■掲示板に戻る■ ■過去ログ 倉庫一覧■
【淫夢系SS】頼りない檻
-
「う〜、財布財布!」
7月の晴れ晴れとした天気の昼間、赤いシャツを汗でびしょびしょに濡らしながら走る一人の筋肉質な青年がいた。
名は田所浩二、大学生だ。彼は友人たちと昼ごはんを食べた後遊びに行く約束をしていたのだが、
財布を忘れていたことに気がつき大急ぎで家に戻っているのだ。
アパートに着き、104号室の前に立ちいつの間にさび付いたのか「ガチャコ、コン!」とうるさい音を立てながら部屋の中に入り、
鍵を閉めた。
部屋の中はワンルームには珍しくトイレと浴室が別で、大学生が住むには十分な内装をしていた。
テーブルの上に放置されていた財布をかばんにしまったあと、冷蔵庫を開け、アイスティーをコップに一杯分の量を入れると
一気飲みし、コップをテーブルの上に置いた。
-
彼はISLANDERSと印刷された白いシャツに着替えようと手を伸ばした瞬間、「ぐぎゅるるるる〜」と腹部から嫌な音が聞こえた。
「マジかよ、やばいやばい・・・」と独り言を言いながら、シャツを放りだすと上半身裸のままトイレに駆け込んだ。
軽快な音を立てながら、用を足し終えると重大なことに気がついた。
「紙がない・・・」トイレットペーパーをテーブルの上に置いていたのを忘れていた彼は、ぶつくさ言いながら、立ち上がろうとしたとき
「ガチャコ、コン!」とうるさい音と「ギィー・・・バタン」という音を立て玄関が閉まった。
(「ん、隣かな? でも待てよ、こんな音立てるのうちだけだよなぁ・・・まさか」)と思うなり、トイレの壁に耳を当てたが
廊下を歩く音が聞こえなかったためトイレのノブを回そうとした瞬間、「ドサッ」と洋室から音がした。
-
(「は? 何? やっぱり空き巣じゃないか! 遠野か・・・誰かにメールしないと」)と思い、友人にメールをしようとズボンの中を探るも携帯電話が見当たらない。
(「しまった、カバンの中だ・・・」)と彼はがっくり肩を落とした。
(「とにかく・・・どうせしょぼい大学生の家だ、金もなければ何もない。さっさと帰るだろ」
「幸い、クレジットカードはまだ、作ってないし通帳やキャッシュ取られても、停止してもらったりすれば良いし・・・」)
と汗だくになりながら楽観的に考えていた。
侵入者は、洋室でごそごそと何かを動かす音をさせたと思いきや洋室を歩き回る音が聞こえたあと、
わざとらしく足跡を立てながらトイレの前まで来た。
-
(「は? なんですぐにかえらないんだよ!? かねめのものはとっただだろ、かおなんてみてないし
くちふうじするひつようないだろ?)彼は冷や汗をかきながら思った。
数秒間たったあとトイレの前からひとのけはいがなくなり、安心したのもつかの間
洋室からワイドショーの声と「チョロ・・・チョロロロロロ」と飲み物が注がれる音がした。
-
(「は? 何? 飲み物? テレビ?」)
彼は叫びたくなる衝動を抑えるため、手を口に当て心を落ち着かせようとした。
少しすると、また歩く音とテーブルに「コトン」と何かが置かれる音、そして飲み物が注がれる音が2回聞こえた。
(「え? コップ2つ使っているの? ほんと何なんだよ・・・」)
彼の眼は大きく見開かれ、うつむいたまま手を口に押さえ、ひざをがくがく鳴らしていた。
「ゴクッゴクッ、グー」とのどを鳴らす音が2回聞こえ、テレビから流れるCMの音はいつの間にか消え、
冷蔵庫の閉まる音と水の流れる音がした後、トイレに向かってゆっくり足音が聞こえてきた。
-
(「やばい!今度こそ殺される!!・・・誰か!! 助けて!!」)彼は無意識のうちに祈っていた。
汗と排泄物の異臭に包まれ、背を丸めた情けない姿のまま両手を組み祈っていた。
その祈りが通じたのか足音はトイレの扉の前で止まった。
情けない姿のまま数分が過ぎた。少し落ち着くと異常事態に気がついた。
(「あいつ動いてない」)
(「なんで動いていないんだ、俺を口封じで殺したいんじゃないのか?」)
(「分けわかんねぇよ・・・」)と考えているうちに自然に涙がこぼれていた。
-
暑い個室の中に異臭と予期せぬ訪問者、奇妙な行動のこれらがストレス反応となり、彼は精神的に限界に達していた。
(「もう嫌だ、こんなところにいるなら殺人者でも異常者でも何でも良い俺を助けてくれ」)とすがるようにトイレのドアノブに手をかけた瞬間
「いやー・・・ほんまあちぃよなー」と大きな声が聞こえた。
「チッ」と舌打ちが聞こえたあと玄関が大きな音を立て開くと、「バタン!」という音とともに部屋は静かになった。
一瞬、何が起こったか分からず呆然としたまま彼はトイレの個室に籠もっていた。
しばらくして我に返るとトイレのドアに耳を当て、音がしないことを確認するとトイレのドアを少し開いた。
-
目の前に飛び込んできたのは、いつもと変わらない洗面場と廊下、そして鍵が開いた玄関であった。
「た・・・助かった・・・」彼は尻を拭くのも忘れ涙目のままその場に座り込んだ。
気持ちが落ち着くと、玄関の鍵とチェーンをかけ洋室に向かった。
侵入者が使ったであろう2つのコップはきれいに片付けられ、放り出した白いシャツはキチンと畳まれ、
テーブルに出したままのアイスティーは冷蔵庫に仕舞われていた。
数ヶ月前に隣に引っ越してきた、関西から来たというお笑い芸人を目指しているというチャラ男たちに感謝しつつ
侵入者の異常な行動に恐怖を覚えた。
「あのとき、トイレのノブを回していたらどうなっていたか」と考えると田所の体に鳥肌が立った。
-
「ピンポーン」という突然のチャイム音に驚きすくみあがっていると、「先輩、大丈夫ですか〜」という声が聞こえた。
「なんだ、遠野かよ・・・」と安堵の表情を浮かべながら田所は玄関を開けた。
「先輩、遅いですよ! MUR先輩とKMR君が待ってますよ」と遠野と呼ばれた男が言った。
「悪い、悪い ちょっと下痢しちゃってさ〜 少し漏らして片付けていたんだよ」と明るく言うと
「どうせ先輩のことだから、冷たいの一気飲みしてお腹下したんでしょ」と笑いながら言った。
「ちょっと風呂入ってくるから、家の中で待ってろよ アイスティー出すからさ」
遠野を家に上げると、遠野はちらりと白いシャツを見た後テーブルの前に胡坐をかいて座った。
-
「テレビとかゲーム、漫画でも読んでちょっと待っててくれよ、すぐ入ってクルルらぁ」
と冗談交じりで言うと浴室に入っていった。
田所は熱いシャワーを浴びながら平和な日常生活に戻ってきたことへの感謝と安心感を全身で浴びながら
この体験を4人で飯食いながらネタにしようと考えていた。
終わり
-
ホラー淫夢いいゾ〜
-
淫夢SSいいっすねぇ^〜
-
なんで冒頭で鍵を閉めた描写があるのに入ってこられたのか、私には理解に苦しむね(ガクガク)
■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■