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魔法使いえりぽん避難所Part2

1 名無し募集中。。。 :2015/07/29(水) 23:59:12
狼で進行中の魔法使いえりぽんの避難所です

871 名無し募集中。。。 :2017/09/11(月) 14:48:07


里保はのびのびと戦っていた。

愛理の教えを実践しながら、
その流れに蜘蛛の糸を乗せて周囲へ広げる。

魔力を練りこんだやや太めの糸だが、
敵は戦いに気を取られているため糸にかかっても気づいていない。

里保はそのまま縦横無尽に動き、

敵の攻撃をいなしながら自身の『巣』に絡めていく。


「こんなもんかな…。」

程よい頃合いを見て間合いを取った里保が刀に魔力を込めると、

握った刀から青白い電流が光り、
一瞬にして周囲を感電させていった。


やはり皆と戦うのは楽しい。

緊張感とはまた違う、頼もしさとか、いろんなことを感じれる。


里保も別に戦うことが好きというわけではないが、

里保は皆となら、もっともっとやれる気がしていた。

872 名無し募集中。。。 :2017/09/11(月) 14:48:39


一方、里保の部下である亜佑美は
里保の戦いを少しでも吸収しようと必死だった。

優樹たちとの連携は里保と同じような気持ちで戦っているが、

こと里保に関しては如何に技術を学んでその経験をも吸収するか
という所に重点を置いていた。

里保の近くで戦う分、自分の負担は軽減される。

また、里保が鈴木愛理から学んだという流れを感じながらの戦い方も、
菅井トレーナーの教えを活かすことで
割と使えるようになってきたという事が亜佑美に余裕を生んでいた。


だがまだ足りない。

まだ、里保には追い付けない。



亜佑美はふと空を見上げた。

時は間もなく夕暮れ。
心地よい風に太陽が傾き始めている。


そろそろ戦いが終焉に向かう。

そんな気がして、亜佑美は再び気合を入れ直した。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

873 名無し募集中。。。 :2017/09/17(日) 21:09:19
新スレ
娘。小説書いた!『魔法使いえりぽん』76
http://matsuri.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1505649568/

874 名無し募集中。。。 :2017/09/20(水) 03:18:41
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「まーちゃん!」

遥の声に優樹が体を沈めるとほぼ同時に
遥の水柱が頭上を通過し、眼前の敵にクリーンヒットする。

二人はすかさず左右に展開すると
間に挟んだ敵を遥が水縄で制止、
そこへ逃げる間もなく優樹の鉤爪が襲った。


序盤と比べて確実に敵は減っているのが分かる。

地の利を活かしているお陰で遥もまだ魔力の心配はない。

衣梨奈と里保も、
そして里保の近くでチラチラ視線を飛ばす亜佑美も、

このままいけば何とか押し切れそうだ。
それは衣梨奈と亜佑美も同感であった。

里保は唯一、多くの戦闘経験から
勝利を近くにして気を緩めることはしなかったが、
それでも客観的に見て戦況は詰めの段階に入っていると考えていた。



だが、その状況は突如として逆転した。

875 名無し募集中。。。 :2017/09/20(水) 03:19:29


「お前ら!! 攻撃を止めろ!!!」

叫んできたのは敵の1人だった。

もちろん皆は「そんな挑発に乗るワケがない」と瞬時に判断したのだが、

次の言葉に皆は一斉に振り向いた。


「地下室に居た 譜久村聖 と 鈴木香音 を連れてきた!!!

 騒ぐようならコイツから殺す!!」



衣梨奈は耳を疑った。

二人は敵に見つかりっこない。今も家に居るはず。

でも、奴は今、確かに『地下室』と言った。


幻を見ているわけではない、今ここは魔法ではなく現実の世界。

居るはずがない。なのに……。



「みずき!!! 香音ちゃん!!!!」


「えりぽんごめん!! 聖バカだから!! ごめんなさい!!!」


そこには悔し涙を流す聖と敵を睨みつける香音がいた。


それを見た全員の魔力が一気に増幅する。

876 名無し募集中。。。 :2017/09/20(水) 03:20:00

「おいおい、どっからそんな魔力出て来んだよ。

まぁそれにしても、あの魔法は本当に役に立つ。
こいつらの隠し場所までペラペラ吐いてくれるとは。

おかげで手間が省けたよ。」


敵の言葉に、衣梨奈は目を見開いた。


あの時だ。自分が香音ちゃん達の幻覚を見た時。

あの時、思わず「地下室にいるんじゃ…」と口走ったんだ…。


それは紛れもなく、衣梨奈の致命的なミス。

そのせいで、大切な二人を傷つけるなんて…。



「かえせ……。

 二人を……、

二人を返せ!!!!!!」



衣梨奈の魔力が爆発的に高まる。

放出される莫大な魔力は、彼女が完全にキレたことを
一瞬で周囲に知らしめた。


「えりぽん! 落ち着かんと!!!

 二人は人質じゃけん! 刺激せんで!!」

里保が慌てて衣梨奈を抑える。

877 名無し募集中。。。 :2017/09/20(水) 03:20:38

敵の手には短刀が握られ、
衣梨奈の魔力に気圧されたその刃先は、聖の柔らかい首元を
今にも裂いてしまおうかと言わんばかりに食い込んでいた。


「コイツの首を落とされたくなきゃその魔力を抑えろ。あと鞘師里保、

 お前はとりあえず刀収めろ。」

「二人を放せ。」 「断る。」

「まず聖の首からナイフを放せ!!」

「断る!! お前達は指図できる立場じゃねぇんだよ。
 
いいから黙って従え馬鹿ども。」



「みんな、近くへ。」

里保が敵への鋭い視線はそのままに、皆へ声をかける。

反撃のままならない状態で
皆を孤立させるのは危険と判断した為だった。

幸い、敵も里保の指示を『大人しくするための行動』とみなしたようだ。


敵は里保達を取り囲むように近づき、

聖と香音は里保達から25メートル程離れた場所で止められた。



「…ハルの攻撃じゃ気づかれます。」

遥が小さく呟く。


目に見える物体では、まず周囲の敵に気づかれるだろう。

かと言って里保の蜘蛛糸の魔法も
動きを操ることまではできないため使えない。


ならば…

878 名無し募集中。。。 :2017/09/20(水) 03:58:11

里保は左手に鞘を取り出した。


「それは…。

いくら何でも遠すぎます、鞘師さん。」


里保がやろうとしているのは風に乗った抜刀術。

風の魔法をブースターとして魔力解放と同時にトップスピードを出し、

敵までの25メートルを一気に強行突破するつもりだった。

だが風の魔法は発動を敵に気づかれ易いというデメリットがある。

里保が飛び出すよりも先に気づかれてしまえば
二人の元へたどり着く前に敵が間に入るだろう。
それだけ二人との距離は遠いのだ。


そしてコースを塞がれたら最後、

恐らく里保は大切な仲間を一人失うことになる。


だが里保にはそれ以上に確立の高い方法は考えられなかった。

どのみち敵の言う通りにしても今度は周りの皆が袋叩きに合うだろう。

脅迫に従って状況が良くなることなど無いに等しい。
それなら里保はリスクを取ってでも皆を助ける道を選びたかった。

今はダメだった時の事など考えている暇はない。


必ず助ける。里保が刀を鞘へ収め始めたその時だった。


「里保、ここはえりに任せて。」


不意に、衣梨奈が声を上げた。

それは、とても力強い声だった。

879 名無し募集中。。。 :2017/09/20(水) 03:58:42

「何か思いついた?」

「うん。あのさ、


えりって物体移動が得意やん?

やけんその魔法でえり自身を動かせば
瞬間移動みたいに動けるやろ?」


「えりぽん自身をスケボーみたいに? 無茶だよ!!

そんな無茶苦茶なことして二人が殺されたらどうするん?!」

里保が思わず声を荒げる。

「でも、もうそれしか方法ないやろ?

それに、今のえりなら大丈夫やけん。」

「いや何が言いたいのかぜんぜん分からんのんじゃけど。」

「どのみち風の魔法は悟られるけん。」

「えりぽんの意味わからん魔法よりかはウチの方が絶対いいから。

 てかそもそもえりぽんの魔法、生き物はムリとか言っとったじゃん。」

「うん。でも今ならできる。 自身はある。」

どこからそんな自信が…、と呆れる里保に割って入ったのは亜佑美だった。

880 名無し募集中。。。 :2017/09/20(水) 04:02:29

「じゃあ、お二人でやるっていうのはどうでしょう。」


里保は思わず亜佑美を睨みつけてしまったが、

衣梨奈はどうやら乗り気のようだ。


「直線は里保にあげる。

 えりは里保の隣でいいっちゃよ。」


里保は一瞬考えたが、返事は思ったよりもすぐに決まった。

「…いいよ。じゃあ亜佑美ちゃんはどぅー達の防御をお願い。

でもえりぽん、絶対二人には…」
「それはこっちのセリフっちゃよ。」

衣梨奈が小さな笑みを浮かべると、フーッと深い息を吐いた。


衣梨奈のこの自信、客観的に考えれば絶対に不可能なはずなのに、

…里保は心のどこかで、衣梨奈の言葉を信じていたのだろうか。


自分も随分と能天気になったな、
と自嘲しながら里保もゆっくりと息を整えた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

881 名無し募集中。。。 :2017/09/20(水) 04:03:42

さっさと終わらせるとか言いながらぜんぜん上げてないですが…

日曜日には終わります。多分。

882 名無し募集中。。。 :2017/09/21(木) 18:37:46
めっちゃ楽しみ

883 名無し募集中。。。 :2017/09/22(金) 08:22:54
二人の作戦がこの危機的な状況を覆す事が出きるのか!?流石にこの大事な場面で鞘師はこけたりはしないだろうな…決めるときは決める!それが『鞘師里保』

最後まで楽しみにしてます

884 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 01:38:01

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「やっと大人しくなったか。

 それで、ちゃんと言う事聞いてくれる気になったか?」
 
「まぁどのみちこの状況じゃあ大人しくするしかないよな。」


敵のヤジをよそに
里保は刀を鞘に収めながらゆっくりと片膝をつき、

隣に立つ衣梨奈もまた
荒れていた魔力を整えながら全身に纏い、集中力を高める。

そしてその後ろでは、
亜佑美をはじめとした三人が静かに、
だが極限の集中を以ってタイミングを探っていた。


「…っておいおい、何止まってんだよ。

 さっさと刀を置けっての。」


敵に苛立ちの表情が出てくる。


だがまだ、二人は動かない。

里保は鞘に収めた刀を持って膝をついたまま。

衣梨奈にいたっては棒立ちだ。

このリラックスした状態が構えなのだろうか。


亜佑美はタイミングを計りかねていた。

885 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 01:38:31


と、衣梨奈からいつもと違う感覚を覚える。

それは頼もしく、そしてどこまでも幸せな魔力…。


「あれ、神社の…!」

遥が思わず声に出した。


そう、それは皆が大好きな神社で感じる
独特な感覚と同じだった。

和みスポット、だとか幸せスポット、などと呼んでいるが、

なぜそれが今、衣梨奈の魔力に混ざっているのか。


亜佑美は一瞬だけ思考を巡らせたが、
答えは出さず、直ぐに考えるのをやめた。


今は自分の役割を全うする時だ。



衣梨奈の魔力は、
荒々しさから徐々にリラックスしたものへと変わってきた。

それに呼応するかのように、
後ろでタイミングを計る3人の神経も冷静に、
水を打ったようなクリアな状態になっていた。

886 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 01:39:42


流れるように、風が1つ。


…来る。


それは一瞬、息を吸う間の出来事だった。


タイミングを掴んでいた亜佑美でさえ
反応が遅れたほどのスピード。


二人の魔力が光ったのを見た敵は
慌てて小刀を振りかぶる。

その鋭利な刃は、
二人の柔らかく温かい首へ入り込んでいく
手前でピタリと止まった。


「なっ…!?」


敵はこの状況を飲み込む間すら与えてはもらえなかった。


聖は自らの死を覚悟して目をつぶっていたが、

聖を押さえる手が離れるのと同時に
聖を包む優しい感覚に目を開ける。


「恐い思いさせてごめん。でも、もう大丈夫やけん」


聖の心へ流れ込んでくる温かい感覚。

思い出せないけれど、
楽しい夢を見た後のような、幸せな気分。

つい数秒前まで死を覚悟していたのが嘘のように、
聖の心はリラックスしていた。


「ありがとう、えりぽん。」

衣梨奈の笑顔は本当に癒される。

887 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 01:53:05


「えりぽん、来るよ。」

香音に声をかけていた里保が敵に向き直る。


「さっきの魔法、今も使える?」

「もう無理。」

「なんじゃそりゃ。」


「でも里保が来てくれとったお陰で
 刀を止めた後に敵倒すのがスムーズやったよ。」

「…嫌味に聞こえるんじゃけど。」


「お前ら調子乗ってんじゃねぇぞ…」

怒りに震える敵達の魔力が一気に高まり、

合図を待たずして突如皆に襲い掛かってきた。


待ち構えていた亜佑美が遠距離攻撃を防御しつつ、
スノードームを精製して聖と香音を覆う。



「怒っとるのはこっちも同じ。」

里保と衣梨奈は正面から突っ込んでいく。


亜佑美はスノードームに最大限の魔力を注ぎつつ周囲を防御し、

他の皆はそれを囲むようにして応戦する。


と、外円の敵が突然魔力を失っていく。


衣梨奈達がその方向を見ると、

M13地区の魔導士達がもの凄い勢いで流れ込んで来るのが見えた。

「てめぇらマジぶっ殺してやる!!」

「クズ共がぁ!!!」


聖や香音と交流のある魔導士を筆頭に、
皆がその怒りを敵にぶつけているのだ。

888 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 01:53:38


「みなさん、お待たせしました!

 ようやく街の魔導士全体がまとまりました。

 街のみなさんが、こちらの味方です!」

なだれ込む住民に紛れて春菜が合流する。


こうなったら後は駆逐するだけだ。

衣梨奈・里保を筆頭に
今まで以上の勢いで敵を圧倒していく。


衣梨奈が向かってくる水球と雷撃を砂壁でガードすれば
横から優樹がカウンターで襲い掛かり、

敵が遥を囲めば里保が炎を纏った刀で敵を薙ぎ払い、
遥がそれに合わせて水柱を叩き込む。

住民たちも互いに連携しながら次々に敵を片付けていき、
もはや完全に流れを掴んだと断言できるまでになっていた。



「お前が生田の娘か。」

不意に、男が衣梨奈の前に立ちはだかった。

おそらく、敵のリーダーであろう。

里保も近くでその男に注意を注いでいた。

前線に現れたという事は、やはり敵も策が尽きたという事か。


「そうですけど、あなたはここのリーダーですか?」

「だとしたら?」

「本気でやります。」

衣梨奈の魔力が再び跳ね上がる。


「…クソガキが。こちとら計画おじゃんでお先真っ暗なんだよ。

ぶっ殺してやる。」

敵の魔力は相当なもの。里保も衣梨奈の隣に立つ。

889 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 01:54:09

「里保、ここはえりが…」

言い終わらぬうちに、敵が突進してきた。

その速さは狗族に匹敵し、咄嗟にガードした衣梨奈は
あまりの衝撃に攻撃をはじいてしまう。

懐に入り込もうとする敵を慌てて蹴りで牽制し、
その隙に里保が刀で切り上げるがそれは空を切る。

身体を反った敵はそのまま瞬時に回転を利かせて
里保の肩へと蹴りを入れた。

「里保!!」

背後から殴りかかる衣梨奈の拳を左腕でガードすると、
その腕を払いつつ右拳で衣梨奈のみぞおちを狙う。

だが衣梨奈も咄嗟に掌底で拳を受け止め、
その右手を両腕で掴んだまま跳び上がって相手の顔に蹴りを入れた。

体勢の崩れた敵だがなんとかふんっばって里保の刀を受ける。

だが里保の刀が赤く光ったかと思うと、男の体を炎が包んだ。


「ぐぅっ…。 だが…、まだ!!!」

魔力を焼かれながらも火の手を脱した男は魔力で刀を取り出し、
里保と激しくぶつかり合う。

間を取るたびに仕掛けてくる衣梨奈は
炎や雷の魔法で牽制したり斬りかかったりすることで攻撃を防ぎ、

とにかく里保を仕留めようと
素早い太刀裁きと移動スピードで里保をジリジリと押していく。


敵はもう少々の被弾は捨てている。

今は執念だけで、とにかく目の前の里保を消そうとしている。

対する里保はかすり傷でも太刀を受けないよう立ち回っているため、
どうしてもその動きに差が出てしまう。

このままではいずれ手傷が増えていく。


どうすれば…

890 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 01:54:53


「里保、飛んで!」

衣梨奈の声で里保が風に乗ると、
衣梨奈の砂壁が敵の太刀を止め、飲み込んだ。


「今!!!」

衣梨奈の合図で疾風に乗った里保が
炎を纏った刀を振り抜く。


敵はうめき声を上げながらその場に倒れこんだ。



「大丈夫?里保。」

「うん。」

駆け寄る衣梨奈に返事を返す。

だが、里保の鋭い感覚はもう一人、異質な男の存在を捉えていた。


「ブラボー!  まさかやっつけちゃうとはね。びっくりした!」


40代後半だろうか、敵意のない魔力を纏った男が拍手をしていた。

891 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 01:55:23

「誰ですか。」

「そんな冷たい対応しないでよ。
俺さぁ、ちょっと君たちに惚れちゃったんだけど。」


と、倒れていた男の言葉に里保は警戒をさらに上げた。


「…おい、依頼主は出しゃばんねぇでくれないかね。

 これは俺たちの仕事なんだよ。」

「うるさいよ。てかそもそも俺の依頼と違うことやってんじゃん。

 それに人質なんて最悪だよ? もうあり得ないっての。」 

「黙れ。とにかくじゃまし…なぃ…、で…」

男は言い終わらないうちに気絶した。


いや、気絶させられた。

「もう、ほんと困っちゃうよな。

 ゴメンね?おれも傭兵雇うの初めてだったから
 こんないい子たちを攻撃するなんて思ってなかったわけよ。」


「あの〜、おじさん何者なんですか?」

まったく話についていけていない衣梨奈がしびれを切らせて質問してみる。


「あ、どうも。ユースケ・サンタマリアです。」

892 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 01:55:55


聞きなれない名前に戸惑うが、ユースケはお構いなしに話を続ける。

「いやオレはね、ここM13地区が協会と距離を置いてんのに
なんでこんな風にやっていけてんのかなぁって気になったわけよ。

でもさ、えりぽんだっけ?君みたいな子たちがいるんなら納得したよ。
オレもうファンになっちゃったもん。」

「えー、ほんとですかー?!」

素直に喜ぶ衣梨奈の横で、まだ里保はユースケを疑っていた。

「あの、協会の襲撃はなぜやったんですか? それにB.T.Sも。」

「それも彼らが全部勝手にやったことだよ。

 俺も様子見ようと思って話聞いてみたら
全然違う方向に進められちゃってたからびっくりしたんだよ。

だから人質になってた二人にはほんとごめんな!
俺のせいで危ない目に合わせちゃってほんと申し訳ない。」

敵の雇い主が頭を下げる。戦場においてなんとも異様な光景だった。


「でもほんとさぁ、これからもえりぽん達のこと応援してっから。

がんばってよ!」


嘘を言っているようには見えない。
だが、里保は執行局員として引き下がれなかった。

「すみませんが、このまま逃がすわけにはいきません。
 一緒に執行局へ来てください。」


だが、それを止めたのは意外にも衣梨奈だった。

893 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 01:58:21

「いいよ、里保。 ユースケさんは大丈夫。」

「えっ、何で?

 ここで引き下がるわけにはいかんじゃろ。

 局長になんて言う気?」

「パパには『解決したからもう大丈夫。』って言っとけばいいけん。」

衣梨奈が涼しい顔で話す。

「里保の任務は『相手の目的を探ること』やろ?

 それにここはM13地区やし。
勝負してもない相手を捕まえるのはタブーっちゃろ?」


考えていないようで痛いところをついてくる。

里保にはこれ以上食い下がることはできなかった。


「オレも執行局には行かないけど
えりぽん達の質問に答えたりするぐらいなら協力するよ。」

「じゃあユースケさん、こんどまた話聞かせてくださいね。」


初対面の相手をこんなにもあっさり信用するなど
里保には到底できなかったが、

優樹に目をやってみると、こちらも特に警戒している様子はない。

こういう場合は衣梨奈と優樹を信じる方が良いのだろう。


聖と香音を傷つけようとした敵は倒したし、

敵も既に戦意喪失している。


里保は赤く彩られた空に終局を受け入れた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

894 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 01:58:53


衣梨奈達の戦いを遠くから眺めていた菅井は、
柔らかい表情で神社へと入って行った。


「まったく、思い出すまでずいぶん苦労したわよ。」

そう毒づく菅井の身体をピンク色の魔力が包んだ。

――ありがとうございました、菅井先生――

優しいピンク色の魔力から、そんな声が聞こえた気がした。


いや、たぶんきっと聞こえたのだろう。

なんてったって彼女のことだから。


「いいのよ、あたしも久しぶりに教えることができて楽しかったわ。

まぁ、あなたの記憶が無いのはたいへんだったけどね。」

ピンク色の光が申し訳ないと言うように揺らめく


「伝承の魔法、我ながら良い魔法ね。

 無理矢理にでも引き寄せてくれて嬉しかったわよ。
 

感謝してます、ありがとう。」


その言葉に呼応するかのように
菅井を包む魔力が強い光を放つと、

光が消えた後、菅井の姿は無くなっていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

895 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:13:54
まさかのユースケw

菅井ちゃんは…さゆが呼び出した魂だったって事なのかな?

896 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:28:19
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「…そうか、みんなケガはないんだな。

 …あぁ、わかった。今日はとにかく休んでくれ。ありがとう。」


通信を切った生田は、大きな安堵のため息を吐いた。



「じゃあ局長、行ってきます。」

「嗣永、俺は本当に居ない方がいいのか?」

「はい、やっぱりお別れはチーム水入らずで。」

桃子は少し力なく笑うと、
メンバーの元へ足を進めた。



稲場の離脱。

執行局の、もう1つの大事件だった。


カントリーガールズが襲撃に遭った後、

愛香は持病の発作により協会の警護任務から外れていた。

これは以前より懸念されていたことではあったが、
稲場の状態は想定より速いペースで悪化していた。


リスクを抱える人間を戦闘に出すわけにはいかない。

今の状態の稲場に、できることはなかった。

897 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:28:52


「…正直、すごく悔しいです。」

メンバーを前にしてまず出たのは、
愛香の率直な思いだった。

それからみんなに迷惑をかけて申し訳ないという謝罪、

でも新メンバーの成長やみんなを信頼していることを思うと
大丈夫だという確信があることが伝えられた。


「これからは、治療と共に一人の人間としても、
もっともっと様々な経験や勉強をして、
成長していかなくちゃいけないと思ってます。

みんなには、迷惑をお掛けしてしまいますが、
すみません。宜しくお願い致します。」


梨沙は感情をこらえきれず、愛香に抱きついた。


こうしないと、愛香がどこか遠くへ行ってしまうような、
また大切な何かを失ってしまうんじゃないかというような、

そんな気持ちが沸き起こって仕方がないのだった。


メンバーを失うのは、これが初めてのはずなのに。

898 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:29:24


「…待ってるから。待ってるからね。

絶対、帰ってきてね。」

それを聞く愛香の目からも涙が流れる。

「うん、ありがとう梨沙ちゃん。」

温かい、きれいな涙だった。

「まなかん!!」

他のメンバーも、もう誰一人溢れ出る涙をこらえようとせず
二人のもとへ駆け寄る。

「ありがとうみんな。

まなか、少しでも早く帰ってこられるように頑張るね。」


桃子も皆と同様、
愛香が絶対に執行局へ帰ってくることを信じていた。


今度こそ失わない。諦めない。
今度こそ、守り抜く。

桃子は静かに、だが断固とした誓いを立てた。

899 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:30:06


・・・・・・・・・・・・・・・・・



日が落ち、辺りが暗くなった頃、

M13地区の住民たちは続々と海岸に集まっていた。


衣梨奈達も同様に、海岸に集まっていた。

無事だった聖と香音も、ずいぶんと元気になっていた。

二人はそれを衣梨奈の魔法のおかげだと言っていたが、
衣梨奈は「そんな魔法は知らん」と、どや顔で笑っていた。


「はるなんすごいね、この戦いで一気に昇進しちゃったよね。」

集まった住民達への挨拶回りに奔走する春菜を見ながら皆が笑う。

「でもよかったよ。これでM13地区も安定しそうだから…ぁあっ!」

階段をおりる鞘師が突然声を上げたと思うと、

たった数段の階段を見事に踏み外し、
砂浜に突っ伏して体を震わせていた。

「いったぁい…」

「ヤダ!アッハッハッハッ!」
「大丈夫ですかぁ!?」

みな笑いながら鞘師に駆け寄る。

「はるなんにも見せてあげたかったね。」
「後から悔しがるだろうね〜。」

砂を払う里保をよそに春菜の姿を探すと、
春菜は初老の魔導士とにこやかに話をしている所だった。

900 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:30:36


「流石は情報屋さんですな、我々のような変わり者をご存じだとは。」

「いえ、変わり者ではなく才能に溢れた方々だと思いますよ。

でも恥ずかしながら、実はワタシも驚いてるんです。」

「ほう、というと?」


「私、皆さんの居場所を調べたことはないと思うんですけど、
何故か皆さんのことを知ってたんです。

誰かに教えてもらっていたような気もするんですけど、
でも覚えてなくて…。」

首を傾げる春菜に初老の魔導士が優しく笑いかけた。

「そうですか。ではこれも何かの巡り合わせということでしょうな。

いやはや、世の中は不思議なことだらけですなぁ。」

「はい。でもそのおかげで、
こうやって今日、皆で花火を見ることができるので。

その巡り合わせに感謝です。」

「そうですな。
 我々も全力で、ご期待に応えさせていただきますぞ。」


春菜は計画を練っていた時から、
今日のような日には魔法花火が必要だと思っていた。

今日のような日には、うってつけ。

以前見た時にでも、その印象が強く残っていたのだろうか。

901 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:31:15


「はるなーん! まだ〜?!」

優樹の催促に振り返ると、

もう皆、準備は万端のようだ。


「じゃあ、あとはお願いします。」

春菜はニコリと会釈をすると、優樹たちの中へ加わった。


「お待たせしました。」

「はるなん!さっきやっさん階段から落ちたんだよ!」

「えー、大丈夫だったんですかぁ〜?」

「いやウチこけてないし。」

「なんで急に白を切り始めるんですか鞘師さん」

「もう、鞘師さんもそんなことはいいから早く座りましょ!」

「いやどうでもよくないし! 大体…わあっ!!」

「ちょ、なんでまたコケてるんすか鞘師さん!」

「あたしたち何もしてないのに!」
「もうサイコー!」

902 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:31:51

ひとしきり騒いだ春菜たちがようやく腰をおろすと、

ちょうど大きな音を上げて、最初の花火が打ち上げられた。



不思議な花火。

衣梨奈達も、そして住民の皆も、
ただただ感嘆の声をあげながら花火を楽しんでいた。


「魔法花火って、お願い事したら叶うかなぁ?」

不意に、優樹が声を上げた。

「まーちゃんそれは流れ星だけだと思うよ。

 まぁでもお願いしといたらもしかしたら叶うかもね。」

「優樹ちゃんは何をお願いしようと思ったの?」

「まさね、優樹達のこと見ててくださいねってお願いした。」

「あ、もうしたんだ。」

「へぇ〜、神様とか?それとも天国の人?」

「いや、死んじゃった訳じゃないんですけど、
 でも神様にちょっと近いかもしんないけど多分違うんですよ。

 なんていうか、空の上と天国の間っていうか…」

「なんそれ、死にかけやない?」

「違いますよ〜!

 とにかく! まさき達のことを見てくれてる人です!!」

「ふ〜ん、そっか。」


「その人はまさき達に1本ずつ薔薇の花をくれてて、

まーたちはそれに金の粉をかけて、
みんなの薔薇を集めて、花束にしなきゃならないんですよ。」

「なにそれ、まーちゃんロマンチックだね。」

「もう、わかんない!? まーの言ってること!!」


「ん〜、なかなか難しい表現だけど、

でも正直、まーちゃんの言ってることを
どこかで素直に受け入れてる自分がいるのは事実だよ。」


メンバーたちは皆、同じ思いだった。

903 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:32:27


「みんなで、これから頑張っていこうね。」

「はるなんは代表になるわけだし。」

春菜は茶々に赤面しながらも、その眼はとても頼もしく見えた。


「じゃあ、気合入れでもしちゃおっか!」

聖の提案で皆が円になり、手を重ねる。

「まーちゃんの言う、聖たちを見ててくれる人に。

 一生懸命、がんばっていきまぁ〜〜っ…」

「 しょいっ!!!!!!!!」



見上げた空には、美しい花火が満開で皆を照らしていた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

904 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:33:14
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


〇Epilogue 



たくさんの絵に囲まれた部屋。


「できた…。」

少女が一人、ちょうど1枚の絵を描き終えたところだった。


花火の絵なんて、初めて描いたなぁ。


急に思い立って描き始めたものだったが、
なんとか間に合わせることができたようだ。


― ピーンポーン ―

「は、はいっ!」

チャイムに思わず姿勢を正し、慌てて階段を下りる。

「あやちゃん、こんにちは。」

ドアを開けると、そこには春菜と、そして…

「こんにちは。」

柔らかな笑顔で微笑むさゆみの姿があった。

905 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:33:57

「あっ、お、お久しぶりです!」

二人を出迎えた少女、和田彩花は
やや緊張しながらも二人を部屋へと招いた。


「やっぱりいつ見てもあやちゃんの絵はきれいだなぁ〜。」

「あ、ありがとうはるなん。

 あ、あとこれ、さっき描き終わったばっかりなんだけど、
 道重さんに見せたいなって、思って…。」

彩花が恐る恐る見せた絵に、二人は感嘆の声を上げた。


「わぁ〜!魔法花火!! あの花火大会の時の絵ですかね!

 あ、ワタシもいる!」

興奮する春菜に、さゆみが優しく目配せをする。

「すごいね。ちなみにこれは、どういうきっかけで描いたの?」

「あ、なんというか、急に思い立ったんです。

 道重さんに見せたい! って。」

「わぁ、嬉しい! ありがとう!」

さゆみの笑顔に、彩花もようやくリラックスした笑顔を返した。

906 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:34:29


「あの、道重さんが、題名を考えてもらえませんか?」

「この絵の?」

「はい。 描いている時から、
この絵は道重さんのために描いていたので。」

「わかった、帰るまでには考えとくね。」





「…じゃあ、いまスパゲッティつくるので、ちょっと待っててください。」

「はるなんも少しは習ってくるといいよ。

 でもお手伝いは程々でいいからね。」

苦笑いの春菜を送り出し、さゆみは再び絵と向き合った。

その表情は清らかで、母性に溢れていた。


「頑張ったんだね、みんな。」


本当に頼もしくなった。さゆみも安心しちゃったなぁ。



さゆみはしばらくその絵を見て微笑んでいたが、

キッチンが騒がしくなってきたのに気づいてようやくペンを取った。



『Message』


そうタイトルをつけると、
さゆみは音程のおかしな鼻歌を歌いながらキッチンへと歩いて行った。




                             完

907 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 12:40:18

ちょいちょい端折ってるので回収してない所もありますが、
ようやく終わりました。

本編や他の外伝からいろいろ設定をもらったり
オマージュを入れたりしてます。

菅井ちゃんは、
さゆが消える前、自分の魔法の影響で
M13地区に何かあっても大丈夫なようにと唯一仕込んでいたものです。

あくまで本編作者さん作『卒業』の世界観とよく似た
パラレルワールドでの出来事ですが。

908 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 13:11:26
避難所の『Message』の結末きたぞ

909 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 13:12:01
誤爆しました

910 名無し募集中。。。 :2017/09/24(日) 23:35:12
>>909

いや、ありがとうございます。by作者

911 名無し募集中。。。 :2017/09/25(月) 11:21:44
完結お疲れ様でした

912 名無し募集中。。。 :2017/09/25(月) 13:51:26
そうか…すでさゆが旅立った後の世界だったのか
なぜ出てこないんだろうと思ってたからこれで納得w
完結お疲れ様でした!やはり鞘師はこけましたねw

913 名無し募集中。。。 :2017/09/27(水) 20:14:50
本スレ落ちてる・・・

そろそろこっちに移行する潮時かな

914 名無し募集中。。。 :2017/09/28(木) 07:28:44
本スレ終わりなの

915 名無し募集中。。。 :2017/09/30(土) 00:43:13
立てば保全の協力は惜しまないけど

916 名無し募集中。。。 :2017/09/30(土) 06:29:05
避難所の外伝もちょうど完結したし…本編作者さんや外伝作者さんが再開する時改めて立てても良いんじゃないかな?

917 名無し募集中。。。 :2017/09/30(土) 07:12:09
iテキストからDropboxにアクセス出来なくなった
鬱だ

918 名無し募集中。。。 :2017/10/16(月) 07:09:11
もうサポートやめたのかと諦めてたらiテキストのアップデート来てた
放置してたSSの続きを書いてみようかな

919 名無し募集中。。。 :2017/10/16(月) 10:32:53
続き待ってます

920 名無し募集中。。。 :2017/10/18(水) 07:29:30
待ってるよ

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