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【艦これ】「First partner」【SS】
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執務室の扉の前には一人の少女が立っていた。白っぽい髪にワンピース風にアレンジされたセーラー服。
胸元から伸びる赤く長いスカーフは腰くらいまでの長さがあった。
そして、その少女は扉を3回ノックした。コン、コン、コンと心地の良い音が廊下に響く。
「どうぞ」という声が中から聞こえてきたため扉を開け、部屋に入る。
「失礼します」
部屋の中には白髪が混じった、初老の男性が座りながら書類を確認していた。
少女が入ってくると男性は一旦作業を止め、かけていた眼鏡をはずし、顔を小さな少女に向ける。
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期待
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「呼び出してすまなかったな、叢雲」
「それ毎回言ってないかしら。もっと他の言い方はないの?」
男性は顎に手を当て、少し考えた後。
「叢雲、お前さんに会いたかった」
どうだと言わんばかりの顔を見せる。
「わざわざ呼び出さなくても毎日会ってるでしょうが」
それに対して叢雲は呆れ気味に返す。
「頑張って考えたんだがなあ……」
男性はそう言って今度はしょげた顔を見せる。
相変わらず表情が豊かな人だと叢雲は思った。
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「冗談よ。で、なんで私は呼び出されたのかしら?」
「ああ、実は伝えたいことがあってな」
「私にだけ?」
「そうだ」
少し間を置いてから。
「おそらく、来月にはここを離れることになる」
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少しの沈黙の後、叢雲が口を開く。
「異動ってこと?」
軍人にとって転勤や転属、異動などは日常茶飯事である。
事実、叢雲自身も数年前に呉鎮守府から、今の大湊警備府に異動してきたのだった。
目の前にいる男性と共に。
「まあ、そういうことだ」
「どこまで?」
「トラック泊地」
「ずいぶん遠いわね。左遷かしら」
「違う。……先日、トラック泊地が深海棲艦による襲撃を受けたことは知っているな?」
「ええ、でも撃退に成功したって聞いたけど」
「そうだ。だが、今後また襲撃がないとも言い切れない」
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男性が話を続ける。
「そこでだ、上から経験豊富な指揮官を派遣したいと言われた」
「トラック泊地にいる今の指揮官はどうなるの。十分優秀な人でしょうに?」
「なんでも、内地でさらなる高度な教育をするそうだ。将来、海軍のトップになるかもしれんなあ……」
「若いのに大したもんよね、ホント」
トラック泊地の指揮官に叢雲は会ったことがない。
しかし、風の便りに聞いた話では、若い佐官で有望株らしい。
ちなみに未婚だそうで、婚約を申し込む人が後を絶たないのだとか。
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「司令官がトラック泊地に行くことは分かったわ。ちなみに、伝えたいことはそれだけ?」
「いや、まだある。一番大切なことだ」
「へえ、気になるわ。何かしら」
男性は椅子から立ち上がり、叢雲に正対する。
そして、しっかりと叢雲の目を見つめながら、言葉を発した。
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「叢雲、また私と一緒に来てくれないか?お前さんの力が必要だ」
二人の間に沈黙が流れる。
少しして、叢雲はくつくつと笑い出した。
「今更そんなこと言うなんてね」
「確認は必要だろうに?」
「最初に会った時から全然変わらないわねえ……。律儀な人」
「そういう性分なんだ。あんまり茶化さんでくれ」
「はいはい」
「で、返事はどうだろうか?」
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叢雲は左手を腰に当てながら、男性の問いに答える。
「いいわ、トラックだろうがどこへでもついて行ってあげる。感謝しなさいよね」
「……ありがとうな、叢雲」
男性は心底嬉しそうな顔をした。
「だったら少しずつ準備しないとねえ。来月なんてあっという間よ」
「そうだな。しかし、まだ正式に辞令が来たわけではないから、他の者には言うなよ?」
「大丈夫よ、そのぐらい分かっているわ」
「お前さんがそう言うなら安心だ」
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老提督いいゾ〜
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男性が腕時計で時間を確認する。時計の針は夜の九時を回ったところであった。
「……随分話し込んでいたようだ、そろそろ戻りなさい。明日も早い」
「そうさせてもらうわ。司令官も早く寝なさいよ」
「ああ、これが片付いたらすぐ寝るさ。……お休み、また明日な」
「お休みなさい、司令官」
叢雲が部屋を静かに出る。
電球のぼんやりとした光が庁舎の廊下を照らしていた。
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庁舎から出た叢雲は空を見上げた。
夜の闇を照らす月には、雲が薄くかかっている。
(月に叢雲、花に風、ねえ……案外、そうでもないかもね)
そう思いつつ、叢雲は寮に向けて歩き出す。
少女の小さな影がゆっくりと建物から離れていった。
〜おわり〜
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以上で終わりです。作るのにすごく疲れました(小並感)
拙い文章ですが、叢雲のことが好きになってくれたら嬉しく思います
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乙シャス!叢雲かわいい
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やっぱ・・・叢雲くんを・・・最高やな!
新規絵も可愛かったし改二あくしろよ
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2人の育まれた信頼関係いいゾ〜これ
叢雲も初老提督合いますねぇ!
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