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エレン「ミカサ、戦え」

1 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:36:58 e7Y5oq3M

※Production I.GといえばBlood+だろ

※というわけで進撃でBlood+をやってみる話
 もうあったらごめん

※話の都合上、黒化してるキャラもいる
 翼手の細かい設定とか少し違う


"
"
2 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:37:44 e7Y5oq3M
その日、人類は思い出した。

翼手に支配されていた恐怖を。

鳥籠の中に囚われていた、屈辱を――。


【845年】


パカラッパカラッパカラッ…

キース  「総員、戦闘用意!!!」バッ

団長の号令に、エルヴィンは顔を上げる。
地平線の向こう、まだ遠いが、黒い影がうごめいていた。

近づくごとに、影の形が明らかになる。鋭い牙にコウモリのような翼。
3メートルほどの大きさで、馬の足音を聞きつけた長い耳がぴくり、と動く。

キース  「目標、前方の3メートル級2体!翼手の中でも小柄な方だ、必ず仕留めろ!!」

モーゼス 「距離400!……行けます!」


3 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:38:19 e7Y5oq3M
ググ…

ズシンッ、ズシンッ

モーゼス 「っ、目標が走り出しました!!距離およそ250!縮まっています!!」

キース  「なんだと!?翼手は日光に弱いんじゃなかったのか!」

エルヴィン「滑空できないというだけで、動きが封じられるわけではありません!
      ……翼手は昼間でも、我々を殺せます!」

キース  「くっ…全員、立体起動に移れ!!我々の班が囮をつとめる、訓練通り5つに分かれて討伐しろ!!」

全員   「「「了解!!」」」バシュゥッ…

次々に飛び立っていく、調査兵団の兵士たち。
翼手はその大きな翼を広げて、彼らを叩き落とそうとした。

兵士A  「させるかっ!」ギュオオオ

飛び立った兵士たちはアンカーを撃ち出し、翼手の翼に突き刺して攻撃を避ける。

兵士B  「頭がガラ空きだぜ!!」

兵士C  「人類の力を……思い知れ!!!」

□□□□


4 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:39:12 e7Y5oq3M
??? 『早く帰ろうぜ、オレたちの家に』

??? 『な、ミカサ』

「――ミカサ」

ミカサ 「…………」

??? 「ミカサ!」

ミカサ 「……んっ…」パチッ

ゆっくりと目を開ける。肌に当たる草。やわらかい陽ざし。
そして――視界いっぱいの、あきれ顔。

??? 「さっさと起きろよ、日が暮れちまうぞ」

??? 「ったく…俺がせっせと薪拾いしてる間に、お前はグースカお昼寝か?」

ミカサ 「……?……あれ、ジャン?……縮んだ?」

ジャン 「は?……まだ寝ぼけてんのか?」

ミカサ 「ん……なんだか、すごく長い夢を見てたみたいな気がするけど……」ゴシゴシ

ジャン 「おい、ミカサ……お前、なんで泣いてんだ?」

ミカサ 「……え?」

ザアッ…


5 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:39:42 e7Y5oq3M
【846年】

トコトコ…

ミカサ 「ジャン。わたしが泣いてたってこと、おばさんには言わないでね。心配するから」

ジャン 「分かった、秘密な。その代わり…」

ミカサ 「チーズはあげない。パンならいいけど」

ジャン 「ハァ…翼手に喰われるより先に、お前の食費でウチが破産しちまうぜ」

並んで歩くわたしたちに、道の向こうから「おーい」と手を振る人がいた。

ハンネス「よお、二人とも元気してたか?」

ジャン 「おっさん!」

ミカサ 「ハンネスさん!」

ハンネス「わりいな、ここ最近全然構ってやれなくてよ。お、ミカサまた髪伸びたか?」ワシャワシャ

ミカサ 「やめて、髪の毛ぐしゃぐしゃになっちゃう」

ハンネス「ジャンはあいかわらず目つきが悪いなあ」ワシャワシャ

ジャン 「生まれつきだよ、ほっとけ!」


"
"
6 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:40:15 e7Y5oq3M
この人は、ハンネスさん。苗字は知らない。
ジャンのお母さんの友達で、時々家に来て晩ごはんにありつくおじさんだ。

ジャン 「おっさん、こんなとこで遊んでる場合かよ。壁の上にちゃんといろよ」

ハンネス「夜勤明けだ……ふああ、ねみぃ……」

ミカサ 「駐屯兵団はそんなに大変なの?」

ハンネス「あ?ああ、なんせ翼手の野郎は夜になると強くなっからな。壁の上で夜通しかがり火焚いて、
     固定砲の横で立体起動くっつけて待機だ。調査兵団が昼間のうちに数減らしても、
     毎日二、三匹は来やがる。やってらんねえぜ」

ジャン 「ケッ、駐屯兵団が一番の貧乏クジってだけの話じゃねーか。なあミカサ」

ミカサ 「うん……」

カンカンカン!!!

ハンネス「お、もうこんな時間か。んじゃ、俺はちょっくら引っかけてくっから、またな」ヒラヒラ

ミカサ (……そんなこと言って、お酒の匂いがしたことなんか、ないのに)

ジャン 「調査兵団が帰ってきたのか……ちょっと見てこうぜ、ミカサ」ガシッ

ミカサ 「毎日のことじゃない。それに、早く帰らないと」ズルズル


7 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:40:48 e7Y5oq3M
ささやかな抵抗もむなしく、ジャンはわたしを引きずって大通りに出た。
もうたくさんの人が集まって、英雄たちの凱旋を見守っている。

ガラガラガラ…ワイワイ

住民A 「来たぞ、調査兵団だ!」

兵士たち「「「……」」」

ミカサ 「!」

ジャン 「…ひでえな」

帰ってきた兵士たちは、ほとんどがケガをしていた。荷馬車に寝ている人もいる。
つまさき立ちで大人たちの後ろから覗きこむと、布をかぶせられた下に赤いきれいな石みたいなのが見えた。

ミカサ (あの人が団長?……すごく暗い顔)

住民B 「今日は運がよかったんだな、死体袋がないぜ」

住民C 「ああ…マリアがなくなる前は、ここももっと平和な街だったのになァ」

ミカサ 「……」

ジャン 「……帰ろうぜ」

ミカサ 「うん……」


8 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:41:29 e7Y5oq3M
【キルシュタイン家】

ガチャッ

ミカサ 「ただいま、おばさん」

ジャン 「ただいま。あー、背中痛ェ……」ガラガラ

ジャン母「おかえり。もうご飯できてるよ、手洗ってきな」

ジャン母「あんた、晩ごはんだよ」コトッ

台所でシチューを煮ていたおばさんは、テーブルに置いた肖像画の前にもお皿を置いた。

ミカサ 「はぐっ、もぐもぐ…おかわり!」ムシャムシャ

ジャン (なんて速さだ……スプーンが見えねえ!)

ジャン母「ミカサは本当に大食いだねえ。そういえば、春になったら訓練兵の募集があるらしいけど……」

ミカサ 「……わたし、行く」

ジャン 「俺も。家いたって退屈だしな」

ジャン母「ジャンは男の子だからいいけどね…ミカサ、あんたは他の子とは……」

ミカサ 「分かってる。でも、訓練所はご飯がたくさん食べられるって、ハンネスさんが言ってた。
     それに…兵士になって壁の外に出たら、何か思い出せるかもしれない…たぶん」


9 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:42:03 e7Y5oq3M

ジャン 「ミカサがうっかり死なねえように俺が見といてやっから。いいだろ?」

ジャン母「……仕方ないね」

ミカサ 「おばさん!」

ジャン母「一つだけ約束しな。二人とも、絶対に死に急いじゃいけないよ。兵士だからって
     必ず死ななきゃいけないなんて法はないんだからね」

ミカサ 「うん。約束する」

ジャン 「言われなくてもそうするっての」


いまから一年前――突然現れた超大型翼手、および鎧の翼手によって、シガンシナ区は破られた。

人類は一番外側の『ウォール.マリア』を放棄。その活動領域はウォール.ローゼまで後退した。

翼手。それは、人に擬態して生き血をすする化け物。

わたしたち人類の、天敵だ。


10 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:42:36 e7Y5oq3M

【847年】


キース 「私が運悪く貴様らを監督することになった、キース.シャーディスだ!!」

ミカサ (ひっ…!怖い……!)ビクッ

ジャン (チッ、ミカサの奴完全にビビッてやがる…)

ジャン 「おい、力抜けよ」ヒソヒソ

ミカサ 「む、むり…」ガタガタ

前の列にいた金髪の男の子が、「バカみてえな名前だな!!」って怒鳴られている。

ミカサ (どうしよう、訓練兵団がこんなに怖いところだなんて知らなかった……!)

そうこうしているうちに、わたしの番が来た。

キース 「貴様は何者だ!!何をしにここへ来た!!」

ミカサ 「えっ!?あ、あの…」フルフル

キース 「何者だと聞いている!!その口は飾りか!?」


11 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:43:06 e7Y5oq3M
ミカサ 「ウォールローゼ、とっ…トロスト区出身……ミカサ.アッカーマンです!
     へっ、壁外に出て!翼手を倒すために来ました!!」

キース 「そうか!せいぜい翼手の餌になれるよう、精進しろ!!」

ミカサ (えっ、餌!?ひどい……!)ガーン

「憲兵団に行って内地で暮らしたい」と言ったジャンは、思いっ切り頭突きされた。
それを見た誰かが「翼手の前に教官に殺されるぜ」と言ったのに、わたしは心の中で同意した。


【食堂】


ザワザワ…

ミカサ 「あ、あの…」(ジャンは「ちゃんと女子とは仲良くしろよ」って行っちゃったし、わたしから声かけなきゃ…)

クリスタ「なあに?」

ミカサ 「い、いっしょに…その、ご飯を…」

クリスタ「いいよ、ここ空いてるから一緒に食べよう?」

ミカサ 「あ、ありがとう…!」(優しい…よかった、教官は怖いけどなんとかやれそう…)


12 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:43:39 e7Y5oq3M
ユミル 「私はユミル。この天使がクリスタだ。お前、ミカサ…だよな。教官に翼手の餌認定されてた……
     それ、一人で食うのか?」

ミカサ 「へっ?おふぁふぃい?」モゴモゴ

ユミル 「いや、どう見ても五人前はあるだろ…調理係に何つかませたんだお前」

ミカサ 「え、えっと…」チラッ

ユミル 「おい、お前なんで目そらしてんだ」

クリスタ「まさか…さっきのサシャと同じで」

サシャ 「呼びましたか?」ヒョコッ

クリユミ「」

サシャ 「ああっ!どうやって持ってきたんですかこのパン!私にも一個ください!」

ミカサ 「だめ。これはわたしが命を削ってぬす…持ってきたもの。たとえジャンが頼んできても渡せない」

クリスタ(今盗んだって言いかけたね)

サシャ 「だったら大食い対決しませんか?今男子のみんなからごうだ…貰ってきたパンがあります!」ドサッ

クリスタ(強奪って……)


13 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:44:12 e7Y5oq3M
サシャ 「ミカサが勝ったら、明日の私のパンを半分あげますが、私が勝ったら明日のミカサのパンは
     いただきますよ!早く食べきった方の勝ちです!」

ユミル 「何バカなこと… ミカサ「分かった……受けて立とう」バカかお前!?教官に見つかったら……」

サシャ 「そこの人、スタートの合図お願いします!」

マルコ 「えっ?わ、分かったよ…」

ジャン 「あのバカ……」アタマカカエ

マルコ 「じゃあ、行くよ。1、2の……さん!」

ミカサ 「もぐもぐ、はぐっ」ガツガツ

サシャ 「むぐっ、ん、むぐむぐ…」ムシャムシャ

それは、闘い――。ひたすら目の前のパンにかぶりつき、引きちぎり、
咀嚼の時間も惜しいとばかりに、喉へ詰めこむ。

「いいぞー、二人ともー!」「すげえ…翼手でもあんな食えねえぞ…」「俺ミカサに10シリング!」

アルミン「……なんだろう、あっちにみんな集まって…」ガタッ

アルミン「あの黒髪の子……ミカサ?」

周りから歓声が聞こえる。わたしとサシャの手が、最後の一個に伸びた瞬間。


14 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:44:46 e7Y5oq3M
キース 「貴様ら……何を騒いでいる」ゴゴゴ

ミカサ 「」

サシャ 「」

突然現れた教官によって、闘いは終わりを告げた。

キース 「ブラウス…初日だからと罰則を免除してやったのが仇になったな。早速独房へ行きたいのか?」

サシャ 「え、えっと…それは…」

ライナー「ブラウス訓練兵は何もしておりません!その、あ、明日から訓練が始まると思うと、
     つい興奮してしまいまして……」

キース 「ほう、いい心構えだな。なら、特別に…明日の午後は座学の予定だったが、
     崖を命綱なしで下りる訓練に変えてやろう」

全員  「」

教官が出て行くと、みんなも食器を片付けはじめた。

サシャ 「やりますね……私のスピードに追いついたのは、あなたが初めてでしたよ」ガシッ

ミカサ 「こちらこそ。いい戦いだった」ガシッ

クリスタ(いつのまにか謎の友情が生まれてる…)


15 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:45:26 e7Y5oq3M
ユミル (ベクトルの違うバカが揃っちまった…)

ミカサ (やった、今日1日で3人も友達ができた!)パァァ

ミカサ (ジャンはどうしてるだろう…短気だから心配していたけど、誰彼構わず喧嘩を売るような
     性格ではない。心配はいらな「んだと、もう一回言ってみろ!!」

けたたましい怒鳴り声。
見ると、ジャンが黒髪の男子とつかみ合いの喧嘩をしていた。

エレン 「だったらお望み通り言ってやるよ!この腰抜け野郎!!」

ジャン 「なんだと!?内地に行きたいって思って何が悪いってんだよ!!いきなり突っかかって来やがって!」

エレン 「だったら今すぐ行けばいいだろ!?お前みたいな奴がいると士気が下がるだろうが!」

アルミン「や、やめてよエレン…また教官が戻ってく「アルミンは下がってろ!」ドンッ

アルミン「いっ……!」ガシッ

ミカサ 「大丈夫?」

アルミン「あ、僕は平気……」(すごくきれいな子だ……)

マルコ 「二人とも落ち着けよ!」ガシッ

ミカサ 「ジャン、一旦その手を下ろして。外でゆっくり話そう」


16 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 16:46:14 e7Y5oq3M
ジャン 「クソッ…分かったよ、ミカサが言うんなら」スッ

エレン 「ミカサ?」

そこで初めて、取っ組み合いになっていたもう一人がわたしを見た。
黒髪に、大きなエメラルド色の瞳。その両目が、わたしを射抜く。

エレン 「お前……」

ミカサ 「?」

エレン 「いや、なんでもねえ……きれいな髪だな」

それだけ言うと、彼はさっさと行ってしまった。


_______

一旦切る


17 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/06(火) 20:29:35 amlwDrJ6
言いたいことはひとつだけだ…盗むな。

以上だ。


18 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:25:26 J2C7Hc3w
『なあ、エレンってあのシガンシナ区にいたんだよな?』

エレン 『ああ……』

『じゃあ、超大型翼手ってのも見たのか?』
 
エレン 『まあ…デカかったな。壁から頭出るぐらいには』

ザワッ…

『じ、じゃあ…内門を破った鎧の翼手は?奴ら、昼間でも空飛んだって聞いたぞ』

エレン 『オレはよく見てないけど、翼は硬かったな。駐屯兵団の大砲が全然……』

ワイワイ…

ジャン (こいつら、デリカシーの欠片もねえな……被害者に根掘り葉掘り……)

ジャン 『……おい、ただでさえ味気ない飯でうんざりしてるってのに、翼手の話なんかしてんじゃねえよ』

『なんだよ、ジャンは気にならないのか?』

ジャン 『ケッ、どうせ憲兵団に行けない奴らは、毎日見られるだろうが』

エレン 『おい…お前、内地で楽したいとか抜かしてた奴だよな。悪かったよ、んな腰抜け野郎だったら
    心臓も弱いって分かっておくべきだったな』

ジャン 『んだと、もう一回言ってみろ!!』


19 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:26:04 J2C7Hc3w
□□□□

ジャン 「――というわけだ。オレは悪くない。あいつがいきなり突っかかってきたんだよ」

ミカサ 「つまり……エレンが辛いんじゃないかと心配して言ったのに、
     逆にバカにされて腹がたったということ?」

ジャン 「バッ、バカ言ってんじゃねえ!俺はただ……」

マルコ 「あ、あそこにいるの、エレンじゃないのか?」

マルコが指さした先を見ると、井戸の所でエレンが気まずそうな顔で立っていた。
わたし達を見ると、ぐっと拳を握りしめて近づいてくる。

エレン 「悪かった!!」ガバッ

ジャン 「……あ?」

エレン 「た、たしかに、食事中に翼手の話なんか、するもんじゃないよな……それに、
     あんな遠回しな言い方だけど、心配してもらってッ……なのに、内地志望を見下すなんて、
     異端者狩りをする奴らと同じじゃないか、って…アルミン、に……怒られて……」

エレン 「本当に、ごめんな!」


20 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:26:38 J2C7Hc3w
ジャン 「……顔上げろよ。言っとくけど、俺は自分の考えは曲げるつもりはねえからな。
    ただ、テメエとは忌々しいことに同室だ。下らねえ喧嘩で開拓地行きに
    ならない程度には仲良くしてやるよ」

エレン 「ジャン……!」パァァ

ジャン 「なんだよその顔」

エレン 「いや、お前最初はムカついたけど、意外にいい奴だな!」

ジャン (なんか友達認定されたみてえだ…こいつ、人付き合い苦手なんだな……)

ミカサ (そうか。この二人、似た者同士だと思ってたけど……友達少ないところが似てるんだ……)ホロリ

エレン 「ミカサも、これからよろしくな!」ガシッ

ミカサ 「あ、うん……」(なんだか、距離感が独特な人だ……)

ジャン 「……」ビシッ

エレン 「いってえな!何すんだジャン!」ヒリヒリ

ジャン 「気安くミカサに触んじゃねーよ!お前の目に下心が見えてんだよ!」

エレン 「言いがかりじゃねーか!お前こそミカサと一緒に暮らしてたからって、勝った気でいんじゃねーぞ!!」

ジャン 「んだと!?そりゃあ宣戦布告って受けとっていいんだよなあ!?」ボキゴキ


21 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:27:12 J2C7Hc3w
ギャーギャー

ミカサ 「あの二人はなんでまた喧嘩を始めたんだろう…」ポカン

マルコ 「」

カラーン…カラーン…

マルコ 「もう消灯時間か…じゃあおやすみ、ミカサ。明日からの訓練がんばろうね」

ミカサ 「うん。おやすみなさい」

ジャン 「腹冷やすんじゃねえぞ、ここには毛布かけてくれるババアはいねえんだからな」

エレン 「おいジャン、家族にそんな言い方「分かってる。ジャンこそベッドから落ちないでね」……ええー」

ミカサ 「これは愛情の裏返し。エレンもいずれ分かる」

エレン 「そういうもんなのか……?まあいいや、おやすみ」

ザッザッ…

ミカサ (よかった。ジャンの方もちゃんと友達が出来たみたいだ)

ミカサ (でも、通過儀礼であんなに怖かったのに、明日からの訓練は大丈夫だろうか…)

ミカサ (だめだめ。こんな所でへこたれてちゃ、おばさんに合わせる顔がない。
     ……わたしなら、きっとできる)


22 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:27:48 J2C7Hc3w

だけど、この世界は残酷だった。


【対人格闘】


ミカサ 「ふんぬぐぐぐ……!」カオマッカ

アニ  「……はいっ、と」グリンッ

ミカサ 「いたっ!」ドサッ

アニ  「これで15回目だけど……どうする、まだやるの?」

ミカサ 「だ、だいじょうぶ……」ヒリヒリ

アニ  「尻さすりながら言われてもね……あんた、力みすぎだよ。筋肉はちゃんとあるのに、
     それを正しく使えてない」

ミカサ (図星すぎて何も言い返せない……)サスサス


23 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:28:18 J2C7Hc3w
エレン 「おーい、アニ!また足技教えてくれよ!」

アニ  「いいよ。じゃあミカサは……ああ、ちょうどライナーが空いたみたいだから、組んでもらいな。
     首席のあいつなら手加減も上手いだろうし」

□□□□

ミカサ 「いだぁッ!!」ドサッ

ライナー「すまん!かなり手加減したつもりだったんだが…」

ミカサ 「たたっ…足、ひねった…!」ズキズキ

ライナー「本当に悪かった……教官!アッカーマン訓練兵を医務室へ連れて行ってもよろしいでしょうか!」

エレン 「あ、だったらオレが」

アニ  「余所見してんじゃないよ」ガシッ、グルン

エレン 「ふごっ!」ズテーン 「いででで、ギブギブギブ!!首、首!!」バシバシ

ジャン (ナイスだアニ!そのまま死に急ぎ野郎を落としてくれ!!)グッ

ライナー「ほら、背中につかまれ。早く冷やさないとな」

ミカサ 「う、うん…」(わたしと組んだばかりにこんな面倒を…ごめんなさい、ライナー…)


24 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:28:49 J2C7Hc3w
【馬術】


クリスタ「よーしよし、いい子だねコゼットー」ナデナデ

ユミル 「コゼットは本当に優しいよなあ。私にも触らせてくれるし。やっぱ馬は飼い主に似るんだな」ナデナデ

ミカサ (クリスタの馬はいつも大人しい…なんでわたしのカミカゼは暴れ馬なんだろう?)

ミカサ (よし、今日こそ!)ダッ

ヒヒヒーン!!ドカッ

ミカサ 「きゃっ!?」シリモチ

エレン 「ミカサ、危ねえ!…クソッ、落ち着けこのバカ馬!!」グイグイ

ジャン 「あ、俺の見てねえ隙に何かっこいい所見せようとしてんだ駆逐野郎!!」

キース 「アッカーマン!馬に背後から近づくな、何回言えば分かる!!」


【座学】


眼鏡教官「……えー、立体起動装置を用いて初めて翼手を討伐したのは、キュクロ.マンセルというのは
     昨日の単元で学習したな。今日は……」

ミカサ (毎日体を酷使してるせいか、眠い……)コックリコックリ


25 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:29:27 J2C7Hc3w
ジャン 「おい、ミカサ…起きろ、まずいぞ」ツンツン

眼鏡教官「では、翼手の弱点とは何か?アッカーマン、答えなさい」

ミカサ 「ふぁっ!?」ガバッ (ど、どうしよう…聞いてなかった、今どこ!?)

マルコ 「脳と脊髄」ヒソヒソ

ミカサ 「の、のうとせきずい!」

眼鏡教官「そう。翼手を完全に倒すには、脳と脊髄を破壊するしかない」

ミカサ 「あ、ありがとう……助かった」ガタッ

マルコ 「どういたしまして。お互い様だよ」ニコッ

エレン 「……その手があったか」ボソッ

ジャン 「……マルコ、明日からもこの席で頼むぜ」ギロッ

マルコ 「えっ、なんで?」


26 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:30:05 J2C7Hc3w
【立体起動】


エレン 「クソッ、全然追いつけねえ!!」ギュイィィィィ

ジャン 「へっ!お前はそんぐらい遅い方が死に急がなくていいんじゃねえのか!?
     つーかしれっと俺とミカサの班に入りやがって!!アルミンとフランツの班行けよ!!」ギュィィィィン

エレン 「なんでお前は、いつもいつもオレの邪魔ばっかすんだよ!!」ギュィィィィ

ジャン 「黙れ巨人バカ!お前みてえな命知らずにミカサは任せらんねえってんだよ!!
     俺に追いつけるようになってからほざきやがれ!!」ギュィィィィ

エレン 「あっ!!こいつ、ますます加速しやがって……待てー!!」ギュィィィィ

ミカサ 「ま、待って……エレンこそ待って、置いてかないで……」キュィィィ

わたしの願いも空しく、二人の背中はぐんぐん遠くなる。

ミカサ 「あ、あれ?二人ともどこ行ったの?」スタッ、キョロキョロ

ミカサ 「ジャーーーン!!エレーーーン!!どこー!!?」

しーん…。

キース 「15班、失格……アッカーマン、立体起動は散歩の道具ではないぞ!!」カキカキ

ミカサ 「……っ!」ガーン


27 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:30:46 J2C7Hc3w
キース (ミカサ.アッカーマン。バランス感覚に優れ、潜在的な身体能力は高いと思われる。
     しかし、一年目を終える今もその才能を引き出せず、成績は平均値)

キース (体の使い方さえ覚えれば、首席も夢ではない逸材だというに……)ハァ


【食堂】


ミカサ 「……」チーン

サシャ 「ミカサー?食べないんなら、このパンもらっちゃいますよー?」ヒラヒラ

ミカサ 「うん……どうぞ、持って行って……」ズーン

サシャ (えっ!?私と並ぶ大食いのミカサが、パンを一口しかかじらないなんて……!)

ジャン 「おいミカサ、いつまでシケた面してんだ?ミカサちゃんは悪くないでちゅよ〜って慰めて欲しいのか?」

エレン 「おいジャン!そんな言い方…」

ジャン 「失格になったのはお前の所為じゃねえよ。お前のトロさを計算に入れてコースを組まなかった
     俺の判断ミスだ」

ミカサ 「……ッ!」ガタッ

ジャン 「逃げんのか?お前、都合が悪くなるといっつもそうだよな。勝手に俺を悪者にしてよ。
     俺がいくら"怒ってねえ"って伝えた所で、聞きやしねえ」


28 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:31:29 J2C7Hc3w
ミカサ 「……」

ジャン 「いいぜ、しばらく頭冷やしてろ。俺もしばらく考える」

ミカサ 「……うん」

バタン!タッタッタッ…

コニー 「なあ。ミカサ泣きながら走ってったけど、いいのか?」オロオロ

ジャン 「家族の俺じゃ力不足だからな……というわけで、行けよ。死に急ぎ野郎」

エレン 「お、オレか…?いいのかよ」

ジャン 「悔しいが、こういう時はお前の方が優秀だ。本音ぶちまけるサンドバッグとしちゃあな。
     いいか、ミカサに指一本触れてみろ、今日をお前の命日にしてやるからな」

エレン 「変なことはしねえよ……分かった。行ってくる」ガタンッ

ジャン (……なんでエレンの野郎が、ミカサに執着してるのかは知らねえ。
     まあ、悪い奴じゃねえのは分かるけどよ)

ジャン (簡単に命を投げ打つなんて、いいわけねえだろ。
     ……それにミカサを巻きこむのは、絶対に許さねえ。あいつは幸せになるべきだ)


29 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:32:03 J2C7Hc3w

【訓練所.外】

ミカサ 「うっ…ううっ、ひっく、ぐすっ…」ポロポロ

ミカサ (どうして、わたしは……こんなに、無力なんだろう……
     訓練兵になってからも、みんなに迷惑かけてばっかりで)

ガサッ…

ミカサ 「っ!」ゴシゴシ

エレン 「……なあ、隣いいか」

ミカサ 「う、うん」

ストンッ

エレン 「あのさ、お前はなんで兵士になろうって思ったんだ?」

ミカサ 「え?」

エレン 「……翼手を見たわけでもないのに、なんで翼手を憎み続けなきゃいけない
     兵士になろうって思ったんだ?……オレには、お前が焦る理由が分からねえ」

その言葉に、考える。

エレンは大切な仲間。ジャンとよく喧嘩するけど、それだけ本音を言い合える友達。
だったら、わたしも……もう、隠し事をするべきじゃないのかもしれない。


30 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:32:38 J2C7Hc3w
ミカサ 「あのね、落ち着いて聞いてほしいんだけど……エレン、わたしには」


「記憶がないの」


エレン 「……は?」

やっぱり、エレンは口をぽかんと開けて呆然としている。

ミカサ 「二年前までの記憶が、すっぽり抜けてる。気がついたら、ジャンの家にいて……
     おばさんと、ジャンと暮らしていた」

エレン 「……じゃあ、ジャンは血が繋がった家族じゃない……ってことか?」

ミカサ 「その言い方は嫌い。血なんかなくても、ううん…だからこそ、わたし達は家族。
     誰よりも強い結びつきの、家族」

エレン 「悪かった。……でも、記憶がないってことは……」

ミカサ 「うん……わたしは、シガンシナ区が陥落したのも、覚えてない。エレンがあの日の
     出来事を語るのも、なんだか……不思議な気分で聞いていた」


31 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:33:38 J2C7Hc3w
□□□□

ジャン母「そうかい…ルイの遺言なんだね。あの女の子を引き取ってくれって」

ハンネス「すみません……変なことを頼みますが」

ジャン母「いいさ。ルイが巨人に食われちまった代わりに、あの子が来たって考えることにするよ」

壁|ャン「……」コソッ

ミカサ 「……」クルッ

壁|  「!」サッ

ジャン母「んじゃ、あんたも時々様子を見に来とくれよ。あたしの友達ってことにしとくからさ」

ハンネス「いいんですか?」

ミカサ 「……」ジーッ

壁|ャン「……」コソコソ

壁|ャン(きれいな黒髪だ……それに、すごくかわいい)ポーッ

ミカサ 「……?」

□□□□


32 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 11:34:10 J2C7Hc3w


エレン 「……そっか、あいつの親父さん、シガンシナで……」(敗北主義者とか言っちまった自分が恥ずかしいぜ…)

ミカサ 「ジャンは言葉を教えてくれたり、ご飯を食べさせてくれたり、お風呂に入れてくれたりした。
     家に来たばかりのわたしは赤ちゃんみたいだったって」

ミカサ 「訓練兵になるまでは、記憶のことを気にしたことはなかった。だけどエレンに出会って、
     マリアが陥落したのとわたしの記憶がないのは、なにか関係があるのかと思い始めた」

ミカサ 「それが……とても、怖い……」

エレン 「……」

エレン 「いいんじゃないか。思い出さなくても」

ミカサ 「え?」

エレン 「覚えてねえってことは、お前には要らない記憶だったんだよ。お前は……
     駐屯兵団にでも行って、家族と幸せに暮らしてろ。それが一番いいんだ」

そう言ったエレンの顔は、影がかかってどんな表情をしているのか
よく見えなかった。


33 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/10(土) 13:06:31 czqXkPEA
今日はここまで。
訓練兵時代はさらっと流そうかと思ってたけど
次回で三つの兵団紹介して終わり。

ちなみにクリスタの馬がコゼットなのは
境遇が似てるなーという理由から。


34 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/06/13(火) 11:06:06 dEpW/wtE
ごめんなさい、今見返したらレス抜けと間違いが
大量に見つかったので
一旦建て直します。


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