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【ガルパンSS】黒森峰と飲むパン

1 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 22:27:54 Mglhu9Z2
午前の授業が終わり、黒森峰女学園の食堂は人でごった返していた。
少し耳を澄ませば「あの授業は難しい」だの、「お洒落なお店を見つけたから今度行こう」など、それぞれ仲の良いグループごとにまとまり、話に花を咲かせている。
対して私たち戦車道を履修している2年生。中でも戦車長クラスのグループは戦術論だとか今後の練習についてなど、ランチを食べながらなんとも堅い話題で話し合っていた。
そして、昼休みも残り少なくなる中、大体の話がついたところでエリカさんが同じテーブルにつく私たちに問いかける。

「以上が今後の方針だけど、何か質問はあるかしら?」

するとマウスの車長をしている同級生が手を挙げた。少々荒っぽいところもあるが、頼れる仲間だ。


2 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 22:29:15 Mglhu9Z2
「エリカ、一ついいか」
「どこか気になる点があるの?」
「いや、今後の方針自体には特に何も無い。これはエリカ個人に対する質問だ」
「私に?」

エリカさんは訝しげな視線を向ける。すると、その視線を向けられている本人は真面目な顔をしながら、その質問をエリカさんにぶつける。

「エリカ……お前、西住妹と仲直りできたのか?」
「……はぁ?」

かなり間抜けな声がエリカさんの口から漏れる。


3 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 22:30:54 Mglhu9Z2
「だってお前、さっき大洗のこと話してる時に『あの子』とか『大洗の隊長は』とかしか言ってなかったじゃん。昔みたいに『みほ』って呼ばないのかと思ってな」
「そういえばそうですね……」
「だよなぁ?」
「ちょっと小梅、あなたも何言ってるの!」

確かに彼女の言うとおりだ。みほさんが黒森峰にいた時はお互い下の名前で呼び合っていた。
多くの人が西住流家元の子、西住隊長の妹ということを理由に少し距離を置いていたが、エリカさんは違った。あくまで私たちと同じように、対等に接していた。
テーブルを囲んでいる他のメンバーも同じことを感じたのだろう。皆それぞれ相槌を打っている。
ちなみに、そのことを指摘されたエリカさんはというと顔を赤くしながら反論していた。


4 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 22:32:05 Mglhu9Z2
「別に私とあの子は仲がいいわけじゃ……」
「ほう?二人で夜遅くまで作戦立てたり、ピーマン嫌いのことを知ってるのにか?」
「ぐっ、なんであんたがそれ知ってんのよ!」
「前に小梅から聞いた」
「小梅!」

ついに怒りの矛先が私に向かってきた。さて、どう誤魔化そうか。
ちらりと見えた時計の時刻を確認しつつ、そんなことを考えていた。


5 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 22:33:06 Mglhu9Z2
「小梅、この後付き合いなさい」

練習後、愛車のパンターを整備していたら後ろから声を掛けられた。
そういえば、この前も隊長からも同じように話しかけられたなと思いながら、エリカさんに言葉を返す。

「なんですか、エリカさん」
「昼の事よ、忘れたとは言わせないわ」
「さぁ、なんのことでしょう?」
「あの時は時間がなくて誤魔化されたけど、練習が終わった後なら問題ないでしょう?」

少しおどけて答えてみるが、見逃してくれそうにはない。

「みほさんのことは別にいいじゃないですか。聞かれて困るようなことでもないですよ?」
「私は困るの!とにかく今日は飲むわよ!」
「はいはい、分かりました」

エリカさんの愚痴を聞くとなると、今夜は長い夜になりそうだ。


6 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 22:35:28 Mglhu9Z2
整備と明日の確認作業が終わった後、お店で黒森峰名物であるノンアルコールビールやおつまみを買って、私の部屋で飲むことになった。
「飲むパン」とも言われているこのビールを私たち黒森峰の生徒は愛してやまないでいる。とはいえ最初から飲める人は少なく、私自身初めて口にした時はあまりにも苦くて、何が美味しいのかよく分からなかった。しかし、馴れてくると独特の苦みとコクが好きになっていた。
そして、おつまみの他にエリカさんの愚痴も肴にしながらビールを飲む。

「私だってねぇ……このままじゃダメだってわかってるわよ」
「じゃあ、昔みたいに呼んであげればいいじゃないですか」
「言おうとしても、思ってもないこと言っちゃうんだから仕方ないじゃない……」

やれやれどうしたものか。この人の性格的に、素直に気持ちを伝えるというのは難しそうである。


7 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 22:36:58 Mglhu9Z2
「だいぶ時間がかかりそうですね」
「そうね……アルコールの力でも借りれば少しはマシになるかしら?」

空になったビール缶を眺めながら、エリカさんはつぶやく。

「20歳になるまで待つんですか」
「冗談よ、それまでにはケジメをつけるわ」
「本当に?」

いたずらっぽく笑いながら言ってみる。するとエリカさんもこちらにノってきた。


8 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 22:38:10 Mglhu9Z2
「ふーん?言うようになったじゃない、小梅」
「ええ、私だってエリカさんに言いたいことがあるんです」
「いいわよ、聞いてあげるわ。夜は始まったばかりなんだから」

言いたいことは沢山あるが、とりあえず何から言おうか。本日3本目のビールを開けて、私は思考を巡らせる。
エリカさんが言うように、夜は始まったばかりなのだから。

〜おわり〜


9 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 22:47:17 L9eNhPsA
貴重なほのぼのエリカいいゾ〜これ
小梅もありがたい


10 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 22:50:35 ZhUvr396
雰囲気がいいゾ〜これ


11 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 22:52:22 QBqce77s
ドイツ風の肴と言ったらプレッツェルですね


12 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 22:57:53 9ewyXSQw
黒森峰モブSSいいぞ〜コレ


13 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 23:01:43 r.ZSDoYg
公式は小梅ちゃん以外の車長の名前も公開するんだよ、あくしろよ


14 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/10(水) 23:03:05 qJKOkaY.
エリカの無愛想なイメージがどんどん崩されていきますよ!


15 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/11(木) 00:50:09 ff7x6m8w
ええぞええぞ!


16 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/11(木) 09:38:11 SAPFtdEY
これはいいですね!


17 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/11(木) 10:24:05 w0YtjLvI
ナイスでーす


18 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/02/12(金) 11:32:25 JeDuBcm2
エリカはあんまりお酒に強くなさそう


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