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( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ 第三部

1 ◆MgfCBKfMmo :2016/06/10(金) 21:01:44 ID:U0jBOVFc0
第二部までのお話はBoon Roman様に収録されています。
http://boonmtmt.sakura.ne.jp/matome/sakuhin/tender/
(リンク先:boon Roman)

780 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:29:13 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「中継地はわかりますか」

ζ(゚ー゚*ζ「出発からはまだ日は経ってない。テーベとの境界沿いにあるスィオネまでは野宿の予定だったわ。
       あとは、そこから東に通ってカルデア。あとは川沿いに行けばイオの峰に辿り着くはず」

( ,,^Д^)「結構憶えているじゃないですか」

ζ(゚ー゚*ζ「思い出しているのよ。協力したいもの」

('A`)「……」

タカラの畳みかけるような問いに、デレはそつなく答えている。
初めから、問い掛けられることがわかっていたかのようだ。

781 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:29:45 ID:kt9Y/rdc0
ラスティアにいた頃のデレは、どうだっただろう。
たった一人で魔王に立ち向かおうとした胆力は確かなものだ。
そう考えると、今の強気な態度もあり得ない話じゃない。

( ,,^Д^)「ふーん、結構しっかりしてるんですね」

ζ(^ー^ζ「ありがと」

( ,,^Д^)「どうします? ドクオさん」

タカラが肩を竦めて言う。若干顔を青くしていた。

('A`)「このまま待っていれば、いずれシナーの援護部隊が来る。
    そうすればいずれにしろ探索は終わり。デレも、テーベに来ることになるだろう」

782 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:30:17 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「捕虜になるのかな」

('A`)「一般市民と同じ扱い、にはならないだろう。元王女だ。
    ラスティア国陥落の経緯についての証人でもある。
    やりようによっては、あんたを発端に合法的な戦闘行為も行えるだろう」

( ,,^Д^)「戦争になるんですか」

('A`)「可能性の話だよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……不思議」

('A`)「何が」

ζ(゚ー゚*ζ「まるでテーベに行って欲しくない、みたいな言い方だから」

783 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:31:09 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「……」

( ,,^Д^)「ドクオさん?」

('A`)「もうひとつ、案がある」

ドクオは居住まいを正すと、タカラとデレを交互に見た。

('A`)「シナーがくるまでの間に、ここからいなくなる。
    そして、デレを置いていったマルティアの連中を追いかける」

ドクオの言葉はしばらく洞穴の間を漂った。

784 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:31:53 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「引き渡すんですか、この人を」

('A`)「……ただとは言わない」

( ,,^Д^)「それって」

ζ(゚ー゚*ζ「私を人質にするってことね」

言葉を切って入ってきたデレが、ドクオをじっと見据えた。
柔和な笑みを崩さないまま、瞳が突き刺してくるようだった。

785 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:32:21 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「率直に言えば、そのとおりだ。
    あんたが本当にただの一般市民で、大して重要でも無いならば
    無視されてしまうかもしれないがな」

ζ(゚ー゚*ζ「……私が言うのもなんだけど」

ζ(-ー-*ζ「効果はあると思う。
        実験は秘密。多少なり触れている私を、容易くテーベには渡したくないはず」

( ,,^Д^)「決まりっすね」

('A`)「ああ、早いところ中継地とやらに」

786 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:33:08 ID:kt9Y/rdc0
言い終わる前に、

ζ(゚ー゚*ζ「ふふ……」

デレが笑い声をたてた。
押し殺すようだったそれが、次第に熱を帯び、大きくなっていく。

('A`)「なんだ、いきなり」

苛立ちを隠しもせず、ドクオは顔を顰めた。

ζ(゚ー゚*ζ「因果かなって」

('A`)「ん?」

ζ(゚ー゚*ζ「私を引き渡す、代わりに情報を得る。それは、いい考えよ。
       でも、それが素直にできるかどうかはわからないと思う」

787 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:33:32 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「特に、あなたならば」

含みのある言葉に、ドクオはますます首を傾げた。

('A`)「はっきり言えよ」

声が若干荒くなる。

ζ(゚ー゚*ζ「……私、まだまだ信頼されていないのよ」

デレがタカラを一瞥する。
身を竦ませるタカラをよそに、デレは話を続けた。

788 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:34:34 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「一般市民といっても、元敵国の王女だもの。
       自由に暮らせるのも街の中だけ。他の場所に勝手に行くことはできない。
       仕事も、見つけるのは一苦労だった。少しでも他国に干渉することは許されなかったから」

ζ(゚ー゚*ζ「この実験に参加できるかどうかも、賭だった。途中で国外に出るからね。
       結果としては参加できた。でも、それには条件がついた。明言されたわけじゃないけど。
       私が本当に、マルティアに逆らう意志がないかどうか、示すことが、求められていたわ」

わけもなく、胸の締め付けられるような痛みがあった。
デレの微笑みをみているうちに、自然と追い詰められているような気がした。
生唾を飲み込んだ音が、耳の奥で深いに響く。

789 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:34:59 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「どうやって示すんだ」

問い掛けると、一段と、デレの口が大きく歪んだ。

ζ(゚ー゚*ζ「薄々気づいているんじゃなくて?」

思い出せることは少ない。
昨日の記憶。冴えた夜の、冷たい霧のこと。

('A`)「霧……」

790 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:35:24 ID:kt9Y/rdc0
呟いて、途端に、気づいた。
あのとき抱いた気持ち。感触。

(;'A`)「まさか」

ドクオの声に、デレは大きく頷いた。

ζ(゚ー゚*ζ「私を運んでいたのはマルティアの将校。バルケンという鼠の魔人。
       霧を操る、ふしぎなちからの遣い手よ」

791 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:35:44 ID:kt9Y/rdc0
そして。
デレの言葉が続く。

ζ(゚ー゚*ζ「モララーさんを殺した人よ」

息をのむドクオの音が、不自然なほど大きく響いた。



     ☆     ☆     ☆

792 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:36:12 ID:kt9Y/rdc0
ドクオたちは、マルティア人が目指した中継地へ向けて歩き出した。
日は既に高く昇っていたが、その光量は弱い。
空はむしろ厚い雲に覆われつつあった。

吹雪を警戒したドクオたちは、元の洞穴への道を把握しつつ
新たに野営できそうな場所を見つけると、簡易な地図を作り、マークを欠かさなかった。

ヘゲモネのさらに北東。山道はさらに険しくなる。
草木も少ない岩山には何度も足を取られそうになった。

( ,,^Д^)「途中で休んだ方が良さそうですね」

全体の様子を眺め、タカラがアドバイスした。

793 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:36:51 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「次に手頃な場所を見つけたら、そこにテントを張るか」

( ,,^Д^)「その前に良い場所を知ってますよ。俺が昨晩泊まったところです」

('A`)「そういや国境沿いだったな」

( ,,^Д^)「もうちょっと東の山沿いですね。どうでしょ」

タカラが流し目をデレに向けた。
青い顔をして、胸元を押さえている。

794 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:37:21 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚;ζ「……あの、私は別に」

( ,,^Д^)「無理して倒れられたらその方が迷惑っすよ」

棘のある声で言うと、タカラはにやりと歯を見せた。
中継地を目指すことに同意したタカラだったが
内心ではデレへの疑いを無くしているわけでもないらしい。

最もそれが普通か、とドクオは内心首を横に振る。

795 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:37:46 ID:kt9Y/rdc0
気がついたらデレに寄り添う考え方になる。
自分と彼女が元々知り合いだから、仕方なしにしても
気の緩みを感じずにはいられなかった。

('A`)「その宿は近いか」

( ,,^Д^)「おそらく十分も歩けばつきます」

('A`)「なら、行こう」

796 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:38:15 ID:kt9Y/rdc0
結果として、その判断は正しかったといえる。
進行方向を変えた途端、空の雲はさらに厚くなり、濃さを増した。
景色の中に、雪片が景色にまぎれ始めた。
こうなってくると積もるのは時間の問題だ。

一行は転ばないよう注意しつつ、速度を上げた。

山際に光の明滅するのが見えた。
テーベの辺境防衛施設が発する信号だとドクオは推測する。

微かな赤い光は雪により途切れがちだ。
逆に言えば、今のような状態であれば、マルティア軍も国境を抜けやすくなるのだろう。

797 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:38:46 ID:kt9Y/rdc0
敵は霧を使う魔人だと、デレは言っていた。
だとすれば、この雪は自然現象だろう。
足を取られるのは敵も同じはずだ。
不測の雪に足止めを食らっているのだと、ドクオは信じたかった。

タカラを先頭に一行は進む。
地勢的に、山沿いにはいくつもの洞穴が見えた。
どの穴も、雪を凌ぐには申し分ない広さがある。

そのうちの、ひとつの前で、タカラは足を止めた。

798 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:39:25 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「ここです」

一見しただけでは、違いがわからない。
ごつごつした岩肌や、氷柱の張った天井も、他の洞穴と同じだ。
さらにいえば、目の前には壁が、すでに見えている。
他と比べたら遥かに狭く、入り口から雪がいくらか吹き込んでくるほどだった。

( ,,^Д^)「安心してください」

俺の顔を見て察したらしく、タカラは自ら前に出て壁に手を触れた。

( ,,^Д^)「俺もたまたま見つけたんです。この壁、押せるんですよ」

799 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:39:49 ID:kt9Y/rdc0
力を込める声とともに、壁だと思っていたものが音を立てる。
縦に切れ目が入った途端、両側の奥へと開かれる。
ちょうど二つの開き戸を押した形となった。

端には蝶番もついている。
人の手が加えられていることは明らかだ。

前方は暗い。だが、薄明かりとなる蝋燭が点々と壁に灯されている。

( ,,^Д^)「さ、行きましょう」

800 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:40:23 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「まだ歩くのか」

( ,,^Д^)「もう少しですよ」

ドクオは自然、柄に手をかけた。

(;,,^Д^)「ドクオさん?」

('A`)「すまんな、職業柄、警戒は怠れない」

タカラのことは信頼している。
しかし、今ここにいるタカラが信頼に足るかは、確証がない。

801 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:40:53 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「まず、名前をフルネームで言え」

( ,,^Д^)「タカラ・エルブシャフトです」

('A`)「俺の名前は」

( ,,^Д^)「ドクオ。姓は廃されてます」

('A`)「俺との関係は」

( ,,^Д^)「テーベの傭兵同士。初めて会ったのはメティス暴徒制圧のときです。
      ドクオさんの率いた傭兵部隊に俺が所属してました」

802 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:41:37 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「傭兵になった理由は」

( ,,^Д^)「生活資金を得るためです」

('A`)「傭兵になる前は何をしていた」

( ,,^Д^)「アイトネの麓で、鉱山夫相手に日雇いの手伝いをしていました」

('A`)「この作戦の目的は」

( ,,^Д^)「マルティアの越境行為の真偽を突き止めるため。
      また、その行為が何を企図したものなのかを探るため」

803 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:42:05 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「作戦の立案者」

( ,,^Д^)「シナー大尉」

('A`)「……ふむ」

ドクオは洞穴の奥に目を移した。
暗がりは不安を煽る。
だが、タカラは質問には即座に答えた。
疑いの余地はない。

( ,,^Д^)「もっと楽な方法がありますよ」

と、タカラが切り出して、腰元から銃をドクオ側へ放った。
甲高い音が洞穴の中で響き渡る。

804 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:42:32 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「俺の武器はそれだけです」

タカラは自らの手荷物を広げ、外套の内側も見せた。
ポケットの一つ一つ裏返し、何も入っていないことを示す。

( ,,^Д^)「というわけで、おれは丸腰です。
      これから先、俺が怪しいことをしていたら、
      すぐにその銃で俺を殺してください」

タカラの声もまた響き渡る。
力強いわけじゃない、むしろ淡々と、事実を述べる口調だった。

805 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:42:58 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚;ζ「いいの?」

疲れを露わにしていたデレが口を開いたのに、ドクオもタカラも目を見張った。
デレも口元を抑える。つい、言ってしまったかのような様子だった。

( ,,^Д^)「俺は失うものがありませんから」

タカラは一瞬うつむいて、デレに笑いかけた。
デレに向けていた冷たい目線が、このとき初めて解れた。

( ,,^Д^)「失うもののない俺みたいな人間は、なかなか信頼されません。
      俺からしてみれば、いくらでも裏切ることができるんですよ。
      いざというときの担保がないわけですからね」

806 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:43:24 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「だから、俺にとって信頼は命よりも大事なんです。
      俺が信頼できない人とは付き合わないし
      俺を信用しない人間にも近寄らない。
      そうやって、今まで生きてきたんです」

タカラは目を落とし、自嘲気味な微笑みを浮かべた。

( ,,^Д^)「あんたのことも、本当はよく知らないけれど
      俺が信頼しているドクオさんが、あんたを信じているらしいので
      ひとまず一緒にいます。武器も手放しました。
      他に、何か気になることはありますか」

807 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:43:57 ID:kt9Y/rdc0
怒りでも疑いでもなく、真意を知るために、
タカラはデレを睨んでいたのだと、ドクオにもようやくわかった。

ζ(゚ー゚;ζ「……今のところは」

デレは狼狽しながら、タカラから視線を逸らさなかった。
言葉の少ない威圧を感じてはいるはずだ。
それでも逃げず、堪えているようだった。

( ,,^Д^)「すみませんね、俺も軍人なんで」

タカラが頭を掻いて、デレに頭を下げた。
元の陽気な調子に、見た目では戻ったように思われる。

808 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:44:29 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「怖がらないでくださいよ〜、大丈夫です。
      もう睨んだりしないですから」

ζ(゚ー゚*ζ「そ、そう……」

引きつるデレを後ろにし、タカラは俺の方へと近寄ってきた。

( ,,^Д^)「その銃の使い方はわかりますね」

声を潜める。デレにも聞き取れないくらいの音量だ。
ドクオが頷くと、タカラは真顔になって頷いた。

809 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:45:17 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「その銃の意味も、わかりますね」

タカラは振り返らず、指だけを後ろに向ける。
デレを指しているのは明らかだ。

( ,,^Д^)「俺も警戒は続けます。でも、この場でのリーダーはあんたですよ、ドクオさん。
      絆されちゃだめっすよ。あの女、絶対何か隠してます」

('A`)「確証が?」

( ,,^Д^)「元より女は信用しない主義なんで」

810 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:45:48 ID:kt9Y/rdc0
言葉少なく言い終えると、タカラはドクオから離れ、自ら先に歩いて行った。

('A`)「……」

俺の心も見透かされているのだろう。
ドクオは内心ぞくりとする。

タカラのことは信頼している。
なぜならタカラが、誰のことも信頼していないからだ。
だからこそ、かつての自分を思い出してしまう。

誰も信頼できなかった頃の自分。

尤も、タカラがドクオに親しく接してくるのも
自分との共通項を感じとっているからなのかもしれなかった。

811 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:46:48 ID:kt9Y/rdc0
洞穴の入り口が遠くなるにつれ、前がぼんやりと明るくなってくる。
穴の深くに進むばかりかと思われたのだが、天蓋は案外近くで途切れていた。

白い地面。雪が積もっていた。
開けたそこは、山間の窪地だった。
中央には木造の小さな小屋があり、背の低い簡素な塀に囲われていた。

軒先に人影がある。

ハソ ゚-゚リ

髪を引っ詰めた少女だ。まだ若い。
十代、それも前半に見える。

812 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:47:25 ID:kt9Y/rdc0
自分よりは若いと見積もりつつ、
その生気のない顔に、ドクオは身体が強張るのを感じた。

( ,,^Д^)「待っててくれたんですか?」

タカラが小走りに距離を詰めていく。

ハソ ゚-゚リ「門の開く音がしたからね。
      あの人たちが、昨日タカラさんの話していたお連れさん?」

813 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:47:59 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「そうですそうです。人数増えてますけど、気にせずに。
      ここで暴れたりはしない人たちですよ。それは保証します」

タカラが捲し立てる。
笑いを取るには、やけに言葉が多い。
ドクオが不思議に思っているうちに、タカラは首を横に振った。

( ,,^Д^)「だから護身刀は要らないですよ、ナチさん」

タカラが掌で払いのける仕草をする。

ハソ ゚-゚リ「……バラしやがった」

814 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:48:35 ID:kt9Y/rdc0
ナチ、と呼ばれた少女は懐から小刀を取りだした。
弱々しい陽光の下でも、その刃の鋭いことがよくわかる。

('A`)「あの壁の仕掛けも護身のためか」

ハソ ゚-゚リ「そうだよ。ここ、誰にも奪われたくないから」

ナチは目を細め、辺りを眺め回した。
今は雪が降り積もっているが、目を凝らせば、畑の跡がある。

しかし、外れの方に目をやれば、草が方々に延びている。
管理が行き届いているとはとても言えないだろう。

815 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:49:40 ID:kt9Y/rdc0
人が多く住んでいるようにも見えない。
少女と、他にいても一人か二人。
自給自足のつましい生活を送っているらしかった。

ハソ ゚-゚リ「タカラさんは悪い人じゃないからいい。
      そっちの男の人、名前は」

('A`)「ドクオ」

ハソ ゚-゚リ「うん、わかった。襲ってきたら殺す。そっちの女の人は」

淡々と話していたナチの、言葉が途切れた。
これまで無表情だった彼女の顔に、はっきりと動揺が読み取れた。

816 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:50:11 ID:kt9Y/rdc0
ハソ;゚-゚リ「デレ……王女?」

ナチは声を震わせる。

ハソ;゚-゚リ「うそ……どうしてここに?」

ζ(゚ー゚*ζ「ご存じなのね」

ハソ;゚-゚リ「あの、私、元々ラスティアの人です。スィオネという街にいて、それで……」

ナチは慌てた様子で、タカラとドクオに視線を向けた。

ハソ;゚-゚リ「デレ王女を助けてくれたんですか?」

817 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:50:52 ID:kt9Y/rdc0
(;,,^Д^)「えっと、それは」

捕虜、人質、どれを言っても耳障りが悪い。
言い淀むタカラの代わりに、ドクオが咳払いをした。

('A`)「ごめんな、お嬢ちゃん。ナイショにしないといけないんだ。
    ここで見たってことも言わないように」

ドクオなりに言葉を選んだ。
ぎこちない口調に、タカラがこっそり噴き出しているのを、ドクオは睨み付けた。

('A`)「お前も易々と認めるなよ」

ζ(゚ー゚;ζ「それもそうね。うっかりしてた」

818 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:51:45 ID:kt9Y/rdc0
ハソ ゚-゚リ「……わかった。誰にも言わない。言いません」

ナチは俯き、それからドクオを呼びかけた。

ハソ;゚-゚リ「あの、つかぬことお伺いします。
      ドクオさんとデレさんはお知り合いなんですね」

('A`)「ん? まあ、そうだが」

ζ(゚ー゚*ζ「それなりに」

ドクオとデレは顔を見合わせ、ナチの言葉を待った。
目を瞬かせるナチは、「だったら」と前のめりになる。

819 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:52:21 ID:kt9Y/rdc0
ハソ ゚-゚リ「聞きたいことがあります」

ナチが胸を反らす。
肩幅に広げた脚が、微かに震えている。



ハソ ゚-゚リ「モララーさんはどうして死んだのですか」



ζ(゚ー゚;ζ「……え?」

('A`;)「なっ」

反射的に、ドクオは小屋に目を移した。
咄嗟の閃きに、考えるよりも先に身体が動いた。

820 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:53:29 ID:kt9Y/rdc0
軒の下に看板が掲げられている。


('A`)「嘘だろ?」

遠い昔、ただ一度だけ、
モララーから話を聞いたことがある。

彼はスィオネの外れにある養護施設で育てられたということ。
その施設こそが、彼のただ一つの、大切な故郷なのだということ。


     ☆     ☆     ☆

821 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:54:10 ID:kt9Y/rdc0


( ・∀・)「ハイジャ」


独特なアクセントを伴うその名前を、モララーは愛おしげに口にした。


( ・∀・)「母さんがどこからかもらった名前だよ。
      遠い昔の、東の大国の言葉だ」



彼が教えくれたのは、その名だけだった。



     ☆     ☆     ☆

822 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:55:26 ID:kt9Y/rdc0



┌─────
│hai zhe   
└─────


看板には漂う海月の絵が添えられている。

予想に、間違いはなかった。

('A`;)「ここが……」

廃れた小屋を前にして、ドクオは瞠目した。

823 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:55:49 ID:kt9Y/rdc0



('A`;)「モララーの、故郷?」


彼が護ると言っていた場所。



吹き荒ぶ吹雪が、一層勢いを強くした。




     ☆     ☆     ☆

824 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 22:56:56 ID:kt9Y/rdc0
.




第二十五話 届かざる哀哭(雪邂永訣編③) 終わり





第二十六話 目覚めたる悪魔(雪邂永訣編④)へ続く




.

825 ◆MgfCBKfMmo :2018/02/25(日) 23:00:39 ID:kt9Y/rdc0
本日の投下は以上となります。
当初の予定どおりなら、折り返しを過ぎました。
うっかり長くなってしまったこの物語に、ここまでおつきあいいただきありがとうございました。
お話はまだしばらく続きます。これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします。
それでは失礼いたします。

826 同志名無しさん :2018/02/26(月) 04:46:42 ID:QNcjdAnQ0


827 同志名無しさん :2018/02/26(月) 15:10:10 ID:6PLc9Noc0
乙乙
タカラいいキャラしてるわ

828 同志名無しさん :2018/02/26(月) 19:03:19 ID:6KrTCWgM0
本当に続きが気になる、乙

829 同志名無しさん :2018/02/26(月) 19:07:47 ID:ERWMSqtI0
これは……一番ダメージ受けるのはドクオかな……



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