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【咲SS】ぼっちじゃないよー【レズ注意】
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「シロー?どうしたの?」
私がぼんやりと教室で空を眺めていると、背後からトヨネが抱きつきながら話しかけてきた
「ううん、なんでもない」
私が振り向きながら言うと、すぐ目の前には微笑んだトヨネの顔があった
トヨネの顔は大抵上にあるものだから少しばかり驚いてしまった
どうやらわざわざ腰を曲げて顔の位置を合わせたらしい
「ねーいっしょに帰ろー?」
「ダルい……」
「じゃあ学校に泊まる?」
「……帰る」
いつも通りのはず、だけどなんだか不安な気持ちになる
下駄箱に行くとちょうど塞が帰る所だった
「あっ……塞も帰るところ?」
「うん、シロとトヨネも帰るところ?」
「そうだよー」
別に問題はない……ないけどちょっとだけ違和感がある
……塞とトヨネが仲良く話してる、いたって普通……
「ん?どうしたのシロ?」
塞が聞いてくる……なんだか考えるのダルいな……
「なんでもないよ」
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「勉強するのダルい……」
椅子に座りながらつぶやく、結局その後は何事もなく家に帰った
「……」
ちょっとした事で色々考えてしまう
「……ダルい、勉強して紛らわせよう……」
考えてもしかたない、それよりも今勉強しなくて大学受験失敗して後々ダルくなるほうが一番ダルい
そんな事を考えているとスマホが鳴った、画面を見ると塞からのメッセージだった
「明日土曜日だけど暇?」
……暇だけど……どうしたんだろ
「どうしたの?」
「久しぶりに遊ばない?息抜きも大事だし」
息抜きか……そういえば最近麻雀もしてないな……
「うんいいよ、あと誰が一緒?」
「私とシロだけじゃダメ?」
……変だな、なんで他の3人を呼ばないんだろう
「みんなは?」
「私だけじゃダメ?」
ダメって訳じゃないけど……
「言いたい事もあるし」
「なら今言えばいいよね」
「直接言いたいから」
……なんだかダルそうだな
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次の日、結局2人きりで会うことになった、やや曇りなのが気になる……
勉強道具と折り畳み傘を持って待ち合わせ場所の公園に行く
公園に着くと塞がブランコに乗って待っていた、まだ待ち合わせの時間じゃないのに
「……あっシロ」
ブランコに乗り、揺られながらこちらを見つめる塞、なんだか寂しそうだな
「今日はどうしたの、急に2人きりで会いたいなんて……」
私が塞の横で揺れるブランコに乗りながら言う
「……ここってさ、私達がよく遊んだ公園だよね」
何を言ってるんだろういきなり……確かにそうだけど
「私と胡桃とシロでさ、ここで色んなことして遊んだよね、まぁシロはダルって言って動かないこと多かったけど」
微笑みながら塞が語る、しばらくは黙っていよう……
「それでさ、一緒の小学校行って中学校行って……高校行ってさ、色んな思い出作ったよね」
塞は黙ってしまった
「……それで?」
「ううん、なんでもない、じゃあ……」
塞がブランコから降りてすぐに雨がぽつりぽつりと降り始めた、傘持ってきてて良かったな……でも
「塞、傘ないの?」
「あっ忘れちゃった……悪いけど入れてくんない?」
断る理由はない、私は傘を開き塞の家に歩き始めた
……さっき言ってたこと、きっと塞は大学でも思い出をみんなで作りたかったんだろう
でも私はお金とかの事情で地元……トヨネも岩手に残るけど理由知らない、きっと村が理由だろう
塞と胡桃は県外に出てしまう……エイスリンなんか国から出てしまう
帰り道、少しばかり塞を遠く感じた、相合傘だというのに……
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結局、塞の家では勉強だけをして帰った
家に帰ってさっさとシャワーを浴びる、シャワーは雨と違って心地良い……
……塞……どうしてるかな
そんなことを考えるとダルくなる……けど大切な人だから考えてしまう
目をつむり静かに考える、どうしたらいいんだろう
……どうしようもなさそう
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日曜日、今日は久しぶりに先生を含めて6人で部室に集まり卓を囲んだ
「どうしよっか、三麻にする?」
塞がそう提案すると、トヨネが嬉しそうにしながら
「東風を3,4位の人が抜けるようにするのもいいかもねー」
塞は変わりないように見える、いや、みんな変わりない
私がぼんやりとしていると
「シロ?ゲンキナイ」
エイスリンが首を傾げながら尋ねてくる、それを聞いた塞達も私の方を見つめる
「……ダルいだけ」
そう言って苦笑してみせると、みんなが微笑んだ
「ほら、次はシロの番だよ」
胡桃がそう言いながら椅子を立つ、私は胡桃が座っていた椅子に座る
みんなが集まって麻雀をし始めた頃から何も変わらない……
いつも通り変わらなく打つ、負けたり勝ったり
塞も胡桃もトヨネもエイスリンも先生も……私も
だけど一瞬で時は過ぎていく、数ヶ月前とは比べ物にならないぐらい
1日1日すぐに……
外も暗くなり帰ろうとしていたとき、トヨネが私にこっそりと
「明日の放課後部室に来てほしいな」って言ってきた
……なんだろう、一体
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学校と行っても受験も近いためすぐに帰れる
部室に行くとすでに鍵は開けられていた、私が扉を開けて入るとトヨネが椅子に座って待っていた
なんだか少しだけドキドキする
「ごめん、待った?」
「ううん、待ってないよー」
朗らかに笑み浮かべながら話すトヨネを見ると私まで微笑んでしまう
「それでなんの用?」
私が扉の前で立ったまま聞く、トヨネは頬を掻きながら言う
「うんっと……シロは私と同じ大学行くんだよねー?」
「そうだけど……」
「順調ー?」
「今のところは、トヨネは?」
「うーん勉強は難しいけど順調かなー」
「……わざわざこんな事を聞くために呼んだ訳ないよね」
「……」
トヨネが卓に置いていた帽子を手に取り手遊びを始める、私は静かにそれを見つめていた
「シロは……いなくならないよね?」
「え……?」
思わず声に出してしまった、いきなり過ぎて……
「サエとクルミは県外に出て、エイスリンさんも帰国しちゃって……岩手には私とシロ……もちろん熊倉先生もいるけど……けど」
言いたいことは分かる、どんなに仲良くなっても友達と教師とでは違う、でもそれを言うのは先生に失礼と思ったんだろう
「せっかくみんなと会えたのに、1年ちょっとで別れちゃうなんて寂しいよー……」
手で顔を覆いながらトヨネが話す、私は何も言えないまま
「……シロはいなくならないよね?」
そうトヨネが言った瞬間、私は尻込みしてしまった、怖いとか不思議な……なんて言ったらいいんだろう
「シロ……?」
深く暗く引きつけられる感覚、私はハッとして言葉を放った
「大丈夫、いなくならないよ」
トヨネの悲しむ顔なんて見たくない、私はなんとか安心させようとした
トヨネが満面の笑みを浮かべる……そして私は思った
あぁ、私はトヨネが好きなんだって
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それから数日後、また塞から連絡があった
「また公園で」
私は返答もせず、ただ明日の事をを思い浮かべながら眠った
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がんばれ��がんばれ��
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前とは違い今日は小さな雪が降っていた、公園に着くとまた塞はブランコに乗っている
「ずいぶんここも人がいなくなったなぁ……」
なんて独り言を呟きながら塞の隣のブランコに腰掛けた
「それで……今日はなんの用事?」
ダルそうに言うと塞が私のことを見つめた
「……シロってさ、好きな人いる?」
私は思わず目を丸くしてしまった、いるにはいるけど……
「私はね、いる」
それ以上は言わないで欲しいな、出来れば私の思ってる事と違えば……
「急にごめんね……」
急すぎるよ……塞
「シロ、私はあなたの事が好き、小学生の頃からずっと」
言葉を失ってしまった、頭の中がグルグル回って今までの思い出だとか
色んな物がグチャグチャに混ざって白黒になったり小さくなって、元に戻る
「……シロの好きな人は?」
「言わないとダメ?」
「そう言ったって事は私が期待するような返事じゃないって事よね」
塞が苦笑しながら言う、無理して笑わなくていいのに……
私は俯きながら語る
「トヨネが好き……」
塞の表情は見えない、見たくない
「そっか……いつ頃から?」
「……全国行く前ぐらいかな」
「それまでは誰が好きだったの?」
「誰も……」
塞は大切な人だけどそれは親友として……
距離が近すぎたから恋愛感情は持てなかった、だけど今はもう
「……」
あまりにも遠い存在に思えてしまう
「ねぇシロちょっと立って」
言われるがままに立つと塞も一緒に立った
「なに…・…」
「黙ってて」
不意に塞が私を抱きしめ、胸の中に顔を埋めた
「少しだけ、少しだけでいいからこうさせて、最後だから」
塞の表情は見えない、だけど小さく震えてるのが分かる
私は抱きしめる事なく、ただぽつんと立っていた
雪は積り、冬風が私達の身を切る
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月日は経ち、センターも受験も終わり、卒業式を迎えた
あれからというのもあまり塞とは連絡を取らなくなり
その代わりトヨネと話したり出かける事が多くなっていたから、塞とは久しぶりに合うな……
長い式が終わり、自由に帰っていいことになると
部室にみんなが集まった、そのとき塞と目が合う
「シロ卒業おめでとう」なんて言うから
「塞もでしょ」って笑いながら言った
何も……変わってないのかな
部室の前にみんなで並ぶ、まずは6人みんなで、次に生徒だけ
次に先生と1人ずつ……
それからみんなで思い出を語っているとトヨネが泣いてしまって
私達まで泣いてしまった……考えてみれば、本当に短かったなぁ……
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「それじゃあ……私は帰るね」
塞がそう言いながら背を向ける、今まで何度と見た姿
だけどその姿は遠く小さな物になっていく
手を伸ばしても届かない、声すらも届かない……消えてしまう
同じように胡桃もエイスリンも……小さな点になってしまう
「シロ?大丈夫?」
気がつけばしゃがみ込んで泣いてしまっていた、トヨネが心配して同じようにしゃがんで顔を覗こうとする
顔を見られないように私はトヨネを抱きしめた、そして小さく掠れた声で呟いた
「ぼっちじゃないよー……」
なんでこんな事を言ったのか分からない、ただなんとなく可笑しさを求めて言ったんだと思う
ただ笑いたくて……
「うん……ぼっちじゃないよー」
トヨネが私を抱きしめる、トヨネの暖かな匂いが鼻腔を満たし、腕が私に絡みつく
私は深く暗く静かにトヨネに沈み込んだ
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短いけど
カン
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乙シャス!
描写がしっとりとしていてベタつかない、スッキリした読みやすさだ。
ココアはバンホーテンのものを使用したのかな?
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悲しいなぁ・・・
乙!
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君百合もいけたんか・・・
積極的な姉帯さんもイイネ
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良かったゾ��これ
シロが塞ぐさんのことを好きだっていうパターンも見たい...見たくない?
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姉帯さんとシロがイチャイチャするSSかな?と思ったけど違った
でもこういうのは嫌いじゃないし好きだよ
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>>16
前に書きましたよ、一応
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>>18
そマ?
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>>19
マジマジ
【咲SS】告白するのダルい… というタイトルです
SS交流スレに多分URLが張られているので
読んでくださったらクッソ嬉しくて絶頂射精すると思います
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一人悩むスタンスがシロによく合っていて好感が持てた
欲を言えば、何故好きだと思ったのかをもう一歩踏み込んで読みたいとかとか
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皆様感想ありがとナス!
参考にして良いSSが書けるように頑張りたいです(小並)
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http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/20196/1424270892/
あったゾ、こっちもすばらです
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>>23
わざわざ有り難うございます
うれしい・・・うれしい・・・
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