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幅75cmの廊下とそれと同じくらい、もしくは少し小さい箱のようです
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夏物語参加作品
(初めて投下します。読みづらい部分等あると思いますがご了承ください。
また、この話は『ザ!世界仰天ニュース』で取り扱われたエピソードから着想を得ています)
幅75cmの廊下とそれと同じくらい、もしくは少し小さい箱のようです
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|三三o三三|
| August |
| .|
| 12 .ノ
|____________〈_|
(゜д゜@「あらやだ。内藤さん家、今度海外旅行に行くの?」
J( 'ー`)し「ええ。家族全員で」
(゜д゜@「うらやましいわ〜。どのくらい向こうにいるのかしら?」
J( 'ー`)し「思い切って2週間ほど。息子のホライゾンは今から楽しみでしょうがないみたいで」
(゜д゜@「あらやだ。贅沢ね〜」
J( 'ー`)し「前から家族で海外旅行するのが夢でお金を貯めていましたから…」
そう言いながら、内藤カーチャンはカバンから鍵を取り出しドアに差し込んだ。ドアには「808」と書かれたプレートが取り付けられている。
J( 'ー`)し「それでは荒谷さん、また今度」
(゜д゜@「帰ってきたらお土産話でも聞かせてくださいねー」
そして内藤カーチャンと別れると数歩進み、「809」のプレートの付いたドアの鍵を開け中に入った。
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ドアに鍵をかけて靴を脱ぐ。幅75cmの玄関の前の廊下を進むとまず左側に風呂場が、そしてその隣にはトイレがある。廊下の右側には小さな収納スペースが設けられ、さらに4畳ほどの部屋がある。突き当りのドアを開けるとリビング、ダイニングとキッチン、さらに奥に進むと寝室とベランダがある。
マンションは郊外にある8階建ての鉄筋コンクリート造りで、各階に10部屋ずつ。つまり彼女の生活する部屋は最上階の端の方に位置する。日当たりは良好でベランダから見る景色もなかなかである。また、防音もしっかり施してあるのか、遊び盛りのホライゾンがいるはずの808号室からもほとんど音は聞こえない。ただ最近は、屋上の貯水タンクの補修があるらしく、騒音等でご迷惑をおかけします、と書かれた紙がポストに入っていたりもした。
(゜д゜@
荒谷あらやだはそのマンションの809号室に一人で暮らしていた。夫とは娘が10歳の時に離婚しており、ずっと会っていない。数年前までは娘も一緒におり廊下沿いの部屋を使っていたが、今は都会の会社に勤めておりアパートで独り暮らしをしている。娘が帰ってくるのは夏と正月の2回だけ。しかも、今年は仕事がいろいろ忙しいらしく、いつ帰ってこれるかが未だに分からないらしい。
とはいえ、特に寂しがることもなくむしろ広い部屋を思う存分に堪能しながら日々を送っていた。
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|三三o三三|
| August |
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| 13 .ノ
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翌日、あらやだはいつものようにせんべいを片手にテレビを見ていた。
テレビでは熱中症が取り上げられており、水分補給や塩分補給の大切さを語っていた。
(゜,〜゜@「そんなの家にいるときは関係ないわー」
と、エアコンがガンガン効いた部屋の中で彼女はぼりぼりと音を立てながら呟く。最近は別に外に出かけていないし出かける予定もない。
しいて挙げるなら学生時代の同級生の父親の通夜に出たくらいである。すると、
ピンポーン
と、チャイムが鳴った。
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(゜д゜@「あらやだ。誰かしら。はーい、今行きますー!」
彼女は玄関の鍵を開けた。
(=;゚ω゚)ノ「ちゎっす、お届け物ですょぅ!」
ドアの前に立っていたのは大粒の汗をかいた宅配業者だった。
その横にはそこそこの大きさの箱が置かれていた。
(゜д゜@「あらやだ。こんな暑い中!」
(=;゚ω゚)ノ「最近は特に暑い日が続いているしちょっとキツイっす。
でもまあ、普通にエレベーターで持ってこれる大きさだったからまだ良かったですょぅ。
とりあえず判子かサインをお願いしますょぅ」
(゜д゜@「はいはい、今持ってきますね」
彼女はリビングにある棚の引き出しから判子を取り出した。
棚の上で充電している携帯電話が鬱陶しい。
-
(゜д゜@「はい、おまちどおさま」
判子を押すと宅配業者はまだ次の仕事があるのか、
(=;゚ω゚)ノ「ありがとうございましたぁ」
と言い、小走りでエレベーターホールへと向かっていった。
(゜д゜@「ご苦労様ー。…さてと、」
箱に手をかける。
(゜д゜@「あらやだ。結構重いわね、これ」
箱の中身は通販で注文した小さな組み立て式のテーブルである。
今まで使っていたテレビの前のテーブルは脚の部分が傷んでおり、お菓子やお茶ならともかく、重い物を載せられなくなっていたのである。
しかし、思ったよりも新しく届いたテーブルが重かったため、あらやだはとりあえずその箱を廊下の右側に立てかけておくことにした。
別に今のテーブルも一応使えるし、新しいテーブルを組み立てるのもどうせなら娘に手伝ってもらった方が効率がいい。
まあ、娘がいつ帰ってくるのかまだ分からないが、とりあえず、だ。
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|三三o三三|
| August |
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| 16 .ノ
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その日もあらやだはいつものようにお菓子をむさぼりながらテレビを見ていた。また、同時に尿意と格闘していた。
(゜д゜;@(はやくCMにならないかしら…)
テレビでは司会者が言葉巧みにスタジオにいる主婦たちを笑わせている。
いつもはCMがしょっちゅう入る気がするのに、こういう時に限ってCMにならない。
しばらくトークが続き、ようやくCMに入った。
(゜д゜;@(は〜、間に合った…)
彼女は慌ててトイレのドアを引いて、駆け込み、勢いよくドアを閉めた。
そして閉じたドアの向こう側からドサリ、と何かが倒れる音がした。
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(゜д゜;@(あらやだ。何の音かしら?)
便座に腰をかけながらあらやだは音の鳴った方を見る。
ドアが閉まっていては何が起きたか分からない。
出すものを出してレバーを捻り、水を流し手を洗う。
そしてドアノブを回してドアを押す、いや、押せない。
(゜д゜@(?)
彼女は首を傾ける。厳密にいえばドアは動く。
しかし然るべきところまで開かない。
(゜д゜;@(!)
そして気づいた。
廊下に立てかけてあった箱が倒れたのである。
ドサリ、という音もドアが開かないのもこの箱が原因だった。
廊下の幅は75cmで箱の大きさもおそらくそれと同じか、もしくは小さいくらいなのだろう。
丁度箱が廊下にすっぽり収まり、トイレのドアをつっかえ棒のように押さえてしまっているのである。
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(゜д゜;@(―――!―――!!)
慌てて何度もドアを押すが1cmほど隙間ができるだけで、そこから先はびくともしない。
箱も未開封だから丈夫なのだろう。当然、引いても何も起きない。工具なんかはリビングにならあるかもしれないが、トイレに置くわけがない。
何か連絡手段があるかもしれない、とポケットをまさぐるが携帯電話は昨日から充電器に差しっぱなしであったのを思い出す。
( д ;@
閉じ込められた―――。そう気づくのに時間はかからなかった。
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そうなるとこの狭い空間でできることは限られてくる。
(゜д゜;@「すみませーん、誰か聞こえますかー?」
あらやだはかれこれ1時間ほど声を出し続けている。
(゜д゜;@「内藤さーん、聞こえるーー!?」
しかし、いまだに反応はない。そして思い出す。
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――――――
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|三三o三三|
| August |
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| 12 .ノ
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(゜д゜@「あらやだ。内藤さん家、今度海外旅行に行くの?」
J( 'ー`)し「ええ。家族全員で」
(゜д゜@「うらやましいわ〜。どのくらい向こうにいるのかしら?」
J( 'ー`)し「思い切って2週間ほど。
息子のホライゾンは今から楽しみでしょうがないみたいで」
――――――
( д ;@
あの時「今度」と言っていたが、もうその「今度」というのはすでに過ぎてしまったのだろうか。
いくら防音加工を施しているからといって、壁をたたいて呼んでいるのに気づかない、というのは考えにくい。
おそらく内藤一家は今頃どこかの国でバカンスを楽しんでいるのだろう。
-
そうなると808号室に助けを求めても意味がない。
そうなると反対側の810号室の鬱田さんはどうか。
しかしそちら側にも先ほどから呼んでいるが気づく気配がない。
810号室は隣といっても、トイレからだと廊下と部屋、そして分厚い壁を挟んだ向こう側にあり、声が届いているか分からない。
そもそも、ここ1年間家主である鬱田ドクオの姿を見ていない。
もちろん下の階にも足を踏み鳴らして、気づかせようとしている。
しかし、真下の709号室の埴谷さんは数か月前に奥さんと夜逃げをした、と聞いている。そして今はまだ空き部屋になっていたような…
とはいえ、叫ばなければ気づいてもらうことはできない。
あらやだは叫び続けた。
-
それからまた1時間ほど経過した。
(゜д゜;@「…暑い」
閉じ込められたショックで忘れていたが今は夏。日によっては35度を超すこともある。
(゜д゜;@「水…」
当然、トイレに飲み水を置いたりはしていない。
しかし、同時に水は当然のようにあった。
抵抗はあった。本来飲むためのものではない。手を洗うためのものだ。
しかしながら手を洗える、ということは害は基本的にはないとも言える。
テレビでも言っていた。熱中症を予防するには何よりも水分補給が大事である。
人間は水がなければ3日も生きられないのだ。
(゜д゜;@
背に腹は代えられない。レバーを捻ると水が流れる。
ゴクリ
(-д-;@
特に苦かったり変な味がするわけでもなかった。ただ、しばらくこうして水分補給をしなければならないと思うと何とも言えない気分になった。
その後も定期的に水分をとりつつ夜遅くまで助けを求めていたが、結局、反応は何もなかった。
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あらやだとは珍しい
支援
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|三三o三三|
| August |
| .|
| 16 .ノ
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(゜д゜@(………)
目が覚めて腕時計を見ると9時前を指していた。いつもよりも遅い目覚めである。
あらやだはトイレの棚の上の掃除用具を取り出した。
(゜д゜@「いつまでここにいるか分からないからね〜。しばらくお世話になりますよ〜」
いつもよりも念入りに磨いたトイレは少しばかり涼しげに感じることができる。
そして掃除用具を片すと
(゜д゜@「あら?」
彼女はあるものに気づいた。
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そこにあったのは塩だった。といっても普通の塩ではなくいわゆる「清めの塩」と呼ばれるものである。
それはいつだったかに出席したお通夜か何かで余分にもらってきたものだった。
そういえばテレビで水分だけでなく塩分も必要だと言っていた。水分補給と同時にこれからは塩分も摂るようにしよう。
トイレの水よりずっとましだ。
(゜〜゜@
塩を口に含む。少し口の中がさっぱりした気がする。
さて、今日は気づいてもらえるだろうか。
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結局その日も全く反応はなかった。
いくらたたいてもいくら足を踏み鳴らしてもいくら呼んでも何も起こらなかった。
声を出しすぎて喉が痛くなったくらいだ。
(゜д゜;@(大丈夫。きっと明日は気づいてもらえる!だから大丈夫!!)
そう自分に言い聞かせながら少量の塩を含み便座の上で目を閉じた。
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|三三o三三|
| August |
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| 16 .ノ
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(゜д゜@「すみませーん!誰かー!聞こえませんかー!?」
次の日もあらやだは定期的に水と塩分を摂りつつ声を出し続けた。
すると頭上からウィーン、とかガガガガッ、という音が聞こえてきた。
(゜д゜;@(何かしら…?)
(゜д゜;@(もしかして貯水タンクの工事!?あれって今日だった!!?)
チャンスだ!と彼女は思った。ようやく、「いる」ということが分かる人が現れたのだ。
そしてありったけの力を入れて叫んだ。
(゜д゜#@「すみませーーん!助けてくださーい!!!」
しかしいくら叫んでも機械の音が彼女の声を遮る。
どうすれば伝わるか?そこで、外へとつながっているであろう換気扇へと目を向けた。
ここからなら聞こえるかもしれない。むしろこのチャンスを逃したらあとはない!
そう思いながら彼女は助けを求める。
(゜д゜#@「だれかー!!だしてくださーーーい!!!」
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だが現実とは無情なものである。
散々うるさかったドリルなどの音がいつの間にか聞こえなくなっていた。
工事が終わって作業員はもう帰路についているのだろうか。
(゜д゜#@「きこえますかーーー!だれかーーー!!!」
それでもあらやだは呼び続けた。
-
だが、数分もしないうちに彼女は声を出すのをやめた。
( д #;@「暑い…」
いくら水分と塩分を補給しているからといって暑くなくなるわけではない。
それに、
( д ;@「おなか、すいたな」
いくら水分と塩分を摂っても腹が膨れるわけでもない。
-
( д ;@
あらやだは昨日よりもたくさんの水を飲んだ。もはや抵抗はなかった。
それでも食欲は抑えられない。
(゜д゜;@
目に入ったのはトイレットペーパー。
確か以前に段ボールを食べて暮らした芸人がいたっけ。
材質は違うけど似たようなものなのかな…
( д ;@
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口の中の水分が吸い取られるようだ。
( д ;@「ウェッ」
そのまま便器に向かって吐く。すぐ近くに便器があってよかった。
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|三三o三三|
| August |
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| 16 .ノ
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目を覚ますと時計は5時を示していた。ただ、アナログ時計なので朝なのか夜なのか分からない。
もしかしたら丸1日寝ていたのかもしれない。
( д @
あらやだは疲れ切っていた。いくら助けを求めても誰も来てくれない。
このマンションには誰もいないのではないか。そう思ってしまう。
ドアを押す。相変わらず少しは動くがそこから出せるのは小指一本くらい。
(゜д゜@「もしわたしが男だったら、ドアとか蹴破れたかもしれないのになー」
(゜д゜@「というか、わたしが男じゃなくても誰か家にさえいれば、外から簡単に開けてもらえるのになー」
そう独り言ちながら別れた夫のことを思い出す。
(゜д゜@「あいつは…」
(゜д゜@
(゜д゜@「あらやだ。あいつと一緒に生活するのが想像できない」
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そして次に思い浮かべるのは娘のこと。
大雑把な自分と違い真面目に育った娘。夫と別れた後は女手一つで育て上げた。
(゜д゜@「あの子は都会で頑張ってるからね〜」
(゜д゜@
(゜д゜@
( д @「あいたい…」
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|三三o三三|
| August |
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| 16 .ノ
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その次の日、あらやだは叫び続けた。
(゜д゜;@「すみませーーーん!!閉じ込められてますーーーーー!!!」
(゜д゜;@「だしてくださーーーい!!!」
しかし、相変わらず反応はない。
(゜д゜#@「ドアがあきませんっ!!!!」
(゜д゜#@「たすけてっ!!!!!」
-
壁をたたく。
(゜д゜#@「内藤さーん、きこえますかー!!!?」
内藤一家はどこかの国でまだまだバカンスを満喫中。
(゜д゜#@「埴谷さーーん、いませんかーー!!!」
埴谷夫妻はどこかの町でひっそりと暮らしている。
(゜д゜#@「鬱田さーーーん、いるんでしょーーー!!!??」
鬱田ドクオはとっくの昔に樹海のどこかで首をくくっていた。身寄りのいない彼の身元が判明するのにはまだ時間がかかる。
-
(゜д゜#;@「だれかーーーー!!たすけてーーーーっ!!!!」
(;д;#@「たすけてよーーー!!!」
(゜д:#@「たすけろやっ!オイッ!!!!」
(;q;#@「だじゅげでょ〜〜〜〜〜」
(;q;#@
(;q;@
(;д;@
(;д;@
( д @「たすけて、トソン」
あらやだは娘の名を呟いた。
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|三三o三三|
| August |
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| 20 .ノ
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ミセ*゚ー゚)リ「ふぃ〜、よーやく落ち着いてきたねー」
(゚、゚トソン「そうですね」
(-、-トソン「ですがここで気を抜いてはいけません」
ミセ*゚ー゚)リ「トソンちゃんはマジメだな〜。そりゃそーなんだけどさー」
ミセ*´ヮ`)リ「でも、これを過ぎればようやく休みだよ〜」
(゚、゚トソン「今年はちょっといろいろありましたからね。むしろ休みがもらえるなんて思いもしませんでしたよ」
ミセ*´д`)リ「あうー、でも遅いよ〜、もっと早くから休みもらって遊びたいーー」
(゚、゚トソン「そこは仕方ないと割り切るしかありませんね」
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ミセ*゚ー゚)リ「トソンちゃんはまた実家に帰るの?」
(゚、゚トソン「ええ。あ、お母さんに連絡しなければ」
ミセ*゚ー゚)リ「そっか、あ、ちょっとトイレ行ってくるね〜」
そう言うと芹沢ミセリは出ていった。
そして荒谷トソンは携帯電話を取り出す。
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(゚、゚トソン(『おかあさん おげんきですか 1週間後に帰ります トソン』)
(゚、゚トソン([送信]、と)
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン(はやくおかあさんにあいたいな〜)
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|三三o三三|
| August |
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| 16 .ノ
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ヴー、ヴー
リビングに置かれた棚の上の、コードにつながれた携帯電話が震える。
その携帯電話に届いたメールを開く者は誰も、いない―――――
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幅75センチメートルの廊下とそれと同じくらい、もしくは少し小さい箱のようです
おわり
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すみません、最後の最後にミスりました
幅75センチメートルの廊下とそれと同じくらい、もしくは少し小さい箱のようです
おわり
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ぬおお〜〜!!
なおせてねぇっ!!
幅75cmの廊下とそれと同じくらい、もしくは少し小さい箱のようです
おわり
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これで本当に終わりです
失礼しました
そして、ありがとうございました
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完全にツミですね
乙
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仰天ニュース理解
これは怖い
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鍵が壊れてトイレから出られなくなったからベルトのバックルでドアを削り開けた人もいたような
ともかく乙
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返信返って来なくて嫌な予感がする可能性も…無くはないと言ってくれ…
乙
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おつ
幽霊話やサイコホラーとは違ったベクトルの怖さだった
トイレ行くのがこわい
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>>40
幅75cmの廊下とそれと同じくらい、もしくは少し小さい箱さえ無ければ大丈夫だから安心しろ
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なんとなく思いついたので投下します。
幅75cmの廊下とそれと同じくらい、もしくは少し小さい箱のようです
蛇足
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|三三o三三|
| August |
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| 23 .ノ
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(゚、゚トソン「…」
荒谷トソンが母親にメールを送って3日が経ったが、いまだに返信が来ない。
(゚、゚トソン(おかあさん、どうしたのかな)
(゚、゚トソン(風邪でもひいてるのかな…)
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「……ゃん、…ちゃん」
「トソンちゃん!!」
(゚、゚;トソン「はっ…、す、すみません!」
気づくと同僚の芹沢ミセリがファイルを片手に立っていた。
明らかに怒っている。
ミセ#゚ー゚)リ「山場を越えても気を抜くなって言ったのは、どこのどいつだっけ〜?」
(゚、゚;トソン「本当にすみません!すぐやります!!」
そうだ、今は仕事中だ。手を止めてはいけない。
ミセ*゚ー゚)リ「どしたの?最近ぼーっとしてることが多いけど」
(゚、゚トソン「いえ、別に…。ただ、先日母親に送ったメールの返信がまだ来てなくて」
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ミセ*゚ー゚)リ「う〜ん、気にしすぎじゃない?」
ミセリはペンをくるくる回しながらそう言った。
(゚、゚トソン「まあ、そうかもしれませんが…」
確かにミセリの言う通り心配のし過ぎだとも思う。
大雑把な母親のことだ。単に返信するのを忘れているだけかもしれない。
だが、今までにそんなことはなかった。むしろ普段は送った文の何倍もの文量で返してくる。
そんな母親が娘からのメールを忘れたりするだろうか。
そう言うとミセリは
ミセ*゚ー゚)リ「夏風邪でもひいてんじゃないの?」
と、さらりと答えた。
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(゚、゚トソン「夏風邪…」
言われてみれば、この時期母親は家から出ず
クーラーのガンガン効いた部屋に閉じこもってほとんど外に出ることがない。
そんな生活をしていれば体調を崩してもおかしくはない。
(゚、゚トソン「そう、ですよね…」
夏風邪なら大したことはないだろう。
(゚ー゚トソン「どっちにしろあと少しで休みですからね」
ミセ*゚ー゚)リ「そうだよ。休みになったらすぐに帰ればいいじゃん!」
(゚、゚トソン「もともとそのつもりではありました」
どうせあと数日で帰ることができる。そうだ、母親のところに行く前に風邪薬でも買っておこう。
(゚、゚トソン「さて、仕事の続きをやりますか」
ミセ;´д`)リ「うへぁ」
ミセリは机の上に溜まった書類を見てため息をついた。
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|三三o三三|
| August |
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| 26 .ノ
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あれから3日後。
予定よりも仕事を早く終わらせることができたため、1日だけ早く休みをもらうことができた。
(゚、゚トソン
トソンは母親のいるマンションのある郊外の町へ向かう電車に乗っていた。
陽はだいぶ西に傾き、色づきはじめたイネが光を照り返しきらきらと輝いている。
子供のころ母親と何度も見た景色だ。
最近はあちこちで新たな住宅の建設が進んでいる。
この田んぼもいつかは見られなくなってしまうのだろうか。
それから電車に揺られること数分。目的の駅に着きホームに降りる。
各停しか止まらない駅だが自分以外にも降りる客は結構いた。人の流れに乗って改札を出る。
正月にも来ているはずだがそれでも懐かしく感じるのはなぜだろうか。
そんなことを考えながら彼女は薬局に向かった。
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あのあと、トソンは再びメールを送っていたがやはり返信はなかった。
(゚、゚トソン(おかあさん、返信できないほど体調悪いのかな…)
陳列棚に並んだ風邪薬を選びながらふと考える。
母親が病気になることはめったになかった。そのせいで急激な体調の変化に体がついていけなくなってしまったのかもしれない。
食事はとれているのだろうか。着替えはできているだろうか。洗濯物やごみは溜まっているだろう。
いろいろな心配がつのる。
(-、-トソン(帰ったらやらなければいけないことがたくさんありそうだな…)
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薬局からマンションへ向かう道中に小さな商店街がある。
そこでは時代のあおりを受けて閉店してしまった店もいくつか見受けられるが、まだ多くが細々と営業を続けている。
和菓子屋「処凡庵」もそういった店の一つである。トソンはそこの前で立ち止まった。
(゚、゚トソン(今回はどうしよっかな…)
「処凡庵」は和菓子屋ではあるが、和菓子と同じくらい洋菓子も取り扱っている。
中でもカステラはこの店の一押しの商品で、彼女は帰省するたびにこのカステラをお土産代わりに買っていた。
だが、母親はまだ体調が良くなっているか分からない。病み上がりの体にカステラは少し辛いものがあるかもしれない。
(゚、゚トソン「…」
しばらく考えた後、彼女は店のガラス戸を引いた。
それでもやはりこのカステラを欠かすことはできない。
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父親がマンションから出ていったのはトソンが10歳の誕生日を迎えてから数日後のことだった。
両親の仲が冷え切っていたのは幼かった彼女も感づいていたし、いつかそういうときが来る、ということもなんとなく分かってはいた。
できるだけ普段通りに振る舞おうとした。
それは、母親に心配をかけたくなかったから。
母親は仕事の量を増やしていた。帰りが夜中を過ぎることも多くなった。
自分のせいで母親に負担をかけるわけにはいかない。
わたしがしっかりしなくては―――。
トソンの表情から笑顔が消えていた。
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そんなある日、いつものように学校から帰って部屋で何もせずにぼんやりしていると、いつもよりも早く母親が帰ってきた。
(゜д゜@「あらやだ。まだ明るい時間なのに部屋に閉じこもっちゃって。出てらっしゃい」
どうしたのだろう。
(゜д゜@「今日はお土産があるの。たまにはこういう贅沢もいいわよねー」
いつもならまだ働いている時間なのに。
(゜д゜@「処凡庵さんのところのカステラ。前から食べてみたいと思ってたのよー」
仕事は大丈夫なのだろうか。
(^д^@「あらやだ。あんたがわたしの仕事なんて気にしなくていーの」
おかあさんが笑っている。
(^д^@「わたしはあんたのかーさんなんだから」
わたしのおかあさん。大雑把でおおらかな優しいおかあさん。
(^д^@「さ、手を洗ってきなさい。一緒に食べるわよ」
子供のわたしでも分かる。おかあさんは無理をしている。
それでも―――。
おかあさんと一緒に食べたカステラはしっとりとしながらもふわふわで、とても優しい味がした。
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(´・ω・`)「毎度あり。お母さんにもよろしくね」
思い出のカステラが入った紙袋を片手に店を出る。
あの日以来母親とよく買いにいくようになったため、店主のショボンさんとは顔なじみであった。
(ちなみに母親が病気かもしれないことを告げると、ゼリーもおまけに、と渡してきた。
断ろうとしたが断り切れなかったのでお言葉に甘えることにした)
(゚、゚トソン(ショボンさん、だいぶ白髪が増えたな〜)
そんなことを考えながら道を歩く。空はまだうっすらと明るさが残るが、ちらほら星も見え始めている。
これで必要なものは全部そろった。あとは帰るだけだ。
すでにマンションの白い外壁も見えている。
携帯を取り出し、母親に電話をかけてみる。出る気配はない。
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|三三o三三|
| August |
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| 16 .ノ
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エレベーターに乗り「8」を押す。ドアが閉まりゆっくりと上へあがる。
8階に着く。エレベーターホールを出て、通路を歩く。下には駐車場が見える。
「806」、「807」、「808」そして「809」。着いた。
表札には「荒谷」と書いてある。
ピンポーン
と、チャイムを鳴らす。返事はない。
鍵を差し込む。
ガチャリ
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ドアを開けて玄関に入る。
(゚、゚トソン「おかあさん、ただいまー」
鍵を閉めながら靴を脱ぐ。何か変なにおいがする。
やはりごみが溜まっているのだろうか。
(゚、゚トソン「またカステラ買ってきたよ」
(゚、゚トソン「おかあさ」
彼女の視界に入ったのは幅75cmの廊下。
そして、そこにすっぽりと収まりトイレのドアを押さえるようにして倒れている箱があった。
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幅75cmの廊下とそれと同じくらい、もしくは少し小さい箱のようです
蛇足
( д @母親までの直線距離は3m79cmのようです(゚、゚トソン
おわり
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いいあらやだを見たせいで余計悲しくなったわふざけんな乙
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乙 これは心にくる
-
乙
気づけるタイミングがあっただけにキツイ...
-
乙
変な臭いって…希望は無いんですか…
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乙 これはしんどい
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