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ワンダーランドではないようです

1名無しさん:2017/05/17(水) 02:12:15 ID:aa.PTjuE0



両親の罵声が響く午前一時に、彼女はサンタクロースがいないことを知った。


.

2名無しさん:2017/05/17(水) 02:13:50 ID:aa.PTjuE0
――( ^ν^)――


ξ゚⊿゚)ξ「物ですか? 金ですか?」

少女の第一声はそれだった。
人質の身として疑問を抱く、というところまでは普通だが、
平然とそれを口に出す、というところまで来ると微妙なところだった。

下校途中に攫われ、数駅ほど離れたこのアパートに、
現在進行形で連れ込まれているというのに、少女は動揺をあまり見せない。
最初に押さえつけた際には、多少の反応があったものの、今思うと驚いていただけかもしれない。
それもクラッカーを耳元で鳴らされた時のような、ただの条件反射で。

ξ゚⊿゚)ξ「まあ、両方期待できないと思いますが」

( ^ν^)「別にしけた暮らしをしてるわけでもねぇだろ」

裾を外に出している白いブラウスと、それに覆われた紺のハーフパンツという、
少女が身に纏っている服は、シンプルではあるものの品の良さを感じた。安物には見えない。

3名無しさん:2017/05/17(水) 02:14:54 ID:aa.PTjuE0
ξ゚⊿゚)ξ「それなりには潤っているのでしょうね。だから別の問題です」

( ^ν^)「虐待でもされてんのか」

ξ゚⊿゚)ξ「この綺麗な顔を見て言ってるんですか」

( ^ν^)「自分で言うなクソガキ」

文句はつけられても、自惚れとは切り捨てられなかった。
確かに際立つ容姿をしている。自明の理かもしれないが。

この部屋においては、明らかな異物だった。
日が落ちてもいないのに雨戸に覆われ、付近にほとんど物が無い土壁に囲われ、
安っぽい四角形のカバーから漏れる蛍光灯に照らされ、ささくれが目立つ畳の上に座っている少女は。

少女の置き場所はここには無い。身の丈に合っていないインテリアと同種だった。
表情の乏しさや、綺麗に色が抜け落ちた白い肌と金の髪も、その認識を助長させた。

しかし、先ほどまでテープで塞がれていた唇を指でなぞり、
違和感を確認している現在の少女からは、ある程度の人間味を感じられた。

4名無しさん:2017/05/17(水) 02:15:53 ID:aa.PTjuE0
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、そういう意味じゃないです。それにやるなら身体の方ですかね、見ます?」

気が済んだのか少女は唇から手を離し、口を開いた。

( ^ν^)「……いい」

十に一を足すか足さないか程度の子供相手に、少し心臓が揺れた。
これも自明の理かもしれないが、自己嫌悪は拭えなかった。脅し用に持っているナイフを握り直す。

ξ゚⊿゚)ξ「とにもかくにも、私は外れクジなんですよ」

( ^ν^)「なんだ? だから解放しろってか。馬鹿じゃねぇの」

少女の落ち着き払った佇まいには感心すら覚えたが、言いくるめ方には失笑を禁じ得なかった。

ξ゚⊿゚)ξ「いえ、それは無理です。引いたカードは山札には戻せませんし、
ポケットティッシュ程の価値しかない白玉も、ガラガラという音を鳴らす抽選機には戻せません」

( ^ν^)「はぁ……」

ξ゚⊿゚)ξ「つまり、配られたもので勝負するしか無いんですよ」

( ^ν^)「随分と立派な価値観をお持ちのようで」

ξ゚⊿゚)ξ「そうでしょうか」

( ^ν^)「多分同世代より三年ぐらい進んでるよお前は」

ξ゚⊿゚)ξ「ありがとうございます……でいいんでしょうか。えっと、なんの話でしたかね。
……ああ、そう。覆水盆に返らずという話でしたね。続けましょうか」

( ^ν^)「……三年も撤回するか。なあ、一応訊くがこれ見えるか?」

ξ゚⊿゚)ξ「刃物ですね」

( ^ν^)「……もういいや、続けろよ」

ここまで喋り倒す人質というのも珍しい。希少性から考えると寧ろ当たりだったが、
俺の視点から考えると確かに外れかもしれない。少女に呑まれ始めている自分がいた。

5名無しさん:2017/05/17(水) 02:18:40 ID:aa.PTjuE0
ξ゚⊿゚)ξ「私は帰れません。あなたも私を帰せないでしょうし。
ここまではしょうがない、変えられないんですけど、正直に言いますが共倒れしか見えません。
それは望まない結末であることは共通しているので、お互いの利益のためには、
変えられるここから先が重要だと思います。要は、誘拐ではなく旅にしましょうという話です」

( ^ν^)「……は?」

ξ゚⊿゚)ξ「大人の足を使えるまたとない機会ですし。駄目ですか?」

( ^ν^)「駄目に決まってんだろマセガキ」

訳の分からない要求に、流石に苛立ちを覚えた。
こいつはなにを言っているんだ? 呑まれかけていた自我が拘束を振り解き始めた。

( ^ν^)「俺にどんな利益があるんだよそれは」 

ξ゚⊿゚)ξ「私は人質としての価値はありませんが、スパイとしての価値ならあると思うんですよ。
家に地雷を仕掛けられると考えたならそれなりに意義があるんじゃないですかね」

( ;^ν^)「……は?」

ξ゚⊿゚)ξ「あなたが私を連れ回してくれるのなら、要求に従います。これじゃ駄目ですか?」

( ;^ν^)「……お前自分の立場が分かってんのか」

ξ゚⊿゚)ξ「分かってますよ。嫌ならどうにでもしてください」

そう言うと少女は目を瞑り、畳の上に横たわった。
肝が据わっているというよりは、人としての欠落を思わせる行動に、
俺はただただ呆気に取られてしまい、その場に立ち尽すよりほかなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「あ、親に連絡していいですか。
今日と土日は友達の家に泊まります、ぐらいの文面を送れば三日は持つので。
心配もされずに放っておかれるのも今なら丁度いいですよね」

( ;^ν^)「……もう勝手にしろ」

助けを呼ぶことを警戒するべきなのだろうが、もはやその気も起きなかった。
こいつがそんな小賢しい真似をするような人間に見えない。
信頼よりも、畏怖から来る根拠を持ってして、俺はそう判断してしまった。

6名無しさん:2017/05/17(水) 02:19:30 ID:aa.PTjuE0
――ξ゚⊿゚)ξ――


愛想の無い子とよく言われる。
遠回しにしろなんにしろ、私に対する評は大体それだった。

実際、その通りだなと自分自身でも思う。
意図的にでは無いけど、不可抗力でそうなってしまうから。

直す気も起きなかった。寧ろ矯正することに抵抗すらあった。
その起因である嫌悪感は、いつかのテレビで見た海辺の岩をひっくり返すシーンや、
塩漬けした魚が入っている缶詰の封を切るシーンに対するものと似ていた。

だから私は口数が少ない。
自ずと人との交流は減っていき、周りに誰もいなくなっていた。
つい最近の進級で環境が変わってもそれは一緒だった。

現在休み時間を迎えている五年生の教室でも、
私はいつものように席から動かず、対象年齢にずれがある小説を読んでいた。

数年前、一人になった私は読書という趣味を選んだ。
行き着く場所としては自然かもしれないけど、そこで取った行動は少しずれていた。

7名無しさん:2017/05/17(水) 02:20:12 ID:aa.PTjuE0
結論から述べると背伸びがしたかった、ということになる。
スタートラインの前後にあるものから逃げ出したかった。
言うならば、視線を動かした先にいる男子の集団にはいないような存在から。

背後に映る曇天模様と、ミスマッチを起こしている窓際の彼らは、
身振り手振りを織り交ぜながら話を続けている。環境音のようなもので、
いつもは気になりもしないけど、廊下側にいる私にも分かるぐらいに騒がしい。

この中に王子様とやらはいないんだろうな、と思った。どこにもいないのだから、当たり前だけど。

大体の存在は日常を構成するパーツの一つでしか無い。
普段は関心を向けることは無いし、今のように目を寄越し続けることも無い。

( ^ω^)「何処を見てるんだお?」

だから、彼が滑り込んだのは貴重なタイミングだった。
声が聞こえた方……通路側へ振り向くと、良く言えば人が良さそう、悪く言えば気弱そうな男子が立っていた。
確か、さっきまで見ていたグループの一員でもあった。何らかの理由で教室の外に出ていたらしい。

8名無しさん:2017/05/17(水) 02:21:58 ID:aa.PTjuE0
( ;^ω^)「あっ、急に話しかけてごめん! ただ、その、珍しかったから」

名前はなんと言うのだっけと、顔を見続けていると、彼は慌てて言葉を繋げた。

そう、思い出した。内藤という苗字だったはず。
流石に四年も同じ学校に通っていれば、それぐらいの情報は頭に入っていた。
けれど、そこまでしか分からず、どういう対応を取ればいいのかも分からなかった。

少しの間沈黙が続くと、意識の外にあった騒ぎ声が再び耳に届いた。

( ^ω^)「……もしかして、君も読んでるのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「はぁ……」

質問の意図が掴めず、擬音に近い声を返してしまった。
そのせいか、内藤は私の対応に良くないものを感じたらしく、所在なさげな手で頬を掻いた。

ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさい。別に怒ったわけではないの」

いたたまれなくなった私は、内藤の誤解を解こうと、出来るだけ柔らかいトーンで声を発した。
すると彼は、少しの間固まった後、再び動揺を露わにし始めた。どうしろというのか。

ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫だから。落ち着いて」

私は立ち上がり、少し高い場所にある、内藤の頭に掌を置いた。
昔はあの人にこうされると落ち着いた記憶がある。
いや、母親としての威厳が無くなった今でもそうかもしれない。
刷り込みというやつだろうか。これもテレビで見た記憶がある。
案外テレビ子だなと思う、この時代に。BGMとして垂れ流せるのがいいのだろうか。

そこまで考えたところで、私の手は内藤に振り解かれた。どうしろというのか。

まあ初対面……というよりは、彼を初めて認識した日は、浮かび続ける疑問符に悪戦苦闘していた。

9名無しさん:2017/05/17(水) 02:22:32 ID:aa.PTjuE0
ここまで。
また後日。

10名無しさん:2017/05/17(水) 07:07:55 ID:91xjF.cc0
乙。続き楽しみー

11名無しさん:2017/05/17(水) 09:01:57 ID:gIL3Btfs0

面白そうだ

12名無しさん:2017/05/17(水) 09:45:31 ID:/ZHgnL8g0

続き待ってる

13名無しさん:2017/05/17(水) 21:46:46 ID:4MSDl7S.0
wktk

14名無しさん:2017/05/18(木) 09:09:41 ID:tZzGnljQ0
いいなこれ、乙

15名無しさん:2017/05/18(木) 10:47:12 ID:/G9yjHpU0

どうなっていくのか気になる

16名無しさん:2017/05/18(木) 21:58:45 ID:/zTS6FDc0
――( ^ν^)――


堂々としていればいいとは、後部座席にいる少女の弁だった。
親子と見れば不自然な年齢でも無いからと。頷ける考えではあった。
確かに、少し前の自分も同じような考えを使っていた。

ただ、今の自分が実践出来るかどうかは話が別だった。
対向車線を走る一台一台に注意を払いすぎて、運転が覚束ない。
身体が勝手に動かしているようなもので、信号の色を判別出来ているのが不思議なほどだった。

土曜日の青い空が今日は一段と疎ましかった。
解像度の高い視界だと、県道に引かれた白線の経年劣化が分かり易く映る。
些細な綻びすら衆目の元に晒されてしまう。そんな気がした。

いつのまにかブレーキに体重がかけられていた。
前を行くトラックが停止している。それを壁に見立てて、俺は少し息を吐いた。

ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫ですか」

背後から少女の声が聞こえた。
バックミラーを見ると、さっきまで開いていた漫画雑誌が閉じられていた。

( ^ν^)「誘拐犯って心配されるんだな」

なにもかもがおかしかった。
俺に気を遣う余裕すらある少女も、少女の要求を呑み続けて雑誌まで買い与えた俺も。
既に下に置かれているのか。職場ですらこんなスピードで転がり落ちたことはねぇぞ。

17名無しさん:2017/05/18(木) 22:00:18 ID:/zTS6FDc0
ξ゚⊿゚)ξ「よくある話じゃないですか? 極限状態で情が芽生えてしまうとか」

( ^ν^)「そうかもな。極限状態ならな」

他人事のように話す少女は例に当てはまらないが。

中々前方のトラックは動きを見せない。
少しの間、沈黙が続いた。

ξ゚⊿゚)ξ「今更な話ですが」

静寂を破ったのは、車の発進ではなく、少女の声だった。

ξ゚⊿゚)ξ「結局のところ、誰でも良かったんですか?」

( ^ν^)「……答える必要あんのかそれ」

俺の返答は、違うと言っているようなものだった。

ξ゚⊿゚)ξ「母親の方ですか?」

( ^ν^)「……はぁ」

吐いた溜め息は、肯定に等しかった。
どちらかと言えばそっちの比重の方が大きい。

18名無しさん:2017/05/18(木) 22:02:43 ID:/zTS6FDc0
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃどっかで恨みを買いますよね」

( ^ν^)「……別に、恨んでるつもりじゃ」

言いかけたところで口が止まった。



文学少年、と言えば聞こえが良い根暗な高校生。
それが二十年近く前の俺だった。

日陰者の趣味にも馴染めなかった俺は、教室の隅にいる脂ぎった男どもを、
内心では見下していた。息抜きと現実逃避を混合し、だらだらと堕ちていくこいつらとは違うと。

今思うと、唯一秀でている勉学で、自分のプライドをなんとか維持していたのだろう。
クラスの賑わいから逃げた先にある文字に没頭し、孤立していることを孤高だと思い込んでいた。

その思い込みも、実に脆いものではあったが。

傍から見れば、俺は見下している連中と何も変わらなかった。
寧ろ一人でいる分惨めに映り、嘲笑の的には最適だった。

それなりの進学校ではあったから、表立った攻撃は少なかったが、
時折俺をネタに使った話が耳に入った。普段は喧騒の一部でしかない声が、
そんな時に限って言葉として意味を成し、鮮明に聞こえたことを覚えている。

だから、女子連中に視線をやっている際に、あいつに話しかけられた時は冷や汗が止まらなかった。

19名無しさん:2017/05/18(木) 22:04:28 ID:/zTS6FDc0
ζ(゚ー゚*ζ「どこをみてるのかなー?」

残暑が鬱陶しい九月の日だった。
開いた窓に近い机の俺はまだマシだったが、入って来る風は生温く、あまり心地の良いものでは無かった。
そのせいしれない。後ろの席に彼女がいることに気づかないほどに、注意力を欠いていたのは。

恐る恐る振り向くと、頬杖をついて座っている彼女が目に映った。
不安を煽りたてる心臓が、一瞬だけ別の鳴り方をした。

別の世界に住んでいる存在がそこにいた。
派手な化粧。ウェーブをかけた金髪。着崩したブラウス。
どこを取っても気圧される要素しか無い……はずだった。

品の無さを感じなかったのは、単純に顔立ちが整っているからだろうか。
それとも、内面から滲み出ているものがあるのか。

なんにせよ、俺がデレに見惚れていた瞬間があったのは事実だった。
すぐにそれどころではなくなってしまったが。

20名無しさん:2017/05/18(木) 22:06:18 ID:/zTS6FDc0
ζ(゚ー゚*ζ「珍しいね。いつもはずーっと本に向かってるのに」

( ;^ν^)「あっ、いや、その」

スタッカートのような声を出している俺は情けなかった。
この先に起こりうることに、恐れを抱いていた。

何度傷つけられようが、心の強度は増したりしない。
少なくとも俺の場合はそうだった。
だからその時が訪れたら、同様に胸が引き裂かれてしまうのだろう。

じゃあ、どうすればいい? どう取り繕って、この場を凌げばいい?

……考えるまでもなかった。無駄だ。
俺がどんな言葉を使おうが、デレが曲解して面白おかしく言いふらしたらおしまい。

( ^ν^)「……くだらねぇ話をしてんなって」

なら、もういい。
そう開き直れたのは、日ごろの鬱憤が爆発したせいだろうか。

21名無しさん:2017/05/18(木) 22:09:42 ID:/zTS6FDc0
( ^ν^)「どいつもこいつもモララーモララーって馬鹿みてぇに騒いでやがる。発情期か? あいつら」

モララーとは、先日の甲子園で優勝投手になった球児だった。
ルックスが良く、メディアでの受け答えも様になっていた。

( ^ν^)「あいつらはさ、ドラマに酔ってるだけだろ。
体格が良いわけでもないし、特に目立った球も放ってない。プロに入ったら最初だけ客寄せに使われておしまいだよ。
そしてキャーキャー騒いでる声も萎んでいく。結局は一瞬の酔狂じゃねぇか。そんなんに踊らされるやつって脳が足りないんじゃねぇの」

捲し立てるように溜まっていた毒を吐き出した。
紛れも無い本音で、間違ったことを言ったとも思わない。

だが、一瞬も無い人間の妬みが混じっているのは否めなかった。
例え先を見据え、軌道に乗り、良い生活が出来るようになったとしても、俺にはあんな春は訪れないから。

ζ(゚ー゚*ζ「……へぇ」

俺の小心を引き戻したのは、デレの声だった。
そのトーンからは感情を伺うことはできなかった。

再び冷や汗を掻き始めたのと、デレが動いたのは同時だった。
彼女は開かれた窓の方へ向き、背伸びを兼ねるようにして立ち上がった。
腰に巻かれたサマーベストが連動して動く様が、やけにゆっくりと見えた。

22名無しさん:2017/05/18(木) 22:10:58 ID:/zTS6FDc0
ζ(゚ー゚*ζ「いやーその通りだね」

( ^ν^)「……えっ」

俺の方に向き直したデレは、やけにすっきりした表情で、
胸の前で両手を重ね、小さく拍手をするかのように動かした。

ζ(゚ー゚*ζ「だから、代弁者に褒美のキスを」

一瞬の出来事だった。
俺の頬に、デレが口付けをしたことは。

ζ(゚ー^*ζ「いい? これが一瞬の酔狂です」

軽くウインクをしてから、デレはそそくさと女子連中の方へ去って行った。



( ^ν^)「……確かに軽薄な奴だったが、どうなんだろうな」

自分でもよく分からなかった。あの出来事があったから、今の状況があるのは間違いないが。

ξ゚⊿゚)ξ「私に訊かれても分かりませんよ」

( ^ν^)「ああ、悪い」

口に出してからはっとしてしまう。
それは癖だった。遜り続けていた人間の。

23名無しさん:2017/05/18(木) 22:13:04 ID:/zTS6FDc0
ξ゚⊿゚)ξ「誘拐犯も謝罪とかするんですか」

( ;^ν^)「うるせぇな。お前やっぱり自分の立場を理解出来てねぇだろ」

ξ゚⊿゚)ξ「あなたが分かってないんですよ。着替えの服も、
風呂場も、食事も提供して、尚且つ暴力も振るわず、あまつさえパシリすらこなす」

( ;^ν^)「……ちっ」

これも癖だろうか。

ξ゚⊿゚)ξ「結構いい人なんですね、あなたって」

( ^ν^)「……馬鹿じゃねぇの」

俺の悪態は、クラクションに掻き消された。
いつの間にか信号の色が変わっていたらしい。

八つ当たりをするかのように、アクセルを強く踏み込んだ。
視界の端に映る、横断歩道を待つ母と子の姿が瞬く間に歪んだ。

( ^ν^)「あれだろ、不良が少し良いことをするのと一緒。ああいうの大っ嫌いだから俺は」

ξ゚⊿゚)ξ「ごもっともで。結構私たちって気が合うんじゃないですか」

( ^ν^)「……嬉しくねー」

同意を得られたことに対する感情は複雑だった。

24名無しさん:2017/05/18(木) 22:14:38 ID:/zTS6FDc0
――ξ゚⊿゚)ξ――


おはようと声をかけて来た内藤に、私は返事を返さなかった。

なんとなく予想はついていたけど、よくもまあ前日で懲りないものだった。
お人好しという分類なのかもしれない。もしくはただ能天気なだけか。

彼にそんな印象を抱いたのが今朝のことだった。

そして次の休み時間を迎えるや否や、私の机に歩いて来た彼に、
どんな印象を抱けばいいのか分からないのが現在のことだった。

ξ゚⊿゚)ξ「……国語とか苦手な人?」

左に立っている内藤に目を向けないまま、言葉を発した。

( ^ω^)「えっ? 別に苦手ではないと思うお……多分」

ξ゚⊿゚)ξ「著者の気持ちを考えることって難しい?」

( ^ω^)「それも別に……。なんでだお?」

なんでもなにもなかった。
私は確かに内藤の机に入れていたはずだった。
あなたがからかわれるだけだと、そういう文章を書いた紙を。

( ^ω^)「……あっ、もしかして君も嫌だったのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「なにが?」

( ^ω^)「ほら、冷やかされるのが」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな相手もいないから別に」

( ;^ω^)「おっ……」

私の返しに影を感じてしまったのか、内藤は言葉を選び始めている。
悪い気はしないけど、いらない気の遣い方だった。

25名無しさん:2017/05/18(木) 22:15:58 ID:/zTS6FDc0
ξ゚⊿゚)ξ「……結局あなたはなにがしたいの?」

私は頬杖をつき、内藤を見上げた。
急に視線を寄越されたせいか、元からかは分からないけど、彼の所作は安定していない。

( ;^ω^)「ちょっと、話がしたくなったんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「例えばどういう?」

( ;^ω^)「ほら、あの漫画を知ってるのかとかだお」

あの漫画、とはなにを指しているのかと訊くと、内藤は私が聞いたことのあるタイトルを出した。

ξ゚⊿゚)ξ「そりゃ、知ってはいるけど、読んだことは無いわね」

( ;^ω^)「そうかお……」

再び内藤は言葉を選び始めた……というよりは、今度は探し始めたと言い換えた方が正しい気がした。
なんとか間を空けないようにと、必死に頭を動かしているように見える。

私は、その姿が妙に気になってしまった。

ξ゚⊿゚)ξ「……それ、面白いの?」

結果として、助け船を出すぐらいに。

26名無しさん:2017/05/18(木) 22:17:34 ID:/zTS6FDc0
今日はここまで。
またお付き合い願えたらなと思います。

27名無しさん:2017/05/19(金) 07:16:34 ID:.OmOO3Ok0

めげるな内藤……

28名無しさん:2017/05/19(金) 08:08:13 ID:U3qzk/IQ0
面白い
先が気になる

29名無しさん:2017/05/19(金) 08:22:36 ID:qRXyEPVE0
こういうツンも好きだ


30名無しさん:2017/05/20(土) 20:58:17 ID:9Ror0A8M0
――( ^ν^)――


俺はなにをしているんだ? 今更になって、そう思った。
三十代半ばの無職が今の状況に疑問を覚えるのは当然だった。
青々とした芝生の上で、ゴムボールを少女と投げ合っているという、そんな状況に。

明らかにおかしい事態なのに、認識が遅れた理由は、余裕の無さにあった。
言われるがままにたどり着いた市民公園には、自分の入る隙間が見当たらなかったから。

快晴の下に照らされている、アスレチックにまとわりつく子供、
ペットと戯れている熟年夫婦、噴水近くのベンチで距離を計りかねている少年少女。

その風景に溶け込むことは、とても困難に感じたが、
強い視線を察知することは無かった。ガキどもの高周波音が隙間を作ってくれたせいだろうか。
それとも、親子と見れば不自然ではない、という少女の見立て通りだったのか。

どちらかと言えば後者の方に頷けた。
確かにこうしていると、父親ごっこをしている気分になる。
なんかの風俗かよ、と内心で毒づいたが、首筋を撫でる風はインモラルの反対にあるものだった。

31名無しさん:2017/05/20(土) 20:59:50 ID:9Ror0A8M0
長らく触れていない健全は、引きこもりにとっては毒だ。
浴び続けていると、長らく触れていない後悔が浮かぶほどに。

人生を間違えたのは、いつだった?



ガリ勉というのは、つまりのところ要領が悪いだけだと知ったのは、
度々俺を小馬鹿にして来たあいつが、自分より上の大学に悠々と入った時だった。
裏でなにをしていたかまでは把握していないが、遊びの計画を立てる姿ばかりが目に入り、
勉強に打ち込んでいるようには見えない男だった。なのに結果はそれだ。
少なくとも、放課後の時間を多く使ったのは、間違いなく自分の方だというのに。

しかし、即ちそれは、何かに打ち込める精神を俺が持っていたことの証明だった。
なのに、大学に入って打ち込んだものは、運転資格の取得ぐらいだった。

どうしようもない挫折感を覚え、だらだらと単位を掠めとり、
サークルにも入らず、怠惰を貪る俺には、乗せる相手なんて見つかりもしないというのに。

孤独には慣れていたはずだ。高校に比べ、大学では馬鹿にされることも無い。
楽な日々を送れていた。だが、それだけ。本当に、楽なだけだった。

そんな空虚な生活で摩耗した心に、遅効性の病が襲い掛かった。
くだらないと思っていたものに憧れを抱いてしまった。
甘ったるくて安っぽい歌を、思い出の一ページに刻み込むような、そんな人種に。

32名無しさん:2017/05/20(土) 21:01:27 ID:9Ror0A8M0
俺をこんな風にした張本人は、とっくに手の届かない場所にいた。
次元が違う存在に恋をしてしまう。高校で見下していた、脂ぎった男たちの気持ちに近かったが、
次元、という表現が、ただの比喩でしかないところが決定的に異なっていた。

いつしか、確かに存在する彼女が、どうしているのかを考えるようになった。
不毛な時間だった。俺にとって、ネカディブな想像しか浮かばなかったから。
それでもやめられず、やがて冬を迎え、クリスマスソングが至る所で流される頃には、酷く憂鬱になった。
華々しい音楽を聴くと、彼女はイルミネーションの中に放り込まれる。
その先を見たくない俺は、瞼を閉じても消えないものを必死に振り払った。

当時の俺は、頭を黒で塗りつぶしたかった。
ラジオから流れる轟音を聴いていたのもその一環だった。
きらびやかさとは無縁な、無骨な声やギターに溺れていた。

ロッカーがサンタクロースは死んだと歌ったのはクリスマスイブの夜だった。
最初はざまぁみろと思ったが、当たり前の話だった。
俺がいる場所はどうしようもない現実で、デレが誰かと寝ていることは変わらなかった。

33名無しさん:2017/05/20(土) 21:02:24 ID:9Ror0A8M0
それっきり病が襲ってくることは無かった。
再び空虚な生活を送り、こなし、やがてそれなりの企業へ入社した。

学歴というのは、あくまでスタートラインでしかないことを知ったのはその時だった。
真面目にこなしていればなんとかなると思っていた。
だが、仕事を覚えるためのメモにはどっ散らかった内容を刻んでしまい、
分かったふりをして独断で動けば怒声が飛び、同僚とのコミュニケーションも上手くいかなかった。

気がつけばカーストの最下層だった。
同僚と談笑しているからといって、事務職の契約社員である、
若い女の仕事を押し付けられることは日常茶飯事だった。

それぐらいやってやれよと、軽い調子で言う同僚と、
猫撫で声から冷めたトーンに落とし、上っ面の謝罪をする女。

いつか殺してやると思い続けながらも、訪れるはずもない実行日の前に退職届を書いた。

34名無しさん:2017/05/20(土) 21:04:04 ID:9Ror0A8M0
大体その繰り返しだった。
やがては祈られる対象となり、怠惰を貪るだけの人間になっていた。

そんな空虚な生活で摩耗した心には、やはりというべきなのか、デレの影が忍び寄って来た。
ネットの発達は著しい。少し調べれば、近況が分かってしまうケースもある。

幸か不幸か、彼女は分かってしまう方のケースだった。

別に、大きなことをしようとしたわけではない。
あわよくばネットストーカーでもしてやろう。
小心者の俺がすることなんてその程度のはずだった。

35名無しさん:2017/05/20(土) 21:05:43 ID:9Ror0A8M0
ただ、デレの結婚相手が、あいつだったのがいけなかった。
歪な恋慕の相手と、挫折の象徴が混ざり合い、脳内がどうしようもないほどに掻き乱された。
長らく揺れ動くことの無かった感情が爆発し、前後不覚になり、最終的に得たのは全能感だった。
本来なら決行出来るはずの無い計画が、今なら完遂出来る気がした。

まずは子供を人質に取ろう。話はそこからだと思った。



ξ゚⊿゚)ξ「なにが面白いのか分からないですね、これ」

疲労を感じさせない声で少女は言った。

流石に喉は乾いたのか、ペットボトルの水を度々口に含んでいるが、
ベンチで俺の隣に座っている少女は息一つ切らしていなかった。

華奢な身体にも関わらず、運動神経が良いのか、
続けるごとに随分と綺麗な球を放るようになっていた。

36名無しさん:2017/05/20(土) 21:07:16 ID:9Ror0A8M0
( ;^ν^)「てめーが言い出したんだろうが。へとへとになるまでやらせといてよく言うな」

対照的に体力の無さを露呈している俺は、ベンチの裏に両腕を回し、空を見上げていた。
徐々に雲が占める面積が増えてきているように見える。さっきよりはマシな天気だ。

ξ゚⊿゚)ξ「あの、シャワーを浴びたいので一回戻っていいですか」

( ;^ν^)「なんでお前の意思で事は動いて行くんだよ……」

ξ゚⊿゚)ξ「だってあなたがどうしたいのか言わないから。結局物とか金が欲しいんですか?」

その問いかけに対する解答が見当たらなかった。
結局のところ、誘拐までは勢いで誤魔化せたが、
そこからは本来の小心が戻ってしまっていた。

漠然とした復讐心を、どう扱えばいいのか分からない。

ξ゚⊿゚)ξ「別にまだ決めなくてもいいですから、とりあえず帰りましょうよ」

少女は先に立ち上がり、空のペットボトルを隣のゴミ箱に入れた。

( ;^ν^)「あのな、俺の家だからな」

後を追うように俺も立ち上がった。
我ながら、滑稽な姿だった。

37名無しさん:2017/05/20(土) 21:09:16 ID:9Ror0A8M0
今日はここまで。
次は来週中に投下出来たらなと思います。
よければまた。

38名無しさん:2017/05/20(土) 21:59:40 ID:cJpQZGC20


39名無しさん:2017/05/20(土) 22:45:55 ID:JlzfsKRI0
乙乙

40名無しさん:2017/05/20(土) 23:44:03 ID:IfvYPbhc0
淡々と話が進んでいくの好き


41名無しさん:2017/05/21(日) 21:36:19 ID:pRmr/vW.0
――ξ゚⊿゚)ξ――


あの漫画は面白かったと伝えるところまでは良かった。
懲りずに私の席まで来た内藤も嬉しそうにしていたし、自分も悪い気はしなかった。
けれど、その後に感想を続けると、途端に彼は困惑し始めた。

ξ゚⊿゚)ξ「えっと……なにかおかしいことを言ってしまったみたいね」

触れたことの無いジャンルだったせいか、感覚がずれていたらしい。

( ;^ω^)「おかしいというか……僕と見てるものが違うお」

ξ゚⊿゚)ξ「どういう感想が一般的なの?」

( ;^ω^)「そもそもそんな深く考えて読んでないお。まあ、主人公がかっこいいとかは思うけど」

ξ゚⊿゚)ξ「……そんなものかしら?」

( ;^ω^)「そんなものなはずだお! ……いや、自信無くなって来た」

内藤は語尾を萎ませ、右手で自分の髪を荒く擦った。

声と身体を使い、分かり易く喜怒哀楽を表す彼は、
私には到底理解出来ない存在ではあったけど、見ていて退屈はしなかった。
しかし、意図せずとも振り回してしまい、内藤を悪目立ちさせるのは良くないと思った。

42名無しさん:2017/05/21(日) 21:38:20 ID:pRmr/vW.0
ξ゚⊿゚)ξ「とりあえず、落ち着いて」

私は立ち上がり、内藤の頭に掌を添えた。
彼は一瞬身を震わせたけど、この前のように振り解くことは無かった。

( ;^ω^)「……だから、それはやめてくれお」

その代わり、弱々しい言葉で私に抗議した。
あまり嫌がっているようにも見えないのだけど。

それでも彼が戸惑っているのは確かなので、私は「ごめんなさい、つい」と言った。

ξ゚⊿゚)ξ「……どうしたの?」

内藤は少し驚いたような表情をしている。

( ^ω^)「……いや、なんでもないお」

ξ゚⊿゚)ξ「……そう」

引っ掛かるものはあったけど、特に追及はせず、私は手を離した。

( ^ω^)「……えっと。ちょっと次の授業の準備をしてくるお」

すると内藤は、そそっかしい様子で自分の席へ戻って行った。
私は再び引っ掛かりを覚えたけど、呼び止めることはしなかった。

43名無しさん:2017/05/21(日) 21:39:37 ID:pRmr/vW.0
内藤が去ってしばらくすると、私の耳が妙な音を拾い始めた。
その正体はクラスメイトである彼らの騒ぎ声だった。
いつもなら環境音でしかないのに、現在は聞き流すことが出来なかった。

彼らの方へ視線を向けると、からかわれている内藤の愛想笑いが歪んでいた。
普段は軽い冗談で済んでいるのだろうけど、今日はやけにしつこく絡まれている。

それを見た私は、海辺の岩がひっくり返される様や、
塩漬けされた魚の缶詰が開けられる様を連想してしまった。

デジャヴを感じた。汚いものが色として可視化されている。
数年前の経験が修復することは不可能だと告げている。

44名無しさん:2017/05/21(日) 21:41:00 ID:pRmr/vW.0
毒を持って毒を制すという言葉を思い出した。なんかの本で出てきた言葉だ。
怒りにまかせて敵を殴り倒す主人公を思い出した。この前読んだ漫画で見たシーンだ。
後者の方が鮮明に思い出せたのは、最近見たものだからだろうか。……違うなぁ。

私は単純に気持ちいいことがしたいだけ、そう気づいた時には既に立ち上がっていた。
数人に囲まれている内藤の席へ向かうと、彼らは私にも同じような言葉を使い始めた。
周りを確認する。近くには誰も座っていない。とても都合が良かった。

私は、無人の席から拝借した椅子を振り回した。

45名無しさん:2017/05/21(日) 21:41:58 ID:pRmr/vW.0
――( ^ν^)――


夜の高速道路を攫って来たガキと駆け巡る。
大半の人間は経験しないシチュエーションだが、あまり異常な事態に思えない。
助手席の少女に俺の平衡感覚は壊されてしまったらしい。

ξ゚⊿゚)ξ「あの、帰るのすごい面倒だと思うんですけどいいんですか?」

( ^ν^)「だからてめーが言い出したんだろうが」

ξ゚⊿゚)ξ「すみません」

( ^ν^)「今更謝んなよ」

なんで連れ去った子供に謝られないといけないのか。
これもストックホルムなんたらか、と浅い知識が浮かんだが、
こいつは最初からこんなもんだな、と一瞬で思い直した。

46名無しさん:2017/05/21(日) 21:43:55 ID:pRmr/vW.0
車間距離にゆとりがある内に、ハンドルの横にある缶コーヒーを取った。
緩みそうになる気を張り直そうとして取った行動だったが、
そもそもこの状況で気が緩みそうになるのは異常だった。

ある種の解放感があったのかもしれない。
昼間の日差しも、それに照らされる新緑の季節も、やはり俺には毒でしかない。
街の営みをただの煌びやかな景色に変換し、橙色に染まる、この道ぐらいが丁度良かった。

しばらく無言が続くと、癖でセットしたCDに耳を委ねるようになった。
もがき続けているようなボーカルの声が、今日はやけに響いた。

ξ゚⊿゚)ξ「あの」

( ^ν^)「ん?」

ξ゚⊿゚)ξ「生きてて良かったと思ったことってありますか」

( ^ν^)「……凄い失礼な質問じゃね」

ξ゚⊿゚)ξ「すみません」

( ^ν^)「だから謝んなって」

常備しているタバコに手を伸ばそうとしてやめた。

47名無しさん:2017/05/21(日) 21:46:05 ID:pRmr/vW.0
( ^ν^)「まあ、あったな。……一瞬だけ」

こんな事態に陥ったのも、その一瞬が引き金だった。

ブームをアルコールに見立て、酔狂は一瞬だと馬鹿にしていた俺の方が、
未だにデレの気まぐれに囚われているのは皮肉なものだった。全てが的外れだ。

( ^ν^)「お前は?」

ξ゚⊿゚)ξ「え」

( ^ν^)「……だから、お前はあるのか?」

言った後に、ガキになにを訊いているのかと思い直し、一瞬詰まったが、
ここまでおかしい……変わっている人間になるのは相応の理由があるように感じた。

ξ゚⊿゚)ξ「……気持ちよかったことはありましたね」

( ^ν^)「……なんだそれ」

ξ゚⊿゚)ξ「実に野蛮な話なんですけど、私、暴力沙汰を起こしたんです」

( ^ν^)「……は?」

ξ゚⊿゚)ξ「引きました?」

引くというよりはよく理解出来なかった。
華奢な少女の口から、暴力沙汰という言葉が出ることが。
こいつをまともな物差しで計れないのは今更なのに、殴られたような衝撃があった。

48名無しさん:2017/05/21(日) 21:49:16 ID:pRmr/vW.0
( ^ν^)「……で、続きは」

まともに言葉を拾えるか疑わしくなり、CDを取り出した。、

ξ゚⊿゚)ξ「要は切れ散らかして? からかう人間を殴り倒したんですよ。
最中は気持ちよくてしょうがなくて……とか、まあ、そんな感じですね」

( ^ν^)「まずお前が切れ散らかすところが想像出来ない」

ξ゚⊿゚)ξ「自分でも驚きましたね。……いや、そうでもないか」

( ^ν^)「どっちだよ……」

また無言が続いた。さっきと違い、気まずい空気を感じた。
少し息苦しくなった俺は、適当なCDを放り込み、気を紛らわすことにした。
一々面倒だったが、型落ちの車には外部プレーヤーを接続する箇所が無かった。

ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり駄目ですね。私の内面も、どうしようもないほどに汚い」

少女は自虐した。
淡々とした声だったが、音の波に埋もれることは無かった。

( ^ν^)「正直気持ちは痛いほど分かるけどな」

俺を虐げたあいつらを殴り倒せたら、と思ったことは一度や二度では無かった。
だが、結局思うだけだった。夢の中では復讐出来ても、現実では何も出来ない。

今考えれば、デレの近況を見た際に爆発した感情には、
そんな自分に積み重なった嫌気も多分に含まれていたのかもしれない。

49名無しさん:2017/05/21(日) 21:50:15 ID:pRmr/vW.0
ξ゚⊿゚)ξ「誘拐犯に共感されるとかおしまいじゃないですか?」

( ^ν^)「……笑えるわ」

タバコとライターを取り、窓を開けると、切り裂かれた夜風が車内を舞い、
歪んだギターやしゃがれ声と奇妙なアンサンブルを奏でた。
腐るほど流した音楽が、やけに新鮮に聴こえた。

少しだけ涙がこぼれそうになる。
誤魔化すように、口に含んだ棒に火を点けた。

「……変な質問いいですか」

「なんだ」

「サンタクロースとか嫌いですか」

「大っ嫌い」

「……やっぱりおしまいだなぁ」

騒音の中に、微かな笑い声が混じった。

50 ◆ABzdo6kBrI:2017/05/21(日) 21:57:39 ID:pRmr/vW.0
今日はここまで。

えっと…週が変わったのでつい。
文字数的には四割ぐらいだと思いますが、感覚的には折り返し地点だと思います。
間があくかもしれませんが、また。
ありがとうございました。

51名無しさん:2017/05/21(日) 22:31:40 ID:YaK0HBE.0
( ^ν^)の方が後の時系列だったか…


52名無しさん:2017/05/22(月) 21:38:54 ID:t1Ug6YbA0
シャロンかな


53名無しさん:2017/05/23(火) 18:13:14 ID:jv6fGLGY0
静かだけど起こってることは大胆で好き


54名無しさん:2017/05/26(金) 06:54:11 ID:ydJcqT4w0
――ξ゚⊿゚)ξ――


背後で轟音が聞こえた。反射的に振り返った私は、視線を上に向けた。
高架橋の上を行く列車は、のどかな休日の昼下がりを数秒だけ別の色に染め替え、
いつになく青く見える空と川の間を切り裂くようにして通過した。

一瞬の出来事だった。その一瞬で、乗客は私が生きるエリアから走り去って行った。
少し羨望を覚える。なんとあっけないことか。けれど、そういうものかもしれない。
あの日、私の感情が爆発したことと同じだ。事を起こすまでに要した時間は実に短かった。

物思いに耽り、立ち止まっていた私を現実に引き戻したのは、再び聞こえ出した少年の掛け声だった。
進行方向へ身体を反転させると、パーカーにジーンズというラフな格好の母が先を行っていた。
やっぱりこちらの方がしっくりくるなと思い、妙に安心してしまう。

母が散歩に出かけようと口にしたのは唐突だった。
断ることに抵抗を覚え、言われるがままについて行った私が連れて来られたのは、この遊歩道だった。

それなりに見栄えがする場所だった。
右手側に見える少年野球の練習が行われている河川敷から登り、
その先にあるこの道は、草が生い茂る傾斜を線引きするかのように石畳が敷かれ、
それに覆いかぶさるように、左手側では葉桜が身をしならせていた。

55名無しさん:2017/05/26(金) 06:55:13 ID:ydJcqT4w0
木陰に設置されたベンチには、母親と幼い子供が手を繋いで座っている。
その情景に少し目を奪われていると、挨拶をされてしまい、私は小さく返した。

あまり母の姿を目に入れたくなかったので、元から俯き気味ではあったけど、
気恥ずかしくなった私は頭と地面を平行にした。土混じりの花びらばかりが目に映る。

放任主義で友達感覚の母はあまり叱ることが無い。あんな事件を起こしても同様だった。
しかし、学校側と被害者側に謝り倒す際は、別人のような真剣な姿を見せ、
同伴していた私は流石に罪悪感を覚えた。これも刷り込みというものだろうか。

……駄目だなぁ、本ばかり読んでも。

素直に謝ることがなぜ出来ないのか。
それがトラウマから起因するものとは分かってはいるけど、解決方法が分からなかった。

顔を上げると母の背中が見えた。
少し、呼吸が苦しくなる。

56名無しさん:2017/05/26(金) 06:56:54 ID:ydJcqT4w0
ζ(゚ー゚*ζ「中々の快晴だねー、こう、身体を動かしたくなるような」

影を感じさせない母は、どこか見覚えがあるようなピッチングフォームを真似た。

ξ゚⊿゚)ξ「……なんで?」

ζ(゚ー゚*ζ「んー?」

ξ゚⊿゚)ξ「……なんで怒らないの?」

ζ(゚ー゚*ζ「え」

ξ゚⊿゚)ξ「えっ?」

ζ(゚、゚*ζ「ん?」

母は一文字ずつ、擬音のような声を発し、
大げさなジェスチャーで考え込むような素振りを見せた。

ζ(゚ー゚;ζ「……ツンちゃんってなんか悪いことしたの?」

ξ;゚⊿゚)ξ「……は?」

訳の分からない言動に、理解が追い付かなかった。

57名無しさん:2017/05/26(金) 06:57:43 ID:ydJcqT4w0
ξ゚⊿゚)ξ「いや、普通は大問題もいいところじゃない……」

ζ(゚、゚*ζ「普通ってねぇ……ツンちゃんが大暴れする時点でおかしいもん」

ξ゚⊿゚)ξ「……モンペ」

ζ(゚ー゚#ζ「あー! また変な言葉使って……。だから本ばっかり読んでちゃ駄目なんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「いや本関係ないから」

ζ(゚ー゚*ζ「あるんだなぁ。引きこもって身体が動かなくなるからそうなる。健全な精神にはなんとやらだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「私これでも結構動けるんだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「よし、それならあそこの野球チームに混ぜてもらおう」

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ!? ちょっと……」

急に私の手を取った母は、河川敷と繋がっている階段をゆっくり下りた後、
グラウンドの方へ声を掛けた。……見知った顔がいる、グラウンドの方へ。

58名無しさん:2017/05/26(金) 06:58:27 ID:ydJcqT4w0
ζ(゚ー゚*ζ「へー、あの子ピッチャーなんだね、知ってた?」

ξ゚⊿゚)ξ「……知ってたって訊きたいのはこっちなんだけど」

腕を上げた内藤に、私は軽く手を振り返した。




( ;^ω^)「その、ごめんなさい!」

ξ゚⊿゚)ξ「なんであなたが謝るのよ」

向かいに座っている内藤は、下げた頭をテーブルにぶつけてしまいそうだった。

ζ(゚ー゚*ζ「ねー、家に来た時からこんなんばっかりだよ」

隣にいる母は、呆れたようにメニューを眺めていた。

早上がりをして着替えを済ませた内藤は、着いたファミレスで腰を落ち着けると、
途端に謝罪を口にした。奇異なものを見る視線を感じたけど、彼は気にもしていないようだった。

ξ゚⊿゚)ξ「来たっていつ?」

ζ(゚ー゚*ζ「ツンちゃんがこもってた時」

ξ゚⊿゚)ξ「なんで言わなかったのよ……」

ζ(゚ー゚*ζ「どうせ意固地になって出て来ないと思ったからかなー」

悔しいことに正解だった。
誰に呼びかけられても、あの時は反応したくなかった。

59名無しさん:2017/05/26(金) 06:59:52 ID:ydJcqT4w0
ξ゚⊿゚)ξ「……で、なに? 内藤から美化された私の話を聞いたから怒らなかったの?」

ζ(゚ー゚*ζ「成り行きを聞けたのは嬉しかったけど、そこは別に変わらないんじゃないかな」

( ^ω^)「……良いお母さんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「頭が軽いだけよ」

ζ(゚ー^*ζ「大正解」

母は持っていたメニューを離し、空いた手でパチパチと拍手をした。

ξ゚⊿゚)ξ「……ほらね」

( ^ω^)「おー……」

内藤の顔は変わらなかったけど、どこか苦笑しているようにも見えた。

ξ゚⊿゚)ξ「……あの、今更だけど、私の方こそごめんなさい。
迷惑をかけた……というより、今もかけているわね。
面倒なやつにつきまとわれてるって風評は消えないだろうし」

私のような大人しい人間が問題を起こすと、謂れのない噂が雪だるま式に膨らみ、
謝罪を繰り返していく内に投げかけられる言葉は辛辣になっていった。
自分で蒔いた種だから、弁解する気も無かったけど、腹が立たなかったと言えば嘘になる。

60名無しさん:2017/05/26(金) 07:00:47 ID:ydJcqT4w0
( ^ω^)「……まあ、そうかもしれないお」

いつになく落ち着き払った内藤は、ゆっくりと言葉を紡いだ。

( ^ω^)「でも、それ以上に嬉しかったから良いんだお」

どういう反応をすればいいのか分からなかった。
ストローを吸い、ドリンクバーで注いだジュースを飲んだ。

しばらくしてから口を離し、息を一つ吐く。少し気が静まった気がする。
けれど、隣に良くない視線を感じた。母がにやけている。私は睨みで返した。

ξ゚⊿゚)ξ「……あなたって、野球とかしてたの?」

私はなにかを誤魔化すように、別の話を始めた。

( ^ω^)「まあ、それなりにだお」

ζ(゚ー゚*ζ「それなりでピッチャーなんて有望だなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「ピッチャーってそんな凄いの?」

ζ(゚ー゚*ζ「大体は一番上手い子がやると思うよ」

内藤は照れ臭そうにしている。あながち間違いでもないらしい。

61名無しさん:2017/05/26(金) 07:02:54 ID:ydJcqT4w0
ζ(゚ー゚*ζ「やっぱりゆくゆくはモララーみたいに! とか思うの?」

( ^ω^)「……確かに憧れの選手ですけど、どうしてモララー?」

ζ(゚ー゚*ζ「あっ、まあ、ちょっとね……」

ξ゚⊿゚)ξ「ファンなんでしょ」

たまに母が野球中継を観ていることを思い出した。
さっき真似していたフォームの既視感は、そこにあるのかもしれない。

ζ(゚ー゚*ζ「ファンというか……うーん、難しい。まあ甲子園といえばモララーの世代だったからねぇ」

( ^ω^)「ああ、なるほど」

ζ(゚ー゚*ζ「当時はもう王子様扱いだったもん」

ξ゚⊿゚)ξ「王子様ねぇ……」

あのどこかに連れ去ってくれるような、ファンタジーな存在。
現実にいるとも思えない。私には到底理解出来ない。だから。

( ^ω^)「……おっ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな柄にも見えないけど」

内藤を見ながら、つい強い口調で否定をしてしまった。

62名無しさん:2017/05/26(金) 07:03:53 ID:ydJcqT4w0
( ^ω^)「おー……」

ξ;゚⊿゚)ξ「あっ、違う、そうじゃないの!」

ζ(^ー^*ζ「あはは! ツンちゃんひどーい」

ξ#゚⊿゚)ξ「ちょっと黙ってて」

私は感情の制御が随分下手くそになっていた。

ζ(゚ー゚*ζ「あのね、内藤君。ツンちゃんがこんなに慌ててるってことは本当にそうじゃないからね、多分」

そのことを察したのか、母は言い聞かせるような声で話した。

ξ゚⊿゚)ξ「多分は余計」

ζ(゚ー゚*ζ「いーや、必要だよ」

母からは、ゆるいようで、はっきりとした意思を感じた。
珍しいと思った。けれど、不思議だとは思わなかった。




ξ゚⊿゚)ξ「そんなに凄いの? その、モララーって人」

話題がモララーという選手に戻ったのは、ある程度料理に手を付けた後だった。

ζ(゚ー゚*ζ「どうなんだろうね。専門家から見るとどうなの?」

( ^ω^)「専門家じゃないですけど……多分、超一流とかそういう選手じゃないお。だけど、とにかくかっこいいんだお」

ζ(゚ー゚*ζ「かっこいいよねー」

ξ゚⊿゚)ξ「かっこいい」

間抜けな復唱が三回続いた。
本当に、曖昧でしかない表現なのに、私は妙にその選手が気になってしまった。

63名無しさん:2017/05/26(金) 07:04:46 ID:ydJcqT4w0
ζ(゚ー゚*ζ「……ツンちゃん?」

ξ゚⊿゚)ξ「えっ?」

ζ(゚ー゚*ζ「口をポカーンと開けてちゃ勿体ないよ。折角かわいいんだから。ねぇ、内藤君」

( ;^ω^)「おっ!? ……え、えっと」

ζ(゚ー゚*ζ「なーんてね。あっ、そういえば思い出したんだけどさ、モララーって来週の日曜日に投げるんだよね」

母の言葉を聞いた内藤は、なにかを思い付いたように頬を掻いた。

( ^ω^)「……あの、実は、その日は僕も投げるんだお」

内藤はゆっくりと、けれども芯がある声で言った。

( ^ω^)「良かったら、君に見に来て欲しいんだお。野球とか、つまらないかもしれないけど」

ξ゚⊿゚)ξ「つまらなくなんてないわよ。あなたが投げるなら」

一瞬、空気が固まった気がした。

ξ゚⊿゚)ξ「……どうしたの?」

ζ(゚ー゚*ζ「……あー、今のツンちゃんは悪いことしたね」

ξ゚⊿゚)ξ「なんでよ……」

ζ(゚ー゚*ζ「なんででも」

母はまた笑っていたけど、今回は不快に感じなかった。

64 ◆ABzdo6kBrI:2017/05/26(金) 07:06:24 ID:ydJcqT4w0
今回はここまで。
デレちゃんのAAが前回と違うのは演出じゃないです修正です。
よろしければまた。

65名無しさん:2017/05/26(金) 13:42:16 ID:55wTYf2Q0


66名無しさん:2017/05/26(金) 18:19:40 ID:ytyg60Ps0
悪いことwwww乙

67名無しさん:2017/05/28(日) 05:44:46 ID:HJW6zbMg0
――( ^ν^)――


俺たちは少し仮眠を取った後、駐車していたサービスエリアで外に降り、新鮮な空気を吸っていた。

ξ゚⊿゚)ξ「よくこんなもの飲めますね……」

運転席側のドアに寄りかかっている少女は、紙コップから口を離した。
後部座席側で立つ俺の正面には、その中身であるコーヒーを購入した売店があった。

まだ日が昇り切っていない、深い青に包まれたこの時間では、
明かりが煌々と主張しているガラス張りの向こう側は別の世界に見える。
遠近法も相まって、透明な壁を隔てた先で動く人間たちはミニチュアのように感じた。

ξ゚⊿゚)ξ「あの、懺悔していいですか」

俯いている少女はゆっくりとコーヒーを飲み進めながら、その合間に口を開いた。

68名無しさん:2017/05/28(日) 05:45:25 ID:HJW6zbMg0
( ^ν^)「誘拐犯に懺悔ね」

ξ゚⊿゚)ξ「それももういいじゃないですか」

( ^ν^)「まあさっきも懺悔みたいなもんだったな」

俺は飲み干したコーヒーの紙コップを捨てるタイミングを逃してしまった。

ξ゚⊿゚)ξ「今日友達との約束があったんですよ」

( ^ν^)「……それは俺へのあてつけか?」

ξ゚⊿゚)ξ「いや、頑張って助けを呼ぶという手もありましたよね。正直隙だらけもいいところでしたから」

( ^ν^)「……なに、お前は俺にどうしてほしいの?」

ξ゚⊿゚)ξ「悪いと思ってそうなところが致命的に向いてないですね」

69名無しさん:2017/05/28(日) 05:46:14 ID:HJW6zbMg0
少女は顔を上げ、こちらの方へ向いた。

俺を見据える表情は、焼けもしない空の下では分かりにくい。
だが、ほんの少しだけ、懐かしい雰囲気を纏っている気がした。

「優しい、というよりは、臆病者なあなたが、私は割と嫌いじゃないですよ」

目に映るものが鮮やかに塗り替えられたのは一瞬の出来事だった。
辺りを囲っている群青が剥がされ、白昼の光が記憶の中から溢れ出した。

だが、一瞬は一瞬だった。にわかに動き始めたトラックの走行音が耳に入った。

くだらない感傷に胸を焼かれた俺は、持っている紙コップを握りつぶした。

70名無しさん:2017/05/28(日) 05:47:19 ID:HJW6zbMg0
( ^ν^)「……ほんと、嫌な血だわ」

ガキに移っても苦しめやがる。

ξ゚⊿゚)ξ「……どうしました?」

( ^ν^)「ただの自己嫌悪だよ」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなに自分を責め続けなくてもいいと思いますよ。
それに、もうして欲しいことはしてもらってますから。子供の足だと届きにくい場所ですし」

( ^ν^)「結局なんで野球場なんか行きてぇんだよ。お前面白さが分からないとか言ってなかったか?」

ξ゚⊿゚)ξ「まあ、自分でやってみるとそうでしたね。
ただ見るのは別かもしれませんし、誰がしているかにもよりますよね。
……あの、今日はモララーって選手が投げるらしいんですけど知ってます?」

( ^ν^)「……やっぱり嫌な血だわ」

ξ゚⊿゚)ξ「知ってるんですね」

( ^ν^)「知ってるというか、忘れられねぇわ」

ξ゚⊿゚)ξ「とにかく興味があるんですよ、色々と。
だから連れて行ってください。その後は煮るなり焼くなりでいいので」

( ^ν^)「……俺がか?」

全能感などとうに消え失せ、少女に振り回されているだけの俺に、
大きいことが出来るエネルギーが残っているとは到底思えなかった。

71名無しさん:2017/05/28(日) 05:48:27 ID:HJW6zbMg0
ξ゚⊿゚)ξ「それならこのまま引き返して解散しますか」

( ^ν^)「いや、いい、俺も興味がある。……そうだな、その後はなんとかお前の父親を殴り倒せればいい」

だから、それは絵に描いたような虚勢だった。
心の中の怨嗟を口に出してみただけ、そんな情けない虚勢。

ξ゚⊿゚)ξ「とてもシンプルでいいと思います」

知ってか知らずか、少女は平坦な声で答えた。

72名無しさん:2017/05/28(日) 05:49:26 ID:HJW6zbMg0
( ^ν^)「今更だけど、お前父親嫌いなの?」

ξ゚⊿゚)ξ「興味が無い。お互いにでしょうけど」

( ^ν^)「……じゃあ、母親は?」

ξ゚⊿゚)ξ「……あー、ノーコメントで」

( ^ν^)「普通に物やら金揺すれたんじゃねぇか、嘘つき」

ξ゚⊿゚)ξ「本当に微妙なラインなんですよ。あなたが母の軽薄さに振り回されてるのと一緒じゃないですか」

( ^ν^)「……もういいや、出すか。モララーがKOされるところを見に行かないとな」

俺は運転席近くにいる少女に空のコップを渡し、しっしっと追い払った。

73名無しさん:2017/05/28(日) 05:49:57 ID:HJW6zbMg0
ξ゚⊿゚)ξ「嫌いなんですか?」

ゴミを捨てに行く前に、少女は疑問を口にした。

( ^ν^)「昔はな」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあどうして」

( ^ν^)「そうじゃないと理にかなってないんだよ」

俺はドアを開け、乱暴な動きで座席に身を預けた。

74 ◆ABzdo6kBrI:2017/05/28(日) 05:51:22 ID:HJW6zbMg0
ここまで。
次かその次ぐらいで終わりだと思います。
どうもでした。

75名無しさん:2017/05/28(日) 09:34:46 ID:WCw2LBqM0
おつおつ

76名無しさん:2017/05/28(日) 09:51:18 ID:x.XoeLh.0
気がついたら終盤か……


77名無しさん:2017/05/28(日) 13:28:09 ID:MnspTEPE0
もう終盤だったとは
本当にただツンに振り回されて終わるんだなあ

78名無しさん:2017/05/28(日) 15:58:13 ID:HJW6zbMg0
――ξ゚⊿゚)ξ――


試合開始直後は明るかった空も、徐々に夜の帳に呑まれていき、
今球場を支配しているのは、けばけばしい照明と観客の声援だった。

私が内野席と呼ばれる場所から見ているグラウンドの、光の粒が付着したような芝と土は、
二色のコントラストを更に引き立たせている。その上で躍動しているのは、ほとんどは体格の良い選手だったけど、
一番目立つ場所で球を投げ続けている人間は、周りと比べると少し背丈が低いように感じた。
けれども、彼……モララーという選手のプレイは、私でも分かるぐらいに迫力があった。
投球動作を一回終えるたびに、野太い歓声が洪水のように溢れる。
別の投手がグラウンドに上がっている時とは明白な違いがあった。

しかし。

ξ゚⊿゚)ξ「確かにかっこいいですけどね。もっと女性にキャーキャー言われてるタイプだと思ってました」

髭を生やし、気迫を前面に出すモララーは、イメージとはだいぶ違った。
どちらかと言えば男性からの支持が厚いように見える。

79名無しさん:2017/05/28(日) 15:58:57 ID:HJW6zbMg0
( ^ν^)「お前が生まれる前に言われ尽くしてるよそんなん」

さっきまでは日曜日なのにナイターかよ、と愚痴を零していた誘拐犯さんは、
今ではすっかり試合に見入っているようだった。時折ビールを頼みそうになるのが不安になる。

ξ゚⊿゚)ξ「王子様だから?」

( ^ν^)「そうだな、鬱陶しくてしょうがなかった。だからどうせすぐ冷めるとかそんな目で見てたわ。
……だけどな、腐った日々を送ってたはずなのに、あいつの投げる姿は結構記憶にあるんだわ。あほらし」

試合前はKOされろと言いつつも、現在の誘拐犯さんは彼の投球に手を握りしめている。
そんな姿を見ると、一つの記号が思い浮かんだ。

ξ゚⊿゚)ξ「あれですか、ツンデレってやつですか?」

( ;^ν^)「気色悪いからやめろ」

かわされた。やっぱりそういうものなのかと思う。案外似合っているように感じるけど。

80名無しさん:2017/05/28(日) 16:00:46 ID:HJW6zbMg0
ξ゚⊿゚)ξ「中々点が入りませんね。いつもこんなものなんですか?」

( ^ν^)「いや、今日は投手が良いな。両方が最後まで抑えきれそうな勢いだから、ちょっとのミスで試合が終わりかねない」

ξ゚⊿゚)ξ「大変なんですね。ピッチャーって」

( ^ν^)「好投したら試合を作ったとまで表現されるからな、結構な重荷を背負ってるよ。
……それに、あいつの場合なんかはそれに加えて二重苦三重苦だからな、普通は潰れてる」

ξ゚⊿゚)ξ「……でも、楽しそうに投げてますよね、あの人」

二重苦三重苦が何を指しているのかは分からないけど、
少なくとも現在のモララーは、このスポーツが出来る喜びを全身で表しているように見えた。

( ^ν^)「……かなわねぇよなぁ。いるんだよ、ああいうやつって」

分厚い身体をした外国人のバットが空を切った。
対戦相手のモララーが咆哮を上げると、こだまするかのようにスタジアムの空気が振動した。

81名無しさん:2017/05/28(日) 16:03:12 ID:HJW6zbMg0
( ^ν^)「こりゃお立ち台コースかな」

ξ゚⊿゚)ξ「お立ち台?」

( ^ν^)「用意された小さな台に登るんだよ。そこで今日のヒーローは○○選手ですとか言われてマイクを向けられんの」

なるほど。ヒーローという表現が妙にしっくりきた。
王子様もサンタクロースも理解出来ない私でも、ヒーローは理解出来るらしい。
内藤が少年漫画や彼に惹かれる理由も分かった気がする。……きっと、私も一緒だった。
頭でこねくり回して、伝わりもしない感想を言うよりも、ヒーローに惹かれていたと、
たった一言で済ませれば良かった。この試合が幕を下ろせば、きっと出来上がった日常が迎えに来て、
私は引き戻されてしまうのだろうけど、内藤にそれを伝えるのは楽しみだった。

……いや、そうでもないか。
ああ、気まずい、帰りたくない。本当に、今更なんだけど、そう思ってしまう。

いつかは冷める夢なのは知っていたし、受け入れていた。
ほんの少しだけ閉塞感から解放されたかっただけ。
その結果が死でも良かった。自発的には命を絶てないけど、外発的なら構わなかった。
どうせ世界なんて塗り替えられもしなくて、ただ平坦な日常を送ることしか出来ないのだから。

82名無しさん:2017/05/28(日) 16:04:39 ID:HJW6zbMg0
けれど、多分、私は彼を悲しませてしまった。
それだけで、日常に波が起こってしまう。

事情が分かったところで、現在の彼は知る由も無い。
今頃何を思っているのかなんて、考えたくも無い。

目を逸らすように試合に目を向けると、電光掲示板に0以外の数字が刻まれていた。
モララーの投球で揺れていたスタジアムは、別のなにかに移り気をしている。
ヒーローは何処かへ行ってしまったらしい。無性に悲しくなった。

83名無しさん:2017/05/28(日) 16:05:53 ID:HJW6zbMg0
……そっか、内藤もこんな気持ちなのかな。
そう思うと少しは気が楽にな「探したお!」


( ;^ω^)

ξ゚⊿゚)ξ


息を切らし、膝に手をついている内藤がこちらを見ていた。
とても残念だった。私の手にはマイクが握られていないから。

84名無しさん:2017/05/28(日) 16:06:34 ID:HJW6zbMg0
――( ^ν^)――


まんまと取り逃がした、というべきなのか、取り逃した、というべきなのか。
どっちでも良かった。ビールを煽り、まだ続いている試合に目を向けていた。

KOされるならされるでもっと派手に散れよな。粘りのピッチングとか笑えないわ。

俺が柄にもなく汚い声を飛ばしているのは、酔いが回っているせいもあったが、
きっと、なにかに期待をしている自分を覆い隠すためでもあった。

「隣良いですか?」

( ^ν^)「ああ」

ζ(゚、゚*ζ「少しぐらい驚いて欲しいんだけどな」

不満げな声の主は、先ほど空いた席に座った。

85名無しさん:2017/05/28(日) 16:07:08 ID:HJW6zbMg0
( ^ν^)「てめぇこそこんな危なそうな奴には物怖じしろよ」

ζ(゚、゚*ζ「なんたって誘拐犯さんだもんね」

( ^ν^)「……もう知れ渡ってんのか」

ζ(゚ー゚*ζ「さぁね。まあ親子に紛れても本物には分かっちゃうよね」

デレの砕けた声は、どこか自嘲的に聞こえた。

ζ(゚ー゚*ζ「しかしよくもまあツンちゃんを怖がらせてくれましたね」

( ^ν^)「あいつ全く動じて無かったんだけど」

ζ(゚ー゚*ζ「流石にね、車やら家に引き摺り込まれるところは怖かったんじゃないかなぁ。想像だけど」

( ^ν^)「……悪かったよ。さっさと警察に突き出せ」

ζ(゚ー゚*ζ「試合が終わったらね」

86名無しさん:2017/05/28(日) 16:08:18 ID:HJW6zbMg0
呑気なもので、デレはこちらに目を向けず、グラウンドの動きを眺めていた。
俺もつられたかは分からないが、割高のアルコールを追加で頼んでいた。

三つのアウトを取ったモララーは袖で額を吹いていた。
流石に疲労困憊といった様子だが、微かに覗かせる眼光は死んでいないように感じた。

( ^ν^)「お前の差し金なの、あれ」

俺の声は旧友に話しかけるようなものになっていた。
相当脳がやられてきたらしい。そもそも旧友なんていねーよ。

87名無しさん:2017/05/28(日) 16:09:03 ID:HJW6zbMg0
ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと違う。普通はお家に連絡するでしょ、待ち合わせの相手が来なかったら」

( ^ν^)「……普通はここじゃなくて警察に行くよな」

ζ(゚ー゚*ζ「ツンちゃん割と普通じゃないからね」

( ^ν^)「まあな。だからといってここに来るプロセスはわかんねぇけど」

ζ(゚ー゚*ζ「そもそもね、ほったらかしにしてるとはいえ、友達の家に泊まるなんて嘘っぱちだってわかるもん。
だからさ、なんかあるなとは思った。でも触れて欲しくはないんだろうなぁとも思ってね。
けど内藤君の試合にも行かないとなるとうーんとなった。わざわざすっぽかすとは思わなかったんだよね。
ツンちゃんって関心の幅が狭いから、持ったものにはとことん持ちそうだし。
ああ、そうなると、もしかしてモララーなのかなぁって。だからここにいるんじゃないかと思った」

( ^ν^)「正解だったがな、親のお前がそれでいいのかよ」

ζ(゚ー゚;ζ「駄目なんだよねー。だから自分では迎えに行かなかった。
ちょっと内藤君に仄めかしておしまい。まああの子が来なかったら私が行ってたけど」

( ;^ν^)「……はぁ、お前が子供想いなのかも分からねぇし、あいつがお前を慕ってるかどうかも分からねぇわ」

頭が痛くなって来た。デレの思考回路には到底ついていけない。

88名無しさん:2017/05/28(日) 16:09:37 ID:HJW6zbMg0
ζ(゚ー゚*ζ「ツンちゃんなんか言ってた?」

( ^ν^)「さあ? 父親は関心無いけど母親はノーコメントだってよ。……なにガッツポーズしてんだよ」

ζ(゚ー゚;ζ「いや、つい」

デレは反射的に動かした腕を、所在なさげに揺らしていた。

( ^ν^)「……お前そんな嫌われるようなことやったの」

真っ当な母親には見えないが、娘を嫌っているようには見えない。寧ろ逆だった。

89名無しさん:2017/05/28(日) 16:10:32 ID:HJW6zbMg0
ζ(゚ー゚*ζ「クリスマスの日に親同士で罵り合ってたら次の日から避けられた」

( ^ν^)「やっぱりクリスマスって糞だな」

ζ(゚ー゚;ζ「やっぱりってなに」

( ^ν^)「別に。……で、それだけで避けられるようになったのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「いや、普段とのギャップかなぁ。いつもはこんな感じでしょ私」

( ^ν^)「いつもは知らないけどそうなんだろうな」

ζ(゚ー゚*ζ「それがさぁ、あの日に限って頭の弱いふりやめちゃったんだよね。鬱憤が溜まりすぎちゃって」

( ^ν^)「それふりだったのかよ」

ζ(゚、゚*ζ「軽いのはふりじゃないんだけどさぁ……頭の弱い女に思わせといたのはふりだったね。
責任を取らせるために臆病な人を選んだからさ、せめてもの優越感を持たせておきたかったんだよね。
それに私がまともだと浮気もやりにくいでしょ。いざという時のためのカードを」

( ^ν^)「もういい」

もはやあきれ返る以外の選択が出来ない。俺の復讐心が馬鹿らしくなってくる。

90名無しさん:2017/05/28(日) 16:11:17 ID:HJW6zbMg0
ζ(゚ー゚;ζ「あっ、ごめんなさい。……いや、でも結局ふりじゃなかったかなぁ。
正直結婚する相手は間違えた。収入さえ良くて、ある程度外で遊んでてくれればいいかなって思ったんだけどさ」

( ^ν^)「よくもまあそんなわがままを通せるもので」

ζ(゚ー゚*ζ「まあ見た目かなぁ。ツンちゃんもかわいいでしょ?」

( ^ν^)「外見は似てたな、内面はともかく」

ζ(゚ー゚*ζ「ほんとなんであんな良い子なんだか。産む子供は間違えなかったところは褒めて欲しいよね」

( ^ν^)「……親バカかよ」

あいつが良い子かは疑問が残ったが、まあ、嫌いでは無かった。

( ^ν^)「……なんでそんなにかわいがってるのに距離を取ってるんだよ」

だから、多少の同情心が湧いたのかもしれない。
らしくもないことをしてしまいそうだった。

91名無しさん:2017/05/28(日) 16:13:00 ID:HJW6zbMg0
( ^ν^)「修復とか試みなかったのか?」

ζ(゚、゚*ζ「だってさ、嘘っぽいもん。次の日から優しいママですよー、とかやってもさ。
聡い子なら特にね。だから私は友達ぐらいでいいやって、資格を捨てました。終わり」

デレの物言いは子供のようだった。
だが、実際に母親を捨てているのだから、これも意図の内なのか。

( ^ν^)「多分、お前は見切りが早すぎるんだよな。割とリアリスト……というよりは悲観的」

ζ(゚ー゚*ζ「……そうかもね」

( ^ν^)「お前はモララーも失敗すると思ってたしな」

ζ(゚ー゚*ζ「あはは……」

デレは気の抜けたような笑い方をした。

92名無しさん:2017/05/28(日) 16:13:36 ID:HJW6zbMg0
( ^ν^)「あいつを見てると、人生を間違ったなって思わないか?」

ζ(゚ー゚*ζ「なる」

( ^ν^)「即答かよ」

ζ(゚ー゚*ζ「どうせさ、ハッピーエンドの先なんて碌なものが待ってるとは思えなくてね、実際そうなりかけてたでしょ?」

( ^ν^)「一度や二度に飽き足らずに、怪我から復活した時はどう思ったんだ?」

ζ(゚ー゚*ζ「もう戒めのように登板見てた」

笑うしか無かった。ここまでは大体自分と一緒だったから。

( ^ν^)「だったら今からでも母親に戻れよ」

だが、ここから先は違うはずだ。

93名無しさん:2017/05/28(日) 16:14:17 ID:HJW6zbMg0
ζ(゚、゚*ζ「……バッドエンドの先じゃない? それって」

( ^ν^)「お前が打ち切っただけじゃねぇのかよ」

ζ(゚、゚*ζ「……まあ、そうなんだけどさぁ」

( ^ν^)「取りあえず、サンタクロースの名誉ぐらいは回復させろよ」

ζ(゚ー゚*ζ「頑張る……ってなんで誘拐犯に説教されてるんだろうね」

( ^ν^)「今更かよ」

俺は笑った。デレも笑っていた。

歓声が響いた。強打者が左中間にボールを弾き返していた。
ベンチで声を張っているモララーが一瞬モニターに映った。

彼の名前は、まだ電光掲示板から消えていなかった。

94名無しさん:2017/05/28(日) 16:16:35 ID:HJW6zbMg0
――ξ゚⊿゚)ξ――


十二月の朝は底冷えするような寒さだった。
ゆっくりとした起床をした私は、着込んだ厚いセーターが身体に馴染むのを待ちつつ、
電気ケトルの中身を眺めていた。沸騰する頃には流石に瞼も軽くなっていた。

リビングのテーブルから封筒を取り、黒い液体が入ったカップを置いた。
コーヒーの香りは良いと思うのだけど、未だに少しずつしか飲めなかった。
お母さんは無理をする必要はないよ、と言うし、私もそう思うけど、やめることが出来なかった。

背伸びをしてしまうのは結局自分の性質なのかもしれない。
もしくは、誰かさんとの曖昧な繋がりを持っておきたいのだろうか。
それならば車から掻っ攫ったCDだけで十分な気がするのだけど。

ソファに身を預けた私は、差出人不明の封筒を切った。
手紙に書いてあった文章はたったの一行だった。



『サンタクロースは元気か?』



結構な頻度で死んだと聞くんですけどね、案外元気みたいですよ。




ワンダーランドではないようです  おわり

95 ◆ABzdo6kBrI:2017/05/28(日) 16:21:23 ID:HJW6zbMg0
以上です。
補足というか余談なんですが、プロットの整理をしてたら数千文字を削ってしまったので、
文字数的に四割と評した際には既に半分を超えてました。見積もりミスでした。

前のめりになり、所々文章が粗くなってしまったのは申し訳ないです。

最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。

96名無しさん:2017/05/28(日) 17:59:41 ID:CBdmGhY.0
おっつおつ
最後まで面白かったよ

97名無しさん:2017/05/28(日) 18:31:27 ID:cek3qjwg0
楽しかった、ありがとう

98名無しさん:2017/05/28(日) 19:15:11 ID:x.XoeLh.0
乙!!!

99名無しさん:2017/05/28(日) 20:34:50 ID:c2CsjAYo0

皆が優しくて不器用な世界が大好きだ

100名無しさん:2017/05/29(月) 09:00:46 ID:J9/X6/OU0
ゆるやかに始まってゆるやかに終わるいい作品だった



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