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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。

1 名も無きAAのようです :2015/06/28(日) 22:31:31 ID:k22M11bE0
立ったら投下がある。

2 名も無きAAのようです :2015/06/28(日) 22:40:44 ID:k22M11bE0
どーもです。

新しく作らせてもらいました。
もう少しの間、お付き合いいただければ幸いです。

お世話になっているまとめ様

ブーン 芸 V I P 様

いつも本当にありがとうございます。

.

3 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 22:43:51 ID:k22M11bE0




第十七話 君が嘘をついた




.

4 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 22:46:32 ID:k22M11bE0
0.



浮遊城アインクラッド。
第一層 はじまりの街。
初めてこのゲーム、『Sword Art Online』の世界にログインした者は、
数々の設定をこなした後、このはじまりの街に降り立つ。

ゲームを始めた者の、『始まりの場所』

そして、ゲームの中の死が現実の死と繋がったこのデスゲームの中で、
この街には『終わりを記す』物があった。

巨大な建造物。『黒鉄宮』。
その中にある、『生命の碑』。

それはこのデスゲームに囚われたプレイヤー全員の名前が刻まれた巨大な碑。

そしてゲーム内で死亡すると、名前に横線が引かれ、その原因が刻まれる。

ゲーム内の死。

それは現実世界において、ナーヴギアにより脳を焼かれ、死亡することを意味する。



そして、今日もまた、生命の碑の前で、少女が、泣き叫んでいた。

.

5 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 22:53:57 ID:k22M11bE0
冷たい、黒い床に膝をつき、碑に向かって土下座をするかのような姿で。

涙が、床を濡らしている。

両手が、床を、自らの身体を、叩く。

それまで、ただ見守ることしかできなかった横に立つ和装の武装をした少年が、
少女を横から抱きしめるように支えた。

「……ぼくはそばにいるから」

少女は小柄で、年端もいかないようにも見える。

その泣き叫ぶ姿と、声は、同じように生命の碑を見に来た者の心を、重く、黒くする。

見守るように、隠れるように少女を見ていた黒い影も、そっと視線をそらし、柱の陰に消えた。



『 e-YOU 』

『floor 43  Player kill』



少女の視線の先の名前。

横線の引かれた、名前。

少女の泣き声が、黒鉄宮の中をいつまでも響いていた。




.

6 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 22:55:32 ID:k22M11bE0
1.


朝の日差しが部屋に差し込む。
対面式のキッチンからは芳ばしい香りが漂っていた。

(*゚ー゚)「おはよう、ヘリカルちゃん」

*(‘‘)*「おはようですよ」

部屋に入ってきたしぃがヘリカルに声をかけつつキッチンに近寄った。

*(‘‘)*「今日の食事当番は私ですから座っていてくれていいんですよ」

(*゚ー゚)「そう?あ、じゃあお茶はいれちゃうね」

*(‘‘)*「お茶当番はギコなのに…。
……しぃねぇはギコに甘過ぎですよ」

(*゚ー゚)「待ってたらいつになるか分からないからであって、
甘やかしている訳じゃありませーん」

ヘリカルの呆れたようなつっこみに少しだけ頬を膨らませて答えるしぃ。

*(‘‘)*「そういうことにしておいてあげます」

ワンプレートに盛りつけた食事をテーブルに置くヘリカル。

(*゚ー゚)「嘘じゃないもん」

*(‘‘)*「はいはいですよ」

続けてテーブルの中央に木製の篭を置く。
山盛りのパンが芳ばしい香りのもとだったようだ。

(*゚ー゚)「ヘリカルちゃんの作るパンはほんとに美味しいよね。
レシピはもちろん一緒だし行程も同じなのに、かなわないな」

*(‘‘)*「しぃねぇの作るキッシュも美味しいですよ。
それこそかなわないのです」

.

7 名も無きAAのようです :2015/06/28(日) 22:55:42 ID:.SHf8Grk0
初遭遇!支援だ

8 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 22:58:28 ID:k22M11bE0

(*゚ー゚)「えへへ。
じゃあ明日はキッシュにするね。
卵とチーズと、何がよいかな」

*(‘‘)*「ベーコンは外せないですよ」

(*゚ー゚)「だね。あとはクラム草かな」

*(‘‘)*「クラム草があんなに美味しくなるとは知らなかったですよ」

四人掛けのテーブル。
それぞれのイスの前に置かれた食事の乗った四つのプレート。
中央に置かれた大きめの木の篭。
プレートの横にしぃがカップを一つずつ置き、
ティーポットを篭の横に置いた。
音を立てて開かれるドア。

(,,゚Д゚)「おはようだゴルァ」

(*゚ー゚)「おはようギコ君。
遅刻だね」

*(‘‘)*「おはようなのですよ。
20分遅いです」

(;,,゚Д゚)「すまん。
自主練が調子よくてつい」

*(‘‘)*「さ、朝食にするのですよ。
ギコも早く武装を解除して手を洗ったら席についてください」

(,,゚Д゚)「お、おう」

慌てて防具をはずしてキッチンに向かうギコ。
実際は防具の劣化促進や行動を阻害する『汚れ』ステータス異常はあっても、
圏内の街において『汚れる』といったようなことはシステム上存在しないのだが、
やはりそこは気持ちの問題だった。

.

9 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:02:27 ID:k22M11bE0



*(‘‘)*「お兄ちゃんのいない家は、少し広いのですよ」



.

10 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:03:45 ID:k22M11bE0
買い物に訪れたヘリカルの道具屋で、
ヘリカルから同居を持ちかけられたのは、
ギコとしぃの二人がVIPを抜けて半月ほどたった頃だった。
ギルド時代は片手ほどの回数も会っていなかったが、
POT類の補給のために頻繁に立ち寄るようになっていた頃だった。
ヘリカルの店は品揃いもよく値段も手頃なのだが、
低層階ではあるが少し辺境の街にあるため、
一日の客数はそれほど多くない。
しかし来た客のほとんどは買い溜めをするため量を買ってもらえていた。
また一部のプレイヤーには「可愛い幼女のお店」として口コミで話題にもなっており、
そういった客はヘリカルと話すことが目的であるため会話の増える買い取り依頼が多く、
更に多少安い値でも売ってくれるため、店としてはなかなか潤っていた。

そんな中二人は頻繁に通うようになり、三人の中は深まっていった。

ヘリカルから同居の話を持ちかけられたとき、
店の中には三人他の客がいた。
しぃも十分可愛い部類なのだが、
ギコという男連れだからか年齢が範囲外なのか、
三人の男はヘリカルだけを意識していた。

*(‘‘)*「しぃさん、
良ければここに住みませんか?」

よってヘリカルのこの言葉は、各人に波紋を与えていた。
無言でざわめく店内に気付かないのか、
しぃとヘリカルが会話を続ける。

(*゚ー゚)「え、でも、さすがに…」

*(‘‘)*「もちろんただじゃないですよ。
薬草を採ったりしに行くときのボディガードや色々頼みたいこともあるのですよ」

(*゚ー゚)「それくらいならお手伝いするよ、
でも一緒に住まなくても呼んでくれればいいし」

(,,゚Д゚)「そうだぞゴルァ。
遠慮するな」

*(‘‘)*「……それだけじゃないんですよ」

.

11 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:05:13 ID:k22M11bE0
(*゚ー゚)「?」

(,,゚Д゚)「?」

*(‘‘)*「お兄ちゃんがいないこの家は、少し広いのですよ」

(*゚ー゚)「ヘリカルちゃん…」

(,,゚Д゚)「ゴルァ…」

*(‘‘)*「だから、良ければ…ですよ」

(,,゚Д゚)「良いんじゃないか?しぃ。
せっかくのお誘いだから、住まわせてもらえば」

(*゚ー゚)「え、でもそしたらギコ君が」

(,,゚Д゚)「おれは一人で宿屋に泊まればいいから問題ないぞゴルァ」

*(‘‘)*「もちろんギコさんも一緒にどうぞですよ。
個室も全部で四つあるから、余裕があるのです」

(,,゚Д゚)「…何でそんな広い家に」

*(‘‘)*「たまたまレアアイテムをドロップできて、
それを高く売ることができたのですよ」

(*゚ー゚)「そうだったんだ」

*(‘‘)*「だからどうぞなんですよ」

(,,゚Д゚)「だが女の子一人の家に、俺が住むってのは…ゴルァ」

(*゚ー゚)「いくら私と一緒って言っても」

*(‘‘)*「ダメ…ですか?」

少しだけ悲しげにしぃを見上げるヘリカル。
普段は見せない愁いを帯びた瞳。
思わず息をのむしぃ。

.

12 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:06:42 ID:k22M11bE0

「ヘリカルちゃん…」
「あんな表情をしたヘリカルちゃん…」
「ヘリカルちゃんのお願いを…」

店にいた三人の客も最初は嫉妬からくる敵意を向けていたが、
いつの間にかヘリカルのお願いを断ろうとしている不届き者への怒りに変わっていた。

(;*゚ー゚)「えっと…そうだなあ」

(,,゚Д゚)「ま、いいか。
ヘリカルがそこまで言うなら。
しぃ、ヘリカルに甘えるぞゴルァ」

さすがに自分達をチラチラと見る視線に気付いて口ごもったしぃだったが、
まったく気付いていないギコがさらりと申し出を受けた。

(;*゚ー゚)「ぎ、ギコ君?」

(,,゚Д゚)「いくら圏内とはいえ女の子が一人で暮らすのは危ないからな。
俺たちはヘリカルのボディガードだ。
それに一人でこの店を切り盛りするのも大変だぞゴラァ。
おれも店番くらいならできるし、採取にも行けるからな」

*(‘‘)*「ありがとうですよギコ!」

(*゚ー゚)「それはそうだけど…」

(,,゚Д゚)「なんだしぃ。ヘリカルと一緒に暮らすのが嫌なのか?」

*(‘‘)*「いやですか?しぃさん」

不思議そうに自分を見るギコの視線。
悲しそうに自分を見るヘリカルの瞳。
憤怒の混じった例えようのない三人の客からのプレッシャー。

(*゚ー゚)「わ、私だって一緒に暮らしたいわよ!」

(,,゚Д゚)「じゃあ決定だなゴルァ」

.

13 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:08:23 ID:k22M11bE0

*(‘‘)*「しぃさんありがとうございます!」

(*゚ー゚)「ほんともう…。よろしくね、ヘリカルちゃん」

*(*‘‘)*「ありがとうですよ!」

(,,゚Д゚)「それじゃあ引っ越さないとだな。
今借りてるところが明後日で終了だから、それまでに…」

*(‘‘)*「今日からでも大丈夫ですよ」

(*゚ー゚)「それはさすがに」

(,,゚Д゚)「じゃあ今から移動するか。
二人で手分けすれば二回くらい往復すれば持ってこれるだろ」

(*゚ー゚)「……そうだね」

(,,゚Д゚)「どうしたしぃ?」

(*゚ー゚)「なんでもない!よし!やっちゃおう!」

突き刺さる視線を感じながらそれを振り払うように笑顔になるしぃ。

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

*(‘‘)*「楽しみなんですよ!」

その笑顔に、二人も笑顔で答えた。



そして三人の生活が始まった。





.

14 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:10:11 ID:k22M11bE0
2.


店のドアが開き、ドアベルが鳴る。
手元に集中していた店主が顔を上げると、よく知った顔があった。
途端に店主の眉間にしわが寄る。

ξ゚⊿゚)ξ「何よその顔。
失礼しちゃうわね」

( ・∀・)「おまえがアポなしで来るときには絶対良くない話題を持ってくるときだからな」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたにおまえだなんて呼ばれる筋合いはございませんー」

( ・∀・)「おまえにあんただなんて呼ばれる筋合いはございませんー」

ξ゚⊿゚)ξ「ふん!」

( ・∀・)「へっ!」

視線を再び手元に戻すモララー。
その前に置かれているイスに座るツン。
少しだけ興味深げにモララーの手元をみる。

ξ゚⊿゚)ξ「なに?それ」

( ・∀・)「二つのアクセサリーの接合。
アクセサリーは付ける個数が限られているからな。
一つのアイテムが持っている効果をそのまま二つ合わせることができれば、
少ないアクセサリーでいまよりもっと付加効果を得られることができるようになる」

ξ゚⊿゚)ξ「…できるの?そんなこと」

( ・∀・)「昔のスキルなら無理だった。
今のスキルなら、もしかしたら出来るかもしれん」

ξ゚⊿゚)ξ「今の言い方、ただスキルレベルが上がったって言う意味じゃなさそうだけど?」

( ・∀・)「いや、スキルレベルも大事だぞ?
ただ、同じレベルでも昔と今では違うような気がする」

.

15 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:11:42 ID:k22M11bE0
ξ゚⊿゚)ξ「どういうことよ」

( ・∀・)「一つのアイテムを作るとき、
俺たちは素材と大まかな種類だけしかシステム上で指定することしか出来ないだろ?」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ」

( ・∀・)「だから昔は出来た後に本当に欲しいものと違うことがあった」

ξ゚⊿゚)ξ「細かいところではそういうこともあったわね」

( ・∀・)「でも最近はほとんどそんなことがない」

ξ゚⊿゚)ξ「時間はかかるけどデザイン通りに作るアイテムを手に入れたわけだし」

( ・∀・)「もちろんそれが一番大きい。
それなりのレベルを持ってないと使えないアイテムだしな。
でも、なんとなく、アイテムやレベル以外の要素があるような気がする」

ξ゚⊿゚)ξ「?なにそれ」

( ・∀・)「確証はないけど、この世界のシステムが更新されているような、
プレイヤーの要望に添った変更をしているような気がする」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなことありえるの?」

( ・∀・)「さあな。
ただ、クエストの数が多量すぎるのは、
定期的に増やしているからなんじゃないかってショボンが言ってた。
だからクエストを増やすときにシステムの更新がされていてもおかしくはない」

ξ゚⊿゚)ξ「なるほどね。
もしそんなことがされているなら、試す価値はあるわね」

( ・∀・)「だろ」

ξ゚⊿゚)ξ「でも…」

( ・∀・)「ん?」

.

16 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:13:34 ID:k22M11bE0
ξ゚⊿゚)ξ「そんなふうに干渉しているなら、
いい加減解き放てと声を大にして叫びたい」

( ・∀・)「あー。まあ、そうだな」

ξ゚⊿゚)ξ「どこか、上の方とか、モニター越しとかで、
私達が大変なのを見てニヤニヤしてるとしたら腹が立つ」

( ・∀・)「どうだろうな」

ξ゚⊿゚)ξ「なに?」

( ・∀・)「ツンはもともとゲームとかするのか?RPGとか」

ξ゚⊿゚)ξ「これが初めて。
パズルとか音ゲーはやってたけど」

( ・∀・)「おれもだ。
だからゲーマーの気持ちってのはあんまりよく分からん。
で、この前ゲーマーのドクオが言ってたんだけどさ」

ξ゚⊿゚)ξ「なにを?」

( ・∀・)「ゲームをただ見ているのは、
特にRPGゲームを横で見ているだけなのはかなりつまらないって」

ξ゚⊿゚)ξ「だから?」

( ・∀・)「ただ見ているだけなのか…って」

ξ゚⊿゚)ξ「それで、クエストを増やしたり、干渉しているかもってこと?」

( ・∀・)「…かもな。
ドクオやショボンはなんか色々話してた。
興味があるなら聞いてみろよ。で、ほれ、」

モララーがウインドウを操作すると、ツンの目の前にウインドウが現れた。

ξ゚⊿゚)ξ「何これ」

( ・∀・)「やるよ。加工した鉱石だ。
それぞれに効果を持つ『原石』」

.

17 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:18:03 ID:k22M11bE0
ξ゚⊿゚)ξ「……わかった。
試してみる。」

( ・∀・)「おう、がんばってくれ」

ツンは腰掛けたままウインドウを消し、店のドアを意識しながら店内を見回す。
モララーはそんなツンを意識せず、ただ手元の作業に集中していた。

十数分ほどしてからモララーが顔を上げると、そこにはカップに口を付けたツンがいた。

(;・∀・)「うをっ」

ξ゚⊿゚)ξ「なによ、変な声出して」

( ・∀・)「いや、まだいたんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「本当に失礼な男ね」

( ・∀・)「用事があるなら言えよ」

ξ゚⊿゚)ξ「別に私があんたに用事があるわけじゃないもの」

( ・∀・)「はあ?」

ξ゚⊿゚)ξ「この前買った服に似合うアクセサリーを見立てて欲しいんだって」

( ・∀・)「だれが?……って、デレさんか!?」

ξ゚⊿゚)ξ「そういうこと。
残念なことにこの店の品揃えにかなう店はなかなかないから」

( ・∀・)「そういえばこの前手に入れた鉱石をまた加工して欲しいとか言ってたな」

ξ゚⊿゚)ξ「あら、そうなの?」

( ・∀・)「ああ、新しい服にあわせるとも言ってたから、多分それだろ」

ξ゚⊿゚)ξ「帽子に付ける飾りとベルトの飾り。
あとはペンダントとかって言ってたけど」

( ・∀・)「多分ペンダントだろうな。
帽子とベルトは既製品として、出してない品で良いのがあったかな…」

いそいそと在庫をチェックし始めたモララーを見てため息をつくツン。

.

18 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:19:17 ID:k22M11bE0
( ・∀・)「なんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「前から聞こうかと思ってたんだけど、
あんた、分かってるわよね?」

( ・∀・)「ん?ああ、デレさんのことだろ。もちろん」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんとに?」

( ・∀・)「ああ。正直最初は本気だったけど、途中で分かった。
よく見ればなー。だからソロなんだろうけど」

ξ゚⊿゚)ξ「分かってるなら良いけど」

( ・∀・)「おれとの会話も楽しんでるだけだろうから、
良いお客さんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……あんたも結構割り切ってるのね」

( ・∀・)「人間、いろいろあるからな。
それに、……まあいいだろ」

ξ゚⊿゚)ξ「なによ」

( ・∀・)「んー。
何でもかんでも相手に合わせてやるのが優しさってわけでもないだろ。
優しさってことなら、おまえの方が優しいだろ。多分」

ξ゚⊿゚)ξ

( ・∀・)「なんだよ、そんな鳩が豆くらったみたいな顔して」

ξ゚⊿゚)ξ「いや、まさかあんたの口からそんな言葉が聞けるとは思わなかったから」

(;・∀・)「おまえこそよっぽど失礼な女だなおい」

ξ゚⊿゚)ξ「いや、だって」

.

19 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:20:51 ID:k22M11bE0
( ・∀・)「はいはい。
……ツンには感謝してるってことさ。
素直になるきっかけをくれたのは、ツンだからさ」

ξ゚⊿゚)ξ「と、突然なニバカなこと言ってるノよ!」

( ・∀・)「バカなことっておまえ、」

ξ゚⊿゚)ξ「ば、バカなことハバカなコトでよ!」

( ・∀・)「おれは本当にそう思って……」

ξ゚⊿゚)ξ「だ、ダイタイあんたがそんなコトを言うなんて似合ワナいのよ!」

( ・∀・)「……もしかしてツン、照れてる?」

ξ゚⊿゚)ξ「ベ、別にテレてなんかいないわよ。
何バカなこと言ってるわけ。
ダイタイあんたはそうやってアホなことを」

( ・∀・)「なるほどね。
誉められるのが苦手なのか」

ξ゚⊿゚)ξ「別にあたしハそんなコト」

( ・∀・)「いやー。
ギルドVIPに咲く一輪の薔薇、
その美しさで有名なツンさんにこんな弱点があったとは」

ξ゚⊿゚)ξ「あんた何馬鹿なこと言ってるの?」

( ・∀・)「…あれ?」

ξ゚⊿゚)ξ「前から馬鹿だ馬鹿だと分かってはいたけれど、ここまでとは」

( ・∀・)「あれー?」

ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは」

店のドアが開き、デレが顔をのぞかせた。

ξ゚⊿゚)ξ「いらっしゃい。デレ」

.

20 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:24:38 ID:k22M11bE0
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちはー。ツンさん。
今日はよろしくお願いします。
モララーさんもよろしくお願いします」

中に入るデレ。
ドアを閉めるとペコリとお辞儀をし、
二人に向かってそれぞれ笑顔で挨拶をした。

( ・∀・)「あ、う、うん。よろしくねー」

ξ゚⊿゚)ξ「こちらこそよろしく」

ζ(゚ー゚*ζ「ツンさんの服に合わせるってだけで、
ツンさんの服を買うわけでもないのに、付き合わせてしまっているわけですし」

ξ゚⊿゚)ξ「いいのいいの。
同じギルドの店だし、
ここの売り上げはうちのギルドの潤いになるわけだしね」

ζ(゚ー゚*;ζ「な、なるほど」

( ・∀・)「ぶっちゃけだなーおい」

ξ゚⊿゚)ξ「それにしても、よく似合ってるわ。
結構着る相手を選ぶ服だと思ったけど、私の目に狂いはなかった」

ζ(゚ー゚*ζ「そうですか?えへへへへ。
ツンさんにほめられるなんて嬉しいです」

ツンの前に立ってクルリと一回転するデレ。
膝下までのスカートがふわりと広がる。

ξ゚⊿゚)ξ「デレは凛とした清楚系の中に少し可愛いものをいれたり、
可愛い系の中に少しきりっと締めるものをいれると似合うわね」

ζ(゚ー゚*ζ「そうですか?
そんな風に言われたの初めてだから嬉しいです」

照れたように笑うデレ。
頬が少し赤くなっている。

.

21 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:27:16 ID:k22M11bE0
ξ゚⊿゚)ξ「ってことでモララー、似合いそうなものを見繕ってみなさい」

( ・∀・)「凄い命令形だなおい」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたのセンスを見てやろうってのよ」

( ・∀・)「見て吠え面かくなよ」

ξ゚⊿゚)ξ「はいはい。さっさと出しなさい」

モララーがテーブルの上にいくつかのアクセサリーを出すと、
ツンとデレが顔を寄せ合うようにのぞき込んだ。

ζ(゚ー゚*ζ「うわっ。全部素敵ですね」

ξ゚⊿゚)ξ「ま、良い出来なんじゃない」

( ・∀・)「素直に認めろ」

ξ゚⊿゚)ξ「はいはい」

ζ(゚ー゚*ζ「うふふふふふふ」

ξ゚⊿゚)ξ?

( ・∀・)?

急に笑いだしたデレを不思議そうに見る二人。

ξ゚⊿゚)ξ「どうしたの?」

ζ(゚ー゚*ζ「いえ、本当にお二人は仲が良いんだなって思って」

ξ゚⊿゚)ξ「はあ?」

( ・∀・)「へ?」

にっこりとほほえんだデレ。

ξ゚⊿゚)ξ「はああああああああああああ?!」

( ・∀・)「デレさん!?」

.

22 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:28:50 ID:k22M11bE0
ζ(゚ー゚*ζ「モララーさんもいくら接客トークでも、
他の人にあんなことばかり言ってると振られちゃいますよ」

( ・∀・)「ち、違うデレさん!それは思いっきり違う!」

ξ゚⊿゚)ξ「デレ!そのことに関してはこの前しっかりと否定したでしょ!」

ζ(゚ー゚*ζ「はいはい。
何でそんなに隠したいのか分かりませんけど、ワカッテマスヨ」

( ・∀・)「この人ぜんぜん分かってなーい」

ξ゚⊿゚)ξ「違うって言ってるでしょ!
それに私にはブ…」

ζ(゚ー゚*ζ「ぶ?ぶ…なんですか?」

( ・∀・)「ぶ、ぶ、ぶ、ブー、ブー、ブー、………ん、なんだろうなー
ブー、ブー、ブー、……ん?いったい何だろう」

ξ゚⊿゚)ξ「モララー、後で殺す」

ζ(゚ー゚*ζ「ツンさんって照れ屋さんですよね」

ξ゚⊿゚)ξ「デレ!あんたいい加減本気で怒るわよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「でも、そういう風にしか見えませんよ?」

( ・∀・)「デレさん、君の目は曇っている」

ζ(゚ー゚*ζ「結構ひどいこと言われた」

ξ゚⊿゚)ξ「言われても仕方ない。事実だから」

ζ(゚ー゚*ζ「えーでもー。あ、じゃあさっきの『ぶ』ってなんですか?」

ξ゚⊿゚)ξ「そ、それは……。
ぶ、ぶ、ぶ、ブサイクすぎて、モララーなんて私には不似合いよ!
ってことよ!」

.

23 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:32:32 ID:k22M11bE0
ζ(゚ー゚*ζ「うわぁ」

( ・∀・)「ひでぇな」

ζ(゚ー゚*ζ「ツンさん、照れ隠しとは言えそれはさすがに」

ξ゚⊿゚)ξ「うるさいうるさいうるさい!」

( ・∀・)「もうちゃんと言っちゃえよ。ブー」

ξ゚⊿゚)ξ「わー!わー!わー!WAーーー!!」

ζ(゚ー゚*ζ「ツンさん?そんな大声」

( ・∀・)「はぁ…まったく変なところで…」

ξ゚⊿゚)ξ「うっさいうっさいうっさい!
だいたいデレ!あんたが変な間違ったことを言うからおかしなコトになるのよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「えーでもー」

ξ゚⊿゚)ξ「よし!今日は予定変更して誤解を徹底的に解くことにする!」

ζ(゚ー゚*ζ「え?いや、別にそこまで…」

ξ゚⊿゚)ξ「異論反論は認めない!」

ζ(゚ー゚*ζ「モララーさん!」

( ・∀・)「ツン!頑張って誤解を解いてくれ!」

ζ(゚ー゚*;ζ「モララーさんまで!?」

ξ゚⊿゚)ξ「さあ行くわよデレ!」

ζ(゚ー゚*ζ「わ、わかりました!
お二人は付き合ってません!
ただ仲の良いってだけで」

.

24 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:33:36 ID:k22M11bE0
ξ゚⊿゚)ξ「分かってない!
よし!どこかに腰を据えて落ち着いて話すわよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「え?あ。いえ、この後用事が…」

ξ゚⊿゚)ξ「異論は認めない!」

ζ(゚―゚*ζ「わ、分かりました。お二人は付き合ってません」

ξ゚⊿゚)ξ「よし、本当にちゃんと分かったか落ち着いて確認する」

ζ(゚ー゚;*ζ「そんなー」

ξ゚⊿゚)ξ「よし!行くわよ!」

引きずられる様に店を連れだされるデレ。

声援で二人を見送ったモララー。

一息つきながら座り直し、そしてウインドウを開いた。




.

25 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:36:00 ID:k22M11bE0
3.


同月同日。攻略層主街区。
転移門広場はプレイヤーが溢れていた。

その多くは最前線を戦い、攻略を進める攻略組と呼ばれる者達。
そして攻略組の大半を占める大手ギルドのプレイヤーは、
同じモチーフのカラーリングを施した防具や制服を着ていることが多いため、
道行く様を見ているだけでどのギルドに属しているのかが大まかに分かる。

('A`)「カラフルだよな」

( ゚∋゚)『そうだな』

( ´∀`)「モナ達も人のことは言えないもなよ」

▼・ェ・▼「きゃん!」
 _
( ゚∀゚)「そうだよな」

( ゚∋゚)『特に…』

広場の隅でぼそぼそと会話する四人に近寄ってくる二人。

(´<_` )「悪い、待ったか?
兄者が出がけに駄々こねたから」

( ´_ゝ`)「待ち合わせ時間には遅れてないぞー」

('A`)「金銀コンビだからな」

(´<_` )?

( ´_ゝ`)?

( ´∀`)「そんなに待ってないもなよ」

( ゚∋゚)『大丈夫だ』

.

26 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:37:52 ID:k22M11bE0
(´<_` )「なら良いが」

不思議そうに輪に加わる二人。
六人が互いの顔と装備を目線で確認をする。
 _
( ゚∀゚)「今日のメンバーはこれで終わりなんだよな?
さっさと行こうぜ!」

('A`)「テンション高いなーおい」

( ´_ゝ`)「ま、気持ちは分かるが」

( ゚∋゚)『兄者が?』

( ´_ゝ`)「鉱石は必ず一種類につき二つ以上見つけるぞ!」

('A`)「ああ」

( ´∀`)「そういうこともなね」

(´<_` )「今回は先におれが使える順番なんだ」

(;゚∋゚)『いっぱい見付かると良いな』
 _
( ゚∀゚)「何でもいいから早く行こうぜ」

('A`)「フォーメーションと目的の再確認が先だろ」

隣に立つクックルを見上げるドクオ。
クックルは小さく頷き、ウインドウを開いた。

( ゚∋゚)『みんな確認してくれているとは思うが、
念の為繰り返す。開いてくれ』

.

27 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:41:12 ID:k22M11bE0

クックルの動きに同調する様に、五人が自分のウインドウを開く。

( ゚∋゚)『今回もリーダーはおれがやらせてもらう。
サブリーダーはドクオ。
攻略エリアの出現モンスターデータから、
毒耐性は全員、麻痺耐性はおれとドクオと兄者で。
フォーメーションはトップに兄者とドクオ。
後ろに弟者とジョルジュ。
後ろをモナーとビーグル、おれがつとめる』

クックルの声を聞きながらアイテムの確認をする五人。
腰のポーチの中、POTとクリスタルをそれぞれに見る。

( ゚∋゚)『最終目標は……』






(`・ω・´)「ここにも無かったか」

(´・_ゝ・`)「ああ」

最前線の五つ下の層。
迷宮区に繋がる森に、ギルドNSの六人はいた。

(゚、゚トソン「ですが、これで最終目標を決めることが出来たと思います」

( ゚д゚ )「何か掴んだのか?」

(゚、゚トソン「はい」

行き止まりの戦闘エリア。
大きな樹の情報を読んでいたトソンが振り返り、
ずれていない眼鏡の位置を直しながらニッコリと微笑んだ。

从 ゚∀从「さすがトソン。
で、どうすればいい?」

.

28 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:42:49 ID:k22M11bE0
(゚、゚トソン「まずは二つ前の安全エリアまで戻りましょう。
そこで先程とは別の道を進んで、南西エリアの巨木まで向かいます。
ルート的には遠回りになりますが、途中で一件採取を行います。
その後辿り着いた南西の大樹、その根元でアイテムが得られるはずです」

<_プー゚)フ「もう南西で良いのか?
確かショボンから送られてきた情報じゃあ…」

(゚、゚トソン「はい。クエストの内容から鑑みて、
最終的に南西の巨木で拾えるのは確実。
ただそれまでにやることがまだ確定されていないとのことでした。
そこで今までにVIPの皆さんが行ったデータと、
情報屋さんから提供されたデータを精査して、
ショボンさんのご意見も参考に本日のルートを決めさせてもらいました。
じつは先程の安全エリアでショボンさんとメッセージさせていただいてまして、
この南エリアの巨木での結果次第では次に南西に向かうのが、
正しいルートであろうという結果になっています」

クエストの問い掛けに、笑顔で答えるトソン。

(`・ω・´)「一発で正解だったってことか」

( ゚д゚ )「やるな」

(゚、゚トソン「実は偶然なんですけどね」

(´・_ゝ・`)「は?」

(゚、゚トソン「いくつか選定した中で、このルートは四番手候補だったんです。
ただ、このルートを潰せば確実なルートを導き出せる予定だったので。
元のルートではこの後南東、そして北東の巨木に向かうつもりでしたから」

(;`・ω・´)「あ、そうだったんだ」

从 ゚∀从「正直に言わなくていいのに」

(゚、゚トソン「偶然も実力です」

<_プー゚)フ「(最近素が出てきたよなこいつも)」

.

29 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:44:05 ID:k22M11bE0

(゚、゚トソン「何か言いましたか?」

ナイフを構えてニッコリと微笑むトソン。

<_プー゚;)フ「いーえ何も言ってません」

(;゚д゚ )「とりあえず早く手に入るならそのほうが良いから行くか」

(`・ω・´)「おう」

<_プー゚)フ「行くぜ行くぜ行くぜ!」

駆け出すエクスト。

(`・ω・´)「おれが先だバカ野郎!」

続くシャキン。

(´・_ゝ・`)「まったく…。ハイン、行くぞ」

从 ゚∀从「おう」

やれやれといった仕草で続く二人。

( ゚д゚ )「トソン、行けるか?」

(゚、゚トソン「はい。行けます」

周囲を確認しながら二人が続く。

その二人がエリアを移動したとき、
既に一番前の二人は戦闘を始めていた。





.

30 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:45:19 ID:k22M11bE0
ミ,,゚Д゚彡「はっ」

完全武装をしたフサギコが流れるように身の丈二メートルを超える牛頭男の懐に入る。
自分を狙った棍棒が空振りして地面を叩くのを見向きもせず、
オレンジ色に輝いた刀を縦に横にと三閃した。

ポリゴンに変わる牛頭男。

剣技後の硬直を起こしたフサギコを狙って針を向けた巨大蜂。
羽音を聞いてフサギコは自分が狙われているのが分かったが、
そのまま動かずにいた。

川 ゚ -゚)「!」

呼吸のみの気合い一閃。
薙刀の先が蜂の肩羽を切り裂く。

バランスを崩した蜂が、自分を攻撃したクーに向きを変える。
しかしそれを狙ったかのように薙刀はもう片方の羽を根元から切り裂く。

地面に落ちる巨大蜂。
その頭から胴体を薙刀が切り裂くと、
その身体はポリゴンへと変わった。

(;^ω^)「相変わらずの戦い方だおね」

川 ゚ -゚)「何か問題があるか?」

(;^ω^)「いや、それは無いけれど」

別の場所で牛男を倒したブーンが近寄る。

ミ,,゚Д゚彡「二匹を分断して倒すのはお見事だから」

二人に笑顔で近寄るフサギコ。

川 ゚ -゚)「二匹で行動する【ツイン・ビーヒール】とはいえ、
うまく誘導すれば分断することは可能だ。
先に一匹倒せば、余裕も生まれるしな。
ま、これも二人がそれぞれ一匹ずつ牛男を倒すことが出来るからだ」

.

31 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:46:59 ID:k22M11bE0
( ^ω^)「これくらいのレベル差があれば大丈夫だお」

ミ,,゚Д゚彡「何度も倒して経験も積んでるから」

今三人がいるのは、
同時進行でクエストを行っている仲間達がいる上層階からは
十層近く下の階の迷宮区だった。

( ^ω^)「それで、さっき宝箱から取ったのがそうなのかお?」

川 ゚ -゚)「ああ、これが『鍵』だ」

クーがウインドウを開いて操作すると、手のひらの上に水色のカギが現れた。
覗き込むブーンとフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「普通のカギだから」

( ^ω^)「形はよくあるタイプだお」

川 ゚ -゚)「情報を出すと【迷宮の継手1】と名前が出るから、
正解で間違いないはずだ」

( ^ω^)「じゃあ後は、他の皆がゲットできればクリアだおね」

川 ゚ -゚)「そういうことだ」

ミ,,゚Д゚彡「戻るから!」

川 ゚ -゚)「戻る際に採取していくリストがあるから、
寄り道するぞ」

取り出した紙に書いてある内容をチェックするクー。
横からブーンがそれを覗く。

( ^ω^)「……このリスト作ったのクーだおね」

川 ゚ -゚)「ショボンにはOK貰ってあるぞ」

ミ,,゚Д゚彡「……」

視線で『問題があるか?』と問いかけるクーに何も答えない二人。

川 ゚ -゚)「では行くか。
まだ他の組は『鍵』を手に入れていないようだが、
早く戻るにこしたことは無いからな」

ニッコリと微笑んだクーの後ろを、
愛想笑いを浮かべた二人が続いた。

.

32 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:52:17 ID:k22M11bE0




(エギル)「状況はどうなってる?」

(´・ω・`)「予定通り…と言うより、少し早いくらいですね。
このままいけば、一時間近く早く全ての鍵が手に入るかもしれません」

(アスナ)「そうですか。では、予定通り今日中の攻略が可能と言う事ですね」

フロアボス攻略作戦会議室。

各層にある迷宮区の奥に設定されているボスの部屋。
ボスを倒せば、その部屋の奥の扉が解放され、上の層への階段へ進むことが出来る。

そしてボスを倒す作戦実行に際しては、
ボス部屋に入る人数に上限があるためメンバーの選定から作戦の立案、
指揮者の選定などを行う必要がある。

攻略組全員が一つのギルドであればギルドホームで行えばよいのだが、
ボス戦のほとんどが幾つかのギルドとソロプレイヤーの合同作戦であるため、
攻略層にある適当な空き家で作戦会議が行われるのが常であった。

(´・ω・`)「このまま問題なく進めば、ですが」

(アスナ)「ギルドVIPのクエストの攻略は、
無駄のない最短の攻略と聞いています」

(;エギル)

(´・ω・`)「みんなが頑張ってくれればいけるかも知れませんね」

.

33 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:53:31 ID:k22M11bE0
作戦会議の主導権は、2大ギルドの血盟騎士団と聖竜連合のどちらかが握ることが多い。
その中でも血盟騎士団の副団長『アスナ』は、
使用武器【細剣】の速度、正確さから『閃光のアスナ』などと呼ばれ、
強さは勿論のことその美貌からもファンが多く、
ギルドの垣根を超えてリーダーシップを取ることの出来る稀有な存在だった。

(アスナ)「今回の作戦はあなたの立案と言っても過言ではありません。
肉付けは私達もしましたが、骨子はあなたの立てた作戦です」

(´・ω・`)「僕は攻略組の皆さん、先遣隊の皆さんが集めた情報と、
アルゴさん達情報屋さんが集めた情報を纏めただけですよ」

(アスナ)「こんな何でもない層のボス戦に、
十層以上下の層からいくつか布石がされていたなんて、誰も気付けていませんでした。
膠着した状態で、あのまま突撃したら…死者が出たかもしれません」

(´・ω・`)「僕を推してくれた二人の顔に泥を塗る訳にはいきませんし、
引き受けた以上は最善を尽くします」

そんな攻略組と一部情報屋のみが入れるような作戦会議室に、ショボンはいた。
しかも部屋に集まった者を全て見渡せる奥の場所、その机の前に座っている。
机の上には何枚かの書類。
それぞれの書類には、層の地形図やクエストのチャート図が描かれていた。

今この部屋にいるのはショボンと背の高い肌の浅黒いスキンヘッドの男『エギル』と、
そして白地に赤のラインの入った戦闘服を身に纏った『閃光のアスナ』だけだった。

(´・ω・`)「ですが、アスナさん。
あなたがあの状態でボス戦に挑むような無謀な方だとは思えませんよ」

座ったまま。
集まってくる情報をまとめ、書き写し、推理し、指示を送りながら、
目の前に立ったアスナと会話するショボン。

アスナは口調こそ硬質的で事務的だったが、
手を休めないショボンを見るその表情は穏やかだった。

(アスナ)「…『七つの鍵』収集作戦、よろしくお願いします。
あと、各ギルドの代表と作戦メンバー全員の賛成を得られたあの手腕、見事でした。
理と情の振り分け、凄かったです。私も見習わないと」

.

34 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:54:53 ID:k22M11bE0
(´・ω・`)「もともとうちのギルドの店を利用してくださっている方が多くいらっしゃったので、
そこで信用していただけただけですよ。
それに僕は鍵集めの作戦立案指揮だけで、
そのあとのボス攻略戦の指揮はアスナさん達がメインで行われるわけですし」

(アスナ)「……レストランの方にも、よくお邪魔しているみたいですね」

(´・ω・`)「ええ。血盟の方もよくいらっしゃってくれますよ。
迷宮に潜る前にお弁当を買いに来て下さる方も多いです」

(アスナ)「………やっぱり胃袋は掴むべきか」

(´・ω・`)「はい?」

(アスナ)「い、いえ、なんでもありません。
それでは私は戦闘の準備に向かいます。
鍵が集まったら、よろしくお願いします。
エギルさん、集まった時間によってはそのまま攻略に入る可能性もあります。
その際はそのまま宜しくお願いします」

(エギル)「あ、ああ。分かった」

笑顔を二人に向けてから、踵を返して部屋の出口に向かうアスナ。
そして出口の前で振り返り、この数分で一番の笑顔を見せた。

(アスナ)「ショボンさん、二人じゃありませんよ」

(´・ω・`)「え?」

(アスナ)「うちのギルドの者からも、推薦されました。
ついでに血盟に取り込むよう説得してくれともね」

(´・ω・`)「……はぁ」

(アスナ)「今回の作戦が順調に終わった時には、一度お話しさせて下さい。
何度か血盟騎士団副団長名義で、団よりメッセージはさせていただいていますが、
しっかりと、ちゃんとお話しをできてはいませんでしたから」

(´・ω・`)「…はい」

(アスナ)「では、失礼します」

.

35 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:56:25 ID:k22M11bE0
部屋を出るアスナ。
横で大きく息を吐いたエギル。
ショボンは座ったまま苦笑した。

(エギル)「悪いな、ショボン」

(´・ω・`)「?何がですか?」

(エギル)「いや、こんなところまに引っ張り出しちまってよ」

(´・ω・`)「問題ないです。
攻略に協力するのは当然の事ですから。
それに、僕等にも得るものは多いです」

(エギル)「そう言ってもらえるとありがたいが…」

座ったまま自分を見上げるショボンの視線から逃れるように横を向くエギル。
気まずそうに片手で頭を掻いている。

(´・ω・`)「どうしました?」

(エギル)「いや、多分このボス戦が無事に済めば、
VIPに対する勧誘は激しくなる。
特に血盟……、いや、聖竜もだな。この二つからの勧誘がな。
だから…」

(´・ω・`)「ああ、そんな事ですか。
それこそ杞憂ですよ。
対応は簡単ですから、気にしないでください」

(エギル)「え?」

(´・ω・`)「僕が断れば済む話です。
中小ギルドより大ギルドの方がプライドがある分暴挙にも出ませんし。
ギルドホームに来いとか言われても、行かなければ良いだけですしね。
この世界ではシステムで設定されたこと以外で強制されることなど一つもないのですから」

ニッコリと微笑んだショボン。
それに対し、困惑したような笑いを返すエギル。

.

36 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:58:22 ID:k22M11bE0
(´・ω・`)「それに…。血盟騎士団と聖竜連合。
今まで水面下で接触を求めてきていたこの二大ギルドが表から来てくれれば、
多少は牽制されて他のギルドからの勧誘が少なくなったらいいなと思います。
なんといっても攻略組を形成する二大ギルドなわけですし。
今この二大ギルドに『攻略の為』と言われて真っ向から対抗できるギルドは少ないと思いますよ」

(エギル)「…というか、対抗できるギルドがあるのか?」

(´・ω・`)「アインクラッド解放軍。あそこは気にしないでしょう。
規模的には二大ギルド以上ですしね。
それに、今は攻略より低層階での利権に走っている分、
もしかしたら勧誘が激化するかもしれません」

(エギル)「あー。まあ、あそこは……な」

(´・ω・`)「軍が攻略から退いた理由を、僕は数値データと結果からしか知りません。
今の軍の情勢も、実際に勧誘に来られた方と、一般的な情報程度です。
そこからの推測ですが、あそこには攻略組にコンプレックスを持っている派閥が
存在しているようですね」

(エギル)「そんなことまで知っているのか」

(´・ω・`)「ちゃんと情報を集めて整理すれば、導き出される答えですよ。
ね、アルゴさん」

(エギル)「え?」

唐突にショボンがアインクラッド一の情報屋の名を呼ぶ。
壁を見るショボンの視線の先を追うエギルだったが、
そこには何もない。

「なんだ、ばれてたカ」

しかし声が聞こえると、すぐに壁に寄りかかっているアルゴが二人の視界に現れた。

(アルゴ)「いつから分かってたんだイ?」

(´・ω・`)「先ほどアスナさんが部屋を出る時、
妙にドアとの間に空間を開けていたので気になってたんですよ。
なので注意して観察したら、壁のポリゴンが少し揺れたような気がしまして。
アスナさんが手引きして、ここまで隠れることが出来るような方は、
アルゴさん以外考えられませんから」

.

37 ◆dKWWLKB7io :2015/06/28(日) 23:59:44 ID:k22M11bE0
(エギル)「…なんつー」

(アルゴ)「こいつはこういう男なんだヨ。
迂闊に何か話すと何でも知られちまうゾ」

笑いながら二人に近寄るアルゴ。

(´・ω・`)「アルゴさん、それは自分の事でしょう」

(アルゴ)「アタシは売れる情報くらいしか集めてないけどネ」

背中を向け、ショボンの前の机に腰掛けるアルゴ。
小柄だが魅惑的な肢体を見せつけるように足を組み、
身体のラインをねじる様にしながら振り返った。

(アルゴ)「軍の話とか、どうやって調べたのかナ?」

(´・ω・`)「情報屋はアルゴさんだけじゃありませんよ?」

(;エギル)

上目遣いにアルゴを見るショボン。
二人の視線がぶつかるが、二人ともそらそうとはしない。
そんな二人を見るエギルは額に汗を浮かべていた。

(アルゴ)

(´・ω・`)

(;エギル)

(アルゴ)「つれない男だネ」

(´・ω・`)「いつから色仕掛けの真似事までするようになったんですか?」

(アルゴ)「おや、色仕掛けってことは気付いてたんだネ」

(´・ω・`)「あ、本当にそうだったんですか。
冗談だったんですが、当たってよかった」

.

38 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:01:09 ID:BL2IwAIc0
机から降り、振り返ってショボンの前に仁王立ちするアルゴ。

(#アルゴ)「……特殊性癖のショボン殿に気付いてもらえたのなら、
アタシの色仕掛けもたいしたものだってことかナ」

(#´・ω・`)「僕は気を使い過ぎてもしかしたらって思うことが出来ましたけど、
僕以外の人だと確かに特殊性癖の方でないと気付けないかもしれませんね」

(#アルゴ)「……それは、どういう意味かナ?」

(#´・ω・`)「人の事を特殊性癖って、人聞きの悪い」

(#アルゴ)「最初に喧嘩を売ったのは君だよネ」

(#´・ω・`)「冗談だったのに当たったからびっくりしたんですよ」

(#アルゴ)「ホントに失礼な男だネ」

(#´・ω・`)「それはこっちのセリフです」

(エギル)「二人は仲良いな」

(#アルゴ)「誰が!」
(#´・ω・`)「誰がですか!」

(;エギル)「いや、息もあってるし」

(#アルゴ)「エギル、君の目は節穴だったのかイ」

(#´・ω・`)「残念です、エギルさん。
まともな方だと思っていたのに」

(#アルゴ)「いやショボン、どうしてこうして、こいつはなかなかの変態なんだヨ」

(#´・ω・`)「おや、そうだったんですか。幻滅しました」

(エギル)「え?お、おい、アルゴ?」

(#アルゴ)「だいたい道具屋をやりながら攻略組とか、
何を考えているのかネ。
店もあんなところで女の影も無く、
たまに若い低レベルの少年なんかが来るとおまけしてやって」

.

39 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:02:12 ID:BL2IwAIc0
(エギル)「それはおれの店に女の客がほとんど来ないだけであって!」

(#´・ω・`)「そういえば、バックアップしている中層クラスのプレイヤーも、
男性…というよりは少年が多いようですね」

(;エギル)「お、おいショボン!
それもただ単にそれくらいの年齢のプレイヤーが多いってだけであって!」

(アルゴ)「ハー。なるほどね。
エギルはそちらの趣味の人だったのカ」

(´・ω・`)「どうやらそのようです」

(アルゴ)「そういえば昔は肌を露出した防具を好んで着ていたナ」

(´・ω・`)「今も体のラインを強調する服が多いですよね。
筋肉質で、見せびらかしたいんでしょうか。」

途中で入るエギルの「それは防御力が!」や「キリトに貰ったレア防具が!」や
「動きやすい服を選ぶと!」といった叫びを気にすることなく話を進めていくアルゴとショボン。

(アルゴ)「ま、エギルの様な見た目の人はモテるらしいしナ」

(´・ω・`)「らしいですね。それに趣味嗜好性癖は自由ですし」

(アルゴ)「エギル、私達は偏見の目で見たりしないから安心してくれ」

(´・ω・`)「共感は出来ませんが、節度さえ守っていただければ自由だと思います」

(#エギル)「バカやろう!俺にはちゃんと現実世界に嫁が!」

(アルゴ)「え?」

(´・ω・`)「嫁?」

.

40 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:03:26 ID:BL2IwAIc0
(;エギル)「……あ……」

(アルゴ)

(´・ω・`)

(;エギル)

(アルゴ)

(´・ω・`)

(;エギル)「えっと……その……」

思わず口走ってしまった内容に引っかかって自分を見る二人の視線。
エギルは何とかごまかそうと思ったが、口からは何も出なかった。

(アルゴ)「なるほどナ。
調べても女の影が出てこないからそう報告しようかと思ったが、そういう事カ」

(´・ω・`)「もう、だから言ったじゃないですか。
素直に聞けばいいって」

(アルゴ)「んー。
それも考えたけど、やはり情報屋としては本人の意見ではなく実際の所を知りたいからナ」

(´・ω・`)「まったく。手伝いをさせられたこちらの身にもなってくださいよ」

(エギル)「え?アルゴ?おれのことを報告?
女関係を?え?誰に?え?手伝う?」

(アルゴ)「すまなかったな、ショボン。
これは手伝ってくれたお礼だヨ」

キョロキョロと二人を見るエギルに構うことなく会話をする二人。

ショボンの前にトレードウインドウが現れた。

(´・ω・`)「!これは」

.

41 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:05:03 ID:BL2IwAIc0
渡されたデータのタイトルを見て表情を引き締めるショボン。
アルゴはそれを見て目を細め、興味深そうに口元に笑みを見せた。

(アルゴ)「頼まれていた物だ。
報酬は、今手伝ってくれたことと、それを見て意見がまとまったら、教えてくれれば良いヨ」

(´・ω・`)「それで良いんですか?」

(アルゴ)「その結果から、キミがどんな結果を導き出すか興味深いんでネ」

(´・ω・`)「分かりました。この作戦が終わり次第すぐに精査します」

(アルゴ)「楽しみにしてるヨ」

(エギル)「お、おい、アルゴ」

(アルゴ)「ああエギル、悪かったナ。
依頼主には決まった相手がいるって報告しておくから」

(エギル)「え?あ、いや、」

(アルゴ)「リアルの話は基本ご法度だから、今聞いたことは他言しない。
信じてくれ。」

(エギル)「あ、いや、うん、そう、だな」

(アルゴ)「それじゃ、またナ。二人とも。
エギル、ボス戦、キバってくれヨ」

(´・ω・`)「ありがとうございました。また連絡します」

(エギル)「お、おお」

部屋を出るアルゴを確認した後、すぐさまデータを深く読み始めるショボン。

その横ではエギルが落ち着きなく身体を揺らせている。

(エギル)「……なあ、ショボン」

(´・ω・`)「はい?」

ウインドウから目を離さずに返事をする。
行儀は悪いが、二人とも気にはしない。

.

42 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:06:39 ID:BL2IwAIc0
(エギル)「あー。なんだ、その、な」

(´・ω・`)「……あ、大丈夫です。僕もリアルの事を他言したりはしませんから。
安心してください。」

(エギル)「あ、いや、それは、ああ、そうだな。
うん。頼む」

(´・ω・`)「もちろんです。
こちらこそすみません。
アルゴさんと一緒に聞き出すようなまねをしてしまって」

ウインドウを消してから立ち上がり、エギルに向かって姿勢を正し、腰を折って頭を下げるショボン。

それに対して慌てたように自分の頭を触るエギル。

(エギル)「あ、いや、まあそれはいい。
ショボンはアルゴには色々と世話になってるだろうしな。
おれが頼んでいる中層クラスのプレイヤーの教育にも、
手を貸してもらっているんだろ?」

(´・ω・`)「そうですね。
色々と力を貸してもらっています。
……もちろんそれなりの対価は支払っていますけど」

顔を上げたショボンが苦笑いをしながら言葉を選ぶと、
アルゴとの取引について想像が出来たエギルが同じような表情になった。
そして互いの顔を見て、二人が噴出した。

(´・ω・`)「でも、お世話になっているのは本当です」

(エギル)「ああ、それは分かってる」

笑う二人。

しかしすぐにショボンの顔から笑みが消えた。

(エギル)?

(´・ω・`)「すみません。連絡がきました」

.

43 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:10:23 ID:BL2IwAIc0
ウインドウを出すショボン。
メッセージを読むと、表情が柔らかくなる。

(´・ω・`)「うちの二班から報告が着ました。
鍵を手に入れたそうです」

(エギル)「そうか。あとは…」

(´・ω・`)「手に入れているのは、うちの三班と二班。
そして先にソロの方が手に入れていた一本で、計三本。
残りは、うちの一班と、血盟、聖竜、風林火山が一つずつ。
残り四本ですね。
先の二班と違い、四班ともこの層に近い高層での作戦ですから、
予定通り進んでくれれば問題ないです」

(エギル)「そうだな」

席に座り直し、机の上に広げられた書類に書き込みを始めるショボン。

(エギル)「(すごいな。同時に六件のクエスト情報をそれぞれにまとめ上げ、指示を出す…か)」

その迷いの無い動きに目を見張るエギル。
右手で自らの顎をさすりながら、じっと見つめていた。

(´・ω・`)「エギルさん」

(エギル)「お、おう」

(´・ω・`)「今回の作戦とは別件ですが、これを見ていただけますか?」

(エギル)「ん?」

ショボンがウインドウを出し、可視モードにする。

(´・ω・`)「これです」

座るショボンの後ろに立ち、腰をかがめてウインドウを覗き込むエギル。

(エギル)「……これは」

.

44 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:11:39 ID:BL2IwAIc0
(´・ω・`)「ここ五カ月の、プレイヤーの死亡数です」

(エギル)「!…こんなにいるのか……しかも」

(´・ω・`)「はい。PK……プレイヤーによる殺害が増えています。
ここ二ヶ月の平均は、その前の三ヵ月平均値の、倍近い数字です」

(エギル)「…ラフィンコフィンか?」

(´・ω・`)「かもしれません。ですが、違うかもしれません」

(エギル)「だがここまでの増加ってことは、
数名のPKプレイヤーやオレンジギルドの仕業と考えるより、
規模の大きいPKギルドが関わっていると考えた方が良いんじゃないか?」

(´・ω・`)「その意見には賛成です。
ですが、見てください」

ウインドウを操作するショボン。
エギルの目の前で、幾つかの数字が新たに生まれる。

(エギル)「これは?」

(´・ω・`)「死亡時の層の分布です。
高層、中層も増えていますが、圧倒的に低層階が増えている」

(エギル)「そうだな。この量は…」

(´・ω・`)「そして、日はまちまちです」

(エギル)「そのようだが…」

(´・ω・`)「これは推測ですが、ラフコフはPKを楽しんでいるように思えます」

(エギル)「楽しんでいる?」

(´・ω・`)「はい。
高レベルのプレイヤーを殺すことや、一度に多量の人数を殺すことなど、
PKという行為を楽しんでいるように思えます」

(エギル)「そうだな……。なんとなく、わかる」

.

45 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:13:31 ID:BL2IwAIc0
(´・ω・`)「それが正しいと仮定すると、この低層階でのPKには、違和感があります。
亡くなっている方は、それほどレベルは高くなく、有名ギルドのメンバーでも無いようです。
そして噂になる様な大量PKと言うわけでもなく、ただただ人数が多い」

(エギル)「ラフコフ以外のPK」

(´・ω・`)「もちろんラフコフの仕業である可能性も高いです」

言葉を止めるショボン。
エギルが怪訝に思い視線をウインドウからショボンに移すと、
悲しそうな笑顔を見せるショボンがいた。

(´・ω・`)「と言うより、PKを楽しむギルドが、ラフコフ以外にあることなど考えたくないですけどね」

(エギル)「……ああ、そうだな」

(´・ω・`)「ですが、それに囚われていると、
もしラフコフではない他のギルドだった時に反応が遅れます。
今は、新たなラフコフが生まれるその芽を潰す最後のタイミングかもしれません」

(エギル)「ショボン…」

(´・ω・`)「もう少しデータを調べてみます。
アルゴさんにもしっかりと報告して、協力してもらうつもりです」

(エギル)「ああ、頼む」

(´・ω・`)「攻略組の方の手を煩わせるようなことはしたくないのですが、
僕達中層エリアを生きる者の手に余る時は、お願いするかもしれません」

(エギル)「もちろんだ」

(´・ω・`)「お願いします」

(エギル)「…攻略に参加する者も、固定化されてきた。
攻略組、トッププレイヤー、二大ギルドなんて言われても、
実際のボス戦で満足に動ける者は限られている。
もっと、中層からの底上げが必要だ」

.

46 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:16:52 ID:BL2IwAIc0
(´・ω・`)「ええ。この先のボスが特化型になる可能性もありますしね」

(エギル)「そうだな。
ボスに合わせて攻撃方法と共に参加できる者も変える必要が出てくるかもしれん。
同じレベルでも、スキルを特化させた者が勝てるボスが出てこないとも限らない」

(´・ω・`)「はい。その通りだと思います」

真剣な面持ちで互いの考えを照らし合わせた二人。
互いの考えが、思想が似ていることを感じ、信頼を込めた笑みを浮かべた。

(´・ω・`)「さて、そろそろうちの班は鍵をゲットできる頃だと思います。
エギルさんはボス戦の準備はしなくてもよろしいですか?
ここはもう僕一人でも大丈夫ですし、何かあったら連絡入れますけど」

(エギル)「ああ、おれの準備は大丈夫だ」

胸のプロテクターを自分の拳で軽く叩くエギル。
澄んだ音が部屋を響く。

(´・ω・`)「では、このまま続けますね」

その姿に笑顔を見せたショボンだが、
机の上の書類に視線を移した時にはその表情は険しくなっていた。

(エギル)「どうした?」

(´・ω・`)「いえ、あまりにも順調なので、少し順調すぎだなと思いまして」

(エギル)「そうか。まあ、クエストは手順をちゃんと踏めば問題なく進めるはずだから、
大丈夫じゃないか?」

(´・ω・`)「……そうですね」

(エギル)「で、だな、ショボン」

(´・ω・`)「はい?」

(エギル)「さっきの話だが」

(´・ω・`)「さっきの?」

(エギル)「アルゴが、その、おれの事を報告するっていう」

(´・ω・`)「はあ」

.

47 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:18:13 ID:BL2IwAIc0
(エギル)「誰に報告するのかなーなんてことが気になるんだが」

(´・ω・`)

(エギル)

(´・ω・`)

(;エギル)

(´・ω・`)

(;エギル)「あ、いや。忘れてくれ」

(´・ω・`)「アルゴさんならその情報も売ってくれるとは思いますが、
エギルさんもけっこう……」

(;エギル)「いや、違うんだ!純粋に気になっただけでだな」

(´・ω・`)「浮気者…」

(;エギル)「いや、ちがうぞ、ショボン!
相手を知ったからと言ってどうこうするつもりはない!」

(´・ω・`)「……(しらんがな)」

エギルの弁解は、ショボンに鍵取得のメッセージが届くまで続いた。




.

48 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:23:44 ID:BL2IwAIc0
4.


同日。中層。

気候と広さから中層エリアを主に活動するプレイヤーにとって、
この街は人気があった。

アインクラッドに置いて定住する場所を決める行為、
俗に言う『ホームを買う』と呼ばれる行為は現実世界の土地付き一戸建てを買うようなものであり、
現実世界と同じく値段も高い。

しかしこの街にはマンションのような建物が数多く存在し、
一部屋一部屋を月単位で借りることは勿論、買うことが出来た。
買うのはそれ相応の金額はするのだが、それでも通常の一戸建てを買うよりも手頃であるため、
とりあえず定住する場所を持ちたいと思ったプレイヤーが数多く住んでいた。

街の中には公園や広場がいくつかあり、アインクラッドに住むことに慣れたプレイヤーは、
モンスターに襲われないその穏やかな場所で、のんびりと過ごす者も多かった。

( ><)「またこんな所にいるんです!」

(*゚ー゚)「あ、こんにちはー」

(*‘ω‘ *)「こんにちはだっぽ」

*(‘‘)*「こんにちはなのです」

(,,゚Д゚)「またお前らかゴルァ」

( <●><●>)「ここで会ったのはたまたまなのはワカっています」

緑色のふかふかのシートの上で、お弁当を広げていたしぃ、ギコ、ヘリカル。
呑気なその姿に寄ってきたのは、チーム『ビロワカッポ』の三人だった。

(#><)「せっかく入れてもらったVIPを辞めて、
こんなところで呑気にご飯とはいい度胸なんです!」

(*‘ω‘ *)「おいしそうっぽね」

(*゚ー゚)「ぽっぽちゃん、食べて食べて。
この卵焼きは新作なんだよ」

.

49 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:26:08 ID:BL2IwAIc0
(*‘ω‘ *)「卵焼き!新作!」

*(‘‘)*「ぽっぽは卵焼きが好きですね」

( <●><●>)「見ただけで美味しいのはワカッテマス」

(,,゚Д゚)「おう、座れ座れ。ほれ、茶も飲め」

( <●><●>)「遠慮なくご相伴にあずかります」

(#><)「それ相応の実力者なのに努力を止めるのは間違っています!」

(*‘ω‘ *)「おいしいっぽ!この緑の葉っぱはなにっぽ?」

(*゚ー゚)「アルハインの実だよ」

( <●><●>)「通常アルハインの実は麻痺系の解除薬に使うのは分かっています」

(*゚ー゚)「お、ワカッテマス君は流石だね」

*(‘‘)*「ギコは分かって無かったですよ」

(,,゚Д゚)「ばらすなゴルァ」

(*‘ω‘ *)「二人は今日は狩りには行かないっぽ?」

(,,゚Д゚)「今日は休みの日だぞゴルァ」

(*゚ー゚)「ぽっぽちゃんも今日はお休みにしたら?
フロアボス攻略できたら、開通と同時に新しい街に一緒に行けるし」

( <●><●>)「今頃攻略組の皆さんが必死に戦っているのはワカッテマス」

(,,゚Д゚)「それもいいな。ワカッテマス、一緒に行かないか?ゴルァ
前に新しい防具が欲しいって言っていただろ」

*(‘‘)*「わたしとしぃねぇは、新しい服と食材を見に行くつもりなんですよ」

(*‘ω‘ *)「それもいいっぽね」

( <●><●>)「名案なのはワカッテマス」

(#><)「二人とも馴染みすぎなんです!」

.

50 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:27:42 ID:BL2IwAIc0
すでにシートの上に座り、カップを片手にお弁当箱の中を物色しているぽっぽとワカッテマス。

独りビロードはシートの真横に立ち、片手剣を右手にぶるぶると震えている。

(,,゚Д゚)「何をそんなに怒っているんだゴルァ」

(#><)「それは何度も説明したんです!」

(,,゚Д゚)「!?まだ怒っているのか?!」

(#><)「当たり前なんです!」

(*‘ω‘ *)「もうそのことは何度も聞いたっぽ」

( <●><●>)「当事者じゃないと分からないことがあるのはワカッテマス」

( ><)「でも、でも」

(*‘ω‘ *)「でももかしこもないっぽ」

( ><)「ううううううう」

(*゚ー゚)「ごめんね、ビロード君」

( ><)「……なんで、折角VIPに入れたのに辞めたんですか」

片手剣を地に突き立てたビロードが、呟く。
泣きそうなその声に、ビロード以外が喋るのを止めた。

( ><)「僕は、VIPに入りたいんです。
最初は攻略組になりたくて、この世界を解放する力になりたくて、
でもどうやったら強くなれるか分からなくて、
それで、戦闘訓練をしてくれるVIPに情報屋さん経由で特訓を申し込んだんです」

下を向いたまま呟き続けるビロード。

.

51 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:28:59 ID:BL2IwAIc0
( ><)「特訓で、自分には全然無理だってことが分かって、
でも諦める事も出来なくて、辛かったんです。
でも、VIPの人達は言ってくれたんです。
先ずは生き残るために頑張ろうって。
レベルの差は、経験を積めば埋められる。
埋まった時に、どうすればいいか決めれば良いんじゃないかって。
ぼくはずっと前を見てたんです。
前しか見てなかったんです。
でも、実は前も見えてなかったんです。
夢ばかり見て、理想ばかり追って、逃げていただけだったんです」

消え入りそうな声。
けれどその声は、五人の心にしっかりと届いていた。

( ><)「VIPの活動を知って、みんなが生き残るための手伝いをしていることを知って。
僕も、その手助けが出来たらって思ったんです。
まだ弱いけど、ぽっぽちゃんと、ワカッテマス君と一緒なら出来るかもって思えたんです。
だから…。だから…」

(*゚ー゚)「ビロード君」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(*‘ω‘ *)「ビロード…」

( <●><●>)「もう、言わなくていいんです。ぽっぽちゃんと私はビロードの事をワカッテマス」

( ><)「だから…だから…」

(*゚ー゚)「そうだよね。ビロード君から見たら、あのギルドを抜けた私達を、理解できないよね。
しかも、ギルドの名前が有名になってから入った私達が抜けるなんて」

( ><)「そうなんです!二人が入ったのを知って、羨ましかったんです!」

(*゚ー゚)「ごめんなさい。
でも、わたしは…ゆるせなかったから…」

(,,゚Д゚)「しぃ!」

(*゚ー゚)「!い、色々あったの。だから…」

.

52 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:30:01 ID:BL2IwAIc0
*(‘‘)*「しぃ姉にも、ギコにも、きっと色々あったんですよ。
もう、良いじゃないですか。
わたしは、二人がいたから今一人じゃないんです。
二人がギルドを辞めていてくれたから、一緒にいられるんです」

(*゚ー゚)「ヘリカルちゃん」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

ギコとしぃの間に流れた不自然な空気に怪訝な顔をしたワカッテマスとぽっぽ。
しかしそのすぐ後に悲しげな笑顔を見せながら呟いたヘリカルによって、
その場はヘリカル一色となった。

(*‘ω‘ *)「うちのビロードがバカでごめんだっぽ!」

( <●><●>)「ビロードがバカなのはワカっていて止められなくてすみません!」

(;><)「え?え?」

ヘリカルに向かって頭を下げるぽっぽとワカッテマス。

(*゚ー゚)「そうだよ!ビロード君が何と言っても、私達は一緒にいるから!」

(;><)「え?!?」

(,,゚Д゚)「ビロードの言う事なんか気にすることないぞゴルァ」

(;><)「ぼくが何を?」

ヘリカルの両隣に座っていたしぃとギコはヘリカルの顔を覗き込みながら、
その小さな肩を抱いた。

(*‘ω‘ *)「そうだっぽ!ビロードの言う事なんて気にすることないっぽ!」

(;><)「ぽっぽちゃんまで!?」

( <●><●>)「ビロードの言葉になど一ミリも価値が無いのはワカッテマス」

(;><)「ワカッテマス君はひどすぎませんか!?」

.

53 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:31:21 ID:BL2IwAIc0
頭を上げ、座ったまま三人ににじり寄るぽっぽ。
ワカッテマスはちらっとビロードを見る。

(*゚ー゚)「そうだよ!たわごとに耳を傾けちゃダメ!」

(;><)「優しい顔して酷いことを言われたんです!」

(,,゚Д゚)「ま、そういうことだから気にするな」

(;><)「なんかまとめられたんです!」

*(‘‘)*「えへへへ」

ビロードを除く四人にかわりがわり声を掛けられ、笑顔を見せたヘリカル。
その屈託のない表情にホッとした顔をする四人。
そして一人困惑しているビロードを睨む二人。

(*‘ω‘ *)「ビロードは早く謝るっぽ」

( <●><●>)「まだちゃんと謝っていないのはワカっています」

(;><)「ぼ、ぼくがですか?」

(*‘ω‘ *)「ヘリカルちゃんにあんな悲しそうな顔をさせて、
良心が痛まなかったっぽ?」

(;><)「そ、それは」

( <●><●>)「ビロードがそんな男だとは私も分かっていませんでした」

(;><)「痛んだんです!」

(*‘ω‘ *)「なら謝るっぽ」

( <●><●>)「ちゃんと謝れる男が男らしいのはワカッテマス」

( ><)「ごめんなさいなんです!」

芝生の上に両膝をつき、手のひらを地につけて頭を下げるビロード。

.

54 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:33:24 ID:BL2IwAIc0
( <●><●>)「ビロードも土下座をして謝っているので、許してあげてもらえませんか」

(*‘ω‘ *)「こんな奴だけど大事な仲間だっぽ」

*(‘‘)*「……」

ヘリカルが立ち上がり、ビロードの前に移動してしゃがむ。
そしてビロードの右手をそっと触った。

*(‘‘)*「顔を上げてください。
一緒にお弁当を食べると良いんですよ」

( ><)!

顔を上げたビロードに、可愛らしく微笑むヘリカル。

*(‘‘)*「さ、一緒に食べるんですよ」

(*><)「は、はい!」

手を握ったまま立ち上がったヘリカル。
それに惹かれるように立ちあがったビロード。
そのまま手をひかれ、シートの上に移動し、ぽっぽとワカッテマスの間に座った。

*(‘‘)*「召し上がると良いですよ」

(*><)「は、ハイなんです!」

ヘリカルに微笑まれ、嬉しそうに頬を赤らめながらお弁当に手を出すビロード。

(,,゚Д゚)「(……ろりこん?)」
(*゚ー゚)「(私がヘリカルちゃんを守らないと)」
(*‘ω‘ *)「(……これはまずいかもだっぽ)」
( <●><●>)「(ビロードを見るみんなの視線が厳しくなったのはワカッテマス)」
*(‘‘)*「(場を納めるのも楽じゃないんですよ)」

色々な思惑が交差する中、ランチは和気藹々と続いた。



.

55 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:34:34 ID:BL2IwAIc0
*(‘‘)*ニッコリ

(*><)エヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ

(*><)(でもぼく、ヘリカルちゃんを傷付けるようなことを言ってしまったんでしょうか?)

(*><)(ま、許してもらえたし、ヘリカルちゃんは可愛いから良しとするんです)

(*><)(ヘリカルちゃん…あんなにかわいくぼくに微笑んでくれるなんて…)

(*><)(ああでもぼくにはぽっぽちゃんが……)

(*><)(ああ……僕は罪な男なんです)




( <●><●>)




.

56 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 00:37:45 ID:BL2IwAIc0

第十七話、書いたページ数的に半分投下が終わりました。

残りは明日、投下予定です。


ではではまた。


支援、ありがとうございます!!

57 名も無きAAのようです :2015/06/29(月) 00:39:46 ID:mQkSiI1Q0
乙 ぃょぅ……

58 名も無きAAのようです :2015/06/29(月) 00:40:03 ID:zDdNSh060
乙おやすみ
初リアルタイム遭遇でドキドキした

59 名も無きAAのようです :2015/06/29(月) 00:47:18 ID:Cgt8XayI0
乙!久々でも楽しめるアインクラッド最高だぜ!

60 名も無きAAのようです :2015/06/29(月) 17:08:15 ID:uWfp8wPAO
大分原作キャラとの絡みも増えてきましたね
キリトも名前は出てないだけで結構活躍してそう
今夜も楽しみに待ってます!

61 名も無きAAのようです :2015/06/29(月) 17:44:44 ID:Qa0aYbqwO
キテル━━━━(゚∀゚)━━━━!!

62 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 22:59:27 ID:BL2IwAIc0
こんばんは。

乙や感想、ありがとうございます。

今夜もよろしくお願いします。

.

63 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 23:07:05 ID:BL2IwAIc0
5.


ギルドVIP、及びN-Sが関わったフロアボス攻略戦は、一人の犠牲者を出すことなく終了した。
死者を出さずに攻略戦を終えることは少なくないが、
今回は予想よりも順調に戦いを終わらせることが出来た。
その『結果』をVIPの参加があったからではないかと口にする者も少なくは無く、
VIP、そしてN-Sへの攻略組への参加や大手ギルドへの加入要請は増える一方だった。

ξ#゚⊿゚)ξ「とりゃああああああ!!!!!!」

ツンの高速の三連突きが馬頭怪人『メズーリ』の身体を突き刺し、ポリゴンへと変える。

(#^ω^)「おっおっお。流石だお!」

その横ではブーンがそれを見ながら笑っているが、
その後ろではドクオ達四人が呆れた顔でその様を見ていた。

(;^Д^)「えっと…何か嫌なことでもあったのか?」

(;´ー`)「ツンもだけど、ブーンも鬼気迫るものがあるだーよ」

|; ^o^ |「正直今日はほとんど働いてないです」

('A`)「あー。悪いな。あいつら鬱憤がたまってるから」

迷宮の中を進む六人。
低層と中層の境目ほどに位置するこのフロアは、和風な敵が数多く出現した。
特に迷宮区には仏教画で見ることがある様な敵が数多く出現した。

ξ#゚⊿゚)ξ「甘い!」

(#^ω^)「ほっ!ほっ!」

先頭を歩くブーンとツンが出てくる敵を交互にほぼ一人で倒すため、
その後ろを歩く四人は、特にプギャー、シラネーヨ、ブームの三人は所在なさげに呟いた。

('A`)「ま、今日は歩いているだけで経験値と金が入ってくるってことで、楽してくれ」

( ^Д^)「お前達がそれで良いなら良いけどよ」

.

64 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 23:11:23 ID:BL2IwAIc0

( ´ー`)「ドクオはそれで良いのかよ?」

('A`)「おれ?」

|; ^o^|「あ…」

ブーンとツンがそれぞれに牛頭怪人『ゴズーリ』と馬頭怪人『メズーリ』と戦っていると、
その横に人面怪炎『ウィスピリメン』が三つ浮かぶ。

流石に前の二人の援護をしなければと三人が武器を構えると、
いつの間にかドクオが移動しており、三匹を纏めてポリゴンへと変えていた。

(;´ー`)「…とてつもないだーよ」

(;^Д^)「いくらそんなに強くはないっつってもよ」

|; ^o^ |「我々も強くなったとは思うのですが」

('A`)「悪い悪い、で、なんの話だっけ」

( ^Д^)「あー。いや、なんかあったのか?」

('A`)「ああ、前回のフロアボス戦以来、二大ギルドと軍からの勧誘が酷くてよ、
八割以上はショボンが引き受けて流してるけど、
商売やってるあの二人の所には直接来るやつがいるらしくてな」

( ´ー`)「それで鬱憤が溜まってるってことかーよ」

('A`)「ま、そんなこった」

|  ^o^ |「ドクオさんは大丈夫なんですか?」

('A`)「おれか?おれは…」

再び浮かぶ二匹の『ウィスピリメン』を、三人が武器を構える間もなく瞬殺するドクオ。
そして呆然とそれを見た三人の下に歩いて戻る。

('A`)「まあほら、おれは店やってないからあいつらほどじゃないし」

黒光りする片手剣をギュッと握ったドクオを見て、
三人は心の中でため息をついた。



.

65 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 23:12:52 ID:BL2IwAIc0



目的のエリアに辿り着いた六人は、
フロアの中ボスに相当する敵を難無く倒し、目当てのアイテムを手に入れた。

( ^ω^)「おっお。これを村長に渡せば終了だお」

ξ゚⊿゚)ξ「で、村長からもらうアイテムを依頼人に渡せば依頼終了って事ね」

('A`)「そういうこった」

ブーンがアイテムを確認している間、彼を囲む様に立って周囲を警戒する五人。
倒した敵はクエスト専用のモンスターであり、このエリアもクエスト専用である。
その場合、目的の敵を倒したエリア内では追加の敵は現れない仕様となっているはずなのだが、
以前クエストにおいて『今までと違うルート』が発生したことを知っている六人は、
フォーメーションを崩さずにいた。

( ^Д^)「どうする?すぐ出るか?」

( ´ー`)「HPの回復は終わってるだーよ」

('A`)「いや、おれ達の本題はここからだ」

|  ^o^ |「どういう事ですか?」

('A`)「ブーン、ツン、頼む」

( ^ω^)「了解だお」

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、中入って」

アイテムをストレージに入れたブーンがツンと反対の位置に立ち、
二人で180度を見張る様に武器を構えた。

促された三人は、ブーンと入れ替わる様に中心に入ったドクオの前に立つ。

.

66 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 23:15:20 ID:BL2IwAIc0
('A`)「今ここはイベント用のボス戦専用エリアだ。
しかもワンパーティー六人しか入れない仕様だから、
このエリアには絶対におれ達しかいない。
そして『イベント専用ボスエリア』だから、通常の空間からは切り取られている」

( ^Д^)「ああ、そういうことか」

( ´ー`)「?どういうことだーよ」

|  ^o^ |「通常このエリアはただの行き止まりで、モンスターが出るだけです。
ですが、クエストを受けてすべてのフラグを立てた後入ればクエストボス戦用エリアになります。
とはいってもクエストと関係ないプレイヤーがこのエリアに入れなくなるのは効率が悪いです」

( ´ー`)「そんなことは知ってるだーよ。
エリアへの入り口は一緒で、中に入った見た目も一緒でも、通常プレイヤーは通常迷宮のエリアに、
クエスト受託者は専用エリアに入っているってことだーよ」

( ^Д^)「ああ、おれ達が戦っていた間、
ただの採取目的でこのエリアに入ってきたやつもいるだろうし、
同時進行で同じクエストを進めていたやつらが、
同じ時間に一見同じな全く別の場所で同じクエストボスと戦うことが可能ってことだ」

( ^ω^)「クエストの受託を一度に1グループしかできなかったら効率悪いからだおね」

ξ゚⊿゚)ξ「前にドクオとクーで2チームに分かれて、
同じクエストをどちらが先にクリアするか競争したりしたわよね」

( ´ー`)「だから、それがどうしただーよ」

('A`)「完璧に分離した閉ざされた空間。
聞き耳・覗き目スキルを持っている奴も外から覗けない空間。
6人以上は入れないから、この6人以外はここには存在しない空間。つまり、」

( ´ー`)「!内緒話し放題!」

('A`)「そういうこった。
メッセージでもいいんだけどよ。
メッセージを読んでる時に覗き見できないとは言い難いからな。
まだ情報公開されていないエクストラスキルがあるかもしれねーし」

( ^Д^)「で、どんな内緒話がしたいんだ?」

('A`)「もちろんショボンからの伝言だ」

.

67 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 23:16:46 ID:BL2IwAIc0
3人にとって、ドクオの言葉は予想できた言葉だった。
しかし改めて聞くことにより、自然と背筋を伸び表情が引き締まる。

('A`)「おそらく、まもなく攻略組によるラフコフの討伐作戦が実行される」

( ^Д^)!

( ´―`)!

|  ^o^ |!

('A`)「結構驚かないんだな」

( ^Д^)「もともとその可能性はショボンから話を聞いていたからな」

|  ^o^ |「とうとうその時が…とは思います」

('A`)「ああ。そうだな。
正直遅いと思うが、攻略組がやっと重い腰を上げてくれたってところだ」

( ^Д^)「……VIPは参加するのか?」

('A`)「ショボンがおれ達にそんな危ない真似をやらせるわけないだろ」

( ´ー`)「だーよ」

('A`)「ショボンは、ラフコフ側、攻略組側、お互いに死者は出るだろうって言っていた。
特に攻略組側は、よほどの覚悟をもったメンバーでないときついかもしれないとも」

|  ^o^ |「覚悟?ですか?」

('A`)「…少なくとも俺には無い。人を殺す覚悟なんか」

( ^Д^)!

( ´―`)!

|  ^o^ |!

.

68 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 23:20:40 ID:BL2IwAIc0
('A`)「戦うことは出来る。刃を向けることも、切り裂く事も出来る。
その為の対人戦闘訓練だからな。いざという時に出来るだけ躊躇しない為の。
お前らだって、ショボンから指示されてるだろ?」

( ´ー`)「時々牧場の方でさせてもらってるだーよ」

|  ^o^ |「モナーさん、クックルさん、モララーさんには相手をしていただいています」

('A`)「でも、それは威嚇のためだ。
あれは、相手を殺さないで、相手の戦意を喪失させる為の練習だ。
自分の力と相手の力を出来るだけ正確に分析して戦う為の練習だ。
……人を殺す練習じゃない」

( ^Д^)「ああ」

('A`)「だが、ラフコフの奴らは違う。
殺すことに躊躇が無い。
相手のヒットポイントをゼロにすることに躊躇が無い。
たとえレベル差があっても、その覚悟、躊躇の無さは如実に戦闘にあらわれるだろう」

ドクオの言葉に、言葉を無くす3人。

ブーンとツンはただじっと、中の4人を守る様に武器を構えている。

( ^Д^)「おれ達3人とあいつは、ショボンから、ラフコフ討伐戦の可能性と、
その時の行動に関して少し話を聞いている」

('A`)「ああ、そういうことだ。
周囲の見張りと、ラフコフメンバーが逃げ出した時の連絡をお願いしたい。
追跡や戦闘はしなくていい。
ほんの少しでも危険を感じたら、隠蔽のままクリスタルで逃げてくれ。
三人のスキルに例のフードが合わされば、それが出来るはずだ。
追跡や戦闘は、おれ達がやる」

( ´ー`)「作戦には参加しないって言ってただーよ」

('A`)「討伐戦には参加しない。
だが、逃げた奴を捕まえる奴も、必要だろ」

|; ^o^ |「正直、皆さんがそこまでしなくても良いと思いますが」

.

69 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 23:22:54 ID:BL2IwAIc0
('A`)「……ちっとばかし因縁があるんだよ。ラフコフとは。
それに、ショボンが一人で戦いに向かうのを黙って見ているわけにはいかねえからな。
といっても、ショボンには内緒で隠れてだし、参加するのは俺と兄者と弟者の3人だけだ」

(;^ω^)「!僕も参加するお!」

ξ#゚⊿゚)ξ「ドクオ!あんたまだそんなことを!」

('A`#)「お前らはダメだ!VIPに残れ!」

(#^ω^)「いやだお!」

('A`#)「残ってVIPを守ってくれ!」

( ^ω^)!

ξ゚⊿゚)ξ!

('A`)「討伐戦によって無事にラフコフの主要メンバーを捕まえることが出来れば、
そのあとの尋問によってVIPは窮地に立たされるかもしれない。
おれと兄弟の二人は、その時のために、命を懸ける。
ギルドのメンバーが命を懸けたという事実は、その後に影響を与えることが出来ると思う。
だから、お前らとクーは、その後のために、他のメンバーのために残ってくれ。
残ったメンバーの為に、おれたち全員がいなくなってしまう可能性は捨てなければならないんだ。
お前達の方が辛い役目になるが…頼む…。
ギルドをギルドとして、味方を作って生き残る。それは、おれみたいなコミュ障な奴じゃだめなんだ」

( ^ω^)「ドクオ…」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ…あんた…」

ドクオの悲痛な叫びと、絞り出すような声と言葉に、何も言えなくなる二人。
沈黙が包んだエリアに、プギャーの明るい声が響き渡る。

( ^Д^)「あの時命を救われたのは、ギコだけじゃない。おれ達もだ」

.

70 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 23:31:03 ID:BL2IwAIc0

ξ゚⊿゚)ξ「………」

|  ^o^ |…?

ξ゚⊿゚)ξ「………」

|;  ^o^ |?

ξ゚⊿゚)ξ「……名前なんだっけ」

|; ^o^ |「さっきまで普通に名前呼んでくれてましたよね!ツンさん!」

ξ゚⊿゚)ξ「いや、なんか突然シリアスな雰囲気に耐え切れなくなって。
それにブーンとドクオがプギャーとシラネーヨを呼んだから、
あたしはこれやんないとまずいのかなって思って」

|; ^o^ |「いや、そこはシリアスなままでよくありませんか!?
ドクオさんとブーンさんも言ってやってください!」

('A`)

(^ω^ )

|; ^o^ |「二人ともこっちを向いてください!
プギャー!ネーヨ!二人も何か言ってやってください!」

(^Д^ )

(´―` )

|; ^o^ |「二人まで!?」

ξ゚⊿゚)ξ「ま、所詮オチ要員ってことよね」

|; ^o^ |「やめてください!!」

('A`)「さて、じゃあそろそろ出るか。話も済んだし」

(^ω^ )「だおね」

.

71 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 23:36:53 ID:BL2IwAIc0
6.


数日後。

青みを帯びた暗い灰色の空。
青銀色の樹木を模したオブジェクトが、くすんだ白い道の両側に、
アンバランスに配置されている。

(アルゴ)「はぁ…ハァ…」

その長く続く一本道を走るアルゴ。
ラフィンコフィンのアジトを探っていた彼女は、構成メンバーに追われていた。

彼女は、βテスターだった。

ソードアートオンライの正式運用前のテストプレイヤー、βテスターであった彼女は、
正式サービス直後から、デスゲームとなったその日から、
情報屋としてこの世界を生きてきた。

βテスターとしての経験と知識があったとはいえ、
情報屋として攻略組を支えながら共に駆け抜けてきた彼女は、
それ相応のレベルとスキルを持っている。

(;アルゴ)「これが絶体絶命ってやつなのかナ」

それほどの力を持った彼女が、複数のプレイヤーに追い立てられていた。

(;アルゴ)「アタシは『鼠』で、『狐』じゃないんだけどネ」

狩人が遊びで獲物を狩るように、
アルゴを追うプレイヤーは一定の距離を置いたと思えば、
すぐそばまで追いついて攻撃を加え、笑いながら駆け抜けるアルゴを見送っている。

振り返ることなく走るアルゴだったが、自分を追いかける者の人数と立ち位置は把握できていた。

(アルゴ)「(四人…いや、六人。
攻撃をしてくる四人と、その後ろで見張る二人)」

.

72 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 23:48:18 ID:BL2IwAIc0
鍛え上げたスキルによる現状の分析。
曲がり角や反射のあるオブジェクトを使い、振り返ることなく後方を確認。

追いつめられ、攻撃され、HPを減らされつつも、
システムのアシストと経験を駆使し、自分を追う者を冷静に分析する。

それは彼女がこの世界で積み重ねた力。
生きてきた強さが、生き残ろうとする思いが、生きる為の行動に繋がっていた。

(アルゴ)「(チャンスは一度。二つ先のエリア。
エリア移動した直後の右、隠れワープポイントに繋がる『穴』
あの穴自体は知られていても、瞬間的に逃げることは出来る。
その瞬間にクリスタルで跳ぶ)」

自分のHPを確認し、半分以上削られていることを改めて確認する。
それと同時に、右腰のポーチの中にある転移結晶も確認した。

(アルゴ)「(スピードだけで切り抜けるのは不可能。
これだけの目に見張られている状態で、隠れるのも無理。
……これが最初で最後のチャンス……ってやつだナ。
キー坊…アーちゃん……また会えるよナ!)」

決意新たに、エリア移動した瞬間に走る速度を上げたアルゴ。

(#アルゴ)!

ただ次のエリアだけを目指して駆け抜ける。

追っている者達も速度を上げる。

振り切れはしないが、少しだけ距離を開けることができた。

(#アルゴ)!!

そしてエリア移動。

出来るだけ小さい弧を描きつつ、穴に向かう。
横目で自分の後ろを確認。
まだ誰も移動してこない。

(アルゴ)「(ヨシ!)」

.

73 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 23:50:28 ID:BL2IwAIc0
その瞬間。

穴に飛び込もうとした瞬間、自分の左胸を、後ろから針が貫き、前に抜けて行ったことに気付く。

(アルゴ)「……エッ」

「穴に逃げ込んだ!」

思わず漏れた吐息とともに、後ろで誰かが叫んだのが聞こえた。

そして気付いた。
自分を追っていた者は六人だったが、それとは別に並走していた者がいたであろうことに。
攻撃されることに、追われることに、そして追われる原因となった掴んだ情報に気を取られ、
その可能性が自分の頭から抜け落ちていたことに。
後ろにだけ気を取られ、横や前に対しての注意が欠けていたことに。

走っていた勢いのまま穴に飛び込む。

視界の隅に浮かぶ、自らのHPバー。
赤くなっていること以上に、その横に浮かぶ状態異常マークに戦慄する。

(アルゴ)「(麻痺…)」

黄色い雷のような印。
おそらくは、先ほどの針に麻痺毒が仕込まれていたのであろう。

スキルは勿論アクセサリーでも対麻痺・対毒処理はしてあるが、
条件が重なると完全に防ぐことが出来なくなる。
おそらくは余程強い麻痺毒が仕込まれていたはずだ。

エリアを移動した。

視線の先、まっすぐに伸びた一本道の、100メートルほど先にあるワープポイント。
あれに飛び込めば、ランダムではあるが、どこかの街の転移門広場に飛ぶことが出来る。
圏内に、非戦闘エリアに行くことが出来る。
けれど、麻痺をした体ではそこまで移動する事が出来ない。

(アルゴ)「ここで終わりかナ……」

もつれる足、動きを止める身体。
地面しか見えなくなる。

.

74 ◆dKWWLKB7io :2015/06/29(月) 23:56:38 ID:BL2IwAIc0




「コリドー!オープン!!!」




.

75 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 00:00:44 ID:oFGQtUTY0

死を覚悟した瞬間に、耳に届く声。
それは、回廊結晶を使う時のキーワード。

(アルゴ)「え?」

( )「こっちだよ !」

崩れ落ちそうになった身体を、突然現れたフードの男が右の二の腕を掴んで支えた。

(アルゴ)「……だれ?」

そのまま右手を引っ張られ、動かない身体を引き寄せられ、
もつれ、なだれ込むように、回廊結晶によって現れた転移ポイントに飛び込んだ。





転移した先は、どこかの街の、どこかの公園だった。

見覚えはあるが頭が働かず、けれども圏内に移動できたことに安堵する。

フードの男はアルゴを引っ張り、公園の樹の後ろ、ベンチの陰に彼女を横たえさせた。

(アルゴ)「あんたはいったい…」

フードの男はフードの中も黒尽くめであり、顔も瞳以外はマスクで隠されている。
黒装束と呼ばれる防具アイテムに似ているそれと、
腰につけた短刀と鉤爪から『忍者』を想像させた。

(アルゴ)「(あの場所での隠蔽スキル…。
麻痺に体の動きを阻害されている私を動かしたパワー…。
そして身に着けた衣服のレベル…)」

混乱しつつも出来るだけ冷静になろうとするアルゴ。
装備が高レベルであることを見抜いたのは、流石と言うべきであろう。

(アルゴ)「あんたは…誰なんだ?」

.

76 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 00:16:31 ID:oFGQtUTY0
( )「追っては来ないようだよ 」

彼女の横にうずくまって周囲を伺っていた男が立ち上がった。

背はそれほど大きくは無い。
声も高くは無いが低くは無い。
男だと思うが、少年…女性かも知れない…。

ぼんやりと自分を助けた忍者を観察するアルゴ。

すると忍者は腰のポーチからシートを取り出し、彼女にかぶせた。

( )「被っていれば身を隠せるから、助けが来るまで隠れていると良いよ 」

(アルゴ)「まってくれ!」

圏内に入ったからといって、麻痺は消えない。
動けない彼女をシートで覆うと、忍者はその場を後にした。

(アルゴ)「待って…」

まだ警戒を解いてはいけない。
そうは思っていても、緊張が途切れた彼女は、その意識を手放した。






目を開けたアルゴは、どこにでもある天井を見た。
建物のテクスチャーも数多く用意されているが、
今見ている天井は基本設定の一つだ。

(アルゴ)「ここは…」

ベッドに寝かされている自分。
自分がどこにいるのか。なぜ自分がここにいるのか。
全てが分からないが、その寝心地から、かなりの品だということだけは分かった。

.

77 名も無きAAのようです :2015/06/30(火) 00:18:03 ID:YLYbfXwg0
まだ顔は出さないか… 支援

78 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 00:18:13 ID:oFGQtUTY0

左の壁側の窓から外を見て、安堵の吐息をつく。

(アルゴ)「まだ夜…。間に合ったようだナ」

起き上がろうとして、止める。
そして目を閉じた。

すると、部屋の扉が開いた。

随時発動させているスキルのおかげか、
普段からの警戒心か、
扉の前に何かが来たのを感じ、アルゴは寝たふりをしていた。

扉のしまる音。

ベッドに備え付けられたサイドテーブルに何かが置かれた音がした。
何者かが、自分を覗き込む気配を感じる。
そして離れたのを感じ、ほんの少しだけまぶたを開いた。

(アルゴ)「フサギコ?!」

ミ;,,゚Д゚彡「ハイだから!」

何度か見たことのある横顔を見て、思わず叫んで上半身を起こしたアルゴ。

いきなり名前を叫ばれ、背筋を伸ばして返事をするフサギコ。

(アルゴ)「あんたが助けてくれたのカ!」

ミ,,゚Д゚彡「元気になってよかったから」

(アルゴ)「いや、でも、あの黒尽くめはあんたじゃなかったようナ…」

自分を助けてくれた記憶の中の忍者と、
目の前で完全武装した姿でにこにこと笑っているフサギコを重ねるアルゴ。

しかしすぐにウインドウを開いた。

(アルゴ)「!すまない。礼は後でゆっくりとする。
すぐにキー坊とアーちゃん達に連絡をしないと」

.

79 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 00:20:56 ID:oFGQtUTY0
とりあえず見知った顔で安心したのか、早口で呟きながらウインドウを操作し始める。

(アルゴ)「……メッセージが、届かない?」

ミ,,゚Д゚彡「アルゴさん。アルゴさんは、ほぼ一日寝てたから」

フサギコの言葉に一瞬動きを止めるアルゴ。
そして画面上のカレンダーを確認し、青ざめる。

(アルゴ)「…そん……な……」

ミ,,゚Д゚彡「もう、ラフコフ討伐は、始まってるから。
参加している攻略組の人には、届かないから」

(アルゴ)「そんな…だって……。この作戦は、洩れてるんダ……。
どこからか、リークされてて、ラフコフは、迎える準備をしていタ…」

ラフィンコフィン討伐戦。
アジトの場所や、構成メンバーの全体数などは、アルゴを中心に調べ上げたと言っても良い。
そして討伐戦前日の昨日、彼女はその作戦が漏れていることを知り、
慌てて戻ろうとした時にミスをしてしまい、ラフィンコフィンのメンバーに追われていたのだった。

(アルゴ)「で、でも、最後にアタシからの連絡も無く作戦をするなんて…。
!!!
も、もし、あの中に、攻略組の中に、裏切り者がいたら……」

ミ,,゚Д゚彡「…討伐戦は、行われているから。
少なくとも、アジトのある迷宮に、入っていったって聞いたから」

(アルゴ)「何故あんたが知っている!!?
討伐戦の日程は、討伐に参加するメンバーしか知らない!」

ミ,,゚Д゚彡「……うちのギルマスは、ショボンだから」

答えになっていない答えに、思わず口を開けて固まるアルゴ。

しかしすぐに我を取り戻し、自嘲気味に笑った。

.

80 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 00:23:55 ID:oFGQtUTY0
(アルゴ)「答えになってないのになぜか納得してしまうのは、
アタシもあいつの術中に嵌っているってことだネ。
だいたい、情報屋はアタシだけじゃなイ。
あの男に子飼いの情報屋の一人や二人いても、おかしくは無い…カ」

ミ,,゚Д゚彡

アルゴの言葉に、困ったように笑うフサギコ。

(アルゴ)!

ミ,,゚Д゚彡!

ほぼ同時に、二人がウインドウを開く。
視界の端で光ったメッセージ到着のシグナルを見ての行動だった。

送ってきた相手を見て、まずは安堵の吐息を吐くアルゴ。
そしてメッセージを読み、一度ほっとした顔をした後、すぐに引き締めた。

(アルゴ)「アーちゃん。いや、血盟騎士団副団長から連絡が来た。
ラフィンコフィン討伐戦、終了したそうだ。
犠牲者は両陣営に出たけれど、それ以外は一人を除いて牢獄送りにできたようダ」

ミ,,゚Д゚彡「……『PoH』」

(アルゴ)「……ああ、あいつだけは…捕まえられなかったようだナ」

ウインドウを閉じるフサギコ。
そのままドアへと向かおうとする
アスナへの返事を打とうとしたアルゴは、フサギコを見て動きを止めた。

.

81 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 00:30:02 ID:oFGQtUTY0
(アルゴ)「フサギコ?」

ミ,,゚Д゚彡「出掛けるから。ゆっくりしていてくれていいから」

(アルゴ)「…どこに行くんだ?」

その強張った表情を見て、アルゴは眉間に皺を寄せて問いかける。

フサギコは動きを止め、少しだけ考えた後、振り返った。

ミ,,゚Д゚彡「………決着を、見届けに。
良ければ、一緒に来ると良いから。
……できれば、アルゴさんにはショボンの事を知っていて欲しいから」

(アルゴ)「!」

アルゴは何も聞かず、まずすぐさまベッドから降りた。






.

82 名も無きAAのようです :2015/06/30(火) 01:00:57 ID:V369HJSw0
ん? 終わり?

83 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 01:20:59 ID:oFGQtUTY0
以上、残りは明日投下します。

よろしくお願いします。

84 名も無きAAのようです :2015/06/30(火) 01:21:37 ID:V369HJSw0
そかそか、乙!
すごい気になる展開過ぎて続きが待ち遠しい!

85 名も無きAAのようです :2015/06/30(火) 01:26:19 ID:YLYbfXwg0
乙 どうなるどうなる

86 名も無きAAのようです :2015/06/30(火) 07:18:39 ID:uqxGHe5w0
3日連続で投下とかあつすぎる!乙!

87 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 22:36:15 ID:oFGQtUTY0
こんばんは。

昨日は寝落ち失礼しました。

続きの投下をしたいと思います。


乙と感想、本当にありがとうございます!
とても励みになります!!


それでは、始めます。
よろしくお願いします。

.

88 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 22:37:56 ID:oFGQtUTY0
7.


フィールドダンジョン『常夜の森』

横に広く葉を生い茂る木々は、空を隠す程に高くそびえ立ち、
鬱蒼と茂る草花は、人の背の高さを超え、視界を邪魔している。

昼の時間さえ闇が支配するその森。
夜ともなれば、暗闇の世界となる。

彼と彼は、中央の少しだけ広い、ほんの少しだけ空から光が差し込むエリアで、
向かい合って立っていた。

(PoH)「……」

一人は、ラフィンコフィンのリーダー。
『PoH』
体全体を覆い尽くすようなフード付きのマント。
右手に持った愛用の武器、『友切包丁』だけが鈍い鉄の光を放って揺らめいている。

(´・ω・`)「……やあ」

(PoH)「俺と共に来る気になったか?」

(´・ω・`)「そんなわけ、無いでしょ」

一人は、VIPのギルドマスター。
ショボン。
装備は、刺繍の施された黒いインパネスコート。
左の腰には細い片手剣、右側には円盤型の投擲武器を三つぶら下げられている。
線の細い銀縁の眼鏡が、光を反射させた。

(´・ω・`)「今日で、君との関係もお終いだ」

.

89 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 22:39:07 ID:oFGQtUTY0
(PoH)「俺との関係?」

(´・ω・`)「君のフレンドリストから、僕の名前を消してくれ。
僕も君の名を消す。それで、君のことを見逃す。それで、終わりだ」

一瞬ののち、面白そうに笑いだすPoH。

心の底から楽しそうに、
けれどどこか軽蔑しながら、
そして怒りを含め、
喉の奥を鳴らすように笑っている。

(´・ω・`)「……何がおかしい…。
もう、ラフィンコフィンは終わりだ。
お前一人なら、今ここで僕が攻略組を呼べば、倒すことが出来る」

(PoH)「ああ、確かに『Laughing Coffin』は無くなった。
だが、俺がいる限り、『Laughing Coffin』は終わらない。
そしてお前が来れば、もっと楽しい夢が見られるだろう。
こちらにこい、ショボン」

(´・ω・`)「僕は、行かない」

(PoH)「気付いているはずだ。自分の事に」

(´・ω・`)「確かにぼくは目的のために手段なんか選ばない。
守りたい人を守るために、見ず知らずの誰かを犠牲することなど厭わない。
その自信も、自覚もある。
その本質は、おそらく、君と同じだ」

(PoH)「楽しめばいい。この世界を」

(´・ω・`)「でも僕は、知っている。
僕の守りたい人達は、その犠牲にした『誰か』の為に悲しむ人だということを。
そして、僕を憎まず、自分を憎んで、自分を戒める人だということを。
だから、僕は、出来るだけ誰も傷付けない道を選ぶ。見付けてみせる!」

(PoH)「世迷言だ」

.

90 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 22:40:57 ID:oFGQtUTY0
(´・ω・`)「かもね。僕もそんな気はするよ。
でも、理想だ。それが、理想なんだ。
理想は、追い求める為にある。
現実にするために、頑張るためにある。
だから僕は、頑張る。頑張れるんだ」

(PoH)「ならば、その理想、砕いてやろう。そして、現実を知れ」

(´・ω・`)「それでも、誰かを犠牲にしなければならないなら。
その『誰か』には、僕がなる」

それは、静かな決意だった。

そして、再びPoHが笑う。

人を嘲るような、笑い声。

(PoH)「戯言も、お前が言うなら面白い」

ショボンを見ながら、武器を構えるPoH。
愛用のレア装備。『友切包丁』が鈍く光を反射させている。

(PoH)「だが、もうそれも終わりだ。
選べ。共に来るか、仲間の死か」

(´・ω・`)「僕が選ぶのは、君との決別だけだよ」

右手を片手剣の柄に添え、左手をケープに差し込むショボン。

.

91 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 22:42:25 ID:oFGQtUTY0



(PoH)




(´・ω・`)



.

92 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 22:47:32 ID:oFGQtUTY0
PoHが身体を揺らめかせる。
ショボンの左手が針を放ち、それをPoHの友切包丁が弾くと、彼の身体はショボンへと肉薄した。

振り上げられた友切包丁を弾くショボンの片手剣。
しかし弾いた勢いで体勢を崩す。

崩れた体勢を立て直そうとはせず、そのまま横に流れるショボン。
PoHの友切包丁は弧を描いて逃げた体を追うが、
その攻撃範囲から既に距離を取っていた。

立ち上がり、再び構えるショボン。
PoHは両手をだらりと前に倒しながら、身体をまるで音楽に乗せるように揺らめかせている。

(PoH)

(´・ω・`)

(PoH)「ほんの少しでも傷を追えば、麻痺毒が俺の自由を奪う」

(´・ω・`)「一発当てれば奪えると思えるほど、君を甘く見ているつもりはない。
僕にしてみれば、直接攻撃は勿論武器で受けてもHPを減らすそっちの装備の方が脅威だよ」

放たれるショボンの針。
顔を狙ったそれを友切包丁で防ぐ。
追って放たれた二枚のチャクラムが死角からPoHを襲う。
しかし一枚は避けられ、一枚は弾かれた。

チャクラムが弾かれた金属音。
その瞬間にショボンに迫る友切包丁。
左上から振り下ろされたそれを、片手剣で受ける。
ハンマーで殴られたような衝撃を受けた直後、自分の腹を狙って包丁が迫る。

片手剣を放し、盾の様に見える円盤型武器で防御する。
直撃は避けることが出来たが吹き飛ばされるショボン。

しかし想定の内なのか、円盤を放棄しつつ投げた三本の針がPoHを襲う。

.

93 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 22:49:19 ID:oFGQtUTY0
弾かれる二本の針。
一本は左肩を貫いた。

(PoH)

(´・ω・`)

PoHのHPが、一目盛だけ点滅を始めた。
しかし、既にショボンのHPは二目盛減らされている。

頭の上のカーソルをオレンジに変えたPoHが、
口の端をにやりと上げた。

(PoH)「やはりお前は、こちら側だ」

(´・ω・`)

ショボンは荒れた呼吸を整えながら、インパネスコートのケープ部分に両手を入れて構える。

(PoH)「この世界を、楽しめ」

(´・ω・`)「……ふざけるな」

ショボンの両手が鞭のようにしなり、交互に針を放つ。
通常の投擲と鍛え上げた単発の剣技を混ぜ、隙間の無い連続投擲。
しかし通常投擲と剣技の投擲は武器の飛び方に差が生むことが出来、不規則にPoHを襲った。

(PoH)

しかしPoHは危なげなく針を弾き、躱し、徐々にショボンとの距離を詰める。

(´・ω・`)

PoHとの距離をキープしつつ、ゆっくりと移動するショボン。
エリアの外側を、弧を描くように動く。

位置を変えることによる投擲はPoHへの攻撃時の角度をランダムに変え、
何本かを当てることに成功する。

しかし狙いである麻痺を起させることは出来ず、
針の持つ攻撃力では、いくら射手であるショボンのレベルが高くても、
更に高レベルであるPoHのHPを大きく減らすことは出来なかった。

.

94 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 22:53:15 ID:oFGQtUTY0
悔しげに下唇をかむショボン。

それを見たPoHは口元に笑みを浮かべ、三度一気に距離を詰めた。

(´・ω・`)!

身体を投げ出し、地面に転がっていた自分の片手剣を掴むショボン。
しゃがんだままPoHに向かって片手剣を振り上げ、
一瞬動きが止まったのを見つつ後方に飛び、正眼の構えを取る。

しかしPoHは既に目の前にいた。

(´・ω・`)!

真上から振り下ろされる友切包丁。
刃に対して直角に、片手剣左から右に振る。

(;´・ω・`)!!

片手剣の刀身が砕け散る。

衝撃により包丁の軌道を反らすことは出来たが、
友切包丁はショボンの右腕を、二の腕から切り取った。

(;´・ω・`)!

視界の隅で自分の腕が地に落ちてポリゴンに変わるのを見ながら、
PoHの横を走り抜けて背後に回り、左手でナイフを放つ。

振り向いたPoHが無造作にナイフを弾いた。

(;´・ω・`)「ハァ…ハァ…」

痛みが無いと言えば嘘になる。
しかしそれ以上に、目の前の死神に、恐怖を覚える。

(PoH)「最後だ。俺と共に来い」

ショボンは、フードに隠れたPoHの目が、自分の心を貫き、弱い気持ちを捕えたのを感じた。
赤く変わったHPバーが身体を強張らせ、心を凍らせる。

判断を、鈍らせる。

.

95 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 23:00:45 ID:oFGQtUTY0

しかし彼は、最後の勇気を振り絞った。

(;´・ω・`)「……冗談でしょ」

ショボンが言い終わらないうちに、PoHは、何も言わずに動いていた。

ショボンの視界の中、数メートル先でゆらゆらと動いていたはずのPoHが、
右手に持った友切包丁を振り上げて目の前にいる。
チャクラムでの防御も間に合わない。

(´ ω `)「(ごめん みんな)」

ショボンが死を覚悟した。

.

96 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 23:04:32 ID:oFGQtUTY0




その時、陽炎が揺らめいた。





.

97 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 23:10:41 ID:oFGQtUTY0
刀が、振り上げたPoHの右手首を、切り裂く。
そしてその斬撃を追うように、透明な刃が二枚続いた。

PoHは右腕を振り下ろしたが、切り落とされた右手が武器を掴んだまま空を舞う。

(PoH)!

ポリゴンに変わるPoHの右手。

落下する包丁を左手で掴み、自分の手を切り落とした男の背中を攻撃しようとするが、
自分に向かって飛ぶ二本の武器に気付き、バックステップで避けた。

二本の武器、『苦無』と呼ばれる両刃のナイフを避け、
飛んできた先を見ると更に二本が投げられており、
やむなく更に後方に移動して避ける。

フード付きコートを纏った黒装束の忍者が、自分に向かって更に武器を構えている。

ミ,,゚Д゚彡「ショボンを、殺させはしないから」

そして、剣技後の長い硬直を終わらせたフサギコが、
ショボンの前に立ち、PoHに向かって居合の構えを取る。

先程の剣技も、居合系スキルだった。
体術スキルも上げている者だけが覚えることの出来る『空歩』からの、
居合系スキル『陽炎』に続けた連続技。

システムに設定された連続技の場合、剣技後の硬直時間は使った技の分だけ加算される。
よってどんなに強力な技でも、使い方を誤ればその先には死が待っている。

今回フサギコはショボンを守るためにその技を使い、
自分の身の守りはもう一人に任せたのだった。

.

98 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 23:12:17 ID:oFGQtUTY0





ミ,,゚Д゚彡「ギルドV.I.P.のフサギコ。
このまま戦うというのなら、フサギコが相手になるから」





.

99 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 23:15:17 ID:oFGQtUTY0

(;´・ω・`)「ふさ!?どうしてここに!?」

ミ,,゚Д゚彡「言いたいことは色々あるから。
でも今は、生き残ることが大事だから」

フサギコはまだ剣技を発動していない。
PoHの戦い方を見た結果、自分から向かうよりも襲い掛かられた時に、
神速の居合抜きを放った方が勝率が上がると判断したからだった。

更に今は、仲間がいる。

(PoH)「……」

フサギコに気を取られ、先ほどの忍者から目を離したPoH。
その隙に闇に溶け込まれ、位置を確認できなくなっていた。

目の前には、高レベルの刀使い。
その後ろには、高レベルの投擲武器使い。
更に自分を狙う、投擲武器使い。

そして、自分を見張るものはまだいる。

そう判断したPoHは、構えを解いた。

(PoH)「このまま戦うほど愚かではない。
ショボン、また会おう」

踵を返し、一度周囲を一瞥してから隣のエリアへの移動ポイントに向かうPoH。

(;´・ω・`)「!」

思わず追おうとしてしまい一歩踏み出そうとしたショボンだったが、
いつの間にか横に立った忍者が自分を見上げているのに気付き、動くのを止めた。

(´・ω・`)「…助けてくれて、ありがとう」

目を細め、照れたように首を横に振る忍者。

その間にPoHは立ち去り、エリアには平穏がおとずれた。

.

100 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 23:23:06 ID:oFGQtUTY0

(´・ω・`)「ふさ…」

自分に背中を向けて立つフサギコに、声をかけるショボン。

(´・ω・`)「助けてくれて、ありがとう。
ふさが来てくれなかった、僕は死ん」

ショボンの左頬が、平手打ちされた。

衝撃に、思わず固まるショボン。

目の前には、目に涙をためたフサギコ。

ミ,,゚Д゚彡「これは、皆の怒りだから。
皆、ショボンの事が大事だから。
それを分かっていないショボンに、怒ってるから」

(´・ω・`)「ごめん……」

ミ,,゚Д゚彡「死んでほしくないから。
ずっと一緒に居たいから。
みんな、誰が欠けても嫌だから。
だから、大変な時は、皆で乗り越えるから。
みんなで頑張って乗り越えれば良いから!
ショボンは、分かってないから…だから…だから…」

(´・ω・`)「フサギコ」

ミ,,;Д;彡「生きてて…良かった…」

涙を流しながら、ショボンに抱きつくフサギコ。

ミ,,;Д;彡「良かった!良かった!良かった!」

(´ ω `)「…ありがとう、フサギコ」

フサギコを、抱きしめるショボン。
そしてすぐに横にいた忍者も、片手で引き寄せ、抱きしめる。

(´ ω `)「二人とも、本当に、ありがとう」



.

101 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 23:29:34 ID:oFGQtUTY0




そんな三人を陰から見る、三人の視線。



.

102 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 23:32:46 ID:oFGQtUTY0

木に寄りかかっているドクオ。
その足元にしゃがんでいる弟者。
その後ろに立つ兄者。

それぞれに完全武装で、武器を手に持っている。

('A`)「ま、これでとりあえずは一件落着ってところか」

(´<_` )「けど、PoHのやつ、また来るんじゃないか?」

( ´_ゝ`)「来るだろうな。ショボンを片腕にしたいみたいだから」

('A`)「ショボンがPoHの片腕……」

黙り込み、色々と想像する三人。

(´<_` )「終わるな」

( ´_ゝ`)「終わりだな」

('A`)「否定できんのが嫌だ」

三人は、同じタイミングで身震いをした。

( ´_ゝ`)「……追わなくて、良かったのか?」

('A`)「これ以上危険なことをしたら、今度はおれ達がふさに怒られるぞ」

( ´_ゝ`)「それは嫌だな」

(´<_` )「ショボンだから平手打ちで済んだけど、
おれ達だったら強制的に決闘モードで細切れにされそうだ」

('A`)「さすがにそれは」

( ´_ゝ`)「御免こうむりたい」

(アルゴ)「フサギコってのは、そんなキャラなのかイ?」

('A`)「あいつには言うなよ」

.

103 ◆dKWWLKB7io :2015/06/30(火) 23:35:25 ID:oFGQtUTY0

(;´_ゝ`)「うわっ!」

(´<_`;)「うをっ!」

ドクオの隣、木のそばにあらわれるアルゴ。
兄者と弟者が大袈裟に驚く。

('A`)「驚きすぎ。お前らだって居たのは気付いてただろ?」

慌てて首を横に振る二人。

('A`;)「マジか」

(´<_`;)「おれらはそっち系のスキルは鍛えてないからな」

(アルゴ)「で、フサギコはあんた達を細切れにできるほど強いのかイ?」

('A`)「うちのギルドは大人しそうに見える奴の方が怖いんだよ。
ギルマスを見ればわかるだろ?」

(アルゴ)「…なるほどナ」

(´<_`;)「(うわぁ。納得したぞおい)」

( ´_ゝ`)「(仕方ないといえば、仕方ない。ショボだし。あいつらだし)」

(アルゴ)「VIPは変人ばかりのギルドだからナ」

('A`)「おれを入れるなよ」

( ´_ゝ`)「いや、それは無理だろう」

(´<_` )「兄者も他人事のような顔してるが、兄者が変人筆頭だぞ」

( ´_ゝ`)「え?おれが?どこが?」

(´<_` )「全部だ」

.

104 ◆dKWWLKB7io :2015/07/01(水) 00:02:22 ID:pn4kSDw.0
('A`)「弟者もだぞ」

(´<_` )「え?おれが?どこが?」

('A`)「そういうところが」

(アルゴ)「(ホントに仲が良いな。この子たちハ)」

小声でがやがやと騒ぐ四人。

(アルゴ)「まあ、この世界でそれなりに力を示している奴らは、
多かれ少なかれみんな変人だけどナ」

( ´_ゝ`)「なんとなくわかる。強い武器を買える奴は癖が強いやつが多い」

(´<_` )「そういえばそうだな。強いやつには、癖の強いやつが多い」

('A`)「おれみたいな平凡……ごめんなさい」

自分を見る三人の視線に気付き、途中で謝るドクオ。

頷く三人。

(アルゴ)「そういえば、あの忍者も仲間なのかイ?」

('A`)

( ´_ゝ`)

(´<_` )

(アルゴ)

('A`)「情報屋なんだから、自分で調べたらどうだ?
金になるかどうかは、分からないけどよ」

(アルゴ)「流れで口を滑らすかと思ったが、しょうがない、調べてみるヨ。
助けてくれた、お礼もちゃんとしたいしネ」

.

105 ◆dKWWLKB7io :2015/07/01(水) 00:16:29 ID:xKs0V69g0
( ´_ゝ`)「お礼なら、今言っていけばいいだろ」

(アルゴ)「今あの三人の空間に割り込むほど、空気の読めないことはしたくないんでネ」

いまだに三人抱き合って泣いているエリアの中央を見て、
おどけた様に肩をすくめてから、手を振りつつ木々の中に消えるアルゴ。

その後ろ姿を見送る三人。

そして消えたのを確認すると、兄者と弟者がドクオの顔を見る。
周囲を観察していたドクオが、二人に向かって頷く。

三人の顔から、笑顔が消えた。

( ´_ゝ`)「ラフコフはこれで終わりとして、ショボンは次も見据えているんだろ?」

('A`)「ああ。俺も全容は聞いていないけど、色々と手は打っているようだ」

(´<_` )「NSだけじゃない、今までに培ってきた全部を使うんだろ?」

('A`)「多分。出し惜しみをしている場合じゃないだろうから」

( ´_ゝ`)「あとは、ショボンが一人で危険なことをしないっていう約束を取り付けることだが…」

兄者の言葉に、エリア内にいる三人を見る三人。

( ´_ゝ`)「大丈夫か」

(´<_` )「だな」

('A`)「フサギコ様様だ」

それぞれに柔らかい笑顔を見せ、抱き合う三人を見守る。

淡い光が、六人をやさしい気持ちにさせていた。



第十七話





.

106 名も無きAAのようです :2015/07/01(水) 00:31:38 ID:uT3QU.aM0
乙でした。みんな無事で良かった(;つД`)ハラハラしました。無粋ですが、忍者はいょう?

107 名も無きAAのようです :2015/07/01(水) 00:31:54 ID:EsGqHiKU0
3日連続投下乙乙 
死なずにすんで良かったな、ほんに良かった

108 ◆dKWWLKB7io :2015/07/01(水) 00:33:12 ID:RZhnex0w0





( ´_ゝ`)「ところで、そろそろ帰らないか?」

('A`)「帰りたいな」

(´<_` )「あいつらどうする?」

('A`)「置いていくのもどうかと思うが…」

(´<_` )「おれは嫌だぞ。声かけるの」

('A`)「おれも」

( ´_ゝ`)「おれも無理だからな」

(´<_` )「兄者のくせに何で空気よんでるんだよ」

( ´_ゝ`)「実の弟に今ひどいことを言われた」

('A`)「任せた」

( ´_ゝ`)「いーやーだー」

押し付け合いは、たっぷり20分続いた。





.

109 ◆dKWWLKB7io :2015/07/01(水) 00:41:02 ID:RZhnex0w0
以上、17話でした。
ありがとうございました。

とりあえずラフコフを決着?できて安心しています。

予定しているエピソードは残り三つくらいなので、
あと数話で終わる予定です。

20は超えると思いますが、25まではいかないと思います。


いつも乙と感想、本当にありがとうございます。
それを励みにして、完結まで行けるよう頑張ります。


ありがとうございました!

ではではまた。

110 ◆dKWWLKB7io :2015/07/01(水) 00:47:28 ID:RZhnex0w0
>>106

忍者は…誰でしょうww

色々と考えているキャラではあるので、楽しんでもらえたら嬉しいです。

111 名も無きAAのようです :2015/07/01(水) 01:38:21 ID:5qa1Y.lQO

現行であんたが一番楽しみだよ

112 名も無きAAのようです :2015/07/01(水) 03:10:31 ID:aE7oxsZg0
激しくニンジャとクックルの待遇の差はなぜ生まれたのか・・・

113 名も無きAAのようです :2015/07/02(木) 23:28:32 ID:nVTxARwAO

ぃようがPKされたようには見えるがミスリード誘ってるようにしか思えんのよなぁ
結局ギコが抜けた真意もまだ明かされないか

114 名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 00:38:32 ID:3CcDZ1jgO
ブギャネーヨほんと好き
こういう決して無能なわけではないのに個性が弱いのとメインキャラが出鱈目に強く濃いので霞んでしまうザ・一軍半的なキャラが愛おしくてたまらない

115 名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 10:35:31 ID:o0oBfeSI0
おおお来てるやんけ検索したりずっと待ってた
今から読む乙

116 名も無きAAのようです :2015/07/04(土) 19:23:32 ID:iQ/Y1V6M0
いま1番これがおもしろい 頑張ってね

117 名も無きAAのようです :2015/07/07(火) 15:32:39 ID:dwdVAMr.O
むしろ>>75-76で「よ」の後に意味ありげにスペース入れてるのがミスリード
>男だと思うが、少年…女性かも知れない…。
男、女、少年は出てるのに
あえて少女という表現を避けてる事から結論を導くと…

後は明かされてない伏線は15話の最後でショボンと会話してた女か
この辺もどう物語に関わってくるか楽しみ

118 名も無きAAのようです :2015/07/09(木) 00:55:39 ID:BUtbaNBEO
忍者に関しては最新話前半と後半の時系列が解らなくなってるからぃょぅでも不思議ではないし別人でもいい
12話ラストで「死んだように見せかけたトリック」と出ているのも「死んだと思わせる方法がある」という伏線っちゃあ伏線といえる
ぃょぅは全部小文字なのにeだけ小文字で碑に刻まれてるというのが引っ掛かるし

にしてもこれ風呂敷畳めるのか?
伏線結構残ってるけど
ブーンが激しく動くと体調を崩す謎
アングラーとワカビロっぽ(と疑える人物)の裏の顔
またんきの消息
ギルドに入ってないショボン達の知人と思われる人物
ギコしぃがギルドを抜けた真相
デレの正体
ざっと思い出したのでもこれだけあるが
まぁいくつかは回収しなくてもいい伏線もあるし俺は原作読んだこともアニメ見たこともないから解らないだけのものもあるかもしれないがな

119 名も無きAAのようです :2015/07/13(月) 17:52:00 ID:W4jVdej.O
>>118
ブーンのはただ単に強力な技の反動じゃね?

120 名も無きAAのようです :2015/07/14(火) 14:36:27 ID:xKDXgqrYO
>119
ブーン以外の皆が使ってないだけで硬直以上の「反動」というシステムあるいはバグ的な現象が全プレイヤーもしくは一部のプレイヤーに存在するのか、ブーン個人が見た目に反して虚弱だからそうなるのかが原作知らずこれしか読んでない身にはわからんのよ

121 名も無きAAのようです :2015/07/14(火) 15:08:30 ID:4jhymCoQO
そういうシステムなんじゃね
ブーンのあれはRPGでたまにあるコストがMPではなく、HP〇割消費+自キャラステ異常しちゃう特大威力技みたいなもんだと思ってる

122 名も無きAAのようです :2015/07/20(月) 23:21:18 ID:bZY2XRC6O
>>118
12話ラストのは原作のエピソードで解決されてる
ブーンは脳の処理能力の限界を超えた動きをしちゃうから負荷がかかるみたいな話じゃないかな?
それに近い表現も原作にあったはず


そういえば>>69-70の間のレス飛んでないか?
前後の繋がりが不自然に見える

123 名も無きAAのようです :2015/07/31(金) 23:26:36 ID:Y9c1s5bsO
こういうの良いな
正史で語られない程度にほんの少しだけ影響を与えた者達の物語って
ザ・外伝って感じで
原作のターニングポイントとなる大きな作戦の立案に一役かっていたとか物資の生産・流通という形で結果的に原作主要人物の支援を行っていたとか

124 名も無きAAのようです :2015/08/21(金) 12:18:21 ID:hKqnmWZo0
盆休みも終わったことだしそろそろくるか?

125 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:07:06 ID:ElLvkyBM0
どーも作者です。

乙と様々な感想や考察、本当にありがとうございます。
言葉知らずなため感謝の言葉もいつも同じになってしまっておりますが、
本当に、本当に、ありがとうございます。

読みながら、
おっ!と、おもったり、
にやにやしたり、
ここはもっとわかりやすくしなければ…。と、思ったりしています。

次の話に活かせるように頑張ります。

といいつつも>>124様に見透かされているように盆休みを使って18話と19話の終わり頃までは書き上げてしまっているので、
何とか最終回までには反映させることができればいいななどと、
甘いことを考えたりもしております。

そして>>122様のご指摘通り、抜けてます。

orz

ということで、まずは投下前に補完です。
>>69-70の間に、以下を挟んで読んでいただけると嬉しいです。

.

126 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:11:03 ID:ElLvkyBM0
その明るい声は、次の声を呼ぶ。

( ´ー`)「あの時みんなが来てくれなきゃ、死んでただーよ」

プギャーのけだるい、けれど決意の籠った声を。

|  ^o^ |「あの時のクエストボス戦が今回のボス戦とは別パターンで良かっただーよ」

ブームの真面目な、けれど出来るだけ軽々しくした声を。

( ^Д^)「ほんとにそうだな」

そして、元気な、心の底から楽しそうに、けれど真剣な声。

( ´ー`)「だから、おれ達を甘く見るのはやめるだーよ」

('A`)「お前ら」

|  ^o^ |「皆さんとラフコフとの因縁だとか、窮地に立つとか、我々には詳しいことはわかりません。
ですが、今までに受けた色々なことは、返したいのです」

( ´ー`)「貰いっぱなしは性に合わないだーよ」

( ^Д^)「そういうこった」

('A`)「お、おい」

( ^Д^)「きっと、おれ達よりもつらい道を選んだあいつも、同じ気持ちだろうよ」

|  ^o^ |「どれだけ力になれるかは分かりませんが、やれることはやらせてもらいます」

( ´ー`)「もちろん死にたくないだーよ。
だから死なないギリギリまでやってやるだーよ」

|  ^o^ |「だからこちらは、私達に任せてください」

( ^Д^)「こいつらが殺されそうになったら、ちゃんとおれらが逃がすからよ」

( ^ω^)「プギャー…」

( ^Д^)「ま、適材適所ってことだ」

('A`)「シラネーヨ」

( ´ー`)「だてにショボンのプログラムで鍛えてきたわけじゃないだーよ」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

|  ^o^ |
.

127 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:14:22 ID:ElLvkyBM0

三人の決意とか、思い的な大事なシーンだったのに、痛恨のミスでした。

プギャー、ネーヨ、ブーム、ごめん。


それでは、18話の投下を始めます。

今回もなかなかの長さなので、何日かに分けて投下になると思います。

ではでは、よろしくお願いします。

.

128 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:17:23 ID:ElLvkyBM0


第十八話


はじまりの日 〜NerveGear〜



.

129 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:19:12 ID:ElLvkyBM0




0.彼と彼女




.

130 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:21:15 ID:ElLvkyBM0

その日は、朝から灰色の雲が空を埋め尽くしていた。

朝の情報番組で、可愛いだけかと思いきや、
気象予報士の資格をちゃんと持っているお天気お姉さんが、
降水確率を100パーセントと言っていた。

『あの人局アナじゃないんだよ』

親友が、特に必要じゃない知識を披露してくれたのを、彼は覚えていた。

昼前には雨が降り出して、帰宅する頃には本格的な雨だった。

傘をさしていてもほんのりと濡れてしまう雨。

通っている高校には徒歩でも自転車でも通える距離に住んでいる彼と彼女は、
帰り道の道路をならんで歩いていた。

「ドクオと本城は?」

「ドクオは本屋、ショボンは生徒会だお。
そっちこそ、今日は来島さんは一緒じゃないのかお?」

「久美子も生徒会。書記も大変みたいね。
あんた、今日部活は?」

「体育館も武道館も渡り廊下も使われてて、お休みだお」

「そっか。吹奏楽部が使ってたわね」

「そういうことだお。
ショボン達もその関係だおね。多分」

「まだ部活に入ってない生徒向けの、文化部発表会か。文化部は大変よね」

「運動部系は今から入る一年生はまれだけど、文化部系はそれなりにいるみたいだお。
あれ?茶道部は出ないのかお?発表会」

.

131 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:23:47 ID:ElLvkyBM0

「出るわよ。でもうちがやれることなんてたたかが知れているし、
私も久美子の付き合いで入っているだけだから、そこまでね。
だいたい発表会で人を増やせる部活なんて、合唱部とかそこらへんくらいよ。
あ、でもそうそう、あさ美、知ってるわよね」

「大垣さんだおね?」

「そうそう。大垣あさ美。
あの子華道部なんだけど、華道部は派手なパフォーマンス計画してるらしいわよ。
音楽にのせて花を活けるとかなんとか」

「そういえばドクオが音楽の事で話しかけられたって言ってたお」

「え?まさかアニソン使うつもり?」

「なんかロックバンドが主題歌やってたアニメがあるらしくて、
それならロック好きにもアニメ好きにも知られてるから良いんじゃないかとかなんとか」

「ドクオ、ちゃんと喋れてた?」

「……それはノーコメントだお」

「あさ美、見た目はギャルだからねー」

雨音が大きいため、傘を寄せ、肩が触れ合うような距離で会話をする二人。

男と呼ぶにはまだ笑顔が幼い少年は、
隣の少女が濡れないように傘を逆側に傾けている。
女と呼ばれるのを嫌がっている少女は
身長差から傘によって彼の顔が見えなくなってしまうのを嫌がって、
傘を逆側に傾けていた。

お互いがお互いを思っているのは周りから見れば一目瞭然なのだが、
何故か本人達は、気付かないでいた。

.

132 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:25:22 ID:ElLvkyBM0

「……あんた、ここ右でしょ」

「青になるまでいるお」

「良いわよ別に」

「雨酷いし、送っていくかお?」

「えっ!?……い、いいわよ。別にそんなことしなくて。
もう家まですぐだし。まだ明るいし」

「でも…」

四つ角の横断歩道の前で立ち止まる二人。

彼女は前に進むため信号が青に変わるのを待ち、
彼は彼女が渡るのを待つ。

「明日は晴れるって言ってたし、風邪ひかない様に早く帰りなさい。
昔から雨の日に外で遊んで風邪ひいてたアホなんだから」

「……高校に入ってからは無いお」

「中三の時に入試の前に熱出してたじゃない」

「そ、それは雨とは関係ないお」

「38度越えたっておばさんに聞いて、みんな心配してたんだから」

「……ごめんなさいだお」

「体力はあるのに、昔から風邪は良くひいてたわよね。
だから、寄り道せずにさっさと帰りなさい」

「……わかったお。あ、青だお」

「やっと変わった。じゃあね。バイバイ」

「また明日だおー」

.

133 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:26:56 ID:ElLvkyBM0

「はいはい。また明日」

「…………」

「…………」

「行きなさいよ」

「渡らないのかお?」

「あんたが行ったら渡る」

「ツンが向こうの角を曲がったら帰るお」

「ば、バカなこと言ってないで行きなさい!
後ろを見てるだなんて、あんたストーカーと一緒よ!」

「す、ストーカーって」

「早く行きなさい!」

「はいだお…」

「まったく…」

とぼとぼと歩道を歩き始める少年。

「また明日だお―」

しかしすぐに振り返り、傘からはみ出した手を大きく振った。

「はい。バイバイ。気を付けて帰りなさいよ!」

少年の後ろ姿を見てから、横断歩道を渡り始める少女。

歩行者専用信号は、既に点滅し始めていた。

.

134 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:28:25 ID:ElLvkyBM0

少年が後ろを見たのは、ただ彼女の姿を見たかっただけなのかもしれない。

そして彼は、傘と鞄を放り出して駆け出した。



「    朋ちゃん!!!!!!   」



視界の悪い雨の中、左折しようとした普通乗用車が、加速して交差点に進入した。





.

135 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:30:04 ID:ElLvkyBM0





1.病院  少女一人





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136 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:33:10 ID:ElLvkyBM0

彼女は目を開いたとき、自分がどこにいるか分からなかった。

自分の部屋、自分のベッドではない。

少し清潔すぎる白と、穏やかなベージュの壁。
そして周囲には柔らかい薄いピンクのカーテン。

頭と、頬が痛み、身じろぎをすると体の至る所にも痛みが生まれた。

ξ■゚⊿゚)ξ「なに…これ…」

眉間に皺を寄せながら上半身を持ち上げる。

そして、唐突に思い出した。

雨の日の横断歩道。
自分の名を呼ぶ少年の声。
抱きかかえられるその力強さ。
耳障りなブレーキの音。

ξ■ ⊿ )ξ「あっあっあっ……」

倒れた車道で、自分を抱きかかえ、血を流しながら笑った彼の顔。

ξ■   )ξ「いやーーーーーー!!!!!!」

顔を覆い、叫んだ。

腕につけられていた点滴の針と、胸と頭に取り付けられていた計器の配線が外れ、
警告を意味する電子音が部屋に響いた。





.

137 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:35:29 ID:ElLvkyBM0





ξ■ ⊿ )ξ「ねえ、ブーンは!?ブーンは!?ブーンはどこにいるの!??」

看護師に身体を抑えられつつも、やってきた母親に抱きつく朋美。

(看護師)「落ち着いて、朋ちゃんも怪我してるから」

(朋美母)「朋美、まずは寝なさい。あなたも頭を打ってるから、まずは寝て!」

ξ■ ⊿ )ξ「だって!だって!」

(看護師)「武士君も大丈夫よ」

ξ■ ⊿ )ξ「本当ですか!!あ、おば……さん……」

朋美は看護師の言葉を聞いて、初めて自分の身体を抑えるその顔を見た。
そしてそれが見知った者だということに気付き、少しだけ身体から力が抜ける。

(看護師)「久しぶりね。朋ちゃん。いや、もう朋美さんって呼ばなきゃだめかな」

その瞬間を見逃さず、看護師は彼女をベッドに寝かしつけた。

ξ■ ⊿ )ξ「そんな……、あ、ブーンは!ブーンは!」

(看護師)「武士君も無事よ。ただ朋美ちゃんよりも怪我が激しかったから、まだ治療中なの。
明日になれば面会も出来ると思うけど、二人とも検査をいっぱいしてもらわなきゃいけないから、
落ち着いて会えるのは明後日くらいになっちゃうかも」

ξ■゚⊿゚)ξ「そうですか……よかった……」

(看護師)「二人とももう大人だから部屋も別々になっちゃうしね。
あ、一緒の方が良ければお願いしてあげようか?」

ξ■///⊿///)ξ「ば、バカなこと言わないでください!」

(看護師)「遠慮しなくていいのよー」

.

138 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:37:42 ID:ElLvkyBM0

ξ■///⊿///)ξ「おこりますよ!」

(看護師)「もちろん冗談よー。相変わらず朋ちゃんは可愛いわね」

軽口を叩きながらも寝かせた朋美に点滴を繋ぎ、脳波や心電図の配線を取りつけていく看護師。

(看護師)「さて、先生もそろそろ来ると思うから、簡単な診察をさせてね。
この病院の先生は変人ばかりだけど腕は確かな人達だから、安心して。
そしたら、今日はゆっくり眠っちゃいましょう。
先生からOKでたらご飯も食べられるから、お腹すいてたら声かけてね」

ξ■゚⊿゚)ξ「はい」

(医師)「変人はひどいなぁ」

(看護師)「あら先生。遅いですよ。
あと、変人なのは本当の事ですから、ちゃんと自覚してくださいね」

(医師)「徳永さんが担当なら大丈夫だと思ったからね。
来た時の容態も安定していたし。
宇佐木さん、こんばんは。救急の磯貝です。
いくつか質問と、診察をさせてもらいたいけど、気分はどうかな?」

ξ■゚⊿゚)ξ「は、はい。大丈夫です」

(磯貝)「ああ、そのままそのまま。寝たままでいいからね。
じゃあえっと…」

横になっている朋美に質問を始める磯貝医師。

その様子を少しだけ見てから、徳永看護師は朋美の母親を廊下に促した。



.

139 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:39:28 ID:ElLvkyBM0



(朋美母)「徳永さん、ありがとうございます」

(徳永)「あの様子なら頭への衝撃は問題がなさそうですね。
もちろん精密検査は行いますが、ひとまずは安心してよいかと。
身体の傷は細かい診察と治療が必要ですが、
今の医療技術なら大丈夫だと思います」

(朋美母)「ありがとうございます、ありがとうございます」

深くお辞儀をする朋美の母親。
クリーム色の床に涙がぼたぼたと落ちた。

(徳永)「宇佐木さん、顔を上げてください。
こちらが恐縮しちゃいますから。
宇佐木さんにはこちらの方がお世話になってますからね。
『ありがとう』は、今日はもう禁止です
それで、今日この後の事なんですが。
点滴の中に安定剤も少し入っていますが気休め程度です。
事故の後ですし、武士君の事もありますから、夜中に目を覚まして不安になることもあるかと。
ですので今日はよろしければ」

(朋美母)「はい、出来れば泊まらせていただきたいです。

(徳永)「よかった。じゃあサブベッドとか準備しますね。
今日は私も詰めますから、何かあったら気軽にナースコールしてください」

(朋美母)「本当に重ね重ねあ…」

(徳永)「友里恵さん?今日はもう『ありがとう』は禁止」

顔を上げていた朋美の母だったが、砕けた口調で名前を呼んだ徳永を見て、
その笑顔につられて笑顔を見せた。

(朋美母)「了解。知佳さん。でも最後に一回だけ言わせて。
ありがと。そして、よろしくね」

(徳永)「かしこまりました」

かしこまった敬礼をして、とぼけた様にこたえる徳永。

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140 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:42:23 ID:ElLvkyBM0

それを見て更に友里恵は笑顔を見せ、
徳永も笑顔を見せた。

(朋美母)「あ、でも夜勤にしちゃって大丈夫なの?俊雄君」

(徳永)「大丈夫大丈夫。
それに、私がいない方がゲームできるって喜んでるんじゃないかな。
ただ、もしかするとそろそろ……あ、やっぱり。噂をすれば影ってやつね」

自分の息子が部屋でゲームをしている姿を想像してため息をついた徳永。
しかしすぐに廊下の先に見知った顔を見付け、手を上げた。

('A`)「!かーちゃん!」

J( 'ー`)し「廊下を走るなバカ息子」

('A`)「そんな事よりブーンとツンが事故ったって?!
無事なのか!無事なんだよな!大丈夫なんだろ!」

J( 'ー`)し「まったく…。朋美ちゃんはもう大丈夫よ。
さっき目が覚めて、意識もしっかりしてたし。
精密検査はこれからだけどね。で、挨拶は?」

('A`)「え?あ、ツンのおばさん。
こ、こんばんは。お久しぶりです」

(朋美母)「こんばんは。俊雄君。
久し振りね。また遊びに来てね」

('A`)「は、はい。ありがとうございます」

J( 'ー`)し「まったくこの子はきれいな人の前だと借りてきた猫になっちゃうんだから」

('A`)「うっさいかーちゃん。
あ、ぶ、ブーンはどうなんだよ」

J( 'ー`)し「武士君はまだ眠ってるわ」

('A`)「ね、眠ってるって?」

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141 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:44:19 ID:ElLvkyBM0

J( 'ー`)し「看護師にも守秘義務ってのがあるんだよ?俊雄」

('A`)「だーーー」

J( 'ー`)し「救急の治療室にいるから、行ってみなさい。
多分そろそろ病状説明も終わった頃だと思うから、
内藤さん達が病室前の廊下か待合室にいらっしゃるはずよ」

('A`)「わ、分かった!」

J( 'ー`)し「廊下は走らない」

走り出そうとした俊雄の頭頂部に拳骨を一発。

('A`)「いってーなー。分かってるよ!」

競歩の様に歩く俊雄。
そして廊下を曲がった瞬間走り出す。

J( 'ー`)し「まったくあの子は」

(朋美母)「武士君と俊雄君は今でも仲が良いんですね」

J( 'ー`)し「ええ。朋美ちゃんと三人でよく遊んでたのが懐かしいわね」

(朋美母)「知佳さんには、よく遊びにつれてってもらってたわ」

J( 'ー`)し「平日は幼稚園や学校の後をお願いしちゃってたから。
休日くらいは俊雄と触れ合おうと思ったんだけど、
二人だけだと俊雄が私に気を使っちゃうのよ。
私が疲れてるんじゃないか?とかね。
でも武士君と朋美ちゃんが一緒だとよく笑ってくれたから、
俊雄の笑顔が見たい私の我儘だったのよ」

(朋美母)「知佳さん」

J( 'ー`)し「今は笑うと悲しくなるけどね。
あの人は男前だったし、私もそれほど悪くは無いと思うんだけど……。
どこの遺伝子が間違ったのかしら」

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142 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:46:04 ID:ElLvkyBM0

(;朋美母)「知佳さん……。母親くらいはその……」

J( 'ー`)し「良いの良いの。家族が真実を伝えなきゃね。
さて、うちの子の事は良いとして、友里恵さんのお泊りの準備はどうする?
すぐに一回戻る?それとも旦那さんが来てからにする?」

(朋美母)「ええ。うちの人が来てから交代にするわ。
朋美のそばに、どちらかはいるようにしたいし。
あと、あの人が来たら改めて内藤さんにご挨拶もしないと」

J( 'ー`)し「それが良いわね。じゃあ病室にいてね。サブベッドとか準備で来たら持っていくから。
もし私が来る前に家に一度戻ることになったら、ナースステーションに一言伝えといて。
内藤さん達も今日は泊まられるだろうから、
武士君の容態が安定したら挨拶出来るわよ」

(朋美母)「ええ、あり……よろしくね」

J( 'ー`)し「それでよろしい」

(朋美母)「ふふ」

J( 'ー`)し「ふふ」

病室に戻る朋美の母。
看護師である徳永は表情を引き締めると、廊下を歩きだした。




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143 名も無きAAのようです :2015/08/24(月) 22:46:39 ID:lFC6PVII0
支援

144 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:48:59 ID:ElLvkyBM0




2.学校  四人の男女






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145 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:52:02 ID:ElLvkyBM0

私立常林学園美ノ付高等学校。
(わたくしりつ じょうりんがくえん みのつきこうとうがっこう)

設立当初は姉妹校である緑葉高等学校に入学するには劣る者が入る学園内の二番手校であり、
県内でも下から数えた方が早い高校であったが、
制服を変えた事やその他諸々のイメージ戦略の成果によって生徒の質が上がり、
いつの間にか県内有数の進学校となっていた。

学校名である『美ノ付』は、
初代学校長であり設立にもかかわった『美野付伴三』の名前から付けられている。
彼は常林学園初代理事長であった来島幸之進の親友であった。

学校のレベルが低い頃から、揶揄されるように生徒は
『美付生(びっぷせい)』などと呼ばれていた。
これは『VIP』とかけた『同じ読みでもお前らは馬鹿ばかり』といった侮蔑的な意味を持っていたが、
最近では学校のレベルが高くなったのと、
卒業生の中に世界的に有名な者が出たことにより、
本来の意味である『VIP』の意味を込めて『ビップ生』と呼ばれることが増えてきた。

そんな、外から見れば進学校の生徒である彼ら彼女らだったが、
ふたを開けてみればただの高校生であり、全員が全員超優秀ということも無く、
会話はそれ相応であった。

今日の朝も、駐輪場で落ち合った男子生徒が二人、
取りとめのない会話をしながら校舎に向かって歩いていた。

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146 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:53:34 ID:ElLvkyBM0

('A`)「まだ七月にもなってないっていうのに…あちぃ…」

(´・ω・`)「今年も異常気象だって言っていたね」

('A`)「うん。安曇野さんが言ってた」

(´・ω・`)「ドクオはお気に入りだよね。あのお天気お姉さん」

('A`)「声とか顔とか似てるんだよなー」

(´・ω・`)「なんだっけ。『カオナシ!』の『北条政子』だっけ」

('A`)「……『オレナイ!』の『南佐古田茉理子』な。
ねぇねぇ、わざとだよね。わざとだよね。
四文字しかあってないし、北と南くらいしか共通点ないよね。
全国模試一位の本城さんともあろう方が間違えたりしないよね。
っていうか昔はおれと一緒に特撮の話とかしてたのに、
今は『アニメなんか見ません』みたいな顔して間違えるとか悲しいんですけど」

(´・ω・`)「変身ヒーローと萌えアニメを一緒にされても…」

('A`)「いっしょですー。
両方とも童心に帰るだけですー。
っていうか『オレナイ!』をそこら辺の萌えアニメと一緒にしないでくださいー。
『オレナイ!』はそこらの萌えアニメとは違うんです―」

(´・ω・`)「あ、萌えアニメだってのは認めるんだ」

('A`)「……まぁ…そりゃ」

半袖だがネクタイを締めた、背筋をピシッと伸ばした眼鏡の少年と、
開襟シャツをズボンからも出して猫背で歩く小柄な少年。

一見友人には見えない二人だが、その話す雰囲気から親しいのがよく分かる。

見るからに真面目そうな眼鏡の少年と違い猫背の少年は不真面目そうに見えるが、
今の時刻が始業開始の一時間近く前であることを考えると、
それなりに真面目ではあるのであろう。

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147 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:54:53 ID:ElLvkyBM0

川 ゚ -゚)「本城、徳永」

下駄箱の入り口前に、黒髪の少女が立っていた。

(´・ω・`)「来島さん。おはよう」

('A`)オ、オハヨウゴザイマス

川 ゚ -゚)「二人ともおはよう。すまないな、こんな時間に来てもらって」

(´・ω・`)「気にしなくていいよ。起きる時間は変わらなかったしね」

('A`)オ、オレモ

川 ゚ -゚)「そう言ってもらえると助かる」

(´・ω・`)「それで、どこで話す?話があるんだよね?」

川 ゚ -゚)「ああ、もう一人いるから生徒会室でお願いしたいが、良いか?」

(´・ω・`)「基本部外者は立ち入り禁止だけど、この時間なら大丈夫じゃないかな」

川 ゚ -゚)「すまない。見つかった時は本城の『副会長権限』ってやつで頼む」

(´・ω・`)「そんなの無いのは来島さんだって知ってるでしょ」

川 ゚ -゚)「おや、無いのか?それは知らなかった」

(´・ω・`)「まったくもう」

('A`)………

楽しそうに話す二人を後目に、徳永と呼ばれた少年は隠れるように自分の下駄箱に向かった。



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148 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:56:45 ID:ElLvkyBM0

生徒会室。

通常の教室の半分程度の大きさのその部屋は、一面が窓である以外は、
三面の壁を本棚とロッカーで埋め尽くされていた。
中央には長机とパイプいすが並べられており、ホワイトボードも置かれている。

三人が部屋に入ると、中には既に一人の少女がいた。

ξ□゚⊿゚)ξ「おはよう、本城、ドクオ」

(´・ω・`)「おはよう。宇佐木さん」

('A`)「おう、おはよ。ツン」

窓辺の壁に寄りかかっていた少女が視線を向け、
少年二人に挨拶をした。

その頬に貼られた、大きなガーゼ。

ξ□゚⊿゚)ξ「ツンって呼ぶなって何度言わせんのよ」

('A`)「おまえだっておれの事ドクオって呼んでるだろうが」

ξ□゚⊿゚)ξ「私は良いのよ」

('A`;)「うわぁ。なんだこの理不尽さ。マジにムカつく
じゃあなにか?おれに『宇佐木さん』とか『朋ちゃん』とか呼ばれたいのか?」

ξ□゚⊿゚)ξ「……マジで気持ち悪い」

('A`)「おまえなぁ」

ξ□゚⊿゚)ξ「しょうがないから『ツン』で良いわよ。許してあげる」

川 ゚ -゚)「二人は仲が良いんだな」

ξ□゚⊿゚)ξ「はぁ!?やめてよこの地球外生命体と仲良いなんて」

('A`)

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149 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 22:58:55 ID:ElLvkyBM0

(´・ω・`)「ブーンとドクオと宇佐木さんは幼馴染だからね」

川 ゚ -゚)「なるほど。そんなことも軽く言える仲なのだな」

ξ□゚⊿゚)ξ「だーかーらー」

('A`)

ξ□゚⊿゚)ξ「あんたも何か言いなさい!」

('A`)エ?オレ?

ξ□゚⊿゚)ξ「まったく、その人見知りと女の子苦手なのさっさと克服しなさい」

('A`)

(´・ω・`)「まあ、その話はまた今度として、今日はどうしたの?」

ξ□゚⊿゚)ξ「そうね。これと話しても進まないし」

('A`)「じゃあなんで呼んだんだよ」

ξ□゚⊿゚)ξ「……二人にしか頼めないからよ」

(´・ω・`)?

('A`)?

ξ□゚⊿゚)ξ「……明日から、ブーン登校でしょ?」

(´・ω・`)「うん。その予定だね。ギブスもしているし松葉杖か車椅子かは今日決めているはず。
明日は病院から直接学校だから、僕が一緒に来る予定だけど……。
宇佐木さんも、来る?」

黙って首を横に振る宇佐木。

その瞳に涙が滲んだのを、三人とも見逃さなかった。

(´・ω・`)

('A`)?

川 ゚ –゚)

しかし何もなかったように彼女は言葉をつづけた。

.

150 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 23:01:09 ID:ElLvkyBM0

ξ□゚⊿゚)ξ「本当なら、ケガの原因を作った私が率先してそばにいなきゃいけないし、
サポートしたいけど、私じゃだめだから、二人にお願いしたいの」

('A`)「はぁ」

(´・ω・`)「元からサポートはするつもりだけど」

ξ□゚⊿゚)ξ「ありがとう」

(´・ω・`)「何故、『私じゃダメ』なの?
宇佐木さんがそばにいてくれた方がブーンも喜びそうだけど」

('A`)「だなぁ」

ξ□゚⊿゚)ξ「そうね……。言うより、見てもらった方が早いかな」

宇佐木が頬のガーゼを取ると、下には薄い青緑色のジェルシートが現れた。
そしてさらにそれを剥がす。

川;゚ -゚)「!朋美!?」

ξ◆゚⊿゚)ξ「見て、これ」

そこには、赤くただれた肌があった。

(´・ω・`)!

('A`;)「お、おいツン」

ξ◆゚⊿゚)ξ「これが、あの事故で私に残った唯一の跡」

川 ゚ -゚)「朋美…早くこれを」

ξ◆゚⊿゚)ξ「ありがと」

宇佐木のバッグから新しいシートを取り出した来島が、それを手渡した。
そのまま手鏡を宇佐木に向けると、慣れた手つきでシートを貼り、その上からガーゼをのせる。

(´・ω・`)「治療、それで終わりじゃないよね?まだ治るんだよね?」

.

151 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 23:03:00 ID:ElLvkyBM0

ξ□゚⊿゚)ξ「ええ。本城の所の皮膚科の先生達がいろいろ調べてくれてる。
今は再生医療も出来るから、化粧で隠せるくらいには治せるだろうって。
まだ菌が残ってる可能性があるから、一回治ってからそっちの治療に進もうってスケジュール」

('A`)「……跡は、のこっちまうのか?」

ξ□゚⊿゚)ξ「多少はね。
表情筋とか全く動かさずに年単位で治療だけすれば跡形もなくなる可能性もあるみたいだけど、
生活してれば笑って怒って食事して。……そんなの無理よね」

('A`)「そうか……」

ξ□゚⊿゚)ξ「でもね、その程度までには治るし、それだけなのよ」

(´・ω・`)「え?」

('A`)?

ξ□゚⊿゚)ξ「ブーンは骨折して、この夏を棒にした。
私は、ちょっと頬に傷が出来てたんこぶ出来たからちょっと精密検査したくらいなのに、
あいつは足を骨折して、頭も強く打って、切れて、血を流して、一週間も目が覚めなくて。
今だって、まだ入院してて……」

川 ゚ -゚)「朋美……」

ξ□゚⊿゚)ξ「目を覚ましたって聞いて、病室に行った時、
あいつが私に言った言葉、二人とも覚えてる?
私が病室に駆け込んだとき、
笑いながら『無事で良かったお』って言って、その後頬のガーゼに気付いて、
『ごめん』って……。泣きそうな顔で言ったのよ。
こんな傷が何だっていうのよ……。
私を守って怪我して、生死の境さまよって!それでなんで『ごめん』なのよ!
もっと自分のこと考えてよ!注意を怠った私を恨みないよ!怒ればいいのよ!
怒鳴ればいい!罵っていい!!『命の恩人だ!』って偉そうな顔をすればいい!!
何したっていい!!!
夏の大会もダメになって!完治するまでどれだけかかるのか!
来年に間に合うかどうかだって分からないのに!!
あいつは!あいつは!!」

.

152 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 23:04:13 ID:ElLvkyBM0

('A`)「ツン」

川 ゚ -゚)「落ち着け」

俯き、肩を震わせながら叫ぶ宇佐木に寄り添い、そっと肩を抱く来島。

ξ□  )ξ「久美子……。ごめん、ありがと」

渡されたハンカチで顔を抑え、宇佐木が顔を上げる。

ξ□゚⊿゚)ξ「そのあとお見舞いに行っても、
無事でよかったって笑って、私の頬を見て悲しそうな顔をして。
すごく、辛そうな顔をして。
部屋に入った時は今まで通りの普通の笑顔なのに、
だんだんと、辛そうな顔を隠すための笑顔に変わってる」

('A`)「それは…」

ξ□゚⊿゚)ξ「わたしは、もうあんなを顔ブーンにさせたくない。
正直、本当にこの傷が跡形も無くなくなるなら、
二年でも三年でも顔を動かさなくたって良いと思ってる。
どこかに体を固定して、顔を動かさなくして、流動食でも飲んで、顔を動かさなくして。
でも、そんなことを私がするってことをあいつが知ったら、絶対に悲しむ」

('A`)「ああ。そうだな。あいつは、そういうやつだ」

ξ□゚⊿゚)ξ「…今は入院中だから病院に任せてるし、
退院しても家にはおばさんがいらっしゃるから、問題ない。
でも、学校は違う。
本当は、私がそばにいてサポートしたいけど、
きっとあいつは私にはわがままを言わない。
そして、この頬を見たら、きっと辛さを隠すために、私の為に笑顔を見せる。
そんな顔を、ブーンにさせたくない……。
もう、辛い思いなんて、させたくない……。」

苦しそうに話す宇佐木。
それを聞く三人は、ただその言葉に耳を傾けることしかできなくなっていた。

沈黙の後、何度か口を開こうとする宇佐木だったが、口に出そうとするたびに思い悩み止まる。

口を開いたのは、本城だった。

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153 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 23:05:44 ID:ElLvkyBM0

(´・ω・`)「聞いた話だと、右折してきた車は宇佐木さんを完全に見ていなかった。
コース的にそのままぶつかっていたら、宇佐木さんは今ここにいたとは思えないらしい。
出していたスピードを考えても、良くて入院中。あるいはそのままってことも推測できたって。
運転手は歩道を走ってきたブーンに気付き、そこで宇佐木さんにも気付いた。
慌ててハンドルを切ったら、雨によって滑った車はスピン。
宇佐木さんに走り寄ったブーンが、宇佐木さんを抱きしめたまま歩道に飛び込んだけど、
スピンした車がその足に当たって、その勢いで頭を歩道のヘリに打ち付けたらしい。
宇佐木さんの頬の傷もその時にできたんだろうね。
スピンした車も電柱にぶつかって、開いたエアバックの衝撃で運転手も意識を無くした。
丁度人通りが無くて、おそらく10分程度した後に通りかかった近所の人が通報。
これが、事故のあらましみたいだね。聞いてた?宇佐木さんは」

突然事故について話し出した本城に怪訝な顔をする三人。
それでも宇佐木は慌てて首を振った。

ξ□゚⊿゚)ξ「いや、そこまで詳しくは聞いてないけど…」

川;゚ -゚)「なぜ本城がそこまで詳しく知っているんだ?」

(´・ω・`)「人脈と権力は利用しないと」

川;゚ -゚)

ξ;□゚⊿゚)ξ

('A`)「(……こういうことを言っちゃうってことは、二人には結構気を許してるんだな。ショボン)」

(´・ω・`)「まあそんなことは置いておいて」

ξ;□゚⊿゚)ξ「そ、そうね。何が言いたいの?
悪いのは運転手で、私はそこまで気にする必要はないとでも?」

(´・ω・`)「悪いのは運転手だってのはその通りだけど、
人の気持ちはそんな簡単に割り切れるもんじゃないからね。
君が気にするのは仕方ないし、それは周りが何を言っても変わったりはしないでしょ。
おそらく、ブーンが言っても変わらない。
そして、ブーンも変わらない。
何かの拍子に君が心の底からそう思えるようにならない限り、
自分が悪いって気にするんじゃないのかな」

.

154 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 23:07:37 ID:ElLvkyBM0

ξ□゚⊿゚)ξ「…………」

(´・ω・`)「僕が気になるのは、君が顔を見せないことをブーンが気にするんじゃないかってことと、
本当に君はそれでいいのかなってこと」

ξ□゚⊿゚)ξ「?どういうこと?」

(´・ω・`)「宇佐木さんの性格を、ブーンだってよく知っているはずだよ。
お見舞いは部活が忙しくなったって言って、朝チラッと寄っていくだけにしてたみたいだけど」

ξ;□゚⊿゚)ξ「な、なんであんたが知ってるのよ!」

(´・ω・`)「?看護師の皆さんが楽しそうに教えてくれたけど」

ξ;□゚⊿゚)ξ「はあ?」

('A`)「母さんも言ってた」

ξ;□゚⊿゚)ξ「おばさんも!?ちゃんと口止めしたのに!」

('A`)「母さんにそれは無理だ」

(´・ω・`)「若者のうるおいは楽しい話題だからねー」

('A`)「……『あんたにはああいう相手はいないの?』って言われた……」

川 ゚ -゚)「人の口に戸は建てられないからな」

ξ;□゚⊿゚)ξ「あーもう!で、何が言いたいわけあんたは!」

(´・ω・`)「だから、君が来なければブーンが気にするだろうし、
君だって本当はブーンのそばにいたいでしょ?会えないのはいやでしょ?」

ξ□゚⊿゚)ξ「それはそうだけど…でも……」

.

155 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 23:10:49 ID:ElLvkyBM0

川 ゚ -゚)「『でも』とか言っている場合じゃないんじゃないか。
私も本城の言うとおりだと思う。
朋美の言っていることを尊重していたが、
これから先の事を考えれば、避けるのは得策ではないような気がしてきた」

ξ□゚⊿゚)ξ「……どうすればいいのよ…。
私だって、ブーンのそばにいたい。でも……」

('A`)「二人っきりじゃなきゃいけるんじゃないか?」

ξ□゚⊿゚)ξ「え?」

('A`)「おれ達も一緒に居れば、お前の事だけを気にすることも無いだろうからさ」

(´・ω・`)「そうだね」

('A`)「だろ?」

ξ□゚⊿゚)ξ「で、でも」

川 ゚ -゚)「私は内藤君の性格をよく知らないから何とも言えんが、
周りにいる人が気の置けない仲間ならば、徐々にほぐれたりするのではないか?」

('A`)ウ、ウンオレモソウオモッタンンダ

(´・ω・`)「それに、ドクオは同じクラスだけど僕はクラスが離れているから、
休み時間ごとが厳しい。登下校と昼休みくらいしか力になれない。
宇佐木さんはクラスも隣だし、来やすいでしょ?
合同授業もひとくくりになるわけだし」

('A`)「ブーンとツンの仲はみんな知ってるしな」

ξ*□゚⊿゚)ξ「な、仲って何よ!別に付き合ってるとかじゃないし!
ただ幼馴染ってだけだし!」

('A`)「ああ、うん、そういうのをみんな知ってるってこと」

ξ*□゚⊿゚)ξ「そ、それならそう言いなさいよこのバカドクオ」

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156 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 23:13:06 ID:ElLvkyBM0

(´・ω・`)「(いい加減付き合っちゃえばいいのに)」

川 ゚ -゚)「(もうちゃんと認めればいいのに?)」

('A`)「(あのブーン相手に告白されるシチュエーションの夢を見ても無駄だと思う)」

三人の白けた視線に気付かずに顔を赤くする宇佐木。

(´・ω・`)「それじゃあ、登下校はドクオと僕。
クラスではドクオと宇佐木さんが。
来島さん、宇佐木さんのこと頼むよ」

川 ゚ -゚)「うむ。頼まれた。ちゃんと連れて行こう」

ξ;□゚⊿゚)ξ「ちょっと、久美子?」

(´・ω・`)「お昼はみんなで食べよっか。
いつもは三人で中庭裏庭屋上なんかで食べたりしてたけど、
ブーンが治るまではここを使えるようにお願いしておくよ。
僕と来島さん二人役員がいれば問題も無いでしょ」

('A`)「あー。それは楽だな。この部屋はどこ行くにも近いし」

ξ□゚⊿゚)ξ「え?ちょ?一緒に食べる?え、何を言っているの?」

('A`)「手作り弁当でも作ってきてやったらどうだ?」

ξ*□゚⊿゚)ξ「ば、ばか何言ってるのよアホドクオ!」

('A`)「バカだのアホだのお前はほんとに」

(´・ω・`)「来島さん」

川 ゚ -゚)「………」

(´・ω・`)「来島さん?」

川 ゚ -゚)「あ?う、うむ。なんだ?」

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157 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 23:16:13 ID:ElLvkyBM0

(´・ω・`)「どうしたの?いきなり何か考え事?」

川 ゚ -゚)「いや、考え事とかではないんだが……」

(´・ω・`)「?」

川 ゚ -゚)「……うちの学校、一般生徒は屋上立ち入り禁止だよな?
通常は鍵もかかってる」

(´・ω・`)「うん」

('A`)エ?ソウダッタンデスカ?

ξ□゚⊿゚)ξ「へー。そうなんだ」

川 ゚ -゚)「なのに何故昼休みに屋上でお昼を食べられるんだ?」

(´・ω・`)「人脈と権力と人の隠し事は利用しないと」

川;゚ -゚)

ξ;□゚⊿゚)ξ

('A`)「(ツンはブーンとおれの幼馴染だしブーンの好きな相手だからわかるとして、
来島さんの方にもここまで気を許してるのか)」

(´・ω・`)「ブーンが回復したらみんなで屋上ランチもしたいね」

ξ;□゚⊿゚)ξ「そ、そうね」

川;゚ -゚)「あ、ああ。楽しみだ」

('A`)「(一見人畜無害だからな。ま、引くよなー)」

ξ□゚⊿゚)ξ「お月見茶会とかもいいわね」

川 ゚ -゚)「野点のセットなら部室から持ってこれるぞ」

.

158 ◆dKWWLKB7io :2015/08/24(月) 23:18:07 ID:ElLvkyBM0

(´・ω・`)「それもいいね」

('A`;)「(ツンはともかく来島さんもこういう性格なのか!)」

(´・ω・`)「さて、そろそろ朝礼の準備で会長たちも来る時間なんだけど…」

ξ□゚⊿゚)ξ「ちょ、ちょっとまって!ブーンの事は!」

川 ゚ -゚)「随時隣の教室に朋美を連れていく」

('A`)「みんなでワイワイ……ガンバル」

(´・ω・`)「なるべく僕も顔だすよ」

ξ;□゚⊿゚)ξ「あ、あんたたち!」

(´・ω・`)「続きは昼休みにでも話そうよ。
ブーンのためにも連絡は取り合っておきたいし。
来島さんも、色々頼めるかな」

川 ゚ -゚)「うむ。問題ない」

ξ;□゚⊿゚)ξ「あーもう!勝手に話が進んでく!」

('A`)「じゃ、また昼に」

(´・ω・`)「うん、よろしく」

川 ゚ -゚)「朋美、あとで教室で」

ξ□゚⊿゚)ξ「はいはい!分かったわよ!」

生徒会室を出ていく徳永と宇佐木。
残った本城と来島は、朝礼の準備を始めた。




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159 名も無きAAのようです :2015/08/25(火) 07:34:15 ID:Up7GeTvwO
事故の脳への後遺症がブーンの過負荷時の行動不能に繋がるんかね。
続き期待

160 名も無きAAのようです :2015/08/25(火) 11:31:56 ID:ifoji4Kc0
乙乙

161 名も無きAAのようです :2015/08/25(火) 19:35:10 ID:RZbuQsAY0
アインクラッドきてたー!
続きまってます!

162 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 21:44:35 ID:t6mGuhyQ0
しえん、おつ、色々ありがとうございます!

それでは、今日の投下を開始します。

よろしくお願いします。

.

163 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 21:46:17 ID:t6mGuhyQ0




3.電話  朋美と久美子





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164 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 21:49:01 ID:t6mGuhyQ0

川 ゚ -゚)「はい。私だ」

ξ□゚⊿゚)ξ「私…朋美」

川 ゚ -゚)「どうした?ノリが悪いな。
普段なら『神々の遊び』まで続けるのに」

ξ□゚⊿゚)ξ「ごめん。懐かしのお笑いネタシリーズをやる気分じゃないの」

川 ゚ -゚)「そうか……。そうだな。すまなかった」

自室の文机で勉強をしていた来島久美子は、
携帯電話の画面に出た親友の名を確認してから通話ボタンを押した。

そして『普段通り』に話しはじめたのだが、
親友はそれを受けることの出来る状況にいなかった。

ξ□゚⊿゚)ξ「ううん。こちらこそごめんね」

途切れる会話。
二人とも矢継ぎ早に喋る性格ではないが、
会話が途切れるということはあまりない。
話題の切れ目ならばともかく、
電話で最初の挨拶が終わって時点で二人とも黙るのは今までなかった。

久美子は正座をしたまま、背筋を伸ばした。

物心ついた時からこの畳の部屋で過ごしていた。
椅子よりも正座。
足腰が弱くなった祖父の為に作った洋間もあるし、
テーブルと椅子で食事をとる場所もある。
来客用のリビングは板張りに絨毯を敷いてありソファーセットもある。

けれど、彼女は畳と正座が好きだった。

最初は顔色を伺っていただけだったが、今ではこの空間が好きだった。

.

165 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 21:52:53 ID:t6mGuhyQ0

携帯電話を耳につけたまま、そんなことを考えていると、
親友がやっと本題を話しはじめた。

ξ□゚⊿゚)ξ「明日、ブーンに会って、私ちゃんと笑顔を見せられるかな」

川 ゚ -゚)「大丈夫だろ」

ξ□゚⊿゚)ξ「……なんでそんなことを言えるのよ」

川 ゚ -゚)「私、本城、徳永。
この三人が朋美と内藤をフォローするんだ。
大船に乗ったも同然だろ?」

ξ□゚⊿゚)ξ「久美子……」

川 ゚ -゚)「それに、学校に来れるようになった内藤を見て、
朋美が嬉しさのあまり笑顔でいることなんて誰でも想像がつく」

ξ□゚⊿゚)ξ「ちょ、な、何言ってるのよ!」

川 ゚ -゚)「あ、いや、約一名はそんな風には思わないかもな」

ξ□゚⊿゚)ξ「え?」

川 ゚ -゚)「まったく鈍感にもほどがある。
一番気付かなければならない人間が気付かないんだから。
本城と徳永もそこら辺をちゃんとフォローしてやってほしいものだ」

ξ□゚⊿゚)ξ「え?え?え?
なんのこと?誰のことを言ってるのよ」

川 ゚ -゚)「……鈍感同士の恋愛と言うのは、
見ている方にとっては面白くもあり、イライラもし、
なかなかつらいものだな」

ξ□゚⊿゚)ξ「え?久美子?」

川 ゚ -゚)「なんでもない」

ξ□゚⊿゚)ξ「???」

.

166 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 21:56:27 ID:t6mGuhyQ0

川 ゚ -゚)「ま、T.U.N.と書いてツンさんなんだから、
内藤の顔を見れば自然と笑顔になるだろ?」

ξ□゚⊿゚)ξ「ば、ばか!何言ってるのよ!
外で言ったら怒るからね!
あんたの『Qoo』もばらす!」

川 ゚ -゚)「ふふふ。冗談だよ
二人でばらしあって、ツン、クーと呼び合うのを止めたんだからな」

ξ□゚⊿゚)ξ「そうそう。まったく…」

川 ゚ -゚)「しかし、恥かしさ的には朋美の方が」

ξ□゚⊿゚)ξ「怒るわよ」

川 ゚ -゚)「ふふふ」

ξ□゚⊿゚)ξ「まったくもう」

川 ゚ -゚)「それだけ元気が出てきたなら大丈夫だよ」

ξ□゚⊿゚)ξ「……ありがと。明日、よろしくね」

川 ゚ -゚)「ああ、大船に乗った気分でいいぞ」

ξ□゚⊿゚)ξ「そうする」

川 ゚ -゚)「ま、タイタニックも大船だがな」

ξ□゚⊿゚)ξ「くーみーこー」

川 ゚ -゚)「冗談だ」

ξ□゚⊿゚)ξ「まったくあんたって人は」

川 ゚ -゚)「明日、楽しみだな。学校で会えるのが」

ξ□゚⊿゚)ξ「うん」

.

167 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 21:58:24 ID:t6mGuhyQ0

川 ゚ -゚)「朝は病院から来るようだから無理としても、
帰りは一緒に帰るんだろ?」

ξ□゚⊿゚)ξ「まあ。家も近いし。
あ、ドクオも一緒よ!本城も!」

川 ゚ -゚)「後ろから付いていって朋美を観察しようかな」

ξ□゚⊿゚)ξ「なによそれ!来るならちゃんと来なさい!」

川 ゚ -゚)「はははは。
皆で下校と言うのも楽しそうだな」

ξ□゚⊿゚)ξ「久美子はあんまり寄り道とかしないしね」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ□゚⊿゚)ξ「あ、もうこんな時間だ。お風呂入らなきゃ。
ありがと久美子。電話付き合ってくれて」

川 ゚ -゚)「友達だからな」

ξ□゚⊿゚)ξ「……ほんとにありがとうね」

川 ゚ -゚)「では、明日」

ξ□゚⊿゚)ξ「うん。明日。おやすみ」

明日の待ち合わせを確認した後、切れる電話。

待ち受け画面には、朋美と二人で撮った写真。

自分が笑顔を見せていることに違和感を覚えてしまうが、
それを超えて嬉しくもあった。

.

168 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:03:27 ID:t6mGuhyQ0

扉の無いこの部屋と廊下を隔てるのは、襖のみ。
板張りの廊下を足音無く歩くその技量は感嘆に値するが、
その消された気配に気付くようになったのはいつ頃からだろうか。

携帯電話を文机に置くのと、その声はほぼ同時だった。

「久美子さん、よろしいですか」

川 ゚ -゚)「はい。お祖母様」

立ち上がり、襖をあけると凛としたたたずまいの着物の女性がいた。

久美子の部屋着を見て、眉をひそめる。
Tシャツにハーフパンツと言うその服装は、
高校2年生の女子としては特に問題の無い部屋着だと思われるが、
『来島家』を支えたと自負し、孫にその生き様を教え、
自分の後を継いでほしいと願っている彼女としては、
あまり見栄えの良い物ではなかった。

川 ゚ -゚)「(だが、これに関しては説得済みだ)」

そう思いつつも緊張して唇を硬く閉じる久美子。

(祖母)「……稽古をつけてあげましょう。
着替えたら道場に来なさい」

川 ゚ -゚)「はい」

.

169 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:05:36 ID:t6mGuhyQ0

父と母は仕事で飛び回っており、久美子はこの祖母に育てられたと言っても過言ではない。

しかも一部では『来島の女傑』と称されたこともあるこの祖母に刃向うことなど、
久美子にはずっと出来なかった。

しかし小学校も高学年になった頃に自分が浮いていることに気付いてからは、
自分の興味のあることには意思を見せるようになった。

だがそれでも逆らえないことは幾つかあり、
この『稽古』もそうであった。

川 ゚ -゚)「稽古と道場の組み合わせってことは薙刀か……。
また青痣が出来るな」

そんなことを考えながら、久美子は和箪笥を開けた。





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170 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:09:22 ID:t6mGuhyQ0



4.心・技・身体  久美子




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171 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:11:32 ID:t6mGuhyQ0

川;゚ -゚)「はぁ…はぁ…はぁ…」

(祖母)「肩で息をしてはいけません。
汗はまだ仕方ないとしても、疲れていることを相手に気取られないように気を付けなさい」

川;゚ -゚)「は、はい…」

久美子は白い胴着と黒い袴に臙脂の襷をかけた姿だが、
祖母は普通の着物に白い襷をかけ、額にも白の鉢巻きをしただけの姿である。

その姿で汗一つかかず、久美子に対して薙刀を振るう。

(祖母)「遅い!」

川;゚ -゚)「はい!」

既に師範の座は後人に渡した祖母ではあるが、
その武芸者としての力は全く衰えていない。

それを知るのは久美子と一部親族だけであり、
更にその『教え』を受けているのは久美子だけだった。

因みに久美子は自分の実力が、
薙刀の腕前が世間的にどれほどなのかを全く知らない。
それは稽古は常に祖母と二人。
対外試合などを全くしたことが無い為である。

(祖母)「!」

川;゚ -゚)「ふっ!」

しかし、範士の称号を持つ祖母から何十本かに一本でも有効打を奪える彼女は、
それなりの『強さ』は持っているのであろう。
例え祖母が『本気』を出していなかったとしても。

(祖母)「よろしい。今日はここまでにしましょう」

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172 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:14:14 ID:t6mGuhyQ0

孫の成長に頬を緩めつつ、
けれどそれを知られない様に久美子に背を向ける。
そして神棚の前に立つ時には、普段通りの凛とした立ち姿だった。

そして久美子は祖母の思惑通り、その表情の変化に気付くことなく、
神棚の前、祖母の前に正座をした。

(祖母)「本日の鍛錬を終わります」

川 ゚ -゚)「ありがとうございます」

少し頭を下げた祖母に対し、
深々と腰から頭を下げる久美子。

そして数秒後頭をあげると目の前にはまだ祖母がいた。
普段であれば久美子が頭を下げている数秒の間にその場を去ってしまう祖母がまだいることに、
久美子の顔は不安によって曇った。

川 ゚ -゚)「お祖母様」

(祖母)「明日は和室に参りなさい。
帰宅後準備を終わらせて、7時には入る様に」

川 ゚ -゚)!

ここで言う『和室』とは、日本舞踊の稽古を行う部屋を指す。

『薙刀』と『日本舞踊』
幼い頃より大和撫子として、来島の名に恥じない女性として、
そう言われ続けて祖母より手ほどきを受けてきた。
久美子自身も稽古は辛いが嫌いではない。
だからこそ続けることが出来た。

小学校は毎日どちらかの稽古を。
中学校に上がってからは週に各二回ずつ。
そして高校に上がってからは週に各一回か二回行ってきた。

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173 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:16:47 ID:t6mGuhyQ0

だから明日舞踊の稽古が行われることにはそれほど驚いていない。
久し振りの連続稽古ではあるが、それもそこまで驚くことではない。

それでは何に驚いたのかと言うと、明日稽古を行うと予告されたことについてだった。

中学校になってから、稽古は突然だった。

祖母が部屋まで来て、稽古の為に道場か和室のどちらかに来るようにと告げる。
その瞬間から準備を始め、祖母が来る前にその場所に行かなければならない。
つまり祖母が部屋に来た瞬間からが既に稽古になっているのだ。

それが、前日の内に告げられた。
確かに『7時』という時間は授業が終わった瞬間に帰宅の途につき、
更に通学路内で何の問題なく家に辿り着けたとしてもかなりギリギリの時間である。
しかしそれは全ての準備を当日その瞬間に行わなければならない場合であり、
着物への着替え以外の準備を今日中に行ってさえおけば、
そこまで時間的猶予が無くなるスケジュールではない。
勿論寄り道などは出来ないが、信号や踏切に捕まって帰るのが遅れても、
充分間に合う時間である。

そこで、思い当る。

つまり祖母は明日授業が終わり次第すぐ帰って来いと言っているのだ。

久美子の心に、怒りの炎が宿る。

しかしそれを外に出そうとはせず、無表情に口を開いた。

川 ゚ -゚)「申し訳ありません、お祖母様。
明日は少々遅くなる可能性があるため、
稽古は明日の遅い時間か別の日に変えていただけますでしょうか」

立ち去ろうとする祖母の背中に、
大きくは無いがしっかりとした声で告げる。

(祖母)「遅くなる?何故ですか?
生徒会の用事なら私から統括の岡野先生に伝えて別の日に変えてもらいます。
茶道部ならば佐々木さんに伝えておきます」

川 ゚ -゚)「いえ、どちらでもありません」

.

174 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:19:09 ID:t6mGuhyQ0

生徒会と部活と言う二つの言い訳は潰された。

もとよりその二つはあてにしていないが、これで確信もした。

『祖母は、私と朋美が友人関係にあることを良しとしていない』

それを知っている久美子は、先ほどの電話から明日何かがあることを知り、
学校が終わった後彼女といることが無いようにしているのだと思った。

(祖母)「それでは、どのような用事ですか?」

川 ゚ -゚)「明日、ケガで入院していた友人が、久しぶりに登校をします。
足のケガのためまだ松葉杖、もしくは車椅子での登校の予定です」

(祖母)「あなたの友人にケガで入院をした者がいるとなど聞いておりませんよ」

川 ゚ -゚)「はい。これから友人になる予定の方ですので」

(祖母)「……あなたは自分が何を言っているのかおわかりですか?」

呆れた様に、ため息交じりに話す祖母。
そして久美子に向けていた顔を出口に向ける。

(祖母)「訳のわからないことを言っていないで、明日に備えなさい。
7時です。口答えは許しま」

川 ゚ -゚)「彼は!」

祖母の言葉をすべて聞き終える前に、久美子は口を開いた。
鋭い声で祖母の話を中断させるなど、今までの彼女には考えられないことだったが、
思わず口を開いていた。

(祖母)!?

驚いたように再び久美子の顔を見る祖母。

真剣な瞳が彼女を迎えうった。

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175 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:22:42 ID:t6mGuhyQ0

川 ゚ -゚)「彼は、明日入院を終えて登校する内藤君は、本城のご子息の親友です」

久美子の言葉に、祖母の表情が揺れる。

そしてすぐに神棚の前、久美子の前に戻り、腰を下げて正座をした。

(祖母)「お話しなさい」

川 ゚ -゚)「はい」

探る様な祖母の顔。

嘘は言わない。
祖母のこの視線の前で言えるほど、まだ抜け出せてはいない。
けれど少しだけ誇張するくらいならばできる。

そんなことを考えつつ、久美子は口を開く。

川 ゚ -゚)「明日久しぶりに登校する彼の名前は、『内藤 武士』(ないとう たけし)といいます。
去年のインターハイ、陸上短距離で一年生ながら好成績で2位入賞。
全国でも8位に入り、将来が有望されています」

(祖母)「覚えております。
美ノ付の名前を全国に広めてくれた立役者の一人ですね。
しかもスポーツ特進ではなく、一般入試での一般クラスとか。
そうですか。彼が。ということは、今年の夏は…」

川 ゚ -゚)「はい。出場は難しいかと」

(祖母)「……そうですか」

川 ゚ -゚)「そして、彼は先ほども申した通り本城のご子息の親友です」

(祖母)「祥大さんの親友」

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176 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:24:54 ID:t6mGuhyQ0

川 ゚ -゚)「はい。
小学校からの友人で、ご子息、内藤君、
そしてもう一人徳永君と共に親友であると、
ご子息が申されておりました」

(祖母)「徳永?」

川 ゚ -゚)「え、あ、はい。同じ年で徳永君と言う」

(祖母)「……名前は?お父上のお名前は知っていますか?
住んでいるのはどちらで?」

川 ゚ -゚)「彼の名前は『俊雄』です。御尊父のお名前までは……。
ただ、内藤君と徳永君は幼馴染とも聞いております。
また小学校は安藤小学校とのことですから、あの近辺かと。
それと、徳永君のお父様はお亡くなりになっているようです」

(祖母)「そうですか、お亡くなりに。
そしてお名前が『俊雄』さんと言うのですね。
おそらくですが、お父上は徳永俊一郎さんです。
この近辺で『徳永』という苗字は珍しい部類に入りますし。
彼の名前にも聞き覚えがあります」

川 ゚ -゚)「お祖母様?」

(祖母)「俊一郎さんは、昔道場に通って剣術を習っていた門下生です」

川 ゚ -゚)「え?」

(祖母)「とても気持ちの良い爽やかな若者で、
当家に年齢のあう女性がいたら是非縁談を進めたかったと思える方でした。
結婚の際にご夫婦でご挨拶に見えられて、ご相手も気立てのよいお嬢さんでした。
警察官で、交番勤務の頃までは頻繁に来られていたのですが、
刑事になられてからは月に一・二回しか来られなくなっていました。
お子さんは男の子が一人。
もう少し自分の手で鍛えたら道場に連れてくると言っていましたが、
その前に亡くなられました。
息子さんが、お葬式で必死に涙をこらえている姿を覚えています。
貴女と同じ年だったのは覚えておりましたから、もしやと思いました。
しかし、祥大さんの親友とは。
世間は狭い物です」

.

177 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:27:01 ID:t6mGuhyQ0

しみじみと、少し切なげに話す祖母を見て、久美子は驚いていた。
自分の前では常に矍鑠として弱い面など全く見せなかった祖母の一面を、
覗いてしまったような気分であった。

(祖母)「それで、その内藤君のお世話をあなたがするのですか?」

しかしすぐに普段の祖母に戻り、
久美子は気を引き締め直す。

川 ゚ -゚)「い、いえ、違います。
まだそこまでは親しくありませんし、
この年代の親しくも無い男女がそんなことはいたしません。
彼のサポートは本城のご子息と、徳永君がする予定です。
あと内藤君はクラスでも人気が高いので、同じクラスの友人たちがすると思います」

(祖母)「……ではあなたが何かをするわけではないのでしょう」

川 ゚ -゚)「はい。ですが足を怪我したということで、
移動等の不都合や学内のサポートの為に本城のご子息より、
生徒会の備品を使いたいと申請がありました。
ご子息は副会長ですので彼の一存で特に問題は無いのですが、
公明正大であるご子息はそれを良しとせず、
それぞれの使用に関してもう一人生徒会役員の確認をお願いしたいと申し出があったのです」

(祖母)「それに、あなたが指名されたと?」

川 ゚ -゚)「はい。ご子息は校舎が違うため、頻繁にこちらに来るのは難しいとのことです。
そこで、同じ学年で内藤君のクラスに一番近いのが私ですので、
ご子息よりお願いをされました。
もちろん私が内藤君の学校生活の手助けを直接することはありませんが、
生徒会の備品の確認や貸し出し、
通常生徒は使えないエレベーターの使用の際などのサポートは、
私がすることもあると思います。
特に明日は登校一日目と言うことで、
授業終了後に明日以降の施設・備品の使用に関して打ち合わせをすることも考えられます」

(祖母)「そういう事ですか」

.

178 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:32:29 ID:t6mGuhyQ0

告げることは全て告げた。
隠している事はあるが嘘はついていない。
誇張はしたが、虚ではない。

(祖母)「……あの時本城家からの申し出が無ければ、今の来島家はありません。
今を支えているのはあなたのお父様とお母様の働きによるものですが、
あの日を乗り越えることが出来たのは、本城の御当主と、
その娘でありあなたのお母様の学生時代の先輩である小百合さんのおかげです。
学校の、部活の後輩だったというだけで何も聞かずに手を差し伸べて下さった小百合さん、
そしてその小百合さんの願いを慎重に、けれど迅速に叶えてくださり、私達を救って下さった御当主。
お二人のおかげです。
小百合さんの息子さんであり、御当主の直系のお孫さんである祥大さんが、
今あなたと同じ学校で、さらに生徒会という要職にておそばにいられるのは、何かの縁でしょう。
よろしい。明日の稽古は無くしましょう」

川 ゚ -゚)「ありがとうございます」

頭を下げる久美子。
とりあえず一つのハードルを越えたことに安堵して緩む表情を隠す。

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179 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:34:43 ID:t6mGuhyQ0

(祖母)「内藤という選手は、美ノ付の名をあげることの出来る可能性があります」

川 ゚ -゚)「は、はい?」

頭を上げる前に突然親友の思い人の名が出てしまい、
おもわず上ずった声で返事をしながら頭を上げた。

(祖母)「今年は無理でも、まだ来年があります。
美ノ付の、ひいては常林学園の為になる可能性のある生徒ならば、
来島家として助けるのは当然のことです。
学生としての領域を逸脱することは許しませんが、
学内の生活においては手を貸して差し上げなさい。
よって、夏休みが始まるまでの稽古は土日のみとします。
よろしいですね。」

川 ゚ -゚)「は、はい!」

正直土日の夕方以降は全て潰れるのは辛いが、
望んだ以上の好条件な結果に、先ほどとは違う心で声が上ずってしまった。

.

180 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:37:49 ID:t6mGuhyQ0

そんな久美子を見て祖母は軽くため息をつきながら立ち上がった。

(祖母)「そうそう、機会があれば徳永さんのお子さんを、道場に連れていらっしゃい」

川 ゚ -゚)「え?」

(祖母)「今でも目に焼き付いていています。
幼き身で涙を必死にこらえたその姿を。
そして俊一郎さんの息子さんなら、さぞや爽やかな好青年なことでしょう」

川 ゚ -゚)

(祖母)「俊一郎さんと同時期に稽古をしていた者もまだおりますし、
忘れ形見に会いたい者もおるでしょうしね。
ええ、それが良い。
幼き頃は俊一郎さんが教えていたなら、剣術の基礎は出来ているはず。
彼に興味があれば、通ってもらうのもいいでしょう」

川 ゚ -゚)

(祖母)「最近は若い門下生も少なくなりましたし、
俊一郎さんの息子さんの様な爽やかな青年が入ってくれれば、
道場の雰囲気も更によくなることでしょうしね」

川 ゚ -゚)

(祖母)「久美子。どうしました」

川 ゚ -゚)「あ、い、いえ。私はまだ徳永君とは親しくありませんので。
いくら徳永君の御尊父をお祖母様がご存知だとしても、
親しくも無い私がお亡くなりになっているお父上の事に繋げて何かを話すというのは、
少々気後れをしてしまいますので」

(祖母)「そうですね。
私としたことが、懐かしい名前を聞いて少々先走ってしまったようですね。
それは、久美子さんが正しいです」

祖母は久美子の顔を見て満足げに頷いた。

.

181 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:40:47 ID:t6mGuhyQ0

(祖母)「内藤さんの手助けをしているうちに、親しくなることもあるでしょう。
その時に、機会があればお話ししてみなさい。
俊一郎さんの事に関しては、私からお話ししても宜しいですし」

川 ゚ -゚)「は、はい」

微笑んだ祖母に対し、ぎこちない笑顔で返す久美子。
その脳裏には、今日初めて少しだけ話した徳永俊雄の姿が浮かんでいた。

(祖母)「さて、少し遅くなりましたね。
道場の片付けは最小限で構いませんから、
汗を流したら早めにお休みなさい」

川 ゚ -゚)「はい」

.

182 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:43:28 ID:t6mGuhyQ0

再び頭を下げる久美子。
その間に祖母は立ち上がり、道場の出口へと移動した。
そして体の向きはそのままに、ほんの少しだけ顔を動かして視線のみで久美子を見る。

川 ゚ -゚)

頭を上げた久美子。

(祖母)「久美子」

川 ゚ -゚)「は、はい!」

既に外に出たと思っていた祖母の声に、
慌てて返事をする久美子。
そして身体ごと、正座したまま祖母に向かって体の向きを変えた。

(祖母)「私は、あなたとあの女との交友を許したわけではありません。
それは覚えておきなさい。
祥大さん、内藤さん、俊一郎さんの忘れ形見。
素晴らしい方が周りにちゃんといらっしゃるでしょう。
友人は、選びなさい」

祖母は久美子が何かを言うのを許さない様に、それだけ告げると前を向いて歩き始めた。

久美子は、その背中に向かって立ち上がろうと腰を浮かせたが、
結局立ち上がることは出来ず、その背中を黙って見送ってしまった。

川   )「すまん、朋美…。
私はまた、朋美の素晴らしさをお祖母様に伝えることが出来なかった…」

道場の板張りの床に、二粒の水滴が落ちた。





.

183 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:46:46 ID:t6mGuhyQ0




5.日常  5人




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184 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:48:58 ID:t6mGuhyQ0

バスが止まり、一番最後に下りてきた少年。
松葉杖を器用に操り、身のこなし軽く下りきった。

('A`)「お疲れ様」

黒い学生鞄を二つ持った俊雄が声をかける。

(´・ω・`)「どうだった?一人でバスは」

その後ろから、本城が不安そうに声をかける。

ξ□゚⊿゚)ξ「バスくらい一人で乗れるわよね」

口調や台詞とは逆に、心配げに見守る朋美。

川 ゚ -゚)「乗る時は朋美と徳永君がそばにいたんだろ?」

そんな朋美を見て苦笑しながら、下りてきた彼に声をかけた久美子。

( ^ω^)「おっおっお。みんな心配し過ぎだお。
小学生じゃないんだし、バスくらい一人で乗れるお」

内藤武士。

退院した彼が学校に戻ってから、一週間が経っていた。



( ^ω^)「やっぱりこの通い方が一番だと思うお。
皆は普段通り自転車。僕はバス。
停留所で待っててもらうのも本当は悪いお」

ξ□゚⊿゚)ξ「もし転んだ時にクッションが必要でしょ」

('A`)「……なあ、クッションっておれの事か?」

ξ□゚⊿゚)ξ「他に誰がいるっていうのよ」

(´・ω・`)「とりあえず、この路線は必ず低床車両を走らせてもらえるよう、
本社には言っておいたよ」

.

185 名も無きAAのようです :2015/08/25(火) 22:51:31 ID:wgEjCwcE0
うううっひょー来てた!やっと追いついたぜ 支援しえん


ってか バスの車種まで変えれるのかショボンの権力wwww

186 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:53:32 ID:t6mGuhyQ0

('A`)「あー。それはいいな」

( ^ω^)「ありがとうだお」

ξ□゚⊿゚)ξ「おぼっちゃまめ。よくやった。褒めてやる」

(´・ω・`)「別に宇佐木さんに褒められてもなー。
ま、いまだに低床車以外の車両を使ってるのが悪いんだけどね」

川 ゚ -゚)「(いくらバスも本城近親の系列会社とは言え、ここら辺はまだ流石に慣れん)」

( ^ω^)「じゃあ、これからもこれでお願いしますですお」

('A`)「おれもバスで楽だと思ったのになー」

( ^ω^)「ドクオはもっと運動しなきゃだめだお」

ξ□゚⊿゚)ξ「学校の行き来くらい、ちゃんと動きなさいあんたは」

('A`)「でもさー」

川 ゚ -゚)「近いとはいえ、毎日となると、乗車賃もそれなりにならないか?」

('A`)「そこはほら、そこの大明神様に」

(´・ω・`)「株主切符はブーンの分しかないから、ドクオは自腹だよ」

('A`)「……自転車か歩くとするか」

ξ□゚⊿゚)ξ「まったくもう」

( ^ω^)「おっおっおっ」

バスの停留所からの道を、楽しそうに歩く五人。

道すがら自転車の者や徒歩の者、学校に向かう生徒達に声をかけられる。

.

187 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:56:11 ID:t6mGuhyQ0

それは八割方内藤に向けての挨拶だったが、
中には宇佐木や本城に向けてされるものもあり、
たった一週間であったがこの五人で固まっていることが、
周囲から普通であることと認識されるようになっていた。

ベクトルは違うが周囲とのコミュニケーションがあまり取れていなかった
俊雄と久美子が声をかけられることも増えていた。

川 ゚ -゚)「不思議なものだな」

('A`)「何が?」

川 ゚ -゚)「いや、五人でいるだけなのに、この一週間で周囲が変わった気がする」

ξ□゚⊿゚)ξ「そう?」

(´・ω・`)「そうだね。
今までだってブーンとドクオと僕の三人で固まっていたけど、
こんな風にはなっていなかった。
この五人で固まりだしてまだ一週間なのに、
何故か昔から一緒にいるように扱われているよ」

('A`)「そういやそうだな」

( ^ω^)「良いことだお。
三人でも楽しかったけど、
五人だともっと楽しいおね。
勉強も教えてもらえるし」

(´・ω・`)「ブーンとドクオは期末テストは大丈夫?」

('A`)

( ^ω^)

(´・ω・`)「ブーンは休み明けだから仕方ないとしても、ドクオ?」

ξ□゚⊿゚)ξ「まったく二人とも」

川 ゚ -゚)「朋美は大丈夫なのか?」

.

188 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 22:58:42 ID:t6mGuhyQ0

ξ□゚⊿゚)ξ「……数学以外は」

川 ゚ -゚)「まったく」

('A`)「学年一位と常に十位以内の二人から見たらおれ達なんて…。
いいんだよ。赤点は取ってないし」

ξ□゚⊿゚)ξ「そ、そうそう。取ってないし」

川 ゚ -゚)「そういう問題じゃない」

(´・ω・`)「来島さんの言うとおりだよ。
うん。決めた。ドクオ、期末の順位が前回より下だったら例の件は無しね」

('A`;)「れ、例の件ってまさか!お、おいショボン、前回って中間?
あれって俺の最高順位だったんだぞ!?」

(´・ω・`)「決定ねー」

('A`;)「い、いや、それはなしだろ。
頼むよマジで」

( ^ω^)「おっおっお。
ドクオなら本気出して頑張れば大丈夫だお。
僕もショボンに教えてもらう予定だし、ドクオも一緒に頑張るお」

('A`;)「……それしかないか…」

ξ□゚⊿゚)ξ「久美子、本城、数学宜しく」

川;゚ -゚)「はいはい」

(´・ω・`)「はいはい」

ξ□゚⊿゚)ξ「で、例の件ってなんなのよ。ドクオ、本城」

( ^ω^)「話してないのかお?」

('A`)「そういやそうだな。
まああんまり広めないほうが良い件だし」

.

189 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:00:21 ID:t6mGuhyQ0

川 ゚ -゚)「なんだ。後ろ暗いことなのか?」

('A`)「ちげーよ!」

( ^ω^)「ドクオが運を使い果たしたんだお」

('A`;)「ブーンお前……。
まあ、おれもそんな気はするけどさ」

ξ□゚⊿゚)ξ?

川 ゚ -゚)?

(´・ω・`)「ゲームの話だよ」

ξ□゚⊿゚)ξ「ゲーム?」

('A`)「ああ。『Sword Art Online』ってゲームの話」





.

190 名も無きAAのようです :2015/08/25(火) 23:01:36 ID:wgEjCwcE0
繋がってきたな 支援

191 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:03:25 ID:t6mGuhyQ0

(´・ω・`)「二人とも、『ナーブギア』は知ってるよね?」

昼休み。
生徒会室の長机でお昼食を取る五人。
それぞれに手作りのお弁当や学食の料理、パンなどを持ち寄っていた

話の流れは、登校時に途中で終わってしまった『ドクオの例の件』についてだった。

川 ゚ -゚)「名前だけは」

ξ□゚⊿゚)ξ「うちにある」

('A`)「!マジか!」

ξ□゚⊿゚)ξ「うん。父さんが持ってる。
私は使ったことないけど」

('A`)「うわー。おじさんマジか」

ξ□-⊿-)ξ「『技術大国ニッポン!』とか言いながら買ってきて、
母さんに怒られてた。あれ10万くらいするのよね?確か。
父さん新しい物好きだからね」

川 ゚ -゚)「アルベルトさんは古きを愛する系かと思ったが。
神社とかよくまわってるよな」

ξ□゚⊿゚)ξ「うん。好きよ。ご朱印帳とかもってるし。
母さんと出会ったのも富士山登りと京都巡りに来たときみたいだしね。
ただ、その前の来日は夏の秋葉原と池袋と中野と国際展示場を巡ってたって話。
入るなって言われてる書斎の一角がロボットのプラモとフィギュアで埋まってるのは、
本人まだ私に知られてないつもりみたい」

川;゚ -゚)「アルベルトさん…」

('A`)「おじさんそっち系だったのか―!!!」

ξ□゚⊿゚)ξ「隠してるつもりだから、そっとしておいてあげて」

.

192 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:05:22 ID:t6mGuhyQ0

川;゚ -゚)「ま、まあそれは置いておいて、で、ナーヴギアがどうしたんだ?」

(´・ω・`)「うん。あれって世界初のバーチャルネットワークゲーム機って触れ込みなんだけど、
じつはまだちゃんとしたRPGゲームって出てないんだよ」

川 ゚ -゚)「確か、ヘルメットみたいなやつを被るとゲームの世界に行けるとか」

('A`)「えらく端折ってるけど間違っては無い」

( ^ω^)「さすがにシステムはいまいちよく分からないおね」

ξ□゚⊿゚)ξ「仮想現実の世界に行けるのよね?
気になるけど、なんか怖い気もする」

川 ゚ -゚)「そうだな。脳神経に直接電気信号を送り込むという話だし」

(; ^ω^)「おっおっ。そういう観点で言うと、確かに怖いかも」

('A`)「おじさんは何やってるんだ?」

ξ□゚⊿゚)ξ「よく分からないけど、剣を振り回してるみたい。
なんか一本道で前からやってくる敵に対してタイミングよく剣を振るとかなんとか。
最初の頃は楽しんでたみたいだけど、最近はやって無いみたいだし」

(´・ω・`)「今売られてるソフトは、そんなのばっかりなんだけど、
今年の10月に発売予定の『Sword Art Online』は、
完全にバーチャルワールド、仮想世界の中に行けるって話しなんだ」

ξ□゚⊿゚)ξ「へー」

川 ゚ -゚)「ふーん」

('A`)「感動薄いなぁおい」

ξ□゚⊿゚)ξ「だってよく分かんないしー。
で、その『ソードアートオンライン』ってのが発売されて、なんだっての?
買うってだけでしょ」

.

193 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:07:09 ID:t6mGuhyQ0

('A`)「ほとんどのゲームでは、
一般発売前にバグとか不具合が無いかテストがされる」

( ^ω^)「実際にプレイしてみないと不具合とかが分からないことがあるんだお」

川 ゚ -゚)「全プレイヤーが製作者の思惑通りに動く訳じゃないだろうしな」

( ^ω^)「だおだお」

('A`)「普通の家庭用ゲームだと、お金で雇ったテストプレイヤーにやらせたりする。
ゲームセンターのなんかは、ロケーションテスト、『ロケテ』なんて呼ばれる方式で、
正式稼働前に幾つかの店舗に先行で置いてみて、一般の人に遊んでもらったりする。
で、今度発売されるRPGゲームは、MMORPG。
そしてヴァーチャルワールドで行われるからVRMMORPG。
『Virtual Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game』なんだよ!
つまり、仮想現実の中にそれぞれにちゃんと人格を持ったプレイヤーが生活を出来る、
世界初の超すごいゲームなんだ!」

(; ^ω^)(はいっちゃったお)

ξ□゚⊿゚)ξ(あー。こういうこいつ、久しぶりに見た)

川 ゚ -゚)(爽やか……ではないな。お祖母様に会わせてよいのだろうか)

(´・ω・`)(話が脱線してるなー。この後戻るのかなー)

('A`*)「で、だ。
通常のMMORPGも、正式稼働する前には一般のプレイヤーを公募して、
テストプレイをしてもらうことがほとんどなんだけど、
今回の『Sword Art Online』でもテストプレイヤーの募集がされたんだよ!
そして、なんと、それに!!!」

川 ゚ -゚)「当たったわけだ」

ξ□゚⊿゚)ξ「それでそんなにテンションが高いわけね」

('A`*)「そおゆうことー!!
でへでへでへでへでへでへ」

.

194 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:08:50 ID:t6mGuhyQ0

ξ□゚⊿゚)ξ「変な笑い方するな」

( ^ω^)「真っ先に病室に来て大騒ぎだお。
あとでおばさんに怒られてたけど」

(´・ω・`)「ほんとだよ。まったく」

('A`*)「でへ。でへ。でへ。だってさー」

川 ゚ -゚)(お祖母様に会わせるのは無しだな)

ξ□゚⊿゚)ξ「何人くらいの?そのテストプレイヤーって」

('A`*)「1000人!」

川 ゚ -゚)「多いのか少ないのかよく分からないが……」

('A`*)「公式発表はされてないけど、多分十万近く応募があったんじゃないかってネットの噂」

ξ□゚⊿゚)ξ「あー。それで運を使い果たしたと」

('A`*)「良いんだ良いんだー。
テストプレイヤーは優先的にゲームを購入できるって言うし、
今までの不運もこれで帳消しなんだー」

ξ□゚⊿゚)ξ「はいはい」

川 ゚ -゚)(会った時のお祖母様の顔を見てみたい気もする)

( ^ω^)「お?みんな買えるんじゃないのかお?」

('A`*)「あれ?ブーン知らなかいのか?
初期ロットは1万本なんだよ。
だから予約も抽選がほとんどだし、
入荷するところで予約を取らない店なんかには、
予約できなかった奴らが数日前から並ぶだろうな」

.

195 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:10:13 ID:t6mGuhyQ0

川 ゚ -゚)「それだけ注目されているのなら、もっと販売してもよさそうだが」

(´・ω・`)「なんといっても世界初だからね。
バーチャルワールドで何が起こるか分からないから、
システムや運営会社側で充分対応できるであろうギリギリ最大人数ってところじゃないのかな」

川 ゚ -゚)「なるほど。それならばまあ納得できる」

ξ□゚⊿゚)ξ「とりあえずあんたのテンションが高くなったのは分かった」

川 ゚ -゚)「そのゲームでは、こちらでは使えない魔法とかが使えるのか?」

('A`*)「いや、『Sword Art Online』って名前の通り『剣』を中心とした武器での戦闘がメインで、
魔法とか銃とかは無い」

ξ□゚⊿゚)ξ「じゃあ空を飛べるとか」

('A`*)「いや、スキルやレベルを上げれば速く走れたり動けたりは出来るだろうけど、
空は飛べないはず。何と言っても、『Sword Art Online』だからな!」

ξ□゚⊿゚)ξ

川 ゚ -゚)

('A`*)「ん?」

ξ□゚⊿゚)ξ

川 ゚ -゚)

('A`*)「どうした?」

ξ□゚⊿゚)ξ「それ、何が面白いの?」
川 ゚ -゚)「それのどこが楽しいんだ?」

('A`)「え?」

.

196 名も無きAAのようです :2015/08/25(火) 23:11:23 ID:wgEjCwcE0
ドックンェ・・・・・

197 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:11:46 ID:t6mGuhyQ0

ξ□゚⊿゚)ξ「だって別にこの世界とやれることは一緒なわけよね」

川 ゚ -゚)「ゲームの世界と言うと、空を飛べたり魔法を使えたりといった、
非日常が楽しいと言うところもあると思うんだが」

('A`)「ほ、ほら、怪物を倒したりとか」

ξ□゚⊿゚)ξ「そんなに戦いたいの?」

('A`)「……剣で真剣勝負とか……」

川 ゚ -゚)「刀を振り回したいのか?
居合の道場でも紹介するぞ?」

('A`)「うう……」

(; ^ω^)「と、とりあえず世界初のゲームだお。
ヴァーチャルワールドだお!
す、すごいお!」

('A`)「だ、だよな!そうなんだよ!」

ξ□゚⊿゚)ξ

川 ゚ -゚)

('A`)「……技術大国ニッポンってことなんだよ」

ξ□゚⊿゚)ξ「ま、別に良いんだけどね。
それであんたは、本城と何の約束をしてるわけ」

('A`)「あーーー。
実は、まだおれナーヴギア持ってないんだよ」

ξ□゚⊿゚)ξ「はあ?なにそれ」

('A`)「で、ショボンに貸してもらおうかなって。
いや、バイトはしてるんだぜ。うちの高校別に禁止されてないし。
でもまだ半分くらいしか溜まって無くて……」

.

198 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:14:25 ID:t6mGuhyQ0

ξ□゚⊿゚)ξ「まったく…」

川 ゚ -゚)「本城も持ってるんだな」

(´・ω・`)「病院に4台」

ξ□゚⊿゚)ξ「は?病院に?」

川 ゚ -゚)「しかも4台も?」

(´・ω・`)「父さんがね。研究の一環として」

ξ□゚⊿゚)ξ「何の研究よ」

(´・ω・`)「もしさ、目の見えない人がバーチャルワールドに行ったらどうなると思う?」

ξ□゚⊿゚)ξ!

川 ゚ -゚)!

(´・ω・`)「ナーブギアは、脳神経に直接信号を送り込む。
脳の働きに問題があって目が見えない人はダメかもしれないけど、
目の働き、網膜や視神経に問題がある人なら、
バーチャルワールドでならその世界を『みる』ことが出来るかも知れない」

川 ゚ -゚)「それは……」

(´・ω・`)「同じように、喋ることが出来ない人、耳が聞こえない人、においが分からない人。
そういった障害のある人が、一般的な『普通』を体験できるかもしれない。
あと、バーチャルワールドではアバター、
つまり仮の自分を作って、その中に自分が入り込む。
ならば、手の無い人、足の無い人がはいったら、どうなるか。
あと、手足はあるけど麻痺してしまっている人。
そんな人がバーチャルワールドでならば……
さらに言うと、原因不明で身体の筋肉を動かすことが出来ない人が、
バーチャルで動かす事が出来るようになれば、
現実世界にも何かしらの影響を与えるかも知れない」

.

199 名も無きAAのようです :2015/08/25(火) 23:14:32 ID:ySj3KyP6O
初遭遇。支援

200 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:17:00 ID:t6mGuhyQ0

穏やかに話すショボンの言葉に衝撃を隠せない宇佐木と来島。

徳永と内藤は先に聞いていたのか、頷きながら話を聞いていた。

( ^ω^)「ショボンのおじさんは凄いお―」

('A`)「おれなんかはただヴァーチャルワールドすごいって思ってただけだ」

(´・ω・`)「父さんはもともとそちら系の研究をしてたから。
今だって専門は脳神経外科だし。
婿入りする時の条件が『研究を続けること』だったのに、
いつのまにか院長にさせられたって時々ぼやいてる」

ξ□゚⊿゚)ξ「……なんか、色々とびっくり」

川 ゚ -゚)「ただのゲーム機だと思っていたが、少し興味が出た」

ξ□゚⊿゚)ξ「……父さんに貸してもらおうかな」

川 ゚ -゚)「感想を教えてくれ」

ξ□゚⊿゚)ξ「うん」

(´・ω・`)「他にも色々と可能性はあるって言っていたよ。
他の医者とか研究者の方とも連絡を取っているって言っていた」

川 ゚ -゚)「しかし、それだけの可能性があるというのなら、
そのナーヴギアの製造会社とも連絡を取ったほうが良いのではないか?」

ξ□゚⊿゚)ξ「それもそうね。医療機器としての、技術提供とか」

(´・ω・`)「あー。まあねー。
ま、皆には良いかな」

.

201 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:20:01 ID:t6mGuhyQ0

('A`)?

( ^ω^)「お?」

ξ□゚⊿゚)ξ「なに」

川 ゚ -゚)

(´・ω・`)「実は、僕はナーブギアのテストプレイヤーなんだ」

('A`;)「はあああああああああああああああああ?」

( ^ω^)「おお?」

ξ□゚⊿゚)ξ「え?」

川;゚ -゚)「なんだと?」

(´・ω・`)「父さんがいた研究室とつながりのある研究室に、
ナーブギアの設計者がいたらしくてさ。
で、ナーブギアの製作に際してつながりのある研究者に声がかけられたんだって。
ただお金も人脈も動かせる教授陣は新しい技術にちょっと反目してたらしくてね、
その中である程度のお金も人脈も持っていて、
更に同じような研究をしてたってことで父さんに白羽の矢が立ったみたい。
まぁテストプレイヤーって言っても、
技術はほぼ確立した後のテストタイプとプロトタイプを病院に設置して、
要請があった時に何人かのスタッフと一緒に仮想世界に行ったりしたくらいだけどね」

('A`;)「はあ……」

(; ^ω^)「それだけでも充分すごいお」

(´・ω・`)「守秘義務契約を結んでいたから言えなかったんだ。ごめんね」

川 ゚ -゚)「本城のお父上と言うことは、
地方とは言え運輸、エネルギー、不動産等を手広く抱えた『マシログループ』の一角。
中央政界にもグループの息のかかった大臣や議員も何人かいるわけだし、
コンタクトを取っておいて損は無い」

.

202 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:23:07 ID:t6mGuhyQ0

ξ;□゚⊿゚)ξ「なにその大人な発言。
っていうか、もうどこに驚いて突っ込めばいいやら」

(; ^ω^)「来島さんも詳しくてびっくりだお」

川 ゚ -゚)「あ、いや、その……」

(´・ω・`)「来島家はお殿様に仕えていた名門家だからね。
領土の商業にも目を光らせていて当然だよ」

川;゚ -゚)「べ、べつにそういうわけでは」

( ^ω^)「なるほどだお」

川;゚ -゚)「な、内藤!?」

(´・ω・`)「あと知っていると思うけど、
来島さんのお祖父さんは常林学園の初代理事長だし、
今の理事長である来宮さんとも血縁にある」

ξ;□゚⊿゚)ξ「知らなかった。
あんた、本物のお嬢様だったのね。
家が大きいのは知ってたけど」

( ^ω^)「来島さんは凛とした雰囲気があって和風お嬢様だおね」

('A`)オジョウサマダッタンデスネ

川;゚ -゚)「い、いや私は別に」

ξ;□゚⊿゚)ξ「お嬢様なのに百円のおにぎりと百十円のかけそばで悩むとか。
は!お嬢様なのに立ち食いそば屋に入るなんて!
しかも常連で顔覚えられてて蕎麦に揚げ玉サービスしてもらうとか。
あ、でも確かに茶道部で着物着た時の立ち振る舞いは流石だった!
草履で階段二段飛ばししても裾乱れなかったし!
中庭に舞った袱紗を取りに走った時も見事な裾捌きだった!」

川;゚ -゚)「ちょ、おま、朋美!?」

.

203 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:25:23 ID:t6mGuhyQ0

(´・ω・`)「微妙にバカにしてない?」

(; ^ω^)「だおだお」

('A`)デモオジョウサマナノハカワラナイヨネ

ξ;□゚⊿゚)ξ「そして何より男の趣味が悪…うぐぅぐぅううぅうぐ」

川#゚ -゚)「とーもーみー。変なことを言うのはこの口かな?」

音も無く宇佐木の背後に移動した来島が、両手で宇佐木の口を塞いだ。

川#゚ -゚)「ともみさん?」

ξ□;⊿゚)ξ「っ……ぃ、ぃki……」

(; ^ω^)「く、来島さん、それくらいで……」

内藤が立ち上がろうとしたが、来島はその前に手を離した。

川 ゚ -゚)「まったく」

ξ;□゚⊿゚)ξ「ぜぇ…ぜぇ…あんたねぇ…」

川 ゚ -゚)「それで、徳永はゲームをやるために毎回病院に行くのか?」

ξ□゚⊿゚)ξ(強引に話をずらしやがった)

('A`)ウ、ウン。ソノツモリナンダ。

(; ^ω^)(お嬢様と知ってドクオの人見知りが復活してた)

川 ゚ -゚)「しかし、それでは病院に迷惑がかかるのではないか?」

ξ□゚⊿゚)ξ「あと、バイトもするんでしょ?夏休み。
そのテストプレイする期間がどれくらいか知らないけど、
ちゃんと発売したら自分の家でやるんだったらナーヴギア買わないと。
そんなことしててお金溜まるの?」

.

204 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:27:50 ID:t6mGuhyQ0

('A`)「それはその……」

ちらっと本城を横目で見る徳永。
本城はその視線を受け、黙って頷いた。

('A`)「実は、ゲームの最中はショボンの親父さんの手伝いってことで、
報酬が出ることになってるんだ」

ξ□゚⊿゚)ξ「はあ?」

川;゚ -゚)「それは流石に公私混同と言うか、まずいんじゃないか?」

(´・ω・`)「『Sword Art Online』は世界初のVRMMORPG。
おそらくは、今までとは比べ物にならない人達が、
今までとは比べ物にならないくらい長時間ゲームの世界に入っていると思う。
それが、身体にどんな影響を与えるかっていうのは、まだしっかりとは分からない。
で、ドクオは廃人ゲーマーだからね」

('A`)「おいショボン。おれはまだそこまでじゃないぞ」

(´・ω・`)「だから、父さんもいろいろ知りたいみたいだったからさ。
仲介したんだよ。ドクオの身体の変化を調べてみないかって」

('A`)「スルーするなこら」

ξ□゚⊿゚)ξ「身体の」

川 ゚ -゚)「変化?」

(´・ω・`)「そう。身体の変化。状態。
ゲームの中でしている経験が、身体にどんな影響をもたらしているか。
ゲームの最中は、脳波・心電図は勿論のこと、
筋肉に伝わる電気信号も調べられるように、
身体に無数の配線が繋がれる。
更に中での経験との連動も見る為に、
中で何をしたか時系列でのレポートも提出してもらうし、
ゲーム前後での状態確認の為に採血なんかもしてもらう」

.

205 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:29:32 ID:t6mGuhyQ0

('A`)「採血はきついよなー」

( ^ω^)「おっおっおっ。採血も点滴も痛くなかったお」

(´・ω・`)「それにドクオのおばさんも看護師でうちにいるからね。
ドクオが入る時にはおばさんにはそっちも見てもらうようにするから、
そこら辺も安心で丸く収まってるんだよ」

ξ□゚⊿゚)ξ「ドクオに危険は無いのね?」

(´・ω・`)「もしゲームプレイ中に危険な兆候が表れたら、即座に電源を切ることになっている」

ξ□゚⊿゚)ξ「そう……。
本人達が了承してるなら外野がとやかくいう事じゃないわね」

川 ゚ -゚)「本当に朋美は素直じゃないな」

ξ□゚⊿゚)ξ「……なによ」

川 ゚ -゚)「徳永の事が心配なら、そう言えばいいのに」

ξ;□゚⊿゚)ξ「な、何を言ってるノよ!」

( ^ω^)「おっおっお。ツンが優しいのは、僕もドクオも知ってるお」

ξ;□゚⊿゚)ξ「ちょ、ブーンまで何言ってるの!
私ガこんな地球外生命体のコトをしんぱいナンテするわけないでしょ!」

('A`)「あーはいはい」

川 ゚ -゚)「照れ屋さんめ」

( ^ω^)「そういうところも良いところだお」

ξ*□゚⊿゚)ξ「ぶ、ぶぶぶ、bu―ンまで、何を!」

('A`)(ツンに対しては天然ジゴロなんだよな)

川 ゚ -゚)(さっさと付き合えば良いのに)

.

206 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:31:06 ID:t6mGuhyQ0

ξ*□゚⊿゚)ξ「も、もう、ほんとにばかなんだから」

( ^ω^)「おっおっお。ごめんだおー」

ξ□゚⊿゚)ξ「そ、それで、結局バイトってことなのね」

('A`)「あーまあそれがその」

(´・ω・`)「バイトってしちゃうと人体実験みたいになっちゃうから、
基本は協力者って名目で、ボランティア。
ただ、協力ありがとうってことで、テストプレイが終了したら、ナーブギアをプレゼントする予定」

ξ;□゚⊿゚)ξ「本当に悪知恵が働くわね」

川;゚ -゚)「まったくだ」

(´・ω・`)「ギブアンドテイクだよ」

('A`)「そうそう」

( ^ω^)「楽しみだおね。『ソード・アート・オンライン』。
感想聞かせてほしいお」

('A`)「もちろん!
毎日話すぞ!」

ξ;□゚⊿゚)ξ「そんなのの何が良いんやら…」

川 ゚ -゚)「まったくだ」

(´・ω・`)「まあまあ」

まだ見ぬゲームに対して盛り上がる二人とそれを見て呆れる二人。
本城は一人、そんな四人を見て笑顔を見せた。




.

207 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:35:11 ID:t6mGuhyQ0




6.夏の空  男三人



.

208 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:36:30 ID:t6mGuhyQ0

前方に見える白い建物。
その後方には突き抜けるような青い空。
そして白い雲。
夏の日差しが、降り注ぐ。

('A`)「あちい……八月ももう終わるっちゅーのに何だこの暑さは」

自転車を引っ張って歩道を歩く徳永。
周囲の芝生には、患者らしき人やそのお見舞いに来たであろう人達が、何人もいた。

('A`)「良い病院なんだろうけど……。
庭がもうちょっと狭いと良い」

ぼたぼたと落ちる汗を気休めに拭うと、後ろから声をかけられた。

( ^ω^)「ドクオー!」

振り返ると、親友の顔。

('A`)「うぃーっす」

( ^ω^)「だおー」

走り出そうとした内藤が、顔をしかめて歩きながら手を振った。

('A`)「まだ痛いのか?」

( ^ω^)「普通に歩くのは問題ないお。
でも走るのはまだちょっと違和感があるんだお」

('A`)「そっか……」

追いついた内藤が促し、病棟に向かう二人。

('A`)「今日も検査か?」

( ^ω^)「だお。ちょっと早く着いちゃったからそこのベンチでドーナツ食べてたら、
ドクオを見付けたんだお」

.

209 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:38:13 ID:t6mGuhyQ0

('A`)「おまえ、最近太ってないか?」

( ^ω^)「お?そ、そんなことは……」

('A`)「ブーン?」

(; ^ω^)「ちょ、ちょっと」

('A`)「今までは食べた分全部走ってたから良かったけど、
今は走れないんだから、気を付けろよ」

(; ^ω^)「ツンにも言われたけど、難しいんだお」

('A`)「冬に向けて肥えるぞー」

( ^ω^)「大丈夫だお。気を付けるから」

('A`)「ま、俺から見れば太れて羨ましいけどよ」

( ^ω^)「ドクオは食べられないおね」

('A`)「飯は食べるけど、あんまり量がな。
こってりした物はそれほど得意じゃないし」

( ^ω^)「カルビとか美味しいのに」

('A`)「タンが良い」

( ^ω^)「お肉は何でも美味しいおね」

('A`)「結局そこに辿り着くのか」

( ^ω^)「お魚もお野菜も果物も美味しいお」

('A`)「お前なんでも食べるからなー」

( ^ω^)「カレーもシチューも味噌汁もお豆腐も牛乳もチーズも!」

.

210 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:39:44 ID:t6mGuhyQ0

('A`)「はいはい」

( ^ω^)「白米もパンもナンも……」

('A`)「あ、納豆」

(; ^ω^)「ごめんなさい」

('A`)「おいしいのに」

(´・ω・`)「ブーンはにおいの強い物が苦手だよね」

('A`;)「うを!」

(; ^ω^)「おおっ!」

(´・ω・`)「こんにちは二人とも。
どうしたのそんなに驚いて」

病院の入り口の前までたどり着いた二人。
自動ドアの少し前で後ろから話しかけられ、慌てて振り向いていた。

('A`)「だから急に話しかけるなと何度も言ってるだろうが!」

(; ^ω^)「びっくりしたお」

(´・ω・`)「二人とも気付かないんだもん」

すねたような顔を見せる本城。

('A`)「いつからいやがった?」

(´・ω・`)「ん?『( ^ω^)「カルビとか美味しいのに」』の時くらいかな」

(; ^ω^)「ほどほどに前だお」

(´・ω・`)「さっさ、中に入った中に入った暑い暑い」

('A`)「誰のせいで止まってたと思ってるんだこの野郎」

.

211 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:41:15 ID:t6mGuhyQ0

本城に促され、病院の中に入った三人。
柔らかな冷気が身体を迎えてくれ、表情を和らげる三人。

( ^ω^)「涼しいおねー」

(´・ω・`)「中で待ってればよかったのに。
飲食可能の待合スペースだってあるんだから」

( ^ω^)「おー。なんとなく外で食べるのもいいかと思ったんだお」

('A`)「最近は、涼しい風が吹くこともあるけど、木陰とはいえまだ暑かっただろー」

( ^ω^)「そうでもなかったお」

(´・ω・`)「なら良いけど」

( ^ω^)「お。そろそろ予約時間だから行くお。
今日は二人ともどうするんだお?」

('A`)「おれはかーちゃんの終わり時間までSAO」

(´・ω・`)「診察が終わる頃に来るよ。
宿題、まだ終わってないでしょ?教えるよ」

( ^ω^)「ありがとうだお!」

(´・ω・`)「ドクオはどうする?」

('A`)「…………理性が勝てたら二時間くらい早く現実に戻る」

(; ^ω^)「が、がんばれ」

(´・ω・`)「まったく」





.

212 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:42:55 ID:t6mGuhyQ0



内藤が所定の検査室に向かい、本城と徳永は研究室へと向かう。

研究室エリアは通常のエリアと少し隔離されているため、
専用カードキーが無いと入ることは出来ない様になっていた。

('A`)「こんにちはー」

「俊雄君こんにちはー」

(´・ω・`)「こんにちはー。おじゃましまーす」

「あら祥大ぼっちゃん。こんにちは」

何人かいる職員にあいさつをしつつエリアに入る二人。
ほとんど人のいない廊下を、並んで歩いた。

('A`)「ブーンの足、まだ悪いのか?」

(´・ω・`)「外科的には完治してるって。
もちろん筋肉は落ちたけど、骨とか神経には異常は認められないって」

('A`)「でも、違和感があるって言ってたぞ」

(´・ω・`)「そう言ってるね。僕達には」

('A`)「?」

(´・ω・`)「担当医には、痛みがあるって言ってる」

('A`)「マジか」

(´・ω・`)「ぼくらには心配かけたくなくて『違和感』って言っているんだと思うけど、
医者には流石にちゃんと言ってるよ」

('A`)「だけど、異常は見当たらないんだろ?」

(´・ω・`)「うん。もしかすると、身体が痛みを記憶しているんじゃないかって言ってた」

.

213 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:44:20 ID:t6mGuhyQ0

('A`)「身体が痛みを記憶?」

(´・ω・`)「時々あるらしい。
例えば怪我とか病気で右足を曲げると痛みが走る状態が続いたとするよね」

('A`)「ああ」

(´・ω・`)「それで怪我や病気が完治しても、身体は
『右足を曲げると痛みが走る』という事象と結果だけを覚えていて、
怪我や病気と言う原因が無くなっても、
『右足を曲げる』という事象が起きると、『痛み』という結果が引き起こすことがあるんだって」

('A`)「ブーンもそれだって?」

(´・ω・`)「分からない。
でも原因としては考えられるから、
今月を待っても痛みがひかないようなら麻酔治療も始めるって言ってた」

('A`)「そうか……。
なんか、あんまよく分かってないけど、ちゃんと治ってくれると良いな」

(´・ω・`)「うん。だね」

廊下を進む二人。

('A`)「……聞かないのか?」

(´・ω・`)「聞かない」

('A`)「聞けよ」

(´・ω・`)「懲りたから良い」

('A`*)「ホントに楽しいんだよー。
誰かに話したいんだよー」

(´・ω・`)「だから父さんもレポートだけで良いって言い出したのか」

.

214 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:45:51 ID:t6mGuhyQ0

('A`*)「いやもうマジで楽しくってさ!!
こっちに戻ってきてもあの世界でのことしか考えられなくって!!」

(´・ω・`)「もーうーあーきーた」

('A`*)「そんなこと言わないで聞いてくれよー。
やっかまれるからゲームの知り合いとかにも話せないしさー」

(´・ω・`)「ちゃんと宿題終わらせなよ」

('A`)「いきなり現実に戻すなよ」

(´・ω・`)「はいはい。着いたよ」

('A`)「ん、じゃあまたな」

(´・ω・`)「あとでねー」

('A`)「……おれの理性が勝つことを祈っていてくれ」

大き目のドアの前で立ち止まる二人。
引きつった笑顔を見せた徳永が、広く横に開く扉を開けて、部屋に入っていった。

そして音も無く閉まるドア。

『ナーブギアのお部屋』

おそらくは自分の父親が書いたであろう、
妙に丸っこい文字で書かれたそれが扉に張り付けられているのを見て、
本城はため息をついた。





.

215 ◆dKWWLKB7io :2015/08/25(火) 23:48:14 ID:t6mGuhyQ0

以上、本日の投下は終了します。

乙と支援、ありがとうございます。

明日もこんな感じで投下できれば、
18話の投下は明日で終了できるかと思います。

ではではまた。
.

216 名も無きAAのようです :2015/08/25(火) 23:54:44 ID:2EsCa3H.0
乙した
記憶かーなるほどな

217 名も無きAAのようです :2015/08/25(火) 23:55:36 ID:wgEjCwcE0
これ読み始めてからアニメ見たけどこっちの方が断然面白かった 絶対に完結までたのむ



乙でした

218 名も無きAAのようです :2015/08/26(水) 01:01:24 ID:w/FqJz7M0
乙乙

219 名も無きAAのようです :2015/08/26(水) 22:57:24 ID:IGWp5MVw0
現実パートも面白いけど「朋美」の違和感が半端ない

220 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 22:58:51 ID:NghVfPoA0
それでは、投下を始めます。

今日もよろしくお願いします。

.

221 名も無きAAのようです :2015/08/26(水) 23:01:29 ID:lzcLA2H2O
宜しく御願い致します!

222 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:03:43 ID:NghVfPoA0




7.はじまりへの一歩   五人




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223 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:05:34 ID:NghVfPoA0

(´・ω・`)「結局ここで食べるのが恒例になったよね」

常林学園美ノ付高等学校生徒会室。

夏休みも開け、通常の授業が始まっていた。

内藤は夏休み中に支え無しで歩けるまでに回復していたが、
原因不明の痛みがあり、走ることは出来ないでいた。

そして、今日も五人は生徒会室で昼食をとっていた。

( ^ω^)「ゆっくりできるおねー」

川 ゚ -゚)「うむ。五人で食事するのは楽しいからな」

ξ□゚⊿゚)ξ「あら、久美子からそんな言葉が聞けるなんて」

川 ゚ -゚)「どういう意味だ?ん?」

ξ□゚⊿゚)ξ「友達絡みでそんな素直なことを言うなんて、珍しいなって思っただけよ。
自分でもそう思わない?」

川 ゚ -゚)「……うむ。そういえばそうだな」

( ^ω^)「僕もみんなと食べれて嬉しいお」

('A`)「みんなと?」

(´・ω・`)「みんなと?」

川 ゚ -゚)「みんなと?」

チラチラと内藤と宇佐木の顔を交互に見る三人。

(* ^ω^)「み、みんなとだお」

ξ*□゚⊿゚)ξ「な、なんで私の顔を見るのよ」

.

224 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:07:33 ID:NghVfPoA0

('A`)「そういう事にしておいてやるか」

(´・ω・`)「しょうがないねぇ」

川 ゚ -゚)「まったく世話の焼ける二人だ」

ξ*□゚⊿゚)ξ「な、何を言ってるのよ三人とも!」

(* ^ω^)「おっお」

それぞれに繋がりがあったとはいえ、
五人は各々が各々に対して気の置けない関係になりつつあった。

川 ゚ -゚)「徳永は、まだあのゲームはやってるのか?」

('A`*)「SAOの事か?ああやってるぜ!この前もさぁ!」

川;゚ -゚)「あ、いや、感想は別に良いんだが」

('A`*)「そんなこと言わないで聞けよー。
この前フロアボス戦にも参加したんだけどさ!」

(´・ω・`)「捕まったね」

(; ^ω^)「捕まったおね」

ξ□゚⊿゚)ξ「久美子も迂闊ねー」

('A`*)「ラストアタックボーナスは取られちゃったんだけどさ、良いとこまでいったんだ!」

川;゚ -゚)「う、うむ」

(; ^ω^)「助けなくていいのかお?」

ξ□゚⊿゚)ξ「この前私が捕まった時に15分くらい助けてくれなかったから、15分は放置」

(´・ω・`)「おやおや」

ξ□゚⊿゚)ξ「しかし飽きないわね」

.

225 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:10:00 ID:NghVfPoA0

(´・ω・`)「さすがに学校はじまったから毎日は来てないけど、
平日でも二日に一回は来てるし、土日は朝から晩までいるよ。
夏休みはおばさんとも相談して、夜通しやったりもした」

ξ;□゚⊿゚)ξ「はーーーー。たかがゲームにね」

( ^ω^)「でも、ドクオの話を聞いてると楽しいのは伝わってくるお」

(´・ω・`)「本人が心底楽しんでいるからね」

ξ□゚⊿゚)ξ「それ、発売はいつだっけ」

(´・ω・`)「ソフトの発売は10月の末。
ゲームの正式サービス開始は11月だったはず」

ξ□゚⊿゚)ξ「……いくら?」

(´・ω・`)「ソフト単品で4万円。
ナーブギアと同梱で、13万位だったかな」

ξ;□゚⊿゚)ξ「たかっ!
あいつ買えるの?そんなの」

(´・ω・`)「前のバイトで、ソフトの金額は充分あるって。
ナーブギアはテストプレイが終わり次第、一台プレゼントするから」

ξ□゚⊿゚)ξ「たかがゲームにそんな値段ねぇ……」

('A`*)「でさ、でさ、その街でさ……」

川;゚ -゚)「(たーすーけーてー)」

ξ□゚⊿゚)ξ「そろそろ助けてやるか。ブーン、お願い」

( ^ω^)「ドクオ、次の英語の予習はしてあるのかお?」

('A`*)「え?なに?」

( ^ω^)「次の英語、確か当てられる順番だおね」

.

226 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:11:29 ID:NghVfPoA0

('A`)「え?あ?そうだっけ?」

( ^ω^)「そうだお」

('A`)「……やってない……。ショボンさん、お願いします……」

(´・ω・`)「ちゃんと授業受けて勉強しないと、テストプレイも終了だよ」

('A`)「ちゃんとやるから教えてくれ」

(´・ω・`)「はいはい」

棚から教科書を出した本城。

(´・ω・`)「いまどこ?」

('A`)「確か、キャリーとジョンが痴話げんかしてるところ」

ξ□゚⊿゚)ξ「どんな教科書よ」

(´・ω・`)「ドクオ?」

('A`)「……何ページだっけ」

差し出された教科書をめくる徳永。
呆れた顔でその姿を見る四人の視線を気にすることなく、
前回の授業のページを見付けた。

そして本城に促され、長机の端に二人で移動する。

そんな二人をニコニコ見ていた内藤が、宇佐木と来島に話しかけた。

( ^ω^)「ツンと来島さんはSAOに興味ないのかお?」

ξ□゚⊿゚)ξ「んー。無いと言えば嘘になる。なんか色々凄そうじゃない」

( ^ω^)「お?」

.

227 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:16:21 ID:NghVfPoA0

川 ゚ -゚)「ここにきて普通のニュース番組でも取り上げられ始めたからな。
昨日も見たが、あの映像は確かにすごかった」

( ^ω^)「だおね」

ξ□゚⊿゚)ξ「でも予約の抽選はもうどこも締め切ってるみたいだし、
一般で買おうと思ったら、多分前日の夜とか、
その前から並ばないと駄目そうな雰囲気だし」

川 ゚ -゚)「待ってればすぐ買えて安売りも始めるどっかの電話と違い、
当分は追加販売はしないと告知しているようだからな。
転売をする奴も含めて、熾烈な争いになりそうだ」

ξ□゚⊿゚)ξ「そこまではねー。
それに、私の家には父さんの買ったナーヴギアがあるけど」

川 ゚ -゚)「私は持ってないからな」

( ^ω^)「ネット環境はあるんだおね?」

川 ゚ -゚)「古い日本家屋だが、流石にそこら辺は完備している。
父や母ともそっちで連絡を取っているからな」

( ^ω^)「おっお。そうだおね」

ξ□゚⊿゚)ξ「で、ブーンは買うの?
あんただってナーヴギア持ってないでしょ?」

( ^ω^)「おーそれなんだけど……」

(´・ω・`)「来年の春に、ナーブギアがマイナーチェンジするんだって」

本城が、三人の会話に突然参加する。
英語の教科書を指さしているが、頭半分で会話を聞いていたらしい。
教わっていた徳永は全く何の話をしていたか聞いていなかったようであるが。

川 ゚ -゚)「マイナーチェンジ?」

.

228 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:18:30 ID:NghVfPoA0

(´・ω・`)「今の時点でも価格を抑えるための工夫はされているんだけど、
更に無駄を省いて価格を安くするんだって。
廉価版とでもいうのかな。
もちろん安全面では今よりさらに厳しくするみたいだけどね。
内部バッテリーを低容量化するとか、機能は変えずにそれ以外を色々変えるみたい。
で、値段を三分の二以下に抑えて、普及率を更に増やすのが狙いなんじゃないかな。
あれは一人一台なうえにあの値段だからなかなかね。
さらにそれに合わせてSAOもプレーヤー人数を追加できるようにする予定みたい。
その頃には別のゲームも出るんじゃないかな」

ξ□゚⊿゚)ξ「ふーん」

川 ゚ -゚)「三分の二か……。
手は出しやすくなるかもしれんが……」

(´・ω・`)「で、うちには僕がテスターとして使ってたテストタイプ,プロトタイプ以外に、
汎用型、つまり今流通してるのと同じタイプが4台あるんだけど、
汎用型の内の2台は、そっちに変えて違いを確認する予定なんだ。
今年の冬には病院に入る予定」

('A`)「え?なんの話?」

(´・ω・`)「ドクオは英語」

('A`)「はい……」

(´・ω・`)「だから、あげることは出来ないけど、
早ければ今年の冬、遅くとも来年の春までには貸し出しは出来る」

川 ゚ -゚)!

( ^ω^)「それを貸してもらうつもりなんだお。
だから僕もSAOをはじめようかなーと思ってるんだお」

川 ゚ -゚)「それは確かに魅力的だが……」

ξ□゚⊿゚)ξ「ソフトは手に入るわけ?
さっきも言ったけど、抽選はもう終わってるみたいよ?
まさか並ぶつもりじゃ……」

.

229 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:20:47 ID:NghVfPoA0

( ^ω^)「おっおっお」

(´・ω・`)「世界初の『VRMMORPG』。
初期ロットナンバリングされている1万本以外にも、
テレビ、出版社といったマスメディアはもちろん、
政府、研究機関、関係協力企業等にはサンプルとしてソフトはばらまかれる。
もちろんナンバリングはされてると思うけど、一般発売物とは別ナンバーじゃないかな」

ξ□゚⊿゚)ξ「あ」

川 ゚ -゚)「ふむ」

( ^ω^)「おっおっ」

(´・ω・`)「そ。僕はナーブギアのテストプレイヤーだし、
父さんはその研究や開発に一役かっている。
ということでうちも申請しておいたから、
研究所用、テストプレーヤー用で3本は送られてくる予定。
それで、あと2本くらいなら頼んでおけば貰えるかもしれないし、
父さんの伝手でその他の研究所とかから分けてもらえるかもしれない。
テストプレイヤーはやりたがるかもしれないけど、
研究機関とかはゲーム自体には興味ない所も多いだろうからね」

ξ□゚⊿゚)ξ「このぼんぼんめ」

(;´・ω・`)「え?今の話ってそこに流れ着くの?」

川 ゚ -゚)「流れ着くな。うむ。本城のせいではないが」

( ^ω^)「でもそのおかげでSAOを遊べるかもだお」

ξ□゚⊿゚)ξ「まあね。でも、それならやってもいいかな。
ただであの世界を体感できるのは魅力があるし。
久美子はどうする?」

川 ゚ -゚)「私も気にはなっているからやってはみたいが……。
本当に良いのか?ものすごく良い話過ぎる気がするのだが」

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230 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:22:53 ID:NghVfPoA0

(´・ω・`)「貸すのもタダだし、無料で配られるソフトだから、あげるのも別にかまわないよ。
どちらにせよ当分はうちの病院まで来ないと遊べないから、ばれても何とでも言い訳できるし。
ただまあ一つお願いはあるけど」

ξ□゚⊿゚)ξ「……なによ」

川 ゚ -゚)「うむ。聞かせてもらおう」

(´・ω・`)「ナーブギアを貸すまでの間、うちに来てプレイするときは、
脳波計るのと中で何をしたのかのレポートはお願いしたいって」

ξ□゚⊿゚)ξ「…………」

川 ゚ -゚)「…………」

(; ^ω^)「?」

(´・ω・`)「えっと……どうした?」

ξ□゚⊿゚)ξ「研究者の闇を感じた気がする」

川 ゚ -゚)「私もだ」

(; ^ω^)「おー」

(´・ω・`)「ずっと一緒に暮らしてると、こんなのはまだ良い方な感じなんだけどね」

('A`)「なあ、さっきからナーヴギアとかSAOとかなんの話してるんだよ」

(´・ω・`)「それが終わったら話してあげるよ」

徳永が課題を終わらせたのが昼休みの終わるギリギリの時間であったため、
今話されていた内容をちゃんと知るのは、かなり後になってからだった。





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231 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:24:26 ID:NghVfPoA0



8.バーボンハウス   三人と一人と一人




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232 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:26:08 ID:NghVfPoA0

『俺の名前は錦城 志也(きんじょう かずや)
ここ、≪バーボンハウス≫のマスターでオーナーだ。
え?この若さでオーナーなんてすごぉいって?
褒めても何にも出てきやしないぜ。
いや、おれの愛が欲しいのかな?
罪なかわいこちゃんだぜ。
この店はおれの城。
信頼できる仲間達に支えられて、今日もおれは珈琲を淹れる。
きみも、おれの淹れた珈琲を飲んだら、珈琲に対するイメージが変わるかもしれないぜ』

( ^ω^)「今日はオムライスにするお」

('A`)「ナポリタンで」

(´・ω・`)「僕は和風ロコモコにしよっかな」

(`・ω・´)「……」

(´・ω・`)「なに?」

(`・ω・´)「珈琲とか飲み物は?」

(´・ω・`)「食後のコーヒーは怜奈さんに淹れてもらう」

(`・ω・´)「…………」

本城、内藤、徳永の三人がいるのは、カフェ&バー『バーボンハウス』
昼でもほんのりとした柔らかい光源しか差し込まないよう工夫された店内は、
管理された空調と流れる穏やかな音楽と相まって、
夏の昼であるということを忘れさせてくれた。

『木目調』ではなく本当の木にこだわって揃えられている椅子やテーブルも、
ゆったりとした気分にさせてくれている。

三人はカウンターに座り、カウンターの中、本城の目の前には、
よく似た顔の青年がつまらなそうな顔をしていた。

( ^ω^)「いつもの光景だおねー」

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233 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:28:10 ID:NghVfPoA0

('A`)「料理は美味しいし、紅茶はちゃんと淹れられるのにな」

( ^ω^)「どうしてだろう。珈琲のあの不味さ」('A`)

|゚ノ ^∀^)「粉の量、お湯の温度、注ぎ方、全てがダメダメですから」

カウンターの中、店の裏側の厨房に続く扉から、一人の女性が現れた。

( ^ω^)「こんにちはだおー」

('A`)「ちわっすです」

|゚ノ ^∀^)「こんにちは。いつもありがとうね。武士君、俊雄君」

(´・ω・`)「こんにちは。怜奈さん」

|゚ノ ^∀^)「こんにちは。祥大君」

(`・ω・´)「ダメダメとか言うなよ」

|゚ノ ^∀^)「何度教えても勝手にアレンジするから変な味になっちゃうんですよ。
それよりはいはい。オーダー入ったんですから奥に戻ってさっさと作る」

(`・ω・´)「はいはい」

怜奈と呼ばれた女性が錦城を奥に押しやる。

年のころは二人とも二十代の中頃に見え、
その話しぶりや仕草から、親しくしているのが伺えた。

(`・ω・´)「あ、祥大!ちょっと話があるから食べ終わったら奥で待っててくれ」

(´・ω・`)「ん?分かった―」

|゚ノ ^∀^)「多分暇だから、カウンターで珈琲でも飲んでればいいわよ」

(`・ω・´)「暇とか言うな!」

あっかんべーをしながら奥に向かう錦城。

.

234 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:30:31 ID:NghVfPoA0

|゚ノ ^∀^)「まったく。
あれで首席入学主席卒業、
法学部のエースとか言われていた人なんだから、
どうなってるのかしら」

(´・ω・`)「なんかすみません」

|゚ノ ^∀^)「親戚だからって、祥大君が謝ることないのよ」

本城に向かってウインクをする女性。

彼女の名前は森本 怜奈(もりもと れな)。
学年と年齢は一つ下だが錦城志也と同じ大学の同じ研究室出身で、
学生時代は才色兼備ともてはやされていた。
今もその美貌は健在で、パリッとした白いシャツに膝上のタイトな黒いスカートが良く似合っている。
グレーのエプロンでさえ、彼女のスタイルを引き立てるアクセサリーのようだ。
しかし何故か、今はこんな店でウエイトレスをしていた。

(`・ω・´)「こんな店で悪かったな!」

突然顔を出して四人に向かって叫び、そして厨房に戻る錦城。

呆気にとられる四人。

|゚ノ; ^∀^)「なに?今の」

(´・ω・`)「さあ……。志也兄さん、変だから」

(; ^ω^)「ショボンはシャキンさんには一段と厳しいおね」

('A`;)「手加減しないよな」

思わず本城の顔を見る内藤と徳永。
その視線にしれっとした笑顔で返す本城。

(´・ω・`)「でも怜奈さん、弁護士の仕事の方は大丈夫なんですか?
こんなところで油売ってて」

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235 名も無きAAのようです :2015/08/26(水) 23:31:18 ID:lzcLA2H2O
ショボとシャキは名字が違うんだな
地方財閥のドロドロが透けて見える

236 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:32:55 ID:NghVfPoA0

|゚ノ ^∀^)「ん?大丈夫だよ。今は弁護士も多いしね。
うちの事務所は所長が呑気だけど仕事は出来る人だし、
経営と人員配置の方は専門の有能な人達がいるから、空き時間がちゃんとあるの。
この店のスタッフも八割がうちの事務所の人間だってのは知ってるでしょ?」

(´・ω・`)「はい」

|゚ノ ^∀^)「結構いい社会勉強にもなってるんじゃないかな。
勉強ばっかできて弁護士になると、人間の黒いところ見て鬱になる奴もいるっていうし。
人間を知るには、客商売は一つの方法としてはありだと思う。
それに弁護士って威張っていても薄給なやつは多いからね。
こういう時間に融通の利くバイトは嬉しいのよ。
それに、この店で愚痴ついでに相談にのってあげて、
最終的に事務所に依頼しに来るって人も何人かいるのよ」

(´・ω・`)「なら良いんですけど」

('A`)「個人的にはシャキンさんも弁護士だってのが信じられない」

(; ^ω^)「おー。それは思っていても言っちゃだめだお」

(´・ω・`)「弁護士か検事になれたら家を継がなくていいって条件を小父さんと約束して、
とりあえず弁護士になった人だからね」

('A`;)「弁護士にとりあえずなれるってのがすごい」

(; ^ω^)「でもショボンもそういう理由でもなれそうだおね」

(´・ω・`)「ならないよー」

('A`;)「な『れ』ないじゃないんだな」

|゚ノ ^∀^)「そういえば前から聞きたかったんだけど、
錦城先輩はなんで『シャキン』って呼ばれてるの?」

(´・ω・`)「ああ」

.

237 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:34:42 ID:NghVfPoA0

('A`)「それは……」

怜奈からの問い掛けに言葉を濁しつつ内藤を見る二人。

(; ^ω^)「おー。僕が名付けちゃったんだお」

|゚ノ ^∀^)「内藤君なんだ。でもどこから?」

(´・ω・`)「僕の『ショボン』が、
「「しょうた・ほんじょう」で、あたまをとって「しょぼん」だお!」だったよね」

('A`)「いつの間にか『ドクオ』って呼んでたよな。
「とくなが としお」で最初は「とくお」だったのに。
『ブーン』に関しては自己申告だし」

(; ^ω^)「おっおっお」

|゚ノ ^∀^)「あらあら。でも錦城先輩には、『キン』はともかく『しゃ』は……あっもしかして」

(´・ω・`)「初めて会ったのは僕等がまだ小学生で、
ちゃんと親戚の『かずや』兄さんだって紹介したのに漢字の話になって、
『志也』を『かずや』って読めなかったんだよね。ブーン」

('A`)「だったなー。
「ショボンがショボンだから、シャキンだお!シャキンだお!」
って喜んでたよな」

(; ^ω^)「おー。懐かしいお。
友達に『和也』君がいたから、『也』は『や』って読めたんだけど、
『志』は『正志』君の『し』しか分からなかったんだおね」

|゚ノ ^∀^)「あらあら」

( ^ω^)「でもシャキンさんも笑ってて、
「そうだ!おれはシャキンだ!シャッキーン!」って遊んでくれたんだお」

.

238 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:36:20 ID:NghVfPoA0

('A`)「だった、だった。
ショボンの家の庭で大騒ぎして、
おばさんに怒られた思い出」

(´・ω・`)「そういえばそうだったね。
三人で飛び回って、志也兄さんが植木鉢を三つくらい割って……」

|゚ノ ^∀^)「先輩は昔からそういう人なのね」

(`・ω・´)「できたぞー」

|゚ノ ^∀^)「はい」

楽しそうに怜奈が納得した直後、厨房から錦城が声をかけた。
それに反応にして奥に向かう怜奈。

そしてすぐに二人がお皿を持ってカウンターに戻ってきた。

|゚ノ ^∀^)「はい、和風ロコモコ。お待たせしました」

(´・ω・`)「ありがとうございます」

(`・ω・´)「オムライスとナポリタンおまち。
トッピングのハンバーグはサービスだから気にするな」

('A`)「すみません。いつもありがとうございます」

( ^ω^)「ありがとうですお」

見るからに美味しそうな料理を前に、自然に笑顔になる三人。

それを見て笑顔になる二人。

「「「いただきます!」」」

三人の声が打ち合わせ無しに揃った。




.

239 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:38:03 ID:NghVfPoA0



|゚ノ ^∀^)「ねえねえ、内藤君」

( ^ω^)「なんですかお?」

食後、本城は珈琲を怜奈に淹れてもらい、
内藤と徳永は悔しそうに怜奈を見る錦城に、炭酸飲料をグラスに注いでもらった。

そして二人がそろそろ帰ろうかとアイコンタクトをとっていると、
怜奈が声をかけた。

|゚ノ ^∀^)「私にだったらなんて名前を付ける?」

(; ^ω^)「お?」

(`・ω・´)「どうした?森本」

|゚ノ ^∀^)「いえ、前から思ってたんですよ。四人の名前っていいなって。
ブーン君に、ドクオ君に、ショボン君に、シャキン。
なんか初めて聞いた時から四人にピタってくる感じで。
だから私だったらどんな名前を付けてくれるのかなって思って」

(; ^ω^)「おー。そうだおねー」

(`・ω・´)「なんだ、昔おれが付けてやった『おもれーな』は不服だったのか?」

|゚ノ ^∀^)「たのしみー」

(`・ω・´)「スルーされた」

('A`)「今のはフォローできない」

(´・ω・`)「なぜそんな名前を」

(`・ω・´)「ん?こいつ学生の時酔うと面白かったんだよ。
なんか理想の彼氏がいるとか言って、ちょっといっちゃてるところが」

.

240 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:39:56 ID:NghVfPoA0

|゚ノ ^∀^)「錦城先輩、この店って包丁多いですよね。
どのタイプが好きですか?お腹に刺してあげますよ?」

(`・ω・´)「あ、うん、なんでもない。全部嫌いだから許して」

|゚ノ ^∀^)「楽しみ楽しみ―」

(; ^ω^)「おー。森本怜奈さんだおねー」

じっと怜奈の顔を見る内藤。
そして彼女の名を何度も口の中で呟いていく。

( ^ω^)「もりもとれな…。もりもとれな…。
ももれな…。もりな…もれな…れなり…。れなも……れもな……。
れもな!?」

|゚ノ ^∀^)!

( ^ω^)「『レモナ』!『レモナ』とかどうですかお!?」

|゚ノ ^∀^)「うん!いいね!なんか今ピタってきた!」

カウンター越しにハイタッチする二人。

それを呆れた顔で見る三人。

|゚ノ ^∀^)「あー。なんか、うん。良い感じ。
先輩、これから先輩の事シャキン先輩って呼ぶので、
私の事は『レモナ』って呼んでくださいね」

(`・ω・´)「えー」

|゚ノ ^∀^)「呼んでくださいね」

(`・ω・´)「でも、そういうのってさぁ。自然に…」

|゚ノ ^∀^)「呼べ」

(`・ω・´)「はい。レモナさん」

.

241 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:41:52 ID:NghVfPoA0

|゚ノ ^∀^)「はい」

ニコニコと笑う怜奈。
そして無理やり錦城とハイタッチをすると、徳永、本城に向けて掌を見せる。

('A`)「れ、レモナさん」

(´・ω・`)「レモナさん」

そしてハイタッチをしながら呼ばれると、ニッコリと微笑んだ

|゚ノ ^∀^)「うんうん。良い感じ」

( ^ω^)「おっおっ。喜んでもらえて嬉しいお」

|゚ノ ^∀^)「いえーい」

( ^ω^)「いえーい」

そして再びハイタッチをする二人。

笑顔な二人。
それを見る三人の表情は疲れていた。



内藤と徳永が帰り、本城が一人残ったバーボンハウス。
店の営業もそろそろお酒を飲む客が現れる時間だった。

(´・ω・`)「で?話って?」

アイスティーのストローに口を付けた後、本城が隣に座った錦城に話しかけた。

(`・ω・´)「ああ。ブーンの足はまだ悪いのか?」

(´・ω・`)「普通に歩くには全く問題ないよ。
でも、まだ走ろうとすると痛みがあるって。
足にも、頭にも」

.

242 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:43:22 ID:NghVfPoA0

(`・ω・´)「足にも、頭にも……か。
精神的なモノじゃないのか?」

(´・ω・`)「10月まで様子を見て、11月からカウンセリングも始める予定。
まだまだカウンセリングって言うと敷居が高いからね。
もう真壁先生との会話は、録画して本永先生に達に見てもらってる」

(`・ω・´)「そうか」

(´・ω・`)「あと、今度のSAOでの経験が、
もしかすると良い方向に向かえるかもって言ってた」

(`・ω・´)「小父さんが言ってたな。
向こうで痛みなく走ることが出来れば、現実世界での痛みの消去に繋がるかもって」

(´・ω・`)「……願うよ」

(`・ω・´)「ああ……」

しんみりとした二人の会話。
カウンターの中の怜奈ともう一人の男性スタッフが、チラチラと様子を伺っている。

(`・ω・´)「で、SAOの事なんだけどさ」

(´・ω・`)「大丈夫だよ。兄さんの分も手に入るから」

(`・ω・´)「マジか!よし!よくやった!」

(´・ω・`)「まったく…」

(`・ω・´)「これで休みがちゃんと取れれば」

|゚ノ ^∀^)「11月初めの一週間の休暇!!」

(`・ω・´)「なんだよレモナ。急に。
つーか聞いてたのか?ダメだぞ、たとえ聞こえてても話に割り込むとかしちゃ」

.

243 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:44:41 ID:NghVfPoA0

|゚ノ ^∀^)「確か家の都合って言って取ろうとしてませんでしたか!?」

(`・ω・´)「あ……」

(´・ω・`)「一週間?家の都合?」

(`・ω・´)「いや、ほら、こういうのはスタートダッシュでのレベル上げが大事だろ?」

|゚ノ ^∀^)「……所長に……。いや、裄丈さんにチクっておきますから」

(`・ω・´)「森本!それはやっちゃダメだろ!」

|゚ノ ^∀^)「レモナです」

(`・ω・´)「今はそういう事を言ってる時じゃなくてだな!」

|゚ノ ^∀^)「レモナです」

(`・ω・´)「だから!」

|゚ノ ^∀^)「レモナです」

(`・ω・´)「……レモナさん、あのですね。事務長に話すのはやめていただけませんか?」

|゚ノ ^∀^)「だいたい、既に所長から片腕扱いされてるのに、
一週間もゲームの為に休むとか何考えてるんですか」

(`・ω・´)「だから一か月以上前から調整してもらって……」

|゚ノ ^∀^)「本気で出てこないつもりですか?」

(`・ω・´)「え?」

|゚ノ ^∀^)「弁護士の方は雇われかも知れませんが、バーボンハウスはオーナーのくせに?」

(`・ω・´)「えと…その……」

|゚ノ ^∀^)「いくらなんでも無責任すぎませんか?」

(`・ω・´)「それはその」

.

244 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:46:12 ID:NghVfPoA0

|゚ノ ^∀^)「無責任すぎませんか?」

(`・ω・´)「……店の方には一日一回は顔を出します」

|゚ノ ^∀^)「最低、開店時と閉店時はお願いします。
それに食事したりするためにログアウトするんでしょうから、
ちゃんとメールのチェックもして、返事もくださいね」

(`・ω・´)「いや、それは……」

|゚ノ ^∀^)「急を要する事務所の案件は店でお見せしますから、
指示や助言はしてくださいますよね」

(`・ω・´)「え?」

|゚ノ ^∀^)「してくださいますよね」

(`・ω・´)「……はい」

|゚ノ ^∀^)「まったく……。
でも裄丈さん、長くて五日間だって息巻いてましたから」

(`・ω・´)「まじかー」

頭を抱えてカウンターに頭を付ける錦城。
それを冷ややかに見つめる怜奈。

本城はカウンターで呆然と二人の会話を聞いていた男性スタッフと視線を合わせ、
同じタイミングで苦笑いをした。





.

245 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:47:48 ID:NghVfPoA0




9. リンク・スタート  五人




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246 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:49:32 ID:NghVfPoA0

2022年11月6日

五人は、病室にいた。

病室の扉には、『ナーヴギアのお部屋』と書かれたプレートが取付けらている。

(´・ω・`)「変えてって言ったけどそういう意味じゃない」

小さくため息をつく本城。

しかし四人はそんなことを気にすることなく、
それぞれのベッドに腰掛けていた。

( ^ω^)「たのしみだおー」

ξ□゚⊿゚)ξ「発売日は凄い騒ぎだったわよね」

川 ゚ -゚)「ネットですごい金額で売られているのを見たぞ」

('A`)「結局ちゃんと金出して買ったのはおれだけなんだよな……」

(´・ω・`)「ぼく、ちゃんと誘ったよね?手に入るかもって」

('A`)「……もしかしたら、テストプレイヤーが優先券で買えば、
テストプレイありがとう的な武器のプレゼントとかあるかもって思って……」

川 ゚ -゚)「あったのか?」

('A`)「何も案内は無かった」

ξ□゚⊿゚)ξ「あらら」

( ^ω^)「で、でもほら、中に入ってから!」

('A`)「新アカウントでキャラも最初から作るから、テストプレイヤーって認識するのも無理だと思う」

( ^ω^)「おー」

ξ□゚⊿゚)ξ「ま、仕方ないわね」

.

247 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:55:31 ID:NghVfPoA0

('A`)「……おれの買ったのは転売して、おれはショボンが手に入れたソフトで……」

(´・ω・`)「多分もう手に入らないよ。
っていうか、そんな転売とか僕が許すと思う?」

('A`)「ですよねー」

大きくため息をついた徳永。
それを見て、四人が呆れた顔で笑った。

(´・ω・`)「さて、皆には術着に着替えてもらったけど、何か問題はある?」

独りベッドとベッドの間の通路に立つ本城。
広い部屋には両側の壁沿いに三台ずつ、合計六台のベッドが置かれ、
そのうちの五台にナーヴギアが取り付けられていた。

しかしそのうちの二つは、他の三台とは少し趣の異なる機種が備え付けられてあった。

( ^ω^)「なんか僕のとショボンのが違うおね」

その趣の異なる機種の備え付けられたベッドに座る内藤が、
少しだけ不安気に本城に声をかけた。

(´・ω・`)「うん。ブーンが使うのはプロトタイプ。
僕が使うのがテストタイプ。
両方とも汎用型モデルの原型だよ。
今日は全員脳波とか心電図とか色々つけてもらうけど、
ブーンには僕がテストプレイヤーをしていた時の同じような、
みんなよりちょっと多く色々つけてもらうから、そっちを使ってほしくて。
機能的にはみんなが使うモデルと同じだから安心して。
違いは内臓電源とデザインくらいかな」

( ^ω^)「おっおっ。分かったお」

内藤が笑顔で頷いたのを見て、残りの三人に視線を向ける本城。

三人ともそれぞれに問題無しの合図をし、本城は一人一人に笑顔で頷いた。

.

248 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:56:56 ID:NghVfPoA0

(´・ω・`)「もう少ししたら看護師さん達が色々付けに来るから。
そうしたらその後はベッドに寝たままになるし、すぐゲームを始めよう」

('A`)「了解」

( ^ω^)「わかったお」

ξ□゚⊿゚)ξ「トイレも行ったし」

川 ゚ -゚)「うむ。準備は万端だ」

徳永と本城以外の三人は少し緊張しているように見えた。

(´・ω・`)「やっぱり少し緊張する?」

川 ゚ -゚)「まあな。何回か別のゲームでナーヴギアは試させてもらったが、
やはり毎回少し緊張していた」

ξ□゚⊿゚)ξ「わたしもそうね。
あの中に入っていく瞬間が、吸い込まれるような浮遊感があって」

( ^ω^)「ゲームの中に入った後は良いんだけど、
入る時と出る時に少し違和感があるお」

('A`)「あー。確かにおれも慣れるまで少しあったな。違和感」

(´・ω・`)「そうだね。こう別次元に移動するっていうか、
妙な浮遊感と言うか……」

ξ□゚⊿゚)ξ「気持ち悪いとかじゃないけどね」

川 ゚ -゚)「そうだな。
あまり体験したことのない感覚だから、少し緊張する程度だ。
気にするほどではない」

(´・ω・`)「じゃあみんな大丈夫ってことで。
中に入ってからの事とか、ゲームを始めるまでの事についてはドクオにレクチャーしてもらったから、
それを守ってまずは『はじまりの街』に降り立つことを目指そう」

.

249 ◆dKWWLKB7io :2015/08/26(水) 23:58:32 ID:NghVfPoA0

('A`)「言ったけど、向こうでの体型を現実世界の体型と大きく変えると、
歩くだけでも慣れるのに大変になるから、
出来るだけ身長・体型は今の自分と変えないようにな」

徳永の言葉に頷く四人。

(´・ω・`)「無事に街に入ったら、まずは西地区の教会の前を目指す。
そこで、落ち合うってことで」

本城の言葉に頷く四人。

(´・ω・`)「みんな名前は決めた?
中ではアバターになって顔も声も変わるから、名前くらいしか決め手が無くなるからね」

( ^ω^)「ぼくは『Boon』にするお」

ξ□゚⊿゚)ξ「私は『T.U.N.』にする」

川 ゚ -゚)「私は『Qoo』だ」

(´・ω・`)「僕は『Shobon』にするよ」

それぞれにゲーム内での自分の名前を決め、最後に徳永を見る。

('A`)

( ^ω^)「ドクオ?」

('A`)「あー!おう!『DOKUO』だ!」

ξ□゚⊿゚)ξ「どうしたのあんた?」

(´・ω・`)「テストプレイの時は違う名前でやってたみたいだから、
そっちと悩んでたんじゃないかな」

川 ゚ -゚)「良いのか?そっちの名前じゃないくて」

('A`)「悩んだけどさ……みんなとやるなら、やっぱ『ドクオ』って呼ばれたいし……」

(* ^ω^)「どくお…」

('∀`)「えへへへ」

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250 ◆dKWWLKB7io :2015/08/27(木) 00:00:11 ID:iD/pBizs0

ξ□゚⊿゚)ξ「なにやってんだか」

川 ゚ -゚)「友情だな」

(´・ω・`)「さて、そろそろ来る時間かな」

ξ;□゚⊿゚)ξ「あんたはのらないのね」

病室のドアがノックされ、看護師が何人かはいってきた。



それぞれに配線を取り付けられ、ベッドに横たわる五人。
ナーヴギアは鼻まで覆い尽くすようなヘルメット型の為、
全員口元しか外に出ていない。

(´・ω・`)「全員問題ないー?」

('A`)「ドクオ問題ないぞー」

( ^ω^)「ブーンもオッケーだお!」

ξ□゚⊿゚)ξ「つ、ツンも平気よ!」

川 ゚ -゚)「クーも問題なしだ」

(´・ω・`)「ぼく、ショボンも準備完了です」

それぞれに自分のゲーム内の名前を使って声をかける。

ベッドは床ずれ防止用のジェルと温度管理されたもので、
枕も含め身体をやさしく支えてくれており、
五人とも力を抜いてリラックスが出来ていた。

五人は、顔を覆い尽くすナーヴギアの中で、期待とほんの少しの不安に満ち溢れていた。



.

251 ◆dKWWLKB7io :2015/08/27(木) 00:01:33 ID:iD/pBizs0



そして、13時を告げるアラームが鳴る。



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252 ◆dKWWLKB7io :2015/08/27(木) 00:02:59 ID:iD/pBizs0



五人はまだ、これからその身に降りかかる苦しみと悲しみを知らない。




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253 ◆dKWWLKB7io :2015/08/27(木) 00:04:11 ID:iD/pBizs0




彼らは決めていた。13時のアラームが鳴ったら、同時に始めようと。





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254 ◆dKWWLKB7io :2015/08/27(木) 00:06:08 ID:iD/pBizs0



彼らはそれぞれに口をひらき、仮想世界への扉を叩いた。







その言葉が、牢獄への扉を開く言葉だとは知らずに。




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255 ◆dKWWLKB7io :2015/08/27(木) 00:07:44 ID:iD/pBizs0




「「「「「リンク・スタート!」」」」





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256 ◆dKWWLKB7io :2015/08/27(木) 00:09:15 ID:iD/pBizs0

第十八話










第十九話に続く



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257 ◆dKWWLKB7io :2015/08/27(木) 00:15:58 ID:iD/pBizs0

以上、第十八話でした。

十九話も順調にかけているので、
うまくいけば早めに投下できるかと思います。

乙も支援も指摘も考察も感想も、本当にありがとうございます!

ラストは決まっていますがラストまでの道は少し増えそうな気もするので、
もう少し?お付き合いいただけると嬉しいです。


ではではまた。


.

258 名も無きAAのようです :2015/08/27(木) 00:42:44 ID:1ox94TfUO
おー乙ー

259 名も無きAAのようです :2015/08/27(木) 00:55:32 ID:5537t14s0
乙乙

260 名も無きAAのようです :2015/08/27(木) 10:02:27 ID:/L8kfdgkO

次回も楽しみ

261 名も無きAAのようです :2015/08/27(木) 20:51:29 ID:F41S/OQoO

ドクオの片手剣の冴えはゲーム慣れもあるんだろうが「父からの手ほどき」もある程度影響していそうだな

262 名も無きAAのようです :2015/08/29(土) 23:26:55 ID:8UAbygEs0
ブーンの息切れはプロトタイプだからか事故の精神的なものなのか
>>261
クーさんちわっす

263 名も無きAAのようです :2015/08/30(日) 21:36:57 ID:nvkKDcJA0
断定君きっめ

264 名も無きAAのようです :2015/08/30(日) 22:00:39 ID:RaP9Cp1s0
>>263
IDじゃね

265 名も無きAAのようです :2015/08/31(月) 16:44:34 ID:z/wVhXUA0
断定君って断定君きっめ

266 名も無きAAのようです :2015/08/31(月) 21:18:48 ID:PEV.Gky60
〜かも〜じゃね?って話ほど無駄なものもないけどな

267 名も無きAAのようです :2015/09/01(火) 16:43:22 ID:.pxRqHrw0
何言ってんだこいつ

268 名も無きAAのようです :2015/09/02(水) 20:20:57 ID:8EyujuHo0
で、でたー笑笑笑人は全部自分と同じ規格で出来てると思ってる奴ー笑笑笑
同じ出来の頭のオトモダチと四角い画面だけが現実の珍獣!ゲンダイニホンジン笑笑笑

269 名も無きAAのようです :2015/09/02(水) 22:54:57 ID:YUAcGFdA0
何処かの誤爆とはいえ、古代日本人がタイムスリップしてインターネットしたうえさらにレスまで・・・歴史的瞬間に感動するな

それ四角い画面じゃなくてぱぁそなるこんぴゅうたぁって言うんです先輩

270 名も無きAAのようです :2015/09/04(金) 01:39:11 ID:7LlVpqZY0
おいおい釣れた釣れたっていわれちゃうぜ

271 名も無きAAのようです :2015/09/06(日) 15:19:00 ID:/UN4rGQg0
きになったんだけど

>>126
( ´ー`)「あの時みんなが来てくれなきゃ、死んでただーよ」

プギャーのけだるい、けれど決意の籠った声を。

|  ^o^ |「あの時のクエストボス戦が今回のボス戦とは別パターンで良かっただーよ」

ブームの真面目な、けれど出来るだけ軽々しくした声を。

この「プギャーのけだるい、けれど〜」って「シラネーヨのけだるい、けれど〜」が正しいんじゃないかな?
あとブームの語尾がだーよなのはしらねーよの真似してふざけてるだけ?

272 名も無きAAのようです :2015/09/07(月) 00:23:57 ID:3mIG3mKU0
>>269
ジョークの真意を理解出来ないって・・・東洋人ってやあね

273 名も無きAAのようです :2015/09/10(木) 17:00:30 ID:eoarnBiMO
>>271
単なる書き間違いでミスリードを誘ったりではないと思う

274 名も無きAAのようです :2015/09/11(金) 20:39:18 ID:3X6izJ/k0
>>270
煽りスキル高いわけでもないのにしゃしゃり出て来た上に画面がPCしか想像つかない時点でお察し

275 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 14:52:37 ID:khqOjRnI0
どーも作者です。

九月中に投下をと思っていたら、
うわわああああわわわあああああ!!

>>271 様

ご指摘ありがとうございます。

>>273 様

のおっしゃる通り、ただのミスです。

恥ずかしいです。

下が正しいですね。

276 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 14:55:07 ID:khqOjRnI0
その明るい声は、次の声を呼ぶ。

( ´ー`)「あの時みんなが来てくれなきゃ、死んでただーよ」

シラネーヨのけだるい、けれど決意の籠った声を。

|  ^o^ |「あの時のクエストボス戦が今回のボス戦とは別パターンで良かったです」

ブームの真面目な、けれど出来るだけ軽々しくした声を。

( ^Д^)「ほんとにそうだな」

そして、元気な、心の底から楽しそうに、けれど真剣な声。

( ´ー`)「だから、おれ達を甘く見るのはやめるだーよ」

('A`)「お前ら」

|  ^o^ |「皆さんとラフコフとの因縁だとか、窮地に立つとか、我々には詳しいことはわかりません。
ですが、今までに受けた色々なことは、返したいのです」

( ´ー`)「貰いっぱなしは性に合わないだーよ」

( ^Д^)「そういうこった」

('A`)「お、おい」

( ^Д^)「きっと、おれ達よりもつらい道を選んだあいつも、同じ気持ちだろうよ」

|  ^o^ |「どれだけ力になれるかは分かりませんが、やれることはやらせてもらいます」

( ´ー`)「もちろん死にたくないだーよ。
だから死なないギリギリまでやってやるだーよ」

|  ^o^ |「だからこちらは、私達に任せてください」

( ^Д^)「こいつらが殺されそうになったら、ちゃんとおれらが逃がすからよ」

( ^ω^)「プギャー…」

( ^Д^)「ま、適材適所ってことだ」

('A`)「シラネーヨ」

( ´ー`)「だてにショボンのプログラムで鍛えてきたわけじゃないだーよ」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

|  ^o^ |
.

277 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:13:41 ID:khqOjRnI0
ご指摘ありがとうございます。

そして、感想や乙も、本当にありがとうございます。

それでは、十九話の投下を始めたいと思います。


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278 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:17:57 ID:khqOjRnI0



第十九話



はじまりの日  VRMMORPG 〜SWORD ART ONLINE〜




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279 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:19:04 ID:khqOjRnI0




0.リンク・スタート




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280 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:22:34 ID:khqOjRnI0

0-1

彼が『はじまりの街』の広場に降り立った時、
一番最初にしたのは頬をつねる行為だった。

「……痛くない。
やっぱりこれは夢、仮想現実なんだおね。
すごいおー」

その癖のある語尾から幼いと思われがちだが、
こういう時に取る行動は本当に子どもだった。

まず、棒立ちのまま周囲をきょろきょろと見回す。

目に入るのは、イメージの中の中世ヨーロッパの石畳の街。
目の前には画像で見たパルテノン神殿の様な大きな建物がある。

そして次に意識を向けるのは、人々。
同じように初めてこの場所に、この世界に降り立った者達が、盛んに声を上げ、
身体を振り、地べたを触り、建物を触り、自分の体を触り、その『世界』を楽しんでいた。

中には踊っている者もいる。

.

281 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:23:46 ID:khqOjRnI0

「これが、仮想現実。
ナーヴギアで入ってきた世界。
『ソードアートオンライン』の世界。
ゲームの中の世界。
なんだおね」

彼も手を握り、足を上げ、歩き始める。

「本当に自分の身体みたいだお……」

ゆっくりと、一歩一歩でその世界を楽しむように歩く。
そして広場を一周してから、西の空を見る。

「えっと、西地区の教会で待ち合わせだったおね。
みんなもう移動してるのかお」

周りの建物と、楽しげに、というより、道行くすべての人、
おそらくプレイヤーと思える人達が全て笑顔なのを見て同じように笑顔を見せながら、
内藤武士、いや、『ブーン』は、西に向かって歩いていった。



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282 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:25:09 ID:khqOjRnI0

0-2



(ブーン)「こ、これがぼく!?」

少女漫画の中で、
メガネを外して化粧をしてもらった少女が、
初めて鏡を見た瞬間に言うようなセリフを呟いたブーン。

教会に向かう道すがらの屋台に立てかけてあった姿見を見て、
一度通り過ぎ、
戻ってきて鏡の前で一回転し、
鏡の中の美青年が自分だと分かり、
顔を近付けて鏡の中の自分に呟いた。

路地裏であったため誰も近くにプレイヤーがいなかったのは幸いだっただろう。

鏡の中の自分とにらめっこをし、
精一杯の変顔すら色男であるその顔に、
スタート時に自分で選んだとは言え気恥ずかしくなる。

(ブーン)「な、慣れるお。
自分では見えないんだし」

無理やり納得し、鏡から離れる。
そしてそのスリムで均整のとれた身体を見て、
4回鏡に向かってポーズを決めてから、
再び歩き始める。

(ブーン)「みんなはどんな姿か楽しみだお」

自分の事を棚に上げることに成功したブーンは西に向かった。


.

283 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:26:29 ID:khqOjRnI0

0-3


西地区 教会前

(ブーン)「着いたお―」

ルーベンスの絵でも飾られていそうな大きな教会の前。
中央広場からは離れているためプレイヤーはほとんどいなかった。

扉を背にして視界に入るのは3人。

先ずは女性。
ストレートの黒髪が肩にかからないくらいで切り揃えられたショートカット。
女性らしいメリハリのあるプロポーションを、初期設定の簡単な革と布の装備を包んでいた。
もちろん美人で、黒髪の似合う清楚な女性だった。

次も女性。
金髪のウエーブのかかった髪が、肩甲骨くらいまで伸びている。
先程の女性と同じようなプロポーションだが、
彼女よりは少し身長が高い為髪の色と相まって外国の女優の様に見える。
もちろんセレブな美人女優だ。

最後の一人は男。
自分と同じような身長で、同じような体つき。
黒い髪と、目にかかるくらいの長さも自分と同じだった。
おそらくは同じ『型』なのだと思うが、髪型が微妙に違っているので雰囲気は違った。
いや、顔が違うのでそう思えたのかもしれない。
彼も美青年なのだが、自分の方が美青年だった。
しいて言うならば、彼は街に居たら女の子が振り返りそうなくらいの美青年。
自分はハリウッドで主役をはっていそうな美青年。

(ブーン)「……あれくらいで、いいんだおね」

少しだけ自分のセンスを恥ずかしく思いながら、
ブーンは3人と同じように教会の扉が見える位置に移動した。

他にも数人のプレイヤーと思しき人が教会を訪れて中を覗いたりしているが、
ここに留まっているのは自分を入れて4人だった。

.

284 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:29:01 ID:khqOjRnI0

(ブーン)「(ドクオは寄るとこがあるから少し遅くなるって言ってたし、
来たらすぐ合図をするだろうから、
多分この3人がツンとショボンとクーさんなんだおね。
声をかけたいけど、女の人に声かけて違ったら恥ずかしいし、
こっちの男の人は…)」

3人を観察しているブーン。
なんとなく女性二人は互いを意識しているように見えるので、
あの二人がツンとクーならその後こちらに声をかけてくれるだろうと思い、
もう一人の青年に視線を向けた。

一心不乱に右手を振っている青年。
おそらくはウインドウを見ているのだろう。
かなり真剣な表情だが、なにをそんなに真剣に見ているのか不思議だった。

(ブーン)「(お知らせがさっき一回来てたけど、
その後は来てなかったおね)」

暇つぶしに何度かウインドウは開いて見たが、新しいメッセージなどは来ていない。
ウインドウを出すことによって現れるメニューは重要と言えばすべて重要なんだとは思うが、
これから落ち合う頼れる男友達二人に教えてもらえばいいやと思っていた彼は、
すぐに画面を閉じた。

(ブーン)「(すごく真剣だから、話しかけられないお……)」

どうしようかと腕を組み、教会を見るブーン。

すると、教会の前の一本道の真ん中を歩いてくる人影が見えた。

(ブーン)「お?」

ドクオが来てくれたのかと思い、じっと見つめる。

身長は190近いだろう。
胸板も厚く、足も長い。
ガッチリといった表現が似合うが、太いと言ったイメージは持たない。
服装は自分達と同じ初期装備に見えるが、腰付けた剣が彼を更に引き立てていた。
顔も凛々しく、美青年と言うよりは美丈夫。
精悍で、爽やかな好青年と言った感じだった。

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285 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:31:32 ID:khqOjRnI0

(ブーン)「(……ドクオじゃないか)」

彼を見ていたブーンは、現実世界でドクオが言っていたことを思い出しつつ、
友人ではなかったことに落胆しつつもう一度ウインドウを真剣に見ていた青年に視線を移す。

そして、意を決して彼に声をかけようと一歩踏み出したブーン。

しかしそれとほぼ同時に、再程の美丈夫が、教会の扉の前に立ち、
剣を鞘から抜いて掲げた。

思わずその姿を見る4人。



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286 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:33:59 ID:khqOjRnI0



「ドクオ騎士団の諸君!我がもとへ!」




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287 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:35:54 ID:khqOjRnI0



張りのある、よく響くバリトンの美声。

それと台詞のギャップに思わず唖然とする四人。




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288 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:38:08 ID:khqOjRnI0




「ド、ドクオ騎士団の諸君!は、早く来るんだ!」




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289 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:39:28 ID:khqOjRnI0

美丈夫が、四人に目配せしながらもう一度声を張る。

しかし思考の停止した四人は動かず、
ただただ彼をじっと見つめた。

「あ、あれ?ブーンとショボンとツンとクーさんだよね?」

剣を下ろし、不安げに四人に視線を配りながら呟いた美丈夫。




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290 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:40:46 ID:khqOjRnI0




「「「「ドクオ!!!!????」」」」




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291 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:41:45 ID:khqOjRnI0



四人の叫び声が、教会前に響き渡った。




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292 名も無きAAのようです :2015/09/27(日) 15:48:12 ID:IMsMnNhU0
支援

293 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:49:22 ID:khqOjRnI0



1.はじまりの街



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294 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 15:57:26 ID:khqOjRnI0

教会の中に入った五人は、ドクオに案内させて奥の部屋に入った。

長机が七つほどあり、それぞれに椅子が四つずつついているその部屋は、
中規模なグループが会合をするにはちょうど良いくらいの広さだったが、
今は五人しかいない。

(ツン)「あんたねー。何考えてるのよ!
人には何度も何度も身長体型を変えるなとか言っておいて!」

黒髪の美女が、座って肩を竦めている美丈夫に詰め寄る。
絵になる光景だ。

(ドクオ)「お、おれはテストの時からこの姿で、
こっちではこの姿の方がなれてるからいいんだよ」

最初は声を張っていた美丈夫……ドクオだったが、
美女に睨まれるという現実では経験したことのないシチュエーションと、
中身がよく知っている『ツン』であるという現実に、
いつもよりおどおどとしていた。

(ショボン)「そういえば、最初の頃のレポートではよく転んだって書いてたよね。
そういう事だったのか」

(ドクオ)「そうなんだよ!
最初は歩くこともままならくってさ。
腕のリーチも違うから剣を振るタイミングとか距離感とか慣れるまで大変でさ!」

少し離れた場所に座った美青年……ショボンが、
相変わらず右手を振りながら会話に参加した。
分かってはいるが、ウインドウを自分しか見えない不可視モードにしているため、
その右手を振る動作が少しおかしい。

(ツン)「他のゲームでもそうだっていうんだから、
普段の身体サイズでやればいいでしょうが!」

(ドクオ)「そ、そそ、それは……さ……」

(ツン)「なによ」

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295 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:00:07 ID:khqOjRnI0

(クー)「もしかして、理想、憧れなのか?
そういう体型が」

(ドクオ)「…… …… ああ。そうなんだ」

二人のすぐそばで見守っていた金髪美人……クーが口を開く。

彼女の頭の中では、祖母に見せてもらった昔の道場の写真が思い出されていた。
その写真には、ドクオの父が写っていた。

(ドクオ)「おれ、ちっさいし、飯一杯食べられないし、
多分あんまり大きくなれないだろうからさ。
太りたくはないけど、あんま筋肉とかつかない体質だし。
だからせめてここでは、理想の体型になりたかったんだ」

(ツン)「あんた……」

ドクオの悲しげな言葉に、思わず言葉を詰まらせるツン。
この世界では声も現実世界とは違っているが、
何故か今のドクオの言葉は、全員がドクオの声で聞こえた気がした。

(クー)「仮想現実は、
現実では叶えられないことを現実化させることの出来る世界。
と、何かに書いてあったのを読んだ。
そして、そうだなと納得した。
だから君の姿を非難したりはしないが、
せめて言っておいてほしかったな」

クーの言葉は現実世界と同じく感情を感じない無機質な響きを持っていた。
それゆえ誤解され、友人と呼べる者が少なかった。
だが何故か、この世界では、その言葉に込められた優しさが伝わっていた。

(ドクオ)「ありがとう……」

(ブーン)「おっおっお。
じゃあ早く外に行くお!」

不安げに会話を聞いていたブーンだったが、
なんとなくまとまったのを感じて笑顔で声をかける」

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296 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:02:09 ID:khqOjRnI0

(ツン)「そうね。せっかくだから楽しまないと」

(クー)「うむ。今日は7時までには帰ると言ってあるから、
五時半ごろには出ないといけないしな」

(ドクオ)「あ、ああ!
そうだな!
この街だけでも時間は潰せるけど、どうせなら戦闘もしようぜ!」

(ブーン)「だおだお。
そういえばショボンはさっきから何をしているんだお?」

それぞれに笑顔を見せながら扉に向かう。
しかしショボンが出遅れたため、
ブーンが振り返って声をかけた。

(ショボン)「あ、うん。
一応メニューバーが説明書にあったのと違いが無いか、
フルチェックをしていたんだ」

(ツン)「あんた、あの電話帳みたいなの全部読んだの?」

(ショボン)「読んだよ」

呆れ半分、感心半分と言った顔をしたツン。
それに対してショボンは当たり前のように普通に返した。

(ブーン)「おー。すごいお。
僕はスタートアップと簡易マニュアルの方しか読んでないお」

(ツン)「私も。
まあ所詮ゲームだし」

(ドクオ)「おまえら、ちゃんと読んどけよ」

(ツン)「何の為にあんたとショボンと一緒にゲーム始めたと思ってるのよ」

(ブーン)「頼りにしてるおー」

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297 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:03:55 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「おまえら……。
クーさんは?」

(クー)「ちゃんと読んだのはブーンと同じ簡易マニュアルとスタートアップマニュアルだけだ。
正式マニュアルは流し読み程度だな」

(ツン)「とか言いながら、ちゃんと読んだんでしょ?」

(クー)「まぁ読みはしたが、ちゃんと覚えているかどうかと言うと、自身は無い。
だから『流し読み程度』だ。ショボンは全部覚えているのか?」

(ショボン)「多分ね。大丈夫だと思いよ」

(ツン)「どういう脳味噌してるのよ」

(ブーン)「昔から教科書とか一回読めば覚えてたおね」

(ツン)「そうなの!?」

(ショボン)「教科書程度ならね。
でも流石に今回のは2回全部読んで、気になるところは何回か確認したよ」

(クー)「それで覚えられるのか」

(ショボン)「うん。でも、覚えるだけならその本を持っていればいいだけだし、
今ならパソコンでもタブレットでもどうにかできる。
結局はその知識をちゃんと使うことが出来るかどうかなんだよ」

(ドクオ)「テストに持ち込みできません」

(ショボン)「そこに関しては何とも言えません。
頑張って覚えてください」

ぼそっと呟いたドクオに、
笑顔でショボンが返す。

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298 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:06:38 ID:khqOjRnI0

(ブーン)「おー。暗記物苦手だから羨ましいお」

(ツン)「で、記憶も活用も出来る新生徒会長さんは、
チェック終了したの?特に問題は無かったわけ?」

(ショボン)「……まあ、うん」

(クー)「?歯切れが悪いな」

(ショボン)「いや…うん。
細かい変更と言うか、順番が違っているところとか説明文の誤字とかがあったから」

(ブーン)「それくらいは許してあげてほしいお」

(ショボン)「うん。でも気になったから、GMにメールしておいた」

(ツン)「ジーエム?」

(ドクオ)「GM、GameMasterの略で、
こういったオンラインゲームでは管理者とか運営者とかを言うんだ。
つーか、それは簡易マニュアルにも載ってたはずだぞ」

(ツン)「しらなーい」

(ドクオ)「まったく」

(ツン)「でも、正式運営はじまった初日の、
まだ2時間も経って無い状態で説明文の誤字を指摘されるのは色々厳しいのは分かる」

(ブーン)「ツンもお手柔らかにしてあげて」

(クー)「そのGMへのメッセージだが、
それは誰でも連絡できるものなのか?」

(ドクオ)「ああ。メッセージ機能で送ることが出来る。
プレイヤー同士で送りあうことが出来るメッセージ機能だけど、
初期設定でGMにだけは送れる様に登録してあるんだ。
多分消去も出来ないはずだから、間違って消したりすることも無い」

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299 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:10:01 ID:khqOjRnI0

(ツン)「ふーん」

(ドクオ)「ホントに興味ないんだな」

(ツン)「先ずは二人に聞くし、
そこで分からなかったらどちらかが連絡するでしょ?
私が使うことは無いと思うし」

(ドクオ)「……あてにしてもらえて嬉しいよ」

(ツン)「私がドクオを当てにすることなんて滅多にないんだから、
頑張る様に」

(ドクオ)「へいへい」

(クー)「しかし、何か聞きたいことがあって一万人がそれぞれメッセージを送ったら、
運営とはいえ混乱するんじゃないか?」

(ドクオ)「んー。スタッフ一杯用意してると思うし、大丈夫だと思うけど……。
それにスタッフが街に点在してるから、細かい質問はスタッフ捕まえて聞けばいいし」

(ツン)「それって連絡来てなかった?」

(ドクオ)「へ?」

(ツン)「なんか、最初は自分達の力だけで世界を楽しんでくださいとかなんとかで、
街にはNPCだけでスタッフはいないですよ的なメッセージ」

(ドクオ)「は?!」

慌ててウインドウを出すドクオ。

(ブーン)「向かってる時に突然チャイムと視界の端に何か出て、
ビックリしたお」

(クー)「ああ、どこを見ても視界の隅にチカチカ光る何かがあって、
何事かと思った」

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300 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:11:26 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「げっ!ホントに来てる!
なんでおれには通知が……。
なんで通知機能がオフになってるんだよ!
デフォルトはオンだろ!?
あー。こっちもオフだ。良かった。街の外出てなくてほんとによかった」

ウインドウを開いて独り言を言いながら操作しているドクオ。

(ツン)「ちゃんとマニュアル読まなきゃだめよー」

(ドクオ)「……マニュアル関係ないし」

ツンの言葉に、少しバツが悪そうに答えたドクオだった。



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301 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:13:16 ID:khqOjRnI0

1-2


教会を出た五人は、ドクオを先頭に路地裏を歩き、ある民家の軒先にやってきた。

(ドクオ)「到着―。
みんな、武器は何にするかちゃんと決めたか?」

(ブーン)「ここがお店なのかお?」

(ドクオ)「ああ。隠しショップだ。
他の店に比べると格段に安い。
ただ一日の販売量が決まってるみたいだから、
この店を知ってるβテスターが押し寄せてたら、買えないかもしれない」

(ツン)「なにそれ」

(ショボン)「無限に安価で売ってたら、他の店が売れなくなるし、
バランスが崩れちゃうってことなのかな」

(クー)「そういうものなのか?」

(ショボン)「いや、僕もオンラインゲームは初めてだから想像だけど」

(ブーン)「でも、オンラインゲームは、
普通の家庭用ゲームと色々違うっていうからそういうのもあるのかもだお」

(ツン)「RPGはほとんどやったことないのよね」

(ブーン)「ツンは格ゲーはうまかったおね」

(ツン)「隙をついたり、コマンドで技を出したり、
壁際に追いつめたりするのは好きだったわね」

(クー)「私はテレビゲーム自体やったことが無いからな」

(ブーン)「そうなのかお?」

(クー)「あまり興味も無かったからねだらなかったし、
両親や祖母もやらないから家にないんだ」

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302 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:14:51 ID:khqOjRnI0

(ブーン)「おっおっ。ならやらないおね。
うちは家にあったから、小さいころからやってたんだお」

(ツン)「……父さんがゲーム機揃えてた」

(ブーン)「おじさん……」

(クー)「おじさん……」

(ドクオ)「何やってんだよ。
ほら、中入って」

家の前で三人が話していると、先に中に入っていたドクオが顔を出し、中に入るように促す。
そして三人も民家に入ると、壁に数種類の武器が並べられていた。

(ブーン)「おお!」

(ショボン)「ドクオが会話をはじめたら、段々と出してきたんだよ。
話す順番とか、聞く順番とかあるんだよね?これ」

(ドクオ)「そうそう。
決まった順番で、キーワードを入れた会話をしないと出てこないんだ。
まだ全種類あるけど、どうする?
一応片手剣、曲剣、槍なら、基本的な動きを教えられるけど」

(ブーン)「僕は片手剣で良いお」

(クー)「私は槍だな」

(ショボン)「弓は無いんだよね。じゃあ僕も槍にしようかな」

(ドクオ)「おれはさっき買った片手剣があるから良いとして、ツンはどうする?」

(ツン)「私は……この細いのも片手剣?」

(ドクオ)「これは細剣だな。やってないからちゃんとは教えてやれないけど、
基礎基礎くらいなら……」

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303 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:16:56 ID:khqOjRnI0

(ツン)「じゃあ、私はこれ」

(ドクオ)「了解。さっき預かった金でまとめて買っちゃうけど良いよな」

(ブーン)「よろしくだおー」

(美少女)「私には短剣を買って」

突然現れた美少女が、ドクオの服を掴んで彼を見上げながら小首をかしげていた。

(ブーン)「おっ!?」

(ツン)「えっ!?」

(クー)「いつの間に」

(ショボン)「知り合い?」

(ドクオ)「しらない!」

(美少女)「えー。酷いなー。あんなことやあんなことを、いっぱいしたのに」

(ツン)「あんた……」

(クー)「そういうやつだったのか?」

(ブーン)「え?お?え?ええっ?」

(ショボン)「βテスト時代の友達?」

(美少女)「……なんか一人冷静な人がいるとのれないよね」

ツンと同じくらいの身長だが、屈んでドクオの上着を摘まんでいたためかなり小さく見えた。
しかしつまらなそうに立ち上がると、狭い店の中で器用にお辞儀をした。

(美少女)「お久しぶり。
この店を知っていてその体格でその受け答えってことは、
アルルッカバー君だよね?」

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304 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:20:37 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「その名前を知ってるってことは……そうか!
その姿!お前『ミカゲ』か!?」

(美少女)「ピンポーン。お久しぶり。
あんなに仲良くしたのに忘れてたなんて、悲しいな」

ドクオに向かって可愛らしく微笑む美少女。
少し慌てながらも、βテスター仲間に会えたことを喜ぶドクオ。

二人が話す姿はかなり絵になる光景なのだが、
片方の中身を知っている四人には微妙な空気が流れている。

(美少女)「短剣二本と、片手剣一本も追加宜しくね」

(ドクオ)「なんでそんなに……もしかして!あいつらも!?」

(美少女)「大当たり!『ハクヒョウ』と『コクエン』も外にいるよ。
この店開放するのめんどうくさいから、助かっちゃった。
一人でいくつも買えるけど、一回買うと元に戻っちゃうなんてめんどくさいよね」

(ドクオ)「まったく……横着なのは相変わらずだな。
そんなことでちゃんとした忍者になれるのかよ。
ほら、先にコルよこせ」

(美少女)「はいはい。分かってますよ。
そして大丈夫!今度こそエクストラスキルの体術をとって、忍者になります!」

(ドクオ)「はいはい。頑張ってくれ」

(美少女)「はーい!」

二人の会話をただ聞くだけだった四人。
しかしドクオが隠し武器屋のNPCに声をかけると、美少女は四人に向かってお辞儀をした。

(美少女)「こんにちは。
アルルッカバー君のβテスト自体の友達です。
ここでは『くノ一』目指して頑張る予定です!」

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305 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:22:16 ID:khqOjRnI0

四人にむかって可愛らしく挨拶をする美少女。
まだこの世界で表現することに慣れていない四人と違い、
それは自分の見た目を意識したうえで、
その可憐な容姿の魅力を最大限に引き出す仕草だった。

しかし女二人は勿論男二人にも感銘を与えることは出来ていないのが分かり、
眉間に皺を寄せた。

(美少女)「アルルッカバー君の友達ですよね?
宜しくお願いします」

可愛らしく手を差し出す美少女。

その手はブーンに向けられていたが、
手を握ったのはショボンだった。

(ショボン)「こんにちは。『ミカゲ』さん?
僕は彼の友達でショボンと言います」

(美少女)「『ショボン』さんですね。
宜しくお願いします」

ニッコリと微笑んだ美少女。
それに対し、儀礼的な笑顔で返すショボン。

(ブーン)「おーー」

それを見て小さく呟いたブーン。
ツンが耳元でささやく。

(ツン)「どうしたの?」

(ブーン)「ショボンが敵対モードに入ってるお」

(ツン)「敵対モード?
別に普通と変わらない様に見えるけど」

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306 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:24:18 ID:khqOjRnI0

(ブーン)「初対面の相手とか、
自分や僕達に敵意を向けたり難癖をつける相手には、
いつでも反撃できるように構えることがあるんだお」

(ツン)「今がそんな感じなの?」

(クー)「特に普段と変わらない様に見えるが」

こそこそと話す二人にクーが顔を寄せた。

(ブーン)「うう……。かなり警戒してる感じだお」

(ツン)「ふーん」

(クー)「ない……ブーンがそう言うのならば、おそらくはそうなんだろうが、
ショボンは彼女のどこにそこまで警戒しているんだろうな」

(ツン)「私達に難癖付けようっていうのかしら」

握手をしたまま笑顔で会話をする二人を見つめる三人。
すると買い物を済ませたドクオがやってきた。

(ドクオ)「悪いショボン、こいつはお前と一緒で悪知恵は働くけど悪いやつじゃないと思う。
ミカゲ、とりあえず外で渡すから出るぞ。
あ、あとおれ名前を変えたんだ。これからは『ドクオ』って呼んでくれ。
ブーン、ツン、クーさん、外に出よう」

(美少女)「悪知恵働くとか酷―い」

(ショボン)「お前と一緒って」

(ドクオ)「良いから良いから。ほらほら外に出て。
ここは買い物終わった後長居すると怒られるんだよ」

(美少女)「しょうがないなー。
分かったよ。ドクオ君。
因みに私も名前変えたんだよ」

(ドクオ)「それも外でな。
ほら、三人も早く」


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307 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:27:15 ID:khqOjRnI0

1-3



ドクオに促されて店の外に出る五人。
最後にドクオが出ると、民家の扉が静かに閉まった。

(ドクオ)「しかしショボンのアンテナはこちらでも健在だな。
こいつに関わると面倒くさいのに気が付くとは」

(美少女)「ドクオ君ひどーい。
もう遊んであげないぞ」

(ドクオ)「βテスト時代に敵に落とされた剣を盗みやがったのに、
よくそんなこと言えるな。
まだ返してもらってないぞ」

(美少女)「テスト時代の事は終わったことだよ」

(ドクオ)「まったく」

通りの真ん中に出た後、道のはじに寄るドクオと美少女。

ドクオの後ろに四人がいる。

(ドクオ)「で?ふたりはどこだ?」

(美少女)「二人とも、出てきていいよ!」

美少女が声をかけると、少し離れた路地から二人の青年が現れた。

二人は完全に同じ設定にしたらしく、
顔・背格好・髪型が全く同じだった。
違うのは肌の色で、片方は透き通るような白い肌をし、
もう一人は浅黒く焼けたような肌の色をしている。
そして髪型は二人とも短く刈り込んだ坊主に近いような髪型だが、
白い肌の青年は黒髪で、浅黒い肌の青年は白い髪だった。

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308 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:29:25 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「ハクヒョウ、コクエン、久しぶりだな。
アルルッカバーだ」

(白い肌の青年)「アルルッカバーか。久しぶりだな」

(浅黒い肌の青年)「おまえも始めたんだな」

どうやらドクオのβテスター時代の知り合いのようだが、
久し振りの再会にも笑顔は見せない。

(ドクオ)「当然だろ。
で、おれ名前変えたんだ。
これからは『ドクオ』って呼んでくれ」

(白い肌の青年)「そうか。おれもハクヒョウから『ビコーズ』に変えた。
これからはそう呼んでくれ」

(浅黒い肌の青年)「おれは『ゼアフォー』だ。間違えるなよ」

(ドクオ)「『ビコーズ』と『ゼアフォー』だな。
了解了解」

ドクオがウインドウを操作すると、二人の目の前にウインドウが現れた。
そしてそれぞれに短剣と片手剣が渡された。

(ビコーズ)「覚えていてくれたんだな」

(ゼアフォー)「今度は負けんぞ」

渡された武器を装備する二人。
βテスト時代からの所作であり、まったく迷いがない。

(ドクオ)「おれだってそう簡単には負けるつもりはない。
というか、そんな事よりもお前らにはお前らの目標があるだろ?」

(ビコーズ)「ああ!今度こそ『体術』を!」

(ゼアフォー)「まずはあの『鼠』を捕まえないことには」

.

309 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:31:22 ID:khqOjRnI0

(美少女)「ねえねえ、私の武器は?」

ドクオと二人の青年が話している間に割り込む美少女。
その途端に二人の青年の表情がだらしなく緩む。
それに気付いてすぐ引き締めたが、
その表情の変化はそこにいた全員が確認していた。

(ドクオ)「相変わらずだな、お前ら。
ベータの時からこいつの事を姫とか呼んでちやほやしてたけど」

ドクオが指摘しつつ美少女に対してウインドウを開く。

(ビコーズ)「当り前だ!
我らは姫を守る忍び!」

(ゼアフォー)「姫に仕える忍者!
白と黒の影!」

(美少女)「もう二人ともったら」

(ドクオ)「あーはいはい。
ほれ、短剣」

(美少女)「ありがとう。ドクオ君」

ウインドウを閉じ、渡された短剣を装備する美少女。

(ビコーズ)「貴様こそ!」

(ゼアフォー)「我らが姫に恋心など抱いておらんだろうな!」

(ドクオ)「抱くか!
なんでおれがこんな奴を!」

(ビコーズ)「なにを!」

(ゼアフォー)「姫を愚弄するな!」

(ビコーズ)「可憐で美しくて可愛らしくて華やかな姫を好きでないわけがない!」

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310 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:33:07 ID:khqOjRnI0

(ゼアフォー)「そうだ!姫の事を好きでないわけがない!」

(ドクオ)「なんなんだよお前らは!?」

詰め寄ろうとする二人におびえるように後ずさるドクオ。
その後ろの四人は少し引きながらその状況を見守っている。

(美少女)「もう、だめだよ。二人とも。
私はみんなの姫なんだからね」

(ビコーズ)「姫!」

(ゼアフォー)「姫!」

人差し指を立て、二人に可愛らしく分かりやすい怒った表情をする美少女。
二人は片膝をついてしゃがみ、彼女を見上げた。

(美少女)「二人は代わりの無い永遠の私の忍びなんだから、
あんまり変なことしないでね」

(ビコーズ)「姫!ありがたき幸せ!」

(ゼアフォー)「姫!ありがたき幸せ!」

首を垂れる二人を見て笑顔をみせた美少女。

呆れた顔でそれを見るドクオ。

その後ろで四人が完全に引いていた。

(美少女)「ごめんね。ドクオ君」

(ドクオ)「本当に相変わらずだな」

(美少女)「こういうのも、ゲームの楽しみ方だよ」

可愛らしく片目をつぶろうとして両目をつぶってしまう美少女。
ドクオの目には、それすらも計算のようにみえる。

.

311 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:37:10 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「はいはい」

(美少女)「ドクオ君は昔からそんな感じだよね。
こっちの世界でそういったことを求めないのは、
後ろの友達のおかげなのかな」

(ドクオ)「おれはこのゲームで色恋を求めたりしてないから。
お前のそういった計算に惑わされないでいられたのは、
あいつらのおかげかもしれないけどよ」

(美少女)「そうなんだ。素敵な人達だね」

(ドクオ)「……何を企んでる?」

(美少女)「酷いなー。
言葉通りの意味だよ。
私だって、嘘ばっかりついてるわけじゃないもん」

(ドクオ)「はいはい」

(美少女)「そうだ!フレンド登録しておこうよ。
機会が合えばダンジョンも行きたいしさ」

(ドクオ)「あー。そうだな。
一緒にダンジョンはともかく、登録はしておくか。
おまえら『鼠』を探すんだろ?見付けたら教えてくれよ」

(美少女)「体術スキルの情報が欲しいから探すけど、
ドクオ君も何か欲しい情報があるの?」

(ドクオ)「あいつとは知り合いになっておいた方が得だろうからさ。
情報は重要だ」

(美少女)「ドクオ君だって情報溜めこんでるでしょ?
知ってるよ。結構上まで行ってたの」

.

312 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:39:10 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「βテスターの中で、ちゃんとレベル上げが出来たり、
ゲームを楽しめていたのは2割もいなかったんじゃないか?
おれ程度の腕でボス戦に参加出来たぐらいだし。
終りの頃にはやってない奴も多かっただろ?」

(美少女)「……話反らすのが下手だよ。ドクオ君
でもまあそういう事にしておいてあげるね」

(ドクオ)「……ありがとうって言っておいてやるよ」

美少女とドクオの前にウインドウが開く。

(美少女)「これからも宜しくね」

(ドクオ)「んー。ああ、そういや名前変えたって言ってたな。
……これは普通に読めばいいのか?」

(美少女)「うん。可愛いでしょ?」

フレンド登録を済ませてウインドウを消した二人。

(ドクオ)「はいはい」

(美少女)「ねえねえ、名前呼んでよ」

(ドクオ)「はあ?」

(美少女)「だって二人は姫としか呼んでくれないんだもん。
折角名前変えたから、ちゃんと呼ばれたいなって思って。
最初に呼んでくれるのが、ドクオ君だったら嬉しいな」

(ドクオ)「……そうやって何人の男プレイヤーをお前は……」

(美少女)「こんなことは、アルルッカバー君だけにしか言いませんー」

(ドクオ)「おれの名前は『ドクオ』だ」

(美少女)「そう呼んで欲しかったら、私の名前も読んでよ」

(ドクオ)「……めんどくさ」

.

313 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:42:59 ID:khqOjRnI0

(美少女)「ひどーい」

ドクオの熱い胸板をポカポカと叩く美少女。

(ドクオ)「ああ、分かった分かった。だから離れろ」

(美少女)「はーい」

半歩だけ後ろに下がり、ドクオを見上げる美少女。

(ドクオ)「もっと離れろこら」

(美少女)「はやくー」

(ドクオ)「まったく…」

小首をかしげながら微笑む美少女。
大きく一回ため息をつくドクオ。

そして名を呼ぼうと口を開いた瞬間、
跪いていた二人が立ち上がって美少女を挟むように並んだ。

(ビコーズ)「姫!」

(ゼアフォー)「姫!」

(美少女)「何よもう!」

(ビコーズ)「いまそこに!」

(ゼアフォー)「『鼠』のような人影が!」

(美少女)「なんですって!」

三人にとって後方を指さす二人。
美少女は振り返り、今までとは比べ物にならないような鋭い声を出した。

(美少女)「本当に鼠だったの!?」

.

314 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:45:22 ID:khqOjRnI0

その声色の変化にドクオの後ろにいる四人は驚いたが、
ドクオと白黒の二人は全く気にしていない。

(ビコーズ)「背格好はβテストと同じでした!」

(ゼアフォー)「チラッとですが、頬に三本の線が!」

(美少女)「追うよ二人とも!」

(ビコーズ)
 「はい!」
(ゼアフォー)

(美少女)「ドクオ君またね!」

美少女は最後にもう一度ドクオに向かって可愛らし声で声をかけると、
二人を従えて風のように走り去っていった。

それを普通に見送ったドクオだったが、
慌てて後ろを振り向く。

(ドクオ)「わ、悪い、皆、時間を取らせちゃって……」

ドクオと四人の距離は一区画分ほど。

それが今の彼らの心の距離だった。




.

315 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:47:21 ID:khqOjRnI0




2.剣の世界




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316 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:50:28 ID:khqOjRnI0

2-1


(ドクオ)「だから、何にもないって!」

(ブーン)「おっおっお。ドクオにもああいう女の子の友達が出来て良かったお」

(ドクオ)「だから違うって!」

(ツン)「まったく……。
テストプレイの間、その身体で何をしていたんやら」

(ドクオ)「おれは無実だ!」

はじまりの街のそばの戦闘エリア。
それぞれにイノシシ型のモンスターを一匹ずつ倒すことが出来たため、
丘の上にのぼり休憩をしている五人。

移動の最中も似たような会話をしていたのだが、
やはり話題は先ほどのドクオと美少女達のやりとりに関してだった。

(クー)「不潔だな」

(ドクオ)「クーさんまで!」

(ツン)「不潔よねー」

(ドクオ)「お前は分かって言ってるよな!」

(ブーン)「不潔だお―」

(ドクオ)「ブーンまでか!」

(ショボン)「ねえねえ、『鼠』って何?
『エクストラスキル』は調べたときにあったから覚えてるけど、
『鼠』はMMORPGの公用用語じゃないよね?
あと『体術』スキルとか」

.

317 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:52:37 ID:khqOjRnI0

丘の上、座ったドクオを囲む様に四人は座っていた。
街で、同じく通常売りより安価で買える道具屋で買ったHP回復ポーションを飲みつつ会話する。

(ツン)「あんたはもう少し空気読みなさい」

(ショボン)「いやだってさっきから同じ話をしてるだけだからさ。
もう良いかなって思って」

(クー)「そうだな。そろそろ飽きてきた」

(ツン)「それもそうね」

(ドクオ)「酷い!お前らやっぱり酷い!」

(ブーン)「ドクオがそんなことできない奴だってことは分かってるお」

(ツン)「中身がドクオじゃ、そんな度胸ないわよね。
それに、仮想空間のこの身体じゃ、そんなことできないでしょ」

(ショボン)「出来るよ」

(ツン)「え?」

(クー)「いや、確か『倫理コード』があって、
一般的に抵触されるような行動、
15禁レベルの動作は禁止されているはずではなかったか?」

(ドクオ)「あ、ああ。
そういった行動をすると、された方にメニューが出て、
はじまりの街にある牢獄に送ることが出来る。
それに確か目に余る行動はシステムが判断して牢獄に送られるはずだ」

(ショボン)「基本的にはね。
でもメニューの中の『倫理コード』を解除すれば、
当人達の合意の行動だってことでシステムが認識するみたいだよ。
流石に人目に触れる所でそういったことをしてたらシステムに弾かれると思うけど」

(ドクオ)「べ、βの時はそんなの確かなかったぞ!」

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318 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:54:38 ID:khqOjRnI0

(ショボン)「正式サービスに移行するにあたって追加されたんじゃないかな。
何考えて付け足したのかは分からないけど。
……あれ?みんなどうしたの?」

ショボンの言葉を聞いて、四人とも別々の方向を向いて黙ってしまう。

(ショボン)「どうしたの?」

その空気を無視して声をかけるショボン。

(ドクオ)「さ、さてもう一匹ずつ倒してみるか!
まだ時間もあるし!HPも全快したし!」

立ち上がるドクオ。

(ツン)「そ、そうね!倒しましょうか!
それにしてもこのポーションってやつ、不味かったわね!」

(ブーン)「おっおっ!頑張って倒すお!
でもこっちの世界でも味を感じることが出来るのってやっぱり不思議だお!」

それに続いてツンとブーンが立ち上がる。
そしてクーが立つ。

(クー)「そうだな。時間まで楽しもう。
しかし、飲んだらすぐ回復しないんだな。
じわじわとHPバーのランプが戻るのはもどかしかった」

(ツン)「そうそう。
のんだらパッと戻ればいいのに」

(ドクオ)「ま、そういうところも考えながら戦うってことだな」

(クー)「すぐに増やせるアイテムは無いのか?」

(ドクオ)「あるけど一・二層では出てこない。
それに高いから、あんまり使えない」

(クー)「この世界も金が全てと言う事か」

.

319 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:56:20 ID:khqOjRnI0

丘を下りていくブーンとツンを追おうとするクーとドクオ。

(ドクオ)「そんな身もふたもない。
クーさんもなかなか辛辣だね」

(クー)「『クー』だ。『さん』はいらないぞ」

(ドクオ)「え?あ。それはその……」

(クー)「向こうの世界で苗字に『さん』を付けるのは仕方ないが、
こちらでは『クー』でよい。
いや、ブーンにもドクオにもクーと呼んでもらいたい」

(ドクオ)「が、頑張ります」

(クー)「うむ。そうだな。ちゃんと呼べるようになったら、プレゼントをやろう」

(ドクオ)「プレゼント?」

(クー)「お父さんは、そこまで背は高くなかったぞ。
そのアバター、顔は少し似ているが流石にそこまでの大男ではなかったようだ。
ドクオは小さい時に見上げたイメージでそれくらいの身長にしたのではないか?」

(ドクオ)「な、なんで父さんの事を!?」

(クー)「君の父親は私の家の道場の門下生だったそうだ。
君も来たことがあるようだ。その時に撮った集合写真が我が家のアルバムに残っていた。
それを渡す暇なく、お父上は事故にあわれてしまったようだが」

(ドクオ)「父さんが通ってた剣術の道場!
行った思い出は確かにあるんだ。
でも、どこかは分からなくって。
なんか、母さんにも聞けなくて……。
クーさんの家だったなんて……」

.

320 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 16:59:36 ID:khqOjRnI0

(クー)「世間は狭い物だな。
私の祖母も驚いていたよ。
祖母はずいぶんお父上をかっていたようだ。
君の名字を聞いただけですぐさまお父上の事を思い出していた」

(ドクオ)「父さんの……死ぬ前に撮っていた写真……」

(クー)「今度、持っていくよ。
良ければ我が家に来てくれても良い。
祖母が君に会いたがっていてな」

(ドクオ)「…… …… …… 父さん」

(クー)「ドクオ?」

(ドクオ)「あ、う、うん。分かったよ。ありがとう、クーさん」

(クー)「クーだ」

(ドクオ)「あ……」

口を押えるドクオをみて、笑うクー。

(クー)「頑張って呼んでくれ」

クーは笑顔を見せると、ツン達を追って丘を下りていった。
呆然と立ち尽くすドクオ。
今聞いたことが信じられないといった雰囲気であった。



.

321 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 17:04:16 ID:khqOjRnI0

2-2



(ショボン)「良かったね。ドクオ」

歩いていくクーの後ろ姿をぼんやりと見ていると、
後ろからショボンに声をかけられた。

(ドクオ)「おっ!」

(ショボン)「ごめんね。聞こえちゃったんだ」

振り返ると、柔和な微笑みを自分に向ける親友。

(ドクオ)「い、いや、それは良いけど」

(ショボン)「良かったね。お父さんの写真」

(ドクオ)「あ、ああ……。うん」

(ショボン)「頑張ってクーの事を呼び捨てにしないと」

(ドクオ)「……ハードル高い……。
っていうかショボン、なにいきなりあんな話してるんだよ!」

(ショボン)「あんな話?ああ、倫理コードの件?でも事実だし」

(ドクオ)「事実だとしても今言わなくても」

(ショボン)「ちょっとドクオに話があったんだよ」

(ドクオ)「え?」

ショボンの表情が引き締まり、真剣な瞳で自分を見ることに気付く。
顔の造形は普段と違っても、親友がどんな気持ちでいるかは分かった。

(ドクオ)「どうした?」

.

322 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 17:08:00 ID:khqOjRnI0

そして自分も気分を引き締めてショボンを見た。

(ショボン)「これを見て」

ショボンの右手が数度動く。
メニューウインドウは、通常自分以外には見られない仕様である。
そこでショボンはドクオにも見てもらえるように可視化したウインドウを出した。

(ドクオ)「もうおれよりうまいんじゃないか?」

(ショボン)「これ……ここ」

ドクオの軽口を流し、ショボンがメニューの一つを指さす。

そこは、空欄だった。

(ドクオ)「空欄?この位置は……え?」

(ショボン)「自分のメニューも見てもらえるかな」

ショボンに言われる前にドクオの右手が閃く。
そして現れたウインドウをほぼ確認なしで動かして、
ショボンが指示したメニューを呼び出す。

(ドクオ)「……おれもだ。こっちも無い」

(ショボン)「全メニューを探したけど、そこにあるはずのメニューはどこにもなかった」

(ドクオ)「おい……ってことは……」

腕を組み、じっとドクオの顔を見ているショボン。

(ショボン)「ログアウトボタンが無いってことは、
この世界から出られない。元の世界に戻れない……ってことだよね」

(ドクオ)「まあ、そうだな」

(ショボン)「入った後すぐに一回全部見た時は、ちゃんとあったんだ。
でも、そのあと記憶とのダブルチェックをしている時には消えていた」

.

323 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 17:09:50 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「マジかよ」

(ショボン)「その時点でGMには連絡を入れてる。
でも、返事が無い。
そろそろ3時間経つんだけどね。
いくらなんでもおかしいと思わない?
それに、1万人のプレイヤーがいるとして、
気付いたのがぼくだけとは考えにくい」

(ドクオ)「初期不良…だろ?
もうすぐアナウンスも流れるさ」

(ショボン)「それなら良いんだけど」

笑うドクオ。
しかし少し無理をしているように見える。

(ショボン)「ドクオ、マニュアルには無かったんだけど、
ログアウトボタン以外にログアウトする方法あるの?」

(ドクオ)「……いや。無い。
あとは現実世界で電源を落とされるか、ヘルメットを外されるか……。
一回予定時間を2時間オーバーした時にかーちゃんに電源落とされた時はびっくりした」

(ショボン)「そう……。
一応父さんに6時になっても誰も戻ってこなければ電源を切ってもらうようにお願いはしてあるけど」

(ドクオ)「なら、問題ないだろ」

(ショボン)「うん。だよね。
ところでドクオ、この世界で死んだことはある?」

(ドクオ)「また唐突だな。
何回か死んだけど、それがどうかしたか?」

(ショボン)「死んだら、どうなるの?」

(ドクオ)「んー。死んだら自分の体はポリゴンに変わって、消滅。
で、精神の方と一緒にいつの間にか黒鉄宮に戻ってる感じだな」

.

324 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 17:13:53 ID:khqOjRnI0

(ショボン)「復活までの時間は?」

(ドクオ)「一分はかからなかったと思う。
20秒から30秒くらいかな。多分。
なんだよ一体。そんなことを聞いて」

(ショボン)「マニュアルにも、死亡した際の事は
『システムによって自動的に復活する』
程度の事しか書いていなかった。
ゲームなんだし、戦うわけだから、死ぬと思うんだけど、そんなものなの?
MMORPGって」

(ドクオ)「んー。ゲームによって違うかな」

(ショボン)「再生は?
教会とかの場合じゃなくて、復活の薬とか」

(ドクオ)「βテストのときは無かった。
もっと上の階に行けばあるかもしれないけど。
なんか、どうした?」

(ショボン)「いや、死んでもログアウト出来ないんだなって思って。
もしこのままログアウトボタンが出てこないとしても、
わざと死ねばログアウトできるのかなって考えたから」

(ドクオ)「そういうことか。
ああ。出来ない。自動的に復活させられてから、ログアウトボタンでログアウトだな」

(ショボン)「そっか……」

組んでいた手を片方だけ外し、ショボンは顎に手を当てた。

(ドクオ)「おい、ショボ」

(ツン)「ねえ!モンスターは!?」

(ブーン)「二人ともなにしてるんだお!早く来るおー!」

(クー)「これでもう打ち止めなのか?」

.

325 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 17:20:40 ID:khqOjRnI0

ドクオの言葉をかき消すように、下から三人が声をかける。
どうやら下りてはみたものの、モンスターが現れない為焦れていたようだ。

(ドクオ)「ここは時間湧きのはずだから、もうちょっと待て!」

三人に向かって声をかけた後、ドクオはいまだ何かを考えているショボンにも声をかけた。

(ドクオ)「ゲームの中じゃ、何もできない。
とりあえず運営からの連絡かアナウンスを待つことにして、
今はゲームを楽しもう」

(ショボン)「……そうだね。
打てる手は全部したし。
楽しもっか」

(ドクオ)「よし!いくぞ!」

駆け降りるドクオ。
その後ろにショボンが続いた。




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326 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 17:22:48 ID:khqOjRnI0

2-3



(ツン)「もうちょっと頻繁に出てきてもいいのに」

細剣を構えたツンが、軽やかなステップで剣を振った。

(ドクオ)「はじまりの街の周辺は初心者用、
練習用だから一度に出てくる数はそれほど多くないんだよ。
一人で来て練習できるように、一度に何匹も徒党を組んで出てきたりはしない。
レベル的にも弱いから普通に切っても倒せるし、
剣技を使えばほぼ一発か二発で倒せるくらいになってる」

それを見て、呆れつつも感心した面持ちでドクオがゲームについて講釈をたれていると、
ブーンが横に並んで立った。

(ブーン)「戦ってる時に後ろから襲われたら大変だおね」

(ドクオ)「そういうこと」

(ブーン)「でもこの剣技(ソードスキル)って、なかなか難しいおね」

ブーンが片手剣を両手で持って剣道のように構えると、
横でドクオは片手で構えを見せた。

(ドクオ)「慣れだなー。
武器それぞれに設定されてるから、その種類の武器を使えば使うほど技は増える。
で、技を使えば使うほど、技のレベルも上がる」

(ツン)「技のレベルが上がるとどうなるの?」

(ドクオ)「技の後起きる硬直時間が減ったり、
技の能力が上がって敵に与えるダメージが増えたり」

(クー)「なるほどね」

(ブーン)「おー。難しいお」

.

327 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 17:27:08 ID:khqOjRnI0

(ツン)「あら、私は結構好き」

(ドクオ)「細剣の最初の技はフェンシングの突きをかなり勢いよく放つみたいなやつだよな。
構えも分かりやすいし、モンスターに対する恐怖心さえ無ければ使いやすいんじゃないかな。
でもその分細剣の弱みでもある。
一回の攻撃力が同レベルの他の武器に比べると少しだけ弱い」

(ショボン)「なるほど。そういう違いがあるんだね」

(ブーン)「おかえりだおー」

(ショボン)「ただいま」

(ドクオ)「見てたけど、慣れてきたみたいだな」

(ショボン)「うん。だいぶね。
ソードスキルは決まると爽快だね」

(ドクオ)「だよな!だよな!
それが良いんだよ!これは!」

(ツン)「はいはい」

既に全員が二体ずつ倒し、
更に一体ずつ倒したドクオ、ツン、ブーンが喋っていると、
少し距離を置いた場所で戦っていたショボンが戻ってきた。

(ドクオ)「そして、一番意外だったのが」

(ブーン)「クーさんだおね」

四人の視線の先では、クーが猪型モンスターと戦っている。

(クー)「……」

怯むことなく、怯えることなく、腰を引くことも無く、ただ淡々と槍を構え、
向かってくる猪に攻撃を加え距離を置くクー。

(ドクオ)「……槍はすでにおれよりうまいな」

.

328 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 17:29:22 ID:khqOjRnI0

(ブーン)「さっきは剣技一発で倒してたおね」

(ツン)「楽しんでるわね」

(ドクオ)「え?」

(ブーン)「お?」

(ツン)「ん?なによ」

(ドクオ)「いや、無表情に淡々とこなしてるから、
青イノシシが弱すぎてつまらないのかと」

(ツン)「いやいや、楽しんでる楽しんでる。
あれだけ槍を使うのがうまいのは想定外だけど、
楽しんでるのはよく分かる。
顔姿は違っても、仕草や雰囲気は同じなのね」

(ドクオ)「そう」

(ブーン)「なんだ」

断言するツンに、言葉を繋げて納得する二人。

(ツン)「あんたはどう見てる?」

(ショボン)「ん?僕?
槍がうまいのは、家の人に薙刀とか習ってたりするのかな」

(ブーン)「薙刀?クーさんならってるのかお?」

(ツン)「いや、聞いたことないけど」

(ショボン)「僕も習ってるって聞いたわけじゃないけど、
確か来島家の道場では剣術と薙刀を教えていたはずだから、
もしかしたら少しは手ほどきを受けてるのかもしれないって話」

.

329 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 17:37:31 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「おれもよく分からないけど、
構えはそう言われるとそうなのかもって感じだな。
おれは槍も薙刀もゲームに出てくる武器として知ってるくらいだから、
全く見当違いかもしれないけど」

(ブーン)「クーさんはすごいおねー」

(ツン)「ホント、家じゃちゃんとお嬢様してるのね。
……って、そういう事じゃない!」

感心したようにクーを見ていた四人だったが、
ツンの叫びに身体を震わせて驚いた。

(ショボン)「どうしたの?
いきなり大声で」

(ツン)「そういう事じゃなくて、
ツンが楽しんでるように見えるかどうかって聞いてるのよ!」

(ショボン)「ああ、そういうこと。
そうだね。楽しんでいるように見えるよ。
顔はアバターで変わっているから分かり辛いけど、
肩の上下とか足のステップとかは楽しそうだよね」

(ツン)「……私から聞いておいてなんだけど、ひく答えね」

(ドクオ)「ひでえなおい」

(ツン)「いやだって、肩の上下とかステップとかってふつう見るところ?」

(ショボン)「視ないかな?」

(ツン)「見ない」

(ドクオ)「まあ、そこに関しては見ないかもしれない」

(ショボン)「そうかなあ」

.

330 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 17:58:40 ID:khqOjRnI0

(ブーン)「見る所のことは別にしても、
クーさんのそんなところから楽しいか分かるなんて、
ショボンはクーさんの事をよく分かってるおね」

(ツン)「(ブーンえらい!)」

(ドクオ)「(人の事には敏感なんだよな)」

(ショボン)「それなりに付き合い長いしね。
表情はあまり変えないけど、結構正直だよ。彼女は」

(ツン)「へー。そうなんだ」

棒読みで相槌を打ちつつも、にやにやと笑顔を見せるツン。

(ショボン)「言っとくけど、ブーンやドクオはもちろん、
ツンの事だってそれくらい見分けられる自信あるけど?」

(ツン)「あ、……そう」

ショボンの言葉に心底つまらなそうに答えたツン。
不思議そうにその姿を見るショボン。
そんな二人を見て、ブーンとドクオは苦笑いを浮かべるしかなかった。



.

331 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:00:11 ID:khqOjRnI0

2-4



(クー)「うむ。楽しいな」

通常攻撃だけで≪フレイジーボア≫通称『青イノシシ』を倒したクーが四人の下に歩いてきた。

(ドクオ)「お疲れ様」

(ブーン)「お疲れだお」

(クー)「二人ともありがとう。
だが、まだまだいけるぞ」

表情が出ていないが、アバターでもわかるほど目はキラキラと輝いていた。

(ツン)「私も負けてないからね」

(ショボン)「あ、あそことあそこ、出るよ」

唐突にショボンが呟き、槍の先で正面と少し右側を指す。

全員がその槍の先を交互に見ると、空間が歪み二匹の青イノシシが現れた。

(ツン)「いっちばーん!」

(ブーン)「ツン!一人じゃだめだお!」

丘を駆け下りていくツン。
それを追うブーン。
スタートの違いで少し差がついていたが、
すぐにブーンは追いついていた。

ブーンの走る姿を後ろで見守る三人。
ショボンとドクオは本当に安心したような顔をしている。

.

332 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:02:12 ID:khqOjRnI0

(クー)「ショボン、さっきから思っていたんだが、
モンスターのポップに敏感すぎないか?」

(ショボン)「え?そう?」

(ドクオ)「あ、それおれもさっき思ったんだ。
おれ達が気付くより先に気付いてるよ」

(ショボン)「いや、モンスターが現れる前って空間が歪むからさ。
だからそこを」

(クー)「空間が歪む?」

(ドクオ)「いや、おれ達にはそんなのは見えないぞ?」

(ショボン)「え?そうなの?
皆見えているんだと思った」

(クー)「いやいや」

(ドクオ)「それはない」

心の底から驚いているショボンを見て、
ドクオとクーが互いの顔を一回見てからツッコミを入れた。

(ショボン)「そうなんだ。みんなは見えてないんだ」

二人が少し打ち解けたのを見て心の中で笑顔を見せたショボンであったが、
その心の半分と表面では、指摘されたことを考えていた。

(ショボン)「……もしかすると……」

(ドクオ)「なにか心当たりがるのか?」

(ショボン)「今日僕はテストタイプを使ってるけど、
テストタイプって、ちょっとオーダーメイドに近いんだよ」

(クー)「ナーヴギアのオーダーメイドってことか?」

(ショボン)「うん。それに近い」

.

333 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:09:58 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「どういう事だ?」

(ショボン)「そうだね。説明すると……。

通常のナーブギアは、既製服なんだ。
かなり優秀で、SSサイズからLLサイズまでカバーできてる。
でも、SSサイズよりも更に小さい人や、LLサイズよりも大きい人には合わない。
洋服だと大きすぎてぶかぶかだったり、小さくて着られなかったりする。
ナーブギアだと、ゲームを始められなかったり、
ゲームの世界に来ることは出来ても遠近感が無かったり、片目が見えなかったり、
身体の反応が遅かったりといった症状が出て、
ゲームが出来なかったりするんだ。
これはナーブギアが『大多数をカバーする一般的なレベル』をフォローしてるからで、
一人一人に合わせた細かい調整をするにはかなりの時間とお金がかかるから、
しょうがないと言える。
ナーブギアの説明書にもその旨は書いてあるしね。

で、僕のやっていたテストは、
『脳の出した指令でゲームの中の身体をちゃんと動かす事が出来るか』
がメインで、その為に僕の脳に合わせたカスタマイズが多少されているんだよね。
言うならば、自分より少しだけ大き目の既製服を買ってきて、
裾を詰めたりウエストを直したり肩幅を調整したりして、
多少は自分の体に合わせている感じ。

あと、実は汎用型よりも少し脳に与えられる信号の強さも強いんだ。

だから皆よりは多少この世界との親和性が高いのかもしれないし、
そんな理由で、空間上の異常に敏感なのかもしれない」

(クー)「なるほどな」

(ドクオ)「ゲームをやるうえで結構なアドバンテージだよな。それ」

(ショボン)「そう?」

(ドクオ)「そりゃそうだろ。出てくる敵の位置が分かるなら対処の準備をすることが出来るんだから」

(ショボン)「でも、多分一秒くらいだよ」

.

334 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:12:28 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「おれ達が注意深く見ていた状態でな。
出るって言われたからじっくり見ていたけど、
普通はそこまで見ていないから気付かないさ」

(クー)「つまり、ショボンの観察眼と合わさることで、
大きな武器になっているということか?」

(ドクオ)「そういうこと」

(ショボン)「ふーん。そうなんだ」

(ドクオ)「感動薄いなおい」

(ショボン)「いやだって、テストタイプを使ってゲームするの今日が最後かもだし」

(ドクオ)「え?そうなの?」

(ショボン)「うん。ブーンのプロトタイプは別としても、
テストタイプは無駄も多いし機密部分もすぐ見られるようになっていたりするからね。
だから、いつまでこっちに置いておくか、使うことが出来るか分からないよ。
それに、基本的には僕も汎用型でゲームするし」

(ドクオ)「そうなのかー」

(クー)「今日はなぜテストタイプを使っているんだ?
もう一台ある様な事を言っていたと思うが」

(ショボン)「ああ。今日はね……。
親戚に
『(`;ω;´)本体の入荷が遅れて開始日に間に合わない!一台貸してくれ!』
って泣かれたから貸しているんだ。隣の部屋でやってるはずだよ。SAOを」

疲れたように呟くショボンを見て不思議に思うクー。
そして隣で同じように疲れた表情で微妙な笑顔を見せているドクオを見て、
更に不思議な思いをした。

しかしそれ以上の事を聞くのも何故か憚れたため、
すぐに話題を変えた。

.

335 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:14:17 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「おれ達が注意深く見ていた状態でな。
出るって言われたからじっくり見ていたけど、
普通はそこまで見ていないから気付かないさ」

(クー)「つまり、ショボンの観察眼と合わさることで、
大きな武器になっているということか?」

(ドクオ)「そういうこと」

(ショボン)「ふーん。そうなんだ」

(ドクオ)「感動薄いなおい」

(ショボン)「いやだって、テストタイプを使ってゲームするの今日が最後かもだし」

(ドクオ)「え?そうなの?」

(ショボン)「うん。ブーンのプロトタイプは別としても、
テストタイプは無駄も多いし機密部分もすぐ見られるようになっていたりするからね。
だから、いつまでこっちに置いておくか、使うことが出来るか分からないよ。
それに、基本的には僕も汎用型でゲームするし」

(ドクオ)「そうなのかー」

(クー)「今日はなぜテストタイプを使っているんだ?
もう一台ある様な事を言っていたと思うが」

(ショボン)「ああ。今日はね……。
親戚に
『(`;ω;´)本体の入荷が遅れて開始日に間に合わない!一台貸してくれ!』
って泣かれたから貸しているんだ。隣の部屋でやってるはずだよ。SAOを」

疲れたように呟くショボンを見て不思議に思うクー。
そして隣で同じように疲れた表情で微妙な笑顔を見せているドクオを見て、
更に不思議な思いをした。

しかしそれ以上の事を聞くのも何故か憚れたため、
すぐに話題を変えた。

.

336 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:15:17 ID:khqOjRnI0

(ショボン)「ブーンと、ドクオと、クーと、ツン。そして僕。
ほら三人じゃない、五人だ。ね、ドクオ。仲良しな友達五人組」

(ドクオ)「ん?ああ、そうだな、ブーンと、ショボンと、クーと、ツン。
あとおれで、五人だな」

(クー)「ショボン、ドクオ」

二人を見るクー。

ニッコリと微笑んでいるショボンと、
照れ臭そうに、それでも笑顔を見せているドクオ。

クーも、照れ臭そうに微笑んだ。




.

337 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:16:56 ID:khqOjRnI0

2-5



夕日が、空を赤く染めている。
現実世界の日本の標準時刻とリンクしたこの世界には、
同じように朝があり、昼があり、夜がある。

視界の端に浮かぶデジタルの文字は、
『5:20』を示していた。

(ツン)「んー!戦った戦った!」

大きく伸びをしたツン。

その横でブーンとクーも伸びをしたり腰を回したりといったストレッチをしていた。

(クー)「しかし、本当に自分の体のようだな」

(ブーン)「だおねー。不思議な感じだお」

(ツン)「帰ったら父さんに自慢しなきゃ」

(ブーン)「おじさん羨ましくて発狂しちゃうお」

(ツン)「かも」

三人の笑い声が、小高い丘を響いた。

(ツン)「それにしても、他に人来なかったわね。
もっといっぱい人が来るのかと思った」

(クー)「そういえばそうだな」

(ブーン)「おー。五人でいっぱいイノシシ倒せたけど、
他の人と話したりするのもMMORPGの楽しさっていうおね」

(ツン)「ふーん。そういうもんなんだ」

.

338 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:18:34 ID:khqOjRnI0

(クー)「そういう意味では、その楽しみはまた次の機会に持ち越しだな」

(ツン)「お。やる気ね、クー」

(クー)「思ったよりも楽しかったからな。
定期的にこの世界に来ることはやぶさかではない」

(ブーン)「素直じゃないお―」

(ツン)「楽しかったからまたやりたいって言えば良いだけなのに」

(クー)「うむ。私が素直じゃないのは認めてもいいが、
なんとなく二人に言われるのは納得がいかないな」

(ブーン)「お?」

(ツン)「な、なによそれ。どういう意味?」

(クー)「自分の胸に手を当てて考えて見ると良いと思うぞ」

(ツン)「クー?」

(クー)「ん?なんだ?」

(ブーン)「おっおっおー。最後まで楽しくだお!」

(ツン)「まったく」

(クー)「ブーンは真理を言ったな」

(ツン)「調子良いんだから。
で、それは良いとして……」

三人で楽しげに話していたが、
ツンは離れたところで話し込んでいる二人を指さした。

(ツン)「そこの二人!さっきからこそこそ何してるのよ!」

.

339 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:20:06 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「話なら聞こえてるぞ!
人は何人か来てたけど、おれ達を見たら別の場所に移動してた。
13時のサービス開始から始めたとして、
この時間に『戦闘』をやろうと思うのはβテスターくらいだろうから、
他の狩場に心当たりもあるだろ。
初めてこの世界に来たやつは『はじまりの街』でVRの世界を楽しんで終わりだろうからさ」

(クー)「ふむ。なるほど。一理あるな」

(ブーン)「確かにドクオと一緒じゃなかったらこんなふうに戦闘してなかったと思うお」

(ツン)「そうね。あの街を散策して終わってたかも。
少なくともこんなふうにイノシシ退治はしてなかったでしょうね」

(ブーン)「あ、そういえば一人来たのを見た覚えがあるお。
でもすぐにいなくなったから見間違えかと思ったんだお」

(クー)「そういえばいたな。
確かツンが戦っているのを見ていた時に居たな」

(ドクオ)「それおれも見た。
本当に【消えた】から、多分親か猫に電源切られたか、
ギアを外されたんじゃねーかな」

(ツン)「へー。そんなやつがいたんだ」

納得し、談笑する三人。

(ツン)「って、違う!
そんな意見を聞いてるんじゃなくって、
さっきから何二人で話してるんだって事よ!」

しかしすぐに話を元に戻したツンが再びドクオに向かって指をさす。

(ドクオ)「ああ……うん、それなんだけどさ……」

そして、言いよどんだドクオの代わりに、隣のショボンが事も無げに答える。

.

340 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:21:38 ID:khqOjRnI0





(ショボン)「実は、メニューの中にログアウトボタン、
つまり終了ボタンが見当たらないんだ」





.

341 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:26:31 ID:khqOjRnI0

軽く告げられたその言葉に、一瞬その重要性に気付かなかった三人。

しかしすぐにその意味に気付き、二人に駆け寄った。

(ツン)「ど、どういうこと!?」

(クー)「終われない、つまり戻れないという事か?」

(ブーン)「ド、ドッキリかお?」

そして慌ててショボンの手元を覗き込む。

(ツン)「ど、どこよ!」

(ショボン)「いや、だから無いんだけどね」

ショボンの右手が、可視モードに変えてあるメニューの一つを指さす。
そこには何も書かれておらず、ただ空欄だった。

(ツン)「どういうことよ」

(ドクオ)「ショボンが気付いてから何度かGMにメッセージを送っているんだけど、
返答がないんだ。
でかいミスだから、対応に追われていて個別に連絡は出来ないのかもしれない」

(クー)「それでも、普通なら何かしらの返答は来るべきだろう。
私の方も消えている」

既に自分のウインドウを開いていたクーが呟く。

(ブーン)「僕の方も無いお。
ドクオ、他にログアウトの方法は無いのかお?
例えば死ぬとログアウトするとか」

(ドクオ)「いや、HPが無くなると『死亡』状態になって、
身体はさっきの青イノシシが死ぬ時みたいにポリゴンになるけど、
精神は自動的に復活してはじまりの街に戻されるんだ。
ログアウトするには、そのあとメニューでログアウトを選ぶしかなかった」

.

342 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:28:03 ID:khqOjRnI0

(ツン)「……わたしのも空欄。
テストのときはそうでも、正式になったら変わってるとか」

ブーンも自分のメニューを確認しているのを見て、
慌てて自分のメニューを確認したツンも苛立ちを隠そうともせずに呟き、
そしてドクオとショボンに詰め寄った。

(ツン)「ショボン、マニュアルに載ってなかったの?」

(ショボン)「載ってなかった。
自発的にこの世界から出るには、ログアウトボタンを押すしかない。
それ以外だと、現実世界で電源が切られるか、ギアを強制的に外されるかするしかない。
停電はともかくギアを外されるのは、
脳に衝撃が与えられる可能性があるから出来る限り止めてくれって書いてあったよ」

(ブーン)「お!そうだお!ヘルメットを取ればいいんだお!」

ブーンが笑顔で自分の頭から、被っているヘルメットを外すようなジェスチャーをした。

(ドクオ)「ヘルメットじゃなくて、『ギア』な。
それで、おれ達は今それをすることは出来ない。
脳が体に送り出す命令、『信号』はナーヴギアによって身体じゃなくてこっちの世界に送られている。
向こうの身体を意識的に動かすことは出来なくなっているんだ」

(ツン)「じゃあ、どうするのよ」

(クー)「向こうに連絡できないのか?
ショボンのお父上に電源を落としてもらうようにメールを送るとか」

(ドクオ)「通常のメールは使えない。
メッセージ機能はこのゲームの中だけのものだから。
ただ……」

ショボンを見るドクオ。
その視線を受けて、ショボンが口を開く。

(ショボン)「一応6時を過ぎても戻ってこない場合は、
電源を切る様に父さんには頼んである。
だから、後30分もしたら切られると思うんだけど……」

.

343 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:30:08 ID:khqOjRnI0

(ツン)「なんだ、じゃあ大丈夫じゃない。
ビックリした。脅かさないでよ。
もうこの世界から出られないのかと思っちゃった」

(ブーン)「おっおっおー。
ショボンもドクオも人が悪いお―」

ホッとしたように顔を見合わせて笑う二人。

(クー)「6時か。
少々ギリギリだが、何とかなるか」

(ショボン)「7時って言ってたよね。
父さんに車出してもらって送っていくよ。
で、父さんから説明してもらえば怒られないでしょ?」

(クー)「怒られないとは思うが、
一回家の中に入ったらおもてなしが始まって1時間は出られないぞ?
大丈夫か?」

(ショボン)「……無事に帰ることが出来たなら、それくらい我慢してもらうよ」

(クー)「どういうことだ?」

(ツン)「ちょっと、電源切ってもらえれば帰られるんでしょ?」

(ショボン)「だと思う。
でも、なんかとてつもなく嫌な感じがするんだ」

(クー)「いやな感じ?」

(ドクオ)「おれもさっきから気にしすぎだって言っているんだけどよ」

(ブーン)「どういうことだお?」

.

344 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:31:33 ID:khqOjRnI0

(ショボン)「さっきから、何故かよく思い出すんだ。
これを作った人のインタビューとか手記を。
それで、なんか引っかかるっていうか……。
杞憂だとは思うんだけどさ」

(ツン)「そうそう、気にし過ぎよ。
んー。でもあと30分足らずか。
何してる?」

(ドクオ)「のんきだなーおい」

(ツン)「だって何もできないなら、
気をもんでいても何かしてもしなくても、結局は一緒でしょ。
そのGMって人から連絡が来るか、
先に電源が切られるか、その違いだけよ。
なら、待つしかないじゃない」

サバサバと持論を言うと、細剣を構えて剣技を放つツン。

(ブーン)「ツン!?」

(ツン)「これ、別に敵がいなくても出来るのよね。
風のように身体が動くのが気持ちいい」

(ドクオ)「まったく……」

(クー)「ツンらしいな」

(ブーン)「おっおっお。さすがツンだお」

(ツン)「なによそれ。
私の事をどう思っているのか、あとでゆっくり聞かせてもらうからね。
それとショボン!
この世界に連れてきたって気にしてるんでしょうけど、
あんたのせいじゃないんだから、そこまで気にしてもしょうがないでしょ!
残り時間はあんたも楽しみなさい!」

.

345 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:34:01 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「!」

(ブーン)「!」

(クー)「!」

(ショボン)「……ありがと。
そうだね。この世界を楽しまないとだね」

自分の言葉に三人が驚いたのを感じ、
ほんの少しだけ照れくさそうに笑った後、
それを隠すように再び細剣を構えるツン。

それを見たショボンが、今日一番の笑顔を見せた。




.

346 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 18:36:40 ID:khqOjRnI0
少し休憩します。

8時ごろ再開します。

347 名も無きAAのようです :2015/09/27(日) 18:39:56 ID:YqudV0Ag0
おつー

348 名も無きAAのようです :2015/09/27(日) 19:01:35 ID:U3/aVl1c0
乙乙

349 名も無きAAのようです :2015/09/27(日) 19:12:54 ID:IMsMnNhU0
乙!

>>329
>(ツン)「そういう事じゃなくて、
ツンが楽しんでるように見えるかどうかって聞いてるのよ!」

このツンの台詞のツンのところはツンじゃなくてクー?

350 名も無きAAのようです :2015/09/27(日) 20:15:44 ID:r4Bo3wK.0
やっぱ面白いな!!

351 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:28:31 ID:khqOjRnI0
戻りましたー。

続きの投下を開始します。

と、言おうと思いましたが……。

>>349 様
その通り、ツンではなくクーでございます。
読み返しながらコピペしていたつもりだったんですが……。
ご指摘ありがとうございます。

まずは修正版を下につけます。

.

352 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:30:56 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「おれもよく分からないけど、
構えはそう言われるとそうなのかもって感じだな。
おれは槍も薙刀もゲームに出てくる武器として知ってるくらいだから、
全く見当違いかもしれないけど」

(ブーン)「クーさんはすごいおねー」

(ツン)「ホント、家じゃちゃんとお嬢様してるのね。
……って、そういう事じゃない!」

感心したようにクーを見ていた四人だったが、
ツンの叫びに身体を震わせて驚いた。

(ショボン)「どうしたの?
いきなり大声で」

(ツン)「そういう事じゃなくて、
クーが楽しんでるように見えるかどうかって聞いてるのよ!」

(ショボン)「ああ、そういうこと。
そうだね。楽しんでいるように見えるよ。
顔はアバターで変わっているから分かり辛いけど、
肩の上下とか足のステップとかは楽しそうだよね」

(ツン)「……私から聞いておいてなんだけど、ひく答えね」

(ドクオ)「ひでえなおい」

(ツン)「いやだって、肩の上下とかステップとかってふつう見るところ?」

(ショボン)「視ないかな?」

(ツン)「見ない」

(ドクオ)「まあ、そこに関しては見ないかもしれない」

(ショボン)「そうかなあ」

.

353 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:33:26 ID:khqOjRnI0
修正失礼しました。

それでは、続きの投下を始めます。

乙としえんと感想、ありがとうございます。

それでは、よろしくお願いします。

.

354 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:34:55 ID:khqOjRnI0




3.創造主






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355 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:36:45 ID:khqOjRnI0

その鐘の音が鳴り始めたのは、
皮肉なことにショボンが笑顔を見せたのとほぼ同時だった。

大晦日の鐘と言うよりも、西洋の、教会の鐘の音。
言葉にすると『リンゴーン、リンゴーン』とでも表せばいいだろうか。

大音量の、ともすれば警報の様にも聞こえるその音は、
この世界すべてに鳴り響いているようだ。

(ドクオ)「なんだよ一体?」

四人が自分を見ているのを感じ、
言葉に出して知らないということをアピールするドクオ。

空を仰ぎ見て、
両手のジェスチャーでも『知らない』ということをアピールした後に、
四人に視線を向ける。

すると自分達が、青い光に包まれた。

(ツン)「なにこれ!?」

(ショボン)「ドクオ!?これは!?」

(ドクオ)「これはテレポート!?なんで!?」

自分達の姿が透けていくの見て叫ぶ五人。

(クー)「ど、どうすればいいんだ?」

(ブーン)「ツン!」

ブーンがツンを呼ぶ声と同時に彼らの身体は強い光に包まれた。





.

356 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:38:17 ID:khqOjRnI0

あまりの強い光に思わず目を閉じる五人。
そして恐る恐る目を開けると、そこは丘の上でも草原でもなかった。

(ブーン)「……ここは?」

(ショボン)「みんな!いる!?」

ブーンが周囲の変化に戸惑っていると、後方で声が聞こえた。

振り向くと、周囲の視線を集めることを気にせずに叫んでいる美青年。

親友であると確信し、名前を呼びながら近寄ろうとすると、
仲間達も同じように集まってきた。

(ドクオ)「みんな、大丈夫か?」

(ツン)「びっくりした。なにこれ」

(クー)「ここは、最初に来たところか?」

(ブーン)「よかったおー。みんないて」

(ショボン)「良かった。みんないるね」

それほど離れてはいなかったが、ショボンに駆け寄る四人。

(ショボン)「ここは、最初に降り立った場所だよね?」

隣に立つ者と肌が振れるような距離まで集まった後、
自然に輪になって互いの顔を見る五人。
全く別の顔のはずなのに、なぜか心の中では『本当の顔』を思い浮かべ重ねていた。

(ドクオ)「ああ。『はじまりの街』の中央広場だな」

(クー)「今のは一体?」

.

357 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:40:10 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「魔法が存在しないこの世界だけど、
魔法っぽいモノを使えるアイテムは存在するんだ。
一発でHPを全回復するようなアイテムなんかが。
その中の一つに、好きな街に飛ぶことの出来る『転移結晶』ってのがある。
今のは強制的に転移させられたんだろう」

(クー)「そんなこと、出来るのか?」

(ドクオ)「もちろん普通のプレイヤーには無理だと思う。
だから、おそらくGMがやったんだと思う」

キョロキョロと周囲を見るドクオ。
それにつられて、四人も周囲を見回す。

(ドクオ)「おそらく、いまログインしている全プレイヤーが、集められている。
これから何かしらのアナウンスが行われるんじゃないかな」

(ツン)「謝罪でもするつもりかしら」

(クー)「人騒がせだな。
何時ごろに直るかメッセージでも送ればいいのに。
強制的にこんなことをするなんて」

(ブーン)「でも、これで戻れるならいいお」

(ドクオ)「……だな」

(ツン)「どうしたのよ。浮かない顔して」

(ドクオ)「いや、この『SWORD ART ONLINE』を作った会社、
『アーガス』ってのは普通のMMORPGも手掛けているんだけど、
ユーザーに対してかなり優しいというか、
サポートがしっかりしているので有名な会社なんだよ。
だからGMから返信メッセージが無いのが少し不安だったんだけど、
更にこんな事をされるなんて、ちょっと幻滅と言うか……」

(ショボン)「不信感を生んでしまうね」

(ドクオ)「……ああ」

.

358 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:43:34 ID:khqOjRnI0

(ツン)「でも、自発的にログアウトできないなんてミス、
かなり大きなミスなんでしょ?
そんなことも考えられないほど慌てているんじゃない?」

(クー)「そうだな。
今までユーザー重視といった姿勢でいたとするなら、
これで今までの評価をすべてダメにしてしまう可能性もある。
慌てもするだろう」

(ブーン)「おー。そうだおね」

(ドクオ)「ああ……。そうだよな……。うん」

周囲では、次々に人が現れる現象が続いている。

人々はそれにも慣れ、自分の体に異変が無いことを感じると、
アナウンスを待ちつつも会話を始めたり、
誰に言うまでも無いような愚痴を口々に発していた。


  _
(美青年)「さっさとログアウトさせろ」

(美青年)「か、かえりたいから……」

(美青年)「やっぱりキャラ付には語尾を工夫するのが一番だと思うもな」

(美少女)「ど、どうすれば……」

(美少年)「さっさとしろゴルァ」

(美青年)「兄者、これはいったい?」

(美少女)「えー。兄者って誰ですかー?」

(美青年)「そっか。戻る……のか……そうだよな……」

(美丈夫)「早く帰らないとバイトに間に合わなくなるんだが」


.

359 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:45:54 ID:khqOjRnI0

誰もが、ここに移動させられたのはGMからの説明があるのだと、
ログアウトについて謝罪があり説明があるのだと、
思っていた。

そしてそれは、『説明』についてのみ正解だった。

(ツン)「なに、これ……」

どこからか聞こえた『上を見ろ』という叫びに誘われ、
五人が上を見上げた。

そして、目の前が赤く染まった。

正確には、真紅と漆黒の市松模様。
まるで血の様な赤と、深い闇のような黒。
目には赤のみがまず飛び込んでくる。

更によく見れば、それは二つの英文が交互にパターン表示されたものだった。
【Warning】と【System Announcement】
『警告』と『システムからの告知』

それに気付いた者達は喋るのを止め、
運営側からのアナウンスを聞き漏らすまいと、
上を見ながら耳をそばだたせているようだ。

(ブーン)「なんか……怖いお……」

ブーンの呟きは、四人も感じていたことだった。

そしてその恐怖は、さらに増大した。

(クー)「なん……だ……」

.

360 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:50:03 ID:khqOjRnI0

五人が、広場にいるほとんどの者が空を見上げている。

真紅のパターンが覆い尽くした空を。

そして、その中心が、ドロリと溶け、垂れ、滴って、落ちようとする。

それはまるで血の様で、見ている者の心に不安の種を植え付ける。

(ドクオ)「もしかして、これがオープニングなのか……?」

ドクオの言葉に、四人と周りにいた数人が彼を見た。

(ツン)「これが?」

(クー)「な、なるほど」

(ブーン)「そ、そうだおね。それなら……」

小さなざわめきが起き、ほんの少しだけ人の呟きが復活した。

(ショボン)「見て、何か来た……」

ショボンの声で再び空を見た三人。
ずっと空を見上げていたドクオは、
眉間に皺を寄せて何かを考えているように見えた。

(ブーン)「人……だおね」

目の前に浮かぶのは、全長二十メートルはあろうかという人の姿。
『それ』は、真紅のフード付きローブを被っていた。

(ツン)「なんなの……いったい……」

ツンの呟きは、そこにいる全ての者の思いだったであろう。
空に浮かぶフードの中に『顔』はなく、ただただ黒い、虚ろな闇が見えるだけであり、
ローブの裾やあわせ、袖口といった場所からも、中の『人』を目で見て感じることは出来ない。

.

361 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:51:23 ID:khqOjRnI0

けれど何故かそこにいるのは『人』であると、
自分達と同じ『人』がそこにいると、
広場に集められたプレイヤーのほとんどが感じていた。

すると袖口から白い手袋が浮かび上がり、両手を広げた。

そして、上空から声が降り注いだ。


.

362 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:52:31 ID:khqOjRnI0





『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』






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363 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:54:08 ID:khqOjRnI0

低く落ち着いた、よく通る男の声。

(ショボン)「この声……どこかで……」

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

ドクオがショボンの顔を見る。

ショボンがそれに気付き、ドクオの顔を見て頷いた。

(ショボン)「茅場晶彦……。
テストの説明で研究室に行ったとき、お会いした。
その時の声と、同じだよ。
もちろん音声を複合してる可能性もあるから、
本人だとは限らないけど、でも……」

【茅場晶彦】
若き天才ゲームデザイナーにして、量子物理学者。
そして、【SWORD ART ONLINE】の開発ディレクターであり、
【NerveGear】そのものの基礎設計者。

(ショボン)「喋り方まで一緒な気がするんだ……だから……」

『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューから
ログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う』

それぞれの思惑をよそに、声は降り注ぐ。

『しかしゲームの不具合ではない』

(ドクオ)「なんだって?」

『繰り返す。これは不具合ではなく、
≪ソードアート・オンライン≫本来の仕様である』

.

364 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:55:58 ID:khqOjRnI0

(ショボン)「仕様って……」

(ツン)「どういう…こと」

『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、
ゲームから自発的にログアウトすることは出来ない』

(クー)「城?どこかに城があるのか?」

(ドクオ)「いや、無かったと思う……。
正式サービスで実装されたのかも」

『また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。
もしそれが試みられた場合、
…………
ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、
諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』

その言葉は、そこにいる誰をも呆然とさせるに充分だった。

そしてその後に失笑が所々で生まれる。

それはそうだろう。
そんなことを言われても、誰も信じやしない。

しかし中には【ナーヴギア】の機能をちゃんと理解している者がおり、
その呟きを聞いた者は、再び呆然とした。

そしてここにも、その機能をしっかりと理解している者がいた。

(ショボン)「……可能だ」

.

365 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 20:58:18 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「え?」

(ブーン)「ど、どういうことだお?」

(ショボン)「ナーヴギアは、
ヘルメット内部に埋め込まれている信号素子から電磁波を発生させて、
僕達の脳に疑似的な感覚信号を与えるんだ。
その信号が、この仮想空間での【感覚】を生んでいる。
これは最先端のテクノロジーだけど、基本原理はあれと一緒なんだ」

(ツン)「……あれって……なに」

(クー)「電磁波……だと……あれ、か?」

(ショボン)「そう、電子レンジ。
あれはマイクロ波で水分子を振動させて熱を持たせる。
ナーブギアと、基本思想はほぼ同じ。
電磁波の出力を上げれば、僕達の脳を煮沸……破裂させられる」

ショボンの言葉に息を飲む四人。

周囲の者達も何人かは言葉を無くしていた。

空からの声は続く。

『より具体的には、十分間の外部電源切断、
二時間のネットワーク回線切断、
ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試み、
以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される』

(ツン)「電源切って、なんで電磁波出るのよ……」

(クー)「ナーヴギアには、内臓電源が付いている。
でも、所詮はゲームの内臓バッテリーのはずだが……」

.

366 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 21:07:13 ID:khqOjRnI0

(ショボン)「不思議だったんだ。なんであんなに必要なのか。
マイナーチェンジで小さくされるって聞いて、
ああやっぱりって思った。
……汎用機の内臓バッテリーは、高出力を起こせる力を持ってる」

『この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。
ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視して
ナーヴギアの強制解除を試みた例が少なからずあり、その結果
……残念ながら、すでに二百十三名のプレイヤーが、
アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

(ドクオ)「!……あの、プレイヤー」

(ブーン)「!」

(クー)「!」

ドクオの言葉に思い出す二人。
三人の脳裏には、先ほどまでいた草原で見た一人のプレイヤーが浮かんだ。

(クー)「――――!!」

声にならない短い悲鳴を上げるクー。
ツンがその肩を抱いた。

『諸君が、向こう側に置いてきた肉体を心配する必要はない』

(ツン)「クー!」

(クー)「す、すまん……」

『現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、
多数の死者が出ていることを含め、繰り返し報道している。
諸君のナーヴギアが強引に除装される危険はすでに低くなっていると言ってよかろう。
今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま
二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、
厳重な介護体制のもとに置かれるはずだ。
諸君には、安心してゲーム攻略に励んでほしい』

.

367 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 21:10:09 ID:khqOjRnI0

(ドクオ)「何言ってやがる……こいつ……」

(ツン)「嘘……よね……」

(ブーン)「ドッキリ……だおね……」

(クー)「本当なのか……」

『しかし、充分に留意してもらいたい。
諸君にとって、≪ソードアート・オンライン≫は、
すでにただのゲームではない。
もう一つの現実と言うべき存在だ』

(ドクオ)「……」

(ブーン)「……」

『今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。
ヒットポイントがゼロになった瞬間、
諸君のアバターは永久に消滅し、同時に』

(ツン)「……」

(クー)「……」

『諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』

(ツン)「!」

(クー)「!」

(ブーン)「!」

(ドクオ)「!」

ほとんどの者が、息を飲んだ。
どこかでばかばかしいと思いつつも、どこかで言葉を受け入れ、
そして、恐怖した。

.

368 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 21:19:43 ID:khqOjRnI0

声は続く。

『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。
先に述べたとおり、アインクラッド最上部、第百層までたどり着き、
そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。
その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』

抑揚のない、ただ事実を告げるだけの淡々とした語り口調。

呆然とした彼らの耳に、どこからかいくつもの叫び声が聞こえた。

その中にはβテストでの攻略数を嘆く声もあり、
それを聞いてドクオが頷く。

(ドクオ)「……二ヶ月で、六層。
七層の途中までしか、行けてない」

(クー)「二ヶ月で六層。
単純計算なら百層にかかるのは三十四カ月くらいか?」

(ツン)「約三年ってこと!?」

(ドクオ)「六層だって、何度もチャレンジして、
何度も何人も死んで、やっとだったんだ……」

(ブーン)「そんなこと……死ぬなんて……」

(ドクオ)「復活できるから、死なないから、
ゲームだからそんなことが出来る。
何度もチャレンジして、攻略方法を学んで、
……何度も死んで、敵を倒す。
RPGなんて、ゲームなんて、そうやって楽しむもんだろうが!」

ドクオの声は、ここにいる誰もが思ったことだろう。
けれどその思いが、言葉が受け取られることは無く、
声はさらに続いた。

.

369 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 21:22:27 ID:khqOjRnI0

『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。
諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。
確認してくれ給え』

(ドクオ)「プレゼント?」

ドクオがメインメニューを開く。
三人は勿論周囲の者達も同じ動作をしたため、
中央広場に電子的な鈴の音のサウンドエフェクトが響いた。

(ツン)「手鏡?」

(ブーン)「鏡?」

(クー)「なんでこんな?」

四人の中では一番操作が遅いツンがアイテム欄を開いた時には、
三人は既にその名前をタップしていた。
そして現れたメニュー内のオブジェクト化を選択すると、
効果音と共に小さな手鏡が出現した。

それを手に取る四人。

恐る恐る鏡を覗き込むと、自分が設定したアバターの顔が映った

(ツン)「ただの鏡じゃない」

(クー)「これからこの顔で、ここで生きろってことを確認しろってことか?」

(ブーン)「おーーー」

(ドクオ)「これが、なんだって言うんだよ」

.

370 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 21:24:03 ID:khqOjRnI0

四人で輪になった状態で、鏡を持ったまま自分以外の三人を見る。

(ツン)「ちょっと!あんた達!」

突然、ツンを除く三人が白い光に包まれる。
そして数瞬遅れてツンも包まれた。

(ドクオ)「みんな!」

(ブーン)「ツン!」

(クー)「またどこかに飛ぶのか!?」

(ツン)「ブーン!」

そして数秒後、光が収まると、彼らはまだはじまりの街の中央広場にいた。

('A`)「お、おい、お前ら」

( ^ω^)「お?お?」

ξ゚⊿゚)ξ「ど、どういうこと?」

川 ゚ -゚)「ここは、ゲームの中だよな?」

見慣れた姿の自分達。
髪の色や瞳の色は異なっているが、その姿は見慣れた友人の姿だった。
手鏡はいつの間にか消えていたため自分の姿を確認することは出来ないが、
仲間達を見る限りは自分も【自分の姿】をしているのだと感じた。

(´・ω・`)「みんな、大丈夫?」

いつの間にか四人とは少し離れた場所に一人でいたショボンも駆け寄ってくる。

(;^ω^)「ショボン!これはいったい!」

(´・ω・`)「ナーヴギアは頭全体と顔の半分を包み込んでいる。
高密度の信号素子が頭と顔を包み込んでいるんだ。
顔全体の造形を読み取ることなんて、容易い」

.

371 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 21:37:09 ID:khqOjRnI0

川 ゚ -゚)「身体はどうなっているんだ!?」

普段の身長に戻ったドクオを見る三人。

('A`)「!そうか……キャリ…ブレーション……」

(´・ω・`)「そう。キャリブレーション。
最初にナーヴギアを被った時に体全身をくまなく触ったよね。
あれによってこの世界での感覚と実世界の感覚を同期させているわけだけど、
あれは自分の体のデータをナーブギアに教えているんだ。
長さや太さ、おうとつといったね。
色以外のデータはすべてナーブギアに教えてある。
特に僕達は薄い術着を着ていたから、かなり正確だと思う」

冷静に、けれどどこか自嘲気味に自分の考えを告げるショボン。

しかしその姿は冷静過ぎていて、
まるでこのような状況になることを知っていたかのように見えた。

勿論それは邪推なのだが、
この中では一番彼をよく知らないツンの脳裏には少しだけ浮かび、
そしてすぐ消えた。

消えた理由は、自分の幼馴染達と親友が、
全くそんなことを考えていないことを感じたから。
そして自分も短いながらもこの数カ月で、
彼がそんなことをすることは考えられないと思えたからだった。

川 ゚ -゚)「ショボンは冷静だな」

('A`)「お前はほんとにいやになるくらいに冷静だよ」

( ^ω^)「でも、ショボンがショボンらしいと安心できるお」

ξ;゚⊿゚)ξ「まったくあんたは……」

先程まで戸惑い、狼狽えていたのが嘘のように落ち着いた四人。
勿論まだ動揺はしているのだが、
ショボンの姿が、信頼している友人が普段と同じ姿を見せてくれたことが、
彼らに落ち着きを取り戻すきっかけを与えてくれた。

.

372 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 21:38:34 ID:khqOjRnI0

(´・ω・`)「そう?」

いつも通りの表情で、いつも通りの受け答えをするショボン。

ショボンの後ろに回された右手は強く握られ細かく震えており、
それを抑える為に右の手首を強くつかむ左手も震えていたが、
四人に隠すことは成功していた。

('A`)「ショボン、会ったことあるんだよな?
どんな奴だったんだ?
こんなことをするような奴に見えたか?」

(´・ω・`)「……茅場晶彦氏とは、ほんの少ししか話していない。
けれど、彼は言っていた。
『私の世界を作る手助けをありがとう』って。
それに違和感は感じたけれど、念願がかなうって意味なのかなって思った。
けど、きっと、それは正解だけど、正確ではなかったんだと思う」

川 ゚ -゚)「?どういうことだ?」

(´・ω・`)「それは……」

『諸君は今、なぜ、と思っているだろう』

ショボンの声に重なるように、空から声が再び降り注いだ。

『なぜ私は、
SAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのか?
これは大規模テロなのか?
あるいは身代金目的の誘拐事件なのか?と』

空を見上げる五人。

今まで淡々と話していた声に、少しだけ表情を感じて怪訝に思う。

.

373 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 21:40:29 ID:khqOjRnI0

『私の目的は、そのどちらでもない。
それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由ももたない。
なぜなら……この状況こそが、
私にとっての最終的な目的だからだ』

(´・ω・`)「……やっぱり、そういうことか……」

川 ゚ -゚)「ショボン?」

『この世界を創り出し、鑑賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。
そして今、すべては達成しめられた』

そこで声は止まった。

中央広場にいる者の表情はまちまちだった。
呆然とする者、
怒りに満ちた者、
まだ現状が把握できていない者、
冷静な者。

けれど全ての者が空を見上げ、
空に浮かぶフードの男、
【茅場晶彦】
を見ていた。
それは、フードの中の闇の中に、
彼の姿を見ようとしているようだった。

『……以上で≪ソードアート・オンライン≫正式サービスのチュートリアルを終了する』

その中で降り注いだ声には、表情も感情も無くなっていた。

『プレイヤー諸君の―――健闘を祈る』

そして、その声を最後に空からの声は消えた。




.

374 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 21:42:16 ID:khqOjRnI0





第十九話 











第二十話に続く






※文中の【茅場晶彦】の『』内のセリフは、
一部区切りを変更させていただきましたが、全て
≪電 撃 文 庫 ソー ドア ートオ ンラ イン1 アインクラッド≫
より引用させていただきました。

.

375 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 21:48:27 ID:khqOjRnI0

以上、第十九話でした。

今回は少し短めでしたが、その分二十話が長くなりそうです。
何とか詰めて、なるべく早めに投下できるよう頑張ります。

乙、しえん、感想、指摘、本当にありがとうございます。

終わりまで亀の歩みですが突っ走るつもりですので、
よろしくお願いいたします。

.

.

376 名も無きAAのようです :2015/09/27(日) 21:51:14 ID:IMsMnNhU0


377 名も無きAAのようです :2015/09/27(日) 22:07:54 ID:YqudV0Ag0
おつ
『ミカゲ』=十七話で出てきた忍者……かなあ

378 ◆dKWWLKB7io :2015/09/27(日) 22:10:11 ID:khqOjRnI0

「みんな、ごめん」

彼の謝罪が、波紋を生む。

「そうね。全部、あんたのせいだもの。当然よ」

突き刺さっていく、彼女の言葉。

「ナーヴギアを被ったのも、『リンク・スタート』と言って飛び込んだのも、
私だ。私なんだよ」

それは、全員の思い。

「でも、そんな状態だと、この世界では生きていけないと思う」

震える事実

冷静な観察から導き出された現実。

目指す理想。



「帰る日まで、みんなで頑張ればいいんだお」



五人の思いが、交差し、離れ、結びつく。




( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです


第二十話


はじまりの日  DEATH GAME 〜SWORD ART ONLINE〜



11月中には投下予定。

.

379 名も無きAAのようです :2015/09/27(日) 23:13:35 ID:GdjZjd7k0
乙!

380 名も無きAAのようです :2015/09/27(日) 23:44:51 ID:U3/aVl1c0
乙乙

381 名も無きAAのようです :2015/09/28(月) 12:05:12 ID:iWtFCWLk0
乙です!次回も楽しみにしてます!

一点だけ、335と336の間もしかして抜けてないかな?
読みとれてないだけならすまん

382 ◆dKWWLKB7io :2015/09/28(月) 22:40:29 ID:7DX9FKkk0
どーもです。

>>381 様

ご指摘ありがとうございます!
抜けてました!

はぁああぁぁぁぁぁあああぁぁぁ…… ……。

今回こそは抜けはないようにと思っていたんですが……。

すみませんでした。

補完ねがいます。

.

383 ◆dKWWLKB7io :2015/09/28(月) 22:45:26 ID:7DX9FKkk0

(クー)「ブーンの使っているプロトタイプは全く同じなのか?
その、信号の強さとか」

(ショボン)「実は、少しだけ強い。
でも僕のテストタイプよりは弱いし、
もともとはプロトタイプの強さで出そうって話もあったくらいだから、
違いは無いと思うよ」

(クー)「そうなのか。
先程のツンに追いついた走るスピードと今の話を聞いて、
もしやと思ったのだが」

(ショボン)「多分違うと思うけど……。
走るスピードに関しては、もともとブーンの記憶の中に
『これくらいのスピードで自分は走れる』
ってイメージがあると思うから、そこら辺に由来しているんじゃないかな?
もしくは、初期のパラメーター振り分けを素早さ重視にしちゃったとか」

(ドクオ)「バランスよく均等にしろって言ったのに」

(ショボン)「いや、もしかしたらだよ?」

(ドクオ)「さっきの走りは、もしかしたらそうかもしれん」

(ショボン)「まさかー。ブーンに限ってそんなことしないよ。
と、自信を持って言い切れないところが悲しい所」

(ドクオ)「あとで問い詰めるの手伝ってくれ」

(ショボン)「お手柔らかにね」

(クー)「本当に三人は仲が良いな」

ドクオとショボンの掛け合いを聞いていたクーがポツリと漏らす。

(ショボン)「今の会話のどこからその言葉が出てくるのかは分からないけど、
仲が良いのは三人じゃないでしょ?」

(クー)「え?」

.

384 ◆dKWWLKB7io :2015/09/28(月) 22:47:36 ID:7DX9FKkk0
正確には、334と335が重複なので、
334→383→336と読んでいただけますようお願いします。

ではではまたー。

.

385 名も無きAAのようです :2015/09/28(月) 23:23:14 ID:HDjCF66wO
乙乙
原作知らんから始まりの部分がよく分かって実に良かったわ

> (美青年)「兄者、これはいったい?」
> (美少女)「えー。兄者って誰ですかー?」

ネカマ全開兄者わろたwwwww

386 名も無きAAのようです :2015/09/29(火) 23:06:25 ID:UjlOR2Ww0
おつです
やはり読んでいて楽しい

387 名も無きAAのようです :2015/10/06(火) 22:31:24 ID:VpfbFhhcO

ジョルジュの眉毛がwww

388 名も無きAAのようです :2015/10/07(水) 23:11:59 ID:PJJCBGG2O
乙!ミカゲが15話あたりで出てきた謎の人物っぽいね
読み返すとミカゲ=デレ=黒装束の忍者と想像させられる伏線だけど違う展開でも全然おかしくないし良い意味でモヤモヤするな

389 名も無きAAのようです :2015/10/08(木) 05:32:00 ID:UH9qTWcU0
予想は控えようぜ

390 名も無きAAのようです :2015/11/16(月) 07:59:27 ID:TJFzpEBU0
期待

391 名も無きAAのようです :2015/11/25(水) 09:10:18 ID:W6BO/KcA0
まだかな?

392 名も無きAAのようです :2015/11/29(日) 19:30:21 ID:F.S.mHpE0
霜月終るぞこらあああ

393 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 21:50:43 ID:ylSOxNhA0




0.浮遊城




VRMMORPG 『SWORD ART ONLINE』の舞台は、100層からなる浮遊城である。
それぞれの層は円形大地であり、
第一層の上に第二層、そして第三層と基本的には少しずつ小さくなった円形台地が重なっている。
層と層は一つの迷宮によって繋がっており、
一番下の一層から一番上の百層を目指し、百層にいるとされる最後の敵を倒すのが、
このゲームのグランドクエスト、最終目的である。
迷宮の一番奥にはその層のボスがおり、ボスを倒さない限り次の層に行くことは出来ない。
層の一番端、岩壁を登ることは不可能であり、
また落ちればその距離に応じた衝撃が身体を襲う。

先に書いたが、この世界は『浮遊』城である。
つまり、天空に浮いているのだ。
層の端から外に向かって落ちるということは、
見えない大地に向かって落ちて行くことと同じであり、
そして、それは「死」を意味している。

βテスト時代に外の壁を登ろうとした猛者もいたということだが、
結局は失敗していた。

.

394 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 21:52:39 ID:ylSOxNhA0

円形の大地が層になっているため、
上を見上げてもそこには上の層の底しか見えない。

大地の端に行けば無限の空が見えるが、ただ空が見えるだけである。

太陽はこの浮遊城を照らし、光は外側から降り注いでいる。
地球と同じように太陽の周りをこの浮遊城が回っているのか、
浮遊城の周りを太陽が回っているのかは定かではない。

日本の標準時刻と同じペースで時は進み、
浮遊城の一日は、現実世界の一日と同等である。

常春の層。
常夏の層。
常秋の層。
常冬の層。
昼の層。
夜の層。
鉄の層。
花の層。
水の層。
牛の層。
鳥の層。
虫の層。

層には気候の固定された特色のある層もあれば、
季節によって気候が移り変わる層もあり、
更には出てくるモンスターやボスキャラクターの種類を特化した層もある。

.

395 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 21:54:43 ID:ylSOxNhA0

当初プレイヤーは浮遊『城』と呼ぶことに多少の抵抗を持っていた。
浮遊しているとはいえ、大地があり、湖があり、川があり、木々のあるその世界を、
【城】と呼ぶことに違和感があった。

しかしいつしかその違和感は消えていた。

無意識下で、心の奥底で、本当に理解したのであろう。

自分達のいるこの世界が、
天才【茅場晶彦】の創り出した世界であるということを。
彼の手の中の、彼の頭の中の『城』であるということを。

≪SWORD ART ONLINE≫は、
この浮遊城を舞台としたゲームである。


そして、

浮遊城は、

≪アインクラッド≫

と、

名付けられていた。





.

396 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 21:56:39 ID:ylSOxNhA0





( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。




第二十話




はじまりの日  DEATH GAME 〜SWORD ART ONLINE〜




.

397 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 21:58:26 ID:ylSOxNhA0






1.はじまりの日






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398 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:02:54 ID:ylSOxNhA0

2023年11月6日

デジタル時計は夕方六時を過ぎたことを教えてくれている。
夕闇の赤が血の様に見える真紅の世界。

ついさっきまで上空を覆っていた赤と黒の市松模様は消えている。

この世界の創造主である【茅場晶彦】から告げられた内容をやっと認識した人々が、
声を上げ、泣き、叫び、怒鳴り、嘆き、はじまりの街の中央広場には混乱の渦が生まれた。

だが、騒ぎの起きる前に五人は広場から外に飛び出していた。

('A`)「ショボン……どうするんだ?」

(´・ω・`)「まずは一度西の教会に行こう。
最短の道を先導してほしい」

('A`)「……分かった」

ドクオを先頭に、ブーンがツンを、ショボンがクーを支える様にして駆けていく五人。
少し動きがゆっくりしているのは、
先ほど告げられた現実の重さを考えれば仕方ないことだろう。

そして、後方の広場から聞こえるプレイヤーの声が、心を暗くさせる。

彼らが人の渦に巻き込まれる前に外に飛び出せたのは、
的確に指示を出したショボンのおかげだった。

('A`)「その後、どうする?」

(´・ω・`)「まずはとにかく教会に」

心細げなドクオの言葉に、しっかりとした声で答えるショボン。
その声に後押しされるように、ドクオの足取りがしっかりとしたものに変わった。




.

399 名も無きAAのようです :2015/11/30(月) 22:06:18 ID:fSGbOTDg0
しえ

400 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:07:45 ID:ylSOxNhA0

西区教会

つい先ほど、五時間ほど前に来た教会に、彼らは再び訪れた。
奥の部屋に入り、疲れた様に椅子に座る。
ツンとクーが肩を寄せ合い、二人を守る様にブーンが腰掛ける。
その前にドクオが座った。

(´・ω・`)「みんな、ごめん」

そしてドクオの横に立っていたショボンが、
座らずに頭を下げる。
腰を九十度に曲げ、テーブルに額当たる勢いで頭を下げた。

('A`)「!」

(;^ω^)「ショボン!なにを!」

(´・ω・`)「僕がナーヴギアを提供し、SAOというゲームも提供した。
皆が今ここにいるのは、僕の責任だ。
謝って済むことじゃない。
でも、まずは謝らせてほしい。
許してほしいともいえない。
ただ、謝らせてほしい。
みんな。ごめんなさい。
巻き込んでしまって、ごめんなさい」

('A`)「お前のせいじゃないだろ!
おれは自分で選んだ!
テストに自分でお応募して、自分で始めたんだ!」

(´・ω・`)「でも、ナーヴギアを使わせなければよかったんだ」

('A`)「おれがお願いしたんだろ!だからお前のせいじゃない!
それにバイトしてナーヴギアは買ってた!」

.

401 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:09:58 ID:ylSOxNhA0

(´・ω・`)「バイトの金額計算しても、
当日までには、スタートの今日までには溜まらないかもって言ってたよね。
同梱版の金額。最後のバイト代が出るのが、11月の10日だから。
夏休みにいっぱい入れたとしても、それ以外は週一回か二回じゃ、無理だって」

('A`)「それは……」

(´・ω・`)「だから、僕のせいなんだ」

('A`)「でも、おれが楽しそうにSAOをやらなければお前だってみんなを誘ったりしなかっただろ!?
だから、おれにも!」

(´・ω・`)「どちらにせよ、誘っていたよ。
僕は、友達皆で何かをやるってことに憧れていたから」

( ^ω^)「!」

('A`)「!」

(´・ω・`)「SAOは、五人で、友達でやる、特別なことに、最適だったんだ。
たった一万人の中に入れた、特別な五人。
世界で初のバーチャルゲーム。
それを楽しむ、特別な五人。
それが、したかったんだ」

('A`)「ショボン……」

( ^ω^)「ショボン……」

川 ゚ -゚)

ξ ⊿ )ξ

(´・ω・`)「僕の勝手な思いに巻き込んでしまったんだ。
だから、ごめんなさい」

.

402 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:12:11 ID:ylSOxNhA0

川 ゚ -゚)「……だが、やることを決めたのは自分だ。
術着に着替えたのも、ベッドに寝たのも、
ナーヴギアを被ったのも、『リンク・スタート』と言って飛び込んだのも、
私だ。私なんだよ」

( ^ω^)「そうだお!みんな自分で決めたんだお!」

('A`)「ああ、そうだ。自分で決めたんだ。
だから、きにすんな」

(´・ω・`)「でも、それでも。僕が誘わなければ、みんなは……」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「……」

( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「だから、僕はここに誓う。
絶対に、みんなは生きて向こうの世界に戻す。
何に変えても、絶対に。
現実世界に戻れる日まで、絶対にみんなが生き残れるようにする。
だから、その日までみんな、僕」

ξ ⊿ )ξ「そうね。全部、あんたのせいだもの。当然よ」

ずっと黙っていたツンが、ショボンの言葉にかぶせるように呟いた。

川 ゚ -゚)「ツン!?」

(;^ω^)「ツン!?」

('A`#)「ツン!」

(´・ω・`)「うんそうだよ。僕のせいなんだ。だから」

ゆっくりと立ち上がるツン。
そしてショボンを睨む。

.

403 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:15:54 ID:ylSOxNhA0

ξ゚⊿゚)ξ「って、言えば、満足?
でも、絶対にそんなこと言ってやらない!
バカにすんな!バーカ!」

(´・ω・`)「え?」

(*^ω^)「ツン」

川 ゚ -゚)「……朋美……」

('A`)「うわぁ……」

ξ゚⊿゚)ξ「バーカ、バーカ、バーカ。
私の事をバカにすんなこの野郎」

('A`)「ショボンをバカとかよく言えるよな」

ξ゚⊿゚)ξ「良いのよ。だってこいつホントにバカなんだから」

川 ゚ -゚)「ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「……そうね。
あんたの言葉に甘えて、
あんたのせいにして、
あんたを恨めば楽よ。
どうせあんたの事だから、
私達を安全な所に置いて、
何とかして帰還の日までもたせようとか、
考えているんでしょ。
私たち以外の使えるモノは何でも利用して」

(´・ω・`)「そんなことは」

('A`)「しそうだな」

( ^ω^)「やりそうだお」

川 ゚ -゚)「うむ」

.

404 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:19:52 ID:ylSOxNhA0

(´・ω・`)「いや、だから」

ξ゚⊿゚)ξ「でもそんなの、私は嫌。
ここには、自分の意思で来た。
その事実に蓋をして、あんたを恨んで生きるなんて絶対にいや!」

( ^ω^)「ツン……」

ξ゚⊿゚)ξ「………。
こんなところで死にたくない!
現実に戻りたい!
あの声を聞いて、ここに移動するまでの間、ずっと思ってた。
心が張り裂けそうだった。
でも、誰かを恨んでまで、
友達を恨んでまで、心の平穏なんて求めてない!」

ツンの叫びが部屋に響き、四人がツンを見た。
空気が固まり、誰も動けず、何も言えなかった。

ただ一人、ツンはショボンを睨みつけながら、口を開く。
震える身体を支える様に自分の体を抱きしめた彼女を、
クーが横から抱きしめようとした直前だった。

ξ゚⊿゚)ξ「あとあんた、
私達が無事に帰れるなら自分は死んでもいいって思ってるでしょ」

(´・ω・`)「!」

('A`)!

(;^ω^)!

川 ゚ -゚)!

(´・ω・`)「別に、僕はそんなこと……」

ξ゚⊿゚)ξ「いいや、思ってる!
どうせ本当なら死んでお詫びしたいけど、
でもみんなが帰るまでは死ねないとか思ってるのよ!
ブーンやドクオだって、分かってるでしょ!」

.

405 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:26:36 ID:ylSOxNhA0

('A`)「……そうだな」

( ^ω^)「ショボンなら、……思っていそうだお」

ξ゚⊿゚)ξ「『いそう』じゃなくて、思ってるのよ。
だってこいつ、さっき『なににかえてもみんなは』って言ったもの。
きっと、自分の命は、二の次にしてる。
もちろん私達を活かすために頑張って生きるでしょう。
でも、私達を生き残らせるためになら、簡単に自分の命を捨てるつもりよ。
そして、私たち以外の命を犠牲にすることもいとわないわよ。こいつ」

右手の人差し指でショボンを指さすツン。

その指先は少しだけ震えていて、
それを見て我に返ったクーはツンを抱きしめた。

ξ゚⊿゚)ξ「久美子……」

川 ゚ -゚)「朋美。もういい。もういいよ」

ξ゚⊿゚)ξ「だって、あんた……」

川 ゚ -゚)「本城、私も朋美と同じ気持ちだ」

(´・ω・`)「……」

川 ゚ -゚)「私の家が本城の家に救ってもらえたから、
私は美ノ付に通うことが出来ているし、
不自由無い生活を送っていた。
高校で再会できた時、……恩返ししたいと、思った。
私がそれを言った時、困ったように笑って、言ってくれたよな。
『僕は何もしてないよ。そんな事考えないで、高校生活を楽しもう』って」

ξ゚⊿゚)ξ「!久美子、あんた……」

('A`)

( ^ω^)

(´・ω・`)「融資を決めたのもおこなったのも、父や母や祖父であって、僕は何もしていない」

.

406 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:30:37 ID:ylSOxNhA0

川 ゚ -゚)「……来島家を救ってくれたのは本城家だが、
私を救ってくれたのは、本城、お前だ。
本城は覚えてないかもしれないがな。
私は、忘れない。
あの、あの日から、ずっと。
私は……。
だからこそ、『友達』にはなれないと思っていた。
借りが多すぎて、大きすぎて、対等である友達になんて、なれないと思った。
でも本城、言ってくれたよな。私達五人は、友達だって。仲間だって。
私はそれが、凄く、凄く、嬉しかったんだ。
ずっと、色んなことに引け目を感じていた私を、
友達だって言ってくれた、仲間だって言ってくれた、
本城が、朋美が、内藤が、徳永が、大事で、大好きなんだ。
一緒に笑って、バカな話をして、お弁当を食べて、勉強をして、
毎日が楽しかったんだ。
だから、自分が決めた事のせいで、大事な人を恨んだり憎んだりなんてできない。
したくない。でも私は弱いから、本城にそんなことを言われ続けたら、
心の片隅に思ってしまう日が来てしまうかもしれない。
だからもう、そんなことは言わないでくれ。
私は、私を嫌いになりたくないんだ。
だから、頼む」

(´・ω・`)「来島さん……」

顔を伏せ、互いの体を支えるように抱きしめあうツンとクー。

ブーンが近寄り、二人に椅子に座るように促した。

( ^ω^)「ショボン、ショボンはいつも僕達の事を考えてくれるけど、
僕達だってショボンの事を考えてるんだお。
ショボンが僕達の事を好きでいてくれるように、
僕達もショボンの事が好きなんだお。
いつもショボンに甘えちゃってるけど……」

('A`)「そうだな。
おれ達は、ショボンに甘え過ぎてた。
いつも笑って、おれ達の事を考えていてくれたから。
より良い道を、正解の道を指し示してくれたから、
それを普通に思ってしまっていた」

.

407 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:37:28 ID:ylSOxNhA0

ξ ⊿ )ξ「甘えてたのはあんたたち二人でしょ」

('A`;)「お、おれ達ってのはおれとブーンの事であってだな、」

ξ ⊿ )ξ「分かってるなら良い」

('A`;)「お、おお」

なんとなく気まずそうに頭を掻くドクオ。
ブーンも困ったようにそんなドクオを見ている。

('A`)「で、まあ、何を言いたいかっていうと、
自分を責めるのは止めてくれってことだ。
おまえは今のこの状態は自分のせいだって思ってる。
でもおれ達は、自分が選んだ結果だって思ってる。
本当は、ショボンがそんなことを思うのを止めてほしいけど、
おれ達が何を言ったって、多分変わらないよな。
でも、ショボンがどんなに言っても、
おれ達も自分の選んだ結果だって意見は変えない」

(´・ω・`)「ドクオ……」

('A`)「でも、そんな状態だと、この世界では生きていけないと思う」

(´・ω・`)「!」

( ^ω^)「!」

ξ゚⊿゚)ξ「!」

川 ゚ -゚)「!」

俯いていた二人もドクオの顔を見た。

('A`)「おれはβテストのとき、ダンジョンどころかフィールドですら、
それこそさっき倒した青イノシシに負けて死んだことがある。
戦い方が分からないんだから、当然だよな。
自画自賛になるけど、もし俺がいなかったら、
お前ら全員もう死んでいたかもしれない」

.

408 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:42:20 ID:ylSOxNhA0

四人の背中に冷たい物が走った。

('A`)「武道をやっていたクーですら最初はへっぴり腰だったもんな」

川 ゚ -゚)「……ああ。徳永のアドバイスが無かったら、
あの時に死んでいたかもしれない」

('A`)「まあおれも教えるのがそれほどうまいってわけじゃないし、
ショボンに言われてポーション飲んでなかったら、
あそこで与えられたダメージ総量を考えると、死んでいたかもしれない」

自分達に戦い方を指導しながら、
自分達を守るためにイノシシの攻撃を受けて傷を負ったドクオを思い出す四人。

( ^ω^)「……ドクオ」

('A`)「一番最初に突っ込むタイミングを掴んだツンだって、
そう思うだろ?」

ξ゚⊿゚)ξ「……ええ。
何回も攻撃受けたし、ドクオにも守ってもらった。
思い返せば、いつ死んでもおかしくなかったかも」

('A`)「ショボン、どんなにお前の頭が良くても、
多分この世界はそれだけじゃ生き抜くことは難しい。
よっぽどの『力』をもつ奴ならともかく、
本当に一人で生き抜く事なんて無理だと思う。
ましてや、自分以外に四人も守るなんて、無理だ」

(´・ω・`)「でも…ぼくは……」

('A`)「けれど、おれ達は一個一個を見ればかなり高スペックだと思う」

(´・ω・`)「?」

( ^ω^)「お?」

ξ゚⊿゚)ξ「?」

川 ゚ -゚)「どういうことだ?」

.

409 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:48:19 ID:ylSOxNhA0

ドクオは全員の顔をゆっくりと見回し、そしてショボンを見た。

('A`)「ショボンの頭の良さ、記憶力。
更にテストタイプのナーヴギアを使っていることによる敵の出現をいち早く察知できる目。
これはかなりのアドバンテージになると思う」

(´・ω・`)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「いち早く察知?」

川 ゚ -゚)「詳しくは後で話すが、
ショボンが使ってるナーヴギアはテストタイプのため、
私達より少しだけ早く敵が現れる場所を知ることが出来る様なんだ」

( ^ω^)「おお!すごいお!」

ドクオは視線をクーに移す。

('A`)「クーの武術と冷静さ。
槍捌き自体はいつかは他の奴もうまいやつが出てくるだろうけど、
現時点ではβテスターを含めてもトップクラスだと思う。
それに状況を掴む冷静さ、観察眼はショボンと同等、
いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。
ショボンはさ、おれ達には甘すぎるから」

(´・ω・`)「……そう……かな」

川 ゚ -゚)「ふふふ。そうかもしれんな」

そしてツンを見る。

('A`)「ツンの持つ思い切りの良さと剣技のセンス。
それと歯にモノ着せない物言い」

ξ゚⊿゚)ξ「褒めてないわよね?」

('A`)「……大事だよ。
おれ達じゃ、ショボンが暴走したら止められないかもしれない。
さっきみたいに、ガツンと言ってやることが出来ないかもしれない。
それじゃ、ダメなんだけどな。友達に気後れするとかさ……」

.

410 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:50:53 ID:ylSOxNhA0

( ^ω^)「おー。だおね。ショボンの方がちゃんと考えていてくれるから、
いつも甘えちゃってて、ショボンが言うなら間違いないだろうって思っちゃってるお」

('A`)「ああ。
それに、あの剣技の切れは、
今まで見たどの細剣の初期技と比べても、
トップクラスだったと思う。
もしかしたら、ツンの性格は細剣の剣技と相性がいいのかもしれない」

ξ゚⊿゚)ξ「性格と剣技の相性ねぇ……」

('A`)「剣技は技によっても武器によっても癖がある。
ツンが細剣の全部の剣技と相性が良いのかは分からないけど、
あの技にはかなり相性が良いように見えた。
技後硬直とか注意点も大きいけど、
自分の能力を格段に引き上げる剣技を使いこなせるのは、
かなりの強みだ」

ξ゚⊿゚)ξ「なるほどね」

('A`)「そしてブーン」

( ^ω^)「おっ」

('A`)「ブーンの体の動きと呼吸の合わせ方。
他のどの武器ともそれなりに合わせやすい片手剣ってこともあるけど、
おれやツンと共闘した時の呼吸の合わせ方は、見事だった。
ソロはともかく、パーティーで戦う時は大きな武器だ。
それに普段から運動をしていただけあって、
自分の体の動かし方がよく分かってる。
小学校の時に通ってた体操教室の動きも活かされてるのかもしれないな」

(*^ω^)「お!そうかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「で?あんたは?」

.

411 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:54:36 ID:ylSOxNhA0

('A`)「ゲームの知識。お約束。
βテスターとしてこの世界を生きた経験と知識は、
一般プレイヤーには無いものだ。
モンスターの種類と特徴と出現場所。
抜け道を含めた細かいマップ。
街の中の店や細かい裏技。
いつかはみんなが分かることだけど、
最初からある程度分かっているというのはそれなりに力になるはずだ。
あと、古今東西のRPGや複数のMMORPGをプレイしたゲーマーとしての知識も」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「ん?どうした」

ξ゚⊿゚)ξ「いや、確かに今の私達にとって、
生きる為の凄い武器だと思うんだけど……」

川 ゚ -゚)「少し引いた」

ξ゚⊿゚)ξ「昔からゲーム良くしてたもんね。
私達が誘わないと外出ないし」

('A`)「今は良いんだよそんなことは」

( ^ω^)「おっおっお」

川 ゚ -゚)「だが同時に、かなりすごいとも思う。
あの短時間で、私達の事をよくそこまで……」

('A`)「ああ、まあな。
パーティー組んで戦うには全員の長所と短所、
得手不得手、好きな戦い方嫌いな戦い方を知らないといけないからさ。
最終的には指揮をショボンに任せるとはいえ、
おれも意見できるようにしたほうが良いかなと思って」

そしてショボンに視線を戻した。

.

412 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 22:57:08 ID:ylSOxNhA0

('A`)「おれ達がパーティーを組んで戦うとしたら、指揮はショボン、お前だ」

(´・ω・`)

('A`)「今みたいに一人一人の特性を見ることは出来ても、
それを組み合わせて、状況に合わせて動かす事なんて、
おれにはできない。
この五人の中でそれが出来るのは、
ショボン、お前だ」

(´・ω・`)「……来島さんも出来るよ」

川 ゚ -゚)「は?」

('A`)「ああ、そうだな。資質だけなら出来る可能性は高いと思う」

川 ゚ -゚)「いやちょっとまってくれ」

('A`)「でも、お前の目とクーの戦闘能力を充分に発揮させるなら、
お前が指揮を執るのが順当だろう?
悪いけど、戦闘能力はお前よりクーの方が上だ。
お前が前線に出るより、クーが前線に出た方が安全に敵を倒せる。
それにお前の持つ目の能力は、後方で全体を見渡すことで、
最大限に威力を発揮するんじゃないか?」

(´・ω・`)「それは……」

川 ゚ -゚)「二人とも私の声が聞こえているか?」

('A`)「お前だってわかってるはずだ。
自分の真価は、『人を使うこと』だってな。
だからお爺さんたちに」

(´・ω・`)「ドクオ!」

('A`)「……わるい。今はそれは関係なかったな。
でも、おれの言いたいことは分かるだろ?」

(´・ω・`)「……うん」

.

413 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 23:00:33 ID:ylSOxNhA0

ドクオの言葉に、珍しく声を荒げるショボン。
その声にツンとクーは驚いてショボンの顔を見た。

ブーンは何も言えず、少しだけ悲しそうにショボンとドクオの顔を見ている。

(´・ω・`)「でも……やっぱり……」

項垂れるショボン。

( ^ω^)「帰る日まで、みんなで頑張ればいいんだお」

ブーンが朗らかに、事も無げに言い放つ。

(´・ω・`)「ブーン……」

頭を上げるショボン
その簡単な物言いに、ドクオとクーは苦笑いを浮かべながらも追従した。

('A`)「そうだな」

川 ゚ -゚)「それしかない」

出来るだけ簡単に、何事も無いように。

(´・ω・`)「でも、皆に命が危険にさらされるようなことは」

それでも異議を唱えるショボン。

ξ゚⊿゚)ξ「なら、私達が危険にならないように、考えなさい」

しかしすぐにツンの言葉によって遮られた。
それはまるで最初にショボンが提案しようとしたことを認めるような言葉だった。

(´・ω・`)「え?いや、じゃあ」

が、違った。

.

414 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 23:02:52 ID:ylSOxNhA0

ξ゚⊿゚)ξ「ただし、私達は自由に動くわよ。
納得できる内容なら、従ってあげる。
でも、納得できなかったら指示になんて従わない。
どこかに閉じ込めるとか、この街から出ないなんてのはもってのほかだから、
それ以外で私達が出来るだけ死なない道を考えなさい」

(´・ω・`)「…………え?」

('A`)「……上から目線だ」

川;゚ -゚)「朋美……」

(;^ω^)「おー」

おもわず唖然としたショボン。
ツン以外の三人も同じような表情で二人を見た。

ξ゚⊿゚)ξ「だってそれしかないじゃない」

四人に対し、普段のツンと何も変わらない仕草で喋り続ける。

ξ゚⊿゚)ξ「本城の望みと、私達の思い。
そこら辺が折衷案でしょ?
本来なら自由に動いていい私達が、
納得できれば指示に従うって言ってるんだから、
喜んで欲しいくらいよ」

('A`)「うわ」

ξ゚⊿゚)ξ「ま、考えるのめんどくさいから、
細かいことは任せるっていうのもあるけど」

( ^ω^)「賛成だお」

ξ゚⊿゚)ξ「あと、自分の命も大切にして」

川 ゚ -゚)「ああ。私からも頼む。
自分の事も大事にしてほしい」

.

415 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 23:05:26 ID:ylSOxNhA0

( ^ω^)「来る時と一緒だお!
五人皆で帰れる様に頑張るんだお!」

('A`)「ああ、そうだな」

川 ゚ -゚)「うむ。内藤の言うとおりだ」

ξ゚⊿゚)ξ「そういうことよ。わかった?」

(´・ω-`)「みんな……」

笑顔で告げる四人に、片目をこすりながら、やっと笑顔を見せるショボン。

(´・ω・`)「わかったよ。
皆で、生きて帰る。
その為に頑張るよ!」

('A`)「おう!」

( ^ω^)「だお!」

川 ゚ -゚)「うむ」

ξ゚⊿゚)ξ「やっとわかったか」

(´・ω・`)「償いは、帰ってからするよ」

('A`)「って、わかってんだが、わかってないんだか」

( ^ω^)「おっおっお。でも、ショボンらしいお」

川 ゚ -゚)「ならば私も帰ってから恩返し攻撃をしなければな」

ξ゚⊿゚)ξ「私鉄とバスとタクシー乗り放題くらいで良いわよ」

('A`;)「おいおい」

(;^ω^)「おっおっお」

川;゚ -゚)「朋美」

.

416 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 23:10:10 ID:ylSOxNhA0

ξ゚⊿゚)ξ「冗談よ、冗談」

(´・ω・`)「了解」

ξ;゚⊿゚)ξ「いやいや、冗談だからね!」

五人全員に笑顔が戻り、会話を交わす。
それは生徒会室で昼ご飯を食べている時のようで、
五人の心に落ち着きを与えていた。







('A`)「さてバカ話もこれくらいにして、
ショボン、これからどうするのが良いと考えている?」

(´・ω・`)「うん……」

時折笑い声も出るような会話を30分以上した後、
全員が一呼吸置いた時に、ドクオが真剣面持ちで口を開いた。

(´・ω・`)「出来れば、早めにこの街を出たい。
今すぐにでも。
この街の情報収集もしたいけど、
ひとまずはドクオの知識があれば事足りるだろうし」

川 ゚ -゚)「何故この街ではいけないんだ?」

('A`)「広いし宿屋も多いし、当分は拠点にしてもいいと思うが?」

(´・ω・`)「宿屋を借り続けてずっと中に籠るならそれもいいと思う。
でも、その道を選ばないなら、着実に安全に早急にある程度までレベル上げをしたい。
おそらくそう考えたβテストをやっていないプレイヤーはこの周辺で狩りを、
戦闘訓練を、レベル上げを始めると思う。
この街の中にいるだけなら、規模でみれば1万人いても大丈夫だと思うけど、
周辺で狩りや戦闘を行うと考えると、キャパが足りないような気がする」

.

417 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 23:12:31 ID:ylSOxNhA0

('A`)「そうか。ああ、そうだな。
そうなれば、この周辺のモンスターはすぐ狩られるだろうし、
狩場をめぐって争いが起こるかもしれない。
そうなると、まずは次の街か。
あそこにはアニールブレードのクエストもあるし、
早めに取りたかったからそれもいいか。
でも……いや……すぐはだめだ。最低でも一つはレベルを上げて」

ショボンの話を聞いて、考え込むドクオ。
最初は周りに聞こえるような声だったが、
だんだん小さくなり最後はぼそぼそと独り言になっていた。

ξ゚⊿゚)ξ「何がダメなのよ?」

('A`)「あ、いや、順当にいくとしても、まずは次の街
『ホルンカ』になると思う。
もともとそこには早く行きたかったから行くことには賛成だけど、
出来るだけ早くってのは、厳しい」

ξ゚⊿゚)ξ「なんでよ」

('A`)「行く途中にモンスターが出る。
さっき倒した青イノシシよりも強いやつが。
といってもそこまで変わらないけど、危険度が上がるのは事実だ。
それに、今はもう夜の時間だからモンスターの出現率も高くなってるし。
少し回り道をしてできるだけモンスターの出ない道を選ぶとしても、
『今すぐ』ってのは無理だ。
安全を考えるのであれば最低でもレベルを一つ上げてから行きたい」

川 ゚ -゚)「どれくらいかかる?」

('A`)「んー。夜はランダムで強いモンスターも出るから、
明日の朝から始めたとして、三日後の昼には全員出られるかな……」

(´・ω・`)「それだと遅い」

.

418 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 23:15:45 ID:ylSOxNhA0

( ^ω^)「どうしたんだお?そんなに慌てて」

(´・ω・`)「……さっきのは、一つ目の理由。
もう一つは、おそらくこの街はこの先更なる混乱に包まれる。
自棄になったやつが、何をしでかすか分からない。
街の中は『圏外』といって戦闘行為は出来ないから僕達に命の危険は無いと思うけど、
出来れば早めに出ておきたいんだ」

('A`)「んなこと言われても……」

(´・ω・`)「今ドクオの言っていたのは、五人全員で動いた場合だよね」

('A`)「ん?ああ」

(´・ω・`)「ドクオ一人なら、次の街まで行ける?」

('A`)「おれ一人なら?ああ。行ける。
でも、おれ一人行ったって……」

(´・ω・`)「もう一人、僕以外の三人のうち誰かを連れていくとしたら?」

('A`)「二人……。まあそれなら行けるかな。
ブーンにせよツンにせよクーにせよ、
一人ならおれもフォローできるだろうし。
あ、ショボンでも大丈夫だぞ?
ああ、そうだな。それなら行けるな。
その方法で一人連れて行って、おれがまた戻ってきてまた一人連れていけば」

(´・ω・`)「いや、流石にそれは効率が悪いよ。
それに、ドクオの負担が大きすぎる。
長く続く緊張や疲れが、ミスを誘うよ」

('A`)「じゃあどうするんだ?」

(´・ω・`)「まず二人で行って、その一人を鍛えてほしい。
そして、ドクオが大丈夫と思えるところまで鍛えたら、
二人で迎えに来てくれ」

.

419 名も無きAAのようです :2015/11/30(月) 23:16:53 ID:QiYv79HQO
滑り込みで11月に来てたー
これから読みます

420 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 23:22:20 ID:ylSOxNhA0

('A`)「!なるほど。それなら五人での移動がいけるかもしれない。
昼の移動なら二人で三人のフォローも出来るだろうし……。
それに、あのクエストをやれば戦いにも慣れるしレベルも上がるはずだ」

(´・ω・`)「できれば、明後日の昼頃までにお願いしたいけど、間に合うかな?」

('A`)「一緒に行くのが、鍛えるのが一人なら充分だ。
運さえよければもっと早くできるかもな」

(´・ω・`)「出来るだけ安全に。
間に合えば嬉しいけど、急がなくていいよ」

('A`)「でも、それくらいで大丈夫なのか?」

(´・ω・`)「……現実世界からすぐに救出があるとしたら、
おそらく明日の夜までには帰れると思う。
でも、……おそらくそれは無い。
茅場晶彦、あの人は良くも悪くも天才だから、そんな結果にはしないと思う。
そして、この街に居てただただ向こうからの救出を待っている人が大きく騒ぎ出すのは、
多分明々後日くらい……。
扇動者がいればもっと早くなるかもしれないけど、多分それくらいだと思う」

川 ゚ -゚)「……騒動になるまでそんなにかかるのか?
先程の広場では既に……」

(´・ω・`)「小さな騒ぎや騒動、小競り合いは勿論起きるよ。
当分は起き続けるさ。
今もあの広場では起きているんじゃないかな。
でも、全体を巻き込むような騒動は『指揮者』が、
『扇動者』いなければそう簡単には起きない。
一万人って数は、それなりの人数だからね。
無秩序な騒動にだって、引き起こす人や盛り上げる人はいるんだよ。
それに、こんな特殊な状況、だれも信じたくないからね。
『一回寝て、起きたら全部夢だった』って思いたい。
『壮大なオープニングイベントで、もうすぐネタばらしが来る』って思ってる。
それが大多数の人だと思う。
だから、受け入れたくない現実を受け入れて、絶望する。
大きな騒動が起きるのはこのタイミングだと思う」

.

421 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 23:27:05 ID:ylSOxNhA0

川 ゚ -゚)「なるほどな……」

ξ゚⊿゚)ξ「!あんた、もしかして……」

(´・ω・`)「なに?宇佐木さん」

ξ゚⊿゚)ξ「……いや、なんでもない。
……それにしてもあんた、ほんと、やなやつね」

(´・ω・`)「褒めてくれてありがとう」

ξ゚⊿゚)ξ「……褒めたつもりはないわよ。
まあいいわ。それでドクオ、誰を連れて行くのよ」

('A`)「ああ、連れて行くやつだけど……」

(´・ω・`)「うん」

('A`)「ブーン、良いか?」

( ^ω^)「お?僕かお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンなの?」

川 ゚ -゚)「私でもいいぞ?」

('A`)「……移動の時に必要な戦闘力ではクーは勿論ツンでも大丈夫だと思うけど、
何かあった際におれの指示で安全な場所まで逃げてもらうのを考えると、
出来るだけ足の速いやつがいいんだ」

川 ゚ -゚)「そういうことか」

('A`)「それに、着いてからのレベル上げなんだけどさ、
ついでに街売りしてない片手剣をゲットする為のクエストをやろうと思う。
おれの分も含めて二本。
結構使える武器だし、そのままその武器を使える片手剣使いの方が良いだろ。
この先落ち着いてからならまだしも、
折角少しは慣れた今の武器を変えるのは時間の無駄だから。
そして、そのクエスト中に戦闘に慣れてレベルも上げられると思う。」

.

422 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 23:32:19 ID:ylSOxNhA0

(´・ω・`)「うん。分かった。
ブーン、宇佐木さん、来島さん、良いね」

ドクオの説明に頷き、ショボンが三人に確認をした。

川 ゚ -゚)「問題ない」

( ^ω^)「……大丈夫だお」

ξ゚⊿゚)ξ「……しょうがないわね」

クーはすぐに返答したが、
ブーンとツンは互いの顔をちらっと見てから同意を告げる。

(´・ω・`)「二人を離すのは心苦しけど……」

ξ*゚⊿゚)ξ「な、何言ってるのよ!」

(* ^ω^)「おっおっお!
出来るだけ早くみんなを迎えに来られるように頑張るお!」

(´・ω・`)「危険だけど、頼むよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、時間かかってもいいから。出来るだけ安全にね」

川 ゚ -゚)「徳永、内藤、頼んだ」

( ^ω^)「頑張るお!」

('A`)「ああ。おれも頑張るよ。
あ、でさ、さっきからちょっと気になってたんだけど」

川 ゚ -゚)「ん?なんだ?」

('A`)「いや、クーだけじゃなくみんなにさ」

(´・ω・`)「なに?」

('A`)「この世界では、リアルネームじゃなくてこちらの世界の名前を使ったほうが良い」

.

423 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 23:35:50 ID:ylSOxNhA0

ξ゚⊿゚)ξ「そういえば顔が一緒だから普通に名前呼んでたわね」

川 ゚ -゚)「まずいのか?」

('A`)「んー。明確な理由があってまずいってことは無いと思うし、
リアルネームとこちらの名前を同じにしてる人もいるだろうから一概には何とも言えないけどな。
ただ、これから先この世界でそれなりの時間過ごすことを考えると、
こちらでの名前を使っていたほうが良いと思う。
こちらの世界で知り合う人もいるだろうし」

(´・ω・`)「そうなんだ。
そこら辺はよく分からないけど、ドクオがそう言うなら気を付けるよ。
ドクオとブーンはいいとして、ツンさんとクーさんだね」

ξ゚⊿゚)ξ「呼び捨てで良いわよ。
わたしもショボンって呼ぶから。
っていうか、あんたにツン『さん』とか言われるとむず痒くなる」

(´・ω・`)「酷いな」

川 ゚ -゚)「私も呼び捨てにしてくれ。
私も呼び捨てで呼ぶしな。
ブーン、君もそうしてくれ」

( ^ω^)「わかったお!」

(´・ω・`)「うん。僕もそうするよ」

('A`)「うん。それでいい。
それでショボン、おれ達が鍛えている間、
お前達はどうするんだ?」

(´・ω・`)「中央から離れた宿屋に籠ろうかと思う。
僕は、日中は情報収集の為に出たりするつもりだけど、
ツンとクーは部屋の中に居てもらうよ」

ξ゚⊿゚)ξ「やだ」

( ^ω^)「ツン、僕とドクオが戻るまではそうして欲しいお」

ξ゚⊿゚)ξ「うーーーー」

.

424 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 23:39:06 ID:ylSOxNhA0

川 ゚ -゚)「仕方あるまい。
三人とも街の外に出たりしないのは当然として、
闇雲に部屋の外には出ない様にしよう。
ま、二日が限度だと思うがな」

('A`)「戻ってこれるとは思うけど。……あ。そうだ」

(´・ω・`)「どうしたの?」

('A`)「ショボン、別に宿屋じゃなくてもいいよな?
鍵がかかって外から守れれば」

(´・ω・`)「うん。それは良いけど」

('A`)「ならあそこがある!」




.

425 名も無きAAのようです :2015/11/30(月) 23:39:57 ID:Z52GQRn.0
来ると思ってたから!

支援

426 ◆dKWWLKB7io :2015/11/30(月) 23:48:23 ID:ylSOxNhA0
以上、本日の投下は終了します。

二十話はこれくらいの長さがあと数回続くので、
修正しつつゆっくり投下する予定です、
よろしくお願いします。

支援等、いつもありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。


次回、『2.出発』


ではではまたー。

.

427 名も無きAAのようです :2015/11/30(月) 23:50:00 ID:Z52GQRn.0
作者、おむつー

428 名も無きAAのようです :2015/12/01(火) 00:56:10 ID:uFzc9vfw0
乙津

429 名も無きAAのようです :2015/12/01(火) 01:04:35 ID:0P1GSiy.0
乙乙

430 名も無きAAのようです :2015/12/01(火) 07:36:00 ID:emOpIpKE0
おお、きてた
おつおつー、また待ってるぜ

431 名も無きAAのようです :2015/12/02(水) 20:11:03 ID:2LmnKnlc0
乙!

432 名も無きAAのようです :2015/12/05(土) 12:15:31 ID:NrnGWIas0
おつ

433 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:13:52 ID:txZEg.9U0
では投下を開始します。

今日もよろしくお願いします。

.

434 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:15:48 ID:txZEg.9U0




2.出発




.

435 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:17:27 ID:txZEg.9U0

ドクオの先導で教会を出た五人は、
何の変哲もない通路にやってきた。

街の外れに位置するその路地には店の看板を掲げている家も無く、
その通りには『民家』しかない様に見える。

( ^ω^)「なにもないおね……」

川 ゚ -゚)「またさっきの様な隠し店舗があるのか?」

('A`)「まあ見とけって」

ドクオの指示により、曲がり角に隠れる四人。
ドクオは一人角から十数メートル先の民家の前で立ち止まった。

ξ゚⊿゚)ξ「うわ。こっち見て笑った。
何あのドヤ顔」

川 ゚ -゚)「爽やかではないな」

(; ^ω^)「……許してあげてほしいお」

(´・ω・`)「なにするんだろ」

四人が見守る中、ドクオは大きく深呼吸すると目の前のドアを力強く蹴った。

(´・ω・`)「え?」

(; ^ω^)「ど、ドクオ!?」

ξ゚⊿゚)ξ「何してるのあいつ」

川#゚ -゚)「ああいう行為はいただけんな」

蹴るというよりはドアを踏みつける様に、
足の裏で全部で四回蹴ると、すぐに隣の家の門柱の陰に隠れるドクオ。

.

436 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:20:59 ID:txZEg.9U0

駆け寄ろうとした三人をショボンが
「とりあえず隠れて見ていてくれって言っていたし」
と言って制止していると、民家のドアが開いた。

女性が周囲を見回している。

そして誰もいないのを確認すると、ドアを閉めた。

それを確認したドクオが四人のもとに駆け寄ってきた。

ξ゚⊿゚)ξ「何やってんのよあんた」

('A`)「あれを後三回やるから、もうちょっと見ててくれ」
  
川#゚ -゚)「あと三回も?」

(; ^ω^)「おー」

(´・ω・`)「ドクオ、これはβテスターしか知らない内容なんだよね?」

('A`)「ん?ああ。っていうか、おれと数人しか知らないと思う」

(´・ω・`)「分かった。
ツン、ブーン、こちらに残って、誰か来たら声をかけて。
クー、僕と一緒に向こう側の角に移動しよう。
ドクオ、何をするのかは知らないけど、誰にも見られないようにしてくれ」

('A`)「え?あ。ああ。わかった」

(´・ω・`)「あと三回蹴ったらどうしたらよい?」

('A`)「終わったら呼ぶから、やってきてくれ」

(´・ω・`)「わかった。
じゃ、クー、向こう側に行こう。
ブーン、ツン、頼んだよ」

川 ゚ -゚)「う、うむ」

( ^ω^)「おっお。わかったお」

ξ゚⊿゚)ξ「わかった」

.

437 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:23:56 ID:txZEg.9U0

駆け出すショボンと、後に続くクー。

不思議そうな顔をした残った三人だったが、ドクオは気を取り直して民家の前に戻った。





同じようにドアに蹴りを入れるドクオ。

四回目の蹴りの後にドアを開けた女性は、
遠目で見てもイラついているのが分かった。

そして大きく音を立ててドアを閉めるのを確認すると、
ドクオが四人を手招きした。

ξ゚⊿゚)ξ「それで、これでどうなるってのよ」

('A`)「ショボン、これで中に入るとイベントが発生する。
基本どんな受け答えでも三日間はこの家の二階にただで寝泊まりさせてもらえるから、
この家を拠点にしてくれ」

(´・ω・`)「ここに?」

('A`)「ああ。この世界では、
宿屋の看板が出ているところ以外にも泊まれるところが結構あるんだよ。
ま、こんなフラグ立てをしなきゃいけないのはそんなにないし、
ただで泊まれるところはほんとに少ないけど。
ここも三日間泊まった後は、多分二週間くらいここにただで泊まることは出来ない」

( ^ω^)「全員分やらないとなのかお?」

('A`)「いや、パーティー設定している全員が泊まれる。
ここは元宿屋かなんかで、上にはリビング一つに寝室が二つあるんだ。
寝室にはベッドが二つあったから、三人なら充分だろ?」

(´・ω・`)「パーティー。
教会でやったあの設定?」

.

438 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:25:28 ID:txZEg.9U0

('A`)「そ。あれで今この五人はパーティー。
まあグループ設定されてるってわけだ。
って、早く入らないと最初からやり直しだから、ショボン、入ってくれ」

(´・ω・`)「う、うん。わかったよ」

詳しいことを聞きたそうなショボンだったが、
ドクオに急かされてドアの前に立ち、ノックをした。

『……誰だい?』

すぐに開かれるドア。
先程までの蹴りにより、
ドアの前に待機していたのだろう

(´・ω・`)「こ、こんばんは」

会釈をするショボンを上から下までじっくりとあからさまに見まわす女性。

同時にショボンも女性を観察する。
少しふくよかな体格。
身長もショボンより高いだろう。
そこまでは現実世界の人間と遜色ないが、大きな違いが一つ。l

頭の上に、エクスクラメーションマーク。
俗に言う『ビックリマーク』が浮かんでいた。

(´・ω・`)(これがクエスト受託マークなのかな)

『何か用かい?』

(´・ω・`)「え、あ、その」

('A`)「……え。会話が違う」

(´・ω・`)「い、色々とお話を伺いたくて」

『話……ね。あんたたち、旅行者かい?それとも冒険者かい?』

.

439 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:29:28 ID:txZEg.9U0

(´・ω・`)「ぼ、僕達は……冒険者です」

『その姿でただの旅行者ですとか言われたら、ドアを締める所だったよ。
立ち話もなんだ、中に入りな』

ドアが開け放たれ、五人を中に促す女性。

どうやら玄関という概念は無いようで、すぐにリビングの様になっていた。
八人は腰掛けることが出来そうなソファーセットがあり、促されて五人はそこに座った。

(´・ω・`)「ドクオ、この後はどうしたらいいの?」

('A`)「……任せる」

(´・ω・`)「は?」

('A`;)「βの時と、色々違ってるから掴めん」

女性が「ちょっと待ってな」と言って奥の部屋に行ったのを確認した後、
ぼそぼそと会話する二人。
その会話を呆れた顔で三人が聞いている。

('A`)「とりあえず生死にかかわる様な事にはならないはずなのと、
どこかに行くとか何かを選択する時にはウインドウが現れてキャンセルも出来るはずだから、
とりあえずは会話を進めてみてくれ」

(´・ω・`)「……分かったよ」

ショボンの言葉で会話が終わり、なんとなく黙り込む五人。
それぞれに部屋の調度を見回している。

部屋はかなり広いが、家具と呼べるものは彼らが座っているソファーセットぐらいだった。
奥に扉が一つと、二階に上がる階段があるくらいである。
しかし壁にはいくつもの絵画が飾られていた。
中には空に浮かぶ卵の様な絵もあるが、ほとんどは空と大地を描いた風景画だった。
壁にはアンティーク調の壁紙も貼られており、
βテスト時代に多くの民家や宿屋を見てきたドクオも新鮮な気持ちで観察していた。

('A`)(全然違ってる……)

.

440 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:32:08 ID:txZEg.9U0

『待たせたね』

帰ってきた女性がローテーブルの上にコップを置く。

テーブルの長辺には三人掛けのソファーがあり、五人は男女に分かれて座っていた。
そして短辺にある一人掛けのソファーに女性が腰を掛けた。

『それはサービスだ、飲むも飲まないも自由だよ』

(´・ω・`)「いただきます」

テーブルの上のカップを手に取り、口をつけるショボン。
一口啜ると、弱い苦みの中にほんのりと甘さのある味が広がった。

(´・ω・`)「初めて飲む味です。これは?」

一瞬顔をしかめたショボンを見てにやりと笑う女性。
そして自分も一口啜ってから、口を開いた。

『これは【ラウラ草】という薬草を乾燥して作ったお茶だよ』

(´・ω・`)「よく飲まれるんですか?」

『ここでは採れない草だ。飲むのはたまにさ』

(´・ω・`)「貴重なものをありがとうございます。
ここでは採れないとのことですが、どちらで採れるんでしょう?
次の街ですか?」

『……【ラウラ草】は、この層では採れない』

(´・ω・`)「そうですか」

女性に対し、ニッコリと微笑むショボン。

.

441 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:35:35 ID:txZEg.9U0

『私の名前は『アイネ=ハウンゼン』。
ここに来たということは勿論私の名前は知っていると思うが、
自己紹介をするのは当たり前だからね』

(´・ω・`)「申しおくれました。僕の名前は『ショボン』です」

チラッと横を見るショボン。
二人の会話を黙って聞いていたドクオが慌てて口を開く。

('A`)「ど、『ドクオ』です」

( ^ω^)「『ブーン』ですお」

ξ゚⊿゚)ξ「『ツン』です」

川 ゚ -゚)「『クー』と申します。
本日は夜分にお伺いして申し訳ありません」

(アイネ)『気にすることは無いさ。
こんな時間、まだ昼も同じだよ』

川 ゚ -゚)「そうですか」

(アイネ)『それで、話ってのはなんだい?』

('A`;)!

NPCとの会話。

通常NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)との会話では、
一人一人に一定の会話設定がされており、
そのキャラクターに沿ったキーワードを与えることが出来れば、
会話が成立して話を進めることが出来る。

例えばある村の村長に『何かお困りですか?』といったようなセリフを言えば、
【村を襲うゴブリンを退治しろ】というクエストを始めることが出来るが、
『今日はいい天気ですね』と話しかけても、クエストは始まらない。

('A`;)(こんな状況で何の話をしろってんだよ)

.

442 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:37:29 ID:txZEg.9U0

(´・ω・`)「この世界の話をお聞かせ願いますか?」

('A`;)(はあ!?)

アイネの顔を見ながら迷うことなく告げるショボン。

焦った様にショボンの顔を見るドクオを見て、
残りの三人もショボンの顔を見た。

しかしショボンはそんなことは全く気にすることなくアイネの顔をじっと見ている。

すると、アイネの上に浮かんでいたエクスクラメーションマークの色が変わった。

('A`;)「え?」

思わず声を出してしまったドクオだったが、
アイネは気にすることなくショボンを見ながら笑い出した。

(アイネ)「合格だ。話してやろう」

('A`;)(はああああああ?)

豪快に笑いながらショボンの顔を値踏みするかのように見るアイネ。
そして笑い終わると、表情を引き締めた。

(アイネ)「私に話をさせる気にさせたのは、あんたが初めてだよ。
だが、全部を話すにはどれだけの夜を重ねればいいのか分からないほどこの世界は広い。
まずは自分で調べるんだね」

立ち上がるアイネ。
そして二階に上がる階段に向かった。

(アイネ)「ついてきな」

(´・ω・`)「はい」

立ち上がったショボンがアイネに続き、
その後を慌てて四人が続いた。

.

443 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:39:13 ID:txZEg.9U0



二階に上がると、人が二人余裕で通れる廊下の先にあるドアに連れて行かれた。

('A`)「おれが泊まったのは手前のドアだ」

川 ゚ -゚)「正式サービスで変わったのか?」

('A`)「分からない……。でも、この受け答えは無かったと思うから、
おそらくは変更したとおもう。
それか、テストの時は実装してなかっただけで、元からこうする仕様だったのか」

ドアは全部で四つ。
階段近くのドアを見ながらドクオは先に進んだショボンの後に続く。

(アイネ)「ここだよ」

アイネが奥の扉の一つを開くと中に入った。
その後をショボン達が続く。

(´・ω・`)「これは」

壁一面の本棚と、そこに収められた本。
ところどころに開いている個所はあるが、ほとんどが埋まっていた。

(アイネ)「ハウンゼン家が集めた知識。
『ハウンゼン=レコード』だ。
これが見たかったんだろ?」

(´・ω・`)「はい」

('A`;)「(えーーーー)」

(;^ω^)「(ショボン)」

ξ゚⊿゚)ξ「(この男)」

川 ゚ -゚)「(これが吉と出るか、凶と出るか)」

.

444 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:41:16 ID:txZEg.9U0

(アイネ)「ホントに度胸があるね。
そういうやつは嫌いじゃない」

ニヤッと笑ったアイネに笑顔で返すショボン。

('A`)「(どういうフラグなんだ?)」

( ^ω^)「(ショボンすごいお)」

ξ゚⊿゚)ξ「(うまくいきやがった)」

川 ゚ -゚)「(吉と出たようだな)」

(アイネ)「といっても、今お前達が読めるのはこの辺りだけだろう」

アイネが扉の近くの本棚に向かい、一冊の本を出した。
そしてそれをショボンに渡す。

(´・ω・`)「【はじまりの街】」

('A`)「この街の名前だな」

表紙に書かれた文字を読んだショボン。
開くと、そこには目次があった。

(´・ω・`)「これは……もしかしてクエストリスト?」

('A`)「なに!」

慌てて横から覗き込むドクオ。
そして目を輝かせた。

('A`)「うを!まじか!」

ξ゚⊿゚)ξ「クエストリスト?」

( ^ω^)「クエストっていうのは、
街や外にいるNPCから請け負うことの出来るアルバイトみたいなものだお。
街の中での簡単なお使いから、外に出て採取したりモンスターを何匹か倒したり、
あとは中ボスクラスのモンスターを倒すなんてのもあるお」

.

445 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:45:08 ID:txZEg.9U0

川 ゚ -゚)「クエスト……か。
それで、あの本にはそのリストが載っているのか?」

( ^ω^)「みたいだお。
通常は自分でNPCに声をかけて探さなきゃいけないから、
リストがあればすごく楽になるお」

ξ゚⊿゚)ξ「攻略本みたいって事?」

( ^ω^)「おっお。少し違うけど、そんな感じだと思ってくれていいお」

川 ゚ -゚)「なるほど。
それであんなにドクオが喜んでいたわけだな」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、なんかテンション下がってない」

三人の視線の先、先ほどまで目をキラキラさせていたドクオが目に見えて項垂れていた。

('A`)「クエストタイトルしか書いてねーじゃん」

(´・ω・`)「どこで請け負えるかも書いてあるよ?」

('A`)「まあそれは少しは役に立つけどさ。
攻略方法はともかく内容も書いてないとか……」

(アイネ)「当たり前だ。
冒険者なら、冒険者らしく自分で埋めるんだね」

('A`)「そりゃそうだけど…」

棚の二冊目を手に取るドクオ。
その本の表紙には【ホルンカ】と書かれている。

('A`)「街ごと有るんだな」

本を開くドクオ。
しかし、今度はクエストネームも書かれておらず、目次には数字だけが並んでいた。

('A`)「……名前も無いとか」

.

446 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:50:38 ID:txZEg.9U0

(´・ω・`)「行くことは出来るけど、
行ったことが無い街の本は見られるけどクエストネームすら分からない。
っていうことかな?
それにほら、この棚の本は出す事も出来ない」

違う棚の本に手をかけるショボン。
しかし出す事すらできない。

('A`)「この部屋、意味あるのか?いやない」

(´・ω・`)「そう?
自分で記録を取ることを考えたらかなり楽だよ?」

('A`)「そりゃそうだけどよ」

(´・ω・`)「それに、ヒントもある。
例えばこのはじまりの街の本。
ここ、ナンバーは書いてあるけどクエストネームは書いてない。
つまり、隠しクエストがあるってことだよね。多分」

('A`)「!なるほど。
隠しが有るか無いかが分かるだけでもかなりの手間が省ける……か?」

(アイネ)「自分の力で埋めることが出来れば、
それは歴史であり、経験であり、知識であり、糧となる。
そして、それ以外にここに来ればいいことがあるかもしれんぞ。
私を始め、ハウンゼンの者は知識や話が好きだからな」

(´・ω・`)「そうですね。ここの本をすべて埋められるよう頑張ります」

(アイネ)「頑張ってくれ。
といってもそれだけじゃ、折角ここに一番最初に来たのにつまらんだろう」

そう言いながら懐から一冊の本を取り出し、ショボンに渡した。

(´・ω・`)「……【アインクラッド】?」

.

447 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:54:11 ID:txZEg.9U0

(アイネ)「このアインクラッドの成り立ちと歴史をしたためた本だ。
その本を受け継ぐことが『ハウンゼン家』の当主たる証だから
やることは出来ないが、ここに来ればいつでも読ませてやろう」

(´・ω・`)「ありがとうございます」

(アイネ)「さて、そろそろ夜も更けてきた。
お前達、今夜の宿はとってあるのか?」

(´・ω・`)「いえ……」

アイネに促されて部屋を出る五人。
そして向かいのドアを開けたアイネが、そこに五人を通した。

(´・ω・`)「ここは……」

('A`)「βの時より豪華だ」

ξ゚⊿゚)ξ「なかなかね」

川 ゚ -゚)「居心地が良いな」

一階の最初に通された部屋が嘘のような部屋だった。
中央に置かれたソファーセットは大きさこそ先ほどの部屋のもとの同じだが、
見ただけで格段に良いものであるのが分かる。
部屋には他にも暖炉や燭台があり、天井には小さいがシャンデリアまである。
壁沿いには水差しの置かれたテーブルや棚などが備え付けられていた。

(アイネ)「三日くらいなら、ただで泊めてやろう」

('A`)「(ここでこのルートか……)」

(アイネ)「実はお前達が来る前に玄関にいたずらをされてな。
冒険者がいると分かればいたずらする奴もいないだろう」

ドクオを見ながらアイネが話す。
思わず視線を逸らしたドクオを見て、唇の端で笑った。

(´・ω・`)「いえ、払わせてください」

.

448 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:56:25 ID:txZEg.9U0

('A`)「え?ショボン?!」

(アイネ)「……どういうことだい?」

アイネの表情から笑みが消え、
冷たくショボンを見下ろす。

(´・ω・`)「今はやられてはいないのかもしれませんが、
おそらくここは宿屋をされていたのではありませんか?」

(アイネ)「ああ。そうだ」

(´・ω・`)「でしたら、ちゃんと料金は徴収してください。
【ハウンゼン=レコード】を読みに来る度に泊まらせてもらうわけにもいきませんし、
これからあの部屋を使わせていただくにあたって、
出来るだけ対等でいられるようにさせていただきたい」

('A`)「お、おい……」

(アイネ)「悪いがこの部屋は、というよりこの宿はもともと特別室のみでね。
どの部屋もこの街の通常の宿屋とは格も桁も違う。
あんた達に払えるとは思えないよ」

(´・ω・`)「では、外に宿を取ります。
この本を読む間、一時間ほど先ほどの
【ハウンゼン=レコード】の部屋をお貸し願いますか」

冷たく見下ろすアイネと、臆することなく対峙するショボン。

数分誰もしゃべらずその状態が続き、
ドクオが意を決して話しかけようと口を開こうとしたその瞬間、
アイネが大きな声で笑い始めた。

('A`)「(へ?)」

(アイネ)「意地っ張りなやつは嫌いじゃない。
しかもこのアイネさんに、
元宿屋ギルド総元締めのアイネ=ハウンゼンに意地を通すとは、
気に入ったよ。あんた」

.

449 ◆dKWWLKB7io :2015/12/05(土) 23:58:45 ID:txZEg.9U0

心底面白そうに笑っているアイネ。

(´・ω・`)「では……」

(アイネ)「だが、あたしにも意地はある。
気に入った奴から宿代を貰うなんて、
アタシの名に傷が付くからね。
しかも他の宿に行かれたなんてことは以ての外だ。
絶対にここに、ただで泊まってもらうよ」

(´・ω・`)「……」

(アイネ)「明日、用事をいくつかこなしてくれ。
それが宿代ってことで良いだろう」

(´・ω・`)「用事ですか?」

(アイネ)「もちろん、今のあんた達にできるレベルでだよ。
今回はこの街の中で色々とお使いをしてもらうだけさ。
勿論、この先出来ることが増えたら色々やってもらうけどね。
それでどうだい?」

(´・ω・`)「そうですね……」

(アイネ)「女の我儘を笑ってきくのも、男の度量ってもんだよ?」

(´・ω・`)「はい。分かりました」

(アイネ)「よし!成立だ!」

笑顔で右手を差し出すアイネ。
そしてショボンも笑顔でその右手を取り、握手を交わす。

(アイネ)「この部屋はいつでもこれから好きな様に使ってくれ」

五人の耳に、チャイムの様な電子音が響いた。

('A`)「クエスト完了!?」

.

450 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 00:03:03 ID:oINB0dP60

(´・ω・`)「え!?」

( ^ω^)「お!?」

ξ゚⊿゚)ξ「どういうことよ」

川 ゚ -゚)「今のは?」

そして続いて同じような、けれど旋律の違う音が彼らの耳に別々に鳴っていた。

(アイネ)「それじゃまた明日朝に待ってるよ」

呆然とする五人に構うことなく、
アイネはもう一冊小さな本をショボンに手渡した。

(アイネ)「これは一番最初に辿り着いた報酬だよ。
大事に使うんだね」

アイネは今日で一番人の悪い笑顔を見せると、部屋を出て行った。

('A`)「ショボン、それは?」

(´・ω・`)「【アイネの手帳】」

川 ゚ -゚)「アイネの手帳?」

小さな本を開くショボン。
最初の数ページに幾つかの文章が書かれており、
その次のページには数字の羅列が書かれ、
その先のページは空白だった。

.

451 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 00:05:52 ID:oINB0dP60

(´・ω・`)「これも基本的にはクエストを記録する手帳みたいだね。
多分明日の『依頼』を筆頭に、
彼女から請け負うクエストでこれを埋めていくんじゃないかな。
そして、最初のページに幾つか書いてあるよ。
この手帳を持って来た者は、
【アイネ=ハウンゼンの宿】を無料で使うことが出来る。
多分ここがその宿なんだろうね。
ただし、継続利用は最長七泊八日。
使用した後は、その直前に継続宿泊した日数分利用することは出来ない。
つまり最大泊数の一週間泊まったら、その後一週間は泊まることは出来ないってことみたい。
この手帳を持っている者は、【ハウンゼン系列の宿】に泊まる際に、
宿ごとのサービスを受けることが出来る。
この手帳を持っている者は、【ハウンゼン系列が売る建物】を購入する際に、
手帳を埋めている率に相応した割引価格で購入することが出来る。
他にもいろいろ書いてあるけど、
【ハウンゼン家】はアインクラッドで宿屋とか不動産業を営んでる、
大富豪って感じなのかな。
この手帳はハウンゼン系の店で使える割引パスポートってことみたい」

ξ゚⊿゚)ξ「あら、結構お得ね」

川 ゚ -゚)「うむ。役立ちそうだな」

('A`)「……」

(;^ω^)「……」

渡された手帳の内容を読んだショボン。
ツンとクーは部屋のソファーの座り心地を確かめながら素直に思ったことを口にしている。

川 ゚ -゚)「?どうした?二人とも呆けた顔して」

ξ゚⊿゚)ξ「締まりの無い顔が更にぼんやりしてるわよ」

(´・ω・`)「どうしたの?」

ショボンもソファーに腰掛け、
ツンとクーの二人とかけ心地について話しはじめても、
二人はぼんやりと立ちつくしていた。

.

452 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 00:07:44 ID:oINB0dP60

(;^ω^)「……」

('A`)「……」

(´・ω・`)「ホントにどうしたのさ二人とも」

(;^ω^)「おーー……。
ねえドクオ、あの手帳って……」

('A`)「ああ。おそらく超レアアイテムだ」

(´・ω・`)「ふーん。そうなんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「あら、珍しいアイテムなの?」

川 ゚ -゚)「ふむ。まぁ全員がこんなのを持っていたら、
宿屋の商売はあがったりだな」

ξ゚⊿゚)ξ「それもそうね」

(´・ω・`)「そうだね。
商売にならないかも」

笑う三人をよそに、ドクオとブーンの表情は更に強張る。

('A`;)「っていうか、超レアアイテムなんてレベルを超えて、
武器で言うところの魔剣クラス、
いや、多分、伝説級(レジェンダリー)……」

(;^ω^)「伝説級武器(レジェンダリー・ウエポン)ならぬ、
伝説級アイテムかお?」

('A`;)「……サーバーに一個しかないやつかも。
さっきあの人【一番最初に辿り着いた報酬】って言ってたよな」

(;^ω^)「うわぁ……」

ξ゚⊿゚)ξ「さっきから何ぼそぼそ話してるのよ。
このソファー座り心地良いわよ。
座ったら?」

.

453 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 00:10:43 ID:oINB0dP60

川 ゚ -゚)「レジェンダリー?伝説級?
その手帳がそんなにすごいのか?」

('A`;)「凄いなんてもんじゃない。
……多分」

(;^ω^)「サーバーに、この世界に一つしかないアイテムかもしれないんだお」

ツンの隣に腰掛けるブーンと、一人用のソファーに腰掛けるドクオ。

テーブルの上に開かれた手帳をこわごわ覗き込む。

(´・ω・`)「レアアイテムかなとは思ったけど、これってそんなに凄いの?」

('A`;)「多分な。
規格外だろ。こんなの」

(; ^ω^)「さっきも言ったけど、
もしかすると世界に一つだけのアイテムかもしれないんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「ふーん」

川 ゚ -゚)「ほお」

('A`)「……相変わらず感動薄いなおい」

ξ゚⊿゚)ξ「まだそんなに恩恵受けてないし」

川 ゚ -゚)「実感が湧かないな」

('A`)「そうですか」

(´・ω・`)「あとさ、なんかレベル上がってるんだけど」

('A`)「え?あ、さっきの音!」

ウインドウを開いていたショボン。
慌ててドクオが開き、残りの三人もそれぞれに開いた。

.

454 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 00:12:52 ID:oINB0dP60

('A`)「……レベル2。
っていうか、もうすぐ3?
なんだこれ……チートすぎる」

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、レベル上がったから一緒に行けるんじゃない?」

('A`)「え?ああ……。いや、ダメだ。
レベル上げってのは、戦闘の経験を積むってことでもある。
いくらレベルが上がっても、経験が無いのは恐い」

ξ゚⊿゚)ξ「そう……」

( ^ω^)「頑張ってくるから、待っててほしいお」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。頑張ってね。
絶対戻ってきなさい」

( ^ω^)「はいだお!」

川 ゚ -゚)「それで、結局なんだったんだ今のは」

('A`)「おれがβの時には、
部屋をただで借りるための隠しイベントだったんだ。
まさか、こんな事になるなんて」

(´・ω・`)「もともとそうだったけどテストのときは隠していたのか、
正式サービスに際して変わったのか……」

川 ゚ -゚)「こういったイベントをするとレベルが上がるのか?」

('A`)「イベントやクエストでも経験値は入るけど、
ここまで入るのは……。
まあ今回のも、本当はもう少し経ってからクリアされるのを想定していたかもしれないな。
ある程度レベルが上がってからなら、
この量の経験値が加算されても簡単にレベルが上がったりしないだろうし」

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、明日頼まれるお使いをちゃんと出来れば、
また経験値が入るかもしれないのね?」

.

455 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 00:14:58 ID:oINB0dP60

('A`)「そうか。そうだな。可能性はある。
宿代の対価だから、お金やアイテムは手に入らないだろうし」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ私達もやるからね?ショボン」

(´・ω・`)「……うん。分かった」

('A`)「大丈夫だろ。
街の外に出さえしなきゃ」

川 ゚ -゚)「ああ。気を付けるよ」

(´・ω・`)

( ^ω^)「お?ショボンどうしたんだお?
また難しい顔して」

ξ゚⊿゚)ξ「ダメだって言ってもやるわよ?」

(´・ω・`)「いや、それは一緒にやろう。
安全にレベルを上げられる可能性があるなら、やっておいたほうが良い。
経験も大事だけど、レベル、最大HPを上げられるチャンスを逃す手は無いからね」

( ^ω^)「じゃあどうしたんだお?」

(´・ω・`)「ドクオ、こういったβテストから変更ってのはよくあるのかな?」

('A`)「ん?ああ、そうだな。結構ある。
行けないところが行けるようになったり、クエストが増えたり。
今回みたいに分岐が増えたり」

(´・ω・`)「敵は?」

('A`)「敵?」

(´・ω・`)「見た目は同じモンスターだけど、動きが変わったり、
弱点が変わったり」

('A`)「!あ、ああ。そうだな。ある。…ああ、あるな。うん」

.

456 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 00:16:13 ID:oINB0dP60

(´・ω・`)「それじゃあ、」

('A`)「ただ、ここ周辺のモンスターと、
次の街に行くまでの道すがらのモンスターは大丈夫だと思う。
まだ武器を持つタイプは出てこないから攻撃のバリエーションも少ないし。
もし出没モンスターが変わっていたら、一度撤退するよ」

(´・ω・`)「うん。気を付けて」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、ドクオ……」

( ^ω^)「大丈夫だお。
頑張ってくるから、ツンとクーもクエスト頑張って!」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ゚⊿゚)ξ「まったく、能天気なんだから」

( ^ω^)「おっおっ」

('A`)「さて、じゃあそろそろおれ達は行くか」

立ち上がるドクオ。
続いてブーンが立ち上がり、
自然と残りの三人も立ち上がる。

('A`)「見送りは良いぞ。
外に出ないほうが良いだろ?」

(´・ω・`)「うん……。
ドクオ、一つお願いがある」

('A`)「ん?」

(´・ω・`)「出来るだけβテスターだってことが周りに知られないようにしてくれ」

('A`)「?ああ、わかった。
でも、何故だ?」

.

457 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 00:17:49 ID:oINB0dP60

(´・ω・`)「……長くなるし、杞憂で終わる可能性もある。
……戻ったら説明するよ、だから」

('A`)「わかったよ。
おまえが言うなら隠しておいたほうが良いんだろう。
気を付ける」

(´・ω・`)「うん。よろしく」

ξ゚⊿゚)ξ「……いってらっしゃい」

( ^ω^)「行ってくるお」

川 ゚ -゚)「二人とも、気を付けて」

('A`)「ああ」

互いの顔を見て頷きあう五人。

そしてせめて下まで行こうとする三人をドクオが制し、
ドクオとブーンだけが部屋を出て行った。

扉のしまる音がツンの胸を苦しめ、
クーの心に不安を呼び、
ショボンに後悔を覚えさせた。

けれど三人はそれを外には出さず、
しばらくの間しまったドアを見つめていた。






.

458 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 00:22:05 ID:oINB0dP60
おつとおむつ、ありがとうございます。

以上、今回の投下を終了します。


次回、『3.武器』


また、よろしくお願いします。

ではではまたー。


.

459 名も無きAAのようです :2015/12/06(日) 00:26:10 ID:1ES0ruww0

>>452辺りのドクオとブーンの気持ちすげえわかるわ

460 名も無きAAのようです :2015/12/06(日) 00:53:26 ID:m9Pz2kIE0
おつー!

461 名も無きAAのようです :2015/12/06(日) 11:01:49 ID:UT0XR5cs0
おつおつ

462 名も無きAAのようです :2015/12/06(日) 13:19:50 ID:NYz90U3g0
そんなレアなアイテム持ってて大丈夫なんかな・・

463 名も無きAAのようです :2015/12/06(日) 19:10:59 ID:5iwsK/cA0
乙です
現実世界もいいけどやっぱゲームに入るとおもしろい
次の更新まってます!

464 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:05:57 ID:oINB0dP60
それでは、投下を開始します。

今日もよろしくお願いします。

.

465 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:07:52 ID:oINB0dP60




3.武器





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466 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:11:51 ID:oINB0dP60

『はじまりの街』から『ホルンカ』への道。
最短ルートではないが、
ドクオ曰く『モンスターがそれほどでない道』とのことだった。

('A`)「ブーン、片手剣の良さって、なんだと思う?」

( ^ω^)「お?」

ドクオが指示した通りに進んできたブーン。

立ち止まり、道すがらの大樹の下に隠れている二人。
ブーンはやってきた道を、一目散に駆け抜けた道を振り返る。

そこには四体の狼がいた。

闇に浮かぶ赤い八つの光、瞳と思われるその光を見て、
思わず身震いした時に、ドクオに問いかけられた。

( ^ω^)「だいたい初期装備とか主人公は片手剣だおね。
良さ……。良さ……。良さ……」

狼を気にしながらドクオと喋る。

('A`)「大丈夫だ、この場所は後ろの奴には縄張り外だから。
あと一分くらいで叢に戻る。
そしたらこの先に一匹狼が出る。
それは倒そう。
そこでは、順調に倒すことができれば、
倒した後に次の奴が出てくるはずだ。
ここで少し経験を積む」

( ^ω^)「わかったお」

('A`)「で、なんだと思う?」

(;^ω^)「おー。使いやすいのかお?」

.

467 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:13:42 ID:oINB0dP60

('A`)「それも一つだな。
片手で持って、手の延長線上の流れで攻撃することが出来る。
でも、それは一番じゃないと、おれは思う」

( ^ω^)「じゃあなんだお?」

('A`)「もう片方の手に盾を持てる」

( ^ω^)「おお!そうだおね」

('A`)「剣と盾、攻撃と防御を一つずつもてるんだ。
センスは必要だけど、かなり美味しいと思う」

( ^ω^)「なるほどだお。
あれ?でもドクオはもってないおね?
僕にも買えって言わなかったし」

('A`)「おれのやりたいスタイルには盾が邪魔なんだよ。
スキルスロットも二つしかないから剣と盾で埋まっちゃうし。
で、ブーン、お前も多分盾は持たないほうが良いと思う」

( ^ω^)「なんでだお?」

('A`)「お前の持ち味のスピードが損なわれる可能性が高い。
盾ってのは、相手の攻撃を受けて防ぐのが基本だ。
でもお前の持ち味がスピードなら、避けることが可能かもしれない」

( ^ω^)「スピード……」

('A`)「ただこれはおれの勝手な意見だ。
やりながらスタイルを決めれば良い。
スキルスロットの数にも限りがあるしな」

( ^ω^)「お……」

('A`)「さ、うしろの狼も去ったし、進むぞ。
まずはおれがやるから、二体目はブーンも参加してくれ」

( ^ω^)「わかったお」

.

468 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:15:59 ID:oINB0dP60

立ち上がるドクオ。
ブーンも立ち上がり、二人とも剣を構える。

('A`)「いくぞ」

( ^ω^)「おうっ!」

二人は闇に向かって走り出した。







二人が部屋を出た後、少しの間雑談していたが、すぐに沈黙が襲ってしまった。

それを感じ、立ち上がるショボン。

そして壁際に設置された小さいテーブルの上の水差しを確認して、グラスに手をかける。

(´・ω・`)「飲む?」

ξ゚⊿゚)ξ「え。あ、わたしは……」

川 ゚ -゚)「ああ。頼む。
ツンも飲むだろ?」

ξ゚⊿゚)ξ「え、あ、うん。そうね。よろしく」

(´・ω・`)「了解」

グラスを三つ用意して水差しを手にしようとすると、間違えて指先でタップしてしまった。
するとウインドウが現れた。

(´・ω・`)?

ウインドウを読み、頷いた後操作を始めるショボン。

.

469 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:19:46 ID:oINB0dP60

そして横の棚からティーセットを出してグラスを片付け始めた。

川 ゚ -゚)?

ξ゚⊿゚)ξ?

クーとツンが見守る中更にいくつか操作をすると、
トレイの上にティーセットを乗せてショボンが戻る。

(´・ω・`)「なんかね、お茶みたいのがあったんだ」

テーブルにトレイを置いた後、二人の前にソーサーにのったカップを置いた。

ほのかに湯気が立っている。

(´・ω・`)「凄いよね。あたたかいよ」

先程までと同じ位置に座ってカップを手にしたショボン一啜りして、呟いた。

それを見たクーとツンもカップを手に取る。

ξ゚⊿゚)ξ「ほんとだ……」

川 ゚ -゚)「うむ。あたたかいな」

口を付けると、表情が和らいだ。

川 ゚ -゚)「……優しい味だな。
ほんのり甘い」

ξ゚⊿゚)ξ「昔飲んだような、初めて飲んだ様な。
不思議な味」

(´・ω・`)「……」

そんな二人を見て表情を緩めたショボン。

(´・ω・`)「さて、今日は疲れたでしょ。
早めに休もうか」

.

470 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:21:31 ID:oINB0dP60

立ち上がり、奥のドアを開けるショボン。

一つ目と二つ目のドアは寝室のドアで、
三つ目は浴室に続くドアだった。

(´・ω・`)「こっちにはお風呂もあるよ」

ξ゚⊿゚)ξ「今日はとりあえず横になろうかな」

川 ゚ -゚)「ああ」

ショボンが二回目に開けたドアの中を覗く二人。
セミダブルサイズのベッドが二つあり、リビングと同じ色調の部屋は、
落ち着くことが出来そうだった。

ξ゚⊿゚)ξ「この部屋使うから、入ってこないように」

(´・ω・`)「わかってます」

ξ゚⊿゚)ξ「よろしい」

川 ゚ -゚)「ショボンはまだ休まないのか?」

(´・ω・`)「とりあえずさっきの本を読まないと。
あとあの本の部屋を隅々まで調査したいし」

川 ゚ -゚)「そうか……。
手伝いたいところだが、逆に負担になるだろうから止めておこう。
あまり無理はしない様にな」

(´・ω・`)「うん。ありがとう」

ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんと寝なさいよ」

(´・ω・`)「ありがとう。うん。ちゃんと休むよ」

その後明日の事も簡単に決めた後、
ショボンに就寝の言葉を告げてから二人は寝室に入った。





.

471 名も無きAAのようです :2015/12/06(日) 22:23:25 ID:mt9hKyfk0
久々に遭遇した支援

472 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:24:46 ID:oINB0dP60




部屋に入った後、
それぞれにベッドに腰掛ける二人。
スプリングを確かめた後、
ツンはそのままの姿で横たわった。

ξ゚⊿゚)ξ「不思議な気分。
疲れているから眠れそうだけど、
夢の中で眠る様なものなのかな」

川 ゚ -゚)「体が疲れているように感じるが、
現実世界の体は疲れていない。
本当に変な気分だ」

ξ゚⊿゚)ξ「倦怠感?
だるいとか、精神的に疲労しているっていう。
あれなのかな。
それが、身体の疲れのように感じているのかも」

川 ゚ -゚)「……そうか。着替えが無いんだな」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

川 ゚ -゚)「汚れたりしているわけではないが、服は脱がないとじゃないか?
特に防具はそれなりにごわごわしているというか……」

ξ゚⊿゚)ξ「ああ、うん。そうね。
この革のやつ、外さないとか。
普通に脱ぐのとは違うのよね」

川 ゚ -゚)「ああ。多分ウインドウで操作るんだと思う」

腰掛けたままウインドウを開くクー。
そして操作をすると、そのままの体勢で胸当てと腰回りの装備品が消える。

川 ゚ -゚)「ふむ。普通に脱ぐよりは楽だな。たたまなくてよい」

ξ゚⊿゚)ξ「何言ってるのよ」

.

473 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:27:03 ID:oINB0dP60

横になったまま、天井を向いたままウインドウを操作するツン。

胸当て、腰の装備が消える。
そしてそのまま布の衣服も全て消した。

川 ゚ –゚)「ツン?」

下着姿になったツンを見て首をかしげるクー。

ξ゚⊿゚)ξ「……パジャマとか欲しいな。
売ってるのかな。そういうの」

川 ゚ -゚)「どうだろうな。自分で作る事も出来るらしいぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「私の家庭科のレベルは知っているでしょ」

川 ゚ -゚)「こちらの世界ではスキルが全てだ。
裁縫スキルさえちゃんと持っていれば色々作ることが出来るらしいぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ針とか糸とか自分で縫ったりしなくていいの?」

川 ゚ -゚)「そう思われる」

ξ゚⊿゚)ξ「そうなんだ。やってみようかな」

川 ゚ -゚)「そうしたら私の分も作ってくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「りょうかーい」

白い下着姿のまま掛け布団に包まるツン。

川 ゚ -゚)「何をしているんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「へへへ。ふかふかで気持ち良いよ」

川 ゚ -゚)「まったく」

胸当てや靴といった『装備』のみを解いたクーが立ちあがり、
扉の横のパネルをタップする。

.

474 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:29:17 ID:oINB0dP60

タップするごとに部屋の光が少しずつ暗くなった。

川 ゚ -゚)「ツンは、真っ暗はいやだったな」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。ありがと」

壁の燭台だけが、ぼんやりとしたオレンジの光で部屋を満たした。

自分のベッドにもぐりこむクー。

何度か寝返りをうった後、ウインドウを出した。

川 ゚ -゚)

小さな電子音が響く。

ξ゚⊿゚)ξ「脱いだ方が気持ち良いでしょ」

川 ゚ -゚)「うむ。
素肌にシーツの感触と毛のもふもふ感が直接当たって、
不思議な気分だ。
ツンも普段はパジャマだよな?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。パジャマ。クーは浴衣?」

川 ゚ -゚)「寝間着だな。
だが最近はスエットにした」

ξ゚⊿゚)ξ「変えたんだ」

川 ゚ -゚)「楽だな。あれは」

ξ゚⊿゚)ξ「女の子なんだから、可愛いのにしなさいよ」

川 ゚ -゚)「上下グレーではダメか?」

ξ゚⊿゚)ξ「女子力低いので却下です」

川 ゚ -゚)「ピンクはあまり好きではないんだがな」

.

475 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:31:49 ID:oINB0dP60

ξ゚⊿゚)ξ「ピンク以外にもオレンジとか花柄とかあるでしょ。
クーは明るすぎない赤が似合うから、そんな感じのにするように」

川 ゚ -゚)「……善処しよう」

ξ゚⊿゚)ξ「まったく」

それぞれに掛け布団に包まって会話をする二人。

言葉だけを抜き出せば取りとめのない『普段の』会話。

だがそこに流れる感情は、『普段』とはかけ離れていた。

そして沈黙が訪れる。

隣のベッドの上の友人が身じろぎ一つしないのを感じて、
クーは瞳を閉じた。

ξ゚⊿゚)ξ「寝た?」

川 ゚ -゚)「いや」

ξ゚⊿゚)ξ「そっち、行って良い?」

川 ゚ -゚)「ああ」

閉じると同時に声をかけられ、返事をした。
そして瞳を開けた時には、隣に友人が潜り込んできた。

ξ゚⊿゚)ξ「……ごめんね」

川 ゚ -゚)「いや、大丈夫だ。
セミダブル程度の広さがある」

ξ゚⊿゚)ξ「いや、そうじゃなくて」

川 ゚ -゚)「それとも何か?私と二人では狭いとでも?」

ξ゚⊿゚)ξ「もう……」

.

476 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:34:49 ID:oINB0dP60

寄り添うように横たわる二人。

お互いの肌が触れ、自然に繋がれる手。

二人は自他ともに認める親友だが、
性質からべたべたとする方ではない。
同じ格好をして手を繋いで繁華街を歩く女同士を見て
『バカみたい』
と同時に思う程度には冷めていて、気もあっている。

だが、今日は違った。

強く握られる手。

ξ゚⊿゚)ξ「なんか、変なことになっちゃったね」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ゚⊿゚)ξ「デジタルの世界。
ハイテクノロジーの成果。
ゲームの中」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ゚⊿゚)ξ「そう、ゲームの中なのよね。
敵を倒してレベルを上げて、
自分を鍛えて更に敵を倒す。
ゲームの世界」

川 ゚ -゚)「そうだな。ゲームの中。
ゲームの世界だ」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、遊びじゃなくなっちゃったんだね」

川 ゚ -゚)「遊んで、勝って、負けて、終わって、帰って、
『楽しかった』って笑うことが、出来なくなってしまった」

ξ゚⊿゚)ξ「ゲームだけど、遊びじゃない。
命がけのゲーム」

.

477 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:37:33 ID:oINB0dP60

川 ゚ -゚)「武器で敵を倒さなければ、自分が死ぬ。
現実世界の自分が、死んでしまう」

訪れる沈黙。

クーは自分の手を握るツンの手が強くなったのを感じた。
そして彼女が自分に向かって寝返りをうったのを感じ、
なんとなくツンの方向に身体を向けた。

川 ゚ -゚)!

ξ ⊿ )ξ「……ごめん」

つないでいた手が解かれた。
そしてそのかわりにツンの両手はクーの背中に回された。

ξ ⊿ )ξ「ごめん……」

謝りながら、クーに抱きつくツン。

下着越しに互いの体温を感じる。

川 ゚ -゚)「ツン……」

ツンの名を呼び、自分の胸に顔をうずめる彼女の体と頭を抱える様に両手を回すクー。

川 ゚ -゚)「こんな状態になったんだ、私も心細い」

ξ ⊿ )ξ「違うの……」

川 ゚ -゚)「ツン?」

ξ ⊿ )ξ「わたし、いっしゅん、しょぼんのせいだって、思った」

川 ゚ -゚)!

クーに抱きつくツンの腕の力が強くなる。

ξ ⊿ )ξ「わたし、いっしゅん、ショボンに言われる前にそういう風に思っちゃった」

.

478 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:40:00 ID:oINB0dP60

川 ゚ -゚)「ツン……」

ξ ⊿ )ξ「そして、ショボンが自分のせいだって言った時に、
本当に、本当に一瞬だけど、『その通りだ!お前のせいで!』
って思ったの」

川 ゚ -゚)

ξ ⊿ )ξ「でも信じて!本当に一瞬なの!
すぐにそんなの違うって思ったの!
ここには自分の意思で来たんだって、分かってた!
でも、でも、でも……ごめん……」

川 ゚ -゚)「そんなこと、思って当然だと思う」

ξ ⊿ )ξ!

川 ゚ -゚)「ただ私や、ドクオや、ブーンは、
ツンよりはショボンと付き合いが長いから、
そんな風に思わなかった。
それだけだ」

ξ ⊿ )ξ「ちがう……」

川 ゚ -゚)「あとな、私は……。
そしてきっと、ブーンやドクオも、ショボンの言葉に安心したんだ」

ξ ⊿ )ξ「え?」

川 ゚ -゚)「ショボンは、私達を生きて向こうの世界に戻すと言った。
あいつは不言実行でもあるが、それ以上に有言実行だ。
一度言ったことは、何としてでもやり遂げる。
だから、あいつがそういうなら大丈夫だろうって思ってしまったんだよ

ξ ⊿ )ξ「信頼しているのね」

.

479 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:42:18 ID:oINB0dP60

川 ゚ -゚)「そんな良いもんじゃない。
私に限って言えば、結局甘えてしまっているんだよ。
あの日、あの土手で私に『qoo』のオレンジを手渡して泣き止ませた後、
要領を得ない私の言葉を組み立てて家まで連れて帰ってくれたあの日のショボンに、
私はまだ甘えているんだ。
あの日繋いでくれた手の温かさに、
私はまだ甘えてしまっているだけなんだ」

ξ ⊿ )ξ「クー」

川 ゚ -゚)「だから、ツンの持った感情の方が当たり前で、当然なんだ。
おそらく、自分を責めているショボンの心もな。
無条件であいつを信じている、
一瞬たりともあいつを責めなかった私達の方が、異常なんだ。
だから、ツンは気にしなくていい」

ξ ⊿ )ξ「でも……でも……」

川 ゚ -゚)「それにツン。
私はツンに感謝しているんだ」

ξ ⊿ )ξ「え?」

川 ゚ -゚)「ツンが言ってくれなかったら、
ショボンの事を信じるだけの、
その言葉にただ従う人形のようになってしまっていたかもしれない」

ξ ⊿ )ξ「クー」

川 ゚ -゚)「それではいけないんだ。
それでは、全ての責任をショボンに押し付けているのと変わらないんだ。
ショボンを頼るのと、すべて任せてしまうのは違う。
自分の事は自分で考える。
ショボンに頼るのはそれからなんだ。
それに頼ってしまうのはショボンだけじゃない。
ドクオにも、ブーンにも、そしてツン」

ξ ⊿ )ξ!

.

480 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:44:18 ID:oINB0dP60

川 ゚ -゚)「ツンに頼ることだってある。
そして、私はみんなに頼ってもらえるようになりたい。
クーに任せておけば大丈夫だって言ってもらえるようになりたい」

ξ ⊿ )ξ「……クー」

川 ゚ -゚)「今はまだこの胸を貸すことくらいしかできないが、
これからは他の事でも頼られたいよ」

ξ ⊿ )ξ「クー……」

川 ゚ -゚)「それに、私が辛くなったら貸してくれるだろ?」

ξ ⊿ )ξ「!うん!」

川 ゚ -゚)「その薄い胸を」

ξ ⊿ )ξ「…………」

川 ゚ -゚)「…………」

ξ゚⊿゚)ξ「どうせ薄い胸ですよ。
っていうかなんなのよこの胸は!
体触る時にずるしたんじゃないの!」

川 ゚ -゚)「いや、現実世界より少し小さい気がするんだが……」

ξ゚Д゚)ξ「なんだとーーー!」

その豊満な胸に顔をうずめたまま、更に奥に進むように顔を横に振るツン。

川 ////)「つ、つんやめろ」

背中に回していた手を解き、両手で胸を外側から揉むツン。
親指や人差し指が時折小さな突起に触れるが、
優しく柔らかく、時に強くその柔らかくて白い胸を揉むので夢中であまり気にしていない。

川 ////)「つ、つん」

.

481 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:45:58 ID:oINB0dP60

ξ゚Д゚)ξ「ここがいいのか!
ここがいいのか!
でかい胸しやがってこの女!」

川 ////)「つ、つん」

押し退けようとしたクーの手がツンのお椀型の胸を包む。

ξ////)ξ「んっ!」

クーの、女性としては少しだけ大きめの手で優しく包める大きさではあるが、
その柔らかさと弾力は見事なものだった。

クーの甘い吐息に紛れ、
ツンの口からも色付いた息が漏れた。

川 ////)「な、なんだツンはこういう風にされたいのか?」

ξ////)ξ「ちょ、ばか、やめなさいよ」

親指の先で突起を弾いた後に下から優しく揉み上げ、
谷間を強調する様に両サイドから押さえる。

川 ////)「ど、どうだ?」

ξ////)ξ「ば、ばか……。こっちだって……」

川 ////)「んっ…」

ξ////)ξ「あっ」

川 ////)「そ、そこは……」

ξ////)ξ「だ、だめ……」



互いの胸や体を弄り始めた二人。

その攻防は、数分後転がった二人がベッドから落ちるまで続いた。



.

482 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:47:55 ID:oINB0dP60





ベッドから仲良く落ちた二人が我に返り、
互いの顔を見た後笑いあったころ、
隣の部屋ではショボンがダーツをしていた。

(´・ω・`)「……」

灯りの落とされた部屋の中で、
右手で構えた矢は青白く光り輝いている。

(´・ω・`)!

記憶の中の見様見真似だが様になっている姿勢で投げられた矢は、
吸い込まれるように的の真ん中に刺さった。

左手に持っていた別の矢を構えるショボン。

(´・ω・`)「まずは知識。
調べられることは、すべて調べる。
知れることは、すべて知る。
情報は、力だ」

投げられた矢は、青白い光をまとって的に刺さった。

(´・ω・`)「効率よく、力を手に入れる。
少しのことでは死なない体。
能力を身に付ける。
生きるための、力を身に付ける。
それぞれの特性に合致した、それぞれの力。
一人が最強になる必要はない。
いや、『最強』になんてならなくていい。
生き残るための、生き続けるための力があればいい」

二人が部屋に入った後に改めて室内を調査した際に見付けたダーツセット。

二十本の矢は、すでに半数が投げられていた。

.

483 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:51:27 ID:oINB0dP60

(´・ω・`)「お金の単位はコル。
モンスターを倒せば手に入るけど、それを目的に戦うのは避けたい。
戦いは、自分を鍛えるためだけでいい。
生きるための力を手に入れるためだけでいい。
アイテムを売って稼ぐなら、
売る相手は価格を設定できるプレイヤーの方が最終的には儲けることができるはず
採取、宝箱、ドロップ品よりも、
自分で作って売ったほうが価格をコントロールできる」

呟きとともに手から放れる矢。
寸分の狂いもなく狙った場所に当たっていることは全く意識せず、
自分の思考の中に入っているショボン。

(´・ω・`)「需要と供給。
自分たちにとって必要なもの。
他のプレイヤーにとって必要なもの。
武器、防具、装備、アイテム、生活用品。
おそらくは、武器や防具、装備にアイテムは手に入りやすいはず。
ゲームとしての必需品は、低層階からも準備されているはず。
でも、『生活』のための品はそれほどではないはず。
けれど、これからここで『生活』するのならば、
戦い以外の『遊び』が重要になってくる」

構えた矢の放つ青白い光が部屋の中を飛ぶ。

(´・ω・`)「死なないこと、生きることは考えるまでもない。
その先にある、ここで生活するということを。
笑顔で、笑うことのできる生活をするためにできることを考えろ。
四人の顔に、笑顔を。
泥水を飲むのは、僕だけでいい。
汚い部分は僕だけが知ればいい。
四人には、笑顔で……」






.

484 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:53:16 ID:oINB0dP60




《ホルンカ》
始まりの街の隣。
大きさは村と呼ばれる程度だが、
宿屋や武器屋といった基本の設備は整っている。

('A`)「さて、ここが目的の村だけど」

村の門をくぐり、圏内に入ったことを確認してから一息ついたドクオ。
そして振り返った。

('A`)「大丈夫か?」

(;^ω^)「つ、疲れたし危なかったけど、無事に着けてよかったお」

('A`)「だな」

剣を杖のようにして立ち、
肩で息をしている友を見つつ周囲を観察するドクオ。

('A`)「まずは一休みするか」

(;^ω^)「お?大丈夫なのかお?
来る途中の話だと、
このクエストを知っている片手剣使いは
殺到するんじゃないかって言ってたおね」

('A`)「思ったより……というか、
全然プレイヤーの気配がない」

( ^ω^)「そうなのかお?」

('A`)「ああ。
来るのがだいぶ遅くなったから心配だったけど、
ほとんどいないみたいだ」

( ^ω^)「そうなのかお……」

.

485 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:55:34 ID:oINB0dP60

('A`)「ああ。
来るのがだいぶ遅くなったから心配だったけど、
ほとんどいないみたいだ」

( ^ω^)「そうなのかお……」

('A`)「あれを聞いてすぐ行動に移せたのは、
やっぱり少ないみたいだな。
ショボンがいてくれてよかったよ。
おれ一人だったらここに来る度胸なんて出なかったかもしれない」

( ^ω^)「ショボン……」

剣を鞘にしまい、大きく伸びをしたブーン。

( ^ω^)「ドクオ、行くお」

('A`)「休まなくて大丈夫か?」

( ^ω^)「早く手に入れて、強くなって、みんなのところに帰るんだお」

('A`)「……そうだな」

決意を込めてにっこりとほほ笑んだブーン。
それにつられて笑顔を見せたドクオ。
だがすぐにその笑みは消えてしまった

( ^ω^)「ドクオ?」

('A`)「結局ショボンに頼っちまったんだな」

( ^ω^)「ドクオ」

表情と身振りでブーンを促しつつ歩き出すドクオ。
ブーンも慌てて歩き出し、彼の横に並んだ。

('A`)「この世界でなら、おれがイニシアチブをとれる。
あいつを指導して、かばって、一緒に強くなって、
ショボンにおまえもおれたちを頼ったっていいんだって分からせるつもりだったのに」
 
.

486 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:57:49 ID:oINB0dP60

( ^ω^)「ショボンに甘えてばっかりだったおね」

('A`)「ああ。
あいつが、その方が笑顔を見せてくれるから、
まずはそれでって思ってただけなのにな」

( ^ω^)「ショボンはまだ気にしているんだおね」

('A`)「多分。
三つ子の魂百までじゃないけどよ、
小学校でいじめられてたからって、
たまたまそれを気にしないおれ等に会って、
なんとなく一緒に遊ぶようになったからって、
そんなに気にしなくていいのによ」

( ^ω^)「本当に、それだけなのかお」

('A`)「ん?」

( ^ω^)「いや、本当にそれだけなのかなって思ったんだお。
それだけの理由なのかなって」

('A`)「んー。
まあ、いじめが無くなってクラスに馴染みかけたのが小5の途中。
中学校に入る前にはあいつの天才性でまた微妙にはぶられ始めてたからな」

( ^ω^)「中学校に上がる前の春休みに、
本城病院がマシログループの総合病院になって、
ショボンがその子供ってことが広まって」

('A`)「ゴマすって媚びる奴らと、
あからさまに陰口いうやつらばっかりで」

( ^ω^)「私立に通えって聞こえるように言ってたやつもいたおね」

('A`)「いたな。
マジむかついたから、下駄箱にごみ入れといた」

(;^ω^)「ドクオ……」

.

487 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 22:58:59 ID:oINB0dP60

('A`)「ツンがあの場にいたらすごいことになってただろうな」

(;^ω^)「初めて学区が違って良かったって思えたお」

('A`)「表立ってのいじめってのは無かったと思うけど、
居心地は良くなかっただろうな」

( ^ω^)「私立に行かなかったのは僕たちと離れたくなかったって本当なのかお」

('A`)「どうだろうな。
おばさんが笑いながら言ってたけど」

( ^ω^)「でも、幼稚園で行ってた私立で持ち上がらなかったのも、
幼稚園でいじめられてたからなんだおね」

('A`)「それも言ってたな。
ま、4歳にして三島由紀夫とか量子力学の本とか読んでたらしいから、
浮いてはいたんだろうけど」

( ^ω^)「それは引く」

('A`)「だよなー」

立ち止まり、互いの顔を見て笑う二人。

('A`)「空気の読み方が大人のそれだったみたいだしな」

( ^ω^)「ショボンにとってはお遊戯とか絵本とか理解の範囲外だったみたいだおね」

('A`)「無理やり合わせても、ダメだっただろうな。
『大人びている』とか言えるレベルじゃないし」

( ^ω^)「見た目は子供、中身は大人」

('A`)「殺人はおきてないぞ」

( ^ω^)「おっおっお」

笑いながら歩き出す二人。

.

488 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 23:00:21 ID:oINB0dP60

('A`)「人生経験積んでるわけじゃないから、
あの名探偵ほど子供のふりができてなかっただろうし」

( ^ω^)「本当に子どもなのに子供のふりってのもすごいおね」

('A`)「そういやそうだな」

今度は立ち止まらずに噴き出す二人。
そしてドクオが立ち止まり、ブーンも歩くのをやめた。

目の前には小さな民家。

( ^ω^)「この家かお?」

('A`)「ああ。ここでクエストを受ける。
病気の少女に薬を届けるお使い系だけど、
薬は出現率の低いモンスターからしかドロップできない。
あとでちゃんと話すけど、いろいろ注意点があるから気をつけろよ。
報酬でもらえる片手剣はそのままでも店売りより強いし、
強化次第では3層くらいまで使えるはずだ」

( ^ω^)「わかったお」

('A`)「よし、じゃあ入るか」

扉に手をかけようとするドクオ。
しかしブーンがついてこなかったため、
手をかける前に振り返った。

('A`)「どうした?」

.

489 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 23:02:31 ID:oINB0dP60

( ^ω^)「ドクオ」

('A`)「ん?」

( ^ω^)「ぼく、頑張るお。
早く強くなって、みんなのところに戻れるように。
ツンを守れるように。
みんなを守れるように。
……ショボンに頼ってもらえるように」

('A`)「ああ。
おれも頑張る。
頑張るしか、ないんだよな」

決意を込めて頷き合う二人。

そしてブーンがこちらに向かってきたのを見てから、
ドクオは民家の扉を開けた。




《はじまりの街》

日付は既に明日になって数時間経っている。

ショボンは、流れ作業のように手を動かし、
矢を的に当てていた。

(´・ω・`)「どうすればいい……。
どうすればいい……。
みんなを守るには……。
笑顔で過ごしてもらうには……」

既に何度も読んだ本が足元に何冊か置かれている。
先ほどまでは時折思い出したかのように開き、
中を貪るように読んでいたが、
ここ一時間は開くことはなかった。

.

490 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 23:04:06 ID:oINB0dP60

(´・ω・`)「まずは今わかっている事実の検証。
僕たちの持つアドバンテージを生かす方法」

先ほどまで青白く光っていた矢は、
今はオレンジ色の光を帯びている。

(´・ω・`)「知識を持つものは妬まれる。
それは、どんな世界でも同じ。
その知識を持たざる者に公平に分配し、
持つ者が持たざる者より不幸にならない限り、
その思いは消えない。
おそらくこの先、βテスターは妬まれ、忌避される。
その仲間である僕らも、その的になる」

ショボンの手から放たれた矢は、
弧を描いて的に刺さった

(´・ω・`)「僕は、僕を、僕自身を見てくれる皆を、
守るためならば、なんだってやる。
誰の命も、僕の命も、気にしない」

手に持った矢は青白く光り、
放たれると同時に光の直線を描きながら的に刺さった。

(´・ω・`)「……きにしない」

意識せずに再び矢を構えるショボン。

しかし手は動かず、オレンジ色の光だけが弱弱しく部屋を照らす。

(´・ω・`)「……父さん……母さん……。
あの爺に何を言われても、頼むから、馬鹿なことはしないでよ……。
……志也兄さん……。
僕達がログインした時にはまだ入っていなかったはず。
このことが報道されるまで何かしらの事情でこちらに来ていなければいいけど……。
……でも、もし……来ているとしたら……」

.

491 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 23:06:01 ID:oINB0dP60

手が動き、矢が放たれる。

的に向かって弧を描くオレンジの光。

そして中央に刺さっていた矢に当たった。

二つの矢が、床に落ちる。

初めて、的に当たらなかった。





(´ ω `)「……たすけて」






窓の外では、朝の白い光が街並みを照らし始めていた。









.

492 ◆dKWWLKB7io :2015/12/06(日) 23:09:25 ID:oINB0dP60
以上、本日の投下を終了します。

乙と支援、ありがとうございます。


次回、『4.スキル』

よろしくお願いします。


ではではまたー。

.

493 名も無きAAのようです :2015/12/06(日) 23:10:11 ID:mt9hKyfk0


494 名も無きAAのようです :2015/12/06(日) 23:18:21 ID:Jyw649io0
ショボンも人の子か…


495 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 00:43:21 ID:3vUQS7c60
正直本編より今の話が面白いわ
おつ

496 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 01:01:33 ID:LO6aFkzQ0
おつおつ

497 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 01:27:11 ID:2UV2kYB.0
おつ!

498 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 01:35:21 ID:rBNQM.XI0
>>494
だからこそのシャキンの存在なんだろうな

499 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 02:13:45 ID:UxOGt8r60
乙乙

500 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 03:18:15 ID:erar3k6U0
人の子だけど真ん中に刺さったダーツに当ててるんだよな…
おつ

501 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 06:53:53 ID:UQUrCZas0
今思ったんだけど>>398の2023年って一年ズレてないすか

502 名も無きAAのようです :2015/12/09(水) 15:31:22 ID:Va8hk.xg0
おむつー

503 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:28:13 ID:RiB.7oDE0
こんばんは。

それでは投下を始めます。

今日もよろしくお願いします。

と思ったら。
あーーーーーーー。orz

>>501 様

ご指摘ありがとうございます。
間違えてますね。

はぁ……orz

脳内修正をお願いします。


それでは、はじめます。

.

504 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:30:23 ID:RiB.7oDE0





4.スキル





.

505 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:31:56 ID:RiB.7oDE0

アインクラッドに囚われてから三日目の昼、
始まりの街の入り口で五人は合流した。

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、ドクオ、無事でよかった」

( ^ω^)「おっお。強くなって帰ってきたお」

('A`)「こいつ頑張ったぞ。もう一人でも往復できる」

川 ゚ -゚)「頑張ったのはドクオも同じだろ。
お疲れさま」

外から手を振ってやってきた二人に駆け寄ろうとするツンとクー。
しかし門の外に出る前にドクオとブーンが慌てて走り始め、
門の中で落ち合うことができていた。

(´・ω・`)「メッセージはもらっていたから無事なのは分かっていたけれど、
顔を見られてやっと安心できたよ。
二人ともお疲れさま」

( ^ω^)「おっお。ショボンもお疲れさまだお」

('A`)「村で飯食べてるときにレベルが急に上がってびっくりしたぞおい」

ξ゚⊿゚)ξ「ふふん。
私たちがこっちで何もしないと思ったら大間違いよ。
ショボンのよみ通り、あの人の指定したクエストは経験値が得られるのが多かったようよ」

(´・ω・`)「パーティー設定してあれば離れていても加算してくれたからね。
最初のクエストでそれが確認できたから、やれるクエストは全部消化したよ」

( ^ω^)「危ない真似はしなかったんだおね」

川 ゚ -゚)「外に出るクエストはショボンがストップさせたからな」

('A`)「それでここで待ち合わせだったのか」

(´・ω・`)「そういうこと。
フラグは立てまくったから、
いまから六つ消化して、できれば今日中、
遅くとも明日の朝には旅立ちたい」

.

506 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:33:16 ID:RiB.7oDE0

( ^ω^)「おっお!戦闘は任せてだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「私たちの戦闘訓練でもあるんだから、
あんたたち二人だけ戦っても仕方ないんだからね」

('A`)「ん。了解」

川 ゚ -゚)「だが、ブーンの戦いぶりを見られるのは楽しみではあるな」

( ^ω^)「おっおっお。
見て驚くなだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「……すぐに追いつくからね」

(´・ω・`)「それじゃあ行こうか。
まずは青猪ニ体と、緑猪一体を倒したい」

('A`)「わかった」

それぞれに武器を握り待ちの外に出た五人。

街に残った三人は久し振りの戦闘に少し緊張気味だったが、
帰ってきた二人の落ち着いた身のこなしと指示により、
順調に戦闘を重ねていった。




アイネ=ハウンゼンの宿

消化予定のクエストを消化することはできたが日が落ちてしまったため、
この日もこの宿に泊まることにした。

川 ゚ -゚)「もともとその予定ではあったのだがな」

('A`)「どうした?クー」

川 ゚ -゚)「いや、もっと早くクエストを消化できたら、
今日中に次の町に行きたいとショボンは言っていたなと思ってな」

.

507 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:34:53 ID:RiB.7oDE0

('A`)「?ああ。そんなことも言っていたな。
最後にはあいつも戦闘に入れ込んでいたけど」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんとよね。
最初は私とクーが戦うのを後ろでむすっとした顔で見ていたくせして」

リビングでくつろいでいる三人。
ドクオはまだソファーの快適さに慣れていないが、
ツンとクーはゆったりと腰かけている。

('A`)「まあそういうなって。
最初のうち、二人の戦闘はやっぱり危ういところがあったから。
おれとブーンがついてちょうど良い感じだった」

ξ゚⊿゚)ξ「とはいってもねぇ」

ツンに至っては半分横になっているような姿勢で、
ふかふかのひじ掛けに手をのせて、その上に顎をつけて会話していた。

川 ゚ -゚)「うむ。
長刀と槍はやはり勝手が違うし、
剣技も槍としての技だからまだ慣れていないな。
その点でいえば、ツンの方が武器の使い方はうまいんじゃないか?」

あまりの行儀の悪さに隣に座っていたクーがお尻を軽くたたいた。

ξ゚⊿゚)ξ「そう?」

クーの言葉に疑問符を投げかけてから「良いのよドクオは」と言いながらも起き上がり、
テーブルの上のカップに手を伸ばすツン。

('A`)「こいつの行儀の悪さは知ってるから大丈夫」

川 ゚ -゚)「そういう問題じゃない」

ξ゚⊿゚)ξ「変なところで真面目なんだから」

.

508 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:36:58 ID:RiB.7oDE0

川 ゚ -゚)「ブーンに嫌われるぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「な、なんでそこでブーンの名前が出てくるのよ」

('A`)「ブーンも知っているから大丈夫だ」

川 ゚ -゚)「さすがは幼馴染ということか」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンといえば、あの二人も遅いわね」

('A`)「そうか?
どうせブーンが寄り道してるんだろ」

視界の左上を気にしながらドクオが答える。

そこにはパーティーメンバーの名前とそのHPバーが表示されていた。

川 ゚ -゚)「最初は少しなれなかったが、
便利なものだな」

ξ゚⊿゚)ξ「でも視界が塞がれるわよね」

同じように表示を見る二人。
一番上に自分の名前とHPバー。
その下に友達四人の名前と対応するHPバーがあり、
今近くにいない二人のHPが満タンのまま動いていないことを確認した。

('A`)「非表示にもできたはずだけどな。
あと透過率を上げて薄くしたり。
でも出来れば慣れておいてほしい」

ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり?」

('A`)「仲間の命綱になるかもしれないからな」

川 ゚ -゚)「だが、五人分でもそれなりに視界を塞がれているから、
これが十人、二十人と増えたら」

('A`)「パーティーは最大六人だから、
増えてあと一人分だよ」

.

509 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:38:30 ID:RiB.7oDE0

ξ゚⊿゚)ξ「六人?」

('A`)「そ。
行動を一緒にしたりすることはできるけど、
互いのHPを確認しあえたり戦闘時の効果を分け合えるパーティーを組めるのは、
最大で六人なんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「そうなんだ」

('A`)「クエストやイベントで参加人数が固定されたりしたら
増減する時もあるかもしれないけど、
滅多にないだろうな」

川 ゚ -゚)「それではやはりあの時のショボンは嘘をついたんだな」

ξ゚⊿゚)ξ「そういえばそうね」

('A`)「何かあったのか?」

ξ゚⊿゚)ξ「昨日お使いクエストをやってるときに、
変な男に声をかけられたのよ。
ちょうどショボンが一人で買い物してて、
私とクーが少し離れたところで待ってた時だったから
ナンパだと思ったんだけどさ」

川 ゚ -゚)「どうせ私たちの容姿に対して
美辞麗句を並べているだけだと思って
全く話しは聞いていなかったんだが、
ショボンが戻ってきたら
『俺も仲間に加えてくれ!』
と言い出したからびっくりした」

ξ゚⊿゚)ξ「そうそう。
朝から後ろを付いてきてたみたいで、
ストーカーかと思った」

川 ゚ -゚)「なんとなく後ろにいるなと思ってはいたが、
どうせまたツンがつけられているんだと思ったんだがな」

.

510 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:40:00 ID:RiB.7oDE0

ξ゚⊿゚)ξ「はいはい。
ストーカーもどきのナンパはあんたの方が多いでしょ。
一見清楚系だから」

川 ゚ -゚)「ツンは見た目が派手だから、
とりあえず声をかけてくるようなバカが多いだろ」

ξ゚⊿゚)ξ「そうそう。
だから昨日の奴みたいに付きまとう系はクー相手よ。
あーでも、昨日の奴はあの時の奴に似てた感じがする。
ほら覚えてる?駅で待ち合わせした時に声をかけてきたバカ」

川 ゚ -゚)「数が多くて覚えきれない」

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、あの時よ。
あんたがなんだかってお寺にお参りに行きたいとか言って
駅で待ち合わせした時に声かけてきたオールデニムでリュック背負った」

川 ゚ -゚)「ああ。あの時のバカか」

ξ゚⊿゚)ξ「似てない?」

川 ゚ -゚)「雰囲気は似ていたかもな」

ξ゚⊿゚)ξ「えー。似てたってー」

川 ゚ -゚)「高岡美咲と結城かなえの区別がつかない者に似ているといわれてもな」

ξ゚⊿゚)ξ「ドクモの顔なんてみんな一緒よ。
っていうか、ちゃんと見てないし。
着こなし方を参考にしているだけなんだから」

川 ゚ -゚)「たかみーの方は芸能界デビューしたみたいだぞ。
ドラマの出演が決まったとかなんとか書いてあった」

ξ゚⊿゚)ξ「へー。やっぱあの雑誌のドクモはそっちに行くんだ。
そういえば水樹リンダも出身だったよね」

.

511 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:41:47 ID:RiB.7oDE0

川 ゚ -゚)「ああ。
芸能界への道になってるな。
ツンも原宿辺り歩いてればスカウトされるんじゃないか?」

ξ゚⊿゚)ξ「興味ないからなー」

('A`)「えっと……いいか?」

二人の脱線した会話に割って入るドクオ。

ξ゚⊿゚)ξ「なに?」

川 ゚ -゚)「なんだ?」

('A`)「色々と突っ込みたいところはあるんだけどさ、
とりあえずその男とショボンの会話を覚えてる?」

会話を途切れさせられたことは気にせずにドクオを見る二人。
そのドクオの顔はかなり疲れたように見えたが、
二人ともそれに関しても気にしなかった。

川 ゚ -゚)「一言一句覚えているかけではないが、
流れくらいなら」

('A`)「どんなだった?」

川 ゚ -゚)「私たちがクエストを消化しているのを見て、
今のここで既にそんなことをしている人を初めて見た。
仲間に入れてほしい。
そんなことを言っていた」

ξ゚⊿゚)ξ「そしたらショボンが無理って答えて、
でも引き下がらなくて、
結局リアルからの友達で作ったパーティーで
もう入れることはできなとか言って、
何とか諦めさせてたわよ」

('A`)「……ふむ。
そっか……。
ショボンは、驚いてたか?
話しかけられたとき」

512 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:44:05 ID:RiB.7oDE0

ξ゚⊿゚)ξ「え?ああ、そうね。
急にだったし。
驚いてたみたいだったけど?」

('A`)「でも、朝から後ろを付いてきてたんだよな?」

川 ゚ -゚)「ああ。ツンの後ろをな」

ξ゚⊿゚)ξ「クーの後ろをね」

('A`)「それはどっちでもいい。
……そっか。
ショボンも落ち着いてるように見せてただけなんだな。
……そりゃ、そうだよな」

川 ゚ -゚)「どういうことだ?ドクオ」

('A`)「……ほら、ショボンっていいところの坊ちゃんだろ。
だから小さい頃からまぁそれなりに色んなことがあったらしいんだよ。
だから結構視線とか後ろを付いてくるやつとかに敏感なんだけど、
昨日は気付いていなかったんだなと思って」

川 ゚ -゚)「それもそうだな。
マシログループの中枢の関係者の子供。
ショボンの小さい頃は親が医者程度しか周囲には広まっていなかったはずだが、
調べればすぐにわかることだ」

ξ゚⊿゚)ξ「そりゃ、そうよね。
しかも私達のことばかり考えているわけだし」

('A`)「ん?いや、そうか。違うな」

自分の考えに一人納得し、
更に二人に説明して考えをまとめたドクオだったが、
ツンの言葉で今までとは違う答えにたどり着いた。

ξ゚⊿゚)ξ「何がよ」

('A`)「そう、ショボンはおれたちのことを一番に考えている。
だから昨日は二人に対する付きまといや監視なら、気付いただろう」

.

513 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:48:19 ID:RiB.7oDE0

川 ゚ -゚)!

ξ゚⊿゚)ξ!

眉間にしわを寄せて新たな考えを話し始めるドクオ。
クーとツンはその言葉にはっとした。

川 ゚ -゚)「そうか」

ξ゚⊿゚)ξ「私たち狙いじゃなかった」

('A`)「そう、おそらくそいつは…」

ξ゚⊿゚)ξ「狙いはショボンだった!

('A`)「ああ」

ξ゚⊿゚)ξ「ショボンをナンパしたかったのね!」

('A`;)「違うわボケ!」

たどり着いた答えは違っていた。

川 ゚ -゚)「違うのか?
ショボンは違うと思うが、そういうのを否定はしないぞ?」

('A`)「ナンパから離れろ」

ξ゚⊿゚)ξ「なんだつまらない」

('A`)「はぁ……」

川 ゚ -゚)「では本当にクエストをしている私たちの仲間になりたかったのか?」

('A`)「本当に『仲間』になりたかったのかはわからねーけどよ。
『今、この状況下でクエストをやっているおれ達』に
いや、『今、この状況下で冷静にクエストを消化しているショボン』に対して、
興味があったのは事実だろうな」

.

514 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:50:03 ID:RiB.7oDE0

ξ゚⊿゚)ξ「でも、この街のクエストって初歩の初歩ばかりなんでしょ?
付いてくる必要なんてないし、
クエストのやり方を覚える練習レベルってショボンは言ってたわよ?」

川 ゚ -゚)「うむ。付いてくる必要があるとは思えないが」

('A`)「どんなに簡単なクエストでも、
つまずく奴は躓く。
だから自分がやろうと思っているクエストを先にやっている奴がいたら、
参考にして付いてくる奴だっているよ。
でも多分、今回はそんな話じゃない」

ξ゚⊿゚)ξ「もったいぶらずに言いなさいよ」

('A`)「もったいぶっているわけじゃないって。
っていうか、二人だって本当はわかってるんだろ?」

川 ゚ -゚)

ξ゚⊿゚)ξ

ドクオの問いかけに口を閉ざす二人。
その行動こそがドクオの言葉が正しいということを示していた。

('A`)「二日経って、一見平穏だけど、
やっぱり小さな騒ぎは起こってる。
平穏といっても、おそらく大体の連中は、
何も行動を起こせずにこの街で宿屋とかに籠ってるんだろう。
ログイン時にもらえる金額が残ってれば、
一番安い宿屋なら一週間くらいなら泊まれるからな。
教会の奥の部屋なら雑魚寝だけどただのところもあったはずだし、
ベッドはないけど出入り自由の建物だってある。
おれ達がいた村にも昨日になってちらほらやってくる奴がいたけど、
あの行動を見る限りおそらくみんなβテスターだ。
で、何が言いたいかっていうと、今この街で冷静にクエストをやる奴なんて、
ほとんどいないってことだ」

.

515 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:51:30 ID:RiB.7oDE0

苦しそうに話すドクオ。
それは話すことが苦しいのではなく、
自分が言葉にして出した内容が、
今のこの世界を、自分たちを取り巻く環境が
悲惨なものであるということを改めて明確にしてしまうだからだった。

しかし彼は続ける。

('A`)「おれ達は、幸運なことにこの宿に居られるし、
自分でいうのもなんだけど仲間内にβテスターがいて、
更にショボンが居てくれたからこんなバカ話ができているけど、
ほとんどはまだ絶望していて、活動できていないだろう。
今もう前向きになれてる人なんて、きっとほんの一握りだ。
そんな中でショボンが冷静にクエストをこなしている姿は、
仲間と一緒に行動している姿は、どう見えたか。」

口を閉ざすドクオ。
二人も何も言えず、沈黙が部屋を支配する。
三人の頭には、『羨望』という言葉と、
『嫉妬』という言葉が浮かんでいた。

( ^ω^)「ただいまだおー!」

突然開かれた扉。
重苦しい空気を吹き飛ばす元気な声。

ブーンの登場に、
あからさまにほっとした顔をする三人。

('A`)「おう、お帰り」

ξ゚⊿゚)ξ「おかえり。
遅かったわね。
どこで道草食ってたのよ」

川 ゚ -゚)「ショボンもお帰り。
買い物はどうだった?」

( ^ω^)「おっおっお。
街のはじからはじまでいったら流石に時間がかかったんだお」

.

516 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:52:50 ID:RiB.7oDE0

(´・ω・`)「ただいま。
遅くなってごめんね。
ご飯も買ってきたよ」

ブーンの後ろからショボンが続いて入ってくる。

ショボンは手には何も持っておらず、
テーブルの前まで来るとウインドウを開いた。

( ^ω^)「手に持たなくて良いってのは楽ちんだおね」

同じようにブーンもウインドウを開き、
目の前に浮かんだ操作パネルをタッチしていく。

あっという間にテーブルの上はアイテムで埋め尽くされた。

(´・ω・`)「回復、解毒、麻痺解除といったPOT類。
ドクオに教えてもらった店で買いそろえたよ」

('A`)「安かっただろ?
このフロアだと、多分教えた店が一番安い」

(´・ω・`)「そうなんだ。
じゃあちゃんと場所を覚えないとだね」

出したアイテムからいくつかをいそいそと袋に入れ、
部屋の片隅に移動するショボン。

川 ゚ -゚)「POTを自分で作ったりもできるんだろ?
その方が安くならないか?」

テーブルの上のアイテムを仕分け始めるドクオ。
反対側のソファーに座っているクーがピンク色の瓶を手に取った。

('A`)「できるけど、スキルを鍛えないといけないし、
材料も買ったら街売りより高くなる」

川 ゚ -゚)「採取すればよいだろう」

.

517 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:55:52 ID:RiB.7oDE0

('A`)「クー、スキルを鍛えるつもりか?」

川 ゚ -゚)「ああ、折角だからな」

ドクオに向かってにやりと笑うクー。

('A`)「まあ、パーティーって考え方なら、それもありだな。
ソロなら戦闘に役立つスキルを先に覚えてほしいけど」

川 ゚ -゚)「今日手に入れたアレを使えば問題ないだろ?
それに私達はスキルスロットが現時点では余裕があるわけだし」

('A`)「言っておくが『余裕』があるわけじゃないぞ。
戦闘に限っても覚えておいた方がよいスキルはまだたくさんある」

ξ゚⊿゚)ξ「『裁縫』は外さないわよ」

( ^ω^)「『鑑定』も大事だと思うお」

クーの隣でツンが、
ドクオの隣に座ったブーンが既にスキルスロットに入れたスキルを口にした。

('A`)「…『調剤』なら『裁縫』よりはましか」

ξ゚⊿゚)ξ「女には大事なスキルよ」

('A`)「家庭科の成績底辺だったくせして」

ξ#゚⊿゚)ξ「ちょ!何で知ってるのよ!」

('A`)「母ちゃん経由でおばさんから聞いた」

ξ#゚⊿゚)ξ「母さんったらもう……」

川 ゚ -゚)「ツンは設計図は描けるが細かい作業が苦手だからな。
料理も中華はうまかったぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「ふふん」

('A`)「女子中学生が中華鍋を振る姿を想像できない」

.

518 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:57:33 ID:RiB.7oDE0

ξ゚⊿゚)ξ「うるさい」

川 ゚ -゚)「ブーン?
顔がこわばっているがどうした?」

(; ^ω^)「お?なんでもないお」

('A`)「2月14日は決死の覚悟でアレを食べなきゃいけなかったから、
それを思い出したんだろ」

川 ゚ -゚)「なるほど」

ξ゚⊿゚)ξ「なんでクーは納得してるのよ!」

(; ^ω^)「お、おいしかったお。ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「ほら」

('A`)

川 ゚ -゚)

ξ゚⊿゚)ξ「何か言いなさいよ二人とも」

('A`)「よし、仕分け完了。
各自、自分のアイテム欄に入れておけ」

川 ゚ -゚)「分かった」

( ^ω^)「了解だおー」

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと三人とも?話は終わってないのよ?」

しゃべりながらもテーブルの上のアイテムを仕分けしていたドクオが、
三人の前にそれぞれアイテムを置いた。

クーとブーンはウインドウを開き、
アイテムを一つずつ確かめながら閉まっていく。

.

519 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 22:59:03 ID:RiB.7oDE0

ξ゚⊿゚)ξ「終わったらゆっくり話しましょう」

ツンも諦めて二人に倣って作業を始めた。
そして四人がアイテムをすべて収納すると、
待っていたかのようにショボンが声をかけた。

(´・ω・`)「お待たせ」

両手で持ったトレイの上には、
五つ皿が乗っていた。
そして皿の上には、
焼けた肉の塊が乗っている。

( ^ω^)「おっおっお!
お肉だお!」

ξ゚⊿゚)ξ「はしゃがないの!」

川 ゚ -゚)「ショボン、ショボンの分のアイテムはあちらの台の上に置いておくぞ」

テーブルの上を片付けるクー。
ブーンは立ち上がってトレイをのぞき込んでいる。

(´・ω・`)「ありがと、クー。
仕分けありがとうね。ドクオ。
ブーン、ちゃんと全員分あるから落ち着いて。
ツン、あそこにおいてあるパンの入った籠を持ってきてもらえるかな」

( ^ω^)「いい匂いだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「了解。
三つともいいのよね?」

川 ゚ -゚)「では私はもう一つの皿をもって来よう。
このサラダも良いんだな?」

立ち上がり、ショボンに頼まれた籠の置いてる部屋の隅に向かうツン。
壁際のローテーブルにショボンの分のアイテムを移動出せたクーも、
ツンの後ろに続いた。

.

520 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:02:34 ID:RiB.7oDE0

(´・ω・`)「うん。三つとも。
ありがと、クー」

トレイのまま一度テーブルの上に置くショボン。

( ^ω^)「おいしそうだお!
向こうではパンくらいしか食べなかったから、
お肉うれしいお」

こぶし大の肉はこんがりと焼けており、
その上から褐色のソースがかかっていた。

(´・ω・`)「喜んでもらえてうれしいよ」

にっこりとほほ笑むショボン。
ブーンも笑顔で皿をトレイからテーブルに移す手伝いをする。

( ^ω^)「ドクオも手伝うお」

('A`)「で、ショボンが『料理』か……」

(´・ω・`)「相談せずにスキル決めてごめんね」

('A`)「謝るようなことじゃないけどよ」

ブーンに促され、食事の準備を手伝い始める。

('A`)「いつのまにそんなにレベルを上げたんだ?」

(´・ω・`)「焼くのはタイミングの問題だけだったよ。
もっとレベルが上がるか専用の道具があれば自動になりそうな気がするけどね」

('A`)「かかってるソースは?」

(´・ω・`)「焼く機械の上の棚にいろいろあったんだ。
一回戻った来た時にブーンに詳しく調べてもらったら、
細かい注釈があって、
それに逆らわないでできる限り色々混ぜてみた。
ちゃんと味見もしたからそれほどまずくはないと思うよ」

('A`)「うん……」

.

521 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:05:52 ID:RiB.7oDE0

( ^ω^)「おいしそうだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「はい、パン」

川 ゚ -゚)「サラダ……。
この野菜は食べて大丈夫なのか?」

(´・ω・`)「ちゃんと食用って書いてあったよ。
ドレッシングは肉に使った物の流用だから味が似通っちゃうけど」

('A`)「パンも焼いたのか?」

( ^ω^)「それはさっき一緒に買ってきたやつだお。
ちょっと硬いけど、味はまあまあだおね」

('A`)「向こうで食べた奴と一緒か」

ξ゚⊿゚)ξ「どうしたのよさっきから」

('A`)「いや、……うん。なんでもない」

ξ゚⊿゚)ξ「変な奴」

( ^ω^)「準備完了!
さあ食べるお!」

全員の前に肉の皿と野菜の皿が一つずつ置かれ、
中央にはパンの入った籠がある。

(´・ω・`)「口に合えばいいけど」

水の注がれたグラスをショボンが配るときには全員が座っていた。

( ^ω^)「大丈夫だお!
いい匂いがするおね!」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。おいしそう」

川 ゚ -゚)「あれから取れた肉とは思えないな」

ξ゚⊿゚)ξ「言うな」

.

522 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:26:08 ID:RiB.7oDE0

( ^ω^)「牡丹肉はおいしいお」

(´・ω・`)「処理さえちゃんとすれば、
臭みも抑えられるからね。
今回はソースも濃い味にしたし」

川 ゚ -゚)「ふむ。楽しみだ」

( ^ω^)「それじゃあみんな手を合わせて」

ブーンの合図で手を合わせる五人。

( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ川 ゚ -゚)
  「いただきまーす」
  ('A`)(´・ω・`)

この世界に来てから初めての、
五人でする食事だった。





( ^ω^)「おいしかったおー。
おなかいっぱいだおー」

両手を広げてソファーの背にもたれかかりながら
天井を見上げているブーン。

ξ゚⊿゚)ξ「お行儀悪いわよ」

川 ゚ -゚)「ツンは言える立場にいないな」

流石にブーンほどではないが、
正面に座るツンも体をソファーに沈ませてひじ掛けにもたれている。

ξ゚⊿゚)ξ「そういうあんたもでしょ」

川 ゚ -゚)「私は自分の事がわかっているからな。
人に言うような真似はしていない」

.

523 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:28:15 ID:RiB.7oDE0

隣に座るクーもゆったりとソファーに腰を掛けている。
ツン程ではないが、だいぶリラックスしているように見えた。
そしてさらに二人に共通しているのは、目が既に閉じかけているということだろう。

ξ゚⊿゚)ξ「なによそれー」

川 ゚ -゚)「はっはっはー」

力のない声で会話をする二人。

('A`)「……三人ともだらけすぎだ」

ドクオはブーンの隣でソファーに浅く腰かけていた。
そして少し前のめりで、
開いたウインドウを操作していた。

(´・ω・`)「今日も疲れたしね。
早く休みたいけど、まずは明日からの予定を打ち合わせよっか」

片付けを終わらせたショボンが戻ってくる。
先ほどと同じトレイをもっており、
その上にはマグカップと大きめのティーポットが乗っていた。

川 ゚ -゚)「手伝おう」

(´・ω・`)「ありがと」

クーとショボンがカップを配り終わると、
四人は浅く腰かけて話をする体制になった。

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、起きなさい」

( ´ω`)「おー。もう朝かお?」

ξ゚⊿゚)ξ「バカ言ってないの」

('A`)「まったく」

目をこすりながら体を起こすブーン。
大きくあくびをしたのを見てから、
座ったショボンが口を開いた。

.

524 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:32:18 ID:RiB.7oDE0

(´・ω・`)「さて、まずは明日からのスケジュールの確認かな」

('A`)「予定通り『ホルンカ』に向かう」

(´・ω・`)「うん。まずは『ホルンカ』へ。
そこでモンスターと戦うことに慣れるのと、
レベル上げ、クエストの消化をしたい」

川 ゚ -゚)「目標とかあるのか?」

(´・ω・`)「実際にはやるつもりはないけど、
この『はじまりの街』と『ホルンカ』を、
一人で一日で往復できるような強さと経験を積みたい。
ただ、状況を見て『ホルンカ』の次の町への移動も考えてはいる」

ξ゚⊿゚)ξ「街を転々とするってことね」

(´・ω・`)「落ち着けるところがあれば拠点を作るのもありだとは思うけどね。
まずは自分たちのレベルアップ、経験値では表せない経験を身に付けたいと思う」

('A`)「賛成だ。
こればっかりは実践あるのみだからな。
クエストで得られる経験値でのレベル上げなんて、たかが知れてるし。
遭遇する敵によってはすぐに逃げられない場合もあるから、
戦いの経験を積みたい」

ξ゚⊿゚)ξ「逃げたりなんてしないわよ」

川 ゚ -゚)「ちゃんと戦うぞ」

('A`)「……戦略的撤退も覚えてくれよ」

ξ゚⊿゚)ξ「むーーーー」

川 ゚ -゚)「仕方ない。善処してやろう」

('A`)「なぜ上から目線かな」

(´・ω・`)「戦闘やレベル上げに関してはドクオに頼ってしまうけど、
よろしく頼むね」

('A`)「ああ。きっちりやろう」

.

525 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:34:23 ID:RiB.7oDE0

ξ゚⊿゚)ξ「ホルンカってどんなところなの?」

( ^ω^)「良いところだったお。
こことは違って道とかも舗装されてなかったけど、
家とか木や藁でできてて暖かい雰囲気だったお」

ξ゚⊿゚)ξ「土の道か……」

('A`)「土で汚れたりはしないだろ」

ξ゚⊿゚)ξ「ならいっか」

('A`)「まったくもうこいつは……」

ξ゚⊿゚)ξ「女子には大問題よ」

('A`)「はいはい」

(´・ω・`)「それじゃあ、次は武器とスキルの件だね」

('A`)「それだよそれ!」

ξ゚⊿゚)ξ「なによいきなり大声出して」

('A`)「スキルだよスキル!
とりあえず最初のうちはちゃんとどれを選ぶか相談してだな」

ξ゚⊿゚)ξ「はいはい」

('A`)「おまえなー」

ξ゚⊿゚)ξ「とはいってもさ。
基本よくわからないし」

川 ゚ -゚)「そうだな。
とりあえず何が必要とか説明してもらってないわけだし」

('A`)「……」

( ^ω^)「一応聞いたけど、
もう一度ちゃんと聞いておきたいお」

.

526 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:39:37 ID:RiB.7oDE0

('A`)「はぁ……」

(´・ω・`)「まずはスキルの基本知識が必要だね」

ため息をついたドクオを見て苦笑いを浮かべながらショボンがウインドウを開く。

ξ゚⊿゚)ξ「基本知識ならわかるわよ。
それくらい。
スキルってのを設定しておかないと、
そのスキルにかかわる作業ができないってことでしょ」

川 ゚ -゚)「片手剣で戦いたかったら『片手剣』、
槍で戦いたかったら『槍』。
服を作りたかったら『裁縫』
料理をしたかったら『料理』」

ξ゚⊿゚)ξ「それくらいわかるわよね」

川 ゚ -゚)「全くだ」

ショボンの言葉に心外だとばかりに知識を披露する二人。
心なしか二人とも胸を張っている。

('A`)「『索敵』、『隠蔽』なんかはわかるのか?」

川 ゚ -゚)「知らん」

ξ゚⊿゚)ξ「知らない」

そして同じテンションでドクオの問いに答えた。

('A`)「はぁ……」

(´・ω・`)「スキルは、本当に大まかに分けると二つに分類できる。
一つは戦闘に直接かかわるスキル。
一つは戦闘に直接かかわらないスキル」

うなだれたドクオに代わってショボンが説明を始めた。

.

527 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:41:59 ID:RiB.7oDE0

(´・ω・`)「さっき二人が言っていた『片手剣』や『槍』、
ツンの使ってる『細剣』、『曲刀』、『投擲』なんかが《直接かかわるスキル》になるね。
で、『裁縫』や『料理』、ブーンが鍛え始めてる『解析』なんかが、
《直接かかわらないスキル》になる」

ξ゚⊿゚)ξ「うん」

川 ゚ -゚)「ふむ」

( ^ω^)「おー」

(´・ω・`)「そして、
《直接かかわらないスキル》の中には、
今言ったような生活を豊かにしたり便利にしたりするスキルのほかに、
戦闘を有利に進めるためのスキルも存在するんだ。
さっきドクオの言った『索敵』は自分の近くにいる敵を見つけやすくなったりできるし、
『隠蔽』なんかは周囲の木や草に隠れたりすることで、
敵をやり過ごすことができるようになったりする」

ξ゚⊿゚)ξ「へー」

川 ゚ -゚)「ふむふむ」

( ^ω^)「おー」

(´・ω・`)「そんな感じでスキルはいろいろ用意されているらしい。
だから色々なものを鍛えて戦闘を有利に、
生活を楽しくしたいところなんだけど、
スキルをセットする設定画面には枠が、
スキルスロットが初期では二つしかない。
しかも基本的にスキルはスロットから外すと経験値がゼロに戻るから、
一度鍛え始めたら外すのがもったいなくなる」

ξ゚⊿゚)ξ「あら」

川 ゚ -゚)「なるほど」

( ^ω^)「おー」

.

528 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:44:31 ID:RiB.7oDE0

(´・ω・`)「というわけで、スキルを決めるときは、
慎重に自分の戦闘スタイルや生活スタイルをよく考えて、
決めなければいけないってことなんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「はーい」

川 ゚ -゚)「わかった」

( ^ω^)「おー!」

('A`)「三人ともほんとにわかってる?ねぇ」

ショボンの説明をまともに聞いているのかどうかわからないような受け答えしかしない三人に、
思わずため息混じりの突っ込みを入れてしまうドクオ。

川 ゚ -゚)「聞いてるぞ」

( ^ω^)「聞いてるお」

ξ゚⊿゚)ξ「聞いてるわよ?
でも、……さ。ねぇ」

川 ゚ -゚)「うむ」

(; ^ω^)「おー」

(´・ω・`)「まあしょうがないよね。
既に僕たちのスキルスロットは五つあるわけだし」

一瞬の空白。
仲間以外誰もいないのに、
何故か周囲の目を気にしてしまう五人。

そしてドクオが大きく息を吐いた。

('A`)「だよなー。
おれも言いながら説得力とかなかったし」

.

529 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:45:54 ID:RiB.7oDE0

ξ*゚⊿゚)ξ「そうよね」

川*゚ -゚)「もう五つもあるし」

('A`)「今日クリアしたクエストのうち三つがスキルスロット増加とか、
どんなチートだよ」

( ^ω^)「ショボンはもらえるのがわかってたのかお?」

(´・ω・`)「昨日のうちに消化した二つのクエストの報酬がレアアイテムみたいだったから、
残りのクエストもそうかなって思ったのと、
もしかしたら人数分くれるイベントとかもあるのかなって思ったから、
怪しいやつはできるところまでフラグを立てて、
二人が帰ってくるのを待ったんだ」

('A`)「そうしたらこうなったと」

(´・ω・`)「うん。さすがにこれはバグレベルだよね」

('A`)「だよな……」

自分のウインドウのスキルスロットを見てため息を吐くドクオ。
スロットが増えたことはかなり喜ばしいことなのだが、
今まで公正・公平なプレイヤーとして
多量課金プレイヤーや初心者狩りをするようなプレイヤーを忌避していた身としては、
いくら偶然とはいえ自分の今置かれている状況になんとなく納得がいっていなかった。

( ^ω^)「多分あの三つって、本当は一つしか受けられなかったんだおね」

('A`)「多分そうなんだろうな」

ξ゚⊿゚)ξ「でも出来た」

川 ゚ -゚)「ショボンがやらかしたと」

(;´・ω・`)「人聞きが悪いよ。
たまたま時間的タイムラグと同時進行するための穴を見つけただけだよ。
それに僕もアイテムがいっぱいもらえたら良いなとは思っていたけど、
スキルのスロットが増えるとは思ってなかった」

.

530 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:48:24 ID:RiB.7oDE0

('A`)「でも、道具の方は狙っただろ?」

(;´・ω・`)「もらっておけるものはいっぱいもらっておこうって思ったけど、
その瓶が更に手に入るとは思わなかったよ?」

川 ゚ -゚)「本当か?」

(;´・ω・`)「ちょっと、クーまでやめてよ」

ドクオがウインドウを操作すると、テーブルの上に小瓶が何個も現れた。

('A`)「《カレス・オーの水晶瓶》
スキルの熟練度を保存することができる……か。
まさかこんなアイテムがあるなんて。
そしてしかもこんなにいっぱい手に入るなんて」

(´・ω・`)「初日のクエスト報酬で一つ手に入れて、
昨日僕が試してみたけどちゃんと使えたよ」

('A`)「メッセージで教えられたときはびっくりした」

( ^ω^)「今日は五人で四回成功したんだおね」

ξ゚⊿゚)ξ「あれ?四回だった?」

川 ゚ -゚)「五回だな。
多分ブーンは最初の一回を数に入れていないんだろ。
あれはチャレンジの説明だと思ったら本番だったという、
一種の騙しだから」

('A`)「二十五個。最初の一個を加えたら二十六個か……」

(´・ω・`)「最初のクエストはおそらくあの手帳を持っている人専用だけど、
今日のクエストはほかの人も受けられそうだったよね。
そして説明という名の一回と、泣きの一回で、
誰でもニ個は手に入れられる確率があるってことだよね」

.

531 名も無きAAのようです :2015/12/13(日) 23:48:47 ID:GHslT9wM0
支援

532 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:51:41 ID:RiB.7oDE0

('A`)「そんな簡単なことじゃない気もするけどな。
あのクエストを受けるには、まず手元にこの小瓶が必要なわけだし。
そしてどちらにせよ、システムの穴というかほぼバグを突いて
これだけの量を手入れることができたわけだけど、
あれをやるにはよほどの記憶力が必要だろ?」

(´・ω・`)「それに関しては否定しないけど」

('A`)「通常はレベルを上げないと手に入らないスキルスロットを、
最初からこれだけ持てているのはかなりのアドバンテージだ。
そしてこのアイテムもかなりありがたいアイテムなのは間違いない。
正直こんな能力を持ったアイテムがあるなんて知らなかったし、
かなりのレアアイテムだと思う。
システムの穴をついたとはいえ、
一応正規のルートで手に入れた品だから、
使うことに問題はないとも思う。
…………でもなー。やっぱなー」

頭を抱えてもんどりをうち始めるドクオ。
四人はそれを生暖かい視線で見ていたが、
三分を過ぎたところでツンが切れた。

ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、いい加減にしなさい」

ソファーの横に置かれた銀のトレイでドクオの頭をたたくツン。
トレイの形が変形などはしていないが、
大きな音が部屋に響いた。

(;A;)「いてぇ!お前何しやがんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「嫌なら使わなければいいじゃない。
小瓶もスロットも。
スロットは二つだけ使ってればいいだけなんだから」

('A`)「え、いや、それはなんか違うっていうか。
折角あるものは使わないとだし」

ξ゚⊿゚)ξ「ならもうグズグズ言わないの!」

('A`)「うえーい」

ξ゚⊿゚)ξ「まったく」

.

533 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:54:04 ID:RiB.7oDE0

薄い胸を持ち上げるように腕を組んでソファーに座るツン。

二人の掛け合いを笑顔で見ていた三人だったが、
ツンが座ると同時に目の前のカップに手を伸ばした。

そのタイミングがあまりに合致したため、
思わず笑ってしまった。

( ^ω^)「おっおっお」

川 ゚ -゚)「ふふ」

(´・ω・`)「  」

ξ#゚⊿゚)ξ「三人は何笑ってるの?」

(;^ω^)「おっ。ツンを笑ってたわけじゃないお」

川 ゚ -゚)「それは誤解だからな」

ξ゚⊿゚)ξ「まったく」

(´・ω・`)「さて、じゃあスキルについての相談だけど、
まずは僕の考えを言ってもいいかな」

ツンに睨まれて慌ててフォローを入れた二人。
ショボンは話を変えるように、
というよりは戻すために姿勢を正して四人を見た。

自然とソファーに座りなおしてショボンを見る四人。

(´・ω・`)「まずはスキルスロット。
五つのうち、一つはメイン武器。
これは今使っている部から変えない方向で。
二つ目がサブの武器。
使用している武器に問題が発生した時用に、
一応別ジャンルの武器も練習しておいた方がいいと思うんだけど、
どうだろう?」

.

534 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:55:38 ID:RiB.7oDE0

ショボンがドクオを見る。
その視線を追って三人もドクオを見た。

('A`)「おれは反対だな。
武器によって敵との相性ってのは確かに存在するけど、
低層ではそれほど気にしなくてもいいと思う。
あと、同時に二つの武器を練習するってのは無理があると思う」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね。
とりあえずは一つで良いかな」

川 ゚ -゚)「ああ。
私も長刀ならともかく、
槍はもう少し練習しないとだめだと思う」

( ^ω^)「ショボンはなにかやりたい武器があるのかお?」

ドクオの意見に賛成をする二人。
ブーンもとりあえずは片手剣だけのつもりだったが、
口から出たのはショボンへの問いかけだった。

その言葉に反応してショボンを見る三人。

(´・ω・`)「あ、うん。
メインには槍として、
サブ武器として《投擲》を入れたい」

('A`)「《投擲》?
あの趣味スキルを?」

( ^ω^)「趣味スキル?」

('A`)「いや、武器や物を投げるスキルだけどよ、
一回投げたら終わりだし、攻撃力の高いものを投げるのっていうのは、
金額の高い武器やレアなアイテムを投げるってことだから、
なかなかハードルが高いというかなんというか……」

川 ゚ -゚)「金持ちじゃないと成り立たないスキルってことか」

('A`)「もしくは自分が武器製造スキルを持つとかかな。
それにそれだけやっても与えるダメージはたかが知れてるだろうし」

.

535 ◆dKWWLKB7io :2015/12/13(日) 23:57:42 ID:RiB.7oDE0

ξ゚⊿゚)ξ「ショボンは何でそんなのを?」

(´・ω・`)「僕の目、敵の出現を素早く感知できる力を有効に使うためには、
このスキルが最適かなって思ったんだけどね」

ξ゚⊿゚)ξ「ああ、出現の時の空間の歪みが見えるっていうあれね」

(´・ω・`)「うん」

('A`)「あー。
それはそうかもしれないが、
実戦で意味のある使い方ができるにはかなりの練習が必要だろうな」

(´・ω・`)「そうだね。
じゃあ……」

( ^ω^)「武器にブーメランとかないのかお?」

(´・ω・`)!

('A`)「!
あ、ああ。そうだな。
ブーメランは聞いたことないけど、
そういえばなんか戻ってくる投擲武器あるとか。
いや、ドロップする敵がいるとかだったかな。
βの時にそんな噂を聞いたことがある」

川 ゚ -゚)「『戻ってくる投擲武器』?」

('A`)「ああ。
おれも実物は見てないし、
名前も聞いてないけど」

( ^ω^)「じゃああるかもなんだおね。
その武器が手に入ったらそのスキルも使えるんじゃないかお?
しかも武器が手に入ってから覚えるんじゃなくて最初から鍛えておいたら、
かなり使えるんじゃないかお?」

('A`)「あ、ああ。そうだな」

.

536 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:00:29 ID:moG2ydB.0

ニコニコと話すブーン。
眉間にしわを寄せて色々と考えつつ言葉を選ぶドクオ。

('A`)「……ああ。うん。
そんな武器を使えることができれば、
戦闘を優位に進められるかもしれない。
ただ、そのためにスキルスロットを……」

( ^ω^)「五つもあるし、小瓶もあるお。
ある程度使えるまでは個人練習にして、
戦闘に使えるレベルになったらレギュラーでスロットに入れておけばいいんじゃないかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「どうしたのよブーン。
すごくブーンらしくない」

( ^ω^)「おー。ひどいお」

川 ゚ -゚)「だが、ブーンの言う通りだな。
これがスロットが二つのままだったり、
アイテムがなかったら諦めないといけないかもしれないが、
今の私達ならそれくらいの余裕を持ってもいいんじゃないか?」

('A`)「でも自主練とかいっても」

( ^ω^)「というか、
ショボンならそれくらい全部考えているように思うけど、
どうかお?」

(´・ω・`)「実は、すでに自主練はしてたんだ」

壁にかかったダーツ用の的を見るショボン。
その視線から、四人も壁の的を見た。

('A`)「ダーツ?」

(´・ω・`)「うん」

立ち上がり、同じく壁に掛けてあった矢を一本手に取り、
少し離れて構える。
四人はじっとそれを見つめている。

.

537 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:02:25 ID:moG2ydB.0

(´・ω・`)「いくよ」

ショボンが気合を入れると矢がオレンジ色に輝いた。

('A`)「おっ」

( ^ω^)「剣技(ソードスキル)だおね」

ξ゚⊿゚)ξ「オレンジだ」

川 ゚ -゚)「オレンジだな」

('A`;)「気にするのそこかよ」

ξ゚⊿゚)ξ「えー。だって。ねぇ。クーさん」

川 ゚ -゚)「うむ。オレンジは良い色だ」

('A`)「なんだそりゃ」

会話をしながらも視線はショボンに向けたまま。
そしてショボンは外野の声を気にすることなく矢を投げる。

( ^ω^)「おお!」

('A`)「おっ」

ξ゚⊿゚)ξ「あら」

川 ゚ -゚)「きれいだ」

弧を描いて的の中央に刺さる矢。

矢の動きを目で追うのは困難であったが、
そのオレンジの光は部屋の中に、
自然界ではありえない鮮やかな軌跡を残して消えた。

(´・ω・`)「趣味スキル扱いは運営もなのかな。
一つ目は直線だったけど、
二つ目はこんな風に弧を描く軌道を持った技を使えるようになったよ」

.

538 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:03:54 ID:moG2ydB.0

( ^ω^)「それだけ鍛えたのなら外したくないおね」

(´・ω・`)「スロットが二つだったら槍と投擲になっちゃうから諦めたけど、
今の状況なら良いかなって思って」

('A`)「そのダーツセットは持っていけるのか?」

(´・ω・`)「いや、無理だった。
隣の部屋には移動できたけど、
下の階には持っていけなかったよ。
持っていこうとしたら、自動的にこの部屋のこの場所に移動していた」

('A`)「なら、これから先の自主練はどうやってするんだ?」

(´・ω・`)「ここに泊まるときはダーツセットで。
無理な時は部屋で小石を投げたりすることでできないかなって思ってる」

('A`)「……それよりは、投擲用のナイフを数本買って、
部屋で丸太や非破壊オブジェクトに投げた方がいいだろ」

( ^ω^)「おっ!」

('A`)「回収可能投擲武器がある可能性が少しでもある以上、
そこまで鍛えたスキルを完全に捨ててしまうのはもったいないからな」

(´・ω・`)「ありがと」

('A`)「ただ、メイン武器になるかどうかは不明だから、
まずは槍の練習をしてくれ。
あと、戦闘時スロットには《武器防御》を入れること」

川 ゚ -゚)「《武器防御》?
うむ。あるな」

ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ」

ウインドウを開いてスキルを確認するクー。

('A`)「言葉通り。武器で防御をするためのスキルだ。
それを入れておけば、使っている武器で相手の攻撃を防御することができる」

.

539 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:08:49 ID:moG2ydB.0

川 ゚ -゚)「これをつけておかないとできないのか?」

('A`)「剣の腹で相手の剣を受けたりすることはできるはずだけど、
スキルをつけておかないとまったく補正が働かないから、
ダメージを剣すべてで受けてしまう可能性がある。
滅多にないはずだけど武器破壊が起きてしまったり、
そこまでいかなくても武器の疲弊・摩耗には多大な影響があるだろうな。
それに防御技のスキルも使えるようになるはずだ」

( ^ω^)「おっ!そんなのがあるのかお?」

('A`)「ああ。火を吐いたりするモンスターも出てくるから、
それを避けるため、受けるための特殊技がスキルとして存在しているはずなんだ。
今のところパーティーに盾使いがいないから、
各人で自分の身を守る技をちゃんと持っておいた方がいい」

川 ゚ -゚)「なるほどな」

('A`)「あとは《軽業》とか《疾走》とか……。
あ、あと《容量拡張》関係も取っておきたいし、
うーむ……どうしよう。選べるけどどれを選ぶか……」

先ほどとは打って変わってニヤニヤと笑みを浮かべながらウインドウを操作し始めるドクオ。

残りの四人がイラッとするような笑みだったが、
そんなことは誰も言わず、
けれど呆れてドクオを見ていた。

川 ゚ -゚)「さっき言っていた《索敵》とか《隠蔽》とかは良いのか?」

('A`)「あー。
おれは取るつもりだけど、
基本ソロ向きのスキルだから、
四人には必要ないだろ」

ξ゚⊿゚)ξ「ソロ向き?って、あんた」

.

540 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:11:40 ID:moG2ydB.0

('A`)「あ、いや、別にパーティーを抜けるってわけじゃないぞ。
ただ、先行して次のエリアを見に行ったりすることもあるだろうし、
おれは一人で動くこともあるだろうから、
それ用に鍛えておいた方がよいスキルってことだ。
おれは四人みたいに職業スキルを入れない分、
戦闘に特化した、できれば一人でもフラフラできるスキル構成にするつもりなんだ」

(´・ω・`)「ドクオ……」

('A`)「悪いショボン。
このセッティングは譲れない。
その分、それを考慮した戦闘を組み立ててほしい。

(´・ω・`)「……わかったよ」

( ^ω^)「で、スキル構成はどうするんだお?」

('A`)「とりあえず、こんな感じっていう自分の方向性を考えてみて、
それに沿ったスキルを構築してみるか。
どうする?今からやるか?
それか一晩考えて、明日出発の前にやるか」

(´・ω・`)「できれば……」

ξ゚⊿゚)ξ「今からやりましょう。
めんどくさい」

川 ゚ -゚)「そうだな。さっさと済ませてしまおう」

( ^ω^)「おっおっお。それがいいお!」

('A`)「よし!やるか!」

満面の笑みを見せるドクオに、
ブーンを除く三人は少しだけなぜこんなに笑顔なのか不思議に思った。





.

541 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:14:49 ID:moG2ydB.0





そして二時間かかって全員の初期スキルを決定するころには、
全員がその理由をわかっていた。

川 ゚ -゚)「(そっか。ドクオは……)」

(´・ω・`)「(RPGとかの技設定とかを決めるのが好きなんだね)」

ξ゚⊿゚)ξ「(そういえば、
桃太郎の持つ武器とかお供三匹の装備とかを
ずいぶん気にしていたわね)」

( ^ω^)「昔からドクオはこういうの好きだおね」

('A`)「楽しいよな!
自分のやる技とか設定とか決めるの!」

川 ゚ -゚)
(´・ω・`)
ξ゚⊿゚)ξ

三人が心の中でため息をついたのを、
二人は知らない。

(´・ω・`)「さて、とりあえずはこれでやってみて、
あとは状況や装備に合わせて変更ってことで」

('A`)「そうだな。
やっていくうちに変更も出てくるだろうし」

( ^ω^)「おっおっお」

ξ゚⊿゚)ξ「もう夜も遅くなったわね」

川 ゚ -゚)「ああそうだな。
明日も早いし、そろそろ寝る時間だな」

.

542 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:17:00 ID:moG2ydB.0

(´・ω・`)「そうだね。
あ、でもちょっと話があるんだけどいいかな」

( ^ω^)「お?なんだお?」

(´・ω・`)「うん。
ドクオの事と、この部屋のこと、レアアイテムの事なんだけどさ」

('A`)「おれの事?」

(´・ω・`)「ドクオがβテスターだってこと、
この宿のこと、隣の書斎や宿代が無料だってこと、
あと手帳を含めたレアアイテム、特にスキルを保存する瓶の事は、
他言無用、僕達だけの秘密にしよう」

川 ゚ -゚)「……宿とアイテムに関してはその方がいいだろうな。
まわりからいろいろ言われそうだ」

('A`)「言われるだけならいいけどな。
ま、うん。そっちに関しては賛成。
でも、おれのβテスターってのは?
この前も言われたけど」

(´・ω・`)「ドクオが自分でも言っていたけど、
ドクオの持つβテスターの知識ってのは、
かなり僕たちの戦いを楽にしてくれると思う。
けれど、ほとんどの人はそれを持っていない。
一つの選択、決断が命にかかわるこの世界で、
その知識を持っている人やその仲間っていうのは、
羨望を通り越して妬み、恨みを持たれる可能性がある」

ξ゚⊿゚)ξ「それは……怖いわね」

(´・ω・`)「うん」

( ^ω^)「ドクオの知識を世に広めることはできないのかお?」

(´・ω・`)「どうやって?」

.

543 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:19:01 ID:moG2ydB.0

(;^ω^)「おー。それは…その……」

(´・ω・`)「口コミ、書類や本にして頒布。
色々考えたけど、やっぱり一つの事にぶち当たる。
もし、ドクオの知識が間違っていた時。
あるいは、本サービスへの移行による変更があった時。
そしてその記憶違いや変更によって死人が出てしまった時」

('A`)!

(;^ω^)!

ξ゚⊿゚)ξ!

川 ゚ -゚)!

(´・ω・`)「その時ドクオは恨まれるだろうし、
迫害されるかもしれない。
それどころか、命を狙われるかもしれない」

つらそうに話すショボン。
四人は黙って、沈痛な面持ちで次の言葉を待っている。

(´・ω・`)「だから、βテスターだってことは、
このメンバーだけの秘密にしたい」

('A`)「……わかった」

(´・ω・`)「ほかにドクオの事をβテスターだって知ってる人はいないよね?」

('A`)「……いる」

(;´・ω・`)「だれ!?」

焦ったように声を荒げるショボン。

('A`)「あいつらのこと覚えてないか?
初日にあった奇妙な三人組」

.

544 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:21:16 ID:moG2ydB.0

(´・ω・`)「あ、ああ。
あの姫とか忍者とか言ってた。
でもアバターの姿しか知らないわけだし」

('A`)「それが、ホルンカで会っちまったんだよ。
あいつらも移動してきていて。
おれとブーンがやったクエストの件でメッセージが来て、
会うつもりはなかったんだけど偶然がいろいろ重なってさ。
ばれた。
まあ名前も知ってフレンド登録もしていたから、
時間の問題ではあっただろうけど」

(´・ω・`)「そっか……。
じゃあ念のためメッセージは入れておいて。
僕の意見と、そちらも気を付けるようにってことと、
ドクオの事を広めないように」

('A`)「分かった。
で、実はあいつらがショボンに会いたいって言ってるんだ」

(´・ω・`)「僕に?」

('A`)「ああ。
宿の事なんかは話してないけど、
おれ達だけいまホルンカにいることや、
この後迎えに行くことなんかは話したら、
一度ゆっくり話したいって。
出来ればパーティーを組みたいようなことを言ってた」

(´・ω・`)「……ドクオ?」

('A`;)「ほんとに話してないぞ。
ただ最初五人でいたのにホルンカではブーンと二人だってことに食いつかれて、
根掘り葉掘り聞かれて、宿の事や手帳のことを黙ってるので精一杯だったんだよ」

( ^ω^)「横で聞いてたけど、
ほんとに喋ってなかったお。
ただ、女の子はちょっと焦ってるように見えたおね」

.

545 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:24:04 ID:moG2ydB.0

('A`;)「あ、ああ。
なんか切羽詰まっているような……。
まぁこんな状況だからと思ってあんまり気にしなかったけど」

(´・ω・`)「そう……。
パーティーは無理だとしても、
協力したり情報の共有をするにはいいかもね。
なんといっても向こうは三人共βテスターなわけだし」

('A`;)「そ、そ、そ、そうだろ」

(´・ω・`)

川 ゚ -゚)

ξ゚⊿゚)ξ「なんかあやしい」

挙動不審なドクオを見て、
怪訝な顔をする三人。
ツンは口にしたが、
ドクオは顔を横に向けてその視線から逃れようとする。

(´・ω・`)「あからさまに怪しすぎて突っ込む気にもなれないよ」

('A`;)「聞かないでくれ」

( ^ω^)「かわいい子だったから、ちょっとドキドキしたんだおね」

('A`;)「ちょ、ブーンおまえ!」

( ^ω^)「おっおっお。
かわいかったから仕方ないお。
アバターの時も可愛かったけど、
素顔も可愛かったおね」

ξ゚⊿゚)ξ「へーはーふーん。
可愛かったんだ」

( ^ω^)「おっ?
おっお。
可愛かったお」

.

546 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:25:47 ID:moG2ydB.0

ξ#゚⊿゚)ξ「へーはーふーん。
かわいかったんだ」

( ^ω^)「……お?」

ξ#゚⊿゚)ξ「へーはーふーん。
か、わ、い、か、っ、た、ん、だ」

(;^ω^)「そ、そうだお。
ツンのきれいさにはかなわないけど、
なかなか可愛い部類にはいる女の子だったから、
ドクオがドキドキしちゃったんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「やだなにきれいだなんて。
お世辞言ってんじゃないわよ」

(;^ω^)「身近にきれいな人がいると審美眼が鍛えられるから大変なんだおね」

ξ゚⊿゚)ξ「はいはい。
でもその審美眼を持っていながらも可愛いっていうんだから、
なかなかの子ね。
で、その子がどうしたって?
ドクオ」

川;゚ -゚)「付き人みたいなのも一緒だったんだろ?」

(;´・ω・`)「そうそう。
姫を守る忍者とかなんとか」

('A`;)「お、おお。
後ろで見守ってたけど、
相も変わらず
『俺たちが姫を守る!』
とか言って盛り上がってた」

(;´・ω・`)「そ、そうなんだ。
と、とりあえずそれじゃあホルンカで会うってことで、
それでいいのかな」

.

547 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:30:26 ID:moG2ydB.0

('A`;)「お、おう。
それもメッセージしておく」

ツンを除く四人がひきつった笑顔を浮かべる中、
一人ツンは壁を見ながらニヤニヤと笑っていた。





(´・ω・`)「さて、それじゃあこれで打ち合わせは終わりかな」

(;^ω^)「おっ」

ニヤニヤと笑うツンを意識しないように場を締めようとしたショボンだったが、
ブーンが声を漏らし、ドクオを見た。

(´・ω・`)「?ブーン?ドクオ?
他にも何かあるの?」

ショボンの問いかけにブーンがドクオを見て、
ドクオはブーンに向かって静かにうなずき、
そしてショボンを見た。

('A`)「実は、もう一人おれがβテスターだって知ってる人がいる」

(´・ω・`)「……誰?」

先ほどとは違うもったいぶったような喋りを怪訝に思いつつ、
ショボンは次の言葉を待つ。

('A`)「シャキンさんだよ」

(´・ω・`)!

ドクオの言葉に言葉をなくすショボン
大きく目を開き、口も半開きで、取り繕うことも忘れ驚きを身で表している。

ξ゚⊿゚)ξ「え?だれ?」

.

548 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:33:07 ID:moG2ydB.0

そんなショボンを見て驚くツンとクー。

( ^ω^)「ショボンのお兄さんだお」

川 ゚ -゚)「一人っ子じゃなかったのか?」

( ^ω^)「正確には親戚のお兄さんだけど、
兄弟のように仲良くて、
顔もよく似てるんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「その人も、こっちに来てたんだ……」

川 ゚ -゚)「!そういえば、ナーヴギアを1台親戚が使うとかなんとか言っていたな」

( ^ω^)「その人だお。
シャキンさんって言って、
すごくいい人だお」

(´ ω `)「え、ほ、本当に?」

('A`)「ああ。ホルンカで会った」

( ^ω^)「びっくりしたお。
ショボンに聞いてはいたけど、
村でぱったり会ったから」

(´ ω `)「な、なんか言って……」

('A`)「……気にしてた。
ただ、……まずはこっちはこっちでやるから、
そっちはそっちで頑張れって」

(´ ω `)!

( ^ω^)「もう三人組のパーティーを組んでたお」

.

549 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:38:08 ID:moG2ydB.0

(´ ω `)「パーティー?」

('A`)「シャキンさんは片手剣。
あと曲刀と斧を持った人の三人パーティーだった。
このタイミングでホルンカにいるってことはどちらかがβテスターなのかと思ったけど、
そういうわけではなく、ただなんとなく強そうな人の後ろを付いてきたって言ってたな」

(´ ω `)「……そう……」

('A`)「だから俺たちのやった片手剣の為のクエストを教えたから、
今頃まだやってると思う」

(´ ω `)!

一瞬腰を浮かせかけたショボン。
しかしすぐに我に返って座りなおす。

その姿を見た四人のうち二人はさらに驚き、
二人は少しだけ悲しそうな顔をした。

(´ ω `)「なんで……」

('A`)「道は同じだから、時期が来たら会えるだろうって言ってた。
……シャキンさんに会ったことを話すかどうかも、
おれ達の判断に任せるって」

(´ ω `)「……そう」

( ^ω^)「すぐに言わなかったのは、
それもシャキンさんに頼まれたんだお。
もし言うのなら、ホルンカに向かう準備が全部整ってからにしてくれって」

ブーンの言葉に体を震わせたショボン。
そしてゆっくりとその顔を見た。

( ^ω^)「シャキンさんから伝言があるお。
『まわりをよくみてがんばってみろ』だ、そうだお」

(´ ω `)「…………志也兄さん……」

.

550 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:43:24 ID:moG2ydB.0

顔を隠すように俯くショボン。
膝の上で握れれている手は、
強く握られ震えている。

一分ほどそのまま動かないでいたショボンが、
すっと顔を上げた。

(´・ω・`)「うん。わかった。ありがとう。二人とも」

普段通りの柔らかい笑顔を二人に見せる。

(´・ω・`)「兄さんなら元気で過ごせるでしょ。
こちらに来てしまっていたのは残念だけど、
元気そうなら安心だよ。
ドクオはフレンド登録とかした?」

('A`)「え。あ、ああ。一応」

(´・ω・`)「そう。なら良かった。
兄さんにいろいろ教えてあげて。
クエストの事とかさ」

そういいながら立ち上がる。

川 ゚ -゚)!

ξ゚⊿゚)ξ?

( ^ω^)!

('A`)!

(´・ω・`)「さて、それじゃあこれで打ち合わせは終了だね。
僕は出発前にもう一度書庫の本の内容を確認しておくから、
みんなは休んでくれていいよ。
ブーン、ドクオ、ベッドは一つずつ使ってくれていいからね。
僕はこっちのソファーで寝るから」

( ^ω^)「いいおっ!
僕がこっちで寝るお!」

551 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:45:32 ID:moG2ydB.0

既に廊下に出るドアの前まで移動したショボンが、
ノブに手をかけて振り返る。

(´・ω・`)「ちょっと遅くなると思うから、
先に寝てて。
ブーン、ここのベットは寝心地良いから今日は使ってみて。
それじゃ、おやすみ。
明日は朝7時起床の8時半前には出発でよろしく」

誰に何も言わさないでそれだけ告げると、
ドアを開けて部屋を出た。

川 ゚ -゚)「ショボン……」

腰を上げて立ち上がりかけていたクーだったが、
後を追わないでもう一度座った。

ξ゚⊿゚)ξ「いいの?」

川 ゚ -゚)「……ああ」

俯いたクーにささやくツン。
クーはツンにさみしげにほほ笑んだ後、
小さく首を横に振った。

川 ゚ -゚)「今私が行っても、
ショボンは私に気を使うだけだろうからな」

ξ゚⊿゚)ξ「そう……ね」

先ほどのショボンと同じような姿でこぶしを握る親友の姿をみて、
ツンは彼女に寄り添うように座りなおした。

ξ゚⊿゚)ξ「で、これからどうするの?」

('A`)「……今日は寝て、明日ホルンカに……」

ξ゚⊿゚)ξ「そういうことじゃなくて、
今部屋を出たバカの事と、
そのシャキンって人の事よ」

.

552 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:47:40 ID:moG2ydB.0

('A`)「あ、ああ……。
まあ、なるようにしかならないだろうし」

ξ゚⊿゚)ξ「で、あんたたち二人は何を隠しているわけ?」

('A`;)「何も隠してねーよ!
なあ、ブーン」

(;^ω^)「お、おお。
そうだお。隠してなんかないお」

('A`;)「なあ」

(;^ω^)「そ、そうだお」

ツンの言葉にあからさまに取り乱す二人。

それを見て大きくため息をつくツン。

ξ゚⊿゚)ξ「そこまであからさまだと引くし、
突っ込みを入れるのも気が引け始めるけど、
さっさと話しなさい」

(;^ω^)「おっおっ。
な、何も話すことなんてないお」

('A`;)「な、なにを言ってるんだよツン」

ξ#゚⊿゚)ξ「あんたたちねぇ」

ツンがこめかみに青筋を立てようとしたその時、
隣のクーが口を開いた。

川 ゚ -゚)「教えて、くれないか?」

ゆっくりと顔を上げる。
そしてドクオとブーンの顔を交互に見た。

.

553 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:50:34 ID:moG2ydB.0

川 ゚ -゚)「今の私ではショボンの助けにはなれないが、
もし何かあるのなら、教えてほしい」 

ξ゚⊿゚)ξ「クー」

('A`)「クー」

( ^ω^)「クー」

川 ゚ -゚)「頼む」

三人に見られながら、
そのまま頭を下げようとするクー。

(;^ω^)「は、話すお!
だから頭とか下げないでほしいお!」

川 ゚ -゚)!

(;^ω^)「友達にそういう真似をされるのは、苦手だお」

泣き出す前のように表情を曇らせたブーン。
ドクオは腹を決めたのか、
ソファーに座りなおしてお茶をすすった。

('A`)「シャキンさんに、頼まれたんだ。
ショボンがシャキンさんの事を聞いて取り乱したら、
すぐにシャキンさん達ははじまりの街に戻るって」

川 ゚ -゚)「いま、十分に取り乱していたように見えるが?」

( ^ω^)「……まだまだだお。
ショボンは本当はもっと感情表現が豊かなんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「あいつが?」

('A`)「ああ。
笑うし、泣くし、はしゃぐし。
おれから見たらブーンにならぶ」

(;^ω^)「おっおっお。
三人でいるときは、
ドクオがストッパーだおね」

.

554 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 00:53:14 ID:moG2ydB.0

('A`)「まあおれのテンションがおかしくなる時は、
ショボンは冷静なことが多いから、
三人のうち一人は冷静って感じだけどな」

川 ゚ -゚)「それで、なぜそのシャキンさんはそんなことを。
気にしているのなら、すぐに会いに来てくれれば……」

('A`)「シャキンさんの真意はわからない」

( ^ω^)「……だお」

川 ゚ -゚)「そんな……」

首を横に振ったドクオ。
ブーンも悲しげに視線を下に向けた。
クーはそんな二人を見て表情を曇らせたが、
一人ツンは二人に意見を聞く。

ξ゚⊿゚)ξ「でも、思い当たるところはあるんじゃない?」

('A`)「……なぜそう思う?」

ξ゚⊿゚)ξ「幼馴染をバカにするなってことよ。
って、まあ勘だけどね。
でもあんたがそういう返しをするってことは、
あるんでしょ?」

( ^ω^)「ツンにはかなわないおね」

ξ゚⊿゚)ξ「で、予想でいいから聞かせなさい」

川 ゚ -゚)「頼む」

互いの顔を見るドクオとブーン。
そして頷きあうと、先に前を向いたドクオが口を開いた。

('A`)「多分だぞ?
予想だからな?
それこそ勘だぞ?」

ξ゚⊿゚)ξ「さっさと言いなさい」

.

555 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 01:01:32 ID:moG2ydB.0

('A`)「ん〜。
今のあいつはさ、やっぱり責任を感じていて、緊迫状態なんだと思う。
おれ達がいるから、おれたちの前では冷静な顔をしているけど、
多分今向こうの部屋ではシャキンさんが生きていた喜びと、
シャキンさんがこっちの世界に来てしまっていたという絶望と、
シャキンさんがショボンと会おうとしないことに対する悲しみで、
ものすごいことになってるんじゃないかな」

川 ゚ -゚)!

立ち上がるクー。
しかし今度はツンがその手を掴んで引き留めた。

川 ゚ -゚)「ツン?」

ξ゚⊿゚)ξ「目の前のバカ二人はそれをわかっていて後を追ってない。
今はあいつにとって一人にさせた方が良いってことだと思う」

川 ゚ -゚)!

自分を見上げる親友の悲しげな瞳。
テーブルをはさんだ友人二人も少しだけ悲しそうに頷いた。

川 ゚ -゚)「でも……」

ξ゚⊿゚)ξ「まだ続きがあるみたいだから、
とりあえず座って聞きましょ。
ほらドクオ、続きを言いなさい」

('A`)「なんでおれには命令なんだよ」

ぶつぶつと文句を言う友人を見ながら再び腰を下ろすクー。
隣のツンと手をつなぎ、先ほどよりもさらに寄り添うように座った。。

( ^ω^)「僕やドクオの前では感情を表に出すし、
シャキンさんの前でも出してる。
多分僕たちに対するよりも、泣き言とかは言ってると思うお」

川 ゚ -゚)「……今は、私達がいるから……」

(;^ω^)「ち、違うと思うお!」

.

556 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 01:03:35 ID:moG2ydB.0

('A`)「多分ここに二人が居なくても、
今はおれたちの前でも、
弱音を吐いたり取り乱したりはしないと思う」

ξ゚⊿゚)ξ「それだけ思い詰めてるってこと?」

( ^ω^)「そう思うお」

ξ゚⊿゚)ξ「……ばっかみたい」

三人が悲しげな表情をする中、
一人怒りに似た感情を表に出すツン。

川 ゚ -゚)「ツン……」

ξ゚⊿゚)ξ「一人で全部背負ってるんじゃないわよ……。
私が言ったこと、何にもわかってないじゃない」

川 ゚ -゚)「……ツン」

吐き捨てるようにつぶやいた親友の言葉に、
最初の夜にその苦しみを聞いていたクーは言葉が出ず、
ただ握った手を強く握りしめることしかできなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「で、結局そのシャキンってのはショボンと会うわけ?
時期とかなんとか言ってたbたいだけど」

( ^ω^)「シャキンさんもきっと会いたいと思ってると思うお。
ショボンの事が心配だろうし、
自分の元気な姿を見せてやりたいって思ってるんじゃないかお」

ξ゚⊿゚)ξ「ならさっさと来ればいいのに」

('A`)「いまシャキンさんに会ったら、
ショボンはシャキンさんに心のよりどころを求める。
おれ達を守ることにすべてをささげ、
自分の心はシャキンさんに頼ると思う」

ξ゚⊿゚)ξ

川 ゚ -゚)

ドクオの言葉に息をのむ二人。

.

557 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 01:05:59 ID:moG2ydB.0

( ^ω^)「でも、シャキンさんはそれじゃだめだと思ったんだと思うお。
そして、僕もそんなのは嫌だお」

--例えそれでもショボンの心が楽になるのなら--
そんなことを考えて口にしようとしたツンとクーだったが、
ブーンの言葉に何も言えなくなった。

( ^ω^)「だからシャキンさんの言う通り、
シャキンさんの事を伝えるのは今にしたんだお」

川 ゚ -゚)「まだ私達はショボンに頼ってしまっている……」

('A`)「ああ。けれど正直、
さっきのスキル設定なんかは自分達でやれるけど、
これからの事を一番考えていてくれるのはショボンなんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……そうね。
それは私も反省しなきゃね。
いくらなんでもあいつに任せっぱなしだし」

川 ゚ -゚)「今の私たちが考えつくようなことは既にショボンは考え尽してくれているから、
どうしてもそうなってしまう。
それではいけないのは分かっているつもりなんだが……」

('A`)「……ああ。
βテスターとしての知識も、
あいつがいるから最大限に生かせてる気がする」

自分たちを省みて、気を引き締めつつも首を垂れる三人。

( ^ω^)「僕たちも、ショボンが安心して頼ってくれるように、
頑張らないとだお」

しかしブーンは笑顔でそう言い放った。

('A`)!

ξ゚⊿゚)ξ!

川 ゚ -゚)!

.

558 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 01:09:08 ID:moG2ydB.0

( ^ω^)「ショボンが一人で背負っちゃうのはそういう性格だし、
今の状況から考えたらそうなっちゃうのは仕方ないと思うお。
でも、それじゃだめだから、何か一つでも僕たちに頼ってもらえたら、
きっと変わるような気がするお」

('A`)「ブーン」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン」

川 ゚ -゚)「ブーン」

( ^ω^)「それに、今のショボンは必死に色々考えて、
それで僕たちが笑顔になることが一番の喜びなんだ思うお。
だから今は甘えて、でも着実に力をつけて、
出来るだけ早く頼ってもらえるように頑張るのが一番いいと思うお」

('A`)

ξ゚⊿゚)ξ

川 ゚ -゚)

満面の笑みを浮かべて三人に話すブーン。

その笑顔を眩しそうに見るドクオとツン。
クーは一人驚いたようにその笑顔を見つめていた。

( ^ω^)「そう思わないかお?」

('A`)「ああ、そうだな」

ξ゚⊿゚)ξ「悩んでも仕方ないわね。
ああいうやつなんだし」

( ^ω^)「おっおっお」

('A`)「ま、おれは戦闘とかで頼ってもらえると思うから、
三人はがんばれ」

ξ゚⊿゚)ξ「今それほど頼ってもらってないのに、
この先あいつも戦闘のコツを掴んだらさらに頼ってもらえないんじゃないの?」

.

559 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 01:24:51 ID:dgGsF.TI0
すみません。

後少しなんですが、
PCとつながりが悪くて
投下できなくなってしまったので、
残りはまた後日投下します。

乙や支援ありがとうございます。

またよろしくお願いします。

560 名も無きAAのようです :2015/12/14(月) 01:30:13 ID:u.QTp0CYO
今更新来てたのか、乙です

561 名も無きAAのようです :2015/12/14(月) 01:30:57 ID:Y2dFVg0EO

スキルスロット3個追加とかチートすぎるwww

562 名も無きAAのようです :2015/12/14(月) 03:56:07 ID:sdHPvfeQ0
カーディナル先生激怒不可避

563 名も無きAAのようです :2015/12/14(月) 08:07:21 ID:ArZt05v20
おつおつ

564 名も無きAAのようです :2015/12/14(月) 14:16:48 ID:EZcvxTSg0
おむつー

565 名も無きAAのようです :2015/12/14(月) 15:49:33 ID:mxMjRC1c0
乙乙

566 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 19:52:51 ID:moG2ydB.0
失礼しました。

それでは続きを投下します。

.

567 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 19:54:20 ID:moG2ydB.0

('A`)「……まだβの知識がある」

ξ゚⊿゚)ξ「はやっ!
切り替えはやっ!」

('A`)「良いんだよ別に!
そういうお前はなんかあるのかよ」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたにお前とか呼ばれたくありませんー」

('A`)「うっわ。マジむかつく」

( ^ω^)「ちょ、二人ともやめるお」

('A`)「でもそうやって話を逸らすってことは、
まだ何にも浮かんでないってことだな」

ξ゚⊿゚)ξ「うっ」

('A`)「へっへっへ」

ξ゚⊿゚)ξ「うるさい!
あんたにはない私の女子力で目にもの見せてやるわよ」

('A`)「女子力?
誰に?
え?ツンに?
え?女子力って意味わかってるか?」

ξ゚⊿゚)ξ「こいつ素で聞きやがった」

( ^ω^)「おっおっお」

ξ゚⊿゚)ξ「見てろよこの野郎」

('A`)「ま、おれが一番最初だな」

ξ゚⊿゚)ξ「あーら。
こっちにはクーがいるのをお忘れかしら?
生徒会での片腕!
事務処理の鬼!
和服のお嬢様!」

.

568 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 19:56:39 ID:moG2ydB.0

('A`)「結局他力本願かよ!
つーかお嬢様とか関係ねー!」

ξ゚⊿゚)ξ「どちらのチームが先に頼られるか勝負よ!」

('A`)「主旨が変わってるぞおい!」

ξ゚⊿゚)ξ「結果が一緒ならいいのよ」

('A`)「よかねえよ!」

( ^ω^)「おっおっお」

ξ゚⊿゚)ξ「クー!頑張るわよ!」

川 ゚ -゚)「え?あ、ああ。
うん。そうだな。頑張ろう。
ショボンの片腕になれるように。
倒れる前の杖となれるように」

ξ゚⊿゚)ξ「いや、そこまでは」

('A`)「とりあえず目指せよ!」

( ^ω^)「おっおっおっ」

和気あいあいと話す四人。

それはまるで数日前まで過ごしていたお昼の生徒会室のようで、
四人の心を温かくした。
そして今ここにもう一人が欠けていることを全員が悲しく思い、
それぞれに決意を胸に秘めた。





.

569 ◆dKWWLKB7io :2015/12/14(月) 20:16:54 ID:moG2ydB.0
以上、『4.スキル』でした。

二十話はまだまだ続きます。

次回、『5.彼等』

よろしくお願いします。


いつも支援と乙とおむつ、ありがとうございます。

またいただけると嬉しいです。


ではではまたー。


.

570 名も無きAAのようです :2015/12/14(月) 20:24:53 ID:rC8rY5uo0
乙乙

571 名も無きAAのようです :2015/12/14(月) 20:27:35 ID:5BnSLuvo0
おつ!
スキル決め楽しいのスゲー分かるw

572 名も無きAAのようです :2015/12/14(月) 20:31:42 ID:j4Qj1FVA0

本当に少しだったなwww

573 名も無きAAのようです :2015/12/14(月) 22:44:21 ID:N7MZlreU0
乙!
期待してる

574 名も無きAAのようです :2015/12/15(火) 13:58:59 ID:YT2XZaz60
おむつー

575 名も無きAAのようです :2015/12/15(火) 20:56:54 ID:Jb8zW7EE0
おつおつ

576 名も無きAAのようです :2015/12/21(月) 06:03:31 ID:mVKIdoEk0
追いついたー
面白くて読み始めたら止まらないな
出来ることなら全員がリアルに帰るまで、いや帰った後の話まで読んでみたいな

577 名も無きAAのようです :2015/12/23(水) 12:42:42 ID:uzn16Kqs0
やっと追いついた

578 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 20:41:38 ID:jMQ1Wtwo0
こんばんは。

それでは投下を始めます。

よろしくお願いします。

.

579 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 20:42:40 ID:jMQ1Wtwo0





5.彼等






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580 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 20:44:19 ID:jMQ1Wtwo0

時は少し遡る。

茅場晶彦のアバターが空から消えてから数時間後。
今なお中央広場は悲鳴と怒声に彩られていた。

それは当然のことで、
瞬間的に『先』を考えることができた十数名を除けば、
広場で泣き叫ぶか運営を呼ぶか、
あるいは現実を直視できず街をさまようものが大半だった。

そして一部には強制的にログアウトすれば戻れると思う者もいた。
彼らは崖から飛び降りてその身をポリゴンに変え、
あるいは街の外にいる魔獣にその身を差し出す者もいた。

その混乱の中、彼はまず冷静に自分の置かれた状況を理解し、
次の一手を考えつつ、
目の前の喧嘩を面白そうに見ていた。

(`・ω・´)「やばいぞ。
面白い奴らを見つけてしまった」

彼の名はシャキン。

(`・ω・´)「この状況で……。
スゲー面白い奴らだ」

今の状況下でそんな他人の喧嘩を『面白い』とみている時点で、
彼も充分『面白い』部類に入ると思うのだが、
彼はそんなことは全く考えていなかった。

とはいえ、シャキンも最初から目の前の喧嘩を見ていたわけではない。

とりあえず重要施設を確認しようと《黒鉄宮》と呼ばれる施設に入ると、
そこには漆黒の、黒曜石のような輝きを放つ大きな石の壁、
碑が存在していた。

そしてそこに書かれたアルファベットを見て、
それがプレイヤーの名前だと知った彼はまず自分の名前を探し、
そしてこの世界に来ているはずの弟同然の親類の名を探した。

.

581 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 20:46:33 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「……『Shobon』。ま、これが祥大だろうな。
ってことは……『DOKUO』と……『Boon』これがあの二人か。
名前に取り消し線が入ってないってことは、
生きてるってことだよな」

既に取り消し線が上に引かれた名前が目に付く。
シャキンが名前を探している間にも、
いくつかの名前に線が引かれていた。

(`・ω・´)「命を粗末にするなバカ野郎」

ボソッと呟くと、踵を返し黒鉄宮を出るために出口へと足を進めた。

(`・ω・´)「さて、多分この三人であってると思うけど、
連絡はどうするか……。
おれが『Shakin』で来ているのは教えてないし、
多分、いま祥大はおれの事を考えている状態じゃないだろうからな。
ドクオかブーンに連絡するのが良いかもしれないな……」

そして黒鉄宮を出たシャキンはいろいろと考えながらプレイヤーの少なそうな路地に入った。

そこで、彼は見付けてしまった。



.

582 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 20:48:40 ID:jMQ1Wtwo0








( ゚д゚ )「だから熟女の方が良いに決まっているだろう!」

(´・_ゝ・`)「二次の少年こそ至高だ!」










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583 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 20:50:34 ID:jMQ1Wtwo0

リアルの世界で叫んでいたら、
いやこの世界でも通常の状態なら通報されそうなことを叫んでいる二人の男。

どうやら最初は肩がぶつかった程度であったらしいが、
そのぶつかった理由が片方は店先にいた店員(熟女)に目を奪われていたからで、
もう片方がその店に買い物に来ていた少年に目を奪われていたから、
このような怒鳴りあいに発展したようだった。

(`・ω・´)「アホだ」

思わず近寄り、少しだけ隠れて二人を観察するシャキン。

最初は面白がっていただけだったが、
途中で気付いてしまった。

二人は、どうでもいいことで争うことで自我を保っているということに。

出来るだけ『普段の自分』を装うことで、
何とかして『自分』を繋ぎ止めているということを。

(`・ω・´)「……そりゃ、そうだよな。
おれとか祥大の方が特殊だろう」

自分が状況を冷静に観察していることを更に客観的に判断するシャキン。
そして自分と同じような環境下で育った弟のように思っている身内も、
この状況下でも冷静でいることを確信していた。

(`・ω・´)「ま、これも何かの縁か。
祥大達にはあとで連絡しよう」

街の中では通常の戦闘は出来ないよう設定されている。
しかし一歩街の外、圏外に出れば命のやり取りができる。
そして決闘システムを使えば街の中でも、
圏内でも命のやり取りができることを知っていたシャキンは、
軽い足取りで二人に近づいた。

シャキンが近づいてくることにも気付かずに言い争いを続ける二人。

.

584 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 20:52:07 ID:jMQ1Wtwo0

(# ゚д゚ )「よし!外に出ろ!」

(#´・_ゝ・`)「決着をつけてやる!」

(`・ω・´)「おいおい、いい加減にしろよ二人とも」

(# ゚д゚ )「ああ!?」

(#´・_ゝ・`)「だれだてめぇ!?」

.

585 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 20:53:36 ID:jMQ1Wtwo0







(`・ω・´)「おれの初一人エッチのおかずは20歳離れた(親類の)お姉ちゃんで、
更に(昔は)人目もはばからないブラコンだ!おれはあいつを愛してる!」







.

586 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 20:54:39 ID:jMQ1Wtwo0







( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)






.

587 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 20:55:31 ID:jMQ1Wtwo0








( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)







.

588 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 20:56:53 ID:jMQ1Wtwo0

( ゚д゚ )「(お姉ちゃん?20歳離れた?
近親相姦的な熟女好き変態?)」

(´・_ゝ・`)「(人目をはばからないブラコン?
実の弟を愛でる系?え?マジの人?)」

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)

(`・ω・´)

( ゚д゚ )「あ、そうなんだ」

(´・_ゝ・`)「へ、へー」

(`・ω・´)「いろいろ話そうぜ二人とも!」

『がしっ』というような擬音が聞こえそうな勢いで二人の肩を抱くシャキン。

( ゚д゚ )「え、あ、いや、おれはそろそろ」

(´・_ゝ・`)「あ、うん。おれもそろそろ」

.

589 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:05:55 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「なんだよ、二人とならいい酒が飲めそうなのに!
どうせウロウロしてただけなんだろ?
バーでも探して一杯やろうぜ!なっ!」

力が強いわけではないがうまく首元に手を回され、
更に体勢を崩された二人はシャキンの動きに合わせて歩き出した。

(`・ω・´)「仲良くしようぜ!兄弟!」

( ゚д゚ )「いや……」

(´・_ゝ・`)「その……」

(`・ω・´)「おれはシャキン!お前ら名前は!?」

( ゚д゚ )「み、ミルナ……」

(´・_ゝ・`)「……デミタス」

これが、後にギルドN-Sを結成した三人の出会いであった。

更に言うと、ギルド名はこの時『バー』を探して東に西に歩いたことに由来する。

そして後に彼の言う『ブラコン』の対象であるショボンに、
シャキンとの出会いを聞かれ二人はこう言った。



「自分を上回る変態に出会うと、一瞬で正気に戻るもんだぞ」



ショボンが頭を抱えてうずくまったのを見たシャキンは、
豪快に笑っていた。






.

590 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 21:08:14 ID:ruOzep360
支援

591 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:10:52 ID:jMQ1Wtwo0

次の日の朝。
同じ宿に泊まった三人は宿の隣の店で朝食をとっていた。

(`・ω・´)「二人はこれからどうするんだ?」

朝食といっても硬いパンを二つと、
謎の飲み物である。

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)

シャキンの問いかけに答えられず、
顔を見合わせる二人。

(`・ω・´)「?二人はこれからどうするんだ?」

( ゚д゚ )「あ〜。まだ決めてない」

(´・_ゝ・`)「おれもだ」

(`・ω・´)「そっか。
おれは昨日話した弟と合流しようかと思う。
そっちはそっちで友達四人と一緒だから、
良ければ一緒に動いてみないか?」

( ゚д゚ )「え?」

(´・_ゝ・`)「で、でも」

(`・ω・´)「向こうは既に五人だからパーティーは組まないだろうけど、
何かしら一緒に行動するのはいいだろ」

(´・_ゝ・`)「五人なら、シャキンを入れればちょうど六人だろ?
それでパーティー組めばいいんじゃないか?」

(`・ω・´)「ずっと一緒だとあいつを甘やかしちまうからな」

( ゚д゚ )「(ブラコンだった)」

(´・_ゝ・`)「(ブラコンだった)」

.

592 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 21:11:27 ID:8KJsD63A0
追い付いた
支援

593 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:12:41 ID:jMQ1Wtwo0

にやりと笑ったシャキンを見て、
同じことを考えた二人。

(`・ω・´)「どうだ?」

( ゚д゚ )「おれは……正直ありがたい」

(´・_ゝ・`)「おれもだ。ありがとう」

(`・ω・´)「何言ってんだ。
誘ったのはおれだぞ。
じゃあパーティーに誘うな。
えっと、こうしてこれで……。
お、ミルナの名前が出た。
どうだこれで!」

シャキンが独り言ちながら自分のウインドウを操作すると、
ミルナの目の前にシャキンからパーティーに誘われたウインドウが現れた。

( ゚д゚ )「よろしく頼む」

(`・ω・´)「よしよし。
じゃあこうしてこうすれば……。
よし、デミタス出た」

続いてデミタスの前に現れたウインドウ。

(´・_ゝ・`)「よろしく」

こうして三人は行動を共にすることとなった。






.

594 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:14:32 ID:jMQ1Wtwo0

(´・_ゝ・`)「シャキン、聞いていいか?」

(`・ω・´)「ん?なにをだ?」

路地を歩く三人。
先頭を進むシャキンの後ろを、ミルナとデミタスが並んで歩く。

(´・_ゝ・`)「道、覚えてるのか?」

(`・ω・´)「ああ。はじまりの街は説明書にマップも載ってたしな」

( ゚д゚ )「え?あれを覚えてるのか?」

(`・ω・´)「?あれだけじゃないぞ?
こっちに来て中央広場に詳細な地図があったし、
通った場所は自動でマッピングされてるし」

(´・_ゝ・`)「でも今それを見てないよな?」

(`・ω・´)「黒鉄宮は昨日も行ったしな。
まぁ中央広場のそばだし、わかりやすいだろ」

(´・_ゝ・`)「はぁ……」

( ゚д゚ )「あの分厚い説明書も読んだのか?」

(`・ω・´)「さすがに二回は読まないとちゃんと覚えられなかったな」

(;゚д゚ )「覚えた!?」

(;´・_ゝ・`)「あれを!?」

(`・ω・´)「ん?ああ。
お、着いたぞ」

目の前には大きな広場。

茅場晶彦とその言葉を思い出し、顔をしかめるミルナとデミタス。
昨日の事であるはずなのに、なぜか遠い過去のような、
それでいてつきさっきの事のように脳裏に浮かぶ。

.

595 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 21:18:00 ID:IZHlORFI0
来てるー!!

596 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:18:52 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「ん?どうした?」

足を止めた二人を不思議そうに見るシャキン。

(`・ω・´)「黒鉄宮に行くぞー」

自分たちが感じているような感覚を全く持っていないように見えるシャキンを、
二人は少しだけ羨ましく感じていた。



黒鉄宮につくと、シャキンは入り口付近を見渡せることができ、
なおかつ隠れることのできる場所を探した。

( ゚д゚ )「何故隠れる?」

(`・ω・´)「突然現れて驚かそうと思って」

(´・_ゝ・`)「待ち合わせをしてるんだろ?」

そしてうまいことそんな場所を見つけると、
二人とともに隠れた。

(`・ω・´)「いや、してない」

( ゚д゚ )「は?」

(´・_ゝ・`)「え、じゃあなんでここに?」

(`・ω・´)「いや、あいつの事だから来るだろうと思って」

( ゚д゚ )「いやいやいやいや」

(´・_ゝ・`)「さすがに無理だろそれは」

(`・ω・´)「んー。あいつの思考を考えると、
多分今日の朝ここに来ると思うんだよな。
友達と一緒に」

.

597 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:21:34 ID:jMQ1Wtwo0

柱の陰に押し込まれ、二人に詰め寄られるシャキン。

( ゚д゚ )「この状況でそんな悠長なことを」

(´・_ゝ・`)「名前もわかってるんだろ?
そのショートメッセージってのなら、
名前さえわかればメッセージを送れるんだろ?
送ってみろよ」

(*`・ω・´)「もし間違ってたら恥ずかしいじゃないか」

(´・_ゝ・`)「今更そんなことで恥ずかしがるな」

( ゚д゚ )「……あ……れ?」

呆れる二人。
なんとかしてメッセージを送らせようと考えつつ、
ちらりと黒鉄宮を見たミルナの動きが止まった。

(´・_ゝ・`)「どうしたミルナ?」

( ゚д゚ )「シャキン、弟は顔が似てるのか?」

(*`・ω・´)「おれに似てかっこ可愛いぞ。
怒られるからあいつには言えないけど」

( ゚д゚ )「もしかして、彼か?」

(´・_ゝ・`)「なに!?」

慌ててデミタスがそれでもこっそりと柱の陰から顔を出す。
そしてその後ろからシャキンも続いた。

(´・ω・`)

川 ゚ -゚)

ξ゚⊿゚)ξ

(`・ω・´)「おっショボンだ」

.

598 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 21:22:51 ID:7R5Ymr2EO
リアルタイム記念
クリスマスに投下しなかったのは意地かリア充か…

599 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:38:13 ID:jMQ1Wtwo0

(´・_ゝ・`)「ほんとに来やがった」

( ゚д゚ )「マジか」

振り返り、ニヤニヤとショボンを見ているシャキンを見る二人。

(`・ω・´)「あいつの事だから無茶はしていないと思ったが、
無事で何より。
けどドクオとブーンがいないな……。
あの三人がこの状況下で別行動をするとは考えにくいが……」

呟いている内容はまじめだが、
その顔はにやにやとした笑顔で正直気持ち悪いと二人は思った。

( ゚д゚ )「で、で、でだ。
出て行って声はかけないのか?」

(`・ω・´)「んー。ちょっと考える。
多分あいつ等も生命の碑を見に来たんだろうから、
そのあとおれも確認して……。
ミルナ、デミタス、どちらか頼まれてくれるか?」

( ゚д゚ )「何をだ?」

(`・ω・´)「生命の碑を見に行ってきてもらいたい。
そこで、『Boon』と『DOKUO』の名前を確認してきてほしい。
……線が引かれていたりはしないと思うが」

(´・_ゝ・`)?

(`・ω・´)「あいつ、『Shobon』は、その二人とこの世界に来たはずなんだ」

.

600 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 21:38:41 ID:zc5Rdcu.0
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!



っと思って喜んだシャキンほ変人っぷりに泣けたwww

とはいえ能力てきにはさすがに(´・ω・`)と同族なんだな

601 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:40:28 ID:jMQ1Wtwo0

(´・_ゝ・`)「彼女たちは?」

(`・ω・´)「さらに一緒に来た友達だとは思うが。
会ったことはない」

( ゚д゚ )「分かった。おれが行ってこよう」

(`・ω・´)「頼む」

ミルナが柱の陰から出て黒鉄宮の入り口に向かう。

(´・_ゝ・`)「だが、それと今顔を出さないのは意味があるのか?」

(`・ω・´)「今のあいつは何か追い込まれているように見える。
もし二人のうちのどちらかに何かがあったんだとしたらすぐに飛び出すが、
そうでなければ少し様子を見たい」

(´・_ゝ・`)「……」

まじまじとシャキンの顔を見るデミタス。

(`・ω・´)「どうした?」

(´・_ゝ・`)「いや、ブラコンなのに甘やかすだけじゃないんだなと思った」

(`・ω・´)「甘やかすだけが愛じゃないのさ」

(´・_ゝ・`)「はいはい」

瞬間的に表情を引き締めたシャキン。
しかしすぐにニヤニヤとした笑いに戻ってしまったため、
デミタスはまた心の中でため息をつくこととなった。

.

602 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:42:35 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「お。出てきたな」

しばらくするとシャキンが心なしか弾んだ声で呟いた。

(´・ω・`)

ξ゚⊿゚)ξ

川 ゚ -゚)

少年を先頭に、少女が二人続く。

その歩き方は先ほどまでの自分達のようで、
デミタスは少しだけ恥ずかしくなった。

(´・_ゝ・`)「み、ミルナが遅いな。
後は付けなくていいのか?」

(`・ω・´)「んー。多分、これが使えるから」

ウインドウを出していたシャキンが、
流れるように指を動かしている。

(´・_ゝ・`)「なにしてるんだ?」

(`・ω・´)「『追跡』ってスキルを使うと対象の跡を追えるらしいんだ。
レベルを上げればその場に居なくても足跡とかを追えるらしいけど、
まあ目の前にいる奴の後ろを追うだけなら、
付け焼刃で設定したスキルでも大丈夫だろ。
本当なら『聞き耳』スキルであいつらの会話も聞きたいところだけど、
さすがに武器のスキルを外すのは心もとないからな」

(´・_ゝ・`)「…………シャキン、
おれがその『追跡』を付けて追うから、
お前はその『聞き耳』ってのをつけろ」

(`・ω・´)「え?いやそれは」

(´・_ゝ・`)「少しは役に立たせろ。
パーティーなんだから」

.

603 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:53:03 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「……ありがとう。
それじゃあ頼む」

既に開いていたウインドウを操作し始めるデミタス。

そしてショボンの後姿を注目する。

(´・_ゝ・`)「……なるほど。足跡が見えるようになるんだな。
ん?もう黒鉄宮の入り口近辺の足跡は消えかけてる。
おれの顔はばれてないはずだし、
先に行くぞ」

(`・ω・´)「ありがとう」

(´・_ゝ・`)「見失わなかったら、
後でまとめて聞くさ」

ショボンの後姿が路地の角を曲がったのを確認した後、
柱の陰から出て歩き始めるデミタス。

それと同時にミルナが黒鉄宮から外に出た。

( ゚д゚ )「?」

一人歩くデミタスを見て不思議そうな顔をするミルナ。
シャキンが駆け寄る。

(`・ω・´)「ミルナ」

.

604 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:55:00 ID:jMQ1Wtwo0

( ゚д゚ )「デミタスは一人でどうしたんだ?」

(`・ω・´)「いまスキルを使ってショボンを追ってくれているんだ。
おれ達はデミタスの後ろを少し空けてついていこう」

( ゚д゚ )「そんなスキルがあるんだな」

歩き始めたシャキンの隣に駆け寄るミルナ。

そして歩調を合わせて歩き始める。

( ゚д゚ )「『Boon』と『DOKUO』に線は引かれていなかった」

(`・ω・´)「そうか…よかった」

( ゚д゚ )「あと、彼が彼女たちの名前を呼んでいるのを聞いた。
背の高い方が『クー』。小さい方が『ツン』だ。
字は分からないが、対応しそうな名前としては『KuU』、『COO』、『Qoo』。
『TUNN』、『T.U.N.』なんてのがあった。
そこらへんも見ていたら遅れた。すまん」

(`・ω・´)「!そ、そうか。
ありがとう。助かるよ」

驚いたようにミルナの横顔を見るシャキン。

( ゚д゚ )「……助けてもらってばかりってのも、
いやだからな」

ミルナは前を向いたまま、
少し照れくさそうにつぶやいた。




.

605 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:56:59 ID:jMQ1Wtwo0

時間は二時間ほどが過ぎようとしており、
時計の針はお昼へと向かっていた。

シャキンたち三人の視界の隅にいるのはクーとツン。
ショボンは二人より少し前にいて、
屋台のような店先で中の女性と話をしている。

(´・_ゝ・`)「で、どうなんだ?」

(`・ω・´)「普通にクエストをしているみたいだな。
さっきも今も物を届けるお使いの話をしている」

( ゚д゚ )「ならそろそろ話しかけたらどうだ?」

(`・ω・´)「それなんだけどな……」

( ゚д゚ )「どうした?」

(`・ω・´)「三人の会話が、不自然なんだ。
一見普通に会話しているけど、
ショボンがおかしい。
あいつは友達に対してああいう喋り方はしないと思う」

(´・_ゝ・`)「友達じゃないとか?」

(`・ω・´)「いや、三人の会話の中に『ブーン』と『ドクオ』が出てくることと、
その内容からこっちに一緒に来たことは間違いない。
全部で五人で遊ぶってのも、向こうで聞いたしな」

( ゚д゚ )「ふむ。
それで、どうするんだ?」

.

606 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 21:59:02 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「……先にドクオとブーンに会いたいな。
話をしたい。
出来ればメッセージより直接会いたいが、
どうやら二人は先行して次の町に行っているみたいなんだ」

少しうつむき加減で眉間にしわを寄せるシャキン。
こめかみや眉間を数回人差し指でたたくと、
ミルナとデミタスの顔を見た。

(`・ω・´)「二人ともすまない、
せっかくパーティーを組んだ…」

( ゚д゚ )「なんて街に行くんだ?」

(´・_ゝ・`)「パーティーとしての初陣だ、
腕が鳴るな」

(`・ω・´)「のに……え?」

( ゚д゚ )「行くんだろ?次の町に。
パーティーとして、一緒に行くぞ」

(´・_ゝ・`)「どちらにせよいつかは外には出なきゃいけなくなる。
それなら信用できる奴らと数人で出た方が安心だろ?」

(`・ω・´)「二人とも……。ありがとう」

頭を下げたシャキンに慌てる二人。
しかしすぐにミルナがショボンたちを再び見た。

( ゚д゚ )「ん?おい、シャキン、一人近づいてくる奴がいるぞ?
あれはドクオとかブーンじゃないんだよな?」

(`・ω・´)「え?」

ミルナの横、隠れていた角から顔を出すシャキン。
デミタスも後ろから顔を覗かせる。

.

607 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 22:01:21 ID:jMQ1Wtwo0

(`・ω・´)「いや……違うな。二人のどちらでもない。
会話も……仲間にしてほしいとか話しているな。
それでショボンが断ったところだ」

(´・_ゝ・`)「そうか」

( ゚д゚ )「一人でいるのは心細いからな」

デミタスとミルナは互いの顔を見たあと少しだけ笑いあい、
そして二人してシャキンを見た。

(`・ω・´)「……今はしょうがないな。
だが、あの断り方は……やはり追い詰められているのか……」

そんな視線には気付かず、スキルによって会話を聞いているシャキン。

デミタスとミルナも視線を再びショボンたちに向ける。

既に話はついたのか、ショボンたち三人は歩き始めていた。

話しかけていた青年が、一人たたずんでいる。

(´・_ゝ・`)

( ゚д゚ )

(`・ω・´)「……この街にとどまるなら声をかけてもいいが、
これから外に出るつもりである以上、
話しかけるわけにはいかない」

(´・_ゝ・`)「……うん」

( ゚д゚ )「ああ。そうだな」

たたずむ青年を見つめるデミタスとミルナに、
そして自分に言い聞かせるように話すシャキン。

二人は無言でうなずいた。

.

608 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 22:03:39 ID:jMQ1Wtwo0

そしてデミタスが慌てて声をかける。

(´・_ゝ・`)「シャキン、どうする?まだ後をつけるか?」

追跡スキルを発動させるデミタス。

(`・ω・´)「いや、大丈夫だ。ありがとう。
あの様子ならショボンたちはとりあえず大丈夫だろうから。
次の街に行く準備をしよう。
回復POTとかポーション類をそろえたり、行き方、道を調べないと」

( ゚д゚ )「本当にいいのか?」

(`・ω・´)「ああ。とりあえずは顔を見ることができたから満足だ」

ウインドウを開くシャキン。
そして街の地図を開くと、道具屋の位置を確認する。

(`・ω・´)「ここから北に行ったところに道具屋があるはずだ。
まずはそこで揃えよう」

(´・_ゝ・`)「分かった」

( ゚д゚ )「おう」

それぞれの顔を見る三人。
そして頷きあうとシャキンの先導で進もうとするが、
そのシャキンが急に足を止める。

その視線の先には、男女の三人組がいた。

( ゚д゚ )?

(´・_ゝ・`)?

不思議そうに声をかけようとした二人に対し、
左手を上げて声を出さないように指示するシャキン。

.

609 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 22:06:07 ID:jMQ1Wtwo0

そして右手を右耳に当て、声を聴きとれるような仕草をする。

( ゚д゚ )「(聞き耳?)」

(´・_ゝ・`)「(スキル?)」

そしてその三人を追い始めるシャキン。
慌てて二人もそれに続く。

(´・_ゝ・`)「どうした?」

(`・ω・´)「どうやらあの三人も次の街《ホルンカ》に行く予定らしい。
ちょっとついて行ってみよう」

二人に向かっていたずらっ子のような笑顔をするシャキン。

それに対し二人は呆れながらも笑顔で返し、
シャキンに続いて視線の片隅に映る三人を追う。

デミタスはそっと追跡スキルを発動した。







.

610 ◆dKWWLKB7io :2015/12/26(土) 22:19:20 ID:jMQ1Wtwo0
以上、本日の投下を終了します。

支援や感想、ありがとうございます。

二十話と今年の投下はもう少し続く予定なので、
よろしくお願いします。

因みに昨日投下をしなかったのは、
M○テと検○ちゃんを見ていて投下のタイミングを忘れてました。

次もちゃんと予定を立てて投下させていただきます。


ではではまたー。

.

611 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 22:36:05 ID:ruOzep360
乙!

612 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 23:07:15 ID:2Y69I4jQ0
乙乙

613 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 00:00:23 ID:RZ6v09A.0
やっぱシャキンも優秀なんだなぁ

614 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 02:19:59 ID:YdwazdikO

今年中にまだ投下するなんて嬉しいこと言ってくれるじゃないの

615 名も無きAAのようです :2015/12/27(日) 05:45:53 ID:FNvcDGfIO
そもそも血族後継の第一候補だったシャキンの後釜候補がショボンだから、本質的にはシャキンの方が万能なのかもしれないな

616 名も無きAAのようです :2015/12/28(月) 09:47:29 ID:3vcUWt1A0
おつおつ

617 名も無きAAのようです :2015/12/29(火) 18:02:36 ID:kOMmoSLI0
おむつー

618 名も無きAAのようです :2015/12/29(火) 18:54:05 ID:Uco76CpM0
おつむ大丈夫か上げチキ

619 名も無きAAのようです :2015/12/29(火) 21:42:50 ID:g/OXSzhQ0
おむつ必要だって自己申告してるくらいには大丈夫じゃなさそうだな

620 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:15:50 ID:jPuH2I2s0
どーも作者です。

冬コミも終わった年の瀬、
みなさんいかがお過ごしでしょうか。

それでは、今年最後の投下を始めさせていただきます。


よろしくお願いします。

.

621 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:17:59 ID:jPuH2I2s0






6.βテスター







.

622 名も無きAAのようです :2015/12/31(木) 19:18:05 ID:.D4UzW.20
よろしくお願いします。

623 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:20:24 ID:jPuH2I2s0

《ホルンカ》

はじまりの街を早朝に出た五人は、
昼前に目的地である《ホルンカ》にたどり着いていた。

ξ゚⊿゚)ξ「なるほど。ここは『村』ね」

入り口から見える民家を見てツンが呟いた。

川 ゚ -゚)「映画や書物で見るような『中世の村』だな。
魔女狩りの時代を思わせる」

周囲を観察しながらクーも呟く。
その横でドクオとブーンは先頭で村に入ったショボンの背中を見ていた。

ショボンは無言で周囲を見ていた。

ξ゚⊿゚)ξ「私たちの服装もそんなイメージよね。
ドクオ、ずっとこんな感じなの?」

('A`)「おれが行ったところはこんな感じだったな」

(;^ω^)「つ、ツンもドクオも」

('A`)「あ……」

ξ゚⊿゚)ξ「まわりに誰もいないことぐらい確認してます」

川 ゚ -゚)「うむ。近くには誰もいないな。
だが、昨日の話に出てきた『聞き耳』スキルを使われたら」

ξ゚⊿゚)ξ「あっ」

(´・ω・`)「さすがに今のタイミングで
あのスキルをスロットに入れている人はいないと思うけどね。
ふつうは」

四人の会話も聞いていたショボンが振り返りつつ、
苦笑しながら会話に参加した。

.

624 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:22:36 ID:jPuH2I2s0

川 ゚ -゚)「それもそうだな。ふつうは」

( ^ω^)「だおねー。ふつうは」

ξ゚⊿゚)ξ「え、あ、そうか。そうね。ふつうはそうね」

意味ありげにドクオを見る四人。
少しだけ不機嫌そうに横を向くドクオ。

('A`)ゼッタイヤクニタツカライインダヨ

誰にも聞こえない声でぶつぶつと呟くドクオを見て笑顔を見せた四人だった。




(´・ω・`)「でも……確かに思ったよりも人が少ないね」

ドクオを先頭に歩く五人。
その横にショボン。
クーとツンが続き、その後ろをブーンが歩く。

('A`)「だろ?
まあこの時間だから、
この村にいるほとんどの奴は狩りに出てると思うけどな」

(´・ω・`)「そっか。今日の天気なら森でも明るいもんね」

('A`)「ああ。
今ここにいるってことは、
戦ってここに来たってことだし、
片手剣使いはあのクエストやってるだろうしな」

川 ゚ -゚)「ふむ。
今二人が持っている剣はそれほど強いのか?」

('A`)「この村までで手に入る剣の中では段違いだ。
それに強化回数もそれなりに多いから、
うまく鍛えれば3層か4層くらいまで使えるんじゃないかな」

ξ゚⊿゚)ξ「お得ね」

.

625 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:27:53 ID:jPuH2I2s0

川 ゚ -゚)「だが、失敗もあるんだろ?
その強化ってやつは」

('A`)「ああ。
しかも失敗した分も回数としてカウントされる。
強化の種類も何種類かあるから、
それも楽しみでもあるな」

そう言って笑ったドクオの笑みはスキルを決めるときの笑顔とほぼ同じで、
横で見たショボンは後ろの三人に見られなくてよかったと思った。

(´・ω・`)「強化回数は、武器ごとに異なる。
強い武器でも一回しかなかったり、
それなりの武器でも複数回強化できたら、
最終的には強い武器になる。
ってことでいいんだよね」

('A`)「ああ。そういうことだ。
強化の種類は耐久値や重さ、正確性や切れ味に速さがある。
どの武器にも好きな強化ができるはずだから、
どんな強化をするかによって同じ名前の武器でも個性が変わるだろうな」

川 ゚ -゚)「なるほどな。
基本の武器を自分好みに変えられるということか」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ私の細剣をものすっごく重く硬くしたり、
ブーンの片手剣とかをものすごく軽くできたりするの?」

('A`)「回数が多い武器なら可能だろうけど、
かなり回数が多くないと難しいだろうな。
まあ基本となる武器の特性を損なうことはしない方が良いだろ」

( ^ω^)「スキルと同じでどんな強化をするか考えるのが楽しそうだおね」

('∀`)「だよな!」

ブーンの言葉に思わず振り向いたドクオ。

ツンとクーがその笑顔を見て眉間にしわを寄せた。
昨日のスキル設定を思い出したからだった。

.

626 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:31:38 ID:jPuH2I2s0

そしてその眉間のしわに気付いたドクオは慌てて前を向く。

('A`)「も、もうすぐ着くぞ。
ショボン、ここにはどれくらいいるつもりなんだ?」

(´・ω・`)「……五日。出来れば四日。
状況に応じても一週間くらいをめどにしたい」

( ^ω^)「お?」

(´・ω・`)「ここには転移門もないからね。
出来れば転移門のある街を拠点にして、
各村や街でのクエストをこなすのはもちろん、
あの《書庫》で進行を確認したりしたいし」

ショボンの言う《書庫》をどこの事か理解した四人。
男二名は壁一面の本を思い出し、心の中で苦笑いを浮かべた。

ξ゚⊿゚)ξ「で、今私達はどこに向かってるわけ?」

('A`)「ん?ああ。ここだよ」

ツンの問いかけとほぼ同時にドクオが歩みを止め、
四人も止まると彼の指さす方向を見た。

( ^ω^)「結構広くていい感じだったお」

村はずれまでやってきた五人。
村に入ってから見た見た家屋としては大きめの部類に入る家の前で歩みを止めた。

川 ゚ -゚)「農場?牧場か?」

('A`)「農場だな。
二階部分に泊まることができるんだ。
泊まると家主からクエストを受注できるようになるけど、
やらなくても別にペナルティはない。
最初の日に一度に借りられる最大日数の7泊分を借りてあるから、
まだおれが借主になってるはずだ」


.

627 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:38:35 ID:jPuH2I2s0

農家の入り口に進むドクオ。
無言でドアを開け、中に入る。
入ったすぐが大きな部屋になっており、
ソファーには中年の男女が座っていた。
しかしこちらを見ようとはせず、
男は黙って新聞のようなものを読んでおり、
女性は編み物を行っている。
ドクオの後ろを四人が続く。
三人は小さな声で「おじゃまします」と呟きながら周囲を見回していたが、
最後に入ったブーンは「またおせわになりますおー!」と、
元気よく挨拶をした。

思わず立ち止まる三人。
しかし部屋にいた男女はちらりとこちらを見ただけですぐに視線を元に戻した。

ドクオは部屋の隅の会談の前で振り返っていた。

('A`)「反応ないから声かけなくてもいいと思うんだけどよ」

( ^ω^)「挨拶は大事だお」

ξ゚⊿゚)ξ「挨拶は良いけど声が大きすぎるのよ」

( ^ω^)「おっおっお。
驚いたのならごめんだお」

まったく悪いと思っていないブーンの言葉に苦笑いを浮かべる四人。

階段を上がると短い廊下の先にドアがあった。

('A`)「二階全部を使ってるんだ。
風呂はないけど、それ以外は大体そろってる」

(´・ω・`)「最終日にまた連続で借りることが出来るの?」

('A`)「ん?ああ。大丈夫だ。
ただ一度借りるとキャンセルや、
途中で泊まらなくなっても返金はできないから、
そこら辺は注意して借りた方がよいな。
今回はあとで全員で来ることが決まってたから、
一週間分キープしたけど」

.

628 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:40:54 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「了解。
ここは宿屋じゃないから割引もないだろうしね」

('A`)「ああ。
一回クエストをクリアした後に借りたけど、
金額が結構ぎりぎりだった」

(´・ω・`)「あとで金額教えて」

('A`)「お、お、おお」

ξ゚⊿゚)ξ「(忘れてるわね)」

( ^ω^)「(こりゃ忘れてるおね)」

川 ゚ -゚)「(覚えていないな)」

(´・ω・`)「(忘れたなら言ってくれればいいのに)」

('A`;)「お、覚えてるぞちゃんと。
う、うん。ちょっと待ってくれ」

四人の視線にうろたえながらも、
扉を開いて中に四人を促した。





ξ゚⊿゚)ξ「ベッドルームは一つなのね」

川 ゚ -゚)「ベッドは二つあったが」

今日の朝まで泊まっていた宿よりは質素だが、
素朴な雰囲気を持つ部屋を一通りチェックしたツンとクーがソファーに座った。

部屋の隅のキッチンを自分のスペースと決めたショボンに
「とりあえず座ってて」
と言われ、ドクオとブーンもソファーに座っている。

.

629 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:43:18 ID:jPuH2I2s0

川 ゚ -゚)「手伝えることはあるか?」

(´・ω・`)「大丈夫だよ。
ありがとう。
今はお茶だけだからね、
まずは座って待ってて」

川 ゚ -゚)「……うむ」

立ち上がろうと腰を浮かせたクーだったが、
ショボンの言葉に座りなおした。

そのやり取りを複雑そうな表情で見守る三人。

(´・ω・`)「お待たせ」

木のトレイにカップを五つ乗せてやってくるショボン。

トレイをテーブルの上に乗せる。
席を譲ろうと立ち上がったブーンを制して、
部屋の隅にある小さな丸い木の椅子に近寄るショボン。

(´・ω・`)「どうぞ」

四人がトレイの上のカップを手に取ると、
ショボンは木の椅子をテーブルの横に置いてそれに座った。

その位置は四人と話すには都合の良い場所で、
リーダーとして会話を進めるにはちょうど良い場所であり、
四人は自分の座った場所を、座り心地の良い椅子をショボンに譲ることが出来なくなった。

(´・ω・`)「さて、とりあえずこれからだけど、
まずは先頭の訓練だね。
できれば二人がやったクエストもやってみたいけど、
それは僕らでも大丈夫かな?」

.

630 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:45:55 ID:jPuH2I2s0

('A`)「レベル的には問題ないと思う。
今日の戦いぶりを見ても、
よほどのへまをしなければ問題ないと思う。
ただ、おれとブーンがクリアしてるからクエストを制覇するって意味では
やる意味はないんじゃないか?」

(´・ω・`)「他のクエストもやりたいから、
それにかかりっきりになるようならまずは他のクエストをするつもりだけど、
戦闘の練習も何か目的があったほうがやりがいがあるだろうからさ」

ξ゚⊿゚)ξ「それもそうね。
報酬がある方が良いかもしれない」

('A`)「現金な奴だな」

ξ゚⊿゚)ξ「うるさい」

川 ゚ -゚)「だが報酬は片手剣なんだよな?
ドクオとブーンは持っているわけだし、
ショボンは武器を変えるつもりか?」

(´・ω・`)「何があるかわからないからね。
予備はあったほうが良いと思うんだ。
それに、そんな強い剣なら欲しがる人も多いだろうから」

('A`;)「おいおい、商売をするつもりか?」

(´・ω・`)「お金はあるにこしたことはないよ。
もちろんそのために命を懸けるのは馬鹿げてるから、
ほどほどにやるだけだけどね。
それに、できれば色々なパターンを知りたいから」

( ^ω^)「お?何のパターンだお?」

(´・ω・`)「クエストのパターン、
会話のパターン、
状況のパターン。
選択肢いかんによってはレアなパターンに進むことがあるってわかったからね」

.

631 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:48:15 ID:jPuH2I2s0

にっこりとほほ笑んだショボン。

はじまりの街でのショボンと女主人の会話を思い出し、
四人はこわばった笑顔でその微笑みに返した。

川;゚ -゚)「では、今から行くか?」

(´・ω・`)「……夕方まであと二時間ちょっとくらい。
本格的な戦闘練習は明日からにして、
とりあえず今日は受けれるクエストを全部受けてくるくらいにしようか。
そうすれば村もひと回りできるだろうし」

視界の隅のデジタル時計を確認しつつ、
ショボンが提案する。

(´・ω・`)「どうかな?」

ξ゚⊿゚)ξ「いいんじゃない」

( ^ω^)「賛成だお」

('A`)「おれもいいと思う」

川 ゚ -゚)「私も異論はない……。
だが、いいのか?」

三人が賛成する中、
ひとりクーは口ごもり、
逆にショボンに問いかけた。

(´・ω・`)「どうかした?」

川 ゚ -゚)「その、シャキンさんに会わなくて」

クーの言葉に目を見張る三人。
ショボンも瞬間的に表情がこわばったが、
すぐに穏やかな笑みを取り戻した

(´・ω・`)「ああ、うん。そう……だね」

.

632 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:50:15 ID:jPuH2I2s0

表情は先ほどまでと変わらないが、
少しだけ低くなった声で呟き、
ドクオに視線を向けた。

('A`)「……さっきメッセージは入れたけど、
今少し先まで狩りに出ているらしい。
暗くなる前には戻る予定だっていうから、
それこそ二時間くらいあとじゃないかな」

川 ゚ -゚)「そうか……」

(´・ω・`)「ありがと。ドクオ」

('A`)「いや別に……。
あ、で、例の奴らの方なんだけどさ」

ξ゚⊿゚)ξ「βテスターの?」

('A`)「そうそう。
そいつらは一時間くらいで戻ってくるっていうから、
戻ってきたら会ってやってくれないか?」

(´・ω・`)「うん。わかった。
会う時は僕とドクオだけで」

ξ゚⊿゚)ξ「あら、私達も行くわよ」

川 ゚ -゚)「ああ。行かせてくれ」

(´・ω・`)「え?うん……」

ξ゚⊿゚)ξ「会わせたくないの?」

(´・ω・`)「いや、話がどんな内容かわからないからなんとなくさ。
どちらにせよドクオとブーンの顔は知られていて、
これからこの村で会うこともあるだろうから、
仲間ってのはすぐ分かるから顔を隠す必要はないんだけど」

ξ゚⊿゚)ξ「話は私達も聞きたいから」

.

633 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 19:52:02 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「そうだね。
相手は女性みたいだし、
二人にもいてもらった方が良いかな」

( ^ω^)「女の子のプレイヤーどうし、
仲良くなれるといいおね」

ブーンの言葉を聞き、
ツンは軽くにらみ、
クーは呆れた顔をし、
ドクオは聞こえていないふりをして、
ショボンは苦笑いを浮かべた。




小さな村であるため設備を確認しつつ一周回るのにうはそれほど時間はかからなかった。
クエスト数もそれほど多くはなく、
全部のクエストを受注して地図に印をつけたころ、
やっと一時間が経過した。

川 ゚ -゚)「これで全部か?」

('A`)「そのはずだけど」

ショボンの顔を見るドクオ。

(´・ω・`)「うん。書庫の本に書いてあった数とは一致したよ。
ただページに空きがあったから、
隠しとかクエストをクリアすると出てくるような継続の物もあるかもね」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなのもあるんだ」

( ^ω^)「狼を退治したら、その群れに長も倒してくれとか。
卵と小麦粉を届けたら、その卵と小麦粉で作ったケーキを他の人に届けてくれとか」

ξ゚⊿゚)ξ「自分で届けなさいよ」

.

634 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:05:32 ID:jPuH2I2s0

(;^ω^)「報酬がもらえなくなっちゃうお」

ξ゚⊿゚)ξ「楽な仕事でお金を稼ぐってことね」

川;゚ -゚)「ツン……」

('A`)「相変わらず見も蓋もないことをしれっと」

(´・ω・`)「間違ってもないけどね。
簡単なクエストを重ねてお金を稼いで装備を強くして、
できるだけ優位な状態で戦いに出るようにするわけだし」

川 ゚ -゚)「それはそうだが」

(´・ω・`)「受注回数制限があるクエストもあるみたいだけど、
ここやはじまりの街のお使い系は時間をおけば何度も出来るみたいだし、
初期装備の僕達にはいいクエストだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……何度も同じお使い……。いいかげ……」

呟きを耳にしてツンを見るブーンとクー。
その顔を見て、ツンは続きを口にするのはやめた。

('A`)「さて、そろそろ来る頃かな」

村の入り口の近く。
小さな広場にやってきた五人。

周囲を見回すドクオ。

( ^ω^)「メッセージは来てないのかお?」

('A`)「さっききて、もうすぐ村に着くって話だったんだけどよ」

ドクオが村の出入り口に視線を向け、
自然と四人もそちらを見た。

ξ゚⊿゚)ξ「女一人に男二人の三人組なのよね?」

.

635 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:07:26 ID:jPuH2I2s0

川 ゚ -゚)「……いないな」

(´・ω・`)「こないね」

( ^ω^)「影もないお」

('A`;)「お、おれはただあいつがそう言ってきたってことを告げただけで」

日は傾き始めており、五人の影は少しだけ長くなっていた。

四人の視線に耐え切れなくなったドクオが村の外をよく見ようと移動しようとした時、
背中から、つまり村の中心部の方から声が聞こえた。



「アルルッカバーくん!」



勢いよく振り返るドクオ。
つられて振り返った四人。

五人の視界に映る三人の人影。

背の高い男と、低い男。
二人の男に挟まれるように、
小柄な女性、いや少女が手を振っている。

('A`)「美影!おれはドクオだ!」

「なら私の事もちゃんと今の名前で呼んでよね。
ドクオくん!」

光の加減で顔が見えないが、
その声や口調から、笑顔でいることがうかがえた。

女の子らしい小走りで五人に近づく少女。
そして慌てて男二人がそのあとに続いて駆けて近寄った。

そして少女は迷わずショボンの前に立ち、
にっこりとほほ笑んだ。

.

636 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:11:04 ID:jPuH2I2s0




ミセ*゚ー゚)リ「こんにちは。ショボンさん。
元『MIKAGE(美影)』、今は『miSeri(ミセリ)』です。
よろしくね」




.

637 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:12:39 ID:jPuH2I2s0

握手を求めて右手を出したミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「……あれ?どこかで……」

(´・ω・`)「こ、こちらこそ」

その手を握ろうと右手を出そうとしたショボンの前に立ちふさがる二人の男。

( ∵)「おれがビコーズだ」

小柄な男がショボンの手を掴んで握手をし、

( ∴)「おれがゼアフォーだ」

大柄な男が横からショボンを上から見下ろす。

(´・ω・`)「こんにちは」

その二人の行動から逆に冷静さを取り戻したショボンが笑顔で握手をする。

男二人の背中にショボンとの対面を遮られたミセリは一瞬眉間に皺を寄せたが、
すぐに可愛らしく両頬を膨らませた。

ミセ*゚ー゚)リ「二人とも、ちゃんと挨拶させてくれなきゃだめだよ」

( ∵)「姫!なぜこんなやつらと!」

( ∴)「われら二人では姫を守るのに力不足とでもおっしゃるのですか!?」

少しだけ怒ったような口調に、
慌てて振り返る二人。
そして片膝をついてミセリの前に傅くと、
悲痛な声を上げた。

( ∵)「姫は我らが命に代えてお守りいたします!」

( ∴)「このような下賤の者達と親しくする必要などございません!」

声を荒げる二人を見て顔をこわばらせる五人。

.

638 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:14:15 ID:jPuH2I2s0

ミセリはビコーズとゼアフォーに微笑みを向けた。

ミセ*゚ー゚)リ「二人ともいつもありがとう。
二人のおかげで毎日が楽しいよ」

( ∵)「ならば姫!」

( ∴)「姫!」

ミセ*゚ー゚)リ「でもね、三人でもっと楽しくなるには他の人と仲良くなることも必要だと思うんだ。
まだ忍者になる方法も掴めてないし、
三人だけじゃ情報を集めるのも大変でしょ」

( ∵)「それは……」

( ∴)「ですが姫!」

ミセリが二人の前にしゃがみ、
二人の膝の上にのせている手をとる。

( ∵)「姫」

( ∴)「姫」

ミセ*゚ー゚)リ「二人ともありがとう。
この世界を生き抜くために、
頑張ろうね」

優しく微笑むミセリ。

その笑みは聖母の様で、
ビコーズとゼアフォーの心に暖かく染み渡った。

その一部始終を見ていた五人。
そのうちの四人はあからさまに唖然とた表情をしつつ、
程度は違えど心の中で『茶番劇』と同じような意味の言葉を思っていた。

しかし一人、ショボンだけはミセリを鋭い瞳で、
そしてどこか慈しむような優しさをもった光を帯びて、
見つめていた。

.

639 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:16:25 ID:jPuH2I2s0

( ∵)「わかりました。姫」

( ∴)「ですが、くれぐれも相手を信用しすぎぬようご注意ください!」

勢いよく立ち上がり、
ミセリの後ろに移動する二人。

二人の頬が赤く染まっていたが、
それを言葉にして指摘できる猛者は今ここにはいなかった。

ミセ*゚ー゚)リ「分かってくれてうれしいよ。
ありがとう。二人とも」

ゆっくりと立ち上がり、
二人に振り返るミセリ。

小首をかしげながら微笑みを向けると、
二人の顔はさらに赤くなった。

ξ゚⊿゚)ξ「……うざ」

川 ゚ -゚)「良くも悪くも『女』だな」

(;^ω^)「ちょっ。二人とも」

('A`)「でも、ああいうのが『女子力』って言うんじゃないか?」

ξ゚⊿゚)ξ「……むかつく」

( ^ω^)「まあまあ」

川 ゚ -゚)「ドクオは騙されないようにな」

('A`;)「そこまで女慣れしてないわけじゃないぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「慣れてないから近寄らないだけでしょ」

('A`;)「うるせー」

(;^ω^)「三人とも聞こえちゃうお」

.

640 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:21:45 ID:jPuH2I2s0

五人だけに聞こえるように小さな声で呟いたツンとクー。
慌てるブーンとここぞとばかりに突っ込みを入れるドクオ。

ミセ*゚ー゚)リ「では改めて。
よろしくお願いします。
ショボンさん」

(´・ω・`)「こんにちは。
ミセリさん。
こちらによろしく出来る事があるかは分かりませんが、
まずはお話だけでも」

ミセ*゚ー゚)リ「お話だけでもさせていただけるなら光栄です」

お互いに柔らかく微笑んで挨拶し、
握手をする二人。

川 ゚ -゚)

ξ゚⊿゚)ξ

クーとツンはそれを少しだけ複雑な気分で見ていた。
しかし深い付き合いの二人は違う感想を抱いたようだった。

('A`)「しょうがないけど、警戒心バリバリだな。
ショボンの奴」

(;^ω^)「おー。
女の子相手にあれは……」

('A`)「仕方ないけどな。
充分怪しいし」

最後の声が聞こえていたのか、
ミセリがショボンと握手をしたままドクオを見る。

ミセ*゚ー゚)リ「ひどいなードクオくん。怪しいだなんて」

('A`)「実際怪しいだろうが。
っていうか、どこから聞こえてた?」

.

641 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:24:17 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「最後の『じゅうぶん怪しい』ってのだけだよ」

ショボンに向かってお辞儀をしながら握っていた手をほどくと、
ドクオの前に移動する。

身長はツンと同じくらいでドクオとそれほど変わらないのだが、
腰に手を当ててすこし前のめりになり、
上目遣いにドクオの顔を覗き込むミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「私のどこが怪しいのか、
聞かせてほしいな?
ドクオくん」

('A`*)「べ、別にどこが怪しいとかそういうことじゃなくてだな」

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあどうして怪しいとか言うのー?」

('A`*)「そ、それはその、言葉のあやというかその」

ミセ*゚ー゚)リ「えー。ドクオくんって確証もないのにそういうこと言っちゃう人なんだー」

('A`*)「な、なに言ってんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「きもっ」

川 ゚ -゚)「ひどいなこれは」

('A`)「!」

ドクオに聞かせるようにツンとクーは言葉を吐き捨てる。

それにより冷静さを取り戻したドクオは数歩後ずさり、
頭を振った。

('A`)「と、とにかく、ショボンに話があるんだろ?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。そうだよ」

('A`)「ならショボンと話せよ」

.

642 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:28:51 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「ドクオくんが変なこと言うから問い詰めただけなのに」

('A`)「さっさと話せ」

ミセ*゚ー゚)リ「はーい」

ドクオに微笑みかけ、その斜め後ろにいたツンとクーにも笑顔で会釈し、
最後にブーンに微笑んでからショボンに向き直すミセリ。

ξ゚⊿゚)ξイイカゲンニシロヨアノオンナ

川 ゚ -゚)「ツン、顔が怖い」

(*^ω^)「おっおっお。
どうしたんだお?ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「にやけてんじゃないわよ」

(;^ω^)「に、にやけてなんかいないお」

ミセ*゚ー゚)リ「ショボンさん、
少し込み入ったお話になるかもしれないんですが、
お時間は大丈夫ですか?」

(´・ω・`)「時間は構いませんが、
それは今ここで話せるような内容ですか?」

少しだけ周囲を気にするような仕草をするショボン。
ミセリもそれに倣って視線だけで周囲をうかがう。

日の傾きが顕著になってきた広場には、
日中の狩りから帰ってきたプレイヤーがちらほらと通り過ぎていた。

女性プレイヤーは珍しく、
更に三人もいるため多少人目を引いているのが分かる。

ミセ*゚ー゚)リ「そう……ですね。
出来れば他の人に聞かれない場所の方が良いかと思います。
ただこの村の宿屋の部屋は広くありませんから、
適当な空き家があればいいんですが」

.

643 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:30:29 ID:jPuH2I2s0

四人の頭には今自分たちが確保している農場の二階が浮かんだが、
ショボンが何も言わない為、口を開かなかった。

(´・ω・`)「それでは、まずは話す場所を確保するということで、
今日は一度解散」

「ミセリ!ビコーズ!ゼアフォー!」

ショボンが会話を終わらせようとした瞬間、
ショボンの後ろからミセリたち三人を呼ぶ声が聞こえた!

その声を聞き、更に自分たちに向かって手を振る男を見て露骨にいやそうな顔をする三人。

ドクオとブーンもその声の主を見る。
すると二人の顔には笑みが浮かんだ。

ツンとクーが五人の表情の違いに怪訝な顔をしつつ声のした方を見ると、
手を振りながら走ってくる一人の男と、
その後ろに二人の男が見えた。

川 ゚ -゚)「え?」

ξ゚⊿゚)ξ「あれ?」

ミセ*゚ー゚)リ「何でこんな時に……ん?」

走ってくる男の顔を見て、同じタイミングで気付く三人。

川 ゚ -゚)「……似てるな」

ξ゚⊿゚)ξ「似てるわね」

ミセ*゚ー゚)リ「そうか、さっきどっかで見たような顔だと思ったけど」

駆け寄ってきた男が、
ショボンに後ろから抱き着いた。

川 ゚ -゚)「うわっ」

.

644 名も無きAAのようです :2015/12/31(木) 20:32:05 ID:JWTXHizw0
追いついた支援

645 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:33:56 ID:jPuH2I2s0

ξ゚⊿゚)ξ「おっ」

ミセ**゚ー゚)リ「あらっ」

(`・ω・´)「ショボン!
元気そうでなによりだ!
会いたかったぞ!」

(´ ω `)「にい……さん……」

シャキンの声を聞いてから少しうつむき気味に動くことが出来なかったショボンが、
シャキンにだけ聞こえる小さな声で呟いた。





.

646 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:37:45 ID:jPuH2I2s0

ドクオたち五人が借りている農場の二階の部屋に、
シャキンたち三人とミセリたち三人が入り、
合計十一人が集まっていた。

二人掛けソファーの片方にはミセリとドクオが座り、
ミセリの後ろにはビコーズとゼアフォーがSPのように威圧的に立っている。
ドクオがソファーの隅に座っているように見えるのは、
見間違いではないだろう。

テーブルをはさんで反対側のソファーにはミルナとデミタスが座っており、
ひじ掛けにシャキンが座っている。

そしてシャキンの座るひじ掛けの横に置かれた木の椅子に、
ショボンが座っていた。

互いに譲り譲られながらそれぞれがその場所に収まったのちに、
それぞれのパーティーを代表してショボン、シャキン、ミセリは、
自分たちの現状とあの日からの行動を話し合った。

もちろんショボンたち五人が『はじまりの街』で手にした恩恵は内緒のままだったが。

そして話している間、シャキンの手はずっとショボンの頭を撫でていた。

ショボンの後ろ側に、ブーンとツンとクーが壁沿いに立っているが、
その光景を見て三者三様の表情を見せている。

(´・ω・`)「とにかく、状況を整理しよう」

最初のうちは頭を撫でる手を邪険にあしらっていたが、
今は諦めたのかそのままにいしてた。

( ゚д゚ )「(整理?)」

(´・_ゝ・`)「(この状況を?)」

(´・ω・`)「兄……シャキン達三人は」

(`・ω・´)「なんだよ、『兄さん』で良いんだぞ?」

.

647 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:39:49 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「うるさい。
パーティー三人は、
始まりの街でミセリさん達三人がホルンカに行く事を知って、
接触したと。
そこで意気投合して」

ミセ*゚ー゚)リ「してないよー」

( ∵)「してない」

( ∴)「するわけがない」

(`・ω・´)「なんだよ、仲良く六人でこの村にやってきたっていうのに」

( ゚д゚ )「すまんな。三人共」

(´・_ゝ・`)「助かったよ」

ミセ*゚ー゚)リ「ミルナさんとデミタスさんは良いんですよ」

(`・ω・´)「え?おれはダメなの?」

( ∵)「あたりまえ」

( ∴)「改めて聞くことのできるその性格が羨ましい」

(*`・ω・´)「褒められると照れるな」

(#∵)

(#∴)

(´・ω・`)「付いてきた三人を無下に扱うのも憚られ、
安全に連れてきていただいたんですね。
ありがとうございます」

ミセ*゚ー゚)リ「いいえー。
お二人はご兄弟なんですか?」

.

648 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:41:46 ID:jPuH2I2s0

(*`・ω・´)「血よりも熱く堅い絆で結ばれた」

(´・ω・`)「他人です」

(`・ω・´)「二人……」

(´・ω・`)「他人の空似です」

(`・ω・´)「……です」

ミセ;*゚ー゚)リ「あ、た、他人なんですね」

(´・ω・`)「分かっていただけて幸いです」

(`・ω・´)「です……」

ミセ;*゚ー゚)リ「あはははは」

(;゚д゚ )「(さっきまで『兄さん』と呼んでいたその口で)」

(;´・_ゝ・`)「(何の躊躇もなく『他人』と言い切れるとは)」

(´・ω・`)「話を戻します」

ミセ;*゚ー゚)リ「はい」

(`・ω・´)「はーい」

(´・ω・`)「その過程でシャキンたち三人は、
ミセリさん、ビコーズさん、ゼアフォーさんの三人が、
βテスターであったことを知った」

(`・ω・´)「特に隠してはいなかったな」

(´・ω・`)「今まではそれでいいと思いますが……」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。
ショボン君の言う通りだと思う」

.

649 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:48:06 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「人の負の感情には、
警戒するに越したことはないです」

ミセ*゚ー゚)リ「私もそう思う。
これから気を付けるよ」

( ∵)「姫を危険に晒すわけにはいかない」

( ∴)「降りかかる火の粉は蹴散らすがな」

ミセ*゚ー゚)リ「二人とも、ありがと。
でも、二人もちゃんと気を付けてね」

( ∵)「はっ!」

( ∴)「かしこまりました」

(´・ω・`)「ミセリさん達とシャキンたちはホルンカに到着後別行動。
分かれた後にそれぞれドクオとブーンに出会い、
僕たちもホルンカに来る予定なのを知ったわけですね」

ミセ*゚ー゚)リ「もともとアルルっじゃない、
ドクオくんには連絡するつもりだったから。
連絡したらもうホルンカにいて、
更にアニールブレードのクエストまでクリアしてたなんてびっくりしたよ」

( ∴)「しかも二人分とは」

( ∵)「運がいいな」

('A`)「ああ。ほんとに運が良かった。
というか、多分おれ達が行く前に誰かがクリアしてたんだと思う。
一回目はかなり早く目当ての敵が出てきたから」

ξ゚⊿゚)ξ「どういうことよ」

ドクオの言葉に頷く元テスターの三人。
しかしそれ以外の七人は意味が通じなかったため疑問に思った瞬間、
それをツンが口にした。

.

650 名も無きAAのようです :2015/12/31(木) 20:55:20 ID:F6m92yJ.0
大晦日に投下とか昔のブーン系思い出すぜ しかもこの作品とか発狂するレベル


しえんしえん

651 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 20:59:25 ID:jPuH2I2s0

('A`)「ああ、えっと……」

ミセ*゚ー゚)リ「この世界では、
基本的にそのエリアに出現する敵の量と、
時間で出てくる敵の量は決まっています」

あたまを掻いて言葉に詰まったドクオを見て、
ミセリが助け舟を出した。

ミセ*゚ー゚)リ「アニールブレードのクエストでは、
少女の病気を治すのに必要な実を取に行くんですが、
それはある敵を倒さないとドロップしません。
あ、クエストのネタバレになるけど良いですよね?」

(´・ω・`)「はい」

(`・ω・´)「ああ。大丈夫だ」

ミセ*゚ー゚)リ「では続けますね。
敵は植物系の怪物で、名前は『リトルネペント』。
見た目はそうですね……。
大きさは人の背丈より高いです。
名前に『リトル』ってあるけど大きいです。
移動や攻撃は根や葉を動かすことでします。
基本的にはそれほど素早くはありません。
はじまりの街の周辺やホルンカに来るまでの道で出会う猪型や狼型と違って、
かなり怪物、モンスターの色合いが強くなります。
βの時は、そういった見た目で腰が引けてまともに戦えないでいた
プレイヤーもかなりの数いたみたいなので、
注意した方が良いです」

壁際に立つツンとクーを見てにっこりと微笑むミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「先ほども言いましたが、
クエストクリアに必要なアイテムは『リトルネペント』を倒さないとドロップしません。
しかもどの『リトルネペント』でも良いわけでもなく、
頭に花を咲かせた『リトルネペント』を倒さないと、
ドロップしません」

.

652 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:02:43 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「頭に花がついた怪物……」

ミセ*゚ー゚)リ「はい。
そして花付きのリトルネペントはあまり出てこないため、
出すためには目の前のリトルネペントを倒す必要があります」

川 ゚ -゚)「?」

ξ゚⊿゚)ξ「?」

( ^ω^)「?」

ミセ*゚ー゚)リ「例えばエリアに出てくる数が5匹であり、
現時点で花付きが居ないのならば、
その5匹を倒して新しくリトルネペントをポップさせなければ、
花付きを見つけること、倒すことが出来なくなるわけです」

川 ゚ -゚)「なるほど。そういうことか」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、その5匹を倒したたら花付きが出てくるってわけでもないんでしょ」

ミセ*゚ー゚)リ「その通りです。
だからその場合はまたその5匹を倒して、
更に新しくポップさせます」

川 ゚ -゚)「出てくるまで繰り返すってことか」

ミセ*゚ー゚)リ「はい」

( ^ω^)「おー。なるほどだお」

ξ゚⊿゚)ξ「って、なんでクエストクリアしたあんたが説明聞いて納得してるのよ」

(;^ω^)「あの時は戦うことと強くなることに必死で、
そんなことを気にしていられなかったんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「まったく」

.

653 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:06:38 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「花付きが出てくる確率は低いので、
ドクオくん達が行ってすぐ出会えたってことは、
誰かがその場所で先に倒しまくっていた可能性が高いってことです。
もちろん運が良かっただけかもしれませんけどね」

これで終わりとばかりにドクオに向かって微笑むミセリ。

('A`)「と、言うわけだ」

ドクオは笑顔は見ないようにして、
ミセリの言葉を引き継いだ。

(´・ω・`)「なるほどね。
その花付きが出るのはどれくらいの確率なのかな」

('A`)「出現率が固定か変動かって疑問もある」

(´・ω・`)「変動するなら厄介だね。
あまりにも出ないと心が折れそうだ」

(`・ω・´)「折れかかったぞ」

( ゚д゚ )「出なかったな」

(´・_ゝ・`)「何度、一回やめようと言ったか」

ミセ*゚ー゚)リ「私たちの時も出なかったですよ。ねっ」

( ∵)「思い出させないでくれ」

( ∴)「私の剣の為に、ありがとうございました。
この御恩は必ずやどこかで」

ミセ*゚ー゚)リ「はいはい」

心底疲れたように話すシャキン達三人。
それとは違ってどこか楽しそうに話すミセリ達三人。

少しだけ笑みが漏れ、
全員の表情が穏やかになる。

.

654 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:11:17 ID:jPuH2I2s0

( ゚д゚ )「ゲームなんだから裏ワザとかあってもよさそうだが」

(´・_ゝ・`)「そうだな。ワープポイントとかアイテムとか」

('A`)「裏ワザ……」

ミセ*゚ー゚)リ「ありますよ。お勧めはしませんけど」

ミルナとデミタスの雑談にドクオが表情を曇らせると、
ミセリはほがらかにほほ笑んだ。

( ゚д゚ )「あるのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「はい」

(`・ω・´)「お勧めしないっていうのは?」

ミセ*゚ー゚)リ「リトルネペントには、ノーマルと花付きの他に、
頭に実を付けた『実付き』というのもいるんです」

(´・ω・`)「実付き……」

(´・_ゝ・`)「そいつが?」

ミセ*゚ー゚)リ「強さは普通と一緒なんですけど、
その身を割ると臭いを振りまいて、
仲間のリトルネペントを呼び寄せるんですよ」

ξ゚⊿゚)ξ「へー」

川 ゚ -゚)「つまり、数多くの敵を呼び寄せることが出来る。
そうすればその中に花付きがいる可能性が高いってことか」

ミセ*゚ー゚)リ「そういうことです」

(;^ω^)「おー。それってドクオが言ってた……」

('A`)「ああ。そうだ」

ブーンとドクオが表情を曇らせる。

.

655 名も無きAAのようです :2015/12/31(木) 21:11:27 ID:F6m92yJ.0
ミセリはバーボンハウスで素知らぬ顔で浮かれてたと思うと感慨深いな


支援しえん

656 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:13:09 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「ただ良いことばかりじゃありません。
出てくるのは敵ですから、
私たちに襲い掛かってきます」

( ゚д゚ )!

(´・_ゝ・`)!

ξ゚⊿゚)ξ!

川 ゚ -゚)!

(`・ω・´)

(´・ω・`)

ミセ*゚ー゚)リ「この臭いで寄ってきたリトルネペントは、
エリア内の最大量や時間制限を飛び越えてやってきますし、
興奮しているのか動きも素早くなります。
つまり普段よりも手強い敵に囲まれてしまうわけです。
そして絶対花付きが出る確証もありません。
だからβの頃ならともかく、今やるのはお勧めしません」

( ゚д゚ )「に、逃げることはできないのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「できますよ。
ただそれなりに鍛えてからでないと難しいと思うので、
今のレベルでは……」

あいまいな笑顔で言葉を濁すミセリ。
そして、少しだけ声を小さくして独り言のように呟いた。

ミセ*゚ー゚)リ「そうか……。
もしかするとドクオくんが行く前に、
誰かが実付きを倒していたのかもしれないのか。
それで出現数が増えて確率的に遭遇できたのかも」

.

657 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:15:20 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「ゼアフォーさんもアニールブレードは持たれているんですよね?」

( ∴)「ああ。昨日一日がかりだった」

(`・ω・´)「おれも持ってるぞ!」

(´・_ゝ・`)「おれらも一日とちょっとくらいだったか」

( ゚д゚ )「暗くなりかけてたな」

( ∴)「それでも一日で出たならば、まだ良い方だと思う。
今は一日以上かかることもあるみたいだ」

(`・ω・´)「日頃の行いが良いからな!」

(´・ω・`)「そして僕たちもこの村に来て、
あの広場で落ち合ったというわけですね」

(*`・ω・´)「なんだよー。
反応なしかよー。
可愛い奴だなーほんとに」

(; ゚д゚ )「(うわ……)」
(;´・_ゝ・`)「(うわ……)」
ξ;゚⊿゚)ξ「(うわ……)」
川;゚ -゚)「(うわ……)」
ミセ;*゚ー゚)リ「(うわ……)」
(;∵)「(うわ……)」
(;∴)「(うわ……)」

さらに激しくショボンの頭を撫でるシャキンに、
同じ思いを抱く七人。

しかし二人、ドクオとブーンは違う思いを抱いていた。

(;^ω^)「(お?シャキンさん?)」

.

658 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:19:21 ID:jPuH2I2s0

('A`;)「(シャキンさんとショボンの関係は分かってるつもりだったけど、
ここまで……?)」

(;^ω^)「(ど、どくお……はどう思ってるのかお)」

('A`;)「(ブーンも違和感感じてるよな?多分)」

思わずお互いの顔を見る二人。

シャキンは視界の隅にるドクオの表情を見て、
心の中で柔らかく笑った。

(´・ω・`)「さてミセリさん」

ミセ;*゚ー゚)リ「は、はい!」

(´・ω・`)「何かお話があるとのことでしたが、
どういったご用件でしょうか」

ミセ;*゚―゚)リ「え?あ、は、う、うん」

当事者であるはずのショボンに全く平然と質問され、
すぐに返事ができないミセリ。

大きく深呼吸するミセリを、
ショボンとシャキンはそうとは見えないように観察していた。

ミセ*゚ー゚)リ「相談……なんだけど、
私達とパーティーを組まない?」

( ∵)「姫!」

( ∴)「姫!?」

身を乗り出してソファーに座るミセリの顔を覗き込む二人。
ミセリはそんな二人に可愛らしく微笑むと、
少しだけ困ったような顔をして話しかける。

ミセ*゚ー゚)リ「二人とも落ち着いて。
今からちゃんと話すから」

.

659 名も無きAAのようです :2015/12/31(木) 21:21:11 ID:F6m92yJ.0
しえしえ

660 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:21:20 ID:jPuH2I2s0

文字にすれば語尾にハートや音符が付きそうな声と話し方。
それは二人の感情を削ぐことに成功した。

( ∵)「……分かった」

( ∴)「うむ……」

ミセ*゚ー゚)リ「えっと……。
正直に言うと、
最初はドクオくんだけを誘うつもりだったの」

二人がまた背後で仁王立ちに戻ったのを感じてから、
ミセリは話を戻して続けた。

(´・ω・`)「僕達のパーティーから引き抜くつもりだったと」

ミセ*゚ー゚)リ「言葉が悪いけど、
結果的にはそうなるのかな」

ショボンに微笑みかけるミセリ。

ショボンは視線だけで話の続きを促した。

ミセ*゚ー゚)リ「…… ……。
私達もβテスターでこの世界の事は分かってるつもりだけど、
ドクオくんの知識はそれを超えると思う。
それに戦闘能力も高いし、
効率の良いレベルの上げ方やスキル設定なんかも、
頼りになるって思ったから」

隣に座るドクオに微笑むミセリ。

ドクオは逆側を向いて見ないふりをした。

.

661 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:23:32 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「だから最初はドクオくんにだけ話すつもりだった。
あの日はさすがに動けなくて、
次の日のお昼前くらいにやっと冷静になれて、
それでフレンド登録してあったことを思い出して連絡したんだけど、
正直驚いたよ。
もうホルンカにいるっていうんだもん。
三人で話したらアニールブレードのクエストの事も思い出したから、
早速こっちに来てドクオくんに会っていろいろ話を聞いたってわけ。
向こうで準備しているときに変な人に付いてこられちゃったけどね」

(`・ω・´)「なんだ。おれ達に会う前に何かあったのか?」

( ゚д゚ )「おれ達が『変な人』なんだと思うぞ」

(`・ω・´)「え!?」

(´・_ゝ・`)「素で驚けるポジティブさが羨ましいよ。
って、褒めてはないからな」

(`・ω・´)「なんだ」

ミセ;*゚ー゚)リ「ははは」

(´・ω・`)「それで、なぜ引き抜きから僕達とのパーティーに変わったんですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「え?あ、うん。
ショボンくん、君がいるからだよ」

(´・ω・`)「僕ですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「全員気になるけど、
特にショボンくんが気になるかな」

川 ゚ -゚)

後ろでクーのこめかみがひくひくと動いたが、
それに気付いたのは隣に立つツンだけだった。

.

662 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:26:54 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「あの日の当日に冷静さを取り戻して、
自分たちにとって最善の道を選ぶ冷静さは、
賞賛に値すると思うけど?」

(´・ω・`)

ミセ*゚ー゚)リ「それにブーンくんも強いよね」

壁際に立つブーンに微笑みかけるミセリ。

(*^ω^)「おっ?」

ξ#゚⊿゚)ξ

(;^ω^)「おっ。そ、そんなことないお」

ツンのこめかみが動いて眉間に皺が寄ったのは、
ほぼ全員が気付いた。

ミセ*゚ー゚)リ「強いよー。
もうこの近辺の敵なら一人で倒せるでしょ?」

( ^ω^)「それは多分……」

ミセ*゚ー゚)リ「ドクオくんの指導があったとはいえ、
この短期間にそこまで強くなれてるんだから、
この世界で戦うセンスもあるんだと思うよ」

(*^ω^)「おー」

ξ#゚⊿゚)ξ

(;^ω^)「おー」

横を気にしながら喜びつつ冷や汗を流しているブーン。

そこにいた三人以外にも二人の関係性は一目瞭然といってもよかった。

ミセ*゚ー゚)リ「それに、女の子が二人もいたし」

.

663 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:39:39 ID:jPuH2I2s0

ξ#゚⊿゚)ξ「?」

川 ゚ -゚)「?」

ブーンから視線を外し、
ツンとクーを見るミセリ。

それに対し、
ツンは不快感をあからさまに表して、
クーは不快感を隠しているがそれでも少し不審げに、
自分たちを見るミセリの顔を見た。

ミセ*゚ー゚)リ「最初会った時は女の子だったけど、
ゲームの中では性別を自分で決められるから。
本当に女の子かわからないからさ。
さっき広場で見た時に実はちょっと驚いたの」

にっこりと微笑むミセリ。
その微笑みは今までドクオやショボン、
そしてブーンに見せていた笑顔と同じで、
女同士であるけれど少し胸がときめいた。

ミセ*゚ー゚)リ「そのうえ、ここまでやってきた」

ξ゚⊿゚)ξ?

川 ゚ -゚)?

少しだけ寂しそうに呟いたミセリ。
ツンの眉間のしわは取れ、
クーの瞳の剣呑さも多少和らいでいる。

ミセ*゚ー゚)リ「多分だけど、
ここに来た女は私が一人目だと思う。
もしかしたらいるかもしれないけど、
見てないから。
多分……ね」

.

664 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:41:36 ID:jPuH2I2s0

('A`)「おれ達も見てないな」

( ^ω^)「見てないお」

ドクオの言葉にうなずくブーン。

ミセ*゚ー゚)リ「きっとプレイヤーの人数自体、
男女比はかなり男の人に傾いていると思う。
それに男女関係なく、
ほとんどの人はまだはじまりの街にいるんだろうしね」

( ゚д゚ )「まあ、そうだろうな」

(´・_ゝ・`)「おれ達だって、
シャキンに出会っていなかったらまだあの街にいたと思う」

ミセ*゚ー゚)リ「今ここにいるのは、
基本元βテスターだと思う。
それは知識云々もそうだけど、
自分の身で怪物と戦うということを知っていないと、
街を出る決心ってなかなかつかないと思うから」

(`・ω・´)「向こうでは、
剣を振って動物を殺したりしないからな」

(´・ω・`)「またそういうことを言う」

(`・ω・´)「はっはっは」

(´・ω・`)「笑ってごまかさない」

ミセ*゚ー゚)リ「でも、二人はいる。
ドクオくんがいて、
ショボンくんがいて、
ブーンくんがいて、
例えまわりに守ってくれる人がいたとしても、
ここまで歩いてきたのは自分だと思うから、
ちょっと……ううん。すごく嬉しい」

.

665 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:43:49 ID:jPuH2I2s0

( ∵)「確かに驚いたな」

( ∴)「ああ。姫以外にも勇敢な女性がいるものだと」

( ∵)「もちろん一番美しく聡明で勇敢で艶やかなのは姫だが」

( ∴)「ビコーズ、それはさすがに二人に悪い。
姫と比べるなど、すっぽんに月を見習えと言っているようなものだ」

( ∵)「それもそうだな」

( ∵)「はっはっは」(∴ )

ξ#゚⊿゚)ξ

川#゚ -゚)

(;^ω^)「ふ、二人とも落ち着いて」

ξ#゚⊿゚)ξ「べーつーにー」

川#゚ -゚)「怒ってなどいない」

ξ#゚⊿゚)ξ「ねっ!」

川#゚ -゚)「うむ」

(;^ω^)「な、ならいいお」

(´・ω・`)「つまり、僕達とパーティーを組むことにより、
自分の陣営を強化しようと思ったということですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「陣営とかそんなのは考えていないよ?
ただ、力を合わせた方が、行動を共にした方が、
この世界で生き残る確率を高くできるんじゃないかなって思っただけ」

.

666 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:47:49 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「そうでしょうか。
ここに来るときにドクオと話しましたが、
この世界でレベルを上げるのはパーティーを組むよりも、
ソロで動いた方が効率がいいと。
ミセリさん達βテスターならそちらを選ぶんじゃないですか?
それこそレベルを上げれば生き残る確率を高くできるのではないかと思いますけど」

ミセ*゚ー゚)リ「レベルだけを考えたらそうかな。
でも、何があるかわからない以上、
ちからを合わせることは大事だと思う。
危険な状態になってしまった時に、フォローしあえるから」

そこで言葉で一呼吸おき、
後ろに立つ二人以外の顔を見回すミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「一つの失敗が命にかかわる、
些細なミスも許されない今のこの世界では」

真剣なミセリの表情に、そこにいたうちの六人は何も言えず、
それぞれに今まであった命の危険や恐怖を思い出していた。

(´・ω・`)「お話は分かりました」

ミセ*゚ー゚)リ「それじゃあパーティーを」

(´・ω・`)「ですが、システム的にパーティーの上限人数は6人のはずです。
同じパーティーを組むのは無理でしょう」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。それは分かってる。だから」

(´・ω・`)「『ギルド』ですね」

ミセ*゚ー゚)リ「そう」

.

667 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:56:07 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「誰がギルドマスターになり、
ギルドを仕切るおつもりですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「それは」

( ∵)「もちろん姫です」

( ∴)「もちろんです」

再び身を乗り出す二人。
今度も両サイドからミセリの顔を覗き込む。

ミセ*゚ー゚)リ「え、二人とも?
別に私はそんなこと」

( ∵)「我らは姫を守りし白と黒の風」

( ∴)「この剣は姫の為に振り、
この命は姫の為にある!」

( ∵)「姫以外の命令を聞くことなどできません!」

( ∴)「パーティーでもギルドでも!
我らに命じることが出来るのは姫のみ!」

( ∵)「我らが従うは姫のみ!」

( ∴)「姫!それをお忘れ無きように!」

ミセ*゚ー゚)リ「えっと……でも、ほら、ね」

( ∵)「姫!」

( ∴)「姫!」

ミセ;*゚ー゚)リ「……はーい」

積極的ではないが肯定したミセリの言葉にとりあえずは納得して姿勢を戻す二人。

.

668 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 21:57:52 ID:jPuH2I2s0

ミセリは少しだけ助けを求めるようにショボンを見た。

(´・ω・`)「決裂、ですね」

ミセ;*゚ー゚)リ「えっ!」

(´・ω・`)「ビコーズさんとゼアフォーさんが
ミセリさんにリーダーになってほしいように、
僕達は僕達で思うところ、
考えることがあります。
現時点でそれが重なることはないでしょう。
ですので……」

ミセ;*゚ー゚)リ「い、いやいやいやいやいや。
ちょっとまってちょっとまって。
結論そんな早く出さなくてもよいと思うんだけど」

(´・ω・`)「でしょうか」

ミセ;*゚ー゚)リ「そうそう。
ほら、まずは一度一緒に狩りとかいってみたりしちゃったりとか」

(´・ω・`)「しかし」

(`・ω・´)「いいな!
やっぱり一度行ってみないとな」

ミセ*゚ー゚)リ「ほらほら、彼もそう言って……」

(`・ω・´)「実は次の街に行く前に行ってみたいところがあってだな」

ミセ;*゚ー゚)リ「って、……いきなり出てきて何言ってくれちゃってんのこの人」

(`・ω・´)「良いだろショボン、みんなで行こうぜ」

(´・ω・`)「……まったく」

ミセ;*゚ー゚)リ「ちょ、二人とも?」

(`・ω・´)「いーこーうーぜー」

.

669 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 22:00:35 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)「しょうがないな」

(`・ω・´)「よし!」

ミセ;*゚ー゚)リ「はあ!?」

(´・ω・`)「あ、でもこっちの戦闘練習が済んでからだよ。
だから早くても明後日、状況によっては更にその後だからね」

(`・ω・´)「分かってる分かってる。
おれ達はそっちも手伝うぞ」

(´・ω・`)「はいはい。ありがとう」

(`・ω・´)「遠慮すんなって。
おれたちの仲で」

(´・ω・`)「はいはい。ありがとう」

ミセ;*゚ー゚)リ「ちょいちょいちょいちょい。
何言っちゃってんのあんたたち」

(´・ω・`)?

(`・ω・´)?

ミセ;*゚ー゚)リ「なに二人してキョトンとした顔しちゃってるかな。
今誘ってたのは、わーたーし。
私。
わかってる?ねえ、わかってる?
わかってるわよね。わかってやってるわよね」

(´・ω・`)?

(`・ω・´)?

ミセ*゚ー゚)リ「だから不思議そうな顔をしてるんじゃないっつーの」

.

670 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 22:02:23 ID:jPuH2I2s0

(´・ω・`)?

(`・ω・´)?

ミセ#*゚ー゚)リ「だーかーら。
似た顔して同じような表情してるんじゃないって言ってるの。
先に誘ったのはこっちだっていうのに
その目の前で別の奴と一緒に行く約束するなっていうの!
大体あんたたち、他人だって言ってたわよね。
だったらその設定をちゃんと貫きなさい!」

立ち上がり、
腰に手を置いてショボンとシャキンを指さすミセリ。

ミセ#*゚ー゚)リ「だいたいあんたたちはねー……」

そして自分を見る自分以外の者、
目の前の二人以外の視線に気付いて動きを止めた。

ミセ;*゚ー゚)リ「え……あ……あれ?」

('A`;)
(;^ω^)
ξ;゚⊿゚)ξ
川;゚ -゚)
(;゚д゚ )
(;´・_ゝ・`)
(;∵)
(;∴)

ミセ*゚ー゚)リ「あれー?
みんなどうしたのかな?」

小首をかしげながら微笑むミセリ。

八人はその笑顔にこわばった笑顔で返す。

.

671 名も無きAAのようです :2015/12/31(木) 22:02:25 ID:F6m92yJ.0
しえんしえん

672 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 22:04:03 ID:jPuH2I2s0

(;∵)「ひ、姫の言う通りだ!」

(;∴)「そ、そうだ!」

(;∵)「そうだそうだ!」

(;∴)「姫が正しい!」

ミセ;*゚ー゚)リ「二人ともありがとう」

(´・ω・`)「ミセリさん」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、は、はい!あ!
な、ななんな、なにかな?
ショボンくん」

(´・ω・`)「さっきまでのが素ってことでいいですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「え、な、何のことかな?
私はいつも私だよ?
へんなの、ショボンくん」

全員に笑顔を振りまいてから可愛らしくソファーに座りなおす。

(´・ω・`)「あと、」

ミセ*゚ー゚)リ「え?まだ何かあるの?」

(´・ω・`)「?いや、先ほどの件ですが」

ミセ*゚ー゚)リ「先ほどのって?」

(´・ω・`)?

ミセ;*゚ー゚)リ?

(`・ω・´)「一緒に戦ってみるってことだろ」

(´・ω・`)「うん」

.

673 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 22:07:00 ID:jPuH2I2s0

ミセ*゚ー゚)リ「考え直してくれるの!?」

(´・ω・`)?

(`・ω・´)?

ミセ;*゚ー゚)リ「え、いやだから何でそんなキョトンとした顔を」

(´・ω・`)「ですので、シャキンに言われてとりあえず一緒に活動してみますかと」

ミセ*゚ー゚)リ「はあ?」

(`・ω・´)「みんなで行こうって言っただろ」

ミセ;*゚ー゚)リ「はあああああ?」

(´・ω・`)「とりあえず僕とそこの二人は
戦闘に慣れたいので明日はそちらメインになりますが、
明後日以降の日程で打ち合わせをしましょう」

ミセ*゚ー゚)リ

(´・ω・`)?

(`・ω・´)?

凍り付いた笑顔でショボンとシャキンを見るミセリ。

(´・ω・`)「どうしました?」

(`・ω・´)「どうした?」

ミセ##*゚ー゚)リ「あの話の流れでわかるかそんなもん!」

再び立ち上がってショボンとシャキンを睨みながら叫んだミセリ。

あまりの勢いに再び固まってしまう八人。

ショボンとシャキンは、そんなミセリを見て穏やかに笑っていた。



.

674 ◆dKWWLKB7io :2015/12/31(木) 22:15:07 ID:jPuH2I2s0

以上、本日及び2015年の投下を終了します。

いつも支援、感想、乙、おつむ、ありがとうございました。

また、よろしくお願いします。

なんとか彼女を出すことが出来てホッとしているところです。

が、二十話はまだ続きます。

また来年、よろしくお願いいたします。

ではではまたー。

良いお年をー。


.

675 名も無きAAのようです :2015/12/31(木) 22:19:07 ID:F6m92yJ.0
おつおつ

色々な伏線回収がたのしみで仕方ない
来年も楽しみにまってますよっと


良いお年を!

676 名も無きAAのようです :2015/12/31(木) 22:25:32 ID:I3IRRyrE0
乙乙

677 名も無きAAのようです :2015/12/31(木) 22:26:06 ID:PH6HUmRM0
二十話の長さが凄いことになってくな……乙

678 名も無きAAのようです :2015/12/31(木) 22:32:54 ID:JWTXHizw0
乙!

679 名も無きAAのようです :2015/12/31(木) 22:46:33 ID:TFdB7/xo0
乙乙、よいお年を

680 名も無きAAのようです :2015/12/31(木) 23:57:42 ID:nYIiN7WAO

年末は忙しくなるから無理だったかなと思ってたからこれは嬉しい更新
良いお年を!

681 名も無きAAのようです :2016/01/03(日) 01:40:41 ID:VrczH2LE0
見返せばいいだけなんだけど、ミセリって前に出てた?

682 名も無きAAのようです :2016/01/03(日) 01:54:02 ID:bOA5VnuYO
多分バーボンハウスでフィレンクトの彼女としてと兄弟の店にも来てたはず

683 名も無きAAのようです :2016/01/03(日) 10:56:24 ID:861q9tfQ0
おつおつ

684 名も無きAAのようです :2016/01/07(木) 14:13:47 ID:LntB6zKw0
ミセリとフィレンクトが急に気になってきた

685 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 22:23:46 ID:wbqeuKXw0

どーもです。

それでは投下を始めます。


よろしくお願いします。


.

686 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 22:25:38 ID:wbqeuKXw0





7.迷路







.

687 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 22:28:34 ID:wbqeuKXw0

『ミセ#*゚ー゚)リ「そこの二人、
明日からビシバシ鍛えるからな」』





ショボンとシャキンを睨みつつ、
小声で二人しか聞こえないように呟いたミセリを含む三人を見送った後、
シャキン達三人とショボンは農家を出て宿屋に向かった。

部屋は一人部屋を三つ、念のため三日分借り、それぞれに部屋に向かう。
一時間後にホテルのロビーで落ち合うことを約束してそれぞれに部屋に入る。

ショボンはシャキンの後ろに続いて部屋に入った。

(`・ω・´)「おつかれさん」

農家を出る前に頭から離した手を再びショボンの頭にのせ、
髪の毛を掻きまわすかのように撫でるシャキン。

身長はシャキンの方が少し高い。
けれどショボンが俯いていたため、ちょうどよい高さに頭があった。

上目遣いにシャキンを見るショボン。

しかしそこに可愛げといったものは無く、
出てきた言葉は恨み節だった。

(´・ω・`)「すぐ連絡くれなかったくせして」

(`・ω・´)「そう怒るなって。
理由は分かってるだろ?」

(´・ω・`)「分かってるつもりだけど、
とりあえず連絡をくれるくらいはしてくれてもいいと思うんだ」

(`・ω・´)「おれもあの二人とパーティー組んだりして大変だったんだよ」

.

688 名も無きAAのようです :2016/01/20(水) 22:28:41 ID:pFC/LRvU0
待ってました!

689 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 22:30:50 ID:wbqeuKXw0

(´・ω・`)「嘘だね」

(`・ω・´)「なんだよ嘘って」

(´・ω・`)「ちょっとしか喋ってないけど、
ミルナさんもデミタスさんもちゃんとした人っぽいし、
あの二人を丸め込んで落ち着かせることくらいかず兄になら分けないよ」

嬉しそうにショボンの顔を見るシャキン。

(´・ω・`)「……なに?どうかした?」

(`・ω・´)「いや、『かずにい』って呼んでくれたなと思ってさ」

(´・ω・`)「……シャキンにならわけないでしょ」

(`・ω・´)「なんだよー。『かず兄』って呼んでくれよー」

(´・ω・`)「うるさい」

頭を撫でる手を乱暴に外し、木製の丸椅子に腰かけるショボン。
顔は少し赤らめて怒ったような顔をしているが、
怒っているというよりも恥ずかしさの方が大きいようだ。

それを見て、笑顔でベッドに腰かけるシャキン。

(´・ω・`)「一時間しかないし、さっさと打ち合わせをするよ」

すねたように軌道修正を試みるショボン。

(`・ω・´)「そうだな。まずは情報の整理からしよう」

シャキンはそれに付き合ったが、
表情はまだニヤニヤと笑っていたためショボンは少しだけ睨んだ。




.

690 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 22:33:06 ID:wbqeuKXw0



(`・ω・´)「なるほどな。そんなクエストとアイテムがあるのか」

(´・ω・`)「やっぱり街はそんな感じだったんだね。
この村ではどうだった?」

それぞれに得た情報や感じたことを交換する二人。

いきいきとした表情で話すショボンを見てシャキンは笑顔で話すが、
時折悲しそうに少しだけ眉をひそめた。

それに気付かないショボン。

(´・ω・`)「レベルを上げるのが大変だとしても、
当分はパーティーで行動した方が良いだろうね」

(`・ω・´)「そうだな。
通常戦闘はもちろん、連携の練習もしないとだし、
ある程度はその方が良いだろう」

(´・ω・`)「ある程度?」

(`・ω・´)「何があるかわからんからな。
一人での戦い方も学ぶべきだろう」

(´・ω・`)「……そう……だね」

考えながら口を開くショボン。

(`・ω・´)「どうした?」

(´・ω・`)「うん……」

(`・ω・´)「ドクオやブーンは守られているだけの男じゃないだろ?」

(´・ω・`)「それは、わかってる」

(`・ω・´)「それなら良いけどな」

.

691 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 22:36:45 ID:wbqeuKXw0

ショボンの態度に眉を顰めるシャキンだったが、
何事もなかったように話題を流した。

(`・ω・´)「とりあえずは明日からの合同練習だな」

(´・ω・`)「うん」

あからさまにほっとした表情をするショボン。

(`・ω・´)「あの子がどんな風におれ達を鍛えてくれるのか楽しみだ」

(´・ω・`)「ドクオが、
パーティーでの戦いは彼女の方がうまいって言ってたけど、
どうだった?ここに来るまでの戦いは」

(`・ω・´)「そうだな。うまかったと思う。
というか、一緒にいた男二人より強く見えたな。
ゼアフォーはそれでも戦ってたけど、
ビコーズの方は掛け声ばかりでそれほど動いているように見えなかった。
ミセリとゼアフォーの指示に合わせて動いていたように見えた」

(´・ω・`)「そうなんだ」

(`・ω・´)「あそこも色々ありそうだな。
ミセリの『姫キャラ』というか『ぶりっ子キャラ』も含めて」

(´・ω・`)「アバターの時と違って、
少し無理しているように見えた」

(`・ω・´)「そうか。
それであんなことを」

(´・ω・`)「そっちだって分かってやってたんでしょ?」

(`・ω・´)「おれは面白そうだなって思っただけだ。
そしたらお前がのってきたから」

(´・ω・`)「またそうやって人のせいにするし」

.

692 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 22:39:53 ID:wbqeuKXw0

(`・ω・´)「別にお前のせいにしたわけじゃないぞ。
おれ一人じゃうまく誘導できなかっただろうとは思うがな」

(´・ω・`)「まったくもう」

口調では避難しているように聞こえるが、
ショボンの表情は穏やかで明るかった。

(`・ω・´)「素の方が面白いし良いキャラしてそうだと思うんだけどな」

(´・ω・`)「別人になって、
女の子らしい女の子をやってみたかったのかもね。
三人共β出身だから、
その頃からの設定というか、
互いの役割的なものがあったんだろうし」

(`・ω・´)「それが壊れたと」

(´・ω・`)「あの程度でぼろを出すようじゃ、
遅かれ早かれ破綻してたよ。
早く素を出せて良かったって感謝してほしいくらいだって」

(`・ω・´)「おれに対してはキャラ壊れてたしな」

(´・ω・`)「そういえば最初からそんな感じだったよね。
……ここに来るまでになにしたのさ」

(`・ω・´)「なんもしてないぞ」

(´・ω・`)「あとでミルナさんとデミタスさんに聞くよ」

(`・ω・´)「なんもしてないって」

(´・ω・`)「何もしてないなら聞いてもいいよね?」

(`・ω・´)「いやいや、してないから時間の無駄だから」

(´・ω・`)「……なにしたの?」

.

693 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 22:44:21 ID:wbqeuKXw0

(`・ω・´)「……三人で打ち合わせしてるのを後ろから盗み聞きしたり、
出てきたモンスターに対して三人が陣形を整えている隙に特攻かけて、
結局ミセリに助けられたり。
まあ最初から付いてきたのも少しは強引だったかな。
それくらいだ」

(´・ω・`)「……充分だと思う」

(`・ω・´)「そうか?」

(´・ω・`)「うん」

(`・ω・´)「ならしょうがないな」

(´・ω・`)「まったく」

呆れたように、
少し困った顔をするショボン。
しかしすぐに笑顔に戻った。

(`・ω・´)「なんだよ」

(´・ω・`)「なんでもない」

ニヤニヤと笑うショボンを見てシャキンは肩をすくめる。
そして表情を引き締めてから口を開いた。

(`・ω・´)「彼女がお前にコンタクトをとってきたのは、
そのためだろうしな」

(´・ω・`)「ん?」

(`・ω・´)「ミセリがお前たちと一緒に動きたいといった理由だよ」

(´・ω・`)「やっぱり、そう思う?」

(`・ω・´)「一目瞭然だろ。あれは」

(´・ω・`)「だよね」

.

694 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 22:45:30 ID:wbqeuKXw0

(`・ω・´)「ビコーズもゼアフォーも、
ミセリに依存している」

(´・ω・`)「うん。僕もそう思った。
一見姫を護る騎士を装ってはいたけど、
『彼女を守る』という使命感に縋って自我を保っているようにね」

(`・ω・´)「おそらくそれが正解だろう。
二人とも気付いていないだろうが」

(´・ω・`)「彼女は、それを嫌がっているのかな」

(`・ω・´)「自分が休まる場所がないかもしれないな。
共依存の関係には見えなかった」

(´・ω・`)「……うん」

(`・ω・´)「今のお前と、同じだ」

(´・ω・`)「そう……だね」

(`・ω・´)「分かってはいるんだな」

(´・ω・`)「……うん。
僕が巻き込んでしまったのに、
僕は今『みんなを守る』っていう事を支えにしている。
すぐ連絡をくれなかったのだって、
それが分かっていたからでしょ?」

(`・ω・´)「ああ」

(´・ω・`)「僕が、兄さんに甘えない為」

(`・ω・´)「半分正解、半分間違い」

(´・ω・`)「え?」

.

695 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 22:57:54 ID:wbqeuKXw0

(`・ω・´)「おれに甘えるのは問題ない。
ただ、おれに『だけ』甘えるのはダメだ。
おれ『だけ』を心の支えにするな。
依存するんじゃない。
自分で立って、
それから甘えていい奴全員に甘えろ」

(´・ω・`)「……」

(`・ω・´)「さっきも言ったが、
お前の友達はただ守られているだけのような奴らじゃないだろ?
彼らの為にも、あの子たちを頼る強さを持て。
甘えることのできる余裕を作れ」

(´・ω・`)「分かってはいる。
分かってはいるんだ。
分かってはいるんだよ!
でも……
でも……」

(`・ω・´)「でも?
なんだ?」

(´・ω・`)「僕が誘ったから、
みんなを命の危険に晒してしまったんだ。
その責任は、取らなきゃいけない。
皆を生きてかえす。
それは、絶対にしなきゃいけない……。
だから僕は……」

(`・ω・´)「責任の所在だけを考えるのはおれたちの悪い癖だ。
そのうえお前は身内には優しいのに、
自分には厳しすぎる」

(´・ω・`)「今は仕事じゃないし、
命がかかってる」

(`・ω・´)「でも、『責任』や『自分の行動の結果』にとらわれすぎて、
そこに携わっている人間の思いを忘れてるんじゃないのか?」

.

696 名も無きAAのようです :2016/01/20(水) 23:00:23 ID:6OSHSUBI0
http://ssks.jp/url/?id=348

697 名も無きAAのようです :2016/01/20(水) 23:00:41 ID:ymbsM8JU0
きてる!

698 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:01:15 ID:wbqeuKXw0

(´・ω・`)「思い?」

(`・ω・´)「お前が一人で背負って苦しんでいる姿を見て、
何も思わないような奴らなのか?
ドクオとブーン、あの二人は。
あと、クーとツン。彼女たちは」

(´・ω・`)「それは……」

(`・ω・´)「おれには、違うように見えた。
ドクオとブーンはそういうやつらだって知っている。
彼女たちとは少ししか話せなかったが、
意志の強い瞳をしていた」

(´・ω・`)「……」

(`・ω・´)「すぐには無理だと思うけど、
もう一つ違う視線を持て。
今のお前は一つの思いに囚われすぎている」

(´・ω・`)「……うん」

(`・ω・´)「おれはいつでもいつまでも、
必ずお前の味方だ。
だから、もう少し勇気を持ってみろ」

(´・ω・`)「ありがとう……かず兄さん……。
でも、兄さんは誰に」

(`・ω・´)「ん?いろいろお前に甘えるつもりだけど?」

(´・ω・`)「へ?」

(`・ω・´)「ドクオにも甘えるし、
ブーンにも甘える。
ミルナやデミタスにだって甘える。
でも、あいつ等にも甘えてもらえるように、
甘えてもいい奴だって思ってもらえるように、
自分の位置を作るつもりだ」

.

699 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:02:57 ID:wbqeuKXw0

(´・ω・`)「兄さん……」

(`・ω・´)「お前はいろいろできる分だけ一人で背負いすぎる。
でも、お前以外の奴だって色々できるし、
モノによってはお前よりうまくできる奴だっている。
仕事と一緒だよ。
おまえは人の能力を見抜くのがおれよりうまいんだから、
こっちでもそれを活かせばいい」

(´・ω・`)「金儲けとは違うよ……」

(`・ω・´)「ああ、違う。
でも一緒だ」

(´・ω・`)「?」

(`・ω・´)「個人の得意を伸ばし、特異とする。
個人の苦手を集団で補い、悪手をなくす。
適材適所。
相互補完。
マシロがやってきた経営の基本は、
お前の得意技だろ?」

(´・ω・`)「仕事ではそうだけど……」

(`・ω・´)「一緒だよ。
同じように考えてみろ。
皆を守るために、
皆が生き残るために、
皆が笑顔で過ごせるように」

(´・ω・`)「!」

.

700 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:04:06 ID:wbqeuKXw0

(`・ω・´)「社員みんなに笑顔で働いてもらう。
マシロの経営者、幹部、役付きに徹底させる理念。
それはここでも同じじゃないのか?
みんなに笑顔で生活してもらう。
誰かの犠牲の上にそんな生活が出来たとして、
お前の友達はほんとに笑顔でいられるのか?」

(´・ω・`)「でも、命が……」

(`・ω・´)「戦うか戦わないかを決めるのは、
お前じゃない。
それに、お前が居なくなった時にどうするつもりだ」

(´・ω・`)「僕は、死なない。
皆を返すまでは決して……」

(`・ω・´)「テストタイプ」

(´・ω・`)「!
しって、るの……?」

(`・ω・´)「おじさんに聞いた。
ログインの前にお前たちの部屋を見に行った時にな。
テストタイプのナーヴギア。
プロトタイプ、汎用機と違って、
お前が使っているテストタイプにバッテリーは付いていない。
つまり、電源を切ればそれで接続は終わりだ」

シャキンの言葉に、
隠していた事実を知っていたという衝撃に、
言葉をなくすショボン。

ただじっとシャキンの顔を見る。

(`・ω・´)「だが、おそらくだが、
こちらの世界で死ねば、
バッテリーではなく配線から供給された電力で、
お前の脳味噌は沸騰させられる」

.

701 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:06:14 ID:wbqeuKXw0

静かな部屋に、シャキンの言葉だけが響く。

(`・ω・´)「今電源を切れば確実に助けることが出来る命が、
目の前にある。
しかもそれは、最愛の自分の子供だ。
お前の両親、大おじさんと千早おばさんは、
これからずっとその思いと戦うことになる。
でもあの二人なら、その思いにきっと勝つ。
お前がこっちで何を考えているか、
分かっているだろうからな。
お前の心を尊重して、電源を切るような真似はしないだろう。
でも、爺さんがそのことを知ったら……」

(´・ω・`)「……病室に乗り込んで、電源を引っこ抜くだろうね」

(`・ω・´)「ああ。
お前とおれ、二人だしな。
おれはともかく、お前はそうすれば助けられるわけだし」

沈黙。
じっとショボンを見るシャキン。
ショボンは俯き、膝の上で握ったこぶしをじっと見ていた。

数分の間、その状態が続いただろうか。
シャキンの表情が緩み、柔らかい瞳でショボンを見た。

(`・ω・´)「よく考えるといい。
時間があるのかないのかは分からないけれど、
ちゃんと考えて答えを出せばいい」

(´・ω・`)「兄さん……」

顔を上げたショボン。
その視線の先で、にやりとシャキンは笑った。

(`・ω・´)「さて、一時間たったな。
そろそろロビーに行くか」

.

702 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:08:16 ID:wbqeuKXw0

ショボンが視界の隅のデジタル時計を見ると、
予定の時間より10分すぎていた。

(´・ω・`)「う、うん」

慌てて立ち上がったショボンを座ったまま片手で制するシャキン。

(`・ω・´)「部屋に入る前に少し遅れるって連絡しておいた。
だから慌てなくていいぞ」

(´・ω・`)「……かなわないな」

(`・ω・´)「はっはっは」

ゆっくりと立ち上がり、両手を腰に当て、
胸を張って高らかに笑うシャキン。
ショボンは浮き出ていた涙をぬぐい、笑みを浮かべる。

(`・ω・´)「よし、じゃあ行くか」

扉へと向かうシャキン。
ドアに手をかけた時に、後ろからショボンが話しかけた。

(´・ω・`)「かず兄さん」

(`・ω・´)「ん?」

ノブに手をかけたまま振り返るシャキン。

(´・ω・`)「もしも、僕が先に消えてしまったら……」

(`・ω・´)「ああ。おれがお前の友達のそばにいるよ」

(´・ω・`)「……ありがとう」

(`・ω・´)「ただし」

.

703 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:09:58 ID:wbqeuKXw0

(´・ω・`)「ん?」

(`・ω・´)「突然消えてしまった場合だな。
無茶をしたり軽率な行動で死んでしまい消えた時は、知らん」

おどけた口調で軽々しく、
けれど真剣な瞳で告げるシャキン。

(`・ω・´)「だから、お前もちゃんと生きろよ」

そして重く呟くと、ショボンの返答を聞かずにドアを開けた。








.

704 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:14:57 ID:wbqeuKXw0



ミセ*゚ー゚)リ「遅い!」

次の日、
ホルンカの村のそばの森。
クエストとは関係ない場所で、
11人は戦闘を重ねていた。

ミセ*゚ー゚)リ「待っている方はただ待つだけじゃなくて一緒に戦うの!
戦っている方は戦いながら次の手を考えて!
早めにタイミングを教えるのよ!」

朝から戦闘を開始し、休憩を挟んでそろそろ6時間が経とうとしているが、
ミセリの怒声はやむことを知らない。

ミセ#*゚ー゚)リ「遅い!もっと早く!」

(;∵)「は、はい!」

(;∴)「はい!」

叱られているのは、ビコーズとゼアフォーの二人。




.

705 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:17:25 ID:wbqeuKXw0




その日の朝、広場に集まった十一人はミセリから今日のスケジュールを告げられた。

それは少し行った場所にある森の中の安全エリアを中心として、
戦闘訓練を行うということ。

そのエリアは東西南北に戦闘エリアを隣接しており、
3組が戦闘訓練を行うにはもってこいの場所だということだった。

そしてエリアまでの道はドクオとミセリが戦闘を行い、
それを見本、参考にするようにとミセリは告げた。

そして、その言葉に見合う見事な戦いぶりを見せ付けた。



森の中、
現れた熊型のモンスターと戦うミセリ。
何度も隙をついて懐に潜りこみ、
短刀を閃かせて熊のHPを削る。

(クマ)「ぐをおおおおおおおお!」

HPを半分まで削ると、熊が雄叫びをあげた。

再び懐に入ろうとするミセリ。
しかしクマが腕を振り、うまく入れなかった。

ミセリの後ろでドクオが片手剣を構える。

ミセ*゚ー゚)リ「そろそろ行くよ!」

('A`)「おう!」

バックステップで距離を置くと同時に光りはじめるミセリの持つ短刀。

.

706 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:19:02 ID:wbqeuKXw0

そして次の瞬間、ミセリの体は熊の懐に潜りこんだ。
光る短刀熊の胸から肩にかけて攻撃を与える。

ミセリが繰り出したのは剣技による攻撃。

剣技の中には、武器の持つ攻撃力を高めるだけではなく、
自身の反応速度を上げる技も存在する。
更にミセリはβテスト時代の経験から、
助走と跳躍のタイミングを剣技の発動に合わせることによって熊の隙を突くことに成功した。

ミセ*゚ー゚)リ「スイッチ!」

(クマ)「ぐりゅああああああ!」

ミセリの声と、熊の叫びはほぼ同時。

威力の弱い短刀での攻撃ではあったが、
剣技による会心の一撃は熊を後ずさりさせ、
更にミセリは短刀の光が消える前に熊の体を蹴って後方上空に向かって跳躍し、
弧を描く途中で綺麗に一回転をして着地した。

片膝をつき、熊を見ながら剣技後の硬直を甘受するミセリ。

そしてドクオは、既に熊を攻撃していた。

ミセリの声とほぼ同時に動き出していたドクオは正面から通常攻撃を一度加えた後、
硬直を起こした熊を右から二回攻撃、
そのまま右を向いた熊の脇をすり抜けて後ろから一回攻撃。
自分を攻撃する者の姿を追って振り返りながら、熊は攻撃のための手を振り上げる。
ドクオはその手と熊の目線の間に移動して、更に一回攻撃を加え、バックステップで距離をとる。
熊の減ったHPが赤に色を変えた。

('A`)「決める!サポ頼む!」

ミセ*゚ー゚)リ「了解!」

後ろを見ずとも技後硬直が解けてこちらを見ているであろうミセリに指示を出し、
それとほぼ同時に駆けだすドクオ。

.

707 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:25:43 ID:wbqeuKXw0

その先には、両手を上げて咆哮し、威嚇する熊。

怯むことなく繰り出したドクオの持つ光り輝く片手剣による攻撃は、
熊をポリゴンに変えた。

万が一今の一撃で倒せなかった時の為に短刀を構えていたミセリが構えを解いたのは、
ポリゴンのきらめきがすべて消え、
周辺に敵のポップが認められないのを確認した後だった。

全員が上げた感嘆の声がおさまった後に、
ミセリから注目する点を注意され、
奥へと進む一行。

目的の安全エリアに到着するまでにさらに四回ドクオとミセリは戦闘をこなした。





そしてエリアに着いた後、
まずは一度ずつ全員が戦ってみたのだが、
既に『彼等』は出来上がっていた。

.

708 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:27:27 ID:wbqeuKXw0



ξ゚⊿゚)ξ「ブーン!」

( ^ω^)「だお!」

川 ゚ -゚)「ドクオ!」

('A`)「ん!」

(´・ω・`)「ツン!」

ξ゚⊿゚)ξ「任せなさい!」

( ^ω^)「クー!」

川 ゚ -゚)「心得た!」

('A`)「ショボ!」

(´・ω・`)「省略するな!」



ミセ*゚ー゚)リ「……え?」

ミセリは、リアルからの友人である五人の息がすぐさま合ったことは納得できた。



.

709 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:28:50 ID:wbqeuKXw0



(`・ω・´)「行くぞ二人とも!」

( ゚д゚ )「おう!」

(´・_ゝ・`)「ああ!」

( ゚д゚ )「シャキン!」

(`・ω・´)「任せろ!」

(´・_ゝ・`)「次だ!」

(`・ω・´)「おりゃ!」

( ゚д゚ )「デミタース!」

(´・_ゝ・`)「変な伸ばし方するな!」

(´・_ゝ・`)「こっちミルナ!」

( ゚д゚ )「見なきゃ戦えないだろうが!」



ミセ*゚ー゚)リ「はあ?」

ミセリは、この三人は自分達とあの道をやってきて自分の戦いを見てきた経験があることと、
さらにシャキンの指示が的確であることを悔しながらも認めることにより、無理やり納得した。



.

710 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:33:14 ID:wbqeuKXw0



ξ゚⊿゚)ξ「                     」
( ^ω^)「                     」
('A`)「     こっち(だ)!ミルナ!    」
(´・_ゝ・`)「                    」
(`・ω・´)「                    」
川 ゚ -゚)「                     」

(#゚д゚ )「ちゃんと『だ』を口にしろ!」

(´・ω・`)「すみません。うちのも一緒になって」

( ゚д゚ )「え?あ、ま、まあいいけどな。うん。
そこまで怒ってないから気にするな」

ξ゚⊿゚)ξ「                  」
( ^ω^)「                  」
('A`)「     こっちミルナ!    」
(´・_ゝ・`)「                」
(`・ω・´)「                」
川 ゚ -゚)「                」

(#゚д゚ )「その違いは分かるぞこのやろう!」





.

711 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:37:59 ID:wbqeuKXw0

ミセ#*゚ー゚)リ

危なげはなく、
しかし見本になるかといえば口を濁すレベルの連携で一体の熊を倒した二人と共に、
モンスターの出ない安全エリアに戻っていたミセリ。

和気あいあいと戦闘準備を始めている八人を見て、
静かに怒りを湛えていた。

しかし戦闘そのものは真面目に行っており、
更に回数をこなすごとに精度を上げる連携に、
文句を言えないでいた。

そしてその鬱憤は、
成長しない連携しか行えない自分の仲間に向いてしまった。

だがそれは仕方のないことだろう。

βテスターであり、
本来ならばこの世界での戦闘に一日の長があるべきはずの二人が、
程度の低い連携しか行えていなかったのだから。

(;∴)「ひ、姫、どこが悪いのか教えていただけますか」

(;∵)「十分連携は取れていると思うのですが」

もちろん程度が低いといっても戦闘に問題があるわけではない。
無事に敵は倒しているし、危険な目にもあっていない。
しかし目の前で目に見えて成長する者達を見て、
何故かミセリは焦りに似た感情を覚えてしまっていた。

ミセ#*゚ー゚)リ「そんなこともわからないの!」

自分でも制御できない感情。
それをビコーズとゼアフォーの二人に分かれというのが酷な話であり、
二人は混乱していた。

更に言えば、今まで戦闘能力はあるものの『可愛く』自分たちに守られていたミセリの素の姿、
見た目からは思い描けない激しい叱咤に戸惑ってしまっていた。

.

712 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:39:26 ID:wbqeuKXw0

ミセ*゚ー゚)リ「!!
ご、ごめんね二人とも。
でも、二人の方が強いのに彼らの方が
ちょっと連携が出来ているからっていい気になってるのが悲しくって」

二人の目に見えた戸惑いを見て我に返り、
ミセリは悲しそうな表情をつくって二人を見る。

( ∵)「姫」

( ∴)「姫」

(#∵)「あいつらめ……」

ミセ*゚ー゚)リ「で、でもね、仕方ないことだと思うの」

( ∵)「仕方ない?」

( ∴)「どういうことですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「だって、自分よりも強いはずの二人よりも、
優れているかもしれないところを見つけたんだもん。
気分よくいい気になっても仕方ないよ」

βテスト時代の美影、
そして昨日までのミセリのような可愛らしい仕草で二人を見るミセリ。

( ∵)「それもそうだ。
連携、スイッチのタイミングが、
我らの足元にも及ばぬ奴らが見出した光芒。
そこに縋っていい気になっても仕方ない」

( ∴)「ふむ……。
それは一理あるかもしれませんが……」

ミセリの言葉にまんざらでもない顔をする二人。
それを見てから、満面の笑顔で二人の手を握るミセリ。

.

713 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:41:21 ID:wbqeuKXw0

(*∵)「ひ、姫」

(*∴)「姫」

二人の手を合わせて両手で包むように握るミセリ。
そして自分の胸元に引き寄せる。

ミセ*゚ー゚)リ「でもね、このままじゃいけないと思うんだ」

(*∵)「ひ、姫?」

(*∴)「姫!」

ミセ*゚ー゚)リ「だって、それは自分を過大評価するってことだと思うの。
モンスターとの戦いが命のやり取りであるこの世界で、
その思い上がりはきっと危険につながると思うから」

(*∵)「姫はなんて優しい」

(*∴)「それでこそ、我らが姫」

ミセリの手を挟んでいるが、
彼女の決して小さくない胸に手が当たっていることに、
心を半分持っていかれている二人は素直にミセリの言葉を受け止める。

ミセリは二人の手を、
胸に当てた二人の手を力強く一回握り、
二人の目を交互に見ながら手を放した。

(*∴)「姫!」

(*∵)「ひ、姫!」

そして両手を広げ、
飛びつくように二人に抱きついた。

.

714 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:43:56 ID:wbqeuKXw0

ミセ*゚ー゚)リ「だから、がんばろ。
あいつらの見本になるくらい、
レベルの違いを見せつけて、
あいつらもついでに守ってあげて。
二人ならできるよ!」

(*∴)「姫!」

(*∵)「姫!」

(*∴)「姫!がんばります!」

(*∵)「お、おれも頑張る!」

身長差があるため、背の高いゼアフォーに合わせて抱きつくと、
ビコーズの顔にはミセリの胸が少し当たることになる。

それを意識してかしないでか、
更に強く二人に抱きつくミセリ。

もちろんゼアフォーにもその女性らしい体を押し付けることになり、
二人の顔は赤く染まっていた。

ミセ*゚ー゚)リ「うん!
がんばろうね!」

可愛らしく、跳ねるような甘い声で二人に話しかけるミセリ。

(*∴)「はい!」

(*∵)「はい!」

二人の元気な返答が、
エリアに響いた。






.

715 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:46:12 ID:wbqeuKXw0



('A`)「ミセリ、二人には見えないと思って悪い顔してるなー」

(´・ω・`)「ああ。うん」

そんな二人を見る三つの影。

(´・_ゝ・`)「ま、三次の女なんてそんなもんだ」

(´・ω・`)「デミタスさん……」

エリアへ繋がる道で、
三人が木陰に隠れて三人を見ていた。

('A`)「デミタスさんは、
だからショタコンになったんですか?」

(´・_ゝ・`)「……大人はいろいろあるんだよ。
っていうか、おれのショタコンは二次限定だからな。
そこは間違えるなよ」

最初から盗み見をするつもりではなかったのだが、
ミセリ達を呼びに行こうとやってきた時に、
ちょうど見かけて思わず木陰に隠れてしまっていた。

それでも普段のミセリ、あるいはビコーズやゼアフォーも、
いつもの精神状態ならば気付いたのかもしれない。
けれど今は全く気付いていなかった。

因みに三人の会話は『聞き耳スキル』によってドクオが聞き、
下手なアフレコで二人に説明していた。

.

716 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:48:22 ID:wbqeuKXw0

('A`)「ういーす」

(´・ω・`)「はーい」

(´・_ゝ・`)「分かってないよねお前ら」

(´・ω・`)「それにしても、彼女はなぜそこまで二人を」

(´・_ゝ・`)「うわ。流した。
流石シャキンの血縁」

('A`)「だよな。
忍者目指しているんなら、
しっかりとした連携が出来ているならいいと思うんだけどよ」

(´・_ゝ・`)「戦闘は出来ても、お子様ってことだな」

('A`)「え?」

(´・ω・`)「デミタスさんは分かるんですか?」

(´・_ゝ・`)「多分な」

事もなげに、やれやれと呟きながら二人の顔を見るデミタス。
ドクオとショボンは互いの顔を一度見た後に、
おそらくは自分達より年上であろう青年の顔をまじまじと見た。

(´・_ゝ・`)「彼女はおれ達よりも優位に立ちたいんだよ」

(´・ω・`)「え?」

('A`)「はあ」

(´・_ゝ・`)「おれ達は、まあドクオはβテスターだけど、
おれを含め他の奴らはこの世界の初心者だ。
通常なら、おれ達は彼女たちに教えを請い、
戦闘に対して保護を求めてもおかしくはない。
ツンやクーといった女の子もいるし」

('A`)「ふむ」

.

717 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:51:37 ID:wbqeuKXw0

(´・ω・`)「それは……そうかもしれませんね」

(´・_ゝ・`)「ドクオ一人で四人の面倒を見るのは厳しいし、
いまやおれたち三人も加わってる。
でも、おれ達はそこまでこの世界に対して困っていない。
戦闘においても、まあまあ戦えている。
一見そんなことは出来なさそうな女の子二人も含めてな」

('A`)「確かに」

(´・ω・`)「はい」

(´・_ゝ・`)「おそらくだが、
彼女の中に会ったプランが砕け散ったんだろうな」

('A`)「プラン?」

(´・_ゝ・`)「この世界を生き抜くためのプラン。
リアルに戻るまでの間、無事に生き抜くためのプラン。
流石におれ達やあの二人を奴隷のように扱うつもりはなかったと思うけど、
自分のそばにいて、頼れる人をつくるためのプランがさ」

('A`)「あの二人がいるじゃないですか」

(´・_ゝ・`)「ドクオはお子ちゃまだなー」

('A`)「ここでそれ?」

(´・_ゝ・`)「ショボンは分かってるみたいだぞ」

('A`)「え?」

ドクオが横にいるショボンを見ると、
彼はデミタスの顔を悲しげに見つめていた。

(´・_ゝ・`)「別に言っちゃまずいことじゃないだろ?」

(´・ω・`)「そう……ですね」

('A`)「?」

.

718 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:53:15 ID:wbqeuKXw0

(´・_ゝ・`)「あの二人、ビコーズとゼアフォーは、
口ではミセリを守るとか言ってるし、
実際戦闘では彼女の前に立って戦おうとするけれど、
精神面では完全に彼女に依存している」

('A`)「!」

(´・_ゝ・`)「『姫を守る!』なんて使命を、
リアルの世界では使わない言葉を口にして、
自分で勝手にこの『ゲームの世界』に目的をつくって、
自分の置かれたこの現実をどこか架空のものとして、
心を、精神を保っているんだと思う」

('A`)「そんな……。
しょ、ショボンも同じ意見なのか?」

(´・ω・`)「……うん」

('A`)「そんな……。
み、ミセリは?」

(´・_ゝ・`)「彼女はその点に関しては冷静だよ。
二人が自分に依存していることも理解しているだろうし、
自分がその役目を放棄したら二人がどうなるかわからないから、
基本的には今の状態を維持している」

デミタスの言葉を聞いてから、
ショボンの顔を覗き見るドクオ。

ショボンはその視線を感じ、
無言で頷いた。

(´・_ゝ・`)「けれど、このままじゃ彼女は誰にも、
ビコーズとゼアフォー、どちらにも頼れない。
だからドクオ、お前にコンタクトをとったんだろうし、
更に頼りになりそうなショボンや、
この思いを理解してくれそうな女の子二人、
ツンやクーと『仲間』になりたいって思ったんだろう」

.

719 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:54:42 ID:wbqeuKXw0

('A`)「ミセリ……。
それならそれで、もっと素直に……」

(´・_ゝ・`)「なれなかったんだろうな」

('A`)「なんで!?」

(´・_ゝ・`)「だってお前たち、
ほんとに仲良いだろ?
五人の仲間の中に飛び込むのって、
かなりきついぞ?」

('A`)「!」

デミタスの言葉に息をのむドクオ。
自分自身リアルの世界では社交的でないことを自覚している彼は、
今までそれに思い至らなかった自分に驚愕した。

('A`)「そう……ですね……」

(´・_ゝ・`)「……βテストで戦闘を続けていたプレイヤーなんて、
九割コアなプレイヤー。ゲーマーでヘビーユーザーだろ。
んで、まあ人見知りも多いよな。
そのうえこんな命のやり取りをするような世界で、
五人で固まってる、リアルからの友人達に飛び込むなんて、
なかなかしづらいだろ」

('A`)「……」

(´・ω・`)「……」

まじまじとデミタスの顔を見る二人。

その視線に気付き、デミタスは照れたように笑った。

(´・_ゝ・`)「ま、おれも昔は人のこと言えなかったから言えることだけどな。
それに、今の彼女の気持ちが少し分かる気もする。
そして、お前たちが分からなくても仕方ないってことも分かる」

.

720 ◆dKWWLKB7io :2016/01/20(水) 23:56:46 ID:wbqeuKXw0

('A`)「?」

(´・ω・`)「 」

(´・_ゝ・`)「おれとミルナは、自分の精神を制御できなくて、
この世界の事が信じられなくて、
自分がこの世界に閉じ込められたことに心がついていけてなかった。
昨日話したけど、おれとミルナが喧嘩したのだって、
余裕がなかったからだと思う。
あそこでシャキンに会えなかったら、
おれ達のどちらか、もしくは二人とも、死んでいたかもしれない。
おれとミルナは、シャキンに救われたんだよ。
今も、シャキンと一緒に居たから、お前たちに会えたんだしな」

にやりと、
それこそ余裕を感じさせる笑みを見せるデミタス。

(´・_ゝ・`)「だから、だれにも頼れない思いとか、
それに気付かないで右往左往している思いとかが、
……今の彼女の思いなんてのが、
少しだけわかる気がする」

デミタスの思いを聞き、
何も言えなくなった二人。

特にドクオはあの日の事を、
あの教会でのことを思い出し、
あの時のショボンの言葉を思い返していた。

(´・_ゝ・`)「で、どうするんだ?ショボン」

(´・ω・`)「え?」

(´・_ゝ・`)「考えてはいるんだろ?」

.

721 ◆dKWWLKB7io :2016/01/21(木) 00:00:37 ID:bdkr6AuI0

(´・ω・`)「……素は出せてもらえましたが、
今のままでは彼女は僕達に対して
素直に思いを口にしてはくれないと思います」

(´・_ゝ・`)「うん」

(´・ω・`)「彼ら二人の連携が僕らの連携よりも精度が高くなることが、
彼女が落ち着いて僕たちと向き合ってくれるきっかけになるのなら、
それを待つのも良いかと」

(´・_ゝ・`)「具体的には?」

(´・ω・`)「昨日の食事の時に話した『はじまりの街』でのクエストを、
明日やりに行きませんか?
帰りは夜になりますから、二日間ホルンカから離れることになります」

(´・_ゝ・`)「その間に、二人には頑張ってもらうと」

(´・ω・`)「はい。
クエストに関しては、
無事に三人が行うことが出来た後に、
彼女達にも教えることを考えています」

('A`)「……バグレベルだから、
すでに対処されてるかもしれないからな」

黙って二人の会話を聞きつつあの日の事を思い返していたドクオが口を開いた。

('A`)「とりあえずはデミタスさん、シャキンさん、ミルナさんでやってみて、
まだ可能だったら教えるって方向でいいと思う。
その後で修正が入るかもしれないけど、
そこら辺は運ってことで我慢してもらおう。
あのクエストは五人でも多すぎたくらいだから、
指示要員でショボンが部屋に入ることを考えると、
三人ずつ二回に分けた方が良いだろ」

(´・ω・`)「シャキンが居ればできると思うけどね」

(´・_ゝ・`)「後ろにいて指示を出してくれ」

(;´・ω・`)「は、はい。わかりました」

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722 ◆dKWWLKB7io :2016/01/21(木) 00:02:23 ID:bdkr6AuI0



三人が喋っている間に、ミセリ達三人は再度熊退治に隣のエリアに移動していた。

それに三人が気付き、慌ててミセリ達を探す。

戻る時間を考慮するとそろそろ村に向かう時間であったために三人はやってきていたのだが、
結局ミセリ達とともにホルンカに戻ったのは、
日が落ちる寸前、暗闇がホルンカを包む少し前だった。





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723 ◆dKWWLKB7io :2016/01/21(木) 00:04:28 ID:bdkr6AuI0



三人が喋っている間に、ミセリ達三人は再度熊退治に隣のエリアに移動していた。

それに三人が気付き、慌ててミセリ達を探す。

戻る時間を考慮するとそろそろ村に向かう時間であったために三人はやってきていたのだが、
結局ミセリ達とともにホルンカに戻ったのは、
日が落ちる寸前、暗闇がホルンカを包む少し前だった。





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724 ◆dKWWLKB7io :2016/01/21(木) 00:08:38 ID:bdkr6AuI0



次の日の朝。
ミセリ達三人に見送られて八人ははじまりの街向かった。

無事に街にたどり着いた八人は、
ショボンの提案したやり方と順序でクエストをこなしていく。

その結果、五人程ではないが満足のいく結果を得ることが出来た。
三人のスキルスロットは二つずつ増え、
手にはスキルの熟練度を保存することができるアイテム、
《カレス・オーの水晶瓶》が二つずつ握られている。

その他のクエストもこなし、情報を整理した頃には夕闇が街を包んでいた。

予定通りその日ははじまりの街にとどまり、
次の日の朝安い道具屋でアイテムを購入した後、
ホルンカへと向かう。



予定通り。



ショボンも、シャキンも、ドクオも、
ホルンカへの道すがら、
八人誰もがそう思っていた。








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725 ◆dKWWLKB7io :2016/01/21(木) 00:16:20 ID:bdkr6AuI0
以上、本日の投下を終了します。

おつと感想、ありがとうございます。

2016初投下でした。

そろそろ二十話は前後編にするべきだったかと思ったりもしておりますが、
この回は1話にしたかったので、このやり方で投下を続けさせてもらおうと思っております。

ということで、まだ続く二十話。

多分次くらいが佳境です。


また、よろしくお願います。


ではではまたー。

.

726 名も無きAAのようです :2016/01/21(木) 00:20:05 ID:x7penJk60

ここで切るのか・・・やらしいなー、続き気になるぜ

727 名も無きAAのようです :2016/01/21(木) 00:34:11 ID:Vwg3a5ZY0
おつおつ

728 名も無きAAのようです :2016/01/21(木) 00:36:30 ID:J2B/6yQ20
乙乙

729 名も無きAAのようです :2016/01/21(木) 02:56:26 ID:8ncmYnnc0
なんだなんだ不穏だな

730 名も無きAAのようです :2016/01/21(木) 05:16:52 ID:FJYx5aeM0
おつ

731 名も無きAAのようです :2016/01/21(木) 08:16:18 ID:1lA9hUF20
おつおつ

732 名も無きAAのようです :2016/01/30(土) 22:38:24 ID:vBs.q8SM0
おつおつ!

733 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 22:48:42 ID:E23G0H0I0
どうもこんばんは。

それでは、投下を始めたいと思います。


今日もよろしくお願いします。

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734 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 22:51:16 ID:E23G0H0I0





8.流星







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735 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 22:52:50 ID:E23G0H0I0

はじまりの街へと出発した八人を見送るミセリ達三人。

ミセ*゚ー゚)リ「なんか怪しいのよね。
戻ってきたら吐かせないと」

ショボンとシャキンの後姿を見ながら呟くミセリ。

( ∴)「姫、どうかしましたか?」

ミセ*゚ー゚)リ「え?あ、ううん。なんでもない」

右隣に立っているゼアフォーが顔を覗き込んでくる。
それに満面の笑顔で返した。

ミセ*゚ー゚)リ「さ、今日も頑張ろう!
明日戻ってきた時に、驚かせちゃおうね」

(*∴)「はい!頑張りましょう!」

頬を赤らめながら答えるゼアフォー。

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ、まずはまた昨日の場所にいこっか。
あんまり効率よくないから、今この村にいるような人達は行かないだろうし」

( ∴)「は」

( ∵)「姫!」

ゼアフォーが元気よく答えようとした声にかぶせるように、
左隣に立つビコーズがミセリを呼んだ。

ミセ*゚ー゚)リ「なになに?どうしたの?」

二歩前に歩き、
両手を腰に当てて踊るように半回転するミセリ。

緩いウエーブのかかった髪の毛が柔らかく揺れた。

ミセ*゚ー゚)リ「なに?」

.

736 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 22:54:34 ID:E23G0H0I0

ビコーズの顔を見るミセリ。

可愛らしく微笑むことを忘れない。

( ∵)「きょ、今日はもっと先まで行ってみませんか?」

ミセ*゚ー゚)リ「先?先って?
でも、スイッチの精度も上げたいなって思うんだけど……」

( ∵)「先といってもそれほど先じゃなくて、
昨日のエリアの少し先の丘まで!」

ミセ*゚ー゚)リ「あそこの先?
あの先ってことは次の町とも外れて……」

( ∴)「!星見の丘!」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、あそこか!
懐かしいね。ほんとの名前なんだっけ」

( ∴)「丘には名前はなかったような」

ミセ*゚ー゚)リ「そうだったそうだった!
それで、勝手に名前付けたんだよね。
夜に行くとちょうど真上に二層の底にある何かが光ってて、
北極星みたいで。
そうそう、思い出した!
懐かしいなー」

( ∵)「いかがでしょう!」

ミセ*゚ー゚)リ「うーん。どうしよう。
行きたい気はするけど、スイッチの練習もしたいし。
それにお昼に行っても普通の丘だしなー」

( ∵)「夜はまだ危険です。
それに、βの時と変更がないかを見ておくのも良いかと」

ミセ*゚ー゚)リ「うーん。
でもなー」

.

737 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 22:57:16 ID:E23G0H0I0

( ∴)「ビコーズ、今の我らにあそこまで行ける力が無いわけではないが、
危険は回避した方が良い」

ミセ*゚ー゚)リ「危険?
あ、そっか。あそこは角熊がでるのか」

( ∴)「はい。
基本は熊よりすこし強い程度ですが、
時折二匹一度に出てきます。
同時攻撃はしてこないと思いますが……」

ミセ*゚ー゚)リ「うん。二匹出てきたことあった。
一人でも倒せたけど、ちょっと怖かったな」

( ∴)「はい」

( ∵)「ですが、我らなら戦えます!
本当なら熊一匹くらい、一人で倒せる実力があります!」

ミセ*゚ー゚)リ「それは分かってるけど、この先もあるし、
折角三人で動いているんだから、
スイッチも練習しないと」

( ∵)「それはそうですが……」

ミセリの言葉に納得しつつも不満を隠そうとしないビコーズ。

ミセリとゼアフォーはその様子を見て不思議に思いつつも、
互いの顔を見て言葉を交わさずにそれぞれ思案した。

( ∴)「ビコーズ、とりあえず昨日のエリアまで行こう。
もちろんスイッチの練習をしつつ。
姫、そこまでの道すがらスイッチの練習を行い、
その状況に応じて星見の丘に行くかどうかを決めるのはどうでしょう」

ミセ*゚ー゚)リ「そうだねー。
ここで悩んでても時間の無駄だし。
まずはあそこまでいこっか」

.

738 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 22:59:14 ID:E23G0H0I0

( ∴)「ビコーズ、それで良いか?」

( ∵)「ああ!よし!行こう!」

ゼアフォーの提案に表情を明るくするビコーズ。

「頑張るぞ!」などと気合を入れながら剣を振るビコーズを見て、
ミセリとゼアフォーは苦笑いを浮かべた。





スイッチの練習をしつつ向かう森の中。
三人は昨日とは違う手ごたえを感じていた。

ミセ*゚ー゚)リ「(なんだろう。今日はすごく動きやすい感じ。
これならあいつらよりも……)」

三人は気付いていなかったが、
昨日までのほんの少しの遅さやタイミングの遅れは、
ビコーズが原因だった。

アバターの体から現実の自分の体のサイズに戻ったことによる手足の長さのずれ。
それはβテスト時代と同じ戦い方をしようとすると、
タイミングや微妙なずれを引き起こしていたのだった。

前まで一歩踏み込めば届いていた短剣が、
今は大きく一歩、あるいは二歩踏み込まなければ攻撃を与えられなくなっている。

空振りをするようなことはないが、その『ずれ』は確実に影響していた。

余談だが、それはドクオにも同じことが言えた。
しかし彼は最初の戦闘で、
後ろに親友を連れてはじまりの街からホルンカの村へ向かう
その最初の一歩で狼と戦った際にそれに気付き、
すぐさま修正をした。

.

739 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:01:20 ID:E23G0H0I0

βテスト時代は、大きな身体に片手剣と盾を持って戦っていた彼だったが、
今の体になってからは小柄な体を活かす戦い方に変えていたのだ。

そして彼は、その戦い方が自分に適していることを認識し、
この数日は何の戸惑いもなく戦闘を行っていた。

話をビコーズに、ミセリ達三人の戦闘に戻そう。

今日、ビコーズは昨日よりも少しだけ急いでいた。

前に、前に、という思いが、踏み出す一歩を早くし、
大きくし、時に二歩進み、その結果βテスト時代と同じ戦闘能力を得ていた。

( ∴)「(そうか……。
ビコーズは手足の長さが変わったのか。
今までなら少し早めのタイミングが、ちょうどよくなっている。
あとで教えてやらねばな)」

ゼアフォーは、ビコーズの復調の理由は分からずとも、原因に気付いた。

そしてビコーズの復調は、ゼアフォーの中にあった迷いを少しだけ取り除いた。

( ∴)「(おれも負けてはいられないな。
もっとがんばらないと)」

ゼアフォーの中の『迷い』。
それはこの世界に囚われた事でも、
モンスターとの戦いでHPが無くなったら自分が死んでしまう事でもない。
もちろん最初はそれもあった。
だが今は、それ以上の思いで心が埋められていた。

ミセリへの恋心。

アバターの頃よりも今の方が好きだった。
『姫』である彼女よりも、『ミセリ』である今の彼女の方が好きだった。
それは自分が置かれた現実からの逃避から生まれた恋かもしれない。
けれど彼は、その『恋心』によって今を生きていた。

.

740 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:04:48 ID:E23G0H0I0

そしてその恋心は彼の動きを狂わせた。
ミセリとのコンビネーションにおいて、
早く彼女を守りたい、できれば彼女を戦場に出したくない、
そんな心が彼の動きを狂わせ、タイミングをずらしていたのだ。

だが目の前でミセリと呼吸を合わせ始めたビコーズを見て、
自分も彼女とあんなふうに戦いたいと思っていた。






そして三人は、
昨日とは違う戦いを、
それはβテスト時代よりも高度な戦い方を身に付けることができた。






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741 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:07:28 ID:E23G0H0I0

( ∵)「姫!これならば!」

ミセ*゚ー゚)リ「うん!凄かった!
昨日とは全然違ったよ!」

( ∴)「互いの足りない部分を補い、
且つ長所を伸ばす戦い方が出来た気がします!」

( ∵)「おお!」

ミセ*゚ー゚)リ「うん!ほんと!
凄くよかった!全く負ける気がしなかったもん!」

昨日拠点とした、モンスターの出ない安全エリアにやってきた三人。
予定よりも早く付けたこともあり、
三人は少し興奮気味だった。


( ∵)「で、ではこの奥の」


ミセ*゚ー゚)リ「そうだね。
まだ時間も早いし、
行ってみちゃおっか」



( ∴)「そうですね。
三人共『隠蔽』を入れてますから、
熊型の敵ならいざとなれば隠れてやり過ごせるでしょう」



ミセ*゚ー゚)リ「だよね。
それに、一匹くらいならいけそうだし」




( ∴)「ええ。一匹なら大丈夫でしょう」

.

742 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:09:50 ID:E23G0H0I0



( ∵)「二匹でも行ける!」



ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズったらもう」




( ∴)「まずは一匹を倒してみてだ」




( ∵)「なんだよノリが悪い」



ミセ*゚ー゚)リ「でもゼアフォーも顔がにやけてるよ」



(*∴)「そ、そんなことは」




頬を赤くして口がにやけるのをおさえたゼアフォーを見て、
ミセリとビコーズが声を上げて笑う。
そしてゼアフォーも笑い出した。





.

743 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:14:15 ID:E23G0H0I0

最初に遭遇した角熊は、一匹だった。

ミセ*゚ー゚)リ「ゼアフォー!」

( ∴)「ビコーズ!」

( ∵)「おう!」

横から現れた角熊に対して一番近くにいたミセリが攻撃を与え、
続くゼアフォー、ビコーズと、剣技を盛り込んだ攻撃を与える。

ミセ*゚ー゚)リ!

( ∴)!

( ∵)!

その戦いは見事としか言いようがなかった。

通常攻撃と剣技を繰り出し、
呼吸のかみ合った攻撃の連鎖は角熊を翻弄し、
自分たちのHPを減らすことなく倒した。

その結果は三人の心を更に高揚させた。

ミセ*゚ー゚)リ「すごいよ二人とも!」

( ∴)「姫!ビコーズ!」

( ∵)「おおおおおおおおおお!」

一夜による成長。

実際は昔よりも少し連携がうまくなっただけなのだが、
前日の微妙な攻撃のズレと初心者に負けていると勝手に思い込んでいたため、
今の自分たちが『成長』したと思ってしまっていた。

そしてそれはさらに加速する。

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744 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:17:02 ID:E23G0H0I0

( ∵)「とりゃ!」

ミセ*゚ー゚)リ「とう!」

( ∴)「はっ!」

ビコーズの素早い短剣の振り。
ミセリの技巧を駆使した短刀の冴え。
ゼアフォーの堅実な片手剣の攻撃。

その三つが角熊を翻弄し、
確実にポリゴンへと変えていく。

合計四つのエリアで一匹ずつ角熊を倒した頃には、
『戦う事』が楽しくさえなっていた。





.

745 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:18:46 ID:E23G0H0I0

ミセ*゚ー゚)リ「あるーひ」

( ∵)( ∴)「あるーひ」

ミセ*゚ー゚)リ「もりなの、なか!」

( ∵)( ∴)「もりの、なか!」

ミセ*゚ー゚)リ「つのぐまに」

( ∵)( ∴)「つのぐまに」

ミセ*゚ー゚)リ「であぁった!」

( ∵)( ∴)「でああった!」

ミセ*゚ー゚)リ「ほしみのおーかーへーのみちー」

( ∵)( ∴)「つのぐまに、であーあったー」

ミセ*゚ー゚)リ「つのぐまの!」

( ∵)( ∴)「つのぐまの!」

ミセ*゚ー゚)リ「ゆうことにゃ」

( ∵)「いうことにゃ!」

( ∴)「おひめさん」

( ∵)「おにげなさい!」

ミセ*゚ー゚)リ「いいおわるまえにー。
ソードスキルをおみまいしたー!」

ミセ*゚―゚)リ( ∵)( ∴)「ららららーらーらーらーらー。
ららららーらーらーらーらー」


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746 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:20:18 ID:E23G0H0I0



こんな替え歌をうたいながら森を歩くほどには、
気分が高揚していた。



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747 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:22:56 ID:E23G0H0I0

それでも注意を怠っているわけではなく、
エリアの移動の際には周囲を確認しながら、
細心の注意を払って少しずつ前へと進んでいった。

ミセ*゚ー゚)リ「ストップ」

細い道を両脇に分かれ、
茂みの中を進んでいく三人。

前方をミセリとビコーズ、
後方をゼアフォーが見張っていた。

そして左に九十度曲がる道の手前で、
ミセリが停止を告げた。

( ∴)「敵ですか?」

( ∵)「ああ。二匹いる」

ミセ*゚ー゚)リ「二匹か……」

ミセリの視線の先にいる角熊。
そしてその後方15メートルほど先にも、角熊がいた。

ミセ*゚ー゚)リ「もう少し奥に行って『隠蔽』スキルを使えばやり過ごせるかな」

( ∵)「ひ、姫。やってみませんか?」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

( ∵)「一匹目と二匹目の間は15メートル以上あります。
前の角熊を今までの調子で攻撃すれば、
二匹目が接近する前に倒せるかと」

ミセ*゚ー゚)リ「んー」

( ∴)「計算上は出来そうだが」

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748 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:24:36 ID:E23G0H0I0

( ∵)「それに、一匹目をやり過ごした後に二匹目に見つかった場合、
前後から挟み撃ちされる可能性があります」

( ∴)「……うむ……」

ミセ*゚ー゚)リ「それは一理あるかも」

( ∵)「では!」

( ∴)「一つ、気になる点が」

ミセ*゚ー゚)リ「なに?」

( ∴)「後ろの角熊の角、今までと色が違ってます」

( ∵)!!

ミセ*゚ー゚)リ「え?あ、ほんとだ。
今までのは熊の地肌?色だったけど、
あいつは赤いね」

( ∴)「はい。もしあれが今までよりも強い敵の印だったら……」

ミセ*゚ー゚)リ「ちょっと怖いね」

( ∵)「な、ならば、なおさら先の角熊を倒して、
一対三の状況にした方が良いのでは?」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

( ∴)「ビコーズ?」

( ∵)「先の角熊を速攻で倒し、
落ち着いて次の赤角熊と戦闘。
一対三ならば、形勢不利な時には逃げ出すことも出来るのでは」

ミセ*゚ー゚)リ「それはそうだけど……」

( ∴)「だが……」

.

749 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:27:55 ID:E23G0H0I0

( ∵)「強いにしろ、変わらないにしろ、
何かしらの情報を掴むことが出来れば、
あいつらに教えてやることもできます」

ミセ*゚ー゚)リ「……そう……か。
うん。そうだね。
でも、ちょっとでもまずいと思ったらすぐ撤退するからね」

( ∵)「はい!」

ミセ*゚ー゚)リ「ゼアフォーも良いかな?」

( ∴)「……はい。わかりました」

ミセリに問われ、少しだけ躊躇しつつも戦闘を受け入れたゼアフォー。

ミセ*゚ー゚)リ「それじゃあ、一匹目の角熊がこの角に入った瞬間、私が出……」

( ∵)「ひ、姫!」

ミセ*゚ー゚)リ「どうしたの?」

( ∵)「こ、今回の最初の一撃はおれにやらせてください」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

( ∵)「先ほどの戦闘で少し思いついたことがあったので、
それをやってみたいのです」

( ∴)「ビコーズ、それは次の戦闘に取っておけ。
今回の戦いは出来るだけ早く倒せねばならない以上、
あまり不確定要素を入れるわけにはいかないだろ?」

( ∵)「は、早くやらないと忘れてしまいそうなんだ!
タイミングの問題もあるから、思いついたときにやってしまいたい!」

( ∴)「だが、」

ミセ*゚ー゚)リ「勝算はあるんだよね?」

.

750 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:32:24 ID:E23G0H0I0

( ∴)「姫?」

( ∵)「はい!初撃に使えると思うので、
スイッチのタイミングを乱すこともないです!」

ミセ*゚ー゚)リ「分かった。じゃあやってみよう」

( ∴)「姫!?」

ミセ*゚ー゚)リ「もしビコーズが失敗したら、
私達でフォローしよう。
二人でちゃんと見られる方が、
フォローもしやすいだろうから。
それに、思いついたことを早く試したいのは私も一緒だし」

( ∵)「姫!」

( ∴)「姫……」

いたずらっ子のように笑ったミセリ。
ビコーズは満面の笑顔で返し、
ゼアフォーは呆れたように肩をすくめた。

ミセ*゚ー゚)リ「さ、来るよ。
頼んだからね。ビコーズ」

( ∵)「はい!」

茂みの中で武器を構えるビコーズ。
まっすぐに、強い瞳で角熊を見据えている。

ミセリとゼアフォーももちろん武器を構えて角熊を見ていたが、
二人とも視界の中にビコーズが入り、
何をするのか興味を持ちつつ見守っていた。

( ∵)!

気合を入れ、茂みを飛び出すビコーズ。

.

751 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:35:00 ID:E23G0H0I0

ミセ*゚ー゚)リ「!(ビコーズ!?)」

( ∴)「!(まだ早い!)」

茂みに隠れていた状態から戦うことのメリットは、
言うまでもなく奇襲である。

相手が自分に対して警戒していない状態、
自分を認識していない状態、
攻撃なり防御なり、何かしらの『構え』を相手がとる前に攻撃を与えること。

しかしビコーズの出たタイミングは微妙だった。

いや、明らかに早すぎと言ってもよかった。

事実、ビコーズが角熊に攻撃を繰り出せる範囲まで近付いたとき、
既に角熊はビコーズを認識し、威嚇していたのだから。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」

( ∴)「あのバカ!」

茂みから飛び出す二人。

対応を間違えなければ、ビコーズが倒されることはない。
多少の傷は負うと思うが、
それだけのレベル、HPと防御力は持っている。

だが今日はほとんど攻撃らしい攻撃を受けず、
しかも速攻で敵を倒してきた三人にとって、
いや、ミセリとゼアフォーにとって、
ビコーズが攻撃を与えられHPを削られ姿をただ見ていることはできなかったのだ。

しかし、二人の予想した未来は起きなかった。

ミセ*゚ー゚)リ「うそ……」

( ∴)「……ビコーズ」

.

752 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:38:01 ID:E23G0H0I0

角熊の振り上げた手が、ビコーズを狙って振り下ろされる。

しかしその手はビコーズに当たらなかった。

角熊の手が当たる前に、斜め上に跳躍したビコーズ。

そして木の幹を蹴り、更に斜め上へ、
角熊の頭上へと跳躍した。

( ∵)「はっ!」

そして体を捻りながら短剣を閃かせ、
角熊の後頭部を攻撃した。

ミセ*゚ー゚)リ「足りない跳躍力を、
木を蹴ることで、二段跳びすることでカバーするなんて」

( ∴)「タイミングが命。
早ければジャンプしたところを狙われてしまう。
相手が攻撃を繰り出した瞬間に跳躍することに意味があったんだ」

思わず解説者のようにビコーズの動きを説明する二人。

ミセ*゚ー゚)リ「で、でも、あんなこと出来るなんて」

( ∴)「β時代、角熊サイズの敵ならば、
レベルが上がってポイントを振れば、
通常のジャンプで頭を狙うことも可能でした。
私やゼアフォーは体のサイズからあまりそういったことはしませんでしたが、」

ミセ*゚ー゚)リ「私はよくやってた」

( ∴)「ええ。
ビコーズはそれをおぼえていて、
今の体のサイズならばその戦い方が向いていると思ったのかもしれません」

.

753 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:43:22 ID:E23G0H0I0

ミセ*゚ー゚)リ「私と同じ戦い方ってこと?」

( ∴)「そこまでは……。
ただ、今までの……β時代の戦い方ではなく、
今の体に適合した戦い方を探し始めているのかもしれないです」

ミセ*゚ー゚)リ「……負けて、いられないね」

( ∴)「はい」

二人が話している間も、ビコーズの戦いは続いていた。

角熊「ぐをおおおおおおお!」

後頭部を攻撃され、悲鳴を上げる角熊。

角熊の背中側に着地したビコーズは、
そのまま背中に攻撃を与える。

( ∵)!

気合を込めて、通常攻撃を四回。
角熊の背中に四本の線を引き、バックステップで距離をとる。

怒りに染まった角熊が後ろを向こうと体を反転。
そしてその動きを冷静に観察し、
回転に合わせて走り出す。

それは角熊が闇雲に振り回している手の死角を縫うような動きだった。

ミセ*゚ー゚)リ「(ドクオくんの動き……)」

そしてもう一度跳躍。

実際には死角を選んでの移動はできていなかったが、
角熊の予期していない行動をとることには成功した。

( ∵)!!

.

754 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:47:10 ID:E23G0H0I0

再び木の幹を蹴って角熊の頭上に跳躍する。

そして今度は角と頭の境目を狙うように短剣を一閃した。

角熊「ぎゅがぎゃあああああああああ!」

今までに聞いたことのないような雄叫びをあげる角熊。
その一撃で、HPは大幅に減った。

( ∵)「姫!」

ミセ*゚ー゚)リ「!う!うん!!」

着地する前にミセリを呼ぶビコーズ。

駆けだすミセリ。

ビコーズは視界の隅でそれを確認しつつ、
着地と同時に短剣を光らせた。

( ∵)「はっ!」

光る短剣を突き出して、
角熊の脇腹に向かって駆けるビコーズ。

剣技による二連撃は、
先の角に向けた攻撃以上にHPを削り、
角熊のHPバーを黄色に変えてさらに削った。

( ∵)「スイッチ!」
ミセ*゚ー゚)リ「スイッチ!」

角熊を攻撃して駆け抜けたビコーズ。
技後の硬直を起こした彼に向かって角熊が手を振り上げた時、
ミセリの通常攻撃が角熊を襲った。

角熊「ぎゅるうがぁるあぁあああああ!」

.

755 名も無きAAのようです :2016/02/13(土) 23:47:50 ID:hb0DtD9AO
きーてーたー
この作品が大好きです

756 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:50:53 ID:E23G0H0I0

ミセリの短刀が深くその体を傷つけ、
雄叫びをあげて攻撃目標をビコーズからミセリに変える。

しかしそのときすでにミセリの体は位置を変え、
角熊の体を攻撃していた。

角熊「!!!」

怒りに任せ両手を振り回す角熊。
その手を避けて攻撃を繰り出すミセリ。

短刀が、輝きを放つ。

ミセ*゚ー゚)リ「スイッチ!」
( ∴)「はい!」

ゼアフォーが駆けだすのと、
ミセリの短刀が角熊を攻撃したのはほぼ同時。

ビコーズと同じ二連撃が角熊のHPを大きく削り、
HPバーを赤に変える。

攻撃の流れを殺さずに離脱したミセリを追って体を動かす角熊。
生まれた隙に、その無防備な身体に片手剣を、
アニールブレードを突き立てるゼアフォー。

絶叫をあげる角熊から離脱し、
先の二人のように武器を光らせるゼアフォー。

そして彼は、
自分を攻撃目標にした角熊に向かって剣技を放った。





.

757 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:53:52 ID:E23G0H0I0



ポリゴンへと変わる角熊。
ビコーズの初撃から数分の間の激闘は、
レベルによる補正があるとはいえ、
彼らの戦闘能力の高さを物語っていた。

そしてその立役者であるビコーズが、
今回の戦いの隠れた目的であったその敵に向かって駆けだしたのも、
仕方ないことだった。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!?」

( ∴)「ビコーズ!?」

一匹目を倒したことを喜ぶ間もなく二匹目に向かって武器を構えた三人だったが、
何の打ち合わせもなく駆けだしたビコーズに驚き、
名を呼びながらその後を追った。

( ∵)「やらしてください!」

さらに加速するビコーズ。

( ∴)「ったく!調子に乗って」

ミセ*゚ー゚)リ「気を付けて!」

先ほどの先制攻撃。
それに気を良くしたビコーズが再びアレを狙っている。

二人はそんな風に思っていた。

更に、
『たとえ赤角熊が角熊よりも強くても、
三人の連携があれば、
そこまで危険ではない』

戦況をそんな風に判断していたとしても、
仕方のないことだった。

.

758 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:56:24 ID:E23G0H0I0

βテスト時代、
各層にはモンスターの強さには上限があった。
もちろんフロアボスやエリアボス、
イベントボスに関してはその上限から大きく外れるが、
それでも目安があった。

更に言えばここはまだ一層。
はじまりの街から少し離れているとはいえ、
序盤も序盤のエリア。
そこまで強い敵は出てこないと考えていたとしても仕方がなかった。

そして、強さにおいては三人の推測は間違っていなかった。

そう、モンスターの『強さ』においては。

( ∵)「とりゃああああああっ!」

赤角熊が自分に突進してくるビコーズに気付き、
両手を上げて攻撃の予備動作に入る。

( ∵)「とうっ!」

先程と同じように赤角熊の横の樹に向かって跳躍するビコーズ。

( ∵)「はっ!」

そして樹を蹴ってさらに高く飛び上がる。

赤角熊「!」

ビコーズを目で追う赤角熊。
通常の角熊よりも動体視力が上がっているのか、
その動きに対応していた。

しかし動きの速さは変わらないようで、
攻撃には移れていない。

( ∵)「とうっ!」

.

759 ◆dKWWLKB7io :2016/02/13(土) 23:58:04 ID:E23G0H0I0

赤角熊の頭の上に到達したビコーズは、
笑顔でその赤い角めがけて短剣を振り下ろした。

赤角熊「     ――――!!!!!!」


声にならない雄叫びをあげる赤角熊。

そしてそのままポリゴンと化した。

ミセ;*゚ー゚)リ「ええっ!?」

(;∴)「え!?なんで!?」

( ∵)「よしっ!」

驚いて動きを止めてしまうミセリとゼアフォー。

攻撃を繰り出したビコーズは体勢を崩すことなく着地した後、
大きく腕を上げて喜びをあらわしている、

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!?」

( ∴)「今のは一体!?」

( ∵)「はっはっは」

どこか芝居染みた、けれど誇らしげに笑うビコーズに駆け寄る二人。

( ∵)『独自のルートで情報を仕入れたんで試したかったんだ。
『赤い角の熊は、最初の一撃を角に与えることが出来ればそれで倒せる。
しかもレア武器が手に入る』ってね」

ミセ*゚ー゚)リ「なにそれ……」

( ∴)「いったいどこでそんな」

( ∵)「ソースは教えられないけど、これからも仕入れてくるよ」

.

760 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:00:40 ID:/PVHF5LI0

ニヤニヤ笑いながら、ウインドウを開くビコーズ。

( ∵)「さあって、どんなレアな武器が手に入ったのかなー。
……ん?『赤い角』?
アイテムで武器じゃないし、レア武器は確率なのかな」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」

( ∴)「ビコーズ、情報の出どころは詮索しないが、
得た情報はちゃんと共有してくれ。
特に戦闘に関しては……」

( ∵)「分かってるって。
今度からはちゃんと報告するよ。
今回は初めてのネタだから、まずはやってみたかっただけだよ。
うまくすれば姫にレア武器を献上できたからな」

ゼアフォーに向かって笑いながら謝罪した後、
ミセリに向かって真面目な顔で片膝をついてしゃがんだ。

( ∵)「申し訳ありません姫。
お心を乱した上、
レア武器を献上できませんでした」

ミセ*゚ー゚)リ「……もう」

芝居がかったセリフを吐き、ミセリを見上げるビコーズ。

その笑顔を見て、ミセリは呆れつつも笑顔で返した。




.

761 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:02:38 ID:/PVHF5LI0






「逃げろ!」







.

762 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:04:48 ID:/PVHF5LI0

独断先行ではあったが無事にモンスターを倒したことに変わりはないため、
ビコーズの謝罪で一息つこうとした三人に、
何者かの叫び声が届く。

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

( ∵)「え?」

( ∴)「ん?」

声に驚いた三人が周囲を見ると、
自分たちを囲むようにポリゴンが現れた。

それはモンスターが出現する時に見られる空間の歪み。

デジタルの世界でのみ起こる、現象。

咄嗟に武器を構える三人。

普通の状態ならば間違ってはいないその行動も、
今は愚行に分類される。

「逃げるんだ!」

なおも聞こえる叫び声。

だが三人は動かない。

いや、動けなかった。

モンスターの出現を示唆するその現象は、
自分たちを囲むように起きており、
まるで逃げる隙など無いように思えていた。

「突っ込むんだ!
まだ間に合う!」

謎の声にまず我に返ったのはゼアフォー。

.

763 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:09:10 ID:/PVHF5LI0

( ∴)「姫!ビコーズ!」

ポリゴンの状態は、
出現を示唆するだけであり、
まだそこに存在しているわけではない。

この状態ならばすり抜けることが可能だとゼアフォーは瞬時に判断した。

ミセリの手を取り駆けだすゼアフォー。

名前を呼ばれて我に返った二人も走り出す。

ギリギリではあったがポリゴンの隙間を狙って飛び出すことに成功した。

( ∴)「!」

だがその目の前にもモンスター出現前のポリゴンがあり、
それはすぐにモンスターの形に変化した。

「立ち止まるな!」

謎の声の言葉は正しい。
立ち止まらずに駆け抜ければ、
今の時点では、その先に敵はいなかったから。

出現したばかりのモンスターはまだ三人を認識しておらず、
その横をすり抜けることも可能であったから。

しかしそれに気付く冷静さを三人は持ち合わせておらず、
武器を構えるのが精一杯だった。

ミセ*゚ー゚)リ「な、なんなの!?」

( ∴)「何かのトラップが発動したのか!?」

武器を構えて目の前の角熊に向かって駆けだす二人。

( ∵)「ひ、姫!ゼアフォー!」

.

764 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:10:40 ID:/PVHF5LI0

振り向いたビコーズ。
先程まで自分達を囲んでいたポリゴンが実体化し、
自分達に向かって攻撃の唸り声をあげていた。

ビコーズは短剣を構えてはいるものの、
五体の角熊を前にその剣先と足は震えていた。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」

( ∴)「こいつを倒して先に進むぞ!」

( ∵)「ひ。ひいいいいいいいい!」

ゼアフォーが目の前の一体を攻撃し、
それにミセリが続く。

この一匹を倒して道をつくることに専念しようとしたのだが、
更にその後ろに二匹角熊が現れたことを確認し、
戦慄した。

ミセ*゚ー゚)リ「そんな……」

( ∴)「くっ」

「諦めるな!」

再び謎の声が聞こえた。

そしてその瞬間、影が横の森から飛び出す。

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

ミセリとゼアフォーの前に立つ角熊の後方に回り込んだ影は、
片手剣を振った。

( ∴)「え?」

角熊の体に引かれる何本もの線。
その数えきれない線が斬撃を示すものだと思う前に、
角熊はポリゴンと化した。

.

765 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:14:24 ID:/PVHF5LI0

「道はおれが作る!
後ろのやつをこちらへ!
アルゴ!」

「キー坊も結局お人よしだネ。
ま、これはしょうがないけどサ」

二人の目の前で、黒髪の少年が片手剣を構えて立っている。
そしてその横に、どこからともなく現れた、
顔に髭のような模様を描いた少女が並んだ。

(少年)「アルゴは左を。
無理な攻撃はしなくていい」

(アルゴ)「はいヨ」

角熊に向かって駆けだす二人。

( ∴)「あの二人は」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」

いまだ何が起きているのか分かってはいない。
しかし前の二匹はあの二人に任せていいのだと咄嗟に判断したミセリが振り返った。
ゼアフォーもそれに続く。

(;∵)「ひ、ひ、ひ、ひ、ひ……」

引けた腰で短剣を振り回しているビコーズ。
目の前にいる五匹の角熊は、
ビコーズを見てはいるもののまだ攻撃を繰り出してはいないようだった。

しかし赤い瞳でうなり声をあげるその姿に、
恐怖を覚えるのはミセリとゼアフォーも同じだった。

ミセ*゚ー゚)リ「目が赤い」

( ∴)「怒っているのか?」

.

766 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:19:37 ID:/PVHF5LI0

動かない体の代わりに思考のみが回転する。

なんとかビコーズのそばに移動するが、
自分から戦闘を始める勇気が三人には無かった。

角熊「――――――!!!!!!」

三人に一番近くに立った角熊の突然の咆哮。

それはただの『声』ではなく、
直撃を受けた者が状態異常を引き起こす『攻撃』だった。

ミセ*゚ー゚)リ!

( ∴)!

( ∵)!

視界の隅。
自分と仲間たちのHPを示す三本のバー。
その名前の横に、
雷のようなマークが点灯したことに気付く三人。

それは、状態異常の印。

身体の動きが止められた『麻痺』を示す印。

自分の身体が動かなくなったことを知った三人。

目の前の角熊が攻撃を繰り出すモーションを始めた。

ミセ*゚ー゚)リ「う……そ……」

( ∴)「まだ……一層だぞ……」

( ∵)「ひ、ひ。ひ、ひ、ひ。ひひひひひ……」

.

767 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:21:57 ID:/PVHF5LI0

実はこの麻痺の効果時間は二秒に満たない。
剣技後の硬直よりも短い麻痺の効果だった。
しかし、βテスト時代にもっと上の層でだが、
同じような敵の咆哮で麻痺を起こしたことのある三人は、
記憶の中のそれと同じものだと錯覚し、
身体を動かすことを放棄してしまっていた。

そして角熊の攻撃が三人を襲う。

ミセ* ー )リ!!!!!

( ∵)!!!

( ∴)!!!!

横殴りされ、横の樹の根元に吹き飛ばされる三人。

ミセ* ー )リ「がっ!!」

( ∵)「ぎゃあっ!!!」

( ∴)「ぐっ!!」

その一撃で半分以上のHPが削られ、
三人のHPバーの色が黄色に変わった。

(少年)「おまえら!」

既に一匹を倒し、二匹目の相手をしていた少年と少女が、
ミセリ達三人が攻撃されたことに気付く。

(アルゴ)「こっちは大丈夫ダ!
あいつらを!」

(少年)「……無理はするなよ!」

少女はその素早い動きで角熊の動きを翻弄し、
時折小さな攻撃を与えることで注意を自分に向けさせ、
攻撃は少年に任せていた。

.

768 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:26:50 ID:/PVHF5LI0

だが少年を送り出した後は表情を引き締めて、
敵のHPを削るための攻撃を繰り出していった。

(少年)「(間に合ってくれ)」

駆けだした少年の目の前で、
一匹の角熊が狙いを定めていた。

狙いは、一番手前に倒れているミセリ。

ミセ;* ー )リ「あ…あ…あ…」

普段は気丈な彼女も、
目の前に迫りくる死の恐怖で満足に動くとが出来ないでいた。

ミセ;* ー )リ「や……あ……いや……」

(少年)「立ち上がれ!
逃げろ!」

少年の声に立ち上がるという体の動きを思い出し、
懸命に腰をあげようとする。

しかしそのときすでに、角熊は片手を振り上げていた。

ミセ;* ー )リ「いやーーーー!!!!」

振り下ろされる熊の左手。

顔を覆うミセリ。

そのミセリの身体が、
突き飛ばされる。

ミセ;*゚ー゚)リ「え?」

それは角熊の攻撃ではなく、
力強いが優しい衝撃。

ミセリの身体が角熊の攻撃動線から外れ、
彼女を突き飛ばしたゼアフォーが、
その攻撃を受けていた。

.

769 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:28:40 ID:/PVHF5LI0

ミセ;*゚ー゚)リ「ゼア……フォー……?」

( ∴)

彼女の瞳に映る、
彼の笑顔。

背中に角熊の攻撃を受け、
その衝撃があるはずなのに、
ミセリを見て優しく微笑んでいる。

ミセリの視界の隅。
一本のHPバーが赤くなり、
そして光をなくす。

ミセ;*゚ー゚)リ「え……?」

大きく目を見開き、
ただ目の前の状況を見た。

ミセ;*゚ー゚)リ「ゼア……フォー……」

.

770 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:32:03 ID:/PVHF5LI0






( ∴)「……ミセリ……す」








.

771 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:33:35 ID:/PVHF5LI0

ミセリの目の前で、
ゼアフォーがポリゴンに変わった。

ミセ;* ー )リ「ゼ……ア……フォー……?」

彼女の名を呼びながら、
優しい笑顔で、
彼の形を成していたポリゴンが、
砕け散る。

ミセ;* ー )リ「          !!!!!!!!」

一瞬の間の後、
エリアにミセリの叫び声が響き渡った。






.

772 名も無きAAのようです :2016/02/14(日) 00:36:15 ID:f4IaJYHY0
待ってた支援

773 ◆dKWWLKB7io :2016/02/14(日) 00:36:22 ID:/PVHF5LI0
以上、本日の投下は終了です。

いつも乙と感想、ありがとうございます。

それでは次回、『境界線』、またよろしくお願いします。

ではでは、また。


.

774 名も無きAAのようです :2016/02/14(日) 00:37:09 ID:f4IaJYHY0


775 名も無きAAのようです :2016/02/14(日) 00:50:16 ID:Jwz6MW4IO

ゼアフォー死ぬの!?
ビコーズはどうなる!?
次も気になりすぎる

776 名も無きAAのようです :2016/02/14(日) 01:45:40 ID:wr3F7Nro0
ゼアフォーマジかよおおおお


777 名も無きAAのようです :2016/02/14(日) 01:54:54 ID:H3BYxm7.O
乙乙

778 名も無きAAのようです :2016/02/14(日) 02:05:47 ID:ryl0l4BQ0
乙乙

779 名も無きAAのようです :2016/02/17(水) 08:21:35 ID:sGHIZuFo0
おつおつ

780 名も無きAAのようです :2016/03/18(金) 15:33:45 ID:Vf/Gwd4Y0
そろそろ投下ないかなぁ

781 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 22:34:31 ID:oUtX2mf60
こんばんは。

遅くなりましたが、続きの投下をしたいと思います。

今回も、よろしくお願いします。

.

782 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 22:36:12 ID:oUtX2mf60







9.境界線








.

783 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 22:37:55 ID:oUtX2mf60

その後の事を、ミセリはよく覚えていない。
気付いた時には、目的地だった安全エリアで、一人うずくまっていた。

おそらくはあの時の少年と少女が助けてくれたのだと思われるが、
どうやってあの場所から逃げたのか、
あの時の敵は全部倒したのか、
あれはいったい何だったのか。

彼女は何も覚えていなかった。

気付いた時には朝日がエリアを照らしていた。

かすかに残る記憶の中で、

「ありがとうございました」

と、少女に向かって頭を下げていたことだけを覚えていた。

日の光がエリアを照らした時、
視界の隅にビコーズがいるのが見えた。

彼もうずくまり、
膝を抱え、
そしてずっと何か呟いていた。

けれど声をかける事も出来ず、
ぼんやりとその姿を見ていた。

視界の隅にメッセージの到着を知らせる印が点滅しても、
開く気にはなれなかった。

ぼんやりと、
目の前の景色を、
ただ、
ただ、
眺めていた。





.

784 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 22:40:25 ID:oUtX2mf60

昼になる少し前に、ホルンカに八人がたどり着いた。
予定では昼に入り口近くの広場で落ち合う予定だったが、
ミセリ達三人がいなかったため、
一度農家の二階に戻っていた。

( ^ω^)「ただいまだおー」

ξ゚⊿゚)ξ「ただいまっと」

ソファーに腰かけるブーンとツン。

川 ゚ -゚)「ツン、行儀が悪いぞ」

ξ゚⊿゚)ξ「はいはい」

ソファーに身体を預けるツンと、
それをたしなめつつも同じ様に横に座るクー。
ここ数日で何度も見た光景に、
男性陣は苦笑した。

( ゚д゚ )「何も考えずに着いてきたが、
おれ達は宿屋に行かないのか?」

(`・ω・´)「おれもそう思ったんだけど」

(´・ω・`)「あ、実は話しておきたいことがあって」

(´・_ゝ・`)「話したい事?」

(´・ω・`)「実は」

シャキン達三人にソファーに座るよう促し、
ショボンが話しながら自分のウインドウを開く。

と、同時に三人の座るソファーの後ろでドクオが転んでいた。

(´・ω・`)「……ドクオ?」

( ^ω^)「お?どうしたんだお?」

.

785 名も無きAAのようです :2016/03/24(木) 22:42:48 ID:QnQZ7qok0
しえん

786 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 22:43:51 ID:oUtX2mf60

('A`)「……いや、何でもない。
メッセージを打ちながら歩いてたら転んじまったよ」

頭を掻きながら立ち上がるドクオ。
苦笑いを浮かべつつウインドウを消す。

('A`)「ミセリにメッセージ打ってるから、
気にせず話を進めてくれ」

(´・ω・`)「うん」

( ^ω^)「ドクオもおっちょこちょいだおね」

('A`)「うるせー。
お前に言われたくねえっつーの」

ξ゚⊿゚)ξ「あら、ドクオは昔からおっちょこちょいでしょ」

('A`)「だからうっさいつーの。
ショボン、外で落ち着いてメッセージ送ってくるわ。
ついでにさっき話したアイテムも買ってくる」

(´・ω・`)「あ、うん。よろしく」

('A`)「んじゃ行ってくる」

部屋を出るドクオ。
階段を下り、
普段と変わらない足取りで農家を出る。

そして扉を閉めたと同時に駆けだした。

('A`)「嘘だろ……」

表情は硬く、強張っており、
その足取りはバランスが悪く、
ちゃんと走れていなかった。

('A`)「……ゼアフォー」

.

787 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 22:45:33 ID:oUtX2mf60

外へと向かって走ろうとするが足が思うように動かずつまずく。

('A`)「!」

土埃を巻き上げながら勢いよく転ぶドクオ。

('A`)「くっ……」

慌てて立ち上がろうとするが、
身体をうまく動かせなくて寝転んだままだった。

('A`)「はやく……」

泣きそうな顔をしたドクオの目の前に差し出される手。

('A`)「え?」

( ^ω^)

見上げた視線の先に、親友の笑顔があった。

('A`)「ブーン……なんで」

( ^ω^)「おっおっ」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたが何か隠してるのなんか、バレバレなのよ」

その横には、自分を見下ろす幼馴染。
口調はきついが、その表情はどこか悲しげだった。

('A`)「ツン……」

.

788 名も無きAAのようです :2016/03/24(木) 22:46:36 ID:25X5JyRI0
待ってました支援

789 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 22:46:50 ID:oUtX2mf60

(´・ω・`)「なにがあったの?」

その横にはもう一人の親友。

いつも下がっている眉が、
更に下がり悲しげに見える。

('A`)「ショボン……」

三人の顔をゆっくりと見回したドクオ。

呆然と三人を見ていた顔が徐々に悲しみに歪む。

('A`)「みんな……」

ドクオの手が、
ブーンの手を握った。





(`・ω・´)「ドクオが出て行ったあと三人が後を追ったのは驚いたが、
そういうことだったか」

少し離れた建物の陰で四人を見守っているシャキン。
その横にはクーがおり、後ろにミルナとデミタスが立っている。

呟いた後、横にいるクーをちらっと見る。

川 ゚ -゚)「私はドクオに対しては付き合いが浅い。
気付かなくても仕方がない」

その視線に気付いたのか、
冷静な声で呟くクー。
しかしその表情は悲しそうであり、悔しそうだった。

シャキンはその表情を見て、優しげにほほ笑んだ。



.

790 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 22:49:10 ID:oUtX2mf60

立ち上がったドクオ。
クーとシャキン達四人も駆け寄り、
ドクオを囲む。

('A`)「おれは、ミセリ達三人と『フレンド』になってるんだ」

右手を振り、ウインドウを出して操作をしているドクオを怪訝そうに見る7人。

ドクオは自分の『フレンドリスト』を画面に出した後、
自分以外にも自分のウインドウを見せることのできる『可視モード』にする操作をしようとするが、
動きが止まった。

そして自分を見る友人たちの顔をもう一度見てから、
操作をした。

('A`)「フレンドになれば、自分のウインドウの中に、
フレンドリストが自動的に作られる。
順番とかも自分で変えられるけど、
おれはまだ十人くらいだから何の操作もしていない」

ドクオのウインドウを覗き込むように全員が移動する。
その視線の先に自分達の名前を見つけた。

( ^ω^)「お?」

ドクオが画面を固定し、
ブーンが呟いた。
そして問いかける。

( ^ω^)「なんで『Therefore』だけ黒くなってるんだお?」

見知った名前が続く中、
『Therefore』が、
『ゼアフォー』の名前だけが、
他の名前に比べて黒くなっていた。

('A`)「……βテストの時は、
ログインをしていないプレイヤーの名前は、
こんな風に名前が暗くなっていたんだ」

.

791 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 22:53:30 ID:oUtX2mf60

( ^ω^)「お?」

ξ゚⊿゚)ξ「ログイン」

(´・ω・`)「……していない時?」

ツンとショボンのつぶやきを聞き、
ドクオが振り向く。

('A`)「ああ」

川 ゚ -゚)「それは、つまり……、
アインクラッドに、
この世界に、いないという……事?」

('A`)「ああ」

ツンの横でクーが瞬きをしながら、
一言一言文節を区切って呟き、
ドクオが肯定した。

( ^ω^)「……お?」

(`・ω・´)「ん?」

( ゚д゚ )「ということは、
今ゼアフォーはログインしていない、
ということか。……ん?」

(´・_ゝ・`)「ゼアフォーがログアウト出来た」

('A`)「……ああ」

ミルナとデミタスが漏らした言葉を肯定するドクオ。

(`・ω・´)「それは、つまり……」

( ^ω^)「か、帰れたってこと……か……お?」

決定的な一言を避けるようなブーンの言葉。

しかしそれはむなしく友の耳に届いただけだった。

全員が沈黙する中、ショボンが口を開く、

.

792 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 22:57:07 ID:oUtX2mf60

(´・ω・`)「まずはミセリにメッセージを送ってみよう。
ドクオ、ビコーズにも送ってみて。
そのあと現在位置が分かるかどうかの確認を」

('A`)「あ、ああ。ビコーズだな。
ミセリへは頼む」

(´・ω・`)「うん。今送った。
ミセリは現在地もわかるね」

ショボンが自分のウインドウを可視化する。

ドクオ以外が覗き込んだそこには、
地図のような図に点滅する光があった。

(´・ω・`)「この光がミセリ。
今僕たちのいるのがここで、
このあたりが一昨日スイッチの練習をした場所」

画面を指さすショボン。

(´・_ゝ・`)「ふむ。昨日のところより先なんだな」

( ゚д゚ )「敵は一緒なのか?」

('A`)「昨日の熊の上位互換種で、
額に角を生やした『角熊』が出る」

川 ゚ -゚)「上位互換?」

('A`)「見た目は基本一緒だけど、
色が違ったりとか、角の有る無しや数が違うとかで、
微妙な変化がつけてある。
でも能力は格段に違う。そんな敵の事だ。
ただ『熊』と『角熊』の違いは多少攻撃力と防御力が上がっているくらいだった」

川 ゚ –゚)「ってことは、強いのか」

.

793 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 22:59:55 ID:oUtX2mf60

('A`)「この前の熊に比べれば。
だけどな。
でも、今の俺じゃ一対一は避けたいレベルではある。
負けるとは思わないけど、安全に戦える敵ではない」

( ^ω^)「みんなと一緒ならどうだお?」

('A`)「スイッチが機能できていれば問題ないと思う。
でも、本当はまだ連れて行きたくはないな」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、そんなこと言っている場合じゃないでしょ」

いつの間にか戦闘準備を整えているツン。

見るとドクオ以外は準備が出来ていた。

('A`)「お、おい」

(´・ω・`)「幸いなことにポーション類は買い漁ってある。
まずは前回の広場まで。
そこについてから、その先の事を考えよう。
それまでに三人からメッセージが届くかもしれないしね」

('A`)「ショボン……いいのか?」

(´・ω・`)「あそこまでなら行くのに問題ないでしょ。
それに、素直にこの街に残る人がいると思う?」

苦笑しながら話すショボン。
ドクオは自分の周りにいる人達を見回すと、
男は笑顔や親指を立てて参加を表明し、
女は彼を睨んで意思を示した。

('A`)「……いないな」

(´・ω・`)「でしょ。
さてみんな準備はできたね。
行こうか」

.

794 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:01:57 ID:oUtX2mf60

('A`)「お、おい」

(´・ω・`)「出来るだけ敵に会わないルートはもう組み立てた。
距離的には少し遠回りになるけど、
出来るだけ戦闘は避けるから直線ルートよりも早く着けると思う」

自分のこめかみを人差し指でつつきながら自信をもって告げるショボン。

('A`)「そ、そうか」

(´・ω・`)「……出来るだけ早く着きたいから、隊列を組んでいこう。
一番前をブーンとツン。
ツン、ブーンが暴走しないように抑えて」

ξ゚⊿゚)ξ「分かってる」

(;^ω^)「おー」

(´・ω・`)「二列目は僕を中心にクーとデミタスさん。
僕は敵の出現と道の指示で突然の戦闘には参加できないと思うから、
両翼をよろしく」

川 ゚ -゚)「わかった」

(´・_ゝ・`)「あ、ああ」

(´・ω・`)「三列目を、ドクオを中心にシャキンとミルナさん」

('A`)「お、おい!」

(´・ω・`)「今は戦える状態にないでしょ?
それに、出来れば広場からミセリ達のいる場所までに行く道順を考えておいてほしい。
そこから先は僕の頭の中にないからね」

('A`)「で、でも……」

( ゚д゚ )「なんだ。おれ達の護衛じゃ不安か?」

('A`)「いや、そういう事じゃなく!」

.

795 名も無きAAのようです :2016/03/24(木) 23:04:33 ID:25X5JyRI0
さすが作戦の鬼、ショボンだな

796 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:06:22 ID:oUtX2mf60

(`・ω・´)「ならおとなしく従え。
それでないと出発しないぞ?
このリーダーさんは」

『お前もわかってるだろ?』
と口に出さず、ドクオに笑いかけるシャキン。

ドクオは眉間に皺を寄せつつも頷いた。

(´・ω・`)「さあ出発しよう」

ショボンの言葉に全員が頷き、
村の出口に辿り着くころには自然と隊列を組んでいた。

(´・ω・`)「シャキン」

(`・ω・´)「ん?」

(´・ω・`)「うしろを、頼むね」

(`・ω・´)「ああ、わかってる」

意味ありげに笑ったシャキン。

ドクオとミルナが不思議そうにその顔を見た。





一つ目の目的地である安全エリアに辿り着いた時には、
ショボンの決めた隊列に少しだけ『疑念』を持っていたミルナとデミタスも、
その正しさに心の奥で感嘆していた。

(´・_ゝ・`)

( ゚д゚ )

.

797 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:07:33 ID:oUtX2mf60

先頭を走るブーンとツン。

後ろから見て右にいるブーンは左手に片手剣を持ち、
左にいるツンは右手に細剣を持つ。

エリア内に敵を見つけるや否や、
走るスピードを上げたブーンが敵の横を走り抜けながら一閃。

本来ならば敵の目標を自分に向けつつ敵に背中を見せる愚行だが、
続くツンが『自分を見ていない敵』に対して落ち着いて攻撃を与えるための布石だった。

そしてそのことに気付いており、
忌々しく思いつつもそこに強力な一撃を与えることが
最良であることを分かっているツンは、
容赦なく鋭い一撃を敵に与える。

通常はそのまま敵を前後から攻撃して退治する二人だが、
後方に敵がいる場合ブーンはそのまま次の敵に向かう。

そしてその後ろを追うツン。
もちろん一体目はまだ退治できていないが、
すでにそこにはクーが槍による攻撃を加えていた。

(´・ω・`)「デミタスさん!」
川 ゚ -゚)「デミタス!」

(´・_ゝ・`)「お、おう!」

最初こそショボンやクーの声で戦いに加わったデミタスだったが、
隊列での自分の位置と役割を理解した彼は、
三度目以降はクーと先を争うように戦いに参加した。

(´・ω・`)「うしろ!
来ます!」

突然後ろを向いて叫ぶショボン。

『うしろ!』で振り返って武器を構えたシャキンとドクオに対し、
ミルナは『来ます!』で慌てて振り返った。

.

798 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:08:45 ID:oUtX2mf60

最初の一匹が倒されると後方から出現する敵。

それは先日通った際にも起こった事象だが、
さすがにどのエリアで起こるかをミルナは覚えていなかった。

それはおそらく八人中二人を除く全員が同じであり、
覚えていないことを責められることではない。

もちろん覚えていないことによって死ぬ確率が高くなるのであれば
覚えておかなければいけないこと、
知らなければいけないことなのだが、
幸いなことにこのエリアで後方から出現する敵は即座に攻撃を仕掛けてくることはないため、
パーティーを組んでいる彼らにとってそれほど重要度が高くなかったのである。

(`・ω・´)「右手の動きに注意しろよ!」

戦闘態勢を整える前の熊に攻撃をするシャキン。

熊が攻撃の手を上げた時には四度切り裂き、
バックステップで距離をとった。

( ゚д゚ )「おう!」

『(`・ω・´)「真上に振り上げた手はそのまま下に向かって振り下ろされるが、
斜めに上げた手は袈裟懸けの時と、くの字型に曲げるときがある。
袈裟懸けだと思って懐に潜り込んだら攻撃されることがあるってことだな」』

先日の熊との戦いでシャキンが告げた注意事項。

その後に一見同じような動きの中の違いを説明されたミルナとデミタスは、
素直に驚き、改めてシャキンの凄さを感じていた。

そして今日のショボンの指示。

もともと感じてはいたことだが、
シャキンとショボンに知り合った自分達の運に二人とも感謝した。
更に惜しげもなくその恩恵を自分達に与える二人に対し、
自分も力になりたいと素直に思っていた。


.

799 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:12:10 ID:oUtX2mf60




一つ目の目的地である安全エリアに辿り着いたのは、
出発から一時間半経過した頃だった。

前回は二時間以上かかっていたことを考えると、
かなり順調に辿り着いたことになる。

(´・ω・`)「まずは一息つこう」

ウインドウを出したショボン。
ドクオとルートの確認をする。

そんな二人を囲むように休憩をする六人。

しかしシャキンが二人に、
ショボンに近付いた。

(`・ω・´)「ショボン、どうする?」

(´・ω・`)「そうだね……。
一回、話を聞こうか」

(`・ω・´)「了解」

('A`)?

(´・ω・`)「ドクオごめん、ちょっと待ってて」

にっこりとほほ笑んだショボンに対し、
不思議そうに頷くドクオ。

そして二人は何事かを話しながら輪から外れ、
今自分達がやってきた道に向かって歩いていく。

まるでそれは仲間たちに聞かれたくない内緒話をしているように見えた。

( ^ω^)「二人はどうしたんだお?」

.

800 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:13:58 ID:oUtX2mf60

('A`)「わからん」

ブーンとドクオの声がぎりぎり届く位置で、
突然二人は武器を構えた。

その先には木々しかなく、
敵は見えない。

川 ゚ -゚)!

ξ゚⊿゚)ξ!

( ゚д゚ )!

(´・_ゝ・`)!

驚きを見せる四人。
ブーンとドクオは既に走り出していた。

( ^ω^)「ショボン!シャキンさん!」

('A`)「おい!」

(´・ω・`)「何の御用ですか?
ずっと着いてきていましたけど」

(`・ω・´)「おれに一目ぼれしたか?」

仲間達の動きを気にせずに気に向かって語り掛ける二人。

まるでそれは擬人化した木に対して行っているように見るが、
二人の行動に信頼をしている六人は同じように武器を構えた。

(´・ω・`)「このまま戦いますか?」



「それはやめておくヨ」




.

801 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:14:57 ID:oUtX2mf60

ショボンの問いかけに返答する一つの声。

そして一本の大きな木の裏側から、
ゆっくりと人が現れた。

(女)「よく気付いたナ。
『看破』のスキルなんてのはまだないはずだけド」

それは鼠色のフードを被った小柄な女性だった。
両手を上にあげて手のひらを見せ、
武器を手にしていない、
敵意がないと意思表示していた。

(´・ω・`)「この世界、どうやって攻撃をされるかわかりませんよ。
武器以外の裏ワザがあったとしても驚きません」

(女)「……疑り深い男は嫌われるヨ」

口調はきつめだが、
表情は笑顔で答える女。

その頬に特徴的なペイントをしているが、
可愛らしい顔立ちをしていた。

('A`)「お、おまえ。もしかして」

その顔を見て、
ドクオは武器を下ろして数歩進んだ。

( ^ω^)!

ξ゚⊿゚)ξ!

(´・ω・`)!

ドクオが自ら進んで女性に近付いたことに驚く三人。

しかしその後のドクオの言葉に、
全員の頭に『?』が浮かぶ。

('A`)「もしかして、『鼠』か?」

.

802 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:16:32 ID:oUtX2mf60

(女)

特徴的なペイントとは、
髭のような三本の線。

確かに鼠色のフードとそのペイントから『鼠』という言葉を思い浮かべることはできるが、
とりあえず見た目は可愛らしい女性に向かって『鼠』と呼ぶのは如何なものだろうか。

そんなことをほぼ全員が考えた中、
女性の顔が少し曇ったのを感じた。

『そりゃそうだよね』

またしても七人の頭に同じような感想が浮かんだが、
言われた女性の返答は少しだけ斜め上だった。

(女)「私を知っているのかナ」

('A`)「おれは『アルルッカバー』だ」

βテスト時代の名前を告げるドクオ。

βテスターであったことを出来るだけ隠す予定だったことを知っている仲間たちは思わず息をのむ。

そして何故かフードの女性も驚いていた。

(女)「え!?」

('A`)「久しぶりだな。鼠」

(女)「え!?アルルなのカ!?」

('A`)「『アルル』って呼ぶな。
あと、今の名前は『ドクオ』だから」

ドクオの返答に笑い出す女。

(女)「その返答!
まだ最後に会ってからそれほど経ってないのに懐かしいヨ!
久し振りだナ!『アルル』!」

.

803 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:17:38 ID:oUtX2mf60

('A`)「『アルル』って呼ぶな!」

(女)「分かってるヨ。
アルルッカバーくん」

('A`)「笑いながら言われてもな。
あと、今の俺の名前は」

(女)「『ドクオ』だネ。
よし、覚えタ」

('A`)「まったく……。
……久し振りだな。ね」

(アルゴ)「アルゴだヨ」

('A`)「久しぶりだな。アルゴ」

(アルゴ)「……来てたんだネ」

('A`)「……お前もな」

あっけにとられた表情で二人を見守る七人。

アルゴがその視線に気付く。

(アルゴ)「ドクオ、彼らは……」

('A`)「おれのリアル友達だ。
全員βはやってないけど、
おれがそうだってことは知っている」

あからさまに顔をしかめるアルゴ。

('A`)「大丈夫だ。
こいつらはおれ達がβテスターだと知っても」

(アルゴ)「いや、アルルくんにリアル友達がいたことが衝撃なだけだヨ」

.

804 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:18:56 ID:oUtX2mf60

('A`)「そこかよ!
っていうかおれは」

(アルゴ)「アルルッカバー君で、
今はドクオなんだよナ」

笑顔を見せるアルゴに対し、
こんどはドクオが顔をしかめた。

(アルゴ)「確かにβテスターだって知られるのは避けたかったけど、
君らの方が下手なテスターより色々すごそうだ。
特にそこの二人がネ」

面白そうに、
けれど鋭い視線でシャキンとショボンを見るアルゴ。

(´・ω・`)「ドクオ、この方は?」

('A`)「ん、ああ。
名前は今聞いた通り『アルゴ』。
β時代の知り合いだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんとあんたこっちの世界では社交的だったのね」

('A`)「うるさい」

(アルゴ)「なんだ、リアルでの評価は一緒なんだネ」

川 ゚ -゚)「うむ。友達は多い方ではないな」

('A`)「なんとなくクーに言われるとへこむ」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんとの事なのに」

('A`)「ツンに言われてもへこまない」

ξ゚⊿゚)ξ「よし、後で」

(´・ω・`)「三人共?」

.

805 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:23:13 ID:oUtX2mf60

('A`)「あ、うん」

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、話を進めなさい」

川 ゚ -゚)「脱線しているぞ」

(;`・ω・´)
(; ゚д゚ )
(;´・_ゝ・`)

( ^ω^)「いつもの事ですお」

(´・ω・`)「それで、なぜあなたは僕達をつけていていたんですか?」

(アルゴ)「!
いや、たまたま先にここに来ていたところに君たちが……」

シャキンが剣を握りなおしたのを横目で見て、
大きくため息をつくアルゴ。

(アルゴ)「と言っても信じてもらえないネ。
……この先に出る角熊の攻撃に関して調べていることがあってネ。
昨日もここに来ていたんだけど、
ホルンカに一度戻って、
色々買い込んでまた向かおうとしたときに、
広場で騒いでいる君たちを見つけたってことサ」

(´・ω・`)「……僕達は急いでいます。
ですので今の内容でとりあえず納得しますが、
正直信じてはいません」

(アルゴ)「当然だと思うヨ。
でもこれが真実だから、
信じてもらえると嬉しいナ」

(´・ω・`)「角熊の攻撃とは?
今から僕達はそのエリアに向かう予定ですので、
β時代とは違う点があるようであれば教えていただけますか?」

.

806 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:25:16 ID:oUtX2mf60

(アルゴ)「ふむ……。
情報には対価が必要だと思うんだけどネ」

槍を構えるショボン。
その動きを見たシャキンがアルゴの背後に回って剣を構える。

(´・ω・`)「命と引き換えでは如何ですか?」

('A`;)「お、おいショボン!」

慌ててアルゴの前に立とうとするドクオを止めるブーン。

('A`)「ブーン!?」

アルゴに見えないように、ドクオに向かって微笑むブーン。

見ればミルナとデミタスは驚いているが、
ツンとクーも平然と見守っていた。

(アルゴ)「……本気かい?」

(´・ω・`)「僕達は今急いでいます。
あなたの情報が正しく、
これからの僕達の行動に有益であるならば、
出来る限りで返します。
ですが、嘘の情報で僕達が危険な目になったり、
最悪な結果になった場合は、
必ずあなたを殺します。
それを念頭において、
取引をしていただけますか」

クーとツンが武器を構える。
それを見て慌てて武器を構えるミルナとデミタス。

ブーンは少しだけ悲しげな顔でショボンを見た後に、
ドクオを止めるのとは逆の手で武器を構えた。

('A`)「ショボン……。
みんな……」

.

807 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:27:32 ID:oUtX2mf60

(アルゴ)「分かった。嘘はつかないヨ」

(´・ω・`)「それでは」

(アルゴ)「ただ、情報の前に一つ教えてほしい。
どこに向かっているんだ?
角熊のいるエリアに向かっているという事しかわかっていないんでネ」

(´・ω・`)「それは……」

アルゴをじっと見るショボン。
その視線を受け止め、さらにショボンを見るアルゴ。

(´・ω・`)「……人を、迎えに行くところです」

(アルゴ)「!もしかして、男女一人ずつの二人組……?」

(´・ω・`)「!……いえ、…………男二人、女一人の三人パーティーです」

(アルゴ)「……そう……だネ」

二人の会話を聞き、
表情をこわばらせる七人。

いつの間にか全員が武器を下ろしている。

(アルゴ)「目的地は、奥の安全エリア。
この層ギリギリの丘。だネ?」

(´・ω・`)「……はい」

(アルゴ)「案内するヨ。
実は私もそこに行くつもりだったんだヨ」

(´・ω・`)「!なぜですか?」

(アルゴ)「話すと長くなるし、
おそらくは聞きたくないことも含まれるけどいいかイ?」

(´・ω・`)「それは……」

.

808 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:30:49 ID:oUtX2mf60

(アルゴ)「先導する。
この人数じゃあ戦闘は避けられないから参加してもらうけど、
いいネ?」

ツンとクーを見るショボン。

その視線を受けて、黙って武器を構える二人。
ほかの皆も武器を構える。

(´・ω・`)「……はい。よろしくお願いします」

(アルゴ)「それじゃあ行こうカ」

歩き始めたアルゴの後ろを、
ここに来るまでと同じ隊列になって八人は続いた。




角熊との戦い方と注意点を途中でアルゴから聞き、
ブーンとツンとドクオの三人が先制攻撃、
クーとデミタスがそのフォロー、
シャキン、ミルナ、ショボンが後方と横を担当する形で戦闘をこなした。

そして二時間後。
奥の安全エリアにアルゴを含む九人はたどり着いた。

('A`)「ミセリ……」

安全エリアは、マップ上では第一層の端にある。
柵やオブジェクトがあるわけではなく、
崖に沿った長辺30メートル以上、
短辺20メートルほどの少し湾曲した正方形に近い長方形をしていた。

四方のうち一辺は崖。
崖の先には、青い空。
何もない空間。
上空には、第二層の端が見え、
今自分達がいる場所が、
『空に浮いている』という現実を突き付けられる。

.

809 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:32:28 ID:oUtX2mf60

その他の三辺は角熊の出るフィールドダンジョンに続く道と、
エリアを分ける森があった。

さらにエリアは中央が少し高くなっており、
一番高くなった場所には、
一本の太い樹が立っている。

('A`)「ミセリ……」

ドクオが名前を呼びながら、
その木の根元にうずくまるミセリに近付く。

他のメンバーは、
黙ってそれを見守っている。

('A`)「ミセリ……」

ただ名前を呼ぶことしかできないドクオ。

そして大樹の反対側、
ミセリの座る場所と正反対の場所にうずくまるビコーズを視界に入れた。

('A`)「ビコーズ……」

体を震わせるビコーズ。

そしてゆっくりと、
恐る恐るといった動きで顔だけ振り返る。

( ∵)「ドクオ……」

名前を呼んでも微動だにしないミセリはそのままに、
ビコーズに向かって足を進めるドクオ。

('A`)「ビコーズ、大丈夫か?」

( ∵)「おれは、悪くない。
おれは、悪くない。
おれは、悪くない。
おれは、…………」

.

810 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:34:06 ID:oUtX2mf60

ドクオを見ながら、
少し焦点のずれた瞳で、
呟き続けるビコーズ。

('A`;)「ビコーズ?」

( ∵)「おれは、悪くない」

('A`)「お、おい、どうした」

ビコーズに触れる距離に辿り着く前に立ち止まるドクオ。

縋りつくように自分を見る瞳、
けれど拒絶するようにうずくまるビコーズの姿に、
恐怖に似た感情を覚えてしまったからだった。

(アルゴ)「『赤角熊は、
一番最初に角に攻撃を与えれば、
一発で倒すことが出来る。
しかも、ランダムでレアアイテムや武器が手に入る』
ホルンカの裏通りで流れている噂話だヨ」

アルゴの声に、大きく体を震わせるビコーズ。

いつの間にか隣に立つアルゴに驚きつつも、
それ以上に語った内容に困惑するドクオ。

('A`)「なんだよ、それ」

(アルゴ)「だから、噂だヨ、『噂』」

('A`)「なんだよ……それ……」

口調は軽いが、無表情なアルゴ。
ドクオは言葉をなくし、その感情の読み取れない顔を見ながら立ち尽くした。

.

811 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:38:36 ID:oUtX2mf60

(´・ω・`)「本当は、先ほど教えていただいたように……」

(アルゴ)

('A`)

丘を登りながらショボンが声をかけると、
二人が振り向いた。

(´・ω・`)「赤角熊は最初の一撃を角に当てられると、
その一撃で倒される代わりに、仲間を呼ぶ。
しかも呼ばれた角熊の攻撃力は通常よりもアップしている」

(アルゴ)「代わりに防御力は弱くなっているけどネ」

ドクオとアルゴの間に立つショボン。

(´・ω・`)「その噂は、だれが流しているんですか?」

(アルゴ)「……」

(´・ω・`)「『βテスター』。ですか?」

(アルゴ)「……そう、噂されているヨ」

('A`)「なっ!
べ、β時代には赤角熊なんていなかったぞ!」

(アルゴ)「ああ。
情報を集めた限り、
βテスターだと思われるプレイヤーで『赤角熊』を知っていたやつはいなイ。
正式サービスで追加された敵だと思うけど、
もしかするとβ時代は出現条件が厳しくて誰も会わなかったか、
或いは知っているプレイヤーに会えていないだけなのカ」

(´・ω・`)「おそらく、正式サービスによる追加でしょう」

(アルゴ)「何故?
アンタはβテスターじゃないよナ?」

.

812 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:39:42 ID:oUtX2mf60

(´・ω・`)「ホルンカの街のそばで、似たようなトラップを持ったモンスターが出ますよね?」

(アルゴ)「『実付き』だネ」

(´・ω・`)「はい。
リトルネペントの『実付き』です。
βテストが基本システムや、
プレイヤーが実際に動いた時の
プログラムをテストするためのものであるのならば、
こんな近くに似たようなトラップを仕掛ける意味がありません」

(アルゴ)「……一理あるネ」

('A`)

(アルゴ)「だけど」

(´・ω・`)「また、リトルペネントの『実』も
赤角熊の『角』も頭の上にあるものですが、
基本の背の高さが違うため、
普通に戦っていても『実』には武器が届きますが、
赤角熊の『角』を攻撃するためには、
身長の高い人が柄の長い武器で意識的に狙わないと無理でしょう」

(アルゴ)「?」

(´・ω・`)「すべて推測ですが、
この先にクエストでこの赤角熊と戦わないといけない時が
来るのではないでしょうか」

(アルゴ)「!」

('A`)「!」

(´・ω・`)「新たに何体か湧いて出る
『攻撃力は強いけど防御力が弱くなっている敵』も、
この先に進んで『攻撃力と防御力が増しているプレイヤー』ならば、
倒すことが出来る適正範囲の敵なのかもしれません」

.

813 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:45:53 ID:oUtX2mf60

無表情に淡々と自分の推理を口にするショボン。

ドクオはその一つ一つを『可能性』として素直に受け止めて頭の中で昇華しているが、
アルゴは目を見開いて驚いていた。

(´・ω・`)「どうしました?」

自分の顔を凝視するアルゴに対し、
不思議そうに問いかけるショボン。

(アルゴ)「君はいったい……」

(´・ω・`)「すべて『推測』です。
可能性の一つでしかありません」

(アルゴ)「それはそうだ、いや、でモ」

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ」

いつの間にか、下にいた六人も丘の上に登ってきていた。

(´・ω・`)「ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「その噂ってまだ流れてるのよね?」

ドクオとショボンの間に立ったツンがアルゴに問いかける。

クーはミセリのそばにしゃがんで声をかけており、
ブーンはビコーズに話しかけていた。

(アルゴ)「ああ。さっきも喋っている奴がいたヨ」

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、それを信じてここに来たのって他にもいるの?」

(´・ω・`)!

('A`)!

(アルゴ)「私が知っているだけでも四組。
その中の二組は角への攻撃を出来ずに諦めていたが、
残りの二組はその後見ていない」

.

814 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:47:23 ID:oUtX2mf60

(´・ω・`)!

('A`)!

ξ゚⊿゚)ξ!

川 ゚ -゚)「今回は助けるのが間に合ったんだな」

三人が衝撃を受けると、クーがツンの後ろにやってきていた。

ξ゚⊿゚)ξ「クー。あの子は?」

川 ゚ -゚)「だめだ。全く反応してくれない」

ξ゚⊿゚)ξ「そう……」

('A`)「そうだな。アルゴ、お前そんなに強いのか?」

(アルゴ)「え?あ。いや、その、まあ、ネ」

('A`)?

川 ゚ -゚)?

ξ゚⊿゚)ξ?

(´・ω・`)「どなたか助っ人がいたのではないですか?」

(アルゴ)「あー。うん。まあ、ナ」

(´・ω・`)「β時代からのお友達ですね。
よろしくお伝えください」

(アルゴ)「あ、ああ。うん。伝えておくヨ。
でも、この世界で危ない状態を見たら手助けするのはよくあることだから、
あんまり気にしなくていいサ」

(´・ω・`)「ですが、僕達をここに連れてきてくれたり、
動けなくなった二人を見守っていてくれるなんてことは、
なかなか出来る事ではないと思いまして」

.

815 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:51:55 ID:oUtX2mf60

(アルゴ)!

ショボンの言葉に再度驚きを見せるアルゴ。

ショボンは彼女のその表情を見て自分の推測が正しかったことを知り、
丘を囲む林の一角を見つめた。

すでにそこは先ほどからシャキンが視線を向けており、
アルゴはそのことにも気付いて驚きを強くした。

(アルゴ)「あ、いや、その、ナ」

そんなアルゴを気にすることなく、
木々に向かって深く一礼するショボン。

シャキンもショボンほどではないが頭を下げていた。

(アルゴ)

二人を交互に見るアルゴ。

(´・ω・`)「ありがとうございます。
よろしくお伝えください」

ショボンとシャキンが頭を上げるとほぼ同時に、
林の中で影が動いた。

(アルゴ)「君たちは……いったい?」

(´・ω・`)「ほんの少し、人からの視線に敏感なだけですよ。
後僕は、ほんの少しだけ人より目が良いので」

にっこりとほほ笑んだショボンを、
いぶかしげに見つめるアルゴ。

そんな二人を、というより戸惑っているアルゴを、
少しだけかわいそうに思って何人かは見つめていた。

.

816 ◆dKWWLKB7io :2016/03/24(木) 23:59:32 ID:oUtX2mf60

( ゚д゚ )(この二人はいろいろと規格外だからな)

(´・_ゝ・`)(この数日でだいぶ慣れたけど)

川 ゚ -゚)「しかしそうなると、早いところ噂を消さないと更に……」

微妙な空気を破り、ボソッと呟いたクー。

('A`)「そう……だな」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、どうやって?」

(´・ω・`)「一度広まった噂を消すのは難しいよ」

川 ゚ -゚)「それはその通りだ。
しかも今回は、一撃で倒せるとかレアアイテムとか、
心をくすぐるキーワードも多い」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんと、攻略本が欲しいわよ」

('A`)「壁新聞とか?」

ξ゚⊿゚)ξ「そういえばあんた昔やってたわよね。
自分で調べたゲームの裏ワザとかハウツーを新聞にして、
クラスの壁に貼ってたりするの」

('A`)「忘れてくれ」

川 ゚ -゚)「だが、ハウツー本や指南本があればいいな。
敵ごとの戦いにおける注意点をまとめてくれたような」

ξ゚⊿゚)ξ「地形とか、最短ルートとかも地図があるといいわね。
今回連れてきてくれたみたいな出来るだけ敵と会わないルートとかも」

('A`)「そういうのも自分で探すのが楽しみだけどな」

ξ゚⊿゚)ξ「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ」

('A`)「そうだけどよ」

.

817 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:03:32 ID:s/W4n4qI0

(アルゴ)「ハウツー本、攻略本……」

会話を黙って聞いていたアルゴがぶつぶつと呟く。

ショボンはそれを横目で見ながらビコーズに近付いた。

(´・ω・`)「ブーン」

(;^ω^)「ショボン」

(´・ω・`)「どう?」

(;^ω^)「だめだお」

ブーンの反対側、
ビコーズを間にしてしゃがむショボン。

(´・ω・`)「ビコーズさん」

( ∵)「おれは悪くない……。おれは悪くない……」

身体を細かく震わせながら呟き続けるビコーズ。

(´・ω・`)「ビコーズさん……」

(;^ω^)「さっきからいろいろ話しかけてるけど、
ずっとこんなかんじだお」

(´・ω・`)「……ブーンでもダメか」

( ^ω^)「お?」

(´・ω・`)「ううん。なんでもない」

立ち上がるショボン。
ブーンは最初その動きに合わせて頭を上げただけだったが、
ショボンに視線で促され、二人でミセリのそばに移動した。

(´・ω・`)「ミセリさん」

.

818 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:06:01 ID:s/W4n4qI0

二人はミセリの両側にしゃがんだ。

(´・ω・`)「ミセリさん」

二回名前を呼ぶと、伏せていた顔を上げてゆっくりとショボンを見た。

(´・ω・`)「ここは安全エリアですが休めません。
まずはホルンカまで戻りましょう」

ミセ*゚ー゚)リ

( ^ω^)「ミセリ……」

ブーンの優し気な声に釣られるように向きを変えるミセリ。

( ^ω^)「おっおっ。
一緒にホルンカへ戻るお」

柔和な笑みを浮かべたブーン。

その顔を見たミセリの目から、涙がこぼれ落ちた。

ミセ*;ー;)リ「ゼアフォーが、姫じゃなくて、ミセリって……呼んだの」

( ^ω^)「そうなのかお」

ミセ*;ー;)リ「それで、私の事が好きだって」

( ^ω^)「ゼアフォーはミセリの事がすきなんだお」

ミセ*;ー;)リ「私……全然知らなくて……。
姫って呼ばれるのも、ただのキャラ設定で……。
とりあえず女の子とゲームをするのが楽しいだけなんだろうって……。
思ってて……」

( ^ω^)「そうだったのかお……」

ミセ*;ー;)リ「こんな、ゲームの世界で、好きとか、言われても、
アバターだし、現実とは性格だって違うし。
こんなに、わたし、しゃべることなんて……」

.

819 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:09:23 ID:s/W4n4qI0

( ^ω^)「ゼアフォーは、
そんなのも全部ひっくるめて、
ミセリの事が好きなんだお」

ミセ*;ー;)リ「私なんか……」

( ^ω^)「ゼアフォーが好きな人の事を、
『なんか』なんて言っちゃだめだお」

ミセ* ー )リ!

( ^ω^)「ゼアフォーはかっこいいお。
好きな人を守ってるんだお。
だから、そんなかっこいいゼアフォーが好きになった人の事を、
『なんか』なんて言っちゃだめだお」

ミセ* ー )リ「ブーン……くん……」

( ^ω^)「ホルンカにかえるお」

ミセ* ー )リ「もう……少しだけ……。
今は星は見えないけど、ゼアフォーが、
ここで見る星が、好きだったから……」

( ^ω^)「そうだったのかお……」

再び俯いたミセリ。
ブーンがショボンの顔を見ると、ショボンは一度頷いた。

( ^ω^)「分かったお。
もう少しだけ、ここにいると良いお」

ミセ* ー )リ「ありがとう……」

ミセリが涙を流したまま顔を伏せる。

二人のした会話は決して大きな声ではなかったが、
そこにいる全員の耳に届いていた。

そう。彼にも。

.

820 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:10:53 ID:s/W4n4qI0

( ∵)「ふざけるな!」

ふらりと立ち上がったビコーズ。
そして両足で大地を踏みしめ、
こぶしを握って叫んだ。

( ∵)「ふざけるな!!」

その声は強く激しく、
けれど震えていた。

( ^ω^)「ビコーズ!?」

ビコーズがミセリの前に立った。

(´・ω・`)「ビコーズさん?」

( ∵)「ふざけるな!
あいつはずっとお前のことが好きだったんだ!」

ミセ*゚ー゚)リ!

顔を上げるミセリ。

その目の前には、怒りによって顔を赤くしたビコーズ。

( ∵)「ずっと、ずっと、ずっと!
βで会った時からずっと!
おれと二人で!お前が好きだったんだ!」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」

( ∵)「おれたち二人はゲーム初心者で、
名前のモチーフが似てて、
知り合ってから名前の事で盛り上がって!
はじまりの街から出ることが出来なかったけど!
話しているだけで楽しかった!
でもお前と会って、ゲームの進め方や戦い方を教えてもらって、
お前の事を二人で姫って言いだして!
守るって決めて!」

.

821 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:14:01 ID:s/W4n4qI0

苦しそうに言葉をつづけるビコーズ。
その激しさと悲しみと怒りで、
誰も近寄れない。

( ∵)「だから、だから、だから!
お前に誘われたから!
だから正式サービス後も始めたんだ!
誘われなかったらやらなかった……。
おれ達は……」

(´・ω・`)!

( ^ω^)!

('A`)!

ξ゚⊿゚)ξ!

川 ゚ -゚)!

(`・ω・´)!

ミセ*゚ー゚)リ「え、で、でも、二人とも、またここで会おうって……」

( ∵)「おまえにゲームの中でリアルの事を聞くのはマナー違反だって言われた!
おれ達がお前にまた会おうには、ここに来るしかなかった!
三人共βで止めるのならば他で会おうってことになったかもしれない。
でも、おれ達よりもゲームを楽しめるお前がこの世界に残るなら、
会うなら、おれ達はここに来るしかなかったんだ!」

肩を震わせ、涙でぐしゃぐしゃの顔で叫んだビコーズ。

その告白は、だれもが固唾を飲んで見つめる事しかできなかった。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……くん……」

( ∵)「……おれ達が、この世界に来たのは、お前のためだ」

ミセ*゚ー゚)リ!

.

822 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:15:03 ID:s/W4n4qI0

( ∵)「おれ達が、この世界に囚われたのは、お前のせいだ」

ミセ* ー )リ!

( ∵)「あいつがこんなことになったのはおまえのせい」

川   - )「ふざけるな!」 

駆けだしていたクーが、
ビコーズが言い終わる前にその胸ぐらを掴む。

(´・ω・`)「クー!」

ξ゚⊿゚)ξ「クー!」

(;^ω^)「クー!?」

川   - )「ここに来ると決めたのは好きな人のせいじゃ無い!
自分で決めたからだ!」

ξ゚⊿゚)ξ「クー」

川   - )「自分で決めたことを誰かのせいにするな!
経緯はどうであれ自分で決めた自分でナーヴギアをかぶったんだ!
自分の行いの責任は自分で取れ!
人のせいにするな!
しかも惚れた相手のせいにするなんて言語道断だ!」

ビコーズの胸元を掴んだまま激しく揺するクー。

その剣幕に誰も動けない中、
一人ツンは彼女に近付き、
その背中に優しく抱きついた。

ξ゚⊿゚)ξ「クー」

川   - )「ツン……」

強く抱きつき、その背中に頬を当てて彼女の名を呼んだ。

.

823 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:16:04 ID:s/W4n4qI0

ξ゚⊿゚)ξ「クー。落ち着いて」

川 ゚ -゚)「ツン……」

クーが動きを止める。
胸倉は掴んだままだが、
ビコーズも力をなくし立ち尽くしている。

ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫みたいね」

手の力を緩めるツン。

ξ゚⊿゚)ξ「クーもその手、早く離した方が良いわよ。
クズに触ってると手が腐るから」

川 ゚ -゚)「そうだな……」

(;^ω^)(おー)

('A`;)(安定のツンだな)

(;゚д゚ )(ん?いまさらっとひどいことを)

(;´・_ゝ・`)(うわぁ……)

そっと身体を離したツンにあわせるように、
クーも手を離し、振り返った。

川 ゚ -゚)「ありがとう、ツン」

ξ゚⊿゚)ξ「パフパフ一回分貸しね」

川 ゚ -゚)「私は良いが、ツンが悲しくならないか?」

ξ゚⊿゚)ξ「うるさい」

軽口をたたきつつ、クーと位置を入れ替えるツン。

そして振り上げた右手を振りぬいた。

.

824 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:17:29 ID:s/W4n4qI0

(;^ω^)(お!)

('A`;)(うわっ)

(´・ω・`)(あっ)

(;`・ω・´)「おっ」

(;゚д゚ )(え?)

(;´・_ゝ・`)(いたい……)

(アルゴ)(あれくらいなら攻撃判定に入らない……と)

左頬を平手打ちされたビコーズがよろめいて座り込む。

そんな彼を、軽蔑した目で見降ろすツン。

ξ゚⊿゚)ξ「あんた、最低よ」

そして踵を返すと、クーの手を取ってミセリの前に立った。

ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ、こんなのとのパーティーはさっさと解消して、
私達のパーティーに入りなさい」

ミセ*゚ー゚)リ「……え?」

ξ゚⊿゚)ξ「『え』じゃなくって、
パーティーは基本六人までいけるんでしょ」

ミセ*゚―゚)リ「あ、うん。そのはずだけど」

ξ゚⊿゚)ξ「ならいいじゃない」

ミセ*゚ー゚)リ「で、でも……」

ξ゚⊿゚)ξ「でももくそもないわよ」

ミセ*゚ー゚)リ「くそって……」

.

825 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:19:16 ID:s/W4n4qI0

ξ゚⊿゚)ξ「こんなのとパーティー組んでても良いことないわよ」

川 ゚ -゚)「それは私も同意見だ」

ミセ*゚ー゚)リ「で、でも……」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたは私たち。
あいつはシャキンのところにでも入れて鍛えなおしてもらえばいいでしょ」

(`・ω・´)「え?そこでおれ登場?」

ξ゚⊿゚)ξ「良いわよね?」

(`・ω・´)「え、でも」

ξ゚⊿゚)ξ「い、い、わ、よ、ね?」

(`・ω・´)「はい」

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)

ξ゚⊿゚)ξ「これでよし」

満足げに周囲を見回すツン。
ほぼ全員が呆気にとられているのを確認しつつも、
得意げに笑うだけだ。

ξ゚⊿゚)ξ「さ、とりあえず戻るわよ。
鼠さん」

アルゴを見て、彼女に向かって数歩近付くツン。

突然のことに戸惑うアルゴ。

ξ゚⊿゚)ξ「?鼠さん?」

(アルゴ)「えっと……わたしのことかナ?」

ξ゚⊿゚)ξ「他に誰がいるのよ」

(アルゴ)「……『アルゴ』って名前があるんだけどネ」

.

826 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:20:43 ID:s/W4n4qI0

ξ゚⊿゚)ξ「じゃあアルゴ、帰り道の先導もよろしく」

(アルゴ)「……あいヨ」

('A`;)(ツンすげー)

ツンが話を進める中、
クーがミセリの前にしゃがんだ。

川 ゚ -゚)「ミセリ、立てるか?」

ミセ*゚ー゚)リ「……うん」

戸惑いながらも頷いたミセリに笑いかけ、
クーが立ち上がる。

そして差し出される右手。

ミセ*゚ー゚)リ!

川 ゚ -゚)

にっこりとほほ笑んだクーを見ながら、
ミセリがその手を取り、
ゆっくりと立ち上がった。

ショボンが、うずくまったままのビコーズに近付く。

(´・ω・`)「ビコーズさん……」

( ∵)「おれは悪くない……
おれは悪くない……
おれは悪くない……」

(´・ω・`)「ビコーズさん」

( ∵)「おれは悪くない……
おれは悪くない……
……悪いのは……」

ゆっくりと立ち上がるビコーズ。

その目は虚ろで『何も見ていない』ようで、
けれど視線の先はミセリに向いていた。

.

827 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:24:49 ID:s/W4n4qI0

そしてフラフラと歩きだす。

( ∵)「みせり……」

近寄るビコーズの前に立ちふさがるツンとクー。

だがミセリは二人をゆっくりと押して間を開け、
間に立った。

ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ……」

川 ゚ -゚)「ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ「ふたりとも、ありがとう」

小さな声で二人感謝を告げてから、
一歩前に出るミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」

( ∵)「悪いのはおれじゃない……。
あの噂だ……。
あんな噂があったから……」

ξ゚⊿゚)ξ「あんたっ!」

前に出ようとしたツンの前に手を出すミセリ。

ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ」

ミセ*゚ー゚)リ「ごめんね。
ずっと二人の思いに気付かなくて……。
私が誘ったから、こんな目に合わせてしまって……」

川 ゚ -゚)「ミセリ!」

ミセ*゚ー゚)リ「私が誘ったのは事実だよ。
また、この世界で会いたいって。
強要はしてなくても、誘ったのは事実」

川 ゚ -゚)「……ミセリ」

.

828 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:39:06 ID:s/W4n4qI0

ミセ*゚ー゚)リ「だから、ビコーズがもう戦いたくないなら、
私が戦って、ビコーズを守るから。
ビコーズははじまりの街で、助けが来るのを待っていてくれれば、
それまで私が支えるから」

ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ!何言ってんのよ!」

川 ゚ -゚)「ミセリ!それは違う!」

ミセ*゚ー゚)リ

小さく首を振るミセリ。
ビコーズを見るその表情を見て、
二人は二の句をつなげることが出来なかった。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ」

(  )「姫……」

俯いたまま、
ビコーズがミセリの前に立つ。

(  )「姫は、ゼアフォーの事が、好きですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「……うん。好き。
恋じゃないかもしれないけど、大事な人」

(  )「……『ビコーズ』、の、ことは?」

ミセ*゚ー゚)リ「好きだよ。
大事な、友達だよ。
だから……え?」

ビコーズが、握手をするように手を差し出した。

(  )「ぼくも、二人が好きだ。
やっとできた友達。
ずっと、一緒に居たいと思ってる」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」

.

829 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:40:13 ID:s/W4n4qI0

差し出された手を、両手で握るミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「うん……」

(  )「だから……」

ミセリの手が、強く握られた。

( ∵)「一緒に行こう」

ミセ*゚ー゚)リ!

上げたビコーズの顔は笑顔だった。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ?」

ミセリが困惑しながら名前を呼び終わる前に、
腕を引っ張られて思わず足を動かす。

( ∵)「いこう!」

ビコーズの勢いに釣られてそのまま歩くミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ?どこに……!」

ビコーズの視線の先には、何もない空間。

ただ『空』があるだけ。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」

( ∵)「行こう姫!
ゼアフォーのところへ!」

ミセ*゚ー゚)リ「!」

空に向かって、
崖の先に向かって走り出そうとするビコーズ。

ミセリは必死にその場にとどまろうとし、
かつビコーズの手を強く握った。

( ∵)「姫!」

ミセ*゚ー゚)リ「だめ!ビコーズだめ!」

.

830 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:43:15 ID:s/W4n4qI0

(;^ω^)「だめだお!」

('A`)「ビコーズ!」

慌てて駆け寄ったブーンとドクオがビコーズの身体を押さえる。

しかしその動きを完全には止められない。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!
やめて!」

(;^ω^)「おちつけお!」

('A`;)「おい!やめろ!」

(;´・ω・`)「みんな!」

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン!」

川;゚ -゚)「おい!気を付けろ!」

ショボンをはじめとする全員が動き出そうとしたその時。

(`・ω・´)「とや!」

いつの間に背後に回ったシャキンが膝の後ろを蹴り、
ビコーズのバランスを崩した。

(;^ω^)「おっ」

('A`;)「うわっ」

ブーンとドクオも一緒にバランスを崩し身体を重ねるように倒れ、
結果的にビコーズを止めることに成功した。

.

831 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:45:17 ID:s/W4n4qI0

(;´・ω・`)「シャキン……危ないよ」

(`・ω・´)「ん?大丈夫大丈夫」

シャキンは口元に笑みを浮かべながら崖に向かう道を見ると、
ミルナとデミタスが姿勢を低くして、
万が一誰かが転がってきても止めることが出来るように準備していた。

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)

(`・ω・´)

(´・ω・`)「どや顔されても」

立ち上がりながらやってくる二人とシャキンに向かって悪態をつきつつも、
ホッとした笑顔を見せたショボン。

( ∵)「なんでだ!」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」

四つん這いになり、
下を向いたまま地面を叩くビコーズ。

ドクオとブーンはビコーズのそばに立ち、
ツンとクーはミセリのそばに寄っている。

ショボン達四人は、少し離れた場所に立っていた。

(  )「なんでだ!」

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ?」

(  )「なぜおれが生きていて!
ゼアフォーが死んだんだ!」

ミセ* ー )リ!

.

832 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:46:31 ID:s/W4n4qI0

それは、だれもが分かっていて口にすることが出来なかったこと。

ゼアフォーの死。

(  )「何でおれが生きていて、
ゼアフォーが死んだんだ……。
死ぬのは、おれの方だろ……。
あんな噂を信じた、おれの方だろ…………」

涙声で叫びながら地面をたたくビコーズ。

(  )「なんであんな噂を信じまったんだ!
おれはバカだ!バカだ!バカなんだ!
だから死ぬのはおれなんだ!
なんで!なんで!なんで!」

ミセ* ー )リ「ビコーズ……」

(  )「だからせめて、
ゼアフォーが寂しくないように、
ミセリを連れて、
おれの顔なんか見たくないだろうけど、
でも、謝りたくて……」

ξ#゚⊿゚)ξ「あんた!」

川#゚ -゚)「貴様!」

ミセ*゚ー゚)リ「ふたりとも」

ミセリを支えるように寄り添っていたツンとクーがビコーズに怒声を浴びせようとするが、
ミセリに止められた。

ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ、あんた」

川 ゚ -゚)「ここはしっかりと!」

ミセ*゚ー゚)リ「二人ともありがとう」

.

833 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 00:46:47 ID:ypqb3NrA0
きてるー!
楽しみにしてるよ!

834 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:48:09 ID:s/W4n4qI0

にっこりとほほ笑んだミセリ。
その微笑みをみて、二人は何も言えなくなった。

ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ」

四つん這いのビコーズの前にしゃがむミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「私は、死ねない」

( ∵)!

顔を上げるビコーズ。

ミセ*゚ー゚)リ「ゼアフォーは、私を守ってくれた。
……命を懸けて、守ってくれた」

苦しそうに、けれど微笑んでビコーズに話すミセリ。

ミセ*゚ー゚)リ「だから、ね。
ゼアフォーが守ってくれた、
この命を、ね。
自分の手で、捨てる事なんか、できないの」

ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ……」

川 ゚ -゚)「ミセリ……」

ミセ*;ー;)リ「ごめんね、ビコーズ。
でもね、きっとね、ゼアフォーはね、
ビコーズが……死ぬことも、望んでなんかね、ないと思うんだ」

ミセリの両眼からポロポロと涙がこぼれる。

ミセ*;ー;)リ「ごめんね。ビコーズ。
こんなところに連れてきちゃって。
わたし、……わたし……。
がんばるから。
がんばって、生きて、いつか帰れる日まで、がんばるから。
だから、ビコーズも、頑張って、生きて……ね……ビコーズ……」

.

835 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:49:41 ID:s/W4n4qI0

苦しそうに、泣きながら、けれど精一杯の微笑みを見せて、
右手をビコーズに差し出すミセリ。

( ∵)「ミセリ……」

だがビコーズは名を呼んだだけでその手は取らず、
ゆっくりと立ち上がった。

ミセ*;ー;)リ「ビコー……ズ」

( ∵)

立ち上がったビコーズと、
しゃがんだままのミセリ。

泣き続けるミセリと、
涙を流し果てたようなビコーズ。

ミセ*;ー;)リ「ビコー……ズ?」

ビコーズは、笑った。

表情としては、『笑み』
だがそこには嬉しさも喜びも楽しさも無く、
かといって怒りや苦しみを隠すための笑みでもない。

無感情な、
ただ、顔の筋肉を動かしただけのような、
虚ろな、
『笑い顔』

ミセ*;ー;)リ「ビコー……ズ?」

ミセリがビコーズの名を再度呼ぶと、
彼が口を開いた。

( ∵)「独りで、やってくれ。
おれは無理だ」

.

836 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:50:44 ID:s/W4n4qI0

早口で呟いた後、
踵を返して走りだしたビコーズ。

そばにいたドクオとブーンに対応が出来ないほどの素早い動き。

もしもショボンとシャキンがそばに居れば、
その表情の怖さをリアルの世界で知っている二人がそばにいたのなら、
もしかしたら止められたかもしれない。

けれどそれはすべて可能性。

現実は、
笑いながら崖から空に向かって飛んだビコーズと、
その背中を見守ることしかできなかった十人。

も何も言えず、
ガラスの砕けるような音が、
ポリゴンが砕け散る音が、
耳に届くまで、
誰も、
動けなかった。

その音がする直前まで聞こえたビコーズの声を、
笑い声とするのか、
叫び声とするのか、
泣き声とするのかは、
十人それぞれの心の中だった。





.

837 ◆dKWWLKB7io :2016/03/25(金) 00:53:01 ID:s/W4n4qI0
以上、『9.境界線』でした。

支援、ありがとうございます!

まだもう少し続く二十話、
よろしくお願いします!

それでは次回、またよろしくお願います。


ではではまたー。

.

838 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 01:01:17 ID:df1qxUpU0
乙乙

839 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 01:06:11 ID:gJrxQPiY0
続き楽しみ

840 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 01:09:28 ID:3TlTVMY20
乙でした
続きを楽しみにしてます

841 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 05:45:33 ID:r1fTvVNA0
こりゃツンとクーはマジでお花畑やなぁ・・・

842 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 05:46:22 ID:r1fTvVNA0
こりゃツンとクーはマジでお花畑やなぁ・・

843 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 09:51:58 ID:N/MtFcMI0
分かりきってる正論言って、殴って、余計な暴言吐いて
ビコーズを自殺させて満足かよ

844 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 10:37:54 ID:beXcIwBYO
どんなに追い詰められようが、どんなに辛かろうが、男として、人として絶対に口にしちゃいけない言葉ってのがあるからな。
甘さとか未熟さとかで許されるレベルの発言じゃない。
ツンクーが切れてなかったらシャキンあたりが殴ってたんじゃないか

845 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 11:47:19 ID:FgE/u1d20
クーのパフパフは一回いくらですか

846 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 12:36:54 ID:mPnZWtxAO
クーはビコーズを自分と重ねたからの態度でしょ
ツンは擁護できないくらい空気読めてないけど

847 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 20:06:09 ID:nvW2AgHk0
まあどうせ他人のせいにするやつなんて遅かれ早かれ死ぬしなww
心に傷を残せてある意味最高に死でいいんじゃね!?www

848 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 23:00:49 ID:FCVPpaYc0
おつおつ

849 名も無きAAのようです :2016/03/25(金) 23:48:52 ID:Gr/2K8NY0
おつ
今までといい今回のビコーズ、ツンやクー含めて、キャラクターに人物としての考え方の違いがそれぞれ出ているのが凄い。
それによるキャラの好き嫌いは人それぞれだけど、その人物の性格や考え方がしっかりみせてくれるの本当良いね

850 名も無きAAのようです :2016/03/26(土) 00:39:27 ID:smiN1xRU0
どちらかといえばビコやミセリの状態のほうがよっぽど普通に思える
ショボンたちのほうが怖いわ

851 名も無きAAのようです :2016/03/26(土) 01:47:21 ID:Gjitm6QY0
精神崩壊寸前の奴にクズ呼ばわり、暴力ですか。
まあ学生だから仕方ない所もあるけどこれは流石に・・・

852 名も無きAAのようです :2016/03/26(土) 02:19:37 ID:BxDd8W7o0
今までの話だとギコしぃがいたからってのもあるけど未熟なところも悪いところもちゃんとあるのな。
クーはドクオの事だとしてツンは良くも悪くもそういう性格だって事かな、仲間以外にはキレると容赦がないというか

853 名も無きAAのようです :2016/03/26(土) 03:01:27 ID:BxDd8W7o0
あとあれか、まだSAOに来たばかりの頃の話だっけか

854 名も無きAAのようです :2016/03/26(土) 09:02:05 ID:5CT.3IUg0
ミセリって普段本編に出てきてるっけ?ごめんねあたし忘れちゃったよ…

855 名も無きAAのようです :2016/03/26(土) 09:22:04 ID:dACbDCms0
ミセリに言い始めたから殴ったんだろ、黙らせなかったらミセリのほうが壊れてたんじゃないの…
言い方はもっとあっただろうけどさ、勝手に惚れられて依存されてそして責任を全部押し付けられたらミセリのほうが壊れるだろ

856 名も無きAAのようです :2016/03/26(土) 09:46:21 ID:b/yUO6v.0
>ミセ*゚ー゚)リ「また来ますね!いこ!フィレフィレ!」

>(‘_L’)「ミセミセ。今日も食べすぎだぞ」

>ミセ*゚3゚)リ「ぶーー。たっておいしいんだぽん」

こんな役で出てるぞ 精神崩壊してるやんけ

857 名も無きAAのようです :2016/03/26(土) 10:42:37 ID:BxDd8W7o0
>>855
女性陣はミセリ視点だった訳だな
女性からみたら女性の肩を持つのは当然だし男性が悪いように見えるよな

男女で視点が違う事をよく忘れる
男性視点で読むからツンが酷く思えるだけか
でもビンタはやりすぎ

858 名も無きAAのようです :2016/03/26(土) 12:07:18 ID:oYBcjqoA0
http://is.gd/bM4zjX

859 名も無きAAのようです :2016/03/26(土) 22:55:39 ID:G4fkvfyk0
「この世界に来たのはお前のせい」なんていう
この世界、特に5人におけるタブーを言ってしまったんだから殴るしかねぇ

860 名も無きAAのようです :2016/03/27(日) 01:16:55 ID:gCdfxGv60
5人におけるタブーを5人に対して言ってないのに殴られたらたまんねーよ

861 名も無きAAのようです :2016/03/27(日) 02:24:29 ID:ZWDimTIo0
嘘か本当か判断できない噂におどらされて仲間死なせて、しまいにゃその責任を惚れた女に負わせようってんだからたまんねぇよな

まだ混乱期の話だからツンも若気のいたりって感じか。これを匂わすようなエピソードがあったかどうか

862 名も無きAAのようです :2016/03/27(日) 11:29:22 ID:UxUoh7co0
噂に踊らされたのはゼアフォーだけだけどな

863 名も無きAAのようです :2016/03/27(日) 13:30:35 ID:36AiMRC.0
いやビコーズであってるぞ

864 名も無きAAのようです :2016/03/27(日) 23:52:03 ID:MUWenynoO
ショボン組は全員それぞれ生まれながらに非凡な才能を持っていたり特殊な環境で生活したりしてる「強い人間」「いわゆる“勝ち組”」なわけで、世の中にはそこまで強い力や心を持っている人間ばかりじゃないということを理解していないんだろうな
そもそも正義の味方を目指してるわけでもないので弱者の気持ちを解ろうとしているわけでもないしする必要はない
一番の目的は「自分と友人達が無事に帰れること」なんだから
中途半端な正義感が先走って他人を平気で傷つけるようなことも時には言ったりしたりするわな

って書いて今まで自分がショボン達5人に感じていた不気味さというか気持ち悪さはこれだったことに気付いた
天上人じみてるというか、他人との接し方に上級市民と平民みたいな態度を所々で感じる

865 名も無きAAのようです :2016/03/28(月) 07:47:55 ID:55aBMgzsO
まぁ全員高校生なのに既に、職場にこんな人材が一人は欲しいと思える位の思考力、判断力、行動力だからな。ドクオ位じゃないか?普通に高校生らしいの。
こんな集団が実際いたら不気味に感じるわなぁ。

866 名も無きAAのようです :2016/03/28(月) 15:51:51 ID:KRkpWZ1.0
http://is.gd/4twCxM

867 名も無きAAのようです :2016/03/28(月) 16:23:54 ID:lC45GYl20
ツンクーのビコーズに対しての言動が理解できない奴の頭御花畑でワロエナイ
命のやり取りの重みが解らない学生にはまだ難しいのかな

868 名も無きAAのようです :2016/03/28(月) 16:54:48 ID:MtuuuR8YO
>>864が俺の思ってたこと整理してくれた感じ。
それがつまらんとかではなくむしろこの作品好きでずっと見てるけど
今回のエピソードは上手くいえないが、誰が悪いとかじゃなくタイミングの悪さとか不運とか全部重なったって感じで、キャラの誰にとってもつらい話だなあと思う
こんなことがあっちゃミセリがショボン達とギルド一緒にやってくのはきつそうだ

869 名も無きAAのようです :2016/03/28(月) 18:55:08 ID:YebT7j7Q0
>>867
ただゲームをやりにきただけなのにいきなり死んだらリアルでも死にますみたいな状況になって
短期間できっちり受け入れきってる時点で正直常人離れだとおもうぞ
受け入れてると思ってる人間もいざ目の前で本当に死んでしまったら取り乱すだろうに

870 名も無きAAのようです :2016/03/28(月) 20:14:31 ID:KRkpWZ1.0
http://is.gd/4twCxM

871 名も無きAAのようです :2016/03/29(火) 00:31:42 ID:q9VPBxqQO
もっとも一番怖いというか不気味なのはシャキンだけどな
ショボン達のような浮世離れした臭いを感じさせないのに本気の能力はショボン以上(恐らく)というね
こういう愚者の皮を被れる賢者は一番敵に回したくない

872 名も無きAAのようです :2016/03/29(火) 00:55:28 ID:TeKDJGJ60
ツンもクーもこの時期まだ冷静じゃないってのが良くわかるよね。
実際に酷い言葉を吐いてしまったとはいえ結局ビコーズのことは考えてやらずにそれをギャーギャー攻めてるだけだし。
ツンはまあ駄目そうだけど少なくとも物語後半のクーならもっと考えをめぐらせて冷静に諌めることも出来ただろうからな

873 名も無きAAのようです :2016/03/29(火) 03:38:38 ID:dS2eWT4g0
全て自分でとった行動の責任は自分にあるものだよ。
ゲーム始めるのも自殺するのも全て自分の管理下で、他の環境のせいではない。
どう考えたってビコーズが自分で選んで人のせいにして自分で死んだだけ。
被害者意識高すぎて共感してる奴大杉。

874 名も無きAAのようです :2016/03/29(火) 16:30:03 ID:T6HT6hG.0
>>873
そんな事読んでるやつ皆分かってるだろうしその上でツンやクーの対応について語ってんだろ
自分の気にそぐわない意見もあるだろうけど考え方は人それぞれなんだからいちいち人を下に見たような言い方すんな
語りたいなら語るだけにしろよ、無駄に荒らすな

875 名も無きAAのようです :2016/03/29(火) 18:13:04 ID:BtYb.ylY0
>>856
おお!ありがとう!
確かにこんなバカップルいたわwww

876 名も無きAAのようです :2016/03/29(火) 21:19:41 ID:s2flBIt2O
クーが叩かれてんのはよく分からんな
あの場面で誰かがきっちり言っとかないと今度はミセリが極限まで追い込まれる
ツンはうん、まぁ……間違いなく無用な追撃だったね

877 名も無きAAのようです :2016/03/30(水) 02:42:35 ID:3nc.OrF60
ツンは当時はそういう性格だったって事だよな、ミセリの味方なのもあるけどクーが発言したからってのもありそう。ブーンやドクオはツンのそういうところについて分かってるようだし。
読者が思うようなところはミルナとデミタスが代弁しているように思える。

そんなツンが読者から責められるのは仕方ないとして、当時のクーに関してはもうあの言葉が仲間の誰よりもトラウマになっているだけじゃないか?もう聞きたくないし言わせたくないみたいな。

878 名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 19:31:23 ID:..EOuTuA0
ミセリぶっ壊れっぽくなってるけど、15話最後に居たのもミセリじゃないのかな
何となくだし、こういう話していいのか分からんけど

879 名も無きAAのようです :2016/04/06(水) 07:29:36 ID:4HBDV6WI0
>>878
アルルッカバー=ドクオが判明した時点で今まで読んできた人なら普通に思いつくことだろ

880 名も無きAAのようです :2016/04/10(日) 18:13:05 ID:EjjO4JjA0
過去編長くて本編どんな状況だったか忘れたわ
読み直す時間ないから誰か本編を産業で

881 名も無きAAのようです :2016/04/10(日) 22:06:05 ID:K6tpmLOc0
>>880




882 名も無きAAのようです :2016/04/11(月) 08:50:07 ID:o2xFK56A0
優秀でも精神的にまだまだ未熟なお子様に、発狂寸前で自己防衛のために形振り構わず責任転嫁してるような奴の心情を汲み取って対応することなんか出来ないだろ…jk

883 名も無きAAのようです :2016/04/12(火) 02:36:21 ID:kSdLtm4A0
どっちもどっち

884 名も無きAAのようです :2016/04/16(土) 20:32:36 ID:m/g0VNcI0
http://jump.cx/I7R2D

885 名も無きAAのようです :2016/04/28(木) 00:30:36 ID:poQdsSCk0
次まだかな?

886 名も無きAAのようです :2016/05/08(日) 20:07:15 ID:YVsF4Ml20
面白いのう

887 ◆dKWWLKB7io :2016/05/08(日) 23:50:23 ID:iSJsU6I20





10.謀略と攻略





.

888 ◆dKWWLKB7io :2016/05/08(日) 23:51:33 ID:iSJsU6I20

ホルンカに辿り着いた10人。

気を失ったミセリを連れて帰ることが出来たのは、
ひとえにアルゴの知識だった。

(アルゴ)「これに彼女を入れれば、
引きずって連れ帰ることができると思う」

そう言いながら彼女がショボンに送ったのは、
アイテム名『寝袋』が2つだった。

どうやら次の町で手に入るアイテムらしく、
ドクオは一人納得していた。

その『寝袋』にミセリを入れ、
筋力パラメーターを比較的高くしていた
シャキン、ミルナ、デミタス、ドクオが三人ずつ交代で引き摺ってホルンカに戻ってきた。

辿り着いたのは本当にギリギリで、
ホルンカの門を通り過ぎて少し引き摺った時に、
耐久値が無くなった寝袋がポリゴンとなって砕け散った。

その砕け散る音が『あの時』の『あの音』に似ていて、
その音が響いた瞬間全員が横たわるミセリを確認し、
存在していることを視認したのちに胸をなでおろした。

2つ目の寝袋を使って農場の間借りしている部屋に辿り着いたときは、
全員が疲れ切っていた。

('A`)「あ……アルゴ……」

いつの間にか届いていたフレンド申請のメッセージを見つつ、
ドクオが部屋を見回す。

いつものリビングにいるのは男が五人だけだった。

(´・ω・`)「村の入り口で分かれたよ。
アルゴさんにはお礼をしないとだよね」

.

889 ◆dKWWLKB7io :2016/05/08(日) 23:52:37 ID:iSJsU6I20

既に彼女のフレンド登録を済ませたショボンが何事もなく告げる。

('A`)「気付いていたなら言えよ」

(´・ω・`)「アルゴさん、
声をかけられたくなさそうだったから」

(`・ω・´)「お、おれにもフレンド申請が来てる」

( ゚д゚ )「とりあえずは昔の知り合いと、
特殊な奴を押さえたってところか?」

(´・_ゝ・`)「だろうな」

(´・ω・`)「特殊って」

(`・ω・´)「はっはっは。
おれはともかくお前は当たってるな」

(´・ω・`)

( ゚д゚ )

(´・_ゝ・`)

('A`)

四人の視線を受け止めつつも、
何もわからないふりをして小首をかしげるシャキン。

(´・ω・`)「かわいくないよ」

(´・_ゝ・`)「それが似合うのは二次の少年だけだ」

('A`)「せめて三次の少女も入れてください」

( ゚д゚ )「どちらにせよ変態だがな」

(´・_ゝ・`)「お前に言われたくない」

.

890 ◆dKWWLKB7io :2016/05/08(日) 23:53:47 ID:iSJsU6I20

今まで通りのような会話をつなげていく五人。
しかしその笑顔は、完璧に笑顔を見せているシャキン以外、
すこし強張っていた。

会話を続けていると、寝室のドアが開く。

('A`)「……どうだ?」

( ^ω^)「目を覚ます様子はないお」

('A`)「そっか……」

(´・_ゝ・`)「あの時からずっと気を失ったままか」

( ゚д゚ )「仲間が二人とも……だからな。
しかも、ビコーズは……」

口を閉ざし、それぞれにあの瞬間を思い出す。

(`・ω・´)「ツンとクーは?」

( ^ω^)「……元気、だお」

(`・ω・´)「無理矢理?」

( ^ω^)「……うん。
だから、僕が居たら休めないかと思って、
出てきたんだお」

(`・ω・´)「おつかれさん」

小さな声でねぎらいの言葉をかけるシャキンに、
黙って少しだけ首を横に振るブーン。

ドクオに促されてソファーに座ると、
ショボンが目の前にカップを置いた。

(´・ω・`)「まずは少し落ち着こう」

.

891 ◆dKWWLKB7io :2016/05/08(日) 23:54:55 ID:iSJsU6I20

( ^ω^)「……お」

見ればいつの間にか全員に行き渡っており、
ショボン自身もトレイを置いた後一つカップを持っていた。

(´・_ゝ・`)「おれ達がミセリを運ぶ要員だったから
後ろから戦闘を見てるだけなことが多かったけど、
彼女たち二人、少し危険だったな」

( ゚д゚ )「ショボンが槍を投げたり短剣や石を投げつけたのは驚いたけど、
あんなふうにモンスターの意識を自分に向けさせることが出来たんだな」

('A`)「ショボンがひきつけないと、
危険な場面がいくつかあった」

(`・ω・´)「……二人とも、
猪突猛進に突っ込んでいっていたからな。
空回りしていた」

( ^ω^)「ツンも、クーも、
ビコーズが死んだのは自分のせいだって思ってるんだお」

('A`)「はあ?」

(´・_ゝ・`)「あー。そっか」

( ゚д゚ )「少しきついことは言ってしまっていたから、
気にしているか……。
間違ったことは言っていなかったんだけどな」

('A`)「い、いや、でも」

(´・_ゝ・`)「ああ。ビコーズが死を選んだのは二人のせいじゃないってことは分かってる。
でもそれは、見ているおれ達が分かっているだけで、
二人は自分があんなことを言ったからって思ってるんじゃないか?」

( ^ω^)「……そうだと思うお」

('A`)「だ、だってあれくらいあいつらなら普通だし」

.

892 ◆dKWWLKB7io :2016/05/08(日) 23:56:35 ID:iSJsU6I20

( ゚д゚ )「クーが激昂した理由は分からないが、
言っていたことは間違っていない。
ツンが言ったことは多少行き過ぎだったが、
お前たち仲間内なら許容範囲だったんだろ。
ただ、今は通常の状態じゃない。
ビコーズは特に、あの時は、な。
そして、あいつはおれ達の事を『仲間』とは思っていなかったのかもしれない」

('A`)「そんな……」

(´・_ゝ・`)「殴ったのは少しいただけないが、
もし彼女がなにもせず、
あいつがあのままあんなことを言い続けていたら……。
おれが殴ってたかもしれん」

( ゚д゚ )「おれもだ。
というか、本来ならばおれ達が同性として、
おそらくは年上の男として、
あいつを正してやらなきゃいけなかったんだ」

(`・ω・´)「うむ。そうだな。
おれ達がやらなきゃいけなかった。
そばにいたんだから、ちゃんと諫めなければいけなかったんだ。
……二人には、嫌な役目をさせてしまった」

(;^ω^)「そ、そんなことはないお!」

(´・ω・`)「責任は、僕にある」

シャキン達三人が首を垂れるなか、
ずっと黙っていたショボンがぼそりと呟いた。

(`・ω・´)「おい?」

(´・ω・`)「僕がちゃんと話をして、説明して、
別行動をとらなければ。
一緒にはじまりの街に戻れば、
こんなことにはならなかった」

.

893 ◆dKWWLKB7io :2016/05/08(日) 23:57:42 ID:iSJsU6I20

( ゚д゚ )「おいおい」

(´・_ゝ・`)「そこまで遡らなくても」

('A`)「それにはそうするだけの理由があっただろ」

( ^ω^)「そうだお!
だからそんなこと!」

(´・ω・`)「理由は確かにあったよ。
でもそれは、どうしてもじゃない。
彼らのプライドなんて気にせず、
優位な情報を渡せばよかったんだ」

('A`)「ショボン……」

( ^ω^)「ショボン……」

(`・ω・´)「いい加減にしろ!」

立ち上がったシャキンが、
ショボンの頭に拳骨を落とす。

(´・ω・`)「に、兄さん!?」

(`・ω・´)「お前は何様のつもりだ!」

(´・ω・`)「え?」

シャキンの一喝。
それは拳骨と相まって雷と呼ぶにふさわしい衝撃となり、
ショボンは呆然とした。

そして呆然としたのはショボンだけではなく、
それを見ていた四人も目を丸くして見守っていた。

(`・ω・´)「確かにゼアフォーとビコーズの事は残念だし、
後悔もある。
特にビコーズの事は他にやり方もあったかもしれない。
けれど、それを自分のせいだなんていうのはおこがましい!
人の命を何だと思っているんだ!」

.

894 ◆dKWWLKB7io :2016/05/08(日) 23:59:08 ID:iSJsU6I20

(´・ω・`)「で、でも……」

(`・ω・´)「でももくそもあるか!
何でも自分のせいにして収めようとするな!
物事はそんなに簡単じゃない!
しかも命にかかわることなんだからな!」

(´・ω・`)「それは……」

(`・ω・´)「だいたいな、お前の今持っている情報、
はじまりの街でのことは、今は混乱しか招かない!」

(´・ω・`)!

(`・ω・´)「おれ達はいい。
ミルナもデミタスもある程度の恩恵を受けることが出来たし、
おれ達はお前たちと一緒に行動することを選べるからな。
だがミセリ達、そしてその後に続くプレイヤーが、
同じレベルの恩恵を受け取れるかどうか分からないだろうが!」

(´・ω・`)「そ、それは……」

(`・ω・´)「今お前が持っている情報はそういった部類の情報だ。
お前だってそれが分かっているから、
まずはおれ達で試したんだろう?」

(´・ω・`)「……うん」

(`・ω・´)「これ以上情報を広めることは禁止だ。
お前の命が狙われる。」

(´・ω・`)「でも!
手帳はともかくそれ以外のアイテムとスロットは!」

(`・ω・´)「使いこなせないアイテムは身を亡ぼす。
不平等なアイテムは、それをめぐって争いが起きる」

(´・ω・`)「でも……」

.

895 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:00:31 ID:E4SpJ5.o0

(`・ω・´)「情報を広めたいのなら、もっともっと考えろ」

(´・ω・`)!

(`・ω・´)「より良い方法を、均等な方法を、暴動が起きない方法を、
そして、自分と仲間たちが危機にさらされない方法を」

(´・ω・`)「それは……」

(`・ω・´)「それが出来ないのならば、諦めろ」

(´・ω・`)「兄さん……」

二人を見守る四人。

そのうちの二人、特にブーンとドクオは驚いていた。
ショボンとシャキン、二人をよく知っているつもりだったが、
こんな二人を見るのは初めてだったからだ

(´・_ゝ・`)「お前は思いつかないのか?」

(`・ω・´)「ん?」

不思議そうにシャキンに問いかけるデミタス。

(´・_ゝ・`)「いや、『ん?』じゃなくて、
シャキン、お前がその情報をうまく使いこなす、
広める方法は思いつかないのか?」

(`・ω・´)「そういうのはおれよりこいつの方がうまい」

(´・_ゝ・`)「は?」

( ゚д゚ )「はあ?」

デミタスと同じことを考えていたミルナも思わず声を漏らした。

(`・ω・´)「そういったことを考えるのは、
おれよりショボンの方が上手いし早いし確実だ。
ただこいつは自分が泥をかぶる方法を考えがちだから、
それは矯正してやらんといけないけどな」

.

896 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:01:40 ID:E4SpJ5.o0

(;´・_ゝ・`)「へー」

(; ゚д゚ )「ほー」

言葉の外で『おれは考えない』と断言したシャキン。
唖然とするデミタスとミルナ。

( ^ω^)「おっおっお」

('A`)「あー。うん」

そしてブーンとドクオは、
自分たちの知っているシャキンを見て少し落ち着いた。

(´・ω・`)「……誰も傷つけない、
情報の広めかた……」

そんな五人を意識しないでぼそぼそと呟いていたショボンだったが、
一階天井を見てから俯くと、大きくため息をついて正面をみた。

(´・ω・`)「思いつかないや」

(`・ω・´)「なら、考えるんだな」

(´・ω・`)「……うん」

辛そうに、けれど決意を込めた引き締めた表情で頷くショボン。

それを見た五人は、五人それぞれに思いを含んだ笑顔を見せた。

('A`)「……これから、どうする?」

ほんの少しだけゆったりとした空気が流れたが、
ドクオの問いかけに全員の表情が引き締まった。

(`・ω・´)「彼女が目を覚ますまでは、
ここを拠点にするのが一番だろう」

(´・ω・`)「うん」

.

897 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:03:50 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「なあ、もしかして彼女は今病院に運ばれているってことはないか?」

(´・_ゝ・`)「あ、なるほど」

( ^ω^)「お!それなら目を覚まさない理由もわかるお!」

('A`)「現実世界の身体が病院に運ばれるまでの間は接続が切られる。
その間の身体はシステムで保護されるけど、
時間が過ぎたら自動的にナーヴギアが……」

(´・ω・`)「この前送られてきたアナウンスだよね。
多分、違うと思う。
ここに連れてくる間に彼女の身体にはほんの少しだけどダメージがあったらしく、
HPが少しだけ減っていたんだ」

(´・_ゝ・`)「『システムで保護』されていなかったってことか」

(´・ω・`)「はい」

( ゚д゚ )「心を閉ざしている。
ということか。やはり」

(`・ω・´)「彼女はここで保護するとして、
その間のおれ達だな」

( ゚д゚ )「交代で出るか?
コルは稼がないとだし、
レベル上げもしたいし」

( ^ω^)「……だおね。
ミセリさん、ツンとクーにはここにいてもらって……でも……」

(´・ω・`)「ここには六人います。
女の子三人は少し不用心な気もするから一人残って、
五人でパーティーを組んで出るのが一番じゃないかと」

( ^ω^)「それが良いと思うお!」

( ゚д゚ )「そうだな。
ミセリもだが、二人も当分は外に行かない方が良いだろ」

.

898 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:06:22 ID:E4SpJ5.o0

ショボンの提案にうなずく五人。

その後明日からのスケジュールを決めていると夜も更けたため、
シャキン達三人は街の宿に一度引き上げた。

ミセリの目は、まだ開かれなかった。







夜。

視界の隅の時刻表示が23時を告げる頃、
リビングにはブーンがいた。

一つ目の寝室にはミセリとツンとクーがいる。
二つ目の寝室をブーンとドクオとショボンで使っているのだが、
念のため一人はリビングで休むことにした。
三人が三人共、自分がリビングで休むと主張したため、
話し合いの結果時間で交代することにして、
まずはブーンがリビングにいることになった。

ショボンに入れてもらったお茶を飲みつつ、
ショボンが作った、
彼の記憶の中のSAOの説明書を書き起こした本をペラペラと捲っていると、
一つ目の寝室のドアがゆっくりと開いた。

(  )「ブーン」

( ^ω^)「ツン……」

ブーンは二人掛けのソファーに腰かけていたが、
自分を呼んだツンの声に立ち上がる。

しかしツンがその横に移動して黙って座ったため、
また腰かけた。

.

899 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:07:28 ID:E4SpJ5.o0

( ^ω^)「ツン……」

ξ゚⊿゚)ξ「私が、殴ったから……。
ひどいことを言ったから、死んじゃった……」

前を見ながら。
隣にいるブーンを視界に入れず、
背筋を伸ばし、
何もない壁を見ながら、
呟いたツン。

( ^ω^)「!」

ξ゚⊿゚)ξ「私が、あんなことを……、
ビコーズに言ったから……」

( ^ω^)「違うお!
ツンが言ったから死んだわけじゃないお!」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……。ありがと……」

( ^ω^)「あの時ビコーズはずっと呟いていたお!
『おれのせいじゃない』って。
けれど、ときどき、つらそうに、
『おれがいなければ』って、言っていて!
きっとビコーズは、僕達が来るより前から、きっと……」

ξ゚⊿゚)ξ「もし、ビコーズが最初からそうするつもりだったとしても、
私がしたのことが、きっと、引き金になっちゃったんだよ」

( ^ω^)「違うお!
ツンは悪くないお!」

ブーンは座ったまま腰を捻って隣に座るツンを見つめている。
しかしツンはブーンの顔は見ておらず、
ただじっと、目の前の壁を見続けている。

ξ゚⊿゚)ξ「だめだな……わたし。
自分の事しか考えられない」

.

900 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:08:27 ID:E4SpJ5.o0

( ^ω^)「ツン!あれはクーやショボンの事を!」

ξ゚⊿゚)ξ「辛そうなクーを見ていられなかった。
ショボンだって苦しくなると思った。
……あのまま言われていたら、ミセリだって……」

( ^ω^)「そうだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「でもそれは、私が、辛そうな三人を見たくなかった。だけ。
自分の為に、クーを止めて、二度と同じようなことを言わないように、
ビコーズを止めたくて、あんなことをした。
私が、私の為に、したこと」

( ^ω^)「ツン……」

ξ;⊿゚)ξ「ひどいことをした、とは思う。
反省しているし、悔やんでる。
もっと、うまいやり方があったんじゃないかって、思ってる」

黙ってツンの肩を抱くブーン。
けれどツンは寄り添おうとはせず、
身体をこわばらせただけだった。

ξ;⊿;)ξ「でも、
言った内容を間違っていたとは思わない。
違う伝え方があったし、
言わなくてよかったことかもしれないけど、
許せなかったから。
あれで、
怒って、
けんかして、
思ってること言いあって、
思い直して、
ごめんって言って、
また、
みんなで、
レベル上げとか、
戦闘とかを、
出来るって、
思った……のに……」

.

901 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:09:39 ID:E4SpJ5.o0

( ^ω^)「ツン……。
ちょっと言い方はきつかったけど、
ツンは、……悪くないお。
間違ってないお。
きっと、タイミングが悪かっただけだお……」

肩を抱く手を強め、
自分に引き寄せるブーン。

ツンは一瞬拒んだが、
すぐにその力に負けて体を寄り添った。

そしてブーンの肩に頭をのせる。

ξ;⊿;)ξ「わたしは、ずるい……。
ブーンならそう言ってくれるってわかってて、
こんなこと言って、
甘えてる」

( ^ω^)「ツンは悪くないお」

ξ;⊿:)ξ「わたしは、ずるい……。
でも、だから、全部、受け止めて、
でも、私は、生きる。
みんなと、生きて、みせる。
ビコーズの、事を、抱えて」

( ^ω^)「……ツンが抱えなきゃいけないことだとは思わないお。
でも、どうしても抱えてしまうなら、
僕も一緒に抱えるお」

ξ;⊿:)ξ「ブーン……」

ツンの両目からポロポロと涙がこぼれ、
ブーンの肩を濡らす。

.

902 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:10:46 ID:E4SpJ5.o0

ξ;⊿:)ξ「明日は、自分で立つから。
全部抱えて、ちゃんと立つから。
忘れない。
自分のしてしまったことは、忘れない。
でも、今日だけは、今だけは、
こうさせて……。
ブーン…………」

( ^ω^)「ツン……。
僕はずっと、ここにいるお」

二人の夜は更け、
時刻は12時を過ぎていった。




時は深夜2時を少し回っていた。。

二つあるベッドの上で、
彼女は瞼を開いた。

見慣れない、
けれど見たことのある天井を見た彼女は、
ゆっくりと顔を右に向けた。

隣のベッドには、一人少女が上に何もかけずに横たわっている。
視線をずらすと、窓際の簡素な木の机に、
同じく簡素な木の椅子に座った少女が、
枕にした両手に額をのせて寝息を立てていた。

すべてを自分なりに理解した少女は、
ほんの少しだけ、
二人を起こさないように身動ぎをした。





.

903 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:11:53 ID:E4SpJ5.o0


時計は4時を告げていた。

リビングに一人座っているドクオ。

テーブルの上にはカップと本が置かれている。

('A`)「いつの間にこんな説明書をつくっていたんだよ」

感心しつつ呆れた風にペラペラと捲り、
けれどすぐにソファーに横たわった。

少しだけ身体を抱えるように横になると、
ソファーに身体がすっぽりとおさまった。

('A`)「……ふぅ……」

身体を包まれるような心地よさに一息つくと、
背凭れの後ろのドアがゆっくりと開いた。

結果的にソファーに隠れるような体勢でいたドクオに気付くことなく、
開かれたドアから出た人影はがテーブルに近付いた。

川 ゚ -゚)「ドクオか」

('A`;)「うをっ!」

川 ゚ -゚)「こんなところで何をしているんだ?」

テーブルの横の水差しからカップに水を灌ぐクー。

('A`)「お、おはよう」

慌てて起き上がるドクオ。

川 ゚ -゚)「ん?ああ。そうか。もうそんな時間なんだな」

そのままドクオの正面のソファーに座る。

.

904 名も無きAAのようです :2016/05/09(月) 00:12:24 ID:tdKUX1ew0
支援

905 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:12:53 ID:E4SpJ5.o0

川 ゚ -゚)「私は喉が渇いて目が覚めただけだが、
ドクオは早いんだな。
もしかして、寝てないのか?」

('A`)「い、いや、そんなわけではないんだけど」

川 ゚ -゚)「ん?
……なるほどな」

ドクオの気まずそうな顔と、
テーブルに置かれたカップを見て表情を緩めるクー。

川 ゚ -゚)「交代で、この部屋の番をしていてくれたのか。
ありがとう」

('A`)「べ、別にお礼を言われるようなことは」

川 ゚ -゚)「いや、体を休める時間を減らして私達を守っていてくれたんだからな。
言わせてほしい」

('A`)「ああ……。うん」

川 ゚ -゚)「どうした?」

('A`)「あ、いや……」

川 ゚ -゚)「あんなことがあったのに、普通に見えるのが不思議か?」

('A`)「そ、そんなことは……」

徐々に声を小さくするドクオに、
悲しげな笑顔を見せるクー。

川 ゚ -゚)「……ビコーズにしてしまった事に、
後悔をしていないわけではない。
あの時は我を忘れてしまっていた。
ツンが止めてくれなかったら、
ツンがああやって彼を叩いていなかったら、
私がもっと酷いことを言って、してしまっていたかもしれない。
それくらい、感情に身を委ねてしまっていた」

.

906 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:14:48 ID:E4SpJ5.o0

('A`)「クー?」

川 ゚ -゚)「きっとツンは、私以上に苦しんでいる。
彼に対してひどいことを言ったことを、
叩いたことを悔やみ、悩み、
彼の死を抱えてしまっている」

目の前のテーブルに置いたカップ。
その中の水を一気に飲み干すクー。
そして立ち上がり、水差しに向かった。

川 ゚ -゚)「だから私は、泣いてなんかいられないんだ。
悔やむ暇があったら、次にあんなことをしないように考えなければいけない。
そして私の代わりに大きなものを抱えてしまったツンを支えたい」

水を注ぎ、一気に飲み干す。
そしてもう一度注ぐと、
ソファーに改めて座った。

川 ゚ -゚)「そしてミセリは、私はもちろん、ツンよりもつらいはずだ。
目の前で自分を守ってゼアフォーが、
そしてビコーズが……。
自分の周りで二人も消えてしまったんだ。
辛くない、わけがない。
だから私なんかが、悲劇のヒロインぶって、
泣いたり、苦しんだりしていたらいけないんだ」

水を注いだグラスに手を伸ばすクー。

しかし掴んだ瞬間にすぐ手を離し、
座りなおした。

川 ゚ -゚)「……もしも、ミセリが許してくれるなら、
私は彼女のそばにもいたいと思う。
何ができるというわけでもなくても、
そばに居れば何かできる時があるかもしれない」

('A`)「クー……」

.

907 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:16:35 ID:E4SpJ5.o0

ただずっとクーの独り言を聞いていたドクオだったが、
辛そうに口を開いた。

('A`)「クー。
おれの父さんが死んだのは、
小学生の時だったんだ」

川 ゚ -゚)?

('A`)「ショボンとはまだ知り合う前だったけど、
ブーンがいてくれて、
そのころはまだツンも家が近かったから、
そばにいてくれた」

川 ゚ -゚)「ドクオ?」

('A`)「おれさ、父さんが死んだとき、
最初、泣かなかったんだ。
なんか実感がなくってさ。
目の前で寝ている父さんがもう起きないってことも、
火葬場で焼かれて、もうその姿を見ることもないってなった時も、
涙は出なかった。
なんとなく、それでも、いつかまた会えるような気がしてたんだ
いや、いつかじゃなくて、明日にでも、
ただいまって言って帰ってきてくれるような気がしてた。
でもさ、なんか、少し経ったときに、急に分かったんだ。
もう会えないってことに。
母さんが頑張ってる姿とか、
学校に行ってまわりが腫れ物に触るみたいに接してきた時に。
急に、わかったんだ。
でもなんか日が経ちすぎてて、泣くことが出来なかった。
体の中が空っぽになって、
穴が出来て、
埋める事なんかできなくて、
それに母さんの手伝いしなきゃとか、
父さんが言ってたことをいろいろ思い出したりして」

川 ゚ -゚)

.

908 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:18:30 ID:E4SpJ5.o0

('A`)「空回りして、
なんとなく友達も少なくなって。
でもさ、隣にブーンがいてくれた。
ツンがこっちを見てた。
そしたらさ、ああ、こいつらの前では頑張らなくてもいいんだって、
弱音を言ってもいいんだって、
なんか、そんなことを思ったら、
おれ、泣いてた。
ブーンは黙って隣にいてくれて、
ツンも黙ってそばにいてくれた」

川 ゚ -゚)「ドクオ……」

('A`)「ごめん、何言ってんのかわからないよな」

川 ゚ -゚)「い、いや……」

('A`)「でさ、何が言いたいかっていうと、
クーもさ、一人じゃないと思うんだ。
確かにツンも責任とか感じているとおもうけど、
だからと言って、クーよりも私の方が辛いとか言うやつじゃないし。
だから、さ。
ここには、ブーンもいるし、ショボンだっている。
シャキンさんもいい人だし、
ミルナさんやデミタスさんだっていい人だと思う。
……頼りないけど、おれだっている」

川 ゚ -゚)「……ドクオ」

('A`)「辛かったり、
苦しかったりするときは、
言っていいと思うんだ。
むやみやたらには言えないけど、
せめて、おれ達にはさ。
ツンに言えないなら、
おれ達に」

川 ゚ -゚)「ドクオ……別にわたしは」

('A`)「だって、手が震えてる」

.

909 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:19:39 ID:E4SpJ5.o0

川 ゚ -゚)!

膝に置いていた手を後ろに隠すクー。

ドクオはそれを悲しげな眼で見てから、
口を開いた。

('A`)「苦しかったり、辛かったりするときは、
泣いた方が良いと、おれは思うんだ。
泣けば何が変わるわけじゃないし、
泣けない時もあるのは知ってる。
でも、泣きたいときは、泣いていいと思う。
辛いときや苦しいときは、そう言っていいんだと思う。
誰よりは辛くないとか、
誰々に悪いとかじゃなくて、
今、自分が、どう感じているかを、ちゃんと、分かるためにも」

川   )「ドクオ……だが……私は……」

俯くクー。
長い黒髪が顔を隠す

('A`)「おれはさ、多分だけどさ、
一番ビコーズの気持ちが分かってると思う。
同じβテスターで、
βテスト時代もそれほど強かったりしたわけじゃないし、
参加したボス戦はすぐ死んだし。
ただ、おれとビコーズの違いは、
βテストの後、もう一度この世界に来たいって、
戻ってきたいって本気で思ったのと、
リアルの世界に友達がいた事だと思う。
もしビコーズのような状態でこの世界に来てしまって、
自分のせいでやっとできた友達を死なせてしまったら、
自分を許せなくなる。
きっと、ビコーズは、ゼアフォーを死なせてしまった時点で……」

川   )「やめてくれ!
私がいけないんだ!
私が我を忘れてあんなことを言ってしまったから!
だからビコーズはあんなことを選んでしまったんだ!」

.

910 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:20:39 ID:E4SpJ5.o0

声を荒げるクー。
下を向いたままだが首を横に振り、
肩を震わせていた。

('A`)「そうおもうなら、それでもいいと思う。
でも、おれはそう思ってないし、
きっとあそこにいた全員が、そんな風には思ってない」

川   )「私の、わたしのせいで!」

クーの膝の上で握られた量のこぶし。
その上にぼたぼたとしずくが落ちるが、
ドクオは気付かないふりをした。

('A`)「クーがそう思うなら、
それも正解なんだと思う。
でもおれは、おれの思っていることが正しいと思うし、
そうやってクーに接する。
もちろんツンも悪くない。
ミセリだって、悪くない。
……ビコーズが、自分自身で、選んだんだと、
おれは思う。
うん……。そうだな。
きっと、何もなかったら、
おれもビコーズと同じ道を選んだ」

川   )「……?」

('A`)「現実の世界には、友達がいて、
母さんがいて、辛いこともあるけど、
楽しいこともある。
夢だってある。
もしそれが何もなくて、
別の世界を求めてこの世界に来て、
こんな状況になっていて、
自分のせいでやっとできた友達が死んでしまったら……。
ビコーズと同じことをするかもしれない」

川   )「!」。

.

911 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:21:50 ID:E4SpJ5.o0

('A`)「そうだな……。
おれが一番ビコーズの気持ちが分かったはずなのに。
おれが本気で考えていたら、
あいつが何をしでかすか分かったかもしれない。
それは近い立場のおれしか、分からなかったのに。
おれは、止めることが出来なかった。
あいつが死んだのは、おれのせいだな」

川 ゚ -゚)「ち!違う!そんなことはない!」

顔を上げるクー。
涙に濡れた瞳が、悲し気に歪んでいた。

('A`)「ショボンも悔やんでいた。
別行動をしなければって。
ブーンもきっと悔やんでる。
もっと早く動くことが出来たらって。
あの場にいた皆が悔やんでると、
おれは思う」

川 ゚ -゚)「ドクオ……」

('A`)「だから……その……。
一人で、抱え込まなくていいんじゃないかな。
みんなが、いるから」

川 ゚ -゚)「ドクオ……」

('A`)「なんか……ごめん。
もっとうまく、いろいろ言えたらいいのに」

川 ゚ -゚)「いや。
ありがとう。ドクオ。
ドクオは、やさしいな」

('A`)「べ、べべべべべべべべべべべべべえ別に優しくなんか」

顔を赤くして動揺するドクオ。

それを見たクーは、
ほんの少しだけ微笑んだ。

.

912 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:22:52 ID:E4SpJ5.o0




朝。
時計は8時を告げている。

簡単に食事を済ませた後、
今日の行動を決めるために
昨日と同じ位置に座っている六人。

(´・ω・`)「それじゃあ午前中の留守番はブーンで、
一回戻った後、午後はドクオってことで」

( ^ω^)「わかったお」

('A`)「りょうかいー」

(`・ω・´)「いいのか?」

( ^ω^)「レベル上げはまたできるけど、
ここにいるのは今が良いお」

( ゚д゚ )「おれ達がいるよりは、
彼女達も良いだろ」

('A`)「いや、別に二人の事を……」

(´・_ゝ・`)「わかってる。
でも、まだ知り合って間もないからな。
今は気心が知れた相手の方が良いだろってことだ」

(`・ω・´)「二人とも、彼女たちくらいの女には興味ないしな」

( ゚д゚ )「女は熟してからだ」

(´・_ゝ・`)「言っておくが、
二次の少年が至高の存在であるというだけで、
女に興味がないわけではないからな」

.

913 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:24:17 ID:E4SpJ5.o0

( ^ω^)「その発言だけで二人をそういう目で見たことがないのが分かるお」

(´・_ゝ・`)「それは正しい」

('A`)「何を話しているんだこの二人は」

(´・ω・`)「ほんとだね」

(`・ω・´)「お前はこういうネタには弱いよな」

(´・ω・`)「うるさいよ」

('A`)「そういえば下ネタは苦手だよな」

(´・ω・`)「ドクオまで」

( ゚д゚ )「ショボンにも苦手なものがあったのか。
それならばまずは熟女の良さを……」

(´・ω・`)「ミルナさん?」

(´・_ゝ・`)「まずは二次、少年の良さからだろう。常考」

(;´・ω・`)「デミタスさん!?」

( ^ω^)「おっおっお。
そういえば、去年もらったラブレターはどうしたんだお?」

(;´・ω・`)「ブーン!!」

(`・ω・´)「なに!?
聞いてないぞ!」

(;´・ω・`)「話す必要ないでしょ!」

('A`)「学校帰りに時々寄るお店の店員からもらってたあれな」

(;´・ω・`)「ドクオ!?」

.

914 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:25:33 ID:E4SpJ5.o0

(`・ω・´)「なんだ。うちの店以外にも寄るところがあるのか。
浮気だな」

( ^ω^)「そこのお店は夕方のケーキセットが安いんだお」

(`・ω・´)「スイーツかー。
やはり甘いものがないとだめか。
うちの店はパンケーキとアイスクリームくらいしかおいて無いからな」

('A`)「店の雰囲気も落ち着いてて、
自然と客も静かにしてていい感じで」

(`・ω・´)「それはいいな!」

ξ゚⊿゚)ξ「何の話をしているのよ」

川 ゚ -゚)「まったくだ」

( ^ω^)「ツン!クー!」

いつの間にか開いていた寝室のドア。

ツンとクーの二人が仁王立ちで六人を見ていた。

ξ゚⊿゚)ξ「ミセリの看病は交代にして、
私達も行くわよ」

川 ゚ -゚)「最初にブーンが留守番なら、
まずは私が先だな」

ξ゚⊿゚)ξ「なによそれ。
私が行くわよ」

川 ゚ -゚)「……それでもいいが?」

ξ゚⊿゚)ξ「なんかその間がムカつく」

現れた二人を見て、
その会話を聞いて呆気にとられる六人。

.

915 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:27:17 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「お、おい」

(´・_ゝ・`)「二人とも?」

川 ゚ -゚)「ん?」

ξ゚⊿゚)ξ「何?」

( ゚д゚ )「いや、その」

(´・_ゝ・`)「なんだ、その」

川 ゚ -゚)「どうした?」

ξ゚⊿゚)ξ「どうしたのよ」

( ゚д゚ )「あ、いや、その、あれだ」

(´・_ゝ・`)「うん、その、あれだ」

川 ゚ -゚)「?」

ξ゚⊿゚)ξ「?」

思わず心配を口にしてしまったミルナとデミタス。
しかし『普段通り』のように返すツンとクーを見て、
その次をつなげずにいた。

( ^ω^)「昨日の帰りみたいな戦い方をするなら、
連れていけないお」

ξ゚⊿゚)ξ!

川 ゚ -゚)!

ブーンの言葉はミルナとデミタスを助けただけではなく、
戦闘をする上での重大な懸念点だったため、
ツンとクーはもちろんのこと全員が息をのんだ。

.

916 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:28:47 ID:E4SpJ5.o0

( ^ω^)「あんな無謀な戦い方をしちゃ、ダメだお。
僕もまだうまく戦っているわけじゃないけど、
昨日は、見ていてい凄く怖かったお」

('A`)「そうだな」

(`・ω・´)「ああ。その通りだ」

川 ゚ -゚)「昨日は、すまなかった」

ξ゚⊿゚)ξ「クー」

頭を下げるクー。
そしてゆっくりと顔を上げる。

川 ゚ -゚)「私は、これからもっと冷静になろうと思う。
少なくとも、戦いの場では」

('A`)「クー」

ξ゚⊿゚)ξ「私も、ごめんなさい。
昨日は、周りが見えてなかった」

ツンも頭を下げ、すぐに顔を上げて六人を見た。

ξ゚⊿゚)ξ「だから、もうあんなことにならないように、
戦い方を知りたい。
どんな時でも、自然に動けるように、
身に付けたい」

( ^ω^)「ツン……」

(`・ω・´)「そこまで戦いに身を投じなくてもいいと思うが……」

二人の真剣な顔とその言葉にうなずくことしかできない面々であったが、
シャキンは軽く、けれど少し困惑しているような表情で口にした。

('A`)「え?」

.

917 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:29:56 ID:E4SpJ5.o0

( ゚д゚ )「シャキン?」

(`・ω・´)「いや、基本的には生きるための狩り、
生活のための戦いをするわけだから、
できる時にやればいいし、
調子が悪いときは休めばいい。
折角のチーム、パーティーなんだから」

( ゚д゚ )「あー。
まあ、そうだな」

ξ゚⊿゚)ξ「いやなの」

シャキンの言葉にうなずいたミルナ。
その言葉にかぶさるようにツンが言葉を吐き捨てる。

( ^ω^)「ツン?」

ξ゚⊿゚)ξ「それじゃ、いや。
生きるために戦う。
レベルを上げる。
お金を稼ぐために戦う。
もちろんそれが一番かもしれないけど、
でも、それだけじゃ、いやなの。
何かの時に、逃げるだけの女になりたくない。
ただ守られるだけじゃなくて、
守ることは出来なくても、
せめて、隣で戦えるようになりたい」

川 ゚ -゚)「私もそうだ。
危険な目に合わないのが理想だが、
何かあった時に、足手まといになりたくない。
守られるだけじゃなく、
ともに戦える者になりたい」

( ^ω^)「ツン……」

('A`)「クー」

.

918 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:31:11 ID:E4SpJ5.o0

(`・ω・´)「なるほどな」

( ゚д゚ )「ふむ……」

(´・_ゝ・`)「言いたいことは分かるが……」

自然と全員の視線がショボンに向かった。

(´・ω・`)「ん?どうしたの?」

(;^ω^)「え、あ、いや」

('A`;)「いや、今のを聞いてどう思ったのかとか」

(´・ω・`)「どうって言われても……」

不思議そうに首を傾げたショボン。

(´・ω・`)「僕のスタンスは変わらないよ。
『元の世界に戻るまで、
皆でこの世界を出来るだけ笑って過ごす』
その為になら、何でもする」

(;゚д゚ )「それはまた」

(;´・_ゝ・`)「なかなか難しそうだな」

二人の言葉に微笑むショボン。

(´・ω・`)「ここにいる皆が無事に生きて帰ることが、
僕のしたいことです。
その為に出来る事なら何でもするし、
皆のしたいことの為に力を貸す」

( ^ω^)「僕も頑張るお」

('A`)「もちろんだな」

ξ゚⊿゚)ξ「私も」

.

919 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:32:32 ID:E4SpJ5.o0

川 ゚ -゚)「自分のできるすべてを」

ショボンの言葉に追随する四人。

(´・ω・`)「……ありがとう。
だから、ツンとクーがそれを望むなら、
僕は出来る限り力を貸すよ」

ショボンは少しだけ躊躇した後に、
そのすべてを拭い去るように笑顔で四人に語り掛けた。

そして視線をシャキン達三人に向ける。

(`・ω・´)「おれはおれのやりたいようにやる。
その中にはお前たちと遊ぶってのも含まれる。
遊ぶためには、やるときはやらないとな」

にやりと口の端で笑った後に、
満面の笑みを浮かべるシャキン。

それをみて全員が苦笑いを浮かべた後、
ショボンの視線はミルナとデミタスに向かった。

( ゚д゚ )!?

(´・_ゝ・`)!?

(`・ω・´)「残念ながら、既にこいつの中ではお前たちも『みんな』に含まれるみたいだぞ」

(´・ω・`)「『残念ながら』?」

(;`・ω・´)「ほ、ほら、ミルナ、デミタス、どうするよ」

慌てたように二人を促すシャキンだったが、
ミルナとデミタスは輪をかけて慌てていた。
いや、戸惑っていた。

( ゚д゚ )「いや、いや、おれは、その」

(;´・_ゝ・`)「仲間とか、ほら、まだ数日だし」

.

920 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:34:09 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「僕達の事が嫌いですか?」

( ゚д゚ )「そんなことはないが、その」

(´・_ゝ・`)「おれ達まで守ってもらうとか……」

(´・ω・`)「本当は、ここにいる四人は圏内の安全な場所で、
ただじっとしていてほしかったんです。
でも、残念ながら四人共それをよしとはしない」

悲しそうに四人を見るショボン。
視線の先では四者四様の表情でその視線を受け止めていた。

小さくため息をつくショボンだったが、
すぐに表情を引き締めた。

(´・ω・`)「ただ、
もしかするとこの世界に『安全な場所』なんてないかもしれないと、
今回の事で思いました」

('A`)「圏内とか、モンスターの出ないエリアはあるだろ?」

(´・ω・`)「……所詮システムで決められたことならば、
いつそのシステムが書き換えられてもおかしくはないよ」

ショボンの言葉に全員が顔をこわばらせる。

(`・ω・´)「何故、そう思うんだ?」

(´・ω・`)「今回のトラップ。
滅多にないことだとしても、
今回のように力量が足りないプレイヤーが
間違ってやってしまうことがないとは言い切れない。
そんなイベントがあるなら、
システムが書き換わるイベントがあったとしても、
不思議じゃない」

(`・ω・´)「可能性は?」

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921 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:35:51 ID:E4SpJ5.o0

(´・ω・`)「現時点では、ゼロではないレベル」

(`・ω・´)「つまり、現時点ではないと思うってことか?」

(´・ω・`)「今のところはね」

(`・ω・´)「『今のところ』は?」

(´・ω・`)「……考えた。
天才、『茅場晶彦』になったつもりで、
色々考えたんだ。
彼の目的を、何をしたいのかを」

(`・ω・´)「……分かったのか?」

(´・ω・`)「どうだろう。
天才の考える事なんてわからないよ。
でも、頑張って想像した。
時間はあったから。
彼のインタビュー記事や、実際会った時の雰囲気を、思い出した。
僕の中の彼の情報を総動員して、考えた。
この、自分が作った世界に、意思を持ったプレイヤーを閉じ込めたら、
何をしてほしいかって考えた」

(`・ω・´)「……おい?」

(´・ω・`)「この世界を生きてほしい。
満喫してほしい。
ゲームの世界じゃなく、
現実の世界として、生きてほしい。
そしてそれと同時に、遊んでほしい。
戦って、攻略して、命のギリギリで、
上の層を目指してほしい……」

うっすらと笑みを浮かべ始めたショボン。
シャキンが立ち上がろうとした瞬間、

( ^ω^)「ショボン!」

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922 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:37:28 ID:E4SpJ5.o0

ブーンが名前を呼んだ。

(´・ω・`)「え、あ、うん。
ごめん、ちょっとぼっとした」

瞬きをして、
首を横に振るショボン。

そして話をつづけた。

(´・ω・`)「……だから、
もし、プレイヤーがはじまりの街に籠って外に出ようとしなかったら、
或いは、攻略をしようとせず第一層だけをだらだらと過ごしていたら……」

('A`)「街を戦闘エリアにしてしまうってことか?」

(´・ω・`)「可能性はあると思う」

ドクオの言葉に工程をするショボン。

その内容に、全員の顔に緊張が走った。

(´・ω・`)「ま、大丈夫だと思うけどね。
既にこうやってはじまりの街を出て先に進もうとしているプレイヤーがいるわけだし」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、
システムを変えることが出来るあの男が何をしでかすかは、
分からないってことよね」

(´・ω・`)「……うん」

ξ゚⊿゚)ξ「ほんとムカつく。あの男」

川 ゚ -゚)「可能性はあると思うか?」

(´・ω・`)「さっきも言ったけど、ゼロではないレベルだよ。
茅場晶彦の目的がこの世界を楽しむことならば、
プレイヤーは生きていてくれないと意味がない。
この試みは、一回失敗したらもう次はないからね」

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923 ◆dKWWLKB7io :2016/05/09(月) 00:39:59 ID:E4SpJ5.o0

(´・_ゝ・`)「二度も三度もこんな事件が起きたら社会が崩壊するな」

(´・ω・`)「そうですね。
VR技術の普及がどうなってしまうか……」

(`・ω・´)「そんなことを今おれ達が気にしてもしょうがない」

シャキンが一回柏手を打ち、
視線を自分に集めた。

(`・ω・´)「つまり、今の状況なら『圏内』や『安全エリア』がちゃんと機能しているが、