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SS・ソロールスレッド

16”探偵” ◆NYzTZnBoCI:2016/05/08(日) 15:37:27 ID:vfULsUNc



「本当に、エミを助けていただいてありがとうございます……!
 このご恩はいつか必ず……」
「探偵のお兄ちゃん!エミちゃんを見つけてくれてありがとう!」

騒動が収まり風紀委員の事情調査を終えた頃、エミの父親と依頼人の少女が探偵へ礼を述べていた。
解放されたエミは一足先に母親と自宅へ向かっており、精神面での休息をとっているらしい。
探偵は短く首を振って、変わらず澄ました表情で二人の顔を交互に見やる。

「いえ、探偵としての仕事を遂行したまでです」
「お兄ちゃん……私も何かお礼したいけど、お金…持ってなくて……」
「……お礼、ですか」

そう言えば考えてなかったなと、少女が口にして初めて気がついた。
本来ならばここで依頼料を請求するべきなのだろうが、別に探偵業で生計を立てているわけではない。
金よりも情報を求める彼にとって、この選択は真っ先に切り捨てられた。

「では、一つお願いがあります」
「お願い……?」
「ええ、”高天原いずも”という学ランとハチマキを身につけた人物を見かけたならば連絡をください」
「う、うん……でも、そんなことでいいの?」
「勿論です」

にこりと、軽く微笑む探偵の言葉を受けてパッと明るい表情を浮かべる少女。
もしも他の探偵がその様子を見ればせせら笑い、小柳の事を自分よりも劣った存在だと思うかもしれない。
だがそんな事を気にしていたら探偵などはやっていられない。ポン、と少女の頭に手を乗せれば踵を返し歩き出す。
時刻はもう夕暮れどき、街灯が広場を照らし出し夕焼けが空を独占する時間帯だ。

「探偵さーんっ!ありがとーっ!!」

後ろから響く声が自身の背中を後押しするような、そんな感覚に身を馳せて。
学園都市に吹き渡る気まぐれな風は、夕闇を歩いた。


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