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麻子「大洗の夏祭り?」

1 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 12:58:06 RIm0h7p6
八朔祭――それは夏の大洗町で行われる祭典の一つ

神事の一面もあるそれは、一般的には夏に定番の『お祭り』として皆から親しまれている伝統行事である

当然、祭りにはかかせない出店から神輿に至るまでが網羅されており、締めの花火は壮観と言う他ない

高校二年生の夏、大洗女子学園の生徒である冷泉麻子は、その話を聞いて一人考え込んでいた

麻子(そういえば去年は沙織が連れ出してくれたんだったか……)

麻子(ここ一年で、戦車道のお陰か知り合いも増えた)

麻子(せっかくなら、こっちから誰かを誘って祭りに行くのもアリだな)

祭りは夕刻から始まるのが常識

なれば、麻子の最も活発になれる時間帯と被る

少々上機嫌の麻子は、携帯のアドレスから>>4に電話した

(※祭りは実際の大洗の八朔祭とは違う描写があります)

(※祭りは三日行われるという予定です)

(※最終目的はありませんが、安価次第では……?)


2 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 13:24:40 RIm0h7p6
kskksk!
安価遠かったからね、仕方ないね(池沼)


3 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 13:26:34 KDslRlgQ
ヤダモー


4 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 13:26:53 Q0IMVpDk
ゲイリー・オールドマン


5 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 13:27:33 .yNTD1bk
みぽりん


6 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 13:29:35 f0IdUpk2
これはまた大物ですね…


7 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 13:29:46 9lzmTMAw
夏休みの人かな?
今回もがんばってくれよな〜たのむよ〜


8 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 13:32:10 R.bmxLCE
なんで面識というか親交あるんだよ…


9 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 13:42:16 RIm0h7p6
ゲイリー「ヘイ、麻子!」

麻子が携帯で夏祭りに誘った相手は、ゲイリー・オールドマンだった

ちょっと映画や海外の俳優について知っている人間ならば、一度は名前くらい聞いたことあるレベルには有名人である

あの世界的に有名なハリー・ポッターにも出演するほどの大物だ

どうしてそんな彼と麻子が知り合いなのかといえば、方向音痴のゲイリーが日本に旅行へ来て迷っていた所を、偶然通りかかった麻子が道案内をして助けたからだった

当時のゲイリーは数年連れ添ったアレクサンドロと別れた直後で傷心していたため、麻子の親切に痛く感謝して「お礼は必ずするよ」と連絡先を渡していたのだ

麻子「ギャリー、元気だったか?」

ゲイリー「まあ、そこそこかな。最近はちょっと腰が痛くて……俺も歳かもしれんな?」

麻子「去年のチャイルド44は名演だったと思うぞ」

ゲイリー「ありがとう麻子。そう言ってもらえるだけで嬉しいね」

ゲイリー「ところで今日はニッポンの夏祭りについてこいってことだったけど、俺でよかったのかい」

麻子「ああ。以前は滞在期間中に道に迷ったせいで殆ど楽しめなかったみたいだからな」

麻子「どうせなら日本らしい祭りを楽しんでもらいたいと思って、誘った」

ゲイリー「おお……やはり麻子は天使だったか」

麻子「……妙なお世辞はやめてくれ」

恥ずかしくなって顔を背けた麻子をゲイリーが軽快に笑い飛ばす

ともあれ、夏祭りの一日目はこうして幕を上げたのだった

――大洗町

ゲイリー「麻子、あの屋台というやつは何を出している店なんだ?」

麻子「あれは、>>11


10 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 13:45:11 0QHUxQHI
ダージリンのうなぎゼリー


11 : 豆狸 :2016/04/29(金) 13:47:22 ???
りんご飴


12 : 今の私は日本の高1で最強のつもりや :2016/04/29(金) 13:47:36 ???
干し芋パスタ


13 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 14:01:10 RIm0h7p6
麻子「あれはりんご飴の屋台だな」

ゲイリー「りんご飴……? りんご味の飴なのか? いや、飴がりんごのようになっているからりんご飴なのか……?」

麻子「これはりんごを丸ごと飴でコーティングしてあるんだ。すまない、二つくれ」

屋台のおばちゃん「はいよ! おっ、外国の方ー? じゃ、もう一本サービスね!」

おばちゃん特有のサービス精神で合計三本のりんご飴を手に入れた麻子は、一本をゲイリーに手渡すとすぐに自分の分を齧った

甘い。甘酸っぱい。そしてちょっと硬い

これこそがりんご飴だ。ただひたすらに美味しい

ゲイリー「ほぉ……おぉ〜」

ゲイリーはというと、初めて見るりんご飴に興奮しているのか食べる前に光に透かしてみたりして観察していた

そして、いい加減口をつけるとなんとも言えない恍惚の表情でうんうんと首を縦に振る

ゲイリー「美味い! 美味いぞこれは! 麻子、美味いぞ!」

麻子「どれだけ美味しかったんだ」

苦笑する麻子だったが、はて? と首を傾げてゲイリーに問うた

麻子「確か海外にもりんご飴はあったと思うんだが?」

ゲイリー「お祭りといったら情熱的なダンスと上質の酒だからね」

麻子「なんだそれは」

どうやらゲイリーは地元の祭りでこういった出店の品を食べたことはあまりないようだ

よくよく考えれば俳優として多くの社交界にも出るだろうし、こういった庶民の品から遠ざかっているのは想像に難くない

ゲイリー「ところで麻子、君が持ってる日本のりんご飴……片方は俺のじゃない?」

麻子「…………ちっ」

まんまとりんご飴二本を頂くつもりだったが、そうは問屋が卸さない

すっかりりんご飴にハマったゲイリーは、麻子から二本目の飴を回収すると、ほくほく顔でかぶりつくのだった

ゲイリー「まふぉ、あのやはいはなんら?」

麻子「食べるか喋るかどっちかにしろ。あれは……>>15だな」


14 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 14:18:21 RySsf9nY
武部殿


15 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 14:20:21 Y9cVF7TM
アンチョビオシッコティー


16 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 14:37:30 RIm0h7p6
麻子「あれは……? 飲み物か?」

屋台をぱっと見ても何を売っているかさっぱりわからなかった

緑と白と赤の三色が並んだテントの下では、よく見ればアンツィオ高校の制服を着た連中が商売をしているではないか

麻子「よう」

ペパロニ「お? あんたは大洗の!」

麻子「アンツィオはこんな所でも屋台を出すのか」

ペパロニ「いやいや、あんたんとこの生徒会長さんが屋台出してくれって言うから来たんすよ。ね、姐さん?」

アンチョビ「えっ!? あ、うん、そうだな。はは……」

麻子「?」

とにかくアンツィオの面々は生徒会長角谷杏の要請でこの祭りに屋台を出しているようである

並べられたペットボトルをしげしげと見つめるゲイリーに、カルパッチョが声をかけた

カルパッチョ「お一つどうですか?」

ゲイリー「うん、いや……これはビールか?」

ペパロニ「ああ、それは罰ゲームで姐さんが出した――」

アンチョビ「お茶だ!! ちょっと茶葉の原産地が特殊なお茶なんだ!!」

何故かペパロニの言葉に必死で被せてきたアンチョビは顔を真っ赤にしてペパロニの首根っこを掴むと奥へ引っ込んでしまった

そんなこともお構いなしにニコニコと佇むカルパッチョに、どうしてか背筋の震えた麻子はこの『お茶』を買うのをやめておくことにした

「珍しい茶葉を使ってるのなら飲む価値はあると思う」と言うゲイリーに無言で首を振る

終いにはゲイリーも渋々納得してくれたが、恐らく麻子の判断は間違っていなかっただろう

そうして日が完全に沈み切った頃、行き交う人々の間を縫って祭りを楽しむ二人に声をかけてきた人物が居た

>>18


17 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 14:41:38 1HNmt4jo
さおりん


18 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 14:41:44 MmQBrEOs
蝶野正洋


19 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 14:43:55 V7pHR.9A
ガルパン安価スレではほぼ毎回出てくる蝶野兄貴


20 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 14:59:18 RIm0h7p6
蝶野正洋「え゛ぇ゛ー、大洗の冷泉麻子ちゃんにゲイリー・オールドマンだとぉ? 夢でも見てんのかね俺ァ!」

麻子「!?」

人混みを裂く巨体がそんなことを言いながら近づいて来るものだから、麻子は驚いて思わずゲイリーの後ろに飛び退いてしまった

その拍子に躓きそうになった所を、ゲイリーが支えてくれる

ゲイリー「大丈夫かい」

麻子「あ、ありがとう」

蝶野「うおぉーすまねぇ! 驚かせちまったか!」

ゲイリー「んん。……おや、もしかして君はニッポンのブラックキング、ミスター蝶野か!?」

蝶野「イエス、イエース!! そういうあなたはゲイリー・オールドマンだろう、俳優の」

ゲイリー「その通り。いやしかしまさか、ここでレジェンドに会えるなんて……実は今度の福岡のスターダムはチケットを取ってあるんだ」

蝶野「見に来てくれるのか!!」

ゲイリー「勿論! 前々から君のファンだったんだよ!」

唐突な遭遇にも関わらず意気投合して盛り上がりだす二人に、麻子は流石についていけずに黙って事の成り行きを見守るしかない

しかも、大男二人が道でくっちゃべっていれば嫌でも目立つ

いつしか遠巻きに見ていた人々の中から、目敏い者は二人が有名人だと気づいて彼らの元に殺到した

観光客「蝶野正洋さんですよね!? ビンタしてください!!」

屋台のおばちゃん「アンタ海外の俳優さんじゃないの!! ウチのタコ焼き器にサインしてちょーだい!!」

人の渦に呑みこまれては堪らないと場を離れようとした麻子だったが、時既に遅し

女や男の荒波に呑まれて足元はおぼつかないし目の前は見えない

???「こっち!」

いっそ流れに身を任せようと麻子が脱出を諦めた時、誰かが彼女の手を引っ張って人並から離してくれた

>>22「大丈夫?」


21 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 15:03:48 6PSsoJEI
おケイさん


22 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 15:04:00 GQ6z0Hwo
武内P


23 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 15:04:26 g8AgNvkw
ハーマイオニー


24 : 今の私は日本の高1で最強のつもりや :2016/04/29(金) 15:07:26 ???
メンツが濃すぎィ!


25 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 15:15:36 RIm0h7p6
武内P「大丈夫、ですか?」

麻子「あ、ああ……ありがとう」

また大男だった。今日はつくづく縁がある

男い縁があるという意味では沙織が喜んだかもしれないが、残念なことに彼女はここにはいない

もしかすると会場には訪れているかもしれないが、この人の量では待ち合わせをしないと遭遇するのは難しいだろう

武内P「……あの」

麻子「怪我ならない。お陰様で」

武内P「いえ……私、こういう者なのです」

目の前の男が差し出してきたのは一枚の名刺

怪訝に思いながらもそれを受け取ると、そこには『株式会社346プロダクション シンデレラプロジェクトプロデューサー』と記してあるではないか

346といえば、今や765と双璧を成す一大アイドル事務所であり、大手と言っても過言ではない

そんな事務所のプロデューサーがこんな所でスカウト活動とは精が出る

武内P「貴方には、とても素晴らしい可能性が秘められていると感じました」

武内P「アイドルに、なりませんか」

麻子「>>27


26 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 15:17:12 8LOHYmt6
いやです……


27 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 15:21:01 g8AgNvkw
いきなり言われても困る


28 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 15:30:17 RIm0h7p6
麻子「いきなり言われても困る」

正直な感想であった

麻子としては数々のアイドルを抱える事務所の人間から「可能性がある」と告げられて嬉しい気持ちもあるが、話が急すぎる

武内P「それもそうですね。急な勧誘ですので……」

麻子「別に絶対に嫌というわけじゃない。考えさせてほしい。返事は必ずする」

武内P「本当ですか……! ありがとうございます!」

仕事柄なのだろう

自分より年下の少女に躊躇いなく頭を下げた彼は、「それでは」と身体に似合わない慎重な足取りでその場を去って行った

麻子(今日は随分と濃いな……)

たった一時間程度でこれなのだから、この先どうなるかわかったものではない

逸れてしまったゲイリーにはしばらく近づけないだろうから後で合流するとして、麻子は>>30へ向かった


29 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 15:35:02 MmQBrEOs
アクアワールド大洗


30 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 15:35:26 03E2a27k
ケーズ電気スタジアム水戸


31 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 15:43:42 RIm0h7p6
続きは十時過ぎになりまスゥゥゥゥ
ごめん……ごめんねやで……


32 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 23:18:35 RIm0h7p6
麻子「いくらなんでもこんな所まで来なくてよかったな……」

麻子は気分転換がてらに祭りの会場から離れたケーズ電気スタジアムまで来ていた

場所自体は大して離れていないので、戻ろうと思えばすぐに戻れる距離だ

スタジアムでは明かり灯され、歓声が夜空を覆っている

サッカーや陸上競技も行えるスタジアムなので、恐らく今夜もなんらかの競技があっているのだ

この辺りには水源池公園や植物園などもあり、休日には多くの家族連れや中高生などで賑わっている

>>34「あれ? あなたは……」


33 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 23:55:47 GuquMK3s
愛里寿ちゃん


34 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 23:56:19 dHZ3uErA
文科省眼鏡


35 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 23:56:41 JY7RZiOE
文科省メガネ


36 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/29(金) 23:57:52 WE0KFSBQ
Syamu_game


37 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 00:16:05 1CVw7k8M
役人「あなたは大洗の生徒の……戦車道の冷泉さんですね」

麻子「……まぁ、そうだが」

まさかこのタイミングでこんな人物と出会ってしまうとは

麻子としては、気分転換のはずがテンション急直下で大変よろしくない

何を隠そう、麻子の目の前にいる人物は大洗を廃校にしょうとした人間であるのだから当然とも言える

役人「やれやれ、高校生がこんな時間に一人で外出とは……親の顔が見てみたいものです」

麻子「…………………………親はいない」

役人「!! ……申し訳ない。今の言葉は忘れて下さい」

どうやら自分の失言に謝罪をできるくらいの人間であることを麻子は意外に感じた

国の重要ポストに就いているような人間は、こんな細かい事で謝りを入れるわけないという偏見があったからだ

役人「それはそれとして、若い女性がこんな夜中に一人とは感心しません」

役人「何か重要な要件でもない限りは早急に帰宅しなさい。夏だからと浮かれていては自分を見失います」

流石は文部科学省に勤めるだけのエリートというか

言う事は至って正論である。世間一般的に見れば

麻子「>>39


38 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 00:18:02 2HPBZkZQ
帰宅に付き添え


39 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 00:19:53 Bwg2PihE
屋台でなんか奢れ


40 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 00:38:21 1CVw7k8M
麻子「屋台でなんか奢れ」

役人「なんですって……?」

麻子「私は大洗の祭りの空気からちょっと離れたくてここに来ただけだ」

麻子「帰れというなら道中危なくないように『大人』が付くものだし、『子供』が祭りを楽しみにしているのなら相応の度量を見せるのが大人の役割だろう」

それを聞いた役人は渋い表情をしながらも、やれやれといった様子で麻子の隣へついた

役人「全く、最近の子供は口ばかり達者で困ります」

麻子「最近の大人は素直じゃないな」

役人「くっ……」

最早、麻子に舌戦では敵わぬと悟ったのだろう

役人は何も言わずに先を歩き出すとそれに麻子も続いた

――祭り会場

役人「歩くだけでこんなにかかるとは……」

時間的にはもう今日の祭りのギリギリと言っていいだろう

膝に手をついていた役人だったが、すぐに復帰を果たすと麻子に向かっていがみ散らす

役人「それで! 屋台で何を買えば納得していただけるんです」

麻子「>>42


41 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 00:39:52 acPsufYA
フル焼きそば!


42 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 00:41:39 IOT5g9UI
たこ焼き


43 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 01:08:23 1CVw7k8M
麻子「たこ焼き」

役人「はぁ……あ、そこのあなた! たこ焼きを一つ」

たこ焼き屋のおっちゃん「あいよ!!」

店じまい寸前だった屋台であったが、役人の注文に威勢よく答えるとあっという間に焼きたてのものを出してくれた

こうしてまんまとたこ焼きを手に入れた麻子はホクホク顔でたこ焼きを受け取ると、爪楊枝を手に取って踊る鰹節をつつく

初日とはいえ今日の祭りは終盤

人もまばらになっている会場周辺で落ち着いて食べる場所を探すのは簡単だった

麻子が海岸の防波堤に飛び乗って胡坐をかくと、「女の子がはしたない!」と役人の叱り声が飛ぶ

しょうがないので足を延ばして防波堤の向こうへぶら下げると、役人はため息をついて防波堤に背中を預けた

麻子「……一ついるか?」

役人「結構です」

しばらくそうして無言の間が続いたのだが、屋台が撤収しだした頃に役人がふと呟いた

役人「こうして波の音を聞くのはいつぶりでしょうか……」

麻子「私はほぼ毎日聞いている」

学園艦は広大とはいえ、端によったり早朝や夜中の静かな時間帯になれば波の音が多少は届く

麻子の返答に役人は一息つくと、愚痴とも皮肉とも取れる言葉を吐いた

役人「大人になると波の音なんて聞こえなくなりますよ」

それは単に忙しくて海の近辺を訪れても波の音を楽しむだけの精神的な余裕がなくなるということなのか

はたまた、海に来れるような時間を取ることができなくなると言っているのか

それとも学生の身でなくなった後は学園艦という子供の園から離れることになるということなのか

麻子「……言ってる意味がよくわからない」

役人「いいんですよ、それで。今のはただの独り言だと思ってください」

それ以上何かを言うつもりはないらしい

役人は腕時計を確認すると麻子に帰宅を促した

役人「もういいでしょう。ここから学園艦に出るフェリーも、もたもたしていたら最終便を逃してしまいます」

麻子「……ああ、ありがとう。ごちそうさま」

――一日目、終了


44 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 01:11:14 1CVw7k8M
――二日目、開始

麻子(昨日は奇妙な縁が繋がる一日だったな……)

麻子(今日は誰と行こうか)

夕刻。昨日と同じように誰かを誘って出ようと考えていた麻子が携帯を手にすると、>>46から連絡が入っていた


45 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 01:24:27 NBUqM1lA
ミッコ


46 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 01:24:48 Bwg2PihE
磯辺キャプテン


47 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 01:45:34 1CVw7k8M
麻子(キャプテンから連絡とは珍しい)

連絡を入れて来たのは大洗女子学園バレー部再興を目指すメンバーの一人にして、八九式中戦車を駆るアヒルさんチームの車長、磯部典子だった

同アヒルさんチームの面々からキャプテンと呼ばれ親しまれている典子に敬意を表し、他の戦車道履修生も彼女をキャプテンと呼ぶ

麻子もその一人だ

特に麻子は学園艦内で戦車を捜索する際に彼女らアヒルさんチームと行動を共にしていたので、他の面子よりかは親交も深い

まぁ操縦関連で積極的に質問をしてくる忍の方が交流が多いといえば多いのだが

ともかく、典子から届いたメールの内容を見てみると『一緒に祭りへアタックを決めましょう!!』とのことで、どうやらこちらを誘ってきているらしい

麻子(……行くか)

――祭り会場

典子「冷泉さーん! こっちこっち!」

待ち合わせ付近に行くと、既に待機していた典子が大きく手を振って迎えてくれた

私服の磯部典子という激レアな姿を見た麻子は、思わず冗談を口にしてしまう

麻子「キャプテンも服を着るんだな」

典子「祭りに練習着はちょっとね」

辺りを見るに典子は一人のようだった

麻子「しかしまぁ、どうして私を誘ったんだ?」

典子「>>49


48 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 03:06:35 KxXUL5.g
ほかのあんこうメンバーも誘った


49 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 05:16:37 GBuqm.D.
バレー部の勧誘も兼ねて


50 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 05:17:30 WOjD/lKA
思い出作り


51 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 11:45:12 1CVw7k8M
典子「バレー部の勧誘も兼ねてね!」

麻子「バレー部の勧誘って……私にか」

典子「もちろん!」

彼女が自分をバレー部へ勧誘するだなんて想定外の事だ

麻子は身長が平均に比べてかなり劣るので、バレーやバスケットのように低身長がネックになってしまう競技は不向きだと考えていた

無論、それらの競技は必ずしも身長のみで勝敗が決するわけではないが、ゲームメイクで他より不利になることは間違いない

麻子「こう言ってはなんだが、私がバレーをするには身長が……」

典子「そこは気合いと根性でカバー!!」

麻子「それができるのはキャプテンだけだ」

実を言うと、典子はバレー部一低身長なばかりか、麻子よりも身長が低い

そんな彼女がバレー部を引っ張っていけるのは、司令塔としての能力の高さだけではないはずだ

典子「バレーはチーム! 足りない部分は皆で補ってやってくんだよ!」

典子「わたしはアタックやブロックをするにはどうしても一歩足りない」

典子「でも、トスやレシーブ主体のリベロなら、そんな心配もない」

典子「戦車もそれぞれ役割があるでしょ? どんなことだって一人じゃ回し切れないから役割ってのがあるんだよ!」

典子の熱い言葉に、麻子も思わず「おぉ……」と唸った

戦車道でもそうだが、典子は基本的にやることに関して非常に情熱を注いでいる

その情熱は言葉にも表れるし、そうなると人の気持ちも揺り動く

麻子(彼女がキャプテンと呼ばれて慕われるわけだ)

典子「ね、どう? バレーやってみない?」

麻子「>>53


52 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 11:47:55 f5OP5gwk
考えておく


53 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 11:48:31 waf.Ytog
バレー部員のバレーボールを揉ませてくれるなら


54 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 11:49:18 ystLx3do
やってみたい


55 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 12:04:25 1CVw7k8M
麻子「バレー部員のバレーボールを揉ませてくれるなら」

典子「? そんなことでいいの?」

はい、と躊躇いなくどこからか取り出したバレーボールが手渡される

まさかのマイバレーボールだった

というか、それを常日頃持ち歩いているところに彼女のバレーへの入れ込みぶりが窺える

ちょっとした悪戯心や冗談のつもりふだったのだが、こうも純粋な表情でバレーボールを差し出されては揉むしかあるまい

麻子「………………」グニグニ

典子「………………」ニコニコ

ひとしきりモルテンの五号球を揉みしだいた麻子は、その様子を微笑みながら眺めていた典子へボールを返却して踵を返した

典子「冷泉さん?」

麻子「約束は約束だ。バレー部に入る」

典子「ホント!? よっし、戦力アップだー!! よろしくね、冷泉さん!」

麻子「ああ。それより、祭りに行こう――キャプテン」

典子「そうだね! 気合いだーっ!!」

とんとん拍子でバレー部への参加が決まった二日目

当初の目的である祭り会場へようやく入った二人が適当に散策をしていると、どうにも騒がしい場所があった

何が起こっていた? >>58


56 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 12:04:59 Z7LsQEp2
http://qq4q.biz/tBsQ


57 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 12:05:31 oxt.vdXw
パンツレスリング


58 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 12:05:55 Lh.8iHWM
ストリートファイト


59 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 12:20:59 1CVw7k8M
典子「なんかすごい人だかりが……」

麻子「待った」

祭り会場の一角。やけに人の密集している地点に典子が興味を示す

それに待ったをかけた麻子に、彼女は首を傾げた

麻子「もしかすると面倒事かもしれない。近寄らない方がいい」

催し物をしているにしては、周囲の人々の視線が微妙に違って見えたのだ

怒号や囃し立てる声が聞こえてくるあたり碌な事ではない

藪蛇になって巻き込まれてはたまらないのでなるべく避けるつもりでそう提案したのだが、典子はじーっと人混みを観察すると驚きの声を上げた

典子「あそこに居るの、>>60>>61だよ!」


60 : 妖怪画像貼ってけ :2016/04/30(土) 12:23:12 ???
文部省メガネ


61 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 12:23:48 Lh.8iHWM
戦車道連盟会長


62 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 12:23:58 f5OP5gwk
蝶野正洋


63 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 12:27:32 Lh.8iHWM
ア!会長じゃなくて理事長だった…(池沼)


64 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 12:51:17 1CVw7k8M
典子「あそこにいるの、あの役人さんと戦車道連盟の理事長だよ!?」

麻子「はぁ!?」

そんな馬鹿なことがあってたまるかと人混みに目をこらせば、とんでもないことに中央で激しい争いを繰り広げているのは文化省の役人と連盟の理事長だった

一体全体、どうしてこんな場所で組織のトップにあるまじき行為をしているのかと頭が痛くなる

と同時に、このままでは不味い、と麻子は意を決して人混みへ飛び込んだ

役人「あなたがそうやって甘いから他の人間が割を食う!」

理事長「そうやって自分の都合だけで生きているから、平気で他人を見捨てられるんでしょう!!」

役人「なに!?」

理事長「子供はね、大人に見捨てられちゃたまんないんですよ!!」

何が原因かは知らないが、両者ともに相当興奮していて周りが見えていない

麻子「キャプテン!」

典子「根性!!!!」

鎖骨に手刀を打ち込んだ理事長が、よろめいた役人へ間髪入れずに膝元へのローキックを繰り出す

抉り込むような右足が役人の膝を刈り取り、完全に体勢が崩れた彼へ理事長はとどめと言わんばかりに左腕のストレートを叩きこもうとした

――が、背後から典子に羽交い絞めにされて寸での所で拳が止まる

動きが止まった理事長に反撃に出ようとした役人の腕も麻子によって掴まれ、振り返った彼が彼女の顔を見た瞬間、その表情は驚愕に満ちた

役人「わ、わたしは……」

麻子「いい大人が子供みたいな事をして……」

がっくりと項垂れた役人が拳を下ろしたのを確認し、麻子は典子にハンドサインを出す

彼女はそれに頷くと、突然空を指さすと大声で叫んだ

典子「ああああぁぁぁぁー!!!! 空の月がバレーボールになってる!!!!」

それに釣られて視線の外れた群衆の隙をつき、二人は情けない大人を連れて祭りの会場からなんとか抜け出すことに成功するのだった――

――祭り会場 郊外

麻子「…………それで」

上がった息を整え腰を落ち着けた麻子は、先ほどから項垂れっぱなしの大人二人に向かってやや辛辣な言葉を投げた

麻子「偉い人がみんなの前で殴り合いをしないといけなかった理由はなんだ」

役人「……>>67


65 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 12:53:09 f5OP5gwk
大学選抜が大洗に負けたせい


66 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 13:08:44 FE8Ho5xY
削減予定の予算がこの様でヤバい


67 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 13:14:40 OIs0uofg
大洗女子学園が勝ったことで不幸になった人々もいるんですよ


68 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 13:47:46 1CVw7k8M
役人「…………大洗女子学園が勝ったことで不幸になった人々もいるんですよ」

理事長「っ!! だからどうして子供たちの前でそんな事を言えるんですかあなたは!!」

典子「お、落ち着いてください!」

流石の典子も普段のノリではいけないと悟ったらしく、努めて慎重に理事長を宥める

それにしても、騒動の理由が大洗が廃校を回避した事とはいえ、よくもまあ本人らを前にして口にできるものだと麻子は呆れかえった

どうやら詳しく話を聞くと、二人が祭りの会場で遭遇したのは単なる偶然らしく、当初は剣呑な空気でもなかったという

一度、廃校の騒動に見舞われた学園艦を見ておきたいと大洗に訪れた理事長は、今現在大洗が祭りを開催していることを知りついでに視察

一方、役人の方は偶には息抜きをしようと、昨日の件から大洗の祭りに目をつけここを訪れていたようだった

そこでたまたま遭遇した二人は、戦車道の話から学園艦の話へ、更には話題が大洗や廃校の事へ移ってしまいこの有様になってしまったとの事だ

社会では本音を剥き出しのままでは生きてゆけない

それは組織の中核に近ければ尚の事で、私事などは一切排除して組織に貢献しなければならないものだ

仕事上での対面でなかった二人は互いに言いたいことを小出しにしているうちにヒートアップしてしまい、ついには本音が漏れて殴り合いにまで発展したという、なんともお粗末な話だった

理事長「貴方たちに罪はないのです。本来ならば、大人は子供たちが不自由なく過ごせる場を作ってあげなくてはならない。それなのに、こちらの都合で幾度となく貴方たちに不便を……」

役人「まるで私どもが子供たちへ罪を被せているような言いがかりはやめていただきたい。何の理由があって、私が彼女らに廃校を言い渡さなければならなかったと思っているんですか」

理事長「ですからそれは――」

麻子「やめろ」

再び熱の籠りだした両名に麻子の静かな怒声が釘を刺す

役人「……申し訳ない」

理事長「……失礼した」

気まずい沈黙が辺りを包んだ

どうして彼らの仲裁を自分がしなければならないのだ、とため息をついた麻子は立ち上がる

麻子「ともかく、あんな場所で喧嘩は止めた方がよかった。大勢に目撃されて、私たち以外の大洗の生徒もいたかもしれない」

麻子「それに、下手な週刊誌なんかに見つかればまた余計な心労を増やすハメになる」

麻子「…………大人なら、もうちょっと周りをよく見てくれ」

それだけ告げて二人に背中を見せた麻子は、なんとも言えない表情の典子と共にその場を去るのだった

――祭り会場 入口

典子「……根性じゃどうにもならないこともあるね」

すっかり気分の落ち込んでいる典子にどう声をかけるか迷った麻子は、とりあえず出店で気分を変えようと彼女を連れて>>70の屋台に向かった


69 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 13:59:28 f5OP5gwk
鉄板焼


70 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 14:00:50 wicRbfEw
飛び上がるほど美味しいクレープ


71 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 14:01:03 FE8Ho5xY
サルミアッキ(継続高校経営)


72 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 14:25:25 1CVw7k8M
麻子「キャプテン、これを」

目に入ったクレープの屋台で二人分の注文をした麻子は、出て来た片方を典子へ渡すと適当な場所へ腰かけた

隣に座った典子は麻子から受け取ったクレープを齧ると、みるみるとその顔に笑顔が戻ってくる

典子「これ美味しい! 強烈なスパイク貰ったみたい!」

麻子「ん、美味い」

祭りの屋台が出してるとは思えないほど美味なクレープに舌鼓を打つ

八朔祭も折り返し地点。今日を終えれば明日が最後となる

なんとなく神輿を追いかける子供たちを眺めていると、ぽつりと典子が呟いた

典子「私たちも大人になったら、あんな風に鬱憤を溜めて過ごすようになっちゃうのかな」

普段の典子からは考えられないセンチな台詞だったが、あんなものを見せつけられてはしょうがない

麻子「みんながみんな、思い通りに過ごせるという事はない。どこかしらでそうなるだろう」

典子「…………」

麻子「でも、必ずしもそうなると限ったわけでもないんじゃないか?」

麻子「キャプテンみたいに、普段から元気な人が居ればこっちも元気をもらえるしな」

典子「冷泉さん……」

麻子「いつもの元気はどうした、キャプテン。そんなんじゃ強豪校のスパイクに打ち破られるぞ」

典子「はは、そうだね……うん」

典子「よし、根性おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

典子「気合い注入!!! 冷泉さん、あそこの金魚掬いにダブルクイックしよう!!!」

麻子「ああ、そうだな」

――二日目、終了


73 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 14:28:18 1CVw7k8M
三日目は殆ど安価取りません……(震え声)

三日目の展開について、よければこうした展開がいいとかいう意見を下さい、オナシャス!
それに合わせて展開を広げて三日目を書くゾ〜


74 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 18:44:04 IOT5g9UI
何かイベントがあるといいかも
ゲーム大会とかプロレス大会とか


75 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 19:04:02 GBuqm.D.
麻子が幸せならそれでいいです


76 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 20:23:38 1CVw7k8M
>>74
夏休みという大イベントを気にし過ぎて小イベントを見逃していた痛恨のミス
参考にさせていただく(きれぼし脳)

>>75
一部の隙もないレスに何も言えないゾ
なんで麻子が主役のSS少ないの……?


甘えてないで今から書いてくゾ


77 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 20:46:55 1CVw7k8M
――三日目、開始

沙織「麻子ー! こっちこっちー!」

祭りの最終日となるこの日は、昼頃からあんこうチームに招集が掛けられていた

なんでも沙織の提言で、みんなで祭りを回ろうという話になったらしい

昼食は採ってくるようにとのことだったのでそれを済ませ、麻子は集合場所の会場付近を訪れていた

既に麻子以外の四人は集まっており、四人が彼女を迎える

麻子「すまん、遅れた」

みほ「大丈夫です。わたしと優花里さんも今来たばかりでしたし」

麻子「そうか。ところで、なんでこんなに早く集めたんだ?」

号令者の沙織にそう訊ねると、不敵に笑った彼女は胸を張って「これ!」と自分を指さした

優花里「…………? ああ! 『私について来い』のハンドサインですね!」

沙織「ちがっ、いや、あながち間違いじゃないんだけど! そうじゃなくて!」

麻子「じゃあなんだ」

沙織「浴衣だよ!」

言われてみれば沙織は浴衣姿だった

華道の家元である華がこういう機会に余さず浴衣を着てくるのは当然として、沙織が浴衣というのも珍しい

ただ、祭りに行くのなら浴衣を着るのも自然な流れなのでそれ自体はなんら不自然ではないのだが

沙織「せっかくお祭りなのに女の子がおしゃれできるのを逃す手はないよ!?」

みほ「私たちも浴衣を着るということですか?」

沙織「そうだよみぽりん! みぽりんだって浴衣を着て今以上に可愛くなったら男の人に声かけられちゃうかもぉ」

みほ「あはは……そうかな?」

沙織「ゆかりんだってその苔の迷彩服も似合ってるけど、偶には女の子らしい恰好しなきゃ!」

優花里「これはデジタルフローラ迷彩です! 苔じゃありません!」

沙織「麻子は浴衣持ってたでしょ!?」

麻子「一人じゃ着にくくて面倒だった」

沙織「とにかくみんな浴衣着るの!!」

華「浴衣はわたくしのお家に沢山ありますから、皆さんが気に入ったものを着て頂いて構いません」

どうやら、沙織と華の二人は画策してみんなに浴衣を着せようと考えていたようだ

道理でこんなに集合時間が早いはずである

三人は沙織と華に引っ張られる形で五十鈴邸へと足を運ぶことになったのだ


78 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 20:51:09 Adr1y5pI
苔の迷彩は草


79 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 21:49:18 1CVw7k8M
華「どうですか?」

麻子「ん、少しキツイ」

華「少々きつめの方が後々緩みませんから」

華の実家を訪れた一行は早速着付けに移り、みほ、優花里、麻子の三名は各々が気に入った柄の浴衣を選んでいた

みほは橙色の祝花の柄を見事に着こなしており、控えめに言ってもどこぞのお嬢様と申し出ても過言ではない気品を放っている

優花里は紅色の昇り鯉の柄のものだが、彼女のハイな時のイメージとピッタリでよく似合っていた

そうして麻子が選んだのは、藍色の風車の柄が入った涼し気な一着

特別な理由があったわけではないが、無性に風車の柄と色合いに惹かれて一目でこれがいいと即決したのだ

沙織「ほらぁ! やっぱりみんな似合ってるじゃん!」

文句なのか称賛なのかイマイチわからないことを言いながら、沙織はそれぞれを写真に収める

みほ「あ、後でその写真下さい」

沙織「うん、みんなにもちゃんと送るからね!」

華「皆さん大変よろしいかと」

普段から着物を見慣れているはずの華がそう言うのならば間違いはないだろう

麻子は浴衣特有の足回りの悪さに苦戦しながらも、綺麗に整えられた浴衣姿に姿見の前で感心してしまった

麻子「馬子にも衣装だな」

華「あら、麻子さんは前々から綺麗でしたよ?」

沙織「そうだよ麻子。可愛いんだからもっとおしゃれしたらいいのに」

麻子「うぐ」

独り言のつもりが二人の耳に届いていたらしい

急激に恥ずかしくなった麻子は、赤くなった顔を伏せると二人に背を向けたのだった


80 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 22:10:25 1CVw7k8M
麻子「そ、それより、これからどう時間を潰すんだ。後三時間はあるぞ」

誤魔化すために話題を無理やり転換した麻子に苦笑する面々の横で、沙織が「あ!」と声を上げた

沙織「そうそう抽選会に行くから早めに集合したの」

麻子「抽選会?」

みほ「なんの抽選会?」

沙織「えっと、夏祭りの最終日には毎年恒例の『大洗町町長が選ぶ! 八朔祭納涼イベントin20XX』っていうのがあるみたいなんだけど……」

沙織「今年も町長さんが選んだイベントがお祭りの特設会場であるみたいだから、それの抽選会に行こうと思って」

優花里「あんこうチームのみんなで参加しようということですね!」

みほ「なるほど……」

大洗の八朔祭では毎年違った催しが最終日に行われる

それは景品の当たるビンゴ大会であったり、腕相撲大会であったり、ラムネ早飲みであったり……その年ごとに異なった内容のイベントが選ばれて開催されるのだ

何を開催するにしても、参加者は前準備として最終日の祭り会場で抽選会に出なくてはならない

思い出作りにはもってこいのイベントだった

麻子「それで、今年は何をやるんだ?」

沙織「>>82


81 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 22:14:03 GBuqm.D.
あんこう踊り


82 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 22:39:04 YYymF./s
プロレス


83 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/04/30(土) 23:04:39 1CVw7k8M
沙織「プロレス」

みほ「えっ」

華「えっ」

優花里「えっ」

麻子「えっ」

沙織「プロレス」

「「「「」」」」

閉口した

何かの冗談だろうと思ったが、沙織は念を押すように二回も告げたのだ

しかも、あろうことかイベントのポスターを四人の前へ出してきた

そこには間違いなく『本年度八朔祭最終日特別イベント・プロレス』と記されており、沙織の言葉が嘘でない事を証明している

優花里「えぇっと……仮に私たちが参加するとして、武部殿も……?」

沙織「うん! なんかプロレスできるくらい強い女の子なら、素敵な男性が現れるって!」

みほ「それは一体誰から……」

沙織「祭りの初日に会った大きな男の人がそう言ってたよ?」

麻子(ギャリーか蝶野さんだな……)

どっちかは知らないがとんでもないことを吹き込んでくれたものだ

華「あまり荒事はよろしくないのでは……」

沙織「大丈夫! 女の子には打撃技無しだし、決勝までは女性同士でしか当たらないんだって!」

麻子「そういう問題か?」

沙織「これも女子力アップのため! さぁ、みんな行くよー!!」


84 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 00:36:07 EA6NTQwA
――祭り会場 夕刻

麻子(本当にプロレスとはな……しかも、抽選会の会場にあんなに人がいたことに驚きだ)

沙織に押し切られるまま抽選会に参加したあんこうチームは、登録を済ませて抽選くじを引いた後に特設会場前で解散となった

互いにくじの番号を明かしておらず、トーナメント表に記された番号が誰であるかはわからない

男子の部、女子の部と別れており、それぞれの優勝者が良しとするならば男女でエキシビジョンマッチとなるようだ

特設会場の壁に大きく張り出されたトーナメント表を見る限り、四回勝てば優勝できる

しかしまぁ、これならば浴衣なんて着るべきではなかったと落胆してしまう

勝つにせよ負けるにせよ、華が貸し出してくれた浴衣を痛めてしまう可能性が高いのだ

かといって会場に浴衣で来てしまったので着替えもなく、この格好のまま試合に臨むしかない

麻子(許せ、五十鈴さん)

プロレスが始まる前に二時間ほど浴衣で祭りを楽しめたので良しとしよう

実況『それではァ〜! 女の子の部、第一試合!! 選手番号五番さん、選手番号一番さんの入場ォ〜!!』

そうこうしている内に第一試合が始まろうとしていた

選手番号五である麻子が舞台上に上がると、相対したのは>>87だった


85 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 00:36:38 EA6NTQwA
続きは明日ゾ


86 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 01:14:42 UECHv1Bc
おっつおっつ
安価ならケイ


87 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 01:17:12 PsxyB7gs
野獣先輩


88 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 01:34:56 1mfadm/o
野獣はどうみても失格でしょ......
>>86


89 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 01:47:30 ljyrPKh.
なぜ作者でもないのに勝手に指定を?


90 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 08:31:45 1mfadm/o
つい言ってしまったスマン


91 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 11:50:49 EA6NTQwA
熱くなるのはしょうがないゾ
でも雰囲気悪くなっちゃうからね、仲良くしてほしいゾ
まぁ任せてほしいゾ


92 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 11:51:17 EA6NTQwA
野獣先輩「おっすお願いしまーす」

麻子「」

初対面の人間に対してこういった感想を抱いてしまうのは非常によくないのだが、それでも麻子は相対する選手を「ほぼ男の女」としか思えなかった

服装はシャツと短パンで軽装なのだが、ガタイが良いせいで胸元は胸筋が服を押し上げてパツンパツンだし、処理をしてないのか足には毛が伸び放題

プロレスをやるのに不向きな浴衣を着ている麻子も大概ではある

それでも野獣のような見た目のせいで幾分かは自分の方がマシに思えるから不思議だ

実況『両者出揃いましたァー!! 第一試合、レディー……ファイトォー!!』

カーン!! と、勇ましいゴングが会場に響き渡る

特設会場中央リング。どちらも速攻は掛けずに、互いに相手の出方を窺っている状況だ

麻子(あの肉体だと中途半端な打撃技は通らないな……女子の部が打撃禁止で、むしろ助かったか)

麻子を二回りも三周りも上回る筋肉ダルマがチョップや張り手でもかまそうものなら、直撃を貰った時点で下手すれば一発KO

当たり所が良くても致命打は避けられないだろう

しかし、女子の部は打撃技禁止

となると、相手は己の肉体を活かせる拘束できる技を使用してくるはず

野獣「行きますよ……イクイク――ヌッ!」

相手は堂々とした立ちから腰を引いた体勢へ移行したかと思うと、次の瞬間にはその巨体が麻子の目の前に現れていた

ズドン!! という音が遅れて麻子の耳朶を叩き、反応し切れなかった彼女の首を野獣の蛇のような腕が捉える

麻子(コブラクロー……!!)

実況『ああっとォォォ!! 先制したのは選手番号一番の選手ゥ!! 相手の喉元をガッチリ抑え込むゥ!! これは厳しい!!』

麻子の軽い身体がそのまま持ち上げられる

状況的には開幕直後から圧倒的に不利になってしまったが、まだ麻子には逆転の手があった


93 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 12:20:36 EA6NTQwA
自分を持ち上げる野獣の腕の手首、その尺骨と橈骨がある部分を両手で思い切り握り潰す

麻子の全力の掌握に野獣の顔が苦痛に歪む

それもそうだ。いかに強靭な筋肉であろうが、骨に直接響くような部分を攻撃されては神経の痛みに身体は耐えられない

筋肉のヴェールは貧弱な麻子の握力でも簡単に引き剥がすことに成功し、緩んだ拘束から首の離れた麻子は、掴んだ腕をそのままに身体を浮かせて両足で相手の首周りに絡みついた

野獣「やりますねぇ!」

人一人分の全体重が乗っているにも関わらず平然としているのを本来ならば不幸だと嘆くべきかもしれない

だが、麻子にとっては不幸中の幸いだった

両手を手首から離し、今度は絡みついた両足を支点に相手に肩車をするような形で体勢を素早く変更した麻子に会場が沸き上がる

現在は野獣に対して麻子が逆体勢の肩車(野獣の顔が麻子の身体で隠れている)をしているようなもので、形勢的には逆転しているのだ

野獣「視界が潰されてる。真っ暗だってはっきりわかんだね」

ただ、このままでは野獣が麻子を無理やり引き剥がしにかかればあっという間に状況は元通りだ

麻子は一か八か、野獣の肩を滑らぬよう鷲掴みにして逆立ちをした

実況『選手番号五番ン!! ここで逆立ちィー!! まるで二人で一本の棒のようだァァァァー!!』

見る者が見ればどうして人の肩で逆立ちなんかと思うかもしれないが、身体に対して垂直になった分、体重が一点に集中して同じ重さでも途端に重量が増すのだ

麻子を片手で支えるほどの筋肉量があった野獣は、突然の体重移動にバランスを崩してしまう

麻子(このタイミングで――!!)

麻子は掴んでいる肩から手を離さぬように、身体を一気に野獣の手前へ傾けた

地面へ急落下した麻子とは対照的に、なんと野獣の身体が宙に浮かぶ

落下の勢いを利用して相手の身体を持ち上げた麻子は、その勢いが残っている間に相手の身体をなんとか持ち上げ切ると――

――そのまま、全体重をかけて頭から落とした

実況『す、垂直落下式ブレーンバスターだァァァァァァァァァッ!!?』

支点、力点、作用点……そして、相手の体重と重力すら利用した麻子の全力の一撃

リングが凹むほどの衝撃を受けた野獣は気絶してしまっていた

レフェリーが「ワン、ツー、スリー!」とカウントを取り、高々と麻子の手が挙げられる

実況『勝者!! 選手番号五番ンンン!!』

――第一回戦、終了

>>95 二回戦目の相手


94 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 12:39:10 kDuwWXT.
坂東まりも


95 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 12:43:29 38zHdjdc
蝶野


96 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 12:44:00 u6jtdVG.
吉田沙保里


97 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 14:35:53 EA6NTQwA
実況『さぁ、準々決勝に移っていきましょう!』

試合運びはどこもスムーズに行われているようで、気づけばすぐに初戦だった麻子の二回戦目が来ていた

最初の試合から強烈な相手だったので、戦々恐々として実況に導かれるままリングに上がった麻子は、自分の対戦相手に茫然としてしまった

蝶野(教官)「久しぶりね!」

麻子「教官……」

相手は大洗戦車道の教官、蝶野だった

教官と言っても彼女は最初以外ほとんどこちらに任せきりで、大会の会場で審判員としての彼女を見る方が多かった気もする

蝶野「そういえば、貴方たちにまだ直接言ってなかったわね……優勝おめでとう」

麻子「……どうも」

蝶野「でもこの試合は別よ! 全力で行くから!」

仮にも自衛官が全力などと不穏な言葉を口にしないでもらいたいものだ

なんせ女性といえども自衛隊所属。そこいらの格闘家以上に修練を積んでいるはず

そんな彼女に全力を出されたのでは、ただの女子高生である麻子は敵いようがない

実況『試合、開始ィィィィィィィ!!!!』

カーン! と高々に打ち鳴らされたゴングと同時に蝶野は速攻をかけてきた

予想はしていたことだが、それに身体が付いていったとしても相手は動体視力と運動能力で麻子を遥かに上回る

回避運動もむなしく組み付かれた麻子は、抵抗する間もなく足元を引っ掛けられて引き倒された

しかし、引き倒されたときに仰向けなのが功を奏した

素早く両足を挟むようにして覆いかぶさる蝶野のボディを締めあげる

実況『ボディシザーズ!! 先手を取ったはずが手痛いカウンターだ!!』

蝶野「甘いわね」

麻子「……!!」

麻子のあまっちょろい筋肉では締めるものも締められず、蝶野はケロっとした顔でホールド体勢を受けていた

しかも胴締めをそのままに体固めを行うものだから、早くもレフェリーがカウントを取り始めている

レフェリー「ワン!」

レフェリー「……ツー!」

麻子(もうだめか……)

レフェリー「ス――」

典子「まだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

蝶野「!?」

レフェリーがまさにカウントを終えようとしたその時、ロープを越えて飛び込んで来た典子が蝶野を引き剥がした

あろうことか、彼女の腰をがっちりホールドした典子はそのまま身体を持ち上げ――

ズドム!! と典子のジャーマンスープレックスが炸裂し、もろに喰らった蝶野は力なく腕を上げて呟いた

蝶野「伏兵か……してやられた、わね」

ガクリと倒れた蝶野にレフェリーがカウントを取る

レフェリー「ワン! ツー! スリー!!」

カンカンカンカーン! と高々になったゴングだったが、さすがの麻子もこれはいいのかと実況の様子を窺う

会場自体は乱入に大盛り上がりだがルール的にアウトなのではと素直に納得がいかない

実況『まさかまさかの展開ィィィィ!! 選手番号五番の助っ人が現れて逆転勝利ァァァァァ!!』

実況『あ、ちなみに助っ人は認められてますから問題ありません』

麻子「あっはい」

どうやらルール上助っ人が認められていたようだ

乱入してきた典子は笑顔で麻子にガッツポーズを決める

典子「根性と友情で勝利!!」

麻子「まぁ助かったが……」

どうにも釈然としない麻子だったが、ピンチに駆け付けてくれた典子の顔を見ているとそんな気持ちも些細な事だとかぶりを振った

麻子「いや、ありがとうキャプテン。助かった」

典子「また頼りにしてよね!」

――二回戦、終了

三回戦目の相手 >>99


98 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 15:16:25 kyBaYPCw
ノンナ


99 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/01(日) 15:22:00 leHGdO42
ペパロニ


100 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 00:57:18 1f18JteY
実況『さぁ準決勝です!! 熱い試合の数々に熱気もムンムンですねぇ!』

女子男子共に素人同士のプロレスとはいえ白熱した試合が多いようで、選手控室に居る間に実況のやかましい解説は留まることをしらなかった

そうこうしている内に、麻子の番がやってくる

ペパロニ「おっ」

相手は初日の屋台で会ったアンツィオ高校のペパロニだった

リングに上がった麻子に気さくな笑みで近寄ってきた彼女は、スポーツマンシップに則ってなのか握手を求めてくる

麻子「お前も好きモノだな、プロレスだなんて」

ペパロニ「出てるのにそれ言うんスか?」

麻子「それもそうか」

ペパロニ「ま、それに優勝賞品かかってるんで――」

カーン! と恒例のゴングが打ち鳴らされる

ペパロニ「――手段は問わないっす!!」

麻子(しまっ……!)

握手をしたのは最初からペパロニの狙い通りだったのだ

開始の合図と同時に麻子を振り回してロープへ投げたペパロニは腕を伸ばしてラリアットの体勢を取る

投げられた勢いを止める事の出来ない麻子は、ロープに跳ね飛ばされて攻撃体勢の彼女へ一直線だ

だが、足はどうにもならなくとも腕は間一髪で防御の姿勢を取ることに成功し、ペパロニのラリアットを防げる

――はずだった

実況『こ、これはァァァァァァァァァ!!?』

確かに麻子の咄嗟の防御は正面のペパロニの攻撃を防ぐことができた

しかし、〝真後ろのカルパッチョが繰り出したラリアット〟は防げなかったのだ

麻子「ぐっ……二人目……!!」

実況『クロスボンバー炸裂ゥゥゥゥゥゥゥゥ!! 乱入したもう一人によるサンドイッチプレスには小さな獅子も耐えられないッッ!!』

ペパロニ「悪いっすね」

カルパッチョ「手段を選ぶつもりもないものですから」

もろに首へのラリアットを食らった麻子は血管の急な圧迫から、立ち上がろうとするとふらついてしまって回復を待つしかない状況だ

二人はこれ幸いとばかりにへばる麻子を拘束しようと手を伸ばしたのだが……

ペパロニ「おっ――」

がくり、と視界が下がった

と思った次の瞬間には床を見つめていた

一連の流れに思考が付いて行かずに混乱するペパロニだったが、遅れて来た痛みに自分が膝を折られて投げられたのだと即座に飛び起きた

まさしくその通りで、ペパロニの背後から現れた人物が彼女の膝を付いて体勢を崩し、襟首を掴んで背負い投げをしたのだ

それを行った人物が――

ペパロニ「ね、姐さん!?」

アンツィオ高校戦車道のリーダー、アンチョビだった

どうして姐さんが、と困惑するペパロニにアンチョビは怒号を飛ばした

アンチョビ「数で押して良いのは戦車道だけだ! ルール上認められているとはいえ、二対一なんて卑怯だろう!!」

ペパロニ「で、でも……」

アンチョビ「お前だって逆の立場なら不公平に思うだろう!」

カルパッチョ「しかし、ルールで認められていることを活用するのは悪い事ではないのでは?」

アンチョビ「その通りだ。だから私も参加する……この冷泉麻子の助っ人としてな!!!」


101 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 01:33:18 1f18JteY
NGワードがわからぬ……


102 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 01:39:19 1f18JteY
一人置いてけぼりの麻子だったが、状況が好転したことに希望を見出すとわずかに口の端が吊り上がっていた

手を貸して立たせてくれたアンチョビは堂々と二人へ宣告して前へ立つ

麻子「チョビ子、お前面白いな」

アンチョビ「誰がチョビ子だ!! って無理するなよ、回復するまで時間は稼げるから」

麻子「もう大丈夫だ。それより、耳を貸せ」

一対二のままならわからなかったが、二対二ならば勝機はある

麻子は考えついた作戦をアンチョビに伝えると、彼女は一瞬呆けた後に面白い、と獰猛な笑みを見せた

ペパロニ「いかにドゥーチェといえど容赦しないっす」

カルパッチョ「覚悟してください、ドゥーチェ」


103 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 01:40:06 1f18JteY
じりじりと間合いを詰める二人に対し、先に動いたのは麻子だった

自分の方へ飛びかかって来た麻子を迎撃しようと身構えたカルパッチョは、それが悪手だと気づいてペパロニへ警告を飛ばす

カルパッチョ「ペパロニ!! ドゥーチェが……!?」

先手を取った麻子とタイミングを合わせてペパロニの方へ向かうアンチョビを視界に捉えた上での発言だった

しかし、アンチョビはそのままペパロニの正面を素通りしてしまったのだ

注意する方に気が向いて自分をおろそかにしたカルパッチョは麻子の膝撃ちを食らってしまい、ペパロニが彼女へしたようにロープへ振られてしまう

ロープで勢いよく跳ね返ったカルパッチョを避けた麻子の後ろに控えていたのは――同じくロープで勢いをつけて突進してくるアンチョビだった

アンチョビ「許せよ二人とも……!」

それは避けようもなく完璧なタイミングだった

走って来た勢いのままボディスラムのようにカルパッチョを抱えたアンチョビは、そのまま勢いを利用して大きく飛び上って後方に彼女を投げ飛ばしたのだ


104 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 02:00:10 1f18JteY
それに巻き込まれたペパロニともどもリングに倒れ込む

勝利のゴングに麻子とアンチョビの手が挙がった

実況『勝利したのは選手番号五番だァァァッ!!』


105 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 02:01:09 1f18JteY
――準決勝、終了

決勝の相手 >>107


106 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 02:02:28 1f18JteY
どうしようもないから小出しにして原因の文章見て文章変えたけどまたNGだったから大幅に削ったけど許してほしいゾ……


107 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 02:11:23 Wg1oQ4uA
井口裕香


108 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 02:37:10 1f18JteY
麻子「ついに決勝か……」

ここまで参加していた他のあんこうチームの面々との遭遇はなかった

となれば、決勝で誰かと当たる可能性は高い

顔に似合わず華が並み居る強敵を撃ち斃してリングの中央へ立っているのを想像してしまって麻子は震える

あるいは、さらっととんでもない事を言うことのあるみほが笑顔で自分を待っているかと思うと背筋も凍るようだ

実況『それでは参りましょう、決勝戦ンンン!!』

実況『赤コーナー、選手番号五番!! 大洗の眠れる獅子ィィィィ……冷泉麻子ォォ――!!』

うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!! という地響きのような歓声に思わず足もすくむ

中央へ向かう最中、知り合いが次々とエールを送って来た

みほ「麻子さんがんばれー!」

沙織「怪我しないようにねー!」

華「麻子さんならきっとやれます……!」

優花里「目指すは優勝ですよー!」

驚いたことにあんこうチームのメンバーは全員がどこかしらで敗退しているようだった

驚く間もなく実況が決勝まで上り詰めたもう一人を壇上へ現す

実況『青コーナー、選手番号一七番!! 変幻自在のゆるふわガールゥゥゥ……井口裕香ァァァァァァァァァッ!!』

麻子(誰だ)

どうやら決勝の相手はまったく見知らぬ人物と争うことになるらしい

どうせここまで来たのなら優勝した方が気持ちがいいというもの

気合いを入れた麻子は相対する女性を観察する

麻子(至って普通の女の人にしか見えん……)

井口「よろしくぴょん♪」

麻子「えっ」

カーン!!

突然飛び出た台詞に不意を突かれた瞬間、開戦のゴングが高らかと鳴った


109 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 03:00:24 1f18JteY
言動に惑わされてはいけない。相手は決勝まで来た強者なのだ

慎重に相手の出方を窺う事でタイミングを見計らって一気に攻勢へ出ようとした麻子だが、相手はろくに構えもせずに突っ立っているのでいまいちどう動けばよいかわからない

井口「ふっふっふっ、あなたの考え、丸わかり」

ふらふらしていたはずの相手が突如攻勢に討って出た

真正面から掴みかかってきたのを屈んで躱した麻子がチャンスとばかりに掴みにかかった――

井口「――トランス」

麻子「なっ!?」

なんと相手の髪の毛がまるで生き物のようにうねって麻子の身体を拘束したではないか

これにはさすがの麻子もお手上げだ

麻子(なんだこれは! 髪になにか仕込んでるのか!?)

井口「あらあら、怖くて声も出ませんかぁ?」

急に相手の髪が伸びてきて自分を掴まえたら誰でも怖さで立ちすくむに決まっている

麻子「お化けなんかよりよっぽどマシだ」

そう強がってはみたものの、現状麻子には成す術がない

絶体絶命の状況に今度はリング外から歓声が沸き上がった

麻子の助っ人 >>111


110 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 04:28:11 mp/LY7g6
神取忍


111 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 06:47:17 8d29BHWQ
キャプテン・ファズマ


112 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 12:33:16 1f18JteY
バシュゥン!! と緑色の閃光が飛来し、麻子を拘束する相手に着弾した

眩い輝きに目を細める麻子に、増援からの声がかかる

ファズマ「ここは私に任せてもらおうか」

麻子(誰だ……)

現れたのは全身を謎の甲冑のようなもので覆ったマント姿の女性のようだった

手にした物騒な銃が先ほどの閃光を発したものらしいが、見た目通り本物のビームやレーザーではない事を祈るばかりだ

井口「援軍なんて生意気かも」

相手がピンピンしているということは本物じゃない……はずなのだが、あれだけ派手な爆発と音だと本当にそうなのか疑わしくなる

いっそ麻子の存在はただのお膳立てで、この特撮じみた二人の一騎打ちが本筋のイベントだと思い込んだ方がいいくらいだ

ブラスターを構えて近づくファズマに対して毛先を変化させた井口が、それを矢のように刺突する

華麗な足運びでそれらを避けるファズマは、合間合間に銃撃を叩きこむがどれもが大したダメージになってはいないようだった

ついにはブラスターが弾かれてしまい、ピンチかと思いきや懐から飛び出た柄からはレーザーが伸び、剣となって井口の攻撃を防ぐ

麻子(ライトセイバー? まるで映画じゃないか)

井口「鎧袖一触よ」

ファズマ「フォースを知らぬ者め」

苛烈を極める剣戟の嵐だったが、両者の動きにも段々と慣れてくる

麻子はファズマが取り落としたブラスターを拾い上げると、井口の背中へ回り込むようにして移動する

それを逃すはずもなく攻撃しようとしてくるのだが、打ち合いの最中ファズマがそんな隙に甘えさせてくれるはずもなく、いくつもの髪の束が両断されてゆく

ファズマ「これで止めだ」

井口「甘いのよアンタァ!!」

ファズマ「なにぃ!?」

とどめに大ぶりな攻撃をしようとしたファズマの隙を、今度は井口が見事に差し込んでカウンターを決める

ザックリと甲冑を貫通した井口の槍と化した髪に血が滴る

井口「油断禁物だ」

麻子「お前がな」

後頭部に押し付けられた感覚に井口はハッとなって振り向いたがもう遅い

バシュゥン、と夜空に緑の光が瞬く

謎の甲冑姿の助っ人も倒れ、奇妙な髪の毛の女も倒れ

最後に立っていたのは麻子だった

実況『試合、終了オオオォォォォォォォォォォ!!』

実況『優勝、ンンンン冷泉、麻子オオォォォォォォッッ!!』

今日一番の歓声が会場と麻子を包み込む

麻子としてはかなり釈然としない決勝だったが、勝てば官軍、優勝は優勝なのだからとリングに転がる二人に頭を下げた

実況『早速ですがァ、優勝者には優勝賞品と副賞の授与がありまスゥゥゥゥゥゥ』

実況『えぇー、優勝者の冷泉麻子さん、どうぞお受け取り下さい!!』

優勝の余韻へ浸る間もなく別のスタッフが持ってきたのは>>112(優勝賞品)と>>113(副賞)だった


113 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 13:01:31 YYKgakGM
枕 兆花
http://www.makurano-mori.com/product/chouka/


114 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 13:22:33 1f18JteY
よく見たら安価自分で取ってたゾ(池沼)
>>113を優勝賞品
>>115を副賞にするゾ


115 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 13:33:15 qZpiTgCg
そど子


116 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 14:19:23 1f18JteY
実況『えぇー、まず優勝賞品から!』

実況『ヨーロッパでは伝統ある最高級寝具素材として扱われる馬毛、いわゆるお馬さんの体毛を使った贅沢な一品!』

実況『匠の丁寧な仕事によって最高の弾力、抜群の通気性、極上の寝心地を保証された超高級枕、兆花です!!』

おおおおぉぉ……!! と賞品が受け渡されるだけで再び歓声が広がった

実況『えぇー、そして副賞なんですが、えぇー……』

実況『本来ならば学園艦へのフリーパスなんですが、冷泉麻子選手は元々大洗学園艦の生徒さんですのでパスは持っていまして……』

実況『ですので、今回の副賞を用意して下さっていた大洗女子学園風紀委員、園みどり子さんが自らご奉仕して下さると』

そど子「ちょっとー!! そんなこと聞いてないわよー!!」

どこだらか飛んできた本人の声に重なるようにして実況がスタッフから渡されたメモを読み上げる

実況『えぇー、はい。これにつきましては大洗女子学園生徒会長の角谷杏さんの権限を持って、園みどり子さんへの辞令とするとのことでスゥゥゥゥ』

そど子「何よそれはー!!」

実況『というわけで賞品授与は以上となります!! 皆様、もう一度冷泉麻子選手への盛大な拍手をお願いいたします!!』

ワアァァァァ……、と大きな歓声に包まれる麻子は、目が合ったそど子ににやりと笑いかけると壇上を降りて会場を後にするのだった


117 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 14:39:28 1f18JteY
――祭り後 大洗学園艦行フェリー

麻子は手すりに掴まって海を眺めていた

たった三日間の祭りだったが、最初から最後まで想定外が続いた三日間だったと言えるだろう

海外の俳優と祭りを回るわプロレスラーとは会うわアイドルにスカウトされるわ

文科省の役人と戦車道連盟の理事長の喧嘩を仲裁する羽目にはなるし

終いにはプロレス大会に出て優勝までしてしまったのだ

麻子の常識を遥かに超えた手触りの枕を胸に抱え、彼女は眠気に誘われていた

そど子「ちょっと」

ここで寝ては不味いと意識を持ち直した時に声が掛けられる

振り返ればそこにいたのはそど子(副賞)だった

麻子「副賞だ」

そど子「だれがそど、副賞よ!!」

麻子「そど子とは言ってない」

そど子「わかってるわよ! 癖よ、癖!」

麻子「それで、そど子はわたしに何をしてくれるんだ?」

にやにやとしながらそど子をからかう為にそういった麻子だったのだが、対する彼女もニヤッとした笑みを浮かべるとなぜか麻子の肩をむんずと掴んだ

そど子「これから毎日私が家まであなたを起こしに行くわ」

麻子「!? こ、断るっ」

そど子「だって私は『ご奉仕』しなくちゃいけないみたいだし? だったら朝が苦手な冷泉さんの為に朝起こしてあげるのは奉仕になるわよね?」

なんということだ。そど子の目は本気で会った

せっかく最高の睡眠を提供してくれる枕が手に入ったというのに、これでは快眠どころか眠れない夜を過ごすことになる

そど子「訊いたわよ、あなたバレー部に入るんでしょ? だったら朝練もあるだろうし、早起きしなきゃね」

麻子「バレー部は廃部状態だから朝練なんて……」

そど子「そりゃそうだけど、放課後は戦車道やるから朝に練習しようって言って、磯部さんたちは毎日やってるわよ」

麻子「」

茫然自失とする麻子の背中を叩く者があった

その人物は麻子の様子を察してただ一言、「根性根性」とだけ言って去る

麻子「…………だ」

そど子「? 冷泉さん?」

満点の夜空に一人の悲鳴が木霊した

麻子「もう夏祭りはこりごりだああぁぁぁぁぁぁぁぁ……がくっ」

そど子「ちょ、冷泉さん!? こんな所で寝転ばないで!!」

こうして、麻子の奇妙な三日間は無事に終了したのだった


〈了〉


118 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 14:41:17 1f18JteY
今回も自分の計画性のなさからグダったので反省してマグロ漁にでるゾ
参加してくれた人も見てくれた人もありがとうゾ


119 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 17:16:01 BGdKWPlg
乙です 面白かったです
ここのNGワード分かりにくいからね仕方ないね(レ)


120 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 21:32:22 YYKgakGM
乙です。
麻子に枕あげられてうれしい


121 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 21:54:43 2KoLk7Gw
浴衣に照れる麻子が可愛かった(コナミ感)
あとプロレス


122 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/05/02(月) 22:07:19 gwgmnFz.
海外俳優とかレスラーが出てすごいと思った(小並感)


123 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/08/21(日) 23:22:47 MhQa5Ls2
八朔祭だったのであげます


124 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/10/15(土) 18:37:40 yU8EEUTc
今日は大洗で月見の会が開かれ、海から昇る月を背景に、巫女さんによる舞(大洗磯前神社)、地元郷土芸能の磯節披露などステージイベントのほか、けんちん汁やお団子の無料配布が行われたそうです。
ガルパンの世界でも月見の会で誰か舞を舞ったりするんでしょうかね?


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