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( <●><●>)最低な死を迎えるようです
1
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:28:59 ID:lO35HPnw0
私は医者になりたかった。
「おい......またあいつだよ」
そのために私はすべてを捨てていた。
「まーいかにもって感じだよねぇ」
周りのものは全て、目障りなゴミに見えた。
「おめでとう、和歌手。全国模試トップ、本当にお前は先生の、いや我が校の誇りだよ」
( <●><●>)「はい」
周りの雑音など、聞くに値しない。
馬鹿な豚共がブヒブヒとうるさいだけだ。
意味のない話であーでもないこーでもないと時間を浪費するだけの、バカ共。
愚民と言ってもいい。
怠けることしか知らないバカに付き合う暇などない。
私は、医者になるのだから。
2
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:29:40 ID:lO35HPnw0
医者は、いい。
人の体を自由にすることを許されたただひとつの役職。
つまりそれは人の超越。
人を救える唯一で絶対の存在。
神に足を一歩、踏み入れることと同じ。
あんなバカ達と違う世界に住めるのだ。
( <●><●>)「......」
学校と言う名の牢獄の窓から外を見る。
ああ、なんてバカげてる世界なんだ。
いくら優秀でも世間体と言うものがなければ息をするのすら弾劾されるこの世界。
バカがバカな世界を作ってるのがよくわかる。
バカが優秀な人間を押し下げてるのが肌でわかる。
そしていざ優秀な人間が前に出ようとするとそれを食い潰す。
それはまるで、害虫。
そう、寄生することしか頭にないバカな寄生虫なのだ、やつらは。
3
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:30:24 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「......ふっ」
そんなことを考え、三分ほど無駄にしていたのにようやく気がついた。
こんなわかりきった無駄なことを考えるくらいだったら勉強していた方が数百、いや数千倍......いや0にいくらかけても0なのだからもはや比べることすらできないレベルで無駄なことだった。
( <●><●>)「......」
パラリ、と医学書を開く。
それだけで周りが奇怪な目でこちらを見る。
自分の将来のために何かすることがそんなに異様な光景だろうか?
まああのバカ共は今を生きれればいいとしか考えられないバカだから仕方ないと言えば仕方ないが。
最も、今も生きられないバカもいるわけなのだが。
4
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:31:05 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「ねぇねぇ和歌手くん!」
そう、こいつだ。
バカ中のバカ。
素直九徒。
きゅーと、だなんて名前を付けるくらいだ、親も相当頭がイカれてしまってるのだろう。
なんせ子供は、こちらの勉強してるのが見えているはずなのに邪魔をしてくるのだから。
o川*゚ー゚)o「次さー、数学じゃん?出見先生のやつ、確かテストあるよね!」
( <●><●>)「......」ペラッ
o川*`ー´)o「お願い!山教えて!」
5
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:31:49 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「......」カリカリ
o川*゚ー゚)o「むー!教えてくれたっていいじゃーん。ケチー」
( <●><●>)「......邪魔」ペラッ
鬱陶しい。
夜の蚊の羽音より鬱陶しい。
近寄るな。
バカが移るだろうが。
ボタンはちゃんと閉めてないし着崩してるわ、髪は茶色入ってるわと校則スレスレをいくその格好。
もし近くにいて友達とでも思われたら私の世間体がおかしくなる。
早く、消えろ。
6
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:32:30 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「いっつもさーなんかよくわかんないの読んでるけどーなにそれー?」
( <●><●>)「......」カキカキ
o川*゚ー゚)o「ちょっと見せて......うーわー、これ英語?やっぱすごいんだねー和歌手くんって」
ドイツ語と英語の見分けもつかないのかこのバカは。
ドイツ語と分からなくても英語ではないと気づかないのか。
バカだ、バカすぎる。
そしてなぜ私はこんなバカに絡まれなければならないんだ。
( <●><●>)「......」ペラッ
o川*゚ー゚)o「ねーねー」
甘ったるい声が脳を揺さぶる。
吐き気がする。
なんだ、こいつは。
いつも、いつもいつも、いつもいつもいつもいつも邪魔しやがる。
なぜ優秀な私がこんなやつに絡まれなければならないんだ。
こんなバカ、さっさと淘汰されて絶滅すればいいのに。
7
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:33:12 ID:lO35HPnw0
キーンコーンカーンコーン......
o川;*゚ー゚)o「げぇ、休み時間終わっちゃった......べんきょーできてないよ。どしよー......」
知るかバカ。
そう思いながら本をしまう。
同時に教室に出見先生が入ってきた。
そして予告通りテストを配っていく。
テストが手元に来るとき、チラリと時計を見る。
約5分、くらいか。
私が今日、この女に無駄にされた時間は。
頭のなかで計算し確認する。
さて、この無駄になった分、どこで取り戻そうか。
そんなことを考えながら配られたテストを解いていく。
当然、解らない問題も、間違える問題もひとつもなかった。
8
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:33:53 ID:lO35HPnw0
.........
......
...
( <●><●>)「......ふぅ」
夜、随分遅くなってしまった。
調べものをしに近くの大学の図書館に行っていた訳だがなかなかの収穫だった。
早く帰って、まとめ直さなければ。
そう思い、小さな路地へと入っていく。
人通りの少ない、暗い路地。
だがそこが一番家へ近い抜け道なのだ。
危険な噂などもない。
怖がることなく、その道を進む。
9
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:34:46 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「......ん?」
その暗い道の先に二つの影が見えた。
身長的と体格的に一つは太った男のもの、もう一つは小柄な女のもののようだ。
襲われてる、という雰囲気ではないしどう考えても、親子とかカップルではない。
そしてこんな路地。
思わず汚いものを見たときのように顔をしかめてしまう。
恐らくあれは、援交だろう。
底辺の底辺。
糞の掃き溜めのすることだ。
この道を選んだことを少し後悔する。
( <●><●>)「......」
まあ、そんなもの無視して通ればいい。
気づかれないように一本早めのところで曲がればいいだけの話だ。
そう考え歩みを早める。
どうやらあちらも話が終わり、別れるようだ。
ちょうどいい、さっさと帰れ。
さっさとあいつらを視界から消したい。
10
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:35:28 ID:lO35HPnw0
さらに歩みを早める。
早く、帰りたい。
その一心で。
「......和歌手くん?」
......
今、私が呼ばれた?
どう言うことだ?
ここに、私以外はあのゴミしかいない。
いやでも私にゴミの知り合いなんていない。
......
いや、一人いた。
いやだがまさか、そんなにバカだとは思っていなかった。
私はそんなのに付きまとわれていたのか。
吐き気がする。
目眩もする。
重たい視線をあげる。
暗い道の先にいた女の影。
それは。
o川*゚ー゚)o「あはは......」
素直九徒がそこにいた。
11
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:36:09 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「いやーまさかこんなところで友達とあうとはねー」
( <●><●>)「......ふん」スタスタ
o川;*゚ー゚)o「え、ちょっ!?何で帰るの!?」
( <●><●>)「......帰りたいからですが、何か」
o川*゚ー゚)o「......何か聞きたいこととかないの?」
( <●><●>)「別に」
o川*゚ー゚)o「......ふふ、本当に私に興味ないんだね。いや、私って言うより周り、かな?」
( <●><●>)「分かってるじゃないですか、なら」
o川*゚ー゚)o「和歌手くんってさ、童貞だよね?」
12
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:36:50 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「は?」
......思考が止まった。
何を言っているんだ、こいつは。
o川*゚ー゚)o「あはっ!ようやく興味持ってくれた?」
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「和歌手くんも男だもんね」
( <●><●>)「下らない」
吐き捨てるようにいう。
下らない。
ああ、本当に下らない。
体を武器にするなど、本当にこいつは。
どこまで人から堕ちているんだ。
13
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:37:53 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「......ふーん。下らないんだ」
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「......ほれっ」
(; <●><●>)「っ!?」
いきなり、胸のボタンを外した。
そうわかったときにはもう、そこには白い肌が存在していた。
医学書で何度も見たこともある筈の胸。
だというのに、顔が暑く、火照る。
o川*゚ー゚)o「あー、赤くなったー」
(; <●><●>)「せ、生理現象です。別に......」
14
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:38:33 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「うんうん、そうだよね。だからさ」
(; <●><●>)「......うっ!?」
さわり、と撫でられる。
そして気がついた。
いつの間にか股間が熱く、苦しくなっていた。
撫でられたその感触でそれはさらにはち切れそうなほどに膨れ上がる。
(; <●><●>)「あ、こ、れは......これも」
o川*゚ー゚)o「うんうん、男だったら仕方ないことだよ。知ってるよ、何度も見てきたからさ」
(; <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「......だから、さ。知ってるんだ。これ」
出さないと、苦しいよね?
15
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:39:14 ID:lO35HPnw0
甘い言葉が、脳を揺さぶった。
吐き気がするほど甘く、そして甘美。
私の全てが麻痺してるような錯覚。
拒絶するだけなら簡単なのに。
突き飛ばせば、終わるはずなのに。
流れに逆らえない。
このまま、流されてしまいたい。
今まで溜めてきた欲望が溢れ返るような熱い感覚。
(; <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「あはは、いつもと全然違うね和歌手くん」
(; <●><●>)「あ、う......」
o川*゚ー゚)o「ね、いいでしょ?和歌手くん。したい?したくない?」
(; <●><●>)「......」
16
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:39:55 ID:lO35HPnw0
心臓の音が早くなる。
ダメだ、やめろ、やめろ。
理性が私を止めようとする。
さあ、いけ、いけ。
本能が私を進めようとする。
二つの波がぶつかり、私を狂わせる。
(; <●><●>)「......ハァー......ハァー......」
o川*゚ー゚)o「そんなに無理すること?」
(; <●><●>)「え?」
o川*゚ー゚)o「優等生でいるの、辛いでしょ?」
(; <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「いいじゃん、今は私しかいないんだよ?だからさ、もう優等生なんてやめちゃってさ、やりたいことしちゃいなよ」
(; <●><●>)「やりたいこと?」
17
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:40:49 ID:lO35HPnw0
私のやりたいこと。
やりたい、こと。
やりたい。
優等生をやめて。
欲望をぶちまけたい。
我慢、したくない。
o川*゚ー゚)o「ね、だからさ」
しよ?
頭が縦に揺れた。
18
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:41:29 ID:lO35HPnw0
手を引かれるまま、たどり着いたのはひとつの所謂ラブホテルというところだった。
だが、頭の麻痺した私が覚えているのはいつの間にか部屋にたどり着き二人とも服を脱ぎ捨てたところからだけだ。
熱い。
暑い。
暑い熱い暑い熱い暑い熱い暑い熱い暑い熱い暑い熱い暑い熱い暑い熱い暑い熱い暑い熱い暑い熱い暑い熱い暑い熱い暑い熱い暑い。
空気が、体が、心が、空間が。
全てが熱く、暑い。
火照る。
なにも着てないのに着ていたときより暑い。
なんだ、これは。
こんなもの、知らない。
私の、知らない世界だった。
19
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:42:09 ID:lO35HPnw0
「はぁー......はぁー......」
疲れていないのに、呼吸が早まる。
そんな様子を見てか九徒はクスクスと笑った。
顔がもっと熱くなる。
普段の私なら九徒に笑われることくらいなんとも思わないはずなのに今は違った。
顔が真っ赤になり、頭が真っ白になる。
「じゃあ、するね」
「あっ......」
気がつくと九徒はいつの間にか私のそばまで近寄っていた。
そして、軽く触れられる。
ただ、それだけ。
それだけなのに。
体に突き抜けるような電流が走る。
頭が、狂いそうだった。
20
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:43:15 ID:lO35HPnw0
「......」
いや、狂ってしまってるのだ。
だってもう、そこにいる私は私の知っている私ではなかった。
早く、早く早く早く!
早く、快楽に身を投げたい。
脳が狂ったように命令を出している。
獣の本能が目覚めるかのごとく、性欲へと身を投じる。
「......入れるね?」
「あ......」
先端が、当たっている。
ムズムズと何かが込み上げてくる。
早く、ぶちまけたい。
私の欲望を全て、吐き出したいのだ。
21
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:44:06 ID:lO35HPnw0
「......ん!」
挿入は、思った以上にあっさりと行われた。
だけど、それは私の残りわずかな理性を吹き飛ばすには十分すぎた。
私は、獣になる。
ぶちまけたい。
早く、早くこの中に。
頭のなかはもう真っ白だ。
考えたくもない。
今はただ、この快楽に身を任せたい。
早く、早く、そして長く。
この、快楽を......
「っ......!」
目の前が白濁に染まっていく。
汚れていくのが、堪らなく気持ちよく、脳を麻痺させていた。
22
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:44:21 ID:rRGQG8NY0
腹上死乙
23
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:45:04 ID:lO35HPnw0
.........
......
...
( <●><●>)「......ん」
気がつくと自宅のベッドだった。
どうやら私は昨日の一部を忘れてしまうほど興奮し、脳が狂っていたようだ。
昨日のことを少し思いだしまた体が熱くなる。
昨日、あんだけやってしまったというのにまだ、体は求めていた。
(; <●><●>)「......私は一体、どうしてしまったんだ」
鏡に写る自分を見る。
そこには見慣れた顔があった。
でもそこに写る私は、私の知っている私ではなかった。
24
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:45:44 ID:lO35HPnw0
「......和歌手、よくできた。満点だ」
( <●><●>)「はい」
出見先生のテストが返される。
当然、満点。
確認するまでもない。
当たり前の結果というやつだ。
「素直、追試だ」
o川;*゚ー゚)o「げぇ......」
まあ、あちらも当然の結果と言うやつだ。
あまりに予想通り過ぎて少し笑った。
25
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:46:29 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「ねぇー和歌手くーん」
休み時間。
甘ったるい声が私を呼ぶ。
どうやら九徒が私を呼んでるようだ。
が、本から顔はあげない。
いや、上げられない。
だって、顔を見れないから。
その声だけでも、顔が暑い。
o川*゚ー゚)o「わーかーてーくーん?」
ピタリと、腕にくっついてくる。
服の上から微かな柔らかさが伝わってくる。
その感触に昨日触れた柔らかさが手のひらに蘇る。
体が、熱い。
本の内容なんて、頭に入らない。
26
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:47:13 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「......勉強、教えてほしいんだけどさ」
(; <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「放課後、3階の空き教室で待ってるから」
(; <●><●>)「わ、私はいかな」
o川* ー )o「したいこと、お礼にしてあげるからさ」ボソッ
(; <●><●>)「っぃ!?」
耳元でボソリと呟かれる。
その微かに耳に空気が当たる感覚。
それすらも私を狂わせるかのごとく体中から汗を吹き出させる。
27
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:48:08 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「じゃ、気が向いたら来てね。ほら、授業始まるよ」
(; <●><●>)「......あ」
気がつくと次の授業の先生が教室に入ってきていた。
どうやら気がつかない間にチャイムがなっていたようだ。
私は、それすらも気がつかないほどおかしくなっていたようだ。
(; <●><●>)(わ、たしは......)
頭のなかで様々な考えがグルグルと渦巻く。
先生が授業を始めたがそれどころではない。
私はこれからどうすればいいのか。
全く分からなかった。
28
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:48:51 ID:lO35HPnw0
.........
......
...
o川*゚ー゚)o「あ、来てくれたんだ」
( <●><●>)「......まぁ」
なぜ私はこんなところにいるのか。
いつもならもう帰っているか、調べものをしているかなのに。
時間は有限なのに。
無駄にしてしまっていいのか。
でも、しかし、それでも。
私は、ここに来てしまった。
( <●><●>)「......何が解らないんですか?」
o川*゚ー゚)o「ん?え、あー!そっか勉強するんだった!」
( <●><●>)「......帰りますよ?」
o川;*゚ー゚)o「あータンマタンマ!冗談だよー!とりあえずここ教えてっ」
29
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:49:34 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「ふん......どこがわから......は?」
o川*゚ー゚)o「いやー、難しいよねー数学ってさぁ」
( <●><●>)「......あの」
o川*゚ー゚)o「ん?」
( <●><●>)「これ、教科書の1P目なのですが」
o川*゚ー゚)o「だーかーらー!そっからわかんないのー」
目眩がする。
いや、忘れてたわけではない。
こいつがバカだって分かってはいた。
分かってはいたが。
限度があるだろう。
よく、よくこの高校に入れたもんだと逆に感心してしまう。
30
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:50:32 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「......はぁ。ならもう追試に受かるためだけの勉強をしますか」
o川*゚ー゚)o「え、そんなのできるの?」
( <●><●>)「出見先生のテストならある程度予測できますからね。それに合わせてやりましょう」
o川*゚ー゚)o「ひゃーさっすが。頼りになるねぇ」
( <●><●>)「始めますよ?」
o川*゚ー゚)o「はーい、和歌手先生!」
なるべく、深くは追求せずに、浅く、浅く授業を進めていく。
九徒みたいなバカでも分かる言葉を頑張って考え、教えていく。
もう何年も前から知っているものを教えても私には何の得もないのに。
それでも知恵を振り絞りなんとか伝えていく。
31
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:51:22 ID:lO35HPnw0
楽しい。
沸々と胸の奥から沸いてくる。
忘れてた感情、いや、捨てていた感情。
思い出した、思い出してしまった。
無駄だと切り捨てていたものを。
o川*゚ー゚)o「いやー、ありがとうね」
( <●><●>)「......いきなりなんですか?」
o川*゚ー゚)o「いや、ね。和歌手くんってさ、私のこと、嫌いでしょ?」
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「否定してくれない、と。うん、知ってたからいいんだけどさ」
( <●><●>)「......別に」
別に。
まさにその言葉が全てだった。
興味ない。
嫌いかどうか考える以前の問題。
考えることすら、しない相手だった。
32
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:52:12 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「でも、これは好きてしょ?」
スッと、スカートを持ち上げる。
白の布が太ももの間に顔を覗かせる。
また、顔が暑くなる。
もうその下を見たことすらあるのに。
それでもその姿は私を昂らせる。
それでも必死に私は私を保とうとする。
まあ、単なる意地だ。
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「んー、今回はあんまり慌てないんだねぇ。つまんないなー」
( <●><●>)「別に......」
o川*゚ー゚)o「......ぷっ」
(; <●><●>)「な、なんですか」
33
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:53:05 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「強がったり、カッコつけるのは逆にカッコ悪いよー?」
(; <●><●>)「うっ」
速攻でバレた。
顔に出ないようにしていたのに。
また、九徒に笑われる。
まるで、九徒の手のひらで踊らされてるのではないかと感じてしまう。
でも、不思議だ。
(; <●><●>)「......しますよ」
o川*゚ー゚)o「きゃー」
不思議とそれも、悪くない。
そう、感じていた。
34
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:53:57 ID:lO35HPnw0
肌を重ねる。
単なる、生殖行為。
だというのにまだ慣れない。
心臓が痛くなるほどのこの鼓動。
燃えているのではないかと勘違いするほど熱い体。
そして狂うほどの、快楽。
体の合わさる音と粘液の混じり合う音、そして荒い呼吸の音が教室の中に響く。
誰かに気付かれるかもしれない。
でも、そんなことより今は。
ただ、快楽に溺れたい。
その一心で体を動かす。
甘い、甘い、今をただ楽しみたかった。
35
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:54:41 ID:lO35HPnw0
.........
......
...
o川*゚ー゚)o「いやー、またしちゃったね」
(; <●><●>)「......気づかれてませんよね?」
ようやく落ち着き頭が回るようになってきた。
そしてここになって危機感を持ち始める。
これではまるで私までアホみたいだ。
いや、実際アホだったのだろう。
いくら人の来にくいところとはいえ学校でこんなことをしてしまったのだから。
36
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:55:22 ID:lO35HPnw0
(; <●><●>)(......)
o川*゚ー゚)o「わーかーてーくん!」
(; <●><●>)「はい?」
o川*゚ー゚)o「かえろっ!」
九徒はいつの間にか服装を整え帰る準備を終えていた。
私はそれを見て慌てて脱ぎ捨てていた学ランを羽織る。
が、慌てるせいかボタンがうまく閉まらない。
o川*゚ー゚)o「ボタンなんていいじゃん別に閉めなくて。しかもそんな上まで」
( <●><●>)「服に付いているボタンは閉めるために普通は付いてるものですよ......っと、よし」パチッ
37
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:56:04 ID:lO35HPnw0
o川;*゚ー゚)o「ひえー......ホックまで閉めるんだね。うーん、知ってたけど凄いなぁ。苦しくない?」
( <●><●>)「慣れれば別に」
o川*´ー`)o「いやー、すごいっすなー」
( <●><●>)「では」テクテク
o川;*゚ー゚)o「......って、どこいくのー?」
( <●><●>)「どこって......さっき言ってたじゃないですか。帰るんですよ」
o川;*゚ー゚)o「えー、ならちょっとは歩調あわせてよー」
( <●><●>)「は?」
38
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:56:49 ID:lO35HPnw0
疑問を頭に浮かべると同時に九徒が横に来る。
それだけでなく腕を絡め体を密着させる。
先程までもっとすごいことをしていたと言うのに顔が暑くなる。
心臓の音が、頭にまで響いてくる。
(; <●><●>)「なにを」
o川*゚ー゚)o「一緒にかーえろ」
(; <●><●>)「家、近いんですか?私の家と」
o川*゚ー゚)o「んー?知らない。てかこの間会ったところの近くなら私んちは遠いってか逆方向かなー」
39
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:57:31 ID:lO35HPnw0
(; <●><●>)「......なのに一緒に帰るって......非効率的な」
o川*゚ー゚)o「和歌手君、世の中はねー効率だけじゃ楽しめないぞー」
( <●><●>)「あなたにだけは世の中のことを語られたくないですね」
o川*゚3゚)o「えー」
ああ、なんでだろう。
こんなにもうざったいのに。
こんなにものぼせるように暑いのに。
こんなにも心臓が痛いくらい鳴り続けているのに。
とても、とても、その時が心地よかった。
40
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:58:11 ID:lO35HPnw0
.........
......
...
彼女と関わり始めてからもう何週間が経ったのだろうか。
そして彼女と何回、交わったのか。
もう、分からない。
それくらい時間が経った。
o川*゚ー゚)o「和歌手くーん、お昼食べよー」
いつの間にか九徒と昼食を食べるのが習慣化していた。
今日もいつも通り弁当箱を振り回しながらこちらの机へと向かってくる。
( <●><●>)「危ないしそんなに振り回しますとまた中身が混ざりますよ?」
o川*゚ー゚)o「やー、いいのいいの。私混ざってるのもなかなかいけると思うんだよー和歌手君」
41
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:58:51 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「そうですか、ちなみに今日の中身は?」
o川*゚ー゚)o「え?えーと......」
( <●><●>)「......?今日はあなたが作った弁当ではないんですか?いつも作ってきているのに」
o川*゚ー゚)o「あはは......まぁ」
珍しい。
いつの間にか始まったこの昼食会だが一度も九徒は弁当を忘れずすべて自分で作ってきていた。
少し分けてもらったこともあるが弁当用に考えて作っているのか冷えていても美味しく思わずバカの癖に上手いと誉め言葉が口からこぼれてしまったほどだ。
なぜか九徒には殴られたが。
42
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 17:59:35 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「いやー......今日はさ、おとおさんが作ってくれたのよね」
( <●><●>)「ふぅん......」
o川*゚ー゚)o「......さ、食べよ」
( <●><●>)「......?」
何やら九徒の様子がおかしい気もする。
まあだからといって何かしてやれることもないわけだが。
他人の問題は、赤の他人が介入すべきではない。
そんなの非効率的だし、なにより面倒くさい。
その相手が例え、仲のいい人であってもだ。
43
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:00:17 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「......」
下駄箱。
帰るための人がちらほらと自分の靴を取りだし家へと向かって消えていく。
私はその流れに従うように校舎から家へと向かう。
一人で帰路につく。
久しぶりに九徒が横にいない。
いつも当たり前のように絡んできたそいつがいない。
家が真逆だと言うのにわざわざ着いてきたあいつが。
理由も言わずどこかへ行ってしまった。
44
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:00:57 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「......」
静かだ。
家への道を一人で歩くとこんなに静かなものだったか。
寂しいわけではない。
でもなにか、物足りない。
( <●><●>)「ん?」
気がつくといつしか九徒と出会った細い路地の近くまで来ていた。
そういえばあのとき出会ってから一度もそういうことをしたということは聞いてない。
まあ話すようなことではないのだが。
45
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:01:55 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「まさか、ね」
早く帰る理由なんてないからここを通るメリットなんて無いわけだが。
何となく、足がそちらへと向かう。
......私は何を期待しているのだろうか?
なぜ、こっちの道を選んだのだろうか。
単なる気まぐれでこの道を選んでしまった。
( <●><●>)「......ん?」
46
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:02:40 ID:lO35HPnw0
そして、見た。
o川*ー)o
( <●><●>)(まさか本当にいるとは......)
そこに、九徒がいた。
私は思わず声を掛けようとした。
( <●><●>)「きゅ」
47
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:03:22 ID:lO35HPnw0
なぜ、私は分からなかったのか。
家が真逆でさらにはこんなところで彼女がいる理由なんてただひとつなのに。
( ゚∀゚)o川*ー)o
( <●><●>)「......あ......?」
3,40くらいの男が九徒の横にいた。
明らかに異常な光景。
親子とかそんな雰囲気じゃなくてあれは。
48
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:04:04 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「......」
彼女の体に手がのびる。
彼女はそれを拒まない。
彼女の体を引き寄せる。
彼女はそれを拒まない。
彼女の顔に男の顔が近づく。
彼女はそれを受け入れる。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
やめてくれ。
なんだ、これは。
どす黒い何かが溢れてくる。
汚される。
彼女が、あいつに。
あの男に。
いや、考えろよ。
元から汚されてたじゃないか彼女は。
それがまた元に戻るだけ。
49
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:04:42 ID:kQQ9WFNY0
おお!続ききたのか?
50
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:04:47 ID:lO35HPnw0
......
......嫌だ。
嫌だ、嫌だ。
何でか、何でかは分からないがとにかく嫌だ。
でもどうするんだ?
今から飛び出すのか?
私が彼女の事情に介入していいのか?
今あの姿は彼女の望んだ姿かもしれないのに。
( <●><●>)「......あ」
唇が重なった。
それだけなのに、彼女がとても、遠くに消えていくような錯覚を受ける。
心のなかにいるきれいな彼女が汚されていく。
おかしな話だ。
私だって彼女を汚したのに。
それなのに、許せない。
私以外が彼女を汚すのが耐えられない。
でも、だからといって。
私に出来ることは、ない。
なにも、出来ない。
51
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:05:28 ID:lO35HPnw0
o川*;ー)o
( <●><●>)「......っ!」
一瞬、男に連れられていく彼女の顔に涙が見えた気がした。
それに私はひとつの結論に達する。
彼女は心のなかではこんなことを望んでいなかったと言うこと。
その結論に少しどす黒いものが安らぐのを感じ、そしてなにもできなかった無力感に私は押し潰されそうになっていた。
52
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:06:17 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「おっはよー!」
次の日、九徒はいつものように教室に飛び込んできた。
いつもの笑顔。
いつもの大声。
なにも、変わらない。
( <●><●>)(......)
昨日の出来事が見間違いだったのではないかと思えるほどにいつもの彼女だった。
でも、確かに見たのだ。
彼女が汚され、そして涙するその姿を。
私は見てしまっていたのだ。
53
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:06:57 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「おーい、和歌手くーん。聞こえとるかーい?」
( <●><●>)「......うるさいですよ」
o川*゚ー゚)o「あ、聞こえてるんだ。じゃあなんで返事しないんだよー。このこのー」
(; <●><●>)「顔を突っつかないでください」
o川*゚ー゚)o「えー」
( <●><●>)「えー、じゃないですよ。ったく」
九徒の顔を再び見る。
そこにはいつもの笑顔がある。
作り物ではなく本物の笑顔。
54
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:07:38 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)(......)
汚されたのだ。
昨日、この笑顔が。
まだ胸の奥にドロドロとした感情が渦巻く。
これは、なんだ。
不快で痛く、苦しいこの感情は。
私は、どうしたいというのだ。
o川*゚ー゚)o「あ、先生来ちゃった。じゃね」
( <●><●>)「......え?あ、ああ。はい」
気がつくと時計は1限が始まる時刻を指し示していた。
慌てて教科書を鞄から取り出す。
取り出しはしたが何もする気にはなれなかった。
55
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:08:19 ID:lO35HPnw0
.........
......
...
( <●><●>)「九徒、少しいいですか?」
休み時間。
私は九徒に話しかけた。
教室に残ったやつらがチラチラとこちらを見てくる。
いつもは気にならないのに、今日はなんだか落ち着かない。
o川*゚ー゚)o「んー?あ、和歌手くん。どったの?話しかけてくるなんて珍しいね」
( <●><●>)「いえその......」
o川*゚ー゚)o「んー?」
( <●><●>)「あー......」
九徒と話をしていた女子のグループがこちらを見ながらボソボソと話している。
私のことであろう。
居心地が悪い。
物凄く、むず痒い。
56
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:09:03 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「んー?ここじゃ話しづらいこと?」
( <●><●>)「......まぁ、わりと」
o川*゚ー゚)o「ん、じゃ、いこか」
九徒はそういうと私の手をとる。
小さく弱いその手に引かれ私は教室から連れ出される。
チラリ、と時計を見るとそろそろ授業の始まる時間だった。
戻らないといけない。
頭のなかでそう思う。
話なら後でもできるのだからいまは戻らなくては。
頭ではそう思っていた。
けどこの手を、何故か離す気にはなれなかった。
57
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:09:45 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「んで、和歌手くん。話ってなに?」
( <●><●>)「いえ......その昨日のことで」
そこまで言って言葉に詰まる。
聞いていいのだろうか。
昨日、彼女がしたこと。
聞くにしてもどう聞けばいいのか。
そもそも聞いてどうしたいのだ、私は。
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「?」
九徒が首を小さく傾げ、こちらを見てくる。
真っ直ぐで綺麗な目だ。
58
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:10:42 ID:lO35HPnw0
でもその目は私の知らない男とのまぐわう姿を見てきたのだろう。
腕や足だけじゃなく、全て、全てを。
( <●><●>)「っ!」
o川;*゚ー゚)o「え、ちょっ......きゃっ!」
嫌だ。
彼女が他のだれかに汚されているのは腹が煮え立つような気分になる。
苛つく。
どす黒い物が込み上げてくる。
そのどす黒いもの、全てを吐き出したい。
そして彼女を染め上げるのだ。
私の、私だけの色に。
59
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:11:22 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「......もしかして我慢できなかったの?」
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「ふふ......授業始まっちゃうけど、いいの?しかも学校で」
( <●><●>)「......しますよ」
o川*゚ー゚)o「きゃー」
九徒がわざとらしい悲鳴をあげる。
その甘い声が私を昂らせる。
彼女の姿、声、匂い、全てが。
まるで麻薬のように、私を魅了していた。
60
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:12:02 ID:lO35HPnw0
(; <●><●>)「はぁ......はぁ......」
息がキレる。
疲れた。
体から全てを吐き出したかのような倦怠感。
でも、スッキリしない。
まるで胸の奥に何かが突っ掛かったままのような感覚。
どうしても、昨日の彼女の涙を流す顔が忘れられないのだ。
私にはなにも、出来ないのに。
o川*゚ー゚)o「......和歌手くん、どうかしたの?」
( <●><●>)「え?」
o川*゚ー゚)o「だってなんか、辛そうだよ?」
( <●><●>)「......」
61
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:12:42 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「何があったかわかんないけど力になるよ?」
散らばった服のシワを伸ばし、服を着ながらこちらに笑ってくる。
ほんのりと上気した肌がチラリ、と服の間から覗く。
また、体が熱くなる。
まだ、足りない。
こんなにも、吐き出し尽くしたのに。
まだ、足りないのだ。
再び、九徒に迫る。
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「......今日の和歌手くん、ちょっと変だよ?」
( <●><●>)「......うるさい」
o川*゚ー゚)o「ま、いいよ。力になるっていったし、満足するまでしよっか」
62
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:13:22 ID:lO35HPnw0
そういうと九徒は上着を脱ぎ、下を脱ぎ捨てる。
彼女は再びYシャツ姿になる。
もう、何度この姿を見たのだろうか。
いつもと同じ彼女の姿。
もう慣れてもおかしくないのに。
でも、それでもこんなにも心が昂るのは何故だろう。
私はまた、その心の赴くままに感情を彼女にぶつけた。
63
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:14:03 ID:lO35HPnw0
.........
......
...
o川;*゚ー゚)o「はぁ......はぁ......」
(; <●><●>)「はぁ......はぁ......」
何時間経ったのだろう。
時計を見るといつのまにか学校の全ての授業は終わる時間となり外は紅くなり始めていた。
(; <●><●>)「......はぁ」
それでも心が晴れない。
この気持ちはなんなんだ。
酷く、不快。
何かがずっと突っかかっている。
でもそれはなんなのか。
全く、わからない。
64
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:14:45 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「結構時間経っちゃったね。私たちも帰ろっか」
( <●><●>)「え?......ええ、そうですね」
o川*゚ー゚)o「ん、あ、これ。服ね」
( <●><●>)「わざわざどうも」
九徒がそこら辺に散らばった服を集めて渡してくる。
気付かないうちに私は服を脱ぎ捨てていたようだ。
o川*゚ー゚)o「ほら、早く帰ろ!校門閉まっちゃうよ!」
( <●><●>)「待ってくださいよ......全く」
ボタンを閉めもせず、私は走っていく九徒の後を付いていく。
いつもと違う服の感覚。
締め付けられないその感覚はなかなかに心地よい気がした。
65
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:15:26 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「ごめーん、和歌手くん。今日もちょっと用事があるんだ」
昼休み。
九徒といつものように食事していると彼女はそう口にした。
その言葉にあの夜見かけた男の顔が脳内をよぎる。
急に食べていたものの味がしなくなり吐き気がしてくる。
( <●><●>)「そう......ですか」
o川*゚ー゚)o「ん?変な反応......あー、もしかして寂しい?私と帰れなくて」
寂しい?
寂しいのか?
いやこの気持ちは多分そんなのではない。
なんなのかは、分からないけど。
でも、違うということだけは確信できる。
66
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:16:06 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「あれ?おーい」
じゃあ、この気持ちはなんなんだ。
私は彼女をどうしたいんだ?
堪らなく嫌いで苦手で関わりたくなかったはずなのに。
o川*゚ー゚)o「もー......すねちゃうぞー」
今はただ、この二人の時間が勉強よりもっと長く続けたいとどこか願ってしまった。
67
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:16:47 ID:lO35HPnw0
.........
......
...
( <●><●>)「......」
放課後。
私は一人、家へと向かう。
ただ、歩くだけ。
何時もならうるさいくらいの彼女の声が響く通りも音ひとつない。
静かだ。
まるで全てが死んでしまったかのように。
( <●><●>)「......あ」
何をするでもなくただ帰る。
ふと、いつもの小道との分かれ道にたどり着いた。
まさか、とは思う。
何度も出会うわけがない。
そもそも今日も彼女があんなことをしてるかなんて分からないのだから。
68
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:17:28 ID:lO35HPnw0
大丈夫、大丈夫なんだ。
そう自分に言い聞かせる。
何が大丈夫なのか何てわからない。
それでもそうしなければ自分が保てない。
酷く口が乾く。
吐き気がする。
それでも足を踏み出す。
ただ、期待していた。
何も起こらず、いつものように帰れることを。
ただ、祈っていた。
( <●><●>)「......」
足を踏み入れたその先。
私の視界の中には彼女はいなかった。
当たり前だ。
何度も出会える方がおかしいのだ。
彼女が住むのはもっと、遠くなのだから。
69
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:18:09 ID:lO35HPnw0
でも、代わりに私の視界には一人の男が写っていた。
( <●><●>)「......あいつは」
(; ゚∀゚)
あの夜、彼女といたあの男がそこにいた。
70
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:18:49 ID:lO35HPnw0
(; ゚∀゚)「......ん?おお!君!」
( <●><●>)「え」
思わず立ち止まり男を見ていたら向こうからこちらに近づいてくる。
まさか、見ていたのがバレたのだろうか。
(; ゚∀゚)「君......○○高校の子だよね?」
( <●><●>)「そう......ですが、なにか?」
(; ^∀^)「た、助かったー。いやね、私この辺り詳しくなくて迷っていてね......高校までの道を教えてほしいんだよ。いやー申し訳ない。ハハハ」
( <●><●>)「はぁ......」
71
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:19:37 ID:lO35HPnw0
......なんだ、こいつ。
思わず拍子抜けする。
この間薄暗い中見たときはもっとこう、荒っぽかったように見えたが今のこの男は妙にペコペコと頭を下げるどこにでもいるようなおじさんだった。
本当にこいつ、あのときの男なのだろうか?
見間違いをしたのではないかと思うほどの別人具合である。
( <●><●>)「まぁ、高校までなら......説明するのも難しいですし一緒に行きますか?」
(; ゚∀゚)「ええっ!いいのかい?いやーありがたい。助かるよ。いやね、今日はうちの子と約束があってね。遅れたら申し訳なくてねー」
( <●><●>)「......」
72
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:20:52 ID:lO35HPnw0
男はペラペラと聞いてもない事を語り出す。
多分、九徒のように喋ってないと死ぬ人間なのだろう。
(; ゚∀゚)「いやね、それで妻にも逃げられ仕事もなくしてしまってね......いや、申し訳ない、申し訳ないって思ってるんだけどね。どうしても駄目でね。弱いんだけど酒に逃げてしまうんだ。いやー少し飲んだだけでもダメになるんだけどやめられないんだよね......ハハハ。ま、しょうがないよね」
( <●><●>)「......」
本当によくペラペラとしゃべる。
そしてこの上ないほどのゴミだ。
話し半分で聞いていたが、この男はゴミだ。
無能にもほどがある。
聞いているとこいつには子供がいるようだがその子供は苦しんでいるだろう。
73
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:21:33 ID:lO35HPnw0
無能の子供ほど、救い様のない存在もないだろう。
親という助けてくれる存在がいないのだから。
どれだけ助けを叫んでも回りは他人なのだ。
触りたくないものは触りたくない。
そういうものなのだから。
(; ゚∀゚)「あ、そういえば君は何年生かな?いや、個人情報聞こうとかそういうのじゃなくてね、子供の歳と近いかなーってやつでね」
( <●><●>)「......」
74
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:22:13 ID:lO35HPnw0
(; ゚∀゚)「いやね、こんな親でも子供の学校事情は気になるものでね。友達とか、大切だろ?あ、もしかして君が友達かもしれないか。知ってる?私の娘、九徒って言うんだけど」
( <●><●>)「......あ?」
......今、こいつ、なんていった?
わたしの、むすめ?
むすめ?
むすめ?
むすめ?
娘?
75
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:22:54 ID:lO35HPnw0
(; <●><●>)「......あ、え......は?」
嘘だ。
嘘に決まってる。
だってあのときは。
あんなに親子のものではない異常な空気だった。
違うと、確信してたはずだ。
でも。
でも確かに。
今のこいつならば父親と言われてもおかしくない。
もはやあのときのあいつとこいつは別人のように雰囲気が違う。
つまり、は。
もし、もしも。
見間違いじゃなければ。
あの夜。
彼女を汚していたのは。
(; ゚∀゚)
実の、父親、だった?
76
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:23:50 ID:lO35HPnw0
(; ゚∀゚)「それでうちの子なんだけど......」
(; <●><●>)「......」
まだ、男は話続けている。
でも、声は聞こえない。
聞きたくもない。
その男の声はまるで他人の会話のように私の耳を通り抜け誰に情報を伝えることもなく消えていった。
77
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:24:30 ID:lO35HPnw0
.........
......
...
o川*゚ー゚)o「ねー。わーかーてーくーんー。きっこえってるー?」
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「どしたのよー、なんか変だよー」
また今日もいつも通り九徒が私に話しかけてくる。
でも、私は彼女の顔を見れない。
見たら、考えてしまうから。
このドロドロとした感情が表に出てしまう気がするから。
だから、見れない。
78
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:25:10 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「......なにか、あったの?」
( <●><●>)「別に」
o川*゚ー゚)o「嘘だよ」
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「......」
九徒がこちらを見てくる。
やめてくれ。
そんな眼で私を見ないでくれ。
そんな、泣きそうな瞳で。
私を見つめないでくれ。
79
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:25:50 ID:lO35HPnw0
o川*゚ー゚)o「......待ってるから」
( <●><●>)「え?」
o川*゚ー゚)o「辛かったら、言って」
( <●><●>)「......あ」
九徒が離れていく。
思わず呼び止めそうになる。
離れてしまうのが堪らなく嫌だ。
でもそれと同じくらい顔を見たくない。
私は何をしたいのだろうか。
80
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:26:31 ID:lO35HPnw0
( <●><●>)「......」
考えていると昨日のあの男の顔が脳裏に浮かぶ。
九徒に対するドロドロとしたものとはまた違うどす黒い感情が沸いてくる。
ああ、この気持ちの正体は知っている。
この気持ちは。
この不快な感情は。
( <●><●>)「......死ねばいいのに」
ポツリ、と誰に言うでもなく私は呟いた。
81
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:27:12 ID:lO35HPnw0
.........
......
...
(; ゚∀゚)
( <●><●>)「......ん?」
放課後。
空き教室でいつものように九徒と二人、過ごしていたときのこと。
ふと窓の外を見ると見たことある顔がそこにあった。
見たくなかった顔でもある。
ただひたすらに不快。
o川*゚ー゚)o「和歌手くん、なーに見てるのー?」
( <●><●>)「あ、いや......」
o川*゚ー゚)o「ん?......え?」
82
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:27:52 ID:lO35HPnw0
九徒の笑顔が固まる。
そしてどんどんとそれが剥がれ落ちるかのように真顔へと変わっていく。
感情が抜け落ちたかのように。
いや、それは正しくない。
その顔にはまだ絶望した感情が残っていた。
そしてその表情もやがては焦った表情に変わっていく。
o川;*゚ー゚)o「あ、え......あ!ご、ごめん和歌手くん!私急用できた!」
九徒が慌てて帰ろうとする。
そして、向かうのだろう。
あのゴミのような、父親の元に。
そしてまた、汚されるのだろうか?
私はそれでいいのだろうか?
私は、彼女をどうしたい?
そんなのは、決まってる。
引き留めたいんだ。
もう、汚されたくないんだ。
83
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:29:53 ID:lO35HPnw0
o川;*゚ー゚)o「だから先にかえ」
( <●><●>)「九徒」
o川;*゚ー゚)o「へ?」
( <●><●>)「......父親、ですか?」
o川;*゚ー゚)o
o川;*゚ー゚)o「......え?」
焦った顔のまま固まった。
こちらを見つめてくる。
o川;*゚ー゚)o「なん......で」
( <●><●>)「......」
84
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:30:41 ID:lO35HPnw0
o川;*゚ー゚)o「......」
( <●><●>)「......」
o川;*゚ー゚)o「......どこまで」
( <●><●>)「え?」
o川;*゚ー゚)o「どこまで、知ってるの?」
怯えたような瞳でこちらを見てくる。
私はなんと言えばいいのだろうか。
私は確かに知りたい。
知ってることを今話せば彼女もすべてを話してくれるだろう。
でもそれでいいのか?
それは確実に彼女を傷つける。
それに聞いたところで私に何ができるというのだ。
85
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:31:29 ID:lO35HPnw0
無意味。
それどころか彼女から言いたくもないことを引きずり出す苦痛を与えるのだ。
やめよう。
まだ今なら誤魔化せる。
そうすれば、また。
いつもの彼女に戻るだろう。
( <●><●>)「......キス」
o川*゚ー゚)o
( <●><●>)「キスを、してました......よね」
それでも。
それでも、私は聞きたかった。
彼女のことを知りたかった。
本当のことを、すべて。
ちゃんと、聞きたかったのだ。
86
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:32:23 ID:ijOZ49GY0
o川*゚ー゚)o
o川*゚ー゚)o「......そっ、か。見られてたのか」
( <●><●>)「......はい」
o川*^ー^)o「......あーあ、だから、嫌だっていったのになぁ」
九徒は笑顔だった。
でもその笑顔は何かを諦めたかのようで、疲れきっていた。
普通ではない。
なにか、壊れてしまったかのようなその顔。
彼女はその表情のまま言葉を紡ぐ。
87
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:33:03 ID:ijOZ49GY0
o川*^ー^)o「多分分かってると思うけどね、私、お父さんにもされちゃってるんだ」
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「あ、嫌ちょっと違うか。まず最初にお父さんにされちゃった、が正しいか」
( <●><●>)「っ」
o川*゚ー゚)o「もう知ってるかな?うちさ、両親が離婚してるんだ。お父さん、仕事クビになってそれでね。その時くらいからお父さん、おかしくなっちゃって」
o川*゚ー゚)o「ずーと家に籠って慣れないお酒を飲んで、酔っぱらっては荒れ狂ってた」
88
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:34:01 ID:ijOZ49GY0
o川*^ー^)o「それでねある日ね、私さ襲われたの」
少女は楽しそうに話をする。
o川*^ー^)o「誰のお陰で生きてられると思ってるんだーって言われてさ、そのまま押し倒されて」
狂った話を笑顔で話す。
o川*^ー^)o「私さ、バカだからさどうすればいいかもわかんないからさ全部お父さんのしたいようにしたんだ」
でもその笑顔は歪んでいた。
o川*^ー^)o「痛くてさ、苦しかったよ。でもね、全部が終わったら褒めてくれたんだ」
その笑顔は汚れきっていた。
89
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:35:05 ID:ijOZ49GY0
o川*^ー^)o「凄く、嬉しかった。私さお父さんに迷惑しかかけてなかったから。本当に嬉しかったんだ」
o川*゚ー゚)o「その日からね、お父さんがしたい日はいつもするようになったんだよね。私がお父さんにしてあげられることなんてこれくらいだし」
o川*^ー^)o「そのお陰かね、この前はお弁当作ってくれたし、外にも出れるようになったんだ。元気になってくれて凄く嬉しかったんだ」
( <●><●>)「......どうして」
o川*゚ー゚)o「え?」
( <●><●>)「どうしてあなたはそこまで......」
o川*^ー^)o「お父さんが元に戻ってくれればまた、元の家族に戻れるから」
彼女は笑う。
明るく、明るく笑う。
鈍く、鈍く笑う。
90
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:35:47 ID:ijOZ49GY0
o川*^ー^)o「援交もね、お父さんが働けない代わりにしてるんだ」
o川*゚ー゚)o「本当は普通のアルバイトできればいいんだけど私バカだしなにより、お金、たくさん必要だからさ」
o川*^ー^)o「ま、仕方ないよね!」
( <●><●>)「......」
確かに聞けた。
私の知りたかったことは。
でも、私は分からない。
彼女になんと声をかけていいのか。
言葉にならない。
( <●><●>)「......警察」
o川*゚ー゚)o「ん?」
91
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:36:32 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「警察には、言わないんですか?」
そしてようやく出た言葉はそれだった。
情けない。
口にしてすぐに後悔する。
そんなこと私が言わなくても分かっているだろう。
o川*^ー^)o「なんで?」
( <●><●>)「え?」
o川*゚ー゚)o「別に私は嫌じゃないよ?」
(; <●><●>)「で、ですが」
o川*^ー^)o「そんなことしたらお父さん、捕まっちゃうじゃん。折角ここまで頑張ったのに台無しになっちゃうよ」
ケラケラと私の考えを笑い飛ばす。
背筋が冷たくなる。
彼女はここまで、狂っていたのか。
92
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:37:13 ID:ijOZ49GY0
o川*^ー^)o「大丈夫だよ、和歌手くん」
(; <●><●>)「え?」
o川*゚ー゚)o「お父さん、もうすぐ元気になってくれると思うから」
o川*^ー^)o「それで、元通りになるから!」
歪みきった、壊れてしまった物はもう、元には戻らない。
それでも彼女は直ると信じている。
全てが何もなかったかのように消えてしまう奇跡のような未来を。
そこにいる彼女はいつものように綺麗に笑う彼女だった。
透き通るように透明な彼女。
その姿は先ほどまでの汚れた彼女が嘘のように綺麗だった。
93
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:37:56 ID:ijOZ49GY0
o川*^ー^)o「だからね、心配しないでね!」
(; <●><●>)「しかし......」
o川*゚ー゚)o「ふふ......でも嬉しいなぁ」
( <●><●>)「え?」
o川*゚ー゚)o「だって和歌手くんが私を心配してくれるんだもん。前までの和歌手くんだったら心配しなかった......ううん、そもそも私を無視してたかな?」
( <●><●>)「そう、かも......いえ、多分、そうでしょうね」
o川*^ー^)o「えへへ」
もしあの日。
あの夜。
あの帰り道。
彼女にあっていなければ。
彼女が援交をしていなければ。
彼女の家族が狂っていなかったら。
私は彼女とこうして話すことはなかっただろう。
94
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:38:04 ID:zJeuJZEgO
皆さん、オワコン社長をよろしくお願いします。気に入ったらチャンネル登録!!
http://www.youtube.com/watch?v=XJBsJBnlHRQ
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95
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:38:36 ID:ijOZ49GY0
でもあの日。
彼女はあそこにいた。
そして私は今日、彼女とこうして話す。
それは、ただの偶然。
o川*゚ー゚)o「ねぇ和歌手くん」
( <●><●>)「はい」
o川*゚ー゚)o「和歌手くんにとってさ、私ってなに?」
( <●><●>)「え?」
96
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:39:16 ID:ijOZ49GY0
偶然。
本当にそれだけなのか?
o川*゚ー゚)o「和歌手くん、周りの人には興味を持たない人だった」
( <●><●>)
o川*゚ー゚)o「でも、今は私のことを心配してくれる。自分から聞きにきてくれる」
( <●><●>)
o川*゚ー゚)o「ねぇ、和歌手くん」
この、胸の奥に込み上げるこの気持ち。
苦しく、不快でモヤモヤとしたこの気持ち。
97
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:39:58 ID:ijOZ49GY0
o川*゚ー゚)o「和歌手くん、私のこと、どう、思ってるの?」
それでいて、暑くて熱くてそして心地いいこの気持ち。
この溢れる気持ちは。
o川*゚ー゚)o「和歌手くん......」
潤んだ瞳が私を見つめる。
彼女は待っている。
私の、言葉を。
私の、気持ちを。
( <●><●>)「わ、たし、は......」
彼女は待っている。
この胸の奥の気持ちの正体を。
私が、それを言葉にして伝えるのを。
分かっている。
分かっている。
98
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:40:39 ID:ijOZ49GY0
分かっている、けど。
( <●><●>)「......あ」
言葉に、できない。
だって知らないから。
こんな気持ち。
何て言えばいいのか。
伝える言葉を、私は知らないから。
o川*゚ー゚)o「......そっか」
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「うん、そうだよね。私の、思い上がりか」
( <●><●>)「......きゅ、うと?」
99
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:41:38 ID:ijOZ49GY0
o川*^ー^)o「あはは、残念だなぁ。和歌手くんの口から似合わない台詞が聞けると思ったのに」
彼女はまた、笑う。
その笑顔は、綺麗だ。
そして、歪んでいる。
彼女は泣きながら、笑っていた。
( <●><●>)「......あ」
o川*^ー^)o「ごめんね!和歌手くん!変なこと聞いて」
( <●><●>)「いえ、その」
o川*^ー^)o「私、もう行かなくちゃ」
( <●><●>)「っ」
彼女が教室から出ていこうとする。
彼女の背中が遠くなる。
まだ走れば追い付けるその距離。
でももう、手が届かないのではないかと思うほど遠い。
100
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:42:32 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「......九徒、わたしは」
o川* ー )o「......和歌手くん」
彼女は一度だけ振り向き呟いた。
o川*;ー;)o「大好き、だったよ」
(; <●><●>)「っ!!」
彼女がまた前を向く。
もう私を、彼女は見ていない。
行ってしまう。
彼女が、遠くに。
何故かは分からないけど、確かに分かるんだ。
101
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:43:21 ID:ijOZ49GY0
(; <●><●>)「九徒!私は、私は!」
「和歌手くん」
彼女は振り返らない。
もう、遅かったんだ。
私は、やはり、無力だったんだ。
「さようなら」
彼女が教室から出ていく。
教室に一人残された私は彼女を追うことなくただ、立ち尽くしていた。
窓から外を見る。
そこにはあの男と彼女が肩を並べ歩いていく姿が見えた。
その姿は遠く。
もう、どうやっても追い付けない。
そしてその姿も日の光に包まれ消えていく。
もう彼女はどこにもいない。
その日、素直九徒が学校から姿を消した。
102
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:45:33 ID:ijOZ49GY0
とりあえずVIP投下分おしまい
ちと休憩
103
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:53:46 ID:gr0GEp2I0
wktk
104
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 18:56:52 ID:r9nHwKtA0
乙、惹き込まれた
105
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:17:16 ID:ijOZ49GY0
次の日。
いつものように私は学校にやって来る。
( <●><●>)「......ん?」
教室に入るといつもと何か違う。
なんというか、違和感を感じる。
なんだか、静かだ。
( <●><●>)「......あぁ」
ふと後ろの方の席を見るとそこには九徒の姿がなかった。
静かなのはそのせいかと一人で納得する。
それと同時に昨日の彼女の後ろ姿が頭に浮かぶ。
とても、遠くに消えていくような彼女のその後ろ姿。
そして誰も座らない彼女の席。
心が少し、ざわつく。
106
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:18:12 ID:ijOZ49GY0
(´・_ゝ・`)「和歌手、少しいいか?」
( <●><●>)「?......はい、何でしょうか」
休み時間。
今日は九徒が休みなのか学校にいないため一人で久しぶりの日課の医学書を読んでいたとところに出見先生が私に話しかけてきた。
本を閉じ、先生の方に顔を向ける。
それを見た先生は先生は頭をかき、小声でこちらに喋りかける。
(´・_ゝ・`)「......あまり、ここで話すことじゃないんだ」
( <●><●>)「......」
(´・_ゝ・`)「談話室に来てくれ。いいか?」
( <●><●>)「......はい」
なんだろう。
胸の奥が苦しい。
これは、不安?
出見先生のその口調からはただならぬものを感じる。
聞きたくない。
厄介事は、ごめんだ。
107
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:19:02 ID:ijOZ49GY0
本当は聞きたくない。
でも、その気持ちもこの一言で変わる。
(´・_ゝ・`)「素直さんのことで、話があるんだ」
( <●><●>)「......え?」
思考が止まるかと思った。
九徒?
九徒の、話?
先程までとは比べ物にならないほどの不安感が私を襲う。
でも先ほどまでのように聞きたくないとは思わない。
むしろ、今すぐにでも。
彼女の話を聞きたかった。
108
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:19:55 ID:ijOZ49GY0
.........
......
...
( <●><●>)「......辞めた?」
(´・_ゝ・`)「ああ、そうなんだよ。学校、辞めてしまったんだ」
先生の口から飛び出た言葉はあまりに唐突なものだった。
九徒が学校を辞めた。
もう彼女はこの学園からいなくなったのだ。
また彼女の後ろ姿が頭に浮かぶ。
ぞわりと、背筋が冷たくなる。
(´・_ゝ・`)「......なんだが、理由を聞けなくてなぁ。お前、最近素直さんと仲良かったろ。何か知らないか?」
あの日、彼女は泣いていた。
私が、何も知らなかったから。
私が、意気地無しだから。
私が、好きだと気づけなかったから。
彼女はもう行かなければと言っていた。
知っていたんだ。
彼女は、私といれなくなることを。
だから最後に、聞きたかったのか。
私の、気持ちを。
109
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:20:35 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「......」
もしあの日。
私が、彼女に好きだといっていたら。
彼女はどうしたのだろうか。
受け入れてくれたのだろうか。
居なくならなかったのだろうか。
(´・_ゝ・`)「......和歌手?」
( <●><●>)「......すみません。彼女から聞いたことはないです」
分からない。
あの日、もし間違えなければどうなっていたかなんて。
でもあの日、私は間違いを起こしたことだけは間違いないだろう。
だって彼女は泣いていたのだから。
110
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:22:10 ID:ijOZ49GY0
(´・_ゝ・`)「そう、か。うーん......そっかそっか。ま、それならそれでいいんだが」
( <●><●>)「......先生」
(´・_ゝ・`)「ん?どうした?」
( <●><●>)「その、九徒、いえ素直さんの家の住所とかって、分かりますか?」
でも、終わらせたくない。
間違いのまま終わるなんて許せない。
私は間違いが嫌いなんだ。
このまま、彼女が傷付いたまま、私の思いを伝えられないまま、終わるのなんてごめんだ。
(´・_ゝ・`)「わかるが......あー、すまんが教えられんぞ。プライバシーの関係でなぁ。もうあいつ、学校の生徒じゃないから」
(; <●><●>)「そこをなんとかお願いできませんか?素直さんの友達として、ちゃんと話をしたいんです」
(´・_ゝ・`)「んー......」
111
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:22:58 ID:ijOZ49GY0
出見先生はうっすらと生えたアゴヒゲを弄りながら考える。
頼む。
いやなんだ。
あんな姿が彼女の最後だなんて。
何も出来ないかもしれないけど。
それでも。
(´・_ゝ・`)「......いやダメだ。俺の口からは言えんなぁ。なんか特別な用事があるならいいけど」
( <●><●>)「......」
(´・_ゝ・`)「ま、諦めろ。これやるから」
( <●><●>)「......?これは?」
(´・_ゝ・`)「あーちょっとしたメモのごみだ。捨てるなりなんなりしてくれ」
( <●><●>)「......ありがとうございます」
(´・_ゝ・`)「ごみを渡したんだ。礼なんかいらんよ」
見なくてもわかる。
このメモがなんなのか。
ありがとうございます。
心のなかで呟く。
何度も何度も。
深く頭を下げる。
授業が始まる前の唯の形式のお辞儀とは違う深い深い感謝を表す姿。
それでも感謝したりない。
112
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:23:39 ID:ijOZ49GY0
(´・_ゝ・`)「あー、もうやめろうん。流石にここまでされるとこっちが辛い」
( <●><●>)「あ......」
(´・_ゝ・`)「まぁとりあえず、もうここに用はないだろ?さっさとどっか行ってこい。行く場所、あんだろ?」
( <●><●>)「......はい」
もう一度だけ頭を下げ、教室を出る。
そして手元の紙に目を落とす。
そこには私の知らない住所が記されている。
でもそれが、誰の家なのか、私には分かる。
( <●><●>)「行こう」
例えなにも出来なくても。
面倒後とが嫌いでも。
巻き込まれてやろうじゃないか。
理由はよくわからないけれど。
それでも、行かなくちゃいけない気がする。
そして、行くことを望んでいる気がするから。
113
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:24:21 ID:ijOZ49GY0
.........
......
...
( <●><●>)「ここ......か?」
メモに記された場所に付くとそこには小さく古い家がポツリと建っていた。
周りの家からまるで取り残されたかのように古い。
ここだけ、異様な雰囲気を醸し出しているような錯覚を受ける。
( <●><●>)「......」
表札には『素直』と書かれている。
確かに、ここが彼女の家なのであろう。
私はたどり着くことが出来たのだ。
( <●><●>)「さて、と」
しかし重要なのはここから。
ここからどうしたものか。
114
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:25:25 ID:ijOZ49GY0
普通に会ってしまっていいのだろうか。
そもそもお互い家を知らないはずなのにこのように会いに来てはまるでストーカーのようではないか。
( <●><●>)「......」
わからない。
そもそも誰か他人の、それも同級生の家に行くことなど初めてなのだ。
どうすれば正解なのか、分からない。
でも。
いや、だからこそ。
( <●><●>)「やってみるしかない」
そう、進むしかない。
決めたのだから。
無力でもなんでもいい。
巻き込まれてやると。
それならとことんいくしかない。
115
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:27:01 ID:ijOZ49GY0
呼吸を落ち着かせ、インターホンに指を伸ばす。
(; <●><●>)「......」
たかがこんな一動作でなぜこんなにも落ち着かないのだろうか。
ほんの少し、押し込むだけだと言うのに。
でもそれで、私は彼女に会うことが出来るのだ。
伝えられなかったものを伝えることが出来るのだ。
さぁ、いけ。
ほんの少し、勇気を出せ。
( <●><●>)「っ」
ピンポーン
......
......
......
......トトトト
( <●><●>)「......」
チャイムからほんの少しの静寂のあと、小さな足音が聞こえた。
軽い、女性の足音。
わかる。
その足音が誰のものなのか。
彼女だ。
私にはわかる。
116
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:27:54 ID:ijOZ49GY0
そして、閉ざされていた扉が開かれる。
o川*゚ー゚)o「......え?」
( <●><●>)「......九徒」
その先には、やはり彼女がいた。
117
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:28:46 ID:ijOZ49GY0
o川*゚ー゚)o
( <●><●>)
沈黙。
ひたすらに沈黙。
何か言わなきゃいけないはずなのに。
それを言うために来たはずなのに。
言葉が出てこない。
でもそれでも分かってる。
言わなくちゃいけないんだ。
もう、遅いかもしれないけれど。
分かっているんだ。
ただ、分からないふりをしてるだけ。
( <●><●>)「......九徒」
o川*゚ー゚)o
彼女は答えない。
いつも見せないような、静かな表情でこちらを見つめる。
ただ私だけを見つめる。
ただ、真っ直ぐ。
そこにいつも感じていた暖かさは、ない。
118
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:29:27 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「あなたに、どうしても言いたいことがあるんです」
o川*゚ー゚)o
言葉はない。
でもそれは、どことなく、拒絶のようにも感じられる。
私はこのまま、言葉をぶつけてもいいのだろうか。
これでは単なる、押し付けではないか?
ただ、私が楽になりたいが為の、押し付け。
( <●><●>)「......私は、あなたのことが」
o川*゚ー゚)o
だとしても。
進むと決めたんだ。
私らしくない、生き方だ。
先のことなんて考えず、ただひたすらに直感で進む。
119
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:30:42 ID:ijOZ49GY0
始めてこんな気持ちになったのだ。
言葉にしたい。
彼女に伝えたい。
彼女を、救いたい。
( <●><●>)「好きです、九徒」
やっと、言えた。
胸の奥にあったモヤモヤが一気に晴れたような感覚。
ああ、そうか。
私はこんなに、この人のことが好きだったのか。
o川*゚ー゚)o
o川*-ー-)o
( <●><●>)「......きゅう、と?」
o川*ー)o「......おそすぎるよ、ばか」
120
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:31:26 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「あーあ!せーかく学校もやめて全部きっちり決着つけたと思ったのになー」
( <●><●>)「......あ」
o川*^ー^)o「えへへ、でもうれしーなー。だってわたしね、和歌手君のことずっーと前から好きだったんだ」
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「......でも、ダメだよ」
( <●><●>)
o川*゚ー゚)o「私なんかじゃ、ダメだよ」
( <●><●>)「そんなことはありませんよ」
o川*゚ー゚)o「もう、終わったから」
( <●><●>)「終わらせたくない」
o川*゚ー゚)o「決心しちゃったんだもん」
( <●><●>)「お願いです、九徒。戻ってきてください」
o川*゚ー゚)o「ダメだよ、言ったでしょ?」
もう、遅すぎたんだよ。
121
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:32:38 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「......」
覚悟はしていた。
あの日、伝えられなかったから。
彼女は私から離れてしまった。
そしてそれは、彼女なりの決意だったのだろう。
あの父親と、生きていくことを。
助けられたかもしれないのに。
( <●><●>)「......まだ、間に合います」
o川*゚ー゚)o「え?」
( <●><●>)「すべてが解決すれば、いいんです」
o川*゚ー゚)o
( <●><●>)「九徒、あなたのお父さんの問題、すべて解決したら」
o川*゚ー゚)o「わ、かて、くん?」
( <●><●>)「私と、付き合ってください」
o川*゚ー゚)o「......あ」
どうすればいいかなんてわからない。
でもどうしたいか。
その答えは持っている。
なら、進もう。
今度こそ、手に入れる。
間違いは嫌いだ。
でも進もう。
ただひとつの、私が求める正解のために。
122
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:33:20 ID:ijOZ49GY0
o川*゚ー゚)o「ズルいよ、和歌手くん」
( <●><●>)「え?」
o川*^ー^)o「いつもそんなこと言わないくせにこんなこと......カッコよすぎだよ」
( <●><●>)「......」
o川*゚ー゚)o「和歌手くん」
( <●><●>)「はい」
o川*゚ー゚)o「待っててね」
( <●><●>)「え?」
o川*゚ー゚)o「絶対、全部、終わらせるから」
o川*゚ー゚)o「それできっと、あなたのところにいくから」
o川*゚ー゚)o「そしたら」
o川*^ー^)o「私を、恋人にしてください」
123
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:34:02 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「......九徒、それなら、わたしも」
o川*゚ー゚)o「手伝うのはなし!」
( <●><●>)「え?」
o川*゚ー゚)o「これは、私の問題だから。んーん、違うかな」
o川*゚ー゚)o「私がお父さんを救いたいの」
o川*^ー^)o「大好きだから」
( <●><●>)「......」
そこにいるのはいつもの彼女だった。
明るく、綺麗に澄んだその笑顔。
ああ、そうだ。
これが私の好きになった人だ。
124
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:34:46 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「分かりました、でも何かあったら」
o川*゚ー゚)o「ん、分かってるよ。そのときは助けてねダーリン!」
(; <●><●>)「だっ!?」
o川*^ー^)o「えへへ」
ああ、私はやったんだ。
もう手に入らないと思っていた。
でも、届いた。
私は、彼女を。
125
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:35:39 ID:ijOZ49GY0
「なにしてンじゃ!さっさと戻ってこねーかぁ!!」
o川*ー)o「っ!」
( <●><●>)「え?」
なんだ、今の声は。
怒りに満ち溢れ、空気を震わせる。
( <●><●>)「九徒、今の」
o川*ー)o「......サイ」
( <●><●>)「え?」
126
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:36:37 ID:ijOZ49GY0
o川*ー)o「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
(; <●><●>)「な、にが」
九徒は狂ったかのように謝り続ける。
一体何に。
彼女が謝るその先。
思い当たるのは一人の男。
( <●><●>)「あ......」
(# ゚∀゚)「客一人相手すんのにどんだけ時間かかってンだぁ!?あぁ!?」
o川*ー)o「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
127
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:37:18 ID:ijOZ49GY0
(# ゚∀゚)「うるせぇなぁ......謝ればすむもんじゃねーんだよ!糞、がぁ!」
(; <●><●>)「っ!やめ」
ゴスッ、と重い音が響く。
それと共に、行き場を失った空気が漏れる音が聞こえた。
o川;*Д)o「ッ!......ッ!」
九徒は蹴られた腹部を押さえ、倒れこむ。
男はその上からさらに蹴り続ける。
何度も、何度も、何度も。
まるで、殺しにかかるように。
(; <●><●>)「やめてください!もう、十分でしょう!」
(# ゚∀゚)「んだぁ、テメェ......」
(; <●><●>)
(# ゚∀゚)「人ん家のよぉ......躾の邪魔、しないでくれるかなぁ?」
この男、本当にあの時であった男なのか?
雰囲気が違いすぎる。
まるで、言葉の通じない猛獣。
128
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:38:00 ID:ijOZ49GY0
だが、これなら。
この男、やり易いかもしれない。
(; <●><●>)「やり過ぎです。もう、いいでしょう!」
(# ゚∀゚)「ぁ?」
(; <●><●>)「だから」
さあ、怒れ。
そして私を殴れ。
それで、終わる。
o川*ー)o「わ、かてくん......」
( <●><●>)「九徒?」
o川*ー)o「ありがと......でも、ダメ。それじゃ、ダメなの」
(; <●><●>)「なっ」
129
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:38:40 ID:ijOZ49GY0
o川*ー)o「おとーさん、今お酒に酔ってるだけだから......さめれば優しいおとうさんにもどるから......だから」
o川*;ー;)o「だめ......そんな、の」
( <●><●>)「......」
o川*;ー;)o「わたしが、すくうの......だから、だから」
(# ゚∀゚)「さっきからごちゃごちゃうるせぇなぁ!糞、さっさと家はいれ!」
o川*ー)o「っ!」
男が九徒の髪を掴み、引きずる。
そのあまりに強引な行動に九徒の顔が苦痛に染まる。
(; <●><●>)「っ!」
咄嗟に言葉が出そうになった。
でも、出せない。
出せなかった。
出そうとしたその一瞬、彼女と目があった。
ダメだよ。
その目はそう語っていた。
私が出ては、ダメだと。
130
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:39:22 ID:ijOZ49GY0
私は待つことしかできない。
彼女が、あの男と決着がつくのを。
( <●><●>)「......九徒」
彼女とあの男は家に戻ってしまった。
これで、よかったのだろうか。
分からない。
でも、ひとつわかる。
もう彼女は決意してしまった。
私にできることは、何もない。
ただひたすらに、無力だった。
131
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:40:10 ID:ijOZ49GY0
.........
......
...
あれから何日経ったのだろう。
未だに九徒から連絡はない。
もう、終わったのか。
まだなのか。
ただひたすらに待つことしかできない自分が情けない。
でも彼女がそう決めたのだ。
その彼女の決意を無駄にはしたくない。
( <●><●>)「はぁ......」
私はいつものように学校に向かう。
つまらない。
学校は今までもつまらないものだったがここまでだったか。
理由は分かってる。
彼女がいないから。
まだ出会って半年も経っていないのに彼女はこんなにも大きな存在になっていたのか。
132
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:41:03 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「......待ってますから」
誰に聞かせるわけでもなく、ポツリと呟く。
一分一秒でも早く。
全てが終わることを望んでいた。
( <●><●>)「......っと」
腕時計を見るといつもより大分遅れていることがわかった。
考え事をしすぎたようだ。
私は少し小走り気味に学校へと急ぐ。
少しするといつもの近道となる路地への分かれ道に辿り着く。
時間的に間に合うにはここを通るしかない。
( <●><●>)「......」
分かってる。
しかし、足が進まない。
思えば私と彼女の関係はここから始まった。
そして、変化が訪れた原因もここからだった。
狂ったのはここからなのだ。
133
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:41:44 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「......」
足が、止まる。
足が、震える。
何をしてる、早く、いかなくては。
なにも起きるはずがない。
大丈夫。
大丈夫だ。
自分に言い聞かせる。
( <●><●>)「......よし」
私は足を路地の方へと向ける。
行くな、行くな。
どこからか、そんな声が聞こえた気がした。
私はそれを聞こえない振りをして、路地へと進んだ。
134
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:42:24 ID:ijOZ49GY0
進む、進む、進む。
なにも、ない。
当たり前だ。
それが、当たり前なんだ。
ほら、そろそろ、この路地も終わる。
何もなく、終わる。
終わる、はずだった。
「あのー少しいいですか」
( <●><●>)「え?」
(; ゚∀゚)「ああっ!やっぱり君か!いやー、よかった!」
嘘だ。
嘘だ。
嘘だ。
なんで、よりによって。
二人きりで、こんな人のいない場所で。
振り返ったその先に。
九徒の父親が、そこにいた。
135
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:43:07 ID:ijOZ49GY0
(; ゚∀゚)「いやー、ごめんね?ちょっといいかなー?」
( <●><●>)「......なんですか」
抑えろ。
これは、九徒のためだ。
ここで、怒りに任せてはいけないんだ。
私が、手を出しては、いけないんだ。
(; ゚∀゚)「いやね、この間、案内してもらったことのお礼を言いたくてさ」
( <●><●>)「......」
136
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:43:55 ID:ijOZ49GY0
(; ゚∀゚)「それにこの前、うちにも来たでしょ?」
( <●><●>)「っ!覚えてるんですか?」
(; ゚∀゚)「あーうん。ごめんねこの前は。いや、酒のむとつい荒れちゃって」
( <●><●>)「......分かってるのなら、止めたらどうです?」
(; ^∀^)「いやーあっはっはっ!」
どす黒い感情が込み上げる。
だめだ、耐えろ。堪えろ。
すぐ終わる。
終わるから。
137
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:44:35 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「......用はそれだけですか?」
(; ゚∀゚)「え?」
もう、これ以上、無理だ。
早く、この場から立ち去りたい。
じゃないと、もう。
(; ゚∀゚)「あ、あと、娘のことでさ」
( <●><●>)「九徒の?」
(; ^∀^)「そうそう!君、あの子の友達なの?」
( <●><●>)「......まぁ」
(; ゚∀゚)「おお、そっかそっか!いやー、驚いた。あの子に友達かぁ」
( <●><●>)「......驚いた?」
(; ゚∀゚)「うんそうだよ、だってあの子にねぇ......」
138
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:45:18 ID:ijOZ49GY0
(; ゚∀゚)「あんな出来損ないにねぇ」
( <●><●>)「......あ?」
今、何て言った?
デキソコナイ。
デキソコナイ。
出来損ない?
(; ゚∀゚)「いやー君も知ってるでしょ?あの子、すごい馬鹿なのよ。学校に行かせてやってるのに全然頭よくなんないしもーねぇ」
何をいってるんだ。
こいつは、何を。
139
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:46:05 ID:ijOZ49GY0
(; ゚∀゚)「それにさぁ、君、知ってる?あいつ、体売ってるんだよねぇ。まぁそれしか脳がないから仕方ないけどさぁ。親として恥ずかしいのよ」
なんだ、こいつは。
( <●><●>)「......それは、あなたの代わりに稼ぐために」
(; ゚∀゚)「いや分かってるよ?でもさぁ、親にも面子ってのがあるのよ。子供が体売った金で養われる身の気持ちにもなってほしいよほんと」
( <●><●>)「......あなたは、働かないのですか?」
(; ゚∀゚)「んー?なんで?」
( <●><●>)「は?」
(; ゚∀゚)「金あるのに働く理由なんてないでしょ?」
( <●><●>)「......」
なんなんだ、こいつは。
140
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:46:49 ID:ijOZ49GY0
(; ゚∀゚)「まぁ、あいつもあれだけは良くできるんだよねぇ。あ、もしかして君もやってもらったのかな?それで仲良く?」
こんなやつのために、九徒は。
(; ゚∀゚)「まぁあんなやつでも私の娘だからねぇ。見捨てずに育ててあげてるから感謝してほしいもんだよねぇほんと。いや、馬鹿な娘を持つと辛いよ」
彼女は言っていた。
酔っぱらっているから荒れてるだけだと。
さめれば、優しくなると。
でも違う。
こいつは。
根っからの、糞野郎だ。
141
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:47:31 ID:ijOZ49GY0
(; ゚∀゚)「あーでもそっかー、友達かぁ。うん、まぁあんなやつだけどよろしくね」
プツリ、となにか聞こえた気がした。
(; ゚∀゚)「ん、どうし......」
もう、喋るな。
気がついたらいつの間にか握られていた拳を顔面に叩き込んでいた。
初めて感じる人を殴る感触。
思ったより殴った勢いが強かったのかゴッと重い音をたて男は後ろに倒れこむ。
( <●><●>)「......ぁ」
142
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:48:12 ID:ijOZ49GY0
やってしまった。
彼女と約束したのに。
暑くなっていた頭が覚めてきて冷静になってくる。
(; <●><●>)「......」
人を殴ってしまった。
これがどういうことか。
分からないわけではない。
理由が何であれ、殴り飛ばしてしまったのだ。
(; <●><●>)「......だ、いじょうぶですか?」
恐る恐る、男に近づく。
しかし声に対し反応はない。
先程の音からしてかなり強く頭を打ったのかもしれない。
慌てて男に駆け寄り、状態の観察を始める。
143
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:48:56 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「......あ」
頭の部分を見るとそこから大量の血が流れ出ていた。
視線を少しずらすと赤く染まった少し大きめの石がそこにあった。
(; <●><●>)「......」
死ねばいいと思ったことはあった。
だが、まさか、こんなことになるなんて。
早く、早く何とかしないと。
(; <●><●>)「救急......」
ふと携帯を取り出そうとして手が止まる。
このまま、こいつを助けていいのか?
144
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:49:42 ID:ijOZ49GY0
あの出血、放っておけば確実に死ぬ。
だが、助ける意味はあるのか?
もしこのまま、あの男が死ねば。
全ては解決するんじゃないか?
( <●><●>)「......」
彼女は言っていた。
この男を救うと。
でも、しかしだ。
この男に、そんな価値はあるのか?
九徒が苦しんでまで。
助ける価値は、そこにあるのか?
( <●><●>)「......」
私は無力だと思っていた。
何もできないと思っていた。
でもどうだ?
もしここでこの男を殺せば。
145
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:50:24 ID:ijOZ49GY0
私は。
彼女を救えるのではないか?
(; <●><●>)「......わた、しは」
どす黒い考えが頭のなかを支配する。
そんなことしたら、私がどうなるか。
分かっている。
そんなこと、してはいけない。
いけないんだ。
(; <●><●>)「......っ!」
覚悟を決め、ボタンに指を伸ばす。
私はその日、人生でもっとも間違いな選択をした。
146
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:51:08 ID:ijOZ49GY0
.........
......
.....
( <●><●>)「......」
次の日、私は学校に来ていたが授業に身が入らない。
当たり前だ。
未だに彼女から連絡が来ないのだから。
彼女は、どうなっているのだろうか。
父親が、あんなことになってしまったのに。
なぜ、まだ。
147
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:52:04 ID:ijOZ49GY0
(´・_ゝ・`)「和歌手、少しいいか」
( <●><●>)「出見先生?」
(´・_ゝ・`)「少し話がある。いいか」
( <●><●>)「......はい」
素直に頷き、先生に連れられ教室を出る。
ということはみんなの前では言いにくいことか。
何となく、予想はできる。
だからと言って無視はできないが。
148
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:52:44 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)「で、先生、話と言うのは」
(´・_ゝ・`)「ん?ああ、昨日のことなんだが......九徒の親父さん、知ってるか?」
( <●><●>)「まぁ、何度かあったことはありますが......それが?」
(´・_ゝ・`)「......昨日、亡くなったらしい」
( <●><●>)「......そう、ですか」
知っている。
私は昨日、通報しなかったのだから。
あのあと、放置されたあの男はそのままちゃんと死んでくれたようだ。
よかった。
思わず、笑いそうになる。
149
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:53:25 ID:ijOZ49GY0
(´・_ゝ・`)「学校をやめてすぐこれだ。多分、九徒は相当キてると思う......」
( <●><●>)「はい」
(´・_ゝ・`)「聞けば母親もいないとか......和歌手、九徒とまだ、仲はいいか?」
( <●><●>)「はい」
(´・_ゝ・`)「そう、か。なら、支えてやってくれ。俺にはできないからな......情けないが頼む」
そういうと出見先生は頭を下げる。
大丈夫ですよ先生。
そんな覚悟、もとから出来てますから。
( <●><●>)「任せてください」
いつ、警察にバレるか。
それは分からない。
それでもその日までだけでも。
私は彼女と。
150
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:54:11 ID:ijOZ49GY0
.........
......
...
( <●><●>)「ん......流石にまだ慌ただしいですね」
彼女の様子が気になり家まで来てみたが辺りにはまだ警察がうろついていた。
殺した犯人が自ら警察のそばにいくなんて自殺行為だろうか。
まぁそれでも、会わなくては。
151
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:54:52 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)(......ん?)
妙だ。
警察の数が多すぎないか?
事件現場ではないここになぜこんなにも警官がいるんだ?
( <●><●>)「......あの」
「ん、なにか」
( <●><●>)「ここの人がどうかしたんですか?」
「......ここの人の知り合いですか?」
( <●><●>)「ええ......」
「......そうか。その実はな、ここの家の人が昨日、死んでしまったんだ」
( <●><●>)「......」
152
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:55:35 ID:ijOZ49GY0
知っている。
それだけなのか?
本当に、ただの思い違いなのだろうか。
「それでかは分からないんだが......娘さんが、ね」
( <●><●>)「え?」
九徒?
九徒に何かあったのか?
折角、折角あの男がいなくなったのに。
まだなにか、あるのか?
153
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:56:32 ID:ijOZ49GY0
「......娘さんが、自殺してしまったんだ」
......
......
......は?
目の前が真っ白になる。
自殺。
誰が?
娘さん。
つまりそれは。
九徒が?
どうして?
なぜ?
分からない。
分かりたくない。
知りたくない。
154
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:57:23 ID:ijOZ49GY0
「お、おい、君、大丈夫か?」
声が、聞こえた気がする。
でも、そんなものはどうでもいい。
九徒。
嘘だといってくれ。
なぜ、なぜだ。
君が苦しむのはもう、終わったはずじゃないか。
これから君は解放されて、生きていけたはずなのに。
どうして。
私は君を救うために。
この手を、汚してしまったのに。
何のために、私は。
私は失敗した。
私は間違えた。
私は不正解だった。
あの日、私がしたこと。
私は、取り返しのつかないことをしてしまった。
こんなことになるなんて、知らなかった。
ただ、私は、助けたかっただけなのに。
155
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:58:05 ID:ijOZ49GY0
なのに、どうして。
九徒。
私はどうしたらいいんだ。
君のために、そう思っていたのに。
私は、どうしたら。
「......どうかしたのか?」
(; <●><●>)「っ!」
ふと顔をあげると何人かの警官が集まってくるのが見えた。
その目はどれも、私を見ていた。
こちらを見ながら、なにか、ポツリポツリと話している。
その中に、殺人、犯人という言葉が聞こえた気がした。
心臓の音が早くなる。
背中に冷たいものを感じる。
動悸が早くなる。
逃げないと。
逃げなければ。
混乱しうまく考えられない頭を振り絞り、そう結論付ける。
震える足をどうにか動かし、走り出した。
156
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 20:58:47 ID:ijOZ49GY0
坂から転げ落ちるようにがむしゃらに走る。
後ろから声が聞こえた気がする。
でも、逃げないと。
早く、早く。
捕まりたく、ない。
こんな、こんな結末なんて嫌だ。
こんな最低で、最悪な結末なんて。
受け入れたくない。
ああ、神様。
早くこんな悪夢から目を覚まさしてくれ。
誰か、私を。
助けてくれ。
助けて。
誰か。
157
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:00:16 ID:ijOZ49GY0
助け
「危ない!止まれ!」
え?
ガンッ!
158
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:00:56 ID:ijOZ49GY0
......
......
......何が、起きた?
体の感覚がない。
体が軽い。
体が重い。
体が動かない。
何が、一体。
誰かの声が聞こえる気がする。
うるさいくらいの声。
でも、なぜだ。
瞼が重い。
......あれ。
なんで、涙が出てくるんだ。
視界が霞む。
瞼が落ちてくる。
涙は止まらない。
光が、遠くなる。
......ああ、そうか。
私はこれから、死ぬのか。
159
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:02:10 ID:ijOZ49GY0
......
......
......私は。
私は一体。
一体、なんなんだ。
何もできず。
誰も助けられず。
こんな、死に方なんて。
なんて、馬鹿なんだ私は。
あんなに勉強したのに。
あんなに努力したのに。
あんなに全てを捨てて来たのに。
何もかも、無駄だった。
夢があった。
医者になると。
人の命を救える、神様のような存在。
そう、私は神様になりたかったのだ。
人の上に立つ、そんな存在に。
だがそれも、全てが無駄だった。
どんなに苦労して詰め込んだ知識を駆使しても抗えない。
闇の中に沈んでいく。
どんなに光にてを伸ばしても。
まるでそんな私を嘲笑うかのように闇が体を包んでいく。
もがくほどに。
抗おうとするたびに。
160
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:03:02 ID:ijOZ49GY0
ああ、冷たい。
温度なんか、感じてないはずなのに。
それでも冷たいと感じる。
寒いほどに。
冷水を浴びせかけられたかのように寒い。
体が震える。
ただ、一人。
闇の中。
膝を抱え震える。
赤子のように。
何かから自分を守るように。
でも、闇は待ってはくれない。
少しずつ、少しずつ体を包んでいく。
恐怖が体を包んでいく。
その恐怖から紛れるために私はなにかを叫んだ。
何を叫んだかは分からない。
でも、無意味だ。
この声が、誰かに届くことはないのだから。
161
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:03:52 ID:ijOZ49GY0
その事を思いだし、再びこの闇の中、一人きりだったことを再確認させられる。
九徒。
彼女の顔が、声が、頭の中に甦る。
彼女も、この苦しみを味わったのだろうか。
また、涙が溢れる。
私のせいだ。
私のせいで、彼女も。
私が間違えなければ。
私のせいだ。
私のせいだ。
私のせいだ。
私のせいだ。
ただだだひたすら、その言葉が頭のなかを反響する。
私のせいだ。
私の。
私の。
162
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:04:47 ID:ijOZ49GY0
「あなたのせいだ」
......今、声が聞こえた気がする。
どこか懐かしい、女の人の声。
「あなたのせいだ」
その声は私を責める。
「あなたのせいだ」
ああ、その通りだ。
163
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:05:38 ID:ijOZ49GY0
「あなたのせいだ」
でもなぜだろう。
「あなたのせいだ」
分かっているはずなのに。
「全部」
私のせいなのは分かっているのに。
「あなたが」
こんなに、苦しくなるのは。
164
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:06:24 ID:ijOZ49GY0
「あなたさえ、いなければ」
ああ、そうか。
「全部、あなたが悪いんだ」
私は、救われたかったのだ。
「さよなら」
あなたは悪くないと、誰かに言ってほしかったんだ。
「和歌手くん」
165
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:07:13 ID:ijOZ49GY0
声が聞こえなくなる。
ああ、待ってくれ。
私を一人にしないでくれ。
もう、駄目なんだ。
私一人では、頭がおかしくなりそうなんだ。
助けて。
誰か。
私を。
この闇から。
九徒。
九徒。
九徒。
君は。
どこに。
私の好きな人。
私の救えなかった人。
私が殺した人。
彼女は。
ああ、そうか。
もう、どこにもいないのか。
まだ、涙は止まらない。
失ってしまったとわかってしまったから。
もう二度と、手に入らないと理解できてしまったから。
166
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:08:00 ID:ijOZ49GY0
ああ、そうか。
死とはこういうことなのか。
どんなに勉強しても。
どんなに努力しても。
どんなに苦労しても。
どんなに幸せになっても。
その全てが、無くなるのか。
その全てが、無駄だったのか。
じゃあ、つまりは。
人の生きる人生なんて、無意味なんだ。
私の生きた人生も、同じだ。
誰よりも勉強して医者を目指したことも。
誰よりも努力して一番で居続けたことも。
そして、彼女を好きになったことも。
全部、もう終わったことなんだ。
もう、全て無意味だ。
167
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:08:47 ID:ijOZ49GY0
乾いた笑みがこぼれる。
なんだ、これは。
なんて、滑稽なんだ。
苦悩していたのがアホらしくなる。
どんな風に苦悩し生きても死んだら全てが失われるのだから。
全てを失うことを運命付けられて産まれる人とはなんと滑稽か。
そうでありながら生きることに意味を探そうともがくその様はあまりに無様だ。
これを、笑わないで何を笑うのか。
笑う。
全ての生きる人、これから生まれてくる新たな命、そして私自身を。
闇の中、高らかに。
狂ったように、笑う。
168
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:09:47 ID:ijOZ49GY0
涙を流しすぎたせいか、目は紅く染り、体は闇のような黒で包まれたその存在。
ただひたすらに人という存在を見下すように、嘲笑うその存在。
その姿はもう人とは呼べない存在になっていた。
その人外はまだ、笑う。
笑い、そして沈む。
闇の底へと沈んでいく。
もう涙は流さない。
もう、人ではないのだから。
169
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:10:39 ID:ijOZ49GY0
.
170
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:11:49 ID:ijOZ49GY0
オギャーオギャー
171
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:12:30 ID:ijOZ49GY0
命の産まれる音が響く。
その声は世界中に自分が生まれ落ちたことを知らせるかのごとく、響く。
その声を聞き、人々はそれを歓迎しそして歓喜する。
生命の誕生を祝福する。
人によっては愛の結晶と呼ぶ赤子というその存在。
人々の様々な思いを背負い、この世へと生まれ落ちたその存在。
だがまだ知らない。
この世に生まれたことにより死という避けられない理不尽な不幸な運命を背負ってしまったことに。
172
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:13:38 ID:ijOZ49GY0
赤子は笑う。
この世界がまるで自分を祝福してると勘違いしているかのように。
この世界がまるで自分を歓迎していると勘違いしているかのように。
しかし世界はそれを拒む。
人に最低で最悪な運命を背負わせる。
どんな物語もバッドエンドしか認めない。
それでも、何も知らない赤子はただ、笑う。
ああ、なんて無様なのだろう。
その赤子の目に私が映る。
そこに映るのは世界に絶望し涙を流し続けた眼が血のように紅く染まった存在。
孤独に身を震わせ闇に包まれた体は黒の装束を纏う存在。
人ではない存在。
赤子はその存在の名前をまだ知らない。
赤子は世界が生誕を拒絶しているのをまだ知らない。
173
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:14:28 ID:ijOZ49GY0
「こんにちは、おちびさん」
これからこの赤子はどんな風に人生を過ごすのだろう。
楽しむのだろうか、それとも苦しむのだろうか、それは分からない。
しかし、その全てを失うと気づいたとき、この赤子はどうするのか、それがただひたすらに楽しみで仕方ない。
「最低な死を、あなたにも」
私はただ、楽しそうに笑っていた。
174
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:15:08 ID:ijOZ49GY0
( <●><●>)最低な死を迎えるようです
終
175
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:29:41 ID:r9nHwKtA0
上手く言えないけど凄く面白かった。乙
176
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 21:58:01 ID:JY5nrumw0
死神側のサイドストーリーか
177
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 22:51:55 ID:gr0GEp2I0
最高の死と繋がってるのかな?読んでくるわ
乙
178
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:38:51 ID:SOVy2k8w0
どっかで見たことあるタイトルだと思ったらサイドストーリーなのか
ちょっとメインの方読んでこようかな
179
:
名も無きAAのようです
:2015/11/26(木) 23:58:44 ID:lBTMZe1g0
最高の死の死神?モナーの話に繋がるのでしょうか
180
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 03:40:21 ID:twhHlISY0
すっごく引き込まれた
おつ
181
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 06:23:36 ID:fwuRfEm60
>>76
の話続けている、
>>106
の先生は先生は、
>>112
の面倒後と、
>>113
の場所に付く、
>>139
の脳がない、
>>142
の暑くなっていた、は
話し続けている、先生は、面倒事、場所に着く、能がない、熱くなっていた、でいいのかな?
182
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 11:49:04 ID:.vNDqE/U0
あれ?前にもあったよね?
183
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 16:20:28 ID:DHqm29Ac0
vipで投下した分の続きらしい
184
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 17:28:32 ID:CwI8QRkA0
え?VIPに投下したやつの再投下で委員だよね?
これ読んだ覚えがある
185
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 18:12:00 ID:vWscmJsw0
死を与えるみたいなことばっか言ってたから死神になっちゃったのかな
186
:
名も無きAAのようです
:2015/11/27(金) 18:14:14 ID:gtDC0qsw0
>>102
に書いてあるよ
187
:
◆Q.5DeUcL0I
:2015/11/27(金) 22:20:07 ID:NehUon1E0
>>176-179
この作品は元々は最高の方の話に入れるつもりだったけど入れられず没にしたものなんです
再利用したものなので設定考えてたときは最高の方に合わせて考えてたのでサイドストーリーと考えてもいいし書いたのは没にしてからなので単独のものと考えてもらっても大丈夫なようにしたつもりです
>>181
誤字多すぎワロタ
ありがとう赤ペン先生
>>182
,184
以前VIPに同タイトルのものを投下してましたが内容としましては
>>101
まででした
今回は最後まで書き終えたので全部まとめたものを創作にて投下させてもらいました
188
:
名も無きAAのようです
:2015/11/28(土) 11:49:44 ID:HsjF43WE0
乙だぜ
これにつられて最高の方読んだが面白かった
水先案内人みたいなやつが周りを引っ張るだけじゃなくてそいつも成長してるってやつは二つの視点から物語が見られてよかった
189
:
名も無きAAのようです
:2015/12/23(水) 03:42:05 ID:9ooUh1ho0
今更だが読んだ、最高の死も大好きだったからうれしい。
激しく乙。
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