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女装ハッテン場に見学に行って参りました。
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NaNじぇいのホモの皆様ならご存知かも知れないし、そうでもないかも知れない、某所の女装ハッテン場。
先日、私はそこへ見学へと参りました。
特に何か派手なことが起きた訳でもない、凡百のレポート、つまらない駄文でございますが、よろしければご覧ください。
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あ、ホモだ
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ついに、現れてしまったようだな
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AILEくん、僕はうんこ色でお願いします
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ハハァ・・・
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しゃぶったのかしゃぶられたのか
それが問題だ
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きっかけは、居酒屋での友人との何気ない会話でした。
とある日曜日の、日も落ちた頃。
友人と二人で下らない雑談に花を咲かせている中、ふと私はNaNじぇいで知ったとある女装ハッテン場のことを思い出しました。
女装を好む男性と、女装した男性を好む男性が集まる出会いの場。
個室ビデオボックスのような形態を取りつつ、その実は社交場やハッテン場を取り合わせたような場所であるらしい。
「そういえばネットで見たんだけど……」
そんな風に前置きして、私は友人(ノンケ)にその場所のことを話しました。
「凄いなぁ」
それが友人の感想でした。
「色んな場所があるもんだ。行ってきたら?」
冗談っぽく友人は言います。
「いやいや行かないよ」
私は女装ハッテン場に行ってみることにしました。
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>>7
>「色んな場所があるもんだ。行ってきたら?」
>冗談っぽく友人は言います。
>「いやいや行かないよ」
>私は女装ハッテン場に行ってみることにしました。
草
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ホモは嘘つき
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行ってるじゃないか(困惑)
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年齢層ってどんな感じなんですかね
若くて可愛い子がいれば行きたいけどなー俺もなー
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ラスト一文の前に何が起こったんですかね・・・
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前にアドバイスもらってた人ですかね
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ハナっからこの疾走感
たまらねえぜ。
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この時期は全裸待機してても風邪引かないからいいですね
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稲川淳二が喋ってる体で文章読んでます
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待ちきれないよ!早く(続きを)出してくれ!
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初手ホモ嘘で草
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ホモは嘘つきが証明されましたね……
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ここで前もって私の性的嗜好を説明させていただくと、
至って普通のノーマルで、少しだけ興味の範囲が広い程度、といったものです。
エロければ何でもOK、というタイプ。3次元でいえば18歳から40代〜50代くらいまでならイケる口。
純女だけに限らず、2次元3次元問わず男の娘やニューハーフにも興味を持っています。
もっとも、経験があるのは女性だけで、男の娘やニューハーフは漫画やアダルトビデオで楽しんだことしかありません。
また、おそらくはエロ漫画の影響でアナルにも興味はあるのですが、
プロの店で女性のアナルに1度挿入した経験がある程度で、それもあまり上手くはいっていません。
彼女は私の息子がしょんぼり元気を失くす程度に、あちこちがとても臭かったのです。
そうしたわけで、女装男子は私にとってフロンティアかも知れないのでした。
きょう女装ハッテン場で何かをしようとまでは思わないけれど、雰囲気を覗きに行くくらいなら面白いやも。
そう考えたのです。
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やっぱり選択肢が多いのはいいことよね。
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読ませる文章
やはりホモは文豪
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女装男子は人類最初で最後のフロンティアだった……?
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フロンティアにはアポロンに通ずるものを感じますね…
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友人との会話で当然のようにハッテン場の話題を出す精神
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これがマクロスフロンティアちゃんですか
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ち◯この付いてない性癖が普通の女性は純女って言うんすね〜
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友人と解散して電車に乗り、とある駅で途中下車すると、
ほろ酔いの私は足取り軽く、薄暗い夜の街へと向かいました。
時刻は既に22時過ぎ。
客引きや酔っ払い、ラーメンの匂いなどの間を潜り抜けながら、
私はスマホのグーグルマップに導かれるままにとあるビルへと向かいました。
ただただ足を進めます。
好奇心と期待、そしてちょっとした恐れ。そうしたものが私の心の中にはありました。
ノリで女装ハッテン場に行く、というのは、新しい悪戯を試すような感覚に少し似ていました。
……否、ノリというのは正確ではありません。
きっとそういう風にして己を奮い立たせて、細かいことを考えないようにしなければ、勇気が足りなかったのでしょう。
女装ハッテン場に興味があったのは事実ですが、
一方で何か恐ろしいものに出くわしてしまうのではないか、というような警戒心もまた確かにあったのです。
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なるほど…
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決意するのが早すぎる
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当 日 決 行
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けっこう良い文章力してるけど何かスポーツとかやってたの?
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少しも躊躇わない探究者の鑑
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やがて店の置き看板を見付けるとビルに入り、エレベーターのボタンを押して上へ昇りました。
フロアに降り立つと、右側奥に小さな受付があります。
この女装ハッテン場は商業ビルのうちの2フロア(2階分)に入っていて、私が降りたのは下の方の階です。
最初に券売機で利用コース(3時間コースなど)のチケットを買い、受付に渡すといいとネットに書いてあったため、
私はきょろきょろ周囲を見回して券売機を探しました。
しかし券売機はどこにも見当たらず、困った私は受付にいた店員さんに話しかけることにしました。
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30分でまだ店の入り口という事実
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もう待ちきれないよ!早く出し てくれ!
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まだ友人と飯くってハッテン場に行って券売機を探してるだけという事実
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はよ頼む
そろそろ冷房が腹に効いてきた
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受付には天井から下がった、簡単な目隠しのような板があり、目から上くらいからは隠れるようになっていました。
その内側、目隠し板の向こうにいらっしゃったのは、女装をされた男性。
いそいそと近付くと、私が口を開くよりも早く、彼女は私に声をかけてくれました。
「いらっしゃいませ」
その声を聴いて、私は少し驚きました。
当然と言えば当然なのですが、その声は当たり前のように男性のそれだったのです。
特に作っているわけでもない、ナチュラルに低めな男性の声。ああ、女装の人だ、と私は思いました。
「すみません、ここって券売機とかじゃないんでしょうか」
そんなことを言うと、店員さんは「ああ」と呟いてから、
「初めてですか?」
と私に訊きました。
「あ、はい。そうです。ははは」
そう答えると、店員さんはわざわざ受付の外まで出てきて、券売機の場所を教えてくれました。
結局、券売機は受付のすぐ近く、奥まで続く長い廊下の手前あたりにありました。
単に機体が横を向いていたので少し分かりにくかっただけだったのです。
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読ませる文章+114514点
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参考になりますね
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この文章力の高さは立派なホモだよ
誇りたまえ
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ホモは優しい
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券売機の存在を知っていたことから、私がたまたま迷い込んだだけの人間でないことは察していたのでしょう。
そのまま店員さんは各種コースの概要をてきぱきと説明してくれました。
「上の階に行くならこのチケットも一緒に出してくださいね」
そう言いながら彼女が指さしたのは500円のチケットのボタン。
これがあれば上の階にあるバーラウンジやハッテン部屋に立ち入れるのです。
私は一番短い2時間コースのチケットと上階チケットの2枚を買い、受付に戻って店員さんに渡しました。
しめて2500円です。
すると、店員さんは上の階の個室と下の階の個室のどちらがいいかを私に尋ねました。
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女と経験あるのは高齢童貞が多いNaNじぇい民代表として許せないけと
文章見てたらちんちんムズムズしてきた
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個室の時点で見学では済まなくなってないか?
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ちゃんと彼女扱いしてる+114514
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なんだろうこのハラハラは…
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もう待ちきれないよ!早く現実を見せつけてくれ!
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はやくヤって
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すこし前の土曜にNaNじぇいでおすすめされた所に行ってきたら時間が悪かったのか全然乗ってくれなくてひどく寂しい思いをしましたね
たぶん>>1と同じところです。二階のバーの奥にハッテンスペースあるなら確実に。
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他にもいるのか…(困惑)
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ハッテン場凸民が複数人いるのか(困惑)
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ホモは文豪
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自分はまた場所と時間変えて何回かいこうと思ってます
ちなみにバイです。
スレ汚し失礼しました
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NaNじぇい民は開拓者精神旺盛
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なんすかこれ
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私は悩みました。
下の階には漫画棚やDVDがあって、
そこで作品を物色している女装さんに痴漢……もといボディタッチをすることで個室にお誘いすることができることは予習しています。
一方、上の階には先程も書いたバーラウンジがあって、そこで女装さんをナンパして個室に連れ込むこともでき、
さらにはもっとあからさまなエリア、ハッテン部屋もあるのです。
どちらにせよ個室は与えられる、という意味ではそう変わらないのですが、一方で流れや雰囲気、間というものもあるはず。
私は悩みました。
……いやいや。考えてもみろ。
今日はただ見学に来ただけなんだ。余程のことがない限りハッテンまでするつもりはないんだ。
となれば、できるだけ色々な場所を見ておきたい……。
結局、私は上の階の個室を借りることにしました。
私は人見知りなので、「個室に来たついでにバーを覗きに来ただけですよ」「もののついでにハッテン部屋を覗きに来ただけですよ」
そういう誰に対するでもないエクスキューズが欲しくなったのです。
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小説みたいで楽しい
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他のハッテン場体験もまとめて書籍化して販売しろ
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そのうちNanじぇいオフ会会場になりそうな勢い
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これすごいですね
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「河童が覗いたハッテン場」ってタイトルで詳細な部屋の配置とかをイラストで書いたら売れそうだけどバッシング凄そう
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なんだこの引き込まれる文章…
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全く別の世界に飛び込むかのような葛藤とも言える気持ちが伝わってくる
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もののついでにハッテン場というパワーワード
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ただただ引き込まれる
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私も行きたくなってきました(興味)
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ク レ イ ジ ー ジ ャ ー ニ ー
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これ出た時には自分も女装してるパターンだ
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ハ ッ テ ン 場 放 浪 記
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いつか日本のハッテン場全制覇する時が来るかもしれない
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なぜホモはこんなにも読ませる文章を書けるのか
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次に店員さんは、部屋の種類をどうするかを尋ねてきました。
部屋の種類は3種類。
リクライニングチェアがある部屋や、フラットマットという四角く分厚いベッドのようなマットがある部屋などがあります。
もしかしてもしかすると、個室を使うことになるかも知れないもんな。
今度はそういう風に考えが切り替わり、
私はもっともハッテン行為をしやすいであろうフラットマットの個室を借りることにしました。
すると、最後に店員さんは、カウンターに貼られた紙を指さして、
「どのサービスにしますか?」
というようなことを私に訊きます。
このサービスというのは、要はちょっとしたハッテングッズプレゼント。
ローションや避妊具などがもらえます。3種類あって、そのコースによってグッズの種類や数が変わるのです。
私が選んだのは避妊具と小さなローション、
そして小さな袋に入った豆菓子をいずれも一つずつもらえる、おそらくはもっともスタンダードなコース。
店員さんはどこからか取り出した白いカゴに伝票とハッテングッズを入れると、私の手首にオレンジ色のベルトを巻きました。
このベルトがないと店内を出歩けない、紛失した場合は弁償、とのことです。
「分かりました」
と私は答えました。
お世話になった店員さんに頭を下げて挨拶すると、私は受付に背を向けて上の階へ繋がる階段へと向かい、
それからふと足を止めて、何となくまた後ろを振り返りました。
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最後の行好き
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国語の教科書に載せても違和感なさそう
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ハッテンまではするつもりはないと言いながら万一に備えしっかり準備はしておくバイの鑑
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すごい文が読みやすい
こんな文章書けるようになりたいなぁ
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ついに新世界への一歩を踏み出す時
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ぼくも週末に同じところ行く予定だったけど風邪を巻き散らかしたくなかったので断念しました
ところで、風邪ひくと口の中が精液みたいな味になりませんか?
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券売機の向こうにはDVDや漫画の棚とロッカーとに挟まれた細い廊下。そしてさらにその奥には個室が並ぶエリア。
そういえばけっこう照明が薄暗いんだな、と、今さらながらそんなことにも気付きます。
目線だけをあちこちに這わせていると、ふとDVD棚に表向きに置かれた『Ted』のパッケージが目に入りました。
券売機の前でコースの説明を受けている時、
DVDや漫画を同時に5点まで借り放題、交換し放題のサービスがあると教えられたことを思い出します。
とはいえ2時間で映画を見るのは少々難しいですし、そもそもそんな気分でもありません。
私はふたたび背を向け、階段を昇って上階へ向かいました。
外の空気にむきだしの、非常時用のような階段。蒸したような夜風が吹き付けます。
いつの間にかうっすらとかいていた手汗は、果たして夏の夜の暑さだけのせいなのか、私には分かりませんでした。
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なんか詩的…
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すごいロマンチック
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待ちきれないよ!早くだしてくれ!
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>>1は小説家か何か?
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今夜は眠れないかもしれない…
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センター試験の現代文に出題して受験生の度肝を抜きたい文章力
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いわば逢魔時
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>「色んな場所があるもんだ。行ってきたら?」
>冗談っぽく友人は言います。
>「いやいや行かないよ」
>私は女装ハッテン場に行ってみることにしました。
このくだりいる?
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理性では止めるべきとわかっていても好奇心には逆らえないことのメタファーや(適当)
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気の置けない友人にすら打ち明けられない自分自身を人知れず解放する緊張感を表現するためにもいる
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>>89
ここの部分ダンカンに朗読してほしい
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>>89
ここが非日常への分かれ道
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>>92
ぼくのなつやすみかな?
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>>89
センター試験の問題にここ使えそう
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そのまま階段を昇り切り、上階フロアに入りました。
右側には洗面台とお手洗い、左側にはいきなりバーのドアです。私が借りた個室があるのはバーの奥。
いきなりバーに立ち入るのが急にためらわれて、
私は洗面台の方へ向かい、手に持っていたカゴを折り曲げた肘の辺りまで滑らせると、手を洗いうがいをしました。
そうしてもはや洗面台への用もなくなってしまうと、
私は小さく息を吐いてバーの方へと向かいました。
すると、バーのドアの脇にガチャポンマシンが一つ置いてあることに気付きます。
背が高く、球を軽く押し潰したような形の透明なガラスケースにカプセルがたくさん入ったガチャポンマシン。
足元にはカプセルを捨てるための小さな段ボール箱も置いてあり、中にはいくつか空のカプセルが転がっています。
このガチャポンマシンの不可解なのは、カプセルの中に何が入っているのかがよく分からないこと。
値段も煽り文句も書いてあるのですが、中身についてはどこにも書いていないようなのです。
カプセルの中身を凝視してみようかとも考えましたが、どうせ買わないのにそんなことをするのもどうも気が引ける。
私はガチャポンマシンから離れ、とうとう静かにバーのドアを開けました。
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無意味に時間を潰すところがリアルですね…
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ガチャの中身何なのかこっちまで気になっちゃう……
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なんだかドキドキしてきた...
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>>89
現代文学っぽくて好き
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待ちきれないよ!はやく(続きを)出してくれ
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Nanじぇいってガチな人とそっちに興味がある人を繋ぐ場所になりつつあるよな
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まるで昭和の初めの頃の文豪みたいだぁ(直喩)
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ホモになると文豪になるのか文豪がホモになるのか
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何処かの週刊誌にルポとして載せてもいいレベル
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こんな文が書けるようになるなら俺もホモになろうかな…
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頭の中で常に情念が渦巻き思索に耽るから文章にした時すごいことになると聞いたことある
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カプセルの中身が知りたくて――。
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ID:BCSCMVSIなら知ってるかもしれない
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いきなりバーに立ち入るのが急にためらわれて、
私は洗面台の方へ向かい、手に持っていたカゴを折り曲げた肘の辺りまで滑らせると、手を洗いうがいをしました。
そうしてもはや洗面台への用もなくなってしまうと、
私は小さく息を吐いてバーの方へと向かいました。
ここクリスティの名作みたいな緊迫感がある
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ドアは音もなく空きました。
バーは下の階よりももう少し薄暗く、照明のせいなのか調度品のせいなのか、青紫っぽい印象です。
左側には横長のシックなカウンター席。正面奥には個室が並ぶ廊下に繋がっているであろうドアがあり、
そのドアの斜め上に設置された大きなモニターからは地デジのテレビ番組が流れています。
また、右側の手前側には長いカーテンで隠された怪しげな通路への入り口があり、
その奥にはもう一つ、やはり長いカーテンで隠された怪しげな通路への入り口。
そのもう少し奥、二つ目の入り口と正面のドアの間にはソファなどが置かれた広いコミュニティエリアがあるようです。
つまりL字の縦棒を奥から手前にぐいと引き倒したような形に、バーはなっているわけです。
カウンター席に座っていた40代くらいの女装さんと30代くらいの男性がちらりとこちらを見ようとする気配を感じて、
臆病な私はそっと目を宙に逸らしました。
左側の一番手前には小さな受付があり、受付の内側とバーのカウンターの内側とはひとつながりになっています。
カウンターで接客をしていたらしい女装のマスターは、
私が持っているカゴを見ると、ぱたぱたと受付の内側まで駆けてくると、
「お客様っ」
と私に声を掛けてきました。
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ついにか…
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明日朝早いから日付変わる前に寝ようと思ってたんに
こんなスレ立てやがってチクショウ
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内心ドキッとしながら、
「あ、はい」
と返事をすると、マスターは私が上階の個室の利用者であるかどうかを確認してきました。
「そうです、はい」
そんな具合のなんだか情けない返事をすると、
「ご利用ありがとうございます。カゴをお借りしてもよろしいでしょうか」
という風なことを言われたので、どうぞとカゴを渡します。
カゴの中にリモコンやヘッドホンを入れてくれているマスターは、
やはり女装はしているものの、ごく普通の男声。
女装の方にこういう表現は不適切かも知れませんが、親戚のおじさんのような親しみを感じる語り口でした。
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ふむ…
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ちなみにですが自分もガチャの中身は知りません
コインが必要だったか、ガチャをやる気分じゃなかったかですね。
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受付が済むと、何でもない風を装いながら、正面奥のドアを目指して私はゆっくり歩きました。
視線だけはちらちらと周囲に巡らせます。
カウンターには先程の二名の客と、二人に隠れてさっきは見えなかった若めの女装さん一人、そしてマスター。
モニター近くのコミュニティエリアにいたのは、
うつむきがちの姿勢で低いソファに座っているせいで顔の様子が見えない、
茶髪のウィッグに黒いキャバドレスのような服を着た女装さん。
それだけでした。
……あれ? けっこう少ないな……。
そう感じて、すぐに理由に思い当たります。
考えてみれば、今は日曜日の22時過ぎ。
ここにくる客のほとんどすべてはプロではなく一般の社会人や学生のはずで、
となれば明日は朝から仕事なり学校がある。
……どうも時間選びをミスったかも知れないな。まあ、今日は見学のつもりだったしいいか……。
そんなことを考えながらドアを開け、個室の並ぶ廊下へ入りました。
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なに出逢いに期待してんだよこの猿ゥ!
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なんだかんだでちょっと期待してるの素直ですき
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廊下の両脇には個室のドアが並んでいます。
ドア上の壁と天井の間には、換気用なのか30センチほどの隙間が空いています。
室内で声や音を出すと多少なりとも室外に漏れ聞こえてしまいそうですが、ここは女装ハッテン場。
あえてそういう設計にしてあるのかも知れません。
廊下の中ほどには、アダルトグッズや女装セットなどを買える、金庫くらいのサイズの自販機が置いてあります。
そして廊下の一番奥には、スライド式のドアが半開きになった、よく分からない真っ暗な部屋がありました。
あれが噂のハッテン部屋かも知れない、そう思ったものの、今立ち入るには荷物が多過ぎます。
私は自分の個室を見付け、
中に入るとすぐにドアの鍵を閉め、フラットマットの上にカゴとバッグを投げ出すとそのままどさりと寝転がりました。
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部屋の広さは普通の個室ビデオ店程度の狭さ。
ドアに錠の類はなく、引き上げ式のごく簡単なカギで内側からロックできるだけ。
部屋にはフラットマットのほかに大きなモニターとDVD再生機とキーボード、その横には小さな卓上扇風機が置いてあり、
その下にはゴミ箱がひとつあります。
部屋の壁には注意書きや部屋の使い方などが書かれた張り紙がたくさん。
そして連絡用のインターホンが一つ。
本当に簡単な個室です。
軽くネットでもしようかとモニターを少しいじってみたものの、方法がよく分からず、すぐ諦めてしまいました。
後から知ったのですが、部屋でネットをする場合は会員登録が必要なのだとか。
ふたたびマットに寝転がった私は、動くのが少し億劫になり、そのままスマホを取り出して数分ほどグラブりました。
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グラブルはホモ
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そろそろヤってくれ
全裸待機きつい
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4時間も全裸待機してるのか……(困惑)
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ゼノウォフ周回きついからね、しょうがないね
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ホモ体験の途中に宣伝したいものを挟む手法が流行りそう
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グラブルってそういう…
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スマホを片付けていると、ドアに貼られた案内図が目に留まりました。
見ると、ハッテン部屋に当たるエリアは上階には3か所あるらしいことが分かりました。
バーで見かけた2つの長いカーテンの向こうに、それぞれ一つずつ。
片方は仮眠室、片方は読書ルームと銘打たれています。
そしてもう一つ、廊下の奥に、こちらも名前は読書ルーム。
ドアが半開きになっていた、個室に入る直前に見かけた真っ暗いあの部屋です。
他人のハッテンを見てみたい……。
他人のハッテンを見てみたい。
バーの中でうろうろすることはどうにもためらわれたため、
廊下の奥のハッテン部屋に行くことに決めました。
私は両のポケットに貴重品の財布とスマホだけを入れると、廊下に出て部屋のドアを閉めました。
部屋には外から掛けられるカギはないため、部屋の主が個室外にいる際は常に空きっぱなし。
そのため貴重品を置いておくと危ないわけです。
廊下をそろそろと歩き、半開きのままになっていたドアに手をかけると、
音が鳴らないようにしながら少しだけドアを開いてハッテン部屋の中に入り、
それから静かにドアを閉めました。
真っ暗になりました。
ハッテン部屋に入ったのは、これが生まれて初めてでした。
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いざぁ…
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いいところ区切るから先が気になっちゃう!
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>真っ暗になりました。
ハッテン部屋に入ったのは、これが生まれて初めてでした。
これから新しい自分が生まれることを暗示していますね…
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読ませる文とはこの事ですね
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>他人のハッテンを見てみたい……。
>他人のハッテンを見てみたい。
問. この場面における作者の気持ちの変化を文章中の言葉を用いて100字前後で説明せよ。
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これは風邪を押してでも行くべきだったかもしれませんね……
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緊張と好奇心がそのまま伝わってきて興奮しますね
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ただのぼんやりとした興味がカチッと確固たる意志に変わった様が伝わってきます
小さい頃、夜中に道端のエロ本を回収しにいった時のような高揚感と緊張感が想像できる
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>>117
>……あれ? けっこう少ないな……。
>そう感じて、すぐに理由に思い当たります。
>考えてみれば、今は日曜日の22時過ぎ。
>ここにくる客のほとんどすべてはプロではなく一般の社会人や学生のはずで、
>となれば明日は朝から仕事なり学校がある。
>……どうも時間選びをミスったかも知れないな。まあ、今日は見学のつもりだったしいいか……。
>そんなことを考えながらドアを開け、個室の並ぶ廊下へ入りました。
これは時間選びをミスったと思わせておいて、実は最初から人を避けるためにこの時間を選んでおいて
いざやってきてみるとやはり女装さんと出会いたくなっちゃったという心境の変化を表してますね…
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そしてドアに背を向けて部屋の奥に向き直ると、そこは壁とついたてのような板とに挟まれた細い通路になっており、
右奥からは赤く妖しい光がわずかに漏れていることに気付きました。
要は、そのハッテン部屋は角ばった渦巻のような構造になっているのです。
部屋の中央、あるいは最奥という言い方でも良さそうですが、
そこに行くためにはぐるぐると角を3回ほど曲がる必要があるわけです。
私は最初の角を曲がると、そのままそろりそろりと先へ進んでいきました。
……人の気配はまだ感じない……。
他人のハッテン行為を見ることがマナー違反なのかどうか私には分からないため、
できるだけ静かに足を進めていきます。
やがて、2つ目の角を曲がり、部屋の中央まであと一曲がりという箇所まで来たとき、
赤い照明と、その近くに申し訳程度に並べてある本を見付けました。
このハッテン部屋の照明はそれ一つだけ。
壁には「読書ルーム」と書かれた紙が貼ってこそありますが、とてもではありませんが本を読める環境ではありません。
10冊ほど置いてある本は、聞いたこともないような古めのエロ漫画と、ブリーチなどの少年漫画でした。
それらにざっと視線を走らせたのち、私は最後の角に差し掛かり、
静かに息をのむと壁に手を掛けながら、
おそるおそる部屋の中央、ハッテン空間を覗き込みました。
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これマジ?
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ナオキ賞作家かな?
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唐突なブリーチに大草原
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俺は明日の朝が早いんだ!なのにこのスレがどうしても気になるからちくしょう!
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ちょっとしたちっちゃな文学賞なら取れそうな気がする
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ブリーチとグラブルが日常をかんじさせてくれていい
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国語の題材として使ってみたいですね
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>今日は見学のつもり
今日は、ね あっ ふーん(察し)
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待ちきれなくてどうも射精したみたいなんですよ
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ハッテン空間は無人でした。
座椅子や、毛布だかマットだか分からない布などが、四畳半ほどの広さの中に乱雑に転がっているだけです。
そのゴチャゴチャした様を見るに、
今日もハッテン自体は起きていたのでしょうが、やはり訪れるのが遅すぎたようでした。
肩透かしを食らったような気分になって、私はへへっと笑ってしまいました。
……これからどうしたものか。
このまま帰るという選択は流石にない。勿体ない。
支払ったコストに見合うリターンを、私はまだ見いだせていない……。
そうして、私は下階の痴漢エリア……もとい漫画棚エリア、
そして上階の残り二か所のハッテン部屋を見に行くことに決めました。
個室に戻ってカゴを手に取ると、中身を全部取り出して伝票だけを入れ直し、
バーへのドアを開けました。
-
悲しいなあ…
-
ドアを開けた時、ふたたびいくつかの視線を感じましたが、また目を逸らしてしまいました。
そうして私はバーの中をすたすた横切っていきます。
長いカーテンが近付いてきましたが、
なぜだか「もしかしたら入ろうとすると注意されるかもしれない」などと急に怖くなってしまい、
いったん上階のハッテン部屋は後回しにして下階の漫画棚へ行こうと考えました。
バーカウンターの前を通り受付の前まで差し掛かった時、
マスターが慌てたように、
「あっ、すみません!」
と声を掛けてきました。
内心ドキンとしながら黙って振り返ると、マスターは、
「お帰りですか?」
と私のカゴを見ながら言いました。
どうやら、帰ろうとしている客だと勘違いされたようです。
もしかすると、立ち振る舞いがあまりに初心者らしさ丸出しだったのかも知れません。
「いえ、DVDを借りようと思いまして……」
愛想笑いしながらそんな風に答え、
マスターと互いに「ああ」とか「すみません」などと言いながら頭を下げあうと、
私はそのままバーを出て階段を下りました。
-
入店した時もそうでしたが、下階の受付の向こうにあるDVD・漫画棚のエリアには誰も居ませんでした。
下階にはハッテン部屋の類もありません。
……もしかすると今日はこのまま終わりかもなあ。ま、それでもいいか……。
この頃になると、私はほとんど油断していました。
バー以外にはもう誰もいないだろうと思い込んでいたのです。
棚とロッカーの間を歩いたり立ち止まったりしながら、私は借りたいわけでもないDVDや漫画を眺めます。
受付から見える棚にこそ全年齢向けの洋画などが並べてあったのですが、
その少し奥以降の棚には、やはりというべきか、アダルトなDVDばかりが置いてありました。
熟女ものなどもあるのですが、大半は男の娘もの、女装ものなどです。
一方で、漫画は古いエロ漫画から、ハンターハンターや進撃の巨人などの近年の人気作までさまざま。
意図したものかは分かりませんが、どうやら基本的には男性らしいラインナップのようで、ははぁと妙な感心をしました。
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ドキドキしてきた…
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ハッテン部屋での肩透かしからのこの展開はドキドキしますね……
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渦巻のような迷路の形をしたハッテン部屋が心の中の不安や葛藤、迷いを表現してますね・・・
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ゲーセンの休憩ルームがハッテン場扱いされててそこになら行ったことあるけど特に何もなくてホッとした反面ちょっと残念だった時のことを思い出しますね…
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そんな風にして進んでいると、個室の並ぶ廊下への入り口の左手前、
ロッカーの脇に、長いカーテンのかかった謎の部屋への入口があることに気付きました。
入り口が狭いこともあり、つい先程までは死角になっていた部屋です。
すぐ近くにあった案内図を見ると、そこは漫画棚コーナーとのこと。
案内図をさらによく見ると、
その謎の部屋の真向かいからさっき眺めてきたロッカーや棚の裏側にかけての細長いL字のエリアにも、
別の漫画棚があるようでした。
つまり、乱暴に説明すると、漫画・DVD(およびロッカー)が並ぶエリアは、
「山」の字を上下ひっくり返したような形になっているわけです。
しかしすでに油断して、人がいるかどうかよりも漫画のラインナップが気になりつつあった私は、
何も考えずに無造作にカーテンの中に顔を突っ込みました。
そして部屋の中を見て、一瞬固まってしまいました。
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おっ
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これはついに来ましたね……
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かつてこれほどまでにハッテン場という未知との遭遇における人の内面を
克明に、かつ繊細に表現したものがあっただろうか
-
そこではとても綺麗な女装さんがひとり、低い組立椅子に腰かけて漫画を読んでいたのです。
濃い茶髪のミディアムヘアのウィッグ。身には青一色のキャバドレスを纏っています。
腕は細く白く、足はすらりと美しく伸びています。
横顔の輪郭には若干男性らしいメリハリが見受けられたものの、
バランスよく凛と整った目鼻立ちといい、雰囲気は完全に若い女性のそれのように思われました。
思われる、というのは、驚いてしまったゆえに彼女を直視できなかったから。
視界の端でしか、彼女の姿をとらえ続けることができなかったからです。
きちんと見ればもっと気付くこともあったのでしょうが、その時の私にはとても無理な相談でした。
どうかこの小心をご嗤笑いただければと思います。ともあれ。
うお、美人だ、と思いました。
例えばツイッターで地名と店名で画像検索すると、あるいは単に「女装」とか「女装子」などで検索してもよいでしょう、
数はごく少ないですが、本当に一見女性と見まがうような綺麗な女装さんがいたりします。
もしくはもっと分かりやすく、市販のAVに出ているような女装さんは大半がとても美人です。
そういうごく一部の上澄みというか、
存在してることは知ってるけど実際に会えはしないだろうなというような、そういうレベルの女装さん。
そういう人たちに決して劣らないようなレベルの人のように、少なくとも私の目には映りました。
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ヌッ!(早漏)
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こんなんじゃ眠れないよ〜
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金曜夜とか土曜がゴールデンタイムなんですけど美人に会えたのは運いいですよほんと
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あくあくあくあく
もう待ちきれないよ!
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朝からベンチプレス120kg上げにジム行こうとしてたのに眠れない
明日の筋トレは中止だ
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痴漢、というワードが、頭の中でにわかに浮上してきます。
先に書いた通り、漫画やDVDを見ている女装さんは、
痴漢……もといボディタッチを仕掛けることでお誘いをすることができる、
という話は知っていました。
しかし、私のイメージしていたボディタッチとは、
棚の前に立って漫画やDVDを眺めている女装さんのケツを背後から撫でる、というものです。
椅子に座っている女装さんにはどうボディタッチを仕掛けたらいいものか、
あるいは、椅子に座るという行為には何かしらの別の意味合いがあるのか。
私にはさっぱり分かりませんでした。
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たってきちゃったよ…
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もっとも、それが分かったところで、ボディタッチを仕掛ける度胸が私にあったかは怪しいのですが……。
結局、私は数秒ほどカーテンの中を覗くと、すぐに顔を引っ込めてしまいました。
思わず息をつきたくなりましたが、
その音をカーテンの向こうの彼女に聞かせることがなんとなくはばかられて、
鼻から静かに深く息を吐きます。
それから、なんだか自分のことがとても情けなく思えてきました。
きっと、カーテンの中に人を見付けた時点で、私はもう完全にすくんでしまっていたのです。
もしかすると、人がいないだろうと思っていたのも、
そういう風に思考を先回りさせておくことで、失敗の準備をしていただけなのかも知れません。
さっきのすぐに顔を引っ込めるという行為が、
もし彼女に「趣味じゃなかったので立ち去られた」という風にうつっていたらちょっと嫌だなあと、
そんなことも考えました。
それから、私は足早にカーテンの部屋の真向かいの漫画棚エリアを見て回り、
特に誰もいないことを確認すると、逃げ帰るようにいったん自分の個室に戻りました。
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なんか純文学感じちゃいますよ…!
ところでカーテンの向こうって化粧室とかじゃありませんでしたっけ?(うろ覚え)
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個室のカギを閉めてマットの上にカゴを放り出すと、
私は卓上扇風機のスイッチを入れて風力を最大にし、マットの上にだらしなく寝転びました。
それからスマホを取り出すとハチナイを起動し、溜まっていた行動力を無言で消費し始めました。
ぼけっとしながら画面をつついていると、頭の中がだんだん空っぽになっていくのを感じます。
そうして何度目かの試合、信じて送り出した九十九くんが奇跡の逆転3塁打を放ったその時、
突如ドアの向こうから男性二人組の声が聞こえてきました。
私はすぐさま体を起こすとドアに近付いて耳をそばだて、
声がうまく聞き取れないと分かると、スマホをしまいながら静かに卓上扇風機のスイッチを切りました。
……これはもしかしてもしかすると、個室への連れ込みの最中なのでは……?
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純文学を思わせる文体の中にグラブるやらハチナイやら入ってくるの好き
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唐突なハチナイで草
野崎さんすき
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九十九くん…あっ、ふーん(察し)
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所々のソシャゲ描写で筆者と読者の距離感を取り除いてますね…
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大興奮で寝れてませんねこれは
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もう待ちきれないよ!早く続きを出してくれ!
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向かいの個室に用があるのでしょうか、男性二人の声はドアの向こう側から移動する気配はありません。
言葉は聞き取れないものの、なんだか楽しそうな雰囲気は伝わってきます。
しかし、途中で、ん?
と思いました。
というのも、二人の話し声が本当に男性同士の雑談の雰囲気にしか思えないというか、
どちらの声も、女性を装っている男性のそれとは思えないようなトーンだったのです。
しばらく会話は続いていましたが、やがて何も聞こえなくなりました。
まさかまったくの無音でハッテンをしているということもないでしょう。
従業員さん同士、あるいは常連さん同士の会話だったのかな、そんな風に思いました。
例えば二人の従業員さんが向かいの部屋の掃除をしていた、と考えると筋自体は通ります。
なあんだ、と私はがっかりしました。
勝手に期待して勝手に失望しただけの、それだけの時間でした。
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……これ以上は無益だ。
私はそう思いました。
もう帰ろう。
下階の受付でもらった避妊具とローションをお土産代わりに胸ポケットに入れると、
私は帰り支度を始めました。
リモコンやヘッドホンを放り込んだカゴを手に持ち、バッグを肩にかけながら立ち上がります。
部屋の中をざっと見回して忘れ物がないことを確認すると、ドアをガラガラと開けて廊下に出ました。
あとは受付にカゴを返して、このビルから出るだけ。
ただ……その前に、私にはやり残したことがありました。
バーの中にある、二か所のハッテン部屋……仮眠室と読書ルームを覗くことです。
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緊張感出てきた
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ドアを開けてバーに入ると、
私はまず手前側のハッテン部屋の入り口へ向かってまっすぐ歩いていきました。
もう帰り際だし。もう最後だし。
そんな風に思えば、バー内のハッテン部屋へ入るのもそこまで怖くはありませんでした。
カーテンをめくって中に入ると、正面は予約制有料のシャワー室になっています。
仮眠室があるのは右奥。
私はずんずんと仮眠室へと向かいました。
仮眠室の中には誰もいませんでした。
薄々分かっていたことではあったので、私はすぐに踵を返してカーテンの外へ出ていきました。
次は最後のハッテン部屋、バー内の読書ルーム。
私は入り口のカーテンを片手で脇に押しやるようにしながら、中に入りました。
案の定、読書ルームの中にも誰一人いませんでした。
……やっぱり時間を間違えたな。
そんなことを思いながら読書ルームから出た私は、
何気なくカウンター席の方を見て内心びっくり仰天しました。
-
あくしろよ
-
下階の漫画棚コーナーにいた、青いドレスを着た美人の女装さん。
彼女がいつの間にかカウンター席に腰掛けていたのです。
恐らくはたった今来たというわけではなくて、
単に私がハッテン部屋に気を取られていて気付かなかっただけなのでしょう。
もしかすると、漫画棚での痴漢待ちに飽きてしまって、バーまで上がってきたのかも知れない。
そうだとしたら、私はせっかくのチャンスを逃してしまったのだろうか。
とはいえ、そんなことを今考えていても仕方がありません。後悔先に立たず。あるいは後の祭り。
大事なのは、今、どうするか。
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お、きたね
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ざわざわしてきたな…
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スカートめくりしたくなってきた
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寝ずに書いてるのか…(困惑)
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夜通し書いてたとは思わなんだ
もう待ちきれないよ!早く出してくれ!
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声を掛けるべきかどうか、私は悩みました。
ナンパの類をした経験は私にはありません。
そもそもが人見知りな私には、どんな風に声を掛ければいいのか見当もつかないのです。
そもそも女装とはいえ本当に男とハッテンできるのか? 無理なんじゃないか?
そんな疑念まで脳裏をよぎりました。
それでも。
私は考えました。
ここでどれだけ無様に失敗しようが、ただ一時の恥をかくだけだ。
チャンスは今ここにしかない。
……今、ここで動くことができれば。
きっと、何かを変えることができる。
私は受付にカゴを返却すると女装ハッテン場から立ち去りました。
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は?
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えぇ…
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何かを変えろ
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チャンスの神様は前髪しかないってそれ一
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なんてことだ…なんてことだ…
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次はカマレズの日に女装していけ
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期待を裏切られてというやるせなさと躊躇いに対する理解とが混ざり合ってぐるぐるしている
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情けないと思うけども気持ちが痛いほどよくわかる
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初めてハッテン場に行って声かけるなんて普通出来ないだろうしね...
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変えることはできましたか…?
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そんな彼女も今はベッドで隣にいます
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駅へと続く薄暗い路地を、孤独に歩きました。
私はノンケだった。私はノンケだった。
今思い出した。
私には早過ぎたのです。
あるいは、そもそも向いていなかったのです。
本当のことを言えば、最初に受付で店員さんの声を聞いた時点で、
そして何度かマスターの声を聞いた時にも、
私はこんなことを感じていたのです。
声が男だと結構マジでチンコ立たない。
思ってたより厳しい。
あらゆる多大な失礼と語弊を承知で言えば、
きっと私にとって、ニューハーフや男の娘や女装男子はいわば珍味のような存在だったのです。
金時草や銀杏ではあっても、米やライ麦にはなりえない。
そしてそこにコミュニケーション力なり交渉力まで要求されると、いよいよ本当にハードルが高過ぎる。
女装男子という嗜好に、
喫煙を自慢する中学生や全身にアニメグッズを付けて歩くオタクのような、
稚拙な自己顕示欲に通じるものを見い出していたことも、否定はできません。
結局、女装ハッテン場で私が出会ったのは、そうしたつまらない結論だけなのでした。
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かなしいなぁ
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でもそういうエロ動画で抜くのに一番ハードル高いのは骨格とかよりもやっぱり声だよね
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かなしい。
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しょうがないね
これから夏休みもお盆休みもあるしハッテン場にも人は増えるだろうからチャンスはまだあると思います
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世界に選ばれるにはまだ早かったわね…。
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もしあなたが女装ハッテン場に興味を持っている純男なら。
僭越ながら、いくつかお伝えしたいことがあります。
まずは、本当に女装男子とハッテンできるのかどうか、よく考えてみてください。
あなたが本当にハッテンできる人で、
更にもし私が行った所と同じような店に行くことがあったら。
おまけに、女装さんに痴漢する勇気が湧かないようなシャイな性格だったら。
何でも構いません、バーで何か注文してみてください。
そしてマスターでも近くのお客さんでも構いません、話しかけてみてください。
あそこはきっと、あくまで出会いの場なのです。
自分から動かなければ、何一つ起きることはないのです。
純男が女装ハッテン場で待ちの姿勢でいることはきっと、
切株にぶつかって死ぬ兎をただ待ちぼうけるより愚かなことなのです。
今回のレポートは失敗例の最たるものとして、考えていただければと思います。
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淫夢の音声聞きなれてそうなここの住人でもやっぱりキツイんですねぇ…
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>>206
すっごいためになった
長時間の執筆作業お疲れ様でした
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ノンケも文豪
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いつの間にか、私は駅前まで辿り着いていました。
日付が変わるまであと1時間もないような、遅い時間。
それでもやっぱり行き交う人は多くて、私はなぜだか少しほっとしました。
ついさっきまで気落ちしていたはずなのに、
久し振りの冒険と考えればまあ悪くなかったな、
人生経験になったなと、気分もそんな風に変わります。
まずはニューハーフヘルスに行こう。
私はそう胸に誓いました。
そして私は白い光に満ちたホームへのんびりと降りていきました。
【了】
-
然るべきステップを踏んでいくのはいいことよね。
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次回も楽しみにしてます お疲れ様でした
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ヤっちゃってもホモじゃないのでは…?
http://i.imgur.com/N7oLSX8.jpg
http://i.imgur.com/ziM0Afd.jpg
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これが今年のセンター国語ですか
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>私はノンケだった。私はノンケだった。
ここのリフレインすこ
自分の可能性という最大の未知への多大な期待と失望感という
思春期の少年の内省にも似る心理が、まさに青春の一幕の様に瑞々しく表現されてる
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ホモは文豪
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(生々しい筆致に)ブルっちゃうよ…
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ニューハーフは珍味っつってるのにもうニューハーフヘルス行く決意固めてるのか(困惑)
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はぇ^〜
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全て読ませてもらいました、やはり新しい世界を開くのには相当なパワーが必要ですね
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夜通し読んでましたが、なんと言うべきか…
ともかく、半端なことをしちゃいかんよねって事ですかね
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やっぱりファッションホモと実際では雲泥の差があるんですね・・・
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これが少年の日の思い出ちゃんですか
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着実にステップアップする主人公の鑑
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ノンケ宣言の直後にニューハーフヘルス行く決意固めるのほんと草
リアルタイムでこのスレ見れてよかった、夜通しお疲れさまでした
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New OrderのTemptationのような情けなさと妙な明るさの同居した名文
求めた大きな変化はなかったものの、経験したことは無駄にはならないENDが美しい
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ところどころに入る国語の授業レスも相まってなかなか良いモノを読ませてもらった
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この調子じゃNH編もありそう
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世界は広いんだなぁって
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NaNじぇいにいると自分は男もいけるんじゃないかと思っちゃいますけど現実は中々厳しいんですね...
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この掲示板だけで済ませるには勿体無いぐらい引き込ませるレポにぶるっちゃうよ…
もし機会があればニューハーフヘルス編もよろしくお願いしナス!
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乙でした
先へ先へと展開が気になる連載小説のような作品
次回作があればぜひ読みたい
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このスレが気になって午後休暇取って帰ってきました
非常に良いものを読ませていただきました
執筆ありがとナス!
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ぐいぐい引き込まれました
下手なルポライターより断然面白かったです
お疲れ様でした
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>>233
過去ログ見ればいいだけなのになんてことを…
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おっつおっつ
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読了です…おっp、おっぱげた…
てか逆にハッテン場常連とか運営してるNaNじぇい兄貴はいないんですかね
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新たなセクシュアリティ、ささやかなロマンスへの希望と絶望とが、抑圧された静謐な語りで表象されている。一見表層的ながらも、自己を巧妙に隠蔽し可能性を探求する主体は、自由とその裏腹の自意識との葛藤を通じて、きわめて現代的な性のイメージを投射する。激賞に足る秀作。
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素晴らしいレポートをありがとうございます
ノンケはノンケのまま生きていても良いという活力が湧いてきました
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あ、やっぱり……本物との壁は厚いんやなって……
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我々は所詮、ホモの皮を被った醜いノンケでしかないのだ
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山田ルイ53世のような引き込まれる文章書く才能、誇らしくないの?
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たまに来るセンター国語の随筆文っぽい問題作れそう
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いきなり自分が望む所に行ってもダメ
着実にステップアップしとけばいいと
希望に満ちあふれてるよね
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爽やかなED曲流れてそう
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軽快な若手ロックバンド(個人的にはナッシングスやFABLED NUMBER)をBGMにホームの白い光の中に飲まれていき制作委員会と局の名前が出て「このドラマはノンフィクションです」ってテロップが出てる(幻覚)
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BGMは孤独のグルメのが流れてそう
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世が世なら薔薇族に掲載されるレベル
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行動力が大事ってはっきりわかんだね
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どうせまとめられる事なんて絶対に無いよ!
もしまとめられたら野外(夜の公園のトイレ裏)で
女装コスックスした動画をあげても構わないよ
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面白かった
ご苦労さん
>>1
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そう考えると自分の性、性癖にしっかり向き合った上で壁を越えてるお客さんたちがすごく見える
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ヘルマンヘッセを思わせる内省的な文章
それでいて分かりやすい状況説明
もしかしなくてもホモなのでは?
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ここまで来て最後の一歩を踏み出せないとかチキンかよ
チキンなら鶏姦しろよ
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本物のホモ文化への興味が日に日に高まってる今のNaNじぇい民たちにこそ読んでほしい名ルポ
まとめてほしい
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酒入ってたのにこんなに鮮明に覚えているのはそれほどの衝撃体験だったってことですね…
引き込まれるような文章誇らしくないの?
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ようやく昨日の途中から読めたけどやはりノンケもホモも後一歩踏み出す勇気が必要なんですね…
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性的冒険に付き物のワクワク感と一抹の侘しさが入り混じってるところがミシェル・ウェルベックっぽい
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もしかして>>1はウェルベック兄貴か
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<削除>
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やっぱり画面越しにキャッキャするのと実際に対面するのでは違うんでしょうね・・・
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語り継がれるべき名作
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チューするのは全く抵抗ないけど掘れるかと言われると多分無理ゾ
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<削除>
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友人と2人きりで湯船入ったときはビンビンになったけどいざSEXとなったら全くたたなかったゾ
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何が消されてるんですかね(困惑)
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こういう場所に20年近くも入り浸ってるプロもいるから女装ハッテン場通いは辞められない
中には新卒みたいな年齢で女装子好きな人もいて業の深さ、感じるんでしたよね?
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>>266
顔写真つきで「犯してください」みたいなことが書いてあったゾ
たぶんここをホモの掲示板か何かだと勘違いしたんでしょうね
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いきたいなあ
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>>268
岡山の文豪クラスの文章が書いてあったらネタになったかもしれない
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>>268
>ホモの掲示板
よし!間違っていないな!
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一気に読んでしまった…
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好評、絶賛!
次回(ニューハーフヘルス潜入編)もお願いします
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三島由紀夫も天国から読んでる
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出会い目的ばかりのホモの掲示板とここを同一視してはいけない(戒め)
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こんな時間なのに最後まで読んじゃったじゃないか(賞賛)
一見自分はまだノンケだと思いこみつつ、ホモへの道を着実に進んでいるのが見える見える…
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発展場にはじめて行くようになった頃を思い出して、とても懐かしい気持ちになりました
次はぜひ、勇気を出して、女装子さんにアプローチしてみてください
彼女たちもきっと、あなたが一歩を踏み出すのを待っていると思います
あなたが声をかけたその子がもしも私だったら、あなたに素敵な初体験をさせてあげられたらいいな
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何より文章力に圧倒されましたねえ!
まだプロになってないならすぐ小児応募して、どうぞ
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香ばしいのまで出てきて草
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>「いやいや行かないよ」
>私は女装ハッテン場に行ってみることにしました。
今思うとこれは、ラストの暗示になっていたんですね
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>「いやいや行かないよ」
>私は女装ハッテン場に行ってみることにしました。
>きっと、何かを変えることができる。
>私は受付にカゴを返却すると女装ハッテン場から立ち去りました。
ここら辺の一行でさらっと手のひら返すテクニックほんとすこ
自分も取り入れたい(なろう系)
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>>279
自己消化かな?
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