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('A`)は撃鉄のようです

1 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 17:32:51 ID:tpcqJCsI0
          __     ,、
        く_;:::ハ    /::ヘ
        (_厂    ヒコ

2 ◆gFPbblEHlQ :2014/11/17(月) 17:35:42 ID:tpcqJCsI0
前スレ
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1364742199/l50

今夜投下

3 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 18:09:29 ID:7xnueIms0
早めの支援

4 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 18:42:54 ID:PxiHI8LA0
支援

5 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 20:10:50 ID:kEWXgIOMO
ω・)wktk

6 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 20:48:40 ID:tpcqJCsI0

≪1≫


 早朝、遠くの空が白く輝き始めた頃。
 今まで後回しになっていた戦いの決着をつけようと、一人の男が荒野に佇んでいた。

(,,゚Д゚)「……遅かったな」


('A`)「早起きは苦手だ」

 ギコの前に来ると、ドクオは首の骨を鳴らして両手足のストレッチを始めた。
 体の調子を確かめるような入念なストレッチに、ギコは冷静に助言した。

(,,゚Д゚)「まだ休んでてもいいんだぞ。お前のが重症だ」

('A`)「動く体と気合がある。他は全部置いてきた」

(,,゚Д゚)「……そうかよ」

 互いに傷も癒さぬまま、男二人は前を向き、倒すべき相手を目に焼き付ける。
 なにも今ここで戦う必要はない――だが、それでもこの決着が欲しい。

 理屈や言葉ではどうにもならない、酷く野蛮な欲求。
 その欲求は、超能力などという馬鹿げたものがあるからこそ湧いてくる。
 超能力の存在が、夢に描いた男の生き様を肯定し、実現するのだ。

.

7 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 20:49:38 ID:tpcqJCsI0


(,,゚Д゚)「何だっていい……こないだの借りを返す。それだけだ」

 ギコは右手に隠し持ったペンライトを点け、そこから光を吸収した。
 吸収された光はギコの体に溶け込み、ほのかに彼の全身を輝かせる。
 光はやがて両腕の前腕部に集中し、鋭利な刃として両腕に具現化した。

 朝日を反射するほど研ぎ澄まされた刃が両腕に一つずつ。
 その刃には、人肌を斬るに余りある十分な切れ味があった。


(,,゚Д゚)「使え」

 そう言い、ギコは空中にペンライトを放り投げた。

('A`)「……上等だ」

 両足を広げ、左腕を突き出す。
 ドクオは空中のペンライトから光を根こそぎ奪い取り、それを超能力として肉体に具現化した。
 一瞬後、彼の左腕は鋼鉄の装甲に覆われ、背の右側には撃鉄を模した突起が現れた。

 人から譲り受けた超能力だが、今は確かにドクオ自身の超能力としてここにある。
 自分自身を肯定する拳――男にとって、それは何より強い武器になりうる。
 新たな力を手に入れたドクオの意思は、以前よりも強固になって胸の奥に秘められていた。

.

8 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 20:51:07 ID:tpcqJCsI0


 風が吹き、砂塵が舞い上がる。
 同時に、二人の男が大地を踏み締めた。

(#'A`)「避けんなよ!」

 怒号の次、ドクオは背の撃鉄を意識した。
 そこに内包された膨大なエネルギーが、撃鉄が落ちると同時に一気に爆発する。
 撃鉄から噴出したエネルギーは翼のように大きく広がり、彼の背中で光り輝いた。

(;,,゚Д゚)(こいつか、看守長と互角だったっていうのは……!)

 光の粒子が生み出す強力な推進力を一点に絞る。
 ドクオは弾けるように空に上がると、体を回転させて落下しギコに拳を向けた。

(#,,゚Д゚)「――上等! 正面から切り刻む!」

(# A )「撃動のおッ――!」

 ギコも相対して両腕の刃を構え、襲いくるドクオめがけて刃を振るった。

 ただ、決着をつけるためだけに戦う。
 二人の能力者がぶつかりあったその瞬間、二人の姿は、太陽の鮮烈な輝きの中に消えていった。

.

9 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 20:52:00 ID:tpcqJCsI0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 レムナント監獄。ここは最近まで完璧な法治施設として機能していた。
 ダディクールは、早くもそれを昔の事のように感じていた。

 あの夜、ドクオがどこかから光源を手に入れて脱獄を開始。
 看守長が倒れた後、切り札とも言えるオサムが超能力を発動して監獄は大半の機能を喪失。
 それが決定打となり、メシウマ側は施設の完全放棄を決定。彼らは脱獄は成功した。


 一件がとりあえずの落ち着きを見せた今、ここに居た囚人達は殆どが脱獄を済ませている。
 監獄には、囚人のほんの一部が残った。
 彼らの思惑はそれぞれ違っていたが、皆一様に同じ人間の起床を待っていた。

 早朝。
 考え事の最中、外の異様な物音に気付いたダディクールは、鉄格子から外を覗くと同時に頬を弛ませた。
 彼らの待ち人の名前はドクオ。このとき、脱獄の一夜から既に一週間が経過していた。

.

10 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 20:53:13 ID:tpcqJCsI0

≪2≫


 素直ヒートの一度目の起床はギリギリ午前中だった。
 二度目の起床は午後二時。しかし、彼女が最終的にベッドを降りたのは午後四時頃だった。


ノパ⊿゚)「おーす」

 夕日が差し込む広々とした一室。
 ここは看守長の私室として使われていた部屋だが、家具を入れ替えた今はダディクール達の溜まり場と化していた。
 素直ヒートは雑多に並べられたソファに腰掛け、持ってきた菓子の袋に片手を突っ込んだ。


ノパ⊿゚)「で、なにか進展は?」

(,,゚Д゚)「おいダディクール」

|;(●),  、(●)、|「待て待て、彼女がアレなのはもう諦めてくれ」

 このバカを追い出せと言わんばかりに開口したギコをなだめ、ダディクールはヒートの質問に答えた。


|(●),  、(●)、|「進展なら大いにあった。お前が寝ている間にな。まずドクオが起きた」

ノハ;゚⊿゚)「やっとか! どんだけ寝てたんだアイツ!」

(#,,゚Д゚)「おいダディクール!」

|;(●),  、(●)、|「諦めてくれ!」


.

11 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 20:56:05 ID:tpcqJCsI0


ノパ⊿゚)「まぁなんにせよ進展ありか〜〜〜よかったなぁ〜〜〜〜〜〜」

 そう言いながらも彼女の意識は菓子に集中している。
 バリバリと中身を頬張るせいで、菓子袋は瞬く間にしぼんでいった。


|(●),  、(●)、|「ヒート、悪いがそれを食べ終わったら身支度をしてくれ」

ノパ⊿゚)「……身支度? これを腹に詰めたら終わりだけど?」

 彼女は菓子袋を掲げ、得意気に微笑んだ。

|(●),  、(●)、|「だったらいい、我々もすぐに出発だ」

ノパ⊿゚)「……我々も?」

 ダディは立ち上がって厚手のオーバーコートを羽織り、用意しておいたボストンバッグを肩にかけた。

(,,゚Д゚)「てめえの分だ、女扱いされたくないなら持て」

 ヒートに鞄を一つ投げると、ギコも腰を上げて自分の支度に取り掛かった。

ノハ;゚⊿゚)「……なんだ? どっか行くのか?」

|(●),  、(●)、|「私達はドクオの旅路に乗っかる事にした。結構デカイ恩もあるしな」

(,,-Д-)「荒巻を倒すんだとよ、俺達でな」

ノパ⊿゚)



ノハ;゚⊿゚)「……マジ?」

 呆気にとられた素直ヒートを引きずりながら、かくして三人は夕日の荒野を歩き出した。

.

12 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 20:57:25 ID:tpcqJCsI0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

        第十六話 「仲間を求めて」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

.

13 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 20:58:06 ID:tpcqJCsI0



 ――ドクオが目を覚まし、ギコとの決着をつけた後。


 まだ早朝という時間帯に、彼らは元看守長私室の溜まり場に集合していた。
 ダディクールが言うに、ドクオが寝ている間にメシウマ側の事が色々判明したそうだ。
 現状を把握するため、そして次の行動を決定するために、ドクオは彼の話を聞く事にした。


 ソファに深々と座り、ダディクールは事の前置きを話し始めた。
 部屋の方々にはギコと棺桶死オサムの姿があった。


|(●),  、(●)、|「自己紹介はやり直したほうがいいかな?」

('A`)「……ダディ、なんとか」

|(●),  、(●)、|「……必要なさそうだ。本題に入る」

 ダディは股座で手を組んだ。

|(●),  、(●)、|「ここに残っているのは我々だけ。共通点はひとつ、君だ」

('A`)「……」

|(●),  、(●)、|「恩返しなどと言えば聞こえはいいが……。とりあえず、これを読んでほしい」

.

14 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:00:22 ID:tpcqJCsI0


 ダディクールに差し出された物には見覚えがあった。
 今の今まですっかり忘れていたが、それは素直クールのペンダントと一緒に送られてきた、盛岡デミタスからの手紙だった。

 ドクオは手紙を開け、内容に目を通した。


『一ヵ月後、レムナント全土を制圧する為の制圧部隊がそっちに向かう。』

『荒巻の寝首をかくならそのタイミングしかない。』

『追記:こう書けば罠でも飛び込んでくると信じた上で、お前の再起を願って書いておく。』

『素直クールはまだ生きている。』


(;'A`)「……」

 最後の一行を読んだ瞬間、ドクオの頭からあらゆる言葉が抜け落ちた。
 抜け落ちた言葉のかわりに、いま目の前にある手紙の一文が脳内を駆け巡っていく。

 思えば実に間抜けた話だった。
 今まで彼が抱えていた不安は、そもそも最初にこの手紙を読んでおけば杞憂として片付けられた。
 一時とはいえ、仲間になると言って握手までした相手の言葉だ。多少の疑念はあれど、信頼に足る。


(;'A`)「……昔、車のドアが開けられなくて泣いたことがある」

(;'A`)「そんな早とちりが、どうやら今でも直ってないらしい……」

 独り言のように言い、ドクオは手紙を畳んだ。

.

15 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:02:19 ID:tpcqJCsI0


('A`)「……読んだぞ」

 ドクオから手紙を返されると、ダディはすぐ次の話に移った。

|(●),  、(●)、|「うむ。それで私は手紙に示唆されていた事をちょっと調べてみた。
           もちろん私だって本気にした訳じゃあない。
           君が起きるまでの暇潰しに、と思って始めたのだが……」

|(●),  、(●)、|「結果、今まさに我々が居るこの部屋で、コレを見つけたのだ」

 次に彼が出してきたのはピンク色の手帳。
 目を疑うような前時代的デコレーションが施されたその手帳は、表紙を見るに、看守長カーチャンの私物のようだった。


|(●),  、(●)、|「中身は日記だ。最近のを面白半分に読んだら、こう書かれていた」

|(●),  、(●)、|「『本部から召集! 二週間後にはここを離れなくちゃ☆』」

( 'A`)「そこ完全再現するのか?」

(,,-Д-)「向こうの連中がいよいよ本腰を入れて攻め込んでくるって事だ。
     今はこうして自由にやってられるが、また好き勝手されりゃあ水の泡だ」

(,,゚Д゚)「手紙の内容を信じるなら三週間で全面戦争。
     しかもこの戦いの存在を知ってるのは俺達だけ。結果は目に見えてる」

.

16 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:04:45 ID:tpcqJCsI0



('A`)「……おう、それが?」

 ドクオはさも人事のように聞き返した。

|(●),  、(●)、|「君の目的、察するに『素直クール』という人なのだろう?
            その人は今、メシウマ側に何らかの形で拘束されている……違うか?」

('A`)「……大体合ってる」

|(●),  、(●)、|「ドクオ君、この制圧作戦がもし本当に起こったなら、君はどうする?」

( 'A`)「……回りくどいな。要点だけ言えよ」

|(●),  、(●)、|「……また改めて、我々と手を組んでもらいたい。
           制圧部隊を迎え撃ち、更にこちらから打って出る。
           そのための仲間を、私はこれから集めていくつもりだ」

|(●),  、(●)、|「今は仲間は三人だけ。ギコと棺桶死オサム、素直ヒート」

('A`)「……最後の奴は誰だ?」

|(●),  、(●)、|「素直クールとは同姓なだけだ。確認したが見ず知らずだったよ」

.

17 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:07:06 ID:tpcqJCsI0


('A`)「……」

 ドクオは顔を上げ、部屋の大窓から外を眺めた。

('A`)「まあ、そうだな」

 窓から見えるのは草一本と生えていない地面と、監獄を囲う高い壁。
 すこし気分を整えようと外を見てみたが、そんなものを見た所で気分は変わらない。
 ドクオはぼんやりと外を見ながら、ダディクールの誘いに返事した。

('A`)「一人じゃ無理なのは分かったから、遅かれ早かれ、味方が必要だとは思ってた」

('A`)「……それで具体的にどうする。今から向こう側行って暴れるのか?」

|(●),  、(●)、|「それもいいが、今は残された時間を活用するべきだろう」

 彼の問い掛けを快諾と受け取ったダディは、大きな机を部屋の真ん中に引っ張ってきた。
 机上には既にレムナントの地図が広げてあった。
 全員を机の周囲に集め、ダディは話を再開した。


|(●),  、(●)、|「長くて三週間、短くて二週間。それがこちら側に残された猶予だ」

|(●),  、(●)、|「その間、我々は手分けして行動し、制圧作戦の事を吹聴しながら各地で仲間を集める。
           最終目的地はレムナントの中心街『クソワロタ』。
           そこで落ち合うのが安全だと、私は考えている」

|(●),  、(●)、|「お互い、みんなで一緒に歩くなんて柄でもないだろう。
           とりあえず勝手に行動して、最後に合流するのが手っ取り早いと思うが……」

 ダディは皆を一瞥し、意見を煽った。

( 'A`)「そいつは良いが、装備が一通り欲しい。
    俺が向こうで戦えたのは装備が充実してたからだ。武器も無しじゃ分が悪いぞ」

(,,゚Д゚)「そこには当てがあるんだよな?」

 ギコが間に入って尋ねると、ダディは深く頷いた。

.

18 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:08:38 ID:tpcqJCsI0


 ダディは地図に指を置き、進路ををなぞりながら話した。

|(●),  、(●)、|「ここが現在地、レムナント監獄」

|(●),  、(●)、|「武器の補充はこの酒場、バーボンで可能だ。
           店主はもうここを出発して、武器の調達を始めている」

('A`)「店主? ここの囚人だったのか?」

(,,゚Д゚)「ほらあいつだ、あいつ居るだろ。
    初日お前に突っかかってきたデカイやつ。あいつだ」

('A`)「……あのデカブツか?」

 ギコの的確な補足が光る。補足王ギコの誕生だった。

|(●),  、(●)、|「意外な縁だろう。本当に運が良かった」

 ダディはペンを手に取り、地図上に二つの線を引いた。

|(●),  、(●)、|「二手に分かれよう。北へ向かって仲間を集める組、西へ向かって武器を調達する組だ。
           西への道は少し険しいが、行動は最短ルートをとってほしい」

( 'A`)「……」

 地図をじっと見たまま、ドクオはある事を迷っていた。
 その迷いを振り切ると、ドクオは地図の一点を指差して言った。

( 'A`)「……ここ、バーボンへの進路に俺の故郷がある。久し振りに帰ってみたい」

.

19 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:09:49 ID:tpcqJCsI0


 ダディは、ドクオの語気から複雑な心境を察した。

|(●),  、(●)、|「西へ行きたい、という事か?」

 あえて聞き返してたが、ドクオはすぐに頷いて答えた。
 そのとき突然、硬く口を閉ざしていた棺桶死オサムが窓の方を向いた。

|(●),  、(●)、|「敵か?」

【+  】ゞ゚)「……知らない気配が急に現れた。どんどん監獄から離れていく」

|(●),  、(●)、|「知らない? もうここには我々以外は居ないはずだが……」



('A`)「……まさか……」

(,,゚Д゚)「……あっ、そういや一人居たな。ミルナとかいう奴」

 ドクオの囁きを切欠に、補足王ギコはミルナの存在を思い出した。

.

20 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:12:44 ID:tpcqJCsI0


(,,゚Д゚)「多分そいつだ。外が静かなもんだから這い出てきたんだろ。
    気にするまでもねえ男だ」

('A`)「――行ってくる!」

 補足王ギコが言い切る前に、ドクオは大窓を開けて外に飛び出した。
 突拍子も無い行動に驚いたダディは急いで立ち上がって言った。

|;(●),  、(●)、|「おいっ! どこに行くんだ!」

( 'A`)「ミルナを追う! そっちはそっちで好きにしてくれ!」

 地面に着地した途端、彼はすぐに走り始めた。

(;,,゚Д゚)「ハァ!? おい待てよ!」

【+  】ゞ゚)「――荷物だ! 持って行け!」

 咄嗟に追いかけようとした補足王を引きとめ、オサムは食料が入ったバッグを空に投げた。


(;,,゚Д゚)「おい棺桶死、止める相手ちげえだろ!」

【+  】ゞ゚)「……いや、これでいい」

 含みのある言い方に、補足王は言葉をなくしてオサムを見た。

【+  】ゞ゚)「あの男のセリフを確かめる」

(;,,゚Д゚)「あぁ……?」


|;(●),  、(●)、|「一週間後、クソワロタで落ち合おう! 武器の調達は任せたからな!」

( 'A`)「分かった!」

 ドクオはバッグを上手く受け止めると、ダディ達に軽く手を振って走っていった。

.

21 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:13:25 ID:tpcqJCsI0



|;(●),  、(●)、|「……やれやれだ」

 ドクオの後ろ姿が荒野に消えたのを見送り、ダディは溜め息交じりに呟いて頭を切り替えた。
 振り返って室内の二人を一瞥し、開き直ったようにハキハキと言う。

|(●),  、(●)、|「まぁ、あっちはあっちだ。任せてこっちの予定を進めよう」

(;,,゚Д゚)「……俺達、チームワークが必要だからこうしてるんだよな?」

|(へ),  、(へ)、|「そうだとも! 仲良くしような兄弟!」

(;,,-Д-)「すでにウンザリしてるからやめろ……」



【+  】ゞ゚)「……」

 その時、ダディクールは一人上の空になっているオサムを見逃していなかった。
 何か思惑があってドクオを見送ったのだろうと薄々気付いてはいたが、今の彼の様子を見て、ダディは不意に予感した。
 何かが起こるという漠然とした予感。そして、この予感が当たるという根拠のない自信があった。

|(●),  、(●)、|(……今はまだ、気にする必要もないか)

 しかしダディはその予感を脳裏に追いやり、二人との話し合いを再開した。
 
.

22 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:14:42 ID:tpcqJCsI0

≪3≫



ノパ⊿゚)「……で、ドクオは西へ、あたしらは北へって訳か」

 ダディが歩きながら振り返り、今後の予定を改めて口にする。

|(●),  、(●)、|「我々は仲間を増やしながらクソワロタへ向かう。
           一週間で目的地に行き、道中出来る限り、制圧の事を知らせていく」

(,,゚Д゚)「仲間か……。簡単に増えれば話が早いんだがな」

ノパ⊿゚)「いや無理だろ、そういうのとは縁がねえ連中ばっかだぞ?
     あの監獄に集まってた一匹狼の山盛りバカ沢山がその証拠だろ」

|(●),  、(●)、|「その心配は今更だ。
           それに、一人くらいは居るかもしれない」

ノパ⊿゚)「なにが?」

|(●),  、(●)、|「我々の仲間になるような大バカ野郎」

ノパ⊿゚)「……そう言われると確かに居そうだ」

.

23 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:16:14 ID:tpcqJCsI0


|(●),  、(●)、|「ドクオ君も一週間後にはクソワロタに来る予定だ。
           棺桶死も、なおるよを故郷へ送ったらクソワロタに来てくれるそうだ」

|(●),  、(●)、|「恐らく彼らには先に着かれてしまうが、まあその方が安心できる。
           我々は最大限の遠回りをして進む。せいぜい心折れないようにな」



ノハ;゚⊿゚)σ「……おい、もう夜なんだが……?」

 ふと、徐々に暗んでいく夕焼け空を見上げてヒートが言った。

(,,゚Д゚)「じゃあ野宿だな。適当な岩陰で一晩だ」

ノハ#゚⊿゚)「ハァ!? ふざけんな!」

(#,,゚Д゚)「てめえが早起きすりゃもっとマシだったんだよ!」

ノハ#゚⊿゚)「起こせばいいだろ! てか起こせよ!」

 ギコが怒号を飛ばしてもヒートのブーイングは止まない。
 ギコとダディは一人喚き散らすヒートを無視し、そそくさと歩調を速めた。


ノパ⊿゚)

 置いていかれるのも嫌だったので、ヒートも口を閉じて彼らについていった。

.

24 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:17:17 ID:tpcqJCsI0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 ドクオ、ダディクール達がそれぞれレムナント監獄を出発してから一晩が過ぎた。

 その日、ミルナと行動を共にしていたドクオは、彼と一緒に小さな町にやって来ていた。



('A`)「……」

 自分自身の故郷を忘れきれる人間は居ない。
 ドクオもまた、自分の故郷であるこの町を覚えていた。


( ゚д゚ )「……行かないのか」

('A`)「……行ってくる。ちょっと待っててくれ」

 ミルナを置き、一人で町に踏み入っていくドクオ。
 過去との決着を望む彼にとって、これはいつか必ず通る道だった。

 町を進んでいくにつれ、心臓の鼓動が早く強くなっていく。
 そのうち、遠くに自分の家を――彼女との家を見つけた。家というにも貧相な、手作りの掘っ立て小屋だ。

 ドクオはまず、そこへ向かうことにした。

 帰路と記憶をたどりながら彼は歩いた。
 愛した場所や記憶が、必ずしも人を幸福にする訳ではないと痛感しながら。

.

25 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:25:09 ID:tpcqJCsI0

1〜15話 >>2

第十六話 仲間を求めて >>6-24


次回は今日中に投下する予定です
とても長い間お待たせすることになりますが、ご了承ください

26 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:26:41 ID:tpcqJCsI0

_人人人人人人人人_
> 突然のオマケ <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄


 ≪ ('A`) / マグナムブロウ ≫ 

【能力者】ドクオ

【タイプ】近距離 / 具現・装着型


【基礎能力】 ※撃鉄未使用時 ※本人の戦闘能力を含む

[破壊力:C] [スピード:C] [射程距離:D]

[持続力:C] [成長性:F]

A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み    E=よわい     F=論外


【能力概要】
撃鉄の能力。左腕。
発動すると左腕が装甲に覆われ、背の右側に撃鉄を模した突起が具現化する。
撃鉄には吸収した光のエネルギーが凝縮されており、一つ一つが莫大な力を有している。
今回ギコに負けた。

27 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:27:27 ID:tpcqJCsI0


 ≪ (,,゚Д゚) / ハック&スラッシュ ≫

【能力者】 ギコ

【タイプ】 近距離/具現化型

【基本能力】

[破壊力:C] [スピード:D] [射程距離:C〜D]

[持続力:B] [成長性:D]

A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み    E=よわい     F=論外


【能力概要】
金属を具現化する能力。もっぱら刃物を具現化している。
あんまり強い能力ではないので頭を使って戦わないと勝てない。
今回ドクオに勝った。

28 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:43:52 ID:UT.aOXyk0
乙。

29 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:55:02 ID:jK.adOAA0
撃鉄はミル→ドクの過程でかなり改悪させたんだっけか。だがそれがイイ

次回も楽しみにしてます

30 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 21:58:44 ID:uWgjhgPU0
なんと長い間だろつ

31 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:05:03 ID:LbkCUjAc0
>>25
おいおい、待ちすぎて風邪引いちまうぜ!

32 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:27:19 ID:g99JVt0.0

次回の投下を楽しみに一日を頑張る

33 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:32:39 ID:tpcqJCsI0

≪1≫


 ドクオがレムナント監獄を飛び出し、ミルナの後を追い始めておよそ二十分。
 荒野を黙々と歩き続けるミルナの足並みは早く、追いついた時にはすでに監獄が遠くにあった。

(;'A`)(つーかなんだよあの地面、不自然すぎるだろうが……)

 ドクオはふと足を止め、乗り越えてきた岩だらけの悪路を見返した。

 監獄周辺の地面は先日の戦いの終盤、棺桶死オサムによって一度完全に引き裂かれている。
 オサムはそれを超能力によって再度くっつけたが、当然元通りとはいかず、地面には激しい隆起の跡形が残っていた。

('A`;)(いい加減、追いつかねえとな……)


('A`)ノシ 「おーい!」

 片手を大きく振りながら、ミルナの背中めがけて大声で呼びかける。
 ミルナは立ち止まって振り返り、手を振るドクオの姿を見つけた。

  _, ,_
( ゚д゚ )

 彼はとても微妙な表情のまま、ドクオが追いついてくるのをしばらく待った。

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34 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:33:46 ID:tpcqJCsI0


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            第十七話 「Waste Land」

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35 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:34:49 ID:tpcqJCsI0



( ゚д゚ )「……事情は把握した。でもなんでついてきた」

('A`)「色々聞きたい事があった。教えてもらいたい事も」

( ゚д゚ )「……質問は受け付ける。教えて欲しい事も即教えてやる。
     だが終わったら連中のところに戻れ。これでいいか」

('A`)「……なんで外に出たんだ? 引きこもりかと思ってた」

( ゚д゚ )「外に出る理由ができた、だから出た。それだけだ」

 ミルナは歩を速め、ドクオを振り切ろうとした。


(;'A`)「その理由を聞いてるんだよっ」

 足早に追いかけ、さらに問いかける。



( ゚д゚ )「質問は終わりか? じゃあさっさと消えろ」

(;'A`)「まさかイラついてんのか? なんかあったのか?」

 途端、ミルナは振り返ってドクオの胸倉を掴みあげた。
 ドクオは恐縮して口ごもり、身動きを止めてミルナの言葉を待った。


 険しい表情を無理矢理に素面に戻すと、ミルナは溜め息をついて手を離し、ドクオを地面におろした。


( ゚д゚ )「……関わるな、これ以上は。お前言っただろ、お前の問題はお前の問題だって」

( ゚д゚ )「それだよ、これは俺の問題だ。首を突っ込むな」

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36 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:36:53 ID:tpcqJCsI0


(;'A`)「……お前は手掛かりだ。あいつを助ける為にはどうしても必要だ」

( ゚д゚ )「力はくれてやっただろ。それで何とかしろ」

(;'A`)「助け出した後の問題だ! 助けるだけならお前なんかいらねえよ……。
    でも別世界とかtanasinnとか、俺だけじゃどうにもできない問題があるんだろ?」

 まだ言葉を返してくるドクオに、ミルナの苛立ちが沸点を超えた。
 ミルナはその怒りを露にし、声を荒げて言った。

(#゚д゚ )「だから! それが俺達の問題なんだ!」

(#゚д゚ )「ついてくれば否応無しに巻き込まれる! そうなればお前はまず助からない!」

(#゚д゚ )「お前は奴を助けて平和に暮らしてろ! 俺はお前がそうすると思ったから力を渡したんだ!
     今のお前は超能力のせいで万能感に浸ってるだけなんだよ!」

(#゚д゚ )「お前は素直クールを助けてハッピーエンドで終わりだ、絶対にそうするべきだ!
     だが、俺達と深く関われば全部が変わる! すべて終われなくなる!」

('A`)「……んだよ」

 ドクオはミルナを見返し、彼の胸倉を掴み返した。

(#'A`)「じゃあ死ぬまであいつの愛想笑いを見てろってのか!?
    俺には何もできないから、俺がガキだから! あいつの嘘と優しさに甘え続けろっていうのか!?」

(#'A`)「そんなん二度とごめんだから強くなるって決めたんだよ……!
    他人の嘘と優しさに生かされてたら、俺はずっとガキのままだ……!」

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37 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:37:57 ID:tpcqJCsI0


 それからしばらく、二人の間に長い長い沈黙が流れた。

( ゚д゚ )「……」

 選ぶ自由さえ無くこの道を歩き始めた自分と、選んでこの道を進もうとするドクオ。
 ミルナは、自分とドクオの境遇を比べて考えていた。


 今の自分には後悔しかない。叶うことなら全てをやり直したいとさえ思っている。
 しかし現実はただ前へ進み続ける。
 例え行く末が底無しの断崖であっても、現実は一定の速度で淡々と進んでいく。

 断崖へと続く未来を変える方法はただ一つ。
 今ある道をはずれ、見ず知らずの道に一歩踏み出す事だ。

 もし、ドクオの存在によって何かが好転するのなら……。


( ゚д゚ )(……駄目だ。それで何かが変わった試しは、ない……)


 誰かが居れば何かが変わるのではないかという、無責任で楽観的な思考。
 一時の安楽の為に考える事を放棄し、希釈され尽くした希望に未来を放棄する。

 そんな子供染みた考えに今一度縋りつくような真似は、彼にはもう決して選べなかった。
 彼の過去は、後悔と戒めに満ち溢れている。

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38 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:40:12 ID:tpcqJCsI0


 そこまで考えて、ミルナはようやく自分の立ち位置を思い出した。


( ゚д゚ )(『役立たずのろくでなし』だ、結局はな……)


 どれだけの実力を有していても、それが全く活用できず、いくら努力しても目指しているものに届かない。
 才能や努力が成果に結びつかない期間が長続きすれば、人はいつか諦念と堕落に行き着いてしまう。

 人間を本当の意味で終わらせるのは生まれや能力の優劣ではなく、
 山ほど積み上げた努力の産物を、誰にも知られずひっそりと、胸のうちで絞め殺した時だ。

 ミルナはその経験を何度も味わってきた。
 元の世界に戻る――最初はその事だけを考えて行動したが、それが残したのは夥しく連なる後悔の痕だ。


 かつての世界。ミルナは仲間を集めてtanasinnに挑み、その仲間達を全滅させた事がある。
 しかしそれを悲しむ暇はない。この世界はタイミングが来ると、tanasinnが生み出す次の世界へと作り変えられていく。


 次の世界にはまた別の常識と正義が存在する。
 ミルナは次の世界に順応する為に、自分の記憶にだけ存在する過去の仲間達を忘れ、自分の中の正義を塗り替えた。
 時には前の世界を全否定する悪のような正義にも、彼は“元の世界に戻る”という目的の為に従った。

 そしてある時、ミルナは全てを諦めた。
 彼は自分の中の正しさを塗り替えていく中で気付いてしまったのだ。
 もうとっくに、自分という存在は無色透明に塗り潰されているのだと。


 彼はtanasinnへの反抗をやめ、誰も居ない場所で静かに停滞し続けることを選んだ。
 100万回生きた男は100万回生きて死に、そして100万回分の後悔を抱え、無限に続く人生を漂い始めた。
 そうした生きながら死を演じるような無様な生き方は、彼の心をすぐに鈍化させていった。

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39 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:40:52 ID:tpcqJCsI0



 ミルナは心を落ち着け、ドクオをどうするべきか考え始めた。


 世界が変わる度に過去を切り捨て、百万通りの正義を使い分けてきた彼にとって、
 今更誰がどれだけ干渉してきたところで、思う事は何もない。
 正直ついてきても構わないと思えるが、問題は……


( ゚д゚ )(……いや、問題も何もない。勝手にしろ、それだけだ)

 十分に鈍化した彼の心は、最終的にそういう結論を出した。

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40 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:41:32 ID:tpcqJCsI0



( ゚д゚ )「……ついてきていい。放せ」

(;'A`)「……気持ち悪いぐらいあっさりだな」

 ドクオはそう言い、胸倉を掴んでいた手を放した。


( ゚д゚ )「……俺には行く当てがない。ついてきていいとは言ったが、道はお前に任せるぞ」

('A`)「……お、おう……」

 一瞬前の様子とは打って変わり、今は不気味なまでに穏やかなミルナ。
 その姿に、ドクオは大きな不気味さを覚えた。

( ゚д゚ )「続きは歩きながら喋るぞ。急ぎたいだろ」

('A`)「……そうだな」

 ドクオは心配そうな目でミルナに一瞥を送ってから、一歩を踏み出した。

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41 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:42:12 ID:tpcqJCsI0



( ゚д゚ )「……」


('A`)「……どうした、来ないのか?」


( ゚д゚ )「……行く。ちょっとな」


 ミルナもまた一歩を踏み出し、いよいよレムナントを回る二人の旅が始まった。



( ゚д゚ )「暇潰しに俺が一番好きなお話をしてやる」

('A`)「藪から棒にも程があるだろ」

( ゚д゚ )「話したい気分なんだ。その話はな、百万回生きた猫って話でな……」


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42 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:44:41 ID:tpcqJCsI0

≪2≫


 ドクオはレムナント監獄を出発してから西へ歩き続けた。
 ダディ達と一緒に見た地図では、目的地は大体こっち方向だった覚えがある。
 記憶は酷く曖昧だが、この先の森と崖を超えていけば、あとは土地勘で何とかなるとドクオは考えていた。


('A`)「……必殺技、欲しいんだよ。
   こないだ戦ってる時に名前思い付いたんだけどさ……」

( ゚д゚ )「必殺技か、俺も一時期やってたな。今思うとすごい恥ずかしい」

('A`)「叫びたいんだよ……カッコイイやつを……切実に……」

(;゚д゚ )「やめとけやめとけ、本気でドラゴンブロウとか叫ぶの結構キツイぞ」

('A`)「えっ? ドラっ……」

( ゚д゚ )

('A`)




('∀`)「カッコイイな! それな! それ貰っていい?」

(;゚д゚ )「好きにしていいからこの話はやめろ! ほら、あれが目的地だろ!」


('A`)「……おっ、もうすぐそこじゃん。案外早かったな」

 雑談に花を咲かせている内に、彼らは一つ目のチェックポイントである森林を目前にしていた。
 レムナントで唯一植物が群生しているあの森を抜け、崖を飛び越えればドクオの故郷はもうすぐだった。
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43 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:45:21 ID:tpcqJCsI0


 ミルナは空を見上げ、太陽の位置からおおよその時間をはかった。
 太陽はほぼ真上に位置している。

( ゚д゚ )「あの森を抜ける、か……半日で行けると思うか?」

 ドクオは森に向かって目を凝らした。
  ,_
('A`)「……けっこう広いな。しかも奥の方は結構暗いぞ。昼間なのに殆ど光が差し込んでない」

( ゚д゚ )「……どうする?」

('A`)「……今日はとりあえず森を抜けよう。
   無理でも森の中なら火を起こせるし、食べ物もあると思うし」

( ゚д゚ )「だな」

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44 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:46:02 ID:tpcqJCsI0



 ――森に近づいていくにつれ、二人は先程の目論みがどれだけ甘かったかを徐々に理解していった。


 木々はその一本一本が高く図太く、地面にも多くの雑草が生い茂っていた。
 見る限り道と言えるものも存在しておらず、進行は手探りにならざるをえない様子だった。

 地形の高低差もかなり激しい。
 途中から上り坂と下り坂が入り乱れており、下手な進路をとればすぐに体力を消耗してしまう。
 素人の二人で乗り越えるには、この森はあまりにも広大で複雑なつくりをしていたのだ。


 森の入り口まで来て立ち止まったドクオとミルナは、今一度森を見渡してあんぐりと口を開けた。

(;゚д゚ )「おい半日じゃ無理だろコレ」

(;'A`)「……とりあえず真っ直ぐ進めばオッケーの筈だから、深く考えずに直進してこうぜ」

(;゚д゚ )「真っ直ぐか、なら大丈夫だろ……」

 森の怖さを知らないままに、二人は森の中を歩き始めた。


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45 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:50:15 ID:tpcqJCsI0


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 三時間後、二人は迷子だった。


('A`)


('A`)「は?」

 ドクオは逆切れ気味に呟き、後ろについてきているミルナを睨んだ。


( ゚д゚ )「いやこっち見るなよ」

('A`)「ここどこだよ。結構歩いたよな? は?」

( ゚д゚ )


(;゚д゚ )「……あー。そういや何度目かの休憩で真っ直ぐじゃなくなった気が……」

('A`)「言えよ」

( ゚д゚ )


(#'A`)「それ言えよ!!」

 ドクオはついに逆切れし、近くにあった木に拳で八つ当たりした。
 木々がざわめき、木の葉が空中を舞い落ちていく。


( ゚д゚ )「……」

 途端、ミルナは空中を見上げた。
 それを不思議に思い、ドクオは一時の怒りを忘れて彼に尋ねた。

('A`)「どした」

(#゚д゚ )「伏せてろ!」

 瞬間、ミルナは超能力を発動し、振り返ると同時に拳を突き出した。
 超能力によって鋼鉄に包まれていた彼の拳は、ガキンという音をあげて何かを打ち落とした。

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46 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:51:12 ID:tpcqJCsI0


(;'A`)「――トゲ!?」

 ミルナが地面に打ち落とした物を見て、ドクオは一歩遅れて周囲の気配に気がついた。
 ドクオは身構えて周囲を見回し、敵の存在を視認した。
 木々の陰に隠れて輝くそれらは、森に住む生物達の双眸だった。


(#゚д゚ )「なんでか知らんが怒りを買ったらしい!」

 ミルナは木陰から次々と飛来する巨大なトゲを的確に打ち落としながら言った。

(;'A`)「お、俺もッ!」

 危機感を覚えたドクオは能力を発動しようとしたが、その為の光源を持ってくるのをすっかり忘れていた。

(;'∀`)「……やっべ」

 冷や汗が頬を伝って流れ落ちていく。
 その様子から今が好機と悟ったのか、茂みの中から生物達がなだれの様に飛び出してきた。

 驚く事に、飛び出してきた動物達はその多くが超能力らしきものを発動していた。
 火達磨のリス、八首のヘビ、全身を針に覆われた犬、ミサイルを携帯した鳥、
 体が水で出来ているクマ、三羽そろって牙をむくスズメなど、そのバリエーションは種族超能力ともに多岐に渡った。

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47 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:52:36 ID:tpcqJCsI0


('A`;)「ヤバイ! ヤバイってミルナおいこれ逃げた方が!?」

(;゚д゚ )「同感だ! この数はさすがに今はッ……!」

 二人が背を合わせて切迫している間に、動物の大群の中から、人型の鳥が先行して接近してきた。

(# ゚∋゚)

 3メートルはあろう鳥人間の肉体は完璧な二足歩行で走り続け、
 そのまま二人に体当たりをかまそうとしていた。

(;'A`)「くっそ!」

( ゚д゚ )「……」

 鳥人間から逃げようとしたドクオは、そのとき急にミルナの雰囲気が変わったような気がした。
 その感覚は、ミルナが光源なしに物質を具現化した――tanasinnの力を使った時に似ていた。

 ミルナの左腕に、黒い煙が巻きついた。

('A`;)(――止めねえと!)

 ドクオは咄嗟にそう思った。
 何が起こるか具体的に想像した訳ではなかったが、心身が一瞬にして“あれは危険だ”と察知したのだ。

 ドクオは踵を返し、ミルナの肩に手を伸ばした。
 だが既に、ミルナと鳥人間の間には何者かの攻撃が割り込んできていた。

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48 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:54:08 ID:tpcqJCsI0


 二人の間に割り込んできたもの。
 それは、地面や草木を容易に切断しながら飛んでくる殺人的な旋風だった。

(; ゚∋゚)「ッ!」

( ゚д゚ )「新手……」

 直撃が危険と悟った鳥人間は急停止して後方に飛びのいたが、
 ミルナは悠然と左腕を振るい、腕に巻きついていた黒煙を放って旋風に直撃させた。

 黒煙と旋風はぶつかると同時に相殺し、やわらかな風を残して双方消滅した。


(;'A`)「……」

 ドクオは、旋風が飛んできた方向に目を向けた。
 すると間もなく、森の奥から長身の男がぬらりくらりと歩み出てきた。





.∧_∧
( ´Д`)「参ったな……」

 男は、後頭部をかきながら呟いた。

.∧_∧
( ´Д`)「あんな握りっ屁に消される技じゃなかったんだが……」



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49 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:56:28 ID:tpcqJCsI0


.∧_∧
( ´Д`)「……あんたら」

 男はミルナとドクオをそれぞれ見てから、ドクオに声を掛けた。

.∧_∧
( ´Д`)「俺は八頭身。見ての通り、剣士だ」

 八頭身と名乗った彼は、身の丈を超える大刀を肩に担いで自己紹介した。


(;'A`)「でっけ……」
.∧_∧
( ´Д`)「見慣れないだろ。こいつが案外ただならねえ」

 八頭身はドクオの訝しげな反応に不敵な笑みを返した。
 それは、自身の技量と刀への信頼を表していた。

.∧_∧
( ´Д`)「クックル、さっきのはただの八つ当たりだろうよ。
      こいつらに敵意があった訳じゃねえさ」

( ゚∋゚)「……」

 鳥人間――クックルは八頭身の言葉に耳を傾けたようで、小さく頷くと、彼は森の生物達に視線を送った。
 すると動物達は静かに超能力を解き、静かに森の中に帰っていった。

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50 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:57:40 ID:tpcqJCsI0


.∧_∧
( ´Д`)「俺は探しモンでここに来た。
      コイツ、クックルには道案内を頼んでる。ただの迷子じゃねえさ」

.∧_∧
( ´Д`)「一緒に来るか? 俺の用事を手伝ってくれりゃ金も取らねえよ」

(# ゚∋゚)

 クックルは八頭身の隣に立ち、ドクオをじっと睨んだ。
 まだ怒っているのだと察したドクオは、バッグから食料の一部を取ってクックルに差し出した。

(;'A`)「……これ、ビスケットだけど要る?」

(* ゚∋゚)

 餌付け、完了。


.∧_∧
( ´Д`)「で、どうするよ。クックルがいりゃあ夜中襲われる心配もねえが、今の内に動きたいだろ」

('A`)「……そりゃそうだ。ミルナ、こいつらに付いてこうぜ」

( ゚д゚ )「……ああ」

.∧_∧
( ´Д`)「そんじゃあクックル、案内頼む」

 クックルが歩き出すと、各々もその後に続いて歩き始めた。

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51 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 22:58:44 ID:tpcqJCsI0

≪3≫


 道程は長く、三人は歩きながらの雑談で暇を潰していた。
 特に何かがあるわけでもないので、適当な事を話すしかやる事がない。
 今の話題は、八頭身が呆然と語る“剣士とは何ぞや”だった。

.∧_∧
( ´Д`)「……まぁ剣士なんざ結局二通りよ。
      斬り合ってるか刃物集めてるかのどっちかだ」

.∧_∧
( ´Д`)「たまに獲物自体が超能力持ってたりするしな、剣の腕はあんまり関係ねえのが現状だ。
      俺もそんなに腕は立たねえ。俺はこの刀ありきで今までやってきた。さまさまだ」

('A`)「アンタのそれも、凄い刀なのか?」

.∧_∧
( ´Д`)「すげぇのなんの、石ころひとつで姿形と能力が変わる化け物だ。
      鍔のとこにへこんだ場所があるだろ、そこに石をはめこむんだ」

.∧_∧
( ´Д`)「名前は『大長刀・アハト』。自慢の一振りだ」

 八頭身は少し屈み、背中の大刀をドクオに見せつけた。
 強固に作られた鍔の部分には球形のくぼみがあるが、今はそこに何も収まっていなかった。

.∧_∧
( ´Д`)「俺が今探してるのはその石ころだ。
      この先の崖下にあるらしいんだが、ほんとに見つかるかどうか……」

('A`)「……俺達が手伝う用事はそれか?」

.∧_∧
( ´Д`)「そうそう。頼りにしてるぜ」

 八頭身は振り返り、ドクオに笑顔を送った。

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52 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:00:00 ID:tpcqJCsI0


.∧_∧
( ´Д`)「俺が探してる石ころ、その名も『両刀・太刀猫』よ」

(;゚д゚ )「……ろくでもない名前だな」

('A`)「?」



.∧_∧
( ´Д`)「……そういやぁ兄さん、さっきの煙、ありゃ何だよ」

.∧_∧
( ´Д`)「俺は驚いたんだぜ、だって光もなしにあんなの出したんだ。
      世の中にゃあ生身で大地震起こす熊みたいな化け物が居るらしいが、アンタ、それとも違うだろ」

( ゚д゚ )「……あらかじめ能力を発動してただけだ。剣士にしては目が悪いな」

.∧_∧
( ´Д`)



.∧_∧
( ´Д`)「は? お前あとでぶった切るからな」

(;゚д゚ )「真に受けるな! 冗談だよ!」

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53 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:00:42 ID:tpcqJCsI0


('A`)「……能力と言えば、なんで森の生き物が能力出してたんだ?」

.∧_∧
( ´Д`)「あぁそれか、それは俺にも分かんねえ。不思議な事もある」


( ゚д゚ )「……認識の違いだろう」

( ゚д゚ )「俺達にとって光は人工的なものだが、生き物にとって光は太陽だ。
     その認識の差異が長い年月をかけて超能力の違いを生み出した、とかな」
.∧_∧
( ´Д`)「進化の過程で超能力が枝分かれしたか。
      案外そうかもしれねえよ。アンタ頭良いな」

 ミルナの空気の読めないマジレスに、八頭身は優しく対応した。


( ゚∋゚)「そろそろ森を抜ける」
.∧_∧
( ´Д`)「あいよ。ご苦労さん」

(;゚д゚ )(こいつ喋れたのか……)

(;'A`)「……クックル? さん……は、種族的に何なんですか?」

 ドクオは勇気を出して聞いてみた。
 雰囲気がどことなくクマーに似ているので、ドクオはクックルを怖がっていたのだ。

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54 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:01:29 ID:tpcqJCsI0


( ゚∋゚)「……鳥人間、というよりは人間鳥」

( ゚∋゚)「昔は完全に人間だったけど、気付いたら鳥だった」

(;'A`)「気付いたら!?」

( ゚∋゚)「寝て起きたら空とか飛べそうだった……それで鏡見たら羽毛もっさもさだった……」

(;'A`)「そ、そんな感じでいいんすか……?」

( ゚∋゚)「元々森に一人で住んでたから、特に生活に変化とかない。
     生き物の言葉が分かるようになっただけ、むしろ便利」

.∧_∧
( ´Д`)「しかもコイツ、聞いたら人間に戻る方法知らねえんだってよ。ずっとこのままだと」

(;゚д゚ )「……森で生きてたから、超能力の概念も動物寄りになったのか……?」

( ゚∋゚)「超能力、とても不思議」

.∧_∧
(*´Д`)「まあ今の方が断然カッコイイと俺は思うけどな! いいじゃん人間鳥!」

(* ゚∋゚) ポッ

 八頭身はクックルの肩に腕を回し、高らかに笑った。

(;'A`)(こんな気楽な話じゃないと思うんだけどなぁ……)

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55 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:02:23 ID:tpcqJCsI0


.∧_∧
( ´Д`)「――っと! いよいよお目当ての場所だ!」

 森の出口が間近に迫ると、八頭身は走り出してクックルを抜いていった。

( ゚д゚ )「森を抜けたら次はなんだ?」

('A`)「崖、っていうか谷かな……。地面がばっくり割れてる場所」

( ゚∋゚)「凄い昔に、凄い剣士が作った谷、らしい」

 間もなくして、ドクオ達も八頭身に続いて森を出た。
 久方振りの太陽が、彼らの頭上で眩く輝いた。


 そして先頭に立っていたミルナは、突然足元に広がった断崖絶壁に目を丸くした。

( ゚д゚ )「は?」


(;゚д゚)「おっ↑ちる!!!!!!!!!」

 ミルナは声を裏返らせて言い、落ちる寸前でなんとか踏み止まった。
 しかしすぐそこが崖なのを知らなかったドクオは

(*'A`)「わぁ〜崖だぁ〜」

 などと意味不明な供述をしながら崖下に落ちていった。

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56 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:05:22 ID:tpcqJCsI0



('A`)(…………あ……?)



('A`)(………………)



('A`)

('A`)「あっ」



 ようやく気付いたその瞬間、ドクオは腹の底から悲鳴を上げた。


(;゚A゚)「死ぬぁアアアアアアアアアアアアアア――――……」



(;゚д゚ )「あンのバカ野郎ッ!!」

 ミルナは遠のく悲鳴を追いかけるように体を前傾させて崖を飛び降りた。

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57 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:06:56 ID:tpcqJCsI0



('A`)「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……」

(;゚д゚)「ビビってんじゃねえ! 手ぇ伸ばしてろ!」

 ミルナは体を大の字に開いて落下しながら超能力を発動した。
 右腕が鈍色の装甲に覆われ、彼の背に撃鉄がひとつだけ具現化する。

(;゚д゚)(少しは力が戻ったか……!)

 ミルナは右腕を真下に向け、それを左腕で支えた。
 照準をドクオに絞り、ミルナは何万年振りに背の撃鉄を落とした。

(;゚д゚)「ぐッ……!」

 それを切欠に背の撃鉄から光が溢れ出した。
 光の流動が生み出した推進力は彼の落下速度をさらに上昇させ、ドクオとの距離を瞬く間に縮めていく。
 だが、長い間超能力を発動せずに居たミルナには、マグナムブロウという超能力の反動は余りにも大きすぎた。

(;゚д゚)(ここまでッ……)

(; д )(ここまで鈍ってるのかッ……!)

 加速し始めた途端、右腕の装甲が一気にひび割れて崩れ始めた。

 装甲は肉体との結合を維持できず、破片になって空中に散っていく。
 装甲がはがれる度に、生身から分厚く皮膚をめくられるような激痛が彼の全身に突き刺った。

(; д )(なまるにも程があるだろッ……!)


(;'A`)「――おい! 大丈夫か!?」

 あと少しで手が届くというところで、ミルナの意識は激痛によって打ち切られた。
 ふっと力が抜けて自由落下を始めた彼の手を、ドクオは咄嗟に掴み取った。

(;'A`)(このままだとコイツごと地面に――!)

 ドクオはこの状況を何とかしようと考えたが、やれる事は何一つとして思い浮かばない。
 せめて傷のない自分が下になろうとミルナを庇い、ドクオは覚悟して目を閉じた。


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58 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:08:03 ID:tpcqJCsI0



 ――目を閉じる最中、ドクオは崖下に奇妙な姿を捉えていた。
 それは、地面から空中を睨んで居合いの構えをとっている八頭身の姿だった。



.∧_∧
(#´Д`)「クックル! 二人を止めるぞ!」

 八頭身は深く息を吐きながら『大長刀・アハト』の柄に手を触れた。
 そしてドクオらが攻撃範囲に入った瞬間、一気に腰を切って抜刀。火花が散るほどの加速をもって刀身を弾き出す。
 同時に爆風が巻き起こり、抜刀の衝撃波が空気を切り裂いて飛翔していった。


(;゚A゚)「おおおおおっ!?」

 衝撃波はドクオとミルナに直撃し、二人の落下を一時的に止めて見せた。
 しかしふんわりとした浮遊感は一瞬で、一秒と経たずして、二人は再度地面に向かって落ち始める。

 そこに手を伸ばしてきたのは、背中に純白の両翼をたたえたクックルだった。

(; ゚∋゚)「危ない危ない……」

 クックルに手を掴まれると、ドクオはようやく安堵して口元を緩めた。

(;'∀`)「……すっげー……マジで鳥だ……」

 クックルと一緒に空を飛びながら、ドクオ達は徐々に地面に降りていった。

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59 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:09:50 ID:tpcqJCsI0

≪4≫



 目が覚めると、ミルナは満天の星空に迎えられた。
 体に掛けられていたタオルケットをはがし、ミルナは体を起こした。


('A`)「……よう。森でキャンプ中だぜ」

 ドクオは焚き火をつつきながらそう言い、森の木の実をひとつ口に入れた。

( ゚д゚ )「……気絶してたのか……」

('A`)「年を考えろってヤツだ。助けに来てくれたのは素直に感謝してるけどな」

( ゚д゚ )「……あの二人は?」

('A`)「刀探しでまだどっか歩いてる。俺もさっきまで手伝ってたけど、見つかんなかった。
    でもお礼にペンライト貰えたんだ。これで俺も戦える」

 食料の入ったバッグから缶詰と缶切りを取り出し、ドクオは缶詰を開けて食べ始めた。

('A`)「食べる? 二人分の食料は十分あるぞ」

( ゚д゚ )「……働かざる者だ。今夜は飯抜きでいい」


.

60 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:11:59 ID:tpcqJCsI0


('A`)「そういやクックルに地図も貰ったんだ。
    次の目的地までは半日かからないってよ」

( ゚д゚ )「次か。次はどこだ?」

('A`)「俺の故郷。久し振りに帰ろうと思って」

( ゚д゚ )「なんだ、親の顔でも見に行くのか?」

('A`)「……いや、親は居ないんだ。育っただけ。親の顔なんざ見たこともねえよ」

( ゚д゚ )「……じゃあ何の為に寄るんだ?」

(;'∀`)「おいおい、質問攻めは勘弁してくれよ……」

 ドクオは苦笑いを浮かべてミルナの方を向いた。


('A`)「ついでに俺も聞くけど、あの時、崖から落ちてる時、なんで超能力に頼ったんだ?」

('A`)「あるんだろ? まだよくわかんねえけど……tanasinnとかっていうのの力がさ。
    森で動物に襲われた時には使ってたけど、どうしてあの時使わなかったのか気になったんだ」

( ゚д゚ )「……さぁな、どうしてだろうな……?」

 ミルナは本心でそう言って俯いた。

.

61 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:12:45 ID:tpcqJCsI0


 ドクオが少しの間沈黙していると、ミルナは考えをまとめて話し始めた。


( ゚д゚ )「……今朝、ついてくるなってお前に言っただろ。
     あの時、俺は諦めたんだ。結局人を巻き込むんだなって」

( ゚д゚ )「それでも希望はあった。
     お前が切欠で何かが変わるんじゃないか、とかそういう……無責任な希望だ」


( ゚д゚ )「一歩踏み出す直前、俺はその考えが間違っていると思った」
     だったら一体、何が正しいのか……」

( ゚д゚ )「正しさはあらゆる要素によって無限に定義される。
     だが、今の俺には正しさを定義する材料が何もない」

( ゚д゚ )「……そこで俺は、お前に合わせてみようと思った。
     この世界でひどく馬鹿らしい生き方をするお前にだ」

( ゚д゚ )「tanasinnの力を使わなかった理由はそれだ。
     ……素直クールも、お前の前ではあの力を使わなかっただろう」

( -д- )「言っちまえば今の俺は素直クールの後追いなんだと思う。
      アイツも、今の俺も、きっと『正しく』とかじゃなくて、普通に生きてこうとしたんだろうな」

.

62 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:13:31 ID:tpcqJCsI0


('A`)「……」


('A`)「……主体性がないって言うんだろ、そういうのって……」



(;゚д゚)「……そう言われると……」

 思わぬマジレスにミルナは困惑した。


('A`)「……まぁ俺に合わせるのも勝手にすりゃあいいけどさ、
    正しいとか間違ってるとか、考えてても終わらないだろ。自分一人でだと特に」

('A`)「俺は自分のやってる事は間違ってると思う。でも正しい事をしてる自負もある。
    あれだ、矛盾だ。世間のルールが矛、俺のアイツを助けたいって考えは盾」

( ゚д゚ )「……よく分からんな」

('A`)「俺もわかんね。でも逆に、分かってた方が不自由ってことも多いし、別にいいだろ」

( ゚д゚ )「……それはよく分かる」

.

63 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:14:18 ID:tpcqJCsI0



( ゚д゚ )「……荒巻と俺は、力量的には殆ど互角だ」

 ミルナはふたたび寝そべり、焚き火を見つめながら次の話題にうつった。

( ゚д゚ )「ドクオ、お前が知ってる奴で最強の奴を一人思い浮かべてみろ」

('A`)「デルタ関ヶ原。間違いなく、あの人が最強だよ」

 ドクオは考えるまでもなく即答した。


( ゚д゚ )「荒巻はそいつより強い。無論、俺もだ」

('A`)「にしては随分弱ってたけどな……」

(;゚д゚ )「リハビリ中だ。仕方ないだろ!」

 ミルナが逆ギレ気味に反論すると、ドクオはへらへらと笑って彼を宥めた。

( ゚д゚ )「……この先も俺と一緒に居れば、お前は確実に荒巻に会うだろう。
     こないだ、監獄の騒動に乗じて奴の部下が俺を殺しに来た。
     荒巻もまた、動き出そうとしている」

.

64 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:15:32 ID:tpcqJCsI0


('A`)「……」

( ゚д゚ )「先に聞きたいんだ。荒巻に会った時、お前は荒巻に戦いを挑むか?」

 ドクオは少し考えてから開口した。

( 'A`)「……タイミングによる。さすがにもう闇雲に戦ったりしねえ。
    俺より強い奴には山ほど出会った。ヤケクソじゃ勝てない……」

('A`)「看守長にもギコにも、結局は負けちまったしな……」

( ゚д゚ )「……お互い、今はクソ雑魚ゴミ野郎だな……」

('A`)「やる気なくなること言うなよ……」


( ゚д゚ )「……俺は、荒巻に会ったら、正直どうするのか分からない」

('A`)「戦うかどうかって話か?」

( ゚д゚ )「……いや、ちょっと違うな。奴に協力するか、それとも奴に殺されるか。
     多分俺は、そういう選択を強いられている」

(;'A`)「協力? つーか聞いてなかったけど、荒巻とお前の関係ってどうなってんだ?」


( ゚д゚ )「……それはまた今度だ。まだ体が痛いから寝る。お前もさっさと寝ろ」

 ミルナは寝返りをうってドクオに背を向けた。

( ゚д゚ )「明日から俺のリハビリに付き合え。特訓好きだろ」

('A`)「……いや、明日は駄目だ」

( ゚д゚ )「……明日は、お前の故郷か」

 それ以降ミルナはなにも喋らず、ドクオも缶詰を食べ終えるとすぐに横になった。
 ドクオはゆっくり時間をかけて明日への緊張を飲み下し、眠りに就いた。

.

65 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:18:22 ID:tpcqJCsI0

≪5≫


 翌朝、クックルに起こされた二人は近くの川で体の汚れを落とし、軽い朝食をとった。


( ゚д゚ )「お前にやる」

 朝食の途中、ミルナはドクオに衣服を差し出した。

( ゚д゚ )「ずっと囚人服のままは嫌だろ。俺が昔着てたのをtanasinnで具現化してみた」
  ,_
('A`)「……tanasinnの力は使わないんじゃなかったのか?」

( ゚д゚ )「こんな便利な能力だぞ? そりゃ必要最低限は使うだろ」

(;'A`)「……確かに……。ま、ありがたく貰うわ」

 衣服を広げて現れたのは、深紅のシャツ(DEAD or DIEと書かれている)と、
 黒のレザージャケット、致命傷と言うほどのダメージ加工を施されたジーンズだった。
 必殺技のくだりでもドクオは思っていたが、ミルナは案外痛い趣味をしているようだった。

(;'∀`)「……やっぱジャケットだけ貰うわ……」

( ゚д゚ )「そうか? 俺の中では渾身の組み合わせなんだがな……」

('A`)

 ドクオは笑いを我慢した。

.

66 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:20:07 ID:tpcqJCsI0


 出発の準備を済ませた二人はクックルの後について歩き始めた。
 一時間経たずして森の出口に到着。クックルに掴まって空を飛び、崖を飛び越える。



.∧_∧
( ´Д`)「おう、元気そうだな」

 崖の向こう側では八頭身がしたり顔で待ち構えていた。
 よく見ると彼の背中にある刀に変化があった。鍔のくぼみに、昨日にはなかった球体がはめこまれていたのだ。
 球体があるせいなのか、刀は二本に分かれていた。

 ドクオの視線に気付くと、八頭身は待ってましたと言わんばかりに話し始めた。

.∧_∧
( ´Д`)「今朝方見つけた。お前らのおかげだ」

 刀を小突き、八頭身は朗らかに微笑んだ。

('A`)「お世辞言うなよ。……太刀猫だっけ? いいな、カッコイイぜ」

( ゚д゚ )(言葉の意味は教えないほうがよさそうだな……)

.

67 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:20:55 ID:tpcqJCsI0


.∧_∧
( ´Д`)「なんにせよここでお別れだな。あんたら良い話し相手だったぜ」

('A`)「あ、ちょっと待ってくれ。クックルさんも。
   聞いて欲しいことがあるんだった」

.∧_∧
( ´Д`)「お? なんだ?」

( ゚∋゚)「?」

 八頭身とクックルを呼び止め、ドクオはレムナント制圧作戦の事を二人に伝えた。
 二、三週間後に大きな戦いが始まる事を知ると、二人の表情は徐々に険しくなっていった。

.∧_∧
( ´Д`)「……参ったな、そいつは……」

(;'A`)「あえっと……。俺らはレムナント監獄から来たんだよ、あそこ脱獄してさ」

 慣れない説明役に戸惑いながら、ドクオは言葉を続けていく。

(;'A`)「出所は監獄の看守長だよ。確信が欲しいなら一度監獄に行ってみてくれ」

(# ゚∋゚)「……」

 クックルは沈黙したが、その雰囲気は怒りに満ち溢れていた。

.

68 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:23:23 ID:tpcqJCsI0


.∧_∧
( ´Д`)「ふぅん……制圧作戦ね……だから俺を……」

 八頭身は腕を組んで考える素振りを見せたが、考えても分からないのですぐに居直った。

.∧_∧
( ´Д`)「とにかく分かった。嘘でも本当でも言いふらしといてやる」

(*'A`)「おお! 助かる!」

 八頭身はドクオらに背中を向け、二つに分かれた二本の大長刀・アハトを両手に構えた。


.∧_∧
( ´Д`)「それじゃあ今度こそお別れだ。
      しかも厄介な話を聞いちまった、善は急げってヤツだぜ」

 刀を地面に突き刺すと、八頭身はポケットに手を突っ込んでその中身をジャラジャラと音を鳴らした。
 次の瞬間、彼は勢いよくポケットから手を抜き出した。

 同時に、八頭身の手の平からビー玉ほどの水晶が大量に空に放たれた。
 彼が先日話した通りならば、空中に飛ばされた全ての水晶は、超能力を有している事になる。


(;゚A゚)「――マジかっ!?」

(; ゚∋゚)

(;゚д゚)「バカだろ」

.∧_∧
( ´Д`)「大マジだ」

 ドクオの驚愕も束の間、多数の水晶はアハトと八頭身を中心に浮遊し始め、一斉に超能力を発動した。
 実に三十はあろう水晶達はぼんやりと輝き、炎や水、氷、稲妻、風などの超能力をその身に纏った。

.

69 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:25:11 ID:tpcqJCsI0


.∧_∧
( ´Д`)「縁がありゃあまた会える。そういうもんだぜ人生」

 超能力が一度に三十種類も発動した光景に圧倒され、三人は息を飲んだまま目を泳がせていた。

 八頭身は空中に浮遊する水晶をひとつ取り、それを大長刀・アハトに装着した。
 刀身は輝きながら形状を変え、最終的にスノーボードのような形に変形する。
 果たしてこれを刀と言うのか分からなかったが、とにかく凄かったのでドクオは何も言わなかった。

.∧_∧
( ´Д`)「ドクオ、ミルナ、クックル。ついでに俺の名前も広めといてくれ。
      どうやらこっちじゃ無名らしいからな、売名も大事な活動なんだ」

(; A )「頼むから超能力一個分けてくれ!」

(;゚д゚ )「あっおい! 俺のがあんだろ!」

.∧_∧
( ´Д`)「俺の名は八頭身、またの名を『東方の抜刀神』だ。
      確かに伝えたぜ、武神の馬鹿弟子さんよ」

 八頭身がスノーボードに乗ると、氷雪系の能力を持つ水晶が彼の前方を走り始めた。
 大地を凍らせながら水晶が走っていく一方で、ボードの後部では風の能力を持つ水晶が低く唸り声を上げていた。

(;'A`)「ちょっ! 武神って――」

.∧_∧
( ´Д`)「また会おうぜ、あばよ!」

 風の水晶はエンジンのように唸って爆風を噴射し、ボードは一気に最高速度に達して動き始めた。
 八頭身は瞬く間に離れていき、結局ドクオの質問はうやむやになってしまった。

.

70 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:26:11 ID:tpcqJCsI0


( ゚д゚ )「……もしかして、凄いヤツだったんじゃないのか?」

(;'A`)「……かもしれない……」

 二人はしばらく黙ったまま、八頭身が見えなくなるまでそこに立ち尽くした。
 十秒もすれば、八頭身は完全に見えなくなってしまった。

 そこでミルナはドクオの肩をポンと叩き、自分達も先を急ごうと言って歩き出した。


(;'A`)「……抜刀神、ダジャレかよ」

 ようやく落ち着いてきた所で、ドクオはクックルの方を向いて軽く頭を下げた。
 次いで荷物のバッグから食料をいくらか差し出し、昨日の一件を改めて謝罪した。


('A`)「……それじゃあ俺らも行きます。クックルさんも、森のみんなも元気で」

( ゚∋゚) コクリ

 もう一度頭を下げると、ドクオは身を翻してミルナのもとへ駆けていった。

.

71 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:27:13 ID:tpcqJCsI0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




(`・ω・´)「――向こう側に行きたいだと?」

 メシウマ側にある巨大な塔、ステーション・タワーの一室。
 シャキンは事務机から視線を上げてそう言うと、目の前でピンと突っ立っている少年と目を合わせた。


<_プ−゚)フ「もうすぐ制圧作戦が始まります。あそこはもう戦場になる。
        それまでに助けたい人が、あの町に」

(`・ω・´)「誰だ」

 シャキンは右手のペンを一回転させた。

<_プ−゚)フ「育ての親です。……もう年です。こちら側に住まわせたい」

(`・ω・´)「……越権行為だが、いいだろう。デミタスに話を通しておく。
      しかしあくまで制圧作戦の一環としてヤツに提案する。却下されても知らないからな」

<_プー゚)フ「ありがとうございます!」

 エクストは満面の笑みを見せ、さっさと部屋を後にした。


.

72 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:31:06 ID:tpcqJCsI0
1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24

第十七話 Waste Land >>33-71

大変お待たせしました
次回の投下は今月末〜来月です。次も二話分投下できればいいなと思います
以下おまけ

73 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:32:25 ID:tpcqJCsI0

 ≪ ( ゚д゚ ) / マグナムブロウ ≫

【本体名】 ミルナ

【タイプ】 近距離/具現・装着型

【基本能力】 

[破壊力:D] [スピード:D] [射程距離:D]

[持続力:E] [成長性:F]

A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み    E=よわい     F=論外


【能力概要】
ドクオの能力の原型で、右腕版のマグナムブロウ。
ドラゴンブロウという必殺技(名前だけ)がドクオに受け継がれた。

長年の停滞によって過去最弱の状態にまで落ちぶれている。
少しずつ感覚を取り戻していこう。

74 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:33:05 ID:tpcqJCsI0

 ≪ ( ゚∋゚) / (本人が考えていない) ≫

【本体名】 クックル

【タイプ】 身体強化型

【基本能力】 

[破壊力:-] [スピード:B] [射程距離:C]

[持続力:B] [成長性:D]


【能力概要】
鳥になれるぞ!

75 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:34:02 ID:tpcqJCsI0

    .∧_∧
 ≪ ( ´Д`) / 大長刀・アハト ≫

【本体名】 八頭身(抜刀神という異名がある)

【タイプ】 異物

【基本能力】 ※水晶なしの状態

[破壊力:B] [スピード:C] [射程距離:B]

[持続力:A] [成長性:-]


【能力概要】
超能力を有した水晶を鍔のへこみに装着すると、その水晶の能力が発動する。
使い込んだものは装着する必要もなく発動可能。
現時点で少なくとも30種類の超能力を有しており、とてもすごい。

通常のままでもとてもすごく、爆風を起こして攻撃する事が出来たりする。
刀身は3メートルくらいある。とてもすごい。

76 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:50:19 ID:jK.adOAA0


77 名も無きAAのようです :2014/11/17(月) 23:57:35 ID:g99JVt0.0

次回はよ

78 名も無きAAのようです :2014/11/18(火) 01:22:11 ID:uVQLzjTc0
おつおつ
八頭身がかっこいい・・・だと・・・

79 名も無きAAのようです :2014/11/18(火) 01:47:10 ID:2hAOuGkA0
乙!次回待ち遠しい…!

80 名も無きAAのようです :2014/11/18(火) 12:04:57 ID:FpRdanjQ0
この八頭身は1さんを追い回すのだろうか
おつ

81 名も無きAAのようです :2014/11/18(火) 14:02:51 ID:yK8pS5Jk0
補足王ギコwwwwwwww

ミルナの本調子の能力が楽しみだな、おつ

82 名も無きAAのようです :2014/11/18(火) 16:58:07 ID:yrFHOsPg0
とてもおつ

83 名も無きAAのようです :2014/11/21(金) 11:32:11 ID:9IY2hICE0
とてもすごい乙
次も楽しみ

84 ◆gFPbblEHlQ :2014/11/22(土) 03:07:22 ID:1kjA8D0s0
24日の21時に投下
よければリアルタイムで('A`)

85 名も無きAAのようです :2014/11/22(土) 09:52:27 ID:9yD.1Wn20
はい

86 名も無きAAのようです :2014/11/22(土) 17:58:06 ID:wHkH72.M0
やったぜ

87 名も無きAAのようです :2014/11/23(日) 08:27:52 ID:0GtYlX4s0
八頭身の能力かっけー

89 ◆gFPbblEHlQ :2014/11/24(月) 21:12:16 ID:z2STY7x60

≪1≫



 ドクオは、素直クールと一緒に作った掘っ立て小屋に来ていた。
 彼女との思い出はここに凝縮されている。
 それは幸せな日々だ。今よりもっと純粋に、単純に生きていた気がする時代。

 純粋であるという事を無思慮に崇高だと考えるほどドクオは子供ではなかったが、
 あの頃の思い出が次々と想起されていき、彼の思いは止め処なく溢れ返った。

 ドクオが思い出したのは、この名も無き町での生活、素直クールとの生活だった。
 町を離れて数年、様々な経験を経た今でも彼女の事は忘れていない。


 時が経つにつれ、彼女への感情は確かなものになっていった。
 しかしドクオはそれを言葉にはしなかった。愛に形を与えれば、人の心は欠陥品に成り下がる。
 強さを維持し、高めていくのに愛は邪魔だった。彼女を助ける為には、何にも勝る力が必要だった。

 徹しなければ上を向けない、切り捨てなければ前にも進めない。
 ドクオはそういう感じで生きていこうと思っていたが、どうにも上手くできず、
 今も郷愁のあるがままに心を動かされている。

('A`)(……いつになったら、大人なんだろうな……)

 長い年月が経った今でも色褪せないこの場所を見回しながら、
 ドクオはただ、あの頃の記憶をなぞり続けた。


('A`)「……手入れだけは、してくれてるみたいだな」

 ドクオは二人用の小さなテーブルを指でこすり、小屋を出た。
 歩き出す直前、最後に小屋を一望してから、ドクオは町の中を歩き始める。

.

90 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:19:49 ID:z2STY7x60



 ドクオには行き着けの八百屋があった。
 町で暮らしていた当時は、買い物の殆どをここで済ませていた。
 ここの店主に言われて運搬の仕事をやった事もある。エクストと一緒に。


 久し振りに八百屋に来たドクオは、まず息を殺して物陰に隠れた。
 遠くから、八百屋の様子をじっと窺う。


(゜д゜@ 「……」


 軒先の椅子に腰掛け、彼女は呆然と空を眺めていた。
 陳列された野菜も最低限の数が置いてあるだけで、繁盛している様子は感じ取れない。
 風が吹きぬけるだけのこんな町で、商売をしようというのも無理な話だが。

 ドクオが知る当時に比べると、店の雰囲気はあまりにも退廃してしまっていた。
 店主である彼女自身も、ここ数年見ない内に随分と老け込んだ気がする。

 ドクオは自分が町を去った後の事を知らない。
 それもあってか、彼女をこんなにしてしまったのは自分だという気がして、急に罪悪感が込み上げて来た。
 しかし同時に怒りもあった。
 素直クールはこの町の全員によって売られたのだ。彼女もまた、裏切り者の一人に過ぎない。

.

91 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:21:24 ID:z2STY7x60



 ドクオは作戦を立てた。

 それは完璧な作戦だった。


 まずは物陰で気持ちを落ち着け、おばちゃんが店の奥に引くのを待つ。
 そして彼女が引いたらすぐ店に近付くのだ。

 そこから先の事はその時考える。
 現実に直面すれば本心が出る筈だという適当な思いつきだったが、抜け目ない完璧な作戦だった。


 その時。
 青空を見上げていたおばちゃんが何かに気付いた。
 彼女は杖をついて立ち上がり、周囲に視線を泳がせた。

('A`)(……もう、気付いてももらえないんだな)

 気が萎えたドクオは両手をポケットにしまい、猫背になって物陰から出て行った。

 数歩出て行くと、そこでようやく彼女の視線がこちらに向いた。
 彼女は目を凝らしてこちらを見つめ続け、ややあってから、ドクオの存在を認めた。


(゜д゜;@ 「……ドクオ……」

 表情を何度も変えながら、絞り出すようにその名前を口にする。


('A`)「……」

 かける言葉が何も見つからず、ドクオはただ黙って立ち尽くした。
 しかし彼女はそれで満足だったようで、彼女はただ彼の名前を涙声で呟きながら、まるで懺悔するように地面に膝を落とした。
 ドクオはただ、彼女のそんな姿を見つめ続けていた。

.

92 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:29:40 ID:z2STY7x60

≪2≫


 ドクオは古びた畳の部屋に通され、そこで彼女と昼食を食べる事になった。
 お互いに、交わす言葉は必要な分だけに抑えていた。
 一言漏らせば、そこから全部が流れ出てしまう気がしたからだ。

 昼食として出てきたのは大きさの違う三つのおにぎりだった。
 ドクオは一番大きいのを手に取り、口に運んだ。


('A`)「……味気ないな。味付けは手汗だけか?」

(゜д゜@ 「年寄りにはこれで丁度いいのさ」

('A`)「……もう何歳になる」

(-д-@ 「聞くもんじゃないよ。女に嫌われるよ」

('A`)「女を選べる顔してねえって」

(゜д゜@ 「……ずいぶん見違えたと思うけどねぇ。良いツラしてるよ」


('A`)「おばちゃんもかなり変わったよ。かなりヨボヨボになった」

(゜д゜@ 「時間が経てば人間だって干乾びる……オアシスなんかありゃしないよ」

('A`)「化粧水使えば?」

(゜д゜@ 「焼け石に水だよ」

('A`)「確かに」

.

93 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:33:34 ID:z2STY7x60


(゜д゜@ 「……いまさら何しに来たんだい」

 湯のみにお茶を注ぎながら彼女は言った。

(゜д゜@ 「町の連中はもう居ないよ。みんな壁の向こうに行っちまった」

('A`)「……別に怨念返しに来たわけじゃねえよ。
    近くに来たから寄った、それだけ」

(゜д゜@ 「……それだけで済む理由で、あんたこの町を出てってないだろ」

('A`)「……俺が町を出たのはお前らが理由じゃない」

 ドクオは口早に続けた。

('A`)「今更なんてこっちの台詞だ」

('A`)「今になって謝って、それで話を終わらせようとか思ってんなら……。
    それこそ本当に、俺はお前らを許さない」

 冷たくそう言い切ってから、ドクオは空虚に嘲笑した。


('∀`)「……みたいな感じでな、本当は来るつもりだったんだ。
    そしたらおばちゃん以外誰も居ねえし、色々覚悟してたのも空回りだ」


('A`)「俺さ、強くなったんだよ。今は超能力もあるんだ。
    こんな小さい町なら俺一人でブッ潰せる。今日はそういう決心をしてここに来た……」

(-д-@ 「……」

('A`)「……ってな、冗談だよ。今しがた、冗談って事にした」

.

94 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:35:34 ID:z2STY7x60


('A`)「おばちゃんは何でここに残ってたんだ?
    町の奴と一緒に行けばよかったのに」

(゜д゜@ 「……なんでだろうねぇ。あたしも今しがた忘れちまったよ」

('A`)「……俺ぁ元気にやってるよ」

 ドクオは残りのおにぎりを頬張り、それをお茶で流し込んだ。

('A`)「エクストも多分、上手くやってる」

('A`)「あんたが元気で良かった。……じゃ、体壊す前に引っ越せよ」

 ドクオは立ち上がり、彼女に背中を向けた。
 二人の間に存在する軋轢が、彼らの会話を表面上の部分だけで終わらせようとしていた。


('A`)「……」

 ドクオはふと、素直クールが消えた日を懐古した。

 しかし、ドクオはその事で彼女や町の人間を責めようとは思わなかった。
 それは決してコミュ障の弊害などではなく、単に彼女達が悪いと思っていないからだった。
 クーは俺が弱いせいで町を出た――悪いのは俺だという確たる結論が、彼の内心にはあった。

 ドクオはあの一夜の責任を一身に抱えることで、素直クールへのささやかな独占欲を満たしていた。
 自分で彼女を救いたいという思いも、もしかすると歪曲した独占欲に過ぎないのかもしれない。

.

95 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:37:35 ID:z2STY7x60


('A`)(独占欲……)

('A`)(……俺は……自分の欲の為にここまで来たのか……?)

 世の中には、誰かを助ける事でしか自分を助けられない人間が居る。
 それは、他人の幸福を利用しなければ、自分自身の幸せを自覚できないという人種だ。

 彼らはある種の妄信だけで生きている。
 人を幸せに出来る自分は幸せだ、偉い、凄い。
 人の為に生きている自分は生きていて良い。

 そんな他人に依存しきった幸福感が彼らを生かし続ける。
 他人に利用される事に存在意義を見出し、幸福のおこぼれから自己肯定の材料をかき集める。

 ドクオは、自分にこそ“コレ”が当てはまるのではないかと胸を痛くして考えた。
 そうしていると、おばちゃんが小さな声で話し始めた。


(゜д゜@ 「……あたしゃね、あんたが生きてて本当に良かったと思うよ。
      あんたいっつも死にたがってたから……。
      クーちゃんが居なくなったら、もう本当に死ぬんじゃないかって」

(゜д゜@ 「長い間、帰りを待ってて本当に良かった……」

 彼女は一息つき、微笑んで言った。

(゜д゜@ 「もうすっかり大人じゃないか、ドクオ」

('A`)「……よしてくれ。俺はそんなんじゃない」

.

96 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:39:39 ID:z2STY7x60



('A`)「……そうだ、おばちゃんに渡すもんがあるんだ」

 ドクオはそう言って踵を返し、おばちゃんの前に腰を下ろした。

('A`)「ペンダント。あいつが俺にくれたんだけど、おばちゃんにやるよ」

 首にしていたペンダントを外し、手の平にのせて差し出す。
 おばちゃんはポカンとしてそれを見たが、すぐ我に返り、首を振って身を引いた。

(゜д゜;@ 「受け取れないよ! それ、凄く大事なもんじゃないか!」

('A`)「すげぇ大事だ。これがなきゃ眠れない夜もあった」

(゜д゜;@ 「そんな、どうして……」

 ドクオは彼女の目を見た。

('A`)「自分の為はここまでだ。俺はもう、誰かの為に戦える」

('A`)「いつかアイツを連れて帰ってくるよ。それまで、どうか預かっててほしい……」


(゜д゜;@ 「……」

 おばちゃんは少しのあいだ考え、やがて、ペンダントを手に取った。

(゜д゜@ 「……綺麗だね。大事にするよ」


.

97 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:43:39 ID:z2STY7x60


('A`)「そんじゃあ行ってくる」

('A`)「ちょっと騒がしくなるから、家から出んなよ」

(゜д゜@ 「……え? なんだい?」

('A`)「いいから安全な場所に居てくれ。じゃあな!」

 ドクオは彼女にそれだけ言い残し、急いで小屋を出て行った。


(;'A`)「――うおっ!?」

 小屋を出た途端、地面を揺らす巨大な爆発音が響いてきた。
 音を頼りに周囲を見回すと、町から離れた場所で空を刺すような砂塵が舞い上がっていた。


(;'A`)(やっぱり戦ってやがる! なんでか知らねぇけど……)

 先程からの物音、耳の弱ったおばちゃんには聞こえていないようだったが、ドクオにはハッキリと聞こえていた。
 誰かが戦っている音、心当たりはミルナしか居ない。
 ドクオは急いで戦場へと走り始めた。
 まだ本調子ではないミルナを一人で戦わせるのは余りにも危険だ。

.

98 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:44:29 ID:z2STY7x60





「――お前、まさか……」


 しかし、その時、背後から聞こえてきた呑気な声に、ドクオは足をその場に押し止めた。


 確かに聞き覚えのあるその声……ドクオは、ゆっくりと振り返った。


.

99 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:45:13 ID:z2STY7x60




('A`)「エクスト……」


<_*プー゚)フ「ひっさし振りじゃねえか、ドクオ!」


 まるで全てを忘れ去ったかのように、エクストは満面の笑みでドクオに言った。


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100 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:45:53 ID:z2STY7x60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

        第十八話 「限りある世界」

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101 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:47:09 ID:z2STY7x60

≪3≫



 ドクオの顔を見ると、エクストはすぐドクオに歩み寄っていった。
 彼が着ている服はデミタス達が所属するメシウマ側の組織、カンパニーの制服だった。

<_*プー゚)フ「元気にしてたかよオイ!」

 馴れ馴れしくドクオの肩を叩き、エクストはさらに続けた。

<_;プー゚)フ「……結構ゴツくなったのな。色々あったか?」

('A`)「……まぁな」

 ドクオは精魂の抜けた返事を返した。

<_プー゚)フ「まぁ〜話すことは山盛りだよな」

<_プー゚)フ「ああ、ところでおばちゃん居るか?
        なんかおばちゃんだけずっと町に残っててな、今日は俺が説得に来たんだよ」

('A`)「……町の連中は元気か?」

<_プー゚)フ「そりゃあな。ここより断然暮らしは豊かだ、みんな元気だよ」

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102 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:47:49 ID:z2STY7x60

 エクストは白い歯を見せて笑い、ドクオに手を差し出した。

<_プー゚)フ「お前もこっち来いよ、ドクオ。
        見つかんなくて困ってたけど、今日は一石二鳥だぜ」


('A`)「……なあ、エクスト」

 エクストの手を見つめながら、ドクオはひとつ質問した。

('A`)「お前、幸せか?」

<_プー゚)フ「……ああ、充実してるぜ?
        こないだ学校も卒業できたんだ、すげぇだろ!」

('A`)「……楽しそうだな」

<_;プー゚)フ「……大変だけどな? ……どうした?」

 ここまで、ドクオは一瞬たりとも嬉しそうな素振りを見せていない。
 それを心配に思い、エクストは顔を傾けて彼の顔を覗き込んだ。

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103 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:50:27 ID:z2STY7x60


('A`)「……言いたい事は、全部言い終わったか?」

<_;プー゚)フ「……なんだよ、会わない内に死にたがり加速したのか?」

('A`)「言い終わったら教えてくれ」

 冷たく言い切り、ドクオはエクストの手を強く弾いた。

<_;プー゚)フ「……何すんだよ」

('A`)「……分からねえんだろ」

('A`)「終わった瞬間、これがゼンブ大爆発だ」

<_;プー゚)フ「……ドクオ……?」

('A`)「さっさと自慢話を続けろよ」

('A`)「それとも言わなきゃ分からねぇか……」
    昔から感情出すの苦手だったしな……」


('A`)「……エクスト、俺は『ブチギレ』てるんだよ……」

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104 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:51:22 ID:z2STY7x60


<_;プー゚)フ「ちょっ! ちょッッッッッッッッッ!! 待て!!」

 静かな激昂にようやく気付いたエクストは、即座に引き下がって距離をとった。

<_;プー゚)フ「なんだよいきなり!! そりゃ怒るのも分かるけどよ!! 時効だろ!?」


 時効、一定期間が経過して効力のなくなること。『約束はもう―だ』


('A`)「……時効、時効か……時効……」

('A`)「……時効……」


('A`)「時効……それか……」

 ドクオは理解した。
 エクストにとって、あの日の事はすべて終わった話なのだ。

 ドクオは、腹の底に熱いものを感じ取った。
 張本人達がのうのうと生き、幸せに暮らし、あまつさえ時効と言い切ったのが堪らなく腹立たしい。
 言葉にすればするほど、この怒りは明確になってドクオを熱くさせていく。

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105 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:53:29 ID:z2STY7x60


('A`)「お前にとってはもう、ゼンブ終わった事で、何もかも元通りか……」

<_;プー゚)フ「……クールさんも助ける。それで元通りだ」

 エクストを一瞥してから、ドクオは空を仰いだ。
 心に怒りが染み渡り、感覚が麻痺していくのが手に取るように分かった。

('A`)「……いつか『昔あんなこともあったね』『色々ごめんね』なんて語り合う」

('A`)「俺達は仲直りして幸せになって終わり、ゼンブ忘れて元通り……」


<_;プー゚)フ「……」

('A`)「……くだらねぇ話だ。くだらねぇ……」

('A`)「俺達の世界は終わったんだよ。
    跡形もなくなって、今はもうどこ探したって見つからねえ。
    どうしたって、あの頃を取り戻す事なんざ出来ないんだよ……」

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106 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 21:56:55 ID:z2STY7x60


('A`)「……分からねぇだろ。俺が今までどうやって生きてきたか」

('A`)「都合の悪い事は何もかも忘れたお前には分からねぇだろ。
    俺とあいつを利用して、今みたいに幸せになったお前には」


('A`)「……もし、お前が『哀れなドクオ君を助ける神サマ』気取りなら……」

('A`)「……そいつはもう、本当に駄目だ……」


<_;プー゚)フ「おい、待てって! まさか俺と戦うつもりか!?」

('A`)「美談で終わって元通りなんて、それは平和ボケしたバカ野郎の考えだ……」

('A`)「何より、絶対にお前が言っちゃいけない台詞だった……」

 八頭身から貰ったペンライトをポケットの中で点灯させ、そこから光を吸収する。
 ドクオは左腕を突き出し、意識を集中した。
 ドクオの全身がほのかに光り、次いで左腕に光が集中していく。

('A`)「その服着てるって事は超能力あるんだよな。だったら早く発動しろ」

('A`)「俺は見ての通り『どん底帰りのゴミクズ』だが……」


('A`)「クソガキ一人を倒すだけなら、十分だ」

 超能力・マグナムブロウがその姿を現した瞬間、
 ドクオは弾けるように飛び出してエクストに襲い掛かった。

<_;プー゚)フ「――いいぜ、だったら! 今でも俺が上だって証明してやる!」

 エクストもまた超能力を発動し、ドクオの攻撃に正面から挑んでいった。

.

107 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:01:05 ID:z2STY7x60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 ミルナは苦戦を強いられていた。
 ドクオの邪魔はさせまいとカンパニーの足止めを買って出たが、ミルナはそれを満足に出来ずにいた。

 最初ミルナを囲んでいたカンパニー隊員はおよそ二十人。
 その内の十九人はなんとか倒せたが、
 特に厄介な男が健在で、今もその男はミルナと互角以上に渡り合っていた。


(´・_ゝ・`)(こいつが件のアレか、荒巻の同類……)


 涼しげな表情のまま、デミタスは自身の超能力とミルナをそれぞれ一瞥した。
 デミタスの傍らには、毒物によって肉体を構成された女性――超能力“毒の姫君(ポイズン・メイデン)”が立っている。


(;゚д゚ )「……クソッ!」

 ミルナが唾棄して攻撃を再開すると、ポイズン・メイデンも反応して前に出た。

 毒で出来た肉体は、それ自体が盾であり武器となる。
 デミタスとミルナの間に立つだけで、ポイズン・メイデンは攻防両方の役割を果たせていた。

 一方、ミルナの超能力は物理的に接触出来ない相手には殆ど無力になる。
 相性で言えばマジ最悪、勝機がまったく見えてこない程だった。

(;゚д゚ )(……すまん、こいつtanasinn無しの今の俺じゃ無理だ!)

 昨日の自分に謝りながら、ミルナはtanasinnの力を解放した。
 彼の左腕に黒煙が巻きついていく。

.

108 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:03:39 ID:z2STY7x60


(´・_ゝ・`)「おっ」

 ミルナから荒巻と同じ雰囲気を感じ取ったデミタスは、ようやくお出ましかと目を見張った。
 ポイズン・メイデンを一度自分の所に戻し、奥の手を準備し始める。

 その時ふと、デミタスの脳内にドクオと直面しているエクストの姿が思い浮かんだ。
 わざわざ二人を再会させるよう仕向けたのはデミタス。
 ドクオならエクストを成長させる切欠になると考え、彼はエクストを連れてきたのだ。

(´・_ゝ・`)(……せいぜい現実を見るんだな、エクスト)




( ゚д゚ )「……」

(´・_ゝ・`)「……おいおい、あんまりこっち見るんじゃねえよ」

 熱烈な視線を向けてくるミルナに、デミタスはおちゃらけて反応した。
 しかしそれは、圧倒的な勝利への確信があるからこその態度だった。

(´・_ゝ・`)「こっちの能力は『毒』だぞ? いいのか?」

( ゚д゚ )「……何が言いたい?」

(´・_ゝ・`)「そうだな、じゃあ格好つけて言ってやろう」

 デミタスは煙草を一本くわえ、それに火をつけた。

.

109 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:04:53 ID:z2STY7x60



(´・_ゝ・`)「あんまり俺を見ない方がいい」

(´・_ゝ・`)「目に 『毒』 だ」


( ゚д゚ )(……?)

 その瞬間、ミルナの視界が不自然にぼやけた。
 目にゴミでも入ったかと思って咄嗟に瞬いて目を擦ったが、視界のぼやけは少しも直らない。
 それどころか、視界の隅の方から少しずつ暗闇が広がってきた。

 “目に毒”――両目が暗闇に落ちていく最中、ミルナはその言葉の意味を遅れて理解した。


(;゚д゚ )「そういう事かッ……!」

(´・_ゝ・`)「そういうこった。ついでに言うとあんまり呼吸しない方が身の為だ」

(´・_ゝ・`)「なんせ俺の能力は全身毒、どんな毒を撒き散らしてるか分からねぇ」

(´・_ゝ・`)「いわゆる 『体に毒』 ってヤツだぜ。どうだ、耳はまだ聞こえるか?」

(;゚д゚ )「……」




(;゚д゚ )「……なんだ、何を言いやがった!」

(´・_ゝ・`)「……tanasinnも毒には耐性無しか。有益な情報だ」


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110 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:05:57 ID:z2STY7x60


 煙草の火を煽りながら、デミタスはミルナに歩み寄っていった。
 視覚に加えて聴覚まで失いつつあるミルナは、既に完全にデミタスを見失っていた。

 この状況は最早戦闘としての体を成していない。
 形勢は100%デミタスに傾いており、勝利は彼の手中にあった。


(;゚д゚ )「こッの……!!」

 ミルナは当て所なく腕を振るい、せめてもの抵抗を示す。
 腕に巻きついた黒煙が、デミタスの頬を掠めてどこかへ飛んでいく。

(´・_ゝ・`)「おっと危ないな」

(´・_ゝ・`)「だがいいのか? 触っちまったぞ」

 攻撃の最中、ポイズン・メイデンはミルナの腕を容易く掴み取っていた。

(;゚д゚ )(こいつ……!)

 腕の皮膚を入り口にして、ミルナの体内にじわりと毒が侵食し始める。
 今度の毒は、ミルナの平衡感覚を一瞬にして麻痺させた。

(´・_ゝ・`)「……撃鉄か、荒巻とは比べ物にならねえ雑魚だな」

 デミタスはそう呟き、ミルナの胸を軽く小突いた。

(;゚д゚ )「なッ……!?」

 視覚、聴覚、そして平衡感覚すら喪失したミルナは、ちょっと小突かれただけで大きく仰け反り、簡単に地面に倒れた。

 しかしここまでされた今でも、ミルナは自分が地面に倒れた事に全く気付いていなかった。
 気付く為の器官がそもそも無効化されているのだから、それも仕方のない事だった。
 彼自身は今、突然全身が壁にぶち当たったような奇妙な感覚を覚えていた。
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111 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:09:39 ID:z2STY7x60


(´・_ゝ・`)「……」

 地面に倒れたまま狼狽するミルナを見つめながら、デミタスは次の毒をメイデンの体に充満させた。
 毒の名前はストリキニーネ。人を殺すに余りある猛毒中の猛毒である。

(´・_ゝ・`)「……」

 デミタスは、毒で死ぬ惨さを誰よりも知っている。
 毒に侵されて死ぬ苦痛を身をもって知っている。

 だからこそ毒殺は最後の手段。
 猛毒を使う相手は、完璧な止めを与えるべき相手に限定していた。
 世界中の猛毒をちゃんぽん一気飲みさせても死にそうにない相手でなければ、デミタスは人間相手に猛毒を使えなかった。

(´・_ゝ・`)(あれの同類とはいえ今やこのザマだ……。
       奥の手無しでtanasinnの何とやらを圧倒か、倒した実感に欠ける)

(´・_ゝ・`)(……それでもタダで返すのは危険だ。
       今後コイツが荒巻の話を受け入れて、奴と手を組まないとも限らん……)

 長考の末、デミタスはミルナの始末を決めた。

(´・_ゝ・`)(……両腕と目は完全に潰す)

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112 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:13:07 ID:z2STY7x60



(;゚д゚ )(相性が悪すぎる……とにかく今は逃げるッ!)

 ミルナは何としてでも生き延びるため、形振り構わず残った力を全解放した。
 背中の撃鉄から光が爆発し、ミルナの肉体に一方向への推進力が生まれる。


(´・_ゝ・`)「まぁ待て」

 デミタスは余裕を持ってそう言い、逃げ出そうとしたミルナの頭を全力で踏ん付けた。
 撃鉄が生み出す推進力がその程度で止まる訳もなかったが、毒を盛るには一瞬の隙があればいい。
 ポイズン・メイデンは間一髪でミルナに触れ、そこから毒を侵食させた。

 デミタスが足を離すと、ミルナはどこぞへ向かってブッ飛んでいった。
 傍から見れば滑稽に見える逃走方法だったが、生き残るには何をしてでも逃げるしかなかった。


(; д )(……クソ……ッ!)

 先日から確かに感じていた、“マグナムブロウ”という超能力の弱体化。
 感覚を思い出せば元に戻ると信じていたが、事はミルナが思っているほど簡単ではないようだった。

 全力で超能力を使ったことで、またミルナの全身に激痛がほとばしった。
 腕の装甲も瞬く間にひび割れ、崩壊していく。

(; д )(……俺は……俺はッ……!)

 屈辱を噛み締めながら、ミルナは地面を跳ねて転がってデミタスから逃走していく。
 自慢の拳とまで謳ったこの力、それが圧倒的に完敗した現実が、ミルナの心臓を強く握り締めていた。

.

113 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:15:39 ID:z2STY7x60

≪4≫



 ――それは、エクスト・プラズマンが超能力を手に入れて間もなくの事だった。


 彼はデミタスの勧めでアサピーが居る総技研へ出向き、彼らに超能力の検査分析をしてもらっていた。
 エクストの来歴が特別なだけに、結果が出るまでには数日必要になった。


 検査の結果がようやく出揃った後日、エクストは市街の総合病院に呼び出された。
 精神科の部屋に入ると、部屋にはアサピーと彼の知人である超能力分析を専門とする人物が待っていた。

<_;プー゚)フ「能力の検査って精神科扱いなんですね……」

(-@∀@)「本当は紙切れ一枚で終わる。お前の為に色々根回しした結果だ」

 エクストは椅子に腰掛け、アサピーの知人に視線を送った。


「……では結果の方を。エクストさんの超能力についてお話します」

 知人は慣れた口調で切り出した。

「超能力としては具現化、装着型。つまり戦闘向きの超能力です。
 発動すると脚部に装甲が具現化し、およそ時速100km程度の加速ができるようになります」

<_プー゚)フ「そう……ですね……」

「と、ここまでは自分で自覚できる事なんです。
 デミタスさんがあなたに伝えたいのは、きっとこの先の話ですよ」

.

114 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:16:55 ID:z2STY7x60


「……超能力の覚醒には、二通りあります」

 知人はエクストの目を見ながら話し続ける。

「心理的な切欠があり、それを種として超能力が覚醒するパターン。
 あるいは何の脈絡もなく、ある日突然超能力に目覚めるパターン」


「分かりやすく言えば、原因が先か結果が先か……。漫画でよくあるのは後者ですね」

「しかしエクストさんの場合は前者です。
 あなたの生い立ちと精神状況から見るに、間違いなく」

<_;プー゚)フ「……何かダメなんですか?」

 知人の口振りに不安を感じ、エクストは率直に質問した。


「ダメという事はありません。ただ、先程上げた2パターンには幾つか違いがあるんです」

「まず前者、戦闘向きの超能力が多く、超能力の性能、発動もハッキリしている事が多いです。
 種類も具現化ばかりでシンプルです」

「次に後者、結果が先に来た方です。先天性の超能力。こちらは戦闘向きではない超能力が多いです。
 そして超能力の性能、発動にムラがあり、種類も分類しきれないほどに多い」


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115 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:18:05 ID:z2STY7x60


「そして最大の違いが一つ」

 知人は人差し指を立ててエクストに見せた。

「それは前者の場合に限り、『原因』が消滅すると超能力自体が消滅するという事です」

<_;プー゚)フ「消滅……」


「……エクストさん、自分が加速能力を獲得した理由、原因は分かりますか?」

<_;プー゚)フ「……」

 心当たりはあったが、エクストは沈黙したまま答えなかった。


「……ここの精神科医に、あなたの事を匿名で分析をさせました」

「その人いわく、あなたは『生き急いでいる』から『加速能力』を手に入れたそうです」


「あなたの過去に具体的に何があったかは我々の知る所ではありません。
 ですが確かに、あなたの加速能力は自分の精神を切り崩す事で――生き急ぐことで成立しているんです」

<_プー゚)フ(……心当たりのド真ん中か)

.

116 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:18:45 ID:z2STY7x60


「焦燥、重圧、あるいは後悔……」

「……この先も超能力を使い続けるのなら、あなたはそういったものと死ぬまで付き合う必要があります。
 自分自身を生き急がせる、追い詰める要素を持ち続ける事でしか、超能力を維持出来ないからです」


<_プー゚)フ「もしも、その……後悔がなくなったら?」

「……先程言ったとおり超能力は消滅します」

「詳しい検査結果はこちらになります。目を通して、質問があればお答えします――」


.

117 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:21:12 ID:z2STY7x60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



('A`)「……やっと起きたか」


<_;フー )フ「まぁ、な……」

 戦闘が始まってしばらく。無傷のドクオとは打って変わり、エクストは満身創痍を極めていた。
 エクストは数分前まで掘っ立て小屋として存在していた木片を乗り越え、ふらつきながらドクオの前に戻った。


<_;プー゚)フ(クソッ、こんな時に変な夢見せやがって……)

 ドクオの一撃をまともにくらったせいで、エクストの昨日今日の記憶は完全にブッ飛んで消えていた。
 そのかわりに思い出したのが病院での会話――後悔そのもののようなこの町では、出来れば思い出したくは無かった。

 エクストは傷だらけになった自分の体と、ボロボロに砕けた両脚の装甲を虚ろな目で見つめた。
 

<_;プー゚)フ(……なんつぅザマだよ……)

<_;プー゚)フ(全部切り捨ててあっち行って……色々やって成長したつもりがコレか……?)

<_;プー゚)フ(……分かってた。焦ってたよ、だからこんな能力が出来上がっちまったんだろうが……)


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118 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:23:25 ID:z2STY7x60


<_;フー )フ「でもまぁ……分かってても止まらないものってあるよな……」

('A`)「……あるな」

<_;フー )フ「分かってる。お前の言葉も、俺がバカだった事も……」

 エクストは背筋を伸ばし、目を光らせた。

<_;プー゚)フ「分かってるけど、今日の所は『それ』でいく……」

<_;プー゚)フ「今日の俺は『止まらない』。生き急いで何が悪い、死ぬまで走り続けてやる……」

 その時、エクストの超能力に異変が起きた。
 脚部の装甲がわずかに剥がれ落ち、光の粒子となって散ってしまったのだ。

 傍目に見れば小さな変化。しかしエクストは予感した。この超能力は、もう先が長くない。
 ドクオとの再会が彼にもたらしたのは、後悔や重圧からの解放だった。

<_;プー゚)フ(あんなに弱かったドクオがここまで強くなった。
         だから俺はもう、前を走らなくていい……)

<_;プー゚)フ(そう言いたいんだろうが……そんな弱音は後回しだ)

 装甲に覆われた爪先で、地面をトントンと叩く。
 エクストはペンライトを点灯させて光を吸収し、超能力を再構成した。

<_;フー )フ(この能力とも、短い付き合いだったな……)

 地面を蹴り、エクストは一気に加速してドクオに急接近した。

.

119 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:25:59 ID:z2STY7x60


 エクストは最速でドクオの背後に滑り込み、更に加速してドクオに迫った。
 片脚に遠心力を加えて振り上げ、それを力のままに振り下ろす。

 ドクオは咄嗟に反応して体を翻し、左腕の装甲で攻撃を受け止めた。
 金属同士が強い力で拮抗し、ギチギチと音を上げる。

<_#プー゚)フ「もう喋る必要もねえだろ……俺はお前の敵、お前は俺の敵だ……」

<_#プー゚)フ「……」


<_#プー゚)フ「……俺は俺のやり方でクールさんを助け出す! てめえが割って入ってくんな!」

(;'A`)「喋らねえんじゃなかったのかよ!」

<_#プー゚)フ「てめえの言う事なんざ聞かねえ!」

(;'A`)「今さっき自分で言っただろ!」

<_#プД゚)フ「ゴチャゴチャっ……うるせえッッ!!」

 エクストは攻撃に使った片足を引き、軸足を切り替えて次の一撃を放った。
 体を回転させ、なぎ払うように片脚で一閃。
 その脚は風を切ってドクオの左腕に直撃し、ドクオを一歩よろめかせた。

(;'A`)「おッ……!」

 エクストとの戦いにおいて、この時初めて脅威を覚える。
 大して体も鍛えておらず、実際戦ってみてもそこまで強くない奴だと思っていただけに、
 エクストが一瞬で成長した事に驚きを隠せない。

 それがドクオの対応を遅らせた。そのとき既に、エクストの追撃が始まっていた。

.

120 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:27:22 ID:z2STY7x60


 エクストの脚が防御をすり抜け、ドクオの顔面に鋭く飛んでゆく。

 ドクオは上体を大きくそらし、脚の軌道上から素早く離脱した。
 装甲によって攻防共に強化されたエクストの蹴りが、ギリギリ顎先を掠める。

(;'A`)「チッ!」

 エクストの脚が引き下がろうとした瞬間、ドクオはその脚を掴み取り、力任せにエクストを放り投げた。
 エクストは空中で体勢を整え、少し離れたところに綺麗に着地してみせた。

 ドクオは体勢を戻し、額の汗をぬぐう。

(;'A`)(そうだよ、コイツこういう奴だった……)

(;'A`)(人のこと煽ってはすぐ開き直る、喧嘩したがりな奴だった……)

 だが、そっちの方が見慣れてて相手しやすい。
 ドクオは昔を思い出して笑い、そして背中の撃鉄に意識を集中した。

('A`)(『撃動のドラゴンブロウ』……)

('A`)(……)

('A`)(やっぱり叫ぶのは恥ずかしいな……)

 背中の撃鉄がガキンと音を立て、羽のように広がる。
 そして、起き上がった撃鉄から光が――



('A`)(……お?)

 ――光は、まったく出てこなかった。

.

121 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:29:58 ID:z2STY7x60


(;'A`)「ちょッ……!」

 カーチャンと戦った時にはあった光の噴出が不発に終わる。
 しかし予想外の事態に手間取っている暇は無い。特に今はエクストから目を離す訳にはいかなかった。


 数瞬後、エクストの脚が肉体の寸前にまで来ていた。
 目を離してはいけないという自戒がなければ、ドクオはこれに直撃していた。
 ドクオは後ろへ軽く跳躍し、エクストの蹴りを回避する。

(#'A`)(ないなら無いで戦う!)

 蹴りはリーチと威力については殴る以上に強い攻撃方法だが、とうぜん相応の弱点がある。
 蹴りの弱点とは、体重を支えるのが片足だけでバランスを崩しやすいのと、連続して出すのが難しいという事。
 そして何より、次の一撃を出すにはどうしても“脚を引く”という大きな動作をせざるをえない事だ。

 ドクオは、エクストが脚を引くのに合わせて前に出た。
 素早く二回、エクストの顔面を右拳で殴る。

 顔面の痛みもそのままに、エクストは即座に膝を突き上げてドクオを追い払った。

<_#プー゚)フ(顔面容赦無しかっ!)

 エクストは大きく後ろに跳んで距離をとった。
 鼻から垂れてきた血を親指で乱雑に拭い、一旦頭を落ち着かせる。

<_#プー゚)フ(俺の戦闘経験は多対一ばっかりだ。戦うにしても、俺にはいつも味方が居た……)

<_#プー゚)フ(タイマン勝負はアイツのが慣れてる。ムカつくけど本当の事だ)

<_#プー゚)フ(けっこうマジの蹴りも見切られちまった。
         当てるには……陽動? とかなんか頭良い事しねえとだよな……)


<_プー゚)フ(……でも、今日の俺は止まらない。考え事は俺の足を引っ張るだけだ)

<_フー )フ(……だったら、結論なんかこれしかねぇ……)

 エクストは、ペンライトから更に光を吸収した。
 全身に力がみなぎり、超能力が次の段階へとシフトする。

.

122 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:35:08 ID:z2STY7x60


<_;フー )フ(『今よりもっと生き急ぐ』。今の俺には速さが足りない……)

<_;フー )フ(嫌なこと全部思い出して、焦りまくって余裕なくして……。
         そうすりゃ俺はもっと速くなる……そういう能力なんだろ……)


<_;プー゚)フ(……笑えるぜ。今じゃ俺の方が死に急いでやがる)

<_;プー゚)フ(でもまぁ……例えそうでも、この決着だけはつける……)

 崩壊しようとする装甲を気力で維持しながら、エクストは歩を進めた。
 ドクオも身構え、次の攻防を頭の中で想定し始める。


 やがて両者の間合いが10メートルを切ろうとしたその時、

(;'A`)「!」

 エクストがドクオの視界から消えた。

 途端、ドクオのみぞおちに堪らない激痛が走った。
 ドクオは反射的に視線を落としてその正体を確かめた。エクストの足が、深々とみぞおちを穿っていた。

(; A )(コイツまた強く――速くッ――!)

 ドクオは弾けるように後方へと蹴り飛ばされた。
 地面を何度も跳ね、しばらく地面を転がり続ける。

 町から大きく離れた場所まで飛ばされたドクオはすぐに起きて構え直した。
 エクストはその隙に加速して接近し、ドクオを空中に蹴り上げる。

<_#フー )フ「この程度かよ!!」

 エクストは両手を地面につけると、タイミングを見切って両脚の力を爆発させた。
 すると彼の姿は一瞬でその場から消え、そこには少しの砂煙だけが取り残された。

.

123 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:39:35 ID:z2STY7x60


<_#フー )フ「この程度で向こう側に楯突いてんのか、テメェは!!」

<_#プД゚)フ「向こう側の連中はこんなモンじゃねえ!
         これじゃあクールさんを助けるどころか、テメェの命すら守れねぇぞ!」

 空に上がったエクストは一段と加速し、ドクオの腹を蹴り貫いた。

(; A )(致命傷だけは受け流すッ――!)

 脚が肉体に風穴を開ける寸前、ドクオは反射的に体を大きくねじり、エクストの攻撃を別方向に誘導した。
 エクストの脚が血肉をえぐり、皮膚表面を削りながら体を過ぎていく。
 ドクオは下腹部から肩にかけて大きな傷を負ったが、即戦闘不能になる事だけは回避してみせた。

(; A゚)(――来た!)

 攻撃を受けた直後、ドクオは背の撃鉄に充足感を覚えた。
 次いでドクオは受身をとって地面に着地し、、すぐに空を見上げてエクストを目視した。

 エクストは片足を突き出した姿勢で、ドクオに向かって真っ直ぐ落ちてきていた。
 安直なキックだが、加速に加速を重ねたその一撃は十分な威力を誇っている。

(# A )「何がこの程度だッ……!!」

 怒号を上げ、ドクオは拳を振り上げた。

(# A゚)「撃動のォォォォッ!!」

 背の撃鉄から光が噴出し、生み出された力が彼の拳を後押しする。
 エクストの蹴りが来る一瞬を予測し、ドクオはその瞬間に拳を打ち出した。

 だが、ドクオの渾身の一撃は空を裂くだけに終わった。

<_#フー )フ「だからッ……!」

 エクストはドクオの背後で舌打ち、加速した。
 ドクオの背中に強烈な回し蹴りを直撃させ、またもドクオを遠くへと蹴り飛ばす。

<_#プー゚)フ「いい加減気付け! 真正面から戦って勝てる相手じゃねえんだよ!
         お前は昔からバカ正直すぎる! ちったあマシになったみたいだが……」

<_#プー゚)フ「……だがまだ足りねぇ! 足りねぇぞ!」

(# A )「今更偉そうに高括ってんじゃねえェェェェェェェッ!!」

 蹴り飛ばされたドクオは光の噴出によって勢いを殺すと、反転してエクストに飛び掛っていった。
.

124 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:41:04 ID:z2STY7x60


<_#フー )フ「言った傍からッ……!」

 エクストは片足を上げ、真ん前に飛び込んできたドクオを難なく蹴り返した。
 その一瞬の間に、ドクオの体には無数の蹴りが叩き込まれていた。

(;゚A゚)(……クソッ……!)

 背の撃鉄は、ドクオが地面に倒れゆくと同時に、静かに光の噴出を止めた。


<_#プー゚)フ「……これが数年鍛えたお前の強さかよ……」

 傷口から大量に流れ出る血液、多数の打撲、三半規管の混乱。
 そんな状態のまま全力を出したのも重なり、ドクオの体は既に限界を迎えていた。

 超能力が肉体にかける負担は大きい。
 考え無しに使えばこうなると、ドクオ自身も理解していた筈だった。

 しかしドクオにとって、エクストとは我を忘れて戦ってしまう程の相手なのだ。
 ドクオはここまで、全くと言っていいほど戦いに集中していなかった。
 過去の後悔が永遠に生み出し続ける怒りと憎しみに頭を支配され、ドクオは考える事を止めていたのだ。
 それこそが、今の状況を作り上げた最大の理由だった。


<_#プー゚)フ「中途半端な力だ、何の意味もねえ」

 そう言った途端、脚の装甲に亀裂が走る。
 間もなく訪れる離別の時を予感し、エクストは超能力に最後の発破をかけた。

.

125 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:42:05 ID:z2STY7x60


<_#プー゚)フ「立て!」

 エクストは大手を振ってドクオを怒鳴りつけた。

<_#プー゚)フ「お前が今までどうやって生きてきたかは知らねぇが、
         弱いお前なりに、背負ったモンがあるんだろうが!」

<_#プー゚)フ「今のお前はそれを全部捨てて這い蹲ってんだぞ!
         立って敵に立ち向かえ! でなきゃっ……」

(; A )「……うるせぇな……立ち上がれねぇとでも思ってんのか……」

 ドクオは片膝に手をつきながら、ゆっくりと立ち上がった。
 口内に溜まった血反吐を地面に吐き捨て、乱雑に口元を拭う。


(; A )(……慣れてんだよ、こんな状況)

(; A )(誰かに勝てた覚えなんざありゃしねえ。いつもズタボロ、相打ちぐらいが関の山だ……)

(; A )(そんで今日もこの通り。自分が雑魚なの忘れて、調子に乗ったら大事故だ……)

 ドクオは自分を戒めながら、光を吸収してマグナムブロウを補強した。

.

126 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:44:27 ID:z2STY7x60


 ――ドクオは思い出していた。

 確かめる為の力……昔の俺は、多分そんなものを求めていた。
 しかし今でこそ思う。そんな力では、目の前の現実を何も変えられないのだと。


(; A )(……エクストの言った通りだ。俺は、中途半端だった……)

(; A )(……戦うのを正当化したいだけだったのか、俺は……)

 ドクオは装甲に覆われた左手を見下ろした。

(;'A`)(俺は……そもそも戦うのが好きじゃなかった。
    ガキの頃のエクストとの喧嘩だって、口ばっかりで本気ではやらなかった……)

(;'A`)(殴るのも人を殺すのも嫌だ。
    だから暴力に理由をつけて、自分は間違ってないと思い込みたかった……)


(;'A`)(今もそうだ。俺はまだ、この戦いを人のせいにしようとしている……)

(;'A`)(俺の戦いは、俺が原因なんだ。誰かの為に戦おうが、全部自分一人の責任だ……)

 ドクオは拳を作り、奥歯を噛み締めた。


(;'A`)(だったら俺は……自分の為にだけ戦う。自分の為に人を傷つける。
    最初から何かの、誰かのせいにしちゃいけなかったんだ……)


(;'A`)(……俺は、俺の意思で、俺の為にクーを助け出して……)


('A`)(……親友を……)


.

127 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:46:03 ID:z2STY7x60


 平常心を取り戻したドクオはエクストに目を向けた。
 そこでようやく、ドクオはエクストの脚部に違和感を覚えた。

('A`)「……」

 エクストの脚に具現化された超能力。
 その能力は既に限界を迎えており、崩壊と具現化を繰り返しながら形状を保っていた。


<_#プー゚)フ「……だからどうした」

 ドクオの視線に気付いたのか、エクストは強く反発した。

<_#プー゚)フ「俺がもう戦えないんだと思うんなら、どうするんだ?
         俺はまだやる。たとえ何があってもな……」


('A`)「……お前は敵だ。昔、どれだけ、何があったとしても、今のお前は敵だ」

('A`)「敵は倒す。一人残らず。……中途半端な考え方はもう止めだ」

 ドクオは身構え、ペンライトに残された全ての光を吸収し、意識を集中した。
 意識が透き通り、心が闘争心に染まってゆくと、彼の背中には新たな撃鉄が具現化し始めていた。

.

128 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:47:35 ID:z2STY7x60


 背の右側、一つ目の撃鉄の真下に具現化した第二の撃鉄。
 それは白と黒が中途半端に混ざり合った、曖昧な灰色をしていた。
 一つ目が重厚な金属らしくあっただけに、この撃鉄はドクオには似合わない異質な雰囲気を漂わせていた。


('A`)「……自分の為に人も物も傷つける。
   そうしなきゃアイツを助けられないなら、俺はもう、それでいい」

('A`)「正しさでアイツを救えないなら、俺はもう、悪でいい」


 その時、二つ目の撃鉄が落ちて金属音を響かせた。


('A`)「……」


('A`)(……そうか、俺は……)



.

129 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:48:15 ID:z2STY7x60





('A`)(俺自身の正しさを踏み躙ってでも、クーを自分の物にしたいのか――)




.

130 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:49:13 ID:z2STY7x60

≪5≫





(´・_ゝ・`)「――御厚意に感謝します」

(゜д゜@ 「そんなんじゃありませんよ、久し振りに賑わってくれて嬉しいです」

 枕元に二人の声があった。
 エクストが次に目覚めたのは夜、町の掘っ立て小屋の中だった。



(´・_ゝ・`)「……と、遅いお目覚めだな」

 デミタスがエクストの顔を覗き込む。
 エクストは布団から体を起こし、外が真っ暗闇であることを確認した。
 そして、もう全てが終わった後なのだと自覚する。今更、その事を理解する。


<_プー゚)フ「……俺は、どうなったんですか」

 そう聞きながら、エクストは戦いの記憶を掘り起こしていた。
 戦いの記憶が徐々に蘇っていく――それにつれて、エクストの精神は活力を失っていった。

 ドクオとの戦いは実に呆気なく、単なる実力差だけを理由にして決着した。
 だからこそ、それは変えようの無い残酷な現実だった。
 根拠のない自信だけで生きているような人間には、この現実が酷く傷口に染みる。

.

131 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:50:40 ID:z2STY7x60


(´・_ゝ・`)「強かっただろ、一人でこっちに攻め込んでくるだけはある」

<_フ− )フ「……」

(´・_ゝ・`)「……エクスト、お前は弱い。弱いなりに、今までよくやった」

<_フ− )フ「俺は……お払い箱ですか……」

(´・_ゝ・`)「使えない雑魚は置いていく。そう、使えない雑魚はな。
      まだ自分に利用価値があると思うなら、話は別だが……」

 デミタスは立ち上がり、おばちゃんに会釈をしてから小屋の戸に歩き始めた。

(´・_ゝ・`)「明日にはここを発つ。ここに残るかどうかは勝手にしろ」

(´・_ゝ・`)「……お前は一度、自分自身を裏切ってこの町を出た。
      もしもまた町を出るつもりなら、その時は別のものを切り捨てて来い」

(´・_ゝ・`)「中途半端に責任負って走り出すような真似は、もう二度とするなよ」


(´・_ゝ・`)「……ゆっくりしろ。本当にな。
      ドクオの事は任せておけ、殺しはしない……お前はよくやった」

 デミタスは背を向けたまま手を振り、外に出て行った。

.

132 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:52:13 ID:z2STY7x60



(゜д゜@ 「……今日は良い日だ。待ち人が二人も来てくれた」

 おばちゃんはデミタスを見送ると、微笑んでエクストに話し掛けた。

(゜д゜@ 「ここでの生き方は覚えてるだろう。なんでも好きに使いな」


<_フ− )フ「……ああ」

 エクストの返事は空虚だった。
 今まで取り繕っていた虚勢が敗北によって剥がれ落ちた今、彼を現実から守るものはない。

 ドクオのため、素直クールのため――それが嘘だったわけではない。
 確かに当初のエクストは素直クールの為に様々な考えを馳せていた。
 だがそれは時間の経過によって変化した。向こう側での生活が、彼の決意を少しずつ鈍らせていったのだ。

 最初でこそ大義名分、しかし今は“成り上がり”の口実に過ぎない。
 それを自覚した時、エクストはその現実を都合よく塗り替えてしまった。
 行動を先延ばしにして現状を正当化し、最終的にどうにかなればいいという無責任な希望に、思考を停止させたのだ。

 そして今日の敗北は、自分で動く事をやめ、他人に従い続ける道を選んだ男の末路だ。
 言い訳の余地は無い。自分の行動が招いた結果は、他の誰のせいにも出来ないのだ。

 もしもそれすら人のせいにしてしまったら、その人はもう、自分を理由にして動けない。
 他人に依存しきった考えでしか生きられなくなってしまう。
 成功すれば人の為でしたと言って褒められたがり、失敗すれば人のせいにして現実から目を背ける。
 そんなバカ丸出しのバカになる。

.

133 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:53:11 ID:z2STY7x60



<_フ− )フ「……やっぱりか」

(゜д゜@ 「……何がだい?」

<_フー )フ「……超能力、消えてら」

 エクストは先程から超能力を発動しようとしていた。
 しかし天井に吊るされた裸電球に変化はない。電球は十分に光り続けていた。

<_フー )フ「……しばらく世話になるよ。一人で頑張る時間が要るみたいだ」

<_フー )フ「早くドクオの後を追っかけねえとな……」


(゜д゜@ 「……エクスト、あんたの脚は……」

<_プー゚)フ「分かってる。分かった上で言ってるんだ」

 笑顔を取り戻したエクストは、涙を滲ませた目でおばちゃんを見た。
 次いで自分の両脚の付け根をポンと叩き、



<_プー゚)フ「脚がなくても、俺はドクオを追っていくよ」

<_プー゚)フ「今度こそ、歩くような速さで……」



 完全に消し飛ばされた両脚に思いを馳せながら、そう言って笑った。


.

134 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:53:56 ID:z2STY7x60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



( ゚д゚ )「……」

('A`)「……」

 互いに互いを探して歩き、夜になってやっと巡り合った二人。
 見た目は揃ってボロボロで、かたや視力を喪失し、かたや返り血で真っ赤に染まっている。
 ドクオにとって唯一の救いは、見るに耐えない今の姿を誰にも見られない事だった。

( ゚д゚ )「……目をやられた。何も見えん。腕も上手く動かん」

('A`)「……次は武器の補充だ。バーボンまでちょっと遠いけど、歩けるよな」

( ゚д゚ )「肩貸せ。それか手をつなげ」

(;'A`)「肩貸すよ……」

 傷だらけの二人は肩を組み、レムナントの荒野を歩き出した。

( ゚д゚ )「……色々あったみたいだな」

('A`)「……」

( ゚д゚ )「俺もだ。正直、今は自分に自信がない……」

('A`)「……歩こうぜ。今は、話せる気分じゃないんだ……」


 沈黙だけが二人を繋ぎ止めたまま、夜は、段々と更けていく。


.

135 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:57:06 ID:z2STY7x60

1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71

第十八話 限りある世界 >>89-134


次回の投下は来年を予定しています
オマケは投下予告の時に

136 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 22:59:23 ID:487/NgOc0
乙。

137 名も無きAAのようです :2014/11/24(月) 23:02:55 ID:rCMxDvgk0
おつおつ

138 名も無きAAのようです :2014/11/25(火) 00:39:23 ID:BJgXi7aE0
クソっリアルタイムで支援しようと思ってたのに出来なかった
乙!!!!!

139 名も無きAAのようです :2014/11/25(火) 01:34:58 ID:KSN4nCAY0
乙!
ほんと面白い!

140 名も無きAAのようです :2014/11/25(火) 12:58:33 ID:HHWcrG7M0
ら、らいねん?
読み返せるne!

141 名も無きAAのようです :2014/11/26(水) 00:33:16 ID:IaipQKsQ0
ライバル戦は熱いね おつ

142 名も無きAAのようです :2014/11/27(木) 09:02:53 ID:ta7jIa5.0
デミタスつっええな

143 名も無きAAのようです :2014/11/27(木) 22:36:04 ID:f6UkRN6wO
能力バトルもの
好き

144 ◆gFPbblEHlQ :2014/12/30(火) 16:44:00 ID:jSGI0SeQ0
今週投下

145 名も無きAAのようです :2014/12/30(火) 18:46:03 ID:vIX.zi4k0
待ってました!!!!!

146 名も無きAAのようです :2014/12/30(火) 21:20:18 ID:R0GhatNMO
ドクオのしぶとい生き様や熱い展開大好き
期待してます

147 名も無きAAのようです :2014/12/31(水) 03:13:00 ID:MVNScWFA0
こいやぁ!投下こいやぁ!!!

148 名も無きAAのようです :2014/12/31(水) 14:04:19 ID:s3iYeZ4M0
除夜の鐘を聞きながら全裸待機

149 ◆gFPbblEHlQ :2015/01/04(日) 18:39:04 ID:F4FhWaM20

≪1≫



「お嬢さん、あんたも変な人だぜ」

 店に居るたった一人の客を相手に、酒場・バーボンの経営者である大男はそう言った。
 綺麗に磨いたグラスにワインを注ぎ、それをカウンター席の女性に差し出す。

ミセ*゚ー゚)リ「ありがとう。そういう貴方は……普通の人みたいね」

 優しく笑い、彼女は大男からグラスを受け取った。
 ふくよかな下唇にグラスの縁を乗せ、口の中へワインを送っていく。
 大した味ではなかったが、彼女は処世術に基づき、満足そうな表情を作って見せた。

「こんな店をやってるから堅気に見えたか? これでも、こないだまで牢屋の中だったんだぜ?」

ミセ*゚ー゚)リ「あら、どうして」

「向こう側に歯向かったんだ。言いたかないが、ザマァないって奴だ」

ミセ*゚ー゚)リ「……どうして、その牢屋を出られたんです?」

 聞かれると、大男はニヤリと頬を弛ませた。

「つえぇ奴が出てきたのさ。まさか看守長までブッ倒すとは思わなかったけどな」


.

150 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 18:41:37 ID:F4FhWaM20



( A )「オウッフ……」

 その時、スウィングドアが軋みながら開き、一人の男がフラつきながら店に入ってきた。
 途端、男は糸が切れたように床に落ち、そのまま微動だにせず沈黙した。


「……ドクオか……?」

 大男は訝しげに眉間をすぼませ、ドクオらしきそれに近づいた。
 それは不細工なドクオだった。

 大男は床に倒れたドクオをひっくり返し、彼の頬を叩いた。

「おい、ドクオ! お前ドクオだろ!?」

(゚A゚) ※連戦、長距離移動から来る疲労困憊、筋肉痛

 それから程なくして、更にもう一人が店に入ってきた。
 大男が顔を上げると、ちょうど二人目の男が床に落ちていく所だった。


( ゙゚Д゙゚)「カッハァ……」

( ゙゚Д゙゚) ※毒物による体調不良、貧血、しかも目が見えない


.

151 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 18:42:49 ID:F4FhWaM20


 揃いも揃ってズタボロの二人を見回し、大男は参ったと言わんばかりに頭をかいた。


「……どういうこったよ……」



ミセ*゚ー゚)リ「……大変そうね」

 騒々しくなった背後をよそに、彼女は静かにグラスを揺らした。

.

152 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 18:45:06 ID:F4FhWaM20


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 目的地の酒場に到着したドクオとミルナは、その日を丸々休日とした。
 二人のズタボロっぷりを見かねた大男もそれを認め、しばらく店に居付いていいと言ってくれた。

 武器は地下倉庫にたっぷり用意してあるらしく、ダディとの待ち合わせにもまだ時間がある。
 ドクオは今日からの数日間を休息に当て、万全の体制を作るために使おうと考えた。
 ミルナもそれに賛成しており、二人のちょっとした旅はこれで呆気なく終わった事になる。



('A`)「……」

 ドクオは店先の岩に座り、ぼんやりと空を眺めていた。


 微弱な風を全身で感じ取りながら、雲の動きを目で追い続ける。
 たまに足元を変な虫が通り過ぎていく。そいつに息を吹きかけて遊んだりもする。
 大きな欠伸もするし、かゆい所があれば即ポリポリしていく。

('A`)「……ハァ」

 ドクオはそんな動作をして思考を誤魔化し続けていたが、
 彼は自分がエクストの両脚を千切り、消し炭に変えてしまった現実を受け止めきれずにいた。

 能力者同士が戦うのは銃と銃を向け合うのとなんら変わりない。
 どちらかが“その気”になれば、その時点から戦いは現実の殺し合いに発展する。
 死んだ方が負けという現実が始まれば、超能力は単なる人殺しの道具になってしまう。
 エクストとの戦いを経てそれを実感したドクオは、感情に任せて拳を振るった事を深く後悔していた。

.

153 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 18:46:02 ID:F4FhWaM20


「なんだよ、死人みてぇなツラしやがって」

 店から出てきた大男はそう言い、ドクオが座る岩の隣に来た。


('A`)「死んだように生きてりゃこうなる」

「……器用だな、俺には出来ねぇ」

 大男は肩を竦めて言い返すと、ドクオに新しいシャツを放り投げた。
 それは白い半袖シャツだったが、今ドクオが着ている返り血まみれのシャツよりは幾分か上等だった。
 ドクオは大男に礼を言い、さっさと服を着替えた。


「あの男、目が見えてないな」

('A`)「らしい」

「かたや視力無し、かたや血塗れか……」

 大男は肩を落として言った。

「ま、俺には関係無いから事情は聞かん。だが、この店に厄介な客が来るのは御免だぜ」

('A`)「……来ないと思う」

「……どうしてそう思う?」

('A`)「あっちは制圧作戦の為に戦力を集めてるんだ。
   それをわざわざ分散するような真似はしないだろ」

「……確かに。お前意外と冷静だな」

('A`)「自分でもビックリだよ」

.

154 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 18:47:00 ID:F4FhWaM20

 ドクオは呆然としたまま、大きな間を置いてから尋ねた。

('A`)「なあ、あんた、人殺しの経験はあるか?」

「……そういう奴じゃなきゃ監獄には入ってねえ」

 そう答えると、大男は地面に腰を下ろした。

「変な事を聞くんだな。お前、ここがどういう場所か知ってんのか?」

('A`)「掃き溜めだろ」

「……違いねえが、それは向こう側の人間のセリフだな。
 ここは人殺しも強盗もある、ただの無法地帯だ。金と力がありゃ不自由は無い、そんな場所だ。
 目に見える自然は確かに綺麗に見えるが、その上に生きる俺達はゴミクズの極み。そうだろ?」


('A`)「……そうだな。忘れてた」

('A`)「……俺はそういう人間だったな」


「……そう意味深な事を言われても分かんねぇぞ。喋るんなら分かりやすく、だ」

 ドクオは困ったように両手をあげた大男を見て微笑み、すぐに表情を戻した。

('A`)「親友だった奴がいるんだ」

 ドクオは、躊躇いなく先日のことを口走った。

.

155 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 18:49:06 ID:F4FhWaM20


('A`)「昨日、そいつの両脚を俺が潰した。
    服の返り血はそいつの血だ」

('A`)「……初めて人を殺そうと思った。だから少し思い詰めてたんだ」

('A`)「でもまぁ、それも開き直れた。今はメシを食いたい」

「……メシか? そいつぁ分かりやすっ――」

 その時、大男の言葉を遮って大きな物音が轟いた。店の中からだった。
 二人は一瞬目配せし、すぐに立ち上がって駆け出した。



.

156 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 18:51:15 ID:F4FhWaM20

≪2≫


 店内では、ミルナと一人の女性が相対していた。

 ミルナは拳を固めて立ち上がっており、女性の方は椅子に掛けたまま落ち着いている。
 二人の間にあったテーブルは粉々に粉砕されており、今はもう跡形も無い。
 テーブルを破壊した際の余波なのか、周囲のテーブルも方々に吹き飛んでいた。


ミセ*゚ー゚)リ「……激しいのが好きなの?」

(#゚д゚ )「……黙れクソ女。この場で殺すぞ」」

 女性はグラスに残ったワインを飲み干し、グラスを空中にそっと置いた。
 本来なら重力に従って床に落ちるはずのグラスは、そのまま空中に静止して落ちなかった。

ミセ*゚ー゚)リ「私は利口な生き方を提案しただけ。
      目的の為なら人殺しだって厭わない、そういう生き方をね」

(#゚д゚ )「それはお前みたいな根っからの悪人の生き方だ。
     俺は俺自身の正義を捻じ曲げてまで、自分の為に生きようとは思わない」

ミセ*゚ー゚)リ「だったらこう言えば貴方は悩むのかしら。
      その生き方でどれだけの人を救い、一方でどれだけの人を苦しめ、殺してきたの?」

 ミルナは、何も言い返せなかった。
 彼女は口元に手を当てて小さく笑い、ミルナを上目遣いで見つめた。

.

157 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 18:52:13 ID:F4FhWaM20


ミセ*゚ー゚)リ「長生きしててもお子様なのね。
      今時、そういう人は沢山居るけれど」

( ゚д゚ )「……お前も同類だろうが」

 精一杯の反抗心を言葉にして吐き出す。
 しかし彼女は物ともせず、ミルナの台詞を否定した。

ミセ*゚ー゚)リ「私は大人よ? ちゃんとした大人の女性。
      少なくとも貴方ほど他人に依存してないし、自立してるの」

( ゚д゚ )「孤立の間違いだ」

ミセ*゚ー゚)リ「それでも構わないわ。何か問題ある?」

 彼女は言い切った。

ミセ*゚ー゚)リ「私は私一人で私の為に生きている。
      楽しい事、嬉しい事の為に生きている。私はね、これで幸せなの」

ミセ*゚ー゚)リ「楽しい事の内容に問題があるとか言わないでよ?
      これは単なる個人的な人生観なんだから。世の中のアレコレなんか知らないわ」

(#゚д゚ )「そんな勝手――ッ!」



ミセ*゚ー゚)リ「――間違ってるってね、よく言われてたわ」

 ミセリは口元に人差し指を立て、静かに呟いた。

.

158 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 18:54:08 ID:F4FhWaM20


ミセ*゚ー゚)リ「でもね、そう言って私を否定した人達は、誰も私に戦いを挑まなかったわ」

ミセ*゚ー゚)リ「私が悪いと思うなら殺しに来ればいい。裁けばいい。
      大なり小なり超能力者が居るんだから、大勢で私を嬲り殺せばいいと思った」

ミセ*゚ー゚)リ「しかし彼らはそうしなかった。私はしばらくして気付いたわ。
      彼らはね、私を利用して自分の立ち位置をアピールしたかったのよ」


ミセ*゚ー゚)リ「正義と悪の構図がね、欲しかっただけなの」

ミセ*゚ー゚)リ「彼らはね、『悪に立ち向かう正義の僕私』を演出して、利益を上げようとしたの」

 そこまでを言い、彼女はカウンターに置きっ放しだったワインボトルに視線を送った。
 するとボトルは宙に浮かび、彼女が空中に置いたグラスに近づいてワインを注いだ。

 彼女はグラスを持ってワインを煽り、口を開いた。


ミセ*゚ー゚)リ「話が逸れたけど、私が言いたい事は一つだけ」

ミセ*゚ー゚)リ「ミルナさん、貴方は元の世界に帰りたいんでしょう?
      その為に必要なものは準備出来ているわ。足りないものは、あと貴方だけ」

( ゚д゚ )「……目的が手段を正当化する。大義名分があれば、大悪党も正義の味方だ」

 ミセリは背筋を正して言った。

ミセ*゚ー゚)リ「……そうね。私達という集団は完全完璧な『黒』よ。
      およそ悪と言うに相応しい、そんな悪者達の集まりだわ」

ミセ*゚ー゚)リ「しかしそんな黒でさえ、tanasinnの前では純白のように光り輝く。
      それを知らない貴方ではないでしょう?」


ミセ*゚ー゚)リ「それに……別に初めてって訳でもないんでしょう?
      tanasinnを倒す為に他人を使い捨てるなんて、今までの世界ではよくやってたらしいけど?」

ミセ*゚ー゚)リ「言っておくけど、あなた、私なんかよりよっぽど多くの人を殺してるんだからね?」

.

159 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 18:55:16 ID:F4FhWaM20




( ゚д゚ )「……俺は……」


 ミセリの問い掛けは、ミルナにとっては古傷を抉られるようなものであった。
 仲間を集め、力を蓄え、決戦に挑み、すべてを失う。
 そんな経験を何度もしている内に鈍化していった心ですら、後ろめたい自覚はあったのだ。

 tanasinnに勝てる見込みなど無い筈なのに、俺達なら勝てると嘘を吐いて味方を鼓舞する。
 心からミルナを信用し、彼の宿命に怒りと同情を覚えるような仲間達ですら、
 世界が変わればミルナは彼らの存在を忘れ、次の世界に適応していく。

 ただ心臓を動かして生きているだけだった。
 それだけで、他人という存在の価値がどんどん下がっていく気がした。
 命の価値が分からなくなった。やがて、仲間が死んだ所で何も思わなくなった。


( ゚д゚ )「俺は……」


 ――結局のところ、ミルナは他人を利用し、その場凌ぎをしていたに過ぎなかった。
 思考を停止し、『仲間達との友情演劇』の為に同じ事を繰り返していたに過ぎない。
 精神の安寧を欲するあまり、彼は目的を見失って一時の安らぎを追ってしまっていた。

 tanasinnを倒して元の世界を取り戻すという、大義名分と言っても余りある正義の言い分が、
 その重荷が、彼という人間を少しずつ現実から遠ざけていったのだ。
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160 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 18:56:20 ID:F4FhWaM20



ミセ*゚ー゚)リ「ずばり、自信がないんでしょ」

 彼女はミルナを指差し、にんまりと笑った。


ミセ*゚ー゚)リ「あの仲間達と過ごした時間は紛い物だったのか?
      俺は本当にあいつらを信用していたのか?
      一般人を死地に送り込むような真似をしたのに、俺はまだ正しさを語れるのか……」

 席を立ち、彼女はミルナから離れていった。
 そうして少し距離を取ると、彼女はくるりと体を翻してミルナを見直した。

ミセ*゚ー゚)リ「……考える時間は山ほどあったでしょう?
      もう答えは出てるんじゃないかしら。どうであれ、何であれ」

 やがて、彼女の背後に暗闇よりも黒いものが渦巻き始めた。

 彼女はミルナと目を合わせたまま、黒い渦の中に一歩踏み入った。
 黒い渦は、少しずつ彼女の体を包んでいく。


ミセ*゚ー゚)リ「人生には数多くの決着が必要である。
      前に進む為ではなく、過去を過去に留めておく為に」

ミセ*゚ー゚)リ「私の名言よ。今思いついたの。良ければ覚えておいて」

 黒い渦は彼女の全身を飲み込むと、ふわっと周囲に霧散して消滅した。
 次の瞬間には、彼女はもう、どこにも存在していなかった。




.

161 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 18:57:33 ID:F4FhWaM20

≪3≫



(;'A`)「どんだけ派手にすっ転んだんだよ……」

 テーブルと椅子がめちゃくちゃに吹き飛んだ店内を掃除しながら、ドクオはミルナを一瞥する。
 ミルナは椅子に座り、光を失った目でどこか遠くを眺めていた。

( ゚д゚ )「仕方ないだろ。そういう事もある」


('A`)「……お前の目、もう見えないままなのかな」

( ゚д゚ )「……直そうと思えば直せる。しかし面倒だからな、自然に治るのを待つ」

(;'A`)「自然に治るなら、まあいいんだけどさ……」

 ドクオはミルナの前に椅子を置き、そこに腰を下ろした。


('A`)「これから先も一緒に来るなら荒事だってあるんだぜ、大丈夫かよ」

( ゚д゚ )「……分からん。俺の中にあった自信は、ここ数日でかなり粉々だ」

('A`)「……そういやリハビリとか言ってたよな。どうする?」

( ゚д゚ )「……分からん」

 ミルナは同じことを繰り返してドクオをあしらい、目をそらした。
 歯切れの悪い言葉が連続したせいか、場の空気がずんと重くなる。

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162 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:00:02 ID:F4FhWaM20


( ゚д゚ )「……そういえば、お前も故郷で何かあったんだろ?
     血の臭いくらいは分かる。お前こそ大丈夫なのか」

('A`)「……大丈夫だよ。ちょっと現実見ただけだ」

('A`)「気分は悪いけど、仕方ねえと思ってる。
    自分がどういう人間だったかやっと思い出した……そんだけ」


( ゚д゚ )「……なあ、ドクオ」

 ミルナは音を頼りにドクオの方を向いた。


( ゚д゚ )「お前には、何をしてでも帰りたい場所があるか?」

('A`)「……ある。今もその場所を目指してる」

( ゚д゚ )「……そうか。俺は今でも道に迷っている。
     帰る場所も分からないまま、ずっとだ」

 互いに目をそらしたまま、二人はしばらく口を閉ざした。
 その最中、二人は沈黙しながら真逆の事を考えていた。


('A`)(帰れるなんて思ってねえ。これはただの夢だ、分かってる……)

( ゚д゚ )(tanasinnさえ倒せれば可能性はあるが、その為には……俺はまた……)


 一人は夢が夢であると自覚し、一人は自分の夢を信じようとしていた。
 それは、この二人の決別を意味していた。

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163 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:01:21 ID:F4FhWaM20



( ゚д゚ )「……なあ、ドクオ」

( ゚д゚ )「……俺は元の世界に帰りたい。帰って何がしたいって訳じゃない。
     どうせ死ぬなら、見慣れたあの世で死にたいんだ」

('A`)「……帰る手段は」

( ゚д゚ )「……ある」

('A`)「……じゃあやればいい。お前の好きにすればいい。
    俺は知ったこっちゃないからな、無責任にそう言うぜ」

 ドクオは表情を曇らせ、さらに続けた。

('A`)「例えそれで、自分自身の正しさを踏み躙ってもだ。
    人に恨まれたって、責められたって成し遂げたい事があるなら、それはもう 『なる』 しかないんだ」

( ゚д゚ )「……なる? 何にだ?」

('A`)「悪者にだよ。そう呼ばれる覚悟をして、間違った事をするしかない。
    間違った事をしないとどうしようもない人間なら、もう諦めてやるしかねぇんだ」

 ドクオは嘲笑し、さらに付け加えた。

('A`)「……俺は悪者だ。社会の正しさの手には負えねえ、社会不適合者のゴミクズだ。
    俺はもう、それでいいって決めた。これで結構気が楽だ」

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164 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:02:55 ID:F4FhWaM20

(;゚д゚ )「それはっ……!」

 途端、ミルナは声を張り上げた。

(;゚д゚ )「それはただの身勝手じゃないのか!?
     悪者になるしかないって……そんなの……」

 狼狽した彼とは反対に、ドクオは冷たい表情のまま答える。

('A`)「身勝手だろうな。でも 『だから何だ、それがどうした』 だ。
    俺は元々こんな世界は大ッ嫌いでな、今更誰に何言われようが知らねぇんだ」

('A`)「俺は女一人を取り返せればそれでいい。他の全部は、もういいんだ」


('A`)「……俺はそういう身勝手な開き直り方をした。
    そりゃあ何をするにしたって、最低限の常識は守るけどな」

(;゚д゚ )(……俺には分からない。お前は、そんな簡単に他人を切り捨てられるのか?)

 ドクオを否定するその言葉は、思った直後に自分に跳ね返ってきた。

 過去の行いを思い返せば、ミルナはドクオよりよっぽど多くの悪事をこなしてきた。
 より多くの他人を切り捨ててきた。より多くの現実から目をそらしてきた。

 人を責められるほど俺は上等な人間じゃない。
 そう思えば思うだけ、ミルナは『正義』としての自分の考えを肯定できなくなっていった。

 結果を伴わない綺麗事は世迷言だ。
 そんな事は分かっていた。分かっていたからこそ、彼は現実を直視することができなかった。
 思い描いた綺麗事とは真逆の、罪悪と失敗だけが積み上げられた今という現実を。

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165 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:05:02 ID:F4FhWaM20


 改めて外に出てきた今、ミルナは選択をしなければならない。
 それは至極単純な話、戦うか戦わないかの二択である。

 tanasinnと関わり、もうこの世界と無関係ではいられない彼は、このどちらかを選ぶ義務がある。
 もちろん義務を放棄して死ぬのも一つだ。
 荒巻に頼めば彼は快くミルナを殺し、かくしてミルナは全ての義務から解放されるだろう。

 だが、それでは駄目だとミルナは思う。

( ゚д゚ )(……死ねば楽になるなんて、それこそ一番最初に考えた)

( ゚д゚ )(死ぬのは別にいい。ただ、何も成し遂げられないまま死ぬのは――)



('A`)「――おい、大丈夫か?」

 ドクオに声を掛けられると、ミルナはハッとして顔を上げた。
 駆け巡った考えが急停止し、彼はドクオの存在を思い出す。

('A`)「……さっき聞いたんだけどさ、地下の武器庫を寝床にしていいって。
   雑用はやっとくから休めよ。顔色悪いぜ」

( ゚д゚ )「……」

( ゚д゚ )「……すまん。先に寝る。
     だがそういうお前も万全じゃないんだ、早めに切り上げろよ」

(;'A`)「お前が散らかしたんだろうがッ」

 そう言ってミルナが席を立つと、彼の目の代わりをするべく、ドクオも腰を上げた。
 ドクオはミルナの手を取り、彼を地下に案内していく。

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166 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:06:05 ID:F4FhWaM20


('∀`)「野郎の手なんか握りたくないんだが?」

( ゚д゚ )「……」

(;'∀`)「……」

 おかしな雰囲気を打開するために放ったドクオのボケは全く意味をなさなかった(実際面白くなかった)
 変な汗を拭い、喉を鳴らして仕切りなおす。


(;'A`)「明日、お前用の杖でも作ろうぜ。武器にも出来るしな。便利だろ?」

 沈黙を誤魔化し、ドクオはぺらぺらと話し始めた。
 手を握るという行為によって、ミルナが自分の心を覗き見ている事にも気付かず。

( ゚д゚ )「……心が決まった。もう、大丈夫だ……」

('A`)「……?」

 ミルナは独り言のように言い、ドクオはそれを聞き流した。


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167 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:07:58 ID:F4FhWaM20


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 レムナントでの諸用を終えた後、ミセリはメシウマ側に移って都内観光を楽しんでいた。
 彼女は数多くの店に入り、目に付いたものを一つ残らず買っていった。
 荷物は超能力で浮遊させればいいので、彼女の買い物は留まる所を知らなかった。


ミセ;*゚ー゚)リ(……さすがに買い過ぎたか)

 荷物の積みあがり具合がそこらへんのビルを超えようとして、ようやく気付く。
 彼女は仲間からコピーした瞬間移動能力を発動し、荷物をすべて本拠地にすっ飛ばした。
 それと同時に携帯電話が鳴り響く。ミセリは携帯電話を耳に当てた。


「嫌がらせか何かか?」

 開口一番の言葉には、明確な怒りが込められていた。

ミセ*゚ー゚)リ「こんにちは。何が?」

「空から女物の服やアクセサリー、家具家電が山のように降ってきたぞ。
 つーか何が悲しくて無駄毛処理機を複数買ってんだよお前、アルパカでも飼ってんのか」

ミセ*゚ー゚)リ「……送り先間違えました。ごめんなさい。あと買ったもの見るな」

 ミセリも怒った。アルパカは飼っていない。つまりそういう事だった。


「次からは普通に宅配を使え。この量だとダンボール幾つだ?」

ミセ*゚ー゚)リ「それこそ宅配業者への嫌がらせだわ。
       荷物は適当に部屋に突っ込んどいて。次は気をつけるから」

 ミセリは反省せずに言い、そこで会話を区切った。

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168 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:10:54 ID:F4FhWaM20


 歩道の端っこに寄ってから、彼女は本題を語った。

 ささやかな監視の目がこちらを向いている。
 彼女は監視に対して手を振って応えた。


ミセ*゚ー゚)リ「仕事は終わったわ。一応それなりに煽っておいたけど」

「……それなりか」

 電話の相手は不安そうな声色で繰り返した。

ミセ*゚ー゚)リ「あら? 仕事のパートナーが信用できない?」

「人心についてはお前の方が専門だ。お前が駄目なら適役は居ない」

ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫よ。たとえ数万年数億年生きていようが、人は切欠一つでコロッと変わるわ」

 ミセリはゆっくりと、それこそ子供相手に話すように言った。


ミセ*゚ー゚)リ「どこかの先生も、あっという間に変わってしまった事だしね」

「……ぐうの音も出やしねぇ。そうだな、確かに人は変わる」

ミセ*゚ー゚)リ「あのミルナとかいう男、今なら貴方でも圧勝出来るほど弱いわ。
      だからこそ彼は変わる。『弱い』という事は、いつか必ず『強くなる』という事なの」

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169 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:18:19 ID:F4FhWaM20


「……よく分からん、お前の哲学は」

 相手の反応は溜め息交じりだった。

「とにかく仕事は終わりだ。さっさと荷物片付けに帰って来い」

ミセ*゚ー゚)リ「ええ、買い物が終わったら帰るわ。あと夕飯、お願い出来ない?」

「うちは当番制で、今日はお前の番。
 遅れたら新品のパンツが食卓に並ぶからな。まず黒のひらひらを並べる」

ミセ;*゚ー゚)リ「ちょっと見ないでよ!」

 相手は一方的に通話を切った。
 ミセリは携帯電話を睨んで「どうしてこうなった」と何度も考え、やがて薄緑のスカートを翻して歩き出した。
 とにかく食卓にパンツが並ぶのだけは阻止したいので、彼女は即座に帰る準備に取り掛かった。

ミセ*゚ー゚)リ(……ミルナより、あの子の方が将来有望だったかな)

ミセ*゚ー゚)リ(いつか彼が強くなったら、また会いに――)



ミセ;*゚ー゚)リ「――あれはッ!」

 そう思った矢先、彼女は手近にあった宝石店に目を奪われ、そこに駆け寄っていった。
 彼女はその後の数時間をもショッピングに使い、メシウマという街をエンジョイしたのだった。
 食卓には黒のひらひらパンツと脱毛器具が並んだ。

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170 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:24:44 ID:F4FhWaM20


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     第十九話 「ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た」

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171 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:26:05 ID:F4FhWaM20

≪4≫




 ――ミルナは星を見上げていた。



( ゚д゚ )「……綺麗なもんだな、どの世界でも」



 真夜中、夜風を浴びながら、一人。



 光を取り戻したミルナは、右手に掴んだ大男の亡骸から目を逸らすように、満天を見続けた。

 大男の肉体は黒い霧に変換され、ミルナの右腕に巻きついていく。

 やがて大男の全身が霧になって消え失せると、ミルナはようやく自分の右手を見下ろす事が出来た。

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172 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:27:37 ID:F4FhWaM20




( ゚д゚ )「…………」



 言葉を失ったまま、ミルナはしばらくその場に留まった。
 人を殺したという罪悪感すら抱けない自分を、彼は冷ややかに自嘲する。


( ゚д゚ )「……こんなもんだったな、人殺しなんて……」


 ドクオが居てくれて、何かを取り戻せる気がしていた。
 しかしそれも気のせいだった。今のミルナに、そんな気持ちは微塵も無かった。

 自分の中に戻りつつあった何かを、ひっそりと、胸のうちで絞め殺す。
 こみ上げる感情は途端に息絶え、感情の波もやがて治まった。


 ミルナは振り返り、店に帰っていった。
 彼が立ち去った後には、大男が居たという痕跡は何一つ残らなかった――



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173 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:28:17 ID:F4FhWaM20














('(゚∀゚;∩「……あの人、ヤバイんだよ……」



 ――遠くの岩陰で事の一部始終を見ていたなおるよは、そう囁き、静かに望遠鏡を下ろした。

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174 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:30:30 ID:F4FhWaM20

1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71
第十八話 限りある世界 >>89-134

第十九話 ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た >>149-173


4〜8月頃まで逃亡します
恐らく今年中に完結出来る可能性が高い予感を感じるので、
年内完結への準備期間と思ってもらえるとGJ部です

頑張って最終回ぐらいまで書き溜めてきます!待て次回!m9(^ω^)('A`)(´・ω・`)9m

175 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 19:58:45 ID:82KYZqQM0
乙!
楽しみにしときます

176 名も無きAAのようです :2015/01/04(日) 22:30:44 ID:rMWuC/k60
おつおつ
ゆっくり待つ

177 名も無きAAのようです :2015/01/05(月) 04:11:38 ID:TDSNlg.o0
乙乙! 気長に待ってる

178 名も無きAAのようです :2015/01/05(月) 07:37:41 ID:FOmq.Sig0
まだ中盤入ったばかりと思ってたけどもう完結見えてるのか
待ってるおつ

179 名も無きAAのようです :2015/01/05(月) 09:09:30 ID:lSYu2vwc0
50話くらいまであるとか言ってなかったっけ
これは休載明ければ怒涛の連投の予感

180 名も無きAAのようです :2015/01/17(土) 15:11:43 ID:Nb6dUf620
乙乙ー

181 名も無きAAのようです :2015/01/22(木) 08:43:32 ID:XUZCIVRI0
ドクオとギコの喧嘩以来久々に見たらスクライドやっててワロタ
まだ追い付いてないからこれから楽しみますわ
しかしドクオの「衝撃のー」後の台詞が気になる

182 名も無きAAのようです :2015/01/29(木) 00:40:09 ID:S0hzqCZk0
そらもうファーストブリット

183 名も無きAAのようです :2015/03/18(水) 03:15:13 ID:bVwjXiE20
逃亡したか…(スットボケー

184 名も無きAAのようです :2015/03/22(日) 22:06:34 ID:HZSGxix6O
おもしろい

185 ◆gFPbblEHlQ :2015/04/05(日) 23:24:15 ID:vKZ1gbyE0
年内完結は無理です諦めました(^ω^)
6月から再開します よろしくお願いします

186 名も無きAAのようです :2015/04/06(月) 07:04:40 ID:ho2LVEYQ0
(^ω^)おっ

187 名も無きAAのようです :2015/04/07(火) 02:41:41 ID:ujKy.rwI0
終わらせてくれるなら自分のペースで頼んだ

188 名も無きAAのようです :2015/04/08(水) 17:55:05 ID:.tay8Wh.O
好きな作品

189 名も無きAAのようです :2015/04/10(金) 00:30:55 ID:2uxCqnFQ0
うっひょう待ってるぜ

190 名も無きAAのようです :2015/04/28(火) 21:24:10 ID:nCPBBCw20
おいもう6月になったぞ

191 ◆gFPbblEHlQ :2015/04/30(木) 04:47:32 ID:NAys9RVY0
今夜投下

192 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 04:53:10 ID:Hp6gjNQ60
おう

193 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 19:30:41 ID:fsgnTPdQ0
マジでもう6月だった

194 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 21:52:02 ID:NAys9RVY0

≪1≫



('A`)(……久し振りにまともに寝たな)

 酒場・バーボンに来てから一夜が明けた。
 ドクオは快晴の空を仰ぎ、大きく体を反り返らせた。


('A`)「しっかし、あの野郎はどこ行ったんだろうな?」

 体をほぐしながら、ドクオはミルナに話しかけた。


('A`)「買い出しに行くにしたって、行き先くらい教えろってんだよ」

( ゚д゚ )「おかげでタダ働きしなくて済むんだ。気にするな」

('A`)「……まぁそうだけどさ」

( ゚д゚ )「お喋りは後だ。念願の特訓だぞ、さっさと準備しろ」

 ミルナはそう言い、店から持ってきた大型の懐中電灯を点けた。
 二人は距離をとってそれぞれ超能力を発動し、静かに拳を構えた。

('A`)「とりあえず軽くな。ラジオ体操気分でやろうぜ」

( ゚д゚ )「分かった。いつでも来い」

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195 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 21:52:42 ID:NAys9RVY0


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        第二十話 「説明をする回」

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196 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 21:54:14 ID:NAys9RVY0



 半分の力も出さず、二人はしばらく小競り合いを続けた。

 それは、互いに相手の癖を観察する為だった。
 自覚のない癖を相手に見つけてもらい、それを後で確認し合うのはとても良いと思う。

 衣服が汗を吸い、冷たさを覚えるようになった頃合で、二人は一旦動きを止めた。

(;'A`)「どうだった?」

( ゚д゚ )「とりあえず……左腕に意識を割きすぎだな。
     動きが強張って攻撃を読み易くなってる」

(;'A`)「……マジか。4月末だと思ったら6月だった時くらい驚いたぜ」

( ゚д゚ )「全体のキレは良いが、なんだろうな……。
     簡単に言ってしまえば、超能力に慣れてないんだろうな」

(;'A`)「……だよなぁ」

 ドクオは苦笑いを浮かべ、肩を落とした。


(;'A`)「これ、装甲の分だけ重くなるんだよなぁ。
    使用者は重さを感じない的なのを期待してたんだけど……」

( ゚д゚ )「そう都合良くは出来てない。
     だが重さについては対策がある。一回能力解いて、少しずつ光を吸収してみろ」

.

197 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 21:55:25 ID:NAys9RVY0


 言われた通り、ドクオはゆっくりと超能力を発動しなおした。


( ゚д゚ )「俺の場合、装甲の厚さ重さは発動時の集中力次第だ。
     お前の場合なら、きっと取り込んだ光の量でそれが決まるはずだ」

( ゚д゚ )「能力を使う時は光の量を考えろ。丁度良い加減を探っていけ」

('A`)「なるほど。分かった」

( ゚д゚ )「まずは拳だけで具現化してみろ。
     適当なグローブを想像すれば上手くいくだろう」

(;'A`)「素人相手に無理言うなよ……」

 じわじわと光を吸収しながら、拳だけに意識を集中する。
 拳に淡い光が灯り、やや遅れて装甲が具現化し始める。

(;'A`)「……けっこう辛いな……」

( ゚д゚ )「わざと呼吸を止めてるようなもんだからな。慣れるまでは仕方ない」

 しばらくして拳が装甲に覆われきったところで、ドクオは光の吸収を打ち切った。

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198 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 21:58:30 ID:NAys9RVY0



(;'A`)「まぁ……こんなもん……?」

 ドクオは拳を凝視し、装甲がしっかり具現化できているかを確かめた。
 指の一本一本を動かした時には不自由もなく、重量もかなり削減出来ていた。

(;゚д゚ )「一発かよ。ふざけんな、もっと苦労しろ」

 ミルナは4月末から6月にタイムスリップした時くらい驚いた。


(;'A`)「……いや、これ強度がまったく駄目だ」

 しかしドクオは言い返し、地面に向かって左拳を打ちつけた。
 拳の装甲は、たったそれだけの衝撃で砕けてボロボロになってしまった。
 軽量化には十分成功していたが、これではとても武器防具にはなりえない。

(;'A`)「……まだまだ」

( ゚д゚ )「……これはもう体で覚えるしかない。
     加減も、お前なりの落とし所を見つけるんだな」

 ミルナは体裁を整え、先輩面して言った。

(;'A`)「あいよ……他に直すとこあったか?」

( ゚д゚ )「ない」

 ミルナは断言した。

( ゚д゚ )「俺はお前みたいに修行とかした訳じゃないからな。
     諸々の動きはお前の方が完成度高いぞ。だから言える事はない」

(;'A`)「……まぁ、そりゃそうだ」

( ゚д゚ )「俺だって素人だ。アドバイスにも限界がある」

(;'A`)「……じゃあ相談。まず撃鉄の使い方、教えてくれよ」

 ドクオはマグナムブロウを再発動し、装甲と撃鉄を肉体に具現化した。

.

199 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 21:59:43 ID:NAys9RVY0


( ゚д゚ )「コイツの使い方ねぇ……」

 ミルナは腕を組み、自身の背中にある撃鉄を一瞥した。


( ゚д゚ )「おい、今までどんな風に使ってきた?」」

('A`)「爆発ッ! って感じで撃鉄落として、なんか凄いパワー出てる」

(;゚д゚ )「アホっぽい扱い! ……とりあえず手本をやってやる」

 ミルナは近場の岩を指差し、ドクオと一緒に岩に近づいた。



( ゚д゚ )「今のお前は、燃料が切れるまでエンジンを掛け続けるような使い方をしてる筈だ。
     確かにそれなら見栄えは良いが、肝心な時に燃料切れになる事もある」

(;'A`)「……肝心な時にな……」

( ゚д゚ )「いいか、マグナムブロウはその名のとおり銃をモチーフにしている。
     扱いも銃と同じようにすれば、ある程度は節約が効く」

('A`)「……?」

( ゚д゚ )「……こうやるんだ。見てろ」

 いまいち理解出来ずにいたドクオを一歩下がらせ、ミルナは岩に右手の平を当てた。

.

200 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:01:20 ID:NAys9RVY0


('A`)ノ 「じゃあ次の質問」

 そう言って踵を返し、ミルナに背中を向ける。
 ドクオは先日現れた二つ目の撃鉄を見ながら言った。

('A`)「こないだ新しいのが出てきた。コレがなんか変なんだよ」

( ゚д゚ )「……何が変なんだ?」

('A`)「なんか、しっくりき過ぎてて、逆に変……って感じ」

 ドクオはたどたどしく、曖昧な答えを返した。
 しかし返答としてはそれで十分だったらしく、ミルナはドクオのクソみたいな返事に文句を言わなかった。


( ゚д゚ )「……こいつは……」

 ミルナは大きく息を吐き、腰に手を当てて深慮した。
 今、彼の心中には 『tanasinn』 という言葉が色濃く浮かび上がっていた。


( ゚д゚ )「……お前自身、それをどう思ってる?」

('A`)「一回使った切りだから、あんま何も思ってないけど……」

( ゚д゚ )「……分かった。なら、もう二度と使わない方が良い」

 ミルナは一瞬口ごもってから、俯いてその理由を口にした。

.

201 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:03:04 ID:NAys9RVY0


( ゚д゚ )「微弱にだがtanasinnを感じる。俺のが影響しちまったな……」

('A`)「……使うなって、なんか不都合あるのか?
    お前はバカみたいに使ってるけど」

( ゚д゚ )「普通の人間に耐え切れるとは思えないんだ。
     特にお前、精神脆いだろ? tanasinnに全部支配されるぞ」


( ゚д゚ )「つーか今バカって言った?」

(;'A`)「そんな事より具体的に話してくれよ」

 一瞬前に具体性皆無のクソみたいな返事をした男はそう言った。


( ゚д゚ )「……最終的に俺と同じなるか、存在そのものがtanasinnに呑み込まれる。
     強過ぎる力を扱うなら、それを制するだけの精神が必要なんだよ」

( ゚д゚ )「少しずつ慣らして使うなら問題ないだろうが、一個目の撃鉄と同じような使い方は絶対にするな。
     もしそんな使い方をすれば、tanasinnはお前の全てを燃料にして暴れ回るぞ」

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202 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:05:30 ID:NAys9RVY0


('A`)「……そっか。分かった、使わないようにする」

( ゚д゚ )「……」

 ドクオはやけに素直に頷いた。
 その様子から彼の本心を察したミルナは、はっきりと言葉にして釘を刺した。

( ゚д゚ )「出来れば取り除きたいんだが……お前嫌がるだろ」

('A`)「うん。弱くなって堪るかよ」

( ゚д゚ )「……だがまぁ、お前がヤバくなったら問答無用で取り上げる。
     それを使うならタイミングは選んでくれ。せめて、俺が居る時だ」

('A`)「……分かってる」



 ドクオは体を構え直し、ミルナを煽るように拳を振った。

('A`)「時間が惜しい。さっさと続きやろうぜ」

( ゚д゚ )「……お望みどおりに」

 再開の合図として拳を突き合わせると、二人は拳を飛ばし合った。


.

203 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:09:32 ID:NAys9RVY0

≪2≫




('A`)「――で、そろそろ聞かせてくれよ」

 酒場に戻って一杯酌み交わそうと準備している二人。
 何を聞かれているかは想像出来たが、ミルナは一度とぼけて見せた。

( ゚д゚ )「何をだ?」

('A`)「なんで目が見えるようになったんだよ。ま〜た例のヤツか?」

( ゚д゚ )


(;゚д゚ )「……そっちか。荒巻の話だと思ったぞ」

(;'A`)「……やっぱそれで」

(;゚д゚ )「聞きたがって癖に忘れてたのか……」

 ミルナは呆れて半笑いを浮かべ、席に着いた。
 ふと、脳裏で「上手く誤魔化せた」と考える。


( ゚д゚ )「まあ話すのは別にいいが、とりあえず飲み物とツマミだ。
     長話になる。多めに頼むぞ」

('A`)「あいよっ」

 気前の良い返事をした後、ドクオは注文の品を腕一杯に抱えてテーブルに戻ってきた。
 これで、長々と駄弁る準備は整った。

.

204 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:10:57 ID:NAys9RVY0


( ゚д゚ )「……そうだな。じゃあ、まずはこないだの続きから」

(;'A`)「その辺は全部要約してくれ!」

 ドクオは咄嗟に片手を突き出してミルナを止めた。
 また同じように意味不明な事を話されては話が進まない。


(;'A`)「まず、確認」

 ゆっくり、はっきりと言い、ドクオは一つずつミルナに質問を投げかけた。


(;'A`)「まず、別世界があるんだな?
    その世界で、お前はクーと知り合いだったと」

( ゚д゚ )「より正確に言うなら仕事仲間だった。
     そんで別世界は確かにあるが、俺が生きた世界はもう無い」

(;'A`)「……え、無いの?」

( ゚д゚ )「無い。まだあるかも知れないが、小数点の遥か先にある可能性だ。
    その可能性でさえも裏付けは無い。だからほぼ『無』だ」


(;'A`)「……帰れないじゃん」

( ゚д゚ )「……そうでもない。可能性は、確かに残ってるんだ」

 ミルナはジュースの入ったジョッキを覗き込んだ。

( ゚д゚ )「まぁ、可能性として見るには余りにも希薄だがな……」

.

205 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:12:19 ID:NAys9RVY0


( ゚д゚ )「……決めたんだ。俺は元の世界に帰る。
     あの監獄を出た時にはまだ迷っていたが、もう決めた」
  ,_
('A`)「……でもよ、実際できんの?」

 ドクオは椅子にふんぞり返って言った。

(;゚д゚ )「お前ムカつくなぁ……」

('A`)「なんだっけ。あれだ、tanasinn。要はあれだろ?」

(;゚д゚ )「適当に言いやがって……けど、その通りだよ」


( ゚д゚ )「あれを倒すなり何なりすれば、とりあえず道は開けるそうだ。
     俺もよくは分からんが、全部あれを倒してからだと思ってる」

('A`)「ふぅーん……」

(;-д- )「……分かったよ他人事だろ、さっさと何でも聞きやがれ」

 世が世なら確実に友達0人であろうドクオの反応をスルーし、ミルナはテーブルの菓子に手を伸ばした。

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206 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:13:16 ID:NAys9RVY0


('A`)「それで、荒巻はなんでアイツを連れてったんだ?」

 姿勢を正し、次の質問を口にする。
 それは荒巻と素直クール、ミルナの三人の関係を知る第一歩となる質問だった。


( ゚д゚ )「そうだな……求める結果は違うが、俺と荒巻の目的は同じだ」

('A`)「……たなしん?」

( ゚д゚ )「そうだ。荒巻もあれと戦いたがってる」

('A`)「じゃあ、戦う為にクーが必要なのか?」

 その一言は、事の核心に触れていた。

( ゚д゚ )「……あいつが鍵になってる」

('A`)「……カギ」

( ゚д゚ )「……」


.

207 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:14:20 ID:NAys9RVY0



('A`)「……荒巻もお前も、あいつを殺すのか?」

 ミルナは、真実を察したドクオから大きく目をそらした。


( ゚д゚ )「……tanasinnが目覚める条件は三つ。
     偶発的に起きるか、鍵の意思で起こされるか、鍵となる人物が死ぬか」

( ゚д゚ )「あいつの死は確かに引き金にはなる。
     だが、俺も荒巻もそれはしないだろう」

('A`)「……」

 視線を戻すとドクオを目が合った。
 ミルナはまた目を逸らし、無言で聞き返してきたドクオに返事をする。

( ゚д゚ )「tanasinnと戦いたがってるヤツがもう一人居るんだ。
     現状、荒巻だけじゃそいつを抑え込めない。少なくとも、俺と組まない限りは……」

.

208 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:16:50 ID:NAys9RVY0


('A`)「そいつが居る限り、荒巻はクーに手を出さないのか?」

( ゚д゚ )「……荒巻の事だ。今もあいつから力を奪い続けていると思う。
     じゃなきゃ 『もう一人』 にも対抗出来ないし、tanasinnにも歯が立たない」

('A`)「……奪い切ったらどうなる」

( ゚д゚ )「準備完了だ。『もう一人』よりも強くなって、俺も不要になる。
     邪魔者を排除して、tanasinnとの戦いに全力を注ぐだろう」


('A`)「……時間は、あとどれぐらい残ってる」

( ゚д゚ )「……あいつが荒巻の所に行ってからしばらく経つだろう。
     この先一年は無いと思う」

 重苦しい沈黙が二人の肩にのしかかった。
 しかし、残された時間の短さにドクオは大して驚いていなかった。
 以前の彼なら即座に荒巻を倒しに行こうとしていたが、今の彼は冷静さを保ったままだった。

 俺が冷たくなったのか、あるいは大人になったのか……。
 ドクオはふと考えたが、明確な答えを出さないまま、やがて口を開いた。

.

209 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:18:32 ID:NAys9RVY0


('A`)「荒巻もお前も、tanasinnを倒したい。
   倒して元の世界に帰りたい。その為にはあいつの意思か、死が必要」

 淡々と、挙げられた事柄だけを羅列する。

('A`)「そんで、 『もう一人』 には荒巻もお前も勝てない。
   俺がクーを助けたいなら、そいつに頼るしか無いわけだ……」

( ゚д゚ )「――駄目だ」

 素直クールを無事に救い出す方法として言ったそれを、ミルナはすぐに否定した。


( ゚д゚ )「……そいつは昔の仲間なんだ。俺がこの問題に巻き込んじまった。
     あいつの命は俺が絶つ。絶対に、俺が殺さなきゃならない」

( ゚д゚ )「……俺はお前まで殺したくない。あっちにつくのはやめてくれ」

('A`)「……知らねぇ」

 ドクオは吐き捨てるように言って俯いた。


('A`)「俺はクーを助けたいだけなんだ。
   本当にもう、俺はそれだけで生きてる……」

('A`)「あいつが死ぬなら、そこから先、俺の存在に意味は無いんだ。
   死ぬ理由ばっかりが頭を埋め尽くして、いつか呆気なく死んで終わりだ……」

.

210 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:19:56 ID:NAys9RVY0


( ゚д゚ )「……」

('A`)「……」



(;゚д゚ )「……ったく、分かったよ!」

 重い空気に耐え切れなくなったミルナが、その空気を壊すような大声を張り上げた。
 ドクオは若干引いた。なんだこいつと思った。

('A`)「……なにが?」

(;゚д゚ )「クールを助けるのに手ぇ貸してやる。
     一緒に荒巻を倒せばいんだろ? だから暗いのはよしてくれ」

( ゚д゚ )「ただしだ。俺が『もう一人』とやりあう時にはお前が手を貸せ」

( ゚д゚ )「だからさっさと俺ぐらい強くなってくれ。
     でないと荒巻とも『もう一人』とも戦ってられん。足手纏いは要らんぞ」

  ,_
('A`)「……俺とお前で出来んの?」

( ゚д゚ )「出来なきゃ素直クールは助けられん。
     お前が『もう一人』の仲間になるのも嫌だし、最善の折半案だと思うが」

 ドクオは少し逡巡してから、ジュースと菓子をそれぞれ口に運んで答えた。

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211 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:21:03 ID:NAys9RVY0


('A`)「……俺もお前とは敵対したくない。そうするのが一番だな、うん」

( ゚д゚ )「だろ? お互い、リハビリと特訓を頑張ろうな」



(;'A`)「……つーか、やっぱり時間ねえわ」

 特訓にかける時間と、素直クールに残された時間。
 それらを考えた時、ドクオの胸中に焦燥が湧き上がった。

 ドクオは立ち上がり、壁際にまとめておいた荷物の方へと歩いていった。
 ミルナもその行動の意図を察し、席を立つ。


( ゚д゚ )「もう出発か? 次はどこに行くんだ」

('A`)「クソワロタっていう街だ。ここで一番デカイ、中心の街。
    待ち合わせにはちょっと早いけど行く。先に行って、やれる事をやるんだ」

('A`)「立ち止まって色々考えるのは今じゃなくていい。
    悪い癖だ。つい時間を無駄にしちまった……」

 バッグを背負い、酒場をぐるりと一望する。

('A`)「あの大男には悪いけど、店の車を借りて武器を運ぼう。
   今日中にクソワロタに行くぞ。荷物運び手伝ってくれ」


( ゚д゚ )「……」

 ドクオがそう言って振り返った時、ミルナは自身の右腕を見つめていた。

.

212 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:21:43 ID:NAys9RVY0


('A`)「……どした?」

( ゚д゚ )「……いや、何でもない。さっさと準備しよう」

 ドクオを追い越し、ミルナは地下の武器庫に降りていく。



('A`)「……」

 その時、ドクオは、彼の背中がやけに遠くにあるような錯覚を覚えていた。

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213 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:22:16 ID:4gncg0LE0
俺も驚いた
支援

214 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:26:55 ID:NAys9RVY0

≪3≫


 メシウマ側に最近出来た観光名所。
 全長1000メートルという頭が悪そうな規模の建物、ステーション・タワー。

 その最上階に設けられた素晴らしい絶景の眺めの光景の景色の展望室フロア空間。
 超能力者だけで構成された二つの集団、カンパニーと特課の一同は今、そこに集まっていた。



/ ,' 3 「――――」

 全員の視線は荒巻スカルチノフに向けられていた。

 tanasinn、ミルナ、素直クール、『もう一人』。
 それぞれの思惑と目的、関係性を、彼はミルナよりも冷静に皆に伝えていた。
 ミルナが話していない事も含めて、tanasinnにまつわる全てを、包み隠さずに。



/ ,' 3 「……まあ、とにかく」

 荒巻は大体を話し終えると、気の抜けた一言で説明を区切った。

/ ,' 3 「正直なところ、今回は完全に私の戦いだ。
    君らには戦う理由が無い。参加すれば然るべき報酬を出すが、降りた所で咎めはせん」

/ ,' 3 「説明の中で出てきた『もう一人』。
    この戦いは、その人物とミルナを接触させない為の戦いなのだ」

 最後に投げやりに「まあ、好きにしたまえ」と言って、荒巻は口を噤んで皆に背を向けた。
 カンパニーと特課の面々は、事の大きさに唖然としたまま、展望室を後にした。

.

215 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:28:09 ID:NAys9RVY0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 皆はデミタスの提案で適当な休憩室に入り、荒巻の話について意見を交わす事にした。
 ツンとモナーがお茶を沸かしている間に、皆は意見交換を始めた。

  _
( ゚∀゚)「ダメださっぱり意味が分からなかった」

(´・_ゝ・`)「……俺とシャキンは少し前からこの話を知ってた。
      素直クールをここの地下に入れたのは俺達だ。ある程度、信用していい」

 カンパニーのバカ筆頭・ジョルジュ長岡を完全無視し、デミタスはそれぞれに視線を送った。


( ´_ゝ`)「俺は乗るぞ。信じるとかは置いといてだ」

 壁際で一人、深刻そうな表情で佇んでいた流石兄者がはっきりと告げる。
 普段は常に余裕たっぷりな自分を演出している彼が、今は明らかに余裕を無くしていた。
 目付きも鋭く、殺気に近い気配を発している。

( ´_ゝ`)「横堀には俺が伝えておく。あいつまだメンテ中だからな」

 そう言い残し、彼は一番に休憩室を出て行った。
 結論が出たからというよりは、早く一人になりたいが為の行動だった。

.

216 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:29:30 ID:NAys9RVY0


ξ゚⊿゚)ξ「私も乗るわ」

 彼女は一人一人にお茶を配ってから、けだるそうに席にかけた。

ξ゚⊿゚)ξ「あの荒巻さんが人の為に戦おうとしてるんだから、手助けするわよ」

*(;‘‘)*「私もやります。ミルナっていう人と、『もう一人』が接触したら大変ですもんね……」

 ツンの意見に賛同し、ヘリカル沢近が不安そうに呟く。
 ヘリカルはゆっくりとお茶をすすった。しかし熱くて舌を火傷した。ちゃんと冷めてから飲もう。
  _
( ゚∀゚)「えっ大変なの?」

( ´∀`)「荒巻さん、『もう一人』がミルナと組んだら大変だって言ってたモナ。
      tanasinnがどうこうの前に、人類皆殺しだって」

(´・_ゝ・`)「ああ、モナーさんの言うとおりだ」

 モナーの言葉を後押しするため、デミタスがすかさず開口した。


(´・_ゝ・`)「もしもミルナが 『元の世界に帰りたい』 と願うなら」

(´・_ゝ・`)「それはつまり、他人を殺して自分の力に変換するっていう事だ」

(´・_ゝ・`)「だから絶対に阻止しなきゃいけないんだよ。
      あの男にそう思わせちまう人間は、誰一人として近付けちゃならん」


(´・_ゝ・`)「……言い方は悪いが、ミルナには諦め続けてもらうしかない。
      俺達の世界が平穏無事にあり続ける為に、元の世界には帰れねえってな」

  _
( ゚∀゚)「な、なんてこった……」

 バカは満場一致で完全無視されていた。

.

217 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:32:07 ID:NAys9RVY0


((( )))
( ´Д`)「しかし、ですよ」

 1さんは飲める温度になったお茶を一口飲んでから言った。
 ヘリカルは彼を見習い、そっと湯のみに口をつけてまた火傷した。


((( )))
( ´Д`)「敵は荒巻さん以上で、しかも相当の実力者を味方にしていると言いました。
      それを現状、この面子で打倒するのは難しいかと……」

(´・_ゝ・`)「……で?」

((( )))
( ´Д`)「……八頭身の奴がもうじき来ます。
      戦力の補強になるかと思い、念のため呼んでおきました」

(´・_ゝ・`)「……やってくれた。ありがとう」

 八頭身は1さんの古い知り合いの剣士で、カンパニーきっての隠し玉である。
 それを最高のタイミングで呼んでくれた1さんに、デミタスは後で飴をあげる事にした(とても美味しい)

.

218 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:33:30 ID:NAys9RVY0


(`・ω・´)「これで一応、全員が戦闘に加わる事になったか」

 全員が意向を示すまで黙っていたシャキンが、改めてそう言って皆の意思を確かめた。
 しかし最早聞くまでも無く、全員確かな戦意を目の奥に秘めていた。


ξ゚⊿゚)ξ「……とりあえず実家に電話してくる。必要でしょ?」

(´・_ゝ・`)「頼む。1さんは八頭身を迎えに行ってくれ」

((( )))
( ´Д`)「分かりました。ついでにカーチャンさんの様子も見てきます」

(´・_ゝ・`)「カーチャンにも一応今日の事を話して、返事を聞いといてくれ。
      彼女が居ると居ないじゃ空気が違う」

 デミタスの言いつけを聞き入れた1さんは、足早に休憩室を出て行った。



  _
( ゚∀゚)「……やるぜ、俺は」

(´・_ゝ・`)「黙れ。お前なにも理解してないだろ」
  _
( ゚∀゚)「ああ、マジでさっぱりだ……お前ら何者だよ……」

(´・_ゝ・`)「とにかくお前はいつも通りでいい。
      自由だ。好きにしろ」
  _
( ゚∀゚)


  _
( ゚∀゚)「よし、わかった」

 この話題において、彼は初めて何かを分かる事ができた。

.

219 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:35:10 ID:NAys9RVY0


 デミタスは振り返り、モナーに話し掛けた。

(´・_ゝ・`)「特課の動きは横堀に一任しておきます。
      用があれば言ってください。善処します」

 デミタスは私用の連絡先を書いたメモをテーブルに置き、1さんに続いて部屋を出ようとした。

( ´∀`)「どちらへ?」

(´・_ゝ・`)「俺は荒巻の土下座巡りについていきます。
      モナーさんが現状の最大戦力だ。留守を頼みます」

(; ´∀`)(……土下座巡り?)

 デミタスが部屋を出る寸前、モナーは「分かったモナ」と言って彼を見送った。

 お茶を飲み干し、モナーはヘリカルと一緒に席を立った。
 ヘリカルはお茶に恐怖していたのでお茶を残した。情けない。

( ´∀`)「それじゃあ特課に帰るモナ。
      アサピーに言って、色々準備するモナ」

*(;‘‘)*「そうでづね……」

 特課、カンパニーを含むメンバーで最年少のヘリカル沢近。
 舌を火傷したこと以外、彼女に気後れした様子は無い。

(`・ω・´)(無駄な心配だったな)

 彼女を心配していたシャキンも、舌の火傷以外に心配する事は無いと察して彼女を認めた。
 お茶で火傷する猫舌ではあるが、彼女も列記とした荒巻の部下なのだ。

(`・ω・´)「俺の連絡先も後で送ります。何かあれば」

( ´∀`)「モナ。感謝するモナ」

 モナーとヘリカルが一礼し、部屋を出て行く。
 丁度その時、ツンの電話が終わった。

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220 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:36:32 ID:NAys9RVY0


ξ゚⊿゚)ξ「――うん。じゃあ妹を言いくるめておいて」

 ツンはそれを最後に通話を切った。
 携帯電話をしまい、溜め息を一つ。


(`・ω・´)「……駄目だったか?」

ξ;-⊿-)ξ「いえ、久し振りにパパと話したから疲れただけ。
       基本様子見だけど、いざとなったら力を貸すってさ」

(`・ω・´)「あの人が来てくれるなら大分心強い。
      たしか荒巻の土下座リストにも名前があったしな」

ξ;゚⊿゚)ξ「あの人に土下座なんて、私なら死んでも嫌だわ……」

 ぐてぇ〜とテーブルに崩れてから、ツンは呆然と呟いた。


ξ゚⊿゚)ξ「……ドクオとかいう奴、今はミルナと一緒なんでしょ?」

(`・ω・´)「デミタスからそう聞いたが。それがどうした?」

ξ゚⊿゚)ξ「……別に。なんか、敵になりそうだなぁ〜って思っただけ」

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221 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:37:28 ID:NAys9RVY0


(`・ω・´)「それはまた、別の問題だ」

 シャキンの一言がツンの杞憂を一蹴する。
 彼は立ち上がって窓辺に歩み寄り、外を一望した。

(`・ω・´)「今は明確な敵である『もう一人』の進行を止めるのが先だろう。
      ドクオもミルナも、まだ敵になると決まった訳じゃないんだ」

ξ゚⊿゚)ξ「……だといいんけどね。ドクオとかいう人、かなり危ないから」

(`・ω・´)「……根拠は?」

 振り返って尋ねると、ツンは悪ぶれず答えた。

ξ゚⊿゚)ξ「雰囲気が犯罪者っぽいから」

(;`・ω・´)「……」

 否定も肯定も出来ないまま、シャキンは彼女の答えを聞き流した。


  _
( ゚∀゚)「……うし、帰って寝るか!」

 ジョルジュは帰って寝た。

.

222 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:43:15 ID:NAys9RVY0

≪4≫



/ ,' 3 「皆、案外乗り気になるものだな」

 デミタスを連れてステーション・タワーを出発し、街を歩く荒巻。
 行き交う人々の間をすいすいと進みながら、二人は街の図書館に向かっていた。


(´・_ゝ・`)「何がです?」

/ ,' 3 「tanasinnがどうこうの話だ。
    正直、痴呆を疑われて終わりだと思っておった」

/ ,' 3 「長い人生だが、この事を初めて他人に喋った。
    久し振りに緊張したわ……」

(´・_ゝ・`)「……聞きますけど、本当に彼らを戦わせるんですか」

/ ,' 3 「当然だ。……敬語は好かん、適当にしろ」

(´・_ゝ・`)「……1さん、八頭身、モナーは及第点だが他は駄目だ。
      無駄死にするだけだぞ」

 デミタスは普段通りの口調に切り替えた。

/ ,' 3 「なぁ〜にが及第点じゃ。お前だって使い物にならんわ、たわけ」

.

223 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:45:20 ID:NAys9RVY0


/ ,' 3 「……所詮、特課もカンパニーも前座の露払いに過ぎん。
    向こうもそれを分かっておる。虐殺は起こらん」

/ ,' 3 「誰も死なせはせんよ。それだけは約束する」

 “守る”という約束――。
 荒巻がそんな事を口走ったのを、デミタスは一瞬信じられなかった。


(´・_ゝ・`)「……なあ」

(´・_ゝ・`)「あんた、なんで戦うんだ。何の為に……」

 これまで人間味というものを微塵も見せてこなかった荒巻が、今は少しだけ人間らしく見える。
 不意に口に出した一言は、ようやく人間味を見せた彼への率直な疑問だった。

/ ,' 3 「……ワシの余生を脅かすものを排除する。ただそれだけだ」

/ ,' 3 「ワシは、それ以外の理由で力を揮ったことはない」

(´・_ゝ・`)「……好戦家だと思ってたぞ。
      素直クールを奪取したのも、tanasinnと確実に戦う為かと……」

/ ,' 3 「あれを閉じ込めたのは確実に 『もう一人』 と戦う為だ。
    tanasinnは……なんかもういい。アレはマジでつまらんぞ」

 荒巻は振り返って言い、げんなりした表情をデミタスに見せた。

.

224 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:49:29 ID:NAys9RVY0


/ ,' 3 「何度か戦ったが、なんというか……何も無いのだ。
    空気相手に腕を振るような、得る物も失う物もない、無意味な戦いだった」

(´・_ゝ・`)「なんでまた、そんなのと何度も」

/ ,' 3 「そりゃあ……義務感とかあるだろう?
    一時はアレを倒して元の世界に〜などと考えておったな……義務感で」


/ ,' 3 「ま、戦う理由が義務感しかないと気付いてからは全くだ。
    普通に生きて、世界が変われば次の世界を生きて、楽しくやっておる」

 あっけらかんに言い、荒巻は軽快に笑った。

(´・_ゝ・`)「……元の世界に執着とか無いのか?」

 デミタスが更に問い掛けると、荒巻はまた振り返ってきょとんとした顔で答えた。

/ ,' 3 「ないない。そもそも、元の世界での孤独死が拗れてこんな身体になったのだ。
    今更戻っても良い事なんか何も無いわい」

(;´・_ゝ・`)「どんな拗れ方だよ……」

/ ,' 3 「これも一つの人生だ。ワシの命に終わりは無いが、それもまた良かろうて」

.

225 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:51:03 ID:NAys9RVY0


 二人は人混みを抜け、図書館に続く小さな並木道に入った。
 人通りが大きく減ったことで、デミタスはようやく荒巻の横に並ぶ事が出来た。


(´・_ゝ・`)「なぁ、なんで俺らや特課のメンバーを集めた?
      あんたならもっと凄い味方を揃えられたはずだ」

 そう問い掛けた時、荒巻は空を見上げていた。
 周囲の木々の青葉が風になびき、日差しを受けて光り輝く。


/ ,' 3 「特別であることに意味を見出さなくなった。それだけだ」

/ ,' 3 「唯一無二も、絶対無敵も、なにも要らん。
    自由に動けるだけの地位は獲得するが、ワシはな、ただ生きていたいのだ」

(´・_ゝ・`)「……憧れてるのか? 普通とか、当然に」

/ ,' 3 「……憧れ?」

 荒巻は4月末が6月になっていた時のように驚き、デミタスの言葉を繰り返した。


/ ,' 3 「……まあ、そう言うのならそうなのだろう」

/ ,' 3 「自分の人生に自分以外の誰かが居る。
    たったそれだけの願望を満たす為に、ワシは今も生きておるのかも知れん」

226 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:51:55 ID:NAys9RVY0


 並木道の終わりが見えてきた。
 デミタスはこの会話の締め括りに、荒巻にこんな事を訊ねた。

(´・_ゝ・`)「あんたの人生には、今でも誰も居ないのか?」

 荒巻は、この並木道に風が吹き抜けると同時に口を開いた。
 多くのしわを刻んだその顔に、ささやかな陰りを見せながら。


/ ,' 3 「誰もが先に行ってしまう。不老不死はそこが厄介だ」

/ ,' 3 「負け惜しみを込めて答えるならば、今は誰も居ない……という所かの」

 それは、永遠にも等しい孤独を享受した男の、精一杯の弱音だった。



/ ,' 3 「――さて、ここが土下座巡りの第一弾だ。気張ってゆくぞ」

(´・_ゝ・`)「俺はあんたの土下座写真を撮るだけ。絶対しないからな」

/ ,' 3 「その余裕、最後まで保ってくれよ」

 都内最大の国立図書館を前に一言交わした二人は、
 軽く目配せしてから図書館の玄関を押し開けた。


.

227 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:52:56 ID:NAys9RVY0

≪5≫



 ドクオ達、レムナントの面々。

 荒巻達、メシウマ側の面々。


 レムナント制圧作戦のもと、間もなく激突するかに思われていた二つの勢力。
 しかし荒巻達の敵はレムナントの人間ではなく、『もう一人』と呼称された第三者であった。
 結果的に三つになった勢力を、とても分かりやすい図にすると以下のようになる。


     攻撃!
     →→→     迎撃!
 (?)     (荒巻)←←←(ドクオ)
     ←←←
     迎撃!


 瞬間、この分かりやすい図のおかげで誰もが現状を把握した。


.

228 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:53:56 ID:NAys9RVY0


 荒巻がでっち上げた架空の制圧作戦の目的。
 それは、レムナント側の人間にも戦う準備をしてもらう為だった。

 もし自分達が倒され、壁を突破された場合、頼れるのは内側に居る人間だけだ。
 先日崩壊したレムナント監獄も、実はその場合を想定して用意された施設だったのだ。
 あそこが死ぬほど甘ったれた好待遇だったのも、
 壁の内側に強力な超能力者を多数留めておく為の作戦だった。

 しかし荒巻にとって監獄の崩壊は大した問題ではなかった。
 むしろあの一件は作戦の存在を広める良い起爆剤になり、好都合だったと言える。
 戦いの準備も着々とぬるぽ進んでいるようだし、その点について荒巻に不安はなかった。
 

 問題は、ミルナが再び超能力を発動した事だった。
 彼は最近まで監獄の奥深くで引きこもりニートをやっていた。
 それが再起した今、ミルナには一つの選択をしてもらう必要があった。

 自分につくか、『もう一人』につくか。
 シャキンが受け取った伝言では時間をくれという事だったが、そう長くは待っていられない。
 『もう一人』はすぐにでもミルナを勧誘しに来るし、実際もうミセリが勧誘に来ている。


 ミルナは荒巻と同じくtanasinnの片鱗を手にした男である。
 二人に大した実力差はなく、ミルナの意向次第では戦況が大きく傾く。
 荒巻にとって一番良い展開はミルナがどちらにもつかず、傍観者で居てくれる事だった。

 今はまだ、しかしそう遠くない内に、ミルナは結論を出して動き始めるだろう。
 そして荒巻は、彼がどのような結論を出しても対応出来るだけの戦力を集めようとしていた――

.

229 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:54:37 ID:NAys9RVY0




 ――メシウマ、国立図書館。


 荒巻とデミタスが吹き抜け三階建てのメインホールに立ち入った瞬間、
 文字通りそのままの意味で、時間が止まった。


/ ,' 3 「……いやあ、手厚い出迎えだのう」

 荒巻は立ち止まり、館内を一望した。


(;´・_ゝ・`)「……」

 時間の停止と同時に周囲の人間はピタリと動かなくなり、じっと観察していても、彼らは微動だにしなかった。
 この現象を受け止めるのに多少の時間を要したデミタスは、駆け足で荒巻の傍に戻って言った。

.

230 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:55:17 ID:NAys9RVY0


(;´・_ゝ・`)「時間が止まったのか?」

/ ,' 3 「その通りだ。理解が遅いな」

 誰だって脈絡なく時間が止まれば驚く。

(;´・_ゝ・`)「いや、でも、せいぜい数秒じゃないのか?」

/ ,' 3 「まあな。ワシはせいぜい三日が限界だが、ここに居る彼なら際限無く止められると思うぞ」

/ ,' 3 「それより、余り離れるなよ。お前の時間も止まってしまうからの」

(´・_ゝ・`)


(´・_ゝ・`)「……よし、分かった」

 デミタスは思考停止することで平静を取り戻した。
 荒巻の後ろに付き添い、図書館の奥へと進んでいく。

231 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:56:36 ID:NAys9RVY0




 「――何の用だ? 荒巻スカルチノフ」



 その時、二人の頭上に声が現れた。
 デミタスは咄嗟に顔を上げ、二階、三階、天井までもを一気に見回した。

 ふと、荒巻がデミタスの方を振り返った。
 デミタスは意味が分からず、じっと荒巻を見返す。

/ ,' 3 「……」

(´・_ゝ・`)「……?」


/ ,' 3 「……それはウチの部下だ。イタズラせんでくれ」

 荒巻が、デミタスの背後を見ながら溜め息を漏らす。
 デミタスは察して振り返ったが、そこに人の姿は無い。

(;´・_ゝ・`)「……なんだ、誰か居るのか?」



.

232 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:57:42 ID:NAys9RVY0



( ・∀・)「――お前、ずいぶん貧弱なのを連れてきたな。
      伊達酔狂も程々にしておけ。いつか身を滅ぼすぞ?」

 視線を前に戻した時、その男は荒巻の隣に立っていた。
 男は荒巻に対してかなり不遜な物言いをしていたが、荒巻にそれを咎めるつもりは無さそうだった。


 男は荒巻の肩をポンと叩き、不敵に笑んだ。

( ・∀・)「もう一度聞いてやろう。何の用だ?」

 男は、こちらの目的を分かった上であえて質問していた。
 彼の口振りからそれを悟ったデミタスは、荒巻共々悪趣味な奴らだなと二人を貶した。


/ ,' 3 「前にも話した事があるだろう。『顔付き』、あの連中が来る」

 図書館に住まう男・モララー。彼を皮切りに、荒巻の土下座巡りが始まった。
 この荒巻土下座探訪録は、今後の番外編で書かれる可能性が少なからずあるのだった――

.

233 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 22:58:23 ID:NAys9RVY0




 ――以上で、説明回は幕を閉じるのだった。終わり――



.

234 名も無きAAのようです :2015/04/30(木) 23:00:01 ID:NAys9RVY0

1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71
第十八話 限りある世界 >>89-134
第十九話 ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た >>149-173

第二十話 説明をする回 >>194-233


番外編として処理する予定だったのを、急遽無理矢理一話分にしました
今回の内容が役に立つことはあんまり無いなので、今回よりも過去話を読んでもらえるとハッピー('A`)

書き溜めが24話まであるので、5月は週一で投下しようと思います
次回は来週末くらい(^ω^)よろしくNE(^ω^)

235 名も無きAAのようです :2015/05/01(金) 00:03:38 ID:Oqb4V8sA0
おつおかえり
タイトルが直球過ぎて笑う
ようやく全貌が見えてきたってところかね

236 名も無きAAのようです :2015/05/01(金) 04:38:13 ID:4S1Yhf760
乙乙ー。荒巻の印象が変わる回だったな

237 名も無きAAのようです :2015/05/01(金) 06:12:46 ID:K4Q52b7U0
乙!説明回と言えど安定の面白さ
6月早いなぁ

238 名も無きAAのようです :2015/05/01(金) 12:35:14 ID:RUJIoxOk0
>>199>>200の間抜けてない?

239 名も無きAAのようです :2015/05/01(金) 12:55:33 ID:W1S11R8U0
乙!
さすがの実力
楽しみだわ

240 ◆gFPbblEHlQ :2015/05/01(金) 23:54:52 ID:h4HZApWg0


( ゚д゚ )「俺の場合、撃鉄一個を節約して使い、大体六発に分ける」

(;'A`)「え、分けるとか出来たの……」

( ゚д゚ )「お前は全力で戦おうとしすぎなんだ。
     同じ事を言うが、加減と節約を覚えて損は無いぞ」

 その時、ミルナの背の撃鉄が落ちた。
 撃鉄から生み出された光は花火のように弾け、瞬発的な破壊力を彼の右腕に送り込む。
 すると、彼の右手は簡単に岩にめり込んだ。


(;'A`)「……え、で、撃鉄また起こせるのか?」

( ゚д゚ )「ああ」

 ミルナが腕を引くと同時に、撃鉄は再び起き上がった。

( ゚д゚ )「当面は超能力に慣れる事と、燃費の向上を目標にするんだな」

(;'A`)「能力ありきの戦い方を考えるのは後か……」

( ゚д゚ )「お前には十分な基礎体力がある。大体何とかなる。分からんが」

.

241 ◆gFPbblEHlQ :2015/05/01(金) 23:56:22 ID:h4HZApWg0
第二十話 >>194-199 >>240 >>200-233

たまにはこういうこともあるNE(^ω^)
抜けを教えてくれてありがとう('A`)

242 名も無きAAのようです :2015/05/02(土) 23:20:59 ID:Qw7y.Ivg0
乙!
ふざけた発言したらホントに投下がきたときぐらい驚いたぜ

243 名も無きAAのようです :2015/05/03(日) 21:59:14 ID:DwmEH1HgO
毎回楽しく読んでます

244 名も無きAAのようです :2015/05/05(火) 01:03:15 ID:T/PCd2DA0
>>228
ガッ

245 ◆gFPbblEHlQ :2015/05/10(日) 18:26:55 ID:KD5KKbjY0
忙しいので来月末まで延期します
個人的6月では世間的5月には勝てませんでした('A`)

246 名も無きAAのようです :2015/05/10(日) 18:31:43 ID:37AWUrZ60
了解
今日何とはなしに読み返したけど面白かったわ

247 ◆gFPbblEHlQ :2015/05/21(木) 22:56:08 ID:ZATrzIH.0

≪1≫


【一年前、なおるよの実家】


【以下、レムナント監獄に入っていたなおるよ】

  ハ_ハ  
('(゚∀゚∩ 「みんな〜」
 ヽ  〈 
  ヽヽ_)



【以下、なおるよの弟妹6人】

  \ワイワイ/
      ハ,,ハ   ハ_ハ \ドッ/
  ハ_ハ('(゚∀゚∩∩゚∀゚)'ハ,,ハ  
(^( ゚∀) ハ_ハ Y ハ,,ハ('(゚∀゚∩
  )  (^(    )^)    )^)   〈
  (_ノ_ノ )  /´ `ヽ  ( ヽヽ_)
     (_ノ_ノ     ヽ_ヽ_)

248 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 22:57:01 ID:ZATrzIH.0

('(゚∀゚∩「にーちゃん!」(六男)

('(゚∀゚∩「兄ちゃん!」 (五男)

('(゚∀゚∩「兄ちゃんだ!」 (四男)

('(゚∀゚∩「おみやげだ!」 (三男)

('(゚∀゚∩「みんな手を洗ってから食べるんだぜ!」 (次男)

('(゚ー゚*∩「兄ちゃんおかえり!」 (長女)


('(゚∀゚∩「ただいまだよ! なおるね(五男)は元気だった?」

('(゚∀゚∩「今日は隣のおばさんにオヤツ貰ったよ!」 (五男)

('(゚∀゚∩「おおっ! それは良かったんだよ〜!」


('(゚∀゚∩「……なおるかな(長女)、あっちで御土産広げてくるといいんだよ!」

('(゚ー゚*∩「……分かった! みんな、あっち行くよ!」 (長女)

('(゚∀゚∩「一番乗りなんだよ!」 (三男)

('(゚∀゚∩「ぼく一番大きいの食べる!」 (六男)

('(゚∀゚;∩「ずるい!」 (五男)

('(゚∀゚;∩「みんな手を洗ってからだよ〜」 (四男)

.

249 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 22:57:41 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚∩「……兄ちゃん」 (次男)

('(゚∀゚∩「ん? どうしたんだよ?」

('(゚∀゚∩「……やっぱ俺も働きに……」 (次男)

('(゚∀゚∩「それはダメだよ! みんなの面倒を見られるの、なおるぜ(次男)だけなんだよ」

('(゚∀゚;∩「でもっ! 兄ちゃんが体壊したらみんな悲しむぜ!?」 (次男)

('(゚∀゚∩「……ごめんね」



('(゚∀゚∩「……今度、ちょっと長い出稼ぎにいってくるよ。
      いつ帰れるか分かんないけど、いっぱいお金貰って帰ってくるよ」

('(゚∀゚;∩「……危ない橋は渡らないでほしいぜ」 (次男)

('(゚∀゚∩「その橋を渡れるのは僕だけなんだよ、分かってほしいんだよ。
     大丈夫、絶対に帰ってくるよ――」


.

250 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 22:58:22 ID:ZATrzIH.0



 ――なおるよは、唸るようなエンジン音で目を覚ました。


('(゚∀゚∩(……良い夢を見たんだよ)


.

251 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 22:59:17 ID:ZATrzIH.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

       第二十一話 「不治のくらやみ その1」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

.

252 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:00:43 ID:ZATrzIH.0



 ドクオとミルナはその日の内に酒場・バーボンを出発する事にした。
 逸早く目的地に行き、今出来ることをやる為に。

('A`)「よっし。大体オッケーだ」

 店の軽トラックを無断拝借して車の荷台に銃器を積み終えると、ドクオはすぐさま運転席に乗り込んだ。
 ミルナは先んじて助手席に座り、アホ面で荒野を眺めていた。


( ゚д゚ )「……」

('A`)「なんだよ、まだ気分悪いのか? 昨日も変だったし」

( ゚д゚ )「これが俺のデフォだ。覚えとくんだな」

(;'A`)「そんなツラで偉そうに……車、揺れるからな。吐くなよ」

 ドクオはキーを回し、レバーやハンドルをガチャガチャして車を発進させた。
 次なる目的地はレムナントの中心街・クソワロタだ。



( ゚д゚ )「……」

 気の抜けた様子のミルナ。
 しかし彼は、周囲に隠れ潜んでいる なおるよ の気配を鋭敏に察知していた。

( ゚д゚ )(普通の感知能力なら見逃すんだろうが、tanasinnの感知能力に弱点は無い。
     お前が何をしたいかは知らんが、場合によっては……)

 場合によっては、殺すつもりだった。
 人を殺すということに対して、今の彼には迷いも戸惑いもなかった。

.

253 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:02:05 ID:ZATrzIH.0








('(゚∀゚;∩(……ああ、行っちゃった)

 なおるよは岩場の陰に身を潜め、望遠鏡を構えてドクオ達を見ていた。


('(゚∀゚∩(予定より早いけど、ドクオを追って街に入らなきゃ)

('(゚∀゚;∩(また長距離移動……がんばろう……)


 車が土煙を上げて走っていくのを確認してから、彼もリュックを背負って歩き出した。
 彼が今こうしているのは、監獄で棺桶死オサムと交わした約束があるからだった。


.

254 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:03:05 ID:ZATrzIH.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 棺桶死オサムが行動を起こしたのは、ドクオがレムナント監獄を出発した直後だった。
 なおるよを故郷に送り返すという名目で二人きりになった時、オサムはなおるよに、ある頼みを持ちかけた。


【+  】ゞ゚)「お前に、ミルナという男を追って欲しい」

('(゚∀゚∩「……なんで?」

 なおるよは首をかしげて聞き返した。

【+  】ゞ゚)「向こうに感知能力があった場合、俺では確実に気付かれる。
       だが、お前の無効化があれば気付かれずに追跡出来るはずだ」


('(゚∀゚∩「……オサムも恩人だよ。
     だから受けた恩は返すけど、頼み事があるならちゃんと話さないとダメだよ」

【+  】ゞ゚;)(……子供に正論を語られた……)

 彼の正論を受け入れ、オサムは大人ぶるのを止めた。

.

255 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:03:52 ID:ZATrzIH.0


【+  】ゞ゚)「なんと言うかな……ちょっと気になっててな。
       こないだの戦いで、向こう側の奴が俺に言ったんだ」

 オサムは脳裏にシャキンの顔を思い浮かべて言った。

【+  】ゞ゚)「――『ミルナに気をつけろ』。
       たったそれだけ、本当に一言なんだが、気になっている」


('(゚∀゚∩「……良い意味で? 悪い意味で?」

【+  】ゞ゚)「後者だ。ドクオとは仲が良いらしいが、信用ならん。
       仲間として受け入れるかどうか、その判断材料が欲しい」

('(゚∀゚∩「……要は、ミルナがどんな人か見てくればいいの?」

【+  】ゞ゚)「気付かれずに、だ」

 オサムは、はっきりとした口調で念を押した。


【+  】ゞ゚)「相手は監獄の最奥に幽閉されてた危険人物だ。
        もし引き受けるなら、本当に気をつけてくれ」

【+  】ゞ゚)「……俺だって人殺しだが、もしもミルナが危険な奴なら、迷わずに逃げろ」

 オサムの忠告を聞いた上で、なおるよは胸を叩いてしたり顔を作った。

.

256 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:05:13 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚∩「これでも危機管理は出来る方なんだよ!
     でないと、こんな所まで出稼ぎには来れないよ!」


('(゚∀゚∩「……それに、オサムも結構その人を信用してるでしょ?
     僕に行かせるくらいだし、そこまで脅さなくてもいいんだよ!」

 なおるよの言った通り、これはオサムにとっても杞憂と言える行動だった。
 もしも、万が一、仮に――そういう言葉を並べた末に思いついた、なおるよという保険。
 この時の棺桶死オサムは、まだその程度の危機感しか覚えていなかったのだ。


【+  】ゞ゚)「……まあ、ドクオと仲が良いからな。
       ある程度なら信用出来ると、思っている」

('(゚∀゚∩「……まぁ追っかけるのは正直面倒だけど、恩返しって大抵面倒だからね」

【+  】ゞ゚;)「その年で何を言ってるんだお前は……」



('(゚∀゚∩「オサムの頼み、引き受けるんだよ」

 その後、オサムから事細かに注意を言い渡されたなおるよは、
 リュックを背負ってレムナントの荒野を歩き出した。


.

257 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:06:16 ID:ZATrzIH.0



 ――なおるよが監獄を出発して数分後。


(。人。)



('(゚∀゚∩


('(゚∀゚;∩(オッパイが落ちてる……)

('(゚∀゚;∩(あの垂れ具合からして、多分看守長のオッパイなんだよ……)



      ハ_ハ  (とりあえず埋めておこう……)
    ∩;゚∀゚)')
     〉  /            
   .(_/ 丿  :;""'':';⌒"゛゛;:
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~^'"\(。ノ""'':,√~^ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   地面    . \,( ゚ )/

258 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:07:19 ID:ZATrzIH.0


 ――さらに数時間後、ドクオを追って入った森にて。



('(゚∀゚;∩「道に迷ったよ!」


    _,,,  チュン
   _/::o・ァ
 ∈ミ;;;ノ,ノ

('(゚∀゚∩「スズメだ! こっちで初めて見た!」



    _,,,  チュン _,,, チュン
   _/::o・ァ   _/::o・ァ
 ∈ミ;;;ノ,ノ  ∈ミ;;;ノ,ノ

('(゚∀゚*∩「増えた! かわいいんだよ!」



    _,,,  チュン _,,, チュン  _,,, チュン
   _/::o・ァ   _/::o・ァ   _/::o・ァ
 ∈ミ;;;ノ,ノ  ∈ミ;;;ノ,ノ  ∈ミ;;;ノ,ノ
     。
('(゚∀゚*∩「エサあげたら懐くかな〜……」


.

259 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:08:15 ID:ZATrzIH.0


  \KILL/ \YOU/
    _,,,      _,,,     _,,, 
   _/::o・ア   _/::o・ア   _/::o・ア <エサ置いてけ
 ∈ミ;;;ノ,ノ  ∈ミ;;;ノ,ノ  ∈ミ;;;ノ,ノ


    。
('(゚∀゚∩


('(゚∀゚∩`。 ポロッ

 ※このあと食料の大半を渡して和解、道案内をしてもらった。

260 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:10:03 ID:ZATrzIH.0


 ――森の出口、すごい崖のところ。


 ヒュオオオ〜……

('(゚∀゚;∩「こんなのどうやって渡ればいいの!?」



   ノノノノ
  (゚∈゚__) 「向こうまで、食べ物で送っていく」
  /⌒  )
 ミイ  //
  | ( (   【ドクオとの接触により、等価交換を学習したクックル】
  |  ) )
  | //
  | ノノ
  |ノノ
 彡ヽ`



('(゚∀゚;∩「もう食料が全然残ってないんだよ……」

( ゚∋゚)「……森の食べ物でいい」

('(゚∀゚∩「本当に!? 優しいんだよ! 取ってくる!」

 ※このあと三匹スズメに再会。残りの食料を取られ、身包みをはがされる。

.

261 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:10:53 ID:ZATrzIH.0


 ――ドクオの故郷。から少し離れた岩陰。



('(゚∀゚∩「あれがドクオの育った場所……」

('(゚∀゚;∩「……うちと良い勝負だよ、ドクオとは仲良く出来そう」



<_プー゚)フ「じゃあ俺、町の方に行って来ます」

(´・_ゝ・`)「おう。気をつけてな」



(;´・_ゝ・`)「……んで、なんだアイツ」


('(゚∀゚ |岩| コッソリ

(;´-_ゝ-`)「……誰かアレを捕まえて車に突っ込んどけ。邪魔だ」


('(゚∀゚∩「……えっ? まさか向こう側の……」


('(゚∀゚;∩「ギャー!」


 ※このあと普通に補導され、車両に突っ込まれる。

 ※ミルナが隊員を倒してる最中に頑張って逃げ出した。とても頑張った。

.

262 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:11:34 ID:ZATrzIH.0


 ――深夜。酒場・バーボン付近の岩陰。


('(゚∀゚;∩「なんか酷い目にあってばっかりだよ……」

('(゚∀゚;∩「恩返しって本当に面倒臭いよ……早く帰りたいよ……」



( ゚д゚ )「――悪いな、夜中に呼び出して」

「まったくだ。俺は明日も早いんだぞ?」


('(゚∀゚∩(ミルナと……でっかい人だよ。なんか話してる?)


「そんで話って何だよ? 悪いが金の掛かる事はッ――」

( ゚д゚ )「……」

「――……てめえッ……!」





('(゚∀゚∩(……えっ)

.

263 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:12:22 ID:ZATrzIH.0

≪2≫




('(゚∀゚;∩(あー疲れた……)

 なおるよはドクオ達に続いてレムナントの中心街・クソワロタに入った。
 既に日は落ちており、街は夜の活気に満ちていた。

 なおるよは夜の商店街を歩きつつ、適当なホテルを探した。


('(゚∀゚∩(……あのホテルとか、ドクオが選びそうだよ)

 路地に破格の安ホテルを発見し、足を止める。
 なおるよは即断してそこに入り、風呂とトイレが別になっている部屋を取った。


.

264 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:14:25 ID:ZATrzIH.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 なおるよはリュックをベッドに放り投げた。

('(゚∀゚;∩(やっと休める……)

 壁際にあった椅子に腰掛け、電気も点けずに窓を覗く。
 路地のホテルなので壁しか見えなかったが、彼は構わずに思案し始めた。

('(゚∀゚∩「……」

('(゚∀゚∩「……殺したのかな……」

 ミルナがした事を思い返し、自分自身に問い掛けるように言う。


('(゚∀゚∩(ダディ達がここに来るまであと四日、どうしようかな……)

('(゚∀゚∩(見張りを続行する? でも、もし本当に殺してたなら危険だよ)

('(゚∀゚∩(……殺したかどうかで考えるなら、見た限り、ミルナは大男を殺した)

('(゚∀゚∩(僕個人の判断では、ここで見張りは終わり。
      殺しの事実だけをオサムに伝えて身を引くべき……)


('(゚∀゚∩(……でも、その危険に一番近づけるのも僕なんだよ)

('(゚∀゚∩(オサムが僕に声を掛けたのも、僕が超能力を打ち消す力を持ってるから)

('(゚∀゚∩(能力者相手の生存確率は僕が一番高い。逃げるだけなら一番上手いだろうし。
      危険を冒して行動できるのが僕だけなら、確証を得るまで続けるべきかな……)


.

265 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:15:45 ID:ZATrzIH.0



('(゚∀゚∩(――うん、見張りは続行する。
      明日改めてミルナ達を見つけて、追うんだよ)

 なおるよが決意を新たにした、その時。
 彼は眼下の路地裏に、二人の男を見つけた。




( '`_ノ´')
  
 かたや見知らぬ男。切れ目で、目尻には謎の刺青がある。
 彼の風体は猛々しく、なおるよの目にも彼が強者だと見て取れた。



( ゚д゚ )

 そしてもう一人の男は、件のミルナだった。

.

266 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:16:26 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚;∩(なんでここにッ!?)バッ!

 なおるよは咄嗟に窓から離れた。
 ミルナの顔を見てビクンと跳ねた心臓に手を当て、息を殺す。


('(゚∀゚;∩(やっぱりこの辺のホテルに泊まってたんだよ……!)

('(゚∀゚;∩(……感知能力を発動される前に、こっちも能力を発動して……)

 なおるよはゴクリと音を立てて生唾を飲み込み、今さっきの決意を強く念じた。

('(゚∀゚;∩(……ミルナを追いかけるんだよ……!)


.

267 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:19:11 ID:ZATrzIH.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 人気のない場所に到着して間もなく、男は振り返ってミルナと向き合った。
 両手を後ろに組み、鋭い視線をミルナに投げかける。


( '`_ノ´')「アナタ、何者カ?」

( ゚д゚ )「……見ての通りだが」

( '`_ノ´')「……ナラ、喧嘩屋?」

( ゚д゚ )「そう見えるなら」

( '`_ノ´')「……コノ街、意外と喧嘩屋は少ナイ。
      見ての通りの喧嘩屋にしてハ、アナタ、目が優しい」


( '`_ノ´')「……なのに気配ハ邪悪ソノモノ。共存しないハズのモノが、アル」

( ゚д゚ )「人間色々居るんだ。その一人さ」

( '`_ノ´')「……マ、売られた喧嘩は買ウのが常ネ。さっさとやるヨ」

 男は組んでいた両手をするりと解き、大きく開いて身構えた。
 周囲の電灯から光を吸収し、能力を発動して――




.

268 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:20:47 ID:ZATrzIH.0




(; '゚_ノ´')「ハァ……ハァ……」 ボタッ・・・ボタッ・・・

 ――ものの数分で、男は両腕をちぎられていた。


( ゚д゚ )「……どうした、威勢が衰えたな」

(; '゚_ノ´')「……理解不能……」 ボタッ・・・ボタッ・・・

 ミルナの背後でうごめく黒煙を睨みつけ、男は声を絞り出した。
 黒煙は巨大な手をかたどっており、その手中には男の両腕を握っていた。

( ゚д゚ )「……」

(; '゚_ノ´')「……ココに来てカラ初めて思ったよ、マジでヤバイ……!」

( ゚д゚ )「……命までは取らん。腕は貰っていくが、逃げたきゃ逃げろ」

(; '゚,_ノ´')「フン。屈辱に甘んじて生きてくほど、自分の命に執着は無い……!」

 男は両腕の切断面から多くの血を流しながら、なおも戦意を失っていなかった。
 血に染まった狂的な笑み。ミルナはそれを見て、男を最後まで殺しきる決心をした。


(; '゚_ノ´')(弟子を育てきる前に死ぬのは未練だけど、許すネ……)

 数瞬後、男はミルナに肉薄し、最後の一撃を仕掛けた――

.

269 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:21:52 ID:ZATrzIH.0

≪3≫




 ――夜が明けていく。


 路地裏のホテルにも多少の日差しが入り込み、なおるよの部屋をほのかに照らし出す。



('(゚∀゚;∩ モゾモゾ

 埃っぽい布団から顔を出し、朝日を一瞥。

 なおるよが街に到着してから今日で四日目。
 今日はいよいよダディクール達との集合の日。今日でなおるよの仕事は終わりだ。



('(゚∀゚;∩「……」

 集合時間は午前十二時、場所は近くの噴水広場。
 徒歩10分で着けるその場所に、今日なおるよは一つの報告をしに行かねばならない。

.

270 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:23:47 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚;∩(今日までの四日間で完全に理解した……。
      ミルナはほぼ毎晩、誰かを殺してる……)

('(゚∀゚;∩(全部見ちゃった…………)


 黒い煙。

 ミルナが使っていたそれの禍々しさは、なおるよの短い人生では到底表しきれるものではなかった。
 しかも、その煙は日を追うごとに進化していった。

 大男を殺した時は腕にまとわりつく単なる煙。
 その後、この街で最初の犠牲者になった男の時には、手の形。
 更に翌日には腕一本。昨晩には、黒煙は遂にあらゆる形状に変化出来るようになっていた。


('(゚∀゚;∩(あの能力はたぶん、人間をエサに進化してる)

('(゚∀゚;∩(……人を食べて進化する能力なんて、聞いた事ない……)

.

271 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:24:40 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚;∩(今日はオサムと合流して、見たものを全部話すんだよ)

('(゚∀゚;∩(……でも、ミルナにも理由があるかも知れないから、ちゃんと話を……)


('(゚∀゚;∩「……」

('(゚∀゚;∩(人を殺した理由を聞いて、『そうなんだ』って言えるのかな……。
      もしかしたら僕達だってエサなのかも知れないのに……)



 ――こんこん。


 部屋のドアがノックされた。
 駆け巡る思考を止め、ドアに目を向ける。

('(゚∀゚∩(ルームサービス?)

 一瞬、そんな呑気なことを思う。
 それも束の間、弾けるような悪寒が彼の体を駆け巡った。

('(゚∀゚;∩(いやっ――これは――!)

.

272 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:25:40 ID:ZATrzIH.0


 言葉に出来なかったあの禍々しい気配、その一端がドアの向こうに確かにあった。
 次いでオサムの言葉が脳裏を過ぎる。


『もしもミルナが危険な奴なら、迷わずに逃げろ』


('(゚∀゚;∩(――逃げなきゃ!)ガタッ!

 なおるよはベッドを飛び起き、財布だけ持って窓枠に足をかけた。
 だがその時にはドアは開けられ、素早い足音が背後に迫ってきていた。

('(゚∀゚;∩(飛ぶッ! 迷ってる暇はッ――)


.

273 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:27:26 ID:ZATrzIH.0




(;'A`)「――お前ッ! なにやってんだよッッ!!」ガッ


('(゚∀゚;∩「――おおおおッ!? ドクオッ!?」

 そう言ってなおるよの肩を掴んだのは、ミルナではなくドクオだった。

('(゚∀゚;∩「な、なんでドクオ……?」

(;'A`)「っていうか先に戻れっ! 落ちるぞ!」グイッ

 ドクオに力強く引き戻され、なおるよは床に尻餅をついた。


('(゚∀゚;∩(なんでっ、なんでドクオが来たんだよ!?)


('A`;)「あッぶねえな……。おい、お前の言うとおりだったぞ!」

 ドクオは呆れた様子で振り返り、廊下に佇む男に言った。


('(゚∀゚;∩「……」

 なおるよの予感は当たっていたのだ。
 しかし、ミルナがドクオを連れて来る事までは想像が及ばなかった。

.

274 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:28:08 ID:ZATrzIH.0



( ゚д゚ )「……だから言ったろ」


('(゚∀゚;∩「……」

 なおるよは目を丸くし、しかし平静を装いながら、彼が部屋に入ってくるのを見守った。


( ゚д゚ )「何があっても、誰であろうと、絶対に見つけ出せるってな」


.

275 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:31:18 ID:ZATrzIH.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



( 'A`)σ「あんまり危ないことしちゃダメだぞ、分かったな」

('(゚∀゚;∩「わ、わかってるんだよ……。
      向こう側の人かと思って慌てたんだよ、もうしないよ……」

( ゚д゚ )「お前のが死にたがりだろ、何偉そうに言ってんだよ」

('A`;)「うるせぇ!」

('(゚∀゚;∩「……アハハ……」

 三人は部屋で談笑しつつ、集合時間が来るのをゆったりと待っていた。
 ただし、なおるよの内心は激しい焦燥に駆られていた。


('(゚∀゚;∩(確実にバレてる。この場所が分かったんだから、僕の見張りは絶対バレてる)

('(゚∀゚;∩(ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……)

('(゚∀゚;∩(……ドクオを連れて来たのは僕を逃がさないため?
      でも正直、居場所がバレた状態でこの人から逃げ切るのは無理……)


( ゚д゚ )「――だがまぁ、怖くて逃げ出すって感じはよく分かる」

( ゚д゚ )「だから、いつでも逃げ出していいんだからな」


('(゚∀゚;∩「……えへへ。考えておくんだよ……」


.

276 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:33:19 ID:ZATrzIH.0


( 'A`)「そうだ、なおるよ」

('(゚∀゚;∩「なに?」

('A`)「お前、この先一緒に行動するのか?
    俺らを追ってきた理由、それぐらいしか浮かばないんだが」

( ゚д゚ )

('(゚∀゚;∩「……一応、そのつもりだよ」

(;'A`)「……大丈夫かよ。声震えてんぞ。
    つーかお前、たしか故郷に帰るとか言ってなかったっけ?」

('(゚∀゚;∩「……そうだね、帰らなくちゃいけないよ。家族が待ってるから」

('A`)「……だったら帰れよ。帰る場所があるんだから」

 なおるよはミルナを一瞥してから言った。
 一瞬の目の動きだったが、ミルナはしっかりとそれを把握していた。

('(゚∀゚;∩「でも、せめて、みんなに会ってから帰りたいんだよ。
      ドクオが起きた後、すぐ出発でちゃんと話せてないから……」


( ゚д゚ )「――誰かに伝言があるなら、聞くが」

 ミルナは静かに提案し、なおるよに冷たい視線を送った。


('(゚∀゚;∩「……いやっ、別に……、急いで帰る必要は、ないし……」

( ゚д゚ )「大事な話でもあるのか? ただの囚人仲間相手に」

 前のめりになり、じっとなおるよを見つめる。
 ミルナが言葉の裏に隠した真意は、明確になおるよに伝わっていた。

.

277 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:34:31 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚;∩「……」


('(゚∀゚;∩


('(゚∀゚;∩「帰る」




('A`)「……そうしとけ。みんなには俺から言っとくよ。
    悪いな、無駄金を使わせちまって」

('(゚∀゚∩「……ううん。僕が一人で勝手に来ただけだから。
      ドクオ、僕を監獄から出してくれてありがとうなんだよ」

('∀`)「気ぃにすんなって。俺も勝手にやっただけだ」

( ゚д゚ )「慣れない先輩面なんかするなよ、似合ってないぞ」

ゞ('A`;)「うるせっ」 シッシッ


.

278 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:35:11 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚∩「……それじゃッ!」

 なおるよは元気に言って立ち上がった。


('(゚∀゚∩「早いし越した事はないし、さっさと帰るんだよ!
      みんなに『頑張れ、ありがとう、またね』って言っといてね!」

('A`)ノ 「おう。今回は短い付き合いだったけど、またな」

('(゚∀゚∩「……うん! いつか改めて、ちゃんとお礼をしに来るよ!」


.

279 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:35:55 ID:ZATrzIH.0


 なおるよはテキパキとホテルのチェックアウトを済ませ、外に出た。

 表通りに行き、ドクオとミルナに見送られながら帰路を行く。
 ドクオは自分より年下のなおるよの背中を、じっと見送った。


('(゚∀゚∩「またね〜〜〜」

('A`)ノ 「おー」

 最後に大きく手を振ってから、なおるよは軽快な駆け足でどんどん離れていった。


('A`)「……なんか、良いヤツだったな」

( ゚д゚ )「……そうだな」

('A`)「ダディがアイツを助けた理由が分かったよ。
    優しいけど向こう見ずって感じ、ちょっと話しただけで分かったぜ」

 ドクオは踵を返し、ダディクールとの待ち合わせ場所へと歩き出した。
 しかしミルナはドクオが歩き出してからもしばらく、なおるよの背中を見続けていた。


( ゚д゚ )

 やがてなおるよが角を曲がり、姿が見えなくなったところで、
 ミルナもようやくドクオの後についていった。

.

280 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:38:08 ID:ZATrzIH.0

≪4≫



 なおるよは、クソワロタ周辺の荒野をとぼとぼ歩いていた。


('(゚∀゚;∩「……」

 出来るだけゆっくり、それでいて、しっかり歩いているように見せかける。
 そんな小細工で時間を稼ぎながら、なおるよは一つの可能性に身を委ねていた。


 その可能性とは、クソワロタに来ている筈の棺桶死オサムが自分を見つけるというものだった。
 棺桶死オサムにも十分な性能の感知能力がある。
 彼がそれを発動してなおるよを感知すれば、必ずなおるよを迎えに来るはずだ。


 しかし、なおるよが時間稼ぎを始めて一時間、現在午前十時。
 最早その可能性は完全に途絶え、なおるよは次の事を考えていた。

 こうなればもう一度、自分から会いに行くしかない。

.

281 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:39:49 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚;∩(生きて帰る。故郷に帰る。
      それだけが目的なら、このまま歩いて行けばいい……)

('(゚∀゚;∩(……家族をずっと待たせてるし……)

('(゚∀゚;∩(それに、僕じゃ絶対にミルナに捕まって終わっちゃうよ。
      オサムだってミルナが危ないって疑ってたし、たぶん何も起きないはず……)


('(゚∀゚;∩「……」 ピタッ

 なおるよは一通りの言い訳を並べ終えてから、足を止めた。


('(゚∀゚;∩「……」


('( ∀ ;∩「……〜〜〜〜〜〜ッ!!」 ググッ・・・


.

282 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:42:13 ID:ZATrzIH.0



('(゚∀゚;∩(……ああっ! もうっ!!)


('(゚∀゚;∩(恩は勝手に返すもの!
      だからこれは恩返し! 全員分合わせてこれが最後!)

('(゚∀゚;∩(終わったら帰る! 何が何でも!) ザッ!

 なおるよは威勢よく踵を返し、クソワロタに向かって踏み出した。


('(゚∀゚;∩(僕だけがミルナのやった事を知ってる!
      真実であれ杞憂であれ、この事を誰にも伝えないのはダメだ!)

('(゚∀゚;∩(しかもミルナが人殺しなら一番危ないのはドクオじゃん!
      一番恩返ししなきゃならない人を見殺しなんて、気分悪い!)

 なおるよは足元の石ころをコツンと蹴り飛ばした。

('(゚∀゚;∩(クッソォ〜〜帰ったらみんなに自慢してやるんだよ!)

('(゚∀゚;∩(にいちゃんは良い事をしたんだ、悪い人を出し抜いたんだって!
      みんなに自慢して褒めちぎられないと割りに合わない!)


('(゚∀゚#∩(牛歩で稼いだ一時間時間、クソワロタには人も車も入っていかなかった!
      ってことは、オサム達はとっくに街に入ってるんだよ!)

('(゚∀゚#∩(じゃあ集合場所まで行ければ何とかなる!
       ミルナが何だって言うんだよ! チクショウ!)



('(゚∀゚#∩「……恩返しは大抵面倒。その通りなんだよ、まったく……」

 ささやかな愚痴を最後に腹を括り、そこから先、なおるよは無駄口を叩かなかった。

.

283 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:43:40 ID:ZATrzIH.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【クソワロタ中央・噴水広場】


 噴水とは水が上に向かってドバーとしているモニュメントである。

 この噴水広場はクソワロタでは待ち合わせ場所として有名で、
 昼前の時間帯でも多くの人がここに集っていた。


(゚д゚;);'A`)「人多すぎだろ!」 ギュウギュウ

 時刻は午前十時。
 ダディクール達との待ち合わせまで、まだ二時間も残っている。
 人混みの中で待つのは辛いので、ドクオとミルナはひとまず噴水を離れた。


(;'A`)「あー都会こえー……噴水にこんな集まるってバカかよ……」

(;゚д゚ )「なんだ、都会は初めてか?」

(;'A`)「こんなん初めてだよ。なんか気分悪くなってきた……」

(; д )「俺も人混みは苦手だ。は、腹が……」

(;'A`)「前から思ってたけど腹弱いの? ださくね……」

(; д )「それ酷くないか……?」

.

284 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:44:48 ID:ZATrzIH.0


(;゚д゚ )「……あーダメだ、出してくる」

(;'A`)「おう、分かった」


(;゚д゚ ) ギュルルル〜


(;゚д゚ )「しばらく出してくる」

(;'A`)「どういう表現だよ。分かったから、この辺に居るから」

(;゚д゚ )「悪いな、行ってくる……」

 ウンコマンはそう言って弱々しい足取りで歩き出し、人混みに紛れてどこかに消えた。
 ドクオはそれを見届け、近くにあったベンチによろよろと腰を下ろした。


(;'A`)(あー気持ちわる……)

(; A )(ていうか、もう昼寝するっきゃねえ……) ガクッ

 ドクオは深々と俯き、眠った。

.

285 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:45:28 ID:ZATrzIH.0





 人気を離れ、静かなところで立ち止まる。
 ミルナは両手をポケットにしまい、やさぐれた様子で青空を見上げた。


( ゚д゚ )(……警告はした)

 ミルナの感知能力は既になおるよを捉えていた。
 なおるよの進行方向からして、彼が噴水広場に向かって来ているのは明白だった。


( ゚д゚ )(警告を無視するなら俺も容赦はしない。
     見られたからには、それを秘密にできないなら、子供だろうと……)

 ミルナはそこから先を考えなかった。


( ゚д゚ )「……」

 沈黙の最中、ミルナの体から黒煙が立ち上り始める。
 ミルナが念じると、黒煙は彼の足元に集中した。

 軽く膝を曲げ、跳躍。
 直後、彼はその場から消えた。


.

286 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:48:01 ID:ZATrzIH.0
1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71
第十八話 限りある世界 >>89-134
第十九話 ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た >>149-173
第二十話 説明をする回>>194-199 >>240 >>200-233

第二十一話 不治のくらやみ その1 >>247-285


次回は明後日

287 名も無きAAのようです :2015/05/21(木) 23:58:02 ID:WlydqfHk0
おつ

288 名も無きAAのようです :2015/05/22(金) 00:07:50 ID:E1jjiaew0

黒い煙も撃鉄なのかなあ

289 名も無きAAのようです :2015/05/22(金) 02:06:15 ID:wJWZJ9Nk0


290 名も無きAAのようです :2015/05/22(金) 02:14:53 ID:M6wFZYuA0
おつ!!!!!

291 ◆gFPbblEHlQ :2015/05/23(土) 22:17:38 ID:P/ZE8Ycc0

≪1≫



 「……おい、ドクオ。おいってば」ユサユサ

('A`)「んあっ」

 ドクオは誰かに肩を揺すられ、気持ち悪い顔で目覚めた。


(;,,゚Д゚)「ったく、お前こんなとこで寝んなよ。スられても知らねぇぞ」

('A`)「おあ……お前、ザコじゃん……」

(#,,゚Д゚)「ギコだ。殴るぞバカ」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


('( ∀ ;∩「――――ッ!!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



('A`)「……いま何時?」

(,,゚Д゚)「十二時ちょい過ぎだ。もうみんな居るぞ」

('A`)「どこに?」

(,,゚Д゚)「近くのメシ屋。決起記念、ダディクールの奢りだってよ」

.

292 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:19:10 ID:P/ZE8Ycc0


 ドクオは大きく体を伸ばして立ち上がった。
 噴水広場にあった人混みは、寝る前に比べれば大分マシになっていた。

 ドクオとギコは僅かに残った人の往来を背景に、立ち話を続けた。

('A`)「……あれ、ミルナは?」

(,,゚Д゚)「あいつ来てんのか?
    その辺に居ないから途中で別れたんだと思ったぞ」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


('( ∀ ;∩(クソッ……!)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


('A`)「あいつウンコしに行ってるんだ」

(;,,゚Д゚)「……そ、そうか。クソか」

('A`)「ま、後で迎えに来りゃいいだろ。それよりメシだ」

(,,゚Д゚)「そうだメシだ。男のウンコ待ちなんかしたくねぇよオレ」

('A`)「俺も。行こうぜ」

 二人は肩を並べて歩き出した。
 どこかで戦う一人の少年の事など、ほんの少しも知らないまま――

.

293 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:19:50 ID:P/ZE8Ycc0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 この大地において一番の人口と大きさを誇る街・クソワロタ。
 そこは未だ発展途上であり、その過程では放棄された区画がいくつかある。


('( ∀ ;∩(何かッ……何か考えなくちゃッ……!)


 なおるよは今、その放棄区画の中で戦っていた。
 人気は一切無く、たまに浮浪者がそこら辺を歩いているだけの空間。


 ほぼ孤独、完成された孤立無援。
 そんな状況下に置かれながら、なおるよは懸命に戦い続けていた。


( ゚д゚ )


 ――無表情な顔が一つ、なおるよを追い続けていた。

.

294 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:20:24 ID:3F996IxwO
支援

295 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:22:04 ID:P/ZE8Ycc0

≪2≫



 クソワロタに戻る途中で、なおるよは幾つかの方針を決定していた。


('(゚∀゚∩(一つ。放棄区画から入って、広場まで一気に突っ走る。
      人混みに足止めされてる余裕は無い。これが最善ルートだよ)

('(゚∀゚;∩(二つ。見つかるのは時間の問題だから、絶対に立ち止まらないこと。
      ミルナに見つかる前にオサムに会えなければ、もう殆どダメだよ。考えたくないけど)


('(゚∀゚∩(三つ。話が出来そうならする。
      その上で和解が出来るなら和解する)


('(゚∀゚∩(……四つ)

 なおるよは紙切れとペンを持ち、そこに自分が死んだ場合の事を書き記した。

('(゚∀゚∩(……これを書き終わったら、自分が殺される想像は二度としない)


 以上四つの方針を胸に、なおるよはクソワロタの街に再度足を踏み入れた。

.

296 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:23:57 ID:P/ZE8Ycc0


 放棄区画から入る場合、目的の噴水広場はほぼ反対側になってしまう。
 メリットは足止めを食らわないこと、無関係な人の迷惑にならないこと。

 主に後者を心配してのルート選択だったが、それが運良くミルナの死角を突いていた。
 結果、なおるよは難なく放棄区画に立ち入る事ができたのだった。


('(゚∀゚;∩(……よし、まだ来ない。気付かれてないんだよ)

('(゚∀゚;∩(時間は……)チラッ

 人気のない大通りを走りながら腕時計を一瞥。
 時刻は午前十一時を数分過ぎた直後だった。

('(゚∀゚;∩(あと十分も走ればこの区画を抜けられる!
      それまで気付かれなければっ……!)



 なおるよが希望を持って思った時、それは、空からやってきた。


('(゚∀゚∩「――――」ピクッ

 頭上に落ちた黒い影。
 なおるよは反射的に顔を上げ、一気に目を見開いて叫んだ。

.

297 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:25:17 ID:P/ZE8Ycc0

('(゚∀゚;∩「――来たッ!!」ズザザザッ!

 なおるよは咄嗟に踏ん張って立ち止まり、全力で後方にジャンプした。
 直後その場に爆風と砂塵が巻き起こり、なおるよは衝撃の余波に大きく吹き飛ばされた。

('(゚∀゚;∩「おおっ!?」

 飛ばされた先は廃屋。
 なおるよは古びた窓ガラスを突き破り、中の家具もろとも床を転がった。
 砕けたガラスが彼の体に降り注ぎ、いくつもの切り傷を作る。


('(゚∀゚;∩(一つ! 止まらないッ!)ガバッ!

 なおるよは一瞬で立ち上がり、振り返らずに廃屋の奥へと駆け込んだ。

.

298 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:25:59 ID:P/ZE8Ycc0



 グチョッ・・・
          ”
 . ..:.“..:.:. .:..:. :::.,..;;;(⌒ 、 . ..”
:.:.:. .. .:..ノ;;ゞ/,,リ、∵∴ ∴) ...
  ”(∵ ⌒" ∴∵∴ r'. ..:.: グチッ・・・
 (●)∴¨"、,∵∴∵.∴.). .:.:
  ..・・¨   γ    ∵  ”


 一方、空から落ちてきた定形すらない黒い塊は、


 ゆっくりと、なおるよの後を追い始めた。

.

299 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:27:06 ID:P/ZE8Ycc0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 なおるよは廃屋の裏口から路地裏に出た。
 左右をそれぞれ一瞥し、より広い場所を目指して進路を決める。

('(゚∀゚;∩「あっち!」

 なおるよは右に向かって飛び出した。
 間髪いれず、彼を追って黒い塊が背後に現れる。
 黒い塊は水のように流動し、一定の速度を保ってなおるよを追跡した。


('(゚∀゚;∩(あの感じ、やっぱりミルナと同じだよ……)

 一瞬振り返って黒い塊を目視するなおるよ。
 彼はその物質から、ミルナと同じ雰囲気を直感した。

('(゚∀゚;∩(……話し合いは無理だ……!)


.

300 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:29:43 ID:P/ZE8Ycc0


 路地裏から大きな通りに出て、再び左右を見回す。
 噴水広場への道順を急いで整理し、今度は左に向かって走り出した。

 そうしてしばらく走ってから、ふと背後を振り返る。
 そこに、黒い塊の姿はない。



('(゚∀゚;∩「……」

 走るのを止め、ゆっくりと歩いてみる。
 自分の足音が消えた今、そこには不穏な静寂が広がっていた。

 放棄された場所だからという理由だけではない、もっと別の違和感。
 言葉を変えれば、なおるよが肌で感じたものは 『危機感』 だった。

 こっちからは見えないが、敵がどこかから見ている。


('(゚∀゚;∩(……屋内に入るんだよ)

 なおるよはじりじりと壁際に寄り、大きめの廃屋を選んで中に入った。

 元は飲食店だったであろうその廃屋は、開店当時のまま放棄されたのか、
 各所に分厚い埃を被っていても家具や食器はしっかりと整理されていた。

 それはそれで不自然だったのだが、今は無駄な事を気にする余裕はない。


('(゚∀゚;∩(とりあえず入り口を塞ぐんだよ)

 なおるよは店内のテーブルや椅子を持ち寄ってドアを封鎖した。
 あの物質なら液体のようにすり抜けてくるだろうが、少しでも足止め出来ればそれでいい。

 ミルナの追跡は手強い。今後更に激化するのも目に見えている。
 だからこそ、今ここで考える時間を作らなければ先が無いのだ。

.

301 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:30:35 ID:P/ZE8Ycc0

('(゚∀゚;∩(……ハッキリした攻撃がまだ来てない。
      どうして? こっちの能力が分からないから警戒してる?)

('(゚∀゚;∩(あの黒い塊で僕の能力を探ってるのかな……。
      だったら逆に、向こうの能力を探ってやるんだよ……)

 なおるよが持つ超能力は『無効化』の能力。
 三つの条件を満たした場合に限り、他者の超能力を問答無用で消滅させる能力だ。


('(゚∀゚;∩(発動条件その1・対象の能力を理解すること)

('(゚∀゚;∩(まず、この状況を利用してミルナの能力を把握するんだよ……)

 活路を見出し、再び奮起したなおるよ。
 外から水音が聞こえてくる。黒い塊が追いついて来たのだ。


('(゚∀゚;∩(まあ、素早くないのだけが救いかな……)

 ピチャピチャという水音はドアの向こう側にしばらく留まった後、呆気なく沈黙した。
 なおるよはジッとドアを睨みつけ、黒い塊が入ってくるのを待ち構えた。

.

302 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:34:24 ID:P/ZE8Ycc0



 ――ふぉん。


 風を切るような、軽い音。
 その直後、近くにあったテーブルが真っ二つに分かれ、床に倒れた。


('(゚∀゚;∩(……前言撤回)

 切断されたテーブルを一瞥し、なおるよは拳を固く握りしめた。

.

303 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:35:29 ID:P/ZE8Ycc0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



( ゚д゚ )(……外した、のか)

 なおるよが隠れた廃屋を観察しながら、ミルナは物陰で小さく呟いた。


( ゚д゚ )(tanasinnの感知能力、感知範囲はともかく精度が駄目だ。
     俺自身が力を制御出来てない証拠だな……)

 ミルナが頭の中で 『戻れ』 と唱える。
 すると、なおるよを攻撃していた黒い塊はいそいそと彼の所に帰ってきた。
 黒い塊はミルナの影に混ざり、居なくなる。


( ゚д゚ )(形状の変化も難しいし、不定形の維持もすごい疲れた……。
     遠隔操作は燃費が悪いな……)


 物陰を出て歩き出し、胸元で右拳を構える。
 ミルナは超能力『マグナムブロウ』を発動した。

( ゚д゚ )(ドクオに怪しまれるし、さっさと殺して戻ろう)

.

304 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:36:44 ID:P/ZE8Ycc0

≪3≫



 ドアノブを捻って手前に引くと、足元をテーブルや椅子が塞いでいた。

( ゚д゚ )(……バリケードなのか?
     引くドアだから意味無いんじゃ……)

 ミルナは普通に障害物をどかし、中に入った。
 細かい埃が舞い上がり、視界を濁らせる。


 目の前の埃を手で払い、店内を見渡す。
 ミルナはその途中、二つに切断されたテーブルが床を転がっているのを見つけた。
 二つに分かれたテーブルをよく観察すると、わずかに血痕があった。

( ゚д゚ )(……掠っていたか。感が冴えん)

 血のついた手で触ったであろう痕跡も周囲にいくつか見受けられる。
 ミルナはそれらを冷静に見つけ出し、血痕を辿った。


( ゚д゚ )(血は奥に続いてる。厨房に逃げ込んだな)

 ――と、ミルナはここまで考察して我に返った。


(;゚д゚ )(感知すりゃいいんだった)

 集中し、なおるよの居所を探る。案の定、やはり厨房の中に居た。
 しかも先程の攻撃が致命傷になっていたらしく、彼は厨房の壁際に座ってグッタリしていた。

.

305 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:39:17 ID:P/ZE8Ycc0


( ゚д゚ )「……」

 ミルナは忍び足で厨房のドアに近づき、ドアを少し開けた。
 その隙間から荒い息遣いが聞こえてくる。しかし、なおるよの姿は見えない。

 ミルナは徐々にドアを押し広げた。


('( ∀ ;∩「ぐううううッ……!」

 やがて、痛切な唸り声が右側から聞こえてきた。
 ミルナは勝負が決した事を察し、厨房に入ってなおるよを捉えた。

( ゚д゚ )「……」

('( ∀ ;∩「はぁ……はぁ……!」

 なおるよは右肩から腰骨にかけて大きな切り傷を負っていた。
 出血量も凄まじく、放っておけば確実に死ぬのは明らかだった。


( ゚д゚ )「……」

 放っておけば、彼は苦しんで死ぬ。
 ミルナはしばし考えてから、なおるよに歩み寄った。

.

306 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:40:20 ID:P/ZE8Ycc0


( ゚д゚ )「中途半端に当てて悪かった。
     今、止めを刺す――」

 なおるよの前に行くと、ミルナは超能力を解いて床に片膝をついた。
 彼の首元に手刀を当て、その手にtanasinnの黒煙を纏わせる。

('( ∀ ;∩「や、やめ……」

( ゚д゚ )「ここで生き延びても殺す。諦めろ」

 黒煙を纏った手刀が首の薄皮を切り、グッと押し込まれる。
 首筋からたっぷりと血が溢れ、死が近づいてくる。


('( ∀ ;∩

 最中、なおるよは笑っていた。

.

307 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:42:54 ID:P/ZE8Ycc0


( ゚д゚ )(……なんだ?)

 違和感を覚えて手を止めるミルナ。
 嫌な感じがした。その一瞬の停滞が、彼に冷静な思考をさせてしまった。

 後ろで、何かがパチパチと鳴っている。
 ミルナは咄嗟に振り返った。

( ゚д゚ )(あれは――――)

 点火済みのガスコンロと、それに加熱される多数のガス缶、ガラス片。
 それを見つけ、彼の笑みの理由を察した時には手遅れだった。

(;゚д゚ )「こいつッ!!」 バッ!!

('(゚∀゚;∩「おああッ!」

 ミルナが身を引くと同時になおるよは動いた。
 彼は隠し持ったガラス片を振りかざし、ミルナの太腿に深々と突き刺した。

(; д )「ぐッ!」

('(゚∀゚;∩「舐めんなッ!」 ゲシッ

 なおるよは足を抑えて悶えるミルナを蹴り飛ばし、自分は窓を突き破って外に逃げ出した。

.

308 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:46:04 ID:P/ZE8Ycc0


 直火に晒されたガス缶が、いよいよ炸裂した。

 中身がコンロの火に引火して燃え上がり、巨大な火炎となって一気に膨れ上がる。
 なおるよが仕掛けた罠は、たった今ミルナを“詰み”の状況に引きずり込んだ。

 0.5秒にも満たない時間の最中、ミルナは咄嗟に体を丸めて防御の体勢を取った。

(;゚д゚ )(tanasinnならまだ間に合ッ――)

 更にtanasinnを用いて守りを固めようとした瞬間、多数の鋭い痛みが彼の思考を遮断した。
 ミルナは反射的に、自身の両腕を見直してしまった。


(;゚д゚ )(これは――)

 腕には透明な破片がいくつも突き刺さっていた。
 それには見覚えがあった。ガス缶と一緒に加熱されていたガラス片だ。
 ガス缶の炸裂で細かく砕けたガラス片が、火の手よりも早くミルナを攻撃したのだ。


(;゚д゚ )(――――)

 そんな無駄な思考を経て視線を戻すも、思考が状況に追いつかない。
 膨大した火炎は、一瞬でミルナを包囲した。

.

309 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:46:50 ID:P/ZE8Ycc0

≪4≫





(,,゚Д゚)「あそこだ。先に始めてやがる」

(;'A`)「まともなメシ、久し振りな気がする……久し振りばっかだ……」

 店に入ったギコとドクオは、奥のテーブルに集まったダディクール一行のもとに行った。


|(●),  、(●)、|「おお、来たか。元気にしてたか?」

('A`)「不健康そのものだよ。そっちは元気そうだな」

(,,゚Д゚)「お前そっちつめろよ」 グイ

【+  】ゞ゚;)「押すな」

ノパ⊿゚)「おう。元気が一番だ」ムシャムシャ

|(●),  、(●)、|「まぁとりあえず食べるぞ、話はそれからだ」

ノハ*゚⊿゚)「ぶっちゃけ監獄の方がメシ美味かったけどな!」

.

310 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:48:22 ID:P/ZE8Ycc0


 その後は、各々好き勝手に飲み食いしながら雑談を楽しんだ。

(#,,゚Д゚)「それオレのもんだぞ!」

ノハ*゚⊿゚)「追加注文しろよどうせ奢りだろ〜」

(,,゚Д゚)「じゃあこれ貰うぞ」ヒョイパクー

ノパ⊿゚)「あっ殺す」

(,,゚Д゚)「は?」

(#,,゚Д゚)「上等だ女ァ!! 表出ろォ!」

ノハ#゚⊿゚)「出たらメシ食えねェだろ馬鹿かァ!?」


(;'A`)「タベモノガ・・・モウナイ・・・」

【+  】ゞ゚;)「……俺のをやる」

 がっつく二人に気圧されて貧困根暗クソ野郎と化したドクオ。
 棺桶死オサムはクソ野郎を哀れみ、自分のスパゲッティを分け与えた。

.

311 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:50:26 ID:P/ZE8Ycc0


('A`)「……棺桶死、だったよな?」

 フォークでスパゲッティを巻き取りつつ、ドクオは無難な話題で彼に話し掛けた。

【+  】ゞ゚)「呼び方は何でもいい。それも偽名だ」

('A`)「……じゃあオサム。お前それ眼帯、カッコイイよな」

【+  】ゞ゚;)「同じ事を、脱獄の日にも言われたが」

( 'A`)「そうだっけ? でもマジでカッコイイぜ、それ」

 ちゅるりん。ドクオはスパゲッティを食べた。カルボナーラ(笑)

('A`)「あん時な、脱獄の時。手ぇ貸してくれて助かったよ。
    お前すげー強いんだな。ビックリしたわ」

【+  】ゞ゚)「それならこいつのおかげだ。あの晩、俺は役立たずだった」

 彼は得意気に右目の眼帯を叩いた。
  ,_
('A`)「……それがぁ? なんで」

【+  】ゞ゚)「異物を知らないか? 何も無くても超能力を使えるんだ」



('A`)

('A`)「……マジかよ……」

 今までの俺の努力は何だったのか。ドクオは脱力して呟いた。

.

312 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:51:33 ID:P/ZE8Ycc0


('A`)「――あっ」

【+  】ゞ゚)「どうした?」

('A`)「そうだ、見たわ。お前の言う『異物』を使うすごい奴」

 ドクオはフォークで空中に弧を描いた。

('A`)「八頭身! あいつ凄かったなぁ」

('A`)「なんか凄いデカイ剣を持っててさ、その剣に水晶はめるんだよ。
   そしたら色々出てくんの。しかも水晶いっぱい持ってたし、あれ反則だって」

【+  】ゞ゚)「……凄いあやふやだが、異物を複数持ってたのか?
        確かに凄いな。異物の扱いは結構難しいんだが……」

('A`)「そうなの? お前の眼帯も?」

【+  】ゞ゚)「こいつの場合、はっきりした人格と意思を持ってる。
        それに認められない限り、力は使えないんだ」

(;'A`)「……ふ、ふ〜ん……」

 ドクオは歯切れ悪く言ってから、オサムの眼帯をチラ見した。

.

313 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:52:33 ID:o663oWnY0
来てるな支援

314 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:53:03 ID:P/ZE8Ycc0

(;'A`)「……ちなみに、俺じゃ使えない?」

【+  】ゞ゚)「……付けてみるか?」

(;'A`)「……中の人に怒られない?」

【+  】ゞ゚)「見込みが無ければ、そもそも話も出来ない」

 ドクオは少し考えてから、オサムに手の平を差し出した。


(;'A`)っ 「……ちょっといい? ダメ元で試す」

【+  】ゞ゚)「まぁ根は良い奴だ。話せるといいな」

 ドクオは渡された眼帯をまじまじと見つめてから、意を決してそれを装着した。



【+】A`)

【+】A`)「似合う?」 チラ


( ゚"_ゞ゚)「……」

【+】A`)「……」


.

315 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:54:01 ID:P/ZE8Ycc0





('A`)「ところでさ、お前はなんでココに来たんだ?」

【+  】ゞ゚)「……なんで、というのも分からんな。
        動機の話でいいのか?」

 直前三十秒間のやり取りを忘れ、二人は話を続けた。


('A`)「正直この中じゃ一番冷めた感じがするから、不思議に思った」

【+  】ゞ゚)「お前こそ、女の為に体を張るような感じはしないがな」

( 'A`)「……察しろ恥ずかしい」

 わざとらしく顔を背けたドクオを見て、オサムは頬を緩めた。


【+  】ゞ゚)「……俺は、なんというか……」

 シャキンが言った事を確かめる為、とは言えず、オサムは語尾を濁す。

【+  】ゞ゚)「……そうだな、強いて言えば気まぐれだ」

(;'A`)「あー出た、強い奴にありがちなヤツ」

('A`)「ったく、強い奴は主体性がない法則でもあんのかよ」

 呆れた様子で瞑目し、頭を振る。
.

316 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:54:48 ID:P/ZE8Ycc0


('A`)「……そういや遅いな」


【+  】ゞ゚)「料理がか?」

('A`)「いや、ミルナ。あいつ今ウンコしてるんだ」

 ミルナという言葉に、オサムの眉がピクリと跳ねた。


【+  】ゞ゚)「……来てるのか?」

('A`)「ああ。なおるよも来てたんだぜ、さっき帰ったけどな」

(;,,゚Д゚)「帰った!? なんでだよ、引き止めろよ!」

 山盛りポテトを抱えたまま、ギコが話に割り込んできた。

(;'A`)「いやっ! だって流石に小さすぎるだろ! 危ねぇよ!」

(;,,゚Д゚)「貴重な戦力が……。つーかお前も十分ガキだっての!」

 ギコはそう言い、ポテトでドクオをつついた。

.

317 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:56:44 ID:P/ZE8Ycc0


【+  】ゞ゚)「……探しに行ってくる」

('A`)「お?」

 ドクオは席を立ったオサムを目で追った。

【+  】ゞ゚)「ミルナがどこに行ったか分かるか?」

('A`)「その辺のトイレだろ? 別に探しに行かなくても……」

【+  】ゞ゚)「……襲われてるかもしれないだろ。
        俺達の思惑を向こう側が知れば、何かあっても不思議じゃない」

(;,,゚Д゚)「いや、考えすぎだろ。俺らが動き出したの一週間前だぞ」

【+  】ゞ゚)「俺だってそう思う。だから見てくるだけだ。
        本当にトイレが長引いてるならそれでいい。
        紙が無くて困ってるだけかも知れん」

('A`)(ありそうだなぁ……)


 ダディクールは、視線をティーカップに向けたまま思考した。

|(●),  、(●)、|(……『本当に』か。何を探っているんだかな……)


ノパ⊿゚)「行くならお前らで行ってくれよな。あたしはメシを食うから」ムシャムシャ

(,,゚Д゚)「お前は周りに合わせるって事を覚えろ」サクッ

 ヒートの鼻に熱いポテトが突き刺さった。


【+  】ゞ゚)「それじゃあ、また後でな」

('A`)「……俺も行こうか?」

 ドクオは提案したが、彼はそのまま店を出て行った。

.

318 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 22:58:15 ID:P/ZE8Ycc0

≪5≫




 クソワロタの放棄区画に、男の声がこだまする。


\(^o^)/「色々売ってるよぉ〜」


\(^o^)/「仕入れも出来るよぉ〜」

 男は健気に売り文句を言いながら、周囲を見回しながら客が来るのを待っていた。
 しかしここは放棄区画。小さな露店を構えて数ヶ月、客足は絶滅していた。


\(^o^)/「……」



\(;^o^)/「……」



 彼の名前は人生オワタ。
 ('A`)は撃鉄のようです第8話に登場し、黒ローブの男と戦った一般的な会社員である。


 そんな彼がなぜ、一体どうしてレムナントの街・クソワロタに居るのか。
 その理由を簡潔にまとめると以下の通りになる。

 1・『ThisMan』の一件が色々作用して会社が倒産
 2・色々あって一文無しに
 3・以上の理由でレムナントでの生活を余儀なくされる

 社会の荒波に揉まれた結果、彼はこの街に流れ着いたのだった。
 世の中には色んな事があるため、決して不自然な事ではなかった。
.

319 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:00:07 ID:P/ZE8Ycc0


\(;^o^)/「ハァ〜〜客なんか来る訳ねえだろ〜こんなトコでさぁ〜〜」

 オワタは弱々しく空を見上げた後、がっくりと肩を落とした。

\(;^o^)/「あんな奴の言うこと聞くんじゃ無かった……。
       こっちに居た方が利口だとか……完全に騙されたわ……」


\(^o^)/(……お?)

 遠くに足音を聞いたオワタは、咄嗟に姿勢を正して身構えた。
 この客の羽振り次第で今日の夕飯が決まる。心身は自然と滾った。

\(;^o^)/(ぜってえ逃がさねぇ……!)



('(゚∀゚;∩「……」

 しかし、やってきたのは大怪我をした子供。
 とても金銭を期待できる雰囲気ではなかった。

.

320 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:00:51 ID:P/ZE8Ycc0


\(;^o^)/「……いらっしゃい」

('(゚∀゚;∩「……水、ある?」


\(;^o^)/「……水ってか、絆創膏とかあるけど、買う?」

('(゚∀゚;∩「……水だけ」

 なおるよはポケットから紙幣を掴み取り、数えもせずにオワタに渡した。
 オワタは状況が分からず面食らったが、すぐに水入りのペットボトルを彼に差し出した。



('(゚∀゚;∩「……銃……」

 ボトルを開けて水を飲み始めたなおるよが、商品として出されていた拳銃に目をつける。
 なおるよは水を飲み干してボトルをポイ捨てし、拳銃を指した。

('(゚∀゚;∩「あれ、使えるの?」

\(;^o^)/「一応使えるけど……え、買うの?」

('(゚∀゚;∩「……お金、さっきので足りる?」

\(;^o^)/「足りるけど……お前、何? どうかしたの?」

('(゚∀゚;∩「子供にも色々あるんだよ」

 なおるよは拳銃を受け取り、弾が入ってるのを確認してポケットに差し込んだ。

.

321 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:01:59 ID:P/ZE8Ycc0


('(゚∀゚;∩「助かったよ。じゃあ急いでるから……お願いね……」

 なおるよは軽く頭を下げ、オワタの前を去った。


\(;^o^)/(……物騒な街だぜ。
       ガキがあんなに逞しいってスゲー……)



\(^o^)/(でもまぁ何にせよ収入ゲット!
       これでまともなメシを食える! うおお!)

 オワタは早速売上金を数えた。
 今回の売り上げは五万円。今のオワタにとって、これは十分すぎる額であった。

\(^o^)/(なんという奇跡……ありがとう名も知らぬガキよ……)

\(^o^)/(これを元手にして、いつか向こう側の生活に戻ってやる!)




\(^o^)/「……お?」

 その時、オワタは紙幣の中に別の紙切れが混ざっているのを見つけた。

\(^o^)/「なんだこりゃ……」

 オワタは紙幣に紛れていた紙切れをつまみ、訝しげに広げた。


.

322 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:05:14 ID:P/ZE8Ycc0

≪6≫




 ミルナは 『不幸』 を自覚した事が無かった。

 彼は、『俺は不幸だ』と人に言った事が無かった。


 彼には、昔からこういう考えがあった。
 自分より弱い人間に助けを求めるのは、それ自体が暴力であると。

 ミルナは殆どの他人を『弱者』だと思っていた。
 自分より弱く、頼るに値しない存在だと認識していた。
 決して周囲の人間を見下していた訳ではないが、少なくとも、助けを求めるには脆すぎる存在だと思っていた。


 実際それは正しい認識だった。
 tanasinnと関わる以前でも、ミルナに匹敵する強者はそう居なかった。
 だから誰にも頼らなかった。あらゆる事を一人でこなし、あらゆる敵を一人で倒してきた。


.

323 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:05:59 ID:P/ZE8Ycc0


 しかし、tanasinnに出会ってからその生き方は一変した。


 彼は変わりゆく世界を生きながら、時に仲間を作り、tanasinnに立ち向かった。
 結末は全滅。何度仲間達と戦いを挑もうと、その悉くを皆殺しにされた。

 結局最後には何も残らず、誰もついて来ていない。
 振り返れば、そこには死体の山が積み上がっているだけ。

 死体の山を見る度、彼は自分の言葉を思い出して自責した。
 そして、孤独に耐え切れず、自分以下の存在に囲まれて現実逃避に励む自分を強く自覚させられる。

 上には立ち向かわず、延々下に向かって吼えているだけ。
 tanasinnを得て強くなった筈なのに、ミルナは自分がどんどん弱くなっている気がしていた。
 一方的に与えられた力は、呪いに他ならない。

 ミルナは自責する。


( д )(俺はこんな人間じゃなかった筈だ)

( д )(自分より弱い人間を、こんな風に利用する卑怯者じゃなかった筈だ)

( д )(俺は、自分の現実から目を背ける為に他人を利用している……)

.

324 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:07:42 ID:P/ZE8Ycc0


 深い深い漆黒の中にひきこもった彼は、孤独を享受した。
 そうせざるをえなかった。

 誰彼構わず人に頼る弱い自分を否定しながら、
 一人で何にでも立ち向かっていた頃の自分を演じるには、孤独に身を潜めるしかなかった。

 自分の人生から他者を排除する事でしか自分を守れない。
 そんな人間に成り果ててしまいながら、ミルナは心の奥底で願い続けていた。

 いつか自分より強い誰かが現れて、この弱さ諸共自分を消し去ってくれないか。
 この願いすら自分の弱さだと自責しながら、彼はひたすら漆黒の中で考え続ける。

 漆黒を出て、荒野を歩き、今に至っても。
 ミルナの願いは、それだけだった。

.

325 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:10:58 ID:P/ZE8Ycc0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



('(゚∀゚;∩「……もう少しだよ……!」

 なおるよは、確実に噴水広場へと前進していた。
 傷を負った体を懸命に動かし、彼は放棄区画を抜ける寸前にまで来ていた。

 人の声がだいぶ近くに聞こえる。
 ほんの少し、胸をなでおろす。


('(゚∀゚;∩(……頭がぼーっとする……切りすぎたかな……)

 なおるよが負った右肩から腰骨にかけての大きな切り傷。
 それは、自らガラス片で作った自作自演の傷であった。
 ミルナを誘き出して注意を引く為とはいえ、やりすぎたと反省する。

('(゚∀゚;∩(まぁ、あの程度で死んだはず無いけど、足止めは出来た、と思いたい……)

('(゚∀゚;∩(追ってきたとしても、今なら僕の能力で対抗できる……はず)

 なおるよの無効化能力の発動には、対象となる能力への理解が必要である。
 十分ではないにしろ、なおるよはミルナの力を多少なり理解している。
 いずれ追いつかれた時には、問答無用で超能力を発動するつもりだった。

.

326 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:12:17 ID:P/ZE8Ycc0




 ――黒煙の具現化、形状変化、遠隔操作、感知能力、撃鉄の能力。

 そして更に回復能力もある、となおるよは推測していた。
 ミルナが追って来ないのも、恐らく肉体の回復に手間取っているからに違いない。

('(゚∀゚;∩(……はず。多分。分かんないけど)

 何にせよ前進を急ぐべきだ、と結論を出す。
 あらゆる推測に自信を持てない今、出来るのは前に進む事だけだ。

 なおるよは傷の様子を見つつ、走り出した。



('(゚∀゚;∩


 ――その矢先、なおるよは背筋に冷気を感じた。


 今度のは分かりやすい脅しではない。
 凍てついた殺意。それが背後に現れた。


.

327 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:13:24 ID:P/ZE8Ycc0


('(゚∀゚;∩「クッソ!!」

 なおるよは脇目もふらずに疾走した。

 あと少しで人気のある場所に出られる。あと十秒あれば安全圏に出られる。
 当初は人混みを避けようと考えていたが、もはや人混みを利用してでも前に進むしかない。
 なおるよには伝えなければならない事がある。自分しか知らない『この事』を、誰かに残さなければ……。

 彼は薄暗い小道を光に向かって走った。殺意がそれを追い、どんどん近づいてくる。
 猶予は無かった。崩れ落ちていく崖が一歩後ろにあるような絶望感が、今にも彼の足を掴もうとしていた。


('(゚∀゚;∩(間に合う――ッ!)

 あと数歩で明るい日差しのもとに出られる。
 彼は微笑んだまま、光の中に身を投げた。




.

328 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:17:00 ID:P/ZE8Ycc0



 ――鮮烈な太陽の日差しが、なおるよを照らした。


 彼は勢い余って倒れ込み、地面をごろごろと転がった。

('(゚∀゚;∩(――間に合ったッ!)ガバッ

 すぐ近くに聞こえるガヤガヤした声、ドタバタした足音。
 いつもは小うるさいとしか思わない雑音に心底安心を覚えながら、なおるよは汗ばんだ顔を上げた。


.

329 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:18:53 ID:P/ZE8Ycc0



('(゚∀゚∩


 なおるよが聞いた、それらの雑音。

 それには、ノイズが混ざっていた。


 人の声には悲鳴が。
 足音には、足ではない物が地面を叩く音が混ざっていた。

 赤い塊がひとつ、地面に落ちて転がっていく。

 なおるよは目に映る光景を理解出来ず、立ち上がるという思考すら出来なかった。
 何かをする、という段階まで脳が動かなかった。


.

330 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:21:14 ID:P/ZE8Ycc0




 形振り構わず逃げていく人々がとは別に、道に巨大な人混みがあった。
 数人が、それぞれ超能力を発動したまま誰かを睨んでいる。

 一人の能力者が意を決して中心に飛び込む。
 それが箍を外したのか、他の能力者も一斉に動き出した。

 次いで、風を切る音が響いた。


 直後、人混みを形成していた人間は全て血飛沫に変わった。
 ある程度は肉として残ったが、大半は粘り気のある血飛沫になって広範囲に飛び散った。

 人が消えた事で、なおるよにも中心が見えた。



( ゚д゚ )

 無機質な瞳と、目が合う。

 そこに居たのは、黒煙を周囲に漂わせたミルナだった。
 ミルナの視線は一直線にこちらに向いていた。


('(゚∀゚;∩「ひっ……!」

 押し潰された悲鳴が小さく上がる。
 なおるよは逃げるとか戦うとか以前に、全身から力が抜け落ちてしまった。


.

331 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:25:47 ID:P/ZE8Ycc0


 この場の人間が、ミルナの黒煙によって次々と血肉に変わっていく。
 ミルナに近づく者は何度もシュレッダーに掛けられたように粉々になり、
 逃げていく者はわざわざ黒煙で引っ張り戻されて殺された。

 標的に例外は無かった。
 泣き叫ぶ子供も、それを守ろうとした母親も細切れになって死んだ。
 そこで行われているのは、単なる屠殺作業でしかなかった。

( ゚д゚ )

 ミルナの視線はなおるよを捉えたままだった。
 その傍らで、ミルナの黒煙が作業的に人々を殺していく。

 “お前が巻き込んだ”。

 ミルナの目は、そう語っていた。



('(゚∀゚;∩「……やっ……」

 やめろ、とは言えなかった。なおるよは直感して分かっていた。
 彼らを巻き込んだのが自分で、自分の考えが甘かったせいで、こうなってしまった事を。

.

332 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:29:00 ID:P/ZE8Ycc0


 ミルナの作業はものの数十秒で終わった。
 生きている人間は、少なくともこの周辺には二人だけ。
 それだけ徹底的に邪魔者を排除した以上、次に殺されるのが自分なのは考えるまでもなかった。


( ゚д゚ )「……この傷は……」

 ゆっくりと歩き出したミルナは、その歩調同様にゆっくりと話し始めた。
 彼は、自身の顔に残った火傷の痕を指でなぞった。

( ゚д゚ )「俺が 『人間』 として負った、最後の傷になるだろう」

( ゚д゚ )「……目撃者は皆殺しだ」



('(゚∀゚;∩(……な、何か……何かしなくちゃ……)

 なおるよは腰を抜かしたまま後ずさり、言う事を聞かない体を動かした。

 その時、なおるよはポケットに硬い感触を覚えた。
 それはさっき露店で買った古い拳銃。彼は咄嗟にそれを掴み取り、ミルナに突き付ける。


('(゚∀゚;∩「……」

 だが、その行為は自身の非力さを際立たせるだけだった。

('( ∀ ;∩(今更こんなの出して、何が出来るって言うんだよ……)

.

333 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:32:23 ID:P/ZE8Ycc0


( ゚д゚ )「……お前、銃を持つのは初めてか」

 一歩一歩、ミルナが着実に近づいてくる。

( ゚д゚ )「……お前、こんな事をするタイプじゃないだろう」

('(゚∀゚;∩「……」

 気を持ち直し、なおるよは唇を食いしばってミルナを見返した。
 なおるよの口元に血が滴る。


( ゚д゚ )「……小さな正義漢という訳か。
     だが、そのせいで多くの人間を巻き込んだ」

( ゚д゚ )「さっさとお前を殺しておくべきだった。
     そうすれば無駄な殺しをせずに済んだ」

 なおるよの目前に立ったミルナは、周囲をたゆたう黒煙をなおるよに差し向けた。

( ゚д゚ )「言いたい事があれば聞くぞ」


('(゚∀゚;∩「…………」


( ゚д゚ )「…………」


.

334 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:33:31 ID:P/ZE8Ycc0




('(゚∀゚;∩「……なんで」


 すこし考えて出てきた言葉に、なおるよは点々と言葉を繋げていった。


('(゚∀゚;∩「なんで、人を殺すの……?」

( ゚д゚ )


('(゚∀゚;∩「……ドクオと居る時の、あの時のアンタは……」

 なおるよは固唾を飲んだ。

('(゚∀゚;∩「そんなに悪い人じゃないって、少し思ったよ……」


 ミルナは答えを探すように視線を泳がせてから、はっきり答えた。


( ゚д゚ )「人殺しは俺だけじゃない。殺しなら、あの面子の殆どが経験している」

( ゚д゚ )「無論、棺桶死オサムもだ。他の奴らに聞け」


('(゚∀゚;∩「……オサムも言ってたよ、俺も人殺しだって。
      でも、オサムの言葉は違ったよ。アンタの言葉より、もっともっと重かった……」

( ゚д゚ )「……言い返せないな。俺はもう、人が死んでも動じない。
     俺にとって、人殺しはとても軽い……」

.

335 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:35:43 ID:P/ZE8Ycc0

('(゚∀゚;∩「……アンタが、何の為に人を殺すかは分からないよ。
      でも、殺さない事だって出来たはずだよ……」

( ゚д゚ )「だろうな」

 俺は暗闇の中でずっとそうしてきた。
 ミルナはそう思いながら、なおるよを冷ややかに見下ろした。

('(゚∀゚;∩「今からでも、止めればいいんだよ。
      人が死ぬのは、たとえ他人であっても嫌なんだよ……」


 間を置いてから、ミルナはたっぷり溜め息をついた。

 子供らしい、白紙のような意見だと思った。
 希望で塗り尽くされているように見えて、実は何も書いていない。
 人間はそういうものを希望と呼ぶ。ミルナはそういうものに対して、本当に呆れきっていた。


( ゚д゚ )「……お前は優しいな。優しすぎるが故に、何も救えなかった。
     正しさだけでは救えない人間が居るという事を、お前は分かっていないんだ」

 ミルナはじっとなおるよを見つめたまま、淡々と言った。

.

336 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:36:37 ID:P/ZE8Ycc0


 瞬間、なおるよは拳銃の引き金を引いた。
 大きな銃声が空に響く。

 彼なりに不意をついたつもりだったが、弾丸は黒煙が受け止めていた。

('(゚∀゚;∩「……ハ」

 乾いた笑いさえ、まともに出てこなかった。


( ゚д゚ )「……何なら、お前の能力も使わせてやろうか」

( ゚д゚ )「悪あがきもそれが最後なんだろ。やってみろ」

.

337 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:39:09 ID:P/ZE8Ycc0


('(゚∀゚;∩「……考えてる事が分かるの?」

( ゚д゚ )「まぁな。どうする?」

 最後の一策をも見抜かれてしまい、なおるよは思わず嘲笑をもらした。
 ミルナの口振りから察するに、きっと彼の能力を無効化する事は出来ないのだろう。
 出来たとして、きっと大した意味を成さないのだろう。

 あと、自分に出来る事は何だろうか……。


('( ∀ ∩(……いや、もう、やれる事はやった。
      残せるものも残した……大丈夫、あとはみんなが……)

 なおるよは、一時の安楽の為に考える事を放棄した。


( ゚д゚ )「……もし次があったら、身の丈にあった生き方をするんだな」

 黒煙が巨大な刃をかたどり、なおるよの体を包囲する。
 なおるよは空を見上げ、微笑んだ。

('(゚∀゚∩(……死んだら親に会えるとか、考えとこうかな)

 それが、彼の最期の思考だった。

.

338 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:39:51 ID:P/ZE8Ycc0

≪7≫







(,,゚Д゚)「あー食ったァー」

ノパ⊿゚)「ここ一週間分は食った。満足」ゲップ


|(○),  、(○)、|「……予算が……」

(;'A`)「そら無くなるよ、かなり食ったもん……」

 ダディクール一行は長い昼食を終え、外に出ていた。
 噴水広場周辺のベンチを陣取り、今はオサムとミルナが帰ってくるのを待っている。


|(○),  、(○)、|「……宿泊場所は同室でいいな?」

 白目を剥いたダディクールが低い声でギコとヒートに問い掛ける。
 反対意見は許さないと暗に伝わってくる雰囲気に、二人は押し黙ってコクンと頷いた。


.

339 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:41:01 ID:P/ZE8Ycc0


 ――ぽつん、と冷たい感触がドクオの頬を叩いた。


('A`)「……あ?」

 ドクオは空を見上げた。頭上には、灰色の大きな雲が広がっていた。
 青空を覆いきる程の雨雲ではなかったが、嫌な予感がして、ドクオは皆に声を掛けた。


('A`)「おい、なんか雨降りそうだぞ。お前ら先に行ってていいぞ」

 ドクオに言われて気付いたギコは怪訝な表情で空を見た。

(,,゚Д゚)「……マジで雨か。珍しいな」

 レムナントでは滅多に雨は降らない。
 メシウマ側だけ雨、こっちは超快晴みたいな事も多々ある。
 なのにも関わらず突然の雨雲。ダディとヒートも、この空の様子を不思議に思った。

(,,゚Д゚)「不思議な事もあるもんだ」

 ギコは口を半開きにしたまま、暗んでいく空を望遠した。


|(●),  、(●)、|「しかし君はどうする? ミルナとオサムを待つのか?」

('A`)「そのつもり。でも少しだけだ。さすがに遅すぎる」

('A`)「多分何かあった。なんとなく、そう思う」

.

340 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:41:42 ID:P/ZE8Ycc0


|(●),  、(●)、|「……ならば全員で待とう。
            個人の危険を皆で分かつ、その為に手を組んだ」

('A`)「……良いこと言うぜ」


ノハ;゚⊿゚)「え゙ぇ゙ー! アタシは寝たい!」

(;,,゚Д゚)「お前ほんとに自分勝手だな!」

 やがて、しとしとと雨が降り始める。
 四人は適当な軒下に逃げ込み、二人の帰りを待った。



( 'A`)「……遅いなぁ」

 ドクオは俯き、地面の泥をぼんやり眺めた。

.

341 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:42:33 ID:P/ZE8Ycc0









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342 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:43:14 ID:P/ZE8Ycc0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



【以下、レムナント監獄に入っていたなおるよ】

  ハ_ハ  
('(゚∀゚∩ 「みんな〜」
 ヽ  〈 
  ヽヽ_)



【以下、なおるよの弟妹6人】

  \ワイワイ/
      ハ,,ハ   ハ_ハ \ドッ/
  ハ_ハ('(゚∀゚∩∩゚∀゚)'ハ,,ハ  
(^( ゚∀) ハ_ハ Y ハ,,ハ('(゚∀゚∩
  )  (^(    )^)    )^)   〈
  (_ノ_ノ )  /´ `ヽ  ( ヽヽ_)
     (_ノ_ノ     ヽ_ヽ_)

343 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:43:17 ID:o663oWnY0
嗚呼なおるよ…

344 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:44:13 ID:P/ZE8Ycc0

('(゚∀゚∩「兄ちゃん!」 (六男)

('(゚∀゚∩「兄ちゃん!」 (五男)

('(゚∀゚∩「兄ちゃんだ! 久し振り!」 (四男)

('(゚∀゚#∩「どこ行ってたの! みんな心配してたんだよ!」 (三男)

('(゚ー゚*;∩「こらこら、怒らないの!」 (長女)

('(゚∀゚;∩「兄ちゃん、凄い怪我してる!」 (次男)


('(゚∀゚*∩「これくらいヘッチャラだよ! すぐになおるよ!」

('(゚∀゚*∩「それより今は、またみんなに会えて嬉しいんだよ〜〜」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


('( ∀ ∩(兄ちゃんは……凄いことを沢山やって、帰ってきたんだよ……)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


.

345 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:44:53 ID:P/ZE8Ycc0


('(゚∀゚*∩「すごいことしてきたの!? すごいよ!」 (六男)

('(゚∀゚∩「それじゃ意味分かんないよ」 (四男)

('(゚∀゚;∩「また危ないことしたんでしょ! もぉ〜」 (次男)


('(゚∀゚*∩「えへへ! でもね、良い事をしたんだよ!
      悪い人を出し抜いてね、恩人に恩返しもしたんだよ!」

('(゚ー゚*∩「兄ちゃん、すぐご飯にするから休んでて!
      自慢話もいっぱい聞くよ!」 (長女)

('(゚∀゚;∩「兄ちゃんの自慢話は長いんだよ〜〜」 (三男)


('(゚∀゚*∩「分かったよ! じゃあ、いっぱい話しちゃおうかな!」

('(゚∀゚*∩「話す事はいっぱいあるから! いっぱい――」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



('( ∀ ∩(いっぱい……話したい事が……)





.

346 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:45:49 ID:P/ZE8Ycc0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



【+  】ゞ )「……何をした」


 雨の中、声が聞こえた。
 ミルナはなおるよから目を逸らし、背後を振り返った。


( ゚д゚ )「……来たらこうだった」

( ゚д゚ )「驚くよな。俺もだ。
     俺の事は知ってるか? ドクオの……」

 白を切るつもりで口走った名前で、ふと思い止まる。
 ミルナは一度口を閉じ、改めて言った。


( ゚д゚ )「……ああ、俺がやった。分かってて聞いてんだろ」

 オサムは血と肉にまみれた地面を一歩、また一歩と進んだ。
 雨の匂いに意識を集中する。
 でなければ正気を保てない程の臭いが、この場所には充満していた。



.

347 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:47:24 ID:P/ZE8Ycc0


( ゚д゚ )「……お前がこいつに尾行させたんだな。
     自分でやれば、こうはならなかった」

( ゚д゚ )「……俺はお前達にだけは手出ししないつもりだった。
     お前が無駄な事を考えなければ、俺もここまではしなかった……」

【+  】ゞ )「……」

( ゚д゚ )「……弱い人間に頼ったから、こうなる」


 その時、空の雨雲が雷鳴を放った。

 周囲の電灯、電光板が光を失い、炸裂して煙を上げる。
 現象の原因は停電ではない。棺桶死オサムが、超能力を全開発動していた。


( ゚д゚ )「……この力、まだ加減が出来ない。
     逃げるなら今の内だが、しないだろ」


( д )「……後悔するなよ」

 お前も、俺も。
 ミルナは周囲の黒煙を硬質化させ、甲冑のようにして全身に纏った。
.

348 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:49:21 ID:P/ZE8Ycc0




【+  】ゞ゚;)(――なんだ、これは)

 黒い甲冑を纏ったミルナの変わり様に、オサムは思わず戦意を忘却した。


【+  】ゞ゚;)(光を使わずに超能力。しかも、これは……)

 目の前で起こった現象は、甲冑を着たというより、何かと融合したと言う方が的確だった。
 体格や気配も変化し、一瞬前とはまるで別人になっている。
 これが同一人物のものだとすれば、明らかに常軌を逸し、人として破綻しているとしか思えない。


 「……」

 二つ角の兜の奥に、赤い双眸が輝く。
 だらりと伸びた獣の尻尾が、雨に濡れて黒光る。

 聞こえてくる呼吸音は最早人間のそれではない。
 白い息が兜の口元から立ち上り、低く唸るような声が聞こえてくる。

 人の形をした別の生き物。
 似たような物に言い換えるなら、人の形をした黒竜。
 
.

349 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:50:03 ID:P/ZE8Ycc0


( д )「……」

 ミルナは膝を折って背中を丸め、視線をオサムに集中した。
 既に人としての意識を失っているのか、素振りは乱雑で、野生動物のようだ。

 その瞬間、ミルナが立っていた地面が弾け、彼の姿が消えた。


【+  】ゞ゚;)(来る――ッ!)

 雨がほんの一瞬、止んだ。
 ミルナの速さについていこうとしたオサムの目が、そう錯覚させたのだ。


【+  】ゞ゚;)(やはり、あの男の言う通りだった――!)


「――――■■■■■■■■■■■!!」

 人外の咆哮が、暗い雨空に響き渡った。
 

.

350 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:50:50 ID:P/ZE8Ycc0









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351 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:51:46 ID:P/ZE8Ycc0

≪8≫






 ドクオは雨中に人影を見た。一人だった。
 雰囲気から、それが棺桶死オサムなのは何となく分かった。


('A`)ノシ 「お〜〜い。どうだったよ〜〜」


 遠くから声を掛ける。しかしオサムは何の反応も示さなかった。


|(●),  、(●)、|「……様子が変だ。行くぞ」

ノパ⊿゚)「……嫌な感じがする」

 ダディとヒートが雨の中に飛び出す。
 ドクオとギコも彼らに続き、棺桶死オサムのもとに駆けつけた。

(;,,゚Д゚)「ったく、何だってんだよ」


|(●),  、(●)、|「おい、何があった。棺桶死!」

 ダディはずぶ濡れのオサムの肩を揺すり、はっきりした口調で呼び掛けていた。
 それでもオサムはしばらくの間、完全に沈黙して口も開かなかった。

.

352 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:52:49 ID:P/ZE8Ycc0


【+  】ゞ゚)「……やられた」

 呆然自失の状態から、ようやく少しだけ回復する。
 彼の瞳に光が戻り、体にも少し力が戻ったようだった。

 やっと出てきた一言は殆ど雨音にかき消されたが、辛うじてダディだけが、オサムの言葉を聞き取っていた。

|(●),  、(●)、|「……連れて行ってくれるか」

 ダディの頼みを聞いたオサムは、何も言わずに来た道を歩き出した。



(;'A`)「……どうしたって?」

|(●),  、(●)、|「……やられた、とだけ」

 心配そうなドクオに簡潔に答える。

ノパ⊿゚)「……行くぞ。お前らも」

(;'A`)「……なんなんだよ」

(,,゚Д゚)「……覚悟はしておけ、ドクオ」

 皆は、オサムの後に続いて雨の中を歩き出した。
 その先に待つものが何なのか、予感していなかったのはドクオだけだった。

.

353 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:54:03 ID:P/ZE8Ycc0






 なおるよを前にして、オサムを含む五人は言葉を失っていた。

('( ∀ ∩

 激しい雨が冷たい体に降り注ぐ。
 彼が生きていた証は、この雨が全て洗い流してしまった。

 血の流れは終わり、死んでいるとは思えないほど綺麗なまま、なおるよはそこで死んでいた。
 壁に背もたれ、俯き、微笑んだまま。


|(●),  、(●)、|「……認識が甘かった……」

 ダディは、まるで全員の言葉を代弁するかのように言った。
 ダディだけはなおるよに近づき、彼の肉体がその機能を終えているのを確認した。


|(●),  、(●)、|「……オサム。念のために聞くが、お前じゃないな」

【+  】ゞ゚)「……俺が来た時には、もう死んでいた」

 腰を上げ、ダディは皆を一望して言った。

|(●),  、(●)、|「この街に知り合いが居る。
           彼に頼んで、なおるよを葬る」

.

354 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:54:43 ID:P/ZE8Ycc0

('A`)「……冷静だな」

 なおるよを見たまま、ドクオがぽつんと囁く。
 ドクオの静かな怒りを感じ取ったギコが、彼を宥める為に喋りだした。


(,,゚Д゚)「……こいつを殺した奴が今もその辺に居るかもしれない。
     取り乱したらダメだ。いいか、冷静とかって話じゃないんだ」

(,,゚Д゚)「何で殺されたのか、誰が殺したのか。
     今それを考えたら動けなくなる。言い方は悪いが、黙れ」


('A`)「……俺はなおるよに会ってた。昼に、少しだけ話をした」

('A`)「こいつ、『頑張れ、ありがとう、またね』って、そう言ってた……」

 ドクオはギコの制止を無視して喋りだした。
 誰かに向けての言葉ではなかった。
 しかし今すぐ吐き出さなければ、胸の内でより大きな怒りを生み出しかねなかった。

('A`)「手伝ってくれるって言った。でもまだガキだと思って、俺は帰るように言った……」


('A`)「……それが、コレか……」


.

355 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:55:44 ID:P/ZE8Ycc0


('A`)「……なんで殺された……」

(,,゚Д゚)「……やめろ」

('A`)「誰が殺しやがった……」

 ドクオの頭いっぱいに、素直クールが目の前で殺された時の光景が蘇る。


( A )「……誰だ……」

 その時、ドクオはペンライトを点けて超能力を発動した。
 左腕が強固な装甲に覆われ、背中に二つの撃鉄が具現化する。

 そして彼自身は自覚していなかったが、彼の周囲には不透明な靄が漂っていた。
 蜃気楼のように漂うそれは、ドクオの怒りに応えるように、少しずつ黒くなる。

.

356 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:56:31 ID:P/ZE8Ycc0


(,,゚Д゚)「……どうやって相手を見つける。
    一人でどうやって居場所を突き止める」

( A )「……」

(,,゚Д゚)「そいつと会えたとして、お前は勝てるのか?
     俺達は協力しないぞ。自分勝手な行動には誰もついて来ない」


(,,゚Д゚)「……だけどな、今ここで『それ』を抑えられるんなら、俺達はまだ仲間で居られる。
    今、それを抑えられないなら、お前はただの人殺しだ」

( A )「……俺はただの人殺しでいい……」

(,,゚Д゚)「……」


(,,-Д-)「……ああそうかよ。だったら言ってやる」

 ギコは目を閉じ、息を吐いてから言った。

.

357 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:58:09 ID:P/ZE8Ycc0


(,,゚Д゚)「なおるよを殺したのはお前だ。
     お前はとっくに、ただの人殺しだ」

( A )「……そうだ。だから殺した奴を殺す」

(,,゚Д゚)「償いにはならねぇ」

( A )「それでいい」

 ドクオは即答した。

(,,゚Д゚)「分からず屋か」

 ギコもまた、即答した。



(,,゚Д゚)「……じゃあ好きにしろ」

 するとギコは呆気なく、ドクオを突き放した。

(;'A`)「…………」

(,,゚Д゚)「……どうした行けよ。お前がそう言った」


(#'A`)「……ッ!」

 何か言いたげにギコを睨む。
 しかしそれも一瞬で、ドクオはみるみる内に息苦しそうな顔になり、目を伏せた。

.

358 名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:59:40 ID:P/ZE8Ycc0



【+  】ゞ ;)「……ダディクール」

|(●),  、(●)、|「……どうした?」

【+  】ゞ ;)「後を、頼む……」

 弱々しく名前を呼ばれて振り返ると、脱力して倒れゆくオサムが視界に入った。

|;(●),  、(●)、|「――棺桶死ッ!!」

 ダディは咄嗟に手を伸ばして受け止めようとしたが、オサムはそのまま地面に崩れ落ち、意識を失った。


(;,,゚Д゚)「こいつ怪我人かよッ!」

 ギコはオサムの傍で膝をつき、彼の呼吸と心音を確かめた。

|;(●),  、(●)、|「どうだ……?」

(;,,゚Д゚)「……息はある。だが、心臓が無い……」

ノハ;゚⊿゚)「……は? 何が無いって?」

 ギコは自身が理解する前に、ありのままを伝えた。

|;(●),  、(●)、|「……不可能を可能にする能力だ。
            恐らくそれで生きている。光源のある場所で絶対安静だ」

.

359 名も無きAAのようです :2015/05/24(日) 00:00:43 ID:.vSxxcK.0

|;(●),  、(●)、|「ヒート、みんなを連れてホテルに行ってくれ。
             場所は分かるな? オサムもすぐに寝かせてやれ」

ノパ⊿゚)「了解だ。ギコ、そいつ運べ」

(;,,゚Д゚)「急に仕切んな。つーかマジで分かってんのか?」

ノハ#゚⊿゚)「いいから黙ってついて来い。そいつ死ぬぞ」

(;,,゚Д゚)「……分かった」

 ヒートとギコはオサムを連れて走り出した。
 周辺には早くも野次馬が湧いていたが、彼らはそれを突っ切っていった。


(;'A`)「……オサム……」

|(●),  、(●)、|「君もだ」

 ダディはドクオに対してキッパリと言い、なおるよの体を慎重に持ち上げた。

|(●),  、(●)、|「私はなおるよを知り合いの家に運ぶ。
           ここに置いておけば雑多に始末されてしまう」

(;'A`)「……」

|(●),  、(●)、|「……どうした。まさか動かないつもりか?」

.

360 名も無きAAのようです :2015/05/24(日) 00:01:31 ID:.vSxxcK.0


(; A )「……一人で動くのは危ない。俺も一緒に行く……」

 長い沈黙の末に、ドクオは絞り出すように言った。
 それはドクオが自分で導き出した、今出来る最善の行いだった。

|(●),  、(●)、|「……分かった。遅れるなよ」

 ダディはドクオへの視線を切り、力強く駆け出した。




(; A )「……」


 友達になれる。笑い合う仲間にもなれる。

 そう思ったからこそ、なおるよを巻き込んではいけないと思った。
 俺みたいな奴と関わってはいけないと、そう思った。


 だが、なおるよは死んだ。誰かに殺された。誰かに……。


.

361 名も無きAAのようです :2015/05/24(日) 00:02:11 ID:.vSxxcK.0




 全てを洗い流すこの雨に、ぬるい雫がこぼれ落ちる。


 この胸の苦しさは、俺に戦いの始まりを告げているのか……。



.

362 名も無きAAのようです :2015/05/24(日) 00:02:55 ID:.vSxxcK.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

       第二十二話 「不治のくらやみ その2」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

.

363 名も無きAAのようです :2015/05/24(日) 00:03:36 ID:.vSxxcK.0




 ――なおるよは、夢の中に六人分の笑顔を思い浮かべていた。


 ただ、それだけで良かった。



.

364 名も無きAAのようです :2015/05/24(日) 00:05:14 ID:.vSxxcK.0
1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71
第十八話 限りある世界 >>89-134
第十九話 ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た >>149-173
第二十話 説明をする回>>194-199 >>240 >>200-233
第二十一話 不治のくらやみ その1 >>247-285

第二十二話 不治のくらやみ その2 >>291-363


次回は5月30日

365 名も無きAAのようです :2015/05/24(日) 00:05:44 ID:B3iwk.T20
乙乙

366 名も無きAAのようです :2015/05/24(日) 01:14:53 ID:2a52fGeo0
おつ

367 名も無きAAのようです :2015/05/24(日) 02:05:13 ID:u1dFS.RQ0
おつ

368 名も無きAAのようです :2015/05/24(日) 17:40:55 ID:4lZ4AC/o0
おつううう!

369 名も無きAAのようです :2015/05/24(日) 19:48:43 ID:KBjAJ0zAO


370 名も無きAAのようです :2015/05/25(月) 03:44:18 ID:ANCNXxiM0
一気に最初から最後まで読んでしまった
セリフとか地の文好き

371 名も無きAAのようです :2015/05/27(水) 09:11:04 ID:0uDYW0NA0
乙乙ー

372 名も無きAAのようです :2015/05/27(水) 16:00:33 ID:IaE.FClw0
ミルナ強くなりすぎィ!
おつ!

373 名も無きAAのようです :2015/05/29(金) 12:05:23 ID:kgan.vPI0
乙乙乙

374 ◆gFPbblEHlQ :2015/05/30(土) 22:35:49 ID:nPOKjnFo0

≪1≫


 荒野のレムナント、その中で唯一都会としての体裁を保つ街・クソワロタ。

 人口の集中に伴うその場凌ぎの開発が繰り返された結果、

 街は荒廃と発展が混在する独自の社会体系を得るまでに拡大していた――


.

375 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:37:09 ID:nPOKjnFo0


 ――叩きつけるような雨が降っていた。
 空のずっと向こうまで、灰色の雲が続いている。

 暗雲に覆われた昼下がり。
 ホテルに入ったギコ達は、それぞれ自由に休息を取っていた。


(,,゚Д゚)「……素直ヒート」

 窓辺に立ち、外をじっと睨んでいるギコが口を開いた。


ノパ⊿゚)「……んだよ」

(,,゚Д゚)「……けっこう良い部屋に泊まるんだな。
    俺達のリーダーは金持ちなのか?」

 ギコは振り返って室内を見た。
 彼の言うとおり、このホテルはクソワロタの中でもかなり上等な施設だった。

 木目のフローリングにクリーム色のカーペットが敷いてあり、その上にはL字形のソファがある。
 ソファの前にはコーヒーカップを置いたテーブルが一つ。コーヒーを淹れたのはギコだが、まだ口はつけていない。
 テーブルの向こうにはテレビ台と薄型テレビが設置されており、その両脇には細長のスタンドライトと観葉植物があった。

.

376 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:38:04 ID:nPOKjnFo0


ノパ⊿゚)「事の大きさを考えれば当然だ。
     寝込みを襲われる可能性は低い方が良い」

 ヒートはソファから離れた食事用のテーブルに居た。
 こちらのテーブルはキッチンに程近く、五人分の椅子が用意されていた。

 彼女はその中の一つに腰掛け、机上で手を組んで静かにしている。
 ギコに話しかけられなければ、彼女はずっとそのままだっただろう。


(,,゚Д゚)「……案外、全員同室で良かったのかもな」

ノパ⊿゚)「アタシらの大食いに感謝しろ、ってな」

 ヒートは普段通りに軽口を叩いたが、彼女は無表情だった。
 大きな考え事をしながら平静を装っているのだと気付くのに、大した洞察は必要なかった。


(,,゚Д゚)(なおるよの事含め、今後の話はダディクールが帰ってからだな……)

 ギコはコーヒーカップを手に取り、ぬるくなったコーヒーを飲んだ。

.

377 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:38:46 ID:nPOKjnFo0


(,,゚Д゚)「……おい」

ノパ⊿゚)「……んだよ。話があるなら一回で済ませろ」

(,,゚Д゚)「棺桶死になんか持ってってやれ。
     女だろ、気を利かせろ」

ノハ;-⊿-)「……コーヒーと水道水しかねぇのにどう気を利かせろってんだ、ったく……」

 ヒートは小言を呟きながらも席を立った。
 電気ケトルで早々に湯を沸かし、コーヒー粉末と一緒にカップに注ぎ込む。


ノパ⊿゚)「おら、持ってけ」

(;,,゚Д゚)「……いや、なんで俺が」

ノパ⊿゚)「お喋りは他所でやれって言ってんだ。
     人を気遣うフリして自分慰めてんじゃねえよザコ」

 コーヒーカップをテーブルに置き、ヒートは勢いよくソファに飛び込んだ。
.

378 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:40:19 ID:nPOKjnFo0


(,,゚Д゚)「寝るなら寝室で寝ろ」

ノハ-⊿-)「……あんまり女扱いしてっと殴るぞ」

(,,゚Д゚)「お前三十路入ってんだろうが。
    女扱いされんのもここらが限界だ、ありがたく思え」

ノハ#-⊿-)「マジでブッ殺すぞ」

(,,゚Д゚)「じゃあオッパイ触っても文句言うなよ」

ノハ-⊿-)「別にいいぜ。だけど触って文句言ったら殺すからな」

(,,゚Д゚)「そのサイズなら文句無しだ。良かったな」

 ヒートは最後に「あいあい、まったくだぁ」と欠伸交じりに言い、ギコに背中を向けた。


(,,゚Д゚)「……」

 話し相手を失ったギコは改めて外を見た。
 それと同時に、外の人影が電柱の後ろに身を隠した。

(,,゚Д゚)(……バレてもいいって感じだな。
     あれの後ろには何が控えてんだか……)

 ギコはカーテンを締め、一人静かにダディクール達の帰りを待ち続けた。

.

379 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:42:11 ID:nPOKjnFo0

≪2≫



 ダディクールが向かった先には、古い教会があった。


 この場所は放棄区画の隙間に生まれた小さな空き地で、四方は建物の背中に囲まれていた。
 ここに出入りできる道はたった一つ。しかもその道は網目のように入り組んだ狭い路地と繋がっているのだ。

 ダディいわく、ここまで迷わずに来れたのは運が良かった。
 彼も教会には久し振りに来ると言っていた。
 もっとも、この場所が何なのかは最後まで一切語らなかったが。


|(●),  、(●)、|「……居てくれよ……」

 ダディはなおるよを背負い直し、教会の扉を叩いた。
 雨音に負けないよう、強めに数回。

 ノブが回り、扉がゆっくりと開け放たれる。


|(●),  、(●)、|「……急用だ。この死体を運んでほしい」

( l v l)「……どっちの死体だよ。俺の目の前には死体が二つあるんだが」

 扉の向こうには教会の主であろう神父服の男が立っていた。
 彼の冗談に顔色一つ変えず、ダディは教会に押し入った。

|(●),  、(●)、|「とにかく邪魔する。後ろのは私の連れだ」

(; l v l)「久し振りに来たかと思えばコレかよ……」

.

380 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:43:10 ID:nPOKjnFo0


(; l v l)「あーあー、びしょ濡れで入りやがって……」

 男はダディが通った後の床を一瞥し、軽い溜め息をついた。
 それを見かねたドクオは一歩前に出て、男に話しかけた。

('A`)「すんません。俺がやっときます」

( l v l)「……知らん顔だな。お前も組織を抜けたクチか?」

('A`)「……組織?」

 聞き返すと、ムネオは何かに気付いて息を呑み、苦い笑みを作って目をそらした。

(; l v l)「いやあ? なんでもねえよ」

 ムネオはダディの後を追い、逃げるように教会の奥に行った。


(; l v l)「モップはあっち、タオルは後で持ってこさせる。
     連れが礼儀知らずじゃなくて安心した。掃除、頼んだぜ」

('A`)「あ、はい……」


('A`)(……まあ、やるか)

 ドクオはさっさとモップを用意し、床掃除に取り掛かった。
.

381 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:44:29 ID:nPOKjnFo0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 床掃除を終えて暇になったドクオは、
 教会で唯一やれる暇潰しに興じるため、最前列の長椅子に座って薄汚いステンドグラスを見上げていた。
 女神か神様かよく分からないが、なにか神々しい感じのデザインだった。


('A`)「……」

 思考は不思議と穏やかだった。
 神様のおかげなのか、止まない雨が逡巡を遮っているのか。
 どちらにせよ、今のドクオはシンプルに物事を考えていた。

 そこに足音が近づいてきた。
 目線を落とすと、肩にタオルを掛けたダディクールがすぐそこに居た。

|(●),  、(●)、|「タオルとホットミルク、砂糖入り」

('A`)「……ああ」

 ドクオは渡されたタオルで全身を拭った。
 ダディはその間にドクオの隣に腰掛け、彼と同じようにステンドグラスを見上げた。

|(●),  、(●)、|「……なおるよの事は終わった。
           実家に送りつけるような真似は出来ないが、彼の故郷で弔うよう依頼した」

|(●),  、(●)、|「名前は刻まれないが、ちゃんと墓も立つ。
            この一件が終わったら墓参りだな」

('A`)「……そうだな」

.

382 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:46:15 ID:nPOKjnFo0


|(●),  、(●)、|「……さ、早くみんなの所に行こう。話し合う事もある」

('A`)「……なあ、死にたいって思った事はあるか?」

 ドクオは唐突に質問した。
 ダディは飄々と答えようとしたが、思いとどまって真剣に答えた。


|(●),  、(●)、|「……思うだけなら、何度かは」

('A`)「……そっか」

|(●),  、(●)、|「……聞いた割りに、随分と素っ気無い反応だな」

('A`)「……ごめん。俺は、死にたくないって思った事がないんだよ。
    無自覚にでも 『俺は生きてて当然なんだ』 とか思ってたのかな、俺は……」

 ドクオは席を立ち、ダディクールと一緒に教会を出て行った。
 空は未だに暗く曇っており、土砂降りの雨がひたすら降り注いでいる。


|(●),  、(●)、|「……ついでだし、神に快晴でも祈るか?」

('A`)「てるてる坊主で十分だろ。帰ったら作るよ」

 二人は再び、雨の中を走り出した。
.

383 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:48:07 ID:nPOKjnFo0

≪3≫



 ギコ達の部屋を見張っていた男は、交代と報告の為に一時間程でその場を去った。

 男は離れたところに停車していた大型トラックに近づき、運転手に合図を送った。
 トラックが動き出し、男を迎えに近づいてくる。
 男が助手席に乗り込むと、トラックはすぐに発進した。


「対象に動きは無い。とりあえず現状を教えてくれ」

「……あっちで起きた殺しの現場に対象が居たらしい。それがこの仕事の発端」

「……それだけ? それだけか?」

「……早く帰って、報告を済ませよう」

 運転手は渋い表情で言った。
 言いたい事は分かっている、という口調だった。

「下っ端だとしても、俺達だって組織の一員だろ……。
 給料どころか、最低限の情報すら貰えないとはな」

「……仕方無いんだよ。仕事があるだけマシだと思っておこう」

 二人はそれぞれ不満を思い浮かべ、それぞれに飲み下した。


.

384 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:50:13 ID:nPOKjnFo0


 数分後にトラックが行き着いたのは、商店街から少し離れたシャッター街だった。
 この通りで開いている店は既に片手で数えるぐらいで、ここも早々に放棄区画の一角に加わるだろう。

「……おい」

 そんなシャッター街を進んでいく最中、運転手が小さく声を掛けた。
 助手席の男は目を閉じて眠っていたため、その一言に気付かない。


「――おい!」

 大声で放たれた二度目の呼びかけで、助手席の男はようやく目を覚ました。

「なっ、なんだよ……」

「あの煙、支部の方向じゃないか!?」

 そう言われておずおずとフロントガラスを覗き込む。
 見上げると、空に向かって立ち上る大きな黒煙を見つけた。
 その方向には運転手が言ったとおり、彼らのアジトがある。


「――支部に連絡を取る! 急げ!」

 男は携帯電話を手にして支部との通信を試みたが、コール音が続くばかりで誰も応答しない。
 遠くの空に見える黒煙。それを見ながら、彼らは何かを予感していた。

.

385 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:52:26 ID:nPOKjnFo0



 ――やがて彼らが支部に到着した時、予感は現実として目の前に現れた。
 組織のレムナント支部とその周辺の光景は、跡形もなく、火炎に飲み込まれていた。


「う、嘘だろ……」

 燃え盛る炎を前にトラックを止め、運転手は息を呑んだ。
 支部として使っていた三階建てのビルは粉々になって崩壊し、今は瓦礫の燃えカスでしかない。

 近隣の建物も一つ残らず崩壊・炎上しており、その一帯は、ただの焼けた荒野と化していた。


「……本部には伝言を残した。行くぞ」

 助手席の男はそう言ってトラックを降りた。
 支部で待機していた他の能力者達はどうなったのか――という自問に、全滅という答えを出しながら。


「バカ野郎! 逃げた方がいい! 見つかる前に――」

 その瞬間、運転手の言葉が爆発にかき消された。
 男は背中に焼けるような熱風を受けながら、咄嗟に振り返った。

.

386 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:54:22 ID:nPOKjnFo0


 振り返ると同時に、男の右肩がふっと軽くなった。
 男は一瞥して理解する。右腕は、消えて無くなっていた。

「お゙っ……!」

 突然の激痛に傷口を押さえて身を捩る。
 男はなんとか目を見開いてトラックを見直したが、そこには炎の塊があるだけだった。
 運転席で黒い影がバタバタしているが、あれを助けている余裕は最早無い。

「くっそ――」

 男は唾棄し、残った左手で光源を取り出した。
 しかし出来なかった。その時すでに、男の左手は地面に落ちていた。

 死の直前、男の眼前を黒い影が過ぎる。
 何が起きたのか、誰にやられたのか。
 そのどちらも理解出来ないまま、男は後ろから心臓を貫かれた。



( д )「…………」

 ミルナとしての意識を失いながら、なお動き続けるその肉体。
 黒甲冑を着た“それ”は、男の胸に突き刺した腕を引き抜き、喉を鳴らした。



.

387 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:56:06 ID:nPOKjnFo0




 「――『天を仰ぐ狂戦士。かの者は、真紅の丘に死を刻む』 」




 燃え盛る景色、降り注ぐ雨。
 終わらない喧騒の中に、穏やかな声が入ってきた。

 黒甲冑は獣のように背中を丸め、声の方に体を向けた。





ミセ*゚ー゚)リ「……みたいな」

 薄ら笑みを浮かべた女――ミセリが、炎の向こうに立っていた。


ミセ*゚ー゚)リ「お久し振り。まさに狂戦士って感じね」

.

388 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:57:41 ID:nPOKjnFo0



( д )「…………」

ミセ*゚-゚)リ

 ミセリは笑みを消し、緊迫した表情になった。
 作り物ではない本物の表情。彼女にそうさせるだけの威圧感が、“それ”にはあった。


ミセ*゚-゚)リ「……良い感じだけど、その力はまだ必要無いの。
       これ以上暴れても困るでしょうから、止めてあげる」

 瞬間、彼女を中心にして突風が起こった。
 風が周囲の雨粒と炎を吹き飛ばし、一瞬の静寂を作る。


ミセ* - )リ「――≪終焉する原初の業火≫」

 静寂を破り、ミセリは囁くように言葉を発し始めた。
 黒甲冑はそれを攻撃と判断し、大地を蹴ってミセリに急襲する。


ミセ* - )リ「 ≪断罪者は剣を収め、地を這う骸を哀れ見る≫ 」

 二文目を言い終えた瞬間、ミセリの背後から無色透明の鎖が飛び出した。
 鎖は黒甲冑の右腕にぶつかると同時に、彼の右腕と融合してその動きを止めた。

.

389 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 22:59:52 ID:nPOKjnFo0


(# д )「■■■■■■ッッッッッ!!!!」

 ――途端、鎖は呆気なく引き千切られた。
 技も特別な力も用いず、純粋な力だけで。

ミセ* - )リ「 ――≪不在の鎖、餓狼の爪牙を戒める―― 」

 眼前に迫った黒甲冑の拳。それに応じ、更に言葉を繋げる。
 今度は四つの鎖が出現し、黒甲冑の四肢に融合した。

(# д )「――――――ッ」

 だが、これも数秒ともたずに破壊。
 口早に続きを発しながら、ミセリは大きく退いた。
 鎖を切られる程度は想像の範疇ではあったが、思わず体が逃げてしまった。


ミセ*;゚ー゚)リ「――全ての骸は彼の地の扉を叩く者なり≫」

ミセ*;゚ー゚)リ「≪骸に群がる亡者を繋ぎ、貪り尽くす鉄鎖の再現≫――」

 ミセリの詠唱が終わろうとした時、黒甲冑の頭上に光が落ちる。
 雨が止み、神々しい光が空に満ち溢れた。

 黒甲冑の意識が頭上にそれた瞬間、ミセリは最後の一文を口にした。


ミセ*;゚ー゚)リ「 ――【Over fiction・Gleipnir】――」


.

390 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:01:05 ID:nPOKjnFo0


(#゚д )「――――」

 空を見上げた彼の双眸が捉えたのは、黄金色の光を受けて乱反射する透明な鎖。
 数は千。その全てが、彼を捕縛しに襲い掛かってきていた。


 鎖の一本が飛び抜けて迫ってきた瞬間、黒甲冑は空高くに飛翔した。
 体を丸めて回転し、空中でスピードを増加させる。
 鎖は空中を駆け巡り、黒甲冑に追随していく。


ミセ*;゚ー゚)リ(……これで駄目となると、こっちも無傷じゃ済まないわね)

 鎖と黒甲冑の速さはほぼ互角だった。しかし互角では駄目だ。彼を捉え切ることは出来ない。
 今のミルナは数本、数十本程度の鎖なら簡単に振り払える。
 生半可な拘束など無意味に等しかった。

ミセ*; ー )リ(対価の後始末は、後の私に任せましょう――)

 しかし、まだ術はある。
 ミセリは息を整え、次の一手に備えた。

.

391 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:05:47 ID:nPOKjnFo0


(# д )「――■■■■■■■」

 千の鎖に追われながら空中を疾駆する黒甲冑。
 近づく鎖を薙ぎ払い、弾き、砕きながら、彼は何かを呟いた。



               breaking my body.
ミセ* - )リ「――――≪血肉の器が砕け散る≫」

 新たな言葉が始まった瞬間、ミセリの両目は真紅に染まった。
 彼女の足元に、赤い閃光が迸る。

               Even if I see all unreason
ミセ* - )リ「 ――≪血は空を流れ、肉は大地に解けていく≫ 」

            I pray.      The end of ideal world.
ミセ* - )リ「 ≪しかして神に叛逆し、孤独の旅路に意味を問う≫―― 」



(; д )(――――止まれ)

 心の奥底に閉じ込められた精神が、暴走した体に命令する。
 悪意と怨嗟の濁流は、そんな小さな言葉すら飲み込んで暴走を続ける。

 黒甲冑の背中に、四つの撃鉄が具現化した。
 撃鉄から噴き出す黒い閃光は翼のように空に広がり、彼の肉体を更に加速させた。
 黒甲冑は音すら置き去りにする速度に達し、鎖の追跡を完全に振り切った。

(#'゚'д )「オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙!!」

 最高速度を維持したまま、向きを転じてミセリに立ち向かう黒甲冑。
 人としての在り方を失って得た力で、彼はまた、同じ道を歩もうとしていた。

.

392 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:07:39 ID:nPOKjnFo0



             I crave   【Breaking The Rules】.
ミセ* - )リ「 ――≪誰も居ない、一人きりの荒野の果てで≫」


 ――直後、赤と黒の閃光が雨空を引き裂いた。

.

393 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:08:20 ID:nPOKjnFo0

≪4≫




 ドアが二度叩かれた。
 ギコは超能力を即発動できる状態で、ドアに向かった。


(,,゚Д゚)「……なおるよは一緒か?」

 「……下手な冗談は止めておけ」

 その答えと声色に一定の信用を置き、ギコはドアを開けた。


(,,゚Д゚)「……早く入れ。監視されてる」

|(●),  、(●)、|「ドクオ君、入るぞ」

('A`)「……ああ」

 ギコは二人を招きいれると、廊下の左右を見渡してからドアを閉めた。


.

394 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:09:12 ID:nPOKjnFo0



('A`)「……ミルナとオサムは?」

 リビングに入り、ドクオはここに居ない二人の事を聞いた。

(,,゚Д゚)「棺桶死は寝室を独占中だ。相当きてるらしい。そっちは知らん」

 ギコは寝室のドアを一瞥して答え、素直ヒートの頬を力強くひっぱたいた。
 彼女を起こすにはこれぐらい必要なのだと、ギコは数日の共同生活で十分に理解していた。

ノハ;゚⊿゚)「いってえ!!」

(,,゚Д゚)「ダディクールとドクオが来たぞ。今後の方針を決める」

|(●),  、(●)、|「ドクオ君、オサムを呼んで来てくれ」

('A`)「分かった」

|(●),  、(●)、|「寝てたら起こさなくていいからな」

 頷き、ドクオは寝室にそっと入っていった。

.

395 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:10:46 ID:nPOKjnFo0


('A`)「……オサムー……」

 寝室内は暗く、電気は点いていなかった。

 寝室にはベッドが三つあった。
 窓際のベッドに腰掛けている人影に、ドクオは声を掛けた。

('A`)「……オサム? 俺だ、みんな揃ったぞ」

【+  】ゞ゚)「……お前か。すぐに行く」

 その時、外で唸るような雷鳴が起きた。
 光が大地に落ち、部屋の中を真っ白に照らし出す。


(;'A`)「――――ッ!?」

 部屋が光に満ちた一瞬、ドクオは自分の目を疑った。

 棺桶死オサムの胸には大きな裂傷の古傷と、拳ほどの風穴が開いていた。
 そこに収まっているべき器官は、無い。

 やがて部屋に暗闇が戻る。オサムは服を着直し、立ち上がった。


(;'A`)「……お前……」

【+  】ゞ゚)「……気にするな。峠は越えた」

 オサムはドクオの横を通り過ぎ、リビングに出た。
 しかし、ドクオはその場に立ち竦んでしばらく動けなかった。

.

396 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:11:55 ID:nPOKjnFo0


(;'A`)(……あの位置、心臓だよな……)

(;'A`)(……本当に無いのか、心臓……)


(;'A`)(……なんなんだよ……)

(;'A`)(なおるよも、ダディクールも、お前も……)

 ドクオは片手で頭を支え、ふらりとベッドに腰を下ろした。
 猛烈な立ち眩みだった。


(; A )(……クソッ! なにが起こってんだ!)

 ドクオは今まで、自分一人の問題にしか向き合ってこなかった。
 他人への興味なんて微塵も無かったし、興味が無いという自覚すら無かった。

 ゆえに彼は、多くの他人に囲まれている現状に対して、とても強い違和感・乖離感を覚えていた。


 今までは何があっても一人で開き直り、思い込み、なあなあにすれば前進出来た。
 彼の中には自分と素直クール以外の人間が居ないのだから、ある意味それは当然の事だった。

 今日の事だって、開き直ればいつも通りに戻れる。
 死んだ奴は弱い奴だ、他人の過去も事情も知らねぇ、どうでもいい――

.

397 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:12:06 ID:Du3bMv260
Fate感あるよな

398 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:12:36 ID:nPOKjnFo0


 ――だが、ドクオはなおるよの死を開き直れなかった。
 思い切って開き直ろうとする度に、息苦しくなる程の不快感が体内を駆け巡った。

 なんとかこの感覚を鎮めようと色んな思考を巡らせるも、全てが失敗した。


(; A )(気持ち悪い……なんだってんだよ、クソ……)

 開き直りは個人の問題は片付けられるが、他人の問題は絶対に解決出来ない。
 ドクオはまだ、その事を知らなかった。

(; A )(……)

 ドクオは内心の不快感を拭い切れないまま、リビングに戻った。

.

399 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:13:23 ID:nPOKjnFo0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 全員での話し合いはトントン拍子で進んだ。
 話し合いの最後に、ダディクールは全員に向けて改めて言った。


|(一),  、(一)、|「まず、単独行動は禁止。そして光源を常備すること」

|(●),  、(●)、|「我々を監視する組織については私が調べておく。
            攻撃されたら仕方ないが、過激な対応はするな」

('A`)「……組織か」

|(●),  、(●)、|「本来の目的である、二週間後の制圧作戦についてだが……」

(,,゚Д゚)「当然、やるよな」

|(●),  、(●)、|「……殺される覚悟がある者だけ、な。
            既にそういう状況だという事は、全員自覚してくれ」

ノハ-⊿-)「ま、そらそうだ……」

【+  】ゞ゚)「……」

.

400 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:14:04 ID:nPOKjnFo0



('A`)「……今更悪いけど、俺、それには付き合えねえ」


 沈黙する空間に、ドクオの言葉が染み渡った。
 すると、思い思いの姿勢を取っていた面々が、一斉にドクオを見た。

 ドクオは、彼らの無言の問いかけに答えた。

('A`)「ミルナを探す。あいつが居ないのは、変だ」

(,,゚Д゚)「……そっちに集中するってか」

('A`)「……俺はレムナントがあっち側に支配されようが、知ったこっちゃない。
    ミルナを探しながら、なおるよを殺した奴を――」


(,,゚Д゚)「――本気で、言ってるんだな?」

 話を遮ってギコが問い質す。
 真剣な眼差しで、じっとドクオを見つめながら。

('A`)「……ああ。一人の方が気楽でいい」

(,,゚Д゚)「俺が言った事、もう忘れたのか?」


 間を置いてから、ドクオは最後に決定的な言葉を付け加えた。



.

401 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:14:44 ID:nPOKjnFo0






('A`)「お前らは、信用出来ない」





.

402 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:15:26 ID:nPOKjnFo0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

      第二十三話 「不治のくらやみ その3」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

.

403 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:16:06 ID:nPOKjnFo0

≪5≫



 雨の中を歩く。
 水浸しの地面を歩くと、ぴちゃぴちゃと音が鳴った。

 雨の音は孤独を紛らわすのに丁度いい。
 頭にずっとノイズが掛かるようで、一つの事に集中できる。


( A )(……元々こんなだっただろうが……)

( A )(何を後悔してんだ、俺は……)


 ギコ達と別離したドクオは、混濁した感情を抱えて当ても無く彷徨っていた。

 他人という未知の存在に対して、ドクオは何一つとして答えを出せなかった。
 決してギコ達が嫌いという訳ではない。逃げ出した理由さえ、自分でもよく分かっていなかった。


 なおるよが死んでも誰も動じなかったから。
 ダディクールも、棺桶死オサムも、何かを隠してるから。
 そもそも、あの連中を信じる理由が何も無いから。

 思いつく理由を頭の中に並べても、どれも違う気がする。
 ドクオは、いつまでもこの自問自答を繰り返していた。


 答えを出せば、素直クールが自分にとって何なのか分かってしまう。
 だからこそ、彼は自問の答えをはっきりと言葉に出来なかった――


.

404 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:17:54 ID:nPOKjnFo0



 ――ドクオはただ、素直クール以外のものに心を支えられるのが嫌だった。


 たった一人の相手に捧げ、向けていた筈の心に、誰かの手が加わるのが怖かった。
 ようやく手に入れた純粋な感情を失うのが、ドクオはただひたすらに怖かった。


 一番簡単な形で言ってしまえば、ドクオは、素直クールに嫌われたくなかった。
 その思いは、彼女が知っている“あの頃のドクオ”を保持する事でしか解消出来なかった。

 だから他人を拒むしかなかった。
 自分を変えてしまうものを遠ざける以外に、ドクオには出来る事がなかった。
 それはまるで一人の神に心身を捧げるような――歪な執着でしかない。


 俺は彼女に依存・陶酔した理由の為だけに、初めての仲間すら放棄した。
 たった一人の友達ですら手にかけ、殺しかけた。

 そんな素直クールを否定するような答えを出してしまえば、ドクオには生きる意味が無くなってしまう。
 彼女の存在が生きることに直結している彼には、その答えを受け入れることは絶対に出来なかった。
 たとえ、孤立する事になっても。

.

405 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:18:34 ID:nPOKjnFo0



「――――■■■■■■■■■!!」

 その時、どこかから咆哮が轟いてきた。
 肌を刺すような威圧感を帯びた、人外の咆哮だった。


('A`)「……あっちか」

 思考を遮られ、意識が現実世界に戻る。
 咆哮につられて空を見渡すと、遠くの空が黄金色に輝いていた。


('A`)「……」

 足は、自然とそちらに向かった。
 吸い寄せられるような、そんな感覚があった。



('A`)(呼ばれてる――)

 体に熱が宿り、ドクオは己の感覚に従って動き出した。

 行く先に何が待っているかも分からぬまま、少年は死と雨にまみれて――



.

406 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:20:18 ID:nPOKjnFo0

1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71
第十八話 限りある世界 >>89-134
第十九話 ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た >>149-173
第二十話 説明をする回>>194-199 >>240 >>200-233
第二十一話 不治のくらやみ その1 >>247-285
第二十二話 不治のくらやみ その2 >>291-363

第二十三話 不治のくらやみ その3 >>374-405

Fate/Staynight 好評放送中!
英文監修はグーグル先生です

次回は明後日

407 名も無きAAのようです :2015/05/30(土) 23:58:34 ID:D3YLI4K60
おつー

408 名も無きAAのようです :2015/05/31(日) 00:10:21 ID:V5XLi8uM0
おつ

409 名も無きAAのようです :2015/05/31(日) 16:14:33 ID:y7/IEwWA0

緊迫してるな

410 名も無きAAのようです :2015/05/31(日) 19:30:50 ID:y7N./s/.0
fateオマージュは微妙…

411 名も無きAAのようです :2015/06/01(月) 14:16:12 ID:.s.aoslY0
オマージュがうまくできているのかいなかは物語の面白さにとってさして重要ではないからいいけど
ドクオずぶずぶだなーどーすんだろ


412 名も無きAAのようです :2015/06/01(月) 14:59:49 ID:mCCL6n8s0
まあ10代半ばの子供だからねドクオ

413 ◆gFPbblEHlQ :2015/06/02(火) 03:43:54 ID:ApiOfvPA0

≪1≫



 ――――熱い。


 失われていた感覚が、熱によって少しずつ戻ってくる。


ミセ* - )リ(ここは…………)

 徐々に回復していく視力。
 彼女は目の前の光景を呆然と捉え、ゆるやかに思考を巡らせた。


 大地が燃え、家屋が崩れ、何かがが雄叫びを上げている。
 焦土と化したその場所に、彼女は傷だらけで横たわっていた。


ミセ* - )リ(……懐かしい)

 ふと、郷愁に浸る。
 状況に似合わない感情なのは分かっていたが、それでも彼女は思わずにいられなかった。

 これと同じ光景を、どこかで見た事がある――


.

414 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:44:34 ID:ApiOfvPA0


 炎の揺らめきの中に、黒い影が立ち上がった。

 彼女は黒い影に途轍もない恐怖を感じた。
 しかし体は動こうとせず、恐怖もやがて諦めに染まった。


ミセ* - )リ(……このまま、死ぬのかな……)

 そう思った直後、彼女はまた懐かしい感覚を覚えた。
 同じような場面で同じような事を言った、そんな気がした。


 黒い影が少しずつ近づいてくる。
 ガチャ、ガチャという重苦しい金属音が、歩に合わせて聞こえてくる。

 じっと待てば、終わらせてくれるのだろうか。

 光を失った目で、彼女は黒い影が自分のもとに来るのを待ち侘びた。


.

415 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:46:41 ID:ApiOfvPA0


 その時、何かが彼女の視界を遮った。
 一瞬焦点が合わず、ぼんやりと二つの棒があると彼女は錯覚した。


「……お前か」

 小さな声がして、彼女は視線を持ち上げる。
 そこにあったのは小さな背中と、鋼鉄に覆われた左腕――



( A )「――お前がやったのか」


 私ではない、あの黒い影に言っている。
 雨に濡れた体を震わせて、今にも消えそうな声で。

( A )「……違ってもいい。でも、この女に手は出させない」

( A )「……誰かを守るなら、償いになるだろ」

 少年は空虚に向かってそう言い、拳を構えて腰を落とした。



.

416 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:47:22 ID:ApiOfvPA0

≪2≫



 ――夢の中で彼女に出会うのは、もう何度目だろう。



 満天の星に覆われた、荒野の夢だった。
 ドクオはそこにぽつんと立ち、彼女もまた、ドクオの前にぽつんと立っていた。


 彼女には顔が無かった。
 彼女の表情は、黒い雨が滲んだように跡形も無くなっている。

 口の無い顔が話し始める。


「――色んな人に、会ったみたいだな」



.

417 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:48:12 ID:ApiOfvPA0


「素直に嬉しいぞ。お前には、私以外の誰かが必要だったから……」


(;'A`)「――――!」

 彼女の口振りに疎外感を覚えたドクオは、彼女を引き止めようと口を開いた。
 だが、言葉は何も出てこない。


「もう一度エクストに会え。そして、本当の事を知ってほしい」

「……そして、本当の事を知った君に向けて、少しだけ」

.

418 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:49:22 ID:ApiOfvPA0


 彼女の顔に、はっきりとした表情が浮かび上がった。

 素直クールは困ったような笑みをしながら、最後に言った。


「弱い私に付き合ってくれてありがとう」

「貴方を騙して、引き止めてしまって……ごめんなさい」


「出来れば、もう二度と、私に会おうとしないでくれ――」

.

419 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:50:06 ID:ApiOfvPA0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



(; A゚)(――――ッ)


 一秒にも満たない、生き死にを左右する瞬間の連続。
 思考を繋げる間もなく、息をする間もなく、反発するような直感だけが体を突き動かしている。

 ドクオの右腕は、もうとっくに使い物にならなくなっていた。
 左腕は装甲があるだけマシだったが、生身の右腕は黒甲冑との攻防には耐え切れなかった。

 右腕はあらぬ方向にひしゃげ、赤く腫れ上がり、骨が飛び出していた。
 もはや感覚すら通っておらず、彼の右腕はただの肉塊に成り果てている。

 この腕は、もう二度と使い物にならない。


 一瞬、突き刺すような黒甲冑の拳撃が止まった。
 ドクオは反撃の好機を見逃さず、背の撃鉄を叩き落した。
 彼の背中で閃光が爆発し、拳に渾身の力を送り込む。

.

420 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:51:08 ID:ApiOfvPA0


(# A゚)「お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ッッッ!!」

 絶叫して放たれた左拳が黒甲冑の兜を叩く。
 それと同時に、マグナムブロウの装甲に亀裂が走った。
 限界なのは右だけではない。左腕が動かなくなるのも時間の問題だった。

 頭を全力で殴られた黒甲冑は即座に後退し、離れた所からドクオを見据えた。

(; A゚)(……効いてねえか)

 二人は暗黙し、数秒の休憩を挟んでから、戦いを再開した。


「――――■■■■■■■!」

 地面が響いた直後、黒甲冑の影から黒い液体が噴き出した。
 液体は膜状に薄く大きく広がり、ドクオに向けて槍状の物を一斉に発射した。

(; A゚)「ッ!」

 形振り構わず、ドクオは勢いよく瓦礫の陰に飛び込んだ。

.

421 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:54:24 ID:ApiOfvPA0

 しかし、瓦礫が楯になるという期待は軽率だった。
 放たれた槍の威力・鋭利さは凄まじく、瓦礫は絹綿も同然の盾だった。

(; A )「がッ――――」

 陰に飛び込んで間もなく、咳き込むような悲鳴を漏らす。
 自分の体を見る前に、ドクオは瓦礫の陰を転がり出た。

 マグナムブロウで地面を殴り、着地も考えずにどこかへ体を吹っ飛ばす。
 しかし、それだけでは轟音を伴って掃射される槍からは逃げ切れなかった。


(# A゚)「――――」

 地面に腕を突き立てて勢いを殺し、即座に立ち直る。
 ドクオは息を止めて目を見開き、飛来する槍に向かって次々と拳を振るった。
 直撃するものだけを選んで打ち落とし、最低限の身動きで槍をかわしていく。

 時間にして十秒、数にして百本近い槍。
 それを左腕一本で凌ぎきったドクオは、瞳孔の開ききった目で自身の体を一瞥した。


(; A゚)「……」


 左肩に一本、腹に二本、使えなくなった右腕に一本。
 他に直撃は無かったものの、体の至るところの肉が抉り取られている。

 痛いとか、怖いとか、引き下がるとか……そういう感覚はすっかり麻痺していた。
 ドクオは、ここまで来ても死を感じられない自分を滑稽に思った。


.

422 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:55:04 ID:ApiOfvPA0



 ――このまま死んでも、きっと俺は何も思わない。


 何も成し遂げていない人生でも、きっと後悔は無いんだと思う。


 俺は、自分というものを持っていないから――


.

423 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:55:44 ID:ApiOfvPA0



「■■■■■■■――!!」

 黒甲冑が咆哮する。
 散漫しかけたドクオの意識が現実に戻る。

 目の前には、見たくも無い現実が立ち塞がっていた。


(# A゚)「……上等だッ……!」

 ドクオは体に刺さった槍を抜き捨て、黒甲冑に向かって走り出した。
 傷口から血が噴き出し、意識は混濁を深めていく――


.

424 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:56:24 ID:ApiOfvPA0



 ――けっきょくの所、俺自身には戦う理由なんか無い。

 あの人は俺の生きる理由そのものだ。決して、戦う理由なんかじゃない。


 あの人がどこかで死んでしまっても、俺は死ぬほど泣いて……きっと、それで終わる。

 好きな人が死んだって、けっきょく俺は、それを乗り越えて生きてしまうんだと思う。

 心の中の素直クールを都合の良いように塗り替えながら、勝手な開き直りで前に進んでいく――

.

425 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:57:05 ID:ApiOfvPA0


 今でこそ思う。人は、どうしても強くなってしまう生き物だ。

 俺も強くなってしまった――悲しみの一つや二つ、乗り越えていけるほどに。

 心のどこかで、もうとっくに、俺は彼女の事を諦めていたのかもしれない。


.

426 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:58:44 ID:ApiOfvPA0


 ――いつしか俺は、一人でも生きていけるようになってしまっていた。

 素直クールが居なくても十分生きていけるほど、強くなってしまっていた。


 だけど俺は、あの人が過去の存在になっている事をどうしても受け入れられなかった。

 あの人の顔すら忘れかけているのに、俺はどうしても――それを認めたくなかった。


 だから他人を、ギコ達を拒んでしまった。

 これ以上他人を受け入れたら、いつか本当に彼女を忘れてしまうと思ったから……。

427 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 03:59:24 ID:ApiOfvPA0


 ――他人を知る度に自分の中の神が薄らいでいく。

 敵味方に関わらず、他人という存在は俺に夢を忘れさせた。

 そして何度も、あの頃に死んでおけばよかったと思っている。


 子供のままで死んでおけば、きっと夢から覚める事もなかったのに――――

.

428 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:00:11 ID:ApiOfvPA0




 ――バキン、と音が鳴った。
 左腕の装甲が崩れ、空に舞った装甲は光の塵になって消えていく。


(;゚A゚)「――――」


 この瞬間にも、無数の黒槍が目の前に迫ってきている。

 体力は底をつき、限界を超えている。
 なんとか数本撃墜出来ても、残る数十本は確実にこの体を貫くだろう。


(;゚A゚)(――ダメだ)

 視界を覆い尽くした黒槍の弾幕。
 逃げ場があったとしても、この足ではとても逃げ切れない。

.

429 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:02:03 ID:ApiOfvPA0


 終わったと、確信した。

(; A )「ぐ、うッ……」

 途端、失われていた感覚が一気に息を吹き返し、ドクオは全身の激痛に嗚咽を吐いた。
 死を前にした生存本能が最後の力を振り絞り、ドクオの脳に生きろと命令する。

(; A )(でも、どうすりゃいい……)

 考える時間は十分にあった。
 本来その時間は走馬灯を見る為に用意された時間だったが、肉体がそれを許さなかった。
 終わるのはまだ早いと、本能が最後の意地を張っていた。

(; A )(相手は訳分かんねぇ化け物、腕っ節でも歯が立たねぇ……)

(; A )(撃動が直撃しても無傷……どうしたって無理だ……)


(; A )(何一つ、勝てる気が――)



 ――まだ一つ、あるじゃねえか。

 その時、ドクオの思考に割り込むように、心の中で誰かが囁いた。
 彼は心に湧いた声に従い、まだ自分に残されているという “一つ” を模索する――

.

430 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:03:37 ID:ApiOfvPA0



 ――背中に、異物感があった。
 思わず振り返ってみると、ドクオは“二つ目の撃鉄”に目を奪われた。


(;゚A゚)(――――いや、でも、こいつは)

 ドクオは咄嗟にミルナの言いつけを思い出す。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

( ゚д゚ )「……最終的に俺と同じなるか、存在そのものがtanasinnに呑み込まれる。
     強過ぎる力を扱うなら、それを制するだけの精神が必要なんだ」

( ゚д゚ )「少しずつ慣らして使うなら問題ないだろうが、一個目の撃鉄と同じような使い方は絶対にするな。
     もしそんな使い方をすれば、tanasinnはお前の全てを燃料にして暴れ回るぞ」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



(;゚A゚)(……でも、今使わなきゃここで死ぬ……)

(;゚A゚)(……それだけは絶対に嫌だ。このまま、何一つ遂げずに死ぬのだけは……)

.

431 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:04:45 ID:ApiOfvPA0



(; A )(……俺は死にたくない)

(; A )(ここで死んだら、俺は独りぼっちのままだ……)

 視線を前に戻し、心の中で囁く。

 目の前には変わらず黒槍の雨。
 止まったように少しずつ動く時間の中で、ドクオは心を決めた。


.

432 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:05:25 ID:ApiOfvPA0


 ……もう一度会えるなら誰でもいい。

 もしもこの戦いを生き残れて、もしも誰かに会えたなら、

 少しは心を開く努力をして、めいっぱい笑う努力をしてみたい。


 器用には生きられないけど、せめて、自分が生きる理由を守れるようになりたい。

 生きる理由をあの人に押し付けるのも、この戦いで最後にする……。

.

433 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:06:58 ID:ApiOfvPA0

 この先何を理由に生きればいいかは分からないけど、

 とりあえず、色んな人の思い出と一緒に生きてみようと思う。


 ちょっとしかない思い出を大切にして、生きる理由を沢山作って、

 そのせいでいつかの夜を忘れたら、あの夜を想って夜明けまで泣こう。


 だから今だけは、この時だけは――――生きる為に戦う。

 俺が俺自身として生きる為に、この死線だけは、絶対に越えて行く――――

434 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:07:48 ID:ApiOfvPA0







 ――ドクオの背で、二つ目の撃鉄が落ちた。






.

435 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:08:28 ID:ApiOfvPA0


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          第二十四話 「幼年期の終わり」

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436 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:09:25 ID:ApiOfvPA0

≪3≫



 その瞬間、ドクオの自我は消滅した。
 肉体の隅々まで根を張っていた心が、するりと引き抜かれる感覚があった。


(; A゚)「――――あ」

 心臓の鼓動が、激痛と共に全身に響き渡る。
 痛みは一瞬で飽和し、五感が精神との接続を放棄する。

 ドクオという人間は、この体から完全に切り離された。
 やがて、別の存在が彼の体内で起動した。

.

437 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:10:33 ID:ApiOfvPA0



 ドクオの体から、マグナムブロウが剥がれ落ちる。
 限界を超えて使役された武装は、呆気なく光の塵となって消滅した。

 降り注ぐ無数の黒槍。
 その全てが必殺――これを前にした時点で、あらゆる防御が無意味となる。
 ならば、真っ向からの衝突以外に活路は無い。


 より強く、誰よりも強く。

 tanasinnは彼の願いに強く共鳴し、願いを具現化し始める。


 背中を押すように、風が吹いた。

.

438 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:14:13 ID:ApiOfvPA0


 左手を振り上げ、呟く。

 あらゆる力を超越しうる絶対の力の名を。

 幼年期の始まりに見た、あの夜空の象徴を。


  “アルター
「≪天の光は――――」


 だが、名を呼ぶ最中、脳に――心に亀裂が走った。

 何かが不快感を伴って心身に染み込んでくる。
 取り除こうにも、それは一瞬の内に彼の肉体を支配してしまった。


( ∀`)「……へえ、いい感じじゃねえか」

 再び、ドクオの体を動かすものが変化した。
 その存在を一言で表すなら、それは――悪魔だった。

.

439 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:21:29 ID:ApiOfvPA0
1〜15話 >>2
第十六話 仲間を求めて >>6-24
第十七話 Waste Land >>33-71
第十八話 限りある世界 >>89-134
第十九話 ドクオは泥を見た。ミルナは星を見た >>149-173
第二十話 説明をする回>>194-199 >>240 >>200-233
第二十一話 不治のくらやみ その1 >>247-285
第二十二話 不治のくらやみ その2 >>291-363
第二十三話 不治のくらやみ その3 >>374-405

第二十四話 幼年期の終わり >>413-438


第二部終わりです 次回からの第三部で完結予定です

書き溜めは出し切りました 今は25話を書いています
恐らく8〜9月まで逃亡します 頑張って書き溜めます(^ω^)('A`)

440 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 04:28:11 ID:FYog/wEQ0
おつー

441 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 07:22:42 ID:T96NQP3A0
クールからの卒業か
続きが気になって仕方ない
待ってるぞ乙

442 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 12:46:18 ID:OzOe22js0
乙乙、一番気になってる現行だ

443 名も無きAAのようです :2015/06/02(火) 18:50:08 ID:FQqwYZwc0
乙!
すごく熱い展開だな

444 名も無きAAのようです :2015/06/03(水) 09:12:24 ID:CFj3rFnM0
おつ

445 名も無きAAのようです :2015/06/04(木) 15:12:22 ID:268HRCGA0


446 名も無きAAのようです :2015/06/08(月) 20:21:37 ID:HnlBdGLUO


447 ◆wP0l9mnb1E :2015/07/27(月) 03:57:58 ID:6uCK4wJk0
(^ω^)こんなのが9ヶ月前からあったんだね('A`)
http://notepad.cc/share/LrIFrDyTbB

448 名も無きAAのようです :2015/08/13(木) 21:15:00 ID:z4XSOr6oO
おもしろい

449 名も無きAAのようです :2015/08/16(日) 23:28:20 ID:lcfO6FSY0
もうすぐかなぁ?

450 ◆gFPbblEHlQ :2015/08/16(日) 23:42:28 ID:wM8XR6cQ0
明日の夜に投下します
>>447はわたしです|  ^o^ |
書き溜めの進捗が見たい人はこれ見てね(^ω^)

451 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 00:04:01 ID:gkwo6/xg0
いえぇぇぇぇぇぇす!!

452 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 10:38:40 ID:szhc58M60
イリス症候群にかかっててワロタ
楽しみに待ってる

453 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 17:36:56 ID:zmb2k71.0


すごいわかるあらすじ!前回までの撃鉄!


( ゚д゚ )「母さん! 俺もう飽きてやめたりしない!
     進研ゼミ(tanasinn)から逃げたりしない! 勉強する(戦う)よ!」


('A`)「マジ無理・・・別にハッキリした理由はないけど人を信用できない・・・」

ミセ*;´ー`)リ「ゲホゲホ! ひーつらい!」

('A`)「なんか困ってる人が居る・・・鬱だけど助けとこ・・・」


( ゚д゚ )「進研ゼミ(tanasinn)から分かりやすい教材(闇堕ち描写)が届いたぞ!」

( ゚д゚ )「これでもう勉強(戦闘)でみんなに置いていかれることもない! うおお!」


('A`)「うっわつよでもがんばろ」

川 ゚ -゚)「がんばれドクオ。あと私には秘密があるけど気にせず戦ってくれ」

('A`)「なにそれ気になる」

( ゚д゚ )「うおおお! これなら期末もばっちりだ!」

('A`)「うおりゃ。あーもう撃鉄落としちゃう」


第二部 おわり

454 ◆gFPbblEHlQ :2015/08/17(月) 17:37:57 ID:zmb2k71.0

≪1≫




('A`)「――お前らは、信用出来ない」


(,,゚Д゚)「……じゃあ決まりだ。さっさと失せろ、部外者」

 言いながら、ギコはダディクールに視線を送った。
 俺の口車に乗れ。ギコの双眸はハッキリとそう語っていた。


|(●),  、(●)、|「……まぁ、どうするかは自由だ。
           仲間が必要なのはお互い様だと思っていたが、残念だ」

('A`)「……なんかあったら知らせに来るよ。
    関わった手前、それぐらいはさせてほしい」

 ドクオは俯いて歩き出し、部屋を後にした。
 彼を呼び止めようとする者は、誰も居ない。


.

455 ◆gFPbblEHlQ :2015/08/17(月) 17:38:56 ID:zmb2k71.0



ノパ⊿゚)「……ぬるい奴ら」

 ドクオが消えてから最初に喋ったのはヒートだった。

 彼女はソファに腰掛けると、暗い雰囲気に対抗するべくテレビを点けた。
 録画されていた適当な番組を再生し、音量を上げていく。


|(●),  、(●)、|「……あれが普通の反応だろう。
            我々の様子に違和感を覚えて、不信に思うのも仕方ない」

|(●),  、(●)、|「私だって出来れば止めたかった。
            しかし、あんな目で訴え掛けられてはなぁ……」

 ダディは嫌味たらしい微笑みをギコに向けた。

(#,,゚Д゚)「うるせぇぞ」

 ギコがそっぽを向き、悪態をつく。


(,,゚Д゚)「大体な、人死にくらいでビビる奴なら最初っから要らねぇんだ。
     ガキが消えて清々したくらいだ。食費も浮くしな」

ノパ⊿゚)「だよなぁ。でなけりゃ、こんな状況で外に追い出したりしねぇよなぁ」

ノパ⊿゚)「訂正するぜ。ひっでえ奴らだ。あんなガキ、いつ殺されてもおかしくねぇわ」

(,,゚Д゚)「……」

.

456 ◆gFPbblEHlQ :2015/08/17(月) 17:40:25 ID:zmb2k71.0



(,,゚Д゚)「……ちょっと行ってくる」


|(●),  、(●)、|「……どこに?」

(#,,゚Д゚)「便所だッ!! 聞くなクソ野郎!」

 早足で歩き出し、ギコも部屋を出て行った。
 


ノパ⊿゚)「……結局追うのかよ。あいつごと殺されるかもな」

|(●),  、(●)、|「……それはないさ」

 表情から笑みを消し、ダディは冷たく言い切った。

|(●),  、(●)、|「棺桶死、ヒート、話がある。
           ギコにも後で話すが、とりあえず聞いて欲しい」


.

457 ◆gFPbblEHlQ :2015/08/17(月) 17:41:35 ID:zmb2k71.0



【+  】ゞ゚)「……俺はギコの時でいい。もう少し、休みたい」

 部屋の片隅で蹲っていたオサムが、ダディを一瞥して言う。
 オサムの顔色はすっかり青ざめており、今にも倒れそうなほど衰弱した様子だった。


|(●),  、(●)、|「……なおるよなら、まだ生きてる」

【+  】ゞ゚;)「――ッ!?」

 そんな彼に対して、ダディは一切の装飾無しで真実を語った。


|(●),  、(●)、|「ギリギリだったが、一命を取り留めた」

ノパ⊿゚)「……お前、やっぱムネオのとこに行きやがったな」

|(●),  、(●)、|「ああ。他に頼る当てが無かった」


【+  】ゞ゚;)「まっ、待て!」

 話に割り込み、オサムは椅子を蹴飛ばして立ち上がった。

【+  】ゞ゚;)「あいつが生きてるって……」

|(●),  、(●)、|「……そうだ、生きている。あの時だって心臓はまだ動いてた。
            お前が第一発見者だが、確認しなかったんだな」

.

458 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 17:42:15 ID:zmb2k71.0


【+  】ゞ゚;)「……なおるよは今どこだ」

|(●),  、(●)、|「まず私の質問に答えろ」

 ダディは語気を強めて言った。


|(●),  、(●)、|「あの状況で、どうして彼が死んだと思った?」

【+  】ゞ゚;)「……見て明らかだった」

|(●),  、(●)、|「お前はそんな思い込みで喋る奴じゃない。
            何か、彼が死んだと確信するようなものを見てしまったんだろう」

|(●),  、(●)、|「例えば、自分より強い誰か、とか」

【+  】ゞ゚;)「……」


ノパ⊿゚)「……じゃあコイツ、なおるよをやった犯人を見てるのか?」

|(●),  、(●)、|「……私はそう思っているし、もう犯人の見当もついている」


.

459 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 17:43:18 ID:zmb2k71.0


|(●),  、(●)、|「棺桶死オサム。
           お前はミルナを探しに行って、なおるよを見つけたな」

【+  】ゞ゚;)「……」


|(●),  、(●)、|「そこで一つ聞きたい。
           もしかして、ミルナとなおるよは一緒に居たんじゃないのか?」

|(●),  、(●)、|「だからミルナを探す過程でなおるよを見つけられた。
           そうであるなら、犯人は殆ど決まったようなものだろう」

【+  】ゞ゚;)「……」

 畳み掛けるような追求に、オサムは口ごもって言葉を返せなかった。
 オサムは隠すことをやめ、ダディの言葉に頷いた。


【+  】ゞ-;)「……やった所は見てないが、『俺がやった』と奴は言った」

|(●),  、(●)、|「……ミルナは、他に何か言ってなかったか」

【+  】ゞ゚;)「……俺を殺したら他の奴には手を出さない、と言っていた。
        恐らくミルナは、あの姿を見た奴は全員殺す気でいる」


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460 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 17:44:11 ID:zmb2k71.0


ノパ⊿゚)「……おい、お前の能力って確かスゲー強かったよな。
     当然、勝ったんだよな?」

ノパ⊿゚)「勝ったからお前はここに居て、ミルナは居ないんだよな?」

 まさか――と思いながら、ヒートはオサムに問い掛ける。


【+  】ゞ゚)「……いや、負けた。俺はミルナに殺された」

【+  】ゞ゚)「死んだふりをして――というか、俺は実際しばらく死んでいた。
       ミルナはその間に消えた。俺が今生きてる理由は……」


ノハ;-⊿-)「……不可能を可能にする能力。てめぇも大概だな」

【+  】ゞ゚)「……ああ。心臓は今も再生中だ。三日もあれば、何とかなる」

 オサムは自身の胸に手を当てた。

【+  】ゞ゚)「……だが、どおりでなおるよを蘇生出来なかった訳だ。
        まだ生きていたとは、思ってもみなかった……」


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461 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 17:45:37 ID:zmb2k71.0


|(●),  、(●)、|「ミルナが今どこに居るか、分かるか?」

【+  】ゞ゚)「……時間をくれ。感知する」

 目を閉じ、オサムは右目の眼帯に集中した。

ノハ;゚⊿゚)「……まさか今からヤりにいくのか?」

|(●),  、(●)、|「当然。敵は誰であれ早々に消す」



【+  】ゞ-;)「……居た。商店街の外れだ。誰かと戦ってる」

|(●),  、(●)、|「相手は誰だ?」

【+  】ゞ-;)「……駄目だ、分からない。俺よりは善戦しているが……」


ノハ;゚⊿゚)「――おいダディ! あっち方角だ!」

 その時だった。
 ヒートが窓を開けて外に身を乗り出し、遠くの空を指差した。

 呼ばれて見に行くと、雨雲の一部が黄金色に輝いているのが目に入った。
 そして、光り輝く空の中には黒い影があった。
 影は何かの追跡を振り切ろうとしているのか、凄まじい速さで空中を飛び回っている。


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462 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 17:46:36 ID:zmb2k71.0





 「――勝手に、失礼するよ」


 誰もが外に目を向けていた、その時。

 声は、唐突に彼らの背後に現れた。




|;(●),  、(●)、|「――――ッ!」

 ダディは振り返りながら超能力を発動し、視界に入った人影に向けて火炎を打ち出した。
 しかし炎は容易くよけられ、空中で四枚の紙切れに変化する。




¥・∀・¥「……四万か。はした金だが、まぁ頂いておこう」

 タキシード姿の男は床に落ちた紙切れを拾ってから、ダディ達に面と向かった。


¥・∀・¥「……全員ザコだな。話にならん」

ノパ⊿゚)「……あぁ?」

¥・∀・¥「フン」

 ヒートの威嚇に対し、男は生意気に鼻を鳴らした。

.

463 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 17:47:24 ID:zmb2k71.0


 ふと、男が指をパチンと鳴らした。
 すると空中に黒い渦のようなものが生まれ、その中から二つの物体が落ちてきた。


\(;^o^)/「――またかよッ!」 ドテッ

(;,,゚Д゚)「おおおッ!?」 ドテッ

 床に落ちた二人を見て、ダディ達は揃って目を丸くした。


¥・∀・¥「こいつ、お前らの仲間だろう。
       ドクオとやらを追って戦いに行こうとしていたから、止めてやった」

 男は拾った紙切れで顔を扇ぎ、得意気に言った。


|;(●),  、(●)、|「……片方は知らんが、片方は確かにそうだ。
            だが、お前は一体何者だ……?」


 すると正体不明の二人組は一度顔を見合わせ、


¥・∀・¥「瀕死の金持ち」

\(;^o^)/「死にまくってる貧乏人……」

 とだけ答えた。


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464 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 17:48:07 ID:zmb2k71.0



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

            ('A`)は撃鉄のようです

            第三部 荒野の果てに

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465 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 17:48:57 ID:zmb2k71.0




 ――雨は止み、雨雲も消え去り、夜が間近に迫っていた。
 夕日が、少しずつ地の底へと落ちていく。


( ゚д゚ )「…………」

( A )

 意識を取り戻したミルナが最初に見たのは、血だらけで気絶したドクオの姿だった。

 ミルナは周囲を一望し、壊滅した街の光景を見て理解した。
 tanasinnを制御出来ず、求めた以上の破壊をしてしまった事実が目の前に広がっている。

 しかし、ミルナの心に後悔はなかった。


( ゚д゚ )(……間違ってても突き通したいものがあるなら、やるしかない。
     そうする事でしか自分を救えないなら、悪と呼ばれる覚悟をして前へ……)

( ゚д゚ )(……この力を選んだ俺も、この考えすらも、間違っているかもしれない。
     だが、もうそれでいい。俺は決めた)

 ドクオに背を向け、一歩、夕闇に向かって踏み出す。


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466 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 17:50:07 ID:zmb2k71.0


( ゚д゚ )(俺はこの間違いを貫く)

( ゚д゚ )(正しさの為に立ち止まるくらいなら、俺はもう、間違ってでも生きていく)


 己の正義に殉じた自分。
 理想の為に、己の生き方すら忘れた自分。

 それらを全て捨て、ミルナは果てしない荒野を一から歩き始める。
 身体一つとまっさらな信念を持って、いつか辿り着くその場所へと――


( ゚д゚ )(この道の向こうにしか俺の居場所は無い。
     どれだけこの手が汚れていようと、俺はもう一度だけ手を伸ばす……)



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467 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 17:50:59 ID:zmb2k71.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

          プロローグ 「Another Heaven」

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468 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 17:52:12 ID:zmb2k71.0
またあとで一話分投下します('A`)
深夜になるので待ってたら駄目だよ('A`)

469 名も無きAAのようです :2015/08/17(月) 18:03:43 ID:eXvFs81w0
待ってた

470 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 00:08:07 ID:NVVWLIMo0
待ってる

471 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 00:39:00 ID:dvbWYQW60
待つぞ��

472 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 01:01:05 ID:DVZ96Nuk0
期待!

473 ◆gFPbblEHlQ :2015/08/18(火) 02:37:06 ID:SZlhC8WQ0

≪1≫




 ――暗闇に立っていた。



 ――果ての無い闇の中に、俺は居た。



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474 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:37:53 ID:SZlhC8WQ0



「――ようこそ、歓迎するぜ」


 その声に遅れて、目の前に人型の霞が漂い始めた。


「……ほお、二度目にしては居心地が良いな。
 実体を持てんのは、ちと残念だったが」

 霞は色んな動きをして自分の体を確かめてから、こちらを向いた。

 頭らしき部分には僅かに影がついており、辛うじてそこから表情が読み取れた。
 霞は、とても楽しそうだった。


「回りくどいのは性に合わん」

「だからハッキリ言うが、俺はtanasinnの、こう……使い魔的なものだ」

 ハッキリ言うと宣言した割りに、大雑把だった。

「仕方ないだろ。俺の飼い主には形はおろか意思も無い。
 俺自身、俺が何なのかよく分からん。それらしい自己紹介をしただけだ」

.

475 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:38:34 ID:SZlhC8WQ0


「とりあえずアレの一部って程度の理解で十分だ。
 あと、姿は無いが名前はある。自分でつけた」

「今後、俺の事はテンプターって呼んでくれ」


「ま、長い付き合いをしようぜ。お前はミルナより話が出来そうだしな」

 腰に手を当てて得意気に言った途端、霞は風に吹かれたように揺らめいた。


「――残念、時間だな」

「次はもっと長話が出来ると最高だ。お前の声も聞いてみたいしな」


 霞は最後に片手をビシッと構え、ドクオを見送った。

「そんじゃあな。また話しかけるからヨロシク!」



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476 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:39:45 ID:SZlhC8WQ0


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            第二十五話 「老兵集う」

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477 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:41:00 ID:SZlhC8WQ0

≪2≫


 昨日発生した殺戮の現場には、翌朝、多くの花が手向けられていた。
 レムナントの環境は花を育てるのにそぐわない為、花は全て造花だった。


ハハ ロ -ロ)ハ「……皆さん、こういう所は律儀なんですね」

 現場に出来上がった造花のカーペットを見通しながら、金髪の秘書・ハローは呟いた。


「これは鎮魂の花ではなく、報復の決意表明だよ」

 スーツ姿の初老の男が反応し、ハローを一瞥する。


「今回の被害はどのくらいだ」

ハハ ロ -ロ)ハ「二十人以上、六十人未満らしいです」

 曖昧な返答に、男はムスッとした表情をハローに見せた。


「検証班に伝えてくれ。ハッキリ数えろとな」

ハハ ロ -ロ)ハ「現場に残った挽き肉の総量から、そう推測したらしいです」

「……今の発言は無しだ。あと、野菜の輸入量を増やしておけ。しばらくは野菜が流行る」

ハハ ロ -ロ)ハ「分かりました。普段の三倍で発注します」

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478 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:42:02 ID:SZlhC8WQ0


 降り注いだ雨と造花のおかげか、現場の血生臭さは大分和らいでいた。
 それでも時折鼻につく異臭は、彼らに凄惨な現実を強く認識させる。


「生存者の様子は」

ハハ ロ -ロ)ハ「少女の方は目覚めました。しかし記憶が無いようです。
       青年は医療班が交代で看病していますが、運び込まれた当初は酷い有様だったと聞いています」

「聞かせろ」

 青年の状態をあえて伏せたハローは、男の反射的な要望に肩を跳ねた。
 彼女は平静を装ってから、事務的な口調で彼に答える。

ハハ ロ -ロ)ハ「一言にまとめると、全身がズタズタだったそうです。
       肉、骨、内臓。その全てが致命的な破壊を受けていました」

「……それは、死んでいて当然だと思うのだが」

ハハ ロ -ロ)ハ「そういう超能力だというのが医療班の見解です。
        彼の場合、回復速度というより生命維持能力が異常です。
        だからこそ、この惨劇を生き延びたのかと……」

 男は彼女の推測に同意し、軽く頷いた。

.

479 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:42:59 ID:SZlhC8WQ0


「帰って雑務を済ませるぞ。二人の見舞いに行きたい」

ハハ ロ -ロ)ハ「余った造花でも持って行きますか?」

「私の家のを持って行く。枯れ気味だが、偽物よりは誠意が伝わるだろう」

ハハ ロ -ロ)ハ「……ええ、きっと」

「荒巻スカルチノフには帰ってもらえ。この事件を先に終わらせる」

 男は颯爽と振り返り、歩き出す。


「――私の街を荒らしたからには、犯人は確実に殺す」


ハハ ロ -ロ)ハ「……市長、言葉を選んでください」

 男の名前は『佐藤』。
 都市・クソワロタを実質的に取り仕切る、レムナント最古参の男である。


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480 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:44:14 ID:SZlhC8WQ0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 携帯電話で録画された動画には、自分の姿が映っていた。
 記憶の手掛かりになる物が無いかと思って開いたが、私はどうやら用意周到な女だったらしい。



ミセ*゚ー゚)リ「――はい、こんにちは。
      最低限の知識を持った、子供の頃の私」

ミセ*゚ー゚)リ「私がその状態になったのは、何らかの理由で死んだからです。
      ほら、輪廻転生って言葉があるでしょう? それを個人規模でやりました」

 記憶が無くても分かった。
 この人は、とてもブッ飛んだ事を言っている。


ミセ*゚ー゚)リ「記憶は全部ありません。
      若返ったのは個人的な願望です。若さは日々失われていきます」

ミセ*゚ー゚)リ「私は、貴方は、色んな超能力を持った凄い人です。
      ケータイのメモ帳に能力の一覧・概要を書いておいたので読んでください」

ミセ*゚ー゚)リ「しかし、すぐに迎えが来るので心配ありません。
      迎えの人と一緒に帰って、私の部屋に入ったら記憶が戻ります」

ミセ*゚ー゚)リ「そういう感じなので、よろしくお願いします」

 他でもない自分からのメッセージに、私はとりあえず、心の中で「はい」と返事した。


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481 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:44:55 ID:SZlhC8WQ0



 携帯電話をたたみ、部屋を一望する。
 目が覚めてから何度も繰り返した行為に、いい加減飽きを覚えてきた。


ミセ*゚ー゚)リ(……ただの病院、って設定なのかな)

 私は、この『空間』が普通ではないと何となく理解していた。


 澄み渡る風、揺らぐカーテン、草原が見える大窓。
 白いベッドに白い天井。
 壁際には本棚があって、質素な食事がベッド近くのテーブルに用意されている。

 ここまで分かりやすい作り物で満たされていると、自分が人形劇の舞台に立っているような気になってくる。
 不愉快ではないけれど、常に視線を感じるのは快適ではない。

ミセ*゚ー゚)リ(これが、善意によって作られた客室であればいいんだけど……)

 私は反対側のベッドに目を向けた。
 現状、そこに寝ている恩人を見るのが一番楽しい。
 生きてるんだか死んでるんだか分からないけれど、横にあるピッピ言う奴がずっと鳴っているので、多分生きている。

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482 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:45:49 ID:SZlhC8WQ0


ミセ*゚ー゚)リ(……ま、記憶が無いっていうのも同じくらい生死不明だけどね)

 少なくとも、今の私に生きている実感は無い。

 自分を定義するだけの記憶が無い以上、今の私は個人として成立していない。
 よって今の私はただの物体なのだし、生きている実感が無いのも割りと当然なのでは? と思う。


 暇なので考え込んでいる。
 動画の私が言った通り記憶は無いが、考え込めるだけの知能はあるようだった。

 でもベッドの横にある鳴ってるアレの名前が思い出せないのはダメだと思った。
 元々の私がアレの名前を知らないなら仕方ないけれど、それはそれで残念な気持ちになる。


ミセ*;゚ー゚)リ(……私は残念な人だったのかもしれない……)

 私はすぐさま本棚を漁り、アレの名前を調べた。
 心電図モニターで合っている、はず。少なくとも、ピッピするアレという表現に頼る事はもう無い。

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483 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:47:26 ID:SZlhC8WQ0


ミセ*゚ー゚)リ(……起きないなぁ、この人)

 私は改めて向かいの恩人を見つめた。

 死んでて当然の状態でも、彼はしっかり生きていた。道理は分からない。
 まあ、超能力が普通に存在しているらしい世界でそれを考えるのは不毛だろう。


 何か出来ないか、と一抹の義務感を覚える。
 恐らく彼は命の恩人で、あの火災と黒い影から助けてくれた人だ。
 恩返しはまた別としても、彼が死なないよう働く義務が私にはある。

 頼る当てとしてまず浮かんだのは、携帯電話のメモ帳だった。
 私にあるというスーパーパワーがどんなものか、少し興味もあった。


ミセ*;゚ー゚)リ「……うわ」

 早速メモ帳を開くと、そこには恐るべき長文が十分な改行もされずに羅列されていた。
 内容はなんだか凄そうだったが、凄さが伝わる前に気が滅入った。

 掻い摘んでまとめると、動画内の私には七つくらい能力があるらしかった。
 どれもいちいち名前が長く、気が滅入った。
 動画の私は二十歳半ばくらいだろうか? あの人がコレを考えている様子を思うと、残念な気持ちになった。

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484 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:48:58 ID:SZlhC8WQ0


ミセ*;゚ー゚)リ「……これなら使えるかな」


 【一つ残らず木偶人形(ワンサイド・アウトサイダーズ)】。

 その長い名前を脳裏に読み上げ、能力の内容を確認する。
 これは、周囲の物質を何でも操作出来るらしい。


ミセ*゚ー゚)リ(これなら心臓が止まっても動かせるし、止血も出来る)

ミセ*゚ー゚)リ(傷を治したりは出来ないけど、瀕死状態を維持する事はできるよね)

 しかし、私はそこまで考えて思い止まった。

 彼はとりあえず生きている訳だし、急いでこれをやる必要はない。
 というか、瀕死状態を維持するという発想がまずおかしい。かなり嗜虐的だ。


ミセ*;゚ー゚)リ(……別の案を考えよう)

 私は 『常識的に』 という言葉を念頭に置き、彼に対して出来る事を考えた。
 それじゃあ体を使って奉仕しようかな? と考えたが、恐らくこれも前の私の思考回路なのでボツだ。


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485 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:49:38 ID:SZlhC8WQ0



 ――その時、ノックが聞こえた。

 私の返事を待たず、部屋の扉が大きく開け放たれた。


¥・∀・¥「……」


ミセ*゚ー゚)リ「……どなた?」

 私は振り返って声を掛けた。
 なんだか敵っぽい。一応、心の準備だけはしておく。


¥・∀・¥ 「……ああ、失礼」

 来訪者は私に気付き、申し訳程度の断りを入れた。


¥・∀・¥「……状況が、変わったか?」

 彼は私達二人を見比べて呟く。

 意味は分からなかったが、嫌な感じがする。
 私自身ではなく、『前の私』がそう告げているのだ。


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486 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:51:12 ID:SZlhC8WQ0


¥・∀・¥「……状況が変わった。
      これは立ち回りを変えるべきだな」

¥-∀-¥「……まぁまぁ。今は感動の再会を喜べよ」

 両手を挙げ、彼はヘラヘラした様子で振り返った。
 独り言ではなく、誰かに向けた言葉と共に。




/ ,' 3 「……佐藤よ。私は今、とても不愉快だ」


「……こっちの台詞だ。これは誰だ」

 現れた三人は、互いに威圧的な視線を送り合った。

 私はこっそりベッドを出て、命の恩人の傍で身構えた。
 何が起きてもせめて盾になる。それぐらいしか、出来ることが思い浮かばなかった。

 ふと、老人の双眸が私を捉えた。


/ ,' 3 「……久し振りだが、初めましてだな」

ミセ*;゚ー゚)リ「……」

/ ,' 3 「……こりゃあ、本当に一から考え直しか……」

 老人は困った様子で言い、天井に向かって嘆息した。

.

487 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:52:12 ID:SZlhC8WQ0

≪3≫


/ ,' 3 「佐藤、ワシらはあっちで話をする。
    用が済んだらお前も来い」

¥・∀・¥「茶菓子は勝手にもらうぞ」

 二人は雑に言い残して部屋を出て行った。



「――初めまして。君を保護した、佐藤という者だ」

 そして、次に私に話しかけてきたのは白髪交じりのスーツの男。
 さっきの老人よりは一回り若く見える。
 高身長で頑強な体付きをしているおかげで、とても怖い。


ミセ*;゚ー゚)リ「……」

「……まだ具合が悪いか?」

 佐藤が一歩、こちらに近づいた。
 到底人を心配しているとは思えないマーダーフェイスだったが、そういう顔の人なんだなと恐怖を納得に変換する。
 そうしなければ恐怖で口が動かせなかった。

.

488 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:52:55 ID:SZlhC8WQ0


ミセ*;゚ー゚)リ「……いいえ、大丈夫です」

「大丈夫、とは耐えられるという意味か?」

ミセ*;゚ー゚)リ「いえ、健康そのものです。ご心配なく」

「そうか。ならば病み上がりで悪いが君の話を聞きたい。どうだろうか」

 佐藤は椅子を持って私のベッド近くに移動し、こちらで話そうと促してきた。
 私は大人しく従い、自分のベッドに戻る。彼のもとを離れると、少し不安になった。


「……さて。まず、君の事を聞かせてくれ。自己紹介だ」

 椅子に座った佐藤は、股座で手を組んでじっと私を見つめてきた。殺されるかと思った。


ミセ*゚ー゚)リ「……ミセリ、と言うそうです」

「……なるほど。その口振りなら自分の状況を分かっているな。
 記憶が無いと聞いているが、それは本当か?」

ミセ*゚ー゚)リ「はい。私自身、私が誰か分かりません」

 私は端的に答える。

.

489 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:53:44 ID:SZlhC8WQ0


「ではなぜ、自分の名前が分かった?」

ミセ*゚ー゚)リ「ケータイがあったからです。
      中に、自分のことが記録されてました」

 ケータイのことを話すのは危険かとも思ったが、無駄な隠し事は無駄な疑念を生んでしまう。
 今は平和的な方向へ向かって話を進めるべきだ。


「……ここに担ぎ込まれた時点で身体チェックは完了している。
 その段階では携帯電話を持っていなかった筈だが、なぜ持っている?」

ミセ*;゚ー゚)リ「え、そうなんですか? 分からないです」

「……なら、それでいい。では、その携帯電話を見せてもらいたい」

ミセ*;゚ー゚)リ「……ごめんなさい。出来ません」

「……分かった」

 非協力的な答えが連続しても、佐藤は顔色を変えなかった。
 実際、自分がどうしてケータイを持っているかは分からないし、唯一の記憶の手掛かりを気安く渡す事も出来ない。

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490 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:54:32 ID:SZlhC8WQ0


「健康そのものだと、さっき言ったな」

 佐藤は追求せず、手早く話題を変えた。
 ずいぶん呆気ないと思いながら、私は肯定の相槌を打つ。

「君の傷は全治一年は確実だった。
 もっとも、あの状況で即死以外の状態というのも不自然だが」

ミセ*゚ー゚)リ「……私、疑われているんですね」

「いや、君は犯人ではない。
 さっきの老人にキッパリ否定されているし、私もそれに納得した」


「話を戻す。君の復活の速さから推測するに、恐らく君は治癒能力を持っている。
 その能力を使って、彼を治すことは出来ないか?」

 佐藤は、命の恩人を一瞥して言った。

「私のところには治癒能力者が居なくてな、あのくらいの対処しか出来なかった。
 生命維持は出来ているが、あの状態は見るに堪えない」


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491 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:55:29 ID:SZlhC8WQ0


ミセ*;゚ー゚)リ「あの、すみません……。
       メモを見た限り、私に治癒能力はありません」

 人を刺すような佐藤の視線が私に向く。
 怖い。今にも両目を抉りにきそうで怖かった。


「なら、それも仕方ないな。荒巻に頼むとしよう」

 そしてまた呆気なく、佐藤は話題を終わらせた。


「私からの質問は次が最後だ。君が見たものについて、聞きたい」

ミセ*゚ー゚)リ「見たもの、というと……」

「あの状況で起こったこと、君が見たもの、全て」


ミセ*゚ー゚)リ「……はい。分かりました」

 私は回想する。黒い影と、あれと戦っていた少年の姿を。

ミセ*゚ー゚)リ「……あの人の名前、分かりますか?」

 恩人を見つめ、佐藤に問い掛ける。
 彼を語るのに彼の名前を知らないのでは、あまりに不便だ。


「ドクオ、と言うらしい」


ミセ*゚ー゚)リ「……では、ドクオさんが私の前に現れた所から、お話します」

 私は、私として覚えている記憶を、一から語り始めた。

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492 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:56:15 ID:SZlhC8WQ0

≪4≫


 リビングに出ると、油断した様子のハローと目が合った。
 彼女はそそくさと取り繕い、読んでいた雑誌を背後に隠して言った。


ハハ ロ -ロ)ハ「お話は済んだのですか?」

/ ,' 3 「これからだ。席を外してもらえるか」

ハハ ロ -ロ)ハ「どうぞ、使ってください」

 テーブルに散らかした菓子の包装紙をグシャっと鷲掴みにし、席を立つ。
 ハローはすぐさまその場を離れ、どこかに消えた。

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493 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:57:20 ID:SZlhC8WQ0


¥・∀・¥「さあて、何から話す」

 マニーは奥の席に座ると、わざとらしく大仰に足を組んだ。


/ ,' 3 「なんで生きてる。こないだ殺しただろ」

 荒巻はあえて立ったまま、上から鋭くマニーを睨んだ。
 マニーは不敵に笑み、下からそれを睨み返す。

¥・∀・¥「逆に聞くが、あの程度で私が死ぬとでも?」

/ ,' 3 「当然。あの程度で死ぬ程度の男という認識だった」

¥・∀・¥「であれば先の答えは自明だろう。
       単に君の認識が間違っていたのだよ、荒巻くん」

/ ,' 3 「……まあ、いい。で、今度は何をしにきた」

 マニーの煽りを言い返せなかった荒巻は渋々本題に移った。
 それを分かった上で、マニーは微笑んだまま答える。


¥・∀・¥「私の目的は変わらない。貴様の打倒、ただ一つ」

/ ,' 3 「……」

¥-∀-¥「……と、言いたいんだが、残念ながら今は貯金が少なくてな。
       とても貴様相手に戦える状況ではない。だから貴様とは戦わん」

 マニーは背もたれに体を預け、だらけた姿勢で片手を振った。
 降参の素振りにしては極めて不快だったが、荒巻はそれを見逃してやった。

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494 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 02:58:41 ID:SZlhC8WQ0


¥・∀・¥「しかし、だ」

¥・∀・¥「身を潜め、表舞台から消えたままというのは性に合わん。
       私も密かに行動を続け、まぁまぁの手札を三枚、用意した」

 マニーはしたり顔で言い、続ける。

¥・∀・¥「――『敵の情報』、『tanasinnの倒し方』、『人生オワタ』」

¥・∀・¥「今日は新たに『ドクオ』という手札を揃えるつもりだったが、まあ、状況が変わった」


/ ,' 3 「……目的を言え、という質問だったのを忘れたか?」

¥・∀・¥「そう急くなよ荒巻くん。負けた気がして悔しいのかな?」

/ ,' 3 「貴様――」

¥・∀・¥「今回の目的はひとつ。ドクオを回復させること。
       これは必要な立ち回りでな、誰かがやらねばならん」

 荒巻が言い返してくる前に、マニーは口早に質問に答えた。


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495 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 03:00:10 ID:SZlhC8WQ0


¥・∀・¥「ま、理解力の低いお前の事だ。いくらか説明が要るだろう」

/ ,' 3 「貴様の説明に無駄な表現が多いだけだ。
    不快な語彙を記憶ごと添削しても構わんのだぞ」

¥・∀・¥「いいや的確な表現だね。
       お前は強いが結構バカだ。だから私にも騙される」

 語気を強めたマニーの発言に、荒巻は呆れたようだった。
 マニーに対してというより、彼との再会にはしゃいでいる自分を自覚し、呆れていた。

 荒巻は大きな溜め息の後、すとんと肩を落として言った。

/ ,' 3 「分かったよ、マニー。もう好きなだけ話せ」

 椅子に腰掛け、荒巻は気だるそうに頬杖をついた。
 マニーも真似して頬杖をつき、最初の微笑みを保ったまま言った。

¥・∀・¥「そうか? じゃあ遠慮なく 『ThisMan』 の穴埋めからいこうか」

/ ,' 3 「勝手にしてくれ……」

¥・∀・¥「そう自棄になるなよ。
       主役は私じゃないが、そこそこ楽しめる事は約束しよう」

 マニーは、それはそれは楽しそうに語り始めた。

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496 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 03:07:12 ID:SZlhC8WQ0
16〜24話 >>439

プロローグ Another Heaven >>454-467
第二十五話 老兵集う >>473-495

次回は多分来月です('A`)
細かい進捗は上のやつを見てね('A`)

497 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 03:52:54 ID:KzWM0RuU0
乙乙。マニー生きてたんかい!

498 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 07:44:42 ID:AwoUxzU20
おいおいここで切るのかよ
次はいつだ楽しみすぎる


499 名も無きAAのようです :2015/08/18(火) 13:26:11 ID:VzWKxhzU0
おつ!

500 名も無きAAのようです :2015/08/19(水) 06:52:35 ID:PKEqUMFE0

続き待ってるよー

501 名も無きAAのようです :2015/08/31(月) 23:52:09 ID:JEA2c7sM0
乙乙

502 ◆gFPbblEHlQ :2015/09/01(火) 09:45:43 ID:.qy122Fc0
今週土曜日くらいに投下します('A`)

503 名も無きAAのようです :2015/09/01(火) 12:23:13 ID:JUKu2RUw0
きったきたきた

504 ◆gFPbblEHlQ :2015/09/05(土) 17:09:24 ID:xjnvjimM0

≪1≫



\(^o^)/(……暇すぎる。有能過ぎるのも罪だわ……)


 人生オワタは屋上での戦闘を回避し、残業に励んでいた。
 時系列は('A`)は撃鉄のようです第八話5レス目まで遡る。

 後に『面汚しの夜』と総括される一夜の中、オワタは人生最大の敵に遭遇していた。


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505 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:10:21 ID:xjnvjimM0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

        第二十六話 「面汚しの夜 その3」

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506 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:11:41 ID:xjnvjimM0



 午後6時にもなると街には 『ThisMan』 の感染者がうろついていた。
 当然その頃にはオワタの会社も機能を停止しており、会社の中には同じ顔の『ThisMan』ばかりが居座っていた。


\(;^o^)/(な〜〜〜〜にが起こってんだよバカ!)

 そんな会社から誰よりも先に逃げ出したオワタ。
 彼は一目散に自分の車に立て篭もり、膝を抱えて逆ギレしていた。

 彼が篭城場所に選んだのは地下の駐車場。
 人気は少なく、隠れるには丁度いい環境である。

 しかしその有様はまさに無力な小市民。
 救助をじっと待つ木の上のネコそのものだった。


\(;^o^)/(誰か助けに来いよ! ケーサツ! おい!)

\(;^o^)/(こっちは税金払ってんだぞ! 働け! おい! 助けて!)

 強気な救助要請をひらすら内心で唱え続ける。
 それに応えてか、地下駐車場にコツン、コツンと足音が響いてきた。

\(;^o^)/(誰か来た! 普通の人であってほしい!)

 オワタはそっと頭を上げ、窓から外を覗き見た。


\(^o^)/

 すると、窓越し数センチ先に『ThisMan』の顔が迫っていた。

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507 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:12:21 ID:xjnvjimM0

\(^o^)/(やっべ)

 オワタは即座に姿勢を正してハンドルを握った。
 同時に外の『ThisMan』が窓ガラスを殴り始め、たった二発でガラスに亀裂を走らせた。

\(;^o^)/「おおおおおおッ!!」

 アクセルとかレバーをガチャガチャして車を急発進させ、出口に最速で突っ込んでいく。
 バックミラーを見ると、陸上選手ばりの迫力で『ThisMan』が追走して来るのが見えた。

\(;^o^)/(こうなりゃタワーまで突っ走るしかねえ! あそこなら確実に無事だ!)

 しかし地上に出た瞬間、オワタはその考えがどれだけ困難であるかを理解した。
 夕闇の中、見渡す限りに『ThisMan』の顔がある。その数十人分の同じ顔が、一斉にオワタの車を捕捉した。


\(;^o^)/(――轢かれても知らんからな!!)

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508 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:13:40 ID:xjnvjimM0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 素直キュートが自身の超能力を自覚した時、彼女はその能力をひどく虚しいと一蹴していた。


o川*゚ー゚)o(まあ、この能力が色んな虚しさを誇張させたのは事実だけど)


 最初、超能力は夢という形で現れた。
 夢を見たのは算数のテストの前日。夢の中には、テストの答えが全て浮かんでいた。
 翌日テストに見たままを書き込むとこれが全問正解。以降、彼女は時折こうした夢を見るようになった。


 夢の次は幻覚だった。
 じっと一点を見つめていると、そこに音付きの立体映像が見えてくるのだ。
 しばらくは映像の意味が分からなかったが、ある日、自宅のリビングで見た映像が彼女の理解を早めることとなった。

 リビングで見たのは両親が大声で口喧嘩をしている様子だった。
 どちらも自分の手元にお金が欲しいらしく、適当な口実を作ってはそれをぶつけ合っていた。
 最終的に取っ組み合いの喧嘩が始まり、けっきょく父親が暴力に打って出る。そういうものが見えてしまった。


 映像を見てから数日後の深夜、キュートは両親の怒鳴り合いで目を覚ました。
 静かにリビングを覗くと、そこには先日見たものと同じ光景があった。
 口喧嘩の一言一句も違わず、まったく同じ展開がそこにあった。


 それを見た彼女は直感した。自分の能力が 『未来予知』 である事を自覚してしまった。
 そして、一番欲しくない力が来てしまったと、彼女は子供ながらに大きな虚脱感を覚えた。

 自覚と同時に見えた彼女自身の未来は、この家族の為に歪みきっていたのだから。

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509 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:14:29 ID:xjnvjimM0



o川*゚-゚)o「……ああ」


 素直キュートは回想を止め、電子レンジに入れた弁当に意識を戻した。
 残り数秒を頭の中で数え、チンと鳴ると同時に弁当を取り出す。

 蓋を外すと十分に温められた食材から湯気が沸き立ち、彼女の食欲をそそった。
 だが、それは食欲というよりも義務感だった。
 彼女にとって食べる事は作業でしかなく、味や見栄えは度外視された概念だった。

 未来予知のせいで向こう数ヶ月分のご飯の味が分かってしまう。
 だから食べるのが楽しくない、という訳ではない。
 彼女の作業的な食事風景は、単にコンビニ弁当を死ぬほど食べ続けた結果の飽きだった。

 弁当を半分ほど食べてから、キュートは時計の針を確かめた。

 3分後、このコンビニに人生オワタという人が来る。
 キュートは人生オワタに出会う未来を数年前に予知していた。
 彼に出会い、最期を一緒に過ごす未来。


 素直キュートは、今日ここで死ぬ事になっていた。

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510 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:15:39 ID:xjnvjimM0



\(;^o^)/「……お〜い」

 三分後、人生オワタがおそるおそる店内に入ってきた。
 自動ドアの開閉に反応し、入店の音楽が店に鳴りひびく。

 キュートは数年振りに、自然に笑みを浮かべて言った。


o川*゚ー゚)o「こんばんは、人生オワタさん」

\(;^o^)/「……お前、だれ?」

o川*゚ー゚)o「素直キュートって言います。ずっと、あなたを待ってました」


\(;^o^)/(……なに言ってんだコイツ)

 ひるんだオワタが一歩退くと、キュートはハッとして体裁を整えた。
 軽く会釈をしてから、彼女は店内を一望して言った。

o川*゚ー゚)o「ここ、しばらくは安全ですよ。棚で入り口を塞ぎましょう」

\(;^o^)/「……分かった」

 警戒を見せながらも、オワタは彼女の提案に乗っかった。
 
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511 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:16:40 ID:xjnvjimM0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 二人は窓のブラインドを全て下ろし、商品棚を動かしてコンビニの出入り口を封鎖した。
 そこまでやってようやく一息つき、二人は奥から持ってきたパイプ椅子に腰掛ける。


\(^o^)/「なんか大変な事になってるよなぁ……」

o川*゚ー゚)o「今夜中に終わる話ですし、特に被害も出ません。大丈夫です」

\(^o^)/「……だといいケド」

 妙に自信あり気に断言されてしまい、オワタは口先に出かかった愚痴を飲み下した。


o川*゚ー゚)o「……あの、私。お話したいです」

\(^o^)/「……すれば? とりあえず聞いててやるよ」

 不気味なほどニコニコしている彼女に対して、オワタはぶっきらぼうな返事をした。
 安全な場所を共有させてくれた分は彼女に協調するが、それ以上に深入りする気は毛頭ない。
 それは決して彼女に限った話ではなく、誰に対しても、オワタは必要以上の人間関係を作ろうとしないのだ。


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512 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:18:22 ID:xjnvjimM0


o川*゚ー゚)o「……嬉しいです。あの、馴れ馴れしくしてごめんなさい」

o川*゚ー゚)o「いちおう理由があるんです。私の能力、予知能力なので……」

\(^o^)/「……俺に会うのを知ってた?」

o川*゚ー゚)o「あ、そうです。この会話も一言一句その通りに予知してます」


\(^o^)/「……つまらなくないか? 俺ならそんな顔で喋ってられねえわ」

o川*゚ー゚)o「はい、すごくつまらないです。
       でも今日だけは、今だけは特別なんです」

\(^o^)/「ふうん……」

o川*゚ー゚)o「私、今日ここで死ぬんです。
       普段だったら、私こんなに喋らないです」

\(^o^)/「……そら災難だったな。知りたくもなかったが」

o川*゚ー゚)o「いいじゃないですか! 最後ですし、いっぱい話したいんです!」


 人生オワタは、彼女の言う事を大体信じていた。
 信じるかどうかで何かが変わる訳でもないので、善意的に受け止めてあげたのだ。

 信じた上で、オワタは彼女の歪さを早々に察知していた。
 彼女の表情はなぜか希望に満ちていて、とても今日ここで死ぬ人間の顔には見えない。

 人間誰しも死ぬのは怖い。
 しかし、彼女はそういう当然の感性を育てる事が出来なかった。あるいは、してこなかった。
 そういう人生だったのだと、薄々分かってしまった。

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513 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:19:19 ID:xjnvjimM0


o川*゚ー゚)o「色々あって、私が自分語りを出来る時は今しかないんです。
       なのでいっぱい話します。本当、聞くに堪えないのは承知の上ですが……」

\(^o^)/「……」

o川*゚ー゚)o「……最後なんです。落ち着いて、話しますね」

 哀れむような視線に気付いたのか、キュートは声色を落として改めて言った。



o川*゚ー゚)o「物心ついた時には、私は私の一生を予知していました」

o川*゚ー゚)o「えっと、私思うんです。夢や希望って、分からないから意味があるって。
       でも私は、人生における夢や希望にあたるものを全部見ちゃって……」

o川*゚ー゚)o「別に悲しいとかは思いませんでした。
       ただ、なんだろう……」

o川*゚ー゚)o「ああ、こういう感じで生きて終わるんだなぁって。そう思うようになりました。
       自分の身に起こるすべての事が、まるで他人事のようになってしまったんです」

 用意された言葉を読み上げるように、彼女は淡々と語る。
 しかしオワタは彼女の言葉に耳を傾けていなかった。聞いてはいたが、聞き流していた。
 聞くに堪えないという言い訳を用意してくれた以上、オワタはそれに従っていた。

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514 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:20:06 ID:xjnvjimM0


o川*゚ー゚)o「多分どこかで未来を変える努力をすれば、
       何かが変わっていたと思いますが……まだ子供なので、早々に諦めました」

\(^o^)/「……」


o川*゚ー゚)o「そもそも未来を変える気すらありませんでした。
       私が予知のとおりに生きると、両親はすごい喜んだので。
       基本的に完璧に生きてきました。自慢の娘だったと思います」


o川*゚ー゚)o「親は賭け事が好きでした。ギャンブル中毒とか、そういうんだと思います。
       家庭は酷かったですね。およそテンプレ通りの、壊れた家庭です。
       でも虐待とかはありませんでしたよ。私は数ある宝くじの一枚に過ぎないので」

o川*゚ー゚)o「で、私が予知を使って宝くじも競馬もパチンコも勝たせてあげると、環境は変わりました」

o川*゚ー゚)o「私の家には札束が溢れかえって、両親も幸せそうにしてくれました」


o川*゚ー゚)o「まぁ世間的には親に利用される子供ということで悲劇的に見えるでしょうけど、
       やっぱり子供なので、どんな形であれ、親に信じて喜んでもらえるのは嬉しいんです」

o川*゚ー゚)o「これは、子供という役割に与えられた義務だと思います。
       親のために生きるという義務。私はそれを全うしました」

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515 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:20:52 ID:xjnvjimM0


o川*゚ー゚)o「ただやっぱり、これがいつまでも続くのは私も嫌でした。
       嫌だという根拠の無い感覚だけが、今日私をここに運びました」

o川*゚ー゚)o「別に大した意思があったわけじゃないです。
       ただ家を出てここに来て、予知のとおり死ぬ。そうしたかったんです」

\(^o^)/「……親は止めなかったのか?」


o川*゚ー゚)o「両親ですか? 別にとめませんでしたし、むしろ見送ってくれました。
       『生きて帰れるから大丈夫』って言ったら難なく出られました」

o川*゚ー゚)o「きっと探しにも来ませんよ。
       だって、親が子供の言う事を信用しない訳がないじゃないですか」


o川*゚ー゚)o「子供を信用しないっていうのは、子供の責任から逃げたい人の言い分です。
       子供が何かやらかした時、自分に対して言い訳をする為です」

o川*゚ー゚)o「あとあと『私に責任はありません』っていうことを主張する為に言質を揃えておきたいんです。
       信用とか、耳障りのいい言葉を利用して」

 信用、という言葉が完全に破綻している。
 オワタは彼女に対して同情を思うより先に、不気味さを感じた。

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516 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:22:03 ID:xjnvjimM0


o川*゚ー゚)o「その点、私の両親は私を信じてくれてます。
       私の家は、私を信じる事で回っています」

o川*゚ー゚)o「なのでまあ、私がこうして死を選んだ時点で、私の家は終わりだと思います。
       みんな首吊って死ぬのかな、悲しいな、なんて……」



o川*゚ー゚)o「……まあ、そんな感じです。要はここで死ぬ、というだけの話です」

o川*゚ー゚)o「貴方なら話を聞いてくれると知っていたので、今までの分を簡単に話しちゃいました」

o川*゚ー゚)o「一方的に話してごめんなさい。初対面で私が何者かも分からないのに」


\(^o^)/「……嫌な気分になった」

o川*゚ー゚)o「……ごめんなさい。じゃあもう行っていいですよ」

\(;^o^)/「……なんか急に嫌な言い方だな」


o川*゚ー゚)o「……早く行かないと巻き込まれちゃいます。
       私を殺す人がもうすぐ来ます。あと五分くらいかな」

\(^o^)/「……聞くまでもないんだろうが、逃げないのか?」

o川*゚ー゚)o「はい。死んだ方がマシなので」

 彼女はたやすく断言し、店の裏口へ行くようオワタを促した。


o川*゚ー゚)o「……正直に言います。私の予知で、あなたは死ぬ事になってます。
       でも私はその未来だけは変えたい。なので、お願いします」

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517 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:25:23 ID:xjnvjimM0


\(^o^)/「……俺の能力は、予知してないのか?」

o川*゚ー゚)o「……あなたが何故かここに留まって、私と一緒に殺される。
       今までも、その未来しか見たことないです」


\(^o^)/「……じゃあそれで正解だよ、俺の中では」

 オワタはよっこらせと呟いて腰を上げ、商品棚から適当なお菓子を持って椅子に戻った。


\(^o^)/「俺ここで死ぬわ。あともう話しかけないでくれ」

\(^o^)/「俺はお前が嫌いだ。人間が合わない」

o川*゚ー゚)o「……はい。ごめんなさい」


\(^o^)/(……こいつ、努力をした事がねえんだな)


 人は、努力の積み重ねによって今を生きている。
 それは未来に何が起こるか分からないから、人生が未知だからこそ努力なんていう面倒な事が出来るのだ。

 しかし彼女の場合、素直キュートの場合は違う。
 未来が分かってしまう以上、彼女の中ではそもそも努力が意味を成さない。成立しない。
 生きる努力をしなくても生きていけると分かれば、どんな人間であろうと綻びが生まれてしまう。


 彼女は未来を知る代わりに、生きる上でのあらゆる動機を失っていた。
 未知に立ち向かう機会もなく、求めなくても与えられ、努力せずとも正解が分かる。

 一生分のテストの答えを全て安全にカンニングできる状態で、一体誰がテスト勉強をするのだろうか?
 宝くじの当選番号が毎回確実に分かるなら、そもそも勤労に意味はあるのか?
 好きな人ができたとして、その人に一生振り向いてもらえないと分かっても、その人を好きで居続けられるか?
 努力が報われないと分かっているのに、それでもなお努力は続くのか?

 分からない、未知だからこそ人は努力に意味を見出す。
 無駄かもしれない努力に懸命になれる。

 しかし、彼女にはそれが出来なかった。努力をする動機が何一つとして無かった。
 努力によって正解を見つける必要が、彼女にはまるで無かったのだ。
 それは、人として余りにも大きな欠落だった。

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518 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:26:30 ID:xjnvjimM0


\(^o^)/(ま、俺にはぜんぜん関係ねーけどな)

\(^o^)/(あと数分でなんか来て殺されて終わり。
       次はこんなクソガキに会わないよう行動するだけだ)


 人生オワタの超能力は二つ。
 その両方が、人生オワタの死亡を条件として発動する。


 一つは【生前体験/ニア・ライブ・エクペリエンス】。
 能力者が死亡すると、その死因を回避できる時点まで時を巻き戻す。

 もう一つは【死後後悔/ルック・バック】。
 死亡するまでの記憶、死んだ後の記憶。
 その両方を過去の自分に送信する能力。


 人生オワタはこの二つの能力を使って幾多の危機を脱してきた。
 持って生まれたスペランカーボディと超不運もあって死んだ回数は無数(千回死んだ頃に数えるのを止めた)。
 しかし、だからこそ現れた 『死を回避すること』 そのものに特化した超能力。

 彼は強い意志をもって死の運命を回避し続け、その結果として平穏で幸福な人生を実現してきた。
 素直キュートとは正反対に、生きる努力を人一倍、人の何百倍も積み上げてきた。

 素直キュートが運命を肯定するなら、人生オワタは運命を否定する男。
 そんな二人が相容れる訳もなく、オワタは先程の言葉どおり、素直キュートを大嫌いになっていた。


\(^o^)/(なにが運命だ。そんなもんはゼッテー無いね)

\(^o^)/(俺は何度でも運命を変えてきた。
       だから断言できる。変わらない運命なんかない)

\(^o^)/(親のためだと? くだらねえ)

\(^o^)/(自分も他人も幸せな完璧な人生なんてまっぴらごめんだぜ。
       どんな時であろうと、俺は俺自身の幸福のために生きてみせるぞ……)



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519 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:27:35 ID:xjnvjimM0




 ――五分後、素直キュートが宣告した時間になった。


o川*゚-゚)o「……来ました」

 どうせ死ぬので確認する必要もなかったが、オワタはコンビニ店内をぐるっと見回した。
 しかし中に居る人間は二人だけ。だったら外か? と思ってガラスから距離を取り、じっと待ち構える。
 それでもしばらく音沙汰はなく、オワタは拍子抜けして肩の力を抜いた。


\(^o^)/(……もしかしてこいつの話、嘘か?)

 オワタが油断してキュートを一瞥したその瞬間。
 入り口を塞いでいた商品棚が、自動ドアのガラスもろとも巨大な衝撃に破壊された。


\(;^o^)/「……」

 破壊が落ち着くと、瓦礫の山を踏み越えて一人の男が入ってきた。

 男は袖のない黒の道着を着ている以外、何一つとして武器になる物を持っていなかった。
 体一つで強化ガラスを破壊して余りある一撃を実現したとなれば、その正体は明白。

\(;^o^)/(……格闘家かぁ……)



 男は一呼吸を置いてから、オワタ達に目を向けた。
 古傷にまみれ、既に目としての機能を持たないその器官を。


( ФωФ)


 オワタは、素直キュートを連れて壁際に下がった。

.

520 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:28:44 ID:xjnvjimM0


\(;^o^)/(……格闘家は嫌いだ。
       バトル大好きな人種の中でも特に話を聞かん)

\(;^o^)/(俺でも何とか出来るレベルなら予知変えてドヤ顔してやろうと思ったけど、これは無理!)


\(^o^)/(無理なものは無理! 諦めた!)



o川*゚-゚)o「……なにか、話しますか?」

 キュートはオワタの制止を無視して前進し、男の前でそう口走った。
 殺される未来を知ってなお、彼女は台本通りであり続ける。

( ФωФ)「……不要であろう。すぐに済む」

o川*゚-゚)o「……後ろの人だけは逃がしてくれませんか」

( ФωФ)「……言葉を交わす気は、ない」

 男はゆっくりとキュートの首を掴み、その細い管をキュッと握り締めた。
 すると彼女の体は一瞬痙攣してから脱力し、まったく動かなくなった。

( ФωФ)「……」

 男は首を絞めたまま片手で拳を作り、それを彼女の心臓に突き刺した。
 どぷ、という殺しの音が鼓膜の奥にゆっくりと入り込んでくる。
 
.

521 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:29:24 ID:xjnvjimM0


 素直キュートの死体を床に寝かせ、彼女に向かって手を合わせ、瞑目する。
 男はその所作を終えると、振り返ってオワタを見据えた。


( ФωФ)「……逃げるなら、追わんが」

\(;^o^)/「チッチクショーー」

 オワタは一方的に彼女を殺された悔しさから男に殴りかかった。

 しかし実際のところ悔しさなど微塵も無かった。
 自分が死ねば無かったことになる現実など、まともに受け止める気にもならない。


\(^o^)/(次は別のとこに逃げっか)

 その思考の直後、オワタもサクッと殺されて超能力が発動した。

.

522 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:31:10 ID:xjnvjimM0

≪2≫ 



\(^o^)/(……二週目スタートか)


 人生オワタは屋上での戦闘を回避し、残業に励んでいた。
 時系列は('A`)は撃鉄のようです第二十六話1レス目まで遡る。


\(^o^)/(まぁとりあえず、さっさと逃げ出すか)

 オワタは残りの仕事を適当に仕上げて会社を出た。
 上司から多少の嫌味は聞かされたものの、普段の優秀な仕事振りから大きな足止めをくらうことは無かった。


 地下駐車場の車に乗り込み、エンジンを唸らせる。

\(^o^)/(フッやれやれ、またしても運命に勝利してしまった……)

 オワタはしたり顔で勝利宣言を掲げ、ステーション・タワーに向けて一直線に車を走らせるのだった。

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523 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:31:50 ID:xjnvjimM0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

        第二十六話 「面汚しの夜 その3」

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524 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:32:52 ID:xjnvjimM0



\(;^o^)/

 ステーション・タワー付近の駐車場に車を停め、車を降りたところで体が固まった。
 オワタは、こちらをじっと見つめる少女に気付いてしまった。



o川*;゚д゚)o

 だが、驚きのあまり硬直していたのは彼女も同じ。
 二人は一分ほど、その場で口を開けたまま見つめあった。


\(;^o^)/「いや」


\(;^o^)/「……いやいやいやいや」

 オワタは緊迫した表情で少女に詰め寄り、いまだに驚いている彼女の両肩を掴んだ。

\(;^o^)/「お前、違うよな? 別人だよな?」

o川*;゚д゚)o「……え?」

\(;^o^)/「名前だよ名前!! お前の名前、素直キュートじゃないよな!?」

o川*;゚д゚)o「……素直キュートです……」

\(;^o^)/「え?」

o川*;゚д゚)o「私の名前は素直キュートです……」

\(;^o^)/「……」


<(;^o^)>「うそだろ……」

 オワタは頭を抱え、弱々しく呟いた。

.

525 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:33:32 ID:xjnvjimM0


\(;^o^)/(どういうことだ? このガキはコンビニで俺を待ってたハズだろ?)

\(;^o^)/(『人生オワタがコンビニに来る』っていう未来予知はマジだった。
       一週目でそれは確認済みだ。ならなんでコイツはここに居る?)

\(;^o^)/(ピンポイントで予知が変わったのか?
       なんにせよ色々確かめねぇと……)


o川*;゚ー゚)o「あの、なんで私の名前、ていうかなんでここに……」

\(;^o^)/「お前、未来予知の詳細を言ってみろ」

o川*;゚ー゚)o「え、いや、なんで能力のことまで」

\(;^o^)/「いいから! 俺は殺されるのか!?」

 一週目で彼女は『人生オワタは殺される』という予知をしていた。
 今回行動を変えたのはその未来を回避する為であり、そもそもその原因となる彼女に出会わない為だった。

 オワタが強く問い掛けた肝心な質問に、キュートはしどろもどろに答える。

o川*;゚ー゚)o「えっと、はい。そのはずでした……さっきまでは……」

\(;^o^)/「……どういう意味だ?」

o川*;゚ー゚)o「……貴方はコンビニに行って、そこで私と会うはずでした。
       そういう予知を見たんです。でもそうすると私と一緒に殺されちゃうので、その……」

o川*;゚ー゚)o「それを回避しようと思って、こっちに来たら貴方も来て、今になります……」

.

526 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:34:38 ID:xjnvjimM0


 とたん、オワタはキュートに背中を向けて熟考した。

\(;^o^)/(予知そのものに変化はナシ。
       変わったのは俺とコイツの行動だけか……)

\(;^o^)/(……とにかくもう一度、こいつに『未来予知』をとやらをさせてみるか)

 そして最後に、まったく信用しちゃいねーけどな、と付け加える。
 オワタは振り返って再びキュートの両肩をがっしり掴み、力強く言った。


\(;^o^)/「もっかい未来予知して!! お願い!!」

 成人男性から少女への、体裁を捨てた本気のお願いだった。


o川*;゚ー゚)o「……あの、それが……その……」

\(;^o^)/「どうだった!?」

o川*;゚ー゚)o「……私達、あと十秒で狙撃されます」


\(^o^)/



\(^o^)/(オワッタアアアアアアアアアアアアwwwwwww)

 ドキューンバーンwwwwwwwww二人とも死んだwwwwwwwww

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527 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:35:18 ID:xjnvjimM0

≪3≫



\(;^o^)/(世の中って理不尽!!)


 人生オワタは屋上での戦闘を回避し、残業に励んでいた。
 時系列は('A`)は撃鉄のようです第二十六話19レス目まで遡る。


\(;^o^)/(……よし! 次は時間を合わせよう)

\(;^o^)/(さっきは早く動きすぎた。
       あいつがコンビニに居た時間まで待って、それから移動開始だ!)

\(;^o^)/(同じ顔の奴らからは逃げられないかも知れないが、
       いま俺はもっとヤバイものに関わってる気がする!)


 オワタは六時過ぎまで会社に残り、『ThisMan』が動き出した頃合で逃げ出した。

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528 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:36:00 ID:xjnvjimM0


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        第二十六話 「面汚しの夜 その3」

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529 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:36:40 ID:xjnvjimM0

≪4≫



\(^o^)/(……ダメだった、ふつうに出くわした)


\(^o^)/(同じ顔の奴らから逃げてたら曲がり角でぶつかった……)


\(^o^)/(一緒に逃げてたら知らん間に殺されてた……)

 人生オワタは会社で目覚め、('A`)は撃鉄のようです第二十六話24レス目まで遡って反省した。


\(^o^)/(……もう会社に立てこもるか。
       さすがに会社までは来ないだろ)

\(^o^)/(この騒動も収まってるかもしれないしな。
       動かないのが一番だ。そうしよう……)


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530 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:37:21 ID:xjnvjimM0


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        第二十六話 「面汚しの夜 その3」

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531 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:38:01 ID:xjnvjimM0


\(;^o^)/


o川*゚ー゚)o「あ、こんばんは!」

 深夜二時ごろ、素直キュートは会社に来た。
 彼女はとても元気そうに挨拶すると、オワタに駆け寄ってきて満面の笑みを見せた。


o川*゚ー゚)o「よかった、予知は変えられたんですね!」

\(;^o^)/「……え、そうなの?」

o川*゚ー゚)o「はい! 貴方は私と一緒に殺される筈でしたけど、助かりました!」

\(;^o^)/「……今、もう一回予知してくれる?」

o川*゚ー゚)o「はい、いいですよ! でも終わったら私の話をっ」

 そこまで言って、彼女のハツラツとした言葉が止まった。


o川*;゚ー゚)o「……あの」

\(;^o^)/「……」

o川*;゚ー゚)o「……逃げてください」

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532 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:38:42 ID:xjnvjimM0

≪5≫


\(;^o^)/「もおおおお!! またかよ!! 死ねッ!!」

 五週目に突入したオワタは社内で大声を発した。
 周囲から憐憫の眼差しが突き刺さるも、今の彼にそれを気にする余裕はない。


\(;^o^)/(じゃあもう逆に街から出ちゃう!)

\(;^o^)/(飛行機とか乗ってアメリカ行っちゃうんだからな!)

 オワタはさっそく空港に行って飛行機に乗った。
 シートに深く腰をうずめ、たっぷりと息を吐き出す。


\(;^o^)/「ふぅ…………」

o川*゚ー゚)o「あ、失礼しまッ」

 隣の席に現れた少女を見て、オワタは未来を察した。
 離陸後、飛行機は何者かの攻撃によって墜落した。もちろんオワタは死んだ。

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533 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:39:22 ID:xjnvjimM0



≪6≫



≪7≫



≪8≫



≪9≫



≪10≫


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534 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:41:37 ID:xjnvjimM0

≪11≫



\(^o^)/「……はあ」

 会社で目覚めると同時に、オワタは両腕を組んで椅子にもたれかかった。
 この現状は場当たり的な行動では解決しないのだと、十分に理解した。

 オワタは、これまでの10週分の体験をもとに考察する。
 口元に手を当て、思考の逡巡に立ち向かう。


\(^o^)/(どうやら、俺とアイツが会うのは確定事項らしい……)

\(^o^)/(あんまり使いたくない言葉だけど、運命とでも言うのか……。
       元々信じてない言葉だったが、今はその存在を否定できない……)


\(^o^)/(どうすりゃ俺は生き延びられる?
       あいつに巻き込まれて死ぬなんてゴメンだぞ……)


\(^o^)/(……次はシンプルに動くか)

 今回の行動方針を決めたオワタは、一週目と同じように過ごしてタイミングを待った。
 彼は一週目と同じように行動し、あえて彼女が待つコンビニに足を踏み入れるのだった。


.

535 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:42:33 ID:xjnvjimM0


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\(^o^)/「……おーい」


 コンビニに立ち入ると、入店の音楽が鳴り始めた。
 店内をざっと見回し、彼女の姿を目視する。

 彼女はレジに立ち、コンビニ弁当をゆっくり食べ進めていた。
 オワタの存在には気付いているだろうが、彼女は構わず食事を続けている。


\(^o^)/(……話しかけてこない)

\(^o^)/(『こいつの話を絶対に聞かない』つもりで来たが、それだけで何か変わったのか?)

 一週目とは違う状況に、ほんの少しの動揺を覚える。


\(^o^)/(……俺から話しかけるべきか、このまま去るべきか)

 彼が訝しげに表情をしかめていると、キュートの視線がようやくこちらを向いた。
 

o川*゚-゚)o「……行かないんですか?」

\(^o^)/「……」

o川*゚-゚)o「貴方は裏口から出て行って、そのままタワーに行く筈なんですけど……」

\(^o^)/「……それに従えば、生き残れるのか?」


o川*゚-゚)o「貴方はここを通り過ぎるだけの人。
       なので確実に生き残れます。今は、ですけど……」



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536 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:43:47 ID:xjnvjimM0




 ……結果的に、オワタの死亡条件は素直キュートと会話することだった。

 しかし無理に逃げようとすれば 『運命』 のようなものが働き、彼女と一緒に殺されてしまう。
 そこでオワタはあえて彼女に出会い、そして一切の関わりを持たずに彼女と別れることにした。

 彼女の話を聞いて時間を無駄にし、変に接点を持ってしまったのが一週目の死亡理由。
 彼自身は不服だったが、今回と一週目の彼女が促した 『逃げる』 という選択によって死を回避したのだ。



 コンビニを出て、ステーション・タワーに向けて車を走らせる。
 『ThisMan』による妨害も多少あったが、オワタは難なく安全圏であるタワー内部に入れた。

 タワー内部には混乱した市民達の雑踏が溢れていた。
 市民救助や謝罪、現状報告を求める大声が絶えなかった。

\(;^o^)/(うるっせえなゴミ共が……)

 オワタは耳障りな雑音が無い場所を求め、ステーション・タワーの非常階段を上り始めた。


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537 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:44:39 ID:xjnvjimM0


\(^o^)/「……」

 長い階段をひたすら歩き、上る。

 階段に設けられた簡易照明がオワタを感知しては点灯し、時間の経過と共に消灯する。
 階が上がるごとにそれを繰り返しながら、オワタは胸中の不快感と向かい合っていた。


\(^o^)/(……最初に死んだのは子供の時か……)

 オワタは取り出した煙草に火をつけ、独白する。


\(^o^)/(別に特別な死に方じゃなかった。ただの交通事故だった)

\(^o^)/(ボールを追って、道路に出て、車に跳ねられた)

\(^o^)/(俺を殺したのはバカの乗った車だった。その車は止まらなかった。
       俺を轢いて殺しても、その車はどこかへ走り去っていった……)

\(^o^)/(……俺はそれが心底悔しかった。
       一方的に殺されて、何も出来ずに終わるのが許せなかった……)


\(^o^)/(意識が無くなりかけて、このとき初めて死を感じた)

\(^o^)/(だけど次に目覚めた時、俺の時間は数日前に巻き戻っていた)

\(^o^)/(それが最初だった。俺が能力を使った、初めての事件は……)

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538 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:45:20 ID:xjnvjimM0



\(^o^)/(事故を回避してからも俺は死にまくった。残機は無限だが、まあ疲れた)

\(^o^)/(時には辛くて死にたいと思ったこともある。
       でも死ぬに死ねないから普通に生きていくことを選んだ)

\(^o^)/(常識を身につけ、安全を徹底し、今に至る)


\(^o^)/(そうだ、この現状は俺の生き方による当然の結果だ。
       不服に思うところなんか、一片もありゃしねえ!)

\(^o^)/(そうだ! 俺はこの力を自分の為に使うって決めてんだ!)

\(^o^)/(世の中には交通事故が溢れてる!
       初めて死んだ時は 『この世から交通事故を無くそう』 と思って奔走したが、まったくもって無駄だった!)


\(^o^)/(死にたい奴は死ねばいい! 俺は生きて、そして老衰で死ぬ。
       老衰なら確実に死ねる。能力を持った本人だからこそ、そういう確信がある!)


\(;^o^)/(……今の俺は完璧なんだ。
       植物の心のような人生を歩んでいく……それを実現し、実行できる状態なんだ)


\(;^o^)/(……でも、敵が現れた。『遂に』と言っても良い。過去最大の敵だ。
       どんな運命だろうとクソッタレだと馬鹿にしてきた俺の前に……)


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539 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:46:20 ID:xjnvjimM0


\(;^o^)/(今の俺は、あのガキの言った 『運命』 の通りに生きている)

\(;^o^)/(今までクソ同然だと思っていたものに従い、生き延びている……)


\(;^o^)/(……それを受け入れられるのか?)

\(;^o^)/(今まで運命を否定してきた俺が運命に救われるなんてありえねぇ……。
       そんなん、最早ただの敗北宣言だぞ……)


\(;^o^)/(クソッ! まるで人生を犯された気分だ……。
       ガキの頃、車に轢かれた時とまったく同じ無力感がある……)

\(;^o^)/(そして何より、今現在この俺が 『運命サマに生かされている』 という事実がこの上なくムカつく!)


\(;^o^)/(あのガキの存在は今、俺の 『平穏なる心』 をこっぴどくメチャクチャにしている……!
       素直キュートの存在は、俺の人生とはまるっきり相反している……!)

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540 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:47:10 ID:xjnvjimM0



\(;^o^)/(……否定しなきゃならない。運命を語るあのガキは、俺にとって唯一の敵だ。
       あれの言葉を否定出来なければ、俺にもいつか 『運命』 が牙を剥く……)


\(;^o^)/(このまま生き延びれば俺は運命を受け入れてしまう……。
       受け入れたら最後、俺は運命の奴隷だ……!)


\(;^o^)/(運命に支配された人生なんて俺が一番望んでないものだ!
       何が何でも、俺は俺自身の未来の為に、この 『運命』 には従わないッ!)

 階段を上る彼の足が、その段にぐっと踏み止まった。
 オワタは振り返り、暗闇に落ちた階下を睨みつけた。


\(;^o^)/(……なんというか、『勝負に勝って試合に負けた』 という感じか……。
       今回は 『人生に勝って運命に負けた』 が、いつか逆転してやるからな……)

\(;^o^)/(素直キュート、確かに覚えたぞ。そして強敵だと認める。
       俺はあらゆる強敵から逃げ延びてきたが、お前にだけは立ち向かう)


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541 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:48:00 ID:xjnvjimM0


\(;^o^)/(人生、勝たねばならない相手が確実に一人は居るって言うしな。
       それが今来ただけの話。人生初の、俺だけの戦いだ……)


 オワタは生唾を飲み下し、護身と自殺用を兼ねた拳銃を懐から取り出した。
 拳銃をこめかみに当て、次の行動を整理する。


\(;^o^)/(……とりあえず、あの両目傷の野郎を攻略する)

\(;^o^)/(格闘家だから時間は掛かるだろうが、攻撃パターンを覚える)

\(;^o^)/(……まずは三十回だな。その先は後で考えよう)


 途端、その階の照明が時間切れで消灯した。

 そして、暗闇の中に小さな火花が飛び散った。


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542 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:49:28 ID:xjnvjimM0

≪12≫

 そして今度も呆気なく死ぬ。


≪13≫

 死ぬたび、失敗したという結果がひとつ積み上がる。


≪15≫

 人生オワタは何度でも死んだ。


≪17≫

 何度でも――






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543 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:50:08 ID:xjnvjimM0

≪19≫

 終わりなど無かった。


≪23≫

 終わりを受け入れる事は、運命への敗北に直結する。


≪29≫

 運命への敗北は、人生オワタの存在そのものを否定するに等しい。


≪47≫

 オワタの敵は『運命』であり、『素直キュート』だ。

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544 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:50:57 ID:xjnvjimM0

≪101≫

 『運命は行動によって変化する』という前提で存在する人生オワタの超能力。


≪127≫

 『運命は決まっている』という前提で存在する素直キュートの超能力。


≪191≫

 これが同時に存在する矛盾――


≪397≫

 ――人生オワタにとって、それはきっと、人生最大の敵だった。

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545 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:51:37 ID:xjnvjimM0



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        第二十六話 「面汚しの夜 その3」

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546 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:52:17 ID:xjnvjimM0

≪400≫












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547 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:52:57 ID:xjnvjimM0




\(^o^)/「……あ?」


 オワタは会社で目覚め、半ば朦朧とした意識で現実を見た。





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548 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:53:43 ID:xjnvjimM0


\(^o^)/(…………これ何回目だ)


\(^o^)/(最多記録は300とかか……。
       そろそろ記録更新だな……)


\(^o^)/(……攻撃パターンを書き起こさないと)

 オワタは書類の山から適当に一枚抜き取り、その裏にひたすら文字を書き殴った。
 両目傷の格闘家。彼の攻撃パターンを、覚えている限り書き出していく。
 こうも回数を重ねると忘れてしまった攻撃パターンも多数あるが、出来る限りを図と字にして復習した。

 その作業だけで一時間が経過した。
 攻撃パターンが余りにも多すぎる、という愚痴は100回目を超えたあたりで言うのを止めた。


 ざっと二十枚にまとめた攻撃パターンのメモを見直しながら、人生オワタは思う。


\(^o^)/(……無理。これは無理だろ)

\(^o^)/(パターンは大体分かったけど、体が追いつかない)


\(^o^)/(先読みして動こうにも、先読みして動いたっていう行動自体で相手の動きが変わる)


\(^o^)/(先読みは、100手先まで出来なきゃ役に立たない)


\(^o^)/(グーだけでじゃんけん百連勝するようなもんだぞ、なんだこれ……)

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549 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:54:33 ID:xjnvjimM0


\(^o^)/(…………)


\(^o^)/(…………どうしよ)


\(^o^)/(頭がさっぱり動かない……モチベが尽きた……)


\(^o^)/(……コーヒー牛乳でもキメるか)








             ⑩⑩
_____     ⑩⑩⑩⑩⑩
|←自販機|    ⑩⑩⑩⑩⑩
 ̄ ̄|| ̄ ̄    ┗(^o^ )┛
   ..||         ┃┃  
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


_____            、
|←自販機|           冂
 ̄ ̄|| ̄ ̄    三┏( ^o^)┛
   ..||       三  ┛┓ 
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

550 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:55:13 ID:xjnvjimM0



\(^o^)/(あ〜〜〜うまい血が冷える。なんだ血が冷えるって)



\(^o^)/(……しばらく休むか。まずモチベ戻そう)



\(^o^)/(とりあえず餃子とか食べにいこ……)


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551 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:55:53 ID:xjnvjimM0

≪401≫


\(^o^)/


\(^o^)/(社長殴りに行くか……)



≪402≫


\(^o^)/(ちょっと元気出た)

\(^o^)/(次は、カラオケだな……)


≪407≫


\(^o^)/(いくらでも歌えそうだ……)


\(^o^)/(……でも、そろそろ考えないとな。頑張ろう、頑張ろう)


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552 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:56:33 ID:xjnvjimM0

≪408≫



\(^o^)/(……とにかく俺一人じゃ無理だ。
       認めたくはないが、そういうことらしい)



\(^o^)/(強い奴が必要だ。それもブッチギリで強い奴)

\(^o^)/(でもそういう奴とは全員縁を切ってきたからな……。
       強い奴は必ず戦いの火種になるし……)


\(^o^)/(どうしよ……。アレを倒すとなれば相当な奴だよなぁ)

\(^o^)/(警察は変顔一派の対応で手一杯って感じだし。
       子供の生存者が居るって言えば数人分けてくれるだろうが、頼りねえ……)


\(^o^)/(…………)



\(^o^)/(……あの黒い奴ならいけるか?)

 オワタは遥か昔の記憶から黒ローブの存在を思い出し、天井を見上げた。
 いま一番身近に居る強い奴と言えば、オワタには彼くらいしか思いつかなかった。

\(^o^)/(一度殺されてっけど、他に頼る当てもねえし……)

\(^o^)/(……とりあえず行くかぁ)




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553 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:57:35 ID:xjnvjimM0

≪426≫





「……こんな顔にされるとは聞いていなかったが」


『木を隠すなら、という事だ。
 しかしアンタが見た目に文句を言うとは、意外だ』


 ビルの屋上で黒いローブをはためかせ、誰かと通信している男。
 彼が不満を口にすると、通信の相手は慎ましくそれに反論した。



「……荒巻の足止めはどうなってる」

『交戦開始から一時間になるが、三人掛かりでも抑え切れてない。
 ガキ共は当然としても、思った以上にミセリが苦戦してる』

「マニーの想定通りという訳か。もうすぐ俺の所にも来るんだろう」

『その通りだ、そして時間が無い。急いで素直クールを奪取してきてくれ』

「了解した」

 通信を切り、黒ローブは遠くにそびえるステーション・タワーを見渡した。



\(;^o^)/「……ども……」

 そこに、人生オワタが音も無く現れた。





.

554 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:59:00 ID:xjnvjimM0


 黒ローブは振り返ると同時に腰の拳銃を抜き取った。
 狙いを定め、引き金を引く。
 精密な動作で撃ち出された弾丸はオワタの眉間を貫き、彼を絶命させた――



\(;^o^)/「あの、話を聞いてほしいんですッ」

 ――という数週前の体験のもと、オワタはクイッと首をかしげて弾丸を避けた。
 続けて放たれた弾丸も全て回避しながら、オワタは誠実に話し続ける。

\(;^o^)/「今、どうしても貴方の力が必要なんです!」

\(;^o^)/「金でも物でも、必要な対価は用意しますんで……!」

 黒ローブはナイフを投擲すると同時に走り出し、投げたナイフを追い越してオワタに近接戦闘を仕掛けた。
 十回の打撃がオワタの体を的確に破壊し、動けなくなったところでナイフが追いついて急所に突き刺さる。


 ――その経験があるオワタは、まず横に避けてナイフの軌道から外れた。
 弾丸を避けるのと同じ要領で黒ローブの打撃も全ていなし、掠らせもしない。


\(;^o^)/「『依頼』という形で、僕の話を聞いてもらえませんか!」

 そこまでを言い切ったオワタは回避を止め、黒ローブに向き直った。
 直後、銃口が眉間に突きつけられた。

\(;^o^)/「ヒィィ! チクショウ話くらい聞けよバカ!」




「……すまないが、俺も目的があってここに来ている。
 今はお前に関わっていられない。いい加減、諦めてくれ」

 オワタに銃を向けたまま、黒ローブは溜め息交じりに言った。
 即・銃殺と思っていたオワタは彼の返事を脳内でじっくり反芻し、話の取っ掛かりになりそうな部分を聞き返した。

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555 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 17:59:40 ID:xjnvjimM0


\(;^o^)/「あの、いい加減って……」

「そのままの意味だ。お前、何度やり直せば気が済むんだ」



\(;^o^)/「……分かる感じですか?」

「……まあそうだな。分かる」

 曖昧な質問に、曖昧な答え。
 しかしオワタにはそれだけで十分だった。
 この男が、オワタの時間逆行をしっかり認識していることは理解できた。



\(;^o^)/「……分かるなら力を貸してくれ。助けたくて倒したい奴が居る」

「……屋上の入り口を封鎖して夜を越せ。それで助かる」

\(;^o^)/「あんたくらい強ければアイツも倒せる。頼む」

「素直キュートは諦めろ。あれはもう手遅れだ」

\(;^o^)/「べつにお前じゃなくてもいい。強い奴がほしい。紹介してくれ」

「話を聞け」

\(;^o^)/「頼む。金は出す」

「金は要らない。無理だと言っている」

\(;^o^)/「肩揉み券をつけてもいい」


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556 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:00:20 ID:xjnvjimM0



「……もういい。分かった。なら、こちらが諦める」

 黒ローブは俯いて頭を振り、深々と息を吐いた。

\(;^o^)/「マジ!? 手伝ってくれんの!?」


 黒ローブは中空を指差す。
 オワタは彼の指先を目で追い、夕空を一望した。

「この街とマリスポ港のあいだに海上発電所があるだろう。
 こちら側の仲間が一人、そこで陣取っている」

\(;^o^)/「……強いんだな?」

「強さは保証する。だが、お前に協力するとは限らない。交渉次第だ」


\(;^o^)/「……よし、分かった! ありがとう!
       初見で殺された時は悪い奴だと思ったけど、本当に悪い奴だったな!」

 黒ローブは黙って背を向け、さっさと行けとオワタに促した。


\(;^o^)/(……発電所か。急げば一時間、安全運転でプラス20分だな……)

 新たな指針を得たオワタは手早く仕事を片付け、さっさと会社を後にした。

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557 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:01:19 ID:xjnvjimM0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 発電所の警備網は、人も機械も一つ残らず全滅していた。
 入り口の鉄扉は開け放たれたままで、オワタは簡単に敷地内に入ることができた。


 車を降りて周辺を確認する。
 敷地いっぱいに軒を連ねる発電施設、よく分からない倉庫、中央に真っ直ぐ佇む監視塔。
 どこも真っ暗で人気などまったく無いが、今は黒ローブの仲間以外に頼る当てはない。


\(^o^)/(警備システムを破壊したなら制御室には当然居ない。
       倉庫なんざ陣取る理由も無いだろうし、居るとすれば監視塔だけど……)


 闇夜にそびえる監視塔を見上げ、渾身の溜め息を吐き出す。

\(^o^)/(……分かる。なんか、ヤバい……)

 まあとにかく、駄目なら次で、とりあえず……。
 駄目人間の動機にありがちな言葉を並べつつ、オワタは監視塔のエレベーターに乗り込んだ。



 途中でエレベーターが爆発して死んだ。


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558 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:02:23 ID:xjnvjimM0

≪461≫




 監視塔の最上階でゆったりと荒巻を待っていたマニーは、
 その瞬間に目を見開き、出入り口のドアを睨みつけた。



¥・∀・¥(……五回も避けた。強運か、あるいは)

 この監視塔にはマニーの超能力で用意した罠が多く張り巡らされている。
 しかし、さきほど監視塔を上り始めた侵入者は、その罠をするりと回避して見せた。それも一度ならず。



¥・∀・¥(感知する限りではとんでもないザコ。
       私の罠を初見でくぐり抜けるような輩ではないが……)

 思考している間に、また一つ罠が突破される。
 道中まだまだ罠は残っているが、この調子であれば三十分と掛からずに上ってくるだろう。


¥・∀・¥(……出向いて始末するとしようかな。
       心配事は早々に消すべきだろう)

 マニーは外の投光機から少量の光を吸収し、椅子と一緒に瞬間移動した。

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559 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:03:44 ID:xjnvjimM0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




\(#^o^)/

 床が落ちる、槍が降る、大玉が転がる、とにかく爆発する、外すと死ぬ二択クイズなど。
 全てのマスに 『即死。スタートに戻る』 と書かれたスゴロク同然の有り様に、オワタはキレていた。

 多数の風雲たけし城めいた罠を突破しつつ、オワタは監視塔の中層まで到達。
 ここから先は未知の空間だったが、どうせ死ぬので今更立ち止まることもしない。
 オワタはイライラを込めた力強い足取りで廊下を前進した。


¥・∀・¥「……避けんのか?」


\(#^o^)/「――あ゙あ゙!?」

 背後の声に足を止め、オワタは横暴に振り返った。

 すると、椅子に座った男が足を組んでこちらを見つめている。
 オワタは一瞬こいつを殴ろうと考えたが、なにか忘れている気がして、思いとどまる。


\(^o^)/(……あっ。コレだ、アイツの仲間)

 目的を思い出し、マニーの存在を合点する。
 オワタは手の平を返し、彼を懐柔しようと愛想笑いで話しかけた。

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560 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:04:27 ID:xjnvjimM0



\(;^o^)/「……エヘヘ初めましてェ〜」


¥・∀・¥「……」


\(;^o^)/「自分、あの、名前分かんないんですけど、黒いローブの人の紹介で……」


¥・∀・¥「……」


\(;^o^)/「……来ました。人生オワタって言います〜」


¥・∀・¥「……用件は? そちらとの関係は終わったはずだが」


\(;^o^)/「あっ個人的なお願いです! あの人とはまったく無関係です!
       殺されるよしみで頼んで紹介してもらったんです!」


¥・∀・¥「……」


\(;^o^)/「……あのですねぇ、お願いがあるんですよ。
       ちょっと一人、倒すか殺すかしてほしい相手が居るんです……」


¥・∀・¥「対価は?」


\(;^o^)/「あっそれはもうお金でもブツでも、出来る限りのことをします!」


¥・∀・¥「要らん。消えろ」

 マニーが片手を振り払うと、オワタは爆発して死んだ。

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561 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:05:07 ID:xjnvjimM0

≪540≫



¥・∀・¥「――対価は?」


\(;^o^)/「情報! これでどうだ!?」


¥・∀・¥「……中身による。言ってみろ」


\(;^o^)/「荒巻スカルチノフと戦うんだろ!?
       戦うと死ぬぞ! それはもうこっぴどく!」


 マニーは膝で手を組み、冷たい笑みを作った。

¥・∀・¥「……なるほど。聞き逃せんことを言ったな。
       いったいどこで私の決闘を知った? 情報の出所を吐いてもらうぞ」

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562 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:06:36 ID:xjnvjimM0


\(;^o^)/「見てきたんだよ! とにかくお前は死ぬの!」


¥-∀-¥「……正気ではないようだ。死んでおけ」

 マニーは哀れむように目を逸らし、片手を振り払った。
 するとオワタの肉体が爆発し、周囲に血肉が飛び散った。



\(;^o^)/「――それだって五十回以上くらってんだよ!」

 しかし、そうなるはずだったオワタは五体満足で生きていた。


¥・∀・¥「……おお?」

 マニーはすこし驚き、もう一度手を振り払った。
 同時にオワタは二歩だけ横に動き、またしてもマニーの攻撃を避けて見せた。


¥・∀・¥「……ハハッ楽しいな。どこまで避ける」

 それを面白がったマニーは指を鳴らし、連続してオワタの体を爆破させようとした。


\(;^o^)/「言っとくけどやるだけ無駄だからな! ダンレボみたいに避けきるぞ!」

 紙一重で確実に、そして効率よく。
 オワタは踊るように体を翻し、見えない爆破攻撃の全てを回避しきった。


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563 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:07:52 ID:xjnvjimM0


¥・∀・¥「――いいぞ、ウォーミングにピッタリじゃないか!」

 いよいよノッてきたマニーは椅子を立ち、本格的に超能力を発動させた。
 彼の周囲に電撃が走り、空間が炸裂して音を上げる。


¥・∀・¥「誰かは知らんがちょうどいい!
       私のガス抜きに付き合ってもらうぞ!」


\(^o^)/「――待て」

 オワタは、それを静かに呼び止めた。


¥・∀・¥「なんだ?」








\(^o^)/「――疲れた」


¥・∀・¥


\(^o^)/「もうダメ」


¥・∀・¥


\(^o^)/「勘弁してください……」


 オワタは、自然と土下座の姿勢をとった。


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564 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:09:29 ID:xjnvjimM0


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 土下座のオワタに腰掛けると、存外しっくりきた。

¥・∀・¥「お。座り心地は中々だ」

\(;^o^)/「そっ、それは良かったです……!」

¥・∀・¥「下々の嗜みを心得ているという事だな。
       適切な対応に免じ、まあ話くらいは聞いてやろう。しかし手短にな」

 マニーは下衆な笑顔でオワタの顔を覗き込んだ。
 人を見下しきった彼の表情に、オワタは土下座しながらキレた。

\(;^o^)/(いつかゼッテー仕返しする! 死ね!)



\(;^o^)/「あの……僕の能力は、ですねェッ……!」

¥・∀・¥「おいおいおいおい、手短にと言っただろう?
      もっとハキハキと喋ってくれないと困るなぁ……」

\(;^o^)/(絶対に俺が殺す! 死ね!)

 オワタは大きく息を吸い込み、一息で用件を話した。


\(;^o^)/「死んでも時間が戻って大丈夫って能力でそれで色々未来を死ねってるんですうッフウ……!」

¥・∀・¥「いま変な言葉を混ぜなかったか?」

\(;^o^)/「きのせいですッ……!」


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565 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:10:21 ID:xjnvjimM0


\(;^o^)/「それでマニーさんが荒巻と戦って死ぬのも見てっ見てて……」

¥・∀・¥「すまん聞き逃した」

\(;^o^)/「だから死んじゃうんですよ戦ったらったスゥゥゥハァァァァ……!」



¥・∀・¥「なるほどな……。私の協力を取り付けるために、何度死んだ?」

\(;^o^)/「数えてねェッ……何百とかッ……!」

¥・∀・¥「……確かに、その能力が本当なら色々と理解できる。
       お前のようなザコが私の攻撃を避けたのもな」

\(;^o^)/「じゃあ俺に手を貸してくれるんすかッ……!」


¥・∀・¥「いや、今回は駄目だ」

\(;^o^)/「ぐえっ! あと死ね(小声)」

 マニーはオワタから降り、ザコに座ったいせいで付着した埃を手で払った。
 一方オワタは満身創痍で床に伏し、激しい呼吸を繰り返した。


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566 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:11:18 ID:xjnvjimM0


¥・∀・¥「貴様の能力、死をトリガーにしているのだろう?
       であれば、その提案は 『次の私』 に言うがいい」


¥・∀・¥「同じように私に話をし、同じように話をしろ。
       だがそれだけでは貴様は信用に足らん。今の私も貴様をまったく信用していない」


¥・∀・¥「だから合言葉を作ろうではないか。
       その合言葉をもって協力関係の成立としよう。ゆえに今回は死ね」

 マニーは片手を上げ、オワタを爆死させる用意を整えた。
 

¥・∀・¥「いいか、合言葉は――」


≪541≫


\(;^o^)/「――カネに勝る武力なし」

 オワタは床に転がったままマニーを見上げ、その合言葉を口にした。
 マニーは一瞬黙った後、上げた片手をそのままオワタに差し出した。


¥・∀・¥「……ふむ」



¥・∀・¥「私は資金と言ったが、まあいいだろう。
       貴様の徒労はここに意味を成した。良かったな」


\(;^o^)/「……これで終われば、いいんだけどな」

 マニーの手を取り、オワタはくたくたの笑顔を浮かべた。



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567 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:12:19 ID:xjnvjimM0


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¥・∀・¥「上限ナシ、対象『荒巻スカルチノフ』……もう迷いはない。荒巻、お前を止めるのは私だ」

/ ,' 3 「ワシは、平和な今に留まっていたいと願うような脆弱な人間ではない」

¥・∀・¥「今更話し合う気はお互い無いだろう……。
       さらばだ。今夜どちらかが死ぬ。今生の別れだ」


 そのとき、彼らの上空に太陽が出現した。

 実際には、それは太陽のように灼熱を纏った岩――隕石だった。
 数は多数。目視だけで二十はある。
 それら隕石の全てが、荒巻とマニーの居る発電所へと落下してきていた。


¥・∀・¥「去らば友よ、然らば死ね」

/ ,' 3 「……くだらんな」

 マニーの言葉を一蹴し、荒巻は夜空に向けて腰のサーベルを振りぬいた。
 一瞬、時が止まったような錯覚がマニーの体を縛りつける。


¥;・∀・¥「なっ……!!」

 そして気がついた時には、天上の隕石は一つ残らず真っ二つに裂けていた。
 まるで灯篭の火を吹き消すかのように、荒巻は全ての隕石を切断して見せた。


¥・∀・¥「……化け物め。いや、分かりきったことか」

 切断されて隕石としての形を失い、超能力の効力を失った隕石群は、元の形――幾千億円分の紙幣に戻った。
 大量の紙幣は空中に舞い散り、やがて能力の対価として消滅していった。

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568 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:13:08 ID:xjnvjimM0



¥-∀-¥「……くくっ」


/ ,' 3 「……何がおかしい?」

 唐突に笑い出したマニーに怪訝な表情を向けながら、荒巻は腰を落とした。


¥・∀・¥「……なに、愉快で堪らんだけよ。
       私と貴様の茶番劇がな……」

 マニーは頭を振って嘲笑をかき消す。


¥・∀・¥「さて、始めよう! 今夜はいい、実に愉快だ!」

/ ,' 3 「……気が触れたか。哀れよのお」


 マニーは戦いの火蓋を切って落とした。
 切って落とせば業火に見舞われる戦いである事は彼自身も分かっていた。

 人生オワタに、そう教えられた。

 もちろん今回もマニーは荒巻に勝利するつもりだった。
 しかし今回は万が一にも備え、彼は人生オワタを利用した保険を用意していた――



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569 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:14:15 ID:xjnvjimM0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




\(;^o^)/

 人生オワタは発電所から一番近いコンビニに入り、片隅のATMに直行した。
 ATMの画面をまじまじと見つめた後、財布から三枚のキャッシュカードを取り出す。


\(;^o^)/「……フゥゥゥ……」

 三枚の合計預金額は一千万近く。オワタがせっせと貯めてきた勤労の集大成である。




\(;^o^)/「……オァァ……」

 一枚目をATMに挿入し、次にオワタは黒いキャッシュカードを取り出した。

\(;^o^)/「……」

 黒いカードを前に黙り、目を丸くしたまま五分以上も迷い、迷い尽くす。
 そして決心、というか諦めがつくと、オワタは人生最大の溜め息とともに、黒いカードをATMに吸い込ませた。






\(^o^)/「……」



\(^o^)/「……あっ」

 作業時間たったの一分。



\(^o^)/(おひょおおおおおおおwwwwwwwwww)

 オワタの一千万円が、消えた。

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570 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:14:57 ID:xjnvjimM0



\(^o^)/(なんでだwwwwwwwwww)

 発狂寸前の笑顔でコンビニを後にし、車に戻る。
 オワタは黒いカードを後部座席に投げ捨て、発狂した。




\(^o^)/(なんか有り金ぜんぶとけたwwwwwwwwwwww)


\(^o^)/(あうあww)ガンッ!

 パァァァァーーーwwww(クラクションの音)



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571 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:15:38 ID:xjnvjimM0



(――おい)

 発狂していると、頭の中に声が入ってきた。
 いまさらそんな事にも反応せず、オワタは発狂を続ける。


(話が違うぞ。これではまったく足りん)


\(^o^)/「うっせwwwwwもう帰りのガソリン入れる金もねえよwwww」

\(^o^)/「あー社会的に終わったwwwww死にたいwwwww」


(……いずれ好きな金額で返してやる。冷静になれ)

\(^o^)/「うん」

 マニーは久し振りに他人に心から同情し、強い哀れみを覚えた。


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572 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:16:40 ID:xjnvjimM0



¥-∀,';,', 「――しかし、私とて傷心の極みだ」


 後部座席に投げたカードが黒い輝きを放つと、その光の中にマニーの肉体が再生され始めた。
 この再生にはざっと五百万円が利用されている。


¥・∀・¥「奴らを利用し、兆をつぎ込んでなお届かんとは……」

\(^o^)/「ちょう? ちょうちょ?」

¥・∀・¥「……なんでもない」

 今のこいつに金の話はやめておこう、とマニーは話をごまかした。


¥・∀・¥「不満はあるが、何にせよ貴様は約束を守った」

 肉体を再生しきったマニーは次に衣服を具現化して身にまとった。
 のちの戦闘を考慮し、衣服は百万円程度のスーツにしておいた。

 優雅に足を組み、マニーはバックミラーに映るオワタに視線を送った。


¥・∀・¥「次は私の番だ。何とでも言ってみろ」


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573 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:17:21 ID:xjnvjimM0


\(;^o^)/「――ハッ! そうだ、急がねぇと!」

 オワタは今月分の支払いすら出来なくなった携帯電話で地図を表示し、マニーに画面を突きつけた。


\(;^o^)/「ここ! このコンビニ行ってくれ!」

¥・∀・¥「……そこに行くのはいいが、確実だろうな?」

\(;^o^)/「は!? うっせバーカ早くしろ!」

¥・∀・¥「……私が関わったことで今回は特に状況が違うはずだ。
       その影響で未来が変わった可能性はあると思うが、そこでいいんだな?」

\(;^o^)/「……」

 冷静に考えるとその通りだったので、オワタは黙って頷いた。




¥・∀・¥「……街に戻ったら感知能力で探し出す。
       その後、移動して戦闘……でいいか?」

\(;^o^)/「オッケー! 素直キュートって奴を探してくれ!」

¥・∀・¥「街に戻ったらと言っただろう。とりあえず車を降りろ」


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574 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:18:01 ID:xjnvjimM0



¥・∀・¥「――地面に寝て私の足に掴まれ。それもガッチリな」

 外に出て開口一番、マニーはオワタにそう促した。
 訳も分からず言われた通りにすると、マニーの体が徐々に浮かび始めた。


\(;^o^)/「うおお……浮いてる……」フワフワ

¥・∀・¥「感知能力を使うならば瞬間移動はしてられん。
       安値で済ませるため、最速でジャンプする」

\(;^o^)/「……なんて?」


¥・∀・¥「初動と着地でのみ力を使う。だから落ちても拾いには行けん」

¥・∀・¥「落ちるな。落ちたら多分、死ぬぞ」


 空中でぐっと膝を折った次の瞬間、マニーは轟音を伴って夜空に跳躍した。


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575 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:18:43 ID:xjnvjimM0

≪567≫




 人生オワタを探し、素直キュートは彼の勤め先の会社に来ていた。
 会社はすでにもぬけの殻で、人気はまったく無い。

 『ThisMan』に溢れかえる今夜、照明が消えた会社の中は真っ暗闇になっていた。



o川*゚ー゚)o「……ああ」

 時計を一瞥し、小声を漏らす。
 もうすぐ誰かが私を殺しに来る。
 オワタさんを見つける前に、時間が来てしまった。


 キュートは最期の景色を見ようと会社の屋上に出て行った。

 ぬるい夜風がクソワロタの街をそよがせる。
 街は静かだが、複数の思惑が街中に飛び交っている。

 そして、それらがいずれ生み出す結末を知るのは彼女だけだ。
 彼女が殺される理由は、それ以外に無い。




o川*゚ー゚)o「……私が居ると、彼の目的を誰かに口外されるかもしれない」

 キュートは屋上のフェンスに体を預け、振り返った。

o川*゚ー゚)o「だから予め殺しておく。そうですよね」


( ФωФ)「……」

 振り返った視線の先には、予知で見た両目傷の男が立っていた。


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576 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:19:55 ID:xjnvjimM0



( ФωФ)「……畏怖せずか。貴様の親は、いい親ではないようだ」


o川*゚ー゚)o「……どうして、そう思うんですか?」


( ФωФ)「子に恐怖を教えるのは親の役目。
        そして、その恐怖を克服させるのも親の役割だ」

( ФωФ)「子は、一番最初に親という存在への恐怖を克服する。しなければならない」


o川*゚ー゚)o


( ФωФ)「しかし貴様の親はそれをしていない。
       故に、このような状況においても、貴様は死を感じていない」

( ФωФ)「恐怖を知らずに生きた人間は見るに耐えん。
        恐怖を克服せずに生きる者など、動物畜生よりも遥かに下等である」


o川*゚ー゚)o「……恐怖はありません。貴方の言う通りです。
       私の親は正直、二人とも親になるべきではありませんでした」

o川*゚ー゚)o「子供は二十歳で大人に。
       その後、時間を掛けて大人になりきって、妻や夫の役割を全うできるようになってから、初めて親に。
       しかし私の親は大人にすらなりきらないまま親になりました。だから、駄目だったんです」


o川*゚ー゚)o「でも、そういう人の子供だからと言って、
       『家族』 という集団を円滑に動かす 『子供』 というパーツであり続けるのが、子供の仕事です」


o川*゚ー゚)o「もっとも、それも今、ここで終わる……」

 キュートは目を閉じ、未来予知に見た死の光景を頭に浮かべた。
 呆気なく心臓を潰され、痛みは一瞬。
 これまで何度も見てきた死の瞬間が、もうすぐ来る。



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577 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:20:35 ID:xjnvjimM0



( ФωФ)「……遠くから迫る気配、間違いなくここに向かっている。
        どういう訳か、こちら側の者も一緒にだ」

 しかし、キュートが生きることを放棄しても、両目傷の男はすぐに動かなかった。



 直前の語りさえなければ殺すのは間に合っていたが、今はもう手遅れだった。
 たった数秒の遅延。それが、男の手を止めた。




o川*゚ー゚)o「……子供が好きなんですよね。
       ごめんなさい、予知で色々見ちゃいました」


o川*゚ー゚)o「あの人達が間に合うには、私の時間稼ぎが必要だったので……」


( ФωФ)「……やられた。演技派、もとい性悪であるな」

o川*゚ー゚)o「似たもの同士です。優しいおじさん」


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578 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:21:15 ID:xjnvjimM0




o川*゚ー゚)o「私の嘘に付き合ってくれたお礼です」


 その時、鋭い閃光が夜空を切り裂いた。

 光は一直線に彼女達のもとに飛来し――




o川*゚ー゚)o「ギコさんの為にも、生き延びてください」


 ――彼女の言葉の後、屋上に着地して一層強く輝いた。


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579 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:21:57 ID:xjnvjimM0





「――オレ生きてる!? 死んでる!?」


「生きてるぞ。女も居る」



 収束していく光の中に二人分の声があった。
 どちらの声にも聞き覚えは無かったが、キュートは彼らのことをずっと前から知っていた。



\(;^o^)/「……あっ! 素直キュート!」

o川*゚ー゚)o「こんばんは、人生オワタさん」

 光が収まって互いの姿を認め合うと、人生オワタはキュートを指差して声を張り上げた。


¥・∀・¥「ほれ、決め所だろう。キザなセリフの一つでも言ってやれ」

 マニーの冷やかし半分のアドバイスを聞くまでもなく、オワタは彼女に駆け寄って鬱憤を叩き付けた。




\(;^o^)/「てめえ全部知ってんだろ! あとで回数分感謝してもらうからな!」


o川*;゚ー゚)o「は……はい」



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580 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:23:23 ID:xjnvjimM0



¥;-∀-¥「……呆れた男だ」

 カッコつけろと言ったつもりが、出てきたのは逆ギレめいた怒号。
 マニーは嘆息しながら踵を返し、両目傷の男に向き合った。




¥・∀・¥「……と、言う訳だ。悪いが敵に回る。
       他の連中にも伝えておいてくれ、ロマネスク」

( ФωФ)「……承知したが、ここで一戦交える気であるか」


¥-∀-¥「残金は少ないが、まあ何とかなると計算した。
       貴様など取るに足らん無能だ。現状でも、互角はあれど負けは無い」

( ФωФ)「なるほど。……ほざいたな」

 ロマネスクはマニーに向かって構え、両脚を力強く踏みしめた。
 空気にヒビを入れるような重々しい音が響き、空間が一気に張り詰める。


¥・∀・¥「……ああスマン、最後の仕事を忘れていた」

¥・∀・¥「ちょっと待て。後ろのをどかしてくる」クルッ

 しかし意に介さず、マニーは男に背を向けた。

.

581 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:24:03 ID:xjnvjimM0


\(#^o^)/「お前ぇぇ!! お前がぁぁぁ!!」

o川*;゚ー゚)o「あの、せめて分かるように八つ当たりを……」

¥・∀・¥「ええい乳繰り合うな、場所を弁えろ」

 二人に近付くと、マニーは彼らの肩を掴んで言った。


\(;^o^)/「……えっ。お前はアレと戦えよ。お前の仕事だろ」

¥・∀・¥「二人とも抱き合え」

\(;^o^)/「……えっなんで?」

¥・∀・¥「邪魔だからブッ飛ばす。さっきのヤツをやる」

\(^o^)/



\(;^o^)/「オェェ!? さっきのまたやんの!? 死ねよ!」

¥・∀・¥「心配するな。場所は選ぶし、肉体強化も施してやる。
       ただし、とにかく女を抱いたまま離すな。でないと着地の衝撃で女が死ぬ」

\(;^o^)/「だったら二人分やれよ!」

¥・∀・¥「カネが無い。お前が守れ」


.

582 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:24:45 ID:xjnvjimM0


\(;^o^)/「……」


\(^o^;)/「……いける?」チラッ


o川*゚ー゚)o「……あっ大丈夫ですよ、出来ます。保証します」

\(;^o^)/「よっしゃ来い!」ギュッ!!

 彼女の後押しで自信をつけたオワタは手の平を返してキュートを抱きしめた。
 マニーはオワタの肉体を強化した後、彼の背中に両手を押し当てた。



¥・∀・¥「あとは任せて惚気ておけ。また会おう」

\(;^o^)/「ゼッテーだぞ! まだ俺の一千万がッ――」


 瞬間、オワタ達はフェンスを突き破ってステーション・タワーの方角にブッ飛ばされた。



.

583 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:25:25 ID:xjnvjimM0









━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━








.

584 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:26:05 ID:xjnvjimM0







 ――――軋む音が、頭の中に伝わってきた。






.

585 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:26:52 ID:xjnvjimM0



 直後、痛みが肢体に響き、意識が無理矢理に起こされる。
 オワタは目を開けようとしたが、それが出来ないほどの眩しさが部屋中に満ちていた。


\(;^o^)/(……朝か……?)

 少しずつ目を開け、光に目を慣らしていく。
 思えば、数百回分の時間逆行はどれも夕暮れから夜にかけての時間帯だった。
 朝という状態に晒されるのは、オワタの体感時間では本当に久し振りの事になる。



\(;^o^)/(……病院じゃないよな)

 自分の服や大きなベッド、部屋の模様などから病院かとも思ったが、窓からの景色がその想像を否定する。
 窓から見える街を一望できるほどの絶景は、ここが凄まじい高所であることを示していた。



\(;^o^)/(……てことは、タワーか。あー助かった……)

 しかし、自分の体を見返すとけっこうな傷を負っているのが見て取れた。



\(^o^)/(でも生きてりゃハッピー! 俺の勝ち!)

 こういう考え方の人生は、傷が絶えない。


.

586 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:27:56 ID:xjnvjimM0



o川*゚ー゚)o「……おはようございます」モゾモゾ


 ふと素直キュートの声がして、オワタは部屋の中を見回した。
 声の出所が布団の中なのは一瞬でピンと来ていたが、オワタは何かをごまかす為に視線を泳がせた。


\(;^o^)/「……なんで布団に居るの」

o川*゚ー゚)o「そろそろ起きると思って。嬉しくないです?」

\(;^o^)/「嬉しくない。人に見られたら誤解される」

 おそるおそる、掛け布団を持ち上げて覗き込む。
 オワタは、小さな暗闇の奥に少女の得意気な笑みを見つけた。


o川*゚ー゚)o「隠れるので大丈夫です。
       事案になっても私が証言するので大丈夫です」

\(;^o^)/「大丈夫とか言う前に出てくれ。
       つーかさっき体が痛かったのお前が原因だろ」

o川*;゚ー゚)o「あれは私の寝相が悪くて……。ごめんなさい」


.

587 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:28:45 ID:xjnvjimM0


 キュートを布団から追い出し、備えられていたパイプ椅子に座らせる。
 オワタは何かとソワソワしている彼女を見かね、小さく鼻息を漏らした。


\(;^o^)/「なんか言いたいんだろ。好きにしろよ……」

o川*゚ー゚)o「え、いいんですか?」

 すると、彼女は早速ぺらぺらと話し始めた。



o川*゚ー゚)o「あの、知ってました。貴方が助けに来てくれるの。
       貴方が今まで、何度も私を助けに来てくれたことも……」

\(;^o^)/「……何度で足りる話じゃねえけどな……」

o川*゚ー゚)o「……はい、知ってます。本当にありがとうございます」

 オワタが口を挟んだ途端、彼女の笑顔がすこし薄れた。
 それでも笑みを保ったまま、彼女は言葉を続ける。


o川*゚ー゚)o「……私、貴方が死ぬ所を何度も見ました。
       未来予知で何度も。それも凄い数で、もう、何百回も……」

o川*゚ー゚)o「多分、その回数だけ貴方は死んできたんだと思います。
       私の未来予知が変わった回数だけ、貴方も……」


\(;^o^)/「……わりぃけど、泣かれても対処できないからな」

o川*゚ー゚)o「……すみません」


.

588 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:29:26 ID:xjnvjimM0


 キュートは息を整えてから胸をなでおろし、平静を装って開口した。


o川*゚ー゚)o「私、貴方に死んで欲しくなかったです。
       時間が巻き戻るとしても、嫌でした」


o川*゚ー゚)o「なんで私のせいでこんなに死んでるんだろうって、罪悪感とか、色々……」

o川*゚ー゚)o「……でも貴方は何度でも死んで、何度でも助けに来てくれた。
       私を助けようと、何度でも未来を変えてくれた」


o川*゚ー゚)o「途中からは死なないでとか思えなくなりました。
       未来を変える努力をしない私がそれを言っても、ただ無責任なだけだから……」


o川*゚ー゚)o「かわりに、途中からは助けてって思うようになりました。
       貴方はたぶん、私が死んだら後追いするでしょうし、
       貴方を死なせないためには、私自身が生き残るしかないんだって……」



.

589 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:30:10 ID:xjnvjimM0


o川*゚ー゚)o「……でもまぁ、とりあえず一件落着ということで」

 彼女は姿勢を正し、オワタの目を見据えて言った。

o川*゚ー゚)o「お願いです。もう二度と死なないって、ここで約束してください」


\(^o^)/「いや無理だけど」


o川*゚д゚)o

.

590 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:30:50 ID:xjnvjimM0


o川*゚д゚)o「……」


\(^o^)/(……止まった)



o川*゚-゚)o「……実は今、すごい驚いてます」


\(^o^)/「……そう」


o川*゚-゚)o「予想外っていうものを初めて体験しました」


\(^o^)/「……いやお前、それは変だろ」

 素直キュートには予知能力がある。
 それがある限り、彼女の生活に予想外はありえないはずだった。

 しかし、


o川*゚-゚)o「予知能力なら消えました」

\(^o^)/


 その能力はいつの間にか消えていた。


.

591 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:31:38 ID:xjnvjimM0



o川*゚ー゚)o「……あの能力、たぶん最初から時限付きだったんだと思います」

 途端、彼女は表情を取り戻し、オワタに含みのある視線を向けた。


o川*゚ー゚)o「はあ、これから困ったなあ〜」

\(;^o^)/


o川*゚ー゚)o「私の家、あんなだし、予知能力の無い私が戻ったら……」

\(;^o^)/「……分かった、もう言うな。やめろ」



o川*゚ー゚)o「役立たずだし、すごい虐待されるかも……」

\(;^o^)/「知らねえし、そもそもオレ完全に他人だし」



o川*゚ー゚)o「家に帰りたくないなぁ……」

\(;^o^)/「最初からこの話に持ってくつもりだったろ」

o川*゚ー゚)o「じゃあ端折りますけど責任とってほしいです……」


.

592 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:32:31 ID:xjnvjimM0


\(;^o^)/(……助けた手前、放り出すのも無責任)

\(;^o^)/(しかし今の俺はまったくの無一文。
       多分今回の入院費も踏み倒すことになる……)

\(;^o^)/(行く当てがねえのは俺も一緒なのに、
       それこそ無責任にコイツを連れてく訳には……)


o川*゚ー゚)o「えーじゃあ私が泣けば即答します?」

\(;^o^)/「話すのが楽しいのは分かる。だが今は黙れ」

o川*゚ー゚)o「ひどい! でも楽しい!」





「――ずいぶんと、楽しそうだな」

 現実を深刻に考え始めたオワタと、そんな彼にちょっかいをかける素直キュート。
 二人の喧騒に声が割り込むと同時に、窓から十枚ほどの紙幣が室内に滑り込んできた。


\(;^o^)/「なんだコレ……あっ。マニーさん」

「……出迎えの言葉がそれか。まあ、見逃そう」

 紙幣は部屋の一角に集中すると、そこで渦巻いて白く発光し始めた。
 下から上へと、渦は徐々にマニーの肉体を再構成していく。
 一分ほど掛かって、マニーはようやく人間としての体を取り戻した。

.

593 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:33:12 ID:xjnvjimM0


¥   ¥「とにかく生き残れてよかったな」

\(;^o^)/




\(;^o^)/「待て」

¥   ¥「なんだ」

\(;^o^)/「顔が無い。怖い」

¥   ¥「カネが足りん。五体満足で精一杯なのだ」


\(;^o^)/「……そう」

φ川*゚ー゚)o「ならペンで描きますね」キュッキュ


 五秒後



¥’q’¥


.

594 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:33:54 ID:xjnvjimM0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




¥・∀・¥「……という感じだ」


/ ,' 3




/ ,' 3 「……ああ?」


 マニーの話が唐突に終わり、荒巻スカルチノフは寝惚けた反応を見せた。


¥・∀・¥「かくして私と人生オワタの出会いという訳だ。感動的だな」

/ ,' 3 「え、ああ、まあ……」

 ぶっちゃけ八割方聞いていなかったので、荒巻は適当に話を合わせた。

.

595 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:34:34 ID:xjnvjimM0



/ ,' 3 「……貴様、ロマネスクはどうした」

¥・∀・¥「いやあ、足止めが精一杯だった。呆気なく殺されたよ
       復活はお前に殺された時と一緒だ。オワタのカードで課金した」

/ ,' 3 「ああ、そう……」



¥・∀・¥「話を戻すが」

 もはや今の話がどこから分岐して発生したんだったか、荒巻にはまったく思い出せなかった。


¥・∀・¥「人生オワタとなおるよというガキの接触。
      これによって人生オワタは再び死にまくった。今のところ百回」

¥・∀・¥「とりあえずガキを生存させる事には成功したが、どうにもミルナが毎度厄介でな」

/ ,' 3 「……そこで、ドクオか?」

 荒巻が先んじて言うと、マニーは眉をすぼめて答えた。

¥・∀・¥「……そのつもりだった。二十回、そうしてきた。
      しかし、今回に限ってイレギュラーが現れた」


.

596 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:35:14 ID:xjnvjimM0



ミセ*゚ー゚)リ「……あの」

 その時、ミセリが病室のドアから顔だけを出して話しかけてきた。
 荒巻とマニーの冷たい視線が、一瞬彼女を恐怖させる。


/ ,' 3 「……どうしたね」

ミセ*;゚ー゚)リ「……あの、ドクオさんが起きました」

/ ,' 3 「……分かったよ。すぐに行く」


¥-∀-¥「……やれ、今度の未来はどう転ぶんだか」

/ ,' 3 「未来に期待など、したことが無い」

 二人は立ち上がり、件のドクオが待つ病室へと戻っていった。


.

597 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:39:38 ID:xjnvjimM0
16〜24話 >>439
プロローグ Another Heaven >>454-467
第二十五話 老兵集う >>473-495

第二十六話 面汚しの夜 その3 >>504-596


長かったね(^ω^)
でも番外編のノリで書いたから気楽に読んでね(^ω^)
でも長かったね(^ω^)ごめんNE(^ω^)

次回も来月には投下したいですが年末になるかもしれません
次もちょっと長いよ(^ω^)

598 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 18:48:27 ID:e.N763x60
おつー

599 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 20:17:20 ID:8.ksUPx60
おつ!
オワタの精神力やべぇ

600 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 20:34:11 ID:W3MymVEo0
おつ!こんがらがってきた!

601 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 20:49:57 ID:h4LOmYg60
乙!
面白かった!

602 名も無きAAのようです :2015/09/05(土) 22:55:40 ID:vL7fjRoQ0
メッチャ面白いわ


603 名も無きAAのようです :2015/09/06(日) 10:24:33 ID:d2rUD6Vo0
死後後悔やっときたぁぁぁあ!!
やっぱドクオよりオワタの方が合ってるな!wwww

604 名も無きAAのようです :2015/09/07(月) 22:27:59 ID:bv.iGoJY0
きてたーーーー乙!

605 名も無きAAのようです :2015/09/08(火) 01:16:03 ID:q6ctIbyc0

キュートかわいい

606 名も無きAAのようです :2015/09/08(火) 12:58:30 ID:/KMU9Vog0
良いコンビだなー乙

607 名も無きAAのようです :2015/09/08(火) 19:45:31 ID:0cHrnM9w0
肩揉み券でクソワロタ

608 名も無きAAのようです :2015/09/12(土) 21:59:47 ID:V29f0Sw20
ドキューンバーンwwwwwでクソワロタ
緊張感ブチ壊してくノリすごくいい

609 ◆gFPbblEHlQ :2015/09/14(月) 22:14:49 ID:AywYk0Tg0

≪1≫



 荒巻とマニーが病室に入ると、目を覚ましていたドクオの視線がこちらを向いた。


/ ,' 3 「……二度目になるか」

('A`)「……」

/ ,' 3 「……正気はあるか?」

('A`)「……とりあえず」

 まるで自身の傷の深さを知らないかのように、ドクオは呆気なく答える。

¥・∀・¥「この様子だと後遺症も大して無さそうだ。
       荒巻よ、さっさと治して本題に入れ」


/ ,' 3 「……必要ならばするが」

('A`)「……いや、いい」

 荒巻の申し出を断り、ドクオは目を閉じて言った。

('A`)「自分でやる」


.

610 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:17:10 ID:AywYk0Tg0


 言葉の後、ドクオの体にあった全ての傷がほのかな発光と共に治り始めた。
 折れて砕けた全身の骨が再構成され、体表の傷跡もさっぱり消え去っていく。

('A`)「……」

 しかし、損傷が激しすぎた体の一部分は完治しなかった。
 ドクオは、ズタズタに潰れたまま動かない自身の右腕を見つめた。

/ ,' 3 「中途半端に残っても無駄だ。落としてやろう」

('A`)「これも自分でやるよ。だれか刃物とってくれ」


ミセ*;゚ー゚)リ「……ど、どうぞ」スッ

 ミセリは逸早くハサミを差し出した。
 ドクオは一瞬ほほえみ、それを受け取って刃を右腕に当てる。

 振り上げ、真っ直ぐに振り下ろした。
 ハサミの刃などとても人体を切断できるものではないが、次の瞬間、ドクオの右腕はベッドに落ちていた。
 もちろん、それは既に腕として表現できる状態にはなかったが。


ミセ*;゚ー゚)リ「うっわ……」

(;'A`)「いってー……」

 切断面を止血し、ドクオはすこし背中を丸めた。


.

611 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:18:11 ID:AywYk0Tg0


(;'A`)「……なあ」

 ドクオはミセリに話しかけた。
 ミセリは視線を返し、彼の言葉を待った。

(;'A`)「お前、大丈夫だったか? けっこう酷かったろ、傷」

ミセ*;゚ー゚)リ「……あ、はい。大丈夫です」

(;'A`)「……ならいい。よかったよかった」



「状況は、理解しているか?」

 途端、佐藤の重々しい声が病室に響いた。
 本題を急いだのか、紆余曲折を省いた質問をドクオに投げかける。

('A`)「なんとなく。できれば全員に自己紹介してほしいけど」


「佐藤だ。クソワロタの街を仕切っている」

 簡潔に言い、佐藤はさらに質問する。

「昨日の話だ。謎の能力者が街で暴れ、多くの人命を奪った。
 君はそれと戦ってそうなった。覚えているか?」

.

612 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:20:25 ID:AywYk0Tg0


('A`)「大体覚えてる。途中から記憶ねえけど」

「そうか。ではまず、感謝する。
 君が居なければ被害はもっと拡大していただろう」

('A`)「別にいい。こんだけ良い部屋に匿ってくれてんだし」


「……では次に聞きたい。敵の正体は分かるか?」

('A`)「……」


¥・∀・¥ 「ヒントでも出してやれ」

/ ,' 3 「黙ってろ」


('A`)「……いや」

 彼自身の心に変化があったのか、或いは心そのものに亀裂が入ったのか。
 ドクオは表情こそまったく変えなかったが、顔を伏せて静かに言った。

('A`)「……分かるさ。分からない訳がないだろ」

.

613 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:21:26 ID:AywYk0Tg0



/ ,' 3 「……ヤツは意を決した」

/ ,' 3 「どこにも属さず、誰にも組せずを選んだ」


/ ,' 3 「……それは、多くの者にとって看過できんことだ」

 荒巻はドクオのベッドに腰掛け、間を置いてから開口した。
 積み上げてきた威厳や風格を放棄した今の荒巻は、ただの人間に過ぎなかった。
 それこそ――ただの人間として存在すること自体が、荒巻にとって何よりの誠意だった。


/ ,' 3 「……事情を話すとな、私はこれから命懸けで戦わねばならん。
    ミルナとは別の敵、『顔付き』という集団だ」

/ ,' 3 「正直なところ、勝機はない。ヤツが味方になってくれん限り、私は負ける。
    戦力的な理由ではない。あの男でなければ倒せんのだ」

/ ,' 3 「だが、ヤツが味方になることはもう無いだろう。
    よって、私はヤツを殺して力を奪う。それでも勝てるとは限らんが……」




.

614 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:22:24 ID:AywYk0Tg0


/ ,' 3 「……お前、ミルナをどうしたい」

 荒巻の真剣な表情がドクオを捉える。

/ ,' 3 「こちらは即、殺す気でいる。
    そこの二人、マニーと佐藤も同意見だ」


('A`)「……そこに俺の意見が必要なのか? 荒巻スカルチノフ」

/ ,' 3 「お前は我々に関わった。ゆえに対等だ。
    まだまだ未熟とはいえ、tanasinnを知る者は誰であれ見くびるつもりはない」

/ ,' 3 「単純な話、立ち位置を示してほしいのだ。
    関係者の一人として、お前の方針を把握しておきたい」



('A`)「……」

 ドクオは、しばし沈黙した。

 いろんな考えが浮かんでは消えていく。
 しかし、どうしても決定を下すほどの動機が見当たらなかった。

 そうだ――俺にはそれが欠けている。

 一瞬の独白は、思考の波に呑み込まれた。


.

615 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:23:57 ID:AywYk0Tg0



('A`)「……一日くれ。考える時間が欲しい。
    それに、先に済ませたい事もある」


/ ,' 3 「……分かった。一日だけ待とう。
    一日だけ、我々は行動を自粛する。二人もそれでいいな?」

 マニーと佐藤にそれぞれ同意を求めると、彼らは軽く頷いて答えた。


('A`)「あと誰でもいいけど車貸してくんねえかな。
    遠くに用があるんだ。徒歩じゃ時間が掛かる」

「送迎なら私が手配する。監視の意味も含んでしまうが」

('A`)「いいよ。逃げ隠れしても意味ねえし」


ミセ*;゚ー゚)リ「あ、あの」

 方針が決まってさっさと話が進む中、ミセリは弱々しく挙手して言った。

ミセ*;゚ー゚)リ「わ、私はどうすれば……」

('A`)「……一緒に来る?」

ミセ*;゚ー゚)リ「……そうします。邪魔でしょうけど……」

 その後、ドクオとミセリは佐藤に用意された車に乗り込み、クソワロタの街をあとにした。


.

616 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:24:37 ID:AywYk0Tg0

≪2≫



<_プー゚)フ「……暇だ」




 エクストは、暇を持て余していた。

 おばちゃんから引き継いだ八百屋を営んではいるが、客は完全に絶滅している。
 町の人間がエクストの他に誰も居ない以上、それは当然の事でもあった。

 町に人が居ない理由は単純だった。
 住民達のメシウマ側への移住――それを交換条件にして、かつてエクストはこの町を出たのだから。


<_プー゚)フ「散歩でもするかぁ……?」

 しかし町の中は既に何十週もして飽きてしまった。
 町を出てもひたすら荒野。エクストは溜め息をこぼし、快晴の空を見上げる。



<_プー゚)フ「……暇にも程がある……」

 一人になって、独り言が増えた。



.

617 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:25:17 ID:AywYk0Tg0



('A`)「……なんだよ、平気そうだな」



<_プー゚)フ「まあなー」

 呑気な声を聞き、エクストは空に向けていた視線をゆっくりと下ろした。


<_プー゚)フ「……いらっしゃい。悪いがなんもねえぞ」

('A`)「八百屋の体裁くらい保っとけ。おばちゃんに怒られんぞ」


<_プー゚)フ「俺の店だ。勝手にしていいって言われてる」

('A`)「……じゃあまあ、いいけどさ」

 思ってもいない軽口を飛ばしあい、二人は薄っぺらい笑みを作った。


.

618 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:26:01 ID:AywYk0Tg0


('A`)「……足はそのまんまか」

<_プー゚)フ「……お前こそ、右腕はどうした?」

('A`)「……ツケを払った」

<_プー゚)フ「……俺と一緒か。まあ、中に入れよ。
        暇すぎて気が狂いそうだったんだ」

 エクストは車椅子を反転させ、ドクオとミセリを手招いた。


<_プー゚)フ「そっちのヤツも遠慮しなくていいからな。
        お前、ドクオの女だろ?」

ミセ*;゚ー゚)リ「違います。付き添いです」

('A`)「エクスト、あとで説明するから適当に喋んな」

<_プー゚)フ「……お前って訳有りが好きなのか?」

('A`)「……」

<_プー゚)フ「……何でもねえ。とにかく入れ、暑いだろ」

 ぬるいぎこちなさを残したまま、エクストは早々に奥に引っ込んでいった。
 逃げるというより、なにかを急いでいるような様子だった。

.

619 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:26:52 ID:AywYk0Tg0


ミセ*;゚ー゚)リ「……お友達ですか?」

 ふと、ミセリがドクオの顔を覗き込んで言う。
 気まずい雰囲気を少しでも和らげようと、精一杯の笑みを作りながら。


('A`)「……昔のな。エクストって名前。ここで一緒に育ったんだ。
   まあ、そんで最近、色々あってな」

 色々、という言葉は誤魔化しだった。
 ミセリはそれを察し、曖昧な相槌をして押し黙った。

('A`)「……悪い奴じゃないから安心してくれ。
   ただまあ、お前は居心地が悪いかもな」

ミセ*;゚ー゚)リ「そんな、別に」

('A`)「車で待ってろよ。あっちのが快適だぜ」

ミセ*゚ー゚)リ「……嫌です。一番近くに居ます」

( 'A`)「……分かった」

 ドクオは不意に歩き出し、ミセリを置いていくような早足で屋内に入った。


ミセ*;゚ー゚)リ「あ、ちょっと待って!」

 ミセリは、せわしない足取りで彼の後を追いかけた。

.

620 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:28:01 ID:AywYk0Tg0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 見覚えのある畳の部屋に入り、ドクオは座布団に腰を下ろした。
 ミセリも座布団を用意し、彼の背中に隠れるように座り込んだ。


<_プー゚)フ「言っとくけどマジでなんもねえぞ。
        用があんならさっさと済ませようぜ」

 エクストは車椅子から自力で降りると、ほふくして座椅子の上に移動した。

 その座椅子は、両脚を失った彼の為にデミタスが送りつけたものだった。
 車椅子も同様の理由でデミタスが用意した。
 組織として最低限の補償をする義務がある、というデミタスの言い分から、エクストは渋々これらを受け取っていた。


 座椅子の肘掛で体を支え、エクストはドクオに向き合った。

<_プー゚)フ「水道がイカレ始めてな、水もちょっと濁ってる」

('A`)「……風呂とかどうしてんだ」

<_プー゚)フ「ちゃんと入ってるよ。清潔な水で毎日な。
        多少やりにくいが、日常生活は以前よろしく送れてる」


.

621 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:28:42 ID:AywYk0Tg0



<_プー゚)フ「……なあ、なんで来た」

 エクストはうつむき、脚の付け根を力強く撫でつけた。
 彼の脚は太ももすら残っていない。その現実を重々認識しながら、幻肢の感覚を抑え込む。

<_プー゚)フ「……いや、なんでじゃねえか。
        理由なんざいくらでもあるわな。まあ、理由はいい」



<_プー゚)フ「……そっちの子、名前は?」

 エクストは顔を上げてミセリに言った。


ミセ*゚ー゚)リ「あ、ミセリって言います。言うらしいです」

<_プー゚)フ「らしい、ってのは?」

ミセ*゚ー゚)リ「なんでも記憶喪失らしくて。あんまり自分を分かってないんです」

<_;プー゚)フ「……それがなんでコイツと?」

ミセ*゚ー゚)リ「助けられたんです。私、殺されかけてて、そこにドクオさんが」

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622 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:29:26 ID:AywYk0Tg0


<_;プー゚)フ「……それでお前も右腕やられたのか」

('A`)「……すげー強いヤツだったんだ。
    これだけで済んでよかったと思ってるレベル」

 薄弱な笑みを見せ、ドクオは自身の右腕に目を向けた。
 今はただ空っぽの袖がはためくだけで、そこに血肉は無い。


('A`)「……なんかさ。夢を見たんだよ」

<_プー゚)フ「……悪い夢か?」

('A`)「素直クールが出てきた。そういう夢」


ミセ*゚ー゚)リ「……えっと、誰ですか? その人」

 ミセリが二人の顔をキョロキョロ見回しながら尋ねる。

<_プー゚)フ「こいつの恋人。年上で綺麗な人だったぞ」

('A`)「恋人じゃない。適当に言うな」

<_プー゚)フ「曖昧よりはマシだろ?」

('A`)「……まあ、そうだけど」



ミセ*;゚ー゚)リ(……お、女絡みでなんかあった感じがする!)

 女の感が冴え渡る。

ミセ*;゚ー゚)リ(これ絶対ついてきちゃ駄目なやつだった!)

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623 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:30:09 ID:AywYk0Tg0


ミセ*;゚ー゚)リ(ど、どうしたものか……。
       居るって言った手前、とても帰りにくい……)

 ミセリの葛藤をよそに、ドクオが話の続きを切り出した。



('A`)「夢の中で言われたんだ。お前に会え、本当のことを聞けって」

('A`)「……何のことだか分からないし、ただの夢だけど、心当たりはあるか?」


<_プー゚)フ「……それを聞く為に、来たんだな?」

('A`)「……ああ」

<_プー゚)フ「……なら、分かった」

 とたん、エクストは薄弱な溜め息を漏らした。
 肘掛を不安そうに握り締め、しばらくの間、単調な呼吸を繰り返す。

 それを終え、エクストは口を開いた。


<_プー゚)フ「……分かった。多分、あの事だ」

<_プー゚)フ「その夢、きっと本当だぜ。
        お前が俺達の嘘に気付くなんて、絶対にありえないからな」

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624 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:31:23 ID:AywYk0Tg0



('A`)「……話があるなら聞かせてくれ」

<_プー゚)フ「分かってる。当然そのつもりだ」

 淡々と、作られた笑顔の口で言う。
 本心を追いやって人と話すことは、デミタスから重々教え込まれた。

<_プー゚)フ「……お前さ、自分の生まれとか、知らないだろ」

<_プー゚)フ「どういう所で生まれて、育って、ここに来たか」

('A`)「……それは……」

 今まで、そんなこと興味すら湧かなかった。
 ドクオは呆気にとられてしまい、エクストの問いに答えられなかった。


<_プー゚)フ「……俺がそれを聞いたのは、デミタスさんがここに来たその日だ。
        クールさんが、俺と町の人達にそれを話した」


<_プー゚)フ「……俺はこの話を聞かせたくない。
        でも、それは俺の身勝手だ。だから、そのままをお前に伝える――」



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625 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:32:07 ID:AywYk0Tg0


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           第二十七話 「悪性萌芽 その1」

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626 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:33:59 ID:AywYk0Tg0

≪3≫



 何十年も前の話だ。


 素直クールは追手から逃げていた。

 荒巻スカルチノフ、そして『顔付き』という集団。


 絶え間なく、それこそ寝る間も削ってひたすら逃げ続ける毎日。

 利用価値があるが故に、彼女はそんな日常を強制されていた。


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627 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:34:47 ID:AywYk0Tg0



 ある日、彼女はとある第三者に出会った。

 素直クールは、その第三者を仮に 『内藤』 と呼んでいた。


 内藤はとびきり強い能力者、ではなかった。

 かわりに彼の超能力は逃避、隠蔽、偽装に長けており、なにより彼の頭脳は世界随一と言えるほど優秀であった。


 藁にもすがる思いで内藤の力に頼ると、内藤はすぐさま行動に移った。

 そして実に呆気なく、彼女は荒巻スカルチノフと 『顔付き』 の追跡から解放されたのだ。



 その後、素直クールは彼に匿われる対価として、内藤の研究に手を貸すことになった。

 この話は、素直クールが彼の実験を初めて見たところから始まるのだった。


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628 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:35:55 ID:AywYk0Tg0


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( ^ω^)「――僕もね、タナシンとやらには興味があったんだ」


 内藤の研究施設。
 三層で出来たこの施設は、観光客で賑わうホテル街の地下深くに位置していた。
 多くの雑踏が彼らの頭上を闊歩している。


 彼の研究室は小奇麗だった。
 資料はちゃんとファイリングされており、無数にある電子機器の配線も事細かに整列している。
 机や椅子の脚、花柄の壁紙、フローリングの溝すら清潔を極めていた。



( ^ω^)「存在そのものは知っていたが、とてもじゃないが関わりにいけなかった。
      僕みたいな弱い人間が不用意に関わったら、殺されちゃうからね」

( ^ω^)「しかし、キミが来てくれた。これは利害の一致だよ」


( ^ω^)「キミは彼らから逃げて安全に暮らしたい。それは僕が提供する」

( ^ω^)「僕はタナシンについて深く知りたい。それは、キミが提供する」


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629 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:37:47 ID:AywYk0Tg0


川 ゚ -゚)「……それは構わないが、具体的に何をすればいい」

川 ゚ -゚)「片鱗ならばいくらでも作れるが、それでいいか?」


( ^ω^)「いくらでも、か。それはいい。
      研究材料には事欠かない。存外、費用は安く済むかな」

 我ながら凄いことを言った、という素直クールの自負は、内藤の素っ気無い反応で水に流された。
 tanasinnの片鱗を無数に作れる事の重大さを知っているだろうに、内藤は表情を大きく変えなかった。


川 ゚ -゚)「……それで、片鱗を研究するのか? 自分で使わずにか?」

( ^ω^)「そうだよ。僕はね、分からないものを使いたくないんだ」

( ^ω^)「分からないって、怖いだろう? だから理解したいんだ。
      制御できない力なんて、本当に怖いよ」


( ^ω^)「僕の研究スタンスはひとつ。
      分からないものを、分かるまで研究する」

( ^ω^)「そうだ! キミにも研究のひとつを見せよう」

( ^ω^)「僕にとって一番大事な研究だよ。
      十歳の時、家族で実験して以来、続けている研究なんだ」

 内藤は素直クールを引きつれ、足早に研究室を出た。
 細長い廊下を進み、階段を下って階下に移る。


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630 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:38:39 ID:AywYk0Tg0



( ^ω^)「さてと」

 階段の先には広い空間があった。
 ここは研究施設の三層目、主に実験施設として機能している。



 内藤は壁一面を埋めている多数のモニターを一斉に起動させ、モニター前の椅子を引いた。

( ^ω^)「キミはここで座って見ていてくれ。
      僕は中で実験作業をしてくるから」

 内藤はそう言ってドアを指差し、そこに向かって歩き出した。


( ^ω^)「好きに操作してね。感覚的に分かるようにできてる」

 言い残し、内藤はドアの向こうに消えた。


川 ゚ -゚)「……」

 素直クールは椅子に座り、モニターを一望した。
 その内の一つに内藤の姿が映ったので、彼女はとりあえず、彼の姿を目で追っていくことにした。



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631 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:39:19 ID:AywYk0Tg0


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( ^ω^)「簡単に言うと僕は人間を研究してるんだ。
      ぶっちゃけこの世の何よりも人間が分からないからね」

 内藤はモニターされているカメラに向けて声を放った。


( ^ω^)v「まあ見てて。この実験、人に見せるのも初めてなんだ。
      だから後で感想が聞きたいんだ。よろしくね」

 ブイサインの後、内藤はいよいよ実験室に足を踏み入れた。


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632 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:40:10 ID:AywYk0Tg0



 ――実験室の構造はシンプルだった。


 長い通路に、横一列の五十個ほどのドア。
 ドアの数だけ部屋があるとすればかなり大掛かりな構造だが、言ってしまえば部屋が多いだけの空間。


( ^ω^)「今、この部屋には女の子が入ってる。子供だ」

 内藤はしばらく歩き、まず最初に、左端のドアの前に立った。


( ^ω^)「作業は簡単だよ。部屋から彼女を出して、一個隣の部屋に移す」

( ^ω^)「そして隣の部屋の掃除を彼女にしてもらう。それだけさ」

( ^ω^)「これを部屋の数だけ繰り返す。それじゃあ始めるね」

 ドアを軽くノックすると、程なくして部屋から女の子が顔を出した。
 少女は晴れ晴れしい笑顔を内藤に見せ、ぴょんと跳ねて内藤に抱きついた。


从'ー'从「おじさん、元気だった!?」

( ^ω^)「ははは。元気だよ。キミほどじゃないけどね」

 内藤は彼女の頭を撫で、同じように笑顔を作った。

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633 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:40:50 ID:AywYk0Tg0


从'ー'从「今日はどうしたの? ご飯はまだだよね?」

( ^ω^)「渡辺ちゃん。ここのルールは、覚えてるかな」

从'ー'从「……あ、部屋替えだっけ? するの?」

( ^ω^)「新しく来た子をこの部屋に住まわせたいんだ。
      ここは一番住み心地がいいからね、心を休ませるにはこの部屋が一番なんだ」

 内藤が言うと、渡辺と呼ばれた少女は苦い表情になった。

从'ー'从「わたし、ここから出たくない〜……」

( ^ω^)「はは、あんまりワガママを言ってはいけないよ。
      僕は確かにキミを助けたけど、キミ以外の子も助けなきゃいけないんだ」

( ^ω^)「大丈夫さ。ちょっと狭くなるけど、隣の部屋もここと大差ないからね」

从'ー'从「……分かったぁ」

 渡辺は渋々承知し、内藤に手を引かれて通路に出た。


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634 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:41:30 ID:AywYk0Tg0


( ^ω^)「ありがとう」

( ^ω^)「それじゃあ、隣の子にも部屋を移ってもらわなきゃね」

从'ー'从「え、そうなの?」

( ^ω^)「みんなに一部屋ずつ、隣に移ってもらうんだ。
      大丈夫。新入りの子のためだから、みんな分かってくれるんだ」

从'ー'从「へぇ〜」

 内藤は隣の部屋をノックした。
 出てきた少女に部屋替えすることを伝え、渡辺を室内に押し入れる。

从'ー'从「それじゃあまたね! ないとーさん!」

( ^ω^)「ははは。元気でね」


( ^ω^)「……それじゃあ、隣の部屋に行こうか」

( ^ω^)「大丈夫だよ。ちょっと狭くなるけど、この部屋と大差ないからね」

 内藤は次の少女を引き連れ、また隣の部屋に。
 そして次の子を連れ、隣に。

 内藤は、それをひたすら繰り返した。

.

635 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:42:11 ID:AywYk0Tg0




⌒*リ´・-・リ「……あ、あの」


 不安そうに声を出したのは、30番目の少女だった。

 31番目の部屋の前で、彼女は内藤の手を握りしめて内藤を見上げた。


( ^ω^)「どうしたんだい、リリちゃん」

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636 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:42:52 ID:AywYk0Tg0


⌒*リ´・-・リ「わたし、この部屋いやです……」


( ^ω^)


( ^ω^)「おやおや、それは、それは……」

 内藤はたっぷり頬を弛ませ、床に片膝をついてリリに向き合った。

( ^ω^)「どうしてだい? お願いには、理由が無いと」


⌒*リ´・-・リ「この部屋、いつも変な音が聞こえてきてて……」

⌒*リ´・-・リ「……それに、またちょっと狭くなるんでしょ?」


( ^ω^)

( ^ω^)「大丈夫だよ。さっきの部屋と大差ないからね」


⌒*リ´・-・リ「……内藤さん、わたし、前の部屋がいい」

( ^ω^)「……どうしてだい?」

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637 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:44:03 ID:AywYk0Tg0


⌒*リ´・-・リ「……」

( ^ω^)「……理由がないなら、それは聞けないなぁ」

 内藤はリリの制止を払ってドアをノックし、中の子供を呼び出した。
 そうして出てきた少女は、手に赤の色鉛筆を持っていた。


(*゚∀゚)「……なあに」


( ^ω^)「さあ、部屋替えの時間だよ」

( ^ω^)「つーちゃん。隣の部屋に行ってくれるかな」

( ^ω^)「安心してね。ちょっと狭くなるけど――」

 内藤の言葉を無視し、つーちゃんが颯爽と部屋を飛び出した。


⌒*リ;´・-・リ「キャッ」

 つーちゃんはリリを押し倒して馬乗りになり、手にある色鉛筆を高々と振り上げる。

( ^ω^)「こらこら」

 内藤が笑って止めに入った瞬間、つーちゃんの色鉛筆がリリの右目に突き刺さった。


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638 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:45:14 ID:AywYk0Tg0


⌒*リ;´ - リ「やめッ……いた、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッッ!!」

(*゚∀゚)「へへへバーカ! テメーまだ分かってねえのかよ!」ゲシゲシ

 つーちゃんは立ち上がってリリを数回蹴りつけ、そのまま逃げるように室内に戻っていった。
 残されたのは、血交じりの嗚咽と聞き苦しい泣き声だ。


( ^ω^)「……立てる?」

 しかし、内藤は平然と彼女に尋ねる。
 ただ転んだだけだろう、とでも言いたげな冷たさを含んで。


⌒*リ´ - リ「エ゙ホッ、ないとう、さん……」

( ^ω^)「さあ、どうしようねえ」

 内藤は床に座りこみ、這いずるリリに語りかける。


( ^ω^)「キミの部屋はここなんだけど、説得は失敗したみたい。
      となると、キミの部屋がないんだけど、どうしようか」

( ^ω^)「もう一回、彼女を説得するかい?」

 彼がドアをノックする素振りを見せると、リリは恐怖心だけで彼の手を止めた。


⌒*リ;´ - リ「やっぱりこの部屋おかしい! ぜったいいやです!」

( ^ω^)「うんうん。じゃあ、奥にまだひとつ空き部屋があるけど、どうする?」

⌒*リ;´ - リ「そ、そこにします! ここより絶対いい!」

( ^ω^)「分かったよ。それじゃあ行こうね」

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639 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:45:54 ID:AywYk0Tg0


 内藤は満身創痍のリリを抱きかかえて通路を歩いていった。
 そして、右端から2番目の部屋の前で立ち止まる。


( ^ω^)「ここだよ」

⌒*リ;´ - リ「……あの」

 リリは、気付いたようだった。


( ^ω^)「部屋の掃除は後から入った人がやるルールなの、覚えてるよね?」

( ^ω^)「よいしょっと」

 内藤はリリをそっと降ろし、ドアの前に立たせた。
 そこで、数分の沈黙が始まった。


( ^ω^)「……」


⌒*リ;´ - リ「……」


( ^ω^)「……どうしたのかな」

⌒*リ;´ - リ「……」

( ^ω^)「大丈夫だよ。ちょっと狭くなるだけさ」

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640 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:48:29 ID:AywYk0Tg0


( ^ω^)「……分かった分かった。
      それじゃあ、分かりやすく聞いてあげる」


 痺れを切らせた内藤は、その部屋のドアを開けた。


 しかしドアの向こうは壁で、部屋と言えるような空間は無かった。
 かわりに、足元には人が入れる程度の、四角いくぼみがあった。

 ――そう、部屋とされていた場所は、ただのくぼみでしかなかった。


 内藤は足元のくぼみを指差し、リリに告げる。

( ^ω^)「ここか、あっちかだよ」

 決して選択を急いでいるのではなかった。
 選択肢を明確にすることで、彼女の理性を無理に機能させているのだ。
 

( ^ω^)「あっちなら、彼女をどうにかしなくちゃね。
      でも彼女は絶対に部屋を空けてくれないだろうね。じゃあ、どうしよう?」

( ^ω^)「でもこっちなら、中身を掃除してから入ってね」

 『中身』という言い方に、リリはぞっとする悪寒を覚えた。

 ふと、彼女は意図せずして『中身』を見てしまった。
 こんな閉鎖空間に詰め込まれて死んだ、その『中身』と目を合わせてしまった。


⌒*リ;´ - リ「……い、いやです」

( ^ω^)「あの子をどうにか出来ないなら、ここに入るしかないんだよ」

( ^ω^)「大丈夫だよ。絶対に死なない設計になってるし、僕が必ず生存させるから」

( ^ω^)「よく見て。これは自殺だよ。だからキミが自分で死なない限り、大丈夫なんだ」



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641 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:49:37 ID:AywYk0Tg0


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( ^ω^)「――と、いう感じ」


 内藤はそう言いながらモニター室に帰ってきた。


( ^ω^)「まあつまり、どんどん部屋を小さくすると人はどう反応するかなって実験だよ」


( ^ω^)「今回の場合、つーちゃんは実験を察していたからリリちゃんを襲ったんだね。
      で、リリちゃんは勘付いてはいたけど確信していなかった。だから簡単に襲われた」

川 ゚ -゚)「……」

( ^ω^)「でも意外だったよ。リリちゃん、あの部屋に入ったんだもん。
      普通なら殺してでも良い部屋を取るよね。キミはどう?」


川 ゚ -゚)「……彼女達は、なんだ?」

( ^ω^)「……人だよ? 子供の」

 素直クールは既に理解していた。
 自分を助けた男が、一体どういう人間なのか。



川 ゚ -゚)「……悪趣味、いや『悪』そのものだ。今すぐ彼女達を解放しろ」

( ^ω^)「……逆じゃない? ただの『趣味』だよ」

 クールの敵意を、彼は簡単に言い返す。
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642 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:50:40 ID:AywYk0Tg0


( ^ω^)「ま、なんとでも言っておくれよ」

( ^ω^)「僕はただこれを見せたかっただけだし、
      キミが嫌ならもう二度と、こういうものは見せないよ」


( ^ω^)「見てて単調でつまらなかっただろう? 普段は劇的にやるけど。
      今回はそういう風にしたのさ。現象そのものを冷静に把握してもらうためにね」

( ^ω^)「どれだけ表現が稚拙だとしてもね、人間はとりあえずその様子を想像する。
      刺されてるなぁ、痛そうだなぁ、とか」

( ^ω^)「僕が欲しかったのはそういう他人事としての感想なのね。
      主観が強いと人は善性を保とうとしてしまうから」


( ^ω^)「……で、その結果キミがそう思ったなら、それはキミの本心だ。
      僕はそれを尊重する。嫌なものを見せてごめん、反省したよ」

 一通りを語ったブーンは口を閉じ、素直クールに発言権をパスした。


川 ゚ -゚)「……助けてもらった手前、力尽くは最終手段に据えておく。
     だが、早々に中止しなければ本当に――」


( ^ω^)「よし、それじゃあこの実験は終わりだ」

 クールが脅し文句を言い終わる前に、内藤はポンと手を叩いて決定した。

 彼にとって、この実験は本当に趣味でしかなかった。
 一番大事と言っても、それは趣味という範疇での話だ。

 ならば今後実益をもたらす素直クールの反感を買うより、
 今は趣味をひとつ我慢した方が利口なのは道理だ。


 それに、と言って内藤は顎をさする。

( ^ω^)「もうこの実験は終わろうと思っていたんだ。大体のパターンも出尽くしたし。
      あと興味があるとすれば、右端の一個体だけだったしね……」

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643 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:51:37 ID:AywYk0Tg0


川 ゚ -゚)「……右端だと?」

 先程、内藤ですら回避した右端の部屋。
 実験が彼の言う通りなら、あの部屋は一番狭くなっているはずだ。
 子供だとしても、とても人間が入っていられる空間ではない。


( ^ω^)「そうなんだ。あの部屋、もうずっと同じ子が占領してるんだよ。
      名前は、……えっと、なんだったかな」

( ^ω^)「まあいいとして、彼以来、男の子を連れてくるのは止めたんだ。
      男の子って中々死ななくて、回転が悪いから」


川 ゚ -゚)「……その子は生きているのか?」

( ^ω^)b「もちろん! でないと実験にならないよ!」

 自信満々に言い、内藤はもう一度ドアに走った。
 その途中、彼は素直クールを振り返って機敏に片手を差し出した。

( ^ω^)「いいことを思いついた! 
      キミもおいで、一緒に彼を出してあげよう!」


川 ゚ -゚)「……悪いが遠慮する。先に戻るぞ」

 内藤はそう言って踵を返した彼女を、じっとりと観察した。



( ^ω^)「ははは、釣れないなあ」


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644 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:52:40 ID:AywYk0Tg0


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 素直クールが第一層に上がると、彼女の前に一人の男が立ちはだかった。
 彼はクールを見るなり先を歩き出し、彼女をどこかへ誘導し始めた。


川 ゚ -゚)「……お前は誰だ」

 男は立ち止まって少し振り返り、小さな声で名乗った。



('A`)「……ドクオ。あれのモルモットとして飼われてる」



川 ゚ -゚)「……なら、お前がこの層を持ってきたのか」

 地下の第一層は居住空間。内藤の研究室もこの第一層にある。

 内装はホテルのようで、というかホテル一階分の空間が丸々ここにあった。
 実験の過程で発生した 『転移能力』 を友人に使わせたと内藤は言っていたが、その友人とは彼のことらしい。
 その能力をもって、地上のホテル最上階を丸ごと頂いたそうだ。内装が立派なのはそのせいだろう。


('A`)「そろそろ夕飯にする。壁をぶち抜いて作った大部屋があるから、そこに案内しに来た」

川 ゚ -゚)「……そうか」

('A`)「……寡黙だな。女はもっと喋るものだと思っていたが」

 期待外れと言わんばかりに溜め息をつき、ドクオはさっさと前に進んだ。
 やや距離を置いて、クールも彼の後を追って歩き出す。


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645 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:53:20 ID:AywYk0Tg0


('A`)「……見てきたんだろう、あれの実験を」

川 ゚ -゚)「……」

('A`)「……絶句、という感じではないな。
   ああいうものは既に見慣れていたか。それはそれで、同情を誘うが」


('A`)「お前の事情は聞いている。しかし運が悪かったな。
    あれに頼るのは愚策の極みだ。経験者が言うんだ、間違いないぞ」

川 ゚ -゚)「……経験者、とは」

 クールが言葉を繰り返す。
 すると、ドクオは鼻で笑ってからそれに答えた。

('A`)「そこでちゃんと聞き返す辺り、まんざら無口でもないらしい。
    ここにはまともな話し相手が居ないんだ。返事があって嬉しいよ」


('A`)「ああ、察しのとおり俺もあれと訳アリだ。そして今は後悔している。
   今でこそ従順に生活しているが、あれの寝首をかく準備は整っている」

川 ゚ -゚)「……ならなぜ、すぐに実行しない?」

('A`)「……単純。あれの底が知れんからだ」

 ドクオは眉間をすぼめ、握り拳を作って言った。

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646 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:54:10 ID:AywYk0Tg0


('A`)「あれの能力は知っているだろう。超能力含め、あれの持つ技術も」

('A`)「あれはとにかく逃げ隠れに特化している。
    それを狙い仕留めることがどれだけ困難か、俺はまだ想定しきれていない」

('A`)「さっき準備は整っていると言ったが、それは現状の俺が出せる最善の策に過ぎん。
    自信ありと唱えたいところだが、きっと容易く看破されてしまうはずだ」


川 ゚ -゚)「……なんにせよ、こんなところで平然とする話ではなかったな。
     今ので全部バレただろ、監視カメラとかで」

('A`)「いや問題ない。後であれに聞いて確かめるといい。
    この三層からなる遊び場には、ほとんど監視システムが無いんだ」

('A`)「動画、音声の記録も一切ない。メモリの無駄だとさ」



('A`)「……ま、当然と言えば当然だがな。あれは誰とも戦う気が無い。
    誰がか逃げても代えを用意するだけ。誰かが敵対すれば即座に身を隠すだけだ」

川 ゚ -゚)「……なら、お前も何も考えず逃げればよくないか?」

('A`)「……あいにく特別でね。逃がすと代えがない。俺も、あんたも」

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647 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:54:55 ID:AywYk0Tg0



('A`)「――自己紹介をやりなおす」

 とたん、ドクオが足を止めて体ごと振り返った。


('A`)「俺は四番目にして最後の成功例、ドクオ。
    あれの実験で生み出された人工生命だ」

('A`)「一応、顔付きのリーダー格を模倣して作られたらしい。
   おかげで人間離れしたことが沢山できる」


 素直クールはじっくりとドクオの肉体を観察し、結論を出した。

川 ゚ -゚)「……遠く及ばんな、あれには」

('A`)「……だろうな。だからあれはお前を連れてきた。
    まあ人口生命の研究は俺で終わりになった。
    努力の甲斐あって、想定どおりの結果は出たらしいが」

('A`)「ちなみにタナシンの実験には俺が付き合う。
    碌な目に会わんだろうが、証拠隠滅の為にバラバラにされるよりはマシだ」

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648 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:56:48 ID:AywYk0Tg0


川 ゚ -゚)「……色々と思うことはあるが、とりあえず聞いておきたい。
     アイツの目的はなんだ?」


('A`)「……素直クール。あれに対して、そういう真っ直ぐな疑問を持つな」

 ドクオは彼女を戒め、冷ややかな表情で言葉を足した。


('A`)「あれはただ、やりたい事をやるために生きている。
    目的はその時々で変わる」

('A`)「自分とこの世界に対してひたすら純粋なんだ、あれは。
    それ以上の表現をするなら、純粋悪とでも言っておけ」


川 ゚ -゚)「……純粋悪か。似たものを知っている」

('A`)「……なら、しばらく話題には困らないな。口下手だから助かった」

 ドクオは再び歩き出し、それっきり口を閉ざした。
 しきりに咳払いをしている様子を見るに、どうやら単に喋りすぎただけのようだった。


川 ゚ -゚)(……追々、ここの状況を探っていこう)

 素直クールはそのままドクオの誘導についていき、彼の手作りの夕飯をご馳走になった。
 こんな環境下では料理くらいしか刺激がないらしく、ドクオは随分と張り切って鍋を振るっていた。

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649 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:57:29 ID:AywYk0Tg0

≪4≫


 素直クールが内藤の研究施設に匿われて半年ほどが経過した。


 その間、第三層で行われていた内藤の実験はスパッと打ち切られていた。
 中に居た少女達は解放こそされなかったが、素直クールが日々面倒を見ることで殺処分だけは免れた。

 あとは時折タナシンの研究に付き合うくらいで、素直クールは大体の時間を自由に過ごしていた。
 子供たちに囲まれた環境は多少うるさくはあったものの、そんな呆気ない日常は確実に彼女の精神を和らげていた。
 いくつかの不安要素残したまま、ではあったが。

.

650 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:58:09 ID:AywYk0Tg0



 ――内藤の研究室。
 そこに呼び出されたクールは、部屋に入ったとたん内藤に質問された。


( ^ω^)「知らせが四つ。善し、普通、悪し、悪し」

( ^ω^)「キミはどれから聞きたい?」

川 ゚ -゚)「……その順番でいい」

( ^ω^)「オッケー。じゃあ座って」

 促されるまま椅子にかけ、クールは内藤と向き合う。


( ^ω^)「タナシンの研究、とりあえず結果を出せたよ。
      キミの協力の賜物だね。ありがとう」

川;゚ -゚)「……たった半年でか? どう考えても無理なんだが……」

( ^ω^)「ああもちろん満足のいく結果じゃないよ。
      でもまあ形になって何かができたんだ。喜ぶべきさ」

( ^ω^)「過程における第一歩を踏んだ、という事だよ。
      何もできないより、何かができた方がいいだろう? たとえそれが失敗でもさ」

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651 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 22:58:49 ID:AywYk0Tg0


( ^ω^)「じゃあ次ね。実験でできたコレをテストしたいんだ」

 内藤はポケットをまさぐり、中から小さな石ころを取り出した。
 それには見覚えが――いや、似ているが違う。
 クールは即座に認識を改め、内藤の顔を見直した。


( ^ω^)「これは人工的に作ったタナシンの片鱗。
      命名はそのまんま。人口片鱗」

( ^ω^)「やっと形状を保持できてね。これをさっそく試したい」


川 ゚ -゚)「……試すのはいいが、失敗作だぞ。
     それはお前自身も分かっているだろう」

( ^ω^)「うん。でも失敗結果も立派な結果さ。
      それに多分、使っても死んだりしないよ」


( ^ω^)「これは確かに失敗作だ。使っても荒巻や顔付きの彼みたいにはなれない。
      でもね、代わりにこれは人の一線を超えることができるんだ」

( ^ω^)「この人口片鱗はね、人の悪意を増大させるんだ。
      分かりやすく言うかい? 怒りや恨みのブレーキをね、取っ払うんだ」

川 ゚ -゚)「……それだけなら、なおさら失敗だな」

( ^ω^)「あはは、そこまで無能じゃないってw」

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652 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:00:29 ID:AywYk0Tg0


( ^ω^)「――本家の『tanasinnの片鱗』は、人の願望そのものをエサにする」

( ^ω^)「荒巻はひたすら万能である事を望んだ。
      キミは永遠の非現実を望んだ」

( ^ω^)「ミルナは、まあ知らないけど」


( ^ω^)「とにかくね、タナシンの好物は人の感情や願望だと思うんだ」

( ^ω^)「そこで今度の実験さ」


( ^ω^)「ブレーキの無い感情、歯止めの無い願望をもった人間が、もし本家片鱗を使ったら」

( ^ω^)「いったいどうなるんだろう? という実験がしたいんだよね」


.

653 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:01:09 ID:AywYk0Tg0


川 ゚ -゚)「……つまりその失敗作を利用して、より正確なデータを得るのが目的か」

(* ^ω^)σ「そーそー! 限界値を知りたいんだ、本家のさ!」

 クールが内藤のセリフを言い当てると、彼はさらに饒舌になった。

(* ^ω^)「やっぱりあれは僕の想像以上のものだと思うんだよね!
       だから数年はデータの蒐集に特化することにしたんだ!
       でないと本物に近しいものなんて作れない! 物事は順序だよ!」

ヽ(* ^ω^)ノ「データをとり、失敗作を作り、またデータをとる!
        ざっと十年はこれの繰り返しかな! ははは、飽きない話だ!」


 とたん、内藤は笑みを消して次の話に移った。


( ^ω^)「で、ここからが悪い話ね」


( ^ω^)「まずひとつ。『顔付き』にここがバレた」

( ^ω^)「ふたつ。ドクオがもう限界。死ぬかもしれない」


川 ゚ -゚)「……そうか」

( ^ω^)「冷静?」

川 ゚ -゚)「いいや、どちらも前々から想像できていた。
     特にドクオの方は目に見えていたからな」

( ^ω^)「まーあれだけ失敗作投与したらこーなるよなって感じ。
      顔付きの方について、ちょっと相談していいかい?」

.

654 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:02:05 ID:AywYk0Tg0


( ^ω^)「とりあえず僕はここに残るよ。
      キミが面倒見てる子供たちと一緒にね」

( ^ω^)「ついでに実験もする。
      顔付きを相手に、僕が本家と人口の片鱗を使う」

川 ゚ -゚)「……私は勝手に動いていいのか?」


( ^ω^)「うん。でも助言しとく。キミは八極武神のところに行くといい。
      あそこは世界一安全な場所だ。あとで場所を教えるよ」


川 ゚ -゚)「……ところで、顔付きの場所がバレてるなら」

( ^ω^)「うん。あと数分で来るよ」

川;゚ -゚)「――それを早く言えッ!!」

 クールは叫んで椅子を立ち、地上空間に探知能力の網を広げた。
 その瞬間、数人分の反応が急に探知網から消滅した。
 恐らくこれが顔付き連中の反応だ。素直クールは確信し、すぐさま逃走の準備に取り掛かろうとした。

( ^ω^)「ははは、さすがに焦ったかい。
      キミの部屋でドクオが待ってる。はやく彼と一緒に逃げるんだ」

川;゚ -゚)「……ッ!」

 クールは一瞬戸惑ったが、今は内藤の口車に乗ってでも逃げ出すべきだと決断した。
 弾けるように研究室を飛び出し、彼女は自分の部屋に駆け込んだ。

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655 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:02:45 ID:AywYk0Tg0






 そして武神のところに行ったクール達は色々あってレムナントに来た。





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656 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:03:25 ID:AywYk0Tg0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



<_プー゚)フ「……」


('A`)「……」


 エクストが急に話を端折って口を閉ざすと、二人はしばらく沈黙した。
 ミセリは適当に喋って場をつなごうとしたが、そうするまでもなく、ドクオが確信を突いた。

('A`)「……お前、まさか」


('A`)「忘れたのか?」

<_プー゚)フ

 エクストはニッコリしたまま、小さく頷いた。


('A`)「続き……嘘だろ……」

<_;プー゚)フ「自分の話じゃねえし、だいたい何年前に聞いた話だと思ってんだよ。
         むしろこんだけ鮮明に喋っただけでも上等だろ?」

('A`)「でもダメじゃん」

<_;プー゚)フ「……ダメだけどさ」

('A`)「どうすんだよ……」


.

657 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:04:05 ID:AywYk0Tg0


<_プー゚)フ「……ぶっちゃけ言うけどな」

 とたん、エクストは開き直って呟いた。

<_プー゚)フ「この話をしたところで、多分お前は何も思わねえよ。
         要は、お前がクールさんと昔なじみだったってことだ」

<_プー゚)フ「そりゃ紆余曲折はあるだろうよ。
         俺には分かんねえけどさ、タナシンがどうこうは」


('A`)「……続きを話す気はない、か」

 ドクオは一息ついてから立ち上がった。
 確かにエクストの言ったとおり、今更自分の出生に興味はなかった。

 なぜ研究所での記憶がないのか。
 話に出てきたドクオと今の自分は別人なのではないか。
 クール達が武神のもとへ行ったあとの生活――気になる事は多いが、ドクオはそれらの疑問を脳内から一掃した。



('A`)(……そういえば、昔なんか聞いたような)


 その瞬間、掃き捨てかけた疑問が、とある記憶に紐付けされた。

 ドクオは咄嗟に想起した。
 数年前、シベリアで流石母者に聞かされた 『素直クールと先代武神』 の話を。

.

658 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:05:33 ID:AywYk0Tg0


('A`)(あの話はたしか、三十年前にクーが先代様を殺して逃げ出したっていう話だ)

('A`)(でも、あの話に俺の名前は出てきてない……)


 エクストの話が本当なら、ドクオはクールと一緒に武神の屋敷に行っている。
 しかし流石母者の話では、ドクオの存在はすっかり抹消されていた。

 どちらかが嘘を――本当のことを隠している。
 直感ではあるが、ドクオは母者の話にこそ裏があると思った。


<_プー゚)フ「もう行くのか? って、なんもねぇのに残る理由も無いか」

('A`)「……エクスト。『ドクオ』は、武神のとこで何をした」

 一度は誤魔化しかけた話を掘り返し、ドクオはエクストの目をじっと見つめた。
 するとエクストは最初から続けていた笑みを消し、冷たく真剣な口調で聞き返した。


<_プ-゚)フ「……どうしても聞くのか」

('A`)「俺はまだあいつと内藤の話しか聞いてない。
    肝心の、俺自身の話が聞けてないんだよ」


('A`)「……」

<_プ-゚)フ「……」


.

659 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:06:13 ID:AywYk0Tg0



<_プ-゚)フ「……そこ、戸棚を開けてみろ」

 しばし黙った後、エクストは壁際の戸棚を指して言った。

ミセ;*゚ー゚)リ「あ、わたし行きます」

('A`)「ああ」

 手持ち無沙汰に耐えかねたミセリがここぞと腰を上げ、戸棚を調べに行く。


<_プ-゚)フ「お前がクールさんに貰ったペンダント、あるだろ。
         大事なもんなのにおばちゃんに預けやがって……」

('A`)「……」

<_プ-゚)フ「……あれにはお前の記憶が入ってる。ロクでもない記憶だ。
         俺には開け方は分からねえけど、本当の事を知りたいならお前が持ってろ」



<_プ-゚)フ「……クソが」

 エクストは黒い感情を一まとめにしてそう呟き、もう一度、物語の語り部として開口した。


.

660 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:07:44 ID:AywYk0Tg0

≪5≫



/ ,' 3 「……やれやれだ……」


 マニーと佐藤と別れた荒巻は、メシウマ側に瞬間移動で帰ると同時に溜め息を吐いた。
 ここはステーション・タワー内部の一室。荒巻が来客用に設けた部屋だった。


/ ,' 3 「……待たせてすまなかったな」





( "ゞ)「……構わん。しかし寝心地いいなコレ」

 一人用の高級ソファに深々と座ったまま、デルタ関ヶ原は眠たそうに答えた。


/ ,' 3 「急な呼び出しにも関わらず――と、決まり文句はさておきだ」

/ ,' 3 「あと一週間で顔付き連中が来る。戦力になってもらうぞ、武神デルタ」


.

661 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:08:24 ID:AywYk0Tg0


( "ゞ)「当然そのつもりだ。お前の土下座に見合う働きはしてやる」

 そう言い、デルタは胸の内ポケットから一枚の写真を取り出した。
 それは荒巻スカルチノフの土下座写真だった。


( "ゞ)「ひっさびさに腹の底から笑わせてもらった。なあお前ら」

 デルタは首だけ振り返り、後ろの数人掛けのソファに向かって話しかけた。




(・(エ)・)「エフッw」

 再登場して早々、クマーは思い出し笑いでむせた。

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662 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:09:17 ID:AywYk0Tg0


(*´W`)「あ〜れは傑作だった! もう一度見たいくらいにな!」

 無精ヒゲをたくわえた侍めいた格好の男・シラヒーゲが同調して笑い出す。
 彼は1さんや八頭身と同じく刀の使い手で、デルタ率いる八極武神の一人でもある。


从;'ー'从「不謹慎ですよ〜! 
      老人虐待とかになっちゃうんですからね!」

 笑い声を仲裁したのは武神の弟子である渡辺。
 光を利用した超能力が台頭する中、彼女は絶滅寸前の技術体系 『魔術』 を嗜んでいる。
 要は魔法少女だった。よくあるやつだった。



/ ,' 3 「……他の連中はどうしている?」

 彼らの煽りを冷ややかにスルーし、荒巻は言った。

( "ゞ)「流石夫婦は家族で団欒中。くるうはトランポリン。
    あと八仙のクソジジイも来てるぞ。弟子が消されたとか何とか言ってたが」

/ ,' 3 「……その件は分からんが、人が多いに越したことはない。
     シナーには私から挨拶しておく」


.

663 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:10:02 ID:AywYk0Tg0


( "ゞ)「……んで、とりあえずミルナを潰せって依頼だったよな」

 デルタは体を起こし、前屈みになって荒巻を見据えた。

 瞬間、ここから先は殺しの話だということを、この場の全員が察知した。
 静寂が場を包み、空気が一変する。


( "ゞ)「それは今すぐでいいのか?
     早めに済ませて観光するつもりなんだが」

/ ,' 3 「ああ、それだが少々話が変わった。
    決行は明日以降。今日は休日にしてくれ」


( "ゞ)「時間が無いんだろ。そんな悠長でいいのか?」

/ ,' 3 「そんなの今更だ。気にするな」







( "ゞ)「……バカか、荒巻」

 悠然とした荒巻の受け答えを、デルタはハッキリと否定した。


( "ゞ)「決着はさっさとつけるべきだ。
     俺は今すぐやりにいく。それでいいな?」

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664 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:11:10 ID:AywYk0Tg0


/ ,' 3 「……勝手は許さん。こちらにも事情と考えがある」

( "ゞ)「おい、勘違いするなよ」


( "ゞ)「この確認はお前の顔を立ててやったに過ぎん。
     俺達はな、最初からお前の許可なんざ求めてねえんだ」

 デルタは強い口調で言い、荒巻に明確な反抗心を向ける。
 荒巻スカルチノフ相手にこんな態度が取れる人間は、この世に十人と居ない。


( "ゞ)「俺が今日中にミルナを殺す。そして顔付きとやらも一週間で潰す。
     俺はその為に来た。お前が止めてどうする」

/ ,' 3 「……それもそうだった。分かった分かった」

 もうどうにでもなれ、という諦めから出た言葉。
 荒巻は疲れたように溜め息をつき、デルタの向かい側のソファにどすっと腰を下ろした。


/ ,' 3 「ミルナは今、レムナントのクソワロタにおる。
    行けば貴様の千里眼で分かるだろう」

/ ,' 3 「しかし一つ頼みがある。途中でドクオという奴に会ってきてくれ。
    そいつが一日の猶予を欲しがっている。本当にやるなら彼に断りを入れておけ」


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665 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:11:50 ID:AywYk0Tg0


( "ゞ)



( "ゞ)「…………あー、今、ドクオって言ったか?」

/ ,' 3 「ああ、その通りだが」


( "ゞ)「……ドクオだってよ」

 もう一度振り返り、デルタは間の抜けた調子で言った。
 武神一同はポカンとした表情で互いを見合い、その名前に目を丸くした。


(・(エ)・)「……ここで彼ですか?」

( ´W`)「そういやこっちに居るんだったな。忘れてたわ」

从'ー'从(顔が思い出せない……)



( "ゞ)「……そうか。ま、久し振りに会ってやるとしよう」

 デルタは居を正し、望郷を含んだ微笑みを浮かべた。

 ドクオとは長いこと会っていない。
 気が向けば千里眼で生存確認くらいはしていたが、奴がどれほどの男になったかは会ってみなければ計り知れない。
 男子三日会わざれば、と言う。その考えでいけば、ちょっとくらいは期待してもいいという気持ちにもなる。


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666 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:12:30 ID:AywYk0Tg0


( "ゞ)「誰か、ついて来たい奴はいるか?」

( ´W`)「俺ぁパス。別件がある」

从'ー'从「クマーさんが行ったらどうです? 兄弟子でしょ?」

(・(エ)・)「押し付けられなくても行きますよ。
     ついでに、フォックス君の話もある」

 後ろで面倒事の押し付け合いが収まると、デルタは改めて荒巻に言った。


( "ゞ)「……という訳だ。俺とクマーが出向く。
    そんでドクオに会った後で、俺らでミルナを殺す」

/ ,' 3 「……いや、二人でか?」

 荒巻は思わず素で聞き返した。
 ミルナ討伐にはてっきり全戦力を叩き込むものだと思っていたが、デルタの考えは大きく違っていた。
 しかもそれは油断や侮りではない。デルタは、本気で二人で事を成すつもりだった。



( "ゞ)「ああ。問題あるか?」

/ ,' 3 「ない。が、少し時間が掛かると思うぞ」


 ――そして荒巻のセリフの通り、それは不可能な事ではなかった。


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667 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:13:29 ID:AywYk0Tg0


/ ,' 3 「なるべく時間を掛けずにやってもらいたいんだが、そこもお前の勝手か?」

( "ゞ)「無理に皮肉を言うなよ。時間は掛からん、その杞憂は無駄だ」

 デルタが颯爽と立ち上がり、扉に向かって歩き出す。
 振り返らず、これ以上の話は無意味だと行動で示した。


(・(エ)・)「では、私の方もこれで」

( ´W`)「おお。まあ死なねぇようにな」

 軽く見送られた後、クマーもデルタを追って部屋を出た。
 廊下に出てデルタの背中を探すと、彼はすでに階段を下ろうとしていた。


(;・(エ)・)「待ってくださいッ」

 早足で追いつき、やれやれと鼻息を漏らす。
 こういう時、デルタ関ヶ原という人間は一切立ち止まらない。
 今回クマーが付き合うのも戦力としてではなかった。単に、彼のブレーキとしての役割を果たす為だった。

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668 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:14:09 ID:AywYk0Tg0



 クマー自身、この先の戦いには多少の不安を覚えていた。
 聞いた話によれば相手は理外の怪物。
 それに生身の無能が太刀打ちできるかと問えば、誰もが不可能だと断言するだろう。


 しかし彼の師は――八極武神と銘打たれた男はきっとそれを可能にする。
 クマーもそれは疑っていない。デルタ関ヶ原は100%勝利するに違いない。

 だが、当然無傷では成しえない勝利だ。
 『tanasinn』という概念がどれほどかは不明だが、デルタ関ヶ原はあくまで人間なのだ。
 血肉に代えは無く、傷の治りも人並みで、超能力も無い。


 だからこそ――とクマーは決意する。
 もしデルタ関ヶ原が命懸けで戦おうとした場合、その役目は自分が負う。
 彼が命を懸けるべき時は今ではない。次の戦いを考えれば、生き残るべきはデルタの方だ。




( "ゞ)「……心配するな」

 ふと、クマーの心中を見抜いたようにデルタが呟く。

(・(エ)・)「心配はしてません。ただ、順序を決めただけです」

( "ゞ)「お前は少し、物事を考えすぎる。
    今度の戦いは――特に今日のは、お前が思うよりもふざけてる」

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669 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:14:49 ID:AywYk0Tg0


 ふざけている。
 その言葉の意味を咀嚼する前に、デルタは小さく笑った。
 何のことかと思って首をかしげると、彼は大層楽しげに説明し始めた。


( "ゞ)「シナーの奴が盗み聞きしてやがった。
    もうミルナのところに向かってやがる。あーあ」

( "ゞ)「こりゃあ仕方ねぇな、先にミルナを片付けるぞ。
     半殺しでドクオの前に突き出して、事後承諾を得るしかねぇわ」



(・(エ)・)「……急ごしらえの口実にしては十分です。あなたも人が悪い」

 わざとらしく困った素振りを見せるデルタと、彼の意図を理解したクマー。
 デルタは拳を握り締めて骨を鳴らし、これから起こる戦いに思いを馳せた。

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670 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:15:36 ID:AywYk0Tg0



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 レムナント、クソワロタの街。


 露店が立ち並ぶ大通り。
 朝から晩まで人混みが絶えないこの通りに、今日ばかりは点々と空白ができていた。
 昨日の惨劇が一帯の人気を払ってしまったのか、露店を構える人々にも活気は見られない。


( ゚д゚ )「……」

 そんな大通りを物静かに歩く男。
 ミルナは落ち着いた様子で歩きながら、今度の獲物を丁寧に選別していた。


 瞬間、風が吹く。
 地表の砂がふわりと舞い上がり、それが大通りを一気に吹き抜けていく。

 ミルナは、そよ風につられて視線を前に泳がせた。





( `ハ´)「――――」

 男は、そよ風の先に居た。


.

671 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:16:16 ID:AywYk0Tg0


 両者に開いた距離は30メートルはある。
 それでも、二人の視線はピタリと合致していた。


( `ハ´)


 この瞬間まで、ミルナは男の気配をまったく感じ取れなかった。
 風が吹き、ふと目を向けなければ、たとえ隣を歩いてもミルナは彼を認識できなかっただろう。

 男の気配はそれほど巧妙に消され――風に溶けていた。


 しっかり目を合わせた今なら分かる。
 気配は確かにあるが、それは色んな気配と混ざり合っているのだ。


 大通りをゆく人々、物言わぬ建物、風や土、空や太陽。
 生命の有無に関わらず、男の気配はあらゆるものと調和していた。

 この景色は1ピースも余らず完璧に収まったパズルと同じだ。
 完璧に出来上がった完成品に対して、それが未完成であると疑問を持つほうが難しい。


.

672 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:17:37 ID:AywYk0Tg0



( ゚д゚ )「……荒巻の差し金か」

 独り言を呟き、一歩踏み込む。



( `ハ´)「――――弟子の、弔いに」

 踏み込んだ瞬間、声と一緒に風が耳元を吹き抜けた。
 ミルナは咄嗟に身を引き、とつぜん隣に現れたカンフー服を目で追った。


( ゚д゚ )

( `ハ´)「場所を選ぶがいい。それは許そう」

 黒ずんだ灰色のカンフー服。胸元まで伸びた口髭。
 一まとめにされ、後頭部からするりと垂れる白髪交じりの頭髪。
 自然体で、まるで風に乗って現れたかのような男――彼こそが、八仙郷の武人・シナーであった。


.

673 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:18:55 ID:AywYk0Tg0


( `ハ´)「……弟子との戦いは純粋であったと見る。しかし、力の差がありすぎた」

 枯れた声が静寂を逆撫でる。
 今まで台風の目であったこの大通りに、ごう、と強い風が奔った。


( ゚д゚ )「……覚えがある。お前、あの中国人の師匠だな」

( `ハ´)「……」

( ゚д゚ )「……ここは人目につく。街の外にいこう」

( `ハ´)「……では、先に行っている」

 シナーの姿は、その言葉をかき消す風と共に消え去った。


( ゚д゚ )


( -д- )「……ふう」

 ふたたび、一人の道を歩き出す。
 ミルナはようやく得た目的地へ向かって、静かに歩を早めた。


.

674 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:21:18 ID:AywYk0Tg0

16〜24話 >>439
プロローグ Another Heaven >>454-467
第二十五話 老兵集う >>473-495
第二十六話 面汚しの夜 その3 >>504-596

第二十七話 悪性萌芽 その1 >>609-673


書き溜めのストックは完全になくなりました('A`)
次回は来月末くらい('A`)

675 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:55:48 ID:neNbsznI0
来月…?年末…?

676 名も無きAAのようです :2015/09/14(月) 23:58:38 ID:U3Rb7pQ.0


677 名も無きAAのようです :2015/09/15(火) 04:47:51 ID:PBJzNLXI0
乙乙
ブーンはどうなったのか…

678 名も無きAAのようです :2015/09/15(火) 06:18:05 ID:.1ya6qM.0
おつ!
いつも楽しみにしてます!

679 名も無きAAのようです :2015/09/15(火) 18:18:33 ID:ZH5Y7Cuk0
バッドラックなあれから出世したなブーン……
おつー

680 名も無きAAのようです :2015/09/15(火) 21:08:18 ID:W/dBsiaY0
>>679
ホントだよな
改訂前のだとヘタレだったのに

681 名も無きAAのようです :2015/09/15(火) 21:38:06 ID:gOmDJnzkO
乙!

682 名も無きAAのようです :2015/09/16(水) 06:48:23 ID:7aKSW2i60
乙!オワタかっこいいw

683 名も無きAAのようです :2015/10/15(木) 20:05:11 ID:2xi.kdwMO

おもしろい

684 名も無きAAのようです :2015/10/16(金) 18:29:09 ID:EB8GnqeY0
そういえばオワタの能力って光を必要としてないのかな?

685 ◆gFPbblEHlQ :2015/10/25(日) 00:10:53 ID:PxHz4QTI0
今月末の投下は無理です(^ω^)
ツンちゃん夜を往くをよろしくNE(^ω^)

686 名も無きAAのようです :2015/10/25(日) 00:20:09 ID:cMgxzqc.0
お前だったのかよ読むわ

687 名も無きAAのようです :2015/11/02(月) 15:59:03 ID:Sw2TYuCcO
人は死ぬ前に走馬“灯”をみるらしい、という解釈
続き楽しみ!

688 名も無きAAのようです :2015/11/10(火) 12:28:36 ID:mFybEIkE0
実はエアマスターも待ってるんだよ

689 名も無きAAのようです :2015/11/14(土) 15:28:01 ID:FIusVAVc0
こっちはどうなっちまったんだ!!

690 ◆gFPbblEHlQ :2015/11/14(土) 23:51:12 ID:EnrtpqCg0
書き溜めは28話25レスくらいです('A`)
あんまり捗ってないのはツンちゃんのせいです('A`)

次の投下は本当に年末年始になると思います('A`)
ごめんNE('A`)

691 名も無きAAのようです :2015/11/15(日) 10:39:29 ID:fQ7b8eNc0
オーライ

692 名も無きAAのようです :2015/11/15(日) 15:34:08 ID:3p1MOLmg0
悲しいなぁ

693 名も無きAAのようです :2015/11/15(日) 19:57:33 ID:xY8V48xg0
ぐぎぎ…

694 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 14:40:22 ID:qg9bTCn20
おいもう1月だぞ

695 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 16:38:52 ID:Kc3i55Yc0
投下予告日を読めない奴がいるとは…たまげたなぁ…

696 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 17:37:36 ID:9b3upAyo0
そう無闇に煽ってやるなよ
期待の裏返しなんだろーから

697 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 21:09:08 ID:tR2dvjug0
いや多分前と同じネタやってんじゃねーの

698 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 21:47:25 ID:z6yNmYI20
奴も学習してるだろうからもう一ひねりしないと驚かないぞ

699 名も無きAAのようです :2015/12/07(月) 21:56:14 ID:42EF7GpY0
ツンちゃんが早く終わってくれれば再開するんだそう信じてる

700 名も無きAAのようです :2015/12/08(火) 15:40:09 ID:GJavyQvE0
ツンちゃんも面白いから辛い

701 名も無きAAのようです :2015/12/09(水) 02:22:27 ID:Rq1CnzQkO
読み直してたら気付いた、4月末に6月が来てたんですね

驚きの表現に4月末に6月〜が初見時は意味が分からなかった

702 名も無きAAのようです :2015/12/09(水) 10:16:25 ID:WLnDc2Ys0
ネタをわからない奴がいるとは…たまげたなぁ…

703 名も無きAAのようです :2015/12/09(水) 14:04:34 ID:JcWZoglI0
投下来たかと思ったらくだらない煽りか、期待して損した

704 ◆gFPbblEHlQ :2015/12/26(土) 00:37:17 ID:Hzh2RXDs0

≪1≫



 ――ざっと三十年前。



.

705 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:37:57 ID:Hzh2RXDs0



 世界は黒白に分かれていた。

 空は黒、大地は薄雪の白に。

 風にたゆたいながら降り注ぐ雪はわずかな月光を乱反射し、夜を照らすに十分な光を蓄えている。



( "ゞ)「――――よっ」

 はっきりと明暗を分けた雪原に少年の肢体が翻る。
 その様子に力強さはなかったものの、しかし確かな存在感があった。

 ふわふわと舞い降りる雪、その中の一粒を狙って打ち出された軽い拳。
 その一撃は、狙った雪を微動すらさせなかった。

 拳の先に、狙っていた雪がぴたりと触れる。
 それを機に、少年は次の拳を撃ち出した。


 以上の動作は一瞬。
 少年は、これと同じ一瞬を数時間と続けていた。
 今はまだ秒間1回だが、この少年はいずれ秒間100回を可能とする逸材だった。

.

706 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:38:41 ID:Hzh2RXDs0



 ――少年、デルタ関ヶ原には天賦の才があった。
 努力による補強は当然あったが、彼の強さはあらゆる歯車が寸分狂わず噛み合ったように完璧だった。

 有象無象の超能力など真っ向勝負で粉砕できる強さは既にある。
 実際、当時13歳のデルタ関ヶ原でも能力者相手には負け知らずだった。

 むしろ、無能力者の方にしか勝てない相手が居なかった。



爪゚ー゚)「よくもまあ、飽きんなあ」

 デルタが勝てない相手代表・じぃは気配なくデルタの背後に立ち、呆れたように呟いた。


 彼女の赤みがかったしなやかな金髪は薄雪と同様に光を含み、ほのかに輝いている。
 老齢に差し掛かるというのに、彼女の風貌は年相応の衰えをほとんど見せていなかった。
 美しさを保ったまま年老いるという理想の生き方を、彼女はその通りに実現していたのだ。

 しかし、保たれているのはその若々しさだけではない。
 強さの概念において、彼女はこの世の誰よりも頂点に近い存在であった。


.

707 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:39:41 ID:Hzh2RXDs0



( "ゞ)「……ンだよ、じぃ様」


爪゚ー゚)「メシの時間だ。さっさと戻らんか」

 彼女こそ先代八極武神その人。
 たった一人で武神を旗揚げし、この世に“武の領域”を確立した張本人。
 元々“八極武神”とは集団ではなく、彼女個人を表す言葉だったのだ。


 ドクオが母者に聞かされた話では、先代武神は看板通りにきっかり八人。
 しかし実際はじぃ一人。この時点で、母者の話はデタラメだった事が確定する。


( "ゞ)「……メシって、」

 デルタは構えをとき、遠くの空を一瞥した。
 視線の先には、暗闇に立ち上る細い白煙があった。

( "ゞ)「あれは無視か」

爪゚ー゚)「何を言う、貴様とて無視して鍛錬を続けておっただろう。
     まさか先程の轟音が聞こえなかったとは言うまい?」

 じぃの言う通り、このやり取りのたった一分前に事は起きていた。

 彼らが住まう屋敷に何かが墜落し、それが爆発を伴う激しい大炎上を巻き起こしたのだ。
 デルタは完全にシカトしていたが、事は一刻を争うものであった。

.

708 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:40:28 ID:Hzh2RXDs0


爪゚ー゚)「まぁオレもよく分からん。だからオレはメシを食うと決めた」

( "ゞ)「いやメシも火の中だろ。まさか燃えカスを食うのか」

爪゚ー゚)「森で適当にイノシシでも獲ってくるつもりだ。
     あの火力なら丸焼きもバーベキューも思いのままだろう?」

( "ゞ)「……乗った。今夜は肉でいこう」

爪゚ー゚)「応とも。ノルマは十匹だからな、心して掛かれ」

 二人は火災現場を背に颯爽と歩き出した。
 この時、火中の屋敷には流石母者が取り残されていた――


.

709 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:41:09 ID:Hzh2RXDs0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「……なんだコレ、どうして誰も手伝いに来ない」

 燃え盛る屋敷の中、流石母者は静かに怒っていた。
 それは火事の原因にではなく、この一大事に一人として駆けつけない他の住民達に向けられていた。



('(゚∀゚∩「補足のなおるよ!」

 ここで補足のなおるよのコーナーが入った。
 もう二度とないであろう奇跡のコーナーが幕を開ける。

('(゚∀゚∩「母者だけど、三十年前の母者に使えるAAが無いのでAAは無いよ!」

('(゚∀゚∩「おわり!」


.

710 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:41:49 ID:Hzh2RXDs0



(今夜はあまり雪が降らん。自然鎮火に頼ってたら全焼するぞ……)

 まず最初に、母者は手早く自分の荷物をまとめて庭先に飛び出した。
 その途中で屋敷中の蛇口を開けてはきたが、それが火を止めることは一切期待していなかった。
 むしろそんな事をする自分をアホか?と思うほどだった。


(……出来ることと言えば雪を集めてブッかけるくらいだが、到底一人ではやってられん)

(よって、これ以上火の手が広がる前に屋敷ごと吹き飛ばす)

 荷物を放り投げ、流石母者は片腕を振り解いた。
 瞬間、空を舞う雪を撥ね退け、鋭いの閃光が彼女の周囲に迸る。

 閃光の正体は拳戟。
 常人の目には、それが人の技であったことすら認識できない。


 その速度と威力をもって今度は屋敷に立ち向かう。
 火炎を帯びて紅蓮に染まった屋敷を見上げ、彼女はすとん、と腰を落とした。

 そして再び、閃光を纏った拳が空を切り裂く――

.

711 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:42:29 ID:Hzh2RXDs0




爪゚ー゚)「――よせ、火傷では済まん」


 とたん、その言葉と同時にじぃの掌が母者の拳を受け止めた。
 勢い余って炸裂した衝撃が大地を抉り、地表の雪を一掃する。


「……イノシシ狩りは終わったのか?」

爪゚ー゚)「オレはな。あっちはまだやっておる」

 じぃが庭の片隅を一瞥する。そこには十頭のイノシシが山積みになっていた。


爪゚ー゚)「それより端に下がっておけ。巻き込むぞ」

「……火事を始末するなら」

 手伝う、と言いかけたところで、母者はぐいと後ろから肩を引かれた。
 振り返るまでも無く、母者は不満気にその手を払いのけた。


爪゚ー゚)「遅かったな、デルタ」

( "ゞ)「ああ、少ねえと思って二十頭やってた」


.

712 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:43:09 ID:Hzh2RXDs0


「……じぃ様、訳を言ってくれ。これは敵の殴り込みか?」

 じぃは微笑んで頭を振り、彼女の問いを否定する。


爪゚ー゚)「あれはただの迷い犬よ。
     しかし厄介にも暴れておる、まず鎮めねば話にならん」

爪゚ー゚)「オレがさっさと済ませてくるから、貴様らはその間にメシの準備を頼むぞ」

 じぃは飄々と火炎に向かって歩き出す。
 あの中に居るものの正体は、結局母者には分からないままだった。

 母者はじぃの背中を見送った後、振り返ってデルタを見た。


( "ゞ)「今夜は鍋だ。頑張ろうな」

「……血抜きってどうやるんだ?」

( "ゞ)「……モツごと絞り出すか?」

 それだ、と両者納得すると、二人は早速イノシシの処理に取り掛かった。


.

713 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:43:49 ID:Hzh2RXDs0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



爪゚ー゚)「……さて」

 じぃは火中の奥深くに踏み込み、一息ついた。
 熱を帯びた空気が喉を通り、肺の中で渦をまく。


爪゚ー゚)「オレの声が聞こえるか?」



('A`)「……聞こえている。悪かった、家を壊して」

 火炎の中に、満身創痍の男が座り込んでいた。
 既に死闘を終えてきた後なのか、全身は血と傷跡にまみれている。

 傍には倒れ伏した女が一人。
 外傷は少ないが、彼女はもっと別の部分に致命傷を受けているようだった。
 彼女に意識は無く、死んだように動かなかった。

.

714 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:44:50 ID:Hzh2RXDs0


爪゚ー゚)「……その女、始末するべきだが」

('A`)「……できれば生かしてほしい。
    これは一時的な暴走だ。あと七割の相手をすれば、じき治まる」

爪゚ー゚)「であれば、三割は貴様が担ったか。
     木偶にしては上等。さぞ勇猛な戦い振りであっただろう」

('A`)「褒め言葉はいい……それより、もうすぐ目を覚ま――――」




 そこまで言って、男の挙動が停止した。



.

715 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:45:49 ID:Hzh2RXDs0


 止まったものはそれだけではない。

 絶えず揺らめく筈の炎も停止し、熱風に舞う火の粉も空中に赤い点として留まっている。

 一枚の絵として張り付いた炎の空間。
 あらゆるものが流動を止めた最中、床に倒れていた女だけが、わずかに身動ぎした。



川; - )「……クソッ」

 唾棄するように呟き、女はふらりと立ち上がった。
 彼女は乱れた前髪を更にかきむしり、意識のない間に何が起こっていたのかを考える。

 しかし、思考はまとまらない。
 一から構築された正常は、彼女が内包する『異常』に侵食されて潰えていく。

 途端、蹂躙された自我に致命的な亀裂が突き抜けた。
 視界が崩落し、素直クールという人間がバラバラになる。


川; - )(意識が、途切れる――)


.

716 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:46:29 ID:Hzh2RXDs0



爪゚ー゚)「――――ああ、分かっとる」

 とたん、止まっていた空間にじぃの声が響いた。
 その言葉は先程のドクオに向けられていたが、彼女の目は確かに素直クールを捉えている。


川; -゚)「動ける、のか……?」

 残された自我が単純な問いを口にする。
 じぃは得意気に頷いて答えた。


爪゚ー゚)「少し時間は掛かったがな。
     この所業、時間停止や法則支配の類とは格が違う」

爪゚ー゚)「あえて形容するなら空間そのものの乖離。
     時間や法則という縛りから、貴様が望んだ物だけを切り取っている」

爪゚ー゚)「もっとも、今はそれを制御できておらんようだが……」


川; - )

 口を動かして答えることはもうできない。
 素直クールは最後に、「後を頼む」と意思を込めた視線をじぃに送った。



.

717 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:47:44 ID:Hzh2RXDs0


爪゚ー゚)(……四で足りるが、状況が悪いな)

 素直クールの強さに対し、発揮するべき力を想定する。
 『四』とはそのまま四割という意味。
 彼女の見立てでは四割で互角。四割も出せば圧倒できるはずだった。


爪゚ー゚)「……」

 じぃは己の手を見つめ、軽く拳を作った。
 しかし、その動きには薬指だけがついてこない。

 薬指をピンと立てた拳。
 それが意味するものを、じぃは逸早く理解していた。


爪゚ー゚)(この指はもう駄目だな)

 瞬間じぃは拳を思いきり振り払った。
 ブチンという音を立て、薬指が拳から千切れて離れる。

 停止空間に捕らわれた薬指は、わずかに血を滴らせてから空中に停止。


爪゚ー゚)(……ここは望んだものだけが存在を許される空間。
     そこに力技で介入した手前、こうなるのは必然というもの)

爪゚ー゚)(気を抜いた部位から空間に自由を奪われる。
     ここで戦う以上、奪われた部位は切り捨てるしかない)

.

718 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:48:24 ID:Hzh2RXDs0


爪゚ー゚)「――おまけに、貴様自身も厄介極まりないときた」

 じぃは素直クールに目を向け、嘲笑しながら言葉を投げかけた。




川 ゚ -゚)「……いや、そんな事は無い」

 彼女は既に別人だった。正気ではあったが、先程とは中身が違った。
 ここは望んだものだけが存在できる空間。
 故に彼女が自分自身を望まなければ、ここに彼女の自我は存在できない。

 であれば、今の素直クールがどういう存在かはすぐに分かる。
 そして、彼女の能力も。



爪゚ー゚)「間違いなく強力な能力だが、くだらん力だな」

 じぃはもう一度笑い、全身の神経を研ぎ澄ました。
 気を抜いた部位など一つとしてない。
 鋭気に満ちた全身は、この炎の停止空間でも十分な気合を放っていた。

.

719 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:49:06 ID:Hzh2RXDs0



爪゚ー゚)「つまりここは夢の世界。貴様が望んだ理想そのもの」

爪゚ー゚)「まさに自己陶酔の極地と言えよう。まったくもって、見るに耐えん」


川 ゚ -゚)「好きに言え。私の在り方は、私自身が決めるのだから」


爪゚ー゚)「しかし独善の成れの果てが何も動かぬ世界とは、いや笑い話にすら程遠い」

 じぃは偶像の妄言を無視して続ける。

爪゚ー゚)「まったくもって、こいつはどうしようもなく大嫌いな性分だ。
     あの木偶には生かしてほしいと言われたが、たったいま、無理になった」




爪゚ー゚)「――膨れ上がったその独善、このオレが瓦礫の山に戻してやろう」




.

720 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:49:47 ID:Hzh2RXDs0

≪2≫



 果てしなく広がる荒野。
 そのひび割れた大地から快晴の空に向かって、一本の線が立っていた。

 線の正体は十本の槍。
 一本ごとの長さは約5メートル。全長50メートル分の、ただの槍。


( `ハ´)「――――」

 それらの直立を支えているのは槍の根元に立っている細身の老人、シナー。
 彼は目前のミルナを見据えたまま、槍を支えていた手をパッと開いた。


( `ハ´)「言い残すことは」

( ゚д゚ )「無い」


 風に吹かれ、十本の槍が無造作に崩れ落ちる。
 シナーの攻撃は、その時点から始まっていた。

.

721 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:51:03 ID:Hzh2RXDs0


( `ハ´)「ッ」

 シナーは手元の槍を掴み直し、それを地面に叩きつけて空中に跳ね上がった。
 反発力が最大になる瞬間で槍を手放し、棒高跳びの要領で一気に10メートル以上飛翔する。

 飛び上がった先でさらに二本の槍を手に取る。
 シナーは二本の槍を一本に合わせると、それを地面に突き立てて一点の足場を作った。

 ここまでの挙動は刹那。
 そして次の槍を掴むと同時、シナーはミルナに狙いを定めてその槍を投擲した。

(#゚д゚ )(槍使い、趣味は同じか――ッ)

 一次元を疾駆する最速無音の一撃。
 それを迎撃するため、ミルナは右腕に『マグナムブロウ』を発現して拳を振り抜いた。
 長槍と拳。真っ向から激突した二つは互いを弾き合い、次の攻撃に向けて行動を開始する。


(#゚д゚ )「――チィッ!!」

 シナーの槍の威力に押されて大地をすべるミルナ。
 僅かに負けた、という事実が苛立ちを煽り、彼の表情をより一層険しくさせる。

.

722 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:52:20 ID:Hzh2RXDs0


 瞬間、シナーが視界から消える。見るなは彼を追って真上を見上げた。
 感知が遅れた――それも束の間、ミルナは即座に回避に走る。

( `ハ´)

 ミルナの上空でひるがえり、ずらっと五本の槍を携えているシナー。
 彼は四本の槍を両脚で次々と蹴り飛ばし、残した一本を両手で構えてミルナに飛び掛った。


(#゚д゚ )(曲芸風情がッ……!)

 ミルナは咄嗟に左腕に黒煙を纏い、それを振るって蹴り出された四本の槍を弾き飛ばした。

 しかしその行動は安直すぎた。
 質量を持った黒煙は攻防共に優れた武器だが、それは同時にミルナの視界を遮るものでもあった。


 故に、空中に描かれた黒い軌跡がミルナの目前から消えた瞬間、


( `ハ´)「――ッ」

 背後に現れたシナーの一撃が、ミルナの心臓を穿とうとしていた。


.

723 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:53:38 ID:Hzh2RXDs0


(;゚д゚ )「――ッッ!!」

 やられた、と思った途端、左腕の黒煙が独りでに飛び出して長槍を防御する。
 ガキッ、という短い金属音。

( `ハ´)「……便利な獲物を」

 この一撃で傷を負わせるつもりだったシナーは眉間をすぼめ、理外の黒煙に敵意を示す。
 シナーは連続してミルナを刺突したが、それもすべて黒煙に防がれてしまった。


(;゚д゚ )(いったん退く! 目が追いつかん!)

 黒煙の自動防御は、ミルナに冷静な思考をさせるだけの時間を作ってくれた。

 ミルナは黒煙の一部を脚に纏わせて脚力を大幅に強化した。
 シナーと目を合わせたまま大地を蹴り、大きく後ろに飛びのく。


( `ハ´)「――それで、逃げ切れると」

 シナーはミルナを冷たく見返し、今度はその規格外の長槍で地面を斬り払った。
 地表を引っぺがすような突風が弾け、空中に大量の砂塵が舞い上がる。
 砂の段瀑がミルナを飲み込み、再び彼の身動きを封じ込める。

(; д゚ )(小細工ばかりッ……!)

 敵が視界を遮りにきた以上、次に来るのは更なる追い討ち。
 だが、ここで防御に回れば二度と攻勢には回れない。そういう確信がミルナの脳裏を過ぎった。

.

724 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:54:21 ID:Hzh2RXDs0


(; д゚ )(やりたくないが、素では相手しきれん……!)

 ミルナはtanasinnが生み出す黒煙を右腕に集中し、マグナムブロウに融和させた。
 瞬間、彼の右腕はどろりと溶解し、無形の泥になって地面に落ちる。


(# д )(――――)

 地に落ちた泥が浮かび上がり、激しく渦巻きながら肉体の一部として再構成され始めた。
 彼の超能力は姿形を変え、蝕むように全身に広がっていく。


 体内に何かが混ざり、血の流れが遅くなる。
 自分の眼球の動きにすら感覚が反応してしまう。
 記憶がバラバラに崩れ落ちていく。
 自分を形容している決定的なものが、その“何か”に犯されている。

 分かるのは痛みと熱だけ。
 五感のすべてがその二つだけで構成されているような錯覚さえある。

 そして、その錯覚を疑うことなく受け入れたとき、



(# д'゚)「――――」


 ミルナの姿は、黒い影に飲み込まれていた。

.

725 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:55:02 ID:Hzh2RXDs0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

           第二十八話 「悪性萌芽 その2」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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726 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:56:31 ID:Hzh2RXDs0


(# д'゚)「――――お゙お゙お゙ッッ!!」

 周囲の砂煙を一掃し、人外の絶叫が迸る。
 大地が震え、呼応するように空気が鳴動する。


 それが止むと同時に、荒野は静寂した。


(# д'゚)「ッ」

 静寂の中、ミルナは気配を直感する。
 シナーの気配も確かにあるが、それとは別に二人分の気配が増えていた。

 喉の奥を獣のように唸らせながら、ミルナはゆっくりと振り返る。







( "ゞ)「……二で足りる」

(・(エ)・)「……残念、私は八です」


(# д'゚)「……」

 彼らが呟いた数字の意味を、今のミルナは理解できなかった。


.

727 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 01:01:16 ID:Hzh2RXDs0
16〜24話 >>439
プロローグ Another Heaven >>454-467
第二十五話 老兵集う >>473-495
第二十六話 面汚しの夜 その3 >>504-596
第二十七話 悪性萌芽 その1 >>609-673

第二十八話 悪性萌芽 その2 >>704-726


次回は来月再来月になります
来年には完結したいなぁと思います 以上です

728 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 01:29:39 ID:obYfOkIE0

補足王が出るまでも無かったか

729 名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 12:45:51 ID:MyBBQ5Ik0
乙。クマー俺が思ったより強そう

730 名も無きAAのようです :2015/12/28(月) 01:10:00 ID:Ykpt63AE0
乙!
正直おもしろすぎ

731 名も無きAAのようです :2016/02/01(月) 19:16:30 ID:jCy430z.O
バトルシーンの描写とかキャラの葛藤とか好き

732 名も無きAAのようです :2016/02/01(月) 20:27:31 ID:aiZu6p560
http://ssks.jp/url/?id=348

733 ◆gFPbblEHlQ :2016/02/05(金) 10:29:12 ID:pjhP36rI0

≪1≫



( "ゞ)「……なんだ、まあ、アレだな」

 デルタはそう呟き、頭をかきながら前に出た。
 目前には敵。人間という箍を外したミルナが、すぐそこで待ち構えている。


( "ゞ)「アレだ…………」

(# д'゚)


( "ゞ)「……おら、掛かって来い。
    今さっき出掛かった言葉を呑んで、一発相手してやる」

(# д'゚)「―――」

 デルタが煽るまでもなく、ミルナを取り巻く黒煙は鋭利な刃となってデルタに襲い掛かった。
 一瞬で作り出された数十の刃――だが、それが砕け散るのもまた一瞬。

 
.

734 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:30:14 ID:pjhP36rI0


( "ゞ)「……終わりならもう言うぞ」

 幾多の黒煙の刃を粉砕し、握り潰して宣告する。
 デルタの目は「さっさとしろ」と言いたげに、冷たくミルナを見据えている。


(; д'゚)「…………なンだ、お前ハ……」

 tanasinnの力を得て暴走しているとはいえ、ミルナの攻撃は確かに必殺だった。
 それが呆気なく、まるでクモの巣を払うかのように一掃された。
 その事実に対して脅威を覚えたのは、ミルナではなくtanasinnの方だった。

( "ゞ)「なんだ、喋るのか? てっきり叫ぶだけの暴走野郎と思ったが」

 ハ、と分かりやすい嘲笑をこぼすデルタ。

( "ゞ)「でもな、俺が誰かなんて今更だろう。俺だってお前が誰かなんて知らん。
     俺はお前みたいな格下を知らないし、お前も俺みたいな格上は知らなくて当然だ」

(; д'゚)「…………」

( "ゞ)「……なんだよその顔は。ビックリって感じのその顔は。
    まさかお前、思ってたんじゃねえだろうな」

( "ゞ)「tanasinnとやらを持ってない奴に俺が負ける訳が無い。
    俺はそういう連中とは生きてる世界が違うんだ、とか」


( "ゞ)「ハハハ。だったらさっぱり的外れだわ、お前」

 繰り返される嘲笑。
 しかもそれは馬鹿にする所か、お前など眼中にないと明言しているようなものだった。

.

735 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:32:27 ID:pjhP36rI0


( д )

 ――デルタ関ヶ原の実力を予感したtanasinnは、即断した。

 まず、tanasinnはミルナという原形を捨てた。
 ミルナの精神を経て形を保っていたtanasinnの力は、早々にその回路を放棄したのだ。

 回路を失った力は理性を破壊し、燃料が尽きるまでミルナをひたすら暴走させ続ける。
 これは先日ミセリやドクオを倒した時と同じやり方。しかし、今度のは限度未定の自殺行為。
 今のミルナに出来る『全力の出し方』は、もうこれしかないのだ。



( ゚д゚ )「……陳腐な物言いだが、ムカつくぞ。
     その場所は、俺が何百年掛けても到達しなかった場所だ」

 束の間、正気を取り戻したミルナはデルタに向かって言い放つ。
 それは単純な羨望と嫉妬――自分より強い人間への敵意。
 自分より純粋に生き、純粋に強くなった男への逆恨み。


( ゚д゚ )「どうすればそこまで強くなれる? ただの人間のままで」

( "ゞ)「いや無能には無理だ。お前には才能がない、俺にはあった。
    それだけの話だ。どうだ、理不尽だろう」

( ゚д゚ )「……ああ。まったく、やってられん」

( "ゞ)「だが結局それなんだよ。理不尽に見逃されるか立ち向かうか。
    人の一生の構造なんざ、結局それだけだ」

( ゚д゚ )「なら、俺は後者でお前は前者か」

( "ゞ)「は? いちいち自分を美化したがる野郎だな。
    俺もお前も後者だよ。ただし、お前は途中で膝を折った半端者」

 デルタはミルナを指差し、当てつけのようにハッキリと言う。

.

736 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:33:59 ID:pjhP36rI0


( "ゞ)「まあ分不相応ってコトだ。
     諦めて普通に生きたらどうだ? とりあえず就活やれよ」

( ゚д゚ )「……いい加減にしろよ。俺には」

( "ゞ)「使命役目運命役割……がある、か? 清々しいほど言い訳だな。
     それより就職して家賃10万のアパートに住む想像でもしろ。よっぽど有意義だ」

( "ゞ)「俺は武人としての地位がある。金も食い物も勝手に転がり込んでくる。
     だがお前には何があるんだ? ないだろ、何にも」

(#゚д゚ )「……何も知らない奴が、俺の在り方に口を挟むな」

( "ゞ)「おいおいおいおい。おい怒るなよ。才能はない、力もない。人脈も何もない。
    俺はそんな人間にも実現可能な最大限の幸福を言ってるだけだぞ」

 デルタは真顔で語り続ける。
 至極真剣に、当然の事をミルナに語りかける。


( "ゞ)「どうだ? 幸せだと思わないか。
     スーパーの特売日。安い鳥肉を買って、それを唐揚げにして食べる。
     給料日には酒があってもいいな。一升瓶で鬼殺しを飲んでいい」

( "ゞ)「あるいは女だ。自然に女ができれば上等だが、金があればまあ大丈夫だ。
     風俗でもいい。チンコに潤いを持てば余裕ができるぞ」


(#゚д゚ )「……そんな下らない話を、いつまでッ……!!」

( "ゞ)「……なんだと?」

 下らない。その一言に、デルタの眉がピクンと跳ねた。



( "ゞ)「お前、唐揚げを馬鹿にするのか?」

 しかし、両者の話はどこか食い違っていた。

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737 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:34:39 ID:pjhP36rI0


( "ゞ)「……よし決まった。たった今、この戦いの動機が固まった」

( "ゞ)「俺は今から唐揚げを馬鹿にしたお前を殺す。
     これは唐揚げの為の戦いだ」

 独りでに自己完結したデルタは軽く構え、鼻で笑う。

( "ゞ)「どうだムカつくか? 
    大義名分を背負った戦いが勝手に唐揚げ大戦争にされちまって」

(#゚д゚ )「……強いだけの男が。意思のない力なんざ、犬畜生にも劣るゴミだ」

( "ゞ)「……」


( "ゞ)「……お前は、耳障りのいい言葉で、取り繕うばかりだな」

 その返答は落胆。
 デルタ関ヶ原は脱力し、小さく溜め息を吐いた。

( "ゞ)「なんというか、最早、見るに堪えん……」



( "ゞ)「おいクマー! あとお前がやれ!」

 踵を返し、遠くに逃げ隠れていたクマーに向けて命令する。
 デルタは適当なところまで離れると、その場にドスンと腰を下ろして傍観者に早代わりした。

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738 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:35:30 ID:pjhP36rI0


(;・(エ)・)「……煽るだけ煽って、結局人任せですか……」

 程なくして、とぼとぼ、とぼとぼとクマーが歩いてくる。
 クマーは興醒めして座り込んだデルタに恨めしい小言を零しながら、渋々ミルナに向かっていく。

( "ゞ)「おいクマー、半分でやれ。上司命令な」

(;・(エ)・)「……分かりました。死んだら弔ってください」

( "ゞ)「おうよ。山盛りの唐揚げで奉ってやる」

(;・(エ)・)(一気に死ねなくなった……)



 ――黒い、ぬるい風が迸る。
 風速は些細だが、その風はレムナントの大地を荒々しく削り取っていた。
 ぐつぐつと煮え滾る殺意と憤怒が、クマーとデルタの余裕に水を差す。

(・(エ)・)「……」

 クマーが視線をミルナに向けた時、そこに彼の姿はもうない。
 代わりにあったものは血肉を詰めた黒い甲冑。人ならざる、文字通りの化物。
 黒甲冑から流れ出る黒い瘴気は、それこそがtanasinnが作り出す悪性の具現であった。


( `ハ´)「……あいつも無茶を言う。私が少し、手を貸そう」

(;・(エ)・)「あ、助かります……」

 並び立った熊の覆面大男、槍使いの老人。
 一度は途切れた戦いの呼吸は、次の瞬間、息を吹き返す。


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739 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:36:11 ID:pjhP36rI0


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           第二十八話 「悪性萌芽 その3」

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740 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:36:56 ID:pjhP36rI0

≪2≫



 素直クールとドクオが武神屋敷に落ちて数週間。
 屋敷の改修作業は適当なところで飽きて切り上げ、彼らはとりあえず元の生活を送っていた。


( "ゞ)「おい大根食うか」

(;'A`)「いや、食べない……。少なくとも生では」

 墜落から数日目にして目覚めたドクオは、デルタの手厚い看護によってまぁまぁ復活していた。
 軽度の痺れや発作的な痛みはあれど、少なくとも、内藤の研究所に居た頃よりは健康だった。


( "ゞ)「許さん。好き嫌いは死ぬぞ。いいから大根を食え」 グイグイグイグイグイグイグイ
 ___
* ダイコン>)'A`;)「主張が激しい割りに大根のAAが雑だ」
  ̄ ̄ ̄
 tanasinnのあれこれによってメタ発言さえ許されたドクオは、渋々生の大根をかじり始める。

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741 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:37:37 ID:pjhP36rI0


(;'A`)「あー……」ジャリッ ガリッ

( "ゞ)「いい食いっぷりだドン引きするくらいにな。
    でもさすがに生はねえわ。腹壊すぞ」

(;'A`)「最初から言ってるだろうに……」

 ここは焼け残った武神屋敷の別邸。
 ドクオが寝ているその部屋は、小さいながら無駄のない綺麗な和室であった。

 ドクオが外に目をやると、写真でしか見たことがないような雪景色が広がっていた。
 池と鹿威しのある大庭園。けっこう金を掛けたんだろうなあ、とドクオは呑気に想像する。


( "ゞ)「あの女、ジィ様が言うにはそろそろ起きるらしいがどうする」

('A`)「……俺が最初に顔見せないと面倒だろう。その時は悪いが肩を借りる」

( "ゞ)「いや、会うつもりなら女の寝床をこっちに移す。
    その方が手っ取り早い。それでいいだろ?」

('A`)「ああ。お前には手間ばかり掛けさせるな」

( "ゞ)「マジでその通りだ。この借りは絶対に返せ」

(;'A`)「……分かった。でも期待はするなよ、俺もそう長くはない……」

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742 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:38:21 ID:pjhP36rI0


 ドクオの身体は、確実にtanasinnに蝕まれていた。

 彼は内藤が作り出した人工生命で常人よりも丈夫とはいえ、このドクオにはtanasinnの適性が無かった。
 しかし内藤はそれを無視し、ドクオに『tanasinnの片鱗』の失敗作を投与し続けた。
 その行為はただの紙コップにマグマを流し入れるようなもので、とどのつまり、最初から彼の死滅を前提としていた。
 約束された死の瞬間は近い。ドクオ自身、十分にそれを自覚している。


( "ゞ)「だから死ぬ前に返せって話だ。お前なりにな」

('A`)「分かってるさ。死んで遺せるものなんか、高が知れているからな」


( "ゞ)「……お前、自分が生き残る可能性は考えてないのか」

('A`)「ああ、まったく」

 デルタの問いに、ドクオはキッパリと即答する。
 『ドクオ』とは元々他人に生み出された存在。なくて当然の物が、元に戻るだけなのだ。

 道具として生まれ、道具として使役され、道具として破棄される。
 ドクオはそんな一生を自分の末路として疑いなく受け入れていた。
 ただ一つ、それが『理不尽』であるという事を見逃したまま。

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743 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:39:01 ID:pjhP36rI0


( "ゞ)「……理不尽に従えばこの世は地獄だ。
     お前はそれでいいのか?」

('A`)「地獄で生まれた男が地獄で死ぬ。
    それはそれで、道理だと思わないか」

( "ゞ)「……思わん。だが、それがお前の道理なら最期まで貫け。
     絶対に途中で膝を折るなよ。でなけりゃ死ぬほどカッコ悪いからな」

('A`)「分かった、覚えておくよ」

( "ゞ)「……“分かった”は嫌いな言葉だ」
    理不尽に従う人間は、みんなそれが口癖だ」


('A`)「……」

('∀`)「……なんつうか、反抗期だな」

 一連のデルタの語りを聞いて、ドクオは朗らかな笑みを見せて言った。


( "ゞ)「当たり前だ。俺はまだ十三歳だぞ」

('∀`)「にしては言い分が達観しすぎだ。
    そんなに嫌いか? この世の中が」

( "ゞ)「好きな所もあるが、ピンポイントで嫌いな所がある。
    ま、そんなん誰でも一緒か……」

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744 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:39:54 ID:pjhP36rI0


 デルタは大きく一呼吸すると、初めてドクオから目を逸らし、語り始めた。

( "ゞ)「俺は元々、心臓を病んでいた。
    俺の身体は生まれた時から早死にを約束されていた。
    理不尽が嫌いなのはそれが理由だ」

('A`)「……それがなんで、ここに」

 ドクオは笑みを消し、彼の話に集中する。

( "ゞ)「大した理由は無い。誰よりも弱い男が、誰よりも強くなろうとしたってだけの話。
    その結果ここに来て、今に至って、それだけよ」

('A`)「……時間が無いのはお互い様って事か。
    因果なものだな、この地獄も」

( "ゞ)「だとしても俺はこのまま死ぬつもりは微塵も無い。
    やるだけやって、俺は俺の一生を生き尽くして死んでやるつもりだ」

('A`)「…………」



( "ゞ)「残り数年の命だが、その間に何とかして神様をブッ潰す」

 しんみりした空気も束の間、デルタの話は意味不明な方向に急展開した。
 それについていけなかったドクオは数秒沈黙した後、思わず「え?」と呟いてしまった。


(;'A`)「いや、えっと、なんでそうなる?」

( "ゞ)「なんでもなにも、神様が理不尽の生みの親だからだ。
    だから一発殴らなきゃ死んでも死に切れん。
    なんならお前の分も殴っといてやるが」

(;'∀`)「……本気、か?」

( "ゞ)「冗談言ってる暇はない。死に掛けなんだぞこの俺は」

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745 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:40:34 ID:pjhP36rI0


(;'A`)「……じゃあまあ、そんな夢ある少年にひとつ助言を……」


('A`)「とりあえずハッキリ言っといてやる。
   お前が殴りたがってるような神様は実在するよ」

('A`)「荒巻スカルチノフっていう爺さんがその神様と知り合いだ。
   だからもし神様をブッ潰しに行く時は、荒巻の方を先に見つけるといい」


( "ゞ)「……いいことを聞いた」

(;'A`)「だが本当に神様だからな。倒すつもりなら」

 忠告の途中、デルタは耳も貸さずにすっと立ち上がった。
 彼は軽くストレッチをしたあと、そのまま庭に降りて雪上を歩き出した。


( "ゞ)「ちょっくら出掛けてくる。朝まで帰らん」

(;'A`)「……いや、いやいやいや待て!! 今が朝だぞ!!」

 ドクオは手を伸ばしてデルタを止めようとするも、彼はそれを意に介さない。

(;'A`)ノ 「おい! お前マジで病人か!?」

( "ゞ)「闘病生活真っ只中だ。休む暇もありゃしねえ」




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746 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:41:14 ID:pjhP36rI0


 デルタはそう言い、結局数日後の朝まで帰ってこなかった。
 そして帰ってから一番最初に言った事は



( "ゞ)「神に土下座させてきた」



 簡潔な勝利宣言だった。


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747 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:41:54 ID:pjhP36rI0

≪3≫



 素直クールの目覚めは、スイッチがパチンと切り替わるように明確だった。

('A`)「おっ」


川 ゚ -゚)「……ドクオ? ……ここはどこだ?」

 布団で横になっていた彼女は周囲を見回しながら体を起こした。
 肉体的な傷はすっかり完治したらしく、彼女に痛みを訴える素振りはない。

('A`)「武神の屋敷だ。目的地だよ、俺達の」

川;゚ -゚)「……いかん、覚えが無い。あれから何があった?
      本当にあそこから無事に脱出できたのか?」

('A`)「本当だ。心配するな。今、他の人を呼んでくる」

 そう言い、立ち上がろうとした瞬間。
 素直クールがドクオの手を掴み、震える声で呟いた。

川;゚ -゚)「誤魔化さなくていい。私は内藤に何をされた……?」

('A`)「……それを話すつもりはない。
    お前が起きる前に、武神も含めてそう決めた」

 ドクオは彼女の手を優しく払い、部屋を出た。

 デルタが神様を倒した記念の為、屋敷の住民達は別室で宴会中だった。
 そこにひょっこり顔を出すと、事を察したじぃが宴会を抜け、ドクオと一緒に部屋に戻った。

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748 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:42:47 ID:pjhP36rI0



爪゚ー゚)「やっと目を覚ましたか。……さて、オレの顔に覚えは?」

川;゚ -゚)「……あります。本当にありがとうございました」

 素直クールは正座に座りなおし、じぃに深々と頭を下げた。

爪゚ー゚)「気にするな、些事であったぞ。
     オレの名はじぃ。八極武神と名乗り、遊びほうけておる」

川;゚ -゚)「それじゃあ、じぃさん」

爪゚-゚)「待て、オレを呼ぶ時は『さん』ではなく『様』をつけろ。
     でないと語感がでんじゃらすになるからな」

(;'A`)「気をつけろ、この人それでマジギレするからな」

川;゚ -゚)「わ、分かった」



川;゚ -゚)「……じぃ様、私達の事情はどこまで聞きましたか?」

爪゚ー゚)「……あー」

 クールの質問に、じぃは少しばかり目を泳がせた。
 人には知られたくない過去があるものだが、じぃはドクオからそれを丸々聞いてしまっていた。

 開き直り、じぃは包み隠さずに答える。

爪゚ー゚)「すまんが徹頭徹尾すべて聞いた。
     要はタナシンだろう? あんなものに関わるとは、災難だったな」

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749 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:44:09 ID:pjhP36rI0


川;゚ -゚)「……私は、内藤の研究所から脱出する時、内藤に『人工片鱗』を投与された。
     追い詰められたが故に仕方が無かったが、それは間違いだった。
     それで、もうそこから記憶は曖昧ですが、私は、私ではなくなった……」

川; - )「じぃ様、ドクオ。お願いだ。私は、何をしたんだ……」




爪゚ー゚)「……だと。どうする、ドクオ」

('A`)「……まだ寝起きで混乱してるんだろう。
    落ち着いたら思い出せるはずだ。今は休め、いいな」

川;゚ -゚)「わ、私はッ――!」

(#'A`)「いいから聞けッ!」

 ドクオは突然語気を荒げ、彼女を黙らせた。


(#'A`)「お前は今も体を『人工片鱗』に侵食されている!
    それがどういう影響を与えているか分からないが、少なくとも今、お前はお前らしくない!」

川;゚ -゚)「……だが……」

(#'A`)「……何があったか話すのはいい。
    だがその『忘れた振り』はお前らしくない。そう言っているんだ」

(#'A`)「お前があの時の事を忘れている訳がない!
    tanasinnには人の心身を乗っ取るだけの意思は無いんだぞ!」

川;゚ -゚)「……私は、嘘なんか……」


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750 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:44:56 ID:pjhP36rI0


 言い淀み、狼狽した素直クールに対し、ドクオは更に言葉を続けようとした。
 しかし、じぃがそれを遮って二人の間に割って入る。

爪゚ー゚)「問答も結構。だがなあドクオ、これじゃあ埒が開かんぞ。
     そろそろ折れてもよかろうに」

(#'A`)「……それじゃあ今以上に悪化するだけだ」

爪゚ー゚)「その時はオレが相手をする。問題あるか?」

川;゚ -゚)「……なんだ、なんの話をしている?」

 素直クールの呼び掛けにも答えず、ドクオはじぃに怒りの矛先を向ける。


(#'A`)「問題ある。今後それを繰り返しても彼女は助からない。
     彼女にこの後遺症を克服させるには時間が必要だ」

爪゚ー゚)「貴様バカか? 時間が無い者に時間が必要なのは当然だ。
     ゆえに限り限られた時間の中で妥協と最善を尽くす」

爪゚ー゚)「なればこそ、今は妥協が最善だとオレは思うが……。
     はて、貴様はその理想の為に限りあるものを使い潰すつもりか?」

(#'A`)「……」

 ドクオは、言葉を噛み潰した。
 感情的に言い返す事はできる。しかし、その言葉には中身が伴わない。
 解決に近付くための言葉を、ドクオは思いつくことが出来なかった。

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751 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:46:02 ID:pjhP36rI0


爪゚ー゚)「……さて。とりあえず起きてメシを食うといい。
     かくして今は宴会中でな、腹を満たすに余りある用意ができておる」


川;゚ -゚)「……」

('A`)「……そうしよう。お前が聞きたがってる事もそこで話す」

 素直クールがドクオに視線を送ると、彼はすっかり落ち着いた様子で彼女に微笑んだ。
 そこでようやく、彼女は少しだけ気を緩めることができた。


爪゚ー゚)「オレとドクオは先に行っている。
     着替えは好きに使え。オレの古着だがな」

川 ゚ -゚)「……え?」

('A`)「……また後でな」

川;゚ -゚)「……あ、ああ……」

 素っ気無く部屋を後にしたドクオとじぃ。

 しかし、その時ドクオは見逃していなかった。
 あの素直クールが、人恋しそうに手を伸ばしてきていた事を。


('A`)(……違う)

( 'A`)(お前は、こんな奴じゃない……)


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752 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:46:42 ID:pjhP36rI0




爪゚ー゚)「……十六回だ。貴様があれの説得に敗した回数」

 縁側をトコトコ歩きながら、じぃは改まってその結果を口にした。

('A`)「……」

爪゚ー゚)「何度繰り返したところで同じだったと思うがな。
     ま、これであの女が『望んだこと以外は受け付けない』と理解したか?」



 ――素直クールは、この数日間に十七回目覚めていた。
 そして先程の一回を除いた十六回の中で、彼女は明らかな異変を起こしていた。


('A`)「恐らく……いや、もう確信した。あれは内藤の人工片鱗が原因だ。
    素直クールは、感情の箍が外れかかっている」

('A`)「なんというべきか……弱くなってしまったんだ。あの女は、精神的に。
    人工片鱗は彼女の精神を変えてしまった。強くあろうとする精神に、毒を混ぜた」


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753 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:47:22 ID:pjhP36rI0


 目覚める度、素直クールは自分が内藤に何をされ、何をしたのかを聞こうとする。

 しかしそこで本当の事を教えると、彼女は“笑う”。
 儚げに目に涙を溜めながら、悲しい事があり悪い事もしたけれど、これからは――と語り始める。
 言うなれば悲劇のヒロイン――彼女はそれになってしまうのだ。

 かといって真実を告げずに彼女の願いを拒否し続けると、
 彼女は再び気を失い、深い眠りについてしまう。次に起きた時、この時のやり取りは全て喪失している。
 つまり、今の彼女は都合のいい言葉しか受け付けない。


('A`)「……あの女は本物の『tanasinn』に関わり、俺よりよっぽど酷い道を歩いてきた。
    だがそれでも分かるんだ。彼女はどんな悲劇であろうと、決して『過去のもの』にはしなかった」

('A`)「救われなくとも足掻いてきた。殺され掛けても何かを救おうとしてきた。
    報われなくとも、たとえ叶わない願いであっても、それを否定する言葉を吐く人間ではない」

('A`)「そんな女が、誰よりも今を見て生きていた女が、
    今ある問題から目を背けて 『これから』 と言った」

('A`)「……俺はそれを認められない。確かにあれも彼女の一面だろうが、決して本心ではない筈だ。
    俺の知っている素直クールは、もっと強い人間なんだ……」



爪゚ー゚)「……それは貴様の願望だ。事実と妄想がごちゃ混ぜだぞ。
     彼女の在り方は彼女が決める。それが清々しいほど現実逃避であろうとな」

 じぃの言葉でふと我に返る。
 ドクオは眉間を指で絞り、嘆息を零した。

(;'A`)「……すまない。俺にも彼女と同じ傾向があるらしい。
    また変な事を言ったら、咎めてくれ……」

爪゚ー゚)「うちはメンヘラを二匹も飼えるほど寛容ではないからな。
     殴ってでも言い改めさせるから安心しておけ」

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754 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:48:02 ID:pjhP36rI0



 宴会場に足を踏み入れると、ドクオはまず、疑問を持った。
 目の前で起こっている宴会――というか乱闘に対して、これが一体何の集まりなのか分からなくなったのだ。


(# "ゞ)「おい阿部ェ!! その肉は俺のだっつってんだろ!!」

N|#"゚'` {"゚`lリ 「黙れ処女! 自分のモノなら胃の中に入れてから言え!!」


(;'A`)「……じぃ様、これって食事の場なのか?」

爪゚ー゚)「見て分からんか? 鍋も鉄板もあるだろう」

(;'A`)「あるのは分かる。でも調理器具として扱われていないぞ」


(# "ゞ)「テメェもだクソ忍者!!
     さっきからちょくちょく盗んでんのバレてっからな!!」


     X
∠ ̄\∩
  |/゚U゚|丿 「――激しく奪取、そして咀嚼」
 (`二⊃
 ( ヽ/
  ノ>ノ
  UU

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755 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:48:43 ID:pjhP36rI0


 飛び交う拳、焼ける肉。床や壁をことごとく粉砕し、ひたすら肉を奪い合う者達。
 ゲイと忍者が入り乱れた乱闘焼肉パーティは、ドクオとじぃを無視してなおも混迷を深めていく。

爪゚ー゚)「貴様もあれに混ざったらどうだ。
     死ぬかもしれんが楽しいぞ? 陰気なツラも変わるだろうて」

(;'A`)「……遠慮しておく。死を娯楽にするには未練が多すぎる……」

爪゚ー゚)「ははは。未練あっての人生だぞ。死ね」

(;'A`)「えっ、いやッ!」

 ドッ、とドクオのケツを蹴り飛ばすじぃ。
 ドクオも寸で踏み止まろうとするも、数歩前進した先は既に戦場であり――


( "ゞ)「よう兄弟。お前も肉か?」

(;'A`)「ちがっ……違う違う違う違う!!」

N| "゚'` {"゚`lリ 「なるほど騙まし討ちか。新入りにしては知恵があるな」

(;'A`)「すぐ下がるから待ッ――――」





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756 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:49:26 ID:pjhP36rI0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 宴会から一晩過ぎた翌朝、ドクオと素直クールは屋敷の庭先に立たされていた。
 なにやら“けじめ”をつけると言っていたが、その実何をするのかはまだ聞かされていなかった。

 雪降る早朝に呼び出されて十分ほど経過。
 デルタの怒号や忍者がその辺を飛び交った後、じぃはデルタに肩車された状態でドクオ達の前に現れた。


('A`)「……じぃ様、顔色が悪いようだが」

爪;゚ー゚)「ああ、朝まで酒を飲んだせいでな……」

( "ゞ)「今から寝るって言って聞かねえから無理矢理連れてきた」

爪;゚ー゚)「今日は弟子入りの予定だったが……明日でいいか?」

(;'A`)「……え、弟子入りするのか? 俺達がか?」

爪;゚ー゚)「そうだ。貴様ら二人とも、強さ弱さを持て余しているようだしな」

 吐き気を抑え込むように呻いた後、じぃは脂汗を拭った。


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757 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:50:06 ID:pjhP36rI0


爪;゚ー゚)「ドクオ。貴様は弱過ぎる。だから強さを教え込む」

爪;゚ー゚)「素直クール。貴様は強過ぎる。だから弱さを教え込む」

('A`)「……」

川 ゚ -゚)「……それぞれ、真逆のことを教えるのか?」

 ドクオとクールは共通の疑問を持って言葉を詰まらせた。

 じぃの言葉に対する違和感は一つ。
 弱いから強くする。それは分かる。
 しかし、強いから弱くするというのはどうにも理解が及ばなかった。


爪;゚ー゚)「……デルタ説明してやれ」

( "ゞ)「面倒を押し付けるな」

爪;゚ー゚)「頭の上で吐くぞ。いいのか」

( "ゞ)「そん時はお前の顔面に吐き返してやる」

爪; ー )「う……っぷ!」

(;'A`)「……おい。これ本当に吐くんじゃ――」

.

758 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:50:46 ID:pjhP36rI0


 ……激しい音はなかった。
 しかし、じぃは口元に手を当てることもなく、当然のようにデルタの頭に吐瀉をぶちまけていた。

 中身を全部吐くまでの数秒間、しゃびしゃびのゲロが脳天から流れ滴る最中、


( "ゞ)


 デルタ関ヶ原、真顔――!!





( "ゞ)「……吐き終わったか?」

爪; ー )「……ああ」

( "ゞ)「よし」

 するとデルタはじぃを投げ捨てて馬乗りになり、己の喉に手を突っ込み――


(; "ゞ)「――お゙ッ!!」

 宣言通り、顔面への吐瀉返し――!!


.

759 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:51:47 ID:pjhP36rI0




爪゚ー゚)「すっきりした所で話の続きだ」

( "ゞ)

 ゲロまみれの二人が平然と話を戻そうとしている。
 ドクオは風呂に入るべきだと言おうとしたが、自分までゲロを浴びせられる気がして何も言えなかった。


爪゚ー゚)「ドクオ。貴様はそこそこ強い、が、それは内藤とやらが与えたものなのだろう?」

( 'A`)「……根本を言えばそうだ。俺はあの男の製作物だからな」

爪゚ー゚)「ならばその時点であの男から逃げ切れんと理解しろ。
     貴様の行動は全て筒抜け。逃げても戦っても手の平の上だ。
     それに、ここに来たのも内藤が言ったからに違いあるまい?」

('A`)「いや、ここに行くと言い出したのは素直クールだが……そうなのか?」

 ドクオが一瞥すると、彼女は軽く頷いた。

川 ゚ -゚)「その通りだ。私も、もう次に頼るならここしかないと思っていたが」

爪゚ー゚)「まあつまりな、内藤が知りうる範疇のままでは話にならんという事だ。
     だから単純に強くする。デルタの次くらいにはしてみたいな」

(;'A`)

 無理だと反射的に言いたくなったが、
 それだと「だからこそ」と言われて逆に大変な事になりそうでドクオは何も言えなかった。
 この人達相手には変に口を挟まない方が安全だと、彼は薄々勘付いていた。

.

760 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:52:27 ID:pjhP36rI0

爪゚ー゚)「で、今度は素直クールだが、貴様はもう十分に強い。
     相手したオレが言うんだから自信を持っていいぞ」

川;゚ -゚)「……その時の事は、あまり覚えていないんだ」

爪゚ー゚)「仕方あるまい。あの時の貴様は己の能力に利用される外殻でしかなかった。
     貴様は確かに強い。が、それは貴様自身の強さとは別々のものだ」

爪゚ー゚)「貴様は己の能力を持て余している。制御しきれず、扱う事すら出来ていない。
     そこを手っ取り早く矯正するには、それはもう弱さを自覚し克服するしかない」

川 ゚ -゚)「……それは、ドクオと同じように特訓するだけでは駄目なのか?」

爪゚ー゚)「駄目だ。貴様は今、時速0kmとマッハ1しかないようなふざけた戦闘機同然だ。
     間を知って徐々に加速する事を覚えねば、明日にも自滅しかねん」


爪゚ー゚)「それに人工片鱗とやらの面倒もあるからな、弱さは克服してもらうぞ。
     聞いた話では、人工片鱗は人の悪意を際限ナシに増大させるらしいが……」

爪゚-゚)「……弱い人間の悪意は狂気に直結する。
     これでもオレは善良市民だ。若人一人、正してみせよう」

 真意はその一言。回りくどく、しかし的を外さず、じぃは目的を語った。
 とどのつまりは自制心の強化。じぃが素直クールに施す特訓は、ただそれだけだった。

.

761 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:53:07 ID:pjhP36rI0


爪゚ー゚)「まーそんなに気負うことでもない。
     貴様ら二人とも才能なんかまるで無いからな、オレも長い目で見ている」

(;'A`)「初日から俺達のやる気を削ぐな」

爪゚ー゚)「数年掛けてゆっくりやればよい。
     それまで最低限身の安全は約束してやる」

爪゚ー゚)「内藤とか顔付きとか、そういうのが来たら問答無用で追い返すから安心せい」


川;゚ -゚)「……そ、その時は、私も加勢する」

 固唾を飲んで言い切った素直クールを、ドクオは静かに否定する。

(;'A`)「素直クール、多分この人達なら大丈夫だ。普通にあいつらより強いぞ」

川;゚ -゚)「いや、でも」

(;'A`)「俺が保証する。一人でも十分だが、じぃ様とデルタが組んだら多分誰も勝てない」

爪゚ー゚)「あらゆる異能を物理で殴り尽くす主義だ」

( "ゞ)「おなじく」

(;'A`)「実際、お前の完全停止能力もじぃ様の物理に負けた。
    もう理屈抜きで思考停止していい。この人達は、死ぬほど強い」

川;゚ -゚)「え、えー……!?」





.

762 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:53:52 ID:pjhP36rI0

≪4≫




 ――話の途中、携帯電話が鳴り響いた。



('A`)

<_プー゚)フ



ミセ*゚ー゚)リ「……」



('A`)「……お前じゃねえの?」

ミセ*゚ー゚)リ「えっ? あっホント……」

 ミセリの着信音により、長々と続くエクストの話は間を挟む事となった。
 ミセリは携帯を持ってそそくさと部屋の隅に行き、そこで誰かしらと話し始めた。


('A`)「……色々嘘があったのは分かった。でもまあ、よく覚えてられんな」

<_プー゚)フ「知らねえだろうがな、俺は物覚えがいいんだ。
        忘れたくても忘れられない事が多い。お前の話もその一つだ」

('A`)「……これが『本当の事』なら、どうして俺は昔の事を覚えてないんだろうな」

<_プ-゚)フ「……それは……」

('A`)「……分かってる。続きを聞けばいいんだろ。大方、予想はついたけどさ」

.

763 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:54:33 ID:pjhP36rI0



ミセ*;゚ー゚)リ「えっと、ちょっと気持ち悪いんですけど……」



('A` )「……お前記憶喪失だろ? 相手にそれ説明したのか?」

 電話に戸惑っている声が聞こえてきて、ドクオは小声で助け舟を出してやった。
 するとミセリはそれだ! と言わんばかりのガッツポーズをドクオに見せ付けた。


ミセ*;゚ー゚)リ「あの、私って記憶喪失なんです。
       だから仲間とか言われても実感なくて、困ります!」

ミセ*;゚ー゚)リ「……え? 迎えに来るって、今ですか!?
       いや、あの、気持ち悪いです!」

<_;プー゚)フ「ミセリちゃんよ、キモイだけじゃ話が通じないと思うぜ」

ミセ*;゚ー゚)リ「だっていきなり仲間だ迎えに行くってオッサンに言われてるんですよ!?
       私って寛容ですけど、コレさすがに気持ち悪いです!」

(;'A`)「それ相手かなり傷付いてるぞ。とりあえず話聞いてやれって」

ミセ*;゚ー゚)リ「……は、はい? えっと居ますけど。
       保護者っていうか、助けてくれた人……」

 不安そうなミセリがドクオをチラ見する。

ミセ*;゚ー゚)リ「……かわってほしいそうです」

(;'A`)「……まあ、仕方ないか」

 ドクオは渋々携帯電話を受け取ると、耳に当てて応答した。


('A`)「……もしもし」


.

764 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:55:39 ID:pjhP36rI0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



『……もしもし』



(; ^ν^)「あーもしもし。悪いな、そんなの拾わせちまって」



( ><)「ミセリお姉ちゃん!」

( <●><●>)「いま電話中だから黙れ」


『気にしないでくれ。俺もこの子しか助けられなかった』

( ^ν^)「ん? ……ああ、アレ相手に一般人を巻き込んだのか。
      そいつは駄目だな……事後処理までさせて悪かった」

( ^ν^)「とにかく一度、そっちに行ってミセリの無事を確かめたい。
      場所を教えてくれないか? 瞬間移動するから準備したらすぐ行ける」



( ^ν^)「……レム、え? なっ――」

 ブツン、と唐突に通話が切れる。
 番外編的な方で登場した男・鵜入速人は、ぽかんとした表情で携帯電話を下ろした。

.

765 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:56:19 ID:pjhP36rI0



( ^ν^)「……切れちった。
      まあレムナントのどっかだろうし、そう焦ることもねえとは思う」

 振り返り、視線の先の男に告げる。
 その男――『顔付き』のリーダー格であるその男は、ゆっくりと腰を上げた。


「感知能力者が居ないのは、こういう時に不便だな」

 男は冗談らしく微笑み、周囲で指示を待つ仲間達に向けて言った。

「あそこに行くなら必ず荒巻が出てくる。
 少々早くなったが、戦闘はまず避けられんだろう」

「用意しろ。ミセリとミルナ、そして素直クールを奪還しに行く」

 男は片手をかざして大仰に指示を下す。
 しかしその言葉で動き出す者は一人も居らず、一同は言葉足らずの沈黙に呑み込まれた。


( ^ν^)「ネーノさん、用意できてねえのアンタだけだぞ」


「……」



「その名で呼ぶなら、この顔を付けてからにしろと言っているだろう」

 男は照れ隠しの為に白々しくそっぽを向き、自分の顔面を一撫でした。
 その行為を終えた直後、男の顔面には、先程とは別の顔が浮かび上がっていた。


.

766 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:57:14 ID:pjhP36rI0



( `ー´)「……今日は旧友にも会えるのだ。
      本人も、この顔の使用を許してくれる筈だろう」


 ――男は、何者でもなかった。

 ネーノという人物の姿形はあっても、それは彼自身本来のものではなかった。
 本来、自分がどういう姿だったのかは彼自身も覚えていない。

 男は、ネーノが作り出した最後の希望。
 この物語がtanasinnと決別する為に生み出された、一つの結論であった。


.

767 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 10:58:30 ID:pjhP36rI0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



『とにかく一度、そっちに行ってミセリの無事を確かめたい。
 場所を教えてくれないか? 瞬間移動するからすぐ行ける』


('A`)「分かった。えっと、レムナントの――――」


 その時、微弱な揺れがドクオ達の体を揺らした。
 揺れは数秒続いた後ピタリと止まったが、

(;'A`)「なんだ、地震――ッ!」

ミセ*;゚Д゚)リ「うわッ」

 次の瞬間、地面そのものが大爆発したような衝撃が彼らを襲撃した。
 予期しない、あり得ない規模の超衝撃。
 最早建物の倒壊は必然――この場で唯一まともに動けるドクオには、エクストとミセリを守る義務があった。


<_;プー゚)フ「おおおッ!?」

(;'A`)「口閉じてろ!」

 ふたたび微震が始まる最中、ドクオは冷静さを欠いたエクストとミセリを担いで外に飛び出した。
 その直後、町にあったオンボロ小屋の数々は、藁の家が壊れるような呆気なさで次々と倒壊し始めた。

.

768 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 11:00:35 ID:pjhP36rI0


ミセ*; ー )リ「い、痛い……ケツを打った……」

 荒野に放り出されたミセリは既に周囲を気に掛けている場合ではなかった。
 彼女はケツを抑えて地面に倒れ、もうそれどころではなかった。


<_;プー゚)フ「おい、また揺れてるぞ!! 次あんじゃねえのか!?」

(;'A`)「衝撃の出所は覚えたから下がれ!!
    これは地震じゃあない! 俺がなんとかする!!」

 ドクオは二人を庇うように前へ。
 左拳を地面に向かって構え、ドクオは複雑な笑顔を浮かべた。


(;'A`)(クマさん……。何しに来て、何やってんだよ……ッ!!)

 微震が静止し、再びあの巨大な衝撃に身構える三人。
 ドクオは超能力を発動し――光も無しに超能力を発動し、



(# A゚)「“撃動”のォ……――――」

 次なる衝撃を相殺させるべく、撃動の拳を大地に突き出した。


.

769 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 11:01:36 ID:pjhP36rI0



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




( (エ) )「……」


( ゚д゚ )「……」

 荒野に、まるで隕石でも落ちたかのような巨大陥没が出来上がっていた。
 その中心には男が二人。クマーとミルナの戦いは、クマーの一撃のもとに終結していた。


( ゚д゚ )「……無様なもんだろう」


( д )「こんなに弱いのに……おれはまだ、それでも、生きてやがる――――」

 ふら、と風に吹かれて倒れ込む。
 ミルナは意識を喪失し、そして動かなくなった。



( (エ) )「……か」



(;・(エ)・)「――勝った! やった! あああああああああ!!」

 その傍らで諸手を上げて喜ぶ熊マスク。
 既にミルナなど眼中にない。クマーはもう早く帰って寝たかった。

.

770 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 11:02:59 ID:pjhP36rI0


( "ゞ)「おーおーやるやる。さすが。
    つっても武神のお膝元に住んでんだ、こんぐれえ出来て貰わねえとな」

( `ハ´)「……助力したとはいえ、そちらの弟子も中々よの」

 陥没の中に降りてきた二人は、クマーにそこそこの賞賛を浴びせた。
 上記以外にまったく本当に何の賞賛もなかったので、クマーはかなり物足りなかった。

(;・(エ)・)「あーしんどい。あーしんど」チラチラ



( `ハ´)「……こやつの止め、私が貰っても構わんか?」

 シナーは地面のミルナに槍の穂先を向け、今すぐ殺さんと槍に力を込めた。
 しかしそこはデルタが止めに入った。
 順序は入れ替えたが、デルタは荒巻の言いつけを守るつもりでいたのだ。


( "ゞ)「待ってくれ。こいつを殺すなら許可がいるんだよ。
    そいつもウチの弟子でな、すぐ近くに居るんだ」

( `ハ´)「……構わん、待とう。この程度の男、いつでも殺せる」

 槍を引き、シナーは踵を返す。
 デルタは気絶したミルナを担ぎ上げると、満身創痍のクマーに一応声を掛けた。

( "ゞ)「お前は来るか? ドクオのとこ」

(;・(エ)・)「あー……疲れたので後で行きます。あとで」

(;・(エ)・)(早めに行くと五万返せって言われそうですし……)


( "ゞ)「あっそ。んじゃあ先に行ってるぜ」

 こうしてミルナを容易く半殺しにした武人一同は、ミルナを連れてドクオの元へと走り出した。

.

771 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 11:03:39 ID:pjhP36rI0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 ところ変わってメシウマ、ステーション・タワー。
 来客用の部屋でデミタスと今後の打ち合わせをしていた荒巻は、突然現れた敵意に戦慄を覚えた。


(´・_ゝ・`)「……どうした爺さん。急死するのか」

/ ,' 3 「……ちょっくら出掛けてくる。お前はカンパニー全員集めて迎撃しろ」

(´・_ゝ・`)「は?」

 事実はシンプルに。
 荒巻は今起こり始めた緊急事態を一言でデミタスに告げた。

/ ,' 3 「顔付きの連中が雁首揃えて来るぞ。数分後にな」

(;´・_ゝ・`)「――ハァ!?」

/ ,' 3 「ワシは素直クールを連れてレムナントに引っ込む。
    殺し合いにはならんだろうが死ぬ気で戦ってほしい。では失礼」

 パシュ、と呆気なく瞬間移動で姿を消した荒巻スカルチノフ。
 訳も分からず取り残されたデミタスは、とりあえず


(´・_ゝ・`)



(´・_ゝ・`)「……ま、書類片付けてからでいっか」

 緊急事態を後回しにした。

.

772 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 11:05:39 ID:pjhP36rI0
16〜24話 >>439
プロローグ Another Heaven >>454-467
第二十五話 老兵集う >>473-495
第二十六話 面汚しの夜 その3 >>504-596
第二十七話 悪性萌芽 その1 >>609-673
第二十八話 悪性萌芽 その2 >>704-726

第二十九話 悪性萌芽 その3  >>733-771


次回が折り返し地点です そうなる予定です
なのですが、30話を投下後、しばらく逃亡します('A`)
10話分は書き溜めてから投下再開したいので、正直一年は逃亡すると思います('A`)

もうほんと何年もかけてすまんね┗(^ω^)┛パワーオブスマイル
長さと面白さを比例させる為に笑顔で頑張ります┗(^ω^)┛パワーオブスマイル

次回は来月末くらいです
かなり長い回なるので、4月になるかもしれません('A`)スマヌ

773 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 11:09:38 ID:JE/22mCg0
待ってたぞ!!!!!

もう待つの慣れてるから
これからも頑張ってくれ

774 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 13:11:36 ID:fxLjFyjY0
なにわろとんねん
乙待ってる

775 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 17:39:42 ID:XVC0cLWQ0
何年でも待つ

776 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 18:10:36 ID:nmi8kbAw0
私待つわ

777 名も無きAAのようです :2016/02/05(金) 23:51:40 ID:lnxnDbPg0
武神連中が思ったよりチートだった

778 名も無きAAのようです :2016/02/06(土) 12:33:13 ID:zEVfclx60
いやっふぅ!乙

779 名も無きAAのようです :2016/02/06(土) 12:54:00 ID:r71lZTzQ0
ネーノって誰かと思ったら刹那の時にいたなそういや

780 名も無きAAのようです :2016/02/07(日) 21:55:23 ID:9itGVS.U0
おつおつ
待ってる

781 ◆gFPbblEHlQ :2016/02/29(月) 05:09:11 ID:xt9MKsH20
(^ω^)今夜投下します('A`)
30話で逃亡予定でしたが、32話くらいになるかも('A`)
とにかく区切りの良いとこまで投下して逃亡するNE(^ω^)

782 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 05:17:15 ID:hE/1lbnI0
待ってるぜ

783 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:00:32 ID:xt9MKsH20

≪1≫


 ――ステーション・タワー内、社員食堂。


(`・ω・´)「なんにする」

ξ゚⊿゚)ξ「あー……」

(`・ω・´)「……」


ξ゚⊿゚)ξ「……あー……」

(;`-ω-´)「……決めてから来い」

 カウンターに用意されたメニューをアホ面で眺めているツン。
 注文を聞くため身構えているシャキンは、彼女に悟られないよう溜め息を吐いた。

ξ゚⊿゚)ξ「……よし」

(`・ω・´)「決まったか」

ξ゚⊿゚)ξ「餃子とラーメン唐揚げ。あと水」

(`・ω・´)「……水は自分で取って来い。あと今は昼だが?」

ξ゚⊿゚)ξ「……それが?」

(`・ω・´)



 シャキンは一瞬の間を置いた後、

(`・ω・´)「オッケー分かった死ぬほど盛ってやる。3番呼んだら来い」

 と言い残して厨房に入った。

.

784 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:02:37 ID:xt9MKsH20


 昼間の社員食堂はそこそこの繁盛振りを見せていた。
 席も殆どが埋まっており、全方位から無意味な雑談が聞こえてくる。

ξ゚⊿゚)ξ「……」

 そんな混雑の中、ツンは三席用意されたテーブルに一人で座っていた。
 誰かの為に席を確保している訳でもないが、彼女の辛辣な雰囲気が人気を払っていた。
 つまりぼっちだった。

  _
( ゚∀゚)「お〜居た居た」

 その時、ぼっち飯敢行直前だったツンの前に、太眉の男・ジョルジュ長岡が現れた。
 彼はさっさと椅子にかけ、持ってきた日替わり定食に向かって手を合わせた。
  _
( -∀-)「いただきます」

ξ゚⊿゚)ξ「……他所で食べなさいよ」
  _
( ゚∀゚)「いいだろ別に。お前んとこ、いっつも空いてるんだしさ」

.

785 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:03:18 ID:xt9MKsH20
  _
( ゚∀゚)「それよりツン、昼飯は何にしたんだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「餃子とラーメンと唐揚げ。一口もあげないわよ」
  _
(; ゚∀゚)「……俺が言う事じゃねえけどさ、お前健康とか考えたらどうだ?」

ξ゚⊿゚)ξ「食べたい物を食べる主義よ。太った所で高が知れてるし」
  _
(; ゚∀゚)「あーそう。お嬢様は言う事がちげーな。
     普通、太るのは嫌がるもんだぜ」

ξ゚⊿゚)ξ「私は太る前に運動するから大丈夫なの。
      太ってから痩せようとするのがそもそも手遅れなのよ」
  _
( ゚∀゚)「まぁ分からんでもない。だがこの話は打ち切りだ。
     耳に激痛走ってる女子が周囲に居るのが分かる。自粛だ」

ξ-⊿-)ξ「話題に乗っただけよ。知ったこっちゃないっての」

 ツンはテーブルに肘をつき、壁際にずらっと立ち並ぶ店舗を右から左へと一望していった。
 フードコートめいたこの食堂は時折店が入れ替わる。
 こうして店の様子を見直すと、新たな発見があったりするのである。

.

786 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:04:01 ID:xt9MKsH20


ξ゚⊿゚)ξ「……あれ。アイスの店、消えてない……?」
  _
( ゚∀゚)「あの店か? こないだ撤退したぜ。
     今はカキ氷屋が入ってる。けっこう美味いぞ」

ξ;゚⊿゚)ξ「……要望書を書かなきゃ……」
  _
( ゚∀゚)「お前の要望の為に消えた店がいくつあると思ってんだ。
     今年はカキ氷の年なんだよ。諦めろ」

ξ;゚⊿゚)ξ「カキ氷じゃチョコとオレンジのダブルが出来ない……」


『シャキン食堂、番号札3番のお客様ー。出来たぞー』

 半端な呼び出しが食堂に響く。
 ツンは立ち上がり、シャキンが作った料理のもとへと早歩きで向かった。

(`・ω・´)「おう。たっぷり盛ってやったぞ。こぼすなよ」

ξ゚⊿゚)ξ「……ありがとう。出来れば席まで持ってきてほしいけど」

(`・ω・´)「俺の仕事は作るとこまでだ」

ξ゚⊿゚)ξ「頑固な料理人って感じ。お似合い」

(`・ω・´)「味以外を褒められてもな。ほら、冷めない内に食ってこい」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、それじゃ」

.

787 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:04:41 ID:xt9MKsH20



  _
(; ゚∀゚)「……うっわ」

 戻ってきたツンを見るなり、ジョルジュはドン引きして仰け反った。
 彼女が持ってきた餃子ラーメン唐揚げセットの総量は、一般女性一回の食事量を明らかにオーバーしている。

 だが当の本人は平静のまま、悪びれずに箸を構えていた。
  _
(; ゚∀゚)「毎回思ってんだけどさ、それマジで食べんの?」

ξ゚⊿゚)ξ「……そんなに多くないと思うけど」
  _
(; ゚∀゚)「いや、量もカロリーもヤバイ。
     正気を疑うぜ。毎回食べきるんだから尚更な」

ξ゚⊿゚)ξ「アンタに人を疑う程の知能ないでしょ。もう食べるから黙って」
  _
(; ゚∀゚)「……いただきます」

ξ-⊿-)ξ「いただきます」


 ――無言の昼食が始まろう、としたその途端。
 尋常ではない大きさのノイズが食堂スピーカーを響かせ、次いで誰かの荒々しい息遣いが聞こえてきた。

  _
( ゚∀゚)「なんだイタズラかぁ? 後が怖いのによくやるぜ」モグモグ

ξ゚⊿゚)ξ「……多分、違う」

 スピーカーの音声を冷静に分析するツン。
 彼女の予想は、次の一言に全肯定された。


.

788 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:05:21 ID:xt9MKsH20




『――――タワー内、全職員に通達する……ッ!』

 それは盛岡デミタスの声。
 瞬間、この放送を聞いている全員が目の色を変えた。


『端的に言う……“敵”が来た! 複数だ! 瞬間移動能力者も確認済!』

『緊急事態宣言を出して適宜対応しろ! 自信がある奴は迎撃に迎え!』

『街の防御はカンパニーが請け負った! 以上、働け!!』

  _
( ゚∀゚)「……ハハッ。なんか映画みたいだなぁ」パクモグ

ξ;゚⊿゚)ξ「バカ、マジの出来事よ! 訓練じゃないんだから早く行くわよ!」
  _
( ゚∀゚)
  _
(; ゚∀゚)「えぇぇええ!? 俺まだメシ食い終わってないんだがー!?」


ξ;゚⊿゚)ξ「……じゃあいいわよ。先に行ってるから。後で合流したらヨロシク!」

 だらけた昼食ムードは一変。
 弾けるような足音に満たされた食堂は、瞬く間に人気を失っていった。

.

789 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:06:11 ID:xt9MKsH20






  _
( ゚∀゚)






.

790 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:06:53 ID:xt9MKsH20






  _
( ゚∀゚) パクー モグー






.

791 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:07:33 ID:xt9MKsH20


  _
( ゚∀゚)「……あー美味い!! たまらんな!」

 あっという間にぽつんと取り残されたジョルジュ長岡。
 しかしそれでも食は進み続け、

  _
( ゚∀゚)(今ならツンの食べてもバレないんじゃね?)

 という奇跡の発想にまで到達していた。
 したらば即実行。ジョルジュはツンが注文したラーメンをずるりと平らげ、餃子唐揚げコンビにまで箸を伸ばす――




 「――こんなトコに一人ッきり。狙えと言わんばかりだなあ、長岡ァ!!」


 だが、自分に怒声を向けられたとあっては、ジョルジュ長岡はその手を止めざるを得なかった。
 ジョルジュはピタリと箸を止め、目だけで声の方を確認した。

  _
(# ゚∀゚)「……なんだァ? てめェ……」



 「…………アア? おい、俺だぞ…………!?」


  _
(# ゚∀゚)「……知らねェよ。誰だよお前、誰だよ!!」

.

792 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:08:13 ID:xt9MKsH20


(; ゚∀゚ )「――このッ!!」

 男は驚愕のあまりに身を震わせ、言葉の続きを恐る恐る呟く。


(; ゚∀゚ )「この永遠のライバル、アヒャ様を……っ!!」
  _
(# ゚∀゚)「知らねェって言ってんだろ!!」

(;  ∀ )「地下プロレスチャンプだったこの俺様を……ッ!!」
  _
(# ゚∀゚)「だから知らねェってば!!」




(# ゚∀゚ )「――忘れやがったなァァァァァァァ!!」
  _
(# ゚∀゚)「アァァァァアァァァァァァ!?」


 戦闘、よく分からないまま開幕――――!!

.

793 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:09:09 ID:xt9MKsH20
      _
 ≪ ( ゚∀゚) / ジャガーノート ≫ 

【能力者】 ジョルジュ長岡

【タイプ】 近距離/身体強化型


【基礎能力】 

[破壊力:B] [スピード:D] [射程距離:D]

[持続力:C] [成長性:D]

A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み    E=よわい     F=論外     S=最強


【能力概要】
シンプルな身体強化。とても力持ちになれるので、とてもスゴイ。

794 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:09:53 ID:xt9MKsH20


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 ――ステーション・タワー、最上階。展望フロア。

 既に戦闘を始めていたデミタスは、相手の一挙手一投足を見逃さんと目を凝らしていた。

 戦況はやや有利。攻撃権はデミタスが独占していた。
 しかし、デミタスはいまいち相手を仕留めきれずにいた。
 語るにも及ばない、分かりきった陳腐な理由一つで。



( ^ν^)「……なんだ、やりにくいか?」

(;´・_ゝ・`)「……まあな。よく似た奴を知ってると、どうにも」

( ^ν^)「……なるほど」

 ニューはデミタスを手招き、宣言する。

( ^ν^)「念願叶って敵同士だぜ。来いよ、出来を見てやる」

(;´・_ゝ・`)(……あの頃よりイキイキしてやがるのが、ムカつく……!)


.

795 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:10:52 ID:xt9MKsH20

 ≪ (´・_ゝ・`) / 毒の姫君(ポイズン・メイデン) ≫ 

【能力者】 盛岡デミタス

【タイプ】 中距離/具現化・自立型


【基礎能力】 

[破壊力:C] [スピード:D] [射程距離:C]

[持続力:A] [成長性:D]

A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み    E=よわい     F=論外     S=最強


【能力概要】
毒の能力。獰猛なスタンド。女体。
デミタスは小さい頃からこの能力を制御出来ておらず、今も出来ていない。

この能力は本体の意思に関わらず、本体の体内で無限に新種の毒を生成し続けている。
しかし新毒の抗体は自動生成されないため、それを放置しているとデミタスは自滅する。
抗体はデミタス自身の『毒に抗う意思』にのみ反応して作成され始める。
よって、能力自体の成長性に本体の意思がついていけなくなった時、本体には確実な死が待っている。
『強くなり続けなければ死ぬ』という非常に危険な能力だが、克服した毒はその後自由に取り扱える。

796 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:11:35 ID:xt9MKsH20


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 あの放送から十分と経たない内に、タワー周辺には理路整然と並んだ武装車両の数々が出揃っていた。
 能力者、無能に関わらず、カンパニーという枠組みの人間は次々とその車両に乗り込んでいく。
 メシウマ住民への避難警報は後回し。まず街中の様子を確認しない事には『上』を動かすことは出来ない。

 街全体に及びかねない戦闘行為、あるいは脅威、あるいは人物。
 それらを一秒でも早く発見する事が、カンパニーにとって第一の仕事だった。


 ツンが乗り込んだ車両には、見知った相手が二人乗っていた。

( ´∀`)

*(‘‘)*

 モナーとヘリカル沢近の二人だった。彼らはツンを見るや、愛想よく手を振って見せた。
 ツンは一瞥でそれに答えると、すぐさま運転席の男に出発の合図を出した。
 運転手は車のあれやこれやガチャガチャし、別部隊を置いて街中を走り始める。

「ったく、部隊長は俺だっての……」

 部隊長の小言を聞き流し、ツンは振り返って部隊メンバーを見直した。
 先の二人以外には超能力保有者が三人。後方支援役の無能力者が一人。
 ツンと部隊長を含めた八人が、この部隊の編成であった。

.

797 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:12:16 ID:xt9MKsH20


ξ゚⊿゚)ξ「誰か、状況分かる人居る?」

 誰でもいいから答えて、と付け加えて全員の顔色を窺うツン。
 案の定、彼女の問い掛けに答えられる者は一人も居ない。

*(‘‘)*「デミタスさんが展望フロアで戦闘中なのは確認されてます。
     敵は複数との事ですが、他の戦闘は今のところ確認されていません」

ξ゚⊿゚)ξ「特課の流石兄者はズバ抜けた感知能力者でしょ?
      そっちの情報はないわけ?」

( ´∀`)「残念。兄者はさっきの放送の少し前、一人で飛び出していったモナ。
      連絡はつかず。今は別の感知能力者が事に当たっているモナ」

ξ゚⊿゚)ξ「そう。期待してたけど居ないなら算段から外すわ。
       となれば、やっぱり大名行列を作って探すしかないか……」

 ツンは腕を組み、深慮するためようやく座席に腰掛けた。


ξ゚⊿゚)ξ(敵は先日荒巻が話していた『もう一人』の集団に違いない。その目的はミルナ。
      そしてミルナは壁の向こう。
      私達の警戒網を突破しない限り、敵は目的を果たせない――いや、違う?)


ξ-⊿-)ξ(敵には瞬間移動の能力者が居る。ならわざわざこの街に一度降りる必要はなかった。
       壁の向こうにはない目的が、この街にある?)

.

798 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:12:56 ID:xt9MKsH20

ξ゚⊿゚)ξ「……ヘリカルちゃん。
      街の重要施設、言えるだけ全部言ってくれる?」

*(‘‘)*「え、既に別の部隊が向かっていると思いますけど……」

ξ゚⊿゚)ξ「個人的に優先順位を決めたいの。お願い」

*(‘‘)*「……分かりました。では、ステーション・タワー」

 違う。

*(‘‘)*「メシウマ議事堂。あとその近くの記念公園」

 違う。

*(‘‘)*「国立図書館。一部の秘匿文書が保管されてます」

 ……引っ掛かるが、違う。

*(‘‘)*「庁舎、特課の研究施設。刑務所や、総合病院……」

*(‘‘)*「お金を狙うなら大手銀行だし……今狙われそうな重要施設ってまだありましたっけ?」

( ´∀`)「……多分そこら辺は全部狙われてないモナ。
      狙われてたら先に施設の警報が作動してるし、もう手遅れモナ」

*(‘‘)*「じゃあ敵の狙いって何なんでしょう? 陽動は、まあ目的の一部でしょうけど……」


.

799 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:13:36 ID:xt9MKsH20


ξ゚⊿゚)ξ「……とりあえず街の見回りね。
      一般人には適当に殺人犯ガーとか言っておきましょう」

*(;‘‘)*「それはそれで問題あるかと……」

「――通信だ! 音上げるぞ!」

 途端、部隊長が声を張り上げた。
 彼の一喝に閉口した面々は、その通信に耳を傾ける。


『現在タワー内にてデミタスさん、ジョルジュさんが交戦中!』

『ほか数箇所にて敵性勢力を確認! 各隊、一般人の避難・護衛を優先との命令!』

『敵はほぼ全員、戦略級以上の超能力を保持! よって“特記超能力保持者”の戦闘が予想されます!』

『その他能力保持者は戦闘の二次被害を想定し、対応できる範囲で被害を食い止めて下さい!』

.

800 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:14:38 ID:xt9MKsH20


*(;‘‘)*「……せ、戦略級って、核兵器に使う言葉じゃ……」

 その通信を聞いたヘリカルが、恐れ戦くように小さく呟いた。

ξ゚⊿゚)ξ「……私も実際聞いたのは初めてかも。
      なんにせよ、これで状況は前進したわ」

ξ゚ー゚)ξ「私達は、死なない程度に頑張りましょう」

 さっきのお返しか、ツンはヘリカルに笑顔を送る。
 もっともその内心は既に臨戦態勢。この笑顔は、最後の余裕で作った紛い物だった。

( ´∀`)「……」

ξ゚⊿゚)ξ(……『特記超能力保持者』 なんて、わざわざ長い方で呼ばなくてもいいじゃない)

ξ゚⊿゚)ξ(荒巻さん、デミタスさん、モナーさん、1さん。
       この四人で対処できなくても、今は武神までこの街に居る)

ξ゚⊿゚)ξ(磐石と言えば磐石だけど、でもまだ引っ掛かる。
       敵の狙いが読みきれない内は、敵の思惑に乗っておくべき?)

ξ゚⊿゚)ξ(回復役の私に出来ることは一つ。展開を読んで適切なタイミングで回復を行うことだけ。
       早々にリタイアする訳にはいかないし、モナーさんについていくのは早計かしら……)

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801 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:15:40 ID:xt9MKsH20



( ´∀`)「……部隊長、一番強いであろう敵の所に向かって欲しいモナ」

 モナーの優しい声が、冷ややかに激戦を要求する。
 彼はさっさと最大戦力を倒し、この局面を片付けるつもりでいた。

 部隊長はモナーの頼みを聞き入れ、すぐさま司令室から敵の居場所を聞き出す。

「このまま真っ直ぐだ! 敵は二人!
 ガキらしいが、先行した連中はもう潰されてるってよ!」


( ´∀`)「……だったら、まずは『三人』で様子を見るモナ……」

 モナーはカンパニー制服の襟に手を入れ、そこに仕込まれたスイッチをカチンと押し込んだ。
 すると制服は仄かな光を発し始め、その光は微塵も残さずモナーの超能力として再構成されていった。


*(;‘‘)*「……モナーさん……」

( ´∀`)「大丈夫、僕の【挑戦者(チャレンジャー)】は負けないモナ」


.

802 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:16:33 ID:xt9MKsH20

 ≪ ( ´∀`) / 挑戦者(チャレンジャー) ≫

【能力者】 モナー

【タイプ】 中距離/具現・自立郡体型


【基本能力】 

[破壊力:D〜S] [スピード:E〜S] [射程距離:C〜S]

[持続力:E〜S] [成長性:S]

A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い 
D=人並み    E=よわい     F=論外     S=最強レベル

【能力概要】
小人戦士(全長15センチくらい)を具現化する能力。最大10人まで具現化可能。発動・具現化の対価は『記憶』
個々が自立して思考しており、戦闘は具現化した彼らが勝手に行う。モナーがやるのは具現化だけ。
一人二人が倒されたところで本体にダメージはないが、倒された場合は対価とした『記憶』を失う。

挑戦者達は学習能力が非常に高く、戦い続けることで理論上無限に強くなっていく。
しかも全員がモナーを介して戦闘経験を並列化しているので、一人を倒しても更に強くなった他の挑戦者を倒さなければならない。


攻略法その1。対価の『記憶』が限界を迎えるのを待つこと。
挑戦者達を倒し続け、人間として必要な『記憶』まで対価にせざるをえない状況にモナーを追い詰める。
もっとも、『戦闘経験』という『記憶』が発動中にも積み重ねられているため、『戦闘経験』を対価にしている間は絶対に倒せない。
しかも『戦闘経験』を失ったところでその経験は並列化によって補完されるため、実質対価ナシ

攻略法その2。モナーを含めた全員を一撃で倒しきる。
これが一番手っ取り早いだがそうそうできない。荒巻はこの方法で倒した。

攻略法その3。落とし穴などの戦闘を回避するトラップ
具現化されたチャレンジャーをその都度なにかに閉じ込める。これで10人を捕まえきれば勝てる。
チャレンジャーは挑戦者自体がダメージで再起不能になるか、能力者自身が敗北を認めない限り消えない。
(一度敗北を認めてから再度能力を発動するのは常套手段)

など(予防線)

格下〜同格の相手には圧倒的に勝てるが、圧倒的に自分より強い相手には歯が立たない(初期状態の挑戦者全員を一撃で倒すような相手)
だが、ずっと能力を具現化したまま経験値をため続ければ自分より強い相手にも互角はとれるのでほぼ最強。
一度発動を止めると経験値はリセット。挑戦者達は記憶を失い、初期状態に戻る。
なおデミタスと組むと無限に強くなれる。

803 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:17:13 ID:xt9MKsH20


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 メシウマ郊外にどんと構えた三棟からなる巨大な研究施設。
 それが世間一般に知られる“総合技術研究所”の本部なのだが、その中身が一般に公開された事は一度もない。

 実は能力者が中に一人居て、そいつが施設全体をたった一人で防衛してる。
 最深部には、世界を震撼させるほどの研究資料が眠ってる。

 そうした枝葉をつけた噂は多々あるが、そもそも施設丸ごと囮という答えにまで世間は気付かない。
 総技研の真の本部は、都市部のビル群に平然と紛れこんでいるのだ。



 ……ならば、ここまで巨大に作られた囮の施設は何の為にあるのか。
 囮として作るには余りにも規模が大きすぎる。ただの箱に、荒巻はここまでの手間をかけるだろうか。


( ´_ゝ`)(恐らく、逆だ)

 流石兄者は前々からそうした疑問を抱え、同時にこの施設に対する推測も立てていた。
 表向き――つまり関係者の中では、こっちの巨大施設の方が囮で、総技研の方が本命とされていた。
 しかし荒巻にとっては逆だったのだ。総技研が囮で、こっちが本命。

 もし荒巻という男に関係者にすら隠さねばならない秘密があったなら、
 その隠し場所はここ以外に候補がない――この推測が正しければ、敵は確実にここを狙いに来る。
 街の陽動が良い証拠だ。流石兄者は確信し、既に巨大施設の中に足を踏み入れていた。


.

804 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:17:53 ID:xt9MKsH20

( ´_ゝ`)(……居るんだろ)

 通路に足音が響く。
 研究施設らしい潔癖な雰囲気はあるものの、この空間に人の気配は皆無。
 ここに何があるのかは知らない。敵の目的すら分からない。

 だが、流石兄者はどうしてもここに来なければならなかった。
 彼の超能力 【リスキーシフト】 があの男を捉えた瞬間、彼は特課としての自分を放棄して動き出していた。

 通路の天井の隅。そこからジィとこちらを見つめているのは、小さな監視カメラだった。
 流石兄者はそれに気付くと、カメラに銃口を向けて呟く。

( ´_ゝ`)「決着をつけに来たぜ、兄弟」

805 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:18:40 ID:xt9MKsH20



 一瞬の火花。それを最後に、監視カメラの映像は砂嵐にまみれた。
 モニター越しに流石兄者の姿を覗き見ていた男は、椅子にもたれて深く呼吸する。


(´<_` )「……さて」

 やがて男は拳銃を持ってその部屋を後にした。
 憎悪に染まった血の繋がりを、己が手で断ち切る為に。

.

806 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:19:21 ID:xt9MKsH20

 ≪ ( ´_ゝ`) / リスキーシフト ≫

【本体名】 流石兄者

【タイプ】 近〜遠距離 / 具現化型


【基本能力】

[破壊力:-] [スピード:-] [射程距離:E〜S]

[持続力:A] [精密動作性:S〜E] [成長性:E]

A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み    E=よわい     F=論外     S=最強

【能力】
発動するとシャボン玉のような球体が出現する。
それがリスキーシフトの本体であり、能力の全て。

この球体はある程度まで拡大する事が可能で、兄者は球体の内側に入った存在の 『思考』 と 『位置』 を知覚する事ができる。
ただし思考・位置は完全に読める訳ではなく、知覚範囲の拡大に従って情報は曖昧になる。
索敵能力として飛び抜けて優秀であり、この能力は周囲から感覚網と呼ばれている

807 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:20:01 ID:xt9MKsH20


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 ――レムナント。ドクオの故郷跡地。


 ドクオにとって、最強という言葉を文字通りの意味で使える人物はただ一人。
 数多の超能力者を含めてもなお、デルタ関ヶ原は変わらず最強の座にどんと腰を下ろしているだろう。



( "ゞ)「おう、なんか話してたか?」


(;'A`)「……デルタさん?」

 その男が今、数年振りにドクオの前に立っていた。
 半生半死のミルナを肩に担ぎ、デルタは意地悪い笑顔を浮かべている。


( "ゞ)「まあいい。そっちの話が終わったら俺の番だからな」

 デルタはミルナを地面に置き、その隣に腰を下ろす。
 彼の視線はドクオ達を捉えて放さず、無言の圧力を掛けてくる。


.

808 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:20:45 ID:xt9MKsH20


(;'A`)「……待ってくれ。そいつ、どこで……」

( "ゞ)「……なんだよ。素直に順番待ちしようと思ったんだが、先にしてくれんのか」

 ドクオとデルタはミルナに目を向け、しばし、沈黙を挟んだ。


 短いながらも共に過ごし、そして同じ超能力を持ったドクオとミルナ。
 そのミルナは何かを切欠にドクオから離れ、多くの人間を殺戮した。

 荒巻は言っていた。ミルナは孤立を選んだと。
 だが、ドクオは未だにそれを本人の口から聞いていない。
 ミルナを多くの人間の敵にしてしまうには、今はまだ余りにも言葉が足りなさすぎるとドクオは思っていた。

 一人の友人として、最大限ミルナの味方であろうと思っていた。
 だから荒巻にも一日だけ貰い、結論を先延ばしにして何をすべきか考えるつもりだった。

 しかし、ドクオのそんな考えはデルタ関ヶ原には無関係。
 この状況がまさにそれだ。一日の猶予があった筈が、ミルナは半日足らずで討伐されている。



 最早、怒りとかそういうものを通り越した


(;'A`)「は?」

 という困惑の言葉しか出てこなかった。


.

809 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:21:32 ID:xt9MKsH20


( "ゞ)「他の連中と一緒にこっちに来てな、荒巻の頼みでコレを殺しに来た」

(;'A`)「殺しに、って……」

( "ゞ)「ああ、もちろん聞いてるぜ。お前の知り合いなんだろ?
    だから殺し切る前にお前の許可を貰いに来た。ついでに会いたかったしな」

(;'A`)「……」

(; A )

 浮かび上がった言葉は一つ。
 それを言う為、ドクオは心を深く閉ざした。

 言えば恐らく回避不能の戦闘が始まる。
 デルタ関ヶ原は確実に俺を屈服させようとする。
 ドクオがそれに立ち向かうには、デルタに対しての恐怖・諦念を捨て去る必要があった。

 ドクオの心身に冷たい空気が流れ込む。
 冷えきった心は、反抗の言葉を口走った。


('A`)「……駄目だ」

.

810 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:22:39 ID:xt9MKsH20


( "ゞ)「……いま、なんつった」

 ドクオの断言はデルタにとって不意打ちだった。
 反対される予想はあったが、ドクオがそれを言う事はありえないとデルタは高を括っていた。
 少なくとも昔のままのドクオであれば決して反対などしなかった。素直クールの命にだけ拘っていたドクオなら。

('A`)「駄目だって言った。そいつは俺の、……」

 しかし、そこで言い淀むドクオ。続く言葉が思いつかない。


( "ゞ)「……なるほど。思ったよりタフに育ったか。
    付け焼刃にしては良いトコまでいったらしい……。なるほどな……」

 よっこらせ、と呟きながら立ち直るデルタ関ヶ原。
 彼は含みのある笑みを浮かべたまま、ドクオに近づいた。

 両者の間隔が拳の射程内に収まる。
 ドクオはデルタの顔を見上げ、デルタは期待を込めた眼差しでドクオを見下ろす。


( "ゞ)「意見が違えば問答無用だ。
    それを承知で俺に『駄目だ』と言ったな、ドクオ」

('A`)「……」


<_;プー゚)フ「――おい、ドクオ!!」

 決裂した二人の間にエクストの叫びが割り込む。
 彼は地べたに這ったままドクオに向かって言った。

<_;プー゚)フ「そいつデルタ関ヶ原だぞ!? 分かってんのか!?」

.

811 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:23:19 ID:xt9MKsH20


('A`)「……俺の話はまた後で頼む。
    それより先に、こっちを片付ける」

<_;プー゚)フ「逆だバカ! 片付けられるのはお前だぞ!」

( 'A`)「……黙ってろ。邪魔だ」

 最後の制止を振り払い、ドクオは目の前の男に集中する。
 勝てる見込みはなかった。当人にもその理解はある。
 ならなぜ戦うのか――強いて言うなら、それは発散だった。

('A`)

 目覚めてからずっと内心で燻っていた感覚。
 無数に枝葉をつけた言葉の数々。心身に結びついた思考の楔。
 ドクオという存在が出来上がってから今まで積み重ねてきた葛藤、苦悩――そういう邪魔なもの。

 もしそれを全力でぶつけられる相手が居るとすれば、それは今、デルタ関ヶ原しか居ない。


.

812 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:24:19 ID:xt9MKsH20


( "ゞ)「俺の性分を覚えててくれて嬉しいぜ。
    俺は話し合いなんかには応じない。道理も理屈も見ず知らずだ」

( "ゞ)「……まあ、アレだ……いかんな。いざ“殺す”となると、語彙が狭まる……」


( "ゞ)「お前には分かるだろ? 死って奴を考えると、途端に言葉が薄くなる感じ」

('A`)「分からない。俺は逆だから」

( "ゞ)「だろ? だからよ、もうここまでだ。この先は殺し合いだ。
     お互い、無理して真面目ぶるのはやめようぜ」

('A`)「でも帰ってくれるなら戦わない。俺自身、今の俺がどんなもんか分かってねえんだ」

( "ゞ)「なんか懐かしいな。お前とこうして喋るのは。
     あの頃は何回くらい半殺しにしたっけな。もう覚えてねえわ」

('A`)「無駄にやりあってお互い致命傷じゃ意味無いだろ。
    だから余裕のある方が下がるべきだと思うんだが」

( "ゞ)「そうだ、後でクマーの奴にも会ってやれよ。
     あいつもあいつで相変わらずだけどな」


('A`)

( "ゞ)


<_;プー゚)フ(……こ、こいつら……)

.

813 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:26:13 ID:xt9MKsH20


(# "ゞ)「てめえは昔っからッ――人の話をッッ!」

(#'A`)「――そりゃあアンタも同じだッ!」

 怒号と同時に飛び退いて距離を取ったドクオとデルタ。
 そして次の瞬間には戦闘準備に入り、両者は即座に拳を構えて大地を蹴った。

<_;プー゚)フ(お互いまるで、人の話を聞いてねえ!!)

ミセ;*゚ー゚)リ「あーケツ痛い……え、なんか始まってます?」



(# "ゞ)「腹ァ括れよ馬鹿野郎! 泣かせてやるから覚悟しろ!」

 先に殴りかかったのはデルタ関ヶ原。
 その一撃を迎撃するのは、能力を発動し、装甲に包まれたドクオの左拳。
 だがこれではデルタの一撃は相殺できない――直感の刹那、ドクオの背で撃鉄が高鳴る。

(# A゚')「マグナムブロウ、撃動のオオオオッッ!!」

 二人の拳が真っ向から激突。
 均衡した力の激突は両者にさほどのダメージを与えない。


(;'A`)「……ッ!」

 しかしドクオは先んじて気付いていた。
 自分の拳の装甲が、デルタの拳骨の形になって凹んでいる事に。

(;'A`)(なんだこれ!? 意味分かんねえッ……!)

(; "ゞ)(ミルナと同じ能力ッ!? しかもクマーの技ッ!?)

.

814 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:27:19 ID:xt9MKsH20


(# "ゞ)「――手段を選ばず強くなったか! 上等!」

(;'A`)「ッ!?」

 ドクオが狼狽から覚める前に、デルタは次の攻撃に移っていた。

 デルタは打ち合った拳を引くと同時、空いた片手でドクオの左拳を掴み取っていた。
 ドクオは咄嗟に腕を引いたが、デルタの五指は既に装甲内部に深く食い込んでおり、回避は叶わず――


(;'A`)(握力ッ! なんつうバケモッ――)

(# "ゞ)「――――」

 デルタの一撃が体に触れた瞬間。
 ポ、と耳の奥で空気が弾けるのが分かった。

(; A )「が、あッ――」

 遅れて、痺れるような痛みが腹の奥底から湧き上がってきた。
 内臓が逃げ場を求めて縮み上がり、今にも口から噴き出そうなのを寸前で耐える。

(; A゚)「……ごっぷ!」

 デルタの拳はドクオの胸部をものの見事にぶち抜いていた。
 体を貫通していないのは手加減の賜物だが、逆にそのせいで一撃の全衝撃がドクオの体内で乱反射していた。

 肉体の徹頭徹尾を破壊せんと暴れ回る激痛。
 それに耐え切れず膝を折ろうとしたドクオを、

( "ゞ)「――ああ悪い。素直にブッ飛ばした方が楽だったか」

 デルタは軽い助走付きのサッカーボールキックで追撃した。

.

815 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:28:21 ID:xt9MKsH20


(;゚A゚)「?」

 デルタに蹴られたと自覚した瞬間、ドクオの視界は反転していた。
 それも一回ではなく無数に。
 ドクオの三半規管は、キック直撃と同時に機能を失っていた。

(;゚A゚)「???」

 上下左右を失ったドクオには最早目を開けている理由すらなく、彼は目を閉じ、ただブッ飛びながらこの勢いが死ぬのを待っていた。
 もちろん地面を石切りのように跳ね転がるのはとても痛い。
 痛いが、痛がっている余裕も無いのでどうしようもなかった。



(; A )「――ッッッ!!」

(; A )「……いッてえ……」

 数秒後、勢い余ったドクオを受け止めたのは“壁”だった。
 レムナントとメシウマを隔てる巨大な壁――デルタの一蹴りは、ドクオをレムナントの端にまで蹴り飛ばしていた。

 ずる、と重力を思い出した体が地面に落ちる。
 超上空から鉄球を抱えて落ちているような度を越えた加速度が収束し、ドクオはやっとまともに息を吸い込む事ができた。


(; A゚)「……スゥ……」

(;゚A゚)「ハァ…………」



(;゚A゚)「……あ……?」

 一瞬前に起こった事に対して、彼の思考はまったく追いついていなかった。

.

816 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:29:03 ID:xt9MKsH20


( "ゞ)「じゃあ」


(;゚A゚)「…………いッ!?」

( "ゞ)「次は縦、いってみっか」

 声がして振り返った、その時にはもう、ドクオは頭を鷲掴みにされていた。

(;゚A゚)「たッた――たんま!!」

( "ゞ)「……ハハハ、お前面白いこと言うなあ」

 瞬間、背骨ごと頭を引っこ抜かれたと錯覚するような馬鹿ヂカラがドクオを空にブン投げた。
 大気圏にまつげが掠る……それが比喩か事実か分からない程の超高高度で、ドクオは思い出す。



(;゚A゚)(調子に乗って忘れてた)

(;゚A゚)(この人、能力とか関係ないんだった)


(;゚A゚)(……二つ目の撃鉄使う? あれ多分、タナシン要素ある能力だけど……)

(;゚A゚)(多分、あれでも勝てない)

.

817 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:29:43 ID:xt9MKsH20


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 ――暗闇に立っていた。



 ――果ての無い闇の中に、俺は居た。




(;゚A゚)「いや、もうそういうのはいい」

(;゚A゚)「テンプターとか言ったっけ? ちょっと出て来い」


「……」

 ぶっきらぼうに呼びかけると、tanasinn的な暗黒空間に人型の霞が現れた。
 それは凄くバツが悪そうな表情で、はっきりとドクオから目をそらしていた。

(;゚A゚)「単刀直入に聞くぞ。お前デルタさんに勝てるか?」

「……いや、俺を呼ぶならさ、もうちょい真面目な時に呼んでくれよ。
 いや、そもそもこんな馬鹿正直に呼ばれたのも意味不明なんだが」

(;゚A゚)「話をそらすな。目も」

「…………」

.

818 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:30:23 ID:xt9MKsH20


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ――意識が現実に回帰する。
 目の前に大気圏がある、意味不明な超高高度。

(;゚A゚)


(;゚A゚)(……み、見捨てられた……?)

 tanasinnがどうこうの存在で、今後ドクオに力が欲しいか的な誘惑を掛ける存在だったテンプター。
 そのテンプターが無言で対話拒否という事実……諦めろ、と告げているようなものだった。


(#'A`)「――ふっざけんな! 信じらんねえ!
    タナシン雑魚じゃねえかオイ!!」

 体裁を無視した惨めな逆ギレ。
 それに答えるように、頭の中で “逆。あっちがヤバイ” とテンプターの声がした。


(;゚A゚)

 ……ドクオもそれで納得した。

.

819 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:31:20 ID:xt9MKsH20

≪2≫



( "ゞ)「……しまったなあ……」

 空を見上げて一人呟く。
 ドクオが落ちてくるのを待って数十秒。
 待ちくたびれたデルタは、やれやれと言わんばかりに頭を振った。

( "ゞ)「これ落ちてくるまで暇だな……」



「……いや、貴様……」

 声の方を振り返る。振り返った先に、デルタは荒巻スカルチノフの姿を見つけた。




/ ,' 3 「……なにやっとるんじゃ。ミルナはどうした」

( "ゞ)「おう、ちっと身内の腕試しをな。楽しいんだから邪魔するなよ。
     ミルナはウチの奴が倒したぞ。あっちだ」

/ ,' 3 「おお! そうか、それは良い報せだ。
    顔付きの連中がこっちに来とる中、唯一の吉報だ」


川  - )「……」


( "ゞ)「……お前こそ何だ。そいつ、素直クールだろ」

 荒巻が背負っている人物を指差し、デルタは強い口調で問い掛けた。
 
.

820 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:32:00 ID:xt9MKsH20


/ ,' 3 「言っただろう。顔付きが攻めてきたから緊急避難だ。
    できれば貴様にも壁の向こうで戦ってきてほしいが」

( "ゞ)「まあ無理だわな。ドクオとじゃれてる方が楽しい」

/ ,' 3 「……まあよい。どうせ顔付きが相手では貴様とて何も出来ん。
    頼る気は最初からない。気にせず遊んでおれ」

( "ゞ)「わざとらしい挑発どーも。まあいざとなれば手は貸してやる。
     ただし、倍返しの“貸し”だ」

/ ,' 3 「……生憎、強い奴は紹介しきってしまった。
    お礼は別のものになるが、構わんか」

( "ゞ)「ならお前が相手だ。それでいい」

/ ,' 3 「……早々に誰か探しておく。頼むからワシと戦おうとせんでくれ」


( "ゞ)「あーそろそろ落ちてくるな。そこどいててくれ」

 雑談も半ば、デルタは荒巻をどかしてドクオを待ち構えた。

/ ,' 3 「……さすがに死ぬと思うのだが」

( "ゞ)「そうか? あいつ意外と頑丈だぜ」

 ニタ、と意地悪い笑みで拳を作るデルタ。
 これをタイミングよく打ち出すだけで、ドクオは二回目の大気圏遊泳を体験する事になる。
 さて何回目で心がボキッといくかなとワクワクしながら、デルタは落下してくるドクオに照準を合わせた。

.

821 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:32:40 ID:xt9MKsH20


(; A )「――――――!!」


/ ,' 3 「……なんか言っとるな」

 目を凝らした荒巻が絶賛落下中のドクオの言葉を読み取る。
 しかし読み取った言葉が意外だったのか、荒巻は呆気に取られた顔でその言葉を呟いた。


/ ,' 3 「……ごめん?」



(;゚A゚)「――――なさッ――」


( "ゞ)

(;゚A゚)「――ごめんなさアアアアアアアアアアアい!! 負けましたアアアアアア!!」


( "ゞ)



(* "ゞ)「ふふっ、お前、そこで謝んのかよ……!」

(;゚A゚)「死にたくないので受け止めて貰えると嬉しいでエエエエエエエエす!!」

 直後、ドクオは地面に墜落した。
 もちろんデルタは受け止めなかった。
 彼はハハハと笑いながら、地面をのた打ち回るドクオを見てさらに笑うばかりだった。


.

822 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:33:20 ID:xt9MKsH20


(; A )「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッ」ゴロゴロゴロ

 寸前で左腕の装甲をクッションにしたのか、負傷は即死と戦闘不能を免れる程度で済んでいた。
 しかしその痛みは凄絶。全身をくまなく鞭で叩き尽くされたような痛みが全身を巡り巡る。

(;゚A゚)「ヴエァアアアアアア……」ゴロゴロゴロ


( "ゞ)「ハハ。見ろよ荒巻、死にかけのゴキブリみたいだぞ」

/; ,' 3 「……貴様かなり性格悪いな。前から思っておったけども」

 さすがの荒巻もドクオに同情し、デルタにドン引きする。


( "ゞ)「……ドクオ、強くなったみたいだな」

 しかし嘲笑から一転、デルタは真剣にドクオの成長振りを褒め称える。
 しかし当の本人は内心で「こんな時に言われても困る」と連呼しまくっていた。

( "ゞ)「俺の攻撃を二発堪えたのは初めてだな。
     どうだよ、記念に鍋やるか、鍋」

(;゚A゚)「鍋ッ……!? こんな時に……!?」

( "ゞ)「こんなも何も、終わったろ。お前の負けだ。
    お前は命惜しさに負けを認めた。だからお前は生かす、ミルナは殺す」

( "ゞ)「とにかく一件落着だぜ。ほれ、あっち見てみろ」

 デルタは得意気に後ろを指し、ドクオの視線を荒巻の方に誘導した。

.

823 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:34:51 ID:xt9MKsH20


(;゚A゚)


川  - )

 そうすれば必然、荒巻が背負っている彼女の姿も目に映った。
 ドクオは、ドクオは……もう、自分の内心をどうにも言い表せなかった。


(;゚A゚)


( "ゞ)「やったな。お前の目的、全達成だな」


(;゚A゚)(…………なんだ、この……)


(;゚A゚)


(;゚A゚)(なんというか、この……)

(;゚A゚)(…………『台無し感』……?)


(;゚A゚)(嬉し、い? でも、なんか、アレだぞ……)


(;゚A゚)


(;゚A゚)(……そうだ、アレだ。『腑に落ちない』だ。アレが今、それだ……)



( "ゞ)「おい荒巻! ちょっとこっち来い、素直クールをこいつに触らせてやれ」

/; ,' 3 「ぬうう、無礼に人を扱いおって……」


.

824 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:35:47 ID:xt9MKsH20


 ドクオは、素直クールを助けるどうこうの為に今までなんやかんやしてきた。

 しかし、結局、結論はこれ。


( "ゞ)「よかったな、感動の再会だ」

(;゚A゚)

( "ゞ)「泣けよ。見ない振りしてるから」


 自分よりブッちぎりで強い誰かが、片手間の副産物で事を終わらせてしまった。
 その無力感、脱力、喪失感たるや――ごっそりと、心身が抉られた気分にならざるをえない。



(;゚A゚)


 今までちまちまちまちま積み上げてきた小さな積み木の数々を、巨大ハンマーで上から


(´^ω^`)「ドーーーン!wwwww」 ※ドクオの脳内に住まうカオス


(;゚A゚)

(´^ω^`)「んんんんんんwwwwww」

 そんな感じの、アレ。

.

825 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:36:27 ID:xt9MKsH20


/ ,' 3 「あードクオ。ワシは止めたんだがな、こいつは人の話を聞かんのだ。
    ミルナの方は諦めろ。かわりにこっちを預けておくから、守れよ」

 荒巻は痛みも忘れてぺたんと座り込んだドクオの前で片膝をついた。
 そして素直クールをドクオの胸に抱かせ、すっと立ち上がる。

( "ゞ)「荒巻、向こうとの戦力差はどんなもんだ?」

/ ,' 3 「こっちが2、向こうが8だな。貴様らを含めば五分を見込めるが」

( "ゞ)「じゃあ完全に負け戦だな。顔付きってのはそんなに強いのか?」

/ ,' 3 「並の使い手じゃ太刀打ちできんわ。強さの段階が我々とは違う」



(;゚A゚)「……」

川  - )

(;゚A゚)「……あっと、その……素直クールさん?」

 抱きかかえた彼女に向けて、そおっと話しかけるドクオ。
 なんだか腑に落ちなくとも、とりあえず目の前に素直クールが居る。
 こまけぇ事は忘れて、とりあえずその事に歓喜しようと頭を整理し始める。

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826 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:37:07 ID:xt9MKsH20


 しかしようやく冷静さを取り戻してきた中、ドクオはふと、彼女の違和感に気づいてしまった。
 鼓動は確かにある。呼吸も血の気も生きている人間のそれで間違いない。
 だが、それなのに彼女の体は死んだように脱力しきって動かなかった。

(;'A`)「……荒巻、クーが起きない」

/ ,' 3 「む? ああ、そりゃあそうだ。
    それはとっくに『素直クール』として死んでおる。ただの抜け殻だ」

 そう簡単に答えてすぐに踵を返し、荒巻はデルタに話しかける。


/ ,' 3 「貴様らはもう少し中心に行っておれ。
    あの男は壁の近くで食い止める。
    他の雑魚の相手はせんから、そっちに行ったら好きに薙ぎ払え」

( "ゞ)「おい待て、俺に子守をさせんな。俺がここに残る」

/ ,' 3 「……あれをワシ一人で倒せるなら貴様など呼んでおらん。
    安心しろ、貴様の出番は確実にある。大人しくしとれ」

( "ゞ)「……もしも敵を倒したら、その敵を倒したお前を倒すからな」

/; ,' 3 「……後日な。連戦は無理だ」


.

827 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:37:47 ID:xt9MKsH20

( "ゞ)「……まあいい。今は言うことを聞いてやるさ。
    ドクオの話を遮った手前、それが終わるまではな」

/ ,' 3 「なんでもいい、とにかく行け」

 荒巻は鬱陶しさを露にして言い、デルタから視線を外した。
 彼の意識は既に死闘の中にある。デルタは、これ以上声を掛けようとはしなかった。

 しかし、荒巻は最後にドクオに言った。
 振り向かず、背中を向けたまま。


/ ,' 3 「……ドクオ、貴様は素直クールに執着しておるようだな」

(;'A`)「……」

/ ,' 3 「……起こす方法はある。片鱗に願え。
    その女がお前を望んだようにな」



( "ゞ)「行くぞドクオ、さっさと立て」

(;'A`)「……え? あ、いや、正直まだ脚がガクガクで……」

( `ハ´)「二人は私が運ぼう。先の戦い、見事であった」

(;'A`)「え? あ、ども……てか誰だ!? いつの間に!?」

( "ゞ)「ハハ、そいつの気配読めるようになったら一人前だ」

 デルタはミルナを担ぎ、シナーはドクオとクールを抱えて来た道を戻っていく。
 これにより、ひとまず、とりあえず、この場における火種は無くなった。


/ ,' 3 (ま、こんなトコで戦われてもこっちが迷惑だからな)

 荒巻は邪魔者を上手いこと追っ払えたことに安心し、ほっと息を漏らした。

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828 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:38:28 ID:xt9MKsH20


/ ,' 3 「……三月、分かっておるだろうな」

 荒巻が呟くと、ささやかな風が地表を煽った。
 それに紛れてやってきたのか、片目傷の白ウサギは彼の言葉に答える。

(メ._⊿)「……分かっている。その時が来れば、お前の望み通りにする」


/ ,' 3 「……ならよい。死なん程度に助力を頼む。久し振りの死闘だ」

(メ._⊿)「……それも、心得ている」

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829 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:39:18 ID:xt9MKsH20

 ≪ / ,' 3 / 概念相殺 ≫ 

【能力者】 荒巻スカルチノフ

【タイプ】 分類不可


【基礎能力】 

[破壊力:-] [スピード:-] [射程距離:-]

[持続力:-] [成長性:-]

A=かなり凄い B=けっこう凄い C=まぁまぁ良い
D=人並み    E=よわい     F=論外     S=最強


【能力概要】
荒巻スカルチノフは、tanasinnのバックアップにより基本的に何でも出来る。
能力無しでも身体能力は武神級。新しい超能力も好き放題に作れる。
ただ本人はサーベルでの戦闘を好む為、それら超能力はすべて『概念相殺』に利用されている。

『概念相殺』はその名の通り、自分自身から一つの概念を失う代わりに、他者からそれと同じ概念を喪失させるというもの。
荒巻は超能力のストック数が桁違いな為、大概の能力者は何も出来ずに倒される。
概念相殺でもへこたれない相手には、無数の超能力をぶつけて物量で圧殺する。

マニーはこの概念相殺を金の力でどうにかしようとしたが、兆を投資しても荒巻の能力ストックは無くならなかった。
デルタは肉体一つで死ぬほど強くなっているので、概念相殺をやると相打ちになって困る。(でもやらないと身体能力と超能力での戦闘になり、負ける)


おまけ

(メ._⊿):うさぎさん とってもぷりちー おめめがいたそう;;

830 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:40:06 ID:xt9MKsH20





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831 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:41:03 ID:xt9MKsH20

≪3≫



<_;プー゚)フ「……ああ、俺の住処が……」

ミセ;*゚ー゚)リ「それ何度目ですか。もう諦めてくださいよっ」

 町の残骸をせっせこ片付け、二人は最低限腰を下ろせるだけの文明空間を作ろうともがいていた。
 ミセリは【一つ残らず木偶人形(ワンサイド・アウトサイダーズ)】という長い名前の超能力を駆使し、エクストは家っぽい物ができるよう指示を出す。

 そんな感じで開始十分。
 図工の授業だったら評価E以外あり得ないような出来損ないのゴミを前に、二人はだんまりを決め込んでいた。


<_;プー゚)フ「……ミセリちゃん、そんな能力あるのにどうして……」

ミセ;*゚ー゚)リ「……し、指示が悪いんですー! 私は完璧でしたー!」


<_;フ′ー丶)フ「はあ、ドクオも戻ってこねえし、もうどうすっかなあ……」

ミセ;*゚ー゚)リ「もう! 顔があり得ないくらいふにゃけてますよ! しっかりして下さい!」

.

832 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:41:45 ID:xt9MKsH20



( "ゞ)「――っと!」 ダンッ!

( `ハ´)「……着地くらい、静かにやれ」 スタッ

 かくしている間に突拍子も無くデルタが空から降ってきた。
 それに続いてシナーも着地し、背負っていたドクオとクールを地面に下ろす。


ミセ*゚ー゚)リ「あ、ドクオさん!」タタタ

 ドクオを見つけたミセリは真っ先に彼のもとに駆けつけた。
 しかし最初は嬉々としていた彼女の表情も、ドクオの負傷ぶりを見てすぐに青ざめていった。

ミセ;*゚ー゚)リ「ちょ、これ……早く治さないと!」

(;'A`)「……あ、忘れてた。ちょい待ち……」


(;'A`)(悪いテンプター、また治してくれ)


はてやみ
「お前さ、さっき言ったよな?
もうちょい真面目な時に」


 一瞬後、ドクオの全身にあった傷はすっかり完治。
 早くも使い勝手のいい道具にされたテンプターはさておき、ドクオは素直クールを抱きかかえてエクストに声を掛けた。


(;'A`)「エクストー! なんか荒巻がクー返してくれたわ!」

<_;プー゚)フ「……は? ……ってマジ!? ちょッ! こっち連れて来い!」

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833 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:42:39 ID:xt9MKsH20


 ドクオはクールを抱えて急いでエクストのところへ。

( "ゞ)「なあ」

ミセ*゚ー゚)リ「……え、私ですか?」

 デルタは、その様子を眺めていたミセリに話しかけた。

( "ゞ)「お前らさっき何話してたんだ?
    順番飛ばしちまったからな、次はそっちでいい」

ミセ*゚ー゚)リ「話って、なんていうか、ドクオさんの生い立ち? みたいな……」

( "ゞ)「……ああ? なんだそれ、どういう話だ」

ミセ;*゚ー゚)リ「いや、私もよく分かんないです。
       なんか内藤が、片鱗がとか、ドクオさんの話なんだけど、別人の話みたいな……」

( "ゞ)「……あの辺の話か。そら、悪い事をした……」

 一人呟き、デルタはドクオの方に歩き出した。

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834 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:43:24 ID:xt9MKsH20




<_;プー゚)フ「――うおっ!? マジだ、マジじゃねえか!!」

(;'A`)「だろ? 棚ボタってレベルじゃねえだろ?」

<_;プー゚)フ「……いや、でも起きねえぞ? これ大丈夫か?」

(;'A`)「大丈夫らしい。タナシンをどうこうで何とかなるらしい」

<_;プー゚)フ


<_;プー゚)フ「……は? そんなフワフワした感じで助けていいのか?」

(;'A`)「……え? 駄目なのか?」

 目を合わせ、二人は答えを見失って沈黙する。
 ドクオはエクストの言葉の意味が分からなかったし、エクストも自分の意思を上手く言葉には出来ていなかった。


( "ゞ)「お前ら、素直クールはとりあえず後回しにしろ」

 その沈黙に割り込み、デルタは静かに二人を威圧した。
 彼は二人の視線を受け取ると、さも面倒臭くて今すぐ帰りたいと言いたげな溜め息を吐き出した。

( "ゞ)「お前ら、ドクオの昔話をしてたんだよな」

(;'A`)「……そうです」

( "ゞ)「……じゃあ、仕方ねえ。あれを正確に喋れんのは、今は俺だけだからな……」

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835 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:44:06 ID:xt9MKsH20


( "ゞ)「とりあえず、手っ取り早く先に言っておく」

( "ゞ)「多分もう話に出てきてるとは思うが、そこに出てきたドクオと」

 デルタは、いま目の前に居るドクオを指差して言った。

( "ゞ)「お前は別人だ」

<_;プー゚)フ「……」


( "ゞ)「大雑把に言うと素直クールは『tanasinnの片鱗』に負けた。
     結果、お前が出来上がったワケだが……そこら辺の話、まだしてねえだろ」

( "ゞ)「俺としては死ぬほどどうでもいい話なんだが、まあ聞かせてやる……」


( "ゞ)「――昔々、あるところに」

(;'A`)


(;'A`)(……よりによって、導入それにするか……?)


.

836 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:44:51 ID:xt9MKsH20


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

           第二十八話 「悪性萌芽 その4」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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837 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:47:10 ID:xt9MKsH20


(;,,゚Д゚)「まずいッ!」

 ――書き込んだ直後、話数を間違えていたことに気付いた補足王ギコ。

(;,,゚Д゚)「今回は30話だ! 急いで訂正しろ!」

 行動は速やかに、違和感なく――

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838 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:47:50 ID:xt9MKsH20


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

           第三十話 「悪性萌芽 その4」

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839 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:49:21 ID:xt9MKsH20

≪4≫



 ……以下、素直クールの日記より。



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840 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:50:13 ID:xt9MKsH20

11月3日(木) 天気:晴れ→雪
 武神の屋敷に来てから半年。ジィ様の言いつけで日記をつける事になった。
 あまりこういうものは得意ではないが、少しずつ慣れていこうと思う。

11月4日(金) 天気:雪
 せめて三行書けと怒られた。
 今日の修行は、よく分からなかった。
 弱くなる修行という時点でよく分からなかったが、今でもそれは変わらない。

11月5日(土) 天気:雪
 寝て、起きて、顔を洗って歯を磨き、朝食を食べる。
 その後は特に何もしない。ドクオの特訓を眺めたり、家事の手伝いをしている。
 こんな生活でいいのだろうか。なんというか、今までの生活と違いすぎて、現実味に欠けている。

841 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:50:53 ID:xt9MKsH20

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11月6日(日) 天気:雪



 ドクオは今日も早朝からじぃ様達と修行に励んでいる。
 人工片鱗の副作用で体調も優れない筈なのだが、彼は存外元気にやっている。


爪#゚ー゚)「――全力を出せと言うておろうが!
      なぜ加減する、殺されたいのか!」

(;'A`)「いや、あの、俺の全力が微塵も通用してないだけだ……」


爪゚ー゚)「……え? あ、そうか。悪い悪い」

N| "゚'` {"゚`lリ「じぃ様、やっぱり相手がアンタじゃ修行になってないぜ。
         せめて母者か俺にやらせてくれ。上手くやる自信はある」

爪;゚ー゚)「そうだのお……こやつ思った以上に弱いし、そっちの方がいいか……?」

(;'A`)「……」

 ドクオの視線が私に向く。先日も少し彼と話したが、もう既にプライドがズタボロだと彼は言っていた。
 彼は内藤が作った物の中では最強クラスなのだが、いかんせん武神の面々が化け物染みている。
 ここ数日で私も彼らの強さを目の当たりにしたが、正直これはダメなやつだと思った。
 彼らに頼ればtanasinnも倒せるのではないだろうか? ありうる。

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842 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:51:55 ID:xt9MKsH20

11月7日(月) 天気:ちょっと雪→晴れ


11月8日(火) 天気:雪
 昨日は日記を書かなくていいと言われたので書かなかった。
 自分に起きた事を受け止め、言葉に出来るようになったら日記を書けと言われた。
 まだちゃんと落ち着いてはいないが、せめて事実だけ羅列しておこうと思う。

 内藤の研究所を脱出する際、私は内藤に人工片鱗を投与された。
 それは不意打ちの、もはや裏切りとすら言える行為。私は内藤を許せない。
 人工片鱗を体内に宿した私は半ば暴走し、内藤を含むあの場の全員を退けたらしい。ここはドクオからも話を聞いたので事実だ。
 あのままだと私が自滅しかねないと予感したドクオが私と戦い、なんとか武神の所まで私を誘き寄せたようだ。

 ジィ様に倒された私は暴走状態から解放されたが、人工片鱗の後遺症が今も残っていると聞かされた。
 それは「希望以外の拒絶」。望まないものが目の前にあると、それから逃避してしまう。
 覚えていないが、私が目覚める時にもそれに関する悶着があったそうだ。

 人工片鱗は人の弱点を増幅する。
 ジィ様が私に弱くなる為の修行をつけるのは、私自身が持つ根本的な弱さと向き合うためらしい。
 確かに、私は今まで自分の弱さを見ようとはしなかった。それはタナシンに出会う前から、ミルナとシーンに出会う前から同じだ。
 弱い人間に価値などない。だから私は強く、ただひたすら強く・・・

 その脅迫観念が今この状況を作っているとしたら、私は今更どうしたらいいのだろうか。
 手遅れだ。私の元居た世界は既にタナシンが食い尽くして跡形もない。
 取り戻せるものなど何もない。手にあるものは失い尽くした。でもそれでも死にたくはない。
 死にたくない・・・この言葉はこの世でもっとも醜い言葉だと、私は思っている。
 死ぬべき人間は死ぬべきだ。望まれない者は殺されるべきだ。無意味な物は排除されてしかるべきだ。
 その筈なのに、その最たる存在のタナシンが今の私を生かしている。
 タナシンと関わってからどれぐらい生きてきただろう・・・自分の年齢なんてとっくに忘れてしまった。
 怖いのは、こんなにも生きているのに、私が昔の私のままで、大差ないということだ。
 私はなぜ変われなかったのだろう 救いの手は確かにあった筈なのに どこで

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843 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:52:47 ID:xt9MKsH20

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11月9日(水) 天気:晴れ


爪゚ー゚)「なあ、素直クールよ。寝るのは好きか」

 縁側にじぃ様と並んで座り、おやつの羊羹を食べる。
 平和だ、と思う。平和という言葉は、機械的な感想だと思う。


川 ゚ -゚)「……そんなに好きではないな。寝てる間より、起きた瞬間のが好きだ」

爪゚ー゚)「……ふふ、オレもだ。これは誰にも秘密だがな、オレは寝るのが今でも怖い。
     ガキンチョの頃に読んだ絵本が原因でな、参ったものだ……」

川 ゚ -゚)「……」

爪゚ー゚)「……オレは強い。が、それは弱さを隠す為のものではない。
     強さとは生きる為の力。人間の弱さは、決して強さでは覆い隠せんよ」

爪゚ー゚)「弱さと強さは別々のものだ。ゆえに、受け止め方も別々でなければならん。
     どちらか片方だけに特化した人間は、いずれ確実に破綻するからのう」

 ・・・そんな事は私だって知っている。けれど、生きる為の強さが私には人一倍必要だった。
 弱さを隠すとか、そういうのではなく、だから  強くなるしかなかった。私は弱くないと、思うしかなかった。
 私が悪いのだろうか。多分、きっとそうなのだ。昔の私なら、こんな疑問すら抱かなかったのだから。

爪゚ー゚)「大丈夫だ。貴様は強い。貴様には腐るほど時間がある。
     強さの次は弱さと向き合えばよい」

爪゚ー゚)「……助言だ。弱さというものは自分の中には無い。
     常に外の世界、現実にこそ姿を現す。目を閉じるなよ、素直クール」

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844 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:53:31 ID:xt9MKsH20

11月10日(木) 天気:みぞれ
 今日はドクオの修行は休み。久し振りに多くの事を話した。
 この日記の事や内藤の話はしなかった。いわゆる雑談をした。
 彼とそんな風に会話するのは初めてだったが、ドクオは意外と愉快な男だった。
 体の調子は良好。彼の命に別状がないのは幸いだ。

11月11日(金)
 ドクオの修行相手が母者さんに変わった。強さはドクオが100歩くらい負けている感じだ。
 夕飯は芋。死ぬほどの芋を食べた。

11月12日(土) 天気:快晴
 昨日の天気を書き忘れた。昨日は晴れだった。
 今日は、すこし体調が悪かった。昼食の後、二度吐いてしまった。
 なにか変な物を食べたかもしれない。ここの人は生肉を平然と貪る為、ありうる。

11月13日(日) 天気:〃
 じぃ様の提案でデルタと手合わせをした。接戦の末に負けた。
 ・・・彼らはどういう理屈で私の能力をガン無視しているのだろう?分からない。

 明日から阿部さんを相手に私の修行が始まる。私の能力の劣化形態を作るのが目的だそうだ。
 とりあえず明確な目標ができてほっとしている。何もする事がないのは、けっこう辛い。

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845 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:54:31 ID:xt9MKsH20

11月14日(月) 天気:雪
 阿部さんは同性愛の人だった。それにビックリして何も覚えていない。
 ただドクオの貞操が危機的なのはなんとなく予感した。
 それを母者さんにぼやいてみたら「手を出すな」と言われた。何がなんだか分からない。
 ↑
 └腐っておるのだ。あまり詮索するな(ジィより)
    ↑
    └ジィ様いつか殺す(母者より)

11月15日(火) 天気:豪雪
 今日はとてもよく眠ってしまった。昼まで寝たのはいつ以来だろうか。
 いや、以前はそもそも寝ること自体できていなかった。逃亡生活にそんな暇は無かった。

11月16日(水) 天気:〃
 三行書けと怒られた。しかし、特に特筆することがない。
 私の修行は順調。着実に能力のコントロールを覚えている。
 ドクオの方は・・・どうなのだろうか。彼とは数日前から顔を合わせていない。
 山篭りでじぃ様とどこかに行ったらしいが、安否がすこぶる不安だ。


11月17日(木)


11月18日(金) 天気:雪
 昨日、ドクオが半生半死で帰ってきた。意識はなく、辛うじて生きている危険な状態だった。
 ジィ様を問い詰めて事情を聞くと、ドクオの肉体は既に限界だと分かった。
 tanasinnの副作用に対抗するだけの修行は終えているが、この先どれだけもつかは分からないそうだ。
 山篭りはドクオが提案して行われた。ジィ様いわく、ドクオもまた私のように暴走を起こしたらしい。
 しかもその破壊規模は私以上で、正直私よりてこずったとジィ様は言っていた。
 ドクオは明らかに衰弱している。もうすぐドクオが死ぬかもしれない。
 今日は一日中彼を見つめていた。私に出来る事はいくつかあるが、彼はそれを望むだろうか・・・

.

846 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:55:27 ID:xt9MKsH20

11月18日(金) 天気:雪
 ドクオが死んだ。目が覚めて、ドクオの様子を見に行ったら死んでいた。
 昔、元々居た世界で、小さい頃に金魚を飼っていたことを思い出した。
 金魚は水面に浮かんで死んでいた。綺麗な水槽だなと思った。

11月18日(金) 天気:雪
 今日はドクオに起こされた。朝食があると言って、私の手を引いてくれた。
 食卓には屋敷の人達が揃っていて、戦争のような朝食を繰り広げていた。
 ドクオの体調は忍者さんの秘薬でなんとか持ち直したらしい。
 ジィ様の修行と秘薬さえあれば、tanasinnに耐え得る心身を作るまでの時間は稼げそうだ。
 よかった、と心から思う。

11月18日(金) 天気:雪
 ドクオは今日も起きなかった。
 か細い呼吸と、指先で机をつつくような呆気ない心音が彼の命を繋いでいる。
 しばらく私の修行は中断してくれるらしい。これでドクオの傍にずっと居られる。

11月18日(金) 天気:雪
 今日は私もドクオも修行が休み。久し振りの休日だ。
 下の港町におりて、普通の休日を過ごした。買い物をしたり、ご飯を食べたり・・・
 そういう生活をしたのはいつ以来だろう・・・。平和で、安心した時間が流れていった。
 だが、元の世界のことを思うとこういう生活に罪悪感が湧いてくる。
 もっと他にやる事があるんじゃないか、もっと他に見るべきものが、と思ってしまう。

11月18日(金) 天気:雪
 水槽と、金魚を作った。tanasinnの力は、こういうどうでもいい事をするにはとても都合がいい。
 久し振りになにか生き物の面倒を見てみようと思ったので、ちょっと魔が差した。
 これも力のコントロール修行という事で、できればお許しいただきたい・・・

847 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:56:20 ID:xt9MKsH20

11月18日(金) 天気:晴れ
 やがて自殺する祖父母が拾ってきた子猫が死んでいた。
 子供だった私は子猫の扱いなんて知らず、手探りに面倒を見ていたが、駄目だった。
 家族は誰もこの子の面倒を見たり、助言をくれたりはしなかった。
 子猫が死んだ時も家族は特に何も言わなかった。私は子猫を庭の隅に埋め、みかんの種を撒いた。
 この子を殺したのは私だ。なのに罰はないのだろうか。家族は私を叱らないのだろうか。
 命の価値が分からない。家族は私に何も教えてくれなかった。私は私一人で育っていった。
 私はこの猫と同じだ。罪も罰もない命は無意味だ。この猫は無意味に生きて死んだ。

11月18日(金) 天気:晴れ
 今日はひとりぼっちの入学式。友達とは違う学校に行ったので、周りは知らない人だらけ。
 集合写真の時、ふざけて膝の上でチョキを作った。特に叱られなかった。

11月18日(金) 天気:晴れ
 ドクオが死んでから一週間くらいが経つ。私にとって彼は何だったのか、と眠る前に考える。
 別に大して好きではない。たかが友人という程度。だが今の私はtanasinnと人工片鱗のせいで情緒がおかしい。
 依存心や我慢というものが弱くなっているし、理性が上手く働かない。
 ドクオは私がそんな風になった時に一番近くに居たというだけだが、きっと理由はそれだけなのだ。
 私はドクオにtanasinnの片鱗を分けてやろうと思う。そうすれば彼は助かる。喜んでくれるかな、なんて。少し笑ってみたりする。

11月18日(金) 天気:晴れ
 書くことがない。
 夕飯は魚。
 ドクオが死ぬ夢を見た。彼はまだ生きている。縁起が悪い。二度寝した。

.

848 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:57:06 ID:xt9MKsH20
11月18日(金) 天気:晴れ
 嘘を書くな、とジィ様に言われた。
 絵本を燃やし、小指のワイヤを締め上げる。
 悲鳴は上がらない。聞かせる相手が居ない悲鳴に意味はあるのだろうか。
 今日は昨日の夢を見た。明日はもっと前の夢を

11月18日(金) 天気:晴れ
 私はもう正常ではないのかもしれない。
 ドクオが本当に死ぬと分かった瞬間、私の中の何かが壊れてしまったのだ。
 それは何だろうか。今までだって人が死ぬところは見てきたのに・・・
 (追記)
 書いた後に分かった。壊れた物は、冷酷さだ。他人の命を見捨てる冷たさ。
 今までは誰が死んでもその命を諦め、背負う事ができた。だが、今の私はそれが出来ない。
 私はもう人の死を背負って歩く事が出来ない。だから死なないでほしいと、そう思うようになったのだ。
 そして内藤の人工片鱗はその弱さを膨張させる。私は多分、もう手遅れだ。

849 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:57:46 ID:xt9MKsH20


11月19日(土) 天気:晴れ
 とりあえず、天気だけ。

11月20日(日) 天気:雪

11月21日(月) 天気:雪

11月22日(火) 天気:雪

11月23日(水) 天気:雪

850 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:58:26 ID:xt9MKsH20

11月24日(木) 天気:雪
 ジィ様、私は大丈夫だ。ドクオの様子は私が見ておく。

11月25日(金) 天気:雪

11月26日(土) 天気:曇り

11月27日(日) 天気:快晴

11月28日(月) 天気:快晴

11月29日(火) 天気:快晴

11月30日(水) 天気:快晴
 引越しは無事に完了した。ここで彼との新しい生活が始まる。

12月1日(木) 天気:快晴
 日記はもうやめようと思う。これからはもう大丈夫だ。

851 名も無きAAのようです :2016/02/29(月) 23:59:29 ID:xt9MKsH20

≪5≫



「ジィ様、素直クールはもう駄目だ」

 口火を切ったのは流石母者の一言だった。
 今日は11月21日。既に、誰もが素直クールの異変に気付いていた。

「やはりあの女にドクオの状態を教えるのは不味かった。
 案の定、もう理性もなにも滅茶苦茶だ。
 さっき話しかけて少しだけ言葉を交わしたが、あれは……」

 母者は言葉に迷い、それ以上を語れなかった。

     X
∠ ̄\∩
  |/゚U゚|丿 「激しく忍者」

爪゚ー゚)「ハゲ忍は黙っておれ。真面目な話じゃ、場を弁えよ」

∠ ̄\
  |/゚U゚| 「――ならばあえて言おう。あの女、とうの昔に破綻している。
      このままではドクオの方にも悪影響を及ぼすぞ」

.

852 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 00:00:09 ID:KhAdyT1E0

N| "゚'` {"゚`lリ 「……俺としては出来る限りの事をしてやりたいね。
          心が衰弱した彼女には支えになるものが必要なんだ。ドクオ以外にも」

( "ゞ)「かったるい話すんじゃねえよ。俺はハゲ忍に同意だ」

∠ ̄\
  |/゚U゚| 「激しく同意?」

( "ゞ)「うるせえハゲ」


          + 激しく忍者 +
      X
 ∠ ̄\∩
   |/゚U゚|丿     (激しく無駄なスペース)
 〜(`二⊃
  ( ヽ/       
   ノ>ノ
   UU


( "ゞ)「けどよ阿部、てめえホモの癖に女の肩を持つのか?」

N| "゚'` {"゚`lリ 「俺にとって女は恋敵と書いてライバルと読む存在だ。
          基本、俺は博愛主義者なんだぜ」

( "ゞ)「それが痴情縺れきったメンヘラでもか? 手間の多い主義だこった……」

N| "゚'` {"゚`lリ 「どうせ殴れば一瞬で済む話。時間を掛けてもいいだろうって話だ。
          それとも俺達はそこまで切羽詰った集団だったか? らしくないぜ」


( "ゞ)「……素直クールは、殴れば済む相手じゃねえな」

 デルタは、阿部の軽口に渋々そう受け答えた。

N|;"゚'` {"゚`lリ 「……なんだって? それを、お前が言うのか?」

.

853 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 00:00:49 ID:KhAdyT1E0


爪゚ー゚)「素直クールがここに来た時、オレと母者、そしてデルタが彼女を迎えた。
     しかし実際に戦ったのはオレ一人。その意味、察してやれ」

( "ゞ)「……」

 デルタ関ヶ原は元々好戦的な人間である。
 そんな男がわざわざジィに出番を譲り、あまつさえイノシシ狩りで時間稼ぎをしていた事実。
 もしもジィがデルタを呼びに行かなければ、彼は絶対に屋敷には近付かなかっただろう。

 なぜなら、デルタには屋敷に落ちてきた素直クールが人間だとは思えなかったのだ。
 殺気や悪意……彼が屋敷の方から感じたものは、最早そういった類の気配ではなかった。
 デルタがあの女に感じ取ったものは、人生最大規模の生理的嫌悪感だった。
 そんなものにわざわざ近付こうなどとは、彼は決して一瞬たりとも思えなかった。

 もちろん素直クールが強い事は肌で感じてはいた。
 あれと戦えば生涯ベスト5に入る死闘になるのも直感出来ていた。
 しかし、あれが放つ気配はそれ以上に『気持ち悪かった』。
 触りたくない、関わりたくない。そういう感覚が、デルタの戦意を丸ごと腐らせてしまったのだ。


( "ゞ)「あれを始末したけりゃお前らでやれ。
    俺は神も悪魔も人間サマもぶん殴れるが、クソまみれのドブ底にアタマ突っ込むような真似だけはしねえぞ」

「……ジィ様、私は数日は様子見でいいと思うが、いざとなれば手を下すべきだと思う。
 それが彼女を半年匿った私達の責任だ。彼女はよくもったと思う」


爪゚ー゚)「……みな準備をしておけ。
     オレは少し、彼女と話してくる」

 結論は暗黙の内に。
 屋敷に住まうこの場の全員は、それぞれ戦いの準備に取り掛かった。

.

854 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 00:01:37 ID:KhAdyT1E0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 寝室のふすまを静かに開ける。
 部屋に入ると、布団に横たわるドクオと、彼の傍らに正座する素直クールが目に留まった。

爪゚ー゚)「……様子はどうだ」

 ふすまを静かに閉じ、ジィは素直クールに問い掛けた。

川 ゚ -゚)「よく眠っている。大丈夫だ」

爪゚ー゚)「……では、貴様はどうだ? 素直クールよ」

川 ゚ -゚)「……私もだ。大丈夫だよ」

 その返答の直後、ジィは懐から日記帳を取り出して畳に投げ捨てた。
 バサ、と音を立てて落ちたそれに、素直クールは嫌悪の一瞥を送る。


爪゚ー゚)「日記、読んだぞ。やけに18日が多かったな」

川 ゚ -゚)「……だな。自分でも、見直した時に寒気がした」

爪゚ー゚)「……まったく。男が一人倒れただけでこの有様とは、難儀だな」

川 ゚ -゚)「……だな。人工片鱗は、思っていた以上に私の虚勢を粉々にしていた」

.

855 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 00:02:17 ID:KhAdyT1E0


爪゚ー゚)「……ドクオを離してやれ。本当に死ぬぞ」

川 ゚ -゚)「いいや、彼は死なせない。手段はある、それをする……」


爪゚ー゚)「ちゃんと見ろ。ドクオは生きているぞ」

川 ゚ -゚)「……嘘を言うなよ。呼吸も、心音もないぞ。
     彼はもうとっくに死んでいる。私が助けてやらないと……」

爪゚ー゚)「それは貴様がドクオの時を止めておるからだ。
     自覚が無いとは言わせんぞ。貴様、もう既に手遅れだ」

川 ゚ -゚)「……大丈夫だ。彼は死なせない。私が守る。
     その為の力は十分にある。大丈夫だ」

 素直クールの能力を一言で表すなら、それは『隔絶』という他にない。
 ドクオを正常な時間の流れから排し、生も死も根本的に存在しない所に置いておけば、確かにドクオは現状を維持できる。
 だがそれは、ドクオは永遠に生き続けると同時に死に続けるいう意味でもあり、最早、それは――

.

856 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 00:02:58 ID:KhAdyT1E0


爪゚ー゚)「――安心を得る為の道具でしかないな。
     貴様の中では、ドクオはもう人間扱いされておらんという訳だ」

川 ゚ -゚)「……それの何がいけないんだ? 彼は死なず、私も安心していられる。
     誰も不幸にならない。むしろ、私達は今より幸せでいられるのに……」

爪゚-゚)「……命の在り方として間違っておる。
     生きる者はみな死ぬ。それを捻じ曲げて我欲に走るなど――」

川 ゚ -゚)「在り方が間違っていたら、その命には生きる為の足掻きすら許されないのか?
     私はもう弱りきってしまった。ドクオがいなければ、もう生きていけないんだ……」


爪#゚ー゚)「……大いに足掻け。生きる為なら死をも覚悟しろ。
     だがな、オレは今ドクオの話をしている。貴様の命など知らん!」

爪#゚ー゚)「いいか素直クール、貴様がそいつの足掻きを阻んでおるのだ!
      ドクオは確かに死ぬかもしれんが、万が一にも生き残るかもしれん!
      その分水嶺にいざ挑もうという男を、貴様は己の為に私物化しておるのだ!」

川 ゚ -゚)「……そんな下らない天秤に、ドクオの生死を乗せろというのか?
     私には出来ない。生きてなくていいから、せめて彼には死なないでほしいんだ」

爪#゚ー゚)「…………」

川 ゚ -゚)「……? 死なないで欲しいと願うことが、そんなにもおかしいか?」

.

857 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 00:03:46 ID:KhAdyT1E0


爪゚ー゚)「……おかしくはない。そこではないのだ、素直クール」

爪゚ー゚)「……残念だ。貴様は理外の力に溺れてしまった。
     今の貴様はドクオにとって、自由を縛る害悪でしかない」

爪゚ー゚)「知っているか? そういうものを一言でなんと呼ぶか」

爪゚ー゚)「――愛憎だ。好意と悪意で他人を縛る、独善の成れの果てよ」


川 ゚ -゚)「……分かった、分かった」

 素直クールは、ジィの言葉をさらっと受け流して二つ返事。

川 ゚ -゚)「つまり、もう出て行けという事だろう。分かったよ。
     そういう事を言われた事は沢山ある。私は元々、人に好かれる人間ではないからな」

川 ゚ -゚)「もちろん自覚はある。私はもう人工片鱗のせいでおかしくなってる。
     ドクオが居ないと心苦しくて死んでしまいそうだ。これが元々の私に無い考えなのも分かる」

川 ゚ -゚)「じゃあどうしろと? 愛憎でもいいじゃないか。
     私は確かに人間離れしているが、それでも私の一部はまだ人間だ」

川 ゚ -゚)「それが寂しさあまりに他人を求めたらそれは罪なのか?
     罰せられる程のことなのか? 人が人を求めたら、それは悪いことなのか?」

爪゚ー゚)「求めて、相手を箱の中に閉じ込めて、それでも同じ事が言えるのか?」

川 ゚ -゚)「そうしなければドクオは死んでしまう。ジィ様だってそれは嫌だろう」

.

858 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 00:04:56 ID:KhAdyT1E0

 素直クールは、単に羅列する。

川 ゚ -゚)「大事な人が死にそうで、死なせない方法があって、それを実行する事もできて」

川 ゚ -゚)「リスクも失うものもなくて、結果的に誰も悲しまないなら、それは良い事に違いない」

川 ゚ -゚)「確かにジィ様は今、私に対してとても憤慨している。
     ドクオの命を私物化し、独占している事について」

川 ゚ -゚)「だが、それはドクオを失った時の悲しみに比べれば軽いものだろう?
     私の行いは、結果的に皆の悲しみを解消しているじゃないか」

川 ゚ -゚)「ドクオは死なず、皆は悲しむ代わりに怒り、私は悲しみを回避した」

川 ゚ -゚)「よく考えてみてくれ。この状況、誰も、なにも損をしていないんだ」



爪゚ー゚)「……度し難いな、貴様は……」

 しかし決して、間違いではないと、ジィは思った。
 間違いではないが、これが絶対に正しいとも言い切れない。

 彼女の言い分を正しいと肯定する者、間違っていると否定する者は、きっとどちらもこの世に存在する。
 しかし、素直クールはそのどちらにも属さない。
 なぜなら彼女は、本人の意思を一切、まったく汲み取っていないからだ。

 彼女がしたことを言い換えるなら、『本人に無断で行われた目的のないコールドスリープ』。
 それはシュレディンガーより性質が悪い、人間で行うドライフラワーのようなものだ。
 しかし、それを愛でるか否定するかは人それぞれ。
 それを人と呼ぶか物とするかもまた、それぞれの価値観に――

.

859 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 00:05:37 ID:KhAdyT1E0


爪゚ー゚)「――そうだな、人それぞれで片付く話だったな」

爪゚ー゚)「間違いか、正しいか、それも分からない。
     いやまったくもってそうだった。まったく、貴様に論破されてしまったな」

川 ゚ -゚)「……そうか。それならよかった」

 朗らかに笑いつつ、ジィは立ち上がって素直クールの胸倉を片手で掴みあげた。
 その唐突な行動に虚を突かれたのか、彼女はその手を払う事もできなかった。


爪゚ー゚)「で! だ。それはそれとしてだ。置いといて、だ
     オレは個人的に、曖昧な結論というのが大嫌いでな」

爪゚ー゚)「もちろん世のなか曖昧にしておくべき事はある。
     オレとて人間、処世術くらいは知っておるさ」

爪゚ー゚)「だがな、それでも生と死だけは絶対だ。
     オレはそれだけを確信し、ここまで至った」


爪゚ー゚)「ところがどっこい貴様は『それ』を曖昧にした。
     正面バッチリ目の前で、オレの神である『死』を誤魔化した」

爪゚ー゚)「正しいも間違っとるも知らん。この世の条理など知ったことか。
     貴様はオレの敵だ。もっとも、それは出会った時から確信しておったが」

.

860 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 00:06:58 ID:KhAdyT1E0


爪゚ー゚)「素直クール、オレは貴様の曖昧さが気に入らん。
     だから今から殺す。そのついでにドクオも助ける」

川;゚ -゚)「り、……理屈になってないぞ」

爪゚ー゚)「だからなんだ、それがどうした?
     だから言ったであろう、オレは曖昧なのが嫌いだと」


爪゚ー゚)「……知っているか?
     タナシンなどに頼らずとも、人は人間という枠組みを壊せる」

 胸倉を掴む手に、より一層強大な力が送られる。

爪゚ー゚)「頭の中、二文字」

爪゚ー゚)「殺す」

爪゚ー゚)「するともう止まらん。言葉は殺意に塗り潰される」


爪゚ー゚)「……言っておく。本気を出せよ」

 途端、ジィの体に電撃が迸る。


爪# ー )「tanasinnがどれ程のものか、今一度、見定めさせろ」

川;゚ -゚)「――ッ!!」

 言葉の後、一瞬の閃光。
 それは火蓋を切って落とすに余りある、天災にも等しい一撃だった。

.

861 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 00:10:13 ID:KhAdyT1E0
16〜24話 >>439
プロローグ Another Heaven >>454-467
第二十五話 老兵集う >>473-495
第二十六話 面汚しの夜 その3 >>504-596
第二十七話 悪性萌芽 その1 >>609-673
第二十八話 悪性萌芽 その2 >>704-726
第二十九話 悪性萌芽 その3  >>733-771

第三十話 悪性萌芽 その4 >>783-860


(^ω^)ミスはなかったNE('A`)

この話はあと二話くらいで終わるよ(^ω^)
また来月投下できたらいいな(^ω^)
なにかミスがあったらみんなの天才的頭脳で補完してNE(^ω^)

862 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 01:17:10 ID:3gbVukSk0

デミタスの能力スタンドだったのかよ

863 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 03:25:25 ID:inyh8Fa.0

カッコよかった果ての無い〜がギャグシーンになっててワロタ

864 名も無きAAのようです :2016/03/01(火) 12:34:10 ID:XicgWoHQ0

ジョーカーキャラが欠片も自重しないという新鮮さよ

865 名も無きAAのようです :2016/03/02(水) 09:32:21 ID:.rsrsQRQ0
おつ
補足王の貫禄の補足にワロタ

866 名も無きAAのようです :2016/03/04(金) 12:44:14 ID:nIdmFdAA0
上がってなくて気づかなかったわ
次回も待ってるおつ

867 名も無きAAのようです :2016/03/05(土) 03:02:33 ID:8wjxjwEs0
乙(^ω^)

868 名も無きAAのようです :2016/03/05(土) 09:03:42 ID:Csyq/ZP60
なんとなく読み始めてたけど投下来てたのか

869 名も無きAAのようです :2016/03/11(金) 21:34:12 ID:a8ogHz5U0
おつおつ
ミルナの扱いでワロタ

870 ◆gFPbblEHlQ :2016/04/10(日) 16:59:47 ID:ZLa8.S4U0
31話の書き溜めは3レスです 非常に順調であると言えます
そしてこれは一体?・・・ http://gekitetunchan.blog.fc2.com/

871 名も無きAAのようです :2016/04/22(金) 18:31:14 ID:a7F8PvZs0
なんというか…うん…

872 名も無きAAのようです :2016/05/04(水) 12:49:37 ID:fnFeqV3Q0
もう五月っすよ!

873 ◆gFPbblEHlQ :2016/05/25(水) 12:18:59 ID:LttE8xGY0
29日の午後7時から投下します 長さは60レスくらいです(^ω^)
さらっと最初から読み返しておくと良いことがあるかもしれないです(^ω^)
悪性萌芽は次回で終わりです(^ω^) 長かったNE(^ω^)

874 名も無きAAのようです :2016/05/25(水) 12:58:51 ID:TsLlUR2Y0
楽しみにしてるNE!

875 名も無きAAのようです :2016/05/26(木) 00:16:43 ID:LGZoYmYo0
わあい

876 名も無きAAのようです :2016/05/28(土) 19:25:50 ID:DEoz/IQ20
っしゃあ!公務員試験終わった直後の楽しみじゃ!

877 ◆gFPbblEHlQ :2016/05/29(日) 17:04:10 ID:fZlsqdbg0
書き終えました! 予告通り投下します!

(^ω^)今回は三曲も作中BGMがあります('A`)
(^ω^)イイカンジに再生するもよし! ガン無視もよし!('A`)
(^ω^)今回90レスくらいです! よろしくお願いします!('A`)

878 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 17:52:53 ID:q7br67W60
素晴らしいな
お風呂に入って待っていよう

879 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 17:56:29 ID:nyt5WqB60
もう待ちきれないよ!早く出してくれ!

880 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 18:57:03 ID:fZlsqdbg0

≪1≫



























.

881 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 18:58:09 ID:fZlsqdbg0



























.

882 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 18:58:49 ID:fZlsqdbg0






























.

883 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 18:59:29 ID:fZlsqdbg0


























 始まったのは、もうだいぶ前の事なんだろう。
.

884 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:00:12 ID:fZlsqdbg0


 私は――素直クールという存在は、きっととても昔に始まっている。
 しかし今の私はそれを思い出せない。私は私自身の始まりを思い出せない。


( д )


(  ー )


 ――誰かが居たような、そんな気がする。

 感覚は朧気だ。覚めてしまった夢を思い出そうとするように、彼らの存在は私の中からどんどん薄らいでいく。
 それは孤独となって私の心を蝕んだ。今の私はどうしようもなく独りなのだと突きつけられる。
 しかし苦痛はない。喪失感もない。ただ欠けてしまったのだと確信するばかりで、私は何も感じない。
 失った事を悲しめなくなった事に、ああ、私はとっくに誰かになっていて、彼らはもう想い出でしかないのだと、そう思ってしまう。

 綺麗な想い出はある。まだ残っている。
 私にはまだドクオが居る。私を定義するものは、もうこの世に彼しか居ない。
 想い出になどさせない。見る夢はいつも同じだ。雪が降っている。今日も、明日も、明後日も、ずっと……

.

885 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:01:21 ID:fZlsqdbg0
























 tanasinn


.

886 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:02:47 ID:fZlsqdbg0

≪2≫


 レムナントにある名前も無い小さな町。
 ある日の晩。その町に住んでいた女の前に、彼女の旧友が突然現れた。


爪 ー )

 悪いがこいつらを預かってくれ、と旧友は言った。
 女は戸惑いながらも旧友の頼みを受け入れ、こう尋ねた。


( д @

 この二人はなんだ。傷だらけで寝ているじゃないか……。
 旧友は苦笑いを浮かべて答える。
 ここで自由にさせてやってほしい。見張りはさせているから安心しろ……。

( д ;@

 女が言葉の意味を理解する前に、旧友はあっという間に姿を消してしまった。
 仕方がない……。女はそう呟いて二人を家にあげ、目を覚ますまで二人を看病した。


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887 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:03:45 ID:fZlsqdbg0




川  - )「……う……」





川; -゚)「…………」


川;゚ -゚)「……ここ、は……」



(゜д゜@「……おや、起きたのかい」

 翌朝、先に目を覚ました方は自分を素直クールだと名乗った。
 どうやら記憶を失っているらしく、具体的な話は聞き出せなかったが、


川 ゚ -゚)


( A )

 ……目を覚まさないもう一人の男を、彼女は安心したような穏やかな顔で見つめていた。


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888 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:05:30 ID:fZlsqdbg0


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         第三十一話 「悪性萌芽/After,in the Dark」

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889 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:06:54 ID:fZlsqdbg0



 この町の朝はおばちゃんの一声で始まると言っても過言ではなかった。


(゜д゜@ 「へいらっしゃい! いつもの朝市だよーーッ!」

 すげえ! 行ってみようぜ! 今日は白菜があるぞ!
 などの声援が飛び交う彼女の店は、当時これだけの繁盛ぶりを見せていた。


( 'A`)ノ 「ちぃーす。元気そうだな」

(゜д゜@ 「ああドクオ、おかげさまだよ! 今日は何の用だい?」

 おばちゃんは店先の人混みにドクオを見つけ、彼に話しかけた。
 手際よく他の客の会計を済ませながら、おばちゃんはドクオの言葉に耳を貸す。


('A`)「いつもどおりだ。適当に頼む」

 ドクオはそう言い、片手に持っていた袋をおばちゃんに差し出した。

(゜д゜@ 「あいよ。ちょっと待ってな、片付けるからさ」

(A` )b グッ

 ドクオは無言で踵を返し、人混みから消えた。

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890 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:08:05 ID:fZlsqdbg0


 それから十分ほど経って客足が落ち着き始めると、彼女はドクオが持ってきた袋に適当な野菜・果物を突っ込んでいった。
 その大半は売れ残り。形が悪かったり欠けていたり、痛み始めていたりする物だった。
 余り物で適当に――それが、ドクオのいつもの注文なのだ。


('A`)「おー。今日は当たりの日か」

 おばちゃんが余り物の品定めをしている最中、ひょっこりとドクオが帰ってきた。
 彼は袋の中を覗き込み、にんまりと笑みを浮かべる。


(゜д゜@ 「そうしてやったんだよ。上等なのを残してやったのさ」

('A`)「そうなのか? わりぃな、おばちゃん」

(゜д゜@ 「助け合いこそ人の道ってね。仕事は上手くいってんのかい?」

('A`)「まぁまぁ。余所者扱いが目につく感じだ」

 僅かばかりの金銭と、野菜の入った袋を交換する二人。
 手渡された袋はずっしりと重たい。それは明らかに等価交換ではなかった。

('A`)「わり、それじゃ足りなかったな」

 ドクオはすぐに手持ちの金を出そうとした。
 しかしおばちゃんはそれを無視して喋り出し、ドクオの手を止めさせた。

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891 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:09:31 ID:fZlsqdbg0


(゜д゜@ 「いいかい、仕事場じゃ愛想よくするんだよ?
      あんたは目つきが悪いから絶対に誤解されちまうんだ」

(゜д゜@ 「しかもわざわざあたしが紹介してやったんだからね。
      この顔に泥を塗るようなマネは」

 彼女は、野菜を入れた袋を一瞥して言った。

(゜д゜@ 「するんじゃあないよ。分かったね」


('A`)「……あいよ。いつか大当たりにして返すからな」

(゜д゜@ 「今すぐ返せないモンの話なんかしないでおくれ。
      ほれ、仕事の邪魔だよ。帰った帰った」

 おばちゃんはドクオを手で払いのけ、店の奥に戻っていった。
 ドクオはそれを見送ってから店を離れた。
 帰り道、袋からミカンを一つ取り出して食べる。

('A`)「うーん。うまいっ」

 ドクオが住んでいる小屋は町から少し離れた場所に立っていた。
 朝食の支度をしているのか、小屋の煙突からはモワモワと煙が立ち上っている……


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892 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:11:04 ID:fZlsqdbg0





('A`)「買ってきたぞお」

 その小屋に到着したドクオは、戸を開けながら気の抜けた声色で呼びかけた。
 玄関がリビングに直結しているので、台所に立っていた彼女の姿はすぐ目に入った。


川 ゚ -゚)「ああ、適当に置いといてくれ」


 素直クールはさっと振り向いてドクオに指示を出し、さっと視線を戻した。
 絶賛加熱中のフライパンには程よく焼けたベーコンと目玉焼きが乗っている。
 ちょうど出来上がるところなのだろう。テーブルにも二人分の食器が用意されていた。


('A`)「おーう」

 踵を使って靴を脱ぎ捨て、言われたとおり適当に、食卓の足元に袋を置く。
 それからドクオは素直クールの隣に行き、シンクの方で手を洗い始めた。


川 ゚ -゚)「おばちゃんに何か言われたか?」

('A`)「……愛想よくしろって」 ジャー

川 ゚ -゚)「……難題を出されてしまったな」

('A`)「まったくだ」 キュッ


川 ゚ -゚)「あ、手を洗うついでに布巾を頼む」

('A`)「おう」 キュッ ジャー


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893 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:13:59 ID:fZlsqdbg0


 食卓のお皿にベーコンと卵焼きが移される。
 素直クールは空いたフライパンをシンクに突っ込んで水をぶっかけた。
 ジュッ、という音を立てて熱が即死する。

川 ゚ -゚)「ドクオ、こないだのパンがまだ余ってるんだ。
     そろそろ食べきりたいから出してくれ」

('A`)「パンなー」

 ドクオがチェック柄の布が被せてあるカゴを持って席につく。
 素直クールもさっと手を洗って椅子に腰掛けた。
 そして最後にカゴの布を取っ払い、二人は手を合わせて呟く。

('A`)「たーきゃす」

川 ゚ -゚)「いただきます」


〜十分後〜


('A`)「ごっそさん」

川 ゚ -゚)「ごちそうさまでした」

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894 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:15:00 ID:fZlsqdbg0


 朝食が終われば次は仕事だ。
 ドクオは手早く食器を片付け、口をゆすいで顔を洗って身支度を済ませていく。


('A`)「今日も遅くなる。町の見回りもあるし、夕飯はおにぎりとかにしてくれ」

川 ゚ -゚)「ん、今日の弁当。それで夕飯はおにぎりだな。作っておく」

('A`)「わりぃな」

 差し出された弁当を受け取る。
 ドクオは散らばった靴を器用に履き直して戸を開けた。


('A`)「行ってくる」


川 ゚ -゚)「……ああ。いってらっしゃい」





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895 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:16:07 ID:fZlsqdbg0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 ドクオの仕事は午後十時を過ぎる頃には区切りがついた。
 メシウマとレムナントを隔てる壁、今度その近くに新しい町ができるらしい。
 町の名前はイッテヨシ。彼の仕事はその諸々の手伝い、というわけである。

('A`)「おつぁえーす」

\うーい/

 適当な挨拶で職場を出て、ドクオはあの町への帰路につく。
 二つの町は大きく離れていた。歩いて帰れば朝が来てしまう程だが、しかし帰宅に大した手間はかからない。
 ドクオが内藤によって与えられた“性能”はほぼ万能。それを使えば瞬間移動など思いのままだ。

 一瞬念じて目を閉じ、目を開ける。
 すると、彼の目の前には自宅の戸があった。

('A`)(もう寝てっかな……)

 町はすっかり眠りに落ちていた。どこの小屋も明かりを消し、明日の為に今日を終えている。
 唯一、ドクオの帰りを待っているこの小屋だけが窓から光を漏らしていた。

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896 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:18:39 ID:fZlsqdbg0


('A`)「……あ、ただいま」

川 ゚ -゚)「……ああ、おかえり」

 素直クールは椅子に座ったままドクオを出迎えた。
 彼女はかなりの早寝なのだが、どうやら本を読んでドクオを待っていたらしい。

 家に上がったドクオはまず、空になった弁当箱を自分の手で洗い始めた。
 家事全般を任せている手前、彼はこういう部分で彼女の手伝いをしていた。


('A`)「今日どーだった」

 ドクオは弁当箱を洗いながら素直クールに話しかけた。
 彼女もまた、本を読みながら彼の問いに答える。

川 ゚ -゚)「いつもどおりだ。おばちゃんの手伝いで畑をいじっていた」

('A`)「ふーん。ま、こっちも普段と大差ないな。
    似たような建物を作るばかりだ。変化がない」

川 ゚ -゚)「お疲れさま。風呂はどうする」

('A`)「見回りの後だな」

 この町では住民が交代で町の見回りをしている。
 そして今日がその当番の日。今からざっと三時間ほど、ドクオは特に当てもなく町をブラつかねばならない。

 洗い物を済ませると、ドクオは服の裾で大雑把に手を拭った。

川 ゚ -゚)「風呂、用意しておこうか?」

('A`)「いい。先に寝てろ」

 そうか、と言って彼女は本を畳む。

川 ゚ -゚)「今日は一緒に寝たかったんだがな」

('A`)「……行ってくる」

 ドクオはふたたび、外に出ていった。

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897 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:21:14 ID:fZlsqdbg0





 彼らがこの町に来て、一ヶ月が経とうとしていた。
 素直クールにも特に変わった様子はなく、平穏な生活が続いている。


( 'A`)「……」テクテク

 見回りのため、町の中を歩く。
 しかし十分も歩くと町の端っこに着いてしまった。
 これをあと何十回も繰り返すんだと思うと、ドクオは少し気が滅入った。

 だが今日は町外れの岩場に男が立っていた。
 ドクオはその岩場に近付き、男の背中に話しかける。





('A`)「……特に何もないぞ」



( "ゞ)「まあ、そう言うなよ」

 デルタ関ヶ原は振り返り、酒瓶をちらつかせて言った。

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898 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:23:50 ID:fZlsqdbg0

≪3≫


 二人で適当な岩に腰を下ろす。
 デルタはポケットから透明なグラスを取り出し、そこになみなみと酒を注いだ。
 グラスには明らかにポケット内の糸くずが浮いていたが、ドクオは気にせずそれを受け取った。


( "ゞ)「こいつはイイ酒だ。ここらじゃあ飲めん」

 ドクオは口元で一旦グラスを止め、その香りを軽く吸い込んだ。

( "ゞ)「どうだ」

('A`)「……まったく分からん。お前がイイって言うなら、まぁイイんだろう」

 ドクオがひとくち酒を煽る。デルタも酒瓶に口をつけた。ラッパ飲みである。
 アルコールの塊が、デルタの喉をごくんごくんと直下していく。
 デルタはその感覚に至極満足気で、彼は息が続く限りたっぷり飲んでから酒瓶を口から離した。


('A`)「そっちの様子はどうだ」

( "ゞ)「変わらずだ。じぃ様達からの連絡は無い。
    あの連中から一ヶ月も逃げるなんざ、内藤って奴はやり手だな……」

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899 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:25:22 ID:fZlsqdbg0


 一ヶ月前。じぃは素直クールとの激闘(全略)に勝利し、彼女を再び最初に状態に戻していた。
 そして全員一致のもと、彼女とドクオをこのレムナントの地に預けたのだ。

 その後、じぃは阿部高和と忍者を連れて人工片鱗の生みの親・内藤を探す旅に出ていった。
 それが具体的な解決に繋がるとは誰も思ってはいなかったが、とりあえず事の発端を潰しておくことにしたのだ。
 ついでに案外ワクチンのようなものが見つかるかもしれないという目論見もあり、とにかくじぃ達は武神屋敷から姿を消していた。

 最初の状態の素直クールならドクオを一緒にしておけば大事にはならない。
 しかしいつまた彼女が破綻するかも分からないので、デルタが気まぐれに彼らの様子を確かめていた。
 それも今日で四回目。ドクオいわく、彼らの生活は慎ましく穏やかであった。


('A`)「……今のところ、普通に暮らせてる。呆気ないほど何も起こっていない」

( "ゞ)「毎度のセリフだな。ま、それに越したことはねえけどよ……」

( 'A`)「……」

 ドクオはグラスを覗き込んで口を閉ざした。

 彼女との一ヶ月の生活で、内心に溜まった言葉は山ほどある。
 しかし、それを口にするのはどうしても憚られた。
 それらの言葉は、ドクオにとっては余りにも無責任なものだったからだ。

( "ゞ)「……」

( "ゞ)「……牙を抜かれたって感じだな」

 ごくん、と塊で酒を飲み下す。デルタは多くを語らなかった。

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900 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:26:33 ID:fZlsqdbg0


( 'A`)「……彼女は今、落ち着いている」

( "ゞ)「ああ」


( 'A`)「……俺は正直、今でもあの女が暴走したという話が信じられない。
    俺を、その……独占したがってたとか……」

 レムナントの荒野。
 夜は肌寒く、乾いた風がゆるやか壁の内側を巡っている。
 循環し続ける空気の流れが、ドクオとデルタの体を静かに撫でていた。


('A`)「……この状況は、たぶん一時凌ぎだ。
    いずれ確実に終わる。だが、今の彼女はこのままを望んでいる気がする……」

( "ゞ)「……ま、良いモンだよな、普通の生活はよ……」

 酒瓶を置き、デルタは遠くの夜空を見つめて語った。

( "ゞ)「俺は戦うしかなかった。でなけりゃ心臓の病でお陀仏、死んでた。
     遊びのひとつも知らねえし、静かな生活ってのがどういうものかも、よく分からねえ……」


( "ゞ)「……居心地が悪くねえんだったら、もうちょい続けてやれ」

( "ゞ)「始末はこっちでつけてやる。それまで気にせず、楽に隠居してりゃあいい……」


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901 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:27:45 ID:fZlsqdbg0


('A`)「……」

('A`)「……もう、終わったんだろうか……」

 ぽつん、とドクオの言葉が孤立する。


('A`)「こんな生き方を、俺が選んでもいいんだろうか……」


('A`)「……俺は、彼女との生活を、幸福であると感じている……。
    だけど、今の彼女は本当の彼女じゃあない」

('A`)「彼女は今でも自分自身から目を逸らしたまま、何も解決できていないんだ……」


('A`)「……それをどうにかしないまま、上手く利用して、俺は、幸せを得てもいいのか……?」



('A`)「……こんな道半ばで、俺は……」

('A`)「足を止めても、いいのだろうか……」


 彼の言葉に答える者は居ない。
 残されたのは酒瓶ひとつ。そこに余った酒を飲みきってから、ドクオは見回りに戻った。

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902 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:28:25 ID:fZlsqdbg0














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903 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:29:41 ID:fZlsqdbg0


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('A`)「……まだ起きてたのか」


川 ゚ -゚)「手が止まらなくてな。小説は、タナシンの力では作れない」

 小屋の電気は消され、室内を照らすものは小さなオイルランプだけになっていた。
 素直クールはドクオを見送った時と同じく、椅子に掛けて本を読んでいる。

  _,
川 ゚ -゚)「……酒臭いぞ」

('A`)「町の爺さんが飲んでてな、ちっと飲んできた」

 テーブルにはサランラップに包んだおにぎりが四つ置いてあった。
 ドクオは椅子に座り、その中からひとつを掴み取る。

川 ゚ -゚)「あとで水も飲んでおけ。明日に響く」

('A`)「明日は休み。これ中身なんだ?」

 ドクオはサランラップを剥きながら言い、答えが返ってくる前にかじりついた。

('A`)「シャケか。うまい」

川 ゚ -゚)「風呂は用意しておいた。入ってくるといい」

('A`)


('A`)「……だったらありがたく入らせてもらうが、やらなくていいと言っただろう」

川 ゚ -゚)「気が向いたからやっただけだ。文句あるまい」

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904 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:30:57 ID:fZlsqdbg0


('A`)「……」


川 ゚ -゚)「……どうした」

 ふと動きを止めたドクオを一瞥し、彼女は小説のページを捲った。


('A`)「……また、デルタに嘘をついてしまった……」

川 ゚ -゚)「……」



('A`)「……あと二ヶ月か」

('A`)「きっと、すぐに過ぎていくんだろうな……」

 ドクオはおにぎりを食べきり、テーブルにうなだれた。

川 ゚ -゚)「……私の嘘に付き合う必要はないんだぞ。
     次に彼が来たら言えばいい。それで済む」

('A`)「……俺は、作り物だ」

 胸に手を当て、ドクオは呟く。

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905 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:33:35 ID:fZlsqdbg0


('A`)「内藤によって作られた人間の模造品。
    俺は本来、とっくに死んでいる筈の出来損ないだ……」

('A`)「それをここまで保持出来たことすら奇跡だし、俺はもう十分に生きたと思う……」


川 ゚ -゚)「……」

('A`)「……あと二ヶ月だ、素直クール。
    俺はあと二ヶ月だけ、お前の望みのままに生きる」


( 'A`)「今の生活は多分……未練、というものなんだろう。
    未練がましいとも言っていい。お前だけじゃなく、俺も」

 ドクオは俯き、嘲笑する。

('A`)「良かったよ。俺の人生に、俺以外の誰かが居てくれて。
    それだけで救われた。幸せだった……」



川 ゚ -゚)「……今日はよく喋る」

 本を閉じ、素直クールは席を立った。

川 ゚ -゚)「私も疲れた。先に寝る。風呂にはちゃんと入っておけよ」


('A`)「……今夜は冷える。俺の部屋で、寝ててもいい」

川 ゚ -゚)「……分かった」

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906 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:34:53 ID:fZlsqdbg0



 ――ドクオは、彼女を庇ってデルタに嘘をついていた。


 「何も起こっていない」とドクオは語った。しかし、事はとうに起きていた。
 ドクオと素直クールがこの町に来て数日後、それは実に呆気なく起こり、彼らの手によって隠蔽されていた。

 しかし起こった事というのも単純で、人工片鱗の副作用に耐えきれず死んだドクオを、素直クールがtanasinnの片鱗で存命させたというだけの話。
 これだけなら別に大した事ではない。むしろ武神屋敷でのコールドスリープを考えれば幾分上等とすら言える。

 だが、ドクオはこれを秘密にした。
 素直クールはデルタ達に打ち明けてしまうつもりだったが、ドクオ本人がそれを止めたのだ。

( 'A`)

 ドクオが素直クールの顛末を知ったのは、この町に初めてデルタがやって来た三週間前の晩のことだった。
 その時点で彼は自分が片鱗によって生かされていると素直クールから聞かされており、その事もデルタに話すつもりでいた。

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907 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:37:31 ID:fZlsqdbg0


 ところがドクオは、彼女の身に起きたことを聞いているうちに、デルタに事実を語るのを躊躇した。

 素直クールという人格は既に破綻し、もはや手を付けられないほどに擦り切れている。
 それが事実なのは容易に理解できたし、自分の身に起こったような激しい副作用が彼女にだけ無いのはありえないと覚悟も出来ていた。

 依存と独占欲。心の綻び、指向性を欠いた肉体。
 永遠の走馬灯。素直クールが望んだものは、ただの停滞だけ。

 本来なら叶うはずもないが、かといってtanasinnの力を利用してまで願うようなものではない矮小な願望。
 何でもない日が毎日続けばいい。今の幸せな瞬間がずっと続けばいい。
 穏やかに、静かに平和に生きていければいい……。

 確かに彼女は間違っている。人工片鱗によって精神の箍を外された今、彼女はもはや独善の塊でしかない。
 だが、それでも彼女の願いは純粋で正しかった。
 途方もない戦いに巻き込まれながら、しかし自身の為にその力を振るわなかった人間。
 その行く末が矛盾と破綻でしかなかったとしても、彼女の願いは人間として正しいとドクオは思ったのだ。


( 'A`)(結局、じぃ様の言った通りだった。
    あのとき俺が妥協していれば、彼女の弱さを受け入れていれば……)


 ついでに言えば、ドクオは理屈ではなく思ってしまったのだ。

 彼女が望む永遠の停滞のなかに自分の居場所が用意されていることに、ほんの少し喜んでしまった。
 一度は彼女の在り方を否定した自分を、それでもなお求めてくれることに安心してしまった。
 人間ではない筈の自分に人間としての意味を与えようとする彼女を、ドクオはもう、強く拒めなくなっていた。

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908 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:40:37 ID:fZlsqdbg0




 ――それでも、素直クールは間違っている。


 一時の迷いは、しかしドクオの考えを変えなかった。
 ドクオは同情を同情だと切り捨て、間違いを間違いだと見限った。
 彼女と共に永遠の停滞に縋るのは容易だ。しかし、それでは駄目だとドクオは思い切った。

 作り物だからこそ、偽物の存在だからこそ、彼女の間違いを誰よりも真っ直ぐ正すことができる。
 正しさの奴隷でなければ彼女を救う事はできない。
 ドクオは彼女に用意された人間としての居場所を、彼女の為に捨てることを決意した。


 三週間前の晩、デルタとの話を終えたドクオは小屋に帰って素直クールに本心を告げた。

 お前は間違っている。だが、今の生活は正しいものだ。正しさの奴隷として、ドクオは淡々と語っていった。
 だから俺は決めた。俺は三ヶ月だけ今の生活を続ける。
 三ヶ月後、もし二人の願いが同じでなかったら、その時は、俺達の手で決着をつけよう。

 ドクオと素直クールは間違いながら、しかし正しくあろうと三ヶ月の猶予を設けた。
 ぶっちゃけ問題を先送りにしただけだし、二人もそれを自覚していた。

 だが、二人にはもうこれしかなかった。
 どちらも自分を曲げる事は出来ないと分かっていたし、例えどれだけ時が経とうと何も変わらないのは分かっていた。
 それでも今の生活は正しく平和で何事もなく、二人とも今の生活が続けばいいとは思っている。

 しかしドクオは彼女の間違いを正したかった。素直クールは彼とずっと一緒に居たかった。
 そういうどうあっても噛み合わない在り方を共存させるには、もうこういう誤魔化し方をするしかなかった。
 結論の先延ばしだけが彼らを繋ぎ止めていた。それを妥協と呼ぶのなら、彼らはきっと妥協を受け入れたのだ。

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909 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:42:39 ID:fZlsqdbg0


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 ――時系列は現在に戻る。



 デルタ関ヶ原は語りを中断し、どでかい溜め息をブッ放した。

( "ゞ)「……まあなんつーか、奴らは俺に黙ってそういう事をしていた。
     俺が気付いた時にはとっくに三ヶ月が経って、手遅れだった」

 デルタは目を背け、嘘をついていた。



( "ゞ)「最後は言うまでもねえだろう。殺し合って、男の方が負けた。
     だが女は男を失った悲しみに耐え切れなかった。自業自得だがな。
     しばらくは例の町に一人で暮らしてたらしいが、それも長続きしなかったらしい」


( "ゞ)「……となれば代わりが欲しくなる。で、あいつにはそれを実現する手段があった。
     あいつは当然のようにtanasinnの片鱗に頼り、そして――」



 デルタはドクオを指差し、続きを言った。



( "ゞ)「――ドクオの顔と偽の記憶を植え付けた、お前という代替品を作った」



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910 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:44:20 ID:fZlsqdbg0


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           第一話 「永遠の夜の最中で」

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911 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:45:00 ID:fZlsqdbg0

≪1≫


('A`)「……」


 とてつもなくブサイクな顔をした少年が一人。

 名をドクオといい、彼はどうしようもない根暗クソ野郎だった。



 ドクオは、 『レムナント』 という場所に住んでいた。


 高く、分厚い壁に囲まれた荒野。省かれ者の集う場所。
 行き場を失った者達が最後に辿りつく場所、それがレムナントだ。


 そんなレムナントの片隅にある、小さな町。

 ドクオの家はそこにあり、彼の居場所もまた、そこにあった。


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912 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:48:17 ID:fZlsqdbg0


11月18日(金)

 ドクオが拠り所としていた素直クールとの生活は全て素直クールが捏造した偽物の記憶だった。
 どれもこれも彼女が理想とした設定と空想に過ぎず、実際はただひたすらドクオという名前の肉人形を彼女が監禁しているだけのつまらない話だった。
 ようやく念願叶って私だけのドクオを手にした素直クールはひたすら我欲を満たし続ける。
 設定年齢は九歳。tanasinnで捏造した存在ではあったが、子供というのは実に取り扱いやすかった。
 そこに物語性は無い。素直クールはあの小屋に一人閉じこもり、おばちゃんや町の人々からの呼び掛けにも答えず際限のない情欲を満たし続けた。
 その生活は十年以上続いた。既にデルタは素直クールを見限っていたし、じぃ様達が彼女の前に現れる事も無かった。
 彼女は永遠の停滞を手に入れていた。


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913 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:48:57 ID:fZlsqdbg0


 朝方、八百屋のおばちゃんが野菜を表に並べていた。
 ドクオは小屋の陰に身を隠しながら、おばちゃんの様子を遠くから窺っている。

 ドクオの作戦はこうだ。

 おばちゃんが店の奥に引いた瞬間、野菜とお金を交換し、逃げる。
 結果、誰とも遭遇せず野菜を獲得できるという寸法だった。

 完璧な作戦だった。


(゜д゜@ 「あら、いらっしゃい」

(;'A`)「エッ・・・」

 普通に見つかったので、ドクオは俯きながらおばちゃんの前へ行った。


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914 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:49:37 ID:fZlsqdbg0


(゜д゜@ 「いやぁ、あいかわらず湿ったハンペンみたいな顔だねぇ」

(;'A`)「オ・・・オハ、オス・・・」

 湿ったハンペン顔の根暗クソ野郎は吃った声で挨拶を済ませると、急いで欲しい物を手に取った。
 キャベツ、たまねぎ、オヤツに食べるリンゴなど、今日一日分の食材を次々と選ぶ。


(;'A`)(あれ・・・トマトが無い。無いぞ・・・)


(゜д゜@ 「ん? どうかしたかい?」

(;'A`)「ウェス! アノ・・・トマッ・・・」

(゜д゜;@ 「……?」

(;'A`)「トマ・・・トマッ・・・」


('A`)


('A`)「トメェイトゥ」

(゜д゜@ 「yeah」

 素晴らしい英会話だった。
 かくしてドクオは食材を手に入れ、自分の家へと帰っていった。

.

915 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:51:35 ID:fZlsqdbg0


11月18日(金)

 しかし彼女の停滞は長くは続かなかった。永遠というには短すぎる、たった三十年の停滞にも終わりが来た。
 素直クールは直ってしまったのだ。ドクオという存在を思う存分に使い潰した結果、彼女は本来の自分を取り戻してしまった。
 その日の朝は絶望的だった。自分がした事を何もかも覚えている。何を願い、何を裏切り、何を成したのか全て。
 ドクオと過ごした最後の三ヶ月。その思い出の場所だった小屋は心身を劈くような臭いに満ちていた。そういうものが染み付いていた。
 それを嫌だとも思わない正気の自分が、彼女はもう気持ち悪くて仕方がなかった。


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916 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:52:49 ID:fZlsqdbg0


 この町は、とてもとても小さな町である。

 レムナントにある他の地域と比べても、この町の生活水準はかなり低い部類に入る。
 電子機器の類も十分には無く、立派な家など一つも建っていない。
 だが、これらの不自由を意にも介さないほど、この町には“情”というものが溢れていた。

 事実、湿ったハンペン顔であり、さらには日常会話もロクに出来ない根暗クソ野郎が、今日もこうして雑草のように生きている。
 町は平和だった。争いの種も無く、ましてやその芽が出る兆しも無い。
 情があり、明日がある。この町は確かに貧しかったが、そういうものに満ちていた。

 しかし、ドクオにはこの平和が堪らなく もどかしかった。

 平和とは“間”である。そして“間”はいつか終わりを告げる。
 ドクオはそう確信し、漠然とした“何か”を待ち望んでいるのだった。


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917 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:53:37 ID:fZlsqdbg0


 この町に建っている建物は、どれも一朝一夕で建てたような掘っ立て小屋ばかりだった。
 町には似た風貌の小屋が十列ほど並んでおり、それぞれ店にしたり自宅にしたり、自由に活用している。
 ただしレムナントの土地は全体的に荒地なので、ぶっちゃけ住み心地は悪かった。

 ドクオの家もそんな掘っ立て小屋の一つで、彼の家は、町から少し離れたところにポツンと建っていた。

 彼には素直クールしか居ない。いつからそうだったか誰も知らないが、少なくとも、ドクオはずっと彼女と二人で生きている。
 気がつけばこの町に来ており、気がつけば町外れの小屋に閉じ込められていた。ドクオはそんな一生を自分の末路として疑いなく受け入れていた。


('A`)(トメェイトゥ……)

('A`)(……恥ずかしい……死にたい……)

 小屋に着いたドクオは野菜を片付けると、悶々としたままベッドに転がった。
 見上げると、雨の日には全力で雨水を迎え入れるガバガバの天井が、青空を覗かせていた。


('A`)(ただでさえ死にたいのにトメェイトゥって……もう死のう……)


( 'A`)(首吊り用のロープは……)

 そのロープは今、外で洗濯物を吊るしていた。


('A`)(練炭は……)

 ご飯を炊いていた。


('A`)(詰んだ……死のう……)

( 'A`)(あ、でも死ぬ為の道具が……)


('A`)

('A`)(やっぱ詰んだ……)

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918 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:54:17 ID:fZlsqdbg0



 ガバガバの天井を見上げながら、ドクオは当てもなく言う。



('A`)「うわぁ〜〜〜死にてぇ〜〜〜〜〜」


「死ぬぅぅぅぅ〜〜〜」


('A`)「いいな〜〜〜」



('A`)



(;'A`)「――ん!?」

 ドクオは咄嗟に体を起こし、天井から青空を見上げた。

  ,_
('A`)「……あれは……」


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919 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:54:57 ID:fZlsqdbg0



川;゚ -゚)「――――ああぁぁぁああああぁぁああぁぁあぁぁぁ!!」

 空から女が落ちてくる。
 ドクオはそれを避ける間もなく、マヌケな断末魔を残して死んだ。


('A`)「うわっ」


 次の瞬間、ドクオの小屋は粉々に砕け散った。

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920 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:56:04 ID:fZlsqdbg0


11月18日(金)

 もう終わろう。彼女は思った。ドクオとの出会いをやり直し、せめて彼を人間としてこの世に送り出そう。
 その為に余りの命を使おう。無理をしよう。彼の為の犠牲になろう。私はもう十分に生かされた。
 彼女は彼との出会いを捏造し、以降ドクオが九歳から十四歳になるまでの五年間を平凡に過ごした。
 そうしたある日、ふたたび精神の破綻を予期した彼女は荒巻スカルチノフに自身を売り渡した。
 そうしなければ同じ事が起こると分かっていた。素直クールは、やはりもう手遅れだった。


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921 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:56:44 ID:fZlsqdbg0














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922 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:58:14 ID:fZlsqdbg0














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923 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 19:59:50 ID:fZlsqdbg0






 平和とは“間”である。そして、“間”はいつか終わりを告げる。
 ドクオはそう確信し、漠然とした“何か”を待ち望み、素直クールに出会った。

 今のドクオには、胸にぽっかり開いた穴がなにかに塞がれたような感覚があった。
 これまで抱えていた濁った感情が、胸の内で青く澄みきったような――


 ――ドクオは、これ以上のことを考えなかった。
 なぜなら、それが偽物の記憶であると分かってしまうから。


“あの日の出来事を理解したくない”

“いつまでもあの日を忘れたくない”


 この二つの願いが、ドクオの思考を緩やかに停滞させていた。

 理解とは忘却の入り口である。
 ドクオはそれを知っていた。

 だからこそ、彼は理解しないことで忘却を拒んだのだ。
 もちろんこの世界に永遠は無い。だが、あの日を理解しないことで永遠の思い出にすることはできる。
 それはまるで箱に閉じ込めたネコのように、誰にも理解されず、触られず、孤独と引き換えに小さな永遠を手に入れるような――

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924 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:00:31 ID:fZlsqdbg0



( 'A`)(“間”は終わった……じゃあ今は、何だ?)

 トラックの助手席で、ドクオは思考を巡らせた。
 荒野を走るトラックは揺れが大きかったが、彼はそんな事は気にせず考え続けた。


( 'A`)(……)



('A`)「……わっかんねー」

<_フ"ー゚)フ「なにが」

('A`)「バッカお前、ただの独り言だよ」

<_フ"ー゚)フ「あっそ。じゃあしりとりやろうぜ」


<_フ"ー゚)フ「まずは俺からな。トンボ!」

('A`)「……なぁ」

<_フ"ー゚)フ「あ? お前しりとりも出来ねーのかよ」

('A`)「永遠に続くしりとりって、あると思うか」

<_;フ"ー゚)フ「永遠に……? いきなり何言ってんだお前」

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925 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:02:04 ID:fZlsqdbg0


 エクストは苦笑いでドクオの顔を覗き見た。

('A`)「……」

 憂いを帯びたその顔は、五年前の頃のドクオを想起させた。
 あの頃、ドクオは人間らしさというものを一切持ち合わせていなかった。
 それをエクストとおばちゃんで一から育て上げ、ようやくここまで持ち直したのだ。

 エクストは、真剣に言葉を考える。


<_フ"ー゚)フ「あー……まぁ、あんじゃね?
         つーか永遠って、そんなにしりとりやったら飽きるぜ?」

<_フ"ー゚)フ「それによ、自分の永遠なんてのに付き合ってくれる奴はそう居ないと思うぜ、俺はな」

 正しさの後には間違いが続く。
 人間は終わらないしりとりを延々と繰り返している。

( 'A`)「……そうかよ、ボンクラ」

<_フ"ー゚)フ「はっはっは――」


<_#フ"д゚)フ「――ってなんだとオラァ! マジで答えてやったのに、ボンクラはねーだろ!」

(#'A`)「アァ!? うっせーしりとりだよバーカ! さっさと次言えよ、ラだぞ!」

<_#フ"ー゚)フ「ああそうかい、じゃあ言ってやるよ! ラーメン!」


('A`)「……ラーメ」

(*'∀`)「ン!?」

('A`)「ラーメン!」ドンッ!


(#'∀`)「バァァァァァァァカ!!」

<_#フ"Д゚)フ「ンだこらジョートーだテメー! 表出ろやァ!!」

(#'A`)「ああ出てやるよ!! 今度こそ白黒つけてやる!!」

 こうして二人は今日の仕事に大遅刻し、しかも喧嘩で怪我をするというバカを仕出かしたのだった。

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926 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:02:44 ID:fZlsqdbg0














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927 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:04:02 ID:fZlsqdbg0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

               Fight with Their Solitude
         https://www.youtube.com/watch?v=Qltn08sWB0k

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928 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:04:47 ID:fZlsqdbg0

≪4≫





( "ゞ)「……お前という存在は、そもそも根本的に間違っている。
    そもそもお前は実在しない。お前は誰でもない」


( "ゞ)「お前はあれが望んだ着せ替え人形でしかない。
     秘密にしてて悪かったな。これで全部だ」


('A`)


<_プ-゚)フ「……」


('A`)


('A`)「……なんつーか、あれだな……」

川  - )

 ドクオは、胸に抱き抱えている素直クールの顔を見下ろした。
 穏やかな寝顔に陰はない。
 このまま、このまま二人で昔に戻れれば、俺達はどれだけ幸せなのだろう……。


('A`)「……まあ、長ったらしく聞いたけど……」


('A`)「結局、答えは変わらねえか……」


.

929 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:05:27 ID:fZlsqdbg0



('A`)「…………どこから嘘で、どこまで嘘か。
    多分、前の俺ならその辺を気にしたんだろうな」


('A`)「……どっちでもいい。俺は確かにあの夜、あの瞬間に救われた」

('A`)「救われちまったんだよ。嘘でもなんでも。
    俺は今でもどうしても、あの夜を信じきったままでいる……」


('A`)「……俺もこいつを否定できねえよ。
    だってよ、俺が出した答えは “正しさを踏み躙ってでもこいつを自分の物にする” なんだ」


('A`)「正しさで救えないと分かった時から、もう……間違える覚悟はできていた。
    俺はその道を歩き始めた。取り返しはつかないし、取り戻すつもりもない」

 ドクオは失った右腕を一瞥した。


( "ゞ)「……素直クールがしたように、今度はお前がそいつを求めるってか……」

 デルタはいよいよ痺れを切らし、もう好きにしろとでも言いたげに大地に寝転がった。



('A`)「……やっぱ駄目ですかね」

( "ゞ)「……いんや、別に。前のドクオは正しさで救おうとした。
     それを今度は間違いでって事だろ。それもありなんじゃねえの……しらね……」


.

930 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:06:16 ID:fZlsqdbg0


( `ハ´)「……」

('A`)「……なぁアンタ。あの娘とエクストを頼んでもいいか」



ミセ;゚ー゚)リ チラチラ

 少し離れたところからこちらの様子を見ているミセリ。
 ドクオは彼女の方を向き、軽く手を振って見せた。


( `ハ´)「……それは構わんが、その前に」

 もはや完全に空気だったシナーは、同じく完全に空気だったミルナ(気絶中)を指差した。


( `ハ´)「あれの始末はどうする。貴様の許可、まだ貰っておらん」

(;'A`)「……あー……」

( "ゞ)「もういいよ、シラけたよ。そいつもう放っとけよ」

 地面に大の字で寝転ぶデルタ関ヶ原。やばいくらいやる気を失っていた。


( `ハ´)「そうはいかん。貴様ら身内の云々はともかく、こいつの始末は後回しにはできん」

( "ゞ)「だったら戦力に加えようぜ。雑魚だけど。
    なんかいま顔付きって連中が来てんだよ。
    こいつ、そいつらと顔見知りだから良い餌になると思うぜ」

( `ハ´)「……」

( "ゞ)「しらねえけどさァ、俺らが居てもいいとこ互角って敵らしいんだわ。
    マジならこんなの殺してるより断然スリリングだぜ、どうよ……」


.

931 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:08:18 ID:fZlsqdbg0


(;'A`)「……あの」

(;'A`)「……出来れば、生かしてほしい。
    こいつと決着をつけたいのは俺も同じなんだ。
    出来れば、俺を先にしてほしい……」


( `ハ´)「……だが、この男が我らの弟子を殺した事実は消えん。
     貴様が決着をつけるのなら、その戦い、必ず私に見届けさせろ」

(;'A`)「……ありがとうございます。約束します」

 ドクオは深々と頭を下げた。
 その後、素直クールを抱えたまま立ち上がり、ドクオは次にミルナの元に向かった。



(; д )「……」

('A`)「……」


('A`)「……気絶したフリか? 俺より上手いな……」

(; д )「……全部バレてると思うと恥ずかしくてな。
     それに、本当に動けん。武神連中は化け物だぞ……」


(;'A`)「……ちゃんとtanasinnで治しておけよな」

(; д゚ )「……そこまで上手く扱えん。
     お前のが、tanasinnに好かれているらしい」

.

932 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:08:58 ID:fZlsqdbg0


('A`)「……なんか顔付きって奴らが来てるんだってさ。
    お前はそっちが本命なんだろ?」

( 'A`)「……だったら全力、出せねぇとな……」

 ドクオはそう言い、しゃがんでミルナの手を握り締めた。
 途端その手に淡い光がともる。光は徐々にミルナの方に移っていった。

 それは、ミルナがドクオに能力を分け与えた時と同じ現象だった。


(; д゚ )「……能力無しでどうするつもりだ。
     そいつと決着つけたいんだろ」

('A`)「……もういいんだ。なんか、腹ァ括ったよ。
    俺はどうやったって無能なんだ。今更だけどさ」

('A`)「……それに薄々感じてたんだ。
    どれだけ強くても、この先どれだけ俺が強くなっても、それじゃ多分、こいつを救えない……」


('A`)「……俺はさ、強くなれば助けられると思ってたんだ。でも違った。
    俺が求めていたような強さは無意味だった。本当に粗大ゴミだった……」

.

933 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:10:24 ID:fZlsqdbg0


(; д- )「……人のチカラを使っておいて、よくもぬけぬけと……」

('A`)「……俺は俺で終わらせてくる。
    だから、お前もお前で頑張れよな」

 ミルナは痛みに耐えながら、ドクオの目を見て小言を呟いた。

(; д゚ )「結局てめえ、最後の最後まで腹立たしいほど他人事だな……」

('A`)「……俺らの決着は最後だ。右腕の借りも返す。それまで絶対に死ぬな」


(; д゚ )

(; д- )「……もう行け。俺も回復に集中する」

('A`)「……」


('A`)「……またな、撃鉄の」

(; д- )「お前もな、撃鉄のドクオ……」

 ドクオは、ミルナのもとを去っていった。

.

934 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:12:27 ID:fZlsqdbg0





('A`)「――エクスト、俺はこいつと一緒に人気のないとこに行く。
    そこで決着をつけてくる。多分、大きな戦いになるからな……」


<_プ-゚)フ「……」


('A`)「俺はもう、全力でtanasinnに頼ってこいつをどうにかする。
    とにかくなんとかしてくる。多分、顔付きとの戦闘に加わった方がいいんだけどな……」

<_プ-゚)フ「……そりゃあそうだな。
         お前、最大の敵を前にして自分一人の戦いをしに行くんだぞ」

(;'A`)「……我ながら、とんでもない馬鹿だな」

<_プー゚)フ「言えてるぜ……」


<_プー゚)フ「……なあ、結論を負う覚悟はできたのか?」

('A`)「……ああ。大丈夫だ」

<_プー゚)フ「……ならもう言うことなんかねえ。
         これ以上カッコ悪い思いさせんな、行けよ……」

('A`)「……」

('A`)「……あれだ、お前が居なけりゃ、俺は俺じゃなかった。
    言いたかねえけどよ、お前は良い兄貴分だったと思うぜ」


<_プー゚)フ


<_フー )フ「……ったく、おっせえよなあ……」

 エクストは一瞬顔をそむけてから、ドクオの足に掴みかかって言った。

.

935 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:13:08 ID:fZlsqdbg0


<_;プー゚)フ「……だったら片鱗、一個よこせ」

('A`)


(;'A`)「……ハ? いきなり、どうしてそうなった?」

<_;プД゚)フ「両脚ねえんだよ! お前に消し飛ばされて!
          片鱗がありゃどうにかできんだろ!? だからよこせ!」


(;'A`)「え、えぇ〜……」



はてやみ
('A`)「できる?」
.λ__λ
(∮∀∮)「もう好きにしてくれ」


 コロン


<_;プー゚)フ「――おっこれか? tanasinnの片鱗ってのは!」

 いきなり地面を転がってきた黒い石ころを拾って、エクストは眉を上げた。


(;'A`)「あんま変なこと願うなよ」

<_;プー゚)フ「……顔付き全滅とか?」


(;'A`)「……それが出来たら楽なんだろうなぁ」

<_;プー゚)フ「……だよな。まあ俺もなんとか戦ってくるわ。
         完全アウトの悪いパワーに頼ってな」


.

936 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:14:04 ID:fZlsqdbg0




ミセ;゚ー゚)リ「――あ、あの」

 呼び掛けられて振り返る。
 いつの間にか、ドクオの後ろにはミセリがやって来ていた。


('A`)「おお、わりぃけど向こうの爺さん達についてってくれ。
    俺はちょっと別の用事が出来てな、しばらく戻れない」


ミセ;゚ー゚)リ「……その人が、素直クールさんですか?」

('A`)「おう、そうだ」

ミセ;゚ー゚)リ「……あの、いきなりこんな事を言うのも、ほんと失礼だと思うんですけど。
      でも、その……怒らないで聞いてください……」





ミセ;゚ー゚)リ「……その人より、私のが良い女だと思います……!」


('A`)



( "ゞ)「おっ修羅場か?」 ガバッ

 颯爽とデルタが飛び起きた。

.

937 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:15:21 ID:fZlsqdbg0


(;'A`)「……まさか、いや、冗談……」


ミセ;゚ー゚)リ「いや、だってそうですよね!?
       ぶっちゃけその人、とんでもない地雷クソ女じゃないですか!
       しかもその、もう死んでる人だし……」

ミセ;゚ー゚)リ「それに比べたら、私のがよっぽどマシです!」

(;'A`)「……」

ミセ;゚ー゚)リ「……じゃないですか!? ほら、私! 断然プリプリですけど!」

( "ゞ)「いいぞ! 盛り上がってきたな」

ミセ;゚ー゚)リ「助けてもらった手前、ドクオさんには恩返しもしたいですし……。
       なんなら結婚しますか!? 絶対幸せにしますよ!」

 ドクオは並々ならぬ恐怖を感じ、おずおずと後ずさる。


(;'A`)「……お前、えと、ミセリだっけか。お前はとりあえず、記憶を戻せ。
    ありがてえ話だけどさ、それは一度元の人生に戻ってから考え直してくれよ」

(;'A`)「……生きて帰ってこれたら、また答えるよ」


ミセ;゚Д゚)リ「それ死ぬやつじゃないですか! ヤですよ! 婚前の未亡人なんて!」

(;'A`)「だ、大丈夫だって。ほら、記憶戻ったら案外婚約者とか居るかもだし……」

ミセ;゚Д゚)リ「駄目なんです! 囁くんです、ここで男を捕まえておけともう一人の私が!」


<_;プー゚)フ「――ああもう行って来い! ミセリちゃん、落ち着け!」 ガシッ

ミセ;゚Д゚)リ「止めないでください! 人生かかってるんです!」

 ミセリの足をエクストが掴み取る。
 しかしミセリの方もやたらと必死で、エクストを引きずって尚もドクオを止めようとしていた。

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938 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:16:40 ID:fZlsqdbg0


( "ゞ)「だいぶ懐かれてるみたいだな。よかったじゃねえか」

(;'A`)「……あれ懐いてるって言うんすかね……」


ミセ;゚Д゚)リ「離せー! 私はー! 売れ残らないんだァー!!」ゲシゲシ

<_;プー゚)フ「イッテ! おい、この子の蹴りほんと容赦ねえんだけど! 
         早く行ってくれよドクオ! 俺がもたねえ!」

(;'∀`)「……へへ……」

 気持ち悪い笑顔を見せた後、ドクオはようやく空を見上げた。
 今はまだ向かう場所すら決まっていないが、彼女との終わりは、どうしても二人だけで過ごしたかった。
 ドクオの中にある結論は、彼女の本性を知った今でも変わってはいない。

 ドクオは目を閉じ、意識を深く沈み込ませた。
 深層の暗闇の中、寝そべって不貞腐れるテンプターの姿が見えてきた。



('A`)「……テンプター、人気のない所に行きたい。力を貸してくれるか」

.λ__λ
(∮∀∮)「……散々好き勝手やった後に言われてもな」


('A`)「……お前、自分の身体が欲しいんだろ?
    あとでお前の身体を用意してやるよ。tanasinnの片鱗で、だけど」

 ドクオがそう言うと、テンプターは体を起こし、冷たい目で彼を見つめ返した。

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939 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:18:47 ID:fZlsqdbg0


.λ__λ
(∮∀∮)「……驚いた。あのチンケな能力も、俺の力ももう要らねえってか?」


('A`)「……」

.λ__λ
(∮∀∮)「……これは運命共同体としての助言だ、聞け。
      今んところ、お前は素直クールが望んだ通りの行動をしている」

.λ__λ
(∮∀∮)「分かるか? この状況は、お前が作り出された時点で素直クールに計画されていたんだよ。
      こっからどう転ぶかは知らねえが、大概まともな結末にはならねえだろう」

.λ__λ
(∮∀∮)「ここはあの女が敷いたレールの上で、お前は今まさに終点に向かっている。
      自分の意思でここまで来たと思ってんなら、そりゃあ大間違いなんだぜ」

 分かってる。
 ドクオは迷いを断つようにそう答えた。


('A`)「……空から降ってきた女を助ける為に四苦八苦。
    ガキはこの世界の為に悲劇のヒロインを殺して、英雄サマに成り上がるってか……」


( 'A`)「……こっ恥ずかしいくらい分かりやすい話だぜ。
    この筋書きをクーが考えたんだと思うと、尚更こっ恥ずかしい……」


.

940 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:19:41 ID:fZlsqdbg0


('A`)「――でもいいんだテンプター。俺はもう答えを見つけたから。
    俺はあいつにそれを示す。大したことは何もしない」


.λ__λ
(∮∀∮)「……ま、俺は自分のカラダが手に入るなら何でもいいさ。
      お望み通りドバドバ俺の力を使ってくれや。何でもありだぜ、tanasinnは」

('A`)「おう。やりたい放題やらせてもらうぜ」



.

941 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:20:44 ID:fZlsqdbg0



 ――次の瞬間ドクオが目を開けると、失くした筈の右腕に感覚があった。
 ドクオは静かに右腕に視線を向ける。
 そこには、右腕を形取るように揺らめく黒煙があった。


.λ__λ
(∮∀∮)(取引のオマケだ。tanasinnとは無関係のケムリだが、万能だぜ)

('A`)(……お前ほんと都合良いよな)

.λ__λ
(∮∀∮)(気にすんな。身体を得たら俺は全人類の敵だ。
      それに敵は強い方がイイしな! 色々楽しみなんだよ俺も!)

(;'∀`)(……聞かなかった事にするぜ!)

 ドクオの意識からテンプターの声が消える。
 黒煙はドクオの右腕として完全に癒着しているようで、生身と同じ感覚で動かす事ができた。
 ドクオは両腕で改めてしっかり素直クールを抱き、人の居ないどこかへと一歩を踏み出す。


.

942 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:21:56 ID:fZlsqdbg0


( "ゞ)

('A`)

 すれ違いざま、ドクオはふと立ち止まり、デルタに耳打ちした。


('A`)「戻らなかったら、後の始末を頼みます」

( "ゞ)「…………俺、その女苦手なんだよな」

('A`)

( "ゞ)「……さっさと行って、そんで帰って来い」

 答えを聞いて安心したのか、ドクオは微笑み、再び歩き出した。


( "ゞ)「……良かったな、その女にまた会えて」

 デルタはそう言ったが、しかし返事は無い。
 彼が振り返った時、そこには僅かに黒煙の余波が残っているだけだった。


( "ゞ)「……あーあ……」


( "ゞ)「……今度ばかりは、弟子の為か……」

 空の彼方に遠ざかっていく人影。
 デルタはあえてそれを目で追わず、壁の向こうから迫り来る敵の方に意識を向けていた。

 ボリボリと頭をかき、かったるそうに溜め息を一つ。
 その日、デルタ関ヶ原は本気を出すことに決めた。


.

943 ◆gFPbblEHlQ :2016/05/29(日) 20:22:57 ID:fZlsqdbg0

ちょっと休憩(^ω^)

944 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:41:40 ID:RyPjbNRY0
つまりナチュラルブサイクはたかしだけってことか

945 ◆gFPbblEHlQ :2016/05/29(日) 20:45:53 ID:fZlsqdbg0

≪5≫



 レムナントの壁を超え、メシウマ側に入る。
 昔あれだけ頑張って乗り越えたものがひとっ飛びで済んでしまう事に、ドクオは少しやるせなさを感じてしまった。

 ステーション・タワーを目前にして、ドクオは一旦地面に下りた。

('A`)「……」

 敵が攻め込んで来ているというのに街の様子がおかしい。
 今は各地で戦闘が起こっていて当然なのだが、街は完全に静まり返っていた。


('A`)「…………」

 答えを得るのにそう大した時間は掛からなかった。
 静かになったという事は、既に戦闘は終わっているという事。
 どちらが勝利したかはあえて口にする必要もない。

 街に残された気配はたった一人分。
 ドクオの目の前に居る、ロングコートの男だけなのだから。

.

946 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:46:55 ID:fZlsqdbg0


( `ー´)


('A`)(……そら足止めがあって当然だよな)

 自嘲気味に鼻を鳴らし、ドクオは男の視線に応える。
 向こうに攻撃の前兆は見られなかったが、しかしタダで通してくれる様子でもない。
 とりあえず、ドクオは男に声をかけた。


('A`)「……通っていいか」

( `ー´)「……彼女を置いて行くならば」

 ここでの戦いは無意味。今この男はドクオの眼中にない。
 逃げるか戦うか……それを考えている内に、男が口火を切って話し始めた。


( `ー´)「私は、君の遠い親戚のような物だ。
      内藤も、ドクオも、そして私も……」


( `ー´)「……元を辿れば、我々は一人の男に行き着く」


('A`)「……」


.

947 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:48:19 ID:fZlsqdbg0



( `ー´)「……私は争いを好まない。できることなら、君とも戦いたくはない。
      そこでどうだろうか。私は君と素直クールが平穏に暮らせる空間を持ち合わせている。
      絶対なる安心を、君達二人に提供させてほしい」


('A`)「……その対価は」


( `ー´)「……私の目的は世界平和、そして人類とtanasinnの決別。
      君にはそれを手伝えるだけの強さと意思がある。願わくは、ぜひ」
.

( `ー´)「だが別に手伝ってくれなくても構わない。私は君との戦いを回避できれば十分だ。
      選択は自由だ。答えは、行動をもって示してほしい」

('A`)「……そうだな……」


('A`)「……申し出はありがたいんだけど、今は構っていられない。
    どうしても先に済ませたい事があるんだ。そこを、通してくれ」


('A`)「俺は今、お前の存在が死ぬほどどうでもいい」

 ドクオは素直クールを強く抱きしめ、絶対に離さないと男に示した。
 しかし真正面から戦うつもりもない。ドクオは両脚にも黒煙を纏い、脚力を人外の域に引き上げた。
 逃げるだけならこれで十分――敵が、よほど強くなければ。


.

948 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:53:22 ID:fZlsqdbg0


( `ー´)「……残念だ」

 男の片手が静かにドクオの方を向いた。攻撃が来る。
 ドクオが飛び出したのはその瞬間。渾身の力が地面を砕き、ドクオは遥か上空に飛躍する。

 ドクオはビルの壁面に着地し、両脚の黒煙を壁に打ち込んだ。
 体勢を安定させて男の方を見直す。しかしそこに男の姿は無かった。



「殺しはしない」


 声は真上から。
 身を捩って振り返ると、男は当然のように壁に直立してドクオを眺めていた。


(;'A`)(……なんだ、こいつ)

 ドクオは、明らかな変容を遂げた男の姿に息を呑んだ。

 ロングコートから僅かに見えていた彼の素肌、手先や首筋の辺りは青白く変色し、ほのかな光を発している。
 先程まであった男の顔面も消失し、今そこには鼻や口に相当する凹凸があるだけ。

 何より不気味だったのは彼の瞳。そこに嵌っているのは無機質な真っ白の眼球でしかない。
 しかしその瞳はハッキリとドクオを捉えていた。
 見透かされているような、そんな焦燥感がドクオの胸に湧き上がる。

 ……ドクオはやむなく素直クールを手放した。
 黒煙で彼女の全身をくるみ、遠くの方に運んで寝かせておく。
 黒煙があるので防御は大丈夫だろうが、恐らく戦闘の余波でぶっ飛んだり色々大変な事になるのは間違いない。
 しかしそうも言っていられないと、ドクオは確信したのだ。


('A`)「……ちょっと待っててくれ、道を開けてくる」

 穏やかに彼女に告げてから、ドクオは男の目を睨み返した。
.

949 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:55:45 ID:fZlsqdbg0



「私達はまだ手を取り合える。いつでも答えを変えてくれていい」


「それまで私はあらゆる手段を講じ、君の心変わりを誘発しよう」


 男はドクオに手を差し出した。
 攻撃の為ではなく、新たな仲間を迎え入れる為に。


(#'A`)「……何をされようが答えは同じだ」

「……ならば、今一度問い掛けてみるとしよう」


「私の仲間になれ」


(# A )「――ノウ!」


「絶対なる安心を約束しよう」


(# A゚)「――絶対にノウ!!」

 叫ぶと同時に足元の黒煙を解き放つ。
 支えを失った体が、重力を浴びて地面に落下する――――

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950 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:58:01 ID:fZlsqdbg0


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                  Waiting for the End of Ground
             https://www.youtube.com/watch?v=9z-GpF_qVc8

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951 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 20:58:43 ID:fZlsqdbg0


(# A )(やっぱもう少しだけ借りるぞ!)

 落下の最中、黒煙がドクオの両腕に巻きつきマグナムブロウの形骸を作り出した。
 腕に装甲、背には撃鉄。撃ち放たれるは絶対無敵――撃動の拳。


(# A゚)「――撃動のォッ!」

 落ちながら体を翻し、落下の勢いも足した一撃を地面に向けて叩きつける。
 地面は大きく陥没してようやく衝撃を受け止めきり、衝撃の一部をドクオに跳ね返した。
 その反動に身を任せてもう一度空へ。
 待ち構える男に向かって、ドクオは腕を振りかぶる。

(# A゚)「だァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!」

「……ミルナの真似事か」

 男が再び片手を差し向ける。
 するとそこに無数の正六角形で出来たシールドが展開された。
 男はそれだけやって手をおろし、ドクオの攻撃をしばし眺めることにした。


(# A゚)「撃殺の――ッッ!!」

 シールドに直撃する寸前、二つ目の撃鉄を躊躇なく落とす。
 敵対は直後。ドクオの赤熱した拳とシールドが直撃し、絶大な二つのパワーが周囲を打ち震わせる。
 烈風が吹き荒れ、ビルのガラスが軒並み炸裂して粉々に散っていく。
 バチバチと張り裂けるような衝撃と閃光が、メシウマの街でひときわ輝いて天空を劈いた。

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952 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:01:13 ID:fZlsqdbg0


「……二つ目の撃鉄、制御不能だった筈だが」

(# A゚)「使えねえから捨てた!」

(# A゚)「どうせ借り物の力! やりたい放題やるだけだァッ!!」

 三つ目の撃鉄が高鳴る。
 ドクオは拳を引き、更なる力を込めた一撃でシールドを殴りつけた。

(# A )「乱撃のオオオオッッ!!」

 轟音を立ててシールドに激動が迸る。
 その一撃に込められた威力は撃動の千発分。
 一撃である筈の攻撃によって無数に鳴り響く打撃音。
 それでもシールドはびくともしなかったが、男はシールドと共に少しずつ押し返されていた。

(# A )「乱撃のッ……」

 ガチャ、と全ての撃鉄を起こし直す。
 途端それを一斉に撃ち鳴らし、ドクオは三回連続で乱撃の拳をシールドに叩きつけた。

(# A゚)「乱撃のォォォォォォォ!!」

 撃動三千発分の威力は最早シールド一枚に収まりきるものではない。
 男が立っているビルはおろか、二人の周囲にある全ての物が崩壊し始めていた。
 攻防の余波が塵芥を吹き飛ばす。車も建物も何もかも、今は彼らの戦いの邪魔でしかなかった。


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953 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:02:27 ID:fZlsqdbg0


「埒が明かないな」

 男がシールドを残して背を向ける。
 次の攻撃準備であろうその一瞬を、ドクオは決して見逃してはいなかった。

 撃鉄を起こし、落とす。
 次の瞬間、ドクオは男の眼前に回りこんでいた。

 今度のは最強ではなく、最速を込めた拳――


(# A゚)「――撃針の、」















(# A゚)「――――――――」




 男は、自分の目の前でピタリと停止したドクオに憐憫の眼差しを向けていた。


「……やはりまだ、ここまでは届かないか」


 ドクオには術がなかった。
 時間を止められた、ということを自覚する能力がなかった。
 男はドクオの頭を鷲掴みにし、時間の停止を解除した。

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954 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:04:45 ID:fZlsqdbg0


(# A゚)「――――」


(; A゚)「――――なッ」


 ドクオの頭を掴んだ男の手中で強大なパワーが爆発する。
 それは単なるサイコキネシスでしかなかったが、彼が扱うそれは規模が違った。

 いつの間にか音もなく、ドクオは男の手から離れていた。
 ドクオは既に吹き飛ばされており、いくつもの建物をぶち抜いてレムナントの壁にその身を打ち付けていた。


(# A゚)「……そこをォ……どきやがれ……!」

 だが、それでもドクオの目はしかと男の瞳を睨んでいた。
 戦意は衰えない、意思は揺らがない――ドクオはなお、無意味な力を望み続ける。



.λ__λ
(∮∀∮)「もっとやるか?」


 脳内で即答――その一瞬後、血肉を蝕む感覚が全身に広がり始めた。
 ドクオの意思が現実に直結する。
 彼が望むすべての力が今、望んだまま形で現実に具現し始める――


.

955 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:05:28 ID:fZlsqdbg0
















.

956 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:07:18 ID:fZlsqdbg0

≪6≫



(# A )「……」

 ドクオの背で二つの塊が羽ばたいた。

 それは、翼というにはあまりにも異形すぎた。


 ドクオの背から広がる一対の黒い、悪魔染みた鋭い翼。

 それを作り上げている羽根は無数の小さな撃鉄。

 起こされたままの撃鉄は、まるで羽根が逆立っているような錯覚を男に覚えさせる。

 それは、正に撃鉄の鉄塊だった。



(# A )「道を開けろ……そこを、どけ……」

 うわ言のようにそう呟く。
 頭から流れ滴る血液が、ドクオの顔をべっとりと濡らしていた。


(# A゚)「……邪魔だ、お前……!」


.

957 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:08:47 ID:fZlsqdbg0



(# A )「……寂滅の……」

 下におりたドクオはそのまま両手足を地につけ、獣のように平たく身構えた。
 次いで撃鉄の両翼が大きく持ち上がる。
 瞬間、翼は一部の撃鉄を落とすと同時に勢いよく地を叩いた。

 向かう先はひとつ。
 ドクオはただ前を向き、道を阻む邪魔者に立ち向かう。


「……取り返しのつかない域に手を出したな」

「tanasinn。やはり人類には必要の無い力だ……」

 男が手をかざして時を止める。しかし今のドクオはその程度では止められなかった。
 諦めて物理的な迎撃に移行――男の“左腕”が白い炎に包まれていく。



(; A )「――ごぷッ」

 ……男に向かっていく途中、ドクオの中で臓物が弾けた。
 体のどこかがプチプチと音を立てている。
 細胞のひとつひとつが、細かく丁寧に潰されているような感覚――



(# ∀ )「……おい、反動デカすぎるだろ」



.λ__λ
(∮∀∮)「片鱗に反動なんかねえよ。ただしお前はtanasinnで作られてるから特別。
      力を使えば使うだけ、お前はtanasinnと同じ存在になっていく」

.

958 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:09:47 ID:fZlsqdbg0

.λ__λ
(∮∀∮)「元が同じなんだから融合するのは自然だろ?
      ま、お前自体の寿命だと思いな」


(#'A`)「……」


(#'A`)「……俺はあと三日も保てばそれでいい。そこまで頼む」

 死を宣告されて出てきた言葉は、それ以上に自分自身の死を早めるような頼みだった。
 テンプターはまたも驚かされて言葉を失い、遂には大きな笑い声をあげた。


λ__λ
つ∀∮)「――クハッ! ハハハハハ!! お前、さてはバカだな!?」


.λ__λ
(∮∀∮)「いいぜやりたいようにやって来いよ! 理外の力で私欲を満たせ!
      ただし超特急の片道切符だ! 思う存分、死に物狂え――!!」




.

959 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:11:46 ID:fZlsqdbg0


 頭の中からテンプターのイメージが霧散する。
 導火線に点いた火はもう消えない。あるのはただ、絶対的な死のイメージ。


(# A゚)「―――――――」

 ドクオはそれを塗り替えるように敵を見据えた。
 撃鉄の翼から音が鳴り始める。次の一撃の威力などもう知った事ではない。
 撃鉄はただ落とされる為にある。それが無数であるのなら、ただ無数に撃鉄を落とすだけ。
 撃鉄は絶えず鳴り続ける。その為にある。

 ドクオは、自分の全身に黒い何かが広がっていくのを感じていた。
 両腕も、両脚も、肉体のあらゆる場所にtanasinnがあった。
 tanasinnの目が手にあるお腹にある。tanasinnの鼓動がすぐ近くに聞こえる。
 どこがtanasinnかは問題ではなかった。道は開かれている。


(; A゚)(ああ、うるっせえなあ――……)

 やがてドクオと男が二度目の交戦を始めようとした、その寸前。
 二人の間に割り込むように、突然、巨大隕石が彼らの頭上に出現した。



(;゚A゚)「……えっ?」



「……不意打ちにしては、派手なのを選んだな」


 男は隕石を睨み、小さく呟いた。彼はドクオよりも先に気付いていたのだ。
 我々をどこかから観察し、そして隙あらば仕留めようと隠れていたその気配に――――


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960 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:12:57 ID:fZlsqdbg0




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               After,in the Dark〜Torch Song

         https://www.youtube.com/watch?v=hw3aAXOt9L0

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961 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:14:22 ID:fZlsqdbg0



  「おいおい顔付き、そう不貞腐れるな。狼煙としては上等だろうに」


(; A゚)

 第三者の声に気付いたドクオは巨大隕石から目を離した。
 いやそう簡単に目を離せるものでもなかったが、ドクオはかすかにその声を覚えていたのだ。


 振り返り、遠くの空に目を凝らす。
 そこに居たのは、白タキシードと中折れ帽の男であった。





¥・∀・¥「――そこのガキ、こいつの足止めは私が買った」


(;'A`)「……お前、荒巻と一緒に居たやつ……」


¥・∀・¥「先をゆけ。あいつが待ちくたびれているぞ」 パチン

 マニーが指を打ち鳴らす。
 瞬間ドクオとマニーの位置が入れ替わり、ドクオは顔付きの男から大きく離れる事ができた。

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962 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:14:36 ID:3pgrjd2M0
っしゃあオラァ!

963 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:15:55 ID:fZlsqdbg0


(;'A`)「お前、お前ッ……!」


¥# ・∀・¥「――見知った間柄ではないだろう! とっとと失せろ!」


 怒号の後、ドクオのもとに黒い影が飛んできた。


「時間が惜しい、行くぞ!」

(;'A`)「――あ、お前も知ってるッ」

 黒い影に見えたそれは、全身を黒いローブに覆われた背高の男だった。
 わずかに覗けた男の顔には、火傷と無数の切り傷がある。


(;'A`)「いやッ、お前……あの、ほら! あの時の!」

「話は後だ! 口を閉じていろ!」

 黒ローブはドクオに素直クールを抱かせ、ドクオの首根っこを掴んで遠くの空に飛んでいった。
 マニーはそれを見届けてから、顔付きの男に見えるよう、わざと大きく醜悪に笑って見せた。

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964 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:17:30 ID:fZlsqdbg0



¥-∀-¥「ふふ、くはは……」


¥ ∀ ¥「アーッハッハッハ! さァてどうする顔付き!
       本命を逃がしてしまったなァ!!」

 マニーの高笑いに、しかし顔付きの男は反応を示さない。
 憐れむような無表情が、単にマニーの姿を見ていた。


「……君も一度は私の考えに賛同してくれた。
 我々が争う理由はなくせるはずだ」


¥・∀・¥「あの夜を手伝ったのは荒巻と戦うため。
      貴様は我が宿命を叶える為の踏み台でしかない」

 マニーの周囲に、彼の能力の象徴であるキャッシュカードが展開される。
 今現在メシウマの街はほぼ無人。街にある金も、今は誰のものでもない。

 よって今、この街にある全ての金はマニーの所有物だった。
 まるごと街一つ分の資金は、彼の能力から限界の二文字を取り払っている。


¥・∀・¥「……で、貴様はこのままだと荒巻と戦うことになるな」

「……彼が戦うと言うなら、そうなる」


¥・∀・¥「で、おそらく荒巻が負ける」

¥・∀・¥


¥´・∀・¥「それは気に入らない」

 マニーは両手を上げてふんぞり返り、溜め息混じりにそう言った。

.

965 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:19:23 ID:fZlsqdbg0


¥・∀・¥「なのでまあ、これは足止めというよりは露払いだな」

¥・∀・¥「これから貴様を倒して荒巻に勝負を挑めば、私はこの街の有り金を全部使える」

¥・∀・¥「さすればいよいよ長きに渡る因縁にも決着がつくというものだ。
       改めて宣言するが、貴様はその為の踏み台でしかない」



「……人間の性は、なぜこうも争いを求める……」

 彼の言葉を聞き、顔付きの男は顔をそむけてそう言った。
 人間味を喪失した青白い体と表情に、僅かな葛藤の色が浮かび上がる。

 しかしマニーは一言で返した。

¥・∀・¥「分からんか? 貴様が私の敵だからだ」

 結論はただそれだけ。
 しかし顔付きの男自身も、戦いというものが結局その程度のものでしかないと納得していた。



「……それでも、私は私の役目を果たそう」


¥・∀・¥


 最早、語る言葉すら無い。
 巨大隕石を頭上に二人は身を構え、瞬間、その戦いは幕を開けた――――


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966 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:20:43 ID:fZlsqdbg0

≪7≫



 黒ローブの男が足を止めたのは、メシウマやレムナントから遠く離れたどこかの森。
 その入口の草原に腰を下ろし、ドクオは掻き消えそうな呼吸を少しずつ整えていった。

 涼しい風が草原と森の草木を優しく揺らしている。
 さっきまでの戦いが嘘のように、この場所は平穏と静寂の中にあった。


「……」

 黒ローブは風を浴びながら空を見上げていた。もうじき、夜が来る。
 夕陽も大半が沈んでおり、大空は夜の暗闇と夕陽の輝きに二分されていた。


(; A )「……ぐッ……!」

「……大丈夫か」

 ドクオの呻き声で我に返り、黒ローブは彼に歩み寄った。

 状態を見るに、ドクオの体は既にその大半がtanasinnと同化してしまっていた。
 腕の装甲、背中の両翼も、もう自分の意思では取り除けなくなっているはずだ。
 この先に待っているのはtanasinnとの同化と、自我の消失。


「……随分無茶をしたな」


(; A`)「……ここまで来れた……上等だ……」


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967 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:23:18 ID:fZlsqdbg0



「……お前、そんなにこの女が大事か」


(; A )「ぐっ!! あ゙、……ハアッ……」


(; A゚)「……見て分かんだろ……俺の全部だ……!」

 ドクオは草原に膝をつき、そのまま草の上に倒れこんだ。
 意識は明確だったが、肉体が彼の言う事を聞いていなかった。


「…………」

 黒ローブは目をそらし、口を閉ざした。

 彼の沈黙は、暗闇が夕暮れを飲み込むまで続いた。
 その間、彼は素直クールのことをずっと見つめていた。

 見つめ、なにか言葉を掛けようとして、それを飲み込む。
 彼はやがて素直クールを視界から外し、ドクオに向けて話し始めた。

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968 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:24:54 ID:fZlsqdbg0



「……俺は街に戻る。お前達の場所を守っておくよ」


(; ∀`)「ンだよ……怪我人見捨ててくのか……?」

 黒ローブはドクオの苦笑いを見ると、つられて自分も笑みを浮かべた。
 この期に及んでこれを冗談と理解できるのは、きっと彼だけだろう。

「それはお前が負ったものだ。俺が手を触れていいものではない」

(; A`)「……」

「…………礼を言う。お前でよかった」

 黒ローブはもう一度空を見上げた。
 俺にはまだやる事がある。ローブの下に見えた瞳は、確かにそう物語っている。


(; A`)「……おい、お前……」

 ドクオは彼を止めようとしたが、やはり体は言うことを聞かない。
 それに例え力尽くで止めたとしても、彼は絶対にその足を止めないだろう。
 根拠はないが、ドクオはそう思った。


「――素直クールを頼んだぞ」


「俺には出せなかった結論が、お前にはあるんだろう」


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969 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:25:58 ID:fZlsqdbg0




 それは、自分によく似た別の誰かでしかなかった。

 しかしドクオは――撃鉄のドクオは、

 彼が、生まれたて夜空に消えていくのを見届けずにはいられなかった。


 結論を背負った者としてなお生きる彼の姿は、はっきりと、ドクオの目に焼き付いていた――――


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970 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:30:09 ID:fZlsqdbg0



(; A`)「……」


川  - )


(; A`)「……あーあ、二人っきりだ」

 ドクオは衰弱していく体に力を込め、もう一度立ち上がった。
 おびただしく伸びた撃鉄の両翼を引きずりながら、素直クールのそばに行く。

(; A`)「俺らも最後だ。止まるのは、それが終わってからだぜ……」

 傷だらけの腕で彼女を抱きかかえる。
 ドクオは自身の体を引きずりながら、少しずつ、彼女と一緒に森の奥に消えていった。

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971 名も無きAAのようです :2016/05/29(日) 21:33:07 ID:fZlsqdbg0
16〜24話 >>439
プロローグ Another Heaven >>454-467
第二十五話 老兵集う >>473-495
第二十六話 面汚しの夜 その3 >>504-596
第二十七話 悪性萌芽 その1