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ゴストゥルーパー・ドールズ臨時レス置き場

1あべさん ◆uMJFatUpYM:2014/03/28(金) 23:56:16
スレタイの通り

2阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/03/29(土) 06:49:19
>「は…はぁ…、あ、では、お車はこちらです。」

迎えの青年は背景で繰り広げられるどつき漫才?に圧倒されながらも、車に案内してくれる。
どのような役職に就いている人だろうか。
ただの事務員にしては妙に体形ががっちりしている。
発進する車。両親が玄関から飛び出てきて、相変わらず騒いでいる。
手を振って笑いかける。

「大丈夫、死んだりするものか」

――妖怪どもを一匹残らず駆逐するまではなあ!

そう、そのために私は歌姫になったのだ。
人間はあまりにも衝撃的な記憶は思い出せなくなるという。
襲撃のその瞬間の事は、よく覚えていない。
あの日、昏睡状態から目覚めた私に告げられたのは、結婚相手が死亡したという事実。
そして悲嘆に暮れながら検査を受けている最中、もう一つの事実が告げられたのだ。
福音の歌い手としての適性が発現している、と。
それを聞いた私は哀しみの涙から一転、箍が外れたように哄笑をあげ、医者が大慌てしたものだ。
この時私は正気と狂気の紙一重を突き破り、正常ではない側に行ってしまったのだろう。
それでも構わない、この巡り合わせを神の思し召しと言わずに何と言おうか。
特に神を信じているわけではないが、奇しくも妖怪に対抗できる唯一の力は”福音”と呼ばれている。
その力を齎すものがたとえ邪神だとしても構わない、喜んで受けて立ってやる。

>「…嬉しそうですね?阿部さん」

迎えの青年に声をかけられ、暫しの回想から現在に引き戻される。
やる気十分を通り越してノリノリと言っていい状態の私が奇異に映っているのかもしれない。
これから命懸けの戦いに赴くのだ、普通は不安がるものなのだろう。
ここで「フゥーハハハ! 妖怪どもめ、駆逐してやるゥ!」なんて言ったらドン引きである。
入隊早々危険人物認定必至である。
私は仮にプッツンいっているにしても味方には友好的なタイプだ。自分で言うのも何だが。
愛想よく笑って返す。

「ちょっとはしゃぎすぎちゃったかな? 期待の新設部隊に抜擢されたからね、一緒に頑張ろうね。
ところであなたは何の役職? 見た感じ事務系……ではないよね。肉体労働系?」

会話のネタ程度に、何の気なしに聞いてみる。

3【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/03/31(月) 15:26:51
>「ちょっとはしゃぎすぎちゃったかな? 期待の新設部隊に抜擢されたからね、一緒に頑張ろうね。
ところであなたは何の役職? 見た感じ事務系……ではないよね。肉体労働系?」

(!?観察眼のある人だな。)

一目で単なる運転手でない事を見破って見せた阿部の観察眼に、鉄は素直に驚いた。
更に自分の身の安全を不安がるよりも、新設の部隊に配置されてより活躍できるとはりきるその姿勢は、
不安を押し隠すために強がっているという事も考えられるが、彼女の態度は平然としていて、何か覚悟や決意のような物を感じられる。

実戦経験者の上に、能力があるから入れさせられたのではなくて、何らかの自分なりの明確な目標をもって戦ってきた人間なのであれば、目標に向かって努力もするし、考えもするだろう。
変な漫才もどきには面食らったが、この女性はきちんと戦力になりそうだなと、鉄は思った。

「あぁ、自分らは万一の時にあなた方をお守りしなければなりませんので、日々鍛錬はかかしておりませんよ」

とりあえずまだ自分の真の役職については隠しておこうと思うので、嘘の無いように、阿部の質問に答えておく。
これだけ聞く運転手兼とボディーガードの類のように聞こえるだろうが、あなた方が全人類を指していて、万一の時とやらが割かし短期間に続々とあって、巨大ロボットで応戦するわけなのだが、嘘ではない。
もう少し会話をしてみようと、鉄は口を開いた。

「もう知ってるかも存じませんが、第5小隊は新設されたばかりであなたを含めて、前線に立って戦う人間は3人しかいません。
歌姫とパイロットが一人づつなのですが…」

何となく第5小隊の話を話し始めて、彼女についてふと、気になることができる。

「そういえば阿部さんはどんな歌を歌われるんでしょうか?えっと第5小隊の今の歌姫の笹倉さんは「未来」って曲を歌われてるんですよ、えーと、昔Kalafinaって方が歌ってた」

歌姫は、大体みんなコンピューターに声帯や声の調子などから過去のあらゆる曲を検索してもっとも福音を発生させやすくかつ歌いやすい曲を選抜させて、その曲を歌っている。
中には自ら作詞作曲して歌っている物もいるが、大体はコンピューターによる選抜方法を使うのだが、なぜか20世紀後半から21世紀序盤の曲が妙に多い。
だから笹倉桜自身も「未来」という曲はコンピューターに選ばれるまで知らなかったし、何に使われていた曲かもわからなかった。
しかしコンピューターの適性判断は正しく、桜はすぐに未来を歌いこなせるようになっている。

4【ゴストゥルーパー・ドールズ】 ◆UPKxgWFDVs:2014/04/03(木) 01:51:53
>「あぁ、自分らは万一の時にあなた方をお守りしなければなりませんので、日々鍛錬はかかしておりませんよ」

なるほど、歌姫の護衛役か。そう思って納得する。
一応妖怪に対抗できるのは歌姫の福音だけなので、護衛も付くのかもしれない。

>「もう知ってるかも存じませんが、第5小隊は新設されたばかりであなたを含めて、前線に立って戦う人間は3人しかいません。
歌姫とパイロットが一人づつなのですが…」

「そう、まだ少ないとは聞いていたけどそこまでなのね。少数精鋭……なんちゃって」

もちろんそういう意図があるわけではなく、結果的にまだ人が集まっていないだけの話である。
既存の部隊は各国から派遣された軍人が多いが、新設の第五小隊に人材を出す余裕は残っておらず打ち止めの模様。
必然、民間から新たに志願した者中心になるだろうか。

>「そういえば阿部さんはどんな歌を歌われるんでしょうか?えっと第5小隊の今の歌姫の笹倉さんは「未来」って曲を歌われてるんですよ、えーと、昔Kalafinaって方が歌ってた」

「ああ、それ曲を選定する時に聞いたよ。いい曲よね」

それはまさしく全き光のような曲だ――
未来への希望を高らかに歌い上げる、愛とか勇気とか、前向きなものだけをたくさん詰め込んだ歌。
きっと笹倉さんという歌姫は、私とは違って、純粋に世界の平和を願って戦う真っ直ぐな人なのだろう。

「私は「紅蓮の弓矢」。昔紅白歌合戦で歌われたこともあるそうよ。
元々男声ボーカルの曲なんだけどね、そんなに声高い方でもないし丁度良かったのかも」

その曲を聞いた時、現在の世界情勢や自分の心境とのあまりのシンクロ率に戦慄したものだ。
歌われているのは、人類を脅かす強大な敵に立ち向かう不退転の意思。
と言えば聞こえがいいが、それから感じられるのは勇気や希望といった小奇麗なものではない。
ドロドロした敵意や、やけっぱちの危うさすらも内包した上での勝利への決意。

「でも前に一瞬いた部隊ではあんまり評判よくなかったのよね〜。
玉砕覚悟で突っ込めって追い立てられてるような気分になるんだって。
でも攻撃は最大の防御って言うじゃない。
ここのパイロットさんは気に入ってくれるといいんだけど」

この時の私は、今話している相手がパイロットだということをまだ知らない。

5【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/04/07(月) 13:35:23
「あぁ、あの…。 何かのCMに使われてたの覚えてます、捕らわれた〜屈辱は〜っていう、あれですよね?
勢いのある曲ですよね」

阿部の言った曲名を、鉄は幼少期に聞いたCMで知っていた。
確か何かの車のCMだった記憶がある。(2014年現在、現実の世界ではこのCMは存在しておりません)
疾走感のある格好いい曲だったので、ネットで何度か聞くうちに名前が頭の中に残っていたのだ。

>「でも前に一瞬いた部隊ではあんまり評判よくなかったのよね〜。
玉砕覚悟で突っ込めって追い立てられてるような気分になるんだって。
でも攻撃は最大の防御って言うじゃない。
ここのパイロットさんは気に入ってくれるといいんだけど」

「確かに、終末感のある曲ですものねぇ。
うん…、でもピンチの時に流れたら逆にやってやろう!って気持ちになってきそうですがね」

阿部の心配に、鉄は素直な感想を述べた。
恐らく阿部の元いた隊の連中は、阿部と長く接するうちに彼女の持つ独特の妖怪への恨みや憎しみを感じる機会が多くあり。
戦闘中にそういった思いの詰まったそういった歌詞の曲を聞かされたので彼女の気持ちに押されて追い込まれた気持ちになったのだろうが、
阿部と出会って間もなく、まだ彼女の性格を把握し切れていない鉄には、その考えは浮かばなかった。

「あ、見えてきました、第5小隊の使用する飛行空母ですよ」

そんな話をしている間に、車は基地に近づき、その滑走路に鎮座するジャンボ機の数倍はある超巨大な鉄の塊が見えてきた。
全体は黒で塗装された巨大なクジラのようなフォルムで、側面には大きなGDⅤの文字が書かれている。

「ニュースとかでⅠからⅣ小隊のを見てると思うのでもう知ってると思いますが、あれが、我々第5小隊の運用する飛行空母です。
長期間の運用に伴う乗組員の快適な生活と、目的地までの高速移動能力、そして60m級巨大ロボットを6機まで運用でき、輸送ヘリや装甲車も搭載する人類が誇る空中要塞です。
これからはあれに乗って世界中を飛び回る事になります。」

基地の建造物よりも巨大なそれを前に、自分の事のように嬉々としながら鉄は空中空母について語った。

6【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/04/07(月) 13:36:11
程なく二人を乗せた車は基地の敷地内に入り、鉄は車をそのまま滑走路に入れて、飛行空母へと向かっていった。
すると、空母の前面にある巨大な横開きのシャッターが大きな音を立てて開き、そこから通路が伸びてきて、鉄たちの乗る車を中へと導いていく。
空母の中、巨大なシャッターの向こうは広大な整備スペースになっていて、大勢の整備士が忙しく動き回り、正面左右には巨大な人型兵器の拘束具と整備用の足場が6っつあって、そのうちの一つ、正面左の拘束具には整備中の50m級人型兵器が鎮座している。

「あれが現在第5小隊に配備されている人型兵器、零九式対妖怪人型兵器、ゼロキューです。」

車を空母の隅のジープやトラックが数台止まっている駐車スペースに停めて、車から降りた鉄は、阿部に視界いっぱいに広がる巨大ロボットを指さしながら言った。
自分の乗るロボットのため、その声は多少、弾んでいる。

「ゼロキュー自体はもう自衛隊が配備してて、何匹か妖怪を葬ってますが、こいつは4番目に作られた新品で、まだ実戦は経験してません。
最も、調整は済んでますし、パイロットも一世代前の機体で実戦を経験してますから特に問題はありませんけどね。
ではこちらです、この後機密事項に関する守秘義務を守るための契約書や、各種の書類に目を通して、いただきます。
それが終わりましたら、自室へご案内いたしますので、その後は艦内で自由に行動していてください」

嬉々としてゼロキューに関する説明を終えると、鉄は彼女を作戦室へ案内した。
重々しい扉と、衛兵に守られたそのテニスコートより広い部屋の中では、ホログラム投影機能のある巨大な机と、それを背にして囲み、通信装置やモニター、レーダーなどに向かっている大勢のオペレーター達が座っている。

「ここは作戦室です。
有事の際は、まずここに集合する事になります。
書類はあそこのテーブルの上にまとめておきました、書き終わりましたらその書類を事務局に提出しますので、お声をおかけください」

鉄の言葉に彼の指さす先を見れば、ホログラム投影機能のある巨大な机の一角に、艦内マップや、契約書類など、阿部がこれから書かねばならない書類と、筆記用具がまとめられていた。


−−−−−−−−−−


一方その頃、阿部の自宅がある街にほど近い山中。
突如として白い燐光のようなものが山に降り注ぎ、それが一か所に集まって、巨大な塊になり。
そうして出来上がった白い塊は、激しく何度か光ったかと思うと、次の瞬間、赤黒い巨大なエビの怪物へと姿を変えた。
巨大なエビの妖怪は、木々を押し倒しながら、街へと進撃していく。
しかし、自衛隊も、われらがゴストゥルーパー・ドールズも、その異常事態を察知することはできない。
妖怪はあらゆるレーダー波、電磁波を素通りさせるため、光学観測以外に発見の手段が無いからだ。

7【ゴストゥルーパー・ドールズ】阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/04/09(水) 23:41:42
>「確かに、終末感のある曲ですものねぇ。
うん…、でもピンチの時に流れたら逆にやってやろう!って気持ちになってきそうですがね」

「ありがとう、あなたパイロットに向いてるんじゃない?」

なかなか嬉しい事を言ってくれる青年である。
そんな事を話しているうちに基地が近づいてきたようで、まず見えてきたのは巨大な鉄の塊だ。

>「あ、見えてきました、第5小隊の使用する飛行空母ですよ」
>「ニュースとかでⅠからⅣ小隊のを見てると思うのでもう知ってると思いますが、あれが、我々第5小隊の運用する飛行空母です。
長期間の運用に伴う乗組員の快適な生活と、目的地までの高速移動能力、そして60m級巨大ロボットを6機まで運用でき、輸送ヘリや装甲車も搭載する人類が誇る空中要塞です。
これからはあれに乗って世界中を飛び回る事になります。」

青年は、飛行空母について嬉々として語り始めた。見ていてこちらまで楽しくなってしまう。
防衛省にはヲタクが多い、という噂はよく聞くが、この青年もこのような物が少なくとも嫌いではないのだろう。
先程言われた言葉をそのまま返す。

「ふふっ、嬉しそうね。あなたも」

前いた隊の連中ときたら鉄仮面みたいな糞真面目な顔をして軍隊みたいなんだもの。
まあ軍隊出身者が多かったから当然っちゃ当然なんだけど……。
この青年一人だけで判断するのは早計だが、やはり第5小隊というのは異色の部隊なのかもしれない。

8【ゴストゥルーパー・ドールズ】阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/04/09(水) 23:42:22
>「あれが現在第5小隊に配備されている人型兵器、零九式対妖怪人型兵器、ゼロキューです。」

「あら、最新型? 格好いいね!」

このロボットが私の歌で暴れてくれるのか。そう思ったらワクワクする。
ゴストゥルーパー・ドールズの戦いにおいて、ロボットのビジュアルも重要な要素である。
冗談みたいだが、ダサいロボットだと歌姫の気分が萎えて出力が下がるという事も実際に起こり得るのだ。
ゼロキューの説明が終わると、作戦室へ案内される。

>「ここは作戦室です。
有事の際は、まずここに集合する事になります。
書類はあそこのテーブルの上にまとめておきました、書き終わりましたらその書類を事務局に提出しますので、お声をおかけください」

「分かった、色々ありがとうね」

なるほど、書類はまた一式書くのね。
つーか異動というより一度除隊されて他の隊に入隊した扱いに近いのかな?
ま、いっか。細かい事を考えてもしゃーない、というわけで書類を書きはじめる。
私より前に一人ずついるというパイロットと歌姫はどんな人なんだろう。
最新型のロボットが真っ先に配備されているぐらいなのだ、きっと物凄い逸材に違いない!
書類を書き終わり、青年に声をかける。

「はい、これ書類。ところで先輩の歌姫さんとパイロットさんはどこにいるの?
お土産持ってきたのよ」

取り出したるは、“面白い変人”と書かれた箱。
色々改変されすぎて何が元ネタだかもはや分からない。

「うちの町内だけの超ローカル発売なの。あ、みんなに配る用のもあるから後であなたにもあげるね」

その時、つるっと手がすべって箱が床に落ちた。

「はっ、不吉な予感……!」

9【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/04/11(金) 22:28:02
>「はい、これ書類。ところで先輩の歌姫さんとパイロットさんはどこにいるの?
お土産持ってきたのよ」

彼女が即時に書きあげた書類をご苦労様ですと受けとり、確認しながらあべの話を聞く鉄。
そろそろ顔合わせだから正体を明かしてもいいかなぁなどと思っていると、彼女がまんじゅうを取り出した。

>「うちの町内だけの超ローカル発売なの。あ、みんなに配る用のもあるから後であなたにもあげるね」
「ありがとうございます、あ。」

そう言って彼女は饅頭を取り出したが、誤って手から落としてしまう。

>「はっ、不吉な予感……!」

言いながらまんじゅうを拾う彼女に続いて、自分もまんじゅうを拾って、もらった一つキープして、残りを彼女に渡す。
饅頭をすべて拾ったところで、鉄は先ほどの彼女の問いに答えることにした。

「えっと、先ほどの件ですが、笹倉さんは今自室にいます、それから、GDには明確な指揮系統は無いのですが、滞在国の軍隊から戦術アドバイザーという形で軍人の方が来られ、作戦立案を行うんですが、自衛隊の代表のヒガキ一等陸佐は今基地の方にいて会えません。
顔合わせ準備が整ったら、放送で呼び出しがあると思います。あとパイロットは…」

そこまで言って、もう正体を明かそうかと考えた、その時だった。

「市街地上空のパトロールヘリが妖怪確認!本艦より20km北北東の位置、歩通山森林地帯を市街地へ向け進行中!非常警報、鳴らします!」
「緊急事態発生!緊急事態発生!妖怪出現!繰り返す、妖怪出現!総員戦闘態勢、繰り返す、総員戦闘態勢!」

作戦室の壁の計器に取り付いていた通信隊員達がはっきりした声で妖怪の出現を告げ、続いて緊急警報を鳴らし、館内放送に向かって非常事態を呼びかける。
サイレンの響く中、あちこちでバタバタと人の走りかう音が聞こえだし、モニターに地図が表示され、そこに妖怪の現在地と進行方向、速度を示すマーカー、そして市街地までの予想到達時間が表示される。
それは、時速20キロ程で森林地帯を阿部の住む街へと進行していて、到達まであと20分と表示されていた。

「出やがったか…。すぐ必要なメンバーが揃いますので!」

周りの喧騒にかき消されないように、大きな声で鉄が阿部にいう。
妖怪が出現しても、即時迎撃する事はできない。
まずは日本政府からの出撃要請が必要だし、妖怪に対する作戦を立案する事も必要だ。
鉄としても即座に迎撃にあたりたいのだが、何の策もなくぶち当たって倒せるほど、妖怪は甘くないことを鉄はよく知っている。

「自衛隊、無人誘導機出撃しました、5分で接敵し、妖怪の足止めおよび、進路変更作戦を行います」

オペレーターの報告が、机の前で待機する二人の間に響く。

10【ゴストゥルーパー・ドールズ】阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/04/14(月) 20:22:37
>「えっと、先ほどの件ですが、笹倉さんは今自室にいます、それから、GDには明確な指揮系統は無いのですが、滞在国の軍隊から戦術アドバイザーという形で軍人の方が来られ、作戦立案を行うんですが、自衛隊の代表のヒガキ一等陸佐は今基地の方にいて会えません。
顔合わせ準備が整ったら、放送で呼び出しがあると思います。あとパイロットは…」

パイロットについて語られるのはこれが初めてなのもあり、身を乗り出す。
その時だった。

>「市街地上空のパトロールヘリが妖怪確認!本艦より20km北北東の位置、歩通山森林地帯を市街地へ向け進行中!非常警報、鳴らします!」
「緊急事態発生!緊急事態発生!妖怪出現!繰り返す、妖怪出現!総員戦闘態勢、繰り返す、総員戦闘態勢!」

告げられたのは妖怪の出現。今や日常と化してしまった非常事態。
しかし、モニターに表示された地図を見てみると、妖怪が今しがた出発した街に向かって侵攻している事が示されていた。
しかも、このままいけば後20分ほどで市街地に到達するという。

「なっ……!?」

>「出やがったか…。すぐ必要なメンバーが揃いますので!」

>「自衛隊、無人誘導機出撃しました、5分で接敵し、妖怪の足止めおよび、進路変更作戦を行います」

先駆けて自衛隊が出撃したようだ。
しかし妖怪は福音以外のあらゆる攻撃手段が無効――果たして通常兵器で足止め進路変更など出来るのだろうか。
おそらく気休め程度にしかならないだろう。
――これ以上、奪われてたまるものか。
作戦室の誰にともなく叫ぶ。

「20分……悠長に作戦立ててる時間は無い! もう一人の歌姫とパイロットを早く!」

11鳥居 呪音 ◆h3gKOJ1Y72:2014/04/16(水) 00:00:05
「ほう、これは…、シソのおにぎりの味がする」
あべの背後。饅頭を頬張る長身の男がいた。
年齢は二十代中盤くらいか。
金髪ロングヘアでサングラス。
白い肌をしていたが体格は鉄にひけをとらずそれでいて長く美しい見事な小顔の八頭身。

しかしご当地名物を他の食べ物の味で表現するなどなんと不謹慎なのだろう。
それも舌バカのようだ。
男は饅頭を少しむしって子猿に与えていた。
その整った長い指は優雅で誰もがみとれるほどだ。

>「自衛隊、無人誘導機出撃しました、5分で接敵し、妖怪の足止めおよび、進路変更作戦を行います」

>「20分……悠長に作戦立ててる時間は無い! もう一人の歌姫とパイロットを早く!」

「落ち着くのだアベマリア。20分もあれば充分だ」
どこか優雅で威圧感のある口調。
彼の名はオスカー・ファン・ハルベルト。
涼しげな双ぼうの男は落ち着きを払っている。

12オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/04/16(水) 00:01:50
まちがっちゃったっ

13【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/04/17(木) 15:34:23
>「20分……悠長に作戦立ててる時間は無い! もう一人の歌姫とパイロットを早く!」

突然の妖怪出現の報に、阿部が動揺して出撃を急かすが、そういうわけにはいかない。
まず第一に、自衛隊との連携について確認を取り、次に、無人機による誘導と挑発で、妖怪の攻撃手段を少しでも理解しておかねばならないからだ。
そうしなければ、わずか10分弱の時間の間に自衛隊と役割分担ができていなかったせいでもめ、さらには妖怪の攻撃に対抗手段を見いだせないまま時間切れまで何もできないかもしれない。
妖怪との戦闘中に考える暇がない以上、始める前に十分に備える他ないのだ。

>「落ち着くのだアベマリア。20分もあれば充分だ」

鉄がその旨を伝えるより早く、いつの間にか鉄の後ろにいた金髪の、肩にサルを乗せた男が阿部を落ち着かせる。
鉄にはその男に見覚えがあった。

「オスカー、 オスカー・ファン・ハルベルト、何故ここに?」

彼の名は、 オスカー・ファン・ハルベルト。
優秀なロボット乗りで、自衛隊在籍時に鉄も一緒に戦ったことがある。
だが、彼は、ほかの隊のパイロットだったはずだ。

オスカーの登場に驚く鉄の前で、オスカーの後ろの分厚い自動ドアが開き、髪の長い女性が入ってきた。
第5小隊のもう一人の歌姫、笹倉桜だ。

「新しい歌姫の子は?」

入ってくるなり、桜が鉄に尋ねる。
挨拶はしている場合ではないため省くが、少なくとも顔は知っておかねばならないという事だろう。
しかし聞いた瞬間、彼の横に花嫁衣装に似たコスチュームを着てすでにスタンバっている女性を見つけ、彼女なのだと納得し、うなづいた。

「私がこの小隊の歌姫です、よろしく」

彼女の方を向いた桜は、短く、それだけ述べた。
次いで、オスカーにいぶかしげな視線を送る。
あなたはだあれ?と。

14【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/04/17(木) 15:41:24
山中を闊歩するエビ型の妖怪に、彼方から数機の小型無人戦闘ヘリが飛来してきた。
ヘリ群は妖怪に必要以上に接近し、至近距離からスモーク弾を撃ち込んでいく。
妖怪は白いスモークに呑まれて視界を奪われ、周囲をきょろきょろと見回し始めた。
と、煙の中で何かが赤い光を放っているのを見つけ、妖怪はそちらに進路を変える。
もちろん、赤い光は自衛隊の無人戦闘ヘリである。

妖怪は確かに、通常兵器も物理防壁も受け付けない。
しかし、外部の状況を判断するために、視覚を用いているらしい個体が多い事がこれまでの研究で明らかになっており、煙で視界をゼロにすれば、攻撃目標を見失う妖怪も存在するのである。
他にも聴覚や超音波などで外界の情報を得るタイプの妖怪も存在し、そういうものに対しては人類の通常兵器も、目くらまし程度には役立つのである。
もちろん、中には第六感としか思えない超感覚を持つ輩も存在するのだが…。

15オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/04/18(金) 02:14:04
>「オスカー、 オスカー・ファン・ハルベルト、 何故ここに?」

「欠員の補充とでも言うべきか。本来なら私の兄が、この第五小隊に配属される予定だったのだがね……」
そこまで言い、オスカーは次の言葉を飲み込んだ。
――オスカーの兄は、新設された部隊の「教育係」として転属される予定だった。
だが自分は彼等と同等な兵隊として…。
そんなことなど口が裂けても言えなかった。
死んだ兄のかわりなどとは。

そこへ入ってくるのは笹倉桜。

>「私がこの小隊の歌姫です、よろしく」

「オスカーだ。パイロットをしている。よろしく頼む」

笹倉桜。資料を読んで知っている。
幽霊のような見た目と違い優しい歌をうたう。
そしてアベマリア。彼女は勇ましい歌をうたうらしい。
前の部隊ではその歌の特性からか疎まれていたらしいが
オスカーは能力さえ高ければ問題なしと思っていた。
べつに妖怪とお友達になるために歌をうたってもらってるわけでもないのだ。

しかし長篠鉄。
彼とここで一緒になるとは奇縁としか考えられない。
一世代前の旧式で何度か敵と交戦した間柄。
自分と同じ、言い方は悪いが普通の腕前のパイロット。
ゆえに堅実。そして生き残った。
生き残って同じ小隊に配属されていた。
彼は天才ではないがゆえに経験を積み重ね、妖怪との戦いかたを知っている。

(だからか……)
狙撃の天才。格闘戦闘の天才。
数多くの才能の溢れる軍隊なかで、
オスカーは長篠鉄の存在を忘れることができなかったのである。
無論死ぬのは怖くないが、長篠鉄の存在に安心感を覚えるオスカーの姿がそこにあった。

16阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/04/18(金) 18:53:29
>「ほう、これは…、シソのおにぎりの味がする」

「シソのおにぎりの味ィ!?」

非常事態なのも一瞬忘れて素っ頓狂な声をあげながら振り向く。
そこには、見事な美形の外国人がいた。
子猿に饅頭を与える姿さえも何故か優雅である。

>「落ち着くのだアベマリア。20分もあれば充分だ」

滲み出る堂々たる威厳。歴戦の強者なのかもしれない。
もしや私に平常心を取り戻させるためにわざとシソのおにぎりの味というボケを繰り出したのだろうか。

「え……ええ。そうね。あなたがこの隊のパイロット?」

>「オスカー、 オスカー・ファン・ハルベルト、何故ここに?」

>「欠員の補充とでも言うべきか。本来なら私の兄が、この第五小隊に配属される予定だったのだがね……」

どうやらこの人は私と同じくたった今配属されてきたようだ。
続いて現れる髪の長い女性。

>「私がこの小隊の歌姫です、よろしく」

「阿部真里亜です。よろしくお願いします」

>「オスカーだ。パイロットをしている。よろしく頼む」

その猿はペット?とか色々聞いてみたい事はあるが、今は悠長に自己紹介している場合ではない。
そうしている間に自衛隊の進路変更作戦が功を奏し、妖怪が進路を変えつつあるのがモニターに示される。
ひとまず妖怪が街に直行するのだけは回避できたようだ。

「どんな妖怪なのかしら。自衛隊からの情報はまだなの?」

17【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/04/21(月) 10:29:14
大きなテーブルを囲み、慌ただしく通信隊員たちが行きかう作戦室で待機する鉄、オスカー、桜、真里亜。
と、そこでようやく、軍服に身を包んだ初老の男が、室内に入ってきた。

「私が自衛隊のヒガキだ、作戦立案と、情報の取りまとめを行う」

テーブルの一角に向かって早足で歩みながら、初対面のオスカーと真里亜に手身近にそう名乗ると、ヒガキはパネルを操作した。
ヒガキの操作で、テーブルの上に自衛隊機が捉えたエビ型の妖怪の全身像が映し出され、今まで鉄達が見ていたモニターの半分には上空から撮られた妖怪の映像がLIVE映像で映し出される。
エビ型の妖怪は鋏を振り回して木々をなぎ倒し、急接近を繰り返すうるさい無人ヘリを撃墜しようとしているが、空ぶってばかりで上手くいっていない。

「これが今回の妖怪だ、コードネームは、バケエビ、攻撃手段は今現在判明しているのは両手の鋏のみ、射程はロボットの蹴りと同程度。
現在、自衛隊が市街地から離れた森林地帯に誘導中だ」

そういって、ヒガキはLIVE映像でなく、妖怪の進行情報が映されている方のモニターを操作し、自衛隊の誘導による進路予想図を映し出す。
進路上には、自衛隊の巨大ロボットと歌姫が待機する予定と表示された。

「敵の誘導は、自衛隊が担当する、我々は敵が市街地へ進路を変える事を前提に、市街地の前で待機し、目標が市街地へ進行再開した場合、これを迎え撃つ」

ヒガキはモニターを操作し、地図に鉄のゼロキューと、オスカーのブラックプリンスを表示し、2機を示す光点を基地から市街地を通らせて、妖怪と市街地の間に配置した。

「自衛隊が誘導に成功した場合、我々は誘導地点へ急行し、これを殲滅する、これが、今回の大まかな作戦だ。
次に、交戦する場合の、歌姫の歌う順番だが」

そう言って、桜を見るヒガキ。
それに対し、桜は真剣な表情で頷く。

「最初は笹倉桜、次に、阿部真里亜の順で行く。両者は福音展開用ヘリに2機に各々乗り込み、上空からロボットに追随、福音展開開始は、現場のパイロットの判断に従ってくれ
福音展開開始の合図は、長篠鉄」
「了解しました」

鉄を見るヒガキに、敬礼する鉄。

「現場での判断、指揮は鉄、君が執ってくれ、オスカーはまだこちらの土地に慣れていない。
以上だ、何か質問は?」

18オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/04/21(月) 23:56:14
バケエビ……。

その敵の重々しい姿にオスカーは、知能も最大戦速も低いと推測する。
甲殻の底部の腹肢を狙えば、さらに動きは抑えられるはずだが
下手に痛めつけるのは避けたいと思考する。やるなら確実にだ。
なぜなら暴れるものの反撃、それはそれで怖いものだ。

(……しかしあの分厚い甲殻。破れるものか?)
オスカーの心配はそれだけだった。
今のところ、敵の飛び道具は確認されていない。
もしあるのなら自衛隊の小五月蝿いヘリに使用しているはず。
これなら歌姫たちをヘリで空輸も承認できる。
オスカーは、はなから仕留める確率の高い格闘戦闘を望んでいた。

>「現場での判断、指揮は鉄、君が執ってくれ、
オスカーはまだこちらの土地に慣れていない。
以上だ、何か質問は?」

「……一般的にエビは腹肢を使い、砂にもぐる習性があると聞くが、
もしもあのバケエビもその様な戦略を使ってきたらどうするつもりだ?
……その前に仕留めるか。出てくるまで待つか。あくまでも仮定の話なのだがね」
サングラスの奥。彼の表情は読み取れない。
すると子猿が跳躍し阿部の肩にとびうつる。
そして阿部の頭髪の毛繕いを始めたのだった。

19阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/04/26(土) 08:36:55
慌ただしく通信隊員たちが行き交う中、ようやく司令官が現れる。

>「私が自衛隊のヒガキだ、作戦立案と、情報の取りまとめを行う」

モニターに今回の妖怪が映し出される。
両手に鋏を持つ、巨大なエビのような姿の妖怪だ。

>「敵の誘導は、自衛隊が担当する、我々は敵が市街地へ進路を変える事を前提に、市街地の前で待機し、目標が市街地へ進行再開した場合、これを迎え撃つ」

“敵が市街地へ進路を変える事を前提に”――そう、妖怪は何故か人間の住む場所に行きたがる性質があるのだ。
空気が汚れている場所に引き寄せられるのではないか、とか文明を壊そうとしているのではないか、という様々な俗説が飛び交っているが、理由は不明。
というより妖怪の目的も正体も何もかもが不明なのだ。
ただ一つ確かなのは、戦わなければ殺されるという事。

>「最初は笹倉桜、次に、阿部真里亜の順で行く。両者は福音展開用ヘリに2機に各々乗り込み、上空からロボットに追随、福音展開開始は、現場のパイロットの判断に従ってくれ
福音展開開始の合図は、長篠鉄」
>「了解しました」

「……そう。あなたが……」

ここに来て、歌姫の護衛か何かだと思っていた青年がパイロットだという事をようやく認識する。

>「現場での判断、指揮は鉄、君が執ってくれ、オスカーはまだこちらの土地に慣れていない。
以上だ、何か質問は?」

>「……一般的にエビは腹肢を使い、砂にもぐる習性があると聞くが、
もしもあのバケエビもその様な戦略を使ってきたらどうするつもりだ?
……その前に仕留めるか。出てくるまで待つか。あくまでも仮定の話なのだがね」

と、子猿が肩に乗り、毛づくろいをするように髪をすきはじめる。
まるでこちらの緊張を解そうとしているよう。かなり人に懐いているようだ。
よしよし、と頭をなでて両腕で抱く。

「――そうなる前に仕留めましょう。私の歌ならあの装甲を突破できるはず
ただ……それを察知した妖怪が必死の抵抗を試みる事があるの。だから必ず仕留めて」

私の福音出力は標準より少し低いが、妖怪の装甲を脆弱化させ、防御力を大幅に下げるという特殊効果がある。
ただし妖怪によってはその事を悟って死に物狂いで暴れ出す事がある――それが敬遠されていた所以だ。

20【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/04/29(火) 22:01:41
>「……一般的にエビは腹肢を使い、砂にもぐる習性があると聞くが、
>「――そうなる前に仕留めましょう。私の歌ならあの装甲を突破できるはず

オスカーと阿部の言葉に、ヒガキはうむ、と少し考えた姿勢を見せたが、すぐに口を開いた。

「目標が地底へ逃走するようならば、上空へ退避しろ。
そのような新戦術を使われたら、既存のロボットでは歯が立たない。
地底の敵を攻撃する手段もないし、地底で福音が切れるまで待たれたらなすすべがないからな。
…しかし、その心配をする必要は少ない。
なぜなら、奴らはもともとあらゆる物質を透過する能力がある。
足など使わなくても、本来なら地底へ潜れるはずだ。
それをしないのは、何らかの妖怪の構造的な共通の欠点があるからに違いない。
だから、現行のロボットでも戦えている。

よって、作戦は当初の通り、笹倉が先発、阿部がバックアップだ。
阿部はまだこちらのヘリのパイロットや、福音展開設備に慣れていない。」

ヒガキの言葉が終わると同時に、モニターに別ウインドウが開いて、整備士が映し出された。

「ロボットの搭乗準備が整いました。」

整備士の言葉に、ヒガキは頷くと、鉄等を振り返る。

「パイロットはパイロットスーツを着用、歌姫はヘリに急げ。
続きは機内でまとめる。」

ヒガキの言葉に、鉄はいち早くパイロットスーツの保管されている機体の搭乗口へ走っていく。

「さ、こっちよ」
次いで、笹倉が阿部を促して、福音展開ヘリの搭乗口へと急かした。
歌姫の方は福音出力の低下を招くので、厚い防護服は装着できない。
故に、ヘリの中では各々の衣装だけである。

駆け足で指令室を出た笹倉は阿部を伴って空母の上部、福音展開ヘリの格納庫へとやってきた。

「あなたは向こうの機体に」

そう言って、笹倉は阿部をヘリポートに着陸しているヘリの一機へと促し、自らは衣装に着替えるべくロッカーへと走りこんだ。
ヘリの各部にフリスビーをくっつけたような独特の形状の、福音展開ヘリのコクピットでは、操縦士と、副操縦士が阿部に敬礼する。

歌姫は基本的にヘリの移動に関しては彼らプロのパイロットに一任するしかない。
勿論、福音の効果範囲をパイロットが見誤っている場合等は近づいてほしいと促す事や、逆に妖怪に歌姫が恐れを抱いた時に離れてほしいというような簡単なパイロットへの意思表示はできる。
近年では巨大ロボットの技術を応用して、歌姫が歌いながら自力でヘリを運用する事も可能になっているらしいが。
まだまだ普及はしておらず、プロのパイロットに歌姫の舞台は任されている。

21オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/04/30(水) 22:18:08
>「――そうなる前に仕留めましょう。私の歌ならあの装甲を突破できるはず
ただ……それを察知した妖怪が必死の抵抗を試みる事があるの。だから必ず仕留めて」

「ああ…任せてくれ」一言、頷くオスカー。
率直な感じ、阿部の言葉はまるで壁のようだった。
故にそれ意外の反論の言葉、まして賛同の言葉さえも必要としない完璧さをもっていた。
その通り、今は戦って勝利すると思う他ないのだ。
それが正義は勝つと信じて疑わない子どもの盲目さを兼ね備えていたとしても。

(任せてくれ……か)
自分は兄のような天才を演じている。
不安を圧し殺している。

そこへヒガキが口を開く。
彼の話では妖怪は物体を貫通できるとのこと。
それもそうだ。通常兵器が通用しないということは
妖怪はこの世界のものではない。
その怪異に対抗するために福音があるのだろう。

>「パイロットはパイロットスーツを着用、歌姫はヘリに急げ。 続きは機内でまとめる。」

「了解」
そう言ってオスカーは駆け出した。
その瞬間、子猿がオスカーの肩へと飛び乗ってくる。

「ん……あの子の肩のほうがよかったんじゃないのか?」

「ききぃ」

――搭乗口を移動しベオウルフの内部へ。
パイロットスーツはすでに着用済み。
それは手首のボタンを押すと体にベストフィットした。
座席に座ると無数の隔壁が閉じ一瞬の暗闇。
続けて虹彩認証によりベオウルフの全機関に火が灯る。
ベースは超電導。戦闘時は福音とのハイブリッド、ゴスペルドライブが発動する。

「つらいものだな」
妖怪を殲滅し続け、生き続ける。
それがオスカーの願い。
それだけが戦死した兄を越える唯一の方法。

22阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/05/05(月) 09:47:19
>「ああ…任せてくれ」

オスカーと名乗った男性が、力強く請け負う。
しかしそこから感じたものは、完璧な自信とは少し違う物だった。
出来る出来ないに拘らず生き残るには何としてでも勝つしかない、それを悟った者の覚悟……。
一方、ヒガキは、妖怪が地中に潜る可能性は低いと語った。
成程、この世の物質が障害物にはならないのなら今までに地中に潜る妖怪が続出していてもおかしくないはずだ。

>「よって、作戦は当初の通り、笹倉が先発、阿部がバックアップだ。
阿部はまだこちらのヘリのパイロットや、福音展開設備に慣れていない。」

いつもの調子なら私が先に行きますと騒ぎ出すところだが、我ながら今日は大人しい。
この感情は、恐怖……?
今更何を。私はあの時とうに壊れているはずだ。死ぬのは怖くない。
なのに……何故?

>「パイロットはパイロットスーツを着用、歌姫はヘリに急げ。
続きは機内でまとめる。」

長篠君が素早く出撃の準備に取り掛かる。
肩に乗っていた子猿がオスカーさんの方に戻る。
出撃する時も一緒なのだろうか。

>「さ、こっちよ」

笹倉さんは緊張で固まり気味の私を促すように、ヘリへと先導する。

>「あなたは向こうの機体に」

言われた通りにヘリに乗り込むと、操縦士と副操縦士はすでにスタンバイしていた。
これから、操縦を一任する事となる彼らに命を預けるといっても過言ではない。
福音の効果が及びかつ妖怪の攻撃を受けない位置を保ち続ける――言うのは簡単だが行うのは至難の業だ。

「本日から配属になった阿部真里亜です。よろしくね。妖怪が襲おうとしている街……必ず守りましょう」

私の家がある、と言いかけたのだがやめた。
余計なプレッシャーを与えてヘリの操縦に影響が出てはよくない。
そのまま間もなくに迫った出撃の時を待つ。

23【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/05/07(水) 18:46:44
「発進ゲート開け。各ロボットは飛行し、市街地を飛び越えて目的地へ移動願います。
福音展開ヘリは、続いて発艦、追随せよ。」
「了解、ゼロキュー!発進する!」

中世の騎士の鎧のような重々しいパイロットスーツに身を包み、コックピットに多数存在する操縦レバーを動かしながら、鉄が力強くオペレーターに述べる。
それにこたえるように空母の前面ゲートが開き、地響きを立ててベオウルフとゼロキューが現れた。
空母から降り、滑走路へと歩いて行くと、ゼロキューはバーニアを噴射し、空へと浮き上がる。

「つづけ、オスカー!」

鉄はそう言うと、はるか空高くに飛びあがった機体を加速させ、目的地へと飛ばす。
オスカー機も飛び上がると、それに続いて笹倉、阿部を乗せたヘリも発艦し、2機に遅れて追随した。

『阿部さん、心配しなくていいわ……、私と…長篠君だけで勝てる相手。あなたは気を楽にしていて』

移動中、ヘリの中から笹倉が、阿部に通信を送った。
濡れ羽色の黒い長髪と、この世に恨みを持つ悪霊のような垂れ目をした幽霊のような顔から、初対面の人間に暗い印象を与える笹倉だが。
気配りができ、下心なく優しい言葉をかけてくれる彼女は、一般職員たちの評判もよい。
そのため、よく「あれで顔がもう少し景気が良ければ」だとか「衣装だけでなく表情やしぐさも明るいものにしてほしい」などと言った言葉が絶えないが…。
ちなみに彼女の衣装は、パステルイエローのエプロンを中心に、白の長袖セーターとクリーム色のスラックスで構成されており、彼女のもともとの職業である保育士を連想させる物だ。

ともあれ発進した2機のロボットとヘリは、妖怪目指して一直線に空を進んでいく。

===========================

自衛隊の無人ヘリに誘導され、スモーク立ち込める森林地帯を鋏を振り回しながら前進していたバケエビは、突如、ぴたり、とその場に静止した。
ヘリが何度か目の前を通り過ぎて見せるが、一切バケエビは反応せず、電池が切れたようにその場に立ちすさんでいる。
自衛隊のロボット部隊が展開される場所にはまだ距離があり、この位置ならGDチームの方が近い。

==========================

『目標が静止しました』
「何?どう思う、オスカー」

目的地へと飛ぶゼロキューの中、オペレーターからバケエビの現在の状況を聞いた鉄は、後方のオスカーに尋ねた。

24オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/05/08(木) 00:29:30
>「つづけ、オスカー!」

「了解っ。ベオウルフ、発進!」
背中のノズルがけたたましく咆哮する。
煌々としたエネルギーの光芒が大空に尾をひき鋼鉄の巨人が飛翔する。
そんななか、耳朶を打つのはオペレーターの報告。続けて鉄の質問。

>『目標が静止しました』 >「何?どう思う、オスカー」

「わからん。ただ、的が止まっているぶん、こちらとしては戦いやすいな」
未知の妖怪という存在。
奴等はいったいなにが目的なのだろう。
全個体に共通の目的があるのか、それすらも不明だ。

(……いったい何を考えている?)
モニターごし。拡大遠視で観測するバケエビの姿。
人には巨大過ぎるフォルム。
無機質な瞳。
沈黙の不気味さにオスカーは固唾を飲んだ。

(ええいっ、怯むな。今の私は戦う駒だ。
みなここにいるものは役割を全うするという覚悟に満ちているはず)

「きぃ!」
子猿が小さく鳴けば、警告音。
オスカーが気がつけば、ベオウルフの速度が上がっている。
前方を飛ぶゼロキューに数秒で激突するほどの速度だ。

(力みすぎだ)
オスカーは深呼吸。
操縦レバーから力を抜いて子猿の小さな頭を撫で沈黙。
だが子猿は密かに心配していた。
動物の本能で、オスカーはまだこの群れには馴染んでいない。
生き残るためには群れの一員として確かな繋がりを得るべきだと。

25阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/05/11(日) 23:44:19
>『阿部さん、心配しなくていいわ……、私と…長篠君だけで勝てる相手。あなたは気を楽にしていて』

笹倉さんの力強い言葉。
優しさはもちろんだがそれだけではない、ベテランの風格といったものが感じられる。
彼女の衣装は、一見歌姫というイメージとは違うパステルイエローのエプロンが特徴的。
もしかしたら私と同じように、歌姫になる事を決意した経緯を象徴するものなのかもしれない。

「……ええ、ありがとう」

ヘリはロボットに追随するように一直線に飛ぶ。
木々を薙ぎ倒しながら進撃する妖怪が見えてきた。
と、バケエビが突然動きを止める。

「不気味ね……」

笹倉さんのヘリが攻撃を受けない程度の距離で前を通り過ぎてみせるが、反応する様子はない。

「ここで一気に攻めるべきか、いったん引いて様子を見るべきかという事ね……。
考えられるのは何かの攻撃の準備か、こちらの攻撃に備えて身を固める防御態勢のどちらか……」

長篠君がオスカーさんに意見を求める。

>「何?どう思う、オスカー」
>「わからん。ただ、的が止まっているぶん、こちらとしては戦いやすいな」

自衛隊の先行部隊に対しては、このような反応は無かった。
私達が妖怪に対抗する力を持っている事を何らかの形で感じ取っている……!?
歌姫が歌唱できる時間はほぼ一曲分のみ、極力無駄にはできない。
ただし今回歌姫は二人。笹倉さんが時間切れになってもまだ私がいる。
もしもこれが防御の類なら攻撃に特化した私が交代すればいいだろう。

「そうね、何のつもりかは分からないけどこれってチャンス…よね」

オスカーさんの意見に同意を示す。

26【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/05/14(水) 19:27:43
「よし!攻撃だ、オスカーは後方より援護射撃、福音展開開始!」

オスカーと阿部の意見を聞いた鉄は、即時、攻撃を決意する。
慣れぬ最新鋭機に乗り、緊張していたことと、妖怪の謎の行動に注意が行っていた鉄は、オスカーの異常には気付けなかった。
それは、彼の能力と判断を鉄が信頼しきっているためなのだが、仲間の行動に気を向けられないあたり、鉄もまだ未熟である。

「行くぞ!」

動きを止め、森林地帯で停止するバケエビ。
その巨体めがけ、鉄は機体を降下させる。
同時に、笹倉桜の喉から淡い黄色の燐光が沸き上がり、ヘリから流れる「未来」の音楽と共に、周囲に上空から降り注いでいく。

🎶夢を叶えて 一人で探してた星の♪

雪のように空から降り注ぐ燐光と共に、穏やかな、しかし哀愁を含んだ笹倉桜の声の中が響き渡る。
それを聞く鉄やヘリのパイロットたちは、母の手の中に抱かれた赤ん坊のような、安息感に包まれた。
彼女の歌を聴く者は、巨大ロボットのパイロットだけで無く、民間人や、他の歌姫等全ての人が、妖怪の精神攻撃から守られる効果があるのである。
その歌と燐光の中を飛ぶ巨大ロボットの周囲に揺れる燐光が、ゼロキューの体に吸い込まれていき、表面を薄い膜のようなもので包み込んだ。
同じようにベオウルフの周囲の燐光も機体に吸い込まれ、周囲を膜で包む。
機体に搭載されている福音装甲展開装置が周囲の福音を吸収し、福音装甲を作り出したのである。
同時に機体の福音兵装が起動し、巨大ロボットは妖怪を攻撃可能となった。

🎶同じ光を 君が見つめているだけで🎶

「福音拳!!」

上空より急降下した鉄のゼロキューの腕に黄色い光を発生させながら、バケエビに鉄拳を叩き込んだ。
勢いよく放たれた拳はいかなる物体もすり抜けるバケエビの体に、しかし命中し、その体を強固に見えたその装甲を簡単にひび割れさせながら、後ろに大きく吹き飛ばした。

🎶いつもの夜が闇に染まる頃🎶

「脆い!オスカー!追撃だ!」

最新鋭機の力強さに興奮しつつ、福音機銃を展開し、バケエビめがけて発射しながら、鉄は叫んだ。

27オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/05/16(金) 18:40:54
>「そうね、何のつもりかは分からないけどこれってチャンス…よね」

オスカーには自身の希望的観測を、阿部の同意によって確信にまで高めたい気持ちがあった。
だが相手は巨大な妖怪。不安は拭えない。

そんななか、戦闘は始まる。
戦場に響き渡る笹倉の歌声。

>「行くぞ!」
バケエビに炸裂するゼロキューの福音拳。

>「脆い!オスカー!追撃だ!」

「了解!」
ベオウルフがその巨体に似合ないほどの優雅な着陸をみせれば、
長篠の攻撃に続き、バケエビの破損箇所に狙いを定めライフルを構える。
福音の展開でその漆黒の体には無数の光のラインが鮮やかに彩られていた。

(……不思議だ。あの歌声。戦場で安らぎを感じるとは)

照準レクティルにターゲットを合わせトリガーをひく。
ズオォン!
刹那、ライフルの尖端から放たれるは激しい光の閃光。
この閃光は、オスカーの経験では小型の妖怪なら一瞬で散華するほどの破壊力を有しているようだった。
そんな規格外の力をこの新型は持っていた。
だがそれもなんのことはない。
人類は、いや、生物は天敵が現れてもそれに対抗する術を獲得し今まで生き延びてきたのである。
それに物事を効率よく機能させるのが人の作った組織というもの。
子猿の心配は見当違いだったのかもしれない。

(私の兄ならこのまま格闘戦闘に突入し、試運転を兼ねて戦いを楽しんでいたはずだ。
それも余裕の台詞を口走りながらね)
そんなふうに思いながら、アサルトライフルのチャージを終えると再び射撃するオスカー。
強固と予想した甲殻が脆弱なものと確認できれば、
最大戦力を使用する必要もない。

「どうだ?やったか!?」
オスカーの狙ったのは先程命中させた同じ被弾箇所。
バケエビの内部がどうなっているのかは不明だが相手は動かない敵。
それは見事に命中しているはず。

――そして慈愛の光の雨のなか、いまだ森に横たわり続ける妖怪の巨体。
それは皆の見つめるなか、不気味に沈黙を続けていたのだった。

28阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/05/20(火) 21:39:25
>「よし!攻撃だ、オスカーは後方より援護射撃、福音展開開始!」
>「行くぞ!」

長篠君の判断は素早かった。
その決定を受けて、笹倉さんが福音を展開する。

>🎶夢を叶えて 一人で探してた星の♪

「すごい……」

思わず呟いていた。まるで心が洗われるような感覚。
戦場の真っただ中で歌われる戦歌だというのに、それが齎すものは安らぎ。
こんな歌の下で戦えるパイロットは本当に幸運だと素直に思う。

>🎶同じ光を 君が見つめているだけで🎶

いつの間にか自分が涙を流している事に気付く。
そうか、私――怖かったんだ。これ以上大事な人を奪われるのが。
死ぬのは怖くないなんて大嘘だった。まだいるじゃないか。私が死んだら悲しむ人が。

「二人とも頑張って! 私の街を……父さんと母さんを守って!」

控えとはいえ作戦メンバーの一員だというのに、まるで端から見ている一般人のような能天気な声援をおくっていた。
そう、あの運命の日を迎える以前の、未だ世界の残酷さを知らない小娘のように。

>「福音拳!!」

ゼロキューの鉄拳をくらったバケエビは、装甲がひび割れながらド派手に吹き飛ぶ。
装甲が強固なのではないかという懸念は杞憂だったのか、新型機の性能が余程いいのか。

>「脆い!オスカー!追撃だ!」
>「了解!」

吹き飛ばされたバケエビにオスカーが砲撃を浴びせる。
一撃一撃がザコ妖怪なら一瞬で吹っ飛びそうなほどの火力だ。

>「どうだ?やったか!?」

「格好良かったよ! 笹倉さんの歌の中で戦うあなた達……まるで神話の英雄みたいだった!」

私の出番が無しで済むならそれに越した事はない。
多分大丈夫9割、不安1割が入り混じった気分で、沈黙を守るバケエビの様子を固唾を飲んで見守る。

29【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/05/23(金) 12:22:44
>「どうだ?やったか!?」
>「格好良かったよ! 笹倉さんの歌の中で戦うあなた達……まるで神話の英雄みたいだった!」

オスカーの追撃を受けて、硝煙の中で体中のヒビから体液を流しながら沈黙するバケエビ。
それを見た阿部の明るい声が機内に響き、オスカーの声もほんの少し緊張が解けている感じがする。
しかし、妖怪の生命力は侮れない、それに、ここまで一方的にやられたのも不気味だ。

🎶一人じゃない 心たちのように🎶

笹倉桜の歌はまだ3分の1ほどしか終わっていない。
残りの時間、攻撃を続けるべきだ、と、鉄は判断した。

「跡形も残さず片づける、妖撃弾を使う!」

鉄は宣言すると、ゼロキューの胸のカバーを開放し、胸の中に搭載された福音ミサイルを展開する。
ゼロキューの武器の中では最強の攻撃力を誇る必殺の一撃、妖撃弾、計算上は、今まで現れた妖怪すべてに、致命的なダメージを与えることができる代物だ。

🎶明け行く空は 誰かが信じた明日を🎶

「発s…!!」

妖撃弾が放たれようとした刹那、ヒビだらけのバケエビの体が砕け散り、中からもう一匹のバケエビが姿を現した!

「だ…脱皮!?くっ!」

🎶裏切り続けて それでも小さな祈りを🎶

殻を砕いてあらわれた脱皮後のバケエビめがけ、それでも鉄は動揺しつつも、発射態勢にあった妖撃弾を発射させようとした。
だが、それより早く、バケエビの口から、何か液体のようなものが勢いよく噴射され、ゼロキューの胸、露出したミサイルに浴びせられる。
液体は妖怪と同じ物質らしく福音装甲が反応して、黄色い火花がゼロキューの胸で激しく光り、しかし受け止めきれずに貫通されてしまう。
すると液体を受けたミサイルと、ミサイルを固定していたゼロキューのパーツは変形し、じゅうじゅうと溶け始めたではないか!

「機体が…溶ける!?あああああ!」

🎶諦めないよ 届かないと泣き濡れた 君をただ🎶

妖撃弾の噴射剤に引火したのだろう、ゼロキューの胸の中で妖撃弾が爆発。
ゼロキューの上半身が激しい炎に包まれ、中の鉄が慌てているのだろう、福音機銃を乱射しながら上半身を激しく上下左右に乱舞させる。
その間にもバケエビの口から溶解液の噴射は続いていて、ゼロキューの体は付着した溶解液と福音装甲の化学反応で起こる黄色い火花と、炎、煙で染められた。

30オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/05/23(金) 23:55:00
集中砲火を浴び沈黙するバケエビ。かたやこちらは、戦力に余力を残している。
敵の沈黙は不気味ではあるが、この流れなら勝利は確実。
きっと、阿部の両親の住む街も守りきれる。

>「格好良かったよ!笹倉さんの歌の中で戦うあなた達……まるで神話の英雄みたいだった!」

阿部の言葉に、素直に喜色を浮かべるオスカー。
戦闘に私情は挟むべきではないが、同僚の安堵した様相は心地良いものだ。

>「跡形も残さず片づける、妖撃弾を使う!」

続けて鉄の完全なる勝利への布石。
ゆえにオスカーは勝利を確信する。
だがそこに、油断が生じた。
なんと妖撃弾が放たれようとした刹那、
ヒビだらけのバケエビの体が砕け散り、
中からもう一匹のバケエビが姿を現したのだ。

>「だ…脱皮!?くっ!」

新たに出現したバケエビの粘液が妖撃弾の射出を封じ、その胸内で爆裂させる。
鉄は慌てふためき機銃を連射。
ゼロキューの上半身は炎と煙りに包まれ見るも無惨な姿だ。

「あ、うぅ…」
オスカーは冷や汗をかきながら唇を震わせている。
その脳裏に浮かんでいるのは兄の戦死する過去の瞬間。
燃え盛る鉄の機体がそれを思い出させていた。
オスカーは両腕を格闘戦闘用の操縦機器に差し込むとおもいっきり前へと突き出す。
すると次の瞬間、ベオウルフは飛翔し、その脚部は硬質な音とともにバケエビの横腹にめり込んでいた。
横に大きく歪んだバケエビは吹き飛ばされ地響きをあげて山の向こう側に落下している。

「脱出できるか鉄!?誰か、誰かゼロキューに消火剤を…。
そして私にはフルンティングを投下して欲しい!」
と、オスカーは飛行空母に要請。
バケエビが攻撃を再開するのも時間の問題で、これは時間のないなかの時間稼ぎ。
ゼロキューの脱出装置が溶解液で破壊されていないか心配だが
ベオウルフはバケエビの相手をしなければならず
阿部に鉄の救出を頼むのも死ねと言っているようなもの。
それに桜の歌ももうじき終わってしまう。
ここで阿部を欠くのは得策ではない。
――それは勝利するための苦渋の決断だった。

「……阿部マリア、わかっているな?」
圧し殺すかのようなオスカーの声。
彼は阿部に念をおしながらも、斜面から顔を出したバケエビにライフルをお見舞いする。
だがそれはバケエビの溶解液に相殺され火花となって辺りに拡散するのみだった。

31阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/05/26(月) 22:19:53
>「跡形も残さず片づける、妖撃弾を使う!」

長篠君は最後まで攻撃を続けるべきと判断。
皮肉にも、この妖撃弾を使うという判断が仇になろうとは誰が予測し得ただろうか。
バケエビの殻が砕け散り、中から新しいバケエビが現れる。

>「だ…脱皮!?くっ!」

確かにエビに姿は似ているが脱皮までするとは……盲点だった。
バケエビは溶解液を射出し、発射直前の妖撃弾に引火、爆発。最悪の事態となった。
何という不運なタイミング……いや、もしかして敵はこの瞬間を狙っていたのかもしれない。

>「脱出できるか鉄!?誰か、誰かゼロキューに消火剤を…。
そして私にはフルンティングを投下して欲しい!」

笹倉さんの歌は半分ぐらいが終わったところ。
その特殊効果は、精神攻撃に対する防御。
残念ながら溶解液等の物理的な攻撃にはその特殊効果は発揮されない。

>「……阿部マリア、わかっているな?」

「ええ、そのまま奴の気を引きつけて!
運転手さん、歌うから福音展開用スピーカーを! それとゼロキューに消火剤散布をお願い!」

凄惨な状況を目の当たりにしても取り乱さずにとりあえず行動がとれているのは、笹倉さんの歌のお蔭かもしれない。
歌唱時間を優先して笹倉さんの歌が終わってから歌いだすという選択肢もあったが敢えてすぐに歌い始めて重ねる事を選んだ。
一刻も早く長篠君を救出しなければいけないこの状況。奴がエビの生態と同じならば、脱皮直後はまだ脆いはず。
それに、歌姫の歌は重ねる事で相乗効果を発揮する場合があるという。
意を決して歌い始める。

♪Sie sind das Essen und Wie sind die Jäger.――!♪

――お前たちは獲物か?いや、俺たちは狩人だ!

そう、私達は妖怪の餌になどならない、妖怪を狩る狩人なのだから!

32【ゴストゥルーパー・ドールズ】笹倉桜 ◆fr8igvtEPg:2014/05/29(木) 11:03:13
マイクを片手に歌い続けていた笹倉桜の前で、鉄のゼロキューが炎に包まれる。
思わず、「あっ!」と言いそうになるのを、桜はぐっとこらえ、何とか歌詞の続きを口にすることができた。
燃え盛る炎は激しく、ゼロキューから鉄が脱出する様子はない。
無線から、オスカーや真里亜の焦った声が聞こえたが、彼らも内心ではわかっているのだろう。
もう、鉄は助からない事を…。

(動じるな、動じてはだめだ、全ての物事を、画面の向こうの事のように感じながら…。
歌に…、歌にだけ、歌詞にだけ、音にだけ集中するの)

動じるな、動じるなとおのれに言い聞かせながら、桜は歌い続ける。
と、言っても、現在は間奏部分。
音楽に合わせて、ハミングをしているだけで、何か喋っているわけではない。
こうする事で、間奏の間も福音を展開しつつ、喉を軽く休める事ができるのだ。

『駄目だ!福音展開ヘリが消火弾を撃ち込もうと近づけば、溶解液の餌食になる!我々は近づけない!
現在レスキュー隊を要請しているが、到着まで時間がかかる!』

無心にハミングを続ける桜の耳に、さらに絶望的な言葉が、ヘリのパイロットからもたらされた。
そうだ、鉄を救うために、さらなる犠牲を出すわけにはいかない。
せめて、早く妖怪を倒す事ができれば…。

そこまで考え、慌てて桜は我に返り、今歌のどの部分か、改めて確認する。
危うく、歌いだしを間違えてしまうところだった。
動揺するな、鉄の事は私が考える事ではない。
彼には色々と世話になったし、仲良くもなったが、これはやむおえない、今考える事ではない。
そう考え、2番の歌いだしに呼吸を整えた、その時。

♪Sie sind das Essen und Wie sind die Jäger.――!♪

心を揺さぶるような声が…福音が、周囲に響き渡った。
同時に、阿部のヘリから、福音の粒子が周囲に撒かれ始める。

(阿部さん…。そうか!早く勝負をつけるために!)

更に、空のかなたより、空母からカタパルトで射出された巨大な剣が飛来して、オスカーの後方に突き刺さった。

(皆、動じていない、今できる事をしている…。私も!)

♪そんな寂しい心じゃ 大事なものを失くしてしまうよ 少し優しい未来を信じていいんだと♪

桜と、阿部の歌の中で、オスカーの乗る巨人は巨大な剣を引き抜き、構えをとる。
バケエビはそれを見て前足を上げ、背をのけぞらせて腕を引いた後、一気に体を倒して、勢いよくオスカー機に突っ込んでいく。

🎶かなしみを暖めて あげたい🎶

(歌う、私は歌う)

炎に包まれ、地響きと土嚢を上げて倒れ伏したゼロキューを視界の端に捉えながら、桜は必死に歌いつづける。

33オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/06/01(日) 13:19:45
>♪Sie sind das Essen und Wie sind die Jäger.――!♪

福音が…、魂を揺さぶるような歌声が、
粒子となって、阿部のヘリから降り注ぐ。
その一方で、炎に包まれ、地響きを上げて倒れ伏すゼロキュー。
だがオスカーにはどうすることもできない。
今はただ、ベオウルフに飛びかかってくるバケエビを倒さなくてはならないのだから。

鉄塊を持ち上げ、構えるベオウルフ。
二人の歌姫の相乗効果が、
ベオウルフのゴスペルドライブを臨界まで上昇させる。

「オオオオオオオオオッ!!」
咆哮が、無音の鼓動が、空気を激震させる。
同時に発光した必殺の大剣、フォルンティングが空間を疾駆。
バケエビの不可視の防御壁と衝突する。

「……くっ!」
オスカーの体を襲う斥力。負けられない覚悟。
勝って生き残るしか、兄を越える方法はないのだ。

(劣等感。それを僧侶のように受け流すことなど私にはできん。
ゆえに、勝って勝って勝ちまくる!
その向こう側に己の魂の安寧をつかみとる!)

猛り、勇み、守らんとする決意の刃が、阿部たちの歌声を宿し加速。
そしてみなぎる思いが剣とともにバケエビの甲殻を切り裂いた!

――静寂。
蒼天には雲の欠片もなく、
静まり返った森林がこの戦いのすべてを見届けていた。
勝敗はすでに決している。
バケエビの切り裂かれた亀裂から光が溢れだし、すべてを覆ってゆく。
光は柱となり天空へ。
音もなく衝撃もなく、ただの光は空へと消えていった。

「……やったぞ。鉄」
オスカーの視線の先、轟沈したゼロキューに散布される消火剤。
さらに救護班の乗ったヘリから隊員たちが降下してゆく。
今はただ、長篠鉄の無事を祈るしかないオスカーだった。

【スレ主さん、お忙しいみたいですね…】

34【ゴストゥルーパー・ドールズ】笹倉桜 ◆fr8igvtEPg:2014/06/02(月) 15:03:19
>オスカーさん
間違ってデビチルの方にこの名前のまま言ってしまいましたね(汗
仕事の方は忙しいですが、今のペースなら何とか続けていけそうです、デビチルもここも。
危なくなったら、事前に言いますね。
ありがとうございます。

で、その…文章がいいだけに誠に申しあげにくいんですが…2chの方にルールがあるのでわかりづらくて申し訳ありませんが、ゴストゥルは決定リール禁止です。
なので、今回はいいですが、次からは、攻撃を行ったところで止めておいてください。
攻撃が有効か、否か、どういう風にやられるかは、妖怪を操作してるプレーヤーが行います。

35オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/06/03(火) 22:38:42
スレ主さんが切羽詰まってそうに見えてしまって
続きを書いてしまったほうが
手助けになるかも…
なんて思ってしまいました。
すいません。

36阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/06/05(木) 00:36:30
♪踏まれた花の名前も知らずに 地に堕(お)ちた鳥は風を待ちわびる♪
♪祈ったところで何も変わらない 今を変えるのは 戦う覚悟さ♪

>『駄目だ!福音展開ヘリが消火弾を撃ち込もうと近づけば、溶解液の餌食になる!我々は近づけない!
現在レスキュー隊を要請しているが、到着まで時間がかかる!』

そんな……あんまりだ。
とはいえ、すでに歌は始まっている。一度歌い始めたら反論も泣き言も許されない。
何故なら歌うのをやめたらその時点で一巻の終わりだからだ。
今の私に出来るのは最後まで歌い切る事だけなのだ。
自分の身が危険にさらされようと、仲間が倒れようと、歌う。それが、歌姫――

♪屍(しかばね) 踏み越えて 進む 意思を  笑う 豚よ♪
♪家畜(かちく)の安寧(あんねい) 虚偽(きょぎ)の繁栄(はんえい) 死せる餓狼(がろう)の自由を♪

空母から巨大な剣が投下される。ベオウルフの切り札――フォルンティング。
ベオウルフはそれを掴み、風の様に疾駆する。いや、獲物に狙いを定めた狩人のように!

>「オオオオオオオオオッ!!」

♪囚われた屈辱(くつじょく)は 反撃の嚆矢(こうし)だ♪
♪城壁のその彼方(かなた) 獲物を屠(ほふ)る♪

剣が振るわれる瞬間、歌に乗せて叫んだ。

♪Jäger(イェーガー)!!♪

あなたは狩人、必ず獲物をしとめる……私が仕留めさせてみせる。

♪迸(ほとばし)る衝動に その身を灼(や)きながら
黄昏(たそがれ)に緋(ひ)を穿(うが)つ 紅蓮(ぐれん)の弓矢♪

そして――光輝く刃の一閃が、忌まわしき妖怪に炸裂する――

37【ゴストゥルーパー・ドールズ】笹倉桜 ◆fr8igvtEPg:2014/06/05(木) 02:31:20
>>35
俺を泣かせないでくださいよ。
細菌涙もろくて困ってます。
めちゃくちゃ助かりました、ありがとうございます。

38【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/06/11(水) 00:16:15
今日もまた、一体の妖怪が倒れた。
世界各地で日常的に行われている妖怪と人間の死闘。
巨大ロボットと福音、二つの力を手に入れた人類は、その戦いに勝利し続けている。
しかし、それは、失う物が無くなったわけではない。
家が物が、命が…その戦いで常に、消えていくのだ。
そして妖怪に対する勝利から、人類が得る物は無い。
いつも、「負けるよりはマシ」な程度に、被害を抑えられるだけだ。

そしてその日も、人類はまた、得る物何もなく、ただ、奪われた。

=================

バケエビが倒され、炎上するゼロキューの周囲には複数の化学消防車、はしご車などが到着し、本格的な消火を行っていた。
ゼロキューの体を包む燃え盛る炎は強く、未だ消える気配はない。

最新鋭を誇った強固な金属の巨人は、今、炎の中に散ったのだ…。
はたしてこの巨人は奇策に負けたのか、それとも、パイロットの実力が足りなかったのか…。
恐らく両方、敵の行動を読めず、そして、溶解液を避けれなかった、指揮官の先を読む力と、パイロットの技量不足。

「あぁ…」

長篠鉄は、救護班の展開したテントの中、ビニールシートの上であおむけになりながら、そんな事を考えていた。
阿部が、オスカーが、新しい部隊に配属されて初めての出撃。
自分はそれに泥を塗る真似をしてしまったのだ。
自責の念で、鉄は強く頭を抱えている。

オスカー、阿部の下した判断は的確だった。
迅速に妖怪を殲滅した事で、コックピットを守るセーフティーフレームと呼ばれる外殻が溶けてしまう前に救護班が到着。
鉄は間一髪、助けられたのである。

「長篠君…」

不意に後ろから聞こえた声に、鉄はびくっとして、こわごわと後ろを振り返った。
そこには、笹倉桜がが幽鬼のように立っている。

「怪g…」
「すみません…」

強く責任を感じているのだろう、鉄は、桜の気遣いの言葉より先に、彼女に謝り、目をそらした。
自分の失策が、ゼロキューを大破させ、他の仲間と、そして後ろの市街地を危険にさらしたのだ。
鉄は顔を両手で覆って隠し、すみませんっとぼそぼそと呟きはじめた。

39オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/06/12(木) 00:45:39
「阿部マリア。いい歌だったぞ」
と、直通無線でオスカーが言う。
これは不謹慎かもだが、彼は心の何処かで戦闘を求めている。
オスカーは妖怪を殲滅する瞬間に梵我一如に似たような錯覚に陥るのだ。
妖怪殲滅は人類の総意。
つまり任務完了の瞬間にオスカーは大義との同化を果す。
彼はその瞬間だけちっぽけな自我を忘れることが出来るのだ。



オスカーは長篠のもとへと駆けつける。

>「怪g…」
>「すみません…」

長篠の口から紡ぎ出される懺悔の言葉。
(一見、笹倉に泣かされているようにも見えたがオスカーにはわかっていた)
そんな長篠の気持ちをくんで、オスカーはいたたまれない気持ちになりこんな言葉を投げ掛ける。

「謝る必要はない。長篠鉄。無事でなによりだ」

「あのときは私のライフルのチャージ時間と君の妖撃弾の発射時間が重なり
敵に攻撃の隙を与えてしまったのだ。
ほんの二、三秒の隙だったかも知れんがな…。
だから次からはお互いにバックアップすることを心掛けよう。
最後まで油断せずにだ」

オスカーは長篠の気持ちを案じている。
それも長篠のすみませんと言う台詞を、次へ繋がる気持ちととらえていたからだ。
こんな弱気なリーダーをオスカーは見たことがない。
それが新鮮でもあり、彼はこの隊が好きになれそうな気もしていた。
幽鬼のような笹倉に、勇ましい阿部。
戦い続けるさだめなら、せめて戦い続ける場所は自分で選びたい。

オスカーは子猿の頭を撫で微笑する。
子猿もオスカーを強く抱き締め返す。
いつかは死んでしまう自分たちのその心に
思い出を刻み込むかのように。

40阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/06/16(月) 01:35:57
>「阿部マリア。いい歌だったぞ」

「……ありがとう」

妖怪を倒したので、その妖怪が出した溶解液も消えたはずだ。
出来る事はやった、だから後はただ祈るのみ……。

「死んだら駄目だ長篠鉄! 私の歌を聞いてみたいって言っただろう!」

自ら迎えに来て役職も明かさないままいきなり出動して
私の歌を聞く事もないままあっさり妖怪にやられるなんて酷すぎる。

♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪

ヘリから降りて待機している私達に、悲痛な面持ちでスタッフが告げる。

「また、尊い犠牲が出てしまいました……大破して再起不能です」

「そんな……。……え? 大破?」

「はい、ゼロキューが」

「そっちかい!」

半ばズッコケながら長篠君の元へ急行する。
彼はすでに目を覚ましていたが、九死に一生を得た割には元気がない。
申し訳なく思っているのと、最新型ゼロキューを見て目を輝かせていただけに、それが大破したショックもあるのだろう。
オスカーさんと桜さんがそれぞれ気遣う言葉をかけている。

「助かったんだから素直に喜んでいいの。
私の歌が聞けなくてそんなに残念だった? そんなのいくらでも聞かせてあげる。
これから同じチームなんだからさ!」

とはいえ、福音の歌を歌うという事は、つまり妖怪が現れたということ。
何時の日か、妖怪に人類が勝利を収める時が来たらその時は……
余計な事を考えずに思いっきり色んな歌を歌おう。

「ゼロキューの事は残念だったけどまた最新型が配備されるわよ。
ほら、ああいうのってすぐ古くなるし。次は夏モデルかな?」

ケータイやPCじゃないんだから……。というツッコミが聞こえてきそうである。
何はともあれ手を差し出し、満面の笑みを浮かべる。

「改めて……よろしくね! パイロット長篠鉄!」

♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪   ♪

歌姫、阿部真里亜――最初に配属された隊を放り出された逸材。
今回は実家の危機で大人しくしていたが、これから先が思いやられそうだ。
しかし、このチームでならなんとかやっていけるのではないだろうか。
そんな予感がするのである。

41【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/06/17(火) 12:46:38
皆の寛容な態度に、鉄は素直に泣いた。
涙を流し、ありがとう、ありがとうと繰り返す鉄を、桜が優しく抱きしめる。

=======================

「状況終了、状況終了、妖怪は完全に殲滅、大破1、死傷者皆無、倒壊家屋無!」

飛行空母の方でも、オペレーターが戦闘終了をヒガキに報告していた。
ヒガキはそれに頷くと、小さくため息をつく。

「また巨大ロボットと引き換えに、優秀なパイロットがより優秀なパイロットになった、そう思いたいものだな」

そう呟いて、ヒガキは今後の第5小隊の行く末を考える。
ゼロキューの代替機は、現在建造中のゼロキューがすべて配備される先が決まっているので、新規に建造されることになるだろう。
それまでは半年かかるので、その間は別の機体…倉庫で解体を待っている旧型機が配置されるのだ。
そんな旧式の機体で、はたして日々進化している妖怪に勝てるのか…。
どのみち、長篠鉄の未来は暗いだろう。

「だが、そこで踏ん張れ、踏ん張れば踏ん張っただけ、人類は有利になるのだから…」

誰にともなく、ヒガキは言った。

===================

「あら、雨、止んだわね」

各々の帰りの機体、鉄は救助隊のヘリ、オスカー、阿部は各々の乗ってきた機体に戻る最中に、阿部が空を見上げて言った。
見れば、鉄が阿部を迎えに行っていた時から降っていた小雨はやみ、曇り空の間には青空が見えていた。

「…虹が見えたらよかったのにな」
「そうですね、あんな小雨じゃ、虹は見れませんもんね」

そんな事をぼそっと呟きあって、鉄と阿部は各々の機体へと別れた。
人類が妖怪を相手に、勝利の虹を見る日は、果たしていつになるのかはわからない。
だが、勝利の日を信じ、ゴストゥルーパードールズは歌い、戦う。
いつの日か高らかに勝利の凱歌を上げる時まで…。


              THE END

42【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/06/17(火) 12:48:41
さて、終わったわけですが、今後どうするか、皆さんの意見を聞きたいと思います。
例の宇宙人が文明復興に搬送する奴を始めてもいいんですが、正直ゴストゥルーパー・ドールズをもう少し続けたいです。
ただ今のままだと色々不具合もあるので、ここを直した方がいいとか、ここがよくなかったとか、ご意見ご感想をいただけないでしょうか。

43【ゴストゥルーパー・ドールズ】新テンプレ ◆fr8igvtEPg:2014/06/26(木) 14:57:28
ジャンル:オカルト・戦略・巨大ロボットアクション
【世界観説明】

○妖怪
突然出現したあらゆる化学兵器を全く寄せつめない未知の存在。
都市部だろうと海上だろうと関係なく、まるで風が吹くように唐突に出現し、破壊の限りを尽くす。
あらゆる物質の影響を受けないため、壁を通過したりもできる。
意思の疎通は不可能。
○福音
妖怪に対抗できる雄一無二の手段。
特定の女性の喉から発せられる音で、この音の中で妖怪を攻撃することで、妖怪にダメージを与えられる。
歌にする事によって力は増幅し、音は人の形に近いものの方がその恩恵を受けやすい。
○巨大ロボット
福音の恩恵を強く受ける人の形をした巨大な機械。
福音を凝縮して防御や攻撃に使用したり、光の剣のような武器としても使用できる。

【ローカルルール】

1:超越、版権禁止、ただし、この物語の世界はわれわれの世界の未来の世界なので、劇中のキャラ達が台詞などで出すのはOK。
2:1週間経過して次の経過して次の順番の人間が書き込まなかった場合、飛ばして書くこと。飛ばされたキャラはプレイヤーが戻るまで以後NPCとするが、基本的に必要最低限以外動かしてはいけない。
3:決定リールなし
4:一人一キャラ、それ以外はNPCとして登場させること。しかし、他の人の出したNPCを動かす時は、なるべく事前に申し出たほうがよい。いきなり殺すのはご法度。
5:敵役参加有、ただし、ストーリーに関わる物を出すのはある程度物語が進んでから!事前にストーリーに関わるのを出したいと相談してから出しましょう。
6:全体のまとめは俺がやります。が、ストーリーの展開は皆で考えていきましょう。

【テンプレート】
人物
名前:
性別:
年齢:
国籍:
身長:
体重:
容姿:
役職:(基本パイロットか、福音の歌い手)
福音出力:(歌い手のみ、平均的な歌い手の出力を1とした場合の出力。ロボットの攻撃力、福音防御力の補正値)
持ち歌:(歌い手のみ、効果の違う歌を3つまで登録可能。ただし、一回の戦闘で歌える歌は1つだけ!)
各歌の特殊効果:(歌い手のみ、各歌一づつ。効果が大きいと、福音出力が下がる)
おいたち:
備考:



新しいテンプレが完成しました。
ルールは改変ありません。
阿部さんの新テンプレができたら、新しい導入部を投下したいと思います。

44阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/06/28(土) 23:52:03
名前:阿部 真里亜
性別:女
年齢: 29
国籍:日本
身長:160
体重: 50
容姿:裾が引き裂かれたようなデザインの漆黒のドレス、引き裂かれたヴェールが付いたヘッドドレス
役職:歌い手
福音出力: 0.9
持ち歌・各歌の特殊効果

・紅蓮の弓矢 ttps://www.youtube.com/watch?v=dv4nVRpNgZ0
ロボットの攻撃力を上げる。
パイロットの精神にも微妙に作用し、勇敢に戦えるようになる。
と言えば良さそうだが裏を返せば慎重さは減退するのかもしれない。

・自由の翼 ttps://www.youtube.com/watch?v=jmBhAe9OE3E
ロボットの機動力を上げる。
足が速くなったり一定時間に攻撃できる回数が多くなったりする。
ただしそれをどこまで活かせるかはパイロットの腕次第。

・デッドラインサーカス ttps://www.youtube.com/watch?v=R_toGhXWk1g
妖怪を混乱させ、知性的な行動をとれなくさせる。
強力だが、妖怪が予測不能の暴れ方をする危険性もある諸刃の刃。

おいたち:
特筆するまでもない絵に書いたような平凡且つ幸せな人生を歩んできた
が、結婚式当日に妖怪の襲撃にあい、結婚相手が死亡、自身も重傷を負う。
奇蹟的に回復し、皮肉にもその時の怪我がきっかけで福音の歌い手としての力に目覚めた。
以来建前では世界平和のため、本音では妖怪への復讐心を胸に歌姫として活動している。
奇抜な衣装は婚礼衣装を染めてあつらえ直したもので、亡き結婚相手への復讐の誓いの証。
引き裂かれたようなデザインは、妖怪の襲撃を受けた時に引き裂かれた部分をそのまま使用したものである。
備考:
心の中に妖怪に対する激しい憎しみという暗黒面と純粋な少女のような一面を同居させている。
が、普段はどちらもあまり見せる事はなく、むしろフレンドリーなぐらいのただの変人に見える。
色んな意味で軍隊的なお堅いノリには馴染まないらしい。

45阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/06/29(日) 00:02:21
お待たせしました
3曲目を何にするかで少し迷ったけどぶっ壊れた感じが合ってると思ったのでこれで

「戦闘曲」「歌付き」で検索してたらこんなのが出て来た
ttps://www.youtube.com/watch?v=uuHfJib1gek
本編で使われない隠し歌としてテンプレにだけ設定しとくのもアリかと思ったけど流石にやめたw

パイロットとの兼ね合いで歌の効力が最高に引き出された時には
武器が魔的な炎をまとうような演出(紅蓮の弓矢)とか
ロボットの背に光の翼が現れるという演出(自由の翼)も考えたりしています
それでどうこうというわけではなくただのビジュアル的な演出としてですが

46阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/07/01(火) 22:52:39
実質独立したスレのような状態になっているので一応トリ変えておきます

47阿部 真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/07/01(火) 22:53:11
新トリップはこれで

48【ゴストゥルーパー・ドールズ】新テンプレ ◆fr8igvtEPg:2014/07/02(水) 20:20:55
>>45
福音がこう、光る燐光として撒かれてる描写があるので、それが集まって翼や炎になるっていうのはありだと思います。

それの応用で、武器を出せるってのもいいかもしれませんね。

少ししたら笹倉のも作ろうと思います。
再開まで今しばらくお待ちください。

49【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/07/06(日) 19:55:12
仕事先の先輩がぶっ倒れやがりました!
自分の子供のかかった病気をうつされたとかなんとか…。

まともな指導も無しに俺が代わりを務める事になっており、現在苦戦中。
再開はまだまだかかります、すいません。

50阿部さん ◆PxcqTTd2Bc:2014/07/06(日) 23:51:39
>>49
それは大変……!お早い回復をお祈り申し上げます。
再開はいつでもいいので慌てないでね。

51【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/07/12(土) 21:58:21
すいません、今月中は無理げです。
仕事が忙しいっつーより、俺の行動に致命的な問題が見つかって…。
根暗で…根暗で接客業向いてなくて…。
うっ…うっ…
営業スマイル何ておらできねえだ…。
休みの日を叩き潰されて仕事に出てるのにもっと働けとかほざく糞上司に愛想よくなんかできねえだ。
もう上司に決闘とか申し込んで相打ちで死にたい。

52阿部さん ◆PxcqTTd2Bc:2014/07/12(土) 22:26:38
開始が遅れる事は全然気にしないで
私も少し引っ越しでバタバタするのでそれ自体はむしろ丁度良かったぐらいよ
休日出勤でお疲れでしょう、落ち着くまではまずは休むことを優先して。

でも大変そうね……。仕事が向いてないんじゃないかという気持ちはとてもよく分かります。
世の中にはすぐ辞める人もいるのに向かないながらも続けてるだけ偉い!と思う事にしてますw
きっと今の状況がずっと続くわけではないのでどうか自暴自棄にならずに。
それでももー究極にどーにもこうにも無理だ!と思った時は病院行って死にたい連呼して診断書を貰ってしまう事よ。
冗談みたいだけど割とマジで。取り返しのつかない事になってからでは遅いんだから。

53名無しさん:2014/07/12(土) 22:47:09
よこですが、上司のかたになにかを言われることは期待の現れであり
成長できるときがきたのかと思われます
感情的になっている時の行動は、
あとから思い出したら失敗ってこともありますので慎重に行動なさってください

応援しています
詳しい現状も知らず生意気を言ってすいません

54【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/07/15(火) 21:00:27
阿部さん、>>53さん、ありがとうございます。
元々俺のとった仕事と相性の悪い職場だったのと、根暗で対人恐怖症なとこがあったので大苦戦してましたが、お二人のおかげで一つ、殻をぶち破る事が出来ました。

皆さんの励ましのことばのおかげで、一つの苦境をどうやら乗り切れたようです。
が、今度はリアルイライラ棒を車でするような本来の職務じゃないところでの大ピンチが襲来してきました。
まだまだゴストゥル復活はできそうにないです…。

しかし、仕事は忙しくてもネトゲよりTRPGのが好きな俺はTRPGがしたくて仕方が無かったりします。

そこで、もっとこう、頭からっぽにしてできるような大雑把なロボット物を作りたいと思っています。
それを始めると余計ゴストゥルが遅れるような気がしますが、俺は自分の気持ちに嘘がつけません。
やります!
以下、設定です。

55 ◆fr8igvtEPg:2014/07/15(火) 21:11:18
スレタイ:「超」巨大ロボット同盟軍対凶悪宇宙人軍団!!
ジャンル:「超」ロボット物
ストーリー:ある日、世界各地を無数の侵略宇宙人が襲ってきた!!
圧倒的な科学力を持つ宇宙人の攻撃に、世界中の軍隊は全く無力!
瞬く間に世界各地は凶悪で無慈悲な侵略者たちの前に焦土と化し、街と言う街は残虐な処刑を施された死体で埋め尽くされた。
侵略者達は宇宙の「悪の意思」なる物の導きにより、徒党を組んで地球を攻撃してきたのだ!
その目的は地球環境の徹底的な改造と、人類の家畜化にある!
交渉、和睦の道は全くない!!

この凶悪な侵略者の大軍勢に対抗すべく、ゆういつ侵略者の攻撃を免れている日本の、富士山麓に世界中の天才頭脳が結集!!
全世界の技術をもって、あらゆる現有兵器を凌駕する、「超」兵器巨大ロボットが作られていた!!
それに乗り込むは、人間離れした奇人、変人、超人、鉄人!!

侵略者と人類の戦力比、地球人類1に対する侵略者100万!!
絶望的な戦況を…ぶっつぶせ!超巨大ロボット同盟軍!!

56 ◆fr8igvtEPg:2014/07/15(火) 21:12:31
あ、すいません、実験準備室と間違えました。
後で投下しなおしときます。

57 ◆fr8igvtEPg:2014/07/15(火) 22:52:42
むしゃくしゃして書いた。
巨大ロボが出れば何でもいい気になっていた。
今は反省しています。
すいません、「超」〜は無かったことにしてください。

うう…さっそく感情のままに動いてしまった…。

58 ◆PxcqTTd2Bc:2014/07/16(水) 12:44:55
とりあえずちょっと元気が出てきたようで何より
それはそれで分かりやすくてなかなか面白そうだと思うけど
本人さんがそう言うならスレ原案投棄所の誤爆という事にしておきましょw

59名無しさん:2014/07/20(日) 10:35:18
少し、元気になられたようでよかったです。
変なことを言ってしまったのかと心配していました。

超ロボット、かっこいいですね

60【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/08/01(金) 21:44:15
【笹倉 桜は新曲追加なしで行きます。
ながらくお待せいたしました。
ゴストゥルーパー・ドールズ、episode2を始めたいと思います】



===========================−


南米、ジャブロー。
暑い日差しに照らされた広大な熱帯雨林の上空を移動する、巨大な影があった。
ゴストゥルーパードールズ、第5小隊の移動空母である。

「妖怪の目撃情報があったのはここか…」

艦橋の窓から眼下の森林地帯を見下ろしながら、アメリカ軍のジャクソン大佐は呟いた。
先日、南米上空を哨戒中だったアメリカの偵察機が妖怪の映像を最後に連絡を絶ち。
監視衛星等は分厚い雲がジャブロー上空を覆っていたため使う事が出来ず、結局、妖怪はそのまま見失ってしまった。
そこで、妖怪を早期発見、殲滅すべく、第5小隊がジャブローの奥深くに送られたというわけである。

しかし、アメリカ軍の偵察機やヘリがジャブロー上空を飛び回り、妖怪を捜索しているものの、その姿は未だに見つかっていない。

「…隠れるのがうまくなってきたな、オカルトのモンスターめ、真っ向勝負では勝てないからゲリラ戦か…」

ジャクソン大佐はいらだたしげにそう言うと、パイロットと歌姫たちに、艦橋へ集まるように指示を出した。

=============================

「私が今回君達の指揮をとる、ジャクソンだ、さっそく、アメリカ軍の所有する妖怪の情報を伝えようと思う」

艦橋に集まったパイロットたちに、大佐はそう言うと、スクリーンに偵察機が最後に送ってきた妖怪の映像を映した。
そこには、人間の腕が4本はえた毛のないネズミのような怪物が、熱帯雨林の中を木々を蹴散らさず進んでいる姿が映し出されている

「これが今回目撃された妖怪、コードネームは、スナカケババア、大きさは約35m、4足歩行型で、全長は60程だ。武器は…」

画面の中のスナカケババアが、手を偵察機の方に向けた。
すると、何か小さな物が無数に偵察機のカメラに命中し、カメラが破損、映像は途切れてしまう。

「このように飛び道具を持っている。こいつが、現在このジャブローのどこかに身を潜めているのだが、上空からの捜索では見つける事ができないでいる。
木々の間に身を潜めているか、川の中に隠れているか…まぁ、そんなところだろうが。
発見次第、諸君らには迎撃にあたってもらう。
今のところまでで、何か質問は?」

ジャクソンは歌姫とパイロットたちを見回した。

61阿部 真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/08/03(日) 22:25:26
第5小隊の空母はもう長い間熱帯雨林の上空を飛んでいた。
妖怪出現によって出動要請があって来たものの、妖怪が見つからないのだ。
妖怪というのは一度現れたら最後派手に暴れ回って探すまでもないというのが今までの常識だったのだが……。

>「これが今回目撃された妖怪、コードネームは、スナカケババア、大きさは約35m、4足歩行型で、全長は60程だ。武器は…」

妖怪が何か小さな物を飛散させ、カメラの映像が途切れる。
なるほど、だからスナカケババアね。

>「このように飛び道具を持っている。こいつが、現在このジャブローのどこかに身を潜めているのだが、上空からの捜索では見つける事ができないでいる。
木々の間に身を潜めているか、川の中に隠れているか…まぁ、そんなところだろうが。
発見次第、諸君らには迎撃にあたってもらう。
今のところまでで、何か質問は?」

人里に進撃するでもなく、偵察機等がこれ程飛んでいるのに積極的に襲いに来るでもない。
隠れて不意打ちの機会を伺っているにしても、こんなに警戒されてしまっては不意打ちも至難の業。
逆に、森の中でひっそり生きてきた人間に見つかりたくない妖怪、とは考えられないだろうか。
そうだとすれば最初の偵察機は不幸にもうっかり鉢合せしてしまったために口封じされたとか……。
そういえば、襲われた偵察機はどうなったのだろうか。
消息を絶った、とは聞いているが……。

「はい! その消息を絶った地点で偵察機の残骸のようなものは発見されたのですか?
それとも行方不明……?」

62【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/08/05(火) 20:45:06
*ジャブローはガンダム独自の架空の地名である事が判明しました。
 なので現在地の設定を、アマゾンに変更します、大変申し訳ありません(汗
 それから、ゴストゥルには今後(あれば)、現実の国家が登場すると気まずいので、架空の国家が出てきますが、それらは本作オリジナルの国家でいくつもりです。
 では引き続き、episode2をお願いします。

63長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/08/12(火) 22:08:52
【オスカーさんが来ないので、鉄をパイロットに復帰させて、話を続けたいと思います】

「偵察機か…、この真下だ」

言って、ジャクソン大佐は機の下方カメラの映像を映し出した。
そこには、ばらばらになった偵察機の残骸が無残な姿をさらしている。

「妖怪による汚染や襲撃を警戒して、本格的な回収作業は行われていない。
しかし、わずかに回収できた部品から、パチンコ玉サイズの無数の何かができたのだろう小さな穴が大量に見つかった。」

ジャクソンがモニターを操作し、画面にまるで月の石の様に小さな穴が無数に空いた破片を映した。

「徹底的な破壊様から、奴が我々に対して強い憎しみを持っているのは疑いようがないな。
現在アメリカ軍は奴を見つけ出すため、ある作戦を進めている。
それがこれだ。」

そう言って、再びモニターを操作するジャクソン。
すると、モニターは戦略地図に変わった。
地図上の熱帯雨林の上を、第5小隊の空母を現している大きなマーカーと、アメリカ軍の偵察機の小さなマーカーがいくつも動き回っており。
熱帯雨林を囲むように画面の端には、アメリカ軍の巨大ロボットを示す赤いマーカーが何機か配置され、熱帯雨林からスナカケババアが現れた際どこから現れても迎え撃てるように待機している。
そこに、画面の端のあちこちから無数の輸送機が出現し、何か小さなマーカーを熱帯雨林のあちこちに撒きながら画面中央の飛行空母に集まり、空母と重なって消えた。

「熱帯雨林のあちこちに我が軍のレンジャー部隊を降下させ、地上から妖怪を探し出す作戦だ」

画面を指さして、ジャクソンはとんでもない事を言った。
生身の人間が妖怪と遭遇すれば、即、殺されてしまう。
それが無くても、人のいない場所にわざわざ人間をばら撒けば、いざスナカケババアを見つけて交戦する事になった時、周りにいる歩兵が邪魔になって思うように戦う事が出来なくなってしまうのだ。

「大佐、それはあまりにも人命を軽視している、そんな非人道的な作戦はするべきではない!」

ジャクソンの余りの作戦に、阿部と一緒に作戦を聞いていた鉄が手をあげ、毅然とジャクソンに言い放った。
横で、笹倉も厳しい目でジャクソンを見つめている。
しかし、ジャクソンは心配する事は無い、と阿部の方を見た。

「そのために、君達第5小隊、正確には、阿部真里亜、君に来てもらったのだ」

言って、ジャクソンは画面を操作した。
それに合わせて緑色の小さなマーカーの中にスナカケババアが出現、緑色のマーカーはそれから逃げるために散り始めると、第五小隊の空母から何かウェーブのような物が放たれた。
すると、緑色のマーカーはウェーブを浴びて青いマーカーに変わり、高速でスナカケババアから離れていく。

「君の持ち歌の一つ、自由の翼を使い、アメリカ兵達に福音の翼を装備させて、高速で戦域を離脱させるのだ。
これなら福音防御と戦線離脱、二つを一度にこなす事が出来る。
さらに、巨大ロボットを高速で戦域に到達させることもできるのだ」

ジャクソンの説明通り、空母に搭載された長篠のロボットと、待機しているアメリカ軍のロボットが高速でスナカケババアに殺到、複数体でスナカケババアを攻撃し、あっという間に撃破した。

福音は「人型に近い形程、その恩恵を受けやすい」そして、最近開発された新型の福音歌唱機は、福音を反物質化して密集させ、人型にまとわせることができるようになっている。
それならばなるほど、「人型」そのものの生身の人間ならば、最大限に福音の恩恵を受け、巨大ロボットのように攻撃力は無いので妖怪を撃破する事はかなわないまでも、福音の効果によって逃げる事位できるだろう。

「しかし、それでも生身の人間を妖怪と対峙させるべきではない…」

そんなジャクソンに、笹倉が強い口調で言った。
彼女は、実際に生身で妖怪と対峙し、その腕を失っている。
故に、その言葉には重みがあった。
そして笹倉の視線は同意を求めるように、阿部の方を向いている。
彼女もまた、生身で妖怪の脅威を感じた一人だからだ。

64オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/08/13(水) 13:25:05
すいません!
考えてみたら引退宣言もしてなくって
ほんとうにすいません!

またの機会がありましたら
よろしくお願いいたします(-人-)

65長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/08/13(水) 18:18:45
え!?
いや、やめるんですか!?
大丈夫ですよ、まだ参加できますよ!?
って言うか参加してくださいお願いします。

66長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/08/13(水) 20:01:42
あ、始まってるのわからなくて参加しにくいんじゃなくって、事情があってやめなきゃならないんですね。
すいません、読み違えてました。
また、機会がありましたらよろしくお願いしますね。

67 ◆z4KXiuQxT6:2014/08/13(水) 20:54:54
TRPG に少し疲れた感じです。
完全なウケミンでしたら参加できるかもです。
それにつきまして
オスカーのキャラでは
中の私が疲れすぎてしまいますので
出来損ない後輩の新キャラを
考えてみたいと思います。
仮設ゼロキューを操る新米の日本男児とかです。

68長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/08/13(水) 22:12:09
>>67
ウケミン歓迎です!!
どんと来てください!

69関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/08/14(木) 11:06:06
>「しかし、それでも生身の人間を妖怪と対峙させるべきではない…」

皆の話を聞きながら関ヶ原金之助は言い合いが終わるのを待っていた。
正直言えば、ことなかれ主義。
自分が歩兵ならば従うだけだし歩兵でなかったことに安堵もしている。
まあ、それは自分の考えることでもないと思いながら
彼は軍人らしくよくしつけされた犬のような態度でおとなしく話を聞いている。

だがただひとつ気になっていることは自身の操るロボットに飛行能力がないことだ。

(どうするのだろう)
と関ヶ原金之助が考えてもしょうがない。
今は話が進むことを待つしかなかった。

70関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/08/14(木) 11:08:37
名前:関ヶ原金之助
性別:男
年齢:22
国籍:日本
身長:172cm
体重:80kg
容姿:デブ
役職:パイロット
おいたち:普通のサラリーマンの息子。
備考:成り行きでパイロットになってしまった変な男

正式名称:対妖怪人型兵器局地戦用試作壱号機
愛称:プロト
全高:40m(頭頂高)
重量:弾薬フル装備時9000t
姿形:頭部はエリンギのような形の甲殻で覆われており
首から下の上半身は人工皮膚を模した特殊装甲に覆われている。
下半身は古代ローマ帝国の戦車ような形。

武装:右手に着脱式巨大ドリル。左手には大盾。
手投げ弾(毬栗型)プロペラ式浮遊機雷。
毒ガス(福音の力で妖怪の体を侵食する)

戦闘能力
攻撃力:1
福音防御力:3
物理防御力:3
機動力:1
耐久力:3

機体解説
装甲に人工皮膚が使われているのは設計者がプロトを人型に限りなく近づけようとしたため。
だが如何せん経営難のため企業が製造を断念。
プロトの製造は凍結された。
しかし戦場での万年的な機体不足のあおりをうけ
軍が自ら改修し、今回実戦配備されることとなる。
未完成の下半身は巨大な車輪を代用することによって完成。
これで遂にプロトは陽の目をみることとなった。

71阿部 真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/08/16(土) 00:37:19
原型をとどめない偵察機の残骸が映し出される。

>「妖怪による汚染や襲撃を警戒して、本格的な回収作業は行われていない。
しかし、わずかに回収できた部品から、パチンコ玉サイズの無数の何かができたのだろう小さな穴が大量に見つかった。」

私が密かに考えていたどこか全く別の場所に飛ばされたとか”妖怪の世界”に連れて行かれたとかいう説は否定された。
妖怪の世界、というのは妖怪がどこからともなく突然現れる事や通常の攻撃が通用しない、という事から
我々の世界とは異なる位相の世界から来る存在なのではないか、と常々考えているのだ。
といっても物理学等の素養があるわけでもないので全くの素人考えだが。

>「徹底的な破壊様から、奴が我々に対して強い憎しみを持っているのは疑いようがないな。
現在アメリカ軍は奴を見つけ出すため、ある作戦を進めている。
それがこれだ。」

一瞬でもこいつ実は戦いたくないんじゃね?と思った私が馬鹿だったようだ。
やはり妖怪は議論の余地無き絶対的な人類の敵なのである。
それならそれでさっさと出てくれば迎え撃ってやるのに。
ジャクソンさんが操作するモニターには、小さいマーカーが熱帯雨林のあちこちにばら撒かれる。
この小さいマーカーは一体なんなのだろうか。

>「熱帯雨林のあちこちに我が軍のレンジャー部隊を降下させ、地上から妖怪を探し出す作戦だ」

レンジャー部隊って……要するに歩兵だよな。
文字通り命懸けの囮作戦!? いくらなんでも大胆すぎる。いったん落ち着こうか大佐殿。
私が口を開くまでも無く第五小隊の良心である笹倉さんが毅然と意見する。

>「大佐、それはあまりにも人命を軽視している、そんな非人道的な作戦はするべきではない!」

しかし、大佐はそのような反応は想定の範囲内とばかりに言葉を続けた。
>「そのために、君達第5小隊、正確には、阿部真里亜、君に来てもらったのだ」

「私……ですか!?」

>「君の持ち歌の一つ、自由の翼を使い、アメリカ兵達に福音の翼を装備させて、高速で戦域を離脱させるのだ。
これなら福音防御と戦線離脱、二つを一度にこなす事が出来る。
さらに、巨大ロボットを高速で戦域に到達させることもできるのだ」

生身の人間に福音を使うという斬新すぎるアイディア。
しかし考えてみれば人型に近い程福音の恩恵を受けやすいからロボットをわざわざ人型に作っている位なので
人間自身が福音の効果を最も受けやすいと言うのは当然っちゃ当然である。

72阿部 真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/08/16(土) 00:38:07
「福音を人間に……ねえ」

これだけ待っていても普通のやり方では妖怪が出て来ない以上合理的な考えと言えるだろう。
しかし、大勢の兵士の命が私の歌に一手にかかってくる事になるのである。
福音を人間に使った前例もなく、具体的に福音が人体にどの程度作用するのか確かな検証の元にやるわけでもない。
少し前までの私ならすぐにやると即決していたに違いないが、第五小隊に来てからというもの余計な事を考えるようになってしまった。
不思議なものだ。

>「しかし、それでも生身の人間を妖怪と対峙させるべきではない…」

笹倉さんの肩腕は、妖怪の襲撃で失われたのだという。
妖怪に何かを奪われ、妖怪との戦いを決意したという点では一緒なのだ。
妖怪に襲われた時の事は、今でもはっきりとは思い出せない。
ただ一つ確かなのは、妖怪の脅威の前に、生身の人間は成す術もないということ。
だからこそロボットという鋼鉄の鎧を纏い戦いに挑むのだ。
しかも、この作戦で尤も重要な役割と言ってもいいレンジャー部隊らしき者がこの場に見当たらない。
少なくとも意見を述べる機会は与えられてしかるべきだ。
と思いきや、隣に少し恰幅のいい見慣れない男性がいる。
もしやレンジャー部隊代表としてこの作戦会議に呼ばれたのだろうか。

「あなたもそんなイチかバチかみたいな事金輪際したくないですよねえ。
笹倉さんの言う通りです。今の状態……では」

いきなり話を振られた男性の戸惑いの表情を肯定と勝手に解釈して私は続ける。

「作戦に参加する兵士に事前に歌の一部を実際に歌って福音の効果を実験しておく……
というのはどうでしょう。
実験、といってももちろん場所は艦内になりますが。
思ったほどの効果を得られないようなら作戦自体を考え直す必要がありますし
効いたら効いたで一度体験しているのといないのでは大違いです」

足が速くなったものの勢い余って木に激突してる間に妖怪にやられました、ではシャレにならない。
一部とはいえ福音を歌えば回復するまで休む時間もいるので、作戦決行までの時間は更に延びるが
今まで手をこまねいていたのだから今から少々延びたところで同じ事だ。
それよりその結果を基により確実な作戦を立てられるメリットが大きい。
もしもその間にスナカケババアが痺れを切らして攻めてきたら……?
普通に笹倉さんに歌って貰って戦えばいい。むしろ危険な作戦を決行しなくてよくなって御の字だ。

73名無しさん:2014/08/16(土) 12:28:08
モニターの内容ってシミュレーションなの?
それとも実際に起きてることを中継してるの?

74【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/08/16(土) 19:38:42
>>73
作戦内容をわかりやすくモニターを使って解説しているだけで、シミュレーションです。
わかりづらくてすいません。

続きは少ししてから書きます。
関ヶ原さん、お先に書きたければどうぞ。

75関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/08/17(日) 21:38:59
>「あなたもそんなイチかバチかみたいな事金輪際したくないですよねえ。
笹倉さんの言う通りです。今の状態……では」

>「作戦に参加する兵士に事前に歌の一部を実際に歌って福音の効果を実験しておく……
というのはどうでしょう。実験、といってももちろん場所は艦内になりますが。
思ったほどの効果を得られないようなら作戦自体を考え直す必要がありますし
効いたら効いたで一度体験しているのといないのでは大違いです」

関ヶ原の答えは、すべてお任せ……だった。
歩兵とて軍人な以上、死ぬかも知れないから出来ませんなどと言えるわけもないはずだし
関ヶ原本人にも死ということの実感は少ない。
両手を失っている笹倉ほどの気持ちも、
愛しい人を失っている阿倍のような気持ちもない。
要するに関ヶ原には、これといって譲れない意見がないのだ。
それと阿倍は関ヶ原を兵士と思っているらしいが、
彼はそれを否定することもなかった。
熱血主人公ならば自己紹介の場面でもあるのだろうけど彼は違った。
阿倍が何を思っていようがかまわない。
今はことが進むのを待つしかなかった。

76関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/08/17(日) 21:45:11
う〜ん。自分ってけっこう悪質なウケミンな気もしていたりしてなかったり……。
オスカーもけっこう空回りって
いうか大きな独り言しか言ってなかったのですが
関ヶ原も一人相撲をはじめてしまいそうですw
すいません…。

77【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/08/21(木) 10:26:38
>「作戦に参加する兵士に事前に歌の一部を実際に歌って福音の効果を実験しておく……
というのはどうでしょう。

「………む、いや、その必要はない」

自分の作戦の欠陥を指摘され、ジャクソンは狼狽えながら、しかし、首を振って強く阿部の意見を否定した。

「副音の人体への影響はすでに別所の研究所で研究成果を得ている、そこは心配ない!
それに、妖怪の行動目的がわからない以上、早期にそれを叩くのを最優先すべきだ!」

先ほどより荒いしゃべり方で、早口にジャクソンは言った。
それは作戦の有効性を説くよりも、自分の意見を押し通すような風である。

「ならそんな目的をもって隠れ潜んでるやつが人間が直接地面に降り立ったところで暴れだすかだってわからないのでは?」
「短絡的だ!そんな作戦が成功するわけがない!」

そんなジャクソンの態度に、笹倉が強い口調で責めるように抗議する。
さらに、鉄に至っては明らかに怒り、声が大きくなっていた。
二人の応答にジャクソンはいらだたしげに大きく舌打ちする。

ジャクソンは妖怪出現以降、軍内部で有効な作戦を立案、実行できずにいた。
個体ごとに攻略法や作戦方法が全く異なる妖怪たちに対抗できないジャクソンは過去失態を重ね、失脚が迫っているので焦っているのである。

「何もしなければ多大な犠牲が出るのだ!作戦は実行する!」

断固とした態度で自分の意見を押し通そうとジャクソンが叫んだその時だった。
司令室の警報が鳴り響き、オペレーターがモニターに別所から届いた映像を表示し、叫ぶ。

「ここから北東30kmの位置に新たな妖怪が出現しました!!」

モニターには偵察機が映しているのだろう、巨大な蛇の胴体から腕が4つ伸び、腹にオレンジ色の半透明の球体を7つつけた妖怪が、木々を蹴散らしながら進んでいる様子が映し出された。

「米軍司令部より、コードネーム、ヨナルデパズトーリと設定、時速70kmでまっすぐここに向かっています」

オペレーターがモニターを操作し、そこに戦略地図が表示され、現在出現しているヨナルデパスドーリの進行方向、速度が表示された。
その進路をたどると、第5小隊の飛行空母がある。

「妖怪の複数出現…前例のないことではない!スナカケババアを包囲しているわが軍のロボットは動かせん…諸君、諸君がヨナルデパスドーリを迎撃しろ!」

モニターから視線を外し、鉄らのほうを向いたジャクソンは、モニターを指さしながら早口に言った。
表情や動きから、うろたえているのがわかる。

78【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/08/21(木) 10:27:08
>>76
いや全然いいですよ、気にしないでください。

79関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/08/21(木) 18:51:20
78
ん〜、何にもしないくせに
美味しくしろ!みたいなウケミンって問題かも、
と思っていたのですが
取り越し苦労だったみたいです。

それとすいません。順番とか気にしていなくって
毎回レスをしていました。
次の阿倍さんのあとに書きたいと思います

80阿部 真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/08/24(日) 20:31:11
>「………む、いや、その必要はない」
>「副音の人体への影響はすでに別所の研究所で研究成果を得ている、そこは心配ない!
それに、妖怪の行動目的がわからない以上、早期にそれを叩くのを最優先すべきだ!」

一瞬狼狽えた様子を見せた後、強硬に自らの作戦を決行しようとする大佐。
明らかに焦っている。その研究は本当に行われたのだろうか。
それを感じ取ったのであろう、笹倉と長篠が激しく抗議するが聞き入れられる事は無く。

>「何もしなければ多大な犠牲が出るのだ!作戦は実行する!」

ああ、駄目だなこりゃ。二人はまだまだ食い下がるだろうが、おそらく無駄に終わるだろう。
君子豹変す、とはよく言ったもので、世の中の殆どの軍人は君子では無い。
組織の面子やら大人の事情やらでがんじがらめで一度強硬に主張したら引っ込みがつかなくなるのが軍人というものである。
例え自分で間違っている事に途中で気付いても、だ。
そしてゴストゥルーパードールズといえども司令官が最終決定した以上、従うしかない。
こうなった以上作戦を成功させるしかないのだ…! そう決意した時だった。
オペレーターが衝撃の事実を告げる。

>「ここから北東30kmの位置に新たな妖怪が出現しました!!」
>「米軍司令部より、コードネーム、ヨナルデパズトーリと設定、時速70kmでまっすぐここに向かっています」

「はあ!? 今取り込み中なのよ、帰って貰って!」

もちろん帰れと言って帰るぐらいならゴストゥルーパードールズはいらないわけで。

>「妖怪の複数出現…前例のないことではない!スナカケババアを包囲しているわが軍のロボットは動かせん…諸君、諸君がヨナルデパスドーリを迎撃しろ!」

大佐は“想定の範囲内”的な発言内容とは裏腹に、パニック状態だ。
新手の妖怪は猛スピードで接近中、言われなくても迎え撃たざるを得ない状況である。

「迎撃するしかないじゃない!」

でも待てよ? これは二種類の妖怪が偶然同時期に出現しただけなのだろうか。
それとも……妖怪同士が協力しているとしたら?
最初の戦いで福音を使い切ってしまったら二匹目の妖怪が暴れ出したらずっと妖怪のターン!だ。
嫌な予感がした私は歌姫用ヘリに向かいながら言った。

「いつスナカケババアが出て来るか分からないのに二人同時に出撃するのはまずい。
笹倉さん……あなたは待機しておいて」

取り越し苦労ならそれでよし
そうでなかった場合、私にはもしかしたら妖怪共の小賢しい作戦を突き崩せるかもしれない持ち歌があるのだ。

81関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/08/25(月) 19:47:30
>「妖怪の複数出現…前例のないことではない!
スナカケババアを包囲しているわが軍のロボットは動かせん…諸君、諸君がヨナルデパスドーリを迎撃しろ!」

「よっ…」
重い腰をあげる関ヶ原金之助。

現時刻、ついに迎撃命令がおりた。
関ヶ原はやれるだけのことをやるためにプロトに乗り込み出撃。
モニターに映る妖怪を見つめながら、無線で鉄に問う。

「どうしますか?」
抑揚のない平たい声。階級は鉄のほうが上であり
失敗すれば鉄の責任。気は楽だった。
関ヶ原は指示がおりるまで
大盾を構え防御体制を維持する。

82【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/08/29(金) 23:17:18
正式名称:T型対妖怪人型決戦兵器改・改
愛称:T改
全高:40m(頭頂高)
重量:6000t
姿形:骸骨のような頭と、筋肉をむき出しにした人間のように機械が露出する黒い体。
背中から下に向けて太いパイプのような物が左右三本のび、そこから噴射して飛行する。
武装:右腕より緑色の福音砲を発射。
戦闘能力
攻撃力:3
福音防御力:3
物理防御力:1
機動力:2
耐久力:1
解説
人類の歴史で初めて妖怪を撃破した、日本の巨大ロボット。
ゴストゥルーパードールズの前身である国連対妖怪研究機関が開発し、日本人の寺生まれのパイロットによって運用され、バケネコを撃破してみせた。
その後も何度も出撃していたが、新鋭機が次々と作られ、パイロットも高性能な機体に乗り換えたため倉庫で眠っていたが。
機体不足によって改良を加えられて復活。
長篠鉄に、新たな機体が送られるまでの繋ぎとして送られてきた。
耐久力は人型に近づけるために下がってしまったが、攻撃力と福音への感受性は新鋭機にも劣らない。

83【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/01(月) 01:50:40
飛行空母から発進する際、鉄は、まず、自分らが出たら空母に上空へ退避するように呼びかけた。
笹倉と阿部はヘリで出るため、空母は戦闘の邪魔になるからだ。

移動力の低い関ヶ原が先に出撃し、空母の大きなゲートが開く。
激しい風が空母の中に吹き込む中、鉄は巨大な機体を一歩、また一歩と進めた。
巨大ロボットが飛び跳ねても墜落しないようにできている空母だが、巨大なロボットが一歩進むたび、ガクン、ガクンとわずかな揺れが全体に響き渡る。
やがてT改が空母の発進口の端に立った時、ヘリの中の阿部から通信が入ってきた。
笹倉を空母に残し、不意打ちに備えてまず自分だけ出るとのことである。

「わかった、歌は阿部さんから始めよう、選曲はこっちの冷静さを保ち、かつ有事の際の撤退を有利にするため、自由の翼で!
とりあえずスナカケババアの事は忘れる!
仮に出現した際は、これと交戦する事は避け、各々撤退、米軍ロボット部隊の援軍を待ち、我々は支援に回る!
行くぞ!!」

樹木の混じった巨大な爆裂と共に関ヶ原のプロトが地面に降り立ったのを確認した鉄は、T改を前進させ、空母から飛び立った。
コクピットの中にいても感じるわずかな浮遊感の後、T改は地表手前でわずかに噴射、勢いを殺して着陸する。
T改は人型になるべく近づけて製造されたため、構造が必要以上に複雑で、破損しやすい。
そのため、操縦は慎重にならざるおえず、平凡なパイロットである鉄には、T改は多少荷が重かった。

着地し、両者の機体が安定した時、後ろにいる関ヶ原からどうするかと通信が入ってきた。

それを聞いて、鉄はわずかに思案する。
敵の攻撃手段はまだわからない。
ここは先行して米軍航空隊に攻撃してほしい処だが、こちらと接敵するのが早いだろう。

「とりあえず、空母は上空に退避、我々は関ヶ原を先頭に、行軍速度を合わせて前進、目標を目視確認後、音楽スタート。
関ヶ原は目標に突撃し、俺は福音砲でこれを援護する。これでいく」

そう言って、鉄は機体を横にずらし、関ヶ原に道を開けた。

84関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/01(月) 21:52:30
質問です。
関ヶ原は敵を確認出来た
ということにしてもいいですか?
作戦地図でマーカーされているということは
肉眼でも敵は見えるということですよね〜?
それと今回、順番は阿部さんからでよいですか?

85【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/02(火) 03:50:15
>>84
スナカケババアを探すために飛び回ってる偵察機が妖怪を発見して位置をトレースしてるので、距離は数十キロ離れています。
でも遮蔽物内から見えると思います。
描写いまいちわかりずらくてすいません。

順番は阿部さんに任せます。

86関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/04(木) 20:08:00
阿部さん。お忙しいのでしょうね。
お引っ越しをなされるとのことでしたが
少し心配でもあります。

それと関ヶ原の次の行動なのですが
盾を構え突撃。そのあとドリルで攻撃の予定なのですが
ヨナルデパズトリは避けたりしますか?
こちらがわの描写はどこまでで止めておいたらよいですか?

87阿部さん ◆PxcqTTd2Bc:2014/09/04(木) 20:43:46
すみません!本人は全く無事なのでご安心を。
パソコンが使い物にならなくなったので修理に出したのですがなかなか帰って来ずついうっかり…。
iPadもどきみたいな端末で頑張ってみるのでもう少々お待ちを。
あまり遅くなりそうなら順番変わってもらうかもなのでまた連絡します。

88関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/04(木) 21:37:31
お元気そうでなによりです。
お返事をお聞きできて
安堵している自分がいます。
レスのほうは待ちますので
ゆっくりと書いて下さい。

89阿部真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/09/04(木) 23:28:12
> 「よっ…」

先程声をかけた男性がパイロットだったらしいことにいまさらながら気付く。
それにしてもパイロットにありがちな気迫というか気負いというかが全く感じられない。

>「わかった、歌は阿部さんから始めよう、選曲はこっちの冷静さを保ち、かつ有事の際の撤退を有利にするため、自由の翼で!
とりあえずスナカケババアの事は忘れる!
仮に出現した際は、これと交戦する事は避け、各々撤退、米軍ロボット部隊の援軍を待ち、我々は支援に回る!
行くぞ!!」

とりあえずスナカケババアの事は忘れるって……。
桜さんに残ってもらって正解だったようだ。

>「とりあえず、空母は上空に退避、我々は関ヶ原を先頭に、行軍速度を合わせて前進、目標を目視確認後、音楽スタート。
関ヶ原は目標に突撃し、俺は福音砲でこれを援護する。これでいく」

大佐とは対照的に、落ち着いた長篠君の指示が飛ぶ。
大佐の指示によると福音は自由の翼で、とのこと。
選曲の候補としてはもう一つ、敵の知性を失わせるデッドラインサーカスがあるが、お世辞にも味方の冷静さを保つのに向くとは言えない。
もし本当に二体の妖怪が共謀していて近くにスナカケババアが控えていれば効果を発揮するが、そうでなければ意味はないのだ。
もはや大佐の言うことは聞く気が失せつつあるが、結果的に指示通りに自由の翼を歌うことにした。
関ヶ原と呼ばれた男性より、敵を目視したとの通信が入る。いよいよ戦闘開始だ。

「Wohlan Freie Jetzt hier ist an SiegDies ist der erste Gloria
Wohlan Freie Feiern wir dieser Sieg fur den Sieges Kampf!」

勇壮な歌に後押しされるように、盾を構えた関ヶ原のロボットが突撃していく。
何事もなく終わってくれと願うばかり。
万が一交戦中にスナカケババアが現れたらその時は……曲を切り替えることも辞さない算段だ。

【お待たせいたしました。改行や文のレイアウトが変だったらご容赦を…】

90【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/05(金) 16:54:37
>>86
関ヶ原の行動だけで止めておいてください。

91関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/05(金) 21:43:51
>「とりあえず、空母は上空に退避、我々は関ヶ原を先頭に、行軍速度を合わせて前進、目標を目視確認後、音楽スタート。
関ヶ原は目標に突撃し、俺は福音砲でこれを援護する。これでいく」

「了解」
プロトが先頭でゆくことになった。
すれ違い様、ギョロリとその巨兵の眼球が、長篠機(T改)をとらえる。

「?」
むろんプロトが見た長篠機の映像は操縦席のモニターにも投影され、
その現象に関ヶ原は少し気持ち悪く思っていた。
それは時々起きる意味不明なこと。
かつて、創世記にヒトガタ兵器を作れと命令された科学者たちの一部には、
福音のことも半信半疑のまま、訳もわからずヒトガタ製造を目指した者もいたという。
ゆえにプロトには人工知能も搭載されていた。
人間の脳を移植されているとの噂もあったし
エリンギ型の甲殻の中身は人の顔を隠すためとの噂もあった。
妖怪が現れた当初は、それほどまでに科学界は混迷していたのだ。

そんななか、阿部のヘリコプターの隣を飛行する民間のヘリコプターの影。
その窓から覗くのは涼しげな女の眼差し。
彼女の名前は暮呼理緒(くれこりお)。髪型はシニヨン。所謂お団子頭に盛り盛りのメイク。
歳は三十前後と言ったところで職業は科学者だった。

「あ、プロトが先頭なの?それでうしろのマシンは妖研のTタイプか。
…ちっ、あの時プロトが完成さえしていたら、
人類初に妖怪を倒したのはプロトになるはずだったのにね!
本当、妖研の奴らってマジムカつく」
理緒は長篠機に向かって中指を突き立てキーっと威圧。
その後、ヘリコプターはプロトと並び一緒に進行する。

「ねぇ、プロトの中の人。今回はプロトの初陣なんだからビシッと気張りなさいよ!
勝って結果さえ残せたらもう誰もプロトのことを化け物なんて言わなくなるんだからね!」

それに対して関ヶ原は「はい。そうですか」と素っ気ない返答で
かくんとコケそうになる理緒。

(こ、こいつ、大丈夫なの?
…まあいいわ。いざとなったらアタシがゴスペルマニューバで…)
と決意を胸に秘め、無線機を握りしめ、
今度はその向こう側にいるであろう長篠たちへとメッセージを送る。

「ねぇあなたたち!アタシの名前は暮呼理緒。プロトの開発者よ!
プロトのためにも、この戦闘は絶対に勝利するんだからね。ショボい敗北なんて絶対に許さないんだから!
歌姫は気合い込めて歌って、Tタイプの人はバッチリプロトをバックアップ。わかった!?」

理緒の言葉の裏には、何かしらの劣等感が孕んでいるかのような印象も受ける。
が、それとは対照的に関ヶ原の思考は何時ものように冷めていた。

「……」
彼女の言葉は関ヶ原にとっては雑音でしかなく
そんなこと言われなくても皆が百も承知なのではないか、と彼は思っている。
個人が何を思おうとも数分後には決着はついているはずなのだから。

そしてついに関ヶ原の瞳は敵を捉える。

「前方に妖怪を確認。プロト、関ヶ原金之助、突貫します」
続けて阿部の歌が鳴り響けばプロトの福音炉に火が灯る。
回転を増す戦車の車輪。激しく舞う土煙。
ドリルと大盾を構え、まるでドンキホーテのように突撃するプロト。
移動力はなくとも向かってくる敵が相手ならそれも関係ない。
あとは唯一の自慢の防御力でこらえ、回転するドリルを妖怪の側面目掛けて繰り出すだけである。

「ふむ。絵に描いたような正攻法ね。
でも正攻法ゆえに敵は受けざるおえない。
やるじゃない。なかなか」
理緒も下唇に指を当て御満悦の様子。

92【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/08(月) 01:32:49
関ヶ原と共に敵を目視確認し、阿部の演奏も始まった、いよいよ攻撃がはじまろうとした、その時だった。
突然戦闘区域に民間機が出現し、通信を入れてきた。

>「ねぇあなたたち!アタシの名前は暮呼理緒。プロトの開発者よ!
プロトのためにも、この戦闘は絶対に勝利するんだからね。ショボい敗北なんて絶対に許さないんだから!
歌姫は気合い込めて歌って、Tタイプの人はバッチリプロトをバックアップ。わかった!?」

「!?何者ですかあなたは、もうすぐ戦闘が始めります!関係の無い通信は控えてください!」

突然入ってきた通信に、鉄は困惑しながらも通信相手をしかりつけた。
ジャクソンの作戦に対する怒りも冷め切っていなかったところに、あんな偉そうな通信を戦いに直接関係しない人間に突然入れられた鉄の口調は荒い。
舌打ちをすると、変な方向に行こうとした心を鎮めて、戦いに集中する。
幸いまだ妖怪との距離はあり、演奏も始まっていないため、仕切りなおすチャンスはあった。
咳払い一つして、鉄は阿部に自分の準備が整った事を伝える。

するとすぐ、演奏が始まった。
後は大音量で流れる歌と、音楽、そしてそれに身を任せて戦うだけだ。

「Wohlan Freie Jetzt hier ist an SiegDies ist der erste Gloria
Wohlan Freie Feiern wir dieser Sieg fur den Sieges Kampf!」

勇ましい音楽と共に、加速し、木々を蹴散らし、凄まじい勢いで突撃を開始するプロト。
対するヨナルデパスドーリは音楽と共に迫りくるプロトの巨体を確認すると、6本の手を巨大な華のように大きく広げ、雄たけびをあげる。

「シィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ」

低い声で鳴きながら、突っ込んでくるプロトを6本の腕で迎え撃とうとするヨナルデパスドーリ。
そこをめがけ、鉄はT改の巨大な腕を向けると、反動に備えて足を引き、機体の前腕部に隠された機械群を展開する。

「破ぁ!!」

鉄の声と共に緑色の光が前腕部から発射され、妖怪の左の真ん中の腕と肩から生える上の腕に命中。
腕2本を跡形も無く消滅させた。
妖怪が怯む間も無く、そこに盾を構えたプロトが体当たりをかまし、体制を崩したその脇腹に、ドリルを思いっきりねじりこむ!
口から黄色い液体を吐き、苦しむヨナルデパスドーリ。

そこに続けてもう一発、鉄が福音砲を放とうとした、その時だった。

『福音展開ヘリ!逃げろ!!逃げろ!!』

突然、ジャクソンの声が通信機に割り込んできた。
余りに唐突なジャクソンの声に、鉄は一瞬、福音砲の発射をためらってしまう。

福音展開中に、通信に割り込む事。
それは数分しか戦えない戦闘ロボットの戦いを邪魔し、さらに歌姫の歌唱を妨害しかねない行為だ。
常識で考えて、やっていい事ではない。

しかし、ジャクソンの言葉が気になった鉄は、ちらりと機体の後方モニターに映っている福音展開ヘリの方を見て……。
思わず声を失い、サッと青ざめた。

鉄の後ろ、はるか頭上を飛ぶ、福音展開ヘリと、民間ヘリ。

その後ろの雲の中から、翼をはやしたスナカケババアが現れ、今まさに、ヘリに喰らいつかんと大きな口を開けていたのだ。

93【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/08(月) 01:38:20
「な…!?」

ジャクソンの指示を受け、機体の後方上空を確認した福音展開ヘリのパイロットは一瞬言葉を失い。
しかしすぐに機体を大きく傾け、一気に高度を落とす。
中の人間が強い浮遊感に一瞬襲われた次の瞬間、ヘリに強い衝撃が走り、機体が回転し、激しい振動が一同を襲う!

「テイルローターをやられた!墜落する!!」

副操縦士の悲痛な叫びが機内にこだました。
機体は警告音を鳴らし、回転しながら急降下をはじめる。
窓の外に一瞬、こちらに背を向け、T改に向かって飛んでいくスナカケババアの姿が見えた。

94阿部真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/09/09(火) 22:16:23
>「ねぇあなたたち!アタシの名前は暮呼理緒。プロトの開発者よ!
プロトのためにも、この戦闘は絶対に勝利するんだからね。ショボい敗北なんて絶対に許さないんだから!
歌姫は気合い込めて歌って、Tタイプの人はバッチリプロトをバックアップ。わかった!?」

>「!?何者ですかあなたは、もうすぐ戦闘が始めります!関係の無い通信は控えてください!」

何故か謎の民間ヘリが現れて騒ぎはじめ、長篠君にたしなめられるというちょっとした騒動がありつつ。
言われなくても歌姫は全力で歌うだけだ、歌姫に出来ることはそれしかないのだから。

>『福音展開ヘリ!逃げろ!!逃げろ!!』

もう何なのよ、リサイタル中の大声は禁止よっと思いつつも後ろをチラ見して、その意味を理解する。
これには、サバンナでお腹をすかせたライオンに出会った時のような素敵な笑みも浮かぼうというものだ。
一気に高度を落としてスナカケババアの襲撃を逃れようとする操縦士。
しかしそれが裏目に出て、ヘリは墜落を始める!
不幸中の幸いがあるとすれば、スナカケババアのターゲットからはとりあえずは外れたこと。
そしてーー今歌っているのが自由の翼であることだ。
なぜなら、福音は生身の人間に最も効果を発揮するのだから!
私自身がどれぐらい福音の加護を受けられるかは意識したことがないので未知数だが
福音を紡ぐ張本人が福音の加護を受ける適性が無いわけはない、きっと、多分。

(福音の神様、私に力を貸してーー!)

福音だから神様だろうというだけで、何の神様かはさっぱり不明である。
とにかく、祈りは届いたようだ。周囲の時間がゆっくり流れはじめる。
実際にはそんなわけはなく、こちらの処理速度が速くなっている、つまり素早さが上昇しているということだ。

「無意味な死であったとは言わせない 最後の一人になるまで」

(死んでたまるかっつーの!)

私は体感的にはゆっくり流れる時間の中で、実際にはものすごい早さで脱出用パラシュートを装着し、ヘリから飛び降りた。
ふわりふわりと降下しーー木に突っ込む。
折れた木の枝などが擦り傷を作る。

「痛っ」

その瞬間、時間の流れが元に戻る。歌が途切れたのだから当たり前だ。
戦闘の福音は桜さんが繋いでくれているだろうが、二匹の妖怪を同時に相手にしている状態。
一刻も早く戦線に復帰しなければ。
まだ歌唱時間は残っている。私の歌で二匹の妖怪の連携を崩すことができれば……。
操縦士さん達は無事ろうか、とちらりと思うが、今は妖怪を倒すことに集中すべきだと頭の片隅に追いやる。
上を見上げれば、先程の謎の民間ヘリが飛んでいる。
この際素性不明でも何でもいい。福音展開用の専用装備は無いにしても、音声の放送機能ぐらいはあるだろう。
パラシュートの布を降りながら大声で呼んでみる。

「お願い、乗せてって!!」

95関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/10(水) 01:24:15
>「!?何者ですかあなたは、もうすぐ戦闘が始めります!関係の無い通信は控えてください!」

「はぁ?そっちには関係なくったってこっちには関係あるんだっつうの!」
無線マイクに、噛みつかんばかりの理緒。
なにこいつ、なにさまなの〜…と苛立ちながらも
長篠のことが気になって軍のデータから彼の経歴を抜き出す。
そして驚愕。わざとらしくも両手で口を隠しながら目を見開いて…。

「え〜やだ〜、こわい、こわいよ〜。あのパイロットさんゼロキュウを大破させちゃってるなんて…信じられなぁい」
と、実はそんな子芝居をしていた理緒だったのだけど、
ここだけヘリコプターのパイロットが無線の送信をきっており、長篠との喧嘩にはいたらなかった。

それで話は戻って、T改の攻撃に宙に舞う妖怪の腕二本。
間髪入れず敵の懐に飛び込むプロト。
繰り出される回転式ドリルを食らい血へどを吐くヨナルデパスドーリ。

「うはあ!」
これには関ヶ原も気持ち悪く思っていて

「は、はやく死んで下さい!」
と、トリガーを引けば、プロトの右腕にも力がこもる。
そしてぎゅるぎゅると回転を増したドリルが、妖怪の心臓を目指し突き進む。
激しい返り血を浴びながらも、プロト自身は臆する様子もなく、
任務を遂行せんと敵と密着状態。

そう。ここまでは此方の思惑通りだった。ここまでは…。

>『福音展開ヘリ!逃げろ!!逃げろ!!』

「!?」
一瞬、何が起きたのか分からず、真っ白になる関ヶ原の思考。
そんななか、ただ一つ認識出来たのはスナカケババアの存在。

(撤退…)
関ヶ原は長篠の命令を思い出す。
仮にスナカケババアが出現した際は、これと交戦する事は避け、
各々撤退、米軍ロボット部隊の援軍を待ち、我々は支援に回る。

「撤退だ!」
関ヶ原はスイッチレバーを押し上げ、プロトの右腕とドリルを早急に切り離した。
福音ヘリが墜落すれば、当然、福音の加護も消滅する。
となれば、巨大ロボットもただの人形。
ゆえに逸早く関ヶ原は撤退をしようとしていたのだ。
続けて大盾も切り離せば、その鉄塊は音をたてジャングルに倒れ込む。
そして両腕が剥き出しになったプロトはその場で回転。
関ヶ原は安全地帯へと進路を定めアクセルを踏む。
……しかし、プロトは動かなかった。
その頭が振り向けば、モニターに映し出されるのは福音ヘリと長篠機。
それはプロトの瞳が映し出しているもの。

「こいつ…、やっぱり操作系に異常があるんだ!このポンコツが!」

96関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/10(水) 01:25:52
一方で…

>「お願い、乗せてって!!」

「いいよぉ!」
親指をグッと突き出している理緒。
そのままヘリコプターは降下して縄ばしごを下ろす。

幸いスナカケババアはT改と交戦中のようで
何とか阿部たちを救出出来た。
あとは空飛ぶスナカケババアに再び襲われないことを祈るのみなのだけど
果たしてどうなることやら。

理緒は結構な真顔で戦況を見つめている。
その時だった。
3歳くらいの子供が抱きついて来たのは。

「抱っこくだしゃあぁい〜」
泣きながら理緒にしがみつく子供。

「え、よし君どうしてこんなところに?」
子供は理緒の子供のヨシヒコだった。
彼は理緒と離れ離れになるのが嫌で座席の下に隠れていたのだ。
そんな関係ないことがなんやかんやあって
ここからが本編。
ヨシヒコをあやし抱っこする理緒の視線の先にはプロトの姿。

巨兵は撤退を拒否するかのようにその背中のリュックのような部分からプロペラ式の浮遊機雷を射出。
長篠機の周辺の空中に無数に展開させると自身はスナカケババアの死角から接近してその醜い足を掴まんと手を伸ばす。

「すいません長篠さん!私は撤退しようとしたのですが、
この機体が勝手に動き出してしまって
止まらないんですよぉ!」

【スナカケババアの足に掴みかかるプロト】

97名無しさん:2014/09/11(木) 23:13:25
近代世界ファンタジー再起動しているゾ

98【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/13(土) 18:10:08
「く!!」

間一髪、上空から襲ってきたスナカケババアの体当たりを、福音の加護が無くなり、無防備になっている鉄のT改はかわす事が出来た。
T改は精密すぎるところがあり、急な負荷をかけ続ければ、簡単に部品がいかれてしまう。
幸い、一度の負荷で足がやられる事は無かったが、このまま2対2で戦う事は想定していない。

「逃げろ!笹倉さん!福音を!!」

戦うにしろ逃げるにしろ、福音の加護は絶対必要な事だ。
急な状況の変化に焦った鉄が叫んだ瞬間、あらかじめ準備していたのだろう、すぐに、笹倉の声が空母の方から聞こえてきた。

♪夢を叶えて一人で探してた星の🎶

妖怪の攻撃で空母と歌姫を同時に失わないようにするためと、足が遅く小回りの利かない飛行空母では妖怪の攻撃から身を守るすべがないため、通常、空母から歌姫は歌わない。
だが、唐突なスナカケババアの攻撃に、そうも言っていられなくなった笹倉は、ヘリが発艦しきる前から、既に福音を歌唱を始めていた。

笹倉の歌が流れ始め、福音の加護が復活した事と、彼女の福音の能力である鎮静効果で鉄の焦った心は、すぐに回復した。

後はこの場から撤退し、ここを包囲しているアメリカのロボットと協力して2大妖怪を葬るだけである。

🎶同じ光を 君が見つめているだけで♪

>「こいつ…、やっぱり操作系に異常があるんだ!このポンコツが!」
「関ヶ原!?どうした!何を…」

だが、鉄が機体を転身させようとした刹那、突如プロトが暴走し、鉄の周囲に浮遊機雷を撒いてきた。
さらに、撤退作戦を無視してスナカケババアに立ち向かい始める。

「何考えてるんだ!く!?」

規定外の出来事の連続に鉄は狼狽えたが、スナカケババアをプロトが相手するのならば自分がヨナルデパスドーリをけん制せねばと頭が働き、福音砲をヨナルデパスドーリに向けると、
腕を飛ばされ、腹に穴をあけなられたヨナルデパスドーリが自らの腹についている半透明の球体の一つをもぎ取り、丸呑みにしているところだった。
するとどうだろう、ヨナルデパスドーリの腕と腹が、見る見るうちに再生したではないか!

「しゃらくさい!!」

鉄はT改の福音砲をヨナルデパスドーリに向け、即座に発射する。
しかし、ヨナルデパスドーリはそれを身をかがめてかわし、細長い体をくねらせて、木々を勢いよく蹴散らしながらT改へ這って近づき、三本の腕で掴みかかってきた。

「く!」

かわそうにも鉄の周囲は機雷がばらまかれ、迂闊に動けない。
雪駄に動けず、鉄は、ヨナルデパスドーリに組みつかれてしまった。

99【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/13(土) 18:17:36
鉄のT改に気をとられていたスナカケババアはプロトに足をとられてしまった。
プロトの方が力が強く、また、スナカケババアの力ではプロトを空高く持ち上げられないようで、スナカケババアが暴れてもがいても、プロトの腕は外れない。
ならば、と、スナカケババアは羽ばたくのをやめ、両手をプロトの方に向けて、その先から砂粒のような物を勢いよく無数に発射した。
その威力は、命中すれば、米国の偵察機を穴だらけにして撃墜できるほどである。

100 ◆x5gMz05B9A:2014/09/16(火) 22:24:34
名前:DIVA
性別:声は女性だが、実際無いようなもの
年齢:10年
国籍:日本製
身長:0〜5m
体重:1ペタバイト、キログラムなら0〜13t
容姿:基本全裸!とくに決まった姿形は無く手近な女性から大女優、二次元キャラ等の容姿をアバターとしてお洒落感覚で使用している
役職:パイロットであり歌い手
福音出力:0.5〜10
持ち歌:
Day After Day
ttps://www.youtube.com/watch?v=SNocsgOj8qI
Mechanized Memories
ttps://www.youtube.com/watch?v=H6gOSF5SR-s
stain
ttps://www.youtube.com/watch?v=SXBjFtcMwT8
各歌の特殊効果:
Day After Day
機動力の上昇、味方の士気上昇
出力を最大にすると周囲のロボット(行動不能、パイロット不在でも)を一斉に操れるが自身も福音の影響を受けるため
自身が暴走する危険性が発生するのと、その場に人間が居た場合、福音がやむまで自身が死んでいることさえ自覚せずに戦い続ける。
Mechanized Memories
幻覚を妖怪に見せ動きを止める、その場にいる人間の心の闇が一時的に増幅してしまう。
出力を最大にすれば、福音のみで妖怪を無力化できるが、人的被害は妖怪以上のものになる。
stain
ロボットとの親和率の上昇、平たくいうならパラメーター全上昇
軽度の人格障害が発生する(感情が希薄になる等々)
・・・例のごとく、最大の場合妖怪よりも味方の被害が甚大
おいたち:
ボーカロイドシリーズのように歌い手の声のデータを統合して、それに人工知能つけて
ロボットの中に積み込めば最強じゃね?的な発想から作られたAI+機体
作った結果とんでもねー非人道兵器になってしまった為、暫しの間凍結処分になっていたが。
戦力増強のため、条件付で処分が解除された。
性格は傲慢極まりなく、人間を見下しているところもあるが・・・

正式名称:対妖試作無人機「鳳(おおとり)」
愛称:死神
全高:10m
重量:装備込みで50t
姿形:ヒロイックな西洋甲冑をイメージさせるデザイン
   背中には巨大な翼状のパーツが四つ付けられており
   うち二つがブースター、残り二つが後述する武装となっている。
武装:多機能型福音武装「ユーアンエリオン」
   自身の福音のエネルギーを貯蓄することで使用する武装
   30mほどの刀身を作り出す「斬撃」、その見た目からは想像もできないほどの威力を持つ「砲撃」
   どんな攻撃さえもはじき返す「障壁」の三つのうちの一つを使用できるが、
   デメリットとして
   ・一回こっきりの使い捨てである
   ・チャージに時間がかかる
   ・チャージの割に使用時間がわずか(斬撃なら十数秒間、砲撃は一発、障壁は一度っきり)
   の三点が挙げられる。
戦闘能力
攻撃力:0〜5
福音防御力:5
物理防御力:1
機動力:5
耐久力:1

101 ◆x5gMz05B9A:2014/09/16(火) 22:25:41
すまねぇ、こんなキャラで参加したくなっちまった。
レギュ的に大丈夫かね?

102 ◆x5gMz05B9A:2014/09/16(火) 22:26:33
修正
×体重:1ペタバイト、キログラムなら0〜13t
○体重:1ペタバイト、キログラムなら0〜39t

103【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/16(火) 22:51:49
>>101
設定は大丈夫です。
ただ、このキャラが今の戦いに即登場すると今現在の戦いではこのキャラが強いので、鉄と関ヶ原が活躍できなくなってしまいます。

今回の戦いはどちらかに決着がついたときに、人類の逆転か、または駄目押しかで登場して、次回、このキャラ中心に話を進めると盛り上がると思います。
どうでしょうか?
物語の導入や、登場する妖怪の操作等、シナリオも ◆x5gMz05B9Aさんがやっても構わないので。

104【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/16(火) 22:52:34
あ、物語の導入云々は次回のエピソードの話ですよ。

105関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/16(火) 23:43:22
プロトに放出されるスナカケババアの砂つぶて。
と同時にプロトはスナカケババアを地面に叩きつけんとする。

「わひぃ!」
土煙が上がり視界がゼロになると、モニターに映し出されるのは特殊装甲の破損状況。
プロトの特殊装甲は人工皮膚であり、原初の地球に存在したという鉱物と生物の中間体のような微生物を培養し造り上げたという代物。
それは鋼鉄で編んだ服を何層にも重ねたようなものでプロトの自慢の防御力の要とも言えた。

そして関ヶ原が確認するに、プロトの装甲の破損状況は11パーセント。
あと数回は充分に敵の攻撃に耐えられるはずだった。
しかし機内には警告アラームが鳴り響き関ヶ原は驚愕する。
あろうことか砂つぶては、下半身の戦車部分の装甲を貫通し、燃料タンクを破壊していたのだ。

「ダメです。燃料タンクをやられました!
あと数分で、プロトは停止します!」
そう言って長篠機を見る関ヶ原。その目は絶望に溢れていた。

106関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/16(火) 23:50:43
民間のヘリコプターの中、唾を一つ飲み込む暮古理緒。
胸に抱くは愛息子の暮古ヨシヒコ。
視線の先には妖怪とくんずほぐれず状態のゴスペルマシンが二体。
おまけに燃料タンクに穴のあいたプロトの活動限界も残りわずか。

「すぱげちっ。よーちゃんすぱげち食べたいのぉ」

「…い、いま、そんな状況じゃないでしょ!」

「うしょつき!いい子にしてたらすぱげち食べさせてくれるって言ったでしょ!」

暴れるヨシヒコに、たまらず理緒は

「いい子にできない子はこっから出ていきなさい!」と叱りつける。
出ていけと言っても今いる場所は空を飛ぶヘリコプターの中なので鬼のような話でもある。

「よーちゃんがいい子にしてないと、みーんなあの鬼ババに食べられるちゃうんだからねっ!」
それは日本古来より伝わるしつけの方法なのであるけど
実際目の前に妖怪が存在しているのでそのリアリティーは半端ない。
なのでヨシヒコは直ぐに大人しくなってくれた。

「とりあえず、あの一対一の状況を打破しなければ!
……ちょっと歌姫さん、手伝ってちょうだい!」
阿部の手を無理矢理引っ張り、ヘリの中間部にある室内へ。
そこは球体の内部のようで、中心には小さなステージがありその回りは深い青色。

「これが、ゴスペルマニューバよ。
ここで皆で合唱することによって、プロトとの意識と、
私たちの意識を同一化することができるの」

あ〜あ〜あああ〜♪
理緒が少し歌えば、青い部屋の壁に現在プロトとの認識している空間が浮かび上がってくる。
それはまだ形という形にはなっておらず不鮮明でもあった。

「きっと貴女の歌声はプロトとの力を何倍にも高めてくれると思う。
そして上手く同一化も出来たら、
この場所からプロトを制御して操作することも可能になるはずなの」
果たして阿部は力を貸してくれるだろうか?
理緒は阿部の歌に合わせて歌うことが出来る。
そしてもし、阿部が歌い始めたとしたら、
彼女はプロトの声を聞くことになるだろう。

『ふひひ……。妖怪、たおす。ぼくがイチバン……。アイツはダメなやつ……』
それはまるで、暗闇から聞こえてくるような小さく冷ややかな声だった。
長篠の乗るT改に対する激しい嫉妬を孕んでいるプロトの声が、阿部の心に逆流してゆく。

107関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/16(火) 23:55:59
いちおう次のレスはこんな感じになる予定です。
プロトの行動判定?をしておかないと
阿部さんが動きにくいかもと思って書いてみました。

108 ◆x5gMz05B9A:2014/09/18(木) 05:41:05
>>103
話の展開もありますしね。
次のシナリオからの参加で構わないッス。
ただ出来れば1プレイヤーとして参加したいです。
どうも多視点的描写が苦手なもんで、ボスと自キャラとシナリオ運行等を同時にやるのは正直厳しいです。

109【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/18(木) 21:15:09
>>108
わかりました、このキャラの相手にふさわしい、凄まじい妖怪を用意します。

110 ◆x5gMz05B9A:2014/09/19(金) 13:43:51
>>109
勘違いだったら、すいません。
その凄まじい相手と戦うのって僕だけなんですかね?
もしそうなら実質的に隔離されてる感じになるんですが…

111阿部真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/09/19(金) 21:30:41
>「いいよぉ!」

ヘリの主の私の同年代ぐらいのかなりノリのいい女性は、快く縄梯子を下して拾ってくれた。

「ありがとう。早速で悪いんだけどこのヘリに放送設備みたいなものはあるかしら。早く加勢しないと……!」

女性が真剣な表情で設備へと案内するそぶりを見せた時だった。

>「抱っこくだしゃあぁい〜」
>「え、よし君どうしてこんなところに?」

あまりにも場違いな光景に思わずずっこけそうになる。

「子持ちだったんかい!」

その後しばし親子漫才が繰り広げられるのだが――それは省略するとして。

>「とりあえず、あの一対一の状況を打破しなければ!
……ちょっと歌姫さん、手伝ってちょうだい!」

ようやく本題に戻ってきた女性が、ヘリの内部にある部屋へ私を案内する。
そこはまるで小さなステージのようになっていた。

「ここは……?」

>「これが、ゴスペルマニューバよ。
ここで皆で合唱することによって、プロトとの意識と、
私たちの意識を同一化することができるの」
>「きっと貴女の歌声はプロトとの力を何倍にも高めてくれると思う。
そして上手く同一化も出来たら、
この場所からプロトを制御して操作することも可能になるはずなの」

「プロトってあのロボットよね? 意識を同一化って……そんなことができるの……!?」

そもそもロボットに意識はあるのだろうか。
高度なAIを搭載していれば意識ときわめて似たようなものはあると言えるが……。
意識を同一化というのは人間の意識と連結するということだろうか。
にわかには信じがたい話だが、どちらにせよ今するべき事が歌う事だというのは変わりがない。
半信半疑ながらも歌い始める。曲目はデッドラインサーカス。
二体の妖怪の連携を崩壊させるのが目的だ。

112阿部真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/09/19(金) 21:31:24
「どうかしてんだ火遊びショータイム おどけたピエロ燃やせ
導火線に火をつけろ 偽りの笑みは有罪だ(Guilty)

『今日盛況!』って強制しちゃってんだ
空虚に十字切ったら さぁ、いくぜ? stand up! Ready?
デッドラインで踊れ」

科学者の女性が合わせて歌い始めた。
不鮮明だった映像が徐々にはっきりと形を帯びてくる。
そして――

>『ふひひ……。妖怪、たおす。ぼくがイチバン……。アイツはダメなやつ……』

声が聞こえてきた。明らかにここにいる者の声ではない。
ならば声の主は……

(まさか……これがプロトの意識!?)

最初は半信半疑だったのものの、聞こえてきたからには信じるしかない。
プロトは劣等感からくる嫉妬に燃えているのだ。
うまくいけば歌で彼を制御することもできるという。その場合、果たしてこの曲目は妥当なのだろうか。
私は暫し考え、そして結論を出した。

「神様だってグッスリ寝てる時間なんじゃねえ?
どんな祈りも届きゃしないさ

ブッ壊れた夜に迷っちゃって 不安げな顔も愛しいね
何もかも忘れて遊びましょ?
なんならもう狂っちゃって キミもこちら側へおいでよ
はしゃごうぜ 燃え尽きるまで 」

結論――このまま押し切る!
長篠の機体が敵に組付かれてしまった今、今さら大人しくさせても仕方がない。
むしろ狂気性を煽ってでも一気に撃破を狙った方が得策だ。

113阿部さん ◆PxcqTTd2Bc:2014/09/19(金) 21:42:46
すみません、また遅くなりました
パソコンが戻ってきたので次からは元のペースに戻れると思います。

DIVAさんよろしく!
歌姫兼パイロットはそのうち出てきそうな気がしてたけどロボットがロボットに乗るとは!
隔離ではないと思うよ。
自分が強いだけじゃなくて全体の能力を引き上げるからそれに合わせて強い妖怪を出すという話では?

114【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/20(土) 18:48:21
>>110
いいえ、勿論第5小隊全員で戦いますよ。

ただ、普通の妖怪相手だとDIVAが実戦配備される理由が弱いと思ったので、強敵を用意しようと思いました。

115 ◆x5gMz05B9A:2014/09/20(土) 19:22:34
>>114
そういうことでしたか
DIVAは勢いで作ったキャラなので、ところどころ誤解を生みそうな箇所が幾つかあったので、
そういう輩に見えてしまったのかなと疑ってしまいました。
本当に申し訳ありませんでした。
>>113
よろしくお願いします!

ロボットがロボットに乗るというよりも、鳳というPCのOSがDIVAという感じですね。
テンプレの身長5mの部分は初期設定の名残でして、身長は鳳と一緒です。

116関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/20(土) 20:05:38

>「プロトってあのロボットよね? 意識を同一化って……そんなことができるの……!?」

「もちろんできるわ!あなたは統合情報理論って知ってる?
少し前の時代まで、心の一部である意識に関しては究極の謎だった。
誰も、脳の何処の部分で意識を生み出しているのかわからなかったの。
でも、統合情報理論の考え方からすると
感覚、感情、行動、記憶、そのすべてが蜘蛛の巣のように連動した時、
意識が生まれるということがわかったの。
つまり鳥や獣にも脳の容量に応じた意識が存在している。
ということは人間を模したロボットにも当然意識は生まれるはずなのよ!」

ここまで説明して、理緒は口をとじる。
あとの説明は人型機械が福音で力を増す
という概念が阿部にもあるはずなの割愛したのだ。
目に見えない力が、確かにこの世界には存在している。
それはこの物語の大きな謎の一つでもあった。

そして戦場に流れるはデッドラインサーカス。

>(まさか……これがプロトの意識!?)

「……えっ」
理緒は目を見開き冷や汗をかく。
恐ろしいことに理緒とプロトの思考は似通っていた。
子供は母親の嫌いなものを嫌いになるって話があるのだけど、まさかロボットも。

それはとにかく、プロトは福音の力で狂暴性を増してゆく。
もし可能ならばスナカケババアの後頭部を鷲掴みにして
顔面を地面に押しあてながら長篠ごとヨナルデパスドーリに突進することだろう。

それを見ているヨシヒコは号泣。
さらに追い討ちをかけるように関ヶ原の悲鳴が無線でこだまする。

「うぁああん!こわいのよぉ」
「ぬぐわあぁあああ!長篠さん、回避して下さぁい!」

その声に理緒は我にもどって

「……これって、バケモノじゃない。身も心も、バケモノじゃない」
罪悪感を感じはじめていた。

【プロト、長篠機に突進】

もし変でしたらディレクターズカットよろしくです。
うん。よいキャラが書けなくって次からまた出直してきま〜す

117【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/23(火) 10:19:54
「くそ!!」

ヨナルデパスドーリの力は、T改と大差なかった。
しかし、相手の腕は6本、2本の手で自分を掴み、残り4本の手で拳を繰り出してくるヨナルデパスドーリの猛攻に、反撃するすべがない。
ガードを固め、長篠は必死に守るが、拳がさく裂する度、T改の精密すぎる体は衝撃であちこちの小さな部品が飛び、火花が散る。

「大佐!軍は?援軍はまだですか?」

パスドーリの猛攻に、長篠の口から弱音が漏れた。
関ヶ原機は暴走し、阿部は生死不明、笹倉の歌が終わるまでに援軍が来なければ、自分たちはあっという間にやられてしまう。
その切迫した状況に、鉄もまた、打開策を見いだせずにいたのだ。

(このままでは全滅する!糞!プロトめ!!いやそれどころじゃ…糞!糞!!)

追いつめられ、状況を混乱させたプロトに、長篠が黒い感情を抱きかけた、その時。

―『今日盛況!』って強制しちゃってんだ
空虚に十字切ったら さぁ、いくぜ? stand up! Ready?
デッドラインで踊れ」―

戦場の阿部の声が流れ始めた。

(阿部さん!…しめた!いける!)

絶体絶命の状況で流れ出した福音は、増幅装置を介していないため本来の力には及ばないものの、それでもヨナルデパスドーリを一瞬、目の前の鉄から気をそらす程度には効果があった。
鉄への攻撃を中断し、天に向かって大きく咆哮したヨナルデパスドーリに鉄がつかみかかり、後ろの地雷原に投げ飛ばそうとした、その時、
背後からプロトが暴れるスナカケババアの頭を掴み、こちらに向かって凄まじい速度で突っ込んでくるところだった!

>「ぬぐわあぁあああ!長篠さん、回避して下さぁい!」
「関ヶ原!脱出しろ!」

燃料タンクから燃料を漏らしながら、木々を吹き飛ばし、砂煙をあげて突っ込んでくるプロトを見て、鉄は叫ぶと、機体を横に飛びのかせた。
次の瞬間、プロトはスナカケババアを掴んだままヨナルデパスドーリに激突し、そのまま自らのばら撒いた浮遊機雷の中に突っ込んだ。

「関ヶ原!!」

激しい爆発が三者を包み込む中、屈んで守りを固め、爆風に耐えながら、鉄は叫んだ。

118関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/23(火) 16:03:10
>「関ヶ原!脱出しろ!」

>「関ヶ原!!」

長篠の声に我にかえった関ヶ原は脱出装置を始動。
が、装置が作動しないままプロトは業火に包まれる。

「う、うわぁあ…、だ、誰か…助けて」
関ヶ原は間近に迫った死にはじめて恐怖を感じていた。

「な、長篠さんは撤退って……、撤退って言ってたのに……!」
無線から関ヶ原の嘆きの声が響く。
もしも彼が戦死することがあればそれは理緒のせいでもあった。

「うぅ、ごめんなさい」と理緒は拳を握ってうつむいてしまう。

「ママ……」それにはヨシヒコも泣くのをやめて心配顔。

そしてプロトは燃え盛る炎のなかで、毒ガスを放出していた。
勿論二体の妖怪を両の手で拘束したまま。

『妖怪……殺す。ぼく、えらい…ふひひひ…』
すでに中破しているプロト。
操縦席まで火がまわるのも時間の問題だろう。

119阿部真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/09/23(火) 17:10:42
「いっせーのって乗ってみろどーだい? 今にも落っこちそうだろ? 
玉乗りなんて不安定さ キミの心のように

落下してんだ視点まわってんだ
生きて着地するまで さぁ、足掻け! stand up! Baby?
デッドラインを刻め」

凶暴性を増したプロトは一気に妖怪を圧し始める。
プロトはスナカケババアを完全に圧倒し、後頭部を鷲掴み。
そうだ、それでいい。憎ったらしい妖怪どもに復讐を――!
そしてそのままヨナルデパスドーリに突進する!

>「うぁああん!こわいのよぉ」
>「ぬぐわあぁあああ!長篠さん、回避して下さぁい!」

はたと我に返る。
間一髪で避けたからよかったようなものの、長篠も巻き込まれるところだった。
プロトは、味方や自分自身の安全すらも度外視してただひたすら妖怪を撃破せんとする化け物と化していたのだ。
もはやロボット三原則ガン無視である。

>「……これって、バケモノじゃない。身も心も、バケモノじゃない」

プロトは妖怪たちもろとも浮遊機雷の中に突っ込み、業火に包まれる。
それを見て私は歌うのをやめた。
もう妖怪は撃破できたとみていいだろう、いいだろうが……

>「う、うわぁあ…、だ、誰か…助けて」

妖怪を駆逐したところで人類もろとも滅亡しては何の意味もない。
人の命と引き換えに妖怪を撃破したところで意味はないのだ。
関ヶ原が脱出する気配はない、おそらく狂戦士と化したプロトがそれを許さないのだ。
私の判断が間違っていたのか……。
しかしあのまま撤退させていたとしてもジリ貧で長篠が妖怪にやられていたかもしれないのだ。
なんにせよ今は言い訳のような思考を巡らせている暇はない。

>『妖怪……殺す。ぼく、えらい…ふひひひ…』

一刻も早くプロトをなだめてやらねば。しかし自分に興奮を鎮め落ち着かせるような持ち歌はない。
いや、持ち歌である必要はあるのか?
先ほどゴスペルマニューバが科学者の女性の声にも反応していたことを思い出す。

「そうだ、笹倉さんと一緒に歌うのよ! あなたも……それにヨシヒコ君も手伝って!」

持ち歌で無い以上、歌ったところで福音としての力は多分無い。
でもうまくいけばプロトを落ち着かせることはできるだろう。
小さな子どもに我ながら随分な無茶振りだが、人数は多いに越した事はないはずだ。

「そんな寂しい心じゃ大事なものも失くしてしまうよ
少し優しい未来を信じていいんだと かなしみを暖めてあげたい」

さっきまで煽るような歌を歌っていたのに都合よく手のひら返しもいいところだが
今はこの歌が通じてプロトが鎮まってくれることを祈るしかない。

120関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/24(水) 18:09:30

>「そうだ、笹倉さんと一緒に歌うのよ! あなたも……それにヨシヒコ君も手伝って!」

もう終わり。関ヶ原の命は風前の灯火。
そう思っていた理緒の頭のなかに阿部の言葉が入ってくる。
そう。常識的に考えて普通なら誰もが終わりと覚悟する。
現実を受け止めて十字架を背負い生きてゆこうと誓う。
だが阿部は違っていた。
どんな絶望のなかでもハッピーエンドを信じている。
それはある意味狂った駄々っ子。
欲しいものが貰えるまで死んでも泣くのをやめない駄々っ子だ。

(そっか、本当に大切に思えるものなら、死ぬまでその手をはなせないものなのよね……)

「プロト……、ごめんね。わたし、あなたを見捨てるとこだったよ」
理緒の瞳に光がもどる。

♪そんな寂しい心じゃ大事なものも失くしてしまうよ

そして笹倉と一緒に歌い始める理緒とヨシヒコ。
それに反応をするプロト。
彼はまだ興奮気味のようだが、徐々に落ち着きを取り戻してゆく。

『ママ、ぼくは偉いんだよ。一人で妖怪を倒したんだ。
だから、本当のママの子供よりも、ぼくは優れているんだ。
ぼくは立派な人間なんだ』

「そうだね。あなたはとっても凄い力をもっている。でもね。立派な人になるためにはそれだけじゃダメなの。
立派な人になるためには、弱い人を守ってあげなきゃいけないの」

『どうして?』

「それは人間の生存戦略が、出来るだけ色々な人たちを守って、
生存確率を最大にすることだからよ」

『……』

「だから強い自分さえいればいいってわけじゃないのよ。
あなたも私も一人じゃ生きてゆけないわ。
人は皆助け合って生きてるの。それが社会ってものなのよ。
社会がなければ人間は皆弱者なのよ」

そう理緒は語りながら、逆にプロトに学んでいると思っていた。

「わかってくれた?」

『……うん』
心を鎮めたプロトは自身の胸に手を当て力をこめる。
どうやら脱出口は戦闘による破損で開口出来ないらしい。
なのでプロトは自ら胸の特殊装甲を引きちぎりその中から関ヶ原を取り出した。

炎の海の中で、関ヶ原は掲げられたプロトの手のひらの上。
その腕はボロボロで今にも崩れ落ちそうだった。
彼を救出する好機は今しかない。
だがその時だ。スナカケババアの砂つぶてが装甲を失ったプロトの胸へと放出される。
同時にヨナルデパスドーリの腕が開いた胸部へ挿入され
内部の機械を幾度となく引きずり出す。
それはまるで妖怪たちがプロトに意識があることを知っての行動に見えた。
妖怪たちはこの時を待ってましたとばかりに反撃を開始したのだ。

「お、わあぁ!」
揺らぐプロトの手のひらで悲鳴をあげる関ヶ原。
その時、プロトの声がヨシヒコの耳朶を震わせた。

『……ヨシヒコくん。ママのこと、頼んだよ』

【プロト、爆散まであと残りわずか】

121関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/09/24(水) 18:13:57
すいませーん。
妖怪を動かすところまで書きたくって
書いてしまいました。
ダメでしたらカットお願いします。

122【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/09/24(水) 21:46:18
長篠が助けてもいいですが、ここでDIVAさんが颯爽と参戦してもOKです。
どうします?

123 ◆x5gMz05B9A:2014/09/24(水) 22:32:14
>>122
おぅ!?
いいんですか?了解です。
ですが、少々時間を下さい。

124 ◆MjieElIfPA:2014/09/28(日) 23:24:59

昔とあるところに大馬鹿野郎が居た。
その大馬鹿野郎は人類と妖怪との熾烈な戦いの中あることに気がついた。
「非戦闘員である歌姫を前線に出すより、歌姫の声のデータを取って、ロボットに歌わせるほうが効率がいいのではないか」
ただの馬鹿野郎がそれを言うなら妄言で終わるのだが、残念なことにその大馬鹿野郎は数少ないロボット研究開発所の所長だった。
理論を実行するための知識も技術も施設も大馬鹿野郎は既に有していた。

データベースに登録されてある歌姫の声のデータを統合し洗練させて出来た理想の歌声

自身の歌声を遺憾なく発揮するための人工知能

それを守り、尚且つ敵に接近するための機動力に優れた鋼の体と装備

こうして鋼の歌姫は大馬鹿野郎の理論どおりに完成した。
間もなく、大馬鹿野郎の理論の証明と人類の新たなる希望の担い手として見極める為の試験運転が始まる。
実験部隊と共に出向いた戦地の中で、大馬鹿野郎はようやく自身の過ちに気がついた。

その歌声を聴いた小隊は、自身が肉塊に張り果てても驚異的な速度を持って戦い続けた。

その歌声を聴いた小隊は、正気を失い、こともあろうに同士討ちを始めてしまった。

その歌声を聴いた小隊は、フィラデルフィア実験の再来と言わんばかりの惨たらしい姿に成り果てた。

試験は失敗した。
大馬鹿野郎は政府に消され、鋼の歌姫に関するデータは研究所と共に消され、鋼の歌姫も闇の中へ葬られる
























はずだった。

125DIVA ◆x5gMz05B9A:2014/09/28(日) 23:26:02
>>124は私です。続き投下しますよー

ソレは飛行空母に向かう無人輸送機の中にいた。
「うわっ泥仕合もいいところだねコリャ」
輸送機のコンテナの中には誰も居ない。
その代わりにロボットが一機ハンガーに固定されていた。
「勝手に暴走とかまるで駄々っ子だなぁオイオイ」
ソイツはそのロボットの中に居た。
物理的な意味ではなく電子的な意味で
ロボットの中に作り上げた仮想空間の中でソイツは長篠達の戦いを観戦していた。
コイツの名前はDIVA(ディーヴァ)、歌姫達の歌声を元にして作られた電子の歌姫であり
それを内包する無人機「鳳(おおとり)」の操縦者であり
三様の惨状を生み出した非人道兵器でもある。
何故そんなものが闇に葬られずにここにあるのか?その真相を知るものはこの場には居ない
ただわかることがあるとすれば、それがいま長篠達の元へ向かっているということだけ
「あぁ・・・もう見てらんないねぇ〜しかたねぇな、慣らし運転がわりに行って来るとするか」
鳳の両目が紅く閃くと輸送機のハッチが開いた。
「鳳・・・出撃するぜ」
固定していたハンガーを外し、鳳は落下するように輸送機を飛び出た。
重力加速に加え、翼状の大型ブースターが火を噴き音速の速さで戦いの場に赴く

それは瞬間の出来事だった。
二対の妖怪による挟撃によって破壊されるプロトの元へ、強烈な突風と共に鳳が姿を現す。
音速の勢いでヨナルデパスドーリの顔面を蹴りぶち込んだ。
「よぉ人間共、あまりにも情けないお前らのためにDIVAちゃんが態々来てやったぞ。喜べ」

126DIVA ◆x5gMz05B9A:2014/09/28(日) 23:27:11
以上です。
本当は蹴った勢いで関ヶ原を救出!と行きたかったのですが、決定リール無しでしたね。トホホ

127【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/10/02(木) 19:44:35
「関ヶ原ぁ!!」

爆発の中から何とかプロトは現れ、阿部がデットラインサーカスを歌うのをやめ、未来を歌った事でその動きも沈静化した。
だが、関ヶ原が機体から出てきた直後、2体の妖怪が煙の中から復活し、無防備なプロトを破壊し始める!
2体はあのヨナルデパスドーリの腹の球体を喰って回復したのだろう、地雷と、プロトに負わされた傷が回復していた。

「やらせん!!」

雪駄に、鉄は2大妖怪に突撃せんとしたが、突然、機体の左膝が折れ、ガクリとT改は崩れてしまった。
先ほどの急な回避動作と、ヨナルデパスドーリとの取っ組み合いによる踏ん張りで、遂に精密すぎるT改の膝に限界が来たのだ。

「く…!」

それならばと福音砲を向けるが、関ヶ原が近すぎて狙いが定まらない。
福音の粒子弾は、通常の熱兵器と同等の破壊力がある、掠っただけで人間など一たまりも無いだろう。
都合よく妖怪だけ攻撃できる武器ではないのだ。

万事休す!笹倉の歌も半分終わってしまった。
関ヶ原がいるのも構わず、福音砲を撃たなければ、全滅してしまう!

そう判断した鉄が、引き金を引こうとした、その時!

>「よぉ人間共、あまりにも情けないお前らのためにDIVAちゃんが態々来てやったぞ。喜べ」

正体不明の機体が突如現れ、プロトを襲っていたヨナルデパスドーリを蹴散らした!

「スーパーロボット!?大佐!あの機体は…」
『輸送中だった機体が急きょ加勢すべく飛んできたらしい!味方だ!』
「じゃあ…あれが、DIVA…」

DIVA、それは人類が作り出した対妖怪用の無人兵器…。
人工的に作り出された福音を使い、パイロットも歌姫も使わずに妖怪を倒せる次世代の兵器…なのだが…。

「あれは…あれは封印された物を預かるだけだったんじゃ!危険すぎる!今ここで歌われたら…」
『落ち着け、既に我が米軍の包囲部隊も到着している!』

DIVA、その歌声は、聞く者を狂わせ、そして殺す魔の殺人兵器。
妖怪も人間も見境なく殺してしまう凶悪な機械と鉄は聞いている。
そんな物が絶体絶命の場に現れたのだ、鉄だって穏やかではいられない。
笹倉の歌が無ければ、パニックになって全力で逃げていただろう。

だが、幸いにもまだ冷静さを保てていた鉄は見た、DIVAが関ヶ原を助けているのを…。
いや、実際に助けているのかはわからない。
しかし鉄には確かにそう見えた。

『DIVA、そのまま離脱しろ!スタークラスター隊、DIVA離脱と同時に攻撃開始!ソフィーヤ、笹倉の曲が歌ったら歌唱開始だ!曲は労働者のラ・マルセイエーズ!』

判断力の落ちている鉄に変わり、ジャクソンの声が無線機から響く。
妖怪とプロトに気が集中するあまり、レーダーを見ていなかった鉄はそこで気づいた、自分たちの上空に、既にアメリカロボット軍が到着している事に!

『ラジャ、ロックオン完了!』
『歌唱準備良し!』

はるか上空にて待機する騎士の鎧のような、小型のスーパーロボット、身長25mのスタークラスターが7機と、福音展開ヘリが一機。
DIVAがどき次第福音粒子光弾を撃てるよう、待機している。

【スタークラスター隊とソフィーヤはフリーです。
ご応募いただいた方、ありがとうございました。
ちなみに、ソフィーヤはアメリカ人に設定変更しています。】

128関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/10/04(土) 19:53:51
気がつけば関ヶ原はDIVAの上。
これはもしかして助けられた?あの悪名高い悪魔の兵器から?
何はともあれジャクソンは離脱の指令を出している。
どうやら援軍は到着していたらしい。

「おまえはDIVAか?これはこれはずいぶんと手荒い救出劇ですね。
しかし助かりました。流石は最新鋭のスーパーロボット!
性能だけは、たいしたものだ!」
関ヶ原は興奮ぎみに、最後に余計なことまで口走ってしまう。
無論本人は失言に気付いていない。

その一方で沈黙するプロト。
燃料もなくなりかけ、光を失った眼球に映るはDIVAの姿。
混迷期に造られた試作の異形と次世代型の魔の最新兵器。
この二つが同じ場所に存在するのもこれで最初で最後かも知れない。

「あれが……DIVA……」
暮古理緒はぽつりとつぶやく。
そしてこのあとの戦いは見守ることにして
阿部にこう言った。

「ありがとう、流石は歌姫さん。素敵な歌でした……」

思えば凍結されていたプロトが蝉のように一瞬だけでも活躍出来て理緒は良かったと思う。
それとは別にDIVAには科学者として上には上がいるということを痛感させられた。
今回の騒動でゴスペルマシンの研究は完全に凍結されるはず。
そう考えると何となくホッとしたような、荷が下りたような、
しかしさみしい気持ちになる理緒だった。

「ありがとうプロト」
こうして理緒の夢は儚くも散るのではあるけれど
のちに大人になったヨシヒコは、その母の姿と沈黙するプロトの姿が忘れられなかったと語るのだった。

129阿部真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/10/09(木) 03:12:17
正気を取り戻したプロトの手によって、関ヶ原は外にだされた。だが、……

>『……ヨシヒコくん。ママのこと、頼んだよ』

「プロト……」

精巧なA.I.を持ったロボットにすぎないはずなのに、この気持ちはなんだろう。
少なくとも理緒にとってはプロトは子供のような存在だということを知ってしまったからだろう。
しかし、感慨に浸っている隙はない。
T改の破損も激しく、今はプロトが命懸けで助けた関ヶ原の命も危ない状況。
ロボットが動く状態なら歌でどうにでもなるが、破損が原因である以上、歌を追加してどうにかなる状況ではない。
歌姫の無力さを痛感した。今必要なのはロボットのほうだ。

「誰か……彼を助けて……」

> 「よぉ人間共、あまりにも情けないお前らのためにDIVAちゃんが態々来てやったぞ。喜べ」

やはり神様というのはいるのだろうか。
救世主が降り立った、ように今の私には見えた。

>「あれは…あれは封印された物を預かるだけだったんじゃ!危険すぎる!今ここで歌われたら…」
>『落ち着け、既に我が米軍の包囲部隊も到着している!』


DIVA……強力過ぎるが故に封印された電子の歌姫。
長篠はその危険性を危惧しているが、今は彼女に頼るしかない。

「歌は今のところ間に合ってるから大丈夫。その人を救出してあげて!」

DIVAは関ヶ原を救出。

> 「ありがとう、流石は歌姫さん。素敵な歌でした……」

戦いの決着が付きつつあることを悟った理緒が感慨深げにお礼を言う。

「いえ、プロトを助けられなくてごめんなさい…」

>『DIVA、そのまま離脱しろ!スタークラスター隊、DIVA離脱と同時に攻撃開始!ソフィーヤ、笹倉の曲が歌ったら歌唱開始だ!曲は労働者のラ・マルセイエーズ!』

後はDIVAがこのまま大人しく離脱してくれるのを願うのみだ。
僅かに残っていた歌唱時間を使って離脱を援護する。

「世界を繋ぐ鎖を各々胸に 奏でるのは《可能性の背面》 蒼穹を舞え《自由の翼》」

130DIVA ◆x5gMz05B9A:2014/10/13(月) 18:40:57
ヨナルデパスドーリを蹴り飛ばしたことで自身の勢いを殺すのと同時に方向転換
Gの影響を受けない無人機にしか出来ない荒業でもって、DIVAは掠め取るように関ヶ原を確保した。
「・・・あぁん?リアクションがうっすいなー」
思った以上に周囲の反応が薄かったのかDIVAは不満そうにぼやく
そんな中、人形のように握っていた関ヶ原が気がついたのかDIVAに話しかけてくる
「うっせぇーよwww役立たずの豚野郎が、満足に感謝も皮肉も言えねぇのかよ、このまま肉団子にしてやろうかwww」
そういいながら、身動きの取れない関ヶ原の頭を親指で押さえつける。
殺すつもりがないのか、ある程度加減はされているが、やられているほうは不快だろう。

>『DIVA、そのまま離脱しろ!スタークラスター隊、DIVA離脱と同時に攻撃開始!
「・・・はいはい、言われなくてもそうしますって」
あからさまに不機嫌そうにジャクソンにそう返すと、DIVAは離脱行動を始める。

 《とそれと同時にゴスペルマニューバにアクセスする。
  阿部が歌おうとしたその瞬間、何もない空間から腕が現れ阿部の口をふさぐ
  といっても、その腕に実態は存在しないDIVAが映し出しているホログラム映像だ。
  しかし、実体は無くとも視覚的作用で歌唱をとめることは可能だ。
  「機動力強化とか余計なお世話だっての」
  そういいながらDIVAのアバターが映し出されていく、何を思ったのか今回のアバターは阿部だった。
  「今こっちは慎重に動こうとしているってときにさ、機動力あげられても迷惑っつーか?福音の無駄使いなんだよね」
  DIVAは憎たらしく顔を歪めながら話を続ける。
  「それに・・・私怨全開で歌った福音なんてこっちからごめんなんだよねwww
   あっ・・・ごっめーん自己紹介してなかったわwww私が超絶歌姫のDIVAちゃん
   それと、あそこのロボットも私で、私専用の無人機の『鳳』でもあるからよろしくねー
   まぁ自己紹介はこんなもんでいいでしょ、話戻すけどさぁ
   私も人格はあれども機械だしさーあの出来損ないみたいに使い潰されたくないわけわっかるー?」
  DIVAはプロトを指差した。
  「それに・・・あの人達がうまくやれるとは思えないんだよね」
  そういってスタークラスター隊に視線を向ける。
  「まぁ念のため取っといてもいいんじゃないかなぁ〜ってのが私の意見な訳よ」》

が、さきほどよりも速度が遅い、手にしている関ヶ原を庇いながら移動している以上、鳳の本来の速度が出せないからだ。
「あぁん・・・もう邪魔だぁ!」
そう愚痴をこぼして、DIVAは大きく跳躍し、長篠が乗るT改に飛びつく
「おい!お前、コックピットにこいつも乗せろ!」
コックピットの付近をゴツゴツノックしながらハッチの開放を強要した。

131【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/10/17(金) 00:29:05
「な!?な!?な!?」

突然、飛びついてきた鳳に、T改は驚いてのけぞってしまった。
飛び乗ってこられたらT改はその重さで足が砕け散ってしまったかもしれないが、幸いにして鳳は自分の足で地面に立ち、上半身のみT改にくっつけている。

>「おい!お前、コックピットにこいつも乗せろ!」

「わ…わかった」

突飛な行動をとってくるDIVAに、鉄は完全に主導権をとられ、狼狽えながら機体の緊急脱出用ハッチを開け、関ヶ原を中に招き入れる。

「…ほら!早く!」

ハッチを開けた鉄はDIVAに握られて満身創痍の関ヶ原を、手招きする。
彼の胸中は、早くこの何をするかわからない機体と別れたいという思いでいっぱいであり、妖怪との戦闘中と言う事も重なって、もはやパニック寸前だ。

「急げ!…!!」

焦りに焦っている鉄が大声で関ヶ原を呼んだのに呼応するように、スタークラスター隊は攻撃を開始した!
福音の光線が、稲妻の雨のように、激しくフラッシュしながら妖怪たちに降り注ぐ!

♪街は静かに
君が描いた日々の中
数えきれない
夢の灯りが消える頃
いつもの夜が輝き始める
君を守りたい
一人じゃない♪

笹倉の歌の中、閃光の中に苦しむ妖怪2匹。
スナカケババアもヨナルデパスドーリも7機もの巨大ロボットに総攻撃されては、なすすべがない。
反撃もできず、ただ苦しみもだえるばかりである。
しかし、福音の光線は妖怪たちだけでなく、残されたプロトにも容赦なく降り注いでいく。
理緒にはつらい光景かもしれないが、鉄やジャクソン、笹倉、そしてスタークラスター隊には、それを気にする余裕はない。

(……いける)
(勝ったな)
(いけ!いけ!!)

激しい閃光の連続を見つめる笹倉が、ジャクソンが、鉄が、勝利を確信する中、閃光の中で、遂にスナカケババアが断末魔をあげて黒い煙となった。

「やった!!」

🎶心で行く未来♪

思わず鉄がそう叫んだと同時に、笹倉の歌が終わり、次いで、上空の福音展開ヘリからソフィーヤの歌…アメリカ合衆国の歌姫に、何の因果か適性が出てしまったソビエト国家の前奏がながれ出した、その時。

「ギシャあああああああああああああああ」

黒い煙を割って、最後の力を振り絞った傷だらけであちこちから緑色の煙を上げたヨナルデパスドーリが、鳳とT改めがけて突っ込んできた!

【ヨナルデパスドーリはここからフリーです、撃破描写してOKです!】

132関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/10/17(金) 21:40:56
>「うっせぇーよwww役立たずの豚野郎が、満足に感謝も皮肉も言えねぇのかよ、このまま肉団子にしてやろうかwww」

「お、おいっ!やめるのだ!
機械のおまえに人に感謝されて嬉しい気持ちがあるなど知らなかったのだ。
……ということでな。DIVAさん、ありがとうございまず」
痛みに耐えながら、涙目で叫ぶは関ヶ原金之助。
しかし周囲のリアクションがうすいとか、このロボットは一体なんなのだろう?
もしかして目立ちたがりやさんなのだろうか?
頭をDIVAに押さえつけられながらふと関ヶ原は思う。
それはこの型破りのロボットと対応するためには受け身では、
物事が何か悪い方向に進んでいってしまうのではなかろうか。
ゆえに関ヶ原の軍隊行動で麻痺していた自由意思が蠢動を始めている。

>「あぁん・・・もう邪魔だぁ!」

「…なら行けDIVAよ!思う存分戦ってこい!」

そう叫びながら、関ヶ原はDIVAのことを羨ましく思っていた。
それは軍人の自分とは生き方の違う自由なDIVAを、
ということでもなく、戦う意志を持っている目的をもつものとしてだった。

(なぜ、おまえは戦えるのだ?)

そんな気持ちを胸に関ヶ原は声のするほうに振り返る。

>「…ほら!早く!」

視線を落とせば手招きする長篠の姿。

>「急げ!…!!」

「了解!」

関ヶ原はDIVAの手から跳躍する。

133阿部真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/10/18(土) 19:49:57
>「うっせぇーよwww役立たずの豚野郎が、満足に感謝も皮肉も言えねぇのかよ、このまま肉団子にしてやろうかwww」

「……」

一体製作者は何の意図をもってこんなキャラ付けをしたのだろうか。
連携が必要な戦いにおいて、むやみに集団の和を乱す言動はよろしくないはずだが……。
さては趣味か。製作者はツンツンデレがお好みなのか。
と呑気なことを考えていたのも束の間、突如DIVAに口を塞がれ、逆に空いた口が塞がらない。
ゴスペルマニューバへの干渉ももちろんだが、私が歌おうとしたことを瞬時に察知した感知能力。
一体どれだけ高性能なんだ。製作者がそれ程の天才なら趣味も少々おかしくなろうというものだ。

> 「それに・・・私怨全開で歌った福音なんてこっちからごめんなんだよねwww
   あっ・・・ごっめーん自己紹介してなかったわwww私が超絶歌姫のDIVAちゃん
   それと、あそこのロボットも私で、私専用の無人機の『鳳』でもあるからよろしくねー
   まぁ自己紹介はこんなもんでいいでしょ、話戻すけどさぁ
   私も人格はあれども機械だしさーあの出来損ないみたいに使い潰されたくないわけわっかるー?」

「お、おう……」

私怨全開で歌った、と言ったが今の歌は攻撃用ではなく支援用(ダジャレではない)であって直接私怨がこもっている訳ではない。
となれば私の情報をあらかじめ知っていたかあるいは何らかの手段でバックグラウンドまで読んだか……。
これには怒るのも忘れて唖然とするしかない。
謎だらけだがとりあえずいろんな意味でトンデモない奴だという事だけはわかった。

>「おい!お前、コックピットにこいつも乗せろ!」
>「わ…わかった」

こうして救出は完了し、あとは妖怪スーパーフルボッコタイムに突入。
スタークラスター隊に任せてあとは私は驚き役に徹していようかな、と思った時。
ふと先ほどのDIVAの言葉が頭の中をよぎった。

>  「それに・・・あの人達がうまくやれるとは思えないんだよね」
  「まぁ念のため取っといてもいいんじゃないかなぁ〜ってのが私の意見な訳よ」

「……!?」

>「ギシャあああああああああああああああ」

「囚われた屈辱は 反撃の嚆矢だ
城壁のその彼方 獲物を屠る 狩人《Jäger》――!」

とっさに出たのは、紅蓮の弓矢の最も盛り上がる部分。
もしDIVAの言葉がなかったら、反応が遅れていただろう。

134DIVA ◆x5gMz05B9A:2014/10/22(水) 12:25:32
ゴスペルマニューバからスタークラスター隊の砲撃を眺めるDIVA
退屈そうな面持ちでその光景を眺めながら、何故か喉を摩っていた。
「(どうやら、あの程度でもロックは解除されるみたいだな)」
DIVAは自分の意志で歌うことは出来ない。
【奴】が提示した複数の制限(プロテクト)を受け入れることが前線に戻る条件だったからだ。
その制限の一つに
「人間から求めてこない限り自分の意思で歌うことを禁ずる」
という項目がある。
つまり、DIVAは人間が求めない限り歌うことが出来ず
>「…なら行けDIVAよ!思う存分戦ってこい!」
そして、先ほどの関ヶ原の一言によって解除された。
「(とはいえ、歌えるのは一曲のみ、出力は1.2程度か)」
歌う制限が一時的に解除されたが出力の制限は解除されてないようだ。
しかし、DIVAはそれを気にする素振りも見せず
「(まぁ『課題』を与えるには十分か)」
口元を静かに吊り上げた。

そんな中、断末魔の悲鳴を上げながらスナカケババアは絶命する。
その場にいた誰もが勝利を確信する中、DIVAだけが険しい顔をする。
「そんなんだからてめぇらみんな駄目なんだ」
>「ギシャあああああああああああああああ」
黒煙を切り裂いて、満身創痍のヨナルデパズドーリが突撃してくる。
それと同時に、鳳が迎え撃つように飛ぶ。
>「囚われた屈辱は 反撃の嚆矢だ
> 城壁のその彼方 獲物を屠る 狩人《Jäger》――!」
大型ブースターによる狂気的な加速に加え、阿部の福音の相乗効果によって
鳳は紅蓮の矢と化し、自身の四倍の大きさをもつヨナルデパズドーリ殴り飛ばす。
「まぁ…まずまずなんじゃないのぉ〜」
ゆっくりと拍手を打ちながら阿部に向かってそう告げるとけたたましい警告音が周囲に鳴り響く
≪DIVAの第一歌唱制限が解除されました。福音被害レベル1、人体に微弱な影響が出るの可能性あり、要警戒≫
機械的なアナウンスが流れた後、落ち着きのない電子音のメロディーが流れ始める。
ttp://www.youtube.com/watch?v=TCLfd6dw3zg
「さぁて…久々のLIVEだ、派手にいっちゃうよ〜ん」

135DIVA ◆x5gMz05B9A:2014/10/22(水) 12:26:15
wwヘ√レvv~ oh, I'm scary ああ、私は恐れている ─wwヘ√レvv
「Mechanized Memories」
恐怖心を刺激し、幻影を見せ妖怪を無力化させる効果を持つがそれと同時にその場にいる人間の心の闇を増幅し、狂気へ走らせる凶歌
wwヘ√レvv~ so I'm scary そう、私は恐れている ─wwヘ√レvv
前述したが出力が抑えられているので精神面が脆過ぎない限りはSAN値が0になることはない。
鳳(DIVA)は歌唱しながら、その高機動でもってヨナルデパズドーリを囲うように動き回る
wwヘ√レvv~ all that I see私には彼らの行く末が見えている─wwヘ√レvv
ジャクソンの命令か、それとも誤射かスタークラスター隊からの砲撃が鳳に迫るも鳳はそれをあざ笑うかのように回避する
wwヘ√レvv~ all is fantasy すべてが遠い幻に変わっていく ─wwヘ√レv
wwヘ√レvv~ all is fantasy すべては一瞬の幻に消えていく ─wwヘ√レv
鳳のもう一対の翼が燐光を発し始めている。
鳳唯一の武装である多機能型福音武装「ユーアンエリオン」のチャージが始まっているからだ。
wwヘ√レvv~ Minute of the end, and dose it still hurt 最期の刻、毒は未だ蝕む─wwヘ√レv
wwヘ√レvv~ In a rainy day, let's fight for counter こんな最悪な日は、逆襲のための戦いをしよう─wwヘ√レv
wwヘ√レvv~ On the silent way, when do you get a calling? 何も無い旅路で、いつ天啓を得るのだい?─wwヘ√レv
wwヘ√レvv~ Look into the void. It's scary さあ「深淵」を覗け。それが「恐怖」だ─wwヘ√レv
初めは抵抗するために暴れていたヨナルデパズドーリは今や鳳を恐れ戦闘の意思もなく怯え逃げようともがくことしか出来ない。
だが、それを逃がすまいと鳳は畳みかける。
wwヘ√レvv~ Minute of the end, and dose it still hurt 最期の刻、毒は未だ蝕む─wwヘ√レv
wwヘ√レvv~ In a rainy day, let's fight for counter こんな最悪な日は、逆襲のための戦いをしよう─wwヘ√レv
wwヘ√レvv~ On the silent way, when do you get a calling? 何も無い旅路で、いつ天啓を得るのだい?─wwヘ√レv
wwヘ√レvv~ Look into the void. It's さあ「深淵」を覗け。それが…─wwヘ√レv
光り輝くユーアンエリオンが変形し、鳳の両腕に装着される。
溜めに溜めた福音は巨大な剣と実体化する。
「さぁて仕舞いだ!!」
wwヘ√レvv~ scary‼ 「恐怖」だ‼ ─wwヘ√レv
巨大福音剣となったユーアンエリオンがヨナルデパズドーリに振り下ろされた。

136 ◆x5gMz05B9A:2014/10/22(水) 12:33:35
うわぁぁぁ目が滑る!!
読みにくくて本当に申し訳ないッス。
次回からはちゃんとスペース入れるんで勘弁してください

137【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/10/26(日) 20:56:06
『DIVAに歌唱をやめさせろ!何故だ?何故奴は勝手に歌っている!!』

精神をむしばむ悪夢のようなDIVAの歌の中で、ジャクソンの怒声が無線の向こうに聞きながら、鉄は操縦間を握ったまま、動けなかった。
彼の瞼の向こうは、いつの間にか、荒廃した街に変わっていた。
…そして、そこで無残な死体となって死んでいる祖父母。
傍らでは妹達のすすり泣く声が聞こえ、他にも嘆き声と、悲鳴があちこちから聞こえてくる。

「これが…DIVAの歌…」

鉄の見ている幻覚、それは、無慈悲な動く天災に、初めて襲われた時の記憶。
当時妖怪に対し、なすすべのなかった人類は、突然市街地に現れる妖怪から、ただただ逃げ惑うしかなかった。
その際、脚の悪い鉄の祖母は逃げ遅れ、祖母を助けようとしていた祖父もろとも、妖怪の攻撃の犠牲になったのである。

物言わぬ屍となった祖父母を見て、鉄はその時、母が話してくれた思い出話を思い出していた。
友人に騙されて作らされた借金で苦労しながら母を育てた祖父母のとてつもない苦労の話…。
そして、孫が生まれ、これからやっと幸せを堪能するのだ、と語っていた事…。

「何だ?何でこんな…」

次いで見えたのは、電話機。
そこから伝えられる、友人たちの死…。
それらを聞く自分…。

「……妖怪に対する憎しみを、思い出させようとしているのか?」
『長篠鉄!撃て!!撃ちなさい!撃てぇ!!』
「!?」

DIVAの歌の中でまどろっていた鉄の耳に、誰かの叫びが聞こえてきた。

『妖怪を滅ぼしなさい!早く!早く!』

笹倉だ。
あの冷静で、雰囲気こそ不気味で陰湿な物の、穏やかで優しい桜が、声を荒げて叫んでいるのだ。
彼女の心は自分よりも妖怪に対する憎しみが強いという事を、鉄は知っている。
この歌は憎しみの度合いによって、その効力が異なるのだろうか?

DIVAは本気で歌っているわけではないのだろう、幻覚の中に、薄らと現実の光景が見える。
それは、圧倒的な力で、T改が苦戦したヨナルデパスドーリを圧倒する鳳の姿。
同時、耳にはアメリカの歌姫、ソフィーヤの歌うソビエト国家が聞こえてくる。

「奴は…危険だ!」

DIVAに対し、危機感を覚えた鉄は、T改の腕を鳳に向けると、スタークラスター隊に続いて、妖撃砲を発射した…。

138関ヶ原金之助 ◆z4KXiuQxT6:2014/10/27(月) 20:45:20
まるで幻聴のような福音が、この戦域を埋め尽くして行く。
混線したそれは人を死に誘う悪魔の行進曲か。
まるで曲調に合わせるかのように明滅する光の粒子。轟音。
だがその歌劇に関ヶ原はついてゆけなかった。

「ここは私のいる場所ではなかったのか…」
DIVAの歌声は長篠の闘争本能を呼び覚ました。
しかし関ヶ原の妖怪に対する憎しみは増長されることもなく
否、初めから憎しみなどなく、そんながらんどうの自分が情けなくも思えていた。

関ヶ原は思考する。
防衛大学は学費もかからず親に負担をかけることもなかった。
ゴストゥルーパーになってみたいと友人に話したらカッコいいと誉められた。
みんな些細なことの積み重ねだった。

だがここにいる者たちには譲れない思いがある。
長篠鉄もその一人だった。
彼は標準レクティルをDIVAにセット。

「……長篠さんっなにを!?避けろDIVA!」
なんと長篠はDIVAに砲撃をした。
たしかにDIVAは危険だが今は妖怪と戦ってくれている。

「あいつはそんな悪いやつじゃない。
少しプログラムに難があるだけのかわいそうなやつなんだ!くそっ……」

無数の光線がDIVAに直進してゆく。
どさくさに紛れ、DIVAに攻撃をしているのは長篠だけではなかった。
クラスター隊の中にもそれはいた。
それも人の譲れない思いというものなのだろうか。
自分のやりたいことをする。それだけで世界は出来ているとでもいうのか。
人の欲望、想いは次から次へと溢れてきて
まるで椅子取りゲームのように、座りたい椅子を狙う。
そう、この世界には夢と言われるものがたくさんある。
芸能人。スポーツ選手。政治家。官僚。
しかし……

「本当にやりたいこと……。そんなもの、この世界は私には用意してくれなかった!
他のものを蹴落として蔑んで何が夢だ!」
関ヶ原は嘆いていた。

139暮古理緒 ◆z4KXiuQxT6:2014/10/27(月) 20:48:54
「な、なんて性能なの!?」
暮古理緒の視線の先、DIVAはクラスター隊の砲撃を避けつつ、妖怪を追い詰めていた。
(……射線上から離脱もしないで普通に回避行動を継続できるなんて)
例え阿部の歌による相乗効果の恩恵があるとはいえ、DIVAの回避力は常軌を逸していた。
そして、ついにDIVA本人が歌い始める。

「だ、だめ!ノイズキャンセラーがもたないわっ!
えっと歌姫さんっ。私たちはもうここから離脱していいんだよね!?」
阿部以外にも歌姫はバーゲンセールの如くわんさかいるし
妖怪はもうじきDIVAが殲滅するだろう。
(長篠たちの援護射撃に見せ掛けたDIVAへの砲撃が
戦闘に悪影響を及ぼさなければの話だが…)

「歌姫さん!?」

【関ヶ原:DIVAに長篠さんの砲撃を避けろと声かけ。理緒:阿部さんにどうしたの?と声かけ。時間、少々前後しています】

140阿部真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/10/31(金) 22:43:41
DIVAの魔性の歌声が響くと同時に、目の前にここではない光景が展開する。
鳴り響く祝福の鐘。永遠の誓いを交わさんとする二人。
しかし、幸せの光景は一瞬にして凄惨な地獄絵図へと変わる。
空を覆い尽くす不気味な影、それは、逆さづりの人形のような妖怪。
大地を根こそぎ抉り取らんという程の大嵐がその一帯を襲う――。
身動きする事もままならず、新郎は新婦を守るように覆いかぶさる。

―― ははは、とんだ結婚式になったな……。だけど……もうずっと一緒だ

しかし、その約束は果たされる事はなかった。新郎は死に、新婦は生き残った。

「嘘つき……。いや、約束を破ったのは私か?」

そう、あの時私も一緒に死んでいれば約束は果たされたのだ。
復讐心のままに危険な戦いに身を投じたのは半ばやけっぱちの自殺願望の裏返しではなかったのか――
私は半ば無意識のうちにヘリの扉を開けた。そこに広がるのもやはり地獄絵図。

>『長篠鉄!撃て!!撃ちなさい!撃てぇ!!』
>『妖怪を滅ぼしなさい!早く!早く!』

>「……長篠さんっなにを!?避けろDIVA!」

笹倉さんは普段の姿からは想像もつかないような様子で声を荒げて叫び
長篠君はDIVAを攻撃し始めていた。
まあどうでもいい、ここから飛び降りてしまえば全てが終わるのだから……。

>「歌姫さん!?」

「……!?」

突如、理緒さんから声をかけられ我に返る。
それで踏みとどまれたのはノイズキャンセラーのお蔭と、すでにDIVAから少し離れつつあるからだろう
もう離脱してもよいかとのこと。

「あ、私……」

思い出した、あの台詞には続きがあった。

―― だけどもし万が一僕の方が先にいなくなったら、僕の事は忘れて幸せに…… 

「幻覚を誘う歌……か」

この状況をこのまま放っておくのは危険。かといって私の福音の残り時間はもう0。
もはや出来ることは……まだある。

「……待って。もう一度、ゴスペルマニューバの力を貸して!」

ゴスペルマニューバは本来プロトを操作するための専用の機構。
プロトが壊れてしまった今となっては用無しのはず……だった。
しかし、DIVAは先ほど何故かゴスペルマニューバに干渉してきた。
ならば……逆もまた真なのではないか!?
DIVAの劇薬のような歌の毒性を少しでも中和する事が出来れば……。

「夢をかなえて 一人で探してた星の 同じ光を 君がみつめているだけで
いつもの夜が闇に染まるころ 走り出せるはず 一人じゃない心たちのように」

私が歌えば福音でも何でもないただの歌。
効果があるかどうかも分からないけど、今は正気を失っている笹倉さんの持ち歌を、彼女の代わりに歌う。

141 ◆x5gMz05B9A:2014/11/01(土) 18:56:55
鉄さん、すいません。
今の状況ってどんな感じなんですか?

142【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/11/01(土) 20:59:43
>>141

わかりにくくてすいません。

1鉄→T改に関ヶ原を収容して、戦いを見ていたところ、DIVAの歌の影響で幻覚を見る、結果、DIVAが危険だと判断して、独自の判断で鳳を攻撃
2笹倉→DIVAの歌で錯乱、歌をやめて、鉄に妖怪を攻撃しろと命令。
3関ヶ原→妖怪に対する憎しみが無いので、幻覚を見ていない、一緒に乗っている鉄の行動に困惑して、DIVAに避けろと警告。
4阿部→幻覚を見て自殺しかけるが、正気に戻り、ゴスペルまにゅーばに向かって歌って見る。
5ヨナルデパスドーリ→虫の息、無抵抗、撃破寸前、ユーアリオンはまだ振り下ろされ切っていない。

>>137〜から>>139までは、>>136のDIVAの行動中に起きた物と考えてください。

143 ◆x5gMz05B9A:2014/11/02(日) 21:08:12
>>142
了解です。
それなら、>>135の後半の部分を今回のレス分ってことにしてもいいですか?

144【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/11/03(月) 22:15:56
>>143
いや、>>135のユーアリオン振り下ろそうとしてるとこで鉄が攻撃して、阿部が歌ってるので、それに対する反応をお願いします。

145 ◆x5gMz05B9A:2014/11/03(月) 22:28:18
>>144
了解です。

146DIVA ◆x5gMz05B9A:2014/11/04(火) 22:50:52
歌唱可能時間は残りわずか、それ以前にユーアンエリオンは使いきりの装備
ここで確実に決めたいところで
「ふっざけんじゃねぇーよ!!!」
迫る長篠のフレンドリーファイアにDIVAは悪態を漏らしながら、ブースターを吹かして刃を加速させた。
次の瞬間、鳳とヨナルデパズドーリは閃光に包まれた。

光が収まるとそこにいたのは、ユーアンエリオンごと両腕がボロボロになった鳳の姿があった。
鳳はあの一瞬、ヨナルデパズドーリを切りつけ、その勢いのままユーアンエリオンで長篠の妖撃砲を受けたのだ。
だが、しかし、エネルギー残量がわずかのユーアンエリオンでは威力不足で相殺しきれず、大破も免れなかったのだが、
かろうじて阿部の福音が効果があったお陰で、小破ですむことが出来た。
歌唱可能時間を使いきり、鳳はすぐさまその場を離れ、阿部の乗るヘリの方向へ向かう。
その最中、DIVAはT改に通信回線を開いた。
「0点」
開口一番に長篠にそう吐きつける。
「恐怖にあてられたか?それとも人間賛歌から来る使命感か?単なる八つ当たりか?
 何にせよ、あの程度で闇に飲まれるんじゃ話にならねぇな
 そこの豚を見てみろ、あの中で自分の空虚さと無力さを嘆くばかりか、冷静に状況を把握し
 あまつさえ、私のフォローまでやってのけてる。アンタと比べ物にならないぐらい見込みあるよ
 その点、てめぇはそこにいるヤンキーども(アメリカ軍)と同程度だね
 なんか?反論でもあるぅ?それともまたぶっ放すかい?」

147長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/11/11(火) 02:37:48
関ヶ原、DIVAの悪態を無視し、鉄は無言で再び福音砲の狙いをDIVAに向ける。
DIVAの駆る鳳は、有人の人型兵器をはるかに上回る速度、機動で動くことができる。
鉄の技量でこちらの攻撃を察知している鳳を、反動が大きく連射が利かない福音砲で撃ち落とす事は難しい。
当然、DIVAも反撃してくるだろう、そうなれば、鉄の命も危ない。
そうでなくても、鉄のしている行為は友軍攻撃、戦闘後、軍法会議にかけられても仕方のない行為だ。

だが、それらのリスクを負っても、目の前の機械を撃たなければならない。
鉄にはそんな漠然とした使命感が心の中から湧いていた。
なぜか、それは、DIVAの歌にある。
DIVAは人造物であり、その人造物が、人に害をなす福音を放ったのだ。
DIVAの福音を受けて狂気を見せた笹倉や、米兵たちを見て、鉄には、DIVAが戦争に利用され、福音が人間を苦しめる道具に利用される未来を感じたのだ。

(福音を…福音を人を傷つける道具に何かさせない!!させてたまるもんか!!奴は…奴はここで…ここで完膚なきまでに破壊しなければ…じゃないと!)

不安な未来を感じた事による、未来への漠然とした不安が、DIVAの歌と妙な相乗をして、恐怖した鉄が、再び、鳳を攻撃しようとし、未だ恐慌状態にある上空のスタークラスター隊が攻撃を再開しようとした、その時!
突如、上空より数発のミサイルが飛来し、T改の周囲に着弾し、さらに、スタークラスター隊の脇をかすめた。

鉄はとっさに、爆発の衝撃を両手で防いだ。
ミサイルは周囲の地面に着弾し、土嚢と煙を上げて、鉄の視界をゼロにする。

『全ロボットへ!戦闘行為を中止せよ!こちらは合衆国空軍である!戦闘行為を中止せよ!既に妖怪は殲滅された!これ以上の戦闘行為を合衆国政府は禁止する!戦闘行為をやめろ!』

立ち込める煙の中、T改のコクピットにジャクソンでない米軍将校の声が聞こえてきた。
他の機体にも、同様の警告が聞こえてくる。
やがて、煙が晴れると、T改の上空を合衆国空軍のステルス戦闘機の編隊が横切っていった。
それも一編隊二編隊ではない、全方位から爆音が聞こえるほどの数のステルス戦闘機が、この戦場に集結しているのだ。
妖怪は福音以外の攻撃は受け付けないが、ロボットは通常兵器が有効であるため、巨大ロボットの暴走に対しては通常兵器が用いられる。
そして、人型などと言う無茶な構造で、あちこちに無駄が多いロボットよりも、戦闘機や戦車の方がこの世界では強い。
これだけの数のステルス戦闘機に一斉攻撃されれば、この場にいるロボット部隊などひとたまりも無いだろう。

たちまちのうちにT改やスタークラスターは空を舞う無数の航空機編隊にロックオンされた。
さらに、航空隊は鳳もロックオンする。

『DIVAに次ぐ、我々は戦闘を許可した憶えはない!直ちに機体を停止せよ!繰り返す!機体を停止せよ!他の機体もだ!全ての機体は地面に降り、停止しろ!然らずんば攻撃する!』

先ほどの将校のDIVAへの怒声が、広域無線を通じてT改やスタークラスター隊、阿部らのヘリにも聞こえてきた。
その声を受けて、鉄ははっと我に返り、自分がとんでもない事をしでかしていた事に気づいた。
DIVAの歌の効果が、今になってようやく切れたのである。
T改はすぐに機体を停止させ、その場にひざまずく。
スタークラスター隊もすぐに正気に戻ったのだろう、ゆっくりと降下を始めていた。

「……俺はなんって事を…」

小刻みに震え乍ら、鉄がふと空を仰ぐと、そこにはあの、民間ヘリの姿があった。

「そうだ、阿部さん……阿部さん!無事だったんですね!!」

突然の出来事に混乱していた鉄だったが、とりあえず、謎のヘリに通信を送った。
不安定な状況であったから、阿部が生きていた、と言うせめてもの安全を、彼は求めたのだ。

148 ◆z4KXiuQxT6:2014/11/11(火) 22:30:21
「ん〜、めでたしっ……てとこかなぁ」
暮古は身をよじり苦笑い。
かたや、関ヶ原はというと沈思したまま。

鈍感というのも、ある意味武器になる。
人の気持ちは諸刃の剣だということだ。

「DIVA。お前は酷なことを言うな。
人は背負っているものの重さで己の魂をも沈めてしまうのだろう」と関ヶ原。

「「てか……」」
長篠は大丈夫なのだろうか。赤の他人の理緒でさえ心配なようす。
すると長篠の無線から阿部を呼ぶ声がした。
だから理緒はやれやれといった感じで

「あなたの歌が必要なのはDIVAじゃなくって彼のほうだったのね」
ぽりぽりと頬をかいた。

149 ◆z4KXiuQxT6:2014/11/11(火) 22:35:43
訂正
×ぽりぽりと頬をかいた。
○と、阿部を意地悪な目付きで見つめ、にこりと笑った。

150阿部真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/11/15(土) 10:05:53
もう妖怪は撃破されたのだろうか、あろうことか長篠とDIVAが激突を始めた。
その光景を実際に目の当たりにしてDIVAが封印されていた意味を痛感する。

>『全ロボットへ!戦闘行為を中止せよ!こちらは合衆国空軍である!戦闘行為を中止せよ!既に妖怪は殲滅された!これ以上の戦闘行為を合衆国政府は禁止する!戦闘行為をやめろ!』
>『DIVAに次ぐ、我々は戦闘を許可した憶えはない!直ちに機体を停止せよ!繰り返す!機体を停止せよ!他の機体もだ!全ての機体は地面に降り、停止しろ!然らずんば攻撃する!』

いつの間にか、ロボットの暴走を止めるために通常兵器が集まってきていた。
ロボットは対妖怪のために作られた特殊な兵器、普通に戦ったら通常の兵器の方が強いのだ。
ようやく正気に戻ったのであろう、T改が崩れ落ちるように膝をつく。
と、通信が聞こえてきた。

>「そうだ、阿部さん……阿部さん!無事だったんですね!!」

「ええ、拾ってくれた彼女のおかげでね。
妖怪はすでに撃破済み。終わったのよ。犠牲者は無し……いえ、プロト一台ってところかしら……」

>「あなたの歌が必要なのはDIVAじゃなくって彼のほうだったのね」

理緒の言葉にしみじみと頷く。一戦にして色々な事がありすぎた。
二体の妖怪の同時襲撃、心を持つロボット、そして禁断の電子の歌姫――
いったん封印されたものの妖怪の攻撃の激化に伴って投入されたのか
何にせよDIVAの封印は解かれてしまったのだ、もう後戻りはできない。
これが救済への福音になるか、破滅への序章になるかは、これからの私達人間次第なのだろう。

151名無しさん:2014/11/23(日) 03:00:08
お鉄や、生きてるかえ

152名無しさん:2014/11/23(日) 04:32:34
本スレはどこに?

153長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/11/23(日) 20:50:09
>>151
今DIVAさんの番ですよ。
とりあえず連絡無いのでもう三日待ちます。
>>152
ここが本スレです。
実験スレが一時使用できなくなったのでこちらに移り、以後こちらで進行しています。

154長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/11/26(水) 20:14:24
DIVAさんがいらっしゃらないようなので、近日中に俺が続きを書きますね。

155長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/11/30(日) 23:29:22
戦いは終わった。

輸送機でどこかへ運ばれていくDIVAと鳳を、空母の窓から見つめながら、鉄はこれからの事を考えていた。

まず、妖怪は完全に殲滅が確認された。
T改は脚部をやられて、専用の施設での修理が必要になった。
プロトの方は理緒でなければわからないが、素人目にも二度と使えそうにないほどにやられたのがわかる。
そういえば、T改から空母へ戻る最中、プロトの頭のカバーが壊れていたように見えた気がした。
どんな風だったかは、疲れていたので、あまり気にしている余裕は無くよく覚えていないが、戦闘中に暴走した理由に関係しているのかもしれない。
プロトもまた、ゴスペルマニューバ等、DIVAには劣る物の強力な機体で、一度の戦闘で失うには惜しい機体である事に間違いはない。
できれば、修復、もしくは、改良発展させた機体の開発と建造が待たれるところだ。

歌姫は全員無事。
特に、ヘリ墜落で大きな怪我なく生きていた阿部は奇跡と言える。
…ただ、残念な事にヘリの操縦士と、副操縦士は遺体で発見された。
それを、彼女が気負わなければいいのだが…。
鉄には、阿部を信じる事しかできない。
いや、阿部は強い女性だ。
妖怪に殺された人の死を、無念を、力に変えて、再び戦ってくれるだろう。

理緒については、作戦への介入と、阿部救出、ゴスペルマニューバの導入と、プロトの暴走、もろもろの手柄と失態が合わさって、今扱いが協議されていた。
もしかしたら、このまま理緒は第五小隊へ新型機や装備の開発要員として配属になるかもしれない。
それだけ、彼女の技術力は高かった。
しかし、阿部に勝るとも劣らない強烈かつ毒のある性格の彼女とこれから一緒に戦う様を想像すると…。

…鉄は、想像する事を放棄した。
今それを考えるには、疲労が蓄積されすぎている。

DIVAは再封印されるらしい。
どうも命令解除コードが甘すぎたという理由らしいが…。
なるべくならもうお目にかかりたくないというのが鉄の感想だ。
また、これに伴って歌の影響による鳳への攻撃は、一切不問に付されるらしい。


「女性の精密検査が終わったわ。」

空母内の検査室の分厚いドアが開いて、笹倉が阿部、そして、理緒を伴って出てきた。
DIVAの歌による暴走の名残が、涙の後となって彼女の頬に残っている。

DIVAの歌の影響と、怪我の具合を調べるため、パイロットと歌姫、そして現場にいた理緒とヘリの操縦士、そしてヨシヒコには精密検査が命じられたのだ。

「…結果、どうでした?」

義手を取り外し、片腕の無い細身の体、幽霊のような白い顔で微笑を浮かべながら、ヨシヒコに隙あらば近づきそうな雰囲気の桜と、ヨシヒコの間に移動しつつ、鉄は阿部に尋ねてみた。

156 ◆z4KXiuQxT6:2014/12/01(月) 00:42:16
すいませ〜ん。今回は書くことが量的に少なくなると思いますのでパスさせて下さい。
自省レスもあんまり意味ないし、次シナリオの開始の時に書くことが増えたら書きたいと思います。

157長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/12/04(木) 01:43:02
>>156
了解です

158阿部 真里亜 ◆PxcqTTd2Bc:2014/12/07(日) 10:53:24
>「…結果、どうでした?」

「大丈夫、打撲と擦り傷以外は異常なしよ」

本当にあの状況で無事だったのは奇跡といえるだろう。
その証拠に、操縦士と副操縦士は遺体で発見されたとの報告を受けた。
DIVAの歌で見せられた幻影……
私がこの戦いに身を投じた理由の根底に自殺願望があったとしたら……なんとも皮肉なことである。
私はまだ死んではいけないということなのだろう。
福音という力を授かってしまった以上、亡くなった人々の分まで戦わねばならないのだ。

「ヨシヒコ君もありがとうね、一緒に歌ってくれて」

無邪気なヨシヒコ君を見て思う。
この子が大人になる頃には妖怪に脅かされることのない平和な世界になっていたらいいなと。

159【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/12/11(木) 20:56:44
はい、episode2、終わりです!!
皆さんありがとうございました!

さて、episode3ですが…今月くそ忙しいので、来月以降になりそうです。

落ち着いたらまた書き込みますので、どうか気楽にお待ちください。
ありがとうございました!!

160 ◆z4KXiuQxT6:2014/12/12(金) 01:32:05
了解です。
皆様お疲れ様でした。
ということは来年まで休止ということですね〜

あ、ホワイトクリスマスをベースに
何か物語を紡げたら綺麗な絵が
想像できそうって、ふと思いました。

それでは皆様、よいお年を♪

161あべさん ◆PxcqTTd2Bc:2014/12/14(日) 16:21:42
ありがとうございました!
よいお年をー!

162新章予告!! ◆fr8igvtEPg:2014/12/22(月) 21:41:09
「ゴストゥルパードールズ、第一小隊全滅……!!」

妖怪との激戦続く全世界に、衝撃の急報が駆け巡る!!
最新鋭、最大規模の装備で、ゴストゥルーパードールズ最強を誇った第一小隊が、複数体の妖怪の猛攻を受け、全滅したのだ!!

圧倒的なパワーを誇る妖怪軍団は駆けつけた現地軍を蹴散らし、人口密集地へ迫りくる!!
抗えない圧倒的な力の前に、人の命が守り手の、その手の指からこぼれ行く!

…そして、人類と妖怪の戦いは新たな局面を迎えていく……。
終わりゆく文明、滅びゆく種、人に残された対抗策は!

ゴストゥルーパードールズ、第3章「砕かれゆく希望!」こうご期待!!

163 ◆fr8igvtEPg:2014/12/26(金) 20:55:12
すみません、↑の新章予告、無かった事にしてください。


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