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【ガルパンSS】黒森峰と落し物
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「はぁ、たまには陸もいいものね」
「そうですねエリカさん。私も久しぶりに実家に帰れてよかったです」
「それにしても人が多い……」
「学校や仕事帰りの人でいっぱいですから……それに、学園艦に戻る人も多いですし」
私たちは満員電車に揺られ、学園艦の最寄駅まで帰っていた。
なぜかというと、黒森峰の学園艦が熊本に寄港しているからだ。そのため、短い期間ではあるが各々実家に帰ったり、友人とショッピングなどをして久しぶりの陸地を楽しんでいた。
そのまま電車に乗ること数十分、目的の駅に着いた。扉が開いた瞬間、人々が一斉に電車を降り、私たちもその流れに乗る。
「あれ、本がない?」
電車を降りた時に後ろからそんな声が聞こえた気もするが、駅の喧騒に飲まれ、消えていってしまった。
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「次のバスまで少しあるわね。小梅、私お手洗いに行ってくるから、荷物を見ておいてもらえる?」
「いいですよ」
駅のバスターミナルにあるベンチに座って、学園艦行きの臨時バスとエリカさんを待つ。
ふと荷物の方を見ると、トートバッグの中に雑誌を入れるような少し大きめの紙袋が入っていた。
(こんなもの買ってましたっけ?)
今日一日、一緒に買い物に行っていたので大体何を買ったのかは把握していた。少なくとも、本は買っていなかったはずだ。戻ってきたら聞いてみよう。
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NaNじぇいの喧騒にこのスレが消えていいてしまわぬよう、私はここにageを残した
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「お待たせ、悪かったわね」
少ししてエリカさんが帰ってきた。
「お帰りなさい。あの、ちょっといいですか」
「どうしたの?」
「エリカさん、今日本とか買いましたっけ?」
「いや、買ってないわよ」
「じゃあ、そのバッグに入っている袋は……」
「えっ……あら、何かしらこれ?」
私に指摘され、トートバッグの中にある紙袋を手に取る。
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「なにかの拍子で入ったんですかね」
「袋が空いてる……何が入ってるのかしら」
そう言いながらガサゴソと袋を漁る。
「ちょっと、中を見るのはまずいんじゃ」
「届ける前に中身を確認しな……」
そこまで言ってエリカさんの動きが止まった。良く見ると顔が真っ赤になっている。
不思議に思い、私も袋の中を覗き込んだらその理由がわかった。
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「……わぁ」
袋の中には艶めかしいポーズを取った女性と、口に出すのも恥ずかしい煽り文句が表紙を飾っている本。要するに成年雑誌が入っていた。
「どうすんのよこれ……」
エリカさんはまさかの出来事に軽くパニックになっているようだ。
自分の荷物の中に、いつの間にかそんなものが入っていたのだから無理もない。
「交番あたりに届けるしかないでしょう……寮に持って帰るつもりですか、それ?」
「はぁ……行くしかないのね」
ついに覚悟を決めた私たちは、駅前にある交番へと歩き出した。
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「失礼します……」
扉を開け、私たちは交番の中に入る。
普段入ることが無い場所だけあって、思わず緊張してしまう。
「はい、どうされました?」
すると机の書類と向き合っていた若い婦警さんが来てくれたので、少し気が楽になった。
「あの、落し物を届けにきました」
「いつの間にか私のバッグの中に入ってしまったようで……」
「あっ、そうなんですか。では、確認しますので出していただけますか?」
おずおずと袋を渡すエリカさん。そして、婦警さんは受け取った袋の中を事務的に確認する。
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「あー、これは……あの、届ける前に中は見ました?」
「……はい」
気まずい沈黙が流れる。気を使ってくれているのが分かったので尚更応えた。
しかし、向こうも仕事なのでいつ、どこで紛れたのか心当たりはあるかなど、細かく尋ねられた。そして最後には拾得物件預り書なるものを受け取り、交番を後にしたが、何とも言えない疲労感を私たちは感じていた。
「疲れた……」
「奇遇ですね、私もです」
「まったく、人のバッグに入れてんじゃないわよ」
「ですよねぇ……それにバスも行っちゃいましたし、なんか散々です」
「何か飲みながら待つことにしましょう。今日は色々付き合ってもらって悪かったわね、なにか奢るわ」
「いいんですか?……じゃあ、コーヒーで」
「了解」
エリカさんは近くの自販機へと向かう。
ベンチで待ちながら見る夕日はとてもまぶしかった。
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その後、あの雑誌が持ち主の元へ帰ったのかは分からない。
ただ、どこの誰だか知らないが、あんな落し物はしないで欲しいと思った秋の日の出来事だった。
〜おわり〜
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>〜おわり〜
ほんとぉ?(期待)
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物足りない・・・物足りなくない?
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正にSS
すき
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G-menかと思った
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なんか深そうなタイトルだと思ったら文字そのまんまの内容で草
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あれ、本がない?(G-men休刊)
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【IFルート】失われしG-men
「あれ、本がない?」
電車で帰宅途中の男性がそう呟いた。他の乗客が降りた後、落ちていないかあたりを探してみたが見当たらないようだ。
(もしかすると、誰かの鞄に紛れ込んでしまったのかも……)
男性は記憶を辿ってみる。
心当たりがあるとすれば、隣に立っていた女子高生のトートバッグの中だろうか。
「はぁ〜、やってしまった」
男性がため息を漏らす。どちらかというと、落としたことの後悔よりも、申し訳ないという気持ちのほうが強いようだ。
(紛れてしまったものは仕方ない……せめて楽しんでもらおう)
あえて、そうポジティブに考えるようにした。
彼女に理解してもらえるかは分からなかったが。
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なぜだ、なぜこんなものが私のバッグの中に入っているのだ。
私、逸見エリカは狼狽していた。同級生の赤星小梅と街で買い物をして、黒森峰の寮に戻った後、自室で買ったものを整理していたら「あるもの」を見つけてしまったからだ。
表紙には「G-men」とプリントされ、筋骨隆々の「漢」が描かれているそれは、間違いなく男性同性愛者向けの成年雑誌であった。
(落ち着け、クールになるのよ私。ここで驚きのあまり大声を出してしまったら、騒ぎを聞きつけ人が来る。そうなったら、もう私はいろんな意味で終わるわ)
とにかく、一刻も早くこの本を処理しなければ。そう思った矢先、扉がノックされた。
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「エリカさーん。入ってもいいですかー?」
「え!?ちょ、ちょっと待ってなさい!」
ここで部屋に入れるのを断ったら逆に怪しまれるかもしれないと考えたため、そう返事をした。そして、私は慌ててG-menが入った袋をベッドの下に隠し、小梅を招き入れた。
「い、いらっしゃい。どうしたの?」
「いえ、ちょっとお話したいと思ったんですけど……どうかしました?」
「べ、別になんでもないわよ!」
「あの……エリカさん?なんか変ですよ。何をそんなに慌ててるんですか?」
まずい。動揺のあまり声が上ずってしまい、不自然ではないように部屋に入れたつもりが完全に逆効果だ。
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「別に慌ててなんてないわ!とりあえず座ってなさい、何か持ってくるから」
「あ、ありがとうございます」
少し強めに言ったのが効いたのか、小梅はそれ以上聞いてこなかった。
予期せぬ来訪者だったが、なんとか誤魔化してお帰りいただこう。私はそう思いながら部屋を出た。
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(一体どうしたんだろう?)
私は部屋の中でエリカさんの帰りを待つ間、ずっとそんなことを考えていた。
普段あそこまで慌てている様子を見ることはなかなか無い。しかし、いくら考えても答えは出なかった。
(考えても仕方ない、か)
クッションを抱きかかえながら、ふと寝転がってみると、あるものが目に入った。
(なんだろう、これ)
好奇心からか、私はベッドの下にある袋に手を伸ばしてしまった。
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「戻ったわよ」
「エリカさん……」
部屋に戻るなり、小梅は私のことを付け合せのミックスベジタブルを見るような目。いや、気の毒そうな目で見てきた。
二人の間に沈黙が流れる。
「……どうしたの、小梅?」
沈黙に耐えかねて私は口を開いた。
「ベッドの下にある……袋のことなんですが……」
見られた、見られてしまった。体中から気持ち悪い汗が吹き出し、頭が真っ白になった。
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「そう……見ちゃったのね」
「はい、悪いかなとは思ったんですが……つい」
終わった。そう思っていたが、どこか様子がおかしい。
小梅は顔を赤らめつつ、恥ずかしそうに体を揺すりながら私に質問してきた。
「エリカさん……もしかしてその……いやらしい本なんですか?」
「……え?」
何を言ってるんだこの子は、そのベッドの下にはG-menが……。
そこまで考えて気付いた。小梅はまだ袋の中身までは見ていないのだということに。
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「ええ、そうよ……」
嘘はついていない。
小梅、あながち間違ってはいないわ。ただ、あなたが想像しているものとは絶対違うと思うけど。
「そうですよね……エリカさんだって興味ありますよね……」
少なくとも、私はガチムチの男たちが盛り合うものに興味はない。
ただ、ここで否定してしまうとややこしい事態になりそうだったので黙っておいた。
女子高生がG-menを持っているのと普通の成年雑誌を持っているのには、雲泥の差があると思ったからだ。
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すると、小梅はおもむろに立ち上がった。
「やっぱり帰ります」
「え?あっ、うん」
「誰にも言いませんから大丈夫です。お邪魔しました」
そう言って、そそくさと部屋を出て行ってしまい、私一人だけが取り残された。
なんだろう。人として、何か大切なものを無くした気がする。
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その後、G-menを近くのコンビニのゴミ箱に入れ、無事に処理は完了した。
しかし、あの日以来、私と小梅の間には溝が出来てしまったので、それを修復するのにずいぶん苦労した。
あの本を落としたのがどこの誰だか分からないが、もし見つけたらアハトアハトをぶち込んでやる。
そう、心に決めたのだった。
〜IFルート おわり〜
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