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( ^ω^)文戟のブーンのようです[4ページ目]
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≪とりあえずこれだけ分かっていれば万事OKなQ&A≫
Q.ここってどんなスレ?
A.お題に沿った作品を指定期間内に投下
投票と批評、感想を経て切磋琢磨するスレ
Q.投票って?
A.1位、2位とピックアップを選ぶ
1位→2pt 2位→1pt で集計され、合計数が多い生徒が優勝
Q.参加したい!
A.投票は誰でもウェルカム
生徒になりたいなら>>4にいないAAとトリップを名前欄に書いて入学を宣言してレッツ投下
Q.投票って絶対しないとダメ?
A.一応は任意
しかし作品を投下した生徒は投票をしないと獲得ptが、-1になるので注意
Q.お題はどう決まるの?
A.前回優勝が決める。
その日のうちに優勝が宣言しなかった場合、2位→3位とお題と期間決めの権利が譲渡されていく
Q.使いたいAAが既に使われてる
A.後述の「文戟」を参照
詳しいルールは>>2-9を参照してください!
また雰囲気を知りたい方は
スレ1
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1531744456/
スレ2
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1533540427/
スレ3
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1536071497/
へGO!!
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《本スレの目的について》
このスレは、様々な作者が匿名、且つ短いスパンで作品を投下しあい、順位を決めていくという、
短期的文芸品評会の運営を目的としています。
こう書くと堅苦しいですが、簡単に言えば『匿名で作品投下して、順位決めて遊ぼうぜ!あわよくば感想とか批評とかし合おうぜ!』
という文筆力の研鑽を第一としております。
基本的に、このスレでの投下では皆さんが今まで築いてきたキャリアなどは捨てていただいて、
このスレのみで通じる新たな価値観を獲得していただければと考えております。
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《生徒登録》
創作学園では新規生徒を随時募集しております。
生徒登録では、名前欄に『好きなAAキャラの顔文字#トリップキー』で書き込みをしていただきます。
その際に、意気込みなどを合わせて書き込んでいただければ、より盛り上がると思います。
また、選択したAAキャラに合わせてのロールプレイ等も推奨しておりますので、
本当にこのスレを学園、あなたをその学園に通う生徒と見立てつつ、楽しく遊んで頂ければ幸いです。
然しながら幾つかの注意事項が御座います。
注意その1:過去に使用したことのあるトリップキーは使用禁止
このスレでは、今までのキャリアは見えない状態で競い合うことを目的としておりますので、
作者が特定できてしまうようなトリップキーの使用はお控えください。
注意その2:AAキャラの選択について
基本的には生徒登録が早かった人が、そのAAキャラを獲得したものとさせて頂きます。
また、のような、名前欄に書き込むことのできないAAは、『でぃ』などの名前での代用も可能です。
注意その3:総合やツイッターでの作者バレ禁止
注意その1と同述ですが、このスレでの生徒《サクシャ》とブーン系作者とを完全に切り離したいので、
自分が特定されるような書き込みをするのはお控えください。
Twitter等で参加を表明すること自体は止めませんが、自分がこのスレに投下した作品を書き込んだり、
匂わせたりする行為も禁止になります。
上記行為が発覚した場合には、【退学】措置もあり得ますので、ご注意ください。
現在の生徒登録状況は>>5の通りになります。
では、このスレの流れをご説明致します。
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《投票期間》
投下期間が終了した時点で、その日から【3日後】まで、【投票期間】とします。
基本的に、第一位と第二位、それから気になった作品(第一位、第二位も選択可)を選んで頂き、
書き込んで頂ければと思います。
第一位は2ポイント、第二位は1ポイントとして集計致します。
もちろん投下作品全てに順位をつけていただいても構いませんが、
ポイントになるのは一位と二位のみであること、ご了承ください。
また、投票時に、寸評等も加えていただけると、互いの研鑽になると思いますので、
是非積極的にお書きください。もちろん面倒くさいなら、順位のみの投票でも構いません。
また、品評会に作品を投下した作者は、必ず投票を行ってください。
投票を行わなかった場合、勝者確定後、1ポイント減点とさせて頂きます。
以下に基本テンプレを用意致しますので、こちらをご使用ください。
《投票》
【第一位】タイトル名
【第二位】タイトル名
【Pick up】タイトル名
【寸評】
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【第四回までの累計成績】
・【26P】从 ゚∀从 ◆ogHcBy0QF6
・【1P】(*゚ー゚) ◆4hjDojWtys
・【0P】▼・ェ・▼ ◆a7eydlwZI.
・【10.5P】( ^ω^) ◆DD/QFCGk1c
・【17P】(・∀ ・) ◆evfltpoFGo
・【28P】(´・_ゝ・`) ◆lqtlYOyuz2
・【0P】<_プー゚)フ ◆AwmE0lJ56w
・【0P】( ><) ◆wHcop5D7zg
・【1P】('(゚∀゚∩ ◆lDflfAeUwE
・【2P】('、`*川 ◆tKLHNhuUIo
・【11P】ミセ*゚ー゚)リ ◆.B6BIc9Qqw
・【8P】( "ゞ) ◆x4POrpflHM
・【3.5P】J( 'ー`)し ◆nL4PVlGg8I
・【1P】(-_-) ◆q/W4ByA50w
・【6P】ζ(゚ー゚*ζ ◆ob8ijO4RO6
・【5P】爪'ー`)y‐ ◆IIES/YYkzQ
・【20P】( ´_ゝ`) ◆GmbTh14.y.
・【7P】('A`) ◆0x1QfovbEQ
・【8P】(-@∀@) ◆q5Dei.01W6
・【6P】o川*゚ー゚)o ◆r65.OITGFA
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《勝者》
投票期間終了後、ポイントの集計を行います。
そして、合計ポイントが一番多かった生徒を、その品評会での【勝者】とします。
勝者には、【次回品評会のお題】及び【投下期間】を決める権利が与えられます。
ただし、投下期間は【最短:一週間】【最長:一ヶ月】の間で設定してください。
また、お題及び投下期間の設定は、勝者が決まった日から【24時間以内】に行ってください。
24時間以内に設定が行われない場合、設定の権利は第二位の方へと移ります。
その後、24時間経過ごとに、第三位、第四位……と権利が移行します。
しかし、それで獲得したポイントなどが消える訳ではないので、ご安心ください。
そして、この品評会で稼いだポイントは、【トリップに紐付けて管理】されます。
つまりは、第二回品評会、第三回品評会と参加し、投票されることで、
皆さんが登録したトリップに、そのポイントが累積していくことになります。
このポイントは、後述の【拝成十傑評議会】を決める際に重要になりますので、
是非多くのポイントを稼げるように品評会にご参加ください。
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《文戟》
さぁ、いよいよこのスレの目玉とも言えるポイントの説明です。
貴方達には、それぞれ【お気に入りのAAキャラ】がいるはずです。
でも、そのキャラを既に誰かが登録してしまっている……。
そんな時、あなたはそのAAキャラを使用している生徒に【文戟】を挑むことができます!
【文戟】を行う際に必要になる手順としては、こんな感じです。
294 名前:ミセ*゚ー゚)リ◆y7/jBFQ5SY[sage] 投稿日:2018/07/15(日) 21:12:15 ID:EVMxAmGI0
(゚、゚トソン◆QyGRlT0wZkに【文戟】を申し込む!!
295 名前:(゚、゚トソン◆QyGRlT0wZk[sage] 投稿日:2018/07/15(日) 21:15:34 ID:6pHFm7UE0 [2/2]
いいですよ。じゃあお題は【蝉】、投下期間は【2018年07月24日23時59分】まででヨロ
【文戟】では、挑まれた側が、お題と投下期間を決定できます。
投下期間に関しては、品評会と同じく、最短一週間、最長一ヶ月で設定できます。
また、文戟中は名前欄に[文戟中]を付け足してください。
通常の品評会投下と区別する目的です。
また、双方の合意があれば、品評会に両名参加し、得票数での決着も可能です。
その場合も、名前欄に[文戟中]の付け足しをお忘れなく。
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では、【文戟】の勝敗によって何を得ることが出来るのかをご説明します。
【挑戦者】
挑戦者は、文戟を挑んだ相手に勝利した場合、その相手が使っているAAキャラクターを奪って使用することが出来るようになる、
あるいは、相手が持っているポイントの【半分】を得ることが出来ます。
AAキャラを奪った場合、奪われた方は他の未使用AAを使用していただくことになります。
もちろん挑戦者との入れ替えでも構いません。
【防衛者】
挑戦を受けた側が勝利した場合は、相手が持っているポイントの【全て】を得ることが出来ます。
また、相手が1ポイントも所持していない状態の場合、相手は【退学】となり、
顔文字AA及び、トリップの登録が抹消されることになります。
このように、お気に入りのキャラを奪ったり、ポイントを奪ったりして楽しむのが【文戟】になります。
【文戟】を挑まれた方が、それを受けるかは自由としますが、なるべく受けていただけると、
面白くなるのではないでしょうか。
基本的なルールは以上になります。
分からない事があれば気軽にスレに書き込んで下さい!
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【第五回品評会お題及び投下期間】
【お題】『すくう』
【投下日時】『2018年9月25日00時00分〜2018年10月4日 迄』
皆様奮ってご参加ください!
また新規生徒登録は随時行っておりますので
是非宜しくお願いいたします。
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以上!足らないと思ったらこちらへ!
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というわけでね、キューちゃんが一番手で行かせてもらおうと思います!
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1
寝覚めの悪い朝は往々にしてある。
俺にとっては日常茶飯事だった。
単純に覚醒するまでの時間が遅いのだ。
それでも一連の身支度は流れるようにこなしているらしい。
十五年の人生が身体に染み付いているらしく、便利なものだったが、
意識も碌に無いまま動く姿は弟者曰くなにかに憑依されているようにしか見えないとの事だ。
外に出ると自宅に停めてある自転車に乗った。
向かう方角は通っている中学の逆だった。
まだ起き上がり切っていない住宅街の中で九月の風を切る。
ある程度の距離まで直進してから湾曲すると、
田んぼに面した片道一車線の道路が真っ直ぐに伸びていた。
ここが俺にとっての通学路だった。
聴覚には揺れる稲穂の音が届き、視界には両端に青々とした土地が映る。
少し田舎に近い町ではあったが、こういう場所は悪く無かった。
そうして学校へ向け、ペダルを漕ぎ続けていると、
意識の輪郭がはっきりとして来るのだが、普段と違いまだ夢の中にいるようだった。
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( ;´_ゝ`)「もういいだろう、そろそろ出て行ってくれ」
ζ(゚ー゚*ζ「そんなこと言われても仕事ですし」
後ろから聞こえる声は昨日のままだった。
一回自転車から降り、手押しに切り替える。
普段は四方八方の土地に包まれているように思えたが。
今日は緑の壁に閉じ込められているようにすら思える。
通常の通学路から外れている上に、登校時間も早めにずらしているとはいえ、
自動車すら一台も走らないのは不運だった。
草木のさざめく音よりも、エンジン音が恋しい。
( ;´_ゝ`)「俺はさ、割かしまともだと思ってたんだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうですよね、おかしいのは自分じゃなくて世界ですものね」
( ;´_ゝ`)「だからそういうあれなあれとは無縁のな」
俯きながら、歩くスピードを落とした。
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( ;´_ゝ`)「もうちょっと地に足のついた人間かと思ってた」
ζ(゚ー゚*ζ「そうでしょうそうでしょう。
その性質は羨ましい限りです。
けれども地面の方から崩さってしまえば、あなたもこちら側の人間に様変わり!」
( ´_ゝ`)「……朝からうっさいんだが」
ζ(゚ー゚;ζ「あーごめんなさい。私、生活感に欠けているんですよ。次からは活かすとします」
( ´_ゝ`)「……それ聞いたことあるわ」
振り向いてみると、なにもかもがアンバランスな人間が立っていた。
街頭インタビューに出て来るようなリクルートスーツを身に纏い、
それでいて顔立ちは大学生というよりは高校生に近く、
服と全く不釣り合いな金髪を肩まで伸ばした彼女は、
大声を出してしまった事に割と反省している様子だった。
スマートフォンを開き、日付を確認する。
( ;´_ゝ`)「なあ、これって故障か?」
ζ(゚ー゚*ζ「だから昨日言った通りですって」
( ´_ゝ`)「……お前その服で暑くないの?」
俺が発した一言は、現実逃避のそれだった。
弟者のなにかに憑依されている、というのは、
正解だった、というよりは正解になったらしい。
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2
昨夜の話だ。
寝つきの悪い夜も往々にしてある。
そもそもそれが連なって寝覚めの悪い朝に繋がるわけだが、
俺は睡眠を取ろうとする努力を放り投げ、部屋の明かりをつけ、
ベッドに横たわりながら多少の毒にはなる娯楽番組を眺めていた。
流し見をしていると、あいつの俯き顔が浮かび、引っ掛かりを覚える。
『誰だってありますよね』
なんて、慰めにもならない言葉が頭に響いた。
『一掬いにしないで欲しい』
と、自問自答で返す。
『うーんでも、一掬いに収まるからこそ解決できることもあるんですよ?』
……ここまで来ると明らかに自分の言葉ではない事に気がついた。
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『あの脳内で通話するの面倒なんで実体化していいですか?』
( ;´_ゝ`)「……は?」
横たわった自身の身体を起こすと、
リクルートスーツを着た金髪の女が立っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「どーもどーも! この度はご利用いただきありがとうございます!」
( #´_ゝ`)「……今何時だと思ってんだ」
ζ(゚ー゚;ζ「あーごめんなさい、どうも最近生活感に欠けているもので。注意します」
彼女は人差し指を自身の口元に当てた。
こちらがすべきジェスチャーだが、まあ俺には似合わないだろうなと思った。
それはさておき。
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( ´_ゝ`)「あの、警察呼んでいいですか?」
ζ(゚ー゚;ζ「いや駄目ですよ! ……いや別に良いのか」
( ;´_ゝ`)「どっちだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「えっと、そうですね、はい、オススメはしないということで」
いまいち彼女の言動が定まらない。
その曖昧さは夢のそれに近かった。
多分既に意識が落ちているのだろう。
まあもういい、寝てしまおうと思った。
ベッドに横たわり、目を瞑った。
ζ(゚ー゚;ζ「待って寝ないで!」
( #´_ゝ`)「うっさ!」
(´<_` )「……おい兄者。さっきから一人でなに喋ってるんだ」
彼女の声に起き上がりながら反応すると、自室のドアから弟者が顔を出していた。
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ζ(゚ー^*ζ「……ほらオススメはしないでしょう?」
弟者には見えていないらしい女はドヤ顔でほざいていた。
張り倒してやりたいがそんな度胸も無かった。
( ´_ゝ`)「いや、脳内の女の子と喋ってたらヒートアップしてな」
(´<_` )「なるほど、そいつかわいいか?」
( ´_ゝ`)「まあ、かわいいんじゃないか。ただ年上は趣味じゃないな」
(´<_`;)「……じゃあなんでそんな妄想してんだよ」
( ´_ゝ`)「人生の先輩として言ってやるがな、探求心を忘れたらおしまいだぞ」
いつものノリで話し、適当にあしらっていると弟者も呆れたようだった。
(´<_`;)「とにかく程々にな。夜はお静かに」
( ´_ゝ`)「ああ、悪い。おやすみ」
弟者は背を向け、手を挙げて去っていった。
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( ´_ゝ`)「聞きましたか? 夜は静かに過ごすものですよ」
ζ(゚ー゚;ζ「良く出来た弟さんですね。……色んな意味で」
( ´_ゝ`)「全く持ってその通りですね。色んなの意味は聞かないとして」
ζ(゚ー゚;ζ「……えっと、何の話でしたっけ?」
( ;´_ゝ`)「……あなたはなにをしにきたんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「ああ、そうでした」
彼女は遠慮気味に少し音を立てて掌を合わせた。
ζ(゚ー゚*ζ「あなたの後悔を解消しにきました。
それと敬語じゃなくていいですよ」
.
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3
暑苦しい格好をした金髪女が再び現れてから、
自転車を押す力は一向に上がらなかった。
学校までの距離がひどく遠く感じる。
ζ(゚ー゚*ζ「まあ暑くないですよ。この通りなので」
彼女は腕を伸ばし、その手を俺の肩と重ねたものの、
こちらには触れられた感覚も無く、そのまま当たらずにすり抜けていった。
( ;´_ゝ`)「幽霊かよ」
ζ(゚ー゚;ζ「違いますって。昨日言ったでしょう」
( ´_ゝ`)「……俺が路傍の石でしかないって話か?」
ζ(゚ー゚;ζ「そう切り取るとは意地が悪い」
( ´_ゝ`)「……それぐらいの仕返しぐらいさせてくれ」
一昨日の日付が表示されているスマートフォンを眺めながら、
俺は溜め息をついた。いまいち上位存在様のやる事はよく分からない。
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要はガス抜きらしい。
世の中の淀みを多少減らせる程度に調整したいと。
ただその対象になる人間は、彼女の婉曲的な説明を要約しても、
俺の様な取るに足らない存在ではないと駄目らしい。
例えばあの試合やコンクールや試験をやり直したい、
そうすることでステップアップ出来る、
そんな人間はNGだ。
つまり弟者は対象外だが俺はその範囲の中という事だった。
突き付けられると少しだけ気が滅入ったが、
とっくに知っていた事ではあったので特に引き摺りもしなかった。
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( ´_ゝ`)「しかしなんで俺なんだ?
ブーンではない理由はまあ分かるが」
ζ(゚ー゚;ζ「こっちが聞きたいんですよね。
あなたがそこまでこだわることでも無いはずなんですけど」
( ´_ゝ`)「……やり切れないだろ、あんなん」
突然の転校だった。
前触れもなく、ツンはこの中学校から去っていった。
根気強く彼女に話しかけ、ようやく心を通わせ始めていたブーンの落ち込みようは酷いものだった。
傍から見ている友人たちも不憫そうに見つめていた事を覚えている。
せめて、良い別れ方が出来なかったものなのか。
そして今戻って来たのがその前日だ。
ζ(^ー^*ζ「優しいんですね」
( #´_ゝ`)「もう前方に生徒が見えて来たから口閉じるわ。あと笑うな」
ζ(゚ー^*ζ「すみません、サービス業ですから。
笑顔を絶やさないように心がけているんですよ」
( #´_ゝ`)「なにがサービス業なんだか」
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4
その日の俺の貧乏ゆすりは酷いものだった。
あまりの手持ち無沙汰ぶりに、友人には忘れものかと訊かれる始末だ。
今更ながら、そもそもどう話しかけろと教室で苦悶している間に、
時間割は進行していき、気がつけば自転車を押しながら帰路を進んでいた。
途方に暮れながら、微かに色褪せ始めた田園の稲穂を眺め続けていた。
俯きながら溜め息を大きく一つ吐き、背後へ喋りかける体勢を整えた。
( ´_ゝ`)「……あのさ、さっきは笑顔がどうこうじゃなくて確実に笑ってたよな」
ζ(゚ー゚;ζ「ま、まさか」
( ´_ゝ`)「まさかここまでのド陰キャだとは思わなかった?」
ζ(゚ー゚;ζ「そこまでは言ってません!」
( #´_ゝ`)「どこまでは言ってんだろうな」
ζ(゚ー゚;ζ「言葉の綾ですって綾」
( ´_ゝ`)「……はぁ。悪い」
こいつに当たってもしょうがないのは分かっていた。
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( ;´_ゝ`)「というか女の子への話し方すら覚束ないのに、
ブーン以外まともに接する事が出来なかったツンに俺がどうしろと」
ζ(゚ー゚*ζ「私は女の子じゃないんですかー」
( ´_ゝ`)「なんか違う」
ζ(゚ー゚;ζ「ひどい!
でもそれならブーンくんに話せばいいじゃないですか」
( ´_ゝ`)「そもそもブーンともたまに話すぐらいなんだよな
なんて話せばいいんだろうな、実は明日ツンは出て行くらしいぞって言えばいいのか?
それでブーンがツンに問い詰めてみてもあまり良い結果は期待出来ない気がするんだよな」
ずっと隠してたことを曝け出されるのも嫌だろ」
ζ(゚、゚*ζ「あー……そうだよね」
( ;´_ゝ`)「……納得するのはいいんだが俺にどうしろと」
ζ(゚ー゚*ζ「取りあえず後悔を無くすまでリトライというのが原則なので。
寝るか二十四時になったらやり直しです。
俗に言うタイムリープなんで身体は疲れませんけど、
頭が疲れたら眠ってください。……あと一ついいですか?」
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( ´_ゝ`)「なんだ?」
ζ(゚ー゚*ζ「ぶっちゃけ兄者さんってあまり二人と接点なくないですか?」
( ´_ゝ`)「接点がなくてもやり切れないものはやり切れないだろ」
ζ(゚ー゚*ζ「感情移入する方なんですねぇ」
( ´_ゝ`)「そうなのかもしれないな」
その後、リトライを繰り返してみたが上手くはいかなかった。
結局一歩を踏み出しツンに話しかけても、
碌に会話が出来ない上に、男としての精神が擦り減るし、
ブーンに相談し、事情を話しても、案の定の喧嘩別れだった。
これでは以前より悪化している、
それでも様々な伝え方や接し方を試してみたもののことごとく上手く行かない。
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ζ(゚ー゚*ζ「これで何回目でしたっけ?」
( ´_ゝ`)「俺が数えることじゃないだろ」
自転車を押しながらこの道を通るのは今日で何回目だろう。
幾度となく通って来た帰路。
四季が止まり、これ以上変色もしない田園が目の端にこびりつく。
癒しの風景だったはずのそれは、今では少しずつ心を蝕む存在になっていた。
( ´_ゝ`)「もう今日も帰って寝るわ」
半ばやけになっていた。
サドルに乗り出し、ペダルに足を掛ける。強く踏み出そうと思った。
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ζ(゚ー゚;ζ「あっ、ちょっと待ってください!」
焦った彼女を尻目に、駆けだそうとした。
……駆けだそうとしていた。
肩に、なにかが触れていた。。
ほんの一瞬で引き剥がされたが、確かに掴まれていた。
( ´_ゝ`)「……あれ?」
ζ(゚ー゚;ζ「あ」
振り返ると彼女は、伸ばしたであろう右腕を引っ込め、その手首を左手で握っていた。
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ζ(゚ー゚;ζ「や、やっぱり今日も暑いですね」
( ´_ゝ`)「……そりゃそんな恰好ならな」
ζ(^ー^;ζ「あはは……」
彼女の笑顔は、今までで一番ぎこちなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……やっぱり私は出来が悪い。
ヘラヘラと笑顔を絶やさない事だけは得意なはずなんですけどね」
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5
少し青みがかった空の下。
コンビニの前には数人の若者がたむろしていた。
過疎化が進むこの辺り一帯では貴重な店舗であった。
細道ながらも二車線道路に面しており、
コンビニと横並びの歩道沿いに飲食店や整備店が設置されていた。
とはいえ、飲食店は老舗と言うには看板の錆びが目立ち、
個人経営の整備店も外装は埃に塗れているような印象を受けた。
俺はそれら店舗の反対車線側にある公園近くの歩道から、
斜向かいに見えるコンビニで位置取っている彼らを見ていた。
少し煙の臭いが漂ってくる。あまり近づきたくはなかった。
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( ;´_ゝ`)「面倒だな」
ζ(゚ー゚*ζ「怖いんですか?」
( ;´_ゝ`)「寧ろその方が良い。
下手に仲の良い先輩がいるから長々絡まれる」
ζ(゚ー゚*ζ「……なるほど。じゃあそこの階段上って境内で待っててください」
彼女が指差したのは公園側にある住宅街への道だった。
コンビニの正面に行くにはここから目の前の横断歩道を渡る必要があるが、
そこを右折し、少し歩くと神社の境内への階段がある。
夏祭りの時は多少使われるが、今は閑散としている場所だった。
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ζ(゚ー゚*ζ「……まあ待っててくださいよ」
言う通りに境内で待っていると、彼女は五分程で登って来た。
もういませんと言うので行ってみると彼らは退散していた。
ζ(゚ー^*ζ「ちょっと怪奇現象起こして来ました」
( ;´_ゝ`)「やっぱりお前幽霊だろ」
ζ(゚ー゚*ζ「どうなんですかねー」
コンビニでアイスを買い、丁度良かったので再び境内へ戻った。
鳥居をくぐり、既に役目を終えているような木造建築へ進み、
賽銭箱の前の段差で二人で腰を掛けた。いや、片方は浮いているだけかもしれない。
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( ´_ゝ`)「お祓いでもしてもらえればいいんだけどな」
ζ(゚ー゚;ζ「やめてくださいって、この世にまだ未練があるんですから」
彼女は暑苦しいのか、上着を段差の上に掛けた。
俺は袋を開けて、彼女に棒アイスを手渡した。
ζ(゚ー゚*ζ「アイスは早く食べないと溶けちゃうんですよね」
( ´_ゝ`)「……そうだな、今気づいたのか」
ζ(゚ー゚;ζ「あっ、馬鹿にしましたね!
違いますから、私が溶けちゃうんですよ」
( ;´_ゝ`)「……普通にぞっとするんだが」
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ζ(゚ー゚*ζ「まあ溶けるというかいつものように透けるですね。
それぐらい私の存在はこの世にとって希薄なものなんですよ。
そうだなぁ、物に触れられるのは一日に五分から十分が限度かな。
それ以上の滞在は現世から弾かれちゃうみたいで、
抗おうとすると身体が悲鳴を上げるんですよね、いや魂かな」
相槌を打つことも出来ず、間に耐えることも出来ず、
俺は黙々とアイスを食べ続けていた。
ζ(゚ー゚*ζ「そういえば辺りがこう少し暗くなって
上半身も白いシャツになっている時の私って
なにかに似てません?」
髪が黒みがかって、白いシャツを着た女。
重なる面影は一つ、ツンしかいなかった。
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( ´_ゝ`)「……ああ、うん、気づかなかった俺の鈍さを笑えよ」
ζ(゚ー゚*ζ「気づかせなかった私の努力を誉めてくださいよ。
なんとかこの世から透け切る前に髪染めとスーツを用意して、
魂の形を定着させて、精一杯面影を隠して俗世から離れようとしたんですよ」
( ´_ゝ`)「確かに胡散臭かったな」
ζ(゚ー゚*ζ「でしょう!?」
( ;´_ゝ`)「胡散臭いと言われて喜ぶ人初めて見た」
ζ(゚ー゚;ζ「あっ、アイスか私が溶けちゃう」
間違ってはいないがまず耳にすることのない台詞だった。
俺も無言で頬張り続けていた。
公園から聞こえていた子供の遊び声も、
いつの間にか消え失せた。そろそろ日が暮れる事を実感する。
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ζ(゚ー゚*ζ「あっ、これ捨てといてください。そろそろ持てないので」
( ´_ゝ`)「……結局お前は何者なんだ?」
ζ(゚ー゚*ζ「実際そういうお仕事は任せられてますよ。
でも元々はあなたと一緒、路傍の石でしたっけ?
私とかそれ直球で言われましたからね、中々辛辣ですよ。
まあそれどころじゃなかったんですけど。だってツンが死んでましたからね」
( ;´_ゝ`)「え……」
さらっと何を言っているんだ、こいつは。
ζ(゚ー゚*ζ「しかも喧嘩別れですから来ましたね。ああどうしたものかと」
( ´_ゝ`)「……お前でも喧嘩とかするんだな」
動揺を呑み込み、なんとか言葉を吐き出した。
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ζ(゚ー゚*ζ「それが嫌だったみたいですよ。
丁度ツンも模試の結果で初めて躓いてた時期だったかな。イライラしてたんだろうね。
『デレっていつもいつもヘラヘラしてるけどさ、それって逃げてるだけじゃない?』
なんて言われてね」
珍しく、はっきりと沈んだ声が聞こえた。
ζ(゚ー゚*ζ「……逃げてなにが悪いんだろうね、いつもいつも二つも下の妹と親に比べられてさ、
出来の悪さを思い知らされてさ、それを正面から受け止め続けたってしょうがないもん。
ツンはいい子でかわいい妹だったから仲良くしたかったし、
劣等感の塊をぶつけて生きていくのだって嫌だった。だからこういう生き方を選んだのにさ、
なんで否定される筋合いがあるんだろうって、……まあそんな感じだよね、言い返したことは」
耳が痛い言葉だった。
ζ(゚ー゚*ζ「ツンは一晩中大泣きして、その次の日に轢かれちゃった。
ループして見たけどフラフラしてたから寝不足だったんだろうね。
でね、ここからが問題なんだけど、私はやりすぎちゃったんだよ。
喧嘩別れという過程じゃなくて、事故という結果を変えようとしたの。
今でいうとツンとブーンくんとの別れの過程じゃなくて、
ツンが転校するという結果を変えるようなものかな」
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( ´_ゝ`)「……過程でもこんなに手こずってるのにな」
ζ(゚ー゚*ζ「ね、そんなことしたらどうなると思う?」
( ´_ゝ`)「……少なくとも無事では済まないだろうな」
別れの形を探すためにここまで彷徨っているというのに、
結果を変えるとなると、もはや俺には検討もつかない世界だった。
ζ(゚ー゚*ζ「そうだね。正解は、ね
……浮くんだよ、因果の外に。
ある意味自己犠牲で一人を救うというよくある話だよね。
それで周りと同じ場所には立てなくなって。
こうやって誰かに、例えばあなたに縛りつくような形でしか顕在出来ない。
それでなし崩し的に当時の担当者に同じ仕事を回してもらったの。
案外この仕事をやってる人ってそういうケースが多いのかもね」
彼女はひと息で話すように長々と喋ると、
目を閉じ、大きく伸びをして、深呼吸をした。
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ζ(゚ー゚*ζ「……しまった、なにを話してるんですかね!」
わざとらしく目を見開き、口調を戻し、明るい声で彼女は言った。
( ´_ゝ`)「……それで今回も妹を助けに来たのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「そう、ですね、どうしても気になって様子を見に来てしまう。
そしたらたまたまあなたみたいな優しい人がいて、
ブーンくんみたいなツンの心を開いてくれる子がいたから、
今度ぐらい、ちゃんと良いお別れにしてあげたいなって」
( ´_ゝ`)「……なるほどな」
その言葉を最後に、長い静寂が訪れた。
強く主張する鈴虫の音色すら耳に入らず、俺は深い思考の海に入っていた。
別に悩む事なんて一つも無いはずなのに、おかしな話だった。
……ほんとうに、おかしな話だ。
-
( ´_ゝ`)「……フェアじゃないよな」
ζ(゚ー゚*ζ「えっ?」
( ´_ゝ`)「これだけ話してもらったんだから、
俺も本音を言わないとフェアじゃないだろ?」
ζ(゚ー゚*ζ「どういう、ことですか?」
( ´_ゝ`)「……俺の場合はさ、ただの発作みたいなもんなんだよ。
俺も一個下のなんでも出来る優秀な弟がいてな、ほらあいつだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……ああ、あの時の方ですね」
( ´_ゝ`)「でもあいつずっと泣き虫でさ、
何処へ行くにもついてきたし、
何処へ行っても泣いてたし、
そんで何処へ行っても俺が親に怒られてた。今思えばおかしい話だよな。
なんでそんなに格差が生まれるんだろうって。たった一歳しか違わないのに。
弟を甘やかしてるだけだと、親としての役目を果たしてるか不安だからか?
叱る相手が欲しかったのかもな。でも当時の俺は疑問にも思えずにな、
帰ったらずっと反省会を続けた。どうすれば良かったんだろう、
どうすれば怒られなかったんだろう、ってな。全部自分のためだよ。
年を取るにつれて弟もああなって今は仲も対等みたいなもんだけどさ、
植え付けられた強迫観念は抜けなかった。その結果がこれだよ。
ちょっと関係性を知ってるだけのあいつらにすらこんな後悔を覚えてしまう。
それだけ」
-
ζ(゚ー゚*ζ「……なんで私たちは上手く出来なかったんだろうね」
( ´_ゝ`)「きょうだいだからじゃないか? 生まれ持ったものだしな。
クラスメイトとかと違って、同じカーストに意図して合わせられない」
ζ(゚ー゚*ζ「なるほどね。私たちは出来損ないだからきょうだいに極端なことしか出来なかったわけだ。
……こんなんだから私たちは路傍の石になっちゃったんだろうね」
( ´_ゝ`)「……でも、出来損ない同士は楽しかったよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……私も」
大きな歪みを覆い隠して、自分を守ろうとして守ろうとして、
それでもまともであろうとしていた俺たちは多分、一緒だったから。
ζ(゚ー゚*ζ「……これじゃお別れみたいだね」
( ´_ゝ`)「多分、次でお別れだよ」
だから。
.
-
6
朝のホームルームが終わった。
初老の数学教師が去り、生徒は各々の場所へ移動する。
教室は微かな賑わいを見せていた。
する事は決まっていた。
数周前と違い、眼前の机は揺れていなかった。
貧乏ゆすりを挟むこともなく、後方の席からスムーズに立ち上がった俺は、
前方の席でポツンとノートを整理しているツンの元へと向かった。
-
( ´_ゝ`)「なあ」
ξ゚⊿゚)ξ「……え」
不意をつかれた様子でツンは振り返った。
それはそうだろう。俺は何回も彼女に話しかけたものの、
相手からすればほとんど面識の無い相手だ。
そういうと俺とツンには深い繋がりがあるように聞こえるが、
実際のところそんなものは無いし、こちらの主観ですら碌に言葉を交わせていない。
だから俺が彼女になにかを伝えられるのは、これが最初で最後だった。
-
( ´_ゝ`)「ツンっていつもいつもムスっとしているけどさ、それって逃げているだけだよな」
俺は因果の外の台詞を使った。
教室が少し騒めいた気がした。
当然だ。いきなりツンの元へ接点の無い男が近づき、喧嘩を売るような真似をしているのだから。
ツンの表情に大きな変化はないが、少し瞬きの数が増えた気がした。
しかしこうして見るとよく似ているなと思った。
言動や表情に大きな違いはあっても、姿かたちも、
本音を覆い隠し続けてしまう内面も、あの人にそっくりだった。
-
( ;^ω^)「兄者!? いきなりなに言ってんだお!?」
後ろからすぐに飛んで来たブーンが、俺の肩に手を乗せながら言った。
( ´_ゝ`)「悪い。後は頼んだわ」
俺は何事も無かったかのように席に戻り、その日の授業を終えて帰宅した。
自室に戻ると倒れ込むように眠った。
答え合わせの時間までは、まだ相当先だった。
-
ζ(゚ー゚*ζ「待ち合わせなんて久々にしましたね!
ちょっとドキドキしましたよ」
二十三時三十分。
彼女はあの境内で待っていた。
俺が階段を上がって来ると、大きく手を降っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「で、どうにかなりそうなんですか?」
( ´_ゝ`)「まあなんとかなるんじゃないのか」
ζ(゚ー゚;ζ「なげやりですねー」
( ´_ゝ`)「そんな心配する事も無いだろ。俺たちと違ってちゃんと価値のある人間だからな」
ζ(゚ー゚*ζ「路傍の石が心配するのもおこがましいか」
( ´_ゝ`)「違いない」
-
並んで座った俺たちは、笑えないような冗談を笑い飛ばせた。
別に、そこに遜ったものも残さずに。
ζ(゚ー゚*ζ「結局なにをしたんですか?」
( ´_ゝ`)「ちょっと手を握っていいか?」
ζ(゚ー゚*ζ「……いや、いいですけどね。
あなたがそこまでするとかどんだけ私駄目なんですか」
恐る恐る俺の膝元に置かれた彼女の手を握った。
( ´_ゝ`)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……いつもみたいになんか言ってくださいって
……泣きますよ」
-
言葉は使わず、ただ手の力を強めた。
彼女の手の震えを止められるものでもないが、
それでも、気休めでも、数分間だけ幸せを分け合いたかった。
ζ(゚ー゚*ζ「……そろそろ十分ですかね」
( ´_ゝ`)「……まだだろ」
ζ(゚ー゚*ζ「……そうですよね」
俺は空いた手でスマートフォンを取り出し、時刻を確認した。
-
ζ(゚ー゚*ζ「や、野暮な事するなぁ」
( ´_ゝ`)「そうだな、俺は酷い奴だからな。
俺がツンになに言ったか知ってるか?」
ζ(゚ー゚*ζ「え?」
( ´_ゝ`)「まんまツンがお前に言ったような事を言った。
まあ流石にヘラヘラは使えなかったから言葉を変えたが。
……あっ、そうだ。もう十五分たったな」
ζ(゚ー゚*ζ「……え?」
彼女は唖然として、手の震えまで止まっていた。
-
( ´_ゝ`)「お前を因果の外から引っ張り出そうとした。
まあこれじゃ気休め程度だけどな。
でも記憶なんて芋づる式に掘り起こされるもんだろ、この手みたいに」
ζ(゚ー゚*ζ「……けど、私がいた痕跡なんてないからね。
徐々に消えていくんじゃないかな」
( ´_ゝ`)「そもそもな、実体を持てること自体がおかしいと思わないか?
微かにでもツンの記憶に残っていたから、認識されたんじゃないのか」
ζ(゚ー゚*ζ「……もうなにが言いたいのか分かんないよ」
( ´_ゝ`)「だから、明日もここで待ち合わせしよう」
ζ(゚ー゚*ζ「……一回日を跨いだら再構成されるだけだよ」
( ´_ゝ`)「なあ、ほんの些細な事で、一人の相手だけを連想してしまう事ってあるよな」
-
俺は今からとても恥ずかしい事を言う。
それでも仕方がない、もうそういう症状なんだから。
( ´_ゝ`)「俺は世界で一番デレを連想してしまうものが多い自信がある。そういう病気って知ってるか?」
ζ(゚ー゚*ζ「……ずるいなぁ。そんなこと言われたら、兄者君を待たないといけないじゃん」
もうすぐ十二時だ。
ブーンとツンは分かり合えて、俺たちは離れ離れになる。
それでも大した問題ではないと思った。
とっくに俺の脳は、デレに巣食われているのだから。
出来損ないのようです 了
.
-
o川*゚ー゚)o[文戟中] ◆r65.OITGFA『出来損ないのようです』
>>12-50
おわりです!
次の方おまたせ!
-
('A`) ブーンが寝たかも知れないので五分待って無反応なら投下する
-
視野全天を文字が流れている。
左から右へ。
上から下へ。
見慣れないその文字列は、何かのコードのようにも思えた。
思わず文字に触れようとして、腕が動かない。
まるで、脳からの信号が届いていないかのように、両腕は沈黙している。
それとも、他人の腕が継ぎ接ぎされているかのように。
視界全体に広がる薄暗い空間の中で、流れる文字の向こうに人影のようなものが動く。
水面に揺れる鏡像のように、その姿形は見極め難い。
これは多分、夢。
曖昧な認識の中で、私はそう考えた。
影は私から遠ざかるように辺りの暗がりへ吸い込まれ、流れる文字が速度を上げる。
何処からともなく現れ、何処へとも知れずに去っていく、膨大な文字の行列。
次第に加速するそれは、最早、私の目では到底捉えきれない速さで、雪崩のように視界を滑っていく。
加速が臨界に達したかと思うと、突然、全てが静止した。
地面と文字が接する終端で、何かの記号だけが明滅していた。
-
そして、耳をつんざくサイレンの音と怒鳴り声で、私は目を覚ました。
「ハイン! 起きろハインッ!」
警告灯の赤が周回する暗闇の中で、誰かが私の顔を覗き込んでいる。
私は椅子のような物にもたれ掛かっていて、体は石のように重かった。
「誰…?」
「いいか、時間が無いから良く聞くんだ」
「これまでの事は、このメモリスティックに全て入力してある」
「だから、これを絶対に肌身…」
男の背後で何かの炸裂音がけたたましく鳴り響き、一瞬、全ての音が途切れる。
直後、吹き寄せた突風に揉みくちゃにされ、男はうめき声をあげてよろめいた。
男がどうにか体勢を戻すと、その手にはもうメモリスティックがなかった。
「クソッ!」
悪態をつく声が遠のく。
-
「誰も信用するんじゃないぞ ハイン!」
男は私の後ろの方で何か音をたてながら、怒鳴り続けていた。
すると、目の前に透明の半球体が降りてきて、私は小さな空間に隔離された。
中で僅かな光が灯る。
「とにかく逃げて、どこかに隠れるんだ」
上からはいくつもの足音が聞こえていた。
私の意識は未だにぼんやりとした被膜に覆われ、何が何やら判然としない。
男が再び正面に現れ、半球の向こうに顔が見えた。
( ´∀`) 「これからは色々な事に戸惑う機会も増えるだろう、でも…」
( ´∀`) 「元気でモナ」
何故かその声だけは妙に優しくて、
次の瞬間、私はものすごい力で椅子から引き剥がされそうになった。
-
男の顔が一瞬のうちに遠ざかって見えなくなり、彼がいた場所も同様だった。
私の背後から何かが現れては、同じように消えていく。
やがて、広大な暗闇の中に全てが小さく消えていった。
「あぁ…」
半球の窓にカバーが降りてくるのと同期して、
私の意識も急速に闇に覆われていった。
再び意識を手放す寸前、私は自分が宇宙空間に放り出されたことを、かろうじて理解した。
-
ξ゚⊿゚)ξ 路地裏の空のようです 从 ゚∀从
.
-
それは、もう何度目かも分からない夏の日暮れだった。
ξ゚⊿゚)ξ 「随分と遅くなっちゃったわね…」
廃棄されたジャンクの山から、使えそうなパーツを探してレストアする毎日。
両親に憧れて、将来は航空宇宙工学かサイバネティックス系のエンジニアになりたかったが、
そんな事を思い描いていたのも、遠い昔のようにツンは感じていた。
この星のように忘れられてしまった、かつての夢の残骸。
過去数世紀に渡って、星系の中心として発展と革新の最前線だったこの星も、
人類の太陽系外進出が本格化して以降、
今では、そこかしこに、そんな時代の名残が見られる古都というのが実情だった。
ξ゚⊿゚)ξ 「ふう…」
過去の栄光をいただく軌道エレベーターと空中都市、それを支える内郭都市。
スプロールじみた外郭がそれらを取り巻き、寄生するようにどこまでも続いている。
そこではスラム街のような場所も珍しくはない。
-
そんな街並みを横目に、ツンは帰り道を急いでいた。
都市の底から覗く空は、超高層のビル群に切り取られて狭く、
その明るさで、遥か彼方の星々もかすれて見えない。
夜空を行き交う光点が流れ星などではなく、
星間シャトルの列と人工衛星だと知ったのは、随分と後になってからだ。
ξ゚⊿゚)ξ (今日も星は見えないわね…)
ある夜、そんな空から一斉に光点が消えた。
北半球ほぼ全域の警戒衛星がブラックアウトしたとか、
宇宙港の管制センターが、やらかしたとか噂は色々あった。
そんな中には流星が一つだけ見えたとか、見えないとか言うのもあった。
ツンがその話を思い出したのは、
通りがかったスクラップ置き場で奇妙な楕円球を見つけた時だった。
-
差し渡し二メートルほどの大きさで、表面は焼け焦げて禿げ上がり、
そこから鈍い色の金属が所々むき出しになっている。
ξ゚⊿゚)ξ 「何かしらこれ…」
表面に描かれた文字や何かのマークは損傷が激しく、判然としない。
裏側に回ってみると球体はぽっかりと口を開け、そこから何かの操縦席のようなものが覗いていた。
ξ゚⊿゚)ξ 「これは…再突入ポッド…?」
ξ゚⊿゚)ξ !?
背後に気配を感じて、振り返る。
地面に落ちていた何かのパーツを蹴飛ばしながら体勢を変えようとするが、
金属板の陰から伸びてきた二本の腕に、首筋と右腕を締め上げられて、
ツンは地面に押し倒された。
ξ ⊿゚)ξ 「うぅ……」
覆いかぶさって来る黒い影。その向こうに広がる夕闇。
空には赤い光点がいくつも流れていた。
-
気が付くとツンはジャンク置き場から、どこかの見知らぬ裏路地にいた。
近くに人の気配を感じ、両肩を抱きすくめて座ったまま、壁に身を寄せるように後ずさる。
从 ゚∀从
室外機の向こうにいたのは、同じ歳くらいの少女だった。
白と紺で塗り分けられ、オレンジの差し色が所々に入る奇妙な服を着た彼女は、
路地に膝をついてツンの顔を覗き込んできた。
少女の銀髪が頬を流れる。
从 ゚∀从 「……大丈夫か?」
開口一番、バツの悪そうな声。
从 ゚∀从 「正直、驚いたのと、力の加減がうまく出来なくて」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
从 ゚∀从 「怪我してない…よな?」
少女の物腰から敵意は感じられなかった。
だが、締め上げられた首と右腕はズキズキと痛んだ。
彼女の服は所々が灰のようなもので汚れていた。
-
从 ゚∀从 「あの場所からはすぐに離れる必要があって、とりあえずここに…」
ξ゚⊿゚)ξ 「…あなた…誰?」
从 ゚∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「見慣れない服ね…他の惑星からの不法移民なの?」
从 ゚∀从 「それが自分でもよく分からなくてな……」
そう言うと少女は夜空を見上げた。
路地裏の空は相変わらず狭くて、星は見えない。
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
从 ゚∀从 「それじゃ、俺はこれで…」
ξ゚⊿゚)ξ 「待ちなさい、この馬鹿力女」
从 ゚∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「乙女の柔肌を傷物にしといて、そのまま立ち去ろうっていうの?」
< 「二の腕と首にくっきり痣が出来てるじゃない!」
路地裏のガラス窓に写った体をあらためながら、ツンは語気を強める。
-
从 ゚∀从 「いやまぁ、乙女って成りでもないだろ…?」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
ツンは窓の中にいる自分をもう一度よく見回した。
油にまみれたツナギ、乙女と言うには幾分しっかりとした体つき。
廃品屋の冴えないロゴが入ったキャップに、化粧っ気のない顔。
ξ゚⊿゚)ξ (さいわい素材は悪くないわ…)
ξ゚⊿゚)ξ (……)
从 ゚∀从 「あのう、もしもし……?」
ξ゚⊿゚)ξ 「なによ! ジャンク屋の乙女よ! 悪いかしら!?」
从;゚∀从 「左様ですか……」
ξ゚⊿゚)ξ 「さあ、改めて洗いざらい吐いてもらうわよ!」
ξ゚⊿゚)ξ 「さもないと傷害犯として治安警察に突き出すわ」
-
从;゚∀从 「いやいや…それは困るぞ、何の為にこうして人目につかない場所に隠れていると…」
ξ゚⊿゚)ξ 「語るに落ちたわね不法入植者!」
从;゚∀从 「いやいやいや、違うんだってば、事情は話せないが追われてるんだよ俺」
ξ゚⊿゚)ξ 「ますます怪しいわ」
从;゚∀从 「頼む! 見逃してくれ!」
ξ゚⊿゚)ξ 「この星に来た目的は?」
从 ゚∀从 「実は…この星には不時着したんだ」
ξ゚⊿゚)ξ 「やっぱり、あの再突入ポッドはあなたの物ね!」
从;゚∀从 「誘導尋問じゃないか!」
ξ゚⊿゚)ξ 「それで何を企んでた? 星間条約で禁じられた密輸品の運び屋か?」
从;゚∀从 「尋問はやめろって!」
-
押し問答はしばらく続いて、二人が何かしらの合意にたどり着いた頃には、
すっかり夜の帳が下りていた。
ξ゚⊿゚)ξ 「つまり事情は話せないがとにかく追われてて」
ξ゚⊿゚)ξ 「宇宙船のトラブルでこの星に降りたと」
从;゚∀从 「最初からそう言ってるだろ…」
ξ゚⊿゚)ξ 「だからって、乙女の柔肌を傷つけていい理由には少しもならないわ」
从;゚∀从 「はい……」
ξ゚⊿゚)ξ 「それに出で立ちから言い分まで、やっぱり全てが怪しいわ…」
从;゚∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「大体…何で追われてるのよ?」
从 ゚∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「だんまりってわけ?」
-
ξ゚⊿゚)ξ 「まぁいいわ…それで、これからどうするの?」
从 ゚∀从 「いや、なんでそんな事まで話さないといけないんだよ?」
ξ゚⊿゚)ξ 「あいたたた〜腕と首が痛むわ〜つらいわ〜お巡りさんー」
从;゚∀从
从;゚∀从 「と、とにかく…この星に長居する気はないぞ」
从 ゚∀从 「星間航行が可能な宇宙船を見つけて、どこか遠くへ旅立つさ」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「あなた、そんな物が買えるようなお金持ちには見えないけど……」
从;゚∀从 「あっ……」
ξ゚⊿゚)ξ 「話にならないわね…まあ、頑張って…」
ξ゚⊿゚)ξ 「なんだか急に興味も冷めたわ……」
ξ゚⊿゚)ξ 「宇宙は広い…いろんな人がいるわねぇ…」
-
从;゚∀从 「まっ、待ってくれ…」
从;゚∀从 「他の星までいけるような星間シャトルがまじめに必要なんだ…」
ξ゚⊿゚)ξ 「盗むにしても騙し取るにしても、そんな物こんな所にはないわ」
从 ゚∀从 「人聞きの悪い事を…」
ξ゚⊿゚)ξ 「他に方法があるのかしら…?」
从;゚∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「あるとしたら上都か宇宙港ね」
从 ゚∀从 「上都?」
ξ゚⊿゚)ξ 「降りてくる時、見えなかった?」
从 ゚∀从 「でかい塔なら見えたが、何しろ初めての再突入ってやつで余裕がなくてさ」
ξ゚⊿゚)ξ 「それが上都の中心を貫く軌道エレベーターよ」
从 ゚∀从 「軌道エレベーター……」
-
ξ゚⊿゚)ξ 「その先に宇宙港があるわ」
ξ゚⊿゚)ξ 「シャトルは宇宙港にとめおくか軌道エレベーターで宇宙港まで持っていくかね」
ξ゚⊿゚)ξ 「ようするに立体駐車場みたいなものよ!」
ξ゚⊿゚)ξ 「本当に宇宙船が欲しいなら…まずは内都に行かないとね」
从 ゚∀从 「…ナイト?」
ξ゚⊿゚)ξ 「軌道エレベーターの根本にある都市よ、そこからじゃないと乗れないわ」
从 ゚∀从 「へぇ…」
ξ゚⊿゚)ξ 「例えるならピザの中央、トッピングが集まって美味しい部分が内都、
外側の硬い耳の方が外都、そして内都の上にもう一枚重なってる小さめのピザが上都」
从 ゚∀从 「いや、耳の部分も俺は案外…」
ξ゚⊿゚)ξ 「そういう話じゃないから」
从;゚∀从 「はい…」
-
ξ゚⊿゚)ξ 「そして二枚のピザを貫いて宇宙まで続いてるのが軌道エレベーター」
从 ゚∀从 「なるほどね…」
从 ゚∀从 「しかし、ピザかぁ…」
ξ゚⊿゚)ξ 「ジャンク屋の親父が好きなのよピザ…」
ξ゚⊿゚)ξ 「それじゃあ今日はもう遅いし内都には明日行きましょう」
从*゚∀从 「案内してくれるのか?」
ξ゚⊿゚)ξ 「あら、見捨ててほしかった?」
从;゚∀从 「まさか…でも…」
从;゚∀从 「なんというか初対面だし…一応は…絞め落とされた相手だぞ…?」
ξ゚⊿゚)ξ 「それは実際すごく怖かったし、腹も立つけど…」
-
ξ゚⊿゚)ξ 「なんだろう、悪人には見えないかなあって」
从 ゚∀从 「お前さ、危機感足りてないんじゃないの…?」
ξ゚⊿゚)ξ 「この街で生き抜けるぐらいにはあるわよ」
从;゚∀从 「治安が良い街なのかな…?」
从 ゚∀从 「とりあえず…お前が働いてるジャンク屋で待ち合わせよう」
ξ゚⊿゚)ξ 「いいけど場所わかるの?」
从 ゚∀从 「地図くらい読めるっての」
ξ゚⊿゚)ξ (うちの店って地図に載るような店なのかしら…)
ξ゚⊿゚)ξ 「まあいいわ、あなた名前は?」
从 ゚∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「そういうところは、だんまりなのね」
-
从 ゚∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「私はツン」
从 ゚∀从 「……ハイン」
ξ゚⊿゚)ξ 「あら、そのくらいは教えてくれるのかしら」
从 ゚∀从 「まあ一応な…」
ξ゚⊿゚)ξ 「偽名じゃないといいけど」
从;゚∀从 「本名だっての!」
从 ゚∀从 (多分な……)
-
「そういえばあなた、私に怪我させたことまだ謝ってないわね」
「……」
「謝罪なさいハイン」
「ツン、お前いい性格してるよ」
「ハイン?」
「……」
「……悪かったよ」
「誠意は形のあるもので頼むわね」
「……」
-
明くる日。
ツンの予感通り、ハインはジャンク屋を見つけられなかった。
しびれを切らしたツンがジャンク屋の親父と探し回った結果、
昨夜の裏路地で膝を抱え、猫に語りかけてる哀れな少女は発見された。
ξ゚⊿゚)ξ 「…アサピーこの娘よ」
从 ;∀从 「ツン……」
(-@∀@) 「こいつか、内都行き志願は」
(-@∀@) 「なんだか聞いてたのと大分違うようだが…」
(-@∀@) 「口の悪い粗野な馬鹿力女だって話だったろ…」
ξ゚⊿゚)ξ 「まあ、昨日はそうだったのよ……」
(-@∀@) 「見たところお前より華奢な身体してそうだが…」
ξ゚⊿゚)ξ 「…ハインあんた、そんなんで今日までどうやって生きてきたわけ?」
从 ;∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ (馬鹿力以外に取り柄はないのかしら…)
(;-@∀@) 「大丈夫なのかこいつ…?」
-
从 ;∀从 「俺だって頑張ったんだ…でも…」
ξ゚⊿゚)ξ 「でも…?」
从 ;∀从 「地図自体が見つからなかった……」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
(-@∀@) 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「どうしましょうこの捨て犬…」
(-@∀@) 「ケッ…野垂れ死にさせても寝覚めが悪い…」
(-@∀@) 「素性が知れないし店には上げないが、一晩ぐらいなら空き倉庫を使わしてやる…」
ξ゚⊿゚)ξ 「ありがとうアサピー」
(-@∀@) 「フン……」
从 ;∀从 「すまねえツン…」
-
近づくにつれて、内都の壁はその大きさを明らかにしていった。
それは壁というよりは、巨大な都市の基部だった
実際のところ、内都は外都よりも高所に存在する。
巨大な基礎の内部には幾つかの通路があり、それが上に建てられた都市へと続いている。
基礎部分の高さは数十メートル。
更にその外周は一体化した都市構造体、つまり、基礎と連続したビル群で隙間なく囲まれている。
それは桁外れに広大な城塞都市を思わせた。
その威容を二人は遠巻きに眺める。
从 ゚∀从 「でかいな…」
ξ゚⊿゚)ξ 「内都はね、元々軌道エレベーターを建設するための街だったの」
ξ゚⊿゚)ξ 「だからあの都市の土台は軌道エレベーターの基礎でもあるの」
从 ゚∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「でも、あまりに大きすぎて、内部構造を把握してる人はもう少ない」
ξ゚⊿゚)ξ 「特に、初期の企業が時代と共に統廃合して、散逸してしまった資料なんかも結構あるのよ」
ξ゚⊿゚)ξ 「私達が今から行くのも、そんな風に遺棄されて忘れられてしまった道の一つよ」
从 ゚∀从 「えっ? 今から行くのか、まだ真夜中だぜ?」
-
ξ゚⊿゚)ξ 「昼に密航するアホがどこの世界に居るのよ、あなたの星じゃそうだったの?」
从;゚∀从 「くそぉ、言わせておけば…」
从 ゚∀从 「……」
从;゚∀从 「ちょっとまて、密航って…?」
ξ゚⊿゚)ξ 「内都はね…治安維持のために滞在許可がない人間は入れないの」
从 ゚∀从 「どうしてそこまでするんだ…?」
从 ゚∀从 「俺たちは出会ったばかりで…」
从;゚∀从 「しかも俺はお前に怪我させて、事情も話せない逃亡者なんだぞ…」
ξ゚⊿゚)ξ 「乙女の柔肌を傷つけたのを今更のように悔いてるわけ?」
从;゚∀从 「まあ多少はな…」
ξ゚⊿゚)ξ 「私、孤児だったのよ」
-
ξ゚⊿゚)ξ 「小さい頃、両親が宇宙船の事故で死んじゃって…」
ξ゚⊿゚)ξ 「今でも一応そうかな」
从 ゚∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「歳も近そうだし見捨てるのもなあって…」
从 ゚∀从 「…多分お前は乙女なんかじゃないぜ、もっとずっといいものさ」
ξ゚⊿゚)ξ 「そうかしら」
从 ゚∀从 「いよっ! 女神さま!」
ξ゚⊿゚)ξ 「まあ私にも実利は当然あるわけよ」
从;゚∀从 「えぇ…!?」
「持たざる者から何を搾り取ろうってんだ!?」
「フフフ……」
「この悪魔!」
喧騒が束の間、夜の街にこだました。
-
外都から内都に通じる搬入路は、全て都市政府と企業が公式に管理している。
だが、先程ツンが話したような経緯で過去に埋もれたしまった道が、人知れず再開していることもある。
ここは、そんな非正規搬入路の一つ。閉鎖された企業搬入口に併設された、
点検用のごく小規模な坑道だった。
軌道エレベーターの建設や企業の物資運搬のための巨大な搬入口とは違って、
人ひとりが通れるかという大きさの通路。こういったものは都市管理局の目を盗みやすい。
恐らく、今となってはこの点検坑の存在を認知している職員も居ない。
从 ゚∀从 「しかしだな、ツン」
ξ゚⊿゚)ξ 「なにかしら、ハイン」
从 ゚∀从 「お前が言った通り、俺はお金なんて全然持ってないぞ」
从 ゚∀从 「どうやって、その点検坑を縄張りにしてるブローカー連中に通してもらうんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ 「そのために、こんな夜中に来たのよハイン」
-
从;゚∀从 「えっ……」
从;゚∀从 「密航って二重の意味で…」
ξ゚⊿゚)ξ 「大丈夫大丈夫、私、知り合いだから」
从;゚∀从 「えぇ…」
ξ゚⊿゚)ξ 「密航者を勧誘するバイトしてたのよ」
从;゚∀从 「おい、俺は体の良いカモじゃないだろうな…?」
从;゚∀从 「まさか…実利ってのは…!」
ξ゚⊿゚)ξ 「ククク…」
从;゚∀从 「俺をどうしようってんだ! やめろ! こっちに来るな!」
「おい! お前らそこで何してる!」
警笛が鳴り響き、むくつけき男たち何処からともなく湧いてくる。
またたく間に、二人は完全に取り囲まれてしまった。
从;゚∀从 「ツンお前やっぱり!」
ξ;゚⊿゚)ξ 「馬鹿言わないで! これはアンタのせいよハイン!」
そうして二人は、怪しげな事務所へと連れて行かれた。
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「ハイン、あなたが騒ぐからでしょ!」
从;゚∀从 「そうは言ってもだな…!」
从;゚∀从 「話が上手すぎるから…本当に、はめられたかと思ったんだぞ!」
ξ;゚⊿゚)ξ 「私がそんな悪人に見えるってわけ!」
「嬢ちゃん達おしゃべりはその辺りに…」
ξ;゚⊿゚)ξ 「何よ…!」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ 「あ、フォックス……」
爪;'ー`)y‐ 「あれ…? ツンお前か…!」
爪;'ー`)y‐ 「……」
爪'ー`)y‐ 「ツン…確かに一時期ウチで働いてたとはいえだな…」
爪'ー`)y‐ 「だからって、勝手にウチのルートで密航しようってのは、いただけねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
-
爪'ー`)y‐ 「まさか、すんなり帰れるとは思ってないよな?」
ξ゚⊿゚)ξ 「いえ、これには事情が…私達はただの観光でして…」
ξ゚⊿゚)ξ 「友人がどうしても内都の壁と、それにまつわる密航エピソードを聞きたがったもので」
ξ゚⊿゚)ξ 「気分を盛り上げようと現地に…」
爪;'ー`)y‐ 「…話は隣の事務室で聞こう」
爪'ー`)y‐ 「おい、こっちの嬢ちゃんを見張っておけ」
「へい、ボス!」
「ボスが話してる間、お前はここで待っているんだ」
从 ゚∀从 「……」
-
<「イヤぁーッ!」
从;゚∀从 「この悲鳴…ツン!」
「おっと、ここで静かにしててもらうぜ!」
<「クソッ!こいつちょこまかと避けやがって!」
<「おとなしく喰らえッ!」
从#゚∀从 「どきやがれぇ!」
ツンの悲鳴を聞いたハインは、見張りを投げ飛ばして隣室へ乗り込む。
そこで見たのは怯えるツンと、何やら棒のような物を振り上げてるフォックスの姿だった。
从#゚∀从 「てめぇ! 何してやがるッ!」
瞬間、ハインは股ぐらを蹴り上げた。
爪;'ー゚ )y‐ 「オゥッホァ!」
間抜けな断末魔をあげて、フォックスが床に倒れ込む。
ξ;゚⊿゚)ξ 「ちょと…ハインあんた何してんの?!!」
从;゚∀从 「えっ…?」
-
从 ゚∀从 「えっ…ゴキブリ…えっ??」
从;゚∀从 「嘘だろツン…お前、ゴキブリに怯えてあんな悲鳴を…?」
从;゚∀从 「街の悪党どもを出し抜いて、密航しようとしてるお前が…?」
ξ*゚⊿゚)ξ 「仕方ないでしょ! すごく嫌いなんだから!」
从;゚∀从 「じょ、冗談じゃねえ…!」
爪゚ー゚ )y‐
从;゚∀从 「このおっさん…完全に伸びてやがる…」
「ボス、何事です?」
「一体、なんの騒ぎだ!」
騒動を聞きつけ、フォックスの部下であろう男たちが続々と集まって来てくる。
その数、総勢十数人。
-
从;゚∀从 「ち、違うんだ…これは誤解だ!」
語るも虚しいハインの弁解。
別室でハインに投げ飛ばされて気絶していた男も起こされ、
証言と犯行現場、状況証拠が出揃う。
「てめえら! よくもボスを!」
「ただじゃ済まさんぞ!」
从;゚∀从 「ええい! こうなりゃヤケだ!」
从;゚∀从 「強行突破するぞツン!」
ξ;゚⊿゚)ξ 「え、えぇ…!?」
そうして、悪党たちとの大乱闘が幕を開けた。
ハインは持ち前の馬鹿力で、悪漢どもを投げ飛ばしたり、いなして大立ち回りし、
ツンはデスクの影からその様子を伺う。
-
順調に数を減らす悪党どもだったが、ついに真打ちが姿をあらわす。
ξ;゚⊿゚)ξ 「なんだか…とんでもないのが出てきたわよハイン!」
从;゚∀从 「うわっ!」
身長二メートルは優にあろうかという大男が部屋に入ってくる。
だが、二人の視線はその長身よりも、男の両腕に釘付けになった。
丸太ほどはあろうかという金属の二の腕が肩口から覗いている。
ξ;゚⊿゚)ξ 「サイボーグ…!」
ξ;゚⊿゚)ξ 「あんたたち! か弱い乙女たち相手になんてもの繰り出してくるのよ!」
ξ;゚⊿゚)ξ 「恥を知りなさい! 恥を!」
馬鹿力のハインに投げ飛ばされた男たちが、辺りに積み上がった部屋の中で、
その抗弁は虚しく響く。
从;゚∀从 「こんなのまで出てくるのか…!」
ξ;゚⊿゚)ξ 「いくらなんでも体格差がありすぎるわ!」
从;゚∀从 「仕方ない! ここは一撃離脱だ!」
从;゚∀从 「いくぞ! ツン!」
-
哀れな断末魔と共に男は床に倒れ込み、先に悶絶していたフォックスが下敷きになる。
爪;'ー゚ )y‐ 「オホゥッ!」
爪;'ー゚ )y‐ 「ち、チクショウ…」
ξ;゚⊿゚)ξ 「ハイン、もう十分よ! むしろ、これはやりすぎだわ!」
ξ;゚⊿゚)ξ 「逃げるわよ!」
从;゚∀从 「ああ…」
ハインとツンは疾駆する。力の限り、己の限界を超えて。
青い光に彩られた少女たちは夜の外都を駆け抜けていった。
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「一体、何なのよその腕は!」
从 ゚∀从 「ああ…時々なんか光るんだ俺の腕」
ξ゚⊿゚)ξ 「はぁ!?」
ξ゚⊿゚)ξ 「義手ってわけ?」
从 ゚∀从 「…言ってなかったけど…俺の体、大部分が…機械みたいなんだ」
ξ;゚⊿゚)ξ !???
夜の街を走り抜け、二人は何処かの路地裏に身を潜める。
ツンはうつむいて地面を凝視し何やら独り言を呟いていた。
ξ;゚⊿゚)ξ 「まさか…そんな…ありえないわ…いえ、でも…」
从 ゚∀从 「おい大丈夫か?」
ξ゚⊿゚)ξ 「いいの良くあることだから、自分には意識があると面白半分に
プログラムされたアンドロイドが妙なことを口走るのは」
从;゚∀从 !?
-
从;゚∀从 「いあや…俺はこれでも多分、れっきとした…」
ξ゚⊿゚)ξ 「あら、そのチタンの頭蓋を開いて私に脳みそを見せてくれるのかしら」
ξ゚⊿゚)ξ 「俺はサイボーグだ! って」
从;゚∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「全身義体化したサイボーグは、アンドロイドなんかより遥かに珍しくて、お金がかかるわ」
从 ゚∀从 「詳しいんだな…」
ξ゚⊿゚)ξ 「仕事柄ね」
そう言ってツンは不意にハインに近づいて顔を覗き込む。
驚いたハインの目が見開かれ、
その瞳の奥、虹彩に擬態したシリアルナンバーは見当たらなかった。
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
人型アンドロイドに義務付けられた識別コードが無いとすると、
近頃、流行りの不正規アンドロイド。
それにしては思考の柔軟性が高いし、躰も高品質に見える。
皮膚の質感、顔の造形、表情。どれをとっても本物の人間と見分けがつかないグレード。
ツンの思考は巡る。
-
从; ゚∀从 「いきなり何を…?」
ξ゚⊿゚)ξ 「ほんの少しだけ言い過ぎたわ…」
从 ゚∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「人間って話はまだ疑ってるけど、ただのアンドロイドではないかもね…」
从 ゚∀从 「実は…俺もあまり自信がないんだ…」
ξ゚⊿゚)ξ 「はぁ? 思考回路が病んでるAIなんてごめんよ」
从 ∀从 「というよりは若干、記憶がないんだ」
从 ゚∀从 「ここ最近以外の記憶が全然なくてな、どうしてこんな体なのか思い出せないんだ」
ξ゚⊿゚)ξ 「最近の逃亡アンドロイドは手の混んだ芝居をするのね…」
从 ゚∀从 「だから…いや、まあ逃亡はそうなんだけど…」
ξ゚⊿゚)ξ 「語るに落ちたわね観念なさい」
从; ゚∀从 「くそっ、なんか調子狂うな…」
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「だいたいフォックスはこの辺りの顔なのよ」
ξ;゚⊿゚)ξ 「あんなことして…どうしてくれるの?」
从;゚∀从 「いや、俺は窮地を救おうとだな…」
ξ゚⊿゚)ξ 「はぁ…人類に反旗を翻すロボットなんて太古のフィクションよ…」
ξ゚⊿゚)ξ 「私の現実が侵食されていくわ…」
从;゚∀从 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「この狂った世界で、この先どうすれば良いのかしら…」
(-@∀@) 「そりゃおめえ…しばらくこの地区を離れるしかないな」
ξ゚⊿゚)ξ 「やっぱり?」
(-@∀@) 「フォックスはしつこいからなあ…」
-
(-@∀@) 「基本的には経済ヤクザだ」
(-@∀@) 「金にならんことはしないはずだが…先方の怒り具合によっちゃあ…」
(-@∀@) 「とんでもない借金を背負わされたり、とっ捕まって娼館に売り飛ばされたりしかねんぞ」
ξ゚⊿゚)ξ 「はぁ…」
ξ゚⊿゚)ξ 「ごめんなさいアサピー…」
ξ゚⊿゚)ξ 「まさか、このバカが暴れるとは思わなくて…」
从 ゚∀从 (しょうかんってなんだろう…?)
-
(-@∀@) 「……」
(-@∀@) 「あんたハインとか言ったか」
从 ゚∀从 「ん、なんか用かおっさん?」
(-@∀@) 「おじさんと言え、まあいい、ツンを頼むよ」
(-@∀@) 「知ってるかもしれんが、あいつは孤児でな…」
从 ゚∀从 「…聞いたよ」
(-@∀@) 「両親の遺産も、アイツを扶養するはずだった親族だかに騙し取られてな」
(-@∀@) 「この辺りじゃ珍しくもないが、ストリートチルドレンだったのをウチで雇うことにした」
从 ゚∀从 「……」
(-@∀@) 「それで良かったのか…満足に学校へもいけず同年代の友達も出来なかった…」
从 ゚∀从 「俺だって別に仲良しごっこをしてる暇があるわけじゃ…」
-
(-@∀@) 「それでもだ」
从 ゚∀从
(-@∀@)「ツンが何で、お前みたいな見ず知らずのヤツを俺のところに連れてきたと思う?」
从 ゚∀从 「それは……」
(-@∀@)「分からないなら、それでもいい」
(-@∀@)「だが義理を働く心当たりは、お前にだってあるだろう」
从 ゚∀从 「……」
(-@∀@) 「確かブローカーと揉めたやつはもう一人居たとかなんとか…」
(-@∀@) 「そいつををフォックスに差し出して詫びを入れるって手もある」
从 ゚∀从 「……」
-
(-@∀@) 「それとも…そいつは不法入星者だって話でな」
(-@∀@) 「低軌道警備隊が血なまこになって探してるっていう…」
(-@∀@) 「この前の衛星ブラックアウト事件の原因かも知れんってな」
(-@∀@) 「突き出した報奨金でフォックスと和解してもいい」
从;゚∀从 「……」
(-@∀@) 「商売柄、事情通でな…」
从;゚∀从 「ちっ、おっさんもアイツに似て強引だな、わかったよ…」
(-@∀@) 「ありがとよ、あと、おじさんだ」
从;゚∀从 「やれやれ…お尋ね者の俺に頼むことかよ…」
-
(-@∀@) 「これもいい機会かもしれん、あいつは此処から出たがってた…」
(-@∀@) 「両親を追って宇宙に出る事が夢だったんだろう…」
(-@∀@) 「でも内都の壁を前に立ち往生してるようじゃ…上都や宇宙は遥か彼方だ…」
(-@∀@) 「あんたなら、もっとデカイ世界を見せられるだろ?」
从 ゚∀从 「…やっぱり、俺に頼むことじゃないだろ」
(-@∀@) 「あいつは俺と出会う前から一人で生きてた」
(-@∀@) 「いまさら心配はいらんと思うが一応な…」
从 ゚∀从 「たくましいんだな…」
-
ξ゚⊿゚)ξ 「できるだけ人目に付く場所は避けて行きましょ」
从 ゚∀从 「それじゃお尋ね者はお尋ね者らしくいくか」
ξ゚⊿゚)ξ 「フォックスは治安組織にもパイプを持ってて黒いお金を収めてるって噂だわ」
ξ゚⊿゚)ξ 「縄張りで揉め事があったら、後ろ盾の警察が動くって寸法ね」
ξ゚⊿゚)ξ 「下手したらこの地区にもう手配書が回ってるかも」
从 ゚∀从 「へえ、そういう風になってるのか…」
从;゚∀从 「…結構まずいことになってるのな」
ξ゚⊿゚)ξ 「今頃気がついたの…?」
ξ゚⊿゚)ξ 「あなた結構、世間知らずな所あるものね…」
ξ゚⊿゚)ξ 「その服装とかも随分と世間ずれしてるし」
从;゚∀从 「言うなよ…」
白と紺で塗り分けられ、オレンジの差し色が所々に入る奇妙な服をからかって、
二人は旅立った。
-
アサピーの元を離れて数日。
二人は人気のない廃棄区画を進んでいた。
放棄された軌道列車の線路がどこまでも続き、それを目印に徒歩で別の繁華地区を目指す。
無秩序に拡大を続ける外都には、こういった区画も珍しくない。
いずれ利用価値が出れば再開発の対象になったりもする。
既に陽は落ちて、金属のレールが夜の僅かな光を集め鈍く光っていた。
まるで水に濡れているように。
从 ゚∀从 「…ここからでも見えるんだな」
ξ゚⊿゚)ξ 「何が…?」
从 ゚∀从 「あれだよ」
そう言ってハインは、林立する廃建築群が途切れた一角を指差す。
夕闇に光る軌道エレベーターが、天まで伸びていた。
-
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
从 ゚∀从 「ひとつ…気になってるんだが…」
ξ゚⊿゚)ξ 「なにかしら…?」
从 ゚∀从 「こんな事になって恨んでないか、俺のこと」
从 ゚∀从 「いや、そもそも、どうして俺を助けたんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
从 ゚∀从
しばらくの間、砂利を踏みしめる足音だけが響いて、それからツンが口を開いた。
ξ゚⊿゚)ξ 「…言ったでしょ私にも実利はあるって」
ξ゚⊿゚)ξ 「私の世界を変えてくれる、そんな出来事を待ってたのよ…」
ξ゚⊿゚)ξ 「それが、あなたのような気がして」
从 ゚∀从 「俺が…?」
-
ξ゚⊿゚)ξ 「私の実利はね、あなたに付いて行って上都を見ることだった」
いつかこの街を抜け出したかった、今までの環境も嫌いじゃなかったけど、何処か空虚で。
モラトリアム…って言うのかしら。ここでは見つからなかった、私の居場所は。
でも、信じてなかった。身よりもない孤児がここから這い上がれるなんて。
ξ゚⊿゚)ξ 「だから…」
从 ゚∀从 「……」
ξ゚ー゚)ξ 「やっぱり…矛盾してるよね」
夜の線路に、寂しげな笑い声が流れ、ツンは足を止めて遠くの空を眺めた。
その先にある軌道エレベーターは、心なしかいつもより小さく思えた。
-
从 ∀从 「……見てみるか、その上都とやらを」
ξ゚⊿゚)ξ 「?…無理よ」
ξ゚⊿゚)ξ 「ここからじゃ上都のプレートだって霞んでよく見えないわ」
从 ∀从 「……」
从 ゚∀从 「…黙ってたんだけどさ、実は俺、飛べるみたいなんだ」
ξ゚⊿゚)ξ 「えっ…?」
ハインのふくらはぎから踵にかけて、
同心円状の幾何学模様が3つほど縦に並び、蒼く発光した。
そこから青白い光の粒が溢れ、粒子は模様とおなじように円状の輪となって噴き出す。
さらに足の裏にも2つ。
音もなくハインは宙に滑り出した。
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