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これを魔女の九九というようです

405名も無きAAのようです:2017/10/11(水) 21:19:33 ID:PogJdj520
*(‘‘)*「さ、どうぞです」

年端もいかない魔女が差し出すのは、サンザシの枝。
白い花は瑞々しく咲いている傍で、銀の針のごとく伸びている棘。
そこへと指を伸ばし、ぷつ、と肉を喰ませる。

ζ(゚、゚*ζ「いたた」

指先に浮かぶ赤い血は、艶めくサンザシの実のようだ。

*(‘‘)*「次は、この札に判を押すのです」

差し出された紙は、二センチ四方の小さなもので、
三行三列のマスに区切られている。
左上から順に、それぞれ一から九までの数字が描かれていた。

ひょう、ひょう、

と吹く寒風に攫われないよう、指先に貼り付ける。
じわ、と滲む血を吸い上げて、紙は数式を成長させていく。
一は十へと置き替わり、四は零へと数が減った。
五と六はそれぞれ七と八に入れ替わり、右下のマスには四を得た。
出鱈目な魔方陣。
しかし、それは人間の道理から見た場合での無意味。

ζ(゚ー゚*ζ(魔女に、なる)

強く念じ、わたしは紙を飲み込んだ。



味は、何もしない。
血の味すらも感じない。
紙を飲み込むのだから、喉に違和感があるのかと思えば、それすらも虚無だった。
ほんの一瞬、世界が止まったような気がした。
聴覚、視覚、嗅覚、触覚、味覚。
全てを失い、忽ちに引き戻される感覚。
鋭敏に研ぎ澄まされた本能。

*(‘‘)*「さあ」

さあ、さあ、さあ、さあ、

見守っている魔女の声が、何重にも重なる。
耳の奥に洞が出来て、うわんと畝るような気持ち。
ふら、と一歩を踏み出した。


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