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( ^ω^)運命と戦う仮面ライダーのようです part2

1 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:37:21 ID:o/sMbQ2Y0
仮面ライダー剣を下敷きにして書かせてもらってます。
毎週日曜の投稿を目安にやってます。
興味があれば見てやってオナシャス。

2 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:38:55 ID:o/sMbQ2Y0

前スレ
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1502975744/



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3 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:41:16 ID:o/sMbQ2Y0

・前スレまでの登場人物まとめ



――――――――――――【 仮面ライダー 】――――――――――――

( ^ω^) 剣藤ホライゾン / ( OwO) 仮面ライダーブレイド
 22歳。主人公。ブーンという呼び名で親しまれている。
 スーパーマーケット『 VIP 』の一社員としてこつこつ働いている青年。
 幼少期に両親が離婚し、女手一つで育ててくれた重い病を患った母親の為に日々働いている。
 また、自分達を見捨てた父親に激しい恨みを持つ。
 正義感が人一倍強く、率先して人助けや動物を助けたりしているが、その強い正義感が災いしてトラブルを生むこともしばしば。
 仮面ライダーブレイドに適合し変身出来たことから、仮面ライダーとして人を守る為にアンデッドとの戦いに身を投じることになる。


川 ゚ -゚) 愛川クー / ( <::V::>) 仮面ライダーカリス
 23歳。ブーンやドクオがよく通う飲み屋『バーボンハウス』で働く女性。
 常にクールで寡黙、何を考えているか分からないが情に熱いところがある。
 出生は謎に包まれているが、その正体はアンデッド。
 記憶を喪失しアンデッドである事も忘れていた時は、人間の自分とアンデッドの自分で意識が分かれていた。が、渡辺を強く想う心が記憶を戻らせた。
 渡辺とショボン、2人への愛情を抱きながら、その愛情と人間らしい感情を持つ自分に疑問を抱き続けている。
 アンデッドとしての本能・運命から戦いを求めてしまい、自分を制御出来ない一面もある。


( ・∀・) 菱谷モララー / ( OMO) 仮面ライダーギャレン
 25歳。BOARDの元研究員であり、仮面ライダーギャレンの適合者。
 BOARD壊滅後は、生き残りのツン達と共にアンデッドの封印を行っていた。
 真面目で純粋な性格だが、純粋さ故に利用されやすい。
 一般人でありながらブーン/ブレイドの活躍と潜在能力、自身の不調、ギャレンとしての責任が重なり精神的に追い詰められ道を外してしまう。
 本人曰く「自分は仮面ライダーに向いてない」とのこと。

4 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:42:28 ID:o/sMbQ2Y0

――――――――――――【 BOARDメンバー 】――――――――――――

ξ゚⊿゚)ξ 廣瀬ツン
 21歳。モララーと同じく壊滅したBOARDの元研究員。
 崩壊したBOARDの施設から使える機材やブレイバックルを頂戴し、PCや端末を用いてアンデッドの探知を行いライダーをサポートする。
 周りを気遣う事の出来る性格で、常に気を配っている優しいお姉さんタイプ。
 芯を強く持った女性でもあり、ブーン達をサポートする。

 _
( ゚∀゚) 白岡ジョルジュ
 23歳。BOARDの元警備員。
 警備員時代からライダーになることへの憧れを抱いている。
 BOARD壊滅後、適合者のいないブレイドへの変身を試みるも適合出来なかった。
 ブーンに対して不信感や嫉妬心を持つも徐々に認め始め、自分の出来る事でライダー達の手助けをする。
 生意気な口調や態度が目立つが、仲間思いな一面がある。

5 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:42:56 ID:o/sMbQ2Y0
――――――――――――【 その他の関係者 】――――――――――――

(´・ω・`) 栗沢ショボン
 33歳。飲み屋『バーボンハウス』の店長。
 1階が店、2階は自分の家となっていて、渡辺とクーと共に暮らしている。
 みんなが心安らかに楽しくをモットーに経営している。やかましく騒ぐ連中や酔っ払いは徹底的に追い出すスタイル。
 ある日、大雨の嵐の中、山から転げ落ちてきたクーを介抱し、身寄りのないクーを自分の店に置くことに。


从'ー'从 渡辺あまね
 14歳。飲み屋『バーボンハウス』の看板娘。中学2年生。
 ショボンとクーと暮らしていて、中学校から帰ると何も無い限りはお店の手伝いをする。
 3歳の頃に母親を亡くし、父親には捨てられ、親戚の友人であったショボンが引き取ることに。
 クーに母親の面影を重ねていて、とてつもなく懐いている。


('A`) 三葉ドクオ
 22歳。ブーンの友達で、中学からの付き合い。フリーター。
 ブーンとは対照的で、普段からやる気が無くだらだらしている。
 内なる義心を持ちながら、自分に自信がなく普段から行動に移せないでいる。


ノパ⊿゚) 深沢ヒート
 25歳。モララーの恋人。同じ大学院を卒業した同級生でもある。
 不安を抱えているモララーを気遣い、また大切に想っている。
 ブーンとモララーが仮面ライダーである事を知ると、ライダー専属の医師として協力を申し出る。

6 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:43:18 ID:o/sMbQ2Y0

J('ー`)し 剣藤カーチャン
 ブーンの母親。
 仕事ばかりで家庭を省みない夫のロマネスクに悩まされ、ブーンが小学4年生の頃に離婚を決意する。
 ブーンを女手一つで育ててきたが、ブーンが中学生に上がった時に重い病気を患ってしまう。
 それから入退院を繰り返し、現在では何十度目かの入院をしている。


(-_-) 引田ヒッキー
 20歳。スーパーマーケット『 VIP 』のブーンの後輩。
 軽いノリが特徴で、常にブーンにちょっかいを出している。


*(‘‘)* 沢近ヘリカル
 23歳。スーパーマーケット『 VIP 』のブーンの同僚。
 周囲を見れる頼れるお姉さん的存在。
 職場の中では一番にブーンを気遣い、その気遣いが結果的にブーンを仮面ライダーに集中させた。


(゜д゜@  新谷田おばさん
 スーパーマーケット『 VIP 』のパートのおばさん。
 店長であるニダーを本当に嫌っている。


<ヽ`∀´> 羽矛ニダー
 ブーンが働くスーパーマーケット『 VIP 』の店長。
 店長であるにも関わらず現場の社員・パートの声をほぼ聞かず本部の言いなりであるため、信頼はゼロ。

7 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:50:02 ID:o/sMbQ2Y0
――――――――――――【 アンデッド 】――――――――――――

ミ,,゚Д゚彡・ミ,,▼Д▼彡 府坂 / ミ,,゚王゚彡 ピーコックアンデッド
 年齢不詳。外見30歳半ば。
 黒いレザーのロングコートが特徴的な全身黒ずくめの男。サングラスを常にしている。
 正体はダイヤスートのカテゴリーJで、上級アンデッド。クジャクの祖。
 再び始まった古の戦いの真実にいち早く気付き、仮面ライダーを利用して有利に進めようと画策する。

( \品/) スパイダーアンデッド
 ♣スートのカテゴリーA。蜘蛛の祖。
 自身の適合者を探し求め、蜘蛛の子を吐き出し続けている。。
 上級アンデッド達とは違い人間に擬態は出来ないが、人間の言葉を流暢に話す程の高い頭脳を持つ。
 適合者を探す目的は明かさず、行動は謎に包まれている。

8 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:51:42 ID:o/sMbQ2Y0






 OP ♪Round ZERO〜BLADE BRAVE - https://www.youtube.com/watch?v=VnF4eLXsDT8





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9 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:52:43 ID:o/sMbQ2Y0





          【 第15話 〜摘まれた紅い花〜 】




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10 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:53:21 ID:o/sMbQ2Y0


 ライオンアンデッドを封印し、カテゴリーAの反応があった山へと到着したブレイド。
 先刻までカリスやギャレンが争っていた橋の上でブルースペイダーから降りるが、誰もいない。
 此処に来るまでの間、サーチャーから反応が消えた事で怪しんではいたが。


( OwO)「どうなってるんだお…?全員の反応が急になくなったなんて…」


 周囲を見渡しても、何もない。あるのは戦った痕跡だけ。
 何もない事を承知の上で橋の柵から身を乗り出し、橋の下を見下ろす。


( OwO)「あるわけないお…」

( OwO)「…ん?」


 橋の下から目を背けようとした時だった。
 木々が生い茂って底がよく見えない中で、人の姿を見たような気がした。
 もう一度視線を橋の下に戻すと、其処には……


( OwO)「やっぱり人だ!何であんなところに…」
 

 高過ぎて誰かまでは把握出来ないが、人が倒れているのは確かだ。
 人里離れた山の中、木々が生い茂り川の流れるような場所で誰かが通るとも思えない。

11 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:53:51 ID:o/sMbQ2Y0


( OwO)「あそこまでどうやって行けばいいんだお…!」


 助けたいが、下まで降りる方法を知らない。
 きっと降る道を走れば辿り着くのだろうが、その道すら知る訳もなく。
 モタモタすれば、倒れている人の命に危機が迫るかもしれない、いっそ此処から飛び降りてしまえば…。

 もしかしたら、ブレイドのスーツのおかげでケガは免れる可能性はある。


( ; OwO)「……いやいや、無理だお…死ぬお。変身してたって痛いもんは痛いし」

( OwO)「余程身体がガチガチに頑丈じゃないと――」





( OwO)「……いや待てよ。もしかすると、あれを使えば!」


 ある方法が閃いた。
 左手でホルスターに収納されているブレイラウザーを逆手に掴み持ち上げトレイを展開すると、一枚のカードを選択。
 

( OwO)「こいつの力、前に実証済みだお」


 ブレイドが手にしたカード、"♠7のMETAL"だ。
 豹のアンデッドと戦った際に初使用したが、このカードは身体を硬質化させ防御性能を高める力を秘めている。
 要するに、このカードを使って極めて頑丈な身体になる事によって、落下時のダメージを無にしようとする算段だ。

12 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:54:33 ID:o/sMbQ2Y0


( OwO)「アンデッドと戦う以外で使う事になるとは…っしょ、と」


    《-♠7 METAL-》


 カードをラウズしたブレイドの身体が、鋼のような銀色に染色。
 日の光に晒され、鋼の身体が光を反射している。

 そして、再び橋の柵に手を掛けた。


::(( ; OwO))::「……ふうー、ふうー……」


 身体が硬質化したのは理解しているが、いざ飛び降りようと思うと恐怖が凄まじい。
 落ち着かせるように深呼吸を何度もするが、バクバクと鼓動が収まる事はない。
 両足もガクガクと震えている。


::(( ; OwO))::「……だめだだめだ!こんな事でビビんなお!こんなもんは勢いでっ――」


 意を決して片足を柵に掛け飛び降りる体勢を作ろうとした、その時だった。



 柵に掛けた片足が滑り、そのまま頭から――



( ; OwO)「ぎゃあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!」

13 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:55:20 ID:o/sMbQ2Y0


 足を滑らせ脳天から落下し、青々とした木々を突き抜け頭から地面へと刺さった。
 ブレイドのスーツの重さに加え、高い位置からの落下。
 土の地面に埋まるには十分な勢いと重さが乗っていた。
 逆さまの状態で埋まっている状態、よく例えられる時に言われるのは”犬神家”だ。


\  / 「………」
  ̄ ̄

( ; OwO)「ぶはっ!!」


 強引に身体を抜いた瞬間、地面の土が水飛沫のように豪快に飛散した。
 

( ; OwO)「し…死ぬかと思ったお……メタルの力すげえお…」


 身体に付着した土を簡単に払い落とす。
 "♠7 METAL"の力のおかげで、普通であれば即死である落下から何のケガも痛みも無い状態だ。
 だが高所から落下する恐怖だけは凌げなかった様子で、心臓の鼓動は加速していた。

 一人で悶絶しているブレイドのすぐそばには、橋の上から発見した人が倒れている。
 事の目的を思い出し、変身を解き急いで人のもとに駆け寄った。


( ^ω^)「大丈夫ですか!?」

( ^ω^)「……え……?」


 倒れている人に近付いて、ようやく気付いた。
 見覚えのある服。長い黒髪。見るからに女性である姿形。
 

( ^ω^)「まさか……!」


 うつ伏せに倒れている身体を仰向けにさせる事で、その疑念は確信へと変わった。



川  - )

14 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:55:52 ID:o/sMbQ2Y0


( ^ω^)「クーさん……!!」


 倒れていたのは、探していたはずの……アンデッドである、クーだった。
 両目を伏せていて呼び掛けにも応じない。意識を失っている。
 一瞬だが、身体を支えている手を離してしまいそうになった。


( ^ω^)「……これ、もしかして緑色の…アンデッドの、血なのかお…」


 クーの口端、そして手から流れ出る緑色の液体。
 アンデッドと戦う中で何度もアンデッドが血を流すところを目の当たりにしてきたブーンには、すぐ把握出来た。
 そして、クーが本当にアンデッドである事実を改めて実感する。


( ; ^ω^)(…今、封印しようと思えば出来るかもしれないお…)


 ブレイバックルを持ち、クーとバックル交互に視線を向ける。
 
 アンデッドは全て封印しなければならない、その事実は変わらない。
 クーは強敵だが、今この瞬間は無抵抗だ。やろうと思えばやれる状況。

 だが、頭に浮かぶショボンや渡辺の悲しそうな顔が、その使命感を邪魔している。
 


( ^ω^)(僕は……!)




 ブレイバックルをギリギリと力強く握り締め、ブーンは立ち上がった。



.

15 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:56:20 ID:o/sMbQ2Y0




 ―――――



.

16 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:56:44 ID:o/sMbQ2Y0


 クーを気絶までに追い込んだ張本人であるモララーと府坂は、アジトへと戻っていた。
 結局カテゴリーAはモララーの追跡を振り切り、取り逃がしたようだ。


( -□-)


 今は、溶液に浸かり精神を落ち着かせ力を蓄えている。
 府坂は自身の椅子に座り、溶液に浸かるモララーをサングラス越しに眺めていた。


ミ,,▼Д▼彡「カテゴリーAは見失ったが……まぁいい。菱谷のお陰で邪魔な奴を鎮める事が出来た」

「府坂さん!」


 静かな部屋に、白衣の男が慌てた様子で飛び入って来た。
 府坂の名を呼ぶ声が、喧しく部屋中に響き渡る。
 返事をする事なく、府坂は白衣の男の方へと視線のみを向けた。
 

「例の男ですが、見つけました!」

ミ,,▼Д▼彡「…そうか、見つけたか」

「はい、今こちらにお連れ――うわっ!?」

ミ,,▼Д▼彡「!?」


 白衣の男が何者かによって退かされ、話は遮られた。
 府坂の前には、白衣の男に代わり別の人物が立っている。

17 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:57:10 ID:o/sMbQ2Y0


「お前が俺を探していたという奴か」

ミ,,▼Д▼彡「そうだ、どうしても君に会いたくてね」

「悪いが、アンデッドに会いたい何て思われるような悪趣味な事はしていない」


 男は、府坂を前にして動じる様子はない。
 それだけではない。何故か府坂がアンデッドである事実を把握している。


ミ,,▼Д▼彡「いいや、君の事は全部知っているよ。君は仮面ライダーになりたかったんだろう?」

ミ,,▼Д▼彡「ギャレンにもなれず、ブレイドにもなれなかった君は…ライダーへの執念を捨て切れてないはずだ」

「………」


 その言葉に反応し、男は鋭い目で府坂を睨みつける。


ミ,,▼Д▼彡「そう怖い顔をするな、俺はそんな君を見込んでいるんだ。
         君なら……ブレイドやギャレンなどに負けない…いや、誰にも勝ち続ける最強のライダーになれる」

ミ,,▼Д▼彡「俺が作る究極のライダー……その力を君に授けたいと思っている。
         どうかな?悪い話ではない…むしろ、君の目は今輝いているように見えるが?」


 男の目を真っ直ぐ見つめる府坂。
 府坂を睨んでいる目、その奥に喜びを見出していた。


「……ライダーになれなかった男が、最強のライダーか」

 
 そして――男の口が、ニヤリと怪しく緩んだ。


(,,  )「……ふっ、面白い」


.

18 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:57:47 ID:o/sMbQ2Y0




 ―――――



.

1915話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:58:19 ID:o/sMbQ2Y0


 山の中にある、ボロボロな小さな一軒家。
 人が住んでいそうな雰囲気もあり生活感を醸し出しているが、住人がいる様子はない。
 
 山の中と言っても、人里がない訳ではなかった。
 きちんと車道もあり、ぽつぽつと家や店、古臭い田舎特有のコンビニなどが建ち並んでいる。
 それでもこの一軒家は、人の住んでいる場所からは離れていた。

 ボロボロな一軒家の近くには、ブーンの愛用車であるブルースペイダーが。



( ^ω^)「っしょ……と」

 
 コンビニ袋を持ったブーンが、草の生えきった道なき道を歩く。
 一軒家の前に着くと、ガラガラと戸を開け家の中に入った。


( ^ω^)「ふう〜」


 家の中も酷く老朽化していて、木で出来た柱や床が所々破損している。
 中には小さな囲炉裏があり、火が優しく灯っていた。

 そして、囲炉裏の隣には薄い布を被り眠っている人の姿が――。



川 - -)


.

2015話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:58:46 ID:o/sMbQ2Y0


 人の住んでいない場所だと思っているからか、家の中に上がるのに靴を脱いでいない。
 コンビニ袋を静かに置き、囲炉裏のそばで眠り続けるクーの顔を、そっと覗き込んだ。


( ^ω^)「……まだ起きないか」

( ^ω^)「意外と優しい寝顔してるお……」

川 ゚ -゚)パチッ 「黙れ」

Σ( ; ゚ω゚)「どぅおおああぁああっ!?!?」


 前触れもなく目を開き、早々口を開き出した。
 驚いたブーンは飛び跳ね後退りするが、火の灯っている囲炉裏に片手を突っ込んでしまう。


( ; ゚ω゚)「あっっちい!!!あちいっ!!」

川;゚ -゚)「ぐっ……」


 悶えるブーンをよそ目に、身体中に走る痛みを堪えながらゆっくりと上半身を起こす。
 ふと、コートを着ていない事に気付く。
 右腕に目をやると、傷口には簡単な処置が施されていた。

 周囲を見渡し、此処が何処だか分からない様子。


( ; ^ω^)「あっちぃ…!あああ…」


 少なからず、ブーンに助けられた事だけは察したようだ。


.

2115話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 10:59:33 ID:o/sMbQ2Y0


川 ゚ -゚)「何故私を助けた…?」

( ; ^ω^)「えっ?何でって……ちょっと待ってお、あーやべえマジで火傷したかも…」

川 ゚ -゚)「早く答えろ。私の正体を知っておきながら…何の真似だ」

( ^ω^)「……僕にだってよく分からない!クーさんを助けた事が正しいのか悪いのか…」


 バケツに汲まれた水に手を浸しているブーンの顔が、水面に映る。
 自分でも分かった。霧がかっているような、パッとしない表情をしている。
 仮面ライダーとしての自分、それに矛盾している自分に挟まれひどく思い悩まされていた。


( ^ω^)「クーさん、家出したんでしょ?ショボンさんの家から」

川 ゚ -゚)「……聞いたのか」

( ´ω`)「ショボンさん…学校行く前のあまねちゃん、凄く混乱して焦って、悲しんでたお。
       あまねちゃん、クーさんがいないと嫌だって泣きじゃくってたお。慰めてるショボンさんの事、見てられなかった…」

川 ゚ -゚)「………」

( ´ω`)「もう自分でも何が正しいのか分からないんだお!でも、二人の悲しむ顔見たら……体が勝手に動いてた」

( ^ω^)「それに……二人へのクーさんの愛情が、本物だって分かってるから。
       クーさんがアンデッドでも、あの二人を大事に思ってる事を知ってるから…!」

( ^ω^)「……僕、実はクーさんが作ってくれてたからあげの味が、一番好きなんだお」

川  - )「………」


 ブーンの言葉に、クーの強張った表情が切なさを帯びた表情へと変わったような気がした。

 家を出たと言ってもまだ一日も経っていないが、頭にはショボンや渡辺の事ばかり。
 今、自分がアンデッドである事をこれ程疎ましく思った事もない。
 こんな風になってしまったのは、いつからだろうか……。

2215話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:00:29 ID:o/sMbQ2Y0


( ^ω^)「とにかく、休んだら二人のもとへ帰ってくれお」

川;゚ -゚)「……余計なお世話だ、私は一人で…っうう…!」


 ブーンの優しさを突っぱね、無理に起き上がろうとするが身体が言う事を聞かない。
 大きく動こうとすれば痛みに襲われ、意地を張り切る事も出来なかった。


( ^ω^)「ちょ、そんな体で無理すんなお!今は休んでなきゃ駄目だお」


 バケツの水から手を抜き急いでクーのもとに駆け寄ると、両肩に手を添え身体を支えた。
 コンビニの袋に手を伸ばし、中に入っているパンやコーヒーを取り出すとクーにそれらを差し出す。


( ^ω^)っ∩「これ…家を出たんじゃ何も食べてないだろうと思って。
         ショボンさん家の朝食はよくパンとコーヒーだ、って聞いたから」

川 ゚ -゚)「………」

( ^ω^)「……あー、ごめんお。好みが分からないからたまごサンドとか適当だけど…。
      薬とか知識なくて効いてるか分からないけど、アンデッドの身体にも効くものかお…?」


 差し出された物を、虚ろ気な目で見つめる。
 ショボンと渡辺以外の人間に…アンデッドである事を理解している人間から受ける優しさに戸惑っていた。


川 ゚ -゚)「……食べる」
  っ∩c


 ブーンと目を合わぬまま不器用に発した一言。たまごサンドの袋を慣れた手付きで開け、一口かぶりつく。
 ショボン達と食べるパンに比べれば大した味ではないが、今は何故か満足している。

2315話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:01:23 ID:o/sMbQ2Y0


川 ゚〜゚) モグモグ
  っ∩c

( ^ω^)「はぁ…よかったお」


 無言で食べ続けるクーを見て、ホッとしてしまっている自分がいる。
 ライダーの使命など忘れて、今この瞬間を求めてしまっている自分が――。


 その時、ガラガラという戸の開く音が聞こえてきた。
 

( ^ω^)「えっ」


 まさか開けられるとは思っていなかった。
 開く音がしただけで焦り、本能的にやばいと感じた。怒られると思った。
 だが、視線を向けた先にいたのは……


川 ゚ -゚)「……!」

『!?』

( ^ω^)「アッ……アンデッド!?」

2415話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:01:48 ID:o/sMbQ2Y0


 戸を開けて現れたのは、人ではなくアンデッドだった。

 首に掛けるようにして生えた羽毛、長く伸びた口吻。
 両腕両脚には、羽根のようなヒレが生えていて、毒々しい見た目は毒蛾に見えなくもない。
 


川;゚ -゚)「うぐっ…!」

( ^ω^)「僕が行くから、クーさんは此処に居て!変身!」


 動こうとするクーを阻止すると、早々にブレイバックルを装着。
 広くはない室内でハンドルを引き、ゲートを放出させた。


    【 -♠TURN UP- 】


『シイイイィ……ッ!!』

( OwO)「待て!」


 変身したブレイドが迫ると、毒蛾のアンデッドは一度だけ飛び跳ね逃走。
 開けっ放しとなった戸を抜け外へと出る。周囲を見渡すが、アンデッドの姿はない。
 アンデッド自身が攻撃を仕掛けてもない為、アンデッドサーチャーには引っ掛からない。


( OwO)「サーチャーはまだ反応しないか…クソッ、何処に逃げた!?」


 ふと、目線を上へと向け生い茂る木を見渡す。
 すると、先程目にした羽根のようなヒレが木の陰から覗いていた。
 高い木の上に隠れるようにして、毒蛾のアンデッドはそこに居たのだ。


( OwO)「居たお…!おいお前!降りて来いお!!」


 人が登るには少し高過ぎる木、足を掛けるような枝も生えていない。
 ブレイドスーツの性能で、一度の跳躍で届く高さではある。
 だが、常人には無理という固定概念がその発想を妨げていた。

2515話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:02:25 ID:o/sMbQ2Y0


『シイイイ……!』

( #OwO)「降りて来いっつってんだお!!この……ッ!」


 木の上から降りず、ただ首を横に振っている毒蛾のアンデッド。
 しびれを切らし、木を蹴り付けようとした時だった。


「やめて!!!」


 甲高い声が、木の生い茂る場に響き渡った。
 声のする方へと視線を向けると、一人の少女が駆け寄ってきている。


( OwO)「ちょ、駄目だ!危ないから来ちゃ駄目だお!!」


 ブレイドの制止も聞かず近付いてくる少女。
 すると、その少女はブレイドと木の間に割って入り……弱々しくも精一杯の力でブレイドを押し退けた。


(#゚;;-゚)「やめて!!モスをいじめないで!!!」

( OwO)「へ……?」


 ブレイドに向かい両手を広げ仁王立ちする少女。
 少女が着ている服は少々ボロボロで、髪もボサボサ。親元で生活しているとは思えない。
 少女が立ちはだかった瞬間、降りる気配を見せなかった毒蛾のアンデッドが軽やかに地上へと飛び降りた。
 そして、仁王立ちする少女の傍に寄り添うように立つ。


( #OwO)「お前…ッ!!」
 

 少女を人質に取られたと思い込み、アンデッドに激昂するブレイドだったが……


(#゚;;-゚)「やめてって言ってるでしょ!?私の友達を、モスをいじめないでよ!!」

2615話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:03:01 ID:o/sMbQ2Y0


( OwO)「え……」


 少女はブレイドに助けを求めるどころか、激昂するブレイドを阻止しようとしている。
 いや、阻止というより、守ろうとしていると言った方が正しい。
 先程から毒蛾のアンデッドを"モス"と呼んでいるだけでなく、あろうことかアンデッドを"友達"と呼んでいるのだ。


( OwO)「ちょ…ちょっと待つお、そのアンデッドは――」

(#゚;;-゚)「モス!」

( ; OwO)「え…うん、えっと…モスは友達?でも、そのモスはとても凶暴な――」

(#゚;;-゚)「凶暴じゃないもん!モスは私と一緒に暮らしてる友達だもん!ねー、モス!」

『……ハ、イ』


 毒蛾のアンデッドは少女に向かい、おぼつかなくはあるが人の言葉で返事をした。
 見るところ府坂のような上級アンデッドにも見えない。
 にも関わらず、アンデッドが人の言葉を話した事実に驚きを隠せないブレイド。


Σ( OwO)「えっ…!アンデッドが、人の言葉で返事を……!」

(#゚;;-゚)「だからモスだってば! モ ス !!」

( ; OwO)「あ、ハイ……」

(#゚;;-゚)「……お兄さん、何なの?」


 まだ信用は出来ないが、毒蛾のアンデッド……モスに敵意はない。
 その事を確認すると、ブレイドは変身を解除。人としての姿を少女に見せた。

2715話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:03:52 ID:o/sMbQ2Y0


(#゚;;-゚)「えっ!?すごい!今の何!?」

( ^ω^)「えーと……ちょっと待ってね、順番に説明するからひとまずあの家の中に入ろうお」
 

 何から説明していいのか、何から聞けばいいのか、軽い混乱を引き起こしている。
 クーが未だ居るボロボロの家を指差し提案するブーンだが、驚きの答えを聞く事になる。


(#゚;;-゚)「それ私とモスのお家だよ?」

( ^ω^)「え?」

(#゚;;-゚)「私とモスで、一緒に暮らしてるの」


 空き家だと思っていたボロボロの家が少女の家だった事実。
 だが、それ以上にこのボロボロの家に二人で住んでいるという事実に驚いた。


( ^ω^)「ちょっと待って、お父さんお母さんは?」

(#゚;;-゚)「いるよ。でも遠くに行かなきゃならなくて、いつか迎えに来るからって…私を此処に置いてったの」

( ^ω^)「………」


 言葉も出ない。人として信じられないような話だ。
 話を聞いただけで、少女の両親の言っている事が嘘だと分かるような内容。
 家の中を見たからこそ分かるが、とても子供一人で住むような場所でもないのに。


(#゚;;-゚)「お兄さん、もうモスの事いじめないならお家入ってもいいよ」

『………』

( ^ω^)「……うん、わかったお」


 アンデッドに表情の変化などなく、顔を見たところでどんな気持ちなのか把握する事は到底出来ない。
 根拠もないが、本当に敵意が無いのかも。と思い始めていた。

2815話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:04:31 ID:o/sMbQ2Y0


(#゚;;-゚)「じゃあいいよ、来て」

( ^ω^)「あ…ごめんお、てっきり人がいないと思って。実はちょっと入っちゃったんだお…」

(#゚;;-゚)「そうなの?でもいいよ、盗むものとかないもん」


 冷静にそう答えてしまう少女がとても可哀想に見える。
 自分が住んでいる場所には、人が惹かれるような物が何一つ無い事を理解しているように聞こえた。

 少女とモスの後ろに着き、少女の家の中へと戻るブーン。
 囲炉裏の側で寝ていたクーが、上半身を起こしてこちらを睨むような目で見ていた。


川 ゚ -゚)「………」

(#゚;;-゚)「お兄さんのカノジョ?」

( ; ^ω^)「ぶっ!!ちっ、違うお!彼女はちょっとケガをしてるから……少し寝かせてあげてほしいお」

(#゚;;-゚)「そうなの?いいよ」


 家の中へと上がり、囲炉裏を囲むようにして少女とモスは座る。
 クーが先程から睨みを効かせている相手はモス。どうやら、クーとモスが何か会話をしているようだ。


『―――、――…!』

川 ゚ -゚)「……どうやら敵意は無いようだな」

( ^ω^)「分かるのかお?」

川 ゚ -゚)「同じアンデッドだからな、私は」

( ^ω^)「…お、おん」

2915話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:05:15 ID:o/sMbQ2Y0


( ^ω^)「君、名前はなんていうんだお?」

(#゚;;-゚)「でぃだよ」

( ^ω^)「でぃちゃん…でぃちゃんは両親と離れていつから此処に?」

(#゚;;-゚)「うーん…4ヶ月前くらいからかな?」

( ^ω^)「4ヶ月前……」

(#゚;;-゚)「でももう慣れちゃった。食べ物とかは近所のおばちゃんとかが持ってきてくれるの」

(#゚;;-゚)「あ、モスがいる事はみんなには内緒だよ」


 淡々と質問に答えるでぃ。怯える様子も哀しげな様子も感じられない。
 見たところ9歳前後に見える少女は、たったの4ヶ月で人柄が変わってしまったのか。
 それとも、元々そういう教育を受けてきたのか。
 どちらにしろ、この現状はとても許されるべきものではない。

 すると、意外な事にクーが少女に声を掛け始めた。


川 ゚ -゚)「……でぃちゃん、怖くないのかい?そのお友達の事」

(#゚;;-゚)「怖くないよ!モスとはちょっと前に会ったの、凄く傷だらけだったからお家で休ませてあげたの。
     最初はちょっと怖かったけど、モスすごく優しくしてくれて。私が言葉を教えてあげたりしてるの!」

川 ゚ -゚)「言葉を…?」

(#゚;;-゚)「モス、おはようございます!」

『……オ、オハヨウゴ、ザイマス』

( ^ω^)「うわ…!マジだ…」

川 ゚ -゚)「………」


 カタコトではあるが、しっかりと日本語で発音出来ている。
 クーのモスを見る目付きが変わった。
 警戒心が剥き出しになっていたが、今ではそれが和らいでいる。戸惑っているようにも見えるが。

3015話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:06:04 ID:o/sMbQ2Y0


川 ゚ -゚)《…お前、この子の事をどう思ってるんだ?》


 クーがモスに向け、意思を通して話し始めた。


《――僕は、この人間の子を愛してしまっている。アンデッドでありながら…》

川 ゚ -゚)《何故だ?何故、人間を…》

《僕は元々戦いを望まない。我々が封印を解かれた時点で、僕はすぐに身を隠した。
 だが…アンデッドとしての気配を感知され何度も襲われた。この地に辿り着いた時、この人間の子が助けてくれたのだ》

《何故かは分からないが…分かっている事は、僕は人間の愛を知ってしまったのだ。
 このまま戦いから身を潜めていたい。封印されるべきなのだろうが…この子と離れたいとも思わない》

川 ゚ -゚)《………》


 モスの話を自分と重ねてしまう程、境遇が似ていた。
 アンデッドでありながら、人間の愛情を知ってしまった自分。
 何故?と聞かれて答えられる程、アンデッドにとっては簡単は事ではない。
 そして、渡辺よりも小さな少女に対しても、渡辺の影を重ねて見てしまっている自分がいる。

 押し殺していたはずの感情が暴発し、寂しさが溢れる。
 ショボンや渡辺のもとへ今すぐ帰りたい。バーボンハウスに戻りたい。
 会いたいという気持ちが止め処なく押し寄せ、胸が苦しい。


川 ゚ -゚)(今更、あそこへは帰れない……)
 
川 ゚ -゚)「……でぃちゃん、お願いがあるんだけど。いいかな?」

(#゚;;-゚)「なに?」





川 ゚ -゚)「私を、此処に住まわせて欲しい」

3115話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:06:36 ID:o/sMbQ2Y0


( ^ω^)「えっ」

(#゚;;-゚)「いいよ?」

( ; ^ω^)「ええええええっ!?そんな簡単に!?」


 クーからの予想外な発言。易く受けるでぃにも驚く。
 

( ^ω^)「ちょ、ちょっと待っておクーさん!あまねちゃん達のもとに――」

川 ゚ -゚)「バーボンハウスには帰らない。私が居れば迷惑が掛かる」

( ^ω^)「そんな……」

(#゚;;-゚)「本当にいいの??待ってる人いるんじゃないの?」

川 ゚ -゚)「……いいんだ。私に、あっちは向いてない」


 身体に掛けられた布を退かし、畳んであるコートを広げ羽織った。
 まだ痛みが残るのか、ゆっくりとだが起き上がれるまでには回復したようだ。

 アンデッドは不死身。封印する以外にその命を断つ事は不可能。
 どれだけの重傷を負っても、回復も人間の数倍早いという訳だ。


川 ゚ -゚)「でぃちゃん、ちょっとモスとこのお兄さんと三人で話してもいいかな?」

( ^ω^)「ぼ、僕も?」

(#゚;;-゚)「モスと?お話できるの?」

川 ゚ -゚)「ああ……まぁ、少しな」

(#゚;;-゚)「いいよ、モス行っておいで」

『ハ、イ』

3215話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:07:51 ID:o/sMbQ2Y0


 ブーンとクー、モスは家の外へ出ると、でぃに聞こえないように家との距離を取った。
 木に凭れ掛かり腕を組むクーに対し、ブーンとモスはクーを不思議そうに見ている。


川 ゚ -゚)『お前、隠してる事があるだろう』

『………』

川 ゚ -゚)『あの子の両親……本当に生きてるのか?』


 モスに向け唐突に質問を投げ掛けた。
 しかもその内容は、でぃの両親について。

 クーの質問に対して、モスは重たそうに口を開いた。


『……アンデッドの戦いに巻き込まれ、命を落とした。僕と、カテゴリーQとの争いにだ』

川 ゚ -゚)『……やはりな』

( ^ω^)「何を話してるんだお?」

川 ゚ -゚)「…でぃの両親は死んでる、このアンデッドと別のアンデッドの争いに巻き込まれて」

( ^ω^)「ええ…!?」


 予想もしなかった。
 でぃは、ただ両親に捨てられたものだとばかり思っていただけにその衝撃は大きい。
 モスは肩を落としうつむいている、落ち込んでいるのだろうか。


『隠したかった訳ではない…伝える術が無いのだ。人間と意思を通わせる事はとても難題だ』

『いつかの日…この周辺で、僕はカテゴリーQに襲われた。当然逃げようとした。
 だが、その時とある人間の家族が巻き添えを食らってしまい…あの子の両親は、そこの棲家に子を押しやった。
 守ったのだ、あの子の両親は自らの命と引き換えに…あの子を』

『あのカテゴリーQはとても残虐だ、自ら人間を襲う真似はしないようだが…。
 自分にとって邪魔な者は、何者であれ排除する。そういう気質の持ち主だ』

3315話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:08:28 ID:o/sMbQ2Y0


川 ゚ -゚)『そうか……』

『そんな残酷な事実も知らないで、あの子は本当に待ち続けている』

川 ゚ -゚)「…両親があの子を庇って死んだ、あの子はその事を知らないらしい」

( ^ω^)「そんな……4ヶ月もこんなところで待ち続けてるのかお……」

川 ゚ -゚)「こいつは他のアンデッドとは違い平和的だが、アンデッドが人の子をどうこう出来るものでもない。
     上級であれば人に擬態出来るかもしれないが…こいつなりに、してやれる事はしてやっている」

( ^ω^)「……まぁ、そうかもしれないお」

『だから、僕は人の言葉を覚えようとしている。そうすれば意思の疎通が出来るはずだ』


 事は想像していた以上に重たかった。
 アンデッドでありながら人間への優しさを見せるモス、モスの声に真剣に耳を傾けるクー。
 ブーンは、クーとモスを重ねて見ていた。


( ^ω^)(クーさんも、口では色々言うけど人を襲ったりはしないし。むしろでぃちゃんには優しくしている…。
       このアンデッドも人は襲わないどころか、戦いを避けてでぃちゃんと暮らしている…)

( ^ω^)(もしかして……アンデッドの中にも、心優しいアンデッドがいるって事かお?だとしたら、クーさんも……)
 

 ブーンの中で、アンデッドという既成概念が崩れ掛かっている。
 元々アンデッドは人を襲い、府坂のように己の欲望の為に動く絶対的な悪という概念が植えつけられていた。
 ライダーになった以上、どんなアンデッドも全て封印するという使命感にも。
 その為に、クーがアンデッドだと知った時は酷く憤怒した。
 
 だが、クーの人間らしさを知り、今こうしてモスの優しさを目の当たりにし、その概念に疑問を抱き始めている。
 
 全てのアンデッドが、人間の敵に成り得る訳では無いのではないか。と。


.

3415話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:09:04 ID:o/sMbQ2Y0



川 ゚ -゚)『私もお前と同じだ、人間の愛情を知ってしまった。これが私にとって何を意味しているのかは分からない。
      でも……とても心地が良いものだと感じてしまうんだ』

川 ゚ -゚)『お前達に危害を加えようなどとは思わないから安心しろ。お前が私とやると言うのなら話は別だが』

『そんな事はしない、したくもない。……そろそろ戻ろう、長いとあの子が心配する』

川 ゚ -゚)「…そうだな、戻るか」

( ^ω^)「おっ、うん」


 クー達に釣られ、でぃの家へと戻ろうとした時。
 ポケットに入っているスマホが振動し、着信を報せ始めた。


( ^ω^)「あっ、先行っててくれお」


 ポケットからスマホを取り出し、呼出人の名前を確認する。
 着信はドクオからだった。
 二人へ挨拶をすると、ブーンは一人その場に残り着信を取った。



( ^ω^)ロ 「おいすー」

「ブーン…!!たっ、助けてくれ…!!」

( ^ω^)ロ 「どうした!?」


 スマホの向こうから聞こえたドクオの声は小さく、震えている。
 その様子から、アンデッドに襲われているのではないか。と予測は出来た。

 ドクオの答えを聞く前に、ブーンの横をクーが駆け足で通り抜ける。



川 ゚ -゚)「カテゴリーAだ…!」
 
.

3515話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:10:00 ID:o/sMbQ2Y0


( ^ω^)ロ 「カテゴリーA……もしかして、あの時の!?」

「頼む早く来てくれ…!!このままじゃ殺され…ッうわあああ!!」

( ^ω^)ロ 「ドクオ??ドクオ!?!?」


 ドクオの断末魔を最後に声は聞こえなくなった。切れてない電話がより不安を煽る。
 ブーンの横を通り過ぎていったクーは、いち早くカテゴリーAの気配を感じ取ったのだろう。
 しかし、まだ絶好調とまでは行かず、身体にズキンッと痛みが走りその場に転倒してしまう。


川;゚ -゚)「うぐっ…!」

( ^ω^)「クーさん…!クーさんは此処に居てお、僕が行くから!!」

川;゚ -゚)「………」

(#゚;;-゚)「どうしたの?大丈夫?」


 騒ぎを聞きつけてきたのか、家の中からでぃとモスが出てきた。
 倒れているクーのもとに駆けつけては、モスがクーの身体を支え起こす。


( ^ω^)「二人とも、そのお姉さんの事見ててお!僕ちょっと急ぐから!!」


 二人にクーを託し、一人ブルースペイダーのもとへと駆け出す。
 バイクに乗りヘルメットを被ると、急いでドクオの元へと走らせた。






「…へぇ〜、此処に居たんだカリス。しかも此処あの下級もいるじゃん」


 ブーンと入れ替わりで、パンク系の派手な格好をした若い女が木の陰に現れた。
 耳につけたピアスを揺らし、真っ赤に塗られた唇から紅い舌を覗かせる。


(*゚∀゚)「アヒャヒャ、良い事思いついちゃった〜♪」


.

3615話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:10:23 ID:o/sMbQ2Y0




 ―――――



.

3715話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:10:47 ID:o/sMbQ2Y0


 ――街中を颯爽と走る、紅いレッドランバス。 
 カテゴリーAが出現した事を聞き、モララーも同じくドクオのもとへと向かっていた。

 数時間前にカリスに邪魔をされ、二度も取り逃がしてしまっている。
 今度こそは、と。カテゴリーA封印に燃えていた。


( ・∀・)(カテゴリーA…今度こそ俺が必ず!)


 すると、対向車線から一台の見慣れた車が通りかかった。


( ・∀・)(あの車は……)

「モララー!!」


 疑問を持ったと同時に、聞き慣れたよく通る声がモララーの耳に届いた。
 それと同時にレッドランバスを停め、見慣れた車から降りた人物が車通りの無い道を横断してきた。


( ・∀・)「ヒート……」

ノパ⊿゚)「はぁ、はぁ…よかった。やっと会えた……電話しても出てくれないし、心配したんだ」


 酷くモララーへの怒りを見せたヒートだったが、未だに気遣う気持ちを抱いていた。
 ようやく会えたからか、ヒートは息を切らしながらも笑顔でヘルメットのシールド越しにモララーを見つめている。

 そんなヒートの笑顔が眩しすぎるのか、気まずいのか。すぐに視線を逸らしてしまう。


( ・∀・)「……俺の事はもう忘れてくれ」


 アクセルを踏もうとした瞬間、レッドランバスの行く手を遮るようにヒートが前に出た。

3815話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:11:25 ID:o/sMbQ2Y0


ノパ⊿゚)「ま、待って!君に話さなきゃならない事がある!」

ノパ⊿゚)「君が浸かってる溶液だが……あれはとても危険だ!」

( ・∀・)「危険……?」


 肩に下げているショルダーバッグから、数枚の書類を取り出しモララーへと差し出した。


ノパ⊿゚)「調べてもらったんだ。君の浸かってる溶液…その植物は、"シュルトケスナー藻"と言うらしい。
     既に絶滅したはずの植物らしいけど、その植物は中枢神経を刺激して…今の君のように闘争本能を増幅させる」

ノパ⊿゚)「だけど、それは一時的なものだ。シュルトケスナー藻の成分は強過ぎる。
     強過ぎて…それを使い続ければ、やがて神経や細胞が破壊されてしまうんだ!」

( ・∀・)「……!」


 初めて聞かされる話に、モララーの表情は一変。
 戸惑いを隠せず狼狽えている。


ノパ⊿゚)「君、ずっと身体がボロボロになるって悩んでたんだろ…?
     こんな事してたら本当にボロボロになる!だからもう、やめてくれ…!」


 話が事実なら、ボロボロにならない為の力を得たはずなのに、その力によってボロボロになってしまう。
 モララーにとっては、行くも退くも地獄という状況。
 ヒートは、モララーがほんの少し目が覚めてくれたように見えたが、


( ・∀・)「………悪いけど、俺は今満足している」

ノパ⊿゚)「え……?」


 モララーからの答えは、ヒートの訴えを全て拒むようなものだった。
 身体がボロボロになってしまうのに、満足……言葉の意味は分からないし、分かりたくもなかった。

3915話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:12:17 ID:o/sMbQ2Y0


( ・∀・)「あの溶液に浸かって力を得る…そして戦うと、俺は全てを忘れられるんだ。
      戦える自分が嬉しくて、もっともっと力が欲しい。もっと戦いたいって思える!」

( ・∀・)「誰にも負けない力…もっと強くなって、誰よりも強くなりたい!
       そう思えば思う程、戦える事が喜びになって…俺の全身に漲るんだ!」


 目を見開きながら嬉々として話す様は、既に常軌を逸している。
 まるで、薬物依存に陥ってしまった人間のように。


ノパ⊿゚)「それが一体なんなんだ!?君は死んでしまうかもしれないんだぞ!?」

( ・∀・)「……俺は、大きく生きたいと思うようになった。俺の強さを誰からも認められて、俺は――」

ノハ ⊿ )「違う!!!!」

( ・∀・)「!!」


 全力で出した大声が、モララーの話を遮った。
 

ノパ⊿゚)「違う……そんな生き方じゃなくていい、誰にも認められなくたっていいじゃないか!
     君は君だよ…モララーはモララーなんだ。強くなくたってモララーの良いところ、私はたくさん知ってる!」

ノパ⊿゚)「それに……私は、道端の花みたいにひっそりとでいい。そんな風に…君と生きていきたいんだ」

ノパ⊿゚)「君と…二人で…!」

( ・∀・)「………俺、と……?」


 ヒートの言葉に、心が大きく動かされた。
 ようやく、自分が力に溺れてしまっていた事を思い出させる。
 ヒートを守る為に得た力のはずなのに、いつの間にかただ力を振るう化物と化していた。
 
 そう、気付いたはずなのに。
 
 それでも――力を失えば、ヒートを守る事も出来ない。

4015話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:12:58 ID:o/sMbQ2Y0


( ・∀・)「………ごめん、生き方が違ってしまったんだ。もう一緒には生きられない」


 手渡された書類を撒き散らし、今度こそアクセルを踏んだ。
 目の前のヒートを、迷いを振り切るように。


ノパ⊿゚)「わっ!待ってモララー!モララー!!」


 寸前で身を翻し、衝突を避けた。
 走り去って行くモララーの背中を見つめながら精一杯名前を叫ぶが、その声は届かない。
 
 
ノパ⊿゚)「……モララー……」


 足元に書類が散らばった中、遠くなっていく背中を見つめ続ける。
 すっかりと変わってしまったと思っていた。でも、そうじゃなかった。
 本当のモララーはまだ居て、今は本当の姿を覆いつくしてしまう程の力に溺れてしまっている。
 
 これだけの事を言われても、モララーへの気持ちを捨てる事は出来なかった。

 足元の散らばった書類を一枚一枚広い上げ、寂しそうに車へと戻るヒート。








 ――その様子を物陰で見つめる、黒い影。


ミ,,▼Д▼彡「あの女は………邪魔だな」


.

4115話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:13:40 ID:o/sMbQ2Y0


 ――――――
 ――――
 ――


 クー達のもとを離れ、ドクオの助けに向かっているブーンは山を下り街中へと戻って来た。
 具体的な場所は、イヤホンでのツンとの通話で知らされている。


( ^ω^)「後少ししたら着くお……ドクオ、頼むから必死で逃げててくれお!」


 ブルースペイダーを走らせている中で、T字の道路へと出た。
 すると、T字の道路から合流してきた赤いバイクが一台、ブーンの前へと着いた。

 よく見なくても分かる。
 この赤いバイクはレッドランバスで、乗っているのは……モララーだ。


( ^ω^)「モララーさん!!」

( ・∀・)「………」


 背後の存在に気が付くが、返事も反応もしない。
 カテゴリーAのもとへとただひたすらにレッドランバスを走らせるだけ。

 
( ^ω^)「もしかして、モララーさんもカテゴリーAの反応を辿って…?」


 カテゴリーAの反応がある度にモララーは必ず現れていた。
 モララーの裏切りを受けて以来接触が無かったが、今此処に来てようやく遭遇する事が出来た。
 だが、ブーンは喜びはしない。抱いているのは警戒心だけ。


( ^ω^)「僕の親友の命がかかってるんだ、変な真似したら許さないお…!!」

4215話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:14:15 ID:o/sMbQ2Y0


 その時、モララーとブーンの間に割って入るようにして頭上から何かが現れた。
 青と金の優雅な羽を羽ばたかせ、颯爽と出現。
 右手に持った黒い剣を振りかざし、接近するブルースペイダーに向けて振り下ろした。


( ^ω^)「なんだっ!?」

ミ,,゚王゚彡『菱谷の邪魔をするな!!』

( ; ^ω^)「うわぁああっ!?!?」


 剣撃を受けたブルースペイダーのバランスを崩し、ブーンは道路上に転倒。
 身体を道路に強く打ち付け、そのまま流れに抵抗出来ず転がった。


( ; ^ω^)「ううっ……ぐ、お前ェ……!」

ミ,,゚王゚彡『カテゴリーAは渡さん、あれは菱谷の物であり俺の物だ』

( ; ^ω^)「ふざけんなお…!お前の所為でモララーさんは……!!」


 じっくりと時間を掛けさせられ、仇敵となった府坂。このアンデッドの仕業で何度も掻き乱されてきた。
 モララーが裏切りに至ったのも、この男が手を回した所為だ。
 
 痛みなどに構っている暇はなく、無理矢理身体を叩き起こす。
 ポーチからブレイバックルとカテゴリーAのカードを取り出し、腰に装着。
 前回は完敗を喫した相手に、再び戦いを挑んだ。


( ^ω^)ψ「変身!」
    /

    【 -♠TURN UP- 】


 府坂が炎球を放ったが、被弾する前にゲートを放出する事で炎球を打ち消す事に成功。
 ブレイラウザーを左手で逆手に引き抜き右手に持ち直す。
 互いに詰め寄り距離を埋めると、剣と剣を激しく打ち合った。

4315話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:14:53 ID:o/sMbQ2Y0


( OwO)「ぐぐぐ……ッ!!」

ミ,,゚王゚彡『ふん、全く…雑魚の相手は張り合いがない!』

( ; OwO)「あうっ!?」


 鍔迫り合いになった剣と剣。
 府坂が力任せにブレイラウザーを振り払い、ブレイドの胸にまずは一太刀。
 余裕綽々な府坂。挑発的な言葉を述べながら、軽々と黒い剣を振るい続ける。


( ; OwO)「くそォ…!上級アンデッドは…こんなに強いのかお……ッ!!」

ミ,,゚王゚彡『俺が強い、そう言いたいところだが……貴様が弱いだけだ!』

( ; OwO)「ぐううぅ!!」


 剣の打ち合いの中で、府坂の放った炎球が直撃。
 府坂の追撃は止まらない。
 吹き飛ばされ地面に倒れるブレイドを囲むようにして、羽根の投擲刃が展開。


ミ,,゚王゚彡『ふんっ!!』

 
 立ち上がった瞬間、府坂が拳を握ったと同時に囲んだ投擲刃が一斉放射。ブレイドを串刺しにした。


( ; OwO)「うわあぁあああっ!!!」


 回避不可能かつカードを使う間もない攻撃に、ただ晒されるしかなかった。
 投擲刃の攻撃を受けたブレイドは、悲鳴を上げながら再び転倒。


( ; OwO)「ああ"ぁ"っ………、……?」


 途端、フッと気配が消えるのを肌で感じる。
 顔を上げると、其処にいたはずの府坂がいない。


( ; OwO)「……クソッ、時間稼ぎかお……!!」


.

4415話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:15:48 ID:o/sMbQ2Y0


 ブレイドの言葉通り、府坂の行動はあくまで時間稼ぎでしかなかった。
 モララーを一人でカテゴリーAのもとへ向かわせる為、行く手を防ぎに来たという訳だ。

 そして、その通りモララーは単身カテゴリーAのもとへと辿り着いた。
 辿り着いた場所には、カテゴリーAとそれに襲われてるであろうドクオの姿があった。
 だが、カテゴリーAはドクオに手を出してはいない。
 それどころか、何かを語りかけている。


( \品/)『キサマ、力ヲ欲シイト思ワナイカ?』

(;'A`)「な……何言ってんだ……!?」

( \品/)『俺ニハ見エル…キサマノ心ニ染ミ込ンダ、暗闇ガ見エルゾ…!』

(;'A`)「もうやめてくれよぉっ!!何で俺なんだよ!!俺は強くなんかない!!!」

( \品/)『俺ヲ求メロ…!俺ハキサマノ"力"トナリ、ソノ暗闇ニ住ミ着イテヤロウ!』

(;'A`)「訳わかんねぇって…!!襲う気ないなら来るんじゃねえ!!」


( ・∀・)「カテゴリーA!!」

( \品/)『………フッ、時ハ来タ』

(;'A`)「ひっ……うわああぁああっ!!」


 モララーの声に反応し振り向いた隙をついて、ドクオは懸命に走り出す。
 ドクオに語りかけていたカテゴリーAはほくそ笑み、ドクオを追跡しようとはしない。
 ギャレンバックルを装着し、戦いに望もうとしているモララーに向き合っている。


( ・∀・)「今度こそ逃がさない…覚悟しろ!!」

o( ・∀・)「変身!!」



    【 -♦TURN UP- 】

4515話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:16:32 ID:o/sMbQ2Y0


 ゲートを通過しギャレンへと変身。
 そのまま走り接近を試みるが、カテゴリーAは蜘蛛の糸を発射してそれを迎撃する。

 その攻撃を見抜いていたのか、咄嗟にギャレンラウザーを引き抜くと右に受け身を取りながら銃撃。
 ギャレンの攻撃を許してしまったカテゴリーAに、何発もの銃弾が浴びせられる。


( \品/)『グウゥッ……フフ、クハハハハ…!来イ…!』

( OMO)「今度こそ俺の手で、貴様を倒す!!」


 ギャレンラウザーを右手に持ったまま接近戦に挑んだ。
 腕を横に振り切ったカテゴリーAの攻撃をひらりと避け、打撃の後すぐに銃撃を放つ。
 カテゴリーAの重たそうな身体から繰り出される素早い攻撃。
 それらを全て防ぎ続け、カウンターに打撃・銃撃を打ち込んで行く。

 
( \品/)『ウウ"ゥア"ア"ァッ!!……グフッ!』

( OMO)(手応えはある…このまま攻め込めば、俺はこいつを封印出来る!)


 着実に追い込んでいる手応えを掴んでいた。
 幾度か戦い、カテゴリーAの動きを把握しているからだろうか。
 初戦は苦戦気味だったが、今となっては圧倒している。

 それ程までに、ギャレンの力は倍増しているというのか。



 だが……カテゴリーAは、心の中で笑い続けている。

4615話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:17:01 ID:o/sMbQ2Y0


( OMO)「一気に片を付ける!」

( \品/)『ウアア"ア"ァア"アッッ!!!』


 がむしゃらに走り、突っ込み始めるカテゴリーA。
 ギャレンラウザーのオープントレイを展開し、一枚のカードを選択し素早くラウズする。
 カテゴリーAはこの間、ワイヤーで阻止しようとはしない。


     《-♦3 BULLET-》


( OMO)「来い!!」


 ギリギリの限界までおびき寄せる。
 一気に距離が縮まり、カテゴリーAはギャレンに襲い掛かった。

 この瞬間を狙っていた。
 ギャレンは攻撃を躱し懐に潜り込むと、腹部に向け威力の倍増した銃撃を何発も撃ち込んだ。


( \品/)『ウオオオォオオッ…!!』


 銃撃の衝撃で吹き飛ばされる。
 地面に叩き付けられた時を見計らい、ギャレンは更に三枚のカードを選択。
 蜘蛛によるくだらない遊戯、そして自分の力の証明の戦いに、終わりを告げようとしていた。


    《-♦5 DROP-》 《-♦6 FIRE-》 《-♦9 GEMINI-》


 三枚のカードの紋章が、ギャレンの背後に浮遊する。
 順に紋章を身体に宿し、三つの力をその身に宿した。


         《-♦BURNING DIVIDE-》


( OMO)「終わりだ!!」

.

4715話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:17:25 ID:o/sMbQ2Y0


 両脚を揃え、地面を蹴り跳躍。
 空中で身体を回転させるギャレンが二つに分身し、二人のギャレンの両脚に燃え盛る炎が纏い始めた。

 カテゴリーAが立ち上がった時には、もう遅い。
 二体のギャレン。どちらが本物か区別がつかず、右側のギャレンを蹴散らそうと蜘蛛の糸を放出した。
 蜘蛛の糸が接触した瞬間、右側のギャレンが消失。


( \品/)『!?』

( OMO)「でいやあああああっ!!!」


 左から迫るギャレンの両脚が、炎の残像を描きながらカテゴリーAに叩き込まれた。
 

( \品/)『グアアァアアアッ………!』


 歪な声をあげながら吹き飛び、カテゴリーAは吸い込まれるように地面に崩れ落ちた。
 爆発は起きないが、ギャレンの必殺技を受け立ち上がる様子はない。

 ギャレンはカードを一枚抜き、倒れたカテゴリーAに向け投擲。
 カードの角が身体に突き刺さると……みるみるカードに吸収され、封印されてしまった。
 封印を終えたカードがギャレンの掌中に戻り、そのカードを見つめる。


( OMO)「……ついにやった、俺は…俺の力だけでカテゴリーAを倒した…!」


 バックルのハンドルを引き、ギャレンの変身を解除する。
 封印したカテゴリーAのカードを見つめるその表情は、とても満足していて、嬉しそうだ。


( ・∀・)「やったぞ…これで、俺の強さは証明された!俺は戦える!!」

4815話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:17:53 ID:o/sMbQ2Y0


「終わったようだな…ご苦労だった、流石はギャレンだ。後で俺のもとへカードを渡しに来い」

( ・∀・)「ああ」


 府坂の声が脳に響く。モララーがカテゴリーAを封印した事を把握したようだ。
 落ち着いた声で一言返事を返すが、モララーの心は喜びに踊っていた。
 あれ程の強敵であったカテゴリーAを一人で封印した事が、絶対的な自信に繋がった事を。



 だが、その喜びは束の間のものとなる。
 モララーの頭に、ヒートの言葉が過ぎり始めた。


 ――――――――――

 ノパ⊿゚)「道端の花みたいにひっそりとでいい。そんな風に…君と生きていきたいんだ」

 ノパ⊿゚)「君と…二人で…!」

 ――――――――――


( ・∀・)「……違う。俺は、何で喜んでいるんだ…?こんな事をして……」


 ヒートの言葉を頭の中で繰り返しているうちに、突然、我に返り始める。
 カテゴリーAを倒し、嬉々としている自分が可笑しい事にようやく気付き始めた。
 それは間違いなくヒートの言葉のおかげであり、ヒートの力。
 シュルトケスナー藻によって、精神を支配され掛けていたモララーの心に、ヒートの声が届いていたのだ。


( ・∀・)「……ヒート」


 手に持っていたカテゴリーAのカードを、静かにポケットへしまう。

 モララーの中に、ヒートへの想いが突如溢れ出した。
 自分勝手だと分かっていながら、その気持ちを抑える事が出来ない。
 モララーはレッドランバスへと乗ると、衝動的に診療所へと向かって行った。 


.

4915話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:18:23 ID:o/sMbQ2Y0




 ―――――



.

5015話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:18:47 ID:o/sMbQ2Y0


 モララーと遭遇した後、ヒートは一人自身の診療所へと戻っていた。

 表情はとても暗く、既に疲れ切っている。
 ショルダーバッグをスタンドに掛け、白衣も着ずに椅子へと腰掛けた。


ノパ⊿゚)「……はぁ」


 深く吐いた溜息、声が部屋中に響く。
 すると、ヒートは立ち上がりスタンドに掛けたバッグの中を漁り始めた。何かを探している。
 探し物を手に掴むと、再び椅子へと座り手に掴んだものを見つめる。


ノパ⊿゚)「モララー……私は一度も君の事、忘れた事なんてない…」


 哀しげに見つめている物は、お守りだった。
 何の変哲もない、ただのお守りだが……


ノパ⊿゚)「大学を卒業した時に、君がプレゼントしてくれたもの…未だに持ってるなんて知られたら笑われるよな」


 そのお守りは、大学を共に卒業した時にモララーがヒートにプレゼントしたものだった。
 ヒートの成功、健康を願って……不器用ながらにプレゼントしてくれた事が、とても嬉しかった。
 特別なお守りなどでなくても、ヒートにとっては世界で一番特別なお守り。
 赤い布に包まれたお守りは、時が経ち紐が解けてしまった為にバッグの中に入れ、大切に持ち歩いていた。


ノパ⊿゚)「……モララー」


 





「そんなに奴に会いたいか?」

5115話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:19:23 ID:o/sMbQ2Y0


ノパ⊿゚)「!?!?」


 突如、自分以外誰もいないはずの部屋に男の声が響き渡る。
 驚いたヒートは、声のする方へと反射的に振り向いた。

 そこには……


ミ,,▼Д▼彡「…深沢ヒート、だな」

ノハ;゚⊿゚)「な……何なんだ、あなたは……どこから!?」

ミ,,▼Д▼彡「お前は、菱谷にとって邪魔になる」

ノハ;゚⊿゚)「何を―――ッッ!?!?!?」


 
 腹部、そして背中に感じる違和感。
 恐る恐る、視線を下に向ける。



ミ,,▼Д▼彡「悪いが……お前には消えてもらう」





 ヒートの腹部には――

 


ノハ;゚⊿゚)「はっ…あ、ぐ…あ……!」




 ――黒い剣が、深く、深く突き刺さっていた。

.

5215話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:20:44 ID:o/sMbQ2Y0


ミ,,▼Д▼彡「お前は触れてはならない所まで触れてしまった」

ノハ;゚⊿゚)「お前……が、ふさ…か……!」

ミ,,▼Д▼彡「挨拶が遅れたな。俺が、菱谷を救った張本人の……府坂だ」

ノハ;゚⊿゚)「そうか……お前が、…モララーを誑かしたのか……ッ!!」

ミ,,▼Д▼彡「言い方が悪いな、俺は奴を助けたというのに」

ノハ#゚⊿゚)「何が助けただ…!!お前は…モララーの、モララーの心を弄んだ……!
       

 腹部に刺さる黒い剣を、震える両手で掴む。
 怒りに震える声、激情に歪む顔。
 モララーを大切に思うが故、府坂に対し食って掛かった。


ノハ#゚⊿゚)「お前はただ、モララーを人形にしただけだ……ッささやかな笑顔すら、お前が奪った…!!
      お前だけは許さない……!私を消して……、全てが上手く行くと思うな…!!」

ミ,,▼Д▼彡「………」

ノハ;゚⊿゚)「お前は…ッ、必ず……ブーン君や……モララー、に……」

ミ,,#▼Д▼彡「黙れッ!!!」


 突き刺した黒い剣を、勢いよく引き抜いた。
 剣を掴んでいたヒートの掌は切り付けられ、腹部から血があたりに飛び散る。
 ヒートは力なく倒れ……モララーからもらったお守りも、目の前に落ちてしまった。
      

ノハ; ⊿ )「………」

ミ,,#▼Д▼彡「人間如きが……ましてやあんな雑魚共が俺を倒すだと?笑わせる!」

ミ,,#▼Д▼彡「…あの世で待っていろ。しばらくすれば、菱谷もすぐお前のもとへ逝くさ」


 手に握っていた黒い剣が消失。
 ヒートの言葉に怒りを露にし、血を流し倒れるヒートを見下している。
 捨て台詞を吐き捨てると、府坂はクジャクの羽に身体を包みその場から立ち去った。

5315話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:21:37 ID:o/sMbQ2Y0




ノハ; ⊿ )「…………」



 腹部から、どくどくと血が流れ続ける。

 この診療所には誰もいない。
 這って動く力も出ず、助けも求められない。


 悟ってしまった。



ノハ; ⊿ )「……はは、……だめだ、これは……」

ノハ; ⊿ )「せめて……この、お守りだけは……!」



 力を振り絞り、目の前のお守りに手を伸ばす。


 血で汚れた指先がお守りの端に掛かり、届く事が出来た。
 指先で引き寄せ、お守りをギュッと握り締める。


ノハ; ⊿ )「……モララー」


 
 遠のく意識の中――ヒートはそれでも、モララーの名を呼び続けた。


.

5415話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:22:05 ID:o/sMbQ2Y0




 ―――――



.

55 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 11:23:35 ID:o/sMbQ2Y0
15話途中ですが一旦投下やめます
今日中には続き投下します

56名無しさん:2017/10/29(日) 14:38:12 ID:WLFJvTJE0
おっニチアサ第2ラウンドきてるじゃあないか!

57名無しさん:2017/10/29(日) 16:04:36 ID:BBttmrSA0
なんでパースレにしたのか

58名無しさん:2017/10/29(日) 17:19:43 ID:7MswAUuY0
え?2スレ目だし別に問題なくね?
なんかあったっけそんなルール

59 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:25:07 ID:o/sMbQ2Y0
>>58の言う通り2スレ目って意味です
単純に分かりやすくしたかっただけなんで大した意味はないです

続き投下します

6015話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:25:52 ID:o/sMbQ2Y0


 その頃、クーが残ったでぃの家では晩御飯を作る為の作業が行われようとしていた。
 この家にはガスがない為、全て薪を焚いて火を起こしているようだ。


(#゚;;-゚)「モス、表から木を持ってきてくれる?」

『ハイ』


 木という言葉がまだ通じない為、木だと分かる為に手でジェスチャーをするでぃ。
 モスはそれを見ると、一言はっきりと返事を残し、戸を開け外へと出た。


川 ゚ -゚)「……随分君になついてるみたいだね」

(#゚;;-゚)「でしょ?私とモスは友達だもん。私の初めての友達!」

川 ゚ -゚)「初めて?」

(#゚;;-゚)「うん。私、お父さんの仕事の関係でいろんなところ引っ越してるから、友達いないの」

川 ゚ -゚)「……そうなのか」


 クーが作業する手を止め、でぃの隣に移動する。
 そして、でぃに向かって小指を差し出した。


川 ゚ -゚)「じゃあ…私とも、友達になろう」

(#゚;;-゚)「…いいの?」

川 ゚ -゚)「もちろんだよ、此処に居させてくれるんだから尚更だ」

(#゚;ー゚)「……へへ、約束!」

川 ゚ー゚)「ああ」


 でぃの笑みに釣られてか、クーの表情が笑顔になった。
 小指同士を結び、友達の約束を交わす。
 何故こんな事をしているのか、考えればきりは無いが…少なくとも、本能に従っている事だけは確かだった。

6115話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:26:43 ID:o/sMbQ2Y0


『………』


 でぃの頼みを受け、一人薪を集めているモス。
 その背後に、ゆっくりと近付く若い女の影。

 
「へぇ〜?アンデッドのくせに人間なんかと暮らしちゃって、やばいんじゃない??」

『!!!』


 声に反応し、モスは瞬時に振り向く。
 背後に忍び寄っていた若い女を目にした途端、モスの様子が変わった。
 手に持っていた薪を落とし、じりじりと後退りしている。 


(*゚∀゚)「何でそんな怯えてるわけ?アタシにこてんぱんにされたから?あはははッ!」

(*゚∀゚)「またずたずたにしてあげよーか??アンタ達下級なんか、カテゴリーQのあたしには敵わないだろうからさぁ…??」


 後退りするモスに、不敵な笑みを浮かべながら近付く若い女。
 自分の事を"カテゴリーQ"と称している事から、アンデッドである事が伺える。
 

(*゚∀゚)「なーんてね、アンタなんかやったってつまんないし……もっと面白い事思いついちゃったからさぁ」


 若い女が右手を伸ばし、モスの首に生えた羽毛を鷲掴んだ。
 見た目からは想像も出来ない程力強く、軽々とモスを強引に引き寄せる。

 そして、耳元で囁いた。



(*゚∀゚)「……あのガキを殺されたくなかったら、カリスを襲え。そしてカードを全部奪え」

『……!!』

(*゚∀゚)「出来ないなら…アタシがあの子供、美味しく調理しちゃおっかな〜??♪」

(*゚∀゚)「フフフ………アヒャヒャヒャヒャ!!」


.

6215話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:27:11 ID:o/sMbQ2Y0




 ―――――



.

6315話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:27:34 ID:o/sMbQ2Y0


 ――カテゴリーAとの戦いを終え、モララーは診療所へと辿り着いた。

 ヘルメットを脱ぎ、見慣れたこの診療所の外観を眺める。


( ・∀・)「……また久しぶりになったな、此処に来るのも」


 何度か来ない時期を作った挙句、ずっと来ると約束した直後裏切ってしまった。
 正直、気まずい部分もある。
 だがそれ以上に、ヒートに会いたい。会って、直接謝りたかった。

 そして……共に生きたいという答えを、改めて伝えたかった。



 レッドランバスから降り、いつものように診療所の扉を開ける。
 中には誰もいない。ヒートの車は表にあったから、いつものように診察室にいるのだろう。

 少し緊張もしてきた。
 あんな事を言ってしまって、今度こそ嫌われたかもしれない。
 でも、それをひっくるめて自業自得だという事も理解している。
 もし嫌われたのであれば…また、頑張るしかない。
  
 ヒートの事を次々に考えていると、穢れきった心が洗われるような気持ちになった。


 診察室の前に着き、ドアノブに手を掛ける。
 そして、いつものように少し古くなったドアを開けた――。


( ・∀・)「ヒート―――」






( ・∀・)「―――……え?」

6415話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:28:11 ID:o/sMbQ2Y0


 ドアを開けモララーの目に飛び込んできたのは……見慣れた景色じゃない。
 辺りに血が飛び散り、血溜まりの上に倒れているヒートの姿。

 想像を絶する光景に、声が思うように出なかった。


( ; ・∀・)「ヒート……ヒート!!」


 ヒートの名を呼びながら、うつ伏せに倒れているヒートの身体を支える。
 仰向けにすると、ヒートの腹部から大量の血が流れている事が分かった。
 服は血を吸い真っ赤に染まっていて……


ノハ;゚⊿゚)「………モラ、ラー……?」

( ; ・∀・)「どうしたんだよヒート!!何があったんだ!?ちょっと待って、今すぐ救急車――」


 ポケットに手を入れようとするモララーの手を掴み、阻止する。
 そして、ヒートはモララーに向け、満面の笑みを浮かべて見せた。


ノハ;゚ー゚)「はは……やっぱり、来て…くれたんだ……」

( ; ・∀・)「何言ってんだよ…!何があったんだよ!?」

ノハ;゚⊿゚)「……府坂が、私の事を邪魔だからと……消しに来た、ってわけさ……」

( ; ・∀・)「!!!!!」


 衝撃を受けた。
 あれ程、モララーと手を出さない約束をしていた府坂が――。

6515話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:28:53 ID:o/sMbQ2Y0


( ; ・∀・)「府坂が…やったのか……?」

ノハ;゚⊿゚)「モララー……最期の時間くらい、一緒に、居てくれるよな…?」

( ; ・∀・)「最期だなんて言うなよ!!諦めるな!!死ぬな、絶対死ぬな!!」


 だだを捏ねる子供のように、大声でヒートの言葉を否定した。
 モララーの感情が爆発し、自然と大粒の涙がボロボロと零れ始める。


( ;∀;)「俺…っ俺、ヒートにたくさん謝らなきゃならない事があるんだ!
       俺、本当バカだったよ!ヒートに一緒に生きたいって言われるまで気付かなかった!
       君の事がとても大事なはずなのに……俺は……ッ!!」

ノハ;゚⊿゚)「……もういいよ、謝らなくていい……それだけで、私は嬉しいから……」


 掌を開き、握っていたお守りをモララーに見せ付けた。
 赤い布が、ヒートの血を滲ませている。


ノハ;゚⊿゚)「これ…覚えてる、かな…君が、くれたお守りだ。……ずっと、持ち歩いてた……」

( ;∀;)「……っ何で、まだ持ってるんだよ…」

ノハ;゚⊿゚)「はは…やっぱり、笑う…?でも……凄く、嬉しかったんだ……私」

ノハ;ー;)「君と……もっと、いろんな思い出欲しかった、けど…ッ、これ見ると……君をたくさん、思い出させてくれる…」

( ;∀;)「……ううっ、ぐ……駄目だ、死ぬな…俺を置いていくなよ!!
      知ってるだろ?俺は、ヒートがいないと駄目だってことくらい!!」

6615話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:30:22 ID:o/sMbQ2Y0


 血に濡れたヒートの白い手が、モララーの涙が伝う頬に添えられる。


ノハ;⊿;)「モララー、泣かないで……笑って。私は君の笑顔が……好きだ」

( ;ー;)「……っ、こうかな……?」

ノハ^ー^)「……うん、それだ……はは」


 涙と血で濡れる顔で、最期の力を振り絞り精一杯の笑顔を作る。
 必死に話し続けてきたヒートだが……限界が、近付いてきた。
 段々、意識が遠くなっていく。

 でも、最期に本当のモララーの笑顔を見れたから――


ノハ ー )「モラ……ラー………」








「――ありがとう」


.

6715話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:32:12 ID:o/sMbQ2Y0





ノハ ー )




「………ヒート?」


「おい……ヒート、ヒート…目を覚ましてよ。目を開けてくれよ…!」



「………ッッッぐう……!!!」





「ヒートオオオオオオオオ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オオォォッ!!!!!!!!」




.

6815話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:37:42 ID:o/sMbQ2Y0





          【 第15話 〜摘まれた紅い花〜 】 終




.

6915話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:38:05 ID:o/sMbQ2Y0

 
==========

 【 次回予告 】


( ´_ゝ`)「まさか、本当に来るとはな……」

( ´∀`)「はは、物好きもいるもんだねぇ。面白いモナ」

从 ゚∀从「ふっ、確かに面白いな……お前達が共に行動をしているなんてな」

从 ゚∀从「カテゴリーK…各スート最強であるはずのお前達が共に行動をしなきゃならない程、仮面ライダーが怖いのか?」

( ´∀`)「怖い??僕に怖いものなんか無いモナ。強いて言うなら……君みたいな野蛮な戦馬鹿、かな??」

从#゚∀从「貴様……!」


 人間界に潜んでいる上級アンデッドが一同に会す。
 敵同士でもあるはずのアンデッド達、一体何を企もうとしているのか?

.

7015話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:38:44 ID:o/sMbQ2Y0


( <::V::>)『ッ……この鱗粉……』

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ!!さぁおいでよ、アタシのかわいいモス……!」

( <::V::>)『……お前、何故だ!?』

『………』
 
(*゚∀゚)「何故って?最初からアタシのかわいいモス、だけど??」

( <::V::>)『ふざけるな!貴様がコイツを襲ったカテゴリーQだという事くらい分かる』

(*゚∀゚)「ありゃ……バレてたかぁ」

( <::V::>)『貴様……脅したな。あの子をだしに使って…!』


 カテゴリーQと呼ばれる女が、とうとうモスを利用しカリスに襲い掛かった。
 このままカリスとモスは戦うしかないのか!?

7115話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:39:14 ID:o/sMbQ2Y0


( ^ω^)「モララーさん、自分の手で府坂を倒すって言ってた。
       自分の命を失ってでも、一人で倒すって……」
 _
( ゚∀゚)「………嘘だろどうせ、また嘘に決まってる!」

( ^ω^)「モララーさん、自分のやってきた事を凄く後悔してた。
       謝っても許されない事をしてきた、って…僕やツン達にも謝りたいって。
       そのケジメとして、一人で府坂を倒すって……」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな……一番悲しいのは……」

( ^ω^)「モララーさん、死ぬ気だお……」

( ^ω^)「駄目だお、そんなの…モララーさんを一人で死なせるなんて…!」

.

7215話 ◆7MnOV.oq7w:2017/10/29(日) 19:41:19 ID:o/sMbQ2Y0


( ・∀・)「………」

ミ,,゚王゚彡『………』


 そして、遂にモララーと府坂が対峙する。


( #・∀・)「府坂……貴様だけは……!」

( #・∀・)「貴様だけは俺の手で倒す!!」

ミ,,#゚王゚彡『貴様如きに俺がやられるかアァァ!!!』

o( #・∀・)「――変身ッ!!」


    【 -♦TURN UP- 】


( #・∀・)「行くぞ、府坂!!!」


 ヒートの仇を討つべく、府坂に勝負を挑むモララー。
 
 府坂に…そして、過去の自分に決着を着ける事は出来るのか!?



 次回、【 第16話 〜ダイヤの覚醒〜 】


 ――今、その力が全開する!

==========

.

73名無しさん:2017/10/29(日) 19:48:05 ID:qfjrJUvk0

ここでヒート死んじまうのか……

74名無しさん:2017/10/29(日) 19:51:46 ID:.ZZ.qnqg0
>>57
ここVIPじゃないぞ?混同してない?

75名無しさん:2017/10/29(日) 22:23:06 ID:2GiO0SvY0
来てた!乙
ヒートがかわいそすぎて泣ける

76名無しさん:2017/11/02(木) 15:44:46 ID:T4QlReJY0
クーは結局何者なんや

77名無しさん:2017/11/02(木) 19:18:08 ID:vdYPai2c0
知ってるけどニヤニヤして待機しとく

78名無しさん:2017/11/02(木) 20:01:33 ID:2bpgSKPI0
今ちょうど原作がYouTubeで公式配信されてるよね

79名無しさん:2017/11/02(木) 20:09:57 ID:HTbg/tYw0
うおマジだ知らなかった

80名無しさん:2017/11/05(日) 02:20:30 ID:wVr6tUlk0
今週はお休みか…

81名無しさん:2017/11/05(日) 02:26:36 ID:cGcEHFh.0
いつも第一ラウンドが始まってからじゃない?

82名無しさん:2017/11/05(日) 05:50:27 ID:8UfA8kVI0
第1ラウンドが今日はお休みだからな…
やらないかもしれない(偏見)

83 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 08:55:47 ID:9rIP2F5M0
今日は本家がお休みなので第1ラウンドを務めさせていただきます

8416話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 08:56:15 ID:9rIP2F5M0





          【 第16話 〜ダイヤの覚醒〜 】




.

8516話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 08:57:49 ID:9rIP2F5M0


 ――夜が更けた頃、とある広場に数人の人が集まっていた。

 一人は眼鏡を掛けた青年。
 一人は今時のちゃらちゃらした少年。
 一人は一見怖そうな女性。

 深夜に集まるにしては、皆が皆つるむ事のなさそうな者同士だ。
 
 最初に口を開いたのは、眼鏡を掛けた青年。


( ´_ゝ`)「まさか、本当に来るとはな……」

( ´∀`)「はは、物好きもいるもんだねぇ。面白いモナ」

从 ゚∀从「ふっ、確かに面白いな……お前達が共に行動をしているなんてな」


 一瞬にして、殺伐とした重苦しい空気が辺りに漂う。
 だが、誰一人として顔色を変える事はない。


从 ゚∀从「カテゴリーK…各スートの最強であるはずのお前達が共に行動をしなきゃならない程、仮面ライダーが怖いのか?」

( ´∀`)「怖い??僕に怖いものなんか無いモナ。強いて言うなら……君みたいな野蛮な戦バカ、かな??」

从#゚∀从「貴様……!」


 女が、少年の顔面に向かい拳を突き出した。  
 だが、その拳は少年の顔面どころか――近付く事も出来ていない。

 少年を守るようにして、女が突き出した拳には一枚の盾が発生している。

8616話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 08:59:04 ID:9rIP2F5M0


( ´∀`)「はいはいごめんなさい。あんたもこうなるの分かってるでしょ?止めたら?
      僕にはそう簡単に攻撃を当てられない。知ってるでしょ?」

从#゚∀从「ああ…だがどうかな?本気でやってやろうか!?」

( ´_ゝ`)「やめとけ。カテゴリーQの中でも最強……そのプライドが高いのはお前の悪い所だ」
 
从#゚∀从「何だと…!?」


「何の騒ぎだ、くだらない」


 ヒートアップしそうなその場所に、全身黒ずくめの男が現れた。
 他にも、派手な格好をした若い女。スーツを着た男や、肌を露出した妖艶な女性も。


( ´_ゝ`)「ほう、お前も来たのか」

ミ,,▼Д▼彡「俺はお前達のように暇じゃない、手短にしろ」

('、`*川「手短ねぇ……あんたのやってる事、もうお見通しよ?」

( ゚д゚ )「カテゴリーAを物にして、新しくライダーを作る…なんて事をしてるそうですね」
 
ミ,,▼Д▼彡「そうだ。俺の作ったライダーで、お前達を全員封印する為にな」


 少年が、堂々とした出で立ちの府坂の前に立ちはだかる。
 身長差のある二人。背の高い府坂をそばで見上げている。


( ´∀`)「面白そうじゃん。でも……それ本当に僕の事も封印出来るの??」

ミ,,▼Д▼彡「ああ。楽しみにしていてくれ」

( ´∀`)

ミ,,▼Д▼彡「………」

8716話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 08:59:56 ID:9rIP2F5M0


 どうやらこの集会は人間ではなく……上級アンデッド達による集会のようだ。
 皆、己の本当の姿を隠し人間に擬態している。


从 ゚∀从「ふん、くだらない…自分の力で戦う事の出来ない腰抜けが。戦士としての自覚は無いのか」

ミ,,▼Д▼彡「お前のように古い考えを持つ奴は、真っ先にやられるぞ」

从 ゚∀从「上等だ、やれるものならやってみろ!掛かってくる奴は全員この力で叩き潰すだけだ」


 怖そうな女性は、一足先に広場を後にする。
 それに続いて、府坂も立ち去ろうとした時だった。


(*゚∀゚)「……ねぇねぇアンタさぁ、操ってる人間の女殺したんだって〜?」

ミ,,▼Д▼彡「………」


 派手な格好をした女が、横切る府坂に絡み始めた。

 この集会で一際注目を浴びている府坂。
 それもそのはず、今のところ目立った動きをしているのは府坂のみ。
 その他の上級アンデッドは、府坂の情報を随時入手していた。


(*゚∀゚)「あんた頭良いと思ったけど、そうでもないんだね〜?」

ミ,,▼Д▼彡「…何が言いたい?」

(*゚∀゚)「アヒャヒャ、聞きたい聞きたい??じゃあ教えてあげる!」
 


(*゚∀゚)「―――あんた、終わったね」

.

8816話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:01:19 ID:9rIP2F5M0


 突如、ふざけるように話していた女の口調が変わった。
 緩み切った表情も締まり、冷酷さすら伺える。


(*゚∀゚)「あんたの欠点はね…人間を甘く見過ぎてる所だよ」

ミ,,▼Д▼彡「……奴等は下等生物だ。アンデッドに及ぶ存在じゃない」

(*゚∀゚)「ぷっ……アヒャヒャ、あんたこそ考え古いんじゃな〜〜い?
     古い考えを持つ奴は真っ先にやられる……じゃなかった??」

ミ,,▼Д▼彡「貴様……」

(*゚∀゚)「こわっ!あー怖い、あまり怒らせたらやられちゃうから退散すっかな〜。ま、せいぜい頑張って〜」


 あまりにも舐め切った態度だが、府坂を恐れていない様子も感じ取れる。
 先程の怖そうな女に続いて、若い女もその場から立ち去った。
 女の発言に気分を害したのか、府坂も何も言わず迎えの車に乗り、アジトへと戻って行った。


( ´_ゝ`)「だから言ったんだ、労力の無駄だと…」

( ´∀`)「そう?なんか面白かったけど」

( ゚д゚ )「どうやら、来てない方も多いみたいですね」

( ´_ゝ`)「これだけ揃えば十分だろう、後の奴等はクセが強過ぎる。特に……俺と同じカテゴリーKの、あの女…」


 上級アンデッドの集会だが、全員揃い踏みという訳ではない。
 未だ姿を現さない者もいれば…何処かでひっそりと己の企みの為に動いている者もいるだろう。
 少年の気まぐれで開かれたこの集会は、何の意味もないようにも見える。

 が、実際は皆が皆、お互いの腹の探り合いだ。
 アンデッド同士、手を取り合う者などいない。全員が敵のバトルロワイヤルだ。
 この集会はただの情報共有に終わったが……それぞれがそれぞれの目的にの為に、再び動き出すきっかけとなった。


.

8916話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:01:46 ID:9rIP2F5M0

  



 ――――― 




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9016話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:02:25 ID:9rIP2F5M0


 ――ブーンの家。


 あれからブーンが駆けつけた時には、既にカテゴリーAはいなくなっていた。ギャレンが封印したからだ。

 ドクオは近場に身を潜めていて、幸い何一つケガをしていなかった。
 駆けつけたブーンと合流し、この日は一度互いの家に戻った。


 そして翌日、ブーンはドクオを家に呼び出し詳細を話す事に。


( ^ω^)「もう一人の仮面ライダーが封印したから、もう襲われる事はないお」

('A`)「そうか……ならよかった……はー!まったく生きた心地がしない日々だった……!」


 ここ最近、急にアンデッドに遭遇する事が多くなったドクオ。
 この状況を憂いていて、外出をするのも気が重かったくらいだ。
 そんな圧迫した状況から抜け出せた事を知り、心の底から安堵する。


( ^ω^)「それにしても…カテゴリーAをあんなに求めて、府坂は何が狙いなんだ?」


 カテゴリーA封印に向かっていたモララーへの追跡を、府坂が直々に妨害する程だ。
 何かを成し遂げたい、余程の何かがあると踏んでいた。 

 その言葉にいち早く反応したのはツン。
 カテゴリーAを封印し欲しがる、その理由に心当たりがあった。

9116話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:03:30 ID:9rIP2F5M0


ξ゚⊿゚)ξ「ライダーは、各スートのカテゴリーAの力を用いて変身するもの。
      あなたのブレイドもそうだし、モララーさんのギャレンも…クーさんのカリスだってそうよ」
 _
( ゚∀゚)「……それって、もしかして!」

ξ゚⊿゚)ξ「そう……府坂が、♣のカテゴリーAを用いた新しいライダーを開発してるかもしれない…」

( ^ω^)「新しい、ライダー……」

ξ゚⊿゚)ξ「だけど、ライダーシステムの開発資料やデータは全部BOARDの厳密な管理下…。
       アンデッドが独自で開発出来るものなんかじゃないわ」


 今は亡きBOARDが開発したライダーシステム。
 その情報も製造技術も、全てはBOARDのみが保有しているもの。
 ライダーシステムを作れる可能性があるとすれば…そのBOARDの誰かが関与している。としか考えようがない。

 _
( ゚∀゚)「もしかして…誰かが協力してるのか?」

( ^ω^)「何の為にそんな事を…府坂が作るライダーなんてどうせろくな事にならないお!」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね……誰かしら」

ξ゚⊿゚)ξ「……姉さんじゃなければいいけど」


 組んだ腕を解き、口元に指を添え小さく囁く。
 小声で囁いたつもりだったが、隣に座っていたブーンには聞こえてしまったようだ。


( ^ω^)「お姉さん?」

ξ゚⊿゚)ξ「あ…そっか、話してなかったね。私、BOARDの同じ研究員として働いてた姉がいるの」

9216話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:04:06 ID:9rIP2F5M0


( ^ω^)「へえ、姉妹で同じ研究員って何かすごいお」

ξ ⊿ )ξ「でも、襲撃を受けてから連絡取れないの。今はどうなってるか、分からなくて……」


 ツンには年が少し離れた姉が居た。
 姉は先にBOARDの研究員となり、ライダーシステム開発にも携わっていた程だ。
 だが襲撃を受けBOARDが壊滅した後、姉とは音信不通。生きているかも分からない。
 その時に亡くなっている可能性も十分に有り得る話で。


( ^ω^)「そう、なのかお…」

('A`)「大丈夫だって!」

ξ゚⊿゚)ξ「え……?」


 落ち込むツンにドクオが声を掛ける。
 話の9割は理解していないはずだが、ツンが落ち込む様子を見ていたのか、すかさず席を立ち隣へと移動してきた。


('A`)「お姉さん、生きてるって。実の妹のツンさんが信じてあげないで誰が信じるんだ?」

ξ゚⊿゚)ξ「……うん、そう…だよね」


 軽いノリと言ってしまえばとても印象が悪くなってしまうが、ドクオの言動からはそれが感じられる。
 そんなドクオの気さくさに、少なくともツンはどこか救われる部分があった。


d('A`)「そうそう、だから落ち込むのはやめてさ。一緒にどこか飯でも行かない?」
 _
( -∀-) =3 「はぁ……お前ただツンと飯行きたいだけだろ?」

('∀`)「んーそうとも言う割合が半々かな〜」
 _
( ゚∀゚)「いやマックスだろ!隙間なくマックスだろ」

9316話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:05:25 ID:9rIP2F5M0


( ^ω^)「モララーさんがカテゴリーAを封印して……今頃、府坂の手に渡ってるのかお」

ξ゚⊿゚)ξ「府坂に命じられて動いてたのなら、そうかもしれないわね」

( ^ω^)「まずいお……そんな事になったら、ますます府坂の身が固まる事に……」


 ただでさえ上級アンデッドであるが故の力を持つ府坂。
 そこに、ギャレンと新しいライダーの力が加わってしまえば…最強にして最悪の敵になり得る。
 頭を抱え、危惧すべき状況がすぐそこまで迫っている事に不安を覚える。


ξ゚⊿゚)ξ「……ヒートさん、あんなにモララーさんの事気に掛けてるのに」
 _
( ゚∀゚)「もうやめろよ、あの人の話は。あの人は裏切ったんだ!それ以上も以下もねぇ」
 _
( ゚∀゚)「本当、ヒートさんが可哀想だよ…」

( ^ω^)「………」

('A`)「……えーと、今は静かにしたほうがよさそうだな」


 静まり返る空気に、事情を知らないドクオも飲み込まれてしまう。
 
 その静寂はすぐに破られる事になる。
 静まったリビングに、アンデッドサーチャーの反応がやかましく鳴り響いた。


Σ(;'A`)「うわっ!?なんだ!?」

9416話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:06:26 ID:9rIP2F5M0


ξ゚⊿゚)ξ「アンデッドよ!」


 ドクオを除いた三人が音に素早く反応し、一斉にPCの前へと群がる。
 ツンがサーチャーの反応を確認する為、反応結果を確認すると……


ξ゚⊿゚)ξ「ギャレンだわ、モララーさんが戦ってる!」


 サーチャーは、アンデッドと戦っているギャレンの反応をキャッチしている。
 だが、そのアンデッドの反応を見たツンは、戸惑いを見せ始めた。


ξ゚⊿゚)ξ「このアンデッドの反応……府坂だわ、それ以外の反応はない…」
 _
( ゚∀゚)「どういう事だ?……まさか!」

ξ゚⊿゚)ξ「モララーさんが戦ってるのって、もしかして…」

( ^ω^)「府坂…!?」


 三人の予想は一致した。
 サーチャーでの反応上、そうとしか断定が出来ない。
 

( ^ω^)「ちょっと行ってくるお!」

('A`)「えっ?お、おい!」


 自然と身体が動いていた。
 府坂と結託したはずのモララーが、その府坂と戦っている…"もしかして"の可能性に賭けたかったのかもしれない。 
 ツン達の返事を待たずに、モララーのもとへ向かう為ブーンは急いで家を出た。


.

9516話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:06:46 ID:9rIP2F5M0




 ―――――



.

9616話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:07:25 ID:9rIP2F5M0


 ――サーチャーの反応がある少し前に遡る。

 
 見慣れた街並みを颯爽と走る紅いバイク、レッドランバス。
 それに乗っているのは、もちろんモララーしかいない。

 だが、普段のモララーとは様子が違った。


 黒色の上下に、黒のネクタイ……。
 モララーは、喪服を着ながらレッドランバスを走らせていた。


 向かう先は、ただ一つ。







( ・∀・)「………」


 目的地に到着し、脱いだヘルメットをハンドルに掛ける。
 夏を終え、秋を迎えた冷たい風がモララーの髪を撫でた。

 レッドランバスから降りると、目の前に建つ建造物を見上げる。


 見上げながらモララーの頭に浮かぶのは――愛しき彼女の最期。

9716話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:08:18 ID:9rIP2F5M0




  ――――――――――


  ノハ;゚⊿゚)「これ…覚えてる、かな…君が、くれたお守りだ。……ずっと、持ち歩いてた……」

  ( ;∀;)「……っ何で、まだ持ってるんだよ…」

  ノハ;゚⊿゚)「はは…やっぱり、笑う…?でも……凄く、嬉しかったんだ……私」

  ノハ;ー;)「君と……もっと、いろんな思い出欲しかった、けど…ッ、これ見ると……君をたくさん、思い出させてくれる…」


  ――――――――――


.

9816話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:08:50 ID:9rIP2F5M0




  ――――――――――

  ノハ;⊿;)「モララー、泣かないで……笑って。私は君の笑顔が……好きだ」

  ( ;ー;)「……っ、こうかな……?」

  ノハ^ー^)「……うん、それだ……はは」

  ノハ ー )「モラ……ラー……」

  ノハ ー )「――ありがとう」

  ( ;∀;)「ヒートオオオオオオオオ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オオォォッ!!!!!!!!」

  ――――――――――



.

9916話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:13:14 ID:9rIP2F5M0


(  ∀ )「…………」


 俯き、零れそうになる涙をぐっと堪える。


 歯が砕けそうになる程噛み締め、血が滲みそうな程握り締める拳は――


(  ∀ )「ヒート………俺は、本当に愚かだ」

(  ∀ )「全部、俺の所為だ……俺の所為で、無関係だったはずの君を……。
       本当に情けないよ……消えてしまいたいよ」


 最愛の人を失ってしまった悲しみと―― 


(  ∀ )「でも………」

(  ∀ )「そんな情けない俺に……力を、貸してくれるかな?」


 ――天地を揺るがしてしまいそうな、激しい怒りを現していた。
 
 俯いていた顔を上げ、拳に握ったヒートの赤いお守りを見つめる。


(  ∀ )「せめて…君が安心して天に逝けるように……ッ!」




( #・∀・)「俺は府坂に……自分自身に打ち勝つ…!!」


.

10016話 ◆7MnOV.oq7w:2017/11/05(日) 09:14:16 ID:9rIP2F5M0


 一点の曇りもない、真っ直ぐな目。
 モララーは、単身府坂のアジトの中へと入って行く。

 不気味な暗さを秘める室内。
 コツ、コツ…と足音だけが静かな廊下に反響する。
 いつものように府坂の居る部屋の扉を開けると…其処に、影は居た。


ミ,,▼Д▼彡「……来たか、菱谷」

( ・∀・)「………」

ミ,,▼Д▼彡「昨日はよくやった。カテゴリーAを見事封印し、お前の力は証明された。
         お前は、間違いなく最強の仮面ライダーだ」

ミ,,▼Д▼彡「さぁ、カテゴリーAを渡せ」


 モララーに向かい手を差し出す府坂。
 だが、モララーは口を開くことも、微動だにする事もない。


ミ,,▼Д▼彡「どうした?早くカテゴリーAを――」

( ・∀・)「ヒートを殺したのは……お前だな」


 口を開いた最初の言葉に、府坂の顔色が変わった。
 それまでと違う雰囲気、目付きをしたモララーに、府坂なりの違和感を覚える。


ミ,,▼Д▼彡「ふっ………そんな事か」

ミ,,▼Д▼彡「お前が強くなる事を止めようとしただろう。あの女はお前にとって邪魔な――」


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