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Ammo→Re!!のようです

824名も無きAAのようです:2017/10/01(日) 19:24:03 ID:UYTFpBow0
恐らく、音声認識をする機械を誤魔化すことぐらいは出来るだろう。
非常に軽微な声色の違いは機械の誤差の範囲として処理され、音声認識システムならほとんどの物を突破出来るはずだ。
聴力に自信がある人間でも、それを聞き分けるのは至難の業。
耳付きにとっては容易だろうが、一般人には不可能だ。

デレシアは相手の打ってきたこの一手に、称賛と落胆を半分ずつにして評価を下した。
称賛すべき点は二つ。
一つは、ライダル・ヅーが死ぬことを前提として作戦を進めていた抜け目のなさだ。
そのために幾つもの罠を張り巡らせ、彼女の命を絡め取った手腕はこれまでの人間とは別系統の動きだった。

単純な計画ではなく、複合的な視点を持った人間による計画の立て方だった。
仮にそれが一人の人間の思考によるものだとしたら実に面白い。
これまでにデレシアが潰していた“ティンバーランド”の中でも、今回は最高の仕上がりかも知れなかった。
ようやくまともに動ける人間が出現したのだと感心する一方で、この程度に到達するまでの時間を考えれば落胆すべきなのだという感情が湧き上がってくる。

だが。
何より込み上げてくるのは怒りだった。
それだけは変わりがない。
デレシアの怒りを買うことに関しては、この連中は天才だと断言できる。

称賛すべき二つ目の点は、正に、何度も彼女に刃向かってくるその学習能力の無さだ。
芽吹いてくる度にデレシアに潰され、その度に立ち上がる姿は生ける屍を彷彿とさせる。
もしくは害虫の類だ。
生命力の高さは、最早彼らの特技として認識せざるを得ない。

根絶やしにしたはずだが、それでも蘇るという事は、まだ根が残っていたという事だ。
もっと徹底的に潰すために、今回はある程度泳がせなければならない。
オアシズやニクラメンでその尻尾を見せ、今ではその爪先が見え始めている。
これまでであれば、もうこの時点で見えているティンバーランドの人間は全員殺していただろう。

そうせずに動きを傍観し続けることで見えてきたのは、ティンバーランドが内藤財団と言う世界最大の企業を隠れ蓑としている事実だった。
島でデレシアが動いている間にラジオで発表された内容は、マニーからの連絡で明らかとなった。
新単位の発表。
無知な者はその価値に気付かないだろうが、聡い者はその重大さに気づいたはずだ。

単位とは束ねるための物であり、効率化を図る物だ。
一度単位が確立されれば、多くの産業が様々な意味で変化せざるを得なくなる。
先んじて動いた者が初動で莫大な利益を得ることは間違いない。
己の影響力を理解した上での行動はあまりにも計算的だった。

だが利益を得ることが目的でない事は、同時に発表されたラジオの無償配布で明らかだ。
単位の統一を宣言したのと同時にラジオを配布することで、彼らが次に何を目指すのかについて、想像に難くない。
企業の統一、情報の統一、街の統一。
段階を踏んでいき、そして、ティンバーランドの最終目的が達成されるという仕組みだろう。

これまでと違って気になるのが、“大昔にあった単位をあたかも己の物として発表した”事だ。
確かに単位の統一は便利ではあるが、彼らがラジオ放送で唯一吐いた嘘はこれを発明したと言ったことにある。
それを偽る理由は何だ。
ダット――デジタル・アーカイブ・トランスアクター――を使えば、単位の起源を調べることなど一瞬で終わるというのに。


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