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(能力者)in 筋肉無敵世界 のようです

1名無しさん:2018/09/15(土) 00:31:06 ID:rAxmPMIg0
長い能力者たちとの戦争の末、無敵の肉体を手に入れた人類。
生き残った能力者は迫害され、各地に身を潜めた。

戦争が終わってから二00年。
これは、とある能力者の末裔の話。

13名無しさん:2018/09/15(土) 00:40:02 ID:rAxmPMIg0
そこは、石造りの町。

大通りには店が軒を連ね、細い路地は迷路のように入り組んでいる。

行きかう人々は、年齢、性別に関わらず、当たり前のようにムキムキマッチョ。
貧弱な肉体のブーンは、一目見るだけで能力者とわかってしまうだろう。


(;^ω^)「また襲われるかもだおね・・・」


ブーンはひとまず薄暗い路地裏に身を潜め、大通りの様子を伺うことにした。

( ^ω^)「・・・・・・」

人通りは少なく、みな穏やかな表情をしている。
平和を切り取ったような、昼下がりの光景がそこにはあった。

14名無しさん:2018/09/15(土) 00:40:27 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「お腹すいたお」

旅に出た時に持ってきた食料は、底をつきかけていた。
飲み水も少なくなってきている。

( ^ω^)「できれば、盗みはしたくないおねー・・・」

ブーンはため息をつく。
そしてため息をついてもしょうがないので、また大通りを観察する。
話が通じそうな人を探そう。そして食べ物をめぐんでもらおう。

そう決心し、まばらな人影を見ていくと。

15名無しさん:2018/09/15(土) 00:40:51 ID:rAxmPMIg0
从 ゚∀从「・・・・・・」

一人、異彩を放つ人物がいた。
茶色いマントですっぽりと体を覆っており、よく見ると痩せているようだ。
フードからあふれんばかりの銀髪が目を引く。

( ^ω^)「・・・・・・」

あの人も能力者なのだろうか。

路地裏に隠れている自分がなんだかばかばかしく思えてくる。


しかし、次の瞬間。

16名無しさん:2018/09/15(土) 00:41:24 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「!!」

銀髪がいきなり、火の玉を放った。

「うわあっ!」

命中し、炎に包まれる通行人。

銀髪は走って路地の隙間に消えようとする。
突然の出来事に、周りの人々はおどろき動けない。

(;^ω^)「まずいお!」

ブーンは一瞬の躊躇ののち、大通りに飛び出した。

17名無しさん:2018/09/15(土) 00:41:59 ID:rAxmPMIg0
(;^ω^)「大丈夫ですかお!!」

そして、燃えている人にありったけの水をかける。
本当は銀髪を追いかけたかったが、人命救助が先だ。

ジョワ、というような音を立てて、すぐに火は消えた。

(;^ω^)「ふう・・・」

しかしあれだけの火、いったい無事だろうかと思っていると。

18名無しさん:2018/09/15(土) 00:42:21 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「どうもありがとうモナ」

助けられた通行人が、口を開く。
以外にもしっかりとした口調だった。
顔には深い皺が刻まれており、年齢を感じさせる。

(;^ω^)「お礼はいいから、早くお医者さんへ行った方がいいお!」

( ´∀`)「モナ? ・・・・・・その体型、能力者モナか?」

しまった。
ブーンは逃げようと走り出すが、

( ´∀`)「まあ、お礼くらいさせろモナ」

(  ゚ω゚)「お゛お゛んっ!」

老人に首根っこを掴まれ、どこかへ連れていかれる。

19名無しさん:2018/09/15(土) 00:42:47 ID:rAxmPMIg0
聞きたい事もたくさんあったが、首が絞められうまく声が出せない。

老人は五分ほどひと気の無い道を進み、一軒の家に入る。
そこも石造りの家で、町の中でも高いところに建っているようだ。

( ´∀`)「着いたモナ」

(;^ω^)「おんっ」

どさっ。
玄関に入ったとたん手を離され、尻もちをつくブーン。

20名無しさん:2018/09/15(土) 00:43:26 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「ここはモナの家モナ」

(#^ω^)「そんなことより、いきなりなんだお! それに、体は大丈夫なのかお!」

ようやくブーンはまくしたてる。

(;´∀`)「まあまあ、落ち着くモナ」 

( ´∀`)「体は大丈夫モナ。あのくらいの火じゃ、火傷一つつかないモナよ」

( ^ω^)「・・・・・・そうなのかお」

( ´∀`)「モナモナ、服は燃えちゃったけど」

( ^ω^)「必死で助けた甲斐がなかったお・・・」

( ´∀`)「そんなことはないモナ。おかげで大事な髪の毛は守られたモナ!」

( ^ω^)「はあ」

( ´∀`)「浮かないモナね。お礼として、この家に招待したモナよ」

( ´∀`)「まあ良かったら、上がれモナ」

そう言って老人はさっさと家の中へと入っていく。
いったい何をされるかと思ったが、どうやら悪い人ではなさそうだ。

少し迷って、ブーンも付いていく。

21名無しさん:2018/09/15(土) 00:43:51 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「どうぞ、かけてくださいモナ」

( ^ω^)「・・・・・・」

そこは、玄関から入ってすぐの部屋。
あまり生活感はなく、机に椅子と、大きなタンスがあるくらい。
奥の部屋に続いているであろう、ドアも一つ。

( ´∀`)「ちょっと着替えてくるモナ」

老人はいったん姿を消す。
窓からは西日が差し込んでいる。

ブーンは唐突に、悲しいような、寂しいような、いとおしいような気持ちになった。

この部屋はいつからあるのだろう。
誰かと暮らしていた、いるのだろうか。
同じような部屋が世界にはたくさんあって、今この瞬間存在してるのか。
その中でブーンは、少しの偶然でここにいるのか。

突然炸裂したかのように、ブーンの頭に言葉がひらめいていく。
同じように、言葉にできない感情も展開していく。
いったいどうしたんだろう。

22名無しさん:2018/09/15(土) 00:44:17 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「どうぞモナ」

その言葉で我に返る。
ブーンの前には、温かいお茶が置かれていた。

( ^ω^)「ありがとうございますお」

( ´∀`)「よいしょ」

老人も向かい合わせに腰かける。

( ´∀`)「改めて、助けてくれてありがとうモナ」

( ^ω^)「いえいえだお」

( ´∀`)「それで見たところ、旅人モナよね」

( ^ω^)「駆け出しだけど、一応」

( ´∀`)「モナモナ。いまどき能力者が一人旅なんてすごいモナ」

( ^ω^)「まあ、家を出ただけですお」

少し照れて答えるブーン。

老人の和やかな話し方に、警戒心も和らいでいく。
誰かとこんなに話をするのも久しぶりだ。
そのまましばらく、なんてことなしの会話が続く。

23名無しさん:2018/09/15(土) 00:44:42 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「おっといけない。もうこんな時間だモナ」

気がつくと、部屋は薄暗くなっていた。
老人はモナーといい、今は一人暮らしだそうだ。

( ´∀`)「肝心の、ごちそうを用意してくるモナね」

モナーはランプをつけ、また奥の部屋へと消えていく。
夕食に、一晩の宿。
それがモナーが提案したお礼だ。

( ^ω^)「なんか、海老で鯛を釣った気分だお」

しかし温かいごはんが食べられるとあって、ブーンはわくわくしていた。
奥の部屋からは、トントンだったり、ジュージューだったり、聞こえてくる。

不思議なぬくもりの部屋で、空腹感を楽しむブーンだった。

24名無しさん:2018/09/15(土) 00:45:34 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「できたモナよー」

しばらくすると、奥の方から声がする。
調理の音が消えたので、内心そろそろかなあと思っていたところだ。

( ^ω^)「あ、そっちの部屋に行っていいんですかおー」

( ´∀`)「いらっしゃいモナー」

席を立ち、ドアノブの方へ。

25名無しさん:2018/09/15(土) 00:46:21 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「お邪魔しますお」

がちゃ。

( ´∀`)「お待たせしましたモナ!」

( ^ω^)「おおお!!」

まずブーンの目に留まったのは、湯気を立てるグラタン。
続いてサラダ、スープ、パンと目が移り、そのまま視野を広げる。
木でできたテーブルだ。部屋はなかなか広くて、雑多としていて、

( ´∀`)「何をぼんやりしてるモナ?」

(;^ω^)「あ、ごめんなさいお。料理に見とれてましたお」

( ´∀`)「モナモナ。いきなり固まったからびっくりしたモナ」

( ^ω^)「あんまりに美味しそうで」

( ´∀`)「じゃあ早く席に着くモナ。ご飯にするモナ」

木の椅子にブーンは座り、また向かい合い。
ブーンの前には輝かんばかりの食事が並べられている。
一方モナーは、パンとチーズとハムとワイン。

( ´∀`)「もうモナは年だから。気にせずたくさん食べるモナ」

どうやら目線に気付いたようだ。

26名無しさん:2018/09/15(土) 00:46:51 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「では、いただきますモナ」

( ^ω^)「いただきますお!!」

( ´∀`)「!」

そう言うや否や、ものすごい勢いで食べ始めるブーン。
彼は腹が減っていたのだ。

呆然とするモナーをよそ眼に、ものの五分ほどで食べ終わってしまった。

( ^ω^)「ごちそうさまでしたお!」

(;´∀`)「若いっていいモナね・・・」

( ^ω^)「すごくおいしかったですお」

(;´∀`)「まあ、それは良かったモナけど」

割と手間暇かけたのになあ。肉でも焼いて出せばよかった。
そう思い、ぼそぼそとパンをかじるモナーであった。

27名無しさん:2018/09/15(土) 00:47:15 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「そうだ」

( ´∀`)「ん?」

食後のお茶の時間。
突然ブーンがそうだと言い、

( ^ω^)「大事なことを忘れてたお」

( ´∀`)「モナ?」

( ^ω^)「ちょっと待っててお」

荷物を取りに席を立つ。
戻ってきたブーンが手にしていたのは、一枚の地図だった。

( ^ω^)「今ここがどこか、教えて欲しいんですお」

( ´∀`)「また古い地図モナね」

( ^ω^)「代々家に伝わる家宝・・・らしいですお」

( ´∀`)「そんなもの、モナに見せていいモナか?」

( ^ω^)「おっおっお、今更何を言ってるんだお」

少しの沈黙。

28名無しさん:2018/09/15(土) 00:47:40 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「・・・モナはブーンが心配だモナ」

( ^ω^)「なんでだお?」

( ´∀`)「人を信頼するのはとても大事だけれど、あまりに無警戒というか、お人好しというか・・・」

( ^ω^)「・・・そんなことはないお」

( ´∀`)「モナを助けた時だって、あの水は飲み水モナよね」

( ^ω^)「・・・・・・」

( ´∀`)「それに、いまだに能力者を忌み嫌う人も多いモナ。一歩間違えてたら殺されててもおかしくないモナ」

( ^ω^)「・・・・・・そうなのかお」

あれ、と驚くブーン。

29名無しさん:2018/09/15(土) 00:48:01 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「ちょっと、教えてくださいお」

( ´∀`)「へ? ・・・何モナか?」

なんだか拍子抜けするモナー。
言葉が届いている気がしない。

( ^ω^)「人間は能力者を見つけ次第、殺したり通報するって聞きましたお」

( ´∀`)「モナ」

( ^ω^)「それで、そうじゃない人も多いんですかお?」

( ´∀`)「・・・だいぶ昔は、そんな感じだったモナ。誰から聞いたモナか?」

( ^ω^)「父さんだお」

( ´∀`)「なるほどモナね。今はいちおう、法律があるモナ」

( ^ω^)「そうなのかお」

うん、とうなずくモナー。

30名無しさん:2018/09/15(土) 00:49:23 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「いつ頃だったモナかね。新しい大王、ロマネスク様が就任して定められたモナ」

( ´∀`)「人間は能力者に危害を加えないこと。ただ、能力者が攻撃してきたら応戦してよい」

( ´∀`)「こんな感じのやつモナ」

( ´∀`)「もう戦争からだいぶ経つモナからね」

( ´∀`)「ただ、さっきも言ったけど、今でも能力者を異常に嫌悪してる人間は一定数いるモナ」

それだけ言うとふう、と息を吐き、

( ´∀`)「旅をするうえで、このくらいは知っておかなきゃだめモナよ」

なぜか少し得意げだ。

( ^ω^)「そうだったんですかお。勉強になりますお」

これは素直な言葉。
生まれてからの十六年間、ほとんどを山で過ごしたブーンは世界を知らな過ぎた。

31名無しさん:2018/09/15(土) 00:50:07 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「でも、あまり人目につかない方がいいモナね」

( ´∀`)「そもそも最近では能力者自体、めったに見ないモナ」

( ´∀`)「昔は通り魔だったり盗賊だったり、割と見かけたモナけど」

( ´∀`)「そいつらが軒並み捕まったから、法律ができたともいえるモナ」

( ^ω^)「なるほどだお」

( ´∀`)「で、残ってる能力者は大体ひっそり暮らしてるらしいモナ」

( ^ω^)「ああ、そういうことかお」

( ´∀`)「モナモナ。理解が早いモナ」

町で能力者を見たら泥棒と思え、ということだろう。

32名無しさん:2018/09/15(土) 00:50:31 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「・・・それじゃあ今日のあいつは」

( ´∀`)「いまどき珍しいモナね」

あの程度の火じゃ効かないのは、本人も知ってそうなものだけど、とつぶやき、

( ´∀`)「それで、地図モナね」

( ^ω^)「そうだったお」

大事なことを忘れるところだった。
ブーンは改めて、机に地図を広げる。

33名無しさん:2018/09/15(土) 00:51:12 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「・・・ここが、目的地モナか?」

地図の中に一か所、赤い丸で囲ってある地名があった。
他にもこまごまとした書き込みがところどころにある。

( ^ω^)「いちおうそのつもりですお」

( ´∀`)「ちょっと待つモナね」

そう言って、本棚の方に向かう。
持ってきたのは地図帳のような本だった。

( ´∀`)「これが今の世界地図モナ」

( ^ω^)「お?」

それを見てブーンは驚く。
ブーンの地図とは、だいぶ異なる地形がそこにはあった。

34名無しさん:2018/09/15(土) 00:51:35 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「じゃあ、ブーンの地図は・・・」

( ´∀`)「不思議な地図モナね」

( ^ω^)「・・・・・」

( ´∀`)「そもそも書いてある文字がモナには読めないモナ」

(;^ω^)「実は、ブーンにもわかりませんお」

うーん、とうなる二人。

35名無しさん:2018/09/15(土) 00:52:32 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「ただ、共通点も多いモナね」

そうして地図帳の一つの大陸を指差すモナー。

( ´∀`)「このあたりが今ブーン君がいる街モナ」

( ´∀`)「向こうの地図と照らし合わせると、大まかな位置はわかりそうモナ」

( ^ω^)「なるほどだお」

( ´∀`)「モナモナ。目的地にはまだまだ遠そうモナね」

( ^ω^)「まあ、のんびり行きますお。どうもありがとうございますお」

( ´∀`)「いえいえモナ」

そう言って、大きな欠伸をするモナー。

36名無しさん:2018/09/15(土) 00:52:53 ID:rAxmPMIg0
( ´∀`)「老人はもう眠い時間モナ」

( ^ω^)「おっおっお、ブーンもおねむですお」

ブーンも大きなあくびをひとつ。

( ´∀`)「じゃあモナはそこらへんで寝るから、ブーン君は奥の布団で寝るといいモナ」

( ^ω^)「あ、いいんですかお」

( ´∀`)「モナモナ。次に布団で寝るのは、いつになるかわからないモナよ」

( ^ω^)「おっおっお、じゃあお言葉に甘えますお」

ブーンが寝床に着くのを見て、モナーはランプを消す。
どこかから、かすかに入る月明かりがやさしい。

37名無しさん:2018/09/15(土) 00:53:27 ID:rAxmPMIg0
「おやすみなさいモナ」

「おやすみなさいだお。今日は色々と、ありがとうございましたお」

「・・・・・・こちらこそ、モナ」

闇の中、言葉を交わす。
しばらくの沈黙の後、ブーンが口を開いた。

「モナーさんはどうして、ここまでブーンに良くしてくれるんですかお?」

「・・・・・・」

最初から、すこし違和感は感じていた。
得体の知れない能力者に、ここまで寛容になるものだろうかと。

だけど、聞くのが怖かった。
なにか答えが出るのが怖かった。

それでも聞いたのは、モナーのことを奥の部分で信頼できたから。
その人と接して、大丈夫だと思えたからだ。

モナーの声が聞こえる。

38名無しさん:2018/09/15(土) 00:54:07 ID:rAxmPMIg0
「うーん・・・ 話すと長くなるかもだけど」

「まあ一言で言えば、自己満足の罪滅ぼしモナ」

「・・・・・・どういうことですかお」

「・・・モナは昔、能力者にひどいことをいっぱいしてきたモナ」

「だけどある時気づいたモナ。自分はなんてみすぼらしい人間だろうかと」

そう言うモナーの声は掠れていた。

「モナーさん・・・・・・」

やっぱり聞くんじゃなかったか。
ブーンがフォローの言葉を探していると、

「まあ、多くは語らないモナ。なぜなら今にも眠ってしまいそうだから」

「・・・はあ」

「聞きたかったら、明日にしてくれモナ・・・・・・」

いつも通りの口調でそれだけ言って、すやすやと寝息を立てるモナーだった。

39名無しさん:2018/09/15(土) 00:54:37 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「・・・・・・」

( ^ω^)「人にはそれぞれ歴史があるおね」

ブーンも目を閉じ、意識を巡らせる。
今日あったこと。昨日見た景色。明日への妄想。

( ^ω^)「・・・・・・」

40名無しさん:2018/09/15(土) 00:55:48 ID:rAxmPMIg0
どのくらい経っただろうか。
真夜中は時間が嘘をつく。

( ^ω^)「よいしょだお」

暗闇の中、ブーンは立ち上がる。
考え事をしているうちに、頭が冴えまくり眠れそうにない。

( ^ω^)「そうだおね」

もう十分世話になったしと、ブーンはモナーの家を出ることにした。

41名無しさん:2018/09/15(土) 00:56:23 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「おっおっお、夜風が気持ちいいお」

鼻歌ひとつで、上を向いて歩くブーン。
夜の町は静かで、人影ひとつ見当たらない。
月がこれでもかというくらい輝いている。

( ^ω^)「モナーさんには悪いことをしたかおね・・・」

出がけに書置きを残したものの、やはりそれは気がかりだった。
ただ、夜のうちに進んでおきたい気持ちも強くある。
早く次の景色が見てみたい。

( ^ω^)「・・・・・・」

後悔してもしょうがないし。
過ぎ去ったことは、また取り出して見ればいい。

そんなことを思っていると。

42名無しさん:2018/09/15(土) 00:57:24 ID:rAxmPMIg0
「よお、昼間は笑えたぜ」

突如、上の方から声がした。

( ^ω^)「・・・・・・」

あたりを見回し、声の主を探す。


从 ゚∀从「あんたも能力者だろ」


いた。

そいつは月を背にして屋根に立ち、マントと銀髪をなびかせている。

ブーンはナイフを構え、口を開く。

43名無しさん:2018/09/15(土) 00:57:54 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「僕になんの用だお」

从 ゚∀从「能力者に会うなんて珍しくてな」

( ^ω^)「・・・・・・」

从 ゚∀从「それも、お前みたいな間抜け面」

( ^ω^)「自覚はあるお」

从 ゚∀从「・・・そうか。まあ、そんなことはどうでもいい」

そう言って銀髪はニヤリと笑う。
空気が変わり、さっきとは別の静寂に包まれる。

44名無しさん:2018/09/15(土) 00:58:49 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「それで、」

ブーンが話そうとした時、


从 ゚∀从「用なんてないさ。ただ殺したいだけだ!」


突然銀髪が叫び、ブーンに向かって大きな火の玉を放った。
昼に見た物の何倍ものでかさだ。

45名無しさん:2018/09/15(土) 00:59:57 ID:rAxmPMIg0
ほんの数秒後。

石畳には火球が落とされ、あたりはにわかに明るくなる。
メラメラと燃える炎。

从 ゚∀从「ハハ、消し炭にな・・・」

(#^ω^)「・・・・・・」

从 ゚∀从「!!」

よっこらせ、と屋根の縁から登ってきたのはブーンだ。
服が少し焦げている。

(#^ω^)「お返しだお!!」

そしてそのまま、手に持っていた鉤爪ロープを銀髪に向かって放った。


从#゚∀从「なんだこんなもん!!」


銀髪も火を放ち、それを一瞬にして灰にする。


が。



パン!



次の瞬間乾いた音が響き、銀髪は膝をついた。

46名無しさん:2018/09/15(土) 01:00:22 ID:rAxmPMIg0
从 ゚∀从「ぐあっ・・・・・・」

瞬間、自分の身に何が起きたかわからなかったが、すぐに激痛が駆け巡る。
太ももからは、どくどくと血が流れていた。

( ^ω^)「油断したおね」

( ^ω^)「もう攻撃するつもりはないから、話を聞いてほしいお」

そう言って、銀髪に近づく。
銃口は向けたままだ。

从 ゚∀从「・・・・・・なんだよ」

しばらくの沈黙ののち、答える銀髪。

47名無しさん:2018/09/15(土) 01:01:06 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「まずは、どうして人を襲うのか教えてほしいお」

从 ゚∀从「襲いたいからだよ」

( ^ω^)「火が効かないの知ってるおね?」

从 ゚∀从「当たり前だろ」

( ^ω^)「じゃあなんで、」

从#゚∀从「うるせえ!」

( ^ω^)「・・・・・・」

从#゚∀从「オレだって意味が無いことなんてわかってんだよ!!」

( ^ω^)「・・・そうかお」

また少しの沈黙が流れる。
銀髪はすでに戦意を失っているようで、ぐったりとうなだれていた。

48名無しさん:2018/09/15(土) 01:01:36 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「じゃあなんで、僕に攻撃してきたんだお」

ブーンが口を開く。

从 ゚∀从「・・・・・・」

( ^ω^)「言いたくないなら別にいいお」

从 ゚∀从「・・・あんたこそ、なんなんだよ」

( ^ω^)「どういうことだお」

从#゚∀从「オレは本気で殺しにかかってんだぞ。なんで悠長に話なんかしてんだよ!」

( ^ω^)「ああ・・・。僕は旅をしてるんだお」

从 ゚∀从「・・・・・・」

( ^ω^)「話が通じる相手なら、一緒に旅をしてほしいと思ったんだお」

从 ゚∀从「・・・あっそ」

銀髪はブーンの顔を見た。
とぼけた感じで、悪意や敵意といったものがまったく見えない

49名無しさん:2018/09/15(土) 01:02:07 ID:rAxmPMIg0
从 ゚∀从「いきなり炎を投げつけるやつに、話が通じると思うのか?」

そしてブーンの顔色を窺い、聞く。

( ^ω^)「人にはそれぞれ事情があるお」

( ^ω^)「それに、あんたは攻撃する前に僕に話しかけてきたお」

从 ゚∀从「・・・・・・」

( ^ω^)「・・・・・・」

ブーンは銃を下げ、無防備な状態で銀髪に近づく。

从 ゚∀从「・・・な!」

( ^ω^)「思ったより、憎めない人おね」

そして、どこからか取り出した包帯を太ももに巻こうとする。

50名無しさん:2018/09/15(土) 01:02:29 ID:rAxmPMIg0
从 ゚∀从「ちょっと待て!」

( ^ω^)「あ、消毒が先おね」

从 ゚∀从「そうじゃねえ!」

( ^ω^)「・・・・・・」

从 ゚∀从「今オレが攻撃したらどうするつもりだ!」

( ^ω^)「多分、しないと思ったお」

从‐∀从「・・・・・・ああそうかい」

そう言って頭をかき、ため息をつく銀髪。
そして、気の抜けたような声で聴く。

51名無しさん:2018/09/15(土) 01:03:05 ID:rAxmPMIg0
从 ゚∀从「どうしてだよ」

从 ゚∀从「どうしてそんなに、人を信頼できるんだ」

( ^ω^)「・・・信頼してるのは自分だお。僕は自分が信じられると思った人を信じてるだけだお」

从 ゚∀从「・・・・・・そうか」

( ^ω^)「話が逸れたおね。早く消毒するお」

从 ゚∀从「あ、待て自分でやる!」

手当が終わると、二人はいったんその場を離れた。
炎に気付いた住人が起きてきたのだ。

52名無しさん:2018/09/15(土) 01:03:55 ID:rAxmPMIg0
( ^ω^)「さて」

从 ゚∀从「おう」

暗い裏路地。

( ^ω^)「僕はブーンだお」

从 ゚∀从「あっそ」

( ^ω^)

从 ゚∀从「・・・ハインだよ」

( ^ω^)「はい。聞きたいことはいっぱいあるけどハインさん」

从 ゚∀从「おう」

( ^ω^)「僕と旅をしてほしいお」

从 ゚∀从「いいぜ」

53名無しさん:2018/09/15(土) 01:04:24 ID:rAxmPMIg0
こうして、ブーンの旅には道連れができた。
火炎使いのハインリッヒ。
彼女の事情も、これから聞くことになるだろう。

二人は足早に石造りの町を出て、南へと進んでいく。

54名無しさん:2018/09/15(土) 01:08:50 ID:rAxmPMIg0
今日は以上です。
どうもありがとうございます。

題名はクラッシュの(White Man) In Hammersmith Palaisの謎パロディです。

55名無しさん:2018/09/15(土) 01:25:24 ID:rkBspfW20
野球思い出す語彙力

56名無しさん:2018/09/15(土) 09:40:12 ID:g1XZGluk0
タイトルからただのくだらないギャグだと思いきや意外に面白い、これからも続き頑張って
(筋肉繋がりでタカラやショボーンも出てこないか期待)

57名無しさん:2018/09/15(土) 17:38:31 ID:rN2qSK1Y0
支援

58名無しさん:2018/09/15(土) 23:09:58 ID:yWRTvR1k0
真面目な話してても周囲がムキムキなのを想像すると違和感がすごい

59名無しさん:2018/09/15(土) 23:38:43 ID:tpL5/McE0
つまりほとんどの女性はドラゴンズクラウンのアマゾンみたいな身体をしているのか。

60名無しさん:2018/09/16(日) 00:18:20 ID:ts09mksk0
ちげーよ量産型母者に決まってんだろ

61名無しさん:2018/09/16(日) 04:02:17 ID:EXMvKEyI0
ハインは女か

62名無しさん:2019/02/28(木) 19:46:11 ID:lfyCNmQU0
淡々としすぎな感じもあるけど筋肉>能力っていう発想が面白かった
続き期待


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