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【艦これSS】冬の日の二航戦
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※艦これの二航戦SS 本文10レス
※百合っぽいので注意
※参考:『紫式部日記』(8月26日)
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1/10
空気の張りつめた小雨の日、艦載機の整備も午後には終わって暇ができてしまった。
出撃はない。トラック泊地での衝突も小康を保っていて空母では時折加賀さんが出ることがあるだけ。
喧しい呑兵衛たちも麻雀仲間も、相方の蒼龍も今日に限って姿を見せない。雨に包まれた空母寮はどこか衰微していた。
昨日と違って急に寒くなった。動かずにいるとこたえるので、部屋干しの服を乾かそうと火を入れた火桶をこちらへ寄せた。
空気は幾分和らいで私は横になった。寝転がって呆然としていると雨音だけが静かにはいってくる。
周りに気配もないと気分が塞いでくる。かといって外には行けないから、行くなら蒼龍のとこかなと虚ろに考える。
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2/10
そこでなんとなく偵察機を飛ばすと、蒼龍の部屋から人の動く気配がしないのに気付いた。
あれ、と思ったけど、丁度よかったから立ちあがって部屋まで行き、勝手を知った扉を開けて中に入った。
蒼龍の姿は見当たらない。珍しいことじゃないけど、和装の部屋には生活感が立ち込めている。
室内干しの洗濯物が渡した紐にかけてあるし、火の消えて灰の残った火鉢も出しっぱなしになっていた。
交差した歯ブラシの入ったコップの横に水を張った桶があって、見ると汚れた食器が放り込んである。
昼はケチャップを使った洋食だったみたい。洗濯籠の中にも山があったけどそれは見ずにおいた。
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3/10
部屋には普段からついたてがあってそれが中を二つに隔てている。
人を呼ぶときはこれを片付けて部屋を広く使うけど、私が来るときはほとんど出しっぱなしだ。
つま先立ちすれば少しだけ向こうが見えるけど、こんなものがあればやっぱり向こうに回ってみたくなるよね。
それに今日はついたてに上着が無造作に引っ掛けてあるから、こういう時は期待できるんだ。
それまでの緊張も忘れて、思わず口角を上げると無意識に抜き足になって回り込んだ。
いつもは声もかけずにこっち側に来ると蒼龍が嫌がるけど、思った通り今回は何の反応もない。
やっぱり蒼龍は寝こけてた。
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4/10
机の横で万年床になってる―と私は知ってる―布団の上で毛布を掛けて、もう本寝なのははっきりしてる。
昏い笑い声が喉のところまで出かかったので押し殺した。少しだけくぐもった音が鳴った。
近寄って顔を仔細に観察。眉尻は下がって瞼がときどき痙攣してる。目を閉じてるのにいつもよりタレ目に見えるよ。
寝息を間歇的に漏らす口元は半開きのままよだれ跡が伝っていて、起きたときにひどいことになりそう。
唇の端まで見ていくと赤い斑がある。食べた後机のところまで来て、つい寝てしまったのがすぐに分かった。
真っ白な頸の筒が広がってすぼまる運動を繰り返して、それが肌蹴た肩口から鎖骨を伝って胸の陵線を動かしてる。
これだから覗き見はやめられないよね。無防備なところを見ると理由もなく口がつり上がっちゃうんだ。
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5/10
つい周囲を見回して確認する。然る後おもむろに蒼龍に近づきます。
まずは冷たい手を頬に当てる。ちょっと引き攣って、ふ、みたいな息を出して反応する。よけないのが可愛い。
じゃあ次、指で頬をつつく。寝息とタイミングが合うとぷすっと口から音がする。似た音を出して笑いそうになる。
そしておもむろにひとさし指を口へと近づけていってそっと挿し込みます。
んぇ、と音が漏れるのにも構わず舌先と頬の内壁をチョッとなぞって引き返す。
指を抜くと起き抜けの口の中のにおいがする。それでもそれを、そのまま、そっと口に含んでみる。
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6/10
踏査はまだ終わらない。次は首の辺り。
いつものほくろがありますね。爪の角の所でカリカリッとする。ただのついで。蒼龍がぴくっとする。
鎖骨に人差し指と親指を添えてそのままそっと肩の方に沿って這わせてみる。
自分がやられたらぞわぞわしそう。そう考えただけで楽しい。思わず無心で三往復した。
大きな反応がないとだんだん大胆になってくる。
ちょんちょんと胸の付け根の辺りを叩いてみる。柔らかいやら張ってるやら不思議な感触。
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7/10
いよいよ丘の方を検分に移る。
丁度半分寝返りをうって横向きになってくれたからこれは色々と分かり易い。
相変わらず大きいなぁ、ちょっと動くともう形が変わって、見てるだけで柔らかい。
蒼龍は寝るとき胸は楽にして寝るからまざまざと見て取れる。隙がありすぎて子供らしいんだよね。
それじゃあとばかりに無遠慮に胸もとに手をつッ込んで稜線に沿って進め、双丘に手のひらを覆いかぶせます。
手の中で自由に動く感触がする。時どき蒼龍の鼻孔から熱っぽい空気が抜けていく。心なしか上唇も緊張して見える。
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8/10
しばらくの間ひとしきり触ると、勝手なものでどうも飽きてきた。
こんなにいじってるのに起きないのはおかしいという不満が、理不尽に募りだした。
同時に蒼龍は目の前にいるのに心の中に寂しい部分が耐え難く広がってきた。
部屋の空気が唐突に冷たいものと感じられて、覚えず慄然とする。
不思議と起きる気配はない。これがさっきの生々しい感触の主なのだとは思えない。
ふと、生きてるのと死んでるのはそう違わないのかもしれないと思った。
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9/10
それでも、こういう感傷は何時ものことだからと努めて振り切った。
蒼龍起きないかなぁ、起こしちゃいたい。起こせば楽なのに。
やっぱり普段は起きて動いてる相手が無防備に寝てるのが物珍しいだけなんだよね。
逡巡しながら所在なく頬をつついてると、突然蒼龍がこちらに寝返ってきた。
あっと思った時にはもう爪に柔らかい重みがかかっていて、目の前の寝惚け顔が、んぇっと音を発していた。
起こしちゃったよ、しょうがないよね。胸のつかえがほどけていくのを感じた。
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10/10
蒼龍はとりあえずという感じで、なに飛龍かってにはいらないで、って呻いてる。本当に嫌そう。
乱れた髪には毛玉がつくし、口は乾いた涎でところどころてらてらするし、赤い頬には爪型の溝ができてる。
嬉しさを抑えきれずに私は、口拭いたら?と笑いかけた。
さっきの身体の感触にも実感が宿って、やっと昨日の続きの今日に戻った気がした。
蒼龍が臍まげたらご機嫌取らなきゃ、何で許してもらおうかな、夕餉でも作ってあげようかな?
蒼龍がひどいよぉと漏らしながら眠気まなこで口周りを拭う。それを背に私は買い物に行かなきゃと楽しく考えていた。
【終】
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二航戦によく似合うほのぼのレズ
ほんとすき
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二航戦流行らせコラ!
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