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( ^ω^)一レス作品で失われたブーン系力を取り戻しましょう

21>>8:2016/09/18(日) 07:23:34 ID:vUnnyOYc0
  わたしの『秘書』は涼しい顔で後をついてきていた。先程拉致し、電源を落としたドクオ議員の『秘書』をきちんと両手で抱きかかえて。
今頃トイレから戻ったドクオ議員は焦りに焦っているだろう。もう警察に通報はしただろうか。政敵であるわたしに目が向くのは間違いなかった。

  あらかじめ準備していた車のトランクを開くと、わたしの『秘書』がドクオ議員の『秘書』を乱暴に転がした。
その瞬間、わたしの背筋は凍りつき、情けなくも小さく声を上げた。首筋に突き刺さったUSBメモリが外れたり、
コネクター端子が折れてしまった途端、ドクオ議員の『秘書』は目を覚ましてしまう。GPS機能はもとより自己防衛機能も怖かった。

  目立ってはいけない現状も忘れて『秘書』を大声で怒鳴り、殴りつけたが、はっと我に返った。時間がないのになんて無駄な時間を。
『秘書』に運転を命令し、わたしは助手席に乗り込んだ。誰にも教えていない隠れ家を人里離れた避暑地に用意してあった。そこへ向かうのだ。

  取るに足らない情報や、体験したその場で抱いた細やかな感情などは本人の頭の中だけに留めておくものだが、
無数の人間と関わり、そのすべてに失敗が許されない仕事が関係しているとなれば、確実な記憶装置に保存するのは当たり前だ。
三原則こそあれど、『秘書』の権利は主本人の権利に相当するのに加えて非常に高度なセキュリティで守られていると考えれば、
情報の観点から考えてもむしろ地頭よりも安全と言えた。消えず露見しないもうひとつの頭を利用しない手はない。わたしも例外ではない。

  避暑地の隠れ家に到着したわたしは、『秘書』にドクオ議員の『秘書』を再び抱えさせて家の中に運び込んだ。同時に、動きを拘束するように伝える。
わたしの『秘書』がしっかりと組み付く間に電波遮断器の電源を入れてGPS機能を無効化し、すぐ側のパソコンから伸びている接続コードを手に取った。今からUSBメモリを抜くため、
再起動したドクオ議員の『秘書』は激しく抵抗するだろう。アンドロイド用接続コードを突き刺して再び電源を落とすつもりだが、使用するプログラムがセキュリティを突破するまでの数秒間はどうしても生じてしまう。
しかし、わたしが自分で依頼したものとはいえ、このクラッカーのプログラムには寒気を覚える。
裏で一番の腕を持つものだと言っていたが、この世の『秘書』はすべて彼の意のままに情報を吐き出すのだろうか。だとすれば、この世はすでに彼によって支配されているのでは?

  ……おかしい。いくら探っても私生活やまっとうな仕事内容しか出てこない。あるとしても、軽犯罪程度。これはあり得ないことだった。
この政治の世界に生きてきて、汚職に手を染めていないはずがない。こちらにはどんな防壁でも破るプログラムがあるのに何故? …………なにか、おかしい。腹部内の情報量が奇妙だ。明らかに少なかった。

  一世一代の犯罪に手を染めている焦燥と、目当ての情報が見つからなかった苛立ち、ようやく手がかりらしきものを見つけた興奮。
考えるよりも早く、ドクオ議員の『秘書』の腹を刃物で切り開いていた。証拠が残るだとかそういう後先のことは考えていなかった。幸運にも予想は当たり、箱が転がり落ちた。
握りこぶしよりも二回り程度大きいその箱は、赤色、黄色、青色、白色、緑色、橙色、水色、紫色がまだらになっていた。混乱したが、正体はすぐにわかった。
正十二面体のルービックキューブ。瞬間、直感で理解してしまった。全面を揃えると鍵が解除される仕組みで、中身に目的の情報が詰まっているのだろう……。
こんなもの、解けるはずがない。インターネットサイトで見つけられる解法はある程度経験を積んだ者にしか理解できないように書かれている。わたしには当然、心得はなかった。
力づくで壊してしまおうかと考えたが、中身のデータが壊れてしまえば元も子もない。わたしは悪態をついた。いくら世界を意のままにできる力を持っていたとしても、目の前の「単純な障害」には手も足も出ないじゃないか!


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