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( ^Д^)ブーン系小説&イラスト練習総合案内所のようです

470名も無きAAのようです:2015/05/02(土) 15:01:18 ID:2C6GaNKI0

川  - )

遥か下方に白雲の海を望みながら、彼女は息を吐く。白い靄は刹那で風に掻き消えた。
地上20000メートル。全世界に水筒技術の威を示したS.Coolタワーの屋上の気温は、コントロール装置が無くては氷点下60℃に達する。
陽光に透き通る青空。零下の風が支配する世界。素直クールは水筒マフラーを引き上げる。

遠くに積乱雲が見えた。やや崩れた上端は、塔よりも少し高い。
中段あたりがすこしくびれて、達磨のようなかたちをしている。輪郭のはっきりした、立派な入道雲だった。
それを眺めながら、ぼやけて白んでいく意識の中に、ふと何かが落ちてきた。
夜中に不意に目が覚めてしまった時のような、ぬるい微睡の残滓の中で、素直クールは耳を澄ます。

      「竜の巣だ! ラピュタだお!」

誰かの声が聞こえた気がした。昔、好きだった男の子の声だ。20年前、彼は人知れず、自ら命を断った。
どんな子だったろう。もう、思い出せない。なんとなく、ちょっとエッチな子だったような気がする。

      「ブーンくん、無職の兄者と同じこと言ってるのじゃ」

友達の声がした。姉1人、兄2人で末っ子の彼女。同じく4人きょうだいの長女の私と、何となく馬が合った。
悲しい事故で、彼女は視力の殆どを失い、それから遂に会うことは無かった。今頃、どうしているのだろう。

もはや素直クールには何も思い出せない、何も分からない。
それでも彼女は、顔も思い出せない2人の友だちに、幸せでいて欲しいと思った。幸せでいて欲しかったと思った。
水筒が台無しにした2人の幸せ、水筒を作ることで取り返したかった。




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