若葉「上着の一つでも持ってきておくべきだった」ｽﾀｽﾀ
提督「俺も油断してたからな……チッ、よりによって出向した帰りにこれとはな」
若葉「大丈夫だ、提督。鎮守府まではあと小一時間。タクシーも拾うんだから平気だ」
提督「馬鹿言ってんじゃないぞお前。そんなに震えて……」
若葉「心配無よ――へくちっ」
提督「言わんこっちゃない」ﾊﾞｻｯ
若葉「な、なんだ？」
提督「俺のやつに間借りって形で不格好になるが、無いよりマシだ。無駄にでかい外套でよかったわ」
若葉「……すまない」
提督「気にすんな。慣れっこだ」
ｽﾀｽﾀ……
若葉「…………」
提督「悪いな、ほとんど被せてるだけみたいなもんだから歩きずらいだろ」
若葉「だが、暖かい」
提督「そうか。…………あ、若葉をおんぶして、その上から外套を羽織ればいいのか」
若葉「いい」
提督「なんでよ」
若葉「こういう時に背負ってもらうのは申し訳ない」
提督「なんだ今更。遠慮すんな」
若葉「違うんだ」
提督「なにが」
若葉「このままの方がいい」
提督「あん？」
若葉「提督に包まれてるみたいなんだ。だから、このままがいい」
提督「…………あ、そ。お前がそうしたいならそうしてくれ」
若葉「ん」ｷﾞｭｯ
提督「手ぇ握るくらいで勘弁してくれ。この状態で腕に抱きつかれるのは歩きずらい」
若葉「タクシーを拾うまでだ」
提督「拾わんよ。こんまま歩いて鎮守府まで戻る」
若葉「なぜだ？」
提督「察せ」
若葉「…………」ｷﾞｭｳｯ
提督「だから腕に抱きつくなと……はぁ、まぁいい。帰り着くまでだぞ」
若葉「ん」ｺｸｺｸ
提督「よし」
若葉「………………提督」
提督「どうした？」
若葉「暖かいぞ」
提督「それはさっきも聞いた」ｹﾀｹﾀ
若葉「くっくっ」
ｽﾀｽﾀｽﾀ……
素晴らしい