若葉「同行したい」
提督「構わんが、珍しいな」
若葉「そんな時もあるんだ」
提督「そうかい。三十分後に出るから、また執務室に集合だ」
若葉「了解した」
――――
提督「なんか目ぼしいもんもなかったなぁ」
若葉「提督」
提督「なんだ？」
若葉「これ、買って貰ってよかったのか？」
提督「まーだ言ってんのか。あんだけ目ぇキラキラさせてたんだから欲しかったんだろ？」
若葉「うむ」
提督「じゃあ素直に貰っとけ」
若葉「ありが――」
主婦「きゃあああ！！ ひったくりよー！！」
提督「！！」
ひったくり犯「どけっ！」
女の子「きゃあっ！」ﾊﾞﾘｯ
若葉「！！」ｷｯ
ひったくり犯「てめぇもどきやが――」
ﾊﾞｼｯ
ひったくり犯「へっ……？」
若葉「シッ」ﾄﾞｽｯ!
ﾌﾞｵﾝｯ……ｺﾞｼｬｯ!
ひったくり犯「けぺっ」
提督「アホが」
提督（にしても足引っ掛けて転けるところに腹パンしてから身体を捻らせて四方投げとはえげつない……）
主婦「ああ、ありがとうございます！」
提督「奥さん、申し訳ありませんが警察が来るまでお待ちいただけますかね」
主婦「は、はい！」
女の子「ふえぇぇぇ！！」
提督（む、さっきぶつかられてた子か。怪我でもしてたか？）
若葉「大丈夫か？ どこか痛いか？」
女の子「ひっ、ぐすっ……うぇぇ……！」ﾌﾙﾌﾙ
若葉「……！ これは君のか？」ｽｯ
女の子「うっ、ひっく……」ｺｸｯ
若葉「そうか。ぶつかった拍子に落として踏んずけられてしまったんだな」
女の子「おかあさんが……ぐすっ、買ってくれて……ぅっ……」
若葉「大切なものだったんだな」
女の子「ずびっ」ｺｸｯ
若葉「これを」ｽｯ
女の子「ふぇ……？」
若葉「この綺麗なペンダントの代わりになるかはわからないが、可愛いアクセサリーだからきっと似合う」
女の子「……くれるの？」
若葉「ああ」ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ
女の子「！」
若葉「一人か？ 母親は？」
女の子「あ、あっちにいるの！ 私、おトイレに行くって……」
若葉「そうか。気をつけて戻るんだぞ。ペンダントがどうして無いのかもちゃんと説明しなきゃダメだ」
女の子「う、うんっ！」
若葉「ん」
女の子「あ、あのね、お名前おしえて？」
若葉「若葉だ」
女の子「若葉……わたし、――って言うの！」
若葉「いい名前だ」
女の子「ありがとう！ またね、わ……若葉お兄ちゃん！」ﾀｯﾀｯﾀｯ
提督「ナイスフォロー」
若葉「少しショックだ」
提督「いやなに男前な行動だったからしゃーない」
若葉「スカートだぞ」
提督「まぁまぁ。お手柄なんだから結果オーライっつーことで締めとこうや」
若葉「……わかった」
提督「よかったのか、あのアクセサリー」
若葉「いいんだ。物はまた買えばいい。提督と出掛ける口実もできた」
提督「ちゃっかりしてんなぁ」
若葉「提督は怒ってないのか？」
提督「なんでよ」
若葉「買ってもらった物をすぐにあげてしまった」
提督「気にしてんじゃねぇよ。お前の言った通り、また買えばいいんだから」ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ
若葉「ん……そうか」
提督「警察には一通り事情も話したし、ちょっとバタついたけど帰りますかね」
若葉「うむ」
提督「とりあえずお前には俺特製の勲章をやらなきゃなー。功労者らしく、なんかねだっていいぞ」
若葉「勲章は要らないから手を繋いでくれ」
提督「……はは」ｽｯ
若葉「ん」ｷﾞｭｯ
提督「来週あたりにまた日曜日が空いてんだよな……行くか？」
若葉「うむ」
提督「希望あるか？」
若葉「若葉はどこでも大丈夫だ。提督と一緒なら」
提督「そうかい」
若葉「……今日はカレーがいいな」
提督「鳳翔に頼むかー」
若葉「一緒に寝てほしい」
提督「いいぞー」
若葉「夜更かししよう」
提督「それは明日に響くからだめー」
若葉「じゃあ――」
ｽﾀｽﾀｽﾀ……
すき