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∬´_ゝ`)が帰ってくるようです

1 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 20:31:20 ID:jsT2KZOY0
はじまります

2 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 20:34:37 ID:jsT2KZOY0
流石家の中では、母者の存在は神にも等しいものです。
これは、流石家では常識として知られています。
生物が上位の生物を自然に認識するのと同じで、一目瞭然の存在感を放っていました。

それは信頼とさえ言えました。
手刀で薪を割り、片手で油圧ジャッキの代わりに車を持ち上げ、スズメバチの針さえ通さない皮膚を持つ母者は、無敵の存在と言ってもいいでしょう。
そのはずでした。

今日、この日までは。

  .@@@
  @# _、_@
  (   ノ`) 「あたし入院するから、留守番任せたよ」

この発言が、流石家の常識に終焉を呼び、新たな神話を生むこととなりました。

3 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 20:37:27 ID:jsT2KZOY0
( ´_ゝ`)「は? は?」

  .@@@
  @# _、_@
  (   ノ`) 「入院だよ、入院。 まぁそんなに長くはならないけどね」

(;´_ゝ`)「入院って? ドーピングのし過ぎ? それとも人間じゃなかったの?!」

母者の入院。
それは買ってもいない宝くじが当たるよりも、見たこともない女に父親の烙印を押されるよりも性質の悪い話です。
病気とは無縁の母者が入院となると、薬物の過剰摂取が考えられました。

確かに、人間離れした力を維持するためには薬物に頼らなければならないのでしょう。
新薬による劇的な肉体改造と考えれば、これまでの暴力的な冗談の全てに納得がいきます。

  .@@@
  @# _、_@
  (   ノ`) 「あのねぇ、あんた本気で言ってるのかい?」

(;´_ゝ`)「ど、どういう」

  .@@@
  @# _、_@
  (   ノ`) 「見て分かるだろ、家で出産するわけにもいかないからねぇ」

4 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 20:40:34 ID:jsT2KZOY0
(;´_ゝ`)「だ、だって……」

        .@@@
        @# _、_@
        (#  ノ`)
       __〃` ^ 〈_
   γ´⌒´--ヾvーヽ⌒ヽ
  /⌒  ィ    `i´  ); `ヽ
  /    ノ^ 、★__¥★_人  |
  !  ,,,ノ爻\_ _人 ノr;^ >  )
 (   <_ \ヘ、,, __,+、__rノ/  /
  ヽ_  \ )ゝ、__,+、_ア〃 /
    ヽ、___ ヽ.=┬─┬〈  ソ、
      〈J .〉、| 妊|, |ヽ-´
      /""  |   |: |
      レ   :|: 娠| リ
      /   ノ|__| |

(;´_ゝ`)「どうみても妊娠なんてしてないよ……!!
      腹筋割れてるもん!!」

5 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 20:43:45 ID:jsT2KZOY0
  .@@@
  @# _、_@
  (   ノ`) 「これ以上あたしを愚弄するってんなら、拳で教えてあげようか……!!」

(;´_ゝ`)「わ、分かったよ!! とにかく、入院するんでしょ!!
     それで、俺と弟者は――」

  .@@@
  @# _、_@
  (   ノ`) 「TAWAKE!! 弟者は今ビーバースカウトのキャンプでしょうが!!
        応援は呼んであるから、今日一日留守番してな。
        それと、川とか海には近づくんじゃないわよ」

そしてこの日。
流石家長男の兄者は、人生で最も思い出に残る留守番を体験することになったのです――

6 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 20:47:04 ID:jsT2KZOY0
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                  ∬´_ゝ`)が帰ってくるようです

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7 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 20:49:54 ID:jsT2KZOY0
流石家は四人家族です。
力の母者、知恵の父者、力も知恵もない十歳になったばかりの兄者、そして力と知恵を兼ね備えた七歳の弟者。
その家族がこれから五人家族になることに対し、兄者は素直に喜べずにいました。

突然の話です。
降って湧いたように、ある日家族が増えると言われても、実感がわかないのも無理はありません。
弟者の時は素直に喜べました。

何せ、気付いた時にはそこにいたからです。
喧嘩は絶えませんが、それでも弟はいいものです。
それが更に一人増えるのは、とても嬉しいことだが、やはり唐突すぎました。

季節の飾りつけ――学校の図工の時間に作った鉄製のオブジェ――の置かれた玄関で母者を見送り、兄者は半ば途方に暮れていました。
留守番は出来ます。
これまでに何度も経験していましたし、失敗は特にありませんでした。

しかし、母者不在の期間が不明で、応援の正体も分からないという状況は、芳しくありません。
父者の帰宅は早くても今日の夜九時。
それまでには昼食、夕食、洗濯、掃除、そして買い物をしなければなりません。

それらを単独で遂行した経験はこれまでになく、渡された二千円札三枚を握りしめて立ち尽くしている彼を責めるのは、あまりにも酷でしょう。
だが、これが人生なのだと、兄者は己に言い聞かせました。
折角の自由なので、ネットサーフィンをするのもいいでしょう。

8 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 20:52:32 ID:jsT2KZOY0
現実逃避のような考えを持った兄者でしたが、それは遂に叶いませんでした。
理由は二つありました。
一つ目は、遠くから響いてきた低い重低音――バイクのエンジン音――です。

それは玄関の前で止まり、エンジンの音も切れました。
紛れもなく、流石家に用のある人間の来訪を告げる物です。
しかし、父者はバイクには乗りません。

ただでさえ不毛地帯の頭髪が失われれば、二度と父者の頭に髪が生えることはないのです。
ヘルメットは父者にとっては電気椅子の帽子にも等しい存在なのです。
では、知り合いにバイク乗りはいたでしょうか?

いいえ。
一人も知りません。
そうなると考えられるのが、バイク便です。

最も可能性が高く、現実的な考えです。
しかしバイク便が来たとしたら、何故エンジンを切ったのでしょうか。
玄関で来訪者がインターホンを鳴らすのを待つ兄者は、季節を考えて知り合いからのプレゼントの類だと少し期待しました。

ですが。
ここからが理由の二つ目になります。
インターホンが鳴ることは、遂にありませんでした。

玄関の扉が開き、そこに見知らぬ女性が現れたからです。

9 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 20:55:17 ID:jsT2KZOY0
  /(∞))∧
  (´<_` ∬ 「ただいまー」
  ./∬=='∬⌒)
  ヽ(:::::::::ノ::|:`{
   }=、-::}、i!、{

( ´_ゝ`)「……」

人は予想外の事態が起きた時、脳の処理が追いつかない時があります。
この時の兄者は、まさにその状態でした。
控えめに見ても美人、豊満な肉体を強調するノースリーブの上着、すらりと伸びた背丈、そして第一声が「ただいま」。

子供の彼を混乱させるには、十分な要素が詰まっていました。

( ゚_ゝ゚)

∬´_ゝ`)「何かたまってんのよ?」

( ゚_!_゚ )

∬´_ゝ`)「ちょっと、聞いてるの?」

不審者か、はたまた兄者の知らない従姉なのか。
彼の脳はこれまで類を見ない程の処理速度で情報を整理しますが、追いつけません。
親戚一同が集まる機会でも見たことがありません。

∬´_ゝ`)「まったく」

10 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 20:59:25 ID:jsT2KZOY0
棒立ちになる兄者の横を通り抜け、女性は家の中に上がりました。
止めていいものか、それすらも処理できません。
とりあえず、訳も分からないまま兄者は彼女の後に付いてリビングへと向かいました。

完全に我が家でくつろぐように女性は椅子に座り、深く溜息を吐きます。

∬´_ゝ`)「お茶頂戴、お茶」

(;´_ゝ`)「じ、自分で淹れればいいじゃないか!」

∬´_ゝ`)「五月蠅い弟ね。 いいから、ほら」

お。

(;´_ゝ`)「お」

と。

(;´_ゝ`)「と」

う。

(;´_ゝ`)「う」

と。

(;´_ゝ`)「と?!」

11 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:01:34 ID:jsT2KZOY0
∬´_ゝ`)「何驚いてんのよ? あたしが姉、あんたが弟。
     当たり前の事でしょ?」

さて。
兄者のミニマムお味噌の中は今、完全に冷静さを欠きました。
新たな弟妹が誕生すると思いきや、今度は姉の登場です。

今日はきっと、テレビ局の仕掛けたドッキリカメラの撮影日なのでしょう。
そうに違いありません。
そうでなければ、ここまで滅茶苦茶な話はないのですから。

どこかに隠しカメラがあって、今頃カメラクルーは爆笑している事でしょう。
と、被害妄想に浸る兄者に対して姉と称する女性はもう一度命令しました。

∬´_ゝ`)「お茶、速く」

(;´_ゝ`)「や、やだ――」

日々、兄者は母者の鉄拳制裁を前に生活していました。
つまり、暴力の化身を前にその力を見届けてきたという事です。
それなりの動体視力、そして勘が備わっているという自負がありました。

ですが、女性が放った攻撃は目視することはおろか察知することも叶いませんでした。
脛に直撃したのは、たまたま置かれていた週刊少年ジャンピョンの角。
完璧な不意打ちでした。

12 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:06:38 ID:jsT2KZOY0
(;´_ゝ`)「おっ、ぐぉおおおお……!!」

∬´_ゝ`)「勘違いしないでよ。 お願いじゃないの、命令」

仕方なしにキッチンに向かい、お湯を沸かします。
ティーバックを取り出してカップに入れ、しばし待ちます。
背後に気配を感じた兄者は、咄嗟に振り返りました。

∬´_ゝ`)「砂糖はたっぷりとね」

(;´_ゝ`)「は、はい……」

湯気が出てきたので火を止めようとすると、女性がそれを制止しました。

∬´_ゝ`)「紅茶を淹れるんなら、もっと沸かさないとダメ」

そんなこと言われても、と言いかけた兄者は喉もとでそれを止めました。
自分が知らないだけであって、この女性は多くを知っているのです。
まだ十歳の子供が反抗してどうこうなる相手ではないのです。

まるで母者を前にしている気分でした。

∬´_ゝ`)「それと、カップにはまだティーバックを入れない。
     先にお湯で温めてからお湯を捨てて、それからよ」

細かな指示をされながら紅茶をどうにか淹れ、兄者はそれをテーブルに運びました。

13 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:09:53 ID:jsT2KZOY0
∬´_ゝ`)「ふむ、まぁいいでしょう。 作り方を忘れないように」

(;´_ゝ`)「それで、あ、あなたは一体……」

∬´_ゝ`)「だーかーら、あんたの姉。 姉者よ。
     やっぱり、あたしのこと母者から聞いてないの?」

そもそも存在を聞いていません。
流石家は四人家族だったはずです。
姉がいるなど、ただの一度も誰も話していませんでした。

∬´_ゝ`)「まぁたぶん、母者なら言わないと思ったけど。
     一年に一回は家に顔出してたんだけど、気付いてないわよね」

いつの間にそのようなことがあったのでしょうか。
バイクが家の前に来れば嫌でも気付くはずですが、郵便屋のスーパーカブ以外、バイクは来たことがありません。

∬´_ゝ`)「母者、入院したんでしょ?
     心配だから最初に家に来てよかったわ。
     あんた、長男の自覚あるの?」

ここまで来たら、信用するしかありません。
母者の入院を知っているのは流石家の中でも兄者、そして父者だけのはずです。
ならば、母者の言っていた応援はこの姉者ということで説明が付けられます。

受け入れがたい事実を受け入れ、兄者は姉者の冷たい視線と質問に勇気を出して答えました。

14 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:13:57 ID:jsT2KZOY0
(;´_ゝ`)「じ、自覚ったって、何したらいいのかなんて知らないよ……」

∬´_ゝ`)「はっ!! なっさけないわねぇ!!
     玉ついてんでしょうが、玉が」

紅茶を一啜りし、姉者は続けます。

∬´_ゝ`)「仕方ないわ。 ここはおねーちゃんに任せなさい」

(;´_ゝ`)「どういう……」

∬´_ゝ`)「あたしが教育するって言ってるのよ。
     あんたが流石家の長男として相応しい男になるようにね」

大迷惑な話です。
兄者の理想は平穏無事に、道に転がる石ころや石の下で暮らす沢蟹のような生活をすることにありました。

(;´_ゝ`)「いいです、遠慮しておきます」

∬´_ゝ`)「はいまずレッスン1ー。 姉の言う事は絶対遵守。
     逆らうなら、あんたのノートパソコンを洗濯機で洗うわよ」

国際条約では、テロリストの脅しに屈してはならないと定められています。
しかし、流石家において力ある者の脅しには素直に従うのが長生きの秘訣として父から息子へと伝えられてきました。
この場合、兄者に抵抗する権利は一瞬で奪われ、また、反抗は彼の唯一の趣味を失う事を意味しています。

∬´_ゝ`)「じゃ、まずは掃除から。 ほら、エアコン切って窓開ける」

15 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:16:16 ID:jsT2KZOY0
(;´_ゝ`)「く、くっそっ……」

∬´_ゝ`)「レッスン2。 女性に向かって糞って言ったら、パソコンのエンターキー取るから」

( ´_ゝ`)「わぁい♪ 掃除だぁ!! 掃除大好きー!!」

言われた通りにエアコンを切って窓を開け、新鮮な空気を流し込みます。
掃除機と雑巾を使って掃除をし、トイレ、そして庭掃除も行います。
さほど汚れていないように見える庭ですが、枯葉や雑草の処理が行き届いていません。

∬´_ゝ`)「急ぎなさいよ」

掃除をする兄者を、姉者は腕を組んで見ているだけです。
額に浮かんだ汗をぬぐいながら、雑草をむしります。

∬´_ゝ`)「根元から抜かないでどうすんのよ、あんた。
     また生えてくるでしょ」

(;´_ゝ`)「ぎぎぎ……」

根元の近くを掴んで抜き、雑草と枯葉の山が出来ました。
一時間以上かけて掃除を終え、一息つこうとした時です。

∬´_ゝ`)「汗臭いわね。 風呂掃除のついでにシャワー浴びてらっしゃい」

16 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:19:39 ID:jsT2KZOY0
誰のせいで汗臭くなったのか、それを言及しなかったのは兄者の成長と言えるでしょう。
しぶしぶ風呂場に行き、服を脱いで浴室の掃除を始めます。
洗剤とスポンジで隅々まで綺麗にし、最後にシャワーで洗い流します。

そうして、自分の体を洗おうとした時、扉が開きました。
開くはずのない扉の向こうにいたのは、バスタオルで体を包んだ姉者でした。
先ほどよりも圧倒的に露出が増え、今にも足の付け根が見えそうです。

(;゚_ゝ゚)「ど、どどどどどどどど」

∬´_ゝ`)「どう躰を洗うのか見るのよ」

(;゚_ゝ゚)「そ、その前にふ、服をっ!!」

∬´_ゝ`)「いやよ。 濡れたくないもの」

この経験が後に彼の性癖を歪めてしまう決定打になったとは、姉者でさえも予想していなかったでしょう。

∬´_ゝ`)「それより、家族とはいってもせめて女性の前では股間は隠しなさい」

指摘され、兄者はすぐに前かがみになって必死に隠します。
顔はゆでだこのように真っ赤になり、陰部はあまりよくない反応を示しています。
事態が落ち着くまで暫くの間はこの姿勢を続けなければなりません。

(;゚_ゝ゚)「み、見ないでよ!!」

∬´_ゝ`)「別に見たくて見たわけじゃないんだけど」

必死に頭の中で別の事を考えます。

17 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:22:43 ID:jsT2KZOY0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(;・∀・)『大統領!! 外部からのクラッキング攻撃でミサイルが発射状態に!!
      このままではKIT-O弾頭が!!』

/ ,' 3『……万事休す、か。
   三銃士、この人間の尊厳は君たちに任せるぞ!!』

(,,゚Д゚)『なぁ、お前ら女の体でどこが好き? 俺は指だな』
  _
( ゚∀゚)『おっぱいだろ。 命を育む形をしてるからな、人間として当然だ』

( ^ω^)『はっ、これだから素人は困るお。 腋に決まってるお。
      字で書くと月と夜。 隠された場所にこそ人間はロマンを感じ、そして惹かれる。 これは常識だお。
      じゅるっ……あー、運動した後のツンちゃんの腋舐めてぇお……
      恥ずかしがってるのを無理やり押さえてペロペロしながら、ツンちゃんのミネラル美味しいって耳元で囁きてぇ……』

(;,,゚Д゚)『うわっ、じゃあお前腋おにぎりとか好きなのかよ?』

( ^ω^)『は? それじゃただの変態だお。 よくそんな発想できるな、引くわ』
━━━○━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   。゚
(;゚_ゝ゚)「うおおおおおお……」

18 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:25:52 ID:jsT2KZOY0
大混乱の会議が脳内で始まり、兄者はちらりと姉者を見上げます。
呆れたように手で頭を押さえるその仕草の中に、兄者は途方もないエロスを感じてしまいました。
無造作に上げられた腕の付け根。

そこに視線が釘づけになります。
バスタオルを押し上げる胸よりも、腋に目が行ってしまい、離せません。
何と美しいのでしょうか。

余計な毛が一本もなく、そして滑らかでいながらも刻まれた皺の影。
その全てが兄者の股間を刺激しました。
十歳のそれはただ純粋に刺激に反応し、痛いほどの主張を行います。

∬´_ゝ`)「……呆れた」

その言葉が聞こえた直後、兄者の頭上から冷水が浴びせられました。

(;゚_ゝ゚)「ひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

瞬く間に股間の熱は引き、持ち上げた鎌首はしおらしくなりました。
助かりました。

∬´_ゝ`)「あのねぇ、別にやましいことも、いやらしいこともないんだから、さっさと躰を洗いなさい。
     綺麗に洗えてるかどうかのチェックよ」

19 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:28:41 ID:jsT2KZOY0
こうして、兄者は姉者の前で体を洗うことになりました。
ひとしきり体を洗った兄者に、姉者はこう言いました。

∬´_ゝ`)「足の指もしっかりと、一本一本洗いなさい。
     それと、恥ずかしいのは分かるけど股間もちゃんと洗うのよ」

羞恥との邂逅を果たした彼は、下された命令に従うという事に対してある種の安心感を得てしまいました。
こうして彼は、アブノーマルな性癖の第一歩を踏み出したのです。
興奮の冷めないまま、続けて髪を洗います。

∬´_ゝ`)「指をしっかりと立てて洗うのよ」

言われるがまま、兄者はその指示に従います。
こうして、兄者にとっては人生を左右するシャワータイムが終わりました。
流石に着替えまでは見られることはありませんでしたが、一瞬だけそれが残念に思えてしまったのは、兄者だけの秘密です。

(;´_ゝ`)「さぁ、お次はなに?!」

∬´_ゝ`)「洗濯物を洗って干して、お昼ご飯を食べましょうか。
     その後お買い物、洗濯ものを畳む、以上が今日の予定」

( ´_ゝ`)「ちょっと待ってよ。 俺は洗濯機の使い方なんて知らないよ」

∬´_ゝ`)「で? だから? それが? どうしたの?」

泣く泣く洗濯機の取扱説明書を引っ張り出し、どうにか動かします。
洗剤を入れて洗濯を開始したのは、十時のことでした。

20 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:31:34 ID:jsT2KZOY0
∬´_ゝ`)「やれば出来るじゃない。 じゃあレッスン14、とりあえず行動あるのみ。
     覚えた?」

( ´_ゝ`)「覚えたけどさ、どうして俺がここまでしないといけないの?」

∬´_ゝ`)「長男でしょ? 兄なんでしょ? 弟や妹の手本になるためよ」

( ´_ゝ`)「えー」

∬´_ゝ`)「口答えはなし」

( ´_ゝ`)「じゃあ姉者はなんなのさ。 俺、姉者に手本を示してもらったことなんてないよ」

∬´_ゝ`)「そりゃそうに決まってるじゃない。 示した覚えないもん。
     それに、あたしはいいのよ」

そろそろ、兄者はこの姉者の事を知りたいと思いました。
突然現れ、その存在さえ母者に隠されてきた姉者。
果たして何者なのでしょうか。

( ´_ゝ`)「ねぇ、姉者はどうしていないことになってるの?」

∬´_ゝ`)「昔に母者を悲しませちゃってね。 そんなわけで、あたしは一年に一回だけ帰ってくることになったの。
     どう? これで満足?」

(;´_ゝ`)「説明が雑すぎるよ!!」

21 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:35:02 ID:jsT2KZOY0
∬´_ゝ`)「あのねぇ、覚えておきなさい。 おねーちゃんに逆らうっていうのは、母者に刃向うってのと同じよ。
     レッスン1で言ったでしょ、姉の命令は絶対遵守」

理不尽です。
自分は多くを知っているからいいですが、兄者は姉者について何も知りません。
母者を悲しませた、その経緯もどこにいたのかも分からないままです。

これ以上訊いたところで、姉者は何も教えてくれないでしょう。

∬´_ゝ`)「いい女はね、秘密があるものなのよ」

(;´_ゝ`)「ただのケチじゃん……」

睨まれ、兄者は口を紡ぎます。

∬´_ゝ`)「ほら、洗濯終ったから干しなさい」

しぶしぶ従い、洗濯籠に洗い終わったばかりの衣類を積めて庭に出ます。
洗濯物をハンガーにかけて干していると、姉者の声が背中からかけられました。

∬´_ゝ`)「それじゃ皺だらけになるでしょ。
     伸ばしてから干すのよ」

いつの間にか紅茶を手に現れた姉者の言葉を守り、一生懸命に皺を伸ばして干していきます。

∬´_ゝ`)「洗濯物の端を持って、パーンってしなさい。
     いつも母者がそうやってるでしょ?」

22 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:36:41 ID:jsT2KZOY0
言われた通りにタオルを振ると、いつも庭から聞こえてくる音がしました。
ですが、母者の場合は少しやり方が違います。
空高くに放り投げた洗濯物をそのまま上空で広げ、高速でハンガーにかけていくのです。

人間業ではありません。
真似するのは不可能です。
しかし姉者の教えてくれたこの方法なら、問題なく干せます。

何と合理的なのでしょうか。
人間を辞めなくても洗濯物が干せます。
洗濯物は三十分で干し終わりました。

(;´_ゝ`)「つ、疲れた……」

∬´_ゝ`)「はいお疲れさま。 じゃあ次よ」

(;´_ゝ`)「ええええ」

∬´_ゝ`)「お買い物に行くわよ」

家から最寄りのスーパーへは徒歩で十分ほど。
車なら三分もあれば着きます。

( ´_ゝ`)「じゃあバイクに乗せてよ!」

∬´_ゝ`)「は? 駄目よ。 あんたにはまだ早いわ」

(;´_ゝ`)「早いってなんだよ! いいじゃんよ!」

23 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:39:50 ID:jsT2KZOY0
∬´_ゝ`)「今はまだ駄目。 乗る時が来るまでは、絶対にノゥ」

(;´_ゝ`)「じゃあ見せてよ。 見るぐらいならいいでしょ?」

∬´_ゝ`)「まぁ見るぐらいならいいわよ」

お財布と買い物バッグを持ち、家を出ます。
しっかりと施錠したことを確認し、兄者は家の前に停まるバイクに目を丸くしました。

(;゚_ゝ゚)「こ、これはっ……!!」

                   ,,,_,。r・。,_  ,__
                    =ヨ>n。ミ\F゙
     _.,。rf ",゙i。   ,イ ̄`≡=->::ノ   `i-。、
    .〈、_:... ト,ヒー-。l/ ヽ_,,。ゝヾ゚"  .n。,、\メ。
   /\i\_.ヽ.,._`\.゙":_,..i"::::...__,,   , ゙゚-ー" .ヽl
   .\...\::i/|ト。,.._Vi´..,ノ゙::::::::. ∥:..   / ̄,~´,
     >、 \||ミli>::,illi/゙:.....::_∥  ./i:。::.....  ゙i。
      {{=〔C∠ <{li{:::::... ゙li "..:::ン":::λ ,r==ニ゙
      .V:,゙二" /:::シ__  _|l::::... ゙l::::{{:H《゙Y"}).l::::}l
       .`<_彡'"   ゙̄гーー-゙ー巛;,フヒヒ;ソ:::ノ
                         `<主キレ"

スズキ・GSX1300R、隼です。
世界最速のアルティメットスポーツバイクとして知られ、世界でも多くのファンを抱えるスズキ社を代表する一台です。
兄者が最も好きなバイクでした。

24 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:44:51 ID:jsT2KZOY0
図工の時間にその置物を作るほど好きなバイクで、それは玄関の置物の中でも異彩を放っています。

∬´_ゝ`)「はい、見たでしょ。 さっさと買い物行くわよ」

(;´_ゝ`)「ま、跨るだけ!! 跨るだけでもいいでしょ!!」

∬´_ゝ`)「だ・め」

有無を言わせない姉者は兄者と共にスーパーへと向かいます。
スーパーまでの道中、姉者は一言もしゃべりませんでした。
そして兄者をおいてさっさと先を歩きます。

(;´_ゝ`)「は、はえぇ……」

∬´_ゝ`)「レッスン43、歩くときは誰よりも先を歩くべし。
     危険がある場合はそれを速やかに排除すべし」

姉者の一歩は兄者の三歩分にも相当し、歩く姉者の後を走って追うしかありません。
大安売りを謳うスーパー・カクヤスに到着した兄者は、買い物かごを持ちます。
母者がいつもそうしているからです。

母者曰く、この店は戦場だそうです。
それも納得できます。
すでに店内は人で溢れかえり、主婦たちの怒号と店員たちの威勢のいい声が響いています。

この中を突っ切るには母者ほどの経験者でなければ、瞬く間にその波にもまれて気が付けば店のどこかに流れ着いてしまいます。
ましてや、世間では連休が始まっているので、普段よりも一層混んでいます。

25 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:51:11 ID:jsT2KZOY0
∬´_ゝ`)「今日のお昼ご飯は焼きそばね。
     キャベツ、もやし、肉、焼きそばを買いましょう」

(;´_ゝ`)「夜は?」

∬´_ゝ`)「近所のお祭りがあるでしょ? そこで買えばいいわ」

素早く献立と今後の予定を決定した姉者は、臆することなく人ごみの中に入っていきます。
離れないよう、兄者もその後に続きます。
しかし、それもそう長くは続きません。

姉者はどういう原理か分かりませんが、人ごみに足を止めることなくどんどん店の奥に進んでいきます。
一方の兄者は主婦たちが作り出す変幻自在の迷路に飲み込まれ、もみくちゃにされてしまいました。

(;´_ゝ`)「あ、姉者ーっ!!」

∬´_ゝ`)「何やってんのよ」

(;´_ゝ`)「待ってくれー!!」

人ごみの中でも姉者の頭は一つとび抜けているため、見失う事はありませんが、距離が離れてしまえばそれまでです。
これ以上離れないよう、兄者は懸命に追いかけます。
目的の食品を全てカゴに入れ、レジに並びます。

買い物はここからが長いのです。

∬´_ゝ`)「じゃ、後よろしく」

26 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:53:28 ID:jsT2KZOY0
そう言って、兄者が何かを言う間もなく人の間をすり抜けていく姉者でした。
会計をしないわけにもいかず、兄者は一人で買い物を済ませ、なんとか店を出ます。
姉者は出口で待っていました。

∬´_ゝ`)「お疲れ様。 さ。 さっさと帰って焼きそば作るわよ」

(;´_ゝ`)「ぐぬぬ……」

本当であれば文句の一つも言いたいところです。
一人で買い物をするのは初めてではありませんが、ここまで放任されての買い物は初体験でした。
ましてや、料理は全くの未経験。

不満を口にしないだけ、兄者は自分が大人であると言い聞かせました。
来た時と同じような形で家に戻り、台所に立ちます。
広げた焼きそばの材料は普段母者が料理をしているのと同じぐらいの量があり、一見すれば兄者には多すぎるように見えます。

ですが、焼きそばは見かけほど手間のかかる料理ではないため、野菜炒めを作ることが出来ればまず失敗はありません。
強いて一つだけ失敗があるとすれば、それは麺選びの段階です。
今回兄者が買ったのはチルドタイプの物で、売り場で姉者が選んだブランドのものでした。

恐ろしく飾り気のない透明なパッケージ。
常に安売りをされているイメージの焼きそばですが、姉者曰くこれが至高の焼きそばとのことでした。
味の違いについては分かりませんが、長年愛され続けている品には理由があるのでしょう。

一パックに麺は三袋入っており、兄者はいつも二袋、弟者が一袋、そして母者が六袋食べています。

( ´_ゝ`)「姉者は何袋食べるの?」

∬´_ゝ`)「あたしはいいわ。 自分の分だけ作りなさい」

27 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:55:22 ID:jsT2KZOY0
( ´_ゝ`)「ダイエット?」

∬´_ゝ`)「ケツにペプシストロング突っ込むわよ。 あたしはダイエットの必要はないの。
     単に、お腹が減っていないだけよ。 食べるとしたら、あんたの分を一口だけもらうわ」

それからまな板と包丁を取り出し、野菜と肉を刻んでいきます。
家庭科の授業を思い出し、慎重に行います。
刻んだ食材はいったん更に乗せ、温めたフライパンに油を敷いて調理を開始しました。

麺を炒め、野菜を入れ、粉末ソースで味を調えます。
こうして出来上がったのは普段母者が作ってくれる焼きそばと同じものでした。
いえ、強いて違いがあるとしたらそれは野菜の切り方と焼き加減ですが、香りは同じです。

皿に盛り付けて食べ始めます。
味は申し分なしです。
自分で作った焼きそばは世界一美味しい物でした。

美味しそうに食べる兄者を、姉者は向かい側に座って見ています。
マナーを注意するでもなく、見かけに文句を言うわけでもありません。

∬´_ゝ`)「美味しい?」

( ´_ゝ`)「最高だよ」

∬´_ゝ`)「それは良かったわね。
     今度は別の料理にも挑戦してみなさい」

( ´_ゝ`)「どんなの作れるかな?」

28 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:57:32 ID:jsT2KZOY0
∬´_ゝ`)「そうねぇ。 カレーとかシチューが簡単ね。
     カレーの美味しい季節だから、近々作ってみるといいわ」

( ´_ゝ`)「分かった」

ひとまず今は、焼きそばが優先です。
全て平らげ、洗物も済ませます。
もちろん、その際にも姉者の助言がありました。

∬´_ゝ`)「水を出しっぱなしで洗わないの。
     水がもったいないでしょ」

(;´_ゝ`)「だ、だって父者はこうやって……」

∬´_ゝ`)「母者は違うでしょ。 私に逆らうつもり?」

(;´_ゝ`)「や、やるよ…… 止めればいいんでしょ」

そして一通りの家事が終わり、兄者は少しだけ眠くなってきました。
学校がないとはいえ、やはり、慣れないことを続けたのが良くなかったのでしょう。

( ´_ゝ`)「ね……眠い……」

リビングでうつらうつらとしながら、兄者は姉者と共にテレビを見ています。
テレビの内容は何も頭に入ってきません。

∬´_ゝ`)「じゃあお昼寝したら?」

( ´_ゝ`)「でも……」

29 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 21:58:58 ID:jsT2KZOY0
∬´_ゝ`)「?」

( ´_ゝ`)「もうちょっと、姉者とお話したい……
      いろんなこと知ってるんでしょ?
      ねぇ、今どんな仕事してるの?
      昔はどんなことしたの?」

∬´_ゝ`)「話をしてあげるけど、ちょっと寝た方がいいわよ。
     ほら、横になりなさい」

軽い抵抗を試みますが、兄者は床に寝転がりました。
途端に瞼が重くなってきます。

∬´_ゝ`)「あたしは昔いろいろあったの。
     本当にいろいろあって、今あんたに教えることは出来ないわ。
     詳しくは母者に訊きなさい。

     そして今は――」

姉者の言葉を兄者が最後まで聞くことはありませんでした。
最後に覚えているのは、頭を撫でる優しい手の感触と温もりだけでした。
感じたのは、初めての気持ちでした。

30 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:01:06 ID:jsT2KZOY0
常に長男として手本を心掛ける兄者は、それ故に甘える対象がほとんどいませんでした。
父者は仕事。
母者は家事、そしてまだ小さい弟者のことで手一杯です。

本当は、兄者も甘えたいという気持ちがありました。
今もその気持ちがあります。
だから時々、母者を困らせようとして、構ってもらいます。

そうでなければ、誰も兄者に構ってくれないのです。
これは友人でも弟でもなく、年上の姉兄の存在が必要でした。
ですがそれは絶対に叶わない夢でした。

妹や弟は生まれてくる可能性がありますが、年上の存在だけは時間を巻き戻さない限り絶対に叶いません。
それが今日、思わぬ形で実現した時。
兄者は長らく忘れていた甘えるという気持ちを取り戻し、最も無防備な姿をさらすことになったのです。

そして、夢を見ました。
微睡の中、夢を見たのです。
それは不思議な夢でした。

姉者が昔からずっと一緒にいて、弟がいて、そして妹がいる不思議な夢でした。
姉者は優しく、そして厳しく接してくれました。
兄者はそれに甘えながら、弟と妹の面倒を見ます。

嗚呼。
夢でなければと、兄者は思います。
姉がいるだけで、ここまで幸せを感じられるのです。

31 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:02:47 ID:jsT2KZOY0
今日会ったばかりの姉者は、確かに厳しい人です。
それでも、彼女の行動の全ては兄者に多くを学ばせるための優しさを伴っていました。
それがたまらなく嬉しく思えるのです。

失いたくはない。
一度知ってしまえば、もう二度と手放したくないと思う感覚です。
甘く、痺れるようなこの感覚は、何なのでしょうか。

ふと。
涼しげな風に乗って、太鼓の音が聞こえてきました。
そう。

今日はお祭りの日です。
ゆっくりと瞼を開けると、もう日が傾いていました。
夕方の五時。

起きて気付いたのは、姉者がいない事でした。
見回しても、室内にはいません。
家のどこかにいるのだろうと思い、探します。

ですがどこにもいませんでした。
帰ってしまったのでしょうか。
それとも、母者のところに向かったのでしょうか。

書置きも何もなく、不安ばかりが兄者を襲います。

∬´_ゝ`)「洗濯物、入れなさい」

32 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:05:56 ID:jsT2KZOY0
その時、何の前触れもなく姉者が現れました。
家中を探したのに、どこに隠れていたのでしょうか。
不安が消え、兄者はすっかり乾いた洗濯物を取り入れました。

∬´_ゝ`)「さぁ、お祭りに行くわよ。
     私はお祭りの後、いかないといけないから後のことは自分でやってね」

(;´_ゝ`)「えー!? 何で? せっかく帰って来たんだから、泊まりなよー」

∬´_ゝ`)「あたしにもいろいろ事情ってのがあるのよ。
     今日だって無理してここに来たんだから。
     ほら、急ぐ急ぐ!」

急かす姉者に、兄者は――

33 ルートが分岐しました→Bルート :2015/12/27(日) 22:09:15 ID:jsT2KZOY0
(;´_ゝ`)「うぅ……」

――何も言い返すことは出来ませんでした。
大人が事情と言ったら、それ以上は教えてくれないのです。
お財布にお金を入れて、それをポケットに入れて準備を整えます。

34 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:15:13 ID:jsT2KZOY0
こうして準備を終えた兄者は、姉者と共に家を出てお祭り会場に向かいました。
すっかり夕方の時間ですが、まだ空は黄金色のままです。
次第にこれがオレンジとなり、紺色と交じり合って最後には夜になるのです。

一番星の浮かぶ空を見上げながら、兄者は姉者の後ろを走ってついていきます。
お祭り会場となった神社には沢山の人がいました。
皆、今日の祭りを楽しみにしていました。

屋台からは美味しそうな匂いが立ち上り、子供たちは射的やくじ引きの店で盛り上がっています。

( ´_ゝ`)「姉者は何か買うの?」

∬´_ゝ`)「バイクに荷物積めないのよ。 だから、あんたが買ってちょうだい。
     食べたいものを二つずつ買うのよ。 ただし、持てる分だけね」

(;´_ゝ`)「え!? 手伝ってくれないの?」

∬´_ゝ`)「女に重い物を持たせるつもりなの?
     私のレッスン28で言ったでしょ、女性に重い物を持たせるなって」

反抗は許されません。
レッスン1、絶対遵守なのです。

( ´_ゝ`)「なら最初はチョコバナナ、リンゴ飴、冷やしきゅうりだ!」

35 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:20:50 ID:jsT2KZOY0
∬´_ゝ`)「あのねぇ、まずはメニューを組み立てるのよ。
     今日のお昼は焼きそばだったから、お好み焼きがメインになるでしょ。
     そしてたこ焼き、まぁフランクフルトと焼きモロコシが限界ね」

何だかんだで、メニューを組み立ててくれました。
しかしその量を考えると、かなり大変です。
それでも、レッスン28にある通り姉者に持たせるわけにはいきません。

まずはお好み焼き、たこ焼き、フランクフルト、次いで焼きモロコシ、最後にリンゴ飴を買いました。
お好み焼きとたこ焼き、そしてフランクフルトはパックに入っているので重ねられますが、最後の二つ。
トレーに載った焼きモロコシとリンゴ飴が厄介の種になりました。

二つとも不安定な形状をしているため、重ねるには不向きです。
どうにか重ねたものの、人ごみの中で落とさずに運搬するのは至難の業です。

∬´_ゝ`)「思い出しなさい。 スーパーの人混みの方がすごかったでしょ」

そうです。
今日兄者はこれの五倍近くの人混みの中を生き延びたのです。
なら、出来ないはずはありません。

∬´_ゝ`)「目標地点は境内裏。 分かるわね?」

(;´_ゝ`)「合点承知!」

36 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:26:20 ID:jsT2KZOY0
慎重かつ迅速な移動を行い、兄者は境内の裏に到着しました。
転びそうになる事十三回、すれ違う子供にぶつかる事七回。
全ての食料は無事なままです。

∬´_ゝ`)「流石ね」

大成功でした。
境内の裏には小さな椅子が置かれていて、これを知っている人は非常に少ないです。
大概の人は急きょ設置された飲食スペースで済ませるので、わざわざ好んでここに来る人はいません。

兄者はさっそくフランクフルトから食べ始めます。
たっぷりのケチャップとマスタードがアツアツの肉と合わり、パリッとした皮がたまらなく食欲を刺激しました。
口の周りにケチャップをつけたのも気にせず、兄者はフランクフルトを平らげました。

焼きモロコシを起用に食べ、そしてたこ焼き、お好み焼きとソース味の食べ物が続きます。
しかしこれでいいのです。
子供はソース味が大好きなのです。

最後にリンゴ飴に手を付けようとしたところで、姉者が言いました。

∬´_ゝ`)「そろそろ口の周り拭きなさいよ」

( ´_ゝ`)「拭くのないもん」

∬´_ゝ`)「ったく、もう」

姉者の手が兄者へと伸び、口の周りのケチャップを拭い取りました。
そして姉者はそれを舐めとりました。

37 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:28:52 ID:jsT2KZOY0
∬´_ゝ`)「次からは、食べるときは上品に食べなさい。
     家の中と外じゃ違うんだから」

( ´_ゝ`)「把握した」

∬´_ゝ`)「ちゃんと覚えておくのよ」

姉者が隣に座っているだけで、兄者は祭りが楽しく思えました。
他に欲しいものは何もありません。
姉者が少しでも長くいてくれれば、それだけで十分だと感じるのです。

そして、しばらくの間兄者はリンゴ飴を舐めていましたが、姉者が食べ物に手を付けないことを疑問に思いました。

( ´_ゝ`)「姉者、何で食べないの?」

∬´_ゝ`)「だってそれは父者の分だもの。
     ……そろそろね」

そう言って、姉者は椅子から立ち上がります。

∬´_ゝ`)「あたし、そろそろいくわ」

( ´_ゝ`)「……うん」

38 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:30:34 ID:jsT2KZOY0
買った物を持って、兄者は姉者と一緒に家に向かいます。
姉者は隼に跨り、ヘルメットを被りました。
エンジンをかけ、低いエンジン音が祭りの音と混ざり合います。

∬´_ゝ`)「あたしのレッスンを忘れないようにね、兄者」

( ´_ゝ`)「うん…… 忘れないよ、姉者」

∬´_ゝ`)「じゃあ、元気でね」

そして――

( ´_ゝ`)「またね、姉者」

――兄者は、姉者がバイクで走り去っていくのを見届けました。
先ほどまで感じていた興奮も何もかもが、今では虚しさでいっぱいです。
どうしようもありません。

自分は子供で、姉者を引き留められるだけの理由がないのです。
本当は涙の一つも流したいところですが、あまりにも唐突な出来事だけに悲しみが追いつかないのです。
もとより幻のような存在だったため、それも無理からぬ話でしょう。

一日だけ一緒にいてくれた姉者の事を、兄者は生涯忘れることはありませんでした。
今日、この日。
かつて亡くなった者たちが帰ってくる、お盆と呼ばれる日のお話でした。

39 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:31:44 ID:jsT2KZOY0
――この日以降、兄者が姉者に再び会う事はありませんでした。
ですが。
もしも。

そう。
もしも、の話です。
もしも兄者が、もう少し違った会話をしていたら彼は真実に気付いたかもしれません。

そうしたらこのお話の結末は、変わったかもしれません。
しかし彼には分かりません。
姉者のいる幸せをもっと望んでいれば、と後悔したところでもう遅いのです。

彼が幸せになるには、真実と約束が必要だったのです。
姉者の真実を知り、絶対の約束を交わす必要があったのです。
これは、そうならなかった時のお話なのです。

ひょっとしたら、別の次元に存在する平行世界の兄者は別の選択をしたのかもしれません。
この次元では、そうならなかっただけのことです。







                        BAD End

40 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:32:27 ID:W3gysiCw0
何がBルートのトリガーだったんだ
支援

41 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:36:30 ID:jsT2KZOY0
支援ありがとうございました。

平行世界の兄者の言動を見ていただければ分岐点がよく分かると思います

42 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:40:41 ID:W3gysiCw0
>>40Bルートに変わった所で書いたんやすまん

BADじゃない方も同じタイトルなのかな?

43 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:42:47 ID:jsT2KZOY0
>>42
同じタイトルで今進行中でございます

44 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:44:20 ID:W3gysiCw0
vipだったか見てくる

45 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 22:57:50 ID:RZ6v09A.0
VIPと両方に投下したのは分岐のためだったか


46 名も無きAAのようです :2015/12/28(月) 00:44:00 ID:xJaPqYTY0
vipの方も読んできた。
どっちの終わり方も好きだな

バイクの理由に笑ったw
おつ

47 名も無きAAのようです :2015/12/28(月) 01:12:52 ID:Y85kwzRQ0
落ちてて見れなかった
残念

48 名も無きAAのようです :2015/12/28(月) 01:15:31 ID:hMze6.sQ0
ログ速でも見れないのん?

49 名も無きAAのようです :2015/12/28(月) 01:33:01 ID:xJaPqYTY0
自分は帰ってくるようですでネット検索して、過去ログで読んだよ

50 名も無きAAのようです :2015/12/28(月) 01:36:56 ID:xJaPqYTY0
ミス
スマホからなんだが、
「このまま表示」ってやつをクリックして読めた。

51 名も無きAAのようです :2015/12/28(月) 03:28:22 ID:Pf8q1uBo0
乙乙
姉者最高や

52 名も無きAAのようです :2015/12/28(月) 09:05:25 ID:W6katbFE0
ログ速で見られたわ
ありがとう

53 名も無きAAのようです :2015/12/28(月) 12:04:45 ID:rx4Scp8Y0
VIP気付かなかった残念

54 名も無きAAのようです :2015/12/28(月) 20:08:51 ID:6pCp3CxM0
お姉ちゃんの人か

55 名も無きAAのようです :2015/12/29(火) 08:27:12 ID:FnL5Yl0g0
VIP見れた人いいなー、お盆的な話って事でいいのかな

56 名も無きAAのようです :2015/12/29(火) 12:23:15 ID:.ptwXg7k0
が帰ってくるようです ログ速

でググれば一番上に出てくるよ

57 名も無きAAのようです :2015/12/29(火) 13:10:48 ID:ejn9WUX20
あとmesimarjaがまとめてるからそっちでも見れるぞ

58 名も無きAAのようです :2015/12/29(火) 15:01:10 ID:Dl5sdCPQ0
read.cgiなら普通に過去ログ見れるしな

59 名も無きAAのようです :2015/12/29(火) 22:15:13 ID:dx.iJ3gc0
今やっとtrueルート読んできた
いい話だな……
こっち先読んでよかった

60 名も無きAAのようです :2016/01/21(木) 14:32:59 ID:BnkJ7gSU0
姉者の死因:母者のげんこつ


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