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企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.4

1しらにゅい:2014/01/27(月) 22:11:13
ここはキャラ企画つれっどにて投稿されたキャラクターを小説化しよう!というスレです
本編とはかかわりがなく、あくまでもアナザーストーリーという扱いです
時系列は本編(2002年のGW4月28日〜)よりも前の話が主になります
本編キャラの名前が名字無しカタカナの為、小説ではそれに合わせた呼び方が多いです
人様のキャラクターを借りる時は、設定を良く見て矛盾が無いように敬意を持って扱いましょう
詳しい説明などは下のURLをご覧ください
ナイアナ企画@wiki―「はじめに:企画キャラとは」
http://www22.atwiki.jp/naianakikaku/pages/1057.html


過去スレ
企画されたキャラを小説化してみませんか?
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1208562457/
企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.2
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1301901588/
企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.3
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1317809300/
企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.3.5
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14155/1330491756/

40スゴロク:2014/04/29(火) 00:15:22
前回の続きです。詠人関連はひとまずこれでひと段落です。「キリ」「アズール」「シュロ」をお借りしています。




赤い世界が解け崩れ、見慣れた町並みが戻ってくる。
その中で、マナは自らが呼び寄せた存在――――百物語組の一人、キリと向かい合っていた。

「ありがとう、キリさん」
「礼には及ばないでありマス。むしろ、僅かなりともこうして言葉を交わす場を用意してもらった小生こそ、礼を言いたいところでありマス」

軽く会釈してハサミをどこかへしまうキリ。その彼に、狐の姿に戻ってランカの腕に抱かれるアズールが呟く。

「……どないなっとるんや……キリさん、しばらく前にシン・シーに殺されたんと違うんですか」
「それは事実でありマス。小生の消滅により、その部分が空席となっているのも承知でありマス」

ではどういうことか、と問いたげなアズールに、キリは「つまり」と前置きして簡単に説明する。

「小生ども百物語組は、主の能力によって妖怪という形で実体を与えられた魂でありマス。裏を返すと、主の『語り』によって鬼門を潜らぬ限り、百物語組とは看做されないのでありマス」
「つまり……どういうことなんですか?」

ランカの問いには、キリではなく状況を見守っていたブラウが応えた。

「主……秋山春美の持つ、ある種のネットワークにかからなくなっており、かつ能力の影響からも外れている。そういうことか」
「正解でありマス。現在の小生は、マナ殿の力で一時的にかつての姿と力で実体化した、いわば『切り裂き魔のとおりゃんせ』の模倣でありマス。次に小生が百物語組として現れることがあらば、その時はこのままなのか、百一話として新たな姿を得るのか……それはまだ不明でありマス」
「それじゃ、あんまり長くはこっちにいられないのか?」

シュロの問いには、頷くことで肯定する。

「残念でありマスが、小生に残された時間は残り僅かでありマス。今はマナ殿の結界のおかげでこうして話していられるでありマスが、それでももうすぐ鬼門の向こうに戻ることになるでありマス。ゆえに、主やクランケ、ミサキの元に戻る時間もないのでありマス」

語るキリの様子は心底残念そうだったが、どうすることも出来ない。
もとより、今こうして存在していること自体がイレギュラーなのだ。それを成したマナこそが、むしろ恐るべきといえる。

「なので、どなたか伝言を頼まれて欲しいのでありマス」
「僕が聞くよ。内容は?」

伝言を請け負ったスザクに、キリは一つ頷いて言った。

「では、ミサキに伝えて欲しいのでありマス。小生は、決して裏切られていない、と」
「え?」
「もう一つ、これは主と、百物語組の皆にでありマス」

薄く透け始めた体で、キリは言う。

「待っている、と」
「……わかった。確かに伝えるよ」
「かたじけないのでありマス。それと、最後に一つだけ」

消えかけた顔で真剣な表情を作り、「切り裂き魔のとおりゃんせ」は最後にこう言った。

「確証はないのでありマスが、近いうちに大きな戦いがあるような予感がするでありマス。どうか、お気をつけて」
「え……!?」

だが、その意を問う前にキリの姿は完全に消えてしまった。
同時、“リミテッド”の結界がほどけて通常の世界が戻ってくる。

41スゴロク:2014/04/29(火) 00:16:27
「……まだ、終わらないみたいね」

呟いたのはマナだ。ランカの方を見て、まず口を開く。

「お姉ちゃんとアズールは家にいて。この先何が起こるかわからないわ」
「う、うん。マナちゃんも気をつけてね」
「マスターはうちが守りますよって、ご心配なく」
「お願いね」

次に、シュロの方を向いて言う。

「シュロ、あなたはミレイを探しておいてくれない?」
「ミレイ、って……こないだランカちゃんトコに来た妖怪の子か? あの子がどうかしたのか?」
「自分を捨てた持ち主を探して回ってる『メリーさんの電話』の子なんだけど……方向音痴で、ここ最近戻ってないの。多分どこかで行き倒れてると思うから、見かけたら回収してくれる?」
「回収って……んー、まあ、わかった」
「お願いね。あの子、ほっといたら死ぬまで家に帰れないかもしれないもの」

一度はスザクの家に電話をかけてきたはいいが、道が分からなくなって迷いに迷い、最後には「迎えに来て」と泣きついたという話は記憶に新しい。

「……スザク、あなたは秋山神社に伝言お願い」
「わかってる、そのつもりだ」
「ヴァイスには最大限の注意を払っておいて。今のあいつはどこにいても、どんな形で何に関わっていてもおかしくない。下手をすると今までの事件が全部自分の仕業だって言い出しかねない」

現在のヴァイスは事象の「原因」となるための偏在だ。解決されないまま藪に紛れた事件に「実は」関わっていても不思議はない。
その危険性は理解しているのだろう、スザクも神妙な面持ちで頷く。

「それと……あら?」

次に声をかけようとした相手・ブラウは、結界が解けると同時にいつの間にか姿を消していた。よく見ると千鶴の姿もない。

「……いつの間に」

特に千鶴には、マナとしても色々言いたいことがあった。詠人を阻んだあの攻撃は、特殊能力によるものではなかった。
マナの知識では、アレは土地神の類が使う力にとてもよく似たものだった。

(なぜ人間があの力を?)

聞いてみたかったのだが、いないのでは仕方がない。放置しておくと色々と起こりそうな気がするのだが。

(まあ、仕方がないわ。今はそれよりも、気にすることがあるから)

最後に目を向けたのは、覇気なく佇む詠人。彼にかける言葉は、指示ではなく問いかけ。

「あなたは、これからどうするの?」
「…………」

答えは返らない。復讐の動機も理由も失った今、彼に目的はない。
マナとしては思うところがないわけではなかったが、同情はしなかった。いくら操られていたといっても、それで全てを許せるほど彼女は大人ではない。

「わからないなら、分からなくていいわ」
「!」
「私は夜波 マナ。それだけよ」

自身の存在を告げるそれは、詠人を受け入れるように見えて、はらむ意味はまるで反対。
どんなに言い方を変えても、マナにとってはそれが真実。

「今の私には家族がいる。お兄ちゃん……あなたが操られていたとしても、あなたのしてきたことが許されるわけじゃない」
「……わかってる」
「私には、もう家族がいる。そして、そこにあなたの居場所はないわ」

マナがヴァイスと戦った理由は明らかだ。悪意のままに人をもてあそぶ、ヴァイスが嫌いだから。
それだけだ。そこに、詠人の敵討ちという目的はない。どんな経緯があったにせよ、詠人のして来たことを許すつもりは、マナにはないのだ。

だからこそ、因縁に決着がついた今、二人がすべきことは和解ではない。本当の決別と、それぞれの道を歩むこと。

だから、マナは告げる。もう、あの時には戻れないのだと。
スザクやランカの時とは、違うのだと。

――――二つの道が交わることはあれど、重なることは二度とないのだと。

42スゴロク:2014/04/29(火) 00:17:27
「……そうか」
「そうよ」

呟きには、容赦ない断言が返る。その意味を飲み込むかのように何拍かの時をおいて、詠人は顔を上げた。

「……なら、それでいい」
「……本当にいいのか? 詠人。お前は、それで……」

当惑したようなスザクの問いに、詠人はどこかすがすがしい表情で応えた。

「未練はある。けど、許してもらおうとは思わない。僕はそれだけのことをして来た」
「なら……本当に、これからどうするんだ」
「さてな。とりあえずはいかせのごれを放浪して見るさ。幸い、ツテはそれなりにあるんでね」

肩をすくめる詠人。そこには、戦う前の狂気や焦燥は欠片もない、ただの少年の姿があった。
そんな彼に、マナはあくまで冷静に言う。

「……なら、わかってるわね」
「ああ。……お別れだ、マナ」
「ええ。今度こそ、本当に」

そうして、



「さよならだ、マナ」
「さようなら、お兄ちゃん」



兄妹の道は、再び分かたれた。




あなたに、さよならを


(別れ際の、最後の瞬間)
(背を向けた兄は寂しげに笑い)
(見送る妹は、少し泣いた)

(あの時も、見えなかった)


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