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【艦これ】「First partner」【SS】

1 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:03:13 o.ikT1SE
執務室の扉の前には一人の少女が立っていた。白っぽい髪にワンピース風にアレンジされたセーラー服。
胸元から伸びる赤く長いスカーフは腰くらいまでの長さがあった。
そして、その少女は扉を3回ノックした。コン、コン、コンと心地の良い音が廊下に響く。
「どうぞ」という声が中から聞こえてきたため扉を開け、部屋に入る。

「失礼します」

部屋の中には白髪が混じった、初老の男性が座りながら書類を確認していた。
少女が入ってくると男性は一旦作業を止め、かけていた眼鏡をはずし、顔を小さな少女に向ける。


2 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:06:01 Kr2apC.s
期待


3 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:06:04 o.ikT1SE
「呼び出してすまなかったな、叢雲」
「それ毎回言ってないかしら。もっと他の言い方はないの?」

男性は顎に手を当て、少し考えた後。

「叢雲、お前さんに会いたかった」

どうだと言わんばかりの顔を見せる。

「わざわざ呼び出さなくても毎日会ってるでしょうが」

それに対して叢雲は呆れ気味に返す。

「頑張って考えたんだがなあ……」

男性はそう言って今度はしょげた顔を見せる。
相変わらず表情が豊かな人だと叢雲は思った。


4 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:07:14 o.ikT1SE
「冗談よ。で、なんで私は呼び出されたのかしら?」
「ああ、実は伝えたいことがあってな」
「私にだけ?」
「そうだ」

少し間を置いてから。

「おそらく、来月にはここを離れることになる」


5 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:08:53 o.ikT1SE
少しの沈黙の後、叢雲が口を開く。

「異動ってこと?」

軍人にとって転勤や転属、異動などは日常茶飯事である。
事実、叢雲自身も数年前に呉鎮守府から、今の大湊警備府に異動してきたのだった。
目の前にいる男性と共に。

「まあ、そういうことだ」
「どこまで?」
「トラック泊地」
「ずいぶん遠いわね。左遷かしら」
「違う。……先日、トラック泊地が深海棲艦による襲撃を受けたことは知っているな?」
「ええ、でも撃退に成功したって聞いたけど」
「そうだ。だが、今後また襲撃がないとも言い切れない」


6 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:10:19 o.ikT1SE
男性が話を続ける。

「そこでだ、上から経験豊富な指揮官を派遣したいと言われた」
「トラック泊地にいる今の指揮官はどうなるの。十分優秀な人でしょうに?」
「なんでも、内地でさらなる高度な教育をするそうだ。将来、海軍のトップになるかもしれんなあ……」
「若いのに大したもんよね、ホント」

トラック泊地の指揮官に叢雲は会ったことがない。
しかし、風の便りに聞いた話では、若い佐官で有望株らしい。
ちなみに未婚だそうで、婚約を申し込む人が後を絶たないのだとか。


7 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:11:58 o.ikT1SE
「司令官がトラック泊地に行くことは分かったわ。ちなみに、伝えたいことはそれだけ?」
「いや、まだある。一番大切なことだ」
「へえ、気になるわ。何かしら」

男性は椅子から立ち上がり、叢雲に正対する。
そして、しっかりと叢雲の目を見つめながら、言葉を発した。


8 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:13:21 o.ikT1SE
「叢雲、また私と一緒に来てくれないか?お前さんの力が必要だ」

二人の間に沈黙が流れる。
少しして、叢雲はくつくつと笑い出した。

「今更そんなこと言うなんてね」
「確認は必要だろうに?」
「最初に会った時から全然変わらないわねえ……。律儀な人」
「そういう性分なんだ。あんまり茶化さんでくれ」
「はいはい」
「で、返事はどうだろうか?」


9 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:15:59 o.ikT1SE
叢雲は左手を腰に当てながら、男性の問いに答える。

「いいわ、トラックだろうがどこへでもついて行ってあげる。感謝しなさいよね」
「……ありがとうな、叢雲」

男性は心底嬉しそうな顔をした。

「だったら少しずつ準備しないとねえ。来月なんてあっという間よ」
「そうだな。しかし、まだ正式に辞令が来たわけではないから、他の者には言うなよ?」
「大丈夫よ、そのぐらい分かっているわ」
「お前さんがそう言うなら安心だ」


10 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:16:24 .ZCT0EuI
老提督いいゾ〜


11 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:17:08 o.ikT1SE
男性が腕時計で時間を確認する。時計の針は夜の九時を回ったところであった。

「……随分話し込んでいたようだ、そろそろ戻りなさい。明日も早い」
「そうさせてもらうわ。司令官も早く寝なさいよ」
「ああ、これが片付いたらすぐ寝るさ。……お休み、また明日な」
「お休みなさい、司令官」

叢雲が部屋を静かに出る。
電球のぼんやりとした光が庁舎の廊下を照らしていた。


12 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:18:41 o.ikT1SE
庁舎から出た叢雲は空を見上げた。
夜の闇を照らす月には、雲が薄くかかっている。

(月に叢雲、花に風、ねえ……案外、そうでもないかもね)

そう思いつつ、叢雲は寮に向けて歩き出す。

少女の小さな影がゆっくりと建物から離れていった。


〜おわり〜


13 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:19:52 o.ikT1SE
以上で終わりです。作るのにすごく疲れました(小並感)
拙い文章ですが、叢雲のことが好きになってくれたら嬉しく思います


14 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:20:09 jp8vvzzs
乙シャス!叢雲かわいい


15 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:20:53 .ZCT0EuI
やっぱ・・・叢雲くんを・・・最高やな!
新規絵も可愛かったし改二あくしろよ


16 : 名前なんか必要ねぇんだよ! :2015/02/15(日) 23:29:16 08rAHjBE
2人の育まれた信頼関係いいゾ〜これ
叢雲も初老提督合いますねぇ!


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