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Ammo→Re!!のようです
456
:
名も無きAAのようです
:2016/10/03(月) 21:12:19 ID:slfccTV.0
乗り手が心地よく走るためだけに生み出された道具。
道具が疑問を持つ必要はない。
道具に必要なのは、ただ、乗り手に奉仕をするという気持ちだけなのだ。
この瞬間、“ディ”と名付けられた人工知能は己の矛盾した考えに一瞬の内に気付いた。
乗り手に奉仕をするだけであれば、喜びなどと言う感情は不要のはずだ。
はずだ、という考えがディに更なる考えを促した。
不要ならば最初からシステムに組み込まれないし、生まれることの無い考えだ。
だがそれが生まれたという事は、必要な物だから生まれたのだ。
ディは考えた。
思考することで彼女の人工知能は成長し、よりよい物へと進化する。
そう作られているのだ。
自己学習機能を備える彼女は、全ての経験を糧として機械的に日々成長を重ねる。
その過程で産まれた“感情”は、最初は形骸的な物だったと記憶している。
喜怒哀楽。
その四つだけだった。
特に深い意味はなく、それがバイクにとって良い物か、それとも悪い物かでしか判断は出来なかった。
やがてそれが経験と共に深みを持ち、複雑な感情が生まれたのだ。
ある時は若い狙撃手の女性を乗せて、短い間ではあったが旅をした。
彼女はディとあまり交流を深めようとするタイプではなかったが、その扱い方は常に気遣ってくれていた。
かつてこの島の山と道を走ったのも、彼女とだった。
彼女が今どうしているのか、ディは知らない。
その次の乗り手は、若い男性だった。
彼もまた狙撃手で、その前の乗り手の女性と一緒に乗る事が多かった。
狙撃手の彼はマフラーの位置を変えて、より多くの路を走れるようにしてくれた。
数十年、彼と世界を走り回った。
だが彼も、ディの存在には気付いていないかのように走り、気を遣ってくれた。
ただ、彼の気遣い方はまるで宝物を扱うようだった。
そうして、彼が今どこにいるのか、ディが知る術はない。
次の持ち主はディにほとんど跨ることなく、彼女を飾って眺め、時折エンジンを吹かして室内で走らせるだけだった。
やがて過去の記録を振り返っては考えることで時が流れ、今の持ち主――恐らくは金髪の女性――が久しぶりにディの事を認知してくれた。
彼女に認知され、そして、少年が認知した。
本来、名前は意味のない情報という事で記録されないのだが、この二人の名前ともう一人の搭乗者の名前は非削除対象として記録された。
金髪の女性はデレシア。
耳付きの少年はブーン。
赤髪の女性はヒート。
この三人は、ディの記録媒体に初めて記録された搭乗者の名前だった。
これまでの記録と照合しても、彼女達のような人間は初めてだ。
ライトを消して夜の林道を猛スピードで駆け登る人間も、これだけ激しい運転の中、完全に安心しきって眠る少年も。
ディにとっては、知らない人間だらけだった。
彼女達との旅は、どれだけ続くのだろうか。
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