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娘。小説『魔法使いえりぽん』 避難所

1 : 名無し募集中。。。 :2014/05/27(火) 11:53:55
わいわいカキコの新狼が機能停止したようなのでこちらに避難所

狼現行スレ
娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 13
http://hello.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1398421520/


2 : 名無し募集中。。。 :2014/05/27(火) 11:57:09
過去スレ・登場人物等はこちらへ
          ↓
娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 まとめサイト

AA込みの本編はもちろん外伝や小ネタに用語集
さらに、やっつー漫画まで読める充実サイト!!!

http://www61.atwiki.jp/eriponmagi/


3 : 名無し募集中。。。 :2014/06/01(日) 11:58:03
スレ立ておつ


4 : 名無し募集中。。。 :2014/06/27(金) 21:44:02
 
       * ∠\`・* 。
        | /★`、 `*。
       ,。∩______フ *  
      +  ハo´ 。`ル *。+゜ <
      `*。 ヽ、  つ *゜*
       `・+。*・' ゜⊃ +゜
       ☆   ∪? 。*゜
        `・+。*・ ゜


5 : 名無し募集中。。。 :2014/08/09(土) 12:48:00
『そう、それでだ里保!』
「はい、なんでしょうか?」
『今度のBerryzの任務にお前も付いて貰おうと思っている。
 本当は衣梨奈や石田もついて行かせたいと思うのだが…』

『えりぽんはあんな状態ですし、亜佑美ちゃんにはまだBerryzと
 組めるほどの経験はありませんからね…』
言葉を濁す生田のあとを受け、里保は続けた。

『そういうわけだ。なのでこれから局長命令を伝える。
 鞘師里保、来週より5日間現在の任地“M13地区”を離れBerryzと合流、作戦を執行するように!
 なお現地ではキャプテンの指示に従いまた他のメンバーともコンタクトをきちんととること。以上だ。』

「…5日ですか?今回のはだいぶ大規模なんですね?」
『そうだ、今回の任務は危険も伴う。長期の構えをとっておきたい。』
1日程度と考えていた里保はふとさゆみの顔を思い浮かべる。

…なんか怒りそう。

そんな里保の気持ちをくんだのか生田は言葉をつなげた。


6 : 名無し募集中。。。 :2014/08/09(土) 12:50:55
『M13地区のことは心配するな。道重さんには話をしてある。
 道重さんもBerryzとは結成当初から関わりがあるからわかってくださった。
 監視はしばらく石田に任せておけば大丈夫、だそうだ。』

里保は思わず吹き出した。自分が監視の対象になっているというのに言い方がさゆみらしい。

「わかりました。では、荷物をまとめて今週末に一度局に伺います。
 …はい
 …では。」

局長からの通信を切った里保は空を見上げる。Berryzとの仕事。
これは相当気を引き締めてかからないとやられてしまう。合流までまだ時間がある。

(えりぽん…まだ起きてるかな?明日魔法の組手と部屋の片付け手伝ってもらおう。
 …亜佑美ちゃんには部屋を見せないようにしないと…。)


一方、執行局の局長室では
里保との会話を終えた生田の元を訪ねてきたBerryzのキャプテン佐紀が話をしていた。

「局長、最後にわがままを聞いていただきありがとうございます。」
佐紀が深々と頭を生田に向かって下げる。

「気にするな。あの子、里保にとっても今回の任務は必ずプラスになる。
 いや、きっとお前たちがしてくれるだろう。」


「いやいや、そんな大袈裟すぎます…。」


7 : 名無し募集中。。。 :2014/08/09(土) 12:53:43
本当に10年という歳月は長いものだ。
昔は自分との打ち合わせすら上手くできていなかったのに、今では任務中でも1日に数回、確実に現状の報告を行ってくれている。
個性の強いあのメンバーをよくまとめてくれていた。

だが、それも来週の任務で最後…。ならばと思い生田は彼女らにしかできないようなものを用意した。

「今週末には里保も合流するそうだ。」

「鞘師ちゃんかぁ。本当に久しぶりだなぁ。
 メンバーにも伝えときます。では!」

生田は部屋を出て行く佐紀を見送ると机上に置いてある任務指示書を手に取り眺める。
「こちらも気を引きしめんと、いかんな」
そうして、再び机に置くと局長室をあとにしたのであった。



電車から降り立った里保は思わず夏の暑さに目眩を感じる。

(だめだ、こんなんじゃ怒られちゃう…)

里保は携帯端末を取り出し、局長からの指示書と待ち合わせの場所を確認する。

「えっーと……。
 川沿いの神社?川?神社?そんなもん見当たらないけど……。
 って!ヤバい、集合時間まであと5分しかないじゃん。どこじゃー!」


8 : 名無し募集中。。。 :2014/08/09(土) 12:57:24
 ・

「ねぇキャプ?」
「んー?」

「鞘師ちゃん、駅の反対側で何やってんだろね」
「!!」


「これは遅刻したら…ヌフフ」

「ちょっと、桃?顔がにやけてるわよ」
「ももちはいつもニコニコなんですー!」

「ほら、馬鹿なこと行ってないで、迎えに行ってあげようよー。」

「なら、まあが行ってよー。ちぃ、疲れちった」

「あたし?やだよー

ってあれ?熊井ちゃん?どこ行ってたの?」

「鞘師ちゃん来るまで神社でお願いごと
 『もっと身長伸びますように』って(笑)」

「熊井ちゃん、それ以上伸びたら本当に公式に引っかかるって」

ゼイゼイ
「お待たせしました!遅れてすみません。」

気づくとメンバーの元にいつの間にか里保が到着していた。


9 : 名無し募集中。。。 :2014/08/09(土) 13:02:28
佐紀は腰掛けていたガードレールから立ち上がると一同を見渡す。
その顔は凛とした美しさを纏っていて局長室にある幼い少女の面影はどこにもない。
大人だ、里保はそう思った。
佐紀はコホンとひとつ咳払いをすると話を始めた。

「今回の任務は私が局長にお願いして難度Fにしてある。」

佐紀の言葉に里保は耳を疑う。
難度Fの任務…。

里保自身若手最強クラスと呼ばれるほどの実力の持ち主であったが個人での任務は難度Dが最高であった。
緊張する里保。

他のメンバーも難度Fという響きに戸惑いが隠せないのかざわざわして……。

「んー?Fって何番目?
 えっーとABC…まぁいつもと一緒か」

「シー!ちぃちゃん、アホがバレるから!Fは7番目だから。」

「みや、違う違う何か増えてる(笑)」

思わず小声で呟きながら指を折って数えてしまった。

(ひょっとしてこの人達、難度Fの意味を知らない?
 まさかね、10年やってるんだし…)

「あー、わかった」
突然桃子が手を挙げる。
みんなの注目を一斉に浴びた桃子は少し胸を張りながら、

「Fだから…“普通”のF!」

奇妙な静寂が辺りを包み込んだ。
里保は背中を冷や汗が流れるのを感じた。なんとかせねば…。


10 : 名無し募集中。。。 :2014/08/09(土) 13:08:29
「あ…」

言葉を発しようとした里保の腕を茉麻がつかむ。
そしてゆっくりと目配せをする。余計な気遣いは無用、そういうことだろうか。

「だからといってわたし達Berryzがやることは変わらないワケでしょ?
 楽しくやってサクッと解決!いい?」

先ほどの桃子の発言はなかったかのように振る舞う一同に里保はずっこけそうになった

が恐らくこれは彼女らのスタイルなのだろう。10年というのは予想外のコンビネーションも培うようだった。

茉麻が尋ねる。
「で、今回の任務内容は?
 キャプ、今回は局長とあんまり打ち合わせしてないみたいだし、
 鞘師ちゃんいるってのもなんかあんの?」

その言葉を聞いて佐紀はニヤッっとすると驚きの言葉を一同に告げた。

「これから、ここにいるメンバーで執行局を襲撃する。」


11 : 名無し募集中。。。 :2014/08/09(土) 13:09:34
とりあえずここまでです

ってまたタイトル変えてないよ…

『果実の想い』で


12 : :名無し募集中。。。 :2014/08/09(土) 16:49:26
Berryzの外伝面白そうで良いです!
動画作者ですがアクセス規制で本スレ書き込めないorz
どなたか転載していただけると幸いです



動画のつづきを投稿させていただきました
次回でまーどぅ編完結です

その38
http://youtu.be/uS3GPXWFi38
http://www.nicovideo.jp/watch/sm24195628


13 : :名無し募集中。。。 :2014/08/09(土) 17:58:18
転載ありがとうございました!
youtubeの方がエラーが出ているようなので
後でもう一度正しいURL投稿します


14 : 名無し募集中。。。 :2014/08/10(日) 00:21:54
試運転


15 : 名無し募集中。。。 :2014/08/10(日) 08:42:21
Youtubeの再UPなんとかできました

その38
http://youtu.be/jpvtFoegPdQ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm24195628


16 : 名無し募集中。。。 :2014/08/10(日) 22:37:42
動画作者です
動画のラスト投稿させてもらいました
申し訳ないですが本スレに転載していただけると助かります



RPG風動画のまーどぅ編ラスト投稿しました
勝手ながら今回をもって定期的な動画投稿は終了させてもらいます
初心者が作ったへたくそな動画を見て頂きありがとうございました!
この作品に出会わせてくれた作者さんとスレの皆さん本当に感謝!!

その39
http://youtu.be/4ygCtVBd3hE
http://www.nicovideo.jp/watch/sm24207468

ゲームは今月中にアップします!


17 : 名無し募集中。。。 :2014/08/10(日) 23:35:50
ベリ編待ってました!お疲れ様です
やっぱり各々の得意とする魔法が何なのかが一番気になる所なので
こんなのなのかな?と書き込みたい気持ちを必死に抑えております
あとまあさんがりほ2を静止した際掴んだものがお尻でなく本当に良かったですw

&ゲーム作者さんいつもお疲れ様です
遂に完成が見えてきたんですね楽しみにしております


18 : 名無し募集中。。。 :2014/08/11(月) 07:28:57
>>11
こんなん見つけた…泣いた

ベリ映画風
http://i.imgur.com/OgtijqU.jpg

パンフの裏
http://i.imgur.com/pSnJI83.jpg


19 : 名無し募集中。。。 :2014/08/11(月) 09:14:04
えぇぇぇ!

何この奇跡みたいな一致w
すげぇ 表紙にしたい


20 : 名無し募集中。。。 :2014/08/11(月) 21:11:24
えりぽん


21 : 果実の想い :2014/08/12(火) 20:45:01
だが、誰も言葉を発しようとはしない。むしろ何かを決心するような顔をしている。

(みんな本気なんですか…

………それだけは、それだけはダメじゃ……)

「しみ…」

「鞘師ちゃん。これ以上駄々をこねるなら悪いけどここで死んでくれる?」

「!」
なおも佐紀にその考えを問いただそうとした里保に突然桃子がスッと右手の小指を突き出し、里保へと向ける。

「ウチらはキャプテンを信じるよ。いつでも、いつまでも」

他のBerryzのメンバーからも魔力が渦巻いているのを感じる。いくら里保でもこの人数の執行魔導士を相手にして勝てる自信は全くなかった。それでも、この人達を執行局に、衣梨奈の父親の元へとやるわけにはいかない。


22 : 果実の想い :2014/08/12(火) 20:49:05
里保は足元に風の魔法を瞬時に発動させ、桃子から距離をとると同時に刀を取り出し魔力を纏わせる。


「へぇ、さすが若手最強っていわれるだけあるねー。」
桃子は目の前で瞬時に起きた魔力のコンビネーションに感心した様子を見せる。

無言で刀を構える里保。

「でも…、まだまだだよね。」


突然背後から声が聞こえた。気づくと桃子がいつの間にか背後にいる。

「んな!?」


「コユビーーーム!」
とっさに身をかがめ回避する里保。可愛げな愛称と裏腹にエネルギーは凄まじいもので、橋の欄干が一部消し飛んでいる。


23 : 果実の想い :2014/08/12(火) 20:53:06
新たな魔力の接近を感じ、里保は考える。

受けっぱなしでは防げない、と。

里保は振り向きざまに桃子へ蹴りを放つ。突如反撃に転じた後輩の動きに驚き桃子の行動が少し遅れた。ねらい違わず桃子の脇腹へと当たる蹴り。その衝撃に桃子はバランスを崩す。

(今だ!ここで一気に畳み掛ける!!)

里保は手にした刀に炎を纏わせ一閃、横へなぎ払う。
その切っ先は確実に桃子の首を通過し…

驚きの顔を見せた桃子は残像と共に消えた。

「ダメじゃん、もも!鞘師ちゃん、執行魔導士なんだから遊んでるとやられちゃうよ〜。」

「いやあ、茉麻!助かったよ〜。ももち、感謝してる!」


24 : 果実の想い :2014/08/12(火) 20:55:37
「いやぁそれにしても本当に強いね…、ちょっとこれはキツいなぁ。」

里保は目の前のやりとりに注視しながら、内部で魔力を練り上げる。中国武術で言う『内功』に近いらしい。

少し前までは偉大な先輩達だと思っていた。だが、心は変わりゆくもの…。ここてウチが止めなければ……。


……できればこの技は放ちたくなかった…。


ふとした心の揺れが一瞬の乱れを生んでしまった。魔力がほんの少し漏れる。

「もも!茉麻!気を付けて!!鞘師ちゃん、めっちゃ魔力溜めてる。」

「えっ!?」
ふざけて軽口を叩き合っていた茉麻と桃子は雅の叫び声でこちらをみた。

(ヤバいっ、気づかれた。
でも…もう遅い…)


25 : 果実の想い :2014/08/12(火) 20:57:43
「ごめんなさい!!」
里保はその場で大きく叫ぶと一気に魔力を刀に注ぎ込んだ。刀が煉獄の旋風を帯びる。
その魔力の強大さにBerryzメンバーから笑顔が吹き飛んだ。


26 : 果実の想い :2014/08/12(火) 21:00:11
続け!


27 : 果実の想い :2014/08/12(火) 22:47:56
冒頭がぬけていた・・・

第3話  忘れた思い
「今頃、里保のやつビックリしてるんだろうなぁ。
 キミの昔の仲間はいい意味でも悪い意味でも全力だからな」

生田は協会本部へ行く道すがら後ろをついて歩く秘書に声をかける。
その問いかけに苦笑する女性。忙しい執行局の局長である生田の仕事をサポートするために1年ほど前から現場へと復帰した石村。
ただし今魔法を使うことはほとんどない。

「でも珍しいですね?
局長がこの手のものに里保ちゃんを巻き込むなんて。」

石村は手元にある2枚の任務指示書を見比べながら生田に声をかける。

「あの子も成長してきた。
そろそろ大人の事情というものを知ってもいいだろう。
だが石村君、今回の件は私と君と佐紀しか知らない。
我々も対応を間違えると、本当にやられてしまう。」

 ・

「これから、ここにいるメンバーで執行局を襲撃する。」

「「「「えっ!?」」」」

「え…???」
佐紀から告げられた言葉はその場にいた全員に衝撃を与えた。
特に里保は目を白黒させている。

「えっ…そんなうそですよね?
 うちが局長からもらった指示書にはそんなこと一言も…」

「あぁ。その指示書、嘘。
 鞘師ちゃんかしてもらうために私が局長にお願いしたの。」

「…そんな!

 もしそれが本当なら私はこの任務には参加できません。
 だって執行局襲撃なんて…。皆さんもそうですよね?」

里保は周りにいた他のメンバーを見回す。
誰か反対してくれ…そんな思いで見てみるが


28 : 名無し募集中。。。 :2014/08/12(火) 22:53:18
ちょっとー!!!一番大事な所じゃないですか!まぁ普通に話繋がって違和感なく読めたけどw


29 : 名無し募集中。。。 :2014/08/13(水) 10:04:41
何か変だと思ったらやっぱり飛んでたか(^_^;)


30 : 名無し募集中。。。 :2014/08/15(金) 09:55:25
みなさんの設定も色々あるなあ


31 : 名無し募集中。。。 :2014/08/16(土) 08:53:23
では続き


32 : 果実の想い :2014/08/16(土) 08:55:44
「うっ、ウソ!ダメだって」
「ちょ、ちょっと鞘師ちゃん!!タンマタンマ!」

目の前に慌てて佐紀や梨沙子が飛び出して来る。
だがもう止められない。

止めるつもりもない。

里保は上半身を切り、溜めをつくると一気に刀を振り抜いた。

「鞘師流魔法術奥義 紅焔鎌鼬三笊!」

刀から放たれた3つの爪は炎をその身にまといながら高速でBerryzへと向かった。

(やってしまった…。まさか鞘師ちゃんがこんなにガチになるとは)


佐紀の判断は早くそして的確であった。奥義というに相応しく魔力も威力も規格外。

いくらBerryzメンバーとあってもこれを受け止めるのは死に急ぐというものだった。

(トホホ〜…。ただの有事訓練に鞘師ちゃんも参加させるはずが。

 局長に怒られる…。)


33 : 果実の想い :2014/08/16(土) 08:56:51
「全員プランE!生き残れ!」

佐紀はそう叫ぶので精一杯であった。
全員がその場を離れるのを確認。そして自身は防壁を張りつつ離脱する。


一陣の熱風が頬を掠めすぎていった時、全ては終わっていた。


佐紀が恐る恐る顔を出し、周りを伺う。

だが、そこには何もない。ただ里保が1人ポツリといるだけ…………。



里保の魔法によって神社を始め周辺はきれいさっぱり焼き払われていた。


34 : 果実の想い :2014/08/16(土) 08:59:40


「「「「「ええぇぇぇぇぇぇぇええぇぇ〜?」」」」」

本日、2度目の驚きの声だ。

「ホントにゴメン!鞘師ちゃんの実力が知りたくてつい悪ふざけを…」

目の前で佐紀を始めBerryzのメンバーが頭を垂れている。
その誰の顔も黒すすだらけであった。

どうやら、主犯格は佐紀で梨沙子はあまりにもいつもと異なる任務命令に疑問を感じて
佐紀に事情を聞いていたようだが、他のメンバーはその場のノリであったようだった。

「いやぁ、ごめんね!鞘師ちゃん。
 てっきりキャプが本気かと思ってさぁ!許してにゃん!!」

(そ、その場のノリであそこまでできるの……。)
改めて、Berryzの絆を感じた里保。


ただ、できることならもう少し違う方向に向けてほしかった……。

「じゃあ、本当に恨みがあって攻めるワケじゃないんですね?
 良かったぁ」

ホッと胸をなで下ろす里保。

究極魔法なんて打ってしまったが、話を聞くとばかばかしくて怒る気も失せてしまった。

「でっ?一体どんなプランでいくんですか?」

「えっ?」
「えっ?」

里保の問いかけに佐紀が聞き返す。
一瞬の空白…。


35 : 果実の想い :2014/08/16(土) 09:02:26
「いやいや、訓練計画書ですよ!
 協会内で戦闘事項を起こす時は必ず提出しなきゃなんですよ?」

「へっ、へぇー……
 

 誰か出した?」

一同は揃って首を振る。

「た、大変ですよ!そうなると、局は訓練の情報を知らないってことになりますよね?
 teamQとかスクランブルしてきますよ!」


「あっでもー…」
佐紀は思い出したかのように口を開く。

「局長は知ってる。『5日で、落とせたら大したもんだ』って!」

里保は大きくため息をついた。
なんとなく局長の意図が読めてくる。

「まぁ、要はみんなでぶっ飛ばしてやりゃあいいんだろ!
 BerryzはBerryらしくノープランで正面衝突上等さ」

梨沙子がそう言うとメンバー全員が爆笑した。


「そう言われるとそうだよね。計画とか守ったことないもんね。」

「当たって砕く……なんかかっちょいー!」


「よし、そうと決まれば早速出発!」


こうして里保は計画性のない戦いの中に巻き込まれることになった。空を舞うカラスのみ里保の苦悩が伝わるかのようにないていた。

(トホホ…ウチ生き残れんのかな)


続け


36 : 名無し募集中。。。 :2014/08/16(土) 09:04:12
ということで朝から何やってんだって感じですけどw

とりあえず前編はここまでかな
後編はさらにカオスがww
お付き合いいただければと思います


37 : 名無し募集中。。。 :2014/08/16(土) 13:26:23
更新乙です
本気で殺し合いにならなくてよかった
後編の更なるカオスも楽しみにしてます


38 : 名無し募集中。。。 :2014/08/16(土) 22:43:12
乙です
カオスいいですねえ


39 : 名無し募集中。。。 :2014/08/17(日) 09:08:09
つか煤だらけの顔ってwww髪も焦げててうっすら煙も立ってるんでしょうか?w
ベリさんたちすげえww


40 : 名無し募集中。。。 :2014/08/18(月) 22:36:16
魔法でガードしてなかったらタダじゃすまないんだろうなw


41 : 果実の想い :2014/08/18(月) 23:50:57
ということできょうは新スレ突入だよ記念!

後編の開始です


42 : 果実の想い :2014/08/18(月) 23:55:30
「はーい。えっと、こっちがいろんな魔法を研究している場所です。
 
 研究内容は人によって全然違うんですけど………」

協会に新規登録された魔導士たちを引き連れて亜佑美は執行局を案内していた。


(あぁぁぁぁぁ…、よりによって何で私が……。)
亜佑美は心の中で苦悶に満ちた声を上げる。


話はさかのぼること数時間前…

「えっ、今日鞘師さん居ないんですか?」

今週の任務計画をたてるために里保の元を訪ねた亜佑美であったがあいにく留守であった。
だが、まだ朝の9時……。
普段なら確実に寝ている時間であった。

衣梨奈のところへ行ったのかと思い道重邸を訪れた亜佑美であったが
そこでさゆみと衣梨奈から聞いたのは里保がしばらくBerryzと任務にあたるため出張にでているということだった。

「亜佑美ちゃんの初一人仕事っちゃね」

衣梨奈にそう言われ、急に亜佑美は緊張してくる。

もし…もし…何か起きてしまったら


それに対処するのは自分1人…。

おぼつかない足取りと不安げな顔になった亜佑美を見て、さゆみが優しく微笑んで手招きをする。


43 : 果実の想い :2014/08/18(月) 23:59:09
「石田、大丈夫だって。
 今回、この街でお留守番している間はきっと何も起きないし。」

そこまでいうとさゆみは急にイタズラっぽく笑って、

「まー、今回は生田のパパが相当ノリノリだからなぁ。
 

 ふふっ、楽しみね!」

よくわからないがさゆみは何かを楽しみにしている。
衣梨奈は首をかしげながらさゆみに事情を聞こうとしていたが、
さゆみは華麗に流していた。


亜佑美が口を開きかけた瞬間、協会の通信端末が鳴った。
さゆみは素知らぬ顔でネットパトロールに戻った。
衣梨奈はその後ろでさゆみに何があるのか聞き出そうと騒いでいる。

「はーい、もしもーし。」
しまった、言葉が伸びる。
前から言われている悪い癖だ。

『石田か、生田だ。』

「きょ、局長!」
亜佑美はちらりと衣梨奈の方を見る。

「………あのー、娘さん近くにいらっしゃいますけどー。
 
 ……代わります?」

電話口の先で生田局長が苦笑しているのが聞こえる。

「えっ?私、何か変なこと言いました?」

『いや、気にしなくていい。そうか、お前も衣梨奈に会ったのか…。

 元気そうか?』

「はい」
亜佑美はそう答え、もう一言付け加える。

「…とっても。」
まだ、衣梨奈は騒いでいる。恐らくこの声は届いて居るのだろう。


44 : 果実の想い :2014/08/19(火) 00:02:50
『なら良いんだ。
 さて、里…鞘師のことは聞いたな?

 本日より5日にわたりBerryzと任務を遂行するためM13地区に常駐している
 執行局職員はお前だけになる。』

「はい、それは聞いています。」

『私としては5日間ぐらいであればお前だけで任務を十分遂行できる…と思っているのだが…。』

局長の口調が少し重い。あれっ…もしかして…
恐る恐る亜佑美は尋ねてみる。

「…ひょっとして私、信用されてませんか?」

『いや、そうではないんだが、今、執行局が手薄状態なんだ。
 SもJも出払っていて、早速今日の仕事に欠員がでてしまった。
 もし、石田が良ければその仕事を引き受けて欲しいと思っていたのだが…。
 もちろん無理強いはしない。』

亜佑美は迷った。
里保無きこの時にM13地区に居て具に報告するのは自分の役目…。

だが、局長の必要としているという声に今の亜佑美が逆らえるはずがなかった。
自分が新人であるからという立場の問題以上に衣梨奈の父は全ての事情を理解した上で
自分をこの街に、遥と優樹の元へと派遣してくれた。

ならば少しでも恩返しできれば…。

「やります!私にできることであれば何でも。言ってください!」

『そうか!恩に着る。早速、協会まで戻ってくれ。詳しいことはそこで説明する。
 道重さんにもよろしくな!では』

亜佑美は、通信を着ると早速移動するために道重邸を後にしようとする。
そこへさゆみが楽しそうな様子で声をかける。


45 : 果実の想い :2014/08/19(火) 00:08:15
「どうやって行くの?
 鉄道だと時間かかっちゃうからさゆみが送ってあげるわよ。」

「ええっ!いいですよ、そんな…」

「気にしない気にしない♪」
亜佑美の言う事はまるで聞こえないというように
さゆみが軽く指を振るうと亜佑美の身体を仄かな光が包み込み天空へと一筋の光となって消えた。


亜佑美を見送り本当に楽しそうなさゆみをよそに衣梨奈は不満げだ。


「里保も亜佑美ちゃんもいつからそんな仕事人間になったとね…。」


---------------------------------------

さゆみによって半強制的に送られた亜佑美。
それでも気持ちを入れて任務に望もうと思っていた。しかし任務内容を渡された亜佑美は愕然とする。


「じゃ、任せた!俺は協会の本部で会議だから」


亜佑美を待っていた仕事というのが協会の広報の仕事だった。
確かに未来の執行魔導士を逃さないためには重要な仕事。


だが、人見知り全開の亜佑美にとってこの仕事は想像以上にキツい。
みんな真面目すぎて笑ってくれない。

けして、滑っている訳ではない…。みんな真面目なんだ。
亜佑美はそう思うことにした。


亜佑美率いる一行は次の場所へ向かうために廊下を移動していた。
誰も口を開かない。そもそも執行局への見学を望んでいる段階でそれなりに腕に
覚えのある魔道士が集まっている。

若干自分も馬鹿にされているような気がしてさらに亜佑美は気がめいる。

(うぅー、早く終われー…。)

その時であった。執行局全体が揺れたような気がした。


46 : 果実の想い :2014/08/19(火) 00:18:10
(誰かがトレーニングルームで暴れたのかな…にしちゃ随分と派手なんだけど…。)

亜佑美がそう思い立ち止まった瞬間、

ズシン

今度ははっきりと局が揺れた。

後ろを歩いている新規協会員の何人かが警戒態勢をとり魔力を高める。
そして同時に幾人かの局員が部屋から顔を出した瞬間、局内に緊急時アラームとアナウンスが響き渡る。同時に亜佑美や他の局員の持つ通信端末からも警報音が鳴り響く。


『緊急事態発生、緊急事態発生!
 地下2階 東側ゲート付近にて局内侵入事案発生。
 局員ならびに協会員に告ぐ。
 至急、現場に急行し事態の収束にあたれ。繰り返す……』


アナウンスをきいて一挙に空気が慌ただしくまた張り詰めたものになる。
また、局内の至る所から強力な魔力を感じ取った。


敵襲…しかもよりによってこの執行局を…。
よほど自信があるに違いない。

そう考えた亜佑美はまず、執行局員としてその場を落ち着けようとした。
だが自分が率いている一行は思わぬ事態に色めき立っていた。

「これは行くしかないっしょ!
 みんなで侵入者ぶっ飛ばせば一気に執行局員になれるんじゃね」

「わざわざ試験を受けなくてもいいってことか」
その場にいた全員が魔力を開放し、現場へ向かおうとする。

「だめっ!!」
一同の前に亜佑美が立ちはだかった。

「相手の人数も正体も何にもわからないまま突っ込んでいくのは
 棺桶に頭突っ込むみたいなものよ。前線からの連絡を待つべきだわ」

「お姉さん、ひょっとしてこわいの?」

「!」
図星だった。大した戦闘経験のない自分にとって未知との闘いはもっとも避けたいものの
ひとつであった。

「おねえさん、なんで執行魔道士なんてやってるの?向いてないんじゃない?」

そう言い残すと全員が階下へ移動していった。

亜佑美の持つ通信端末からは先ほどまで前線の音が響いていた。
いまは時折機械音が聞こえるだけである。

続く


47 : 名無し募集中。。。 :2014/08/19(火) 02:02:25
だーいしが巻き込まれたか
見学メンバーがいかにもやられ役になりそうだw


48 : 名無し募集中。。。 :2014/08/19(火) 03:42:18
乙です
相変わらず滑ってるのかだーいし
それにしても魔道士Aとかじゃ一瞬で終わりだなw


49 : 名無し募集中。。。 :2014/08/19(火) 08:13:30
見学してる人はハロプロ研修生だったりして


50 : 名無し募集中。。。 :2014/08/19(火) 08:55:30
(作者)<ぎくっ


51 : 名無し募集中。。。 :2014/08/19(火) 21:22:02
避難所じゃなく本スレでよかったと思うんだけどな
色んな意味で残念


52 : 名無し募集中。。。 :2014/08/19(火) 21:52:07
確かに残念だけど変なのに粘着されて本スレ荒らされるのも作者さんの本位じゃないだろうし・・・お願いした者としては書いて頂けるだけでありがたやです


53 : 名無し募集中。。。 :2014/08/19(火) 22:31:32
荒らすのが生きがいな輩に餌をやることはない
こっちでいいよ


54 : 果実の想い作者 :2014/08/19(火) 23:41:56
読んでくれる人がいれば作者は
場所を選ばないで書きます

ただ、最初の写真から少し離れてしまって申しわけない気持ちです…


55 : 名無し募集中。。。 :2014/08/19(火) 23:54:27
そこらへんは作者さんの腕でつじつま合わせるのはできそうと
勝手に期待w


56 : 名無し募集中。。。 :2014/08/20(水) 00:31:23
いやいや最初の写真はあくまでプロローグ成長した彼女達の物語を読めるのは嬉しい限り


57 : 名無し募集中。。。 :2014/08/20(水) 13:42:55
私が考えるあゆみん絡みのオチと同じだったりするかなあ


58 : 名無し募集中。。。 :2014/08/20(水) 13:45:41
あゆみん=オチ
って絡めるなw


59 : 名無し募集中。。。 :2014/08/20(水) 19:49:15



60 : 名無し募集中。。。 :2014/08/20(水) 21:03:38
滑ってこそ石田亜佑美


61 : 名無し募集中。。。 :2014/08/20(水) 21:15:52
話題の中心でありながら本筋で扱われない
だーいしクオリティー


62 : 果実の想い作者 :2014/08/20(水) 23:57:51
さてちょっと短めに投稿

まず先に謝罪をします
ごめんなさい

ストーリーの展開的にこれがベストだと思ったので特定のファンの方には嫌な思いをさせてしまうかもしれません

その際は一部改編したものを再度投稿します

では


63 : 果実の想い作者 :2014/08/20(水) 23:58:50
さてちょっと短めに投稿

まず先に謝罪をします
ごめんなさい

ストーリーの展開的にこれがベストだと思ったので特定のファンの方には嫌な思いをさせてしまうかもしれません

その際は一部改編したものを再度投稿します

では


64 : 果実の想い :2014/08/21(木) 00:00:14
1人その場に残された亜佑美はまだ行動を決めかねていた。
先ほど言われた一言が心にまだ突き刺さり鈍い響きを立てさらに亜佑美を躊躇させた。

ただ、いつまでもこうしている訳には行かなかった。
時折、聞こえる爆発音はその戦闘が激しいことを物語っている。

(考えろ…考えるんだ…)

自分が執行魔導士としてできること……。

やはり前線にでて闘いの場に就くしかない。そう亜佑美は意を決すると窓から外をうかがう。


(確か、場所は地下2階の東側ゲート付近…。
ここから見えるのかな……ん?

……あれは……まさか)


65 : 果実の想い :2014/08/21(木) 00:04:40
ーーーーーーーーーーーーーー


(遅い…遅すぎる…。)
協会本部での会議場で生田は少しイライラしながらその時を待っていた。


ドタドタドタドタドタドタ


慌ただしい足音が廊下に響く。
そしてその音は会議場の前で止まった。

(きたっ!)
ガチャン!

「生田局長!緊急事態です!!」


石村であった。
石村は会議場のドアを開けると共に声を上げ生田を目で探した。

そして奥の方で立ち上がった生田を見つけると一目散に駆け寄る。そのただならぬ様子に生田は事態の変貌を悟った。


66 : 果実の想い :2014/08/21(木) 00:07:33
「執行局をMKNGと名乗る組織が襲撃しました!
現在、複数の局員と交戦中………。
負傷者が出ている模様です!」

「何だと!?」
自分でも予想以上に大きな声が出た。

MKNG……MKNG……。

「しまった!
『負けん気』か!!石村、戻るぞ!」


そう叫ぶと生田は会議場を飛び出していった。


協会内で転移系魔法は使えない。エレベーターを待つのももどかしく、生田は非常階段を駆け下りた。

そして1階エントランスに飛び出すと入り口に向かって走りながら魔力を高める。だが石村がまだついてきていなかった。生田が少し足を緩める。

「生田局長!先に行ってください!
 今の私は足手まといです。」

後ろからやや遅れた石村が声をかけた。振り向きざまに頷いた生田は再び足を早め、外に飛び出すとクルリと一回転しその場から姿を消した。

続く


67 : 名無し募集中。。。 :2014/08/21(木) 00:35:25
大事な事なのでってやつですねw
MKNG…負けん気?やべぇ元ネタ分かんねー汗
どうせなら分岐って感じで両方掲載して欲しいw


68 : 名無し募集中。。。 :2014/08/21(木) 02:57:53
吉川友
アップアップガールズ(仮)
ザ・ポッシボー
の連合軍が「チーム負けん気」なのです


69 : 果実の想い作者 :2014/08/21(木) 07:02:29
あっ汗
そ そうです大事なことですからw

路線が違うと言うのははっきりしているので分岐というのは一応念頭に入れています


70 : 名無し募集中。。。 :2014/08/21(木) 07:14:40
そっちかーエッグ組ね協会を辞めせられた連中が手を組んだと言うことか
なんか色んな意味で強そうだねぇw


71 : 名無し募集中。。。 :2014/08/21(木) 09:28:33
きっかは基本一匹狼ってイメージ
でも負けん気のみんなとは仲が良い連絡取り合ってるしたまに会うし
元々同門だしね

別設定のきっかだとこの世界の住人じゃないけど

って外野の戯言です


72 : 名無し募集中。。。 :2014/08/21(木) 17:59:34
カオス一直線


73 : 名無し募集中。。。 :2014/08/23(土) 07:39:11
わがまま
マシュマロ


74 : 果実の想い作者 :2014/08/24(日) 01:38:52
ちょっとベリ編書くのガチになってきたw


75 : 果実の想い :2014/08/24(日) 01:40:46
(あれは絶対に鞘師さんだった……。

Berryzと任務について居るはずの鞘師さんがなぜあそこに…?)

階段を駆け下りながら亜佑美は先ほど、自分が窓から見た光景を思い返す。敷地の外から中をうかがっていた。まるでどこからか侵入口を探すように……。

ふと足を止める。階下から話し声が聞こえ登ってくる気配がする。亜佑美はとっさに物陰へ身を隠した。

「嫌だ、離してー、離してー。」

「あー、全くうるさいガキんちょだな。少しは静かにしろっての」

「オイ、早く黙らせろ。誰か執行魔導士残ってたらどうすんだ。」


76 : 果実の想い :2014/08/24(日) 01:42:55
「大丈夫だろ。
 だいたい並みの魔導士じゃ、あたしらには勝てないって!
 特殊チームも局長も居ないのがこれ幸いってやつ?」

目の前を3人組が通り過ぎて行った。そのうち2人は派手な格好をしている。
先ほどから必死に声を上げているのは小さな女の子であった。
亜佑美はある考えが浮かび
そっと物陰から出て2人の背後に近寄る。

(今から私がこの女の子を助ける……。ちょっとカッコイいかも!)

「アハッ」

思わずにやけて声がでてしまった。その声に気づいた2人は振り返り亜佑美を見、魔力を放出した。かなり強力である。

「お前、いつからそこに!」
「こいつ、協会員だ。」


77 : 果実の想い :2014/08/24(日) 01:45:02
「もう……。最近こんなんばっかし。」


亜佑美は自分のしでかしたミスに腹を立てたが今はそんな余裕もなさそうだ。2人から放たれている魔力は相当なもので、里保や衣梨奈にも相当する。

(ちょっとちょっと…。勘弁してよー。

 物音を聞きつけて仲間がくると厄介だからさっさと片付けなきゃ。)

亜佑美は自分の魔力を解放した。その大きさに相手は驚きを見せる。

「へぇー、こいつ執行魔導士じゃないか?

 相手に不足はないわけだね。じゃ、遠慮なくーーー。」

そういうと、1人が突っ込んできた。

迅い!

亜佑美は右足を半歩後ろに引き身をかわす。それと同時に魔力の接近を感じとっさに氷の壁を張った。電撃が壁にぶつかり飛散する。


78 : 果実の想い :2014/08/24(日) 01:47:08
「ほぉ。なかなかなもんだね。」

相手は初撃を交わされたことに驚きの声を漏らした。だが、その一方で亜佑美は思考を巡らす。正直なところ、さっきの防御はたまたまラッキーだっただけで次の攻撃を防ぐ自信など全くない。

それでも、何故か冷静に状況を観察していた。捕らえられている女の子と目が合う。その怯えきった顔は今にも泣き出しそうであった。

(大丈夫。私があなたを必ず助けるわ。)

目で合図を送ると、女の子は小さく、それでもしっかりと頷いた。


79 : 果実の想い作者 :2014/08/24(日) 01:51:01
今晩はここまで!
ベリ編なのにだーいしがでしゃばってるw

オチがやっと自分の中でまとまりました
しばらく続きそうなので今の部分を中編にして3部構成にしていきます

お付き合いください


80 : 名無し募集中。。。 :2014/08/24(日) 03:16:18
あゆみんの活躍キタ━(゚∀゚)━!
続き待ってます


81 : 名無し募集中。。。 :2014/08/24(日) 08:42:05
あゆみんだからなぁww
戦闘中でも滑るんだろうなぁww


82 : 名無し募集中。。。 :2014/08/24(日) 08:47:22
アプガ?かな?誰だらう?


83 : 名無し募集中。。。 :2014/08/24(日) 13:31:13
長編になりそうな予感…嬉しい!だかだーいし感満載で楽しいwベリと鞘師の活躍も期待


84 : 名無し募集中。。。 :2014/08/25(月) 00:57:20
やっぱりだーちゃんは氷の魔法が似合うなあ


85 : 名無し募集中。。。 :2014/08/25(月) 18:57:19
とうしろう君を遥かに上回る氷系最強の魔術師
魔道士か


86 : 名無し募集中。。。 :2014/08/25(月) 22:07:25
だーちゃんは滑りも超一流だからな


 =   =   =   =   =   =   =   =   =   =   =   =   = ツルツルツル---ッ
 =   =   =   =   =   =   =   =   =   =   =   =   =
 =   =   =   =   =   =   =   =   =   =   =   =   =


87 : 果実の想い作者 :2014/08/28(木) 00:16:26
続きができたので投下します

風呂敷を広げすぎている気がする…


88 : 果実の想い作者 :2014/08/28(木) 00:18:32
(大丈夫。私があなたを必ず助けるわ。)

目で合図を送ると、女の子は小さく、それでもしっかりと頷いた。

「何、よそ見してんの?」
相手が亜佑美との間合いを詰める。右足が繰り出された。

とっさに亜佑美は左手首の外側に氷を張り、受け止める。
そして瞬時に手首をかえすと右足をつかみ、無防備な内膝へと拳を放った。

ガキッ

だがその拳は相手の左手によってはじかれる。

(器用なやつ……。)

やはり侮れない。亜佑美は後ろへ飛び、距離をもう一度とる。

A「今のは危なかったね〜。やっぱり2人で倒す?」

B「ふざけるな!
 ここまでコケにされて引き下がるだと?
 あいつはあたしの獲物…。手、出すなよ。」


どうやら、怒らせてしまったようだ。
だが、1人で来るならそれはそれで好都合…。

亜佑美は静かに左に構えると息を一つ吐き出した。

「今度は、こっちから行くよ。」

急に戦闘的になった亜佑美に相手の反応が一瞬遅れる。
繰り出された右拳が今度は相手の左肩を捉える。


89 : 果実の想い作者 :2014/08/28(木) 00:20:36
「グッ…この…。」
ひるんだ体制から放たれた上段蹴りは亜佑美の頬を掠めた。
闘い方が衣梨奈にとてもよく似ている。


そこからは、両者譲らぬ闘いが続く。


右…左…左下…上…右…右下…左上…。


相手から放たれる拳や蹴りの一つ一つを見切り負けじと亜佑美も拳や蹴りを放つ。

ぶつかり合う度に激しい魔法衝撃が廊下に木霊する。

(そろそろ片をつけたいなぁ…。)


亜佑美はそう考え、敢えて壁へと後退しながら近づいていく。
相手は押し込んでいると考え更に手数を増やした。
その中の一つ一つが亜佑美に小さな傷を創っていく。


ついに、壁際までおいこまれた。

「これで、お前も終わりだ…。」

逃げ場のない亜佑美を見て勝利を確信した相手がほんのわずか大ぶりになる。

(この瞬間を待っていた!)

亜佑美は蹴りを左手で受け流すとその反動で左へ回転する。
そして、壁を蹴り上げ、空中で一回転すると体勢の崩れた相手の脳天へ強烈な膝落としをお見舞いした。

「グワっ…。」

悲鳴を上げて相手は倒れた。


90 : 果実の想い作者 :2014/08/28(木) 00:21:58
「ロビン!!」

後ろで少女を捕まえていたもう一人の仲間がその手を離し、亜佑美へと手を向ける。
だが、亜佑美は着地すると同時に一面を氷の世界へと変えた。

相手の足元も氷漬けとなる。

亜佑美は自身の足元のみわずかに融かすと滑るように
相手との距離を詰めその鳩尾に一撃をくらわせた。

音もなく崩れ去る相手。


「ふう、勝った…。」


亜佑美にとって人生初の死闘。文字通り命がけの闘いであった。
だが魔力の消費が激しい。新手が来れば負けるかもしれない。


(早くここを離れないと……。)

「あの……ありがとうございました!」

ふとした声に亜佑美が振り向くと少女は半ば泣き顔になりながら亜佑美へと近づく。
床は氷漬けだ。


動き始めた瞬間、少女がバランスを崩す。


91 : 果実の想い :2014/08/28(木) 00:24:29
「危ない!!」


どすんっ!

すんでのところで少女は体勢を立て直し踏みとどまった。
そして前を見ると亜佑美が尻もちをついている。
少女を助けようと駆け出した瞬間すべったのであった。


「あはははは。……ごめんなさい。」


その撫すっとした亜佑美の顔を見て思わず少女から笑いがこぼれた。
その笑みを見て、亜佑美も少し安心する。

お尻をはたきながら、よっこらせっと立ち上がると少女のもとへと近づいた。

「怪我、ないみたいね?」

「はい、ありがとうございます。本当にありがとうございました。さっき私たちを案内してくれた方ですよね?」

「あぁ!あなたさっきの新規協会員のグループにいたんだ。
 他の子たちは…まさか…。」

「…はい。みんなあっという間にやられちゃって…」
そういうと少女は再び涙ぐみ始める。

「私、なにもできなかったんです。仲間がやられているのに…。」

先ほどの闘いを思い返し亜佑美はそっと少女の頭をなでる。
「…しかたないよ。
 きっとここを襲撃しているやつらはとんでもない実力を持っているわ。
 私たちもいつまでもここにいると危ない。早いとこ局外へ。
 あなた名前は?」

「キソラです。にいぬ・・・・・・。」


92 : 果実の想い :2014/08/28(木) 00:26:13
「私のわがまま計画が…。こんな子たちに邪魔されとはね。」

突如する声に亜佑美は振り向く。


そこにいたのは顔立ちの整った女性であった。
亜佑美が瞬間的に嫉妬するくらいわがままな体の持ち主である。


(こいつ…やばい…)

逃げなければいけない…。本能的に体が悟る。
魔力を高めようと意識を集中させるが先ほどの闘いで亜佑美の魔力はないに等しかった。
蛇に睨まれた蛙のごとく亜佑美もキソラと名乗った少女も動くことができない。


やがて、目の前の女性は静かに右腕をあげ魔力を込めると一気に放出した。
その瞬間亜佑美はキソラをかばいながら精いっぱいの回避をする。
だがその魔力に巻き込まれ亜佑美は背中に攻撃を受ける。


そしてキソラを抱いたまま外へ投げ出されると、そのまま下へ下へと落ちて行った。


93 : 果実の想い作者 :2014/08/28(木) 00:28:22
というわけでこんばんは

外伝3つはさすがにやりすぎと感じています
でも仕方ない書くのが楽しいんだから

次回よりやっと鞘師&べりが戻ってきます


94 : 名無し募集中。。。 :2014/08/28(木) 01:07:58
あぬみーん!!そしてキソラw氷の魔法を上手く使ってますね〜本編だとバトルシーンは少ないから楽しい
しかしよく3本同時進行出来るなと感心しますしかも全部面白い!


95 : 名無し募集中。。。 :2014/08/28(木) 02:05:07
売れっ子漫画家並みの連載量w


96 : 名無し募集中。。。 :2014/08/28(木) 07:54:57
ロビイイイイイイインン
もう一人は誰だよー

きっかは数女のイメージだと悪役向きかな?


97 : 名無し募集中。。。 :2014/08/28(木) 21:49:14
さるべぇえ!!香音ちゃんええ娘や!


98 : 名無し募集中。。。 :2014/08/28(木) 21:53:04
ロビンに言える
となると橋本…かな


99 : 名無し募集中。。。 :2014/08/28(木) 23:53:09
感想どうもです!
ロビンは呼びやすかったからというのは内緒の話w

いやあやっぱり本編も他の作者さんもすげーな数で勝負とか想っても笑顔作者さん書くのはえーしw


100 : 名無し募集中。。。 :2014/08/29(金) 02:02:09
やはりはしもんか・・・


101 : 名無し募集中。。。 :2014/08/29(金) 23:53:14
正直俺Berryz工房あんまり知らないけどベリ編めっちゃ楽しんでます(笑)


102 : 名無し募集中。。。 :2014/08/30(土) 00:50:14
どうもです!
楽しんでいただけるならこれ幸いです
避難所はどうしても本スレに比べたら注目度低くなってしまうからわざわざここにきて読んでくれるっていうのが本当に嬉しい


103 : 名無し募集中。。。 :2014/08/30(土) 06:41:10
あゆみんがぁ~(T_T)


104 : 名無し募集中。。。 :2014/08/31(日) 20:51:13
うがー書きてえけど下手くそ


105 : 名無し募集中。。。 :2014/08/31(日) 20:55:45
分かる!書きたいけど文才無いから人様にお店出来ないw


106 : 果実の想い :2014/08/31(日) 22:45:20
(一体何が起きとるんじゃ……。)

侵入するためにはある程度のプランが必要。
そう声を大にして言い続けてもBerryzのメンバーは誰が先陣を切るかで盛り上がっている。

いや唯一、須藤茉麻だけは腰に手を当て議論を見物してため息をつく。



「鞘師ちゃん、先に偵察に行こうか?」

そうして、他のメンバーを置き去りにして一足早く執行局へと到着した2人………。

だが・・・
いつもであれば、守衛が魔法仕掛けの門を守っている筈なのだが今日は居ない。
門は閉じたままである。

おまけに局内からは、幾つもの大きな魔力を感じる。

「一体何が起きとるんじゃ……。あっ須藤さん、どちらへ?」


107 : 果実の想い :2014/08/31(日) 22:47:59
突如様子をうかがっていた茉麻はその場から後ろへ7歩ほど下がると
植え込みの影から口に指を当てながら里保を手招きする。

言われるがままコソコソと移動する里保。

亜佑美が見た里保はまさにこの移動の時の様子だった。


「須藤さん、局の様子おかしいですよね?この魔力の多さ…。」

「鞘師ちゃん。」
いつになく茉麻は真剣な面持ちで里保へと声をかける。
その声に里保も緊張する。


「たぶんなんだけどね。」
そう前置きをして茉麻が話し出す。

「…たぶん、私達が襲撃する前に襲撃した奴らがいる。」


茉麻の口から出てきた言葉は里保にとって信じられないものだった。

(局長…。)

「そ、そんな……。きょ、局長は……。」


108 : 果実の想い :2014/08/31(日) 22:50:23
「それは大丈夫なんじゃないかな……。

 キャプテンの話が正しいとすれば、今頃協会本部で会議の最中…。
 舞波が伝えているかな……。

 とにかく、今執行局は故意に手薄状態にさせられていた。
 第一特殊チームが一つも中に居ないなんてのは普通有り得ないこと。

 それに乗じたやつがいる。
 しかも結構な人数だよね。」


茉麻は建物をチラリと見る。

「だったら、今すぐ中に入って制圧しないと!」

「今はダメ!それこそ飛んで火にいる夏の虫だよ。
 行くんならチームとして計画立てないと!
 相手の戦力も人数も人質がいるのかも分か
 らないこんな中飛び込んでも現場の状況に押されるだけ。」

「………。」

逸る気持ちを抑えきれない里保に優しく茉麻は言う。

「一度、戻ろう。
 キャプテンに相談して生田局長も捕まえないと。」


109 : 果実の想い :2014/08/31(日) 22:52:33


「誰を捕まえるって?」

突然した声に2人が振り向くと、
シュンとした顔のメンバーとそれを引き連れた生田局長であった。

「全く……。
 ツッコミを入れるやつがいなくなったら
 こいつらの収拾がつかなくなるだろうに。」

局長が呆れ顔で里保達に言う。
どうやらひとしきりカミナリが落ちた後のようだ。

「須藤の言うとおり。作戦を立てることは重要だ。
 だが、相手が相手だ。本当に激しい危険なものになる。


 …まさか彼女らとはな………。」


110 : 果実の想い :2014/08/31(日) 22:55:17
数年前に、魔導士協会の弱体化に危機感を感じた生田達複数の幹部が独自のチームを立ち上げた。
協会もその考えに賛同し資金を提供する。


『逆境に立ち向かう強い気持ちを』
『常に可能性を求めて』

そうして出来上がった2つのチーム。
だが、予想に反してチームの成長は芳しくなかった。
他の幹部が諦めの色をその顔に浮かべ続々とチームを
見放して行くなか、生田だけは諦めなかった。

それでも、時の流れというのは無情なものでたび重なる
任務の失敗に耐えかねついに協会は資金を打ち切った。

生田もしばらくは粘っていたが衣梨奈も里保も育ち盛りの時………。


やむなく生田は決断を下し、彼女たちは協会を後にした。


111 : 果実の想い :2014/08/31(日) 22:56:48
「そのあとしばらくして強力な魔導士の1人が彼女達を追うように協会を脱退した。
 そして一つのチームを作り上げたようだ。

 それがMKNG……。
 彼女達の好きな言葉でよく口にしていたよ。大事な場面での合言葉としてな。


 今思えば、あの決断をしたその時から今日の出来事が起こることは必然だったのかもな……。」


そう過去を語る局長の横顔はとてつもなく寂しそうであった。


続く


112 : 果実の想い作者 :2014/08/31(日) 22:58:23
というわけでこんばんは

ちょっと短めですがのろのろと話は進んでいきます
一体いつになったら落ちにたどりつくのやらw


113 : 名無し募集中。。。 :2014/08/31(日) 23:18:21
でも彼女たちは悪い子たちじゃないんだ
ほんとはすげー正義感溢れる強く優しいすっとこどっこいたちなんだ
それだけはそれだけは分かってくれ


114 : 名無し募集中。。。 :2014/08/31(日) 23:49:28
誉めてるのやら貶してるのやらw『すっとこどこい』に113の元エッグへの愛を感じるww


115 : 名無し募集中。。。 :2014/09/01(月) 13:01:43
あやっぱオチあるんすねw


116 : 外伝の外伝の外伝名無し募集中。。。 :2014/09/02(火) 10:57:55
後で何か投下してみたいな


117 : 名無し募集中。。。 :2014/09/02(火) 15:08:43
>>116
お待ちしてます


118 : 名無し募集中。。。 :2014/09/03(水) 21:58:58
ももち


119 : 果実の想い作者 :2014/09/03(水) 23:43:02
こんばんは
作者は現在胆石に苦しんでいますが
それでも続きを


120 : 果実の想い :2014/09/03(水) 23:45:04
局長はふと腕時計を見る。

「おおっと…、こんな時間か。
 今頃、本部はパニック状態だろうから一度私は戻る。
 
 ここはお前達に任せた!いけるよな?」

「まっかせなさーい!ウチらを誰だと思っているんですか?
 伊達に10年特殊チームやってないですよー。」

桃子が胸を張る。
他のメンバーからも普段とは違うオーラが漂っている。


里保は思わず、身震いをした。
軽い口を叩いている表情の裏側に感じるものすごい強力な魔力…。


「これがBerryzの力……。」

「よし、里保もくれぐれも気をつけるように!」

「はい!」


そうして生田はその場でくるりと一回転すると再び姿を消した。

「さて…。相手に不足はないわけだね。


 キャプテン、どうすんの?」


121 : 果実の想い :2014/09/03(水) 23:47:12
「とりあえず………、中入ろうかな…。

 まあちゃん、いける?」

「へっ!?あたし?
 無理無理、だって魔法でプロテクト掛かってんだよ!」

突然話を振られ焦る茉麻。


「大丈夫、茉麻なら行けるって!」
「そうだよ、まあちゃん!自分を信じて!」


「そんなこと言ったってさぁ……。」
ブツブツ言いながら正面への扉へと近づく茉麻。
里保も思わず息を止めて事態を観察していた。

茉麻は静かに目を閉じ扉の前へと立つ。

そしてゆっくりと扉へとその手を伸ばした。

(執行局屈指の実力派クラッシャーの須藤さん……。どうやって……)

ドゴォォオォォォン
響き渡る轟音…
里保の目の前には先ほどまで『扉』だったものがあった。

「あー、開いた!」
「やったね!さすがすーさん!」

「……なんか複雑だけどありがとう。」

里保は呆気にとられて開いた口が塞がらない。

「さて…。入口も確保したことだし」
佐紀はメンバーを見渡す。

『『『Berryz〜、行くべー』』』』

戦士達はコクリと頷くと一斉に中へと飛び込んで行った。


122 : 果実の想い :2014/09/03(水) 23:49:00


額に何か冷たいものが当たる。


柔らかい…。

薄れている意識が冷たさによって呼び覚まされていく。

(ここは……、いったい私は……。)

まだ覚束ない意識を必死に手繰り寄せながら
亜佑美は自分の身に何があったのかを思い出そうとした。

(2人組の魔導士……を倒して……
 そしたら………女の子を助けて………後ろから………。)

混濁する意識のせいで記憶も混乱する。


周囲では人の動く気配がする。
だがその姿も目が霞みよく見えない。

(そう…。
 女の子………女の子を助けて………。
 なんて…名……前………。)

「あっ、気がつきましたか?もう、目を覚まさないかと…。」

今にも泣き出しそうな声が突如聞こえてきた。


(この……子、珍しい……名前…。
 キ………ソ…ラ……)


123 : 果実の想い :2014/09/03(水) 23:50:46

「キソラ!………っつう…」

「あぁ!まだダメですよ!ひどい傷なんですから!」
ガバッと亜佑美は跳ね起きるが、その瞬間全身を痛みが蹂躙する。


一気に記憶が戻ってきた。
自分がキソラを抱えたまま外へ飛んだこと。
そしてしばらく歩いて力尽きたこと。

横になったまま周囲を見ると小さな小屋のなかであった。
様々な備品が置かれている。

自分を覗き込んでいる少女は間違いなく自分が助けた少女であった。
顔は涙でぐしゃぐしゃだが、怪我をしている様子はなかった。

「よかっ…た。怪我、…してないね」

亜佑美の問いかけに首を大きく縦に振る。

「本当に………本当に……ごめんなさい!
 私…、また何もできなかった……。」

涙をポロポロと落とす少女に亜佑美はそっとその手を伸ばし、その粒を拭う。

「笑っ…て。私は…先輩……。
 後……輩を守るのは当た……り前のこと。」

そして、亜佑美はにっこりと微笑んだ。
その微笑みはとても幸せそうでとても美しく、今にも消えてしまいそうなほど儚かった。


124 : 果実の想い :2014/09/03(水) 23:52:03
「でも、石田さん……。こんなひどい傷負って……」

突如、キソラの声が止む。人の声がしたのだ。


「なぁなぁ、今回の一件で俺たちも手柄あげればさ…」
「あぁ、幹部も夢じゃないと。ニヒヒヒヒ」

どうやら下っ端のようだ。


だがそれでも、今の2人にとってはもっとも遭遇したくない事態。


何事もなく過ぎればよいが……。
男達は2人の潜んでいる小屋の前を通り過ぎていく。



(行け……そのまま行け…。)



だが…。
「オイ、こっちきてみろ!何かを引きずったあとがあるぞ!」


続く


125 : 果実の想い作者 :2014/09/03(水) 23:53:52
というわけでこんばんはここまで

肝心のまーどぅ編が進まないw
そして鞘師とベリは一体どこへというくらい
あゆみんの話がw


126 : 名無し募集中。。。 :2014/09/04(木) 00:14:34
だーいしがまさかカッコ良いとは!w
てかまぁさのドゴォォオォォォンって魔法なんだよね?まさか腕力って事は?w


127 : 名無し募集中。。。 :2014/09/04(木) 00:27:00
更新お疲れさまです。

扉のくだりの茉麻の怪力ハンパねえwww

にしても、あゆみんどうなるのかすごく続きが気になります。
ベリで魔法物語を書いてくれる人がいて、ほんとベリヲタでよかった!


128 : 名無し募集中。。。 :2014/09/04(木) 01:31:02
茉麻のは突っ張りだろうな
それ以外思い浮かばんww


129 : 名無し募集中。。。 :2014/09/04(木) 23:41:23
ようやく読み始めました!!超面白い!!お世話になります!!


130 : 名無し募集中。。。 :2014/09/06(土) 11:54:13
局長が消える時は横回転でいいのかな?縦回転だと前転とかになっちゃうし


131 : 名無し募集中。。。 :2014/09/06(土) 18:35:15



132 : 名無し募集中。。。 :2014/09/07(日) 07:38:07
空中の一点に渦を巻いて吸い込まれるようにってアレか!!
違うかな?ハリポタでの瞬間移動系ってこんな感じだったかなあ


133 : 名無し募集中。。。 :2014/09/07(日) 10:22:11
  *``・*+。
     `*。
      *。
 。☆ノハヽ   *
+川c `.∀´)*。+゚ <こんな感じよ!
`*。 ヽ  つ*゚*
 `・+。*・`゚⊃ +゚  シャランラ〜
 ☆  ∪~ 。*゚
 `・+。*・+ ゚


134 : 名無し募集中。。。 :2014/09/07(日) 10:27:07
一応貼って置きます
知らない人用にこんな連中です
http://www.up-front-works.jp/makenki/


135 : 名無し募集中。。。 :2014/09/07(日) 15:33:58
>>134
どもですw
本来は作者の自分が貼るべきものをありがとう(^^)/


136 : 果実の想い作者 :2014/09/08(月) 20:59:16
続き行きます!


137 : 果実の想い :2014/09/08(月) 21:00:36
(お願い………お願いだからそのまま行って……。

これ以上は……本当に限界…。)


亜佑美は横になったまま強く心で祈り続けた。

闘いの中で消費した魔力は今までの亜佑美の人生の中でも未知の領域であった。ただ、それ以上に背後から受けた一撃は相当なものであった。
もし、とっさに相殺していなければ今頃、亜佑美もキソラも跡形もなくなって居ただろう。

亜佑美の身の回りにも優樹や遥、そして里保といった歳の割に強力な魔導士はいるが、その誰とも違う猛々しいものであった。


138 : 果実の想い :2014/09/08(月) 21:03:50
「足音…遠くなりましたね……。

 もう…大丈夫ですよね?」


キソラが亜佑美の側へと近づき、その身を寄せる。その言葉は少し震えていた。


(無理も…ない。)
亜佑美はそっとキソラへ手を伸ばし、その手を握る。


「大丈…夫。もうすぐ助けが来…るから…。」


だが、その思いは無残にも打ち砕かれた。


男の声がする。

「オイ、こっち来てみろ!何か引きずったあとがあるぞ!

 続いているな……あの小屋か。」


凍りつく2人…。
起き上がろうとする亜佑美をキソラを押し止める。


139 : 果実の想い :2014/09/08(月) 21:07:32
「私…私がやります。
 石田さんはここで待っていてください!」

「なっ…ダメ……ダメだよ……。」

「すぐに戻ります!」
そう一言告げるとキソラは亜佑美が見つからないように囲いをし、小屋から出て行った。


2人組の男は小屋のすぐ近くまで来ていた。その時突然開いたドアに驚き、距離を取る。



出てきたのは、年端もいかない少女。だが、協会員の腕章をしている。

「こんなちっこいのでも協会員か。
 世も末だなw」


「な、なめるな!お前らなんて相手じゃない。」


140 : 果実の想い :2014/09/08(月) 21:09:51
「ふーん。じゃあ、やってみれば?」

男達は明らかにキソラを挑発している。

キソラは意識を集中し魔力を溜めようとする。

「敵の前で魔力溜めるとか、お前馬鹿なの?」

気づくと、目の前に男がいた。


「キャアぁぁぁぁぁぁ…」



辺りへ響くキソラの声…。

やっとのことで立ち上がった亜佑美は傷む脚を引きずりながらもドアへと駆け寄る。


そして、外へ飛び出してみるとそこにはうつぶせに倒れたキソラがいた。

2人の男は手をはたいている。


141 : 果実の想い :2014/09/08(月) 21:12:39
「協会員とかいっても大したことないんだな。」

「あーあ、魔力の無駄遣い」

亜佑美はキソラを抱き上げる。全身が傷だらけで意識も失っているようだが、どうやら命に別状はないようだ。

少しほっとする。
それと同時に沸々と怒りがこみ上げてきた。

「こんな……
 
 こんな…ことして何が楽しい……。」

そして、亜佑美は強くキソラを抱きしめた。

カラン

音を立てて、何かが地面へと落ちる。


『新沼希空 協会員』


142 : 果実の想い :2014/09/08(月) 21:18:22
「希空……希望の空……。」


亜佑美は男達をキッと睨みつける。

「何、お嬢さんもやるのかい。
 
 そんな状態で?」

もう自分にほとんど魔力が残っていないこと、ましてや闘うなんて無理だということは重々承知している。


だが、亜佑美はこの2人を殴らないと気が収まりそうもなかった。
しかし気持ちが先走っても身体は悲鳴をあげている。

(くっ…。私に力を……。)


「どうしたの、来ないの?
 
 じゃあこっちから行くわ!」

その声に身構えだ亜佑美。

だが突如、その目に映る男の姿がブレる。その瞬間亜佑美は後方へと吹き飛ばされた。

「ぐっ…。衝撃…波か…。」


143 : 果実の想い :2014/09/08(月) 21:21:46
亜佑美は再び立ち上がろうとするが、膝をつく。

「そっちの子はずいぶんと頑張ってたけどね。

 君は弱いんだね。」

男は顎で希空を指す。

「暇つぶしは終わり。ちょっと早いけどそろそろ寝な。」


そして再び手を前にかざす。衝撃波が放たれた瞬間、亜佑美は死を覚悟した。

その時、3人の間を一陣の風が吹き抜ける。知っている魔力……。

この力強い頼もしさを吹かせる風の持ち主。

亜佑美の前にはその手に愛刀を携えた鞘師里保が立っていた。


強く


144 : 果実の想い作者 :2014/09/08(月) 21:33:12
まさかの最後でミスるw

続くですw


145 : 名無し募集中。。。 :2014/09/08(月) 22:40:31
ヤバイ!カッコイイ


146 : 名無し募集中。。。 :2014/09/08(月) 23:07:37
一陣の風と共に現れるなんて格好良すぎだろ
きっと剣は村正あたりなんだろうなあ


147 : 名無し募集中。。。 :2014/09/08(月) 23:26:37
妖刀村正のせいでパーツフェチになったのか


148 : 名無し募集中。。。 :2014/09/08(月) 23:53:20
普通に正宗辺りかな?と思ってる
もしくは架空の日本刀


149 : 名無し募集中。。。 :2014/09/08(月) 23:55:04
呪われてんのかww


150 : 名無し募集中。。。 :2014/09/09(火) 00:53:51
鞘師かっけー!こんな日本刀がシックリくるアイドル他にいないなw


151 : 名無し募集中。。。 :2014/09/09(火) 05:23:14
ウチの唇になにするんじゃ!


152 : 名無し募集中。。。 :2014/09/09(火) 12:07:58
二刀流とかあるんかな
きっかも二刀流で
ってネタを考えてみたが外伝本編(?)終わってからがいいか


153 : 名無し募集中。。。 :2014/09/09(火) 19:26:34
仮にも魔導士たるもの妖刀村正くらい操れないで如何とするヤシ


154 : 名無し募集中。。。 :2014/09/09(火) 22:29:35
どんどん避難所盛り上げて行こう
外伝大歓迎です!


155 : 名無し募集中。。。 :2014/09/10(水) 23:10:51
>>123
ハロステにあゆみんときそらが出ててこのシーン思い出した


156 : 名無し募集中。。。 :2014/09/11(木) 01:36:51
504 名前:名無し募集中。。。@転載は禁止[] 投稿日:2014/09/10(水) 23:08:04.02 0
http://i.imgur.com/GpE3C3N.gif


157 : 名無し募集中。。。 :2014/09/12(金) 08:58:49
書かずに死ねるか!!


158 : 名無し募集中。。。 :2014/09/12(金) 21:20:22
そうだその意気だ!


159 : 名無し募集中。。。 :2014/09/14(日) 20:24:55
まだかなぁ〜?


160 : 果実の想い作者 :2014/09/14(日) 23:37:36
どうもこんばんは!
気づいたら前の投稿から一週間もたっていました
続き参ります


161 : 果実の想い作者 :2014/09/14(日) 23:38:57
相手の手から魔力が放たれる。

(どぅー…まーちゃん…ごめんね。私、2人に会えそうにない……)

亜佑美は死を覚悟し、希空を抱き寄せ目を閉じた。

その時、頬で感じる一陣の風。
(この…この魔力…)

亜佑美がゆっくりと目を開くとそこに1人の少女がその手に代々伝わる刀を持ち、相手を睨みつけていた。

「さ………さや……し……さん」

「ごめん、亜佑美ちゃん遅くなった。あとはウチに任せて!」

相手は2人。確かに里保は執行局若手最強と噂されるほどの実力の持ち主。


162 : 果実の想い :2014/09/14(日) 23:41:15
だが、初撃を受けた瞬間に亜佑美は相手が本気を出していないことを感じていた。

底知れない相手。それにどうやって里保は対処するのか。

「鞘師ちゃんなら大丈夫。あなたも今は傷を治さないとね」

気づくと数人の魔導士が自分の周囲に立っていた。その1人1人から放たれる魔力は凄まじいものであるがなぜか爽やかさを感じさせるものである。

「千奈美スマーイル!」
茶髪で髪の短い女性が治癒魔法を掛けてくれる。みるみるうちに傷が癒えていった。それと同時に亜佑美は何故か自然と笑みがこぼれてくる。


「そっ!笑顔は一番の回復魔法だからさ!スマイル、スマイル!!」


163 : 果実の想い :2014/09/14(日) 23:43:18


佐紀は傷ついた2人の治療をする様子を見て苦笑すると相手を睨みつけたまま対峙する里保へと視線を戻した。

恐らく、相手は戦闘経験が豊富な手練れであろう。雑魚のフリをしているだけ……。

里保はそのことに気づいているか。

ジリッジリッと少しずつ相手との距離を詰める里保。

刹那、飛び出して来た相手の魔力に呼応するように風を纏うとしなやかな動きで対応する。


一瞬の交錯。
身を翻した里保は勢いで地面に片手をつき滑走する。その肩には小さな傷ができており、血がうっすらとにじんでいた。


164 : 果実の想い :2014/09/14(日) 23:45:58
「ヒュー」
「鞘師さんっ!」

相手の2人組は顔を押さえてうずくまっていた。その顔面は半分削り取られて……否。

その2人は仮面を付けていたのだ。里保の斬撃によって壊れた仮面の下から本当の顔が覗く。


「邪魔だったからね。壊させてもらいました。」

スクっと立ち上がった里保は2人を見下ろし言い放つ。

「そろそろ本当の姿を見せたらどうですか?MKNGのメンバーさん?」


165 : 果実の想い :2014/09/14(日) 23:49:31
「ねぇ、キャプ?」
「何、桃?」

目の前で繰り広げられる闘いを注視しながら佐紀は答える。

「鞘師ちゃんのさ、風の魔力って闘い用では無いよね?さっき闘ったとき思ったんだけど。」

「そうだ…ね。私達と闘った時の魔力と質そのものが違う感じ。」


先程のBerryzとの闘いの際に里保は主に風の魔法を移動に費やしていた。


だが里保は今の闘いであらゆる攻撃を風の障壁で防いでいる一方で触れたもの全てを粉微塵にしていた。

(たぶん、あの子は2種類の魔法を持っていて日常的に風の魔法を出力している。それでいざっていうときも瞬時に魔力を増幅できるんだな…)

若いのに大したものだと佐紀は感心する。

「風雷双撃!」


166 : 果実の想い :2014/09/14(日) 23:51:01
里保は鋭い声と共に刀を振り抜く。


雷をまとった旋風が2人を襲う。


佐紀はそっと目を閉じた。自分たちに来る闘いに向け集中するために。

結果はもう見なくてもわかる。里保の圧勝であった。

続く


167 : 果実の想い作者 :2014/09/14(日) 23:53:17
本日はここまで

バトルシーンが雑でごめんなさい
ちなみに里保の刀は無銘だからこそ最強となる予定ですw


168 : 名無し募集中。。。 :2014/09/15(月) 00:04:48
乙です
男?って思ってたらメンバーが化けてたのか
ううむ
負けん気の話し書きたくなってきたな
ワンシーンだけだがw


169 : 名無し募集中。。。 :2014/09/15(月) 02:08:14
なんなんだろうなぁ鞘師のこの『真打ち登場』感w実物はポンコツなのになんでこんなカッコ良いのか!ww


170 : 名無し募集中。。。 :2014/09/15(月) 08:59:28
>>161
更新乙です

千奈美スマイルがアホみたいに可愛すぎて萌えましたww
俺も千奈美スマイル受けてぇ


171 : 名無し募集中。。。 :2014/09/15(月) 17:45:32
りほりほの刀が最強?はいいので、
ベリの活躍をお願いします。(泣)
解禁のポスター見た時の感動で読み始めたんだけど、
このままりほりほが活躍したままでは嫌だー(泣)


172 : 名無し募集中。。。 :2014/09/15(月) 19:37:28
まぁまぁそう焦らずに自分もこれ張ってお願いしたけど楽しく読んでるよ
真打ちは最後に登場だよ…てかベリ強すぎて負けん気位じゃ相手にならないかとw

577 名無し募集中。。。@転載は禁止 2014/08/03(日) 23:17:29.97 0
http://i.imgur.com/bUDfrks.jpg

これで外伝誰か書いてくれないだろうか?スレ違いなのは分かってるんだけど・・・


173 : 果実の想い作者 :2014/09/15(月) 21:44:55
いやいやこちらこそ申し訳ない

この描写もあの描写もってやってたらベリは
どこへやらって感じになってしまって


174 : 名無し募集中。。。 :2014/09/16(火) 00:30:10



175 : 名無し募集中。。。 :2014/09/16(火) 09:16:06
いっそ48Gさんやももくろさんや他のアイドルさんたちを敵として出せば良いのではないでしょうか?
何かルールなど決まりごとがあるのですか?


176 : 名無し募集中。。。 :2014/09/16(火) 09:28:17
出されてもわからない


177 : 名無し募集中。。。 :2014/09/16(火) 10:19:11
それは変なの沸いてきそうだし止めた方がよいかと…それに確かに出ても分からないw


178 : 果実の想い作者 :2014/09/16(火) 21:03:21
なんか避難所が妙な方向性で盛り上がってしまっている
それもこれも自分の実力不足が招い
た種……

責任をとって皆さんを納得させる作品に仕上げてみせます

ということで続き行きます


179 : 果実の想い :2014/09/16(火) 21:07:36
敵を撃破して慌てて亜佑美の元へと駆け寄る里保。その姿を微笑ましく思う佐紀。

「さてと…、ボチボチ始めますか」

「そうだね。ついに作者が一番懸念していたベリの描写不足が指摘されちゃったもんねえw」

誰に言うとでもなく、佐紀と桃子は話をしている。

「向こうも派手にやってるもんね。」


そして建物の方へと目を向ける佐紀。

(みんな大丈夫かなぁ)


180 : 果実の想い :2014/09/16(火) 21:10:39




「何、これ」
「ひどい……。」


佐紀や里保達とは別のルートから進んでいた雅達は建物東側地下2階へとたどり着いていた。そこに広がる光景に思わず息を呑む。


闘いの痕だろうか建物の壁は大きく崩れ、周囲は瓦礫が散乱して居る。


そしてあちらこちらに傷付いた少女の姿があった。


「梨沙子、お願い。」

雅は連れてきたメンバーで唯一回復魔法の使える梨沙子に声を掛ける。梨沙子はコクリと頷くと静かに魔力を込め、そして癒やしの唄を奏で始めた。



その唄は傷付いた少女達のカラダとココロを少しずつ癒やしていく。不思議とその場の凄惨とした空気も和むようであった。


181 : 果実の想い :2014/09/16(火) 21:13:09

その様子を見ながら、雅、茉麻、友理奈は周囲を警戒する。梨沙子の魔法は強力だが、その分周囲の魔導士に自分の存在を示すこととなる。

そのため、佐紀は梨沙子にこの魔法を1人で居るときには絶対に使うことをさせなかった。

必ず、サポートできる人間が居るときのみ指示をする。それは副キャプテンの雅にも浸透した考えだ。


不意に強い魔力を感じる。
数は複数……。

「チッ!」

雅は小さく舌打ちをすると横の2人に目配せをする。2人も同じように魔力を感じ取ったようで戦闘態勢をとった。


182 : 果実の想い :2014/09/16(火) 21:18:42
両腕を静かに交錯させる。

「はぁっ!」

雅は魔力を込めると同心円上に周囲に放つ。その流れを捉えながら雅は敵の居所を割り出す。魔力の流れが乱れた所に敵は居る。

「茉麻、3時の方向に1人!熊井ちゃん、7時に3人!ミヤは熊井ちゃんのサポートに入るね。」

「へっ?雅、7時ってどっちなのさ」

「知らない、とりあえずあっち!」

そして3人はそれぞれの敵を迎え撃つ。

続く


183 : 果実の想い作者 :2014/09/16(火) 21:22:41
とりあえず切ります

ここからはガチガチのBerryz工房です
とは言っても自分は娘ヲタなのでベリファンの方の貴重な御意見や使えるエピソード募集中です!


184 : 名無し募集中。。。 :2014/09/16(火) 21:34:53
ついにベリ始動!!読んでて違和感なく頭に入ってるから大丈夫!しかも頭の弱いところまで・・・w


185 : 名無し募集中。。。 :2014/09/16(火) 23:13:55
7時w大丈夫かなw


186 : 名無し募集中。。。 :2014/09/16(火) 23:54:40
りーちゃんの回復魔法羨ましい僕のお尻にも掛けてほしい
あと作者さんの胆嚢にもw

ガクブルな闘いがここから始まる予感!


187 : 名無し募集中。。。 :2014/09/17(水) 02:12:18
4人たぶんポッシ
残り9人
つーか瞬殺てか2文字


188 : 名無し募集中。。。 :2014/09/17(水) 02:13:33
4人てのはすでに倒された人数ね


189 : 名無し募集中。。。 :2014/09/17(水) 21:14:31
陰で金子のりっちゃんが暗躍してたりして


190 : 名無し募集中。。。 :2014/09/17(水) 21:58:36
Berryz工房のバトルが似合うことったら
プラス娘。の中でもバトルシーンがしっくりくる
りほりほとあゆみん


191 : 名無し募集中。。。 :2014/09/17(水) 23:24:16
ちなみに負けん気今日発売日


192 : 果実の想い :2014/09/17(水) 23:57:50
《茉麻目線》

「すーさんがいれば無人島でも生きていける気がする。」

「茉麻、これ開けてー」

「まぁちゃんならいけるって!」


「いよっ、親方!」

メンバーからこのように頼りにされるようになったのはいつ頃からだろうか?
いや、頼りにされているかもどうかもいまいちわからないが…

基本、特攻隊長の桃子を除いて茉麻は単独任務が多い。
いつ何時でも力で押す。それが自分のスタイル。

…心なしか肉体的にもがっしりしてきた気がする。


193 : 果実の想い :2014/09/17(水) 23:59:31


「茉麻、そっちの1人をお願い!3時の方向ね!」
副キャプテンの雅からの指示通り茉麻は飛び出す。
どうやらこの方向はあっているようだ。

雅たち自身の敵は明らかに違う方向だが…


この距離に近づくまで居場所を悟られることがなかったということは
それなりの実力を持って居ると言うことだろう。


「ツイてな〜いねぇ、ここがあなたの終焉の地になるなんて」

暑苦しい声が聞こえる。相手は佐保明梨。
事前の情報によるとモノと空気をよく壊すらしい。


「はぁ。苦手なんだよなぁ…空気読めない人。」
茉麻は一つため息をつく。
その様子を見て明梨は好機とばかりに魔力を込めると回し蹴りを放つ。


バシッ

「んなっ!?」
易々と受け止めた茉麻に明梨は驚き、慌てて後方へと距離をとる。

「まっ!苦手なんだっていってもさ…。」
茉麻は受け止めた左手を静かに下ろす。

「負ける気はしないよね。」
はっきりと強い口調で告げる茉麻。

「かかってきなよ。あんたなんて薬指と小指だけで十分。

クラッシャーとしての格の違い……、見せてあげる。」


194 : 果実の想い作者 :2014/09/18(木) 00:01:02
とまぁ、こんな具合で全員の個性に合わせた闘い方を
描くことができればと思っています

あと9人かぁ…たいへんだなぁww


195 : 名無し募集中。。。 :2014/09/18(木) 01:33:13
アプガ来たか
体格差がありすぎるwwwガリガリなのに
暑苦しいのは小夏じゃないかな?俺も詳しくないけど


196 : 名無し募集中。。。 :2014/09/18(木) 04:32:35
渾身の正拳突きがボディに…突き刺さらない


197 : 名無し募集中。。。 :2014/09/18(木) 06:05:46
盛り上がってるね


198 : 名無し募集中。。。 :2014/09/18(木) 07:32:26
茉麻キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

茉麻の活躍待ってたぜ
それよりもまさかBerryz目線もあるとは嬉しいね

茉麻のエピソードで思い出したけど、最初のアロハロでドッキリがあって普段頼もしい茉麻が
不審者から即逃げたの思い出した


199 : 名無し募集中。。。 :2014/09/18(木) 13:07:06
ちなみに誰と誰を戦わせるかはキャッチフレーズをもとにしていますので
MKNGの皆さんについては細かな設定はしていかないつもりですね


200 : 名無し募集中。。。 :2014/09/18(木) 15:20:00
ああ播磨灘を思い出した


201 : 名無し募集中。。。 :2014/09/19(金) 00:05:46
また懐かしいものをw


202 : 名無し募集中。。。 :2014/09/20(土) 01:22:12
そういや7人VS7人ですな


203 : 名無し募集中。。。 :2014/09/20(土) 06:20:44
茉麻を倒せるのは北斗柔破斬だけ


204 : 名無し募集中。。。 :2014/09/22(月) 11:00:44
マリア様は活躍しますか?


205 : 名無し募集中。。。 :2014/09/22(月) 22:48:56
負けん気が活躍する話しはいつか俺が!


206 : 名無し募集中。。。 :2014/09/22(月) 23:10:35
>>205
ぜひぜひ!


207 : 名無し募集中。。。 :2014/09/24(水) 20:43:24
ちちんぷいぷい


208 : 名無し募集中。。。 :2014/09/24(水) 23:42:14
魔法にかーかれ!


209 : 名無し募集中。。。 :2014/09/26(金) 01:53:52
あっかかっちゃったぁ〜


210 : 名無し募集中。。。 :2014/09/26(金) 07:14:15
続き待ち


211 : 名無し募集中。。。 :2014/09/26(金) 10:08:18
寝る前にベリ編読み返してたからか夢の中に茉麻が出てきたw


212 : 名無し募集中。。。 :2014/09/26(金) 12:32:20
それは幸せですね〜w


213 : 名無し募集中。。。 :2014/09/26(金) 14:50:29
潰されたんでしょ
ご愁傷さま


214 : 名無し募集中。。。 :2014/09/28(日) 22:25:53
夢にメンバーを出したいなら
つべで再生リスト作ってヘッドフォンで聞きながら寝落ちすると意外に出てくるよ


215 : 果実の想い作者 :2014/09/28(日) 23:37:39
ゆめにまで出てきてくれるなんてありがたし

というわけで続き短めで


216 : 果実の想い :2014/09/28(日) 23:39:14

「かかってきなよ。あんたなんて薬指と小指だけで十分。
 クラッシャーとしての格の違い……、見せてあげる。」

そういうと茉麻はすっと左に構えると明梨を見据える。

しばしの静寂。張りつめた空気が茉麻には少し心地よかった。
久々に血沸く感情に1人おかしくなり思わず笑みが込み上げてくる。


「なに笑ってんだよ!」

一瞬のすきを突いて明梨が向かってくる。
相手の力量は先ほどの一撃で確かめた。十分に余裕を持ってできる相手。
あとは魔法との相性だろうか。


217 : 果実の想い :2014/09/28(日) 23:41:00
まずは初撃を見極める。
相手の属性は……風か。
向かってくる風を交わし、そのことを確認すると茉麻は小さく舌打ちをする。
風の使い手はberryz内ではキャプテンであるが、茉麻は風魔法を苦手としていた。


時として強力な威力を持つ風を操ることは茉麻にとって一つの憧れであった。
だがやはり相性が合わないものはなかなか得難い。


なんも見境もなく風魔法を放ってくる相手に茉麻はすこしいらいらしてきた。

もう少し…もう少し…。

茉麻は心で自分を制御しながら魔力をためていく。

「あれあれ、見ているだけ?避けているだけ?
 そんなんつまらないんですけど。」

「…」

「だから、そんな風に落ちぶれ…」

どぉぉぉぉぉぉん


218 : 果実の想い :2014/09/28(日) 23:42:25
突然、地面から巨大な土塊が出現する。
あまりの出来事に明梨は驚き目をぱちぱちさせる。

「やっぱりさ、魔法でちょこちょこ攻撃するもいいけど…」

茉麻は土塊の足元を軽く叩きながら上を見上げる。
それは巨大な土人形であった。

手にはなぜか電動ドリルのようなものを持っている。

「こういう風に思いっきり攻撃したほうが気持ちいいよね。」


明梨は懸命に土人形に対して攻撃を加えるが、焼け石に水である。

「喰らえ!」
茉麻は右手を上げ一気に振り下ろすと土人形も動きを同じくその右手を振りおろした。

抵抗も空しく明梨は倒れた。


その姿を一瞥すると茉麻は1人呟く。

「まだまださ、先は長いんだから確実に実力をつけてからリベンジに来なよ。」


須藤茉麻VS佐保明梨…勝負あり



続く


219 : 果実の想い作者 :2014/09/28(日) 23:43:57
ちびちび更新していきます


220 : 名無し募集中。。。 :2014/09/29(月) 01:09:58
乙です
今のところ死人出てませんよねやっぱり
襲撃された方もした方も


221 : 名無し募集中。。。 :2014/09/29(月) 06:57:53
茉麻のDIY炸裂!wまさに一撃必殺


222 : 名無し募集中。。。 :2014/09/29(月) 10:25:08
次は熊井ちゃんと森咲樹か?


223 : 果実の想い作者 :2014/09/29(月) 21:04:58
>>222
お前さん、俺のパソコンを見たなww


224 : 名無し募集中。。。 :2014/09/30(火) 00:35:05
まーさのゴーレムはサトヤマVer.なんだな


225 : 名無し募集中。。。 :2014/09/30(火) 07:48:31
作者さん、更新お疲れさまあさ〜

茉麻ヲタとしてこのような作品に出会えて感無量です
技的には須藤親方絡みでワロタ


226 : 名無し募集中。。。 :2014/10/01(水) 00:23:19
あの色とあの色は戦うだろうなあ
イラドル同士もあるだろう


227 : 名無し募集中。。。 :2014/10/02(木) 22:38:10
ドリルワロタw
乙です


228 : 名無し募集中。。。 :2014/10/02(木) 22:44:27
奴はやはり3倍ショーなのだろうか


229 : 名無し募集中。。。 :2014/10/04(土) 20:55:27
本スレ落ちてんじゃん


230 : 名無し募集中。。。 :2014/10/04(土) 21:29:22
立てたよ

娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 17
http://hello.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1412425502/


231 : 名無し募集中。。。 :2014/10/04(土) 23:25:55
本スレ最近過疎ってるね

てか最初から本スレ読み直したら埋もれてる作品とかちょいちょいあって面白かった。

でも読み直したら余計に未完の作品が気になるなぁ

エクソシストのやつとか 浪漫〜My Dear〜 とか続きもう来ないのかな?


232 : 名無し募集中。。。 :2014/10/04(土) 23:38:45
設定丸パクりのオナニーを延々と続けられて少しうんざり
別に狼で維持できなくなればここに引っ越せばいいだけなんだが何か偉そうなこと言い出してるし


233 : 名無し募集中。。。 :2014/10/05(日) 00:08:27
正直本編以外は読んでいない


234 : 名無し募集中。。。 :2014/10/05(日) 00:33:47
うーん難しいところだな
本編作者さんがいてこその外伝でありスレも盛り上がるもの

まぁ自分は気長に待つことにするよ


235 : 名無し募集中。。。 :2014/10/05(日) 00:41:06
俺も細かいこと気にしないでニヤニヤしてる
設定とかも捻じ曲げたりして妄想してるし


236 : 名無し募集中。。。 :2014/10/05(日) 02:30:04
ブラックジャックさゆみんみたいなアホな単発ネタも見たいんだが、ああいうのってもう来ないのかな


237 : 果実の想い作者 :2014/10/06(月) 19:55:57
投稿間隔空きました
ごめんなさい

続きレッツラごー


238 : 果実の想い :2014/10/06(月) 19:57:44
背後で鳴り響く轟音を聞きながら友理奈は困った表情をして立っていた。

相手は3人。自分は1人。

雅は梨沙子を一人残してきたことに気づいて戻ってしまった。


昔から友理奈は闘いが苦手であった。生まれついた性格のせいもあるのかもしれないが人の良い部分がありホイホイ人にだまされてしまう。




だからといって自分の考えを上手く相手に伝えることもできないため、結果として締まらない闘いのスタートとなる。

「これ、どうすればいい?」
今日もまたふとした疑問をつい口にしてしまう。悪い癖だ。


239 : 果実の想い :2014/10/06(月) 20:01:07
突然発せられた疑問に罠かどうか判断に迷い、相手の森咲樹と古川小夏、後藤夕貴は思わず構えを解く。

(本気でコイツは困っているのか?)


「まあ、いっか!」

(いいのかよ!)

思わず心の中で突っ込みを入れながら、3人は散開し友理奈を囲む。

1人1人の動きはとても機敏でそれだけでも友理奈は慌てる。

(こんなん聞いてないよ〜。)

いつもであれば誰かしら戦闘に長けた人物が近くにいた。

だが、頼れる人物が近くに居ない今、相手と対峙している自分の任務は各個の撃破。


240 : 果実の想い :2014/10/06(月) 20:03:56
友理奈はそう決心すると、魔力を解放する。何か懐かしいそんな思いにさせる魔力だ。

「よっし、かかってきなさい!」




対峙していた3人は、友理奈が魔力を解放するのを見、警戒を強めた。だが何かおかしい。

「おい、これって……。」
「あぁ、夕貴と小夏もそう思うか?」

(大したことはない…。)


友理奈から放たれている魔力は咲樹達の予想していたものより遙かに小さいものであった。明らかに自分達の方が大きい。


(コレならいける。私達が連携を上手く取れば……。)


241 : 果実の想い :2014/10/06(月) 20:13:13
そう考えた咲樹は目配せで2人に指示を出す。2人は小さく気づかれない程度に魔力を練り上げる。


「さぁ、かかってきなさい!」

友理奈が再び声を発するのと同時に3人は動いた。

夕貴は後方に一歩大きく下がり、友理奈の足元へと水球を放つ。突然の攻撃に友理奈は反応が一歩遅れるが辛うじて身体を左にひねり回避を試みる。

だが、その水球は避けようとした友理奈の目の前で大きくはじけた。その間に友理奈との距離を背後から一気に詰めた小夏が脇腹へと鋭い貫手を放つ。


「ぐっ…。」

その手は確実に友理奈の身体に触れ鮮血が辺りに飛び散った。間髪入れずに今度は夕貴が水の銃弾を浴びせる。それをなんとか防壁で防ぐ友理奈。そこへすかさず咲樹が電撃を浴びせた。

「キャアァァァァァァ…。」
友理奈は思わず、膝をつく。


242 : 果実の想い :2014/10/06(月) 20:15:32
実力の差は傍目から見ても明らかであった。

それに加え、お互いの癖を知り尽くした連携に翻弄される友理奈に為す術はない。


また、一つ一つ傷が増えていく。反撃をしようと友理奈も魔法を放つがそれも簡単にいなされてしまった。その行動も体力を奪う要因となる。


やがて、完全に友理奈は地に片膝をつき立ち上がることができなくなった。その様子を見て、3人は、嘲笑う。


243 : 果実の想い :2014/10/06(月) 20:17:54
「その程度で、そんな有り様で執行局最強のチームの一員を名乗ってたの?」


「…。」

「呆れた。私達がどんな気持ちでここを追い出されたのかも知らないで、ぬくぬくとしていたのね。」

黙ったまま、顔を上げることもできない友理奈に忌々しげな視線を向ける。

「もう、こんな茶番は終わりにしよう。同じ緑として、トドメを刺す。」

咲樹はそういうと右手を宙に掲げ、巨大な電撃を帯びた球体を作り出す。そして、一言付け加えるとそれを放った。

「私はグリーンが嫌い。今もそして未来も……。サヨナラ、最強チームのメンバーさん。」


そしてそこには、グリーンの衣服の切れ端が少し風にまかれて舞っているのみであった…………。


244 : 果実の想い :2014/10/06(月) 20:19:14





………………。








………


245 : 果実の想い :2014/10/06(月) 20:24:52

「ねぇ、熊井ちゃん?この子達どうすんのさ、これから。」

「えっ?どうするって……雅、どうしよう。」

「えっ?ウチに振らないでよ〜。独りで片づけてよ。熊井ちゃんの魔法でしょ?」


執行局の敷地内にある銅像に向かい攻撃を放っている3人を見ながら雅と友理奈は話をしている。友理奈はピンピンして、身体のどこにも傷ついた様子がない。

「あーあーあ、あんなに派手に魔法使っちゃってね。よっぽど恨みが。うわーっ、あれはひどい。えげつなー!」


「うーん、あの子達の中でウチはコテンパンなのかな〜。なんかおなか痛くなってきた。」


246 : 果実の想い :2014/10/06(月) 20:29:18
そう、これこそが友理奈の得意とする精神感応系魔法『クートマクマク』である。いわば幻覚を見せる魔法で心の中身を具現化するものである。
幻覚には2種類あり、クマるかクマらないかのどちらかである。

だがなんといってもいつ始まり、いつ終わるのかがわからず特にオチもないというジワジワくる苦しみが強力な効果をきたす。掛けられた者は永遠に夢の世界をさまようとかさまよわないとか。


「せめてもの、空想世界で活躍しているのが救いだね。さっ、梨沙子のとこ戻るよ!」

「そうだね。」

先に行く雅を見ながら友理奈は小さく呟く。

「今自分にとってなにができるのかよく考えてみなよ。自分のベストを最大限発揮させなきゃ周りだってついて来ないさ。」

熊井友理奈対MKNG…勝負あり

…続く


247 : 果実の想い作者 :2014/10/06(月) 20:32:17
ということで熊井ちゃん視点でした。(書き忘れたのは内緒w)


熊井ちゃんの属性を何にしようとずっと考えていて間隔空きました

自分の目が黒い内は誰も死なせません!よろしく


248 : 名無し募集中。。。 :2014/10/06(月) 20:50:12
まさかのクマクマトークwしかも精神系魔法とは・・・ちょっとビックリ?体格を何も活かしてないww


249 : 名無し募集中。。。 :2014/10/06(月) 21:17:20
熊井ちゃんの身長はただの飾りなんです
偉い人にはそれがわからんのです

作者さん、更新お疲れさまです
熊井ちゃんのあの大きな身長を全く生かさない魔法に惚れましたw

続き楽しみにしてます


250 : 名無し募集中。。。 :2014/10/06(月) 21:32:29
クマクマキタ━(゚∀゚)━!


251 : 名無し募集中。。。 :2014/10/06(月) 22:58:16
乙です
小夏とももちのイライラ対決はないのか
ハロメン達の元ネタがわからんのはライトヲタだからかな


252 : 名無し募集中。。。 :2014/10/06(月) 23:14:24
本編でさゆが生鞘を襲った奴らに使った箱に閉じ込める系をリアルスケールでやると思ったら違ったw


253 : 果実の想い作者 :2014/10/07(火) 19:57:56
ホントに知識のなさには我ながら呆れてます(笑)
本物のファンの方にしてみたら歯がゆさMAXな展開で申し訳ない


254 : nOTRcORru :2014/10/07(火) 22:16:30
娘。とベリキューしか知りませんが、本人達らしくて良いですね。
声や動作が容易に思い描けます。
各地で各人のバトルの行方がどうなるか、今後も楽しみです。


255 : 名無し募集中。。。 :2014/10/07(火) 23:54:25
>>253
果実作者様
>251の
>ハロメン達の元ネタがわからんのはライトヲタだからかな
は私自身のことを指しているので作者さんのことではないです

ベリキューすら薄らぼんやりとしか知らずやポッシとアプガは
最近気になり出したライトヲタです
ですので今一思い浮かばなかったり台詞や会話のやりとりが
ピンと来なかったりするもので

ハロの黎明期からヲタやってるんですがよく見てないのかもしれませんw
お恥ずかしい


256 : 果実の想い作者 :2014/10/08(水) 00:06:18
>>255さん
自分も娘はかなり知ってますが負けん気とかはからっきしです

変な展開にならんように精一杯頑張ります


257 : 名無し募集中。。。 :2014/10/08(水) 00:51:04
もっと肩の力抜いて気楽にいこう


258 : 名無し募集中。。。 :2014/10/09(木) 22:11:03
俺は楽しんでるよ
作者のパソコンを盗み見るのが楽しみw


259 : 果実の想い作者 :2014/10/09(木) 23:56:49
最近本当に書こうとしてることとか
書いたことを先に当てられてはグヌヌ
ってなってるw
そのたびに構想を練り直すの大変なんだw


260 : 名無し募集中。。。 :2014/10/10(金) 21:21:55
じゃあ頭に浮かんだこと即書きしないほうがいいかな


261 : 果実の想い作者 :2014/10/10(金) 23:12:02
逆にそれをいただいてさらに話を膨らませることもやってるからぜひ続けてくださいw


262 : 名無し募集中。。。 :2014/10/12(日) 08:09:08
まーちゃんは緊張でおかしくなっちゃったのかな?

いつも以上にブログがはちゃめちゃ(笑)


263 : 名無し募集中。。。 :2014/10/12(日) 08:23:19
後付ですが
まあさが佐保ちゃん倒した時の擬音

土偶音!!

ドグゥオオオン!!


地面にめり込み口から少し魂が出てる佐保ちゃん

鼻息出しながらドヤ顔のまあさ


そんな感じ〜


264 : 名無し募集中。。。 :2014/10/13(月) 20:25:50
戦国編が一段落するとベリ編が一気に進むかな


265 : 名無し募集中。。。 :2014/10/14(火) 08:09:53
フラゲ日


266 : 名無し募集中。。。 :2014/10/14(火) 11:06:56
各外伝の人物紹介のまとめもあるといいかもですね


267 : 果実の想い作者 :2014/10/15(水) 21:25:58
戦国編も無事に(?)終わりこっちに集中できるかと思いきや
なかなか筆がすすまない…

続き行きます


268 : 果実の想い作者 :2014/10/15(水) 21:28:26
「向こうの闘い終わったみたいだね…。

 ウチらも行こうか?」


佐紀は里保たちに声を掛ける。
そして、傷ついたもの達を庇うように建物の中へと向かう途中で
ある異変に気づく。

「桃……?」

先ほど自分達の居た場所から
なぜか動こうとしない桃子。


「どうしたんですか?嗣永さん」
里保や亜佑美もその様子に気づいて
希空を支えたまま立ち止まる。

桃子は自分達には感じ得ない何かを感じたのか。
里保や亜佑美に緊張が走る。


「ごめん、キャプ。ももちここから単独で動いていい?」


269 : 果実の想い :2014/10/15(水) 21:32:23
嗣永視点


遠くで感じていた仲間の魔力の気配も弱まり
闘いの収束を知った桃子は胸をなで下ろす。

(良かった……。誰も欠けてない。)

普段からメンバーの中でぞんざいに扱われる
桃子ではあるが、『嗣永桃子』と言えば、
この魔法世界で知らぬものはいない。
それはここ数年、Berryzとして働くよりも
個人で動くことが増えた結果であった。

だが、桃子はそのことをあまり心穏やかに
受け止めてはいない。
確かに名前が売れてそして仕事が増えるのは
とても喜ばしいこと。ただそこでは

『嗣永桃子』でありBerryzの一員ではない。


270 : 果実の想い :2014/10/15(水) 21:36:33
桃子にとってBerryzはなくてはならない存在。
解散を決めるときも佐紀と激しく対立した。
だが、結局はみんなに押し切られる形で
解散ということになってしまった。

今回の任務は色々あったが
ひさびさのBerryzとしての任務。
一つ一つの掛け合いが妙に心地よい。

(この時間を、メンバーみんなを護れるなら
 私はいつだって鬼になる。)


「向こうの闘い終わったみたいだね…。

 ウチらも行こうか?」

佐紀の声にハーイと口を開き足を踏み出そうとした瞬間、
桃子は途轍もない憎悪の念を感じる。
背筋が凍りつくようなそんな感覚。
思わず立ち止まる。

だが、その念は一瞬で消えた。

(何?今の……。)


271 : 果実の想い :2014/10/15(水) 21:40:04
前を歩く里保や亜佑美、佐紀ですら
感じることはできなかったのだろう。
立ち止まったまま動こうとしない桃子を
訝しげに見ている。

(気づいたのはももちだけ?
 というよりも私に向けられたもの…。
 だとしたら……。)


「桃………?」

「ごめん、キャプ!
 ももちこれから単独で動いていい?」
(ごめん、佐紀ちゃん…。
 でもBerryzはももちが護る。)

しばしの静寂。

桃子の突然の発言に佐紀はじっとその瞳を見つめる。

やがて、フッと小さく笑うと言う。

「うん、気の済むようにいってきな。
 ただし、無茶しちゃだめだかんね?」


272 : 果実の想い :2014/10/15(水) 21:44:01
「えっ?何言ってるんですか」
「こんな状況で単独とか危険過ぎますって!」

「はいはい、いいの。
 桃は一回言ったらもう聞かないんだから。
 それより早く私達は移動するよ!
 希空ちゃんを安全なとこに移さなきゃ。」

「後ろはウチにまっかせなさーい!」
千奈美も胸を張る。


(やっぱり佐紀ちゃんにはかなわないなぁ)

桃子は心の中で佐紀に感謝しながら、
自身の感覚を研ぎ澄ませる。
(さぁ、呼応しなさい。)

キーーン


(ももちレーダーに反応あり。
屋上か…。)

桃子は自慢のツインテールで相手の位置をつかむと桃子は瞬時に地面を蹴り、屋上へと飛び上がる。


273 : 果実の想い :2014/10/15(水) 21:47:22
音もなく着地をすると桃子は魔力を何時でも
解放できるよう気を付けながら前へと歩みを進める。

「いい加減出てきたら?吉川友!」


バシュッ



「………さすがは嗣永プロと世間で言われるだけありますね。
 あの一瞬の情報からここまで割り出すとは。」

給水タンクの上に腰掛ける女性は心底驚いた
というような顔をしている。

「あの子達を使ってあなたは一体何が目的…ウグッ…」

桃子の問い掛けは最後まで聞こえなかった。
気づくと目の前に吉川がいて、その左手で
桃子の首を締め上げる。


274 : 果実の想い :2014/10/15(水) 22:59:11



「ぐ………。あなたその力……。」

「あれ、こんなもんなんですか?
 意外と弱い…。」

「は、はな………せ……。」

明らかに桃子の知っている友ではない。
これは誰だ………。
桃子は酸欠状態で虚ろになってきた意識である決意をする。

両手を自身の頭へと伸ばし、ツインテールを
留めているゴムを外す。
そして重力に従いはらりとその髪が下りた瞬間、
爆発的な魔力が桃子から放出した。
友もその衝撃を受け、首を掴んでいた手を放す。


275 : 果実の想い :2014/10/15(水) 23:00:38
「嗣永…。」


「ふぅ、あんまりやりたくないんだけどさぁ。ももちっぽくないし」
桃子は髪留め用のミニゴムを手首にそれぞれはめ、髪がふんわりと下りた頭にカチューシャをはめる。

「ふっ、面白い。この力をどこまで引き出してくれるか楽しみだ。」

「あんたが誰かわからないし、もうこの格好になったら容赦はできないよ。覚悟しな!」


続く


276 : 果実の想い作者 :2014/10/15(水) 23:02:14
というわけでこんばんはここまで
作者はツインテールももちよりも下ろした時のももちの可愛さにやられています。


277 : 名無し募集中。。。 :2014/10/16(木) 00:01:47
ももちかっけー!まさか、ももち結び巨大な魔力を抑えるリミッターだったとはw本当にベリ詳しくなかったの?凄い特徴捉えてるし、個性が出てる


278 : 名無し募集中。。。 :2014/10/16(木) 07:46:17
更新おつかれさまです

俺も最初はベリヲタが書いてるのかと思った
ベリに詳しいし、なによりも愛を感じます

ももち結びの効果クソワロタ


279 : 名無し募集中。。。 :2014/10/16(木) 08:32:37
髪留めゴムが拘束具なのか髪型が制限状態なのか

限定解除!!

ってやつですな?
きっかは憑依されてるか偽者なのか


280 : 名無し募集中。。。 :2014/10/16(木) 09:21:09
俺も外伝書いちゃおっかな


281 : 名無し募集中。。。 :2014/10/16(木) 19:36:42
ももちの魔力ハンパねぇな(^o^;)

あ、ちなみに俺もストレートももち派です。(笑)


282 : 名無し募集中。。。 :2014/10/16(木) 21:37:00
無限の魔力は俺も考えてたーw
しかもきっかでww


283 : 名無し募集中。。。 :2014/10/16(木) 22:37:04
ベリ編いい感じですね
ももちもキャプも千奈美もセリフ脳内再生余裕


284 : 名無し募集中。。。 :2014/10/17(金) 00:06:33
自分はももち結び以外ならどれでも派です


285 : 名無し募集中。。。 :2014/10/17(金) 00:55:17
いくらももち結び以外って言っても流石にバッファーヘヤーとかアメリカの美容室でして貰った髪型ならももち結びの方がマシって思ったw


286 : 名無し募集中。。。 :2014/10/17(金) 19:46:07
おばちゃんパーマ!!


287 : 果実の想い作者 :2014/10/18(土) 00:19:44
感想をありがとうございます

ベリは雄叫びハウス辺りに一回ハマって次にBerryzタイムズで
ハマってという感じで付いたり離れたりしているんで
無知ではないです。ただ最近の動向はあまりよく
わかってないので勉強中ですねw


288 : 果実の想い作者 :2014/10/21(火) 23:00:50
梨沙子と千奈美パートに苦戦
梨沙子の一人称って何なら自然ですか?


289 : 名無し募集中。。。 :2014/10/22(水) 00:27:18
梨沙子今なら『私』かな?
楽しみにしてますね


290 : nOTRcORru :2014/10/22(水) 22:31:45
Berryzのメンバーも'14のメンバーも生き生きと描かれていて、
読んでいて楽しくなります。
続きガンバってください。


291 : 果実の想い作者 :2014/10/24(金) 23:13:42
あっ仮面ライダーの作者さん
ありがとうございます

さてやっと梨沙子が書き終わった

続きいきます


292 : 果実の想い作者 :2014/10/24(金) 23:14:47
あっ仮面ライダーの作者さん
ありがとうございます

さてやっと梨沙子が書き終わった

続きいきます


293 : 果実の想い :2014/10/24(金) 23:17:35
梨沙子視点

目の前の傷付いた少女達に『癒やしの調』を聞かせ終わり
一段落する梨沙子。
雅・友理奈・茉麻は向かってきている敵の元へと向かって行った。
苦しみから解放された少女達は穏やかな顔つきをしている。
その一人一人の顔を見て梨沙子はふと物思いにふける。

自分は最年少であったこと、回復系の魔法を
主だって使っていたということもあり結成当初から何かとみんなに守ってもらうことが多かった。
梨沙子自身もそのことに対して当時は何の想いも持っていなかった。

(そのことは凄く感謝しているんだけども……さ。)

だが時が流れ、最初からある程度の実力を持っていた
梨沙子はメキメキと力を付け、やがてBerryzの中でも
屈指の実力を持つ魔導師へと成長した。

今では攻撃系の魔法ももちろん使える。その威力も
Berryzのメンバーに引けをとることはない。
それでも未だにキャプテンは自分1人で回復魔法を使うことを
決して許さない。必ず誰かを付けないといけないのだ。


294 : 果実の想い :2014/10/24(金) 23:21:12
「アタシ、別に弱くないのにな…。」


心の呟きが思わず外にこぼれた。
梨沙子は頭を強く振ると一応周囲を警戒する。


そこへ慌てた様子で雅と友理奈が戻ってきた。

「そっちは大丈夫?」

梨沙子は雅に声を掛ける。

「うん、熊井ちゃんに任せてきた。
 もうあの3人ダメだよ。」

雅は梨沙子の横に立ち、改めて周囲の状況をを認識しているようだ。

そして友理奈は友理奈で口に手を当てて
どうやらアクビをかみ殺しているようだ。


「とりあえず、この子達中に入れて休ませよ!
 ほら、立てる?移動するよ。」

雅はテキパキと指示を出していく。

(さすがサブリーダー…。)

梨沙子も近くで倒れている少女の元へ
声を掛けようと近寄る。

「ダメ、梨沙子!そいつは…」
鋭い友理奈の声が飛ぶ。

突然世界が歪む。
梨沙子の意識は既になかった。


295 : 果実の想い :2014/10/24(金) 23:23:30




(ここは……?)


『お前の相手は私がしよう。』

「…誰?」


『ふっ。この仙石みなみ、敵に名乗る名前など 
 持ってなどおらん。』

「いやいや、思いっきり名乗ってんじゃんか。」


『ぐぬぬ、お主、さすがはBerryz最年少ということだけはあるな』

(話全然つながってないし。
 こいつ……大丈夫?)

相手をするだけ時間の無駄と梨沙子は判断し、
自分の魔力を戦闘用へと切り換える。
そして構えをとると前方で頭を悩ませている
みなみの元へ歩み寄ると全力の一撃を加え勝負あり

の……ハズだった。


296 : 果実の想い :2014/10/24(金) 23:26:44
梨沙子の一撃は虚しく空を切る。

(…外した?この距離で?)

それだけではない。
梨沙子が先程まで持っていた魔力は
しっかりと消費されている。

だがみなみは変わらずそこに立ったままである。
まるで、梨沙子に攻撃されたことに気づかない
かのようにどこか遠くをみている。
その態度が梨沙子にスイッチを入れた。

「この…、ふっざけんなお前!」

繰り出される一つ一つの攻撃は烈火のごとく
凄まじく、みなみへとたたき込まれる。

しかしながらその一つとしてみなみにダメージを与えることはなかった。



何かがおかしいことははっきりわかっている。

だが身体が言うことをきかない。
本能の赴くまま攻撃を続ける梨沙子。

やがて、手応えのある一撃が入る。

(よし、一発入った。ここでたたみかけるよ。)


297 : 果実の想い :2014/10/24(金) 23:30:12
だが、そこから先、梨沙子の攻撃は全てみなみに
受け止められる。そしてみなみも攻撃を仕掛ける
ようになってきた。

その一撃一撃はとても重い。

梨沙子は受け止めることを諦め回避しようと宙へ飛び上がる。

その時、突然みなみが複数に分かれ、その一人一人が攻撃を放ってくる。

「なっ…!」

あまりの突然の事に避わしきれず、複数発を食らってしまう。

思わず膝をつく梨沙子。

当たらない自分の攻撃に対し、変幻自在な攻撃を仕掛けてくるみなみ。

このままではまずいことはわかっている。
だが、打開策が思いつかない。
そこからも攻撃を受け続ける梨沙子。


まるで悪夢のようである。
そこでふと梨沙子はあることに気づいた。

「悪夢…?そうか、これは…!」


やっと自分に掛けられた魔法の正体に気付く梨沙子。
これは友理奈の程ではないが精神魔法の類…。


298 : 果実の想い :2014/10/24(金) 23:33:52

『今頃、気づいたか。
 だが、私の魔法は現実世界のお前の心を傷つけている。
 そのダメージでは正気を取り戻す事すら…。』


「お前はもう終わりだ。」

みなみの話は突然遮られる。
不審そうなみなみ。
その声は明らかに梨沙子のものではなかった。

梨沙子が頭上高くにかざしたその手の中に一振りの刀が出現した。
その刀は白い光に包まれ、とてつもない魔力をまとっている。

『な、何が起きた…?
 お前どこにそんな力を!?』

突然の事態に動揺を隠しきれないみなみ。

その言葉を全く無視するように梨沙子は刀に向かいある名前を呼ぶ。

「ジャンヌ、また会ったね!
 ちょっとだけあんたの力、貸してもらうから。」


299 : 果実の想い :2014/10/24(金) 23:37:47
そういうと、梨沙子は手にとった刀をすっと引くと、
体勢を低く構える。

そしてキッと自らを囲む敵を見据えると瞬時に
魔力を増幅させ、切りかかる。


先程まで空を切ってばかりいた梨沙子の攻撃は
次々とみなみの分身像を消滅させていく。


そしてとうとう、みなみ本体のみを残すだけとなった。
先程までの余裕な態度はなくなり、みなみ自身が攻撃を放つ。


だがそれをいとも易々と弾き飛ばされるのを見ると
みなみがその右手に魔力を込め突進してくる。

梨沙子も刀を構えると一直線にみなみへと突っ込んでいった………。






300 : 果実の想い :2014/10/25(土) 00:03:18
「りーちゃん、りーちゃん!」
「梨沙子!しっかりしな。」


誰かが自分を呼ぶ声に梨沙子はパチッと目を開ける。
そこには今にも泣きそうな顔をした仲間たちがいた。

「りーちゃん!大丈夫?」

「あー、うん全然何ともないわ。」

「いきなり倒れるんだからびっくりしちゃったよ。
 
 精神魔法の類…?ホントに大丈夫?」

心配する声をよそに梨沙子は大きく手を振る。

「大丈夫だって!それよりもさ早く屋内移動しよ。
 そろそろ夜になるよ!」

(本当のライバルは弱気で後ろ向きな私…。
 簡単に負けるわけにはいかないの)

一同は梨沙子の言葉に心配をしながらもその場を立つ。



その時、建物全体を包むような強大な魔力が2つ……。
その大きさに全員が身を凍らせる。

「これは……桃?この力…。
 桃が制限解除?」


続く


301 : 名無し募集中。。。 :2014/10/25(土) 00:14:43
続きキタ━(゚∀゚)━!


302 : 名無し募集中。。。 :2014/10/25(土) 08:52:54
>>291>>292大事な事ですねw

りさことジャンヌの共演心躍るわぁそして桃の魔力解放…ゾクゾクする!本編にはないバトル満載で楽しすぎる


303 : 果実の想い作者 :2014/10/25(土) 13:14:03
ネットワークがおかしかったみたいですね…

あんまり重要ではないですw


304 : 名無し募集中。。。 :2014/10/25(土) 17:27:29
バトルがあるだけで違った読み物になるもんなんだね
あと登場人物も違うからか


305 : 名無し募集中。。。 :2014/10/25(土) 20:29:02
俺もバトル物書きてえ


306 : 名無し募集中。。。 :2014/10/25(土) 22:45:40
>>305
頑張りや


307 : 果実の想い作者 :2014/10/26(日) 22:27:31
夜の冷え込みがだんだんと強くなってきましたね

ベリ編もようやくまとめに入ってきます
というワケで続きです


308 : 果実の想い :2014/10/26(日) 22:42:05
西の水平線へと沈んで行く夕陽を自宅のベランダから
眺めながらさゆみは大きくため息をつく。

「はぁ〜…。
 りほりほのいない日があと4日も続くなんて
 やんなっちゃうなぁ。
 やっぱりつまんない。」


そうぼやいていると優樹がさゆみを呼びに
ベランダへとやってくる。

「あー、こんなとこにいた!
 探したんだよー。」

「ん?どーしたの、まーちゃん?」


いかにも『苦労しました』というような体で話す
優樹の言葉にさゆみは軽く応じる。

「みにしげさんのパソコンから音がピーって
 さっきから鳴りっぱなしでどぅーが
 みにしげさん呼んでって!」


(こんな時間に通信?りほりほ達に何かあったのかな…)


309 : 果実の想い :2014/10/26(日) 22:46:46
「どぅー!どぅー!みにしげさんいたよー!」


さゆみは派手に階段を降りる優樹を見やり、
少し意識を集中させる。
その鋭い感覚は遥か遠くにある魔力の渦を
即座に察知する。


(なるほど…。これは少し気を緩め過ぎたわね。)


数分後、パソコンの前でさゆみはひとりの男と
通信をしていた。

『……という訳なんです。よりによって
 こんなときに起きてしまうなんて言い訳のしようがないです。』

「だから言ったじゃない。
 10年前、あの子達を魔法使いにって話をした
 あの時、そのリスクを。」


『完全に俺の計算違いです。まさか
 他の魔導師に乗り移るとは…。』



「想いは人に力を与えるわ。あなただって
何かしら想いはあるんでしょ?
 それに向かって行動するから人は強くなれるのよ。
 少なくともあの子達は全力で努力をしてきた。
 それこそ死に物狂いでね。
 まぁどのみち、一人はもうかけているんでしょ?
 だとしたら尚更、あの子達自身が解決する
 必要があるんじゃない。」


310 : 果実の想い :2014/10/26(日) 22:51:22
なおも不安そうな顔で画面に映る男に
さゆみはゲキを飛ばす。

「しっかりしなさい。
 あなたはみんなにとっての親代わりなんだから、
 もっとドッシリ構えたらいいの。
 いい加減腹を括りなさい。」



生田の父はさゆみの最後の言葉聞くと、決心したように
大きく頷く。
そして一言、さゆみに感謝を述べると通信を切った。


「道重さん……。
 今の執行局の…?」

恐らく、声は丸ぎこえだったのだろう。
 実際工藤は元々、魔導師協会の所属であり
その魔導師協会にとって三大魔導師の一人である
さゆみの存在がどのようなものかは知っている。
その中でもエリートの集まった執行局のトップが
わざわざさゆみに通信をしてくることに遥は違和感を覚える。

「んー?確かにあの子は執行局の局長だけどさ。」


そんな遥の違和感を打ち消すかのように
さゆみはノートパソコンを閉じると立ち上がる。

「今回の相談は人の親としての悩み……かな。
 どっちにしろBerryzのあの子達自身がどう道を拓くのか
 楽しみにしてましょう。」


311 : 果実の想い :2014/10/26(日) 22:55:04



執行局の建物内へと入った佐紀達は階段を慎重に昇ると
2階にある自分達Berryzの部屋へと向かう。


「うわっ…凄い…。」

部屋の戸を開けた佐紀は思わず頭を抱える。
部屋の中は自分達が執行局の広報誌に載ったときの
いくつもの拡大ポスターで埋め尽くされていた。

「これ全部、Berryzの皆さんですか?」

「……そう。
 まさか人を入れることになるなんて思ってもなかったぁ〜。」


佐紀はそうゴニョゴニョと小さく呟くと、
目の前のポスターの束をつかみ、後ろへと声を掛ける。

「ここでしばらく時間つぶそうか?
 桃も帰ってこないしみやとかの方も
 気になるかんね。」

「あのー、嗣永さんは何を感じ取ったんですか。
 私、全然気づかなかったんですけど」

遠慮がちな亜佑美の問い掛けに顎に手を当て
少し思案する佐紀。
里保もそのことは気になっているようであった。


312 : 果実の想い :2014/10/26(日) 22:57:50
佐紀はしばらくしてあることを里保と亜佑美に尋ねる。


「今、2人が捉えている魔力はいくつ?
 特にバカデカいの。」


里保と亜佑美はその言葉を聞いて意識を集中させる。


「あっ、あれ?
 嗣永さんの魔力しか感じませんけど……。」

「んーいや嗣永さんだけじゃないかも。
 Berryzのメンバー皆さんの魔力がちょっとずつ……。
 あれ?でも清水さんここにいるし……。」

「えっ、じゃあ嗣永さんは誰と闘っているの?」

わけのわからない事態に混乱する里保と亜佑美。
そんな2人の様子を見ながら佐紀は部屋の
片付けを続ける。
部屋の窓からはすっかり夕闇に包まれた空が見えていた。

続く


313 : 名無し募集中。。。 :2014/10/26(日) 23:57:49
続きキタ━(゚∀゚)━!
毎回もっと続きが読みたくなるわ


314 : 名無し募集中。。。 :2014/10/27(月) 07:21:27
当たり前だけどさゆもBerryzの事知ってたんだな当然局長がらみ…生田パパはどの作品でもキーパーソンになる良いポジションだよなぁw
消えた魔力が意図する理由は・・・もしよもう全てが片付いてる?


315 : 果実の想い作者 :2014/10/28(火) 22:11:48
だんだんと終わりが近づいている本作品です
まーどぅ戦国編のように焦らず粛々と書いていきます。

というワケで続きです


316 : 果実の想い :2014/10/28(火) 22:26:46
「巨大な魔力はどのくらい感じられる?」

佐紀の発した質問に里保と亜佑美は頭を悩ませる。
どう感じてみても桃子とそれ以外のメンバーの
魔力しかないのだ。
しかもおかしなことに佐紀の魔力を目の前にいる
佐紀から感じているわけでもなかった。


「まぁ、わかるわけないよね……。
 でもさ、たぶんあそこで闘っている桃は。」
そこで一つ佐紀は呼吸を置く。

「10年分の私達と向き合っているのかもしれないね。」


317 : 果実の想い :2014/10/28(火) 22:30:14



すでに陽は傾き、夜の帳が降りようとしている。
だが、かれこれ30分以上、桃子と友はお互いに
一歩も動くことなく対峙している。

何もしていない訳ではない。
高レベルの魔導師同士の闘いほど『一瞬』で
勝負がつく。

その『一瞬』を掴むために睨み合いは続く。


本来の力を解放した自分にとって普段であれば
なんてことはない魔導師である。

しかし、今目の前にいる相手から感じられる魔力は
どこか異様でおまけにやりにくい。


複数の術者がいるようなそんな感覚。



(まさかね…。 
でももしそうだとしたら…。ちょっとカマ掛けてみっか。)


318 : 果実の想い :2014/10/28(火) 22:36:27

相手の正体を掴みきれない桃子は自分の魔力の
張り方を少し変化させる。
要は友を誘い出したのだ。

その変化を好機と捉え、鋭い電撃を放つ友。
それを余裕をもってかわす桃子。

だが次の瞬間、目の前に現れた友から放たれた
強烈な前蹴りが桃子の顎先を捉える。
浮かび上がった桃子の身体はしばらく宙を舞うと消滅した。

友は着地すると即座に後ろを振り返る。
そこには腰に片手を当てて右手の小指を
友に向けた桃子の姿があった。


「ひゅー…危ないなぁ!
 これ以上ももちのアゴが可愛くなったらどうすんの。」

そうチャラける桃子。

だがその瞳は全く笑っていなかった。
そして桃子の疑念は確信へと変わる。


(さっきの電撃から蹴りのコンビネーション、
 あれはみやの得意だった型…。
 間違いないコイツは…。いやこの魔力は…。)

桃子は飛んでくる鎌鼬を自分の魔法で相殺し、
降り注ぐ土塊を消滅させる。


(私達自身…か。)


319 : 果実の想い :2014/10/28(火) 22:40:29
友は瞬時に距離を縮め、炎の刀で攻撃を仕掛ける。
その袈裟斬に対し、桃子は逆に間合いを一歩詰め、
刀を頭の上で交差させた腕で受け止めると身体を
右へと切り、刃を渡り相手の鳩尾へと一撃を加える。

その攻撃をがっちり受け止める友。

「んーもう厄介だなぁ、好戦的なりーちゃんに
 防御を考えてるちなとかさ。」

桃子は手首にできた火傷のあとを軽くなでる。忽ち傷は癒えた。

(それにしても一体コイツはどこからももち達の魔力を…)

「闘いの最中に考え事とはな。こちらは10年も我慢させられたのだ。
 少しぐらい好きに動いたってバチはあたらん。」

そう友は呟くと自分の足元に魔法陣を作り出す。

「!」


320 : 果実の想い :2014/10/28(火) 22:46:23
魔法陣からは膨大な魔力が友へと注入される。
だが、その事実以上に桃子はその形に驚いていた。
そしてふと自分の懐へと手を入れてみる。

(なるほど…ね。そりゃわがままにもなるわ。ももちが主体なのも納得。
 あぁ、キャプテンと局長に怒られる。トホホ…)


「これで終いだ」

気づくと友は大きく宙を飛び、桃子へと攻撃を仕かける。
左手には真紅の刀、右手には電撃を纏う。


その動きに対し、桃子は左足を少し外へ開く。

その瞬間、地面から巨大な柱が出現し、友の身体を捉えた。
今度はかわしきれず直撃し苦痛に顔を歪める友。
地面へと落下してきたその姿を見る桃子の瞳からは
もう迷いが消えていた。


「この…」

「あんたの正体が分かったよ。その上でももち達は
 負けられない。他のあんたの仲間たちにもね。
 ももち達だってそんなに軽い10年は過ごしてきたつもりはないから。」





321 : 果実の想い :2014/10/28(火) 22:48:55
「千奈美、このとき覚えてる?」

佐紀は懐から一枚の写真を取り出し、千奈美へと見せる。

千奈美は少し思案したが、すぐに思い出したのか声を上げる。

「あぁ!こん時ね。確か、10年ぐらい前だっけか。
 ウチらがチームになってすぐん時だ!」

そうして、佐紀は里保と亜佑美にもその写真を見せてくれた。


「あっ、この写真…。」

「鞘師ちゃんは知ってるよね。

いつも局長室に有ったしね」


その写真にはまだ幼き頃のBerryzのメンバーが写っているのであった。雨の降りしきる悲しい朝。


そして佐紀はその時の様子を語り始めたのであった。


続く


322 : 果実の想い作者 :2014/10/28(火) 22:51:02
今晩はここまで。

あっ、冒頭に『最終編』って入れるの忘れた


323 : 名無し募集中。。。 :2014/10/29(水) 00:00:23
>>322
更新乙です!7人の力を持つきっかと桃のバトルが凄い!何故きっかがそんな力を持ってるのかまだ謎だけど…

そして…『その写真にはまだ幼き頃のBerryzのメンバーが写っているのであった。雨の降りしきる悲しい朝。』ってもしかして…うぅもうすでに泣きそうなんですがw


324 : 名無し募集中。。。 :2014/10/29(水) 14:14:09
きっかと桃にサンドイッチされて昇天したい


325 : 名無し募集中。。。 :2014/10/30(木) 03:04:03
鰻屋さん…


326 : 名無し募集中。。。 :2014/10/30(木) 03:09:26
http://imgur.com/bUDfrks.jpg


327 : 名無し募集中。。。 :2014/10/30(木) 10:30:05
>>325
いるよ
所属部署違うけど


328 : 名無し募集中。。。 :2014/10/31(金) 09:00:53
                                            ∩     /ゝ
         |_| __  __  __.         |_| __  .l l      __ __    ∪ /⌒/" 、⌒ヽ
         |  | Cし |‐' |‐' У    |  | Cし | | (_) レl/ ヒ' ヒ' l'^! ○ | ::::::::○::;;;::○::;| /ー-
___                                          ヽ ,,:::、WWW;//==ヽ i
 ̄'''‐-、:.`ヽ                                       /,~,川* ^_〉^)./.   |/
   @⌒⌒@                                      / :::   ..::::つO
    </(人人))>                                   "''-;,,i    ::::,,/ ヽ
   ノノ∮‘ _l‘)                                       "''---''''/"''~
    i(ノ::..l) 0つ┓
    /::.. ,イ 。(8‘ ー‘8)。                  <::ヽ
__,,, -‐'":/`J                        |::::::\             。'“゚`・*。 。*゚”`'。
   ̄ ̄                         ∠ニニニ`_ ☆          *     ゚+゚     ☆
                               从*・ 。.・)/  ゚''+。.,      ゚,,        ,.。+''゚
          /ゝ                    <´ヽWノフつ      ゚“・:+.:.。☆,,*:...。.:.+・ ”゚
      /⌒/"⌒、ヽ              ミ≡=_、_. (,ノ(,, _,-、ゝ___ -、         ゚*。      ,
     | ::::::▽::;;::▽:;| /ー--、      彡≡=-'´ ̄ ̄`~し'ヽ)┓ ̄  ̄ ゙̄"′         ゚・*。+・`
     ヽ、:::WWW,; /==ヽ i    ,.           (ノリ ‘. 。‘))
     /,,ノリ*´ー´リ,/    |/ __/=ヘ
    /::::::::::::::::::::::::○     从*´◇`)
∠ \ "''-;,,i:::::::::::::.:,/.ヽ      (     )       π      ∠\
 | \ `' '~U~U/"''~~.     `u-u'       γ,::,::':ヾヽ   _/ニ` 、    <~ヽ、
∠ニニニ>             .、,          (::ハo´ 。`ル). <____フ    /  \
 从*´’v’リ           _/二[ _,       .、   ヽ:ヽ'--'ノノ    | |;;:..|   ,.' , ===`、
  /~~ハ丶つ┓     【ノハ*゚ ゥ ゚)】  __/_[._    )  (..    | |;;;;.|   <|||9|‘_ゝ‘)>
  / OO| (ノノ*・_l ・))  占7 ハ_ ヽ  川c ’∀´)   ( ⊃⊃    | |;;;;;|    / ,∞ヘ  つ┓
  `〜uu′.         .l ゚ ' ゚l´    (,,_,,)〜  (__)__).    │ |/;:;:   く__/u|__,ゝ(ノo’u’oナ)


329 : 果実の想い作者 :2014/10/31(金) 10:02:00
うんべり編がいい感じにまとまってきました。やっと写真の件を書ける

では、続き


330 : 果実の想い :2014/10/31(金) 10:05:15
「10年前に『魔導師の世界に新たな創造を』という
 コンセプトで私達は集められた。でもね、言うほど大した魔力は持ってなかったし。
 それに集められたのは私達だけじゃなかったんだよね。」


「あっその話聞いたことあります。
 矢島さんとかもですよね?」


「そう。今はお互い特殊チームになってはいるけどあの時、
 まだ年端もいかない子供だったからさ…。実際に執行魔導師としての訓練さ
 嫌いだったんだよね。でもやらなきゃ追い出されるし、
 かといって頑張っても昇格の目処が見えないっていう感じ…。」


「うんうん!あれめっちゃキツかったね。訳わかんない事で怒られてさ。」
千奈美も頷き応じる。


331 : 果実の想い :2014/10/31(金) 10:08:28

里保と亜佑美も確かに訓練は受けてきた。
だが、そこまでキツかったという印象はない。
やっている内容は普通の協会員だった時に比べ
少し高度であると感じたぐらいであった。


そんな2人の様子に佐紀は苦笑する。

「要はさ、私達才能なかったんだよね。なのに選ばれちゃったからさ
 浮かれてる部分はあったんだよね。」


そう言いながら、髪をかきあげる佐紀の表情は
どこか寂しそうで里保は少しドキッとする。
自身に才能がないと言い切ること。それは容易なことではないはず。


「ウチには才能あったよ。」
千奈美は佐紀の言葉に賛同しかねるといった具合に腰に手を当てている。


「ちな、さっきから思ってだけどさ…。 
 なんか、ガヤ入れるの得意になってない?」

佐紀の思わぬ言葉に図星という表情の千奈美。
 何か小さな声でブツブツ言っている。


332 : 果実の想い :2014/10/31(金) 10:11:55
「どこまで話したっけ?あぁ、才能が無いってとこまでか。
 そうね…だから生田局長にもいっぱい迷惑をかけたし……。
 それでも局長はいつもいつも笑顔で私達を見守ってくれていたなぁ。
 でも、いよいよ本格的に『Berryz』としてチームを組もうって
 ことになった時にね、局長は一つの判断を迫られることになったの。」


佐紀は一度言葉を切る。
妙な静けさが辺りを包み込んだ。
亜佑美はゴクリと唾を飲み込む。


「私達、それぞれにやりたいことはもちろんあったわけだし、
 子供だったからさ…。

 辛いことからは逃げ出したかったんだよね。でもそれって実際の現場で
 そんなんやったらそれこそ、危ないじゃん。
 協会の上の人はそれを危惧したみたいで……。
 局長に私達から『自分の一番やりたいこと』を取り上げるように命令したの。」


「「「えっ!?」」」

思わぬ言葉に驚きの言葉を上げる3人。
何故か千奈美も驚いているようだ。


333 : 果実の想い :2014/10/31(金) 10:16:17
「いやだってだってそんなん無理ですよね?」

「いくら局長でもそんな都合よくある部分を消せるとか
 取り上げるとかそんなことできるわけな……。

 あっ!」

そんなことができるはずはない。
そう決めつけようとしていた里保はあることに気づく。
この仕事を局長から聞いたとき、ある人物の名前が出ていた。


「道重さんですね?」


里保の言葉に佐紀はゆっくりと頷く。

「そう。局長の力だけでは私達からそれを取り上げるのは
 不可能だったし、マインドコントロールなんてされたら
 いくら何でもひどすぎる可哀想と思ったのかもね。たぶんすごい悩んだんじゃないかな。
 最終的に局長は道重さんのとこへと行って何か良い考えは
 ないかと相談したみたい。」


そこで佐紀は再び写真を取り出す。

「そして『Berryz』結成の朝。私達は広報に載るからって
 中庭に集められた。今は局長の秘書だけど舞波も
 そのときはいたかな。その日は朝から小雨が降っててね……。」


334 : 果実の想い作者 :2014/10/31(金) 10:17:39
ごめんなさい急用ができたので一旦ここで切ってあとで残りを投稿します


335 : 名無し募集中。。。 :2014/10/31(金) 10:18:54
ぬぉー良いところで!?続き待ってます


336 : 果実の想い :2014/10/31(金) 22:37:38

ーーーーー


『全員集合!』

かけ声とともに集まるBerryzのメンバー達。
まだ体がスッポリ覆われるぐらいの傘を差している様子が
何とも愛らしい。

屋上からその様子を見ていた生田は緊張していた。
数日前に言われたさゆみの言葉が今でも、耳に残る。

『あの子達の人生をあなたが責任もてるの?』


(いつだってオレは真剣勝負ですよ。
 あの子達を守るためならオレは鬼となる。)

生田は少女達の書いた一枚の色紙にもう一度目を落とす。
そこには広報誌に同時掲載すると偽り
8人に書いてもらったものだ。テーマは
『もし、自分が魔導師でなかったらやりたいこと』。


337 : 果実の想い :2014/10/31(金) 22:40:49

それぞれが思う一番やりたいこと。
それを使うことに意味があるとさゆみは言っていた。
その色紙を生田はそっと指でなぞる。そして視線を上げると
さゆみのもとから借りてきた魔法道具のカメラに
フィルムと一緒に色紙をセットする。


『…お願いします。』


生田は手にしたカメラを担当のカメラマンへと手渡す。
何も知らないカメラマンは禍々しい魔力を帯びた
カメラを受け取った瞬間、一つ身震いをする。


『はい、それでは皆さん撮りますよー。
 はいチーズ!』



パシャッ!






続く


338 : 果実の想い作者 :2014/10/31(金) 22:42:47
今朝は失礼しました。
急に出かけるようができましてぶったぎってしまいました。


339 : 名無し募集中。。。 :2014/11/01(土) 00:35:42
ついにあの写真の謎が・・・


340 : 名無し募集中。。。 :2014/11/01(土) 02:18:57
色々絡めてくるなあ
ラストまで楽しみにしてます


341 : 果実の想い作者 :2014/11/03(月) 23:02:20
本スレ規制されて書き込めない…

ちょっと更新休止中です
ごめんなさい


342 : 名無し募集中。。。 :2014/11/04(火) 02:18:03
ワクテカしながら待ってる


343 : 名無し募集中。。。 :2014/11/07(金) 01:58:38
20


344 : 倍力?002 :2014/11/07(金) 18:32:45
正所?:“一?奔?,射雕引弓,天地都在我心中!”
倍力?002 http://www.338c.com/prolist.54.html


345 : 果実の想い作者 :2014/11/08(土) 00:07:15
だいぶ投稿サボってました
あと3回の更新でついにベリ編終了でございます

では続き


346 : 果実の想い :2014/11/08(土) 00:09:51
それからは少女達は『Berryz』の名に恥じない働きをするようになった。今までは寄れば喧嘩ばかりであり、それぞれの自己主張が激しかったが、あの日以来文字通り『人が変わった』かのようになったのであった。


ーーーーー

「今までずーっとウチらはウチらっぽく過ごしているつもりだった…。
けどさ。実際はそうじゃなかったんだよね…。」


亜佑美も里保も切なさそうに語る佐紀の顔から目を外すことができなかった。
自我の封印。それが何を意味するのか2人には想像もつかない。


その時突如空気を破るように声が聞こえる。

「じゃあさ、キャプはいつそのことに気づいたわけ?」

雅であった。
どうやらもう1チームの方も合流したようである。


347 : 果実の想い :2014/11/08(土) 00:14:34
「確かに!ウチは全然気づかなかったよ!」

友理奈も続いて問いかける。


皆の視線が一斉に佐紀の方へと向く。
佐紀は一つ一つ思い返すように口を開いた。

「ウチもね、最初は何にも感じてなかった。初めてあれ?
 って思ったのは舞波がチームを抜けてしばらく経ったくらい。
 生田局長の所に行ったときかな。」


佐紀はそこで言葉を切り、視線を里保へと向ける。


「ねえ、鞘師ちゃん。変だと思わなかった、局長室。
 局長自体強い魔導師だから部屋の中に魔力があるのは当然なんだけど、
 なんか複数の魔力を感じたことはなかった?」


突然自分に向けられた質問に里保は驚く。

確かに里保は局長室でよく魔法酔いを起こしていた。
だが、今ではほとんどそんなことはない。

てっきり、自分の幼さが原因だと思っていたのだが…。


348 : 果実の想い :2014/11/08(土) 00:19:57
「あぁとえぇと…。
 よく魔力酔いをしていたのは覚えているんですけど。
 でも最近はしなくなって…。」


「それって今から1年半くらい前じゃない?」

その通りであった。
それまで局長室に入る度に身体が泳ぐような気分がしていたのが
あるときを境にパッタリと止んだのであった。


「恐らく原因は舞波の魔力。
 舞波が抜けた後の局長室にも変わらずに舞波の魔力は
 存在し続けた。写真のなかにね。」


そして、佐紀はもう一枚同じ写真を取り出す。
いや、実際には同じではない。まとう魔力が異なっている。


349 : 果実の想い :2014/11/08(土) 00:25:02
「あの日、ウチらの想いっていうのが
 一部の魔力と一緒に写真の中に個々に封印されたんだろうね。
 それは絆の証しみたいなものだったから。
 舞波が局長の秘書として戻って来たときからあの部屋の魔力が変わった。
 写真から一切の魔力が消えたの。
 その時にウチは確信した。あぁ、私達魔法に掛けられたんだって。」


話を終えた佐紀はほんの少しため息をつく。
聞いていた一同からは誰一人として言葉を発するものはいなかった。
Berryzのメンバーは各々の写真を取り出しそれを眺める。
今まで絆の証しと思っていたものが自分たちへ掛けられた魔法の媒体だった。


「でもさ…、魔法に掛かっていようがいまいが私達は今までも今でも、これからもBerryzでしょ?
 それは変わんないだからさ…。」

「さすがりーちゃん!よくできました。」


350 : 果実の想い :2014/11/08(土) 00:29:33
突然、ドアから声が聞こえる。
いっせいに集まった視線の先には桃子がいた。
その髪は普段通りツインテールとなっている。
そしてその肩には気を失っている友の姿もあった。

「よいしょっと。」

友をそっと床へと下ろす桃子。

「もも!どうしたのいったい?」

「あっ…この人…あたしに攻撃してきた人…。」

「やっぱりね。
 魔力の痕から雅のぽかったからそんな気がしたよ。」


「えっみやは石田ちゃんに攻撃なんてしてないし。
 意味わかんないんだけど。」

「もも。ちゃんと説明しないと!」

どうやら佐紀だけがこの事情をしっているようである。

「うーん、まぁ何というかももちが全力でぶっ潰すとこういう感じになるよって言うかね。
 おそらく、ももちの写真半分焦げて無くなってたからさ。
 封印された魔力が解放されて偶々、この子に移ったんだろうね。
 でも、この子が気を失ったらまたどっかいったみ…。」


351 : 果実の想い :2014/11/08(土) 00:32:09
桃子の言葉は最後まで聞こえなかった。
いや、聞かなかったの方が正しい。


全員が部屋の天井、その先の空へと意識を集中させている。

「あーあ、ちょっと最悪なパターンだよね。」


桃子はため息をついてツインテールの手入れをする。

今やその友から追い出された黒い魔力は隠れることなく
執行局全体を包み込んでいた。





続く


352 : 果実の想い :2014/11/08(土) 00:32:48
ということで今晩はここまで


おやすみ←


353 : 名無し募集中。。。 :2014/11/08(土) 07:17:22
おー!!やっと続ききたー写真にはそんな意味があったのか…『かけた』のではなく『かけられた』とは逆転の発想だなぁ
でもあの写真を本スレに貼ってお願いして良かった!ラストまで楽しみにしています


354 : 名無し募集中。。。 :2014/11/08(土) 08:49:09
なんか切ないんだよ
今ベリをどんどん好きになっているから


355 : 名無し募集中。。。 :2014/11/12(水) 01:16:55
生田と鞘師が派手に戦うカンジの話を書こうと思ってるけど技とか設定は今までのをめっちゃ拝借することになりそう(^o^;)


356 : 名無し募集中。。。 :2014/11/12(水) 14:20:01
俺は逆に合うのは属性くらいで後は俺オリジナルの術や技になりそうだ


357 : 果実の想い作者 :2014/11/12(水) 23:14:00
おーめちゃくちゃ楽しみ

そしてまた更新をサボってます…
もうちっとお待ちください


358 : 名無し募集中。。。 :2014/11/13(木) 01:19:21
早く〜
でも焦らないで
サンシャインで初ベリ握手
高速過ぎw


359 : 名無し募集中。。。 :2014/11/14(金) 17:14:34
生田の個別ロング行くんだけどどれくらいの長さなのかな?


360 : 名無し募集中。。。 :2014/11/14(金) 17:49:56
ハロウィンの怪談でえりぽんが使った魔法が今考えてる話に出てくるのと被るっていうまさかのパターン…

自信あったんだけどな(笑)


361 : 果実の想い作者 :2014/11/14(金) 22:47:48
ネタの被りってまじかよってなりますよね

でもこのスレだったらOKかと思ってます。

ということで行きます。


362 : 果実の想い :2014/11/14(金) 22:51:38
すっかり夜の帳が降りた執行局。
だが、その暗さは夜の闇によるものではなく
また建物の姿を外から見ることは不可能に近かった。


続々と局内から局員をはじめとしたスタッフたちが、
まるで黒い塊に引き寄せられるように、操られるように
力なくその歩みを進めていく。その中には先程、梨沙子の
魔法によって回復した少女達や希空、MKNGのメンバー、
そして里保や亜佑美もいた。



虚ろな顔で部屋を出た3人を追って外に出た
Berryzのメンバーはあまりの光景に息をのむ。


「亜佑美ちゃんのクチビル
 ……譜久ちゃんの二の腕
 ……えりぽんはウチのものヤシ……。」


「スイカ……塩かけ…て…食べ…る」


もはや、意味不明である。


363 : 果実の想い :2014/11/14(金) 22:54:56
「あちゃー、これはひどいね。
 熊井ちょー?どうなってるのか解説!」

桃子が軽い口調で友理奈へと説明を求める。

だが、その口調とは裏腹に桃子の周りからは目で見えるほどの魔力が立ち上っているのが見える。

そして、それは他のメンバーも同じである。





「最悪なパターンだよね。」

桃子の呟きとともに友から追い出された魔力が
執行局を覆い尽くすのを感じた瞬間、Berryzの
メンバーは本能的にそれぞれの『心』にプロテクトをかけた。


一瞬の空白……。



そして、突然頭上の魔力の塊から膨大な魔力が放出された。
その魔力は瞬く間にその場にいた人間の心を掌握したのであった。


364 : 果実の想い :2014/11/14(金) 22:58:38
「たぶん、精神魔法の類の一つだよね。
 あとは相性の問題かな。

 キャプの言うとおりあれがウチ達の魔力の一部だとしたら
 ウチらに効かないのは当然だよね。

 でも、それにしたってさぁ…。」

友理奈は頭上の魔力に向け手を伸ばす。

あと少しで手が届くというところで、強烈な爆発音と共に
友理奈の手が弾かれる。


「「「熊井ちゃん!?」」」

顔をしかめて、手を振っている友理奈に一同が駆け寄る。


「えっ、てか何で届くの?」
「うん。何であれに届きそうにになるわけ?」

「熊井ちゃん、巨大化のお知らせ…。」


「えっ、突っ込むとこ、そこかよ。 
 心配はしてくれないわけね。」

少し悲しそうな声で拗ねる友理奈を放置し、ふと佐紀は辺りを見渡す。


365 : 果実の想い :2014/11/14(金) 23:04:52
いつの間にか、囲まれていたようだ。


「うーん、どうしようねこれ…。」
佐紀が思案していると…。

ドカッ

何の躊躇もなく雅が近づいてきた先輩局員に向かって
蹴りを飛ばす。
その蹴りをもろに受けた局員は遥か後方へと吹き飛んで行った。


「ちょっ…雅!?」



「さぁて、ここからが本番かな。
 何か、みやの闘うとこ割愛されてるし、
 思いっきり暴れるってとこ、ろ!」


そういうと雅はつま先で素早く地面に魔法陣を描く。

一瞬の輝きを放った魔法陣から空へと一筋の雷が延びた。
その柱は宙高く昇っていくと無数に分れると地上へと降り注ぐ。



「食らえ!即・撃・雷!!」


その一つ一つは確実に里保や亜佑美の頭を捉えて…。


366 : 果実の想い :2014/11/14(金) 23:15:47
パチン


乾いた音が辺りへと響き渡る。
その瞬間、雅の放った雷はきれいさっぱり無くなっていた。


そして雅は同時に背後から物凄く大きな怒気を感じる。


「なーにをやっているんだ、夏焼!」


「げっ、局長…。」

振り向いた先には腕組みをした生田局長とかつての仲間である
舞波が空へと手を伸ばしていた。

相手の魔力を無効化する力。
それが、石村舞波の得意とする魔法であった。

局長は雅を睨みつけたまま、顔の前に右手を出し、ゆっくりと目を覆うようその手をゆっくりと閉じる。

すると、今までBerryzへと敵意を向けていた局員達が続々と音もなく
その場へと崩れ落ちた。

「局長…。」


「説教は後だ。
 この状況を打開する。
 全員中庭に集合!」


続く。


367 : 果実の想い作者 :2014/11/14(金) 23:17:16
という訳でついに次回クライマックスです

永きに渡りお付き合いいただきありがとうございました


368 : 名無し募集中。。。 :2014/11/15(土) 01:23:35
確かに雅の戦闘シーンなかったなw雷魔法ってのも初見だし

いよいよ最終話かー楽しみなような寂しいような…


369 : 名無し募集中。。。 :2014/11/17(月) 07:30:21
【速報】
本スレdat落ち


370 : 名無し募集中。。。 :2014/11/17(月) 10:12:49
落ちてないよ?


371 : 名無し募集中。。。 :2014/11/21(金) 21:25:20
そんなこと言うからほんとに落ちちゃったじゃん(笑)


372 : 名無し募集中。。。 :2014/11/21(金) 21:34:55
娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 18c2ch.net
http://hello.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1416567404/


373 : 名無し募集中。。。 :2014/11/21(金) 22:17:40
ヤシ子のヤシって全角?それとも半角?

つまり、 ヤシor ヤシ どっち?


374 : 果実の想い作者 :2014/11/22(土) 00:53:31
自分は半角派

つまりヤシ

ついに書き終わったぞー!
でも眠いからまたあとでオヤスミー


375 : 名無し募集中。。。 :2014/11/22(土) 07:20:08
おい寝るんかい


376 : 果実の想い作者 :2014/11/22(土) 08:04:53
さていっぱい寝たところで最終話


377 : 果実の想い :2014/11/22(土) 08:10:41
Berryzの閉じこめられた『想い』の暴走に操られる仲間達。

思いがけない展開に最初に動いたのは雅であった。
近づいてくる局員に強烈な一撃を浴びせる。
そして、自身が得意とする雷魔法で一気に片を付けようとした瞬間、
局長が舞波とともに現れ、その場を一時収拾させる。

そして局長はその場にいるBerryzのメンバーへ中庭へと
集まるよう告げたのであった。


「そんなこんなで中庭にやってきました。」

「茉麻…さっきから何一人でしゃべってんの?」

「誰かが纏めないとしまらないでしょ?」

その様子を見て局長は苦笑する。
これから自分のする選択はもしかしたら間違いなのかもしれない。
だが、もう腹は括っている。

(それに…。)

生田はこのような状況でもふざけあう、自分たちのベースを
決して崩してこなかった彼女達の10年に賭けてみたくなったのだ。


378 : 果実の想い :2014/11/22(土) 08:18:47

(あの子たちならばおそらくこの『答え』を見つけてくれるはず。
 この10年が失われた時間なのかそれとも何かを得られた10年なのかを。)


「おい、全員集まれ!」

「はい」
「おっす」
「はーい」

生田の声に従い集まるメンバー。
その顔は凛として先程までのふざけた様子はどこにもない。

「やることはわかっているな?」

「はい。」

生田は一言、そういうと佐紀のした返事に大きく頷く。
そして懐から強力な魔力を放出しているものを取り出した。


それは一台のカメラ。


「道重さんから送ってもらった。
 コレクションが減るとだいぶ難色を示していたが…。」


そういうと生田は手にしたカメラを遥か空高くへと投げあげる。
その動きをメンバー一人一人が見つめている。
やがて放物線の頂点に達し、自由落下を始めたカメラに向かい、まず桃子が指を向ける。

その動きを待っていたかのように雅、茉麻、友理奈、千奈美、梨沙子が手を向ける。そして最後に舞波の手を取り佐紀がその手をあげる。


379 : 果実の想い :2014/11/22(土) 08:29:39
一人一人の足元から線が延びそれが一つの魔法陣が出現する。
そこから伸びる一筋の光が違うことなくカメラの中心を射抜く。

その瞬間眩い光と共にカメラははじけ、その場から消滅し地上にキラキラと降り注ぐ。



佐紀達が再び元の場所に戻ると、いつの間にか執行局を覆っていた闇は晴れ、東の空が白み始めていた。


「ラストミッション、コンプリート!」




数日後、任務期間が終わり帰り支度をしていた里保と亜佑美

「いやあ、今回はギリギリの任務だったよね。
 亜佑美ちゃんも死にかけるしさ…」

「ホントですよ。
 全く何でこんなにっていうぐらいコテンパンにされたんですよ、私。
 でも、やっぱり鞘師さんスゴいです。
 いとも簡単に相手を倒しちゃうんですから。」

「いやいや、あのときは夢中だったしさ。たまたまだよ!」

「またまたぁ〜、そんな謙遜しなくてもいいですって〜。」

今回の件でそれぞれに抱える想いはあるだろう。それを今後にどう活かしていくのかが大切なことである。
任務のたびに言い聞かせられたことであった。


380 : 果実の想い :2014/11/22(土) 08:32:37

そのとき2人は局長から声をかけられる。

「そうか、お前達今日で最後か。ちょうど良かった。
 これからちょっと催しをな。Berryzの退官パーティーをやるぞ。
 里保も石田も来れるか?」


「えっ、あっはい。」


「場所は講堂だ。じゃそういうことでまた。」

2人にそう言うと局長はその場から去って行った。
その背中を見送りながらふと里保は局長が何かまた企んでいるような、そんな気がした。

お昼を少しまわった頃、里保と亜佑美は協会の講堂へと到着した。
当然のことながら会場全体から漏れ出てくる魔力は尋常ではない。ただその魔力はとても心地よく、また愉快なものであった。

入口を開けた2人は思わず息を呑む。
講堂全体は色とりどりの装飾で覆われていてその場にいる人々もまたカラフルなライトを手に主賓の到着を今か今かと待っていた。


「すごい…。でも何か…。」

Berryzらしいと里保は感じる。
そのとき、会場全体から歓声が上がる。どうやらBerryzのメンバーが到着したようだ。
一人一人が真紅のドレスに身を包み前へと立つ。


「えーっと、皆さん!」

最後に壇へと上がった佐紀は魔法で拡大した声で会場へとしゃべりかける。

「私たちBerryzは今日で解散し、特殊チームとしての役割を終えます。でも…。」


佐紀はここで言葉を切った。会場全体は静けさに包まれる。

「やりたいことはやってきたし、この10年とても楽しかった。今までお世話になりました。」


佐紀がそこまで言うと、局長が壇上に現れる。手には何か紙を持っている。
佐紀や他のメンバーもその紙に気づき、居住まいを正した。


里保はここで一つため息をつく。
衣梨奈は笑いを隠すのが苦手だ。つい口元が緩む。奇しくもそういった部分でもこの2人は親子なんだと改めて里保は実感する。

紙を受け取ったメンバーはそれをのぞき込むと思い切りずっこける。
宙を舞った紙は一連の出来事でBerryzが破壊した諸々の請求書であった。

「何じゃこりゃああああああ!」


381 : 果実の想い :2014/11/22(土) 08:40:03



5日の間、M13地区を離れていた里保と亜佑美。
ひさびさに踏んだM13地区の雰囲気が何故か心地よい。


「あっ、里保ちゃんだ!」

「あっ譜久ちゃん、かのんちゃん久しぶり〜。」
呼ばれた声に振り向くとそこには聖と香音がいた。

「もう、ほんとだよ。今、道重さんのとこいっても、どぅーと優樹ちゃんしかいないからさぁ」

「あれ?えりぽんは?えりぽんはいるはずだけど…。」
「そうですね、生田さんはいると思いますけど。」
今回の出来事に衣梨奈は関与していないはず・・・。だからいないのはおかしい。

「それがさ、えりちゃん今大事な人の手がかりを見つけたとかで旅に出ちゃったんだよね…」

「「えっ!?」」


「聖は止めたんだよ!
 …あの土地、変わっちゃったから。でもえりぽん行っちゃった…。」


(まただ…またえりぽんはウチを置いてひとりでに勝手に…。)
里保の握りしめた手のひらに爪が食い込む。

「…どこ?」


「えっ!?」


「えりぽんの居場所!どこにいったの?
 ウチが連れ戻す。ひとりで勝手にいなくならないってそれがウチとの約束なんだ。
 だから譜久ちゃん、教えて!えりぽんはどこにいったの?」

こうして、聖から衣梨奈の行き先を聞いた里保は再び、M13地区を後にした。
その様子を指の窓から見ていたさゆみは小さくため息をつく。
机の上には先日のBerryz退官パーティーの写真が載っている。

「わざわざ来なくてもよかったのに。

 それにあなた達の立場的にここにいるのはまずくない?」

さゆみは振り向かず後方へと声をかける。そこにはBerryzのメンバーがたっていた。

「ももち達もう協会所属じゃないしいいんじゃない?ねぇ、キャプ」

「どうしても直接お礼が言いたくて。」

ふふっとさゆみは小さく笑う。
長い時の中でほんの少し関わっただけの若者達がこうして訪ねてきてくれる。
不思議なものだとさゆみは感じた。

「さゆみはあの子に巻き込まれただけ。さゆみそれよりあなた達これからはどうするの?」

わざと素っ気ない態度での問いかけにも佐紀達はひるまない。

「そうですね…。」
ちらりと佐紀は写真を見る。その中に写る8人はとても幸せそうな顔をしている。
そして軽く笑うとこう続けた。

「これからもBerryzはBerryzで居続けます!」



おしまい


382 : 果実の想い作者 :2014/11/22(土) 08:45:16
というわけで以上、ベリ編でした
8月から書き始めてやっと終着でございます
写真から写真へと物語をつなげるそんな構想がようやく形になりました

今後としては、今書き始めているえりぽん海外外伝につなげていくのと
あとは戦国続編を構想中です

これまで読んでくれた皆様、本当にありがとうございました


383 : 名無し募集中。。。 :2014/11/22(土) 09:49:58
繋がるのか!

これは楽しみ


384 : 名無し募集中。。。 :2014/11/22(土) 10:13:09
完結お疲れ様でした この写真で外伝書いて欲しいってお願いしたらホントに書いてくれて…
しかもベリ詳しくない言いつつこんなにもベリらしい話にして貰って本当に幸せでした 写真が出た話の時はちょっと画面が歪んで読むの大変でしたがw本当にありがとうございました。

えりぽん海外編・戦国続編も楽しみにしてます

http://i.imgur.com/bUDfrks.jpg


385 : 名無し募集中。。。 :2014/11/22(土) 21:58:39
お疲れ様でした!
ベリ編楽しく読ませていただきました
海外編と戦国も楽しみに待ってます



386 : 名無し募集中。。。 :2014/11/23(日) 00:05:20
ありがとうとゆいたい


387 : 名無し募集中。。。 :2014/11/23(日) 00:42:27
以前から外伝を書きたいと思っていてやっと形になったので投稿します。

本編や他の外伝の設定や技を使わせていただいていますが、
あくまでお借りしているというだけで、
特に冒頭はベリ編のその後みたいになってますが作者さんとはなんの関係もありません。

海外編が作者さんの作品で、こっちは亜作ととらえていただければ。

正直、本当は本スレに書きたかったんですけど、
俺のPC・スマホじゃ書き込めないのでこっちに書きます。(笑)

理想は横アリの開場待ちの間に完結したいのですが、
思ったより考えるのに時間がかかったのでできるだけ短い間隔でバンバン上げていくつもりですが、
なにせ初めてですのでさるさんなったらごめんなさい。

では堅い前置きはこれくらいにしてゆるい外伝スタートです。


388 : 名無し募集中。。。 :2014/11/23(日) 00:50:02

真っ青な夏空が広がるまだまだ暑いある日、里保は衣梨奈の研究部屋を借りて熱心に魔法の研究に励んでいた。
「やっぱりアイデアが足りてないんかなぁ〜。ん〜、難しいっ」
またも集中が切れ、机にダウンする。もう数週間研究を続けているが、なかなかうまくいかない。

うちも精神魔法が使えたら…

Berryzとの合同作戦の際、そのハイレベルな技やチームワークに里保は多くの刺激を受けていた。
避けられてしまった奥義も改良し、ほかの技にもより一層の磨きをかけた。
しかし里保は戦うための手段として、攻撃魔法だけではなくBerryzの熊井友理奈が使うような精神魔法習得の必要性を感じていた。

強い魔道士たちは、格下の敵と直接戦うことなく勝負を終わらせることができる。
精神魔法を使えば1対多数の場面でも魔力の消費を抑えられるし、直接戦わない分手傷を負うこともない。
仮に途中で見抜かれたとしても、それまでは他の敵に集中することができる。

里保にとってこの類の魔法をひとつは持っておきたいものであった。
しかし人の心を操るというだけあって、そう簡単には完成しない。
それどころか、どうやって心を惑わすのか、どんな状態にするのか、それさえ思いつかないでいた。


ちょっと休憩…
一息入れようと研究部屋を出て紅茶を入れる。

「えりぽんがおったら入れてもらえるのになぁ〜」

“おまじない”をかける衣梨奈の姿を思い浮かべると、研究の間中ずっと眉間にしわを寄せていた表情が自然と和らいでいく。


衣梨奈は最近聖や学校の友達とバンドを結成したらしく、
朝早くからギターの練習で出かけていた。
今日は道重邸の他の住人もみんな出かけており、珍しく静かなリビングでくつろいでいた里保は、このおかしな光景に1人苦笑する。


389 : 名無し募集中。。。 :2014/11/23(日) 00:55:47

「これ飲み終わったら古本屋さんの書庫にでも行ってみようかなぁ。」


春菜がアルバイトをしている古本屋の奥には、
選ばれた者しか入ることのできない秘密の書庫がある。

里保は以前遥と共に『LILIUM』という本の浄化を成功させた際、
さゆみからのご褒美としてこの部屋に入ることを許されていた。

「あの後、道端に咲いてる花の花言葉がすっごく気になるようになったんだよね〜。」
そんな思い出に浸っていた里保は、ふとバジル君のことを思い出した。


うちは植物育てとるとき、自然と穏やかな気持ちになっとった。
それはきっとみんなも同じはず。
だったら植物を育てる幻想を見せて穏やかな気持ちにさせれば…

いや、植物だけじゃなくて、その人の好きなものばっかりの世界を創って
その理想郷の中に閉じ込めることができたら。

そしたら幸せすぎて、出てこようなんて思わなくなるんじゃないかな?


うちにとっての理想郷は・・・

冷凍庫をあけたらいつでもいろんな種類のサイダーがあって、
寝たいだけ寝ても時間を無駄にしなくて、
で、みんなとずっと一緒で、
亜佑美ちゃんの唇もフクちゃんのマシュマロボディも…イヒヒっ。


あ、一応閉じ込められる前の戦いの記憶とかを忘れさせることができたらもっといいな。

記憶を操作するとなるとそれだけでも難しいけど、
道重さんに追い付くにはそれくらいの魔法は使えないと。


よし、いけそう!

里保は再び研究部屋に籠り、
今度は生き生きとした表情で魔法の開発を再開した。


390 : 名無し募集中。。。 :2014/11/23(日) 01:04:20
 ――――― ――――― ――――― ――――― ――――― ―――――



「よし、だいたい型としてはこんなカンジかな」

山がキャンバスに描かれた油絵の如く色彩豊かな表情を見せる季節、
里保の研究はようやく試作段階を迎えた。

「やっぱり魔法をかけるタイミングが重要だよね。
バレたら心をガードされちゃうから自然に使えるようにならないと。」

本当に強い魔法使いは気づかないうちに魔法をかける。
やっぱり立ち振る舞いから練習をした方がいいのかな。

そこで全身鏡に向かって魔法をかける練習をしてみることにした。


が、どうもぎこちない。

そこで、攻撃魔法で気を引いたところで使ってみることにした。

辺りに風を発動させ、鏡を取り囲む。
相手が何らかの対策を講じようとしているところへ魔法をかける。

風の魔法が自分の一部のようになっている里保にとって、この方法は最適だった。


次は囲まれた時。

自分を中心にして瞬時に風をおこし、周囲へ広げていく。
そして1拍おいて精神魔法も周囲へ放つ。

と、つい気合を入れすぎて魔力を多めに使ってしまい、
周りに置いてある道具やノートが風に巻き上げられる。
その中には衣梨奈のギターもあった。

慌てて風を制御し、ギターを安定させる。
「よかった、壊したらえりぽんに何て言われるか…。」

だが冷静に考えると、攻撃魔法の練習で使うこともあるこの研究部屋。
いくら集中できるからと言っても
ギターをほったらかしにしておく衣梨奈の方がどうかしている。


あとで自分の部屋に持ってあがるよう言っておこう。

そう思いながらギターを元の場所に置いた里保は、
自分の意識が徐々に薄れていることに気づいた。

どうしたんだろう、貧血かな?

いや、ちがう。これは魔法……


……そうか、さっきの!!

里保がその理由に気付いた時にはもう手遅れだった。


391 : 名無し募集中。。。 :2014/11/23(日) 01:08:03
とりあえずここまでで一旦切ります。

タイトルはまだ決まってないのでそのうち考えときます。


392 : 名無し募集中。。。 :2014/11/23(日) 01:48:25
おお
なんか新しいの来てるw

わくわく


393 : 名無し募集中。。。 :2014/11/23(日) 03:51:51
これは新展開!外伝と外伝の続編?てか自分でかけた魔法に自分がかかるって…鞘師らしいと言うかなんというかw


394 : 名無し募集中。。。 :2014/11/23(日) 05:47:06
いい加減トリップ◆付けたら?

なりすまし対策しないとあとで大変だよ
もっとも荒らしが目を付けるほど人気があればだけど


395 : 名無し募集中。。。 :2014/11/23(日) 11:13:27
いい加減と言うほどトリが必要な事態なんて
今までになったことあったっけ?


396 : 名無し募集中。。。 :2014/11/23(日) 11:35:38
トリの方法がわかりません


397 : ◆AmmxEN56yY :2014/11/23(日) 22:49:59
名前欄に#********(半角英数字で8文字)


398 : totome90 :2014/11/23(日) 22:53:18
てす


399 : ◆mP8bX/uLY. :2014/11/23(日) 22:54:08
こうか


400 : 名無し募集中。。。 :2014/11/23(日) 22:54:41
もう使えないなこれww


401 : 名無し募集中。。。 :2014/11/24(月) 00:33:20
トリップ、初めて知りました。

ただ、本編にトリップがないのに
俺が最初にやり始めるのもどうかなと思うので、

とりあえず様子見ということにさせてください。


では続きです。

あ、タイトルは

『そうだ、理想郷つくろう』

ってカンジで(笑)


402 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/24(月) 00:35:22





「う〜ん…、もうちょっと奥かなぁ」

石の上にカメラを固定し、セルフタイマーで写真を撮る。

今度こそは!と出来を期待しながら確認してみるが、
いまいち納得のいく写真が撮れていない。

また立ち位置を考え直す。

この少女はもう何度もこれを繰り返していた。


「あっ、効果音があったらうまくいくのかな?」

「テテッテ テテッテ…」
「テーン♪」

今度こそはと手ごたえを感じ、
自信満々のドヤ顔と共にカメラを確認する。

よし、なかなかのクオリティだ。

自然と顔がほころび、
うれしさがにじみ出るのを亜佑美はこらえきれないでいた。
「どぅーとまーちゃん、この土管のこと知ったら来たがるだろうなぁ。
こっち側の池もまたいいカンジだよね。
あ、でもこの写真見せたらまたどぅーに子供だとかってバカにされるかなぁ?」

みんなとのにぎやかなやりとりを想像するとさらににやにやがとまらない。


403 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/24(月) 00:36:38


「亜佑美ちゃん」

「ぅわああぁ」

「…あぁ、鞘師さん。もう、びっくりしたじゃないですかぁ」

いきなり後ろから声をかけられ、驚きから変な声が出てしまった。

しかも1人でニヤニヤしているところを里保にみられてしまった。

これは失態だ。やってしまった…。


「ウチと一緒に理想郷を創らん?」

「・・・え、なんですか?」

里保の口から発せられた意味不明な発言に一瞬思考が停止する。


「その愛らしいぽってりとした質感の持ち主は亜佑美ちゃんしかいないよ…。」


さっきから何を言っているんだ、この人は。

からかっているのか?

それとも道重さんにお酒でも飲まされたのか?

いろいろ考えたが、亜佑美には目の前の里保がまったく理解できなかった。


「え〜っと、鞘師さん、ちょっと何の話かよくわかんないんですけど・・・」

それを聞いた里保の顔が曇る。

「そっか、亜佑美ちゃんにはわかってもらえないんだね。
 
…ウチのその唇に対する想いも。

亜佑美ちゃんには理解できんのんじゃろ?」


前から思ってたけど、鞘師さんってやっぱ変わってる…
ていうか今、唇って言った?


「その唇が手に入らないなら…」

髪をサラリと流した里保の手には刀が握られていた。


404 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/24(月) 00:37:30



ん?

あ、訓練かな。

もしかしたらあれかな。

いつも同じ訓練だと退屈だろうと思って、
鞘師さんがストーリー仕立ての訓練を考えてくれたのかな?

それにしても訓練を始めるきっかけが唇って、

鞘師さんって戦ってる時はあんなにかっこいいのに。
なんなんだろう、このギャップ。

そんなことを考えながらも、
亜佑美は里保の心配りとユーモアに1人関心していた。


しかしそんなのんびりとした想像は
次に放たれた技の猛烈な魔力に吹き飛ばされた。


「奥義、紅焔鎌鼬三笊」

里保は静かに言い放つと、
その右手に握られている煉獄の旋風を帯びた刀を振りぬいた。


「えっ、ちょ、ちょっ、ちょっと! 鞘師さん!?」


405 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/24(月) 00:41:56





「どぅー、11月って秋?冬?」

「ん〜、ビミョーなところだね。そこらへんははるなんが教えてあげてよ」

「暦的には立冬を過ぎたら冬だから、
たぶん立冬までは秋で、それを過ぎたら冬なんじゃないかな?」

「だってさどぅー。ちゃんとわかった?」

「こっちのセリフです。」

「あっ、あぬみんがいるよ〜!」

「あ、ホントだ。あゆみんまた1人でなんかやってんじゃん」

「ねぇ、なんかニヤニヤしながら1人でジャンプしてる〜。

やっぱあぬみんって変わってるよねぇ〜」

「いやそれまーちゃんには言われたくないでしょ」

「あれ、くどぅー、まーちゃん。鞘師さんもいるよ?」


406 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/24(月) 00:42:34

「ホントだ〜! ねぇねぇ、まさ良いこと思いついた!」

「へえ、どんなこと?」

「まさがうしろから近づいていってこちょこちょして、
 やすしさんがうわぁ!ってなる〜」

「あゆみんならともかく鞘師さんは魔力ですぐ気づいちゃうんじゃないかな」

いたずらっ子な笑顔を浮かべる優樹の横で春菜は冷静に分析する。

「まぁとりあえずハルたちも向こう行こうよ」

3人は亜佑美たちのもとへと歩き出した。


407 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/24(月) 00:43:56


「ねぇくどぅー、
なんか距離感みたいなもの感じない?あの2人」

「たしかに。いつもはもっと仲良くやってるのにね。」

「やすしさん変。」

「まーちゃんもそう思う? 

ハルもさっきからなーんか変だと思ってたんだよねぇ〜。

なんていうか、いつもの鞘師さんじゃないかんじ?

どこか哀しそうっていうのかな。


408 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/24(月) 00:46:40

「なんか嫌な予感がする。
急ごう、2人とも」


3人はもやもやとする違和感に足を速める



「ちょ、なんで鞘師さん刀なんか出してんの?」

「もしかしてあゆみ、
やすしさんに悪いことして怒らせたんじゃない?」

「くどぅー、鞘師さんすっごく大きな魔力練り上げてるみたい。

しかもまだまだ魔力が増幅してる。」

「えぇ? 

なんかわかんないけどまーちゃん、いくよ!」

それを合図に変身した優樹に遥が飛び乗ると、
優樹は強風のような魔力を帯びて二人のもとへと一気に加速していった。


409 : 理想郷 作者 :2014/11/24(月) 00:48:12

てなカンジでここまでです。

ちょっと一気に投稿しすぎたかな(笑)


410 : 名無し募集中。。。 :2014/11/24(月) 01:26:36
良いよ良いよ〜鞘師の変態ぶりが発揮されて…て?まさかの展開!こっち方面になるのかw次はくどぅーの鎖骨が危ないww


411 : 名無し募集中。。。 :2014/11/24(月) 04:37:15
紅焔鎌鼬三笊
なんて読むの


412 : 果実の想い作者 :2014/11/24(月) 07:49:15
ぐれんかまいたち さんそうって書いたら出てきました(笑)

りほりほ容赦ねーw


413 : 理想郷 作者 :2014/11/24(月) 08:04:44
正直言うと俺もよくわからなくて、

普通に読んだら

紅焔 鎌鼬 三笊
こうえん かまいたち さん(み)ざる

ただ、もしかしたら独特な読み方をするのかもな〜

ってところです。

俺がベリ編で読んだときは

なんとなく字がカッコいい奥義って解釈してました。(笑)


414 : 理想郷 作者 :2014/11/24(月) 08:05:59
あ、すいませんダブってましたね。

気にしないでください(笑)


415 : 名無し募集中。。。 :2014/11/24(月) 09:36:22
紅蓮じゃないのか
こうえん かまいたち まで読んで最後は読まなかったw
鎌鼬は3匹(3個頭?)で鎌も3つだと記憶してたから鎌の単位なんでしょうね


416 : 果実の想い作者 :2014/11/24(月) 11:42:39
そう言われるとそうですね(笑)
確か刀に纏う炎のイメージを持つ漢字を探してたときに偶々一致して…

読み方はあんまし気にしてなかったです


417 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 02:55:22




「えっ、ちょ、ちょっ、ちょっと! 鞘師さん!?」


この魔力の大きさは訓練とかいうレベルをはるかに超えている。
しかも“奥義”って


もしかしてBerryzに使ったって言ってたあれ!?

とっさに氷の壁を作りながら回避行動をとるが間に合わない。

炎を纏った3つの爪が亜佑美に迫る。


やばい、避けきれない。
当たる…!


しかし直撃を覚悟した亜佑美の体は横か飛び出してきた“何か”にくわえられた。

その“何か”は亜佑美をくわえたまま走り抜け、
すんでのところで里保の奥義を回避する。


418 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 02:55:56


「もーあゆみったら、なにしたの?!」

見ると、優樹が変身を解いて亜佑美に詰め寄ってきた。

「まーちゃん!」

「あゆみん!
目の前であんだけ魔力練り上げられてんのになにしてんだよ!

ハルたちがいなかったら今頃死んでたかもしんないんだよ?」


「ごめん、訓練かと思って油断してた。」

「てか鞘師さん!
 
いくらなんでもあれはやりすぎですよ。あゆみん殺す気ですか?」

遥が里保に権幕を浴びせる。

しかし里保は詫びる様子もなく
ただ遥をじっと見つめ、

遥には聞こえないほどの声でぽつり

「その鎖骨に、水注ぎたい」

そうつぶやいただけだった。


419 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 02:56:55

「ちょっと鞘師さん、ハルの話聞いてます!?」

「くどぅー、いったん落ち着いて。
とりあえず2人から話を聞こうよ。」

「なんではるなんはそんなに冷静なんだよ!

あゆみんが死ぬとこだったんだよ!?」

「みんな、なんしようと!?」

2人の間に割って入ってきたのは衣梨奈だった。

「さっきのでっかい魔力、里保のやろ? なんがあったん!?」

「生田さんちょっと聞いてくださいよ!

鞘師さんがさっきから『一緒に理想郷をつくろう』とか
まるで危ない宗教への勧誘みたいなこと言ってんですよ。

しかもさっき、本気であゆみんのこと殺しかけたんですよ?」


「は? 全然意味わからんのんっちゃけど」

「一言でいうと、鞘師さんがあゆみんにいきなり究極魔法を使ったんです。」

「え、うそやろ? 

里保、なんでそんなことしたと?」


420 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 02:57:38

「ねぇ、えりぽんは

好きなものに囲まれて、

辛いことも嫌なことも、不安になることもない

そんな幸せな世界で暮らしたいとは思わない?」

「鞘師さん、いい加減ハルもキレますよ。
 あゆみん殺しかけといてふざけないでください。」

「ふざけてなんかないよ?ウチは本気で言ってるよ?

ウチは…

ウチはみんなとずっと一緒にいたい!!」


「はるなん、鞘師さんに頭から水ぶっかけてもいい?」

「気持ちはわかるけど待って。

きっと、こうなったのは何か原因があるはずだから。」

亜佑美の唇の話や遥の鎖骨の話といった
どことなくさゆみに似た変態発言。

これは感情の暴走なのか
それとも何者かに心を惑わされているのか。


421 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 02:58:11


「みんなわかってくれない。信じようともしてくれない。」


辺りに吹く風の流れが変わる


「鞘師さんも一回落ち着きましょう?」

春菜の必死の説得も里保にはもう届かない。


「みんながウチを否定する。

こんなに辛くて

いつも不安なこんな世界、


ウチはもういやだ!!」


そう言って刀を横一文字になぎ払うと、空気を切り裂くような炎が5人に牙をむいた。

すかさず遥が水で相殺する。


「何言ってももうムリみたいですね。

てかハルがいるのに火で攻撃してくるなんてなめすぎじゃないっスか?

 まぁいいや。ここ水はたっぷりあるみたいなんで、

やるんなら思う存分やらせてもらいますよ。」

遥が戦闘態勢に入る

 里保もそれに応え、刀を構えなおす


422 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 02:59:11


「どぅー、待って。」

遥を制止して前へ出たのは衣梨奈だった。

「里保の事はえりが守るって決めとるけん。」

遥は衣梨奈の強い意志を前に、反論などできなかった。


「里保がなんでそうなっとるかは知らんけど、

えりは必ず里保を元に戻してみせる。

そしてもしそれが誰かの仕業なら、

えりはそいつを必ず倒す。」


絶対助けるけん。


心の中でそう里保にささやくと
衣梨奈は魔力を開放して走り出した。


                       つづく


423 : 理想郷 作者 :2014/11/25(火) 03:04:54
場面ごとの構想は固まってるのに、

それを繋ぐのがうまくいかないからぜんぜん進めない


少しフラフラ進んでいきます。


424 : 理想郷 作者 :2014/11/25(火) 17:31:52

続きできたのでどんどん行きます。


425 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 17:37:07





亜佑美達3人が見守る前で
衣梨奈と里保は互角の戦いを繰り広げていた。

衣梨奈の拳をひらりとかわして里保が刀を振りぬく

身を反らしてかわした衣梨奈が
すかさずしゃがみこんで足を払いにいく

風を纏って距離をとる里保。


気が付くと衣梨奈の左腕には蜘蛛の糸が絡みついていた。

糸をたどると里保と繋がっているようだ。

と、呪文を唱えた里保の手から炎があがり、

炎は糸を伝って衣梨奈の左腕に
文字通り一直線に進んでくる

衣梨奈があわてて糸を引きちぎると、

進む先のなくなった炎は
爆弾のついていない導火線の火のように空気中に消えていった。

しかし安心もつかの間、
前方から猛烈な魔力を感じて顔を上げると、

里保の左手から放たれた
荒れ狂う龍のような電撃が迫ってくる

衣梨奈は素早く両こぶしを握り締め地面に押し付けた。

すると目の前に砂壁が出現し、

向かってきた電撃はその砂壁にぶつかり拡散する。


今度は風を纏った里保が素早く砂壁を回り込んで衣梨奈に切りかかる。


426 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 17:37:39

衣梨奈はとっさに砂をつかみ、里保に投げつけた

里保が目をかばって体勢を崩したところに
走りこんできた衣梨奈が右手に蹴りを入れ、刀を弾きとばす。

そして続けざまにボディへの回し蹴りを繰り出した。

しかしその強力な魔力を帯びた左足は里保にしっかりと受け止められる。


「どう?里保
えり、なかなかやるちゃろ?」

「……」

衣梨奈が得意げにみせる笑顔にも里保は無表情のままだ。


「じゃあ、これならどうっちゃろうか」

そう言って衣梨奈が里保から離れると同時に
先ほどの砂壁から小動物ほどの大きさをした土の塊がいくつか飛び出してくる。

これは…、


…うさぎ?


とっさに風をおこし、向かってくる塊を砂粒へと変えるが、

すぐ後ろの地面から飛び出してきた“うさぎ”には距離が近い分対応が遅れ、

うち1つが里保に直撃する。


427 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 17:50:08

「びっくりしたやろ?

これ、前にえりがうさぎ系女子を目指すって言いよった時あったやん?
 
その時に、

やっぱり魔法もうさぎ系のやつが使えた方がいいかな〜

と思って開発したっちゃよ」





「あたし前から思ってたんだけど、生田さんって

ああいう魔法を本気で開発しちゃうのがすごいよね。」

「うん。しかも大真面目にね。」

「まさ今ひらめいた。

まさの周りにいる人って変わった人ばっかり。」

「『類は友を呼ぶ』ってやつだね。

まぁそん中でもハルはまともだけどね」

ひらめいた の使い方が間違っているのには触れず、

遥は得意げに眼鏡を上げるしぐさをする。


「どうしたのどぅー、急に頭いいカンジのこと言っちゃって。」

「ちょっと前から四字熟語にハマっててさ。」


話をする3人のもとへ、1匹の黒猫が戻ってきた。


428 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 17:51:00

「あ、おかえりはるなん。どうだった?」

「道重さんのおうちの研究部屋に鞘師さんの魔法の跡が残ってたよ。

やっぱり鞘師さんは魔法にかかってるみたい。」

「え、それって、誰かが道重さんの家に侵入して、

たまたまそこにいた鞘師さんが襲われたってこと?
 
それともまさか道重さんに何かされたとか?!」

「いや、そういうわけではないみたい。

研究部屋には鞘師さんの魔法の跡以外残ってなかったし。」

「じゃあどういうこと?」

「実は、研究部屋の机の上に
鞘師さんのノートが開きっぱなしになってたんだけど、

 これ見て。この構想の部分。

鞘師さんが言ってたことにちょっと似てない?」

そう言って春菜が見せたノートには研究中の魔法と共に、 

植物 穏やか 幸せ フクちゃんの柔肌 理想郷
などといったメモが残されていた。


「えっとー、要するに、鞘師さんは精神系の魔法を研究してて、

それを間違って自分にかけちゃったってこと?」

「うん、そうみたい。」

「それであんな変人になっちゃってたのか。」

「どぅー、やすしさんが変態なのは前からだよ」

「え、でもはるなん、

この魔法ってかかった人を理想郷に閉じ込めちゃうって魔法だよね?

なのになんで鞘師さんがここにいるの?」

「う〜ん、おそらくこの魔法は試作段階みたいだから、

まだ鞘師さんの思うようにはできてないんじゃないかな。」

「じゃあ鞘師さんを元に戻すには

つくった本人もわかんない魔法を解かなきゃなんないの?」

「そういうことになるね。

 とりあえず生田さんに教えてあげないと」


429 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 17:51:57


「うぃ〜くーたーさあ〜ん!!!」

「ちょっとまーちゃん!」

しかし遥の焦りとは裏腹に

優樹の呼びかけに応えて衣梨奈と里保は戦いの手を止めた。

「生田さん、

鞘師さんはご自身が研究中の精神魔法にかかってしまっているようです。」

ただ、まだ完成していない魔法だったようで、

ここに書いてある効果と症状が若干ずれているので、

 どうやって解いたらいいのかはまだ分かりません。」

「はぁ?里保ってどこまでおっちょこちょいなん?

どうやったら自分の魔法にかかるわけ?」

そのきっかけを作った張本人が自分自身だとは
その時の衣梨奈には気付きようもなかった。


「はるなん、それ完成版だとどんな魔法なん?」

「相手を
その人の好きなものしか存在しない理想郷
に閉じ込める魔法みたいです。」


430 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 17:52:29


「ねぇ、えりぽんはわかってくれるよね?

うちの理想郷には、みんなが必要なんだよ。」

「里保…


その理想郷って、どこにあると?」

「うちの心の中だよ。」

「じゃあ今からそこにえりを連れて行って。」


「え、生田さん何言ってるんスか?

いくら理想郷でなら うさぎ系女子 にも
アイドルグループのセンター にもなれるからって、
そんなの危険すぎますよ!」

「あれ、くどぅー、いまさらっとものすごく失礼なこと言わなかった?」

「とにかく! ハルは反対ですから!」


「どぅー、行かせてあげて。」

「ちょっ、あゆみんまで何言ってんだよ!!」

「生田さんならきっと大丈夫たから。信じよう。ね?」

その口調はまるで子供を優しくなだめる時のような穏やかなものだった。

そして亜佑美は衣梨奈に、今度はしっかりとした口調で話しかける。

「生田さん、必ずですよ?」


「ありがとう、あゆみちゃん。

行ってくる。」


「生田さん、よかったらこれを持って行ってください。

役に立つかどうかはわかりませんが、

御守り程度にはなるかもしれません」

そういって春菜が渡してきたのは、折り紙ほどの大きさの紙で折ったネコだった。

紙自体にも特別な素材が使われているようだが、

なによりそれに込められた春菜の魔力はかなりのもので、

白い紙がハニー色の光を帯びているように見えるほどであった。

「ありがとはるなん。

はるなんのことやけん、これもきっと何かの役に立つんやろ?」

「役に立つかどうかは、向こうに行ってからのお楽しみです。」

やっぱりはるなんはよくわからんっちゃね

衣梨奈は心の中で苦笑した。


「じゃあ里保、連れてって。」

「ありがとうえりぽん。じゃあ、いくよ?」

そういうと辺りが光に包まれ、

その光が収まるころには衣梨奈の姿は消えていた。



 

                                 つづく


431 : 理想郷 作者 :2014/11/25(火) 17:53:47

ん〜、間に合わないかも…

まぁギリギリまで頑張ります。


432 : 名無し募集中。。。 :2014/11/25(火) 21:25:48
ピンポンバトルスゲー!えりぽんトリッキーだなぁw


433 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 21:59:44
「も〜、あゆみんもはるなんも

わかってたなら教えてよね。

ハルだけ子ども扱いじゃんか。」

「ごめんごめん、急いでたから。」



「さ〜て工藤たち、これからどうするの?」

ふいに4人の後ろから柔らかい声が聞こえる。


「道重さん!」


「向こうの世界は生田に何とかしてもらうとして、

 こっちの世界のりほりほはどうするの?

 もう少ししたら止められなくなっちゃうから、早めに決めな。」

「えっ、道重さん、止められなくなるってどういう…」


「道重さ〜ん、お待たせしましたぁ〜」

「香音ちゃんそんなに荷物持ってるのによく走れるね。

聖は手ぶらでもこんなに疲れたのに」

「鈴木さん! 譜久村さんも!」


434 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 22:02:04
聖の姿を見た春菜が急に慌てだす。

「道重さん、わざとあの2人を連れてきたんですね?

今の鞘師さんに譜久村さんを会わせるとどうなるか、

それはあなたが一番わかっているはずなのにどうしてですか?」

いつになくテンパっている春菜を見てさゆみはご満悦の様子で、
いたずらっぽい笑みを浮かべた。



「フクちゃん!」

里保の食いつきは予想通りだった。
目を輝かせ、顔を赤らめている。

そして里保の聖に対する思いが爆発した。

「フクちゃん!あのね、ウチはね、 大好きなの!

 フクちゃんの腕とフクちゃんの肌とフクちゃんのフクちゃんのむ、ほっぺたとフクちゃんの目とフクちゃんの耳とフフフ、フクちゃんの脚と手とフフフフ♪どうしよ?もうヘンタイだ、もう。あー、全てが愛しい」


こうなったらもう止められない。

里保は先ほどまでのように理想郷へ誘うことはないだろう。

おそらく聖を無理やり理想郷に連れて行く気だ。

聖は魔道師ではないため抵抗できない。

それだけはなんとしても守らないと…


435 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 22:03:57


…そうか、そういうことか。

春菜はようやくさゆみが何をさせたいのかを理解した。

「道重さんは、私たちに鞘師さんと戦えと、

そうおっしゃりたいんですね?」

「えっ、はるなんどういうこと?」

「このままだと譜久村さんは鞘師さんに連れていかれます。

譜久村さんは魔法を使えないので、おそらく抵抗できないでしょう。」

「だから私たちが鞘師さんを止めろと、

そうおっしゃりたいんですよね?道重さん。」

「なんでですか?道重さん。

生田さんが行ってるんだから
ハル達はおとなしく待つべきじゃないですか?」

「うん、たしかに生田に任せておけばおそらく大丈夫だと思うんだけど、


でも、工藤はそれでいいの?」

「 もちろんハルも何かしたいです!でも…

生田さんの邪魔はできません。」


「大丈夫だよ」
さゆみの優しい笑顔に 遥が顔をあげる


436 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 22:05:31


「あくまで心の中であって体の中じゃないから、

たとえこっちの世界のりほりほを殴ったとしても生田の邪魔にはならないよ。

だからみんな、やりたいようにやってみな。

さゆみも見てるから、死にはしないと思うよ。

まぁ大ケガぐらいはするかもだけどね。」

「でも、いいんでしょうか?

魔法にかけられているとはいえ、

相手は鞘師さんですよね?」

「大丈夫大丈夫。

それにこんな時でもない限り、

本気で誰かと戦うことなんてなかなかないでしょ?

良い経験じゃない。」

さゆみが大丈夫と言っているのならば大丈夫なのだろう。


「じゃあ生田さんの代わりに譜久村さん達を守りますか!」

「案外鞘師さんぶっ飛ばしたら元に戻ったりして。

まーちゃん、そしたら道重さんに誉めてもらえるよ?」

「えーっ!

やすしさん、まーは手加減しません!!」

「決まりだね。

鞘師さん、すみませんが、譜久村さんは渡せません。

もし力ずくで理想郷へ連れていくのなら、

まず私達を倒してからにしてください。」


先ほどから延々と聖への思いを語っていた里保の動きが止まる。

「…いいよ。ウチはフクちゃんの柔肌のためならなんでもする。

容赦はしないから。」

「さっきは油断してたからやられかけましたけど、

今度はあたしも本気でいきますからね。」

亜佑美を筆頭に、それぞれが魔力を解放していく。



こうしてさゆみ、香音、聖が見守る中、

仲間とプライドと柔肌をかけた戦いが幕を開けたのであった。




つづく


437 : 理想郷 作者 :2014/11/25(火) 22:07:42

スマホやりにくくて終わる気しないー

戦ってる最中に卒業はイヤなんだけどなぁ(笑)


438 : 名無し募集中。。。 :2014/11/25(火) 23:10:02
鞘師vs10期か…これはこれで燃えるw


439 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 23:33:27

4人の連携は流石と言うべき域に達していた。

亜佑美と優樹が先行し、時間を稼ぐ。

その後ろで遥が魔力を練り上げながら
春菜と簡単な打ち合わせをしていた。


「じゃあ鞘師さん、準備できたんで、

とりあえず頭冷やしてもらいますね。」

そう言って遥が印を結ぶと池から水柱が上がり、

里保の頭上に水玉というにはあまりに巨大な球体がつくられていった。

「こんな量の水をコントロールできるようになったんだ。

どぅー、いつのまに…」

そんな亜佑美のつぶやきは技の迫力にかき消される。

遥が呪文を唱えると、
“水玉”は里保に向かって落下していった。


落下してくる巨大な水玉を前にしても里保は冷静だった。

風を一点に集中させ、水玉の中心に
ひと1人が充分に入れるだけのスペースを作る。

里保の体が中にすっぽり包み込まれると、

先ほどから練り上げていた魔力を一気に解放し、

紅蓮の炎で水玉を内側から蒸発させていった。

シューッという音と共に辺りに水蒸気が立ち込め、

一面が霧に包まれた。


440 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 23:35:13



視界が悪い…

しかしこれだけの規模の霧を吹き飛ばすためには魔力を消費する。

それはもったいない。

そんなことを考えていると、不意に横から亜佑美が飛び出してくる。

すかさず斬りかかるが刀は手応えのないまま空を切り、

亜佑美の姿は歪んで消えた。


後ろか!

となぎはらった刀も実体を捉えることなく空を切る。

これは…

そうか、霧をスクリーンとして映し出された虚像。

あれ、実像だっけ?


…いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。


里保は神経を集中させ、辺りの魔力を探る。


441 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 23:36:21
と、接近してくる魔力が1つ。この速度は優樹か。

背後から飛びかかってきた狗に対して身をかがめ、
すかさず刀で反撃する。

優樹の脇腹から横一文字に刀が入る

と確信した里保の刀はまたしても空を切り、

今度は優樹の姿がパッと消え、

あとには小さな紙切れがひらひらと舞っていた。


あの優樹は確かに魔力を放っていた。

先程までの像とは明らかに違っていたはずだ。

なのになぜ消えた? 瞬間移動か? 身代わりの回避魔法か?

…いや、優樹がそんな魔法を研究するとは思えない。

一体どうなっている…


442 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 23:37:31



「くどぅー、いつの間にあんな技つくったの?

霧をスクリーンにして姿を投影するなんて、

なんかリケジョってかんじだね」

「学校の理科で光とか習ったとき。

はるなんもすごいじゃん、式神ってやつの応用だっけ?」

「やすしさん怒ってるね」

「狙い通りにね。

鞘師さんがイライラして大技出してきたところで一気に行くよ」

「どぅー、なんか楽しそう」

「あーっ、もしかして くどぅー、

鞘師さんと勝負するときのために
今までず〜っと準備してきてたんじゃない?」

「うるさいなぁ。

あゆみんだってイメトレとかいってわけわかんないことやってたじゃん」

「あったり前でしょ〜

あたしは競技大会で負けたあの日から、

ずっと鞘師さんを目標にここまでやってきたんだから! 

今日は成長した石田亜佑美を見せてあげるわ。」


すました様子でドヤ顔をする亜佑美をよそに、

遥は初めてM13地区に来た頃の事を思い出していた。


443 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 23:38:47


協会に追われ、里保と戦い、

深手を負った優樹を前にして何もできない自分の非力さを痛感し、

どうしょうもない悔しさと共に涙を流したあの日。

そして無情な選択を迫られる優樹の隣にいながら

気休めの言葉すらかけることができなかったあの時以来、

遥は人知れず魔法の研究に励んでいた。

特に、魔力を消費しきっていたとはいえ
里保にかすり傷1つつけることができなかったあの記憶は、

自分1人では何もできなかったという事実を遥に突きつけ、

この先遥たちの前に再び強い魔道士が立ちはだかったとき、

今の自分ではまた同じことを繰り返してしまうのではないか

と遥を不安にさせた。

あんなことはもう二度と繰り返したくない。

だから、執行局の若手最強と謳われる里保にも勝てるくらいの力を遥は求めていた。


444 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/25(火) 23:39:49

今の自分では里保との1対1の『勝負』にはまだ勝てないかもしれない。

遥は主に水属性の魔法を使用するため
ある程度の対策が既に練られているのに対し、

里保は数種類の属性の魔法を使いこなすのに加えて

異なる属性のコンビネーションといった応用技も数多く持っているため
技の全体像を未だに把握できていない。

属性やバリエーションの話だけでなく、

魔力のスタミナや経験といった面でも

里保にはまだまだ遠く及ばない。


だけど、

今のハルにはまーちゃん、あゆみん、そしてはるなんがいる。

1人じゃできないことも、
この4人ならできる気がする。


「くどぅー、そろそろだよ。」
「うん、サンキューはるなん」

「うまくやってよ〜?

本気モードの鞘師さんの大技とか

まともにくらったらホントに死んじゃうからね?」

「わかってるって。あゆみんこそこの後頼んだよ?」

「まっかせっなさ〜い!

どぅー、このあたしを誰だと思ってんの?

主席ですよ、しゅ・せ・き!」

おどけてみせる亜佑美もかなりの魔力を練り上げている。

「はいはい、くれぐれも自分が凍らせた地面で滑らないようにね」

「ちょっと、それ誰から聞いたのよ!」

「え、ホントにそんなヘマしたことあったの?

さすがあゆみん。」

赤面して言い訳をする亜佑美をよそに、

遥は魔力を練り上げながら地面に魔法陣を書き始めた。






つづく


445 : 理想郷 作者 :2014/11/25(火) 23:41:41
バスが消灯時刻を迎えるので今日はここまでです。

怒濤の更新で無理やり間に合わせようとしてる感ハンパない(笑)


446 : 名無し募集中。。。 :2014/11/26(水) 00:29:00
乙であります

バスの消灯時刻が気になるw
遠距離バスかな


447 : 名無し募集中。。。 :2014/11/26(水) 07:15:12
あゆみんw


448 : 名無し募集中。。。 :2014/11/26(水) 09:08:10
想い作者です

このテンポの良さは真似できないです(笑)

容易に脳内再生できるわw


449 : 名無し募集中。。。 :2014/11/26(水) 09:58:47
はるなんの式神はガンダムF91の実態のある影分身を思い出しました


450 : 理想郷 作者 :2014/11/26(水) 10:40:19
F91、たしかにそうですね。

式神の技自体は 浪漫〜My dear〜 第一部
よりお借りしてアレンジしました。


続きいきます。


451 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 10:41:05




衣梨奈はM13地区を歩いていた。

「あんまり変わってないっちゃね」


里保はどこにいるのだろうか

とりあえず里保の家に行こう。

そう思って方向を変えると、
目の前に里保が住むマンションが現れた。


「里保〜、おる〜?」

カギは開いている。

部屋に入った衣梨奈は驚いた。

部屋が綺麗に整理整頓されているのだ。

「まさに理想っちゃね」

だがここには里保はいないようだ。

一体どこにいるのだろうか。

向こうの世界で戦っていた場所か、
それとも衣梨奈の家か

どこにいるにせよ早く会わなければ…

そんなことを考えながら衣梨奈は再び歩き出した。


「えりぽん、こんなところで何してるヤシか?」

不意に後ろから声をかけられて振り向くと、

そこには顔を綿毛のようなものに覆われた少女が
ニコニコしながら立っていた。


452 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 10:42:26


この子、里保に似とるっちゃね。

もしかして、部屋片付けなさすぎて
ついに顔にカビ生えたと?

いや、でもさっきの部屋はきれいだったし…

「えっと、

…里保、なん?」

「う〜ん、合ってるけど違うヤシ。

簡単に言えば、ウチは鞘師里保の心ヤシよ。」

「え、心?
いまいちようわからんのやけど。

それにヤシって何なん?」

衣梨奈はこの事態を飲み込めないでいた。


それよりえりぽん、一緒に海岸に行くヤシ!

魔法楽団のおじいちゃんの演奏聴きたいヤシよ」

「え、あぁ、うん。」

「…いや、うんじゃないわちょっと待って!」

ペースに引き込まれそうになりながらも慌てて少女をひきとめる。

「里保、元の世界に戻ろ?

里保はみんなと一緒にいたいんやろ?」

「えりぽん、ウチはこの世界の住人ヤシよ。

ウチはあくまで心。

この世界から出るなんてありえないことヤシ。

先に海岸で待ってるヤシね。」

そう言い残すと少女の姿は空気に吸い込まれていった。


453 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 10:43:38

「どうすればいいんやろ…」

と、不意にポケットから強力な魔力を感じとる。

その魔力の正体は春菜からもらった‘御守り’だった。

「お疲れさまです、生田さん」

突然紙で折ったネコが喋り出す。

「えっ、はるなん!?」

「はい。何かお手伝いできることがあればと思いまして。」

「え、これどうなっとると?」

「私から見ると、生田さんとビデオ通話をしているような状態です。

そのネコを通して、そちらの世界を見ることができます。」

衣梨奈はますます春菜が掴めなくなってきた。

いつの間にこんな手の込んだ魔法を使えるようになったのだろうか。

「生田さん、おそらくカギはヤシ子さんです。

現実世界の鞘師さんは幸せの脱け殻みたいな状態で、

感情も不安定です。

そこにヤシ子さん
つまり鞘師さんの心が加わることで、

元の鞘師さんを取り戻すことができるはずです。」

「はるなん、ヤシ子って変な名前やね。」

「その方が分かりやすいかと思いまして。

それに私はその名前かわいいと思いますよ?」

「ふ〜ん、まあいいや。

でも里保は…あ、ヤシ子は、

自分はこっちの世界の住人だから
この世界からは出れんって言いよったとよ?」


454 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 10:44:46
「おそらくそう思い込んでいるだけだと思います。

鞘師さんが研究していた魔法は
相手を理想郷に閉じ込める魔法。

もし相手に、

自分はここの世界の人間だから出ることはできない
と思わせることができたら、

出口を探したり無理やり理想郷を壊そうとしたりしないから、

一番閉じ込めやすくないですか?」

「たしかに。じゃあとにかくヤシ子をそっちの世界に引きずり出せば良いわけやね。」

「一言で言ってしまえばそういうことです。

あと、こっちでは今さあぁっ! ちょっと!」

突如通信が乱れる。

「はるなん!どうしたと!?」

「 わ……っ…の…み……ぞ…がっ…」

そのまま通信は途絶えた。


「ちょっと急がんといけんみたいやね。」

そうつぶやくと衣梨奈も空気に吸い込まれていった。






つづく


455 : 理想郷 作者 :2014/11/26(水) 10:46:10

どこに行くわけでもなく座ってこれを書き続けてる俺(笑)


456 : 名無し募集中。。。 :2014/11/26(水) 11:41:38
続き待ってます~


457 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 13:55:23



里保は分身相手にイライラしていた。

分身はそれぞれに魔力を帯びており、

偽物かどうかの判別がつかず、キリがない。

これでは魔力の無駄遣いになる。


里保は内側で練り上げていた魔力を刀に注ぎ込み
高圧の電流をまとわせた。


「巻龍雷波!」
その青白い光を放つ刀を両手で地面に勢いよく突き立てる

刹那、一帯に電磁波が広がり、
周囲に点在していた魔力の気配は一瞬にして消失していった。

辺りに遥たちの魔力は感じられない。

だがあの4人の事だ、
倒れている姿を確認しないと里保は安心できなかった。

ようやく晴れてきた霧の中を進んでいく。


458 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 13:56:12

しかし里保の前に現れたのは
遥たちの姿ではなく金属の壁だった。

壁を伝って進んでいくと、
どうやら里保は円柱状の部屋に閉じ込められているらしい。

鉄や銀などのような名称はわからないが、

これが金属の壁ということは

外にいる4人には
先ほどの電磁波は伝わっていないのだろう。

まんまとしてやられた。

おそらく4人の意図は里保が魔力を消耗すること。

そして見事に里保は魔力のムダ遣いをさせられたわけだ。

里保は無言のまま壁を破壊した。


それをドヤ顔で待っていた遥が満足そうに解説してくる。

「鞘師さんは大技には必ず魔法を使います。

生田さんみたいな武道派タイプの人にはあの壁は通用しませんけど、

相手が炎や電撃ならあの壁は無敵ですよ。

名付けて、当たれば砕けルーム です!」

「わかった。次は壁ごとどぅーを吹き飛ばしてあげる」


459 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 13:57:04

「やすしさぁ〜ん!今度はまーの番ですよぉ〜!」

戦う理由が1人ずれている優樹が会話に割り込んでくる。

「みにしげおねーちゃんに喜んでもらえるように、

まさ頑張りますから!
みにしげさ〜ん、みててくださいねぇ〜!」

と少し離れたところで香音、聖と一緒に
この戦いを見物しているさゆみに手を振る。

「はいはい、わかったから早くやりな」

そう言いながらもさゆみは優しく手を振り返す。

「はい! じゃあいきますよぉ〜!」

そう言うと魔方陣の上で印を結び、呪文を唱える。

すると至るところから草木が生い茂り、

それらはジャングルのような森を形成していく。

里保は絡み付こうとするつたを両断し、

刀にまとわせた炎で一帯を燃やす。

炎が燃え広がり、森一帯が火の海に変わったところで
優樹が亜佑美にバトンタッチする。

亜佑美が呪文を唱えると、
火の海となった森がみるみる凍りついていく。

やがて森は完全に凍りつき、

辺りには火が凍っているというなんともおかしな光景が広がっていた。

そして今度は氷の森をぬってきた遥が
手刀で近接攻撃を仕掛けてくる

里保も応戦するが、
凍った森の中では太刀は長すぎて思うように戦えない。

そこで素手に切り替え、
迫ってくる手刀を巧みにかわしながら隙をうかがう。

素手になった里保に対して
勝負を急いだ遥が手刀を突き出してくる

里保はそれをひらりとかわし、

その流れで遥を蹴りとばす。

けりとばされながらも
遥は空気中から無数の水滴を精製して乱れ打つ

それに合わせて亜佑美も頭上からつららの雨を降らせる

里保は2方向から迫る攻撃を蒸発させようと炎を放つ

すると周りの氷も解け、再び燃える森が出現する。

里保は慌てて凍っているゾーンまで退避するが、

腕に軽い火傷を負ってしまった。


460 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 13:58:28
3人の連携攻撃は続き、

厄介な森への対策を考えているところに
猛スピードで突進してきた優樹の体当たりをもろにくらう。

それにバランスを崩し、里保が尻もちついたところへ
亜佑美と遥の厚い弾幕攻撃が浴びせられる。

里保は風をおこし、
それらを吹き飛ばしたりコースを変えたりしながら
氷の森の間を縫ってなんとか攻撃を回避する。


このままじゃヤバい…

里保はリスク覚悟で上空へと飛び上がった。

それを見た優樹が印を結ぶと、地中から竹林が出現し、

その竹は無限に伸びて里保を追撃する。

里保は迫ってくる竹を絶ち斬り、燃やし、

上空から浴びせられるつららの雨に
かすり傷を負いながらも上昇を続けた。


461 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 13:59:29

やがて空高く舞い上がった里保は
下へ向けてスッと手を伸ばし、
その右手に魔力を注ぎ込む。

すると上空を流れる風が里保の魔力で温められ、

ドライヤーのように里保の手のひらの先へと流れを作った。

温風はみるみる氷をとかし、火の海を出現させる。

里保がその手にさらに魔力を込めると、

その風の流れは次第に加速し、規模を大きくし、
暴風を伴う下降気流となった。

風はまるでろうそくの火を吹き消すかのように地上を鎮火し、

遥たちはその風圧に立っていられるのがせいいっぱいだった。

「どぅー!ヤバいよ、飛行機から落ちてるみたい!」

「スカイダイビングね! まぁたしかにそれぐらいの風だよ。

ほんとヤバいね、これは」

「おぉう…、私の秘密の花園がっ…」

「ヤバい、はるなん集中しないと!

生田さんとの通信切れちゃうよ!」



その様子を遠くから見ていた聖がスッと立ち上がり、

5人の元へと歩きだす。

「フクちゃんどこ行くの!?」

慌てて香音が止めようとする

「聖が里保ちゃんを止めないと。

聖には、里保ちゃんの気持ち、わかるから。」

「でも危険すぎるよ!」

「大丈夫だから。

すみません道重さん、行ってきます。」

「行ってらっしゃい、フクちゃん」

さゆみはそれを止めようとはしなかった。



つづく


462 : 理想郷 作者 :2014/11/26(水) 14:00:20
ようやく終盤です。

ギリギリいけそう


463 : 名無し募集中。。。 :2014/11/26(水) 14:48:42
わくわく


464 : 理想郷 作者 :2014/11/26(水) 16:23:34
できた!

間に合えー!!


465 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 16:24:41


暴風に乗った里保が遥めがけて急降下してくる。

それを見た亜佑美が遥の頭上に氷の壁を作り、
風を遮断して遥の身を自由にする。

すかさず遥右の拳が里保の頬を狙う

それを見た里保は反射的にかがみ、
炎を纏わせた左拳で遥の腹部へとカウンターを繰り出す


遥の頭にあのときの光景が甦る。

同じ轍を2度も踏むまいと
里保の炎を水で相殺しようとする

しかし次の瞬間
遥の体を電流が走り、
遥はその予想外の痛みに顔を歪める

「グッ…、

属性切り替えのトラップなんて、流石っスね…」

里保は拳に纏わせていた炎を
遥に当たる直前に電気へと切り替えていた。

「どぅー!」


466 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 16:25:25

狗の姿になった優樹が遥のもとへ走る

それを見た里保は優樹の前方に手をのばし、呪文を唱える。

と、炎の壁が出現し、
優樹は急ブレーキをかける 。


里保の部下としてやってきた経験からであろうか、
亜佑美の体は頭で考えるよりも先に動いていた。

「まーちゃん伏せて!!」

優樹の前に立ち、

炎の壁を突き破って迫ってきた電撃を
氷の盾と防御魔法で受け止める。





黒のセーター姿で観戦していたさゆみは

少女達の予想以上の成長に驚き、そして感心していた。

「みんな、なかなかがんばってるじゃない。」

前は大技1回で魔力使い果たしちゃってたのに、

いつの間にあんなスタミナつけたんだろ。


頼もしくなったなぁ


微笑ましく見守るさゆみの目は
どこか寂しがっているようにもみえた。


このままずっと…


…いや、そういうわけにもいかないよね。

もうさゆみなしでもできるようになったんだし。


「だからみんななら、大丈夫だよね。」


さゆみは1つ大きく息をはき出すと、

立ち上がって少女達のもとへと歩いていった。


467 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 16:26:02




「里保ちゃん!」

その声に、戦っていた一同の視線が聖に集まる。

「聖、里保ちゃんの気持ちすっごくわかるよ?
かわいい女の子の写真見るのが趣味だし、
小学校高学年くらいの子にも興味あるし。

だから里保ちゃんのみんなへのそういう気持ち、

聖、わかるけど、 でも!」


「里保ちゃんが今やってることは、誰かを傷つけちゃうことなんだよ?

どぅーや優樹ちゃんや亜佑美ちゃんと、

そしてその3人のことが好きな人みんなを、

自分の幸せのために傷つけちゃうのは、それは違うよ!」

それの言葉を聞いた里保が目を見開く。

「里保ちゃん、戻ろう? いつものにぎやかな日常に。」

「フクちゃん…」


里保の体が、恋ピンク色の光に包まれた。


468 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 16:26:48






「里保、えりの話をきいて!」

衣梨奈はM13地区の海岸で里保と向かい合っていた。

「里保は魔法にかかっとるとよ!

里保はこの世界の住人なんかじゃない。

やけんみんながおる世界に帰ろう?」

「えりぽん、何言ってるヤシか?

ウチはここの住人ヤシよ。

それに、そもそもウチは
こんな幸せな世界から出るつもりないヤシ。」

「バカ!」

「えっ、いきなり何ヤシか!?」

「たしかにかの世界では里保の思い通りになるかもしれん。

好きなものに囲まれて、幸せかもしれん。

でもこの世界には、里保とえりしかおらんやん?
それって絶対寂しいよ!

それに全世界の人を理想郷に連れてくるなんてできんから、

里保はよくても、

向こうの世界残る里保のことが好きな人達は、

こっちにきた人に会えんで悲しむやんか!」


そして衣梨奈は
今度は優しい口調で続けた。


「里保、楽しいきなことしかない世界って
ぜんぜん楽しくないっちゃよ。

楽しいのが当たり前になって、
それが 普通になりすぎて、
逆に楽しくなくなるよ。

ほら、新垣さんとか道重さんとかも言いよったっちゃろ?

『雨の降らない星では愛し合えない』 って。

えり、あの言葉の意味、
前はよく分からんかったっちゃけど、

今ならわかるよ。

嫌なことや、悲しみのない星では人は優しくなれない。

辛いことがあるから、

嬉しいことや楽しいことがよりかがやくんだ って。」

衣梨奈が里保を抱き寄せる。

里保の顔は、まだ衣梨奈が協会にいた頃、
家族4人で暮らしていたあの頃のような
幼い子供の顔に戻っていた。

「ありがとう、えりぽん」

「まったく、ほんとしょうがないなぁ、里保は」

「えへへ、えりぽんにいわれたくないよ」


「帰ろ?」

「うんっ」


黄緑と赤色の光が二人を包む。


469 : そうだ、理想郷創ろう :2014/11/26(水) 16:33:36

優しい光が消えたとき、そこには衣梨奈と里保が立っていた。

「結局、人を動かすのは魔法じゃなく
その人への想いだってことだね」

さゆみが香音と共に歩いてくる。


「みんな、ごめん」

里保がみんなに謝り、深々とその頭を下げる。

「りほりほ、
今度やるときはちゃんと自分の心をガードしてからやらないとね。」

「はい、ご迷惑をお掛けしました。」

「まぁみんな死なずにすんで何よりってことで。」

遥たちも輪に加わる。

「そうだね、みんなもお疲れさま。

そしてりほりほ、おかえり!」

そう言ってさゆみは里保のほっぺにキスをした。

「!!!」 

真っ赤になってあたふたする里保

「やすしさん、もうだーいっきらい!」

「鞘師さんばっかずるいよ、ハルも頑張ったのにぃ!」

ふてくされる最年少コンビに

「じゃあ二人にも」

といってさゆみが抱きつく。

「あ、道重さん、私もお願いしていいですか!?」

「え〜っ、どうしよっかなぁ〜」

「そんなぁ…」



9人のにぎやかな笑い声が広がる空には

季節外れの綿毛がフワフワと舞っていた。






おわり。


470 : 理想郷 作者 :2014/11/26(水) 16:37:04

最後ぶっ飛ばして書いたんで
誤字がありますがお許しください。

なんとか間に合いました。

正直もう疲れて眠たいです…(笑)


さっき見たらグッズの列半端ないことになってたんで、

少しでも時間潰しになれば幸いです。

読んでくださった方々、

ありがとうございました。


471 : 名無し募集中。。。 :2014/11/26(水) 16:48:19
ヤバイね
涙腺崩壊しそう。゚(゚´Д`゚)゚。


472 : 名無し募集中。。。 :2014/11/26(水) 23:30:33
唇にキスだったら完璧だったのにw

それにしても何がすごいって
横アリ前の突貫で一気にまとめあげる
文章力が本気で羨ましい限り


473 : 理想郷 作者 :2014/11/27(木) 15:47:24

ほんと、安パイでほっぺにしたことが悔やまれます(笑)


474 : 名無し募集中。。。 :2014/11/27(木) 19:04:34
幸いにして現場にいたけど頭の片隅にここと本スレがくるくるしてたw

乙です


475 : 名無し募集中。。。 :2014/11/27(木) 19:55:09
もう一度さゆとりほりほの絡みが見たいな


476 : 果実の想い作者 :2014/11/27(木) 21:50:11
至る所に色んな外伝の要素があってすごく新鮮でした

ひさびさに浪漫の続きでも書いてみるかな


477 : 理想郷 作者 :2014/11/28(金) 10:51:55
あなただったんですか、浪漫作者さんは!

戦国編といいベリ編といい大好きな作品ばかりですよ。

これは楽しみです。


478 : 浪漫 :2014/11/28(金) 23:55:38
「人は誰しも何かしら他人には言えない夢を持つ。それがたとえどんなに叶わないとわかっていても…」

そう言うと老人は足元に一つ小さな魔法陣を描く。その動きはとても些細なもので対峙している相手は気づくことができなかった。

ズズズ…ズズズズ…ズズ

少しずつ男の足元の砂が消えていく。否、渦を描くように巨大な坑を作っていく。


「か、身体が…。動かない。貴様、何を…」


飲み込まれていく男の姿を見送ると老人は懐からパイプを取り出し、火を付ける。


479 : 浪漫 :2014/11/28(金) 23:59:30
「全く、最近の若いものと来たら闘いの基本がなっとらんの。そうは思わんかね、お嬢ちゃん。」


一枚の紙切れが老人の後ろをひらひらと舞う。それが砂に落ちた瞬間、眩い光が一瞬辺りを包む。そして、そこには春菜が立っていた。


「なるほどの、式紙が空間転移を媒介しておるのじゃな」


「…。」


「確かに『情報屋』としての腕前は見事じゃのう。じゃが…。」

老人はここで言葉を切る。春菜は本能的に身の危険を悟る。だがこの状況で何ができるのか。


「今回は知りすぎたようじゃ。」


続く


480 : 浪漫作者 :2014/11/29(土) 00:05:19
名前欄どうしよう(笑)

何だっけ?トリだっけ付けるかw

とりま、昔書いてた浪漫の続きみたいなもんです。

原作は暗すぎて載せる気がしないのでちょっとリメイクしたものを作り直してます

ちなみに本スレは規制されてしまい書き込めないので避難所メインでやります


481 : 名無し募集中。。。 :2014/11/29(土) 07:25:10
祝!浪漫再開!!だからこっちだったのね…前作もう一度読み直してこよう


482 : 名無し募集中。。。 :2014/11/29(土) 22:13:30
はるにゃあああああああんんんn


483 : 名無し募集中。。。 :2014/11/30(日) 00:13:46
この中では、大好きなモーニング娘。見続けることが出来る。
これからも、外伝期待しています。


484 : 名無し募集中。。。 :2014/11/30(日) 01:21:06
飯窪さんピンチ?
そう言えばはるなんはけっこう前のスレでも転移というか瞬間移動みたいな術使ってましたね


485 : 名無し募集中。。。 :2014/11/30(日) 11:04:33
うおおお俺もはるなんの書きてええ
文才ないけど


486 : 名無し募集中。。。 :2014/11/30(日) 19:05:39
書いちゃえ書いちゃえ
たとえ文才がなくても書きたいネタさえあれば
後は勢いでどうにでもなるものだから


487 : 浪漫 :2014/12/01(月) 00:01:52
春菜は身動き一つ取ることがなく先ほどから
老人の目を真っ直ぐ見据えたまま動かない。


ここで老人は突然、右手を伸ばし電撃を春菜に向けてはなった。
その電撃が春菜の身体に触れた瞬間、電撃が四散する。
まさかの事態に老人の動きが少し遅れ、跳ね返ってきた電撃の一つが右膝に当たる。

「なんと!」

だがそれだけではなかった。

目の前には黒い刀を持った春菜が眼前に迫りつつあった。

「くっ…。」

春菜の実力に関して全くの検討違いを思い知る老人。
足元に風を巻き起こし、距離を取ることを試みる。
しかしすでに春菜の姿は無い。辺りの魔力を探すがどこにもいるような痕跡も見つからない。


488 : 浪漫 :2014/12/01(月) 00:04:07
「上か。」
ガキッ

頭上から振り下ろされた刀を交差させた手首で受け止める。そのまま、自分の周りの砂を巻き上げ一本の柱を突き上げる。

「おぅ…。」
手応えは充分だった。後は一気に片を付ける。老人がそう思ったその瞬間、腹部に鋭い痛みがはしる。それだけではなく肩にも、足にも至る所が痛む。そして目の前には数本の刀で老人を突き刺した春菜の姿があった。



絶対的な状況の中、突然老人は高らかに笑い始めた。


「ホッホッホ。流石はと言ったところかの、お嬢ちゃん。まんまとやられたわい。いつの間に魔法をかけたのじゃ。」


489 : 浪漫 :2014/12/01(月) 00:05:25
老人はそう言いながら後ろを振り向くとそこには大きな岩に腰掛け書物を開き、それを読む春菜の姿があった。

「ふふふっ、ジャスト1分です。いい夢、見れましたか?」

春菜が、その手にした書物を閉じた瞬間老人の目に映る春菜の姿が歪む。そしてしばらくした後、『本物』の春菜が現れた。


よいしょつと岩から砂浜へと降りる春菜。そして老人に向かい話しかける。


「おじいさんが私の式紙魔法を見破った瞬間からですかね。あれ、実は私の魔力を込めた小説なんです。あんなに早く見破られるとはちょっと思ってなかったですけど。さすがは元執行局の局長をしていただけありますね。」


春菜の言葉を聞く老人の様子は先ほどまでとうって変わってとても穏やかであった。


「闘うことだけが身を守る方法ではないと言うことですから。」

また一つ海風が2人の間を吹き去っていった。


490 : 浪漫作者 :2014/12/01(月) 00:07:05
というわけで今晩はここまで

少し古いマンガのネタだけど知っている人はどれくらいいるでしょうかね


491 : 名無し募集中。。、 :2014/12/01(月) 00:38:24
ゲットバッカーズですかね?
邪眼と雷帝コンビの


492 : 名無し募集中。。。 :2014/12/01(月) 00:48:26
おお!なんか聞き覚えのあるフレーズと思ったらその漫画か〜読んだ事あるわ
まさかの小説魔法なんて…これも元ネタあるのかな?


493 : 名無し募集中。。。 :2014/12/02(火) 02:37:44
はるなんつええええええええw


494 : 名無し募集中。。。 :2014/12/02(火) 11:51:48
いいねえ
ワクワク


495 : 浪漫 :2014/12/05(金) 22:02:28
その頃、衣梨奈は自室にて、実家から届いたアルバムを開いていた。

幼き頃の自分を刻む証であるこれをM13地区へと送ってきたということに衣梨奈は少し淋しさを覚える。この3年、手紙は頻繁に出してはいたがそれ以外は何も娘らしいことはしていない。


特に魔導士でない母親にとって衣梨奈の『世界一の魔法使いになる』という夢は想像もつかないであろう。母親からの励ましのメッセージなのだ、ということはわかっていても少し切ない。


そう考えながらアルバムのページを一つ一つ捲っていくとあるページに見知った顔を見つける。それは、父が幼き衣梨奈を連れ、執行局へ遊びに行ったときの写真であった。幾分髭も少なく、全体的に若い印象を受けるが間違いない。魔法楽団の老人だ。


人が良さそうな雰囲気は写真の表情からも読みとることができた。


「おじいちゃん、執行局の人やったとね…。階級は…ひい、ふう、みい…星5つ!?部長クラスやん。そんな人が何でM13地区におるとね…。」


496 : 浪漫 :2014/12/05(金) 22:03:55



「私は生田さんや鞘師さんみたいにアクロバティックに動ける訳でもなく道重さんのように絶対的な魔力も持ち合わせていません。時々、何で神様はこうも不公平なんだろって思っちゃうんです。」


海岸でそう老人に話す春菜は心持ち苦しそうである。それでも、自分が日常的に感じている心境を老人へと吐露し、また老人もそれを黙って聴いている。


「それでも、狗族と協会のいざこざとか、時空間の暴走とかを経験して私ももっと強くなりたい!そう思うようになったんです。」


「それがあの『小説魔法』なわけじゃな。」

老人の言葉に大きく頷く春菜。

「よくできた魔法じゃ。熊井のほど持続的ではないが、レパートリーには優れておる。さしずめ『創造』することによりどんな世界にも相手を引きずり込める。」


497 : 浪漫 :2014/12/05(金) 22:05:20
「さすがですね。一回かけただけでそこまでわかっちゃうなんて。今回はおじいさんの様子がガチ目だったので。普段めったに使わない魔法ですから。」


「ホッホッホ。人間誰にだって秘密の一つや二つある方がおもしろいもんじゃ。ただ、お嬢ちゃんは今回わしの秘密をつかんだ。それを明かすかどうかはお嬢ちゃん次第じゃ。わしは何もせんよ。」


春菜はその言葉を聞き、手にした書物を握りしめる。ある事件について調べているうちに一つの事実に突き当たった。その真偽を確かめるべく春菜は老人の元へと赴いたのであった。


だが、実際に少し戦ってみて、春菜はこの楽団の老人が魔法をこよなく愛していることがわかった。

(おじいさんにあんな事できるわけがない…。だとしたら、誰かがこのおじいさんをはめた?でも、だとしたら誰が…。)


続く。


498 : 浪漫作者 :2014/12/05(金) 22:09:25
というわけでこんばんは

謎が謎をよぶ…
なぜなら作者自身が着地点を見いだせないからである←

さあどうしよう(笑)


499 : 名無し募集中。。。 :2014/12/05(金) 22:40:05
機長!逆噴射


500 : 浪漫作者 :2014/12/05(金) 23:00:51
思わず検索しちまったいw
まだ生まれてねーやw


501 : 名無し募集中。。。 :2014/12/06(土) 00:27:02
モブじいさんのキャラがドンドン強くなるwまさか部長クラスとは…

はるなんの小説魔法はリリウム外伝(別作者?)にも通じるもんがあるね


502 : 浪漫作者 :2014/12/06(土) 01:05:04
モブじい、大好き(笑)
一応リリウム作者さんとは別人でございます


503 : 名無し募集中。。。 :2014/12/09(火) 10:34:34
まーちゃんとはるなんはマーキングするんだろうか?
「魔法のポーズ」(身づくろい)するんだろうか?
獣化中は全裸?丸見え?
一瞬で着脱できる魔法がかかってるんだろうか


504 : 浪漫作者 :2014/12/09(火) 14:13:46
「生田ー、ご飯だよー!
 ていうか、今日はあんたの当番…って、何自分の小さい頃の写真見てニヤニヤしてんのよ。
 気持ち悪いわねぇ。」


自室に戻ったきりなかなか部屋から出てこない衣梨奈に対し
しびれを切らしたさゆみは、幼き頃の里保の写真を探しに来たのであった。

「んなっ!
 道重さん、何てことを言うんですか。
 えりはニヤニヤなんかしてませんって…聞いてます?」


しかし、騒ぐ衣梨奈に対しさゆみの関心は既に写真の方へと移っていた。
衣梨奈の持つ一枚の写真。
それを見てさゆみは小さくため息をつく。

「あぁ…。この頃はまだ彼も執行局にいたんだっけ。」

さゆみの独り言を聴いた衣梨奈はヒラヒラさせていた手を止め、
もう一度、手に持った写真に目を向ける。


505 : 浪漫作者 :2014/12/09(火) 14:16:53
「そう!そうですよ、道重さん。あのおじいちゃんめちゃくちゃ凄い人じゃないですか。なのに何でここにいるんですか?」

魔導士全体の世界を統括するのが魔導士協会である。
その中に執行局を含めた下部組織があるのだが、そのいくつかを纏めた組織を統括するのが運営部であった。
つまり、あの楽団の老人は元々魔導士協会の人間、しかも超重役というわけである。

協会人事の内部事情を知っている衣梨奈にとって、
そんな人物がM13地区にいることは奇妙以外の何物でもなかった。


問いかけを聞いたさゆみはもう一度、ため息をつく。

「世の中って皮肉なものよね。平等なことなんて何一つないんだから。
 彼は、もう協会には戻れない。例え戻りたくても………」


506 : 浪漫作者 :2014/12/09(火) 14:19:48
「道重さん?どうしたんですか?」


突然、言葉を切ったさゆみに対し、怪訝な顔を浮かべる衣梨奈。

「生田!りほりほは?どこ行った?」


衣梨奈の質問には答えず、少し焦った口調で里保の居場所を尋ねるさゆみ。

怪訝な顔のまま、衣梨奈は思案する。

「ええっと…里保なら今日は自宅マンションに居るはずです。って、どうしたんですか?」


「もう。こういう時に限ってなんだから。
 生田、すぐにりほりほをここに連れてきな。
 なるべく早く、手遅れになる前に。」

『手遅れ』という言葉に衣梨奈は事態の深刻さを感じ取る。
状況をいまいち飲み込めてはいないが今は動くとき。

「わかりました。里保をつれてくれば良いんですね。」


507 : 浪漫作者 :2014/12/09(火) 14:23:00
「急いで!」


「はい!」



全力で走って5分。
ほどなく、里保が住居を構えるマンションの前へと到着した衣梨奈。
しかし呼び鈴を鳴らしても部屋から応答がない。

衣梨奈はさゆみが少し焦りを見せていたことに焦っていた。
何かはわからないが、里保の身に不都合なことが起きかけている。
そしてそれを防ぐためにさゆみが動こうとしている。

(全く、どこ行ったとね…。早く見つけんと。)


そのとき、衣梨奈は
大きな魔力を3つ捉えた。そのうちの一つは…。

(里保!ここは……海岸っちゃね。)



衣梨奈は懐からスケボーを取り出すと魔力を注ぎ、空中へと放り投げた。
魔力を注ぎ込まれたスケボーは大きく弧を描き衣梨奈の元へと飛んでくる。
それに向かい衣梨奈は軽く地を蹴ると、宙を飛ぶスケボーに飛び乗った。そしてそのまま一目散に、海岸へと向かうのであった。


508 : 浪漫作者 :2014/12/09(火) 14:24:05
タイトル作者のままだったか
仕方ないw


509 : 浪漫 :2014/12/09(火) 18:55:35



時を遡ること数十分前−。

北の果てに立つ、周囲が断崖に囲まれた孤島の牢獄からひとりの魔導士が脱獄した。

その島は『脱獄不可能』な牢獄となるように様々な仕掛けが施されていた。一度入ったら最後、死ぬまで出られない…ハズであった。

だから、当然看守もつけておらず、一応、警報システムもあるが誰も気を配ってなどいなかった。

だから、この事態に気づくことができた魔導士は、ほんの一握りであった。ちょっとした魔力の流れの、質の変化を感じとった者だけ。



奇しくも、その魔導士のターゲットがM13地区にいた。
そのことをさゆみは知っている。だから警戒態勢をとったのであった。



そして当然ながら、この人物も気づいていた。



険しい顔をして、一人の黒ずくめの姿をした魔導士と向き合う老人。

その右腕には全く力が入っていない。
無事な左腕で里保と春菜を庇うように立っている。


510 : 浪漫 :2014/12/09(火) 18:58:51
「ほう、今の攻撃を喰らっても立っていられるとはな。
 まだまだ腕は衰えていないようだな、じじい。」


「ホッホッホ。こんな老いぼれにも珍しい客が来たと思うたらなんとまぁ無礼なやつじゃのう。」

何でもない風を装うとするがそのダメージは傍目から見ても明らかである。
老人は左腕でそっと右腕を撫でる。小さな光が灯り、再び右腕に生気が戻ってくる。


「あっ危なかった…。な、なんなんじゃ。コイツは?」

自身で防壁魔法を張っていた里保は思わず声を上げる。
もし仮に老人が自分たちを庇ってくれなかったら…。

それほど、強力な魔法であった。
そして今までに感じたことの無いくらい明確な殺意を持った魔法であった。



「フム、これはやるしか無いと言うことかのう…。」

誰に言うでもなく老人はそう呟くと両袖をまくり上げる。


511 : 浪漫 :2014/12/09(火) 19:03:25
「ふん、お前の死に場所はここと決まったんだよ。
 余計な事はしないでさっさと寝ろ。」

そういうと、相手の魔導士は印を組み上げる。
すると突然、里保達の周りの砂が持ち上がり、一気に降りかかってきた。


「うわっ!うわっ!」

覆い被さる砂をかわそうと里保は風魔法を発動させる。
だが、その前に砂の動きが止まった。

「この儂の前で物理魔法などないに等しいわい。」

そう言った老人は指を一本上に向けると小さく円を描く。

するとその指の動きに合わせ、周囲の砂も回転していく。
やがて老人が大きく指を振るうと一気に砂は消え失せた。

「どれ、お返しじゃ。」


そういうと、老人は一つ指を鳴らす。
するとパラパラと砂が巻き上がり、空中で小さな塊を形成していく。
やがてフワフワと浮かんでいたそれらは、ピタッと動きを止めると猛スピードで
魔導士へと向かい砂の雨を浴びせる。


512 : 浪漫 :2014/12/09(火) 19:07:18
その攻撃を軽くいなす相手。
ニヤリとその顔に笑みを浮かべる。


「なっ、なんなんじゃこの闘い…。
 お互いにほんの小手調べという感じなのにこのレベル。」

目の前で繰り広げられる闘いに里保も春菜も目を白黒させるばかり。
ただ何があっても、いつでも対応できるように里保は内部で魔力を練り上げる。
既に陽も傾き、海岸には里保達の影が長く伸びていた。



ふと、里保は自分の前から伸びている老人の影が僅かに『動いた』気がした。だが老人は微動だにしていない。


(ハッ…!黒魔術…、マズイ。)


里保がそのことに気づいた瞬間、老人の影、里保の影、
そして春菜の影が持ち主から離れ複数体に分かれる。


「お前たち、あいつらと遊んでやれ。」


続く


513 : 名無し募集中。。。 :2014/12/09(火) 22:08:45
続きキタ━(゚∀゚)━!


514 : 名無し募集中。。。 :2014/12/10(水) 21:38:21
戦闘シーンが多彩でwktk


515 : 名無し募集中。。。 :2014/12/11(木) 00:15:00
モブじいさんかっけーそしてつえー!w戦闘シーンの描写うまいなぁ状況が目に浮かぶ


516 : 浪漫作者 :2014/12/12(金) 13:13:54
そいでは続き行きます


517 : 浪漫 :2014/12/12(金) 13:15:08
突如現れた自身の分身達。
心なしか里保は自分の魔力が少し減ったような感覚を覚えた。

(これが黒魔術…。)


「ねぇ、はるなん…。これどう考えてもさ。」

「えぇ…。ピンチってやつですね……。」


里保は自分達を取り囲む影の集団へもう一度目を向ける。

自分の姿そっくりだった。

(恐らく、魔力も…。なんてこったい。)

里保は小さくため息をつくと自身の魔力を開放する。
手加減などしている余裕はないだろう。


初めからフルスロットル確定だ。


518 : 浪漫 :2014/12/12(金) 13:16:48
里保が魔力を開放させたのと同時に影のひとりが里保へと切りかかる。
その刀から放たれた魔力は鎌鼬となり里保や春菜へと襲いかかる。
その威力は里保に負けず劣らない。


「ひぃぃぃー」

「はるなん!下がってて。」

 里保はすかさず鎌鼬の進行方向に対し垂直に突風を発生させる。

また同時に地に拳を突き立て、砂塵の壁を作り上げる。

すると、相手の鎌鼬は里保達の元へ届くことなく消失した。


「この街に来てからウチだって黙って過ごしてきた訳じゃないんじゃ。
 ましてやウチ自身が相手なら尚更負けるわけにはいかない。」



そういうと、里保は一振りの刀を取り出す。
幾度となく窮地を共にくぐり抜けて来た愛刀だ。


519 : 浪漫 :2014/12/12(金) 13:20:37

「鞘師さん、次来ます!」

春菜の声が響く。
なるほど確かに前方から2人が迫っている。

里保は刀の柄に手をかけ、静かに抜き放つ。


「鞘師流剣術 流水の舞」


2本の刀が同時に里保へと切りかかる。
だが、その刀は空を切った。
里保はユラユラと揺れながら、影の周囲を回っていく。

その動きに対し、影達は幾度となく攻撃を放つが、捉えることが出来ない。


少女2人の闘いを気にしていた老人は影の放つ魔法を打ち返した瞬間に
そちらを見やる。

そして、里保が何をしようとしているのかに気づくと満足そうに自らの闘いに再び集中し始めた。


決して余裕などない。

だが、ひさびさに心の底から楽しめそうな闘いに老人は一人ワクワクしていた。


520 : 浪漫 :2014/12/12(金) 13:23:17
ついに、里保がその動きを止める。

影のひとりの正面に立つと刀を地へと突き刺した。

すると今まで里保の動いた軌跡が魔法陣として浮かび上がる。

「鞘師流魔法術奥義 絶・陽明結界」


動き止めた里保に切りかかろうとした影の周囲に結界が出現し、その動きを妨げる。中から破壊を試みようと何度も攻撃を加えるが一向に壊れる気配はない。


「光がなければ影は存在出来ない。バイバイ。」

里保はそう一言、言い放つと地に差した刀を抜いた。
その瞬間、結界内は真っ暗闇に包まれ縮み始める。やがて消滅した。

「ふん、ウチにかかればこんなもんじゃ。」
ドヤる里保。


そのとき、
「お嬢ちゃん!後ろじゃ!」

老人の声が海岸へと響き渡る。


「えっ?」

影の一人がいつの間にかその距離を縮めて眼前に迫っていた。
その手には雷を纏わせている。


「鞘師さん!」



続く


521 : 名無し募集中。。。 :2014/12/12(金) 14:05:07
乙です

りほりほの剣舞ですか
ソードダンサーって感じですね


522 : 名無し募集中。。。 :2014/12/12(金) 22:33:41
りほりほかっこいい!スゲー


523 : 名無し募集中。。。 :2014/12/12(金) 23:04:46
鞘師がおじいちゃん世代の広島弁なのが気になっちゃう〜

とか言った先から謝りますごめんなさい。(笑)

とか言って絶対自分も生田の方言はおかしくなってるんだろうから人のこと言えないんですけどね。

いやそれにしても最後は新技で締める所、流石です。


524 : 名無し募集中。。。 :2014/12/13(土) 00:46:12
作者です

感想をありがとうございます
>521
いつもの激しいダンスというよりかは和のテイストでw

>522
わりとりほりほはカッコイい描写に自然となりますね

>523
いっそのことりほりほの方言止めようかなとか思ってて語尾にヤシをつけようかなと(笑)


525 : 名無し募集中。。。 :2014/12/15(月) 17:18:58
以前生田が見た夢
さて
PC覗きに行くかな


526 : 名無し募集中。。。 :2014/12/15(月) 19:45:05
>>524
語尾「ヤシ」はやめてーネタスレっぽくなっちゃうw


527 : 名無し募集中。。。 :2014/12/16(火) 11:21:15
避難所の方が盛り上がってる


528 : 名無し募集中。。。 :2014/12/16(火) 21:57:01
ここも盛り上がってるって程じゃないけどなw
メインとなる本編が3カ月近く停止してる状況じゃ
盛り上がれってのも無理な話だし

最悪さゆロスで作者さんがそのまま消滅まで覚悟してたから
生存確認&外伝投下してくれただけありがたかったけど
後は続きを書けるほどの回復をただ待つしかないわけで


529 : 名無し募集中。。。 :2014/12/16(火) 22:27:37
今本スレで続いてる外伝おもしろいか?


530 : 名無し募集中。。。 :2014/12/16(火) 22:33:28
面白いよ〜まぁ好みは人それぞれだから合わない人がいるのも仕方ないね


531 : 名無し募集中。。。 :2014/12/16(火) 22:52:20
笑顔編もとっても楽しみにしてる


532 : 浪漫作者 :2014/12/16(火) 23:12:42
自分も笑顔編はとても楽しみにしてます

本編作者様もそうだけど、あんなに丁寧な心理描写とか
情景描写は自分には真似できないです

ということで続きいきます。


533 : 浪漫作者 :2014/12/16(火) 23:16:37
その頃、中央の執行局では一つのパニックが起こっていた。

それは、全くの偶然であった。
刑事局の局員が重罪を犯した魔導士の転送先として
北方の監獄の空所状況を確認したとき、画面上に警告メッセージがあるのを
発見、慌てて上司に報告を入れたことにより脱獄が判明したのであった。

相手は重罪を犯した魔導士。
しかも脱獄不可能な監獄から逃げ出した実力者。


(これは、我が局だけでは対応できない。)

そう考えた、刑事局の局長はしぶしぶ
執行局へと応援要請を出したのであった。


「全く、これだから縦割り組織っつうのはダメなんだ。」

生田はそう一言呟くと思考を巡らせる。
あまりにも監獄の管理態勢がずさん過ぎた。
刑事局からの情報だけでは何も掴むことができない。
そう判断した生田は執行局の諜報班に至急、情報取得を指示した。


534 : 浪漫作者 :2014/12/16(火) 23:18:42
程なくして、一枚の報告書が送られてくる。
それは諜報班からのものだった。
そこには脱獄の時間と監獄の被害状況、
そして収容されていた人物の名前など事細かな情報が記載されている。


「こ……、これは……。」
その名前を見た瞬間に、生田は背筋が凍る思いがした。

その人物は、自分が入局仕立ての頃に対応した初めての事案であった。

「よりによって…。」

ガシャン。

 突然、生田の背後にある棚から、写真立てが床に落ちる。
生田がそれを拾い上げるとそこにはまだ衣梨奈が家出をする前に
家族全員で撮った写真が入っていた。
もちろんそこには里保も写っている。


何か妙な胸騒ぎをおぼえた生田はおもむろに電話をかけ始めた。


535 : 浪漫作者 :2014/12/16(火) 23:20:43
(まさかとは思うが…、じいさんの事もある。
 頼む、里保!電話に出てくれ…。)


そんな生田の思いは虚しく、里保へとかけた通信は
呼び出し音を繰り返すのみであった。


(何かあったのか…。もっと早く動けていれば!)


バンッ!

生田は思わず拳で大きく机を叩く。

その音に驚き、作業を進めていた局員達の手が止まり、
何事かと皆の視線が生田に集まる。



「石村、teamQにスクランブル要請!
 任務内容は重罪人の確保ならびに局員の保護、任務地は…。」

生田はそこで大きく息を吸う。
そして一気に吐き出した。

「任務地はM13地区だ。」


536 : 浪漫作者 :2014/12/16(火) 23:22:12



「お嬢ちゃん、後ろじゃ!」

「鞘師さん!」

目の前に迫る影。

(しまった…。油断しすぎた。
 もう防壁魔法も間に合わない…。)

それでも里保は自分の前方へと防壁を張るために魔力を高める。

そのときであった。

「里保ーーーーーーーーー!!」

空に黄緑色のスケボーが光る。
その瞬間、凄まじいスピードを出しながら飛ぶスケボーから、衣梨奈が飛び降りる。
そして、その勢いのまま、影の横顔へと跳び蹴りを放った。


もろにその蹴りを喰らった影は横へと吹き飛んでいく。


537 : 浪漫作者 :2014/12/16(火) 23:24:27
「えりぽん!?
 な、何でえりぽんが。どうしてここに?」


「道重さんに言われたとね。
 里保を迎えにって。でも…。」

そこまで言うと衣梨奈は周囲を囲む影達を見渡す。
いつの間にか自分の影も加わっているようだ。

「ちょっと遅かったみたいっちゃね。」

里保も改めて、自分の周囲を見渡す。
確かに数的に不利であり、実力も恐らく均衡しているだろう。


はっきりとピンチである。


そして衣梨奈は少し離れた位置で腕組みをして立つ一人の魔導士を見つけた。
その姿から実力者であることは間違いない。
だが、それよりも衣梨奈はその姿に見覚えがあった。

(あの影…、あのオーラ…。どこかで……。
 あっ!そうこの前の夢に出てきた人か。)




続く


538 : 名無し募集中。。。 :2014/12/17(水) 00:30:48
まさかの『teamQ』ついにあのメンバーも参戦!これが外伝の醍醐味だね〜


539 : 浪漫作者 :2014/12/18(木) 13:05:35
思う方向になかなか持っていけない


とりあえず続き


540 : 浪漫 :2014/12/18(木) 13:08:22
(この禍々しい黒いオーラはまさか…。)

魔導士が持つ魔力の質は様々で、それこそ同じ質の魔力を保持することは
師弟間はもちろん、親子間でも一致することは稀である。
それゆえ、今まで相対してきた魔導士全ての魔力の質を
把握するというのは不可能なことである。

しかしながら、中には特徴的な魔力を持った魔導士も存在しそのような魔力を持った魔導士は記憶に残りやすい。


特に、自らの体験と記憶というのは強固に結びつくもの。
衣梨奈が魔法の夢の中で見たこと、聞いたこと、そして感じたこと。
これらの一つ一つの記憶が衣梨奈の感覚に確信を与える。


541 : 浪漫 :2014/12/18(木) 13:10:03
あの夜、幼き里保の家族を襲撃した魔導士だと衣梨奈は感じた。その変化を察したのだろうか、楽団の老人が闘いの中で一瞬、こちらを見た気がした。


ただ、今はこの状況をどうにか打破しなくてはならない。
衣梨奈も自身の魔力を開放させると向かってくる影の一つに蹴りを飛ばす。
その蹴りを衣梨奈の影はしゃがみこみかわす。

それと同時に衣梨奈が蹴りを放つために重心を乗せた足を払う。


「のぁ!」

思わぬ反撃にバランスを崩し、後ろへと倒れ込む衣梨奈。チャンスとばかりに飛び込みざまに正拳突きをはなつ影。


542 : 浪漫 :2014/12/18(木) 13:11:45
ガキンッ!


その拳を横から伸びてきた里保の刀が受け止める。

「サンキュー、里保!せいやっ!!」

辛うじて助かった衣梨奈は両手を地につけたまま宙に蹴りを放つ。

足に確かな手応えを感じ、衣梨奈は即座に追撃に移る。
一瞬宙に浮いた相手を再度、宙へと蹴り上げると衣梨奈は地を蹴り飛び上がった。
そして打ち上げた影よりも高い位置で一回転すると
その勢いのまま影に踵落としを喰らわせる。


叩きつけた砂浜から砂煙が上がった。
円錐形に窪んだ地面には影の形が遺っているだけであった。


543 : 浪漫 :2014/12/18(木) 13:13:30
「ふぅ…。まだまだいっぱいおるっちゃね…。キリがないとよ。」


「本当にそうだね、どうしようか…。」


自分の姿の影を頭上から一刺しし消滅させた里保も衣梨奈と背中合わせに着地すると思案する。その間にも、じりじりと影達はその距離をつめていく。


「やっぱり、おじいちゃんみたいに何人か同時に相手をしないとキツいかな…?」


老人は複数の影を相手に戦闘を繰り広げている。防壁魔法も張らずに自然な流れでで受け流す所作に里保は思わず、目を奪われる。


「来ないでください!来ないで!」


544 : 浪漫 :2014/12/18(木) 13:15:36

突然、春菜の声に我に返った里保は辺りを見回す。すると、20mほど離れた位置で春菜が里保の影と闘っていた。

どうやら、春菜の影は戦闘向きではないと判断されたのであろう。
いつの間にか、里保と衣梨奈の姿に置き換わっていた。



「「はるなん!!」」
里保と衣梨奈の声が同時に響き、2人は囲みを突破するため影の頭上を飛び越えていく。

しかし、影の里保が放った一閃が春菜の手にしていた書物を一刀両断にしてしまった。
衝撃を受けた表情を見せる春菜。


「「どけエエエエエ!」」


そこへ影に対し、衣梨奈の蹴りと里保の斬撃が炸裂する。交差する形で左右からの攻撃を受けた影は間もなく消滅した。


545 : 浪漫 :2014/12/18(木) 13:18:42
里保と衣梨奈は切り裂かれた書物を抱え、うずくまったまま動こうとしない春菜へと駆け寄る。

「はるなん!!」

「はるなん!大丈夫?ここは危ないから撤退し…」

背後からの攻撃を警戒しながら、2人はなんとか春菜を避難させようと声をかける。複数の影が好機とばかりに襲いかかってきていた。


動かない春菜を立たせようと、手を伸ばした里保はふと、その動きを止める。

「……ない。」

「えっ?」


その時であった。
春菜が何かを呟いた。その声を聞き取る事ができず、思わず聞き返す里保。


546 : 浪漫 :2014/12/18(木) 13:19:55
「許さない。」

そう大きくいうと、春菜がスクっと立ち上がる。だが、その様子は普段の春菜からは、想像できないくらい猛々しい魔力を放っていた。


「お前たちを許さない。」

春菜は前方から迫り来る影をチラリとみると魔力を解放した。

「bitterな時間、存分に味わいなさい。」


続く


547 : 浪漫作者 :2014/12/18(木) 13:21:59
ということでここまでです

あと3回から5回くらいで終わらせたいもんです


548 : 名無し募集中。。。 :2014/12/18(木) 14:43:24
よし
見せてみよ飯窪春菜
お前の真の力のほんの爪先をな


549 : 名無し募集中。。。 :2014/12/18(木) 15:03:50
ということは後10回だな
楽しみにしてますよ
ウフフフ


550 : 浪漫作者 :2014/12/18(木) 15:51:42
えっマジか(笑)
でもリアルにそれくらいになりそうw


551 : 名無し募集中。。。 :2014/12/18(木) 19:04:16
やばい
はるなん楽しみすぎ。


552 : 名無し募集中。。。 :2014/12/18(木) 19:28:38
まさかのはるなん覚醒wどんな魔法か楽しみ


553 : 名無し募集中。。。 :2014/12/19(金) 23:10:41
笑顔編もついにクライマックス!!
はうちょがとても美しい


554 : 名無し募集中。。。 :2014/12/20(土) 08:42:53
あっちもこっちもはるなん活躍中


555 : 名無し募集中。。。 :2014/12/21(日) 12:03:04
俺もはるなん話構想中


556 : 名無し募集中。。。 :2014/12/22(月) 00:14:41
たまに本スレって活気立つよねw
はるなん話って鞘師とか以上に謎に包まれてるから外伝書くにはもってこいな位置


557 : 浪漫作者 :2014/12/23(火) 01:33:50
笑顔編とてもいい感じ〜

続き楽しみ


558 : 浪漫 :2014/12/23(火) 01:34:42
「来ないでください!」
砂浜に春菜の声が響きわたる。


だが里保の姿をした影はその声を気にする様子もなく、その手に持った刀を左から右へと振り払う。
春菜は咄嗟に手にしていた書物で防御をしてしまった。


ザクッ


鈍い音と共に春菜の持っていた書物はまっぷたつに切り裂かれる。


ドサッ


手にした書物の残骸が春菜の手を離れ砂浜へと落ちた。
そして春菜自身もその場で膝をつき、その残骸を抱きかかえうずくまってしまった。


559 : 浪漫 :2014/12/23(火) 01:36:03


春菜は幼い頃から大人に囲まれた生活をし、その中で育っていた故に、自我を押し殺して生きてきた。
使える魔法は必要最低限、役に立つもの。
自分がどのように振る舞えば大人達が喜んでくれるのか。
春菜はそれを自分の肌で感じ、学んでいった。


戦闘用の魔法に憧れなかった訳ではない。
ただ、大人達の反応を考えると春菜はどうしても
それを表立って研究するわけにはいかなかった。


そこで春菜は多くの『知識』を得ることを始めた。
世に広まる様々な属性を持つ魔法。

使う人によってその効果も性質も全く異なることが
春菜にとって興味深いものでもあった。
春菜はそうした研究内容を逐一メモにとり、そして入念に属性や効果、原理を書き込み記録として残してきた。


560 : 浪漫 :2014/12/23(火) 01:37:28
その中の気に入った魔法からストーリーを作り、自らの魔法を用いて夢の中で使ったりもしてみた。

それもまた春菜にとって楽しみの一つであった。



いわば春菜にとって、この書物は春菜そのものとも言える。

しかし、今、目の前にあるのは残骸のみ。

春菜は唇を噛み締める。
己がもっと強かったらと。
何者にも負けない強い魔力を持っていればと。

心の中で悔やみ続ける。

その時であった。


561 : 浪漫 :2014/12/23(火) 01:38:57
『そんなに力が欲しいの?』

誰かが頭へと話しかけてくる。

(誰…?)

『誰と聞かれたら私はあなた自身とし答えることができない。』

(……私自身?)

『思い出して、あなたが何者だったのかを!
 最初からあなたは【ハニー】だった訳ではなかったでしょ?』

(…!!)

『あなたがあなた自身…を生かす…
 ためにできるこ…と、よく考…えてみて…』

しばらくすると声は聞こえなくなった。
心の中は未だに悔しさでいっぱいであったが
それと同時に新たな感情も沸き起こってきた。
その思いは凄まじい勢いで心の中を埋め尽くす。


562 : 浪漫 :2014/12/23(火) 01:40:18
「……ない。」

「えっ?」


心の中はすでにその『思い』でいっぱいである。
もう後には戻れない。

(ごめんね、【ハニー】の私。
 ほんの少しだけ、【チョコ】に戻るから。)

「お前たちを許さない。bitterな時間を味合わせてあげる。」

そういうと、春菜は自身の魔力を解放した。
そして手のひらを下に向け魔力を込める。
その瞬間、切り裂かれた春菜の書物が規則正しく短冊へと分かれ
広げた春菜の手のひらへと収まる。


自らの手の中に短冊が入ったことを確認すると、
春菜はもう一度チラリと影の方を見た。
その距離はだいぶ近くなっている。


春菜の身を心配した里保が影へと駆け出そうとした。
だが、その動きは手首を掴まれたことによって妨げられる。


563 : 浪漫 :2014/12/23(火) 01:42:00

「お嬢ちゃん、行ってはダメじゃ!」

「おじいちゃん!
 
 …放してください。
 はるなんが、はるなんが!」


里保の腕を掴んだのは魔法楽団の老人であった。

「気持ちは分かる。その気持ちは痛いほどわかるがの…。
 じゃが、危険過ぎる。近寄ることすらの。」


老人はそう言い、里保を押し留める。
ここまできてようやく里保は春菜のまとう魔力の質が
明らかにいつもと違うことに気づいた。
禍々しいというわけではないが何か暗いものを感じる。


やがて影の一つが春菜に切りかかる。
一瞬の魔力の増幅。影は消滅した。


「!?」

「なっ、何が起きたとね?」


564 : 浪漫 :2014/12/23(火) 01:44:25
更に、春菜は先ほど手のひらに収めた短冊の内の幾つかをとると、
影へと投げつける。
その形状に似合わず、真っ直ぐ飛んでいった短冊は影に触れるとその魔力をみるみるうちに吸い尽くした。
そしてユラユラと春菜の元へと戻るとその場ではじけて消滅しそのはじけた魔力は春菜によって吸収される

「あれは……、夜叉?」

「その通り。彼女の主属性は夜叉じゃ。
 相手の魔力を吸収する事により己の身を守る珍しい属性じゃな。
 あまり闘いには向かない魔法なのじゃが。
 ただ、彼女の場合、自らの創作魔法と掛け合わせて使っておるからの。」



そんな話をしている最中、突如春菜の姿が消える。


565 : 浪漫 :2014/12/23(火) 01:46:36
突然、ターゲットを失った影達は思わず、その場に止まりキョロキョロと辺りを見回す。
その影達の集団の中へと一枚の紙切れがひらひらと舞い落ちた。
そこに春菜が出現する。


春菜はその手に持った短冊に魔力を込め、周囲の敵へと投げつける。
今度の短冊は触れても即座に相手の魔力を奪う様子はない。


「スウィートスウィート」


ボンッ


激しい音を立てて一斉に影が破裂する。
表情を一つも変えることなく淡々と影を減らしていく春菜。

里保も衣梨奈もその魔力に圧倒され
ただただ見ていることしかできなかった。


「これが…。」

「はるなんの本気…。」


続く


566 : 浪漫作者 :2014/12/23(火) 01:49:37
というワケでええと続きです。
笑顔編のあとに避難所で更新するのはとてもやりにくいw

そして自分の過去作品を改めてみると描写が酷すぎて笑った


567 : 名無し募集中。。。 :2014/12/23(火) 03:02:33
続き来てたー
比べるものでも無いけど
自分は浪漫作者さんの読みやすいし
テンポが良くて好きだよー


568 : 名無し募集中。。。 :2014/12/23(火) 09:57:27
笑顔編とも何気にコラボw夜叉属性ってドレイン系って事かな?創作魔法はスタンド?最初大悪魔さんが来たのかとww


569 : 名無し募集中。。。 :2014/12/23(火) 12:34:48
多重人格なのかはるなん?
ドレイン技は俺も考えてたので何か気持ち悪いw


570 : 名無し募集中。。。 :2014/12/23(火) 22:36:35
細かいことは分からんが
楽しく読んどるよ


571 : 名無し募集中。。。 :2014/12/23(火) 22:57:40
チョコなのにスウィートスウィートハニータイム?


572 : 浪漫作者 :2014/12/24(水) 00:09:30
様々な意見感想ありがとうございます
>>571さんのご指摘は全くもってその通りで
最後まで入れるかどうか悩んだんです。
でも無音で爆発するのもどうかなと思って…

本当は「しゅわしゅわぽんっ」
ってしたかったorz


573 : 名無し募集中。。。 :2014/12/24(水) 11:45:39
私も投稿するならこっちかなあと思い続けて1年
早いものですメリークリスマス


574 : 浪漫作者 :2014/12/25(木) 23:45:12
本スレに出張してきた
メリークリスマス


575 : 名無し募集中。。。 :2014/12/26(金) 00:45:28
ほのぼのして心がポクポクする作品ありがとう
本スレ書き込めないんでこちらにて失礼します


576 : 名無し募集中。。。 :2014/12/27(土) 00:58:41
ついに本編復活!
おめでとうこうひとりひとり登場人物の息遣いまで聞こえてきそうな
描写はさすがとしか言いようがない


577 : 名無し募集中。。。 :2014/12/29(月) 02:45:44
本スレ落ちた?


578 : 名無し募集中。。。 :2014/12/29(月) 09:31:52
落ちてるね
せっかく本編も再開したのにまさか落ちるとは・・・


579 : 名無し募集中。。。 :2014/12/29(月) 11:54:21
立てれない


580 : 名無し募集中。。。 :2014/12/29(月) 14:57:41
娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 19(c)2ch.net(c)2ch.net
http://hello.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1419832590/
立てました


581 : 名無し募集中。。。 :2014/12/29(月) 15:19:53
ありがとう!


582 : 浪漫作者 :2014/12/30(火) 02:34:45
ちょっと短く更新

さゆみが生田を送り出した数分後、ノートパソコンから
けたたましいアラームが鳴り響く。

悪い予感が的中してしまった。
あの禍々しい魔力はアイツによるもの。

執行局直々の通信がその事実を物語っていた。


さゆみはまた一つため息をついて通信に応じる。
なんだか、この頃ため息の数が増えたなと
自身でも感じるところがある。

「どうしたの、急に?
 ってあんたが急な通信を寄越す時にはロクなことじゃないけどね。」

画面の奥の相手は神妙な顔つきでいた。

「で、何?結局アイツに逃げられちゃったワケ?」


583 : 浪漫 :2014/12/30(火) 02:36:06

「その通りです。なので、追跡班としてそちらに特殊チームを送り込みます。今回はその許可を。『teamQ』を、送ります。」


生田の言葉に少しばかり驚きを覚えるさゆみ。なるほど、これは本気でアイツを捕まえるつもりらしい。


『いいのよ、アイツなんかほっとけば。注目するから調子に乗るんじゃない。ほっとけば2年かそこいらで勝手に牢獄に戻るでしょ?』


さゆみは意に介した様子を見せずに生田へと話をするがさゆみ自身、あの人物を2年も野放しにしたら自分にどんなとばっちりがあるのか想像出来なかった。


「あなたにとっての2年はそれこそあっという間でしょうが我々にとってはそうはいきませんから…。」


584 : 浪漫 :2014/12/30(火) 02:38:59
執行局長の言うことは最もである。
素直にさゆみはその考えを認める。

「それもそうかもね…。
 いいわ、送るなら送りなさい。  ただし、矢ちゃんに伝えて。
 必ずみんなでさゆみのとこによっていきなさいって。
 


美味しい紅茶をご馳走するわ。滅多にないチャンスなんだし。」

その言葉を聞き、生田は苦笑する。本当に呑気なものだと。

「わかりました。彼女らにはそのように伝えます。ただ、恐らく街の入り口で、住人との戦闘が予想されるので遅くなるかもしれません。そこはご勘弁を。」


そう言って、生田は通信を切った。さゆみはまた一つ溜め息をつくとふと浜辺の様子が気になり、空中にスクリーンを出現させ、状況を確認する。


(ふぅ、みんな一応無事みたいね…)


続く


585 : 名無し募集中。。。 :2014/12/30(火) 08:47:40
更新乙です『アイツ』の正体は誰なんだろ?
矢 ちゃん?島抜けたのかな?


586 : 浪漫作者 :2014/12/30(火) 10:42:03
ありゃ!
島が入ってないわw


587 : 名無し募集中。。。 :2014/12/31(水) 11:08:26
住人との戦闘?
たまに好戦的な連中も出てくるもんね
何組かは外部からの来訪者だったかもですが


588 : 浪漫作者 :2014/12/31(水) 23:20:47
色々ありましたが、今年は個人的に
とても充実した一年であったと思います。

思えば、生田局長の「ちちんぷいぷい」から始まり、
戦国編、Berryz編など様々なものを書かせていただけて
本当に自分は幸せ者です

改めて感謝申し上げます。

それでは今年最後の更新です。


589 : 浪漫 :2014/12/31(水) 23:23:42
さゆみのみている景色はまさにちょうど春菜が影を一掃したところであった。

「ふうん、はるなん、意外と渋い技使うじゃない。
 夜叉なんて今じゃ流行らないのにね。
 それにしても…。」

さゆみは指を解くとそのままリビングの窓から空を見上げる。


「何でこのタイミングで出てきちゃうかな
 五郎の坊や……。」






590 : 浪漫 :2014/12/31(水) 23:27:00
〜M13地区郊外〜

周囲に水田が広がる景色の中を猛スピードで移動する影が5つ。

「ねぇ〜リーダーー?」
「ん?何、なっきぃ?」
先頭を飛ぶ赤のスカーフを巻いた女性にその後ろへピタリとついた
青のスカーフをまとう女性が話しかける。

「何で、こうやって飛びながら近づいてるわけ?
 転送魔法使えば、一瞬じゃん。
 中島、飛ぶの苦手だしだるい。」

その質問に、後ろから近づいてきたピンクのスカーフを巻いた女性が
ため息をつく。
早貴はそのため息をついた相手を軽く睨む。

「ちょっとー、何、愛理?
 中島なにか変なこと言った?」

愛理と呼ばれた女性は一つ咳払いをすると説明を始める。


591 : 名無し募集中。。。 :2014/12/31(水) 23:32:41
さわやか?wwwwwww


592 : 浪漫 :2014/12/31(水) 23:33:13
「フガフガ、フガフガフガフガ。」

「へっ?何だって?」

「フガフガ〜。フガフガ、フガフガフガフガ!」

どうやら高速移動中で上手く聞き取る事ができないようだ。
その様子を見かねたリーダーが代わりに説明をする。

「あの街はね、オープンそうに見えて実は意外とガードの堅い街なの。
 あの三大魔導士の『道重さゆみ』が持つ独自のプロテクトがかかっていてね、
 魔法による内部侵入は難しいの。
 それでも今まで協会側は何度か介入するための転送ネットワークを築こうとしてきた。
 でも実際それは上手くいっていないのが現実だから…。
 並みの魔導士は地上ルートで行くしかない。」

「えっ?でもちょっと待ってよ。
 てことは舞達って並みってこと?」

「ちょっと〜舞ちゃん。局長の話を聞いてなかったの?
 あの街でもし問題が起きても協会側は救援を出せない、
 だからなるべく、刺激を少なくしろって。」


593 : 浪漫 :2014/12/31(水) 23:36:48
後ろから追いついた緑のスカーフをまとう女性が説明する。


「あぁ、そんなこと言ってたっけね。
 ていうか疲れたし、リーダー休憩しようよ!」

5人をまとめるリーダーの矢島舞美は苦笑する。


『teamQ』。

その実力はBerryzにも決して引けを取ることはない。
むしろ、チーム全体で比較したさいには
その力は圧倒的と言えよう。

この5人は生田局長からの任務を受け、M13地区へと急行していた。

(それにしても…。)

舞美は1人思考を巡らす。

協会の影響の全く及ばない地域。
それは、数多くの任務をこなしてきた5人にとっても未知の領域。
しかも、街を統括しているのは三大魔導士の1人、あの『道重さゆみ』


594 : 浪漫 :2014/12/31(水) 23:40:36
その地区にいる重罪人の捕獲が今回の任務。
先ほど、自分でも言ったがあの街に侵入する事は難しい。
そこへ難なく侵入し、しかもあの『牢獄』を脱獄した相手。

(果たして私達で太刀打ちできるのか…。)

何一つ油断できない状況であるはずなのに
不思議と局長は道重さゆみとのコンタクトを取るように指示してきた。
その意図が解せない舞美ではあったが事態が事態なのでM13地区へと向かうのであった。



「あった!あそこが入口!
 待った……ストップ!!」

考え事をしていた舞美は突然、早貴の声で現実へと引き戻され
その場で急停止する。

後ろに続いていた4人も舞美の横へ散会するように立ち止まる。


595 : 浪漫 :2014/12/31(水) 23:44:52
どうやら待ち伏せがあったようだ。
なるべく戦闘行為を避けたい舞美は前方へと声をかける。

「あのーそこ、退いてもらっていいですか?」


なるべくおとなしそうな声を放つ舞美。
その視線の先には複数の魔導士達が立っている。
そのいずれも高い魔力を放っていた。


「それは難しいご注文だな。
 生憎、我々が目的とするのはお前たちの魔力を『奪う』ことだ。
 こんなチャンスまたとない。」

「だってさ。どうする?
 こっちは急いでるんだけど。」
横にいる仲間達を見回す舞美。

「いやぁ、これはやるっきゃ無いでしょー。」
青色の中島早貴が一歩前へ出る。

「あっ、舞も舞も!」
黄色の萩原舞も一歩前へと出た。


「はあ…。極力何も起こしたくなかったけどなぁ…。
 愛理、千聖も行ける?」


「もちろん!」

「フガフガ!」

4人の闘う意志を確認した舞美は前を見据える。
一人一人の顔は先ほどまでのふざけた様子は一切なかった。
その変化に相手も魔力を解放し戦闘体制を取る。

「よし、サクッと終わらせよう。みんな行くよ!」






596 : 浪漫 :2014/12/31(水) 23:48:03
「影は粗方、片付いたみたいですね。
 だから次はあなたの番です。
『爽 五郎』 」

春菜はゆっくりと自分の前に立つ男を指差す。

「ほう、意外だな。
 こんな小娘が俺の存在を知っているとはな。」


「爽 五…郎…?

 なんかどこかで聞いたことのある名前な気がしてならない…。
 んーとんーと…。あっ!」

その名前がどこか自分の記憶に引っかかっていた里保は
執行局内の事件記録を思い出す。

その人物は、有史以来、最凶の闇の魔導士として
レッドリスト入りしていた一人。


「そうか、コイツが…。」

里保は改めて、男の潜在能力を探ってみる。
しかし、その奥底に渦巻く魔力の波に呑まれ
上手く読むことができない。
自然と里保の身体が震えてくる。


597 : 浪漫 :2014/12/31(水) 23:51:15
「どうするんじゃ?この後は。
 あまり時間をかけるとおまえさんが辛くなるだけじゃぞ。」


楽団の老人はその身に、静かに魔力を纏わせながら一歩前にでる。
里保や衣梨奈、春菜も魔力をほぼ最高出力の状態で固唾をのんで2人の様子を見守る。


「フハハ、フハハハハ!」

急に『五郎』は大声で笑い始めた。
そしてチラリと空を見やる。

「そうだな、確かに分は悪い。
 それにもうしばらく経つとあの生田の事だ。
 この地区にも特殊チームの一つや二つぐらい余裕で寄越すだろう。
 そうなったらまた面倒だ。」


『五郎』の身体がほんのりと光を帯びる。

「マズい!!」
老人はくるりと後ろを向き、里保達へと駆け寄る。

「伏せるんじゃ!」


598 : 浪漫 :2014/12/31(水) 23:55:35
「ひさびさにボスのジジイと闘えて楽しかったぜ。
 また、どこかで会おう。」

そういうと凄まじい魔力の凝縮が起き一瞬眩い光を放つとその場で大爆発する。
そして砂煙が晴れた海岸には誰の姿もなかった。


……………。



あまりの眩しさに目を閉じてしまっていた里保は自分の身体がフワフワと浮いていることに気づく。

「ウチ、死んでしまったんか…。そうだよね。あんだけすごい爆発、生きてられる訳ないか。」

里保はほんの少し悲しさと切なさがこみ上げてくる。

「でも、できることなら、最後ぐらいえりぽんと手をつないで。ヘヘヘ、死にたかったなぁ。」


続く


599 : 浪漫作者 :2015/01/01(木) 00:00:06
という訳で今晩はここまでです

あと、愛理に対して全く悪意はありません。
むしろ愛理は推しなメンバーです。


爽やかに五郎さんを登場させて爽やかに去ってもらいました。

(人選にすごく悩んだのは内緒w)

では良いお年を&あけましておめでとうございます


600 : 名無し募集中。。。!omikuji :2015/01/01(木) 00:05:01
ことよろ


601 : 名無し募集中。。。 :2015/01/01(木) 00:14:49
敵の設定難しいですね
あの勢力とかにすると角が立つしw
やっぱりUFAの身内にするか
架空にするかですよねえ


602 : 名無し募集中。。。 :2015/01/01(木) 00:57:03
新年早々良いモノが読めた
今年もよろしくお願いします


603 : 名無し募集中。。。 :2015/01/01(木) 01:23:11
まさかのさわやか…そしてキューティーレンジャーかよ!w今年も作品楽しみにしてます


604 : !omikuji :2015/01/01(木) 23:41:55
今年の運勢


605 : 名無し募集中。。。 :2015/01/03(土) 06:45:51
今年も楽しませていただきます


606 : 名無し募集中。。。 :2015/01/05(月) 13:32:44
こっちは保全いらない?


607 : 名無し募集中。。。 :2015/01/05(月) 16:46:06
大丈夫


608 : 名無し募集中。。。 :2015/01/05(月) 22:23:31
本編wktkな展開じゃ


609 : 浪漫作者 :2015/01/06(火) 00:09:34
保全の心配してくれている人がいることに感動!
そして本編に、小田ちゃんの心情に涙が。

浪漫自体はあと2回分で終了です


610 : 名無し募集中。。。 :2015/01/08(木) 02:01:54
狼復活待ち


611 : 名無し募集中。。。 :2015/01/08(木) 07:04:37
2ch全体が落ちてる?


612 : 名無し募集中。。。 :2015/01/09(金) 16:07:17
復活待ち?またダメになってる?


613 : 名無し募集中。。。 :2015/01/09(金) 23:04:25
    ,,-'  _,,-''"      "''- ,,_   ̄"''-,,__  ''--,,__
           ,,-''"  ,, --''"ニ_―- _  ''-,,_    ゞ    "-
          て   / ,,-",-''i|   ̄|i''-、  ヾ   {
         ("  ./   i {;;;;;;;i|    .|i;;;;;;) ,ノ    ii
     ,,       (    l, `'-i|    |i;;-'     ,,-'"   _,,-"
     "'-,,     `-,,,,-'--''::: ̄:::::::''ニ;;-==,_____ '"  _,,--''"
         ̄"''-- _-'':::::" ̄::::::::::::::::;;;;----;;;;;;;;::::`::"''::---,,_  __,,-''"
        ._,,-'ニ-''ニ--''" ̄.i| ̄   |i-----,, ̄`"''-;;::''-`-,,
      ,,-''::::二-''"     ズゴゴゴゴゴ・・・・・・・      "- ;;:::`、
    ._,-"::::/    ̄"''---  i|     |i            ヽ::::i
    .(:::::{:(i(____         i|     .|i          _,,-':/:::}
     `''-,_ヽ:::::''- ,,__,,,, _______i|      .|i--__,,----..--'''":::::ノ,,-'
       "--;;;;;;;;;;;;;;;;;""''--;;i|      .|i二;;;;;::---;;;;;;;::--''"~
               ̄ ̄"..i|       .|i
                 .i|        |i
                 i|        |i
                 .i|          .|i
鯖落中なの━━━━━━i|         .|i ━━━━━━━━ !!!!!
                .i|   oノノハヽo  |i
               .i|  ○从*・ 。.・从○ |i
               i|    \   /トiヽ、_|i
           _,,  i|/"ヽ/:/   \Λ::::ヽ|i__n、ト、
     ,,/^ヽ,-''":::i/::::::::/:/ / ̄\ \ヽノ::::::::::::ヽ,_Λ
     ;;;;;;:::::;;;;;;;;;;:::::;;;;;;;;:::/;;(__)   (__);;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::;;:;;;;:::ヽ


614 : 名無し募集中。。。 :2015/01/09(金) 23:07:38
どっきりどうでした?


615 : 名無し募集中。。。 :2015/01/10(土) 01:03:46
録画してたのさっき見たけど久しぶりにテレビ見て笑った
ケメコ外伝の作者さんにあのドッキリをネタに話書いて欲しいわw


616 : 名無し募集中。。。 :2015/01/10(土) 19:05:19
狼に16レスの更新マークが付いてるからおそらく本編か笑顔の更新があったんだと思われるが
現状ではまったく読めないもどかしさ


617 : 名無し募集中。。。 :2015/01/10(土) 22:34:10
更新は本編や笑顔じゃないただの単発SSなので
そんなに気負わなくても大丈夫かと
ここ数日のパターンからすれば明日の午前中には
また読めるようになってるはず


618 : 名無し募集中。。。 :2015/01/10(土) 23:34:58
なんで狼こんな状態なんすかね?


619 : 名無し募集中。。。 :2015/01/10(土) 23:57:47
よくわかんないけどアメリカにあるサーバーが攻撃されていて
2chはその巻き添えを食らってるらしい

93 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2015/01/10(土) 21:35:42
流れは例のソニープレステの情報漏洩が発端らしいぞ
で向こうの4chがDDOS攻撃受けてJimがだったら8chを作ったから此方でってやったらしい
その8chのサイトにDDOS攻撃仕掛けた輩の個人情報が上がってから8chも攻撃対象になっているとか
その8chと2chのサーバーが同じでってのがダウンの真相らしい
だから当面こんな状況かと


620 : 浪漫作者 :2015/01/13(火) 20:45:47
ご無沙汰しています
ちょっと予定を変更して今回を浪漫最終更新とします


途中挫折の作品でしたがお付き合いいただきありがとうございました。


621 : 浪漫 :2015/01/13(火) 20:48:02
春菜の覚醒により、敵である影のほとんどがその姿を消失させた。


街の外には、『teamQ』が迫るなか海岸沿いの砂浜で睨み合いを続ける里保達。


そのとき、突然大声で笑い出す闇の魔導士『爽 五郎』。

そして、自身の魔力を急激に高めるとその場で大爆発を起こしたのであった…。


622 : 浪漫 :2015/01/13(火) 20:50:29





「そっか、ウチ死んじゃったのか…。」

自らの浮かぶ身体を見ながら、そう呟く里保。

「えりぽんも、死んじゃったのかな…
 だったら、最後ぐらい、ヘヘヘ、…手をにぎって…。」

そこまで言いかけて里保はようやく自分の身体にある違和感に気づく。
そうその自らを包み込む魔力に。


恐る恐る後ろを振り向いてみるとそこには里保の様子を見て
笑いを必死にこらえる舞美達の姿があった。
もちろん、側には衣梨奈や春菜、そして楽士の老人もいて、里保の様子を見て見ぬ振りをしているのであった。


623 : 浪漫 :2015/01/13(火) 20:52:10
「なっ、なっ…。」

「さーやしちゃん、愛しのえりぽんもいいけどさ、夢と現実の違いぐらいはっきりさせようね!」


「「あははははは」」

一同の笑い声がそらへと響き渡っていた。








その後『teamQ』は、逃げ去った五郎の魔法の痕跡を辿って追跡をしたがさすがに捕まえることはできなかった。


再び、M13地区に平和な日々が戻る。


624 : 浪漫 :2015/01/13(火) 20:53:45
衣梨奈や里保に春菜。
それぞれがいつものようにさゆみの元でくつろいでいるとき、里保は春菜へと声をかける。


「ねえはるなん?」
「はい、何でしょう鞘師さん?」

この前の闘いの様子を思い出しながら里保は疑問をぶつける。


「この前の闘いでさ、はるなん、初めて戦闘用の魔法使ったじゃん?あんなにはるなん強いなんてウチ知らなかったよ!いつ頃から使えてたの?」

「あぁ、えりも思っとったと!はるなんめっちゃ強いやん。」

その質問にうぅと呻いて頭を抱える春菜。

「うぅ…。私としたことが…。あれは禁呪の一つで使ってはいけないものなのに…。」


625 : 浪漫 :2015/01/13(火) 20:55:25
「「えっ!?」」

春菜から出た禁呪と言う言葉に驚く衣梨奈と里保。確かにあのときの春菜は少し様子が変であった。いつもの物静かな春菜とは違い、やけに好戦的で威圧的であった。


「だから、しばらくはるなん動けなかったんだよね。」

奥でネットパトロールをしているさゆみが画面をみたまま会話に加わる。


「彼が先に手を施してくれていたから大事に至らずにすんだけど、もしあのまま『もう一人の自分』の魔力を使い続けていたら、今のはるなんはいない。怒りに身を任せた激情のはるなんが遺ったでしょうね。」

いつになく真剣な口調で語るさゆみ。


626 : 浪漫 :2015/01/13(火) 20:57:35
「じゃ、じゃあはるなんが今いるのはおじいちゃんのおかげってことですか?」

「うーん、あのお爺さんホントに何者なんだろう…。」

「えっ、里保知らんと?あのおじいちゃん…。」



2人の話を聞きながら春菜は自分の見つけた事実を頭の中でもう一度思い浮かべていた。
もう十分過ぎるぐらいキャラ付けは完了している。
そう言って、さゆみはこれ以上あの楽士の老人の過去に首を突っ込むことは止めた方がいいと忠告してくれた。


しかし、自分は『情報屋』。

いちど首を突っ込んだ件から手を引くなんて言語道断。
とことんやってやる。
密かに心に決めたのであった。



この選択が後にどうでるのか、それはまだここにいる誰にもわからないのであった。


浪漫 完  何かに続く


627 : 浪漫作者 :2015/01/13(火) 21:04:39
という訳で以上になります。
実は最初楽士のおじいちゃんをりほりほのおじいちゃんにしていてえりぽんのみた夢での件がきっかけで俗世を捨てるっていう設定にしようとしてましたがいざ書いていてやはり時間の流れが不自然過ぎると思い挫折しました


その後自分でいろんな外伝を書いていく中でそれなりにストーリーの幅が広がりここに至ります。

お付き合いいただいた全ての皆さんに感謝します
本当にありがとうございました


628 : 名無し募集中。。。 :2015/01/13(火) 22:06:39
(゚◇゚)ガーン!ジャンプの連載打ち切りのような突然さwモブ爺さんやQの活躍見たかった…残念だけど仕方ないか
次回作楽しみにしてます!えりぽんニューヨークや戦国編は続くんだよね?


629 : 名無し募集中。。。 :2015/01/13(火) 22:34:08
ちょっと尻窄み感が強いけど
残り二回が短くなったということは
理由はわからないですが察します
お疲れさまでした


630 : 名無し募集中。。。 :2015/01/13(火) 23:07:01
おつかれさまです
復帰をお待ちしてます


631 : 名無し募集中。。。 :2015/01/13(火) 23:08:02
乙っす
どうかしたん?


632 : 浪漫作者 :2015/01/14(水) 00:01:42
みなさん何か変に心配かけて申し訳ないです
結構ここらが限界でしたw


とりあえず今後も思いついたネタを形にしていくスタイルは続くので
ひょっこりと作品は上げていきますw


633 : 名無し募集中。。。 :2015/01/15(木) 23:30:30
狼の状態はしばらく続きそうですかね


634 : 名無し募集中。。。 :2015/01/25(日) 20:10:53
>>615
どっきりから時間がかかってしまいましたが
リクエストにお応えしてようやく新作を完成させることができました
なかなか面白い展開が閃かず苦戦していたのですがネタを複合させて
強引に落とす(文字通りの意味で)ことで無理やりまとめてみました

どこまでご期待に添えるものになっているかはわかりませんが
楽しんでいただければ幸いです


635 : 名無し募集中。。。 :2015/01/25(日) 21:34:32
>>634
まさか本当に書いてくれるなんて!?期待した以上に楽しめました!大満足です
まさかとんねるずの水落ちドッキリまで入れてくるとはw


636 : ♯ryuchoro :2015/01/26(月) 21:00:01
テスト


637 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/26(月) 21:01:09
こうか


638 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/26(月) 21:04:59
できた?w
どうもこんばんは
避難所の浪漫etc.作者です←

無くなったと思っていた作品が見つかったので投稿します
お付き合いください。


639 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/26(月) 21:10:18
「魔法使いえりぽん?伝説の魔法
使いを求めて?続」

今日のキッチンには珍しくさゆみが立っている。
レシピ本を見ながら、コンロの火に怒られながら一つ一つをこなしていく。

「はぁぁー…。
 夕ご飯なんてさゆみが指を振ればあっという間にできるのに…。」

思わずぼやくさゆみに中澤の叱咤が飛ぶ。
『重ちゃん、今の世の中結果が全てってのが求められる中で
 料理はその課程を楽しむことのできる数少ないものなんやで!』


「うぅっ…。はぁい…。」
どこかで似たようなセリフを衣梨奈にも言った気がする。

今のさゆみの生き方、考え方その全ての基礎をかつての先輩であった
中澤さんから学んだ。
圧倒的な存在感とそれに劣ることのない実力。
さゆみにまだまだ実力がない間、
ずっと助けてもらってばかりいた。
それは三大魔導士と謂われる今になっても変わる事はない。
よき相談相手でもあるが変な事をすれば怒られる。
しかも激しく。


640 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/26(月) 21:13:00
(あとで、生田にもきちんと紹介しなきゃね。)

中澤から学ぶ事は多い。
あの子の、衣梨奈の目指す世界一の魔法使いの手がかりとなることもあるだろう。


その頃道重邸を脱出した衣梨奈は、里保のところへと向かっていた。


「いやぁ、怖かったと。あれが前に道重さんがいいよう
 伝説クラスの魔法使いとね。どんな魔法をつかうっちゃろ?」

陽も少しずつ傾き始め、空が少しずつ赤みを帯びてゆく。
その時、衣梨奈は前方から足取りも軽くやってくる里保の姿を発見する。

あの様子から見るとどうやら、悩み事に対する
解決の糸口を掴んだようだ。

「里保」

「あっ、えりぽん!」

夕焼けに照らされ朱色に染まった里保の髪を見ながら
衣梨奈はさゆみ邸のコンロの話をする。


641 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/26(月) 21:18:52
「……そんで、里保にも会って欲しいとね。
怒っとーときはまさに烈火やったけど、あの魔力はすごかね。」


「へえー、あのコンロ…ケホ…そんなに凄い魔導士のケホケホ…残り火な
 …ケホケホ…んだ。」

「ちょ、里保?風邪引いたん?さっきから咳、ひどいっちゃね。」

衣梨奈は里保の額に手を当ててみると少し熱っぽい感じがある。
そうしている間も里保は時折、湿った咳を数回していた。

「大丈夫だよ、こんくらい。ちょっと冷えただけ。」

「ちっとも良くないとね。里保、道重さんの所に行くっちゃよ。
 今日はうちで休みぃ。」


あくまでも大丈夫と言い張る里保を無理やり連れて行く衣梨奈。
そして家に戻ると夕飯の支度をしていたさゆみに声を掛ける。


642 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/26(月) 21:21:24
「道重さん、里保が…。」

「ちょっと、生田!あんた師匠置いて逃げるなんて…ってりほりほ!
 どうしたの!?」

さゆみは料理をする手を止め、2人の元へと近づいて来る。

「ケホケホ…みっしげさん、お邪魔してまケホケホ…。」

「さっきからずっとこんな調子なんです。
 咳も止まらんし、ちょっと熱っぽい感じもするんです。」

「だから…ケホケホ、大丈夫だって!
 …ケホケホ…こんなん薬飲んで寝て…ケホケホ…れば治るよ。」

さゆみに事情を説明している間も止まらない咳をする里保。
しかし、さゆみはふと『違和感』に気付く。


(普段のりほりほの魔力以外の魔力があるわね…。)


643 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/26(月) 21:24:25
「おいで、りほりほ。」

さゆみはそっと、里保をソファーへと連れて行く。
さすがにさゆみに呼ばれたのでは里保もその誘いを無碍にするわけにもいかない。

ちょこんと横に腰掛けた里保の頭にさゆみはそっと手を乗せる。


「少しだけじっとしててね。」

さゆみはそういうと、自身の魔力の一部を里保へと流し込む。
するとすぐに手応えがあった。

(ハァ~、やっぱり…。もうりほりほってば…。)


「道重さん!里保はどうなんですか?」

どうやらさゆみは原因を掴んだようだ。
半ば呆れたような顔のさゆみの様子を感じ取った衣梨奈は
身を乗り出して聞いてくる。


さゆみは、しばらく里保の中へと放ち遊ばせていたへと魔力を自分の中へ戻すと里保に告げる。


644 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/26(月) 21:28:01
「りほりほ、残念だけどねこの咳、普通の薬飲んで
 寝るくらいじゃ治んないみたいね。」

「えっ…。」
思わぬ事実に衣梨奈が驚きの声を上げる。

「だから、今日は生田の言うとおり、さゆみのとこで休みなさい。
 いい?」

「…はい。」

「よーし、そうと決まったら夕飯はもっと張り切らなきゃね。
 あっそうだ生田~。」

里保をソファーに寝かせ、再び、キッチンへと向かおうとしたさゆみが
何かを衣梨奈へと伝える。

最初は驚いた様子の衣梨奈ではあったが、すぐに自分のやることを理解し、
大きく頷くと部屋を出て行った。そしてリビングに一人残された里保はやがて、
ウトウトと眠りの中に落ちていった。



続く


645 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/26(月) 21:31:16
先日は失礼しました。
また、妄想が沸いてきたので作品を少しずつ仕上げていきたいと思います


646 : 名無し募集中。。。 :2015/01/26(月) 21:44:21
復活おめ!前に消えたって言ってたのこれだったのねw続き楽しみにしてますね


647 : 名無し募集中。。。 :2015/01/26(月) 21:47:32
こっちにもキテタ━(゚∀゚)━!
続きが楽しみ


648 : 名無し募集中。。。 :2015/01/27(火) 01:58:44
ついに三大魔道士が出揃ったな


649 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/27(火) 21:15:15
数日後、

「全くもう、里保ってばどんだけ部屋の掃除サボっとったと?」

「うぅ…。反省しています。」

「確かに。私も一瞬ジ○リの世界に潜り込んだのかと思いましたよ。」

「そ、そんなー、はるなんまで…。」

穴があったら入りたい。正に里保の心境はそんな感じであった。


衣梨奈によってさゆみの元へ運ばれた里保は気付かぬうちに眠り込んでいた。強がっては見たもののやはり身体はしんどかったようだ。リビングの優しい魔力に包まれて、ひさびさに気持ちよく眠れた気がする。


650 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/27(火) 21:18:05
「りほりほ、お薬とお粥置いとくから。」

さゆみの声が遠くから聞こえる。

「ひとりで食べれる?
さゆみがアーンってしてあげようか?」


その一言に貞操の危機を感じ取った里保はガバッと起き上がる。

が途端に咳き込む。


「ちょっとりほりほ大丈夫?
そんなにさゆみにアーンされたいの?」

起き上がった里保の目の前には心配そうな顔で覗き込む衣梨奈。
そしてその横で悪戯っぽく笑うさゆみの姿があった。


651 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/27(火) 21:24:40
…しかしなぜか2人ともマスクをしている。


「里保、やっと起きたっちゃね。
 説教はあとにして今は取りあえずお粥食べり。」

説教?
衣梨奈から出た思いがけない単語に
何のことだかと思いつつ里保は脇に置いてある
お粥に手を伸ばす。

器がとても暖かい。

お粥からは湯気が上がっており、手に触れたその暖かさと
鼻を擽る香りに里保のお腹がなる。

まずは一口、小匙ですくって口へと入れる。

その瞬間、仄かな甘さと、そして少し効いた薬味が
絶妙なハーモニーを持って口の中に広がる。

「あっ、美味しい。とても美味しいです!」

里保は素直な感想を口にした。


652 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/27(火) 21:44:40
「ホント?やったー!
 ほら、生田、さゆみだって料理できるじゃない!」

里保のほめ言葉に、子供のように喜ぶさゆみ。
その顔は少し勝ち誇った、所謂ドヤ顔というやつである。

その横でやれやれと首を振る衣梨奈。
「道重さん、ネギを切ったのと、生姜と茗荷を添えただけですけどね」

だが、その声はさゆみの耳には届いていない。

あっという間にお粥を平らげた里保は薬へと手を伸ばす。

どうやら春菜が用意してくれたものらしい。
小さな肉球のスタンプが袋に押してあった。

「…ファン○ゾン?聞いたことない名前だ。
 何のお薬なんですか?」


里保の発した質問にさゆみと衣梨奈が顔を見合わせる。


653 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/27(火) 21:48:06
「実は、里保…。カビに感染しとったとね。」

「はっ?」
想わぬ事実に里保はもう一度聞き返す。
「さっき、里保が寝とう間に部屋んなか見てきたと…。」

「いやいや、そんなバカな、えっ、ウチの部屋に入ったの?
 えっ、でもどうやって?

 鍵掛けてあったよね。」

里保の疑問に大きく頷く衣梨奈。

「やけん、最初はドアをぶっ飛ばそう思っとった。
 でも、そしたらはるなんが、開けてくれたと」


654 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/27(火) 21:50:22
ということで次回ラストです

まぁオチは粗方付いていたと思いますがw
本来これは7月に書き終えたはずだったので…。


655 : 名無し募集中。。。 :2015/01/28(水) 19:23:49
所々の細かいアイデアが可愛いらしいですな


656 : 名無し募集中。。。 :2015/01/29(木) 01:25:58
日常のもいいね


657 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/29(木) 12:41:32
にせ2ちゃんの騒動…
なるほどね…すっかりだまされとった

自分、笑顔編をそこで読んでますわw


658 : 名無し募集中。。。 :2015/01/29(木) 16:24:53
もしかして偽2ちゃんねるに作品投下したりも?


659 : 名無し募集中。。。 :2015/01/29(木) 17:54:48
作者の方々は偽の方に投下した作品をこっちに貼り直してくれるとありがたい
そっちがどこにあるのか知らないし


660 : ◆JVrUn/uxnk :2015/01/30(金) 00:55:37
いやたぶんそこに作品は投下していないはず

基本本スレには書き込めない事が多いから最近作品は避難所にしか上げてないですね


661 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/04(水) 23:49:18
「えっ…?でも鍵…。」

里保の疑問は一切受け付けずさらりとした顔で流す衣梨奈。
さゆみも横でにこやかに笑っている。そして話を続ける。

「2人で里保の部屋にとりあえず入ったとね。そしたら里保の布団があったと。
里保!最期に布団干したのいつか覚えとう?」


衣梨奈の問いかけに里保はゆっくりと首を振る。


「あれは今思い出しても寒気がするとね…。」

里保の部屋に踏み込んだ2人が視たのは里保の布団に巣食う黴の胞子たちであった。
しかも…。


662 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/04(水) 23:51:06
「その、黴たち、りほりほの魔力にしばらく触れていたから魔力を持っちゃったみたいだね。
それがりほりほの寝ている間に感染しちゃったみたい。
夢も恐らくその影響。魔力を持ったということで新たに『意思』を持った黴たちがりほりほに
自分たちの存在を訴えていたのかもね。」


「里保の黴たちが意思を…。魔力って奥深いですよね。」

1人さゆみの話にうんうんと頷く衣梨奈。
その一方で釈然としない顔の里保。


それを見て、衣梨奈がカラカラと明るく笑いながらいった。

「大丈夫っちゃよ、里保!里保のお布団はえりたちがキチンときれいにして天日干しにしたとね。
もうさっぱりっちゃよ。」



そのときは若干熱もあり、頭がほわほわしていたせいもあってかあまり気にも留めていなかったが、
体調がすっかり回復し思考も元に戻ってきた途端に里保は急に恥ずかしさが込み上げてきたのであった。


それでも里保は自分のことのように心配してくれた衣梨奈に心の中では感謝をしていた。


663 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/04(水) 23:52:48

(ありがとう、えりぽん)

一瞬だけ、夢の中だけではあったが伝説の魔法使いになれた気がした。

しかし結局詳しいことは分からずじまいに終わってしまった。



だがそれはそれでいいような気がする。

そんな存在に頼らなくてもいずれ必ず自分の手でつかみとる。
そう決めた里保は夢の中でヒントを得て研究した魔法式のメモをポケットの中で
くしゃりとにぎつぶし、それを炎の魔法で燃やした。

「りほも元気になったことやけん、今日はめんたいスパにするっちゃね!
里保もそれでよかと?」


隣で大きく伸びをし立ち上がりながら衣梨奈が里保に尋ねる。


その問いに里保は満面の笑みを浮かべ大きく頷く。




「うん、もちろん!!」


【伝説の魔法使い  完】


664 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/04(水) 23:53:40



―――――――――――――――――――――――――


665 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/04(水) 23:55:38

『重ちゃん、今回は危なかったんちゃう?』

「ええ、その通りです。
危うく鞘師が世界破滅の糸口になるところでした。」

衣梨奈と里保が学校へと行き、さゆみしかいないはずの家で
コーンポタージュを作りながら誰かと話をするさゆみの姿があった。


「今回は早めに気付いたので私の手で食い止められましたけど、もう少し鞘師が意地を張って発見が遅れていたら完全にアウトでしたね。それこそ保田さんに頼らなくてはいけないくらい…。本当に中澤さんありがとうございました。
さすが中澤さん、だてに年を重ねてないですね。」


『ポタージュ、コがすで!』


「嘘です嘘です…ごめんなさい。
でも本当に中澤さんの手を煩わせてしまって申し訳ないです。」

「気にしなくてええんよ。あたしはやつらを燃やしただけだから。それにしても恐ろしい魔法やなぁ。」



「ほんとですねぇ。・・・世界をすべてを無にする伝説魔法『界破零』。
 
 いったい誰が考えたのやら…。まさに伝説ね。」



そうして一言つぶやくとさゆみは一口ポタージュをすすり半ドンで帰ってくる2人のために昼食作りにいそしむのであった。


【本当に 完 】


666 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/04(水) 23:59:08
作者

ということでこれで終わりとなります。
『界波零』は勝手に設定をお借りしましたごめんなさい

これで一つ心残りがなくなったです
今は戦国編2を書いているとこですが長くなりそうなので
投稿はもうしばらく先になります

ではお付き合いいただきありがとうございました


667 : 名無し募集中。。。 :2015/02/05(木) 00:09:13
続きキテタ━(゚∀゚)━!


668 : 名無し募集中。。。 :2015/02/05(木) 00:46:20
完結乙でした!まさか"黴"が意志を持つとは・・・ナウシカの腐海みたいだなw次回作も楽しみにしてます

って続きがwこんな真相があったとは。。。


669 : テキトーインターミッション名無し募集中。。。 :2015/02/06(金) 13:11:08
黴が世界を覆い尽くす

そこは黴人間の世界

菌糸と菌糸で結びつき

情報も感情もあらゆるものを

全てを共有する世界

欲望のない争いの無い世界

みんないっしょの、しあわせなせかい

目映い靄が掛かったようなふわふわとした時間

あれは漂い浮遊する菌糸群が、飽和状態なのかもしれなかった




「うああああああっ!!」

亜佑美は絶叫と共に飛び起きた。
悪夢だった。
寝汗がひどい。全身がずぶ濡れの様な状態。ひどく気持ち悪い。

「な・・・なにあれ・・・?」

ひどいイメージが朧げに浮かんできた。

「ぶるぶるぶるぶる!」

髪が乱れるのも構わず、頭を左右に振る。頭がはっきり覚醒する前に、悪夢の記憶を振り払いたかった。
胃の辺りがモヤモヤとし、少し吐き気もした。
亜佑美はすぐに悪夢の原因に思い当たった。

「あれかなぁ・・・夕飯のキノコ・・・」

亜佑美はキノコが苦手である。口にすることは皆無と言って良い。


670 : テキトーインターミッション名無し募集中。。。 :2015/02/06(金) 13:12:33
力尽きましたん


671 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/06(金) 13:57:03
www


672 : 名無し募集中。。。 :2015/02/06(金) 19:15:24
力尽きるの早すぎだろwww
もうちょっとだけ頑張れ
せめて完結するまでw


673 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/08(日) 01:31:21
あゆみんくどぅーまーちゃんといったらトートバッグしか浮かばなかったw


674 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/18(水) 00:39:01
『Berryz』の活動休止まであと1ヶ月。
この10年…止まっていた時間が動き出す。
これから訪れる未来を想像し、チームのメンバーは今後の活動の方向性を決めていた。


だが、その中でひとりまだ、この先を決めることが出来ない人物がいた。

嗣永桃子。
自称コードネームももち。
彼女の名前をこの魔法界で知らないものはいない。
魔導士としての実力ももちろんであるが、人々は与えられた仕事に対する彼女の姿勢に敬意を込めて彼女をこう呼ぶ。

『嗣永プロ』と。


桃子の去就は周囲からとても注目されている。
しかしながら、桃子自身この10年Berryzに全力を注いできたこともあり、それを今になって改めて
何がしたいと聞かれても何も思いつくことがなかった。


そんな中、ひさびさに桃子は魔導士協会の本部へとやってきていた。

Berryzとしてではなく個人で行った任務の報告書をまとめる為である。
報告書の枚数は膨大であり、さすがの桃子も喋ることなくひたすらコツコツと作業を続けていく。


675 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/18(水) 00:42:58
お昼を少し過ぎた辺りであろうか。
作業も一段落し、資料室に閉じこもっていた桃子は大きく伸びをすると
外の空気を吸うために部屋の外へでる。


窓からは気持ちの良いくらい青い空が広がっていた。

「んー!疲れたー。
まったく何で桃がこんな事しなくちゃならないのさ。」

誰が聞いているわけでもないが桃子は大きな声でひとり呟く。

その時、

「あっ、嗣永先輩!協会にいらっしゃるなんて珍しいですね。
お仕事ですか?」

と声を掛けられた。

桃子はその声の主の方を向くと小さく微笑みを返す。

「あら、大佐じゃないですかー。お久しぶりですー。」

「いやいや、止めてくださいよ!先輩!」

「うふふ。ごめんごめん。元気そうね、浜ちゃん。」

声を掛けてきたのは嗣永の後輩にあたる浜浦であった。
若手魔導士の中でも有数の実力者であり、いつ、特殊チームとして
抜擢されてもおかしくない程であったが何故かその機会に恵まれなかった。


しかし、そんな浜浦にも転機が訪れる。

協会でも危機を感じていたのかBerryzの休止が決まると同時に執行局の生田局長は
新規プロジェクトの立ち上げを考案し、浜浦もその中のひとりとして選ばれたのであった。

「浜ちゃんこそ、どうして協会に。今日何かあったっけ?」


676 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/18(水) 00:45:28
桃子がそう尋ねると浜浦の人懐こそうな笑顔が消え、不安そうな表情で答える。

「はい、今日は外部任務の打ち合わせがあると言うことで呼ばれたんですけど、
上手くできるかどうか不安なんです。」

「そっかぁ。そしたらさ、あとでももちのとこおいでよ!
何か手伝えそうなことがあったらももちも手伝うからさ。
遠慮なく言って。」

桃子がそう言うと浜浦はその顔を輝かせる。

「本当ですか!ありがとうございます。
極秘とかではなかったら、ぜひよろしくお願いします。
 あっすみません。そろそろ時間なので失礼します。」

そう言って浜浦はその場を離れて向こうの会議室へとその姿を消した。

廊下に残った桃子は浜浦の後ろ姿を見送ると小さくため息をつく。

(新規プロジェクトか…。新しく迎えられるものに、去りゆくものか…。)

そこまで考えて桃子はふと自嘲気味に笑う。
やりたいことを取り戻し、本来であれば自由に羽ばたけるはず。
それなのにいつの間にか桃子は自分がやりたいことを見失ってしまったようだ。


正しく言えば、先日の『Berryz』としての最終任務で終わってしまったというほうが良いのかもしれない。

(とりあえず、作業続けようか…)


677 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/18(水) 00:48:48
桃子はそう呟くと再び部屋の中へと戻っていった。
その後も堆く積まれた報告書の山と闘い続けた桃子。

ふと気付くと、既に時刻は23時を回っていた。


「げっ、ウソ!もうこんな時間…。続きは別の日にしようかな…。」

桃子はそう呟くと、自身の代名詞でもあるももち結びが乱れるのも構わず机に突っ伏した。

考えなくてはならないことが山ほどある。
いつかは結論を出さなくてはいけない。

「あっ、そう言えば…。鞄の中にアレがあるはず…。」

机に突っ伏した姿勢のまま、桃子は自分の鞄に手を突っ込み、ガサガサと中を漁る。

そして、取り出した手には、茶色い小さな小瓶が握られていた。これは桃子が独自開発した滋養強壮効果のある、『モモビタンB』。


(これ飲んで帰ろう…。)

その時であった。
『コンコン』

ドアをノックする音が聞こえる。その音に桃子は顔を上げる。


(こんな時間に誰だろう)


「開いてまーす!」

桃子は少し警戒しながら返事をする。
開いたドアから顔を覗かせたのは生田局長であった。


678 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/18(水) 00:51:32
「局長!脅かさないで下さいよ―。まだいらっしゃったんですか?」

「それはこっちのセリフだ。
 灯りが付いていたからまさかとは思ったが、嗣永、まだ居たのか。
 守衛さんが心配していたぞ。『朝貸した鍵が返ってこない』って。」


「ああー、すみません。すぐ返しに行きます。」

慌てて机の上に散らばった資料を片付ける桃子を見て生田はフッと笑う。
そして少し真剣味を帯びた表情で口を開く。

「まだ、自分の未来(さき)が見えないのか?」

その言葉に片付けを進めていた桃子の手が止まる。

「今の世の中、魔導士でも選ぶ道は無限大の可能性を秘めている。
 お前だってそれくらいわかっているだろう。何を迷っている?」

「…桃だって早く決めなきゃって言うのはわかっているんです。…。」

桃子の様子を見た生田は小さくため息をつくと袖をまくり腕時計を見る。

「23時30分か。まだいるな。よし、嗣永。
 荷物整理したら、ちょっと付き合え。
 お前に会わせたい魔導士がいる。」



続く笑


679 : 名無し募集中。。。 :2015/02/18(水) 01:07:49
カントリークルー!


680 : 名無し募集中。。。 :2015/02/18(水) 01:11:52
良いね良いね!浜ちゃん大佐wなんとなくあのセリフ聞けそうな予感ww


681 : 名無し募集中。。。 :2015/02/18(水) 06:33:15
wktk


682 : 名無し募集中。。。 :2015/02/19(木) 22:38:11
カンガルークルー?!


683 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/20(金) 23:33:34
資料室を片付け、自分の荷物を持った桃子は
生田に連れられ、協会の廊下を歩いていた。

「局長。どこへ行くんですか?」

「ん?」

桃子の質問に振り返った生田は歩みを緩める。
いつの間にか桃子と差ができてしまっていた。
小走りで追いついてきた桃子に生田が告げる。

「これから、お前にある魔導士にあってもらう。
 そいつは豪快な奴でな。
 あまり表舞台にたつことは少ないのだが、
 とにかく、良い魔法を作る。
 その魔法の虜になって、弟子となっている魔導士も多い。
 生き方の一つとして見ておくのもいいだろう。」

そうして、局長はある部屋の前で止まると
中をのぞき込み声を掛ける。


684 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/20(金) 23:36:36
「よう。やってるな。ちょっとお客さん連れてきたけん、
 呼んでもよか?」

桃子は局長がそんな話し方をするのを初めて見た。
中の様子はまだ見えない。
しかしながら洩れ出る魔力は計り知れない強さであった。

「よし、いいぞ。きちんとよろしくしてくるんだぞ。」

そう言って、局長は扉を開いた。

部屋の中に入った桃子の目にまず見たのは、腕に大きな刺青を入れた
若い男性の姿であった。

「誰だね、君は?」


部屋に入った瞬間、そう尋ねられた桃子はついいつもの
自己紹介をしてしまう。

「Berryzの嗣永桃子ことももちで〜す。
 よろしくお願いしま〜す。」

その名前を聞くと、男性は椅子に深くかけ直し、
自分の横にある椅子を桃子に勧めた。
そして桃子が座るのを確認すると名前を名乗る。


685 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/20(金) 23:40:33
「どうも、なっかじまたくいです。
 君がももち?
 俺、協会のポスターでしか見たことなかったけど、
 可愛らしい子なんだね。」

「あら、ありがとうございます。
 よく言われるんですー。」

そう返した桃子に卓偉は大きな口をあけて笑う。

「あはははは。
 自分をよく言うのは良いことだかんね。
 俺もよく言われるもん。
 素敵な魔法ですねぇって。
 だから、ありがとうございます、よく言われますって返すもん。
 ところでさ、ももちは何でここに来たの?」

「いやぁ、なんか残って仕事してたらこう、
 生田局長に連れてこられました。」

「あいつ…。
 この協会に残ってる魔導士誰でも良いから
 連れて来ようとか思ってんな。
 とりあえず、ようこそ!」

「はい、よろしくお願いしま〜す。」


686 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/20(金) 23:43:50
生田は扉のすぐ近くで2人を笑いながら見ていた。
とても初対面とは思えないやり取り。
ここに桃子を連れてきた一つの目的には、
最近思い悩む様子の桃子の明るい顔が見たかったのもあった。


中島卓偉。
かつてフリーで動いていた魔導士で、
生田も共に仕事をしたことがある。

その実力は魔導士界はおろか一般の人々の間にも
少なからず浸透していた。

その腕に前の会長が惚れ込み、三顧の礼で魔導士協会へと
引っ張って来たのであった。


(やはり、連れてきて正解だったな。
 あの2人の波長はぴったりだ。)

生田はなおも楽しそうに話を繰り広げる2人を見て
満足そうな顔をすると静かに部屋を後にした。



続けろ(笑)


687 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/20(金) 23:46:35
というわけでこんばんは

いろいろツッコミどこ満載だと思いますが悪しからず
個人的に卓偉にドハマリしてます

ここからなんとかつなげますw


688 : 名無し募集中。。。 :2015/02/20(金) 23:47:09
サンキュー卓偉


689 : 名無し募集中。。。 :2015/02/21(土) 00:42:55
続けろ!続けろ!
…って卓偉だっけ?wまさかの展開!まんまとミスリードされたわwwでも確かにももちと卓偉ってなんかの動画で共演してたよね


690 : 名無し募集中。。。 :2015/02/21(土) 13:24:05
ここまで来たらKANさんキボンヌ


と言う無茶ぶりw


691 : 名無し募集中。。。 :2015/02/21(土) 21:08:23
系列事務所のタレントさん総出演?
このスレがどこに移動しようともあと何十年も続けばいつかはコンプリートするでしょうw


692 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/22(日) 00:50:59
確かに自分の作品は外部キャラ多めですね
正直どうですか?
アンジュ2期の時もいろんな意見頂いたんですが(笑)

外部キャラをからめるのはありですかね?


693 : 名無し募集中。。。 :2015/02/22(日) 02:13:17
あくまで個人的意見だけど正直あまり好きじゃない
外伝という前提からして本編の世界観を
大きく逸脱していくのはどうかと感じるので

絡めるならそのキャラを出す必然性というか
なるほどだからここでこのキャラを出したのかと
読んでいて納得させるものがほしいかな


694 : 名無し募集中。。。 :2015/02/22(日) 07:07:06
2期で指摘されてたのは外部キャラ使うなってことじゃなかったと思う


695 : 名無し募集中。。。 :2015/02/22(日) 07:18:54
正直書いてるものは面白いのにあんた自身がうるせえってのはあるよ


696 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/22(日) 08:50:19
なるほど
とりま集中して書くわ
貴重な意見サンクス


697 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/23(月) 21:51:29


遡ること数時間前、協会内の別の会議室では、
浜浦が緊張した面持ちで目の前にいる人物と話をしていた。

「それでさ…。浜ちゃんにしか出来ないお願いなの。
 ももをいじれるのは浜ちゃんしか居ない。」


「でも…清水さん…。そんな…。
 私にとってBerryzの皆さんは憧れの存在ですし、そんなこと…。」


佐紀は自分の目の前で迷う、浜浦になおも語りかける。

「大丈夫。あの子のハートはそんなやわじゃない。
 と言うよりもいじってなんぼだし。
 それに…。」


佐紀は言葉を一度ここで止めると少し伏し目がちに言葉を続ける。


「ここ最近、桃、私の目を見て話してくれないんだよね。」

そう語る佐紀の表情は少し切ない。


698 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/23(月) 21:54:59
「受け入れてはくれていると思う。
 でもそれはたぶん『納得』ではないと思うんだ。」


「それなら、清水さんとか、
 他のメンバーさん達が言った方がいいんじゃないですか?
 もう長い間一緒に居たんですよね。
 何故私に…。」


その問い掛けに佐紀は静かに首を横に振る。

「だからこそだと思う…。
 一緒にやってきたからこそ私達は何も言えないし、
 桃も言ってほしくないと思うの。」


「確かにな。嗣永のことをよく知っているからこそ
 言えない部分はあるだろう。」


「そう、恐らく『teamQ』のメンバーも難しい………
 ってえっ?」

「えっ?」

佐紀は急に浜浦の声が低く、そして急に堅苦しい
言い方になったことに違和感を感じ顔をあげる。

その視線の先には生田がいた。


699 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/23(月) 22:02:45
「きょ、局長!?」

「おう!」

「いやいや『おう!』じゃないですよ。
 いつの間に…。」

いきなり上司である局長の登場に動揺を隠しきれない佐紀。
その様子を見ながら生田はため息をつき、佐紀に言う。

「お前達、一体、何時間会議をやっているんだ。
 浜浦も実戦の場にいよいよ投入が近づいては来たが
まだまだ未熟だ。
 そもそもそんな大役というか面倒なことを頼むのは早すぎる。」


「うぅ…。確かに…。
 浜ちゃん、桃のこと大好きって言ってますしね。」
佐紀は少し伏し目がちになり、浜浦へ謝る。

「ごめんね、浜ちゃん。」

その言葉にブンブンと大きく手を振る浜浦。

「いやいや、全然良いです。
 むしろ力になれなくてすみません…。」
「何だ、浜浦も力になりたいのか?」

「それは…もちろんです!」

「ふーん。そうかそうか」


そういう生田の顔が一瞬にやけたように感じたのは
佐紀の勘違いであろうか。
佐紀は思い切って尋ねてみる。


700 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/23(月) 22:04:45
「局長…、また何か企んでません?」

その問いに生田はハハっと軽く笑うと手を挙げて、
席を立つ。

そして会議室の扉の方へと歩いていく。
その部屋を出る間際、佐紀は局長が小さな声で呟く独り言を
聞き逃さなかった。

「さてさて、どう転がることやら。」


続く


701 : 名無し募集中。。。 :2015/02/23(月) 22:22:25
生田局長軽いなぁwなんとなく橋本慎ぽいw


702 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/27(金) 10:26:10
「えっとー、次は…。」

「ええっ、まだやるんですかぁ?」


2人のやり取りはその後もしばらく続いていた。
初対面なのにすごく自分に絡んでくれる。
すごく気さくな人であると桃子は感じていた。

(でも…、局長の言うとおり魔力は半端ない。)

卓偉からヒシヒシと感じる魔力はどこまでも底深く、
また強大であった。

しかしながら、不思議と恐怖は感じない。
それはきっと卓偉の性格にも影響している部分が大きいのだろう。

(この人が、本気で魔法を使ったらどれぐらいすごいんだろう…。)

そこでふと、桃子は局長との会話を思い出す。
卓偉は自分の研究した魔法の一部を他の魔導士に情報提供していると。


703 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/27(金) 10:29:51
「あのー、中島さん?」

「んっ?何?卓偉でええよ」

「卓偉さんは他の魔導士にご自身で研究した魔法を
 あげているんですよね?」

「あぁ、うんそうだね。
 ももちにもなんかあげようか?」

「いやいや、そういうつもりで言ったんじゃないんですけど…。
 どうしてそういうことをされているんですか?」

そう言われ、卓偉はパーマのかかった髪を後ろにかきあげる。

「好きなんだ。」
「えっ?」

突然の告白にうろたえる桃子。
しかし卓偉は全然別な方を向いている。
そこで桃子は自分の勘違いに気づく。

「他の魔導士がさ、自分の考えた、魔法をどう使ってくれるかを
 見るのがさ。
 同じように作った魔法でも使う人の、なんだろうね、
 主義っていうかポリシーというのか、それで
 全然違うものになるからね。
 例えば、誰だっけな、『Berryz』の菅谷さんと『teamQ』の鈴木さん。」


704 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/27(金) 10:33:18
いきなり卓偉から自分の知っている名前がでてくる。

「あの2人に、昔同じ魔法あげたんだよ。
 それが、全然違う魔法になってるからね。」

「そうなんですか…。」

「大事なのは妥協しないこと。
 人にあげる魔法だからこんな感じでいいやって言うんじゃなくて。

 そして続けること。継続は力なりって言うけど、
 続けることは意外と苦しい。
 だからこそ続けられる人間は強い。」

桃子はその言葉にハッとする。

…どこかで聞いたことがあるような言葉だが恐らく気のせいだろう。
しかしここ数ヶ月に渡って桃子を覆っていた
何か靄のようなものがクリアになった、そんな気がした。

「『続ける』…か。」


705 : ◆JVrUn/uxnk :2015/02/27(金) 10:37:00
そう独り言る桃子を見て卓偉は小さく微笑んだ。

「おっしゃ。もうええ時間やね。」

そう言われた桃子は壁に掛かった時計を見て驚く。
ゆうにこの部屋に1時間はいた。

「そうですね、そろそろお暇します。」

そう言って桃子は席を立つ。

「じゃーね!ももち、気をつけて帰るんだよ。」

「はい、ありがとうございます。
 お騒がせしましたー。」

「本当にお騒がせだよ!」


その声を背中に受けながら桃子は部屋の扉をそっと閉じた。
忘れていた自分のやりたいこと。
ハッキリ思い出した今、それをとことん突き詰める。
それがいつだって『嗣永桃子』の生き方。
貫き通してみたい。


桃子は廊下を歩きながら、この先の構想を練る。

(やるにしても独りは流石に寂しいよね…。
 局長に言ってみようかなぁ…。)

そう1人考えながら、桃子は協会本部を後にした。 



続く


706 : 名無し募集中。。。 :2015/02/27(金) 11:17:38
りさこと愛理って事はダイヤレディかな?


707 : ◆JVrUn/uxnk :2015/03/01(日) 00:53:47
「えっとー、次は…。」

「ええっ、まだやるんですかぁ?」


2人のやり取りはその後もしばらく続いていた。
初対面なのにすごく自分に絡んでくれる。
すごく気さくな人であると桃子は感じていた。

(でも…、局長の言うとおり魔力は半端ない。)

卓偉からヒシヒシと感じる魔力はどこまでも底深く、また強大であった。
しかしながら、不思議と恐怖は感じない。
それはきっと卓偉の性格にも影響している部分が大きいのだろう。

(この人が、本気で魔法を使ったらどれぐらいすごいんだろう…。)

そこでふと、桃子は局長との会話を思い出す。
卓偉は自分の研究した魔法の一部を他の魔導士に情報提供していると。


「あのー、中島さん?」

「んっ?何?卓偉でええよ」

「卓偉さんは他の魔導士にご自身で研究した魔法をあげているんですよね?」

「あぁ、うんそうだね。ももちにもなんかあげようか?」

「いやいや、そういうつもりで言ったんじゃないんですけど…。
どうしてそういうことをされているんですか?」

そう言われ、卓偉はパーマのかかった髪を後ろにかきあげる.


708 : ◆JVrUn/uxnk :2015/03/01(日) 00:58:30
すみません
間違えましたこっちが本当の続きです



コンコン
「開いてるとよ。」

ガチャ。ドアが開くとそこに顔を出したのは生田であった。

「生田か、お疲れさん。」
「そっちこそ、すまなかったな。面倒ごと押し付けて。」


生田は笑いながら部屋へと入ってくる。


「面倒ごと?ああ、ももちか!
 全然いいよ。彼女、スゴいね、頭良いじゃん。
 俺頭良い女性大好きだからさ。」

卓偉のその言葉に我が子を誉められたかのように嬉しそうな顔をする生田。

「すごかろ?俺も最初に見ようときは、何かいなーって思ったとね。」

「でも、『Berryz』活動休止でももちだけ決まってないんだろ?
 あの子に協会はもったいないとね、狭すぎるっちゃろ。」


卓偉の言葉に含みのある笑いを見せる生田。

「なん?その顔は?なんか考えとることがうまくいきそうなんか?」

「いやぁ、状況はそんな単純じゃなかとよ。
 何せ、嗣永自身が決めることが大切やろ?
 これをどう決断させるかがこれまた大変なんよ。」

そういって生田は手に持ったファイルをヒラヒラとさせる。
そのファイルには今度の会議で発表される新チームに関する情報が入っている。

「そのためにもわざわざ卓偉にあわせたんじゃないか。
 そうでなきゃ連れてこないさ。」

その生田の言葉にフフンと鼻で笑う卓偉。

「お前さんのその常に戦略的に動く姿嫌いじゃないな。
 まあ今度の定例会議、楽しみにしとくよ。」

ーーーーーーーー


709 : ◆JVrUn/uxnk :2015/03/01(日) 01:09:08
その数日後。

桃子は再び協会本部にいた。
生田局長になかなか自分の気持ちを伝えられないまま悶々とした数日を送っていたが
意外なことに今回は生田の方から声がかかった。

これは絶好の機会。今日こそはちゃんと伝えよう。そう思った桃子は約束の時間より少し早くに
生田のもとを訪れていた。しかしなぜか約束の場所は協会の会議室。


些か疑問に感じながらも桃子は部屋の扉をたたく。

コンコン

「おう、開いてるぞ」

「失礼します。嗣永です。」

「おお、待ってたぞ。」



部屋に入った瞬間複数の視線が桃子に向けられた。
何とその場は協会の会議中で複数の幹部が集まっている。


「きょ、局長?これは…」

突然のことに驚いている桃子に対し生田は自分の正面にあった空席を指さし着席を促す。
その席に桃子が座ったことを確認すると生田は一つ咳払いをする。


その瞬間部屋の奥から軽快な掛け声とともに一人の少女が現れる。

「1…2、1…2、1…2、1…2、ぜんたーい止まれ1.2。」

なんとそこにあらわれたのは浜浦であった。


710 : ◆JVrUn/uxnk :2015/03/01(日) 01:27:39
「は、浜ちゃん?何でこんなとこにいるの?えっ、て言うかこの会何?」

状況のつかめない桃子の発した問い。それに対し、不意に浜浦が懐から何かを取り出し
桃子へと近づいてくる。

周囲のざわめきを気にせず、一直線に桃子の元へとやって来た浜浦が持っていたのは
小さな簡易無線機だった。

おもむろにそれを顔に近づけるとひと言、浜浦が告げる。


「おい、スタッフ。『berryz』がひとりまぎれているぞ。」

浜浦の発した言葉により周囲のざわめきがより一層広がるなか思わず立ち上がる桃子。

「やめてよ、今度からももは新しいチーム立ち上げてその一員として参加するの。
 桃のこと好きって言ってたじゃん!!裏切り者!!」

大声で浜浦へと叫んだ桃子。その瞬間会議室は大爆笑に包まれた。
何が起きたか分からずしばし惚ける桃子。その視線の先では浜浦が申し訳なさそうに
桃子へと視線を送っている。

「本当に生田局長の言うとおりでしたな。」
「本当ですな。まさかとは思ってましたが。」

一人状況のわからないまま、立ち尽くしていた桃子はその場の全員を睨みつける。
そのとき、いまだ笑いの止まらない生田が嗣永へと話しかける。

「おい、嗣永。なんつう顔してるんだ。さっき自分の言ったこともう一回考えてみ?」

そう言われた桃子はすこし考え込んだとたんハッとする。

「誰もお前が新チーム作るなんて話聞いてないぞ。」



(嵌められたぁぁぁ…)

この場でがっくりしたい、そんな気持ちの桃子。浜浦の言葉に思わず気持ちが先走って
しまい、胸の奥に潜めていた思いが先に出てしまった。


711 : ◆JVrUn/uxnk :2015/03/01(日) 01:46:17
うなだれたまま、何も言わない桃子に対し生田は一つ咳払いをすると改まった顔をして
一同へと顔を向ける。

「ということで、今しがた執行局局員、嗣永桃子より提案のありました新規チームの編成に関してですが
 本人もやる気があるということで採用という形でよろしいでしょうか?」

生田の突然の発言を聞き、目を白黒させる桃子をよそに一同は大きく肯く。

「では皆さまの賛同が得られたということで、来月付で嗣永桃子の新規チーム参加を決定します。」

ここでやっと思考の追いついた桃子が声を上げる。
「えっ?えっ?どういうことですか?何でこんな急に決まっちゃったんですか?」

その桃子の問いかけに生田は資料を一枚手渡す。

桃子はその紙を受け取ると中身を見て驚きの表情を見せる。


≪新規チーム発足につき監督責任者の人選について≫

その資料にははっきりと候補者としての自分の名前が書いてあった。

「局長...これは?」

「ずっとやりたかったんだろう。」
その言葉が桃子の心へとやさしく澄み渡る。

「特殊チームとして今後も支え続けてもらいたい。もちろん『berryz』のようにはいかないが。
 なにせ経験が浅い奴らばかりなのでな。嗣永の長年培ってきた経験をぜひとも伝えてほしいんだ。
 ポジションとしてはそうだなプレイングマネージャーというところかな。よろしく頼むぞ。」


その言葉を聞いた桃子は感じた。
やはり局長には敵わないと。

ずっと自分の中に会ったわだかまりをわかっていてくれてそれで自分が言いだすまで待っていてくれた。
そして自分のためにいろいろと準備をしてくれていた。

もうそのことで胸がいっぱいだった。溢れそうになる思いを抑えながら桃子は静かに口を開いた。


「この『嗣永桃子』、精いっぱい努めさせていただきます」





712 : ◆JVrUn/uxnk :2015/03/01(日) 01:51:54
こうして嗣永は新しい組織の一員として執行局へと残留することが確定した。
任務を行う場所は変わらない。

しかし環境が大きく異なるということで桃子はとても先が楽しみになった。

「自分の全力を尽くす。貫き通す、それが一番大事。」




そして今後も、この嗣永PMを筆頭に新チームでのドタバタ活躍劇が繰り広げられるのだが
それはまた別のお話で。

終わり


713 : ◆JVrUn/uxnk :2015/03/01(日) 01:55:33
最後まで読んでいただきありがとうございました
いじょうで終了です


>>706

そのつもりで書きました


714 : 名無し募集中。。。 :2015/03/01(日) 02:49:08
完結乙です!個人的には本編と同じくらいべり編好きだからこれからも続いて欲しいな
ところでなんでそんな博多弁の書き方上手いの?局長と卓偉の会話が博多華丸・大吉のように聞こえるw


715 : 名無し募集中。。。 :2015/03/01(日) 04:17:06
ダイヤレディってたくいだったのか


716 : 名無し募集中。。。 :2015/03/01(日) 13:04:24
福岡県民からすると上手くはないけどな


717 : 名無し募集中。。。 :2015/03/01(日) 13:59:35
浜ちゃんだとハマタみたいだからはまちゃんがいい


718 : ◆JVrUn/uxnk :2015/03/01(日) 19:44:37
皆さん感想をありがとうございます
方言はやっぱり関東人の自分にとっては難しいです

>>717
確かに!これは迂闊でした
会話の中では『はまちゃん』でも違和感ないですね


719 : 名無し募集中。。。 :2015/03/04(水) 08:04:10
里田は出ないの?


720 : 名無し募集中。。。 :2015/03/04(水) 21:24:07
「しらばっくれるのもいい加減にしなさい!
 こっちにはちゃんと証拠だって揃ってるんだから!」

「何だと。この小生意気なガキが。
 好き放題言わせときゃ調子に乗りやがって。
 おい野郎ども。」

男の一声を合図に複数の魔道士が部屋に入ってくる。
いずれも高い魔力をまとっている。
亜佑美はその一人一人を一瞥すると言い放った。

「やる気?あんたたちが、この執行魔道士石田亜佑美に勝てるとでも?
 諦めなさい。今ならまだ許してあげるわ。」
執行魔道士と言う言葉を聞いて少したじろぐ男たち。
亜佑美は努めて落ち着いた声を出した。
出来れば闘いたくはない。

だが、その思いはむなしく砕け散った。
今まで、魔力のかけらを見せることもなかったボスの男ですら、
高い魔力を纏い始めたのだった。

「俺たちだってな、できれば執行魔道士なんかとは闘いたくない。」

「でしょ?」

「魔力を奪われれば、それは高くつく。」

「うんうん。その通り!だからさ…。」

「だが、これは俺一人の問題ではない。」

「えっ!?」

雲行きが怪しい…。

「いくら執行魔道士とはいえこんなガキンチョに
 好き勝手シマを荒らされたとなっちゃ、他の連中の気が
 おさまらねぇ」

「そっ、そうなの?」

亜佑美を見る周囲の視線はどれも猛々しく明らかな敵意を
向けられていた。

(これはマズい…。)


その男の言葉を聞き亜佑美は大きくため息をついた。

「そう…やるのね。……しょうがない。」
外面は落ち着いた風を装いながら心中では大慌て。
(やばぁぁぁぁぁぁぁい…どどどどうしよう……。)


721 : 名無し募集中。。。 :2015/03/04(水) 21:29:34
なんか勢いで書いてみた
続きは未定←


722 : 名無し募集中。。。 :2015/03/04(水) 23:18:10
良いね〜だーいし感満載w続き待ってる


723 : 名無し募集中。。。 :2015/03/06(金) 10:08:52
ほう続けたまえ


724 : 名無し募集中。。。 :2015/03/06(金) 21:16:32
もともとこんなことになる予定ではなかった。
鞘師さんのお仕事のサポートとして情報収集をしようとしていただけ。

そのとき偶然にも通された部屋の隣の部屋から
声が聞こえたもんだから、なにその…出歯亀じゃないけど、
情報収集の一環としてね。


そしたら意外にもビッグなネタをつかんでしまって
その勢いで部屋に飛び込んだ結果、今に至るわけ。 


(ってこんな説明してる暇じゃなかった。どうしよう…)

亜佑美はそんな自分自身にツッコミを入れつつ、
とりあえず相手に悟られないように魔力を高める。

徐々に、冷気を纏わせながら少しずつ少しずつ周りの温度を下げていく。
その間にも、男たちの魔力はぐんぐん上がっていく。
恐らく、相手が執行魔道士ということもあり一気に片を付けようといったところであろう。


725 : 名無し募集中。。。 :2015/03/06(金) 21:21:47
(もう…ホントに参っちゃうな…。私から動く訳に行かないのに…。)


この場を打開するためのチャンスは一瞬。
その好機を逃すまいと亜佑美は神経を研ぎ澄ませる。

両者の間を一瞬の静寂の刻が流れる。
刹那、急激に高まる魔力を感じた亜佑美が自身の魔力を解放した。




「これが…鞘師さんの生きる世界…。
 私の…生きていこうとした…道…。」


亜佑美はいくら意識を集中させても湧き上がることのない魔力に、
自らの敗北を悟った。

「うわぁぁぁぁぁぁー…………………」




ガバッと起き上がる亜佑美。
辺りを見回すとそこは自室。
そして今、自分が居るのはフカフカの布団の上。


「ゆ……夢?」

亜佑美は右手を出し意識を集中させる。
するとそこからは小さな氷片が飛び出した。

「ゆ…夢か…。はぁぁぁ、焦ったぁぁ。」
思わず、布団に顔をうずめ、声を上げる。

そしてふと壁を見ると時刻は朝の8時過ぎ。
少し寝過ぎたようだ。

身支度を終えた亜佑美はとりあえず、
遥と優樹に会いに道重家へと向かうのであった。

しかしこのときの亜佑美はまだ知らなかった。
この先、自分に降りかかる笑劇の数々を。


726 : 名無し募集中。。。 :2015/03/06(金) 21:23:10
とりあえずここまでです

まいど続くかは未定←


727 : 名無し募集中。。。 :2015/03/06(金) 21:57:11
笑劇なのか?w更新乙です是非続けて下さいな…笑劇が気になるw


728 : 名無し募集中。。。 :2015/03/07(土) 09:29:26
続け!


729 : 名無し募集中。。。 :2015/03/09(月) 21:35:55
「農作物の裏ルート摘発?
 何ですかそれ、私たちの任務なんですか?」

「ううん…、どうやらそうみたいだね。
 うぅ、最近まともに任務が来ないなぁ…。」

訪ねた道重家では亜佑美の上司でもある里保が
衣梨奈の父で上司でもある局長からの指示を亜佑美へと伝えてきた。

「ちっちっちっ!やすしさんもあぬみんもわかってないねぇ。」

頭を抱えている里保や怪訝な表情を見せる亜佑美に
優樹が横から口をはさむ。

「今の時代、適正な販売ルートと価格で売ることによって
 食に対する安心を呼び込むのさ!
 それにフェアトレードっていう言葉もあってね……、」

優樹に似つかわしくない単語の数々に
その場にいた全員の目が丸くなる。

「まっ、まーちゃん?」
「まっまさきちゃん?」


730 : 名無し募集中。。。 :2015/03/09(月) 21:41:48
「コラコラ、まーちゃん。そんなとこで勉強サボってるんじゃないの。
 ハルのさっき教えた世界の農業分野に関する課題、ちゃんと書いたのかよ。」


「うん、バッチリ!」

「そしたら、戻るよ。
 まーちゃん、他人様の心配してる場合じゃないんだから、
 ほんと通うとこ無くなるよ。」

「わーっ、それはヤダー」

そんなやりとりをしながら2人は2階へと上がっていく。



「まさきちゃん、びっくりしたなぁ。」

「ホントですね……。で、任務なんですけど、
 それ具体的な内容は分かっているんですか?」

亜佑美の問い掛けに慌てて真顔に戻る里保。

「そっそうそれなんだけど、あーとえーっと…。」


731 : 名無し募集中。。。 :2015/03/09(月) 21:45:18
あたふたとした里保の表情も可愛いなぁなんて思っていたら、
ある単語が亜佑美の耳に残る。

「鞘師さん、ストップ!」

「へっ?どうしたのさ急に!」

亜佑美は先ほど自分の耳に残った単語の響きを思い返しながら、
里保へともう一度確認する。


「鞘師さん、確認したいんですけど……
 その適正ルートから外れている農作物って…。」

「あぁ!スイカだよスイカ。
 あの緑色の。中が赤いやつ。」

『スイカ』という単語を聞いた瞬間、亜佑美は
体に電撃が走ったようなそんな感覚に陥る。


(ぐぬぬ!なんということだ…。
 スイカがまさかスイカがそんなことになっているなんて、
 この私を差し置いて裏ルートに流れるなんて…)


732 : 名無し募集中。。。 :2015/03/09(月) 21:50:27
「えっと…、亜佑美ちゃん?」


「…すまじ。」

「えっ?」

亜佑美の口からこぼれた言葉を聞き取ることができなかった里保はもう一度聞き返す。

バンッ!

机を大きく手で叩くと亜佑美は立ち上がる。
「絶対に許せない。この石田亜佑美を差し置いて…。鞘師さん、その仕事、私にも手伝わせてください。いやむしろ私が一人でやります。そんなやつさっさととっつかまえてスイカに平和をもたらすんです!」

拳を握りしめ叫ぶ亜佑美。
そのあまりの剣幕に目をしろくろさせる里保。それでも、亜佑美のよくわからない熱意に心を動かされ、里保もその場で立ち上がると大きくうなずく。

「うん、やろう亜佑美ちゃん。」
「やりましょう。鞘師さん。スイカが私たちを待っています。」

メラメラと闘志を燃やす亜佑美。

その様子を優樹が部屋から逃げ出さないように階段に座って見ていた遥。その横にちょこんと黒猫が一匹腰掛ける。

「ねぇ。なにあれ?」
「私にもよくわかんないなぁ、時々変なスイッチ入るよねあの2人。」

猫の表情で苦笑する春菜。

リビングでギャーギャー喚く2人は緻密な計画を立て始めていたのだった。


733 : 名無し募集中。。。 :2015/03/09(月) 21:52:40
書いてて何かなんだかわからなくなってきたwとりまここまできたら頑張る


734 : 名無し募集中。。。 :2015/03/09(月) 23:18:51
まさかのスイカwここまできたら最後まで頑張って!


735 : 名無し募集中。。。 :2015/03/15(日) 00:31:14
すっかり難民でございます
本編更新があるかも知れないから狼を覗きたいけど怖くて行けない状況


736 : 名無し募集中。。。 :2015/03/15(日) 08:55:54
あれよくわかんないんだけど
結局個人情報抜かれるってことでオケなの?


737 : 名無し募集中。。。 :2015/03/15(日) 11:11:40
なんかもう俺スマホでガンガン書き込みしてるわw
もうどうにでもなーれ


738 : 名無し募集中。。。 :2015/03/15(日) 13:05:53
少なくともPCからならそんなに気にしなくても
今までとほぼ変わらない感じがする
(既存の専ブラから見れなくなるとかの弊害はあるけど)

スマホの方は危険という意見とそこまでビビらなくても
実質的な被害はないだろという意見の両方があって
イマイチよくわからない


739 : 名無し募集中。。。 :2015/03/15(日) 13:10:28
スタイル更新してもいいのかな?


740 : 名無し募集中。。。 :2015/03/15(日) 13:32:46
今まで普通に使ってたんなら更新してもいいんじゃない?
自分はこのスレを参考にして更新後に広告を消したけど

jane styleの情報を集めるスレ
http://hello.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1426214232/


741 : 名無し募集中。。。 :2015/03/16(月) 20:15:57
「まずは、相手のルートを解明することが先決だね」

「そうですね……。っで、鞘師さん?」

「ん?どうしたの亜佑美ちゃん。」

「なぜ、スイカ畑へ?」

物陰に隠れている2人は小さな声でひそひそ話をしている。

「そりゃあ、何でって私たちは今、情報が無に等しい。」

「そうですね。」

「だからさ、現場を知っておく必要があると思うんだ。」

「大事なことですね。」

「だから亜佑美ちゃん。」

「はい。」

「スイカ、盗んで。」

「はい?」


742 : 名無し募集中。。。 :2015/03/16(月) 20:21:16

「店の方ははるなんが粗方、目星をつけてくれているから
 そこに持ち込めば現行犯で捕まえられるじゃん!」

「いやいやいやいやおかしいですって…。それ、私捕まりますよね?
 それ、私が…。」

亜佑美の抗議に眼を閉じ静かに首を振る里保。

「それは違うよ亜佑美ちゃん。
 はるなんも言ってたじゃん。
 『何かを得ようとするならばそれと同等の対価が必要だ』って。
 亜佑美ちゃんは今、何がしたい?」

「そっそれはスイカを適切に…。」

「でしょ?亜佑美ちゃんはスイカを守りたい。
 だったら亜佑美ちゃんを犠牲にするしかないじゃん。」
里保の言葉に若干引き気味の亜佑美。

(何か違うよ?鞘師さん。
 今日の鞘師さん何かぶっ飛んでる…。)


743 : 名無し募集中。。。 :2015/03/16(月) 20:24:07
里保のよくわからない理論を聞き閉口する亜佑美。
このままでは自分が里保に逮捕されるオチとなる。
まあ何かわからないけど、それはそれでおいしい気はするが。

その時、ふと亜佑美の脳裏にある魔法の存在がよぎる。

(そうか、これなら行ける気がする。
 鞘師さんには悪いけどね…。)



数分後、物陰から出てきた亜佑美は、丸い大きなスイカを抱えていた。

「よいしょっと、ふう、さてと…はるなんからもらったメモは…
 っとあったあった。
 えっとー、げっ!隣町?ってことは電車かぁ!
 そうだよね、そうするしかないかぁ。」


744 : 名無し募集中。。。 :2015/03/16(月) 20:31:24
そう一人呟くと亜佑美は自分のスイカだとわかるように
その皮にしっかりと自分の名前を書き込む。
そして駅へと向かうのであった。



M13地区の駅はこじんまりとした駅で、
夕方、ある一定の時刻を過ぎると無人駅となることを
亜佑美は知っていた。

だが問題は隣町の駅。
隣町はそこそこ栄えているため、終日人がいる。
加えて、自動改札機を導入しているのであった。
上手く通過できるか…。


しかし、亜佑美には自信があった。
隣町にたどり着き、人の流れが過ぎ去るのを少し待ち改札口へとむかう。


駅員は突然スイカを持って登場した少女に少し驚いた表情を見せる。
その少女はゆっくりと改札機へと近付くと周りを窺うように
顔をキョロキョロとさせている。
その動作に不審を抱いた駅員が声をかけようとしたその瞬間、


745 : 名無し募集中。。。 :2015/03/16(月) 20:34:54
ピッ

「んな!?」

少女は手に持ったスイカを自動改札口に乗せると悠々とした
表情で出ていった。
その後ろ姿を駅員はただ見送ることしかできなかった。


「やっぱりこのシマシマが大切なんだね」



続く


746 : 名無し募集中。。。 :2015/03/16(月) 21:10:01
www
http://i.imgur.com/jPFyQxU.jpg


747 : 名無し募集中。。。 :2015/03/16(月) 22:46:03
すいか違いwてかこれほどスイカを持つ姿が似合うアイドル…もとい魔法使いがいるだろうか?ww


748 : 名無し募集中。。。 :2015/03/17(火) 14:17:15
本スレ見に行ってきたけど笑顔編とさんまい舌の外伝的なものが投稿されてるだけだったな
あとは保全AAがメインだった
本編作者さんもどこに投稿するか決めかねているのだろうか


749 : 名無し募集中。。。 :2015/03/17(火) 14:34:09
そうなのか…
まとめwikiも本編上がった分まだ収録しきってないよね


750 : 名無し募集中。。。 :2015/03/17(火) 19:17:55
みたいな先生としてだーさくスレに投下してたから
普通に2chに書き込みできる環境にはあるようだ


751 : 名無し募集中。。。 :2015/03/17(火) 20:43:49
みたいな先生がいる!?wだーさくスレ見てきた相変わらず視点が鋭い…てかここでも作品書いてるの?


752 : 名無し募集中。。。 :2015/03/17(火) 21:46:17
本人から明言があったわけじゃないので断言はしないけど
ほぼ間違いなくみたいな先生=本編作者さんだから


753 : 名無し募集中。。。 :2015/03/17(火) 22:06:56
ななななんだってー!?知らなかった…


754 : 名無し募集中。。。 :2015/03/17(火) 22:28:36
なんと!


755 : 名無し募集中。。。 :2015/03/19(木) 11:32:06
皆さんはIEで見てるの?専ブラ?
専ブラだとおすすめありますか?


756 : 名無し募集中。。。 :2015/03/20(金) 01:03:55
>>740に書いた通りjane style使ってるけど
おすすめってどうなんだろうね
いいのがあるなら自分も乗り換えたいけど


757 : 名無し募集中。。。 :2015/03/21(土) 14:08:34
2chmateは更新してないけどスレの新着レス数は拾うからレス未読80の誘惑に負けてパソコンからIEで見ちゃったよ


758 : 名無し募集中。。。 :2015/03/21(土) 17:55:35
今狼ってどんな状況なの?


759 : 名無し募集中。。。 :2015/03/21(土) 18:07:59
騒動前より人はボチボチ少なくなってるけど
案外平常営業してる感じ


760 : 名無し募集中。。。 :2015/03/21(土) 20:42:50
度胸あるねえ


761 : 名無し募集中。。。 :2015/03/22(日) 02:22:57
今までどおり使い続けることで何がどうどこまで実害があるのか
イマイチはっきりしないままだから
関係ないと開き直るのも一つの選択肢ってことなんだろうね


762 : 名無し募集中。。。 :2015/03/24(火) 20:22:14
すごく投稿していいのか迷うんだけどまぁいいか


763 : 名無し募集中。。。 :2015/03/24(火) 20:24:49
「ほう、じゃ何かいお嬢ちゃん。
 俺たちが正しい商売をしていないっていうのかい?
 それはそれは聞き捨てならないねぇ。」

ねっとりとした声を出す男をじっと睨みつける亜佑美。

「あなた達は真っ当な商売をしていない。
 してたらこんなこんなことあるわけないもん!」

亜佑美は目の前にいる男の気持ちを変えようと必死に訴えかける。
信じられなかった。
まさかこんなことになろうとは…。



春菜からもらったメモを頼りにスイカを店に持ち込んだ亜佑美。
そこは八百屋とか果物屋とかそういった佇まいの店ではなく、
雑居ビルの2階に位置する小さな事務所。


764 : 名無し募集中。。。 :2015/03/24(火) 20:27:07
「あのーすみません。運び屋でーす。」

春菜のメモに書いてあるとおり、入り口の扉をノックすることなく、
声をかける。

そして5秒待ってから呼び鈴を3回押した。

しばらくすると、扉がゆっくりと開き、中から男が一人顔を出し
辺りを窺うとスイカを持った亜佑美と目が合う。


(こいつが…。うんやっぱり魔道士だ。)
「あのー、○○さんの代わりに本日の分、お持ちいたしました。」


「んっ?お嬢ちゃん、○○の代わりかい。
 そうかそうか、中に入んな。」

そういって男は扉を大きく開け放った。
亜佑美は慎重に歩を進め部屋の中へと入る。
中はこじんまりとした事務所で部屋の真ん中に机とソファー、
壁際にはいくつも積まれたダンボール。


765 : 名無し募集中。。。 :2015/03/24(火) 20:32:07
(あの中…。スイカだ。
 旬はとっくに過ぎているのに、あの量…。)

「さて、取引といきましょうかね。
 今年はもうないかと思っていましたよ。
 とっくに旬は過ぎてますからね。
 まぁ、最後に相応しい、上玉でもありそうですなぁ。」

そういうと男は亜佑美にソファーを勧める。
スイカを持ったまま亜佑美は腰掛ける。

「ふ、さて、その一玉なんですが…。
 ざっとこれぐらいでいかがですかな?」

そういって男のはじき出した金額を見て亜佑美は仰天する。
自分の知っている金額の150倍近い数字がそこに並んでいた。
亜佑美の心が揺らぐ。
もし自分が今このスイカを目の前の男に売れば、
固定ルートとして確保できれば生活費に困ることはなくなる。

ぐらつく亜佑美の心をさらに追いつめるように
男はアタッシュケースを取り出し、お札を数え始める。


766 : 名無し募集中。。。 :2015/03/24(火) 20:33:55
(くっ…私は…。)
亜佑美が陥落しかけた瞬間、


『亜佑美ちゃんは何がしたいの』

ふと、心の中に里保の言葉が蘇る。その言葉に自我を取り戻す亜佑美。

(そうだ!私はスイカを助けるためにここに来たんだ。
こんな事で負けちゃいけない。)



「これは売れません。」

「えっ今なんと?」

亜佑美はスッとソファーから立ち上がると声高らかに言い放つ。


「このスイカは絶対にあなた達みたいな人には売らない。
 正しく売るべきだわ。」




767 : 名無し募集中。。。 :2015/03/24(火) 20:37:00
2人の睨み合いは続く。
お互いに譲る気配はない。
亜佑美としてはなんとしても、ここにあるスイカ達を
元の販売ルートに戻してやりたかった。

しかし、状況は思わしくない。
辺りに魔力が立ちこめてきた。
恐らくこの闇業者、魔道士のグループであり複数の仲間がいる。

亜佑美の感覚は鋭敏にそれを捕らえていた。

(どうすればいい…。相手が複数になったら
分が悪いし、どうすれば…。)

「オイ、お前ら。お客さんがお帰りだ。
 丁重に見送って差し上げろ。」

男の声と共に部屋の中に魔力をまとった男が3人入ってくる。
そして亜佑美に向けて手を向けたその瞬間、
亜佑美は部屋の壁際の温度を瞬間的に一気に下げた。


768 : 名無し募集中。。。 :2015/03/24(火) 20:40:00
そして相手の初撃をかわしつつ左手の人差し指をたてると
小さく2回円を描き、魔力を込めた。
すると足下にあったスイカから一筋の光が立ち上ったかと思うと
そこからひとりの少女が出現する。


「くぅっー、もう亜佑美ちゃんったら!」

「すみませーん、鞘師さん!」

「とりあえず、この場を制圧するよ。」

「了解!」

男達は突如現れた少女に驚くと同時に、箱から飛び出し、
宙に浮いているスイカ達にも驚いていた。

「んな!?」

「汚されたスイカ達の恨み、味わいなさい!
『スイカクラッシュ!!』」


亜佑美のかけ声と共に里保が一気にスイカを飛ばす。
その一つ一つは男たちの顔にあたるとクシャッっと音を立てて潰れていく。

「これにて一件落着!」


769 : 名無し募集中。。。 :2015/03/24(火) 20:42:41
「それにしてもあゆみんがこんな変な魔法知ってるとはね。
 鞘師さんが消えた時は私もびっくりしたよ」

「ホントだよ。全くいきなりスイカにするなんてひどいんじゃないかな。
 しかもウチ売ろうとしてたよね?」

道重邸に戻った2人。そこで今回の事の顛末が亜佑美の口から語られたのだが、里保が怒るのは当然のことである。


「まぁさ、今回は結果オーライだけど、亜佑美ちゃんのほぼ単独任務成功っていうことでね。
一応、報告入れておいたから。局長からも『よくやったな』ってメッセージ来てたよ。」

そう話す里保の後ろで何故か笑いを必死にこらえている衣梨奈、春菜、遥。
そこへ遅れてきた優樹が里保の背中を指差して大爆笑する。

「ギャハハハ、やすしさんスイカみたーい。」

「えっ!?」

里保がその言葉を聞き後ろを向いた瞬間、亜佑美は気づいた。
里保の洋服の背中側がまだスイカの模様のまんまだったことに。


「あ、亜佑美ちゃーん!」

「ひぃぃ、ごめんなさーーい!」


終わり


770 : 名無し募集中。。。 :2015/03/24(火) 20:45:00
ということで以上です
書いてみて改めて本編作者さんをはじめとした作者の方々が凄さを感じました

こんな駄作にお付き合いいただきありがとうございました


771 : 名無し募集中。。。 :2015/03/24(火) 21:32:38
乙でした
楽しかったよ〜
実際スイカをクラッシュしたら
あゆみんキレそうだけどw

次回作もよろしく!


772 : 名無し募集中。。。 :2015/03/24(火) 23:30:53
ひさびさに作品きたな
何か笑劇というよりドタバタコメディ(笑)

言い意味でだーいしっぽくて
次回作もよろしく

他の作者さん達は元気だろうか


773 : 名無し募集中。。。 :2015/03/25(水) 00:22:41
更新乙ですスイカ投げんなよ!と読みながらツッこんでみたりw楽しかったです


774 : 名無し募集中。。。 :2015/03/25(水) 00:30:53
あゆみんの活躍キタ━(゚∀゚)━!
まあこれもだーいし感って事だなw
たまにはこういうのも良いね


775 : 名無し募集中。。。 :2015/03/25(水) 21:50:42
ついに本編更新来たぞ!!


776 : 名無し募集中。。。 :2015/03/25(水) 21:54:32
どうか早くまとめサイトにまとめてつかあさい…


777 : 名無し募集中。。。 :2015/03/25(水) 22:15:18
直接2ch覗けないならログ速を経由させてみたらどうだろう
・・・と思ったら現行スレの更新が遅いので
scの方の現行スレをログ速経由させてみるという
回りくどいことをするとこんな感じだけどこれだと読めるかな?

http://www.logsoku.com/r/2ch.sc/morningcoffee/1425306165/


778 : 名無し募集中。。。 :2015/03/27(金) 16:02:29
776ではないけど読めたよありがとう


779 : 名無し募集中。。。 :2015/03/27(金) 20:42:47
どうしてもある程度溜まってから固めて纏めるスタイルなので申し訳ない
あと狼に書けない人の為にまとめの方に感想掲示板でも設置したらどうかと思ったけど
別に需要無いかな?


780 : 名無し募集中。。。 :2015/03/27(金) 21:13:50
遅ればせながら776も読めましたありがとうございます
ログ速もう見られないと思ってたけどscの方なら見れるんですね

まとめありがとうございます
ゆっくりでもいいんでまたお願いしますね!


781 : 名無し募集中。。。 :2015/03/30(月) 22:15:23
昔むかし、占星術を生業としていたものがある日の夜空を見上げ、予言を行った。


『間もなく、世界の変異点が生じる。その変異は他の変異点と対をなし、新たに面となるだろう。』


人々の中にその術者の話を信ずる者は誰一人として居なかった。日頃より行われているその者の予言はたいてい適当で当たったことが皆無に等しかった。


誰一人、信ずる者はいなかったが術者はひたすら毎夜毎晩、空を見上げ続け、そして祈りを捧げた。人々はまたその姿を見てあざ笑った。


時は過ぎ、人々がその予言を忘れ、術者への興味も失せたある日のこと、夜空が突然眩く輝いたかと思うと一筋の流れ星が地上のある家へと堕ちた。


あまりにも希有な出来事に驚き人々が騒然とする中、ふらふらと例の術者が歩いてきた。

そして一言、

『世界の理が崩れる』

その言葉のみを残し息絶えた。



ーーーー


「ねぇ、香音ちゃん?この話どう思う?」
学校の帰り道、聖は図書館で見つけた本の内容について香音へと語っていた。

「どうって言われてもねぇ。まぁ信じて貰えないのは悲しい事だと思うけど、どーせそういうのは面白おかしくいじった作り話でしょ?」

香音はにこやかに聖の話を切り捨てる。

「ちがーう、だって聖のおじいちゃんがね、昔お話してくれたやつになんか似てるの。おじいちゃん、嘘は言わない人だからこの話が正しくないとしてもデタラメではないと思うの。」

「うーん、じゃあ聖ちゃんは本当にこういうことがあったと思うの?」

「似たようなことはあったんじゃないかな。うん、あったんだよきっと!」

いつになく嬉々として話す聖に若干あきれ気味な香音。その時であった。


『変異点は……ここか……。』


突如、低いざわめきにも似た声が頭の中で響き渡る。聖と香音は歩みを止め、辺りを見渡すが誰かがいる気配はない。首を傾げ顔を見合わせる2人。

『世の理を……。乱す…。』

「なに?今の声…。」
「聖ちゃんも聞こえた?あたしも聞こえた。」

言いようの知れない不安に襲われた2人は何か導かれるように家路へと向けていた足をさゆみのところへと変え向かうのであった。


ーーーー


782 : 名無し募集中。。。 :2015/03/30(月) 22:20:20
続きはまだない


783 : 名無し募集中。。。 :2015/03/31(火) 02:03:56
なんか来てるー!!
ここからシリアスに行くのかコミカルに行くのか
どちらにしろ続きが気になる

あと1行が長すぎなんで途中で改行した方がいいかも


784 : 名無し募集中。。。 :2015/04/01(水) 22:21:33
本編更新


785 : 名無し募集中。。。 :2015/04/02(木) 00:11:45
ありがとう教えてくれて


786 : 名無し募集中。。。 :2015/04/02(木) 08:41:50
ひさびさに避難所来た
ちょいちょい更新はあるんだね


787 : 名無し募集中。。。 :2015/04/07(火) 17:58:56
実は兄重の外伝が凄く好きだったんだけど、俺以外に感想もあまり書かれないまま作者さんが失踪しちゃって残念だわ


788 : 名無し募集中。。。 :2015/04/07(火) 21:08:27
世界観は好きだったけど一行一行がひたすら長くて
しかも行間が全くなく詰まってるからやたら読みにくかったのが
読者の反応が少なかった原因だろうなと思ってた


789 : 名無し募集中。。。 :2015/04/07(火) 21:12:10
誰かが呼んだような気がする。
懐かしい声。

さゆみはパソコンを閉じるとおもむろに窓へと近づき
カーテンを開けると外を眺める。

(気のせいか…。)

いちおう辺りの気配を探ってはみたがそこには
さゆみのネットワークに引っかかるものは何もなかった。


さゆみはカーテンを再び閉じると、自分のパソコンの前へと戻る。

「どうしたんですか?道重さん。」

部屋にいた弟子の衣梨奈が不思議そうな顔をして尋ねてくる。
そこには衣梨奈の友人の里保も眠たげな顔をしながら
不思議そうにこちらを見ていた。


さゆみは一瞬、何故2人揃って同じような顔をしているのかが
わからなかったが自分の直前の行動を思い返して苦笑する。


790 : 名無し募集中。。。 :2015/04/07(火) 21:14:01
確かに2人から見たらおかしな行動であったろう。
パソコンを見ていた筈の自分が突然窓から外を見て
何もせずに戻ってきてきたのだから訝しく思うのも頷ける。

「ん、ちょっとね、外の空気が吸いたくなっただけ。
 それよりも生田、今日の夕飯は何にする予定?」


2人を安心させるようにさゆみは優しい声で話しかけ、話題を変える。
その問に対して、衣梨奈は幾つかの候補を上げ、それに里保も
相槌を打つ。

そんな2人の様子を見ながらさゆみは小さく一つ息を吐き出す。


そして再びパソコンを開くとそこには先ほどはなかった
メールの着信を知らせる通知が来ていた。


差出人は『M.S』、件名はなく、ただ本文に『変異点』の3文字が
書かれているのみだった。


791 : 名無し募集中。。。 :2015/04/07(火) 21:15:28
さゆみの鼓動が早まる。
見たくない3文字。
それが、この差出人から来たということは何か意味があるのだろうか。


(しばらく、警戒してみようか…。)

さゆみはそっと一人心の中で呟くとパソコンを閉じ、
里保や衣梨奈の話へと加わるのであった。


ーーーーーー

『星の堕ちた村』

世間でそう呼ばれるようになったその村はしばらくの間、
何か特別なことが起きるのではと注目を浴び、人の出入りが
激しくなった。

だが、目立って何か変化が起きたわけではない。
人々の関心は次第に薄れ、逆に呪われた村と言う噂が
流れ始めたことも相まってみるみるうちに人が居なくなっていった。


792 : 名無し募集中。。。 :2015/04/07(火) 21:17:52
そして、そんなある日のこと。
村のある家でひとりの赤ん坊が生まれた。
ひさびさの新しい命の誕生に村人の誰もが歓喜し祝福をした。


しかしその赤ん坊が成長していくにつれその子には
不思議な噂が立つようになった。

『普通の子』ではないとそういった類の噂。
だが、あくまでも噂であってそれに確証はなかった。


あの日の事件が起こるまでは……。



ーーーーーー


続く…のか?


793 : 名無し募集中。。。 :2015/04/07(火) 21:20:11
>>783
ご指摘ありがとうございます
今回のが見やすいものであるといいのですが…


794 : 名無し募集中。。。 :2015/04/07(火) 21:57:57
なかなか楽しみな作品きた!続いてくれ〜最近本スレよりも避難所の方が作品多いね


795 : 名無し募集中。。。 :2015/04/11(土) 16:55:47
その日、少し不安そうな顔で聖と香音がさゆみのもとへとやってきたのは少し夕方を過ぎたあたりであった。


「声?」

聖の話を聞いた衣梨奈が怪訝そうな声を出す。

「そう、なんか学校の帰り歩いてたら何か声が聞こえて来て世界が乱れるとかなんとか言ってて。」

「聖の聞き間違いじゃなかと?」

そう返した衣梨奈の言葉を香音が否定する。

「あたしもその声聞いたから聞き間違いではないと思うよ。」


796 : 名無し募集中。。。 :2015/04/11(土) 16:59:46
「ふぅん、香音ちゃんも聞いとるゆうんなら確かにおかしいっちゃね。」

香音の言葉を聞き、腕組みをして考える衣梨奈。そこに、

「ちょっとえりぽん!聖だと信用しないのに香音ちゃんの方はあっさり信じるの?」

「えっだって聖やし。」

「なにそれ、意味わかんない!」

「まぁまぁ、えりぽんもフクちゃんも落ち着いて。」

険悪な雰囲気の2人の間に里保が仲裁に入る。相変わらず睨み合ったままの2人であったが香音はどこ吹く風の表情でいた。

「それにしてもね…、声か…。道重さん、何か知ってますか?」

さゆみの意見を聞こうと後ろを振り返った里保はさゆみの表情を見て驚いた。

「み、道重さん…?」


797 : 名無し募集中。。。 :2015/04/11(土) 17:03:19
その声に衣梨奈達も振り返り同様に驚く。
そこには普段の優しい表情でいるさゆみの影はなく、
どこか焦ったような表情でいた。


「ねぇ、フクちゃん、香音ちゃん。
 その声って『変異点』って言ってなかった?」


突然さゆみが尋ねてくる。

「えっとー。確かに言っていた気がします。」

「そう…。」

そう一言言ったきりさゆみは黙り込んでしまった。


「何かあるんですね?」

里保の問いにさゆみは小さく頷いた。


「世の中にはね、力のバランスっていうのがあるじゃない。
 例えば国家間のものとか宗教間だったりとか。
 もちろん魔道士の世界にもそういったものは存在していてね。
 それを保つことは当然世界の安定化に、直結するのはわかるよね?」


798 : 名無し募集中。。。 :2015/04/11(土) 17:10:11
「その力のバランスが乱れることは 何故かわからないんだけど、
 ある一定の周期をもって起こるの。
 それは大きな力が失われたりだとか逆に大きな力が誕生したりだとか。
 もし、2人の話が真実で誰かが警告をしているのだとしたら…。」

さゆみの話を聞いていくうちに何故さゆみが焦った表情を
見せたのかみんなだんだんとわかってきた。
要は、この世界の平穏が乱されることをさゆみは恐れているのである。

恐らくはさゆみレベルの魔道士が生まれるか
それとも滅するか……


「そしてそれに関わる人間、地点、事象、それらをひっくるめて変異点と人々は呼んでいるわ。」





799 : 名無し募集中。。。 :2015/04/11(土) 17:12:45
お粗末様でした

本スレにパンチの効いた作品が来ましたが自分には真似できないので(笑)


800 : 名無し募集中。。。 :2015/04/11(土) 21:16:22
おおなんか本格的に壮大な話になってきたぞ


本スレのあれはみんなに真似されても困るやつだしw


801 : 名無し募集中。。。 :2015/04/11(土) 22:27:39
なんかRPGの冒険の始まり的なプロローグ…動画上げてた職人さんにゲーム作って貰いたい感じw


802 : 名無し募集中。。。 :2015/04/15(水) 21:32:32
少女につきまとう不思議な噂。
それが具体的に確証を持つようになったのは
あの日の事件がきっかけであった。


その日、村の子供たちは年に一度開かれる
星の観察会に参加するために海岸沿いの砂浜に
集合していた。

天気は快晴とまでは行かなかったがそれでも空には幾つもの星が
瞬いていた。

『うわぁぁぁ!すっげー』
『キレイ!』

夜空を見上げながら子供たちは騒ぎ始める。

『ねぇあの星は?』
『あれはね…。』

村の大人たちは賑やかに騒ぐ子供たちの様子を
見ながら、その質問に答えていた。
元々、『星を視ること』で賑わってきた村である。

どの村人も星には詳しかった。


803 : 名無し募集中。。。 :2015/04/15(水) 21:37:07
そんな中、集団から離れ、ひとり砂浜を歩く
ヤドカリを見る少女がいた。
少女にとってこの砂浜は『お気に入り』の場所の一つ。

どこまでも続くかと思われる白い砂浜。
打ち寄せる波の音が心地よい。

そこにうごめく静かな、だが巨大な自然の命の営み。
少女はこの場所が大好きであった。

そこを村の催しとはいえ、大勢の人間に踏み込まれるのは
些か気分がよいものではなかった。

当然、他の子と騒ぐ気にはなれず、ひとり
離れたところにいたのだった。


『みんなのところに行かないの?』
突如、頭の上で声がする。

ヤドカリから目を離し見上げてみると
そこには普段、人間の友達があまりいない
少女にとって数少ない友人が覗き込んでいた。

そのいつも眠たげな表情、ふにゃりと見せる笑顔。
時折口にする天然な発言。


恐らく、とても波長が合うのだろう。
少女はその子、絵里をとても信頼していた。


804 : 名無し募集中。。。 :2015/04/15(水) 21:42:56
「行かない。だって面白くないし。」

そう答え、再びヤドカリへと目を向ける少女。
その隣へ絵里もしゃがみこむ。

『これがそんなに面白いかねぇ。
 いやあ、えりちゃんにはさっぱりですわぁ』

そう言いながら砂浜に一筆書きを始める絵里を軽く睨む。

相変わらず後方では大人と子供が賑やかにやっていた。

絵里は立ち上がり大きな伸びとあくびを
一つすると再び皆の下へとゆっくりと歩いていった。
その背中を見つめながら、少しうつむき少女は親指の爪を噛む。

そのときであった。
急に妙な『違和感』に少女は襲われる。
はっとし顔を上げた少女の耳に声が届く。


『ねぇ、あそこにある白い5つの星って何ー?』
『んー?あんなとこに星なんてあったかなぁ…。』

その声の主が指を指す先を『視た』少女は悟る。
近づいている、自らと同じ力を持つ者達の存在を。


805 : 名無し募集中。。。 :2015/04/15(水) 21:49:09
次第に近づくその『星』にざわめく砂浜。
急にその中の一つが一瞬輝きを増した。

「ダメ!!みんな…逃げてぇぇぇぇ!」

少女が叫んだ瞬間、砂浜を轟音が襲った。
衝撃で数メートル吹き飛ばされる少女は
砂煙で霞む視界の中、5つの人影が砂浜に
降り立つのを感じた。

『ここか、噂の地は。』
『そのようだな。力を感じる。ここが変異点か…。』

その場から起き上がろうと砂浜に手をついた少女。
その右腕に人の気配を感じる。

静かに近寄り、その姿を見た少女は絶句する。

それは絵里であった。
ここまで吹き飛ばされたのだろうか。
微かに指が動く。

「絵里!絵里!」

うっすらと目を開けた絵里は少女の姿を見つけると
弱々しく微笑む。

『ウヘヘ、やられ…ちった。
 ……は?

 良かっ…た、けが…してな…い…?』

「絵里!逃げよう!立って逃げよう!」

少女は絵里の肩を起こして支えようとするが少し無理があった。
絵里はその顔で弱々しく微笑みながら小さく首を振る。


806 : 名無し募集中。。。 :2015/04/15(水) 21:59:17
少女は辺りを見渡し助けを求めようとするが、
動く人影はいない。

『ねぇ……何でそんな…顔し…てる…の?
 せっか…くのか…わいい…顔が台無…しだ…よ。』

「絵里、ダメしゃべっちゃダメ!
 すぐ助けを呼ぶから!」

『いっ…つも心…配だった。
 ……だ…けみん…なにキ…ツくあ…たられて…。』

絵里はそっと少女の顔へと手を伸ばす。
そしてその指先で少女の頬を流れ落ちる涙を拭う。

『本…物はあ…たし…だっ…たのに…ね。』
その言葉にはっとした顔を見せる少女。
絵里は少女の頬から指を離すと涙を拭いた指先を
上に向け小さく力を込める。

『絵里…ちゃんか…ら最初で…最…後の贈り…物…。
 受け…取って。』


そう言った瞬間、少女のからだが一瞬光る。
それは絵里の持つ魔力の全てを受け取ったことを意味していた。

「絵里!…ダメだよ。まだだめだよ…。」

『んー……もう……え…りちゃん。
 お…ねむな…んだ。』

そして、また最後に大きく微笑み、少女に言う。

『一緒に…いれて楽し…かった…よ。
 また…ね。さゆ……。』

ーーーーーーーー





807 : 名無し募集中。。。 :2015/04/15(水) 22:02:32
ごめんなさいーーーー
本当にごめんーーーー

ばい作者


808 : 名無し募集中。。。 :2015/04/16(木) 08:52:54
これは…なかなか衝撃的な展開…まぁ避難所はパラレルワールドだから大丈夫!wそれにしても続きが気になるね〜これは過去の思い出なのかそれとも現在なのか・・・


809 : 名無し募集中。。。 :2015/04/16(木) 13:48:15
なんかすごいことになってるー!!!!

絵里の会話が『』だったり
「人間の友達があまりいない少女にとって数少ない友人」
とあえて「人間の」と強調してるところとか
気になる部分がチラホラと見受けられますな


810 : 名無し募集中。。。 :2015/04/20(月) 23:20:45
千鳥のノブってモーニング娘。のファンだと思ってたんスけど、

ダイノジの大谷ノブ彦との勘違いですかね?

今練ってる話に千鳥をしかもそこそこの役で出す予定だったからちょっとショックなんですけど。。


811 : 名無し募集中。。。 :2015/04/23(木) 21:51:13
さゆみの話を聞き、それぞれが不安を抱えながら各々の夜を過ごす。

聖もその一人であった。

もともとは聖が見つけてきた昔話に端を発し、
まるで瓢箪から駒のように話が進んでいった。

最初は存在そのものが信憑性の薄いものであったのに。

繰り返されてきた歴史。


その事実は普通の人間である聖にも少なからず
衝撃を与えた。

聖はさゆみ邸を暇し、香音と別れ、
自宅へ戻ると、まっすぐに祖父の書斎へと
向かった。

夜もいい時間であったが聖は遠慮なく祖父の
部屋の戸を開ける。

そこに人影はなかった。
聖の祖父は多趣味で数日前から留守にしていることを
聖は知っていた。


812 : 名無し募集中。。。 :2015/04/23(木) 21:55:51
「さてと…、ドコだったかなぁ…。
 おじいちゃんの本。」

聖は壁際にズラッと並んだ書籍を見渡しながら呟く。

幼い頃、祖父がよくみせてくれた世界の出来事を
集めた本。

基本的に聖が内容を尋ねると快く祖父はそれを
解説してくれていた。


昼間香音としていた話もその本を見ながら
してくれたものであった。


聖の記憶が正しければ、その話しには続きがあった。
少なくともその本にはまだページが残されていた。
なぜハッキリ覚えているかというと、
その物語のページだけ他のページにはない
ふしぎな輝きがあったからである。

だが、祖父はいつも途中で話を切り上げてしまい、
最後まで語ることはなかった。


いつも『必要な時が来るまでお預け』と言っていた。


さゆみの話と祖父の話。
似ている部分は多い。

恐らく祖父は何かを知っている。
この話に関わる何かを。


813 : 名無し募集中。。。 :2015/04/23(木) 22:03:22
「えっと…確かこの辺に…。
 あったあった。うわっ……」

ものすごい埃にまみれた本と本の間から見つけ出した
タイトルのない分厚い本。

不思議なことにそれは長年おいてあったにも関わらず、
一切の埃をかぶらず怪しい魅力を放っていた。

そしてやはりその中に一際ふしぎな輝きを持った
ページがあった。

当時の自分では気づくことはなかったが、
衣梨奈や里保と出会いそしてさゆみと過ごしてきた今、
直感的にわかる。

これは、魔力を持っていると。


聖はその本をゆっくりと祖父の書斎の机に置くと
椅子に座り丁寧にページをめくり始めた。


世界の出来事が事細かに書かれ、時折写真も見られる。


814 : 名無し募集中。。。 :2015/04/23(木) 22:06:36
そうしてページをめくっていくと突然見覚えのある写真が現れた。

「ここは、海岸?」

そこにあったのはM13地区にある海岸のものであった。

細かな文字の羅列を指で追っていく。


「あっ、あったあった。なになに…。
 『星堕つるとき世は厄いにまみれること必定なり。
 厄い止めしは稀なる力のもの。
 その力…』」

「また厄いを喚ぶものなり。」

突然聞こえてきた声に聖は顔を上げる。

「おじいちゃん!!」

「やれやれ。
 人の部屋に勝手に入るとはほめられたものではないのぅ。」

聖は慌てて椅子から立ち上がるとバツの悪そうな顔で
祖父の方を見やる。


815 : 名無し募集中。。。 :2015/04/23(木) 22:10:15
聖の祖父はその様子を見ながら小さく微笑むと
聖の下へと歩み寄り、その頭を優しく撫でた。


「ごめんなさいおじいちゃん…。
 でも聖どうしても知りたくて…。」


「うむ。好奇心や興味関心を持つことは大事なことじゃ。
 じゃが時に注意も必要じゃ。
 知りたい、手に入れたいという欲望は人を惑わすからの。
 この話もそうじゃ。力が欲しい、手に入れたい。
 そういった欲望が招いた悲劇なのじゃ。
 ちなみにこの本はある御方から授かったものじゃ。
 戒めとしての。」


そういうと祖父は聖の正面に座り話を始めた。


816 : 名無し募集中。。。 :2015/04/23(木) 22:12:38
「うんと大昔のことじゃ。
 ある小さな村があってな。
 そこに2人の少女がおった。
 その内の一人の子は魔道士でな。
 大きな力を持ってはいたが、今の時代とは
 異なりの、魔道士ということがバレれば殺される。」

祖父は一度言葉を切る。

「じゃから、その魔道士の子はの、自らの魔力の
 大半を親しくしていたもう一人の少女の中に
 隠すことにしたのじゃ。」


続く!


817 : 名無し募集中。。。 :2015/04/23(木) 22:24:21
毎回感想をありがとうございます
稚拙な文章で申し訳ない限りです

次回更新分で途中ですがとりあえず幕引きをしようと思っています

お付き合いいただきありがとうございました


818 : 名無し募集中。。。 :2015/04/23(木) 23:37:26
これから本格的に盛り上がっていきそうなのに
もう幕引きだなんてそんな寂しいことを・・・

「とりあえず」ということはそこから改めて続いてくれることも
期待しながら次回更新も楽しみにさせてもらいます


819 : 名無し募集中。。。 :2015/04/24(金) 08:30:43
強い魔法使いなら殺されないんじゃない?


820 : 名無し募集中。。。 :2015/04/24(金) 09:30:07
いつもありがとうございます

>>819さん


確かにもっともな意見だと思います
ただ、命を奪われることはなくても
社会的には殺されてしまうような
なんかそんな気がして今回このような表現にしました

作者の独りよがりということで大目にみてください(笑)


821 : 名無し募集中。。。 :2015/04/25(土) 00:49:32
最後まで書き続ける根性が無いなら
最初からやらなきゃいいのに
少なからず期待して読んでくれてる奴らを裏切るなよ
「一人でも応援してくれてる人がいる限り頑張ろうと思った」byガキさん


822 : 名無し募集中。。。 :2015/04/25(土) 01:41:23
いやいやいきなり何も言わずに投げ出して立ち消えならともかく
「とりあえず幕引き」と明言して話を一区切りさせようとしてるんだから
そこまで文句言うほどのことじゃないだろうに

そういう発言が出るのも面白い話への期待の裏返しなんだろうけど
せめて幕引きの内容を読んでからでも遅くないんじゃないか


823 : 名無し募集中。。。 :2015/04/25(土) 07:05:56
>>817
更新乙です 某スレのおじいちゃんの見聞録思い出したwおじいちゃんの正体も気になるところ…ラスト一話で謎が解明されるのか!?

>>821
いやいや気持ちは分かるけど「とりあえず」って言ってんだから構想固まるまで待ちましょ


824 : 名無し募集中。。。 :2015/05/01(金) 19:15:59
>>821
仰る通りです
見切り発車はよくありませんでしたね
ただ最初オチをてらにゃにしようとしていて
喉の件があって書くに書けなくなってしまって…

今回の更新を第一部完結としてまた構成練り直せたら投稿します

作者 


では続きです


825 : 名無し募集中。。。 :2015/05/01(金) 19:19:33
「親しくしていた友人の『中』に少女は自らの魔力を隠すことにしたのじゃ」


「えっ…。」
祖父の話は聖に衝撃を与えた。
しかし同時に一つ疑問が浮かぶ。
それは聖自身が気になるものである。

「ねぇ、おじいちゃん?」

「なんじゃ?」

「その魔力を受け取った女の子って魔法使いとかじゃなかったんでしょ?
 急にそんな大きな魔力持って大丈夫なの?」

聖の問いかけに祖父は大きく頷く。

「私も昔この話を聞いたときには同じような疑問を持った。
 じゃから友人の魔道士数人に聞いてみたのじゃ。
 そういったことが可能なのか。影響はどれくらいあるのかとな。
 返ってきた答えはみな同じであった。理論上は可能じゃと。
 だが普通はやらないと。だからわからない。
 どうやら『意思』を持つものに入れることは危険なようでな。
 移した魔力が暴走する事もあるそうじゃ。
 それを防ぐ為には魔力で魔力を抑えるしかない。
 つまりその子を護るためにはいつでも自分が近くにいる必要があるのじゃ。」


826 : 名無し募集中。。。 :2015/05/01(金) 19:29:16
「なんでそんなわざわざ面倒なことを…?」

「さぁのぉ、私にもわからん。
 じゃがこの話しは意外に有名でな。
 みんなこの話をしたときは鼻でわらっておった。
 じゃがひとりだけ物悲しそうに『よっぽど大事な存在だったんだな』と。
 今でもよき友人じゃよ。」

聖は少しずつであるが話の筋書きが見えてきた。
要はその魔道士の少女はリスクを冒したのだ。
その目的まではわからないが、他の魔導士が
やらない方法で自分の魔力を移したのだ。


「そう、影響にかんしてじゃが、ある程度は制御できるそうじゃ。
 じゃが、やはり感情の起伏で違ってくるみたいじゃの。」


そこまで祖父はいうと大きく伸びをする。

「聖、少しお茶にしようかの。」

そう言うと、ティーカップを2つ用意し
中にあつあつの紅茶をそそぎ入れた。


827 : 名無し募集中。。。 :2015/05/01(金) 19:38:16

「ほい。」
「あ、ありがとう」

聖が一口すすると口の中に柔らかな暖かさが広がる。
ふと聖はまた疑問がわいてきて祖父に尋ねる。

「それにしてもおじいちゃん、すごい詳しいよね?
 魔法のこととかもよく知ってるし。
 いつからそんなに詳しくなったの?」

聖の問いに祖父は答える。

「このM13地区は昔から魔道士と私ら一般人が
 お互いに何の気兼ねもなく付き合うことで成り立ってきたのじゃ。
 まぁあとは好奇心かの。
 今の時代本気になれば知れない情報などないんじゃ。」

後半、ニヤリと笑った祖父にアハハと聖は
曖昧にしか笑うことができなかった。

『知ろうとする』

聖が苦手とする分野だ。
香音や衣梨奈がサラッと聞けることが自分にはなかなかできない。

ただ今回の件は何かに突き動かされるかのように行動できた。

(少しは成長できているのかな…。)


828 : 名無し募集中。。。 :2015/05/01(金) 19:42:42
そう考えた聖がもう一口紅茶をすする。
するとなんだか急にまぶたが重たくなってきた。
目の前の祖父の顔が霞む。

(あれ…なんだか…急に…。)

眠気が急に襲って来た聖は慌てて紅茶を飲む。

(ダメ…。まだ続きが…。おじいちゃんの話の…。)


…………。

ぐっすりと机に突っ伏して眠る聖。

その背中にそっと毛布をかける祖父。


「すまんの聖。
 ここからの話は魔法界では禁忌なのじゃ。
 さて、聖はもう寝ましたぞ。
 しばらくは起きないでしょう。」

その声を聞き部屋の扉を静かに開けて入ってきたのは
さゆみであった。

「ごめんね、あなたにこんな役目を押しつけちゃって。」

「いえいえ、とんでもないです。
 孫のことではありますが、これがあなた様とのお約束ですから。」


さゆみは寝ている聖にゆっくりと近づくとその前髪をかきあげ、
額に人差し指を当てる。
さゆみの人差し指が一瞬淡く光る。


「うん、これで今日の記憶はきれいさっぱりなくなったわね。
 それにしても…。」


829 : 名無し募集中。。。 :2015/05/01(金) 19:47:39
さゆみはふと考え込む。


「やはり何か起きておりますかの。」
聖の祖父は入れ直した紅茶をさゆみに差し出しながら言う。

「ありがと。
 んー生田のに引けをとらない美味しさね。
 で、やっぱりあなたもそう思う?」

さゆみの問いに祖父は大きく頷く。

「昔からの友人から連絡が入りました。
 変異が起こると。気をつけろと。
 恐らく三大魔道士のあなたがいることを思って故のものでしょうが…。
 今までも確かに歴史上で変異は起きてきました。
 しかし今回は…。」

祖父は腕組みをして考え込む。

「何か不自然ってことね?」

さゆみの問いかけに祖父はカラカラと笑い頷く。

「何もかもお見通しという訳ですな。
 確かに不自然です。
 明らかな『意思』を感じます。」


「そうね。さゆみもそう思う。
 あーあ。面倒くさいけどちょっと警戒しなきゃかなー。」


さゆみは両手を頭の上で組み、いかにも面倒くさいというような
表情を見せる。

そしてすやすやと眠る聖を見て小さく呟いた。

「絵里…。今度は絶対護るから」


ーーーーーーーーーーー


830 : 名無し募集中。。。 :2015/05/01(金) 19:52:55
目の前で静かに息を引き取った絵里。

「絵里ーーーー!」

その動くことのないからだに顔をうずめながらさゆみは泣いた。
落ちる涙は絵里の亡骸を濡らしていく。

「ごめんね、ごめん…。護れなくてごめん…。」

そのとき、背後に人の気配を感じた。
先程の5人組である。

『ちっ、せっかく『変異点』にお目にかかれると思ったのにな。
 先にくたばっちまうとは。』

『でも、さっきこいつに魔力渡してましたぜ。』

『オイ、お前、『変異点』からの力を大人しく渡せ。』


その声にさゆみは顔を上げ、5人組に顔を向ける。

『なんだその眼は。
 大人しく『変異点』からの魔力を……。
 うわっ!』

さゆみへと手を伸ばしたひとりがその手を
見えない壁に弾かれ後ずさりをする。

次第にさゆみの魔力が高まっていく。


831 : 名無し募集中。。。 :2015/05/01(金) 19:57:07
「絵里は友達だった。
 さゆみの唯一の…。
 気を許せる友達だったのにぃぃぃぃ!」

静かに呟き立ち上がるさゆみから立ち上る魔力は
もはや恐怖を感じさせるレベルであった。

思わず、その場から後ずさりをする男たち。
距離を取り、さゆみを制圧しようと男たちがその手を挙げた瞬間、
小さくさゆみが呟いた。

「本当の塵になれ」

砂浜全体が眩い光に包まれる。
それは言葉で表現する事が難しい輝き。
だがその光が消えた後、その場にはただ小さな貝の欠片が
残っているのみで、その欠片も少し風が吹くと
微かな塵となって消え失せた。

それ以後、その少女の姿を見たものはいない。


ーーーーーーーー

第一部 完結


832 : 名無し募集中。。。 :2015/05/01(金) 20:00:39
長ったらしい更新でごめんなさいね←
こんな自分の作品に度々ご感想いただきありがとうございました

この後、さゆがどう動くかとかフクちゃんがどう真実にたどり着くかとか全く持ってノープランです

とりあえずお付き合いいただきありがとうございました

作者


833 : 名無し募集中。。。 :2015/05/01(金) 21:27:34
また気が向いたらぜひ続きをお願いしま〜す(^^)/


834 : 名無し募集中。。。 :2015/05/01(金) 21:31:12
続き良いね
作者さんの考えたストーリー展開こそ正解なのだから気長に続きを待ってます


835 : 名無し募集中。。。 :2015/05/02(土) 21:13:27
>>832
一部完結お疲れ様です『変異点』が現れ今後どうなっていくのか気になるところ…続き思い付いたらお願いします


836 : 名無し募集中。。。 :2015/05/15(金) 21:49:40
本日本編更新


837 : 名無し募集中。。。 :2015/05/16(土) 20:55:33
結局いまだに2ちゃんの仕様変更に付いていけずに
旧バージョンの2chmateにscのスレを取り込んで読んでる始末です


838 : ◆JVrUn/uxnk :2015/05/20(水) 20:11:40
「ちょっとぉ、最後までしっかりやりきりなさいよ!」

トレーニングルーム内に響き渡る鋭い声。

「す、すみません…。」
「ごめんなさい…。」

声をかけられた主は顔を見合わせ肩を縮こませて
すかさず反省する。

「全くもう!絶対に手は抜いちゃダメ!
 うたちゃん、もりとちゃん、常に戦場だと思ってよね。」


「「はい!」」


桃子の声に元気のいい返事をする2人。
その訓練風景を腕組みをしながら部屋の端で見守る桃子。

「はああああぁぁぁぁ!」

その様子を見て満足そうに大きく頷いた。


839 : ◆JVrUn/uxnk :2015/05/20(水) 22:07:55
「さて、今日午後からももちは任務に行ってくるからみんなはキチンと自主トレしておくこと!いーい?」
午前中のトレーニングが一段落し各員が肩で息をしているなか、桃子が声をかける。
すると、チーム最年少であるマイがすかさず反応する。

「ももち先輩!マイ達もたまには連れて行って下さい!」

その発言に桃子はゆっくりと他のメンバーの顔を見る。
口には出していないがそれぞれが同じような想いを抱いていることがわかる。

だが、桃子は首を振り、小指を立て諭すようにマイ達にしっかりトレーニングするよう告げるとトレーニング室を後にした。


『Berryz』が解散しそれぞれが選んだ道を歩み出してから早数ヶ月が経過した。

メンバーの殆どは執行局や魔道士協会に残る道を選んだ。
戦略的助言をするメンバーが多い中で
桃子は特殊チームの指導監督兼チームメンバーという異色のものを選ぶ。


840 : ◆JVrUn/uxnk :2015/05/20(水) 22:09:55
桃子自身が長い現場生活で培ったノウハウを後世へと伝えるため。

『Berryz』解散による執行局の戦力不足のイメージを払拭するため。


桃子が他のメンバーとは違う形で執行局へと残ったことで様々な憶測が飛び交った。
しかしながら桃子はそんな声を気にすることもないし、自分の選んだ道を後悔する事もない。


全ては自分がやりたいようにやる。
その想いを汲み取って機会を与えてくれた局長に桃子は心の底から感謝をしていた。

『Can Girl』
執行局が新たに作り上げた特殊チームだ。


大いなる可能性を秘めたチームであると思っている。
メンバー一人一人が個性派で、結成されてから数ヶ月ということを考えれば実力もそれ相応にあると思われる。
しかし、

「まだまだ甘いんだよなー」

廊下を歩きながら桃子は1人呟く。
先ほどのトレーニングの部分でもそうであったが実力はあってもまだまだ実戦では戦えない。
少なくとも桃子はそう思っていた。

本当の戦闘では一瞬の躊躇が命に関わる。
今は子どもの喧嘩というのが正直なところであろう。

リサやマナカは協会員としての経験を積んでいることからそれなりの厳しさは持ち合わせている。

だが、チサキやウタ、マイは経験も浅くそしてまだ若いということもあり桃子は
そのあたりをひどく警戒していたのであった。

「もーも!」


841 : ◆JVrUn/uxnk :2015/05/20(水) 22:12:37
考え事をしていた桃子は突然後ろから呼び止められる。
振り向かなくても分かる。

この声は千奈美だ。

「どーしたん?そんなしわ寄せちゃって?
 あー、ちぃ達とお別れしたのが寂しいんだぁ。」

普段と変わらないその明るさに桃子はホッとしながらも事情を話す。
現在千奈美はアドバイザーとして執行局に在職中だ。

自分とは何か違う視点を持っているかもしれない。

そんな期待をしていたのだが…。

「ウチらもさ、人のこといえた立場じゃないじゃんwトレーニング中脱走したし。」

「まぁそうなんだけどねぇ」

桃子は当時の自分を思い出す。
確かにあの時の自分と重なる部分は大きい。
あの時は訓練一つ一つが辛くて逃げ出したこともあった。

だが待ちに待った初任務の場でその甘さを痛感させられたのだった。

「あの子達には同じような思いをさせたくないからさ…。
 もも、嫌われてるんだろうなぁ…。」


そんなことを思いながら桃子は千奈美と別れ、司令室へと向かう。
そして自身の名前の下に『任務中』のプレートをかけ指示書にサインをすると自身の任務へと向かって行ったのだった。


842 : ◆JVrUn/uxnk :2015/05/20(水) 22:18:57
一方その頃トレーニングルームに残された他のメンバー達は桃子に対する不満を口にしていた。


「ずるいよずるい。ももち先輩ばっかし任務に行って!
 マイも早く出たい。」

「ホントだよね。
 ていうか絶対一人よりかチームで動いた方がいいのに。」

リサは年少組の意見を聞きながらも彼女たちをなだめる。
しかしその横ではマナカがまた違った表情をしてリサを見つめている。

「リサ…。」

「ん?どうしたの?マナカ。」

「私達、邪魔だと思われているのかな…。」


「!?」


マナカのあまりの言葉に絶句するリサ。

「そ、そんなこと…。」

「だって…。
 リサは絶対にないって言い切れるの?」

重苦しい空気がトレーニングルームに広がる。

そんなときであった。
突然ドアを叩く音がして、部屋の扉が開く。

メンバーが一斉に振り返った先に居たのはまだ来て日の浅い事務職の者であった。
その手には書類を任務内容を知らせる紙、いわゆる指示書を持っている。

「嗣永さんはこちらには?」

リサが代表して答える。

「もも…嗣永先輩なら先ほど別の任務で出動しましたけど。」

その答えを聞いて慌てたような困ったような表情を見せる相手。

「そうですか…。どうしましょう。出撃指示がでているのですが、今どのチームも出撃中で…。
 『Can girl』のみ待機状態だったので嗣永さんに行ってもらおうと思ったのですが。」


843 : ◆JVrUn/uxnk :2015/05/20(水) 22:36:43
みなさまこんばんは
今回は一念発起してカンガルで物語をと思っていたらまさかの…
マロが…

さみしいです


844 : 名無し募集中。。。 :2015/05/21(木) 02:02:07
カンガルの大冒険クル━━━━(゚∀゚)━━━━!!


845 : 名無し募集中。。。 :2015/05/21(木) 06:45:33
きたー!実は前作ラストからカントリーの話来るの密かに楽しみにしてました


846 : 名無し募集中。。。 :2015/05/22(金) 17:06:41
まなかんの活躍はまだか?


847 : ◆JVrUn/uxnk :2015/05/26(火) 23:55:05
「行きます!私達が!」
「えっ?」
声をあげたのはマナカであった。突然のマナカの行動にリサは驚く。

「ちょっとマナカ!」

「リサ!これはチャンスだよ!」

「でも、ももち先輩に黙ってそんな事したら…。」

「成功させればいいんでしょ?そしたら見直してくれるかも。」
「そうだよ。」
「やろうよ!」

他のメンバーも口々にリサに言う。

リサは目を閉じ考える。

(確かにこれは私達にとって最大のチャンス…。ここでとるべき行動は…。)

そしてリサは覚悟を決める。

「『Can girl』出撃します。」
「よっしゃ!」
「サクッと片付けてももち先輩にほめてもらおうぜ。」

「本当ですか?助かります!迅速に処理してきてください。
 こちらが指示書です。任務…は…です。サインをお願いします。
 現地までは転送魔法が使えますので。」

メンバー達が周囲で騒ぐ中、事務の人は早口で必要事項を伝えていく。
リサはそれを聞き漏らさないようにしっかりと耳を傾けていた。

ある一カ所を除いては。

もしこれが初任務でなくリサやマナカが冷静な状況であったならばすぐに気づいたはずである。

また、任務を持ってきたのが新人ではなく、例えば、舞波や佐紀など執行局が取り扱う任務内容を熟知している人間で
あったならばそもそもとして彼女たちの下に任務を持ってくることもなかっただろう。

リサもマナカもチサキもウタもマイも忘れていた。
自分たちの立場を。

魔道士協会における執行魔道士の役割を。


とにもかくにもメンバーは高まる気分のまま、転送魔法により任地へと赴くのであった。


848 : ◆JVrUn/uxnk :2015/05/26(火) 23:58:37
転送魔法により送られた5人。
辿り着いたのは、長閑な自然の広がる里山であった。

「リサ、目的地ってここ?」

リサが手に持った端末で自分たちの位置を確認する。

「いんや、もうちょっと先だね。ちょっと歩くみたい。」


目的の場所へと向かう5人。
ひさびさに外でということもあり、任務とわかっていても気分は高まり、足取りは軽くなる。

しかし、この数分後、彼女たちは本当の意味での任務を知ることとなる。





「これが…。」
「想像してたのと違う…。」

静まり返った庁舎。
至る所に魔法での戦闘痕が残っていた。
どうやら協会の支所が襲撃されたようである。

ウタやチサキが驚く中、リサは慌てて自分が受け取っていた任務指示書を見た。

そして思わず天を仰ぐ。

「しまった…。」


桃子から耳にたこができるほど言われていた事がある。


『この世界では勝算のない闘いはしないこと!』


「いい?リサちゃん。あなたはみんなを束ねる立場。
だから、一つの判断ミスが周りのメンバーを危険に曝すの。
任務ができるかできないか。その一つの判断基準がね…。」


「任務レベル?」

任務を経験したことのない年少組が首を傾げる。
そんな様子を見てマナカが説明をする。

「執行局が出す任務にはレベルがあってこれがアルファベット順になっていてA〜Fまであるの。」

リサは指示書をのある部分を指差す。
紙を覗き込むようにしてチサキ、ウタ、マイが集まる。


849 : ◆JVrUn/uxnk :2015/05/27(水) 00:05:23
「D…か。」
マナカがつぶやく。

そう。難度D。

あの鞘師里保が個人でこなすことのできる最高難度。

それは任務初心者の『Can girl』にとっては荷がおもすぎた。

従って、リサたちのこの任務における最終目標の意味合いが変わった。
目指すは任務の完遂ではなく、生き残ること。

そして救援を待つこと。
だが、現状を考えるとそれはなかなかに厳しいものである。
たしかあの事務の人は特殊チームはすべて出払っていると言っていた。

だから自分たちの元へと任務がやって来たのだ。
だがしかし、本来このレベルの任務は自分たちのレベルで受けてはならないもの。

どうすればよいのか…。

リサの気持ちの切り替えは早かった。
自分たちがまずは生き残るために早速メンバーを集めて指示を出す。


「ウタ。どう思う今回の任務?」

「うーん…。とりあえずは屋内戦闘でしょ?
 こういうとき固まって動くと身動きもとりづらいし
 何より個々の特性を生かすためにも、分かれて行動するのがいいと思う。」


島村嬉唄。そのもって生まれた魔法のスキルはまだ若いながらも底が知れない。

また、幼い頃から彼女は独学で戦略術を学んできた。
ありとあらゆるシチュエーションを想定した幾つもの戦闘パターンが彼女の頭の中には組み込まれている。

その豊富な知識をリサはとても頼りにしていた。

「よしそうしたらマナカはマイちゃんと嬉唄を連れて裏から潜入して。
 ちーちゃんは私と表から行こう。」


リサの言葉に全員が頷く。


850 : ◆JVrUn/uxnk :2015/05/27(水) 00:07:34
とりあえずここまで。

カンガルの特徴をとらえられていない気がする
何か不自然な部分(不自然だらけな気がしますが)あったら
指摘してください

お願いします


851 : 名無し募集中。。。 :2015/05/27(水) 08:03:53
リサさんらしからぬミスw話してる感じは違和感ないですよ
さて…いきなりピンチなこの状況をどう切り抜けるのか


852 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/01(月) 22:37:13
[裏手より]


「ちぃちゃんたち、大丈夫かなぁ。」
「梨沙ちん居るし大丈夫だよ。それよりも…。」

急にマナカの表情が険しくなる。

電気系統がやられているのか、室内に灯りは見えない。
そこでマナカは後ろにくっついている嬉唄に目で合図を送る。

その意図を悟った嬉唄は小さく頷くと地面に手を着け、『声』に耳を傾ける。

その間、マナカとマイは周囲に気を配り敵襲を警戒する。

小関舞。

父親は有名な魔道士でその名前は一部業界で広く知れ渡っている。
また舞自身も『Can girl』の一員となる前には別の組織に所属していた過去がある。

なによりも桃子を弄ることのできるほどの強心臓の持ち主でもあり元気さが
取り柄の若手魔道士である。

主に音魔法を得意としているため辺りの異変にすぐ気づくことが可能であった。

「「あっ!」」

嬉唄と舞が思わず声を上げる。


その声と同時にマナカが動く。
前に手をかざすと共に向かってきた魔力を吸収する。


そして、間髪入れずに打ち返した。


853 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/01(月) 22:54:59
稲場愛香。

そのふわふわとした出で立ちとは裏腹に多彩な技術を持つ魔道士.

もともと北の大地で組織を組んでいたこともあり経験豊富だ。
普段は梨沙のサポート役としての仕事が専らであるが一度戦闘となれば
桃子がいないうちでは『Can girl』随一の実力を誇る。

「まなきゃん!!」

突然の出来事に息を呑む2人。
対する愛香は暗闇を見つめ、集中していた。

「来るよ。」

愛香の声と共に3人組が同時に襲ってきた。その攻撃に対し愛香はキレのある動きで対処する。

通り過ぎる魔力は膨大で舞、嬉唄はその動きを固唾をのんで見守るしかなかった。

「これでどうだ。」
のんびりした高い声で氷雪魔法を放つ愛香。

とたんに辺り一面が雪煙と化す。
その瞬間頃合いを見計らったように舞と嬉唄は動き出す。
左右に展開し舞は周囲に微弱な音の流れを作り、嬉唄は細かい棘を無数に作り出す。

「「ダイヤモンドダスト!」」

「グワッ!」

殺傷力を持った攻撃は確実に相手を捉えた。
少なくとも2人にはそう見えた。
これでキマった。いつもバーチャルではこれで終わっている。


854 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/01(月) 23:04:23

そう思った次の瞬間、愛香の声が響く。


「嬉唄!舞ちゃん!そこで気を緩めない!!」


2人がその声にはっとした瞬間、真っ白な視界から急にひとりの魔道士が現れ
その手を自分たちの方へ向けているのが見えた。

慌てて防御魔法を張ろうとするが恐らく間に合わない。

「ふん、まだまだひよっこだな」


(ヤバい…やられる…。)

その恐怖から思わず、目を閉じてしまう2人。
強烈な魔法衝撃音が室内に響き渡った。

しばらくの静寂。

恐る恐る目を開けた2人が見たのはかばうように立っていた愛香であった。
やがて雪煙が晴れ、辺りの視界が戻る。



「ま、まなかん…!」

「大丈夫?嬉唄も舞ちゃんも怪我ない?」

そう言って2人を気にかけていた愛香ではあるがその身体は傷つき、至る所から出血していた。
愛香はもともと白い肌であるため一層、その赤さが際立つ。

しかし、愛香はそんなことを気にする様子はなく、再び、前方の3人組を睨みつける。


855 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/01(月) 23:12:08
そのとき、初めて、嬉唄も舞も相手の姿をはっきりと見た。
見るからに悪そうな出で立ち。

しかしそれよりも更に2人を怯えさせたのは彼らが纏う黒々とした魔力であった。
狂気をはらんだ魔力。

その流れの一つ一つが辺りに漂い、嬉唄たちを包んでいく。

一体何故、これほどの魔力に対して愛香が対峙できるのか不思議でたまらない。

だが、自分たちも執行魔道士だという意地がある。
3人の相手をし、肩で息をするように立っている愛香の横に嬉唄・舞も立つ。

そして魔力をフルに解放し眼前の相手を睨みつけた。


「ハッハッハ、元気のいいガキだな。何もんだ?てめぇら。」

「魔道士協会執行局 『Can girl』大人しく投降しなさい。」

「ほう、執行局か。ちょうどいい。俺たちの相手に不足はない。」

そう言って相手の中のひとりが声を発する。

「見たところ、成り立てってとこか。腐っても執行魔道士か。
俺たち『奪』われちゃうな。なあ?」
そういって笑いあう男たち。


その発言をきき、少し気が楽になる2人。ただ愛香は依然警戒を解く兆しがない。
じっとただ睨みつけている。

その様子を見て笑っていた相手の目つきが変わる。

「お遊びはここまでだよ、お嬢さん。」


続く


856 : 名無し募集中。。。 :2015/06/01(月) 23:20:15
まぁ〜たこれいいトコで…(^^;

もう既に次が待ち遠しい(笑)


857 : 名無し募集中。。。 :2015/06/02(火) 06:33:30
新人ながらも実力の一端を垣間見える戦闘良いねぇ〜でも相手が悪そうだ…ここからどう巻き返すのか?


858 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/05(金) 23:48:51
《表口》

「ちーちゃんほらもっとこっちこっち。」

「う、うん。」

リサはともに行動するチサキに声をかける。
チサキはリサの後ろにぴったりとくっついた。


「…やっぱり怖い?」

チサキは答えない代わりにリサにぎゅっと近寄る。


森戸千沙希
彼女、とてつもなく引っ込み思案なのである。
そして大の恥ずかしがり屋で、リサや愛香がちょっと(ホントにちょっと)
いじっただけでもすぐ顔が真っ赤になってしまう。
彼女自身組織に所属はしていたのあるが、
協会員としての経験がなかった嬉唄並みに素人感がでているのである。

ではなぜ、リサは千沙希をバディに指定したのか。

その理由は後々になって明らかとなる。

そろりそろりと歩みを進める2人。
その歩く道すがらリサは壁や床に小さな文字を描いていく。


859 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/05(金) 23:52:06
「リサちゃん、それ何してるの?」
知沙希の問いにリサはふふっと小さく笑う。

「これ、おまじない。
 室内戦の時はこうやって自分の通った後に印をつけていくの。
 そうすると退却の時迷わないでしょ?あとはいざって時の備えかな。」

そう言ってリサはまた一つ印をつけた。

執行局員としての仕事は多彩だ。
そのため各シチュエーションにおけるマニュアルの様なものが存在していた。
もちろんすべての状況をカバーしているわけではないがそれでも執行局の下部組織で
一時期訓練を受けたリサにはその習慣が身についているのであった。

だがその一方でリサはもう一つそれとは別の気にかかることがあった。

それは今回の敵の正体。

こうした大掛かりなことをしかけることが出来るとなると相手は複数。

(敵はどんなやつだろう。協会に不満を持つ連中は少なくない。
ただ、そいつ等の中でも、協会を襲える程の実力があるとなると…。)

「リサちゃん…!魔力が3つ!こっちに来るよ。」


860 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/05(金) 23:56:05
考えごとをしていたリサの思考を知沙希の声が現実へと戻す。
間もなくリサも自分たちに近づく魔力を感知する。

「OK。いい?ちぃちゃん。訓練を思い出して。焦りは禁物だからね。」

リサと知沙希はそれぞれの魔力を解放した。

刹那、衝撃を受けた2人は数歩後退する。

「へぇ?それ防ぐなんてなかなかいい反応するじゃん。」


暗闇から声が聞こえる。
現れた3人の姿を見てリサは知沙希を制し前へ一歩出た。

その腕につけている印を見てリサは今回の敵の正体に思い当たる節があった。
「今回の件はあなたたちの仕業だったのね…。」

リサは相手を睨みつけると小さくそうつぶやいた。
平和な秩序が保たれた現代において魔道士教会の占める役割は大きい。
各地で起こるトラブルの解決や魔道士にしか処理のできない案件。

そういった仕事をスムーズに行うためにも協会は組織化が進んだ。
だがその一方で統廃合によりその居場所を失う協会員もおりその一部は反協会はとして組織だっていたのだ。

その中でも協会が要注意をしていた組織があった。
リサは今目の前に立つ人物たちに見覚えがあった。
協会がリスト化している人物。


861 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/06(土) 00:00:08
だとすると、自分たちとの実力の差もおのずと見えてくる。
こうした思考を一瞬にして終えたリサ。

そして導きだした結論は…撤退。

少しずつ後退をするリサと知沙希。
その様子に気付いたのか。相手の1人がうすら笑いをやめ突然攻撃を加えてきた。

大きな大きな火の塊。それがリサたちへとぶつかるかと思われた次に瞬間、跡かたもなくその火は消えうせた。

「お前…今何をした。」

そう尋ねる相手。
その視線の先には先ほど放たれた相手の魔力をまとったリサの姿があった。


山木梨沙。
優秀な魔道士一族に生まれた彼女は幼いころから魔道士としてのいろはや上流階級としての教育を受けてきた。現在ではこの『Can girl』をまとめるリーダー的存在である。

だがそれよりも協会内の若手魔道士のなかで梨沙についての不思議な噂が立っていた。

山木への魔法攻撃は通用しない。

共に訓練を重ねた仲間たちは口々にそう言っていた。
その噂の陰に梨沙の実力が隠されていた。


862 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/06(土) 00:02:30
「はい、これ、お返しね!」

そう言って梨沙は先ほど相手が放った魔法と寸分たがわぬ大きさの炎の塊をうみだすと相手に向かって放つ。
相手の魔道士は手を伸ばすとその炎を受け止める。

が次の瞬間、苦痛にゆがんだ表情を見せる。

「ぐっ…きさま…何を…。」

ほかの二人も突然起こった出来事に驚き動くことが出来なかった。
そのすきを突いて背後から魔力を込めた知沙希の手刀が襲う。

「こんの…くそガキ!」

不意をつかれた二人は慌てて体勢を立て直すとそれぞれ魔力をこめ、攻撃を放つ。

しかし既に知沙希の姿は消え、そこには誰もいない。


「なるほどな…噂には聞いていたがお前たち…『Can girl』だな。」
先ほど梨沙の攻撃を受けた男が立ち上がりそうつぶやく。


863 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/06(土) 00:06:28
「『Can girl』?」
「あぁ。おれもまさかとは思っていたのだが、この闘い方。
 魔法構造を書き換える魔道士と思念を実体化させる魔道士。
 他にも珍しい魔法を使う集団だそうだ。」

「なんだそりゃ?聞いたこと無いぞ。
 思念は精神系魔法の類いだとしても魔法構造を書きかえるなんて…。」

「受けてみるとわかる。見た目は俺の魔法だったが中身が微妙に違う。
 恐らく構造式の一部を変化させて放ったのだろう。」

梨沙と知沙希は目の前のやり取りを警戒しながら少しずつ下がっていく。
自分たちの攻撃が通用したことで一瞬いけるかと思われたがすぐに魔法の正体に気付かれたことは意外であった。

そして思った以上にダメージを与えられていないこと。
この二点が二人に焦りを生じさせる。

「どうする?梨沙ちゃん…逃げ切れるかなぁ?」
「う…ん、わかんないけどやっぱりこのまま闘い続けるのは危険だよ。
 相手の人数も多いし。すぐに…。」

「なるほど。それは『奪いがい』があるな。」


864 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/06(土) 00:08:24
小さな声でやり取りをしていた二人をさえぎるように男が声を上げる。
その内容に二人は凍りついた。

慌てて身構える。

「さっきのお礼だ。おれたちの本気を少しだけ見せてやるよ。
 『影武者』!!」

真ん中にいたリーダー格の男がそう一言いったかと思うと横の二人の体が強烈な光を発する。
そのまぶしさに思わず顔を腕で覆う二人。

その閃光が収まり視界がクリアになった梨沙と知沙希が見たものは自分たちの周りを取り囲む無数の『影』であった。

「さぁ、楽しいゲームの…。」
男たちが不敵に笑う。

「やばい!!」
危機的状況を瞬時に察する二人。


「始まりだ。」


続く


865 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/06(土) 00:10:05
とりあえずここまで

森戸ちゃんの字は間違えるし誤爆はするしw
ごめんなさいねっ


866 : 名無し募集中。。。 :2015/06/06(土) 00:14:54
おつ!


867 : 名無し募集中。。。 :2015/06/06(土) 08:26:26
うわーこっちもピンチじゃん!もう続きが気になって気になって…

「ではなぜ、リサは千沙希をバディに指定したのか。」ちぃちゃん逃げてーって思ってしまったw


868 : 名無し募集中。。。 :2015/06/06(土) 10:19:28
俺もちぃくんのちぃちぃがヤバいと思ってしまった


869 : 名無し募集中。。。 :2015/06/06(土) 14:42:23
こんな所でちぃくんスレの住民がw


870 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/07(日) 23:16:54
《裏口より》

「音?音が何か関係があるの?」

『あぁ、大いにあるぞ。』

舞の父はそう言って自らの愛刀を取り出す。
長年、戦士として戦う舞の父を支え続けてくれた銘刀『裟之丸』


『同じ刀の振りでも芯で捉えるか否かでその威力が大きく変わる。
 芯で捉えることができれば多少の威力の差はカバーできる。』

「でも、その芯でとらえたっていうのはどうやってわかるの?
 普通、手応えじゃない?」

舞がそう聞き返すと父はその言葉に同意するように、大きく頷く。

『あぁ。もちろん舞の言うとおり手から感じる事も大切だ。
だが、それだけでは一般的な剣士と何ら変わらない。
相手が普通の人であればそれでも構わないがな。』

そう言って父は言葉を切る。

そして舞の頭を2度ほどポンポンと叩く。


871 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/07(日) 23:19:18
『私達が相手にするのは魔道士だ。
しかも闘いの場で魔道士と出会うということは即ち、奪う・奪われるの関係にある。
 ならば相手より優位に闘いを進めていくためにも何か一癖二癖あった方がいいだろう?』


手にした刀を構えた舞は父とそんな会話をしたことを思い出す。

銘刀『裟之丸』

舞が『can girl』の一員として正式に採用されたことが決定したときに父が託してくれた一振り。
微かに震える刀身はあらゆるものを切り刻む。

「Never be defeated」

舞はそう一言呟くとキッと前を見据え、同じく刀を構える相手に切りかかる。

ガキィィィィィィィィィィン

あたりには、金属同士がぶつかった音が鳴り響く。

舞は一度、相手の刀を突き放すと身を翻し、自身に向かっていた岩塊に一閃。

岩は真っ二つに割れ、舞の目の前に堕ちた。
そしてまた振り向きざまに数十合相手と撃ち合う。


872 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/07(日) 23:23:20
「舞!」
嬉唄が遠くから叫ぶ。
その声の響きすら、現在の舞の手中にあった。

「お前、たいしたものだな。
 その刀といい、特性といい、地味だが確実に相手を仕留める極意が詰まっているな。」

「…。」

一度距離をとった相手が肩にその刀を置き小さく口笛を吹く。


舞はこの空間にある様々な振動数の音を刀にまとわせていた。
地味と言われても構わない。

決して負けない。負けてはいけない。

それが常々父が口癖にしていたことだった。
幼き頃の舞には何故父がそこまで『勝利』に拘るのかその理由がわからなかったが、
実際に闘いの場に赴く立場となっている今、その気持ちが理解できた。

敗北=奪われる。

それだけは絶対に嫌だった。

斬り合う合間に相手が飛ばしてくる魔法を避けつつ舞は刀を繰り出す。
少し負傷はあるが、気にするほどでもなかった。

その間にも他の2人が闘っている音を感じ、舞は少し安堵した。


873 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/07(日) 23:25:26
その時であった。

相手が話しかけてくる。

「何故、お前たちは組織に属する?」

突然の問い掛けに舞はギョッとするが気持ちを立て直し、答える。

「何故ってそりゃ…組織には仲間がいるし…。」

だが、舞はこれ以上の考えが生まれてこない。
言葉に詰まった舞を見て言う。

「何故、組織に所属するのか。
 その意味もわからず最近の魔道士たちは協会へと登録される。
 しかもある程度の役職を与えられてな。
 もちろん、そこには組織立つからこその強さもあるが、縛られたことによって逆に失った強さもある。
 俺たちはな。」

相手はそこで言葉を切る。

「組織ではないからこその強みを持っている。
 例えば、こんな風にな!」

そう言って、開いては突然、懐の小刀を舞に向かって投げつける。
そして踵を返し、向こうで同様に闘いを繰り広げている、嬉唄の方へと向かった。


874 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/07(日) 23:27:49
それに対し、舞の反応が少し遅れる。

「嬉唄!」
叫びつつ舞も慌ててその後を追う。

舞の声でもう一人の接近に気づいた嬉唄。
しかし、その切っ先は既に嬉唄の方を向いていた。


「お前に何ら恨みはないがな。あばよ。」
そう言い男は刀を突き出した。

一瞬の静寂

驚きの顔を見せる嬉唄。
あとから追いついた舞もその状況を理解しかねていた。

男が貫いたのは嬉唄が闘っていた男の胸であった。

「ぐっ……。な…何…を。」

そう言って倒れる男。その体に魔力は残っていなかった。


「嬉唄!こっち!
 お、お前たち…。仲間じゃないのか?」
目の前で起きた出来事に放心状態の嬉唄をかばいながら舞は聞く。


「使えるものは使うまで。お遊びはここまでといったはずだ。
 もともと魔道士は奪い合いによってその能力をのばしてきたんだ。
 組織だの仲間だのそんな馴れ合い俺はいらない。」

そう言って男はまとう魔力をさらに増幅させるのであった。

続く


875 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/07(日) 23:29:16
今回の更新はここまでです

6月中には完成できればと思います


876 : 名無し募集中。。。 :2015/06/09(火) 22:17:26
手に汗握る戦闘!嬉唄ちゃん無事で良かった…


877 : 名無し募集中。。。 :2015/06/12(金) 14:34:34
密かに騒がれてる地下アイドル
覗けば誰でもできちゃう即○○の見返り^ ^
ガチでスイートのジュリちゃんから頂きましたww

http://snn2ch.net/s16/783rion.jpg


878 : 名無し募集中。。。 :2015/06/12(金) 22:11:01
残念ながら嬉唄ちゃんは無事じゃなかったようで・・・


879 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/13(土) 00:23:23
あう…

お…

マジかいな…


880 : 名無し募集中。。。 :2015/06/13(土) 01:44:49
うたちゃんの件知って真っ先にカンガ外伝思い出したわ…>>876なんて書いて安心してたのに現実で消えるなんて涙

作者さんには予定通りこのまま書いて欲しいです…本編だってさゆ出てるんだし問題ないはず!


881 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/13(土) 12:44:45
西の地平線に太陽が沈みはじめ、だんだんと空が朱色に染まってくる。
そんななか、桃子は任務を終え、執行局へと帰投していた。

「ただいま戻りましたぁ!って…あれ?」

ドアを開け、司令部へと声をかける桃子。
だが、部屋のなかはいつもと違った喧騒に包まれている。
あちらこちらに響くどなり声。ひっきりなしになる通信。あわただしく駆け回る職員

「なになに?一体何の騒ぎ?」

状況を掴めていない桃子。

とりあえず、手近にいた職員をとっつかまえて事情を聞く。
忙しいなかとっつかまえられた職員は半分迷惑そうな顔をしながらも相手が桃子では仕方がなかった。

手短に説明をする。

「協会本部の任務受領システムにウイルスが仕掛けられたらしく、システムがダウンしたようなんです。」

「えー!何?協会のセキュリティーってそんなにザルなわけ?」

腰に手を当て呆れた様子に少々むっとしたのか相手の職員は仕事へと戻る素振りを見せつつ、言葉を続ける。


882 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/13(土) 12:46:32
「それは我々に言われても…。
 とにかく、システムが一度ダウンしていたので任務内容とか任務レベルなどが正しく反映されずに出力されたようで、今はその跡追いをしているとこです。
 では。」


「ふーん…。そりゃ大変だぁ。」

話を聞いたところで桃子にできることは特になかった。
なのでとりあえず、トレーニングルームへと向かう。

「さぁてあの子たちはきちんとやっているかなぁ?」

トレーニングルームへの廊下を歩く道すがら、窓の外を何か白いものが横切る。
ただ桃子はそのことには気づかなかった。


システムトラブルの影響か局内全体が騒がしい。
そんな喧噪を横目に見ながら桃子はトレーニングルームの前に到着し、扉を開く。

「ちゃーんとやってるぅー…ってあれ?誰もいないじゃない。」


883 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/13(土) 12:49:11
トレーニングルームの電気は消え、室内には誰も居なかった。
しかし、そのこと自体、桃子は不思議には思わなかった。
むしろ、いたら誉めてやろうというような気概で居たくらいである。

桃子はトレーニングルームの窓を開け、夜の帳が下り始めた空を眺める。
こうして、外の空気を吸っていると疲れも少し癒えた気がした。

「さてと、いきますか…。」

誰も居ないのに長居をする意味はない。
今日やった任務の報告書を書きに戻ろうと桃子が窓を閉めようとしたその時、目の前を何か白いものが横切った。

普段ならばそんなもの気にすることのない桃子であるが
今日は何故かその正体を見極めようとその白い物体を目で追った。

「鳥?」

果たして、それは白い鳩であった。
鳩を見つめ続ける桃子。

一瞬であるが鳩と目が合う。


『ももち先輩!』


突然頭の中に響いてきた声にハッとした桃子。
しかし再び、目を凝らしてみると鳩は既に消えていた。


「嬉唄ちゃん?」


884 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/13(土) 12:50:51
桃子の心の中にざわざわとした不安が広がる。
周囲の喧騒もより激しくなってきた。

桃子は踵を返しトレーニングルームを飛び出した。


「もも!大変だよ!あの子たちが…。」


部屋を飛び出した桃子を呼び止めたのは佐紀と千奈美であった。

「大変って…。あの子たち今どこにいるの?」

そう聞いた桃子に佐紀が一枚の紙を渡す。
その紙を一目見て桃子は事態を悟った。


ガシャン

局内に鳴り響く警報音。

ガラスが破壊されたのだ。ただし内側から。

「もも!」

「キャプ、ちな、あとはよろしく。」

そう言って桃子は全身に魔力をまとい、足下に魔法陣を作り出すと
目にも留まらない速さで飛んでいった。


885 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/13(土) 12:51:56
「もう!ももったら…。難度Eのグループ推奨任務なのに!
 千奈美、すぐにあと追って!私は局長に報告する。」

「うん!」
佐紀の言葉に千奈美は大きく頷くと自身の魔力を解放させる。

そして桃子の破った窓から飛び出して行った。


続く


886 : 名無し募集中。。。 :2015/06/13(土) 20:16:22
あれ?
たしか難度Dだったような…
システムのせい?


887 : 名無し募集中。。。 :2015/06/13(土) 22:22:20
元々難度Dだったのがメンバー救出作戦も加わって難度Eに跳ね上がったんじゃない?


888 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/13(土) 23:18:47
あっ…
シ、システムのせい
いや難度が上がってでもいいですかね…
とりあえず難度Eでおねがいします


889 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/13(土) 23:44:23
(作者)…書き間違ったなんて言えやしない←


890 : 名無し募集中。。。 :2015/06/14(日) 01:22:43
言われなきゃ分かんないw


891 : 名無し募集中。。。 :2015/06/14(日) 17:48:31
まぁ難度上がった方がドラマチックだからOKw


892 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/15(月) 23:41:36
「くぅ…こいつら本当に強い!ちぃちゃん!退くよ」

「うん。」

2人は迫り来る影の戦士たちを1人また1人と倒しながら後退していく。
不思議なことに自分たちが歩いて来たそのままの経路を通って。

「梨沙ちゃんの言ってたもしもの時って…。」

「そう。相手のレベルがわからないときには何かしら印をつけて進むこと。
で、あとは…。」

「オイこら、コソコソ逃げてないで闘え。」

少しずつ、後退していく2人を追いかける男たち。
梨沙はわざと、狭い通路へと入り込む。

そこには梨沙の印はない。
さらに知沙希が目を凝らすと2人が向かう先は行き止まりであった。

「うわっ、り、梨沙ちゃん!行き止まりじゃん!」

「いいの。
そしたらちぃちゃん、螺旋階段のイメージ出してもらっていい?」

「えっ、あっうん。」

突然、耳元で囁かれた知沙希は耳を真っ赤にしながら頷くと
頭の中で螺旋階段のイメージを作り上げる。

そして周囲の壁へと少しずつそのイメージを伝えていく。


893 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/15(月) 23:44:55
「上出来!さてと。ここからは私の仕事か…。」
視界の端で梨沙は相手が自分たちを捕捉したことを感じる。
恐らくこの先が行き止まりになっているのを見て踏み込んでくるはず。


チャンスは一回。ここで仕留めなければ、おしまいだろう。



「ヘッヘッヘ、ついに見つけたぞ。
鬼ごっこは終わりだ。観念し…。」
おとこの一人がそう言い一歩こちらに向けて足を踏み出した次の瞬間、

「ちぃちゃん!伏せて!
 『double strand flame』!」

梨沙が叫ぶと同時に知沙希が伝えた
螺旋のイメージが梨沙が印してきた壁の魔法式に組み込まる。
更に梨沙が手を加えた魔法が発動した。


「うっうわぁぁあぁぁぁ…。」

全てを飲み込むかのように放たれた焔は男を包み込み、魔力を跡形もなく焼き尽くす。

顔を上げた2人が見たのは黒く焼け焦げ動かない男の姿であった。

「これ…死んじゃったの…。」
「いや…たぶん生きてると思うんだけど…。
 式間違えてなければ…。うん。」


894 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/15(月) 23:47:37
「そうだな、こいつはまだ生きてる。
使い物にはならないがな。」

突然背後から声がし、2人は凍りつく。
振り向いた梨沙の視線の先には別の男が立っていた。


「ぐっ…。あっ…。」


九尾に拳を喰らいその場に倒れ込む梨沙。

「魔法以外ならタダのクソガキだな。
ちょろいもんだぜ。」


「あっ、あっ…。」

知沙希は突然の出来事に恐怖しその場を動くことができない。


(ダメ!ちぃちゃん…思考を止めちゃ…。)

梨沙は知沙希に対し、伝えようと口を開くが思うように声が出ない。



知沙希は自身のイメージを魔法として出力ができる、いわば今までにない全く新しい魔法の持ち主。
属性に囚われない闘いができるわけで様々な闘いに身をおく執行局の特殊チームのメンバーとしては申し分ないと思われていた。

しかしながら、実際にそのとき動きを見ていた生田と桃子はすぐにその弱点に気づく。

思考を魔法として使うということは常に『考え』続けなければ意味がない。
また、新たな発想をし続けるというのも難しいものである。


895 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/15(月) 23:50:45
知沙希にはまだこの魔法を活かしきるための経験や知識が足りなかった。
そのため桃子は秘密裏に梨沙と愛香に指示を出した。


時折、舞が『知沙希を取り合ってる』と感じていたのはこのためである。
闘いの際には、梨沙もしくは舞の必ずどちらかと組むこと。

そしてなるべく強いイメージを出させること。
それが桃子から年長組の2人へと出されたものであった。

だが、今の知沙希は恐怖に埋もれ、また梨沙への攻撃に対してパニック状態に陥り
完全に思考が停止していた。


「まずは一人目だ。」

そう言って男が手を伸ばす。
暴れる梨沙はもう一人の男に押さえつけられた状態で動くことが出来なかった。



「あばっ…。ぐぁぁぁぁあっ…………。」

突然男の声がとぎれその数舜後、叫びとともに何かが壁にぶつかる音が聞こえてきた。


「なんか騒がしいと思ってきてみたら、なぁんだあんたたち桃んとこの子か。」


896 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/15(月) 23:51:28

「なっ、何もんだてめぇ!」

仲間を一瞬のうちに吹き飛ばした人物を影が取り囲む。

「チッ!桃んとこの子なら来なきゃ良かったー!まぁでも…」

その人物は少し栗色がかった長い髪を左右にふると顎をクイッと引き魔力を解放させる。

その大きさはあたりの空気を震わせるほど大きい。そして前をキッと見据える。

「恩を売るのもありかね」

夏焼雅 見参。


続く。


897 : 名無し募集中。。。 :2015/06/16(火) 00:28:24
雅ちゃんかっけー!!


898 : 名無し募集中。。。 :2015/06/16(火) 01:59:12
なんだこの雅が出てきたときの安心感w
てかちぃちゃん上がり性さえ直れば反則的な能力じゃん


899 : 名無し募集中。。。 :2015/06/17(水) 10:24:14
びちゃんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
ベリヲタ歓喜


900 : 名無し募集中。。。 :2015/06/18(木) 02:01:19
狼の飯窪の話より断然面白いね


901 : 名無し募集中。。。 :2015/06/18(木) 09:22:50
人の好みはそれぞれだかんね(しみじみ


902 : 名無し募集中。。。 :2015/06/18(木) 22:09:53
新スレ

娘。小説書く!『魔法使いえりぽん』 21
http://hello.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1434611793/

直接覗けない人ようにログ速sc経由
http://www.logsoku.com/r/2ch.sc/morningcoffee/1434611793/


903 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/18(木) 23:17:39
「なっ、夏焼さ…ん…!」

「梨沙ちゃん…大丈夫?」

梨沙が体をよろよろとさせながら立ち上がると、慌てて知沙希が駆け寄る。

「ここは私に任せな。2人は早くここから…。
邪魔だ、どけって!」

2人を庇いながら、雅は複数の影を相手にし次々とその姿を消していく。
圧倒的な数的不利のはずだった状況はいつの間にかなくなっていた。

しかし、戦っている雅の顔は険しい。
「卑怯なまねするなぁ…。そっちがその気なら…。」

そう言って雅は指にリング状のものを取り付ける。
そして、そのまま一気に加速すると、高みの見物をしている男へと殴りかかった。

ズドンと腹の底に響く音が辺りに広がる。
その音に思わず振り向く2人。

なんと男は雅の右フックを受け止めていたのであった。


904 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/18(木) 23:19:55
「おっお前…。」
雅の顔は驚きに満ちていた。後方へと跳び距離をとる。


「なかなかいいパンチだな。
雷属性か。正義感のこもった一撃。」

そこで男はニヤリと笑う。

「お前はそこの2人と違って楽しませてくれそうだ。
闇の本気、とくと味わえよ。」

そういうと同時に男は今までとは異なる魔力を纏い始める。
辺りが闇につつまれはじめた。

まるで闇が意思を持っているかのようにそこにいる人間の身体にまとわりついていく。

「ヤバッ!」

雅はいち早くその変化を悟り慌てて自分の周囲に魔力を解放させ、自分の周りの闇を弾き飛ばす。
そして同時に防壁魔法を張り、闇の侵入を防ぐ。

しかしながら、状況がわからない2人はその場を動くことができない。
自分たちの身体にまとわりついてくる闇を払おうと必死に身体を動かすが、
動かせば動かすほどしつこく体にまとわりついてくる。


905 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/18(木) 23:22:42
雅は2人のもとへと行こうとしたが、雅自身も少しでも下手に動くと
闇に行く手を阻まれ思うように動くことができない。

雅は誰かを護りながらの闘いを苦手としていたのだ。

そして、ついに完全に2人の姿は闇の中に飲まれてしまった。
それと同時に雅の端末が鳴る。

舌打ちを一つして応える雅。

「はい。何、キャプ?」

『あっみや?今どこ?
向かってほしい場所があるんだけど…。救出任務。』

「ふぅん。それって執行局系のメンバーとかの?」

『えっ、まぁそうなんだけど。何で知ってるのかな。
あっもしかして他の局員から連絡入ったとか!
とりあえず全員を無事に救出するのが目的。』

「あーじゃあ手遅れだ。」

『えっ?』
雅の発した言葉の意味がわからず聞き返す佐紀。

「今2人消されたよ。」
その事実を少し遅れて理解する佐紀。
端末の向こう側から大声が聞こえる。

『はぁぁあ?何?みや、今そこにいるの?』

「そっ!だからちょっと忙しいんだ。あとで連絡するね?」

そう言って雅は一方的に端末を切る。
そして、前を見据えると小さく一つ息を吐き出した。


906 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/18(木) 23:25:25

「ふっふっふっ。意外と薄情なんだな。
 お前。仲間を見殺しにするなんて。どうだ?我らの仲間にならんか?」

そう高笑いする相手。

だが、雅も不思議なことに笑っている。


夏焼雅は誰かを護りながらの闘いは苦手である。
だが目の前の相手をぶちのめす時は話は別だ。


「ちょうどよかった。これで心置きなく攻撃できる。」


そう言って雅は右の拳を握りしめ、前方へ鋭く突きを放つ。
その衝撃は闇を吹き飛ばし余すことなく相手にクリーンヒットする。

「ぐっ…。」

体勢を崩された相手。
苦し紛れに魔法を飛ばしてくるが、雅はそれを軽いフットワークでかわすと大きく前方に跳躍。

空中でどこからか取り出した剣を大きく振りかぶり、男めがけて振り下ろす。
剣と男の出した防壁がぶつかり合い鈍い音が響く。

雅はその反動で後方へと一回転し、着地する。
それと同時に先ほど吹き飛ばしたもう一人の男が放つ魔法を刀で捌いた。

そして、刀身に電撃を纏わせると一閃、あたりを凪払う。


907 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/18(木) 23:34:46
「はぁぁぁぁぁぁ!」

クレセント状の電撃が次々と影の戦士を消滅させていく。
更に雅は床に刀を突き刺し、身体を右に構えた。

その瞬間、暗闇を破るように巨大な影の触手が突き出されてきた。

雅はそれを避けると同時に左手で掴むと、すかさず魔力を込めた右手で殴りつけた。

電撃が触手を通じて男にも届く。

「ぐわぁ。」

響き渡る男の叫び。

2人の魔道士を相手にし全く寄せ付けない雅。

腰に手を当ててため息をつく。

「はぁ。そんだけぇ?ちょーつまんない。」

肩で息をするようになった相手の2人。
とどめを刺そうと雅が身をかがめた次の瞬間、

「イタっ!」

脇腹に激痛が走る。見るとそこには黒々としたとげが突き刺さっていた。

「い、いつの間にこんなもの…。」

脇腹に受けた傷は思った以上に深いようだ。
じわじわと血がにじんでくる。
そして気づくといつの間にか消したはずの影が自分を取り囲んでいるのが見えた。

「このっ!」

雅の不十分な体勢から放たれた蹴りはむなしくも空を切る。
そればかりか少しづつ魔力を吸収されていることに気付いた。

「闇の魔法…。夜叉か…。」


続く。


908 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/18(木) 23:37:17
今晩はここまでです
あと4回分ってとこですかね

ケメコのお話は描写が繊細なタッチで描かれていて自分はとても好きです


909 : 名無し募集中。。。 :2015/06/18(木) 23:59:12
夏焼さんひどいw『夜叉』って浪漫編はるなんの魔法か…他にも使える魔法使いいるんだな

自分もケメコ外伝作者さんの作品好きだな


910 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/20(土) 23:51:47
少しだけ上の階が騒がしくなった気がする。
梨沙達が戦闘を始めたのだろうか。

(だとしたら急がなくちゃ!)

愛香は繰り出された黒い塊を右手の鈎爪で払う。

そして、すかさず魔力を集中させ自身の鈎爪の温度を下げていく。
再び向かってきた黒い塊にその鈎爪を突き立てると、
塊は大きな氷の塊となって地面に落ちた。

「おりゃ!」
目の前で笑う男に飛びかかる。

愛香は北の地方出身であった。
そしてその体には僅かではあるが『狗族』の血が
入っている。

正統な血族ではないため姿を変化させることはできないが、
それでも十二分に強力な魔力を持っていた。

鈎爪は何度も何度も男を捉える。
だが男はそのたびに姿を煙に変え、ふわふわと
あたりを漂い愛香の攻撃をかわしていた。

「んもう…。どうすればいいのかな…。」


911 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/20(土) 23:54:50
思わず後ろを向き嬉唄と舞の無事を確認する。

だが、それは仲間を心配する人としては正しい行いであったが、
任務中の戦士としては間違った行為であった。

「戦闘中に敵に背を向けるとはな。」

その声にハッとして前に向き直るが既に相手の男は
自らの間合いにつめていた。

「しまった…!」

「『漆黒の監獄』」

男の呟きと共に愛香は複数の柱によって取り囲まれ
身動きがとれなくなってしまった。
いくら目の前の柱に鈎爪を立てても全く壊れる気配はない。

むしろ少しずつ闇の中に自分の身体が取り込まれて行くのを感じる。

「まなかん!」
「まなきゃん!」

嬉唄と舞の叫ぶ声が聞こえた。
自分が飲み込まれていく中、愛香も必死に叫ぶ。

「嬉唄!舞ちゃん!
 逃げて!ももち先輩に…。」


912 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/20(土) 23:58:54



嬉唄は目の前で起きた出来事により呆然としていた。
突然、自分が闘っていた相手が仲間によってその魔力を『奪われ』た。

また、愛香もその姿を消してしまった。

そして眼前には先ほどよりも魔力を増した相手。

「ほら、うたこ!逃げないと!」
刀を構えたまま小声で舞が囁く。

その声で正気に戻った嬉唄はもう一度、魔力を練り直し
空中から2挺の銃を取り出し、目の前の男に向けて発砲する。

いきなりの攻撃とその素早さに男の反応が少し遅れた。
銃弾は男の頬を掠めると壁に食い込む。


それを合図とするかのように舞も刀を構えると一気に突進、
突きを繰り出した。
しかし、その攻撃は触手に阻まれる。

その間も嬉唄は数発を壁に打ち込んでいく。
そして魔力を込めると壁の銃弾を操り男たちへと再度撃ち込んだ。
その攻撃を捌きながら男が呟く。


913 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/21(日) 00:03:55
「なかなか複雑な魔法だな。軌道が読めない。
 だが…。」

最後の一発を左手で払った男は右手をのばすと
小さく何かを掴むような所作をする。

その動きに首を傾げる2人。
だが次の瞬間、胸に激痛が走る。
まるで心臓を鷲掴みされているかのようなそんな感覚。

「あ…う…。」

あまりの痛みに思わず膝をつく2人。
その姿を確認するとスタスタと男たちが近づいてきた。

その時、ふと右手に温かさを感じる。
舞が嬉唄の手を握りしめてきたのだ。

(ここで私達負けちゃうの。
奪われちゃうの…。
舞も消されちゃう…。
そんなの…そんなの…。)


「絶対に嫌だぁぁぁぁ!」

突然、嬉唄は叫び、立ち上がる。
その体からは凄まじいまでの魔力が漏れ出ていた。


914 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/21(日) 00:08:02
「お前たちなんてお前たちなんて。」

その右手には嬉唄の身長を遥かに超える巨大な剣が握られている。
その間にも嬉唄の身体からは魔力がどんどん立ち昇り、剣を覆っていく。

嬉唄はそれを両手で持ち頭の上へ振り上げ、小さく呟いた。

「お前たちなんて死んじゃえばいいんだ。」

その一声と共に嬉唄は剣を振り下ろす。
それに対し、呆然としていた男たちはその動きを止めようと
慌てて攻撃を仕掛けた。

一瞬の静寂。

「あっ…。」

後ろで状況を見ていた舞は思わず声を漏らす。
嬉唄の振り下ろした剣の魔力により床は
同心円状に深くえぐれていた。
そしてその中心には嬉唄の剣を受け止めている雅の姿があった。

「だ…ダメだ…よ。
 嬉唄ちゃん…。そっちの世界に行っちゃ…。
 自分を強く持たないと。」

「何で…夏焼さん!しっかりしてください。」

「へへっ、効いたぁ…。でもまだ倒れる訳にはいかないんでね。」


915 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/21(日) 00:10:47
そう言いながらも膝をつき倒れ込む雅。
慌てて駆け寄る嬉唄と舞であったが雅は既に気を失っていた。


「オイ、お前ら何連れてきてんだよ。」
「すまない。意外と強くてな。」

「それにしても…。
 さっきの魔力、やはり生かしてはおけないな。」


そういうと男は右手を再び突き出し魔力を込めた。

「あばよ!」

そのときであった。
遠くから魔力が高速で接近してくる。

「もーーーもーーーアタァッッックッッッ!」

ズゴンという轟音と共に何者かが施設内に飛び込み、男の魔力を跳ね返す。

「あっ…!」


916 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/21(日) 00:13:22
凛とした姿で2人の前に立つ人物。
その様子に普段のヘラヘラした様子はない。
全身から怒りにも似た魔力が立ち込め、ただそれでいて
冷静な表情をしている。

「ももち先輩!」

その声にチラと桃子が目を向ける。

だがすぐに視線を相手の方へと戻した。

「あんたたち、『Can girl』に手を出したこと。
 そして、みやをこんなにしたこと…。」

桃子の姿が消える。
そして現れた先で相手の九尾と寸分違わぬ位置に肘鉄を撃ち込む。


「後悔させてあげる。」


続く


917 : 名無し募集中。。。 :2015/06/21(日) 08:09:23

もぉ〜もちせんぱぁあ〜い!!!。・゜゜(ノД`)

かっこよすぎるよももちセンパイ。。( TДT)


918 : 名無し募集中。。。 :2015/06/21(日) 10:18:29
怒りのももち先輩…泣きそう

しかも何気にミヤにがボロボロになってる事にも怒ってるのに感動…まぁやったのはうたちゃんだけどw


919 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/24(水) 23:26:57
執行局を飛び出した桃子は西へとその進路を向け、高速で飛んでいた。
冷たくなってきた夜風を浴びながらふと冷静になって考えをめぐらす。

(そもそも…なんであの子たちのもとに任務が?しかもよりによって難度が高いものを…。
協会本部の騒ぎのせいで確かに難度設定はミスっていたわけだけどそれでも難度Dで出力はされていた。
それをまだ結成して間もないあの子たちに任せるなんてね…。)


そこまで考えて桃子はある一つの考えにたどりつく。
その考えをどうしても否定する要因が見つからない桃子。

なお一層の不安を胸に抱え桃子はさらに飛行スピードを上げ目的の地へと急ぐのであった。



一方、時を同じくして桃子の出て行った執行局では局長である生田が佐紀からの報告を受け頭を抱えていた。

「なぜ、嗣永1人で向かわせてしまったんだ。
難度Eだぞ。本来であれば特殊チームが複数で対策を立ててから扱わなければいけない案件なのに。」

「だから、千奈美に跡を追わせたじゃないですか。
あと雅にだって今連絡を…あっもしもし?雅?

向かってほしい任務が…。」

佐紀は局長と話をしている間にも各地の元同僚や他の特殊チームと連絡を取る佐紀。
どうやら雅とつながったようだが。

「しかし一体なぜあの子たちに任務が流れた。
任務を持っていったのは誰…。」

「えっ?」

生田の思考は佐紀の大声によって中断させられる。
「ちょっとみや!みやったら!!」
「おい、夏焼がどうかしたのか」

慌てた口調の佐紀に生田がたずねる。
端末から耳を離した佐紀が困り顔で答える。

「それが…どうやらみやが現場で交戦中な様で…。
すでに2人消されたと…。」

「何!?それはどういうことだ。まさか死人が…。」

生田の背中に冷や汗が流れる。
「詳しいことは分かりません。ただ…。」
言葉を濁す佐紀。


920 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/24(水) 23:29:40

「ただなんだ。」
先を促す生田。
「今回の一連の流れなんか不自然だと思うんです。
なんというかその…仕組まれたって言うんですか。
あまりにも偶然が重なりすぎている気が…。」

佐紀の言葉に生田は腕組みをして考え込む。
言われてみればその通りだ。

協会のシステムが混乱し、そのせいで誤った任務情報が提供された。
そして偶々残っていた新人チームが派遣された。
しかしふたを開けてみれば派遣されたチームの手に負える任務ではなく救援が必要になる。

できごとの流れとしては自然であるが、確かにシナリオが出来すぎている。

「もし、お前の言うとおりこれが仕組まれたものであったならば…。」
生田はゆっくりと部屋の中を歩き始めた。
そして顎先に指を当て考え込む。

「執行局は彼女らの救援のために人数を費やしている。
もうすぐ救援チームが準備を整え出発する予定…。
特殊チームは出払い、必然的に局は非戦闘員が中心の手薄な状態となる…。
狙いはがもしそうだとしたら…。」

そこまで言うと生田は徐に机に戻り机上の電話を手に取る。

「おう、おれだ。生田だ。すまんがひとつ頼まれごとをしてくれないか?」






桃子の視界の先に目的の建物が見えてきた。
確かに感じられる魔力は大きい。だがここで桃子はあることに気付く。

(数が合わない…そんな…まさか…)

出発する前の白い鳩の言葉が頭をよぎる。
桃子は小さく魔力を込めると建物を気にせず一気に突っ込んだ。

「ももアタァァァッッック!!」
飛び込んだ先にいたのは複数の男たち。やはり相当な魔力を秘めている。

「ももち先輩!!」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

(よかった、無事だった。)


921 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/24(水) 23:32:09

しかし、ちらりと視線を向けた先の光景に思わず桃子は目を疑う。
嬉唄と舞に抱かれるように倒れていたのは何と雅であった。

その体は傷つき、いたるところから血がにじんだような跡が見えた。

また嬉唄と舞も傷だらけでほとんど魔力も残っていないように感じる。

夜風を浴びてきて少し冷静になったはずの桃子であったがここで沸々と怒りがわいてくる。


(絶対に許さない…。)


「あんたたち『Can girl』に手を出したこと後悔させてあげる。」

そう言って、魔力を開放させる桃子。


嗣永桃子といえばこの業界でその名を知らないものはいない。

元『Berryz』のメンバーとしての活動だけではなく個人での力も人々には伝わっていた。

そういったイメージがあった男たち。
だからこそ桃子の名前を聞いて一瞬ひるんだような表情を見せるが桃子が魔力を開放した瞬間、
その大きさに違和感を覚える。

(思っていたほどではないな…。)

じつは『Berryz』が解散してから桃子にはひとつの噂が囁かれるようになっていた。
「ももち結びを失った嗣永桃子は弱くなった」と。

トレードマークであったももち結びを確かに桃子は『Can girl』では一度もしていない。
そればかりか任務に赴くときもなるべく簡単な易しいものを選択するようになったと。

桃子自身はそのことをあまり気にしてはいなかったが周囲にはそう映るようであった。

(嗣永桃子、恐るるにたらず。これならひょっとすると案外簡単に目的を達せ出来そうだな)

そう考えている男たちの一方で、桃子は焦っていた。
昼間立て続けに難度Dの任務を3つこなしかつここまで全力で飛んできた。

(しまった…。任務用の魔力がほとんどない。)


922 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/24(水) 23:35:02

魔力を開放したのは良かったが今の状態では相手の男たちといい勝負…。
複数が相手なら予断は許されない。

だがそんな状況でも桃子は退く気は逃げる気は全くなかった。

「行くぞ。」

そう言って男の1人が姿を消す。
それと同時に桃子もその姿を消し男の出現ポイントへと先に現れ、蹴りを放つ。
だがその蹴りは空を切った。

今は男のほうが若干速い。瞬時にそのことを理解した桃子は大きく後方へと宙返りをすると着地と
同時に嬉唄と舞に狙いを定めていた男に攻撃を仕掛ける。

「コユビ――ム!」

かわいらしいネーミングだが威力は抜群。
すんでのところで交わした男の背後の壁が大きくえぐれる。

辺りが煙に覆われる中、桃子の鋭敏な感覚は男たち一人一人の魔力を確実にとらえ始めていた。

スッと桃子が体勢を低くする。

その瞬間、黒い触手が桃子の頭上を通り過ぎる。

桃子が右手を少しずらし、空を切り裂くと、音もなく触手は真二つになり落ちる。

その落ちた触手を拾い上げ、指を軽く振るうと桃子の手の中で触手は白い球に形を変えふわふわと
桃子のまわりを浮かんでいた。


離れた位置で雅の介抱をしつつ嬉唄と舞は目の前で起こる闘いに目を奪われていた。

「凄い…。これが魔道士の闘い…。」
「ももち先輩…。」

派手な動きはないがそれでも桃子が魔力を発動するたびに辺りの空気が震える。

と、その時であった。後ろから声をかけられる。

「あちゃあ、みや、手ひどくやられたねぇ。
まっ、ちぃがきたなら大丈夫か。
 2人もだね。」

その声に2人が振り向くと闘いの場に似合わないほど屈託のない笑顔を浮かべている
千奈美の姿があった。

「徳永さん!!」

「よしわたしにまっかせなさーい。『チナミスマ―イル!』」

続く。


923 : 名無し募集中。。。 :2015/06/25(木) 01:07:16
ももち先輩パート良いねぇ〜てかDランクの任務を3本って…
やはり当初Dランクの任務が救出任務も追加されてEランクになったんだねー(棒)


924 : 名無し募集中。。。 :2015/06/25(木) 09:31:35
何かももちが格好いい


925 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/27(土) 00:29:55
闘いを繰り広げている桃子と男たち。
最初はそれこそ互角の闘いであったが、闘いが長引くにつれ少しずつ桃子の魔力が相手に押され始めた。

そのことを残念にも相手も悟ったようだ。
一層攻撃を加えてくる。

「くっ…。」

その背後では千奈美が3人の治療をしながら自分たちに向いてくる攻撃に対して対応をしていた。

「いやぁ!もう、集中できないじゃん。」

だいぶ傷は癒えてきた。
しかし雅はまだ目を覚まさない。
その姿を心配そうに見守る2人。

「『道化師の呟き』。」

敵の繰り出す魔法はことごとく闇属性のもの。
その闇に取り込まれないように桃子は少しずつ押されながらも具体的なプランを頭でねる。

(あー、もうくそ。闇って戦いにくいんだから。)
桃子は後方へと大きく跳躍すると空中で一回転。
着地と同時に床に大きな魔法陣を出現させる。

そしてその魔法陣めがけて蹴りを打ち込む。

「ぐはぁ!」

遠くにいた男の一人がうめき声を上げる。

みると男の顔面には桃子からのけりが炸裂していた。

「この空間は支配したからね。喰らいなさい!桃アタック!!」

そう叫ぶや否や分身する桃子。
その一人一人が目にもとまらぬ速さで蹴りやこぶしを打ち出す。

その一撃一撃はこちらへと向かおうとする男たちの足を止めていった。

(ふふふ、このままのペースでいけば…)


926 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/27(土) 00:32:41

その時であった。
ふと聞こえてきた男の声によりその思考が吹き飛ぶ。

「お前もさっさとあいつらみたいに吸収されやがれ!」

その言葉はドリルのように桃子の耳へと突き刺さる。

『アイツラミタイニキュウシュウ』

(あいつら…あいつらってまさか・・・)
その言葉により桃子は自分の何かが外れたような気がした。

桃子が突然動きを止める。
それを好機とばかり相手の男が放った魔力が桃子の体に当たった。
しかし桃子の体には傷一つついた様子はない。

それどころか先ほどまでなくなりかけていた魔力がその質を変えどんどん大きくなっていく。

「も、ももち…先輩?」
「あっ、これやばいかも…。」
突然の桃子の変わりように首をかしげる舞。
その一方で千奈美の顔には焦りが見える。

『アイツラミタイニキュウシュウ』
『アイツラミタイニキュウシュウ』

桃子の魔力が一瞬消える。

それと同時に今まで目をとじたままであった雅がその目をぱちりと開けてガバっと立ち上がり、叫んだ。

「みんな伏せて!!」


「お前たちを許さない!!」
雅が防壁魔法を全開で張るのと同時に桃子から一筋の光が立ち上る。

その光は渦となり中心にいる桃子の体に次第に収斂していく。
すべてが静寂に包まれた次の瞬間、すさまじい衝撃が周囲に広がった。


927 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/27(土) 00:35:26




ここは桃子たちの闘っている地域から遠く離れたM13地区。
里保は亜佑美とともにいつものようにさゆみの家で夕食後の歓談を楽しんでいた。


その時、体の芯から凍りつくような魔力を感じ思わず立ち上がり身構える。

(敵襲じゃ!)

横をみると里保と同様に亜佑美や衣梨奈、遥、春菜ですら立ち上がり何事かと身構えている。
そのなかでさゆみだけはのんびりとお茶を飲んでいた。

「ほら、みんなどうしたの?早く座りなよ。」

さゆみが少しおかしそうな声でみんなを促す。

「道重さん!」

「ふふっ、大丈夫よ。ちょっと本気を出す気になったんじゃないの。
 まあこの後のほうが大変だけどね」

そう言ってさゆみはまたおかしそうにひとつ笑うとお茶をすすった。






あまりの衝撃に思わず目を閉じた2人だが、風を感じ恐る恐る目を開ける。

その目に映ったのは雅が瞬間的に張った防壁魔法。
それとまっさらな平原であった。
そこが外だと2人が理解するまでにしばらく時間がかかる


そこに広がっていたのは見える限りの平原で各地に建物の基礎部分が残っているのみ。

そしてその中心にいたのは桃子と傷ついた男たちであった。

「ぐ…。きさま…。」

かろうじて防壁魔法を発動させていた男たちであったが桃子の爆発的な魔力に防壁魔法は破られたようだ。

すっと桃子が右手を上げる。
その瞬間に男のひとりが吹き飛ばされる。


928 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/27(土) 00:37:18
「弱くなったって思ったんでしょ?じゃあかかってきなさいよ。」
桃子の語り口にはいつもとは違う冷たさが混じっている。

普段とのあまりの違いに嬉唄は雅に尋ねる。

「夏焼さん!ももち先輩何が起きたんですか!」

「うーん、あれは『リミッタ―オフver2.0』なんだよね。
 ああなると桃を止めるのは大変なんだよなぁ…。
 とにかくここからは離れよう。今巻き込まれたら正直きつい。」

そういう雅の腕にはまた新しく傷が出来ていた。

「夏焼さん、腕が。」
その腕を慌てて治癒させる千奈美。

「ありがと。ふぅーーそれにしても危機一髪だったなぁ」

そう話している間も男たちは桃子に攻撃を仕掛けようとする。
だがそもそもとして近づくことが出来ない。

桃子が一にらみするだけで体が勝手に距離を取っていく。


男たちが桃子から感じていたのは強力な魔力だけではなかった。

殺気。

近づいたら確実に命を奪われるという恐怖感。
男たちの背中には冷や汗が伝う。

「ふうん。来ないんだ、じゃあ時間の無駄だね。
 ならさっさと寝てくれる?」

そういうと桃子は再び分身する。
そして四方から男の一人に対して襲いかかる。

「こ、こいつ…。はや・・・」


929 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/27(土) 00:38:48

気付いた時には既に桃子は目の前にいて通り過ぎていた。
そのことを悟った瞬間全身を激痛が駆け巡る。

体中に残る魔法の傷。
その一つ一つがまるで意思を持つかのように男の体をむしばんでいく。

「うあぁっぁ…。た、助けてくれ…。」

だが、そう言い終わらないうちに男はその場に倒れた。
その様子を見ていた桃子。


「まずは1人。」
桃子は不敵にほほ笑んだ。



続く


930 : 名無し募集中。。。 :2015/06/27(土) 07:34:17
何だろうねこのカッコ良さ


931 : 名無し募集中。。。 :2015/06/27(土) 10:42:10
この桃カッコ良さは惚れるなw
Ver1.0がどうなのか気になるところ…


932 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/27(土) 15:10:31
カッコいいももち書けて満足です

ver1.0はベリ編の時の『ももち結び』を解いた時のです(勝手に←

今スレが終わる頃には終わりまで書けると思います
そしたら短編を一つはさんで戦国編を書こうと思います


933 : 名無し募集中。。。 :2015/06/30(火) 01:58:58
本スレ落ちてる・・・


934 : 名無し募集中。。。 :2015/06/30(火) 08:10:11
かっこいいな
ももちに惚れ惚れとするわ


935 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/30(火) 23:29:02
右も左もない真っ暗な世界の中、梨沙はこの状況をなんとか打開しようとしていた。

吸収されたのは至極一瞬。
だがその一瞬で梨沙は『視た』構造をその記憶に焼きつける。

閉ざされたこの空間で目を覚ました時、
梨沙は記憶を頼りにこの魔法を打ち破ろうと思考をフル回転させあの手この手を使った。


だが、何かしっくりとこない。あと少しのところで止まってしまうのだ。
恐らく、この魔法自体、自分の知識からかけ離れた位置にあるのだろう。

だから途中で間違える。
それでも梨沙は独りでぶつぶつと呟きながら魔法式を組み立てる。

闇に己の心が飲み込まれないように。

「もう、梨沙ちん少し静かにやったらぁ?」

「うるさいな〜。今集中してるんだから静かにしてって。」

そう返された相手はしゅんとした様子で肩を落とす。

「はーい、だってさぁ、ちぃちゃんどうするぅ?」

「えっ、えっー!?そこで私に話を振るの?」

ここで漸く梨沙は外野から聞こえてくる声が聞き覚えのあるものだと言うことを理解する。

クルッと後ろを振り向くと、そこには今まで一面の闇であった空間に
ぽっかりと穴が空いたのかのような明るい空間が広がっていた。

そしてそこには愛香と知沙希がいる。

「どどど、どうして2人とも!?」
いきなり事態に混乱する梨沙。

「んー?何がー?」
ニコニコしながらそう返す愛香。

「だってぇ、さっき梨沙ちん、静かにしてって言ったし。」

「ほらっ!時間無いんだから遊んでないの!」
ムスッとした梨沙の耳に
突然聞こえてきた厳しい声。この声は…。


暗闇から現れた人物に梨沙は驚愕する。
「あっ、あなたは…!」


936 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/30(火) 23:33:32




「まずは1人」

そう不敵に笑う桃子。
その表情には普段、舞や嬉唄に見せるような優しさはない。

むしろ好戦的なそんな顔をしている。

桃子に倒された男は身動き一つとることはない。
桃子は男に近づき、右手をかざし、『奪う』魔法の発動を始める。

本来であれば、ここで桃子が『奪う』魔法を発動させ、決着がつくはずであった。
しかしながらここで奇妙なことが起こる。

倒れた男の身体がどす黒く闇に包まれていくのである。
またもう一人の男の周りにも黒い影が迫る。
その闇から逃れようと必死にもがく男であったが、もがけばもがくほど身体を覆う闇が濃くなっていく。

そして完全に男の体が闇に包み込まれた瞬間、突然宙に舞い上がったかとおもうと
黒い触手を持った男の身体へと吸い込まれていった。

「えっ!?」

目の前で起きた出来事に離れて戦況を見守っていた嬉唄や舞、雅、千奈美らから驚きの声が上がる。

「あっ、あのひとたち…。吸い込まれちゃった…。」
「どうなってるの?」

その様子を特に表情の変化なしに見ていた桃子。
そして、完全に3つの魔力が同化するのを確認すると小さく口笛を吹く。

「ふうん、よくできた、『分身』なんだね。
自我を持つほど自分と離れていたのに。
それを捨ててまでしないと私には勝てないのかな?」

そう言われた男は少し悔しそうな顔を滲ませるがその身に纏う魔力は先程までと異なり、
完全に別なものとなっていた。

そしてその大きさもかなり大きなものとなっている。

雅はその魔力を肌で感じながら、桃子の方をちらりとみる。

相変わらず、その魔力の大きさはぶれることがない。


937 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/30(火) 23:36:21
両者は互いに距離を取り対峙する。


一瞬の静寂。


周囲の人間が固唾を飲んでその模様を見守る中桃子の身体から淡い桃色の魔力が、
男からは黒い煙のような魔力が立ち上る。

2つの相反する魔力が渦巻く中でその渦はやがて大きく膨らみ始める。
じわじわとその距離を縮めていく2つの魔力。

そして膨らんだ互いの魔力がある一点で交わった瞬間、辺りに強烈な爆発を巻き起こした。


その魔力の激突による爆風は避難をしている嬉唄や舞の元へも届く。

「うわっぷっ!」

「ちょっとあんたちもちゃんと防壁魔法、張りなさいよ!」

「はいすみません!」

またもや寸でのところで雅の防壁により難を逃れた2人にたまりかねた雅が怒る。

しかしながら、そう言われて今の2人にはどのような防壁魔法が有効なのかてんで検討がつかない。


まごつく2人の姿を見て雅はまた小さく舌打ちをする。

「ほらっ、こうすんの。」

そう言うと雅は舞の頭に手のひらを載せると自分の魔力を分け与える。

「ほらっ、嬉唄ちゃんも!」

続けて雅は嬉唄にも同じことをしようとその頭に手を載せ魔力を込める。

(?)

ふと違和感を感じ、手をどける雅。
そして己の手をじっと見つめ不思議そうな顔をする。


しばらくの無言のあと、何かを察したような顔を見せた雅は千奈美に声をかける。

「ごめん、ちぃ!この子、『体質的』に防壁魔法張るの苦手みたい。
 ガードよろしくー。」

雅はあえて『体質的』という言葉に含みを持たせた言い方をする。
それを聞いた千奈美もしばらく考えるような表情をしていたがやはり何か感づいたようだ。


938 : ◆JVrUn/uxnk :2015/06/30(火) 23:37:25

大きく頷くと嬉唄を手招きし自身の防壁魔法を大きく張る。

その姿を見て雅は今日3度目の舌打ちをした。

「全く…。局長も桃も何考えてんだか…。」


続く


939 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/01(水) 00:11:05
本スレ書き込めないんだよなぁ…
でも本編読みたいから残しておいてほしい!


940 : 名無し募集中。。。 :2015/07/01(水) 06:53:14
やっぱべりのお姉さま方は頼りになるなぁ喜唄ちゃんにも何か秘密が…

本スレ落ちちゃってたのか・・・


941 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/02(木) 00:08:05
2つの魔力が衝突する。
それぞれの中心では桃子と男が互いに一歩も動くことなく対峙していた。

しかしながら、時折、聞こえてくる爆発音や通り過ぎる魔力はただ2人が突っ立っているだけでは無いことを物語っている。

(そういえば…。)

舞は父の闘い方を思い出していた。

数が多い相手には父は割と動き回って自ら相手の元へと向かっていた。
しかし、一対一の闘いでは刀を構えたまま長いにらみ合いをしていた。

舞が不思議に思い、一度父に尋ねたことがある。
その時の父からの答えは『空間を支配する』というものであった。

「複数の魔道士と交戦するときにはその一人一人の魔力が互いに干渉的に働く。
それは仲間同士であってもだ。
だから、連携がとれていると思っていても実は実力を発揮し切れてない可能性は否めない。
だから、積極的に動くことで自分が実力を発揮できる場所に移動する必要があるんだよ。」

父はビールを片手にそう語っていた。 舞は再び目の前の闘いに視線を戻す。

この闘い、目でみると動いてないように見える。
だが、もし魔力で『視る』となると…。

「あっ…!」 思わず、舞は声を漏らした。

止まっていると感じた2人の周囲に幾重にも魔力の塊が、打ち消しあってはまた現れていく。

そして、その魔力の塊はまるでオセロをしているかのように『空間』の奪い合いをしていたのだ。


942 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/02(木) 00:10:16
「すっ、すげ…。」
「桃は空間支配の鬼だからね。そのうち決着つくんじゃない?」

雅がそういった瞬間であった。
一瞬の隙をついて桃色の魔力が黒い影を包み込む。


そのことを感じ取った男がそちらへ意識をふっと傾けた瞬間、別の場所から一気に桃子の魔力が
完全に男の魔力を包み込んだ。

「し、しまっ…。」

「これで終わりよ。『Degration of alchemy: Magphagy』」

桃子がそう叫ぶと包み込んだ魔力の外側からいくつもの小さな魔力の塊が飛んできて大きな魔力の塊へと融合していく。
そのたびに少しずつ男の魔力が桃子へと吸収されていった。

そして、今まで空間にあふれていた魔力が嘘のように消える。
そこには魔力を完全に吸収され立ち尽くす男とそれを見つめる桃子の姿があった。

「「ももち先輩!」」
後ろから大きな声とともに突然衝撃を感じる。振り返ってみるとそこには顔をくしゃくしゃにしてなきながら抱きついてくる嬉唄と舞、
そしてその様子をあきれ顔で眺めている雅、千奈美の姿があった。

空はいつの間にか白み始め遠くからはいくつもの強力な魔力が近付きつつある。
どうやら救援が到着するようだ。

敵は一掃した。
だがこれですべてが終わったわけではないことを桃子は分かっている。

しかしながら今は小さなルーキー戦士たちの無事をたたえるように
桃子は嬉唄と舞の頭をポンポンと2回小さく叩くのであった。


943 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/02(木) 00:10:51





人気がすっかりなくなった執行局。その中でうごめく影が一つ。
辺りをうかがいながらそっと歩みを進める人物はやがてある部屋の前で立ち止まる。

『記録室 常時施錠』

その人物は懐から鍵を取り出し慎重に鍵を開く。

カチッ

小さな音とともに扉のカギが開く。その人物は誰にも見られないように素早く扉をあけると中にもぐりこんだ。
いくつもの記録名簿が並ぶ中、その人物はまっすぐにある戸棚へと向かう。

「ここか。」

徐に一つのファイルを取り出すとページをめくり始める。
「あった。これだ。」

『島村嬉唄 Can girl』

そのページを見つけまさに破り取ろうとした瞬間、

「何やっとるのかなぁ?」
背後から声をかけられる。

その声に動きを止め振り向こうとした瞬間、その人物の意識は飛んでいた。
声をかけた人物はゆっくりとファイルに近づくともとあった棚へと戻す。そして魔法で再び鍵をかけるとひとつため息をついた。

「生田のこういうとこの勘は侮れないんだよな。」

卓偉はそう言って倒れたままの人物を魔法で浮かしその場から消すと部屋を後にするのであった。


続く


944 : 名無し募集中。。。 :2015/07/02(木) 01:10:27
続ききてた!
やっぱ面白いですな
続きが気になる
敵の目的は?山木ちゃんたちはどうなったんだ?
ますます続きが楽しみだな


945 : 名無し募集中。。。 :2015/07/03(金) 23:26:07
卓偉の兄貴!


946 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/04(土) 00:21:17
若き2人の戦士をある程度ねぎらった桃子。

しばらくは照れたような顔をした2人であったが、突然暗い表情を見せる。

「ももち先輩…、愛きゃんが…。」

その一言に桃子の顔から笑みが消える。
そこに追い討ちをかけるように雅も続く。

「あー、そういえばもう2人いたんだよなぁ…モゴモゴ」

「シーッ!ダメだってみや!そんなこといま言ったら…」

「あっ…。」

慌てて千奈美が雅の口を塞ぐが時すでに遅し。

ゆっくりと男の元へ歩みよる桃子。その背中からは魔力は感じない。
その代わりに漂うのは冷たい殺気。

男は自らの魔力をどうにか使おうと必死になり桃子の接近に気づく様子はない。

「クソっ!クソっ!何で使えねーんだよ!
 俺の魔力俺の魔力…。」

「るっさい!!」
桃子は1人騒ぐ男の額に強烈な頭突きを喰らわせる。

そしてその衝撃により意識が飛びかけた相手の胸ぐらをつかみ引き寄せる。


「さっさと吐きなさい!あの子たちどこにやったの。
 言わないと殺すわよ!」

「も、ももち先輩…?」
あまりにも凶暴な物言い。
このままでは本当に相手の男を殺しかねない勢いに
思わず嬉唄と舞が駆け寄ろうとした瞬間、何者かによって肩を掴まれる。

なにものかと2人が後ろを振り向く。がその瞬間あんぐりと口が開いてしまう。
雅や千奈美もまさかといった表情だ。

その人物はスッと頭に手を乗せ、2人の頭を軽くなでると
ゆっくりと桃子の元へと近づいていく。


947 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/04(土) 00:23:31
「そう、言わないの。ならいいわ…。
 死になさい。」

そう言って桃子が自身の小指に魔力を集中させ、男の喉元に突きつける。
そしてまさに放とうとした瞬間、後ろから頭を叩かれる。

「あだっ!」

「コラ、いい加減にしなさい!あなたの仕事は監督でしょ。
今回はあなたの監督不行き届き!」

その人物はそう桃子に言うと腰に手を当てる。
桃子は振り向き、その顔を見て驚いた。

「さ、里田さん!ど、どうして?」

「全くもう!頭に血が上ると何するか分かんないんだから」

そう言って桃子をたしなめるような仕草をしたのは『Can girl』の後援を一手に引き受ける里田まいであった。

しかし、現在結婚した相手の任務に伴いまいは異国にいるはず…。なぜこんなところにいるのか
いろいろと納得のいかない桃子。

しかし一番納得がいかないのは、

「でも、メンバーが…。」
自分の仲間を失った。まいはその痛みがわからない人ではないはず…。

そう思った桃子に突然誰かが飛びついてくる。

「ももち先輩!」
「ももち先輩!」
「ももち先輩!」

「みんなぁ!ど、どうやって?」

「もうだめかと思ったんです!でも里田さんに助けていただきました。」

桃子から離れ笑顔を見せたのは梨沙、愛香、知沙希であった。


948 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/04(土) 00:26:55
驚いたままの桃子に対して

「魔道士の闘いで必要なのはなんだっけ?」

まいは諭すように桃子に語りかける。

「それは…、常に理解…しようとする事。」

「そっ!だから闇雲に奪えばいいってもんじゃないの。
 闘いの時ほど冷静に。
 それに私達がするのは『任務』なんだから個人的な感情で動くのはバツ。
 わかるでしょ?」

「うぅ…。はい…。その通りです…。」

今更、魔道士としての、執行魔道士としての在り方をまいから言われると思わなかった。
しかも正論を。
わかっていたはずのこと。
普段桃子自身も後輩に口を酸っぱくして言っている。

桃子はぐうの音も出ない。

「まぁね。無事全員助かったことだし、まぁ何人かは休養が必要だけどね。任務完了かな、おっ、生田局長だ。
 じゃ、私は行くね。旦那が心配してる。」

そう言って立ち去ろうとするまいの背中に桃子は声をかける。


「あ、あの…里田さん!」
呼び止められたまいはゆっくりと振り返る。


「ん?何?お礼なら要らないよ。」

「いえ、そうではなく…。」

一瞬の静寂。

「ご飯!連れてってください!!」

その一言にまいはずっこけた。

続々と執行局のメンバーが到着する中、辺りにはいつまでも笑いが響いていた。


続く。


949 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/04(土) 00:32:26
次回で最終話となります

今までお付き合いいただきありがとうございました


作者


950 : 名無し募集中。。。 :2015/07/04(土) 00:42:56
『島村嬉唄 Can girl』なにこのXファイルは!?

そしてまさかのスーパーバイザー!wてっきりキャプ来るかと思ってたから「やられた!」って感じw

次回最終回か・・・名残惜しいけど最後まで楽しみにしてます


951 : 名無し募集中。。。 :2015/07/04(土) 09:14:15
サトタや! !(AAry

まさかスーパーバイザーまで出すとは・・・
すっかり存在を忘れてたw


952 : 名無し募集中。。。 :2015/07/05(日) 22:10:53
テスト


953 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/07(火) 22:10:36
テスト


954 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/07(火) 22:12:52
「舞ちゃん、東側から稲場ちゃんのフォロー!」

「了解!」

「森戸ちゃんは出力を少し落として、山木ちゃんは魔法式に組み込む!」

「はい!」

「一気に畳むよ!みんな集中してね!」

「「「「はい!」」」」


あの事件から半年が経過した。
『Can girl』は執行局の中心メンバーとして忙しい毎日を送っていた。

そこには半年前の面影はない。
メンバー一人一人が執行魔道士としての自覚を持って任務にあたっていた。

まだ難易度の高い任務については桃子のサポートなしでは乗り切ることが難しい。

それでもトレーニングのなかでは決して体験できない世界を数多く践むことで確実にレベルアップをする事ができた。

今日も任務を無事に終え、帰投する一同。
梅雨の半ばも過ぎ、そろそろ夏の気配も見えてくる時期。

「ねー!今日、ご飯行こうよ!」
部屋で疲れを癒やしていた他のメンバーに舞が声をかける。

「おぉー、舞にしてはいいタイミングでの提案じゃないかぁ!」
「何それー!舞はいつでもタイミング読める子ですぅー」

愛香の一言に腰に手を当て頬を膨らませる舞。それがあまりにも面白く、ほかのメンバーが笑い出した。

「何だよー!みんなヒドい…。」

「ごめんごめん!あまりにもさ古典的ポーズ過ぎて。ほら、みんなでご飯いこ?」

拗ねる舞をなだめつつ梨沙は立ち上がり大きく伸びをする。
そして辺りを見回して桃子がいないことに気づいた。

「あれ?ももち先輩は?帰ってきたよね、一緒に。」

愛香や知沙希もぐるぐると辺りを見回すが桃子が部屋に戻ってきていた形跡はなかった。


955 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/07(火) 22:19:14
「んもぉー!ももち先輩どこ行ったんだよー!
今日こそご飯連れってってもらうんだ。ちょっと探してくるねー!」

「いってらっしゃーい!」

他のメンバーに見送られ舞は桃子を探しに執行局の廊下をふらふらと歩きだした。


「ももち先ぱーい?どこー!」

舞は桃子の居そうなところを順繰りに廻っていくがどこにも桃子の姿はなかった。

もうあきらめようかと思ったその時、屋上へ続く階段の扉が開いていることに気づく。

まさかと舞は思ったが、とりあえず行くあてが他にないこともあり、屋上へとその足を向ける。

「うわぁぁ。きれい!」

屋上へ出た瞬間、舞の目の前には梅雨の合間に訪れた夕焼け空が広がっていた。

しばらくその美しさに心を奪われる舞。
ふと横を見ると屋上の端に寄りかかるように夕焼け空を見ている桃子の姿があった。

「何だ。ももち先輩こんなとこに…。」

声を掛けようとした舞。

だが、ここで桃子の様子がいつもと異なることに気がついた。

一枚の写真をじっと見つめたまま、動かない。
舞が桃子の背後に近づくが、そのことにも気づいていないようだった。

「嬉唄ちゃん、ごめんね。私が非力なばかりに…。護りきれなくて。」
小さくつぶやきが聞こえてくる。

桃子が見つめているのはいつ撮ったものであろうか。
自分たち『Can girl』のものであった。


しかしここで舞はその写真を見て違和感を覚える。


956 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/07(火) 22:23:01
ほどなく、舞はその違和感の正体に気づいた。

人数だ。

なぜかその写真には『見知らぬ少女』が一人真ん中に写り、笑顔を見せていた。


「ももち先輩?」


舞が声をかけると桃子は驚いたように振り返り、そして写真を慌ててしまう。
そして何事も無かったかのように舞に話しかけてきた。


「あれぇ?舞ちゃんどうしたの。屋上なんかに来ちゃって。
 ここはももちの特等席なんだけどなぁ。
 ここから見える夕陽は格別なんだよぉ。」

そう言ってもう一度空を眺める桃子。
その背中はいつにも増して小さく見えた。

「もも…。」

「ごめんね。」

「!?」

突然、桃子が空を見ながら謝ってくる。
びっくりした舞は口をパクパクさせるばかりで何も言うことができない。


「私が私でいる限り、みんなを守ってみせる。だからさ?」

そう言って桃子が振り向く。

「みんなでご飯食べにいこ。
 今日は記念日だからさ、ももち先輩がおごってあ、げ、る!」

「ホント?やったぁ!」
その言葉に舞は小躍りをし、駆け足で入口の方へと向かう。

「ももち先輩、早く早く!」

「はいはい。」

小さくなる舞の背中を見ながら桃子も屋上を後にしようと歩き出した。

『ももち先輩』

突如、響いてきた声。
思わず、歩みを止め再び振り返るがそこには誰も居なかった。


桃子は懐に入れた写真を強く握りしめると小さく呟いた。

「ハッピーバースデー、嬉唄ちゃん。」


空には白い鳩が一羽。
夜の訪れを告げるかのように飛んでいくとやがて姿が見えなくなるのであった。


終わり


957 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/07(火) 22:32:55
以上でカンガルバージョンは終了です
ちょっと時期的にずれたのはご勘弁を…

ちょとばかし間隔あきますが、嬉唄ちゃんに関する作品を一つ書く予定では
あります


958 : 名無し募集中。。。 :2015/07/07(火) 22:35:33
完結乙です・・・

まさかこんな辛い結末とは…どうしてうたちゃんがいないのか?どうしてうたちゃんを皆が忘れてるのか?何も分からないまま終わりだなんて…

って思ったらちゃんと考えてたのね〜良かった!楽しみにしてます


959 : 名無し募集中。。。 :2015/07/07(火) 23:01:13
あれ?うたちゃんは?うたちゃんうたちゃん

あ、生田さんハピバ


960 : 名無し募集中。。。 :2015/07/08(水) 08:03:37
嬉唄ちゃあああん!!!

更新お疲れ様でした!
このスレがたったころからずっと物語を楽しまさせていただいてます!
ありがとう!


961 : 名無し募集中。。。 :2015/07/08(水) 10:15:28
ねぇ、嬉唄ちゃんを見なかった?

嬉唄ちゃん、なんて知らないわ!

…一人記憶を取り戻した舞ちゃんの嬉唄ちゃんを探す旅が始まるのか・・・


962 : 名無し募集中。。。 :2015/07/14(火) 19:35:51
本スレが落ちてる・・・

本編更新の翌日だったから普通に書き込みもあるだろうと
完全に油断してたわ・・・


963 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/15(水) 23:08:43
「ンフフ〜。ついに来たよ来た来た!この日が来たぁ!」

夜8時頃の大通り沿いの歩道を一人の少女が歩いている。手には紙袋を持ち、それを大事に大事に運んでいた。

「いやぁ、待ちくたびれました。前作から今作に到るまでどれほど待ちわびたことか。」

誰も聞いていないのについつい独り言を言ってしまう。それほど少女にとって今日の買い物は意味のあるものだった。


そう…。周囲の警戒を怠るほどに…。

足取りも軽く、大通りから自宅へと繋がる道へと入ったときに、少女辺りの景色がいつもより暗いことに気付く。

(あれ、なんかおかしいな。)

その時であった。道を照らしているハズの街灯の光が一つまた一つと消えていく。

「ヤバい!敵襲!?」

少女がそう悟った次の瞬間、背後から何者かによって口を塞がれる。その手には白い布が握られていた。

少女は抵抗をしようとするが次第に意識が朦朧としてくるのを感じる。


(あっ、これ…。ヤバ…い…や…)


少女の意識が完全になくなったことを確認すると襲撃してきた者たちは、近くに止めてあった黒いワゴン車に少女を載せる。

そして音もなく走り去って行くのであった。


964 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/15(水) 23:10:41





「嬉唄ちゃんと連絡が取れない?」

執行局へ出勤してきた桃子に、例の事件後で
下された一週間の謹慎処分から復帰した舞が相談をしてきた。

「それっていつ頃から?ていうか何で連絡が取れないってわかったの?」

怪訝そうな顔で詳細を尋ねる桃子。

「私達、連絡用に端末のトーク機能でグループを作っているんです。」

「何それ…。私、呼ばれてないんだけど…。まぁいいよ、続けて。」

「そこで一週間の任務スケジュールの調整とかトレーニングの課題を話しているんですが、
3日ぐらい前から嬉唄だけ既読がつかないんです。」

「ふーん、それただ単に面倒くさいから読んでないだけじゃないの?
私もよくやるし。」

桃子の返しに対して、舞は強く首を横に振る。

「直接連絡してみても、ダメなんです…。
今までこんなこと無かったのに…。」

あまりにも心配そうな顔をしている舞。

桃子は一つため息をつく。

「わかったよ。私からも連絡してみる。このことを局長には?」

「まだ、伝えていません。伝えた方が良いですか?」

その問いに対して桃子はしばし考える素振りを見せる。
だが、最初から答えは決まっていた。

「いや、報告はしなくていいよ。
どっちにしろ今日から謹慎明けでしょ?来るんじゃない?そのうち。

もし来なかったらその時は私から報告するよ。だから、ほら、心配しないで部屋に戻ってて。」


965 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/15(水) 23:12:39

そう言われ、舞はしぶしぶと自分たちの部屋へと戻る。
その様子を見届け、完全に舞の姿が消えたことを確認すると桃子は足早に局長室へと向かう。

乱暴に扉を2回ノックすると返事も待たずに部屋へと入る。

そして呆れ顔で桃子のことを見ている生田の元へと詰め寄る。


「どうなってるんですか。局長!
もう3日ですよ。まだ嬉唄ちゃん見つかんないんですか?
他のメンバーも少しずつ不審がってますよ。」


突然詰め寄られたのにも関わらず、生田の口調は落ち着いていた。

「そう怒るな嗣永。まったく…。俺だって早く見つけたいのは山々だ。
だが状況が状況だ。巧く痕跡を隠されてしまえば追跡そのものが難しいのはわかるだろう。
今、裏のルートから検索を入れている最中だ。
焦ってもしょうがない。」

「それはそうですが…。」

桃子は口をとがらせながら、食い下がる。

「とにかく、この前のような事態はごめんだ。
嗣永、清水や徳永とも協力してまずはあの子たちが勝手な行動をしないように頼む。
それにお前自身もだ。」

「はーい…。了解しました。失礼します。」

そう言って部屋を出る桃子。
そして廊下に出ると両手でほっぺたを軽くつねる。

「嬉唄ちゃん…。奴ら、いったい何が目的なんだろ…。」





966 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/15(水) 23:13:23



頭が妙にクラクラして頭痛がする。視界もぼやけてはっきりとは見えない。

だが、自分が横になっている感覚はあった。柔らかい布団の上。

もう少し寝ていたい。

開きかけた目をもう一度閉じる。


次に目を覚ましたとき、頭のクラクラは幾ばくかよくなり頭痛もだいぶましになっていた。ゆっくりと身体を起こす。

嬉唄はまばたきを二度し、そして辺りを見回す。

(ここは…。どこ…?)

見覚えのない部屋。簡単な作りの部屋ではあるが必要なものが一通り揃ってはいるようだった。


不自然な点はいくつかあった。
窓がないこと。
ドアノブがないこと。
そしてやたらに天井が高いこと。

要は、一定の生活水準を保たせながら監禁をする部屋。

嬉唄はそのことに漸く気づくと、大きく大きくため息をついた。


「えぇー…。嘘でしょおぉぉ…。ゲームできない…。」

「お目覚めのようですね。島村嬉唄さん。」

突然背後から声が聞こえてくる。その声の方へ嬉唄が振り向くとそこにはひとりの女性が立っていた。

「この部屋から抜け出せないということはやはり噂は真実のようですね。」

その言葉を聞き表情を曇らせる嬉唄。


967 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/15(水) 23:14:01
「『島村嬉唄は魔道士ではない』。では魔道士でないなら一体あの執行局で何をしようとしているのでしょうかね。おっと!」

女性は話をしながら頭を横に傾け飛んできた目覚まし時計をよける。

飛んできた方向では嬉唄が片手を振り切った状態で強く睨みつけているのが見える。

「意外と破天荒な子なのですね。まぁこの話はまたいずれ。あなたは一生ここから出れませんからね。あぁそうそうお情けとしてこれ!」

そう言って女性は嬉唄に向かって何かを放り投げる。見るとそれはゲーム機であった。

「時間が余るでしょうからこれでもどうぞ。では。」


そういって部屋をあとにする女性。
嬉唄はその背中をただただ睨みつけることしかできなかった。せめてもの救いは手元にお気に入りのゲームがあることだろうか。

恐らく、自分はここからしばらく抜け出せないだろう。
ならばどんと構えるしかない

嬉唄は徐に電源をつけるとわき目もふらずゲームに取り組むのであった。


968 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/15(水) 23:15:07
こんばんは
特別編です

全3回に分けて更新します


969 : 名無し募集中。。。 :2015/07/16(木) 04:44:40
楽しみに続きを待ちます


970 : 名無し募集中。。。 :2015/07/16(木) 06:53:20
嬉唄ちゃん編きた!前作のラストの意味が明かされるのかな…


971 : 名無し募集中。。。 :2015/07/16(木) 09:43:15
嬉唄ちゃんのキャラが結構くだけてて面白いw


972 : 名無し募集中。。。 :2015/07/16(木) 20:22:58
モンハンか


973 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/20(月) 22:30:26
嬉唄と連絡が取れなくなって5日。

舞をはじめとした他のメンバーは何か情報がほしいという気持ちが日に日に強まっていく。

しかし、彼女たちの元に情報が入ってくることは一向になく、桃子に聞いても知らぬ存ぜぬを繰り返すばかり。

もはや、いてもたってもいられない心境であった。


(今日こそは…。嬉唄、来てるよね…。)

舞は朝の執行局の廊下を自室に向かって走っていく。
嬉唄が今日こそは来ているのではないか。
ただの体調不良かなにかで寝込んでいて、連絡が取れなかっただけではないか。

きっと部屋に行けば嬉唄がいて笑っているに違いない。

そんな思いで頭をいっぱいにしていた舞は廊下の角を曲がったところで
出会い頭に誰かとぶつかる。

「あだっ!」
「いやぁ!」

ぶつかった衝撃で倒れ込む2人。

「あてて、すいません。前見てなくて…。ってと、徳永さん!」

「ありゃ、小関ちゃんだったのか!
ダメなんだよ〜、廊下は走っちゃ!」

「はーい…すみません…。」

「よし、わかればOK!んじゃあね。」

そう言って千奈美は足早に去っていく。
舞はその背中を見送りながら、ふと自分の足元に一枚の白紙が落ちていることに気づいた。

「あれ、何も書いてないや。
きっとさっき徳永さんとぶつかったときに落としていったんだな…。
まぁ白紙だし届けなくてもいいよね…。それよりも…。急がなきゃ!」

そう言って舞は懐にその紙をしまうと再び自室に向かって走り出すのであった。


974 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/20(月) 22:32:33
その頃、自室では同じような理由で早めに局にきていた梨沙と知沙希が嬉唄がいないことに肩を落としていた。

「今日もやっぱり来てないよ。嬉唄、どうしちゃったんだろう。」

「ももち先輩、絶対何か知ってるのに…。」

そう言って知沙希がカバンから麦茶を取り出しキャップを開けたそのとき、

「嬉唄!来てる?うわっ!!」

勢いよく開いた扉から舞が飛び込んでくる。
その拍子に、まさにお茶を飲もうとしていた知沙希にぶつかり麦茶が舞の洋服にかかってしまった。

「舞ちゃん!ごめん…。」
「2人とも大丈夫?ていうか舞ちゃん、廊下は走らない!」

呆れ顔の梨沙に注意をされる舞。

「うわぁ…。今日ツイてないなぁ。
 さっきも徳永さんにぶつかったし…。」

そう、ぶつぶつ言いながら舞は濡れた服をハンカチで拭いていく。
そうしているうちに何か違和感に気付く。

「あれ、この紙…濡れて…ない?」

先ほど拾った一枚の白紙。
麦茶を派手に被ったというのに、まるで新品のようだ。

さらに先ほど4つに折り畳んでからしまったというのに折り目も付いていない。


「何?舞ちゃんどうしたん?」

手に持った紙を見つめたまま動かない舞を見て梨沙が不審そうに声をかける。

「うん、この紙なんだけどね…。」

そう言って舞は手にしている紙を2人に見せる。
そして先ほどの出来事を話し、元々の所有が千奈美であったことを伝えた。

「ふーん。濡れない紙ね…。」
梨沙はそういって紙を手に取る。すると梨沙の顔つきが変わった。


975 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/20(月) 22:34:30

「これ、魔法がかかってる!しかも、かなり複雑…。」

難しい構造をみると解かなくては気が済まない梨沙。
自分のカバンの中から一冊のレポートノートと鉛筆を取り出すと猛烈な勢いで何かを書き始める。

舞と知沙希が後ろから覗きこむとそこには記号やら数字やらよくわからないものが書き込まれており、
ページが埋まっていくとページをちぎりまた新たに書き始める。

「おはよぉ。嬉唄来てる?
 ってうわっ!何やってんのぉ朝から!?」


部屋の扉を開けて入ってきた愛香は部屋の状態を見て目を丸くする。
そこには紙に埋もれる舞と知沙希、そしてその中心にはひたすら紙の山を量産し続ける梨沙の姿があった。

「大丈夫?どうしたよこの状態?」

紙をかき分け、愛香が2人の元へと近寄る。

「それが…。」

舞が事情を説明しようとしたそのとき、

「できた!」

一声、梨沙はそう言うと事の発端となった紙を部屋の中心に置く。
そして指をパチンと一つ鳴らした。

すると床に散らばっていた紙が次々と宙に浮き部屋の真ん中に集まっていく。

その光景に目を丸くする3人であったがやがて全ての紙が集まったところで、
梨沙が何を造ろうとしていたのかに気づき驚きの声を上げた。


「まっ、魔法陣!」
「すげっ!」
「しかも全部手書き…。」

一枚の紙を中心に幾重にも織り込まれた魔法陣がそこには広がっていた。

「さぁ、あなたの正体を見せなさい。」


976 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/20(月) 22:37:10

梨沙がそう呟くと同時に魔法陣が光り始める。
そしてその光が中心へと到達するとそこに置いた紙から次第に文字が浮き出てくる。

その紙を拾い上げる梨沙。そして中を読み、驚きの顔を見せる。

「これって…。」

そう言って他のメンバーにも書類を見せる。
そこに書かれていた事実は舞たちにとって衝撃的なものであった。


一方その頃、執行局の会議室では、生田、桃子、佐紀、千奈美の4人が密かに話し合いを進めていた。

嬉唄に行方に関する情報はだいぶ集まってきた。
あとは誰が絡んでいるかという黒幕をあぶり出すだけ。

「それにしても局長。
 何故、島村嬉唄はこれほどまでに執拗に狙われているのですか?」

「みやもなんか変だって言ってた。」

佐紀や千奈美の問いに生田と桃子は顔を見合わせる。
できればあまりこの事実は広めたくないというのが本音ではあった。
だが状況が状況であり、また、この場にいる2人であれば信頼できる。

そう判断した生田は話始める。

「島村の一族というのはな、代々、
 『仲介者』として魔法界ではある程度著名な一族なんだ。」

「『仲介者』?」

聞き慣れない単語に首を傾げる2人。

「知らなくても無理はない。
 何故そういったことが可能なのかは未だにわからない部分が多くてな。
 ただわかっているのは『仲介者』というのはその名の通り
 複数の魔道士の魔力によるネットワークを仲介、形成することができる能力を持っている。
 そして、その仲介をする中で魔法を使う。
 だからそもそも本人が魔道士であるかどうかは関係ないんだ。」
 ただの『仲介者』であればそこまで問題にはならん。受動的であるからな。
 だが、ごく稀にだが、『先導者』としての能力を持ち合わせるものがいる。」


977 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/20(月) 22:40:23
「『先導者』?」
聞きなれない言葉に首をかしげる2人。

「簡単に言うと『先導者』は周囲の魔力を能動的にデザインしていくことができるの。
 これは貴重な存在でね、今、いるのが嬉唄ちゃんだけ。
 その力があると本人は知らぬ間に周囲の魔力をすべて自分の中に取り込んでしまう。
 そして必要に応じてそれを周囲の魔道士に配分することが出来る。」

ここで桃子は一旦言葉を切る。

「だからいざとなったら嬉唄ちゃんはその場にある全ての魔力を掌握して
 自分の思うがままにそれを配分することが出来るってこと。」

「そっ、そんな馬鹿な…。」

「『先導者』っていう名づけはそこから来ているみたいね。
 私と局長は初めて嬉唄ちゃんを見たときに訓練が必要だと感じた。
 だから『Can girl』の一員としてまずは『仲介者』としてのスキルを身につけてもらおうと思っていたわけ。」

「じゃあ今回の一件って言うのは嬉唄ちゃんの持つその『先導者』としての力を狙って…?」

「恐らくそうだろう。
 だが実際に動いているのは魔力を持たない一般人のはずだ。
 島村の特性上、いくら訓練を受けていないといっても複数の魔道士が集えばその魔力を利用できるはず。
 そうなれば並みの魔道士ではひとたまりもない。」

「だから、追跡が困難なんですね。魔力の跡が追えないから。」

「そういうこと。でもあまり時間はない。
 敵の最終目的がはっきりしない以上、嬉唄ちゃんが無事であるという保証もできない…。」

桃子の発した言葉に一同は黙りこみ、考えを巡らせる。


978 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/20(月) 22:44:39
その時であった。

「失礼します。石村です。」
「おう、どうした?」

部屋の扉を開け入ってきたのはかつての同僚で今は生田の補佐をしている舞波であった。

「『Can girl』の子たちが先ほど局の外へと出ていくのが見えましたが何か指示を?」
その言葉に生田は首をかしげる。

「いや、俺は出してないぞ。というより出すわけがない。
 嗣永に任務に関しては一任しているからな。」

「桃も出してない…。午前中はトレーニングのはず。
 とりあえず部屋に行ってみよう。」

そうして、『Can girl』控室へと急ぐ一同。
部屋に入るとそこはやはりもぬけの殻であった。

「どこ行っちゃったんだろう…。ってあれこれは…。」

桃子は床に落ちていた一枚の紙を拾い上げる。
それは先ほど梨沙が作り上げていた魔法陣の一部。

その紙を一目見た瞬間に生田が事の顛末に気付いた。


「なんてことだ!あいつら破りやがったな。」

「えっ?局長、どういうことですか?あの子たちが何を破ったって…。」

「会議資料の暗号だ。島村に関する情報を諜報班に取らせていたんだ。
 こんなことを成せるのは1人しかいない。山木に解かれたんだ。あの子たちに島村のことがばれたんだ。
 すぐに全職員に通達。あの子らを動かすのは絶対だめだ。連れ戻すぞ。」

「は、はい。」


そういってあわてて部屋を出ていく一行。
部屋の中が再び静けさに包まれる。

その時空間の一部が破れ、中から梨沙、愛香、知沙希、舞が出てきた。

「ひゅー、もう心臓バックバクだよ―。
 でもやっぱり嬉唄ちゃん何かに巻き込まれていたんだね…。」

梨沙が手に持った紙に目を落とし小さくつぶやく。

「Bellwether…か。」


続く


979 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/20(月) 22:47:02
書いてて意外と自分嬉唄ちゃん好きだったんだなっていうのとカンガルも好きなんだな
っていうことに気付いたw

4回更新になりそうです


作者


980 : 名無し募集中。。。 :2015/07/21(火) 05:00:16
自分もカンガル好きだから作品あるのが嬉しいです
残りの更新も楽しみです素敵なみんなの唄が聞けるラストをお願いします


981 : 名無し募集中。。。 :2015/07/21(火) 06:36:04
嬉唄ちゃんの秘密がようやく明かされたけどこれが最後のシーンにどう繋がるのか知りたいような知りたくないような…

自分は元々好きだったけどカンガル編読んでもっと好きになった


982 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/24(金) 23:47:27
一方その頃、囚われの身となっている嬉唄。

今日もお気に入りのゲームをしながら嬉唄なりの、脱出方法を考える。しかしながら、敵の目論見通り、自分は魔法を使えない。

(あーもう、なんなのさ!考えても全然浮かばない。…ももち先輩なら何か閃くのかな‥?)


一週間の謹慎を挟んでいたせいもありもうしばらく嬉唄は他のメンバーにあっていなかった。

協会の端末も当然取りあげられている。

(梨沙ちゃん、愛かん、ちぃちゃん、舞…ももち先輩…。)

嬉唄はメンバーの顔一人一人を思い浮かべながら呼びかける。だが当然その思いは届くことはない。

「仕方ない。一個クエストやってから考えよう。」

嬉唄は一度切り掛けたゲームのスイッチを再びONにする。
この数日、嬉唄はゲームを徹底的にやり込んだ。その甲斐あってか殆どのクエストはひとりで片付けられるほどに成長していた。

他のメンバーや親が見たら、やり過ぎだと思うぐらいそれほど嬉唄はゲームに熱中していた。

今回も嬉唄お気に入りのクエストを受注するために集会所へと入る。

無駄とはわかっているが、オンラインでやるのはゲーマーの性であろう。

そのときであった。ふと画面の中にひとりの金髪の戦士が現れ嬉唄の貼ったクエストに参加してくる。

(誰だろう…。この人…。凄く強そう…。)

これが初めて嬉唄と金髪の戦士がであった瞬間だった。


983 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/24(金) 23:49:46
その後、幾度か嬉唄の受注するクエストに現れる金髪の戦士。

特に何かやりとりをするわけでもなく淡々と。

嬉唄もゲームに関してはそれ相応の自信を持っている。
だが、その戦士は纏うオーラの質が違った。

一緒にクエストをしていて、攻撃を受けた所を見たことがない。


嬉唄は次第にその戦士に対して強い興味が湧いてくるのであった。

そんなある日のこと、いつものようにゲームをしようと、嬉唄がゲーム機を手に取る。

そこへ部屋の扉を開け、前の女性が現れる。
その女性が嬉唄に話しかけてくる。

「ずいぶんと印象が変わりましたね?」

「なんかもう、吹っ切れた感じ。ここも意外と居心地いいし。」

女性の、顔を見ることなくそう言う嬉唄。

一つのため息が聞こえる。

「残念です。せっかく部屋を気に入っていただけたのに…。」

その言葉に嬉唄は顔を上げ、女性を見る。

「我々としては、野蛮なことは好みじゃないのですが、上からの指示でしてね。
島村嬉唄にはこの世から消えてもらうことになりました。」

「!?」

突然告げられた事実に言葉を失い固まる嬉唄。

「本当に残念です。
ですが、上の意向に私達は逆らえませんから。
せめてもの救いにラクに苦しまずに逝かせてあげます。」

そう言うと女性は部屋から出て行った。

その背中を嬉唄はただ茫然と見送ることしかできなかった。


984 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/24(金) 23:51:50
この場所に連れてこられてから初めて感じる恐怖。
自分の存在をまるで紙か何かと同じように扱う、そんな思想に嬉唄は震え上がった。

(そんな…。そんなの嫌だよ…。)

「に、逃げなきゃ…。」

そう小さく呟くと嬉唄は近くにあった木製の椅子を持ち、壁へと殴りかかる。
だが、木製の椅子は木っ端みじんとなっても、壁には傷一つついている様子はなかった。

「うあぁぁぁぁぁぁぁ…。」

部屋にあるものを片っ端から壁に叩きつける嬉唄。
周囲にはその残骸だけが増えていく。

「うあぁぁぁぁぁぁぁ…はぁはぁ…。」

最後の一つを投げつけると嬉唄は今度は壁へと殴りかかる。

拳から伝わる痛みに思わずくじけそうになるがそれでも嬉唄はひたすら壁をたたき続けた。

「はぁ…。はぁ…。嫌だよ…。死にたくない…。」

やがて叩く体力もつきた嬉唄はその場へと座り込む。
死のイメージがどんどん嬉唄の心にあふれ、恐怖を帯びていく。

ふと、嬉唄が自分の背後を見る。
そこには、ゲーム機があった。

自分がゲームになんぞハマらずもっと危機感を持っていれば…。

そう考えると嬉唄は腹立たしくもありまた虚しさも同時に感じていた。

ボロボロになった手でゲーム機の電源をONにする嬉唄。
そしていつものようにオンラインの集会所にはいると一言呟く。


985 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/24(金) 23:56:27

『助けて。』

何故、自分がそんな行動をしたのかがわからない。
誰かが返事をくれることを期待したのだろうか。

当然のことながら、誰も返事を返してこない。

そもそも、ここのゲーム機は外部とのやりとりが出来ないようになっている。
だとしたらこんなことは全くの無意味。

そう自嘲気味に笑った嬉唄。

だが、そのとき画面上に一通の返信がくる。

『おっけー(^_^)b』

慌てて画面を覗き込む嬉唄。
そのとき背後から妙に淡白な声が聞こえてきた。

「ふーん、キミ、ずいぶんと散らかったお部屋にいるんだねぇ。
 あんま感心しないけど。」

その声を聞き、嬉唄がバッと後ろ振り向くと、そこにはゲームで見たまんまの金髪の女性が立っている。


「な、な、なんで…。」

その問いかけには答えず、金髪の女性は嬉唄へと話しかけてくる。

「ふーん、島村の一族なんだ。
 おもしろい能力だね、それ。てかチートクラス。
 こんだけありゃ足りるかな。時間も無いしね。」


986 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/24(金) 23:58:38
そういい終えた瞬間、部屋の空気が一変する。
とてつもない魔力が部屋の中で渦巻いている。

「ほら、早くあやつんなよ。もう警報装置作動してるしい。」


その声にハッとした嬉唄。
辺りにある魔力を全て吸収していく。

嬉唄の仲介者としての能力は桃子の訓練によってだいぶ様になっていた。

吸収した魔力を基にする訳なので嬉唄自身が決められる訳ではない。


だが、金髪の女性を一目見た瞬間から嬉唄は使える魔法がわかっていた。
右手に現れる巨大ハンマー。

それを身体の脇に構えるとどんどん魔力を注入していく。


10…9…8…。

足跡がどんどん近づいてくる。

6…5…4…。

「間に合うん?捕まるの面倒くさいんですけど。」

2…1…。


「オイ、大人しく……」

大きな音とともに部屋の扉を開け飛び込んできた男たちが見たのは
まさに手にしたハンマーを壁に向かって振り下ろす嬉唄の姿であった。


「思いっきりぶつけてみなよ。キミの気持ち。」

金髪の女性は腕組みをしながらそうつぶやく。

「おりゃああああああ!」


続く


987 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/25(土) 00:00:14
ひい
のこりがすくない
今スレ中に終わるかな…


988 : 名無し募集中。。。 :2015/07/25(土) 07:12:35
金髪の女性ってまさかのあの方!?しかも魔力だけあげて嬉唄ちゃんやらせるなんて粋だねぇ

スレ足りなかったら次スレもありですよ


989 : 名無し募集中。。。 :2015/07/25(土) 19:01:09
避難所が次スレなんておつじゃないですか


990 : 名無し募集中。。。 :2015/07/25(土) 21:31:44
よくわからんがおかしくなってスレがことごとく落ちた時に復活したスレと復活していないスレがあるね
本スレは死んだままみたいだ・・・


991 : 名無し募集中。。。 :2015/07/25(土) 22:02:16
本スレ生きてるよ?書き込みも出来た


992 : 名無し募集中。。。 :2015/07/27(月) 08:02:56
うたちゃんうたちゃん


993 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/29(水) 23:41:56
「嬉唄ー!こっちこっち!早くー!」

「あー待ってよ〜舞!」

若者2人がかけてゆく。
その後ろを梨沙、愛香、知沙希が追い、さらにその後ろから桃子がゆっくりとあとを追っていた。

「ほらほら、ももち先輩も早くー!」

「はいはい、若いっていいわねぇ。」

ふと自分の口から出たそんな言葉に思わず桃子は苦笑する。


今日は珍しくメンバー全員で休暇を過ごすことになった。
嬉唄の提案によるものであった。
目の前ではしゃぐ5人の少女たち。
その姿を見つめる桃子の視線は自然と嬉唄に注がれる。

みんなとともに笑っているその顔はいつもとおんなじ顔だ。
しかし、桃子は何か嬉唄がこの数日で急に大人になったかのような感覚を覚える。

だが、それはしょうがないことなのかもしれない。
とにかくこの1週間で様々なことを経験した。

特に嬉唄は生死の選択を迫られた。

この時期の子ども達は周囲があっと驚くほどのスピードで成長していく。
それを見守る側としては嬉しさ半分、寂しさ半分といったところだろうか。




「家が丸ごと消し飛んだ!?」

嬉唄がさらわれて5日経過していた。
尻尾をなかなか掴めずに焦燥感ばかりが募る。
そんな中、執行局のある町から東にしばらくいったところにある一軒の住宅が跡形もなくなった
という報せが執行局へと入ってくる。

魔法によるものかと思ったがそこはもともと空き家で、以前住んでいた住人も一般人であった。
とにかく、状況がわからない。

何かしらの事件性を感じた生田は『Can girl』へと現場に急行するよう伝える。


程なくして現場にたどり着いた桃子たち。
その状況に思わず言葉を失った。


半径50m、深さは100mはあるだろうか。
目の前に巨大なクレーターが広がっていた。


994 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/29(水) 23:43:57
「な、何…。これ…。隕石かなにか?」
「みんな気をつけてね。何があるかわからない。」

桃子はそう言うと、指を一つ鳴らす。
すると小さな光の球が出現し、穴の中を照らし始める。

「行くよ。」

ソロリソロリと穴へと入っていく一同。
いつ何が起きても大丈夫なように一人一人が警戒を怠らない。


しばらく歩いて行くとやがて穴の底へと辿り着く。

「ねぇ、誰かいるよ…。」

舞の言葉に桃子の顔が青ざめる。
内緒にはしていたが桃子はこういう環境が苦手だ。


「ほら、小関ちゃん!ちょっと行って確認してきてよ!」

「ええぇ!舞ヤですよ!」

誰が先に行くかで揉めていると、

「みんな…?ももち先輩?」
突然聞き覚えのある声が聞こえてくる。

桃子がサッと灯りを照らすとそこにいたのは嬉唄であった。

「「「「嬉唄!」」」」

「みんな!!」





桃子はあの暗闇の中から嬉唄を助け出したときのことを思い出していた。
思えばあの時から少し不思議に感じていたことがあった。

現場には微かだが魔力が残っていた。
しかし嬉唄が拘束されていた期間とその証言から嬉唄に以前の魔力が残っているとは考えられない。

そうすると、誰か嬉唄の脱出に手を貸した人物がいる。
しかも強力な魔道士。

桃子は遥か遠い昔にどこかで似た魔力を感じたことがあった。
しかしその記憶は朧でどんなに思い出そうとしても出てこないのであった。

まるで、誰かにその記憶を引き抜かれたかのように…。

桃子は自らの記憶を引き出そうとするのに必死になるあまり嬉唄が一瞬見せた寂しそうな表情を見逃してしまうのであった。





1日中遊び、帰る頃には少し疲れも見えていたメンバーたち。
その中で嬉唄はひとりニコニコといつも以上に笑っていた気がした。


995 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/29(水) 23:45:46
その日の夜、舞は夢を見た。

広い野原の中でひとり舞は立っていた。
何か大事な約束のために人を待っている。

程なくしてその人物は現れた。

「舞。」

後ろから声を掛けられたため、舞はくるりと振り向く。

そこに立っていたのは、嬉唄であった。

「嬉唄、もう遅いよ!待ってたんだからね、ずっと…。」

何故か夢の中の舞は、嬉唄にたいし、腹を立てているようだ。
それでも嬉唄に会えた。嬉唄が来てくれた。

今は怒りよりも嬉しさの方が上。

「行こ!嬉唄、みんな待ってる。」
舞はそういって嬉唄の手を取りかけ始める。
舞が駆け出した先には、梨沙、愛香、知沙希もいた。

「ふぅ、やっと着いた。」

「舞、遅いよ!遅刻厳禁!」

「ごめん、ごめんだってさぁ…。
あれ、何で遅れたんだっけ。まっいっか!よし、出発。」
歩き出す4人。


嬉唄は遠くでその様子を見ていた。
その頬には一筋の涙が流れている。

少しずつ離れていく背中に向かって嬉唄は小さく呟いた。


「ごめんね、みんな。そしてさようなら。」





翌朝、桃子は昨日のことを思い出しながら執行局へと出勤する。
毎回となるとちとキツいがたまにであればああいった休日の過ごし方もありかもしれない。

「おっはよー。みんな揃ってる?」

「おはようございます。ももち先輩!4人全員そろってます。」

「ん?4人…?それじゃあ1人足りないじゃん。
誰が居ないの?嬉唄ちゃん?」

桃子の言葉を聞き顔を見合わせるメンバーたち。
明らかに困惑した表情だ。

「ももち先輩?嬉唄ちゃんって誰ですか?」

舞の発した言葉に衝撃を受ける桃子。

「えっ…えっ…。みんな、何言ってるの…。」

初めは何かの冗談かと思っていた桃子。
そのうちどこか物陰から嬉唄が飛び出すのではないか。

だが、誰も怪訝そうな顔を崩さない。


996 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/29(水) 23:47:47

「そんな…。」
ふと桃子の脳裏にある考えが浮かび上がる。
脱兎のごとく駆け出す桃子。

「ももち先輩!?どこ行くんですか?この後総会ですよー」

後ろから響く声も気にせず向かった先は記録室。
ここには様々な事件に関する報告や歴代の執行局に関する資料が保存されている。

桃子は室内に入ると一直線に戸棚の前に立つ。
そして中から、一つのファイルを取り出すと、それを猛烈な勢いで捲り始めた。


「ない。ないないないない!何で…。」

いくら探しても島村嬉唄の記録がない。
そればかりか他のメンバーの様子からみるに嬉唄の記憶も無いようだった。

まるで嬉唄の存在がこの世界から消えてしまったのかのように。


「まさか…。」

自分の予感が的中しないことを祈りつつ
桃子は再び、部屋を飛び出していくのであった。


執行局の局員達が一人また一人と建物を出て近くの講堂へと移動していく。

しばらくすると舞や梨沙、愛香、知沙希がワチャワチャしながら皆と同じように講堂へと向かっていく。

その様子を嬉唄は執行局の屋上からぼんやりと眺めていた。

『もういいかい?お別れ、済んだのかな?』
その声に嬉唄が振り返るとそこには給水塔に腰掛けた金髪の女性がいた。

嬉唄がふたたび視線を下へと戻すと
リニューアルされた赤い制服が痛いほど胸に刺さる。

だが、嬉唄はそんな想いを表に出すことはない。

「うん、もう大丈夫。行こ!」

きっとこの人は自分の気持ちを見抜いているに違いない。
それ程の実力を持っている。

そうわかっている上で嬉唄はそう返事した。

それを聞いた金髪の女性は頷く。
『そっか、そしたらもう一人お客さんにお別れしなくちゃね。』

「えっ?」

嬉唄が聞き返した瞬間である。

「嬉唄ちゃん、どこに行こうっていうのかな。
私そんな指示してないんだけどな。」

嬉唄が振り返るとそこには腰に手をあてたまま立っている桃子の姿があった。

「ももち先輩!?なんでここに?みんなの記憶は消したはずなのに…」
「やっぱりね…。そんな事だろうと思ったわ。」
桃子が嬉唄の言葉を聞き、ため息をつく。
「それにしてもね、まさか嬉唄ちゃんの裏にあなたみたいな人がいたとはね…。」

桃子は視線を給水塔のほうへと向ける。


997 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/29(水) 23:50:54
「とっくに魔法界からは縁を切っていたと思ってましたよ。後藤真希さん。」

名前を呼ばれた真希。
だがその表情はピクリとも変わらず相変わらずゲームへとその視線を向けたままだ。

「ねぇ嬉唄ちゃん、みんなのところへ帰ろっ?ねっ?」
そう言って桃子は手を差し出してくる。

しかし嬉唄はその手を取ろうとはしない。
「嬉唄ちゃん?」

「ももち先輩、私、やっぱりみんなとは一緒に居られません。
いや居ちゃいけないんです。この前の襲撃のときもそう。
今回の誘拐もそう。全部私がみんなを巻き込んで…。
何もかも私の能力のせいで…。これ以上みんなを危険な目に合わせるわけにはいかないんです。
あの人、三大魔道士なんです。私にアドバイスをくれた。
他者を巻き込みたくないなら孤独でいろと。そして孤独でも生きられる強さをまとえと。
難しいのは分かっています。でも私はやり遂げたい。
これが私の運命なんだって。運命を受け入れて一人で生きれる本当の強さを身につけたい。」

バシン。

辺りに乾いた音が響きわたる。

「おお、痛い。」
真希が小さくつぶやく。
何と桃子が嬉唄を平手打ちしたのだ。

「何生意気いってんのよ。何様のつもり?そんなのただのわがままじゃない。
黙って聞いていればぺらぺらと。いい?あんたがどう思おうとそりゃあんたの勝手だよ。
一人で生きたいのなら勝手にすればいいじゃない。
なのになんで、なんでわざわざ自分の記憶を、自分の存在を消そうとするの?
島村嬉唄はここにいる。今確かに私の目の前にいるのに。迷惑かけたっていいじゃない。
そのためにチーム組んでいるんでしょ。私たちは『Can girl』ってチームを組んでいるの。
だからさ。」

ここで桃子は一度言葉を切る。その瞳からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちていた。

「私は忘れない。どんな魔法を使われようとも。
どんなに嬉唄ちゃんが消えたいと願っても私はとどめ続けるよ。
島村嬉唄という存在を。世界中のすべてが敵になっても私は…。」

これ以上は言葉が続かなかった。桃子の胸の中に嬉唄が飛びこむ。

「ごめんなさい…。ももち先輩…。ごめんなさい…。」

気付くと傍らに真希がやってきていてハンカチを桃子に差し出している。

「これが人間ってやつなんだね。うん、なんだか懐かしいなぁ。
あとで重ちゃんにメールしてみよ。
っで、どうする?私はそろそろ行くけど。キミは?」


998 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/29(水) 23:52:36
真希の言葉に嬉唄が顔を上げる。そして再び桃子の顔を見る。
その目は先ほどまでの嬉唄とはまたがった決意にあふれていた。
それを見た瞬間、桃子は真の別れを感じ取る。

右手をそっと嬉唄のほほへと伸ばしそこを軽くなでる。

「ごめんね、痛かったでしょ?」
その言葉に嬉唄は小さく首を振る。
「いえ、優しさにあふれているから。」
桃子はもう一度嬉唄を抱きしめると嬉唄の耳もとで囁く。
「行っておいで、嬉唄ちゃん。でもこれは任務だから。
プレイングマネージャーとしてメンバーのスキル向上のための秘密任務だから。
絶対に戻ってくるんだよ?」

嬉唄は大きく頷くと、桃子のもとを離れ真希のそばへと行く。
「今度こそOKかな?」
「はい。」
「金レイヤと桜レイヤどっちが好み?」
「うーん、金レイヤ。」
「よし。」
そういうと真希は一つ指を鳴らす。
すると3人の眼前にきれいな金色をした龍が現れる。
その首に真希と嬉唄は飛び乗ると龍は一つ大きく羽ばたき辺りに疾風を巻き起こしながら一気に空の果てへと消えていくのであった。



嬉唄が姿を消してからもうずいぶん長いことが経過したように感じる。
今でもふと心の片隅で自分たちは嬉唄を護りきれないからという考えが浮かび上がる。

たとえそれが事実であろうとしても嗣永桃子の使命は変わらない。チームのメンバーは守り続ける。
たとえこの命がなくなろうとも。たとえあまり尊敬されなくとも…。

「ちょっと、いい加減におばさん扱いするのやめなさ―い!!」

今日も桃子の叫びが執行局へと響き渡る。
その声はどこまでも遠くかなたの空にまで届くのであった。


おしまい。


999 : ◆JVrUn/uxnk :2015/07/29(水) 23:55:50
というわけで以上で嬉歌ちゃん編並びにももちの物語はおしまいです
長いあいだスレを占領しもうしわけない

しばらく休んだら本編に沿った内容でまた外伝を考えようと思います
ありがとうございました

ついでに次スレも立てます

作者


1000 : 名無し募集中。。。 :2015/07/30(木) 00:01:19
次スレPart2
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20619/1438181952/


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