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【艦これss】
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文章は稚拙かもしれないです
オリキャラでます
シリアスあります
それでもいいなら……どうぞ
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保守
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あくしろよ
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尻ASSあるとか、いいゾ〜コレ。
執筆オナシャス!
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いいゾ〜コレ
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よくきたわね、いらっしゃい
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提督が枕営業するSSかな?
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門倉「安価だけはやめとけよ」
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>>7
お偉いさん「大事な艦娘を守りたければ……わかるよね?」
提督「……はい」
こうですか
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らっきょSSスレの流れを見れば、どういうものが求められてるのかわかるね(圧迫面接)
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―「こちら、タンカー護衛艦隊旗艦長良。ただいま敵艦隊駆逐3軽巡1を撃破。その後、周囲に異状なし。」
―「了解。では、次の戦いに備えてタンカー内で休んでくれ。」
―「わかりました。では艦隊、帰還します」
―「ちょっとまってください!海上に、生存者発見!」
これが、始まりだった。
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長良いいゾ〜
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始まったか
age
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>>9
>>1ちゃんのが終わるまで書き貯めててもええんやで(ニッコリ
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いいゾー
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いいゾーは>>1に言ったんだからね!
>>14のせいでややこしくなったけど
>>1がんばれ
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>>1ちゃんがんばって!
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型月ニキの悲劇を繰り返してはいけない(戒め)
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ss兄貴がんばれ
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>>16
俺の言い方が悪かった、すまんな
>>1ちゃんのも楽しみにしてるからゆっくり書いちくり〜
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NaNじぇいとかいうサラダボウル
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目が覚めるとベットの上だった。
しかし、何かがおかしい。どう見ても自分の部屋ではないのである。
「あれ、ここは……」
彼の名は北崎創一。念願の志望校に合格し、昨晩は下宿先のアパートで初めて眠った。
だが、今そこにいないことは明らかだった。清潔だし、消毒用アルコールのにおいがした。
「寝ぼけてるのか……?」
その途端、右手にあるドアが開いた。
「あれ、目が覚めましたか?」
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>>20
いやワイもウザイ言い方してしまったすまんな
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>>20,>>23
やっぱ平和が一番搾りやな!
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よし、続けて
すばらやで
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東方で言うところの幻想入りに近いのかな
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なんJはSSってだけで迫害されていたからNaNじぇいでは保護して育成していこう(提案)
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>>27
育成(意味深)
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NaNじぇいSS部の始まりや(パチパチパチパチ
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「よかった。目が覚めて」
青みがかかった長い髪と、セーラー服の少女だった。
「海の上で、倒れていたんですよ。」
―海の上?いったい何を・・・・・・
そのとき、タンカーが大きく揺れる。
「わっ!地震?」
「落ち着いてください。ここは海の上ですよ。揺れるのなんてあたりまえじゃないですか
」
「なにふざけたこと言って……」
「ほら」
そういって彼女は、窓のカーテンを開けた。
「マジ?」
そこには、見渡す限りの海が広がっていたのである。
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艦これのしたらばでやればいいんじゃないですかね…
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>>31
育 成 の N A N じ ぇ い
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がんばれ
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>>31
艦これのしたらばはSSダメだったような
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尻もASSもあるとはたまげたなあ…
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「本当だな……」
「あと……そうですね……2時間で横須賀につきますよ。」
「横須賀?」
「はい。そこの港まで。」
横須賀は大学からも下宿先からも近かった。
「そこまで送ってくれるの?ただで?」
「はい。」
願ったりかなったりじゃないか。
「あ、そうだ。自己紹介をしてなかったね。俺は北崎。本当にありがとう。」
「いえいえ。私、五味って言います。よろしくお願いします。」
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あくしろよ
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こ↑こ↓はよこぉ〜すかぁ〜♪
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「へえ五味さんって言うんだ。」
「さんはつけなくても結構ですよ。なんか、呼ばれ慣れてないですから」
「いやこっちも呼び捨てするわけには・・・・・・」
―その時。
ドガ―――ン!爆撃音が船内に響き渡った。あまりの衝撃に、北崎は転んでしまった。
「うわっぷ!」
「だ、だいじょうぶですか?」
―非常事態発生。非戦闘員は所定の避難場所まで速やかに移動してください―
ここの艦長だろうか。野太い声が響く。
「!」
「な、なんだよ戦闘って・・・・・・」
「早くこっちへ来てください!早く!」
二人は、船内の避難場所へ急いだ。
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艦娘はまーだ時間かかりそうですかねぇ?
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「ここなら、大丈夫なはずです。」
「いま、何が起こってんの?あの爆発音は何?」
「知らないほうがいいと思います……よし、ここへ入ってください。」
「って君はどうするんだよ。」
「私には……やるべきことがあります!ここに隠れていてください!」
「ちょっと待ってよ!どこ行くのさ?」
北崎の制止も振り切り、彼女はどこかへ走って行った。
もちろん北崎も追いかけて行ったのだが、角を曲がったところで見失ってしまった。
「何だよ……」
呆然と立つ以外になかったのだ。
エピローグ終わり
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エピローグ…?
終わったのか?
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もう終わってしまったのか
かなしいなぁ
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プロローグが終わりました。
次は明日にでも出したいと思います。アドバイス、質問等があればオナシャス!
エピローグとプロローグ間違えてますね・・・・・・ごめんなさい。
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楽しみにしてるで!
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まだ続きます。
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お疲れさん!
続きも楽しみにしてるやで〜
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頑張って、どうぞ
どうでもいいけどこんなホモブログの掲示板で書こうと思った経緯も気になる
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>>48
コメントがすぐ帰ってきて書きやすいし
なによりみんな優しいんだよなあ
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>>48
ここしか知らんけど他は殺伐としてるの?
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間違えた>>49
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>>50
参考程度に言うと、型月SSニキがこっち来た理由は「おーぷん2ちゃんねるのVIPから追い出された」やで
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>>50
なんJ→くっさと叩かれる
渋→コメント来るの遅い。来ないことも。
こんな感じ
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オレってオープンからこっちに誘導されただけと思っていたけど
追い出されていたのか…
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>>52-53
はぇ〜・・・他所は風当たりが強いんですね・・・
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型月ニキが衝撃の事実を知って落ち込んでいらっしゃる
はげましてさしあげろ!
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>>54
誘導であってるよ
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型月ニキの優秀な才能をオープンだけに終わらせたくなかったオープン民がNANじぇいに降臨させたんや
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>>57
誘導やわ
大袈裟に言いすぎてもーた
すまんな
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これからの方向性ですが、登場する艦娘は自分の好みになってしまうかもしれません。
もう遅いので寝ます
明日の昼くらいに一話執筆始めます
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>>60
おつやでー
明日も頑張りや!
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そろそろ始めようかな
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がんばれ
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俺もSS書いてみたいゾ・・・
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>>64
ホモSSかな?(適当)
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>>64
NaNじぇい創作文芸部
まずはこちらで
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タッタッタッ・・・・・・。
彼女は急いでいた。
「みんな、出撃した後かな・・・・・・」
出撃待機室。そこのドアを開ける。
「やっぱり誰もいない・・・・・・。急がないと」
ロッカーから大掛かりな装置を取り出す。
「よし、艤装異常なし・・・・・・」
脱出口だろうか。上に「OK」の文字が灯る。そして、扉が開く。
「よし、白露型駆逐艦五月雨、出撃します!」
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おっ、続きゥー!
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続きが気になるんじゃあ〜
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おかえり>>1ちゃん
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避難室。そこで北崎は呆然としているほかなかった。
「何なんだいったい……」
他に人はいない。薄暗い、狭い部屋だ。
「そもそも、どういて海の上なんかに・・・・・・」
考えても、答えは出ない。
ドゴオオオオオン
遠くで、爆発音がする。それに従い、部屋も大きく揺れる。
「何が何だっていうんだ!こんな・・・・・・。五味さん、どこへ行っちゃったんだろ
」
―海上
「遅い!」
「すいませんうか・・・・・・長良さん」
「もうやっちゃってるよ!敵は、重巡2、雷巡1駆逐2!」
「そんな!もう横須賀も近いのに・・・・・・」
「それでどうなの、あの人」
「第一印象はまあまあですが・・・・・・」
「・・・・・・余裕はあるのね」
そういって、二人は手に持った銃を構える
「攻撃用意!」
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SSヤメロォ(建前)ナイスゥ(本音)
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提督しか男キャラが居ないから、型月ニキSSみたいなホモ落ち期待は駄目みたいですね
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いいゾ〜これ
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水柱が上がる。
「当たったか?」
目の前に、黒い、人の形をした化け物が現れる。
「だめか・・・・・・」
長良と呼ばれた少女は落胆の声を上げる。
「うわっ!」
容赦なく相手は撃ってくる。砲弾が、長良の肩をかすめた。
「こちら、涼風、駆逐二隻を撃墜。村雨とともにそちらの援護に向かうぜ!」
入電が入る。
「おかしい・・・・・・」
そういったのは五月雨だった。
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>>73
百合はホモ(至言)
不知火は出ますか…?
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五月雨って青いやつか
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五月雨は〜緑色〜♪
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「敵の反応、おかしくないですか。」
「そういやそうだな・・・・・・さっきも、私を見つけたとき先制してこなかった」
「何かほかの目的があるんじゃ・・・・・・」
その通りだった。敵はさっき長良に撃った一撃だけだった。
「あっどこへ行くんだ!」
敵はタンカーの方向へまっすぐ向かう。
「タンカーに攻撃するのか?まずい!」
しかし攻撃はなかった。雷巡と合流しタンカーの周りをぐるぐるしはじめたのである。
「何をやっているんだあいつら・・・・・・」
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「あそこは・・・・・・出撃口?なんで開いているの?」
「しまった!開け放したままだ!」
これは五月雨のミスだった。自動で閉まるようにするように設定してなかったのだ。
敵が見逃すはずもなかった。
「奴ら、中へ入っていく。・・・・・・なにしょげてんの!切り替えるよ!気持ちも装備もね!」
「・・・・・・はい!」
「何が起こっているんだ・・・・・・」
北崎は何も知らず、ただただ天井を眺めていた。
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「何をやっているんだあいつら・・・・・・」←ホモ
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やったぜ。
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何やってんだあいつら…
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[うわああああああああ]
「来るな、来るなぁ!」
船員たちの悲鳴が響く。
「この・・・・・・化け物がぁ!」
一人の船員が勇敢なのか、半分自棄になったのか殴りにかかっていく。
しかし
「オマエタチニヨウハナイ・・・・・・ジャマダテスルヤツハ・・・・・・」
攻撃ははじかれてしまった。そして、銃口が向けられ・・・・・・
「コウダ・・・・・・」
鈍い音。その船員は即死した。
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[コッチカ・・・・・・]
重巡、雷巡は行く方向を変えた。その先は・・・・・・避難場所だった。
「涼風、村雨。合流いたしました!」
操舵室で長良、五月雨、涼風、村雨の4人が合流した。しかしそこは、もはや地獄絵図といった様相だった。
「なんだこれは・・・・・・。私のせいだ・・・・・・。」
五月雨の顔がみるみる青くなっていく。
「おーい!誰かいないのかー!」
涼風が叫ぶ。その途端・・・・・・
ウウウ・・・・・・
「艦長!」
「私は・・・・・・私はもう・・・・・・だめだ・・・・・・この船も・・・・・・計器をやられた・・・・・・あの少年を連れて・・・・・・」
「しっかりしてください!艦長!艦長おおおおお!」
腹部から大量に出血している。間もなく息も、心臓も止まった。
「艦長・・・・・・。仕方ないわ。避難場所よね。」
長良はそういうしかなかった。
「行きましょう。」
「ココカ・・・・・・」
重巡、雷巡の二隻は、避難場所に到達していた・・・・・・
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急展開
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胸熱やね
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バタン!
扉が開く。
「なんだ?ってうわああああああ」
目の前には、この世のものとは思えない化け物。
「来るな!来るなバケモノオオオオ!」
ありったけの声を上げる。武器は、武器はどこだ。
「やるしかない・・・・・・」
足元にあるパイプイスを手にし、力いっぱい殴る。しかし当たると思った瞬間、弾き返されてしまった。
「いてて、なんだ?」
もう一度殴る。しかし結果は一緒だった。
「なんだ・・・・・・なんだよいったい!」
その場に思わずへたり込む。
「シンパイスルナ・・・・・・オマエヲコロシハシナイ・・・・・・」
「スコシネムッテモラウダケダ・・・・・・」
「嫌だ」・・・・・・嫌だ・・・・・・誰か助けて!」
その時・・・・・・
ドン!
「大丈夫ですか北崎さん!」
五月雨が、そこで立っていた。
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続けて、どうぞ
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ドオン!鈍い音が、目の前で響く
「うわあ!」
化物は体勢を崩され、もう一人に倒れかかった。
「大丈夫ですか?早く逃げてください。」
「って、また僕だけまた逃げるのかい?いやだよそんな!」
「早く!」
「そんな・・・・・・クソッ!」
出口へ全力で走る。
しかし、敵もすぐに起き上がり、出口をふさいだ
「クソ、先を越された!」
すぐに距離をとる。
「どうしましょう・・・・・・」
「落ち着いて、奴ら、俺を殺すのが目的じゃない。」
「どうして?」
「俺を一回も攻撃していないし、向こうもそういったから。」
「でも消耗戦はよくないですね。」
「そうなんだ。どうしよう・・・・・・」
足元に何かが転がる。
「そうか・・・・・・これなら」
-
「これならどうだ!」
手に持ったのは懐中電灯だった。薄暗い部屋の中で、一筋の光線が二体の顔に突き刺さる。
「今だ!」
「はい!」
砲撃が相手の足と、砲台部に命中した。
「逃げましょう!」
五月雨は雷巡を力づくで投げる。すると、逃げ道ができた。
「もちろん二人で!」
二人は、出口へ向かって走った。
-
二人は、脱出口へ到着した。
「よかった。あいつらは追ってこない」
「・・・・・・」
「どうしたの。」
「私のせいなんです・・・・・・」
五月雨は、ほとんど泣きそうになっていた。
「私が、ここの扉の設定を間違えたから・・・・・・この船は・・・・・・そこの扉開閉設定のレバー、自動開閉なしに・・・・・・」
「ありになってるけど」
「え?うそ・・・・・・」
「よかった。君の責任じゃないみたいだよ」
「でもいったいなんで・・・・・・」
「誰かが中から開けたんじゃないのか?」
五月雨は少し顔色がよくなった。
「じゃあ・・・・・・いきましょうか。」
「どこへ?」
「横須賀ですよ」
「え、どうやって・・・・・・」
「こうするんです」
-
「何が何だかわからないな。」
「しっかりつかまっていてください。落ちたらまず・・・・・・」
「わかったよ。それにしても・・・・・・いろんなことがありすぎて・・・・・・眠い」
「休んでいてください。すぐに着きます」
「ありがとう・・・・・・」
北崎は五月雨に背負われていた。艤装の上で。
「よし、あと少し・・・・・・」
その時。
ざぱああああん!
「そんな!重巡?そうか、確か一体!」
すかさず砲撃が入る。五月雨はうまくかわした。
「このままじゃ、戦えない!」
北崎を背負っているため、後ろの魚雷管が使えない。しかし、ここは海の上だ。
(どうしよう・・・・・・)
敵の銃口がこっちを向く。
(撃たれる!?)
その瞬間、敵が吹っ飛んだ。
「まったく、私たちを忘れてない!」
「その人は、ちゃんと横須賀まで届けてやんな!」
「砲雷撃戦、始めるよ!」
長良、村雨、涼風の三人だった。
「ありがとう!」
その後、大きな爆破音が聞こえた。
「戦果は以上です。」
「ありがとう。遠征は失敗か・・・・・・。あと、海上に浮かんでた生存者って・・・・・・まさか・・・・・・」
横須賀。そして新たな人々。
第一話終了
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一話終了ようやった。それでこそ漢や
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おつかれナス!
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第一話終わりです
これから更新が不安定になるかもしれません
あと少し矛盾があったかな(五月雨のミスとか)
感想、リクエストがあればよろしくお願いします。
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これって書くのどれくらい時間かかったの?
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12、3時間くらいですね
ノートとか作ってないので、その場でストーリー考えてます
設定の枠組みだけは決めて
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>>98
はぇ〜・・・結構かかるんすね・・・
オツシャス!
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第一話おつかれナス!
摩耶様の出番ま〜だ時間かかりそうですかね〜?
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大人気サイト 大集合NEOの最大規模の裏掲示板 【裏NEO 3rd本家ver....】
更なる進化を遂げさらに人気UP中 いろんな情報アリ!!
そんな裏NEO本家 はこちら★
http://ibbs.info/?id=uraneo3rd
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これから二話を始めます
予定があるので、11日〜13日は更新できない可能性大です
リクエストですが・・・・・・
摩耶・・・・・・出す予定でした。楽しみに待っていてください。
不知火・・・・・・出すか迷ってます
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ガコンガコンガコン・・・・・・
横須賀。響きわたる作業音。そして・・・・・・
「うう〜ん。」
北崎は目覚めた。今回も、起きた時の見えるものが違う。見渡してみると、殺風景な部屋だった。段ボール箱が一つだけおいてある。
「そういや・・・・・・あんなことがあったんだっけ。」
化物2体の姿を思い出す。悪寒がした。
「何なんだろあれ。」
窓がついてあったので覗き込む
「うわー・・・・・・すっごい・・・・・・。」
数えきれないコンテナ。大きなクレーン。そして向こうには海が見える。
「どこなんだよ、ここ」
コンコン・・・・・・
「はーい」
ドアをノックする音。新しい一日が始まった。
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エタらなければみんな大歓迎なんやで
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!ろしくあ
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「北崎さん。入れてください。」
聞いたことのない声だった。
「(誰だろ)はーい。」
「失礼します。」
入ってきたのは、身長が170センチくらいの、髪の毛を横に束ねた女性だった。
「何の用でしょう。」
「私たちの上司があなたに面会を求めています。」
「面会?そうか・・・・・・助けてもらったんだ。お礼もしなくちゃだめだしね。行きますよ。」
「そうですか。よかった。」
北崎は出口に向かう。
「案内しますよ。こちらです」
廊下。無言が続く。
(気まずいなあ)
「あの・・・・・・」
「はい?」
「ここ、広いですね。ここはどこなんです?」
「横須賀ですが」
「そうじゃなくて・・・・・・」
なかなか会話がかみ合わなかった。
「この角を曲がれば・・・・・・ここです」
大きな扉だった。北崎は前に立つ
「ちょっと待ってください。」
「はい。」
「私の名前は加賀美です。」
「あっ・・・・・・僕は北崎です。」
「わかってますよ。」
最後までかみ合わなかった。
-
コンコン
「どうぞ」
扉を開けると、制服を着た男性が立っていた。この格好どこかで・・・・・・。そうだ、自衛隊の服じゃないか?
逆光で少し顔がわかりづらい。
「ありがとうございました。助けていただいたんですよね。一泊もさせていただいたし・・・・・・」
「そんなに固くなるなよ。創一。」
(・・・・・・え?)
どこかで聞いたことのある声だった。
「俺を忘れたのかよ。」
「もしかして・・・・・・祐樹か!?」
ようやく顔が見える。違う高校に入って、会ってなかったっけ・・・・・・。三年ぶりになるのか。
それにしても・・・・・・三年ぶりにしては、なんだか老けてないか?
「久しぶりだな・・・・・・15年ぶりだな。お前・・・・・・若いな。」
15年・・・・・・なにを言ってるんだ?
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今日はここで更新を打ち切ります
できたら13日に更新を再開したいと思います。
感想、質問、リクエストよろしくお願いします。
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お疲れナス!
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全部読んだけどいいゾ〜コレ
SMDRは危うく戦犯でしたね・・・・・・
初春型出してください!オナシャス!なんでもしますから!
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ファッ!?
タイムスリップしとるんか
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コレは創一と祐樹がホモに走りますね……間違いない。
あっ、そうだ(唐突)
五月雨、長良、村雨、涼風がすでに出てるゾ。
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加賀美は加賀っぽいですね・・・・・・
横浜か何か?
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予定が意外と早く終わりました
再開していきたいと思います
>>110初春型ですね
正直口調の問題あるからすっげ〜使いづらいゾ・・・・・・
でも前向きに考えますね
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再開やったぜ。
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お前の投稿を待っていたんだよ!
もう待ちきれないよ!早く出してくれ!
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15年前は二人とも3歳のはずだ。
「ちょっと待ってよ・・・・・・。15年前と言ったら、俺たちが初めて会ったころじゃないか。」
「は?」
何と言っていいかわからない表情をする祐樹。
「おいおい・・・・・・。記憶喪失にでもなったのか?でも、俺のことは覚えているしなあ。」
おかしい。疑問が、創一の脳内を駆け巡る。そして、一つの質問を生み出した。
「今・・・・・・お前は何才なんだ?」
その次、信じられない言葉が飛んできた。
「何だよ・・・・・・30歳だよ。当たり前だろ。」
何の疑問もなく、祐樹はそう答えたのである。
-
流行らせコラ!
-
驚き、困惑・・・・・・形容しがたい感情が湧き上がる。
よく考えると、辻褄はあっていた。3年間で人があんなにふけるわけがない。
とすると・・・・・・俺は12年間何をやっていた?
大学は?
そもそも・・・・・・なぜ海の上に・・・・・・。
「まあ、あんなことがあったら仕方がない・・・・・・」
あんなこと?
「それも、覚えていないのか。あれは5年前のことだ。忘れもしない」
どんどん真剣な顔つきになっていく祐樹。手元にあるスイッチを操作し、ホログラムを出す。
「やっぱり12年後なんだ・・・・・・」
映像が流れ始めた。目を覆いたくなるような、そんな光景が広がる。
-
炎上する都市。逃げ惑う人々。画面を覆い尽くす黒煙・・・・・・。
目を背けてはならない気がした。逃げ出したい気持ちを必死に我慢して。
画面が切り替わる。同じような光景が広がる。そして・・・・・・。
「あっ!あの時の化物!」
黒い、不気味な、二本足の化物。そいつが移った瞬間、映像は終了した。
「見ただろう。わけのわからない化け物が海から来て突然日本中を襲った!日本の沿岸部の都市は壊滅。そして、俺たちの故郷も・・・・・・。」
二人の故郷は港町だった。当然、助かるはずもないだろう。
「俺の家族も、お前の家族も・・・・・・消息は・・・・・・つかめていない。だが・・・・・・もう・・・・・・」
涙を、必死にこらえて。話は続く。
「日本は鎖国状態だ。船を出せば、沈められる。飛行機もダメだ。飛行高度一万メートルなら、奴らの射程圏内だ。こうなると、どうなるかわかるだろう?」
日本は資源に乏しい。当然、輸入に頼らざるを得ない。加工貿易もできない。
「そんな・・・・・・」
創一は絶句するしかなかった。目を覚ましたら、世界が、こんな・・・・・・。
-
「日本では、人口の半分が亡くなったよ。首都は東京から群馬へ移された。復興なんて考えている暇がない。人は、山間部に移った。日本も、世界も・・・・・・変わってしまったんだ。」
その後、10分の静寂が場を支配した。
「でもな・・・・・・希望はある。奴らを、倒せる方法がな。」
自分を助けてくれた少女。創一の頭にはっと浮かぶ。
「お前も知っているはずだよ。大掛かりな装置を背負った少女。最後の砦ともいうべき存在。」
創一は息をのむ。
「艦娘だよ。」
「かんむす・・・・・・?そんな・・・・・・人に世界の運命を背負わせるなんて。」
思わず困惑してしまう。第一、日本にはある程度の軍事力が・・・・・・。
「気持ちはわかる。俺だっておんなじだ。できれば、あいつらを送り出したくない。だがな、このままではもっと多くの人が死ぬんだ・・・・・・。」
苦悩する祐樹。その様子は、痛いほど伝わってくる。
「そもそも、あいつらには、まったくと言っていいほど通常攻撃は効果がない。有効なのが、艦娘の放つ攻撃ってわけさ。」
そうか、だから俺の攻撃が効かなかったのか。
「そして、俺は反撃の責任者、指揮官ってわけさ。具体的に言うと、海上自衛隊傘下の特別部隊のリーダーってわけだな。」
祐樹は、そう付け加えた。
-
「創一、これからどうする。」
「えっ?・・・・・・そうだな。大学も、故郷も、帰る場所はもうないし。正直、どうしていいかわからない。」
現実の前に、はっきりした思考はできていなかった。
「そうか。なら、しばらくはここにいてもいいぞ。部屋はあるからな。ただし・・・・・・」
安堵の表情を浮かべる創一に、祐樹は近づく。
「うちの部下に手を出すなよ。」
「お前はもっと女に手を出したほうがいい。お前、奥手だからな。30にもなって彼女のひとりもいないのか。お前との勝負忘れてないからな。」
「こんな状況でできるわけないだろ!」
勝負というのは、中学三年の時に交わした、どちらが先に結婚するかというものだった。
少し雰囲気が重くなくなった。
「そんなこと言えるんだ。創一は結構余裕があるな。あんな現実、一般人が見たら発狂ものだぞ。」
「悩んでいても仕方がないさ。俺にできることがあったらなんでも・・・・・・というわけにはいかないけどさ。協力するよ。」
「すまない。じゃあ、さっきの部屋がお前のものだ。家具はあまりないけどな」
「おう、またな。」
創一は、足早に部屋へと戻った。
「さてと・・・・・・」
部屋には一人祐樹が残っていた。北崎創一。彼と再び出会えた喜びもあれば、疑問も残っていた。
(あいつ、何か隠しているんじゃないか?記憶が一定期間抜け落ちている。そして、なぜ10代の姿のままなのか?)
部屋を一周して少し考えた。
(それに、五月雨・・・・・・いや、五味君か。彼女はあいつを守ったときこんなことを聞いたと言っていたな。)
化物は、北崎を殺さない―
「すこし調べてみる必要があるな。護衛・保護・監視が必要だな。ちょうどいい。」
-
「ふう、なんか疲れたな……」
無理はない。悲惨な現実を知らされたのだ。18とはいえ、まだ子供。あまりにも大きすぎる。
「まだこんな時間か……」
時計は12時を指していた。
コンコン
ドアをたたく音がする。
「北崎さん。」
聞いたことのある声だった。
「五味さんだね!ちょっと待ってて。」
ドアを開ける。そこには、真剣な顔をした彼女の姿があった。背中に、あの大掛かりな装置を背負っている。
「ど、どうしたのいったい。」
「お久しぶりですね。話があるんです。」
彼女の話とはいったい。
第二話終了
-
第二話が終わりました。
思いのほか時間がかかってしまいました。センセンシャル!
明日から第三話を始めようと思います。
感想、質問、アドバイス、リクエストよろしくオナシャス!
-
おつかれナス!
加賀にしろ五月雨にしろなんで偽名使ってるんですかね…?
-
>>125
次回話まで、待とう!(提案)
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シリアスいいゾ〜コレ
お前〜なかなかやるじゃねえか
群馬を首都にするのか(困惑)
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明日といいましたが今日ですね・・・・・・
いったん寝てから再開します
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そろそろ第三話開始します
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真剣な顔をする五月雨に、創一はただただ圧倒されるしかなかった。
「まあ、立ち話もなんだし、部屋に入りなよ」
二人は、段ボールをテーブル代わりにして向かい合った。
「なんか飲み物もってくるね。」
備え付の簡単なキッチンと小型な冷蔵庫。誰かが入れてくれたのだろうか。棚からコップ、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。
「こんなものしかなかったけどいいかな。」
「いやいやすいません。じゃあ、本題に入りますね。」
五月雨は、一呼吸置いた。
「海田隊長から決定です。今日から、私、五味由佳はあなたの護衛を担当することになりました。」
海田……ああ、祐樹のことか。それよりも、護衛だって?
「あの時の敵の攻撃はあなたを狙ったものでした。殺さないと言っていたんでしたっけ?また、狙ってくる可能性があるという判断です。」
「なんか、大変みたいだね。」
そういって、創一は手元のミネラルウォーターを一口飲んだ。
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「そんな感想なんですか!?……まあいいです。もっと重要な話です。お教えすることと、教えてもらうことがあります。」
由佳も水を飲み、装置に手をやった。
「艦娘についてです。」
「おお・・・・・・それは大事な話だね・・・・・・」
「だれがそう呼んだかはわかりませんが・・・・・・。とにかくあの化物に唯一対抗できる存在です。こうやって装着するんです。」
大掛かりな装置を背負う由佳。
「これで私は……艦娘になったわけです。駆逐艦、五月雨の魂を受け継ぐものらしいのですが……」
創一は、なんとか話を理解しようとした。
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スレ復旧しましたね
再びここへ書き込みます
後から見た時の混乱を防ぐため、いったんコピペをした後本題へ入ります。
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「へえ・・・・・・」
「今、私は艦娘です。証拠に・・・・・・」
五月雨はキッチンに向かい、包丁を取り出した。そして、自分の指をまっすぐに切り裂いた。
「ちょ・・・・・・何やってるの!?」
「見てください」
なんと、血は流れなかった。逆に包丁は刃こぼれを起こす。
「見たでしょう。私にも、今は通常攻撃は効きません。そして・・・・・・」
銃口を創一に向ける。そして、発射した。
「いきなり何をするんだよ!」
「なんともないでしょう?」
その通りだった。撃たれたと思ったが。
「原理はわかりません。あの化物に撃ったら効きます。あなたも見たでしょう?」
タンカーの上。確かに五月雨の撃った弾は化物に命中し、動きを止めていた。
-
[あの化物を倒せるのは私たちしかいないんです。]
「そうなのか・・・・・・。何というか、大変だね。」
コップに二敗目の水を注ぐ。
「あと、このシステムには条件があるんです。」
コップの水は半分になっていた。
「どういうこと?」
「まず最初に、男性は全く使えません。一応装着はできるんですが・・・・・・。水には受けないですし、攻撃の威力も1000分の1にまで落ちてしまいます。」
五月雨のコップの水もなくなった。創一は水をつぐ。
「ありがとうございます。そして、女性なんですが、こちらは未適合者でもつけたら水に浮けます。ただ攻撃の威力はやはり男性と同じぐらい落ちてしまいます。」
コップの中の水は半分まで減った。
-
「互換性なのですが・・・・・・同じカテゴリーなら装着できます。空母とか、戦艦とか。ただ、攻撃力は半分になります。これは緊急用ですね。」
「すごいね・・・・・・開発者は誰なの?ノーベル賞とか、とれると思うんだけど」
創一は冗談半分で行った。重くなりがちな雰囲気を打破しようとした。
「それはわかってないんです。この装置が贈られたのはあの日の・・・・・・五日前で・・・・・・」
急に雰囲気が重くなってしまった。
「あの日を終わらせたのは艦娘システムです。これって誰かが事件を予想していたんじゃないでしょうか。」
「よくわからないな。それにしても・・・・・・君さすごいよ。」
「え・・・・・・?」
「おそらく怖いと思うよ。戦うのも、死んでしまうかもしれないし・・・・・・。人でなくなってしまうかもしれない。それでも戦っているんだろう?理由は聞かないけどさ。」
水を飲み干す。そうして、笑顔を見せた。
「俺、大学に入ったけどさ。なにしたいかわからなくてさ。何かのために頑張れるって、すごいよ。」
-
「そうですか?照れますね。」
「まあ飲んでよ。水だけど。」
そういって五月雨のコップに水を注いだ。
「そうだ、忘れるところだった!こっちも聞きたいことがあるんです。」
「ん?」
「海田隊長から聞きました。海田隊長と幼馴染だとか。」
「ん、そうだけど。」
「あの人は今30歳です。あなたはそうは思えません……。これはなぜなんですか?」
答えようのない質問だった。むしろこっちが聞きたいくらいの―
「こっちが聞きたいぐらいなんだよ。下宿先に初めて泊まって、目が覚めたら海の上だった。しかも、友達は妙に老けてて、日本は壊滅していた。こんなことってある?」
「信じがたい話ですが……記憶喪失なんでしょうか?」
「可能性は高いね。」
そう答えるしかなかった。
「そんな……。あなたは怖くないんですか?もしかしたら、悪いことをやったのかも……。」
「大丈夫だって!そんな度胸ないよ。第一、記憶喪失だけなら、俺が18歳のままだってことが説明できないよ」
不安を感じさせないような笑顔。
「あなたって不思議ですね。ふつうそんな顔なんてできないですよ。」
「笑顔が一番だよ。」
また、屈託のない笑顔を見せてみせた。
-
「最後です。あなた、あいつらに狙われてるんじゃないですか?」
「そ、そうなの?」
「あいつら、あなたを殺さないって言ったんでしょう。」
「それなんだよね・・・・・・」
はっきりと覚えている。あのタンカーの上。あいつらの声。
「いつ襲ってくるかわかりません・・・・・・ですからあなたを警備することになりました。」
「誰が?」
「私です。よろしくお願いしますね。」
少し、びっくりした。
「ですから、気になることがあるなら何でも言ってほしいんです。」
「こちらこそ、よろしく頼むね。」
握手を交わす。荒れた肌。どれだけの戦いをこなしてきたんだろう?
ぐうう〜。
二人ともおなかが鳴った。時計は一時を指していた。
-
「あはは・・・・・・お腹すきましたね・・・・・・食堂に案内しますよ。」
「うん。ありがとう。」
五月雨は艤装を外し、由佳に戻る。二人は顔を真っ赤にして食堂へ向かった。
少し廊下を歩いた。食堂と書かれたプレート。・・・・・・ここか。
中に入ると、そこは思ったより広かった。100人くらい入るんだろうか。
誰もいなかった。中央付近の席に座った。
「だれか、作っている人はいないの?」
「ええ。人手が足りないですから。なかなか海の近くの職場はきついみたいです。」
「ふ〜ん。あ、そうだ食糧事情はどうなっているの?」
「日本の農家をフル稼働して、最低限なら何とかなっていますね。肉と魚はかなり高いです。」
「海に出られないもんね。肉も、国内牛はもともと高かったもんなあ。」
「鳥と豚なら何とか・・・・・・あと卵も。とりあえず、何か作ってきますね。」
二人は、厨房へと向かった。
「何作るのさ。」
「そうですねえ・・・・・・。ふりかけごはんでいいですか。」
「・・・・・・それ、ギャグなの?」
半ば呆れた顔で、大きな冷蔵庫を開ける。
昼食が終わった後だからか、あまり残っていなかった。しかし・・・・・・
「よかった。これならおいしいものが作れそうだよ。」
そういって創一はにっこりと笑った。
-
「調味料も一通りあるしね……。」
卵と鶏肉、玉ねぎを取り出す。
「ちょっと待っててね」
食材の下処理を素早くこなす。玉ねぎ、鶏肉を切り、しょうゆベースのダシを作る。
卵を溶きほぐすのも早かった。
「すっごい・・・・・・」
具材に火を通したら、卵を入れる
「二回に分けてっと・・・・・・」
あっという間に親子丼二人分が出来上がった。
「はい。俺の得意料理。ささ、熱いうちに食べよう。三つ葉はなかったけど」
テーブルに座る。どんぶり二つが湯気を充てていた。
「いただきます。」
由佳は、とりあえず一口食べてみる。卵はちょうどいいかたさで、ダシの味付けも絶妙だった。
「これ、おいひいです!」
「いえてないよ。まあ、これは小学校からの得意料理!他にも一人暮らしをするため、練習したんだ。」
「これなら……店でも出せるんじゃないですか?」
その時創一にひらめきが走る。
「そうだ。おれ、ここでバイトするよ。食堂のマスター!みんな、ご飯作る暇なんてないでしょ?」
「それはいいかもしれませんね!・・・・・・ただ、しんどいですよ?今ここには15人くらいいますし。」
創一は笑って見せた。
「大丈夫だよ。食糧さえあれば!大人数用のレシピもある。それにさ、考えたんだ俺。俺にも何かできるんじゃないかって。みんな戦ってるんだ。それに……知りたいこともたくさんあるし。」
12年間、両親の行方、敵の目的……。様々だった。
「・・・・・・隊長なら、ある程度の人事権を持っていると思います」
「そうか、ありがと!さあ熱いうちに食べよう!」
創一も、熱々のどんぶりをかきこんだ。
許可は、簡単に降りたという。
第三話終了。
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第三話終了です。
長いことかかったり、スレが変わったりして申し訳ありませんでした。
あと、ここまで長い説明パートでしたね。
分かりにくかったら、設定を個別で書こうと思います。
戦闘パートは……いやーきついっす……
どうすっかな〜俺もな〜
要望、感想、質問、アドバイスよろしくオナシャス!
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メシテロはやめロッテ!
流行らせコラ!
設定あくしろよ
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ラスボスは戦艦レ♂級ですね…間違いない。
偽名じゃなくて本名がタマタマ艦名に似てるってことか
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人に装着することで化物と戦うことができる唯一の存在。
水上を移動でき、多少の攻撃は効かなくなる。
人間にはその攻撃は効かない
原理、開発者不明
ただし条件がある。
まず、艤装と人は適合しなければならないこと。
男性は適合例なし。(一応装備は可能だが水上移動不可能、威力1000分の1、生身と防御力が同じなど実質戦闘不可)
女性の不適合者は水上に浮ける。それ以外は男性と同じ。
・服装
適合を高める効果あり。原理不明。
・互換性
駆逐艦は駆逐艦のものなど同じカテゴリーなら装備可能。
ただし、やはり能力は落ちる。
姉妹艦や同型艦のものなら能力の落ちは少ない。
・改造 近代化改修
作品中ではまだ確認されていない
・その他
陸上では攻撃力が落ちる。
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そろそろ第四話始めます
-
創一が横須賀にやってきて、5日がたった。
指令室。そう書かれた部屋の中祐樹はいた。
「おかしい。国、自治体の持つデータベース、すべてにおいてあいつの情報がない。削除されているのか?」
国民である以上、どこかに情報は残るはず・・・・・・。手当たり次第に調査したのだが・・・・・・。
「まるであいつが未確認生命体みたいだな。」
そうつぶやき自分の椅子に座る。窓を除く。雲一つない、快晴だった。
「俺はあいつのことを高校から知らないからな・・・・・・。地区がまるっきり違う高校だったし。」
手元の水を飲む。
「そうか・・・・・・。高校からの知り合いなら、何か知っているかもしれないな。」
相変わらずの青空を見て、つぶやく。
「都合よく来てくれるといいんだが・・・・・・。こっちも、やらなくちゃいけないことがあるし」
机の上には、作戦資料が置かれていた。
-
食堂の朝は早い。
この部隊に所属する人間は6時に起床、そこから早朝ランニングをし、6時45分くらいから食事に入る。
むろん準備はあるから、創一は5時くらいに起きなければならなかった。
そこから野菜の下処理を行うのだが、15人分となると大変だった。
「栄養バランス、ローテーションを考えるのは大変だよな・・・・・・」
セルフ式で作るだけだったことで、何とかやりくりできていた。
創一が自分の食事にありつけたころには8時半を回っていた。
「慣れてきた?」
由佳とよく似た女性が話しかける。
「うん。まあ大変だけど、やりがいがあるよ。すごく充実している感じがする。」
笑顔を見せる創一。
「あんた、まったく変わってるな。テンポが乱れる。」
彼女の名前は風間涼子。艦娘システム駆逐艦「涼風」の適合者だった。
創一にとっては命の恩人ということになる。
-
「この前はありがとう。まだお礼してないね。」
トレーに食事の入った器をのせ、テーブルに座る。今日の朝食はご飯に味噌汁、キャベツの千切りと目玉焼き、豆腐だった。
「今日休みなんだよね。」
涼子はすでに朝食を食べ終えていた。創一は味噌汁をすする。
「今日だけ付き合ってくれない?」
思わず味噌汁でむせてしまった。
「げほっ!急にそんなこと……」
「そう意味じゃないったら!あんたここにきて日が浅いからね。それに現状、見ておきたいでしょ?案内するよ。」
「それもそうだね。よし、お願いするよ。」
豆腐にしょうゆをかけ、マイペースに食べ進めた。
料理を作っておいて、基地を出発した。
一応祐樹には許可を取る。涼子が一緒ということで快諾してくれた。
艤装は涼子のリュックの中にしまった。
「さて、出発しますか。」
「外出するの久しぶりだな……」
大きな門が開く。そこから三十分hど経っただろうか。住宅地だった場所についた。
-
とりあえずここで切り上げます
更新が遅れてすいませんでした
要望、質問、アドバイスよろしくお願いします
-
おつかれナス!
流行らせコラ!流行らせコラ!
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このSS大好き、ほんとあこがれてる
無理せず更新して、どうぞ
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すばらですよ〜
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「なんだここ・・・・・・」
住宅地があった場所。そこはまるで廃墟だった。
ボロボロの三輪車が転がっている。確かに、ここで人が住んでいたことは明らかだった。
ここの人たちはどこへ・・・・・・。
「この町はあたいの故郷だったんだけどね・・・・・・由佳もそうだけど。」
「幼馴染ってこと?」
「そう、あんたと隊長みたいなもんさ。」
「そうだったんだ・・・・・・。ここ俺の下宿先があった町でもあるんだけど。」
涼子は驚く。
「本当かい?でも、もう・・・・・・」
「行ってみてもいいかな。分からないし。」
下宿先は山の近くだった。もしかすると……。少しの希望を胸に下宿先へと向かった。
-
「ちょっと聞きたいんだけどさ。あんた・・・・・・大学生だったんだっけ。」
「そうだけど。」
「ここの近くに下宿先近いって言ったけど、・・・・・・国保って遠いし・・・・・・」
「そうだね。」
国保とは、国立保土ヶ谷大学を指す略称だった。
「もしかして・・・・・・横須賀医科大!?」
「そうだよ。医学部医学科。・・・・・・でも、こんな状況で12年も経ってる。学業どころじゃない。」
少し足が速くなる。涼子は言った。
「あんたすげえじゃん!医者なんて。あ、国家試験受けないとだめなのか」
創一の顔は少し暗かった。
「・・・・・・何のために医学部に入ったか分からないんだ。医者になるためっていうのは確かなんだけど。」
「ふーん、ぜいたくな悩みなんだな・・・・・・」
「そうかもしれないな。あ、着いた。」
そこは、他とは変わりのない、廃墟同然の建物があった。
「だめか・・・・・・ん?」
ただ、一人スーツを着込んだ女性が立っていたのである。
-
[あれ、誰かいるね]
「でもここ結構危険なのに・・・・・・許可いるんだけど。」
そういっていた2人に気付いたのだろう。彼女は声をかけてきた。
「あなたたち、ここで何をしているんだ。」
「こっちが聞きたいですよ。ここら辺は、許可がないと入れないんですよ」
涼子は一歩も引かない。
「はい許可証と名刺。・・・・・・これでいいかな。」
芦川千夏、警視庁所属―そう書かれてあった。
「ああ、刑事さんですか。私は風間涼子で、こっちは北崎・・・・・・創一だっけ?下の名前。」
「あってるよ。」
「二人とも、あそこの横須賀基地に勤務してます。」
創一は質問を投げかける。
「刑事さん。ここは僕の下宿先だった場所なんです。何か調べてらっしゃるんですか」
千夏は驚いた顔をした。
「そうなんですか。いや、私は5年前の事件の捜査でして。ここが最初に攻撃された場所ですから・・・・・・」
え?今重要なことを言ったのではないか?
そう思ったものの、不審に思われるといけないから黙っておいた。
「今日はここはこのくらいですね・・・・・・。」
その瞬間。一キロ先の廃墟が吹っ飛んだ。
-
轟音は創一たちにも届いた。
「うわっ!またあいつらか・・・・・・」
涼子は通信機器を取り出した。
「隊長、こちら風間。襲撃を受けています。民間人二人と行動中。至急応援願います。」
涼子は艤装を取り出した。
(陸上戦だと威力が落ちる・・・・・・。しかたがないか。)
「あなた、いったい何を・・・・・・まさか。」
民間では噂でしかなかった化物と戦う存在。実在していたとは。
「刑事さん。北崎を連れて逃げてください。」
「そんな、あなたどうする気?」
涼子は覚悟を決めた顔だった。艤装の最終点検を素早く進める。
「足止めをして、止めは援軍にやってもらいます。あとは、任せてください。」
足が震えていた。
「そんな……分かった。ただ、帰ってきてもらうからな。」
「君!?……よし、ついてきてくれ」
できるだけ、山沿いの道。基地に向かって走った。
-
感覚を研ぎ澄まし、周囲に警戒を強める。
電探が装備されてない今、涼子が取れる手段はこれしかなかった。
(よし、艤装・・・・・・装着。)
涼風となった今、私にできることはなんなのだろう。
何が出てきても援軍が来るまで耐える。それだけだ!
その瞬間、山の中で動く影を見つけた。
「そこか!?」
相手に向かって砲撃を行う。やはり陸上だと、効かないか。
「敵、重巡1体を確認!」
敵はこちらへかけてきた。接近戦を決め込むつもりか?
「こっちにも・・・・・・好都合だな、おい!」
その時、創一と千夏の二人は道のちょうど半分へ来ていた。
インフラ整備の進んでいない悪路を歩いたこと、そして、初夏を思わせる陽気。体力を奪う要素はいくらでもあった。
「はあはあ。半分か。」
(一人で・・・・・・大丈夫か?)
「おいおい、信じてやれ。」
「心、読まれましたね・・・・・・」
信じ、基地へと走った。
-
砲撃ができるのに近接戦闘とかまるでギャレンみたいだあ・・・
死亡フラグ立ってるじゃないか
-
更新あくしろよ
まあ焦らないでいいけど
-
走っていると、海に面した近代的な建物があった。
「こんなところ・・・・・・あったんだ」
少し立ち止まる。「開発部」とだけ書いてあった。
「どうした?」
「いや、何でも!」
再び創一は走り始めた。また来なければ―そんな予感がした。
涼風は、パンチの応戦の中にあった。
(こいつ・・・・・・しぶとい!)
即座に足払いをかける。だがその瞬間、化物は高く飛んだ。上から、砲弾の嵐が
「うぐっ!」
何発かくらってしまう。破ける服。艤装が、煙を上げ始めた。
(やはり、魚雷を使うしかない。そのためにも・・・・・・海上へ出る!)
手に持った銃を放つ。弾は化物の足元を襲い、粉じんを巻き上げた。当然視界が悪くなる。
今しかない―涼風は海へ向かって走る。戦闘を続けていくうちに、海に近づいていたのが幸いした。
必死に走り、海についた。とっさに振り替える。だが―
「いない?」
そこには、化物の姿はなかった―。
-
「やっとついた・・・・・・助かった。」
「北崎さん!大丈夫ですか?」
由佳が駆け寄ってきた。
「もう・・・・・・心配したんですよ。」
「ごめん・・・・・・。」
「で、こちらの方は。」
由佳は千夏の顔を見る。
「ああ、警視庁の刑事さん。調査してたらしいんだけど、5年前のこと。」
「芦川です。」
千夏は頭を下げる。
「そうだ!大変なんだ!また化物が!」
「落ち着いてください、援護が向かいました。」
「そうか……ウッ」
突然創一の体を立ちくらみが襲った。立っていられなくなり、膝をつく。
意識がだんだんと遠のく。
「ちょ、ちょっと北崎さん!」
突然のことに二人は驚く。
「とにかく、ここの医務室に運ぼう。疲れが出たんだろう。今日はちょっと暑かったからな。」
「ええ?いなくなったって!?」
鵜川良美。今は軽巡洋艦「長良」というべきだろうか。驚いた声を上げる。
「はいそうなんですよ。」
涼風は答えた。海上を3人が移動する。もう一人は駆逐艦「村雨」。またの名を、村岡なぎさ。
「それにしても無茶したねえ。」
村雨がとがめる。涼風と村雨は同期で仲は良好だった。
「それにしても気になるなあ。あのひと、なんで狙われるんだろう。」
村雨はそうつぶやく。
「そろそろつくよ。」
目の前には、海が広がっている。どこまでも続くように。
背後にはもっと大きいことが起こっているのではないか?
その時、私たちは―
そんなことを考えてしまう長良だった。
「やっぱり、あいつは狙われてるんだ。」
報告書を手に取り、そうつぶやく祐樹。
「俺は、お前を守る。一人の幼馴染として―絶対に!」
そういうと、祐樹はある決断をした。
第4話終了
-
第四話、だいぶ長くなってしまいました。
また、サブタイトルも内容とあっていない気がしました。
二話に分けたほうがよかったですかね・・・・・・(反省)
次は第5話ですね。
できるだけ早く更新したいと思います。
感想、リクエスト、質問、アドバイスがあればよろしくお願いします。
-
またの投稿おまちしてナス
-
続きが気になってしゃーないですが無理せず!
-
歓声が上がる。その次には、「よくやった!」の声が上がる。
だが、そのスポットライトを浴びているのは自分ではなかった。
自分の中に湧き上がってくる嫉妬心が、ひたすら自分を辛くした。
「・・・・・・おれは、違うんだよ・・・・・・」
輝く他人。手を伸ばした瞬間、自分は暗闇にのまれた。
「あれ・・・・・・」
創一は目を覚ました。寝汗をびっしりかいている。時計の針は3時を指していた。外は明るい。
「医務室ですよ。」
由佳は心配そうに声をかけていた。
「うなされていましたよ。何か悪い夢でも・・・・・・?」
夢の記憶は、失われるのが速い。だが、それが悪夢であることは火を見るより明らかだった。
「大丈夫だよ、体もなんともない。久しぶりに走ったからね。疲れが出たんじゃないかな。」
創一は笑ってそう答えてみせた。
-
「あ、そうだ。これから夕飯の準備がある。行かなきゃ……」
ベッドから起き上がる。立ちくらみもない。体は万全だった。
「本当に大丈夫なんですか」
創一は肩をぐるぐる回して見せる。
「大丈夫だって!今日もおいしいご飯作るから、待っててよ。」
創一は部屋を出る。由佳も、あわてて後を追いかけた。
廊下で、祐樹とすれ違った。
「お、創一。もう大丈夫なのか?」
「ああ。大変な目にあったけどね。」
創一は、やれやれといった表情をした。
「あとで話があるんだ。ちょっと用事があるから、ちょっと待っててくれないか。」
「ああわかった。食材の下ごしらえをやっとくよ。」
そういって、二人は別れた。
-
NaNじぇい民の結婚相手を探してあげるスレ
-
更新されてるじゃないか(憤怒)
創一の過去が気になりますね・・・
AILE君はこのSSまとめるんですかね・・・
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今日はここで更新終了です
マンネリ化がいや〜きついっす……
コメント数も少ないしどうすっかな〜俺もな〜
でも数少ないコメントは本当にうれしいです。ありがとうございます。
質問、要望、アドバイスよろしくお願いします
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お疲れさんやで〜
マイペースで書いてくれたらだいじょーぶだいじょーぶ
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読んだゾ
戦艦や空母の出番はま〜だ時間かかりそうですかねえ?
てかKTZKは結構優秀じゃないか
-
創一と由佳は二人、建物の外へ出た。なるほど気がつかなかったが、ここは医務室と言うよりは診療所に近い。白い、大きい二階建ての建物だ。
「出撃で、怪我することもありますからね。結構設備も良いみたいです。」
由佳が言う。
「こんな建物あったんだね……あれ?」
二階の窓から人影が見える。真っ黒な髪の女の人だ。もう一人は……
「海田隊長と……、ああ、桑山さんの妹さんだ。またお見舞いに来てる……。もう長いこと意識がないのに……」
由佳がそう呟く。当然、創一には疑問が浮かんだ。
「桑山さんって?」
「話せば長くなります。食堂でも行きましょう。下準備、手伝います」
二人は食堂へと向かった。
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そこは、個室だった。花の持ち込みは禁止されている。テレビはない。あるのは窓とベッドと引き出し付きのテーブルだけだ。色は白。色彩感はない。
そこに、眠っているままの女性。そして男女の二人組がいた。
「桑山さん。あなたのお姉さんはこのままでは助からない。ずっと眠ったままだ。悪いことは言わない。首都の……群馬にはもっと設備が整った病院があります。そこに移った方がいい」
裕樹だった。申し訳なさそうな、深刻な顔していた。
「治療費なら……国が、いえ、私が出します。そうじゃないと、私の気がすまない。これは私の責任なんだ。本当に、申し訳ない……」
裕樹は頭を下げた。
「頭を上げてください。姉は、言っていました。『私、海が好きなの。あの音、香り……その中で暮らしたい。例え戦いの中でも、倒れていたとしても』って。私、ずっとそばにいます。家族は私達二人だけなんですから。……このやりとり、三回目くらいやっている感じがします。」
女性は気丈に、少し意地悪にそうこたえた。
「しかし……ここは危険だ。いつ奴らが攻撃を仕掛けてくるか。警備体制は万全を期すけれど、それでも……」
「信じていますよ。姉さんが信じた方ですから」女性は笑ってみせた。すると、裕樹の険しい顔も和らいだ。
-
食堂には由佳と創一がいた。
「玉ねぎ、ニンジン、ジャガイモをを切らないと」
「あ、私も手伝います」今日のメニューはカレーのようだ。量が多いから、かなりの食材が必要だった。
「それで、何があったの。裕樹と、その……桑山さんに。」
ニンジンを切りながら創一は尋ねる。
「タブーな話ならいいけどさ。」
「いえ、話します。あれは、半年間くらい前のことですかね……」
由佳は語り始めた。
-
海田くんの過去が気になりますなります!
桑山は扶桑かな?
-
更新あくしろよ
-
「姉のほうは聡美って方です。私たちの先輩で隊長の後輩に当たります。」
由佳はニンジンを切る。思わず力がこもっていた。
「半年前、私たちはある作戦に参加しました。大島ってありますよね。そこにあいつらが基地を作っていたんです。私はまだここに配属されてばかりでしたから、詳しいことはよくわからないんですけどね。」
由佳はニンジンを切り終えた。
「それに参加したのが聡美さんなんですが……。基地は無事殲滅でき、大島も奪還できたんです。ただ……」
「ただ?」
「殲滅が確認できたんでしょうか。帰るとき、奇襲を受けたらしいんです。その時、聡美さんは攻撃を受けて……。今も意識が戻っていないんです。その敵は、まだ殲滅できていません。逃げられたらしいですから。そして……」
創一は思わず息を呑む。
「指揮を執っていたのが海田隊長でした。油断していたといっていましたから……。相当後悔しているんでしょう。」
「あいつにそんな過去があったのか……」
思わず創一は考え込んでしまった。そういえば、俺はあいつのことを何もしらないんだな……。
「過去に悩んでいるのは俺だけじゃないというわけだ。」
創一はジャガイモを切り終える。あとは、玉ねぎを切るだけとなっていた。
-
お、始まってるゥー!
-
病室にはまだ二人がいた。時刻は5時、カラスが鳴きはじめている。
「じゃあ姉さん、そろそろ帰るからね。」
「では、私もこれで。用事がありますので。」
祐樹は一礼をし、病室を出て行った。
(あ、創一との約束・・・・・・)
食堂では二人が食材の下処理を終えていた。鍋に入れられ、煮込まれている。
「あとは固形ルーをいれてっと。」
いい匂いが食堂中に広がる。
「いい香りですね。今日は、カレーですか。」
加賀美が立っていた。
「あっ、加賀美さん。カレーは僕の得意料理なんですよ。待っててくださいよ。」
「そうですか。さすがに気分が・・・・・・。いえ、こんなことを言っている場合ではありません。」
加賀美は小さな咳ばらいをした。
「海田隊長がお呼びです。」
「祐樹が?仕方ないなあ。由佳ちゃん、火加減見といて。」
「私ですか?・・・・・・わかりました。仕方がないですね。」
創一は、食堂を出て行った。
-
今日の更新は終わりです
これから、携帯から更新することが多くなります
現に、このコメントは携帯からです
あと、ペースが最近落ちました。すいませんでした。
アドバイス 質問 要望 コメントがあればよろしくお願いします
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(焦らんでもマイペースで)ええんやで
NANじぇいはなかなかスレ落ちひんからな〜
毎回楽しみにしてるやで
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>>180
ありがとナス!
まあ500番くらいになったらAILEくんに消されるかもしれないんでそれだけは注意ですね……
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そろそろ更新しましょうか
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創一は司令室の扉の前に立った。ここで二人が再開したのだ。創一は扉を開けた。
「お邪魔するよ。要件は何よ。今日はカレーだ。早く頼むぞ。」
創一はおどけてみせる。だが、対照的に裕樹の顔つきは真剣だった。
「創一。お前は今日も奴らに襲われたんだ。もう少し緊張感をもったらどうだ。」
「あ……ごめんな。」
創一は圧倒された。
「それにしてもなんであいつらはお前を襲うかな……。これは推測だがな……。あいつらはお前が目的なんだと思う。」
「おれが?」
考えてみれば確かにそうだ。タンカーに加え、今度は陸上。偶然で片付けられる話ではない。
-
ペースが早くなってうれしいゾ
焦らず更新して、どうぞ
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「タンカーで、お前は殺さないって言われたんだろう?これは、何かにおまえが必要だったんじゃないかって思うんだよな。何かはわからないけど。」
創一の頭に少しの混乱が生じる。
「ちょ、ちょっと待ってよ。俺なんか・・・・・・必要になることなんて」
心に思い浮かぶのは、スポットライトを浴びた「他者」。湧き上がる嫉妬。思わず創一は顔をしかめた。
「落ち着け。この考えはまだ仮定だ。・・・・・・実はな、お前のデータすべて消されていたんだよ。お前の12年間がな。俺はそこが気になっているんだよ。お前が何をやっていたのか。」
「・・・・・・」
創一は黙っているほかなかった。確かに自分自身気になることがある。第一に自分は年を取っていない。18歳のままだ。周りは12年たったというのに。
「俺の調査は限界だ・・・・・・。あとはお前がどうするかだな。」
「俺は・・・・・・。」
過去を知るのが怖い。ただ、このままではいけない。
「俺も、独自に調査していいかな。データは残っていなくても、俺の12年間を知っている人はいるはずだ。探すんだよ。」
祐樹も笑顔を見せる。
「そうか。ただ、五味にまかせっきりだというのもな・・・・・・よし、警備を増やすよ。ただし・・・・・・」
「ただし?」
「無理をしないことだ。またあいつらはお前を狙ってくる。必ずな。」
「ありがとう。もういいか。今日はカレーだ。」
創一は扉へ向かって歩く。そして、扉の前で止まった。
「お前もあまり考え込むな。辛いことは、相談してくれ。一人で背負い込むことはない。」
「・・・・・・まさかお前、あのことを!」
「さあな。きになっただけだ。早く来ないとカレーが冷めるぞ。」
「・・・・・・ああ」
-
「ふう」
廊下の中、創一は小さくため息をつく。
(過去ねえ……)
12年間の謎。考えても考えても何があったかわからない。
(そういえば大学にいけなかったな……。今も残っているだろうか。何かわかるかも。それと……)
食堂の前に着いた。カレーの香りがする。
(艦娘だな……。あのシステムの原理、開発者、経緯を知っておきたい。そうだ、開発部だ。あそこにも行かなきゃな。)創一は扉を開ける。食堂には人が集まっていた。「何の話だったんです?」
由佳が隣に座った。
「これからの話。俺の警備体制、強化されるみたい。」
「そうなんですか?」
カレーは半分彼女が作ったものだ。意外においしい。
「俺、行きたいところが有るんだけど。」
カレーを食べながら言う。
「それは結構ですが……明日は止めた方がいいかもしれないです。」
「なんで?」
「明日は作戦がありますから。」
「ええ!?」
寝耳に水だった。まあ、一応自分は部外者なわけで当然か。
「大変だね。道理でみんな殺気立っているわけだ」
司令室。作戦要項が裕樹の手にある。
「そろそろ夕飯です。」加賀美が伝える。
「ああ。すまない。」
机の上に置かれる大量の用紙。
「しっかり食べないと。」
席を立つ。足が震えた。(もう、俺は誰も傷つけない。みんなを守る。)そう心に誓った。
第五話終わり
-
第五話完了です
やっとバトルに持ち込めますね……
30話位で伏線回収して終わりたいですね……
違うシリーズも考えてますし
まあ頑張って更新します。
感想、リクエスト、質問、アドバイスお待ちしてナス!
-
無理せず更新して、どうぞ
-
>>188
コメントありがとナス!
頑張ります
-
朝6時。朝日が顔を出し、小鳥がさえずる。天気は快晴。風邪は微弱。
裕樹は目を覚ました。夢はまったく見ていない。眠っていたのかも曖昧だったのである。
「朝か……」
祐樹はこの横須賀基地に住み込んでいる。艦娘用の宿舎とは別の建物。そこの二階。
(とうとう今日……か)顔を洗い歯を磨く。そして、即座に何時もの服に着替える。その時間、実に5分。
ふと、お腹が鳴る。
「腹は減っては……」
裕樹は食堂に向かった。
「おっ。今日は早いな。さては、眠れなかっただろ。」
半分正解だった。実はイマイチ裕樹にも分かっていない。
「どうだかな。今日はいそがしいぞー。3時から作戦開始なんだが、いろいろとやることがある。お前はらくでいいよな。」
「ははは。俺は部外者だからな。」
創一はトレーに食事を乗せて祐樹に出す。ご飯に味噌汁、豆腐、スクランブルエッグにサラダ。赤だしの味噌汁の香りだけでお腹がいっぱいになってしまいそうだった。
「いただきます。」
せわしなく箸を動かす。今日の味付けも格別だった。
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「ふう、今日も美味しいな。」
祐樹は料理をすべて平らげた。それだけでなく、ご飯を三回おかわりしたのである。
「ありがとう。でもお前、食べ過ぎだろ……。30なのに」
「うるさい。」
「あ、昼飯オニギリ大量に作っておくから。それなら、急な変更にも対応できるだろ。」
「助かる。」
祐樹は席を立つ。入れ違いに、沢山の人が食堂に入ってきた。
「俺も頑張るか。」
そう言って、創一はご飯を茶碗に盛った。
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とりあえず今日はこれでストップです。
これから1日2レス分位の更新になると思います
今度ともよろしくお願いします
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そろそろ更新しますね
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朝九時。祐樹と艦娘15人、そして関係者は会議室に集められた。創一はいない。部外者ということなのだろう。
「よし、みんな集まっているな。」
前にはホワイトボードが置かれている。そして、その隣に裕樹は立っていた。
「今日の作戦の最終確認を行いたい。」
ホワイトボードに「小笠原諸島奪還作戦」と大きく書かれている。
「小笠原諸島で敵の基地が発見された。そこを叩き潰し、そこに基地を作る。そうすればこの辺での航行、漁業も楽になるだろう。」
希望的観測を述べておく。そうでなければやってられなかった。
「ただ、相手は空母型……艦載機を飛ばしてくる敵が多い。そこでだ。今回は夜戦でケリをつけたい。」
夜になると、艦載機を飛ばせなくなる。原理はわからないが、敵味方共に同じだった。
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「ウチは戦艦、空母が今いない。だから、編成は重巡3軽巡3で、夜戦重視だ。これならカバーできるはずだ……。駆逐艦は護衛と見張りと後方支援を頼む。」
プリントが配られていた。そこには
旗艦……摩耶
2……鳥海
3……羽黒
4……長良
5……名取
6……夕張
とかかれてあった。出撃メンバーはもちろん祐樹が決めた。
「装備は対空および夜戦重視だ……。何よりも生還を第一にすること。何なら、敵前逃亡しても構わない。罪には問えない。」
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「おいおい、しけた面してんじゃねぇよ。隊長。」
声が上がった。頭にアンテナのようなものをつけた女性。重巡洋艦「摩耶」の適合者、佐々木真矢だった。アンテナは艤装の一部らしい。ため口なのは、祐樹の方針でかまわないということになっていたからだ。
「私たち以外にあいつらは倒せないんだ。それなら、戦わなければだめだ。大丈夫だ、必ず帰る。」
周りからも完成が上がる。摩耶が、真矢が、すごく頼もしく見える。
「お前が旗艦だ。責任は重いが……頑張って欲しい。」
「心配するなって!」
笑顔を見せる。
「じゃあ、会議は終わりだ。一時に作戦開始。絶対に成功させるぞ!」
おーっ!という歓声。一体感。そのようなムードの中、会議は終わった。
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「涼風、ちょっといいか。」
「なんだい隊長」
祐樹は涼子を呼び止めた。
「お前は北崎創一の護衛に回ってくれ。」
突然の異動にびっくりした。
「出撃の間、防衛が手薄になるからな……五月雨一人では、不安が残る。あいつは生身だ……訓練を受けていない一般人だ」
「かまわないよ。」
涼子は快諾した。これは戦いからの逃げなのかよくわからなかったのだが。
「そうか。きっと、あいつを狙っている奴らがいる。守ってやってくれ。」
「あたいがいれば百人力さ!」
知りたいこともあるし、由佳も同じだ。不満はなかった。
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今回の更新は終了です。
型月ニキはすごいっすね……
資料を揃えたりこういうことがあの人気につながっていると思います
見習いたいところですね
こっちも負けずにぼそぼそ書いて行きたいと思います
コメント待ってます!
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「ごめん、さっき思ったこと無しで。」
「何言ってるんだよ。君が手伝うって言ったんじゃないか。」
「そうだけどさ……」
涼子は愚痴をこぼす。ここは食堂だった。皿にはオニギリが大量にあった。飽きないように、種類は梅やゴマ塩、シソの混ぜ込みなどがあった。作られたばかりで、湯気が立っている。
「これ、いくつつくるの」
「300くらいかな?」
「300〜!?」
面食らったのも無理はない。
「だめだよ涼子ちゃん。口じゃなく、手を動かさないと。」
由佳が注意した。せっせとオニギリを握っている。
「由佳〜!あたいらは、警備だけでいいんだぜ〜!」
まったくといった感じで、作業を再開する。しかし、集中力の限界がきていた。
「ダメだ!少し休憩だ……。外にいこう。由佳、お前も来い。」
「ダメだよ涼子ちゃん。悪いクセだよ。飽きっぽいの」
「うるせいやい!」
涼子は口を尖らせる。
「仕方がないなあ……。すいません北崎さん。ちょっと休憩貰いますね。」
「別にいいよ。一時間位にぎりっぱなしだからね。」
創一は答えた。
「ありがとうございます。……涼子ちゃーん!ちょっと待ってよー!」
外に出る涼子を追いかけていった。
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食堂の外。自販機とベンチがおいてあって、訓練用のグラウンド、宿舎が見える。そこは、中庭のようになっていた。ベンチは二人掛けで、そこに涼子と由佳が座った。
「いや〜あいつって毎日こんなことやってんのか……。体力勝負なんだな。」
買った緑茶を涼子は一口飲んだ。労働のあとは飲み物がうまい。
「だよね……。」
由佳はアップルジュースを買っていた。甘く冷たい液体が体中に染み渡る。疲れが少し和らいでいくのをかんじる。
ふと、涼子が口を開いた。
「お前、北崎のことどう思うんだよ。」
いきなりだった。口に含んでいたジュースは行き先を間違い、気管に直行する。むせてしまった。「汚いなあ……。そんなんじゃないって。単純にあいつをどう思ってるんだよ。」
「ゲホッゲホッ……。もう……。普通にいい人だと思うけど?」
由佳はむくれた顔をする。対して、涼子は少し意地悪な顔をした。
「ははーん。お前、あいつのことが好きなんだな。」
「な……何言ってんのもう!」
由佳は顔を赤くする。ジュースを飲み干したが、顔は赤いままでまったく効果がなかった。
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「隠さなくったっていいんだぜ〜。お前とあたいの仲だからな〜。心配するな!お前の人選は狂ってねえよ。」
涼子はからかう。
「違うって!恋愛感情じゃなくて!」
「だれもそんなことは言ってないけどなあ〜」
完全に手玉に取っていた。確かに好きかどうか聞いただけだった。由佳の顔がますます赤くなる。すっかり頭は冷静さを失っていた。
「好きかどうかで言えば……好きだけど」
「お!認めるんですなあ〜!」
涼子の顔のにやけ方が止まらない。対照的に、由佳は顔が真っ赤だ。空の容器は力が入りぺしゃんこになっていた。
「もう!いくら涼子ちゃんでも怒るよ!まったく……。」
さすがにやりすぎたか。涼子は話のベクトルを変える。
「じゃあさ、あいつのどこが好きなんだよ。悪い奴じゃあないんだろうけど……。そこまで恋愛感情はあたいには目覚めなかったな。」
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「守ってあげたいから……かな。」
少し黙った後、由佳はそう述べた。
「あの人、毎日戦ってる。自分が狙われているし、自分に何が起こったのかわからないままらしいし……。それでも毎日私たちに料理を作ってくれてる。初めてなんだ、家族以外の人を守りたいと思ったのは。」
半分冷静になってそう答えた。自分が何を言っているか、よくわからないが、それはこのことが本心であることの証明であった。
「ふーん、私はいいんだ………」
少し、いじけて見せる。しかし由佳はもう冷静さを取り戻していた。
「涼子ちゃんは自分で守れるでしょ。」
「それもそうだな。」
顔を合わせ笑い合う。長年、培ってきた友情。当然だがからかっただけで壊れることはない。
「まあ、これからは私も一緒だ。あいつの良さに気付けるのかな。」
軽く伸びをし、二人は席を立つ。
「じゃあ、戻るか。」
食堂へ戻った。
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摩耶様が意外と早く出てきてくれてうれC
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食堂では、もう作業が終わっていた。オニギリ300個はさすがに壮観なものを感じさせる。
「結構長かったね……話。もう作業は終わりだよ。」
「すいません……」
頭をさげる。
「いや、いいんだ。これは俺の仕事だから。」
由佳は顔をあげ、創一の顔を見る。……どうしたことだろう、直視ができない。真っ直ぐ見ていると、どうにかなってしまいそうだ。顔が瞬時に熱くなるのを感じる。
創一も彼女の「異変」に気付いた。顔、こんなに赤かったかな。
「大丈夫?熱でもあるの。顔、赤いけど。」
思わず由佳は創一を直視する。
「いえ……大丈夫です。後片付けは私が」
ふらふらと歩く由佳。
「なあ、あいつどうかしたのか。」
創一は涼子にたずねる。「さあ?今日はなんだか暑いし、のぼせたんじゃない。」
本当のことは言えない。適当にごまかした。
「そうだな。」
創一も鈍感だった。深く詮索はせず、自分も後片付けをしようと厨房へ向かった。
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今回の更新は終わりです
次回作についてですが、要望があれば同時展開もありかなと考えております。構想も大分形になってきたし……
とにかく今の作品を早く進めたいですね。
あと、今更ですけどこの作品のタイトル考えてなかったですね……
NaNじぇいで公募にしましょうか
KEN、どうにかしろ
冗談はさておき感想、コメント、質問、要望待ってます
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基地には海に面した大きな倉庫のような建物があった。元は船をおいていたが、今は艦娘の出撃の場所となっている場所である。出撃口は6つの小部屋になっており、シャッターが開けば海に直行できる。このような場所なのだから、当然油の匂いや作業の音で一杯になる。
「装備の調整まだかー!?」
「艤装修復率87%!」男の声がひっきりなしに飛び交う。
「作戦開始は1時だ!急げー!」
まだ作業は続く。
隣には待機室がある。こちらは壁が防音材で出来ており、作業音が響いてこない。出撃前のリラックスの場所である。
そこには、6人の内夕張を除く5人がいた。
「あいつは……点検か。好きだねえ。あいつも。」
摩耶が呟く。手には、飲み物が入ったマグカップがあった。
「まあ、あいつが点検してくれたのは調子がいいからな。」
長(おさ)夕子。それが「夕張」の適合者である。彼女は工学部の出身だった。機械を見ると、血が騒ぐらしい。彼女にとって、艤装は様々な技術を使った宝物と言っても過言ではない。
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司令室。正午。
「あっ……しまった。創一に伝え忘れたな。」
小笠原までは遠い。艦娘は、艦種にもよるが時速150キロまでだせる。それでも、小笠原までなら10時間はかかるだろう。戦闘、補給もある。
「オニギリ300じゃあ足りないな……。」
まあ、その時だ。そう考え、祐樹は作戦司令室へ向かった。
作戦司令室。それは地下にある。沢山の機器、モニターがあった。艤装と特殊な無線で接続されており、情報を共有することができる。ただ、戦闘時には現場、つまり艦娘の判断が優先されることが多い。
真ん中奥の席が祐樹だ。「また、始まるな。あと、一時間か。」
席に座る。自分の仕事は、専ら戦闘終了時の撤退かどうかの判断だった。自分の判断一つに、人の命は左右されうる。生憎、その経験は誰もやったことがない。世界中で報告されているうちでは。「誰も、死なせないさ。」
一人呟く。薄暗い中で。
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「何をやってるんですか」
加賀美だった。秘書だが、オペレーターでもある。
「薄暗いですよ。電気が半分ついていません」
緊張から押し忘れてしまったのだろうか。
「ああ……ごめん。」
「頑張りましょう。」
加賀美は冷静だった。
昼1時、作戦開始時刻。オペレーターは加賀美を合わせ男子三人女子三人の6人。所定の位置につく。
「艤装修復100%を確認。」
「装備すべて問題なし。安全装置を解除。」
「艦娘の体調、精神ともに異常なし。」
モニターに六人が映しだされた。不安と緊張が入り混じった、なんとも言えない顔だ。
「大丈夫だって!北崎のヤツにごちそう作っとけって言っといてくれ!」摩耶は気丈に振る舞う。「ああ。」
「システム、オールグリーン!」
「よし、シャッター開け」
シャッターが開き、前には海が広がる。
「いつでもいいよ」
摩耶が言った。
「よし、みんな、行くぞ……」
軽く深呼吸し、言う。
「……出撃!」
足場が海に向かう。そして、海へ出た。
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広い海の上、六人はすーっと移動している。時速は100キロ。陣形は単縦。「余り飛ばしすぎないでいい。途中、島を経由しながら行こう。」
負担をできるだけ軽減したい。大島はこの前基地を殲滅したばかりだ。まずはそこを目指す。
大島との間だろうか。突然反応があった。……あいつらだ。
「敵の反応あり!」
作戦司令室に緊張が走る。
「軽巡×1、駆逐×2です!」
ウオオオオオオオオオ
不気味な雄叫びをあげている。ここを通さないというわけか。
「仕方ない……戦闘だ!」
「待ってたぜ!」
祐樹が言い摩耶が答える。
「みんな、作戦プランAだ!いくぞ!」
「了解!」
敵は動かない。そこを、名取と長良の連射が襲う。
「よし」
致命的なものではない。元々の狙いは別だ。相手は思わずひるむ。
次に煙幕弾を夕張が撃つ。黒い煙が奴らを包んだ。
「一気に決める!鳥海、羽黒!いくぞ!」
三人は奴ら目掛けて突進する。だが、気付いたのだろう。こちらに砲を構えた。そして、撃った。「残念でした!」
命中しなかった。そこには、三人はもういない。三人は、跳んだのだ。
上空から砲撃の雨を降らせる。
「どうだ!」
三人は着水する。
ウグアアアアアアアアアア!
唸り声をあげた後、爆発を起こした。三人の着水のいい背景となった。
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「やったな!」
摩耶が歓声を上げる。
「私の計算通りね。」
「ああ、その通りだ。やってみるもんだな。」
このプランは鳥海が立てたものだ。今思えば、結構無茶である。
「あの……ごめんなさい!」
「謝る要素がどこにあるんだ……」
羽黒は気弱で人が苦手だ。謝って逃げてしまうクセがあった。
「私はこれで……」
「待てよ名取!お前と長良、夕張のサポート良かったぞ!」
「ほ、本当ですか……」「もっと自信を持て。」「そうだよ。良かったよ。名取。」
長良は名取を励ます。二人は同型艦の適合者だからか仲がいい。
「えへへ……」
「最後に夕張、お前の点検はいつもばっちりだな!」
「ありがとうございます!」
艦隊が活気づく。最初の目的地大島まで少しだ。
しかし……
「ダイイチカンタイガヤラレマシタネ」「……」
「ドウシマス」
「ククク……」
小笠原諸島の基地、最深部。2つの人の形をした化け物。
「ヤツノ考エテイルコトハ分カルサ……」
指令を送る。作戦変更らしい。
「ナア……ユウキ。」
第六話終了
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第六話終了です
どうだったでしょうか
ジャンプは敵を飛び越えて上から撃った感じです
あと毎度毎度サブタイトル詐欺ですね……戦闘でてくんの遅いし
3人の艦娘(鳥海、羽黒、名取)の本名とかは個別で出すかもしれません。
設定集みたいな感じで
時間が無いときはスレ落ち防止のため設定集だけかくかもしれません。
これからもよろしくお願いいたします。
コメント待ってます。
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今日は設定集を書いていきます
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名前 北崎創一
誕生日 4月25日
身長 175センチ
体重 68キロ
血液型 O型
海上で保護された青年。本人は大学生活を始めるまでの記憶しかないが、目が覚めたら12年後であった。体は18才の時と変わらない。なにが起こったのかは今のところ不明。12年経って世界は変わり果てており、流石に困惑していた。料理が得意で、いくあてもなかったことから横須賀基地の食堂で住み込みで働いている。また、医学部医学科に入学できたことから、勉強はできるようだ。
海田祐樹とは3歳からの腐れ縁。彼が30になっていることからここが12年後であることを知るきっかけとなった。高校時は離れていたので会うことはなく、15年振りの再開ということになる。ただ、祐樹はこのことに疑問を抱いており、保護、監視役として五味由佳、風間涼子をそばに居させている。
好きな食べ物は天津飯。嫌いな食べ物はキュウリ。
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いつも楽しく読んでます
頑張って下さい
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>>214
コメントありがとナス!
今日は設定集で申し訳ないです。
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更新始めます
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おっ、待ってたで
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「エネルギー反応消滅。」
「こちらの艦隊に損害はありません。」
作戦司令室に飛び交う勝利の証拠。祐樹は思わず気を緩めそうになる。しかし、それはダメだ。まだ、先は長い。
「よくやった。だが、先は長いぞ。油断しないように。」
勝利の余韻に浸っている暇はない。司令官として当然だった。
「はいよ。隊長。とにかく、大島だな。」
再び、移動は始まった。
大島に付いた。奴らの攻撃、そして基地を作っていた影響はこことて例外ではない。ただ、今回の作戦を見越して、輸送船と護衛の艦娘を利用して、燃料や保存食がおかれてあった。
まだ日は高い。
「今日は暑いな……まだ四月だぞ。」
「そうですね。……姉さんと呼んだ方がいいのですか?」
摩耶に声をかけたのは鳥海だった。鳥谷岬。重巡洋艦「鳥海」の適合者。「いや、艦娘システム上では姉妹艦になるけどな……。やっぱダメだ。なんかその……落ちつかない。」
姉妹艦の関係。自分の艤装が構造上似ていた場合そう呼ばれることがある。しかし、それぞれの適合者同士が血縁関係にあるとは限らない。
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「しかし不思議ですよね……」
鳥海は口を開く。
「なんで艦娘システムには旧海軍の軍艦の名前がつけられているんでしょう。この艤装、とても船には見えないし……」
たしかにそうだった。艤装はどう見ても船には見えない。水上を動けるようになるだけだ。また、自衛隊なら「護衛艦」等と付けるはずだし、ひらがなの艦名を用いるはずだ。わざわざ旧海軍の名前を使うのは、少し不自然だ。
「うーん。」
考えてみる。しかし、答えは浮かばない。そもそも、この艤装だって原理が分からないのに。
「お前は考えすぎなんだよ。今は、あいつらを倒して、人々を守って、平和を取り戻すことができれば十分だ。そうだろう?考えている暇なんてないさ。」
「それも……そうですね。」
鳥海は笑う。佐々木真矢と鳥谷岬は一年違いの先輩後輩関係にある。血縁関係はなくとも、絆は強い。
「さあ、小休止は終わりだ。先を急ぐぞ!」
まだこの作戦は始まったばかりだ。
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今回の更新は終わりです
スレが消される頻度が高くなるかもしれないので、これから昼に短く更新するかもしれません
また、次回作ですが、新しくスレ立てしたほうがいいですかね?
コメント、要望、疑問、アドバイス待ってます
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もう次回作の予定があるのか…(困惑)
内容があまりにも変わるんなら次スレたてたらいいんじゃない?(適当)
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次回作!? 創作意欲溢れてて羨まC!
ワイはいつも途中で飽きるというか満足して完結までいかんssばっかや……
スレは個人的には別にしたもらえるとソートしやすいから助かるやで
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>>221
そうですね……
艦娘のギミックも変わるし主人公も変わるし世界観も変わるし……
新スレ立てたほうが良いかもですね
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10時くらいから更新します
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「おかしい……」
摩耶がつぶやく。艦隊は八丈島の少し手前まで来ていた。戦闘は二回あったが、いずれも損害軽微で済んでおり、何も問題は無いように思える。ただ、摩耶には腑に落ちないことがあった。
「隊長。今回の海域は空母がたくさん出るんじゃなかったのか?だから対空重視の装備にしたってんのに。」
これまで相手したのは重巡、軽巡、雷巡、駆逐艦……。いずれも空母ではない。
「こっちも気になってるんだ……。相手の作戦かもしれない。今度は空母ばかりで攻めてくるかもしれない。用心するんだ。」
作戦司令室にも少し疑問の声があった。偵察が間違っていたのではないか?こちらの情報が漏れているのでは?しかし、艦隊は前に進むしかない。「はいよ。」
摩耶はそう答えた。
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「南西20キロ!エネルギー反応を確認!」
作戦司令室に緊張が走る。
「カテゴリー空母!」
「摩耶。聞いたな。噂をすればなんとやらだ。」「ああ……こっちも双眼鏡で目視出来てるよ。」向こう側で見える黒い化け物。飛んでくる、黒い物体。艦載機だ。大きさは市販のラジコンを思わせる。
しばらくは偵察機が飛んできた。攻撃は来ない。しかし、すぐに攻撃は来る。
敵の数を確認できるくらいまで2つの艦隊は近づいた。そこで目撃したのは、三体の人型でない化け物。そして……
「な、なんだあいつ……。」
中央部に、人型の敵がいた。普通の人間と違うのは、歯が剥き出しになった、触手の付いた形容のしがたい物をかぶっていたのである。
「隊長。敵は新型だ。恐らく空母だとおもうが……。敵は全部で四体だ。どうする?」
「とにかく相手の艦載機に注意だ!様子見の暇はない。」
その瞬間、大量の艦載機が飛んできた。
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艦載機には、魚雷を撃ってくるのと、爆撃を行うのと二種類ある。相手からすればこちらを一掃できるので、こちらとしては手を焼いていたのだ。「こっちも……、手をこまねいていたわけじゃない!」
三式弾。対空母用にと最近開発されたものだ。摩耶、鳥海、羽黒の三人はそれを発射する。
「おりゃあああああああ!」
効果は絶大だった。敵の艦載機を容赦なく墜落させていく。
「なかなか……やるじゃねえか……。開発部の奴らも、見捨てたもんじゃないねぇ。」
空母の攻撃パターン。それは、まず相手全体を攻撃した後、一体一体に攻撃を開始する……というものだった。ただ、ある程度ダメージを与えると行動不能になる。また、夜になると全く何もできない。
「よし、一気に仕掛ける!いくぞみんな!」
その時だった。
「新たに、二体のエネルギー反応を確認!」
突然、機器が反応を示した。
「何!?摩耶!避けろ!」
「え!?」
突然水柱が上がった。
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水柱の正体は魚雷だった。摩耶に命中したのだ。「うぐっ……!」
魚雷はちょうど、腹部に命中した。今、ヒトの体ではないとはいえ、衝撃は強い。胃の内容物が逆流する。爆発が、服装を破いてゆく。
「ガ……ガハッ!ゲホゲホゲホゲホ!」
思わず咳こんでしまう。何が起こったのか分からない。一瞬のうちに、冷静な判断力が失われてしまった。
「だっ……大丈夫か摩耶ァー!」
裕樹が叫ぶ。
「旗艦摩耶中破!魚雷管に異常発生!雷撃戦は不可!」
マイナスな情報が司令室を駆け巡る。
「一体何が起こって……」
もう一度、水柱が上がった。
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「きゃあ!」
鳥海が声を上げる。どうやら背中に命中したらしい。ただ、ダメージは少ないようだった。
「鳥海小破!」
司令室はパニック状態になりかけていた。みんな、顔色が良くない。
「落ちつけみんな!……摩耶、何があった。」
裕樹はあくまでも冷静を心がけた。
「ガハッ……。ああ……こっちからは、四体以外、何も見えない。魚雷が突然飛んできた……。だけど、艦載機のものじゃない。もちろん、味方のモンでも……角度から考えて……」
途切れ途切れにそう答えた。
「そうか……」
その時一閃の閃きが走る。
「角度、角度はどうだった?」
「ああ……下からだ。向こう側からな。」
向こう側の下……。やはりそういうことか!
「チッ!あいつら艦載機を飛ばしてきやがった!応戦だ!」
痛みが走る体を何とか動かす。標準をあわせる、あの化け物にぶつけてやる……。そう考えるしかできなかった。
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「落ちつけ摩耶!……重巡三人は空母を攻撃だ。」
裕樹は何かに気づいたようだった。
「いわれなくったってそうするさ!」
摩耶は砲撃を行う。相手の内、人型でない敵に命中した。向こう側で黒煙が上がる。
「隊長!私たちはどうすればいいんですか!?敵は何ですか!?」
長良が尋ねる。
「敵は……潜水艦だ!軽巡三人は、対潜攻撃に移れ!」
司令室、艦隊に衝撃が走る。確かに、そう考えるほかない。しかし……
「そんな、対潜装備は最低限のものしか装備していません!無茶です!」作戦は、空母の攻撃を想定したものだった。そのため、対空装備を揃えた。ただ、対潜装備との両立は狭い装備の拡張性を考えれば酷な話だ。
しかし、考えている暇はない。
「作戦変更だ。この戦いをおえ、即旗艦せよ。新型の空母、及び潜水艦のデータを取って帰ってくるんだ!」
これは大きな決断だった。
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「えっ?引き返すんですか?」
長良が驚きを持って尋ねる。
「ああ。データを取れと言ったが、やっぱり倒せ。夜戦に持ち込んでもいい!」
日は傾き、夕焼け空が広がっている。もうすぐ夜になるだろう。空母相手なら夜戦になるとこちらが有利だ。
「おい!そりゃ無いぞ!」
摩耶が叫ぶ。砲撃戦の真っ最中だった。化け物に命中し、より大きな音が鳴る。
「敵空母一体の沈黙を確認!」
「分かってくれ……俺はもう、失いたくないんだ。なにもかも……」
能力に浮かぶ、病室に横たわる女性。
「じゃあ待ってくれ!判断はこの戦闘が終わってからでいいだろ!」
「そうですよ隊長!私の計算は、今のところ撤退すべきでないと。」
鳥海がフォローを入れる。
「……分かった。至急対潜水艦対策を急いでくれ!」
自分は少し弱気になっていた。そして、忘れていた……自分を信じてくれる人を。
裕樹は自分の考えを改めた。
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今回の更新は終わりっ!閉廷!
次には第七話終わりそうですね。
次回作ですが、別スレを立てることにしました。
アドバイスアリシャス!
早くこの作品終わらせなきゃ(使命感)
できれば夏まで……
コメント、要望、アドバイス、質問ください。何でもしますから!
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ん?
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「とりあえず重巡三人はできるだけ空母にダメージを与えてくれ。軽巡三人は潜水艦を何とかするんだ。頼む!」
裕樹は祈るしかなかった。これが出しうる最大の指示だったのである。
「わ、分かりました!」羽黒が答える。砲撃が敵の一体に命中する。向こう側の黒煙が、かなり濃くなった。
「それにしても真ん中のヤツはなんだ?」
裕樹が首を傾げる。現地の映像は司令室のモニターでも確認が出来るようになっていた。しかし、元々の画質と、黒煙が邪魔したのだ。今はまったく見えないようになっている。
分からないといえば、敵潜水艦の位置もそうだった。ソナーは長良、名取の2人は最低限のものしか装備していない。だから、いるということが分かっても、それがどこかはわからないのだ。
「どこにいるかすら分かれば……」
焦りが顔を覆いつくす。艦載機が、こちらにも飛んでくる。ダメージが大きくなってくる。
「くう……」
「長良小破!」
服装が少し破け、艤装からは少し煙が上がった。
-
その時、長良、名取の前にデータが表示された。
「え……?これは敵潜水艦の……」
相手の位置、移動速度、大きさが表示される。艦娘は、同一艦隊で情報が共有できるようになっていた。
「まさか……」
2人はもう1人の艦娘……夕張の方を向く。そこには、満面の笑みを抱えた夕張がいた。
「どう?私の艤装、拡張性が高いんだから!念のため、ソナーも積んでおいたんだ。」
夕張は最後まで点検を行っていた。そこで、最終的に装備を変更したわけだ。
「移動パターン予想完了。今は潜水艦二体が同時に行動しています。ここにくるはず……。私の合図に合わせてください!」
名取が敵の行動パターンを読み切った。三人はそのポイントへ向かう。
「いいですか。私の合図に合わせて下さいね……」
こうしているうちにも、敵の艦載機は飛んでくる。徐々にだが、確実なダメージを与えていく。だが、焦りはない。
「……行きますよ。3、2、1……行けェ!」
ありったけの爆雷を投射する。当たれ……当たれ!
次の瞬間、レーダーから反応が消えた。
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「敵潜水艦の反応。消失を確認。」
司令室にも朗報が飛び交う。
「気を緩めるなよ。もう夜も近い。撃てるやつは、全員魚雷発射だ!」
摩耶以外は魚雷管の発射準備を急ぐ。
「おう!」
摩耶は魚雷を撃てない。だから、祈るしかない。命中するように。
「よく狙って……撃てェ!」
摩耶の合図で、魚雷が一斉に発射される。魚雷が、扇型を描き出す。そして敵艦隊に命中した。けたたましい爆発音が鳴り響く。
「やったか!?」
レーダーから反応が消える。……ただ、一体を除いて。
「敵艦隊3体の沈黙を確認。ですが、まだ一体残っています。新型の……アイツです!」
三体の人型でない化け物が人型の化け物をかばった形となった。
煙が晴れる。奴は、あまりダメージを受けていないようだった。触手で、顔の部分をかくしている。
「化け物が!正体を表せ!」
摩耶が叫んだ。
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「ウフフフフ……アハハハハ!」
化け物が不気味な笑い声を上げる。それと同時に、触手で隠されていた顔の部分が露わになった。女性の顔だった。年は25くらいの。
化け物はこちらに近づいてくる。不気味な、笑みを保ったまま。
「ナカナカヤルナァ……ユウキ。」
「な、なぜ俺の名前を。」
裕樹はドキリとする。
「知ッテイルサ……ナンセワタシハ……」
近くに来るにつれ、相手の顔が段々とはっきりしてきた。周りは、大分薄暗い。
……最も、そのままの方が良かったかもしれないが。
裕樹は突然震え始めた。顔面が、脂汗で覆われている。
ただならぬ状態だったので思わず加賀美は裕樹に近寄った。
「落ちついて下さい。隊長。」
ハンカチを取り出し、裕樹の顔をふく。振動が、加賀美のほうにも伝わってきた。
「まさか……まさか!」距離は大分近くなった。顔が、はっきりと見える。
化け物が手を広げ、口を開く。
「オマエノ……母親ナノダカラナ……」
聞きたくない、言葉だった。
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25才位の母の顔。それは、裕樹が2歳位の時であった。色彩を感じない点以外は、小さい頃見た母そっくりなのである。
「そんな……そんな。」裕樹はうろたえる。冷静な判断ができない。
「隊長!落ちついて下さい。」
加賀美が必死に促す。だが……
「母さん……」
裕樹は気を失ってしまった。その場で倒れ込む。よほどショックだったのだろう。
「隊長!……仕方がありません。以降は私が指揮を執ります。こちらは構いませんから、隊長を医務室まで。」
加賀美が裕樹のイスに座った。
「摩耶、相手は空母。夜戦に持ち込めば勝てる。殲滅して。」
もう当たりは大分暗い。艦載機も出せないだろう。
「……おう。仕方がないな。」
相手の言葉が真実なのかはわからない。ただ、こいつは何をもたらすかわからなかった。こいつが生きていれば、何人の人が死ぬか。……例え、上司の母親を殺すということになったとしても。
「あたしは、お前を倒す!あいつの意志ではなく、あたし自身の意志としてな!」
-
向こうは空母だ。もう当たりは暗い……。こっちに分がある。
「うおおおおおおおおおおお!」
自分の迷いを断ち切るために、摩耶は思わず叫んだ。
だが、予想は外れた。
「なっ!?」
艦載機が飛んできたのだ。不測の事態だった。爆撃が、摩耶を襲う。
「バカダナ……。コチラトテ、進歩スルンダ。フフフ……ワカルゾ……。ワタシタチガ夜戦ガデキナイトオモッテイタンダロウ……?」
「ぐわぁ!」
摩耶は大破してしまった。夜戦ができなくなる。「今日ハコレクライ二シテヤル……」
視界が黒煙でほとんど見えない。意識も朦朧としていた。
奴が猛スピードで撤退するのが見える。
「ま、待て……」
味方が、奴を追いかける。だが、暗闇のせいか攻撃が当たらない。ついに、どこに消えたかわからなくなってしまった。
「クソッ!クソッ……」「摩耶、撤退よ。これ以上は危険だわ。」
加賀美が重い判断を下す。レーダーの反応も大分遠いものとなり、そして消えた。
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朝。今日も天気はいい。光が、祐樹の顔に差し込んだ。
「はっ!?」
目を覚ます。白い部屋。朝日。そして思い出す、悪夢のような事実。
「夢、じゃないか……。」
そうあって欲しかった。これが、さっきまで見ていた夢なら。しかし、夢だとするには少しはっきりし過ぎた……残酷な事実だった。
「おはようございます。いかがですか。」
加賀美が部屋に入って来た。
「ああ……。そうだ!作戦はどうなった!みんなは!そして、あいつは!」
「落ち着いてください。作戦は、旗艦の摩耶が大破したのを理由に中断です。損害は、摩耶が大破、鳥海、長良、名取、夕張が小破。新型の敵は、撤退しました。」
冷静に加賀美は答えて見せた。
「そうか……。」
部屋を見渡す。時刻は朝の10時を指している。「なあ……加賀美。」
「はい。」
一呼吸おき、祐樹は言った。
「俺はあいつを、あいつを殺せるのかな。」
加賀美は少し驚いた。ただ、何を答えていいかわからなかった。そして、ただ窓の外を見た。天気は快晴。雰囲気とは真逆の、憎たらしいとも思える青空が、どこまでもどこまでも広がっていた。
第七話 終了
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第七話終わりです。
結構長くなってしまいましたね……センセンシャル!
第七話は裕樹を主人公に置いてみました。展開はベタですね……。
みんな飽きが来ると思うんで、早く終わらせたいです。次回作も書きたいので……
次回作は学園モノになりそうです
要望、コメント、アドバイス、質問待ってます
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急展開いいゾ〜コレ
祐樹くんは立直れそうですかね…
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>>242
コメントありがとナス!
裕樹くんはもっと不幸にするかもしれませんね……
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すごいシリアスになってきましたね……
15人艦娘がいると言ったけどどんなラインナップなんですかね?
私気になります!
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裕樹の母親?は空母ヲ級なんですかね?
夜戦で攻撃できたということは……フラグシップかな?
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ここ教えてもらって初めて来ました
最初からじっくり読んでいくんで、追いついたらコメントしてみるやでー
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要望だゾ
隼鷹は出ますかね……?
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「これは、どうだ。」
研究室のような場所。いくつもの近未来的装置がそこらじゅうおいてある。そこでは新型艤装の開発が行われていた。
「これが成功したらいいんだがな……。なんせ、原理もよくわからないんだ。まったく、むちゃくちゃだよ。」
研究員が愚痴をこぼす。何日もあまり眠れていないようだ。
そこには、着物に赤い胸当て、飛行甲板を模した板が右肩に取り付けられたような服があった。背中には、弓を入れておくための筒が携えてある。弓の先には、戦闘機の模型のようなものが取り付けてあった。
「正規空母『赤城』か……。」
設計図にもそう書かれてあった。
大掛かりな装置に艤装が入れられ、電源が入った。
すると、弓の部分は消え、戦闘機となった。装置の中を、まるで水を得た魚のように飛んでいく。
「できた……。完成だ!」
研究室の中で歓声が上がる。
「あとは適合者だ。とは言っても、もう決まっているんだがな。」
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>>247
心にいるさ
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横須賀基地の医務室。そこでは、裕樹が着替えていた。幾分、暗い表情だったのだが。
「隊長。昨日の件ですが。」
加賀美が立っていた。
「公開するのは、昨日の作戦が途中で撤退したということだけとします。あのことについては、あの時立ち会った人だけの機密事項とします。」
母親が、人類の敵かもしれない。そんなことが知れ渡ってしまえば、この基地からはおろか、人類からも孤立する可能性があった。
「ああ……頼む。」
気分は最悪だった。
だが、その瞬間、裕樹のお腹が鳴った。お腹なんか、空くはずが無いと思っていたが……。どうやら、空腹感は予想以上に大きいらしい。昨日の昼、おにぎりを2つ食べただけだったから、ムリもなかった。
「あはは……。」
笑顔を取り繕ってみせる裕樹。
「食堂行こうか……。加賀美、一緒に行かないか?」
「ご一緒させていただきます。」
加賀美も朝から何も食べていなかったのだった。
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食堂に着いた時には、時刻は10時半を差していた。もうみんな、食事はとうに済ませてある。居るのは裕樹、加賀美。そして厨房に創一、由佳、涼子の三人。最後の二人は、また手伝わされているらしい。
「お、裕樹。今日は遅いな。加賀美さんも一緒か。」
創一はいつもと同じだ。日々が充実し、満足感に満ちているようである。
「ちょっと待てよ。なんで加賀美にだけさんを付けるんだよ。俺の部下だぞ。」
裕樹はむくれてみせる。そうでもしないと、自分の心理を悟られるかもしれないと思ったからだ。「いや〜なんというかさ。加賀美さんは、大人って感じがものすごくするんだよね。お前は小さい頃を知っているからなあ……。」
少しドキリとした。小さい頃……母親……。思わず、連想の鎖を心で作り出してしまったのである。
「なんだそりゃ……あ、ご飯と、味噌汁だけでいい。昼も近いし……。」「私もそれで。」
二人とも、冷静さを取り繕った。内心、何を言っていいのかわからなかった。
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今回の更新は終わりです。
コメント返ししていきますね。
>>244
今は明かせないです……申し訳ないです
楽しみに待っていてください
>>245
そうですね
>>246
コメントありがとうございます!
またいつか、感想をお聞かせ願えられれば幸いです。
>>247
空母役で出すつもりでした。楽しみに待っていてください!
コメントは本当に励みになります。ありがとうございます。
うれしい……うれしい……
これからも頑張ります!
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「まあ、祐樹は30だからなあ。あんまり食べない方がいいよ。」
ご飯と味噌汁だけだから、出されるのは早かった。祐樹は味噌汁をご飯にかける。一気に食べてしまいたかった。
流石に、創一も異変に気がつく。
「なあ……お前、なんかあったのか。いつも、そんな食い方しないじゃん。」
「別に。」
あんなこと、言える訳がない。
「途中で撤退したって聞いたけど……。でも、作戦自体は悪くなかったんじゃないのか?」
「ああ。大分、こちらの航行できる海域は広がったと思うが。」
一気にご飯をかき込む。「創一。今日は食堂はいいから、いろいろ回ってこいよ。お前の12年間はまだわからないままだ。俺は職務があるから……。ごちそうさん。美味かったぞ。」
そう言い残して、足早に食堂を出て行ってしまった。
食堂には4人がポツンとのこされた。
「加賀美さん。あいつ、どうしたの。」
加賀美は対照的に、行儀よく味噌汁とご飯を食べていた。
「分かりません。ふられたんじゃないですか。」
そう、優しい嘘をつく。創一は急にニンマリとした。
「そうかあ〜。あいつ、結構攻めるんだなあ……。まああいつもう30だし、もう相手見つけないとまずいからなあ……いかんいかん、俺も頑張んないと。」
そう言い残し、厨房に創一は戻る。加賀美の言葉を信じたようだ。厨房には、話を聞いていたのか、顔を真っ赤にした由佳と、それを冷やかす涼子がいた。
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「ごちそうさまでした。」
加賀美は食べ終えた。
「五味さん、風間さん。今日も護衛をよろしくお願いします。」
釘を刺す。2人はバツの悪そうな顔をした。
「北崎さん。あなた、今日はどちらに行かれるおつもりで。」
「ああ、自分が行くはずだった大学に行くつもりです。ここから近いですし……。」
「別に、昼ご飯などは構いませんから。」
「いえいえ。2人が手伝ってくれたので、もう準備は出来てます。セルフサービスみたいな感じに昼ご飯はなると思います。」
「そうですか。では、くれぐれも気をつけて下さいね。また、奴らがあなたを狙ってくるかもしれません。」
「はい。分かりました。あの二人にしっかりと守ってもらいますよ。」
加賀美はそれ以上何も言わなかった。安心したのだろう。
「では、私はこれで。」
「ふう……」
加賀美は廊下で溜め息をついた。自分が無意識に秘密を洩らさないか不安だったのである。
考えごとはもう一つあった。胸ポケットから、一つの封筒を取り出す。
「この事もね……。」
差出人は、開発部と書かれてあった。
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「暑いな……」
創一、由佳、涼子は山道を歩いていた。日は高く上り、雲はまったくない。だから、かなり暑くなっていた。4月だというのに、6月上旬並みの気候らしい。
三人は横須賀医科大学を目指していた。創一が入学するはずだった学校である。
「バスがなかったら……こういうことになるのか。」
キャンパス及び付属病院は山の上にある。以前はバスが通っていたが、今は危険のため運行が停止されていた。最も、山の上にあるからこそ、何かが残っているかもしれないという希望もあったのだが。
「まだなんですか……。こっちにあまりきたことが無くて。」
由佳が辛そうに言う。万が一のため、リュックに艤装を入れていた。それが体力を奪っていく。たとえ彼女が訓練を受けた人間であったとしてもだ。
「もうちょい。もうちょいだから!」
創一は励ます。
「それ、三回目だぞ。」涼子が半分うんざりしたような顔で突っ込んだ。
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「よし、この坂が最後だ。」
三人は最後の関門を乗り越えた。三人には奇妙な達成感が芽生えていた。しかし、それは少しの希望と共に打ち砕かれてしまった。
「やっぱり……そうか……。」
目の前には、瓦礫の山と化した大学があった。受験の日、そして合格発表後……胸を高鳴らせた校舎はどこにもない。白い、美しい校舎だった。だが、今は灰色のコンクリートの残骸だけだ。
創一は思わず膝をついてしまう。心の中にあった希望は、すでに失われてしまっていた。
「薄々感づいていたけど……やっぱりショックだな。」
努力して、この大学に合格した。しかし、予想外のことが、めちゃくちゃにしてしまっていたのだ。
「北崎さん……」
「北崎……」
二人は、黙って見ていることしかできない。創一が立ち直るまで、実に長い15分間を待っていた。
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メイン2人に悲しみを背負わせて行くスタイルいいゾ〜コレ
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てか気づいたんですけど小タイトルの熟語はクウガを参考にしたんですかね?
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「さてと……」
15分がたった。ズボンの膝についた泥を払い、すっくと立ち上がる。
「ごめんね、ちょっとショックだったから……」創一は二人に謝る。
「いや、いいんだ。」
涼子は答えた。
「こんな瓦礫の山だけど、何か残っているかも。俺の過去とか、ちょっと探索してみたいんだけど……いいのかな。」
もしかしたら立ち入り禁止なのかもしれない。
「構いませんから。何かあったら、ウチが責任を取ります。」
由佳は胸を張る。
「それは君の力じゃないだろ……。」
創一の指摘に、少しドキリとした。
涼子が、由佳にこっそり耳打ちをする。
「あいつ、医師だぞ。ここに来るってことはな。玉の輿、ってやつか。こりゃ仲良くしたほうがいいな〜。」
由佳は顔を赤らめた。創一には聞こえていないらしい。
「もう、涼子ちゃんのバカ!」
思わず大声を上げてしまう。
「何?」
「いえ、別に……」
なんとか平静を保とうと努力して創一の顔を見た。
「た、探索、開始してみましょうか。」
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「そうだね。あのがれきの山に隠れているけど、裏は教育棟だ。そこにも行ってみよう。」
瓦礫の山が付属病院だった。まだ、教育棟は残っているかもしれない。
だが、やはり現実は厳しかった。
「ここもか……」
足元には瓦礫が散乱している。ここは中庭だった場所だ。
「やっぱり、厳しいのかな……」
だが、あきらめきれない。足場は悪いが、懸命に前をゆく。
ここで、涼子があることに気付いた。
「なあ……なんで遺体がないんだ?」
「え?」
「言いたくはないけどさ……。ここ病院だろ?全員の避難は困難なはずだ。逃げ遅れてしまった人が出てくる。」
「遺体が回収されたんじゃないか?」
「奴らに狙われる可能性がある。とてもむりだ。」
確かに……。
「きっと、避難が上手くいったんだよ。」
明確な答えが出ず、そうこたえておいた。ただ疑問は消えたわけではなかった。
「そうですよ。ポジティブに考えなきゃ。」
由佳が励ます。三人はまた瓦礫の中進んでいった。
すると、目の前に残っている建物があった。
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「あんなところに小屋が……。」
由佳がつぶやく。どうやら、建物の影になった場所だからか、被害を受けなかったらしい。とは言っても、長い間管理されていないのか、結構ボロボロになっていた。
「草が茫々としてるけど、隣はあまり瓦礫が見当たらない広場……。そうだ、グラウンドだ!」
北崎は小屋に向かって走る。そこまで大きくはない。壁は穴が開いているが、中には入れそうだ。半分欠けたプレートが掛かっていて、「野」という漢字だけがかすかに見える。
「野……野球部の部室か?これ、中に入れるのかな?」
ドアはしまっていた。だが、カギは掛かっていない。
「入れますね。」
「そうだな……。」
ふと、周りを見渡してみる。誰もいない。少し安心する。
「入ってみるか……」
決心し、ドアを開けた。
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「ゲホッゲホッ……ウーン。なんだこりゃ。」
中はホコリが充満していた。また、男の汗が腐ったような匂いがプンプンする。ここで着替えをしていたのだろう。壁に開いていた穴だけでは、浄化不可能だったようである。
「臭い!」
「だめですね……男の匂い、苦手です。」
2人も悲鳴をあげていた。
「まあまあ……」
落ち着いて辺りを見渡してみる。どうやら野球部の部室という予測は当たっていたらしい。ホコリをかぶったバット、ボール、グラブが散乱していた。
壁には、何か文字が書かれてある。
「野球部よ永遠なれ……?2018年?」
「あの日の前のことですね……。」
「野球部廃部を忘れるな……。そうか、この野球部廃部になってたんだ。」
入学していたら、大学四年生ごろのことだろう。そうなれば、中がこんなに荒れているのも納得がいく。
「ロッカーがあるな。」涼子が気付いた。ところどころ錆びており、ホコリがびっしりついている。
創一はそのロッカーに近づく。
「……開いてる。」
-
創一は、そっとロッカーを開けた。
「なんだこりゃ。グローブ?」
涼子が驚いた声を上げる。ロッカーの中にはグローブが一個、ぽつんと置かれてあった。ボールが一個挟まれていて、バンドで止めてある。ロッカーの中にあったからか、あまりホコリはついていない。手入れがされてあったのだろう。長年置かれていたとは思えなかった。ちなみに、投手用の物である。
手のはめる所には「感謝」の刺繍が入っていた。
「感謝って書いてますね……。」
由佳がつぶやく。
だが、様子がおかしかったのは、他の誰でもなく創一だった。唇が微妙に震えている。形容し難い表情をしていた。目の標準が合っていない。
「北崎さん?」
心配そうに尋ねる由佳。一呼吸置いて、やっとのことで口を開く。
「俺の……俺のグラブ!」
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創一はグラブを手に取る。
「間違いない。これは俺のグローブだ……。プロ仕様で、五万円くらいした。証拠に……」
手のはめる所の奥をみる。すると、「北崎創一」という刺繍があった。
「どうしてこんなところに?」
創一には大学生になる前、下宿生活開始時までしか記憶がない。それまで引っ越しの準備やらで忙しく、野球部の練習に顔を出す時間はなかった。そもそも……。
「俺、大学で野球を続けるか迷っていた所なんだ。だから、春休みはじっくり考えようと思っていたんだけど……。」
上手く言葉が出てこない。由佳がとっさにフォローする。
「……つまり、ここにグローブが置いてあるのはおかしい。と……?」
創一は無言で頷く。
「同姓同名とか、お前が誰かにグローブを譲ったとか……?」
涼子は考えられることを挙げてみる。しかし、創一の頭は横に振られるだけだ。
「北崎創一。この名前で同じグラブを買って、この大学に来た……そんなこと、有り得ると思う?他人にあげたとしてもだ、ここにたどり着くなんて……。」
創一は少し考える。論理の糸が紡がれ、ある一つの答えへの道筋が出来上がった。
「俺は、この大学に通っていた……?」
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「辻褄が合うんだよ。俺がこの大学に六年間通っていたとすればね。医学部だから。……俺はこの野球部に入ったんだと思う。そして、野球部は廃部になって、野球を諦めた。そして、ここにグローブを捨てておいた……。こういう感じだな。」
一見、納得がいく説明。しかし、創一は一つだけ釈然としないことがあった。それは、涼子や由佳も同じであった。
「でも、それなら一つ説明がつかないよな。」
「そうですよ。そうだとしたら、なぜあなたは年をとっていない、18歳のままなんです?」
「それは……分からないけど……」
創一は片手でグローブを掲げる。
「これが、自分の物だっていうのは確かだな。」
バンドを外し、グラブをはめてみる。……やはりこれは自分のグローブだ。記憶では高校三年の夏の大会で使ったのが最後だが、それよりもずっと最近に使っていたようだ。
「これ、もらってもいいのかな。」
「いいんじゃない?自分のものだろうし、もらうって言い方は変だぞ。」
「そうか、それもそうだな。」
創一はグローブを手から外し、ボールを挟み直し、バンドで固定した。そして、そっとリュックサックの中にしまった。
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まずはコメント返し
>>258
そうですね……。ちょっと意識したかもしれないですね。まあ深い意味はないです。
自分の拙い小説を読んで下さるかたがどれだけいらっしゃるかは分かりませんが、いつもありがとうございます。
これからも頑張ります
リクエスト、要望、コメント、質問待ってます。なんでもしますから!
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8話は一段落かな?
1話から読んで今日追いつきましたー
ちょっとまだ偽名や世界観に慣れてないけど、面白く読ませてもらってます
これかなどう展開していくか楽しみ
-
>>267
コメントありがとナス!
正直もうコメント来ないと思ってました……(小声)
-
「何をやっているんだ。」
突然背後から人の声が聞こえた。女性が入り口に手をかけ、こちらを見ている。涼子と創一には見たことがある顔で、由佳としては初対面であった。
「芦川さん……」
「誰なんです?」
「警視庁の刑事さんだよ。この前、助けてもらったんだ。」
「さっき、リュックに何を入れたか、見せてもらえるかな?」
「いいですけど」
創一はリュックを手渡す。
「こういうことは、不法侵入って言うんだがな。」
涼子は内心ムッとする。
「ここは彼の大学で、これは彼の所持品だ……文句はないでしょう。」
すると、千夏は驚いた顔をした。
-
訂正です。
由佳は芦川千夏と出会ってましたね……センセンシャル!
-
涼子と創一にとってはみたことがあり、由佳は初対面
↓
三人とも見たことがある顔
「誰なんです」
「警視庁の刑事さんだよ。以前、助けてもらったんだ」
↓
削除
よろしくオナシャス
-
「あら……君はもしかして医師の卵?」
そう言って、リュックサックの中のグローブを取り出す。
「ほら、北崎創一って、ここに書いてあるでしょう。僕のものですよ。」
創一は念を押す。しかし、千夏はどうも釈然としない様子だった。
「おかしいな……君は、どうしてもこの大学にいたとは思えない。五年前にここが無くなったとして、その時君が学生だったって言う確証はない。君は、やけに若く見えるからな。」
それは、創一にも分かっていた。
「それは、そうですが……。」
どうする。分かっていることを伝えようか。この人は本当に信用できるか。
咄嗟に、由佳が声をあげる。
「やめてください。これは、自衛隊の捜査の一環なんです。残っている建物があったから、調査しただけです。」
なんとか状況を打破しようと必死だった。
-
「北崎さんもよくわかっていないんです……」
えっ。言っちゃうのか。まあ、別に構わないか。
「そうなのか?まあ、あまり詮索はしない。これも、事件性はないだろう。」
千夏は、グラブをリュックに入れ直し、創一に手渡した。
「忠告はしておく。君は生身の人間だ。今はいいが、守ってくれない時もある。無理はするな。」
「分かりました。」
4人は小屋を出た。千夏は、由佳を呼び止める。
「……なんですか?」
「君、さっきの調査の件は嘘だろう?咄嗟に北崎をかばったんだ……。」
「……」
由佳は返事をしない。
「まあ、どちらにしても、私は彼を独自に調査するがね……。何だ、君だって知りたいだろう?彼の正体。興味が湧いてきたよ。」
「これだけは言っておきます。北崎さんは悪い人じゃあありません。」
根拠はないが、信じるしかない。
「あなたはもっと分かり合える人だと思ってましたが。」
「人を見かけで判断するな。……いつか、裏切られる。忠告だな。」
2人の中に、不穏な空気が流れる。
「何やってんのさ!」
遠くから、創一の声が聞こえた。雰囲気の悪さに気が付いたのだろうか。
「はーい!今いきます!」
気を取り直し、創一と涼子の後を追いかけた。
-
「ここね。」
開発部の前に、加賀美は立っていた。警備員に身分証を見せ、中に入る。
「失礼します。」
「ああ、君が加賀美君か。よく来てくれた。」
中から白衣を着た男性が出てきた。年は、30位だろうか。黒縁の四角いメガネを掛けていた。
「君専用のシステムは90%完成した……後は人体が拒否反応を起こさないか、ちゃんと適合するかどうかだけだよ。」
「そうですか。」
2人は、薄暗い研究室の中に入って行った。光源は、モニターの光だけだ。先へ進むと、厳重に管理された、人一人の大きさのケースがあった。
「正規空母 赤城」
そう書かれてある。
「これですか。」
「ああ。ちょっと待ってくれ。」
男性は静脈認証、声紋認証を行い、最後に9ケタの暗証番号を入力する。
「ロック、カイジョシマス」
機械的な音声と共に、扉が開いた。
加賀美は艤装を手にとり、つぶやく。
「これが……赤城……。」
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加賀美は息を呑む。まるで、この艤装は生きているかの如く、手に馴染んでいた。
「着替えはここで済ませてくれ。」
加賀美は個室に案内される。ここは明るいが、鏡1つがあるだけで、他は何もない狭い部屋だった。
自分の服をぬぎ、着替えてゆく。艤装は、体のサイズにぴったりと合っていた。
「サイズが合っていて、ほっとしたわ。」
心の中でつぶやく。その時、扉を叩く音がした。
「着替えは終わったかね。」
先ほどの男性の声だ。
「はい。」
そう言って、部屋の外へでる。なんだか、違う世界に来た感じだ。
「サイズは合っているか?違和感は無いか?」
「いえ、特には。」
冷静に答えを返す。
「そうか。良かった。」
男性は、少し安堵の表情を浮かべた。だが、すぐに顔を引き締める。
「では、覚悟ができたかね……赤城君。」
今の私は加賀美ではない。正規空母赤城の適合者。
「はい。」
言葉は最初から決まっていた。ただ、はっきり分かっていなかった。自分の覚悟について。
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「じゃあ、行こうか」
二人は、エレベーターに乗り込む。エレベーターは斜めに移動した。
「……」
エレベーター内では無言が続いた。もっとも、一分足らずで目的地には着いたのだが。
そこは、海に面した洞窟であった。壁は、自然のものではない。至る所に機器が置かれてある。白衣を着た人が数名いた。
「ここで、最終の実験を行う。分かると思うが、水に浮けるか、ちゃんと艤装が君と同調するか……まあ、そんな感じだ。早速始めたいと思うのだが……。」
「分かりました。」
加賀美は、海の前に立つ。緊張はしない。ただ、不安はあった。
「計測機器のスタンバイ、OKです!」
「健康状態に異常はありません!」
研究員の声が飛び交う。どうやら、準備は整ったようだ。
-
「では、進水します。」
足を、そっと海の上に出す。片足が海面に付いた。あとは、もう片方。一思いに離す。
浮いた。
確かに二本足で、水の上、海の上に立っている。まるで、そこが陸であるかのように。
「やった!」
「よくやった!」
「数値、オールグリーン!やりました!」
周りから、歓声が上がる。洞窟内に響く。
「よし、赤城君。更に進んで見てくれ。」
スケートのように、水面を滑ってゆく。洞窟内だから、あまりスピードはだせない。
歓声は、段々大きくなっていった。
「スピードはどれくらいでるかな。試してくれるか。外に出ていい。」
加賀美、もとい赤城は、外にでる。洞窟内とは違い、どこまでも広がる青空。その下で、赤城は猛スピードで駆けていった。
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がんばれ
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加賀美は赤城やったんか!
-
「よし、次は艦載機の発進だな……」
その途端、けたたましい警報音が鳴り響いた。
「な、なんだ!?」
洞窟内が警報機の光で赤く染まる。研究員は、たちまちパニック状態に陥った。
「ええい!落ち着け!どうしたんだ!」
「南西20キロ先の海にて、高エネルギー反応です!」
「何だって!?」
「しかも、エネルギー反応が……ば、馬鹿な!?」
「どうしたんだ!」
「百を、超えています……!」
研究員の間で、ざわめきが広がる。
「赤城君!実験は中止だ!聞こえているかね!」
「……通信を」
「何だ!?」
「通信を横須賀基地につないでください。」
「何を言ってる!早く避難するんだ!」
「つないで!」
思わず大声が出る。こんな声を出したのは、最後はいつだっただろうか。
-
「……分かった。」
大急ぎで回線が繋がれる。
「……加賀美か。」
「今は、赤城です。」
裕紀の声だ。本来なら映像がつくのだが、今回は音声だけだ。しかも、雑音が少し混じっている。
「状況は分かっているな。相手は殆どが駆逐艦。だが、いかんせん数が多い。」
「なら、私の出番ですね。」
「だめだ。危険だ。まだ赤城は実験段階だ。それに、武器も充分じゃない。」
空母なら、まとめて攻撃が可能だ。ただ、それは完成している場合のこと。突然拒否反応が起こってもおかしくない。否定するのも当然だった。
「大丈夫。私には、算段があります。しかし、迷う時間はありません。」
赤城は一歩も引かない。「……分かった!ただ始末書は、お前にかいてもらうからな。」
「……ありがとうございます。」
冗談は通じない。ただ、どこか安心する。
基地から連絡が入ったのだろう。洞窟のシャッターが下ろされる。多分、ある程度の爆撃なら耐えられるだろう。つまり、逃げ場はない。
少し、深呼吸した。
「……一航戦赤城、出ます。」
第八話 終了
-
というわけで第八話終了です。
コメントありがとうございました。
明日からも頑張ります。
-
乙ですよー
いよいよ物語が動いてきたってとこやね
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創一、由佳、涼子の三人は海の見える道を歩いていた。
「な、なんだありゃ……。」
海のかなり沖の方で、なんだか黒いオーラのような物が蠢いて見える。
「こんなこと……初めてだ。」
涼子は双眼鏡を覗く。目には、奴らの大群が写る。
「おいおい……敵の数が半端じゃないぞ……。」
通信が入る。裕樹の声だ。
「五味、風間、聞こえているか。敵は、100を超えている。また、北崎創一を狙ってくるかもしれない。彼を安全な所に避難させ、戦闘だ。」
「100……?」
由佳は絶句した。
「そちらに敵が集中する場合、援護を回す。……創一!」
「はい。」
「ここまで遠いか?」
「そうだな、遠いな。正直厳しい。」
「そうか……できるだけ山沿いを走れ。なるべく海から離れろ。いいな。」
「……分かった」
気が引けるが、仕方がない。格好の獲物となるだけだ。
-
「……逃がして、大丈夫かな?」
裕樹は自問する。遠かろうとこの基地へ逃がした方が良かったか。だが、敵は大群。艦娘を護衛に回せないし、この基地だって耐えられるか……。
「考えたって仕方がないか。」
赤城から連絡が入る少し前のことだった。
「じゃあ、俺は逃げる。……いつも、ごめん。」
「謝ることはないさ。仕事だからな。」
涼子と由佳はリュックから艤装を取り出す。涼風の修復は終わっていた。
「気をつけてくださいね。」
由佳は笑ってみせる。だが、創一にとって、人の笑顔がつらく見えるのは初めてであった。
「また、一緒にご飯作ろう。……じゃあ、俺は逃げる。」
胸からこみ上げて来るものを必死で抑え、全力で駆け出す。海沿いは危険だ。山へ。とにかく山へ。
-
創一は山の方向めがけて全力で走る。道路はあるから、転ぶ心配はあまりないだろう。やがて、カーブを曲がって、見えなくなってしまった。
由佳は、その姿を遠目でみていた。
「大丈夫かな……北崎さん。」
艤装の最終確認が済む。燃料、弾薬は十分。異常も見当たらない。
「信じるしかないさ。今の私達は戦うだけ……そうでないと生き残れない。あいつと、デートできないからな。」
「もう、涼子ちゃん何言ってるの!」
顔は真剣だったが、耳は真っ赤だ。
「まあまあ。こんなこと言えるのは、あたいらに余裕があるということだな。」
二人の艤装の最終点検がすんだ。
「じゃあ……行くよ」
「うん。」
敵は、もう近くまで来ていた。その距離、五キロ。
二人は、同時に艤装を装着した。
「五月雨、出撃します!」
「涼風、続く!」
-
道路の下は崖となっていた。下には海が広がっている。
「飛び込むよ」
「うん」
二人、同時に飛び込む。大きな水しぶきが上がった。
「敵はほとんどが駆逐艦だ……。すぐに援軍を向かわせる。数が半端じゃない。そのことに注意だ。」
「はい。」
水上だと、砲撃の威力が上がる。種類にもよるが、一発で仕留められるかどうかのギリギリのラインだった。
「ようし……」
大分敵が近づく。確かに、駆逐艦だらけだ。人の形をしていない、恐怖を体現したようなデザイン。標準を合わせる。
「撃てーっ!」
砲弾がとめどなく発射される。爆発が敵側で起こる。どうやら、何体かに命中したようだ。黒煙が上がる。
ただ、相手も数が多い。「くそ、キリがない……。」
何発撃っても、何体倒しても敵が出てくる。まるで、地獄のマラソンとでもいうべき状況だった。
-
「はあっはあっはあ……」
戦闘開始から30分が経過した。だが、敵はいっこうに片付かない。
「くそう……どうなっているんだ……。」
倒しても倒しても敵は現れる。援軍は来ない。どうやら基地の方向にも敵が向かっているらしく、足止めを食らっているようなのだ。
「はあはあ……うわっ!」
疲れがたまり、一瞬のスキができる。そこを敵は逃さなかった。五月雨は小破してしまう。黒煙が上がり始めた。
「このままじゃまずい……やられる!」
それでも、攻撃を続けるしかない。たとえ、スタミナが、弾薬が、燃料が尽きたとしても。
そのとき、黒煙が五月雨の目にまともに入ってしまう。
「うっ……」
標準がずれる。スキができる。敵は、こちらを容赦なく襲う……。
「まずい!」
涼風が咄嗟に叫ぶ。だが、間に合わない。これまでか……
その時、襲おうとしていた敵が爆発した。
-
五月雨は目を覆っていた。だが、待てども衝撃は来ない。やがて、目が開けられるようになる。
目を開ける。
「……加賀美……さん?」
「今は赤城です。」
目の前にはいつもの格好とは違う加賀美……つまり、赤城が立っていた。
「その格好……もしかして艤装ですか……。」
自分たち駆逐艦とは一線を画すデザインが目を引いた。
「申し訳ございません。少し、試していたことがありまして。」
赤城は敵艦隊の方を向く。
「話は後です。戦闘を続けますよ。」
そう言って、弓矢を引き絞る。そして、矢が放たれた。矢は、艦載機に変わる。
「凄い……。」
冷静に考えれば物理的に有り得ないことだ。しかし、驚いたのはそこではない。放たれた艦載機は見事な飛行を見せ、相手の対空攻撃をかわしていく。そして、繰り出される爆撃は、敵艦隊を凪払っていった。これまで恐怖でしかなかった攻撃が、とても頼もしく見えた。
-
「はあっ、はあっ、はあっ……。」
創一は走っていた。どれくらい離れただろう。海は既に見えない。
「まったく……運動不足だな……。」
息が切れる。記憶の中では、スポーツをやったのは大分前の話だ。
「ここからまた山か……。」
目の前に坂が続く。山が防御壁のような役割をなし、砲撃が飛んでくることはなかった。創一自身、それを期待していたのである。
「みんな、大丈夫かなあ……。」
物理的にも、それを確認することはできない。音が聞こえてくるのみだった。
海上では、未だに戦闘が続いていた。
「100以上だって!?1000以上の間違いじゃないのか!?」
涼風が声を上げる。周りの、ホログラムのモニター。そこに表示されるエネルギー反応。もう何体倒したかは、もう数えるのを止めてしまって大分経っていた。
「……」
赤城は、無言で艦載機を放つ。艤装も、燃料と弾薬がないと役に立たない。そうなってしまうのも時間の問題だ。
-
「まずいな……」
祐樹は司令室でモニターを見つめる。未だに、数が多い。反応は減っていきつつあったのが不幸中の幸いとでも言うべきか。
「確か赤城は実験段階だ。本当に、艦載機はあまり積まれていない。なんとかもってくれよ……。」
残り艦載機数が表示される。別に艦載機が戻ってくるならいいが、墜落させられる物もある。数値は、だんだん少なくなっていく。
「頼む……」
祐樹は、祈ることしかできなかった。
「おい、なんだか相手……減ってきたんじゃないか?」
涼風が声を上げる。先ほどまでは海がまったく見えないほどだったが、油でどす黒くなった海が見えるようになってきた。ただ、黒煙のせいで海の向こう側は見えない。
「そうね。」
五月雨が、データを確認する。エネルギー反応は確かに減っていた。心に、希望が戻ってくる。
砲撃が相手に当たる。爆発は誘爆を引き起こした。敵も、パニック状態になっているようだった。
-
どれくらい時間が経っただろうか。
「敵……残り10!」
あれだけいた敵がこれほどまで減っている。塵も積もれば山となると言うが、本当らしい。視界は周りが暗くなってきたこともあり、よろしくない。だが、モニターのエネルギー反応からして判断は正しかった。
「もう、艦載機は残りわずか……。」
赤城は艦載機を放つ。敵を爆撃し、翻弄していく。爆撃は誘爆を呼び、敵はどんどん力尽きてゆく。
すると、敵はあと2体を残すのみとなった。少し大きいが、駆逐艦に違いない。
「魚雷……発射するよ。」
「うん。」
二人の魚雷発射管から、同時に魚雷が飛び出す。水中でクロスし、相手に命中する。
水柱が上がった。
同時に、エネルギー反応も消失する。
「やった!」
涼風が、歓声を上げた。「油断はだめです。」
赤城がたしなめる。
「一時、退却しましょう。基地の方にはまだいるかもしれません。」
五月雨は冷静だった。
しかし……。
五月雨の背後から何かが近づく。五月雨も、赤城も気づいていない。……艦載機だ。
-
その艦載機に一人だけ気がついた人間がいる。
涼風だった。
対空攻撃は間に合わないし、当たる確証もなかった。
となると、とる行動は一つだけだった。
……五月雨を庇ったのである。
「涼子ちゃん!」
具体的に言うと、全速力で艦載機と五月雨の間に割って入ったのだ。文字通り、盾となったのである。
「ぐわああああああ!」予想以上に爆撃は激しかった。薄い装甲が一気に破壊された。人体にも損傷が及ぶ。右肩から背中まで火傷を負った。涼風は猛烈な痛みに襲われる、意識が朦朧とする。
五月雨はそれを支えた。手には、びっしり鮮血がついている。
「涼子ちゃん!大丈夫?」
「あ……由佳……」
かなりのダメージを受け、まともに話せないようだ。
「もういいから!話さないで!」
「北崎は……いいやつ……だ。仲……良く……な。」
そう言って、意識が途切れた。
-
「涼風、ロスト!」
司令室に緊張が走る。モニターには、赤城だけが表示されていた。爆撃で、通信機器が壊れてしまったらしい。
「五月雨、涼風はどうしたぁ!」
祐樹が叫ぶ。
「艦載機が突然襲ってきて……私は大丈夫だったんですけど……涼子……いえ涼風が私を庇った形になって……きゃあ!」
通信が途切れる。
「どうした!?」
「五月雨、ロスト!」
モニターから表示が消える。残るは赤城だけだ。
「赤城、何があったんだ!五月雨、涼風は無事か!?」
「隊長。五月雨は小破です。通信をやられてしまった模様です。涼風は……予断を許さない状況ですね。」
「わかった。こっちが片づき次第そちらに救護班を向かわせる。……敵は?」
「……分かりません。」わからないと赤城は言ったが、艦載機はどこかで見たことがあった。
「そうか。分かった。」
-
赤城は実験段階だった。だから、通信はでき、味方の位置が分かったとしても、映像をおくることができないのである。だから、敵のエネルギー反応で起こっていることを判断するしかない。
「なにが起こっているんだ……」
そういう点では今は安全だろう。エネルギー反応はない。
「隊長!こっちの指揮お願いします!」
まだ、基地近くに敵はいる。こちらを叩かなくてはならない。
(頼む……赤城。)
「五月雨。涼風を連れて逃げてください。」
「えっ!そんな!」
「早くしないと、手遅れになってしまいます。それに、敵はおそらく強い。駆逐艦では対処できません。」
「そんな……。」
唇をかみ、手を握り締める。確かに、今の自分に対空装備はない。ただの駆逐艦だ。
「回収ルートは9-13です。早くしないと、手遅れに。」
まだ、息はある。しかし、それは虫の息だった。わがままを言う時間も迷う時間もなかった。
「……分かりました。」
自分の無力さを噛み締めながら、赤城と離れた。心なしか、いつもより涼風が重く感じた。
-
赤城は、少し深呼吸をした。何か、気配を感じる。艦載機が飛んできたから、近くにいるのも当然の話だったのだが。
「……いるんでしょう?」
方角がわからないが、呟いた。
「私達はあなたのことをこう呼んでいます。……空母ヲ級。出てきなさい。」
こころは、静かな怒りをたたえている。少しの衝撃で、爆発してしまいそうだ。冷静に、冷静を心がける。
不意に、笑い声がした。「ハハハ……バレテイタカ……。」
まがまがしい声と共に、岩陰から姿を表す。……間違いない。昨日のヤツだ。
「空母ヲ級カ……ヒトの名前デヨンデクレタッテイイノニナ……。私ハ祐樹ノ母親ダゾォ?」
「あなたは自分の姿を見るべきだ。すぐに分かります。30の子どもを持つ母親がそんなに若いわけがない。」
「ホォー?近クニイルハズナンダケドナア……?ソンナカンジノ人間ガ。」
-
「ワカッテイルダロウ……?キタザキソウイチダヨ。アア、ユウキガチイサイコロカラ一緒ダケドカワイイカっ多ナア」
確かにケースは同じだった。祐樹と創一は同い年なはずなのに、見た目がまるで違う。
「ソッチニイルハズナンダケドナア……ワタシテクレナイカナ。ワタシタチニハアノ子ガ必要ナンダヨ……」
「お断りします。あの人は、私達に欠かせない。もう、あのお味噌汁が飲めなくなる。」
赤城は淡々と言い放つ。「ハハハ……ソンナ理由デ、上司ノ母親ヲコロセルノカナア?」
「あなたは血が通っていない偽物だ。それが私の判断です。」
赤城は弓を構えた。
「あの人に、手は汚させない。」
「フフフ……オモシロイナ……オマエ。」
向こうも艦載機を複数展開する。
そして、空母同士の戦いが始まった。
-
赤城は、大量の弓矢を放つ。ヲ級も、大量の艦載機を繰り出す。いくつかの艦載機が攻撃を受け、墜落していく。
(もう、少ししかない……)
もともとあまり艦載機は積まれてなかった上に、先ほどの大群との戦いで消耗していた。あと、僅かしかない。
「ホラホラドウシタ?コッチハ、マダマダアルゾ。」
かなりの数だ。思わず顔をしかめたくなる。
「まだまだよ。」
不利を相手に伝える訳にはいかない。ポーカーフェイスを貫く。
だが、戦況はどうも不利だった。艦載機が、もう近くまできている。熱気が、顔にかかる。
「くっ……」
ふと、ヲ級が視界から消えた。
「ココダヨ。」
不意に、近くで声がした。思わず振り返る。その瞬間、腹部に鈍い痛みが走った。
「ぐふっ……」
拳が赤城のみぞおちを恐ろしいほど正確に貫いた。胃の内容物が逆流する。
「コレデオワリジャナイサ……」
大きな隙。敵はそれを逃さない。艦載機がとんでくる。
赤城、中破ー。
-
「ハハハ……」
絶望と歓喜の空気にはっきりと二分された。
「モウオマエハオワリダ……。艦載機ガダセナイ。」
それと同時に艦載機も尽きてしまっていた。近接戦闘も、敵艦載機に阻まれ不可能だろう。足止めを食らっているようで、援軍も来ない。まさに、絶望的状況。
「安心シロ……殺シハシナイサ……。モットモ、ジゴクノクルシミハツヅクガナ。」
「……どうかしら。」
腹部の痛みが収まってきて、 話せるようになってきた。
「ナニ?」
赤城は周囲を見渡す。周りには、海とヲ級だけ。誰も見ている人はいない。
「誰も見ている人はいないし……仕方がないか。」
すっくと立ち上がる。首を軽く鳴らした。
「ナニガイイタイ」
加賀美は、偽装を外す。裸にならないように、着物はきたままだが。
「人には、奥の手……切り札が有るってことよ。」
-
司令室。隊員全員が祈るような気持ちでモニターを見つめている。モニターには、足止めを食らわせている大群と、一番大きなエネルギー反応……空母ヲ級の位置が表示されていた。
すると、その位置表示が沖へと移動してゆく。
「なんだ!?」
大群もそれに連れられ沖へと向かってゆく。範囲外へと移動してゆき、そして反応が消えた。
「すぐに救護へ向かえ!」
祐樹は、大急ぎで指示を出した。
救助隊、長良、名取、村雨、の三人はすぐさま現地に向かった。敵の気配は確かにない。
「あれだ!おーい!」
長良が声を上げる。その方向には、服だけを身に付け、水面に浮かぶ加賀美がいた。
「大丈夫ですか?分かりますか?」
加賀美は、小さく声をあげ目を開けた。
「……風間さんは、大丈夫なのかしら。」
「だ、大丈夫ですよ。意識はないですけど……。」
名取が答える。
「そうだ、艤装……」
「こっちにありましたよ。」
村雨が海に浮かんでいたのを拾い上げた。
「敵は……」
「退避しましたよ。」
長良が答える。長良と名取は持って来ていた救護ボートに加賀美を乗せた。
「さあ、帰りましょう。話はそれからでも遅くないです。」
ボートを三人が引っ張る。そして、基地へと帰って行った。
-
「ふう〜」
創一はベンチに座っていた。もう、海から大分離れた。砲撃音もしない。こちらを撃ってきても、山が防いでくれるだろう。
「戦いが終わって……ないかな。」
当たりは大分暗くなっている。
「というより……ここはどこなんだろう。」
一心不乱に逃げた。しかしそのせいで、道順がわからなくなってしまったのである。
「携帯、持っておけば良かったかな。」
自分の持ち物に通信機器はない。自分の居場所がわからないし、つたえることもできないのだ。
幸い舗装が成された道で明かりもあった。
「とにかく、戻ってみますか。」
再び立ち上がって歩き出した。
「こんなところ、通ったっけ……?」
標識を頼りに道を行く。横須賀までの距離は書いていなかった。これまで逃げた時間から逆算して、帰るのは夜中だろうか。
「参ったなあ……夕御飯作れないや。」
そういうことを言っていると、車の集団が見えた。
-
「パトカーだ……。」
安堵の表情を浮かべる。道を教えてもらおう。それで帰れる。
「すいません。」
「はい?って、こんなところでなにをやっているんだ。ここからは立ち入り禁止だ。」
「いえ、僕は横須賀基地で働いているんですけども、道がわからなくって……」
しどろもどろに答える。
その瞬間、後ろから電気が走った。
「え……?」
意識が薄れる。前を見ると、先程の警官が、口角を釣り上げ立っていた。
ドサッ……。
「北崎創一、確保だ。つれてゆけ」
創一は車へ運び込まれた。
パトカーが動き出す。そして、どこかに運ばれてしまった……。
第九話終了
-
第九話終了です
あっという間に300レス、10話目に突入しましたね……
できればスレが完走するまでに完結させたいです。
ペースが落ちましたね……すいません
また明日から10話頑張ります。
-
乙やで〜
緊迫した状況が続くな...、先の読めない展開、wktkです
10話も頑張ってな!
-
病室。一人、ベッドに横たわっている。体には様々な管が繋がれていた。
「今日も、意識が……。」
由佳は涼子を見て呟く。
あれから二週間が経った。出撃、作戦行動はない。毎日、警備の繰り返しだった。幸いにも、敵には遭遇していない。今日は非番で、こうして見舞いにきているのである。
「北崎さん、本当にどうしちゃったんだろ……。」
二週間の間、一度も姿を見ていない。自分も捜索は行っているが、一向に消息が掴めないのである。
「私のせいかな……」
自分は、彼の警備が任務だったはずだ。いくら命令とはいえ、逃がさずに闘うこともできたはずである。それに、自分を庇って、涼子は傷ついてしまった。
「もっと強ければ……」
自分の弱さ、無力感を噛み締める。涙は出ない。ただ、なんとなく、青空が広がるのを眺めていたのである。
-
おっ、今日も始まったか
期待
-
いつまでもここにいたい。だが、それもできない。
「じゃあね……涼子ちゃん。また来るから。」
当然返事はなかった。
病室を出ると、女性と出会った。
「こんにちは。」
向こうから挨拶してきた。たしか、桑山さんだ。今日もお姉さんの見舞いなんだな。
「こんにちは。」
立ち止まって、軽く頭を下げた。すると、彼女はなんとなく立ち止まった。
「誰かのお見舞いなんですか?」
「ええ、同僚が。」
由佳の暗い表情を察知したようだ。
「良かったら、お話でもしません?」
予想外だった。確かに今日は非番だが……。断るわけにもいかない。
「ええ、喜んで。」
-
司令室。祐樹は肩を組み、体をゆっくりと伸ばした。
「やっと、今日の始末書やらの雑務が終わったなあ……」
小笠原諸島進行作戦、そして、二週間前の防衛戦……。損害はばかにできなかった。
「創一……。」
防衛戦以来、創一は消息を断っている。いわゆる、行方不明というやつだ。
「俺のミスだ……。」
あの日、自分は単独であいつを逃げさせた。ただ、自分の指揮がもう少しマトモなら……防衛を少人数でできたら……一人艦娘を護衛に回すことができたはずである。最も、あの日は進行作戦の次の日だったという言い訳は可能だ。ただ、それはしたくない。
「無事でいてくれよ……創一。」
そう言って、作戦報告書を手にする。
気がかりなことが一つあった。
加賀美である。
なぜ、敵は突然撤退していったのか。彼女は赤城を装着して、単独で戦っていた。しかし、味方が救出に向かった際、彼女は艤装を外し、意識を失っていた。この状態で敵を撤退させることができただろうか?
「わからないことだらけだなぁ……」
頭を掻く。創一が余りにも謎に包まれていて目立たなかったが、自分は部下の事を余り知らなかったのだ。
「調べてみるか……」
-
二人は、中庭を歩いていた。ベンチを見つけ、二人して座る。
「あっ、飲み物買ってきますね。」
「いや、いいですよ。」
「遠慮なさらないで。」
「じゃあコーヒーを……。」
由佳は、自販機に飲み物を買いにいく女性を見ていた。綺麗な人である。すぐに、飲み物を2つ持って駆け寄ってきた。彼女は紅茶を買ったらしい。
「はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
缶の冷たさが伝わってくる。
「そういえば、自己紹介していませんでしたね。私、桑山朋美って言います。姉が、ここでお世話になっていました。」
「……あ、五味由佳です。」
姉の話には触れていいのだろうか。わからなかったから、とにかく自己紹介をしておいた。
その後、少し無言が続き、二人は飲み物に集中していた。
口を開いたのは、朋美のほうであった。
「あなたも、艦娘なんですか?」
-
突然の質問だった。まあ、聞いてくるのも当然だろう。この人は元は艦娘だった人の妹さんだった訳だし、話してもいいか。
「はい。そうですけど……」
朋美の顔が少し明るくなる。それは、少し落ち込んでいる由佳と対称的であった。
「そうですか……すごいですね!」
「そんなことないですよ。同僚だって、私のミスでやられてしまったんですし……。」
嫌な光景を思い出す。目の前で涼子が攻撃を受け、倒れていく。
「あっ……すいません。」
由佳の様子を察したのか朋美は謝った。
「いえ……。あと、今、自分の大切な人の居場所がわからなくて……。私、弱いんです。武装がいくら強くても、大切な人を守れない。いつも、失敗ばかりだ……。」
口が止まらない。目の前にいるのは、ついさっき初めて出会った人だというのに……。自分の心に余裕はなかった。もう少し心が弱ければ、その場で大声をあげて泣き出してしまったことだろう。
だが、朋美は驚くほど熱心に聞き入ってくれていた。
-
「す、すいません……。こんな話しちゃって。」
朋美は首を横に振る。
「いえいえ。別にいいんですよ。辛いですよね。みんなの期待を一身に背負っているから、弱い所なんて見せてられないですもんね。」
「はい……。」
「でも、いくら武装したって、中身は女の子なんだから、無理したらだめですよ。」
「でも……」
「うらやましいんですよ。システムの適合者の方が。私だって、あいつらに仕返しがしたい……。でも、やられちゃいます。けど、あなたはそれに対抗ができる。」
「……」
「人の心って、そんなに綺麗じゃないですからね。それでいいと思うんです。そうじゃないとなんか……面白くないじゃないですか。嫌な感情を、あいつらにぶつけてしまえばいいんですよ。」
簡単な話だ、と思ってしまった。実際、自分より強い敵が多いのに。
「ごめんなさいね、偉そうなこと言って。」
「いえ……気持ちが楽になりました。」
由佳は、飲み物を飲み干す。そして、ゴミ箱へ思いっきり投げた。綺麗な弧を描き、入った。
「ありがとうございます。」
「いえ……私で良かったら、いつでも相談に乗りますよ。」
そう言って、話が続いた。二人が同い年であること。民間の現状……いろいろなことが分かった。そして、二人は段々打ち解けていった。
「そろそろ帰らないと。……」
「あっ、それじゃあ送るよ。」
思わず長話になってしまったらしい。艦娘の家族の送迎は、自衛隊が責任を持ってやることになっていた。ちなみに、彼女は今長野に住んでいるらしい。
輸送車に朋美が乗り込む。
「じゃあ、またね。」
「うん。」
今日は非番だったから、もう少し話がしたかった。時間が止まればいいのに。小さくなってゆく輸送車をじっと眺めていた。
-
「ん……」
創一は目を覚ます。
「ここは……って、なんだここ!?」
そこは、牢屋のような場所だった。壁は岩がむき出しで、何もない。天井から水滴がポツン……ポツン……と落ちてくるのみである。
突然、足音が聞こえた。
「だ、誰かいるのか!?助けて、助けてえ!」
「安心しろ……。殺しはしない。」
目の前にいるのは、屈強な体をした男だった。
「誰だあんた!くそっ!ここからだせよお!」
檻に向かって体を叩きつける。しかしびくともしなかった。
瞬間、男が創一の首を掴む。かなりの力が首に集中する。
「ぐえっ……」
「こまるなあ……君に怪我されたら困るんだよ。君が俺達には必要なんだ……」
何を言っているか、さっぱりわからない。ただ、一つだけ分かることがある。
ここは、危険だ。
-
どうする。闘うか。
とは言っても、周りに武器になりそうなものはない。あったとしても、男の怪力に跳ね返されてしまうだろう。
創一は様子を見ることにした。
男は向かいの椅子に座っている。薄暗くて、何があるのかよくわからない。ただ、男はしきりに連絡を取っていて、他の人の声も聞こえてきた。
反抗しないほうがいい。
判断を情報収集に切り替える。勇気をだせ。
「あんた、もしかしてあいつらの仲間なのか。」
「ああ?」
もしかして、刺激してしまっただろうか。創一は少し身構える。
「どうだかな。……次、変な口を聞いてみろ……」
そんなことを言って、二人共黙ってしまった。
その時である。
創一を、激しい頭痛が襲った。
「うわあああああ!」
演技ではない、正真正銘の痛み。バットで殴られた痛みという表現があるが、果たしてそれで事足りるだろうか。
-
「おい!どうしたんだ!」
男は檻の向こうから声をだす。ただ、鍵は開けない。演技である可能性があったからだ。
しかし、創一の様子はちょっとおかしい。
「ああっ……」
痛みが一線を越えたようだ。その場で倒れ込む。体は痙攣していた。たちまち、気を失ってしまった。
「ちっ……」
男は小さく舌打ちをする。
「どうしてもお前が必要なんだよ……!」
男は部下に命令し、運ばせる。さすがにダメだと思ったのであろう。部下は10人程度いるようである。
その時だ。
入り口で、爆発が起こったのである。
「何事だ!」
「侵入者、一人を確認。こちらへ侵攻している模様!」
「なにい!」
怒号が響き渡る。ここは、結構山奥にある。バレるはずがない。
しかし、現実には侵入去れている。だれだ?
-
考えている暇はない。
「とにかく相手を確認するんだ!そっちへむかう。こいつはここへ置いておくから誰か防衛に迎え!」
牢屋のような所以外は壁や床が整備されていた。機器もある。
そこを、ばたばたっと足音が駆け巡った。
「こりゃ……誰なんだ一体!」
壁には大穴が開き、瓦礫が散乱している。外の光が差し込んで、逆に誰がいるか分からなくなってしまっていた。
「そんなに言わなくても……出てきますよ。」
ホコリでよく見えないが、人影が見えるようになってきた。
「お、お前は……」
それは、男がよく知っている人物だった。
カツン、カツン、カツン……。足音がだんだん近づいてくる。
「困るなあ……。パトカーまで使って彼を騙して、連れ去ってきちゃ。信じてもらえなくなる。」
顔が、はっきり見えるようになってきた。それは、創一が二回ほど会った相手であった。
そう、芦川千夏だったのである。
-
千夏は、不敵な笑みを浮かべる。
「あー良かった。北崎君の体に発信機つけておいて。こんな山の中で反応するんだからなあ……」
「貴様……何のつもりだ!」
「何って……人命救助ですよ。警部。誘拐されたね彼のね。」
「上司に刃向かうというのかね?見上げた根性だ……。君はもう少し利口だと思っていたが。」
男の後ろに、何人かの戦闘員だろうか、ぞろぞろと出てきた。しかし、目に生気はない。
「ご安心を。辞表は書いてきました。」
「ふん、この時代、個人で生きられるとでも?無論、ここで死んでしまうがね……。」
戦闘員は、逃げ場をふさいでしまっている。
「警部、なぜ私がこんなに厚着かわかりますか?」
確かに千夏は黒く長いコートに身を包んでいた。「さあなあ……」
パチン。男が指を鳴らす。すると、信じられない事が起こった。戦闘員が大声をあげたかと思えば、あの「化け物」に姿を変えたのである。
-
化け物が、取り囲む。二足歩行の者やら、空中に浮遊している物やら。周りから見れば、絶体絶命。
しかし、千夏は余裕綽々といった表情だった。
「やっぱりそうか……なら、何の躊躇も無く倒せるな……。」
千夏は首を軽く鳴らす。
「警部、さっきの答えを教えてあげますよ。」
コートを脱ぎ捨てる。
その格好は、祐樹が見ていればこう言っただろう。
「羽黒の艤装に似てる」……と。
「私も、力を手に入れたんだ。」
背後から、化け物が襲いかかる。
「はあっ!」
振り向き様に、回し蹴りを放つ。蹴りを食らった敵は、強く壁に叩きつけられ、やがて動かなくなった。
-
「すごい……!」
千夏自身、自分の力に驚いていた。とっさに放った蹴りが、とてつもない威力を誇っている。力がみなぎってくるように感じた。
感情もだんだん高ぶって来る。
「ははっ……じゃあみんな……死んでもらおうかなあ……。重巡足柄、出撃します!」
身に付けていた艤装の名前が明らかになった。
「はははははっ!」
高らかに笑う。そして敵に飛びかかる。相手を殴りつけ、蹴り飛ばし、壁に叩きつける。
「すごいすごいすごい……!」
戦況は明確だった。化け物がどんどん力尽きてゆく。もっとも、どちらが化け物か分からない様相を呈していたが。
やがて10分もすると、取り囲んでいた敵はほとんど片付けられてしまっていた。
男には、恐怖すら感じられた。
「なぜだ……なぜお前は人の形をしていたものを殺せる!」
-
「なぜ、なぜって……」
化け物は残り二体。軽巡と重巡。
「今、人の形をしてないからだよ。私の実力を測る相手になってもらうつもりだ……」
足柄、そういうと笑みを浮かべた。
二体が襲いかかる。これまでの敵とは少しレベルが違った。少し、手強い。
「ここだったらやりづらいなあ……。」
足柄は外へ向かって走る。二体も当然追いかけた。
「かかったね!」
まず軽巡を殴る。拳が、軽巡の腹にめり込む。そして、軽巡を持ち上げ、高く、飛んだ。
「でぃやあああああ!」
重巡目掛けて、軽巡ごと落とす。さらに、ぶつかる直前に砲撃を放った。落下のエネルギーと砲撃のエネルギーがぶつかり合う。
大規模な爆発が起こった。
「ふう。砲撃は陸上では威力が落ちるって聞いたけど……こうすりゃ関係ないわね。」
足柄が、とても満足がいったような顔をして立っていた。
-
「さてと……」
足柄は入り口の方を向く。
「救出作業と……尋問ね。」
「はあっ……はあっ……」
男は基地の中を走っていた。
「もう少しだったのになあ……」
胸元のポケットからタバコを取り出し、火を付ける。
「俺も……ここまでかな……」
男の目線の先には足柄がいた。ゆっくりと、ゆっくりとこちらに向かってくる。
「見つけた……。」
足柄は男の前に立つ。首をつかみ、壁に叩きつけた。
「なあ……教えてくれないかなあ……北崎くんの居場所と……。」
握る力を強くする。
「……バックに、どんな組織がいるんだ。言え。言えば、寿命を15分伸ばしてもいい。」
冗談を言いながら、しかし真剣な顔持ちで訪ねる。
「北崎は右部屋の奥だ……。それ以上は……言えない。」
-
「言えない?……困ったなあ……」
足柄は手を離す。男はドスンと音を立て、その場に落ちた。
「やっぱり殺すのはやめた。その代わり、死ぬ間際まで痛めつけてやろうかなあ……。言えば、許してあげるんだけど。」
足柄が、気味の悪い笑みを浮かべる。
「ふふふ……残念だな……。」
男は呟く。
「俺は、もうすぐ死ぬ。あと、30分位かな。」
「……どういうことだ?」
足柄は真剣な顔に戻る。
「起爆装置だよ。作動させておいた……」
そういって、男は最後の一本のタバコを取り出す。
「忠告しておくよ。芦川……今は足柄の方がいいか、俺は確かにバックの巨大組織の一員だった。ただ……」
口から、煙を出す。
「お前はいつか間違っていたことに気づくよ。俺を倒したことに、そして……北崎を助けることに。」
「……負け惜しみか。聞きたくないなあ。」
足柄はその場を立ち去り、北崎のいる部屋へ向かっていった。
-
「ここかあ……」
目の前に扉がある。どうやら男は、創一を牢屋から移動させたらしい。
扉をあけると、ベッドだけが置いてあった。ベッドの上には創一が横たわっている。
「おーい、大丈夫かあ?」
返事はない。それどころか、様子がおかしかった。息が荒い。
「大丈夫じゃなさそうね……。」
応急処置はできそうになかった。そもそも、その時間もありそうにない。爆発までの時間はあまり残されていないからだ。
「仕方がないか……よっと。」
足柄は創一を抱える。世間一般では、このことをお姫様だっこと呼ぶのだろうか。
「普通は私がやってもらう側なんだけどな……。あっ……こんなことを言ってる暇がない。爆発か。警部は……無理だな。」
そんなことを呟くと、その場を出て行った。そして、出口へ向かって走り出した。
-
足柄は外へ止めてあった車へ運び込んだ。四人掛けの車で、後ろに創一を寝かせた。まだ、息は荒いままだ。
「参ったなあ……。」
ここは山の中だ。近くに医療設備はない。無論、ここは横須賀からも遠かった。
「このままあそこに届け出なければ、私が誘拐したことになるのか……はあ。」
ため息をつく。
千夏は、艤装を解除した。ラフな格好に着替える。
「おっと、どれだけ爆薬がしかけられてるかわからないな。逃げなきゃ。」
そういって車のエンジンをかける。そして、車で走り去っていった。爆発は、予告通りしたが、規模が小さく周りには気がつかれない程度だった。
「さてと……。」
何分か経って、車を止めた。
「これからどうしようかな……。」
とは言っても、行き先は決まっていた。ただわからないことが多く、口に出さないとどうしようもなかったのである。
わからないこと。バックの組織。艤装の謎。そしてもう一つ。
北崎創一である。
-
彼には、記憶がないらしい。また、この容態……何か秘密があるように思えてならない。
創一の息が落ち着いてきた。安らかな寝息を立てている。
「良かった。どうしようかと思った。」
思わず安堵の表情を浮かべる。
「考えすぎるのもよくないな……」
車は再び進み始めた。上に、標識があった。
この先20キロ長野県。
そのような内容がかかれてあり、車はその方向に向かって進んでいた。
「驚いたな……。」
祐樹は書類に目を通していた。とは言っても、いつもより詳細なものだ。
「加賀美……あいつ、孤児院で育ってたのか……苦労したんだな……」
感慨深げに呟く。
実は、今日加賀美を呼び出していたのだ。時間までもう少し。
「失礼します。」
「入りたまえ。」
加賀美が入ってきた。傷も癒えて、今日から出勤のようだ。
「体のほうはもう大丈夫なのか」
「はい。」
いつものペースで答える。
「そうか……ならそろそろ報告を頼む。身体が万全でないと聞きづらくてな。」
軽く咳払いをし、尋ねた。
「……あの時、なにがあったんだい?」
-
「……」
加賀美は黙っていた。
「言いたくなければいわなくていい。ただ、俺の知りたい事は、君がどうやって敵を退避させたか、敵は何だったのか……というわけだ。」
五分間、沈黙が続いた。そして、やっと思い出したかのように語り始めた。
「……敵は空母ヲ級でした。艤装が中破してしまったので、近接戦闘に移行して……」
「半分、嘘だな。」
祐樹は鋭い指摘を挟む。
「空母相手にそんなことができるはずがない。」
ばれたか……。加賀美はばつの悪そうな顔をする。
「なあ、教えてくれないか。君は、何をやったんだ。」
問い詰める。
「……黙秘権を公使させていただきます。」
加賀美は非常につらそうな顔をしていた。
「……そうか。」
祐樹はため息をつく。
「もういい。下がりなさい。」
-
「失礼します。」
加賀美は頭を下げ、そそくさと出て行ってしまった。
司令室には、祐樹が1人ぽつんと残された。
「ふう……。」
窓から外を覗き込む。
「謎が謎を呼ぶ……か。創一、早く帰ってこい。じゃないと……許さないぞ。」
そう言うと、再び業務に戻っていった。
「ふう……。」
加賀美は自室に戻っていた。何日か帰ってなかったので、少し埃がたまってあった。
ふと、手を見つめる。
「すいません隊長……私の秘密を知られる訳にはいかないの。でも……」ベッドに横たわり、天井を見つめた。
「北崎さんの居場所だけは……私が見つける。」
心の中で、強く誓った。
第十話終了
-
ワイが決めることでもないんやけど
ここの掲示板でやるようなSSやないと思うで
-
第十話終了です
結構テンポが悪くなってしまいました……。
これからも続けていいですかね?
-
別にええんやで(ニッコリ
てかやめられたら結末が見えなくなっちゃう・・・・・・ヤバイヤバイ
ワイは楽しみにしてるから、はいヨロシクゥ!
-
>>329
ありがとナス!
僕も最後まで書きたいです……。
とりあえず今の内は書き続けてみます。
明日からまた頑張ります。
-
書いて、どうぞ(応援)
SSは完結させることが最重要って、それ一番言われてるから
-
ワイも楽しみにしてるで!
定期的に目を通してるんやけど感想入れるタイミング逃してて
話の途中にコメ入れても大丈夫ですかね?
-
>>332
別に大丈夫ですよ
自分のssがこんなに好意的に受け取ってもらえて嬉しいです
ご愛読ありがとうございます
-
「う、うーん。」
創一は目を覚ました。そこは何もない、小さな部屋であった。小さな窓が1つついているだけである。
「ここは……」
自分がいつも寝泊まりしている部屋とは違うことだけがはっきりとわかる。
「はっ……そうだ!」
屈強な男、激しい頭痛……。記憶はそこで途切れていた。
「最近、たまに体の調子が悪くなるなあ……。」
少なくとも自分の記憶では、こうなり始めたのはつい最近だ。だとすると、なぜなのだろう。
「うわあ……。」
ふと、窓から外を眺める。山が広がり、まさに緑。といった感じの風景だった。
「海岸部はかなりの被害を受けたらしいけど……。そうでもないってことは、ここはどこなんだ?」
「長野県よ。」
-
「あなたは、芦川さん?どうして、ここに。」
「どうしてって……うーん。どこから説明していいかなあ……。」
千夏は、少し困ったといった表情をした。
「あなた、道端で倒れていたの。それを救出したってわけ。」
「え、嘘……。それじゃ、あの男とかは……。」
「なんのことかしら?」
「いえ、何も……。」
確かに自分はどこかの施設に連れ去られていた。道端に倒れていたというのは、自分が不必要になったからだろうか?
「あのさ……君、忘れてないかな?」
「え、何でしょう?」
「私、あなたのこと助けたんだよ?」
「あ、ありがとうございます。」
「足りないなあ……。」
千夏は得意げな顔をする。創一は彼女の独特のペースに翻弄されつつあった。
-
「有給休暇?3日間?」
司令室。祐樹が疑問の声をあげた。
「何でだ。3日間も」
「私用ですが。」
申請したのは加賀美である。
「隊長は、女性のプライベートに言及されるので?」
加賀美は一歩もひかない。
「いや、そういうわけではないが……北崎創一の救出に行くのか?」
「……さあ、なんのことでしょう。」
「また、秘密を抱えるのか?」
「……」
加賀美は黙り込む。
「いいよ。最近疲れただろうし、有給一回もとったことがなかったろうからね。少し、羽を休めるといいよ。」
「ありがとうございます。」
「ただ……」
祐樹は一枚の書類を取り出す。
「赤城の修復は終わっているから、持っていきなさい。こっちは艤装持出許可証だ。」
-
加賀美はサラサラと書類に名前を書く。
「それでは失礼します。」
「さてと……」
基地裏手の倉庫。そこに置いてあった自衛隊保有の車両の前に加賀美はいた。艤装の服、および弓のセットを積み込む。
「加賀美さん?何してるんです?」
驚いて振り向く。そこには由佳がいた。
「五味さん……どうしてここへ。」
「いや、加賀美が倉庫に行くなんて珍しいものですから。」
積み荷を覗く。すると、艤装がそこにあった。
「加賀美さん……こんなもの持ってどこへいくんですか?」
「それは……」
「北崎さんを探しにいくんですか?」
「……はい。」
正直に言ったのは、相手が同じ女性だったからだろうか。
「私もいきます。捜索の一環として。」
「いや、私だけで。」
「だめです!……艤装と許可取って来ますから待ってください。」
「……はい。」
由佳に気圧され、そうとしか言えなかった。
-
「釣り……ですか。」
千夏と創一は川に来ていた。
「そう、やったことある?」
「まあ、何度かは。」
目の前には、綺麗な水を湛えた川が流れている。風もなく、天気もいい。釣りには絶好の天気だ。
「はい、竿。」
「あ、ありがとうございます。」
「負けないわよ〜!」
二人は早速糸を垂らす。するとすぐに魚が食い付いた。
「へへん。俺が一歩リードですね!」
「何を〜!……おっ、来た!」
そんなことをいいながら、二人は釣りを続けた。糸をたらせば魚が食いつく。まさに入れ食い状態だった。
一時間程度して、二人は竿を置いた。あまり食いつかなくなり、小休止といった感じになった。
「ここは変わらないなあ……。」
千夏がぽつんと呟く。
-
「日本、いや世界が一変したのに、ここはずっと昔のままだよ。」
千夏は手にもった水筒を開けた。
「さっきの家はね、おじいちゃんの家なの。小さい頃はいろいろあって、おじいちゃんと住んでたんだ。」
創一は理由について言及しなかった。ただ耳を傾け、川の流れを眺めている。
「そのおじいちゃんもつい最近亡くなってね……。あ、重い話になっちゃうね。」
「いえ……。」
不思議と嫌な気持ちにはならない。自然の力だろうか。
「大学二年の時かな……。私沿岸部の大学に通ってたから。かなり心配かけちゃって……。」
「それは……大変でしたね。」
慎重に言葉を選んだ。つらい心情がひしひしと伝わる。
自分は、何ができるだろうか?
「ねえ……あの敵、何だと思う?」
それは、突然の質問だった。
-
「それはまた、突然な質問ですね。」
創一はびくの覗きこむ。20匹はいるだろうか。
「そうですね……一言で言うと、怖い、かな……。得体のしれない感じですね……。」
これまでのことを思い出す。
「みたまんまね。」
「艦娘の攻撃しか効かないっていうのも謎っていうか……。」
手元にある石を川へ投げ込む。
「俺はね、悔しいんですよ。」
「悔しい?」
「いつも見ているか、逃げるか、守られてるだけですから……。」
「……。」
「だから、艦娘の人たちって結構すごいと思うんです。死ぬかもしれないのに……。」
二人はその後、何分か心の内を話合った。すると、二人とも気が少し楽になった。
「さてと……これ、食べられますかね?」
「塩つけて焼いたら食えるよ。味は……。」
その瞬間、爆発音が響いた。
-
「うわっ……何だ?」
答えは半分分かっていた。川の下流を向く。ここから見える、ギリギリの場所。
半信半疑だったのが、確信に変わった。
「またあの化け物か!?川にも出没するのか?」
先ほどまで話題に出ていたのが、現実になる。
敵は、人間体を持つものが二体。そうでないものが四体……。それだけが見えた。
「とにかく家に戻ろう。ここにいてもだめだ。」
家から釣りをしていた場所までは近かった。二人は大急ぎで戻った。
「敵はすぐにきますよ。どうします?」
「……」
千夏は大型のジュラルミンケースを持ち出した。
「それ……何なんです?」
「……どうやら、隠し事は通用しないか。」
ケースの中から艤装を取り出す。
「それ……まさか……。」
「そうゆうこと。じゃあ行ってきます。」
創一は驚きを隠せない。
「ちょっと待ってください!また、俺は留守番ですか?それとも逃亡?そんなの……。」
創一は奥歯を噛み締める。
-
千夏は真剣な顔で創一の両肩をつかんだ。顔を覗きこむ。
「いいか、これは君にはできない。私にしかできないからやる。結果として君を守る形になるだけだ。」
「でも……」
「安心して。逃げなくてもいいようにする。敵がここに来る前に片付ける。いいか?」
千夏は手を離す。
「さてと、艤装の装置だな……。見るなよ。もう行くから。」
そういうとすぐに走って行ってしまった。
「二回目、か。」
燃料、弾薬は補充完了。損害も軽微でまだまだ大丈夫だ。
てきぱきと艤装に着替えていく。
「これでよし……と。」こちらから、川が、敵が見える。こちらには気づいていないようだ。
胸いっぱいに空気を吸い込む。
「重巡足柄……出撃。」
そういって川沿いの道を走り出した。
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川沿いの道と川の間には高さがあって、川からは道路が見えない。あらかじめ観測しておいた相手の位置、速度、そして、自分の位置、速度を頭に叩き込む。
「よし、いくぞ……」
敵と足柄が、川と道を挟んですれ違う形となる。だが、足柄はすれ違う直前で90度右へと方向を変えた。
目の前には竹藪が見える。
「うおおおおお!」
足柄は飛んだ。竹藪を越え下には川。障害物はない。
敵はそこでようやく足柄に気づいた。しかし、すでに遅い。
空中で足柄は体勢を変える。膝を曲げて、両足を抱え込む。
「でええええええい!」
軌道の先には敵が一体、駆逐艦がいた。ぶつかる寸前、両足を伸ばす。敵に両足で蹴り込む形となった。
爆発とともに水しぶきが上がる。
敵は突然のことにすっかり驚いてしまっていた。
-
その隙を足柄は逃さなかった。
「うらああああ!」
敵一体を掴み、容赦なく膝蹴りを叩き込む。ひるんだところを、拳の雨を叩きつける。
「あああああ!」
もう力尽きる寸前の敵を別の駆逐艦にぶつける。
「ここは、水上だ!」
2体にまとめて砲撃をくらわせる。どうやら淡水でも海上と同じ威力のようだ。爆発が足柄を包み込む。
駆逐艦は残り一体。
「まだまだあ!」
その一体を足で押さえつける。力の限り、全力で殴る。蹴る……。
そうしていると動かなくなり、爆発した。
「はあっ……はあ……」
残りの二体を見る。人型で、お面のようなもののをつけている敵が2体いた。
「ずいぶん余裕があるのね……。部下をやったんだけどなあ……。」
敵は黙っている。
「悪いけど……。ここで好きにはさせない。私の……怒りの捌け口となってもらう!」
-
「でやあああ!」
川の流れに流されないようにして砲撃を行う。何発か命中し、確実にダメージを与えていく。
「私の……大切な場所を襲った……罪は大きい!」
怒りが、憎しみが体を動かす。一回目の戦闘とは真逆だった。こちらも攻撃は受けていたがほとんど気にならない。実際、損害も軽微であった。
2体の内1体が後ろに下がる。みると損害が結構大きいようだった。足下がおぼついていない。
「ここは水上……魚雷使って見るか。」
艤装に収納された魚雷を取り出し、発射管に入れる。
ただ、相手も発射しようとしていた。
「先手必勝!」
足柄は魚雷を発射する。しかし、相手の発射もほぼ同時だった。
そして、同時に水柱が上がった。
視界が開ける。敵は、しばらくはそこに立っていた。しかし、すぐさま膝から崩れ、やがて爆発した。
-
「がはっ」
足柄もダメージは隠せなかった。もともと、今日は小破した状態で出撃したのだ。今は中破状態。魚雷発射管は壊れており、修理しないと使えそうにない。
「はあはあ……まて。」
視界の片隅に先ほど退去していた最後の敵が映る。下流に向かって逃げていた。しかし、川での移動に慣れていないようであった。
足柄は後を追いかける。対照的に、障害物や流れをものともせず進んでゆき、距離を急速に詰めた。
そして追いついた。
「捕まえた……」
敵の頭を掴むと、大岩に叩きつける。敵は苦し紛れに砲撃するが、あらぬ方向に飛んでいってしまった。
「地の利って知ってるかな……。私はここで何回も泳いだ。逃げられると思うな!」
足柄はまず砲撃を恐れた。だから、敵の腕を踏みつけ、足に力をこめる。鈍い音がして、腕はその機能を喪失した。敵は腕と砲を一体化させているので、これでは砲撃できない。
「グアアアア……」
山間でうめき声がこだまする。
しかし、足柄は攻撃を緩めなかった。
-
「へえ……あなたそんな声なんだ……。」
足柄は不気味な笑みを浮かべる。
「もっと……聞かせてもらってもいいかなあ……?」
敵は、痛みで悶絶していた。足柄は、次はもう片腕……と狙いを定める。腕を固定し、手刀、拳、蹴り、様々な方法で痛めつける。最後に片膝で全体重をかけると、嫌な音がした。
「ウグオオオ……」
その後の展開は見るに耐えないものだった。敵の両足を折り、完全に逃げられないようにした。両手両足を使えなくしたのである。何も知らない人が見たら、どちらが敵かわからなくなってしまっただろう。
最後の敵に追いついて、20分が経過した。
「なぜ砲撃をしないか。肉弾戦じゃないと気持ちが乗らないんだよ……。大切な人を奪われたり、大事な物を失った、人々の無念がなあ!」
足柄の顔は真剣なものであった。そして息も絶え絶えな敵に問いかけた。
「聞きたいことがある……お前らのバックにはどんな組織がいる?」
-
「……」
敵は黙ったままだ。
「黙ってちゃだめだなあ……。これまで肉弾戦だったけど、今度は砲撃もするよ……。」
右手の砲を敵に向ける。
「……」
足柄の脅迫にもかかわらず、敵は黙ったままだ。
「……ちっ!」
固い物が割れる音がした。足柄の拳が、敵の仮面を叩き割ったのだ。
「これで……話す気になったかなあ?」
仮面の下の顔は、人の女性の生気が失われたような、そんな顔だった。目は虚ろで、ひたすら虚空を見つめている。
「ワカッタ……。話ソウ……。」
弱々しい声ながら、敵は語り始めた。
「組織ノ名前ハ……イクス。五年前ニ世界ヲ変エタ……。」
「それは分かった。目的はなんだ。」
「目的ハ……幹部ノ人間ノ理想実現ダ。」
-
「理想の実現!はっ、あんたらそんなもののために人を殺戮するわけ?あきれたねえ……。そして、許せないなあ……。」
声に怒りがこもる。
「……」
敵は黙ってしまった。
「あと質問は一つだ。これに答えたら安らかに眠らせてやる。……北崎創一をなぜ狙っているんだ!」
「ソレハ……」
次の瞬間、信じられない言葉が飛び込んでくる。
「北崎創一ハ……私タチノ仲間ダカラダ……。」
「何だって……!」
にわかには信じがたい言葉だった。
話は続く。
「正確ニハ研究員ダ……。奴ハ私タチヲ裏切リ……逃走シタ……。ダガ、ワレワレノ研究ニ必要ダカラ捕マエロ……。私ニハコレダケシカ知ラナイ……」
「……」
衝撃の事実。あの、感じのいい青年がこれまでの惨事を引き起こした一因だったかもしれない……。そんな、嘘だ。
-
「私ハ……目ガ覚メタラコンナ体ニサレテタンダヨ!ソシテ脅サレタ……。任務ニ成功シナイト体ヲ元ニ戻サナイッテナア!」
「……」
「ダカラ助ケテクレ……助ケテクレヨオ!」
足柄の目の前にあるのは、ただひたすら命乞いをする「人間」であった。しかし、足柄も断固たる意志を持って答える。
「あなたにどんな事情があろうと……たとえ誰かに操られていたとしても……あなたの、あなた達の罪は許されない。ここで死んでもらう。」
「ソンナ!北崎創一ヲ信テイルノカ!」
「あなた一人の証言だけでは決められない……。まだ、彼を信じたいと思う。」
「ウワアアアア!嫌ダアアアアア!」
敵の様子が急変した。動けない体を必死に動かそうとする。そして、体中が盛り上がったかと思えば……そこで爆発した。
「なっ……」
爆発の衝撃から身構える。幸い、損傷はなかった。目をあけると、そこにはもう敵はいなかった。
「……」
足柄はとてつもない虚無感と罪悪感に襲われた。自分の行為は正しかったのか?敵は自爆だったのか?それとも、遠隔操作で爆破されたのか?
しかし、そんなことはもはやどうでも良かった。北崎創一が人類の敵かもしれない……。大き過ぎる、現実味を帯びた仮定が、足柄の心を締め付けていたのである。
-
足柄は河原まで渡った。そして、そこで艤装を外し寝転ぶ。空は青い。
「なんだか……疲れちゃったな……。」
情報を上手く整理できない。北崎が人類の敵とは到底信じられない。千夏は寝返りを打った。
「まあ……敵がでまかせで言ったんだ……そうさ、嘘さ……。」
とは言っても、先程の真剣な顔、そして死が近い状況を見ると嘘だとは思えない。でも、信じてやりたかったのだ。敵よりも、北崎創一という人間を。
心に切り替えのスイッチが入るのをずっと待った。それまでは、ただひたすら青い青い空を眺めていた。
「大丈夫かな……」
一方、創一は家で待機していた。言われた通り、家で待機している。
先程、何回か起こっていた爆発音のあと、単発的に鳴った爆発音がして、しばらくたつ。こうなってくると心配だ。
見に行こうか。でも、もし彼女がやられていたとすれば……。最悪の事態を想定してしまう。
「いけないな……信じないと。」
すると、小さな音が近づいて来るのが聞こえた。
-
「何だろう。」
創一は外へでて確認しようと試みた。何も見えないが、確かに音は近づいている。
「……飛行機?」
ぶうんという音が近づいて来る。虫の音とは違う。
「いや、戦闘機か?」
良く聞くと、飛行機の音とも違っている。
やがて、目に見えるくらい近くなった。ただ、大分近くなっても、小さいままだ。いや、元々小さいのだ。サイズはラジコンとあまり変わらない。形は高校時代の日本史で見たことがある戦闘機だった。
「な、なんだ……。」
すると、その戦闘機は家の中に入ってきて、創一の上で旋回を始めたのである。
「う、うわっ!」
思わずその場に転がっていた棒ではたき落とそうとする。しかし、戦闘機はいずれもかわしていく。まるで、虫のように。
また、そいつは一度も攻撃して来なかった。それは幸運だった。爆撃されては自分もこの家も一溜まりもない。
不思議なことはもう一度起こった。なんと、その戦闘機は跡形もなく消えてしまったのだ。
「な、なんだよもう……。」
-
すると、聞き慣れた声がした。
「北崎さーん!」
それは、由佳の声だった。外に出ると、もうそばにまできていた。こちらに走ってくる。
「はあっはあっはあっ……」
由佳はゆっくり息を調えた。
「良かったあ……もう、心配したんですよ……。二週間ぶりですかね……。」
自分の眠っていた時間をここで始めて知った。道理で泣き出しそうな顔をしているはずだ。
「由佳ちゃん……どうしてここが……。」
「加賀美さんが教えてくれたんです。」
「え。加賀美さんもここに来てるのか。」
見ると、向こうから歩いて来るのが見えた。
「良かった。お久しぶりです。お怪我はありませんか?」
加賀美の質問は淡々としたものだった。
「大丈夫だよ。」
「良かった……。」
顔には、ほんのり笑顔が浮かんでいた。
-
創一はあることに気づいた。
「あれ?涼子ちゃんは?」
「……」
しまった。と創一は思った。由佳の顔から笑顔が消える。
「ご、ごめん。」
「いや、大丈夫です。涼子ちゃんは生きてます。重体ですけど……。」
「そ、そうなんだ。」
「でも、私がふさぎ込んでいても何にもならないですから。涼子ちゃんの分まで、あなたを守ります。」
由佳は大丈夫そうだ。創一はほっとする。ただ、涼子が重体になったのは自分にも遠からず責任がある。完全にはほっとできない。
もう一つ気になることがあった。それは由佳も偶然思っていたようで、尋ねたのは彼女だった。
「そういえば加賀美さん……どうしてここに北崎さんがいると分かったんですか?」
再会の喜び、辛い現実、新たな疑念……様々な感情が渦巻いていた。
第十一話終了
-
第十一話終了です
ちょっと最後は駆け足になってしまいました
あとサブタイトルもあんま関係ない熟語でしたね……
これからも頑張ります
-
「さてと……」
足柄は起き上がった。気分が大分落ち着いてきた。
「切り替えないとね……。」
ゆっくりと体を起こす。すると、自分の艤装の服部分がかなりの損傷を受けていることに気づいた。
「あらやだ……。結構服破けているじゃない。はあ……やだやだ。」
元々着ていた服は艤装を装着した、家の近くに置いていた。
「まあ、見られない……かな。」
そういうと、前を腕で覆い、歩き始めた。
「あれ、知らない車……。っていうか、これ自衛隊所有のものなんじゃ……。」
千夏は着替えをすませていた。確かに、自分の車の隣に見知らぬ車が止まってある。
「まさか……」
家の前では、三人が何やら話をしているようだった。
-
千夏はなんとなく身を隠した。物陰に隠れ、様子を窺う。
「北崎君と……ああ、自衛隊の。隣は同僚かしら。」
由佳の隣の女性に注目する。どうやら、質問されているようだ。会話に耳を傾ける。
「教えてください。北崎さんの居場所がなぜ分かったんです?」
「……」
加賀美は黙ったままだ。
「俺も気になってたんだよ。救難信号はだせないし、そもそも連絡手段がない。あとをつけてでもなければ無理ですよ。まさか……発信機とか。」
「違います。」
そのことについてはきっぱりと否定した。
「じゃあ、どうやったんです。」
由佳が突き詰める。
「ごめんなさい。今は、話せないの。」
今は?創一はこの言葉に引っ掛かりを感じた。なら、彼女は秘密を持っていることになる。
-
「そういえばさ……。さっき小さな戦闘機が飛んできたんだ。俺に攻撃しなかったんだけど……。もしかしたら、あれ、加賀美さんが……。」
この時点で創一は空母の存在を知らなかった。ただ、戦闘機を使い自分を探知したのなら説明がつく。
「まさか、私にそんな能力はありません。……いや、艤装を身につければできますけどね。」
「え、加賀美さん。艤装手に入れたんですか。」
「はい、赤城というんですが。でも、こっちに来るまで艤装は身につけていません。」
「そうですか……。」
謎は解明しなかった。仕方ないな、といった感じで話の流れは変わる。
「そうだ。すっかり忘れていた……。何があったんです?」
由佳は話を切り出す。一番重要なはずだが、創一が予想以上に元気だったのでつい忘れていた。
-
「うん……」
創一は記憶の糸を手繰りはじめた。
「二週間前……になるんだっけ。逃げていると迷ってしまったんだ。そこで、パトカー……だったかな。見つけたんだけど、そこで気を失って……目が覚めたらこことは別の、牢屋みたいな場所だったんだ。そこで、また気を失って……気がついたら、ここだったという訳。」
「なるほど……牢屋みたいな場所……ですか?」
「うん。何か男の人がいて、俺が必要だったみたいなんだ。それで、俺を連れ去ったらしい。」
「では、ここは誰の家なんです?」
「私の祖父よ。」
物陰から千夏が出てきた。
「あなたは……確か警視庁の。」
「あ……私、辞職したんだよね……。」
「そ、そうなんですか。」
「いや、いいわ。……彼は道に倒れていてね。私が救助したの。」
-
「そういえば……」
加賀美は口を開いた。
「先ほど、爆発音がしたような気がします。何かあったんでしょうか。」
淡々と質問をする。
「……何のことかしら。」
千夏はそう言ってごまかす。ちらりと創一をみた。言わないで。そう目が語っていた。
「……まあ、いいでしょう。多分、猟銃かなにかの聞き間違いでしょうから。」
加賀美は改まって創一の方を向いた。
「北崎さん。隊長に連絡を入れましょう。みんな、心配していますよ。」
「そ、そうですね……。すっかり忘れていました。」
由佳はバッグから通信機器を取り出した。山間だが、電波は通じるらしい。
-
「……五味か、どうした?」
機器に裕樹の顔が映し出される。
「北崎さんを発見しました!」
「なんだって!?」
裕樹の顔が、驚き、安堵、喜び……そういった感情でいっぱいになった。
「よ、よう裕樹……。」
照れくさそうに、創一は由佳と交代した。
「創一……創一なんだな!良かった……心配したんだぞ……。」
「ごめん。」
「まあいい……。早く帰ってこいよ。みんな、お前の料理が食べたくてたまらないんだ。」
「そうだな……。」
創一は何か引っ掛かりを感じていた。このまま、基地に戻ってもいいのだろうか?
創一が感じていた疑問。それは、千夏が艦娘システムを手に入れた経緯である。
自衛隊経由でないとしたら、どうやって手に入れたのだろうか?
この疑問が、大きな謎を解き明かす第一歩となる予感を抱えていたのである。
-
ただ、周りの人に大きな心配をかけたのも事実だった。
「裕樹、すまなかった。すぐに帰るよ。」
「ああ……。待ってるぞ。」
「ただ、今から帰ると夜中にそっちにつくことになっちゃうな……。」
「いいよ。あと一晩泊まっても。」
千夏が提案する。
「あなたは?」
裕樹は千夏について知らなかった。
「はじめまして。私、芦川千夏です。彼を保護しました。」
「そうですか。いや、ウチの創一が迷惑を……。ありがとうございました。」
「いえいえ、私の家なら4人は十分泊まれますから……。ご心配なく。」
「何から何まですいません……。創一、話は後で聞く。芦川さんに迷惑をかけるなよ。」
「わかってるって……。」
「じゃあな。」
通信はそこで途絶えた。
-
「すいません……成り行きでこうなっちゃって……。」
「いや、のんびりしていってよ。部屋も四人分ある。」
「お邪魔します!」
由佳が大きな声を上げた。みんな、様々な疑念を抱いていたが、ひとまず心の中にしまっておいた。
その後、創一が夕食を作った。材料は釣った魚。塩をつけて焼いた。
「おいしい。」
塩が魚の素朴な味を引き立てる。海沿いに住んでいると、まず味わえないだろう。
「どんどんあるよ。」
4人は舌鼓を打った。
やがて夜になり、創一は布団の上で横になった。当然だが、一部屋にひとりだ。風呂上がりでまだ体が火照っている。
「これからどうなっていくのかねえ……。」
色々な考えが浮かぶ。しかし、疲れていたので、すぐに眠りに落ちてしまった。
夜中の2時。家の外に出る人影があった。満点の星空が上空に広がるのを眺めている。
-
「どこへ行くのかしら?」
千夏が家の壁に身体をもたげ、腕を組んで立っていた。
「私に用があって来たんでしょう。……加賀美さん。」
人影は加賀美だった。
「……聞きたいことがあります。」
「奇遇だなあ……。私も同じなんだ。」
千夏は艤装が入ったバッグを持っている。
「いや、ここじゃまずい。少し、離れた所に行こう。」
2人は15分ほど歩き、広い河原にでた。
話を切り出したのは加賀美であった。
「私、知ってるんです。あなたのバッグに入っているのは艦娘システム……。昼間の爆発音は戦闘です。」
「……ばれたか。」
千夏は艤装を取り出した。
「あなたにはばれると思っていたよ。」
「私が聞きたいのは……あなたの目的と、あなたがそれをどこで手に入れたか……。この2つです。」
-
「ふうん……」
千夏は艤装を装着した。
「あなた、何を。」
「こっちも聞きたいことがあるんだよねえ……。どうやって北崎くんの位置が分かったのかなあ……?」
「それは……。」
加賀美は、うつむいたような表情をした。
「こっちは修復も済んでるよ。……さて、力ずくで、教えてもらおうかなっ!重巡足柄、出撃する!」
素早く加賀美の近くに踏み込み、殴りにかかる。加賀美は、素早く払い、すんでのところで交わした。
「一体何を……。戦っても意味はありません!」
「無意味なものなんてないよ。それが無意味とわかるならね……。安心してね。砲撃はしない。もとより撃っても聞かないからね。だから、肉弾戦だ!」
足柄は加賀美の腹部に蹴りを命中させた。
-
「ぐふっ……」
思わず腹を押さえる。思った以上の衝撃だった。
「この艤装、足柄っていうらしいんだけどさ……。造った人によると、陸上戦闘能力を強化したらしいんだよね。」
足柄はニヤリと笑う。じわりじわりと距離を詰めた。
「それも……知っています。」
「へえ……そこまで知っているんだ。なら、なぜ知ったのか、教えてもらおうかな!」
素早く加賀美のもとへ移動し、そこからパンチの連続となった。足柄は攻撃を続け、加賀美はかわし続ける。
しばらく経った。
「はあ……はあ……。」
どうやらスタミナが切れてきたようだ。加賀美は肩で息をする。
「もう、ばてたのか……。早いなあ。」
足柄がやれやれといった感じで言う。
「早く楽になりなよ。」
すると、加賀美の表情が変わった。覚悟を決めたような顔つきだ。
「仕方がないですね……。」
なんとか立ち上がり、深呼吸をする。顔を軽く叩いた。
「見せてあげますよ。とっておきを。」
-
すると、あたりに風が舞った。砂ぼこりを巻き上げ、足柄の視界を奪う。
「うっ……」
思わず顔を覆う。
「……いない?」
目を開けると加賀美はいなかった。視界も暗いからかどこにいるかわからない。
「ここよ。」
不意に背後から声がする。それは、まさしく加賀美の声であった。
足柄は思わず後ろを振り返りそうになる。
しかし、加賀美が先だった。
「……遅い。」
さっと足払いをかける。足柄はバランスを崩し転倒した。
「うわっ!」
加賀美の攻めは止まらない。足柄の上に乗りかかり動きを止めた。
「なんの……」
なんとか自由な両手を使って、状況を打破しようと試みる。しかし、加賀美はそれを見逃さなかった。腕をつかみ、地面へ押さえつけた。
「うぐう……」
懸命に跳ね上げようとする足柄。しかし、力はかなり強い。びくともしない。
「形勢逆転ですね。」
今度は加賀美が笑う所だった。足柄の顔を覗き込み、にっこりと笑った。
-
乾いた音がした。加賀美の平手打ちが、足柄の頬をとらえたのだ。
「これで、チャラにしておきます。」
そういうと足柄の艤装を外した。
「あなたには荷が重すぎるようね。……この艤装は私が預かっておきます。」
千夏の背中の隙間から艤装を引っ張り出す。千夏はそれをつかんだ。
「ま、まて……。」
「なぜです。これは民間人が手にしていい代物じゃない。特に、私のような非武装の人間を襲うような人にはね……。暴力は不問にしてあげますから。」
しかし、千夏は手を離さなかった。
「……しつこいですね。なぜそこまで拘り、なぜそこまで知りたがるんです。戦いは私たちに任せて、あなたは平和に生きればいい。それで、何も不自由はないはず……」
「うるさい!」
突然の大声に加賀美は驚いた。
「あなたに……いや、誰にも私の気持ちは分からない……。」
-
さげ
-
千夏の顔は強張っていた。よほど艤装への執着が強いらしい。心にあるのは辛い過去であった。
「あなた……何があったの。」
こうなると加賀美にも心配の気持ちが芽生えてくる。
「あまり言いたくはない……ただ、これだけは言える。自分の大切な人になってくれるかもしれない人がな……敵かもしれないんだよ!」
千夏に忌まわしい記憶が戻る。思わず吐き出してしまいそうだった。
「私は母を失った……。五年前にね……。あいつらを倒すこと、謎を解明することが私の使命だ!」
加賀美は黙ってそれを聞いていた。千夏の気持ちが痛い程伝わってくる。
「私は……私は……。」
そういうと千夏は倒れてしまった。昼の戦闘もあったからか、体力の限界だったのだ。
「仕方がないですね。」
加賀美は、千夏を背負い、家まで歩いていった。
「私にもね……言えない過去はあるの。」
誰も聞いていない。そんな状況で、一人呟いた。
-
朝が来た。
「ん……」
千夏が目を覚ますと、そこは自室の布団の上であった。
「ここは……。」
「気がつきましたか。」
「あんた……」
目の前には加賀美がいる。
「昨日、いきなり倒れたんですよ。あなたの攻撃、結構痛かったんですからね。」
「……。ああ、すまなかった。私も、つい……。」
「いいんですよ。」
加賀美は立ち上がった。
「ご飯の支度は済んでますよ。」
「ああ。」
部屋の片隅には、艤装が入ったケースが置いてあった。
「……」
4人は無言で箸を進める。緊張した空気が辺りに漂っていた。
「なあ、何かあったのかな。」
「さあ……。」
創一と由佳は二人でそっと呟いた。
-
次の瞬間、爆発音が響いた。
「な、何だ……またか?」
創一は思わず外に出る。黒い煙が上がっていた。
由佳がモニターをチェックする。
「反応があります!敵は……重巡が2、雷巡が2!」
距離もそこまで遠くはないらしい。
「……自衛隊が来るのは待てませんね。応戦します。」
加賀美は表にある車に走った。積んである「赤城」と「五月雨」を持ちだす。
「五味さん。これを。私が片付けますから。あなたは北崎さんの護衛をお願いします。」
「で、でも……」
「今度は、守りたいでしょう?」
そういうと加賀美は別室で艤装「赤城」を装備した。
また、千夏は部屋に戻った。置いてある艤装のケースを開ける。
そこにはメモが挟んであった。
-
「ん、なんだこれ……。」
メモを開く。
「この力は人を守るために使ってください。」
そう書かれてあった。
千夏は無言で紙を握りしめた。そして、素早く服を着替え、艤装を装備していく。
「よし、重巡足柄……出撃する!」
誰にも聞こえないように呟く。そして、玄関から飛び出した。
目の前に加賀美がいる。追いついたのだ。そして、昨日とは違う服装……艤装を装着している。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!えっと……加賀美さん。」
「……今は赤城です。」
赤城は足を止めた。
「今日の相手なら私一人でもいけますから。」
「いや、そういうわけにもいかない。……借りを返させてくれ。」
「いいでしょう。」
二人は敵の方向を見た。ギリギリ目視できるくらいまで近づいてきている。
「2体ずつでいいですか。」
「ああ。」
2人は気持ちを落ち着かせた。深呼吸をし、体の力を抜く。
「さて、出撃しますか。」
「ああ!」
2人は走りだした。
-
「さてと……」
由佳は艤装を装着し終えていた。
この人は私が守る。その考えが支配していた。別離の苦しみは、もう味わいたくはない。
もう、二度と離すものか。
「あれ……?そういえば芦川さんは?」
いつの間にか、姿が見えなくなってしまっていた。それに気がつかなかった。
「ああ……。」
創一は言いかけて口を紡ぐ。民間の艦娘。この事実を伝えていいのか?
「何か、隠しているんですか?」
創一はすぐに答えられなかった。言うべきか、言わざるべきか。
その刹那、爆発音が響いた。
「きゃっ!」
五月雨が驚きの声を上げる。
「……しまった。芦川さんが!」
ここにいない、そして、爆発に巻き込まれたとしたらー。最悪の事態を想定し、五月雨は青ざめた。
その様子を見ると、創一は黙っていられなくなった。やむを得ない。
「待って!大丈夫だよ。……彼女も艦娘だから。」
-
川の上では、戦闘が始まっていた。
今回、足柄が先日行ったような奇襲作戦は行わず、上流から普通に敵と交戦することにしたのである。
2人は、敵4体と対峙した。
「先手必勝ですね。」
赤城が艦載機を放つ。強烈な爆発が、相手を蹴散らしていった。
「あんた、すごいな!」
「話は後です。」
その後は応戦が続く。距離をとり、砲撃、爆撃など、様々な攻撃がなされる。
しかし、敵は4体。そのうち2体を倒したものの、決定打を与えることができない。
「くっ……どうすればいいんだ!」
足柄は険しい表情のなかつぶやく。
「……魚雷の準備を。」
「は、はあ?」
「私に考えがあります。」
赤城はそういうと、艦載機を敵に向けて飛ばした。しかし、その攻撃はいずれも命中しない。
「何をやって……」
半信半疑だが、信じるしかない。魚雷を発射管に詰めた。
-
すると、信じられないことが起こった。
敵の2体が衝突したのである。
「そうか、そういうことか。」
赤城は、最初から攻撃を目的としたわけではない。艦載機で敵を誘導し、衝突するように仕向けたのだ。
足柄は、間抜けだな、と思った。同時に、このチャンスを生かさなければという強い意志が生まれた。
赤城がこちらに目で合図を送る。
「これで、決める。」
正直、魚雷の発射は慣れていない。しかし、今回なら当たる気がした。いや、外れる気がしなかった。
魚雷は水中を進み、敵にまっすぐ進む。その速度は、冷静な判断力を失った敵から回避率を極限まで奪った。
やがて、敵2体がいた位置で、大きな水柱が上がった。そして、敵の反応は完全に消滅した。
-
「やった……。」
肩の力がつい抜ける。
赤城が駆け寄って来た。
「やりましたね。」
「ああ……これで、借りは返せたのかな。」
「ええ……」
二人は川岸まで上がった。時刻は10時。まだ、日は昇る。
「今日は早く帰れそうです。」
「そうだな。」
二人は、家へ戻って行った。
家に戻ると、由佳は信じられないような、落ち着かない様子だった。
「危険です!」
事情を説明するとこう言うのだった。
しかし、千夏も一歩も引かない。自分には使命があること。覚悟もあるのだということを伝えた。
こうなると、由佳も認めざるを得なかった。
そうこうしているうちに、出発の時間がやってきた。
「お世話になりました。」
創一は礼をいう。
ここで、創一の頭にひとつの考えが浮かんだ。
「そうだ……。芦川さんの持ってる艤装、誰が開発したかしりたいんです。会わせてくれませんか。」
「ええ。機会があったらね。」
「そうですか。良かった。」
加賀美が車のエンジンをかける。
「じゃあまた!」
車の姿がだんだんと遠くなる。そして、死角に入り、見えなくなった。
-
車の中は小刻みに揺れる。
「驚きましたね……。」
由佳が呟く。
「俺もだよ。……加賀美さん、あの人と何かあったんですか?なんだか、ピリピリしていたというか。」
「さあ……。」
加賀美はハンドルを握っている。
「秘密が多いんですね……。」
まだ、横須賀は遠い。創一は眠りについた。
千夏は、出発の準備を整えていた。
「もう、ここに帰ってくることはないかもね……」
艤装、服、日用品……そういった物を車に詰め込む。
「私は私なりに……真実を突き止めてみせる。……待っててね、母さん。」
車に、エンジンがかかる。そして、どこかへ走って行った。
第十二話終了
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第十二話終了です
マンネリ化してきましたね……ヤバいヤバい
そろそろ大きな動きを取り入れたいと思います
これからも頑張ります
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どこかの薄暗い部屋。
1人の男が、部下らしき人物と何か話している。
「それで、北崎創一の回収はまだなのか。」
男が静かに、強みを帯びた声で問いかける。
「申し訳ございません!周囲には艦娘がいまして……。」
「言い訳はいい。」
男は椅子から立ち上がった。
「我々の計画には奴が必要だ……。それにしても、艦娘のガードは、予想以上に固いようだな。それに……」
「そろそろ、奴は用済みになります。」
「そうだ。だが、まだ様子を見ることにしよう。殺すのは、その後でいい。」
部屋の中に、笑い声が響く。それは趣味の悪い、不気味な笑い声であった。
-
創一が基地に戻ってから、3日が経っていた。
「ふう……。」
創一は部屋の中でため息をつく。
とっくに食堂の営業は再会していた。今は朝食の片付けが終わって、小休止をとっているところだった。
思い起こすのは、3日前の裕樹の姿であった。
再会したとき、裕樹はぼろぼろと泣きだしたのである。
「お前、本当に創一か?」
「ああ、心配かけてすまない。ごめんな。」
「謝るのはこっちのほうだ……。俺の判断ミスだ。作戦ミスだ。お前を……危険な目にあわせてしまった。本当に、すまない。」
「いや、いいんだ。ミスは、誰にだってあるさ。気にするなって。」
「本当にすまない……。」
創一は気丈に振る舞ったが、それは効果がなかったようだ。
「俺は、守られてばかりなのか。」
一度、千夏に打ち明けた悩みが口から出た。
-
これは、誰にも言えない悩みであった。守ってくれているのにそんなことを言うのはわがままだからである。
1人で抱え込むしかなかった。
それに、今日裕樹は基地にいない。上層部から呼び出しがかかったとかで、朝から出かけている。
また、創一にはもう一つ気がかりなことがあった。
涼子の状態である。
二日前、医務室でベットに横たわる涼子を見た。
「涼子ちゃん……」
彼女はまだ意識が戻っていない。力無く横たわる涼子を見て、創一は強い無力感を抱いた。
「俺は……何もできない……。」
立ち尽くすしかなかった。大学合格を決めた年から12年が経っている。普通なら、医師として働いているころだ。
しかし、自分には医師免許がない。つまり、治療がしたくてもできないのである。
-
「くそっ……くそ……。」
唇を噛み、拳を握りしめる。痛みが伴うだけで、何も生まれはしない。
だが、ふと創一の脳裏にある考えが浮かんだ。
「俺の、医師になる、理由……。」
それは受験生時代、筆記試験よりも難しい問いであった。いまだ、答えはでていない。面接は誰もが言うような理由でごまかしたのだった。
だが、今なら。
守りたい人がいる今なら……。
しかし、はっきりとした答えは出なかった。
「……考え過ぎだな、俺……。」
部屋の中、一人大きく伸びをした。
「さて。」
部屋に置いてあるパソコンに向かう。
「やっと慣れてきたぞ……。」
元々パソコンはやるほうではない。その上、12年が経っていたのだ。情報技術の進歩はこんな惨状でも進んでいたようだ。慣れるまで相応の時間を要した。
-
教えてくれたのは軽巡「夕張」の適合者、長夕子だった。
「任せてください!」
彼女は面倒くさがらなかった。むしろ、嬉々として教えてくれた。
「大学では、パソコンを使いまくりましたからね。自信があるんです。」
そう夕子は満面の笑みで答えた。
「さて、もうちょっとだけど……今日はこれぐらいにしておこうかな。」
キリが悪い。そう思ったが、昼食の準備もある。重い腰を上げ、食堂に向かった。
一方、裕樹は会議に出席していた。
「……いまだ敵の目的、正体は不明。各国も、状況が打破できておらず……。」
出席者の一人が重い話をする。嫌いだ。裕樹はそう思った。ここで会議をしようと、何の解決にもならない。
-
「北崎!聞いているのかね!」
注意を受けてしまった。心のなかでも読まれたか。
「まったく……君が優秀だということは承知している。君を信頼しているがね。君は、全国民の期待、適合者の人権全てを背負っているんだ。それを忘れないでくれたまえ。」
だったらあんたがやってみろ……。口には出さないが、心の中で強く呟く。目の前にいる人間は、自分に非難や責任の嵐が襲いかかるのを恐れて逃げている者ばかりなのだ。
しかし、指揮権は譲らない。心の中に強く誓っていた。変わりの人間、後ろで俺の退任を待っている人間はたくさんある。
自分に負けるわけにはいかなかった。
「申し訳ございません。」
ここは謝っておく。悔しさをかみしめながら。
-
訂正
一行目
北崎→海田
センセンシャル!
-
「いや、いいんだ。顔を上げたまえ海田くん。それよりもだな……」
話は、予想外の展開を見せた。
「……君が保護している青年なんだがな。」
裕樹の顔がピクリと反応する。
「北崎創一が、何か。」
静かに、強い声で尋ねる。
「まだ彼の正体は掴めていないのかね。」
「ただの一般人です。それ以上でもそれ以外でもありません。」
「果たしてそうかな……?私達としては、ある仮定が立てられるのだか……。」
「と、いいますと?」
嫌な予感が一瞬した。そしてそれは、現実のものとなる。
「彼、北崎創一が、敵側の人間だということだよ。」
頭に、一筋の衝撃が走った。
-
「ははは……まさか……。」
悪い冗談だと思った。
「我々は冗談のつもりで言っているのではないよ。」
「ありえません。」
顔を引き締めてそう言った。
……しかし、その仮説はどこか納得のいくものだった。
まず、あいつを殺さないという敵側の行動である。仮に、あいつが敵の作戦に必要な人間だとしたら、もちろん、殺すわけにはいかない。
「彼は、そういう人間ではありません。」
自分は今、親友を疑おうとしている。その心理を捨て去りたかった。疑念に対し、少しでも隙を作った自分の精神を恥じた。
幸い、この仮説では説明がつかないところがある。彼の記憶と成長は18で止まっているのだ。ここに因果関係は見いだせない。
この仮説が完璧でないことが、裕樹の精神を安定したものにしていた。
-
「まず第一にですが……それは仮説でしょう。憶測の域をでません。」
「だがね……海田君。国家の身を守る身としてはだね、惨事を繰り返さないためにも先手を打っておく必要がある。彼が、例えば……、敵の司令部の一員だったりしたらだ。情報はつつぬけだ。被害は大きくなるだろう。」
もっともな意見で、反論の余地はない。裕樹は唾を飲み込む。
「君の……個人的な心情で国家を危機にさらすのはいかないのだよ。最近、君の戦績は悪いが、これももしかすると……。」
「やめてください。悪い冗談は。」
目の前をじっと見る。
「さっきも言った通り、確信が持てません。私としては様子を見るべきです。彼は、一般人です。守る義務があります。」
「もし、それで敵だと分かってしまったなら?」
「その時は……」
心の中で、大きな決意を固める。
「その時は私が彼を止めます。」
-
会議が終わった。
「ふう……。」
裕樹の胸には、未だはれない、もやもやとしたものがあった。
「隊長。」
加賀美の声だった。
「お迎えにあがりました。」
「ああ、ありがとう。」
二人は車に乗り込む。加賀美がエンジンをかけた。周りの景色が動いてゆく。
「元気がないですね。……何かありましたか。」
「いや……。何にもない。」
裕樹は、ただ景色の移りゆきを眺めている。
「そうですか。私の思いすぎですね。」
もうこれ以上、詮索しないようだった。そのことが、裕樹にとって幸いであった。あの「仮説」は、少し周りには過激すぎる。
自分で、背負うしかない。
「さあ、帰って演習だ。演習。」
車は、一段とスピードを速めた。
-
11時、食堂。
「へくしっ!」
くしゃみの音が食堂中に響く。くしゃみをしたのは創一だった。
「大丈夫ですか?」
由佳が心配そうに尋ねる。
「いや、体は大丈夫なんだけど……。誰か噂でもしてるんじゃないかな。」
「そんな古典的な……。」
「まあ、準備中の食材にかからなくて良かった良かった。」
作業を再開する創一。二人はいつもの通り、昼食の準備をしていたのだった。今日のメニューは五目チャーハンだ。
ただ、創一は嫌な予感を振り払えなかった。悪寒が、そっと創一の背中を撫でた。創一にとって、何でもないのにくしゃみがでるのは、一種の警告装置だったのである。
「なんだろうな……。」
ぶつぶつ呟きながら、手を動かしてゆく。なんとか作業に意識を集中させ、平静を保った。
-
「さてと……」
創一は部屋に戻ってきて、何気なしにベッドに座った。
今日は、予定がない。
このまま少し横になって夕飯の準備に備えても良かった。しかし、それではどこか味気ない。
「何かないかな……っと。」
部屋を見渡す。いつもの通り殺風景で、暇を潰すようなものはないように思える。
しかし、今は違った。
部屋の片隅にあるそれを拾い上げる。思わず笑みがこぼれた。
「へへ……これがあるんだよね。グローブ!」
グローブには準硬式球が挟み込まれてあった。
この基地にはグラウンドがある。訓練に使う為のものだ。
-
「よし、ここなら……」
当然ながら、野球場のような感じになっているのではない。しかし、そこにはコンクリート製の壁があった。高さは3メートルくらいあり、多少の暴投では越えていかないだろう。
創一は肩をほぐした。何しろ久しぶりだから、体がうずうずしてくる。
壁に、真っ直ぐ向かった。
「おりゃっ!」
軽めにボールを投げた。放たれたボールは山なりで、壁に当たった時に準硬式球特有の音がした。
気分が、高揚してくる。自分は、どうやらまだ野球が好きだったらしい。
そのまま肩慣らしに20球投げた。肩が、暖まってくる。
「おし……」
一度間を置く。そして足元にマウンドプレートがあると仮定した。足を乗せる。……頭の中のサインは、ど真ん中直球。
振りかぶり、投げた。
-
先ほどよりも大きな音がした。久しぶりに投げたし、マウンドはない。全盛期の球に比べ、球速は二、三割減と言った所だ。
ただ、創一は心地よい満足感を得た。謎だらけの日々にスパイスを加えたような感じがした。
すると、拍手がした。
「ん、誰?」
振り向くと鵜川良美がいた。艦娘システム「長良」の適合者である。創一を救出した、命の恩人と言ってもいい人物だ。
脇に、グローブを抱えている。左利き様の、黒いグローブだ。
「良美ちゃんか……。」
「いい球投げますねえ。」
良美は快活に答える。
「壁当てだけだと寂しくありませんか?キャッチボール、相手しますよ。私、女子野球やっていたので、自信あるんです。」
「本当に?助かるよ。」
こうして、二人のキャッチボールが始まった。
-
2人の間は約15メートル。その間をボールが往復する。様子見も兼ねて、スピードはそれほど速くない。
15球くらい投げて、良美が口を開いた。
「ポジションはどこだったんですか?」
「ピッチャーだよ。」
創一としてはありがたかった。話の切り出すタイミングがいまいち分からなかったのだ。
「どうりで……いい球投げるわけですね。スピンも綺麗です。」
そう言って良美は投げる。創一に引けを取らない。左投げであることも手伝ってか、速い。
「ははは……ありがとう。でもね……俺レギュラーじゃなかったんだよね。」
「そうだったんですか?もったいないなあ……。」
「もっとうまいピッチャーが周りにいたしね。それに、俺の防御率……5.89だよ?練習試合で。バッティングもそれほどよくなかったし……。結局、公式戦出場ゼロ。」
あまり思い出したくない記憶だった。心の中に暗雲が広がる。
-
「そうだったんですか……。すいません。悪い記憶を思い出させちゃって。」
「いや、いいんだ。」
ボールを投げ返す。肩に力が入り、良美の足下でショートバウンドした。彼女はそれを難なく受けた。
「良美ちゃんは……どうなの?キャッチボールやってるけど、さっきからうまいじゃん。どこかでやってたの?」
「はい。やってましたよ。小さい頃から、大学までずっと……。」
「へえ……通りで上手いわけだ。」
「ですがね……あの五年前で、うちの大学の女子野球部は廃部に追い込まれたんです。」
「えっ……。」
五年前。それは化け物が世界を襲った日だ。当然といえば当然だが……、スポーツにまで影を落としていたのだ。
「もっともうちだけじゃないんですがね……。高校野球も甲子園球場は使えなくなりましたし、予選出場校も減りました。大学野球も同様です。プロ野球も、沿岸沿いの球場は使えなくなりましたしね……。」
部屋にテレビはない。だから、知り得なかった情報が頭に入ってくる。
-
話は続く。2人の肩は大分暖まってきた。
「私、後悔してるんですよね……。野球をもっと真剣にやれたんじゃないかって……。野球部にいたら野球が目の前にあるのが普通で。大切なことって、どうして気づかないんだろう……。」
創一は黙ってボールを受けていた。
「化け物との戦いは、私にとっては復讐です。でも、もしかしたら……もしかしたら、私の身勝手な八つ当たりかもしれません。戦う理由……ですね。」
創一は話を聞き終えた後、少し考えた。そして、何もいわずに座った。キャッチャーの構えだ。
「え……」
「投げてきなよ。全力で。」
「でも……」
「大丈夫。キャッチャーなら守ったことあるから。専用のミットじゃないけど、それでも受ける。さあ、来い!」
グラブを叩き構えた。コースは真ん中。球種がなんだろうが、スピードがいくら速かろうが、捕る。
「わかりました。」
良美は投球に入る。ワインドアップのフォームは余計な力が入っておらず、綺麗で、理想的で、美しかった。
スピンがかかったボールがグラブに収まる。創一はそれをしっかりと確実に受け止めた。
-
「ナイスボール!」
ボールを返し、グラブを叩く。
「さあ、どんどん行こう!なんなら、ストレート以外でもいいよ!」
すると、良美にも笑みがこぼれた。
「よーし!」
その後、30球くらい投げこんだ。球種はストレートのほか、カーブ、フォーク、スライダー、シュートと多彩だった。だが、良美を驚かせたのは、創一が一回たりともこぼさなかったことだ。ノーサインだったにもかかわらずである。
「すごいですね……。」
「ははは、まぐれまぐれ。とれてよかったよ。すっきりしたでしょ。」
「はい!」
「じゃあ……最後に……。」
創一は軽く息を吸いこむ。
「ありがとうございましたっ!」
大きな声だった。良美は突然の出来事にびっくりした。創一はニヤリとした。してやったりな表情だった。
「ありがとうございましたっ!」
良美もまけじと返した。そして、顔を向かい合わせ、笑った。
「やっぱりこれがないとね……。」
キャッチボールが終わった。
-
「あのさ……」
グラウンドを整地しながら創一は言った。
「誰しも、後悔はすると思うんだよね……。俺も同じ……。思いつめても仕方がないし、毎日を全力で生きていくしかないんじゃないかな。時間は巻き戻せないからね。」
「……」
「ご、ごめん偉そうなこと言っちゃって……。」
「いえ、いいんです。……気持ちが楽になりました。ありがとうございました。」
「そう、良かった。」
すると、グラウンドの反対側から声が聞こえた。
由佳の声だ。
「北崎さあ〜ん!夕飯の準備の時間ですよ〜!」
キャッチボールに熱中していて、時間の経過に意識が回らなかったらしい。
「はっ、そうか!ごめん、俺は厨房にいくから!また、キャッチボールやろう、それじゃ!」
「はい!」
創一は食堂に向かって走っていく。それをじっと眺めていた良美。
「不思議な人……。でも、面白い、うん、いい人だな。」
そう言ってグラブを握りしめた。
-
コツ、コツ、コツ……。
旧横須賀医科大学跡には地下室が残されていた。どうやら、攻撃の被害を免れたらしい。人はいないが、資料やデータが書かれた用紙が積み上げられていた。
その中を探索していたのが千夏であった。
「何かある……北崎創一に関するデータが……。」
敵の一味であることを信じられなかった千夏は、彼の秘密を探ろうとしたのだ。出身校にデータが紙の形で残されているかもしれない。
しかし、膨大な量であり、探し出すのは困難に近い。
「ちょっと……休憩かな」
瓦礫を片付けた上、地下室は予想外に広く、疲れが溜まっていた。その場にそっと腰をおろす。
すると、あることに気がついた。壁にもたれた際、音がおかしかった。叩いてみると、周りと音が違う。
「まさか。」
バックから艤装を取り出す。
-
悲しいなぁ
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壁を、砲撃で吹き飛ばす。衝撃音に、舞い散る粉塵。
「ふう……」
艤装をリュックサックにしまう。
「ちょっと手荒いけど、仕方ないよね。」
視界が晴れてくる。
「……これは」
目の前には、隠し通路があった。
「ビンゴ……かな。」
千夏は、その中へと足を踏み入れていった。
どれくらい経ったろうか。
「行き止まりか。……あれ?これ……」
そこにはロッカーがあった。
「……鍵がかかってない。」
少し、緊張がはしる。警戒しながら、そっと扉を開ける。
「パソコン?……予備電源が走ってある。」
電源を入れると起動した。
「パスワードもない……ザルすぎないかしら。」
引っかかる物を感じながら、メイン画面を開く。
デスクトップには一つのファイルだけが入っていた。
「何かしら。……え。」
北崎創一。そこにはそう書かれてあった。
第十三話終了
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更新に大幅な遅れをとってしまいました……13話が終了です。
誰が見ていてくださるかわかりませんが、ぼそぼそと続けていきたいです。
よろしくお願いします。
言い遅れましたが、この作品は艦隊これくしょんの二次創作であり、実在の人物、企業、団体、事件等とは無関係です。
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復活ウレシイ・・・ウレシイ・・・
これからも頼むで
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嫌な、夢を見ていた気がする。
「うーん……」
創一は起き上がった。外はまだ暗い。
「またか……」
このところこればかりだ。うなされて起きるが、幸か不幸か、夢の記憶が全くない。ただ、嫌な感じだけが心の中に残る。体中、びっしり汗をかいて。
「まずいな……今日は、作戦決行の日だというのに。」
縁起が悪い。そう思いながら、洗面台に向かう。寝直せる自信がなかった。そこで、少しでも嫌な感覚を振り払うためにも、何時もより強く顔をこすった。
「何もない。何もない。」
確かめるようにつぶやく。嫌な予感が現実とならないよう、祈るばかりだった。
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食事を用意する時間になった。結局、あれから一睡もしていない。
「ちょっと眠たいな……。」
だが、休む訳には行かない。いつも通り、食堂に向かった。
廊下で、由佳に出会った。
「あっ、北崎さん!おはようございます!」
「おはよう。」
由佳の声は明るかった。「あれ、北崎さん、少し顔色が悪いですよ……?」
「ははは……少し眠れなかったんだ。……由佳ちゃんは気合いが入ってるね。」
「そりゃあ、今日は作戦決行の日ですから。」
「ふうん……」
創一の頭に1つ、意地悪な質問が浮かんだ。
「由佳ちゃん、君は俺の護衛ずっとやってるわけじゃん。……なんか、悔しくないの?」
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由佳は返答に困った顔をしている。しまった。創一はそう思った。しかし、時既に遅し……そんな感じがした。
「それって、どういう……」
「まあ、なんというか……自分が必要とされてないと感じるというか、他人に嫉妬したりする事はないの?」
言う必要の無いことを口走ってしまう。止められなかった。
「いや、そんなことは無いですけど……。誰かの役に立てるのなら、私はそれで嬉しいですから。」
創一はそれを聞いて、言い表せない感情にかられた。
「そうか。うらやましいよ。君が。」
そう答えるのが精一杯だった。彼女との考えとはかなりの相違点があるに違いなかった。
「ごめん。こんな事聞いちゃって……。どうやら俺、疲れてるみたいだ。本当にごめん。」
「いえ……」
2人の間にわだかまりが残った。いつもより重い足取りで、食堂に向かった。
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裕樹が食堂に入ったのは、七時半頃だった。どうやら裕樹もあまりねむれていなかったようだ。作戦を控え落ち着かなかったというのもある。しかし……
「やあ、裕樹、おはよう。」
創一のことである。
敵かもしれない……。会議で言われたことがずっと脳裏に引っかかっていた。
「ん、どうかしたのか?」
心配そうに創一が尋ねる。
「いや、なんでもない……」
出された朝食を受け取り、席に座った。食欲は普通だった。しかし、味が違うような気がした。
「なあ、味付け、変えたか?」
「いや、いつもと同じ。」
「そうか……。」
自分は、親友を疑っているのだろうか。信じるのが親友じゃないのか。罪悪感と情けなさが心を締め付けた。
「ご馳走さん……」
なんとか完食した。今日は作戦だ。なんとか気持ちを切り替えなければ。そう思って、食堂を後にした。
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悲しいなぁ
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悲しいなぁ
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2015年には続編が投稿されますように
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悲しいなぁ
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追いついた
某ReBurstみたいですね…
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まーだ時間かかりそうですかねぇ?
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待たなきゃ
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悲しいなぁ
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アニメより出来はいいと思うから頑張ってくれよな〜頼むよ〜
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こんなところでアニメ叩いても誰も称賛しないぞ
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http://www.nicovideo.jp/watch/sm27007374
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