■掲示板に戻る■ ■過去ログ 倉庫一覧■
(,,゚Д゚)怪談・電車待駅語のようです
-
.,、 .,、 .,、 .,、 .,、
(i,) (i,) (i,) (i,) (i,)
|_| |_| |_| |_| |_|
.
-
音がする。
( ―∀―)
がたんごとん、という聞き慣れた音。
電車が、通り過ぎる音。
閉じたまぶたの裏は暗闇。
その隙間から光が入ってこないことから察するに、今は夜なのだろう。
鼻に入る空気は、木の臭い。
古い、木の臭いだ。
( ・∀・)
目を開ける。
( ・∀・)
気がつけば、駅のホームに立っていた。
木造の屋根が付いた、古いホーム。
見覚えがない。
-
( ・∀・)(ボクは……)
何をしていたのだったか、と、彼――モララーは考えた。
ここに来るまでの記憶は、どうにも曖昧ではっきりとしない。
一つはっきりと確かな事は、自分はここで電車を待っているということ。
それだけだった。
当たり前である、ここは駅なのだから。
( ・∀・)(で、さっき電車が走ってく音がしたってことは)
どうも自分は乗り過ごしたらしい、と彼は察して、ため息をついた。
またやってしまった。
(;―∀―)< また、つーちゃんに怒られちゃうな……
小さくごちて、モララーは近くにあったベンチに腰掛けた。
隣の席には猫が一匹。
(,,゚Д゚)
珍しい猫だ、毛並みが青い。
( ・∀・)< キミも、電車を待っているのかな?
聞かれて猫は小首を傾げる。
何かの本で読んだことがある、この仕草は猫にとっての挨拶みたいなのものなのだとか。
猫はぐぐぐ、と伸びをすると、モララーの方に向き直った。
( ・∀・)< なーんてね、答えられるわけないよね、はは……
小さな声で、笑うモララー。
猫は手を軽くしゃぶると、再び彼の方に向き直った。
(,,゚Д゚)< いえ、電車はめったに使いません。何分わたしはヒトではなく、ネコですので
( ・∀・)
珍しい猫だ。
喋った。
-
(,,゚Д゚)怪談・電車待猫語のようです
.
-
(,,゚Д゚)< あなたは電車を使うのですか?
(;・∀・)< へ? え? ああ、うん
(,,゚Д゚)< あれは、不思議なものですね。中に入ると戸が閉まり、
次に戸が開いたときにはまったく別の場所に居る。
ネコのわたしとしては、あんな不思議なものを毎日のように使うあなたがたの気が知れません
(;・∀・)< は、はぁ……
饒舌な猫にたじろぐモララー。
猫は特に気にとめる様子もなく、柱に貼られた時刻表に目をやった。
(゚Д゚,,)< 次の電車までは、いくぶん時間があるようですよ
(;・∀・)< え、うん。……え?
言われてモララーも、柱に目をやる。
それは、妙な時刻表だった。
なにが妙かというと、書いてある文字がことごとく読めない。
文字そのものは日本語のようだが、それを読もうとするとなんだか頭がぼんやりとして意味を捕らえられないのだ。
-
(;・∀・)(な、なにこれ、どういう……)
見覚えのない駅、喋る猫、読めない時刻表。
いや、そもそも自分は何故ここに来て、どこに行くつもりだったのか。
連続する異常な事態にようやく混乱しはじめた彼に、猫は言った。
(,,゚Д゚)< 読めないのですか?
(;・∀・)< え、ああ、うん
戸惑いながら答えると、猫はちょっと言葉で表現しづらい顔をした。
それは、ほっとしたような、或いはただ呆れているだけのようなあやふやな表情。
その表情を見て、なぜかモララーはこう感じた。
(;・∀・)(”笑ってる”……の、かな?)
(,,゚Д゚)< それは、”まだ時間がある”証拠でしょうね
( ・∀・)< ? ……それって、どういう……?
(,,゚Д゚)< 次の電車が来るまで、です。ヒトの時間にするなら、1時間そこそこでしょう。
それまで何か暇つぶしのご用意などありますか?
( ・∀・)<え、あ、いや、特には……
ぴょこん、と猫はしっぽを曲げた。
それは鉤型で――そう、人間的に表現するなら「?」マークのような。
(,,゚Д゚)< それでは、何かお話でもしましょうか
-
( ・∀・)< 話……?
(,,゚Д゚)< ただの暇つぶしの与太話ですよ。もっともネコのわたしの話など、
ヒトのあなたにとって面白いかはわかりませんが
言われてモララーは考える。
今、自分は訳の分からない状況におかれている。
何を隠そう目の前の猫もそういった『訳の分からないもの』の一つだ。
正直、ただ話をするだけというのも疑うべきなような気がする。
( ・∀・)(でも……)
だが、なぜだろう、この何もかもがわけの分からないこの状況下の中、
彼はこの猫の事だけは”知っている”気がしたのだ。
(,,゚Д゚)
( ・∀・)(なんだろう、前にどこかであったかな……?)
喋る、青い猫なんかに会えば、普通は忘れないよな、と彼は考える。
しかし、その”普通”もこの状況下ではどれだけ通用するか分からない。
なにしろ自分は、ここに来るまでの記憶もかなり曖昧なのだから。
ただひとつ覚えているのは――
【(*゚∀゚)アヒャ】
( ・∀・)(つーちゃん……)
――つー、彼の大事な妻の事。
ここにくる直前まで彼女と一緒にいたことは覚えている。
一体、自分たちに何があったのか。
思い出そうとして、そして――
(; ∀ ) ……っ……!!
――頭痛。
-
(,,゚Д゚)< ……どうかしましたか?
見れば、猫が首を傾げてこちらを見ている。
モララーは痛む頭を押さえ、少し考えた後、答えた。
(;・∀・)< 大丈夫、なんでもないよ。そうだな……お願いしようかな、話
自分たちに、つーに何があったのか、今は思い出せない。
だからどちらにせよ、今の自分にできることは何もない。
ただ、この猫と話しているうちに何かを思い出せるかもしれない。
なぜか、そんな気がしたのだ。
(,,゚Д゚)< では、僭越ながら
言って猫は、ふとモララーの背中の方向に目を向けた。
(・∀・ ) ?
釣られて振り返ると、猫の視線の先には暗闇に閉ざされた線路があった。
その向こうから、がたんごとんと音を立てて、明かりを灯した何かが走ってきているようだった。
(・∀・ )(電車?)
(・∀・ )
(・∀・;)<……えっ!?
-
結論から言うなら、それは電車ではなかった。
それは赤錆にまみれていて、土砂を満載した金属製の貨車。
(・∀・;)(トロッコ……?)
牽引車の姿も無く、動力も無いであろうそれが、土砂を満載して、
その土の山の頂点に皿に乗ったロウソクを称え走っている。
それはモララーと猫の前まで来ると動きを止めた。
(・∀・;) ……
(・∀・ )
(・∀・ )(あれ?)
またしても起きた理解不能の現象に対する動揺から一転、違和感。
(・∀・ )(この光景……知ってる、ような)
いつか、昔これと似た風景を見た気がする。
それがいつだったのかは、やはり思い出せないが。
(,,゚Д゚)< さて、それではせっかく電車の乗り場にいるのですから、まずは『別の場所』の話でもしましょうか
( ・∀・)< 別の場所?
(,,-Д-)< ええ、そうです。これは、『別の場所』の話――
-
とても遠いけれど、じつはすぐ傍に在る
.,、
(i,)
|_|
そんな場所の話です。
.
-
―――――
―――
―
エンジンの音。
愛車のフロントガラス越しに見えるのは、見慣れた田舎町。
(*^ω^)< おっお〜♪
その日、内藤ホライゾンは盆休みを利用して祖母の家を訪れるため、車を走らせていた。
(*^ω^)< ばーちゃん、元気かおー
小さいころから、ホライゾンは祖母のことが大好きだった。
工業高校を卒業後、大手自動車製造会社の下請けの工場に就職してからは、
忙しくてなかなか会う時間が作れないが、
年に一度、お盆の休みには必ず祖母の家を訪れることにしている。
(*^ω^)< 着いたら昼ごはんだおーん
久々に会う祖母と、昼食に心躍らせながらホライゾンはハンドルを切る。
(*^ω^)< おっお〜
( ^ω^)< お……おー?
ふと、ホライゾンはフロントガラス越しに辺りを見回した。
( ^ω^)< なんか今日、車少なくないかお?
対向車線にも、自分の後ろにも見渡す限り車は一台も無かった。
-
______
|「 ̄ ̄ ̄ `||`l
1本目『別の場所』
|L二二二ニ!| ;|
| ̄ ̄| ̄ ̄|~::|
|__|__|/
.
-
田舎町とはいえ、ここは国道。
かつ、今はお盆である。
いかに墓参りの風習が薄れている昨今とは言え、帰省する車の一台や二台通ってもよさそうなものなのに、
( ^ω^)< おーん……?
違和感。
ホライゾンは首を傾げた。
(*^ω^)< ま、そういう時間帯なんだお、きっと。
そんなことよりごはんだお〜♪
***
木造二階建ての古い家。
ここが祖母の家だ。
庭の片隅に車を停めたホライゾンは、玄関口に声をかけた。
(*^ω^)<< ばーちゃん、僕だお、ホライゾンだおー! 遊びに来たおー!!
張り上げた大声。
それこそ子どものころに帰ったように。
しかし、
( ^ω^)
(;^ω^)ヽ< おー……?
返答は無音。
-
がらがら、と横開きの扉を開け、中に入る。
土間の先に木製の廊下。
相変わらず掃除は行き届いている。
几帳面な性格の祖母らしい、とそんなことを思いながらホライゾンは再び口を開く。
( ^ω^)< ばーちゃーん、ばーちゃん、いないのかおー?
(;^ω^)ヽ(もしかして今日来るって忘れちゃったとか? いや、ばーちゃんに限ってそんなことは……)
がらがら、と客間の戸を開ける。
(*^ω^)< お!!
来客用の長机が置かれた、畳の間。
長机の上には、夢にまで見た祖母の昼食が置かれていた。
(*^ω^)(やっぱりちゃんと覚えててくれてたお!)
座布団に腰を下ろし、目の前の昼食を見つめる。
作りたてなのだろう、湯気のたつそれらは見るからにおいしそうだ。
(*^ω^)< ばーちゃん、早く帰ってこないかおー
炊き上がった白い、つややかな白米。
芋の煮っ転がしから、どこか懐かしい和食独特の甘辛い香りが漂う。
今すぐ食べてくださいと言わんばかりの食卓。
見たところ昼食は作り立てだし、冷房もついたままだ。
祖母もそう遠くには行っていないだろう。
時間が気になったホライゾンは、壁の柱時計に目をやる。
針は12時半を指していた。
-
( ´ω`)< おーん……
それからしばらく時間が経った。
ぐぅと腹がなる。
祖母は未だ帰ってこない。
( ´ω`)< ばーちゃん、まだかお……?
さすがに違和感を覚えた。
時間に正確なはずの祖母が、ここまで時間に遅れることがあるだろうか?
( ^ω^)(まさか、ばーちゃんの身に何か……?)
近年の情報化の影響、というわけでもないが、祖母はケータイ電話を持っている。
心配になったホライゾンはポケットから自分のケータイを取り出すと、祖母の番号を呼び出した。
( ^ω^)】(お……?)
発信後、すぐに応答。
しかし、返ってきたのは暖かい祖母の声ではなく、無機質な自動音声だった。
(;^ω^)(圏外……?)
つロ
-
画面を見れば、たしかに本来アンテナマークがあるはずの場所には「圏外」の二文字。
おかしい。
自分は毎年ここに来ているが、こんなこと今まで一度もない。
(;^ω^)(それに、なんか……)
つロ
――違和感。
その正体には、すぐに気づいた。
(;^ω^)(お……?)
つロ
違和感の正体は「圏外」の文字の、すぐ隣。
四文字のアラビア数字で表示されている。
それは現在時刻。
[12:30]
(;^ω^)(おっ、でもさっき確認したときも……)
つロ
慌てて柱時計に目をやると、針は――
(; ω )(12時……半……?)
つロ
先ほど時計を見てから、体感時間で30分は経過している。
いくら空腹で祖母の帰宅を待ち遠しい状況だとはいえ、
一分も時間が経っていないというのはおかしい。
――時計がとまっているのか?
-
(; ω )(……いや)
違う。
そうホライゾンは確信する。
理由は二つ。
第一に二つの時計が偶然、しかも同じ時刻で止まるなどということはなかなかない。
そして、第二に目の前の光景、それが根本的におかしい。
(;^ω^)(いくらなんでも、こんなに時間が経っているのに……)
目の前にあるのは、白い湯気をたてる、昼食。
室内に入ったときから、冷房はつきっぱなしになっていたのに、である。
何かがおかしい。
(;^ω^)(……)
途端に、見慣れた部屋が、子どものころから何度も訪れた祖母の家が、
なんだかひどく不気味な”別の場所”のように思えてきた。
先ほどまであれほど美味しそうに見えていた昼食でさえ、
今は食べ物ではなく正体不明の異物のように見える。
祖母の帰りを待ちきれずに、口に運んでしまっていたらと思うとぞっとするほどだ。
(;^ω^) ……。
(;-ω-)
(;^ω^)< かっ……
(;^ω^)< ……考えすぎだお!
-
自分に言い聞かせるように張り上げた声。
わざと明るくしたそれは、しかし動揺にうわずってしまっている。
それが部屋に反響して、いやに大きく聞こえる。
(;^ω^)< 時計もきっと、たまたま狂っちゃっただけだお
ねっとりとした、嫌な汗が背中を伝う。
仮にも機械を扱う仕事をしているのだから、
経験上機械が、自分には理解不能で不可解な挙動をとる場合もあることは知っている。
ただ、この状況は果たしてそうなのか?
機械が妙な挙動をするのには、必ず合理的な理由がある。
この状況にはたして”それ”はあるのだろうか?
(;^ω^)< そうだお、ばーちゃん、きっと隣のおばさんちに言って、そこで長話でもしてるんだお!
頭をふって脳裏に浮かんだ考えを消し、ホライゾンはわざと元気な口調でそう言うと、玄関口へ向かう。
(;^ω^)< ばーちゃんってば、しょうがないおー! 迎えに行くお!!
どんっどんっ、と足で廊下を踏み鳴らしながら歩く。
その音さえ今のホライゾンの耳には、聞き覚えのない、ひどく不気味な音のように聞こえる。
(;^ω^) ……。
玄関を開け、太陽の下に出てもなおその感覚は消えない。
浴びなれたはずの太陽の光。
吸いなれたはずの夏の空気。
それらすべてになんだか違和感がある。
(;^ω^)(そういえば……)
なぜ気づかなかったのか。
今は夏で、お盆の真ん中で、そのはずなのに。
なのに、夏ならばあって然るべきものがない。
いや、自宅を出るときまでそれはあったはずだ。
だから厳密には”無くなって”いる。
(;^ω^)(蝉の声……)
いつもは鬱陶しいほどの、蝉の鳴き声。
それが無くなったその場所は、ひどく静まり返っていた。
***
-
(;n^ω^)n< お、おばさーん! ホライゾンですおー!
隣家の戸口から、家の中に向けて声をかける。
この辺りではチャイムを鳴らさず、こうやって戸口から声をかけるのが当たり前だ。
したがって、戸は常時開いている。
(;^ω^)< おばさーん……いないのかおー?
おそるおそる、戸を開ける。
がらがら、という音がいやに大きく響く。
(;^ω^)(お……?)
物音がする。
薄暗い廊下の、その奥から。
人が話しているような、音。
(;^ω^)< ……あがるおー?
さすがに勝手にあがるのは失礼かもしれないが、
この際、人に会えるのであればなりふり構ってはいられない。
(;^ω^) ……。
薄暗い廊下を進み、音がする方へ。
おばさんの家には子どものころよく上がらせてもらっていた。
よって家の構造などもよく覚えている。
(;^ω^)(リビングのほうからかお?)
音が、近くなっていく。
-
(;^ω^)< おばさん……?
部屋の中を覗き込み、そして
( ^ω^)(誰もいない……?)
カーペットの敷かれたリビングには人の姿はない。
では、音の発生源は?
( ^ω^)< お
部屋の端に、昔懐かしい箱型のテレビがある。
電源のつけっぱなしになっているそれが、音の発生源のようだった。
(;^ω^)=3(ここにも人はいない、かお)
しかし、テレビをつけっぱなしでいるということは、
もしかすると別の部屋にいるかもしれない、とりあえずここから移動しよう。
そう思いながら、ホライゾンは何気なくテレビの画面を見て、そして――
( ^ω^)
(;^ω^)
――固まった。
-
(; ω )(なん……だお、これ……?)
音を発生させているテレビ。
その画面に映っているのは、恐らく主婦が好きなお昼の国営放送のテレビ番組だ。
恐らく、というのはその番組内容があまりに異常だったからだ。
「今日は 今日は 今日は 今日は 今日は」
まるで壊れたテープを再生しているようだと、ホライゾンは思った。
「今日は 今日は 今日は 今日は 今日は」
恐らくリポーターであろう女性が、マイクを持って後ろの風景を指さす。
すると映像が最初に巻き戻ってまた女性が、マイクを持って後ろの風景を指さす。
「今日は 今日は 今日は 今日は 今日は」
一定の間隔でくりかえされる、映像。
正直、気味が悪い。
(; ω ) ――ッ!
恐怖からホライゾンは衝動的にテレビの主電源のボタンを押す。
(; ω )(切れない!?)
かちかち、とヒステリックに何度もテレビのボタンを押すが、一向に電源が切れる気配がない。
画面の中ではリポーターが同じシーンを繰り返している。
「今日は 今日は 今日は 今日は 今日は」
リポーターの指さす先。
その風景の上、つまり画面の左上には、お昼の番組特有の時刻が表示されていた。
「今日は 今日は 今日は 今日は 今日は」
時刻は
[12:30]
(; ω )<< うわあああああああああああああ!!!!
-
テレビの電源コードを引き抜く。
(; ω )<< なんでだお!! なんでだお!!!
電力の供給が断たれたはずのテレビは、しかしその機能を停止させる様子はなく、
「今日は 今日は 今日は 今日は 今日は」
繰り返されるリポーターの声と、
[12:30]
表示される時間が、
(; ω )
ホライゾンの頭を埋め着くしていく。
今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は
[12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30]
今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は
[12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30]
今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は
[12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30]
今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は
[12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30]
:30]今日は [12:30]今日は [12(; ω )30]今日は [12:30]今
今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は
[12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30]
今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は
[12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30]
今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は
[12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30]
今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は
[12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30]
今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は 今日は
[12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30][12:30]
***
-
それから、なにをどうしたのか、細かいところは覚えていない。
(`・ω・´)< おにーさん、ちょーっと速度出し過ぎだよ
(; ω )< すみませんお……
気付けば、どこかの路肩に車を停めて、警察の注意を受けていた。
(`・ω・´)< 高速じゃないんだからさー。若いからスピード出したくなるのもわかるけど
(; ω )< すみません、お……
いつもは鬱陶しい警察のスピード違反取締も今では安堵を覚える。
ようやく人に会えたのだ、
(`・ω・´)< 今回は反則金で済んだからよかったけど、これで人死にがでたりしたら責任とれないでしょ、とれる?
(; ω )< すみません……
(`・ω・´)< ……まあさ、気をつけてね
肩をぽん、と叩き、ホライゾンに青い用紙を渡した警察官はそのまま立ち去って行った。
(; ω )=3
車内で大きなため息を吐き、ホライゾンはケータイを見やる。
ロック画面に表示されている時間は15時22分。
(; ω )(よかった……お)
すべて終わったのだ、とホライゾンは安堵して、そして
(; ω ) !?
――着信。
-
驚きのあまり、一瞬シートから飛び上がったホライゾンだが、
表示されている名前を見てすぐに安堵した。
……祖母からだ。
(;^ω^)】< もしもし、ばーちゃんかお?
「ばーちゃんよ、ホライゾン、あんたいつくるの? ばーちゃんずっと待ってたんだよ」
(;^ω^)】< ごめんだお、ちょっと急に体調が悪くなっちゃって
祖母に嘘をつくことは心苦しかったが、ありのままを話して信じてもらえる自信がないのも確かだった。
むしろ、”あれ”が実際に起こったことだったのがどうか、今となってはそれもよくわからない。
「大丈夫? 仕事疲れがでてるんでしょ、無理してるんじゃないの?」
(;^ω^)】< おっお、全然平気だおー。ちょっと暑さにやられちゃって
「熱中症!? 水分はこまめにとらないとだめだよぉ」
熱中症。
そうかもしれない、とホライゾンは思った。
(;^ω^)】< おっお、ごめんだお。今日はちょっといけないかもしれないから、また日をあらためるお
自分は夏の暑さにやられて、ちょっと変な夢を見ただけなのかもしれない。
その方がいろいろと合理的な説明がつく。
「暑さには気をつけないとだめだよぉ。もー、ばーちゃんもね、歳なのかねぇ。
ちょうどお昼ごろに、ホライゾンの声が聞こえたような気がしてねー」
(; ω )】
ぴくり、と表情が固まるのを感じた。
そんな、ただの偶然だろう、自分が見たのは暑さが見せた悪夢だったのだから。
頭の中でそんなことを考えながらも、おそるおそる、ホライゾンは聞いてみる。
(; ω )】< ……ばーちゃん、それって何時くらいのことか覚えてるかお?
-
「え? ああ、12時半よ。ちょうどそのとき時計を見たからそれは間違いないわ」
.
-
(
)
i フッ
|_|
.
-
本日はここまで。
また明日の夜、お会いしましょう
-
おつ
-
乙
なんとなくスレタイとか見覚えあるんだが、関連作ある?
-
>>29
(,,゚Д゚)怪談・高架下猫語のようです というのがあります。
ttp://buntsundo.web.fc2.com/100monogatari_2015/novel/koukashita_nekogatari_1.html
読んでいるとより楽しめるかと思いますが、読んでいなくても特に問題はありません
-
―
―――
―――――
(,,゚Д゚)< わたしが彼から聞いたのはここまでです
トロッコの上のロウソクが、ふっ、と消えた。
モララーは隣に座る猫に訊ねる。
( ・∀・)< ……そのあと、その人はどうなったの?
(,,゚Д゚)< はて、そこまでは。聞いていないのでわかりかねますね
モララーは考える。
一年に一度は行く、大好きな祖母の家。
理由もわからないまま、わけのわからない『別の場所』に迷い込んでしまった、彼。
もし、自分が彼の立場だったら、きっと祖母の家に行くのが怖くなってしまうだろう。
会いに行きたいのに大切な人に会えない彼と、大事な孫にあえない祖母。
それは、きっととても悲しいことに違いない。
( ・∀・)< おばあちゃんち、行けたのかな、ホライゾンさん……
(,,゚Д゚)
ふと、猫の表情が変わった。
先ほど見せたあやふやな表情とは打って変わって、今度はあからさまにきょとんとしている。
(,,゚Д゚)< ……そんなことを気にされていたのですか?
(;・∀・)< え、ああ、うん。だって、悲しいじゃない。大事な人にずっと会えないのって
-
猫はまた、不思議な表情をとる。
そんなものかと納得しているような、あるいは、何かうらやんでいるような。
(,,゚Д゚)< そんなものですか、わたしにはとんとわかりかねますが
( ・∀・)< キミにはいないの、大事な人
(,,゚Д゚)< ……あいにくわたしは野良ネコですので
( ・∀・)< そか
薄暗い駅に、少しの間沈黙が落ちる。
改めてモララーは口を開いた。
( ・∀・)< 会える会えないもそうだけどさ、きっとそのホライゾンさんにとって
おばあちゃんちって『大事な場所』だったんじゃないかなあ
(,,゚Д゚)< 『大事な場所』ですか
( ・∀・)< そ。大事な思い出がたくさん詰まった『大事な場所』。
それがよくわからない怪奇現象で、ただの『怖い場所』になっちゃうのは、
きっとすごく悲しいことだと思うんだよなぁ
(,,゚Д゚)< ふむ、そういったものですか
言いながら、猫は首を傾げ、続ける。
(,,゚Д゚)< あなたはどうなのです、あなたにはあるのですか、『大事な場所』というものが
( ・∀・)< そりゃあ、あるさ。つーちゃんとの思い出がいっぱいつまった場所。そうたとえば――
そして、ふいに
(; ∀ ) っ!!
――頭痛。
-
(,,゚Д゚)< どうかしましたか?
(; ∀ )< いや、ちょっと思い出せなくて……
頭を押さえながら、モララーは必死にその場所について思い出そうとする。
脳裏に映る映像。
その断片に見えるのは、その建物の入り口の風景。
その横に金属製の名板。その右端の三文字だけが、いやにくっきりと見える。
(; ∀ )< 『記念館』……そう、なにかの記念館だった、はずなんだけど……
それ以上を思い出そうとするのを拒むように襲い来る頭痛。
頭を抱えるモララーの耳に、ふと猫の、のんきな声が届いた。
(,,゚Д゚)< 『記念』、ですか。ふむ、それもまたネコのわたしにはよくわからないものですね
(; - ∀・) ?
(,,゚Д゚)< ヒトは、写真を残すのでしょう。『記念』となるその瞬間を切り取ってずっと持っておく
ネコのわたしにはいささか不思議でなりません
言って猫はトロッコの上、まだ火の灯ったロウソクを見上げた。
(,,゚Д゚)< では、せっかくですから『記念写真』の話でもしましょうか
いくらか気もまぎれるでしょう
(; - ∀・)イテテ< ああ、頼むよ。今はそれが一番いい気がする
(,,゚Д゚)< では、僭越ながら――
-
これは大切にしまっておいた”はず”の
.,、
(i,)
|_|
一枚の写真のお話です。
.
-
―――――
―――
―
こじんまりとした、勉強机。
('A`)< 久しぶりだなー、この部屋も
実家の自室。
夏の長期休暇を利用して帰省した鬱田ドクオは部屋に入ると、
学生時代使っていた勉強机の椅子に腰かけた。
('A`)< ここでひーひー言いながら受験勉強してたっけ
ぽんぽん、と机を叩く。
その音もどこか懐かしい。
'_
('A`) 、
ふと、手元の小さな引き出しが目に留まった。
そういえば、この中には何が入っていたのだったか。
気になったドクオは引き出しに手をかける。
('A`)< おわー、こりゃまた懐かしい
中から出てきたのは、文房具、昔集めていた食玩の類、そして――
('A`)< お、いつのだこれ
――写真の束。
-
┏━━━━━━━━━━━━┓
┃┏━━━━━━━━━━┓┃
┃┃ . . .. ┃┃
┃┃ ..2本目 . .... ┃┃
┃┃ 『記念写真』.. ┃┃
┃┃ ┃┃
┃┗━━━━━━━━━━┛┃
┗━━━━━━━━━━━━┛
.
-
ぺらぺら、と写真の束をめくる。
('A`)< あー、これ、中学のときの
修学旅行、卒業式、自分の通過してきた人生のさまざまなシーン。
ドクオには、アルバムに写真を整理する習慣がない。
だから机の引き出しに入れていったまま、今日まで忘れていたのだ。
('∀`)< へー……なつかしいなー
中学、高校と友人の少ない彼には過酷な状況も多かった。
しかしずいぶん時間が経った今では、どちらかというと楽しい思い出だけが残っている。
(*'∀`)< 垂眉、ショボンだっけ。あー、いたなー。たしか生徒会長やってたんだっけか
(*'∀`)< お、内藤じゃん、なつかしいなー。高校卒業したあと就職したんだっけ、元気かなー
(*'∀`)< でゅふふ、津出さんではござらぬか、ロリツンたんprpr!!
ちょっとしか関わりのなかった者、親しかった者、憧れていた者……。
さまざまな人間が映った写真に、思い出が呼び覚まされる。
(*'∀`)< ふひひ、懐かしいなー……
ひらり
('A`)< ……お?
ふいに一枚の写真が、床に向かって落ちていく。
どうも持ち方が甘かったらしい。
('A`)< おっとっと
床に落ちる直前でキャッチしたそれを、特になんということもなく見る。
教室の写真だ。
どうやらみんなで一緒に撮ったものらしい。
-
('A`)< んー? いつの写真だろ、これ
写真の中央には当時の幼い自分の姿。
なにか楽しいことでもあったのだろうか、その顔には満面の笑みが浮かんでいる。
(*'∀`)< ぷっ、きめえwwwwwwww
人から言われると腹が立つが、自分で言う分にはまったく問題ない。
自室に一人であれば、なおさらの事。
(*'∀`)< うっわ、よく見たらこれまわりみんなおにゃのこじゃん、うっはwwwwww俺氏モテ期到来wwwwwww
映っているのは自分を合わせて7人。自分以外は全員女子だ。
笑いながら見ていたドクオだが、どうもこの写真がいつのものだったか思い出せない。
そもそも交友関係も少なかった自分が、写真の中心に映っていること自体が珍しいのだ。
それを覚えてないというのはどういうわけなのか。
('A`)(ましてや、おにゃのこの真ん中で写ってる写真とか、絶対なんかしら覚えてるよなあ)
ただでさえ女子とお近づきになる機会などなかなかないドクオである。
この写真だってたまたま写る機会があったのをいいことに、
一生の家宝にするため焼き増しをスライディング土下座をしてたのんだ、そして女子にどん引かれた。
……くらいのエピソードくらいあってしかるべきものだ。
('∀`)(自分で考えてて悲しくなってきた!)
気を反らすため、改めて写真を見る。
背景は学校の教室、これはたぶん自分のクラスのものだ、
記憶はぼんやりしているが掲示物に多少見覚えがある。
そして、女子だがこれが誰なのか、よくわからない。
顔と名前が一致しない、ということではない、というより――
('A`)(なんでこいつら、みんな顔隠してるんだ……?)
-
自分と一緒に映っている女子たち。
それぞれみんな、目や鼻などの大部分がそれぞれの手で隠されている。
ところどころ笑った口元などが見えるが、それだけで具体的に誰なのかは特定できない。
そして、
('A`)(なんっか、違和感あんだよなぁ……)
どことは言えないが、なんとなく、何かがおかしい気がする。
('A`)(んー?)
そもそも、自分のクラスにこんな女子いただろうか?
体形や髪型などを記憶と照らし合わせてみるが、やはり覚えがない。
少なくとも、先ほど見た写真に映っていた津出ツンのようにすぐには思い出せない。
そして、何より違和感を感じるのは――
( ∀ )
――自分の、笑顔。
('A`)(なんだろ、これ……たしかに俺の顔なんだけど)
どこか、自分のものでないような気がする。
まるで、自分にそっくりな誰かを見ているような、
そんな違和感がある。
('∀`)(……考えすぎだよな)
たまたま身に覚えがない写真が出てきたから、どことなく不気味な感じがしているだけだ。
きっとこの女子たちは、罰ゲームか何かで自分と写真を撮らされたのだろう。
だから、彼女たちは顔を隠しているし、自分の笑顔もどこかぎこちないに違いない。
覚えていないのは、それがトラウマレベルでいやな思い出だから。
そうに違いない。
-
('∀`)< 考えてて辛くなってきたでござる!
明るく言って、ドクオは次の写真に目を移そうとした。
そしてそのとき、写真のある一点が目に留まった。
('∀`)(それにしても、この女子たちの『手』なんかおかしくないか?)
女子の顔を覆っている『手』、それに感じる違和感。
その正体に、ドクオは気付いた。
( ∀ )(なんか、指が長くないか……?)
違和感程度だが、しかしたしかに長いのだ。
具体的にいうと、人差し指、中指、薬指の、三本が――
-
ぽ
と
っ
ころころ
.
-
( ∀ )
うしろで、物音がした。
( A )
柔らかい何かが、床に落ちて転がるような、音。
( )
(A` )
('A` )
('A`)
振り向く。
( 'A`)
('A` )
辺りを見回す。
('A`)
――何もない。
-
('A`) ……。
何も言わず、ドクオは写真をもとの引き出しに収め、そして鍵をかけた。
<< ドクオー、ご飯できたよー!
声が聞こえる。
('A`)
<< ドクオー? 聞こえてるかい?
母が呼ぶ声。
('A`)ハッ
我に返り
(;'A`)<< 今行くー!!
返事をして、彼は部屋を出た。
今後、自分があの引き出しを開けることは二度とないだろう。
そんなことを考えながら。
-
(
)
i フッ
|_|
.
-
今夜は以上です。
また明日の晩、お目にかかりましょう
-
おつー
-
おつー!
この季節にピッタリな話だな…!
-
猫語もギコ見たもシリーズ全部好き
今晩も楽しみだ
-
えっこわい なに? 乙
-
―
―――
―――――
(,,゚Д゚)< わたしが彼から聞いたのはここまでです
再びトロッコの上のロウソクがひとりでに消える。
残るロウソクは、3本。
これがすべて消えるとき、ここに電車がやってくるということなのだろうか。
思いながら、モララーはぽつりと呟く。
( ・∀・)< 自分の実家にそんなのあったらやだなぁ……
(,,゚Д゚)< そういったものですか?
(;・∀・)< そんなものだよ、キミだって自分の縄張りになんだかよくわからないものがあったらいやじゃない?
(,,゚Д゚)< ……基本的に、わたしは縄張りというものをもちませんので
( ・∀・)< え、そうなんだ。じゃあいつも、いろんなところを旅してる感じ?
(,,゚Д゚)< 『旅』、ですか……まあ、そのようなものですかね
微妙にはぐらかすような猫の言い方に、モララーは頭の上に「?」を浮かべる。
(,,゚Д゚)< あなたには、あるのですか
( ・∀・)< うん?
(,,゚Д゚)< かえるべき、場所というものが
-
( ・∀・) ……。
【アヒャ! モラ、飯できたぞー!!】
【(* ∀ ) おーい、おきろー!! ちーこーくーすーるーぞー!!】
【あー!! つーちゃんまって、おきるから! おきるから包丁はやめて!!!】
【(*゚∀゚)< アッヒャッヒャ、とっととおきねーとモラが朝ごはんになるぞ!】
【シャレになってないよ!!!】
( ―∀―)
【(*゚∀゚)< おかえりー、今日は晩飯モラの当番だからなー!】
【ただいまー、今日はつかれたんだからなー】
【(*゚∀゚)< 疲労は当番とはかんけーねーからな】
【わ、わかってるってば、包丁はしまって! つーちゃん】
【(*゚∀゚)< アヒャヒャ!! 代わりに愚痴だけはちゃんと聞いてやるぞ!】
【はいはい、ありがとう】
【(*゚∀゚)< 今日はオムライスがいいなー。モラのオムライス、好きだぞ、オレ】
【ふふふ、じゃあ期待してていいんだからな!】
-
( ―∀―)
が
し ん
ゃ
( ∀ )
【モラ!! おい!! モラ!!!!】
どん
【頼むよ、返事しろ!! おい!!!】
(; ∀ )
どん
【モララー!! おい、おい! モララアアアアアアアア!!!!】
(,,゚Д゚)< ……大丈夫ですか
(;・∀・)ハッ
ふと気づけば、自分の顔を覗き込む猫の顔。
(;・∀・)< ……ああ、うん。平気だよ、ありがと
-
(;・∀・)< 帰る場所の話……だったよね、あるよ。
ボクの家だ。ボクとつーちゃんの家。そこに帰らないと
言いながら、モララーは繰り返し考える。
(; ∀ )(そうだ、ボクは帰らないと……つーちゃんのいる場所に、帰らないと……)
――帰れるのか?
(; ∀ ) っ!!
再び頭痛。
(,,゚Д゚) ……。
猫は、そんな彼を見ている。
黙って、見つめている。
(,,゚Д゚)< そうですね、では次は『帰宅』の話でもしましょうか
(;∩∀・)イタタ< また怖い話?
(,,゚Д゚)< はて、怖いかどうかはわかりかねますね。何分わたしはヒトではなく、ネコですから
そっけなく、猫は言ってトロッコの上にあるロウソクを見上げた。
(,,゚Д゚)< ともかくこれは、『帰宅』の話です――
-
ありふれた、「家に帰りたい」という望みをかなえた。
.,、
(i,)
|_|
ただ、それだけの話です。
.
-
―――――
―――
―
夜。
(´-ω-`)< ふぅー……
仕事疲れと、それから解放されたことへの安堵。
ショボンは、勤める会社のビルの前でため息をついた。
(´・ω・`)< さてと、帰りますか
誰に言うでもなく呟いてショボンは歩き出す。
自分が一人暮らしをするアパート、愛すべき我が家へ。
(´・ω・`) ……。
比較的に都心に近いこの町では、通勤方法は車ではなく徒歩だ。
そうでなくても、ショボンの家は徒歩20分圏内なので、
健康のためにも彼は徒歩で通勤するようにしている。
ショボンはこの帰り道が好きだ。
特にどこがとは言えないが、日中忙しい分、
静かな帰り道は仕事でごちゃごちゃとした脳内を落ち着かせてくれるような気がしている。
(´・ω・`)
ただ、この帰路の中には苦手な場所もある。
それは立体的に道路が交差する場所、
自分が通っている道が、それと交差する道路の下に潜り込んで深くなっている場所――
アンダーパスというらしい――道路の下を潜った、その中腹にある。
-
(;´・ω・`)
そこを通るとき、ショボンはいつも少し緊張してしまう。
そして、つい、深く親指を握りこんでしまう。
その場所は薄暗く、音がよく反響して、じめじめしている。
足元には花束が置かれている。
花の内容は、マムやピンポンマム、そしてアナスタシア――いわゆる菊の類。
つまりは仏花である。
(;´-ω-`) ……。
ここで以前、人死にがあったそうだ。
小さな子どもが犠牲になった、そう聞いている。
だからか、ここには”そういった場所”にありがちな噂がある
くだらない噂だ。
この場所を手を開いたまま通ると――
(;´ ω `) ……。
――”手を引かれる”らしい。
-
o*o。3本目『帰り道』
/⌒ヽ*o*
/ヽ )o*o
" ̄ ̄゜
.
-
終業後、ここは会社の近くの居酒屋。
Σz*^ー )リ< ……でぇ〜、聞いてくらさいよせんぱーい
(*´・ω・`)< キミねえ、もうその話6回くらいきいてるよ、たぶん
ショボンは会社の後輩と二人で飲みに来ていた。
後輩の方はすでにずいぶん出来上がっている。
Σz*゚、 )リ< いいじゃらいですかぁ〜、6回でも7回でもぉ〜。あたし今日はとことん語っちゃいますからぁ
手をぶんぶんと振り回す後輩に、ショボンは苦笑。
普段はいい子なのだが、どうも最近ストレスが溜まっているらしい。
先輩として話を聞いていやりたいのは山々であるが、そろそろ――
(*´・ω・`)< ほら酒蔵、時間。終電逃すよ
Σz*-Д )リ< ええ〜もうですかぁ〜? 垂眉せんぱい今日泊めてくらさいよぉ〜
(*´-ω-`)< ばか言ってんじゃないよ、ほら、お会計
Σz*-Д )リ< むぇ〜、ケチ〜
机に突っ伏す彼女のあたまを伝票でぽふっ、と叩きショボンはそのままレジに進む。
-
***
後輩を駅に送り届け、改めて帰路につく。
そんなに遠回りをしたというわけではないので、いつもの帰り道をそのまま使うことにした。
酔いの回りが体に心地よく、自然と鼻歌なども出てくる。
(*´-ω-`)♪< 一万年と二千年前から――はは、今の子たちはわからないか、さすがに
少し自嘲して、ショボンはさらに続けた。
もう何年も前にネットで流行っていた歌だ。
学生の時分には何度も歌っていたが、
もう最近ではカラオケに行くこともないのでところどころ歌詞が怪しい。
(*´-ω-`)♪< きみが繰り返し大人になって、何度も何度も遠くにいって……ええと
ふと、歌詞につまって、そして気づいた。
(;´・ω・`)(ここ……)
辺りを見回す。
その場所は薄暗く、音がよく反響して、じめじめしていた。
いつもの見慣れたアンダーパス。
思わず足元を見回すと、
(;´・ω・`)(あー……)
自分の後方1メートルくらいの地点に、例の花束があった。
どうやら、歌っている間に通り過ぎてしまったらしい。
もちろん、手は開いたままだ。
-
(;´・ω・`)
(;´-ω-`)
一瞬、どうしようと思って
( ´・ω・`)(……まあ、しかたないか)
すぐ、どうしようもないという事実に行き当たり、そのまま思考を停止する。
たしかにここは不気味だが、噂は噂である。
事実自分も”手を引かれた”わけではないではないか。
そう考えると、いつも緊張した面持ちでここを通る自分の姿もどこか滑稽なように思えた。
(´-ω-`)♪< くーしゃくしゃに、なったとしてーもー
思い出せないフレーズは飛ばして、再びショボンは歩き出した。
結局アンダーパスを出るところまで、彼が誰かに”手を引かれる”ことはなかった。
-
***
そして、特に何事もなくショボンは家へと帰り着いた。
道中、特に何かおかしなことが起こることもなかった。
(*´・ω・`)(なんだ、どうってことなかったな)
こんなものだ、と彼は思う。
少し不気味な雰囲気で、人死にがあった場所。
必然的に生まれる無責任な噂話。
そんなものに翻弄されて、ジンクスを守って、それでなにかから守られているような気がしていたって。
実際はこんなものだ、
そんなものはもともと『ない』のだから。
(*´・ω・`)(さて、鍵鍵……っと)
ポケットの中から鍵を探り当て、それをドアノブに刺し、回す。
かちゃり、と鍵が開く音がして、そして――
(*´・ω・`)(えっ……)
ドアノブが回る。
自分は鍵をあけただけだ。
まだドアノブを回していない。
そのドアノブが勝手に回って、そしてゆっくり開いていく。
「ただいま」
何が起こっているのかわからない、ショボンの耳に届くのは、聞き覚えのない声。
幼い男の子のような、あどけない、声。
開いたドアの向こうの、真っ暗な廊下。
とたとた、とはしる音がした。
そしてその暗闇の向こうで、自室のドアが開いて閉まる音を、ショボンは確かに聞いたのだった。
-
(
)
i フッ
|_|
.
-
こちらに怪談、あちらにゃ忌談。
鬼哭啾啾たるこの場所で明日は鬼が出るか蛇が出るかと
楽しんでいただければこれ幸いでございます。
では、また明日の夜お目見えいたします。
-
オウ…乙
-
乙!
-
乙
今年も百物語ないからここで気分味わえてありがたい
-
―
―――
―――――
(,,゚Д゚)< わたしが彼から聞いたのはここまでです
猫の話が終わる。
不思議と、いつの間にか頭痛は治まっていた。
( ・∀・)< ……そのショボンさんの部屋に昔住んでたのかな、その子
モララーの言葉に、猫はとぼけた口調で返す。
(,,゚Д゚)< はて、それはどうでしょうか。調べたわけではないのでなんとも
( ・∀・)< え、でも、”その子”は家に帰りたかったんだよね?
(,,゚Д゚)< そうでしょうね、だからこそ彼についていったのでしょうから
( ・∀・)< じゃあ、そこが自分の家ってことなんじゃない?
(,,゚Д゚)< なぜ、そう思うのです?
猫はモララーの顔を見上げる。
ガラスみたいに透き通った目に、戸惑うモララーの顔が映っている。
(;・∀・)< いや、だってさ。自分の家じゃない家に行ったって”帰った”ことにはならないじゃない
(,,゚Д゚)< なるほど、そういったものですか
猫はモララーから目線を逸らす。
ひげがぴょこん、と上下するのが見えた。
-
(,,゚Д゚)< ひとつ、可能性としての話ですが
目を逸らしたまま、猫は続ける。
(,,゚Д゚)< 『それ』は、はじめは「家に帰りたい」と思っていた。
家に帰り、家族と再会することを望んでいた。『理由』があったのです
( ・∀・)< うん……?
猫は再びモララーを見上げる。
その目はどこか不安なような、あるいは何かを迷っているような。
(,,゚Д゚)< ただし『それ』はすでにヒトではなくなっていた。ヒトの理屈が通用しないモノになってしまっていた。
( ・∀・) ……。
(,,-Д-)< そうして時間が経つ内に、『それ』は『理由』を失っていった。
『理由』がなくなった『それ』には、ただ「家に帰りたい」という強い『願い』だけが遺った。
( ・∀・)< ……じゃあ、その子は
(,,゚Д゚)< 「家に帰りたい」という『願い』だけの『それ』にとって、
「そこが誰の家か」など大して重要ではなかったのではないかと思います。
……あくまで、可能性の話ですが
ぎりっ、という音がモララーの耳に届いた。
それが自分の歯ぎしりだということに気づき、彼は少し困惑する。
(#・∀・)< そんな、そんなのって悲しすぎるじゃないか!
だから口をついて出た、その声が荒いものになった理由も、彼には分らなかった。
-
(#・∀・)< 大好きな人のもとに帰りたいのに、帰れないなんて!!
そこに帰りたかった理由さえ――
言っているうちに、彼は理解した。
(; ∀ )< ――忘れてしま、って……
”似ている”のだ。『それ』とモララー、その置かれている状況が。
(,,-Д-)< あくまで、可能性の話ですよ
猫は繰り返す。
とぼけたように言って、そして再びロウソクを見上げた。
(; ∀ )< キミは、どこまで知ってるの?
モララーの問いかけに、猫は目をロウソクから動かさず、答える。
(,,゚Д゚)< 何をでしょう
(; ∀ )< だから、ボクが置かれてるこの状況だよ
猫の目の中で炎が揺れる。
きらきらと、あるいはちらちらと。
(,,゚Д゚)< はて、とんとわかりかねますね
(; ∀ )< 本当に……?
(,,゚Д゚)< あなたはどうなのです、実はもう、ずいぶん思い出しているのではないですか
(;・∀・) !!
-
聞こえる。
【あっひゃー!! モララー、今日は結婚記念日だぞー!!】
【ぐえっ、つ、つーちゃん、いきなりお腹の上ダイブはキツい……】
【でかけるぞー!! 『炭鉱記念館』!! さぁー30秒でしたくしろー!!】
【今日は楽しかったな、きっと明日からはもっとたのしくなるよな!!】
声、彼女の声。
乱れる映像。
並んだトロッコ。
古い電車。
そして――目の前に迫るトラック。
-
(; ∀ ) ……!!
(,,゚Д゚)< 深く思い出せないとすれば、それはきっと目を逸らしているだけでしょう
(;・∀・)< キミは……一体……
弱弱しいモララーの問いかけに、しかし猫は答えない。
猫の目の中では、相変わらず炎がゆらゆらゆれている。
残る炎は、2本。
(,,゚Д゚)< さて、そろそろ良い頃合いですね、わたしの話はこれで最後にいたしましょう
(;・∀・)< え、でもまだロウソクが……
そこで猫はやっとモララーの方に顔をやる。
その顔には、不思議な表情。
どこかいたずらっぽいような、それでいてなお、なげやりなような。
どちらともいえない、あやふやな表情。
猫は言った。
-
最後の一本は
.,、
(i,)
|_|
あなたにお譲りしますよ。
.
-
―――――
―――
―
この季節、日中の茹だるような暑さが人を狂わせるのかもしれない。
そうツンは思った。
从;'ー'从< ふぇぇ〜……
ξ゚⊿゚)ξポリポリ ……。
_
(;゚∀゚)< うおっ、これ近くじゃね?
薄暗い部屋で、ツンは無表情のままポテチを貪っていた。
部屋の光源はただひとつ、大きなテレビの画面のみ。
画面に映るのはこの季節ではおなじみの心霊番組だ。
从;'ー'从< わ、わわ……だからそこ行っちゃだめだって〜
_
(;゚∀゚)< お、おおうびっくりした、スタッフかよー
ξ゚⊿゚)ξポリポリ ……。
タイトルは『行ったら必ず死ぬ! 心霊スポットツアー』。
ちなみに生放送ではないので、このタイトルは100%詐欺である。
ξ゚⊿゚)ξポリポリ
ツンはひたすらポテチを喰らい続ける。
彼女は、こういった番組があまり好きではなかった。
心霊の類をばかばかしいと思っているわけではない、
信じていない訳でもない、むしろ逆だ。
ξ゚⊿゚)ξポリポリ
――津出ツンは、幽霊が見えるのである。
-
/ \
_________
'\ ./ \ /
| \/ \/
| | | |
| | | |
|_| |_|
| | 4本目『理由』 | |
| | | |
| | | |
| | | |
| |/ ..\| |
| | | |
._|/| _ _ _ _ _ _ |\|_
..| | _-_-_-_- _ |
..| |/_/━ ━ ━ ━\_\ | |
._| /_/━ ━ ━ ━ ━ \_\.|_
/_/━ ━ ━ ━ ━ \_\
/ /━ ━ ━ ━ ━ ━ \
-
ξ゚⊿゚)ξポリポリ
ツンはポテチを食べる。
まったく、本気で怖がっている他の二人がうらやましいと彼女は思う。
彼女の目に映るもの。
テレビの画面のその向こう。
廃墟となったペンション。
そこにはたしかに、たくさんの幽霊たちがいた。
『ここをね、押すと火がつくの。ここをね、押すと……』
もうすでに電気が通っていないだろう、電灯のスイッチの使い方を出演者に話し続ける老婆。
出演者は見えてないので反応しない。
『おれもカメラすきだよ、あんたもかめら好きかな。おれもカメラすきなんだよ……』
ときたまドアップになる壮年の男の霊の顔。
カメラマンに話しかけているようだが、もちろんカメラマンはすぐ別のところに視点を移してしまう。
「そのときカメラは衝撃の現象を捕らえていた!」
从;'ー'从< ひっ〜……!!
_
(;゚∀゚)< 俺知ってるぞ、これオーブってやつだろ!
ソファの背に身体を逃すようにもたれさせながら怖がっている二人。
対して自分にはテレビがきたとはしゃいでいるのんきな幽霊たちの姿が見えているのだ。
そう、リアルタイムに。
ゆえに温度差は歴然である。
-
ξ゚⊿゚)ξポリポリ
自分も見えなければ怖いんだろうなあ、と彼女は思う。
人が幽霊を怖がる理由は”なんだかよくわからない”から、らしい。
ξ゚⊿゚)ξポリポリ
ばっちり見えているものに対して、わからないもクソもあるものか。
それはたしかに、もっとタチの悪い悪霊とかだったらツンも怖い。
でもそれは、実害があるからであって、その辺の変質者や悪漢に対する恐怖となんら違いはない。
ξ゚⊿゚)ξポリポリ
だから彼女は、この手の番組があまり好きではない。
うまく楽しめないのだから当然である。
从'ー'从< あ〜、こわかったねぇ〜
_
( ゚∀゚)< 再現フィルムとかなくても結構不気味なもんなんだな、心霊スポットって
ξ゚⊿゚)ξポリ…カサッ
ちょうどポテチが切れたあたりで番組が終わった。
一ミリも怖さを感じられなかった自分としては、なんともコメントしづらい。
从;'ー'从< ツンちゃんってば一切動じてなかったね〜
_
(;゚∀゚)< 無言でポテチ食い続けてたもんな、そんなにうまかった?
ξ゚⊿゚)ξ< ……それなりかな
そっけなく答える。
正直ポテチの味などそこまで覚えてなかったので、べつに嘘はいってない。
-
从*'ー'从< クールだなぁ〜、わたしぼんやりしてるからそういうの憧れちゃう〜
人
_
(*n゚∀゚)n< よっ、クールビューティー!! 氷の女、ツン!
ξ*-⊿-)ξ< ……不愛想なだけだから、そんな風に褒められても
あと長岡、最後のは褒めてないわね
照れ隠しにゴミ箱までポテチの袋を運搬しながら、ツンはぼそぼそと回答する。
生来声が大きい方ではないし、表情をうまく顔に出せないだけなのだが、
なぜかこんないじられ方をされてしまう。
まあ別に、嫌ではないが。
从'ー'从< でもこわかったなぁ〜、さっきの番組〜
_
( ゚∀゚) ……。
ξ゚⊿゚)ξ ?
ポテチをゴミ箱に入れたツンが戻ってくると、
いつもはおちゃらけた長岡がめずらしく神妙な面持ちで黙っていた。
なにか考え事をしているようだ、本当に珍しい。
从'ー'从< ジョルくん〜?
_
( ゚∀゚)< ……あのさ、あそこ、行ってみねぇ?
从'ー'从?< え、あそこって〜?
_
(;゚∀゚)< だ、だからさ、あの、心霊スポット……この近くだし
从;'ー'从< ええ〜!?
動揺する渡辺、心の中でツンは小さくため息を吐く。
ろくでもないことを考えていただけだった、これは別に珍しくない。
-
从;'ー'从< ジョルくんこわくないの〜?
おろおろ、と動揺している渡辺に長岡も動揺の色を見せながら答える。
_
(;゚∀゚)< 正直オレも怖いからさ、後輩の強そうなの何人か連れてこうかなって
从;'ー'从< ふえぇ〜……でもなぁ……
ヘタレたことをいう長岡とおろおろしながら迷っている渡辺。
そして、その顔が同時にツンの方を向く。
从;'ー'从< ど〜しよ〜……ツンちゃん
_
(;゚∀゚)< ……どうしよう、ツンちゃん
ξ-⊿-)ξ=3
呆れたツンはため息を吐く、
「どうしよう」と口では言っている友人たちの顔に
どう見ても「怖いけど行ってみたいな」的な表情が張り付いていたからだ。
ξ゚⊿゚)ξ< いいんじゃないの、別に
なので、ツンはこのヘタレた友人たちの背中を押してやることにした。
从;'ー'从< ツンちゃん〜!
_
(;゚∀゚)< ツンちゃん!!
まだ少し迷いがありそうな渡辺と、特に迷いはなさそうな長岡が歓声をあげる。
正確には歓声かどうか判定が難しいところだが、これは八割がた歓声ということでいいだろう。
-
ξ-⊿-)ξ< 廃屋だから崩壊とか危なそうだし、ほんとだったら反対するとこだけど、
まあテレビのスタッフが入れるくらいだから、そんなに危なくもないんでしょ、たぶん
霊的な意味での安全は自分が確認してるし、と心の中で付け足しながらツンは言った。
从;'ー'从< つ、ツンちゃんがそういうなら〜……
_
(*゚∀゚)< おし、じゃあ決まりな、後輩に連絡してみるぜ!
ξ゚⊿゚)ξ< その後輩ってのが引っかかるんだけど、大丈夫なの?
_
(;゚∀゚)< ま、まあ、昔は? なんかやんちゃしてた時期もありそうな感じだけど、大丈夫だって
ξ-⊿゚)ξ< ……まあ、あんたを信用するわ。でも私と渡辺になにかあったら許さないからね
_
(;゚∀゚)ゞ< はい、キモに命じるであります!!
なぜか敬礼する長岡。
从*'ー'从< ツンちゃん、かっこいい〜
人
なぜかぱちぱちと拍手を送ってくる渡辺。
ξ*-⊿-)ξ ……。
ツンはただ、照れて頬をぽりぽりとかいていた。
-
***
そして当日。
時間は夜。
ツン達は長岡の運転する車で、郊外にある廃ペンションにやってきた。
ペンションの前にはすでに車が一台。
傍らで、いかにも軽そうな若者二人が煙草をふかしている。
_
( ゚∀゚) ノ< よ、てめーら先にきてたのか。アヤカちゃん、ツンちゃん、こいつらが後輩
( ^Д^)ノ< ばんわーっす
£°ゞ°)< どもどもー
从'ー'从< こんばんわ〜
ξ゚⊿゚)ξ< ……どうも
タバコを持ったまま、軽く手をあげる二人。
片方は身長が高く、肩幅が広い。
ソフトモヒカンなのも相まってなかなか厳つい印象を受ける。
もう片方は、ごつい方よりいくらか背が低いが、
茶髪ロン毛でいかにも「遊んでます」といった感じだ。
――まあ、少なくとも弱そうには見えない。
_
( ゚∀゚)< ごつい方がプギャー、チャラいのがロミス
( ^Д^)< ちょwwwww先輩wwwwwww
£°ゞ°)< でも大体あってるーwwwwwwwwwww
-
ξ゚⊿゚)ξ(悪いやつらでは……なさそうか)
直感でツンはそう判断する。
彼女に備わっている”霊感”はそういうところに関しても鋭い。
その人間が自分にとって危害を加える人物であるかどうか、そういったこともなんとなく分かる。
从'ー'从< よろしくねぇ〜、わたしは渡辺アヤカだよぉ〜
人
ξ゚⊿゚)ξ< ……津出ツン。よろしく
_
( ゚∀゚)< じゃ、そんなとこで、みんな行こうか
ジョルジュを先頭に、一行はペンションの建物の方へ。
ξ゚⊿゚)ξ(ん?)
(`∠´£°ゞ°)
サッミ£°ゞ°)< ん? なになに、どうかしたー??
一瞬、ロミスという男の後ろに何かが見える。
悪いものではない、おそらくずっと彼を守っている”なにか”。
ξ゚⊿゚)ξ< ……それ、いつ頃から脱色してるの?
£°ゞ°)< えー、いつだっけなー、高3とかかなー
見ていたことをごまかすために、適当な話を振る。
ただでさえ安全そうな心霊スポットという状況に加え、いわゆる守護霊みたいなものもついている。
今回はまず安全だと思って間違いないだろう。
そんなことを思いながら。
-
ペンション内。
足を踏み出すたび、靴が床を叩くかつん、かつんという音が廊下に響く。
窓は心無い侵入者によってすべて割られ、壁には乱雑なラクガキが散見される。
_
(lll゚∀゚)< うっわぁ……やっぱ、なかなか雰囲気あんなぁ……
从lll'ー'从< ジョルくん、離れないでね? ぜーったい離れないでねぇ〜……!!
( ^Д^)< せんぱーい、びびってんすかwwwww
_
(lll゚∀゚)< うっせ、怖ぇからてめーらよんでんだろーが、俺らの身代わりに呪われろ!!
( ^Д^)< ちょwwwwひでーっすよせんぱーいwwwww
£°ゞ°)< ツンちゃん先輩大丈夫ー? なんかさっきから黙ってるけど
ξ゚⊿゚)ξ< ……もともと、こんなもんだから。気にしないで
£°ゞ°)< ほんとー? ま、怖くなったらいつでもいってちょーだいね、ロミスくんのここ、あいてますよ?
ξ゚⊿゚)ξ< そうね、もしもの時はお願いするかも。ありがと
心配してるのか誘ってるのかよくわからないロミスを適当にあしらいながら、ツンは思う。
ξ゚⊿゚)ξ(……おかしい)
違和感。
ここは本当に幽霊のいる心霊スポット。そのはずだ、そのはずなのに――
ξ゚⊿゚)ξ(――なんで、あれほどいた幽霊と、ぜんぜん出くわさないの?)
比較的陽気な幽霊たちのようだったし、テレビの撮影があるから寄ってきていたのだろうか。
もしくは、テレビクルーに同行していた霊能力者が、帰り際に全部祓ってしまった、とか?
……そんなことがあるだろうか?
そんなことを考えながら、黙々とペンション内を進んでいると
ξ; ⊿ )ξ ――っ!!
――寒気。
-
ξ; ⊿ )ξ(なにこれ、何、何これ?)
未だかつて感じたことのないような寒気。いや、これは『悪寒』と呼ぶべきだろう。
突如襲ってきたそれが、今まで冷静だったツンの思考能力を一瞬にして奪う。
どろり、と生暖かい汗が背を伝う。
「逃げろ」、そう本能が警鐘を鳴らしている。
£°ゞ°)< ツンちゃん先輩ほんと大丈夫ー? 顔真っ青だけど
ふと顔を上げれば、ロミスの顔。
ξ; ⊿ )ξ< あ、ごめん。私ちょっと、気分悪くなっちゃって
_
(;゚∀゚)< ちょ、大丈夫かよ!?
从;'ー'从< 大丈夫!? ごめんね〜、わたしってば自分のことで手一杯できづかなかった〜
ξ; ⊿ )ξ< ごめん、ちょっと、あの、やばいかも……引き返さない? 申し訳ないけど
うまく頭が回らない。
「とにかくそこから逃げろ」と、それだけがずっと頭の中をぐるぐるまわっている。
_
(;゚∀゚)< わかった、とりあえず車まで戻ろう。お前らはどーする?
ふらつくツンに軽く肩を貸しながら、長岡が後輩二人に訊ねる。
( ^Д^)< あー、どうするよロミス?
£°ゞ°)< せっかく来たからなー、俺もうちょい見て回りたいかも
( ^Д^)< そうだな、じゃあ俺らはもうちょい見て回りますわ、先輩らは先に帰っててちょーだいよ
-
_
(;゚∀゚)< そ、そうか。気をつけろよ?
やり取りを、ぼーっとする頭でツンは聞いている。
止めた方がいいのではないか、しかしどう止めたものか。
うまく頭が働かないまま、肩を貸している長岡とともに、ツンの身体は戻ってきた道の方へ方向転換していく。
( ^Д^)< 帰り道にユーレイ出ても、女の子ほっぽって逃げちゃだめっすよーせんぱーいwwwwww
£°ゞ°)< ツンちゃん先輩も、お大事にねー
後輩たちの声。
ツンが視線を後ろにやると
(`∠´£°ゞ°)
ロミスの後ろに、一瞬だけ先ほどの守護霊が見えた。
ξ; ⊿ )ξ(大丈夫……かな)
彼らにはあれがついているし、きっと大丈夫だろう。
ぼんやりとする意識の中、ツンはそんなことを思った。
「おきいし……さんぼんせ……」
背中から微かに、何かのわらべ歌のようなものが聞こえた気がしたが、
それが気分の悪さからくる幻聴なのか、それとも実際に誰かが歌っているのか、
ツンにはもう判断できなかった。
-
***
後悔。
_
(; ∀ )
从 ー 从
ξ ⊿ )ξ
その二文字が頭から離れない。
あの廃ペンションからほど近い場所にあるファミレス。
そこに、テーブルを囲んで項垂れる三人の姿があった。
从; ー 从< プギャーくんたち、どこ行っちゃったのかなぁ〜……
あの廃ペンションに行った日から、1週間経っていた。
あのとき同行した後輩二人は、あの夜以来行方がわからない。
ツンは悔やんでいた。
ξ ⊿ )ξ(あのとき、私が止めていれば……)
あの場で、明らかに状況がおかしいことを、自分だけが認識していたのだ。
なのに、自分は止めなかった。
ξ ⊿ )ξ(私のせいだ……)
あのとき、もっと他にうまい言い訳はなかったのか。
そもそも、自分が変に思われることなど構わず、率直にこの霊感を明かしていれば、こんなことにならずに済んだのだ。
自責の念が、嫌でも心の奥底から湧き出てくる。
_
(; ∀ )< 俺のせいだ、俺が心霊スポットに行こうなんて言い出したから……
ξ;゚⊿゚)ξ< え……
-
从;'ー'从< ジョルくん〜……
_
(; ∀ )<< そもそも俺が、あいつらを誘ったりしたから!! 俺のせいだ!! 全部!!!
見れば、項垂れた長岡の肩が小刻みに揺れている。
渡辺は彼の方に手を伸ばし、しかし触れられずにひっこめる。
ξ゚⊿゚)ξ< ――それでも、あの場所に来たのは彼らの意思だわ
ふいに口をついて出た言葉。
それに対してツン自身が一番驚いていた。
何を言っているのだ、自分は。
長岡が固まっている。
_
(; ∀ )< でもっ
ξ゚⊿゚)ξ< 警察にも届け出は出したんだし、話すことは話した。もう私たちにできることはない。
私たちにできることは、捜査の結果を待つことだけ、違う?
_
(; ∀ )< っ……。
何かを言おうとして、言葉に詰まる長岡。
何を言っているのだ、もう一度自分自身に問いかけながら、ツンは続ける。
ξ゚⊿゚)ξ< あんたが自分を責めるのは勝手、でも、それで彼らが戻ってくるわけじゃない
从;'ー'从<< ツンちゃん!! ちょっと言い過ぎ――
あたふたしながらも、ツンを止めようとする渡辺の言葉を、長岡の手が制した。
_
(; ∀ )< 悪ぃ、そうだよな、その通りだよな……
-
_
(; ∀ )< 自分を責めたってしょうがないってことは分かってんだ、分かってんだけど……どうにも、な
ξ゚⊿゚)ξ< ……警察の人も言ってたでしょ、後輩くんたちはあの建物には居なかったのよ
从;'ー'从< そ、そーだよ〜。何かあったとしても、あの夜のことが原因とは限らないし〜
何を言っているのだ、もう一度ツンは繰り返す。
自分は彼らが何が原因で消えたのか、分かっているではないか。
間違いなく、彼らは心霊的な原因によって行方不明になったのだ。
あの夜、あの場所に幽霊たちが居なかったのは、自分たちがテレビクルーでなかったからでも、
ましてやロケに来ていた霊媒師が全部祓ってしまったからでもない。
_
(; ∀ )< そうだな……場所が心霊スポットだったからって、気にしすぎかな、俺……
あの場所に幽霊たちがいなかった『理由』それは――
ξ゚⊿゚)ξ< そうよ、長岡。冷静に考えてみなさい……
――それは、あの奥にいた『何か』の存在。
自分たちよりずっとずっと強力な『それ』に恐れをなし、弱い幽霊たちが全て逃げてしまったから。
それを自分は知っているのだ。
知っているのである。
ξ゚ー゚)ξ< ……幽霊なんて、いるわけないでしょ?
最後に口をついて出た言葉で、ツンは悟った。
自分はこの件に関して、全ての責任が自分にあることを誰にも言うことができないのだと。
それは幽霊のせいでもなんでもなく、他ならぬ自分自身の弱さゆえに。
人からおかしいと思われたくない、人から責められたくない、怖いものに関わりたくない。
そんな誰にでもある、弱さゆえに。
視界の隅の紙ナプキンに、真っ赤な文字で「たすけて」と書かれているのが見えた気がした。
ツンはそれに対しても、見ないフリをした。
-
(
)
i フッ
|_|
.
-
今夜はこれで終わりです。
次回、最終話 5本目 『人喰い電車』
今週中、またお目見えしましょう。
-
結局二人と守護霊っぽいものがどうなったのか、凄く気になってハラハラしている
-
おきいしとれた さんぼんせん
-
次で終わりか
モララーの行く末は……
-
乙。 おきいしさんぼんせんの話怖かったから相乗効果で今回も怖かった
-
守護霊っぽいものはなんだったんだ……
-
―
―――
―――――
(,,゚Д゚)< わたしが彼女から聞いたのはここまでです
( ∀ ) ……。
4本目のロウソクが消えた。
残るロウソクは、あと1本。
.,、
(i,)
|_|
( ∀ )(『理由』……)
揺れるロウソクの火を見ながらモララーは考える。
自分がここにいる『理由』。
自分の記憶がぼんやりとしている『理由』。
なぜ、時刻表がよめないのか、なぜ猫が喋るのか、その『理由』。
どうかんがえても『ここ』は、”この世のものとは思えない”。
【(,,゚Д゚)< 深く思い出せないとすれば、それはきっと目を逸らしているだけでしょう】
脳裏に焼き付いた、猫の言葉。
自分はいったい、何から目を逸らしているのか。
( ∀ )(そうか、ボクは――)
記憶にあるのは、自分たちに迫る巨大な車体。
自分は、妻を助けようとして突き飛ばし、そして
【モラぁ、頼むよ……目ぇあけてくれよ……】
( ∀ )(――死んだのか)
-
結論に至り、うなだれるモララー。
猫はそれを、じっと見ている。
曇りのないガラスのような瞳で、ただじっと。
しばしの沈黙の後、彼は口を開いた。
( ∀ )< ……ボクも、思い出したよ
横目でちらり、と猫を見やりモララーは言った。
猫は小首を傾げている。
(,,゚Д゚)< はい?
( ∀ )< キミが今までボクにしてたみたいな話さ。このトロッコとも関係がある、話
(,,゚Д゚)< なるほど、それはぜひお聞きしたいものです。
ネコのわたしとしては、ヒトのあなたの話はとても興味深いものですので
( ∀ )< うん、わかったからな。これは、そう、僕とつーちゃんが育った町の話――
モララーは、話し始める。
猫の方は見ずに、目の前にあるトロッコの、その上に灯るロウソクの炎だけをぼんやりと見つめて。
もう戻れないであろう、あの町の風景に思いを馳せながら。
-
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::__」_ _,┬、___,ー::::::::::::::
:::::::r~_[ロロ]_ヽ======:::::::
:::::::| ̄|П|~ ̄|n「n| 「П| 「:::::::::::::::::::::
:::::::|_|Ц|__|レ|U| |Ц| L::::::::::::::::::::::::::::
:::::::|‐| |‐ | | 5本目 『人喰い電車』 :::::::
:::::::|ニ_|_|_ニ_|ニ|ニ|ヘ|_|/ニ::::::::::::::::::::::::::::
:::::::||[=]]」 ||=ニi=iニ=::::::::::::::::::::::::::::
:::::::.L_二二_⊥」、ニノー=ーヽニ::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
-
―――――
―――
―
ボクたちが育った町は、炭鉱で栄えた町でさ、
ボクと奥さん――つーちゃんのお父さんも閉山までは炭鉱で働いてたんだ。
子どものころよく父さんとやったなぁ……
( ´∀`)< モララー、今日一日ゼロ災害、いいモナ!?
(・∀・*)< ゼロ災害よし! ゼロ災害よし! ゼロ災害よし!
(*´∀`)< モナモナ、よくできました、モナ
(・∀・*)< とーちゃん、今日もがんばって!
(*´∀`)< モナモナ、がんばるモナー
「ゼロ災害よし」ってのは、炭鉱での仕事が始まるときにみんなでやる確認なんだって。
ちょっと面白いよね。
父さんが働いてたころの炭鉱は、だいぶ設備も整って安全性も増してたって話だけど、
昔はそうでもなかったみたいなんだ。
「怪我と弁当は自分持ち」って言ってさ、事故とか災害って結構あったみたい。
-
そんな頃の話。
ボクたちの町は、街から炭鉱まで線路が通っててさ、電車で炭鉱まで行くんだよ。
朝、炭鉱マンたちをぱんぱんに詰め込んだ電車が、
夜は疲れたくたくたのおっさんを詰めて戻ってくる。
でもね、たまに朝ぱんぱんだった電車が、夜、空いて戻ってくることがある。
落盤や有害なガス、火災。
そんな事故の犠牲になって、帰りの電車に乗れない人が大勢いたんだ。
帰りたかった家族のもとに帰れなかった人たちが、大勢いたんだよ。
それでも炭鉱マンの家族たちは、支えあって懸命に生きてた。
でも、やっぱりね、愛する家族を失う悲しみは、そう割り切れるもんじゃなくてさ
ある、噂が立ち始めたんだ。
―
―――
―――――
(,,゚Д゚)< 噂というのは?
猫は変わらずモララーを見上げている。
モララーは、なぜかその目をまっすぐ見返すことができず、ロウソクを見つめたまま答えた。
( ∀ )< ”消える”んだってさ。電車に乗った炭鉱マンが
(,,゚Д゚)< ほう
-
( ∀ )< 朝、元気に送り出した家族が、夜、帰ってこない。
……もう二度と会えない。耐えられなかったんだろうね、そんな不条理に
(,,゚Д゚)< なるほど、だからその炭鉱マンは”電車の中で消えた”ことにした、と
( ∀ )< みんな、本当はわかってたと思うけどね。
でも、そうとでも思わないと心が保てない人も、中にはいたんだと思う
モララーは項垂れる。
すこし、口をつぐむ。
( ∀ )< 特に、子どもたちは父親の『死』というものを受け入れることができなかったみたい。
だから、彼らは面白おかしく尾ひれをつけて、その話を広めたんだ
遠くから、音がする。
がたんごとん、という聞き慣れた、音。
――電車が、やって来る音。
( ∀ )< あの電車は”人を喰う”。そんな噂が流れて、
そしていつしかその電車はこう呼ばれるようになった――
ごう、という警笛のような音。
それとともに、モララーたちの目の前に電車が走りこんでくる。
ロウソクを載せたトロッコを押しのけて、モララーたちの眼前に停車した電車はゆっくりとドアを開けた。
( ∀ )< ――『人喰い電車』って
-
かんっ、と足元で乾いた音がした。
見れば、ロウソクを乗せた皿が落ちている。
火は、まだ灯ったままだ。
( ∀ )< ボクの話はこれでおしまい。『最期』に、いい思い出になったよ。ありがとう
真っ暗な電車の車内から、冷たい空気が流れてくる。
見れば、その暗闇の中では無数の目が赤く輝き、
そして暗闇の中から黒い腕が、何本も何本もこちらに延ばされている。
よく聞こえないが、何か声のようなものも聞こえる。
”彼ら”は自分と同じだとモララーは思った。
自分と同じ、不条理な事故で命を奪われ、愛する家族のもとへ帰ることができなかった亡者たち。
( ∀ )(つーちゃん……)
自分もこの人たちの”仲間”になるのだろう、
( ∀ )(最期に一目、会いたかったなぁ……)
彼はそんなことを思って、一歩前に踏み出した。
-
(,,゚Д゚)< ……あなたは、それでいいのですか
.
-
足が、止まる。
( ∀ ) ……ッ
(,,゚Д゚)< あなたは、帰りたかったのではありませんか、あなたを待っている、誰かのところに
( ∀ )< そんな……だって、しょうがないじゃないか! だってボクは、ボクは……
死んでしまったのだ、と彼は続けようとして、それを遮るように猫は言った。
(,,゚Д゚)< 電車というものは、不思議なものです
( ∀ ) ?
(,,゚Д゚)< 中に入って戸が閉まり、また開くと別の――”あなたが行きたかった場所”に行ける
-
そこで、やっと彼は猫の方に振り返った。
( ∀ )
猫の瞳に、自分の顔が映っている。
ひどい顔をしているな、と、彼は思った。
なぜなら、その顔はくしゃくしゃにゆがみ、目から涙が流れている。
( T∀T)
自分は泣いていたのだと、ようやく彼は気づいた。
(,,゚Д゚)< その電車は、あなたの行きたい場所にしか行きませんよ
淡々という猫に、嗚咽交じりにモララーは口を開く。
自分の願いを、口にするために。
( T∀T)< ボクは、帰りたい、帰りたいんだよ。帰れるかなぁ、つーちゃんのところに
泣きじゃくるモララーに、猫はなんてことはないという口調で答えた。
(,,゚Д゚)< 帰れるでしょう。あなたが望むのなら
猫は、ぴょんと椅子から飛び降りると、モララーの足元まで歩いてきた。
その目は、涙に濡れたモララーの顔を見上げる。
(,,゚Д゚)< その証拠に、実はずっと聞こえているのではありませんか?
( T∀T) ?
言われて耳を澄ますと、たしかにそれは聞こえているのだった。
-
駅の暗闇の中から、かすかに聞こえる、声。
【モラ、モラ、聞こえるか?】
【聞こえてんだろモラ、いい加減にしないと包丁だぞ!!】
それは、聞きなれた、ずっと聞きたかった妻の、声。
【……】
【なあ、モラ。オレお前がいねぇと生きていけねーよ……】
【なあ、頼むよ、モラ。目ぇあけてくれよぉ……!!】
懇願する妻の声に、モララーは声を上げた。
-
(;・∀・)< つーちゃん!!
(,,゚Д゚)< その声が聞こえているなら、あなたはきっとその人のもとに帰れるでしょう
(;・∀・)< で、でもどうやって
言われて猫は、ちょっと言葉では言い表しにくい表情をした。
それはよくやるよと呆れるような、どこか安心しているような、あやふやな表情。
猫はモララーの後方、『人喰い電車』のほうに目をやる。
(,,゚Д゚)< ”彼ら”が手伝ってくれるようですよ
(;・∀・)< えっ
( ・∀・)
言われて後方を見やると
(*・∀・)< あっ……!!
まばゆいばかりの、暖かな光が電車から漏れ出している。
電車の中には、黒く汚れた顔をして、ヘルメットをかぶった男たちの姿。
みなにこにこと笑っていて、そして、よく聞けば歌を歌っている。
それは盆踊りのときなどに聞きなれた歌。
――『炭坑節』のメロディ。
-
救いのある話はええのぅ
-
嫁置いて 死ぬは 男の恥よ あ よいよい
死なずに すんだら こりゃ幸い あ よいよい
五体満足 家帰りゃ さ よいしょ
おらが嫁は ああ 美人さん あ よいよい
.
-
(
)
i フッ
|_|
.
-
暖かな、日の光。
(*゚∀゚)< あっひゃー! よかったなモラ! こんなに早く退院できて!!
(;・∀・)< 痛い痛い痛い! ちょ、つーちゃんコブラツイストはやめて痛い!!!
夏の日差しが照らす病院の外で、プロレス技をかける妻とかけられる夫が一組。
(*゚∀゚)アヒャ< これがコブラツイスト極めずにいられるか!! 帰ったらパーティーだぞ!!
(;・∀・)< その理屈わかんない!! とりあえずその手を放して!!!
汗だくになりながら、どこか楽しそうな二人は帰り道を歩いていく。
(;―∀―)< はぁ、下手したらまた入院コースだよつーちゃん……
(*゚∀゚)< だいじょーぶだよ! モラは。なんせお医者せんせーは一生植物状態かもしれないなんて言ってたんだぞ!
(;―∀―)< その話もう何度目なの……いいかげん耳タコなんだけど
(*゚∀゚)< これが話さないでいられるか! 寝てるお前にオレずっと話しかけてたんだからなー
(*―∀―)< うん、ありがと。寝てた間のことはよく覚えてないけど、つーちゃんの声がしたことだけは覚えてるからな
頬をぽりぽりとかいて照れる夫に、妻はアイアンクローを繰り出す。
(; ∀ )<< あだだだだだだ!! だから痛いってつーちゃん!!!!
(*゚∀゚)< あひゃひゃ!! めでてー!!!
-
道中、夫の退院にはしゃぐ妻に疲弊しつつ、モララーはふと、周りに目をやる。
ξ゚⊿゚)ξア、ヒサシブリ (^ω^*)ノヒサシブリダオー('A`;)ウオッリアルツンタソガ!!
見慣れた街並み、見慣れた人々の営み。
帰ってきたのだ、帰ってこれたのだ、とモララーは思う。
( ・∀・)(ん? ”帰ってきた”……?)
いったい、どこからだろうと彼は考える。
(´・ω・`)ヒサビサノ サトガエリダナー
( ・∀・) ……。
街の風景を見ながら、しばし黙考していたモララーだったが
(*゚∀゚)アヒャ?< モラー?
( ・∀・)< あ、うん
(*゚∀゚)< 大丈夫かー? まだどっか痛いか?
( ・∀・)< ううん、大丈夫。ちょっと考え事してただけだから
(*゚∀゚)< あひゃ、なんだよー。心配させんなよなー
( ・∀・)< ごめんごめん、なんか、ね。帰ってきたんだなーって
-
苦笑する夫に、妻は小首を傾げた。
(*゚∀゚)< あひゃー? まだ帰ってる途中だぞ?
( ・∀・)< うん、そうだよね。僕もなんか、変だなーって
(*゚∀゚)< 変なモラだなー。あひゃひゃ
笑う妻に「うん、そだね」と彼も笑って
( ・∀・)< そうだ、またさ、炭鉱記念館行こうよ
(*゚∀゚)< またかー? こないだ行ったばっかじゃん
( ・∀・)< ずっと寝てたからか、なんかしばらく行ってなかった気がしちゃってさ
(*゚∀゚)< 好きだなーお前も。ま、オレも好きだしいいけどさ
そんなことを話ながら歩いていると
( ・∀・)(あれ……?)
(,,゚Д゚)
道の向こうに一匹の猫がいるのが見えた。
(,,゚Д゚)
猫は、しばらくじっとこちらを見ていたが
( ・∀・)< あ……
(Д゚,, )クルリ
やがてくるりと向きを変えると、しっぽをぴょこぴょこ動かしながら、どこかへと歩いて行った。
-
(,,゚Д゚)怪談・電車待猫語のようです
終わり
.
-
そんなわけで電車待猫語(でんしゃまちえきがたり)でした。
僕は田舎育ちで、そんなに電車に乗らずに生きてきたから、
最初都会に出たときは電車について分からな過ぎて、乗り方を一から駅員さんに教えてもらったりしたんですわ。
それこそ、切符はどう使うんだとかそんな初歩のとこから根ほり葉ほり。
でも、そんな僕でも線路を走る電車は見ていたわけで。
妙に身近にある割にはどうやって動いてんのとかいろいろ知らないことだらけ、それが電車かな、なんて思うわけです。
人間の僕でもわからないことだらけなんだから、猫のような彼には余計奇妙なものに見えたんでしょうね、たぶん。
気付いてくれた方もいらっしゃったみたいですが、高架下猫語で出てきた”彼女”の影響は
この作品の世界にも及んでいます。
どういう縁かはわかりませんが、それはどうもドクオくんの写真を伝って感染したようです。
マジでなんなんだろうね、あの娘。
守護霊っぽいのは守護霊です、ベルさん。もしかするとファットマンかもしれない。
どうやらベルさんクラスの守護霊でも”彼女”には勝てなかったみたいですね、おお、こわいこわい
余談ではありますが、この作品を書いてる最中に自称霊能力者の方とお話する機会がありまして
彼曰く、「赤い服を来たおかっぱ頭の少女があなたの部屋にいる」そうです。
皆様も、くれぐれもお気をつけて。
では、これで今回の投下を狩猟します。またねノシ
-
おつ
最終話が来るまでに前作読んできた
あの女の子(=彼女)もいつか直接関わってくる事があるのだろうか
後味の良い話をありがとう、最後うるっときました。
狩猟するのねw
-
完結 したなら こりゃ目出度い あ よいよい
読後満足 スレ閉じりゃ さ よいしょ
この怪談は ああ 良い語り あ よいよい
-
平和で終わって安心した……
-
最後に安心。。。 乙!
-
乙
ギコ見たも初めて読んできたけど、ギコ以外(ブーン達)はみんな同AAでも他人の空似ってことでいいんだろうか
-
>>115~>>119
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
>>119
そうっすね、AAがおんなじな人は別世界の並行存在、みたいにとってもらえればいいなかっておもいます
-
そろそろ過去ログ倉庫に送ろうと思うので、最後にageときます。
読んでない人は読んでみてね!
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■