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道のようです
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ヽ._> \__)
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例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声。
刃を振るい、歌声を響かせ、路銀を稼いで進むのは二人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
【道のようです】
【第一話 たぶんこいつはだめだな。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
てくてく、がらがら。
てくてく、がらがら。
二人分の足音と、荷車を引く音。
不機嫌そうな顔で前を歩く少女と、疲れたように荷車を引く男。
一言も発しないまま歩く二人は、左右を森に挟まれた街道を進んでいた。
少女は身の丈よりも遥かに大きな斧槍を担いでおり、その小柄な体を包むのは白銀の軽鎧。
金の巻き髪をひとつに束ねて、整った顔立ちを不愉快そうに歪めている。
歳のくらいは十代の半ばくらいに見えて、首元には上級冒険者の証である金の証明章。
その隣には、真新しい銅のパーティ証明章がちょこんと存在する。
一方、その少し後ろで荷車を引く長身の男は、見てわかるような吟遊詩人の出で立ち。
今は楽器や荷物を荷車に乗せているが、頭には羽飾りのついた鍔広の帽子。
少女とは対照的に装飾や模様の多いやや派手な装いで、胸元の証明章は銀と銅。
濃く長い金髪と鮮やかな碧眼、どことなく軽薄そうな顔立ちで、
吟遊詩人には相応しくない物を口に銜えている。
その整った顔を疲労に歪めつつも、押し黙ったまま荷車を引くばかり。
-
ごとごと、荷車には大きな箱。
伝票や宛名の貼られた箱は軽く、荷車を引くのに難儀はしない。
しかしもう一日中、ろくな休憩もなしに歩き続けているのだ。
さすがに吟遊詩人はぐったりと、息を上げながら額に浮かぶ汗を拭った。
爪'ー`)y‐「つーんーちゃあーん……」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「そろそろ許してよぉーう……」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「騙したのは悪かったからさぁ……謝ったじゃんかぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「うぅー……」
情けない声音で言葉を投げ掛けても、前を歩く少女はぴくりとも反応しない。
駄目かあ、と肩を落として項垂れて、吟遊詩人は乾く唇を湿らせながら歩き続けた。
-
元はと言えばこの吟遊詩人、フォックスが問題で。
事の発端は、遡る事一日と半分ほど。
ある町の酒場で、彼らは出会った。
ざわざわ、がやがや。
昼間にもかかわらず、酒気と熱気がこもる場所。
金の胡桃亭と言う小さな酒場には、その日も銅や銀ランクの冒険者が集まっていた。
酒場は冒険者にとって憩いの場でもあり、大切な情報収集の場でもある。
そんな酒場のカウンター、端の席にぽつんと腰掛ける小柄な少女。
場にまるでそぐわないその存在は、客達の目を引いた。
しかしそれと同時に、見る人みなが彼女の持つ金の証明章には驚きを隠せなくて。
冒険者と言うのは、組合と行政により、ランク付けされて管理されている。
下位の冒険者には相応の簡単な依頼を、上位の冒険者には難易度の高い依頼を。
その依頼は多岐にわたり、溝さらいから薬草の採取、魔物や盗賊の討伐など。
それらをまとめて、依頼はクエストと呼称される。
-
冒険者のランクとは、七つに分けられる。
最上位は伝説上の英雄だけが存在するアダマンタイトの位。
この世に四人しか存在しない、省いても問題の無いランクだ。
例えるなら、一晩で国を焦土に変えるくらいのバケモノでなければいけない。
上から二番目のオリハルコンの位は、いわゆるおとぎ話にならない程度の英雄クラス。
まだ現実味はあるが、数は少なくお近づきにもそうそうなれない。
例えるなら、偉大な功績を残した王国騎士団長みたいな感じ。
三番目はミスリルの位。
こちらはぐっと現実味が増す、上級者を越えた玄人のランク。
オリハルコンに比べれば数はまだ多いが、これでも憧れの対象となる存在。
例えるなら酒場の隅にいつもいるけど実はすごい凄腕のオッサンみたいなアレ。
四番目が金の位。
簡単に言えば上級者、信用するに十分な冒険者、ミスリルに比べれば数は一気に増える。
長く安定した冒険者をしていたり、高難度クエスト完了率が高かったり、大手柄をあげる等。
例えるならなんか序盤で「20代半ばと言う若さで金とは」とか言われるイケメン先輩冒険者みたいなあれ。
-
五番目が銀の位。
いわゆる中級者。普通。
のびしろが無ければ銀止まりの冒険者も少なくはないだろう。
しかし金への足掛かりでもあるため、向上心とやる気のある冒険者も居る。
例えるなら、まあその辺にいる冒険者の大半がそうだ。
下の二つが銅と鉄。
ここからはもう特筆する必要もない、腕の立たない冒険者だ。
そこらじゅうにごろごろ居る、破落戸みたいな連中も含まれる。
つまりはまあ、金のランクはなんかそこそこつよいと覚えれば良いだけだ。
つらつらと並べはしたが、それ以下のランクについて覚える必要はさして無い。
で、巻き髪の少女は年若く、十代の中頃に見える。
そんな少女が、金の証明章を身に付けているのだ。
本物の証明章であれば、ある程度とんでもない存在と言えるわけで。
-
年若い上級冒険者はの前にはいくつかの木の実の殻が置いてある。
店名にもある通り、この店は胡桃を料理に使ったりサービスで二つほど貰える事があった。
巨大な斧槍を立て掛ける彼女は、渋い顔でお冷やを睨む。
酒場に来ておいて一杯の酒も飲まず、食事も注文せず、何かを待つように唇を噛み締めていて。
(*゚ー゚)「はいお嬢さん、胡桃はいかが」
ξ゚⊿゚)ξ!
店の女将に声をかけられた少女は勢いよく顔を上げて、期待に満ちた眼差しを向ける。
すると女将の手に下げられたカゴから、二つの胡桃が手渡された。
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとう……ございます……」
(*゚ー゚)「まぁ良いけど……よく待てたね二時間おきのサービスを……」
ξ゚⊿゚)ξ「いただきます!」バキィ
(*゚ー゚)「実ごと潰してない?」
-
差し出された堅い堅い胡桃の殻を指で挟んで潰す。
中からややつぶれた実を取り出すと、噛み締めるようにゆっくりと咀嚼し始めた。
(*゚ー゚)「それにしても、噂は本当だったのねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「噂?」
(*゚ー゚)「若い怪力の女の子」
ξ゚⊿゚)ξ「なにその雑な噂」
(*゚ー゚)「金の巻き髪の年若い少女冒険者は英雄に滅ぼされた怪力の怪物の末裔である、とか」
ξ゚⊿゚)ξ「人間です」
(*゚ー゚)「人間だったねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「待ってなにその……なにその雑なアレ……ひどい……」
(*゚ー゚)「噂はあてにならないねー」
ξ゚⊿゚)ξ「私冒険者になって3年くらい経ちますけど……そんな噂立ってたの……」
(*゚ー゚)「知らなかったんだ……」
-
少女冒険者の名はツン。
職業は戦士で年齢は18歳、小柄なのもあり実年齢よりも幼く見える。
生まれつきの怪力で、その力を見込まれてとある元戦士の元で師事してきた。
しかし手におえなかったので、力のコントロールと武者修行も兼ねて旅に出たのが3年ほど前。
今では立派な上級冒険者として旅をしている。
なおそのやたらに強い握力などの制御は未だに出来ていない。
ちなみに人間の頭くらいなら握り潰せる。
本来ならば金のランクの冒険者は、クエストの報酬は金額が上がる。
真面目さと腕力だけが取り柄の彼女は、仕事だけはちゃんとやってきた。
ξ゚⊿゚)ξ「それなのにですよ」
(*゚ー゚)「何でパンを買うお金も無いかなぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「わからない……なぜ……」
(*゚ー゚)「残金いくら?」
ξ゚⊿゚)ξ「銅貨二枚」
(*゚ー゚)「銅貨してるわー……」
ξ゚⊿゚)ξ「それムカつくわー……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ところで、誰か来るんですよね?」
(*゚ー゚)「そうそう、吟遊詩人があなたに用なんだって」
ξ゚⊿゚)ξ「まだ来ませんね」
(*゚ー゚)「娼婦でも買って遊んでるんじゃない?」
ξ゚⊿゚)ξ「帰って良いですかね」
(*゚ー゚)「あなた今日の宿は閉店後の酒場のベンチではなくて?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうでした帰るための宿を取る金がなかった」
(*゚ー゚)「まぁナンパな人だけど、恐らくはまあたぶんそこそこ悪い人じゃないと良いなって」
ξ゚⊿゚)ξ「八割悪い人だ……」
(*゚ー゚)「大丈夫よ銀の冒険者だから」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫な要素とは……」
からんころん。
(*゚ー゚)「いらしゃー……あら、噂をすれば」
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
-
酒場の女将とツンが言葉を交わしていると、入り口の方からベルの音。
からんころん、と軽やかな音を立てて入ってきたのは一人の男だった。
濃赤の外套に羽飾りの帽子と、背負われた弦楽器、飾りや模様の多い服。
あからさまな吟遊詩人の風体をした男は、さらさらの金髪を揺らし、青い目を巡らせる。
そして年若い冒険者である巻き毛の彼女を見付けると、真っ直ぐに早歩きで近付いてきて。
(*゚ー゚)「これが八割悪い人」
ξ゚⊿゚)ξ「はあ、どうも」
爪'ー`)y‐「見付けた……君だよね……」
ξ゚⊿゚)ξ「は?」
爪'ー`)y‐「君が噂の怪力娘だよね!?」
ξ゚⊿゚)ξ「何をいきなr」
爪'ー`)y‐「僕を殺してくれないか!?」
ξ゚⊿゚)ξ(キチガイかよ)
(*゚ー゚)(引くわー)
-
爪'ー`)y‐「頼むよねぇ君なら僕を殺せるかも知れないんだよねぇってばお願いだよねぇ!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと触んないで揺すらないでこわい!」
爪'ー`)y‐「君の噂を聞き付けてここまで来たんだよお願いだよちょっとで良いから少しで良いから!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「や、止めてキモい! 触んないでってば! や、やめ」
爪'ー`)y‐「死ねなくなって久しいんだよいや厳密には死ねるんだけどああもう良いからお願いだから!!」
「あああうっぜぇ!!!」
ξ#゚⊿゚)ξ三つ)Д`)y‐ メギャアアアア
「へぶしッ!!」
(*゚ー゚)「あっ」
ξ;゚⊿゚)ξ「あっ」
爪#;,)Д ) ドサァ…
(*゚ー゚)
ξ;゚⊿゚)ξ
(*゚ー゚)「あーお客様ー! 困りますお客様! 店内でお客様の頭蓋骨粉砕は困りますお客様ー!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「余裕ありますね女将!?」
-
(*゚ー゚)「一回やってみたかったのこれ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「えぇ……あの……つか何で皆さん平然と……?」
(*゚ー゚)「でも脳漿は片付けてね、はい雑巾」
ξ;゚⊿゚)ξ「えぇぇ……」
(*゚ー゚)「その人は放っておいても大丈夫だから」
ξ;゚⊿゚)ξ「何なのこの人……殺しちゃったんだけど……どうしよう……」
(*゚ー゚)「大丈夫大丈夫、少しすれば分かるから」
女将が平然と厨房へ戻って行き、ツンは今しがた自分が産み出した男の亡骸を見下ろす。
頭部の右半分がへしゃげて潰れ、中身がはみ出している。
ひとまず手についた内容物を男のマントで拭い、
誰も男の死に対して騒がない現状に困惑しながら、渡された雑巾で床を拭き始めた。
冒険者と言う仕事柄、人の死体も見慣れてはいる。
時には依頼によって、盗賊討伐などで人を殺す事もある。
とは言え、やっぱり人の死体は気持ちの良いものではないし、良くない事故で殴り殺してしまったのだ。
ただでさえしかめてきた顔を、更に歪めながら男の顔にマントを被せる。
-
もぞ。
ξ;゚⊿゚)ξ?
もぞもぞ。
ξ;゚⊿゚)ξ
爪'ー`)゙「あー死ぬかと思った」ムクリ
ξ; ⊿ )ξ!?
(*゚ー゚)「あらー起きるの早かったわね」
爪'ー`)y‐「損傷が少なかったからね、ところでお嬢さん」
ξ; ⊿ )ξ
爪'ー`)y‐「お嬢さん?」
「ばけものぉぉぉお!!?」
ξ; ⊿ )ξ三つ)Д`)y‐ メギャアアアア
「たわばッ!!」
(*゚ー゚)「あらー」
-
ξ; Д )ξ「わーっ! わーっ!? 魔物!? 魔物!!?」
(*゚ー゚)「違う違う」
_,
爪 Д;,,「うう、ぐ……」ジュルジュル
ξ; □ )ξ三つ「ぎゃーっ! いやーっ!!」ヒュボッ
爪;;#,,∴',「あわびゅっ」ボッシャア
(*゚ー゚)「あーあー大惨事」
その後、ツンは落ち着くまで五回くらい吟遊詩人をリスキルした。
それから少し。
ξ゚〜゚)ξ゙ モグモグ
(*゚ー゚)「はい名物クルミパイおまちどー」
ξ゚〜゚)ξ゙ ガツガツ
(*゚ー゚)「名物ナッツソースとローストビーフのサンドもおまちどー」
ξ゚〜゚)ξ゙ モシャモシャ
(*゚ー゚)「名物チョコサンデーとアップルパイおまちどー」
爪'ー`)y‐「ねぇ最後もう名物関係ないよね……」
-
ξ゚〜゚)ξ「おいひい」
爪'ー`)y‐「うん……だろうね……人の金で食う飯だもんね……」
ξ゚⊿゚)ξケプ
爪'ー`)y‐「満足したかな……?」
ξ゚⊿゚)ξ「取り乱して申し訳ないです」
爪'ー`)y‐「うんまぁ仕方が」
(*゚ー゚)「しょうがないわよねー目の前で死体が甦ったら」
爪'ー`)y‐「そうなんだけどーそうなんだけどさーぁ女将さーん」
(*゚ー゚)「はい伝票」
爪'ー`)y‐「何で落ち着かせるために与えた食事の代金がすべて僕もち……?」
(*゚ー゚)「この子の残金がヤバイから」
爪'ー`)y‐「えぇー……」
突然蘇った死体に混乱した彼女は、ノータイムで頭蓋骨を叩き潰した。
起き攻めの様にリスキルを五回繰り返してから女将に止められ、
ツンを落ち着かせるために与えられた食事代は全て吟遊詩人持ちとなり
財布の中身と積み上がる皿の枚数を見比べて、吟遊詩人は顔を青くした。
当の彼女は、くちくなったお腹にやっと落ち着いたのか口を拭ってから満足そうにお腹をさする。
-
爪'ー`)y‐「まぁ良いや……宿賃くらいはあるし……」
ξ゚⊿゚)ξ「何から何までご迷惑を」
(*゚ー゚)「いきなり女の子の肩掴んで揺すられたらひっぱたきたくもなるけどねー」
爪'ー`)y‐「女将さん僕の頭それで吹き飛んだんだけど」
(*゚ー゚)「女の子に優しくしないから……」
爪'ー`)y‐「あーもーはいはい僕が悪い僕が悪い……ところで、話なんだけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
爪'ー`)y‐「僕は、君を追ってここまで来たんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ怖……」
爪'ー`)y‐「えぇ……ま、まあ良いや……前に寄った街からここまで来るのにルートが違ったみたいでね
僕は君を追い越しちゃって、先にこの街に到着しちゃってたんだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「はあ」
爪'ー`)y‐「だからまぁ女将さんはあの塩対応なんだけど……」
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱ死んだんだ……」
爪'ー`)y‐「三回くらい……客もみんな慣れてやがんの……」
ξ゚⊿゚)ξ「なぜそんなに……」
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爪'ー`)y‐「それより!」
ξ;゚⊿゚)ξ「はいっ?」
爪'ー`)y‐「僕は君を見込んで! 信じてここまで来たんだよ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「は?」
:爪'Д`)y‐:「君なら僕を殺せると信じて! ここまで来たのに!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、えっ!?」
爪∩∩)「失望した! やっぱ僕は死ねないんだ!! 巷で噂の怪力娘ならいけると思ったのに!!
体型ははんぺんみたいだし容赦なくリスキルするし人の話聞かないしあんまりだぁ!!」
_,
ξ#゚⊿゚)ξ「く、クッソ失礼だな!? 勝手に雑な情報で雑な信じ方して雑に絶望してるな!?」
:爪'Д`)y‐:「だってそうじゃないかはんぺんとかホームランバーみたいな体型だろ!?」
_,
ξ#゚⊿゚)ξ「そっちじゃねぇよお前ェ!! ブッサイクな顔しやがってェエ!!」
:爪'Д`)y‐:「イケメンですぅ普通にモテますぅ!!!」
_,
ξ#゚⊿゚)ξ「残り二割を期待したのに八割の方だった! 八割の方だったクソが!!」
爪'ー`)y‐「だから俺が死ぬまで一緒に旅しない?」
ξ゚⊿゚)ξ「えっやだ無理キモい……」
爪'3`)y‐「あっ傷付いたー今の傷付いたー悲しいーお兄さん心ない一言に傷付いたー」
-
ξ゚⊿゚)ξ「だって冷静に考えて、見知らぬ吟遊詩人」
爪'ー`)y‐「そうだねすごい美男子だね」
ξ゚⊿゚)ξ「名前も知らない変な体質の人」
爪'ー`)y‐「フォックス君ピチピチの26歳☆ミ」
ξ゚⊿゚)ξ「信用に値しない……」
爪'ー`)y‐「なんで!? ご飯奢ったよ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや信用に値しない……」
爪'ー`)y‐「信用できない男の飯を食ったの!?」
ξ゚⊿゚)ξ「いやだって……ご飯は女将さんが作ったし……」
-
爪'ー`)y‐「えっ……じゃあタダメシ食って逃げるの……?」
ξ゚⊿゚)ξ「それはまぁ……」
爪'ー`)y‐「親御さんに顔向け出来るの!?」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、私ちょっと親居なくて……」
爪'ー`)y‐「あっ……ごめん……」
ξ゚⊿゚)ξ「良いけど……」
爪'ー`)y‐「ご親戚の元か何かで育って……?」
ξ゚⊿゚)ξ「孤児院育ちで師匠の元に住み込みを」
爪'ー`)σそ「なるほど、コホン…………師匠に顔向け出来るの!?」
_,
ξ#゚⊿゚)ξ「ああクソ余計な事言った!! 出来ないクソ!!」
_,
爪'ヮ`)y‐「ふはははははは! さぁどうする困った人にタダメシ奢らせてトンズラするのか!!」
_,
ξ#゚⊿゚)ξ「あー! 勝ち誇った面ー!! あー!! 腹立つー!!」
-
和尚久々に見た
-
爪'ー`)っ「ほら僕って細腕じゃない」スッ
ξ゚⊿゚)ξづ「そうですね」グッ メキボリ
爪; Д )そ「アッダァイァッ!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ脆い」
爪;'Д`)「人の手を!? 握り潰して!? それ!? 本当に血の通った人間かな君は!?」
ξ゚⊿゚)ξ「いやその……死なないし……つか本当ブッサイクだなその顔……」
爪;'Д`)「死ななくても痛いし怪我するし寧ろ死なないから余計痛いよ!? イケメンだよ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「お前のそのよくあるイケメン設定なんなんだよ……顔面偏差値低そうな顔の癖に……」
爪;'ー`)+「実際イケメンですので……と言うかもう素だね君……」
ξ゚⊿゚)ξ「っざ……なにこの人……」
爪;'ー`)「お兄さんキメ顔までしたのに心折れそう」
ξ゚⊿゚)ξ「……で、何? 旅? 何で?」
爪ノ'ー`)「あーえっとねー、僕ってほら細腕じゃない」
ξ゚⊿゚)ξづ「握り」
爪'ー`),,「やめて」
-
ξ゚⊿゚)ξ「チッ……それで?」
爪'ー`)「いやまぁ程よく引き締まった見映えの良い身体ではあるんだけどねうん女の子からも評判が」
ξ゚⊿゚)ξ「女将さんお世話になりました失礼します」
爪'ー`)「あーでもなー! 戦うのに適さないんだよなー! 吟遊詩人ぼっち旅は危険だなー!」
ξ゚⊿゚)ξ「今までよく無事だったなぁこの人……」
爪'ー`)「いやー……素っ裸で谷底で目覚めたりとかよくあって……」
ξ゚⊿゚)ξ「うわ……」
爪'ー`)「自衛しようにもね……うん……吟遊詩人は攻撃スキルほぼ無いし……」
ξ゚⊿゚)ξ「スキル言うな……」
爪'ー`)「だからお金稼いでは用心棒を雇い……お金稼いでは剥ぎ取られた荷物を新調……」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、うん……悲惨……」
爪'ー`)「君ならさ……ほら……信用出来そうだし……金バッチだし……雇いたいなって……」
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃまあ……金だけど……」
爪' -`),シュン「僕もさ……こんなデタラメな身体もう嫌なんだ……普通の人間に戻りたいよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)「だから、もう君に賭けたいんだ……今まで雇った用心棒とは、かけ離れてる君に」
-
ξ゚⊿゚)ξ「う……」
_,
ξ-⊿゚)ξ゙「ううう」
_,
ξ-⊿-)ξ(面倒だしなんか気持ち悪いし関わりたくない……)
_,
ξ-⊿-)ξ(でも確かにリスキルしたしご飯は奢って貰った……恩はある……)
_,
ξ-⊿-)ξ(師匠の言葉を思い出せ……師匠ならこんな時……)
( ΦωΦ)『えっ……貴様ちょっと……野良試合で相手の頭蓋骨陥没させたの……?』
( ΦωΦ)『素手で……? えぇ……怖……その怪力どうにかならんのか……マジで……』
_,
ξ-⊿-)ξ(違うこれじゃない……)
_,
ξ-⊿-)ξ(とにかく師匠は、ご飯と義理を大事にした……)
_,
ξ-⊿-)ξ(あとご飯がすごくおいしかった……)
_,
ξ-⊿-)ξ
ξ゚⊿゚)ξパチリス
-
ξ゚⊿゚)ξ「…………わかった、雇われてあげる」
爪'ー`)「うっそマジで」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、リスキルした事は謝ります、すみませんでした」
爪'ー`)「あ、いえこちらこそ」
ξ゚⊿゚)ξ「ご飯の代金は雇用の給金から引いてください」
爪'ー`)「はいはい、後腐れなく」
ξ゚⊿゚)ξ「……と言うわけで」
爪'ー`)「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「言っとくけど、金ランクの冒険者は高い……けどまぁ……経済状況アレだし良いか……」
爪'ー`)「なんて優しいんだ………まるで女神のようだよ君は……」
_,
ξ゚ -゚)ξ「師匠に顔向け出来ないから雇われるだけだし……」
爪'ー`)(くっそチョロいなこの子……土下座すればヤれそう……)
-
ξ゚⊿゚)ξ「しかしこの場合は護衛契約……? それともパーティ契約……?」
爪'ー`)「パーティにしようよパーティ」
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ良いけど……あんた旅の目的は? 何か説明された記憶無いんだけど」
爪'ー`)「説明した記憶もないね、目的はこの体質の治し方だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「何で死ななくなったのあんた……」
爪' -`)「ちょっとね……魔女の呪いを受けちゃって……」
ξ゚⊿゚)ξ「魔女のって……ガチのやつじゃんそれ……えぇ……」
爪' -`)「身に覚えがない訳じゃないんだけどさ……でも少し理不尽な事でね」
ξ゚⊿゚)ξ「ど、どんな……?」
爪' -`)「旅の途中、出会った魔女が困っていたから手助けしたんだ……」
ξ゚⊿゚)ξ「う、うん」
爪' -`)「そうしたら勘違いされたみたいで、求婚されて……それを断ったらこうなっちゃって」
ξ゚⊿゚)ξ「えぇ……なにそれ、えぇ……」
爪' -`)「それ以降、彼女は見付からず……だから解呪は彼女ではなく高名な魔導師に頼もうかなって」
-
ξ゚⊿゚)ξ「な、なるほど……惚れっぽい魔女の恨みをうっかり買って呪われたと……」
爪' -`)「そう、だから解呪のための旅に同行してほしいんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「む、むむ……なら尚更断れないわね……分かった、付き合うわ……」
爪' -`)「ありがとう……まず目指すのは、かの高名な大魔導師が住むと言う王都の森なんだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「ふむ、ここから王都は距離があるけど……途中村や街に寄りながら行けば」
爪'ー`)「回り道になっても問題ないよ、仕事をこなしながら進もう、のんびりでも良いから」
ξ゚⊿゚)ξ゙「分かった、当面の目標は王都ね
……まぁ久々に王都にも行きたかったし、道中で討伐の仕事でもすれば私の目的は問題ないか」
爪'ー`)「ありがとう、それじゃあ護衛の料金はこれくらいで」パチパチ
ξ゚⊿゚)ξ「いやもうちょい」
爪'ー`)「こう」パチパチ
ξ゚⊿゚)ξ「もう一声」
爪'ー`)「これなら」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、これなら」
-
爪'ー`)「ところで君の旅の目的は?」
ξ゚⊿゚)ξ「力加減の制御と武者修行」
爪'ー`)「ああうん、なるほど」
ξ゚⊿゚)ξ「ところであの、あんたさ」
爪'ー`)「フォックス君☆って呼んで」
ξ゚⊿゚)ξ「クソ狐」
爪'ー`)「程々に傷付く」
ξ゚⊿゚)ξ「でも護衛契約じゃなくて良いの?」
爪'ー`)「パーティ契約の方が君の旅も果たせるだろ? 護衛契約だと君の自由が無くなっちゃうから」
ξ゚⊿゚)ξ「はあ、なるほど……」
爪'ー`)「パーティ契約でも大丈夫だよ、ちゃんと護衛料は支払うから」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
爪'ー`)「パーティ契約だと最短で一年だけど大丈夫?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
爪'ー`)「パーティ名はどうしようか、歩きながら決めようか」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
爪'ー`)(脳みそ本当に動いてるのかなこの子)
-
ξ゚⊿゚)ξ「えっと、それじゃあ役所?」
爪'ー`)「そうそう、女将さん代金はここに」
(*゚ー゚)「はーい」
ξ゚⊿゚)ξ「ごちそうさまでした」
爪'ー`)「どんなパーティ名が良い? したい名前があるならそれでも良いけど」
ξ゚⊿゚)ξ「パーティ組むの初めてだからよくわからない……」
爪'ー`)「そっかぁ、じゃあ詩人として頑張らないとなー」
ξ゚⊿゚)ξ「恥ずかしいのはきついからほどほどで」
爪'ー`)「†漆黒の剣†とか」
ξ゚⊿゚)ξ「漆黒の剣は関係無いでしょやめなさいよ」
爪'ー`)「初心者的に†は外せないかなって……」
ξ゚⊿゚)ξ「やめてよ恥ずかしいよつらいよ……」
からんころん。
ばたん。
(*゚ー゚)「まいどー」
(*゚ー゚)
(*゚ー゚)「苦労しそうねぇあの戦士ちゃん……」
-
爪'ー`)「そうだ、改めて自己紹介をしない?」
ξ゚⊿゚)ξ「ん? あぁ、まだ名乗ってなかったっけ」
爪'ー`)「僕はフォックス・ユースレス、26歳の吟遊詩人だよ、ランクは銀」
ξ゚⊿゚)ξ「ツン・グランピー、18歳の戦士、ランクは金」
爪'ー`)「ツンちゃんっ☆」
ξ゚⊿゚)ξ「死ね」
爪'ー`)「早くも脊髄反射で死を望まれた……あ、そうそう」
ξ゚⊿゚)ξ「うん?」
爪'ー`)「折れたままの腕がクッソ痛いから一回死にたい」
ξ゚⊿゚)ξ「デスベホマ使ってんなよ……」
爪'ー`)「もうずっと痛い」
ξ゚⊿゚)ξづ「オラァッ」ゴブシャッ
爪 :;#,∴。「ベビュッ」ボシュッ
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ξ゚⊿゚)ξ(簡単に頭弾け飛ぶなこの人……)
爪 :;#。゙ ジュル
ξ゚⊿゚)ξ(しかしパーティ組むとは言ったけど、出会ったばかりで距離感がわからない……)
爪 :,,。゙,, ジュルジュル
ξ゚⊿゚)ξ(一年組む事になるんだし、もうちょい砕けた方が良いのかな)
爪 ;。,,゙),ジュルジュル
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇすごくきもいんだけど」
爪:;。ー`)「ひど……ぉい゙……」ジュルジュル
ξ゚⊿゚)ξ「魔物と間違って討伐された事ない……?」
爪'ー`)「あります」
ξ゚⊿゚)ξ「大変ね……」
爪'ー`)y‐「イケメンフォックス君復活☆ 待たせたね、行こっか」
ξ゚⊿゚)ξ「きもいからのうざい」
爪'ー`)y‐「ひーどーぉいー☆」
-
酒場を出た二人は、とりとめのない会話を交わしながらてくてくと、
さして遠くは無い場所にある役所を目指す。
片や長身の優男、片や小柄な少女。
互いの得物を持っていなければ、兄妹か何かに見えたかもしれない組み合わせ。
同業者である銅や銀のバッジ持ちからの視線を受けながら、時おり露店を横目で眺め歩く。
果物、パン、串焼き、装飾品、魔法術式。
そう言えば術式をまた買っておかないとな、とツンは荷物と財布の中身に思考を巡らせる。
いやでも他の消耗品の事を思うと、しかし必要な物ではある。
とは言え財布の中身が非常に厳しい、なぜ仕事をこなしても手元にほとんど残らないのだろうか。
むしろ術式を買う金すら無かった、冷静に考えて薬草しか買えない、つらい。
ただでさえ眉間に刻まれた皺を更に深くしながら考え込む。
すると斜め上の方から、くすくすと笑い声が聞こえた。
ξ゚⊿゚)ξ「……何よ」
爪'ー`)y‐「やー……ツンちゃんめっちゃ渋い顔してたから……」
ξ゚⊿゚)ξ「こっちだって財布事情が良くないのよ」
爪'ー`)y‐「金の戦士様が何でまた?」
ξ゚⊿゚)ξ「わからん……なぜか手元に全然残らん……」
爪'ー`)y‐「えぇー……」
-
たどり着いた役所の扉をフォックスが押し開けて、ツンを先に入れてから後ろ手に閉める。
ツンはぼんやりと王都に思考をやりながら、等間隔で並ぶ書類記入用の机を指でなぞる。
役所の中は、相変わらず整然としている。
窓口のカウンター、クエスト用の掲示板、記入机に休憩スペース。
まだ昼間と言う事もあり、冒険者が何人か掲示板に貼られたクエスト依頼用紙を値踏みしたり
窓口で何やら職員と言い争ったり、払い込みをしたり、説明を受けたり。
奥の方には二階への階段、きっとその先には講習等に使う多目的室がいくつかあるのだろう。
そういや初めて役所に行った時に、一時間半の講習を受けたものだ。
ほとんど覚えていないけど。
爪'ー`)y‐「ツンちゃん、パーティのランクは分かる?」
ξ゚⊿゚)ξ「金銀銅のやつでしょ」
爪'ー`)y‐「そうそう、講習ちゃんと覚えてたんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そ、それくらいは覚えてるわよ……」
爪'ー`)y‐「ほとんど忘れるよね講習の内容」
ξ゚⊿゚)ξ「忘れる」
-
爪'ー`)y‐「じゃあ護衛契約とパーティ契約とクエスト契約は?」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、あ、ご、護衛は期間は自由の、あの、護衛の、契約、商人とかの、」
爪'ー`)y‐(めっちゃキョドってる)
ξ;゚⊿゚)ξ「パーティはあの、えと、最短一年の、あの、冒険者の、仲間の、あれ」
爪'ー`)y‐(ふんわりしてるなー)
ξ;゚⊿゚)ξ「く、クエストはその、受託したクエストが終わるまでの、間の、やつ、」
爪'ー`)y‐「うんまぁ……ふんわりとは合ってたよ、うん」
ξ;゚⊿゚)ξホッ
爪'ー`)y‐「ま、契約は義務付けられてるけど実際には契約せず適当にみんなやってんだけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「え、駄目じゃない」
爪'ー`)y‐「駄目なんだけどねー……まだ冒険者の制度って色々発展途上と言うか」
ξ゚⊿゚)ξ「難しいのね」
爪'ー`)y‐「ま、僕らはちゃんとやろうねっと……はい、名前と証明章押してね」
ξ゚⊿゚)ξ カリカリ ペタン
爪'ー`)y‐「…………」
ξ゚⊿゚)ξ?
-
爪'ー`)y‐「ちゃんと読んだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
爪'ー`)y‐「これ婚姻届だよ? 書類は一応見よう?」
ξ゚⊿゚)ξ「何持ってきてんだお前」
爪'ー`)y‐「確認せずに名前書くの良くない」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「きをつける」
爪'ー`)y‐「うん、こっちがパーティ申請用紙」
ξ゚⊿゚)ξ ジッ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「パーティ申請用紙……一年契約……二人……」
爪'ー`)y‐(ちゃんと読んでる読んでる)
-
ξ゚⊿゚)ξジッ
爪'ー`)y‐(ほんとこの子よく今まで無事だったな、信用第一の仕事だろうに)
_,
ξ゚⊿゚)ξ?
爪'ー`)y‐(いや、無事じゃ無かったのかもな)
_,
ξ゚ -゚)ξ゙
爪'ー`)y‐(まあ悪いのは頭だけみたいだし、上手いこと使わせて貰おうかな)
_,
ξ゚∧゚)ξ
爪'ー`)y‐(これでもうちょっと出るとこ出た体型なら良かったんだけどなー、はんぺんみたい)
ξ゚⊿゚)ξ「読んだ」
爪'ー`)y‐(理解できてんのかな)
ξ゚⊿゚)ξ「名前ここ?」
爪'ー`)y‐「うん」
ξ゚⊿゚)ξ カリカリ ペタン
爪'ー`)y‐(まあ組んでりゃお金になるだろうし、僕が得をするならちゃーんと守ってあげましょ)
爪'ー`)y‐(騙そうとしてくる僕みたいな人からねー)
-
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
爪'ー`)y‐「うんうん、パーティ名の案はある?」
ξ゚⊿゚)ξ「ない」
爪'ー`)y‐「だよねぇ、どうしよっか……この名前経歴にはずっと残るからなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「歴代の偉大な功績を残したパーティってずっと貼り出されてるじゃない」
爪'ー`)y‐「あーるねー、あれに載れたらカッコいいんだけどなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「一番上のやつさ」
爪'ー`)y‐「ああ、伝説のアレ……だっさいよなぁアレ……」
ξ゚⊿゚)ξ「チームおだいどころ……」
爪'ー`)y‐「チームおだいどころって何を思って付けたんだろう……」
ξ゚⊿゚)ξ「知り合いに夫婦円満って言うパーティ組んでた人が居る」
爪'ー`)y‐「ご夫婦で冒険者だったのかな……」
ξ゚⊿゚)ξ「男二人だったような」
爪;'ー`)y‐「嫌なパーティ名だなぁ!?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「簡単なので良いんじゃないの?」
爪'ー`)y‐「えーつまんなーいやーだぁ☆」
ξ゚⊿゚)ξづ グッ
爪'ー`)y‐「やめて」
ξ゚⊿゚)ξ「決めなきゃ用紙提出も出来ないでしょ」
爪'ー`)y‐「うーん……でも詩人的にここは頑張りたい……詩的でカッコいいやつ……」
ξ゚⊿゚)ξ「張り切ると痛い感じになるやつでしょそれ……」
爪'ー`)y‐「趣味とかは」
ξ゚⊿゚)ξ「鍛練」
爪'ー`)y‐「共通するわけもなく」
ξ゚⊿゚)ξ「でしょうね、一応パーティ名変えられるし適当に決めたら?」
爪'ー`)y‐「変えるの手続き面倒なのに」
ξ゚⊿゚)ξ「中には決められなくて数字だけのパーティとかあるでしょ」
爪'ー`)y‐「やだよーカッコ悪いよーつまんないよー」
ξ゚⊿゚)ξ「めんどくさい」
-
爪'ー`)y‐「共通するもの……」
ξ゚⊿゚)ξ「金髪」
爪'ー`)y‐「くらいしか無いね……目の色は違うし」
ξ゚⊿゚)ξ「金……き…………金麦……」
爪'ー`)y‐「喉ごしが良さそう」
ξ゚⊿゚)ξ「スーパードライ……」
爪'ー`)y‐「スードラって略されるやつ」
ξ゚⊿゚)ξ「早く決めてよー」
爪'ー`)y‐「待ってよー」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「うーん詩的でインパクトがあって覚えやすいやつ……」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「金を絡めてみるか……月とかの……」
ξ゚⊿゚)ξづ カリカリ
爪'ー`)y‐「うーんうーん……美男美女的にも……」
,,,ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「ツンちゃんどう思 居ないな!?」
,,ξ゚⊿゚)ξつ「パーティ証明章貰ってきた」
爪'ー`)y‐「勝手に決められたな!?」
-
爪'ー`)y‐「えぇ……えぇぇ……勝手に出したの……」
ξ゚⊿゚)ξ「長くかかりそうだったから……」
爪'ー`)y‐「えぇぇー……名前何にしたの……?」
ξ゚⊿゚)ξ「朝飯」
爪'Д`)y‐「朝飯!?」
ξ゚⊿゚)ξ「証明章つけよう」
爪'Д`)y‐「待って朝飯!? 文字通り!? そのまま!?」
ξ゚⊿゚)ξ「うまくつけられない」
爪'Д`)y‐「貸してもう小さい子じゃあるまいし!!」
ξ゚⊿゚)ξ「鎧が邪魔で……」
爪'Д`)y‐「ほらもうつけたから!! 朝飯!?」
ξ゚⊿゚)ξ「うるさいのとすごいブサイク」
_,
爪'Д`)y‐「イケメンだよ!!!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「パーティも名前で管理されるんだし呼ばれるのはしょうがないじゃない」
爪'ー`)y‐「だからかっこよくしたかった……」
ξ゚⊿゚)ξ「……どうやって冒険者やパーティを管理してるのかしら」
爪'ー`)y‐「パソコンと事務ソフトで」
ξ゚⊿゚)ξ「魔道具の事パソコンって言うのやめて」
爪'ー`)y‐「無線LANで全国と情報のやり取りが可能」
ξ゚⊿゚)ξ「魔力を用いた伝達手段をインターネットって言うのやめて」
爪'ー`)y‐「言ってない言ってない」
鈍い銅のパーティ証明章を職業証明章の隣に付けて、その新鮮さにどこか浮足立つツン。
しかし銅の証明章とまばゆい金の証明章は、なんともちぐはぐな印象で。
それを見てフォックスは子供を見るような目で笑い、
パーティ名については諦めたのか、溜息混じりに自分の証明章を身に付ける。
ああやれやれ、まったく小さな子供みたいにパーティ証明章を眺めて。
それなのに、不釣り合いにすら見える上級冒険者の証を付けて。
-
隣に立つ少女は、18歳と言う若さでその証を身に付けている。
あどけなさすら残す顔立ちに、小柄な身体、手足も細く肌は白い。
太陽をミルクに溶かしたような眩しい金髪には、枝毛の一つも無いのだろう。
傷の少ない白銀の軽鎧を纏う彼女は、いったい何者なのだろう。
いったい何があって、その金の証明章を身に付けるようになったのか。
なんて、考えるだけ無駄か。
この少女は人を疑う事もろくに出来ないし、頭も良くないお人好し。
それだけは間違いないし、腕が立つ事も間違いない。
ならばそれだけで十分だ。
傍らに侍らせておくのに十分な容姿と実力なら、利用するに越した事はない。
二人でひと気のなくなった掲示板を見上げながら、良さそうな条件のクエストは無いかと探す。
木製で横広の掲示板には、裏表にクエスト依頼用紙が貼られている。
用紙には必要な人数や報酬額、簡単な依頼内容が記入されており、詳細は窓口で聞く形だ。
ツンは目一杯に顔を上に向けるが、一番上の用紙は下からでは読めやしない。
眉を寄せるそんな彼女の傍らで、フォックスはひょいと用紙を掴んで剥がした。
-
爪'ー`)y‐「近くの村まで荷物の運搬だってさ、荷車も貸し出してる」
ξ゚⊿゚)ξ「んー……目的地は王都だけど、寄り道と回り道するなら……」
爪'ー`)y‐「次の目的地がこの村でもいい感じ」
ξ゚⊿゚)ξ「あー、街道沿いだとそうなるか……」
爪'ー`)y‐「村までは2、3日くらいでつくかなー」
ξ゚⊿゚)ξ「2、3日か……何運ぶの?」
爪'ー`)y‐「お祭りがあるみたいだから、それに使うやつだってさ」
ξ゚⊿゚)ξ「その情報だと木箱の中に生け贄の人間詰まってそうなんだけど」
爪'ー`)y‐「何それ怖い、あるけどそう言うの」
ξ゚⊿゚)ξ「荷車貸し出し……ふむ、じゃあ受けるか」
爪'ー`)y‐「雑に受けるねぇ……まぁ良いや、受託してくるよーん」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
-
その後、無事にクエストを受託した二人は役所を後にして、フォックスの泊まる宿へと向かった。
一人泊まるも二人泊まるも変わりはしない。
パーティを組んだのだから、とツンは宿泊費をフォックスに立て替えて貰う事となる。
これまでの会話と、同じ時を過ごした結果。
ツンから見たフォックスは『胡散臭いが大変そうな身の上だし、手助け出来れば良い』と言った物。
フォックスから見たツンは『バカでお人好しの世間知らず、最大限に利用しよう』だった。
それから日が落ちるまでフォックスとこれまでの旅の話を交わしたり、他愛のない会話をして。
日が落ちれば簡素な夕食を共に口にして、フォックスはぶどう酒を飲みながらけらけらと笑う。
そして夜半には、フォックスは相棒とも言える楽器をつま弾いて控えめな声で歌をかなでてみせた。
ぽろんぽろんとたゆたう音に、良く澄んだ男の優しい声音。
先程ぶどう酒で笑っていた男と同一人物とは思えないその姿に、ツンは目を丸くした。
-
金の月と銀の星
さざめく風は夜明けの空
金の冠、銀の声
ざわざわなみうつ草の色
花の冠、夜の腕
幼い娘と王たる男
夜空に浮かぶ上弦の月のように、ぴんと張りのある歌声。
それでいて、空からそそぐ月明かりみたいに、包み込むような優しいその声。
弦をはじく指先も、歌をこぼす口許も、どこか物憂げな眼差しも、腹が立つほど様になる。
胡散臭くて軽薄で、変な体質で、胡散臭い上に胡散臭い。
そんな男ではあるが、フォックスは、吟遊詩人としての腕は十二分に一流で。
不幸な身の上で、こんなにきれいに歌うのなら、少々胡散臭くても信じるしか無いじゃないか。
ツンは唇を尖らせながら、財布に残った銅貨の一枚をフォックスに投げて寄越した。
-
翌朝、身支度を整えた二人は役所へ荷車を引き取りに行く。
交代で引けば良いだろう、と言う事になり、ツンが荷車を引いて町を発った。
小さな身体からは想像も出来ない体力と腕力により、ツンは易々と荷車を引いて歩く。
その傍らを歩くフォックスは、機嫌が良さそうに笑って話しかける。
一度目の休憩の時までは、穏やかな時が流れていた。
爪'ー`)y‐「はー、歩くだけでも疲れるねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた歩いてるだけでしょ……」
爪'ー`)y‐「まぁまぁ、はいお水」
ξ゚⊿゚)ξ「どーも」
爪'ー`)y‐「いやー、しかしツンちゃんと組めて良かったなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「あっそ……ところでさ」
爪'ー`)y‐「んー?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「魔女って、どんな人?」
爪'ー`)y‐「魔女? 呪いをかけた?」
ξ゚⊿゚)ξ「う、うん、見付けた時に顔知ってないと困るし……」
爪'ー`)y‐「あー別に良いよそんなの、普通に今は人妻してるし」
ξ゚⊿゚)ξ「は?」
爪'ー`)y‐「一般男性と結婚して幸せになってるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「…………行方知れずでは……?」
爪'ー`)y‐「いや? 結婚式見に行ったけど」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「あれ……?」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「理不尽な、呪いは……?」
爪'ー`)y‐「呪われてはいるよ?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……あれ……?」
爪'ー`)y‐「呪われた理由は僕が魔女を一晩だけの恋人にして翌朝逃げ出したからだけど」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「ん……?」
爪'ー`)y‐「大丈夫? 無いけどおっぱい揉もうか?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「騙したな……?」
爪'ー`)y‐「うんっ☆」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ#゚⊿゚)ξ゙ ミシッ
爪>ー<)y‐ キャー
-
_,
ξ#゚Д゚)ξ「おぉぉまぁぁぁえぇぇぇぇえ!!!!」
爪'ー`)y‐「わーい顔が怖い顔が、ごーめんってー騙してごーめんってーばー
いやー賭けではあったよ? 死なないのは事実だし剥ぎ取りくらうのも事実だしー」
_,,
ξ#゚皿゚)ξフシャーッ
爪'ー`)y‐「だから君が僕を襲わないか、賭けだったんだよ?
でも君は賭けに値しないほど誠実だった」
_,
ξ#゚ -゚)ξ
爪'ー`)y‐「用心棒が欲しいのも死なないのも本当、騙したのは悪かったよ、でも君を信じて良かった」
_,
ξ#゚ -゚)ξ
爪'ー`)y‐「だからお願い、僕と一緒に旅しよ?」
_,
ξ#゚ -゚)ξ「むかつく」
爪'ー`)y‐「ごめんね」
_,
ξ゚ -゚)ξ「今さら契約取り消せないし、組んだからにはちゃんとやるわよ」
爪'ー`)y‐「これからよろしくね、可愛い相棒さん」
_,
ξ゚ -゚)ξ「しね」
爪'ー`)y‐(何も良くないのにすげー雑に言いくるめられててこの子今までよく無事だったな)
爪'ー`)y‐(と言うか騙されたって役所に相談すれば良いのに)
爪'ー`)y‐(格安で金ランクの護衛雇えて僕としては大満足だけどねー)
-
がらがら、ごとごと。
がらがら、ごとごと。
荷車を引く吟遊詩人と、その前を無言で歩く戦士。
なぜ信用したのかと己を恥じる戦士と、疲労にぐったり足を引きずる吟遊詩人。
重苦しい沈黙の中、吟遊詩人が口を開いた。
爪;'ー`)y‐「ねーツンちゃーん」
_,
ξ#゚ -゚)ξ「……」
爪;'ー`)y‐「ついでに言うとさー、急いで呪い解きたいとも思ってないんだよねー」
_,
ξ# - )ξ
爪;'ー`)y‐「だーからのんびりやろーよー、急がなくて良いじゃーん」
直後、吟遊詩人の頭の潰れる音が響いた。
姑息な男と愚かな女の二人旅は、まだまだ始まったばかり。
おわり。
-
>>41と>>42の間に入れ忘れた分
ξ゚⊿゚)ξ「道中で出来そうなクエスト受けない?」
爪'ー`)y‐「良いけどー……えー……朝飯ー……?」
ξ゚⊿゚)ξ「早く決めないから……」
爪'ー`)y‐「だからって朝飯になると誰が思うだろうか……」
ξ゚⊿゚)ξ「あそこに新しいパーティ貼り出されてるわよ」
爪'ー`)y‐「朝飯が……」
ξ゚⊿゚)ξ「しつこいなぁ……確認してきなさいよもう」
爪'ー`)y‐「だってなー……」
爪'ー`)y‐
爪'ー`)y‐「『焼きたてパンと溶かしバター』って書いてあるのは気のせいかな」
ξ゚⊿゚)ξ「いや別に」
爪'ー`)y‐「今後長らく焼きたてパンと溶かしバターって呼ばれるんだよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「お腹空きそう」
-
ありがとうございました、本日はここまで。
よく人が死ぬので一応閲覧注意でした(事後報告)
ξ゚⊿゚)ξ ツン・グランピー
18歳、身長150cm、怪力戦士。
ホームランバーの擬人化みたいな体型。
爪'ー`)y‐ フォックス・ユースレス
26歳、身長185cm、ゾンビ系吟遊詩人。
APPで言うと15くらいある。
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2292.png
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
-
APP15はかなり美形だな
-
おつ
わくわくする雰囲気だ
-
ツンちゃんマジおバカさん
楽しみだわ
おつ
-
おばかだけど強いツンって良いね。
焼酎のとかドリルとか。
乙
-
乙乙 続きが凄く楽しみです
-
おつおつ
こういう雰囲気のファンタジー大好きだ、楽しみに待ってます
-
乙
フォックスがいいキャラしてる
次が楽しみだ
-
土下座一番乗りは貰った
-
乙っした
ツンちゃんばかかわいい
-
塔も旅も大好きで最近読み返したところだったから嬉しい!
毎週更新とのことで楽しみにしてます
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声。
刃を振るい、歌声を響かせ、路銀を稼いで進むのは二人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
【道のようです】
【第二話 いいじゃんちょっとだけ。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
がらがら、ごとごと。
がらがら、ごとごと。
秋の花の匂いが漂う街道、幅の広い、左右を森に挟まれた道。
荷台を引く男と、その前を歩く女。
爪'ー`)y‐「あっれぇこないだもこんな感じじゃなかったっけぇ?」
ξ゚⊿゚)ξ「何言ってんのあんた」
爪'ー`)y‐「やったね今回は口をきいてくれた」
ξ゚⊿゚)ξ「だから何言ってんの……」
爪'ー`)y‐「僕の事許してくれた?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたのどこに許される要素があるの?」
爪>ー<)y‐「無い☆」
ξ゚⊿゚)ξ「自覚あんなら黙って歩けよ……」
爪'ー`)y‐「やーんツンちゃんが冷たーいお兄さん悲しいぞっ?」
ξ゚⊿゚)ξ「クソみたいにうざい」
爪'ー`)y‐「かなしい」
-
ξ゚⊿゚)ξ「騙されるのも問題だとは思うけど、人を騙して契約させるクズが何を」
爪'ー`)y‐「まぁ騙したのもクズなのも自覚してるし否定しないけどぉ」
ξ゚⊿゚)ξ「胸が痛んだりしないのあんた……」
爪'ー`)y‐「いや別に僕は良心が無いわけじゃないし利用できるものはするしその価値があるものは守るし」
ξ゚⊿゚)ξ「清々しいなお前クソが」
,,爪'ー`)y‐+「もちろん、それ以外に愛着を持つ事もあるけどね……?」スッ
ξ゚⊿゚)ξ「うるさい黙れ頭の中身引きずり出すぞ」
爪'ー`)y‐「やめてバイオレンスコミュニケーション」
ξ゚⊿゚)ξ「何が守るよ……腕力無振りの癖に……」
爪'ー`)y‐「いやいやいやー守り方は色々あるんだよーぉ?」
ξ゚⊿゚)ξ「あっそ…………日が落ちてきたな」
爪'ー`)y‐「あー、そろそろ夜営の準備しよっか」
-
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、地図は……」
爪'ー`)y‐「もうちょい先に他の冒険者が夜営した跡があるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「何で知ってんの」
爪'ー`)y‐「僕この道通ってあの町に行ったから」
ξ゚⊿゚)ξ「ふぅん……じゃあそこで一晩越すか」
爪'ー`)y‐「初めてのドキドキ二人野宿だね!」
ξ゚⊿゚)ξ「一晩起きられない程度に粉砕すれば良いの?」
爪'ー`)y‐「一晩死体と過ごすメンタルも怖いけど早々に僕を殺す事への躊躇いが消え失せてる事のが怖いな!」
ξ゚⊿゚)ξ「既に八回くらい死んだし……」
爪'ー`)y‐「出会い頭にリスキルされたもんなぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「それは悪かったと何度も……」
爪'ー`)y‐「あーほらついたよ、火を焚かなきゃ暗くなっちゃう」
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい」
爪'ー`)y‐「着火道具持ってる?」
ξ゚⊿゚)ξ「マッチなら」
-
爪'ー`)y‐「秋は天気が崩れやすいからなぁ、湿気るマッチより別の持ち歩いた方が良いね」
ξ゚⊿゚)ξ「たまにマトモな事言うわよねあんた」
爪'ー`)y‐「普段は?」
ξ゚⊿゚)ξ「しね」
爪'ー`)y‐「わぁい簡素な二文字、一日で扱いの悪さが床抜いてる」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたは雑に扱っても良いって天啓があった」
爪'ー`)y‐「その神様はきっと僕のイケメンさに嫉妬してる」
ξ゚⊿゚)ξ「しね」
爪'ー`)y‐「お代わりいただきました」
道の脇の、少しだけ開けた場所に荷車を停めて、夜営を準備を始める二人。
誰かが設置したであろう丸太に腰を下ろし、外套や食事を取り出すフォックス。
ツンは森に少しだけ踏み入り、薪を拾いながら動物を探す。
落ち始めた葉を足で退かしながら注意深く地面を見れば、所々に獣の足跡。
いや、四足の獣にしては足跡の数が少なく、深い。
水気の残る葉を踏んだ跡もあり、まだ時間がそう経っては居ない事もわかる。
森の奥に視線をやってから、フォックスの傍らに集めた薪を置いて、代わりに斧槍を掴んだ。
-
爪'ー`)y‐「ん? 何かいた?」
ξ゚⊿゚)ξ「二足の獣の足跡、まだ新しい」
爪'ー`)y‐「あーんワーウルフかな……夜営中に来たら困るねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「人里近いのに降りてくるのは良くないわね、少し減らさないと」
爪'ー`)y‐「ほっといたら討伐クエスト貼り出されるんじゃなーい?」
ξ゚⊿゚)ξ「被害が出るのを待つのは嫌なの」
爪'ー`)y‐「ワーウルフの頭数は減らすのに人間の頭数が減るのは嫌?」
ξ゚⊿゚)ξ「嫌よ、私は人間だから」
爪'ー`)y‐「んー…………じゃ、行ってらっしゃーい、火起こしとくねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「ん」
爪'ー`)y‐
爪'ー`)y‐(意外とちゃんと冒険者してるじゃん)
爪'ー`)y‐(理想だけ追っ掛ける甘ちゃんかなーと思ったけど、ふーん)
-
がさがさと草を掻き分けて森へ入って行くツンの背中を見送りもせず、フォックスは薪を組む。
荷物から湿気取りにくるまれたマッチを取り出して、紙に火を点けて薪のなかに放り込む。
しばらくちりちりと揺らいでいた小さな炎は、乾いた小枝に燃え移り、夕暮れの迫る街道をわずかに照らした。
手持ちの小鍋に水を入れて、火にかけてお湯を沸かしつつ耳を澄ませてみた。
遠くから、草を踏み、風を切る音が聞こえる。
それと、獣のような断末魔。
野犬だろうが魔物だろうが、人に害をなすならば狩らねばならない。
だが異常事態で無い限り、狩り尽くす事はせず数を減らすだけ。
人は恐ろしいのだと言う印象を、獣のなかに刻み付けるのだ。
そうすれば、しばらくはまた出てこなくなる。
時おり仇討ちのような真似をする魔物も居るが、そうなれば巣ごと潰すまでだ。
魔物も獣も、今となっては自然の一部。
無駄に巣を荒らしたくはない、と言うのが彼女の気持ちなのだろう。
ま、潰せば別の魔物が巣を作る可能性もある。
多少は残ってもらわねば。
ぱちぱちと揺れる火を見ながら、フォックスは欠伸混じりに荷車から楽器を下ろす。
退屈を紛らわせる歌はあったかな、と指先で弦を弾いた。
彼女が妙な情けをかけては、この先は前途多難になる。
心は残したまま、時に非情になって貰わなければ。
-
すると背後で、がさがさ。
人の足音と、草の音。
爪'ー`)y‐「お、ツンちゃんおか」
,,ξ゚⊿゚)ξポタポタ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「ただいま」
爪'ー`)y‐「血まみれだぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「あの獣が暴れやがってからに」
爪'ー`)y‐「思ったより慈悲も何もなかったぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「一発で終わらせてあげようと思ってんのにばたばた逃げるからまぁ腕とか足とか飛んで」
爪'ー`)y‐「あーあーグロいグロい」
ξ゚⊿゚)ξ「結局のたうち回って死にやがって……返り血浴び放題かよ……」
爪'ー`)y‐「思ってたより非情だったぁ……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「そら、肉よ」
爪'ー`)y‐「わぁいお肉、新鮮ですじばって固いお肉」
ξ゚⊿゚)ξ「食う時に手を合わせれば良いでしょ?」
爪'ー`)y‐「死んでくれてありがとって?」
ξ゚⊿゚)ξ「平たく言えばそうなるけど、厳密には殺されてくれてありがとうかな」
爪'ー`)y‐「……ま、どっちでも良いさ」
ξ゚⊿゚)ξ「血抜きにそこに下げとくか」
爪'ー`)y‐「魔物寄ってこない?」
ξ゚⊿゚)ξ「お肉が増えるわよ」
爪'ー`)y‐「わぁいお肉……野性動物は固くて美味しくない……」
ξ゚⊿゚)ξ「少しさばいて焼くか……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんいつもこんな旅を……?」
ξ゚⊿゚)ξ「肉は現地調達するものでしょ」
爪'ー`)y‐「アグレッシヴぅ……」
-
頭から魔物の血をかぶったツンが木の枝に新鮮な肉の塊を吊るし、濡らした布で髪や顔を拭く。
明日の朝にでも川へ行こう、と鎧に付いた血を拭いながら森の奥を眺めた。
動植物の繁殖具合で、川の場所はある程度見当がつく。
恐らく森の奥、さして遠くない場所に川があるのだろう。
ああ、服まで血まみれだ。
着替えたいが少々難しい。
それより日も随分落ちた、夕暮れ夕闇は夜のとばりに姿を沈めている。
さっさと食事をして一眠りしよう。
爪'ー`)y‐「お肉焼くの?」
ξ゚⊿゚)ξ「食べない?」
爪'ー`)y‐「町で包んでもらったお弁当がまだあるから……」
ξ゚⊿゚)ξ「昼に休まなかった分多く食えるわね」
爪'ー`)y‐「それはツンちゃんが僕を休ませる気が全くなかったからだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「明日も一日荷車引きたいの?」
爪'ー`)y‐「わぁい僕お弁当大好きいただきまーす、はいツンちゃんの分」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」
爪'ー`)y‐(食べ物に関してはクソ素直だよなぁ……)
-
フォックスは丸太をベンチとして座り、ツンは外套を地面に敷いて直接胡座を掻いて座る。
適当な骨を割って、削いだ魔物の肉を二つ突き刺し、焚き火に放り込んだ。
女らしさに無振りだなぁ、と苦笑しながらフォックスが沸かしたお湯を木製のコップに注ぎ、
簡易のお茶を作ってツンに差し出す。
礼を言いながら受け取ると、傍らに置いて先に渡された弁当の包みを掴む。
ぱりぱり、と紙の包みを剥がすと、姿を見せるのは両手で持つ様な大きさのパン。
半分にスライスされた厚めの粗いパンにはたっぷりのナッツソースと葉野菜、ローストビーフが挟んである。
ツンは手を軽く拭いてから、いただきます、と手を合わせた後に、勢い良く大きくかぶり付く。
ざく、と粗い歯応えのパン。
外側は固めだが、内側はナッツ特有の香ばしく甘い、濃厚なソースのお陰でしっとりしている。
パンに挟まれたローストビーフは量も多く、食いでがある。
しっかりとした肉の味、ややもさつきはするが野菜とソースのお陰で喉は擦らずに済んだ。
しなしなの野菜も所々にしゃきっとした歯触りが残っていて、
ソースに入っているナッツの粒と共に歯応えを楽しませてくれる。
ざくざく、もぐもぐ、がつがつ、ごくん。
あっと言う間に弁当を平らげ、手に付いたソースを舐めながら焚き火に突っ込んだ肉を動かす。
お腹いっぱい、には程遠そうな顔だ。
-
爪'ー`)y‐「はー……本当に健啖だね君は……」
ξ゚⊿゚)ξ「ご飯が美味しいと生きてる実感がある」
爪'ー`)y‐「まぁ確かに……」
ξ゚⊿゚)ξ「肉焼けたけどいる?」
爪'ー`)y‐「いらないって言いたいけど意外と肉の焼ける匂いが暴力的でつらい」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
爪'ー`)y‐「いただきます」
ξ゚⊿゚)ξ「塩とコショウ」
爪'ー`)y‐「この辺は塩が安くて良いよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「地域によっちゃ金より高いものね……」
爪'ー`)y‐「そう言う所の料理は辛いんだよねぇ……塩の代わりに唐辛子使うし……」
ξ゚⊿゚)ξ「つらいわよねあれ……」
爪'ー`)y‐「あ、流石につらいんだ……」
-
フォックスも弁当のサンドを食みながら、渡された肉を受け取って軽く塩を振る。
口の中が空いたところで肉を口に運ぶと、案の定の固さ。
ぐぎぎ、と噛み千切って咀嚼を続ければ、次第に肉の旨味がしみだす。
固いし獣臭い、決して上質とは言えない肉。
しかし季節のお陰か、脂の乗りは悪くない。
ぐぎぐぎ、顎の疲れを感じながらも意外と食える魔物の肉に少し複雑そうな顔をした。
ちら、とツンの方を見ると、追加の肉を削ぎながら口には焼けた肉。
もぐもぐと顎を動かす様子を見るに、どうやら歯も顎も丈夫らしい。
流石だなぁ、と顎の蝶番あたりを撫でながら肉を飲み下した。
もう少し手を加えれば、十分に美味しく食べられる気がする。
血抜きが済んだらハーブや果実に浸けてみるか、ヨーグルトに浸ければ柔らかくなるんだったか。
相棒さんがTHE・男の料理みたいな物しか作りそうにないし、まともな料理は僕担当かなぁ。
ある程度しか出来ないのになぁ、まさかこんな形で覚える羽目になるとは。
でもまぁ確かに、美味しい食事は生きている実感がわく。
幾度も死に続ける僕には、悪くないかもなぁ。
-
ぱちぱち、じゅわじゅわ。
焚き火に肉の脂が落ちてはぜる音。
乱雑に削ぎ裂かれた肉を焼くツンの姿は熟練の冒険者、言い方を変えれば何かもうオッサンみたいで。
本人の外見にまるでそぐわないそれに、フォックスは呆れるやら笑うやら。
いったいどんな師匠の元に師事していたんだろうな、この子は。
──── この時のフォックスはまだ知らない
ツンの師匠がアダマンタイトの位を持つ元冒険者である事を ────
──── なおツンも良く分かってない ────
──── なお今後関わっても来ない ────
爪'ー`)y‐「顎がだるい」
ξ゚⊿゚)ξ「さすがに固いわね」
爪'ー`)y‐「よく平気で食うなぁ、顎の力にも怪力って関わってるの?」
ξ゚⊿゚)ξ「顎が強くても歯が弱いと意味無くない?」
-
二人は食事を終えて、後片付けをしながら再び湯を沸かす。
二杯目のお茶を入れると、今度はフォックスが己の荷物から二つの包みを取り出した。
何かとツンが首を傾げつつも、差し出されたそれを受け取り、包みを開く。
するとそこにあったのはクルミのパイ、あの酒場の名物のひとつだった。
ξ*゚⊿゚)ξ「お……ぉぉ……」
爪'ー`)y‐(すげぇ喜んでる)
ξ*゚⊿゚)ξ「神かよ……感謝します……」
爪'ー`)y‐(やや雑な感謝をされた)
片手で持つにはこぼれそうな大きさのそれ。
ずっしりと重いパイに目を輝かせて、いただきます、と二度目のかぶり付き。
粉にしたナッツとバターの風味、無花果とリンゴの甘酸っぱさ、歯応えのある生クルミ。
かりかりさくさく、もったりとした重い甘さだがくどくはない。
入れたばかりの熱いお茶を飲むと、洗い流される口の中。
再びパイを口に運び、甘味と言う幸せの渦に身を沈める。
見てるだけでお腹が一杯になるなぁ、とフォックスは半分ほど食べたパイを包み直して荷物に戻した。
-
ξ*´⊿`)ξ「あー……美味しかった……」
爪'ー`)y‐「食べてる時が一番幸せそうだねぇ君は……」
ξ*´⊿`)ξ「あの町の食べ物は美味しい……」
爪'ー`)y‐「あの町ねぇ、少し前まではただの田舎らしい村だったんだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなの?」
爪'ー`)y‐「うん、終戦から経済効果がこー、ちょちょいとね、発展したみたいよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん……」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「なぜ僕の荷物を見ているのかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「パイ食わねぇか」
爪'ー`)y‐「用途が違うよ食われる側だよ僕」
-
>>77
今後関わってもこないワロタw
-
爪'ー`)y‐「だーめですぅーアレは僕の朝食ですぅー」
ξ゚⊿゚)ξ「朝食ならほらここに肉が」
爪'ー`)y‐「重いよ朝から」
ξ゚⊿゚)ξ「パイも重いのでは」
爪'ー`)y‐「とにかく駄目ですもう寝なさい」
ξ゚⊿゚)ξ「おう子供扱いすんな」
爪'ー`)y‐「子供ですぅーお兄さんから見れば子供ですぅー」
ξ゚⊿゚)ξ「青二才が……」
爪'ー`)y‐「なぜ年下に言われなければいけないのか……!?」
ξ゚⊿゚)ξ「んじゃ私が先に寝て良い?」
爪'ー`)y‐「良いよー、お子様には子守唄を歌ってあげよう」
ξ゚⊿゚)ξ、チッ
爪'ー`)y‐「傷付くから」
-
外套を身体に巻き付け、木に背中を預けて目蓋を下ろすツン。
やっぱり横にはならないんだな、と弦を指先で撫でながら、どんな歌にしようかとフォックスは空を仰ぐ。
月の浮かぶ闇夜に星は無く、木々の葉擦れと焚き火の音、遠くからは獣と鳥の声。
秋の匂いは、不思議と夜には薄れて感じる。
それでも冷たくなり始めた空気が頬を撫でれば、胸が痛むような秋に触れる夜。
ぽろん。
最果ての空
見果てぬ夢
全てを敵に回しても
あの人だけを守り抜く
空浮かぶ月
夢見た日々
誓い合ったあの日から
遠き夢へと成り果てて
求めたものは互いだけ
月明かりだけが見届けて
-
(今日は、少し悲しい月の歌)
(絵になるのが腹が立つ)
もぞ、とツンの懐から取り出した銅貨一枚。
前払いで貰った報酬の一部を、フォックスに向かって投げて寄越した。
「毎回くれなくても良いよ」
「聴いたからには払うわよ」
ぷい、と顔を背けて眠る姿勢に入ったツンを見て、
彼女が寝入るまで、フォックスは歌の続きを静かに歌って聞かせた。
どこか破滅的な二人の若者、その姿を言葉と音に乗せて奏でる。
その優しげで、どこか寂しげな歌声は、耳には残るが記憶には残らず、
ツンが目覚めた時に、妙な歯痒さを小さな爪痕として残した。
-
火の番を交代して、うたた寝して、目を覚ますとそこには身支度を整えたフォックスが居た。
一晩野宿したとは思えない小綺麗な身なりで、二人分のお湯を沸かしていて。
ξ゚⊿゚)ξ「……あんたいつ寝たの……」
爪'ー`)y‐「僕としては寝起きで整えてる姿って一番見られたくないんだよねー」
ξ゚⊿゚)ξ「えー……よくやるわ……」
爪'ー`)y‐「はい顔拭いて」
ξ゚⊿゚)ξ「んー」
爪'ー`)y‐「はいお茶」
ξ゚⊿゚)ξ「んー」
爪'ー`)y‐「川があっちにあったけどどうする? この時期に水浴びすると風邪引かない?」
ξ゚⊿゚)ξ「私風邪引いたことない」
爪'ー`)y‐「あーそっかーバカは風邪引かないもんね! うっかりうっかり!」
ξ゚⊿゚)ξ「喧嘩売ってんのか」
-
爪'ー`)y‐「お砂糖一個どうぞー」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと……あー、あったかい」
爪'ー`)y‐「夜間は冷えるようになったねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「冬の支度しなきゃ駄目かしら」
爪'ー`)y‐「今のうちの方が安く済むねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「ふむ……じゃあ次の村で揃え あっつ!」
爪'ー`)y‐「あ、やけどした?」
ξ゚⊿゚)ξ「お茶美味しいけど熱いわね……」
爪'ー`)y‐「大丈夫? キスする?」
ξ゚⊿゚)ξ「拳と爪先どっちが良い?」
爪'ー`)y‐「唇」
< メゴシャーゴリゴリ
-
爪 Д#:;, ジュル…ジュル…
ξ゚⊿゚)ξ「着替えるか」
爪 ー:;,ジュル…
ξ゚⊿゚)ξ「確か着替えはここに……」ゴソゴソ
爪'ー`)+ペカッ
ξ゚⊿゚)ξ「よっと……」モゾモゾ
爪'ー`)
ξ゚⊿゚)ξ「血に強い素材だけどやっぱこまめに洗いたいなー」
爪'ー`)y‐
ξ;゚⊿゚)ξ「ふぅ……村についたらしっかり洗 うわびっくりしたぁ!?」
爪'ー`)y‐「僕は結局どっちとキスしたの?」
ξ゚⊿゚)ξ「じめん」
爪'ー`)y‐「この地面擦った跡はもみじおろしの跡かぁ」
-
爪'ー`)y‐「あとさぁツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「んー?」ゴソゴソ
爪'ー`)y‐「いくら必要のないサイズだろうと下着は装備しよう」
ξ゚⊿゚)ξ「おいお前人の着替え見てんじゃねえぞ」
爪'ー`)y‐「目の前で脱いだから見えただけだよ僕は無実だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「無実が無罪かはまた別なので」
爪'ー`)y‐「なるほど確かに」
ξ#゚⊿゚)ξ三づ「オラァ!!」ビュッ
爪;'Д`)y‐「ギャー!!」ドボォ
爪'ー`)y‐「ねぇツンちゃん……お腹を拳で突き破られると即死しないから頭潰れるよりつらいんだ……」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめん」
爪'ー`)y‐「次からは即死させて……」
ξ゚⊿゚)ξ「わかった」
-
爪'ー`)y‐「お肉どうにかしないとなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「解体するか」
爪'ー`)y‐「頑張ってね」
ξ゚⊿゚)ξ「手伝う気は」
爪'ー`)y‐「お水汲んでくる」
ξ゚⊿゚)ξ「貴様……」
,,爪'ー`)y‐「行ってきまーす」
_,
ξ゚⊿゚)ξ=3
ざくざく、ぎりぎり、ぶちぶち、ごりごり。
力任せに小さくなって行く元魔物、現食肉。
腐敗を防ぐ草と共に、乱雑に皮袋に詰められる肉。
毛皮はある程度綺麗に剥がれたから、小銭にはなるかも知れない。
骨、はさして使い道は無いか、強度もそれなり加工はしにくい。
内臓もこいつのは食えたものではない、薬にもならない、その辺に捨てておけば何かが食うだろう。
-
大型犬くらいの大きさか、多少食いではあるが処理が面倒だな。
血は抜けているから服は汚れないが、さすがに手はべとべとだ。
魔物の肉は売れないからなぁ、固いし臭いし家畜の肉を食う方がずっと良い。
まあ場所によっては魔物の肉を売りにする所もあるが、ああ言う所は魔物の種類が違う。
専門家が捕って処理して加工して、完璧な状態で出てくる。
素人の冒険者が雑に捌いた肉と比べるべきではない。
あーそういやドラゴンの肉って今が美味しいんだっけなぁ。
そろそろ生け贄を出して、その見返りの肉が振る舞われるはず。
行きたいなぁドラゴンの町。
ξ゚⊿゚)ξグーギュルル
爪'ー`)y‐「ツンちゃん……肉を解体しながら……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ち、違う! 誤解よ! これには理由が!!」
爪'ー`)y‐「良いようん……焼いて食べようか……」
ξ;゚⊿゚)ξ「違うから!! お腹は空いたけど違うから!!」
-
じゅわじゅわ、ぱちぱち。
塩とコショウをすり込まれた肉が火に炙られ、その匂いが胃袋を刺激する。
口許を擦りながら肉を返し、弁解するツンに、フォックスが頷きながら口を開いた。
爪'ー`)y‐「はぁなるほど、ドラゴンの肉」
ξ゚⊿゚)ξ「秋には肉が美味しくなるのよね……脂が乗って甘くて……」
爪'ー`)y‐「食に関しては貪欲だよね……ドラゴンかぁ、前に一度干し肉を食べたくらいだなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「師匠にご馳走して貰った事があるけど、美味しいわよ」
爪'ー`)y‐「時期も良いなら寄ってみようか、ドラゴンの町」
ξ゚⊿゚)ξ「マジで」
爪'ー`)y‐「うん、道順的にも悪い場所じゃないし」
ξ゚⊿゚)ξg゙ グッ
爪'ー`)y‐「無言で」
-
爪'ー`)y‐「肉は焼けたかな」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
爪'ー`)y‐「じゃ、朝食にしようか」
ξ゚⊿゚)ξ「肉しか無いけど」
爪'ー`)y‐「何で君は食事を現地調達以外しようとしないの?」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ、だって飯は現地調達するものでしょ?」
爪'ー`)y‐「どんなサバイバル術なの……町で多少の食材を買うのも大事だから……」
ξ゚⊿゚)ξ「師匠達は現地で肉と草を調達したって……」
爪'ー`)y‐「君の師匠はサバイバル名人かよ……良いからほら、お肉どけて」
ξ゚⊿゚)ξ「むー……」
爪'ー`)y‐「大体主食が無いじゃないのこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「肉が」
爪'ー`)y‐「人間の主食は肉じゃないから」
-
荷物から取り出した固くてもさつくパンに植物の油を薄く塗り、焚き火で軽く焼いて塩を少々。
香ばしさと柔らかさが増して、幾分食べやすくなったパンに焼いた魔物の肉を挟む。
野菜が無いのが惜しいが、次の村で乾燥ハーブでも買って携帯しよう。
今後絶対あった方が良い。
爪'ー`)y‐「はいどーぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「たったこれだけで料理になりやがった……」
爪'ー`)y‐「料理と言うほどでも無いんだけど、少しの手間が大事なんだよ? わかる?」
ξ゚⊿゚)ξ「いただきます」
爪'ー`)y‐「華麗に無視だよ、僕も食べよ」
ξ゚〜゚)ξモギュモギュ
爪'〜`)y‐モギュモギュ
ξ゚⊿゚)ξ「固いわね」
爪'ー`)y‐「固いわ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「私は美味しく食べられるけど、あんたには顎痛くない?」
爪'ー`)y‐「すごく顎がだるいね」
ξ゚⊿゚)ξ「無理しなくて良いわよ……」
爪'ー`)y‐「無理と言うほどでも無いんだけど女の子に膝枕で撫でてほしい程度には顎がだるい」
ξ゚⊿゚)ξ「女の子に膝でこめかみを強打されたい?」
爪'ー`)y‐「やめてよ願望すらぶち殺すその姿勢」
ξ゚⊿゚)ξ「その願望なら叶えてやれるけど」
爪'ー`)y‐「やめてよ膝で僕の頭を強打するのは僕の願望ではないよ願い望まないよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ごちそうさま」
爪'ー`)y‐「ほんと食べるの早いな君は」
ξ゚⊿゚)ξ「まだ入る」
爪'ー`)y‐「健啖と言えば聞こえは良いけど君は普通に大飯食らいだよね?」
ξ゚⊿゚)ξ「だからどうした」
爪'ー`)y‐「全力で肯定された……もう僕の分もあげるよ……」
ξ*゚⊿゚)ξ「わぁい」
-
爪'ー`)y‐(食えれば何でも良いみたいになってんなこの子)
ξ゚〜゚)ξモギュモギュ
爪'ー`)y‐(食に関するトラウマがあるとか……)
ξ゚〜゚)ξモグモグ
爪'ー`)y‐(無さそうだなこの顔)
ξ゚⊿゚)ξ「ごちそうさま」
爪'ー`)y‐「はいはい、そこのお水で君の相棒を磨いてあげてね」
ξ゚⊿゚)ξ「人間を……?」
爪'ー`)y‐「僕じゃないよ斧槍だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ああこっちか、血は落としたしちゃんと手入れもしたんだけどね」
爪'ー`)y‐「すっごい赤黒いよねそれ」
ξ゚⊿゚)ξ「先の戦で英雄が千人斬ったって言われてる業物よ」
爪'ー`)y‐「はいはい眉唾眉唾」
_,
ξ゚⊿゚)ξ「師匠が私に下げてくれたのよ、本物なんだから」
爪'ー`)y‐「君の師匠は本当に何者なんだよ……」
-
ツンに背を向けたまま昨夜の残りのパイを胃におさめ、
手入れと身支度を終わらせたツンが焚き火に水をかける。
最後に荷物の点検を済ませてから、二人は出発した。
からがら、ごとごと。
今日はツンが荷車を引く。
秋の匂いが強い。
花の匂い、草の匂い、不思議と冷えた空気の匂い。
色づき始めた木々の装いと、冬に向けて脂肪を蓄える野生の獣。
実る果実に落ちる種、細かな雲が浮かぶ空は今日も薄青く晴れ渡る。
秋は豊かな季節だ。
過ごしやすく食べる物も豊富。
野菜も穀物も、肉も魚も美味い季節。
この時期ならきっと、行く先々で舌鼓を打てるだろう。
ああしかし、秋とは妙に空が高く感じる。
がらがらごとごと、荷車を引いては空を見上げた。
-
爪'ー`)y‐テクテク
ξ゚⊿゚)ξガラガラ
爪'ー`)y‐「ねぇツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「んー」
爪'ー`)y‐「次からは馬車を借りない?」
ξ゚⊿゚)ξ「そんな金はない」
爪'ー`)y‐「時短出来るよ時短、徒歩だと時間かかっちゃうよ」
ξ゚⊿゚)ξ「狐さ」
爪'ー`)y‐「フォックス君」
ξ゚⊿゚)ξ「歩くの飽きてるでしょ」
爪'ー`)y‐「なぜバレたのか……」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた冒険者としてどうなのそれ……」
-
爪'ー`)y‐「荷台乗って良い?」
ξ゚⊿゚)ξ「良いわけねーだろぶち殺すぞ」
爪'ー`)y‐「やーだぁー今日もう二回死んだーぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「朝から二回死ぬような事してんじゃないわよ」
爪'ー`)y‐「出会って三日目の人間を二桁殺すのもどうなの?」
ξ゚⊿゚)ξ「人間だっけ」
爪'ー`)y‐「お兄さん泣いちゃいそう」
ξ゚⊿゚)ξ「出来れば今日中に村に着きたいんだからさっさと歩いてよ」
爪'ー`)y‐「乗せてくれた方が早いよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「殺すぞ?」
爪'ー`)y‐「死んだら乗れるな」
ξ゚⊿゚)ξ「置いてくわ」
爪'3`)y‐「護衛ぃーちょっと護衛ぃー、雇用主に対して護衛ぃーぃ」
-
このツンちゃんの容赦の無さが良いわ
-
爪'ー(#)y‐「だからいっそ一思いに殺してくれと何度も」
ξ゚⊿゚)ξ「死んだら治るからもうちょっと痛め」
爪'ー`)y‐「あのさぁいかに僕がギャグのオチ要員みたいな体質だからってそうホイホイ殺さないでよ」
ξ゚⊿゚)ξ「自覚あるならどんどん死ねよ」
爪'ー`)y‐「死に芸もやり過ぎると飽きるよね」
ξ゚⊿゚)ξ「殺されるような真似をするなと何度も」
爪'ー`)y‐「あーほらツンちゃん森の切れ目だよー」
ξ゚⊿゚)ξ「無視すんな あら」
爪'ー`)y‐「お、遠目に村が」
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん、小さいけど賑やかそうね」
爪'ー`)y‐「お祭りって言ってたしその準備かな、ほらツンちゃん走って走って」
ξ゚⊿゚)ξ「お前マジふざけんなよ乗るなよ荷車によ」
爪'3`)y‐「ツンちゃんヤンキーみたいになってるこっわーい」
ξ゚⊿゚)ξ「処す」
爪'ー`)y‐「あっ待」
-
ひらけた視界に映るのは、丘の下に広がる村の姿。
遠目にも僅かにうかがえる人の動きは、賑やかに忙しなく働いていて。
村の向こうに広がる、金色の海。
溺れそうな麦畑は、ざわざわきらきら、秋の光を撒き散らす。
祭りと言うのは収穫祭か、豊穣の祭りか。
まだ収穫の済んでいない畑を見るに、稔りを祝い、祭りが終えれば収穫の運びだろうか。
何にせよ、祭りのご相伴には預かれそうだ。
ご馳走も出るだろう、酒に踊りにと楽しげな熱気も振る舞われる筈だ。
楽器の弾ける詩人は、ここで少し稼げるかも知れない。
秋は良い。
豊かな時期だ。
懐までも暖かくなる。
まだ村まで距離はあるが、夜に楽しめるであろう美味しいものを想像しては唇を舐める。
そうして日がまだ高い内に、死体と荷物を乗せた荷車が、ごとごと村へと辿り着く。
おしまい。
-
ありがとうございました、本日はここまで。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
-
乙!
酷いメシテロだ腹へった
-
おつ
変な森は読んであったのだけど、これが来たから搭も旅も読み終えてきてしまったぜい
-
ざく、ざく。
とっぷり夕闇に落ちる森の中。
ざく、ざく。
肉を切る音と、血の匂い。
ざく、ざく。
時おり聞こえる断末魔。
ざく、
全身に血を浴びて、女は来た道を振り返る。
「戻るには、まだかかるな」
ぽたぽた、顔に受けた血が頬を伝い、顎の先から落ちては地面を濡らす。
美しい筈の金髪は、乾いた返り血によって赤黒く固まっている。
頬を手の甲で拭うと、ぱり、と乾いた血が剥がれて落ちる。
それを意に介した様子もなく、次の血を浴びに刃を振るった。
ざく、ざく。
ざく、ざく。
ざく、ざく。
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声。
刃を振るい、歌声を響かせ、路銀を稼いで進むのは二人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
【道のようです】
【第三話 たくさんあるとうれしい。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
村に辿り着いた死体が蘇って、クエストの報告を済ませた頃。
相棒のツンは、一人で新たなクエストを任されていた。
爪'ー`)y‐「いえーい色つけてもらっちゃったぞー」
ξ゚⊿゚)ξ「マジか」
爪'ー`)y‐「明日の夜にお祭りなんだってさ、あれ必要な物だから困ってたみたい」
ξ゚⊿゚)ξ「何で必要な物がまだ届いて無かったんだか」
爪'ー`)y‐「先に受けた人がドタキャンだとさー、それでね」
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
爪'ー`)y‐「祭りの音楽隊に僕も参加する事になったんだよね、ほら僕って吟遊詩人だから」
ξ゚⊿゚)ξ「いや詩人なのは知ってるけど」
爪'ー`)y‐「あ、もちろんツンちゃんと踊れるようにちゃんと抜けられるようにしてあるから」
ξ゚⊿゚)ξ「私は最近魔物が出るから祭りの間はそこら辺で魔物狩りする事になったけど」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
-
爪'ー`)y‐「祭りなのに遊べないね……」
ξ゚⊿゚)ξ「うんまぁ仕事があるだけ良いしあんたと楽しむつもりは無いし……」
爪'ー`)y‐「お兄さん悲しい……」
ξ゚⊿゚)ξ「バカ言ってないで今の内に買い出し済ませるわよ」
爪'ー`)y‐「あ、宿も取ったよー酒場の二階」
ξ゚⊿゚)ξ「勝手に進めるわよねあんた」
爪'ー`)y‐「君に安くする交渉とか出来ないっしょ?」
ξ゚⊿゚)ξ「出来ないけど一言くれても」
爪'ー`)y‐「そっちこそ勝手に魔物退治受けたじゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「だって何か金バッチ見たら急に押しきられて……」
爪'ー`)y‐「戦士様が押しに弱くてどうすんのさ……」
ξ゚⊿゚)ξ「むー……」
-
爪'ー`)y‐「そうだ、気になってたんだけどさ」
ξ゚⊿゚)ξ「うん?」
爪'ー`)y‐「何であんなに手持ちが少なかったの?」
ξ゚⊿゚)ξ「だからなぜか手元に残らないと」
爪'ー`)y‐「そのなぜかを詳しく言いなさいよアホの子」
ξ゚⊿゚)ξ「否定しないけど殺すぞ」
爪'ー`)y‐「これからは二人で旅するんだからそう言う事があっちゃ困るんですぅー」
ξ゚⊿゚)ξ「むむー……」
爪'ー`)y‐「今日は買い出しくらいで後は休めるんだから、ちゃんと教えて」
ξ゚⊿゚)ξ「まぁあんたは私より頭良いし、分かるかも知んないかぁ」
爪'ー`)y‐「君より頭の悪い冒険者って存在するの?」
ξ゚⊿゚)ξ「喧嘩売ってんの?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「色々仕事はしてきたんだけどさ、魔物退治から荷物の運搬、護衛まで」
爪'ー`)y‐「ふむ」
ξ゚⊿゚)ξ「でも毎回、もろもろの手数料とか引かれて」
爪'ー`)y‐「手数料」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
爪'ー`)y‐「……明細ある?」
ξ゚⊿゚)ξ「あるけど」
爪'ー`)y‐「宿で見せてそれ」
ξ゚⊿゚)ξ?
爪'ー`)y‐「僕ずーっと思ってたんだけどさぁ、ツンちゃん騙されまくるよね?」
ξ゚⊿゚)ξ「騙した奴が言う事は違いますなぁ???」
爪'ー`)y‐「あらやだーこれ地雷だったわーでも踏んじゃうポチー☆」
< グシャー ギャー
-
爪'ー`)y‐「地雷だと思ったらヒトコロスイッチだった……」
ξ゚⊿゚)ξ「お前だけを殺すスイッチ」
爪'ー`)y‐「でも死んでる間に宿まで運んでくれたんだね、やっさしーい☆」
ξ゚⊿゚)ξ「村の人の視線がヤバかった」
爪'ー`)y‐「来た時に死んでなかったらツンちゃんがヤバかったな……」
ξ゚⊿゚)ξ「だから死ぬような事をな? 言ったりしたりな?? お前わざとやってるだろ???」
爪'ー`)y‐「僕がそんなマゾに見える?」
ξ゚⊿゚)ξ「死に逃げ癖ついてるだろ?」
爪'ー`)y‐「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「黙するな」
爪'3`)y‐~♪ プイー
ξ゚⊿゚)ξ「こっちを見ろォ!!」
爪'ー`)y‐「それより明細」
ξ゚⊿゚)ξ「話が進まないから今は殺さずにおいてやるが後で覚悟しろよ背骨引きずり出すからな」
爪'ー`)y‐「相当ヤバいタイプの死刑宣告食らった……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「確かこの辺に……」ガサガサ
爪'ー`)y‐「しっかし何でこうすっからかんかね」
ξ゚⊿゚)ξ「だから、なんか手数料とか諸費用とか おい人の財布覗くな」
爪'ー`)y‐「見てて悲しくなる……軽い財布ってつらい……」
ξ゚⊿゚)ξ「殺すぞ。 っと……はい、あった」ガサガサ
爪'ー`)y‐「はい失礼」パラパラ
ξ゚⊿゚)ξ「しかし、何だって明細なんか」
爪'ー`)y‐「…………」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「何これ……引くわ……」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
爪'ー`)y‐「引くわ……」
ξ゚⊿゚)ξ「し、失礼な……」
-
爪'ー`)y‐「これ、船借りたの……?」
ξ゚⊿゚)ξ「手漕ぎボートなら」
爪'ー`)y‐「手漕ぎボートレンタルで金貨10枚……??」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
爪'ー`)y‐「交際費……? 接待費用……?? 宿泊代……???」
ξ゚⊿゚)ξ「色々かかったみたい」
爪'ー`)y‐「これ相手が計算して持ってきたの?」
ξ゚⊿゚)ξ「依頼人が説明してくれた、色々かかったんだって」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ?
爪'ー`)y‐(思ったよりヤバいなこの子)
ξ゚⊿゚)ξ??
-
爪'ー`)y‐「これ意味わかる?」
ξ゚⊿゚)ξ「接待?」
爪'ー`)y‐「された?」
ξ゚⊿゚)ξ「お茶ついでもらった?」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ?
爪'ー`)y‐「こっちの明細は修理費に金貨20枚って」
ξ゚⊿゚)ξ「あー、斧のここに傷がついて」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ??
爪'ー`)y‐(あっどうしよう)
爪'ー`)y‐
爪'ー`)y‐(この子とんでもないアホだ)
ξ゚⊿゚)ξ???
-
爪'ー`)y‐(えっ嘘だろおい……マジかよ……こんな分かりやすすぎる九割詐欺みたいな事案……)
爪'ー`)y‐(どうやったら引っ掛かるんだよこんなの……文字読めたら引っ掛からないだろ……)
爪'ー`)y‐(うっわこれ金貨50枚が散々に引かれて報酬金貨3枚になってる……)
爪'ー`)y‐(意味わかんない……意味わかんないこれ……怖い……まともな明細がほとんどない……)
爪'ー`)y‐(絶対カモれるって連絡回ってるこれ……悪質過ぎる……)
爪'ー`)y‐(でも一番怖いのはこれに一切の疑問を抱かないこの子だよ……何でだよ……)
ξ゚⊿゚)ξ「なんか変なとこあった?」
爪'ー`)y‐「変なところしかない」
ξ゚⊿゚)ξ!?
爪'ー`)y‐「!? じゃないから、何ビックリしてんのこっちがビックリだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そ、そんなにおかしかった……?」
爪'ー`)y‐「よく生活出来てたね?」
ξ゚⊿゚)ξ「最初に受けたクエストが国からので、たくさん貰えたからそれを切り崩して」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
-
爪'ー`)=3 ハァァァァァァア…
ξ;゚⊿゚)ξ「な、何よう……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんはね、騙されてました」
ξ;゚⊿゚)ξ「え」
爪'ー`)y‐「諸費用とか手数料とかこんなにかからないです」
ξ;゚⊿゚)ξそ
爪'ー`)y‐「君が何の文句も言わず疑問も持たずこんな訳のわからない金額を受け入れたから
味をしめた奴らが情報を回して君をカモって支払う金額を10分の1くらいにしてました」
ξ;゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「疑問に思った事は無かったの?」
ξ;゚⊿゚)ξ「だ、だって、あの……私はこう言うのわからなくて……」
爪'ー`)y‐
ξ;゚⊿゚)ξ「向こうはお金のこと分かってるし……わからない私が口出しするのも……」
-
ξ;゚⊿゚)ξ「や、役所通してお金払われるし……なら安心だって……思って……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん」
ξ;゚⊿゚)ξ「ひゃい……」
爪'ー`)y‐「まず第一に、お金の事も相場もわからないのは三流以下の初心者までしか許されないし
わからないからって自分を安売りする様な冒険者はろくなものじゃない、クソですクソ」
ξ; ⊿ )ξ
爪'ー`)y‐「わからないから口を出さないじゃなくて、わからないから口を出せないんだよね
それは君の冒険者としての必要なスキルが大きく欠如してるからだよ、君がバカなだけ」
ξ; - )ξ
爪'ー`)y‐「あと役所を信用しすぎ、町や村ごとにある役所は数が多く国の監視が薄くなりがちです
最近は地元の人間と手を組んで冒険者から金を騙し取る事件が増えて問題視されてます」
:ξ; - )ξ:
爪'ー`)y‐「以上を踏まえて君は駄金ランクの冒険者です、何か言う事はありますか」
:ξぅ⊿ )ξ:「ないです……」
爪'ー`)y‐「よろしい」
-
爪'ー`)y‐「君は戦士としての腕は良いのだろうけどね、冒険者としては数年やってたと思えない」
ξぅ⊿ )ξ「あい……」
爪'ー`)y‐「冒険者と言う面では本当クソですクソ、管理能力の無い冒険者とかクソオブクソです」
:ξぅ⊿ )ξ:「ひゃい……」
爪'ー`)y‐「だからまあ、今後はお財布は僕が管理しますからね!」
:ξぅ⊿;)ξ:「はひぃ……」
爪'ー`)y‐(めっちゃ泣かせてしもた)
爪'ー`)y‐(でもなー事実だしなークソなんだよなー)
爪'ー`)y‐(しかしこの依頼達成率、討伐も護衛も全て完璧にこなしてる)
爪'ー`)y‐(腕は良いんだ腕は……と言うか腕しか無いんだな、とにかく仕事を頑張るしか出来ないんだ)
爪'ー`)y‐(この達成率ならもっともっと良い生活を送れる、どっかに家だって建てられる)
爪'ー`)y‐(はー)
爪'ー`)y‐(不器用ちゃん)
-
ξぅ⊿;)ξペソペソ
爪'ー`)y‐「ツンちゃんさぁ運が良かったよ、僕みたいな詐欺師と組めたから分かった事でしょ」
ξぅ⊿;)ξ「うん……うん……?」
爪'ー`)y‐「今後は交渉もお金の管理も僕がする、ツンちゃんはそれを見てちゃんと学んでね」
ξぅ⊿;)ξ「はい……」
爪'ー`)y‐「この未払い分は戻らないけどさ、高い勉強代だったと思いなよ」
ξぅ⊿;)ξ「はい……」
爪'ー`)y‐「これからは、ちゃんと冒険者としても一流になってよね」
ξぅ⊿;)ξ「がんばる……」
爪'ー`)y‐(向上心はあるんだな)
ξぅ⊿;)ξグスグス
爪'ー`)y‐(何か泣いてるの見るとゾクゾクするな……)
-
爪'ー`)y‐ハッ
爪'ー`)y‐「え、ーっと……こう言う勉強は師匠に教わらなかったの?」
ξぅ⊿;)ξ「うん……師匠は……」
( ΦωΦ)『良いかツンよ、冒険者とは金の管理もせねばならん』
( ΦωΦ)『我輩も昔は冒険者でな……仲間の魔導師にな……いつも怒られてた……』
( ΦωΦ)『やれ金を適当に扱うな……やれ計算をちゃんとしろ……』
( ΦωΦ)『いやぁ日に一回は怒られたものだ、僧侶と共に怒られるのがノルマになってた』
ξぅ⊿;)ξ「って……」
爪'ー`)y‐(あっ駄目だなこの師弟)
ξぅ⊿;)ξ「勉強はねえさまが教えてくれたけど、難しくて師匠と鍛練ばっかり……」
爪'ー`)y‐(筋金入りの脳筋だったかー知ってたけどー脳筋だったかー)
-
爪'ー`)y‐「ほらもう泣かないでよ、僕が悪いみたいでしょ、悪いのは君の頭でしょ」
ξぅ⊿;)ξ「おっしゃるとおりです……」
爪'ー`)y‐「駄目だ制裁が来ない、心が折れてる」
ξぅ⊿;)ξペソ…ペソ…
爪'ー`)y‐「ほらもー泣かないでよーほらー良い子だからさー服脱がせるよー?」
ξぅ⊿;)ξグスグス…
爪'ー`)y‐「もーぉーしおらしい女の子は嫌いじゃないけどツンちゃんがそうだと調子狂うーめんどーい」ベロン
ξぅ⊿;)ξ「ごめんなさい……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんやっぱ覆うべき胸が無くても下着は必要だと思うよ僕」
ξぅ⊿;)ξ
爪'ー`)y‐
<メゴォ ウワーゲンキー
-
ξ゚⊿゚)ξ「どさくさに紛れて何してんだお前」
爪'ー(#)y‐「元気になったね!! 計算通り!!」
ξ゚⊿゚)ξ「やかましいわ」
爪'ー(#)y‐「まぁアレだよツンちゃん、これから頭の中身詰めれば良いんだから」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
爪'ー(#)y‐「まだ18歳なんだからさぁ、欠点無いと可愛くないって」
ξ゚⊿゚)ξ「……がんばる……」
爪'ー(#)y‐「そうそう、僕も腕っぷしはクソって言う可愛らしい欠点があるし」
ξ゚⊿゚)ξ「いやお前の欠点はそれじゃない」
爪'ー(#)y‐「イケメン過ぎる罪に問われてる?」
ξ゚⊿゚)ξ「上には上が居ると思うから調子に乗るな」
爪'ー(#)y‐「そうそう居ないってー僕イケメンだよー?」
ξ゚⊿゚)ξ「つけ麺では?」
爪'ー(#)y‐「ラーメンが飛んだな?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「とにかく、……まぁ、その……今までみたいな事があって、あんたに迷惑かけたくないし」
爪'ー(#)y‐「うんうん」
ξ゚⊿゚)ξ「お金の管理はあんたに任せるけど、私も勉強するから……」
爪'ー(#)y‐「うんうん」
ξ゚⊿゚)ξ「……よろしくおねがいします」
爪'ー(#)y‐「素直なツンちゃんこっえーな!!」
< メキグシャー セボネガー
そのあと、二人は買い出しに行ったり翌日の準備をしたりと自由な時間を過ごす。
ツン一人で受けた魔物討伐の依頼内容を一緒に吟味したり、報酬について話し合ったり。
後にフォックスがツンの明細片手に役所の個室で何やら長く話していたが、内容は解らずじまいで。
数日後、新聞の一面を詐欺容疑で役所の職員や商人が逮捕された記事が飾った。
あとフォックスの羽振りが少し良くなったが、その理由をツンは知らないままだった。
-
翌朝。
朝食を済ませた二人は、音楽隊との打ち合わせ、近隣の森へ魔物狩り、と別々の方向へと歩いて行った。
簡単な弁当と、袋やロープを用意してもらったツンは、のんびり歩きながら森の様子を見て回る。
街道沿いの森にはワーウルフが巣を作っていたが、ここいらはどうか。
まだ獣の気配はしない。
ここは川が流れていて土も良い、餌が多く住み良い場所だろう。
そのせいか、抉れた木々の幹、足跡、糞、食い荒らされたキノコや果実が目立つ。
村の畑の方へ通じる獣道すら出来てしまっている。
ξ゚⊿゚)ξ(数が多いな……去年は日が長かったから、餌と一緒に頭数も増えたか)
ξ゚⊿゚)ξ(去年の内に減らすべきだったが……被害は今年に入ってから)
ξ゚⊿゚)ξ(何か歯止めがあったのか……)
ξ゚⊿゚)ξ(見た感じ、巣食ってるのは草食か……しかし餌が減れば人すら食う)
ξ-⊿゚)ξ゙(悪いけど、狩らせてもらうわ)
-
こちらの敵意を察知したのか、周囲からの殺気がツンの肌を刺す。
昼食の入ったバスケットを適当な木の枝にぶら下げて、斧槍を構える。
すると草むらから、勢いよく何かが飛び出してきた。
ξ゚⊿゚)ξ「おぉ……大イノシシか」
抉れた木の幹はやっぱり牙の跡だったかー、と納得したように頷くツン。
その顔には焦りも恐怖も浮かばず、それどころか、瞳には輝きが増した様に感じる。
真っ直ぐに突き進んでくる巨大なイノシシに似た魔物を、正面から叩き伏せる。
続けて、次から次へと姿を見せる魔物。
その返り血をまともにかぶりながら、ツンは顔を上げて、この旅初めての笑顔を見せた。
ξ*゚ヮ゚)ξ「食肉!!」
-
その後に繰り広げられたのは、一方的な殺戮、もとい屠殺ショー。
嬉々として食肉、大イノシシを斬り倒しては木に吊るし、斬り倒しては木に吊るし。
イノシシ系の魔物は、野性動物に近く味はさして悪くはない。
癖はあるが臭みは少なく、肉は固いが調理次第で柔らかくも出来る。
肉食のワーウルフと違って、草食で野性動物に近い大イノシシの味が悪いわけがない。
難点は固いだけだ、魔物の肉は往々にして固い、だがツンには関係の無い事。
当然ながら家畜の肉の方がずっと美味しい、名物などになる魔物料理に比べれば雲泥の差だ。
しかしツンには、ごちそうの山にすら見えていた。
ちなみにジャーキーなどにすると恐ろしく固くなるが出汁が出るので一般家庭にもたまにある。
人気は大して無いのだが、需要が無いわけではないので流通はされている。
何でも美味しく食べようとする先人の知恵とは素晴らしいものだ。
ξ゚⊿゚)ξ「おっ、と……近場のは狩り尽したか」
ξ゚⊿゚)ξ「完全に駆逐させちゃ不味いから……巣はあっちか」
ξ゚⊿゚)ξ「つい肉狩りに夢中になったけど、色々確認しなきゃな……」
ξ゚⊿゚)ξグゥゥゥ
ξ゚⊿゚)ξ「先にお弁当食べよう」
-
血を拭って払い、適当な場所に座り込んでバスケットを下ろし、中身を拝見する。
レーズンの練り込まれたふかふかのパンと、瓶に入った葡萄ジュース。
エールやワインを勧められたが、戦士として酔って刃は振るえないとして入れてもらった物だ。
いただきますと両手を合わせ、パンを半分に割いて口に運ぶ。
ほんのりとしたバターと香ばしい小麦の香りが鼻を抜け、
レーズンは独特の歯応えと甘酸っぱさでその存在を主張する。
特別な事は何も無いが、噛めば噛むほどにパン特有の甘さが感じられた。
喉を擦るパンを押し流す葡萄ジュースもまた甘酸っぱく、舌の付け根に残るような渋味がある。
しかしまあ、それもまた美味、とツンは弁当を貪った。
葡萄ジュースは後で飲むために、少しだけにしておいたが。
相変わらずの早さで食べ終えたツンは後片付けをすると、仕事を再開する。
ξ゚⊿゚)ξ「お肉は良いけど……これ持って帰れるのかしら……」
大量の肉を見上げて首をかしげながら、まあ何とかなるかと歩を進めた。
-
足跡、足音、ざくざく、とことこ。
時おり魔物を引き裂いて、赤く染まりながら巣に近付く。
しかしこの巣探しがなかなか難儀して、巧妙に隠された巣穴の存在に気付くのが遅れてしまった。
巣穴は木々の隙間、根本から掘り下げられて岩場の洞窟まで続いていた。
今は中には何も居なかったが、その洞窟もまた、人の手で広げたような綺麗な作り。
大イノシシだけでこの巣を作れるとは思えない、恐らく先住の魔物か何かが居たのだろう。
こつこつ、じゃりじゃり。
洞窟の中は、岩壁に自生するヒカリキノコのお陰で意外に明るい。
入り口以外にも穴があるのか、風が通り臭いもこもらない。
本当に、人の住んでいた様な、
こつん
爪先に、何かが当たった。
ξ゚⊿゚)ξ「……人の頭……にしては、大きすぎるわね……」
薄暗い地面に転がる頭蓋骨。
その大きさは人の倍程もあり、立派な巻き角が二本生えている。
-
魔物の類いか、それとも亜人の類いか。
落ちている頭蓋骨は二つ、大きく立派な物と、人と変わらぬ大きさに角の生えた物。
恐らくつがいだろうが子の骨は無い、死んで数年と言うところか、いや、肉を食まれればもっと近いか。
散らばる他の骨の残骸は、割れていても太さと長さをうかがい知れる。
壊れた木製の何かや獣の皮、割れた石斧にも見える物。
手を使う魔物であれば、簡単な道具は扱える。
恐らくここに住んでいたのは、巨大な体躯の、人型に近い魔物か何かだったのだろう。
壊れたり雑であったりはするが道具らしき物がある、手先が器用だった筈だ。
ここは村にも近い、それなのにそんな魔物の話は聞かなかった。
それは恐らく、人間と意図して関わっていなかったからでは無いか。
転がる二つの頭蓋骨を、寄り添うように並べてやる。
近くに落ちている骨の残骸を集めて、一ヶ所にまとめる。
こんな事をしたところで、大イノシシやらが蹴散らしてしまうのだろうが。
それでも何だか、理性の残るこの巣の様子を見ると、無下に扱う事は出来なくて。
ああ私ってやっぱり甘いな、なんて。
-
恐らくこの角を持つ何かが、この森の歯止めだったのでは無いか。
群れで暮らしていたとは思えないが、たった二匹でそれは可能なのか。
しかし骨を見た感じ、何かに削られた跡がある。
これはきっと、大イノシシが屍肉を食んだ跡。
ならばやはり時期も符合するか、たったの二匹で森を統べていたのか。
ξ゚⊿゚)ξ(しかし、なぜ死んだ)
ξ゚⊿゚)ξ(魔物に襲われた……いや、返り討ちに出来るはず……)
ξ゚⊿゚)ξ(じゃあ人間……? でも、村ではそんな話は聞かなかった)
ξ゚⊿゚)ξ(人間が狩ったのなら、この角を土産に持ち帰るはず)
ξ゚⊿゚)ξ(殺せはしたが、そんな余裕は無かった……? んん……分からん……)
ξ゚⊿゚)ξ(むー……帰ったら狐に聞いてみるか……)
ξ゚⊿゚)ξ(っ、と……小さい方の骨に、なんかついてる……銀色、かな、曇ってる)
-
しゃがみこんだまま考えていたら、小さい方の骨の角に、何か銀色の物がついてる事に気付いた。
指先で撫でてみると、それは装飾品なのだろうか、角にはめられた銀のリングで。
少し引いてみると、簡単に外れたそれを、キノコの明かりに照らしてみる。
文字に似たものが刻まれているが、汚れているし薄暗くてよく読めない。
よく見るために岩壁に近付くと、そこにめり込む存在に気付いてしまった。
ξ゚⊿゚)ξ(……銃弾)
よくよく壁に目を凝らせると、めり込みつぶれた銃弾がちらほら。
骨の後ろの方にも、小さな穴が空いていて。
ああなんか、なんかすごく、ヤな気分。
恐らくだが、理性のある魔物。
器用で、賢い、理性的な魔物。
たまに居る、どちらかと言うと魔族に近いそれ。
人は、それをも狩りの対象にする。
-
人は人を狩る。
種族問わず、人は狩りの対象にする。
私もまた狩る側だし、油断をすれば狩られる側だ。
狩らなければ、狩られてしまうから。
だからって、私は人の心は捨てたくないし、良心を抱えて苦しみたいな。
甘いなって、自覚はしてるけど。
角にはめられていたリングを手首に通して、代わりに葡萄ジュースを取り出す。
葡萄ジュースの瓶を二つの骨の前に置いて、深く、一度頭を下げた。
あなた達の事は知らないけれど
あなた達の事を覚えていたいから。
これ、大事にするから許して
きれいに磨いてぴかぴかにするから。
人間って、ほんと傲慢だよね。
-
立ち上がり、巣の中を改めて見て回る。
しかし魔物の姿はまるで無く、完全に無人の状態で。
真新しい木の実や土が落ちているあたり、ここが根城ではあるのだろうが。
ξ゚⊿゚)ξ(こんな立派な巣があると、そりゃ増えもするわな)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(潰すか)
そうだ、この洞窟の出入り口を潰そう。
そう思い立ったツンは、名案だといった顔で斧を握り直した。
< ドーン! ズシーン!! ガラガラ...
<ウワーナンダー
<マモノカーウワー
<モリノホウカラダー
爪'ー`)y‐(ツンちゃんがやらかした音が村まで響いてきた……)
-
──── うっかり閉じ込められかけたツンが洞窟から這い出て、
適当に数匹の大イノシシを逃がした後に残りを黙々と解体していた頃。
村の方では祭りの最終準備が進められ、広場には大きなかがり火が灯った。
打ち合わせを終えたフォックスは、慌ただしく働く村民を眺めつつ酒場の扉を潜った。
(*゚ー゚)「はーい麦と葡萄亭へようこそー……っと、死体のお兄さん! なんかすごい音したね!」
爪'ー`)y‐「やぁお嬢さん、一杯頂戴? あと音の正体はたぶん僕の相棒」
(*゚ー゚)「えぇ……死体のお兄さん、その小さな相棒さんはまだ戻らないの? もう暗くなってきたのに」
爪'ー`)y‐「うーんツンちゃんねー、ずっと魔物狩りするかもだからねー」
(*゚ー゚)「えぇー、折角なんだから旅人さんにもお祭り楽しんでもらいたいのにー」
爪'ー`)y‐「ねぇお嬢さん、向こうの町にそっくりな姉とか居ない?」
(*゚ー゚)「居ないよ?」
爪'ー`)y‐「あ、そうなの……そっか……」
-
(*゚ー゚)「あ、そうそう頼まれてたお洗濯終わりましたよ」
爪'ー`)y‐「あーツンちゃんの」
(*゚ー゚)「洗っても洗っても水が赤黒くて……怖かった……」
爪'ー`)y‐「あっうんごめんね」
(*゚ー゚)「にしても変わった素材ねぇ、あんなに血を吸ってたのに匂いも質も悪くならないなんて」
爪'ー`)y‐「そこまで血に強い布なんてあるのかね?」
(*゚ー゚)「うーんここまでのは聞いた事無いなぁ、と言うか普通はこんなに血を吸わない」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんは趣味なのかってくらい返り血ばしゃばしゃ浴びるから……」
(*゚ー゚)「冒険者的にどうなんですかねそれは……」
爪'ー`)y‐「よくない」
(*゚ー゚)「ですよね」
爪'ー`)y‐「まぁ本人の腕は確かだしどうとでもなるんだけど、はいお礼にチップ」
(*゚ー゚)「あらあらあら悪いわー」
爪'ー`)y‐(良いなぁこう言う強かな子)
-
(*゚ー゚)「そうそう、死体のお兄さんはお祭り行くでしょ?」
爪'ー`)y‐「そりゃ音楽隊に混じるからね」
(*゚ー゚)「じゃあそんな格好じゃダメよー、運んできてくれた荷物から合うの見繕ってあげる」
爪'ー`)y‐「あ、服だったのあれ」
(*゚ー゚)「祭り用の衣装、もー届かなかったらどうしようかと思ったわー」
爪'ー`)y‐「しかし何で衣装を荷物で運んできたの?」
(*゚ー゚)「新調する際に他所の仕立屋さんに頼んだの、村だけじゃ手が足りないから」
爪'ー`)y‐「なるほど、みんな忙しそうだしねぇ」
(*゚ー゚)「よっと、死体のお兄さんのはこのサイズかな」
爪'ー`)y‐「お、良いねぇ僕の顔の良さ際立っちゃって主役になっちゃいそう」
(*゚ー゚)「死体のお兄さんってば見てくれが良いんだから気を付けなよー?」
爪'ー`)y‐「見てくれの良さからこうなっちゃったしなぁ」
(*゚ー゚)「よっ女泣かせ!」
-
爪'ー`)y‐「じゃあ後で着替えてこようかな」
(*゚ー゚)「うんうん、音楽隊は華やかでなきゃね」
爪'ー`)y‐「あ、そうだ」
(*゚ー゚)「はい?」
爪'ー`)y‐「上から65・55・75くらいの女性用の衣装ある?」
(*゚ー゚)「何そのホームランバーみたいなアレ……相棒さんのサイズ把握してるの?」
爪'ー`)y‐「いや目視した感じを適当に」
(*゚ー゚)「おおむね合ってそうで死体のお兄さんちょっと気持ち悪い」
爪'ー`)y‐「お兄さんかなしい」
(*゚ー゚)「あるから用意しとくね、それよりそろそろ行かなきゃ」
爪'ー`)y‐「おっと、じゃあ着替えてきまーす」
(*゚ー゚)「はいはーい」
爪'ー`)y‐「ところで死体のお兄さん呼びやめない?」
(*゚ー゚)「はよ行け」
-
──── ざくざく。
ある程度血の抜いた肉を解体して袋に詰める。
ざくざく。
ざくざく。
肉に残った血で手を濡らしながら、刃を振るう。
ざくざく。
ざくざく。
ざくざく。
私これ端から見たら狂戦士じゃないか?
血まみれになりながら無心で肉を解体し続けるってこれ恐ろしくないか?
今後森に肉を裂く狂戦士の怪談とか出来たらどうしよう。
魔物の娘呼ばわりより立ち直れないかも知れない。
-
すっかり暗くなった森の中。
足元くらいしかよく見えない。
それでも夜目は利く方だし、村の明かりがうっすらと見える。
肉の片付けもそろそろ終わる、抱えて一旦戻るか。
生態系ちょっと壊しかけてるし、ちょっと。
もう魔物の気配も無く、聞こえるのは野性動物の足音や息づかいくらい。
大イノシシもしばらくは大人しくするだろう、つがいと子供を見逃したからたぶん絶滅しない。たぶん。
した時に困るから村の人にちゃんと相談しておこう。
やり過ぎた可能性がある。可能性だようん。
肉を積み重ねて担ぎ、小脇に抱えて更に引きずる。
抜ききれていない血がぼとぼとと体を塗らす。
たぶん今日はもう大丈夫だ。
しかしやり過ぎた事を思うと、私もまだまだ未熟者だな。
狐の言う通りだ。
戦士としての腕力はあっても、私は頭が悪すぎる。
今はまだ小さなやらかしで済んでいるが、いつか大きな失敗をするかもしれない。
そうなっては困るんだ。
私は師匠みたいに、立派な戦士になりたいのだから。
そのためには、ちゃんと経験と知識を積まなければいけない。
-
ホームランバーみたいなアレ笑った
-
狐の言う事はみんな正しい、畳み掛けるように言われて困惑したが、正しい。
戦士として、冒険者として。
私はまだまだ幼子のような未熟さだ。
だからもっともっと、強く、強く賢くならなければ。
あー。
きずつく。
クソとか言われたし。
きずつくし。
くやしい。
あぁー。
やだー。
もーやだーもー。
私のばーか。
もー。
おちこむ。
-
──── 夕闇が夜闇に交わり溶ける頃、広場は祭りの様相に染まっていた。
晴れの日用の衣装を纏った村人達は料理や酒を振る舞い、賑やかで軽快な音楽が村を包む。
僕はその中の一人として、普段とは違う装いで楽器を弾いていた。
いつもは気ままな独りの弾き語りだけど、たまには誰かと合わせるのも悪くはない。
まあ、たまにで十分なんだけどね。
軽快な音楽に合わせて人々は体を揺らし、男女のペアになって踊る。
踊る人、歌う人、食べる人、呑む人、笑う人。
ああ、まさしくお祭り騒ぎだ。
慌ただしく走り回るのは料理を任された人たち、あちらに酒が足りない、こちらに肉が足りない。
子供たちも可愛らしく、肉を食んだりジュースを飲んだり、子供同士で踊ったり。
収穫の前祝いの祭り。
それが、今日のお祭りの理由だ。
今年も稔り良く、収穫の日を迎える事が出来る。
今日が前祝いって事は、収穫してからまた騒ぐんだろうなこの人達は。
良いね、楽しい事は大好きだ。
人生は刹那的で、享楽的でなきゃ。
-
ざわざわ。
ざわざわ。
祭りの喧騒とはまた違うざわめきが、森の方から上がる。
それと同時に、酒と料理の匂いに満ちていた広場に、むわっとした血の臭いが混じって。
何か、小山みたいなものが広場へ近付いている。
ぼたぼたと血を滴らせながら、蠢く暗い影。
あんな魔物見た事無いな、いや魔物じゃないのか、みんな避けはするが逃げはしない。
子供達は泣き叫ぶが、大人達はドン引きと言った感じであぁーこれあぁぁー僕の相棒だこれぇー。
全身赤黒く染めた相棒が大量の大イノシシの死骸抱えて広場に入ってきちゃったんだこれぇー。
えぇー、えぇぇぇー、何でまっすぐ入ってきたのー。
せめて裏から入ろうよそこはぁーと言うか何その数の死骸コエェェエー。
地面に血のあとめっちゃついてるしもう引きずってるし怖い怖い何これホラーだよ。
新しい伝承出来るよこれ祭りの日に動物の死骸を引きずり村を歩くアレが出来るよ。
あぁーほらツンちゃん酒場の女将さんに捕まって、あっ、…………あっ。
あの肉これから料理になるな!?
-
──── 男衆が広場の血を必死に洗い流している時、
村に戻ったツンは女衆に囲まれ全身を洗われていた。
頭の先から爪先まで、血と脂まみれになっていた小柄なツンを寄ってたかってあわあわに。
汚れるお湯を換えては流し、換えては流し。
30分も経てば、そこには祭りの衣装を纏う、小綺麗こざっぱりとしたツンの姿が。
馴れないスカートを持ち上げて渋い顔をするも、着ていた服を洗濯に出されてしまってはどうする事も出来ず。
頭につけられた花飾りや下ろされた髪も、馴れないし何だかむず痒いし。
鏡を覗くと、見慣れぬ自分と一仕事やり遂げて満足そうな女衆が写る。
このまま外に出るの?
相棒と踊ってきなさい。
心底嫌そうな顔をしたツンは、厨房に戻って行く女衆に外へと放り出されてしまった。
ξ゚⊿゚)ξ「うひー……やだなぁこの格好……」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「どっかに隠れるかぁ……」
-
村の広場は、それはもうどんちゃん騒ぎだ。
さっき私が帰ってきた時は騒然としていたが、今ではすっかり元の熱気を取り戻している。
料理と、お酒と、私のせいの血の臭い。
大きなかがり火の赤い灯りに照らされて、人の熱気と入り交じり、世界は夕闇のようなオレンジ色。
何だかふしぎ。
朝見た村とは、違う場所のよう。
ぱちぱち、ごうごう。
燃え盛る炎は揺らめいて、音楽に合わせて踊る人々の姿を照らす。
足元に伸びる影は、闇に溶け込み境目なんてわからない。
あ、音楽。
軽快で、賑やかで、からだの揺れるような旋律。
音楽隊の存在はすぐに見付けられたが、私の相方であるゾンビ男の姿はない。
女の子でも追っかけてんのかな、と近場の丸太椅子に腰掛けて、頬杖をついた。
-
どんちゃんどんちゃん。
歌って踊って、食って飲んで。
たのしそうだな。
でも私は何だか、今日は少し疲れてしまった。
手首にはめたままの銀の輪を、衣装のエプロンで擦る。
私ごと洗われたから、汚れはだいぶ落ちたようだ。
それでもまだ曇っているから、ごしごし、祭りから目をそらしてそれを拭く。
はぁ。
なんか、疲れたな。
昨日は狐に怒られたし。
今日は気分悪いもの見たし。
お腹は空いたけど、料理空っぽで、まだおかわりは届いていない。
-
ξ゚⊿゚)ξ「…………はぁ」
爪'ー`)y‐「溜め息吐くと幸せが逃げるって言うよね」
ξ゚⊿゚)ξ「ふぅん……」
爪'ー`)y‐「あれあれー? お姫様はお疲れかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「誰がお姫さ いつから居たお前」
爪'ー`)y‐「初回の溜め息から」
ξ゚⊿゚)ξ「どこだよ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんやっぱ良く似合うね、こうしてれば本当にお姫様みたいに可愛いのにさ」
ξ゚⊿゚)ξ「動きにくい」
爪'ー`)y‐「予想しきってた返答、でも髪下ろす方が可愛いよ? せっかく綺麗な髪なんだからさ」
ξ゚⊿゚)ξ「すっっっげぇ邪魔」
爪'ー`)y‐「力入ってんなー」
-
爪'3`)y‐「でも勿体無いよなー折角の美人さんがさぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「あーはいはい」
爪'3`)y‐「あっ信じてないなぁ? お兄さんの言葉を信じてないなぁ??」
ξ゚⊿゚)ξ「詐欺師みたいな奴が何を」
爪'ー`)y‐「うんまぁ、今は嘘ついてないけど」
ξ゚⊿゚)ξ「あっそ」プイ
爪'ー`)y‐「それでおっぱい生えてたら完璧なんだけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「おう歯ァ食い縛れや」
爪'ー`)y‐「あーだめー衣装のクリーニング代がかさむのー」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ三つゴッ
爪 Д(#)そ「ヒギィ」メコ
-
ξ゚⊿゚)ξ「あんた仕事は?」
爪'ー(#)y‐「僕はもーおしまい、一応はお客さんだからね」
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん……」
爪'ー(#)y‐「それさっきから擦ってるけどなーに?」
ξ゚⊿゚)ξ「……森にさぁ」
爪'ー(#)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「大イノシシの巣があったんだけどね……先住の魔物が居たみたいでさ」
爪'ー(#)y‐「ふんふん」
ξ゚⊿゚)ξ「その魔物はさ、大きな巻き角で、人より大きいみたいで」
爪'ー(#)y‐「うーん? 僕は見た事無さそうだなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「壁にさ、銃弾があって」
爪'ー∩゙「……あー」
ξ゚⊿゚)ξ「……死体は残したみたいだし、何で銃で殺されたんだろうな、って……」
爪'ー`)+「うーん……そうだなぁ」
-
爪'ー`)y‐「ゲームハントか、奴隷狩りじゃない?」
ξ゚⊿゚)ξ「……は?」
爪'ー`)y‐「奴隷商は魔物も人も問わず、使える物は何でも仕入れて売るからね」
ξ゚⊿゚)ξ「……いや、奴隷って……死んでたよ?」
爪'ー`)y‐「捕まえようとして抵抗されて、撃ち殺したとかじゃないかなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「撃ってすぐはまだ息があったんじゃない? だから慌てて狩人も逃げたのかも」
ξ∩⊿∩)ξ「…………あー……」
爪'ー`)y‐「あっあぁーごめんー何かごめんー多分これ一番嫌な返答したぁー」
ξ∩⊿∩)ξ「ァ゚ー……」
爪'ー`)y‐「えぇ……その声どこから出たの…………ところで、手首の輪っかは?」
ξ゚⊿゚)ξ「あー、たぶんつがいのメスの角についてた」
爪'ー`)y‐「貰ってきたの?」
ξ゚⊿゚)ξ「お供えはした」
爪'ー`)y‐「ま、良いんじゃない? 死体漁りなんて日常風景だよ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……何かさ、覚えときたくて……つい持ってきて」
爪'ー`)y‐「覚えとけば良いんじゃなーい? まあそうやってどんどん荷物増やさなきゃだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「んー……」
爪'ー`)y‐(あー僕のせいもあってかツンちゃんが滅入ってるゥーやりづれーつまんねー)
爪'ー`)y‐(あーあぁーご飯でもあれば一発なのに今は無いィー)
爪'ー`)y‐
ぽろん。
突然、隣に座ってきた狐が愛用の楽器を爪弾いた。
音楽隊の音楽と混ざって混乱させないか、と周囲を見るも、気にする人は誰も居ない。
言葉を探るみたいにぽろんぽろんと音を出し、かがり火に照らされた横顔は歌う時のあの顔で。
ああまた、こいつは絵になるな。
-
金の海が満ちる頃
かがり火が闇に灯る頃
踊れや踊れ
足が悲鳴をあげるまで
歌えや歌え
声がかすれてしまうまで
木々の闇から守人が姿を現して
血肉を引きずり広場を巡る
そして稔りの肉を村人へ
おそろしき守人へ感謝を
村を守りしその者へ賛辞を
そして祭りが終わる頃
声枯れ膝が折れる頃
守人は森に消えて行く
次の祭りのその日まで
村を守りて身をかくす
ξ゚⊿゚)ξ「おい待て」
爪'ー`)y‐「こうして新たなおとぎ話が生まれるのだった……」
ξ゚⊿゚)ξ「やめんか」
爪'ー`)y‐「あれ、今日はチップは?」
ξ゚⊿゚)ξ「今持ってない」
-
爪'ー`)y‐「ほらツンちゃん、行こうか」
ξ゚⊿゚)ξ「は?」
爪'ー`)y‐「踊ろう!」
ξ;゚⊿゚)ξ「や、やだよ! やだよ!?」
爪'ー`)y‐「ほらほらリードしてあげるからさー」
ξ;゚⊿゚)ξ「やだってばぁ!!」
狐に手を掴まれ、立たされて広場の真ん中へと躍り出る。
恭しく頭を下げて手を差し伸べる狐の余裕たっぷりの笑みが、何か知らんがやたらに腹がたって。
こんな挑発されたら乗るしか無い。
私はスカートの裾を持ち上げて、お辞儀を返すと狐の手を取った。
明らかに足を踏むのを期待してるにやにや顔。
でも残念だったなクソマゾこのやろう、私は普通に踊れるからな。
-
音楽に合わせて、スカートの裾をつまんでくるくると。
相手の手を取りひらひらと、軽くステップを踏んで踊ってみせた。
これでも小さい頃から祝い事の度に村で踊ってたんだから。
好きじゃないけど、身に染み付いてるから踊れるんだよ。
心底意外そうに目を丸くする相方は、楽しそうに笑って私の手を掴む。
くるくる、ひらひら、とたとた。
広場の真ん中で踊る私たちは、明らかに悪目立ちしている気がした。
しかしこうして、汗が浮かぶほど身体を動かしていると、嫌な気分が散って行く。
一歩踏むごと、一つ回るごと、胸の奥のもやもやが消えていくみたいで。
ああそっか、そう言う事か。
やっぱストレス発散に筋トレするのは正解なんだな。
師匠の教えは正しかったんだ、悩むより身体を動かせは正しかったんだ。
結局そのまま私達は、音楽の切れ目に料理が届くその時まで、ひたすら踊り続けた。
狐は汗だく息切れでしゃがみこんだが、私は肉を貪りながら空を仰ぐ。
-
ああ、何の悩みもないような顔で星がまたたく。
かがり火の炎に照らされた空は、うっすらと赤く見えた。
大イノシシの香草焼きを堪能しながら、串焼きを狐に差し出す。
呆れたような疲れた顔で受けとると、汗をぬぐいながら立ち上がった。
「どうせまたクソ固いんでしょ?」
「料理人が作ったから美味しいわよ」
「君の美味しいはあてになら無いんだよなぁ」
まだ少し血の臭いはするが、香辛料でうまく隠している。
肉は固いが歯応えだと言い換えればどうにかなる。おいしい。
ああそうだ、私、お腹が減っていたんだ。
ごちそうは私の腹にみんなおさめてしまおうかな、と呟く。
やめなよ迷惑だよ、と隣で相棒がくつくつと笑った。
祭りの喧騒は未だ収まる気配もなく
こうして、賑やかな夜は更けて行くのだった。
おわり。
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ありがとうございました、本日はここまで。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
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(´;ω;`)ツンかわいいおおおおおおお
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土下座したらホントやらせてくれそうな危うさ
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さっき見つけて一気に読んだ
いいなあこういう冒険の話すき
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150でてっきりまた脱がしたか自分が脱いだのかと
良いやつだなフォックス・・・
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しょげたツンかわいすぎるな……
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かわいすぎてしにたい
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魔物のつがいの犯人とかこれから出てくるのかな
すげえ楽しみ。
おつ
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旅のようです見返したいのに見つからない…
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>>163
ググれば一番上に出てくるぞ?
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>>164
2話目しか出てこないです
他の話しは何処へ・・・
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2話を見つけれたならURL弄ってトップに行くもよし1話に行くもよし
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例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声。
刃を振るい、歌声を響かせ、路銀を稼いで進むのは二人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
【道のようです】
【第四話 いやいや休憩しませんか。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
てっこらてっこら。
街道を歩く。
てっとこてっとこ。
石畳の地面を踏んで。
馬車がすれ違える程度の幅。
街道を挟むようにちらほらと木々や秋色の草が生え、時おり土くれのように崩れた廃墟が見える。
少し遠くには使われなくなった、朽ちた水道橋が、ただ静かに立ち尽くしていて。
まだ見えないが、その先には同じように廃墟と化した関所が残されている。
視界の良い場所もあれば悪い場所もあり、時おりうごめく影が見えた。
次に目指すのはこの街道の先にある森。
先に立ち寄った村で受けたクエストが「森の薬師に薬草を届ける」だからだ。
少し距離があるので、食料は多目に買い込んだ。
しかしその重い筈の荷物は既に軽く、それに比例するように私の前を歩く吟遊詩人の機嫌が悪い
まあその原因は、どう足掻いても私なのだが。
-
ξ゚⊿゚)ξ「……あの、」
爪' -`)
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪' -`)
ξ゚⊿゚)ξ「あの」
爪'O`)「そーおーだーうれしいんーだーいーきるーよーろーこーびー」
ξ゚⊿゚)ξ!?
爪'O`)「たーとーえーむねのきずーがーいーたんーでーもー」
ξ;゚⊿゚)ξ
爪'O`)「なんのためーにーうーまれてーなーにをしーてーいきるのかー」
ξ;゚⊿゚)ξ
爪'O`)「こたえられーなーいーなんてーそーんなのーはーいーやだー」
ξ;゚⊿゚)ξ「ね、ねぇ真顔でマーチ歌うのやめて」
爪'O`)「いまをーいきるーことでーあついーこころーもーえーるー」
ξ;゚⊿゚)ξ「ねぇ」
-
爪'O`)「だからーきみはーいーくーんーだーほーほーえーんでー」
ξ;゚⊿゚)ξ「あんたのお昼ごはん勝手に食べた事は謝るからやめて!」
爪'O`)「そーおーだーうれしいんーだーいーきるーよーろーこーびー」
ξ;゚⊿゚)ξ「やめて!!」
爪'O`)「たーとーえーむねのきずーがーいーたんーでーもー」
ξ;゚⊿゚)ξ「ごめんなさい!!!」
爪'O`)「あーあーあんぱんまーんー」
ξ;゚⊿゚)ξ「言っちゃってるから!! 完全に言っちゃってるから!!!」
爪' -`)「他にも言う事あるよね」
ξ;゚⊿゚)ξ「あんたが取って置いてたベリータルト勝手に食べた事もごめんなさい!!」
爪' -`)
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ か、勝手に酒場でランチ五人前食べた事もごめんなさい……?」
爪' -`)
ξ;゚⊿゚)ξ「えっえっ あっ 大イノシシのステーキ八枚食べた事も……!?」
爪' -`)「後半ほとんど初耳なんですがそれは」
ξ;゚⊿゚)ξ(しまった)
-
爪' -`)「ツンちゃんさぁ、ほんと食にだけ貪欲なのやめよ? 人のご飯に手を出すのやめよ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「心から申し訳なく」
爪' -`)「思うならさぁもうちょっとさぁ己の食欲と向き合ってさぁ」
ξ;゚⊿゚)ξ「己の食欲と……向き合う……」
爪' -`)
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξグーキュルル
ξ;゚⊿゚)ξ「向き合った結果が空腹を訴えている……」
爪' -`)「どうなってんだその胃袋は」
ξ;゚⊿゚)ξ「食欲だけはどうしても抑えられなくて……」
爪' -`)「睡眠時間短くても大丈夫なくせに……」
ξ;゚⊿゚)ξ「だ、だって……あの……お腹は空きますから……」
爪' -`)
ξ;゚⊿゚)ξ
爪'O`)「あんぱんまんはーきみっさー」
ξ;゚⊿゚)ξ「歌い出しすら無視するのやめて!!!」
-
ξ;゚⊿゚)ξ「う、うぐぐ……でもあんただって!!」
爪' -`)「僕が何だい、この品行方正な僕が何をしたってんだい」
ξ゚⊿゚)ξ「村で女の子に手出しただろお前」
爪' -`)
ξ゚⊿゚)ξ「三人くらいは居ただろ」
爪;' -`)
ξ゚⊿゚)ξ「お前あそこの若い人ほとんど人妻だって分かっててやっただろ」
爪;' -`)
ξ゚⊿゚)ξ「後々苦情来たらお前これ処理出来るんだろうな」
爪;' -`)
爪'ー`)「さぁ!! 早く目的地に行こう!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「おい おい」
-
爪'ー`)y‐「でもだいぶ食べてくれたよね」
ξ゚⊿゚)ξ「申し訳なく」
爪'ー`)y‐「もーツンちゃんほんと食べるの堪えて」
ξ゚⊿゚)ξ「頑張ります」
爪'3`)y‐「もー」プンスー
ばーかばーか遥かなる胃袋ーとかよく分からない罵倒をしながら先へと歩いていく狐。
しかし実際に食べ物を減らしたのは私なので、正直言い逃れも出来ない。
ほんとに食欲だけは抑えがきかないんだよなぁ、どうしてこんなに堪え性が無いんだろう。
空腹に耐えるのも修行の一つだと思えば、もっと頑張れるのかな。
私の前の方をずいずいと歩いていった狐。
その背中を眺めつつ、夕飯まではどれくらいかかるのかなぁとお腹をおさえる。
ほんとに食欲はどうにもならんな。
-
,,爪'3`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ(晩御飯どうしよう……肉がいいな……)
,,爪'3`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ(この辺の草って食べられるわよね……)
('Д`;川 三3 キャー
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
爪;'Д`)y‐「魔物居たよ魔物! 廃墟からこんにちはしてた!」
ξ゚⊿゚)ξ「あーはいはい、引っ込んでなさいな。つか逆向いたら別人みたいだなお前」
先にあった廃墟を覗くと、そこには角の生えた大きなうさぎ。
ただ迷い込んだだけなのか、他に居るようには思えない。
やっぱ戦えないと、こんなのでも怖いんだなぁ。
弱くて可愛らしいやつなのになー、と魔物の頭を切り落とす。
紐で足を縛り、斧の柄に逆さに吊るしておく。
これで血抜きは出来るだろう。
-
|'Д`)「倒したー?」
ξ゚⊿゚)ξ「倒した倒した」
爪'ー`)y‐「はーやれやれ……どこにでも居るなぁほんと」
ξ゚⊿゚)ξ「野性動物と変わんないしね、動物と共存するようになったのも多いし」
爪'ー`)y‐「人を襲わないのも居るって分かるけどさー、やっぱ怖いよね」
ξ゚⊿゚)ξ「犬や猫と変わらないわよ、悪さをすれば狩られるだけ、はいこれ肉」
爪'ー`)y‐「これ持って歩けと」
ξ゚⊿゚)ξ「夕飯」
爪'ー`)y‐「ほんとに飯は現地調達だね君は」
ξ゚⊿゚)ξ「それとも今たべる?」
爪'ー`)y‐「ハングリー精神(物理)かな?」
ξ゚⊿゚)ξ「おなかすいた」
爪'ー`)y‐「ほんと君さぁ」
-
結局その後、日が暮れ始めるまで休憩を挟むことはなかった。
ぐるぐるとやかましい腹を擦りつつ、これも修行だと自分に言い聞かせる。
忍耐力は身に付くはずだ、堪える事を覚えなくては。
爪'ー`)y‐「ここら辺で今日は休むかなー」
ξ゚⊿゚)ξ「廃墟があるし、中の確認するわ」
爪'ー`)y‐「その辺に薪落ちてないかなー」
ξ゚⊿゚)ξ「中に魔物は居ないか……天井も大丈夫そう……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「んー?」
爪'ー`)y‐「蛇がいる蛇が」
ξ゚⊿゚)ξ「鶏肉に近い味がするわよ」
爪'ー`)y‐「5mくらいあるけど美味しいかな」
ξ゚⊿゚)ξ「サーペント系か、まぁ手を出さなければ今の時期は大人しいから」
爪'ー`)y‐「巻き付く力強いなぁ、あばらが折れそう」
三ξ;゚⊿゚)ξ「襲われてるならはっきりそう言ってくれる!?」
-
爪'ー`)y‐「いやぁ木の棒かと思ったら尻尾の先で」ミシミシ
ξ;゚⊿゚)ξ「せめて助けられる段階で呼んでよ!!」
爪'ー`)y‐「これ手遅れかなぁ」メリメリ
ξ;゚⊿゚)ξ「ズェア!!」
⊂彡 バシュー
爪'ー`)y‐「うわー」ボトー
ξ;゚⊿゚)ξ「……折れてる?」
爪'ー`)y‐「そこそこに」
ξ;゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ;゚⊿゚)ξ「一回死ぬ?」
爪'ー`)y‐「うん」
<メコー
-
ξ゚⊿゚)ξ「死に慣れてるからってもうちょっと危機感とかさ」サクサク
爪'ー`)y‐「いやぁうっかりうっかり、ところでさツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「んー」サクサク
爪'ー`)y‐「斧でウサギの解体とか言う職人芸は何なの?」
ξ゚⊿゚)ξ「肉切りナイフが折れちゃって」サクサク
爪'ー`)y‐「えぇー……」
ξ゚⊿゚)ξ「と言うかあんたもナイフの一本くらい持てば? 丸腰じゃあんまりでしょ」
爪'ー`)y‐「持ってるよ? ほら」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ使 なにそれ……趣味わる……」
爪'ー`)y‐「失敬な、芸術品ですよ」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ……金色で宝石ついてるナイフってなに……」
-
爪'ー`)y‐「懐にこれを忍ばせておく事で財布的に心が安らぐしこの装飾に癒されもする優れもの」
ξ゚⊿゚)ξ「だっさくない……?」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんは審美観もへっぽこだからこれの良さがわっかんないかぁ可哀想になぁ」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「これは観賞用として貴族が作らせたそれはもう財の費やされた由緒正しいナイフで」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょうど良いサイズだから貸して」バッ
爪'ー`)y‐「金も宝石も本物でまってやめて肉切りに使わないで謝るからごめんだからやめて」
ξ゚⊿゚)ξ「切れ味わっる」ギチギチ
爪;'Д`)y‐「やぁぁぁぁめぇぇぇぇてぇぇぇぇよぉぉぉぉぉぉお!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ナイフとしては欠陥品なのでは」ゴリゴリ
爪;'Д`)y‐「あーやめてやめてあぁー!! お客様ー!! 欠けるからーあぁーっ!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「なんか久々に見た気がするけどほんとブッサイクだなその顔」
爪#'Д`)y‐「イケメンですけどね!!!?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ところで薪は?」
爪'ー`)y‐「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「火つけるか」ゴソゴソ
爪'ー`)y‐「お、術式」
ξ゚⊿゚)ξ「買ってはいるんだけどさ、使うの難しいのよね」
爪'ー`)y‐「え、そう?」
ξ゚⊿゚)ξノシ「うん……なかなか……起動しない……」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξノシ
爪'ー`)づ
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)ノシ ボッ
ξ゚⊿゚)ξ「ついた」
爪'ー`)y‐「つくよ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「えぇ……何で……」
爪'ー`)y‐「魔力無いタイプの体質?」
ξ゚⊿゚)ξ「調べたこと無い……」
爪'ー`)y‐「本来なら一般人でも術式使うくらいの魔力はある筈なのになぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「いっつも起動に時間かかるのよね……滅多にそんな話聞かないのに」
爪'ー`)y‐「たまに居るらしいよー魔力蓄えられない体質の人、逆なら大魔導師になれるのにねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「むー……不便だ……」
爪'ー`)y‐「魔法は使えた方が便利だしねぇ……特に術式くらいは」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたは魔法は?」
爪'ー`)y‐「一般人レベル」
ξ゚⊿゚)ξ「ンンン」
-
爪'ー`)y‐「歌に魔力乗せる事は出来るよ」
ξ゚⊿゚)ξ「マジか」
爪'ー`)y‐「君が戦ってる時に僕が歌ってるの何だと思ってた?」
ξ゚⊿゚)ξ「あたるあたる〜♪的なアレかと」
爪'ー`)y‐「何的なアレだそれは」
ξ゚⊿゚)ξ「バフだったのねあれ」
爪'ー`)y‐「その通りだけどバフって言わない」
ξ゚⊿゚)ξ「テンションシステムは」
爪'ー`)y‐「無いです」
ξ゚⊿゚)ξ「むー、魔力かぁ……こればっかりはどうしようも無いような」
爪'ー`)y‐「魔導師ギルドで調べてもらう? 確か無料で適性検査受けられるよね」
ξ゚⊿゚)ξ「なんか哀れみの視線を向けられそうだからやだ」
爪'ー`)y‐「ああうんあるよね何かそう言うアレ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「かと言って、あんたに術式全部押し付けるのもね」
爪'ー`)y‐「底が浅いから日に何枚も強いの使うとアレだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「と言うか術式って何なの? アレ結局どう言うやつ?」
爪'ー`)y‐「んー、魔導師が描いた簡易型魔方陣みたいなやつ?」
ξ゚⊿゚)ξ「ふむ」
爪'ー`)y‐「術式があれば一般人でも簡単に火を起こしたりする事が出来るけど、
魔力が必要ないわけじゃないんだよね、多少の魔力を消費して発動させる」
ξ゚⊿゚)ξ「ふむふむ」
爪'ー`)y‐「だから魔力が無い体質だと発動にやたら時間がかかったり、下手すれば発動しない」
ξ゚⊿゚)ξ「ふむむ」
爪'ー`)y‐「ちなみに使い捨てで一枚銅貨五枚くらいから買えます、高いのは金貨積んでも買えない」
ξ゚⊿゚)ξ「説明乙」
爪'ー`)y‐「きさまー☆」
-
ξ゚⊿゚)ξ「便利だけど万能じゃないのは魔法と一緒ね」
爪'ー`)y‐「世の中そんなもんさ」
ξ゚⊿゚)ξ「むう、やっぱりマッチ使うか」
爪'ー`)y‐「携帯用魔力とかは? 空気中の魔素貯めて使うやつ」
ξ゚⊿゚)ξ「あれオーダーメイドでたっかい」
爪'ー`)y‐「あれ必要な人少ないからねぇ……」
ξ゚⊿゚)ξ「魔力必要な時はあんたに頼むわ……」
爪'ー`)y‐「それは良いけど、今までは使えてたの?」
ξ゚⊿゚)ξ「時間かけて使える時と使えない時の半々」
爪'ー`)y‐「そりゃマッチ持つわ」
ξ゚⊿゚)ξ「でもあると便利だから補充はする」
爪'ー`)y‐「えらいぞー」
ξ゚⊿゚)ξ「しねー」
爪'ー`)y‐「ひどーい」
-
ξ゚⊿゚)ξ「はい肉焼けた」
爪'ー`)y‐「本来ならお弁当食べられたのにね!」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんて」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「極めて申し訳なく」
爪'ー`)y‐「あ、ウサギは意外と美味し 固いな」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなもんよ」
爪'ー`)y‐「蛇の方は 美味しいなおい」
ξ゚⊿゚)ξ「うむ」
爪'ー`)y‐「何かウサギのが美味しそうなのにな……」
ξ゚⊿゚)ξ「普通の蛇は食うとこ少ないけどこれは多いから」
爪'ー`)y‐「繊維が割けやすいのが良いな……」
ξ゚⊿゚)ξ「うまい」
爪'ー`)y‐「くやしい」
-
ξ゚⊿゚)ξ「現地調達も悪くは無いでしょ」
爪'ー`)y‐「認めると後々面倒そうだから否定はしないにとどめておくよ」
ξ゚⊿゚)ξ「かしこいなお前」
爪'ー`)y‐「君が際立ったアホなだけだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ころす」
爪'ー`)y‐「やめて」
ξ゚⊿゚)ξ「そうだ、森へは道なりに行くと良いのよね」ガサガサ
爪'ー`)y‐「そうそう、地図の通りに」
ξ゚⊿゚)ξ「地図の通り……」ガサガサ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「逆さだね」
ξ;゚⊿゚)ξ「わわっわわわ分かってましたけど」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん……」
ξ;゚⊿゚)ξ「うっかりくらいはしますけど!? 方向感覚はしっかりしてますけど!?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「んー、まだ距離あるか……」
爪'ー`)y‐「森のこっちに入ると村があるね」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そこ行った事ある」
爪'ー`)y‐「おぉ、どんな場所?」
ξ゚⊿゚)ξ「野菜が美味い」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「鉱山の麓にあって、みんな人当たりが良くて……私まだ初心者だったから、世話になったわ」
爪'ー`)y‐「ほうほう、じゃあ森に入る前に村で一旦休憩するか」
ξ゚⊿゚)ξ「久々に顔見せるのも良いか……んじゃ次は先にこの村で」
爪'ー`)y‐「何か思い出とかある?」
ξ゚⊿゚)ξ「鉱山に魔物が出たからそれを始末するクエストを受けた」
爪'ー`)y‐「結果は」
ξ゚⊿゚)ξ「鉱夫ドン引き」
爪'ー`)y‐「せやろな」
-
ξ゚⊿゚)ξ「でもドン引きしてから爆笑されたわ」
爪'ー`)y‐「面白かったんだろうね……君と言う存在が……」
ξ゚⊿゚)ξ「言い方が腹立つなおい」
爪'ー`)y‐「酒場は?」
ξ゚⊿゚)ξ「無いと思う?」
爪'ー`)y‐「絶対ある」
ξ゚⊿゚)ξ「大にぎわい」
爪'ー`)y‐「ですよねー稼げそー」
ξ゚⊿゚)ξ「女の子には手出さないでよ、殺されるから」
爪'ー`)y‐「出せる相手にしか手出さないから」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「出せる相手だったからつい」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「ごめんて」
-
ξ゚⊿゚)ξ「さて、そろそろ寝るか」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんお先にどうぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「んー」ゴソゴソ
爪'ー`)y‐「じゃ、子守唄いっきまーす」
ξ゚⊿゚)ξ「子守唄言うなや……」
ぽろん。
その瞳は闇のよう
何かを得ようとさまよう
その指先は骨のよう
何かを解こうとさまよう
その瞳は何も見ない
何かを得る事はかなわず
その指先は何にも触れず
何かを解く事はかなわず
その瞳は闇のよう
こちらを決して見はしない
-
チチチ チュンチュン
ξ゚⊿゚)ξ「何だったのあの歌、クッソ暗かったんだけど」
爪'ー`)y‐「何か思い付いたからつい」
ξ゚⊿゚)ξ「はい銅貨」
爪'ー`)y‐「律儀だね君も」
ξ゚⊿゚)ξ「水汲んでくる、ついでに朝飯探すわ」
爪'ー`)y‐「柔らかいお肉でねー」
ξ゚⊿゚)ξ「野性の動物や魔物にんなもん求めんなよ……」
爪'ー`)y‐「僕は朝食の準備と夜営の後片付けするかな……」
爪'ー`)y‐「先にお茶入れて、と」
爪'ー`)y‐「パンまだあったかなー」
-
爪'ー`)y‐「しかし酒場があると稼げるからありがたいなぁ、まだまだ財布に余裕あるけど」
爪'ー`)y‐「まぁ酒場の無いとこなんてそうそう無いけどねー」
ズシィンズシィン
爪'ー`)y‐「ん? 何の音だろ」
-=三ξ゚⊿゚)ξそ ガサッ バタバタ
爪'ー`)y‐「あ、ツンちゃんお帰」
<メゴシュ
,,ξ゚⊿゚)ξ「あービビった……何でこんなとこにサイクロプス居んのよ……」ズルズル
爪 Д;;#。,,
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「柔らかい肉を探しに行こう」
-
爪'ー`)y‐「お兄さんはひどいと思いました」
ξ゚⊿゚)ξ「非常に申し訳なく」
爪'ー`)y‐「護衛が護衛対象を放置はひどいと思いました」
ξ゚⊿゚)ξ「本当に申し訳なく」
爪'ー`)y‐「給料払ってるんだぞ!」
ξ゚⊿゚)ξ「廃墟から出てると思わなくて……その……申し訳なく……」
爪'ー`)y‐「まあお肉美味しいですけど」
ξ゚⊿゚)ξ「頑張って子供の肉を探したから許して」
爪'ー`)y‐「やだなぁその言い方……もう良いけどさ、許すけどさ」
ξ゚⊿゚)ξ「引き付けてから斬ろうと思ってたのよ……」
爪'ー`)y‐「その道中に僕が居たと……」
ξ゚⊿゚)ξ「申し訳なく……」
爪'ー`)y‐「分かったから……」
-
爪'ー`)y‐「本来ならお詫びに良い事したいなって感じなんだけど」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「ホームランバーはちょっとな……」
ξ゚⊿゚)ξ「私の形容詞にホームランバーを使うのいい加減にやめろ?」
爪'ー`)y‐「はんぺん」
ξ゚⊿゚)ξ「やめろや」
爪'ー`)ノシ「せめておっぱいが生えていればなぁ」ペチペチ
ξ゚⊿゚)ξ「鎧を叩くな」
爪'ー`)y‐「鎧と言うか胸を触っているのですがね、触っても何にも楽しくないなこれ」
ξ゚⊿゚)ξ(忍耐……忍耐を……)
爪'ー`)y‐「ああ胸が無いと触ってもわっかんないかーごめんごめん! 生やす努力してね!!」
ξ#゚⊿゚)ξ(忍……耐……)
爪'ー`)y‐「あっ、努力してその結果だったらごめんね……? 魔力と一緒で無い体質なのかな……?」
<イヤーッ グワーッ
-
爪'ー`)y‐「ツンちゃんそんな怒らんでも」
ξ゚⊿゚)ξ「ホームランバーだのはんぺんだの言われた後に胸触って「無い体質かな?」って言われて怒るなと」
爪'ー`)y‐「怒るなそりゃ」
ξ゚⊿゚)ξ「お前がやったんだよ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんにだけはこう言う雑な扱いしたくなるんだ……これって恋かな……?」
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ狐」
爪'ー`)y‐「ダーリンって呼んで☆」
ξ゚⊿゚)ξ「クソ狐」
爪'ー`)y‐「つらい」
ξ゚⊿゚)ξ「死ぬのと殺されるのとあと死ぬのどれが良い?」
爪'ー`)y‐「死もしくは死あるいはやっぱり死みたいな選択肢やめよ?」
-
爪'ー`)y‐「ほら怒んないで怒んないで僕ができる事なら色々してあげるから」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「歌でも歌おうかな? ツンちゃんのためにしたためようか?
ね? それともレディとしてエスコートしようか?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「ほら笑って笑ってツンちゃんもっと楽しくしようよお願いきいてあげちゃうよねぇねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「お前を消す方法」
爪'ー`)y‐「ごめんて」
ξ゚⊿゚)ξ「安易に胸をいじるのをやめろ」
爪'ー`)y‐「もっかい言って?」
ξ゚⊿゚)ξ「胸を」
爪'ー`)y‐「もう少しセクシーな感じで」
ξ゚⊿゚)ξ「ワタシ オマエ マルカジリ」
爪'ー`)y‐「ンン死にそうだな! 朝から2乙かなこれは!」
ξ゚⊿゚)ξ「死ぬような事を詰め込んできたのお前だぞ? 良いな?」
爪'ー`)y‐「今朝はなかなか調子が良くてつい口が回っちゃってね!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「飯食ったし片付けたし、そろそろ行くか」
爪'ー`)y‐「あ、殺されなかった」
ξ゚⊿゚)ξ「忍耐の修行だから」
爪'ー`)y‐「つまりやりたい放題って事?」
ξ゚⊿゚)ξ「粛清はする」
爪'ー`)y‐「一回粛清されたから程々にしよう」
ξ゚⊿゚)ξ「忘れ物無し、と……」
爪'ー`)y‐「あ、ツンちゃん大変」
ξ゚⊿゚)ξ「うん?」
爪'ー`)y‐「今回ツンちゃん血まみれになってない」
ξ゚⊿゚)ξ「サイクロプス斬殺した帰りになってた」
爪'ー`)y‐「僕が死んでる間に」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたが事故死してる間に」
爪'ー`)y‐「出来れば次からは守ってほしい」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんて……」
-
爪'ー`)y‐「よし、じゃあ村目指して行きますかー」
ξ゚⊿゚)ξ「んー」
爪'ー`)y‐「その村は可愛い女の子居るかな」
ξ゚⊿゚)ξ「だからお前」
爪'ー`)y‐「手を出す出さないではなく僕のモチベに大きく関わるから」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「居たよ」
爪'ー`)y‐「よっしゃ」
ξ゚⊿゚)ξ「これくらいの」
爪'ー`)y‐「女児だそれ」
ξ゚⊿゚)ξ「好きじゃないの?」
爪'ー`)y‐「Fカップくらいのお姉さんが良い」
ξ゚⊿゚)ξ「クッソわがままな……」
てっとこてっとこ。
次の目的地まであとすこし。
おわり。
-
ありがとうございました、本日はここまで。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
スマポン用に一覧のまとめ作っておきましたんでどうぞ
見辛かったりしたらまたなんかお願いします
http☆oppao.web.fc2.com/text_smp.html
-
今日も良くフォックスが死んでて平和だな
おつ
それにしてもツンちゃんの燃費の悪さよ
-
燃費悪ぃから胸育たねえんだろうなあ
-
なんか上の方に死体があるぞ
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声。
刃を振るい、歌声を響かせ、路銀を稼いで進むのは二人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
【道のようです】
【第五話 たっぷりじかんをかけて。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
目の前には、焼け野原が広がっていた。
立ち並んでいたであろう家屋は、そのほとんどが灰となり風に散らされたらしい。
僅かに残る焼け残った家屋も、半壊状態の廃墟と化している。
がらんとしたその何もない空間を、呆然と眺める相棒の横顔。
お世話になった。
みんないい人で。
ご飯が美味しくて。
子供たちも元気で。
賑やかで、活気があって。
楽しげに話していた人々の賑わいも、喧騒も、熱気も、営みも、今はどこにもありはしなかった。
ただただ静かに広がる、村の跡地。
その奥にぽっかりと開いた鉱山への入り口だけが、存在を主張していた。
驚きと悲痛に歪む横顔と、村の跡地を見比べながら、僕は小さく息を吐いた。
ああ、でも、これは。
そんなに、珍しい事じゃない。
-
夜盗か、あるいは魔物か、それとも不幸な事故なのか。
奥地にある村と言うのは、様々な物からその身を守らなければいけない。
以前立ち寄った村が、再び訪れる頃には無くなっていたと言うのはよくある話だ。
毎回それに対して、感傷に浸る余裕は冒険者には無い。
彼女も、それは分かっているのだろう。
爪'ー`)y‐「ツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「あぁ……大丈夫、ちょっと驚いて……別に、珍しい事じゃないし」
爪'ー`)y‐「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「私にどうこう出来る事でも無いし……でも今は、少しだけ悼みたいわ」
爪'ー`)y‐「……そうだね」
ああ良かった。
そこまで落ち込んでない。
まあ、そりゃそうか。
この間と違って、これは規模が大きい。
-
実感がわかないのだろう、記憶の中の村と余りにも様相が違いすぎて同じ場所とも思えないか。
規模的に、村民は数百人ってところか。
田舎に点在する村にしては大きな方だ、それなりに歴史もあっただろうに。
災禍と言うのは非情で、どんな歴史も想いも噛み砕いて飲み込む。
そしてそれは特別な事では無くて、誰にでも、どこにでも降りかかる様な物で。
しかしここは鉱山がある、しばらくすれば、また資源を求めて人が村を作るだろう。
そうやって、人間は似たような事を繰り返す。
これもまた、自然の営みの一つだ。
爪'ー`)y‐「ツンちゃん、そこで休憩させて貰おうか」
ξ゚⊿゚)ξ「うん……」
爪'ー`)y‐「はい、お水」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」
まだ形を残している廃墟に近付き、中を確認してから適当な場所に座る。
ここは店だったのかな、カウンターが半分残ってて、壊れた棚には壊れた何か。
-
村が焼き払われたのは、数ヵ月前か数年前か。
少なくとも、つい最近の事では無いのは確かだ。
さて、どうしたものか。
火事場泥棒をしようにも、既に荒らされきった後。
この辺りには他に村も無く、落ち着いて休める場所も無ければ道具の買い足しも出来ない。
参ったな、薬師のところに一晩厄介になれたら良いんだけど。
少し休憩したら、急いで森に向かうか。
ξ゚⊿゚)ξ「……ねぇ」
爪'ー`)y‐「うん?」
ξ゚⊿゚)ξ「何があったのかしら、ここ」
爪'ー`)y‐「さぁ、何か魔物でも襲ってきたのかも知れない」
ξ゚⊿゚)ξ「でも魔物が多いようには感じないのよね……」
-
爪'ー`)y‐「ふむ……なら好都合だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
爪'ー`)y‐「森の奥に入っても襲われにくいって事でしょ?」
ξ゚⊿゚)ξ「あー……そうね、そろそろ行って、出来れば一晩泊めてもらいたいし」
爪'ー`)y‐「そうそう、だから」
「何をしてるの?」
ξ゚⊿゚)ξ!
爪'ー`)y‐「おや」
(*゚ -゚)「あなたたち、こんなところで何をしてるの?」
ξ゚⊿゚)ξ「……脚を休めてるだけよ」
爪'ー`)y‐「僕らはしがない冒険者だよ、お嬢さんはどちら様?」
(*゚ -゚)「私は近くに店を構える薬師よ、森の奥にあるの」
ξ゚⊿゚)ξ「あ」
爪'ー`)y‐「お」
(*゚ -゚)?
-
(*゚ -゚)「……そう、ここに来た事があったのね」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、良い場所だった筈だけど……はい、これがご依頼の薬草」
(*゚ -゚)「ありがとう、助かるわ……残りの代金よ」
爪'ー`)y‐「はいどーも、っと……それより、この有り様はなんだい? 何があったのか知ってる?」
(*゚ -゚)「……この村はね、鉱山の奥に眠っていた竜を起こしてしまったの」
ξ゚⊿゚)ξ「竜……? こんな所に居たの?」
(*゚ -゚)「ええ、遥か昔に人間との盟約を交わした竜が眠っていた
剥がれた鱗や炎を差し出す代わりに、寝床である山を守らせていたの」
ξ゚⊿゚)ξ「へぇ……竜は気位が高いって言うのに」
(*゚ -゚)「穏和な竜だったから、人々は長く、眠る竜から剥がれ落ちたの鱗で岩を砕き
鉱石を集めては、消える事の無い竜の炎でそれを煮溶かしていた」
ξ゚⊿゚)ξ「……だから栄えていたのね」
(*゚ -゚)「そうね、けれど新たな鱗を拾いに行った者が竜を起こしてしまった」
-
ξ゚⊿゚)ξ「でも、盟約を交わしていたんでしょ? 人間が約束を反故にしたとも思えないわ」
(*゚ -゚)「老いる事で、人が変わってしまったようになる事は知ってる?」
爪'ー`)y‐「あぁ、あるねぇそう言うの……もう、分かんなくなっちゃってたのかな」
(*゚ -゚)「ここに居る竜は、それはそれは老体で、過去に交わした人間との盟約は忘れていた
寝床へ足を踏み入れた人間を敵だと認識するくらい、彼は老いてしまっていた」
ξ゚⊿゚)ξ「……元より、竜は気位が高い」
(*゚ -゚)「長く長く生きて経験を重ね、人間と盟約を交わす程の穏やかさを得た竜だとしても
全てを無くすのはほんの一瞬、ほんの些細な事で、積み上げた全てが壊れてしまう」
ξ゚⊿゚)ξ「なん、っか……やるせないわね」
爪'ー`)y‐「老いる事が悪とは思わないけど、悪い事は起きると言うか……何ともまあ」
(*゚ -゚)「で、一晩のうちにこの有り様よ……誰一人として、逃げ出せなかったと思うわ」
ξ゚⊿゚)ξ「はー……」
(*゚ -゚)「嫌な話だったかしら」
ξ゚⊿゚)ξ「……いえ、聞けて良かったわ」
爪'ー`)y‐「竜も人と同じように、老いる事で大事な物を失うんだねぇ」
(*゚ -゚)「当然よ、生きているんだもの」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……ところで、随分詳しいのね?」
(*゚ -゚)「そうかしら、長くここに住んでいるからかも知れないわ」
爪'ー`)y‐「長く、ったってまだ10代の前か中頃かじゃない? 若く見える種族?」
(*゚ -゚)「人間よ? 昔の話だけど」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
(*゚ -゚)「ちょうど一人で暇をしていたの、夕飯と宿はいかがかしら」
ξ゚⊿゚)ξ「行きます」
爪'ー`)y‐「躊躇う素振りは見せて」
(*゚ -゚)「薬師だからって別に毒なんて盛らないわ、狭いし森の奥だけど、どうぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとうございます」
爪'ー`)y‐「うーん……まぁ気になるし、ついていくかぁ」
(*゚ -゚)「吟遊詩人も難儀ね、歌の種には貪欲で」
爪'ー`)y‐「次に弾く時は歌わせてもらいましょうかね」
(*゚ -゚)
(*゚ー゚)「構わないわ、その代わり、とびきり綺麗に歌ってちょうだい」
-
薬師の少女を先頭に、森の中を歩いて行く。
腰まで垂らした髪は形良く編まれ、どこかの国の紋章が刻まれた髪飾りをつけている。
ツンちゃんと身長もさして変わらず、小柄でごく普通の少女にしか見えない。
顔立ちは可愛らしいが、どこか遠くを見ているような冷たさ。
不機嫌そうと言うわけではなく、ただ静かに、冷たく表情を保っている。
年の頃は見た感じだと10代の前半から中頃、僕の好みには少し若いかなぁ。せめてもう5年は先の方が。
薬師の案内のお陰で、日が落ちる前に店に辿り着けた。
まあ日が高かろうと、森の中に陽の光はほとんど射し込まないのだけれど。
小さな、森に溶け込むような、それでも小綺麗な店。
小瓶を紐で連ねた物や、逆さに干された薬草が吊るされている。
そして申し訳程度の、閉店中を示す看板。
薬師はその看板を開店中に戻す事も無く、ドアを開けて中に入っていった。
無警戒のツンちゃんがそれに続き、肩を竦めてから僕も続いた。
草の匂い、薬の匂い、甘いような苦いような不思議な匂い。
カウンターにもその向こうにも、ところ狭しと並ぶ薬の類い。
材料である植物以外の物が入った瓶まで並んでいるものだから、これではまるで魔女の家だ。
少女の容貌に似つかわしくない店内だが、居心地が悪いわけでもない。不思議なものだ。
-
(*゚ -゚)「あ、そうだわ」
ξ゚⊿゚)ξ「はい?」
(*゚ -゚)「役所を通してのお話では無いのだけれど、ひとつ頼まれてはくれないかしら」
ξ゚⊿゚)ξ「何か足りませんでした?」
(*゚ -゚)「いいえ、知り合いの調香師に届けてもらいたい物があって」
爪'ー`)y‐「場所と相手と金額次第かなー」
(*゚ -゚)「当然ね、場所はここ、相手は……まあ少し変わっては居るわね、金額はお好きなように」
爪'ー`)y‐「えーぇ胡散臭ーい?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと」
(*゚ -゚)「それも当然ね……竜の街は知ってるかしら」
爪'ー`)y‐「今度行く予定だよね?」
ξ゚⊿゚)ξ「その予定よ、肉の配布時期だから」
(*゚ー゚)「ふふ、美味しいものね竜の肉は」
-
ξ゚⊿゚)ξ「食べた事が?」
(*゚ー゚)「あるわ、この土地に眠っていた竜の心臓を」
爪'ー`)y‐「……心臓?」
ξ;゚⊿゚)ξ「食べたら竜は死ぬのでは?」
(*゚ -゚)「あら、死なないわ、そんなちゃちな作りじゃないもの
……その様子じゃ、竜の心臓の効果は知らないのね」
ξ;゚⊿゚)ξ「学が浅くて申し訳なく……」
爪'ー`)y‐「部位ごとに何か効能があるの?」
(*゚ -゚)「効能は不老不死一つよ、その強さが違うだけ」
ξ゚⊿゚)ξ「不老不死」
(*゚ -゚)「尾の先何かは少し元気になる程度だけど、心臓はもっとも効能が強い」
爪'ー`)y‐「へぇ、そんな心臓を食べたなんて……君は一体何者なのかな?」
(*゚ -゚)「竜の寵愛を受けた者」
ξ゚⊿゚)ξ?
爪'ー`)y‐?
(*゚ -゚)「竜と関わりがないとそんなもんよねぇ」
-
(*゚ -゚)「竜の心臓を口にするのはとても特別な事、
だから竜に心臓を差し出させる程の寵愛を受けた者だけが、不老不死になる事が出来る」
ξ゚⊿゚)ξ「確かに……気位の高い竜が人間に差し出すとなると相当な事の筈……」
爪'ー`)y‐「じゃあお嬢さん竜に愛されてるって事だ」
(*゚ -゚)「少し違うわ」
爪'ー`)y‐「ん?」
(*゚ -゚)「愛されてた、ね」
爪'ー`)y‐「あぁー……」
(*゚ -゚)「私の事も、忘れてしまっているしね」
ξ;゚⊿゚)ξ「……で、でも、何で寵愛に心臓なのかしら、不老不死にする理由は?」
爪'ー`)y‐「理由は一つだと思うよ?」
ξ;゚⊿゚)ξ「へ?」
爪'ー`)y‐(マジかこの子)
-
(*゚ -゚)「あら、話しすぎたわ、日が落ちそう」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、もうそんな時間か」
(*゚ -゚)「薪を外から取ってきてもらえるかしら、夕飯の準備をするわ」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ私が行ってくる」
爪'ー`)y‐「僕はお手伝いでもしましょうかね」
(*゚ -゚)「逆では?」
爪'ー`)y‐「僕は弱いから何かあったら割りと大変で」
(*゚ -゚)゙「なるほど」
爪'ー`)y‐「あの子は強いから」
(*゚ -゚)「信頼してるの?」
爪'ー`)y‐「力だけは」
(*゚ -゚)「あら、ひどい相棒ね」
-
(*゚ -゚)「それじゃあ、芋の皮でも剥いてもらおうかしら」
爪'ー`)y‐「はいはい」
(*゚ -゚)" カチャカチャ
爪'ー`)" サクサク
(*゚ -゚)「ねぇ、あなた」
爪'ー`)y‐「はい?」
(*゚ -゚)「その煙草、どこで作られたものかしら」
爪'ー`)y‐「あー、これは東の国の薬師から買ってるんだよねぇ」
(*゚ -゚)「それじゃあ喉の保護にならないわ、調合を変えないと」
爪'ー`)y‐「……よくこの煙草が喉を保護するものだと……?」
(*゚ -゚)「どれだけ薬師をしてると思ってるの、それくらい匂いで分かるわ」
爪'ー`)y‐「何百年と?」
(*゚ -゚)「桁が足りないわね」
爪;'ー`)y‐
-
(*゚ -゚)「後で調合をしてあげるわ、好きな匂いはあるかしら」
爪'ー`)y‐「女の子」
(*゚ -゚)゙「わかったわ」
爪'ー`)y‐「冗談です冗談、マルメロとかシトロンが好きです」
(*゚ -゚)「そう、じゃあ合う調合にしてあげる、調香師に手紙を添えるわ」
爪'ー`)y‐「あー荷物の届け先の? じゃあちょうど良いかぁ」
(*゚ -゚)「変わった子だけど、腕は良いから」
爪'ー`)y‐「煙草のお代は?」
(*゚ -゚)「結構よ、役所を通さず依頼するのだし」
爪'ー`)y‐「んじゃお言葉に甘えますかね」
(*゚ -゚)「もし良ければだけど」
爪'ー`)y‐「うん?」
(*゚ -゚)「眠る時にでも、古いおとぎ話を聞いてもらえるかしら」
爪'ー`)y‐「喜んで」
(*゚ -゚)「ありがとう」
-
爪'ー`)y‐「月並みな質問だけどさぁ」
(*゚ -゚)「何かしら」
爪'ー`)y‐「不老不死は、つらいかい?」
(*゚ -゚)「つらいと言うより、飽きるわね」
爪'ー`)y‐「あー……僕も、死ねない体質でさぁ」
(*゚ -゚)「不老不死ではなく、不死者と言った感じかしら」
爪'ー`)y‐「ゾンビ体質って感じ、死んでも死んでも蘇る」
(*゚ -゚)「何かの寵愛を?」
爪'ー`)y‐「魔女の呪いを少々」
(*゚ -゚)「ご愁傷さま、魔女の呪いはその家系の者にしか解けないから実質解呪は不可能よ」
爪;'Д`)y‐「えぇーぇ止めてよーぉ今は解呪のために旅してんのにさーぁ」
(*゚ -゚)「魔女の呪いを受けるなんて、相当な悪行でも?」
爪'ー`)y‐「一晩仲良くしただけだよ?」
(*゚ -゚)「あら女の敵、火遊びが過ぎたわね」
-
(*゚ -゚)「相棒さんとはなぜ共に?」
爪'ー`)y‐「護衛にね」
(*゚ -゚)「そう」
爪'ー`)y‐「ちょっと騙して契約を」
(*゚ -゚)「悪い子ね」
爪'ー`)y‐「あぁー今のちょっとゾクゾクするぅー」
(*゚ -゚)「ごめんなさいね、子持ちなの」
爪'ー`)y‐「人妻だったかー」
(*゚ -゚)「……妻か、そうね……妻、か」
爪'ー`)y‐「……人ではない者との日々って、どんなもんだろうね」
(*゚ -゚)
(*゚ー゚)「幸せだったわ」
-
爪'ー`)y‐「……そ」
,,ξ゚⊿゚)ξ「ただいま」
爪'ー`)y‐「あ、おかえり」
(*゚ -゚)「おかえりなさい」
ξ゚⊿゚)ξ「悪さしてないでしょうね」
爪'ー`)y‐「人妻だったよ」
ξ゚⊿゚)ξ「お前人妻だろうが手出すだろうが」
爪'ー`)y‐「皮剥き終わったよー」
ξ゚⊿゚)ξ「おいこらクソ狐」
(*゚ -゚)
爪'ー`)y‐「ほらお嬢さん引くから暴力はやめて」
ξ゚⊿゚)ξ「お前ほんとお前」
(*゚ー゚)(賑やか)
-
振る舞われたのは、何も特別ではない平凡なポトフで。
シンプルな味付けと、柔らかな具材が腹の中を暖めてくれた。
薬師の少女は表情が乏しいが、時おり穏やかに微笑む。
その微笑みは、子を、孫を、雛や仔猫を見るような眼差しで。
その眼差し、瞳の奥の冷たさは、彼女が見た目通りの年齢では無い事を裏付けるのに十分だった。
彼女の話をすべて信じるとしたら。
どれだけの時間を一人で過ごしたのだろう。
どれだけの孤独を抱えて生きたのだろう。
彼女を置いて眠りに就いた竜は、目覚める頃には彼女を忘れていた。
今、彼女がそこに座っている理由は何なのだろうか。
いったい何が、今もなお彼女を壊さず、生かしているのだろう。
死なない事への恐怖は、僕自身が一番分かっている。
もっとも、僕は『老いる不死者』なんだけど。
だからこそ、絶望は深い。
-
彼女は宣言通り、クッションと毛布で寝床を与えてくれた。
床にごろ寝ではあるが、屋根があるだけずっとマシだ。
毛布にくるまるツンちゃんと、壁に凭れる僕。
それを眺める彼女は、揺り椅子に腰掛けて微笑んでいた。
それじゃあ、お話をしましょう。
薄い唇を開いて、子供に読み聞かせるような、優しい声音で言葉を紡ぐ。
ああ、今日は僕の歌の出番は無いな。
むかしむかしのあるところ。
薬師の少女が、傷付いた竜と出会いました。
同族との争いに敗れ、傷付いた竜に、薬師の少女は手当てを施しました。
傷が治るまでは殺さずにおこう。
傷が治るまでは手当てをさせてやろう。
傷が治るまでは話し相手をさせてやろう。
傷が治るまでは、傷が治るまでは。
傷が治る頃には、竜と少女は惹かれ合い、互いを深く愛するようになりました。
-
竜は少女に側に居てもらうために、己の心臓を差し出しました。
少女はその心臓を口にして、老いる事も死ぬる事も出来なくなりました。
少女を通じて人を知り、人に心を許し、人を盟友とした竜。
人は襲わない、傷付けない、助け合い、共に生き、守り合おうと竜は少女に誓った。
けれど二人でたくさんの時を過ごした竜は、年老いて動く事もままならない。
流れ着いた山の中、竜は少女を置いて、魂と肉体を休めるために眠りに就きました。
眠りに就くほんの少し前。
竜はぽろぽろ涙をこぼし、少女に語りかけます。
いとしい竜の花嫁よ、私は再びおまえを迎えにゆくよ
いとしい我が花嫁よ、再びこの双眸におまえが映る事を夢見て
いとしい我が花嫁よ、おまえを歪めた私を憎んでくれるか
竜があまりにも悲しそうな声で泣くものだから。
少女はその鱗でざらつく大きな顔を撫でながら、彼も、自分も泣かないように、笑いました。
-
いいえ、いとしいわたしの竜
わたしはあなたを憎まない
わたしはあなたを愛し続ける
だから、いとしいわたしの竜
どうかどうか、わたしを迎えにきてください
おはよう、ただいま、いとしい人と
わたしを迎えにきてください
堪えていた涙をぽろぽろと。
ふたりは誓い合って、愛し合って、再会を約束して、離れて行った。
取り残された少女は一人、ひっそりと、森の奥にお店を作りました。
大好きなあの人が目を覚ますまで、一人で静かに待ち続けよう。
目を覚ましたら、一番に駆け付けられるように。
-
おしまい。
そう言葉を切った彼女は、どこか遠くを、とても悲しそうな目で見ていた。
中途半端な物語り。
ここで話を終わらせたのは、どんな結末でも悲しいから。
事実を結末にすれば、それはひどく悲しいもので。
理想の結末にすれば、それは彼女を余計に苦しめる。
ああ、現実と言うのはおとぎ話のようにはいかない。
愛した人に与えられた不老不死と言うそれは、きっと消せない呪い。
恋人を、伴侶を失った彼女は、それでも一人生き続ける。
傍らで、眠ってしまった相棒を見る。
今日ばかりは、幸せそうとは言えない寝顔。
暖炉の灯りに照らされる巻き髪を指先に絡めてみると、くすぐったそうに身をよじった。
もう少し色気があればなぁ、君を抱く可能性がほんの僅かに芽生えるのに。
薬師は口を閉ざしたまま、揺り椅子をきぃきぃ。
僕も声をかけるなんて無粋な真似はしたくない、このまま眠ってしまおう。
ああ、でも。
こんな胸がちりちり痛む夜は、娼婦でも買って柔らかな胸の中で眠りたい。
-
目が覚める頃には、薬師は依頼の荷物と僕の煙草と、朝食を用意してくれていた。
まだ起きない相棒を爪先で軽く蹴りながら、僕は身支度を整える。
身支度する様は誰かに見せたくないんだけど、まあ、薬師は良いか。
おばあちゃんみたいな感じだし。
薬師は変わらず、布の多い服にきっちりと編まれた三つ編みで。
髪を止める髪飾りには、竜のような紋章。
どこの国の物なのか、今度調べてみようかな。
爪'ー`)y‐「おーはよ」
(*゚ -゚)「おはよう、早く食べてしまいなさい」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん起きな、久々の屋内で惰眠貪りたいのは分かるけど」
ξぅ⊿-)ξ「うー……私の培ったぬくぬくが……」
⊂爪'ー`)⊃「ほらこの胸に飛び込んで」
ξぅ⊿-)ξ「ノルマ達成させんぞ……」
爪'ー`)y‐「今回は血まみれも死に芸もノルマが無いと思っていたのに……!?」
-
(*゚ -゚)「午後から雨になるから、森を抜けるなら早めに行きなさいね」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
爪'ー`)y‐「やっと起きた……頭くしゃくしゃだよ君」
ξ゚⊿゚)ξ「うっさい」
爪'ー`)y‐「ンモー」
(*゚ -゚)「ほら、朝食とお弁当」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとうございます」
爪'ー`)y‐「動かないで」
ξ゚⊿゚)ξ「離せ私は朝御飯を食べるんだ」
爪'ー`)y‐「動くんじゃないこのサイドドリル! 結べないから!」
ξ゚⊿゚)ξ「あとで適当にやるわよ!」
爪'ー`)y‐「その適当がムカつくんだよなぁ!」
(*゚ー゚)(……賑やか)
-
爪'ー`)y‐「しかし、ここまでお世話になって良いの?」
(*゚ -゚)「良いわ、薬草のお礼だから、お代金も荷物に入れておいたわ」
爪'ー`)y‐「その薬草ってそんなに大事な物だったんだ」
(*゚ -゚)「ええ、不死者でも殺すと言われている毒の材料なの」
爪' -`)y‐「……ちょっと」
(*゚ー゚)「……飲まないわ、飲むつもりだったけど、少し気がはれたから」
爪' -`)y‐「…………」
(*゚ー゚)「薬草は別の、毒にはならない薬に使ったから」
爪'ー`)y‐「……そっ」
(*゚ー゚)「ええ、ええ……街の方にでも、店を移そうかしら」
爪'ー`)y‐「良いんじゃない?」
(*゚ー゚)「そうね……賑やかな方が、良いものね」
-
爪'ー`)y‐「それじゃ」
ξ゚⊿゚)ξ「何から何まで、お世話になりました」
(*゚ー゚)「こちらこそ……あ、そうだわ」
ξ゚⊿゚)ξ「はい?」
(*゚ー゚)「森を進むのなら西の方へ真っ直ぐ行きなさい、小屋があるから雨を凌げるわ」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、ありがとうございます」
(*゚ー゚)「いいえ」
爪'ー`)y‐「それじゃ、またいつか」
ξ゚⊿゚)ξ「失礼します」
(*^ー^)「ええ……また、またね」
穏やかに笑って手を振る彼女を、僕らは振り返らなかった。
-
,,ξ゚⊿゚)ξテクテク
,,爪'ー`)y‐テクテク
,,ξ゚⊿゚)ξ
爪;'ー`)y‐「続くんだね!?」
ξ゚⊿゚)ξ「何よ急に」
爪'ー`)y‐「いやなんかもう今回終わりそうだったから……」
ξ゚⊿゚)ξ「何いってんだこいつ」
爪'ー`)y‐「えぇーめっちゃ普通に続いた……こわ……」
ξ゚⊿゚)ξ「それより、雲行き怪しそうだし急ぐわよ」
爪'ー`)y‐「はーあい」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「あのさ」
爪'ー`)y‐「はーい」
-
ξ゚⊿゚)ξ「竜って、まだ生きてるのよね」
爪'ー`)y‐「だろうねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「……このままだと、討伐されるんじゃないかな、って」
爪'ー`)y‐「……依頼されたらどうする? 倒す」
ξ゚⊿゚)ξ「え、無理」
爪'ー`)y‐「何で? 良心が咎める?」
ξ゚⊿゚)ξ「いやそれ以前に私の腕では倒せない」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「握力だけでどうにかなるもんじゃないし、竜の鱗を貫けるとも思えないし」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「私はたかが金のランクよ、竜の討伐だなんて早すぎるわ」
爪'ー`)y‐
_,
ξ゚−゚)ξ「何か言えよ」
爪'ー`)y‐「僕ツンちゃんのそう言うとこ好き」
_,
ξ゚−゚)ξ「気色悪いなおい」
-
爪'ー`)y‐「はぁまじ、ツンちゃん戦士的にまじめっちゃストイック、好き」
_,
ξ゚−゚)ξ「やめておぞける」
爪'ー`)y‐「何でおっぱい生えてないの?」
_,
ξ#゚−゚)ξ「今日のノルマか? お?」
爪'ー`)y‐「はーあぁぁあ……ほんとまじ……」
_,
ξ゚−゚)ξ(……? 何かアンニュイ? 話聞いてやるか……?)
爪'ー`)y‐「はぁ……ほんとおっぱい生えろよ……何なんだよその豆腐体型……」
_,
ξ゚−゚)ξ(よし殺そう)
爪'ー`)y‐「もう本当さぁ村無いしさぁ町遠いしさぁ女の子抱けないしさぁなのに傍らにホームランバーさぁ」
_,
ξ゚−゚)ξ(そうだ頭掴んでねじって背骨引きずり出そう)
爪'ー`)y‐「ツンちゃんにおっぱい生えてたら微レ存抱けたかも知れないのに」
_,
ξ゚−゚)ξ(何で全力で煽ってくんのこいつ)
爪'ー`)y‐「ああでも生えてもツンちゃんじゃ無理だなやっぱ……無理だわ……無いわ……」
_,
ξ#゚⊿゚)ξ「狐」
爪'ー`)y‐「はい?」
<ウギャー ベキィズルズル
-
爪'ー`)y‐「いやぁまさかノルマ達成するとは」
ξ゚⊿゚)ξ「お前ほんとわざとかってくらい煽るよな」ポタポタ
爪'ー`)y‐「決して故意では無いんだけどツンちゃんの胸が無いことは事実でしょ?」
ξ゚⊿゚)ξ「処す?」
爪'ー`)y‐「やめよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「つかせめてシンデレラバストとか言えよお前」
爪'ー`)y‐「無理」
ξ゚⊿゚)ξ「何で」
爪'ー`)y‐「良いかいツンちゃんあれは胸が控えめだろうと可愛らしい物を身に付けようと言う
女の子の気概が無ければ自称できないんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「ツンちゃんみたいにノーブラノー可愛げノー色気の野生児を甘んじる子には駄目です」
ξ゚⊿゚)ξ「なんかすみません」
-
爪'ー`)y‐「ツンちゃんが無乳だろうとそう言う可愛らしいお嬢さんなら多少の性欲をもてあますっつーの」
ξ゚⊿゚)ξ「クソ失礼だしクソムカつくしクソみたいな発言なのに反論出来ないのが心苦しい」
爪'ー`)y‐「ギャップ萌え的にさぁ実は可愛い物が大好きーとか将来の夢はお嫁さーんとか無いの?」
ξ゚⊿゚)ξ「別に可愛い物が嫌いではないけどな」
爪'ー`)y‐「実は少女趣味とかそう言うキャラ付けを」
ξ゚⊿゚)ξ「いやそこまででは無いわ、見るだけで十分だし」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「身に付けるなら実用性の方を重視するし、可愛い物は娯楽の一つでしょ? そんな余裕は無い」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「なんだよその『あーあーこれだからなー分かってたけど可愛くないなー』みたいな顔は」
爪'ー`)y‐「あーあーこれだからなー分かってたけど可愛くないなー」
ξ゚⊿゚)ξ「処すぞお前」
-
爪'ー`)y‐「仔猫とか見てさぁ、きゃー可愛いとか無いわけ?無いわけ?」
ξ゚⊿゚)ξ「可愛いとは思うけど」
爪'ー`)y‐「けど?」
ξ゚⊿゚)ξ「お前がこの間食った肉は仔兎だしそれを肉の状態にしたのは私」
爪'ー`)y‐「あーそうだったー可愛かろうが必要なら肉にするタイプだったー」
ξ゚⊿゚)ξ「お前は冒険者に何を求めているんだ」
爪'ー`)y‐「可愛い女の子」
ξ゚⊿゚)ξ「そんな幻想は捨てろ」
爪'3`)y‐「やーあだーあ冒険者でも可愛い女の子は居るうー」
ξ゚⊿゚)ξ(うぜー)
爪'ー`)y‐「育ちの良い僧侶の子とか」
ξ゚⊿゚)ξ「お前は僧侶に手を出すつもりなのか」
爪'ー`)y‐「神罰下りそう」
ξ゚⊿゚)ξ「似たようなもん食らってその体質だろ……」
爪'ー`)y‐「そうだった……」
-
昨日の事なんてなかったみたいに、相棒は相変わらず不機嫌そうな顔で僕を罵る。
その日常風景が、なんだか妙にありがたく感じてしまえて。
これでしんみりした空気になんてなられたら、居心地が悪くてしょうがない。
ツンちゃんは、やっぱり女の子と言うよりもツンちゃんと言う生き物だ。
咄嗟の事態には困惑して泣いたり落ち込んだりする癖に、戦士としての姿勢はストイックで。
人間としても、戦士としても、冒険者としても未完成なのに。
彼女はどこか、達観しているところがあると言うか、完成された部分がある。
僕が彼女に身の上をほとんど語っていないように、
彼女もまた、僕にほとんど自分の事を話してはいない。
簡単なようで、意外と読めないところがあるなあ。
ぽつ。
木々の隙間から、雨粒が落ちる。
爪'ー`)y‐「おっと、まずいまずい」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたがだらだら話してるから」
爪'ー`)y‐「お喋りしたい時もあるんですぅうー」
ξ゚⊿゚)ξ「口閉じたら死にそうな癖に何言ってんだ、ほら走って!」
-
ぽつぽつ、ぱらぱら、ざあざあ。
雨の勢いは瞬く間に激しくなり、全身を雨粒が強く叩く。
濡らしてはいけない荷物を守るように抱えながら、木々の傘をすり抜けながら走った。
三ξ;゚⊿゚)ξ「寒い!!!」
三爪;'ー`)y‐「秋雨でずぶ濡れはきつい!!!」
三ξ;゚⊿゚)ξ「ああでも血は落ちた! 天然のシャワー!!」
三爪;'ー`)y‐「僕の血浴びてたもんね! ノルマ達成!!」
三ξ;゚⊿゚)ξ「小屋あった小屋!! あれでしょ!?」
三爪;'ー`)y‐「屋根だー! それだけでありがたーい!!」
森の奥、確かに存在した小さな小屋に飛び込んで荷物を下ろす。
冷えきった身体を引きずって荷物の確認を済ませると、外套や上着を外して固く絞った。
小屋は意外に小綺麗で、まだ新しい綺麗な毛布と、最近使われた痕跡のある暖炉。
乾いた薬草が入った籠なんかがあるのを見ると、どうやらここはあの薬師が普段から使っているらしい。
ああ、なら安心だ。
屋根が抜けていたり、いつのものか分からない毛布って事も無いだろう。
-
爪'ー`)y‐「あぁー……さっぶぅ……」
ξ゚⊿゚)ξ゛「あんたが無駄口叩くよってに」ゴソゴソ
爪'ー`)y‐「僕だけのせいかな ブッフォ」
ξ゚⊿゚)ξ「あん?」
爪'ー`)y‐「ほんとさ、ツンちゃんほんとさ」
ξ゚⊿゚)ξノシ「これ一緒に干して」ポイ
爪'ー`)y‐「干すけど……干すけど君ね……突然半裸にならないでよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「ホームランバーに興味は無いんだろうよ」
爪'ー`)y‐「うん微塵も無いけどさ、そうやって開き直るから余計に興味無くす」
ξ゚⊿゚)ξ「暖炉あるし火入れよう」
爪'ー`)y‐「ねぇ半裸で歩かないで」
ξ゚⊿゚)ξノシ「術式使えるかな」
爪'ー`)y‐「隠すそぶりを見せて」
ξ゚⊿゚)ξノシ「背中向けてんだから良いだろうがうるさいな」
爪'ー`)y‐「もうやだ女子力とかそれ以前の問題で見ているのもつらい」
ξ#゚⊿゚)ξノシ「じゃあ見るな」
-
爪'ー`)y‐「はぁ……」
ξ゚⊿゚)ξノシ「ため息ばっかね」
爪'ー`)y‐「視界の端に10代女子の熊にでも襲われたような傷のある白くて小さな背中が映るからね」
ξ゚⊿゚)ξノシ「熊を襲った時の傷だわ」
爪'ー`)y‐「逆だった……熊が可哀想だった……」
ξ゚⊿゚)ξノシ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξノシ
爪'ー`)y‐「僕がつけようか?」
ξ゚⊿゚)ξ「すまんな」
爪'ー`)y‐「つけてあげるから前隠して……」
ξ゚⊿゚)ξ゙
(⊃へへ
爪'ー`)y‐「膝を……抱えただけ……ッ!!」
ξ゚⊿゚)ξ(うっせーな)
-
爪'ー`)y‐「大体ツンちゃん僕が服めくったら殺しに来たのに自分では良いのかよ! 何なんだよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、めくられたら怒るだろ……」
爪'ー`)y‐「どうせ見る物は一緒なのに!!」
ξ゚⊿゚)ξ「今回は見せてないけど」
爪'ー`)y‐「見せなくて良いよ心まで寒くなる」
ξ゚⊿゚)ξ「お前ほんと貧乳に恨みか憎しみでもあんのか」
爪'ー`)y‐「貧乳にではなく君の胸に悲しみしか感じないだけだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「何なのお前そんなに死に急ぐ理由は何なの」
爪'ー`)y‐「可愛さの無駄遣いをする子は女の子じゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「そろそろ暴言控えろ」
爪'ー`)y‐「クールダウンのためにご飯を食べよう、君の服は暖炉の前に移動させておくよ」
,,ξ*゚⊿゚)ξ「ごはんごはんー」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「んー?」
爪#'ー`)y‐「恥じらって」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっごめん」
-
遅くなった昼食はパンと鴨肉の燻製とピクルス。
薬師の料理は何だか落ち着く味で、スパイスやハーブが味を引き立てる。
暖炉で沸かしたお湯でお茶を入れ、色気もクソも無い相棒に渡した。
雑にタオルで上半身を隠す相棒は、なぜこうも女らしさに無振りなのだろうか。
見てくれは可愛らしいのに何か余計にがっかりする。
がっかりも度が過ぎるとイラッとする。
いや。
今の僕がなんとなーく余裕が無いだけか。
昨日聞いた話のせいか、それともこの身にかけられた呪いのせいか。
老いる不死者。
このまま呪いが解けなければ、僕はどうなってしまうのか。
限界まで生きて死に、蘇り、死に、蘇り、老体を幾度も再生させる羽目になる。
死にたいと願うようになるまで、どれくらいかかるのだろう。
ああ嫌な気分だ。
楽しい時間は有限、なら僕はその時間だけを見て感じて生きたい。
それになんだか、胸の奥に巣食ったもやもやは、それだけでは無い気がして。
-
雨が降り頻る森の中。
濡れた土と緑の匂いは強まり、独特の青臭さと、雨にぼやけた白さがが世界を包む。
これじゃ、止む様子は無いな。
折角早めに出たのに、一日を潰すとは。
相棒は食事を終えてから、ずっと鎧と武器の手入れをしている。
雨に濡れたしやる事が無いならちょうど良い、そう言って向けられた背中。
研ぎ、塗り、拭き、磨く、その後ろ姿は少女ではなく一人の戦士。
下ろされた湿った金髪は、手入れもされずに放置されているのだから。
爪'ー`)y‐(あーあ)
楽器の手入れはもう終わった。
やる事が無いわけではないが、どうにもやる気が起きない。
どうしたんだろうな僕は。
妙にピリピリ、イライラ、欲しいものが手に入らないような、焦燥感。
いつもはこんな時は、酒場で騒げば落ち着くのに。
あ、そうだ。
酒だ。
-
爪'ー`)y‐「ツンちゃーん」
ξ゚⊿゚)ξ「んー」
爪'ー`)y‐「寒くなーい?」
ξ゚⊿゚)ξ「寒いな」
爪'ー`)y‐「暖まらない?」
ξ゚⊿゚)ξ「模擬戦でもする?」
爪'ー`)y‐「それ僕が丸太の役でバラバラになるだけだよね? そうじゃなくってー……はい!」
ξ゚⊿゚)ξ「……何それ」
爪'ー`)y‐「お酒」
ξ゚⊿゚)ξ「飲まない」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)づ「はい」
づ)⊿゚)ξ「飲まねえつってんだろ」
-
爪'ー`)y‐「何だよどこまでノリが悪いんだよ君は」
ξ゚⊿゚)ξ「いやだって酒は」
爪'ー`)y‐「この世界は未成年とか関係ないから飲めるよ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「いやだって」
爪'ー`)y‐「それともアレなの? 武人的に酒は飲まない主義なの?」
ξ゚⊿゚)ξ「苦くて美味しくない」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「なーんだぁ!(安堵)」
ξ゚⊿゚)ξ「(安堵)つけんな」
爪'ー`)y‐「そっかーツンちゃんも可愛いとこあるよなーうんうん!」
ξ゚⊿゚)ξ「こう言う時は分かりやすく笑顔になるよなお前」
-
爪'ー`)y‐「まぁでも大丈夫だよ、甘いからこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「酒飲みの甘いは何一つ信用ならないって知ってる?」
爪'ー`)y‐「ああうんよくあるよね酒の甘味が云々でいざ飲んだら甘くも何ともないやつ」
ξ゚⊿゚)ξ「だから飲まない」
爪'ー`)y‐「砂糖甘いよこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「飲める可能性が出てきた」
爪'ー`)y‐「こうやってお湯で薄めて」
ξ゚⊿゚)ξ「薄めるのか……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんお酒に興味無さすぎて何にでも感心できて僕羨ましい」
ξ゚⊿゚)ξ「ビールとかワインしか知らない」
爪'ー`)つc□~「定番だねぇ……はい」
ξ゚⊿゚)ξ「温かい酒とは面妖な」
爪'ー`)y‐「普通だから」
-
爪'ー`)y‐「ああそうだ、服乾いたから着なさい」
ξ゚⊿゚)ξ「あっはい」
爪'ー`)y‐「僕のはー……あー生乾き」
ξ゚⊿゚)ξ「厚着で良かったわね」
爪'ー`)y‐「外側が全滅だけどね、雨天用の外套買おうよー古いのこないだ捨てたじゃーん」
ξ゚⊿゚)ξ「ただ買い忘れただけなんだけどな……くんくん」
爪'ー`)y‐「美味しいから飲んでみなよ」
ξ゚⊿゚)ξズズ
爪'ー`)y‐「どう?」
ξ゚⊿゚)ξ「甘い」
爪'ー`)y‐「そうだろうそうだろう、卵とか牛乳を入れても」
ξ ⊿ )ξ"ドサァァァ
爪'ー`)y‐「ツンちゃーーーん!!?」
-
爪'ー`)y‐「ええやだ何ツンちゃん……えっ……」
ξ-⊿-)ξスイヨスイヨ
爪'ー`)y‐「嘘だろ寝たぞ……えぇ……一口で……? 薄めた酒一口で……?」
ξ-⊿-)ξムニャムニャ
爪'ー`)づ ポンポン
ξ-⊿-)ξスヤスヤ
爪'ー`)y‐「すげぇなほぼ平らだぞこの胸、脂肪存在すんのか」
爪'ー`)y‐「毛布毛布……」
爪'ー`)y‐
爪'ー`)y‐「……結局つまんないなこれ!! 醜態見れると思ったのに!!」
ξ-⊿-)ξウーン
爪'ー`)y‐「おっと、……酒でも飲めば気がはれると思ったのになぁ、こんなしっとり飲むつもりでは……」
-
爪'ー`)y‐「はーあぁ……つまんないなぁ」
面白い事が無いと、生きていけないのにな。
ちりちりと揺らめく暖炉の炎を眺めながら、相棒が残した酒を口に運ぶ。
薄甘く、酒気もほとんど感じられないそれは、到底酔える様な代物ではなかった。
ミルクと砂糖を煮詰めて作られたこの酒は、寝入りにくい時に愛飲している。
優しい甘さとミルクの匂いは、何となく僕の弱い部分を覆ってくれる気がした。
酒を追加で足しながら、すやすやと眠る相棒に目をやる。
今日は穏やかな、アホみたいな顔で眠っている。
悩みなんて無さそうな、何も知らない子供みたいな。
可愛いものだ。
でもそれは、小さな子供を見る意味でしかない。
爪'ー`)づ「……たぶんこれ以上成長しないんだろうなぁ」
ξ-⊿-)ξ「む……」
爪'ー`)y‐「おっと」
-
ξ-⊿-)ξ「……ししょう……」
爪'ー`)y‐「寝てても師匠か」
ξ-⊿-)ξ「どーして……ですか……」
爪'ー`)y‐「おや何か楽しいこと聞けそうな予感?」
ξ-⊿-)ξ「なんで……おかあさん……」
爪'ー`)y‐(お母さん?)
ξ-⊿-)ξ「なんで……私をすてたんですか……」
爪'ー`)y‐
ξ-⊿-)ξ「せんせ、い……」
爪'ー`)y‐
ξ-⊿-)ξ「どこ……みせ……」
爪'ー`)y‐
すっげー楽しくなかった。
-
えーもう聞きたくないってーそう言う過去とか別に聞きたくないってー。
ただでさえ何か湿っぽいのに余計しんみりしちゃったじゃんもー何これーもー。
ツンちゃん空気読んでよマジでもー良いからこう言うイベントー要らないからー。
はーもーやだ。
外はまだ夕方くらいの筈なのに真っ暗だし、雨は止まないしうすら寒いし。
相棒は寝たと思ったら反応に困る寝言を言うし、もう良いよしんみりムードなんて大嫌いなのに。
爪'ー`)y‐
爪'ー`)y‐「かと言ってやる事もなく」
爪'ー`)y‐「何か弾くかぁ……」
ぽろろん。
その瞳は石の色
その髪は朝焼け色
たゆたう声で語りましょう
ながれる言葉を紡いで
知らない世界の知らない国の
知らない誰かの知らないお話
ひとつひとつと並べては
ひとつひとつと飲み込んで
かなしい色に染まる瞳
やさしく指をとおす髪
-
ξぅ⊿゚)ξ「んぐ」
ξ-⊿-)ξ「ぅー? ……外真っ暗だな……寝てたか」
ξ゚⊿゚)ξ「狐……は寝てる……ごはん……は良いか」
ξぅ⊿゚)ξ(このままもう一度寝よう……)
ξぅ⊿゚)ξ゛
ξ゚⊿゚)ξ(狐の髪が火に照らされてきらきらしてる)
ξ゚⊿゚)ξ(バナナみたいだな)
ξ゚⊿゚)ξ(ん?)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(へぇ、意外)
(泣いたりするんだ、こいつ)
その晩、僕は仄かな柔らかさに包まれて、顔も覚えていない母親の夢を見た。
-
爪- -)"モゾ
爪'ー`)゙パチ
何かすっげー目覚め良いぞ。
爪'ー`)y‐(懐かしい夢を見たけど、内容は覚えてない……)
爪'ー`)y‐(酒のせいか……甘ったるい匂い……)
爪'ー`)y‐「ツンちゃーん、起きなー雨止んだよー」
ξ-⊿-)ξ
爪'ー`)y‐「ごはん」
ξ゚⊿゚)ξ゙
爪'ー`)y‐「用意するから手伝って」
ξ゚⊿゚)ξ「ふぁい」
-
>>249
>>ξ-⊿-)ξ「どこ……みせ……」
ξ゚⊿゚)ξ「何処見せてんのよ!」
( ^ω^)「それは私のおいなりさんだ!」
的なのが頭に浮かんで吹いた
-
昨日までのもやもやがすっきりした朝、空はよく晴れ、空気は澄んでいる。
身なりを整えてから相棒を起こすと、朝食の準備を始めた。
一晩眠れば案外どうにかなるもんだ。
落ち込んだ気分も、妙な苛立ちも、焦燥感もなりを潜めた。
やっぱり一杯飲んで寝るのが良いのかな、随分甘ったるかったが。
さて、竜の街まではまだ距離がある。
のんびりしてると冬が来てしまう、出来るだけ早く次の街へ辿り着かなければ。
まあ、どこかで冬を越す羽目にはなるのだろうけど。
それもまあ、楽しければ良いか。
爪'ー`)y‐〜♪
ξ゚⊿゚)ξジッ
爪'ー`)y‐?
,,ξ゚⊿゚)ξ(バナナ食べたい)
爪'ー`)y‐???
おしまい。
-
ありがとうございました、本日はここまで。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
-
おつ!
-
竜のオチんぽって凄く太そう……ゴクリ
-
このつんちゃんがかわいすぎていきるのがつらい
-
狐にとってのツンちゃんは砂糖とミルクなのかなホームランバーだし
-
人間の姿になれたやろ確か
-
乙
今回しんみりだなあ
-
狐泣くのか、乙
-
時系列的にどれくらいの話なんじゃろ
戦争終わって大分経ってるのかな
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声。
刃を振るい、歌声を響かせ、路銀を稼いで進むのは二人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
【道のようです】
【第六話 いいこだよねほんとうに。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
朝から賑やかな街並み。
人々が行き交い、市場の方は熱気に包まれている。
竜の街はまだ遠いが、今日は大きな街でのんびり出来る。
まずは役所に行って、それから宿をとって、買い物を済ませて。
買わなきゃいけないものをリストアップしないとな。
相方が出来てからは、ちゃんと買い物も出来るようになったし。
私はお小遣い制になったけど。
ξ゚⊿゚)ξ「はーついたついた……」
爪'ー`)y‐「やあお嬢さん何て素敵なお髪なんだろうねまるで空から差し込む太陽の光そのもの」
ξ゚⊿゚)ξ「役所はあっちかな……」
爪'ー`)y‐「どうだいお嬢さん僕と一緒にお茶でもどうかな一曲君のために歌わせて欲しいんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そこのクソ狐、着いてこないなら今この場で頭握り潰すぞ」
爪'ー`)y‐「ごめんよお嬢さん突然恐ろしい何かに呼ばれてしまったんだ行きたくないが行かねばなら」
ξ゚⊿゚)ξ「ナンパを続けると言うならこの場で背骨砕いて足を掴んで引きずり回す」
爪'ー`)y‐「あーごめんねー! 相棒ちょっとおこだからー! 激おこだからー!! またねー!!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「とっとと来いやクソが……」
爪'ー`)y‐「もーおー! あと少しだったのにさー! 何で邪魔するかなー!?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「ツンちゃん融通きかないって言うかー! 空気読めないって言うかー! もー!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ」
爪'ー`)y‐「何さー! もー!!」
ξ゚⊿゚)ξ「私、あんたの全身の骨を小さい順から握って潰す事も出来るんだけど」
爪'ー`)y‐「すみません役所行きますクエスト報告します面倒な書類仕事は全部僕がやります」
ξ゚⊿゚)ξ「よろしい、じゃあまず役所ね」
爪'ー`)y‐「はーぁー、せっかく良い感じで口説けそうだったのに」
ξ゚⊿゚)ξ「引っ掛かる女もどうかと思うわ」
爪'ー`)y‐「いっぱい居るよ? 君が特例なんだよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「まだイケメン芸引きずってるの?」
爪'ー`)y‐「芸風じゃなくて事実だよ? わかる? 理解できりゅ?」
ξ゚⊿゚)ξ「男の美醜なんぞよくわからん」
爪'ー`)y‐
-
爪'ー`)y‐「APPで言うと……15くらいあるんだよ……?」
ξ゚⊿゚)ξ「何だよAPPって……」
爪'ー`)y‐「数値上は人間の限界値は18だよ……?」
ξ゚⊿゚)ξ「知るかよ……」
爪'ー`)y‐「ねぇ認めてよ……僕はイケメンだと認めてよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「やだ何この人……めんどキモい……」
爪'ー`)y‐「最近イケメン扱いされなすぎて悲しいから今日は素直に誉めてくれるお姉ちゃんのとこにいく」
ξ゚⊿゚)ξ「お金取られるやつ?」
爪'ー`)y‐「それはどうかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「別に好きにして良いけど……買い出しのリストはまとめないと」
爪'ー`)y‐「僕新しいフライパン欲しい、鋳鉄の大きいやつ」
ξ゚⊿゚)ξ「すっげ重いわよ」
爪'ー`)y‐「アレで焼くとお肉が美味しくなる」
ξ゚⊿゚)ξ「私が持つわ」
-
爪'ー`)y‐「じゃあ役所で報告済ませて……」
ξ゚⊿゚)ξ「次のクエスト探しとく」
爪'ー`)y‐「んー……よいしょ、書面と……証明章を……」
ξ゚⊿゚)ξ「狐ー」
爪'ー`)y‐「んー? マイダーリンか名前で呼んでー」
ξ゚⊿゚)ξ「クソ狐、このクエストは?」
爪'ー`)y‐「頑なに呼ばれねぇ、はいはいどんなの」
ξ゚⊿゚)ξ「これ、畑の手伝い」
爪'ー`)y‐「ニラ茶栽培かー、珍しいね」
ξ゚⊿゚)ξ「飲んだ事ある?」
爪'ー`)y‐「無い、でもこれ期限が短いよ、すぐには難しい」
ξ゚⊿゚)ξ「残念、んじゃ洞窟に沸いた魔物を討伐」
-
爪'ー`)y‐「難度は?」
ξ゚⊿゚)ξ「んーちょっと難しい、でも薬があればいけるかも」
爪'ー`)y‐「んじゃ君にお任せしようかね」
ξ゚⊿゚)ξ「はい任された」
爪'ー`)y‐「どこの洞窟?」
ξ゚⊿゚)ξ「まだ先、海辺の方で実害出てないから緊急度低め」
爪'ー`)y‐「はいはい、じゃあのんびりね」
ξ゚⊿゚)ξ「実害出る前には片付けるわよ」
爪'ー`)y‐「分かってますって」
ξ゚⊿゚)ξ「よし、役所はこれで終わりかな」
爪'ー`)y‐「ん、先に宿でも取るかなー」
ξ゚⊿゚)ξ「宿はどこかしら」
爪'ー`)y‐「んー道の流れ的にー……ハッ ツンちゃん大変」
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
-
爪'ー`)y‐「ここ合法カジノがある」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「カジノがある……!!」
ξ゚⊿゚)ξ「吟遊詩人から遊び人に転職したいの?」
爪'ー`)y‐「楽しいよー駆け引き楽しいよーねーねー行こうよー僕得意なんだよー」
ξ゚⊿゚)ξ「得意ってあんたね……」
爪'ー`)y‐「これでもギャンブラーの資格は持ってる、はい免許証」
ξ゚⊿゚)ξ「マジか……マジだ……」
爪'ー`)y‐「本職にするほど好きではなかったから吟遊詩人してるけど」
ξ゚⊿゚)ξ「ギャンブラーの資格を持つ吟遊詩人って胡散臭さが過ぎるのでは」
爪'ー`)y‐「だから滅多に見せない」
ξ゚⊿゚)ξ「完全に遊び人の互換職だしな……」
爪'ー`)y‐「否定しきれない」
-
爪'ー`)y‐「だからギャンブルで稼ぐ自信はあるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そこまで困ってないだろうに」
爪'ー`)y‐「いやでもさぁ」
「そこの金髪二人連れ! 待ちな!!」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
川*`ゥ´)「お前らが最近調子に乗ってるっつぅ焼きたてパンと溶かしバターだな!!」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
川;`ゥ´)「おい返事しろよ焼きたてパンと溶かしバター!?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「何あの子、お腹空くキーワード連呼してる」
爪'ー`)y‐「アレはね、僕がまだ納得していない君が勝手に決めた僕らのパーティー名だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「実に美味しそうだ」
川#`ゥ´)「返事しろつってんだろバナナみたいな色しやがって!!」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そうだバナナ食べたかったのよ」
爪'ー`)y‐「後で買おうか」
ξ゚⊿゚)ξ「黄色の濃いのが良い」
川#`ゥ´)「きーけーよー!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「知り合い?」
爪'ー`)y‐「いやぁ僕が手を出すタイプのAPPではない」
川#`ゥ´)「おいどう言う意味だおい! おいこの……イケメンだ……!?」
爪'ー`)y‐「見てツンちゃん! イケメン扱いされたよこの子最高なのでは!?」
ξ゚⊿゚)ξ「珍獣の類いかしら」
川#`ゥ´)「珍獣はそっちだろホームランバーみたいな体型しやがって!!」
ξ゚⊿゚)ξ
-
川#`ゥ´)「お前だよお前! ちっこいの! ホームランバーみたいな貧相なストンとした体型の!!」
ξ゚⊿゚)ξ「貧相な」
川#`ゥ´)「分かったなら返事しろよはんぺん! 豆腐! 白こんにゃく! ういろう! らくがん!」
爪'ー`)y‐「最後だけ違うのでは」
川#`ゥ´)「無視すんなってばー!! ぺったんこでちびっこくてちんちくりんのチビガキ!!」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんすげぇ! あの子的確に地雷踏み抜いてる!!(勝俣声)」
ξ゚⊿゚)ξ「声帯模写うまいなお前…………まあ、何だ……アレであるな」
爪'ー`)y‐「え?」
ξ゚⊿゚)ξ三つヒュバッ
川; ゥ )そ「おごぁっ!?」ガッシ
ξ゚⊿゚)ξづ「先ず名乗れ痴れ者が……」ギリギリ
川;∩ ゥ )')「おごががががが」ジタバタ
爪'ー`)y‐「ツンちゃん落ち着いて! 聞いた事も無いような口調になってる!」
ξ゚⊿゚)ξづ「たわけめが……」ギチギチ
爪'ー`)y‐「ツンちゃんダメ! 殺したら死ぬ素人相手にアイアンクローはダメ!!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「貴様は見ず知らずの人間に対して礼儀を知らぬと見た……
初対面の人間に対しての暴言、よもや許されると思っているのであるか……」ギチギチギチ
川; ゥ )「ぐ、うぎ、ぎぎぎ……」
「ツンちゃんダメ!!」
爪;'ー`)☆ξ#)⊿゚)ξそ
⊂彡 パッチーン
ξ#)⊿゚)ξ
爪;'ー`)y‐「ダメでしょツンちゃん! 街中で殺したら死んじゃう素人相手に!! 罪に問われる!!」
ξ#)⊿゚)ξ
爪;'ー`)y‐「この子が殺しても死なない玄人ならまだしもそんな玄人そうそう居ないんだから!!」
ξ#)⊿゚)ξ
爪;'ー`)y‐「良いかい!? 人前で殺しても許されるのは殺しても死なない玄人だけ!!
僕とパーティ組んでるんだからそう言う罪に問われるような事はしないで!!」
ξ゚⊿゚)ξ「すまなんだ……」
爪'ー`)y‐「分かってくれて嬉しいよ……」
-
川; ゥ )「ぜぇ……ぜぇ……」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたも悪かったわね、APP9くらいの小娘」
川#`ゥ´)「もうちょいあるわぁ!!」
爪'ー`)y‐「妥当なのでは?」
川#`ゥ´)「お前ー!! お前ぇえー!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「で、何なのあんた」
川#`ゥ´)「顔面握り潰そうとしてそれかよ!?」
ξ゚⊿゚)ξ三づ「出会い頭に人様ディスってそれかよ」ドッゴ
川;`ゥ´)「そそそそれはあんたが返事しないからだろうが!!」パラパラ
爪'ー`)y‐「うわー女の子同士の壁ドン初めて見たーレアーい」
川;`ゥ´)「壁に拳突っ込んで穴空けるのが壁ドンか!? 壁ドンかこれ!?」
爪'ー`)y‐「死なないだけ良くない? 僕なら死ぬよ?」
川;`ゥ´)「さっきから思ってたけどお前は何なの!? 何が死なない玄人なの!? わけわかんねーよ!?」
爪'ー`)=3「これだから素人は」
川#`ゥ´)「ギィイイーッ!!!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「とりあえず名乗れば? 殺すわよ? 最近殺し慣れてるから手加減出来ないわよ?」
川;`ゥ´)「とんだ殺人宣言だよ!?」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんってばいっつも激しいから……ポッ……」
川;`ゥ´)「おかしいよお前ら! たぶん頭の辺りが一番おかしいよ!!」
爪'ー`)y‐「そんな頭のおかしな連中に喧嘩を売ったお嬢さんの素性は?」
川;`ゥ´)「ふ、ふん……そこまで聞くなら教えてやるよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「いやそこまででも」
川*`ゥ´)「コホン 我が名は! 最上位魔女の名を持つ! アンソルスラン家の末裔!!」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そう言うの良いです」
爪'ー`)y‐「邪魔くさーいながーい要らなーい」
川#`ゥ´)「ンンンンン!! あたしはヒール・アンソルスラン!! かの有名な魔女の!! 血族の!!」
ξ゚⊿゚)ξ「声がうるさい」
爪'ー`)y‐「エビフライの尻尾」
川#`ゥ´)「雑なツッコミすんなやぁあ!!」
-
爪'ー`)y‐「アンソルスランの名は知ってるけどさー」
ξ゚⊿゚)ξ「有名なの?」
爪'ー`)y‐「魔女の中でも最も秀でた家系、でも確かほぼ途絶えたような」
川*`ゥ´)「ふふん! 愚かなお前達に教えてやるわ! アンソルスラン家は確かに絶えたも同然
しかしそれは純血の話、分家や男の血は未だちゃーんと続いているのさ! 分かったか!」
ξ゚⊿゚)ξ「何か無性にあんたを殴りたい」
爪'ー`)y‐「うーん女の子を殴る趣味は無いから有り金全部置いて消えてほしい」
川#`ゥ´)「真顔と半笑いでなんつう感想抱いてんだよお前らは!!」
ξ゚⊿゚)ξ「殴りたい顔してない?」
爪'ー`)y‐「否定したいがしたら嘘になるなぁ」
川#`ゥ´)「外道二人旅か何かかよ!! か弱い魔女相手にお前らは!!」
爪'ー`)y‐「そんな外道二人連れに喧嘩売っちゃったんだよねぇ?」
ξ゚⊿゚)ξ「わーい普通の人間殺すのひさびさー」
川;`ゥ´)「殺すことを前提に動こうとすんじゃねーよこのクソチビゴリラ女!!」
ξ゚⊿゚)ξ
-
ξ゚⊿゚)ξ「ヒール……だっけ」
川;`ゥ´)「な、何だよ! あたしは謝らないからな!!」
ξ゚⊿゚)ξ「謝らなくて良いわ……だから」
川;`ゥ´)「だから……?」
ξ゚⊿゚)ξ「死ぬか、消えるか、土下座してでも生き延びるか、最後に選ぶ権利を貴様にやろう」
川;`ゥ´)「おいイケメンお前の相方どうなってんだよ!! 世紀末覇者の類いかよ!?」
爪'ー`)y‐「もっとイケメンって呼んで……」ポン
川;`ゥ´)「お前はお前で何でそんなしみじみ噛み締めてんの!? 助ける気は無いの!?」
爪'ー`)y‐「えっ無いよめんどくさい……罪に問われてパーティに影響なきゃどうでも良いよ……」
川;`ゥ´)「とんだゴミクズ野郎だなお前!?」
「人の相棒をゴミクズとか言わない」
ξ゚⊿゚)ξ☆川;#)ゥ )そ
⊂彡 ベチコーン 「たわば!?」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんが僕のために……キュン……」
川;#)ゥ´)「絶対ただの口実だよ!! 殴るための口実だよ!!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「で、大人しく素性を明かしなさい」
川#`ゥ´)「ヒール・アンソルスラン! 17歳! かの偉大なる魔女の血族! その末裔! さっきも言った!」
爪'ー`)y‐「わぁ律儀」
川#`ゥ´)「魔女として名をあげるために! 最近名前の売れてきたお前ら朝飯に果たし合いを!!」
ξ゚⊿゚)ξ「朝飯って言うな」
爪'ー`)y‐「それはどっちでも良いわ」
川*`ゥ´)「ふふん! 見たところ脳筋とモヤシ! 魔法対策はなってないと見た!」
ξ゚⊿゚)ξ「否定はしない」
爪'ー`)y‐「モヤシではない」
川*`ゥ´)「我が魔法を受けよ! ファイアボール!!」
川*`ゥ´)ノシ 三◎ボッ
ξ゚⊿゚)ξ「街中で火を出すな」
⊂彡 パシーン
川;`ゥ´)「素手でどうにかすんなよてめぇ!?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「あのねぇ、朝飯はともかく急に喧嘩売られても困るのよ」
川;`ゥ´)「う、うっさいうっさい! お前らの都合なんて知ったこっちゃないね!」
ξ゚⊿゚)ξ「あ? やんのかてめぇ」
川;`ゥ´)「沸点低すぎない!? 何!? ジエチルエーテルか何か!?」
ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ? 飲める?」
川;`ゥ´)「やっべぇなこいつすぐキレる脳筋ゴリラだと思ったらだいぶアホだ!!」
爪'ー`)y‐「何の反論も出来やしない」
ξ゚⊿゚)ξ「エーテルってMP回復するやつでは?」
爪'ー`)y‐「うーん合ってるけど違うんだよなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「エーテルとは……」
川;`ゥ´)「もう良いよエーテルは!!」
爪'ー`)y‐「ねぇヒールちゃんだっけ」
川;`ゥ´)「な、何だよぉ!!」
爪'ー`)y‐「その勢いのツッコミめっちゃ疲れない? 逐一ボケ拾ってくれてるけど大丈夫?」
川#`ゥ´)「わかってんならボケ倒してんじゃねーよ!!!」
-
川;`ゥ´)「ぜぇ……ぜぇ……」
爪'ー`)y‐「大丈夫? そこまで体力使って突っ込んでくれる人初めてだよ?」
川;`ゥ´)「おま……ふざけんなよ……一時のツッコミからの解放満喫してんだろお前……」
爪'ー`)y‐「よく分かったね褒めてあげるよだからその代金支払って早く消えよ?」
川;`ゥ´)「疲れてるのにボケ倒すな!! 腐れ外道!!」
爪'ー`)y‐「いただきまぁす」
ξ゚⊿゚)ξ「もっと声を濁せ」
爪'ー`)y‐「喉に悪いから」
川;`ゥ´)(もしかしなくても因縁つける相手間違えたのではないか)
爪'ー`)y‐「ほらご覧ツンちゃん、さすがに相手が悪かったと察した顔だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「喧嘩を売る前に相手の力量を見極めないからこうなる」
川;`ゥ´)「お前らマジ……マジお前ら……ぜぇはぁ……」
爪'ー`)y‐「一つ良い事を教えてあげよう」
川;`ゥ´)「ろくな事じゃねーだろ……」
爪'ー`)y‐「僕は分かった上でやってるけどツンちゃんは素」
川;`ゥ´)「ろくな事じゃねぇ!!」
-
川;`ゥ´)「あー!! もう良い! 今日は引き下がってやるよ! 命拾いしたなバーカバーカ!!」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「何度も出てくるフラグかしら」
爪'ー`)y‐「フラグにしか見えないね」
ξ゚⊿゚)ξ「キレのあるツッコミだった」
爪'ー`)y‐「楽しかったね」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあバナナ買いに行くか」
爪'ー`)y‐「バナナが最終目的になってるよツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「さっきの子、名前何だっけ……?」
爪'ー`)y‐「思ったより興味持たなかったんだねツンちゃん……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「で、宿見付けて買い出しに出たじゃん」
爪'ー`)y‐「出たね」
ξ゚⊿゚)ξ「何でカジノに居るの?」
爪'ー`)y‐「ほらツンちゃん飲み物がサービスだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ミルクください」
爪'ー`)y‐「あるかなぁ」
赤と黒と金で彩られた世界は、人が多く賑やかで。
あちらこちらから歓声や悲鳴が上がっていて、熱気に包まれている。
酒場よりも強い熱気、酒気、喧騒。
そして目の前には配られたカード、傍らには自分のカードを眺める相棒。
この騒がしいカジノと言う空間は、初めて足を踏み入れた場所なのに。
なぜ私は、何の説明も受けずにここに座っているのだろうか。
ξ゚⊿゚)ξ「バナナ……」
爪'ー`)y‐「帰りに買ってあげるから」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……ところで、これは何?」
爪'ー`)y‐「トランプ?」
ξ゚⊿゚)ξ「一応それはわかる」
爪'ー`)y‐「んじゃポーカー」
ξ゚⊿゚)ξ「ポーカーってどうやるのこれ」
爪'ー`)y‐「んー……同じマークが3つ以上揃えば良いよ」
ξ゚⊿゚)ξ「分かった」
爪'ー`)y‐(まあ役覚えなさそうだしスリーカードにでもなれば十分かな……あわよくばフォーカードで……)
ξ゚⊿゚)ξ「二枚じゃダメなの?」
爪'ー`)y‐「二枚ずつか三枚必要だなー」
ξ゚⊿゚)ξペラ
爪'ー`)y‐ポイ
ξ゚⊿゚)ξ「全然揃わない」
爪'ー`)y‐「うーん……こっちもイマイチか……これじゃカモられて終わっちゃうな」
-
ξ゚⊿゚)ξ「むう、手札が真っ黒で可愛くない」
爪'ー`)y‐「あはは、やっぱ赤い方が可愛いって認識なんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、揃わないし真っ黒」
爪'ー`)y‐「うんそれスペードのロイヤルストレートフラッシュ」
ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ」
爪'ー`)y‐「知らないよねーそうだよねー僕の手札腐ってるのになー」
ξ゚⊿゚)ξ「赤くない」
爪'ー`)y‐「そんなつまんなそうに言わないで、すごく強いからそれ」
ξ゚⊿゚)ξつ「じゃああげる」
爪'ー`)y‐「そう言うシステムじゃないから」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしろと」
爪'ー`)y‐(ド素人)
-
爪'ー`)y‐「こう言う続きの数字でね……」
_,
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
爪'ー`)y‐「えっ何その「何言ってんだこいつ」って顔……」
_,
ξ゚⊿゚)ξ「数字じゃないでしょ……?」
爪'ー`)y‐「あぁーそっかーKQJをただの記号だと認識してたかーそっかそっかー思ったより馬鹿だったー」
ξ゚⊿゚)ξ「うるせぇ」
爪'ー`)y‐「ほらもう記号教えてあげるから……トランプは知ってても遊んだ事無かったのね……」
ξ゚⊿゚)ξ「娯楽はオセロくらいしか……」
爪'ー`)y‐「ンンー」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあこのJが13?」
爪'ー`)y‐「それは11」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあこっちは?」
爪'ー`)y‐「それはジョーカーd 何だその運」
-
ξ゚⊿゚)ξ「Aは?」
爪'ー`)y‐「一番強い」
ξ゚⊿゚)ξ「それは覚えよう……」
爪'ー`)y‐「強さにしか惹かれてねーなこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「Aと11もどきだけどさ」
爪'ー`)y‐「ジョーカーの事11もどきって言う子はじめて見た」
ξ゚⊿゚)ξ「どっちが強いのこれ」
爪'ー`)y‐「ええとジョーカーはあらゆるカードの代理が出来るから」
_,
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「うんそうだよね分からないよね知ってた知ってた
もう取り敢えずそれ場に出してあがりで」
ξ゚⊿゚)ξノシ「あがりで」ポイ
爪'ー`)y‐「雑だから、出し方が雑だからもうちょっと優雅に」
ξ゚⊿゚)ξ「どうでもいい」
爪'ー`)y‐「ンンン優雅さの欠片もないな!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「で、どうすれば?」
爪'ー`)y‐「いっぱいメダルが貰えます」
ξ゚⊿゚)ξ「いっぱいだわ」
爪'ー`)y‐「いっぱいだね」
ξ゚⊿゚)ξ(でもおもちゃのお金よね……)
爪'ー`)y‐(ツンちゃんこれがどれだけの価値か分かってないんだろうな……)
ξ゚⊿゚)ξ(これだけあればバナナと交換くらいは……?)
爪'ー`)y‐(神妙な顔してるけどアホな事考えてるんだろうなぁ)
ξ゚⊿゚)ξ(あ、明かりが赤っぽいからまたバナナめいてる)ジッ
爪'ー`)y‐(なんか見られてる、すごい見られてる、ツンちゃんが僕に見とれるとかまず無いし)
ξ゚⊿゚)ξ「バナナ食べたい」
爪'ー`)y‐「このタイミングで!?」
-
爪'ー`)y‐「バナナ!? バナナナンデ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや何か、食べたくて」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん僕を見ながらバナナ食べたがってない!?」
ξ゚⊿゚)ξ「…………気のせいよ!」
爪'ー`)y‐「嘘だ! ツンちゃん大人が嘘をつく時の顔をしてる!!」
ξ゚⊿゚)ξ「それよりカードもう良いの?」
爪'ー`)y‐「ハッ いやもうちょっとだけ」
ξ゚⊿゚)ξ(はぐらかせた)
爪'ー`)y‐「まだゲーム残ってるしもうちょっとやろうか、賭け過ぎないように」
ξ゚⊿゚)ξ「んー」
爪'ー`)y‐(やっぱりルール分かってないんだろうな……それにバナナは一体……)
-
ξ゚⊿゚)ξっポイ
爪'ー`)y‐ペラ
ξ゚⊿゚)ξ「揃った」
爪'ー`)y‐「おお」
ξ゚⊿゚)ξ「一番強いのが四枚」
爪'ー`)y‐「凄い揃え方したなぁ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「あともどき」
爪'ー`)y‐「ジョーカーをもどきって言うのやめよう!!」
ξ゚⊿゚)ξ「強そう」
爪'ー`)y‐「とてつもなく強い」
ξ゚⊿゚)ξg「勝った」グッ
爪'ー`)y‐「その代わり出禁」ポン
ξ゚⊿゚)ξ「えっ……勝者が排除されんの……」
爪'ー`)y‐「カジノってそう言うところなんだ……」
-
爪'ー`)y‐「じゃあこのメダルを換金して……」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「換金……出来るの……?」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんカジノがどう言う所か本当に理解してる?」
ξ゚⊿゚)ξ「賭け事をする場所」
爪'ー`)y‐「そうだね、賭け事って言うのはお金を賭ける事を言うんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「でもおもちゃのお金だったし……」
爪'ー`)y‐「これ一枚が銅貨10枚の値段だよ、買ったのこれ」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「すごい……金額になるのでは……?」
爪'ー`)y‐「なりますねぇ……」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「出禁か……」
爪'ー`)y‐「已む無し」
-
ξ゚⊿゚)ξ「凄い金貨の量……」
爪'ー`)y‐「持てる?」
ξ゚⊿゚)ξ「持てるけど邪魔になるわね……」
爪'ー`)y‐「うーん、持ち運びやすいものに変えるか」
ξ゚⊿゚)ξ「んー……」
爪'ー`)y‐「うん? 大勝ちしたのに嬉しくなさそうだね、バナナ食べ放題だよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「……どっちかと言うと、これはあんたの領分でしょ?」
爪'ー`)y‐「ギャンブル? んー、まぁそうだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、もう私は立ち入らないようにする」
爪'ー`)y‐「ふーん?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたは私の領分に立ち入らないし、立ち入っても邪魔なだけでしょ」
爪'ー`)y‐「まぁそうだね」
ξ゚⊿゚)ξ「今回は私はまぐれ勝ちしたけど、次からは多分あんたの邪魔するだけだから」
-
ξ゚⊿゚)ξ「だから、私はもうやらない」
爪'ー`)y‐「……じゃあ次からは僕だけで頑張りますかねー」
ξ゚⊿゚)ξ「その方が良いと思う」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんがそう言うんならそうしましょ」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
爪'ー`)y‐(確かに恐ろしい引きだったけど、これが続けば今後どこにも入れなくなる)
爪'ー`)y‐(ただのビギナーズラックだとしても、ルールも把握してないなら足手まとい)
爪'ー`)y‐(引き際はわきまえてるんだよなぁ、この子……経験と知能が追い付いたら大物になりそ)
爪'ー`)y‐チラッ
ξ゚⊿゚)ξテクテク
爪'ー`)y‐(アホみたいな顔して)
爪'ー`)y‐(一時間かけずに家が建つ金額稼いだ自覚あんのかねぇ)
爪'ー`)y‐(無いだろうな、お金の管理任されてるし着服しよ)
-
ξ゚⊿゚)ξ「これ何と変えるの? 持ち運びしやすいものって?」
爪'ー`)y‐「んー、価値の高い宝石にでもするか、少量で持ち運びしやすく」
ξ゚⊿゚)ξ「石屋あったっけ」
爪'ー`)y‐「宝飾店って言おうよあっちにあるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「銀行に預けるのは?」
爪'ー`)y‐「うーん通帳と印鑑持ち歩くのもねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「邪魔にはならない」
爪'ー`)y‐「どこにでも銀行あるわけじゃないから、都心部だけだよあるの」
ξ゚⊿゚)ξ「それもそうか……まだ不便ね」
爪'ー`)y‐「なかなかねー」
ξ゚⊿゚)ξ「石屋はあれ?」
爪'ー`)y‐「宝飾店」
ξ゚⊿゚)ξ「ほうしょくてん」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん国語ドリルとかする?」
ξ゚⊿゚)ξ「いずれ」
-
爪'ー`)y‐「はいはいたのもー」ガチャ
ξ゚⊿゚)ξ「うわぁ金ぴか」バタン
爪'ー`)y‐「これで買えるの下さいなー」
ξ゚⊿゚)ξ「はいこれ」ドサッ
爪'ー`)y‐「んんーやっぱ荷物にならないようにさぁ……いやいやそれより」
ξ゚⊿゚)ξ(はー……ほうしょくてんってのは金ぴかね……)
爪'ー`)y‐「あ、そうだ僕のナイフ見てよこれ台無しでしょ石取れてるし新しくしたいんだけど」
ξ゚⊿゚)ξっ゙(石の何が良いのかまるでわからん……ピカピカしてるだけよね……)
爪'ー`)y‐「あーだめだめそれじゃ見劣りするよもっとこう分かるでしょプロならそうそう」
ξ゚⊿゚)ξ(石や金属なぞ食ってうまいもんでなし……狐は楽しそうだけど……)
爪'ー`)y‐「はぁぁぁああぁ……良いなぁこれ良いね凄く……あぁぁ……うっとりするね……」
ξ゚⊿゚)ξ(気味が悪いなあいつ……外で待ちたいけど勉強はするべきか……)
爪'ー`)y‐「あ、ナイフはこれで、あとは価値の落ちないやつで、そうそうわかってるじゃーん」
ξ゚⊿゚)ξ(大きな石……金貨……いちじゅう……ゼロがななつ……)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(わっかんねぇやもう……こっちは……金貨100枚……ばっかじゃないの……)
-
ξ゚⊿゚)ξ(あー……目がチカチカする……)
ξ゚⊿゚)ξ(外出よ……お小遣いは持ってるし、何か屋台でも……)ガチャ バタン
ξ゚⊿゚)ξ「あー空気がおいしい」
(*゚ー゚)「あの」
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
(*゚ー゚)「お、おはなは、いかがですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「花?」
(*゚ー゚)「はい、あの、おはな、いかがですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ふむ……ひとつもらうわ」
(*゚ー゚)「えっ」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
(;*゚ー゚)「あ、ああ、ありがとうございます!」
ξ゚⊿゚)ξ
(;*゚ー゚)
ξ゚⊿゚)ξ?
-
(;*゚ー゚)「あの、ぅ?」
ξ゚⊿゚)ξ「はい?」
(;*゚ー゚)「わたし、あの……おしごと、はじめてなのですが……」
ξ゚⊿゚)ξ「そう、大変ね」
(;*゚ー゚)
ξ゚⊿゚)ξ?
私は花売りから受け取った花を指先でいじってから、鎧の胸元に差し込んだ。
しかし目の前には、まごまごしている幼い娘。
戸惑っているようだが、何にかがよくわからない。
きょろきょろと辺りを見回しては、こちらをちらちらと見上げて。
代金でも足りなかったのだろうか、しかし花は意外と高いな、夕飯分くらいしたぞ。
まあ店内では狐がたくさんお金を持ってるし、夕飯くらいはどうにかなるか。
それより、何かを待つように困惑している花売り娘はどうすれば良いのだろう。
-
(;*゚ー゚)「あ、のぅ……」
ξ゚⊿゚)ξ「あ」
(;*゚ー゚)!
ξ゚⊿゚)ξ「チップとかが必要なやつかしら」
(;*゚ー゚)「え」
ξ゚⊿゚)ξ「悪いわね、こう言った事には疎くて」
(;*゚ー゚)「いえあの、そんな、」
ξ゚⊿゚)ξ「小銭が無いわね、金貨で良いかしら」
(;*゚ー゚)「いただけませんよ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「良いから、はい」
爪'ー`)y‐「ちょっとツンちゃーん!? 勝手に出ないでよー虚空に向かって五分くらい話しかけたでしょ!」ガチャ
ξ゚⊿゚)ξ「あ、狐」
爪'ー`)y‐「ん? ……おや、小さな花売り娘さんだね」
-
(;*゚ー゚)「あ、あの、あのあの……」
爪'ー`)y‐「あー……初仕事で、怖くなって女の人に営業しちゃったのかな?」
(;*゚ー゚)「は、はひぃ……」
爪'ー`)y‐「うーんごめんね、小さな花を買うつもりは無いから」
ξ゚⊿゚)ξ「買ったわよ」
爪'ー`)y‐「何してんの君」
ξ゚⊿゚)ξ「何よ、花くらい良いじゃない」
爪'ー`)y‐「これの本来の意味知ってる?」
ξ゚⊿゚)ξ?
爪'ー`)y‐「でーすよねー」
(;*゚ー゚)「あのぅ……」
爪'ー`)y‐「あー……どうすっかな……」
-
爪'ー`)y‐「まさか買われると思わなかったんだろうけど、このお姉さん意味分かってないから」
(;*゚ー゚)
爪'ー`)y‐「だからそのまま行きなさい、お花は確かに受け取ったみたいだし」
(;*゚ー゚)「いいんですか……?」
爪'ー`)y‐「あー良いの良いの、僕の好みは手玉に取ってくれそうなFカップのセクシーお姉さんだから」
(;*゚ー゚)「それでは……あの……しつれいします」
爪'ー`)y‐「はいはい気を付けてねー」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「結局なんだったの?」
爪'ー`)y‐「もう知らないままで良いよ君は……」
_,
ξ゚⊿゚)ξ??
-
爪'ー`)y‐「さて、これがあの大金で買った宝石です」ペカー
ξ゚⊿゚)ξ「へー」
爪'ー`)y‐「あー知ってたけど雑! 反応が雑!! あーあ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「何で怒るのよ……それより買い物終わったんでしょ?」
爪'ー`)y‐「終わりましたよ」
ξ゚⊿゚)ξ「何で機嫌悪くなってんのめんどくさい……」
爪'ー`)y‐「はいこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「何これ石ころ?」
爪#'ー`)づ「ほ・う・せ・き・で・す!!!」
づ)⊿゚)ξ「わかったわかった私が悪かった宝石宝石」
爪'ー`)y‐「これは君が持って宿まで戻って、無くさないでね」
ξ゚⊿゚)ξ「あれ、あんたは? 宿に戻らないの?」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「じゃあ僕酒場まで走るから」
ξ゚⊿゚)ξ「おい何だ今の間は」
-
爪'ー`)y‐「少しは使って良いけど無駄遣いしないようにねー!」
ξ゚⊿゚)ξ「おいおま、おい! ……何だあいつ……」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「これが価値のあるお宝とはねぇ……色のついた透明な石だろうに……」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ無くしたら相当怒られるし、雑には扱わないけど……」ゴソゴソ
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「バナナ買おう……あと雨具……」
ξ゚⊿゚)ξ「急に一人行動か……意外と一緒に行動する事多いからな……」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、バナナください」
ξ゚⊿゚)ξ「小銭小銭……銀貨で」
ξ゚〜゚)ξモグモグ
ξ゚〜゚)ξ(やや味気ない……空が曇天だからかな……)
-
その後、一人で買い物を済ませて、宿に荷物を置き、道具の整備や準備をして、一人で夕飯を迎えた。
夕飯は鶏の脚が丸ごと煮込まれたスープと、柔らかな金色のパン。
黄金色にかりっと焼けたパンと、トマト味のスープは相性も良く、鶏肉は簡単に骨から外れるほど柔らかい。
一緒に煮込まれている豆もほくほくで、お腹が暖かくなる美味しさだった。
が、やはり一人では少々味気ないもので。
ξ゚⊿゚)ξ(んー……一人が苦手になってるな)
ξ゚⊿゚)ξ(意外に楽しんでるな、二人旅)
ξ゚⊿゚)ξ(まずいなーこれは……一年契約で切った方が良いか……?)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(一人が厳しくなると、冒険者として致命的だ)
ξ゚⊿゚)ξ(参ったな……)
-
とっぷり闇に沈んだ街を窓から眺めても、胸にもやつく焦燥感は拭えない。
今までパーティを組んで旅をした事なんて無かったもので、慣れない日々に戸惑っていたのに。
いつのまにか、二人旅が当然のようになってしまっていて。
このままでは、契約が切れた時に困る。
孤独を嫌っていては、冒険者なんてやっていられない。
戦士としても弱さに繋がる。
これでは駄目だ、距離を持つようにしなければ。
ああでも、困ったな。
どうすれば良い、旅に出てすぐはどうだった。
はじめはホームシックで震えていた。
師匠や姉様を恋しく思っていた。
いつから平気になったっけ。
いつから一人が怖くなくなったっけ。
いつから私は、一人だったんだっけ。
-
一人だったのは、はじめからだ。
気味の悪い子供として、石を投げられていたあの時からだ。
お母さんに、森に置き去りにされたあの時もだ。
お腹が空いて、お腹が空いて、眼に映るものみんなが食べ物に見えたあの時も。
大きな熊に飛びかかって、返り討ちにあったあの時も。
倒れていた私を、孤児院の先生が助けてくれたあの時から、私は一人じゃなくなったんだ。
孤児院のみんなと、優しい先生。
お母さんみたいだった、みんなの先生。
それから私は、師匠の元に弟子入りして。
やっぱり、一人じゃなくて、師匠や姉様が側に居て。
ああそっか。
ひとりぼっちは、今も私の中でくすぶり続けているのか。
だから私は、一人が怖いんだ。
-
孤独は魂を貪る毒。
人恋しさに胸が裂けそうで。
それでもそれを飲み込む事で、私は強くなれると信じている。
私はもっと強くなりたい。
もっともっと、強くなりたい。
誰かに何かを奪われないように。
大切なものをこの手で守れるように。
強くなりたい、強くなりたい。
誰よりも何よりも強くなって、私は、弱い弱い幼い私の心を守るんだ。
私を捨てたお母さんの事を、憎んではいない。
誰かに憎んだり、恨んだり、心を燃やして茨を巻き付けるような事はしない。
ただ、ただ、私は寂しかったから。
ただ、一人は嫌だったから。
-
泣いていたあの頃、先生は頭を撫でてくれた。
少し細くて、やわらかな手だった。
先生は途中で居なくなってしまったけれど、ちゃんとお別れもしたし、笑顔でさよならをした。
だから先生は、今もどこかで幸せで居てくれると嬉しい。
それにすぐ、私は師匠の元に行った。
だから、先生と別れても寂しくはなかった。
師匠との日々は、修行の毎日。
寂しく思う暇もないくらい、毎日が忙しくて。
孤児院での日々が、遠く、思い出す暇も無くて。
そのまま成長して、そのまま旅に出て、再び孤独と向き合う私は、まだまだ幼い小娘のまま。
どうやって克服するのか、いまだに分からないままで。
今、頬を流れる涙のとめ方を、もう一度だれか教えてほしい。
ああ、全く。
孤独は、人を殺す。
子守唄が、聴きたいなあ。
-
金の月と銀の星
(何か聴こえる)
さざめく風は夜明けの空
(何だっけ、この歌)
金の冠、銀の声
(ああ、そっか、これは)
ざわざわなみうつ草の色
(私が、初めて聞いた)
花の冠、夜の腕
(あの狐の歌)
幼い娘と王たる男
(銅貨を一枚、投げて寄越さなきゃ)
-
まぶたを持ち上げると、朝日に包まれた室内。
聴こえるのは目を覚ました街の賑わいと、朝の鳥の声だけ。
二人部屋の筈なのに、部屋に居るのは私一人。
反対側のベッドは、使われた形跡は無かった。
ああ、帰って来なかったのか、あいつ。
まあ、別に構いやしないんだけど。
あいつの朝帰りは、今に始まった事じゃない。
ただ。
夕飯を一人で食べたのが、久々だっただけで。
ξ゚⊿゚)ξ「……シャワー浴びて、着替えよ……」
熱いお湯を浴びて、朝飯でも食べればきっと気も晴れる。
朝ごはん、何だろう。
トーストかな、パンケーキかな、目玉焼きはつくのかな。
ソーセージか、ベーコンか、ほらお腹が空いてきた、生きる気力に繋がっていく。
-
シャワーを浴びて、着替えを済ませて、髪を乾かしながら外をもう一度見る。
朝靄に煙る町並みは、眩しいほどに光を吸い込んでいて。
ああさっきは気付かなかったけど、良い景色だ。
それに一階の食堂から良い匂いが漂ってくる。
卵と燻製肉を焼く匂い。
パンの焼ける匂いも、昨夜のトマトスープの匂いもする。
それに、香水と白粉と酒の臭い。
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「たーっだーいまーっ!」バーン
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「はー楽しかったー! たっだいまー! いやー酒場のお姉ちゃん達がアフター誘ってき」
ξ゚⊿゚)ξ「くっさ」
爪'ー`)y‐「えっ」
-
爪'ー`)y‐「……あの、ただいま……?」
ξ゚⊿゚)ξ「くさい」
爪'ー`)y‐「死ねでも殺すでも黙れでもなくその一言が妙に刺さるんですが……」
ξ゚⊿゚)ξ「化粧臭い、すごく臭い、臭い」
爪'ー`)y‐「傷付くからお風呂入ります……」
ξ゚⊿゚)ξ「服も臭い」
爪'ー`)y‐「クリーニング出します……」
ξ゚⊿゚)ξ「臭い」
爪'ー`)y‐「もう許して……」
ξ゚⊿゚)ξ「許すも何もあんたが今現在臭いのが現実で」
爪'ー`)y‐「悲しくなってきた……」
ξ゚⊿゚)ξ「換気しよ」
爪'ー`)y‐「そこまで……」
-
爪'ー`)y‐「シャワー浴びて着替えました……」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「……ツンちゃんもしかして怒ってる?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「僕が娼婦買って一晩宿を空けた事とか怒ってる……?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「あのツンちゃん……あの……無言の真顔はちょっと怖いなお兄さん……」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「すみませんでした」
ξ゚⊿゚)ξ「何が」
爪'ー`)y‐「えっ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「何が申し訳なくて謝ってんの?」
爪'ー`)y‐「それはあの……何も伝えず一晩空けたから……?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐(あっ違うなこれやべーな、何だこの空気)
ξ゚⊿゚)ξ「おなかすいた」
爪'ー`)y‐「あ、僕は良いや……二日酔い入りかけだし胃が」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「あっそ」
爪'ー`)y‐(あっもしかして今の地雷かな? 良くないタイプの地雷かな?)
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ私は食堂に行くから」
爪'ー`)y‐「あ、はい……」
ξ゚⊿゚)ξ「別にあんたがどこで何しても良いけどさ」
爪'ー`)y‐「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「化粧の臭い、嫌いなのよ私」
爪'ー`)y‐「アッハイ」
-
ばたん。
こつこつこつ。
爪'ー`)y‐
爪'ー`)y‐「ツンちゃんめっちゃ怒ってない……?」
爪'ー`)y‐「えー……別にこれが初めてでも無いのになぁ……何であんな怒ってんだろ……」
爪'ー`)y‐「うーん……いつもと違う事、いつもと違う事……」
爪'ー`)y‐
爪'ー`)y‐(あ、いつもは晩飯食ってから出てたな)
爪'ー`)y‐(あっ、昨日は歌も歌わなかった)
爪'ー`)y‐(ノルマ一切達成してない)
爪'ー`)y‐
三爪'ー`)y‐「ツンちゃーん!! やっぱ朝ごはん食べまーす!! 待ってー!!!」ドタドタ
-
爪'ー`)y‐「ごめんってばー悪かったってー、ご飯に執着してるからその辺気にして当然だよねー」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「あーんもー許してよー次からはちゃんとご飯は一緒に食べるってばー」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「ねーねー許してよーパーティなんだからそう言う礼儀やルールあっても良いの忘れてたんだよー」
ξ゚⊿゚)ξ(なんか違うんだけど平謝りしてくるのが面白い)
爪'ー`)y‐(ツンちゃんルールとかそう言うの曲げないタイプだもんなーしくったー)
ξ゚⊿゚)ξ(面白いから良いや、許すとか許さないとかじゃないけど)
爪'ー`)y‐(何となーくいつもそうだったからルールになっちゃったりするよなー、はー次から気を付けよ)
ξ゚⊿゚)ξ「狐」
爪'ー`)y‐「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「屋台でなにか食べたい」
爪'ー`)y‐「喜んで」
-
ξ゚〜゚)ξモグモグ
爪'ー`)y‐「串焼きは美味しいかい」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、おいしい」
爪'ー`)y‐(食べ物で簡単に機嫌が治った……)
ξ゚⊿゚)ξ「そうだ」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「この花だけど、枯れる様子が無いのよね」
爪'ー`)y‐「あー昨日の? 造花ってわけじゃないし……聖水ででも育てたのかな」
ξ゚⊿゚)ξ「聖水?」
爪'ー`)y‐「うん、聖水で育てると植物が枯れにくくなったりするんだよ、世界樹って分かる?」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、何かどっかにあるとか言う聖なるでかい木」
爪'ー`)y‐「情緒もくそも無いなそれ……世界樹はその聖水湧く泉の中に生えてるんだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「へぇ、だから枯れないと」
爪'ー`)y‐「そうそう」
ξ゚⊿゚)ξ「見た事あるの?」
爪'ー`)y‐「無いんだよねぇ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「しかし、聖水で育てるとは……大事に育てたのね」
爪'ー`)y‐(言えない……使い回せるように長持ちさせるためだとは言えない……)
ξ゚⊿゚)ξ「聖水なんて安くないのに、花にやるなんて」
爪'ー`)y‐(言えない……教会が裏で噛んでる事もあるからただで手に入る事が多いとは言えない……)
ξ゚⊿゚)ξ「……花を売って、生活になるのかしら」
爪'ー`)y‐「その娘によるね」
ξ゚⊿゚)ξ「ふぅん…………あれ、何かしら」
爪'ー`)y‐「んー? 人だかりだねぇ、何かあったのかな」
ξ゚⊿゚)ξ「覗く?」
爪'ー`)y‐「覗く覗く」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたこう言うの好きそうだものね」
爪'ー`)y‐「野次馬だぁいすきっ☆」
ξ゚⊿゚)ξ「うっざ」
-
路地の入り口の人だかり。
口々にひそひそと、むごいだの何だのと言う言葉が聞こえる。
一体何があるのか、人の間を縫って、身を押し込んで路地の中を覗いた。
薄汚れた狭い道の入り口。
割れた酒瓶やゴミなんかが落ちている、よくある路地の入り口。
そこに広がる血溜まりと、折り重なるようにして倒れる、二つの死体。
ひとつの死体は、女のもの。
顔は見えないが、派手な服と巻いた髪。
もうひとつの死体を守るように、俯せに倒れていて。
もうひとつの死体は小さくて、側には割れた花かごと花が散乱している。
その小さな体を包んでいた衣服は乱暴に破られていて、幼い顔や肢体には、いくつもの殴られた跡。
こちらを見る、光の無い灰色の目。
その小さな手に、一枚の金貨が握られているのが見えた。
銜えていた串焼きをその場に落とした私と、私と死体を見比べる相棒。
何も声をかけずに、私の手を引いて、その場を離れた。
-
死体は見慣れている。
子供の死体だって見てきた。
冒険者なんて綺麗な仕事だけじゃない。
誰かの墓穴を掘るような仕事だってしてきたのに。
胸の奥が握り潰されたみたいに、息が詰まって、苦しい。
爪'ー`)y‐「……ツンちゃん、行こうよ」
ξ゚⊿゚)ξ「…………あんなもの」
爪'ー`)y‐「え?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんなもの、渡せば良かったのに」
爪'ー`)y‐「……違うよツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「金貨は、あんなものじゃない、人の命を奪えるものなんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……ばかみたい」
爪'ー`)y‐「そんな馬鹿みたいなものに左右されて生きてるんだよ、僕らは」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……教会って、こっち?」
爪'ー`)y‐「ここの教会は駄目だよ、金貨で人を売り買いするから」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「だから、こっちだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……こっちは」
爪'ー`)y‐「墓地、いずれあの子達が入るのは、向こうの無縁塚」
ξ゚⊿゚)ξ「……墓守は、信用できるのかしら」
爪'ー`)y‐「ここの墓守は、多分ね」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、私のお小遣いを出して」
爪'ー`)y‐「何に使うの?」
ξ゚⊿゚)ξ「金貨一枚分、花を手向けてもらうのよ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん、それは」
ξ゚⊿゚)ξ「私は」
爪'ー`)y‐「……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……私は、人を殺した事もある、汚い手の人間よ」
爪'ー`)y‐「戦士で、冒険者なんだから、人くらい殺す事もあるさ」
ξ゚⊿゚)ξ「相手が罪人であろうと、盗賊であろうと、私は人を殺して報酬を得る、浅ましい人間よ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、たとえ人を殺して金を得ているとしても、心まで貧しくはなりたくないの」
爪'ー`)y‐「…………花売り娘に花を手向けるのは、皮肉だね」
ξ゚⊿゚)ξ「私は頭が悪いから、よく分からないわ」
爪'ー`)y‐「これは、無駄遣いだよ、とても」
ξ゚⊿゚)ξ「……分からないわよ、私には、馬鹿だもの」
爪'ー`)y‐「…………馬鹿で良いよ、君は」
人が眠るには、あまりにも質素な土くれ。
金貨を一枚握りしめて、いずれ花を売る娘達が眠る寝床を睨み付ける。
ぽんぽんと頭を撫でる相棒の手が、こぼれそうになる涙を止めてくれていた。
おわり。
-
ありがとうございました、本日はここまで。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
-
今週も激しく乙
-
エロい
-
泣いた
笑った
泣いた
-
乙
フォックスCoCみたいなAPP計算してんなーギャグキャラみたいなの登場で今回明るそうだなと思ったらつらかった
ツンちゃん……
-
逆に考えるんだ、幼くして操を奪われるような事だけは避けられたんだと
南無三...
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声。
刃を振るい、歌声を響かせ、路銀を稼いで進むのは二人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
【道のようです】
【第七話 たったごまいのきんかで。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
かつかつ、こつこつ。
整地された石畳の街道を行く。
見晴らしが良く、魔物や盗賊の潜む隙すら無い平坦な道。
それ故に、先の方にある廃村の姿もよく見えた。
いや、廃村にしては妙に人影がある。
しかし間違いなく廃村にはなったと聞いた。
利権争いによって滅んだと聞いたのは、私が冒険者を始めてすぐ。
この三年の間に、新しい村でも出来たのだろうか。
特に会話を交わすでもなく、辿り着いた村の跡。
村を囲っていたらしい囲いだけが残っていて、建物は一つもない。
いや一つある、そして建物では無いがテントはいっぱいある。
商人達が馬車を停め、テントを組み、色んな物を売っている。
その光景は非常に活気があって、ここが廃村だとは思えないほど。
-
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「おー賑わってる賑わってる」
ξ゚⊿゚)ξ「廃村では……?」
爪'ー`)y‐「廃村だよ」
ξ゚⊿゚)ξ?
爪'ー`)y‐「ここは街道が交差してるでしょ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね」
爪'ー`)y‐「だから本来は大きな街があっても良いんだけどね、まあ立地が良いだけに色々とね」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ色々とあるんでしょうけど」
爪'ー`)y‐「んで領土問題も色々ね」
ξ゚⊿゚)ξ「あったのねそんな問題」
爪'ー`)y‐「面倒だからねこう言う話題は」
-
爪'ー`)y‐「だからまあ何やかんやでここは小さな小さな村、と言うか先住民の集落があっただけで」
ξ゚⊿゚)ξ「ほむ」
爪'ー`)y‐「けど街道が出来たお陰でドロドロの血みどろの争いがあって廃村に」
ξ゚⊿゚)ξ「それで?」
爪'ー`)y‐「人の目が無くなり治安が悪化」
ξ゚⊿゚)ξ「わあ」
爪'ー`)y‐「でも砦や関所を作るのも難しく」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほど」
爪'ー`)y‐「そして監視塔としてあの宿屋が建ちました」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほ な んん?」
爪'ー`)y‐「なのでこの土地は国の管理下で、あの宿屋もそうなります」
ξ゚⊿゚)ξ「なぜ宿……?」
爪'ー`)y‐「不便だからだろうねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「んん……んんん……?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「宿屋が……危ないのでは……?」
爪'ー`)y‐「国から派遣された元冒険者が主人なんだよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「冒険者だからって……」
爪'ー`)y‐「なんとオリハルコンクラスの夫婦」
ξ゚⊿゚)ξ「勝てる気がしないわ……」
爪'ー`)y‐「そんでこのバザールですが」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
爪'ー`)y‐「特定の期間に勝手に催されます」
ξ゚⊿゚)ξ「商人って奴は」
爪'ー`)y‐「商人の悪行はぱっと見で分からないから摘発しにくいんだよね、だからほぼ無法地帯」
ξ゚⊿゚)ξ「監視塔とは」
爪'ー`)y‐「盗賊とかそう言うの用なんだよなぁ、でも証拠持ってつき出したら対応してくれるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「交番かよ……」
-
爪'ー`)y‐「ま、こんなところで買い物をするなら騙される方が悪いってやつ」
ξ゚⊿゚)ξ「それはお前が私を騙した事を覚えていながらの発言か?」
爪'ー`)y‐「よーし適当に見て回ろっかー!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ノルマ達成する?」
爪'ー`)y‐「今回の1乙にはまだぬるくない? 大丈夫?」
ξ゚⊿゚)ξ「最近あんまり死んでないしそろそろまとめて死ぬ……?」
爪'ー`)y‐「僕の命って果てしなく軽く安いね……?」
ξ゚⊿゚)ξ「だってこないだ死ななかったわよね」
爪'ー`)y‐「悪かったってば」
ξ゚⊿゚)ξ「飯も食わずに娼婦は買うし……」
爪'ー`)y‐「悪かったってば……」
ξ゚⊿゚)ξ「別にどうでも良いけどねあんたの事は……」
爪'ー`)y‐「それはそれでちょっと寂しい……」
-
爪'ー`)y‐「……ツンちゃんさ」
ξ゚⊿゚)ξ「んー」
爪'ー`)y‐「こないだからちょっと落ち込んでるよね」
ξ゚⊿゚)ξ「久々に子供の死体を見たからでしょうね」
爪'ー`)y‐「んーまぁ、それもあるんだろうけどさ」
ξ゚⊿゚)ξ「だったら何よ、なにか理由があるとでも」
爪'ー`)y‐「なんか僕の事突き放してなーい?」
ξ゚⊿゚)ξ「元からでしょ?」
爪'ー`)y‐「そーだけどさーぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「狐」
爪'ー`)y‐「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「私の中身に口出ししないで」
爪'ー`)y‐「はぁい……」
-
ξ゚⊿゚)ξ(あんまり心を許し過ぎるのも良くない)
爪'ー`)y‐(ぜーったい何かあったよなー)
ξ゚⊿゚)ξ(また、一人に慣れておかないと)
爪'ー`)y‐(怒らせるような事ー……はしたけど、それだけじゃ無さそう)
ξ゚⊿゚)ξ(かと言って、ぎくしゃくして一年旅するのもなぁ……)
爪'ー`)y‐(怒ってると言うか、距離を置こうとしてる感じかなぁ……)
ξ゚⊿゚)ξ(何か、やだな)
爪'ー`)y‐(まさか恋……?)
ξ゚⊿゚)ξチラッ
爪'ー`)y‐チラッ
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ(うー何かやっぱりやだなこの感じ……)
爪'ー`)y‐(いやーねぇな、間違いなくねーわ僕見ながらバナナ食いたがるくらいだし)
-
わいわい、がやがや、ざわざわ。
今まで立ち寄ってきた場所で、一番の賑わいかも知れないバザール。
商人同士が商談をしたり、冒険者や旅人を相手に商売をしたり。
勝手に開かれる無法地帯にしては、あまりにも賑やかで、喧嘩の一つも起きやしない。
ああこの店は食べ物を売っている。
大きな葉に包まれて蒸し焼きにされているのは、肉と穀類だろうか。
こっちの店には服が並んでいる。
花をあしらったピンク色の花びらみたいなワンピース、可愛いがすごいいらない。
武器や防具、馬車に家畜、異国の変なものまで売られている。
何て賑やかで、騒がしくて、熱気のある空間。
商人達の声がそこかしこから響いていて、どれが安いだのお買い得だの。
やれ活きが良い、やれ肉付きが良い、やれ物覚えの良い。
ξ゚⊿゚)ξ「……うん?」
爪'ー`)y‐「んー?」
ξ゚⊿゚)ξ「売り文句が、何か変なとこがあって……」
爪'ー`)y‐「変? ……あー、アレじゃない?」
-
狐が指差したのは、格子のついた頑丈な馬車を背に立つ商人。
その前には、子供が数人並んでいた。
ボロボロの服、足枷と首輪、汚れた髪や肌。
健康状態が良さそうには見えない人々が、死を望む様な眼差しで立っている。
客の姿はまだ無く、売れた様子は無さそうだが。
ξ゚⊿゚)ξ「奴隷商、か……」
爪'ー`)y‐「こう言うバザールにもたまに来るんだよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「……今時、表立って奴隷を売るのはアホなのでは」
爪'ー`)y‐「ああ言うの嫌い?」
ξ゚⊿゚)ξ「しょうがない面はあると思う、けど嫌い」
爪'ー`)y‐「んじゃ後で宿屋に通報しようね」
ξ゚⊿゚)ξ「摘発出来るの?」
爪'ー`)y‐「奴隷の売買は勝手にやっちゃダーメ」
ξ゚⊿゚)ξ「ふぅん……」
-
奴隷はどこにでも居る。
裕福な家庭ならば一人くらいは飼われているものだ。
私は個人的に好きでは無いが、奴隷として飼われる事で幸せになる人も居ると言う。
それならば、悪だと断ずる事も出来ないし、しようのない事だと思うしかない。
ふと並ぶ奴隷達を眺めると、一人だけ珍しい容姿の子供が居た。
この辺りでは珍しい、褐色の肌。
もさもさと伸びるがままの、癖のある黒髪。
長い前髪の隙間からわずかに覗く、伏し目がちに地面を睨み付ける目は淡い緑。
そして、頭の両脇には立派な巻き角。
髪と同化して分かりにくいが、尻尾も生えているらしい。
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「それにしても子供ばっかりだねぇ、趣味わるーぅ」
ξ゚⊿゚)ξ「あの子……魔族?」
爪'ー`)y‐「え? あー本当だ……うっかり捕まったのかねぇ、可哀想に」
-
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2310.png
大きな、立派な巻き角。
私は、あれに良く似たものを見た事がある。
手首にはめた銀の輪を見下ろしてから、再び魔族の子供を見る。
魔族、魔族か。
まだいさかいも多いが、私は魔族を嫌っていない。
師匠の娘である姉様は、静かな目をした白い魔族で、幼い頃からそばにいた。
そんな姉様の静かな眼差しを思い出した、緑の瞳。
この世界にはまだ魔族は少し珍しい。
売れると思って捕まえたのだろうが。
前に狐も言っていた。
売れる物は、何でも売る。
それが商人だ。
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ」
爪'ー`)y‐「うん?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「私のお小遣い、残ってるわよね」
爪'ー`)y‐「え、」
ξ゚⊿゚)ξ「交渉、頼めるかしら」
爪'ー`)y‐「……いやいやいやいや買うの!? 奴隷買うの!? 買ってどうすんの!?」
ξ゚⊿゚)ξ「家に届ける」
爪'ー`)y‐「う、うん! うん!?」
ξ゚⊿゚)ξ「あの子、黒いの」
爪'ー`)y‐「え? あぁ魔族の子?」
ξ゚⊿゚)ξ「あの角、私知ってるの」
爪'ー`)y‐「…………あー……あの時の……」
ξ゚⊿゚)ξ「それに、お世話になった人に似てるの」
爪'ー`)y‐「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「……お願い、買わせて」
-
爪'ー`)y‐「奴隷を買うって事、分かってる? 命の売買に手を出すんだよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「分かってる」
爪'ー`)y‐「……無責任だなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「分かってるわ、傲慢だし無責任だって、……でも買いたいの」
爪'ー`)y‐「はー……あーあーあーもー分かったよ分かったーぁ! もーぉ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさい」
ああ、私は何をしようとしているんだろう。
馬鹿な事をしようとしているのだろう。
命を売り買いするなんて、私の手はどんどん汚れて行くようで。
ξ゚⊿゚)ξ「でも、言ったじゃない」
爪'ー`)y‐「え?」
ξ゚⊿゚)ξ「私はバカで良いって」
爪'ー`)y‐「……それもそうか!」
-
爪'ー`)y‐「じゃ、僕が適当に煽るから君は合わせられるだけ合わせて」
ξ゚⊿゚)ξ「わかった」
爪'ー`)y‐「わかってない顔で……はい声かけて」
,,ξ゚⊿゚)ξ「良いかしら」
( ^Д^)「あん? 何だお嬢ちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「相手を良く見て口をきいてはどうかしら」
( ^Д^)「ん? ヒッ金ランク……な、なんでしょうか……!?」
ξ゚⊿゚)ξ「その子の値段は?」
(;^Д^)「えっ」
ξ゚⊿゚)ξ「言い値は」
(;^Д^)「いや、あの……でもぉ……金ランクの方がこんな奴隷を……?」
ξ゚⊿゚)ξ「……言い値は、と訪ねた筈だけど……人をイラつかせたいわけ?」
(;^Д^)「ヒィ 金貨五枚です!」
ξ゚⊿゚)ξ「へぇ、金貨五枚(相場がわからねえ)」
-
(;^Д^)「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「……へぇ……?(狐ちょっと助けて)」
(;^Д^)「金貨二枚です! 二枚です!!」
ξ゚⊿゚)ξ「狐、金貨二枚だそうよ(人の命を軽くしたわこいつ)」
,,爪'ー`)y‐「ふーん……よく最初にツンちゃん相手に五枚とか吹っ掛けたよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ(いや安いくらいなのでは)
(;^Д^)「それはあの、あの」
爪'ー`)y‐「ねぇツンちゃーん、ここに、奴隷商なんて居たっけぇ?」
ξ゚⊿゚)ξ「…………さあ……どうだったかしら(よくわからないから適当に合わせよう……)」
爪'ー`)y‐「もしかしたら、最初から居なかったのかもねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、その方が私も手っ取り早くて助かるわ(どう言う意味なんだろう)」
爪'ー`)y‐「……最近、人を切ってないよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、獣ばかりだと歯応えがないと思ってたところよん(あんた切った事あったっけ)」
(; Д )
-
爪'ー`)y‐「…………で、幾らだっけぇ?」
(; Д )「あ、え、銀貨、五枚で」
爪'ー`)y‐「え?」
(; Д )「いえ、あ、銅貨、」
ξ゚⊿゚)ξ゙ プチ
爪'ー`)y‐(あ、やっべ)
ξ゚⊿゚)ξ「貴様な」
(; Д )「ひ、はひ」
ξ゚⊿゚)ξ「人の命に金額を決め、更にはその値を底まで落とすか」
(; Д )「だだだってあの」
ξ゚⊿゚)ξ「ならば問う、貴様の命は金貨で買えるか? 値切れば銀貨で買えるか?」
(; Д )「そ、それはその、こいつらは奴隷で……」
ξ#゚⊿゚)ξ「黙れクズがッ!!」
(; Д )「ヒッ!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「喩え世間が許そうが、我が身に受けしミュスクルの名は許さず!!
貴様の首を柱に吊るしてでも、我がたぎる怒り晴らさせてもらうぞ!!」
爪'ー`)y‐(うわーこえーこの手のガチギレ初めて見たかもー)
-
(;^Д^)「差し上げます!! 差し上げますから!!」
爪'ー`)y‐「逆効果かなー」
(;^Д^)「えぇえ!?」
ξ#゚⊿゚)ξ「貴様の首がその身と別れる前に訊ねよう」
(;^Д^)「命ばかりは、命ばかりはお助けを!!」
爪'ー`)y‐「ちゃんと答えないと早死にするよ?」
(;^Д^)「何でもお聞きください!!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「その魔族の娘、どこで仕入れた」
(;^Д^)っζ(゚- ζ,,「ま、魔族の……こいつですか?」ズルル
爪'ー`)y‐「雑に扱っても早死にするよー」
ξ#゚⊿゚)ξ「どこで仕入れた」
(;^Д^)「どこでかは分かりません!! 仲介から買ったので!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「チッ……その手を離せ」
(∩;^Д^)')「はい!!」
-
爪'ー`)y‐「金貨五枚だっけぇ」
(;^Д^)「へ?」
爪'ー`)y‐「ほら、この金貨五枚」
(;^Д^)「え、あ、は、払って……?」
爪'ー`)y‐「ほらお嬢ちゃん、手開いてー」
ζ(゚- ζ
⊂ζ(゚- ζ?
爪'ー`)y‐「これが、これから死ぬ商人が決めた君の値段だよ、しっかり握っておくようにね」
ζ(゚- ζ゙?
(;^Д^)「えっえっ そそそんな奴隷、ど、どうなさるんで……?」
ξ゚⊿゚)ξ「決まってるでしょ」
斧を掲げ、奴隷を繋ぐ鎖を断ち切る。
そして目を白黒させる幼い奴隷の手を掴み、立たせてからその小さな肩に手を置いた。
ξ゚⊿゚)ξ「持って帰るだけよ」
-
(;^Д^)「あの、俺は」
爪'ー`)y‐「裁くのは僕らじゃないよねぇツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「本気で殺そうと思ったけど、宿屋から人が出てきたんじゃしょうがないわ」
(;^Д^)「え゙」
,,(,,゚Д゚)「はいそこ、何騒いでんだー」ノッシノッシ
ξ゚⊿゚)ξσ「無許可の奴隷商です」
爪'ー`)σ「こいつ無許可で奴隷売ろうとしました」
(;^Д^)「あああああああ!!!」
(,,゚Д゚)「そのちっこいのは?」
ξ゚⊿゚)ξ「保護しました」
爪'ー`)y‐「ひどい扱いに見かねてうちの相棒がその身を呈して……」
(,,゚Д゚)「じゃあその奴隷の保護は任せるか、金ランクだしな」
ξ゚⊿゚)ξ「ミュスクルの名に誓って」
(,,゚Д゚)「そりゃ安心だ」
-
爪'ー`)y‐「残りの子は?」
(,,゚Д゚)「孤児院いくつか当たってみるわ、無理なら王都、城下町の教会だ」
爪'ー`)y‐「あーそりゃ安心だ、んじゃ保護とこれの始末お願いしますね」
(,,゚Д゚)「ご協力どうもー、宿の二階が空いてるぞ」
爪'ー`)y‐「すぐ行きまーす」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ζ
ξ゚⊿゚)ξ「行くか」
爪'ー`)y‐「そうね」
ζ(゚- ;ζ
爪'ー`)y‐「ところでミュスクルって?」
ξ゚⊿゚)ξ「師匠の苗字」
爪'ー`)y‐「お師匠は四大英雄の血族だったかー」
ξ゚⊿゚)ξ(本人だけど信じないよなあこいつ)
-
かつかつ、こつこつ。
じゃらじゃら、ずるずる。
ぎぃ、ばたん。
(*゚ー゚)「道草亭にいらっしゃいませー……あら、あなた達が主人の言ってた?」
爪'ー`)y‐「どうも焼きたてパンと溶かしバターです」
(*゚ー゚)「…………あ、パーティ名なのねそれ……急に何かと思った……」
爪'ー`)y‐「ダブルベッドの部屋をお願いします」
ξ゚⊿゚)ξ「部屋分けてください」
爪'ー`)y‐「無慈悲なボケ殺し」
(*゚ー゚)「二階の角部屋をご用意してますよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとうございます」
爪'ー`)y‐「ダブル?」
(*゚ー゚)「シングル二つ」
-
(*゚ー゚)「……ふふ、それにしても、珍しい冒険者さんねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「はい?」
(*゚ー゚)「奴隷のために、わざわざあんな騒ぎにして」
ξ゚⊿゚)ξ「気に食わなかったものでお恥ずかしい……」
(*゚ー゚)「……良いんじゃないかしら、真っ直ぐでも」
爪'ー`)y‐「女将さんそれどうにかするの僕なんです」
(*゚ー゚)「でも良いじゃない……この子なら、壁にぶち当たっても、きっと折れずに穿つ様になるわ」
爪'ー`)y‐「まだ折れるんですよーこの子ー」
(*゚ー゚)「あらあら、じゃあ折れたらあなたがどうにかしなきゃ」
爪'ー`)y‐「ンモー」
(*゚ー゚)「あ、そうそう」
爪'ー`)y‐「はいはい」
-
(*゚ー゚)「その子はどうするの?」
ξ゚⊿゚)ξ「これから決めます」
(*゚ー゚)「あらあら、ノープランなんだから」
ξ゚⊿゚)ξ「お前たちは駄目だ?」
(*゚ー゚)「そっちじゃないわね」
爪'ー`)y‐「エビフライの尻尾?」
(*゚ー゚)「一緒よねそれ」
爪'ー`)y‐「軽やかにボケを拾ってくれる女将さん最高かな?」
(*゚ー゚)「うふふ、引き留めてごめんなさいね、おちびさんが所在無さげだからお部屋へどうぞ」
爪'ー`)y‐「はーい」
ξ゚⊿゚)ξ「失礼します」
(*゚ー゚)
(*゚ー゚)「魔族に優しいと嬉しくなっちゃう」
,,(,,゚Д゚)「同族に優しいと嬉しいよな」
(*^ー^)「ね」
(,,゚Д゚)「……モララーとか元気かなぁ」
(*゚ー゚) 「私達の分も四天王としていっぱい仕事してると思う」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ふぅ……やっと落ち着いたわね」
爪'ー`)y‐「いやー怖かった、ツンちゃんがついに人を殺すかと」
ξ゚⊿゚)ξ「殺すつもりだったけどね」
爪'ー`)y‐「そうだねガチギレだったもんねびっくりしたよ本当にアホかと」
ξ゚⊿゚)ξ「馬鹿にされてる事はわかるから殺したいけど今は我慢しておいてやる」
爪'ー`)y‐「おっと後で凄惨な死が待ち受けてる宣言されたぞ☆
……ところで、この子どうすんの? 完全に絶望モード入ってるけど」
ξ゚⊿゚)ξ「荷物の配送屋あるでしょ? 預けて家の方に届けてもらったら」
爪'ー`)y‐「ゆうパックか何かかいこの子は」
ξ゚⊿゚)ξづ「前髪邪魔ね、ちょっとどかして……」
ζ(゚- ゚;ζ"
ξ゚⊿゚)ξ「……そうだ、あなた名前は?」
:ζ(゚- ゚;ζ:「…………」
-
ξ゚⊿゚)ξ「聞かれたのなら応えなさい」
:ζ(゚- ゚;ζ:「…………」
ガッ
ξ゚⊿゚)ξづ゚- ゚;ζ:そ
ξ゚⊿゚)ξ「名前は」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんそれめっちゃ怖いんだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「マジか」
:ζ(゚- ゚;ζ:「……デレ」
ξ゚⊿゚)ξ「デレね」
:ζ(゚- ゚;ζ:「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「歳は」
:ζ(゚- ゚;ζ:「……きゅうさい」
ξ゚⊿゚)ξ「子供じゃない」
爪'ー`)y‐「見ればわかるよツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「うううるさい。……あなた、魔族ね」
:ζ(゚- ゚;ζ゙:「…………」コクコク
-
ξ゚⊿゚)ξ「……あなた、奴隷商に何かされた?」
:ζ(゚- ゚;ζ:「…………ひんしつ」
ξ゚⊿゚)ξ「品質……?」
:ζ(゚- ゚;ζ:「ひんしつちぇっく……」
ξ゚⊿゚)ξ「……? それは、」
爪'ー`)y‐「あーやめやめ分かったから」
ξ゚⊿゚)ξ「何よちょっと」
爪'ー`)y‐「やめようそれの話は」
ξ゚⊿゚)ξ「…………分かったわ、あんたがそう言うなら聞かない」
爪'ー`)y‐「えーと……怪我はあるかい?」
:ζ(゚- ゚;ζ゙:「…………」ジャラ
爪'ー`)y‐「んー枷の当たる部分が傷になってるか、外す道具が必要だな」
-
ξ゚⊿゚)ξ「見せて」
爪'ー`)y‐「さすがに斧では難しいよね」
ξ゚⊿゚)ξ゙「フンッ!!」メキィメリメリバキン
爪'ー`)y‐
:ζ( - ;ζ:
ξ゚⊿゚)ξ「外れたわよ?」
爪'ー`)y‐「それは外れたんじゃなくて引きちぎったって言うんだよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「外れはしたでしょうるさいわね」
爪'ー`)y‐「お姉ちゃんこわいねーゴリラみたいだよねーよしよし」
:ζ(゚- ゚;ζ:
爪'ー`)y‐「ほらこんなに怯えてる!」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたが気持ち悪いからとかでなく?」
爪'ー`)y‐「何て事言うの!?」
-
:ζ(゚- ゚;ζ:
爪'ー`)y‐「うーん髪も肌も黒いから汚れてるのか分からない」
ξ゚⊿゚)ξ「髪がいろんなものでベタベタだわ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんのインナーみたいになってるね」
ξ゚⊿゚)ξ「双方に失礼なのでは?」
爪'ー`)y‐「そうだねごめんねおちびさん」
ξ゚⊿゚)ξ「おい」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんが怖い声出す度にこの子が怯えるんだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「む、それは困るわね……こいつが悪いだけだから気にしなくて良いわよ」
:ζ(゚- ゚;ζ:
爪'ー`)y‐「ほらー! 震えてるー! ツンちゃんがメスゴリラだからー!!」
ξ゚⊿゚)ξ「お前後で覚悟しとけよ」
爪'ー`)y‐「最近は平和だと思ったのに」
ξ゚⊿゚)ξ「リスキル重点」
爪'ー`)y‐「やめて後ですごくお腹空くんだからあれ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「うーん、取り敢えず家に届けるにも綺麗にしなきゃね」
爪'ー`)y‐「お風呂は一人で入れる?」
:ζ(゚- ゚;ζ゙:「……」コクコク
ξ゚⊿゚)ξ「心配ね……頭くらい洗うわ」
爪'ー`)y‐「大丈夫? 頭皮引きちぎらない?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたの頭も今度フルパワーで洗ってあげましょうか?」
爪'ー`)y‐「自ら頭を差し出してまで潰される気はないかな!」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら立って、お風呂行くわよ」
":ζ(゚- ゚;ζ:" フルフル
ξ゚⊿゚)ξ「? 拒否ってないで来なさいな、別に水に沈めたりしないから」
爪'ー`)y‐「逆効果のような」
ξ゚⊿゚)ξ「傷でもあるのかしら」
爪'ー`)y‐「あー見られたくないのかもね」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ背中向けてなさい、後ろから頭だけ洗ってあげるわ」
:ζ(゚- ゚;ζ:゙ コク
-
ざぶざぶ。
ばしゃばしゃ。
長い癖のある黒髪にお湯をかけて、狐に渡されたシャンプーで揉み洗う。
別にせっけんで良いと思ったが、どうやらダメだったらしい。半ギレだった。
しかし揉んでも揉んでも泡が立たない、手には脂の感触がまだ消えない。
これはしっかり洗わないと。
背中を向ける魔族の子供、デレはその褐色の肌をスポンジで擦っている。
骨の浮いた、小さくて傷だらけの背中。
鞭の傷と、火傷の痕もある、肩にあるのは奴隷の焼き印か。
今度、この焼き印を消してやらなきゃ。
先の戦争の事もあり、人間と魔族はまだ折り合いが良いとは言えない。
偉い人達は和平のために忙しいらしいが、民同士はそう上手くはいかないもので。
しかし、魔族が奴隷として売られているのは、戦争とは無関係だ。
奴隷は奴隷、魔族だろうと人間だろうと、魔物だろうと関係ない。
こちらで魔族が奴隷になるように、あちらでも人間が奴隷になる。
特別な事じゃない。
珍しい事じゃない。
でも、私は嫌いだ。
-
やっと泡立ち始めた髪を洗い、角をブラシで擦る。
小さな身体は、まだ小刻みに震えていた。
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ」
:ζ(゚- ゚;ζ:
ξ゚⊿゚)ξ「人間が憎いかしら」
:ζ(゚- ゚;ζ":フル
ξ゚⊿゚)ξ「そう、なら、有り難いわ」
:ζ(゚- ゚;ζ:
ξ゚⊿゚)ξ「私も、魔族が嫌いじゃないわ、寧ろ友好的であれば嬉しい
友好を示されたのなら、私はそれを返したい、逆もまたしかり」
:ζ(゚- ゚ ζ:
ξ゚ー゚)ξ「……何かを憎むのは、疲れるものね」
ζ(゚- ゚ ζ「……うん」
-
ξ゚⊿゚)ξ「デレ」
ζ(゚- ゚ ζ「あい……」
ξ゚⊿゚)ξ「私はあなたを奴隷として扱わない、一人の子供として扱うわ」
ζ(゚- ゚ ζ゙
ξ゚⊿゚)ξ「帰る場所はあるかしら」
ζ(゚- ゚ ζ「……ない」
ξ゚⊿゚)ξ「そう、じゃあ、私が心から信頼している人のところに来る?」
ζ(゚- ゚ ζ゙「ん」
ξ゚⊿゚)ξ「分かった」
ζ(゚- ゚ ζ「おね、さん」
ξ゚⊿゚)ξ「何?」
ζ(゚- ゚ ζ「ありが、と」
ξ゚⊿゚)ξ「別に、私はあなたを独善的に買おうとしただけだもの」
ζ(゚- ゚ ζ「う……?」
ξ゚⊿゚)ξ「……あなたのためじゃない、私がそうしたかったからしただけ」
ζ(゚- ゚ ζ「……ありがと」
ξ゚⊿゚)ξ「やめてよ」
-
ζ(゚- ゚ ζ「おねさ、こわ、ない?」
ξ゚⊿゚)ξ「怖いわよ」
ζ(゚- ゚;ζ
ξ゚⊿゚)ξ「……悪い相手にだけよ」
ζ(゚- ゚ ζホッ
ξ゚⊿゚)ξ「お湯かけるわよ」
ζ(>- < ζ" ザバー
ξ゚⊿゚)ξ「よし、やっと綺麗になって……あ」
ζ(゚- ゚ ζ?
ξ゚⊿゚)ξづ「尻尾忘れてたわ」ガッ
ζ(゚□゚;ζ「キャンッ!」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら動かない」ワシャワシャ
ζ(゚□゚;ζ「がう、がう!! きゃん!!」
ξ゚⊿゚)ξ「わんわん言ってないで大人しくしなさい」
ζ(゚□゚;ζ「ぎゃうぅ!!」
-
,,ξ゚⊿゚)ξ「上がったわよ」ポタポタ
爪'ー`)y‐「おっかーえ ずぶ濡れだな!?」
ξ゚⊿゚)ξ「尻尾洗ったら暴れられた」
爪'ー`)y‐「あらー、君も入っといでよ、服まで濡らして」
ξ゚⊿゚)ξ「むう、せめて着替えるか」
ζ( - ;ζグッタリ
爪'ー`)づ「やあぐったりしている、尻尾も綺麗になったね」ギュ
ζ(゚皿゚#ζ「がう」ガブー
爪'ー`)y‐「あーいたいいたいいたいお客様ー困りますお客様ー」
ξ゚⊿゚)ξ「アホか」
爪'ー`)y‐「まさか噛まれるとは」
ξ゚⊿゚)ξ「尻尾触られるのは嫌いみたいよ」
爪'ー`)y‐「よーくわかりました……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「軽く拭いて着替えたし、狐」
爪'ー`)y‐「んー?」
ξ゚⊿゚)ξ「その子の服買ってくるから拭いといて」
爪'ー`)y‐「立場が逆なのでは?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたはともかく、あんたのセンスは信じてない」
爪'ー`)y‐「あんまりだ!!」
ξ゚⊿゚)ξつ「おこづかい」
爪'ー`)つ◎「最近使いすぎ」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ行ってくる」
爪'ー`)y‐「はいはい」
ζ(゚- ゚ ζ
爪'ー`)y‐「じゃあ君はドライヤーに慣れようね」
ζ(゚- ゚ ζ?
爪'ー`)y‐「ほーら怖くないよー音がするけど魔力で送風する道具だよー」ブォー
-
ζ(゚- ゚ ζソヨー
爪'ー`)y‐「思ったより怖がらないな、じゃあ乾かしますよー」
ζ(゚- ゚ ζ゙ ブォー
爪'ー`)y‐「着てた服は捨てても良い?」
ζ(゚- ゚ ζ゙「ん」
爪'ー`)y‐「服って言うかぼろきれだな……身体拭いた?」
ζ(゚- ゚ ζ"フルフル
爪'ー`)y‐「じゃあタオル追加するから拭いて、ドライヤー置いといてっと……」
ζ(゚- ゚ ζ゙ ゴシゴシ
爪'ー`)y‐「褐色はこの辺じゃあんまり見ないんだよねぇ、海辺の方には居るんだっけな」
ζ(゚- ゚ ζ" ゴシゴシ
爪'ー`)y‐「よいしょ、ほらタオル、ツンちゃんが戻るまでこれで」
⊂ζ(゚- ゚ ζポイ
爪'ー`)y‐「濡れたタオルを捨てないの、はい新しいタオル」
-
ζ(゚- ゚∩ζワシャワシャ
爪'ー`)y‐「言葉が通じるような通じないような……もう良いや僕のシャツ着せとこ」
ζ(゚- ゚ ζ「がう」
爪'ー`)y‐「がうじゃなくて万歳して」
('(゚- ゚∩ζ バンザーイ
爪'ー`)y‐「あっ」
('(゚- ゚∩ζ?
爪'ー`)y‐
('(゚- ゚∩ζ
爪'ー`)y‐「そいや」バサァ
ζ(>- < ζ
爪'ー`)y‐「お腹におっきい傷あったのね」
ζ(゚- ゚ ζ「ん」
爪'ー`)y‐「じゃあ髪乾かすよ」
ζ(゚- ゚ ζ「あい」
爪'ー`)y‐「たまに会話できるな」
-
ξ゚⊿゚)ξ「戻ったわよー」
爪'ー`)y‐「お帰りー」
ξ゚⊿゚)ξ「はいこれ」
爪'ー`)y‐「わあ女児パンツ……と、ツンちゃんがさっき見てた服?」
ξ゚⊿゚)ξ「気付いてたのかよ……」
爪'ー`)y‐「小さいのあったんだね、じゃあもっかい万歳して」
ζ(゚- ゚ ζ
爪'ー`)y‐「して」
ζ(゚- ゚ ζ
ξ゚⊿゚)ξ「何? 反抗期?」
爪'ー`)y‐「ピンクが気にくわない様子」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなの?」
('(゚- ゚∩ζスッ
爪'ー`)y‐「歯向かってはいけない相手だと察したんだね……偉いぞ……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「あんたには歯向かって良いって意味?」
爪'ー`)y‐「別にそんな感じでもないけどなぁ」ポンポン
ζ(゚- ゚ ζ゙
爪'ー`)y‐「はい着せた」
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2311.png
ξ゚⊿゚)ξ「うむ」
爪'ー`)y‐「ズボンセットだっけこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「動きづらいでしょスカートって」
爪'ー`)y‐「まぁ確かに、尻尾穴空けないとな」
ξ゚⊿゚)ξ「後で女将さんに頼みましょ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん裁縫スキルは?」
ξ゚⊿゚)ξつ「腕のこの傷が自力で縫ったやつ」
爪'ー`)y‐「やめとこう」
-
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚ ζ
爪'ー`)y‐(なにこの空気)
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そうだ」
ζ(゚- ゚ ζ゙ ビクッ
ξ゚⊿゚)ξづ「これあげる、私より似合うでしょ」
:ζ(>- < ζ:そ
:ζ(>- <*゙ζ:
ζ(>- <*ζ
ζ(゚- ゚*ζ゙?
ξ゚⊿゚)ξ「うむ」
爪'ー`)y‐「あら可愛い」
ξ゚⊿゚)ξ「であるな」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんたまにオッサンみたいだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「ッすぞ……」
爪'ー`)y‐「子供の前で残酷な発言はちょっと」
-
爪'ー`)y‐「あれってこないだの花売りの花?」
ξ゚⊿゚)ξ「私が鎧につけるより良いでしょ」
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚- ゚∩ζ゙
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚ー゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ(笑った)
爪'ー`)y‐(笑った)
ζ(゚- ゚*ζ゙ ハッ
ξ゚⊿゚)ξ(戻った)
爪'ー`)y‐(戻った)
ξ゚⊿゚)ξ(かわいい)
爪'ー`)y‐(小動物が増えた)
-
ξ゚⊿゚)ξ「デレは花が好き?」
ζ(゚- ゚*ζ「すき」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあちょうど良かったわ、服」
爪'ー`)y‐「お花いっぱいでひらひらしたの選んだねツンちゃん、願望かな?」
ξ゚⊿゚)ξ「私は着たくないけど人に着せるならと」
爪'ー`)y‐「分かるよその気持ち」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐「着せられた本人はやや不満そうだけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「きっと気のせいよ」
爪'ー`)y‐「お、外套もセットだ」
ξ゚⊿゚)ξ「目立つ色だけど晴雨両用で寒い時期も安心、なんと裏地を剥がせば夏場も使える」
爪'ー`)y‐「そんな長靴みたいな」
-
⊂ζ(゚- ゚*ζ「ぁ、う、」グイグイ
ξ゚⊿゚)ξ「? なに?」
ζ(゚- ゚*ζ「それ、てくび」
ξ゚⊿゚)ξ「手首?」
ζ(゚- ゚*ζ「わっか、ぎんいろ」
ξ゚⊿゚)ξ「……ああ、これはね、森の奥の魔物の巣穴にあったの……勝手に持ってきちゃったのよね」
ζ(゚- ゚*ζ゙ ピク
ξ゚⊿゚)ξ「その巣穴には二つの骨があってね、あなたによく似た角が生えてて」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「……私は関わりは無いし、知らない存在だけど……何だろう、それを忘れたくなくて」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「大事にするから、人間の手で殺された存在を忘れないように、持っていたくて……だからあなたを」
ζ(゚- ゚*ζ「すたるとぅ」
ξ゚⊿゚)ξ「……スタルトゥ?」
-
ζ(゚- ゚*ζ「これ」
ξ゚⊿゚)ξ「……この文字? 読めるの?」
ζ(゚- ゚*ζ「デレの、おうち、なまえ」
ξ゚⊿゚)ξ!
ζ(゚- ゚*ζ「これ、まま、の」
ξ;゚⊿゚)ξ「……あ…………あー……」
ξ;∩⊿∩)ξ「あぁぁぁぁあー…………」
ζ(゚- ゚*ζ?
爪'ー`)y‐「ツンちゃんがまためんどくさく」
ξ;゚⊿゚)ξ「……この輪は……あなたの、お母さんの?」
ζ(゚- ゚*ζ「うん」
ξ;゚⊿゚)ξ「じゃあ……えっと……やっぱり、あなたは、森の奥に……?」
-
ζ(゚- ゚*ζ「ぱぱ、まま、さんにん、まぞく」
ξ;゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ「にんげん、デレ、もってった」
ξ;゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ「まま、うごかない、ぱぱ、おこった」
ξ;∩⊿∩)ξ゙
ζ(゚- ゚*ζ?
爪'ー`)y‐(これはフォローが面倒そうだぞ!!)
ξ;゚⊿゚)ξ「……これ、返すわ、あなたに」
ζ(゚- ゚*ζ「いらない」
ξ;゚⊿゚)ξ「へ」
ζ(゚- ゚*ζ「それ、ままのあかし、デレ、ままじゃない」
ξ;゚⊿゚)ξ
-
ζ(゚- ゚*ζ「おね、さん」
ξ;゚⊿゚)ξ「はひ」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、まま、にてる」
ξ;゚⊿゚)ξ!
爪'ー`)y‐「お母さんおっぱい無かったの?」
ζ(゚- ゚*ζ「ううん、そこ、にてない」
爪'ー`)y‐「だってさツンちゃん!!」
ξ゚⊿゚)ξ「黙れや」
爪'ー`)y‐「お母さんはどんな人だったの?」
ζ(゚- ゚*ζ「つよい」
爪'ー`)y‐「つよい」
ζ(゚- ゚*ζ「こわい」
爪'ー`)y‐「こわい」
ζ(゚- ゚*ζ「ぽかぽか」
-
爪'ー`)y‐「デレちゃん一つ良いかな?」
ζ(゚- ゚*ζ?
爪'ー`)y‐「君は所謂、一般教育を受けて育たなかった子なのかい?」
ζ(゚- ゚*ζ??
爪'ー`)y‐「魔族も人間も、お勉強をするだろ? 君は言葉のお勉強を受けなかったように思える」
ζ(゚- ゚*ζ「ぱぱ、まもの、ちかい」
爪'ー`)y‐「魔物に近い?」
ζ(゚- ゚*ζ「せいかつ、もり、まもの、たべる」
爪'ー`)y‐「うーん……」
ξ゚⊿゚)ξ「人間にも動物に近い生活をする人達は居るけど、それかしら」
ζ(゚- ゚*ζ「もり、まもる、にんげん、かかわ、ら、ない?」
爪'ー`)y‐「あー……うーん……?」
ζ(゚- ゚*ζ「むー……?」
-
爪'ー`)y‐「なぜその生活を選んだかは分からないけど、魔物を狩る事で隣人である人間を守ってたのかな」
ξ゚⊿゚)ξ「たぶんお互いの為に関わらないようにしてたんでしょうね、まだ折り合いが良いとは言えないし」
爪'ー`)y‐「それは分かるんだけどなー……何で魔物に近い生活を……?」
ξ゚⊿゚)ξ「デレが言葉を覚えたら分かるんじゃない?」
爪'ー`)y‐「ま、それもそっかぁ……気長に待つかなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐?
ξ゚⊿゚)ξ「あんた丸くなったわね」
爪'ー`)y‐!?
ξ゚⊿゚)ξ「前は関わるな面倒だって感じだったのに……」
爪'ー`)y‐
爪'ー`)y‐「デレちゃんお兄さんとたくさんお勉強しようねー」
ξ゚⊿゚)ξ「おい」
爪'ー`)y‐「あのお姉さんよりアホな子なんてこの世にいないと思うから将来が楽しみだね!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「クルルァア!!」
-
爪'ー`)y‐「だいたい君は人の事言える!? 僕はともかく僕のセンスは信じてないって言ったよね!?」
ξ゚⊿゚)ξ「言ったけど」
爪'ー`)y‐「いつのまに君を騙して旅に同行させる詐欺師を信用するようになったのかな!!?」
ξ゚⊿゚)ξハッ
爪'ー`)y‐「そうだよそれもこれも君が隙だらけのアホな半人前だからだよだから変に情けが湧いたんだ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ狐」
爪'ー`)y‐「何だよホームランバー! 無乳! 猪突猛進脳筋! 今までどうやって一人旅してたんだよ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと来なさい」
,,爪'ー`)⊂ξ゚⊿゚)ξズルズル
<ウワナニスルヤメ
<ザバーン バシャバシャ ゴボゴボ
<ゴボゴボ … … …
,,ξ゚⊿゚)ξ「デレ、夕飯貰ってきましょうか」ポタポタ
ζ(゚- ゚;*ζ゙ コクコク
-
人前で食事するのはまだ怖がるかもしれない。
そう思い、宿の女将には手掴みで食べられる食事部屋で、と頼んだ。
一階に降りると、ちょうど女将が食事を運ぼうとしていたところで。
私とデレはそれを受け取り、部屋に戻る。
そして二人でテーブルについて、皿にこんもりと積まれたサンドと器に盛られたスープに手を伸ばす。
スープはあっさり、野菜と薫製肉の味がよく出た塩味のもの。
シンプルではあるが質素ではなく、じっくり手をかけて作られた味なのがわかる。
表面に焼き目のあるもっちりした生地のパン、挟まれる具は様々。
ひとつめはチーズと挽き肉。
とろとろじゅわっと噛み締める度に旨味が広がる。
ふたつめは野菜と肉。
新鮮な葉とごろごろ野菜、少し甘く味付けをした肉がよく合う。
みっつめはエビと甘味の無いねっとりした果物、酸味のあるソースが味をまとめている。
よっつめはトマトと冷たいチーズ、味付けは植物油と塩だけだがこれが妙に美味い。
いつつめはデレが持ってきた小さな皿、クリームチーズと果物を煮崩した物が挟んである。
デレはこれを一番気に入ったらしく、口と手をべたべたにして食べていた。
ξ*´⊿`)ξ「ふは……うま」
ζ(´-`*ζ「うま」
-
,,爪'ー`)y‐「あー死んだ死んだ、溺死は苦しいし地味だからやめてほしい」
ξ゚⊿゚)ξ「あらお帰り」
爪'ー`)y‐「あ、もうご飯食べてる」
ξ゚⊿゚)ξ「一つずつ置いといたわよ」
爪'ー`)y‐「わーい、いただきます」
ξ゚⊿゚)ξづ「デレ、口と手を拭いて」
ζ(゚- ゚*ζ「んむー」
ξ゚⊿゚)ξ「服は汚れてない?」
ζ(゚- ゚*ζ「…………ない」
ξ゚⊿゚)ξ「よし」
ζ(゚- ゚*ζ「んむ」
爪'ー`)y‐(保護者っつーか飼い主)
-
ξ゚⊿゚)ξ「デレは毛並みが良いわね」ワシワシ
ζ(゚- ゚*ζ「がう」
ξ゚⊿゚)ξ「……狐、食べながらで良いから聞いてほしいんだけど」
爪'ー`)y‐「んー?」
ξ゚⊿゚)ξ「私あんたとの旅に慣れて、一人で居るのが苦手になった」
爪'ー`)y‐「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「だから距離を置くか、別行動を増やそうかと思って」
爪'ー`)y‐「……ふーん」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、やっぱこう言うの面倒だし、モヤつくのはいや」
爪'ー`)y‐「……それで?」
ξ゚⊿゚)ξ「それでね、私、この膝で眠った子供を連れて歩きたいって思って」
爪'ー`)y‐「デレを? 邪魔になるでしょ」
ξ゚⊿゚)ξ「負担はみんな私が背負うわ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんさぁ、最近ワガママが過ぎるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……ごめんなさい」
-
爪'ー`)y‐「僕らは二人で旅をしてるんだよ、君の都合ばかりで動けない」
ξ゚⊿゚)ξ「分かってる」
爪'ー`)y‐「だったら何でそうやって子供みたいな事を言うのさ、はっきり言えば良いじゃないか」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「一人は寂しいからってはっきり言いなよ」
ξ゚⊿゚)ξ「言えるわけないじゃない」
爪'ー`)y‐「どうして?」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなの、冒険者としても戦士としても、マイナスになるもの」
爪'ー`)y‐「君の師匠はさぁ、言わなかったのかな」
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
爪'ー`)y‐「守る物が出来たら弱くなる事もあるけど、守る物が無ければ強くもなれないよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ッ」
-
爪'ー`)y‐「君はワガママだし、折れやすいし、頭の悪い子だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね」
爪'ー`)y‐「でも自分がしっかりあるし、ストイックだし、凄く真っ直ぐだ」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「それに僕は、君の戦士としての腕を見込んで、君を騙してまで同行させたんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「買いかぶりよ」
爪'ー`)y‐「だから君には、もっと強くなって貰わなきゃいけないんだ、僕を守ってくれなきゃ」
ξ゚⊿゚)ξ「それは、分かってるけど」
爪'ー`)y‐「だから強くなるのに必要な物は、僕が与えてあげるから」
ξ゚⊿゚)ξ「……狐」
爪'ー`)y‐「一人が嫌なら、その子を抱えていると良い
僕も一人で眠りたくない時は、そうすればよく眠れそうだしね」
ξ゚⊿゚)ξ「……うん」
-
ξ゚⊿゚)ξ「私は、私しか守ろうとしてなかった」
爪'ー`)y‐「そんなもんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「子供の私がまだ私の中に居るから、それだけを守ろうとしてた」
爪'ー`)y‐「うん」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、他にも守れるもの、あったのね」
爪'ー`)y‐「護衛って事、忘れないでよね」
ξ゚⊿゚)ξ「うん……」
ζ(- -*ζ゙「んゅ……すぅ」
爪'ー`)y‐「よく寝てる」
ξ゚⊿゚)ξ「緊張してたんでしょうね」
爪'ー`)y‐「君も眠りなよ、子守唄を歌うから」
ξ゚⊿゚)ξ「食事は?」
爪'ー`)y‐「大抵の人は君と違って一個食べればお腹一杯になるんだよ」
-
ぽろろん。
それは歴戦の戦士の姿。
街を背に立つ雄々しき姿。
育った街を護るべく。
愛する者を護るべく。
幾千の軍勢と対峙した戦士。
その働きはまさに獅子奮迅。
斧槍を振るい敵を薙ぎ。
風を裂いては地を濡らす。
全身に矢を受け刃を受け。
それでも守り通せなかった。
英雄と呼ばれる男の咆哮。
英雄と呼ばれる男の慟哭。
その手で守りたかった物はみな
指の隙間からすり抜けて落ちた。
恐ろしきは覇王と呼ばれた英雄。
哀れなる英雄と呼ばれた男。
(ああ、これは)
(師匠の、歌だ)
-
久々に大好きな人たちの夢を見た。
師匠の大きな手のひら。
姉様の優しいほほえみ。
お母さんの、遠い背中。
ねぇ師匠、紹介します。
私の相棒の吟遊詩人。
それと魔族の子供。
私まだ強くなります。
私もっと強くなります。
一人はいやだけど。
しばらくは、一人じゃないから。
熊にも、もう勝てますよ。
素手で首を吹き飛ばせます。
私ちゃんと、成長してますから。
今は私よりも、この小さな子供を守りたいから。
弱っちい相棒も守らなきゃいけないから。
まだまだ、たくさん成長しますから。
-
ξ-⊿-)ξスヤスヤ
ζ(- -*ζスヨスヨ
爪'ー`)y‐「……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんじゃなかったら、惚れるか面倒になって捨ててたのになー」
爪'ー`)y‐「……ま、僕の一人寝も楽にはなりそうだし」
爪'ー`)y‐「連れていきたいって、先に言おうとしたのにさ
君が先に言うんじゃしょうがないや」
ξ-⊿-)ξスヤスヤ
ζ(- -*ζスヨスヨ
爪'ー`)y‐「世界中の責任を背負ったような顔をしてた癖に、何つー穏やかな寝顔してんだか」
爪'ー`)y‐「……」
爪'ー`)y‐「僕の弱さを君に教えるのは、また今度ね」
おわり。
-
ありがとうございました、本日はここまで。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
-
今週も乙でございます
-
乙乙ー
楽しみにしてた
デレちゃんもかわいい
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俺も品質チェックしたい
-
てかデレちゃんかわゆす
-
乙 角の話が上手く回収されたなあ
褐色黒髪のデレって珍しいなと思ったけど、よくよく考えたら色指定は無いわけだから黒髪のツンとかデレは勿論ブロンドの素直姉妹だっておかしくないんだな
-
乙ー母者と父者出てくるかと思ったらギコしいか。
そう言えば塔のようですでギコエルとしいエルって名前だけ登場してたな。
で、ふと気になったんだが二つ前の回でしいはドラゴンの花嫁で出てたけどあれはスターシステム的なあれなんかね?
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んなこといったら一話前にすら出てるぞ
-
そういえばハナウリガしぃだったな
-
でも師匠は一切出ねえんだよなあ……
母者はオリハルコンクラスじゃ済まないと思うんだ
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酒場の女将で二回出てるぞしぃ
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そうか…世界はしぃで溢れて居たのか…
-
モブキャラ=しぃ
-
旅も読んできた
竜の町とか海辺の魔物討伐とか、今作とところどころリンクしてるのな
もっと早く読めばよかった
-
だれか俺のためにリンク貼ってくれても良いんだぜ?
-
検索でヒットする第二話のページのURL削ればいける
がんばれ
-
旅の事ならこのスレ内探せよ
-
しぃをジョーイさん的に使ってるのかなと思ったけど、魔族の元四天王のギコしぃもいるんなら分身とかっぽい気がしてきた
花売りの説明がつかないけども
-
これ旅、塔とリンクしてるのかなぁ。
変森、百鬼夜行もこの作者だよね、全部すっきゃわぁ
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声、獣じみた幼い咆哮。
刃を振るい、歌声を響かせ、魔力を用い、路銀を稼いで進むのは三人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
そんな二人の後ろをついて歩く、小さな魔族の子供。
【道のようです】
【第八話 いい加減にしなさい君は。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
てくてく、とことこ。
舗装されていない、剥き出しの土の上を歩く三つの足。
山の隙間にある道で、左右は高い崖に挟まれていて、視界は極めて悪い。
しかしまっすぐ進めばいずれ視界は開けて、次は再び森の中に入る道。
ξ゚⊿゚)ξ「デレ、大丈夫?」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
ξ゚⊿゚)ξ「うむ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「んー?」
爪'ー`)y‐「あれ何だと思う?」
ζ(゚- ゚*ζ「ぷるぷる」
ξ゚⊿゚)ξ「スライムね」
-
爪'ー`)y‐「僕の足に絡んでるのは何だと思う?」
ζ(゚- ゚*ζ「ぷよぷよ」
ξ゚⊿゚)ξ「スライムね」
爪'ー`)y‐「ああー上がってきてるーこわいー酸性じゃないだけマシだけどこわいー」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた戦闘面では驚くほどどんくさいわよね……」ザクー
爪'ー`)y‐「あー怖かった、核の部分を刺せば死ぬんだね」
ζ(゚- ゚*ζ「どんくさ?」
爪'ー`)y‐「傷付く」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん」
爪'ー`)y‐「はいはい」
ζ(゚- ゚*ζ「うしろ」
爪'ー`)y‐「後ろ?」
ζ(゚- ゚*ζ「でっかいむし」
爪;'Д`)y‐「ツンちゃん助けて」
-
ξ;゚⊿゚)ξ「何よ虫くらいで情けなキモッ!?」
爪;'Д`)y‐「でかいんだけど予想以上にでかいんだけどこれ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「バックパック!? それ虫を模したバックパック!?」
爪;'Д`)y‐「そんな悪趣味な物は装備しないよ!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ま、待って下手に切ると毒を持つ可能性が」
ζ(゚- ゚*ζ「やあ」
⊂彡バシュー
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ「これおいしい」
爪'ー`)y‐「捨てなさい」
ξ゚⊿゚)ξ「美味しいのか……」
爪'ー`)y‐「やめなさい」
-
ζ(゚- ゚*ζ「おいしいなのに」
ξ゚⊿゚)ξ「残念……」
爪'ー`)y‐「やめなさい、もいだ足がまるで蟹の様だから見せるのやめなさい」
ζ(゚- ゚*ζ「ゆでる、おいしい」
爪'ー`)y‐「やめなさい」
ξ゚⊿゚)ξ「私これ食べてみたい」
爪'ー`)y‐「やめなさい」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんひどい」
ξ゚⊿゚)ξ「ひどい」
爪'ー`)y‐「ひどくなーい先に進みますからねー」
ζ(゚- ゚*ζ「ぐあん」
ξ゚⊿゚)ξ「ごはん」
爪'ー`)y‐「君たちはもうちょっと理性的に生きようと言う気は無いの?」
-
ζ(゚- ゚*ζ「う」
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
ζ(゚- ゚*ζ「うえ、とり」
爪'ー`)y‐「鳥? あー、魔物だねぇ」
ξ゚⊿゚)ξづ「狐下がって!」グッ
爪'ー`)y‐「ぐぇっ」バシュッ
ξ゚⊿゚)ξ「いきなり攻撃して来やがって……」
ζ(゚- ゚*ζ「とり、にんげん、ごはん」
爪'ー`)y‐「あー……倒しとく? 被害出そうだし」
ξ゚⊿゚)ξ「しかしあの高さでは、斧を投げてもなぁ」
爪'ー`)y‐「デレちゃん魔法は使えない?」
ζ(゚- ゚*ζ「まほ?」
爪'ー`)y‐「駄目そうだわ」
-
ξ゚⊿゚)ξづ「仕方がない」ガッ
づ爪'ー`)y‐「えっ?」
ξ#゚⊿゚)ξ三つ「いっけぇえええええぇ!!!」ブォンブォン
-=三爪;'Д`)「あああああああああ!!!」ヒュボッ
<ギャー
<ゴシャー
<ドサァ
<グチャ
ξ゚⊿゚)ξ「よく飛んだわ」
ζ(゚- ゚;*ζ「ぅゎ……」
ξ゚⊿゚)ξ「回収に行くわよデレ」
ζ(゚- ゚;*ζ「あ、あい」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇデレ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
ξ゚⊿゚)ξ「……今は難しいだろうから、無理に答えなくても良いんだけど」
ζ(゚- ゚*ζ「う?」
ξ゚⊿゚)ξ「前に人間を憎んでいないって言ったわよね」
ζ(゚- ゚*ζ「ん」
ξ゚⊿゚)ξ「……じゃあ、あなたの両親を殺した人間を、憎む?」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「復讐出来るとしたら、する?」
ζ(゚- ゚*ζ「デレ、おねさん、かわれた」
ξ゚⊿゚)ξ「……買ってない」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、ごしゅじん」
ξ゚⊿゚)ξ「違う」
ζ(゚- ゚*ζ「ちがうない」
-
ξ゚⊿゚)ξ「違うわよ」
◎⊂ζ(゚- ゚*ζ「おかね」
ξ゚⊿゚)ξ「……持っときなさい」
ζ(゚- ゚*ζ「デレ、だいきん」
ξ゚⊿゚)ξ「違うから」
ζ(゚- ゚*ζ「うー」
ξ゚⊿゚)ξ「……そのお金も、狐が出したんだから」
ζ(゚- ゚*ζ「うー!」
ξ゚⊿゚)ξ"「…………」プイ
ζ(゚- ゚*ζ「……がう」
ξ゚⊿゚)ξ「……急がなくて良いわよ」
ζ(゚- ゚*ζ「がう?」
ξ゚⊿゚)ξ「言葉は、どんどん覚えれば良いんだから」
ζ(゚- ゚*ζ「……あい」
-
ζ(゚- ゚*ζ(おかね、いらない)
ζ(゚- ゚*ζ(おねさん、デレたすけた)
ζ(゚- ゚*ζ(だから、ごしゅじん)
ζ(゚- ゚*ζ(うー)
ξ゚⊿゚)ξ「狐の落下地点はこの辺か……」
ζ(゚- ゚*ζ「がうがう」
ξ゚⊿゚)ξ「居た?」
ζ(゚- ゚*ζ「えぐ」
ξ゚⊿゚)ξ「うわ……」
ζ(゚- ゚*ζ「ぱーんした、うえ、ない」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね……胸から上が潰れてるわ……」
ζ(゚- ゚*ζ「がう、おにく」
ξ゚⊿゚)ξ「食べちゃダメよ」
-
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、おにさん、どこ?」
ξ゚⊿゚)ξσ「これ」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξσ
ζ(゚- ゚;*ζ
ξ゚⊿゚)ξ(あ、前は溺死だったから初死目撃か)
ζ(゚□゚;*ζ「おにさん!? おにさぁあああ!!?」
ξ゚⊿゚)ξ(新鮮な反応だわー)
ζ(゚□゚;*ζ「おねさん!? おにさんぐしゃぐしゃ!!? おにく!!?」
ξ゚⊿゚)ξ「食べちゃダメよ」
ζ(゚□゚;*ζ「たべるない!!?」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫よ死んでるけど」
ζ(゚□゚;*ζ「だいじょうぶ!? だいじょうぶない!?」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫大丈夫」
-
爪 Д#;:,, ジュル…ジュル…
ζ(゚□゚;*ζ「おねさ!? おねさん!? おにさんじゅるじゅる!?」
ξ゚⊿゚)ξ「日常風景よ」
ζ(゚□゚;*ζ「がうぅ!?」
爪'ー`)+ペカ
ζ(゚□゚;*ζ「ぎゃうー!? おにさもどた!? あう!? あうぅ!?」
爪'ー`)y‐「新鮮な反応だ」
ξ゚⊿゚)ξ「三日で慣れるわよ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんは正座」
ξ゚⊿゚)ξ「してる」
爪'ー`)y‐「よろしい説教だ」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
ζ(゚□゚;*ζパカー
-
爪'ー`)y‐「君ね護衛なんだからね」
ξ゚⊿゚)ξ「スライムからは助けたから」
爪'ー`)y‐「何で僕を投げたんだい? ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたは投げて潰れても戻るでしょ?」
爪'ー`)y‐「そうだね」
ξ゚⊿゚)ξ「師匠から賜った斧は潰れたら戻らないの」
爪'ー`)y‐「そうだね」
ξ゚⊿゚)ξ「だから投げた」
爪'ー`)y‐「お昼抜きだから」
ξ゚⊿゚)ξ「すみませんでした」
爪'ー`)y‐「抜きです」
ξ゚⊿゚)ξ「許して下さい」
爪'ー`)y‐「駄目です」
ξ゚⊿゚)ξ「そこを何とか」
爪'ー`)y‐「無理です」
-
ξ゚⊿゚)ξ「お腹が空いたら戦えない」
爪'ー`)y‐「ここに虫を即殺した魔物の子が」
ζ(゚- ゚*ζ「がう?」
ξ゚⊿゚)ξ「私のアイデンティティが……!?」
爪'ー`)y‐「反省して護衛」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん」
爪'ー`)y‐「うん?」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんいじめてる」
爪'ー`)y‐「説教です」
ζ(゚- ゚*ζ「うー?」
爪'ー`)y‐「悪い事をしたら怒られるだろう?」
ζ(゚- ゚*ζ「うん」
爪'ー`)y‐「あのお姉さんは人を殺したんだよ、だから怒っているんだ」
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚- ゚*ζ「むりない」
爪'ー`)y‐「だろ?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「デレにまで頷かれた……」
爪'ー`)y‐「良いから進むよ」
ξ゚⊿゚)ξ「分かってるわよ……はぁ、お昼ご飯が……」
爪'ー`)y‐「ほんと食には貪欲だよねぇ」
⊂ζ(゚- ゚*ζ「むしあしゆでる?」
ξ゚⊿゚)ξ「生では無理かしら」
爪'ー`)y‐「捨ててそのカニもどき」
ξ゚⊿゚)ξ「でも狐、あんた先に進めるの?」
爪'ー`)y‐「何が?」
ξ゚⊿゚)ξ「ここ他に道無いでしょ」
爪'ー`)y‐「うん」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたが落下して叩きつけられたこれ」
爪'ー`)y‐「壁?」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃなくて、岩」
-
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚〜゚*ζモグモグ
爪'ー`)y‐「あっ壁が三面だと思ったらこれ岩って言うか待ってデレちゃん待って何食ってんの」
ξ゚⊿゚)ξ「こいつ先に飯を……!?」
ζ(゚- ゚*ζ「むしおいしい」
爪;'Д`)y‐「やーめーてーよーぉ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「相変わらずブッサイクだなその顔……」
爪'ー`)y‐「これ岩……岩だよね? 落石?」
ξ゚⊿゚)ξ「切り替えはっや。 落石でしょうね、一本道だしこっちにしか行けないはず」
爪'ー`)y‐「えー何これ……壁くらいあるんだけど……5mくらい無い……?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうする?」
爪'ー`)y‐「どうするったってなぁ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「狐が私にご飯を与える理由がいくつかあります」
爪'ー`)y‐「えっ」
ξ゚⊿゚)ξ「まず私はお腹が空いた」
爪'ー`)y‐「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「そしてこのままでは立ち往生」
爪'ー`)y‐「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「さらに私はこの岩を穿つ事が出来る」
ζ(゚- ゚;*ζ「おねさんにんげん?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
爪'ー`)y‐「悲しいかな人間」
ζ(゚- ゚;*ζ「にんげんつよい」
ξ゚⊿゚)ξ「そうだろうそうだろう」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんが異常なだけだから」
-
ξ゚⊿゚)ξ「さあどうする」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんまるで居直り強盗みたい」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、こわせる?」
ξ゚⊿゚)ξ「壊せる」
爪'ー`)y‐「ほーんとにーぃ? さすがにこれキツくなーい? ただ昼飯食べたいだけでなくー?」
,,川*`ゥ´)
ξ゚⊿゚)ξ「試してはあげないわよ」
爪'ー`)y‐「と言うか雇用主にそんな態度で良いの?」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「あんたの悪行全部国に報告すっぞ」
爪'ー`)y‐「それは面倒だから困る」
川*`ゥ´)
ξ゚⊿゚)ξ「面倒だからって理由がクソだわ……」
爪'ー`)y‐「えーぇぇえー?」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん」
ξ゚⊿゚)ξ「今こいつ倒すから待って」
-
爪'ー`)y‐「倒せるーぅ? ツンちゃんが僕と口論でかーてーるーのーかーなーぁ?」
ξ゚⊿゚)ξ「すごいむかつく」
川;`ゥ´)
爪'ー`)y‐「はーん? ツンちゃん語彙が貧相ーぅ怒りの表現がそれだけー??」
ξ゚⊿゚)ξ「お前そうやって怒らせてこれどうにかしたいだけだろ分かってるからな」
川#`ゥ´)
爪'ー`)y‐「ねぇ聞いたデレちゃん今この子ったら僕の考えがお見通しみたいな事言っ」
爪'ー`)y‐「なんかいる」
ξ゚⊿゚)ξ「うわマジだ」
川#`ゥ´)「やっと気付いたのかよ朝飯お前ら!!」
爪'ー`)y‐「えっ何どっから来たの?」
川#`ゥ´)「空だよ!! 箒で飛べるからな!!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「あんた……魔女だからってそんな古風な……」
爪'ー`)y‐「今時は魔導師も魔女も箒になんて乗らないのに……」
川#`ゥ´)「あぁん!? 箒に乗る方がかっこいいだろうが!! ロマンだろうが!?」
爪'ー`)y‐「否定できない……!?」
ξ゚⊿゚)ξ「確かに……!!」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん? まじょ?」
川#`ゥ´)「そうさあたしがかの高名な魔女のア 何だよこの可愛いの!? 羊!? 亜人!?」
ζ('(゚- ゚∩*ζ"「がうー」
川#`ゥ´)「何アピールされてんだあたし!? がおーってアレか!?」
ξ゚⊿゚)ξ゙「キレ芸も良いと思うわ」
川#`ゥ´)「うっせぇアズキバー!!」
ξ#゚⊿゚)ξ「ホームランしろよ!!」
川#`ゥ´)「お前の逆鱗なんなんだよ!!」
-
川*`ゥ´)「あー喉いてぇ……」
爪'ー`)y‐「最初から飛ばすね君」
ξ゚⊿゚)ξ「名前なんだっけ」
川#`ゥ´)「ヒール!! アンソルスラン!! 魔女!! すごい(予定)魔女!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ご丁寧にどうも」
川;`ゥ´)「お前ほんとわけわかんねぇのな」
ξ゚⊿゚)ξ「……で、何でまたこんなところに」
川*`ゥ´)「ふ、ふふん! この大岩をどかせるか見物に来たのさ!」
爪'ー`)y‐「暇なの?」
川#`ゥ´)「黙れや若ハゲ」
爪'ー`)y‐「次いわれの無い扱いをしたら君が泣くまで押さえ付けて大人げなく謗り続けるからね?」
川;`ゥ´)「お前の相方最低だな!?」
ξ゚⊿゚)ξづ「悲しいかな最初からわりと最低だけど人の相方を最低とか言わない」ガッ
川; ゥ )「やめろォ!! 顔を掴むのはやめろォ!!!」
ζ(゚〜゚*ζモグモグ
-
ξ゚⊿゚)ξ「……で、この岩?」
川*`ゥ´)「そ、そうさ! あたしがお前らのためにわざわざ落としてやったのさ!」
ξ゚⊿゚)ξ(暇なのかな……)
爪'ー`)y‐(暇なのかな……)
川*`ゥ´)「ここでお前らが来た道を戻るしか無いのならあたしの勝ちだ!!」
ξ゚⊿゚)ξ(それで楽しいのかな……)
爪'ー`)y‐(友達いないのかな……)
川*`ゥ´)「さあどーする朝飯共! あたしの魔法の前に屈するか!!」
⊂ζ(゚- ゚*ζ「あい」
川*`ゥ´)「何これ」
ζ(゚- ゚*ζ「おいしい」
川*`ゥ´)「食べ物?」
ζ(゚- ゚*ζ゙「ん」
-
川*`ゥ´)「お前ら朝飯の施しはー……いや朝飯じゃないかこのチビ……じゃあいけるか……?」
ζ(゚〜゚*ζモグモグ
川*`ゥ´)「食ってるし大丈夫か……」
爪'ー`)y‐(あっ……)
ξ゚⊿゚)ξ(私の取り分が……)
川*`ゥ´)「おいこのチビどうしたんだよお前ら」
ξ゚⊿゚)ξ「保護した」
爪'ー`)y‐「元奴隷」
川;`ゥ´)「慈善事業でもやってんのかよ……アホじゃねぇの……」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、たべるない?」
川*`ゥ´)「なんだお前あざといし可愛いな……蹴鞠にするぞ……」
爪'ー`)y‐(ああ、こう言う可愛がり方するタイプか……)
ξ゚⊿゚)ξ(素直だなこの子……)
-
爪'ー`)y‐「さてツンちゃん、APP8くらいの子に喧嘩売られたけどどうする?」
川#`ゥ´)「もうちょいあるつってんだろ!! THE平凡顔面みたいな言い方すんな!!」
ξ゚⊿゚)ξ「売られた喧嘩なら買うわ」
川*`ゥ´)「やってみろよアズ ホームランバー!! まぁあたしの不戦勝だろうけどな!!」
爪'ー`)y‐(アズキャンするんだ……)
ζ(゚- ゚*ζケプ
爪'ー`)y‐「デレちゃん……食べたね……」
ζ(゚- ゚*ζ「おいしい」
爪'ー`)y‐「よかったね……」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん、おねさんだれ?」
爪'ー`)y‐「ああ、彼女はなぜか喧嘩を売ってきた可哀想な感じの魔女だよ」
ζ(゚- ゚*ζ「かわいそ?」
-
爪'ー`)y‐「そう……相手の実力も見ずに喧嘩を売る可哀想な子さ……」
川#`ゥ´)「聞こえてっからなクソイケメン!!」
爪'ー`)y‐「聞いたーデレちゃんイケメンだってー僕の事だよー?」
ζ(゚- ゚*ζ「いけめん」
爪'ー`)y‐「僕の事を指す言葉だよ」
ζ(゚- ゚*ζ「いけめん、おぼえる」
川*`ゥ´)「何教えてんのあのクソイケメン」
ξ゚⊿゚)ξ「クソしか合ってないわよ」
_,
爪'皿`)y‐「ツンちゃんのそう言うとこ本当嫌い」
ξ゚⊿゚)ξ「見ろあのブッサイクな顔」
川;`ゥ´)「今はブッサイクだけど地はイケメンじゃねーか!? 私の感性がおかしいみたいに言うな!?」
ξ゚⊿゚)ξ「おかしいのよ感性が」
川;`ゥ´)「自信すげーな!? いっそ無垢か!?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「しかしあんたも暇ね、私たちなんて出来たばかりのパーティなのに」
川*`ゥ´)「お前ら着々と役所に貼り出されてるやつでどんどん上がっていってるぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「マジで」
爪'ー`)y‐「意外と」
ξ゚⊿゚)ξ「聞いてない」
爪'ー`)y‐「言ってない」
川;`ゥ´)「無頓着かよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そしてなぜあんたは喧嘩を」
川*`ゥ´)「偉大な魔女になるために手始めにお前らをぶっ倒して名を上げる」
ξ゚⊿゚)ξ「脳筋か」
川#`ゥ´)「お前にだけは言われたくねぇぞおいメスゴリラ!?」
ξ゚⊿゚)ξづ「お前相手見て言えよ」ガッ
川# ゥ )「顔はやめろつってんだろ!!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「とにかくこの岩をどうにかしろと」
爪'ー`)y‐「デレちゃん飽きてきたから早く行こうよ」
ζ(゚- ゚*ζ「あきるない」
爪'ー`)y‐「ほら」
ξ゚⊿゚)ξ「飽きたのお前だろ……はいはいどうにかしますよ」
川*`ゥ´)「ふふん! どうにかなるもんな」
ξ゚⊿゚)ξ三つそ ドガッ
川*`ゥ´)「いや拳は無理だろ」
ξ゚⊿゚)ξ三つそ ガッガッ
川*`ゥ´)「さすがにこれは」
ξ゚⊿゚)ξ三つそ ドゴッゴシャッ
川;`ゥ´)「おい本物のバカかバケモンかどっちだこれ」
爪'ー`)y‐「悲しいよね、両方なんだ」
-
爪'ー`)y‐「しかしさすがに一撃は無理かー」
川;`ゥ´)「英雄にはそんなの居るけど現実的じゃねーよ」
爪'ー`)y‐「目の前で着実に岩を拳で穿つ様は現実的?」
川;`ゥ´)「……まぁ……人の頭潰せるらしいしな……」
爪'ー`)y‐「潰されたよ、何度も」
川;`ゥ´)「お前は何でそんな玄人顔なんだよ引くよ」
爪'ー`)y‐「ところで君の事あんま知らないなー、魔女の家系のヒールちゃんだっけ」
川*`ゥ´)「そうだなそれ三回くらい言ったからさすがに覚えたんだな」
爪'ー`)y‐「身長体重スリーサイズとLINEのIDと家族構成と資産は?」
川;`ゥ´)「おい脳筋! てめぇの相方ろくでなしだろ!?」
< そんないまさら
川;`ゥ´)「お墨付きだったな! 知ってた!!」
-
ζ(゚- ゚*ζ「まじょさん」
川*`ゥ´)「なんだ羊」
ζ(゚- ゚*ζ「ひつじない、デレ」
川*`ゥ´)「デレ? このチビの名前?」
爪'ー`)y‐「そうそう、デレちゃん9歳、元奴隷の魔族」
川*`ゥ´)「ほーん、亜人じゃなくて魔族か、亜人ほど珍しくねぇな」
ζ(゚- ゚*ζ「がう?」
川*`ゥ´)「言葉ろくにわかってねーのかこいつ」
爪'ー`)y‐「そうなんだよねぇ」
ζ(゚- ゚*ζ「まじょさん、おねさんたちきらい?」
川*`ゥ´)「おう成功してる奴らみんな嫌いだ」
爪'ー`)y‐「すげぇ堂々としてる」
-
川*`ゥ´)「あとこいつらおちょくってくるからな、ムカつく」
爪'ー`)y‐「おちょくってるの僕だけだよ」
川*`ゥ´)「黙れクソイケメン」
爪'ー`)y‐「もっと言って」
川;`ゥ´)「キモい!!」
ζ(゚- ゚*ζ「がうー?」
川*`ゥ´)「がうーじゃねぇよ鳴くな」
爪'ー`)y‐「何でそう僕らに突っ掛かろうとするかねぇ君は」
川*`ゥ´)「会うの二回目の人間に色々話す気はねーぞ! 敵だしな!」
爪'ー`)y‐「あん意外とガード固い」
川*`ゥ´)「ペッペッ お前らみたいにきらびやかな見た目と業績残すやつ嫌い!」
爪'ー`)y‐「めっちゃ分かりやすい私怨貰った」
-
川*`ゥ´)「ま、あたしは直系以外のアンソルスラン家を認めないクソ共を根絶やしにしたいだけさ!」
爪'ー`)y‐「根絶やしに」
川*`ゥ´)「だからまず、そんなクソ共を見返すためにも最近目につくお前らを狙ってんの!」
爪'ー`)y‐「貞操を?」
川#`ゥ´)「どうせねぇだろお前そんなもん!!」
爪'ー`)y‐「うんっ☆」
川#`ゥ´)「ギィイーッ!!」
爪'ー`)y‐「まあまあカリカリしないでよC……いやB+のお嬢さん」
川#`ゥ´)「どこ見て言ったァ! あたしのどこ見て言ったァ!!」
爪'ー`)y‐「おっぱい」
川#`ゥ´)「堂々とすんなカス!!」
ζ(゚- ゚*ζ「びーぷらす?」
爪'ー`)y‐「そうB+」
川#`ゥ´)「ムキーッ! ガキに何てもん仕込もうとしてんだ!!」
-
爪'ー`)y‐「ところでさぁB+ちゃん」
川#`ゥ´)「ヒール!!」
爪'ー`)y‐「岩なんですけどね」
川*`ゥ´)「あん? やっと諦め」
,,ξ゚⊿゚)ξ「終わったわよ」
川*`ゥ´)
ξ゚⊿゚)ξ
川*`ゥ´)「重機とか……?」
ξ゚⊿゚)ξっ「重機(拳)」
川*`ゥ´)
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ「かべ、あなある」
爪'ー`)y‐「マジでどうにか出来るもんなんだね」
-
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんつよい」
ξ゚⊿゚)ξ「まだまだよ」
爪'ー`)y‐「またまたご謙遜を」
ξ゚⊿゚)ξ「かの英雄の一人はこれくらい一撃だもの」
爪'ー`)y‐「またそう言うおとぎ話を」
ξ゚⊿゚)ξ「王都で宿屋の経営してるわよ」
爪'ー`)y‐「現存したぁ」
川*`ゥ´)
ξ゚⊿゚)ξ「で、勝負はどっちの勝ちかしら」
川*`ゥ´)「お」
ξ゚⊿゚)ξ「お?」
-=三川*`ゥ´)「覚えてろよばーかばーかクソ貧乳とクソイケメンと何か可愛いの!!」ヒュバッ
ξ#゚⊿゚)ξ「逃げんなゴラァ!!」
爪'ー`)y‐「おー飛んだ飛んだ」
ヾζ(゚- ゚*ζ「ばいばい」
-
ξ゚⊿゚)ξ「チッ……次会ったら骨の一本も折るか……」
爪'ー`)y‐「一応町中でやると怒られるからね」
ξ゚⊿゚)ξ「外に引きずり出せば良いんでしょ?」
爪'ー`)y‐「こえー」
ζ(゚- ゚*ζ「こえー?」
ξ゚⊿゚)ξ「変な言葉覚えなくて良いわよ、行きましょ」
爪'ー`)y‐「しっかしアレだねぇ」
ζ(゚- ゚*ζ「まじょさん、すごい」
ξ゚⊿゚)ξ「すごい?」
爪'ー`)y‐「虫の足持って行ったし、これだけの岩を動かせるってすごくない?」
ξ゚⊿゚)ξ「前半はともかく後半は確かに、これだけの物を動かす、あるいは生成するのはなかなか」
爪'ー`)y‐「なーんで一介の冒険者に喧嘩売るかなぁ、本家には劣っても魔女としては十分そうなのに」
ξ゚⊿゚)ξ「それが嫌なんでしょ」
-
爪'ー`)y‐「ま、お家問題は色々面倒そうだよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「うちはただの村民だったからそう言うのには縁がないわね」
爪'ー`)y‐「僕も家なんてあってなかったようなもんだしなぁ」
ζ(゚- ゚*ζ「おうち?」
ξ゚⊿゚)ξ「あー……血族とか……家系とか……」
爪'ー`)y‐「由緒正しいお家は大変って事だよ」
ζ(゚- ゚*ζ「すたるとぅ」
ξ゚⊿゚)ξ「デレの家……と言うか、家系か」
ζ(゚- ゚*ζ「デレいない」
爪'ー`)y‐「えっ」
ζ(゚- ゚*ζ「ちやう、あとデレ、いない」
ξ゚⊿゚)ξ「あー、ああ残りはデレだけって事?」
ζ(゚- ゚*ζ゙「う」コクコク
爪'ー`)y‐「やっぱ言葉覚えさせるか」
ξ゚⊿゚)ξ「不便ね」
ζ(゚- ゚*ζ「おぼえる」
-
ξ゚⊿゚)ξ「デレが言葉を覚えたら、なぜ森の中にひっそり暮らしていたのかを教えて」
ζ(゚- ゚*ζ゙「がう」コクコク
爪'ー`)y‐「意外とすごい家系だったりしてね」
ξ゚⊿゚)ξ「本人も知らないすごい家系の可能性はあるわね」
ζ(゚- ゚*ζ「すごい?」
ξ゚⊿゚)ξ「実は遥か昔から人間と共存してきた一族の末裔とか」
爪'ー`)y‐「その異端さにより同族の魔族からは忌み嫌われていたとか」
ξ゚⊿゚)ξ「人間を守り人間に守られ生きてきたのかもしれない」
爪'ー`)y‐「そしていつしかスタルトゥの者は森の番人となっていったのかもしれない」
ξ゚⊿゚)ξ「あるかもしれない」
爪'ー`)y‐「ないかもしれない」
ζ(゚- ゚*ζ(なかよし)
-
爪'ー`)y‐「ツンちゃんはさー、どんな感じのお家だったー?」
ξ゚⊿゚)ξ「別に、なんて事ない平凡な村と家だったわよ、祝い事のたびに祭りやらで踊ったり」
爪'ー`)y‐「だから踊れたのか……」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ私は生まれつきこの腕力だから、気味悪がられてたけど」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんつよい」
ξ゚⊿゚)ξ「一般人の中ではね」
ζ(゚- ゚*ζ「デレつよい?」
ξ゚⊿゚)ξ「魔族だからスタート地点が違うわ……」
ζ('(゚- ゚*∩ζ「がうー」
ξ゚⊿゚)ξ「狩るぞ」
,,ζ(゚- ゚;*ζ「キャン……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんやめてあげてよ大人げないよ……」
-
爪'ー`)y‐「それで?」
ξ゚⊿゚)ξ「それでとは?」
爪'ー`)y‐「前に寝言でお母さん捨てないでみたいな事言ってたけど」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ゚;*ζ(ぅゎ)
ξ゚⊿゚)ξ「あ……?」
爪'ー`)y‐「ほら薬師の時に」
ζ(゚- ゚;*ζ(おにさんつよい……)
ξ゚⊿゚)ξ「…………まあ親に捨てられただけですが」
ζ(゚- ゚;*ζ"「おねさん、いうない、むりいうない」フルフル
ξ゚⊿゚)ξ「母親に捨てられて森で熊に襲いかかったら返り討ちにされて死にかけましたが」
ζ(゚- ゚;*ζ"「おねさん、おねさん」フルフル
-
ξ゚⊿゚)ξ「その傷が前にお前も見た背中のアレですが」
ζ(゚- ゚;*ζ「おねさ、みた!? きず!?」
爪'ー`)y‐「大丈夫だよデレちゃん僕はホームランバーに欲情する性癖は持ち合わせていないから」
ζ(゚- ゚;*ζ"「ちやう! おにさんちやう! だいじょうぶない!」
ξ゚⊿゚)ξ「デレ」
ζ(゚- ゚;*ζ「あ、あい」
ξ゚⊿゚)ξ「誰かを憎むのは疲れるって言ったでしょ」
ζ(゚- ゚*ζ「……あい」
ξ゚⊿゚)ξ「あれは、お母さんの事よ」
⊂ζ(゚- ゚*ζ「…………おねさん」ギュ
ξ゚⊿゚)ξ「甘ったれんな」
ζ(゚- ゚*ζ「……」
ξ゚⊿゚)ξ「気遣うのはもっとやめろ」
ζ(゚- ゚*ζ「がうー……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「どうせ村もお母さんも、もうどこにも無いから」
爪'ー`)y‐「戦争で村ごとアレした?」
ξ゚⊿゚)ξ「した」
爪'ー`)y‐「ふーん、でも今は帰る場所があるんでしょ?」
ξ゚⊿゚)ξ「……狐」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「やけに踏み込むじゃない」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「人の過去をつつくほど、あんた人に飢えてるわけ?」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「ならとっとと歩いて次の町に行って娼婦でも買いなさい」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「私とデレをあんたの慰みに使うんじゃないわよ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「行くわよデレ」
ζ(゚- ゚;*ζ「が、がぅ……」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「行くわよ、クソ狐」
爪'ー`)y‐「はい」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ゚;*ζ(くうきおもい)
爪'ー`)y‐「ツンちゃん人の事言えんの?」
ξ゚⊿゚)ξ「は?」
爪'ー`)y‐「一人が寂しいからデレを拾った癖に、人の事言えんの?」
ζ(゚- ゚;*ζ(ひのことんだ)
-
ξ゚⊿゚)ξ「誰もそんな事言ってないけど」
爪'ー`)y‐「だったら」
ξ゚⊿゚)ξ「クソみたいなガキのワガママも、口に出さなきゃ叶わないのよ」
ζ(゚- ゚*ζ「わがまま……?」
ξ゚⊿゚)ξ「私は頭が悪いから駆け引きなんて出来ない、はっきりワガママ言わせてもらうわ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「だから私は、寂しいと思ったらうだうだ言葉を並べずにデレを抱き締める事が出来るの」
ζ(゚- ゚*ζ,,テケテケ
ξ゚⊿゚)ξ
づ(゚- ゚*ζ" ポンポン
⊂ )
ξ゚⊿゚)ξ「ざまーみろばーか、羨ましいか」
爪'ー`)゙ イラッ
-
爪'ー`)y‐「ツンちゃんほんっと、ほんっとムカつく」
ξ゚⊿゚)ξ「ふん、不愉快な方法で自分を慰めるのに人を使うからよ」
爪'ー`)y‐「人をホームランバーをオナネタに使う新人類みたいな言い方しないで欲しいんだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「言い返したいなら言葉使って自分保つのやめれば?」
爪#'ー`)゙ イラァ
ξ゚⊿゚)ξ「あんたの寂しいを察してあげられるほど、私は頭も察しも良くないもので」ツーン
爪#'ー`)y‐「良いよねぇ恥もクソも無いタイプのおバカさんってさー」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね恥知らずのあんたが言うと説得力あるわ」
爪#'ー`)y‐「君にうまい事言われるのが一番腹立つなぁ!」
ξ゚⊿゚)ξ「あっそ」プイ
ζ(゚- ゚*ζ(あっこれちやう、けんかない)
ζ(゚- ゚*ζ(これじゃれてる)
ζ(゚- ゚*ζ(なかよしこれ)
-
爪'ー`)y‐「あのさぁ誰でも君みたいに出来るわけじゃ無いって分かる!?」
ξ゚⊿゚)ξ「知るか」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐「君みたいにアホな思考した人間ばっかりじゃないの! 君がアホなだけだから!!」
ξ゚⊿゚)ξ「甘ったれたい人寂しいってはっきり言えよ鬱陶しい」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐「もしそうだとしても大の男が言えるわけないじゃん!? バカじゃん!?」
ξ゚⊿゚)ξ「知るかよ男の見栄とか」
ζ(゚ー゚*ζ
爪'ー`)y‐「見栄とかじゃなくてさぁ! ああもう君に一般常識を期待した僕がバカだった!!」
ξ゚⊿゚)ξ「あーはいはいあんたバカァ?」
ζ(゚ー゚*ζ
爪'ー`)y‐「何笑ってんの君」
ζ(゚- ゚;*ζそ
-
デレかわいいなぁ…
-
ξ゚⊿゚)ξ「悔しいからってデレに当たるなよ……」
爪'ー`)y‐「あたってませんー悔しくないですー!!」
ξ゚⊿゚)ξ「デレ行きましょ」
ζ(゚ー゚*ζ「がう」
爪'ー`)y‐「僕が悪いみたいな流れやめてくんない!? 僕がおかしいみたいな流れやめてくんない!?」
ξ゚⊿゚)ξ「別に悪いとかおかしいとかじゃないけど」
爪'ー`)y‐「けど」
ξ゚⊿゚)ξ「不便ね、あんた」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「森を早く抜けなきゃ、急ぐわよ」
ζ(゚- ゚*ζ「がう」
爪'ー`)y‐
-
素直だけど、心の奥では素直になれてないお姉さん。
素直じゃないけど、表面だけは正直なお兄さん。
お姉さんはまだ何かを大事にしまっているみたいだし。
お兄さんは、何も見せようとしないのに誰かのこころを覗こうとする。
いちばん素直なのは、おもしろい魔女さんなのかもしれない。
ζ(゚- ゚*ζ(おねさん、おにさん、なかよし)
ζ(゚- ゚*ζ(でもいっぱいけんか)
ζ(゚- ゚*ζ(どっち、さみしい?)
お姉さんもお兄さんもデレにやさしくて。
人間はすこしこわいけど、ちょっとずつ、二人のことをしりたいな。
デレを、ひろってくれたひとだから。
ζ(゚ー゚*ζ(おとなって、たいへん)
おわり。
-
リアタイ遭遇と思ったら終わってた
まだ読んでないけどおつ
-
ありがとうございました、本日はここまで。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
あとピャー子の顔ちょっとスリムな気がするので多分次くらいに直ると思います
直ってなかったらすみません
シリーズ作である塔・旅はや過去作はこちらから読めます!!
読みにくいなどありましたら言って下さい!!!
http☆oppao.web.fc2.com/text_smp.html
-
ほんとに良い掛け合いだわめっちゃ好き
ヒールがちょっかいかけてくるのも可愛いし
おつ
-
乙
ヒールB+ならツンちゃんに勝ってるじゃん
-
現行で一番楽しみ、頑張って!
-
デレかゆす
-
何も見せようとしないのに誰かの心を覗こうとする狐が幸せになりますように…… 乙
-
デレはかわいい(かわいい)
-
むりない
-
(「・ω・)「ガオー
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声、獣じみた幼い咆哮。
刃を振るい、歌声を響かせ、魔力を用い、路銀を稼いで進むのは三人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
そんな二人の後ろをついて歩く、小さな魔族の子供。
【道のようです】
【第九話 たかのぞみじゃないけど。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
じめじめ、しとしと、薄暗い洞窟の中。
光る苔やキノコを集めて詰めた簡易ランタンを掲げながら、見飽きたような道を進む。
持ち込んだ食料はそろそら尽きる、出てくる魔物は食える代物ではない。
私は、早くこの洞窟を抜けてしまいたかった。
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、まもの」
ξ゚⊿゚)ξ「またか……」
この数日で、デレは人よりも魔物を察知する能力が高い事もわかった。
それは恐らく魔族だからなのだろう、何か気配のようなものを強く感じるらしい。
デレは言葉はたどたどしいが、思考はしっかりしている。
ただの何も知らないお子さま、と言うわけではないようだ。
私には従順に、狐にはどこか気さくに振る舞っている。
父親にでも飢えているのだろうか、そいつは父親と言うには少し若いし細すぎると思うが。
うんざりしながらデレが指した方へ体を向けて、斧槍を構える。
岩肌の影から飛び出してきたのは、茶色くて丸い毛玉。
-
ξ゚⊿゚)ξ「これよね、依頼の魔物って」
爪'ー`)y‐「そーそー、解毒薬はあるから気にせず戦って」
ξ゚⊿゚)ξ「ったくもう……少し面倒なだけで弱いったら……無いっ!」ズシャッ
ζ(゚- ゚*ζ「つよい」
この毛玉の魔物は鋭い牙を持つ口があり、油断をすると腕くらいなら食い千切るだろう。
しかしこいつが周知されて久しく、今となっては怪我をする事がまれだ。
それと、斬り殺すと体内の毒があふれだす。
この毒もまた厄介で、特定の薬でなければ解毒は不可能とされている。
まあ解毒薬も近隣の町で普通に買えるのだが。
つまり私にとってこいつは、飯にもならない、強くもない、気を抜く事も出来ない面倒なだけの魔物。
-
斧を振り抜き両断して、一歩下がって毒をかわす。
時には斧の先端で突き殺して、振り払い捨てる。
そんな単純で面白味の無い戦闘ばかり。
とっととここを抜けて、美味しいものを食べたい。
そう、ここを抜ければ海辺の町。
年中暖かく、海で泳ぐ事も出来る町。
つまり海の幸がおいしい。
海に潜れば食べ放題。
美味しいご飯が死ぬほど食える。
それにこんな楽しくも心躍りもしない戦闘ともおさらばだ。
ああ血沸き肉躍る戦いがしたい。
あと焼き肉とか食べたい。
爪'ー`)y‐「ツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「うん?」
爪'ー`)y‐「よだれ」
ξ゚⊿゚)ξ「おっとジュル」
-
爪'ー`)y‐「何考えてるか分かりやすすぎるよツンちゃん……そんなに海の幸が食べたいの……」
ξ゚⊿゚)ξ「いや今は焼き肉が」
爪'ー`)y‐「そっちかー」
ζ(゚- ゚*ζ(どっち)
爪'ー`)y‐「ま、何にせよ楽しみだねー海だよ海」
ζ(゚- ゚*ζ「うみ」
ξ゚⊿゚)ξ「デレは見た事無い?」
ζ(゚- ゚*ζ「ある、あかいの」
爪'ー`)y‐「それは魔界の海かな?」
ζ(゚- ゚*ζ「ちやう、おひさま」
ξ゚⊿゚)ξ「あー夕日か」
爪'ー`)y‐「綺麗だよねぇ」
ζ(゚- ゚*ζ「こわかった」
ξ゚⊿゚)ξ「あー……」
爪'ー`)y‐「言われてみれば真っ赤な水平線ってちょっと怖いか……」
ξ゚⊿゚)ξ「幼心には怖いかもしれない……」
-
ζ(゚- ゚*ζ「うみ、ほんとはあお、しってる」
爪'ー`)y‐「お、知ってるのか」
ξ゚⊿゚)ξ「青くて広いわよ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんは何で海が青いか知ってる?」
ξ゚⊿゚)ξ「空を映すから」
爪'ー`)y‐「お、おぉ……じゃあ空が青いのは?」
ξ゚⊿゚)ξ「海を映すから」
爪'ー`)y‐「くっ……妙に詩的な返答を……ッ!」
ζ(゚- ゚*ζ「ひかりあおいから」
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「あおいちばんつよい」
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「だからあお」
爪'ー`)y‐「見ろツンちゃん、これが君より賢い9歳だ」
ξ゚⊿゚)ξ「やかましいわ」
-
爪'ー`)y‐「やっぱデレちゃんは言葉知らないだけなんだよなぁ」
ζ(゚- ゚*ζ「がう」
ξ゚⊿゚)ξ「少し語彙が増えてきたわね」
ζ(゚- ゚*ζ「ごい」
ξ゚⊿゚)ξ「言葉のアレ、あの、えーと……」
ζ(゚- ゚*ζ?
ξ゚⊿゚)ξ「いっぱいの言葉……?」
爪'ー`)y‐「待ってツンちゃん、君の語彙が死んでどうするの」
ξ゚⊿゚)ξ「と、とにかくどんどん言葉を覚えれば良いのよ!」
爪'ー`)y‐「まぁ間違ってたら訂正すれば良いしね……」
ξ゚⊿゚)ξ「ほらさっさと歩く! お腹空いた!!」
ζ(゚- ゚*ζ(ごいとは)
-
爪'ー`)y‐「そうそう、海楽しみなんだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「さっきも聞いたわね」
爪'ー`)y‐「だって年中温暖な地域なんでしょ? 泳げるらしいじゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、それが売りみたいだし」
爪'ー`)g゙「水着だよツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)g「水着のお姉さんがたくさん居る筈だよ」
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)g「僕らも脱ぎやすいように水着にならないとね!」
_,
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚;*ζ
-
< マッテマッテ
< ノルマニハチョット
< グシャー ギャー
,,ξ゚⊿゚)ξ「行くわよ」ズルズル
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
ξ゚⊿゚)ξ「……水着か、考えてなかった」
ζ(゚- ゚*ζ「みずぎ……」
ξ゚⊿゚)ξ「デレにも買わなきゃね」
ζ(゚- ゚;*ζ「がう、がぅがぅ、デレいらない、これでいい」
ξ゚⊿゚)ξ「服で海に入ると劣化するから駄目よ、着替えないと」
ζ(゚- ゚;*ζ「がうあぅ、いらない、きない」
ξ゚⊿゚)ξ「別に遠慮しなくて良いわよ、稼ぎもまだたっぷりあるし」
ζ(゚- ゚;*ζ「がぅぅぅ……」
-
ξ゚⊿゚)ξ(やっぱり遠慮するのかしら……服とか買い与えるの嫌がるし)
ζ(゚- ゚;*ζ(ひらひら、ぴんく、きるない、ふつういい)
ξ゚⊿゚)ξ(デレは役に立つ事もあるし、気にしなくて良いんだけど)チラッ
ζ(゚- ゚;*ζ(でもはっきりいうない、おねさんしょんぼり、がうがう……)チラッ
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚;*ζ
ξ゚⊿゚)ξ(まだ肩身が狭いと思ってるのかしら)
ζ(゚- ゚;*ζ(おねさんいいひと、しょんぼりだめ、でもひらひらない)
ζ(゚- ゚;*ζ(おにさんないわかってる、わかってやってる、たちわるい)
ζ(゚- ゚;*ζ(おねさんしらずにやってる、ひらひらぴんく、もっとたちわるい)
ζ(゚- ゚;*ζ「きゃぅー……」
ξ゚⊿゚)ξ「鳴くな」
-
肉塊を引き摺りながら歩いていると、デレの尻尾がぱたぱたと揺れた。
すんすん、何かを嗅ぐ動作をしてから、ぱっとこっちを見る。
困惑したような、期待しているような眼差し。
子供らしいその顔に、少し笑ってしまって。
ξ゚ー゚)ξ「潮の匂いでもする?」
ζ(゚- ゚*ζ「がう! しょっぱい、ふしぎ、におい!」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ出口はすぐね、行きましょ」
ζ(゚ー゚*ζ「あい!」
ξ゚⊿゚)ξ(たまに笑うなこいつ)
ζ(゚- ゚*ζ(おねさんたまにわらう)
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「何よ」
ζ(゚- ゚*ζ"「あう」フルフル
-
ずるずる、足を掴んで引き摺る肉塊。
重さが増してきたからそろそろ起きるだろう。
それよりも、洞窟の終わりが見えてきた。
光の差し込む出口、もう私でもはっきりと海の匂いを感じられる。
デレと並んで、光の中に踏み込む。
眩しさに目を細めて、全身を包む暖かさを感じて、耳に届くのは波の音。
どさ、と持っていた足を落として、大きく伸びをする。
数日ぶりの日光は、なんと気持ちの良いことか。
ξ-⊿-)ξ「あ゙ぁー……洞窟長かったー」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、おつかれさま」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」
爪'ー`)y‐「じゃあ役所からの宿だね」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、あらかた狩り尽くしたし報告頼むわ」
爪'ー`)y‐「はいはいっと」
ζ(゚- ゚*ζ(おにさんよみがえるはやい)
爪'ー`)y‐「見てツンちゃん、この子もう慣れてる」
ξ゚⊿゚)ξ「だから三日で慣れると言ったのに」
-
役所で報告、宿を決める、荷物を置く、買い出しをする、必要な事を全て終わらせてからが自由時間。
私は財布を握る狐の腕を引いて、屋台の並ぶ通りに真っ直ぐ向かった。
貝や海老の網焼き、魚のスープに珍しい果物、ジュースやデザートまで並んでいる。
ξ*゚⊿゚)ξ「お……おぉ……」
爪'ー`)y‐「観光客向けかなー、結構充実してるねぇ」
ξ*゚⊿゚)ξ「海老が!!」
爪'ー`)y‐「はいはい順番に回りましょうねー」
ξ*゚⊿゚)ξ「お腹空かせてきて良かった……!!」
爪'ー`)y‐「さっきまで不機嫌だったのに……って言うか痛いから手離して、そろそろ砕ける」
ζ(゚- ゚*ζ「もろい」
爪'ー`)y‐「デレちょっと交代してみて」
ζ(゚- ゚*ζ「ぎゅ」
ξ゚⊿゚)ξ「ん? ……何でデレが手握ってんの、迷子になるから?」
ζ(゚- ゚*ζ「ふつう」
爪'ー`)y‐「くっそー相手を察知したかー……」
-
爪'ー`)y‐「ほら金貨渡すから、一気に使わないでよね」
三ξ*゚⊿゚)ξ「まず一つずつ食べる!」
爪'ー`)y‐「元気だなー」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんたべるない?」
爪'ー`)y‐「僕は少量でも平気だから……デレちゃんは何か食べる?」
ζ(゚- ゚*ζ「すんすん……あれ」
爪'ー`)y‐「あー甘いやつね、はいはい」
ζ(゚- ゚*ζ「おいし?」
爪'ー`)y‐「不味いものは並ばないと思うよ、はいどーぞ」
ζ(゚- ゚*ζ「ありあと」
爪'ー`)y‐「少しずつ覚えるねぇ言葉」
-
ζ(゚〜゚*ζモチャモチャ
爪'ー`)y‐「ココナツタルトかぁ、甘そう」
ζ(´- `*ζ「ねっとり」
爪'ー`)y‐「美味そうに食べるね君も」
ζ(´- `*ζ「あまいー」
爪'ー`)y‐「何か飲む?」
⊂ζ(´- `*ζ「あう、おいし」
爪'ー`)y‐「くれるの?」
ζ(´- `*ζ゙「う、はんぶん」
爪'ー`)y‐「一口で良いよ、はい」
ζ(´〜`*ζ「うまうま……あまあま……」
爪'ー`)y‐(美味しいけどくっそ甘いなこれ……やっぱ子供舌なんだなぁ)
ζ(´- `*ζ「ぷあ、ごちさま」
爪'ー`)y‐「はいはい、喉乾いたし何か飲もうね」
-
デレかわええ
支援
-
フォックスの手ギュッとしてるツンちゃん萌ゆる
しえん
-
爪'ー`)y‐「あと水着見ようね」
ζ(゚- ゚*ζ「デレひらひらない」
爪'ー`)y‐「知ってる」
ζ(゚- ゚*ζ「ふつうきる、いい」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんがどう言うかなぁ?」
,_
ζ(゚、゚*ζ
爪'ー`)y‐「そんな顔しなーいのっ☆」
,_
ζ(゚- ゚*ζ(おにさんひどい)
爪'ー`)y‐(ツンちゃんには嫌な顔見せないのになぁ)
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんいじわる」
爪'ー`)y‐「そんな事なーいよー?」
ζ('(゚- ゚∩*ζ「いじわるーがうー」
爪>ー<)y‐「キャーコワーイ」
ξ゚⊿゚)ξ「どつき回すぞお前……」
爪'ー`)y‐「子供とのじゃれあいを見られた……」
-
爪'ー`)y‐「どしたの? 食べたいものあった?」
ξ゚⊿゚)ξ「一通り食べ歩いた結果あの屋台が一番好みだった」
爪'ー`)y‐「はいお小遣い」
三ξ゚⊿゚)ξ「ありがとうございます」ダッ
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんごはんすき」
爪'ー`)y‐「好きすぎて引く」
ξ゚⊿゚)ξ「なんだその言いぐさ」
爪'ー`)y‐「早いな!?」
ζ(゚- ゚*ζ「たべた?」
ξ゚⊿゚)ξつ「はいあんた達の分」
爪'ー`)y‐「あ、ありがと」
ζ(゚- ゚*ζ「むし?」
爪'ー`)y‐「海老、でっかいなーツンちゃ もういねえ」
ζ(゚- ゚*ζ「むこういった」
爪'ー`)y‐「屋台が店仕舞いになるな……」
-
ζ(゚- ゚*ζ「いたあきます」
爪'ー`)y‐「はいはい」
ζ(゚〜゚*ζモッギュモッギュ
爪'ー`)y‐「海老の腹に……香草とかチーズか、手掴みはアレだけど」
ζ(゚ヮ゚*ζ「おいし!」
爪'ー`)y‐「うん、美味しいね」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐?
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんはりあいない」
爪'ー`)y‐「おっと辛辣に刺さったぞ?」
ζ(゚- ゚*ζ「……おにさん、さみし?」
爪'ー`)y‐「は」
ζ(゚- ゚*ζ「ぎゅーする?」
爪'ー`)y‐「しないです」
-
⊂ζ(゚- ゚*ζ「うー」グイグイ
爪'ー`)y‐「しませんそんな趣味無いです」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐
ζ(゚皿゚#*ζ「がう!!」ガブー
爪;'Д`)y‐「いったぁ!?」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんめんど」
爪;'Д`)y‐「急に噛みついてそれ!?」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんさみし、ない、うそ、めんど」
_,
爪' -`)y‐「…………」
ζ(゚- ゚*ζ「さみしいう、ぎゅーする」
_,
爪' -`)y‐「しません」
,_
ζ(゚、゚*ζ「ぐるる……」
-
爪' -`)y‐「子供が何言ってるのさ、さっさと他の店行くよ」
ζ(゚- ゚*ζ
爪' -`)y‐「……無いから、寂しいとか無いから」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん」
爪' -`)y‐「…………」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんまえ、つよがる」
_,
爪' -`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「デレまえ、つよがるない」
_,
爪' -`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「デレまえ、はずかしいない、いう」
爪' -`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんきにするない、デレへいき」
-
デミタスが食らった毒か
-
爪'ー`)y‐「……はーぁ、言葉なんか覚えなきゃ良かったのになぁ」
ζ(゚- ゚*ζ「がう?」
爪'ー`)y‐「強がるなとか、君に言われたんじゃねぇ……」
ζ(゚- ゚*ζ「……デレへいき、ぷらいど、わかる」
爪'ー`)y‐「……寂しくない人間なんてさ、居ないよね」
ζ(゚- ゚*ζ「あう」
爪'ー`)y‐「お店のお姉さんとかなら平気なんだけどなぁ、ツンちゃんって何かムカつくからさ
ツンちゃんに煽られると、なーんか無性に腹が立つんだよねぇ……」
ζ(゚- ゚*ζ「がうー」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんは妙に素直な所があるだろ? 僕はその部分では、どうにも素直になれないから」
⊂ζ(゚- ゚*ζ「……」ギュ
爪'ー`)y‐「手しか繋がないよ」
ζ(゚- ゚*ζ゙「あう」
-
爪'ー`)y‐「……変な所でプライドが出てくるから、羨ましいんだろうなぁ」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
爪'ー`)y‐「ほらもう良いでしょ? 早く行こうよ、男のこんな愚痴は女々しいだけだよ」
ζ(゚- ゚*ζ゙「ん」
爪'ー`)づ「…………ちょっとすっきりしたよ、ありがと」ワシャワシャ
ζ(- -*ζ「うー」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんには秘密にしてよね? お兄さん恥ずかしいから」
ζ(゚- ゚*ζ゙「がう!」
爪'ー`)y‐「んー……僕も駄目になってんだなぁ……」
ζ(゚- ゚*ζ「う?」
爪'ー`)y‐「人の事言えないなぁって、ね……今日は飲むかぁ」
ζ(゚- ゚*ζ「おとなたいへん」
爪'ー`)y‐「そーだよぉ大変なんだ、大人は勝手に自分を大変な境遇に置いちゃうからねぇ」
ζ(゚- ゚*ζ「むつかし」
爪'ー`)y‐「君もあの子も、そのままで良いんだよ、僕みたいに面倒にならなくて良いんだ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい?」
-
爪'ー`)y‐「ほら、服とか見ようね! ツンちゃんと違って君は飾って楽しめるんだから!」
,_
ζ(゚- ゚*ζ「う゛ー」
爪'ー`)y‐「ふふーん、君がひらひらしたの着たらツンちゃんは喜ぶんじゃないかなー?
あの子はそこまで可愛いものが好きって訳じゃないけど人を着飾らせるのは楽しむからねぇ」
,_
ζ(゚- ゚*ζ「がるる……」
爪'ー`)y‐「ほーらツンちゃんが喜ぶんだよー? 嫌がってるって知ったらしょんぼりするだろうなー」
,_
ζ(゚ぺ*ζ「おねさんごしゅじん……しょんぼりない……ううう……」
爪'ー`)y‐(嫌なら着なくて良いと思うけどなぁ、ツンちゃんそんな気にしないし)
,_
ζ(゚、゚*ζ「う゛ー……おねさんうれしい……デレうれしい……」
爪'ー`)y‐(すっかり拾われた事で忠誠心が……犬かな? いや犬の方が警戒するな)
ζ(゚- ゚*ζ「ひらひらない……でもきる……」
爪'ー`)y‐(飼い主にワガママ言えば良いのに……まぁ無理か、元奴隷だしなぁ)
ζ(゚- ゚*ζ「ひかえめでたのむ」
爪'ー`)y‐「流暢だなおい」
-
がつがつ、もぐもぐ。
我ながら食への執着が強いなと実感する量を食べながら、道を挟んだ向こうに居る二人を見る。
店の中を覗いたり服を選んだり、狐が可愛らしい水着を両手にデレに差し出しては、
嫌そうに顔を歪めながら首を横に振るデレと、けらけら笑う狐。
デレは私に素直に従うが、狐には嫌そうな顔も見せる。
まあ私の事は怖いのかもしれない、首輪や枷を素手で引きちぎったのはまずかったか。
狐が死んでも蘇るため忘れがちだが、私は人の頭を一息に握り潰せる様な力を持つ。
その事で人に恐れられたり気味悪がられていたのに、時おりそれを忘れてしまう。
麻痺してしまったのかもしれない。
もしくは、救われているのかもしれない。
あの軽薄で女々しい男によって、私は報われたのかもしれない。
いやまあ腹は立つしぶん殴るし護衛対象なのに盾にして斬り付けるけど。
それでも孤独を取り払い、私の力を怖がらないあの男には、少し感謝している。
もちろん、未だひ弱く幼い庇護の対象であるデレにもまた、存在を感謝しているのだが。
怒るデレと笑う狐。
私の前では従順に振る舞うデレの捌け口が狐なのだとしたら、それもやっぱり狐に感謝する事だ。
どうやらデレは可愛らしい服は嫌らしい、しきりに嫌そうに狐の持つ服を拒否している。
つまり私の選んだ服も嫌々着ていると言うわけだ。
そうかそうか、知らんな。
嫌だと私にはっきり言えるようになるまで可愛らしい格好をさせてやろう。
-
ああ、狐が若い女性店員に話し掛けている。
どうやらデレの水着が決まったらしい、その本人は何一つ納得していない顔だが。
また値切っているのか、店員に詰め寄りながら耳元で何かを囁く。
顔を赤くした店員が困ったように頷いて、狐は満足げに笑う。
あの様子だと、夕飯の後に居なくなるのだろうな。
あいつはああやってよく店の人間を捕まえては食い物にして、夕飯を済ませたら夜の町に繰り出す。
まあそうやって情報を得たり金を稼いだり、息抜きも兼ねてやっているのだろう。
別に好きにすれば良いとは思うしどうでも良い。
ただ夕飯は揃って食う事を義務とした。
しかし、ああ言う時の狐は生き生きしている。
女を手玉にとり、食い物にするのが領分なのだろうか。
店員の肩やら腰やらに腕を回して話していて、店員は満更では無さそうで。
狐は見てくれは良いし、他人に対しては口がうまい。
人をその気にさせる事に長けていると言うか何と言うか、まあ悪い気はしないのだろう。
しかし足元で自らの耳を塞ぎながら服を見つめるデレの事も考えろと。
-
店員の髪に指を絡ませたり、手を握ったり。
あれされても鬱陶しいだけだろうに、なぜ世の女子はあれで頬を染めるのだろう。
そういや幼馴染みが言っていた、女の子にはときめきが必要だと。
お姫様になるのが夢なのだと、恋を捨て鍛練と修行の道を進んだ幼馴染みが言っていた。
本で得た知識を語ったあの子ともずいぶん会っていない、今はどうしているだろう。
あ、何か約束してる。
仕事終わったら迎えに行って酒場コースかなあれ。
せめて風呂入ってから帰ってこいよな。
化粧の匂いが嫌いなんだよなあ、胸がむかむかする。
ああしかし、余裕たっぷりといった狐の澄まし顔。
あの獲物を見る獣みたいな冷たい目は、私と話す時には決して見せない。
つまり私は獲物じゃないって事で。
それでもあいつには、狩りが必要なのだろう。
なら好きに狩ると良い、人に迷惑をかけずに、呪われない程度になら。
好きに狩りをして、好きに楽しみ、好きに貪り、好きなように遊ぶと良い。
その分、私はこうして飽食に明け暮れる事が出来る。
狐にとって必要な娯楽が狩りなら、私にはこれが必要なのだ。
-
燃費が悪く、飽食に耽り、どんなものでも噛み砕く。
虫も形がそのままだったりしなければ平気だし、お腹が満たされる事で幸せになる。
食べる事は好きだ。
物理的にも精神的にも満たされる。
けれど時々感じる虚無感は何なのだろう。
一人で食べても美味しくないし、食べても食べても満たされない時もある。
目の前に並ぶごちそうを見つめる事で、何かから目をそらし続けているような。
ああ、やめよう、せっかくの海の幸が不味くなる。
そうだ、デレにも娯楽を与えてやらないとな。
何か趣味でも見付けられれば良いのだが。
しかしまだワガママを言えやしないだろう。
少しずつ、溶かす様に馴染んで、ワガママを言えるまで育てば良い。
だからそれまでピンクのひらひらを着せる。
さて、屋台を一つ潰した事だし、そろそろ合流するか。
-
,,ξ゚⊿゚)ξ「水着、決まったの?」
ζ(゚- ゚*ζ「がう……」
ξ゚⊿゚)ξ「可愛いじゃない、きっと似合うわよ」
ζ(゚- ゚*ζ「ありやと……」
ξ゚⊿゚)ξ(嫌がってるわー)
爪'ー`)y‐「あ、ツンちゃん食べ終わった?」
ξ゚⊿゚)ξ「店一つ潰した」
爪'ー`)y‐「うわぁ店の人泣いてる」
ξ゚⊿゚)ξ「お金は払ったのに不思議よね」
爪'ー`)y‐「そうだね不思議だね、ツンちゃん水着は?」
ξ゚⊿゚)ξ「適当に選ぶわよ」
爪'ー`)y‐(あっこれ色気ゼロの袖付いてるやつ選ぶな)
-
ξ゚⊿゚)ξ「あんたのは?」
爪'ー`)y‐「ただの海パンだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「アロハとか」
爪'ー`)y‐「着ませんねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「帽子とサングラスとアロハで最高に胡散臭くなると思うんだけど」
爪'ー`)y‐「着ませんねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「面白そうなのに……」
爪'ー`)y‐「面白さを求めてないんだよなぁ……!」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ着替えてきなさいよ、私も選んどくから」
爪'ー`)y‐「そうしますかぁ、デレちゃん行きますよー?」
ζ(゚- ゚*ζ「がぅ……きる……」
ξ゚⊿゚)ξ(嫌そうだわー)
爪'ー`)y‐(嫌々だわー)
-
ξ゚⊿゚)ξ「さて、どれにするか……」
,,(*゚ー゚)「お決まりですかー?」
ξ゚⊿゚)ξ「あー……すみません、これのサイズなんですけど」
(*゚ー゚)「あっ、申し訳ありません……お客様のサイズだとこちらしか……」
ξ゚⊿゚)ξ「どの辺のサイズですかね」
(*゚ー゚)「あー……えー……っとー…………お客様は細身でいらっしゃいますのでぇー……」
ξ゚⊿゚)ξ
(;*゚ー゚)
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ合うやつで良いです」
(*゚ー゚)「ホッ それではこちらで」
ξ゚⊿゚)ξ「あとさっきの男ろくでなしだって同僚の方に伝えといて下さい」
(*゚ー゚)「アッハイ」
-
爪'ー`)y‐「海だー!」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐「海だよデレちゃん! 青くて広いだろ!」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐「そんな嫌そうな顔で立ってないでさぁ、ほら可愛いよ女児水着よく似合ってるよ?」
ζ(゚- ゚*ζ「デレひらひらない……うごくらくすき……」
爪'ー`)y‐「可愛さより動きやすさってツンちゃんみたいな事言うよね……飼い主に似るのかな??」
ζ(゚- ゚*ζ「ぴんくない……」
爪'ー`)y‐「何色が好き?」
ζ(゚- ゚*ζ「おつきさまいろ……」
爪'ー`)y‐「じゃあシンプルで黄色の水着のが良かったの?」
ζ(゚- ゚*ζ「あい……」
-
爪'ー`)づ「そっかそっかー」ポンポン
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ヮ`)y‐「飾って遊びたいからそれは無しだな!!」
ζ(゚皿゚#*ζガブー
爪;'Д`)y‐「ぁあいったい!!」
浜辺のパラソルの下ではしゃぐ二人。
デレは上下に分かれたピンクの水着、花があしらわれて可愛らしい。
狐はシャツと赤い水着を着たまま、珍しく前髪を上げている。
まあ何と目立つ二人か。
見付けやすくて助かるが。
,,ξ゚⊿゚)ξ「なに遊んでんのあんたら」
爪'ー`)y‐「あっツンちゃん聞いてよデレが急n」
ζ(゚- ゚*ζ「あう、おねさんみずぎにやう」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」
-
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんとまた」
ξ゚⊿゚)ξ「何なんだよお前は」
爪'ー`)y‐「…………ビキニかぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「何か文句が?」
⊂ζ(゚- ゚*ζ「かわい」グイグイ
ξ゚⊿゚)ξ「脱げる脱げる」
ζ(∩-∩*ζキャー
ξ゚⊿゚)ξ「やめんか」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんが……ビキニかぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「なんだよ……」
-
爪'ー`)y‐「この世で最も有り難みの無いビキニかぁ……!!」
ξ゚⊿゚)ξ「死に足りないと見た」
爪'ー`)y‐「だって何!? どんな勇気を振り絞ってビキニ選んだの!? その体型で!?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「ツンちゃん冷静になってよ君A−くらいだよね胸!? ホームランバーだよね!?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「それなのに何でそんな命知らずな格好を選んだの!? 店員さん止めなかったの!?」
ξ゚⊿゚)ξ「命知らずはお前だ」
< アッ マッテマッテ ノルマハモウ
< ブチブチグシャー
< ウギャー
ζ(∩-∩*ζヒエー
-
ξ゚⊿゚)ξ「埋めておくか」
ζ(゚- ゚*ζ「しょこいんめつ」
ξ゚⊿゚)ξ「しばらくすれば勝手に生えてくるわよ」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんはえる……」
ξ゚⊿゚)ξ「生える生える」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、あおにやう」
ξ゚⊿゚)ξ「そう?」
ζ(゚- ゚*ζ「あおしろにやう、すき」
ξ゚⊿゚)ξづ「ふむ、ありがとう」ワシャワシャ
ζ(>- <*ζヒャー
ξ゚⊿゚)ξ「あんたも似合ってるわよピンク」
ζ(゚- ゚*ζスッ…
ξ゚⊿゚)ξ(真顔に)
-
ξ゚⊿゚)ξ「デレは泳げるの?」
ζ(゚- ゚*ζ゙「およぐ」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ泳ぎましょうか」
ζ(゚- ゚*ζ「あい!」
ξ゚⊿゚)ξ「ついでにウニとか取りましょう」
ζ(゚- ゚*ζ「たべる?」
ξ゚⊿゚)ξ゙「当然」
ζ(゚- ゚*ζ(よくぼうちゅうじつ)
ξ゚⊿゚)ξ「それにしても、本当に暖かいわね……」
ζ(゚- ゚*ζ「ぽかぽか」
ξ゚⊿゚)ξ「地熱だか何だかだったかしら……温泉もあるらしいわよ」
ζ(゚- ゚*ζ「おんせん?」
ξ゚⊿゚)ξ「大きい風呂」
ζ(゚- ゚*ζ「おふろ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「旅の疲れも癒えるわね」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんおつかれ?」
ξ゚⊿゚)ξ「少しね、でも今は泳ぎましょう」
ζ(゚- ゚*ζ「がうー」パシャパシャ
ξ゚⊿゚)ξ(犬かき)
ζ(゚- ゚*ζ「がう」バシャー
∞',⊂彡
ξ゚⊿゚)ξ「魚を……!?」
ζ(゚- ゚*ζ「たべる?」
ξ゚⊿゚)ξ「生でもいけるのかしら……」ゴクリ
爪'ー`)y‐「焼くなりしようよ」
ξ゚⊿゚)ξ「あら狐、生きてた?」
爪'ー`)y‐「死んでた死んでた、何たって腹を手で破られた」
-
ξ゚⊿゚)ξ「あっさり死ねたでしょ」
爪'ー`)y‐「完全に埋められたからリスキルされたよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「嬉しいハプニングね」
爪'ー`)y‐「どちらかと言うと砂に埋まるよりも女の子の胸に埋まる方が好きかなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、めりこむ的な」
爪'ー`)y‐「テクスチャバグかな?」
ζ(゚- ゚*ζ(てくすちゃとは)
ξ゚⊿゚)ξ「しかしあんた」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「普段隠れてる片目がアレとかそう言うのは無かったのね……」
爪'ー`)y‐「ああ無いよ、ただの前髪だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「邪魔だろ……切れよ……」
爪'ー`)y‐「やだよ好きにさせてよ……」
-
ζ(゚- ゚*ζ「デレかみきる?」
ξ゚⊿゚)ξ「デレは良いのよ」
爪'ー`)y‐「贔屓だ」
ξ゚⊿゚)ξ「差別よ」
爪'ー`)y‐「区別ですら」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた顔はいいんでしょ? じゃあ出しとけば良いじゃない」
爪'ー`)y‐「顔が良いから半分隠すんだよ、全部見れた時に達成感あるでしょ」
ξ゚⊿゚)ξ「いや知らんが」
爪'ー`)y‐「ベッドでこうやって前髪上げると喜ばれるんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「へー」
爪'ー`)y‐「死ぬほど興味なさそう」
ξ゚⊿゚)ξ「無い」
爪'ー`)y‐「つらい」
-
ξ゚⊿゚)ξ「と言うかいつまでパラソルの下に居るのよ」
爪'ー`)y‐「んー? 僕はこうやって眺める方が合ってるから」
ξ゚⊿゚)ξ「泳げよ、つか脱げよ上」
爪'ー`)y‐「えー良いってー体力は夜に温存するのー」
ξ゚⊿゚)ξつ「ほら脱ぎなさいよ」グイグイ
爪'ー`)y‐「やーだーぁやめてーぇヘンターイ」
ξ゚⊿゚)ξ「そういやあんたの服って丈夫ね」
爪'ー`)y‐「特注だよ、僕が身に付けてる間はほころびも自動で直る魔法がかけてある」
ξ゚⊿゚)ξ「凄いなおい」
爪'ー`)y‐「三着目」
ξ゚⊿゚)ξ「残り二着は」
爪'ー`)y‐「死んでる間に剥ぎ取られた……」
ξ゚⊿゚)ξ「あっうん……手元に戻る魔法もかけろよ……」
爪'ー`)y‐「それは値段がヤバい……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ほら来なさい」
爪'ー`)y‐「やーだぁ☆」
ξ゚⊿゚)ξ「何のための海だよ泳げよ」
爪'ー`)y‐「女の子を眺めたりつまみ食いするための海だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら見なさいよデレだって泳いでるわよ」
ζ(゚- ゚*ζ「うにいた」
ξ゚⊿゚)ξ「デレそれはウニに似た毒を持つアレだから食べられないわ」
ζ(゚- ゚*ζ「こわ」
爪'ー`)y‐「ほら海は危ないことばっかりだよ、入るもんじゃなくて眺めるもんだって」
ξ゚⊿゚)ξ「入りたくない言い訳に使うんじゃない」
爪'ー`)y‐「日焼けするしぃ?」
ξ゚⊿゚)ξ「はい日焼け止め、塗る?」
爪'ー`)y‐「んぇぇぇえーぇ?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ狐」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたまさか泳げないとか」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「別に?」
ξ゚⊿゚)ξ「こっち見ろ」
爪'ー`)y‐「泳げますし?」
ξ゚⊿゚)ξ「顔を背けるな」
爪'ー`)y‐「海とかもう僕のテリトリーですし?」
ξ゚⊿゚)ξ「狐……耳まで赤いよ……」
爪∩Д∩)「人間は泳ぐように出来てないんだよぉ!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「あっ……ごめん……地雷だったのこれ……ごめん……」
-
,,ξ゚⊿゚)ξバシャバシャ
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、おにさんは?」
ξ゚⊿゚)ξ「拗ねた」
ζ(゚- ゚*ζ「ぇぇ……」
ξ゚⊿゚)ξ「まさか泳げないのがコンプレックスだったとは……腕力無いんだし同列にして胸張れば良いのに」
ζ(゚- ゚*ζ「できない、しない、ちやう」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね……あいつは見た目のためだけに体型は整えるけどスポーツは観戦専門タイプよね……」
ζ(゚- ゚*ζ「できないつらい」
ξ゚⊿゚)ξ「泳ぐ事は出来ない事だったかぁ……そっかぁ……出来ないならしょうがないわよね……」
ζ(゚- ゚*ζ(おねさんやさし、ふしぎ)
-
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ人には得手不得手があるから……」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「だから気にしなくて良いと思うのよ狐……」
爪∩-∩)
ζ(゚- ゚*ζ(おもたよりちかくいた)
ξ゚⊿゚)ξ「私が悪かったから、よっぽど触れられたくなかったのねそれ」
爪∩-∩)「泳げないとかかっこわるい……」
ξ゚⊿゚)ξ「それは最初からよ」
爪∩-∩)
ζ(゚- ゚;*ζ(ぅゎぁ)
ξ゚⊿゚)ξ「そろそろ機嫌直してよ……悪かったから……」
爪∩-∩)「かっこわるいからむり……」
ξ゚⊿゚)ξ(最初から無理じゃねーか……)
-
ξ゚⊿゚)ξつ※「ほら、ウニあげるから許せ」
爪;'Д(※「やめて!?」
ξ゚⊿゚)ξ「美味しいわよ」
爪;'Д(#)「普通に刺さったけどね!?」
ξ゚⊿゚)ξ「大変顔が腫れたわ……今日の予定のためにも一度殺して治さないと……」
爪;'Д∩「ツンちゃんは僕の命を軽んじすぎじゃない!? 困ったら殺そうとしてない!?」
ξ゚⊿゚)ξ「いいいいや決してそんな」
爪;'Д`)「対応に困ったから殺そうとしたね!? 絶対そうだよね!?」
ξ゚⊿゚)ξ「気のせいよ気のせいほら波打ち際で遊ぶくらいなら平気よ」グイグイ
爪;'Д`)y‐「えぇぇぇえ……まぁ水に顔つけなければ……」
ξ゚⊿゚)ξ「ハッ……まさか、こないだの溺死がトラウマになった……!? ごめん……!!」
爪;'ー`)「ああいや……その前からあったからトラウマ呼び起こした方かな……」
ξ゚⊿゚)ξ「やだごめん……」
爪'ー`)y‐「良いようん……波打ち際で遊ぼうか……」
ζ(゚- ゚*ζ(なかなおりした)
-
ξ゚⊿゚)ξ「トラウマって何なの? 溺死?」
爪'ー`)y‐「あー子供の頃にちょっとねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「死んだの?」
爪'ー`)y‐「呪いは近年受けたものだから」
ζ(゚- ゚*ζ「のろい?」
爪'ー`)y‐「ああ説明してなかったっけ、こわーい魔女の呪いを受けたんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「すけこましが相手を見ずに手を出したから自業自得でこうなったのよ」
ζ(゚- ゚*ζ「なるほど」
爪'ー`)y‐「納得されちゃったかー」
ξ゚⊿゚)ξ「で、死にかけたの? 川に流されたとか?」
爪'ー`)y‐「んーあー……水瓶に頭を押し込まれた感じ」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「まぁ珍しい事じゃなかったけどね、日常風景の一つで」
ξ゚⊿゚)ξ
-
爪'ー`)y‐「だからまぁ水に顔つけるのが今でもなーんか嫌いでねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「いくつの頃の話……?」
爪'ー`)y‐「まだガキだったけどなぁ、たぶん6歳から12歳の間」
ζ(゚- ゚*ζ(ひろい)
ξ゚⊿゚)ξ「何の咎で……」
爪'ー`)y‐「うまく財布を盗めなかったから」
ξ゚⊿゚)ξ(あっ)
ζ(゚- ゚*ζ(あー)
爪'ー`)y‐「あとはうまく客を呼べなかったとかそんな感じ」
ξ゚⊿゚)ξ(あっこれ……貧民街に住んでたタイプか……あぁっ……)
爪'ー`)y‐「あとはー」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん」
爪'ー`)y‐「ん?」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん」
ξ;∩⊿∩)ξ
爪'ー`)y‐「あぁぁー……そうだったーめんどくさかったー……」
-
爪'ー`)y‐「んー……まぁ良いや、お城作ろうお城」
ζ(゚- ゚*ζ「すな?」
爪'ー`)y‐「そうそう、こうやって砂を」
ζ(゚- ゚*ζ「おやま」
爪'ー`)y‐「これをこうして」
ζ(゚- ゚*ζ「ぉぉ」
爪'ー`)y‐「これがホテル・ラブクラウンです」
ξ゚⊿゚)ξ「なに作ってんだお前」
爪'ー`)y‐「お城(隠語)」
ζ(゚- ゚*ζ「おしろ……?」
ξ゚⊿゚)ξ「ホテルつってんじゃねえかお前おい」
爪'ー`)y‐「じゃあ休憩所」
ξ゚⊿゚)ξ「城どこいった」
爪'ー`)y‐「皆の心の中に」
-
ξ゚⊿゚)ξ「磯遊びなら怖くないでしょ、あっちに良さそうな磯がある」
爪'ー`)y‐「それは小魚や貝を食べたいって意味?」
ξ゚⊿゚)ξ「人の気遣いを……」
爪'ー`)y‐「気遣い要らないです」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ小魚と貝を食べたい」
爪'ー`)y‐「じゃあ行きます」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「おいでデレ」
爪'ー`)y‐「大食漢のわがままに付き合おうデレ」
ζ(゚- ゚*ζ゙「あい」
ζ(゚- ゚*ζ,,
ζ(゚- ゚*ζ(なかよし)
-
ζ(゚- ゚*ζ(おねさん、おにさん、なかよし)
ζ(゚- ゚*ζ(おねさんのて、ぽかぽかぐいぐい)
ζ(゚- ゚*ζ(おにさんいやがる、ない)
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚ー゚*ζニマー
ζ(゚ー゚*ζ(なかよしすき)
ζ(゚ー゚*ζ(デレひとすこしこわい)
ζ(゚ー゚*ζ(でもふたりすき)
ζ(゚ー゚*ζ(なかよしふたりすき)
ζ(゚ー゚*ζ(ぱぱままにてる)
ζ(゚ー゚*ζニマニマ
ξ゚⊿゚)ξ(何かデレが笑ってる……)
爪'ー`)y‐(デレがたまに嬉しそうにするのは一体……)
-
爪'ー`)y‐「ねぇツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「あん?」
爪'ー`)y‐「手を掴まれると痛いです……」
ξ゚⊿゚)ξ「本当にひ弱なお前……デレは平気そうなのに」
ζ(゚- ゚*ζ「がうがう」
ξ゚⊿゚)ξ(戻ってる)
爪'ー`)y‐(戻ってる)
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、て、こう」グイグイ
ξ゚⊿゚)ξ「持ち方が違うの?」
ζ(゚- ゚*ζ「てくびちやう、こう」キュッ
ξ゚⊿゚)ξつ⊂爪'ー`)
バァア-----z_____ン!!
ξ;゚⊿゚)ξ「気色が悪い!!」
⊂彡 ヒュバッ
爪;'Д`)「人と手を繋いでその反応!?」
-
ξ;゚⊿゚)ξ「だって何か気色悪く無いかこれ!?」
爪;'Д`)「あぁん何か否定できないのがもどかしくて嫌だな!?」
ζ(゚- ゚*ζ(なんかちがた)
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱ手首で良いわ……」
爪'ー`)y‐「出来ればもう少し羽毛タッチくらいのソフトさで」
ξ゚⊿゚)ξ「羽をむしる時の強さで?」
爪'ー`)y‐「それ首切った後で吊るされない?」
ξ゚⊿゚)ξ「先に吊るすわよ」
爪'ー`)y‐「手順が違ったかーどうでも良いわー」
ξ゚⊿゚)ξ「でもこないだの鳥美味しかったでしょ」
爪'ー`)y‐「あれを倒す際に生まれた尊い犠牲忘れてない???」
ξ゚⊿゚)ξ「尊くない犠牲なら覚えてる」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん万物生命に対する差別は良くないよ……」
ζ(゚- ゚*ζ(いつもどおり)
-
何だかんだと海辺での水遊びを満喫して、太陽が空を赤く染めながら水平線に沈んで行く頃。
しこたま磯や浜辺で海の幸マラソンをした私たちは、程好い疲労感に包まれていた。
塩水と潮風で冷えた体を暖める温泉はすぐ側にあり、水着のまま入れる混浴。
狐はどこかつまらなそうにしていたが、デレは年相応にはしゃいでいて。
全身を暖かなお湯に浸し、日々の疲れも今日の疲労感も溶け出して行く。
そういやこの水着どうしよう、もう他にこんなの着る場所無いぞ。
季節はもう冬に近い秋、こう言った特殊な場所でしか水着になる機会は無い。
邪魔だから捨てて行くか。
ああいや、でもまあ。
折角楽しかったんだ、記念に持っておくか。
デレが貝殻を集めていたように、狐が連絡先を集めていたように、私も何か記念品を持っても良いだろう。
温泉から出て、夕飯も海の幸を堪能して、部屋に戻る頃にはデレは眠ってしまっていた。
さすがに遊びすぎたのか、疲れて眠るデレをベッドに寝かせる。
どうせ狐はこれから出掛けるだろうし、私も寝るか。
デレを抱えて眠ればよく眠れるし。
-
爪'ー`)y‐「はー満腹」ガチャ
ξ゚⊿゚)ξ「んぇ?」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「店の女と遊ぶのでは?」
爪'ー`)y‐「あーキャンセルした、昼に遊びすぎて夜遊びする体力ないでーす」
ξ゚⊿゚)ξ「健全でよろしいかと」
爪'ー`)y‐「もー僕くたくたーぁ、本当は水遊びする予定なかったんだもーん」
ξ゚⊿゚)ξ「あーはいはい悪かった悪かった」
爪'ー`)y‐「デレ寝た?」
ξ゚⊿゚)ξ「お守り握って寝てる」
爪'ー`)y‐「お守りって首から下げてるそれだよね、巾着」
ξ゚⊿゚)ξ「金貨入ってんのよ、自分の価値だと思ってるのかしらね」
爪'ー`)y‐「ふーん……まぁ大事に持っておかせよう、いざって時に金は役に立つから」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね」
-
爪'ー`)y‐「こないださぁ、ツンちゃんの昔話聞いたじゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「言ったわね」
爪'ー`)y‐「僕さぁ、生まれも育ちも貧民街なんだよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「語り出した」
爪'ー`)y‐「子供って消耗品の一つでさぁ、どんどん使い潰すものでね」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「言う事をきかなかったり仕事が出来ないと、鞭が飛んできたりするわけよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……そう」
爪'ー`)y‐「僕は水瓶に顔突っ込まれて何回か死にかけたけど、何人か本当に死んだりしてね
路地の隅に死体を投げ込んでさ、臭い消しに聖水まいたりするんだよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「次は僕が死ぬってずっと思ってた、だから水に顔をつけるのが今でも嫌いなんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そう」
爪'ー`)y‐「うん」
-
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「痛み分けで良い?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん……」
爪'ー`)y‐「話させただけだと、アレだなって思ってね」
ξ゚⊿゚)ξ「……このために、キャンセルしたわけ?」
爪'ー`)y‐「あはは、まっさかぁ?」
ξ゚⊿゚)ξ(あー、珍しく嘘が顔に出てら)
爪'ー`)y‐「他にもお互い昔話する?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、良い……それより」
爪'ー`)y‐「うん?」
ξ゚⊿゚)ξ「久々に子守唄、歌いなさいよ」
爪'ー`)y‐「はいはい、仰せのままに王様」
ξ゚⊿゚)ξ「誰が王様よ」
-
ぽろろん。
ああ空は赤く。
ああ海は青く。
夢見た人魚の歌声。
夢見た遥かなる世界。
優しげな指先。
温かな手のひら。
その微笑みを見ていたくて。
そのぬくもりを得たくて。
空を歌う。
海を歌う。
遥かな夢を歌う。
ただ小さな温もりのために。
(ああ、やさしい歌)
(寂しそうな横顔)
(こっちを見た、笑ってる)
-
銅貨を一枚投げて寄越して、私はそっと目蓋を下ろした。
ベッドの中、デレのやわらかな髪に頬擦りをしながら子守唄に心を許す。
吟遊詩人の歌声は、曇りもなく澄み渡っている。
久々に気分がすっきり晴れているらしい、何かあったのかな。
やっぱ女遊びしない方が良いのかなこいつ。
途切れた歌声と、コップに酒を注ぐ音。
喉が鳴る音と、微かにくすくす笑う声。
息を吸って、ゆっくり深く吐く溜め息。
「困ったなぁ、僕まですっかり弱っちゃった
あんな話、誰にもした事なかったのに」
全然困ってない声で呟く。
ゆったり煙草を吸う息、吐き出す息。
酒を飲む喉の音、テーブルにコップを置く音。
近付く足音、軋むベッド、髪に絡む指。
何が楽しいのか、狐はくすくすと無邪気そうに笑いながら、私たちの髪を撫でていた。
おわり。
-
ありがとうございました、本日はここまで。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
あと時間無くて水着立ち絵間に合いませんでした。
描けたら放り込みます。
それでは、これにて失礼!
シリーズ作である塔・旅などはこちらからも読めます!
搭じゃないです塔です!誤字です!!
読みにくいなどありましたら言って下さい!!
http☆oppao.web.fc2.com/text_smp.html
-
>>480
電車でクスリと仕掛けたじゃないかふざけけんな可愛い
-
おつ!
狐の気が緩んでいくのいいなぁ
お互いにほだされるっていうか気を許していってしまうのすげえ、好き
あとデレちゃん持って帰りたい可愛い飼いたい
-
立ち絵に期待したのは俺だけでなないはず
乙!
次も楽しみにしてる!!
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可愛すぎるふおおおおおおおおデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃんデレちゃん
-
ソッ…
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2324.png
-
ナイチチビキニかわいいよおお
ピンク嫌そうでかわいいよおおお
-
フォックスが心開き始めてて可愛いし、ツンは最初っから可愛いしデレは飼いたいしやばいなおい
-
ツンちゃんは水着じゃなくてモンハンのインナー姿にしか見えない不思議
-
すげぇチキン食ってて投下忘れてた
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声、獣じみた幼い咆哮。
刃を振るい、歌声を響かせ、魔力を用い、路銀を稼いで進むのは三人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
そんな二人の後ろをついて歩く、小さな魔族の子供。
【道のようです】
【第十話 いくら何でもそれは無い。 前編】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
不思議な匂い。
甘いような、苦いような。
知らないような、懐かしいような。
とろけるような夢のような、悪夢のようなもがくような。
いろんな匂いに満ちた店内で、私たちは匂いに酔わされるように椅子に座っていた。
壁の棚に、窓辺に、机に、ところせましと並べられた瓶や箱、乾かした草花。
何かの角やら何だか分からないものまで並ぶ様は、まるでおもちゃ箱のよう。
ふらふらと視線をさまよわせていると、店主である少年と目が合い、彼は楽しそうに笑った。
(*゚∀゚)「ちょっと待ってろよー」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
(*゚∀゚)「しっかし懐かしい匂いがすると思ったら、ねーちゃんの紹介とはなー」
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱりあの薬師のいm」
(*゚∀゚)「弟!」
ξ゚⊿゚)ξ(妹かと思った)
爪'ー`)y‐(危ない)
-
この調香師の店、工房があるのは山の麓ののどかな町。
竜の住む町の片隅に、この店はあった。
特別広くはない、それでも賑わいを見せる穏やかな町。
その平穏も、恐らくこの土地を守る竜のお陰なのだろう。
町にたどり着いた私たちは、いつも通り役所と宿をはしごしてからこの店にやってきた。
そして森の薬師からの紹介として、狐の煙草を渡して調香を依頼した。
それと同時に依頼されていた荷物を渡して、代金を適当な額受け取る。
調香師はけらけらと笑いながら荷物を開き、中に入っていた手紙を読み始めた。
するとその表情から笑顔は消えて、どこか悲しそうな顔で唇を噛み締めて。
それでも私と目が合うと、ぱっと花が咲くように笑顔を作る。
見たところ、まだ10代の子供だ。
赤い髪と石の色をした目、何かの結晶を模した髪飾り、中性的な顔立ち。
外見だけを見るならば、活発そうでよく笑う少年。
けれどその笑顔の奥に、恐ろしく重い何かがあるような目。
恐らく、この調香師と森の薬師は紛れもない姉弟。
それはつまり、この調香師もまた、年齢不詳と言う事で。
-
(*゚∀゚)「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「……あの、不躾で申し訳ないのですが」
(*゚∀゚)「んぁ?」
ξ゚⊿゚)ξ「あなたも、不老不死ですか?」
爪'ー`)y‐「ちょっとツンちゃん」
(*゚∀゚)「そだよ?」
爪'ー`)y‐「軽いなおい」
(*゚∀゚)「めっずらしーなぁ、ねーちゃんが不老不死の事言ったのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「竜の寵愛がどうとか」
(*゚∀゚)「そーそーそれなー、おれもそれなんだよなー」
爪'ー`)y‐(そんな軽く言う事かこれ)
ξ゚⊿゚)ξ(すごくフランク)
-
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあその竜は」
(*゚∀゚)「あーここに居るやつ、山の方に住んでんの」
ξ゚⊿゚)ξ「危なくは?」
(*゚∀゚)「あーないない、まだ若いしな!」
ξ゚⊿゚)ξ
(*゚∀゚)
ξ゚⊿゚)ξ「お姉さんとの歳の差は……?」
(*゚∀゚)「ふたご」
ξ゚⊿゚)ξ
(*゚∀゚)?
ξ゚⊿゚)ξ「狐」
爪'ー`)y‐「はいはい時系列がわからないそうですよ」
(*゚∀゚)「あー、ねーちゃんの旦那はじじいだもんなー」
ξ゚⊿゚)ξ(じじい)
-
(*゚∀゚)「じじいは会った時からじじいだったからなー、その頃ここの竜はまだ若造でさー」
ξ゚⊿゚)ξ「こんな軽く竜の事をじじい扱いする人初めて見た……」
(*゚∀゚)「おれとねーちゃんが寵愛を受けたのはほぼ同時だけどなー、じじいのがじじいだったんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「はあなるほど」
(*゚∀゚)「ここのはじじいに比べるとだいぶ若いぞ! まぁ人間からすればみんなじじいだけどな!」
爪'ー`)y‐「もうちょっと敬ってあげてよぉ!」
(*゚∀゚)「じじいはじじいだな!!」
ξ゚⊿゚)ξ「あれ、と言うか男同士で寵愛?」
(*゚∀゚)「おれとあいつは友達だぞ?」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、ですよね」
爪'ー`)y‐「寵愛って名称がややこしさを煽る」
(*゚∀゚)「あいつ嫁いっぱい居るしなー」
ξ゚⊿゚)ξ「嫁が」
(*゚∀゚)「食ったってていだけどな!」
爪'ー`)y‐「なんか重要な秘密聞いた気がするぅ」
-
(*゚∀゚)「あーそうだ、ねーちゃん元気だったか?」
ξ゚⊿゚)ξ「はい、そろそろ店を町の方に移そうかと言ってました」
(*゚∀゚)「……ふーん。 お前! そこの赤いの、お前の煙草作るのにな、色々準備あんの」
爪'ー`)y‐「あ、はい」
(*゚∀゚)「だから数日待て!」
爪'ー`)y‐「意外とかかるんだぁ、すぐかなと思ったのに」
(*゚∀゚)「ばーっかお前アレだぞ? こう言う調合は大変なんだぞ!」
爪'ー`)y‐「うーん……数日滞在して良い?」
ξ゚⊿゚)ξ「別に良いわよ?」
爪'ー`)y‐「んーじゃ待ちまーす」
(*゚∀゚)「ほいほい、お前の一番好きな匂いの煙草にしてやんよ!」
爪'ー`)y‐「わーい楽しみ」
-
(*゚∀゚)「んじゃおれあっちの作業部屋でやっから、これ番号札な」
ξ゚⊿゚)ξ「番号札?」
(*゚∀゚)「これでも人気あるからなー結構忙しいのな! んだからできたらそれで呼ぶわ!」
爪'ー`)y‐(呼ぶ……?)
(*゚∀゚)「ま、宿なり観光なり好きにしてこいよ、山には行くなよ! あいつ寝てっから!」
ξ゚⊿゚)ξ「わかりました、じゃあ呼ばれたらまた来ます」
(*゚∀゚)「おう! あと外のちびにこれ渡しとけ!」
爪'ー`)y‐「ポプリ?」
(*゚∀゚)「ここ変な匂いするからな、おれの店はもっと匂うし鼻の良いやつには厳しいんだよー」
ξ゚⊿゚)ξ「それでこれを?」
(*゚∀゚)「おう、持ってると匂いがましになるから持たせとけ!」
ξ゚⊿゚)ξ「わざわざありがとうございます」
爪'ー`)y‐「調香師の特製ポプリかー、ご利益ありそう」
(*゚∀゚)「ただの脱臭アイテムだぞ」
爪'ー`)y‐「ご利益無さそうな響きにするのやめて」
-
ξ゚⊿゚)ξ「あの、調合するんですよね」
(*゚∀゚)「おー、まぁ調合だか調香だか」
ξ゚⊿゚)ξ「少しだけ見ちゃ駄目ですか?」
爪'ー`)y‐「あ、僕も気になる」
(*゚∀゚)「良いよ? でもすげー時間かかるしでかい音立てんなよ」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
爪'ー`)y‐「わぁい」
二名様ご案内だ、と笑いながら別室へと移動する調香師。
開いた扉の向こうには、吹き抜けの高い天井、天窓から光が眩しく降り注ぐ空間。
白い壁、白い床、白い天井。
天井から長く細い鎖で下がるいくつもの大きな輝石、両の壁を流れる清い水。
正面の壁の高い位置にある窓と、そのすぐ下に設置された大きく白い机、壁には机と同じ素材の綺麗な棚。
恐らく水晶で作られたであろう同じ型の瓶が大量に、整然と棚に並んでいる。
様々な色の液体で満たされた瓶は天窓から射し込む光を浴びてきらきらと輝き、
店内のどこか雑然とした雰囲気とは正反対の、神聖さすら漂う張り詰めた空気。
私たちは扉の向こうに踏み込む事は出来ず、開けたままの扉から中を覗いていた。
-
調香師は古風にも魔法用の小さな杖を右手に持ち、私たちを振り返って恭しくお辞儀をした。
そして机に向き直った調香師は杖を踊らせる様に振るって、空中に魔法の帯をすらすらと描く。
きらきらと不思議な色を帯びた魔法は回り、広がり、溢れ、棚の瓶をいくつも浮かばせる。
まるで音楽を奏でるように、指揮者のタクトの様に杖を振るう。
様々な色と匂いが部屋いっぱいに広がって、光を浴びて、調香師を包んで。
真っ白な部屋、たった一人で光と匂いを操るその姿は、
妙に儚げで、どこか神秘的で、胸が締め付けられるくらいに寂しかった。
調香師は何を思うのだろう。
あんなに明るい笑顔の向こう側で。
調香師は何を感じるのだろう。
あんなに瞳の奥に暗い物を隠して。
不老不死と言う苦しみは以前聞いた。
飽きる程の孤独でお手玉をする日々。
調香師の闇は孤独なのか、苦しみなのか、それとも別のものなのか。
こんなに寂しそうに笑うのはなぜなのだろう。
詮索をするのはよそう。
不死者の苦しみは私にはわからない。
まあ、だからこそ知りたいのかもしれないが。
-
ぱたん、と狐が扉を閉めた。
爪'ー`)y‐「どんな匂いが出来るか、楽しみにしよう」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね……今知ったら、勿体無いわ」
音を立てないように店を出ると、いつのまにか開店中だった看板は作業中に書き変わっていた。
色んな匂いに包まれた店から一歩出ると、外の空気はどことなく血の匂いを思わせる。
この町の近くに来た時から感じていたこれは、どうやら竜の匂いらしい。
デレは鼻が良く匂いに敏感みたいで、ずっと何とも言えない顔をしていた。
ξ゚⊿゚)ξ「お待たせ、デレ」
ζ(゚- ゚*ζ「がう……」
爪'ー`)y‐「調香師さんからこれ貰ったよ、お守りと一緒に下げな」
ζ(゚- ゚*ζ「う? ……ぅぁ、においきえた」
ξ゚⊿゚)ξ「効果凄いな」
爪'ー`)y‐「やっぱご利益あるじゃん」
-
ξ゚⊿゚)ξ「さて、数日は滞在するし……どうするか」
爪'ー`)y‐「デレちゃんも平気そうだし、観光しようよ観光」
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ良いけど、何を」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「狐どこに消えた」
ζ(゚- ゚*ζ「あっち」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん見て見て貸衣裳があるよ! 青いのツンちゃんに似合いそう!」
ξ゚⊿゚)ξ「大はしゃぎか」
ζ(゚- ゚*ζ「よかんわるい」
ξ゚⊿゚)ξ「行きましょデレ、可愛いの見繕ってあげるわ」
ζ(∩-∩*ζ「ぁー」
ξ゚⊿゚)ξ(嫌ならはっきり言いなさい)
-
ξ゚⊿゚)ξ「デレのはこれね……」
爪'ー`)y‐「いやいやこっちの方が」
川*` ゥ´)「お前はこの赤だろ」
爪'ー`)y‐「あら良いですね」
ξ゚⊿゚)ξ「私のはこれ?」
川*` ゥ´)「こっちの白メインだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「あら良いわね」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
川*` ゥ´)「もさもさのチビはこれにしろよ」
ζ(゚- ゚*ζ「がう……」
川*` ゥ´)「嫌ならはっきり言えよお前」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ほんとしれっと居るわね」
爪'ー`)y‐「しかもセンス良いな君」
川*` ゥ´)「貸衣裳とか浮わつきやがっておのぼりさんかよだっせぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「お前……貸衣裳に身を包みながらそんな自虐を……」
川*` ゥ´)「ふふん! 似合うだろ」
爪'ー`)y‐「顔を隠せば」
川#` ゥ´)「お前不美人に厳しすぎねぇ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「愛嬌はあるわよ」
川#` ゥ´)「フォローんなってねーしっ!!」
爪'ー`)y‐「白と紺かぁ、意外と似合うね色気クソみたいに無いけど」
川#` ゥ´)「お前マジそれ相方にも言えよ」
ξ゚⊿゚)ξ「聞いてやろう」
爪'ー`)y‐「それにしても今日は君大人しいじゃん?」
ξ゚⊿゚)ξ「聞くぞ? おい聞くぞ?」
-
川*` ゥ´)「そりゃおとなしくもなるだろ、店の中だぞ」
爪'ー`)y‐「あ、うん、そう言うとこ気にするんだね」
川*` ゥ´)「常識で考えて観光客が観光地で悪い騒ぎ方したらクソだろ……」
ξ゚⊿゚)ξ「常識あるわねあんた……」
爪'ー`)y‐「そんな常識人に唐突に喧嘩売られて付きまとわれてるよね僕ら」
川*` ゥ´)「観光地では喧嘩売らねぇよバーカ」
爪'ー`)y‐「静かに口悪いなほんと君は」
ξ゚⊿゚)ξ「大声で朝飯って呼ばれないだけありがたいわ」
川*` ゥ´)「うっせーなそれよりチビが死んだ目してんぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたのデレ」
ζ(゚- ゚*ζ「ぴんく……」
爪'ー`)y‐「可愛いの選んでもらったね」
-
川*` ゥ´)(こいつ本当はピンク嫌なんじゃねーか?)
ξ゚⊿゚)ξ(そうね知ってるわ)
爪'ー`)y‐(分かりやすいよね)
川;` ゥ´)(ひっでーなお前ら)
ξ゚⊿゚)ξ(自分から嫌って言えるようになるまでこのままよ)
川;` ゥ´)(程々にしてやれよな……)
爪'ー`)y‐(ヒールちゃんやっさしーい☆)
川*` ゥ´)「うっぜぇなこいつ」
ξ゚⊿゚)ξ「最初からよ」
爪'ー`)y‐「えぇぇー? このイケメン捕まえてウザいとかひっどーい」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんとうざい」
川*` ゥ´)「調子乗んなおっさん」
爪'ー`)y‐「待って聞き捨てならない」
-
爪'ー`)y‐「おっさん? ホワイ? 僕26だよ? お兄さんだよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「落ち着いて狐、25歳からみんなアラサーよ」
ζ(゚- ゚*ζ「あらさー?」
爪'ー`)y‐「やめてよ何か余計に悲しいじゃないか!!」
ξ゚⊿゚)ξ「三十路なんて若造よ安心して」
ζ(゚- ゚*ζ「はたらきざかり」
爪'ー`)y‐「違うよまだ若いよ!? まだ26だよ!?」
川*` ゥ´)「お前なんか勘違いしてるけどさ」
爪'ー`)y‐「えっ」
川*` ゥ´)「17歳から見れば26歳はおっさんだろ」
爪'ー`)y‐
川*` ゥ´)
ξ゚⊿゚)ξ(ひっど)
ζ(゚- ゚*ζ(むじひ)
-
爪'ー`)y‐「ツンちゃああん……」
ξ゚⊿゚)ξ「私にもたれかかるな」
爪'ー`)y‐「あの子ひどいよぉお……」
ξ゚⊿゚)ξ「やめろ私にすがるな」
川*` ゥ´)「男女のパーティでここまで色気も汁気も無いの初めて見たわ」
ζ(゚- ゚*ζ「いろけ?」
川*` ゥ´)「お前らに無縁なもんだ」
爪'ー`)y‐「僕はあります」
川*` ゥ´)「うっせぇよおっさん」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんあの子がいじめる」
ξ゚⊿゚)ξ「私に救いを求めるな」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんあの子退治してよぉ……」
川*` ゥ´)「てめーらどっちが保護者なんだよ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ほらデレに構ってもらいなさい」
爪'ー`)y‐「あーんデレちゃーんヒールちゃんもツンちゃんも僕をいじめるよー」
ζ(゚- ゚*ζ「よしよし」
爪'ー`)y‐「唯一の優しさが目の前にある」
ξ゚⊿゚)ξ「野良犬や野良猫にも同じ事してるわよその子」
爪'ー`)y‐「うわーんデレちゃーんツンちゃんがあまりにもだよー」
ζ(゚- ゚*ζ「どんまい」
爪'ー`)y‐「そんな言葉は覚えなくて良い」
ξ゚⊿゚)ξ「ところで、あんたは何でここに?」
川*` ゥ´)「え? 観光」
ξ゚⊿゚)ξ「観光」
川*` ゥ´)「今は竜の肉の配布時期だしな、アレ食うと魔力が上がるんだよ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そうだあんた人の魔力測れる?」
川*` ゥ´)「あー? 多少は見れるけど」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと私の魔力を見てほしいんだけど」
川*` ゥ´)「チッ しょーがねーな」
ξ゚⊿゚)ξ(やってくれるのか……)
川*` ゥ´)「んんー…………あ、すげーなお前」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
川*` ゥ´)「一般人が500mlのペットボトルとしてだ」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
川*` ゥ´)「そのチビが洋ドラで見るでかい牛乳入れるプラスチックの四角いあれ」
ξ゚⊿゚)ξ「ああうんあるわね何かクソでかいのが」
ζ(゚- ゚*ζ(ようどらとは)
川*` ゥ´)「お前はフレッシュ容器」
ξ゚⊿゚)ξ「フレッシュ」
-
川*` ゥ´)「しかも小さい方のフレッシュな」
ξ゚⊿゚)ξ「つまり私は」
川*` ゥ´)「無に等しい」
爪'ー`)y‐(胸と一緒か)
ξ゚⊿゚)ξ「狐あとでノルマ」
爪'ー`)y‐「心を読まないで」
ξ゚⊿゚)ξ「視線で分かるわたわけ」
川*` ゥ´)「まぁざっと見ただけだから詳しく知りたきゃ魔導師ギルドでも行けよ」
ξ゚⊿゚)ξ「絶対に哀れんだ顔されるでしょ」
川*` ゥ´)「される」
ξ゚⊿゚)ξ「それが嫌……」
川*` ゥ´)「わかる……」
-
川*` ゥ´)「魔力の最大容量は生まれ持ったもんだし増やせないからな……」
ξ゚⊿゚)ξ「外付け買おうかとも思ったんだけどアレってバカ高いでしょ……」
川*` ゥ´)「アレは職人技だからな、人に合わせてオーダーメイドしか無いんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「見た目綺麗なんだけどね」
川*` ゥ´)「設置型も綺麗だぞ、魔導師ギルドや教会に置いてある」
ξ゚⊿゚)ξ「へぇ、元々は設置型なのよねアレって」
川*` ゥ´)「魔力の貯金として置いてあんだよ、いざって時に魔力不足にならないように」
ξ゚⊿゚)ξ「はぁなるほど……そう言う使い方が本来の姿なのね……」
川*` ゥ´)「携帯用は小型化するから作るのが大変だし使う人間に合わせる必要があんのな
腰からこうぶら下げて、大気中の魔力を少しずつ溜めて使う事が出来る」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、前に魔導師に魔力を入れて貰ってるの見た事あるわ」
川*` ゥ´)「あーあるある、あれ勢いありすぎると外付け壊すから嫌がられんの」
ξ゚⊿゚)ξ「あぁー……それはやる方も嫌ね……」
-
川*` ゥ´)「元々は魔族の技術なんだけどな」
ζ(゚- ゚*ζ「よしよ……がう?」
川*` ゥ´)「まだやってたのかよ……」
爪'ー`)y‐「癒されてる」
ξ゚⊿゚)ξ「心が疲れてんの……?」
川*` ゥ´)「戦争で街消し飛ばしたアレ知ってるか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、英雄の?」
川*` ゥ´)「アレが魔力充填機の元だよ
魔界で魔力たっぷり吸い上げたやつに爆発するように魔法をかけて飛ばしたの」
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃ……大惨事ね」
川*` ゥ´)「ま、今売ってるのはそう言う事出来ないようになってっけどな」
ξ゚⊿゚)ξ「さすが魔女は詳しいわね」
-
川*` ゥ´)「当然だろ未来の偉大な魔女様だぞ、おいこれ着てこい」
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい、うちは魔法知識が乏しいからそう言うのはありがたいわ」シャッ
川*` ゥ´)「あーチビは知識は無さそうだしな、魔女用だけどガキ用の知育絵本やろうか」
ξ゚⊿゚)ξ゙「あら、倒す相手にそこまでしてくれて大丈夫?」ゴソゴソ
川*` ゥ´)「お前ら朝飯は倒すけどチビは冒険者じゃないだろ、倒したら虐待だよ」カチャカチャ
ξ゚⊿゚)ξ「変なところで真面目よねあんた」シャッ
川*` ゥ´)「よし似合うな、ほらよ薄布」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」ゴソゴソ
爪'ー`)y‐「流れるように着替えたね」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんにやう」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」
爪'ー`)y‐「セクシーな衣装の筈なのに色気がどこにもない」
ξ゚⊿゚)ξ「ノルマな」
爪'ー`)y‐「衣装が汚れないようにね」
-
川*` ゥ´)「ああそうだ、フレッシュお前あれだ、気を付けろよ」
ξ゚⊿゚)ξ「? 何に?」
川*` ゥ´)「魔力が乏しいって事は魔力への抵抗も弱いって事なんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
川*` ゥ´)「だからお前は体質的に魔法が弱点、呪いもだな、だから魔防装備持った方が良いぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「魔女が魔防しろって言ってきた」
川*` ゥ´)「いやだってお前があたし以外に殺されたらあたしの計画がパーじゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「それもそうだ」
川*` ゥ´)「だから気を付けろよな、魔法使う魔物もいるんだぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「分かった、今後はそう言った事もちゃんと考慮するわ」
川*` ゥ´)「おすすめの店も教えようか」
ξ゚⊿゚)ξ「ぜひ」
-
川*` ゥ´)「まぁマジで効くのは分かってるだろうし、ついでに頼んどけよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ふむ、分かったわ、ありがとう」
川*` ゥ´)「礼なんか言ってんじゃねーぞ気色悪い」
ξ゚⊿゚)ξ「今日はまだだし顔掴む?」
川*` ゥ´)「やめろ」
爪'ー`)y‐「歳が近いからか仲良いなぁ」シャッ
ζ(゚- ゚*ζ「がう」シャッ
爪'ー`)y‐「似合うねデレちゃん」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんにやう」
爪'ー`)y‐「腰のところかぱーって開いてて心許ない」
⊂ζ(゚- ゚*ζ「つんつん」
爪'ー`)y‐「キャーエッチー」
川*` ゥ´)「仲良いなあいつら」
ξ゚⊿゚)ξ「叔父と姪のよう」
-
ξ゚⊿゚)ξ「しかし本当に面倒見良いわねあんた」
川*` ゥ´)「お前らが見てられないだけだからな」
ξ゚⊿゚)ξ「それで面倒見ちゃうの……」
川*` ゥ´)「うっせーな他所の街で会ったら魔法ぶっぱすっからなてめぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「どんな魔法を?」
川*` ゥ´)「杉花粉爆弾」
ξ゚⊿゚)ξ「待ってそれどこかで聞いた事ある」
川*` ゥ´)「あと何と奇遇なやおい穴」
ξ゚⊿゚)ξ「待ってほんとにそれどこかで聞いた事ある」
川*` ゥ´)「人体変化の魔法は高度なんだぞ、敬え敬え」
ξ゚⊿゚)ξ「いやいや何と奇遇なやおい穴では敬えない無理無理」
川*` ゥ´)「胸を大きくする魔法があってな」
ξ゚⊿゚)ξ「詳しく聞こうか……」
爪'ー`)y‐(ちょっろ)
-
川*` ゥ´)「生け贄に人間が五人くらい必要になる」
ξ゚⊿゚)ξ「いや生け贄を用意してまで無駄に脂肪は増やしたくないわ」
川*` ゥ´)「つか邪魔だろお前の場合」
ξ゚⊿゚)ξ「邪魔なんだけどこの胸だと日に一回はバカにされてな」
川*` ゥ´)「まぁホームランバーってあたしも言ってるしな」
ξ゚⊿゚)ξ「処す? 処す?」
川*` ゥ´)「玄人の方にしろ」
爪'ー`)y‐「おっと急にお鉢が回ってきたぞ?」
ξ゚⊿゚)ξ「ああそうだ、観光ならここの見所とかわかる?」
川*` ゥ´)「あたしはこれから記念撮影して土産屋覗いて飯食うけど」
爪'ー`)y‐「一人で満喫しすぎじゃないか君」
川*` ゥ´)「お一人様でも楽しめる旅行パックもあってな」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたそんな……旅行パックで来てるの……」
川*` ゥ´)「いや箒で一人で飛んできたけど」
ξ゚⊿゚)ξ「旅行パックとは」
川*` ゥ´)「あるって言う情報」
-
川*` ゥ´)「じゃ、あたしもう行くわ、調香師にちゃんと話せよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんと紹介するわよ」
川*` ゥ´)「そっちじゃねーよ魔防の事だよ」
ξ゚⊿゚)ξ(優しいなこいつ……)
爪'ー`)y‐(面倒見良いなぁ……)
ζ(゚- ゚*ζ「まじょさんあげる」
川*` ゥ´)「なんだこれ」
ζ(゚- ゚*ζ「れじもらた」
川*` ゥ´)「子供だけがもらえるタイプの記念硬貨かこれ……良いよ持っとけ、それに入れとけ」
ζ(゚- ゚*ζ「あぅ、これかわりあげる」
川*` ゥ´)「んあ? 花? しゃーねーな貰ってやるよ」
ζ(゚- ゚*ζ「がうー」
ξ゚⊿゚)ξ(道中で摘んだ野草)
-
ξ゚⊿゚)ξ「にしてもあんた、私たちの事は嫌ってると思ったんだけど」
爪'ー`)y‐「普通に話すよねぇ」
川*` ゥ´)「まぁ成功してる奴らもきらびやかな見た目も嫌いだけどな」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたってほんと真っ直ぐ」
川*` ゥ´)「あとおちょくってくるからクソむかつくしな」
爪'ー`)y‐「そんなひどい事をする人が……!?」
川*` ゥ´)づ「まぁでもこのチビは可愛いしな」ワシワシ
ζ(- -*ζ「ぅー」
川*` ゥ´)「あとやりあえる場所でもないし普通にするしか」
ξ゚⊿゚)ξ「友達居ないの?」
川#` ゥ´)「何で急に煽った? ォオン?」
ξ゚⊿゚)ξ「いないのかなって……」
川*` ゥ´)「魔女の同輩どもは低レベルすぎんだよ」
-
川*` ゥ´)「さて、じゃーなクソ朝飯ども、観光地で観光客の評判落とすなよバーカバーカ」
ξ゚⊿゚)ξ「今度一緒に回る?」
川*` ゥ´)「いらねーよ一人で満喫出来る計画書作ってきたんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「こいつプロのお一人様か」
,,川*` ゥ´)「あばよークソども、看板の写真撮ろっと」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「マジで一人で満喫してるわ」
爪'ー`)y‐「と言うかクソ真面目だなあの子」
ζ(゚- ゚*ζ「まじょさんいいひと」
ξ゚⊿゚)ξ「性格歪んでるけど」
爪'ー`)y‐「観光地では大人しいけどきっちり喧嘩は売って行ったからねぇ……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「あと私たちの事は基本良く言わないわよね」
爪'ー`)y‐「あくまでもライバル枠なんだね僕らは」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「簡単に殺せるのに」
爪'ー`)y‐「やめようねツンちゃん」
,,川*` ゥ´)「あ、そうだ」
ξ゚⊿゚)ξ「戻ってきた」
爪'ー`)y‐「寂しくなったの? ハグする? 有料だけど」
川*` ゥ´)「いらねーよクソイケおっさん、ここ温泉もあるから入れよな」
ξ゚⊿゚)ξ「やったまた温泉」
爪'ー`)y‐「混浴は?」
川*` ゥ´)「ねーよ」
爪'ー`)y‐「この世で最も楽しくない温泉だ……」
ξ゚⊿゚)ξ「多いなこの世で最も楽しくない温泉」
川*` ゥ´)「混浴のが少ないだろ……」
-
,,川*` ゥ´)「んじゃなー、串焼き食べてインスタに上げよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「リア充か」
爪'ー`)y‐「本気で観光してやがる」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、まじょさんなかよし?」
ξ゚⊿゚)ξ「喧嘩売られなきゃね」
ζ(゚- ゚*ζ「デレなかよしすき」
ξ゚⊿゚)ξ「良い事よね」
爪'ー`)y‐「あの子もうちょっと顔が良くて胸があって性格がマシならなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「別人じゃねーか」
爪'ー`)y‐「この僕に欲情させない女子二人のパワーたるや」
ξ゚⊿゚)ξ「良かったわね清くいられるわよ」
爪'ー`)y‐「良くないよだから行く先々でつまみ食いしてるんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「知った事では」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……観光するか」
爪'ー`)y‐「あっちに記念館あるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「のどかな癖に意外とがっつり観光スポット化してるわね……」
爪'ー`)y‐「まぁ景観悪くしてないし良いんじゃないかな……」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、お土産だ」
爪'ー`)y‐「おー四面でくるくる回るキーホルダー陳列するラックだ」
ξ゚⊿゚)ξ「剣に……竜が……!!」
爪'ー`)y‐「すごい……鞘から抜けるタイプだ……!」
ξ゚⊿゚)ξ「無駄に目にガラス玉が入ってる……!」
爪'ー`)y‐「男子中学生が好きそうなやつ……!」
ξ゚⊿゚)ξ「いる?」
爪'ー`)y‐「いらない」
ξ゚⊿゚)ξ「でもなぜか買ってしまう」
爪'ー`)y‐「わかる」
ζ(゚- ゚*ζ(なぜ)
-
ξ゚⊿゚)ξ「あ、宿に併設されてるじゃない温泉」
爪'ー`)y‐「混浴じゃない温泉の価値とは」
ξ゚⊿゚)ξ「ここ村民も使えるからお年寄り多そうよ」
爪'ー`)y‐「やぁたまには一人のんびり浸かるのも良いよねぇ息抜きだよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「お前な」
爪'ー`)y‐「まぁご年配だろうとエスコートしますけど」
ξ゚⊿゚)ξ「ヒールには」
爪'ー`)y‐「君とあの子は別だよ、僕は女性には優しくします」
ξ゚⊿゚)ξ「つまり私とあの子は?」
爪'ー`)y‐「女じゃない何かだ」
ξ゚⊿゚)ξ「私良い方法思い付いたの」
爪'ー`)y‐「え?」
ξ゚⊿゚)ξ「首をへし折るだけなら貸衣装も汚れない」
爪'ー`)y‐
-
剣に竜のやつ小学校の修学旅行で買っちゃったわ
まだどっかにありそうだ
-
< マッテマッテギブギブギブ
< ゴキャベキッ
< グゲボッ
ξ゚⊿゚)ξ「さ、何か食べましょうかデレ」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんしたいきれい」
ξ゚⊿゚)ξ「綺麗な状態でしょ、見たとおり死体よ」
ζ(゚- ゚*ζ「くびむこうむいた」
ξ゚⊿゚)ξ「うっかりもぎ取れないか怖かったわ」
ζ(゚- ゚*ζ「デレおにくたべる」
ξ゚⊿゚)ξ「よし肉を食べよう」
ζ(゚- ゚*ζ「あれ」
ξ゚⊿゚)ξ「竜の肉ホイル焼き……ゴクリ…」
ζ(゚- ゚*ζ「あれも」
ξ゚⊿゚)ξ「竜の串焼き……炭火焼き……煮込み……ジュル…」
ζ(゚- ゚*ζ「おいしいある」
ξ゚⊿゚)ξ「あるわ、間違いなく」
-
ξ゚⊿゚)ξ「すみません片っ端から二つずつ」
ζ(゚- ゚*ζ「くらさい」
ξ゚〜゚)ξモシャモシャ
ζ(゚〜゚*ζモギュモギュ
ξ*゚ヮ゚)ξ「うまい」
ζ(゚ヮ゚*ζ「おいし」
爪'ー`)y‐「君たち財布忘れてるよね」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、狐おはよう」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんおはよ」
爪'ー`)y‐「すっごく慣れたね……おはよう……」
ξ゚⊿゚)ξ「デレ、これが美味しいわ」
ζ(゚- ゚*ζ「デレこれすき」
ξ*´⊿`)ξ「こっちもなかなか」
ζ(´-`*ζ「おいしおいし……」
爪'ー`)y‐(本当にこの子達は)
-
ξ゚⊿゚)ξ「と言うわけでこれとこれを三つずつ」
爪'ー`)y‐「まだ食べるのかい君たちは」
ξ゚⊿゚)ξ「はい一個ずつ」
爪'ー`)y‐「あ、どうも」
ζ(゚- ゚*ζ「ありやと」
ξ゚〜゚)ξ「うま」
爪'〜`)y‐「うん、美味しい」
ζ(゚〜゚*ζ「うまうま」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξグゥゥ
ξ゚⊿゚)ξチラッ
爪'ー`)y‐「中途半端につまんだから余計にお腹空いたとか僕知りませんからね」キュー
-
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんおさけ」
ξ゚⊿゚)ξ「何よあんたは酒飲んでるじゃない」
爪'ー`)y‐「お兄さんはお酒が好きだから飲みますけど君みたいにバカな量飲まないから良いの」
ξ゚⊿゚)ξ「ずるい」
爪'ー`)y‐「ずるくなーい僕が死んでる間に勝手に食べ歩き始めた君がわるーい」
ξ゚⊿゚)ξ「チッ……」
爪'ー`)y‐「舌打ちは心が少し」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「やだお腹いっぱい食べたい」
爪'ー`)y‐「真顔で子供みたいな言い分のわがまま言い出したぞおい」
ξ゚⊿゚)ξ「さもなくば」
爪'ー`)y‐「さもなくば?」
ξ゚⊿゚)ξ「山に分け入り直接竜をかじりに行く」
爪'ー`)y‐「ああくそっ! マジでやりかねないから本当に困る!!」
-
爪'ー`)y‐「的確に僕を困らせるようになったよね君」
ξ゚⊿゚)ξ「対等になったと言え」
爪'ー`)y‐「対等……対等かなぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「あっちにも屋台がある」
爪'ー`)y‐「えーマジでお腹いっぱい食べるのー?」
ζ(゚- ゚*ζ「つぶれる」
爪'ー`)y‐「そうだよこないだ一軒潰したんだから」
ξ゚⊿゚)ξ「潰してないわよ数日閉店になっただけで」
爪'ー`)y‐「食べ尽くしたんじゃないですかやーだー」
ξ゚⊿゚)ξ「むう……じゃあ適当に買い込んで宿で食べる」
爪'ー`)y‐「本当に食い道楽だね君は……」
ξ゚⊿゚)ξ「所持金に余裕があるからこうなる」
爪'ー`)y‐「くっそーカジノめー……」
-
爪'ー`)y‐「ねぇツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「何かしら」
爪'ー`)y‐「この20人分くらいの食料ですがね」
ζ(゚- ゚*ζ「いっぱい」
ξ゚⊿゚)ξ「二食分くらいかしら……」
爪'ー`)y‐「いい加減にしてよその俺の胃袋は宇宙だ的なアレ……」
ξ゚⊿゚)ξ「若い子わからないわよそれ……」
爪'ー`)y‐「だろうね……」
ξ゚⊿゚)ξ「さ、宿に戻りましょ、貸衣装は明日に返せば良いし」
爪'ー`)y‐「君さぁ衣装チェンジしてから食べるか喋るしかしてないよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「他にやる事が?」
爪'ー`)y‐「記念撮影とか」
ξ゚⊿゚)ξ「いや別に……」
爪'ー`)y‐「旅の思い出ェ……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「はー買った買った」
爪'ー`)y‐「食べ物ばっかりねー」
ζ(゚- ゚*ζ「おいしいっぱい」
(,,^Д^)「あっ、おかえりなさい!」
ξ゚⊿゚)ξ「ただいま」
爪'ー`)y‐「やぁ坊や繁盛してるかい」
(,,^Д^)「お客さんたちが出てから半日もたってないですよー」
ξ゚⊿゚)ξ「手伝いも大変ね」
(,,^Д^)「将来は僕の宿になるので、いまのうちにたくさん勉強です!」
爪'ー`)y‐「坊やいくつだっけ」
(,,^Д^)「11歳です」
爪'ー`)y‐「ほらデレ、歳が近いんだし仲良くしなさい」
"ζ(゚- │
ξ゚⊿゚)ξ「怯えてるわ」
-
爪'ー`)y‐「知らない人は本当に怖がるんだからもー……」
ξ゚⊿゚)ξ「チェックインした時は姿すら見せなかったわよね……」
爪'ー`)y‐「隠れるに全振りしてたよね……」
,,(,,^Д^)「デレちゃんですよね?」
ζ(゚- │ 「ぁぃ…」
(,,^Д^)「僕はタカラです、この宿の息子です、よろしくおねがいします」
ζ(゚- │ 「がぅ……よろしく、おね……がぅぅ……」
(,,^Д^)「デレちゃんはことばが苦手なんですか?」
爪'ー`)y‐「苦手だねー」
ξ゚⊿゚)ξ「少しずつ覚えてはきてるんだけど」
(,,^Д^)「じゃああとで一緒に絵本を読みませんか? 今でもお気に入りのがあるんです」
ζ(゚- │
(,,^Д^)「読めない文字は教えてあげます、ね?」
-
ζ(゚- │ 「……おねさん……」
ξ゚⊿゚)ξ「好きにしなさい、あんたが選ぶ事よ」
爪'ー`)y‐「そうそう、ちゃんと選ぶんだよ」
ζ(゚- │
(,,^Д^)ドキドキ
ζ(゚- ゚*ζ,, │
(,,^Д^)!
ζ(゚- ゚*ζ「よむ……」
(,,^Д^)「はい、ありがとうございます!」
ζ(゚- ゚*ζ「ぅぅ……?」
ξ゚⊿゚)ξ「ほらデレ」
ζ(゚- ゚*ζ「あぅ……おねさん……」
ξ゚⊿゚)ξ「私の影に隠れるな、ちゃんと挨拶からしなさい」
-
ζ(゚- ゚*ζ「ぅー……デレ、よろしく、おねあいします……」
(,,^Д^)「はい、よろしくおねがいします」
ζ(゚- ゚*ζ「あぃ……なかよし、する……」
(,,^Д^)「はい、お友達になりましょうね」
ζ(゚- ゚*ζ(しらないひとこわい……)
(,,^Д^)(大丈夫かな……ちゃんとお友達になれるかな……)
ζ(゚- ゚*ζ(でもしらないひとちやう……もうしってるひと……タカラおぼえる……)
(,,^Д^)(うう……無言がなんだかお腹が痛くなる感じ……)
ζ(゚- ゚*ζ「う……なる、おともだち……」
(,,^Д^)(まだ怖がられてるみたいだけど、良かったぁ……)ホッ
ξ゚⊿゚)ξ(育った……)
爪'ー`)y‐(育った……)
-
ξ゚⊿゚)ξ「あーそうだ、温泉あるのよね」
(,,^Д^)「あっはい! あります!」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあデレ、一緒に入りましょ」
,,ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ?
ζ(゚- ゚*ζ「ひとりはいる」
ξ゚⊿゚)ξ「何で?」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ?
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん、はいる」
爪'ー`)y‐「えっ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「駄目よデレこの狐はきっと幼女だろうと構わず手を出すクズよ」
爪'ー`)y‐「好みのー! 胸のサイズはー!! Fカップー!!!」
ζ(゚- ゚*ζ「えふかっぷ」
爪'ー`)y‐「ホームランバーに欲情しないのに子供に手を出すわけないよねー!!!」
ζ(゚- ゚*ζ「ほーむらんばー」
ξ゚⊿゚)ξ「狐こっちに来い」
爪'ー`)y‐「あっ待ってノルマはもう終わらせたよね」
ξ゚⊿゚)ξ「良いから来い」
爪'ー`)y‐「待って待って待って」
< ゴシュッ
,,ξ゚⊿゚)ξ「お風呂行きましょうか」ポタポタ
(;,^Д^)「おおおお客さん血まみれですよ!? 何したんですか!?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさいね起きたら掃除させるから」
(;,^Д^)「いったい何を……!?」
ξ゚⊿゚)ξ「わからないほうがいい」
(;,^Д^)「こわい!?」
ζ(゚- ゚*ζ「なれる」
(;,^Д^)「何に!?」
ξ゚⊿゚)ξ「しばらくあっち行っちゃダメよ、うじゅるうじゅるしてるから」
(;,^Д^)「うちの宿で何したんですかぁ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、もしかして客室ある?」
(,,^Д^)「あ、えっと一応、固定のお客様が居て」
ξ゚⊿゚)ξ「ほう、年間契約みたいなアレかしら」
(,,^Д^)「そう言うわけじゃないんですけど、その人のお部屋としておいてあるんです」
-
(,,^Д^)「冒険者の方で、年に何度も来てくれるんです」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、冒険者で年に何度もって言うのは珍しいわね……」
(,,^Д^)「しばらく滞在したと思ったら、ふらっと東に行くって旅立っちゃうんですよ」
ξ゚⊿゚)ξ「何かかっこいいわね……」
(,*^Д^)「かっこいいんですよ!」
ξ゚⊿゚)ξ(あら嬉しそう)
(,*^Д^)「でぃさんはかっこいいんです、小さい頃から憧れてて」
ξ゚⊿゚)ξ「でぃ?」
(,*^Д^)「あっ、えっと、少し難しい名前で、小さい頃はうまく言えなくて……」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、それで短縮して呼んでるの?」
(,*^Д^)「はい、つい馴染んじゃって……」
ξ゚⊿゚)ξ(微笑ましい……)
-
(,,^Д^)「今はうちに滞在してるんです、夕方くらいに戻ってくると思いますよ」
ξ゚⊿゚)ξ「会ったら話してみたいわね」
(,,^Д^)「すごくかっこいいんですよ、きっとお話も合うと思います」
ξ゚⊿゚)ξ(でぃ、か……本名は何なんだろう……)
爪'ー`)y‐「あーよく死んだ」
ξ゚⊿゚)ξ「お帰り」
爪'ー`)y‐「ただいま」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんまっか」
爪'ー`)y‐「これ貸衣装なのになーもー」
(,,^Д^)「あ、血の染み用の洗剤ありますよ」
爪'ー`)y‐「意外と平気そうだね」
(,,^Д^)「冒険者の方はよく来ますから、怪我をして戻られる事もあるんです」
-
その後、温泉に入ったり、部屋で買ったものを食べたり、宿屋の息子とデレが遊ぶのを眺めたり。
狐はその辺で観光客を捕まえては口説くと言う遊びをしていたが、途中で疲れたのか帰って来た。
焦げた跡があった。
デレは緊張していたが楽しそうに絵本を読み聞かせて貰ってるし、人が苦手なのも少しずつ緩和すると良い。
もしかすると初めてじゃないだろうか、友達が出来たのは。
だとしたら非常に微笑ましい。
デレが成長するのは見ていて楽しいものだ。
それから二日ほどは外食をしたり、記念館を覗いたり。
久々に休暇らしいのんびりとした日々を満喫した。
貸衣装は買い取りになった。
そして町に来て4日目の朝、部屋に充満した匂いに気がついたのは、狐だった。
爪'ー`)「ん? んんー……何か匂いがする」
ξ゚⊿゚)ξ「匂い? ……あらほんと、オレンジ系の……」
爪'ー`)「煙草止めてたら匂いわかるな……えーと何だろ、どこから……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「あ、これ」
爪'ー`)「ん? ……あー番号札」
ξ゚⊿゚)ξ「番号札から匂いがする……」
爪'ー`)「呼ぶってこう言う……」
ξ゚⊿゚)ξ「呼ばれたんなら行きましょうか」
爪'ー`)「そうだねぇ、デレも起きて」
ζ(- -*ζ「んぅ……おき……」
ξ゚⊿゚)ξ「寒い日はよく寝るわね……」
爪'ー`)「デレもお守りのお礼言いに行くよ」
ζ(ぅ- ゚*ζ「あい……」
爪'ー`)「ほら外套着なさい」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
ξ゚⊿゚)ξ(親子か)
-
からんころん。
(*゚∀゚)「おーう来たなー! 頼まれてた煙草できたぞー!」
爪'ー`)「わぁいありがとうございます、吸ってたのがもう残り少ないから吸うのが楽しみ」
(*゚∀゚)「お、ちびこいのも来たのか!」
ζ(゚- │ 「あい……おまもり、ありやとござました」
(*゚∀゚)「大事にしろよ!」
゙ζ(゚- │ 「あい……」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、私もひとつ良いかしら」
(*゚∀゚)「おう?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうやら私は魔防が低い体質みたいで、それを守ってくれるお守りがあると」
(*゚∀゚)「おーよく知ってんな! 誰かから聞いたのか?」
ξ`⊿´)ξ「ヒールって言うこう言う目の子が」
爪'ー`)「ブッフォ」
-
(*゚∀゚)「ほーほー、よく勉強してんだなそのつり目! 来たら安くしてやるかー!」
ξ゚⊿゚)ξ「喜びます」
(*゚∀゚)「んで魔防のお守りだっけ? 良いぞー二日ばかしかかるけど」
ξ゚⊿゚)ξ「思いがけず長居するわね」
爪'ー`)y‐「僕は良いよぉ、急ぐ旅でなし」
ξ゚⊿゚)ξ「それじゃあお願いして良いですか?」
(*゚∀゚)「おーう任された! 首から下げるのとか色々あるけどどんなのが良い?」
ξ゚⊿゚)ξ「ふむ、あまり装飾品を増やすのは……」
(*゚∀゚)「じゃあえーと……あ、手首! 何かつけてるだろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、角輪ですね、この子の母親の」
(*゚∀゚)「それ使うか!」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ金属に匂いを?」
-
(*゚∀゚)「できるできるー! よし貸せ!」
ξ゚⊿゚)ξ「勢いあるなこの人……じゃあ、デレ、良い?」
ζ(゚- ゚*ζ「がう? それおねさんの、デレのものない」
ξ゚⊿゚)ξ「……おねがいします」ポンポン
ζ(- -*ζ「ぅー」
(*゚∀゚)「任されたー! 新しい番号札これな!」
ξ゚⊿゚)ξ「それじゃあまた近いうちに、お代はその時で良いですか?」
(*゚∀゚)「どっちでも!」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ後払いで」
爪'ー`)y‐「ありがとうございましたーん」
ζ(゚- ゚*ζ「ばいばい……」
(*゚∀゚)「またなー!」
-
からんころん。
ばたん。
(*゚∀゚)
(*゚∀゚)「あー……」
(*゚∀゚)「仕事すっかぁ……」
ぎぃぎぃ、がちゃ。
ぱたん、こつこつ。
こつこつ。
こつこつ。
(*゚∀゚)「ねーちゃんはさー……」
(*゚∀゚)「それで良いのかよー……」
(*゚∀゚)
(*-∀-)「はー……」
つづく。
-
>>558と>>559の間に
川*` ゥ´)「ここに調香師が居るのは知ってるか? 人気で予約待ちすらあるけど腕が良くてな」
ξ゚⊿゚)ξ「身内の紹介で真っ先に仕事受けてくれたわ」
川*` ゥ´)「マジかよずりーなくそったれ」
ξ゚⊿゚)ξ「あとであんたの事も紹介するから……」
川*` ゥ´)「マジかよちょっと嬉しいじゃねーか……」
ξ゚⊿゚)ξ「で、調香師がどうしたの?」
川*` ゥ´)「ああそうそう、そいつの作る匂袋のお守りが身を守ってくれるんだよ」
ζ(゚- ゚*ζ「これ?」
川*` ゥ´)「そうそ何で持ってんのお前」
ζ(゚- ゚*ζ「もらた」
川*` ゥ´)「マジかよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「脱臭アイテムよ」
川*` ゥ´)「ありがたみが消し飛ぶなそれ」
-
ありがとうございました、本日はここまで。
後編は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
シリーズ作である塔・旅などこちらから読めます!!
読みにくいなどありましたら言って下さい!!
http☆oppao.web.fc2.com/text_smp.html
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2325.png
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相も変わらず不満げなデレさん
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ξ`⊿´)ξ←かわいい
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デレちゃんきゃわわ
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乙
デレ可愛い
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衣裳やっぱり買取になってんじゃねえか
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獣の返り血どころじゃなかったのよ…
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やっぱファンタジーいいなあ街楽しんでるの好き
ツンちゃんのイラスト常に眉間にシワあるな
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ツンちゃんそんな気張らなくてもいいのよ、お洋服よく似合ってるよ
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例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声、獣じみた幼い咆哮。
刃を振るい、歌声を響かせ、魔力を用い、路銀を稼いで進むのは三人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
そんな二人の後ろをついて歩く、小さな魔族の子供。
【道のようです】
【第十話 いくら何でもそれは無い。 後編】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
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元旦も来るのか
支援
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ξ゚⊿゚)ξ「……いくらくらいするのかしら、魔防のお守り」
爪'ー`)「まぁまだ財布に余裕はあるから大丈夫だよ」
ζ(゚- ゚*ζ「ぜいたくざんまい」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね……最近野営で肉狩って食ってないわよね……」
爪'ー`)「うんまぁそうだけど普通は魔物の肉を日常的には食べないんだよツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
ζ(゚- ゚*ζ「えっ」
爪'ー`)「デレは良いけどツンちゃんはおかしいのを自覚して」
ξ゚⊿゚)ξ「普通なのでは……?」
爪'ー`)「違います君がおかしいんです」
ξ゚⊿゚)ξ「前もこんな話したな」
爪'ー`)「そんな気がする……っと、タカラ君に滞在伸ばすの言わなきゃ」
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ξ゚⊿゚)ξ「ただいま戻りました」
爪'ー`)「タカラ君はーっと」
ζ(゚- ゚*ζ「がう、においない」
爪'ー`)「あれ、居ないのかな? 店番もしないでどこに行ったんだか」
,,(,,^Д^)「あ……皆さん、お帰りなさい……」
ξ゚⊿゚)ξ「ただいま……どうかしたの?」
(,,^Д^)「いえ、その……」
爪'ー`)「んー?」
⊂ζ(゚- ゚*ζ「がう……タカラはなす」
(,,^Д^)「デレちゃん……」
ζ(゚- ゚*ζ「はなす」
(,,^Д^)「……うん、実は……でぃさんが帰って来なくて……」
ζ(゚- ゚*ζ「う?」
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(,,^Д^)「滞在中は外に出てもかならず夜には戻って宿で寝てたのに、もう三日も戻ってこないんです……」
ξ゚⊿゚)ξ「三日も?」
(,,^Д^)「滞納するような人じゃないんです……すごく誠実で……それなのに、戻ってこないから心配で……」
爪'ー`)「ふむ……じゃあ探しに行ってたの?」
(,,^Д^)「いえ、その、役所に依頼を出そうと思ったんです……でも保護者の同意が無いと駄目で……」
ξ゚⊿゚)ξ「ああうん……お役所だものね……」
(,,^Д^)「それに、依頼料をお支払い出来るほどおこづかいが……」
爪'ー`)「ふむ……つまり冒険者を探して貰いたいけど役所に依頼書は出せないし報酬も出せないと」
(,,^Д^)「お恥ずかしいです……」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
爪'ー`)(あーこれ受けるんだろうなー無報酬でー)
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ξ゚⊿゚)ξ「狐」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん」
爪'ー`)「はいはいその依頼お受けしますよっと」
(,,^Д^)「えっ」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
ζ(゚- ゚*ζ「えっ」
爪'ー`)「どーぉせ二人とも助けてあげてーみたいなアレでしょ? 顔見れば分かるからね?」
ξ゚⊿゚)ξ(なぜバレた)
ζ(゚- ゚*ζ(おにさんすごい)
(,,^Д^)「で、でも報酬は……」
爪'ー`)「良いよもとから子供のお小遣いに期待してないから……」
(,,^Д^)「……お願いしても、良いんですか?」
爪'ー`)「はいはい、どーぞ」
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(,,^Д^)『でぃさんの特徴は、フルプレートの鎧と黒髪、大きな剣を持っていて、顔とかにたくさん傷があるんです』
(,,^Д^)『出掛ける時に山の方に行くって言ってました、だからもしかしたら遭難してるのかも……』
(,,^Д^)『どうかお願いします! でぃさんを見つけてください!』
爪'ー`)「てー事で山に来ましたが」
ξ゚⊿゚)ξ「裏からこっそり入ったけどね」
爪'ー`)y‐「デレ置いてきて良かったの?」シュボッ
ξ゚⊿゚)ξ「あの子を落ち着かせる方が大事じゃない?」
爪'ー`)y‐「まぁそうだねぇ、下手すりゃ初めての友達だろうし」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「何でもない、行きましょ」
爪'ー`)y‐「はいはい、僕らが迷わないようにしないとね」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、さして入り組んではいないけど迷う可能性はあるし……」
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,,ξ゚⊿゚)ξ「しかし、茶色い山肌ね……岩ばっかり」
,,爪'ー`)y‐「うーん、人が居たら簡単に見つかりそうな感じはするけど……」
,,ξ゚⊿゚)ξ「フルプレートなら目立ちそうだけど……」
,,爪'ー`)y‐「後の特徴はたくさんの傷ねぇ……」
,,ξ゚⊿゚)ξ「黒髪で大剣、と……そういや性別聞いてないわね」
爪'ー`)y‐「まぁ特徴的に大男か何か」
,,(#゚;;-゚)テクテク
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐「傷だらけで」
ξ゚⊿゚)ξ「黒髪」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
-
爪'ー`)y‐「そこの人ー! ちょっと良いかなー!!」
ξ゚⊿゚)ξ「すみませーん! すみませーん!!」
(#゚;;-゚)'「? 僕……?」
爪'ー`)y‐(どっちだろう性別)
ξ゚⊿゚)ξ(女にしてはやや長身だけど男にしてはやや小柄)
爪'ー`)y‐(顔立ちも声も中性的……これは……)
ξ゚⊿゚)ξ(ボーイッシュ女子か細身な男子か)
爪'ー`)y‐(女子で行くか……)
ξ゚⊿゚)ξ(どっちにしろ間違えたら気まずいわよこれ)
(#゚;;-゚)「あの……?」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、えーとでぃさん?」
(#゚;;-゚)「はあ、そうですが……」
爪'ー`)y‐「宿屋の坊やから帰って来ないから探してくれと依頼を受けましてね」
-
(#゚;;-゚)「ああ、なるほど……すみません、道に迷ってしまって……この辺りをぐるぐると」
ξ゚⊿゚)ξ「一本道で徒歩三分くらいでここに来たような……」
爪'ー`)y‐「シッ」
(#゚;;-゚)「でも、まだ目的も果たせていなくて」
ξ゚⊿゚)ξ「目的?」
(#゚;;-゚)「はい、話を聞きたくて」
爪'ー`)y‐「こんなところで誰に?」
(#゚;;-゚)「竜に」
ξ゚⊿゚)ξ「竜に」
(#゚;;-゚)「話を聞かなきゃいけなくて」
爪'ー`)y‐(この人なんかフワフワしてるな)
ξ゚⊿゚)ξ(穏和そうな顔立ちと声が傷だらけのビジュアルにそぐわない……)
(#゚;;-゚)?
-
ξ゚⊿゚)ξ「興味本意ですが、竜にどんな用が?」
(#゚;;-゚)「ああ、竜を殺す依頼を受けて」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
爪'ー`)y‐「えっ」
ミ,,゚Д゚彡「えっ」
(#゚;;-゚)「こことは別の竜だけど、竜殺しは難しいと聞く、だからコツを知りたくて」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、ああ驚いた……」
爪'ー`)y‐「と言うか同種族の弱点教えてくれるのかな……」
ミ,,゚Д゚彡「まず普通の人間には難しいと思うぞ?」
(#゚;;-゚)「僕なら殺せると思うんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「自信があるんですね」
(#゚;;-゚)「自信と言うか、僕は化け物の子供だから」
爪'ー`)y‐「おっと、何だか穏やかじゃないね」
ミ,,゚Д゚彡「混血って事か?」
-
(#゚;;-゚)「ルーツは僕には分からないけど、ずっとそう呼ばれてきた、だから僕なら殺せると思う」
ξ゚⊿゚)ξ(わりとフワッとした理由だ……)
(#゚;;-゚)「それに」
爪'ー`)y‐「それに?」
(#゚;;-゚)「竜を殺すと決めてから、血が疼いてしょうがない」
ミ,,゚Д゚彡「こっわ……戸締まりしとこ……」
爪'ー`)y‐「ねぇさっきから気になってたんだけどさ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、さすがに私も気になってたわ」
爪'ー`)y‐「誰だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「誰なの」
(#゚;;-゚)「あっ、一人増えてた……」
ミ,,゚Д゚彡「竜ですね」
-
ξ゚⊿゚)ξ(何言ってんだこいつ……)
爪'ー`)y‐(電波な人かな……?)
(#゚;;-゚)「なら話が早い、聞きたい事があるんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしようノー突っ込みで進めた」
爪'ー`)y‐「マイペース過ぎないこの人」
ミ,,゚Д゚彡「うんまぁ聞くけどさ、同族殺すためって言われるとちょっと」
ξ゚⊿゚)ξ「こっちもマイペースだな」
爪'ー`)y‐「突っ込んでられない」
(#゚;;-゚)「依頼は、この町の調香師から」
ミ,,゚Д゚彡゙ピク
(#゚;;-゚)「ある廃鉱となった鉱山に巣食う老いた竜を、討伐してほしいと言う内容」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
爪'ー`)y‐「あっ」
-
竜かよわろてる
-
(#゚;;-゚)「人間との盟約を時の流れと共に忘れてしまった竜が、町を滅ぼした
その竜は今は再び眠りに就いたが、いつまた目覚めて近隣を襲うかわからない」
ミ,,゚Д゚彡「だから、殺してくれと」
(#゚;;-゚)「そう、町は焼き尽くされ、栄えた軌跡すら残っていないと言う
近隣の町への被害が出る前に、僕はその竜を殺さなければいけない」
ミ,,゚Д゚彡「…………そうかぁ」
(#゚;;-゚)「だから竜よ、教えてほしい、どう殺せば良いのかを」
ミ,,゚Д゚彡「あー……はい、分かりました分かりました……でもちょっと悩ませて……」
(#゚;;-゚)?
ミ,,゚Д゚彡「あー……あぁぁー……あのじい様かぁー……」
ξ゚⊿゚)ξ「知り合い?」
ミ,,゚Д゚彡「うん……まぁ知ってるんだけど……あーそっかぁ……ボケちゃったかぁ……」
爪'ー`)y‐「軽く言うけど町滅んでますよ」
ミ,,゚Д゚彡「長い間寝てるとは聞いたけど……はぁぁー……もう嫁の事も覚えてないんだろうなぁ……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「…………」
ミ,,゚Д゚彡「あー……嫁残してさー……じい様さー……はぁぁー……」
ξ゚⊿゚)ξ(すごく感傷に浸っている……)
爪'ー`)y‐(まぁいずれ自分もそうなるかもしれないと思うとねぇ……)
ξ゚⊿゚)ξ(と言うかマジで竜なのこの褐色マッチョイケメン……)
爪'ー`)y‐(ガチ感あるよね何か……褐色のマッチョイケメンだけど……)
ミ,,゚Д゚彡「まぁ子孫残せただけマシなのかなぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、子孫いるんだ」
ミ,,゚Д゚彡「居る居るめっちゃいる、確か嫁自身も混血でな」
爪'ー`)y‐「えっあの薬師そうだったの」
ミ,,゚Д゚彡「どっかの魔族の血が入ってるんだよ確か、だから色々耐えられたんじゃねーかなぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「あー肉体的にも精神的にも……」
-
爪'ー`)y‐「でも人間って言ってたよ?」
ミ,,゚Д゚彡「俺らが見たら分かるけど、本人は知らないんだろうよ」
ξ゚⊿゚)ξ「はへー……強い人だなとは思ってたけど……」
爪'ー`)y‐「強くならざるを得なかったんだろうけどねぇ」
ミ,,゚Д゚彡「……さて、弱点だったか」
(#゚;;-゚)「はい」
ξ゚⊿゚)ξ(素直に待ってたな……)
ミ,,゚Д゚彡「竜は人に心臓を食わせても死なないような種族だ、だから普通は簡単に殺せない」
(#゚;;-゚)゙「はい」
ミ,,゚Д゚彡「だから狙うなら竜のどこかにある石だ」
(#゚;;-゚)「石?」
ミ,,゚Д゚彡「俺はこの胸の奥にあってな」メリメリ
ξ゚⊿゚)(マジだった)
爪'ー`)y‐(そんな簡単に弱点を)
-
ミ,,゚Д゚彡「普通の人間には砕けない代物だが、石にある生命力を吸い上げれば死ぬ」
爪'ー`)y‐「どうやって吸い上げるの?」
ミ,,゚Д゚彡「そんなもん自分で考えろ」
ξ゚⊿゚)ξ「最後に投げただと……」
(#゚;;-゚)「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「ほらでぃさんも困って」
(#゚;;-゚)「分かった、出来ると思う……血は出るだろうけど」
ξ゚⊿゚)ξ「マジでか」
爪'ー`)y‐「やべーなおい」
(#゚;;-゚)「有り難う竜よ、お陰で僕は約束を果たせそうだ」
ミ,,゚Д゚彡「あーやり方分かっても死にかけの竜以外には喧嘩売るなよ、危ないから」
(#゚;;-゚)「本当は、竜殺しはしたくないから」
ミ,,゚Д゚彡「なら良い」
(#゚;;-゚)「……それに、斬り倒せない戦い方は好きじゃないから」
ξ゚⊿゚)ξ(話が合いそうだ……)
-
(#゚;;-゚)「それじゃあ僕は山を降りる、タカラにも顔を見せないと、二人共ありがとう」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、心配してたわ」
(#゚;;-゚)「山を降りて挨拶をしたら、急いで鉱山を目指すよ」
爪'ー`)y‐「いつまた起きるか分からないしねぇ」
(#゚;;-゚)「それになぜか僕は道を行くのに時間がかかってしまって」
ξ゚⊿゚)ξ(なぜか)
爪'ー`)y‐(シッ)
(#゚;;-゚)「東北に行こうとして九州に居たみたいな事がよく起きて」
爪'ー`)y‐「知らない土地名ですね……」
ξ゚⊿゚)ξ「全然分からないわね……」
(#゚;;-゚)「それじゃあ竜よ、今後もこの土地を頼む」
ミ,,゚Д゚彡「言われんでもやるけどな」
-
,,(#゚;;-゚)
ξ゚⊿゚)ξ「でぃさん違います」
爪'ー`)y‐「こっちです」
(゚-;;゚#),,
ξ゚⊿゚)ξ「でぃさん待ってそこ道じゃない」
爪'ー`)y‐「何その道なき道に進む勇気」
ミ,,゚Д゚彡(よく冒険者やってんな)
ξ゚⊿゚)ξ「……不安しか無いわ」
爪'ー`)y‐「道なりには降りていったみたいだけど……」
ミ,,゚Д゚彡「あれがミスリルとはなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
爪'ー`)y‐「マジで」
-
ミ,,゚Д゚彡「緑っぽいバッチだったわ」
ξ゚⊿゚)ξ「格上だった……」
爪'ー`)y‐「だいぶ格上だった……」
ミ,,゚Д゚彡(人間も銀だの金だの大変だなぁ)
爪'ー`)y‐「……せっかくだし世間話します?」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちやること終わっちゃって……」
ミ,,゚Д゚彡「あーうん良いけど、定期的に変な人間が来るなぁ……」
爪'ー`)y‐「前にも変な人間が?」
ミ,,゚Д゚彡「妙に綺麗な従者を連れた顔色の悪い魔導師とか、緑の髪の怖いもの知らずの子供とか」
ξ゚⊿゚)ξ「変ね……」
爪'ー`)y‐「変だ……」
ミ,,゚Д゚彡「方向音痴の竜殺しと小さい戦士と赤い吟遊詩人がそこに加わるぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「なぜ戦士だと」
爪'ー`)y‐「なぜ吟遊詩人だと」
ミ,,゚Д゚彡「いやお前ら斧と楽器片手に……」
-
爪'ー`)y‐「ちなみに小さな戦士は人の頭を素手で潰せます」
ξ゚⊿゚)ξ「証拠はお見せできません」
ミ,,゚Д゚彡「マジかよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「ちなみに赤い吟遊詩人は死んでも蘇ります」
爪'ー`)y‐「証拠はお見せできません」
ミ,,゚Д゚彡「うんまぁそれは見せなくて良いよ別に怖いし」
爪'ー`)づ「なお小さい戦士は胸も小さいですねー」ペタペタ
ξ゚⊿゚)ξ「あんたの殺す大義名分を自分から差し出す芸人根性は気に入ってるわよ」
<メシャッ
<ァ゙ッ
ξ゚⊿゚)ξ「このように」ポタポタ
ミ,,゚Д゚彡「相方の頭を岩に押し潰して言う事……?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ああそうだ、竜は礼を重んじるんだったわね」
ミ,,゚Д゚彡「うんまぁ」
ξ゚⊿゚)ξつ「私はツン・グランピー、しがない冒険者よ」
ミ,,゚Д゚彡「えっその頭の内容物がついた手と握手する流れ?」
ξ゚⊿゚)ξづ「ほら、怖くない」
ミ,,゚Д゚彡「怖い怖いやめて」
,,爪'ー`)y‐「怖いよねぇやっぱり」
ミ゚Д゚,,彡「待って何か平然と戻ってきてる」
ξ゚⊿゚)ξづ「このように」
爪'ー`)づ「このように」
ミ,,゚Д゚彡「何だよお前ら芸人か何かかよ」
ξ゚⊿゚)ξ「焼きたてパンと溶かしバターです」
ミ,,゚Д゚彡「何が!?」
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ξ゚⊿゚)ξ「しかし、竜と言うのはもっと恐ろしくて尊大なものだとばかり」
爪'ー`)y‐「おとぎ話の竜はだいたいそうだからねぇ」
ミ,,゚Д゚彡「あーまぁ一応は人間と共存してるしなぁ、俺はだいぶフレンドリーな自覚あるわ」
ξ゚⊿゚)ξ「でも生け贄を貰ってるのよね」
ミ,,゚Д゚彡「まぁ確かに俺は竜だしな、しょうがな」
,,川 ゚ 々゚)「旦那様ぁ……?」
ミ,,゚Д゚彡「あっあちょっと出てきちゃ駄目なんだって一応生贄は食った事になってんだから」
ξ゚⊿゚)ξ(本当に生きてるんだ)
爪'ー`)y‐(マジで生きてるんだ)
ミ,,゚Д゚彡「あーえっとなんだっけ」
ξ゚⊿゚)ξ「奥さんが若い」
爪'ー`)y‐「奥さん見覚えある」
ミ,,゚Д゚彡「いや違うだろ、つか何だ見覚えあるって」
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爪'ー`)y‐「奥さん魔女だったりしません?」
ミ,,゚Д゚彡「やーあいつ過去の事よくわかんないからなぁ」
爪'ー`)y‐「そっかー一晩でポイ捨てした魔女に似てたんだけどなぁ」
ミ,,゚Д゚彡「お前まだ若いんだから身を滅ぼす火遊びは控えろよ?」
爪'ー`)y‐「もう滅んだようなもんじゃない?」
ミ,,゚Д゚彡「頑張って再建しろよ」
爪'ー`)y‐「出来る気がしないなー」
ξ゚⊿゚)ξ「初めまして、冒険者です」ペコリ
川 ゚ 々゚)「竜の花嫁ですわぁ……」ペコリ
ミ,,゚Д゚彡「嫁同士が挨拶を」
爪'ー`)y‐「不服を申し立てる」
ミ,,゚Д゚彡「そんなお前堂々と……」
爪'ー`)y‐「僕あの子の事は気に入ってるけど異性として認識してないから……」
ミ,,゚Д゚彡「言葉のあやだよ……」
爪'ー`)y‐「色気ゼロで目の前で服脱いでも恥じらう素振りも見せないとかクソ極まってるから……」
ミ,,゚Д゚彡「相棒に対して言い過ぎだよ……」
爪'ー`)y‐「あと嫁とか重いし一夜限りで良い」
ミ,,゚Д゚彡「再建しろよ……」
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ミ,,゚Д゚彡「つかお前めっちゃ呪われてんのな……」
爪'ー`)y‐「あ、分かっちゃいます? いやー見る目ある人はちがうなー」
ミ,,゚Д゚彡「お前だいぶキツい呪い受けてんのに軽いなぁ……魔女の呪いだろそれ……」
爪'ー`)y‐「竜ならどうにか出来ない?」
ミ,,゚Д゚彡「無理無理、怖い怖い」
爪'ー`)y‐「竜が人を怖がらないでよーぉ」
ミ,,゚Д゚彡「魔女の血筋は特殊なんだからこえーよ……」
爪'ー`)y‐「やっぱ特別なんだねぇ魔女って」
ミ,,゚Д゚彡「あいつらは魔女同士で子供作って血筋保ってるからな、濃くなりすぎてもはや人じゃねぇよ」
爪'ー`)y‐「その血が長く続けば続くほど人から離れるって事?」
ミ,,゚Д゚彡「そうそう」
爪'ー`)y‐「分家とかってのは? やっぱり直系に比べると劣るの」
ミ,,゚Д゚彡「んー、魔女の血族以外と子供つくったりするとその分力は弱まるよ」
爪'ー`)y‐「ほーん、だからあの子は出世欲が強いのかねぇ」
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ミ,,゚Д゚彡「あの子?」
爪'ー`)y‐「アンソルスランの分家だかの子」
ミ,,゚Д゚彡「そりゃまたコンプレックスの塊だろうなぁ」
爪'ー`)y‐「あ、そんなに?」
ミ,,゚Д゚彡「そんなに、ところでさ」
爪'ー`)y‐「はい」
ミ,,゚Д゚彡「そこの娘二人、遊んでないで嫁は家に帰りなさい」
ξ゚⊿゚)ξ「今あや取りが難しくて」
爪'ー`)y‐「あや取りが難しいて」
ξ゚⊿゚)ξ「見た事もない図を持ってくるのこの子……何なのアトラスの餌食になったスカイツリーって……」
ミ,,゚Д゚彡「またアトラスに東京崩壊させてる……ほらもう死んだ事になってんだから戻っていい子にしてな」
川 ゚ 々゚)「はぁい旦那様ぁ……溶かしバターちゃん、また遊びましょぉ」
ξ゚⊿゚)ξ「出来れば次はアトラスシリーズはご勘弁願いたい」
爪'ー`)y‐「どんだけ崩壊したの……」
ξ゚⊿゚)ξ「アトラスの餌食になった新宿駅とか……」
爪'ー`)y‐「最初から迷宮ダンジョンだよぉ……」
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ミ,,゚Д゚彡「あー……何か懐かしいな……」
ξ゚⊿゚)ξ「懐かしい?」
ミ,,゚Д゚彡「そう言うメタ入った現代ネタ懐かしいわ……」
爪'ー`)y‐「やめて」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなしみじみと」
ミ,,゚Д゚彡「嫁も戻ったし、世間話するか?」
爪'ー`)y‐「さっきさぁ、調香師って言った時に反応してたよね?」
ミ,,゚Д゚彡「あー」
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり寵愛の」
ミ,,゚Д゚彡「シッ」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
ミ,,゚Д゚彡「寵愛の話はやめろ、場所が悪い」
爪'ー`)y‐「はーん……奥さんに聞かれたら困るぅ?」
ミ,,゚Д゚彡「そうだよ困るんだよ……あー……場所変えるぞ」
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竜(仮)に連れられ、山道を進む。
少しばかり離れた場所にある岩場を越えれば、ごつごつとした岩肌ばかりの景色が鮮やかに切り替わる。
先程までの無骨な光景とは正反対の、鮮やかに色付く花々。
よく澄んだ水が溢れ、流れ、町の方へと降りて行く。
その清い水にふとした既視感を覚えたが、その正体は分からなかった。
さやさや、風が花を揺らして甘い香りを漂わせる。
広くはない、しかし目映いような花畑。
岩山の近くとは思えない草木の様相は、まるで違う世界のように思えた。
ξ゚⊿゚)ξ「はー……綺麗なもんね……」
爪'ー`)y‐「オアシスみたいだねぇ……」
ミ,,゚Д゚彡「ここには本来は禁足地、嫁にも来るなって言ってあるから好きに話せるぞ」
爪'ー`)y‐「ここは特別な場所?」
ミ,,゚Д゚彡「ああ、立ち入る輩は嫁であろうと始末するよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そんな場所に私達を入れて良いの?」
ミ,,゚Д゚彡「……調香師の話は、こでしか出来ないからな」
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ξ゚⊿゚)ξ「…………あなたの寵愛を受けたのよね、彼は」
ミ,,゚Д゚彡「ああ、そうだよ、若さ故の過ちだよ」
爪'ー`)y‐「男同士だし、何か理由があったんじゃないの?」
ミ,,゚Д゚彡「あーまー……んぁあー…………あ゙ー……」
ξ゚⊿゚)ξ(ほんと人間臭いなこの竜)
爪'ー`)y‐(竜とは……)
竜を名乗る大柄な男は、花畑の真ん中に座り込み、その毛量の多い頭をがしがしと掻いて項垂れる。
その横顔は人間と何ら変わらない、後悔やら罪悪感の混じり合った顔だった。
竜は自らの行いを過ちと言い、それを深く悔いている。
その後悔の中身を、恐らくだが、察する事が出来た。
ミ,,゚Д゚彡「……寂しかったんだよなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
ミ,,゚Д゚彡「大昔に人間を助けてさぁ、今は信仰の対象でさぁ……
この辺りには同族もほとんど居ない、知った人の顔は容易く死んでいく、だから寂しかったんだよなぁ……」
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爪'ー`)y‐「……だから、子供を不死にしたの?」
ミ,,゚Д゚彡「やめてくれよ、分かってんだ、俺の勝手なワガママで友人を寂しいばけものにしちまったんだ」
爪'ー`)y‐「…………」
ミ,,゚Д゚彡「分かってんだ、でも寂しくて……バカだったんだ、あの頃は……」
竜は、悲しそうな目で語る。
今よりもっともっと若かった頃の話。
まだ信仰の対象では無かった頃の話。
人々が飢えに死ぬ様を傍観した話。
人々に肉を分け与えた事で救った話。
知った顔の人間が死んでいく時の流れ。
それでもそこを動けず人々を守る日々。
飽きる様な孤独と、飽きる様な平穏、生きているのかも分からない。
そんな時に、一人の子供が恐れを知らずに話しかける。
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『なーなー、お前は仲間がいないのに寂しくねーのか?』
『もうわかんねぇよ』
『んーじゃあおれがお話してやるよ!』
『えっいらねぇよ帰れよ』
『昨日はこんなでっけー虫がとれてなー!』
『うるさいなお前は』
『あっそーだ! なーなーお前なんつーの? おれはさー』
『聞いてねぇ聞いてねぇ答えねぇ』
『あー? じゃあ教えろよー!』
子供の気まぐれを追い返す気にはならなくて。
それでも子供は毎日やってきて。
どうせ飽きると思ったのに飽きなくて。
一吼えすれば恐れるかと思ったのに大はしゃぎして。
毎日毎日くだらない話をしにきて、背中に乗ったり角にぶら下がったりの無礼講で。
そんな日々が、いつの間にか自然と始まっていた。
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でも不思議と、それが心地よかったのだ。
幾年振りに孤独を忘れて、その子供と時を過ごせた。
竜にとってはほんの数秒。
人にとってはながい数年。
ほんの僅かな時の流れと感じても、その時は竜にとっては濃密で穏やかな時で。
見知らぬ子供が大切な友人に変わるのに、十分すぎる程の時間で。
飽いていた孤独感は、人間の友人と過ごす事で塗り潰された。
友と呼べる様な存在は、この頃にはもう他に居なかった。
子供はあと一息で一人立ちと言う歳になり、最近している勉強の話をしていた。
そしてぽろ、と口に出す。
『ねーちゃんがなー、竜の嫁になるんだって』
確か、少し前に同族との喧嘩に負けた、老いた竜が近くに降りてきたと聞く。
どうやら子供の姉は、その竜といつのまにやらそう言う関係になったのだろう。
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しかし嫁入りか、よもや心臓を食わせやしないだろうな。
あれは、本当に特別な。
特別な、
『ああ、そうだ』
『なんだー?』
『お前は、永久に生きたいと思わないか』
これは過ちだ。
犯してはならない過ち。
竜の心臓は人間を不老不死にする。
それは老いる事も無く。
ばらばらにされても死ぬ事も無く。
この世界が滅びたとしても、きっと生き続ける呪い。
だから竜は心臓を食わせたりはしない。
だからそんなものは今まで生まれてこなかった。
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でも、この呪いは解呪出来る。
再び生きた心臓を口にして、竜に殺してもらう事。
それだけが、不老不死のばけものを人間に戻せる方法。
だからこいつが嫌になった時、そうしてやれば良いんだ。
もう嫌になったと、死にたいと言った時、殺してやれば良いんだ。
だから、
『んー……』
だから、
『うん! おれ不老不死になりたい!』
この時、拒否してくれていれば
-
こうして、若い竜はばけものを産み出した。
犯してはならない過ちを犯して、傍らに不死者を置いていた。
けれど時の流れに従い、その状態を維持できなくなっていって。
いつもそばに居た友人は、いつしか少しの距離を置くようになり。
今ではもう顔を合わせる事すらまれになってしまって。
年月は流れ、人間の妻を幾人も迎えた竜は、その妻達を心から愛して、心から大切にする。
だからこそ、決して寵愛を与えはしない。
愛するからこそ、妻達は人として死なせたい。
それが今の、竜にとっての最大の願いとわがままだった。
悔いる竜は、親友と顔を合わせる度に訊く。
『まだ死にたくはならないか』
永遠の少年は、決まって明るく笑いながら答える。
『いや、まだ全然』
-
竜はたった一人の親友が死を願うまで、親友のそばに居続ける事を己に誓った。
親友が死にたいと言った時、いつでも殺してやれるように。
自分が救わなければならない人々が居るこの町に。
守るべき人々の居るこの町に、ただただ居座り続ける事を。
ミ,,゚Д゚彡「だーからさぁ、俺は嫁には寵愛の事も教えてないの」
ξ゚⊿゚)ξ「……人として死んでほしい、って……何か重いわね……」
ミ,,゚Д゚彡「そりゃなぁ……俺がバカだったから、あいつをばけものにしちまったんだ」
爪'ー`)y‐「早く殺してあげたい?」
ミ,,゚Д゚彡「……俺が死ぬ前に、殺してやれたらなぁとは思うよ」
生きてくれと願う事と、死んでくれと願う事、いったいどちらの方が罪深いのだろう。
不死者を産み出す事が出来ると言うのは、どんな気持ちなのだろう。
そして、それを聞いていた不死者の気持ちとは、いったい。
-
爪'ー`)y‐「不老不死ってさ」
ミ,,゚Д゚彡「うん」
爪'ー`)y‐「死なないの?」
ミ,,゚Д゚彡「死なない」
爪'ー`)y‐「僕は死んでも蘇るんだけど、死なないの?」
ミ,,゚Д゚彡「お前のは死体から魂が剥がれなくて、体が再生して蘇るだろ」
爪'ー`)y‐「そんな感じ?」
ミ,,゚Д゚彡「死なないのは、どんなに粉微塵になっても生きてるんだよ」
爪'ー`)y‐「……意識とかあるの?」
ミ,,゚Д゚彡「頭が吹き飛べば意識は消えるだろうな」
爪'ー`)y‐「あぁー……単細胞生物みたいにうぞうぞして身体が再生するアレ……?」
ミ,,゚Д゚彡「そうそう」
爪'ー`)y‐「うへーグロい」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたもそうよ」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ
-
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そうだ」
ミ,,゚Д゚彡「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「薬師、子孫が居るのよね」
ミ,,゚Д゚彡「あー居る居る、竜と……人間で良いか、のハーフって血を受け継いだ奴らが」
爪'ー`)y‐「何か特色とかってあるのかなー、よくあるじゃないそう言うの」
ミ,,゚Д゚彡「まぁ個体差によるとは思うけど……平均より丈夫とか長生きとかはあるんじゃないか?」
爪'ー`)y‐「見た目は? 角とか生えちゃう?」
ミ,,゚Д゚彡「いやー生えてなかったみたいだけどな」
ξ゚⊿゚)ξ「今もまだその血は続いているのかしら……」
ミ,,゚Д゚彡「続いてただろ?」
ξ゚⊿゚)ξ?
爪'ー`)y‐?
-
ミ,,゚Д゚彡「? 何だその顔、さっき見ただろ」
ξ゚⊿゚)ξ「さっき……?」
爪'ー`)y‐「いつ……?」
ミ,,゚Д゚彡「ミスリルの竜殺し」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
(*゚ -゚) ─┬─ 竜
│
┌─┴─┐
┌┴┐ ┌┴┐
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
略
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
┌─┘
\子孫/
(#゚;;-゚)
ξ゚⊿゚)ξそ
爪'ー`)y‐そ
-
ξ;゚⊿゚)ξ「マジか!?」
爪;'Д`)y‐「マジで!?」
ミ,,゚Д゚彡「あぁー人間には分からないアレか……混血って事だけが言葉で受け継がれてたんだろうなぁ」
ξ;゚⊿゚)ξ「あっ……あー似てるな!? 顔似てるな!?」
爪'ー`)y‐「いや待ってツンちゃんもっと似てる人を今までさんざん見てきた気がする」
ミ,,゚Д゚彡「親戚なんじゃね」
爪'ー`)y‐「マジかよぉ……ジョーイさんじゃないのかよぉ……」
ミ,,゚Д゚彡「ジュンサーさんかもな……」
ξ゚⊿゚)ξ「だいぶどっちでも良いんだけど……ん?」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「……でぃさんが子孫よね?」
爪'ー`)y‐「そうみたいだねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「…………祖先である竜を、子孫が殺すの……?」
爪'ー`)y‐「あ」
ξ゚⊿゚)ξチラッ
爪'ー`)y‐チラッ
ミ,,゚×゚彡ミッフィー
-
ξ゚⊿゚)ξ「えぇー……ぇぇぇぇー……」
爪'ー`)y‐「あー何か、あー何かあー」
ミ,,゚Д゚彡(そうなるわなぁ)
ξ゚⊿゚)ξ「あぁー……あの竜を殺すってだけであぁーなのに……」
爪'ー`)y‐「しかも殺すのが自分の子孫って……」
ミ,,゚Д゚彡「実際は依頼したのは薬師だろうしな」
ξ゚⊿゚)ξハッ
爪'ー`)y‐「……そりゃそうだよねぇ」
ξ;゚⊿゚)ξ「…………」
ξ;∩⊿∩)ξ゙
爪'ー`)y‐「あ、ツンちゃんがめんどくさくなった……」
ミ,,゚Д゚彡「めんどくさい図なのかそれ……」
爪'ー`)y‐「自分がどうしようもない胸くそスッキリしない事案にぶつかるとこうなるよ」
ミ,,゚Д゚彡「悩むタイプかー……冒険者よくやれてんな……」
爪'ー`)y‐「ほんとにね……」
-
ミ,,゚Д゚彡「ん」
爪'ー`)y‐「うん?」
ミ,,゚Д゚彡「お前らそろそろ山降りろ、雨になるぞ」
爪'ー`)y‐「あー雲が暗くなってきたね、ほらツンちゃん降りよう」
ξ;∩⊿∩)ξ「ア゚ー」
爪'ー`)y‐「どこから出たのその声……ほら行きますよー」
ミ,,゚Д゚彡「気を付けて帰れよー」
爪'ー`)y‐「はいはーい、色々聞かせてくれてありがとうね」
ミ,,゚Д゚彡「歌にするのは命に関わらない部分でな」
,,爪'ー`)y‐「チッ はーい」
ミ,,゚Д゚彡(舌打ちしやがった……)
ミ,,゚Д゚彡
ミ,,゚Д゚彡「おい、もう出てこい」
│∀゚)゙
-
ミ,,゚Д゚彡「ったく、コソコソすんな」
,,(*゚∀゚)「だーっておれの客が居たんだもーん」
ミ,,゚Д゚彡「…………おい」
(*゚∀゚)「死なねーよ?」
ミ,,゚Д゚彡「だよなー」
(*゚∀゚)「嫌になったら殺してもらうからさー、もうしばらく仕事してたいわけよー」
ミ,,゚Д゚彡「……好きにしろ」
(*゚∀゚)「イヒヒー」
ミ,,゚Д゚彡「竜殺しの依頼さ」
(*゚∀゚)「ねーちゃんの、あの二人が知らずに持ってきたんだよ」
ミ,,゚Д゚彡「……あいつら、すげーバトン渡されて届けたんだよな」
(*゚∀゚)「なのにバトンを運んだあいつらは、顛末を風の噂でしか聞かないんだろうな」
ミ,,゚Д゚彡「…………」
(*゚∀゚)「そうだ花、持ってくぞ」
ミ,,゚Д゚彡「おう」
-
(*゚∀゚)「ここの花がさー、良い匂い出すんだよなー」
ミ,,゚Д゚彡「墓場だけどな」
(*゚∀゚)「死体の上に咲いた花だから、きっと良い匂いがするんだよ」
ミ,,゚Д゚彡「……」
(*゚∀゚)「愛情たっぷりの綺麗な魂が土に溶け込むと、それだけ匂いは良くなる
おれはその匂いをちゃんと活かして、生かして、消えないように香りにかえるんだ」
ミ,,゚Д゚彡「お前さ」
(*-∀-)「ねーちゃんみたいで、スゴく良い匂い……きっとねーちゃんも今、こんな匂いがする」
ミ,,゚Д゚彡「……好きにしろもう」
(*゚∀゚)「愛情に満ちた魂の匂いを香りにかえたら、色んな人にその香りを届けるんだ
たくさんたくさん、色んな人に届けて、感じて、覚えてほしい、これが愛される匂いだって」
ミ,,゚Д゚彡「お前の姉ちゃん、そろそろこっちに戻るんじゃないか」
(*゚∀゚)「かもなー……一緒に店やるのも良いかもなー」
ミ,,゚Д゚彡「…………お前は、何で俺に話しかけたんだっけな」
(*゚∀゚)「あー? そんなふっるい事もう忘れたってー」
ミ,,゚Д゚彡「……そうだな、俺も、もうよく覚えてねぇや」
(*゚∀゚)「なー!」
-
ζ(゚- ゚*ζ三「おねさん! おにさん!」
爪'ー`)y‐「あーごめんね遅くなって、ただいま」
ζ(゚- ゚*ζ「おかえいなさ」
爪'ー`)y‐「タカラ君は?」
ζ(゚- ゚*ζ「あんしん、すやすや」
爪'ー`)y‐「あーホッとして寝ちゃった? 子供だねー」
ζ(゚- ゚*ζ「がう、……おねさん?」
ξ;∩⊿∩)ξ「ただいま……」
ξ∩⊿∩)ξ
ζ(゚- ゚*ζキュ,
⊂ ,,
ξ∩⊿∩)ξ
ξ゚⊿゚)ξスッ
爪'ー`)y‐(戻った)
-
ξ゚⊿゚)ξ「あー」ワシワシ
づ(>- <*ζキャー
ξ゚⊿゚)ξ「癒されるわこれ」
爪'ー`)y‐「でしょ」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、へいき?」
ξ゚⊿゚)ξ「落ち着いたわ」ワシワシ
ζ(゚- ゚*ζ「がう、タカラ、おれい、おにく」
ξ゚⊿゚)ξ「? ……この巨大な肉の塊は?」
爪'ー`)y‐「タカラ君がお礼にこの肉を?」
ζ(゚- ゚*ζ゙「う」
爪'ー`)y‐「……竜の肉だね?」
ξ゚⊿゚)ξそ
-
ζ(゚- ゚*ζ「おいし」
爪'ー`)y‐「美味しそうだねー、一気に食べるような愚行はせずに長持ちさせようねー」
ξ゚⊿゚)ξてそ
ζ(゚- ゚*ζ「ぐあんまだ、じかんある」
爪'ー`)y‐「夕飯まで時間あるし、お肉は旅用に加工してもらって僕らは部屋に戻ろうか」
ζ(゚- ゚*ζ゙「がう」
ξ゚⊿゚)ξ「……お肉……」
爪'ー`)y‐「だーめですーん」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ……お肉が……」
ζ(゚- ゚*ζ「たのしみある、だいじ」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね、楽しみに食べましょう……少しずつ……」
爪'ー`)y‐(ここ防犯の魔法売ってたかな……食材に付けておかないと……)
-
爪'ー`)y‐「はー山歩きしたからベッド落ち着くよー」
ζ(゚- ゚*ζ「おつかれさま」
爪'ー`)y‐「あーりがとーう」
ξ゚⊿゚)ξ「濃い一日だったわ……」
爪'ー`)y‐「そうだね……二週くらい跨いだ気がするね……」
ξ゚⊿゚)ξ「……夕飯まで時間あるし、昼寝したい」
爪'ー`)y‐「おや珍しい」
ξ゚⊿゚)ξ「デレおいで」
ζ(゚- ゚*ζ三=-
ξ-⊿-)ξ「あーふかふかする……」
ζ(- -*ζ「ふかふか……」
ξ-⊿゚)ξチラッ
爪'ー`)y‐「銅貨一枚になりまぁすぅ」
-
ぽろろん。
二頭の竜は孤独に喘ぐ。
二頭の竜は愛に飢える。
老いた竜は愛を語る。
共に生きる恋人に語る。
年若き竜は夢を語る。
共に生きる友人に語る。
寄り添う彼女は穏やかに微笑む。
死が二人を別つとしても、この想いは永久に続くと。
傍らに立つ彼は朗々と笑う。
生きていれば、楽しいことは見つかるものだと。
ながいながい時を経て。
数えきれない時を経て。
彼女は寂しそうに笑う。
老いた竜へと愛を語る。
彼は楽しげな声で笑う。
未だ若い竜へ夢を語る。
生きてくれと竜は言う。
死にたがれと竜は言う。
どちらの竜も相手を想って。
大切な存在の破滅を願った。
-
歌い終えた吟遊詩人の顔は見えなかった。
ただ財布を指差すと、小さく笑う息遣いと、床の軋む音、小銭が擦れる音が静かな部屋に広がるだけ。
どうしようもないものに触れた時の狐は、見えない真綿で首を絞められているような顔をする。
そしてどこか破滅的な、全てを諦めた絶望の様なものを浮かべた笑顔をする。
私は、それを見るのが嫌いだ。
目の前で、すぐ隣で、ほんの数歩後ろで、この世には希望なんてない顔をする。
今この腕の中で、安心したように眠る子供の方が、ずっとずっと心穏やかな顔をする。
私は、私の手で守れないものは嫌いだ。
だからきっと、ずっと、世界中が嫌いだったんだ。
この我ながら小さな手は、無理矢理に殴り、握り、潰す事しかできない。
私は私を守りたいし、この子を守りたいし、あのバカも守りたいのに。
そのほんの少しのものすらも、私はきっと守りきれないのだろうな。
まだまだ弱い、まだまだ、もっともっと、頑張らないと、強くならないと。
すぐそこで楽器の弦をいじって、勝手に絶望しているであろう雇用主を守れない。
それにまだ、あいつは弱さをちゃんと見せてはいないから。
あいつを、本当には守れやしない。
おわり
-
ざくざく。
草を踏む音。
ざりざり。
砂を踏む音。
焼け野原となったそこに、鎧を纏うひとが訪れる。
そこの真ん中にぽつんと立ち尽くす少女の後ろ姿に、依頼書を握ったまま声をかける。
「君が、説明役か」
「ええ、ええ、私が」
布の多い服。
ひらりと裾を翻して、少女は小さくお辞儀をした。
彼女は森の薬師と名乗り、依頼の内容をこまやかに説明する。
とは言え内容は簡単で、ただ鉱山の奥の竜を殺すだけ。
-
朝焼けの様な色の髪と、自分によく似た石の目を、鎧のひとはじっと見ていた。
そして説明をする薬師は、何かを諦めたような、どこか悲しい目をしていて。
「それじゃあ、殺してくる」
「私はここで、あなたを待つわ」
「ああ、出来るだけ早く、終わらせる」
ざり、ざり。
土を砂を踏み締めて、鎧のひとは鉱山へ。
その背中を見送る薬師は、何か声をかけようとしては唇を噛み、手を伸ばそうとしては堪えた。
とめたい。
とめてもいみはない。
とめたい。
とめてもなにもかわらない。
あのかたがしんじゃう。
もうしんでいるのとかわらない。
あのかたはいきてる。
もうわたしのこともわすれてる。
-
ああやめて。
ああころさないで。
わたしのあのかたを。
わたしのこいびとを。
いけないころさなきゃ。
だってきけんだもの。
めざめたらたいへん。
おおくのひとがしぬ。
ころさなきゃ。
ころさなきゃ。
ころさなきゃ。
あのかたも。
わたしのこころも。
-
こらえて。
こらえて。
なやんで。
なやんで。
くるしんで。
くるしんで。
じぶんをたたいて。
じぶんをしかって。
それでも薬師は堪えきれずに、鉱山へと走り出した。
鎧のひとが山へ入ってもうふたとき。
なんの物音も聞こえてはこない。
きっと間に合う。
まだ間に合う。
今ならきっと。
殺さないでとすがれば。
わたしの夫だと、恋人だと。
けれど薬師の希望とも絶望ともつかない何かは
真っ赤に染まった、足取りのたしかな鎧のひとの姿に砕かれた。
-
ああ、ああ、ああ。
足を止めた薬師の顔から色が失せ、それに気付いた鎧のひとは、近くまで来て
「僕の血じゃない、怪我は無いよ」
安心させるための言葉で、薬師の胸のやわらかな部分を引き裂いて
「老いた竜だから、抵抗はしなかった、静かに死んだよ」
聞きたくなかった言葉で、胸を刺し貫く。
「そ、う、よかったわ、怪我がなくて」
「ああ、これでこの近辺は大丈夫だろう」
「そう、そうね、きっとそうだわ」
「ああ、けれど」
-
「ひとつ、気になる事がある」
「気になる、事?」
「今際の際に、竜が僕を見て言ったんだ」
『ああ、おはよう、ただいま、いとしい人』
「それと 『お前が迎えに来てくれたのか』 と」
「あ、ああ、ぁ」
「僕には竜の表情はよく分からない、けれど、なぜだか笑っているように見えた」
まるで最もいとしい人を見つけたように。
森の薬師は崩れ落ち
身を抱き 爪を立て
慟哭した。
おわり。
-
ありがとうございました、本日はここまで。
前年は皆さんのお陰でここまで来れました。
本年も皆様に支えられながら頑張りたいと思います。
何かまだもうちょい続きそうです。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
シリーズ作である塔・旅はこちらから読めます!!
読みにくいなどありましたら言って下さい!!
http☆oppao.web.fc2.com/text_smp.html
-
乙ー切ないな…
まとめてあるの読みたいんだがガラケーだと文字数制限で途中までしか読めないんだぜ…
-
>>621
あれか、
妙に綺麗な従者を連れた顔色の悪い魔導師=【塔のようです】ドクオとクール
緑の髪の怖いもの知らずの子供=【変な森】ミセリ?それとも他の作品の?
-
乙乙、しぃさん……
-
>>659
この辺から何かこう上手いこと見れたりしませんかね……?
ttp://fileseek.net/proxy.cgi?u=http%3A%2F%2Foppao.web.fc2.com%2Ftext_smp.html&guid=ON
-
面白い悔しい
-
乙 良かったの。。。?
-
乙
辛いな
-
先生の腕奪った魔物とかも出てきて、前作読んでて良かった。 と思う
-
魔族の血ってしぃつーでぃはギコエルシィエルの血筋的なアレなのか。
-
死んだじいちゃんボケてたけど不意に正気になるんだよなぁ
-
鬱だ、つらい、きついせつない
しんどい
おつ
-
大変申し訳ございませんが 本日体調不良につき 休載とさせて頂きます。
インフルとかノロ流行ってるから気をつけて下さいね。
-
お大事にしてくださいね。
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声、獣じみた幼い咆哮。
刃を振るい、歌声を響かせ、魔力を用い、路銀を稼いで進むのは三人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
そんな二人の後ろをついて歩く、小さな魔族の子供。
【道のようです】
【第十一話 たあいもないおはなしを。】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
ざく、ざく。
雪を踏み締めて歩く足。
はあ、はあ。
息は白く、指先や鼻が赤くなる。
季節は未だ秋だと思っていたら、突然降り始めた豪雪。
その雪は見る間に積もり、一面の銀世界を作り出した。
傍らを歩くのは桃色のてるてる坊主。
雪にも雨にも強い外套が役に立ったのは喜ばしいが、問題は買ってきた本人だ。
袖無し、短パン、ヘソ出し。
軽装も軽装と言った服装で雪を掻き分ける相棒の姿は、人間を越えた何かだった。
爪'ー`)y‐「ツーンちゃーん……」
:ξ゚⊿゚)ξ:「何よ」
爪'ー`)y‐「見てる方が寒いよぉ……」
:ξ゚⊿゚)ξ:「見られてる方も寒いわよバカじゃないの」
-
爪'ー`)y‐「何でインナー袖無ししか無いのさぁ……」
:ξ゚⊿゚)ξ:「それはあんたが私の荷物を捨てたからよ」
爪'ー`)y‐「いやだって汚れた布にしか見えなかったしたまに減ってたから捨てるのだとばかり」
:ξ゚⊿゚)ξ:
爪'ー`)y‐「ごめんってばー僕の外套一枚貸すからー」
:ξ゚⊿゚)ξ:「いらん」
そう、血に汚れた服を洗濯に出す予定だと知らなかった僕は、彼女の服を八割端切れとして捨てた。
割りと真面目に謝ったしお金は出すと言ったが、気付いたのはもう村から離れた後。
買い戻す事も買い足す事も出来ず、おまけにうっかり彼女の外套は食事の際に燃えた。
なのでせめて外套か上着を貸すと言ったのだが、このようになしのつぶて。
分かりやすく怒っていらっしゃるので、僕は素直に大人しくしておきます。
銀世界に死体として放り出されたら自然にリスキルされちゃう。
こう言う時は、休憩の食事の際に彼女の好きな物を与えるに限る。
ちょうど今は上等な竜の肉がある、半分は保存食にしたがもう半分は冷やしてそのまま。
そう簡単には腐らないらしいので、安心して持ち運べる。 重いけど。
-
しかしまぁ、よくあんな夏場の服装で雪の中を進める。
ブーツの中ももうぐしょぐしょだろうに、早く暖めないと凍傷になるんじゃないかな。
僕と違って布の少ない服なんだから、ちゃんとしないと。
それにしても、眩しいな雪景色は。
真っ白だからよく日の光を反射させる。
そして雪に反射した光が、きらきらとツンちゃんの腰辺りを照らす。
ベルトからぶら下がっているのは、先日調香師から買った魔防のお守り。
小さな薄蒼の石が嵌め込まれた銀の輪は、今は手首ではなく腰から下げられている。
ガントレットの中につけていたのだが、出来れば外に出して自然の魔力に触れさせた方が良いらしい。
新たな飾りのつけられたそれは、数少ないツンちゃんの装飾品。
作った人物が調香師と言う事もあり、不思議なもので、あの輪からは匂いがする。
主張しすぎない空気に溶けるような、甘くも苦くもない匂い。
どことなく冷たくも感じる、華やかとは違う、緊張感のある匂いだ。
デレはあの匂いを「おねさんぴったり」と言ったが、僕としてはツンちゃんはもっと乳臭いと思うんだよなぁ。
小さい子供みたいな、甘いような懐かしいような、少し寂しくなる匂い。
ま、本人に言ったら殺されるだろうけど。
-
ζ(゚- ゚*ζ「がう、おにさん」
爪'ー`)y‐「んー?」
ζ(゚- ゚*ζ「こやある」
爪'ー`)y‐「お? おぉー、さすが目が良いねぇ」
ζ(゚- ゚*ζ三「おねさん! おねさん!」
:ξ゚⊿゚)ξ:
ζ(゚- ゚*ζ「こやある! やすむ!」
:ξ゚⊿゚)ξ:゙ コク
爪'ー`)y‐「もう限界じゃんツンちゃん……」
遠目に見える小さな小屋は、木こり小屋か休憩所か。
どちらにせよ、この雪の中だ、壁と屋根があるだけ有り難い。
しかしまだ雪の降る時期では無い筈なのに、何でまたこんな事に。
この辺りはそう言う場所なのかな、聞いた事は無いけれど。
震えるツンちゃんの側に移動した桃色のてるてる坊主を眺めながら、白い息を吐く。
冷たい空気は喉に悪いんだよなあ、と襟巻きをぐいと上げた。
-
ばさばさ、帽子や外套についた雪を払って小屋に入ると、冷たい空気が遮断されるだけで暖かさを感じた。
暖炉と簡素な調理場、蜘蛛の巣に、雨水の溜まった桶。
手入れが行き届いているわけではなさそうだが、乾いた薪だけはちゃんとある。
爪'ー`)y‐「デレちゃん暖炉に魔法の練習してー」
ζ(゚- ゚*ζ「がう!」
僕よりも遥かに多い魔力を持つデレに、少しずつ魔法の練習をさせるようにしている。
調節が下手で火力が出すぎたり、まず出し方が分からなかったりとまだまだだが。
それでもさすが魔族、魔法の上達は早い。
まあ昼に外套を燃やす原因を作ったのはデレなのだけど。
ぼっ、と言う音と共に小屋の中が明るくなり、ちりちりぱちぱち薪が燃える。
青い顔のツンちゃんを暖炉の前に設置したら、僕は食事の準備をしよう。
爪'ー`)y‐「デレちゃん良くできましたー」
ζ(゚- ゚*ζ「う!」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん暖めといてねー」
ζ(゚- ゚*ζ,,「あい!」
-
調理場に火を少し移動させてから、鋳鉄のフライパンに油を馴染ませて火にかける。
小さな鍋には綺麗な雪を入れて同じように火にかけて、肉を切ってハーブと塩を刷り込んで。
小さな根菜ももう使わないとなーって事で切ってスープにしまーす。
寒いし温まるものが欲しいよね、ツンちゃんお酒飲むと瞬時に寝るしデレはまだ子供だし。
スープは塩味、肉も塩味、確か保存用のぱさぱさするパンがあるから少し焼いて。
何で料理ばっか上達してるのかなー僕。
日は傾いてもうじき夕暮れ、この雪じゃまともに進めない。
今日は早めにここで泊まる事にしよう。
爪'ー`)y‐「おーい出来たぞー」
ζ(゚- ゚*ζ「あい、おねさん」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」
-
爪'ー`)y‐「ツンちゃん溶けた? 大丈夫?」
ξ゚⊿゚)ξ「さすがに寒かったわ……」
爪'ー`)y‐「そりゃそうだよねぇ……」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんあい、おいし」
ξ゚⊿゚)ξ「おお……肉……美味しいお肉……」
爪'ー`)y‐「はいパン、スープにつけて食べようねー」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんさむいある? これきる?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたもそれ脱いだら袖無しでしょうが……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん、デレはインナーがあるから……」
ξ゚⊿゚)ξ「ああクソ……袖無しとか言うバカの服装は私だけか……」
ζ(゚- ゚*ζ「ぬ、ぬぐ? なかぬぐ?」
ξ゚⊿゚)ξ「着てろ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい……」
-
スープを一口すすると、喉から胃までがぽかぽか暖かくなる。
簡素で質素なものだけど、この寒さには塩味のスープは大変なご馳走だ。
小さく切った根菜も、水分が多いから簡単に柔らかくなった。
そのままではパサパサのカチカチで食えたものじゃないパンだって、スープに浸せば十分食べられる。
パンが吸ったスープがじゅわ、と染み出る感じが結構好きだったりする。
メインの肉も当然美味い、と言うかこれ不味くしたらバチが当たるな。
外はカリカリによく焼けて、中はややレアで柔らかすぎず固すぎず、噛めば噛むほど肉汁が出る。
脂はあるがしつこくないし、存在感があるのに重くない、味付けは塩コショウだけで十分だ。
色んな人にこの肉が好まれるわけだ、単純にとても美味しい。
爪'ー`)y‐「はーぁ、ごちそうさまでしたーん」
ξ*´⊿`)ξ「ぁ゚ー」
ζ(´- `*ζ「ぁ゚ー」
爪'ー`)y‐(この顔したらもう怒ってないな)
-
爪'ー`)y‐「美味しかった?」
ξ゚⊿゚)ξ「うむ」
ζ(゚- ゚*ζ「がう」
爪'ー`)y‐「急に戻らんでも」
ξ゚⊿゚)ξ「また食べたいやつ」
ζ(゚- ゚*ζ「おにくまだある?」
爪'ー`)y‐「明日にでも食べようねー」
ξ゚⊿゚)ξ「よっしゃ」
爪'ー`)y‐「それ早い夕飯だから、夜に小腹が空いたらこっちを食べようね」
ξ゚⊿゚)ξ「分かった」
ζ(゚- ゚*ζ「おにくおひる?」
爪'ー`)y‐「うーん朝からだと勿体ないからねぇ、明日の昼か夜だね」
ξ゚⊿゚)ξ「干し肉で堪えるか……」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、おなかすく、がまんする、ごはんおいし」
ξ゚⊿゚)ξハッ
爪'ー`)y‐(何て簡単な子達なんだろう……)
-
爪'ー`)y‐「はいツンちゃん、僕の上着のスペア」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、ありがと」
爪'ー`)y‐(今度は素直に着るって事はやっぱり意地で着なかったんだな……)
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんあかい」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、赤くてでかいわ」
爪'ー`)y‐「僕の上着だからねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた何でこんな目立つ色なの?」
爪'ー`)y‐「何でデレちゃんを目立つ色にしたの?」
ξ゚⊿゚)ξ「趣味」
爪'ー`)y‐「そう言う事です」
ξ゚⊿゚)ξ゙「よく分かった」
,_
ζ(゚- ゚*ζ
-
爪'ー`)y‐「ま、朝まで雪の様子を見てみようか」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、まぁどっちにしろ朝には発つんだけど」
爪'ー`)y‐「デレに地面に火を放ってもらったら」
ξ゚⊿゚)ξ「火事になりそう」
爪'ー`)y‐「同時に水を使うと?」
ξ゚⊿゚)ξ「だいばくはつ」
爪'ー`)y‐「まあ雪がもっと深くなったら考えよう、今は暇だから自由行動しよっか」
ξ゚⊿゚)ξ「斧の手入れするか」
爪'ー`)y‐「描写してないけど毎日使ってるもんねそれ」
ξ゚⊿゚)ξ「描写とか言うな」
ζ(゚- ゚*ζ「ごほんよむ」
ξ゚⊿゚)ξ「絵本気に入った?」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
爪'ー`)y‐「絵本くらいなら一人で読めるようになったよねぇ」
-
爪'ー`)y‐「さて、僕は楽器の手入れをしますかね……寒さで固くなるんだよなー」
ξ゚⊿゚)ξ「音が変わるの?」
爪'ー`)y‐「変わるねぇ、いつもより固い音になるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん……」
爪'ー`)y‐「素材によって音が変わるし、楽器は人に合わせて作るのも良いんだよねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「武器と一緒ね」
爪'ー`)y‐「あはは、そうだねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「私は自分用にしつらえたのは鎧だけだけど、金属も気温や気候に左右されるわ」
爪'ー`)y‐「斧はしなりが悪くなったり?」
ξ゚⊿゚)ξ「んー……これは重くなるわね」
爪'ー`)y‐「あー」
ξ゚⊿゚)ξ「切れ味も鈍る、冷たくて血と脂が固まるから」
-
爪'ー`)y‐「寒冷地は特殊な刃物があるんだっけ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、魔法をかけてあったり熱を保つ油を塗ったり」
ζ(゚- ゚*ζ「あついいし、あついてつある」
ξ゚⊿゚)ξ「よく知ってるわね」
爪'ー`)y‐「どゆ事?」
ξ゚⊿゚)ξ「元から熱を発する石や金属が存在するのよ、それを加工して刃物にする」
爪'ー`)y‐「へぇ……切りながら肉とか焼ける?」
ξ゚⊿゚)ξハッ
ζ(゚- ゚*ζ「むり」
ξ゚⊿゚)ξ「無慈悲……」
爪'ー`)y‐「夢を子供に壊された……」
ζ(゚- ゚*ζ「ごめんない」
爪'ー`)y‐「意味が変わるよぉ……」
-
ζ(゚- ゚*ζ「つめたいいしある」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、あるわね」
爪'ー`)y‐「冷たい剣とか作れるの?」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
ξ゚⊿゚)ξづ「よく知ってるわねデレ」ワシワシ
ζ(- -*ζ「うー」
爪'ー`)y‐「デレちゃんの知識って結構片寄ってるよなぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね……頭良いわよねこの子……」
爪'ー`)y‐「よし、楽器の手入れおしまい」
ξ゚⊿゚)ξ「早かったわね」
爪'ー`)y‐「寒い時は触りすぎると割れちゃうんだよねー」
ξ゚⊿゚)ξ「あー」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんも頑張って、はいお湯」
ξ゚⊿゚)ξ「有り難し」
-
専用の油を湯煎して斧に塗るその手元を眺めながら、僕は新しい煙草はどうかな、と容器を開けて中を嗅ぐ。
ふわ、とまだ馴染みきっていない華やかで明るい匂いが広がった。
甘くて優しい匂い、柑橘系でのオーダーをした筈だが、柑橘の匂いは感じられない。
その代わり、胸が痛むような懐かしさを感じた。
爪'ー`)
爪'ー`)y‐~ シュボッ
爪'ー`)y‐ スパー
爪'ー`)y‐
カモミールと、ローズマリーと、林檎と、色々混ざった甘い匂い。
色んな匂いの混ざったそれは、驚くほどに僕に馴染む。
当然だ、これはおばあちゃんの匂いだ。
僕を育ててくれたあの人の、日だまりと編み物と料理が好きなあの人の匂いだ。
優しく甘く漂う煙は、僕を包むように、癒すように、懐かしい小さな手のひらみたいで。
あの調香師は何なんだよ、オーダー通りじゃないどころか僕の一番好きな匂いをどうやって当てた。
今はもう無いあの人の家と同じ匂いだなんて、おかしいだろこんなの。
-
間違いようがないこの匂い、僕の生活のひとつでもあった匂いを
ξ゚⊿゚)ξ(? 今までと違う匂い……新しいやつか)
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ(狐が固まっている)
爪'ー`)y‐?
ξ゚⊿゚)ξ(気に入らなかったのかしら煙草……)
いや、何か混ざってるなこれ。
花の様な匂いと不思議な甘さ、まろやか系の風味がある。
あの調香師は魔法を使うから、本来なら不可能な匂いも使えるかも知れない。
そうなるとこの匂いはいったい。
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「……狐そんなに気に入らなかったのそれ」
爪'ー`)y‐「え?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「いや……何か死んだ目で煙草吸ってるから……」
爪'ー`)y‐「ああいや、何か……何の匂いか分からなくて」
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん……? まぁでも、良い匂いねそれ」
ζ(゚- ゚*ζ「デレにおいすき」
爪'ー`)y‐「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「甘いような……ハーブ系のような……?」
ζ(゚- ゚*ζ「はちみつ」
ξ゚⊿゚)ξ「はちみつくまさん?」
ζ('(゚- ゚∩ζ「がおー」
ξ゚⊿゚)ξ「素手で殺さなきゃ……」
,,ζ(゚- ゚*ζ「キャイン……」
爪'ー`)y‐「何でツンちゃんはそんなにデレのがおーに厳しいの……」
ξ゚⊿゚)ξ「威嚇されたなら狩らないと」
爪'ー`)y‐「威嚇じゃないよお戯れだよ……」
-
ζ(゚- ゚*ζ「がう……かられる……」
爪'ー`)y‐「ほら僕の後ろに隠れるくらい怖がって」
ξ゚⊿゚)ξ「その壁はあまり役に立たないわよデレ」
爪'ー`)y‐「あんまりだぁ」
僕の後ろに隠れたデレの頭をわしわし撫でてやれば、手にはふわふわやわらかな感触。
デレはいつも花を身に付けているからか、花の匂いがする。
そう言えばさっき蜂蜜と言っていたな、なるほど確かに蜂蜜の匂いがする。
この混ざる花の匂いは蜂蜜由来か、デレの髪に似た匂いだなぁ。
爪'ー`)y‐
爪'ー`)y‐ スンスン
ζ(゚- ゚*ζ?
爪'ー`)y‐
あ、これデレの匂いが混ざってるんだ。
-
つまり他の混ざった匂いは。
爪'ー`)y‐スンスン
ξ゚⊿゚)ξ「何だ急に」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ?
ツンちゃんだこれ。
爪'ー`)y‐「引くわー……」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ何……急に喧嘩売られたの……?」
爪'ー`)y‐「いやツンちゃんだけどツンちゃんじゃなくて……あぁー……引くわー……」
ξ゚⊿゚)ξ「何こいつ……感じ悪っ……」
-
確かに女の子の匂いとは言ったけど何でこのチョイスにしたよ調香師。
割りと無いと思うんですけどこの組み合わせ。
と言うか何?
僕に日常的におばあちゃんとツンちゃんとデレの匂いの煙草を吸えと?
無ーいわー。
マジ無いわー。
ドン引きだわー。
爪'ー`)y‐
爪'ー`)y‐ スパー
でも喉には確かに良さそうだし。
味も甘めの苦さがあって良い具合だし。
巻いてある紙の質感や色も好みだし。
何より勿体無いから吸いますけど。
吸いますけど何か悔しいし恥ずかしいから二人の匂いとは誰にも言わないでおこう。
-
ξ゚⊿゚)ξ「狐が変だわ……」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんはずかしいかお」
ξ゚⊿゚)ξ「まるで狐の顔が恥ずかしいみたいね」
爪'ー`)y‐「やめなさい失敬な」
ξ゚⊿゚)ξ「でもその匂い好きよ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
爪'ー`)y‐「嬉しいやら恥ずかしいやら」
ξ゚⊿゚)ξ「恥ずかしい?」
爪'ー`)y‐「あー……僕の育ての親みたいな人の匂いだよ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「どうやって調香師はその匂いを……」
爪'ー`)y‐「分からん……」
ξ゚⊿゚)ξ「こっわ……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「まぁでも良いんじゃない? 離れた実家の匂い」
爪'ー`)y‐「もう死んじゃったし家も無いしね」
ξ゚⊿゚)ξ「んじゃもっと良いじゃない」
爪'ー`)y‐「…………確かに」
ξ゚⊿゚)ξ「懐かしい匂いって良いと思うわよ、大事にしたら?」
爪'ー`)y‐「…………」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんふふくかお」
ξ゚⊿゚)ξ「めんどくさいな……」
爪'ー`)y‐「んーだってさぁ……懐かしい匂いを常日頃吸うってアレじゃない……?」
ξ゚⊿゚)ξ「別に?」
爪'ー`)y‐「えぇーぇー?」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん、はずかしい、かっこわるいおもってる」
爪'ー`)y‐「うぐ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたのかっこいいの定義が分からん」
-
爪'ー`)y‐「……何かさ、ずっとあの頃の平穏にしがみついてるみたいじゃない?」
ξ゚⊿゚)ξ「しがみつけば良いじゃない」
爪'ー`)y‐「え」
ξ゚⊿゚)ξ「しがみついて夢見て良いじゃない、何がおかしいのよ」
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「それを捨てる必要あるの? 大事なんでしょ、バカみたいな事で悩まないでよ」
爪'ー`)y‐
あー。
しがみついても良いんだぁ……。
爪'ー`)y‐(ずっと、思い出として、触れちゃいけないと思ってた)
爪'ー`)y‐(あぁー)
爪'ー`)y‐(もっと手元に置いても良かったんだぁ……)
-
ξ゚⊿゚)ξ「こいつバカよねデレ」
ζ(゚- ゚*ζ゙「がう」
ξ゚⊿゚)ξ「懐かしむ匂いがあるって良い事なのにね」
ζ(゚- ゚*ζ゙「がうがう」
ξ゚⊿゚)ξ「デレの思い出の匂いはある?」
ζ(゚- ゚*ζ「きのみやいたぱん」
ξ゚⊿゚)ξ「今度詳しく聞かせて、一緒に作りましょ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい!」
ξ゚⊿゚)ξ「私は白粉の匂いかしら……鉄の匂い……?」
ζ(゚- ゚*ζ「おしろい?」
ξ゚⊿゚)ξ「嫌いな匂いよ、お母さんがいつもつけていたの」
ζ(゚- ゚*ζ「がう……」
ξ゚⊿゚)ξ「……良い思い出もある筈だけど、まだ嫌な方しか出てこないわね」
ζ(゚- ゚*ζ「よしよしする?」
ξ゚⊿゚)ξ「すんなすんな」
-
爪'ー`)y‐「はぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「何よ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん好き」
ζ(゚- ゚*ζ!?
ξ゚⊿゚)ξ「キモいし前にもやったそれ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんのバカストイックなとこ好き……」
ξ゚⊿゚)ξ「バカにしてるのか好意を口にするのかどっちかにした上で多分そのストイックは誤用」
爪'ー`)y‐「もっとバカになーれ……」
ξ゚⊿゚)ξ「やめろ頭から中身が無くなる」
ζ(゚- ゚*ζ(いちゃいちゃ……ちがう……なんかちがう……!!)
爪'ー`)y‐「デレも好きだよ……」
ζ(゚- ゚*ζ「デレもおにさんすき」
爪'ー`)y‐「聞いた今の」
ξ゚⊿゚)ξ「恥ずかしい」
爪'ー`)y‐「うん恥ずかしい」
ζ(゚- ゚*ζ(なぜ)
-
爪'ー`)y‐「ツンちゃんはさぁ、良い思い出そんなに無いの?」
ξ゚⊿゚)ξ「んー……悪い思い出の方が強いわね」
爪'ー`)y‐「例えば?」
ζ(゚- ゚;*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「綺麗で、自分が好きな人だったわ、田舎なのにいつでも着飾ってた」
爪'ー`)y‐「ふむ」
ξ゚⊿゚)ξ「私は顔は似たんだけど、それ以外は似なくて……それにこの握力でしょ」
爪'ー`)y‐「小さい頃からだったんだ?」
ξ゚⊿゚)ξ「生まれつきね、悪魔の子として始末こそされなかったけどいつでも扱いは悪かった」
ζ(゚- ゚;*ζ ソワソワ
ξ゚⊿゚)ξ「クソガキから気味が悪いとか化け物とか、言われる内はまだ良かったんだけど、一回キレてね」
爪'ー`)y‐「あー……それはアレだねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「……何でキレたんだっけな……確か…………あー、化け物の母親って言われてたからか」
-
ξ゚⊿゚)ξ「キレて……牛を殺したんだっけな……」
爪'ー`)y‐「牛は殺せたんだね……」
ξ゚⊿゚)ξ「まぁそこからは石を投げられる事も無くなり」
爪'ー`)y‐「そりゃ怖くて無理だわ」
ξ゚⊿゚)ξ「お母さんは余計につらく当たるようになり」
爪'ー`)y‐「複雑だなぁ家庭環境……」
ξ゚⊿゚)ξ「で、森に捨てられたの」
爪'ー`)y‐「やっぱつらかった?」
ξ゚⊿゚)ξ「予想はしてたわね」
ζ(゚- ゚;*ζ オロオロ
爪'ー`)y‐「んで熊を」
ξ゚⊿゚)ξ「その前に数日さ迷ったわ」
爪'ー`)y‐「そして熊を」
ξ゚⊿゚)ξ゙「熊を」
-
爪'ー`)y‐「ツンちゃん無理に喋ってない?」
ξ゚⊿゚)ξ「今はそんなに」
ζ(゚- ゚;*ζホッ
ξ゚⊿゚)ξ「まあ、向き合わなきゃいけない問題だしね」
爪'ー`)y‐「そう? 時間に解決して貰っても良いんじゃない?」
ξ゚⊿゚)ξ「駄目よ、だって私は強くなりたいんだもの」
爪'ー`)y‐「それはイコールで強さになるのかなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「……自分も守れない人間に、他人を守れるわけないでしょ」
爪'ー`)y‐「…………あー……」
ξ゚⊿゚)ξ「私はまだ、捨てられた時の子供のままだもの」
長い睫毛が綺麗な緑の瞳を覆う。
俯きがちに呟く彼女の横顔は、まるで何かを戒める様に痛々しく見えた。
少しだけ見えた彼女の中を、更に覗くべきか、退くべきか。
-
また怒られるかも知れない、ツンちゃんにではなくデレに。
あの子は意外に紳士的で、ちくちくとデリカシーが無いと叱ってくる。
でも大人には、踏み込まなきゃいけない時もあるんだよなぁ。
爪'ー`)y‐(だからさーデレちゃん)チラッ
ζ(゚- ゚*ζ(がう?)
爪'ー<)y‐(今は怒んないでね)バチーン
,_
ζ(゚- ゚*ζ(むり)
あ、もう怒ってるわ。
ご主人大好きだな君。
でも、一歩踏み込ませてね。
興味本意と言うよりも、あの子の中身を見たいから。
彼女を知るには、踏み込まないといけないから。
そうしたら、色々分かち合えそうじゃない。
-
彼女は生き急ぐ。
確かに人によっては15歳くらいで一人立ちするが、18歳なんて実質まだ子供だ。
傷付いた子供が、傷も癒えぬままに大人になろうとしている。
無理をしているようにも、背伸びしているようにも見えないが、負担は大きい筈だ。
まだまだ共に旅をする。
途中で壊れられても困る。
それに何だかんだで僕はこの子達を気に入ってしまったから、少し位は何かをしてあげたいんだ。
大人として、パートナーとして。
あーあ。
悪い大人のつもりだったのに。
悔しいかな、いつの間にかこんなにほだされちゃって。
ま、良いか。
大切な物なんてもう作らないつもりだったけど。
少しくらいは良いよね?
-
爪'ー`)y‐「……ツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「んー」
爪'ー`)y‐「君が一番守りたかったものって、何だい?」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「お母さん……かな」
しばしの間を置いてから、ぽつりと吐き出した言葉。
悪い思い出ばかりが浮かぶと言った彼女は、その対象を守りたかったと言う。
ξ゚⊿゚)ξ「怒られたし、ぶたれたし、捨てられたし……嫌な記憶が多いのに
……不思議ね、一番守りたかったのは、あの人なのかもしれない……」
爪'ー`)y‐「……今は前に出てこないけど、良い思い出もあるんでしょ?」
ξ゚⊿゚)ξ「そう……そうね……料理は下手だけど、踊るのが上手くて……おめかしさせて貰ったり……」
爪'ー`)y‐「可愛かったんだろうねぇ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「よく分からないけど……私を着飾らせた時は、あの人は笑ってたわ」
爪'ー`)y‐「今でも着飾れば良いのに」
ξ゚⊿゚)ξ「……今は、戦士だから無理ね」
爪'ー`)y‐「オフの時くらい良いんじゃない? お祭りの時とか可愛かったよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐(デレ、膝へ)
ζ(゚- ゚*ζ,,(あい)
爪'ー`)y‐「今は戦士だから動きやすさ重視なのは分かるけどさぁ
たまには息抜きとして、女の子らしい格好とか出来るような余裕があっても良いんじゃない?」
ξ゚⊿゚)ξ「余裕……か」モフモフ
ζ(゚- ゚*ζ「あう」グリグリ
ξ゚⊿゚)ξ「……余裕なんて、無かったわね」
爪'ー`)y‐「無いだろうねぇ……君はいつも必死な目をしてるもの」
-
ξ゚⊿゚)ξ「生きるのに必死で、強くなるのに必死で……
戦士として、冒険者として、一人前になるために必死で……余裕なんて、無いわね」
爪'ー`)y‐「確かに僕は君に守って貰う立場だし、雇用主だけどさぁ……一応、パートナーだからね」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「君に僕と言う負担を背負わせているんだから、僕にも君を背負わせてくれても良いんだよ」
ξ゚ー゚)ξ「…………ふ、バカみたい……ずっと悪ぶってた癖に」
爪'ー`)y‐「今でも悪い大人ではあるけどさぁ、……良いじゃん、たまには」
ξ゚ー゚)ξ「……そうね、たまには良いかもしれないわね……あんたに色々任せても……」
,_
ζ(゚ぺ*ζ
爪'ー`)y‐「あ、不服そうなのが居る」
,_
ζ(゚ぺ*ζ「デレいらない」
ξ゚ー゚)ξ「要るわよバカ」
-
,_
ζ(゚- ゚*ζ「がるる……」
爪'ー`)y‐「ほら拗ねない拗ねない、君も大事な仲間だよー」
,_
ζ(゚皿゚*ζ「がうっ!」ガブー
爪;'Д`)y‐「ぁあいったい!!」
ξ^ー^)ξ「ふっ……ふふふ……本当、バカみたい」
くすくすと笑うその姿は、歴戦の戦士ではなく、18歳の少女のもので。
僕は初めて、こうしてちゃんと彼女の笑顔を見た気がする。
いつも眉間に皺を寄せて、不機嫌そうな顔をしているから。
きっと地顔になってしまっているのだろうけど、こうして年相応の表情を見るとほっとする。
それにしても、仲間、かぁ。
僕も焼きが回ったかなぁ。
今までは利用するかされるかだけの人生だったのに、この子は本当に変わってる。
騙された癖に真面目だし、真っ直ぐな癖に平気な顔で殺すし。
甘ったるいお人好しな癖に、直向きでストイックで、犠牲を払う事を甘んじる。
それなのに、絶対に曲げられない芯があって。
-
馬鹿で、馬鹿正直で、馬鹿真面目。
猪突猛進な馬鹿だからこそ、今まで関わってきたどんな冒険者とも違う。
僕が胸を張ってパートナーと言えるのは、きっとこのお馬鹿さんだけだなぁ。
この蜂蜜を溶かしたミルクみたいな、小さなお嬢ちゃんだけが、きっと僕の相棒だ。
ま、今後どうなるかわかんないけど。
爪'ー`)y‐「僕さぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「んー?」
づ(゚ぺ*ζ
爪'ー`)y‐「やっぱ君の事好きだなーって」
ξ゚⊿゚)ξ「私はそうでも無いわよ?」
爪'ー`)y‐「無慈悲」
-
ξ゚⊿゚)ξ「大体何よさっきから、気味の悪い」
爪'ー`)y‐「観察して気持ちを整理して思ったことだからとても純粋な気持ち」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ……純粋であればあるほど気持ち悪い……」
爪'ー`)y‐「無慈悲が過ぎない? 慈悲を持たない?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや別に……」
爪'ー`)y‐「デレ癒して……」
ζ(゚- ゚*ζ「ない」
爪'ー`)y‐「あっデレに拒否られたつらい無理ツンちゃん助けて」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ適当に土下座」
爪'ー`)y‐「待って凄く雑に土下座求めるのやめて」
ζ(゚- ゚*ζ「どげざ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんのせいで変な言葉覚えた!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「最初から知ってたかも知れないから」
ζ(゚- ゚*ζ「どげざ」
爪'ー`)y‐「嘘だよこんな感じじゃなかったよ前は! 違ったよ!!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「しかしアレね」
爪'ー`)y‐「ん?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたからストレートな好意を向けられると本当に気味が悪いわ」
爪'ー`)y‐「ねぇひどくない? 僕の気持ちを裏切ったなって言おうか?」
ξ゚⊿゚)ξ「いつ何をどう裏切ったのか……だからって私が素直に受け入れても気持ち悪いわよ」
爪'ー`)y‐「例えば?」
ξ*゚⊿゚)ξ「あ、ありがと……別に私はあんたの事なんて好きじゃないけど……好意は受け取ってあげるわ」
爪'ー`)y‐「あっ怖っ、無理それ」
ξ゚⊿゚)ξ「だろ」
爪'ー`)y‐「こっわ……なにそれ……こっわ……熱無いか心配になる……」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたが素直になってもそんな感じよ」
爪'ー`)y‐「だいぶ無理だわ」
ξ゚⊿゚)ξ「だいぶ無理よ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「大体そう言うアレじゃないし」
爪'ー`)y‐「あー違う違う全然違うツンちゃんにおっぱい生えてたらあったかも知れないけど無いし」
ξ゚⊿゚)ξ「何で流れ作業で喧嘩売ってくのあんた」
爪'ー`)y‐「だってツンちゃん僕を異性と認識してる?」
ξ゚⊿゚)ξ「ムカつくオルゴールだと思ってる」
爪'ー`)y‐「その言いぐさちょっと好き」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたは私をどう思ってんのよ」
爪'ー`)y‐「喋るゴリラ」
ξ゚⊿゚)ξ「ストレートすぎてちょっと好きだわその言いぐさ……」
爪'ー`)y‐「デレはどうかな?」
ζ(゚- ゚*ζ「がう? おねさん?」
爪'ー`)y‐「そうそうツンちゃん」
ζ(゚- ゚*ζ「ごしゅじん」
ξ゚⊿゚)ξ「違うつってんだろ」
-
爪'ー`)y‐「僕は?」
ζ(゚- ゚*ζ「ひも」
爪'ー`)y‐「ンンッwwwwwwwww」
ξ゚⊿゚)ξ「悲しいけど財布の管理はヒモがしてるのよ」
爪'ー`)y‐「僕も働いてるのに」
ξ゚⊿゚)ξ「いつ?」
爪'ー`)y‐「酒場で遊んでるだけだと思ってない? お金も稼ぐし情報も仕入れるからね?」
ζ(゚- ゚*ζ「はつみみ」
爪'ー`)y‐「デレは酒場に来ないからねぇ……ちゃんと僕も楽器で声で仕事してるんだよ……」
ζ(゚- ゚*ζ「ほへぇ……おしごとみる」
爪'ー`)y‐「んーでもご主人が酒場に連れていってくれないでしょ?」
ξ゚⊿゚)ξ「違うつってんだろ」
爪'ー`)y‐「デレはまだ小さいからねー、酒場はちょっと早いってご主人うるさいから」
ζ(゚- ゚*ζ「ごしゅじん……」
ξ゚⊿゚)ξづ「泣いて謝れるギリギリのラインまで頭を握ろうか?」
爪'ー`)y‐「わぁやさしい死なない」
-
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん、ぎゅーする」
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい」
ξ゚⊿゚)ξ
つ(>- <*ζ「ぎゅー」
と ヽ,,
ξ゚⊿゚)ξ「あざとい生物が居るんだけど」
爪'ー`)y‐「うちのあざとい代表だから」
ξ゚⊿゚)ξ「あざとい代表はあざとくて困る……」
爪'ー`)y‐「わかるよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
爪'ー`)y‐「ほらデレないがしろにしたわけじゃないから許して」
ζ(゚- ゚*ζ「ない」
爪'ー`)y‐「あーん許してよーこっちおいでおいでー」
ζ(゚- ゚*ζ「ない」
爪'ー`)y‐「デレが冷たいよーつらいよーお兄さん悲しいよー」
-
ξ゚⊿゚)ξ「別に無視してたわけじゃないから許してあげなさい」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
爪'ー`)y‐「ほんとツンちゃんにだけ従順!!」
ξ゚⊿゚)ξ「デレも大事な仲間だから、安心なさい」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
ξ゚⊿゚)ξ「もう少し大きくなったら、きっとあんたにも色々任せるから」
ζ(゚- ゚*ζ「おおきいなる」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、大きく育ちなさい」
爪'ー`)y‐「大きくなったらどうなるんだろうね」
ζ(゚- ゚*ζ「パパみたいなる」
ξ゚⊿゚)ξ「パパみたいに」
ζ(゚- ゚*ζ「あう」
ξ゚⊿゚)ξ「…………パパの骨すっごく大きかったような……」
爪'ー`)y‐「ねぇママの方にしない?」
,_
ζ(゚ぺ*ζ「しない」
爪'ー`)y‐「ねぇ反抗期かなこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたが怒らせるから……」
-
爪'ー`)y‐「でもママの方が良くない?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね……そっちの方が可愛いと思うけど……」
,_
ζ(゚ぺ*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「本人が嫌そうだからパパでも良いのでは?」
爪'ー`)y‐「えぇぇー……」
ξ゚⊿゚)ξづ「……デレは柔らかくて暖かいわね」
ζ(゚- ゚*ζ「がうー」
ξ゚⊿゚)ξ「はぁ……癒される……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん交代してよー」
ζ(゚- ゚*ζ「ない」
爪'ー`)y‐「じゃあ混ぜてよー」
ζ(゚- ゚*ζ「ない」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんデレが反抗期……」
ξ゚⊿゚)ξ「知らんがな……」
-
ξ゚⊿゚)ξ(あー)
ξ゚⊿゚)ξ(あったかい)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「狐」
爪'ー`)y‐「はい?」
ξ゚⊿゚)ξ「何か歌え」
爪'ー`)y‐「酔っ払いよりひどい注文やめて」
ξ゚⊿゚)ξб ⌒◎「ほらよ」コイーン
爪'ー`)y‐「ツンちゃんひどいよ! そんな雑な投げ銭ないよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「歌えよ」
爪'ー`)y‐「歌うけど……もうちょっと労ってよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「早く」
爪'3`)y‐「ツンちゃんのワガママ暴れん坊プリンセスー」
ξ゚⊿゚)ξ「誰が三石琴乃だ」
-
ぽろろん。
遠き日を謳おう。
遠き日を想おう。
決して消えぬ輝き。
決して消えぬ淀みを。
過去の道を辿って。
過去の傷を擦って。
確かなる道筋。
確かなる願いを。
揺らぐ事は許さず。
嘆く事も能わず。
金の波を揺らして。
真翠は目映く。
-
ξ゚⊿゚)ξ(ああ、私の歌)
ξ-⊿-)ξ゙(私の)
ξ-⊿-)ξ(こいつ、自分で思ってるより私の事が好きなんだな)
(それは私もだけれど)
爪'ー`)y‐「……寝ちゃった?」
ζ(゚- ゚*ζ「がう」
爪'ー`)y‐「聴いたら寝るのが条件反射になってんな……」
ζ(゚- ゚*ζ「ぐるる」
爪'ー`)y‐「まだ怒ってる?」
ζ(゚- ゚*ζ「おこるない」
爪'ー`)y‐「なら良かった、こっちおいで」
ζ(゚- ゚*ζ,,「うー」
-
爪'ー`)っc□「はい、お湯」
ζ(゚- ゚*ζ「あたたか」
爪'ー`)y‐「お茶とコーヒーどっちが良いかな」
ζ(゚- ゚*ζ「みうく」
爪'ー`)y‐「ミルクは無いなー、お酒ならあるけど」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「のむ」
爪'ー`)y‐「バレたら殺されそうだけど別に蘇るから良いか」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんいのちそまつ」
爪'ー`)y‐「死なないとこうなるんだよねぇ、はいちょっとだけ、お砂糖足したから」
ζ(゚- ゚*ζ゙ ゴクゴクプハー
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ「おかわり」
-
爪'ー`)y‐「よし飲め」
ζ(゚- ゚*ζ゙ ゴクゴクゴク
爪'ー`)y‐「熱くない?」
ζ(゚- ゚*ζ「いける」
爪'ー`)y‐「デレお酒に強いな?」
ζ(゚- ゚*ζ「あまいおいしい」
爪'ー`)y‐「甘いならいけるか……いや子供にあんまり飲ませるのもな……」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん、デレまぞく、にんげんちやう」
爪'ー`)y‐「そっかー人間じゃなくて魔族だから子供でもお酒飲んで大丈夫かー」
ζ(゚- ゚*ζ(んなわけない)
爪'ー`)y‐(ですよね)
ζ(゚- ゚*ζ「おいしいすき」
爪'ー`)y‐「酒豪になるぞこれ」
-
ζ(゚- ゚*ζ「デレおうち、おさけある」
爪'ー`)y‐「飲む系のお宅だった?」
ζ(゚- ゚*ζ「だった」
爪'ー`)y‐「一緒に味見してた?」
ζ(゚- ゚*ζ「してた」
爪'ー`)y‐「よーし飲めー」
ζ(゚- ゚*ζ「おいしおいし」
爪'ー`)y‐「外では駄目だよ?」
ζ(゚- ゚*ζ「うい」
爪'ー`)y‐「子供に飲ませる背徳感vs呑み仲間の出来る喜び……!」
ζ(゚- ゚*ζ「だめなおとな」
爪'ー`)y‐「知ってるー☆」
-
爪'ー`)y‐「ま、量は控えめにね」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
爪'ー`)y‐「今度甘いお酒を仕入れるか……」
ζ(゚- ゚*ζ「がうがう」
爪'ー`)y‐「どうせ暇だしツンちゃん起きないだろうしお酒空けちゃうかー」
ζ(゚- ゚*ζ「キャーン」
爪'ー`)y‐「悪い事してるなー僕! 楽しいなー悪い事!」
ζ(゚- ゚*ζ「わるいおとな」
爪'ー`)y‐「もっと言ってー!」
ζ(゚- ゚*ζ「だめにんげん」
爪'ー`)y‐「それは傷付く……」
ζ(゚- ゚*ζ(デレおさけのめる、おにさんさみしいない、いいこといっぱい)
ζ(゚ー゚*ζ〜♪
翌朝、酔い潰れて寝ていた僕らは起きたツンちゃんに死ぬほど怒られました。
おわり。
-
ありがとうございました、本日はここまで。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
シリーズ一作目である『塔のようです』と二作目である『旅のようです』はこちらから読めます!!
一応は読まなくても楽しめるようには頑張ってます!!
でもこちらから読めますから!!ググっても出てきますけど!!
読みにくいなどありましたら言って下さい!!!
http☆oppao.web.fc2.com/text_smp.html
-
途中で切れるって方はこの辺挟んで見てみてください!!
どこらへんで切れるのかちょっとわかんないんで!!サーセン!!
ttp://fileseek.net/proxy.cgi?u=http%3A%2F%2Foppao.web.fc2.com%2Ftext_smp.html&guid=ON
-
乙乙こいつらが好き好きいってんのほんと可愛くて好き
デレちゃんそれがwin-winだぞ、賢いなあ
-
乙
あざといわかる……かわいい……
というかお前ら全員かわいいぞちくしょう
-
最後のデレちゃんきゃわわ
-
けつねの「ンンッwwwwwwww」で唾が変なとこ入ってすっげえむせた
-
堪えたのにけつねで止め刺されたんだけど
-
そんなうどんみたいな
-
(´・ω・`)塔のようです読み始めたけどめっちゃ面白いwwwwwww
-
いいわぁ…
-
けつねうろんひとつ!
-
はあ……ほんとすき
-
ようやく追いついた・・・最高だよアンタ
今回は前回までの名前だけしか出てなかったキャラがいろいろ見れて嬉しいけど主要キャラ達は出ないのかなー
成長したミセリとか見たいなあ
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声、獣じみた幼い咆哮。
刃を振るい、歌声を響かせ、魔力を用い、路銀を稼いで進むのは三人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
そんな二人の後ろをついて歩く、小さな魔族の子供。
【道のようです】
【第十二話 いやなきもちをはらおう。 前編】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
まっしろつめたい降雪地帯はなかなか抜けず、ざくざくと雪を踏み締めて進んでゆく。
目の前を歩くのは、深い赤のマントと濃い青灰色のマント。
やっと服を買えたお姉さんは、斧を肩に担いで雪の中を進む。
小さいのに大きなお姉さんは、とても頼りになる。
誰よりも貪欲に生きようとするし、とても優しくてあたたかい。
少し前を歩くお兄さんは、よく笑う。
いつもにこにこ何かから逃げているのに、最近はちゃんと受け止められているみたい。
デレは、お兄さんとお姉さんがだいすきです。
ζ(゚- ゚*ζ「がう」
爪'ー`)y‐「ん?」
ζ(゚- ゚*ζ「う?」
爪'ー`)y‐「気のせいかな……うーさむー……」
お兄さんはさむいのが苦手みたい。
喉が冷えるのがだめなんだって。
-
パパとママをころされて、デレはこわいひとに連れていかれた。
奴隷として叩かれたり痛い思いも怖い思いもたくさんした。
どれだけの期間を奴隷として過ごしたのかは覚えてないけど、やらされるのは肉体労働ばかりだった。
奴隷をしていた中では、角を掴んで揺さぶられるのが一番痛くて苦しくて怖かったな。
怒られる時はそうされるものだと思っていたけど、違うみたいだ。
パパもママも僕には優しかったし、もうよくは覚えていないけど。
売られて、本格的に奴隷として生きるんだと思ってた。
もうなにも楽しいことなんてないって思ってた。
でもお姉さんが、デレのために怒ってくれた。
お兄さんが、デレのためにお金を出してくれた。
お姉さんは怒ると誰よりも怖くて、ママくらい怖くて、きっとあのままだと人も殺したと思う。
怒ると知らないひとみたいになる。
デレはあんまり怒ってほしくないけれど。
それでもお姉さんは、自分や誰かのためによく怒る。
それにデレを拾った時は、特別な怒り方だったらしい。
-
パパとママをころされて、デレはこわいひとに連れていかれた。
奴隷として叩かれたり痛い思いも怖い思いもたくさんした。
どれだけの期間を奴隷として過ごしたのかは覚えてないけど、やらされるのは肉体労働ばかりだった。
奴隷をしていた中では、角を掴んで揺さぶられるのが一番痛くて苦しくて怖かったな。
怒られる時はそうされるものだと思っていたけど、違うみたいだ。
パパもママも僕には優しかったし、もうよくは覚えていないけど。
売られて、本格的に奴隷として生きるんだと思ってた。
もうなにも楽しいことなんてないって思ってた。
でもお姉さんが、デレのために怒ってくれた。
お兄さんが、デレのためにお金を出してくれた。
お姉さんは怒ると誰よりも怖くて、ママくらい怖くて、きっとあのままだと人も殺したと思う。
怒ると知らないひとみたいになる。
デレはあんまり怒ってほしくないけれど。
それでもお姉さんは、自分や誰かのためによく怒る。
それにデレを拾った時は、特別な怒り方だったらしい。
-
どうしてあんなに怒ったのか、聞いてみた事もあった。
ζ(゚- ゚*ζ『おこるふしぎ』
ξ゚⊿゚)ξ『私は人を殺すわ、だから人の道からは外れた』
ζ(゚- ゚*ζ『あう』
ξ゚⊿゚)ξ『けれどそんな外道にも、譲れない筋って物があるのよ』
私にはそれがあんただっただけ。
斧を研きながら言うお姉さんは、すごくまっすぐな目をしていた。
デレは、そんな目の人を外道だとは思えなくて。
けれど人を殺したのなら、それはどんな理由であれ人の道からは外れると。
お姉さんは自らを戒めるように、自分を縛り付けるように、ただ斧を磨いていた。
-
お兄さんはどうしてお金を出してくれたのか。
デレを拾うの嫌がってたみたいなのに、どうしてなのかが不思議で聞いてみた事がある。
ζ(゚- ゚*ζ『おかねだすふしぎ』
爪'ー`)y‐『んー? まぁ相棒が納得しないしねぇ、と言うか別に払ってないし』
ζ(゚- ゚*ζ『デレもってる』
爪'ー`)y‐『その金貨が君の値段としてつけられた金額だよ』
ζ(゚- ゚*ζ『たかい?』
爪'ー`)y‐『大人になった時、それが高いか安いか分かる筈だから』
僕はその命の値段を教えたかっただけ。
たばこの煙をぷかぷか、お兄さんは笑ってた。
自分以外にお金にうるさいお兄さんが、デレに金貨を渡した。
それは、とっても大変な事なんじゃないかなって思った。
-
このお姉さんとお兄さんは、デレが今まで見てきた人間とはどれも違った。
汚いみたいな目をしないし、魔族だからって嫌わないし、奴隷だからってばかにしない。
気持ちの悪い生き物だって、敵だって目では見なかった。
ばっちいばっちいデレを助けてくれて、お金を渡して、宿まで連れてってくれて、綺麗にしてくれた。
お洋服もくれた、ご飯もくれた、あったかくてやさしくて、怖い事をされると思ったけどされなくて。
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚- ゚*ζ モス
⊂ ⊂ ヽ,,
爪'ー`)y‐「どしたのデレ、寒い?」
ζ(゚- ゚*ζ「あたたかい」
爪'ー`)y‐「サンドウォームみたいになってる……」
ζ(゚- ゚*ζ「げしょ」
-
爪'ー`)y‐「んー? ツンちゃん休憩出来そうなとこあるー?」
ξ゚⊿゚)ξ「いい感じに屋根だけがあるわー、バス停みたいなやつー」
爪'ー`)y‐「休憩しよー、デレが寒そうー」
ξ゚⊿゚)ξ「わかったー、この雪のなかで使える薪あるかな……」
二人とも、あったかくてやさしい。
爪'ー`)y‐「デレ行くよ」
ζ(゚- ゚*ζ「がう」
爪'ー`)y‐「……暖かいな君」
ζ(゚- ゚*ζ「デレたいおんたかい」
爪'ー`)y‐「寒さに強いタイプじゃねーの……」
ζ(゚- ゚*ζ「あついむり」
爪'ー`)y‐「ただの甘えたか今のは」
♪〜ζ(゚、゚*ζ
爪'ー`)y‐「こーいーつーめー」
ζ(>- <*ζキャー
-
,,ξ゚⊿゚)ξ「何してんの」
爪'ー`)y‐「じゃれあいをまた見られた」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんも」
⊂ ⊂ ヽ,, ピト
ξ゚⊿゚)ξ「あったけー」
爪'ー`)y‐「寒いんじゃなくて甘えただったみたいです」
ξ゚⊿゚)ξ「実年齢よりだいぶ小さい子みたいよねあんた」
ζ(゚- ゚*ζ「がうー?」
爪'ー`)づ「九歳児にしては背も低いし甘えただし」
ζ(゚- ゚*ζ「うー」
ξ゚⊿゚)ξ「将来どうなるのかしらこの子……」
爪'ー`)y‐「パパみたいになるのでは?」
ξ゚⊿゚)ξ「恐らく大腿骨があんたの腕くらいあったような」
爪'ー`)y‐「立派な体躯だなー!!」
-
爪'ー`)y‐「ほらデレ、火を起こさないとね」
ξ゚⊿゚)ξ「温かい物が飲みたい」
ζ(゚- ゚*ζ「あい!」
デレは魔族なので、人間よりもたくさん魔力を持っている。
でもまだまだ使い方が分からないから、なかなかうまく魔法は使えない。
ほんとなら小さい頃から魔法は使えるはずなんだけど、パパとママはデレに魔法を教えてはくれなかった。
人間の里の近くで生きていて、人間の世界にはもともと魔法はなくて。
だから人間の世界に居るのなら、その世界の自然のことわりに従う方が良い。
どうしても必要なとき以外は、おいそれと魔法を使ってはいけない。
それに魔法をたくさん使える魔族が近くにいるとわかったら、人間はきっと怖がってしまう。
パパはほんとはたくさん魔法を使えるけれど、
人間の近くでいきる事を選んでからは、全然使わなくなったらしい。
どうしてここでいきるようになったのか、不思議に思った事もあった。
パパやママに聞いてみたら、魔族の世界で生きにくくなったからだって。
戦争? が起きたり、ちょうへい? があったり。
パパはもともと人間が好きで、戦いたくなかったって。
-
あの里の人間に良くしてもらったから、パパは人を好きになって。
だからパパはママを連れて里の近くにこっそり棲んで、里を魔物から守ってるって。
その良くしてくれた里の人はもう死んじゃって、里にパパ達の事を知る人はいなくなったけど。
それでもパパはずっとあの森で、人間と寄り添って生きるんだって言ってた。
そう言えば、魔物にちかいせいかつをするのは、魔物から警戒されないため。
自然の中でこっそり生きるため、そしてそれが出来るタイプの種族だったから、らしい。
パパやママの種族は力が強いから、魔物くらいなら魔法が無くても倒せるって。
魔法は教えてはもらえなかった。
でもお兄さんとお姉さんは魔法が得意じゃない。
お姉さんは魔法がぜんぜん使えないみたいだし、お兄さんは普通の人くらいしか出来ない。
だからデレは、必要だから、二人のために魔法を使うよ。
今は小さな火を出すくらいしか出来ないけれど、いつかはパパみたいに強い魔法を使えるようになりたい。
ただ、教えてくれる人がいない。
どうやって魔法を覚えればいいんだろう、魔女さんとはたまにしか会わないし。
それに人間が使う魔法は、人間用の魔法。
よくにてるけど、魔族の魔法とは少し違う。
だからデレは人間の魔法より、魔族の魔法を使う方が得意だと思う。
-
でもそうなると、もっと教えてくれる人がいない。
パパママ以外に、魔族なんて見たことない。
こまったなぁ。
二人の役に立ちたいのに、これじゃぜんぜん役に立てない。
デレは考えることは出来ても、それを口に出して言葉にするのが苦手。
だからちゃんと気持ちが伝えきれないし、伝わらない事もある。
覚えること、勉強する事がたくさんある。
まず言葉の勉強をして、魔法の勉強をして、他にもたくさん。
うー、役に立てるまでたいへん。
ζ(゚- ゚*ζ「ゔぅ゙ー……」
爪'ー`)y‐「唸ってる」
ξ゚⊿゚)ξ「唸ってるわ」
爪'ー`)y‐「何か居るのデレ」
ξ゚⊿゚)ξ「何の気配も無いわよ」
-
ζ(゚- ゚*ζ「がう!」ザクザク
爪'ー`)y‐「デレ素手で雪を掘ると霜焼けになるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「犬じゃないんだからあなた」
ζ(゚- ゚*ζ 「がうー!」
⊂彡 ザシャー
爪'ー`)y‐「あ、冬眠してたカエルが」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほど、肉を掘っていたのね……」
爪'ー`)y‐「嫌な字面だな肉を掘るって……」
もやもやして発散するために掘ったんだけど、嬉しそうだからまぁ良いや。
カエルはお肉として食べよう、ここらへんのはきっと肥えてて美味しいよ。
近くにまだいるし、もういくつか掘ってお昼ご飯にしてもらおう。
ζ(゚- ゚*ζ 「がうー!」
⊂彡 ガシャー
爪'ー`)y‐「まるで鮭をとる熊のように」
ξ゚⊿゚)ξ「お肉が増えるわ」
爪'ー`)y‐「やったねツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「生態系を破壊しない程度に努めるわ」
爪'ー`)y‐「努めないと生態系を破壊するの怖すぎない」
-
ξ゚⊿゚)ξ「そういや雪も減ってきたし、そろそろ次の街よね」
爪'ー`)y‐「間に村を挟むけど次の街はでっかいぞー、回りきるのに何日もかかるよ」
ξ゚⊿゚)ξ「美味しいものがありそうね」
爪'ー`)y‐「何とカジノがある」
ξ゚⊿゚)ξ「またか」
爪'ー`)y‐「前回はツンちゃんに大負けしたけど次は僕が稼ぎますよーぉ」
ξ゚⊿゚)ξ「ほーん」
爪'ー`)y‐「あっ信じてないな? 信じてないな? 絶対稼ぐからな? 路銀増やしまくるからな?」
ξ゚⊿゚)ξ「期待せずに待つわ」
爪'ー`)y‐「期待してよーんねーぇー」
ξ゚⊿゚)ξ「あーはいはい期待期待」
爪'ー`)y‐「絶対稼ぎまくってやるぅ……」
-
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚- ゚*ζ?
お姉さんとお兄さんは二人で旅をしてた。
だからけっこんしてると思ったけど、なんか違うらしい。
お姉さんはぜんぜん興味無さそうだし、お兄さんはぜんぜん好みじゃないって言う。
どうやらお兄さんはえふかっぷが好きだけどお姉さんはえーかっぷまいなすらしい。
なんか違うみたい。
デレは二人がけっこんしたらパパとママみたいで良いなぁと思うんだけど、
ぜんぜんそんな素振りもないし、なんかそう言うんじゃないみたいで。
でもそうかもしれなくて。
ζ(゚- ゚*ζ(おとなわからん)
ζ(゚- ゚*ζ(うー?)
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんけっこんない?」
爪'ー`)y‐「えっ何を急に……僕は一夜限りのが良い……」
ξ゚⊿゚)ξ「そうやって呪われたんだろうに」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんけっこん……?」
ξ゚⊿゚)ξ「私がもっと強くなって私より強い男が現れたら考えるわ」
ζ(゚- ゚*ζ(むりこれ)
-
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ狐、薪が無いからちょっと燃えてよ」
爪'ー`)y‐「一応は雇用主なのになー! 薪代わりに燃やそうとされてるなー!!」
ξ゚⊿゚)ξ「しょうがないじゃないこの雪だもの」
爪'ー`)y‐「うーん……野宿になるとつらいなこれは」
ξ゚⊿゚)ξ「かまくらでも作る?」
爪'ー`)y‐「最終手段だなぁ」
ζ(゚- ゚*ζ「あなほる、はいる、あたたか」
ξ゚⊿゚)ξ「そうか、掘る方が良いわね」
爪'ー`)y‐「ねぇ着々と野宿への準備やめよ? 地図見ると近くに村あるからね?」
ξ゚⊿゚)ξ「村っつーと……クエスト受けてた気がするんだけど」
爪'ー`)y‐「あー、常に貼ってある回数こなすと小銭がもらえるアレ?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうアレ、雪の花を集めろだっけ」
爪'ー`)y‐「ティガレックス湧きそう」
ξ゚⊿゚)ξ「湧かない」
-
爪'ー`)y‐「薬草にもなるし見た目が綺麗だから数必要なんだっけね」
ξ゚⊿゚)ξ「んー……しかし、白い花って話だったような」
爪'ー`)y‐「……銀世界だなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「別に断っても違約金発生しないし……」
爪'ー`)y‐「まぁそうだけど……」
*⊂ζ(゚- ゚*ζ「がう?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「よく見つけたわね……」
ζ(゚- ゚*ζ「いっぱいある」
ξ゚⊿゚)ξ「どこに……?」
ζ(゚- ゚*ζ「う? ゆきのなかある」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
-
ξ゚⊿゚)ξ「諦めよう、寒いわ」
爪'ー`)y‐「そうだねお小遣い程度の代金だしね」
ζ(゚- ゚*ζ「デレさがす」
ξ゚⊿゚)ξ「やめなさい霜焼けになる」
ζ(゚- ゚*ζ三 ピュー
ξ゚⊿゚)ξ「待ちなさいデレ! こら!!」
爪'ー`)y‐「あーあー……庭を駆け回る犬のように……」
ξ゚⊿゚)ξ「温かいものをせめて」
爪'ー`)y‐「燃やすものがないね!」
ξ゚⊿゚)ξ「生け贄になろ?」
爪'ー`)y‐「人の体はそんなに燃えないよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「試そ?」
爪'ー`)y‐「やだよ?」
-
お姉さんとお兄さんは雪に触っているとだめみたいだけど、デレはぜんぜん平気。
雪にさわってもすぐに溶けるし、そんなに冷たいなとも思わない。
だからデレが、二人の分も頑張る。
二人の役に立ちたいから、雪のなか、お花を探す。
雪の花って言うのは、魔力を吸って夜に少しだけ光る白い花。
デレは魔力を見つけるのが得意だから、どこにお花があるのかすぐにわかる。
魔力は少し光るみたいに見える。
匂いもするし、肌がぴりぴり、尻尾がざわざわする。
すこしだけ温かい気もするし、うんと、よくわかんないけど見つけられる。
ざくざく。
ざくざく。
お花あった。
もっともっと。
ざくざく。
ざくざく。
もっともっと。
-
ξ゚⊿゚)ξ「最近あんまり死んでないじゃない」
爪'ー`)y‐「平和でよろしいのでは?」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた死ななきゃ何にもなんないじゃない」
爪'ー`)y‐「そんな存在価値はゾンビ体質みたいな」
ξ゚⊿゚)ξ「違った?」
爪'ー`)y‐「違いますぅー吟遊詩人としてのポジション確立してますぅー」
ξ゚⊿゚)ξ「ふむ、……しかし燃やすものが無いとつらいな」
爪'ー`)y‐「うーん……こんな時は」
ξ゚⊿゚)ξ「こんな時は?」
爪'ー`)y‐「枯れ木無いかなこの辺」
ξ゚⊿゚)ξ「枯れ木? 通称の方?」
爪'ー`)y‐「そうそう通称枯れ木」
-
爪'ー`)y‐「あれは魔物なのかなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「さぁ……でもよく燃えるわよね……」
爪'ー`)y‐「雨の中拾ってきても燃える枯れ木ね、この辺に無いかなー」
ξ゚⊿゚)ξ「探すか枯れ木……」
爪'ー`)y‐「わりと擬態してるんだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「そうそう、よく鳴くし」
爪'ー`)y‐「パキッと割れば静かになるんだけどなー、割れてると見付けられなくて」
ξ゚⊿゚)ξ「枯れ木出てこーい、燃やすから出てこーい」
爪'ー`)y‐「お、あの辺ありそうじゃない?」
ξ゚⊿゚)ξ「あー枯れ木ありそうね、挟み撃ちで行くか」
爪'ー`)y‐「せーの」
ξ゚⊿゚)ξ「そいっ」
-
ごそごそ。
ざくざく。
ばさっ。
"ζ(>- <*ζ" プルプル
ζ(゚- ゚*ζ プハ
雪の中をうろうろして、たくさんお花をつんできた。
寝てたカエルもいっぱいとって、だいまんぞく。
お兄さんとお姉さんは、何かを燃やして焚き火をつくってる。
ぱちぱち音がして、生き物の焦げるにおいがした。
お花とおにくいっぱい。
よろこんでくれるかな。
抱えるくらい集めたからよろこんでくれるよね。
いっぱいほめてくれるよね。
わくわく。
-
ζ(゚- ゚*ζ,,「がうがう!」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、おかえりなさいデレ」
爪'ー`)y‐「うわーまたいっぱい集めて」
ζ(゚- ゚*ζ" フンスフンス
ξ゚⊿゚)ξ「何ドヤ顔決めてるのバカ、荷物置いて座りなさい」
ζ(゚- ゚*ζ!?
爪'ー`)y‐「あーあー鼻水出てるー」
ξ゚⊿゚)ξ「鼻も手も真っ赤じゃないの、ほら鼻かんで」
ζ(>- <*ζ プィーム
爪'ー`)y‐「はいお茶」
ζ(゚- ゚*ζ ホカホカ
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚- ゚*ζ(おこられた)
-
ξ゚⊿゚)ξ「あーもう尻尾も髪も雪まみれ」ゴシゴシ
爪'ー`)y‐「風邪引くよー?」バサバサ
ζ(゚- ゚*ζ「がう……」
おこられた。
しょんぼり。
ξ゚⊿゚)ξ「すごい量の花ねこれ……袋あったかしら」
爪'ー`)y‐「袋詰めはちょっと、せっかくデレが集めたんだし」
ζ(゚- ゚*ζ"
ξ゚⊿゚)ξ「束ねておくか……ちょうど良い紐は……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんのリボンなら」
ξ゚⊿゚)ξ「余ってるしそれで良いわ」
-
爪'ー`)y‐「リボン好きだよねツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「姉様が私に付けるの好きだったのよね」
爪'ー`)y‐「習慣かー……よいしょ、こうかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「役所に渡すだけなのに可愛らしく」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんに任せると可愛いげがなくなるから」
ξ゚⊿゚)ξ「でも私あんたのセンスは信じてない」
爪'ー`)y‐「もう許そ?」
ξ゚⊿゚)ξ「ナイフ見せて」
爪'ー`)っ=ニニフ+ ギラギラ
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱ趣味悪いわ」
爪'ー`)y‐「なーんーでー!?」
ξ゚⊿゚)ξ「何でてお前……
ζ(゚- ゚*ζ(ほうせきいっぱい)
-
ξ゚⊿゚)ξ「デレ、暖まった?」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた小銭のためにそんなに頑張らなくても良いんだから、そこまで困窮してないのよ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい……」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん言い方が悪い」
ξ゚⊿゚)ξ「マジか」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんはデレが風邪引かないか心配なだけだよー」
ζ(゚- ゚*ζ「あう?」
爪'ー`)y‐「実際雪の花の代金は安いし、そのためにデレが風邪を引いたら何にもならないでしょ?」
ζ(゚- ゚*ζ「うー……」
爪'ー`)づ「でもよくこれだけ集めたねー、偉い偉い」
ζ(- -*ζ「ぅー」
ξ゚⊿゚)ξ「私が悪者みたいなんだけど」
爪'ー`)y‐「このお姉さん怖いもんねー」
ξ゚⊿゚)ξ「あん?」
-
爪'ー`)y‐「顔は怖いし素行も怖いし小さいくせに凶悪だしで十分悪いお姉さんかも知れない」
ξ゚⊿゚)ξ「スッゾオラーァアン?」
爪'ー`)y‐「やめてよ輩化するの怖いよ」
ξ゚⊿゚)ξ「喧嘩売られたなら買わないと」
爪'ー`)y‐「買うと言えば最近女の子と寝てない」
ξ゚⊿゚)ξ「最低だなその発想……」
爪'ー`)y‐「チビッコ&チビッコじゃ僕の女の子抱きたい欲が満たされない」
ξ゚⊿゚)ξ「次の街で買えよ……」
爪'ー`)y‐「買うか適当に見繕って連れ込むけどさぁ」
ζ(゚- ゚*ζ(かう……? どれい……?)
爪'ー`)y‐「もっとこうあるじゃん……何か……あるじゃん……」
ξ゚⊿゚)ξ「ねえよ知るかよ……」
-
爪'ー`)y‐「あー潤いが欲しい……」
ζ(゚- ゚*ζ「おみずのむ……?」
爪'ー`)y‐「潤い(物理)」
ξ゚⊿゚)ξ「良かったわね潤いよ」
爪'ー`)y‐「雪解け水じゃ無くて女の子に求め求められするタイプの潤いがね」
ξ゚⊿゚)ξ「おい子供に説明すんな」
ζ(゚- ゚*ζ?
ζ(゚- ゚*ζ。o(おんなのこ=ξ゚⊿゚)ξ)
ζ(゚- ゚*ζ。o(もとめる=ひつよう)
ζ(゚- ゚*ζ。o(もとめられる=うた)
|
\ __ /
_ (m) _ピコーン
|ミ|
/ .`´ \
ζ(゚- ゚*ζ!
-
爪'ー`)y‐「子供だからと避けて通れる話題ではないよツンちゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「いや教える側は避ける事が出来る話題だろうがこれは」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん?」
ξ゚⊿゚)ξ「んぁ?」
ζ(゚- ゚*ζ「う?」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
ζ(゚- ゚*ζ「うるおい?」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ζ(゚- ゚*ζ?
ξ゚⊿゚)ξ「いやー……」
爪'ー`)y‐「乾ききってんなぁ……」
ζ(゚- ゚*ζ???
-
ξ゚⊿゚)ξ「デレ……ずっと思ってたんだけど……あんた、私達を何か勘違いしてない……?」
ζ(゚- ゚*ζ?
爪'ー`)y‐「僕たちは旅をする上でパートナー同士だけど、男女の関係ではないよ……?」
ζ(゚- ゚*ζ??
ξ゚⊿゚)ξ「分かってないわよ」
爪'ー`)y‐「結婚はしてないし今後もしない関係です」
そζ(゚- ゚*ζ!?
ξ゚⊿゚)ξ「驚かれたぞおい」
爪'ー`)y‐「思ったより深刻そうだなおい」
ζ(゚- ゚*ζ「……けっこんしない……?」
爪'ー`)y‐「無いねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ「無いわぁ……」
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚- ゚*ζ(がぅー……)
-
やっぱりなかった。
おこられたよりしょんぼり。
けっこんしたらデレがまんなかに居られると思ったのに。
二人はいちねんけいやくらしいから、一年でわかれちゃうみたいだし。
そうなったらデレはどうなるんだろう。
やだな。
さみしい。
ζ(゚- ゚*ζ「ぅ゙ぅ゙ー……」
ξ゚⊿゚)ξ「唸るな唸るな」
爪'ー`)y‐「そんなに結婚させたかったの……?」
ξ゚⊿゚)ξ「結婚の認識が異なる気がするのよね……」
爪'ー`)y‐「だいぶライトな感じするよね……」
ξ゚⊿゚)ξ「狐と結婚……はしないな……」
爪'ー`)y‐「さしもの僕もそれは無いと思うわー……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ、えー……何だ……」
爪'ー`)y‐「そうね……うん……」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「飯食ったら行くか」
爪'ー`)y‐「そうだね日が落ちちゃうしね」
ζ(゚- ゚*ζ(ぐぬぅ……)
ξ゚⊿゚)ξ(納得いかない顔してる)
爪'ー`)y‐(さすがにあのワガママは聞けないぞー?)
ξ゚⊿゚)ξ(まぁパーティ契約的には似たようなもんだと納得してもらうしか)
爪'ー`)y‐(一年契約って知ってるから納得しないよあれ)
ξ゚⊿゚)ξ「延長する?」
爪'ー`)y‐「急に風俗みたいな事言い出さないでびっくりするから」
ξ゚⊿゚)ξ「知らんがな」
-
二人はえんちょうするとかしないとか言いながら、後片付けをして歩き出した。
デレはおっきな花の束を抱えて、二人の後ろについていく。
結婚ないのはわかったけど、何でないのかはわかんない。
二人が離ればなれになったら、またデレは一人になっちゃう気がする。
デレはどこにいけば良いんだろう、二人の後ろがデレの居場所なのにな。
さみしいな、やだな。
一人はやだな、こわいな。
また売られるのかな。
おうちにはもう誰もいないし。
お姉さんはデレを助けてくれたご主人だから、一緒にいたいな。
でもお兄さんも助けてくれたし、やっぱり一緒にいたいな。
はぁ、お別れやだな。
ざくざく、ざくざく。
雪を踏む音がひろがって、消える前につながってく。
-
はあはあ、冷たい空気を吸うおと。
ざくざく、凍った雪を踏みわるおと。
冷たくてぴんとはりつめたような匂い。
寒いところの匂いは、お姉さんのお守りの匂いに似てる。
ひんやりして、ひりひりして、でもすっとする匂い。
いやな気持ちがきれいになっていくみたいで、好きな匂い。
お姉さんは冷たくてしゃんとする匂い。
お兄さんは甘くてあったかい匂い。
ふたりともいいにおいがする。
ζ(゚- ゚*ζ「う」
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
ζ(゚- ゚*ζ「いる」
爪'ー`)y‐「んー? 魔物かな」
-
ζ(゚- ゚*ζ「まものにおい」
ξ゚⊿゚)ξ「……真っ白で目視じゃ分からんな、音は」
爪'ー`)y‐「…………何の音もしないね」
ξ゚⊿゚)ξ「……気配はあるな、でもどこに……」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん!」
ξ゚⊿゚)ξ"「ん、ぅおっ!?」バッ
爪'ー`)y‐「え? え? 魔法飛んできた?」
ξ゚⊿゚)ξ「あービビった……火の魔法か今の」
爪'ー`)y‐「ヒール……はこんな風にはしないよね」
ξ゚⊿゚)ξ「あのバカはバカ正直だからな……」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん! まだくる!」
-
-=◎
ヒュッ -=◎ 三ξ;゚⊿゚)ξ
-=◎ 「なんかエネルギー弾みたいなの来たんだけど!?」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんしか狙わねぇなこのエネルギー弾!」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんよけて! まりょく! かたまり!」
三ξ;゚⊿゚)ξ「解読しろ狐ェ!」
爪'ー`)y‐「えーと……無属性の魔力のかたまりがツンちゃんを襲ってる感じ?」
三ξ;゚⊿゚)ξ「雪で動きにくいのに私だけ狙うのやめろ!!」
ζ(゚- ゚;*ζ「ぁー! おねさん! あぶな!」
ξ;゚⊿゚)ξ"「あっ」ズルッ
爪'ー`)y‐「あ」
< ズシャー バリバリー ウギャー
爪'ー`)y‐「……ツンちゃんがこうなるの初めて見たな……」
ζ(゚- ゚;*ζ「おねさーん!!」
-
ξ;゚⊿゚)ξ「死んだらどーす……あれ、ほぼ無ダメ……?」
爪'ー`)y‐「あれ、エネルギー弾モロに食らってなかった?」
ξ゚⊿゚)ξ「三発くらい貰ったような……意外とダメージ無いのかあれ」
ζ(゚- ゚*ζ(ない……つよいのだった……)
爪'ー`)y‐「じゃあ押し勝てるのでは?」
,,ξ゚⊿゚)ξ「よし、飛んできたのはあっちからだな」
ζ(゚- ゚*ζ(おかし……いたいない、なんで……?)
爪'ー`)y‐「ん? あ、ツンちゃーん、お守り外れてるよー?」
ξ゚⊿゚)ξ「持っといて、金具で下げると駄目ね……すぐ壊れる……」
そζ(゚- ゚*ζハッ
ζ(゚- ゚;*ζ「おねさーん!! こっちもどるー!!」
ヒュッ -=◎
-=◎ ξ゚⊿゚)ξ"「? どうしたのデレ」クルッ
爪'ー`)y‐「あ」
ζ(゚- ゚;*ζ「あ」
< バリバリー ウギャアアアア
-
ξ ⊿ )ξ
ζ(゚- ゚;*ζ「おねさ! おねさん!! だいじ!?」
爪'ー`)y‐「うわー焦げてる」
ξ゚⊿゚)ξ「痛い」
爪'ー`)y‐「血が出てる」
ξ゚⊿゚)ξ「すごく痛い」
爪'ー`)y‐「鎧焦げてる」
ξ゚⊿゚)ξ「さっき無ダメだったのに」
爪'ー`)y‐「うわまだビリビリする、魔法攻撃こっわ」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさん……おまもり……」
ξ゚⊿゚)ξハッ
爪'ー`)y‐「あー、これマジで効果あるの?」
ξ゚⊿゚)ξ「貸して」
爪'ー`)つ「はい」
-
ξ゚⊿゚)ξ「お守り握って」
-=◎)⊿゚)ξそ メゴォ バリバリー
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「平気なんだけど」
爪'ー`)y‐「お守り貸して」
ξ゚⊿゚)ξつ「ん」
-=◎)⊿ )ξ=゚そ メゴォ バリバリー
ξ ⊿ )ξ=3 プシュー…
爪'ー`)y‐「効果あるねこれ」
ζ(゚- ゚;*ζ「お、おねさーん!!」
ξ゚⊿゚)ξ「クソ痛い」
爪'ー`)y‐「はいお守りちゃんとつけて」
ξ゚⊿゚)ξ「今は腕にはめよう」
-
爪'ー`)y‐「ところで何がさっきから攻撃してきてんの」
ζ(゚- ゚;*ζ「まもの」
ξ゚⊿゚)ξ「本当に魔法使う魔物とか居たのね」
爪'ー`)y‐「めっちゃ居るよね」
ξ゚⊿゚)ξ「初遭遇だわ……」
爪'ー`)y‐「わりと多いけど今まで遭遇してなかったの……」
ξ゚⊿゚)ξ「だから魔防が大事なんて思ってもなかった」
爪'ー`)y‐「ヒールに感謝しようね……」
ξ゚⊿゚)ξ「今度あったらこてんぱんにしてあげなきゃ……」
爪'ー`)y‐「感謝ァ」
ξ゚⊿゚)ξ「たまには本気で相手をしてあげないと」
爪'ー`)y‐「お礼にフルボッコにするとか……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「おー、お守りつけたら魔法もらっても痛くも痒くもない」
爪'ー`)y‐「ツンちゃーん新品の外套焦げてるよー」
ξ゚⊿゚)ξ「っざけんなよ……結構したのにこれ……」
爪'ー`)y‐「あと歩いてくと血が落ちてるの怖い……」
ξ゚⊿゚)ξ「これくらいなら掠り傷よ、よし見付けた」
爪'ー`)y‐「どんなのー?」
ξ゚⊿゚)ξ「なんか犬みたいなやつ、投げるから受け取れー」
爪'ー`)y‐「魔物のパーツが飛んでくるから受け取ろうねデレ」
ζ(゚- ゚*ζ「ない……」
爪'ー`)y‐「無いけどあるんだよ……」
ζ(゚- ゚*ζ「ごはんなる?」
爪'ー`)y‐「うーん、夕飯はこの先の村で食べるかなぁ」
ζ(゚- ゚;*ζ「あ」
爪'(◎=-:;",ヒュッ
ボヂャッ「あ゙」
-
,,ξ゚⊿゚)ξ「急に撃ってきてビビっ……うわ」ボタボタ
爪 ,;:,,
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんぐしゃぐしゃ……」
ξ゚⊿゚)ξ「久々に顔面粉砕したわね……」
ζ(゚- ゚*ζ「まものあぶない」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、後で役所に報告しましょ」
ζ(゚- ゚*ζ「おにく?」
ξ゚⊿゚)ξつ「ああこれ? 暴れるから握り潰したのよ、頭」デロリ
ζ(゚- ゚*ζ「みそぉ……」
ξ゚⊿゚)ξ「みそね」
爪 ,:;, ジュルジュル
ξ゚⊿゚)ξ「あ、戻ってく」
-
爪 Д,;,ジュルジュル
ζ(゚- ゚*ζ(こわい)
爪'ー`)y‐+ペカーン
ξ゚⊿゚)ξ「段階飛ばしてない?」
爪'ー`)y‐「長々再生シーンを見せるわけにも」
ζ(゚- ゚*ζ「う? おにさん、ふくついてる」
爪'ー`)y‐「んー? ……おや、何だろこのキラキラしたもの」
ξ゚⊿゚)ξ「何かの粒……結晶?」
爪'ー`)y‐「氷……じゃないな、青くて透明な……石みたいな……」
ζ(゚- ゚*ζ「うー? こっちある」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたの脳漿が散った辺りね」
爪'ー`)y‐「僕の頭の中に何かあったんだろうか」
ξ゚⊿゚)ξ「爆弾が?」
爪'ー`)y‐「それはない」
-
爪'ー`)y‐「僕が死んでたあたりにいっぱい何かの結晶が落ちてる……」
ξ゚⊿゚)ξ「大事な部位かも知れないから集めておきましょ」
爪'ー`)y‐「確かに……僕の頭にあったのなら無くしちゃいけないかもしれない……」
ζ(゚- ゚*ζ「がうがう……」
ξ゚⊿゚)ξ「集めてみるとそれなりの量ね……」
爪'ー`)y‐「割れた感じじゃないね」
ξ゚⊿゚)ξ「元からこの大きさだったって事?」
爪'ー`)y‐「うーん……脳内にこんなのが散らばってたのかな……だとしたらやだな……」
ξ゚⊿゚)ξ「本当に何なのかしらこれ……綺麗だけど……」
ζ(゚- ゚*ζ「あつめた」
爪'ー`)y‐「これくらいかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、袋に入れときましょ、今度ヒールにでも聞いてみたら分かるかも」
爪'ー`)y‐「あの子は魔女としてはそこそこだからねぇ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「さて、この肉はどうしましょ」
爪'ー`)y‐「身体の方は綺麗だし分別して売れるんじゃない?」
ξ゚⊿゚)ξ「皮剥ぐにも雪の中じゃね……処理だけしてこのまま持っていくか」
ζ(゚- ゚*ζ「デレもつ」
ξ゚⊿゚)ξ「花持ってろ」
爪'ー`)y‐「それより手当てしないと、ほら術式」
ξ゚⊿゚)ξ「デレ使える?」
ζ(゚- ゚*ζ「がんばる」
⊂ζ(゚- ゚⊂ζ ポワワー
ξ゚⊿゚)ξ ポワワー
爪'ー`)y‐「おー治る治る」
ξ゚⊿゚)ξ「装備は傷ついたけど、まぁ今度直すか……ありがとデレ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい!」
-
おにくをずるずる。
あしおとざくざく。
デレがもっと言葉が得意だったらな。
お姉さんが怪我せずに済んだのにな。
デレがもっと魔法を使えたらな。
お姉さんの怪我もすぐに治せるのにな。
デレやっぱりやくたたずだな。
もっともっと、二人におんがえししたいのにな。
魔法が使えたら、たくさん役に立てるのに。
どうして魔族なのに魔法使うのが下手なんだろう。
ううんわかってる。
教えてもらってないからだってわかってる。
でもやっぱり、なんだかもやもやするなぁ。
おわり。
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ありがとうございました、本日はここまで。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
まとめて下さってます、ありがとうございます!
ttp://naitohoureisen.blog.fc2.com/blog-entry-271.html
-
デレがあざといかわいい
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デレちゃん一人称は僕なんだな
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ごめんホントは一人称はデレだわ……
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デレ、境遇的に自己肯定感見出すの難しいよねぇ。。。
乙!
-
>>737
急に一人称が朴になってビビった
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ふへへデレちゃんかわいいふへへ
というかお守りすげえな
次回も楽しみ乙
-
>けっこんしたらデレがまんなかに居られると思ったのに。
かわいすぎて気持ち悪い顔になってしてしまった
-
元からじゃね?
-
旅読んできたけど良いな!
塔のドクオ達出てくるしドラゴンも出てくるしで面白かった!
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声、獣じみた幼い咆哮。
刃を振るい、歌声を響かせ、魔力を用い、路銀を稼いで進むのは三人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
そんな二人の後ろをついて歩く、小さな魔族の子供。
【道のようです】
【第十二話 いやなきもちをはらおう。 後編】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
ずるずる、ざくざく。
ずるずる、ざくざく。
だまって歩いて数時間。
お日様がかたむきはじめた頃に、小さな村にたどり着いた。
動物がたくさん、デレに似た角の動物もいる。
雪は減ってきたけど景色はまだ真っ白、お兄さんの息が白くて、たばこの煙と見分けがつかない。
ξ゚⊿゚)ξ「あー寒かった……宿はどこだぁ……」
爪'ー`)y‐「あっちの通りが冒険者用みたい、あーお店も並んでて便利そう」
ξ゚⊿゚)ξ「役所のならびに全部あると楽で良いわー……」
ζ(゚- ゚*ζ「おはなやくしょ?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうそう、クエスト完了したって言いに行く?」
ζ(゚- ゚*ζ「デレ?」
ξ゚⊿゚)ξ「そうあんた」
ζ(゚- ゚*ζ" パァァ
ξ゚⊿゚)ξ(嬉しそうに)
爪'ー`)y‐(そんなに嬉しいか)
-
おつかい、おつかい。
はじめてのおつかい。
デレが頑張ったっていっていいのかな。
ほめてもらえるのかな。
わくわく、わくわく。
爪'ー`)y‐「じゃあ僕はこの肉と肉を売ってから宿の方行くから」
ξ゚⊿゚)ξ「役所で荷物渡したら行くわ」
ζ(゚- ゚*ζピタ
ξ゚⊿゚)ξ?
ζ(゚- ゚*ζ「しらないひとこわい……」
ξ゚⊿゚)ξ「あぁー……」
ζ(゚- ゚*ζ「ぅー……」
ξ゚⊿゚)ξ「……やめる?」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ「やる」
ξ゚⊿゚)ξ「よく言った」
-
こわい。
知らない人は、デレを怖い目で見るからこわい。
こわいけど、タカラみたくやさしいかもしれない。
お姉さんが隣にいるから、怖いことないから、頑張って。
ζ(゚- ゚*ζ「が、がぅ……」
( ・∀・)「ようこそー本日はどのようなご用件でしょうか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ほらデレ」
ζ(゚- ゚*ζ「ぅ……お、おはな、あつめた……」
( ・∀・)「ああ、雪の花採取ですか? ありがとうございます、パーティ名は?」
ξ゚⊿゚)ξ「焼きたてパンと溶かしバター、はい証明章」
( ・∀・)
ξ゚⊿゚)ξ
( ・∀・)「あー……はいはい、あの最近よく見る」
ξ゚⊿゚)ξ(マジで有名なのか)
-
( ・∀・)「はいではお花を受けとりますね、良いかな?」
ζ(゚- ゚*ζ「あ、あい!」
( ・∀・)「妹さんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや元奴隷で、花もこの子が集めたんですよね」
( ・∀・)「はぁそれはそれは、珍しい肌の色だなと思って……あっと、」パサ
ζ(゚- ゚*ζ「う?」
ξ゚⊿゚)ξ「あーほら、フードかぶってるから」
( ・∀・)「…………」
ξ゚⊿゚)ξ?
( ・∀・)「亜人、ですか? ……角は珍しい」
ξ゚⊿゚)ξ「ああいや」
ζ(゚- ゚*ζ「まぞく」
( ・∀・)「…………」
ξ゚⊿゚)ξ(あ、これは)
-
( ・∀・)「申し訳ありませんが、雪の花は受け取れません」
ζ(゚- ゚;*ζ「あぅ!?」
ξ゚⊿゚)ξ(あー)
( ・∀・)「魔族の触った物は受け取れません」
ζ(゚- ゚;*ζ「あ、ぅ……」
( ・∀・)「金ランクの冒険者の方ですし追い出しはしませんが、その魔族を連れ歩くのは控えて下さい」
ξ゚⊿゚)ξ「ほう」
ζ(。 。`*ζ「…………」
この人は、こわい方のひとだった。
デレや魔族を嫌いな方のひとだった。
こういうのいっぱいあったから、知ってるけど。
知ってるけど、やっぱりなんか痛い。
お姉さんを見上げたら、すごく冷たい目をしてて。
でも怒ったら、またお姉さんが大変かもしれないし。
いまは近くにお兄さんもいないし、デレはどうすればいいんだろう。
怒ったら、おこらないでっていうしかないのかな。
ちゃんととめないと、お姉さんが人殺しになっちゃうから。
うー。
はなのおくが、つんとしていたい。
-
ここでモララーか
-
( ・∀・)「それでは、申し訳ありませんが」
ξ゚⊿゚)ξ「して、理由は?」
( ・∀・)「は?」
ξ゚⊿゚)ξ「うちのデレが、集めた花を、受け取れない理由は?」
( ・∀・)「……ですから、魔族だからですよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ほう」
( ・∀・)「先の侵略や戦争についてはご存知でしょう? 魔族の行いを許せますか?」
ξ゚⊿゚)ξ「それはどうでしょうね」
( ・∀・)「……失礼ですが、人間の敵である人殺しの種族を連れ歩くのはお勧めしませんね
あなたは確か、英雄と呼ばれる師匠をお持ちなんですよね? お師匠に恥じる事になりますよ」
ひとごろし。
デレは、ひとごろしの種族なんだ。
ζ(。 。`*ζシュン
-
デレは人をころした事なんてないけど。
デレと同じ種族のひとが人間をころしたから、デレもひとごろしの仲間なんだ。
好きで魔族に生まれたわけじゃないけど、
魔族がいやだって思ったこともなくて。
パパとママは大好きで。
でも、魔族だから迷惑かけるなら、違うほうがよかったのかな。
にんげんなら、迷惑かけなかったのかなぁ。
ξ゚⊿゚)ξ「じゃああんたも人殺しの種族よね」
お姉さんの、空気を裂くみたいな、よく通る声。
( ・∀・)「…………は?」
ξ゚⊿゚)ξ「は? じゃないわよ、あんたは何も知らないの?」
( ・∀・)「……いや、何がですか、急に」
-
ξ゚⊿゚)ξ「人間が魔族の世界に侵略もした、多くの魔族を人間が殺した、なら私達人間も人殺しの種族よ」
( ・∀・)「何を屁理屈を」
ξ゚⊿゚)ξ「屁理屈? ならついでに教えてあげるわ、人間を最も殺し、凌辱し、侵略してるのも人間」
(;・∀・)「っ……ですから!」
ξ゚⊿゚)ξ「それと師匠の事を口にしたわね」
(;・∀・)「……それがどうかしましたか」
ξ゚⊿゚)ξ「師匠は魔族に故郷も愛する人も奪われた
けれどあの方が今最も愛するのは、養女である魔族の、私が姉様と慕う人よ」
(;・∀・)「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「この場で叩き斬られないだけ有り難く思いなさい、私はね」
ばき、めきめき。
カウンターがへしゃげて、木くずに変わっていく。
ξ゚⊿゚)ξ「怒ってるわ、とても」
-
あれモララエルじゃないのかね
-
(;・∀・)「…………でも、あの……」
,,(*゚ー゚)「失礼しましたお客様」
(;・∀・)「所長……」
(*゚ー゚)「部下が大変な無礼を、心からお詫び申し上げます」
ξ゚⊿゚)ξ「いいえ、私こそカウンターを握り潰して申し訳無い」
(*゚ー゚)「……魔族のお嬢さん、お名前は?」
ζ(ぅ- ゚*ζ「……デレ……」
(*^ー^)「デレさん、お花をお受け取りします、渡して貰えますか?」
⊂ζ(゚- ゚*ζ「……あい」
(*^ー^)「ありがとうございます、確かに受けとりました、数を数えますので、少しお待ちください」
(;・∀・)「所長っ、魔族ですよ!?」
(*゚ー゚)「あなたこっちに来なさい」
-
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「デレ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい……」
ξ゚⊿゚)ξ「負い目なんか感じるな」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「胸を張れ、両親を蔑む事はするな」
ζ(゚- ゚*ζ「……あい」
,,(*゚ー゚)「お客様」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
(*゚ー゚)「本当に申し訳ございませんでした、今後このような事が起きないよう、指導を徹底します」
ξ゚⊿゚)ξ「いえ別に」
(*゚ー゚)「……ただ、その……まだやっぱり、魔族へ反感を持つ者は居まして……」
ξ゚⊿゚)ξ「ですよねぇ……」
-
(*゚ー゚)「あの者も普段はあんな感じじゃ無いんですよ……でもやっぱり先の戦争で色々……」
ξ゚⊿゚)ξ「分かります分かります……うちの村も消滅しました……」
(*゚ー゚)「坊主憎けりゃでつい脊髄反射であんな事を……本当に申し訳無いです……」
ξ゚⊿゚)ξ「いや私もカウンターを……」
(*゚ー゚)「適当に保険で直しますからそこは……それよりデレさんに申し訳なく……」
ξ゚⊿゚)ξ「あー……まぁ、こんな事もあるだろうなぁとは思ってました」
(*゚ー゚)「本当……本当に申し訳……デレさん嫌な思いをさせてごめんなさい……」
ζ(゚-|
ξ゚⊿゚)ξ「あー隠れた」
(*゚ー゚)「あぁぁぁ……役所が人選ぶなっていつも言ってるのに……」
ξ゚⊿゚)ξ「……まぁ、人には事情もありますから」
(*゚ー゚)「しかし……」
ξ゚⊿゚)ξ「それが私の道理にかなうかと言うと、また別問題なので」
(*゚ー゚)「仰有る通りです……」
-
( ・∀・)「……花数えました、254本です」
(*゚ー゚)「聞いた事もない本数が」
( ・∀・)「……合計銀貨二枚と銅貨五枚です」
ξ゚⊿゚)ξ「デレ」
ζ(゚-|
ξ゚⊿゚)ξ「受け取りなさい、あんたの金よ」
(*゚ー゚)「お支払して、手渡しで」
(;・∀・)「は!?」
,,ζ(゚|
ξ゚⊿゚)ξ
(*゚ー゚)
(;・∀・)
-
激おこツンちゃんに激しく同意
-
(;・∀・)っ◎「……代金です」
(*゚ー゚)「声が小さい」
(;・∀・)「代金です!」
(*゚ー゚)「何の」
(;・∀・)「雪の花の! 代金です!」
(*゚ー゚)「詳細をお伝えしなさい」
(;・∀・)「雪の花254本分の代金、銀貨二枚と銅貨五枚です! お受け取りください!!」
(*゚ー゚)「大声出さないでお客様に迷惑でしょ」
(;・∀・)「どうしろと!? 受けとりませんし!!」
(*゚ー゚)「後で指導室来なさいね、ほら貸して」
"ζ(゚-|
(*゚ー゚)「デレさん、嫌な思いをさせてごめんなさい
集めてくれた雪の花のお代です、受け取ってください」
ζ(゚-|
ζ(゚- ゚*ζ,,|
ζ(゚- ゚*ζ「あい……ありあとござます……」
(*^ー^)「こちらこそ、ありがとうございました」
-
(*゚ー゚)「焼きたてパンと溶かしバターのツンさんも、申し訳ございませんでした」
ξ゚⊿゚)ξ「いえ、ところで一つ良いですか」
(*゚ー゚)「はい」
ξ゚⊿゚)ξ「カウンター、丸ごと取り替えですか?」
(*゚ー゚)「はい、もう古いので」
ξ゚⊿゚)ξ「それじゃあ失礼して」
( ・∀・)「…………」
(*゚ー゚)「はー……本当、再指導だから君」
( ・∀・)「だって……」
(*゚ー゚)「人は人を選んで良いけど、役所が人を選ばないで」
( ・∀・)「……はい」
-
(*゚ー゚)「……しかし、大変な相手に喧嘩売って」
( ・∀・)「……カウンター、叩き割られましたね」
(*゚ー゚)「素手一撃で木っ端とは……保険下りるけど……」
( ・∀・)「…………所長も魔族嫌いじゃないですか」
(*゚ー゚)「嫌いよ、でも役所の所長なのよこっちは、公務員としてのプライドはあるのよ」
( ・∀・)「…………」
(*゚ー゚)「嫌うなら好きなように嫌えば良い、でも公私は分けなさい」
( ・∀・)「はい……」
(*゚ー゚)「…………あんな小さい子供相手に、隣に英雄の弟子が居るのに、よく喧嘩売るわ本当」
( ・∀・)「……すみませんでした」
(*゚ー゚)「君あの子に謝らなかったでしょ、人は人の行動を役所や町全体で見るのよ」
( ・∀・)「…………」
(*゚ー゚)「もう面倒は起こさないで、花は適当に出荷して」
( ・∀・)「はい……」
(*゚ー゚)=3
(*゚ー゚)
(*゚ー゚)(魔族は嫌いだけど、種族問わず小さい子いじめるのはクソだわ……)
-
ξ゚⊿゚)ξ
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「久々に素手で本気だしたわ」
ζ(゚- ゚*ζ「あう」
ξ゚⊿゚)ξ「あの所長はプロだったわね」
ζ(゚- ゚*ζ「……あう」
ξ゚⊿゚)ξ「……デレ」
ζ(゚- ゚*ζ「あい……」
ξ゚⊿゚)ξ「手、繋ぐわよ」
ζ(゚- ゚*ζ「…………あい」
ξ゚⊿゚)ξ「何か買う? それはあんたが稼いだあんたの金よ」
ζ(゚- ゚*ζ" フルフル
ξ゚⊿゚)ξ「……宿に行きましょ、狐が待ってる」
ζ(゚- ゚*ζ「あい……」
ξ゚⊿゚)ξ(くそったれ、あいつら魔族みたいな顔してる癖に)
-
しぃはプロだな好感持てる
幼女は大切にすべき
-
爪'ー`)y‐「…………で、落ち込んでんの?」
ξ゚⊿゚)ξ「そ、ベッドから出てこなくなったわ」
爪'ー`)y‐「はーん……まぁ差別はあるだろうねぇ、反感持つ人も居るよね」
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ居るわ、こっちに魔族は少ないから余計ね……目立つのよやっぱり」
爪'ー`)y‐「で?」
ξ゚⊿゚)ξ「カウンター叩き潰した」
爪'ー`)y‐「うんうん、見事に酒場の話題を作ってくれて」
ξ゚⊿゚)ξ「焼きたてパンはどう思う?」
爪'ー`)y‐「焼きたてパンとしてはどうでも良いです」
ξ゚⊿゚)ξ「まぁそうよね」
爪'ー`)y‐「溶かしバターちゃんも別に差別なくそうとかそう言うの無いじゃん」
ξ゚⊿゚)ξ「溶かしバターもそう言うのは無いですね」
爪'ー`)y‐「でも身内がアレだとムカつくんだよね」
-
所長よく人を見てるなあ
-
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ人がどう思うかなんて自由だしどうしようもないじゃない」
爪'ー`)y‐「うんうん」
ξ゚⊿゚)ξ「でも私がそれに対して腹を立てるのも自由なわけよ」
爪'ー`)y‐「うんうん」
ξ゚⊿゚)ξ「だからキレた」
爪'ー`)y‐「はい好きー」
ξ゚⊿゚)ξ「きもーい」
爪'ー`)y‐「焼きたてパンとしてもそんな感じ、もうちょい俯瞰気味だけど」
ξ゚⊿゚)ξ「根絶出来るものじゃないしね」
爪'ー`)y‐「でも」
ξ゚⊿゚)ξ「でも」
爪'ー`)y‐「うちのデレは魔族とか抜きにあざといから……」
ξ゚⊿゚)ξ「うちの子が一番かわいい」
爪'ー`)y‐「わーかーるーぅ」
ξ゚⊿゚)ξ(これもしかしてペットでは)
爪'ー`)y‐(シッ)
-
爪'ー`)y‐(聞いた感じだと優しそうだった所長さんさ)
ξ゚⊿゚)ξ(あの人絶対魔族嫌いよ)
爪'ー`)y‐(だよね)
ξ゚⊿゚)ξ(雰囲気から察するのよねアレ、デレは気付いてなかったし隠すの上手かったけど)
爪'ー`)y‐(冒険者してて人を見慣れてると分かっちゃうよねー)
ξ゚⊿゚)ξ(いや私はあんたで慣れたんだけど)
爪'ー`)y‐(まーじーかー)
ξ゚⊿゚)ξ(うんマジ)
爪'ー`)y‐「あ、そうださっきお菓子貰ったんだよね」
ξ゚⊿゚)ξ「何を急に」
爪'ー`)y‐「お店のおばあちゃんに『あらー男前だねぇおやつあげようねぇ』(裏声)って」
ξ゚⊿゚)ξ「ンブッフ」
爪'ー`)y‐「デレおやつだよーおいでーお兄さんのお膝においでー」
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐
ξ゚⊿゚)ξ「来ないわね」
爪'ー`)y‐「かなしい」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ふむ……デレ、来い」
ζ(゚- ゚*ζ,,モソ…
爪'ー`)y‐「うーわ従順」
ξ゚⊿゚)ξ「膝に」
ζ(゚- ゚*ζ「あい……」モゾモゾ…
ξ゚⊿゚)ξ バァ----z____ン!!
つ(゚- ゚*ζ
⊂ ヽ
爪'ー`)y‐「当て付けかな?」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、羨め」
爪'ー`)y‐「羨ましいと言うか何か敗北の決まっていた勝負なのに悔しさが」
ξ゚⊿゚)ξ「囀ずるが良い敗北者よ」
爪'ー`)y‐「世紀末感のある言いぐさやめて……」
-
うらやましい
デレちゃん可愛いあざとい
-
ξ゚⊿゚)ξ「デレ、あんたは何が一番気に食わない?」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「差別を受けた事か、自分の種族を愚弄された事か」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「何が嫌でそう腐ってるのか、はっきり言いなさい」
爪'ー`)y‐「ツンちゃんもうちょっとソフトに聞きなよ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたは黙ってて」
ζ(゚- ゚*ζ「……おねさん」
ξ゚⊿゚)ξ「私?」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんおこる……ない……」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
ζ(゚- ゚*ζ「デレまぞく……おにさんとおねさん、いやなおもいする……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「私たちが嫌な思いをするから嫌だ、と」
ζ(゚- ゚*ζ「あい……」
ξ゚⊿゚)ξ「たわけが」
ζ(゚- ゚*ζ「う?」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちがそれだけの事を引きずるように見えるの?」
爪'ー`)y‐(見える)
ξ゚⊿゚)ξ(だまれ)
ζ(゚- ゚*ζ「ぅ……でも、おねさんおこる……ひとごろし、ない……」
ξ゚⊿゚)ξ「一般人は殺さないわよ……主に殺すのはこいつであって」
爪'ー`)y‐「今ならストレス発散で死んであげるよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあメガンテして」
爪'ー`)y‐「MPが足りないなぁ……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……あんたは、あんたの事を考えなさい、デレ」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちは確かに弱い部分もある、守りきれない事もある
それでも私たちは、あんたより大人なのよ、大人だから色々飲み込む術を知っているの」
爪'ー`)y‐「良い事かはさておき、僕らは色々と慣れちゃってる事も多いからねぇ」
ξ゚⊿゚)ξ(まぁ流せない事の方が多いけどな)
爪'ー`)y‐(慣れてもムカつくのが人間のさがだけどね)
ξ゚⊿゚)ξ「あんたはまだ子供よ、デレ、もっと自分の事を考えなさい」
ζ(゚- ゚*ζ「……ぅ……ぅぅー……」
ξ゚⊿゚)ξ「誰もあんたを捨てたりしない」
ζ(゚- ゚*ζ!
-
爪'ー`)y‐「僕らの旅の目的は一応王都の城下町近くに住む魔導師に会う、だけどさ
もう一つの目的は、城下町に住むツンちゃんのお師匠さんの元に君を送り届ける、なんだよ」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「あんたの居場所は今はここだけど、ちゃんと住む場所に届けるつもりなのよ」
ζ(゚- ゚*ζ
ξ゚⊿゚)ξ「それは捨てるって事じゃない、旅には危険が多いから、最も安全な場所に居て欲しいのよ」
ζ(゚- ゚*ζ
爪'ー`)y‐「嫌だったらはっきり言ってよぉデレ」
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚- ゚*ζ「や」
爪'ー`)y‐「お?」
ζ(;- ゚*ζ「や、あ」
ξ゚⊿゚)ξ「あっ」
ζ(;- ;*ζ「やだぁ……」
爪'ー`)y‐「あーあー」
ξ゚⊿゚)ξ「あーあーあー」
-
デレちゃん可愛い
そりゃ嫌ですよ一緒に居たいですよ
-
ζ(;- ;*ζ「おねさんとおにさんいっしょいる……やだぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「あーあーもう泣くな泣くな」
ζ(∩-∩*ζ「やだぁぁぁ……」
爪'ー`)y‐「泣かない泣かない、捨てたりしないから」
ζ(∩-∩*ζ「うー……うぅー……やだぁ……デレいっしょいるぅ……」
爪'ー`)y‐「あぁー、珍しい駄々っ子だ」
ξ゚⊿゚)ξ「初めて駄々こねてるわね……」
ζ(∩-∩*ζ「うぇぇ……やだぁ……デレやだぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「デレ聞きなさい」
ζ(∩-∩*ζ「ぅ……ぅうー……」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたも、あんたと一緒に居るのも好きよ、今の私には必要な存在」
ζ(;- ;*ζ「じゃあっ」
ξ゚⊿゚)ξ「それでも私は、あんたを守りたいの、私のワガママでこれ以上あんたを連れ回せない」
-
ξ゚⊿゚)ξ「だから、私が最も安全だと思う場所に送り届けたい、幸せになってほしいから」
ζ(;- ;*ζ「デレ……しあわせ、ない……いっしょいい……」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちはあんたに必要な物を与えられない、あんたの親には不十分な人間なの」
ζ(;- ;*ζ「ないっ、デレ、おねさんとおにさんっ」
ξ゚⊿゚)ξ「情だけでは、人は人を育てられないのよ」
ζ(;- ;*ζ「っ……」
ξ゚⊿゚)ξ「育てる環境、育てる人間、育てる内容、ひとつ間違えば、あんたは歪んだ姿で育つ」
ζ(;- ;*ζ「ぅ、あ……あぅぅ……」
ξ゚⊿゚)ξ「ご主人のお願いを聞いてデレ、私はあなたに真っ直ぐ育ち、幸せになってほしい」
ζ(;- ;*ζ「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「……あんたが立派に育ったら、その時私がまだ冒険者なら、あんたを迎えに行くわ」
ζ(;- ;*ζ!!
ξ゚⊿゚)ξ「一緒にまた旅をしましょう、隣に狐は居ないかも知れないけど、あんたを迎えに行くから」
爪'ー`)y‐「あっ何かひどーい僕だけ居ない扱いされてるー」
-
ξ゚⊿゚)ξ「あんたあと六年くらい一緒に旅する気なの?」
爪'ー`)y‐「別に契約満了して別れても六年後にまた組めば良いのでは?」
ξ゚⊿゚)ξ「ハッ」
爪'ー`)y‐「その頃には僕は……うわ……32だ……三十路入った……」
ξ゚⊿゚)ξ「私は……えーと……」
爪'ー`)y‐「24だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「まだ若造ね」
爪'ー`)y‐「ソウダネ つか15の時に迎えに行くの?」
ξ゚⊿゚)ξ「私が15で冒険者始めたから」
爪'ー`)y‐「あーはいはい」
ξ゚⊿゚)ξ「……何にせよ、まだまだ旅は出来るわ」
爪'ー`)y‐「だねぇ、働き盛りだ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……だからねデレ、それまでに魔法覚えなさい」
ζ(;- ;*ζ「ぁ……あいっ!」
ξ゚⊿゚)ξ「姉様は魔族で、自然や精霊を使う魔法が得意なのよ、いっぱい教えてくれるわ」
爪'ー`)y‐「ツンちゃん教わらなかったの?」
ξ゚⊿゚)ξ「今思うと姉様は私の無魔力を察してた」
爪'ー`)y‐「あぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちは魔法がてんでダメだから、しっかり覚えなさいよ?」
ζ(ぅ- ;*ζ「あいっ」
爪'ー`)y‐「怪我も病気もしないように丈夫に育つんだよー?」
ζ(゚-⊂*ζ「あいっ!」
ξ゚⊿゚)ξ「あと心を鍛えなさい心を」
ζ(゚- ゚*ζ「あ、あい……」
爪'ー`)y‐「威勢が」
-
つよい
-
ξ゚⊿゚)ξ「……別に離れたからって、あんたを捨てたり忘れるわけじゃないんだから」
爪'ー`)y‐「そーそー、デレが頑張って育つ間は僕らも成長するんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……だからデレ、お別れしても泣くな、ちゃんとまた会うから」
ζ(゚- ゚*ζ「あいっ」
爪'ー`)y‐「僕の事も忘れないでよー?」
ζ(゚- ゚*ζ「あいっ!」
ξ゚⊿゚)ξ「まぁまだ先だしね別れるの」
爪'ー`)y‐「町二つくらい越さないとね」
ξ゚⊿゚)ξ「遠回りしたから結構距離あるわ」
爪'ー`)y‐「まあ楽しかったし良いじゃん?」
ξ゚⊿゚)ξ「良いけどね別に、お守りも手に入れたし」
爪'ー`)y‐「いやーガチだったねそれ」
ξ゚⊿゚)ξ「ガチだったわ、無いともう無理だわ」
-
爪'ー`)y‐「あ、そうだ繕い物しないと」
ξ゚⊿゚)ξ「出来るの?」
爪'ー`)y‐「君ね、散々君のインナー繕ってるの誰だと思ってるの」
ξ゚⊿゚)ξ「いつの間に出来るように……」
爪'ー`)y‐「必要に迫られたからね!! 料理もね!!」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた料理うまくなったわよね……」
爪'ー`)y‐「そりゃどうも……」
ξ゚⊿゚)ξ「師匠には劣るが」
爪'ー`)y‐「褒めるか下げるかどっちかにして?」
ξ゚⊿゚)ξ「私の分もやって?」
爪'ー`)y‐「何で師匠はできるのに君は出来ないの?」
ξ゚⊿゚)ξ「出来なくはないわよ肉なんて焼けば食えるし」
爪'ー`)y‐「着れれば良い食えれば良い理論振りかざさないで」
ζ(゚- ゚*ζ(デレかじおぼえる……)
-
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ別にいつでも良いわよ繕い物は、外套がちょっと焦げただけだし」
爪'ー`)y‐「結構高かったのにこれー」
ξ゚⊿゚)ξ「いやー直撃するとクソ痛いわね魔法って……」
爪'ー`)y‐「今後は下手に突っ込まないでよー? 無茶すると死んじゃうから」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、身のほどをわきまえないと」
爪'ー`)y‐「そう言うとこ素直だよね……」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんしぬ、ふっかつない」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、私は狐と違ってゾンビ体質じゃ無いものね」
爪'ー`)y‐「ゾンビも結構大変なんだからね?」
ζ(゚- ゚*ζ「ふっかついたい?」
爪'ー`)y‐「あー痛い時もある」
ξ゚⊿゚)ξ「あれ意識あんの?」
爪'ー`)y‐「ある時もある」
-
ξ゚⊿゚)ξ「えっ……意識あるの……いやあった気がするな……こっわ……」
ζ(゚- ゚*ζ「ひぇ……」
爪'ー`)y‐「頭弾け飛んだり心臓消滅したら死亡確定じゃない?」
ζ(゚- ゚*ζ「あい」
爪'ー`)y‐「そしたら死んだ扱いみたいで蘇生始まるんだよね、意識が残ってても」
ξ゚⊿゚)ξ「うへぇ……」
爪'ー`)y‐「まぁ頭吹き飛んだら意識もクソも無いけど、蘇生時は痛い時もある、何でかは知らない」
ζ(゚- ゚;*ζ「ぅぁ」
爪'ー`)y‐「僕の蘇生は身体の傷を巻き戻す感じに近いらしいから、まぁ何かじゅるじゅるする」
ξ゚⊿゚)ξ「よくしてる」
爪'ー`)y‐「なのに死亡確定じゃないと治らないんだよなぁ……痛いのは痛いまま……」
ζ(゚- ゚;*ζ ピト
⊂ ヽ,,
爪'ー`)y‐「はははデレは優しいなー」
-
爪'ー`)y‐「まぁ痛いのにも慣れちゃったけどさ、拷問慣れって言うの?」
ξ゚⊿゚)ξ「申し訳無さが」
爪'ー`)y‐「いやいやツンちゃんは殺す頻度は高いけどほとんど一発で殺してくれるし」
ξ゚⊿゚)ξ「……拷問された事が?」
爪'ー`)y‐「あるある」
ζ(゚- ゚;*ζ「なぜ」
爪'ー`)y‐「貴重な存在ではあるらしいからねぇ不死者、簡易的な不死者は作れても僕は稀みたい」
ξ゚⊿゚)ξ「でも薬師とかは?」
爪'ー`)y‐「竜の寵愛を受けるのは難しい事だしねぇ、この世界にはあの二人しか居ないかもね」
ξ゚⊿゚)ξ「ふむぅ……」
ζ(゚- ゚*ζ「しぬいたい?」
爪'ー`)y‐「死ぬ原因を食らった時は痛いね……意識が途絶えたらもう痛くないの」
ζ(゚- ゚;*ζ「……いしきある、なおる……?」
爪'ー`)y‐「意識あるまま蘇生入ると痛い事が多いね!」
ξ゚⊿゚)ξ「申し訳なく」
爪'ー`)y‐「慣れてる慣れてる」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……じゃあ、死ぬ時って、どんな感じ?」
爪'ー`)y‐「んー……僕は死に慣れたからなぁ……」
ζ(゚- ゚;*ζ「なれ……」
爪'ー`)y‐「初めて死んだ時はー…………やっと死ねる、だったかなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「あー……」
爪'ー`)y‐「まぁ死にたくないとか怖いとかもあったけど、しかも蘇ったし」
ξ゚⊿゚)ξ「死ぬ感覚は?」
爪'ー`)y‐「寒い」
ξ゚⊿゚)ξ「寒いか」
爪'ー`)y‐「寒い中寝る感じだけど凍死とはまた違う感じなんだよねー、まぁ即死すると突然意識途切れるだけだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「死に慣れこっえぇ……」
ζ(゚- ゚*ζ「こわ……」
-
爪'ー`)y‐「まあ僕がよく死ぬのは今さらだし、最初からずっと閲覧注意だから」
ξ゚⊿゚)ξ「何の話だ」
爪'ー`)y‐「今後グロ描写があっても注意は入れないって事だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「だから何の話だ」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんだいよんのかべ?」
爪'ー`)y‐「デッドなプールだね」
ξ゚⊿゚)ξ「何の話をしてるんだお前たちは」
爪'ー`)y‐「ほらデレ、おやつ」
ζ(゚- ゚*ζ「ありあと」
爪'ー`)y‐「美味しいよねバームクーヘン」
ζ(゚〜゚*ζ「のどかわく」
爪'ー`)y‐「今ならなんとミルクがある」
ζ(゚- ゚*ζ「みうくー」
ξ゚⊿゚)ξ(こいつら……露骨に話題を……)
-
ξ゚⊿゚)ξ「ああそうだ、肉は買い取って貰えた?」
爪'ー`)y‐「うん、あの白い犬なんと珍しかったみたいでね」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、役所に言うの忘れた」
ζ(゚- ゚*ζ「あう……」
爪'ー`)y‐「明日で良いじゃん、それより珍しかったみたいでね」
ξ゚⊿゚)ξ「高かった?」
爪'ー`)y‐「金貨になりました」
ξ゚⊿゚)ξ「マジかよ」
爪'ー`)y‐「なんと10枚」
ξ゚⊿゚)ξ「マジかよ……」
ζ(゚- ゚*ζ(デレよりたかい)
爪'ー`)y‐「はいお小遣い」
ξ゚⊿゚)ξ「え、良いの?」
-
狐くん商売上手
-
爪'ー`)y‐「ツンちゃん三枚デレは二枚と銀貨三枚」
ξ゚⊿゚)ξ(こいつ自分の取り分だけ多く……)
ζ(゚- ゚*ζ「がう?」
爪'ー`)y‐「銀貨はカエル代、今の時期は高いって」
ζ(゚- ゚*ζ「うー」
ξ゚⊿゚)ξ「受け取りなさい」
ζ(゚- ゚*ζ「あい……」
ξ゚⊿゚)ξ「花の代金も渡したからお金持ちよデレ」
爪'ー`)y‐「お、良いねぇ何か奢ってよー」
ξ゚⊿゚)ξ「お前な……」
爪'ー`)y‐「冗談だから……」
ζ(゚- ゚*ζ(なにかかう……でもおみせいやがる……?)
ξ゚⊿゚)ξ「ほらデレが困ってる」
爪'ー`)y‐「冗談だからねー?」
ζ(゚- ゚*ζ(むむむ……)
ξ゚⊿゚)ξ「聞いてねぇな」
爪'ー`)y‐「つらい」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……ところで拷問慣れってさ」
爪'ー`)y‐「あー、まず水瓶に頭突っ込まれるのも拷問だったよね」
ξ゚⊿゚)ξ「お前そんな軽く幼少期のトラウマを」
爪'ー`)y‐「あとは爪剥がされたり」
ξ゚⊿゚)ξ「痛い痛い痛い」
爪'ー`)y‐「あ、そうそうこれ見てほしいんだけど」ゴソゴソ
ξ゚⊿゚)ξ「脱ぐな脱ぐな」
爪'ー`)y‐「首の後ろのこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「火傷? 傷跡?」
爪'ー`)y‐「奴隷の焼き印もどきを潰した痕」
ξ゚⊿゚)ξ「重いよ!!」
爪'ー`)y‐「あ、実際には奴隷じゃないよ? ご家庭ごとに勝手にやるアレだよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「普通のご家庭には身内の奴隷は居ない」
爪'ー`)y‐「熱い正論がたまらない」
-
爪'ー`)y‐「あとこっちの傷が幼少期のやつ」
ξ゚⊿゚)ξ「傷跡は消えないのね」
爪'ー`)y‐「もとからあった分は消えないね」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ私のこれは自分で縫ったやつ」
爪'ー`)y‐「きつい」
ξ゚⊿゚)ξ「あとこれが野党相手にした時の」
爪'ー`)y‐「何人くらい?」
ξ゚⊿゚)ξ「12人」
爪'ー`)y‐「世紀末覇者か」
ξ゚⊿゚)ξ「そっちのは?」
爪'ー`)y‐「女の子に刺されたやつ」
ξ゚⊿゚)ξ「さてはバカだな?」
爪'ー`)y‐「愛の狩人とか伝道師って言って」
ξ゚⊿゚)ξ「ラブハンターの称号は相当かっこいい人でもクソダサいぞ」
爪'ー`)y‐「うんまぁ割りとダサいな」
-
爪'ー`)y‐「あ、ツンちゃん背中のアレ見せてよ」
ξ゚⊿゚)ξ「お前、以前に見た時は怒ったくせに」
爪'ー`)y‐「目の前で女の子が歴戦の勇者が脱ぐ勢いで半裸になられたら心が負ける」
ξ゚⊿゚)ξ「いつか歴戦の勇者になろう……」ゴソゴソ
爪'ー`)y‐「いやなれば良いってもんでも……いやー立派な三本線」
ξ゚⊿゚)ξ「致命傷で死にかけたやつよ」
爪'ー`)y‐「だろうなぁこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「背骨を抉られてた」
爪'ー`)y‐「深いな!?」
ξ゚⊿゚)ξ「もう動けもしなかったところを先生に助けられたのよね」
爪'ー`)y‐「命の恩人だね」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ」
爪'ー`)y‐「で、熊は?」
ξ゚⊿゚)ξ「旅に出て最初にリベンジに行って殺した」
爪'ー`)y‐「強くなって……」
-
映画ネタうれしい
-
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚- ゚*ζ(なぜ)
なぜお姉さんとお兄さんは、上半身はだかで傷を教えあってるのだろう。
ζ(゚- ゚*ζ(まえかくしてるけど)
ζ(゚- ゚*ζ(けどなんかおかしい)
ζ(゚- ゚*ζ
ζ(゚- ゚*ζ(けっこんない……?)
二人はいつでもなんかしゃべってる。
静かにしてる時もあるけど、いっつもしゃべってる。
デレはことばがとくいじゃないから見てるだけだけど、
二人がしゃべるのを見て、くちにだすことばを覚えてる。
でも二人はいっぱいしゃべるから、デレは覚えるのがおっつかない。
-
でも、二人がしゃべってるのを見て聞くのはたのしい。
なかよしのおしゃべりは、とってもたのしい。
ζ(゚- ゚*ζ「おにさん」
爪'ー`)y‐「ん?」
ζ(゚- ゚*ζ「おうた」
爪'ー`)y‐「おー、お歌聴きたいかー良いよーどんなお歌が良いかなー?」
ζ(゚- ゚*ζ「んと……んと……」
ξ゚⊿゚)ξ「歴戦の勇者で」
爪'ー`)y‐「なぜ君が決める」
◎⊂ζ(゚- ゚*ζ,,
爪'ー`)y‐「出さなくて良いから」
ξ゚⊿゚)ξ「察しなさいよ、やってみたかったのよ」
爪'ー`)y‐「ああ……」
-
普通はおかしいよなあ
けど狐とツンちゃんだしな
-
ぽろろん。
美しき従者を従え、かの者は云う
黒き影をたなびかせ、魔を統べる者は云う
『嗚呼、愚かな行いを』
濁る闇をたたえた瞳でねめつける
色の無い痩けた頬を歪ませて笑う
『争うなど愚か者の成す事』
細く長い指先で指した先には
おそろしくも偉大なる者の前には
海を割り
星を落とし
空を引き裂き
全てを焼き払う
ああおそろしきその者
ああ偉大なるその名は
-
ξ-⊿-)ξzzz…
爪'ー`)y‐「まーた寝た」
ζ(゚- ゚*ζ「ゆうしゃとは」
爪'ー`)y‐「実際に魔を統べる者って呼ばれた英雄様が居るんだよ」
ζ(゚- ゚*ζ「ひぇ」
爪'ー`)y‐「怖いよねー、見た事無いけどきっと魔王みたいな人だよ」
ζ(゚- ゚*ζ「こあい……」
爪'ー`)y‐「こう……でっかくて顔に傷があって一人称が我輩とかなんだよきっと……」
ξ゚⊿゚)ξそ「師匠!?」バッ
爪'ー`)y‐「うわびっくりした」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ-⊿-)ξ「ゆめか……」スヤ…
爪'ー`)y‐「何なんだ君は……」
-
爪'ー`)y‐「さてデレ、怖いお姉さんは寝たよ」
ζ(゚- ゚*ζ「はだかで」
爪'ー`)y‐「腹が立つから着せとこ」ゴソゴソ
ζ(゚- ゚*ζ(ひどい)
爪'ー`)y‐「あまーいお酒があります」
ζ(゚ヮ゚*ζパァ
爪'ー`)y‐「ほーらミルクのお酒もあるし果物のお酒もあるぞー?」
ζ(゚ヮ゚*ζソワソワ
爪'ー`)y‐「なんと割るための飲み物まであるぞー? 軽食もあるぞー??」ガサガサ
ζ(゚ヮ゚*ζワクワク
爪'ー`)y‐(クク……こんなに喜んで、将来飲んべえだなこれ……)
ζ(゚ヮ゚*ζ(おにさんうれしそう)
爪'ー`)y‐「飲みますか?」
ζ(゚- ゚*ζ「はだかで」
爪'ー`)y‐「着ます……」ゴソゴソ
-
爪'ー`)y‐「はい、空酒は胃に悪いから軽く食べながらね」
ζ(゚- ゚*ζ「あいっ」
爪'ー`)y‐「ではこっそり、いただきまーす」
ζ(゚- ゚*ζ「いたぁきますっ」
爪'ー`)y‐「はいはい僕はこっちでデレのはこっち」
ζ(゚- ゚*ζ「おいしおいし」モグモグ
爪'ー`)y‐「あ゙ー……うっま……」ゴクゴク
ζ(゚- ゚*ζ(おじさん)
爪'ー`)y‐「お、これ美味しい、鳥の肉の薫製かな」モグモグ
ζ(゚- ゚*ζ「おいひおいひ」ゴクゴク
爪'ー`)y‐「アァー 麦のお酒と合いますナー」ゴクゴク
ζ(´-`*ζ「うま……あまいおいし……」ゴクゴク
-
爪'ー`)y‐「お酒に甘い肴も合うなー」モグモグ
ζ(゚- ゚*ζ「あまいちーず? おいしおいし……あまあまさくさく……」モグモグ
爪'ー`)y‐「そうそう果物が入ってる、バゲットに乗せると美味いなー」モグモグ
(*゚ー゚)「カエルの唐揚げお持ちしましたー」コンコン
爪'ー`)y‐「はーい待ってましたー」
ζ(゚- ゚*ζ「かえる?」
爪'ー`)y‐「デレがとったやつねー、揚げたて美味しいぞー」
ζ(´-`*ζ「はふ……はふふ……うま……うまうま……」モグモグ
爪'ー`)y‐「アァァー炭酸に合うゥー デレもおかわり飲め飲め」モグモグ
ξ-⊿゚)ξ"「良い匂いがする」モゾリ
爪;'ー`)y‐「あ」
ζ(゚- ゚;*ζ「あ」
ξ#゚⊿゚)ξ「あ」
ものすごくおこられた。
おわり。
-
ありがとうございました、本日はここまで。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
まとめて下さってます、ありがとうございます。
ttp://naitohoureisen.blog.fc2.com/blog-entry-271.html
-
懲りない二人にブレないなツンちゃん
乙
-
一つの村にしぃが2人いるのはじめてか?
-
死ぬほどビール飲みたくなったし
晩酌したくなったけどデレちゃんはいない……
-
最近立ち絵サボってるから晩酌の相手置いておきます
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2327.png
-
ドクオの歌かな?おつおつ
-
ドックンめっちゃかっこよく語られててワロタ
おつんこ
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乙。小汚い毛布纏ったままこんな残虐ファイトを…
-
歌はドクオかよwww
すこーし誇張されてるけど間違ってないよね!
-
>>854
和むわあ仕事頑張れそ
-
所長がプロフェッショナルで惚れた
モララーは良くも悪くも若いって感じか
-
しぃが量産型過ぎて笑う
-
寒いしあまくて濃厚な酒が飲みたくなったよ。
フォックスの頭から出てきたのなんだったんだろう気になる。
-
デレちゃがだんだん自分出せるようになってきたのいい……
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声、獣じみた幼い咆哮。
刃を振るい、歌声を響かせ、魔力を用い、路銀を稼いで進むのは三人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
そんな二人の後ろをついて歩く、小さな魔族の子供。
【道のようです】
【第十三話 たたかうっていみをしる。 前編】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
狐は言っていた。
爪'ー`)y‐『じゃあ僕、カジノで稼いでくるから!』
狐は言っていた。
爪'ー`)y‐『なーにすぐ戻ってくるって! 抱えきれない程の金貨を持ってね!』
狐は、
爪'ー`)y‐『ツンちゃんまだ疑ってるなー? 僕だってやる時はやるって思い知らせてあげるよ!』
狐、は
(*゚ー゚)「それでは、彼のイカサマの落とし前は相棒であるあなたにつけてもらいます」
連れていかれた。
-
事の始まりはこうだ。
爪'ー`)y‐『っしゃーカジノタウンだー!!』
ζ(゚- ゚*ζ『かじの?』
爪'ー`)y‐『楽しい駆け引きでお金が貰えたり奪われたりする場さ!』
ζ(゚- ゚*ζ『デレみる』
爪'ー`)y‐『よーし僕の側から離れないようにね! 良い子にしてれば怒られないから!』
ξ゚⊿゚)ξ『ちょっと狐、無理に稼ぐ必要無いんだから』
爪'ー`)y‐『そうだけどそうじゃないんだよ! ギャンブラー(二次職)の血が騒ぐんだよ!』
ξ゚⊿゚)ξ『黙らせとけ』
爪'ー`)y‐『だって前はツンちゃんのビギナーズラックで旅費全部賄えるくらい稼いじゃったでしょ?』
ξ゚⊿゚)ξ『うんまぁ……だから無理には』
爪'ー`)y‐『だから次は僕が稼ぐんだよ!!』
ξ゚⊿゚)ξ『無理に稼がんでも……』
-
爪'ー`)y‐『確かに僕はヒモタイプの男だけどさ……職業にプライドあるから……』
ξ゚⊿゚)ξ『そんななけなしのプライドを……』
爪'ー`)y‐『んーだってさぁ……相棒に旅費全部稼がせたのはなんかさぁ……』
ξ゚⊿゚)ξ『……まぁ好きにして良いけど』
爪'ー`)y‐『よっしゃ』
ξ゚⊿゚)ξ『全く期待せずに待つわ』
爪'ー`)y‐『きーたーいーしーてーよーぉ!!!』
ξ゚⊿゚)ξ『あー分かった分かったもう行け、私は役所と宿に行くから』
爪'ー`)y‐『じゃあ僕、カジノで稼いでくるから!』
ξ゚⊿゚)ξ『デレ連れてくんだから遅くならないでよね』
爪'ー`)y‐『なーにすぐ戻ってくるって! 抱えきれない程の金貨を持ってね!』
ξ゚⊿゚)ξ『おい濃密すぎるフラグを立てるな』
爪'ー`)y‐『ツンちゃんまだ疑ってるなー? 僕だってやる時はやるって思い知らせてあげるよ!』
-
ξ゚⊿゚)ξ『デレ、怖かったら逃げてらっしゃい』
ζ(゚- ゚*ζ『あい、いてきます』
ξ゚⊿゚)ξ『行ってらっしゃい』
爪'ー`)y‐『行ってきまーす!』
ξ゚⊿゚)ξ『はよ行け』
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ『生き生きしてまぁ……良いけど、ストレス発散になるだろうし』
,,ξ゚⊿゚)ξ『さ、役所に報告しないとね……枯れ木集めの報酬貰わないと』
ξ゚⊿゚)ξ『枯れ木150本のクエスト報告です』
(*゚ー゚)『ありがとうございます、お疲れさまでした……えーと、銀貨15枚ですね』
ξ゚⊿゚)ξ『えぇ、あとこの』
(*゚ー゚)『失礼します』
ξ゚⊿゚)ξ『え?』
-
(*゚ー゚)『何ですか、ここは役所ですよ』
(*゚ー゚)『焼きたてパンと溶かしバターのツンさんですね?』
(*゚ー゚)『聞きなさい! ここは冒険者用の役所です、カジノの方は出ていって下さい!』
(*゚ー゚)『そうは行きません、お連れのフォックスさんとお子さんを拘束しました』
(*゚ー゚)『何ですって!? あなた何を!』
(*゚ー゚)『静かにして下さい、私はツンさんに用があるんです』
(*゚ー゚)『だからって姉さん!』
(*゚ー゚)『私は職務を全うしているだけです、私情を挟まないで』
ξ゚⊿゚)ξ(どうすんだこの絵面)
(*゚ー゚)『とにかくカジノへお越しください、説明いたします』
ξ゚⊿゚)ξ『あ、はい……それじゃあ行ってきます……』
(*゚ー゚)『ああ……はい、行ってらっしゃい……お気をつけて……』
-
ξ゚⊿゚)ξ『あの、狐が何か? セクハラでも?』
(*゚ー゚)『いいえ、軽度のセクハラは出禁で済ませます』
ξ゚⊿゚)ξ『それじゃあ暴力沙汰を……?』
(*゚ー゚)『いいえ、暴力沙汰は衛兵を呼んで叩き出します』
ξ゚⊿゚)ξ『それじゃあ……』
(*゚ー゚)『イカサマです』
ξ゚⊿゚)ξ
(*゚ー゚)『こちらへ』
,,ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐『ツンちゃーん』
ξ゚⊿゚)ξ
爪'ー`)y‐『捕まった☆』
ξ゚⊿゚)ξ
-
爪'ー`)y‐『いやーバレないと思ったんだけど大きい箱だとセキュリティが最新でさー』
ζ(゚- ゚*ζ『おねさん……おにさんおこられた……』
ξ゚⊿゚)ξ
(*゚ー゚)『お連れの方で間違いありませんね?』
ξ゚⊿゚)ξ『間違いであってほしいですね』
(*゚ー゚)『フォックスさんは袖にカードを仕込んでいました、こちらです』
ξ゚⊿゚)ξ
(*゚ー゚)『これにより不正に多額の賞金を得たところを取り押さえまして』
ξ゚⊿゚)ξ
(*゚ー゚)『こちらとしても不正を見逃すわけにはいきません
本来ならばギャンブラーの資格を剥奪し、法的措置をとらせていただきます』
ξ゚⊿゚)ξ『…………本来ならば?』
(*゚ー゚)『ええ、聞けばツンさんはかのミュスクル氏のお弟子さんで非常に優秀な戦士だとか』
ξ゚⊿゚)ξ『あー……暗殺とか技術が必要なのじゃなければやりますが……』
-
(*゚ー゚)『いいえ、そう言った“依頼”ではありません』
ξ゚⊿゚)ξ『……それじゃあ、どう言った“依頼”を?』
(*゚ー゚)『……大きな声では言えませんが、当カジノでは大きな賭けの場があります』
ξ゚⊿゚)ξ『あー』
(*゚ー゚)『あなたの腕と名声ならば、さぞお客様を沸かせる事が出来ると思います』
ξ゚⊿゚)ξ『あぁー』
(*゚ー゚)『ご参加頂けますか? 当カジノの、コロシアムに』
ξ゚⊿゚)ξ『あぁぁー』
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ『やります』
-
(*゚ー゚)『であれば話は簡単です、あなたにはコロシアムで勝ち抜いていただきます』
ξ゚⊿゚)ξ『はい』
(*゚ー゚)『あなたが勝ち抜けたならこちらのお二人は解放します、何も請求しません』
ξ゚⊿゚)ξ『はい』
(*゚ー゚)『勝ち抜けなかった場合は、あなたもこちらのお二人も、解りますね?』
ξ゚⊿゚)ξ『はい』
(*゚ー゚)『それでは、彼のイカサマの落とし前は相棒であるあなたにつけてもらいます』
ξ゚⊿゚)ξ『わかりました』
(*゚ー゚)『ではコロシアムでの詳しい説明はこちらで、お二人とお別れをどうぞ』
ξ゚⊿゚)ξ『はぁい……』
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ『おい狐』
爪'ー`)y‐『ほんとごめんね……』
ξ゚⊿゚)ξ『反省してるなら許すわ……』
-
爪'ー`)y‐『もう無理に勝とうとしない……』
ξ゚⊿゚)ξ『何でイカサマなんて……そんなに勝ちたかったの?』
爪'ー`)y‐『ああいやイカサマは前からやってたけどバレなかっただけ』
ξ゚⊿゚)ξ『クソかお前は』
爪'ー`)y‐『八割のギャンブラーがイカサマ込みでやってるよ』
ξ゚⊿゚)ξ『よく公的な職業だなギャンブラー』
爪'ー`)y‐『二割の豪運が居るのも事実』
ξ゚⊿゚)ξ『むしろ何で公的な職業なんだギャンブラー……』
爪'ー`)y‐『まぁ遊び人が公的な職業だからなぁ……』
ξ゚⊿゚)ξ『はぁ……まあ良いわ』
爪'ー`)y‐『迷惑かけるつもりは無かったんだよーごめんよーデレまで巻き込んでごめんよー』
ξ゚⊿゚)ξ『分かった分かった、躍起になったのもわかるから』
爪'ー`)y‐『うぐぐ』
-
ξ゚⊿゚)ξ『ま、お互いパーティっと言う運命共同体って意識が低かったのが問題よね』
爪'ー`)y‐『本当に……あー反省します……』
ξ゚⊿゚)ξ『……だから、あんたのやらかしは私がどうにかする』
爪'ー`)y‐『ツンちゃん……』
ξ゚⊿゚)ξ『あんたは私のやらかしを裏でどうにかしてくれてるしね』
爪'ー`)y‐『色々ありすぎて覚えていない……』
ξ゚⊿゚)ξ『デレ』
ζ(゚- ゚*ζ『あい?』
ξ゚⊿゚)ξ『平気そうねあんた』
ζ(゚- ゚*ζ『デレなれてる』
ξ゚⊿゚)ξ
-
ζ(゚- ゚*ζ『くさりない、てつごうしよわい、デレそといける』
ξ゚⊿゚)ξ
⊂ζ(゚- ゚*ζ『えい』ガッシ グニィ
爪'ー`)y‐『戻して戻して』
ζ(゚- ゚*ζ『デレせんようおりはいってた、これにんげんよう』
ξ゚⊿゚)ξ
ζ('(゚- ゚∩ζ"『あぶないなる、でれおにさんつれてにげる』ムン
ξ゚⊿゚)ξ『この女児頼もしい……』
ζ('(゚- ゚∩ζ
ξ゚⊿゚)ξ『……まあ、それに一人じゃないものね』
爪'ー`)
つ(゚- ゚*ζ『あいっ』
⊂ ヽピト
ξ゚⊿゚)ξ(あざとい……)
爪'ー`)(あざとい……)
-
爪'ー`)y‐『まぁ信用は無いだろうけど、デレの事は任せておいて』
ξ゚⊿゚)ξ『センスと運以外は信用してるわ』
爪'ー`)y‐『つっら』
ζ(゚- ゚*ζ『おにさんデレまかせる』
ξ゚⊿゚)ξ『ええ、狐は任せるわデレ』
ζ(゚- ゚*ζ『あい!』
ξ゚⊿゚)ξ『……それじゃあ、殺してくるわ』
爪'ー`)y‐『……ごめんね』
ξ゚⊿゚)ξ『バカね、慣れてるわよ』
爪'ー`)y‐『うん……』
ガチャ バタン
爪'ー`)y‐『あー……ツンちゃん大丈夫かなぁ……』
ζ(゚- ゚*ζ『おねさんつよい』
爪'ー`)y‐『……意外と弱いんだよねぇ……』
-
(*゚ー゚)「では、ツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
(*゚ー゚)「ルールは簡単です、相手の命を奪う事」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
(*゚ー゚)「ただし公平さのため、武器や防具はこちらからの支給品をご使用頂きます」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
(*゚ー゚)「逃亡は不可能であり、リタイアも出来ません、勝利か敗北のみが許されます」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
(*゚ー゚)「それでは、こちらを」
ξ゚⊿゚)ξ「? これは?」
(*゚ー゚)「失礼します、胸に装着しますので」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、はいィ痛いっ!?」バチンッ
(*゚ー゚)「失礼しました、後で取り外す事が出来ますから」
-
ξ゚⊿゚)ξ「何ですかこれ……」
(*゚ー゚)「それは装備型の蘇生用魔道具です」
ξ゚⊿゚)ξ!?
(*゚ー゚)「とは言え、この施設内でのみ動作する使用回数に制限のある物です」
ξ゚⊿゚)ξ「そ、蘇生……出来るんですか……?」
(*゚ー゚)「はい、蘇生は本来ならばまだ非常に難しくこちらの魔道具も貴重で機密でもあります」
ξ゚⊿゚)ξ「それを、なぜ?」
(*゚ー゚)「詳しくはお教え出来ませんが……当カジノでは、これが可能と言う事です」
ξ゚⊿゚)ξ「…………なるほど」
(*゚ー゚)「こちらの蘇生アイテムは五回のみ使用が可能です、と言うか五回までしか作れません」
ξ゚⊿゚)ξ「現段階での限界ですか」
(*゚ー゚)「はい、交換は可能ですが負荷が大きくなりますので不可能に等しいですね」
ξ゚⊿゚)ξ「はー……魔道具にも色々あるのね……」
(*゚ー゚)「とは言え、不死者には未だ程遠いのが現状ですが」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……いつかは不死者になれるんですかね」
(*゚ー゚)「無理でしょうね、出来たとしても遥か未来の事でしょうし」
ξ゚⊿゚)ξ「…………それで、私はこれをつけて戦うんですか」
(*゚ー゚)「ええ、使用回数も賭けの対象です、戦う人材も使い回せますから」
ξ゚⊿゚)ξ「……五回……」
(*゚ー゚)「五回使ったら、あとはご自身の持つ一回分の命だけです、使ってしまわぬよう」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
(*゚ー゚)「では、装備を外してください、こちらで丁重に保管致します」
ξ゚⊿゚)ξ「……はい」
(*゚ー゚)「斧槍はお預かりしますが、こちらから支給できる武器の種類には限りがあります」
ξ゚⊿゚)ξ「何がありますか」
(*゚ー゚)「短剣、弓、杖の三種です」
ξ゚⊿゚)ξ「あんまりだ……」
(*゚ー゚)「しょうがないんですよ……」
-
(*゚ー゚)『時間まで自由にどうぞ、ただカジノの外には出ないで下さい』
私は頼りない短剣と小盾のセットを選び、カジノの裏側に放り出された。
控え室の場所は教えてもらったが、じっとしている気は起きなくて。
ざわざわと賑やかなカジノの裏側、地下コロシアムの外側をとぼとぼと歩く。
売店、コインの販売所、景品交換所。
あとは何かよくわからないカウンターやら何やら、熱狂する人混みの間をすり抜ける。
こんな時、狐がいればあれは何かと聞けたのにな。
デレの頭を撫でながら、離れないようにと言いたかったな。
ああ、今は一人なんだ。
私一人で大丈夫なのかな。
武器も防具も粗末な物で。
二人と自分の命を背負って。
狐にはああ言ったけど。
本当に、大丈夫なのかな。
-
ξ゚⊿゚)ξ(あ、これは)
ξ゚⊿゚)ξ(ヤバいな)
ぞわ。
ああ、どうしよう、待って。
師匠から賜った斧も無く、自分用にしつらえた鎧もなく、たった一人で殺し合いをするの?
ぞわぞわ。
確かに腕力はある。
どんな武器でもある程度は扱える。
でも待って。
待って。 待ってよ。
ぞわぞわぞわ。
私は、何を支えにコロシアムに立てば良いの?
-
突然、たった一人で。
愛用の武器も鎧もなしに。
負ければ二人の命も危ないのに。
私、あれ、私。
どうやって、戦っていたんだろう。
ぞわぞわぞわぞわ。
言い表せない不安感が全身に覆い被さって、手の震えを呼び起こす。
今まで一人で旅はしてきたが、いつでも愛用の武器と鎧を身に付けていた。
謂わば依存とも言える心の拠り所を取り上げられて、孤独が苦手になった今、一人で立つのは。
それも街中とは言え、命をかけて殺し合う為の場所に、粗末な短剣と小盾だけを握って立つのは。
思っていた以上に、怖い。
ξ゚⊿゚)ξ(あ、手が、震える)
ξ゚⊿゚)ξ(きついな、これ、私こんなに弱かったか)
ξ゚⊿゚)ξ(五回、五回死んだら、私は全部失うのか)
ξ゚⊿゚)ξ(狐も、デレも、何もかも、失えるのか私は)
-
元はと言えば狐のせいだ。
いや私のせいなのか。
でもイカサマで捕まったのあいつだし。
でもあのバカのプライドをつついたのは私だから。
私が、頑張ってどうにかしないと。
どちらにせよ、私はカジノ側から突き付けられた条件を果たすしか無い。
この震えるような心細さの中、一人で戦わなければ。
ξ゚⊿゚)ξ(大丈夫、大丈夫、いける、いけるから)
ξ゚⊿゚)ξ(大丈夫……戦える……殺せる……)
ξ゚⊿゚)ξ(…………殺す……?)
ξ゚⊿゚)ξ(罪人や不死とも言えない存在を、殺すのか)
ξ゚⊿゚)ξ(あー)
あー困った。
気付かなくて良い事に気付いた。
私、罪もない一般人なんて殺した事無い。
-
ξ゚⊿゚)ξ(いや、相手も殺しにくる)
ξ゚⊿゚)ξ(殺し合うならいけるはず)
ξ゚⊿゚)ξ(何も出来ない子供が相手じゃない)
ξ゚⊿゚)ξ(お金のために、何かのために、命をかけて殺しにくる)
ξ゚⊿゚)ξ(何かの、ために、私みたいに、仲間の、ために?)
ξ゚⊿゚)ξ(あ、だめだ、だめ、こわい)
川*` ゥ´)「あ、チビゴリラ」
ξ゚⊿゚)ξ!!
川*` ゥ´)「違法賭博なんかに来てんじゃねーぞすっとこどっこい」
ξ゚⊿゚)ξ
川*` ゥ´)づ「聞いてんのかよおいオラオラ小さいんだよお前はおぉーん?」
:ξ゚⊿゚)ξ:
川*` ゥ´)(やっべ怒らせたな)
:ξ;⊿;)ξ: ポロ…ポロ…
川;` ゥ´)そ「ホァアアアアーン!!?」
-
川;` ゥ´)「えっ何お前なんで泣いてんの!? つか泣くの!? 泣けたのお前!?」
:ξ;⊿;)ξ:「ぅ……ぅ゙ぇ゙ぇ゙ぇ……」
川;` ゥ´)「可ッ愛くねぇ泣き声だな!! 何だよあたしが悪者じゃねーかこの図!!」
:ξ;⊿;)ξ:「びぃ゙る゙ぅ゙……」
川;` ゥ´)「あー可愛くねぇ!! 全然可愛くねぇこの泣き様!! むしろ汚ぇからやめろ!!」
:ξ;⊿;)ξ:「ややブスうるさい……」
川#` ゥ´)「突然喧嘩売るなー!! お前なー!! 可愛くねー!!!」
:ξぅ⊿;)ξ:「ぅ゙ぇ゙ぇ……」
川;` ゥ´)「何かもう酔い潰れて吐いてるみたいな絵面だからもう少し綺麗に泣けよお前……」
:ξぅ⊿;)ξ:「ぅ゙……ぅ゙ぅ゙ぅ゙……」
川;` ゥ´)「ヴァルヴレイヴか何かかよ……おい鬱陶しいから泣き止んで説明しろおいチビ」
:ξぅ⊿;)ξ:「お゙な゙がずい゙だ……」
川*` ゥ´)「えっ何お前まさかそれで泣いてたの? 保護者どこやったのお前」
ξぅ⊿;)ξ
川*` ゥ´)?
:ξ;⊿;)ξ:「ぅ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁぁ……」
川;` ゥ´)「泣き声が汚いんだよお前は!!!」
-
川*` ゥ´)「ほーん、カジノ側にイカサマがバレてクソイケとチビを取り上げられたと」
ξぅ⊿゚)ξ「うん……」
川*` ゥ´)「取り戻す条件が裏コロシアムで勝ち抜けねぇ……主人公してんなぁおい」
ξ゚⊿゚)ξ「……でも、自信が無い」
川*` ゥ´)「あ? 人の頭を握り潰せるクソゴリが何いってんのお前」
ξ゚⊿゚)ξ「……鎧も、斧も無いのよ」
川*` ゥ´)「まぁ武器防具は支給品だわな」
ξ゚⊿゚)ξ「一人だし、相手は一般人なのに殺しにくるし」
川*` ゥ´)「そらそうだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「…………怖いのよ」
川*` ゥ´)「怖いもんあったのお前……」
ξ゚⊿゚)ξ「あるわよ、当然でしょ…………怖くて不安で心細くて、私こんなに弱かったのね……」
川*` ゥ´)「自分が完璧超人だとでも思ってたのかお前は……一応は人間なんだぞ……」
-
ξ゚⊿゚)ξ
川*` ゥ´)
ξ゚⊿゚)ξ「でも強くなりたいの」
川*` ゥ´)「だろうな」
ξ゚⊿゚)ξ「だから弱くちゃ駄目なの」
川*` ゥ´)「おいチビゴリラ」
ξ゚⊿゚)ξ「返事はしない」
川*` ゥ´)「お前の師匠も強いんだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「英雄よ」
川*` ゥ´)「弱いとこ何て一つも無いのかよ師匠はよ」
ξ゚⊿゚)ξ「…………姉様には弱かったわね……」
川*` ゥ´)「完璧だったのかよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……素晴らしい方だけど、完璧では無かったわ」
-
川*` ゥ´)「お前の目標はよ」
ξ゚⊿゚)ξ「師匠みたいに、強くなる事……」
川*` ゥ´)「だったら別に弱くて良いだろ……」
ξ゚⊿゚)ξ「あれ……?」
川*` ゥ´)「強くなる事は弱くなくなる事じゃ無いだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「……そう、なの?」
川*` ゥ´)「あたしは上級魔法を使えるけどお前のパンチひとつで沈むだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「沈むと思うわ」
川*` ゥ´)「まあお前のパンチが強すぎんだけど……だから強いと弱いは両立すんの」
ξ゚⊿゚)ξ「……マッチョな魔導師は確かに滅多に見ないわ」
川*` ゥ´)「中には居るだろうけど多分ただの変態だしな」
ξ゚⊿゚)ξ「……弱さを残してても、良いの?」
-
川*` ゥ´)「弱さを強さで補えるなら良いんじゃね、ほら殴ってこい」
ξ゚⊿゚)ξ三づ ヒュボッ
川*` ゥ´)っ$そ パキィン
ξ゚⊿゚)ξ「おお……物理障壁……初めて見た……」
川*` ゥ´)「あたしはこうやって強くなってんだ、分かったか金髪ゴリラ」
ξ゚⊿゚)ξ「返事はしない」
川*` ゥ´)「だからまぁ適当に折り合いつけろや、あたしお前らの敵なのにアドバイスさせんな」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、お守り買ったわよ、ありがと」
川*` ゥ´)「何かと思ったら何だよ急に……あたしも安く早く買えて良かったけどよ……」
ξ゚⊿゚)ξ「……お守りの匂い落ち着くんだけど、今は取り上げられたのよね」
川*` ゥ´)「あたしのは杖のここにつけて貰ったわ」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、良い匂いがする、不思議な匂いね」
川*` ゥ´)「本家の魔女の匂いが混ざってんだよこれ、もう死んでるのに」
ξ゚⊿゚)ξ「本当にどうやってそんな匂いを……」
川*` ゥ´)「こっわいわー……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……ところでややブス」
川#` ゥ´)「お前今は魔防ゼロだよな???」
ξ゚⊿゚)ξ「間違えたヒール間違えたからやめて」
川*` ゥ´)(まぁこいつならライフで受けて平気な顔してそうだけど)
ξ゚⊿゚)ξ「あんたは何でこんな違法賭博に?」
川*` ゥ´)「依頼があって来たんだけど勝手に解決しやがったから観光」
ξ゚⊿゚)ξ「観光好きねあんた……」
川*` ゥ´)「楽しいぞ観光、古い建物多いしな」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたも悪ぶってるけど真面目で勤勉よね……」
川*` ゥ´)「悪ぶってるって言うか悪い魔女目指してるお前らの敵だから」
ξ゚⊿゚)ξ「それを悪ぶってるって言うんだと思うわ」
川*` ゥ´)「魔女と言えば悪い魔女だろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「イメージは分かるわ」
川*` ゥ´)「だから目指してんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「分からない」
-
川*` ゥ´)「お前はこれから試合出んだろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「ぅ……うん」
川*` ゥ´)「勝てよなお前、あたしお前に賭けとくから」
ξ゚⊿゚)ξ「やめなさい」
川*` ゥ´)「あとチビが心配だから」
ξ゚⊿゚)ξ「狐は」
川*` ゥ´)「どうでも良い」
爪>3<)y‐そ「へっくち」
ζ(゚- ゚*ζ「おにさんだいじ?」
爪'ー`)y‐「あー大丈夫大丈夫、デレ抱えて暖まろー」
ζ(>- <*ζキャー
-
川*` ゥ´)「あーでもなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ?
川*` ゥ´)「あー……んんー……そうだなー……」
ξ゚⊿゚)ξ
川*` ゥ´)「よしタッグ組むか」
ξ゚⊿゚)ξ!?
川*` ゥ´)「だってお前アレだろ、メンタルガタガタだし」
ξ゚⊿゚)ξ「す、少しは落ち着いたわよ……」
川*` ゥ´)「そんなゴミメンタルでチビ助けられると思えねぇしな」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたデレ気に入ってるわね……」
川*` ゥ´)「あいつは朝飯じゃないし可愛いし」
ξ゚⊿゚)ξ「慈善事業かよ」
川*` ゥ´)「それは見も知らぬ奴隷保護したお前らの事であって知り合いのガキ助けるのは別」
ξ゚⊿゚)ξ「ぐう」
川*` ゥ´)「出てる出てる」
-
ξ゚⊿゚)ξ「でもタッグなんて」
川*` ゥ´)「おいタッグで申請させろよ」
( ^Д^)「タッグチームバトルでのご参加ですね、でしたらこちらの用紙に」
ξ゚⊿゚)ξ「あるんだ」
川*` ゥ´)「いやそうじゃなくて」
( ^Д^)「えっ」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
川*` ゥ´)「通常の試合に二人で出させろつってんだよ」
(;^Д^)「しれっとルール崩壊させないでくれます!? 1対1ですけど!?」
川*` ゥ´)「あ? 違法賭博でルールとか何いってんのお前」
(;^Д^)「いやいやいや違法賭博だからこそルールあるんですってマジ」
川*` ゥ´)「人の仲間を人質にして裏で倍率上げたりしてる癖にルールとは?」
(;^Д^)
川*` ゥ´)「つかさー人道的にアウトだよねー人間に蘇生アイテム持たせて殺し合いってさー」
(;^Д^)「皆さんそうおっしゃいますけどね……意外とホワイトですからここ……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……」
川*` ゥ´)「おい金髪チビゴリラも何か言え」
ξ゚⊿゚)ξ「奴隷商してませんでした?」
(;^Д^)「してませんよ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「奴隷商みたいな顔してる……殺したい……」
川*` ゥ´)「こいつがチビ売ってたの?」
(;^Д^)「裏カジノ勤続15年ですよ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「殺したい」
川*` ゥ´)「殺すかー」
(;^Д^)「支配人ー!! 支配人ーッ!!」
,,ξ゚⊿゚)ξ「ペアで出られたわね」
,,川*` ゥ´)「楽しければ良い派の支配人で良かったな」
-
川*` ゥ´)「まぁあたしは魔力制御つけられたけどな、40%くらいしか出ねーぞこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「半分以下か……」
川*` ゥ´)「まぁ多少はやってやんよ」
ξ゚⊿゚)ξ「私魔法使いと組むの初めて」
川*` ゥ´)「魔女だよボケ」
ξ゚⊿゚)ξ「魔導師は普段どうしてるの?」
川*` ゥ´)「魔女だって」
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり魔術師は外にあんまり出なかったりするのかしら」
川#` ゥ´)「喧嘩売ってんだろー!? ぁあーッ!?」
ξ゚⊿゚)ξ「ヒール面白いわよね」
川#` ゥ´)「っせ貧相な体型」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた人をどうこう言えるほど恵まれた体型なの?」
川*` ゥ´)「……まぁ……平均だな……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「推定Bだっけ……」
川*` ゥ´)「黙れや……」
ξ゚⊿゚)ξ「身長は160くらい?」
川*` ゥ´)「だいたい」
ξ゚⊿゚)ξ「私より10cmも高いのね……」
川*` ゥ´)「お前がチビ過ぎるだけだかんな……?」
ξ゚⊿゚)ξ「……ヒール」
川*` ゥ´)「あー?」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがとう」
川*` ゥ´)「ペッ お前ら朝飯と馴れ合うためにやるんじゃねーよ、チビガキのためだ」
ξ゚⊿゚)ξ「うちのデレのために、ありがとう」
川*` ゥ´)「その感謝なら聞いてやんよ、絶対勝ち抜くぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「……ええ、全員ぶち殺してやるわ」
川*` ゥ´)「おうよ」
-
ξ゚⊿゚)ξ
川*` ゥ´)
ξ゚⊿゚)ξ「でもあんた、簡単に命投げ出したけど良かったの?」
川*` ゥ´)「別に、スーパー魔女様のヒール様はこんな所で死なねぇし」
ξ゚⊿゚)ξ「すごいな」
川*` ゥ´)「この魔道具も効くか分かったもんじゃねーしな」
ξ゚⊿゚)ξ「……なんか見覚えあるのよね、この石」
川*` ゥ´)「あー? 人工の魔石だろうなこれは」
ξ゚⊿゚)ξ「薄い青の、透明な石……どこかで……」
川*` ゥ´)「魔力充填するアレがこんな色だわ」
ξ゚⊿゚)ξ「あーそれかぁ……いやもっと小さいのを見たような……」
川*` ゥ´)「魔力は確かに感じるけど…………変わった魔法かかってんなこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「わかるの?」
-
川*` ゥ´)「修復……固定……再生……治癒……あーよくわかんねぇ……人間用じゃねーなこれ」
ξ゚⊿゚)ξ?
川*` ゥ´)「魔族の魔法か……道理で珍しい事を……つっても未完成……蘇生は研究がまだ……」
ξ゚⊿゚)ξ
川*` ゥ´)「トレース出来ればあたしも……あーいや無理だな……魔族の魔法は1から覚え直さないと……」
ξ゚⊿゚)ξ「おなかすいた」
川*` ゥ´)「緊張感ねーなお前」
ξ゚⊿゚)ξ「ヒールが居たら安心しちゃって……」
川*` ゥ´)「敵だぞ安心すんな」
ξ゚⊿゚)ξ「今は味方だから」
川*` ゥ´)「共闘する手前そうだけどな、緊張感をだな」
ξ゚⊿゚)ξ「ヒール」
川*` ゥ´)「んっだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ありがと」
川*` ゥ´)「もう聞いたわボケ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「この控え室ってお茶も無い、っと……始まるみたいね」
川*` ゥ´)「おーおーアナウンス流れてんな」
ξ゚⊿゚)ξ「ミュスクルの弟子……」
川*` ゥ´)「お前マジで英雄の弟子なん」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、あ……アンソルスランの魔女だって」
川*` ゥ´)「直系じゃねーけどな、……あー粗末な杖、ただの木の棒じゃねーかこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「こっちも刃があるとは思えないなまくら」
川*` ゥ´)「はー……行くか」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、行きましょうヒール」
川*` ゥ´)「おい」
ξ゚⊿゚)ξ「何よ」
川*` ゥ´)「服を掴むな」
ξ゚⊿゚)ξ「行きましょ」
川*` ゥ´)「離せや」
-
コロシアムの内側。
広い円形のその舞台には、消えない血の臭いと色が染み付いている。
私とヒールはその舞台に立ち、上からぐるりと見下ろす観客を眺めてから、向かい側の入り口を睨んだ。
ざわめき、熱気、喧騒、罵声、好奇の目、耳が痛い。
こんな見世物になるのは、初めての事で。
役所や仕事の時だって、ここまでの居心地の悪さじゃない。
この環境で、この武器で、この感情で、私は命の奪い合いをする。
なんて、なんて、気持ちの悪い、
川*` ゥ´)「見てろよ上のクソ客共ーッ!!!」
ξ゚⊿゚)ξ!!
川*` ゥ´)「あたしら以外に賭けたクソ共は大損して帰る羽目になっからなーッ!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ヒール……」
川*` ゥ´)「ふん、滅入ってんじゃねーぞカス」
-
ヒールの言葉に、観客のざわめきは強くなる。
しかしその言葉のお陰で、私は我に返り、短剣を強く握り締めた。
勝てるかどうかじゃない。
勝つしかないんだ。
ヒールのためにも
二人のためにも。
私のためにも。
ξ-⊿-)ξスー ハー
ξ゚⊿゚)ξスッ
ξ゚⊿゚)ξ「我こそは英雄ミュスクルの弟子! ツン・グランピー!!」
川*` ゥ´)「うお」
ξ゚⊿゚)ξ「我が身に受けしミュスクルの名を汚しはせず!! 勝利を掴む者である!!!」
川*` ゥ´)「ヒュー」
ξ゚⊿゚)ξドヤッ
川*` ゥ´)「掴みは上々か、来るぞバカ女」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、やってやるわ」
-
私は人の道を外れた人間。
私は人を殺す事もある道を選んだ人間。
今まで何度も悔やんだし、今まで何度も苦悩した。
けれど一度殺してしまったら、あとはもう戻れはしない。
とは言え、私が手にかけるのは討伐対象だけ。
殺しても許される大義名分があったとしても、私はひっそりと胸を痛める弱い人間なのだ。
それなのに。
だからこそ。
私は仲間のために、人を殺さなければいけない。
弱気になるな。
狼狽えるな、躊躇うな、切っ先を揺らすな。
私は‘敵’を、殺さなければいけないのだ。
なに、一人じゃない。
甘ったれの小娘一人じゃない。
傍らには、素直で愚かで優秀な、魔女の小娘が居るのだから。
-
みしみし、と音を立てて向かいの扉が開く。
広いコロシアムに姿を現したのは、大きな魔物。
四足で固い毛並みを持つ、犬とも熊ともつかない濃褐色。
敵意に満ちた目でこちらを見て、鋭い牙を晒しながら大きく吠えた。
ξ゚⊿゚)ξ「何だ魔物か」
川*` ゥ´)「人間相手かと思って緊張してたのによ」
ξ゚⊿゚)ξ「しかし片手剣か……先に行ってみるわ」
川*` ゥ´)「撃つ時は言うから避けろよ」
ξ゚⊿゚)ξ「分かった」
たん、と地を蹴り魔物に駆け寄る。
前に出した左手には頼りない小盾、右手に握られたおもちゃみたいな短剣を振りかぶって。
< ザクー ブシューブチブチメキメキ ギャオーン ドサァ…
,,ξ゚⊿゚)ξ「よっわ」ポタポタ
川*` ゥ´)「ぐっろ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「拍子抜けね……こんなに弱いとは……」
川*` ゥ´)「いや素手で魔物の頭を引きちぎるのがおかしいんだからな? 分かるか? 馬鹿には無理か?」
ξ゚⊿゚)ξ「食べる?」
川*` ゥ´)「食うかボケ」
ξ゚⊿゚)ξ「美味しいと思うんだけどな……」
川*` ゥ´)「おい次来たぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「あれは……かの有名な……!」
川*` ゥ´)「触手のあれな」
ξ゚⊿゚)ξ「寄ったら服とか溶けない?」
川*` ゥ´)「魔法撃ってみっか」
ξ゚⊿゚)ξワクワク
川*` ゥ´)ノシ -=◎ ヒュゴー
ξ゚⊿゚)ξ
-
< バシュウウウ ジュワワァ…
川*` ゥ´)「よっわ」
ξ゚⊿゚)ξ
川*` ゥ´)「んっだよ何見てんだボケ喝采送れよ」
ξ゚⊿゚)ξ「詠唱とか……」
川*` ゥ´)「あるわけねーだろ下位魔法だぞ、短縮出来るに決まってんだろ」
ξ゚⊿゚)ξガッカリ…
川*` ゥ´)ノシ「あー…………岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち集いて赤き炎となれ!! ファイア!!」ヒュゴー
ξ*゚⊿゚)ξ+ パァァ
川;` ゥ´)「めんどくせーからやっぱ詠唱とかやってらんねぇって!!」
ξ゚⊿゚)ξ「えぇ……折角の魔法職なのに……かっこいいのに……」
川*` ゥ´)「ふん! あたしがかっこいいのは最初からだけどな!」
ξ゚⊿゚)ξ「いや詠唱がだけど」
川#` ゥ´)「しね」
-
< メキーグシャグシャ
< ピシャーンバリバリ
< ザクザクブチブチ
ξ゚⊿゚)ξ「魔物ばっかりね」
川*` ゥ´)「しかもクソ弱い」
ξ゚⊿゚)ξ「楽なのはありがたいけど、ここまで歯応えが無いとは」
川*` ゥ´)「今ので五匹目か? 全何戦だったこれ」
ξ゚⊿゚)ξ「10か15」
川*` ゥ´)「だーっる! クソつまんねーのに何だよこれ!」
ξ゚⊿゚)ξ「まあ二人のためだから……おっと、次が来るわ」
川*` ゥ´)「あーはいはい、次はどんな」
,,( ΦωΦ)
ξ゚⊿゚)ξ
川*` ゥ´)
-
ξ;゚⊿゚)ξ「ししし師匠おおおおおおおおお!!?」
川;` ゥ´)「おい死んだだろお前ええええ!!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「師匠は死んでないわよ!?」
川;` ゥ´)「あぁ!? 魔女の事だぞ!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「師匠が!? 魔女なわけ無いでしょ!?」
川;` ゥ´)「はぁあ!? 生粋の魔女だよ当然だろ!?」
ξ;゚⊿゚)ξ
川;` ゥ´)
ξ゚⊿゚)ξ「待って何に見えてるの」
川*` ゥ´)「本家の直系の魔女(故人)」
ξ゚⊿゚)ξ「私の師匠のロマネスク・ミュスクル」
川*` ゥ´)
ξ゚⊿゚)ξ
-
川*` ゥ´)「ははーん、見る人間によって姿が変わるな?」
ξ゚⊿゚)ξ「よりによって一番戦いたくない相手と」
川*` ゥ´)「あたしだってヤだよあんな魔女相手に」
ξ゚⊿゚)ξ「あっ……」
川*` ゥ´)「あぁ……」
ξ゚⊿゚)ξ「一番戦いたくない相手……」
川*` ゥ´)「うーわ……厄介すぎんだろクソが……」
( ΦωΦ)゙ スッ
ξ゚⊿゚)ξ「うぐ……師匠相手に戦うのは気が引けるけど……」
川*` ゥ´)「ビジュアルでもう勝てる気がしないんだけどさ」
ξ゚⊿゚)ξ「やめてよ私が師匠に勝つとか出来るわけないでしょ」
川*` ゥ´)「いやもうこっちもだいぶヤバい無理死ぬ」
ξ゚⊿゚)ξ「弱気にならないでよちょっともう! こっちだって土下座したいわよ!!」
川*` ゥ´)「お前の土下座なら見たい」
-
ξ゚⊿゚)ξ「師匠に勝負を挑んでは叩き潰されたあの頃……ああ……」
川*` ゥ´)「スパルタだなおい」
ξ゚⊿゚)ξ「そして姉様にめっちゃ怒られる私と師匠……あああああ……」
川*` ゥ´)「そっちのがトラウマなんだろお前」
ξ゚⊿゚)ξ「いつかは越えたいけどそのいつかは今じゃないのよ……勝てるわけないでしょ……」
川*` ゥ´)「でもまぁ……やるしか」
( ΦωΦ)ノシ -=◎ ヒュボッ
-=◎ 三ξ;゚⊿゚)ξ「うわぁぁあああん師匠が魔法撃ったああああああ!!!」
川;` ゥ´)「こっちにすれば当然なんだけどそっち視点だと面白そうだな!」
ξ;゚⊿゚)ξ゙「だぁあ!! 危ない!!」
川;` ゥ´)「あーもー勝てなそうな見た目だけどやるぞ! まず魔法撃つから!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「幻影持ちに通じんの魔法!?」
川;` ゥ´)ノシ-=◎「物による!! 食らえやおらぁああ!!」ボッ
-
◎)ΦωΦ)゙ペソーン
ξ゚⊿゚)ξ
川*` ゥ´)
(づΦωΦ)ポリポリ
ξ#゚⊿゚)ξ「効いてないぞややブス!!」
川#` ゥ´)「ぶち殺すぞ腐れド貧乳が!!」
( ΦωΦ)゙
づ((◎) キュィィィ…
"ξ゚⊿゚)ξ「ああもう! 私が!!」バッ
川*` ゥ´)「おい待て! 今行くな!!」
ξ゚⊿゚)ξ「だって急がないと!!」
( ΦωΦ)
つ((◎)そ ギュィィィ
川;` ゥ´)「あー!! 避けろ馬鹿女!!」
-
ヒールの声に身体を動かした頃には、私はもう目映い程の光の中に居て。
師匠にそっくりの何かは、無表情にも私を見下ろしていた。
その額に、赤い石を瞬かせながら。
轟音が鼓膜を破ったのは、次の瞬間。
強い魔力の塊は、身体を引き裂き、内臓を焦がし、骨を砕いて私を地面に叩き付けた。
全身から溢れる熱いものは、体液なのか、叩き付けられた魔力なのかは分からない。
ただ目の前が真っ白で、何も見えなかった。
「おい馬鹿! 馬鹿女おい!!」
ヒールの罵声が遠い。
耳が駄目になったからか、くぐもってよく聞こえない。
「っそだろオイ……こんなの出るのかよ……」
狼狽える声がかすかに聞こえた。
-
視界に広がる白い世界がゆっくりと落ち着いて行く。
視覚が正常に戻り始めて、コロシアムの高い天井がぼんやりと見えた。
それと同時に、全身に走る異常な迄の痛みに、気がついてしまって。
ξ ⊿#)ξ「あ゙っ……が、げほ、ぉ゙っ……」
川;` ゥ´)「おいクソ女生きてんのか!? おい!?」
ξ ⊿#)ξ「わ゙た、し、どう、な゙、て」
川;` ゥ´)「どうなってるかぁ!? 顔は半分焼き潰れて腹裂けて臓物出して手足吹き飛んでるよ!!
ああくそ再生やら治癒は苦手だし時間かかるのにさぁ! モロに上位魔法食らうなよなお前!!」
ξ ⊿#)ξ
川;` ゥ´)「……おい、おいクソ女、おい!! …………あ゙ー!!! もうっ!!!」
苛立ち紛れに、杖で地面を叩く音。
痛くて痛くて悲鳴を上げたいが、身体は動かないし声も出ない。
全身が燃える様に熱くて、痛くて、のたうち回りたいくらいなのに。
もう、天井もヒールの姿も見えなくなっていた。
-
視界は、再び白に潰される。
てっきりこう言う時は、暗くなると思っていたのに。
痛みは消えない。
何も見えない。
声も出ない。
全身がばらばらになったみたいに痛くて、苦しくて、息が出来なくて。
脈動に合わせて痛む全身は、まるで自分のものじゃ無いみたいに動かない。
それなのに、未だにぼんやりとだけ、ヒールの声が聞こえる。
悲鳴混じりの怒声、罵声、詠唱、遠退いたり、近付いたり。
ああ、まるで地獄の様。
狐は嘘つきだ。
死は冷たく寂しく暗いものだと言っていたのに。
私に手渡された死は。
熱くて、痛くて、うるさくて、眩しくて。
苦しくて苦しくて、しょうがないじゃないか。
おわり。
-
ありがとうございました、本日はここまで。
次回は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
場合によっては出来ない可能性もあります。
あとそろそろ次スレを考えてますので存分に埋めてください。
それでは、これにて失礼!
まとめて下さってます、ありがとうございます。
ttp://naitohoureisen.blog.fc2.com/blog-entry-271.html
-
おい!ここで切るのかよ!
おつー
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時々はいるメタいツッコみとテンポがすごく好きです
ツンちゃんはデッキ15枚くらい破棄しそう
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青い石ってあれのことかな
ヒールめっちゃいいやつだし、ツンちゃんメンタル弱いの可愛い
乙
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日曜の癒やし
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役所の絵面、電車で笑っちまったわちくしょう
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早く投下日にならんかな。イラスト見たい
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服チェンジしてないし絵は来ないんじゃないか
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今読んだおつ
魔導士さんええ子や・・・
-
例えばそれは踏み固められたつなぐ道、時には森の獣道。
騒がしい酒場の熱気、賑やかな町の営み。
周囲にはいつも退屈とは無縁のものばかり。
聞こえるのは風を斬る音、たゆたうような詩人の歌声、獣じみた幼い咆哮。
刃を振るい、歌声を響かせ、魔力を用い、路銀を稼いで進むのは三人。
一人は不機嫌そうに顔を歪める、若い女戦士。
もう一人は、軽薄そうにへらへら笑う優男の吟遊詩人。
そんな二人の後ろをついて歩く、小さな魔族の子供。
【道のようです】
【第十三話 たたかうっていみをしる。 後編】
彼らの進む先にはいつも、血肉の臭いと歌声が存在する。
-
ζ(゚- ゚*ζ゙ ピクッ
爪'ー`)y‐「ん」
ζ(゚- ゚*ζ「ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ」
爪'ー`)y‐「……何かやな感じするね」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんなにかあった」
爪'ー`)y‐「…………」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
爪'ー`)y‐「大丈夫だよデレ、ツンちゃんは強いだろ?」
ζ(゚- ゚*ζ「…………」
爪'ー`)y‐「大丈夫、大丈夫さ…………絶対に、大丈夫なんだから……」
ζ(゚- ゚*ζ「ここでる、だめ?」
爪'ー`)y‐「……」
ζ(゚- ゚*ζ「ぅー……」
爪'ー`)y‐「あー……ごめんね、本当に……」
-
胸の辺りで、何かが暖かく光る様な感覚があった。
柔らかく、優しく、全身を包み込む何か。
慈しむように、愛でるように、身体中を撫でていって。
心臓を、潰さんばかりに強く握られた。
ξ; ⊿ )ξそ「げっ……ほ……げほっぇほっ おぇぇぇぇ……」ガバッ
川;` ゥ´)「蘇生終わったか!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「はっ……はー……はー…………し、死んだ……?」
川;` ゥ´)「死んだ!! ヤバいぐらいエグい感じで!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「あー……くっそ……蘇生最悪だなこれ……」
川;` ゥ´)「マジかよ聖なる系の光に包まれてたぞお前」
ξ;゚⊿゚)ξ「……師匠は?」
川;` ゥ´)「こっちだと魔女な、今は封壁に閉じ込めてある……けど、40%じゃ無理!!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「剣は……あー折れてんな、まだ封壁もつ?」
川;` ゥ´)「頑張るけどな!!、頑張りはすっけどな!?」
゙ξ゚⊿゚)ξ「もたせろよ、行く!!」バッ
川;` ゥ´)「素手でか!?」
ばらばらに折れた短剣を投げ捨てて、青く透明な壁に閉じ込められた師匠の元へ走る。
その額には何もなく、よくよく見慣れた顔立ちなだけ。
使い込まれた傷だらけの鎧。
くすんだ金の長い髪。
顔に走る大きな傷痕。
つんと猫のように目尻の尖った、
ξ゚⊿゚)ξ「お前は、師匠じゃない」
師匠の双眸は、うっとりするほど綺麗な金色だ。
ξ゚⊿゚)ξ「そんな下品な赤じゃ、ない」
-
地面を蹴って飛び上がり、師匠を模した何かの頭上から影を落とす。
そして右の拳を振り上げて。
ξ#゚⊿゚)ξ「封壁を解けぇえええええ!!!」
川#` ゥ´)「言われんでも解くわボケぇ!!!」
拳を、額に向かって振り下ろした。
ぱきん。
何かの割れる音。
私が地面に降り立つ頃には、師匠を模した何かは、本来の姿で倒れていた。
額に割れた赤い石を持つ、人型に近い魔物。
恐らくは精霊の方に近いのだろう、全身が薄青く、やや透き通っている。
魔族、ではない。
魔物だ。
-
,,川;` ゥ´)「あー……倒したか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、何かしらねこれ」
川;` ゥ´)「うっわこんなのまで飼い慣らしてんのか」
ξ゚⊿゚)ξ「これって何なの? 魔物よね」
川*` ゥ´)「魔物っちゃ魔物だし、精霊とか妖魔とか霊だとか分類が面倒なタイプのアレ」
ξ゚⊿゚)ξ「あぁ……何かたまにいるわねそう言うの……枯れ木とか……」
川*` ゥ´)「枯れ木も分類が面倒なアレだな……」
ξ゚⊿゚)ξ「……これ、意思とかあったのかしら」
川*` ゥ´)「無いと思う、本能で人殺すし」
ξ゚⊿゚)ξ「何だ討伐対象か」
川*` ゥ´)「それよりクソチビ、お前残量減っただろ」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、石が一片黒くなってる」
川*` ゥ´)「大事に使えよなお前、死なれたら後始末面倒なんだぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「魔防無いと死ぬ事がよく分かった」
-
川*` ゥ´)「バフかけたいけど時間かかるかr」バクン
ξ゚⊿゚)ξ「あ」
川 ##;:,,゙ ドサァ…
ξ゚⊿゚)ξ「……いつのまに、次の相手が出ていたのか……」
川 ##;:,,
,,ξ゚⊿゚)ξ「えーと……恐竜? トカゲ? 何でも良いか」テクテク
< ガッ メリメリメリ バキンッ ゴキゴキ
,,ξ゚⊿゚)ξ「顎を潰せりゃ怖くないわ」ポタポタ
川;` ゥ´)「ああっぁあ!! 死んだ!!」ガバッ
ξ゚⊿゚)ξ「おはよ、どうだった蘇生」
川;` ゥ´)「地味な即死だったのもアレだけど心臓がいてぇ!! クソが!!」
ξ゚⊿゚)ξ「感じ悪いわよねこの蘇生」
川;` ゥ´)「目覚め最悪!!」
-
ξ゚⊿゚)ξ「ちなみに頭の半分以上を食われてたわ」
川*` ゥ´)「知りたくない知りたくない」
ξ゚⊿゚)ξ「……今ので七匹目?」
川*` ゥ´)「かな、あー……早けりゃあと三匹か……」
ξ゚⊿゚)ξ「正直、痛いか弱いかが極端すぎて何も楽しくないわねこれ」
川*` ゥ´)「溜め魔法モロに食らうような馬鹿は滅多に居ないからな? 分かるか?」
ξ゚⊿゚)ξ「次からは気を付けるわよ……」
二人とも一度死んで、残り四回ずつ。
しかしこの魔道具が無ければ、私たちはもう完全に死んでいたのだ。
そう思うと、ぶる、と全身に嫌なものが走った。
それはヒールも同じなのか、神妙な顔で自分の頬を撫でている。
ヒールは即死だったが、それでも死んだと言う実感はあるらしい。
一度凄惨な死を遂げた私はと言うと、正直、死ぬのがひどく恐ろしく感じる。
あんなに痛いとは思わなかった。
あんなに苦しいとは思わなかった。
-
痛みと熱と苦しみの中で、嫌だ嫌だと死ぬだなんて聞いてない。
狐はああ言ったのに、冷たく眠るようだと言ったのに。
もしかして狐は、私に嘘をついたのだろうか。
私に気を遣わせないために、嘘をついたのだろうか。
それはそれで、何だかすごく、嫌な気持ちになる。
ああくそ、私は強い相手と戦う事が好きな筈なのに。
こんなに死に対する恐怖が強まるだなんて。
あと四回ある、もう四回しかない。
この残り回数を使いたくはない、あんな死は二度とごめんだ。
死にたくない。
死にたくない。
ξ゚⊿゚)ξ「ヒール」
川*` ゥ´)「……んだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「死にたくない」
川*` ゥ´)「あたしもだよ……今しがた死んでたけど……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「だからね、ヒール」
川*` ゥ´)「…………」
ξ゚⊿゚)ξ「生き延びましょう、ここからも、これからも」
川*` ゥ´)「……そうだな、馬鹿女」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、次が来るみたいよ」
服の血と埃を払いながら、相手側の扉を見る。
ぎしぎしと開かれた扉から、小さな影がゆっくりと、震えながら現れて。
川;` ゥ´)「……マジかよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……嘘でしょ」
次の相手は、
:⌒*リ´・-・リ:
小さな、女の子だった。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「……ま、まだ、油断できないわよ、さっきみたいに、魔物かも」
川;` ゥ´)「……魔法が使えるなら、あたしに察知出来るんだよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……嘘でしょ?」
川;` ゥ´)「…………あれ、正真正銘の、ただのガキだ……」
怯えた眼差しで辺りを見回し、震える手で粗末な短剣を握っている。
今にも泣き出しそうな顔で、緊張と恐怖に乱れた呼吸で、全身を冷たい汗で濡らして。
まだ一桁の歳であろう少女は、このコロシアムに立っていた。
:⌒*リ´・-・リ:「ぁっ……ぁ……の」
ξ;゚⊿゚)ξ「……あなたが、次の相手?」
:⌒*リ´・-・リ:「はっ、ひ……ぁのっ……り、リリは……ぁの……ママの、ためにっ……」
川;` ゥ´)「……なぁチビ、会話しない方が良いぞ」
ξ;゚⊿゚)ξ「分かってるわよ……でも……」
-
:⌒*リ´・-・リ:「ま、ママが……びょうきで……リリがっ……ぉかね、を……」
ξ;゚⊿゚)ξ「…………」
:⌒*リ´・-・リ:「だからっ……だからぁっ……ごめんなさいぃっ……!」
とたとたと駆け出した少女は、私目掛けて短剣を突き出す。
さすがに呆然としていても、そんな弱々しい攻撃は当たりはしなかった。
両手で握る短剣を何度も振るい、何度も突き出し、小柄だからと狙ったであろう私を襲う。
けれどその震える切っ先は、涙の浮かんだ目は、誰かを殺すには余りにも頼りない。
ああそうか、私はさっきまで、こんな感じだったのか。
死ぬのは怖い。
殺すのも怖い。
小さな体が背負うには、余りにも大きすぎる業。
けれどこうしなければ、大切な何かを守れない。
だから私は、この子を殺さなければいけない。
-
俺知ってるんだ。この作者は鬼だってこと
-
この子の胸にも、青い石の魔道具がついている。
しかしその輝きは、もう一片のみ。
今までこの子は、四回、殺されてきたのだ。
そう言えば、人間を相手にするのはこれが初めてだ。
この場合、蘇生が発動したらどうなるのだろう。
最後まで殺さなければいけないのだろうか。
それとも一度殺したら終わりなのだろうか。
ヒールはそれを聞かされたのかな。
ずっと狼狽えながら私達を見る事しか出来ずに居るが、それもそうだろう、あいつは子供好きだ。
なら余計に、この子は私が殺さないと。
どさ、と足がもつれたのか、少女が地面に転んだ。
ξ゚⊿゚)ξ「あ、う、だ、大丈夫……?」
:⌒*リ´;-;リ:「ふっ、ぅ、うわぁああんっ……うぁぁああぁあんっ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「あっあっ、ど、どうしようヒール……」
-
川*` ゥ´)「……魔法で、即死させる方が良いかも知れねぇな」
ξ;゚⊿゚)ξ「……そうね、苦しまない方が、良いわよね……」
川*` ゥ´)「……即死魔法の溜めするから、お前相手しとけよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「う、うん……でも……」
:⌒*リ´;-;リ:「ひっ……ぐすっ……ぅうっ……ママ、ママぁ……うわぁぁっ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「あっあっちょっと……泣かないで、泣かないでよちょっと……」
:⌒*リ´;-;リ:「うわぁぁあんっ、ぁぁああぁあっ……ママ、ママぁっ……リリもうしにたくないよぉっ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ね、ねぇヒール、一試合の間に蘇生って」
:⌒*リ´;-;リ:「ぁっ、ぁあっ……ぁぁあああああぁあっ!!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ……」
少しだけ離れた場所に立つヒールの方を向きながら、質問を投げ掛けようとした。
するとすぐそばに倒れたまま泣きじゃくっていた少女が、立ち上がり、勢いよく走り出して。
-
川; ゥ )「あ゙っ……ぐ、ぉぇっ……」
無防備だったヒールの腹に、短剣を突き立てた。
ξ;゚⊿゚)ξ「っヒール!!」
川; ゥ )「て、っめ……相手しとけって……ぎゃっ、あっ」
:⌒*リ´;-;リ:「あぁっああぁっ! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!!」
川; ゥ )「ぎゃ、う、ぐっ、ぇ゙、ぁ゙、ぁあ゙、っ」
ざく、ざく、ざく、ざく。
仰向けに倒れたヒールの腹に、何度も、何度も、刃を振り下ろす小さな手。
ざくざくと肉を貫く音が、濁った短い悲鳴を連れてくる。
そして刺し貫く音が、ぐずぐずに潰れたはらわたが、水っぽい音になった頃。
ヒールの目は光を無くして、吐き出した血で顔を汚して、胸の動きは無くなって。
私は余りに突然で、それを止める事が出来なくて。
しかし短剣の切っ先が骨に当たる音でふと我に帰り、少女をヒールの上から突き飛ばした。
悲鳴を上げて倒れる少女と、もう息をしていないヒールのなきがら。
-
どうすれば良いのかと混乱する私を差し置いて、冷静な部分が私を突き動かす。
この子は敵だ。
この子は殺さなきゃ。
私がこの子を殺さなきゃ。
身を起こそうとした少女に馬乗りになって、細い首を両手で掴む。
何をされるのか察した少女の抵抗は、もう何の意味もなしはしない。
力を込めると、少女は青い顔で私の手を叩き、爪を立て、もがく。
大丈夫、苦しくないから。
一瞬で、終わらせてあげるから。
ぎち。
めきめき。
ごきり。
-
頭と体が皮でだけ繋がっている少女の亡骸を見下ろして、私は震える手を強く握った。
ξ゚⊿゚)ξ(ああ私)
ξ゚⊿゚)ξ(罪の無い子供を、殺した)
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(あぁ、)
川;` ゥ´)「ぉっえげっほげほだから蘇生感覚がクソいっ!!」ガバッ
ξ゚⊿゚)ξ「……ヒール」
川#` ゥ´)「おっまっえっなっ!? 相手しとけつっただろ脳みそ空っぽかクソったれ!!?」
ξ゚⊿゚)ξ「…………ごめんなさい……」
川#` ゥ´)「そうだな謝れ!! ガキ殺したからって優しくはしてやんねーからな!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんなさい……」
川#` ゥ´)「お前ほんと役立たず!! いや魔物狩りまくったけど!! 気分的に役立たず!!」
-
川#` ゥ´)「大体前衛が後衛の魔女を守るのは当然だろお前本当に冒険者かよバーカバーカ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「……ねぇ、ヒール」
川#` ゥ´)「なっんっだっよっ!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「人間が相手だと……一試合の中で、蘇生はどうカウントされるの……?」
川*` ゥ´)「あ? 本来なら一回死んだらそこまでだろ、あたしらはチャレンジャー側だから使いきりだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「……じゃあ、もうこの子は殺さずに済むのね」
川*` ゥ´)「その代わり、そのガキはもうコロシアムでは手札にもならないゴミだ」
ξ゚⊿゚)ξ「……ゴミ」
川*` ゥ´)「だから、きっと後で捨てられる、もう使えねぇからな」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
川*` ゥ´)「おい」
ξ゚⊿゚)ξ「はい……」
川*` ゥ´)「服を掴むな」
ξ゚⊿゚)ξ「掴んでないです……」
川*` ゥ´)「鼻水を拭くな」
ξ゚⊿゚)ξ「拭いてないです……」
川#` ゥ´)「離れろ鬱陶しい!!」
-
蘇生が始まる頃に、係員に運ばれて連れ出されて行く少女。
少ししてから、扉の向こうから泣き叫ぶ声が聞こえて。
耳を塞ぐことも出来ず、ヒールのマントを握り締め、顔を埋めながらただそれを聞いていた。
いやだ、ママ、しにたくない、たすけて。
幼い懇願は聞き入れられず、その悲鳴は遠退いて行った。
ああこんなに、こんなに嫌なものがあるだろうか。
何の罪もない子供を、私は殺したのだ。
死体は見てきた。
人も殺した。
死線を潜った。
危ない目にもあった。
だからこれも、しかたの無い事だと受け止めるほかない。
こうしなければ二人を救えないからだ。
そう、私は私のために、人を蹴落として生きる。
綺麗事ばかりでは、この世の中を生きてはいけない。
わかってる、理解してる、これが現実だと。
だって現実はいつだって、重くて痛くて苦しいのだから。
-
支援支援うわぁ不穏…
-
川*` ゥ´)「悲劇のヒロインぶるなよクソ女」
ξ゚⊿゚)ξ「っ」
川*` ゥ´)「良いか、あたしはガキに殺されたんだぞ、クソ痛いしクソ怖いしマジでクソだったからな」
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
川*` ゥ´)「死にたくねぇし殺したくねぇけどな、怖いけどな、今はやるしかねぇだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「……分かってるわよ」
川#` ゥ´)「分かってんなら鼻水拭くのやめろ」
ξ゚⊿゚)ξ「拭いてないし……よだれだし……」
川#` ゥ´)「同じくらいクソだよバーカ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「私死にたくないし殺すのも怖い」
川*` ゥ´)「誰でもそうだろボケ」
ξ゚⊿゚)ξ「こんなに心が弱かったのね私」
川*` ゥ´)「いやーお前だいぶ最初からメンタルゴミだぞ?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうやったらこれを乗り越えられるのかしら」
川*` ゥ´)「外道なら外道らしく割り切るしかねぇだろ」
-
ξ゚⊿゚)ξ「割りきれるのかしら、こんなこと」
川*` ゥ´)「狂ってなきゃ割り切れねぇよ、お前の師匠もどうせ夜な夜な頭抱えてんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ……お酒が入ると夜に泣いてたな……年に一回くらい……」
川*` ゥ´)「普段は割り切ってても実際は割り切れてねーんだよ、だからたまにそうなんだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「ヒール……」
川*` ゥ´)「お前もせいぜいベソかいてろカス」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた……本当に17歳……?」
川*` ゥ´)「あたしは魔女だからな、悪いから平気なんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ(嘘だ……)
川*` ゥ´)「あともう本当に離れろお前」
ξ゚⊿゚)ξ「わかっズビビ」
川#` ゥ´)「鼻水!!!」
ξ>へ<)ξプィーム
川#` ゥ´)「おーまーえーなーーーーー!!!?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「あースッキリした、一緒に弱気も出したから次行きましょ」
川#` ゥ´)「蘇生使えるうちに一回殺して良いかお前」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたのヒールったらマント捨てて、袖無し寒そうだわ」
川#` ゥ´)「死ね!!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「やめて杖で叩かないで」
川#` ゥ´)「あとそこまで寒くねーよ!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「えっそこ?」
飲み込めなくて吐き出しても、向き合えなくて目をそらしても。
私は全てを受け止めなければいけない、受け止められるだけの力を得なければいけない。
苦しいものが現実だと、この世は苦痛が多いのだと心でも受け止めなければいけない。
でもこの世には、甘く優しく暖かなものもあるから。
私はそれのために、自分の手を赤く汚すんだ。
この汚れた傷だらけの手にも、平穏は掴める。
それに私はまだまだこの手を振るって、世の強者を踏み越えるんだから。
-
いつかこのバカみたいな力をコントロール出来るまで。
いつかあの偉大な師を越えられる日が来るまで。
いつか私の大事な全てを、守れるようになる時まで。
私は止まっちゃいけないし。
どんどん進まなきゃいけないし。
だって、そうじゃなきゃ。
幼い頃の私が受けた苦痛が、まるで報われないじゃないか。
ぎしぎしと軋む音を連れながら、再び扉は開いた。
足元に落ちていた、少女の短剣を拾い上げながらそちらを睨む。
もう躊躇わない。
姿を現した銀の鎧。
全力で殺しに行こう。
傷だらけの中性的な顔立ち。
たとえ、誰が相手だろうと。
-
,,(#゚;;-゚) テケテケ
ξ゚⊿゚)ξ
(#゚;;-゚)?
ξ;゚⊿゚)ξ「何でだよ!!!」
川*` ゥ´)!?
(#゚;;-゚)「えっ」
ξ;゚⊿゚)ξ「でぃさん!? でぃさん何で!?」
(#゚;;-゚)「あー…………あっ、山の」
ξ;゚⊿゚)ξ「溶かしバターの方ですどうも!!」
川*` ゥ´)「えっ何? 知り合い?」
ξ;゚⊿゚)ξ「こちらミスリルの冒険者のでぃさん」
川;` ゥ´)「相手にしたくねぇ!!」
-
ヒール頼りになるなぁ
-
(#゚;;-゚)「えっと……なぜここに?」
ξ゚⊿゚)ξ「ああいやちょっと……身内が捕まりまして……」
(#゚;;-゚)「あぁ……じゃあ訳ありなのか」
川*` ゥ´)「イカサマで捕まったから釈放させるために戦ってる」
(#゚;;-゚)「あの赤い方が……」
ξ゚⊿゚)ξ「なのでまぁ……はは……お恥ずかしい……」
川*` ゥ´)(卑屈な顔をしてやがる……)
(#゚;;-゚)「僕はここには偶然来て、腕試しに参加しただけだから」
ξ゚⊿゚)ξ「また迷ったんですか」
(#゚;;-゚)「いつの間にか街道を外れていて……だから、君達に勝利を譲ろう」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
川*` ゥ´)「マジかよやったぜ」
-
(#゚;;-゚)「でも、君」
ξ゚⊿゚)ξ「はい?」
(#゚;;-゚)「君とは、一度やりあいたいと思って」
ξ゚⊿゚)ξ「……なるほど」
川*` ゥ´)「なぁちょっと思ったんだけどさ」
(#゚;;-゚)「ん……?」
川*` ゥ´)「何でお前は鎧に大剣なの?」
(#゚;;-゚)
ξ゚⊿゚)ξ
(#゚;;-゚)「なぜだろう」
川*` ゥ´)σそ「不公平だぞズルいぞ正々堂々五分の装備で戦えよ!!」
ξ゚⊿゚)ξ(こいつ……相手の不利になる事なら楽しげに……)
(#゚;;-゚)「じゃあ外そう」ガシャンガシャン
ξ゚⊿゚)ξ(そしてインナーになっても……性別がわからない……!!)
-
川*` ゥ´)「お前アレか? 男か?」
(#゚;;-゚)「……? 見ての通りだけど……」
川*` ゥ´)(わかんねーよどっちだよ)
ξ゚⊿゚)ξ(分からないけどこれ以上は失礼で聞けない)
川*` ゥ´)(まあどっちでも良いけどよ……)
(#゚;;-゚)「短剣と盾貰ってきたよ」
ξ゚⊿゚)ξ「お手数おかけします」
(#゚;;-゚)「それじゃあ、溶かしバター君」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
(#゚;;-゚)「お互い得物は使い慣れない短剣」
ξ゚⊿゚)ξ「防具はトレイ以下の小盾のみ」
(#゚;;-゚)「五分の装備、違いないな」
川*` ゥ´)「そーだな」
(#゚;;-゚)「なら、戦士同士」
ξ゚⊿゚)ξ「……ええ、遊びましょう、でぃさん」
川*` ゥ´)(本名もわかんねぇのかもしかして……)
-
爪'ー`)y‐「外はどうなってるのかなぁ」
(*゚ー゚)「気になりますか?」
爪'ー`)y‐「そりゃね、相棒が僕のせいで殺し合いしてんだからさ」
(*゚ー゚)「お連れ様はお休みのようですが」
爪'ー`)y‐「デレは子供だから良いの」
(*゚ー゚)「肝が座ってますね、この状況で眠れるとは」
爪'ー`)y‐「まぁ僕が居るし檻の中は慣れてるからね」
(*゚ー゚)「…………あ、奴隷ですか?」
爪'ー`)y‐「そうそう、元ね」
(*゚ー゚)「それは失礼しました、娘さんか妹さんかと」
爪'ー`)y‐「よく見て」バサリ
(*゚ー゚)
爪'ー`)y‐
(*゚ー゚)「ああはい、妹さんでも娘さんでも無さそうですね……」
爪'ー`)y‐「ご覧の通り……と言うか肌や髪の色からして違うのに……」
-
(*゚ー゚)「しかし立派な角と尻尾ですね」
爪'ー`)y‐「尻尾はともかく角が目立つんだよねぇ」
(*゚ー゚)「旅の同行となると不便な時もあるでしょうね、未だ魔族への風当たりは強い場所があります」
爪'ー`)y‐「こないだも人殺しの種族って言われて落ち込んでたよ」
(*゚ー゚)「そう思われる方が居るのはしようのない事だとは思いますが……」
爪'ー`)y‐「まぁねぇ……」
(*゚ー゚)「私個人の意見としましては、非常に馬鹿馬鹿しいと言う思いもあります」
爪'ー`)y‐「魔族平気なタイプ?」
(*゚ー゚)「この街はあらゆる種族が居ますし、我々にとってはお客様ですから」
爪'ー`)y‐「と言いつつ実際はー?」
(*゚ー゚)「戦前よりこの街を大きくしてくれたのは魔族なので嫌う者は居ないかと」
爪'ー`)y‐「あっはい」
-
(*゚ー゚)「魔族を祖先に持つ者も多いですから、血は薄まりその片鱗すら残していないとしても」
爪'ー`)y‐(凄いよく見る顔な気がするしこの子も魔族の末裔な気がするし片鱗しかない気もする)
(*゚ー゚)「こちらとしましては商売が基本、差別していては商いに支障が出ます」
爪'ー`)y‐「プロだなー」
(*゚ー゚)「あなたもプロなら運で勝負して下さい」
爪'ー`)y‐「すみませんでした」
(*゚ー゚)「一度ならず二度までも、どうして同じ過ちを繰り返すんですか」
爪'ー`)y‐「あ、やっぱ覚えてました?」
(*゚ー゚)「既にブラックリストに居ましたからこれで出禁です」
爪'ー`)y‐「でーすーよーねー☆」
(*゚ー゚)「お仲間が今殺し合ってるんですよ?」
爪'ー`)y‐「そうなんだよねー」
-
爪'ー`)y‐「まぁその件に関しては本当に申し訳なく思ってるよ
ついうっかりギャンブラー(二次職)の血が騒いでやらかしたけど」
(*゚ー゚)「馬鹿なんですか?」
爪'ー`)y‐「反省してます」
(*゚ー゚)「小さなお子様連れでのご来店自体褒められた行為では」
爪'ー`)y‐「ごめんなさい」
(*゚ー゚)「キッズルームもご用意してはいますが」
爪'ー`)y‐(あるんだ……)
(*゚ー゚)「まぁ、私がお客様に説教垂れた所でですが」
爪'ー`)y‐「うんまぁひどい事してるもんねカジノ側も、人殺しコロシアムとか」
(*゚ー゚)「契約書に保険や保証についての記載もある極めてクリーンな関係ですよ」
爪'ー`)y‐「知ってるよ僕も元参加者だし」
(*゚ー゚)「死に抜けした癖に何を偉そうに……」
爪'ー`)y‐「吟遊詩人がナイフ片手にどう戦えと……」
-
(*゚ー゚)「でも開幕バフデバフしてましたよね」
爪'ー`)y‐「しなきゃ即死だから……」
(*゚ー゚)「吟遊詩人は戦闘において立派なサポート役、誇りもある筈です」
爪'ー`)y‐「描写された事もされる事も無いけどこれでもちゃんとバッファーしてるからね
デバッファーとしてもちゃんと働いてるからただの穀潰しでは無いんだけどねこれでも」
(*゚ー゚)「描写されない功績に何の意味が……」
爪'ー`)y‐「意味は無いに等しいよ……」
(*゚ー゚)「見えない栄光にしがみつくのは過去にしがみつくよりも虚しい事なのでは……?」
爪'ー`)y‐「悲しくなるからやめて」
(*゚ー゚)「それより、あなたは何で参加前に不死だと教えてくれなかったんですか」
爪'ー`)y‐「聞かれなかったからさ」
(*゚ー゚)「お陰で誤魔化すのに苦労したんですよ」
爪'ー`)y‐「お詫びにいっぱい拷問されたよ???」
(*゚ー゚)「お陰で魔道具の精度が上がりました、ご協力に心からの感謝を」
爪'ー`)y‐「じゃあここから出して」
(*゚ー゚)「感謝の引き継ぎは出来ませんので」
爪'ー`)y‐「周回前提じゃないのかー」
-
狐さん相変わらず
-
爪'ー`)y‐「……ま、コロシアムが半ば八百長みたいな見世物だってのは分かってるけどさ」
(*゚ー゚)「参加者が失う物は尊厳程度ですからね」
爪'ー`)y‐「それが一番大事だろうに」
(*゚ー゚)「最悪でも得る物が心の傷だけです」
爪'ー`)y‐「まぁ、物理的にはノーダメで出られるんだけどさ……」
(*゚ー゚)「勝ち抜けさえすれば賞金も出ます、求めるのであれば更なる報酬も支払われます
その代わり、防衛側として魔道具を使いきるまで戦って貰いますが」
爪'ー`)y‐「死に抜けしてもデメリット無かったしね、本来ならね」
(*゚ー゚)「ご協力に」
爪'ー`)y‐「もう良いよ出してよここから」
(*゚ー゚)「どんな形であれ試合が全て終われば出しますよ」
爪'ー`)y‐「怖い事言ってた癖にー」
(*゚ー゚)「当店としましては既に利益になりましたから、掛け金はね上がって集客効果も抜群」
爪'ー`)y‐「知ってた、ショーとして体よく使われただけだって知ってた」
-
(*゚ー゚)「ああ言った方が本気になられるでしょう、そうでなければ見世物になりませんから」
爪'ー`)y‐「僕のせいでツンちゃんが鬼気迫る客寄せパンダに……」
(*゚ー゚)「可愛らしい殺人パンダになってくれてますよ」
爪'ー`)y‐「……ツンちゃんはさぁ、心が弱いんだよねぇ」
(*゚ー゚)「そのようでしたね」
爪'ー`)y‐「そこが心配なんだよなー……トラウマにならないかなー……んぁー」
(*゚ー゚)「お仲間思いな事で」
爪'ー`)y‐「言葉にトゲがあるよー解ってるよー僕のせいだよー」
(*゚ー゚)「はい」
爪'ー`)y‐「…………でも、荒療治だけど良くなる可能性もあるんだ」
(*゚ー゚)「……」
爪'ー`)y‐「今のままじゃ、あの子いつまで経っても心が折れ続けるだけだから」
(*゚ー゚)「…………本当に、仲間思いな事で」
-
突き出す切っ先を軽やかに避け、横凪ぎに裂くのは空気ばかり。
目の前に立つ、すらりとしたしなやかな肢体を持つ戦士は、表情を崩す事もなく私の攻撃を避ける。
普段フルプレートの鎧に大きく分厚い剣を持つ姿からは想像も出来ないくらい、その動作は軽い。
まるで盗賊職の様に、ステップを踏むように動く足。
攻撃を避けながらも、私へ向かって刃を振るう事は忘れない。
ああこの人、凄く強い。
ミスリルの位は、伊達じゃないんだ。
さっきまでの命の奪い合いとは違う何か。
血がふつふつと沸くような何かは、ここ最近、私の中に眠っていた物を呼び覚ます。
互いの刃が交差して、ちりちりと傷を負う。
飛び散る僅かな血が、痛みが、私に大切な事を教えている気がして。
もっと、もっと、もっと。
私はこの戦いを、堪能しなければいけない。
瞳孔がぎゅっと伸び縮みする感覚。
肌が粟立ち、背筋に走る震えとも痺れともつかない感覚。
-
私は、どうして強くなりたいの?
守りたいものがあるから。
本当にそれだけ? 他に理由は無いの?
この馬鹿力を制御したいから。
私は本当に師匠が一番戦いたくない相手だったの?
だって姉様が怒ると怖いから。
本当は、
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、ヒール!」
川*` ゥ´)「今ひとり○×ゲームで忙しいんだけど」ガリガリ
ξ゚⊿゚)ξ「あんた本当は、魔女と戦いたかったんじゃないの!?」
川*` ゥ´)「はーぁぁぁああ??? だーれがあんなキチガイみたいな魔女と」
ξ゚⊿゚)ξ「だって越えたくないの!?」
川*` ゥ´)「越えるにきまっ…………あー……?」
ξ゚⊿゚)ξ「本当はあれ……ッ戦いたい相手だったんじゃない!?」
川*` ゥ´)「あー…………かーもなぁ……勝てる気しねーけど」
-
ああやっぱり。
やっぱりだ。
そうだ、私は師匠と戦いたかった。
師匠を越えるため、教わるため、強くなるため、私は師匠と戦いたかった。
だって師匠の元に居る間、日常的に剣を交えていたんだもの。
私の中の迷いを消し飛ばしてくれるのも、叱咤してくれるのも、笑って褒めてくれるのも師匠。
そう、私にとっての、理想のお父さん。
師匠は私にとっての父にも等しいから、だから、剣を交えて教えてほしかった。
道を示してほしかった。
背中を叩いて怒鳴り付けてほしかった。
何を迷う事があるのだと怒ってほしかった。
私は、戦いたかった。
私より、強い人と戦いたい。
その一撃ごとに、その人の人生の重さを叩き付けてくれるから。
この浅ましくも愚かでよわっちい小娘に、力とは何かを教えてくれるから。
その圧倒的な力の前にねじ伏せられたとしても、私には数多の越えるべき目標を得られるから。
-
私どうして忘れていたんだろう。
嫌だと、退屈だと、殺したくないと膝を抱えていたんだろう。
殺す事と戦う事は、隣り合わせだけどまるで違う。
私は殺す事は嫌いだけど、戦う事は、食事と同じくらい大好きなんだ。
中途半端に力をつけた事で忘れていた。
もっと強くなるには、強い相手を見付けなきゃいけない。
そうだよ、どうして忘れていたの。
こんなに、こんなに、こんなに、
ξ ヮ )ξ「は、あは……あははははっ!!」
(#゚;;-゚)「ん……やる気出てきた……」
ξ*゚ヮ゚)ξ「でぃさん!! 私、あなたと戦えて良かった!!」
(#゚;;-゚)「うん、うん……僕も、久々に活きの良い後輩に出会えた……」
ξ*゚ワ゚)ξ「もっと!! 私に‘戦い’を教えて下さい!!」
(#゚;;-゚)「……良いよ、溶かしバター君……ぶつかっておいで!!」
川*` ゥ´)(頭おかしーんじゃねーのかこいつら)
-
「ほら、甘い」
「ぐっ、う」
「もっと力を抜いて」
「ぎゃっ」
「力の入れ方が下手」
「いっ、たい!」
「その腕じゃ、ミスリルは遠い」
「まだまだぁ!」
「師匠に恥じる事になる」
「絶対……ッ一撃は入れる!」
「溶かしバター君」
「あっ」
がら空きの背中を蹴り飛ばされて、地面に倒れ込む。
口の中は、血と砂の味。
(#゚;;-゚)「君は、弱いね」
-
ξ゚ー゚)ξ「……思い知らせてくれてありがとう」
(#゚;;-゚)「でも、うん……後半は、楽しかった」
ξ*^ー^)ξ「私も、久々に戦えて楽しかったです」
(#゚;;-゚)「腕力と無謀を武器にする時期は過ぎてる、だから新しい、君に合う武器を探して」
ξ*^ー^)ξ「はいっ!」
(#゚;;-゚)「……また、遊ぼう」
ξ*゚ー゚)ξ「……次はもっと善戦します」
(#゚;;-゚)「楽しみだ、僕を倒してたら、次は君が僕の目標になる」
ξ*゚ー゚)ξ「……でぃさん」
(#゚;;-゚)「ん……?」
ξ*゚ー゚)ξ「姉様って呼んで良いですか?」
(#゚;;-゚)「いや……それはちょっと……」
ξ*゚ー゚)ξ(どう言う意味でだろう……)
-
川*` ゥ´)「お前ら終わった?」
ξ*゚ー゚)ξ「楽しかった」
(#゚;;-゚)「うん」
川*` ゥ´)「知るか戦闘民族共、じゃあ撃つぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「へ?」
(#゚;;-゚)「あっ」
< バシュウッ ブシャー ディサーン!?
ξ;゚⊿゚)ξ「え……えげつねぇ……ついさっきまで爽やかに戦った相手に即死魔法……」
川*` ゥ´)「即死魔法つっても頭狙って潰すだけなんだけどな」
ξ;゚⊿゚)ξ「えげつねぇ……」
川*` ゥ´)「だってお前は負けたし殺すなら一撃のが楽だろ、暇だったからよーく溜まったわ」
ξ゚⊿゚)ξ「待たせたな」
川*` ゥ´)「おせーよボケナス」
ξ゚⊿゚)ξ(ナスみたいな色しやがって……)
-
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「ナスバター炒めってどうかしら」
川*` ゥ´)「腹が減るな」
ξ゚⊿゚)ξ「いやタッグ名」
川#` ゥ´)「誰がナスだよ!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「私はバター担当だから……」
川*` ゥ´)「チビとお前ならどうなんの」
ξ゚⊿゚)ξ「黒糖バター」
川*` ゥ´)「クソッ……なんかありそうな組み合わせだ……」
ξ゚⊿゚)ξ「ナスと黒糖……」
川*` ゥ´)「食材にこだわるな」
ξ゚⊿゚)ξ「煮浸し?」
川#` ゥ´)「短縮するとマジでわけわかんねーぞ!!」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたと狐ならペスカトーレ感があるわ……」
川*` ゥ´)「何で急にガチの料理名にすんの? バカだろ? 納得できる感じがムカつくぞ?」
-
ξ゚⊿゚)ξ「アラビアータとかペスカトーレとか何かその辺の感じで」
川*` ゥ´)「もう良いよパスタの流れもタッグ名の流れも」
ξ゚⊿゚)ξ「四人集まると」
川*` ゥ´)「四人集まると?」
ξ゚⊿゚)ξ「…………ピザトーストかな……」
川*` ゥ´)「あーーー……うん」
ξ゚⊿゚)ξ「……お腹空いてきたな」
川*` ゥ´)「甘いめのピザトースト食いたい……」
ξ゚⊿゚)ξ「甘いめか……良いな……ケチャップのな……」
川*` ゥ´)「ケチャップのな……」
ξ゚⊿゚)ξ グーキュルル
川*` ゥ´) グーキュルル
-
ピャー子めっちゃいいキャラしてんな
-
ξ゚⊿゚)ξ「でぃさんも運ばれたし、次が最後かな」
川*` ゥ´)「んーだな……終わったらお前メシ奢れよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ああうん、奢るわ……助けて貰いっぱなしだし……」
川*` ゥ´)「お前は助けてないけどな、でも腹減ったから奢れ」
ξ゚⊿゚)ξ(かたくなだ……)
川*` ゥ´)「最後かー……あーやだなー、流れ的にクソつえーの来るだろ絶対」
ξ゚⊿゚)ξ「今までの強さから言うとかなりの相手になるでしょうね……英雄クラスが来たらどうしよ」
川*` ゥ´)「英雄も暇だなって思う」
ξ゚⊿゚)ξ「確かに」
川*` ゥ´)「魔法耐性も物理耐性もありそう」
ξ゚⊿゚)ξ「そろそろ魔族が来てもおかしくないわね」
川*` ゥ´)「あーそれやだなー」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、来るみたいよ」
-
,,( ・∀・)「はー……何で俺がこんな事に……」テケテケ
ξ゚⊿゚)ξ
川*` ゥ´)
( ・∀・)「久々の休暇で遊びに来ただけなのになぁ……ずっと和平だ何だで走り回ってたのに……」
ξ゚⊿゚)ξ(愚痴ってる)
川*` ゥ´)(イケメンが愚痴ってる)
( ・∀・)「こんな事ならじいちゃんの育てた街見に来なきゃ……あっ」
ξ゚⊿゚)ξ「どうも」
川*` ゥ´)「お疲れっす」
( ・∀・)「あっあっ、えっと…………コホン」
( ・∀・)
( ・∀・)「我こそは元魔王軍四天王が一人、白銀のモララー!! モララエルの名を冠する中間管理職!!」
ξ゚⊿゚)ξ「お疲れ様です」
川*` ゥ´)「大変なんだな和平をアレする人って」
( ・∀・)「ありがとうございます……魔族人間両種族間における問題を一つずつ解決する為に尽力してます……」
-
ξ゚⊿゚)ξ「なぜそんな地位もある人がこんな裏コロシアムに……」
( ・∀・)「元々ここって俺の祖先が育てた街で……見てみたいなーと思って……」
川*` ゥ´)「つか魔族なのに見た目は人間なのな」
,∧_∧゙ピョコ
( ・∀・)「ああ隠してます普段は、公務時とかは出しっぱなしですけど人里だと悪目立ちしますから」
ξ゚⊿゚)ξ(ねこみみ……)
川*` ゥ´)(ねこみみのイケメン……)
( ・∀・)「えーと……何かゲスト枠として無理矢理出されたんですよね、殺し合いでしたっけ」
ξ゚⊿゚)ξ「立場のある人がこんな事して良いんですか本当に……」
( ・∀・)「良くないと思うんですよね……色々と……でも出ちゃったからどうにかします……」
川*` ゥ´)「どうにかなんのか……」
( ・∀・)「ええと、お二人は戦士さんと魔女さん?」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、戦士です」
川*` ゥ´)「魔女だよ」
-
キャーーー! モララーさん
-
( ・∀・)「いやー戦士さん魔力無いですね……これは……滅多に見ないくらい無いな……」
ξ゚⊿゚)ξ「ここでも無魔力をディスられた」
( ・∀・)「こんなに乏しいのは珍しいですね本当に、術式使えないでしょ?」
ξ゚⊿゚)ξ「たまーに使えます」
( ・∀・)「それ空気中の魔力でついてるだけです」
ξ゚⊿゚)ξ「知ってた」
( ・∀・)「魔女さんの方はなかなかの魔力量ですね、使いこなす術もお持ちで」
川*` ゥ´)「でもそれは一般的な魔女としてはだろ」
( ・∀・)「そうですね、一般的な魔女としてなら上級クラスです」
川*` ゥ´)「アンソルスラン分家」
( ・∀・)「あっあぁー……それはー……」
ξ゚⊿゚)ξ(一言で察するレベルなんだ……)
-
( ・∀・)「あーはいはい……アンソルスランの魔女……としてなら……ぁぁー……なるほど……」
川*` ゥ´)「魔力の容量はともかく、他は後から伸ばせるからな」
( ・∀・)「あー……はい、そうですね…………ものすごく、その……頑張れば……」
川*` ゥ´)「外法にも頼らないと無理だけどな……生け贄とかはな……」
( ・∀・)「そうですね……正直血筋の問題は素質って言う生まれ持った物の話になりますから……」
川*` ゥ´)「……越えるけどな」
( ・∀・)「ええ、……俺は魔女の友人は少ないですけど、魔導師の友人が居まして」
ξ゚⊿゚)ξ「人脈がお広い」
( ・∀・)「その友人は確かに名門の出ですが、明らかに血筋を超越した力を持っています」
川*` ゥ´)「魔女の友人の方は?」
( ・∀・)「普通ですね」
ξ゚⊿゚)ξ(台無しだ)
-
( ・∀・)「ナイ家の方なんですけどね、上級ではあるけど得意と苦手の差が大きくて」
川*` ゥ´)「名門じゃねーか」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなの?」
川*` ゥ´)「超がつく名家」
ξ゚⊿゚)ξ「どれくらい?」
川*` ゥ´)「シャフトくらい」
ξ゚⊿゚)ξ「ヤバイなそれは」
川*` ゥ´)「アンソルスランはもっと名門」
ξ゚⊿゚)ξ「どれくらい?」
川*` ゥ´)「京アニ」
ξ゚⊿゚)ξ「ヤバイな」
(;・∀・)「好みだけで語弊のある例えをしないで下さい!?」
川*` ゥ´)「魔導師家系のソリテール家ってのがGONZOくらい」
ξ゚⊿゚)ξ「ヤバイな……」
(;・∀・)「聞いて!!」
-
( ・∀・)「ほらもう、試合早く終わらせましょう」
川*` ゥ´)「あたしら勝ち抜けないと駄目なんだけど」
( ・∀・)「分かってます分かってます、でも立場的にストレート負けするとアレですから一回殺しますね」
ξ゚⊿゚)ξ「魔族と戦うの初めて」
( ・∀・)「じゃあせっかくだし本気で行きますね、あー戦闘とか久々だなーうまく出来るかな……」
川*` ゥ´)(このイケメン弱そうだよな)
ξ゚⊿゚)ξ(強くはなさそうだけど、元四天王でしょ?)
川*` ゥ´)(つっても身内軍らしかったし)
( ・∀・)「よしっ、お嬢さん方に本気出すのは大人げないけど……」
ξ゚⊿゚)ξ「どうぞどうぞ」
( ・∀・)「やりますっ!」バサァッ
ξ゚⊿゚)ξ
川*` ゥ´)
-
わーい塔の間男さんだ
-
黒いマントを翻し、六対の翼を羽ばたかせながら宙へ浮かぶ中間管理職。
コロシアム全体の空気は黒く濁り、視界が暗くなる中、彼の周囲に四色の光球が浮かんだ。
光球は彼の周りを公転するように動き、光の帯を作る。
空気を黒く澱ませたのは、彼が全身から発する闇属性の魔力だと気付いた頃には、もうどうしようもなくて。
私とヒールは闇の中、妖しくも神々しく、圧倒的な強者の存在感を発する中間管理職を見上げていた。
そして彼がゆったりとした動作で手を降り上げると、光球が絡まり合う様に上り
同じようにゆったりと手を降り下ろせば、光球はその輝きを白銀に変え、稲妻の様に降り注いだ。
私たちは黙って、それを呆然と見上げながら、全身で受け止めるほか無かった。
即死でした。
ξ;゚⊿゚)ξ「心臓がぃいったい!!」ガバッ
川;` ゥ´)「この蘇生感どうにかなんねーのか!!」ガバッ
(;・∀・)「すみません何か……俺は関わってないし良く出来てはいるけど、半端ですよねその魔道具……」
-
ξ;゚⊿゚)ξ「あぁー……鮮やかな即死だった……」
川;` ゥ´)「四天王やっべーなマジ……いつか倒そ……」
( ・∀・)「何か若いお嬢さんを湯剥きしたトマトみたいにしてすみませんでした……」
ξ゚⊿゚)ξ「湯剥きトマト……」
川*` ゥ´)「黒焦げだったんじゃねーのか……」
( ・∀・)「本来なら消し炭だったんですけど、魔力20%くらいまで制限されてて……」
川*` ゥ´)
( ・∀・)「本気でやろうと思ったけど、全力だと施設が危ないかなって……だいぶ加減しちゃって……」
:川*` ゥ´):
ξ゚⊿゚)ξ「ヒール、ヒール落ち着いて、種族差があるの、魔女は一応人間なの」
:川*` ゥ´):「こいつころせ」
ξ゚⊿゚)ξ「殺す、殺すから」
(;・∀・)「あっあっごめんなさい本当すみません見た目だけ派手で」
ξ゚⊿゚)ξ「やめて、今は何を言っても火に油だからやめて」
-
( ・∀・)「あれ、でも戦士のお嬢さんは武器は」
ξ゚⊿゚)ξ「ただ殺すなら素手で大丈夫ですよ」
( ・∀・)(ああ絞殺とかかな、苦しいだろうなぁ……)
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあいきます」
( ・∀・)「お願いします」
ξ゚⊿゚)ξづそ ガッ
( ∀ )「え?」
< ミシミシメリメリメリ
< アッ マッテマッテ コレハアノ
< メキメキゴキ アギャッ ブチャッ
,,ξ゚⊿゚)ξつ「殺したわよ」ポタポタ
川*` ゥ´)「みそ付けたままこっちに寄るな」
-
ξ゚⊿゚)ξ「……最後二人、なあなあで倒したけど良かったのかしら」
川*` ゥ´)「いんじゃね、何かあたしの残量意外とやべーし、これも賭けの対象だろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、最後まさかのダブル即死とは思わなかったものね」
川*` ゥ´)「魔王軍四天王やっべーなマジ……まだ闇の魔力消えねーぞ、真っ暗じゃねーか」
(;・∀・)「心臓が!!」ガバッ
ξ゚⊿゚)ξ「あ、起きた」
(;・∀・)「これ改良すべきじゃ……でも精度は良いな……量産が困難なのが難点か……」
川*` ゥ´)「人工魔石だろこれ? 生け贄要るじゃん」
( ・∀・)「ですね、天然だとこう上手くは使えませんし……かと言って人工は生命力を元に産み出されるし……」
ξ゚⊿゚)ξ「人工魔石には生け贄が必要……」
( ・∀・)「質を落とせば生け贄は必要ありませんよ、ただ時間がかかるしちょっと大変です」
川*` ゥ´)「質の良い魔石を作るのは相当な理由がなきゃ全面禁止なんだよ」
-
ξ゚⊿゚)ξ(ギルドとかにある大きいやつの材料は聞かないでおこう……)
( ・∀・)「さて、と……そろそろ空気のよどみも収まってきましたね」
川*` ゥ´)「なぁ何かお前見た事ある気がするんだけど」
( ・∀・)「俺ですか? まぁ凱旋とかも何度か」
川*` ゥ´)「いや教科書で」
( ・∀・)「教科書」
ξ゚⊿゚)ξ「教科書に中間管理職さんが」
川*` ゥ´)「何か……何か見…………あっ」
( ・∀・)「思い出しました?」
川*` ゥ´)「何と奇遇なやおい穴」
(;∩∀∩)「あああああああ人間んんんんんんんんんん!!!!」
ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ?」
川*` ゥ´)「ある戦いで発動された術式が」
三(;∩∀∩)「あああああああ!!!!」ダッ
川*` ゥ´)「あ、逃げた」
ξ゚⊿゚)ξ「なんなんだ一体」
-
川*` ゥ´)「ま、とにかくこれで10戦勝ち抜けだな」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、ありがとうヒール」
川*` ゥ´)「お前のためじゃねーよ腐れド貧乳」
ξ゚⊿゚)ξ「それでも礼を言わせてもらうわ、ややブス平均魔女」
川#` ゥ´)「次会ったら覚えとけよ金髪チビゴリラ」
ξ゚⊿゚)ξ「こてんぱんにしてあげるわよ茄子田楽」
試合終了のアナウンスと共に、私たちはコロシアムを後にする。
歓声と罵声を背中に浴びながら、控え室まで戻っていった。
今日の体験は得難いものばかりだった。
死に、殺し、気付き、知る。
私に嫌な物を教えてくれて、私に大切な物を思い出させてくれた。
そして私は、やっぱり一人が怖い臆病者だと言うことを改めて認識した。
-
一人では得られなかった勝利。
ヒールが居てくれたから勝ち進めた。
先輩冒険者に教えられた弱さ。
でぃさんは本当に強くて不思議な先輩。
死の苦しみと、恐怖。
狐はいつも、あんな思いをしているのだろうか。
あと中間管理職。
すっごいつよい。
ああ疲れた。
様々な重圧から解放されて、もうへとへとだ。
疲労感が一気に押し寄せてくる。
デレを愛でたい、癒されたい。
狐の歌を聴きたい、そのまま眠りたい。
あいつは確かにろくでなしの雇用主だけど、私にとってはもう、立派な相棒だ。
戦えないし、火力は無いし、趣味は悪いし、金汚いし、女癖は悪いし、調子に乗るし、鬱陶しいし。
悪いところをあげていたらキリが無いけれど、それはきっとお互い様だ。
-
やおい穴、そんな感じの時系列か…
-
私にだって悪いところがたくさんある、欠陥だらけなのは自覚している。
私の欠陥を補うのは狐だし、狐の欠陥を補うのが私だし。
それでもまかなえない部分を補ってくれるのが、デレなんだ。
デレは良い子だ。
偽善的な私の行動を、全て肯定してくれた。
それが良い事かはさておき、あの子には何の邪も存在しない。
どこまでも純粋で、どこまでもあどけなくて、どこまでも私たちを慕ってくれる。
だから怖い。
私たちはあの子を育てる事は出来ない。
あの子をまっすぐ育てられるほど、私たちは出来た人間じゃない。
ただただ健やかに生きてほしい、育ってほしい、危険の無い場所で愛情を受けてほしい。
だから、あの子は置いて行く。
師匠の元に、無責任にも置いて行く。
私がもっとも信頼する人に預けて、全てを任せる。
偽善者は、善人にはなりきれないのだろう。
-
それでもあの子は頷いてくれた。
無責任な私を待っていてくれると言った。
必ず迎えに行こう。
この身が未だ冒険者で居られるのなら、私は必ず迎えに行こう。
ろくでなしの相棒と共に。
ああ、ろくでなしの歌を聴きたい。
つかれたからそのまま眠りたい。
私はあいつの歌が好きだ。
本人には言いやしないが、あいつのどこが一番気に入っているかと言うと、歌声だ。
毎夜毎夜、暇さえあれば銅貨を一枚投げて寄越して歌をせびる。
それがもはや、日常のひとつになっていて。
子守唄が無いと、すっかり眠りにくくなってしまった。
孤独に慣れなきゃいけないのに、私はどんどん二人に魂を許していく。
それでもあの二人なら、あの二人になら、許しても良いかと思えてしまって。
私は自分が思ってるより、あの二人の事が好きみたいだ。
依存と言えば聞こえは悪いが、心の支えと言えばまだ良いだろう。
-
そう、狐とデレは私の支え。
私の大切なものだから、守り抜かなきゃいけない。
私は私の大切なもののために、自分のために、この手を汚す事は出来るんだ。
川*` ゥ´)「おい、チビゴリラ」
ξ゚⊿゚)ξ「返事はしない」
川*` ゥ´)σ「あれ」
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
ヒールに髪を引かれて顔を上げると、指差されたその先には、見覚えのある二人の姿。
眠そうに目をこするデレと、疲れたように延びをする狐。
ああ。
私、守れたんだ。
-
守りきれたのか。
ヒールに助けられながら、私は二人を守りきれたのか。
大切なものを、やっと守れたのか。
こちらに気付いた二人が手を振る。
けれど私は、それに応える事は出来ない。
突然目の前が歪むから、顔が暖かく濡れるから。
息が出来なくてしゃくりあげて、顔を歪めて、
川*` ゥ´)「ようカス&チビ」
爪'ー`)y‐「予想外の魔女さん」
ζ(゚- ゚*ζ「まじょさん、おねさんだいじ?」
川*` ゥ´)「あーうん、まぁ大丈夫なんじゃね」
爪'ー`)y‐「ツンちゃーん、ツンちゃんってばー」
ζ(゚- ゚*ζ「おねさんいたいある? だいじ?」
-
ああ胸がいたい、胸がくるしい、息がつまる、唇がふるえる。
前が見えない、あたたかくてつめたい、くるしい、くるしい、くるしい。
幸せだ。
ξ ⊿ )ξ「……か」
爪'ー`)y‐「え?」
_,「しねばか!!」
ξ#;⊿;)ξ三づ)Д ),;:ボッ
「へぐぅ!!」
川*` ゥ´)「まぁ一発は殴るだろうな」
ζ(゚- ゚*ζ「むりない」
川*` ゥ´)「お前は平気だったのかよ」
ζ(゚- ゚*ζ「デレへいき、なれてる」
川*` ゥ´)「そういや元奴隷だったな」
-
ひとしきり狐を殴って、蹴って、罵倒して。
1蘇生されたところで、さっきまでのもう少し優しくしようみたいな気持ちが霧散した事に気付いて。
それからはもう、子供みたいに声をあげて泣いてしまって。
おろおろするデレと、困ったように笑う狐。
とにかく私は、しがみついてわんわん泣いていた。
寂しかったとか、怖かったとか、ふざけんなとか、安心した私の口からは感情的な言葉ばかり。
それを聞きながらデレは私から離れなくて、狐はただただ私の頭を撫でて。
三人に群がられたヒールは、ただひたすらに鬱陶しそうにしていた。
それでも私はヒールにしがみついたまま離れられなくて、
マントどころか服まで鼻水まみれにされて怒っていたが、
引き剥がしはしない辺り、やっぱりヒールは悪党にはなれないんだろうな。
私は、誰かに支えられて生かされている。
この手放しがたい幸せを、これからも守れますように。
その時の私は、本当の絶望も知らないまま、ただ目の前の幸せに浸っていた。
おわり。
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おっおっお??
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ありがとうございました、本日はここまで。
次回からの最終話は来週にでも投下出来れば良いなと思ってます。
それでは、これにて失礼!
まとめて下さってます、ありがとうございます。
ttp://naitohoureisen.blog.fc2.com/blog-entry-271.html
今のうちに新スレ立ててきます、完結次第こちらも過去ログ送りしてもらいます
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乙
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完結間近?
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やっぱ鬼か、おつ
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次スレです
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1486904851/l50?
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