みほが好アシストするも、島田愛里寿のライバル心の前に惨敗だった
直ぐ隣から響く桃ちゃんの怒号、隣から聞こえる「西住、お前が何処かに転校しろ！」の声
喚きながら帰り始める生徒の中、今年のMVPみほは独りベンチで泣いていた
戦車道全国大会で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる副隊長・・・
それを今の大洗女子で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすればいいんだろう・・・」みほは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、みほははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなきゃ」みほは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、みほはふと気付いた
「あれ・・・？誰かが居る・・・？」
ベンチから飛び出した西住みほが目にしたのは、甲板まで埋めつくさんばかりのスカウト陣だった
千切れそうなほどに手が振られ、地鳴りのようにボコのうたが響いていた
どういうことか分からずに呆然とするみほの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「みほ、帰って練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った西住みほは目を疑った
「お・・・お姉ちゃん？」 「何よ副隊長、居眠りでもしてたの？」
「エリ・・・逸見さん？」 「なによまほ、勝手にみほを出戻りさせて」
「ケイさん・・・」 みほは半分パニックになりながらボードを見上げた
スカウトプレゼンテーション順番
１番：サンダース大付属 ２番：継続 ３番：アンツィオ ４番：黒森峰 ５番：プラウダ ６番：聖グロリアーナ ７番：秋山理髪店 ８番：島田流 ９番：茨城ボコクマーズ
暫時、唖然としていたみほだったが、全てを理解した時、もはや彼女の心には雲ひとつ無かった
「必要とされる・・・必要とされるんだ！」
秋山からハサミを受け取り、グラウンドへ全力疾走するみほ、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、号泣しながらみほにすがり付く桃ちゃんが発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った