したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

(‘A`) サンドサンドサンドのようです

1 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:33:12 ID:k7Q.JO7E0
※2作目です
※投稿は実に5年ぶりになります。生ぬるい目で見てくださると助かります
※ゆっくり更新していきます
※前作の感想に釣られて書いちゃったよ!!!ありがとうね!!!

2 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:34:39 ID:k7Q.JO7E0
窓を開けて外を眺めると、曇天というには濁りすぎた景色に涙が溜まる。

(‘A`)「今日は砂がやたら飛んでるな」

強風が巻き起こる外の景色を見て、俺はたまった唾を飲み込んだ。

5年ほど前から、雨でも気温上昇でもなく、風が強くなるという異常気象が起こった。
それは海水を巻き上げては塩害を引き起こし、砂を巻き上げては街を暗闇に落とした。
今では、5年の歳月を経て、塩と砂がビルの谷間を舞うようになった。

とはいえ、風が強くなるのは週に1日から2日。
雨が降れば砂も塩も収まるし、いずれも顔に当たって痒くなる程度の量しか舞うことはない。

その程度の風と砂に対しても。

(‘A`)「嫌になるなぁ」

俺は、嫌気がさしてしまう。

3 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:35:22 ID:k7Q.JO7E0
****************************






(‘A`) サンドサンドサンドのようです







****************************

4 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:36:24 ID:k7Q.JO7E0
1. 朗らかで憎たらしい始まり:4月

(‘A`)

ドクオと呼ばれて、それこそ5年ほど経つか。
本名をもじっただけのあだ名を呼ぶ声が、今では聞き馴染んだ耳を打つ。

(゚、゚;トソン「ドクオくん!」

(;’A`)「あ、わりぃ。考え事してた」

(゚、゚トソン「しっかりしてよね。もう私たち”先輩”なんだから」

(‘A`)「大学生にもなって先輩後輩あるかよ」

隣の部屋のドアががちゃんと開く音を聞きながら、隣にいる女の声に応じた。
俺たちは今日から、大学2年目の春を迎える。

5 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:37:34 ID:k7Q.JO7E0
さっきのドアの音は、つい先日隣に越してきた新入生のものだろう。
そう考えながら、着替えを済ませて歯を磨く。
朝食は俺もトソンも食べない主義だ。

(‘A`)「しかし」

まさか、俺に彼女ができるとは。
何事も1人で背負い込んで、他人の手が信用できなくなった俺に、だ。
しかも美形ときている。

(゚、゚トソン「なに私の顔ジロジロ見てるんですか?」

(‘A`)「美人だなぁって」

(//、//トソン「ッ」

すぐ赤くなる俺の彼女、トソンは、同じ学部の同級生だ。
年は1つ下だが、それは俺は4月生まれなのが関係している。

学部で新入生の面倒を見る役職を持っていた俺たちは、つい3ヶ月前に結ばれた。
トソンの一言によって、だが。

表面がすべすべして、砂がつきにくい靴に足を突っ込む。
トソンも後ろからついてきた。

(‘A`)「さて、行きますかね」

扉にもたれかかりながら、トソンに靴を履くよう促した。

6 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:38:26 ID:k7Q.JO7E0
ざわざわ。
桜吹雪に混じって、砂の粒子が紛れ込む。
お世辞にも綺麗とは言いにくいそれは、俺たちの視界の邪魔をする。

(‘A`)「ゲホ、履修ってどうなってんだっけ」

(゚、゚トソン「今日は2コマ目に基礎心理学、午後は別授業だから確認して」

(‘A`)「そっか、おっけ」

砂ぼこりに咳き込んで、トソンと短く言葉を交わす。

女の子とキャンパスを歩く。
ふわりと、シャンプーの香り。
さりげなく話す学校のこと。
十分過ぎるほど幸せな時間だ。

7 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:39:10 ID:k7Q.JO7E0
それでも、学校が始まるのは憂鬱だ。
憂鬱ながらも、気付けば見慣れた顔を目で追っている自分がいる。
大学のキャンパスの中は、狭くも人間が密集した空間であると実感する。

(‘A`)「よう」

( ^ω^)「お!春うららドクオ大先生じゃないですかお!」

(;’A`)「やめろってその呼び方は」

通りすがりを捕まった友人は、冷やかし交じりに再会の喜びを言葉にする。

中学からの友人で、現在も同じ学部のブーン。
丸っこいその体格は、今も昔も変わらない。
砂から髪を守るためか、フードをかぶった彼はどこかおにぎりにも見える。

( ^ω^)「新学期早々幸せそうだおね〜」

(‘A`)「すまんな、アツアツで」

( ^ω^)「くっそ腹たつお。2コマ後に食堂行くお」

(‘A`)「おけおけ」

ブーンは、トソンに手のひらを見せてそそくさと走り去っていった。
軽口をたたくことを除けば、さわやかでいいやつなのだが。
にこやかな表情が清々しい。

トソンは、俺の少し後ろで目を伏せていた。

8 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:42:42 ID:k7Q.JO7E0
授業中には、流石にトソンとは離れ離れになる。
性別が違えば、友人のグループも違うから当然のことだ。
賑やかなトソン達の女子グループが後ろで沸き立つ。
一方で、比較的おとなしい男子グループは講義室の前に集中する。

俺はそっち側の人間だ。

( ^ω^)「今日はどうせガイダンスで終わりだおね」

横で机に頬をくっつけながらブーンが言う。
まあそんなところだろう、と縦に首を振っておく。

春は砂と桜の季節になる、と数年前に誰かが言っていた。
窓の外の景色は、お世辞にも綺麗とは言い難い。
小学生の頃に見ていたうららかな春の景色は、もうない。

教授も教壇に立ちながら、レジュメの配布とパワポの準備に忙しそうで、講義室内の喧騒を鎮めるつもりもないらしい。

ああ、煩わしい。

9 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:44:09 ID:k7Q.JO7E0
( ^ω^)「っかー!溢れる肉汁!とろける玉ねぎ!これで298円(税抜)か!安いね!安いね!」

(‘A`)「学食の牛丼くらいでやかましい」

( ^ω^)「グルメリポートは基本だお」

学校に3つしかない学食は、昼になると大変に騒がしい。
ざわざわと蠢く集団は、座席を求めて右に左に波を作る。

( ^ω^)「ドクオはそれだけでいいのかお?」

(‘A`)「お前麺類のコスパなめんなよ?うまいし安いし早い」

トレイに所狭しとおかずをのせたブーンに対し、俺はラーメンをすすっているだけだ。
でも、こっちの方がブーンよりはまともな食事だと思ったりする。

最後の麺をすすりきって、ブーンのトレイを見るともう空だった。
満足そうに息を吐くおにぎりは、その頬を赤に染めている。
トレイを返却しようと席を立つと、すぐに席は埋まった。
これだから学食は苦手なんだ。

10 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:45:02 ID:k7Q.JO7E0
外に出ると、風が吹いた。
砂と桜がつむじ風に巻かれ、ふわふわと舞う。

ふんわりと肌を包む春の日差しに、不釣り合いな砂が憎たらしい。
視線の先にはふわりと揺れる後ろ姿。
茶色い髪を揺らして、友人とけらけらと笑うトソンだ。

それを眺めて、俺は手のひらで太陽を透かしながら空を仰ぐ。

11 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:45:50 ID:k7Q.JO7E0

俺は、騒がしいのが嫌いだ。

俺は、風と砂が嫌いだ。

俺は、友達と恋人が大好きだ。

そんな俺が、今年1年で変わっていく、そんな物語。

12 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:46:56 ID:k7Q.JO7E0

1. 朗らかで憎たらしい始まり:4月ー了ー

13 ◆csB32AjwmU:2016/07/27(水) 23:49:10 ID:k7Q.JO7E0
1話はこれで終了です。
ありがとうございました。

処女作は酉で検索してみれば出ると思います。
今作は何話になるかわからない、かつのんびり続けていきたいと考えているので、お付き合いのほどよろしくお願いします。

14名も無きAAのようです:2016/07/28(木) 00:27:44 ID:eAQn8emM0
砂がこの後どんな事を起こすのか楽しみだ乙

15名も無きAAのようです:2016/07/28(木) 23:15:04 ID:c58uxdVI0
5年間ずっとお前の新作を待ってたぜ……

16名も無きAAのようです:2016/07/29(金) 09:28:13 ID:rGlH8Gio0
酉検索したら五年前じゃない作品出てきた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板