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若葉「黒いのを見てないか」

1 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/11/08(火) 01:10:59 yGiqxVMM
提督「サルミアッキならここにあるぞ」

若葉「そっちじゃない」

提督「ゴキブリでも出たか」

若葉「猫の方だ。あの短い尻尾の」

提督「ああ……そういやあいつ最近見ないな。誰かが出撃前に連れ出したんじゃないか?」

若葉「いつの間にか出撃前に猫に祈願するのが習慣になっているからな」

提督「艦娘の身体じゃあ艦船のように海に連れてけないからなぁ……」

若葉「一昨日見たきりなんだ。近頃調子が悪いようだったから、明石に見せようと思っていた」

提督「いつもいる場所を回ってれば見つかるかもな。行くか」ガタッ

若葉「すまない」

提督(……………………)


――――――――


提督「外だとここがあいつの定位置だったな」

若葉「うむ。灯台下がナワバリだった。鎮守府にいる猫はどれもここには近付かない」

提督「……いないか」

若葉「灯台の中は?」

提督「さすがにないだろう。外壁は登れない上、入口もこの通り」ガチャガチャ

若葉「仕方ない。次に行こう」


――――――――


提督「資材搬入倉庫……一応、番の者には聞いたが……」

若葉「たまに中の二階に隠れている時があるんだ。……いなかったが」

提督「そうか、そっちもダメだったか」

若葉「……」

提督「次、行くか」


――――――――


若葉「武道場の裏は鎮守府飼いの猫達のたまり場だ」

提督「何匹かいるが……ぶちに茶黒に灰色、どいつも違うな」

若葉「お前たち、黒いのを知らないか?」

猫「なーん」ブラ-ン

若葉「…………」

提督「……あのな、若葉」

若葉「次だ」


――――――――


若葉「昼時には間宮の甘味処に集う。必ず来るはずだ」

間宮「あら? 提督さんに若葉ちゃん?」

提督「間宮か。いつも猫の世話を任せてすまんな」

間宮「いえいえ。お二人は何かお食べに?」

若葉「違う。黒いのを探してる」

間宮「黒いの……?」

提督「黒い猫だ、ウチにいる。今日は……来てないな」

間宮「猫ちゃんたちは自分でご飯を済ませちゃうこともありますから……誰かが餌をあげたりとか」

若葉「……そうか」ザッ

間宮「……提督、あの」

提督「大丈夫だ。まぁ任せとけ」


2 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/11/08(火) 01:12:15 yGiqxVMM
――――――――


若葉「提督」

提督「なんだ?」

若葉「猫が住処を変えることはあるのか?」

提督「基本的にはない。猫は自分の縄張りより外を危険な場所と思ってるからな」

若葉「そうなのか?」

提督「住処の外を彷徨くこともままあるが、時間をかけてそこが安全だって覚えるまでは縄張りを広げたりもしないんだよ」

若葉「……ならば、きっと鎮守府のどこかにいるはずなんだ」

提督「やけに黒い猫を心配するんだな?」

若葉「うむ。何かの病気なら早く診せた方がいい」

ピピピッ

提督「明石か」ピッ

明石『提督ですか? 頼まれていた件なんですが――』

提督「――そうか。ありがとう」ピッ

若葉「なんだ?」

提督「猫を見つけた」

若葉「本当か!」

提督「鎮守府の端にある建物を覚えてるか?」

若葉「昔の鎮守府のことか?」

提督「それだ。さ、行くぞ」


3 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/11/08(火) 01:12:47 yGiqxVMM
――――――――


若葉「ホコリが溜まっているぞ」ギッ

提督「…………」ギッ

若葉「…………提督?」

提督「ここかな」

若葉「広さからすると、食堂かなにかだった場所か。こんな所に……!」

提督「……あれか」

スタスタ…

若葉「…………」ソッ

提督「…………」

若葉「……冷たいぞ」

提督「ああ」

若葉「動いていない」

提督「ああ」

若葉「目を開かない」

提督「ああ」

若葉「死んでいるのか」

提督「………………ああ」

若葉「そうか」

提督「………………」

若葉「………………………………そうか」

提督「…………猫は」

若葉「………………」

提督「猫は、誰かの目の前では死なない。死期を悟ると、寸前でどこか静かな場所を探してひっそりと息絶える」

若葉「………………」

提督「俺より十年も前からここにいた先輩だ。十五歳。猫としては十分に長生きした方だろう」

若葉「………………」

提督「若葉」

若葉「………………痛いぞ」

提督「………………」

若葉「心臓が……痛い……っ」ポロポロ

提督 ポンポン

若葉「っ……く………………! ……!」

提督「生きとし生けるもの、須らく死ぬ。こいつも、俺も、お前も、例外は無い」

提督「だからこそ、残った奴がちゃんと弔ってやらないとな。そいつが生きた証として、墓を建ててやらなくちゃな」

若葉「……っ」コクッ

提督「でもな、若葉」

若葉「…………?」グスッ

提督「確かに生きてる以上は誰しも死ぬんだが……猫はどうやら神様に好かれてるらしい」

提督「猫は死んだ後、あの世で新しい毛皮に着替えてこっちに戻ってくるんだと」

提督「だからまぁその……なんだ。黒か白か三毛か知らんがな、また戻ってくるさ」

若葉「…………ありがとう」

提督「ん。よし、そいつを運んでやろう」


4 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/11/08(火) 01:13:05 yGiqxVMM
……………………


提督「今日は過ごしやすい天気でラッキーだったな」

若葉「うむ」

提督「こういう天気だと昼飯も食べがいがあるってもんだ。そうだな……灯台のとこはどうだ?」

若葉「いいな」

提督「よっし」

スタスタ…

ドサッ

提督「はぁーあ、でもこの昼食ったらまた仕事かぁー」

若葉「では昼食を食べなければ仕事をしなくていいかも知れない」

提督「いやなんでだよ。ならねーよ」

ニャァ-ン

提督「うん?」

若葉「先客の猫が居たようだ。珍し――」

白靴下黒猫「にゃあ」

提督「こいつは……」

若葉「提督。私は鎮守府の猫でこの模様を見たことがない」

提督「俺もだ。出産だの野良だのも報告は受けてないな」

若葉「湧いて出たのか」

提督「まさか」

若葉「…………」ナデナデ

白靴下黒猫「にゃぅ」ゴロゴロ

提督「ほぉ」

若葉「……お前、本当は真っ黒なんじゃないか?」

白靴下黒猫「……」

若葉「……」

白靴下黒猫「みゃう」ノソッ

提督「…………行っちまったな。あっちは鎮守府の方なんだが……」

若葉「提督。もしあの猫が鎮守府に住み着いたら飼ってくれるか」

提督「いまさら一匹増えた所で問題あるまいよ」

若葉「――そうか」















ミャオォォォォ-ゥ……


5 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/11/08(火) 01:13:29 yGiqxVMM
ちょっとしたらば君の調子が悪いみたいでぶつ切りになっちゃいました


6 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/11/08(火) 01:15:58 zk7.X0fY
若葉スレ尊い


7 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/11/08(火) 04:58:16 CcFLJRDo
後のオスカーである


8 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/11/08(火) 07:56:39 U6tw2lj2
若葉スレすこ


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