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【SS】武内P「一時的ですが、クローネの担当になりました」

1 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 01:46:53 a1ziH4UE
注意

地の文あり(三人称)
ちょっとした下ネタ要素あり
多大なるキャラ崩壊あり←【重要】

これの続き的な

【SS】武内P「過度なスキンシップは駄目です」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20196/1449681230/l50


2 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 01:48:40 a1ziH4UE
【プロローグ:未遂】



『渋谷凛、新田美波、アナスタシア、多田李衣菜、島村卯月、以上の5名を一週間の謹慎処分に処す』

プロデューサーは掲示板にデカデカと貼られているそれを見て、嘆息してしまった。
彼女たちがなぜ、謹慎処分を受けたのかを他の人々は知らない。
知っているのは、CPのメンバーと、そして被害者である彼だけである。
さて、名を挙げられた彼女たちが何をしたかと言えば、彼に睡眠薬を盛ったのだ。
宅飲みの約束をしていた片桐早苗、川島瑞樹、高垣楓がドアを蹴破って入ってこなければ、プロデューサーの貞操は危なかっただろう。

「はぁ……何でこんなことに」

彼は思わず顔を顰め、再びため息を吐く。
最近、妙にスキンシップが激しいと思っていたら、まさかそういう対象として見られていたなどとは思いもしなかった。

――私はこれから、彼女たちとどのように接すればいいのでしょうか。


3 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 01:49:58 a1ziH4UE
プロデューサーはそう思い悩み、呆然と掲示板を見ていると、肩に手を置かれ
た。
彼が背後へと視線を向けると、そこには一人の男性が立っている。
その姿には見覚えがあり、確か彼は佐久間まゆが所属している部署のプロデューサーだったはずだ。

「お前も難儀だよなぁ。俺もまゆで色々と大変だけど、薬は盛られたことは無いぜ?」
「……佐久間さんもそこまでしませんか」
「まぁ、たまに作ってきてくれる弁当とかに髪の毛が混じってたりするけどな。あれは料理を作っている過程でのミスだと思いたい」
「ミスと思った方が可愛げがあると思います」
「そうだよなぁ」

まゆのプロデューサーはそう言って、遠くの方を見つめる。
きっと彼の心情は自分と同じだろうとプロデューサーは思った。

「お互い、大変ですね」
「そうだなぁ。もうそろそろ、俺たちも合コンでも開いて結婚相手とか探せば、諦めてくれたりする――」

瞬間だった。

プロデューサーは自分の背後から凄まじい殺気のようなものを感じ取ったのだ。
どす黒く粘着質で、口の中で転がそうと思えば味覚が壊れそうな、そんな殺気。

「プロデューサーさぁん」

その甘く耳に掛かる声には、聞き覚えがある。
それは……先ほど話題に出した佐久間まゆ本人だったのだから。

「ま、まゆ!?」
「プロデューサーさんは、私を置いていったりしませんよね……?」
「違うんだ!! まゆ!! ちょっと待ってくれ!!」
「ずっと一緒だって……まゆとプロデューサーさんの小指には……赤いリボンで繋がってるんですよぉ!!」

「まゆ、ちょっと――」

「ふっ」

まゆは静止する彼の言葉を聞かずに、かなりの速度で一歩踏み込み、そして鳩尾へ鋭いパンチを繰り出した。

「ガハッ」

彼は衝撃を逃すことも出来ず、その拳をまともに喰らい、地へと伏せた。
白目を向いてピクピクとしているところから、どうやら彼は気絶したようだ。


4 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 01:50:41 a1ziH4UE
そんな彼を、まゆは軽々と持ち上げ、立ち去ろうし、何かの気紛れかこちらへと振り返った。

「どうも、こんにちわ。いつもこの人がお世話になってます」
「こ、こんにちわ、佐久間さん」
「そう言えば、美城常務があなたのことをお呼びしていましたよ?」
「は、はい」

彼女は言いたいことを言い終えたのだろう。
こちらへ向けていた首を、前へと向けそのまま立ち去ってしまった。

「……彼と私、どちらが恵まれているのでしょうか。……どんぐりの背比べみたいなものになりそうですね」

なんて考えてみた。
それはともかく、先ほどまゆは美城常務が自分を呼んでいたと言ったはずだ。

……十中八九、あの五人のことだろう。

「どんなことを言われるのでしょうか?」

気が重くなり、胃がキリキリと痛み出すが、逃げ出すことも出来ない。
……頑張ろう。
プロデューサーは手を強く握って、その胸に秘めたる熱い想いを確かめた。


5 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 01:57:19 a1ziH4UE



状況を整理しよう。

まず、プロデューサーはまゆに言われた通り、常務がいる部屋へと赴いた。
彼の胃はかなりキリキリとしていたし、緊張からか呼吸が浅いのも自覚できた。
ただ、そのプレッシャーに負けないように、プロデューサーは歩く。
そして、彼女がいるであろう根城の前へと到着した。
いつも訪れるよりも大きく、そして荘厳に見えるその扉に近付き、彼は三回ノックする。

すると「入っていいぞ」という声が扉の向こう側から聞こえた。

プロデューサーは少しだけ口の中に溜まった唾を飲み込み、そしてドアを開けると……。

「やっほー、お、あの時のシンデレラプロジェクトのプロデューサーじゃない?」
「あ、本当だっ。やっほー、生八つ橋食べる? ここに無いけど」
「……やっと来たな」

ドアから先の光景。

それは宮本フレデリカがチュッパチャップスを美城常務の頭にデコレーションをし、デスクの脇に座って塩見周子はあんぱんを頬張っていた。

「これは一体」

自由奔放な二人に唖然としていると、美城常務が一言。

「私がお前をここに呼び出したのは他でもない。プロジェクトクローネの一時的なプロデュースを頼みたいと思ってな」
「……はい?」

「お、この大男君がアタシのことをプロデュースするの〜? ねぇねぇ、マカロンとか好き? アタシはそこそこ好きだなぁ」
「あんぱんいる?」

美城常務の発言に今日で幾度目か、言葉を失う彼が見えていないのか、プロジェクトクローネに所属している二人のアイドルは、そんな彼を質問攻めにする。
そんなプロデューサーを見て、美城常務が一言。

「頑張ってくれ給え。これは決定事項だ」

そこには議論の余地もない、確固たる意志が垣間見えたような気がした。

「し、しかし、私にはシンデレラプロジェクトが……」
「うるさい。クローネの面倒を見てくれるのであれば、五人の処分も謹慎以上のことはしないと約束しよう」
「そ、それは本当ですか……っ」
「あぁ、本当だ。それにシンデレラプロジェクトのことも安心してくれ。彼女たちには優秀な君の代理を付けよう。というか、お願いだ。プロジェクトクローネの代理をしてくれ。もう、駄目なんだ。最近、新たなプロジェクトが発足してきている。私も、アイドル部門だけではなく映画部門、モデル部門の仕事もしなければいけない。なのに、多忙な私の下にこいつらがやってきて、私の集中力を紛らわす。これじゃ仕事もままならない。だから、お前に任せることにした」

何だか、その妙に切羽詰まった言葉と、濃い疲労が浮き出た表情に、プロデューサーはただただ頷くことしか出来なかった。


6 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 02:01:09 a1ziH4UE



「というわけで、今日から一週間限定ですけれども、プロジェクトクローネの担当となりました。よろしくお願いします」

プロデューサーはそう言って、彼の性格をよく表している深々とした礼をする。
彼が今いるのは、プロジェクトクローネのプロジェクトルームだ。
本社ビルの高い階層に位置しており、そこはやはり常務が企画しただけあって内装も立派であった。
そして、彼の目の前には8名の少女たちが、彼のことを物珍しげに眺めていた。

宮本フレデリカ

塩見周子

橘ありす

速水奏

鷺沢文香

神谷奈緒

北条加蓮

ここにいるのは7名であるが、現在謹慎処分である凛とアナスタシア、それに何故かここにいない大槻唯を含めれば、10名となる。

「ふっひゃー、改めて見るとちょっとデカイねぇ。カントリーフレンチバスケット? ん? あれって大っきかったっけ?」

と、フレデリカがプロデューサーに近づいて、腕などをトントンと叩く。

「本当だよねぇ。ねぇ、昔から牛乳とか飲んでた?」
「あ、いえ、別にそのようなものを意識したことはありません」
「そうだよねぇ」

今度は周子の質問に答えたら、まるで最初からどうでもよいという返答を受けてしまった。
どんな反応をすれば最適だったか分からないプロデューサーは、困ってしまい、首に手を当ててしまう。


7 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 02:05:24 a1ziH4UE
「ちょっと、フレデリカさんに周子さんっ。困ってるじゃないですか」

と、そんな二人を見かねたありすが、そうやってフレデリカと周子を注意する。

「そうよ。ちょっと彼はちょっと不器用なんだから、手加減してあげないとね」

そして、奏も戸惑っているプロデューサーに苦笑しながら、そのように言った。

「ふっふー、このフレちゃんと話すにはないんどが高かったみたいだね。ん? ないんどだっけ、なんいどだっけ?」
「ないんどじゃない? あ、でもこれって9度になっちゃうね」
「なんでなんでー?」
「ないんで9。だから9度」
「おぉー、周子ちゃん天才!!」
「私、天才? いぇーい」
「いぇーい♪」

話の脱線の仕方が凄い、とプロデューサーは何とも楽しげに中身の無い話を繰り広げる周子とフレデリカに、そう思った。

「すみません。あの二人はいっつもあんな感じで」

と、脇からありすがそう謝ってきた。
顔の表情から察するに、本当に申し訳ないと思っているようだった。
しかし、困ってはいるけれど、プロデューサーはそこまで気を悪くしているわけではない。

「大丈夫です」
「そうですか?」

怪訝そうな表情で聞き返すありすに、「はい」と頷き返す。

ありすは納得はいってないようだったが「それだったらいいのですけど」と渋々自分の中で折り合いをつけたようだった。

「こんにちわ。まさか、アンタが来るなんて思わなかったよ」

微笑ましげな視線でありすを見ていると、そう声を掛けられた。
振り向いてみると、そこにいたのは加蓮だ。
そして、彼女の隣にはもじもじと話しかけ辛そうな奈緒がこちらに視線を向けては、目を反らすという行為を繰り返している。


8 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 02:06:42 a1ziH4UE
「こんにちわ、北条さん。いつも渋谷さんがお世話になっています」
「ふふっ、大丈夫大丈夫。どっちかっていうと、アンタの方が凛に迷惑をかけられたんじゃない?」
「……それは」
「まぁ、心中はお察しするけど、悪い奴じゃないんだよ? 凛をスカウトしたアンタだったらわかってるかもしれないけど」

それは重々わかっているつもりだった。

「確かに渋谷さんは根は真面目で素直だと、私は思っています。今回の件で、私との距離感を考えてくださればいいのですが……」
「大丈夫だよ。学習しないほど頭が悪いわけじゃないんだから」
「そう、ですね」
「ふふっ、凛はアンタのこと不器用だとか言ってたけど、確かに不器用そうだね。……ホラ、奈緒も挨拶しなよ」

加蓮はそう言って、隣でもじもじとしている奈緒の背中を押した。

「おぉっ」と驚いたように、プロデューサーの前に出てくる奈緒。

「あ、危ないだろっ!!」
「一向に前に出てこない奈緒が悪いんでしょ。ホラ、早く挨拶したら?」
「うぅ、それはそうだけど……。え、えぇと、よ、よろし……く」

文句を言いながらも、気が進まないように挨拶をする奈緒を見て彼は思った。
もしかしたら、彼女は自分の容姿に怖がっているのではないか、と。
最近、シンデレラプロジェクトの彼女たちと接してきて忘れがちであるが、自分は少女と歩いているだけで通報をされてしまうほどの不審者顔なのである。
そんな自分に、目の前の少女が拒絶しても、仕方がない。

「その、神谷さん。すみません」
「え、えっ。ちょっとなんで謝るんだよ!!」

いきなり謝罪をする彼に、奈緒は戸惑ったようにそう問いかける。

「……神谷さんは、その、私の姿に、恐れを抱いているのではないか、と」
「そ、そんなことあるわけないだろ!!」
「では、何故、北条さんの後ろに隠れたりしていたのでしょうか?」
「そ、それは……」
「それは、奈緒が恥ずかしがってたからだよね〜」
「か、加蓮!! そ、そんなことないぞ!! と、とにかく、あたしは顔を怖いとか思って無いから!! 加蓮、待てっ!!」


9 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 02:07:24 a1ziH4UE
そう言い捨てるように言った奈緒は、からかった加蓮を睨み、掴みかかろうとする。
加蓮はそれを慣れた足取りで避け、「ほーら、こっちだよ」なんて煽るものだから「加蓮っ!! 待て!!」なんて二人で追いかけっこを始めてしまった。
喧嘩するほど仲が良い、ということなのだろう。
しかし、彼女が自分の顔に対してマイナスな感情を持っていなくて良かったとプロデューサーは心底感じていた。

ホッと胸を撫で下ろしていると、「あの……」と小さな声を掛けられた。

振り向いてみると、そこには文香がいつものように本を脇に抱えて立っていた。

「鷺沢さん、こんにちわ。あれから体調のほどはいかがでしょう?」

あれ、とは文香が倒れたオータムライブでのことであり、あの時彼は城ヶ崎莉嘉、赤城みりあ、白坂小梅と一緒に文香の見舞いに行こうとした。
しかし、結局それが出来なかったので、こうやって改めて体調を確認している次第であった。

文香は彼の質問に、少しだけ微笑んで答えた。

「大丈夫です。……今でも、ライブの直前は、緊張で胃が痛くなってしまいますが……倒れる、と言ったほどではありません」
「それはよかったです」
「それに……私も、お礼を言おうと、思っていましたので」
「……何故、でしょうか?」
「私が倒れた時に、色々と手を回して下さったと聞いて……。それに、お見舞いにも、来てくれたんですよね……。でしたらと、思っていました」
「別に、礼など……。プロデューサーとして、当然のことをしたまでです」
「部署が違うのに、ですか?」
「はい。同じ会社にいる者同士、助け合うのが、世の常というものです」
「……ふふっ。何だか、渋谷さんが、よくあなたの話をする理由が、なんとなく、わかったような気がします」

と言ってから、改めて文香はプロデューサーに感謝の念を伝えた。

「ありがとうございました」


10 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 02:08:06 a1ziH4UE
ここまでしてくれているのに、この言葉を謙遜するのは失礼だろう。
そう思ったプロデューサーは、素直に「どういたしまして」と返す。
文香はそんな彼に、再び笑い掛けた。
さて、そんなこんなで始まった彼女たちとの期間限定のプロデュース。

因みに、大槻唯は飴の買い出しにいっていたのでいなかった。

最近は龍角散に嵌ってるようだ。


11 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 02:10:25 FXkqln/g
もう始まっている!


12 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 02:12:04 a1ziH4UE
すみませんが、今日は、ここまで、です
プロジェクトクローネとの絡み合いが書きたかった


13 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 02:22:50 580jfn3c
とってもいいSS書いてるけど、何かスポーツでもやっているの?
自然な導入いいゾーこれ
常務がチュッパチャップスでもう顔中草まみれや


14 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 02:49:58 UWTeefc2
またご自愛兄貴か嬉しいなぁ


15 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 04:35:53 bRvNZxN.
自愛兄貴という名称で草

描き終わったらpixivかなんかでまとめてください


16 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 06:41:08 BKfT9n3M
おうつづきあくしろよ(せっかち)
続きが読みたくなる良いドウニュウブだと思いました


17 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 10:41:11 4YvVTfiU
りいなちゃんなにしてるにゃ…


18 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 10:45:17 nqR6iWko
自愛兄貴で草


19 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 11:21:46 MXIqz98U
これもご自愛兄貴だったのか…


20 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 11:27:52 YfPNojXQ
周子とフレちゃん自由奔放すぎィ!


21 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:07:44 MXIqz98U
>>20
ここまで規格外だと常務も怒るに怒れないんでしょうね…


22 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:31:25 a1ziH4UE
続き投下します
因みに、ここからキャラ崩壊が加速しますので、ご用心を


23 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:31:59 a1ziH4UE
第一話 『取り敢えず全部雨のせいにしとけ』


雨がしとしとと降る日であった。
小雨が地面を濡らし、そして同時にその鬱陶しさが人々の心を湿らせる。
プロデューサーはプロジェクトクローネのプロジェクトルームの窓から垣間見える曇天を見て、顔を顰めた。

「雨は、嫌いなのかしら?」

そんな彼を見て、奏は相も変わらずの艶のある笑みを浮かべ、そう質問した。

「……そう、ですね」

彼は端的にそう返す。
彼は雨がそこまで好きではなかった。
何故かと問われれば、様々な理由があるだろう。
傘を差さねばならないとか、服が濡れるとか、電車がいつもより数分遅れるだとか、そんな理由がある。
だが、それは表面的な理由で、彼が雨を苦手だとする理由は他にあった。
それは間が悪いということである。
雨が降る時は決まって、まるで何らかの神様の意図があるとでも言わんばかりに何か悪いことが起きる。
だから、プロデューサーは雨が嫌いだった。

「ふふっ、何だかプロデューサー、物憂げでミステリアスな表情をしているわ」
「そうでしょうか?」
「そうよ。ふふっ、あなたはチャーミングだけど、それと同じぐらいミステリアスでもあるの」

そう言われても、そんな自覚の無い彼はどんな反応をすればいいか分からずに、首に手を当てた。

「その仕草、癖なの?」

彼女のその言葉に一瞬だけ戸惑い、無意識に自分が首に手を当てていることに気がついた。
それはシンデレラプロジェクトの面々にも散々指摘されてきた癖だ。

「多分、そうだと思います」
「ふふっ、そうなの。でも、その仕草もチャーミング」
「……そうでしょうか?」
「えぇ。あなたはわからないもしれないけどね」


24 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:32:40 pnOvssgY
クソ生意気初期加蓮いいゾ^〜これ

なんであの場にだりーなが参加してるんですかね…アーニャもどうやって寮を抜け出したのか


25 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:36:23 a1ziH4UE
そう言って、微笑む奏は、普段は女性に対して何ら卑しい感情を持たないプロデューサーでも、妖艶だと思い、顔を赤くした。

「揶揄うのは、止めて頂ければ……」
「やっぱり、あなたはチャーミングね。初心なのは、女の子とつきあったことがないからかしら?」
「……何回か、女性とお付き合いさせていただいたことはあります」

すると、心底意外に思ったのだろう。
初めて奏は飄々とした表情を崩して、目を見開いた。

「意外だわ。……あんまり女の子とのコミュニケーションが上手くないように思えたから」
「……そうでしょうか?」
「そうよ。ちょっと凛とかが積極的にアピールをしてる時とか、ちょっと戸惑って言葉に詰まったりしてるじゃない? だから、私はそういう経験が無いんだと思っていたわ」

確かに、自分はあまりそういうことが苦手だと自覚はしている。
ただ、改めて指摘されると、それはそれで恥ずかしいものだった。

「ねぇ、プロデューサー。ちょっとあなたの恋のエピソードを、私に聞かせて貰えないかしら」

今度こそ、プロデューサーは驚いた。
彼の速水奏の人物像は、俗世的なイメージは全く無かった。
逆に、どちらかと言えばもっと飄々としており、それこそ今言ったような恋愛に関してなどは無縁のように思えたのだ。

「……速水さんは、あまりそういうのには、興味がない方だと思っていました」

そう素直に伝えると、奏は言い返す。

「私だって、花の女子高生よ。……まぁ、確かに普通の恋愛の話だったら興味はないわ。……でも、私は知りたいの。あなたのミステリアスな過去を」

奏はそう言い、ソファーから立ち上がった。
そして、プロデューサーへと近付き、彼の頬へキスをした。
何が起こったか把握できない彼を他所に、奏は笑う。

「あなたの恋を、私に教えて」

――


26 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:37:16 a1ziH4UE
「ふ、ふふっ」
「大丈夫ですか、速水さん。顔が赤いですよ」
「だ、大丈夫よ。こ、このぐらい大丈夫よ。ちょっと不慣れなことを聞いたから、動揺しているだけで、大丈夫よ。そうよ、大丈夫よ」
「あ、あの」
「な、何かしらっ!! べ、別に変なことを想像したとかそのようなことはないのよっ。話の隙間隙間であなたとその女性の情事を想像したとか、そんなんじゃないのよ!!決して!!」
「お、落ち着いて下さい」

もうこれ以上彼女の名誉が傷つかない為に、プロデューサーはそう言い掛けた。
因みに、プロデューサーが語った恋愛の話には、性を思わせるようなニュアンスは一切含まれていない。

「お茶、もってきましょうか?」
「お、お願いで、出来る?」

もう動揺しまくっていて、いつも饒舌である彼女もどもっている。
自分の話のどこにこのような反応をする要素があったのか、プロデューサーはイマイチ理解できない。
確かに、赤面するような話はあったかもしれない。
ただ、普通はここまでの反応はしないだろう。
取り敢えず、プロデューサーは台所の冷蔵庫から麦茶を出し、それをグラスへ注ぎ、彼女のところへ持って行った。

「あの、麦茶です」
「あ、ありがとう」

差し出された麦茶を半ば奪い取るように取った奏は、思いっきりそれを飲んだ。
そして噎せた。

「ゴホッゲホッ」
「だ、大丈夫ですか!?」

プロデューサーは奏を気遣って、少しでも楽になるように背中を撫でた。
すると、漸く普通の顔色になってきた奏の顔が、再び紅潮し始めた。
そして……。

「ふふっ、恋は、熱いものね――」
「は、速水さん!?」

気絶してしまった。


27 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:37:58 nNagQ36Q
フレデリカの事よくしらないけど原作でもこんな感じなんですか?
…だったら高田純次扱いされるのも納得ですね…(感心)


28 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:38:37 nNagQ36Q
続き来てるやんけ
邪魔してすみません


29 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:38:55 a1ziH4UE
――――

十数分後、奏は目を覚ました。
記憶が曖昧で、何が起きたんだがはっきりとしない。
ただ、あの強面のプロデューサーと話をしていたことだけは、鮮明に覚えていた。
そもそも自分はどうしてここで寝ているのだろう。
そう疑問に思っていると、上の方から声が聞こえた。

「あの、大丈夫でしょうか」

その声はあのプロデューサーの声だった。
起き掛けに聞くには素敵な声、と思いながらも、何で自分の上から聞こえてくるのか上手く理解することが出来ない。
だから、奏は顔を声の方へと向ける。
そこには当然プロデューサーが自分のことを心配そうに覗いている顔があった。

「……あぁ、プロデューサー、さん?」

しかし、奏は瞬時に体を硬直させた。
何故ならば……プロデューサーは所謂膝枕をしてくれていたからだった。
少し、沈黙が居座り……。

「な、何をしているの!?」

物凄い勢いで、状態を起こしたのである。
そして、鬼気迫った表情を目と鼻の距離まで近付けて、怒鳴るように問い掛けた。

「な、何であなた、膝枕なんか……。あ、あなたは、そ、そういう人じゃ、ないでしょ!!」
「い、いえ、その、速水さんが気絶して困ってる時に、通り掛かった塩見さんが『膝枕とかしてあげたら喜ぶよ。そうじゃなきゃ絶対に怒るよ』と申したので……。お気に召しませんでしたでしょうか」
「お、お気に召しませんでしたとか……」

いや、まぁ、悪い気分じゃないけど、と言葉を濁す奏。
とにかく、周子には後で何かしら報復をせねばなるまいと考える傍ら、自分の恥ずかしいところを見せてしまったと奏は反省する。
顔がとても熱い。
こんな恥ずかしさを感じてしまうのはいつ振りだろうか?

――とにかく、挽回しないと。

「ふ、ふふっ、私もまだまだね。こ、こんなことに動揺をしてしまうなんて、ふ、ふふっ。そうだ、キスをしてあげましょうか」
「……いえ、結構ですけれど」
「え……。い、いや、そ、そんなこと言って、内心ではしてほしいと――」
「思ってません」
「……そ、そう」


30 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:39:46 a1ziH4UE
頑張って自分のキャラを修正しようと試みる奏だが、無欲な彼には呆気なくキスを拒まれてしまった。
何というか、逆にプロデューサーから同情の視線を感じてしまう。

「あの、別に私は、普段、こんなことで動揺とかするわけじゃないのよ。そ、そうよ。今日は雨だから、調子が悪いの!! 雨、私も嫌いよ!!」
「そ、そうですか」
「そう雨が悪いのよ!!」
「……あの、無理はしない方が」
「む、無理なんてしてないわ!!」

更に同情的な視線になるプロデューサーの目に、もう耐えることは出来なかった。

「も、もう、キスであなたを黙らせるしかないわね!!」
「は、速水さん!? それはちょっと、って!?」

もう形振りを構っていられる状況ではない。
奏はがっしりとプロデューサーの顔を掴むと、そのまま頭突きでもするのかと思う勢いでキスをするために、顔を急接近させる。
だが、プロデューサーもプロデューサーで、そんなことをさせるわけもなく、「すみません!!」と謝りながら、彼女の額と左頬に手を当てがって制止させた。

「ふ、普段のクールな速水さんは何処へいってしまったんですか!!」
「あなたにキスをすることで、私のキャラが保たれるのよ!!」
「何を言ってるんですか!! そんなことあるわけないでしょう!!」

ギャーギャーと言い合っている奏とプロデューサー。
だが、そのせいで、扉に近付いてくる足音にも気がつかなかった。

――ガチャリ、と無慈悲にも扉が開かれる。

「「あ」」

そんな情けなく間抜けな声が二人から漏れ出した。

何故ならば、扉から姿を現した人物……それは。

「……何をやっているんだ。お前らは」

「「……美城常務」」

この後、若干奏の扱いがフレデリカや周子と同じようになったのは仕方の無い話であった。

「……私もどうかしてたわ。今日のことは、お互いに忘れましょう」
「私に非は無いような……なんでもありません。そうですね。忘れましょう」
「ふふっ、これも全部、雨が悪いのよ」
「……それは」
「キスするわよ」
「そうですね雨が悪いですね」

そう、雨のせいである。

『取り敢えず全部雨のせいにしとけ』〜完〜


31 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:41:56 a1ziH4UE
第二話 『検索履歴にはご注意を』


仕事終わり、もう夜の帳が冬の寒い空に掛かっている。
吐く吐息は白く曇り、それが尚更寒さを実感させた。

「橘さん、お疲れ様でした」
「はい、お疲れ様でした」

プロデューサーの労いの言葉に、ありすもそう返した。
プロデューサーはそれに少しだけの満足感を得る。
そうなのだ。
この少しだけ淡白な付き合いというのが、アイドルとプロデューサーの関係というものではないのだろうか。
別に、彼だってアイドルとの彼我の距離を縮めた方が良いとは思っている。
ただ、関係を縮めれば縮める程、異常な行動をするアイドルを目にしているので、そういうことに億劫になっているのだ。
その点、この少女はある程度の礼儀と常識を弁えているので、肝を冷やすこともなかった。

「……橘さんは大人ですね」
「きゅ、急になんですか?」

いきなりの彼の言葉に、驚いたのか目を見開いた彼女はそう問い返した。

「い、いえ、すみません。……橘さんは、その、地位も高い人にあっても、凛とした雰囲気を崩さずにいます。それは……私でもなかなかできることではありません」
「そ、そうでしょうか」

ありすは彼の賞賛に、頬を赤くした。
そして、少しだけ目を伏せ、改めて彼の目を見る。

「で、でも、あなたも、その、飄々としている風でしたけど……」
「それは……簡単です。私はあまり感情が表に出ません」


32 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:42:55 a1ziH4UE
プロデューサーはそう言い、自分の顔を指差した。
そう、彼は滅多に感情を表に現出させない。
最近では、彼のプロデュースしているアイドルたちに『表情が柔らかくなった』と言われる彼ではあるが、どうやら彼女たちの視点から見たらの話であるようで、相変わらず無愛想なのは変わりない。
コミュニケーション面では、この無意識的な面の皮の厚さで苦労することも多いが、仕事では大変助かってはいた。

「ですが、心は違います。いつ、自分が下手な発言をしてしまうか、相手に無礼な行動をしてしまうか。それは、いつも私の心の中で燻っています」
「プロデューサーさん……」
「……すみません、今のは忘れてください」

思わず自分の心を吐露してしまったプロデューサーは、自らが話したことであったけれども、急に気恥ずかしさが湧いてきた。
故に、頬を掻きながらも視線を外し、そのように言うと、ありすは「私も同じです」と返した。

「え」

プロデューサーは思わず、呆然と改めて彼女の顔を見る。
彼女は苦笑しながらも、しかし、それでも、目はしっかりと彼を捕らえている。

「私も、怖いです。いつ、背伸びをしたのがバレてしまうのか、ちょっと怖いです。私と、同じです」
「……はい」

プロデューサーも、静かに頷く。
寒い日の夜、針のような冷たさが肌を刺す。
けれど、彼は確かに、自分と彼女の間に、微かな確かな繋がりを確認することが出来たのであった。

――


33 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:44:48 a1ziH4UE
「ふふーん、プロデューサーさんはまだそんなアナログなものを使ってるんですか?」

プロジェクトルームにて、プロデューサーがいつものようにスケジュールを確認するために手帳を開いていると、突如そのような声が背後から聞こえた。
後ろを振り向いてみると、そこにはありすが何処か胸を張って仁王立ちをしている。

「あの、何か用でしょうか」
「ふっふっふ、プロデューサーさんは前時代的な人間ですね!!」
「……はぁ」
「みてください!! この未来的フォルムをしているIpadを!!」

ありすはそう言いながら、困惑しているプロデューサーにiPadを提示した。
一瞬だけ意味がわからなかった彼ではあったが、どうやらありすはただiPadを自慢したいだけということが理解でき、思わず微笑んだ。

「それは、橘さんのでしょうか?」
「はいっ、このiPadは最新式なんですよ!! 見てください見てください!!」

そう言って、ありすはプロデューサーへ自分のiPadを押し付ける。
プロデューサーはそんな子どもらしい一面が垣間見える彼女に微笑ましい想いを抱きながらも、恭しい手つきで受け取った。

「これは……案外軽いものなのですね」
「新しいものですから、利便性にも富んでいるんですよ」
「……それじゃあ、少しだけ使ってみてもよろしいでしょうか」
「いいですよ!! 手書きの手帳なんて目じゃないんですからっ」

どうやらありすの言動を鑑みるに、彼女ははデジタルな物に対して絶対的な信頼を置いているらしい。
そのことにプロデューサーは内心苦笑した。
確かに、最近の機器等は便利になってきている。
それは紛れもない事実だ。
しかし、とは言えアナログにもアナログの良さがあるものだ。
……ただ、きっとこれは社会に出て初めて理解できることであると思う。
プロデューサーは彼女の言葉に反論もせずに、iPadの電源をつけてみる。


34 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:46:28 a1ziH4UE
すると、また幾つものアプリが規則正しく並んでいる画面が映し出される。

プロデューサーはそこから、適当なアプリを押してみた。
と、すると何かページが開いた。
上にアドレスや検索欄があることから、どうやらこれはインターネットプラウザであるようだ。

「何か検索してよろしいでしょうか」
「いいですよっ」

興奮気味に返事をするありすを可愛らしいと思いながらも、プロデューサーは検索欄をタップしてみる。
すると、キーボードが現れた。
ここいらはスマートフォンと同じようだ。
何となくであるが、プロデューサーはeと押してみる。

――だが、すぐに彼は後悔することになった。

「……」

検索欄に出てきた候補の言葉と同時に、今まで検索したであろう言葉が陳列されていた。
ただ、それはあまりにも……ませていた。

『エッチ ビデオ』
『エッチ 漫画』
『エッチ 仕方』
『エロ』
『江頭2:50』

思わず勢いでカバーを閉じた。

「どうかしたんですか?」

純粋な視線がプロデューサーへと集中する。
だが、もう彼女の純粋な視線に目を合わせることができなかった。

「ず、ずいぶんと便利な代物ですね……」
「そうでしょう。……なんか、少し様子がおかしくありませんか? あ、もしかしてこのiPadの凄さに気がつきましたね」
「え、えぇ、そう、ですね」
「ん? 何で目を合わせてくれないんですか?」
「……少し、用事を思い出しましたので、これにて失礼させてもらいます!!」

プロデューサーはありすにiPadを返却し、逃げるようにして、部屋からでてしまう。

――

「なんであんなに急いで出てしまったんでしょうか」

ありすは疑問に思いながらも、彼が閉じたiPadを再び開いて……ありすは顔を真っ赤にしてしまった。

「ち、違うんですよ〜!! プロデューサーさぁん!!」

ありすは足早に出て行ってしまったプロデューサーを追い掛けた。

後日、別の意味でプロデューサーの視線が微笑ましくなったのはまた別の話である。

『検索履歴にはご注意を』 〜完〜


35 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:48:05 a1ziH4UE
今日の分は終わりです。
あ、因みにこのSSでは、真面目なキャラほどむっつりすけべになります


36 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:52:59 pnOvssgY
動物化するシンデレラプロジェクト
カリスマ化するプロジェクトクローネ


37 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 12:54:27 UWTeefc2
江頭で草


38 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 13:00:20 qKoO0du6
江頭とかいう露骨なツッコミどころ


39 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 13:01:39 Gv2UZkH6
ご自愛兄貴今日もお勤め乙倉くん
橘の扱いはこういうのでいいんだよこういうので
ポンコツ奏もいいゾ〜これ導入部といいキャラの特徴はよく掴めてると思いますよちょっと上からの物言いっぽくて失礼


40 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 13:05:02 pnOvssgY
新田ちゃんは紛れもないまじめキャラだと思うのですがあれでもむっつりレベルである可能性…?


41 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 13:24:50 UWTeefc2
>>40
この作者兄貴の別のSSスレで盛大にキャラ崩壊してたゾ


42 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 13:43:23 a1ziH4UE
あ、因みに昨日渋かなんかで纏めて下さいというレスがありましたけれど
すみませんが、それをすることは無いでしょう
ここに投下するだけに留まらせて頂きます


43 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 19:55:35 SJtHU51s
思春期ありすすき


44 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 19:56:19 BKfT9n3M
>>42
ここで読める限り応援するゾ


45 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 21:04:23 a1ziH4UE
第三話 『自分の好きなものを語れない』


神谷奈緒は、アニメを見ることが好きだった。
けれど、それを大っぴらに言ったことはない。
何故ならば、あまりそういうことを話す友人がいなかったから。
確かに、クラスには数人オタクのような人はいたが、それは奈緒とは少しだけ異なったものを好む人々だった。
だから、彼女たちの会話を悪いとは思いつつも、盗み聞きをしたとき、これは自分とは相容れない存在だな、と感じた。
それ以降、彼女は自分の趣味を他人と共有することを諦めてしまった。
今は、そんな彼女にも加蓮や凛などという友人が出来たのだが、だからと言って彼女たちがアニメを好きなわけではない。
相も変わらず、彼女は話したいことを内に留めているだけだ。

ただ、今度来たあのプロデューサーならどうなんだろう。

奈緒は考える。
あのアニメとは縁もゆかりも無さそうな強面と性格。
彼が楽しげにメンバーと話している姿を見ても、その不器用さは明らかだった。
でも、それでも彼は頑張って彼女たちと話そうとしている。
そんな姿を見て、奈緒はやはり、好きなものに関して話せないんだろうなぁ、と思った。


――


46 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 21:05:25 a1ziH4UE
「な、なんか悪いな……こんなところまで送ってもらちゃって」
「いいえ、別にそんなことはありません」

午後8時、もう既に街灯が明かりを灯す時間帯。
まだ深夜とは言えないが、辺りが暗くなったということで奈緒は家の近くまで送ってもらっている最中だった。
何だかわざわざ送ってもらうのは悪い気がしたけれど、断るのも彼に失礼だということで、渋々と頷いたのであった。
しかし、車内には沈黙が鎮座する。
そうか、この人は話し掛けないと話さない人なんだな、と理解し奈緒は頭を回転させ、話題を引きずり出した。

「ぷ、プロデューサーはさ、何か、趣味とか、あったりするのか?」
「趣味……ですか?」
「あ、うん。べ、別に嫌だったら、何も言わなくたっていいけど」
「……元々、映画鑑賞などが、好きでした」
「映画鑑賞?」

奈緒が繰り返すと、彼はこっくりと頷く。

「映画を見ると、楽しい気持ちになります。神谷さんは映画などはご覧になられるのでしょうか?」
「あ、あんまり、見ないなぁ。……でも、アニメだったら」

――あぁ!! 言っちゃった!!

奈緒は思わず頭を抱えたくなる気持ちになってしまう。
目の前の仕事に生きているような人間が、アニメなんか見ているはずがない。
下手したら、奇異の視線で見られてしまう。
そう思った彼女ではあったが、しかし、現実は異なり、バックミラーに映っている彼の顔は微かに微笑んでいた。

「神谷さんは、アニメを見られるのでしょうか」
「お、おうっ」
「私は、あまりそういうのに造詣が深くないのですが……どのような作品がお好きなのでしょうか?」
「え、えぇと……幽体離脱フルボッコちゃんってやつなんだけど」
「あぁ、小関さんがモチーフとなっているキャラクターが主人公の……」
「し、知ってるのか!?」

奈緒は彼が自分の好きなアニメを知っているとは思わず、彼女は身を乗り出してそう聞き出す。
それをバックミラーで確認してであろうプロデューサーは、少しだけ顔に笑みを浮かべた。


47 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 21:06:18 a1ziH4UE
「はい、名前だけですが……しかし、以前から興味がありました。よろしければ、掻い摘んで内容を説明していただくことはできますでしょうか?」
「……しょ、しょうがないなぁ。私がプロデューサーさんに教えてあげるよ!!」

その後、奈緒はどれだけその作品が面白いかを、自分が出来る限り頑張って説明した。
揺れる車の中。
人々が行き交う雑踏。
時たまなるクラクション。
それでも、その時間は、奈緒の子供のようにはしゃぐ声とプロデューサーの低い相槌がただただ混ざり合っていた。
数分後、目的地に到着した奈緒は少しだけ名残惜しい感情を胸に感じながら、車を降りた。

「……幽体離脱フルボッコちゃん、今度機会があれば借りてみようと思います」
「うん!! 是非そうしてくれよ!! 絶対面白いから!!」
「わかりました。それではまた明日」
「うん!!また明日!!」

プロデューサーは奈緒に別れの挨拶を告げると、ドアを閉めて車を走らせる。
奈緒は車が曲がり角を曲がって見えなくなるまで、視線でおっかけて、そして深い深いため息を吐いた。

「うぅぅ、なんか私、引かれる勢いで語ちゃってたりしなかったか!?」

自分が車の中で熱くアニメを語る姿を思い浮かべて、奈緒は悶絶しそうなぐらいに恥ずかしくなった。
……けど。

「プロデューサーさん、見てくれるって、言ってたな」

奈緒は帰り際のプロデューサーの表情を思い浮かべる。
彼は少しだけだけれど、微笑みを浮かべていた……ような気がした。
光の角度の問題かもしれないけど。

「……でも、見てくれないんだろうなぁ」

奈緒は知っている。
こういうのは社交辞令というのだろう。
相手の話に合わせて当たり障りのない返答をする。
でも、それは責められるべきではないのだろう。
プロデューサーは大人であり、そしてプロジェクトを任さられるほどの人間で、そして今は8人のアイドルを抱え、多忙な日々を送っている。
そんな状況下でアニメを勧めても、忙しさに埋没して、そんな約束をしていたことすら忘れてしまうかもしれない。

「……ちょっと、悲しいかな」

でも、それは仕方のないこと。
奈緒はそれを自分に言い聞かせる。

「帰って、録ったやつ見よ」


――


48 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 21:06:52 a1ziH4UE
その日の夜、奈緒はレンタルしていたDVDを返却するために、美城プロダクション近くのレンタルビデオショップに訪れていた。
肩には学生鞄を提げて、そして手にはレンタルされたDVDが入っている手提げ袋があったりする。

「うへー、今日返却日だからギリギリだったな」

なんてことを呟きながら、入店をする。
「いらっしゃいませ」なんて店員の声が耳に入った。
返却ボックスの中に、手提げ袋を入れて、何か良いアニメが無いか。
そんなことを思いながら、奈緒は慣れた足取りで店内のアニメコーナーへと足を踏み入れる。
聞き慣れたBGM、陳列棚を整頓している店員、映画のポスターがある。
ちょっと視線を巡らせれば、普段接している人々のポスターが貼られていたりする。
その中には、自分が載っているポスターもあったりするので、少しだけ気恥ずかしい。
奈緒はそんな中で、アニメコーナーへと移動し……そして、そこにはいたのだ。

背丈が大きく、とても気難しいそうな怖い顔で、アニメDVDの棚を見ているプロデューサーが。

「ぷ、プロデューサー!!」
「……神谷さん?」
「こ、こんなところで何をしてるんだよっ」
「あ、いや……この間、あなたに『フルボッコちゃん』を見ると、約束をしましたので……」

彼は少しだけ照れくさそうな風にして、首に手を当てる。
そんな反応をするとは思わなかった奈緒は、それだけで顔が赤くなるのを感じた。

「は、恥ずかしがるなよっ。こっちが恥ずかしくなっちゃうだろ」
「すみません。……しかし、約束を守れそうで、よかったです」
「……で、でも、プロデューサーみたい年齢層向けじゃないし……」
「神谷さん」

プロデューサーは言う。

「あなたに勧めてもらったものが、面白くないはずがありません」
「――っ」

もう、顔を合わせることも出来なかった。
その時のプロデューサーの顔は、なんというのだろうか。
いつも見る無表情とも違くて、普段アイドルを見る慈しむ視線とも異なった、本当にワクワクとした少年のような表情をしていたのだ。
だから、思わず顔を背けた。
今、彼と顔を合わせたら、自分がどんな表情をしているのか、見られてしまうから。

「……神谷さん?」
「あぁぁぁぁ、もうっ!! プロデューサーっ!! ……その、見終わったら、感想を聞かせてくれよな!!」

奈緒はそう言い捨てると、店内を足早に去る。
自分の部屋にて、先ほどの自分の行動に悶えるのことになるのは、数十分後の話であった。

『自分の好きなものを語れない』 〜完〜


49 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 21:08:09 a1ziH4UE
今度こそ今日の分は終わり
綺麗なものを書きたかった


50 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 21:10:49 pnOvssgY
奈緒かわいい


51 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 21:31:41 269McUYg
もうヒロインは奈緒ちゃんでいいんじゃないかな


52 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 22:06:07 UWTeefc2
あぁ^〜
奈緒もかわいいし律儀な武内Pにもほっこりするんじゃあ〜


53 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/13(日) 22:12:43 Gv2UZkH6
非常に新鮮で、非常に面白い
CPの絡みとは違う形で武内Pの魅力が引き立ちますね唯に期待


54 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 01:29:32 HRYOcUyw
すみません
ちょっと奈緒の話の設定で加蓮が昔のアニメに詳しいという設定を忘れておりました
だから、ちょっと改稿して、加蓮の話と一緒に明日投下させてもらいます
申し訳ございません


55 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 12:11:58 HRYOcUyw
>>48の修正

その日の夜、奈緒はレンタルしていたDVDを返却するために、美城プロダクション近くのレンタルビデオショップに訪れていた。
肩には学生鞄を提げて、そして手にはレンタルされたDVDが入っている手提げ袋があったりする。

「うへー、今日返却日だからギリギリだったな」

なんてことを呟きながら、入店をした。
「いらっしゃいませ」なんて店員の声と無駄に大きなBGMが耳に入る。
返却ボックスの中に手提げ袋を入れた。
そして、気になるアニメのやつあるかな。
そんなことを思いながら、奈緒は慣れた足取りで店内のアニメコーナーへと足を踏み入れる。
聞き慣れたBGM、陳列棚を整頓している店員。
ちょっと視線を巡らせれば、普段何気なく接している友人知人が載っているポスターがあり、その中には自分が載っているポスターもあったりするので、少しだけ気恥ずかしい。
奈緒はそんな中で、アニメコーナーへと移動し……そして、そこにはいたのだ。

背丈が大きく、とても気難しいそうな怖い顔で、アニメDVDの棚を見ているプロデューサーが。

「ぷ、プロデューサーさん!!」
「……神谷さん?」
「こ、こんなところで何をしてるんだよっ」
「あ、いや……この間、あなたに『フルボッコちゃん』を見ると、約束をしましたので……」

彼は少しだけ照れくさそうな風にして、首に手を当てる。
そんな反応をするとは思わなかった奈緒は、それだけで顔が赤くなるのを感じた。

「は、恥ずかしがるなよっ。こっちが恥ずかしくなっちゃうだろ」
「すみません。……しかし、約束を守れそうで、よかったです」

そんな言葉を聞くと、急に彼の貴重な時間を無意味に自分が奪ってしまうのでは無いかという考えが降って湧いて出た。
彼女の口は知らず知らず、言い訳のような言葉をつらつらと並べ始める。

「……この作品は、プロデューサーさんみたいな、大人には合わないかもしれないぞ……?」
「作品の良し悪しに年齢など関係ありません」
「ふ、普段映画を見ているプロデューサーさんには、ちょっと稚拙に見えるかも」
「それでも、多くの人々を楽しませているのは、事実ではないでしょうか?」
「でも……っ」
「神谷さん」

プロデューサーは言う。

「あなたに勧めてもらったものが、面白くないはずがありません」
「――っ」

もう、顔を合わせることも出来なかった。
その時のプロデューサーの顔は、なんというのだろうか。
いつも見る無表情とも違くて、普段アイドルを見る慈しむ視線とも異なった、本当にワクワクとした少年のような表情をしていたのだ。
だから、思わず顔を背けた。
今、彼と顔を合わせたら、自分がどんな表情をしているのか、見られてしまうから。

「……神谷さん?」
「あぁぁぁぁ、もうっ!! プロデューサーさんっ!! ……その、見終わったら、感想を聞かせてくれよな!!」

奈緒はそう言い捨てると、店内を足早に去る。
自分の部屋にて、先ほどの自分の行動に悶えるのことになるのは、数十分後の話であった。

『自分の好きなものを語れない』 〜完〜


56 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 12:15:18 HRYOcUyw
第四話 『風邪を引いてしまいまして』

冬は気温が低くなり、空気が乾燥するためか、多くの感染病が蔓延し易い。
インフルエンザもそうであるし、ノロウイルスも冬に流行る。
とは言え、油断をしていればすぐに風邪を引いてしまう季節であり……。

「うぅぅ、ごめんね。今日はちょっと風邪で行けそうにないんだ……」

そして、加蓮も風邪を引いてしまった一人である。
彼女は昔、病弱な体質であり、それを克服した今でも体調面では気をつけていたつもりなのだが、どうやらここ最近の忙しいスケジュールの中で、油断をしてしまっていたらしい。
電話の向こうからは、『大丈夫でしょうか?』というプロデューサーの声が尋ねてくる。
大丈夫なわけがない。
けれど、そんなことを真正面から言っても嫌味にしか聞こえないだろう。

「大丈夫だよ。……奈緒にもさ、言っといてくんない。アタシが言うと、ちょっと揶揄われそうだから、さ」

少しだけ向こうの言葉が止み、そして『わかりました』と声が聞こえた。

「その、今日は本当にごめんなさい。明日までには、治すから」
『……そんな気負いしないでください。治るものも、治らなくなってしまいます』
「それも、そうだね」

加蓮は彼の言葉に少しだけ苦笑した。
確かに彼の言う通りである。
病は気からというし、今日は何もかも忘れて寝ていた方がいいだろう。
改めてそう思った加蓮は「……それじゃあ、よろしく伝えておいてね」と彼へ告げ、電話を切った。
そして、携帯をベットの脇に放り出して、天井を見上げた。

「……あーあ、迷惑掛けちゃったなぁ」

加蓮は思わずそう呟いてしまう。
病気にならないように細心の注意を払っていたはずなのに、どうして風邪などひいたのか。
それは偶然でしかないのだが、それでも己を責めてしまいそうになる。

「取り敢えず、寝よ」

そう呟き、羽毛布団を顔まで引っ掛けて、加蓮は少し目を閉じた。
目を閉じた当初は、罪悪感とかそういうマイナスな気持ちが彼女の心に渦巻いていて寝られる気配は微塵も無かった。
しかし、瞼を閉じていると、風邪の気怠さが眠気を後押しし、結局眠気が勝ち、彼女の意識は薄れていった。


――


57 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 12:19:56 HRYOcUyw
「加蓮!! ちょっと!!」

母親の大声で、加蓮は目を覚まさせた。
ドタドタと駆け上がってくる足音に寝ぼけ眼で、彼女は体を起こす。

「なに、ちょっと眠ってたんだけど……」
「お見舞いに来てくれた人がいるんだけど、どうするの?」
「……お見舞い?」

加蓮はその言葉に、誰が来たんだろうと考えてみる。
奈緒とか凛とか、その他の人達だろうか。
まぁ、上がられても問題は無い。

「いいよ」

加蓮が許可すると、母親は改めてその見舞いに来た人というのを呼びに行ったようで、乱雑な足音が家中に響き渡る。
しかし、その時になって今更顔を突き合わせ辛いと思ってしまった。
凛が謹慎中でトライアドプリムスの活動が無いし、それに今日はレッスンしか予定は無かったけれど、それでも少しだけ気まずい。
だが、部屋に呼んでおいて、気が変わったから顔を合わせないというのも失礼極まりないだろう。
加蓮がそう思い悩んでいると、訪問した人が自分の部屋の扉の前に立ったのが、足音で分かった。
しかし、躊躇しているのだろうか。
一向に入ろうとはしない。

「あの、入っていいよ?」

そう問い掛けると、一瞬の沈黙の後に、思いも寄らない人物の声が返ってきた。

「あの、北条さん?」
「え、あ、もしかしてその声っ、プロデューサー!?」
「……はい」

加蓮は驚いた。
どれくらい驚いたかと言えば、それはもう普段クールな彼女が素っ頓狂な声を出してしまうほどには、驚愕した。
そんな声を出してしまって、再び重い沈黙が訪れる。
そして、プロデューサーが口早に一言。

「あの、北条さん。神谷さんと橘さんに選んで頂いたショートケーキをここに置いておきますので」
「え、あ」
「……まだ、体調は万全ではないようなので、無理をさせては駄目ですね。これで、失礼させて――」
「ちょ、ちょっと待ちなよ!!」

加蓮は咄嗟に声を出して、いそいそと扉の向こうから立ち去ろうとするプロデューサーを呼び止めた。

「え、えと、さ。折角来てくれたんだし、ちょっと話でも、していかない? あ、もちろんプロデューサーの都合が悪いんだったら別に……」
「……大丈夫です。暫くは、時間が空いておりますので」

彼は静かに、そう述べる。

「じゃあ、入ってもいいよ。部屋はちょっと散らかってるし、髪の毛ボサボサで見苦しいかも、しれないけど……さ」
「……それでは、失礼させて頂きます」


58 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 12:21:08 HRYOcUyw
ゆっくりと緩慢な動きで扉が開かれ、間隙からはあの強面がにゅっと出てきた。
相も変わらず怖い顔だ。
凛はこの男の外見の何処に惚れたのだろうと思う。
彼女はいつも加蓮に彼との他愛も無い日常をとても嬉しそうに話すのだ。
それがまた犬のようで面白く、奈緒と一緒に揶揄ったものだ。

「あ、えーと……部屋の隅に、パイプ椅子が何でか置いてあるからさ、それ使っていいよ」
「お気遣いありがとうございます」

彼は少し落ち着かない様子で部屋に入る。
その様子は不審者みたいだ。
もしかして、彼はあまり女の子の部屋というものに慣れていないのかもしれない。
そんなに女の子っぽい部屋じゃないんだけどなぁ、なんて考えながらも彼が椅子に座るまでじっと待った。

「あの、調子はどうでしょうか?」
「調子? ……んまぁ、体はちょっと怠いけど、朝ほどじゃないよ。たぶん、明日までには完治すると思う」
「そう、ですか。それはよかったです」

彼はそう言って、安堵の息を吐く。
そんな彼を見て、やはり風邪を引いたことに罪悪感が湧いた。

「その、みんなはどんな感じだった?」
「はい、皆様もとても心配しておられました」
「……そうなんだ。あーあ、悪いことしちゃったなぁ」

加蓮は思わずそう呟いて、天井を仰ぐ。

「病気に関しては、人一倍気に掛けてるつもりだったんだけど……」
「……」
「ふふっ、何も言ってくれないんだね。プロデューサーってやつは、こういう時に慰めるとかするんじゃないの?」
「いえ……その」
「なに? 言いにくいことでもあるの?」
「い、いえ、そんなことはありません。ただ……あまり、北条さんが慰めの言葉を掛けてほしくないように見えたので」
「……アンタ、案外人を見る目はあるんだ」

彼の言葉は、まさに図星だった。
自分の心の中でうず高く積もっている面倒臭い感情。

――あんま、表には出してないつもりだったんだけどなぁ。

加蓮は思わず、苦笑してしまった。

「ねぇ、辛気臭い昔話しても、いい?」
「構いません。それで、あなたの気分が落ち着くのであれば」
「じゃあさ、ちょっと聞いててね」

彼女は静かに口を開いて、小さくボソボソと呟くように、自分の過去を語った。
昔病弱であり、そのせいで病院にずっと入院していたこと。
その時にテレビで見たアイドルに憧れを見出し、生きる希望を貰っていたこと。
美城プロダクションの定期ライブのサマーフェスにて、ニュージェネレーションズのライブを見て、彼女たちを目標に据えたこと。
そのどれもが、自分で話していて何だけれども、胸を熱くした。

「ねぇ、アンタはさ、どう思う? 私ってさ、案外アイドルやれてる?」

彼は少しだけ考え、そして口を開く。

「……いつか、あなたがアイドルに焦がれたように、今のあなたは、多くの人々に希望を与えています。それは……紛れも無い事実だと、私は思っています」

いつか憧れたアイドルに、自分はなれている。
いつかの自分が生きる気力を見出していたあの存在に。
彼はそんなことを臆面も無しに言った。
まるで書類に書かれた数字を淡々と読むみたいな口調で、しかし、しっかりとした事実を植え付けるかのような言葉。
彼が語った言葉はスッと胸のうちに入り込んできて、本当にそうなのではないかと錯覚してしまいそうになる。
思わず加蓮は吹き出してしまった。

「ふふっ、よくそんな恥ずかしいことを言えるね」
「……そうでしょうか」
「うん、プロデューサーは今、結構恥ずかしいことを言ってた。……けど」

加蓮は言葉を続ける。

「けど、その恥ずかしい言葉……アタシは好きだよ」
「……そう、ですか」

プロデューサーは加蓮のその言葉を聞いて、思わず首に手を当てがう。
それは彼が困った時にしてしまう癖だってことは、ここ数日間の彼を見ていればわかることだった。
でも、今はその行為に少しだけ可愛いさを見出すことが出来る。

「……ちょっと凛の気持ちがわかったかも」
「あの、何を言っているのでしょうか」
「ふふっ、何でもないよ」

屈託の無い笑みを浮かべて、加蓮は誤魔化した。

――


59 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 12:21:51 HRYOcUyw
「で、昨日はプロデューサーとなんかあったか?」

奈緒と加蓮が下校している時、開口一番に彼女は加蓮にそう問い掛けた。
少し、奈緒の表情を見てみると、野次馬根性全開の表情が浮かび上がっている。
この様子を見る限り、プロデューサー一人でお見舞いに来たのは、案外このもじゃもじゃ頭が原因なのかもしれなかった。

「何にもないよ。アタシがそんな簡単におちるわけないでしょ。アンタと違って」
「は、はぁ!? 何を言ってるんだし!!」
「アタシ、見ちゃったんだー。この間、レンタルビデオショップで――」
「あー!!あー!!」

慌てて加蓮の口を塞ごうとする奈緒を避けながら、更に彼女のことを煽る。

やっぱり、病気で寝込んでるのよりこうやって友達と絡んでいる方が楽しいな。

――それに……プロデューサーの良い所も見れたしね。

「あ、写真もあるんだけど……」
「あー!! 止めろー!!」


『風邪を引いてしまいまして』〜完〜


60 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 12:23:30 HRYOcUyw
今日の分はここでお終いだけど、続きを書けたら書く。
だが、綺麗なのはここでお終い、次からまたしょうもないネタを打っ込む


61 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 12:27:38 uNDYKubU
ナイスゥ〜もっとぬるっとした純愛が楽しみ


62 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 12:30:33 tSUvMQgM
奈緒かわいすぎんよ〜


63 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 12:31:39 FDZor76I
トライアドいいゾ〜これ


64 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 12:46:47 nAr9.lN.
ホモは文豪


65 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 20:45:09 .Ug96T0.
えがった


66 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 22:59:23 KBu6t8/g
毎日SS執筆乙倉くん
疲れたでしょ
喉乾いた・・・喉乾かない?

サッ--- カカンッカンッ




お ま た せ


67 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 23:17:17 9OUDC1Jo
非常にいいですねぇ!
自分の好みピッタリだゾ


68 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/14(月) 23:34:58 zA5QGpJY
奈緒「何を言ってるんだし!!」

かわいい


69 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 12:41:19 28yqf3KQ
第5話『強度の無い蜘蛛の糸』


プロジェクトクローネのプロジェクトルームは言ってなんだか、かなりうるさい。
主に部屋を騒がしくしている要因なのは、フレデリカと周子の二人なのであるが、今日はその二人がいない。
いや、その二人どころか、その空間には文香とプロデューサーの二人以外誰もいなかった。
故に、広々とした部屋はただただ静謐な雰囲気に内包されていた。
音と言えば、紙を捲る音とキーボードを叩く音だけだ。
そんな中、それらとは異なるパタンという音が妙に響き渡った。

プロデューサーがパソコンの画面から視線を外し、文香の方へと視線を向けてみると、先ほどまで開いていた本を閉じていた。
どうやら、本を読み終えたらしい。
ブックカバーを付けているので、本の題名は確認できなかったけれど、それでもプロデューサーは恐らく彼女が純文学作品を読んでいるのだろうと容易に想像ができた。

「……あの、プロデューサーさん? 何か、私に御用でしょうか」

どうやら思いの外、彼女の視線に敏感だったようで、然りげ無く視線を寄越しただけだったのに気付かれてしまった。
彼女は不思議そうにこちらへと視線を向けている。
別に疚しいことをしたわけでもないので、素直に彼は謝罪した。

「あ、いえ、すみません。不躾な視線を送ってしまって」
「……そんなことはありません。別に、悪気があったわけではないのでしょうから」

そう言って、文香はくすりと笑った。
彼も少しだけ微笑む。
すると、突然文香は顔を赤くしてその顔を俯けてしまった。
はてさて、自分は彼女に一体何をしたのだろうか。
プロデューサーがそのように困っていると、少しだけ恥ずかしそうに顔を上げた文香が小さな声で言った。

「……あの、プロデューサーさん。少しだけ、お話をしませんでしょうか」
「……わかりました」

今は仕事の途中ではあったが、別段そこまで急ぐような書類ではない。
プロデューサーはデスクから文香と対面するようにしてソファに座った。
しかし、お話をしようと言っても何を話せばいいのかいまいちわからない。
プロデューサーはもちろん、文香だってそこまで話し上手な人間では無いのだ。
先ほどとは異なった気まずい沈黙が両者間を支配する中、プロデューサーは、苦し紛れに話題を出した。


70 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 12:42:22 28yqf3KQ
「あの、鷺沢さんは、本がお好きなのですよね」
「……はい、幼少の頃から、本の虫でした。本が無い生活など、考えられなかったほどです」
「そうですか。どのようなジャンルの本を好まれているのでしょうか?」
「別段、気に入っているジャンルはありません。ジャンルによって好き嫌いをしてしまえば、本来出会うことのできる本と、出会うことが出来なくなってしまうかもしれませんから……」
「……その考え方は、見習うべきかも、しれませんね」

文香の本に対する信念は、それを聞いただけで彼女が本に対してどれだけ真摯であるかを理解させたのである。
ただ、彼のストレートな言葉に照れたのか、また少しだけ彼女は頬を赤くさせる。

「その、プロデューサーさんは、本をお読みになるでしょうか」
「そうですね。……昔はよく読んでいました」
「今は、あまり読んでいないのでしょうか?」
「はい、残念ながら。……社会人になってしまうと、否応なく自分の趣味に使える時間が少なくなってしまうもので、映画鑑賞と読書は、頻度は減ってしまいましたね。それに……」
「……それに?」
「あまり面白い本を探す時間も、無いので」

美城プロダクションに入社してから、彼のプライベートでの時間は無くなってしまい、趣味に時間を費やさなくなった。
それに、文香には口にしなかったが、仕事の楽しさというものを知ってしまったのも、本を読まなくなった要因の一つなのかもしれない。
自分も少しだけ年をとったのだな、と感慨深く感じていると、文香は「あ、あの」と彼へ何か言い掛けようとする。

「なんでしょうか?」
「プロデューサーさん……よろしければ、私が、お勧めの本を、見繕ってきましょうか?」
「……いいのでしょうか?」
「はい。……プロデューサーさんに、少しでも、私の好きな本を、読んで頂ければ、嬉しいです」

彼女はそう言って、とても晴れやかな笑顔を浮かべた。
少しだけ笑い合い、そして少しだけ談笑をし、互いに互いの行動へと戻る。
だが、彼は見ていないだろう。
プロデューサーが再びデスクへと戻ったときの甘い吐息と、妖しげな笑み、それに彼の名を吐息交じりに呼ぶ、文香の姿を。


――


71 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 12:44:12 28yqf3KQ
「こ、これは……」
「はい……私の大好きな、愛読書、です♡」

目の前に置かれた数冊の本。
別にページ数が多いわけでもなく、洋書のように派手な装飾があるわけでもない。
では何故、プロデューサーが浅い息を繰り返し、動揺しているのかと言えば……。

「こ、これは、官能小説……でしょうか」
「……はい」
「ぜ、全部?」
「……はい」

彼女が持ってきた数冊の本の題名。
それは明らかに、淫猥なものを彷彿とさせるタイトルであったのだ。
頭が痛くなった。
これは夢だろうか。
だとしたら、なんともタチの悪い悪夢なのだろうか。

「これは、私が普段から……使ってる本です」
「……何にでしょうか?」
「ふふっ……そういうのが、お好きなのですね」
「なんででしょうか。今、鷺沢さんの姿ととある謹慎中のアイドルの姿がダブって見えてしまいました」

不思議なこともあるものだ。

「……新田さんとは、仲良くさせてもらっています。色んなことを、教え合ったり、しました」
「あぁ、だからですか」

なるほど、どうやら思わぬところで美波の影響力を強く受けた人間がいたようだ。

「……私は、美波さんのように、強く出ることは出来ません。あんなに気恥ずかしいことを、言えるほど、私は心が強くありませんので……」

彼は思う。
心が強くないと、他人に官能小説など薦めることは出来ないだろう、と。
しかし、そんな何とも言えない表情を浮かべている彼に、文香はどんどんと近づいていく。
揺ら揺らと蜃気楼を彷彿とさせる足取りではあったが、それでもそこには普段彼女が纏わせている儚げな雰囲気は無い。
彼の本能がただただ警笛を鳴らす。
故に、プロデューサーは自然と後ずさっていた。

「でも、最近、私は本の中では、感じ取れないことが世の中にあると、アイドル活動を通じて、わかってきたんです」

一歩、また一歩と彼女は近づいてくる。
その度に後ろへと下がる彼ではあるが、いよいよ壁に背がついてしまう。

「あ、あの……っ」
「だから……」

彼女は逃げ場の失った彼の両手を、彼女のか細い両手で壁に押し付けるように取り押さえた。
さすがの動揺していた彼も、逃げようとするが、彼女の腕力は彼をも上回っているのかびくともしない。
オータムフェスのこともあり、今までか弱いと思っていた少女の腕力が、自分よりも強いという事実に驚愕した。
そして、そんな動けない彼の耳元へ顔を近づけ、

――私に、この世界の快楽とは何たるものなのか、感じさせてください。


72 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 12:45:13 28yqf3KQ
そう呟いた。

「さ、鷺沢さんっ。何をしようとしているのですかっ」

思わずプロデューサーは叫ぶようにしてそう問い掛ける。
だが、文香はただただ妖しげな笑みを返すのみ。
いつかの貞操の危機を感じたプロデューサーは、一生懸命にもがくけれど、その努力は無駄に終わる。

「ふふっ……プロデューサーさん。足掻いても無駄ですよ。……私、体力は無いですけれど、力は強いんです」
「……っ、は、離してください」
「いやです。離したら、プロデューサーさんを美しくすることが、出来ないではありませんか」

う、美しく?
文香が何を言っているのか理解できないプロデューサーはただただ阿呆のような顔を彼女へ晒す。
そんな彼を文香は嘲笑するような、しかし、慈愛に満ちた笑みを浮かべながら、彼の抱いている疑問に答える。

「人は、花を散らす瞬間が、最も美しいのだと、私の愛読書には書いておりました。つまり、強姦、レイプした瞬間が、最も、その人の魅力を引き出すことが、出来るのだと」
「ご、強姦!? レイプ!?」
「……はい。私は、プロデューサーさん。……あなたの美しい姿を、見ていたいんです。遍く悦楽をこの身に受けながら、あなたが涙する雫、そして恐らく甘美なる声と、美しいあなたの姿を、見てみたいのです」

蠱惑な雰囲気を纏わせて、その様に述べる文香に、プロデューサーはただただ戦慄した。
これは……下手をしなくても美波よりも危なげな存在である。

「や、止めてくださいっ。鷺沢さん。このような行為は、その、あなたが好きであると確信した人に……」
「……私は、あなたが運命付けられた、人であると、確信しています」
「ま、まだ会って数日ですよ」
「あなたはそう思っているかもしれません。……しかし、私は、あのオータムフェスからずっと……ずっと見ていたいんですよ?」
「……っ」
「物陰から……ずっと。あなたを見ていたんです。最初は視線で追うだけでした。それだけで、満足でした。でも、その度に、己の内に滾り出す欲望を感じたんです。これはイケナイ感情なのだと。恥ずべき感情なのだと。しかし、あなたは、ここにきました。きてしまいました。その瞬間に、悟ったのです。これは……『運命』なのだと」
「さ、鷺沢さん」
「だから、虎視眈々と、私は機会を狙っていました。そして……あなたを襲うのは、今しかありません」

そう言って、文香は彼の胸に顔を近づけた。
しかし――。

「ただいまです」
「ふぅ、今回の仕事は、疲れてしまったわ」

そこで、プロジェクトルームに戻ってきたのは、奏とありすだった。
彼女たちは仕事終わりで疲弊しているのか、くたくたな様子だ。
しかし、それでもプロデューサーにとっては地獄に垂れてきた蜘蛛の糸のようである。


73 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 12:46:41 28yqf3KQ
「た、橘さん、速水さん!! 鷺沢さんを止めてください!!」

プロデューサーはただただ、今の状況を打開したい一心で、二人にそう呼びかけた。
そして、当人たちはというと……。
まず、文香に視線を移し、そしてプロデューサーへと視線を移し、全体を見て……。

「――けおっ」
「――熱いわね」

……赤面して、卒倒してしまった。

「橘さん!! 速水さん!!」

そうだ、忘れていた。
彼女たちは見た目や言動以上に初心でピュアなのだ。

蜘蛛の糸は所詮蜘蛛の糸であったのだ。

「ふふっ、邪魔者はいなくなりましたね」
「ど、どうすれば……っ」

しかし、そこでプロデューサーは気がついた。
部屋の出入り口である扉は、二人が開けたまましまっていなかったのである。
故に、ここから大声を出せば、恐らく助けは来るだろう。
そう思い、彼は口を開こうとするが、言葉が喉元まで出かかったところで思い留まった。

待て、待つんだと彼は自分へ呼びかける。
もし、ここで助けを呼んでしまったら、文香の名声やイメージなどに傷がついてしまうのではないだろうか。
鷺沢文香が担当しているプロデューサーを襲おうとした……字面だけでも凄いのに、それが社内に広まってしまえば、彼女の居場所が無くなってしまうのではないだろうか。
それは、駄目だ。
彼女をプロデュースする者として、それはあまりにも無責任過ぎる。
だからとは言え、このまま犯されるわけにもいかない。

「私はどうすれば」
「ふふっ……♡プロデューサーさんは、良い匂いを持っていますね。女を惑わす、魅力的な、男の臭い」

どうすれば……と、苦悩に満ちた表情を浮かべた瞬間、まさに神からの施しが……。
美城常務が偶然、通り掛かったのである。

「じょ、常務!!」

それは先ほどの蜘蛛の糸とはまるで違う、必ず千切れることの無いロープが降りてきたのだ。
プロデューサーはまるで、飼い主が帰ってきた飼い犬のような反応をし、常務の名を呼ぶ。
しかし彼女は、

「……ッチ」

舌打ちをして、扉を足蹴りで閉めて、どっか行ってしまった。
残念ながら、そもそも彼が掴める位置までロープは垂れてこなかったらしい。

「じょうむぅぅぅぅうううううううう!!!!!!!!」
「今度こそ、二人きりで、思う存分、乱れましょう。プロデューサーさん♡」

その日、情けない男の悲鳴が、会社に木霊した。


『強度の無い蜘蛛の糸』〜完〜


74 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 12:47:48 28yqf3KQ
今日はここまで
TOKIMEKIエスカレートクリアできるけど難しい……


75 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 12:51:22 PPr.ISVc
常務助けて!


76 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 12:53:41 YYoVc1d.
アニメを消化し本を見なければいけない武内Pの休日はボロボロ


77 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 12:54:49 PPr.ISVc
>>76
こんな事されてもまだ勧められた官能小説を読む武内Pは人間の鑑


78 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 12:57:18 AUKZjTxE
武内Pはなぜこうも受けが似合うのか


79 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 16:42:35 Xwp6Dw6s
アニメは2倍速再生
本は速読、ミステリは最終章読んでから冒頭を読み始めるとか
時短術はいろいろあるから…


80 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 17:07:01 GOfdddSU
>「いやです。離したら、プロデューサーさんを美しくすることが、出来ないではありませんか」
うわぁこれはimgの怪文書文香ですね、間違いない・・・


81 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/15(火) 17:16:57 x9nPDCUE
文香「お前を芸術品に仕立や・・・仕立てあげてやんだよ!お前をげいじゅつし・・・品にしたんだよ!お前を芸術品にしてやるよ(妥協)」


かわいい(錯乱)


82 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/16(水) 02:31:44 06ztELXM
第6話『ギャルってさ、なんなんだろう?』

時代は流れる。
時が流れていくうちに何もかもが流れ去っていく。
記憶もそうであるし、そして何よりも流行もその内の一つだろう。
学生時代、そして思い出が美化されがちな少年少女の時代は、確かに年々入れ替わる流行を抑えることができたはずだ。
コミュニケーションに役立つこともあるし、何よりも共通の話題ができる。
ただ、それは大人になっても変わらないが、徐々に流行を追うのが億劫になったり、面倒くさく感じたりするのである。
そして、プロデューサーもその一人『だった』。
何故、『だった』という過去形なのかと言えば、それはアイドルをプロデュースする上で流行というのが切っても切り離すことの出来ない鍵なのである。

「……やはり、ばいぶすをあげる? というのが、よくわかりませんね」

ただ、流行というのは得てして理解できるものと理解できないものとの両端が激しく、最もそれが顕著に表れているのが、『言葉』だろう。
もっと細分化して言えば『ギャル語』だ。

「ん? 激おこぷんぷん丸が無い。……もしかして、もう流行遅れ?」

と、最近覚えた流行語が廃れていることに驚いていると、背後から声が掛かった。

「プロデューサーちゃん!! 何をしてるのかなっ、かな?」

プロデューサーがその声に反応をして、背後へ振り向くと、そこには正に現在の彼にはタイムリーなアイドル、大槻唯がなんとも興味深そうな目をしながら彼の見ている雑誌を覗き込んでいた。

「あっ、それってもしかしてHR? ゆいもよく読んでるんだよねっ♪。でも、Pちゃんが呼んでるなんて、ちょーっと意外かな?」
「……いつも読んでいるわけではありません。ただ、流行というものを把握しないといけないので」

彼女の疑問にそう返すと、唯は納得したようで、大きく頷いた。

「なるほどなるほどー☆お仕事の為に、こういうの読んでるんだねっ。いやー、勤勉だねー。やっぱ、そういう番組とか作ったりしちゃうの?」
「少し、違いますね。既存の番組に……例えば、とときら学園、知っていますか?」
「莉嘉ちゃんとか出てるアレでしょっ?」
「はい。例えば、とときら学園は基本的に番組内で様々な企画を行うといった内容ですが、ここには双葉さんと諸星さんが担当するコーナーである『あんきらんきんぐ』というコーナーがあり、そこに強く反映することも出来ます。それに、とときら学園を視聴している年齢層は、凡そ小学生から中学生の少女が大半であると考えられますので、このようなギャル系の流行が、背伸びしたい年頃、とでもいうのでしょうか。そういう年齢層に人気なのです」
「へー、案外よく考えられてるんだね♪」


83 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/16(水) 02:33:18 06ztELXM
「はい、そうしなければ、様々なエンタメ系番組が溢れている現状、このような視聴者を取り入れるような工夫をしなければ、生き残ることが出来ないのが現状です……って、大槻さん。私の顔に何かついているでしょうか?」

彼はなるべく唯に分かり易いように、何故流行を番組に取り入れる必要があるのかを説明していたところ、彼女が何も言わずに、ただただこちらを見ていることに気がついた。
ただ、彼女は彼の顔へと視線を注ぎ続ける。
そして、そのまま彼女は言った。

「いやーぁ、プロデューサーちゃんってさぁ、普段じゃあんまり喋らないけど、仕事になるとメッチャ喋るよね♪」
「あ、いえ……」

思わぬ指摘を受けたプロデューサーは、少しだけ驚き、そしてまたやってしまったと反省した。
彼は度々、友人や知人にこのようなことを指摘される。
どうもこの癖を改善したいのであるが、年を取っても治る気配は一切ない。
恥ずかしい癖で、指摘されたプロデューサーは思わず照れてしまう。

「あ、照れてる!!可愛いなぁ、うりうり☆」

そして、そんな彼を見て、何とも天真爛漫な笑顔で、唯は彼の頬を突く。
ぷにっと頬が凹み、その顔に唯が口に手を当てて何とも愉快げに笑う。
この調子だと、自分が何を言っても止めないだろうと思った彼は、成されるがままにした。

「あー……笑ったよもうっ♪。プロデューサーはギャグセンがあるねっ☆」
「……そうですか」

髪がいつも以上にボサボサとなり、突かれた頬にも爪痕が残っていたりする彼は、やっと終わったかと思いながらも、そう息を吐くように呟いた。
実は、彼女の言う流行語らしき言葉の大半を理解できていない彼だったけれども、何となく言いたいことは分かる。
これがシンデレラプロジェクト時代、蘭子で培われた会話能力であったりする。

「……はぁ、全くもう、一ヶ月分くらい笑っちゃった感じがするっ」
「はぁ」
「ふっふっふ、お礼に私が、ギャルのなんたるかを教えてあげちゃう!!」
「……それは」

願ったり叶ったりである。
文字の媒体でこういうものを学ぶよりも、流行の中で生きている当人に聞いた方が分かり易いに決まっていた。

「あの、それじゃあ、お願いできますでしょうか」
「いいよっ。龍角散のど飴1缶ね!!」
「……代金は取るのですね」
「ふふっ、当たり前なのっ♪」

まぁいい。
彼にとって、飴の1缶2缶ぐらいは、接待費として割り切ることが出来る。

「それでは……改めて、お願いできますでしょうか」


――


84 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/16(水) 02:40:30 06ztELXM
「なるほど、つまりギャルというものは、考えるものではなく、感じるものなのですね」
「その通り!! さすがプロデューサーちゃん♪。飲み込みが早いねっ」

一時間にも及ぶギャルとは何なのか、という講義は、彼にとってかなり有意義なものだったと言ってもよいだろう。
唯の言葉は何ともふわふわとしていて意味を噛み砕いて理解する必要があったけれども、それでも彼女のギャル像というものを把握することが出来ただけでも、この時間は無駄なものではなかった。
ただ、彼には今までの彼女の話を聞いて、一つの疑問が浮かび上がった。

「質問、よいでしょうか?」
「ふふーん、いいよっ♪。何でも聞いて聞いてー!」
「……その、ギャル? になったきっかけというものはなんでしょうか?」
「ギャルのきっかけ……かぁ」

彼女はそう呟き、腕を組んでうんうんと唸った。
ただ、彼はそこでふと違和感を覚えたのである。
うんうんと唸っている彼女の姿はどこか演技染みていると、感じたのだ。
ただ、それは確証なんて無い違和感であり、プロデューサーがそれに指摘することもなかった。
そんな彼を横目に、唯は自分の中で結論が出たのか組んでいた腕を解いた。

「別に、ゆいはさ、なりたくてなったわけじゃないんだよね」
「それは……どういうことですか?」
「うーん、なんていうのかなー……。ゆいはさ、仲良い友だちと一緒にゆるーく過ごしてきたの。それで渋谷とか原宿とかで遊ぶわけでしょ。話題のクレープのお店とか、古着屋とか、ぐるぐるーって回ってさ。お洒落が楽しくなって、メイクだって凝るようになって、ネイルアートとかも時たましちゃったりしてさ」
「そうなんですか」
「うんっ。別にギャルになって後悔なんてしてないけどね〜」

そして、彼女は言葉を一旦途切らせた。
そこになんらかの意図があるのか、プロデューサーにはわからない。
ただ、彼女の顔に浮かんでいる表情に、彼は微かな憂いを感じ取り、同時に何処か諦めのついたような感情を受け取ることも出来た。
何故、そんな印象を受けたのか、彼自身にも説明はつかない。
暫く、彼女は少しだけ言葉を途切らせ、「でも」と言葉を紡ぐ。

「もしも、ゆいがこんな感じじゃなかったらなーって思う時が、ときどきあるんだ〜」
「大槻さんが、ですか?」
「ふふっ、ちょっと意外だった?」
「……正直に言わせていただければ、そうです」
「本当に正直なんだねっ。ま、いいけどさ」

そう言って、彼女は少しだけ天井へと視線を向ける。
そこには何も無いが、きっと彼女には何か見えているのかもしれない。
彼には、唯が帯びている雰囲気を感じ、そのように思った。
彼女は続ける。


85 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/16(水) 02:46:32 06ztELXM
「ゆいが頑張って勉強して、ガリ勉くんになって、お洒落なんてしなくて、ネイルアートなんて縁の無い丸い爪にしちゃって、アクセとか付けなくて、その他いろいろ、しなかったら、なんて考えちゃう」
「それで……どう、結論付くのでしょうか?」
「聞きたい?」

唯は天邪鬼のように笑って、プロデューサーへそう問い掛けた。
間を空けて頷くと、彼女は彼へ背を向けたのだった。

「別に、そんな感じなゆいも悪くないんじゃないかって、思うんだ。真面目な生活送って、真面目な勉強して、真面目な恋もしちゃって……なんて。そんなゆい、どう思う?」
「……よいと思います」

唯の質問にどのように答えればよいかわからない彼は、ただただ曖昧な答えを返した。
すると、彼女は、俯いた。
俯いて、呟いた。

「時々ね、ゆい、言われるんだ。『ギャルって軽そう』とか『絶対に尻軽』だとか」

唯の口から漏れ出たその音を聞いた瞬間に、プロデューサーは察した。
これは、彼女から溢れ出た不満なのだと。
開こうとした口は自然と閉じ、彼は聞きに徹することにした。
毒は一度全部吐き出した方が、良いだろうから。

「……まぁ、そう言われるのもわかるんだけどね」

彼女の口調は、先ほどのような語り聞かせるようなものから、自嘲へと変化する。
己を嘲笑するように、彼女は言葉を己へと投げ付ける。

「ギャルって実際、そういう子が多いし。ビッチってやつ? うん、そういうヤツとはあんまし付き合わないけど、それでもいるのはいるよ? ゆいはそんなのしないけどね」
「……大槻さん」
「でも、でもだよ? ゆいは、違うって思ってるんだけど、他人から見たら、一緒なんだよ。それって、ちょっと理不尽なんじゃないのかな? ちょっと肌晒してお洒落して、メイク頑張って、ネイルアートも頑張って、で、それ? もっと綺麗とかお洒落だとか褒め言葉があるじゃん。なのに、それなのっていう。それに、そういう人に限ってさ、プロジェクトクローネに入ったら入ったで『やっぱりそういうのじゃなかったんだー』とか『気品があるよなー』って」
「……」
「それって身勝手じゃないの? 勝手にギャルだなんだって叫んでさ、ちょっと雰囲気変えたらコロッと言ったこと変えて……それって結局、こういうのじゃなくてもいいじゃん。それって――」

――ゆいじゃなくても、別にいいんじゃん。


86 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/16(水) 02:49:05 06ztELXM
彼女はそう話を締め括った。
辛そうな雰囲気は別に無く、別段悲壮なものでもない。
ただ、彼女は達観しているのだと思った。
達観しているから、許容が出来るのだ。
『ギャルだからそういう目で見られても仕方が無い』という固定観念を諦めてしまっているのだ。
今の言葉の羅列も、きっとただの愚痴なのだろう。
酒の席で思わず口を滑らしてしまうような、そんなどうでもいい打ち捨てられた言葉。
ギャルについて問われ、改めて自分について考えて、そして考えてしまったがために漏れ出てしまった余り物。
……プロデューサーは、ただ、思ったことを口にした。

「私は……あなたの姿は、素敵だと思います」
「ふふっ、ありがとっ。でもさ、慰めるんだったらもーとっ、いっぱい言葉を掛けなきゃね」
「……これ以上何かを言ってしまっても、同情になってしまいます。それは、いけません」
「なんで?」
「……私はあなたではありません。それにギャルであるわけでもありません。だから、どのような気持ちであなたがどう過ごしてきた、そのようなものは想像でしか語ることができません。それは……あなたにとってあまりにも失礼です」

そう、男性であり、堅物な生活を送ってきた彼には想像もつかない世界なのだ。
きっと、彼女がどんなに辛い思いをしてきたのかは想像できる。
……しかしそれは所詮フィクションでしかなく、リアリティーはあってもリアルではない。
それに、この話は同情するものでも、無い。

「だから、私は事実をあなたに伝えるのみです。……あなたがお洒落をして、ネイルアートで飾った指でピースサインを作り、頑張って施したメイクで形作る笑顔は……とても素敵だと、思います。星の輝きなどにも負けないほど、ずっと」

彼はただ本心を告げた。
自分の飾りっ気のない言葉を送るしか、彼女を慰める方法など見つからなかった。
それが彼女の心に届いたのかはわからない。
ただ、彼の言葉を聞いた唯はただ、空調の雑音に紛れそうな声で、呟いた。

――ありがとっ、と。


『ギャルってさ、なんなんだろ?』〜完〜


87 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/16(水) 02:51:36 06ztELXM
一旦終わり
深夜テンションで書いたから、性格も言葉遣いもエミュれなかったかも
安易なシリアス♂入れてすみません


88 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/16(水) 02:56:49 tz0pLpY6
乙倉くん
今回も素晴らしかったです
とりあえずお茶でも飲んでください


89 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/16(水) 06:49:32 C7NVaLN2
乙シャス!
文香が一際酷いですねこれ


90 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/16(水) 13:37:41 fyGanMw2
ゆいちゃんは可愛いからそれでいいんだ!


91 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/16(水) 18:08:57 Y4cEw.qs
しかし奏クソザコ過ぎませんかね…
結局ふみふみの件は常務が去った後どうなったのか


92 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 00:37:38 J3Gv6PSc
第7話『ありがとうって、どう伝えればいいんだろうね♪』


「フランスの洋菓子特集……ですか?」
「うんうん♪」

プロデューサーはフレデリカに渡された番組の台本の題字を呟き、それに彼女は頷く。

「アタシ、フランス人みたいな感じだがら、抜擢されたみたいなぁ? アハハ、シルブプレ?」
「シルブプレ? それはフランス語か何かなのでしょうか?」
「フランス語はフランス語なんじゃないかな? アタシもよく知らないけど」
「……はぁ」

フレデリカの何とも要領を得ない返事に、彼もまた曖昧な答えを返すしかなかった。
と、困惑している彼に、フレデリカは身を乗り出す。

「でさでさっ、ケーキビュッフェいかない?」
「……それは、なぜ」
「お菓子特集だから」
「ケーキは、お菓子とはまた違うものなのでは? 今回の企画はフランスの洋菓子、ですよね?」
「もうっ、そんなこと気にしない気にしないっ。ただケーキが食べたいだ〜けっ」
「……」

というわけで、ケーキビュッフェに行くことになった。

――


93 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 00:39:41 J3Gv6PSc
「……それで、なんで私も一緒にここに来ているのでしょうか。プロデューサーさん」

フレデリカとなんやかんやあって行くことになったケーキバイキングは新宿にあった。
そして、「ふんふふーん♪」と鼻歌を歌って先導しているフレデリカと、そんな彼女の後ろについている二人。
一人はフレデリカのケーキビュッフェに誘われたプロデューサーであり、もう一人は彼にスケットを頼まれたありすであった。
ありすはと言えば、もう困惑しっぱなしである。
昨日、明日はオフだから何をしようか悩んでいるところにプロデューサーから電話があって『明日、ケーキビュッフェに一緒に行きませんか』などと言われたものだから舞い上がったのだ。
――こ、これってもしかしなくてもデートなのではっ!?
そんなことを思いながら、久々に夜更かしをするほどに洋服選びに時間を使い、遠足で寝られない小学生のようにワクワクとした心持ちでいたのだ。
……なのに、指定された目的地に着いたらいるのは目の前の金髪だ。
しかも、

「ふふふーん、ありすちゃんっ。今日は気合が入ってるねっ。プロデューサーのためにおめかししてきたのかな〜、それともアタシのためにおめかしをしてきたのかな〜? ふふふっ」

なんて揶揄われるし。
フレデリカの方が自分よりも大人びて洒落た服装をしていたし。
気分はもう最悪であった。

「すみません。……その、私一人では、警察のお世話になる可能性がありまして……」
「もうっ、普通に女の子と歩いてるだけで補導されるわけないじゃないですか……ないですよね?」

プロデューサーはありすの言葉に気まず気に視線を逸らした。
……あるんだ。
内心でその事実に驚きながらも、確かに彼と女の子の組み合わせは、側から見れば『そういう関係』に見えなくもない。
ありすは大人びているから詳しいのだ。
ませている、とも言えるけれども。

「……しかし、本当に今日は付き合って頂きありがとうございました」

彼はそう言って恭しく礼を言う。
そんな風に頭を下げられては、そんな強く出ることもできないではないか。
それにありすもなんだかんだ言ってケーキビュッフェが楽しみであるのだ。
彼と二人だけで来ることはできなかったけれども、もうそれは仕方がないとさっき割り切ったのだ。
これこそできる大人の女である。


94 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 00:41:13 J3Gv6PSc
「ふふーん、大丈夫ですよ。私はいじいじしないんです。なんたって、大人の女ですから!!」
「そういう所、子供っぽいと思うっちゃうアタシなのでありましたー」
「あー!! 子供っぽいって言わないで下さいっ。子どもだと思う方が子どもなんですよっ」
「ふふーん、そうなんだ。……じゃあ、アタシは子どもだから、プロデューサーに甘えちゃったり。とりゃぁっ」
「うおっ。み、宮本さん」
「ふっふっふ、フレちゃんケーキバイキングに着くまで、絶対に離さないぞい」

フレデリカはあろうことは、人目を憚ることもしないでプロデューサーの腕に抱き付いた。
なんと羨ま……恥ずかしい行為なのだろう。
これは注意せねばなるまい。
――大人の私がっ!!

「は、ハレンチです!!」
「子どもの特権その1っ。大人に甘えてもいいんだよ〜。わかんないけど」
「むむむむむっ、だ、だったら私も」
「あれれー、ありすちゃんは、大人じゃなかったのかな? かなかな?」
「むむむむむーっ!!!!!」

ほっぺを膨らませてそう唸るありす。
確かに自分は大人だ。
……大人だけれども、まぁ、年齢的に子どもだから。
そんなことを考えながら、ありすは思い切ってフレデリカが抱きついているとはもう反対の手を、きゅっと握った。

「た、橘さん?」
「私は、大人ですけどっ、大人ですけどっ、子どもに戻りたい時もあるんですっ」
「ふっふっふ、プロデューサーは、両手に花だねっ。っよ、色男」
「……その宮本さん、橘さん、あの、他の方々が見られているので、止めていただければ有難いのですが」
「だいじょうーぶ。ばっち変装してるからアタシがアタシだって誰も気づかないってば」
「そ、そうです」
「そ、そういう問題ではなくて……」
「お、もしかして照れてるー? アタシとありすちゃんに挟まれて照れてるー? んもー可愛いなぁ♪」
「か、可愛くなどは……っ」

ありすとフレデリカに挟まれたプロデューサーは明らかに狼狽していた。
なんというのだろうか。
その姿がなんともありすには愛おしく見えて、ちょっと手を強く握ってみたりする。
すると、彼がこっちに戸惑った視線を送ってきて、ちょっと調子に乗り過ぎたかななんて考える。
ちょっと恥ずかしくて、顔が熱くなるのを感じた。
でも、そんな裾を掴んでいるありすの手を、プロデューサーは優しくその大きくて無骨な手のひらで、包みあげた。

「この人混みの中です。離れたら大変なので、手を繋ぎましょう」

彼はそう言って苦笑する。

――子供扱いされてる。

そう思ったありすではあったが、今はちょっとだけそれを許してもいいのではないかと、そう思った。

――


95 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 00:43:17 J3Gv6PSc
さてさて、なんやかんやありまして、ありすたち御一行は目的のケーキビュッフェへと到着した。
なんとも今風のオシャレな内装であり、正直プロデューサーの外見は、オシャレな今時女子の中で明らかに浮いていた。
彼が居心地悪そうにしているのを、ありすは苦笑してしまう。

「あ、予約してた宮本フレデリカですけどー」

プロデューサーとありすが店の雰囲気に多少たじろいでいる間、彼女は彼女でこのような場所になれているのだろうか。
店員に慣れた口調でそう告げると、話掛けられた店員は少し驚いたように見える。
けれど、「あ、日本語話せるからだいじょーぶ」と彼女が自分から言うとホッとしたのか、「どうぞこちらに」と3人を窓際の席へと案内した。

「それにしても、オシャンティーなお店だよねー。なんかちょーいっぱいケーキ並んでるぅ♪」
「……取り敢えず、コースを注文しましょうか。ここは、私が出しますので」

彼はそう言いながら、コートのポケットから財布を取り出し、中に入っている札を勘定しながらもそのようなことを口にした。
さも当たり前のように言い切ったので、ちょっとぽかんとしてから、それは悪いという思いがせり上がってくる。

「ぷ、プロデューサーさん。それはちょっと」
「そうだよっ。アタシが誘ったんだし、アタシが全部出すとかしなきゃっ」

フレデリカも、さすがに誘った当人であるために、奢ってもらうことには抵抗があるようだ。
しかし、プロデューサーは食い下がる。

「……いいえ、ここは私が。お二人にお金を出させるような真似をさせるわけにはいきません」
「でもでも――」
「宮本さん、橘さん。……ここは、私の顔を立てると思って、お願いできないでしょうか」

そう言われてしまえば、彼女たちはこのことについてこれ以上言及することはできなかった。
彼は口を閉ざしてしまった二人に苦笑しながらも、「お二人でメニューを決めてくださって構いません」と言い、メニュー表をこっちに渡してきた。
ありすとフレデリカは暫し、そのメニュー表へと視線を寄越し、そして互いに視線をやった。
フレデリカがなんとも悪戯っぽく笑みを浮かべ、ありすも今だけは、彼女の気持ちが理解できたような気がした。

「「じゃあ、この一番高いダイヤモンドコース」」
「……」

自分たちの気持ちをわかってくれないのであれば、それ相応の代償でも払ってもらおう。
フレデリカとありすは、プロデューサーに向けて小悪魔のような笑みを浮かべたのであり、彼はいつものように首に手を当てた。

――


96 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 00:44:16 J3Gv6PSc
「ふーっん、ここの苺ケーキは美味しいですねっ!!」
「おっほー、シルブプレシルブプレ。うーん、中々に美味しいねっ。フランスでこんなもの食べたことナッシング。ま、覚えてないんだけど」
「……確かに、これは美味しいですね」

ダイヤモンドコースを注文してからありすたちは、色々なケーキを頬張った。
ありすはと言えば、苺をベースとしたケーキをひたすら食べている。
ふむ、やっぱり苺は最高ですね。
この素朴な照光っている苺が、生クリームの素朴な甘さを引き立てています。
うーん、やっぱり苺は最高ですね。
なんてことを考えながらも、パクパクと頬張る。
そしてふと、プロデューサーはどんな表情を浮かべているのだろうかと気になり、ちょっと視線を彼の方へと向けてみると、ありすたちとは対照的に、何処か苦しげな印象を受けた。
体調でも悪いのだろうか。

「あの、プロデューサーさん……大丈夫ですか?」
「……いえ、お気になさらず」
「でも、ちょっと体調が悪そうですよ?」
「……別に体調が悪いわけではないのです。この年になると、ケーキのような甘いものを食べ過ぎてしまうと、少し胃もたれと胸焼けが」
「プロデューサーさんって、思いの外、おじさんなんですね」

ありすが思わず感じたことを口に出すと、彼は苦笑した。

「昔は、こういう類のものを食べることが出来たのですが……どうも最近はこういうものにめっきり弱くなってしまって」
「そうなんですか……ヨーグルト取ってきましょうか?」
「あ、いえ……お気遣いは結構で――」

彼がなんともいつも通りの謙遜の言葉を口にしようとした時だった。
携帯のベルが鳴ったのである。
ありすの着信音ではないし、フレデリカもちょっと驚いているぐらいでケーキを食べている手を止めていないことから、どうやらプロデューサーの携帯らしい。

「あの、すみませんが一旦失礼させてもらいます」

そう断って、プロデューサーは携帯を耳に当てながら、店の外へと出て行ってしまった。
仕事の電話なのだろうか。
忙しい身の彼のことだから、ありえない話ではない。
だとしたら、もしかして急な仕事が入ったとかそういう連絡かも。

「プロデューサーさんは、忙しそうですね」
「……そーだね」


97 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 00:46:21 J3Gv6PSc
店の出口にて頭をへこへこと下げているプロデューサーを見ながら、ありすがフレデリカにそう問いかけると、少しだけ不機嫌そうな声でそう返事をする。
ありすはそれが、意外だった。
いつも明るい雰囲気で周子とおちゃらけた行動を取っている、というのがありすの中での彼女の人物像だ。
だが、今のフレデリカはなんというか、本当に子どものように頬を膨らませて拗ねている。
どうしたのだろうか。
それについて問い掛けようとすると、タイミングを計ったかのようにプロデューサーが戻ってきた。
だが、その顔には申し訳ないといった雰囲気で塗れており、これは予感が的中したんだなとありすに思わせる。

「その、すみません。急遽、仕事が入ってしまいまして……」
「そうなんですか。……ちょっと残念です。でも、プロデューサーさんは忙しい身ですので、仕方がありませんね」
「本当に申し訳ございません。後日、この埋め合わせはしますので……。あ、ここにブッフェの代金を置いておきます。おつりは好きに使って構いませんので」
「え、あ――ちょっと」

本当に彼にとって急ぎの用事なのか、ありすの制止にも耳を傾けることなく、彼は店の外へと出て行ってしまった。
扉が開閉時になる鈴の音が妙に耳についた。

「……行ってしまいましたね」
「……あーあ、なんか今日は駄目だなーっ」

フレデリカはそう言って、机に突っ伏してしまった。
そんな彼女を見て、ありすはふといつもでは思い浮かばないような疑問が、頭の中に浮かんできた。
少しだけそれを口に出すことを躊躇って、結局尋ねることにした。

「あの、フレデリカさん。なんでケーキビュッフェに行こうなんて提案したんですか? いつものあなたであれば、あんまり意味の無さそうな行動ですけど」

そう、いつもフレデリカの行動の大半は意味がない。
それは先ほどまで、今日も同じように意味も何も無いものだと思っていたのだが、どうもそれが違うということに先ほど気がついた。
より正確に言えば、プロデューサーがケーキを食べて体調を悪くしているところから。

「ふふっ、今日のありすちゃんは、ちょっち冴えてるね♪。……今日は、あの堅物強面大男ちゃんを、労ってあげようって思ってたんだー」

フレデリカはプロデューサーが出て行った扉へ寂しげな視線を向けながらそう述べる。
労ってあげるというのは、つまりそういうことなのだろう。
彼女は適当なことしか普段口にしないが、だからと言って法螺吹きなわけではない。
本心はちゃんと本心として話すことは、まだ数ヶ月の付き合いである彼女でも分かっていた。


98 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 00:47:44 J3Gv6PSc
「なーんか、最近トラブルばっかでしょ? フミカちゃんがプロデューサーのこと襲ったり、なんてこともあったし」
「ありましたね。私は何故か倒れていて記憶が無いのですけど」
「ふんふんっ、まぁ、アタシとシューコちゃんのコンビネーションで見事フミカちゃんを撃退!! したわけなんだけど……よくよくプロデューサーから話を聞いてみると、迷惑掛けられっぱなしみたいな感じ」
「そうなん、ですか?」
「そうそう♪ だから、アタシも普段迷惑掛けてるから、掛けてるなりにってやつ? それで、アーニャちゃんがちょっと前に言ってた『クレープを美味しそうに食べてたよー』って言葉聞いて、これだーっ♪って思ったんだけどねー」

――あんまし喜んでもらえなかったし、奢ろうとしたらゴチになっちゃったし。

普段のフレデリカから感じ取ることの出来ない雰囲気に、ありすは困惑した。
あ、この人もこんな風に凹むんだ、といったかんじで。
ちょっと意外だった。
いつもポジティブで自由奔放であったから余計に。

「あ、ありすちゃん。ちょっと意外って顔してるね。ふふっ、アタシもなんだ」
「え、それはどういうことなんですか?」
「アタシも、ちょっと自分が落ち込んでるのが、意外だったりして」

机に突っ伏しながらも、フレデリカは横にいるありすへと顔を向け苦笑する。

「いつもだったら言えるんだけどなー。常務ちゃん揶揄ってるときとかシューコちゃんと絡んでる時とか、もう、なんて言うのかな、ビスキュイ・ド・サヴォワって感じ? でもでも、プロデューサーの前だとちょーっと気恥ずかしくなっちゃった。言葉って難しいね♪」
「……だったら、言葉で伝えようとしなければ、いいんじゃないんですか?」
「ん? それってどういう――」
「……贈り物、なんてのはどうでしょうか?」

ありすは不敵な笑みを浮かべた。
そして、プロデューサーが置いて行った福沢諭吉を手に取る。

「幸い、資金源はあります。プロデューサーさんはお釣りを自由に使ってもいいと言っていましたからね。ちょっと罪悪感はありますが。……言葉じゃ伝えられない感謝の気持ちも、これで、湾曲もせずに、真っ直ぐ伝えられるんじゃないですか?」


99 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 00:50:14 J3Gv6PSc
言葉で無理に感謝を伝えようとしなくてもいい。
感謝の念というものは、色んなものに姿形を変えるのだ。
それこそ、フレデリカのように感謝を言葉に込めようとするのもアリだが、役立つものをプレゼントするというのも、また一興だろう。
ありすがそのように提案すると、フレデリカは少しだけキョトンとした顔をして、それから何とも楽しげな笑顔を浮かべ、

「ありすちゃんっ、ナイスアイディア!!」

と、言いながら、ありすへと抱き付いてきた。

「え、えぇ、ちょっと!?」
「ふふっ、フランス人流スキンシップ♪」
「ちょっと、恥ずかしいですって!!」
「ふふっ、よいではないかよいではないか〜」
「よくありませんっ」

と、ちょっと興奮していたフレデリカを諌めること数分。
やっとフレデリカは彼女のことを解放した。

「ちょっと、人前で何をやっているんですか。……はぁ」
「いやー、ごめんね♪ちょっと、ありすちゃんの提案が正に妙案!!って感じだったから」
「……まぁ、褒められて悪い気はしませんけど」
「ふふっ、じゃあさ、アタシがありすちゃんにとって嬉しい言葉、言ってあげよっか?」
「……何ですか。急に。――でも、まぁ、言ってみてください」
「ふふーん♪ やっぱありすちゃんは可愛いなぁ。でも……」

――さっきのありすちゃんは、最高に大人っぽかったよ。

フレデリカはそう言って、いつもの笑みをただ浮かべ、少し呆然としていたありすも今日で一番の笑顔を浮かべた。
この後、お店から出た二人は街へ繰り出し、ありすのiPadを使いながらも、プロデューサーのためにネクタイを買ってあげた。
ありすの趣味を尊重して、ちょっと薄いピンクのギリギリ苺を彷彿とさせる色合いのネクタイだ。
そして、今日の一件のおかげで、フレデリカとありすの絆が深まったのは、言うまでもないだろう。

『ありがとうって、どう伝えればいいのかな♪』〜完〜


100 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 00:51:16 J3Gv6PSc
今日の分はこれで終わり
コメディ書こうとしたらいつの間にかこんな感じになってた


101 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 03:14:02 Tff5aq4Y
乙倉くん
高田フレデリカ純次ちゃんをどうするのか楽しみだったからすげぇ良かったゾ〜(小並感)


102 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 03:23:41 VvSsxBeI
どうなるかと身構えてたら連続でいい話が来て草
フレちゃんとありすのコンビもいいですね


103 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 07:29:22 b6IEiJxE
この作品も勿論良いのですが、
こっちが一段落したら、やっぱりドスケベご自愛SSを完成させてほしいですね
気長に待ってますけど


104 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 17:22:56 J3Gv6PSc
第8話『日常の一コマ』


「プロデューサー、一つ気になってること聞いてもいーい?」

夕焼けがあたりを赤く染める午後5時あたりの頃合いだっただろうか。
プロデューサーが少しだけ小休憩を取り、窓の外に広がる紅の街並みへと視線を注いでいると、ここ一週間で聞き慣れた声が掛かった。
顔を、声がした方へと向けてみると、そこには周子がデスクに寄り掛かって立っていた。

「何でしょうか」
「プロデューサーってさ、性欲とかあるのかなーって」

この子はいきなり何を言っているのだろうか。
いつもの首に手をあてる仕草を無意識でしながら、どうして彼女はそのようなことを聞いてきたのだろうと考えてみる。
……全く理由なんて想像がつかない。
そもそも周子が普段考えていることすら理解できないのに、突飛な質問をする時の心境など把握のしようがなかった。

「……あの、いきなりどうしたのでしょうか」

結局、プロデューサーは彼女にそう理由を問うた。
すると、「ふふふ」と周子は笑う。
さも意味有り気な笑み。
だが、彼女のノリはフレデリカと大体一緒で、行動の大半に意味が無かったりする。
やはりどう彼女と接すればいいのか困ってしまう。

「いやー、プロデューサーってさ、可愛い女の子といっぱい触れ合ってるけど、あんまりいやらしー目で見ないなーみたいな。そこんところ実際どんな感じなのよ」

そんな彼に、ずいっと彼女は身を乗り出しながら、そんなことを尋ねる。
確かに、自分の職業柄多くの可愛らしい少女とコミュニケーションをとることも多く、尚且つグラビアなど、普通の男性では性的興奮を催す機会が多いのも確かである。
しかし、だからと言って彼が邪な感情を抱くかと言えば、それも間違いだ。

「塩見さん。私は……そのような感情はあまり」
「えー、でもこの間は奏ちゃんにキスされそうになって嬉しかったんじゃないの」
「……彼女の場合、コミュニケーションやスキンシップの代わりとしてキスを行っています。だから、彼女にとっても珍しいことではなく、確かに驚きはしましたが、嬉しいという感じでは……」
「文香ちゃんに襲われたのは? そのまま川の流れのようにー、なんて感じにはならなかったん?」
「……確かに、鷺沢さんにそのような対象であると見られているのは、大変光栄なものだと思いますが……それでも彼女と、その、性的な接触をするつもりはありません」

確かに、あの瞬間の文香はとても色香漂う妖艶な女性だと思い、心臓が波打ったのを自覚したが、それでも性的に興奮したということはない。
いや、今思えば、あの時の胸の動悸は恐らく、性的な感情は一切関係ない、どちらかと言えば恐怖心からくるものではなかっただろうか。
あの瞬間の、文香の視線は、明らかに獲物を捕らえるようとする獅子だったと言えよう。
と、そのように周子の質問に礼儀正しく答えていくと、周子の笑みが段々と訝しげなものへと変わっていった。


105 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 17:25:03 J3Gv6PSc
「……ねぇ、プロデューサーって性欲ある? インポだったりしないの?」
「アイドルが、そのような言葉を使うべきではありません」
「インポかそうじゃないか言ってくれたらあたしもインポインポ言うの止めてあげよっかなー?」

そうクスクスと笑う周子に、プロデューサーはため息を吐く。
自分が恥を被れば、彼女が下品な言葉を吐くのを止めるのだろう。
渋々と彼は答えた。

「……その、私は至って普通です。性欲だってあります」
「だったら、ホモ?」
「ホモでもありません」
「そこは即答なんだ」
「否定しなければいけないことですから」
「肩揉んであげよっか?」
「……いきなり、なぜ?」
「プロデューサーを労いたいから。それとも、お堅いプロデューサーさんは、肩揉みの接触も駄目なのかな?」
「そういうわけでは」
「じゃあ、肩揉みOK?」
「……それじゃあ、お願いします」
「りょうかーい」

なんとも気さくな返事だとプロデューサーは思った。
性欲云々の話から肩揉みへと話題がシフトしたのか、話している当人の彼でもわからない。
ただ、今は特別肩が凝っていたし、それに、今彼女の誘いを断ると在らぬ噂を流されそうだと思い、素直に頷いたのである。
『プロデューサーさんはね、女の子にマッサージされちゃうと照れるほど、初心なんだーっ。お腹すいたーん』とフレデリカと話す光景が容易に想像できた。
そんな顔を渋くしているプロデューサーを横目に、周子は彼の背後へと近寄り、肩へ手を這わせ、そしてマッサージを始めた。
最初は、少しだけぎこちなさがあった手つきだった周子。
だが、それは手応えを確認していたのだろう。
マッサージを始めて数分後、彼女の手捌きが力任せのものから、技巧的なものへと変化していった。

「……おぉ、これは」
「気持ち良いでしょー。あたしのマッサージって結構評判良いんだよ。お年寄りから」


106 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 17:26:20 J3Gv6PSc
彼女の言う通り、周子の肩揉みは気持ちが良かった。
その技巧による気持ちよさに、思わず変な声が出てしまう。

「うりゃうりゃー、もっと肩を解されてしまえー」
「おぉっ、これは、塩見さん、マッサージ上手ですね……」
「ふふ、そうでしょそうでしょ。おりゃおりゃ、解され肩になっちゃえっ」
「お、ぉお……んん……これは、うっ、中々に」
「とりゃー、これでどうだ」
「んんっ、そこ……いいです」
「うっふっふ、もっと喘いじゃえ喘いじゃえ」
「んんぁ」

そんなこんなで数分後、プロデューサーの肩は周子のマッサージによって、驚くほどに軽くなっていた。
首に残っていた倦怠感も、跡形もなく無くなっている。

「あの、塩見さん。ありがとうございました」
「いやいやー、あんなに凝った肩だったから、思わず精が出ちゃったねー♪。それに、滅多に聞けないだろうプロデューサーさんの喘ぎ声も聞けちゃったしー」
「……お恥ずかしいものをお聞かせしてしまって、すみません」
「いやいやー、別にいいんだよ? ていうか、あたし的には大歓迎。珍しいものほど見たくなる聞きたくなる触りたくなるもんじゃない?」
「……男のそのような声などは、気持ち悪いだけな気がするのですが」
「さぁ? でも、プロデューサーさんのあんな『あんあん』言ってる声はレアだからねー。聞いてて損はないよ」

そういうものなのだろうか。
……そういうものなのだろう。
確かに珍しい事象に恐怖半分面白半分に近づく気持ちは理解できる。
それが自分の気持ち悪い声なのは、例外だが。

「……それでは、私は仕事に」
「はいはい、ちょっと待ってね」

と、周子の肩揉みが終わったのを契機に、仕事に戻ろうとするプロデューサーであったが、彼女はそんな彼を妨害するかのようにパソコンの前へと立ち憚った。

「あの、まだ何か」
「この周子ちゃんに肩揉みをさせておいて、何も要求されないと思っていたのかなーん」

どうやら先ほどの肩揉みは有償だったらしい。
とんだぼったくりバーみたいなものだ。
まぁ、仕方がない。
時計を確認しても、まだまだ時間は余裕がある。


107 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 17:27:46 J3Gv6PSc
「それで、私は何をすればよろしいのでしょうか」
「あたしの肩を揉んでー」
「……それは、私がでしょうか?」
「うんうん、あたしもおっぱい大きいから肩凝っちゃってさー。え、おっぱい大っきくない? もう、セクハラはやーねー」
「あの、何も言って無いのですが」
「まぁまぁ、とにかくあたしも肩凝ってるから、肩揉んでよね。そらそらどういたどいた」

周子はそう言って、プロデューサーを強制的に椅子から退かすと、今度はそこにどかっと周子が座った。

「おぉ、これがプロデューサーさんの椅子かー。中々に良いもんを持ってるねー。まぁ、この椅子に座ったことなんて幾らでもあるんだけど」
「……はぁ」
「ささぁ、早く肩を揉んでくれないー」

そう足をばたつかせながら頼んでくる周子に、最初は当惑した彼だった。
いつも、フレデリカと一緒に揶揄ってくるし、問い掛けてくる内容の大半は意味も無いので、少しだけとっつき辛さを感じていたのは事実だ。
だが、今は違う。
今の彼には、彼女の中に少しだけ年頃の少女らしさを見出したのである。
彼は思わず微笑ましくなり、その感情が表へと出てしまったほどだ。

「何笑ってんのー。早く肩を揉んで揉んで」
「わかりました」

彼は催促してくる周子に、少しだけ微笑みながら、彼女の肩へと手を伸ばし、マッサージをし始める。


108 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 17:28:34 J3Gv6PSc
「ねぇねぇ、この後ちょっとカフェに行かない? お腹すいたーん」
「すみません。まだ、仕事が残っていますので」
「何時に終わりそうな感じ?」
「……恐らく、6時半にはプレゼンテーション用の資料が完成します。しかし、もうその頃には塩見さんは帰宅なさっているのでは?」
「だいじょうぶだいじょうぶ。あたしとしては、プロデューサーさんとご飯を食べることの方が大事だから」
「……そうですか。それでは、なるべく早く、仕事を終わらせますので、待ってもらっていて構いませんか?」
「お、意外だなー。断られると思ってたけど」

確かに、以前の彼では断っていたかもしれない。
だが、彼はアイドルと個人間で話し合う重要性というものも、今では理解できるつもりだった。

「コミュニケーションは大事です」
「それが、一週間限定だったとしても?」
「はい」

それこそ、一度築いた絆に、期間などありはしない。
プロデューサーはそんな想いを胸に、周子の問い掛けに即答すると、彼女は何とも楽し気に吹き出した。

「ふふっ、全くプロデューサーさんには参っちゃうなー。そんな言葉を掛けて、女の子を今まで何人落としてきたんやら」
「……そんなことはありません」
「でも、女の子と付き合ったことはあるんでしょ?」
「まぁ、それなりには」
「だったら説得力無いじゃん」
「……冗談は、止めてください」
「あいあい、ほら、手を動かしてー」
「わかりました」

そうやって時間は過ぎていく。
夕日が沈み、夜の帳が下りてくるのは、それから程なくして数分後の話であった。


『日常の一コマ』〜完〜


109 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 17:30:11 J3Gv6PSc
今日のぶん終わり、次回で最後
ご自愛SSはこれ終わったら再開しますので、安心してください
エロSSを書いていると、脳が融解して耳から流れ出そうになるのです


110 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 17:36:39 .OzAwqtY
ふーん…周子の肩は揉むんだ…


111 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 17:58:15 gjvJ8LO.
ほのぼの周子を・・・最高やな!


112 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/17(木) 18:13:03 Bal0Vdgk
乙倉くん
シューコ純次がクローネの良心だったとは座セに異常さが際立ちますね…


113 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 01:48:04 9oyV6XuA
最終話   『また会えるから寂しくはない』



   時間が過ぎるというのは、あっという間なものだとプロデューサーは思った。

   シンデレラプロジェクトにて、謹慎処分を下された5人の少女たちを皮切りに、何故かプロジェクトクローネを一週間だけ担当することになった彼だった。

   最初はどうなることか、本当に心配だった。

   自分のような不肖の身で、常務が選別した子たちを上手くプロデュースすることが出来るのか。

   そんな心配が頭を擡げていたように思える。

   けれど、そんな心配は無用で、プロジェクトクローネの8人は、部外者であるにも関わらず自分のことをよくしてくれた。

   確かに一週間という期間では少しだけ多過ぎるほどにハプニングがあったりしたわけだけれども、それだって良い思い出となり得るだろう。

   それに、彼女たちとは別に別れたわけではないのだ。

   同じ会社にいることもあるのだから、顔を付き合わせることもあるはずだ。

   ならば、その時はまた笑い合おう。

   そういう未来だってあるはずだ。



   ――


114 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 01:50:16 9oyV6XuA
武内P「……」zzz


カラダシバリアゲー


文香「うふふっ、プロデューサーさん……眠っていますね」


文香「プロデューサーさん、起きないと、私に犯されてしまいますよ?」


文香「……反応が無いと、少しだけ、寂しいですね」


文香「でも、本当に成功して、よかったです」


文香「あなたも、私が、あなたのことを犯すことを、常日頃考えていたとは、きっと思いもしなかったでしょうね……」


文香「いつも通りの日々。本を捲って、あなたはただ仕事に励む」


文香「皆さんがあなたと話している脇で、私はただ本を読む」


文香「でも、その内には、とても醜くて美しい愛憎が渦巻いていたんですよ?」


文香「……私はずーっと、あなたを頭の中で、何回も何回も、してきたんです」サスサス


文香「大丈夫です。きっと、気持ち良いに決まってます」サスサス


文香「……やっと、この時が、来たんです」ハァハァサスサス


文香「プロデューサーさんを、美しい、芸術品に――」



扉バタンっ


115 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 01:59:45 9oyV6XuA
文香「だ、だれですかっ?」

??「ふーん、文香もそんなことをしようとしてたんだ」

??「仲間、ですね?」

文香「あ、あなたたちは……凛さんとアナスタシアさん」

凛「……大丈夫。私たちは仲間だから」

アナスタシア「そう、です。一緒に、プロデューサーを、愛する、仲間、です」

文香「……そう、ですか。それじゃあ、一緒に――」

??「待つにゃ!!」

凛「だ、誰!?……みくっ!?   それに、皆んなも、どうして」

みく「凛ちゃんとアーニャちゃんがいつの間にかお帰り歓迎パーティーから抜け出して、もしかしたらと思ったら、こうにゃ!!皆んなーっ、凛ちゃんアーニャちゃん文香ちゃんを取り抑えるにゃ!!」

CP一同「「「「「「「「「「おぉ!!」」」」」」」」」」

凛「ン何だお前?!(驚愕)」

美波「オロナイン、抑えてちょうだい!」

凛「何すんだあんたっ……流行らせコレ!(Never say never)」

きらり「〆サバァだにぃ!!」

凛「あ゛〜もう(乙女)流行らせコラ……流行らせコラ!!(Trancing Pulse)」

アナスタシア「(聞くに堪えない酷く汚らしいロシア語)」

文香「(酷く綺麗な罵倒)」

美波「10人に勝てるわけないでしょっ!!」

凛「馬鹿野郎私は勝つよアンタ!!(蒼の力)」

みく「繰り出すにゃ!!(スタンガン)」ビリビリビリ



凛・アナスタシア・文香「――」(白目)



GAME   SET



――



   後日、何も記憶の無いプロデューサーが、掲示板に貼られた紙に、思わず深いため息を吐いた。



『渋谷凛・アナスタシア・鷺沢文香の3名は、一週間の謹慎に処す』



「……私が寝ている間に、何が起きていたのでしょうか?」

彼が真実を知ることになるのは、程なくして常務から社内放送で呼び出された後の話であった。

〜歴史はこれからもきっと繰り返すよEND〜


116 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 02:01:24 9oyV6XuA
終わり
締め方が思いつかなかったからやっぱり突拍子もなくSSを書き始めてはいけない(2度目の正直)
あ、Pixivでまとめないとか言っておきながら、まとめます


117 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 02:08:10 BY7itNWU
ホモは嘘つき
完結乙シャス


118 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 02:33:50 VwNl0qls
乙乙
新田さんは何故今回は抑える側だったのか・・・


119 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 02:39:32 nU9Wn/Y.
>>119
Pと美少女3人を天秤にかけて美少女を取っただけでしょ


120 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 03:53:08 NiL4CZ6Q
乙倉くん!
やっぱ〜、ご自愛先生の…SSを…最高やな!


121 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 07:38:14 MMo1mkNc
ああ^〜いいっすね〜
文香メインで書いて欲しいと思いました


122 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 07:47:14 NswDCJUc
乙倉くん!
文香の純愛モノもかいていいのよ?


123 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 08:49:20 9NmG6l06
爆発オチ並の実家のような安心感
乙倉ちゃん


124 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 14:16:04 9oyV6XuA
βルート『取り敢えず、良い雰囲気にしとけ』


「では、皆さん。一週間の間、どうもありがとうございました」

プロデューサーはそうやって深く頭を下げた。
今日は彼が、プロジェクトクローネを担当する最後の日であった。
彼はそんな日でもいつも通りの仕事をこなし、そして時はあっという間に過ぎてしまい、現在の時刻は午後7時。
……もう、彼は彼がいるべき場所へと帰らなければいけない時間であった。
そんな頃合いに、皆が目の前にいる。
アナスタシアと凛の二人を除いた、全員が彼のことを見ていた。
それぞれの瞳に浮かぶ感情は、様々な感情に彩られており、そしてそのどれもが彼がプロジェクトから去ることに悲しみを覚えている目であった。

「……皆さん、私はこの会社を去るわけではありません。また、一緒に仕事をする機会だって、あるはずです」
「あるはずなんて不明瞭な言い方じゃなくてさ、絶対にありますとかそういう風な感じで言った方がいいんじゃない?」

プロデューサーの励ましたの言葉に、周子からツッコミが入る。
彼は改めて咳払いをして、言直す。

「みなさんと一緒に仕事をする機会だってあるはず……絶対にあります」
「あ、質問い〜い?」
「……はい、フレデリカさん」
「あたしたちも、シンデレラプロジェクトの部屋遊びに行っていい感じ?」
「……えぇ、まぁ」
「やったぁっ。じゃあ、あたし毎日遊びにいっちゃうもんねー」
「えっ」
「お、じゃあゆいもメッチャ遊びに行っちゃうから!!」
「……」

二人がそうやって名乗り出ると、プロジェクトクローネのメンバーは次々に彼女と似たようなことを言い出した。

「……プロデューサーさん。一緒に、入れますね」

そして、止めにいつの間にか背後に回っていた文香が、彼の耳に顔を近づけ、そう呟き掛ける。

「……」

……もっとこう、しんみりとした雰囲気ではなかっただろうか。
今は何故か、目の前のプロジェクトクローネの皆んなはワイワイと騒いで楽しげな雰囲気であった。
まぁ、これもいいのかもしれない、と彼は思う。
しんみりとした別れもあれば、新たな出会いもある。
それが今の瞬間なのだろう。

「……取り敢えず、鷺沢さん。私のお尻を撫でるのを、止めてください」
「……ってへ」

〜HAPPY END〜


125 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 14:17:04 9oyV6XuA
今度こそ完!!

好みだったエピソードとか教えてもらえたら嬉しいです


126 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 14:52:32 ogMBuWhY
CPとクローネの修羅場あくしろよ


127 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 16:08:22 lXj6oUeE
>>125
唯一の変態キャラだった文香


128 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 16:23:09 FzV5ffPw
乙倉くん
ふみふみがただの痴女じゃねーか!
ドスケベな卯月の方も期待してます


129 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 18:18:40 iqkz8T76
>>125
ポンコツ奏と純次ゾ
あと橘は元々苦手なキャラでしたが非常に面白くてストライクでした

武まゆ武美穂武幸子とか読みてぇなぁ…気が向いたら書いてくれよな〜頼むよ〜(ホモはわがまま)


130 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/18(金) 19:01:42 9oyV6XuA
Pixivに纏めました
全編とこれを合わせたら、約60000も書いてたゾ……。

http://touch.pixiv.net/novel/member.php?id=3268975


131 : IW26一生ボンバーヘッドダイビングタバコの火を消すブルースリー :2015/12/18(金) 19:17:04 ???
ご自愛さん女性やったんか(純粋)


132 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/12/19(土) 09:32:02 hP8fYV/k
どれも面白かったけど奈緒編が最高や!


133 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/03/07(月) 21:09:53 uPXTjpQA
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誇大広告をやめろ 消費者を騙すな


134 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/08/20(土) 12:01:15 NeRCHdaM
実質8ヶ月も放置


135 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2016/12/18(日) 15:47:32 jlw68.eY
>>66


136 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2019/10/01(火) 03:46:41 ct/9gUxw
なんでこのスレこんなにノリが寒いの


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