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男「お願いだ、信じてくれ」白蓮「あらあら」

344ぬえ ◆ufIVXIVlPg:2017/09/07(木) 22:54:46 ID:m.FE6kXk
こんな時でなければ感嘆の声をあげていそうな立派な玄関に入るとそこは閑散とし、人気を感じさせなかった。

辛うじて灯りは積もっているがそれでも薄ぼんやりとで、足元が十分に見えないほどには暗い。

不気味というよりはどこかもの悲しさを覚える空間だ。客足が途絶えてかなり経つのだろう。床には薄く埃が積もっている。

本当にここに? と疑問を投げかけてしまいそうになるほどには日々を過ごすに不適当な場所。

しかし勇儀さんと射命丸さんは先に進んでおり続かないわけにはいかない。埃まみれになるのが嫌そうな顔をしていたナズーリンの手を引いて進む。

靴を脱いで上がったため、足の裏はすぐにザラザラと不快な感触を覚える。前を行く二人を見れば靴を履いていたため脱がなくてもよかったのかもしれない。

屋敷の廊下は人気を失い活発さを失った見た目とは裏腹にかなりしっかりとしている。妖怪のために頑丈にしているのだろうと関係ないことを思った。

しかし見れば見るほどにここがどれほど力を入れて作られているのかが分かる。本当にこんな時でなければよかった。

どうやら見た目にふさわしく広いようで、何度も廊下を曲がりながら奥へ進んで行く。途中見えた厨房も立派なもので、煮炊きしかできない寺とは大違いだ。

掃除をすれば活動拠点としてこれ以上ないものになるだろう。そのためには話を通すことが重要だ。

何を語ろう。何を話そう。いや、相手は心を読むのだから関係はない。

嘘を付けない。誤魔化せない。

口先だけで今までを乗り切ってきた俺にとって相性の悪い相手。

一番心配なのは前の世界を知られることだ。

きっと、さとりにとって心地よいものではないはずだから。


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