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+】(メ ´_ゞ`) Channelers
1
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:45:14 ID:aqE7LG6E0
.
【 Channelers (ちゃねらーず) 】
オリジナル ・ 長編 ・ ブーン系小説
超能力 ・ 現代厨二もの ・ TS要素あり
オリジナル分90% (残り一割:AA及び2ちゃんねる、ニュー速VIPネタetc.を含む)
まとめサイト
http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
ブーン芸VIP様
http://localboon.web.fc2.com/100/top.html
内藤エスカルゴ様(21話〜)
http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
くるくる川 ゚ -゚)様 (1〜20話)
http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html
フェスティバロス様 (1〜10話)
前スレ
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1344858830/
.
2
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:46:14 ID:aqE7LG6E0
.
−−−−−−−−− あらすじ
自堕落な生活を送るフリーター ・ 内藤ドクオは、ある朝目覚めると女の子になっていた。
どうにか元に戻れたところで、弟 ・ 内藤ホライゾンの行方を追い、夜の学校へ忍び込む。
ドクオはそこで不思議な少女と出会い ── それは、非日常へと彼を誘う扉だった。
−−−−−− 用語
『 チャネラー/ねらー/2ちゃんねらー 』
二つの人格(Channel)を持つ “ 二重人格の超能力者 ” 。
主人格と副人格、それぞれ別個の能力を持つのが特徴。
『 超能力/PSI 』
“ エスパー ” および “ チャネラー ” が有する、人知を超えた悪魔の力。
物理法則をもねじ曲げ、不条理をまき散らす現代の災厄。
ねらーの持つ超能力は、総じて “ 弱い ” と評される。
危険な能力を有する者も、僅かながら存在する。
−− 以下本編
.
3
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:47:12 ID:aqE7LG6E0
.
(l|l* □ ) 「 」
(l|l* ο ) 「 」
(l|l*゚皿゚) 「 〜〜〜〜〜〜っ! 」
さ ・ む ・ いぃぃぃぃっ。
絞り出す少女の声は、身を裂くような冷気にかき消された。
クーのバイクは、夜を駆る。
ライトアップされたウッドデッキを横目に。
光のシャワーを、そして時に、カップル達の奇異の視線をボディいっぱい浴びて。
川 ゚ -゚) 「ちったぁ我慢しろ……と言いたいが、
ま、その格好じゃあな」
つぶやくクーの背中で、少女、猫塚しぃは身を縮ませた。
無理もない。 季節は冬、12月の夜。
.
4
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:47:54 ID:aqE7LG6E0
.
【 しぃ ・ クーサイド : VIP港ベイエリア ・ ウォーターフロント ・ ロード 】
しぃはフルフェイスに制服姿といういでたちだ。
クーのジャケットを羽織っているが、
吹き付ける風を防ぐには、いささか頼りない。
横からの潮風は容赦なく、華奢な体に襲い掛かる。
しぃは震えながら、セミタンデムシートの両脇を、腿でぎゅっと挟みこんだ。
(((l|l*´−゚))) 「でも、なんで!?」
国道へ抜けた。
沿岸道路をかっ飛ばす二人に、
きらめくハーバー ・ イルミネーションの遠景を楽しむ余裕はない。
川 ゚ -゚) 「何がだ」
(((;*゚−゚))) 「あの人を追いかける理由です! ……さ、むいぃっ」
川 ゚ -゚) 「愚問だな」
.
5
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:48:37 ID:aqE7LG6E0
.
エンジン音が鋭さを増した。
鮮やかなライディングで、車線を斜めに突っ切る。
川 ゚ -゚) 「手がかりが欲しいんだろ? 両親の」
(* − ) 「────!」
信号をすっ飛ばし、二人はビルの隙間へ吸い込まれてゆく。
(* − ) 「……」
川 ゚ -゚) 「しっかり掴まっていろ」
まばらな車の間を縫い、稲妻さながら縦横無尽に疾駆する。
(*゚−゚)
(*゚ー゚)
遙か前方に、目的のスカイラインを捉えたまま。
.
6
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:49:24 ID:aqE7LG6E0
.
(*゚ー゚) 「───はいっ!」 ギュッ
て
川;◎-◎) そ 「うお!?」
回した腕に力が込められると、クーの尻が座席から浮いた。
川;゚ -゚) 「前言撤回! お、落ちない程度に掴まってろ!」
(;*´−`) 「すみません……」
〜 〜 〜
.
7
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:50:26 ID:aqE7LG6E0
.
【 ブーンサイド: VIP港 埠頭エリア 】
一方。
タムラを追う高校生たちは、
倉庫群の四つ角を折れたところで、はたと立ち止まった。
(l|l;◎ω◎) 「ぶひ、ふひぃ、ひぃ……」
(,,;゚Д゚) 「はぁ、はぁ……おい、ブーン!?」
息を切らし、前屈姿勢になるブーン。
汽笛がゆるやかに響いた。
少し遅れてサダコが到着する。
川;д川 「あの……これから……どうしたら……?
とっくに……見失ってます……けど」
ブーンの背をさすりながら、サダコは聞いた。
.
8
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:51:09 ID:aqE7LG6E0
.
ギコは鼻を鳴らしたあと、
(,,-Д-) 「だいじょーぶ! “ ロックオン ” してあるぜ!
奴らの会話は、まだ耳に……!」
目を閉じ、神経を両耳に集中させる。
〜 〜 〜
さらにこちら、追われる誘拐犯サイド──。
タムラ達は大型トレーラーを降り、
幌つきのトラックへ乗り換えようとしているところだった。
「……妙な車だな」
爪;゚〜゚) 「【 どりあん運送 】……。 聞いたことのねぇ運び屋だな。
備えあれば、ってことで手配させてたんだが……。
小型トラックたぁ、聞いてなかったわ」
二人して乗り込み、グラサン男が刺さったままのキーに指をかける。
シートからエンジンの振動が伝わる。 そのままトラックは発進した。
.
9
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:51:56 ID:aqE7LG6E0
.
「ところで」
爪 ゚〜゚) 「あん」
「良かったのか?
大事な大事な依頼主さまを助けなくて」
爪 ゚〜゚) 「まーいいさ。
取りそこなった報酬くらい、自分で補填してやらぁ」
助手席にふんぞり返るタムラは、
『 箱 』 を取り出し、しげしげと眺めた。
爪 ゚〜゚) 「ひとまずジャンヌと合流し、こいつを徹底的に調べ上げる。
ポセイドンのガキがわざわざ保管させてたくらいだ。
ただのオモチャじゃねえな。 カネのニオイがする」
「お、俺もその……」
爪 ゚〜゚) 「取り分? はん、そりゃぁこれからの働き次第だな」
滝沢は小さく舌打ちし、ポケットから煙草を取り出す。
港湾の鉄扉を抜けると、前方に青い表示板が見えた。
.
10
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:52:45 ID:bvXKaMo2O
支援
11
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:52:59 ID:aqE7LG6E0
.
「ところで、どこへ向かえばいい」
爪 ゚〜゚) 「落ち合う場所は決まってる。 いいか、この先の────」
〜 〜 〜
(,,;-Д-) 「────廃ビルか!」
叫びつつ、ギコはぱっと顔を上げた。
(,,-Д゚) 「ソーサク1丁目だッ!
奴らはそこに向かってる!」
耳に届く声は徐々に小さくなり、やがて途切れる。
トラックが “ ロックオン ” の有効範囲を脱したらしい。
.
12
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:53:50 ID:aqE7LG6E0
.
(,,#゚Д゚) 「うっし、すぐに行こうぜ! 回り込んでやらあ!」
川д川 「あの……」
(,,゚Д゚) 「あん?」
川д川 「……どうやって?」
サダコは当然の疑問を呈する。
ギコは周囲を見回した。
(l|l;^ω^) ハァ ハァ フゥ
(,,゚Д゚)
貨物運搬用の車両は点在しているものの、
当然ながら、キーが刺さって放置されているものなどはない。
川д川 「……移動の……手段は……?」
.
13
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:55:14 ID:aqE7LG6E0
.
(,,゚Д゚)
川д川
(,,;゚Д゚)
川д川
川д川 (; ^ω^) (,,;゚Д゚) チーン
(,,; Д ) 「あー、え─────っと……」
『 こ、こっからタクシーっていくらかかるっけ……? 』
三人は財布を取り出し、恐る恐る中身を確認し合った。
.
14
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:56:02 ID:aqE7LG6E0
.
http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
http://localboon.web.fc2.com/100/top.html
纏
http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html
.
15
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:57:19 ID:aqE7LG6E0
.
※お久しぶり。
※予告編スレはすまんありゃ嘘だった。
続きは明日?投下します。18:00くらいから。VIPにも。
とりあえずスレ立てだけ。
※VIP投下用と創作用でちょっとだけ構成を変えてます。お好みで。
ではまた。
.
16
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 23:00:19 ID:bvXKaMo2O
乙!
17
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 23:53:24 ID:/V5xy94U0
おつ
18
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 23:57:37 ID:w/Xz2rH20
おつんこ
19
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 00:03:27 ID:yWZE4FXc0
おつんつん
20
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 04:47:00 ID:TOSCJl5M0
いやっほー待ってたぜー
明日っつか今日の投下待ってる
21
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 07:09:02 ID:ZluAOveQ0
乙ニアヘスツゴビナ
22
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 09:27:27 ID:LDDuIEXc0
乙乙
最後の高校生組にほんわかした
23
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:22:29 ID:D9mWpQHU0
.
※投下開始しました。
http://viper.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1408006914/
※こっちでも投下する。 創作ver.
.
24
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:24:55 ID:D9mWpQHU0
.
〜 〜 〜
【 ドクオサイド: 第三倉庫内 】
庫内を静寂が支配した。
ふと気づいた。
可視領域が狭まっている。
奥に行くにつれ、蛍光灯の光量が減っている気がする。
空間を包む緊迫感ゆえか、
それとも、彼の持つ特異性が、関係しているのか。
/ ゚、。 / 「しょーぶの前に、言っておくことがあるケド」
ゆらり、揺らめく人影。
幽霊のように現れた “ 電気系念動力者(エレキネシスト) ” は、
指先に花札を弄びつつ、言った。
(;'A`) 「な、なんだ?」
.
25
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:26:35 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「わかると思うケド、これ」
細い毛糸のような、しかし鮮やかなる閃光が、札の間を駆ける。
/ ゚、。 / 「一部の札には、ちょーのーりょくが封じ込めてあるケド」
( 'A`) 「!」
( ´_ゝ`) 「やっぱそーか」
先ほど投擲された三枚について思い返す。
俺の記憶が正しければ、“ 松に鶴 ”、“ 桐に鳳凰 ”、“ 芒に月 ”。
これらはつまり、奴の操る玩具──超能力アイテムだということらしい。
/ ゚、。 / 「のーりょくを閉じ込めた札は10種。
“ 鶴 ” “ 鶯 ” “ 桜 ” “ 蝶 ” “ 猪 ”
“ 月 ” “ 杯 ” “ 鹿 ” “ 柳 ” “ 鳳凰 ”」
無表情だが、おしゃべりな “ ねらー ” 、
鈴木ダイオードは悠然と続ける。
.
26
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:28:13 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「のーりょくはそれぞれ、
“ リプロデュース ” “ グリントキネシス ” “ パイロキネシス ”……」
て
(; ´_ゝ`)そ 「はぁ? な、なんだって?」
驚いた兄者が聞き返すも、お構いなしだ。
/ ゚、。 / 「“ テレポート ” “ リフレクス ” “ エレキネシス ” “ ツイスター ”
“ マグネティクス ” “ シンクロノス ” ……“ ブローフ ” 」
(;'A`) 「多っ! てか覚えきれねー!」
/ ゚、。 / 「簡単だケド。
音、光、爆炎、瞬間移動、反射、
電撃、回転、磁力、同期、そして……」
(;'A`) 「そ、そして?」
/ ゚、。 / 「“ ブローフ ” は “ 吹き飛ばす能力 ” 」
そう言って、
さきほど跳ね上がったひとつの段ボールを、札で指し示した。
.
27
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:30:03 ID:D9mWpQHU0
.
(; A ) 「……どんだけだよ」
身構えつつ、俺は辺りを見回した。
数えるほどのパレットラック、パイプ椅子、プレジデントチェア、
横倒しになった簡易テーブル……。
あとは入り口脇に、ダンボール箱が数個、崩れ落ちている。
こうしてみるとモノはけっこう散乱しているのだが、
もともと積み荷そのものが少なく、
奥に陣取っていたトレーラーも、すでにいない。
( ´_ゝ`) 「能力のバーゲンセールだな」
庫内はがらんとした印象だ。
超能力者同士の戦闘には、おあつらえ向きのステージかも知れない。
/ ゚、。 / 「ウリモノじゃないケド」
スーツのポケットに手を差し入れ、花札の束を取り出すダイオード。
最低でもワンセット分のストックはあると考えていいだろう。
冷や汗が出る思いだ。
.
28
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:31:43 ID:D9mWpQHU0
.
ヤツは左手から右手へぱらぱらと札を繰る。
後ずさる俺の代わりに、兄者が半歩前に出た。
( ´_ゞ`) 「さて……」
/ ゚、。 / 「お手並み拝見だケド」
ヒーロー男とサムライ野郎。
二人の長身は、簡易テーブルを隔てて対峙する。
唾を飲む瞬間、放たれた言葉は。
/ ゚、。 / 『 ─── “ リレイト ” 』
小さく、しかしはっきりと、庫内に残響した。
.
29
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:33:40 ID:D9mWpQHU0
.
●第三八話 『 CHASE!! ── VS. タムラ&ダイオード① 』
動いたのはほぼ同時だった。
兄者の右手が空を薙ぐ。
対して、ダイオードはバックステップで距離をとる。
兄者の挙動がサイコキネシスによる攻撃動作だとわかったのは、
側方のスチールラックから、硬質な打音が奏でられた瞬間だった。
ダイオードは壁近くまで離れると、腕を交差させ、澄んだ声で言う。
/ ゚、。 / 「 “ 表菅原 ” 」
両の手それぞれの指先。 摘まれるは計3枚の札。
一瞬溜めたあと、ヤツはそれを手裏剣のように投げ放った。
( ´_ゝ`) 「!」
(;'A`) 「!!」
兄者は今までに見たことのない機敏な動きで、
上体を逸らし、投擲された札をやりすごす。
.
30
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:36:22 ID:D9mWpQHU0
.
俺はその場にしゃがむのがやっとだ。
ひっと情けない声が漏れる。
直後、右方より轟く爆発音。
まばゆい光が周囲に広がり、反射的に顔を覆う。
その時だった。
(; ´_ゝ`) 「 ぐぁ!? 」
(;゚A゚) 「あっ、づぅ!?」
視界が緋色に染まった。
浴びせられた熱は痛みに変換され、脳を焦がす。
(;'A`) 「な、なんだ!?」
花札が爆発した。 おそらくこれは “ パイロキネシス ”。
単純な話だ。 が、理解に納得が追いついていない。
爆発は “ 右側 ” で起こったはず。
なのに、灼熱が襲ってきたのは、“ 左後方から ”。
.
31
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:39:48 ID:D9mWpQHU0
.
俺はその場によろめいた。
幸い炎は上体を撫で付ける程度で済んだが、
発生源に近かった兄者のほうは、服の左肩部分から焦げ臭い煙が上がっている。
兄者はたまらず上着を脱ぎ捨てる。
(; ´_ゝ`) 「な、なにが……?」
/ ゚、。 / 「 “ リプロデュース ” ──音を操作する、のーりょく。
“ グリントキネシス ” ──光を制御する、のーりょく」
無表情。 そして無機質な返答。
交差する腕の先、さらに二枚の札が、指先で翻る。
リ レ イ ト
/ ゚、。 / 「 ふたつを “ 関連付けた ” 」
ピンとこない。 が、言わんとすることはわかった。
右から発生した派手な光と音。
これらは超能力による “ 現象 ” であり、おとりだ。
/ ゚、。 / 「 そして、単体の “ パイロキネシス ” 」
左方向へ投擲された札───ホンモノから発せられる爆炎の、カムフラージュとして。
.
32
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:41:10 ID:D9mWpQHU0
.
(; ´_ゝ`) 「梅、松、桜……!」
/ ゚、。 / 「そゆこと」
答えが返ると同時、第二弾が放たれた。
(;'A`) 「うわっ……!」
(#´_ゝ`) 「ふっ!」
俺のほうへ飛んできた一枚の札は、数メートル先で鈍角に軌道を変えた。
兄者が反射的に弾き飛ばしてくれたのだ。
本人めがけて放たれたエモノも、サイコキネシスで難なく叩き落とされる。
('A`;)彡 「!?」
が、その直後。
急ブレーキのようなけたたましい音が右から響き、
.
33
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:43:55 ID:D9mWpQHU0
.
(;゚A゚) 「うわっ」
足元から閃光。
顔を覆った俺の袖元を、何者かが、ぐいっと引っ張った。
(; ´_ゝ`) 「惑わされるな! 上だ!」
それが兄者だと理解した瞬間、目の前に赤いシャワーが降り注いだ。
火の粉がぱちぱちと、生き物のように踊り、爆ぜる。
俺たちは頭部を守りつつその場から離れる。
/ ゚、。 / 「今のは、“ 関連づけてない ” 」
爆音、閃光、そして熱波。
全てがズレたタイミングで発生したため、対処が遅れた。
兄者が袖を引いてくれなかったら……考えると背筋が凍る。
/ ゚、。 / 「どんどん行くケド。 ── “ 表菅原 ”」
::(l|l゚A゚):: 「わ、うわ、うわわわっ」
ダイオードの手には、すでに次の札が握られていた。
.
34
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:47:34 ID:D9mWpQHU0
.
マズい。
こんな連続攻撃聞いてない。
対抗策など用意できるはずがない。
サムライ野郎は両腕をひねると、最小限の動きで、それらに推進力を加えた。
〜 〜 〜
.
35
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:48:58 ID:D9mWpQHU0
.
【 しぃ ・ クーサイド: VIP市沿岸地域 ・ 公営団地周辺 】
(;*゚−゚)】 「うん、うん……わかった。 ありがとう」
しぃは派手な装飾の施された携帯を閉じる。
水色の外装にこびりついた煤を、ハンカチで間単に拭き取ると、
クーのほうへ差し出した。
(*゚−゚) 「行くべき場所はわかりました。
あの、そっちは……!?」
川 ゚ -゚) 「問題ない。 シートが若干、破れはしたが」
立ち上る焦げ臭いにおいに顔をしかめつつ、
クーはバイクから向き直った。
結論から言うと、ジャンヌには逃げられた。
つい先ほど見た、彼女の挑発的な表情を思い返し、しぃは歯噛みする。
……ああ、もうちょっとだったのに。
事実二人は、ジャンヌの乗るスカイラインまであと数メートルにまで迫っていた。
だがそこで、追跡を中断せざるを得ない事情が発生した。
スカイラインを追って路地に入った途端、眼前に火の手が上がったのだ。
.
36
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:50:52 ID:D9mWpQHU0
.
クーははじめ、無謀にも燃える壁に突っ込もうとしたが、
突っ切るには、炎の奥行きと、勢いがありすぎた。
ミディアムレアに炙られたところで、短い悲鳴、そこからクイックターン。
転倒こそしなかったものの、二人は我先にバイクから降り、
消火活動に追われる事態となる。
バイクと服の両方だ。
川 ゚ -゚) 「お前こそ大丈夫か。 制服」
(*゚ー゚) 「いいんです、ボロボロなのはお互い様です」
川 ゚ -゚) 「……言ってくれるな」
クーはポリタンクを捨ててきたことを悔やんだが、
幸いというべきか、水を必要とするほどの事態には至らなかった。
セダンの姿が小さくなるにつれ、
路地を包む炎はだんだんと勢いを弱め、やがて鎮火した。
服の火をようやく消し止めたところで、ギコからのコールだ。
電話はクーの携帯にかかってきた。
そこでしぃは、携帯含め、荷物をすべて倉庫へ忘れてきたことに気づく。
.
37
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:53:15 ID:D9mWpQHU0
.
バイクを点検するクーの代わりに、しぃが電話を受けた。
『 あんちゃん達、学生か? こんな時間にンなとこ行って何しでかす気だ? あん? 』
『 そんなこといいですお! いいから急いでくださいお! 』
『 あーん? いいかぁ、俺がおめェらくらいの頃はなぁ…… 』
『 い、今そこ……右だったんじゃ…… 』
『 ちょ、赤! 信号赤っぁあぁ前ぇえ! 』
車内だろうか。 周りが騒がしく聞き取りづらかった。
何度もギコに聞き返しながら、しぃは誘拐犯たちの行き先と、
タムラ達の乗るトラックの特徴を知った。
そして、
(*゚−゚) 「ソーサク一丁目、工場地帯にある廃ビルらしいです。
クーさん、わかりますか?」
ギコの 『 箱 』 がタムラに奪われたという事実も。
川 ゚ -゚) 「だいたいな。 ここから40分。 私なら30分」
(;*゚−゚) 「さすがですね。でも、廃ビルって」
川 ゚ -゚) 「心当たりはなくもない。 行ってみればわかるだろう」
.
38
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:57:45 ID:D9mWpQHU0
.
クーは頬を掻き、周囲を見回す。
立ち並ぶ住居群は、四角い光をまばらに散らしている。
繁華街に続く、商店の立ち並ぶメイン通り。
そこから住宅区域を結ぶ直線、
ちょうどその中間あたりに、この団地は位置する。
道幅に対し、街路灯の明かりが乏しく感じられる。
不気味なほどの静けさだ。
が、人気のなさが逆に幸いだったというべきか、
さきほどの発火現象も、騒ぎには発展しなかった。
とはいっても、ボヤが発生したことは紛れもない事実。
滞留する薄煙で夜空も曇っている。
周囲の住人がすでに通報している可能性も、なくはない。
川 ゚ -゚) 「とにかく、のんびりしてる暇はないぞ。
場所はわかったからいいが、早く見つけないと色々厄介だ」
タムラとジャンヌはまだ合流していないだろう。
戦力が分断しているうちにカタをつけたい。
しぃは小さく頷く。
.
39
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 18:58:43 ID:D9mWpQHU0
て
(*゚−゚) そ 「そうですね。 先回りできれば、車を目印に……あっ」
川 ゚ -゚) 「?」
(*゚ο゚)σ 「いた」
彼女の指差す方向、
住宅脇の道と交差する広い道路を、一台のトラックが通過していく。
緑色の幌に、大きく 『 どりあん運送 』 とあった。
文字の中央に、飛脚姿のキャラクター 『 どりあんくん 』 が描かれている。
ぶつぶつの丸い玉から手足の生えた、不可解なイラストだ。
まさに今、ギコから聞いた、トラックの特徴ぴったりだった。
川 ゚ -゚)
(*゚−゚)σ
.
40
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:00:44 ID:D9mWpQHU0
.
川 ゚ -゚) 「……マジで?」
(;*゚ー゚)゙
て
川;゚ -゚) そ 「早く乗れ!」
再びシートにまたがるクーの後ろで、
しぃはあたふたとフルフェイスを被りなおした。
−−−
川 ゚ -゚) 「うおおおおおお!」
(;*゚□゚) 「ひゃあぁぁああっ」
川 ゚ -゚) 「んどぉおしたああぁぁああ」
(l|l* □ ) 「さむむっ、いぃい──っ、ですっっ」
.
41
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:02:41 ID:D9mWpQHU0
.
少女を後ろに乗せて、バイクは走る。
なんか凄い轟音となんか凄い煙を噴き出しながら、
なんか凄い曲がって、たまに止まって、色々走って、なんか、その……
それもこれも描写のしようが無いのだ。
どうしてか、単純にバイクの知識に疎いからだ。
そして上の5行は、
かの名作 “ ドクオは棺桶売りのようです ” 五話のコピペ改変だ。
川 ゚ -゚) 「───見えた。 アレだな」
標的を遠くに捉えると、クーはアクセルグリップをさらに引き絞る。
唐突にあらわれた対向車をかわし、歩道の縁石を踏み越え、
路地をジグザグに抜けてショートカットする。
(;*゚□゚) 「や、山越えですか!?」
川 ゚ -゚) 「近道だ」
峠に差し掛かった。
ときおり蛇行し、時に車体をめいっぱい傾かせながら、
暗い道路を突き抜ける。
.
42
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:05:21 ID:D9mWpQHU0
.
しぃははらはらしながら、流れる景色を眺めていた。
弓なりの山道は、わずか十数メートル先も見通せないかわりに、
向こう山の様子は見て取れた。
“ どりあんくん ” 付きのトラックが、山沿いの道を進んでいく。
数百メートルほど先だろうか。
(;*>□゚) 「──いた!」
川 ゚ -゚) 「経路は同じか。 なら、純粋な追いかけっこだな」
木々のシルエットの隙間から現れるたびに、トラックのテールランプが、
闇に光る赤い目となって、追跡する二人を睨みつける。
あちらはあちらで、ドライバーの実力は確かなようだ。
ゆるやかなカーブの続く道を、ほとんど減速することなく、すいすい駆けていく。
距離は少しづつだが縮まりつつある。
しぃは “ 力 ” を出さないよう気を払いながら、
クーの腰に、メットの前部を押しつけた。
.
43
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:06:49 ID:D9mWpQHU0
.
−−−
林を抜けると、視界が一気に開けた。
田園地帯をしばし進み、踏み切りを越えると、別の県道と合流する。
家々に店が混ざり、ビルが現れて。
やがて辺りは町となり、街となる。
ロードサイドには、飲食店といわずガソリンスタンドといわず、
どこかで名を見聞きしたことのある店舗が散見されるようになった。
片側一車線から二車線へ。 車の往来も激しくなる。
川 ゚ -゚) 「あいつら……ネタスレ町を経由し、国道△△号線に抜けるつもりだな」
ガードレールすれすれを飛ばす。
車線を分ける白線の上を通行し、
並んだ大型車の車輪部分、わずかな隙間を抜ける。
荒いライディングに、しぃの心は揺さぶられ続ける。
だが、クーのテクニックは確かだった。
右から左から、次々に車両を追い越し、すり抜け、
確実にトラックとの距離を詰めていく。
.
44
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:09:04 ID:D9mWpQHU0
.
やがて信号に阻まれる。
黄色のランプが点灯するのを見た途端、クーは強引に車線を変更し、わき道へ反れた。
ぐねぐねした路地を抜けると、ちょうど数十メートル先に、トラックの幌が見えた。
(*>−゚) 「すごいっ、ばっちりです!」
彼女の進路選択の的確さに、しぃは感嘆の声をあげた。
川 ゚ -゚) 「準備はいいか?」
(*>−<) 「えっ?」
川 ゚ -゚) 「この道はバイパスへ続いている」
(*゚−゚) 「それって……」
川 ゚ -゚) 「立体交差の直前。 そこで勝負をかける」
駅へと伸びる直線。
道の脇、夜間作業中の現場に差し掛かった。
オープンを間近に控えた飲食店のようだ。
.
45
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:11:43 ID:D9mWpQHU0
.
外装工事の最中、そして今は休憩中らしい。
数人の作業員と、交通整理らしき警備員が、店舗の外壁に腰掛けて談笑している。
歩道に乗りあげる形で、一台の軽トラックがハザードを点滅させていた。
バイクは弾丸のようにその横を駆け、続く四つ角を左に折れた。
川 ゚ -゚)゙ (……む?)
幾度となく繰り返してきた急旋回だった。
だがクーはそこで違和を感じ取る。
バイクの車体が、わずかに揺れた。
ハンドルを通して伝わる重量感も、シートからの振動も、
先ほどまでとはどこか違っているように思える。
軽トラックの荷台を見て、作業員たちが悲鳴をあげるのは、
それからほんの少し後のことだった。
〜 〜 〜
.
46
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:13:59 ID:D9mWpQHU0
.
【 ドクオサイド: 第三倉庫内 】
(; ´_ゝ`) 「焦るな! よく見ろ!」
兄者が俺の前に躍り出た。
彼を取り囲む三方から、札は無慈悲に襲い掛かる。
サイコキネシスを警戒しているのだろうか。
ダイオードは常に俺たちと一定の距離を保っている。
そして札投げのコントロールは抜群。
飛んでくる方向も、位置も正確。
が、それゆえに、
(#´_ゝ`) 「おらぁっ!」
兄者にとっても、念動力で防ぐには難くない条件だった。
.
47
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:15:59 ID:D9mWpQHU0
.
(; ´_ゝ`) 「どぅおおっ! んでっ……!」
真っ直ぐ飛んでくる札を、一度、二度と払いのける。
_, ,_
(#´_ゝ`) 「3枚目! こいつだ!」
そして。
次に投擲された札を、兄者は思い切り左へ弾く。
(;'A`)と 「!」
( ´_ゞ`) 「走れっ!」
俺と兄者は同時に駆け出した。
響く炸裂音。 上から注ぐ眩い光。
俺がそいつらを掻い潜った直後、兄者はすでに攻撃のモーションに入っていた。
( ´_ゝ`) 「メイン ・ ウェポンがわかっていれば───」
右手を引いた体勢でぐっと腰を落とす。
空間の歪みが、念動力の発生を示していた。
.
48
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:18:39 ID:D9mWpQHU0
.
(#´_ゝ`) 「対応くらいできるってなもんじゃよ!」
押し出し、波動の渦を放つ。
ダイオードはアクロバティックな動きで回避するが、
/ ゚、。 / 「!?」
避け切れなかったらしい。 腕に被弾。
紙鉄砲のように、乾いた音が響く。
ダイオードは右手からばらばらと札を取り落とし、たたらを踏んだ。
( ´_ゝ`) 「お前のやってるのは所詮、奇襲攻撃にすぎないからなっ」
光と音── “ おとり ” の能力が先行し、
ラストに着弾するのが “ パイロキネシス ”。
そういうことか。
ようやく理解できた。
俺たちの左後方では、今まさに赤い炎が乱舞していることだろう。
.
49
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:20:43 ID:D9mWpQHU0
て
(; ´_ゝ`) そ 「もらっ……ぐあ!?」
(;'A`) 「兄者!」
追撃を試みる兄者だったが、低位置を滑空する物体に阻まれる。
プレジデントチェア。 ──ポセイドンの。
ガードは間に合わず、右半身に直撃。
兄者がよろめいた隙にダイオードはダッシュし、距離をとった。
/ ゚、。 / 「あぶないあぶない」
壁を背に、首を傾げたような、独特の角度から解説する。
/ ゚、。 / 「反撃を見越して “ ブローフ(吹き飛ばす能力) ” を撒いてたのだ」
(;'A`) 「な……!?」
/ ゚、。 / 「ま、ちょっち距離感を見誤ったことは認めるケド」
本気なのかおちゃらけているのか。 口調では判断できそうにない。
おそらくは素でこういうキャラクターなのだろう。
相変わらず無表情なのが不気味さを際立たせる。
.
50
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:23:00 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「はんせい、はんせい」
言いながら、スーツのポケットに手を差し入れる。
まさか、と息を飲んだ直後には、俺たちにとっての絶望がヤツの両手に握られていた。
(;'A`) (も、もう1セット!?)
/ ゚、。 / 「右手に “ 月見酒 ” 左手に “ 花見酒 ” 」
ダイオードは両手を広げ、その先に2枚ずつ札を示す。
サイコキネシスのダメージすら感じさせない。
(; ´_ゝ`) 「ぐっ……!」
/ ゚、。 / 「かわせる?」
手首のスナップと、わずかな肘の動きだけで。
4枚の紙片は同時にベクトルを与えられた。
(l|l'A`) 「!」
.
51
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:25:29 ID:D9mWpQHU0
.
マズい。
兄者のサイコキネシスはその性質からして、
四方から飛来する札をいっぺんに叩き落とすのは難しい。
(; ´_ゝ`) 「よけろっ!」
それぞれに超常現象を携えた、悪夢の長方形。
先ほどとは挙動が違っていた。
ゆるい弧を何度も描く不可思議な軌道で、
しかし確実に俺たちのほうへ迫りくる。
(;'A`) 「ひぃ!?」
(; ´_ゝ`) 「わぁお!」
着弾。
点火。
“ 花見酒 ” ──右手方向の床から、炎の渦が巻き起こった。
“ 菊に杯 ” と関連付け(リレイト)されたパイロキネシスは、
広範囲に渦巻く “ 現象 ” と化し、花火のように派手な炎を撒き散らす。
咄嗟に左へ避ける。
倒れこみながら、どうにか炎から逃れた。
.
52
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:27:30 ID:D9mWpQHU0
.
顔をあげると、壁際のスチールラックに体を預ける兄者の姿があった。
勢いざま肩から突っ込んだらしく、苦悶の表情を浮かべている。
(;゚A゚) 「!」
その頭上。
落葉さながら、舞い降る一枚の札。
スチールラック上部。
着弾している。
赤、白、深緑。 一目でわかるその絵柄。
月は “ 電撃(エレキネシス) ” 。
(;'A`) 「マズいッ! そこから離れろ!」
(; ´_ゝ`) 「!?」
.
53
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:29:40 ID:D9mWpQHU0
.
あっと言う間の出来事だった。
ラックの支柱を起点として、青い火花が螺旋状に拡散した。
.
飛び退ろうにも、間に合わず。
兄者の二の腕を火花がかすめる。
l||(l|l ゚_ゞ゚)||l 「あがっ!?」
瞬間、青い光の糸が、彼の全身をいびつに編み上げた。
〜 〜 〜
.
54
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:32:29 ID:D9mWpQHU0
.
【 目撃者サイド: VIP市郊外 ・ 沿道 】
すれ違う対向車の前照灯が、光の筋となって流れてゆく。
暗い窓の外を一瞥し、男は大きなため息をついた。
「Ohニィサン。 私コノ道、タマニシカ通ラナイ。 アナタらっきーネ」
彼の隣。 カタコトで話すドライバーが、黄色い歯を見せた。
ドライバーは国籍不詳だった。 彫りが深く、もじゃもじゃのひげと鬢とが繋がっている。
フルビアードと呼ばれるスタイルだ。 頭には白いターバンを巻いていた。
「ナンダカ疲レタ顔シテルネ。 チョコ、食ウカ?」
男は返事の代わりに愛想笑いで応え、軽く頭を下げた。
ああ、ひどい目に遭った。
さっきまでの出来事を思い返し、もう一度ため息を吐く。
「遠慮イラナイヨ? ホラ、ホラ」
この日の夕方、彼は婚約者──となるべきだった相手と別れた。
最高の夜になるはずだった。 なのに。
.
55
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:34:57 ID:D9mWpQHU0
.
いたずらで、高校生にエンゲージリングを奪われた。
そこから全ての歯車が狂ったのだ。
取り返したエンゲージリングはカラスにさらわれた。
カラスを追ううちに階段から落ち、恋人に踏まれ、
通りすがりの柔道部員のランニングに巻き込まれた。
起き上がる際、Jの壁に悩んでいるような顔の女の胸に飛び込んだことで、
痴漢の濡れ衣をかけられ、警察に追われ、側溝に足を取られ転倒。
走るうちに財布を落とし、ぎっくり腰になり、自動販売機の角に足の小指をぶつけ、
三輪車に跳ねられ、頭上にタライが降り、よろけて蜂の巣を蹴飛ばし、
全身刺されて半狂乱のまま肥溜めに落ちた。
「特別製ヨ。 元気出ルチョコレートヨ」
その後、半裸の状態でとぼとぼ歩いていたところ、
目の前にバンが停まった。
ダメ元で帰りの方向を告げると、
運転席の彼が満面の笑みで「OK」のジェスチャーを返してくれたので、
ホイホイついて……もとい、拾われてきたというわけだ。
.
56
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:37:20 ID:D9mWpQHU0
.
「オイシイヨ、ホラ、アゲアゲヨ」
ドライバーはそう言ってニカッと笑う。
屈託ない、今にもカレーを振る舞ってくれそうな笑顔だ。
むげに断るのもどうかと思い、
男はドライバーの手から、菓子をひとかけら受け取る。
そうして三度目のため息を漏らした直後のことだった。
銀紙を剥がし、中の固形物をかじろうとした瞬間、
男はそのポーズのまま固まった。
「オ兄サン男前ネ。 トコロデココ、暑クナイカ?」
右手から、ころりとチョコが落ちた。
思わず二度見する。
「脱グカ?」
時折こちらにちらちら視線を送る、ドライバーの男。
心なし上気しているようにも見える、眉毛の繋がった、濃い顔。
.
57
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:39:37 ID:D9mWpQHU0
.
問題は彼ではなく、その向こう側にあった。
リアシートのガラスを通して、一台のバイクが並走しているのがわかった。
「ダイジョブ、ダイジョブヨ。 怖クナイヨ」
警察ではない。
バイパスへ続く、片側二車線の沿岸道路。
二つの車線のど真ん中、車の間を縫って走り来るのは、ごく一般的な中型バイクだ。
だが、理解できない。
奇妙な光景だった。
「トコロデ兄サン、肌キレイネ」
バイクを操る、コテコテのライダースーツ ・ レディは、ハーフヘルメットを被っている。
後ろのシートにいる、女子高生らしき制服姿の女の子が、フルフェイスメット。
通常は逆じゃないだろうか。
が、そんなことは瑣末な疑問にすぎない。
問題はなぜ、フルフェイスの女子高生の背に、
.
58
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:41:55 ID:D9mWpQHU0
.
/, .
_,,,...//〃ー,_/(. /
,,イ';;^;;;;;;;:::::""""'''''''' ::"〃,,__∠_/
/;;::◎'''::; );_____ (
≧_ノ __ノ))三= _..、'、"^^^\ヾ
~''''ー< ___、-~\(
\(
マグロがいるのか、だ。
ひっく、妙な音が喉から漏れた。 息をするのを忘れていたらしい。
バイクはとうとう、運転席の真横に迫った。
後部シートにちょこんと座る少女は、片手を女性ライダーの腰に回し、
逆側の肩に、巨大なマグロを担いでいる。
目を丸くする男の視線と、もともと丸いマグロのそれが、重なった。
『 What!? 』
ようやく気づいたのだろう、ドライバーが鋭い声をあげた。
何故英語なのだろう。
彼らの疑問に答えるかのように、
川 ゚ -゚) 「ばっかもおおぉぉおん、そいつがルパンだぁあぁあ」
突然、黒髪の女ライダーが叫んだ。
.
59
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:44:07 ID:D9mWpQHU0
.
(;*゚−゚) 「な、なんですか!?」
川 ゚ -゚) 「言ってみたかったんだ」
(;*゚ー゚) 「そう、ですかっ」
会話らしき数回のやり取りのあと、バイクは急加速する。
二人と一匹の姿は、みるみる小さくなっていった。
『 Oh. 』
あんぐり口を開けたままの男の横で、
ターバン姿のドライバーが、つぶやいた。
『 イッツ、イッツ、ソウ…… 』
『 ジャパニーズ ・ マグロ ・ ガール 』
〜 〜 〜
.
60
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:46:19 ID:D9mWpQHU0
.
【 タムラサイド: VIP市ネタスレ町 ・ バイパス入り口付近 】
て
爪l|l 〜) そ 「なんじゃあぁぁあありゃあ!?」
鈴木タムラが、今日のMVPとも呼ぶべき驚愕の叫びを喉から絞り出した。
その途端、彼の視界から、相手の姿は消えていた。
ライダースーツに身を包んだ漆黒の美女。
彼女の後ろに立つ、フルフェイスの女子高生。
そして、マグロ。
先ほどまでサイドミラーに映っていた物体……、
二人と一匹を乗せたバイクは、猛スピードでトラックに接近し、
タムラのすぐ後方へ迫っていた。
「曲がるぞ!」
滝沢が大きくハンドルを切り、トラックは無理やり右折する。
広い幹線道路から、農村地帯を縦断する支線道路へ降りた。
.
61
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:48:46 ID:D9mWpQHU0
.
爪l|l゚〜゚) 「ダメだ、ついて来てやがる!」
トラックがふたたび加速するまでのわずかな間で、
バイクはすでに、タムラの隣へぴったり張り付いていた。
まずい、どうする。
タムラの頬を冷や汗が伝った、その直後のことだった。
爪 ゚:::::::) 「 あ 」
まさか、と息を飲んだ瞬間、それは現実となった。
左サイドから派手派手しい破砕音。
フロントドアガラスがぶち破られ、目の前に魚の頭部が出現した。
ぎゃあ、とタムラは驚き叫ぶ。
車体が右へ傾いだ。
同時にマグロも引っ込んだ。
.
62
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:50:47 ID:D9mWpQHU0
.
シートから跳ねあがり、左を確認する。
当のバイクもバランスを欠いていた。 当然だ。
タンデムフットレストに立つ少女は、
巨大なる凶器──マグロ型の立体看板を、車上でふたたび抱えなおそうとしている。
て
川;゚ -゚) そ 「おまっ、何やっ……何持ってんだ!」
一瞬見えたライダー女の横顔は、
今の今までマグロの存在に気づいていなかった、そういう表情にも見えた。
「この野郎!」
滝沢が憤怒の雄叫びをあげた。
フラつくバイクへ、めいっぱい幅寄せする。
.
63
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:53:23 ID:D9mWpQHU0
.
タイヤが鳴く。
サスペンションがきしみを上げる。
昂りをクラクションが代弁した。
女は体勢を整えるも、徐々に道路端へ追いつめられていく。
怒気をはらんだ視線がタムラへ向く。
ガードレールまであと数センチ。
川 ゚ -゚) 「……チッ!」
衝突ギリギリで、女のバイクはたまらず減速した。
滝沢はすぐさまハンドルを切り返す。
進行を阻むように、バイクの前方へ躍り出る。
急ブレーキ。
タムラは慌ててダッシュボードを掴む。
そして急加速。
滝沢はさらにハンドルを捻り、もう片手でギアをシフトアップする。
エンジンがうなり、トラックはさらに加速した。
.
64
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:56:11 ID:D9mWpQHU0
.
爪;゚〜゚) 「撒いたか!?」
ひととおり走行が安定したところで、
タムラは膝に散ったガラス片を払いのけ、
窓から顔を出した。
見えた。
滝沢による妨害も大した効果はなかったらしい。
バイクはタムラ達を煽るがごとく、左後方へぴったり張り付いている。
幌の端からちらちら姿が現れる。
そのたび、ハイビームがタムラの目を刺した。
「しつこい奴らめ……!」
爪 ゚〜゚) 「右だ、右に寄れ! ヤツらを誘い込む!」
声に弾かれたかのように、トラックはぐっと進路を変える。
わずかに減速を伴った。
その隙を逃すことなく、バイクが左に滑り込もうとしてくるのがわかった。
.
65
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 19:58:18 ID:D9mWpQHU0
.
爪#゚〜゚) 「くらえぇぇぇえぁあ!!」
タムラはここぞとばかり、バスタオルを窓から放り投げた。
ヘッドライトの眩しさではっきりとは見えなかったが、
バイクがその上を通過したであろうことは、おおよそ感じ取れた。
終わりだ。
タムラは顔を引き、口角を吊り上げる。
たっぷりと味わいな、俺様の能力を。
爪;゚〜゚) (あれ? 今……!?)
が、そこで違和感が走る。
今しがた、トラックの左に出現した、クーのバイク。
一瞬しか確認できなかったものの、
後ろのシートに、いるべき人物の影がなかったような。
.
66
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:00:51 ID:D9mWpQHU0
.
『 あっひゃ〜っ☆ 』
爪 ゚〜゚)
その時だった。
上部から、どん、どんという、天井を踏みしめるような音が聞こえ、
川
(*。A。) ヒョコ
爪 ゚〜゚)
フロントガラスという名のスクリーンに、有り得ない光景が映し出されるのと。
(*。A。)
『 やっほー 』
運転席二人の表情がゆがむのは、同時の出来事だった。
〜 〜 〜
.
67
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:03:42 ID:D9mWpQHU0
.
【 ドクオサイド: 第三倉庫内 】
短い悲鳴をともなって、兄者の長身がびくりと跳ね上がった。
::::(l|l _ゝ )::: 「ぐ……おお……っ!」
本日二度目の感電。
幸いスタンピースほどの威力はなかったようで、
兄者は倒れそうになりながらもその場に踏みとどまった。
(; _ゝ ) 「うっは……ビリっと、き、たわ」
(;'A`) 「大丈夫か?」
(; ´_ゝ`) 「なん、の、これしきっ」
そう言って、おもむろに床を蹴る。
追撃の札をすれすれで避け、疾駆する。
.
68
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:05:44 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「どっこい、それは読んでた」
その前方、ひらり舞う花かるた。
声を上げる間もなく、閃光が周囲を包む。
兄者の足が止まった。
真正面からの“ グリントキネシス ” 発動。
サディスティックに広がる白い闇。
兄者は顔を覆う。
当然、俺もだ。
徐々に光は薄れゆくが、そのうち異変に気づく。
.
69
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:08:28 ID:D9mWpQHU0
.
(;'A`) 「なっ」
まっさらなキャンバスの中央に、黒い影がゆらめいた。
はじめはぼんやりと。 しかしみるみる大きくなり。
直後、兄者の頭上から。
(; ´_ゝ`) 「ぐあ!?」
巨大な物体が降った。
/ ゚、。 / 「鹿は “ テレポート ” 」
簡易テーブル。 アルミ製の軽いものとはいえ、落下エネルギーは充分。
延髄あたりをしたたかに打ち、兄者は大きくバランスを崩す。
が、あいつもタダで起きるようなタマじゃない。
(#´_ゝ`) 「────っらぁ!」
既にサイコキネシスの射程距離内だった。
地面に片手をついたまま、兄者は反対の腕を掻き出すように払う。
.
70
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:11:18 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「!」
波動のアンダースロー。
ダイオードはサイドステップしつつ、上体を大きく傾けた。
(; ゚_ゝ゚) 「なっ」
その時だ。
想定外の現象に、俺たちは目を見開いた。
まるで、放たれた念動力でスイッチを押下されたように。
後方の柱が、ギン、と甲高く鳴いた瞬間、
常識とは思えないスピードで、ダイオードがこちらに突進してきたのだ。
('A`;)ノノ そ 「うおっ!?」
大砲の弾のように、俺たちの横を駆け抜け。
反対側まで吹っ飛び、くるり、器用に体を反転させる。
そのまま壁を蹴って静止すると、ダイオードは優雅に着地してみせた。
.
71
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:14:36 ID:D9mWpQHU0
.
(; ´_ゝ`) 「! ───痛っ」
赤い置きみやげを残して。
兄者の腕から血の糸が垂れ落ちた。
/ ゚、。 / 「……」
ダイオードは顔の前に肘を曲げ、
「あんた、背中が煤けてるぜ」のポーズでこちらを見ている。
伸ばした指先に一枚の札。
通過する際、兄者の腕を引っかいていたのだ。
(; ´_ゝ`) 「なんだ、今のは……!?」
/ ゚、。 / 「教えてやるケド」
解説したがりのエレキネシストは、得意げに鼻先をこすった。
/ ゚、。 / 「スズキの履いてるブーツ、
実はここにもちょーのーりょくを封じ込めてあるケド」
.
72
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:17:08 ID:D9mWpQHU0
.
(; ´_ゝ`) 「……花札(オモチャ)だけじゃなかったのか?」 イテテ
返答代わりの軽い跳躍。
/ ゚、。 / 「 “ リアクトン ” タムラの、チカラ。
── “ 反作用を操る能力 ”」
(;'A`) 「!」
〜 〜 〜
.
73
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:20:04 ID:D9mWpQHU0
.
【 クーサイド: 県境方面 広域農道路上 】
12月初旬の夜空は澄みわたり、さえぎる雲もない、星の大海だった。
VIP市沿岸に位置するこの支線道路は、路面もきちんと整備されており、
一般的な農道のイメージとは異なる、アスファルトの幅広い道だ。
「あ」
ただ両サイドが畑というだけ。
十数分ほど進めば、国道△△号線、バイパスの降り口付近へ復帰する。
「お」
星の輝きがよく見える。
夜が深まり、寒さはいっそう増したように思われた。
.
74
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:22:50 ID:D9mWpQHU0
.
川 ゚ -゚) 「 え ? 」
クーは飛んでいた。
川 ゚ -゚) 「………………はい?」
比喩ではなく、バイクごと宙を舞っていた。
トラックから投げ放たれた、一枚のタオル。
そいつを踏んだ瞬間、その “ 現象 ” は起きた。
軽い衝撃とともに、
車体が、勢いよく宙へ跳ね上がったのだ。
ファンタジー映画のワンシーンのように、空を舞う一台のバイク。
『 オーノ〜! 』
ハンドルを握るクーの脳裏に、
コミカルなキャラが登場する、家庭用レースゲームの一場面が浮かんだ。
しぃ達若い者は知らないであろう、古めの機種のゲームだ。
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75
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:25:20 ID:D9mWpQHU0
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川 ゚ -゚) 「Oh.....」
そのゲームでは、ジャンプ台のトラップを踏むと、キャラクターが勢いよく飛び上がる。
彼女の状況は、まさにそれだった。
川 ゚ -゚) 「の……」
落ちるとスピンし、アイテムが没収される。
川 ゚ -゚)
て
川;゚ -゚) そ 「のおおおおおおおおおおおおおぉぉぉう!?」
が、残念ながらこれはゲームではない。
紛れもない現実だ。
地面に叩き落とされた場合、スピンしながら舌を出すだけでは済まされない。
.
76
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:37:50 ID:D9mWpQHU0
※vipさるってしまったので小休止
77
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:43:40 ID:D9mWpQHU0
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浮遊の最高到達点から、ベクトルは下へ。
クーは無意識のうちに腰からペットボトルを抜いた。
ファイトで一発しちゃうドリンクCMのように、
キャップを親指でひねり飛ばす。
川;゚ -゚) 「このっ……!」
落ちる。 回る。
クーは無我夢中で腕を振った。
ボトルから水のロープが射出される。
ボトル内の水は “ 特別製 ” だ。
触れずとも制御でき、その強度も高い。
間一髪、ロープは近くの木の枝に絡みついた。
ぐい、と引き寄せ、ターザンのような振り子運動を二、三回。
クーの体は、しなる枝と水のロープの下、ぶらりと垂れ下がった。
川 ゚ -゚) 「……ぐぅ。 あっっぶな……」
助かった、と胸をなで下ろすクーだったが、
.
78
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:46:00 ID:D9mWpQHU0
.
川 ゚ -゚) 「 あ 」
その目の前、己の分身であるバイクが、
川;゚ -゚)ノ 「や、ちょっ」
スローモーションで、道路下の畑に落下してゆく姿を、
川;゚ -゚) 「Nooooooooooooooooooooooooo!!!!」
目撃させられた。
同時に、聞きたくない轟音が──鮮明に彼女の耳へ届いた。
.
79
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:47:55 ID:D9mWpQHU0
.
川 ; -;) 「きゃしぃいぃいぃぃぃぃぃいぃぃぃぃいいぁあぁ!!」
その後、水の力で引き起こしたマイバイクは、
傷だらけで、見るも無惨な姿に変わっていた。
『 頼む、動いてくれっ 』
『 動けよおぉぉぉおぉお 』
泥を払い落とし、シートにまたがる。
素直でもクールでもない雄叫びをあげ、
必死にキーをひねる。
川 ; -;) 「おおお……お?」
彼女の祈りが通じたのか、数回のトライで奇跡的にエンジンがかかった。
..
80
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:49:47 ID:D9mWpQHU0
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ちょっとだけ泣きそうになっていたクーだったが、
気を持ち直し、ギアを入れアクセルをひねる。
川;゚ -゚) 「うぉぉおぉぉぉあぁぁあぁ」
バイクはよたよたと発進した。
なるべく前を──前だけを見ながら走った。
凄惨たる相棒の姿を、できる限り目に入れたくなかった。
幸いなことに、あれだけの衝撃を受けたにも関わらず、バイクは走行できていた。
ハンドルが湾曲し、多少フラつくためスピードは出せないが、
タイヤ・クラッチ・その他走行に関わる機構にはさほど問題なかったようだ。
.
81
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:52:15 ID:D9mWpQHU0
.
川 ゚ -゚) 「あっ」
……が。
走っているうち、左ウィンカーがはがれ、落ちた。
川 ゚ -゚) 「げっ」
カーブを曲がった瞬間、タイヤのフロントフェンダーが弾けた。
川;゚ -゚) 「ぽよぉ──────ッ!?」
左ミラーが折れた。
ビキニカウルが垂れ下がった。
ガソリンタンクの外装が飛んでいった。
.
82
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:07:45 ID:D9mWpQHU0
.
川 ; -;) 「うごおおおおおおぉぉぉぉぉおぉぉおん」
都市伝説みたいなボロボロの姿で、クーのバイク(元)は夜道をひた走った。
『 リタイアしますか? 』
レトロレーシングゲームのリトライ表示が脳裏によぎる。
クーは歯噛みしながら駆けた。 ほんのちょっとだけ泣いた。
選択肢などない。
ゲームならいつ中断してもいいが、現実は終わらない。 死ぬまで地続きだ。
纏わりつく妄想を、その都度振り払いながら、あぜ道を駆けた。
途中から山のほうへ逸れる。 大型車には通行できない近道だ。
バイク(らしき何か)で暗い坂を登り、駆け下りる。
林を抜けると、郊外のニュータウンへ続く広い道路へ出た。
川 ゚ -゚) 「!」
交差点にて制止し、右を向く。
百メートルも離れているだろうか。
遠くから、ヘッドライトが揺らめきながらこちらへ向かってくる。
.
83
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:11:42 ID:D9mWpQHU0
.
まさにそれは、さきほどまで彼女が追っていたトラックだ。
追いついた。
クーは小さくガッツポーズする。
ハンドルがブレる。
慌てて車体を支えなおす。
普段の彼女であれば、
自らのライディング ・ テクと経路選択が正解だった事実に
しばし酔いしれるのであろうが、今はそれどころではない。
トラックにはしぃが乗り移っている。
事前に打ち合わせたわけではない。
あっと言う間の出来事で、止める暇などなかった。
川 ゚ -゚) 「ここで遭ったが……百年目っ!」
クーはひらりとバイクを降り、スタンドを立てた。
衝撃でどこかのネジが2、3本落ちた。
ところどころ傷つき、外装のひしゃげたバイクを見る。
彼女の視線に応えるように、ジェネレーターカバーがぱかっと開いた。
クーは思わず目をそらす。 もうむり。 正視に堪えない。
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84
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:13:28 ID:D9mWpQHU0
.
川 - ) 「キャサリンの恨み……ここで、晴らす」
怒りを燃やすクーだったが、すぐに違和を感じ取る。
迫りくるトラックは、傍目に見ても異常事態であることがわかった。
きゅりきゅりと、スリップ音を撒き散らしながら、蛇行している。
川 ゚ -゚) 「ん」
しぃが何か仕掛けたであろうことは明白だった。
だが、それならなぜ、トラックは止まろうとしないのだ。
川 ゚ -゚) 「!!」
そして、クーは見た。
彼女の貸したジャケットをはためかせる、白い制服姿。
当のしぃが、蛇行するトラックの天井部分にあらわれた。
四角い、銀色の何かを傍らに携えている。
目を凝らすまでもなかった。
あんな巨大な物体を “ 小脇に抱えられる ” のは、彼女しかいない。
.
85
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:14:15 ID:D9mWpQHU0
.
川 ゚ -゚) 「お、おい……!」
ライトの眩さと夜道の暗さで、正確には確認できない。
が、少女は運転席へ何かを告げるかのように、体を曲げたあと──。
川 ゚ ゚)
クーは仰天し、息を飲んだ。
て
川;゚ -゚) そ 「ま、さ、か!?」
バイクから、ヘッドライトのカバーがころりと落ちた。
メーターのバネがびよんと飛び出た。
──まさか、の事態は、おおむね現実になる。
それが物語の鉄則だ。
〜 〜 〜
.
86
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:15:11 ID:D9mWpQHU0
.
【 タムラサイド: 市道××号線路上 】
時は少しさかのぼる。
クーがバイクの空中ダイブを目撃し、悲鳴をあげているころ。
ここ、どりあん運送所有小型トラックの運転席内でも、
男たちの野太い絶叫が、不協和音を奏でている最中だった。
て
爪l|l゚皿゚) そ 「ひいぃっ! お前ッ、嘘!?」
(*。A。)+
ガラスの上部から、さかさまの少女が現れた。
タムラ達はシートにのけぞる。
先ほどまでバイクのタンデムシートにいたはずの、小柄な女子高生。
猫塚しぃが、トラックの天井から、ガラスにへばり着いていた。
しぃは、いや、しぃの “ 別人格(アナザー)” だろう。
既にメットを外した少女は、運転席の二人を交互に眺め、蛇のように舌なめずりする。
.
87
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:15:54 ID:D9mWpQHU0
.
直後、拳をぐっと握りしめ。
(*。A。) 「あっひゃぁぁあぁ!」
ためらいなく、フロントガラスへ振り下ろした。
て
爪;゚〜゚) そ 「なっ、なぁっ!?」
「こいつ、何を……うわっ!?」
乱打。
(*。A。) 「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひ
ゃひゃひゃヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
縦読みでも 『 あひゃ 』 になるほどの狂笑。
第三話のコピペだが、それはまあいい。
タムラは驚愕におののく。
.
88
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:16:44 ID:D9mWpQHU0
.
『 あひゃぁッ! ふひっ、ひひぇッ 』
ポセイドンが封じたかった──もしくは利用したかった──狂気が、目の前にあった。
逆立つショートカットの奥に、満面の笑顔が張り付いている。
『 くひっ、ふふ……へへ、あ、ひゃひゃっ 』
少女は心底楽しそうに、片手で、ときおり両手をハンマーのように組んで、
めちゃくちゃにガラスを叩き続けている。
タムラが身を震わせたのは、恐怖のためだけではなかった。
『 ひゃ───ッひゃっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃぁ───ッ! 』
こいつはヤベェ。 その気になれば、殺ることのできる人種だ。
ジキルとハイドなんて皮肉ってはみたが、実際にここまで変わるとは思わなかった。
爪; 〜 ) (こいつ──何か、手に!?)
拳での打音に混じって、ガシガシと、引っかくような異音。
金属製の小さな何かを逆手に持っている。
あれはなんだ、爪切りか。
フロントガラスは傷がつくばかりで、
割れはしないものの、視界は確実に狭まってゆく。
.
89
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:17:54 ID:D9mWpQHU0
.
ボディチェックの際、彼女が何本もの刃物を隠していたことを、タムラは思い出す。
巷を震わせる連続殺人鬼 “ アリス ・ キラー ” のニュースが、フラッシュバックした。
「う、うぉおおおおおぉ!」
トラックは減速することなく、車体を揺らしながら前進する。
振り落としてやろうという滝沢の足掻きが、結果的に功を奏した。
しぃはバランスを崩し、前のめりにずるりと滑り落ちた。
辛うじてフロントガラスにへばり着くと、開脚した姿がガラスへ大写しになる。
ひゅー、セクシー、なんて軽口を叩く余裕はなかった。
タムラはすでに相手を女子高生だとは思っていない。
異能をたずさえた、モンスター。
このトラックは、少女型殺戮マシンに襲撃を受けている。
そして何より、
爪;゚〜゚) 「おまっ、ちょっ……どけっ!」
前が見えない。
ワイパーに足をかけ、アナザー ・ しぃは器用に体勢を戻した。
それからふたたび、さかさまに上半身を出す。
.
90
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:19:11 ID:D9mWpQHU0
.
タムラは、猫塚しぃがまたガラスを攻撃するのかと考えたが、
そうはならなかった。
少女は舌を出してウィンクすると、コメディ映画のように、ぴょこんと頭を引っ込める。
爪;゚〜゚) 「もういい、車を止めろ! 外でケリをつける!」
どん、どん。
怪物の足音が天井を移動する。
音を追う滝沢の眼が、青く光っている。
“ 透過式遠隔視(イントロスコピー) ” 。 発動しているのか。
いったいそれに何の意味がある。
.
91
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:19:53 ID:D9mWpQHU0
.
「あ……嘘、だろ」
その上、小さくぼそぼそと呟いている。
いいから前を見て運転しねぇか。
タムラが告げようとした瞬間のことだった。
「「 !!!!!!! 」」
リアウインドウをぶち破り。
l|l 爪l|l 皿゚) l|l
マグロが、出現した。
〜 〜 〜
.
92
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:20:53 ID:D9mWpQHU0
.
【 ドクオサイド: 第三倉庫内 】
( ´_ゝ`) 「……概念的な話になると難しいな」
/ ゚、。 / 「操るといっても、方向は制御できないケド。
あくまで反作用は反作用。 及ぼす力の反対側に発生するチカラ。
できるのは “ 強化 ” “ 軽減 ” の二種類のみだケド」
リ ア ク ト ン
“ 反作用を操る能力 ” 。
鈴木タムラ……あいつにそんな超能力があったとは。
/ ゚、。 / 「右足に “ 反作用強化 ” ───跳躍。
左足で “ 反作用軽減 ” ───着地」
さっきこいつが見せた、
理屈に合わない猛スピードの正体はそれか。
.
93
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:22:04 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「ま、安心していーケド。
最初に教えたとおり、スズキのアイテムに封じたちょーのーりょくは、使い捨て。
ブーツに封じた “ リアクトン ” 、今の高速移動によって品切れだケド」
安心などできようはずがない。
視線を移せば、肩で息をする兄者の様子が、嫌でも目に飛び込んでくる。
形成不利は明らかだった。
/ ゚、。 / 「よかったよかった」
(;'A`) (こいつ……)
ダイオードはことごとく先手を打ってくる。
頼みの綱であるヒーロー男は 札を防ぐのに精一杯。
というより、サイコキネシスの有効範囲に入れてもらえない。
俺に至っては、無様に逃げ回ることしかできず。
お荷物以外の何者でもない。
/ ゚、。 / 「ところで」
翻弄されている。
それが肌で感じられたからこそ、続く言葉は俺たちの緊張をMAXまで引き上げた。
.
94
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:24:56 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「あんたに “ マグネティクス ” を発動したケド。
───これで、あんたは磁力の中心」
_,
( ´_ゝ`) 「!?」
ダイオードは指先の札をぴんと弾いた。
庫内に、赤い “ 蝶 ” が舞う。
兄者は反射的に腕へ視線を落とし、細い目をさらに細める。
破れめくれた袖の下、伝うは一筋の赤色。
先ほどの攻撃──札による一撃は、タダの引っかきじゃない。
(;'A`) (まさか、これ)
/ ゚、。 / 「“ リフレクス ” ─── “ 反射する能力 ”」
萩に猪。
/ ゚、。 / 「“ テレポート ” ─── “ 瞬間移動 ”」
紅葉に鹿。
.
95
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:27:59 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「“ マグネティクス ” ─── “ 磁場を操る能力 ”」
牡丹に蝶 ───これは。
リ レ イ ト
/ ゚、。 / 「“ 関連付け ”」
エレキネシストが告げた途端。
掲げられた三枚の札は、怪しい輝きを帯び。
/ ゚、。 / 「 “ 猪 ・ 鹿 ・ 蝶 ” 」
順次、飛翔した。
(; ´_ゝ`) 「くぅっ!?」
戦慄が走った。
投げる。投げる。投げる。
その三枚にとどまらない。
休む間もなく、札は次々に、ダイオードの手元から放たれる。
.
96
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:29:51 ID:D9mWpQHU0
.
俺は飛び上がりそうになった。
が、逃げまどう必要はないとすぐに気づかされる。
回転する札の数々は、ただ一つの標的目指して飛んでいたからだ。
( ´_ゝ`) 「────はッ。 そうかいそうかい」
ターゲットのサイコキネシストは、迎撃の構えをとった。
掌の中心、空間が奇妙に歪み、渦を巻く。
念動能力の予備動作。
( ´_ゝ`) 「むしろっ、好都合だっ……」
(;'A`) 「!」
(# ´_ゝ`) 「っっっらぁっ! っとぉぅ!」
腕を振るう。
粗野で原始的なモーションだが、パフォーマンスは確かだ。
一枚の札が弾け飛び。
返す手で別の一枚も叩き落とされる。
.
97
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:30:56 ID:D9mWpQHU0
.
(# ´_ゝ`) 「ぃよいしょおおおぉぉっ!」
薙ぎ払う。 幾度となく。
一枚の札が勢いを失い、落ち葉のようにひらひら地面へ。
もう一枚は明後日の方向へ進路を変えた。
( ゚A゚) (す、げ)
冷静に、投擲される全ての札に対処している。
て
(l|l;゚_ゝ`)そ 「どっこい……うぐ!?」
───ように見えたのは、一時のことだった。
ふいに兄者は小さく声を漏らし、前屈みによろめいた。
その肩に一枚の札が突き刺さっていた。
脳内を違和が駆ける。
あり得ない方向からの被弾。
.
98
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:33:23 ID:D9mWpQHU0
て
(;'A`) そ 「横っ!!」
俺の叫びに反応し、兄者はがむしゃらに腕を振りかざした。
飛来していた別の札が、くるくる回ってその場に落下する。
───ところが。
て
(l|l; ゚_ゝ゚) そ 「がはっ!?」
その瞬間。
兄者の体がくの字に折れた。
サイコリフレクション
/ ゚、。 / 「……“ 念 動 力 反 射 ” 。
どう? 自分ののーりょく、味わった感想は」
目を凝らして、何が起こっているかようやくわかった。
無秩序に撒かれる札に混ざって。
実に不可解な “ 現象 ” が、兄者に牙を剥いていたのだ。
/ ゚、。 / 「今のアンタは磁場の中心。
そいつは勝手に引き寄せられるケド」
.
99
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:38:05 ID:D9mWpQHU0
.
『 そいつ 』 とは当然、超能力をパッケージングした札のこと。
“ リフレクス ” “ テレポート ” そして “ マグネティクス ” 。
名称だけ聞けばとても攻撃用とは思えない、
そんなPSI3つの “ 関連付け(リレイト) ” 。
だがしかし、この合成技は、兄者に対して効果覿面だった。
投擲されるいくつもの札のうち、ふいに数点の札が “ 空中で姿を消す ” 。
(; ´_ゝ`) 「くっ!?」
その直後、見失った札は周辺の空間からランダムに出現。
“ マグネティクス ” に関連付け(リレイト)された札は空中にて軌道修正され、
磁石が引き合うように、彼の肉体めがけて直行する。
て
(; _ゝ )そ 「ぐあ!?」
ホーミング性能に加え、死角からの急襲だ。
対応が間に合わない。
掠めれば無邪気に皮膚を裂き。
.
100
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:40:22 ID:D9mWpQHU0
.
(; ´_ゝ`) 「くっそ、この……!」 バチン
て
(゚く_(# )そ 「うぶ!?」
サイコキネシスで叩き落とそうにも、
“ リフレクス ” により、不可視の波動は兄者のほうに返る。
ひるんだところへ、魔弾は容赦なく食らいつく。
消える札以外のそれらは、 “ カス札 ” だ。
特殊効果なし。 だが数が多すぎる。
当たれば皮膚は裂け、場合によっちゃ肉を抉る。
て
(l|l;゚_ゝ`) そ 「がっ……はっ……!」
リフレクション
五度目の “ 反射現象 ” を腹部に受けたところで。
兄者はとうとうその場に膝をついた。
リ レ イ ト
/ ゚、。 / 「あっけない幕切れだケド。 ──“ 関連付け ”」
札の輪郭がほの白く輝いた。
掲げた三枚を青い糸が紡ぐ。
.
101
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:43:41 ID:D9mWpQHU0
.
ダイオードの動きに、躊躇はない。
無慈悲に、無表情に抛られる、とどめの “ 猪鹿蝶 ” 。
≡(;'皿`) 「く、くっそぉぉおぉぉ!」
意を決し、俺はその場を駆け出した。
兄者の前へ仁王立ちになる。
て
(l|l; _ゝ ) そ 「……!」
/ ゚、。 / 「お」
(l|l'A`) (やっちまっ……!)
勢いって恐ろしい。
体中を抉られるビジョンに、思わず目を閉じる。
(;l|l>A<) (くそッ! なるようになれぇ!)
大丈夫だ。 チャンスだ、ほら今だ。
頼む兄者!
俺が盾になったこの隙に、脇をすり抜けて前へ出ろ。
.
102
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:46:24 ID:D9mWpQHU0
.
以前暴漢をのした時のように、サイキック全力パンチをお見舞いしてくれ。
目の前のスーツ野郎に。
そして俺を救ってくれ。 いや、割とマジで。
『 ………… 』
あの、だから。
今のうちに、早く行って、やっちゃって。
ねえちょっ、ちょ、ちょっと! ほら何やってねえちょっと待っおい早
l|(l|l゚A゚)|l 「やっぱ怖えぇぇえぇええぇ!!」
結局耐え切れず。
俺は目を開け、渦巻く感情を絞り出した。
l|(l|l゚皿゚)|l 「あんぎゃぁあぁ!!」
三枚の凶器が、俺のすぐ眼前にあった。
〜 〜 〜
.
103
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:48:39 ID:D9mWpQHU0
.
【 タムラサイド: 市道××号線路上 】
叫喚が車内を揺るがす。
(*゚:::::::)
破れた幌のシートと、粉々になったリアウインドウの隙間から。
ショートカットの悪魔が覗いていた。
爪l|l 皿 )
(*゚∀゚) 「おいっす」
喉が嗄れそうだ。
少なくとも、悲鳴に使うリソースなど残っていない。
タムラはそう思った。
.
104
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:51:09 ID:D9mWpQHU0
.
冷たい無表情から一転、ドヤっと頬をほころばせる怪物チャネラー。
やはりマグロごとトラックに乗り移ってきていた。
ウィンドウの隙間から、後方の様子が垣間見えた。
幌の上部がずたずたに裂かれている。
ここから天井へ移動したのだろう。 つまり、刃物を持っている。
狭い車内において、荷台にいる怪物の攻撃を避け続けるのは不可能だ。
ましてや相手は凶器を所持している。
タムラはマグロの頭越しに、運転席へ指示する。
爪l|l゚〜゚) 「止めろっつってんだろうが! おい! 何やってやが……」
「聞け」
が、滝沢の強い口調が先んじた。
.
105
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:52:54 ID:D9mWpQHU0
.
爪;゚〜゚) 「あぁん!?」
「……わ、悪いニュースが二つある」
何を言い出すのだ、こいつは。
現在進行形で最悪の事態だ。
(*゚∀゚) 「あっひゃ〜〜ン? にゅーすゥ?
オレサマ警報発令中ゥ〜〜☆?」
爪;゚〜゚) 「話は後だ! まずは車を……」
「……ひとつ。 俺の意識は、そろそろ、限界だ」
滝沢はかまわず話し続ける。
様子がおかしい。
明後日の方向を見つめ、声を出さない間も、口をぱくぱく動かしている。
まるで魚ですギョ。
横のマグロがそう語りかけてくる。
.
106
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:54:47 ID:D9mWpQHU0
.
「普通、こんなことは、起こり得ない。
……が、よくあるシチュエーションには、違いない」
亡霊でも見たような表情で、ぶつぶつ呟く。
体全体を小刻みに震わせつつ、滝沢は続けた。
爪;゚〜゚) 「何意味わかんねぇコト言ってやがんだ! いったい何が……」
「悪いニュース、残りの、ひとつ」
顔全体を青く染め、声を上ずらせて。
「ブレーキが、利かない」
そこまで告げると、青い目玉がぐるりと反転した。
.
107
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:55:47 ID:D9mWpQHU0
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爪 ゚〜゚) 「えっ」
(*゚∀゚) 「えっ」
そのままずるずると、ハンドルに沈み込んでいく。
見れば背中にガラスが突き刺さっている。
──黒いスーツに、血の染みが、少しづつ広がっていく。
滝沢はクラクションに上半身を横たえた。
ホーンの音が田舎の夜を引き裂く。
そのうち車体が左右に揺れはじめた。
て
爪;゚〜゚) そ 「ちょっ、なっ、危ねえええ!!」
タムラはすぐさま、ハンドルの下から右足を突っ込み、
滝沢の靴ごとブレーキペダルを踏みつける。
爪 〜 ) 「 」
だが。
伝わるのは、スカスカとした感触だけ。
.
108
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:59:23 ID:D9mWpQHU0
.
『 ……嘘、だろ 』
坂に差し掛かる。
流れる景色の速度が、早まる。
街路灯が光の点から、線に変わる。
何度目だろうか、心臓が大きく跳ね上がる。
車体のきしむ音、クラクション、
ブレーキともスリップともつかない、甲高きタイヤの摩擦音。
て
爪l|l 〜 ) そ 「うぎゃああぁぁぁあぁあ!?」
(;*゚∀゚) 「マ──ジかよ───!?」
─── さまざまな音を立てながら。
─── 事態は、加速する。
(続く)
.
109
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 22:17:49 ID:UI4P.A/g0
おつおつ
110
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 22:30:54 ID:5zl9h5IA0
おっつおっつ
111
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 22:30:54 ID:5zl9h5IA0
おっつおっつ
112
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 22:31:38 ID:K8oP714s0
連投しちまった!
こんどこそおつ
113
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 22:49:42 ID:.mtOHUZo0
乙だぜ
タムラつえー
114
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 22:50:25 ID:.mtOHUZo0
タムラじゃなくてダイオードだ
115
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 23:33:56 ID:TOSCJl5M0
乙乙
ちゃねらーは化け物揃いだな
116
:
名も無きAAのようです
:2014/08/15(金) 01:15:44 ID:1Eh6P8GA0
両方で投下おつ
VIPでの構成の方が好みだ
117
:
名も無きAAのようです
:2014/08/16(土) 04:01:19 ID:yllSeYVEO
乙、滝沢の最後が渋い
118
:
名も無きAAのようです
:2014/08/16(土) 22:47:07 ID:rn8TsSl60
つまらん
119
:
名も無きAAのようです
:2014/08/17(日) 20:35:52 ID:7e3Go1Tw0
おつんつん
vip見逃したからありがたい!
120
:
名も無きAAのようです
:2014/08/18(月) 07:05:25 ID:I4L5i9Xw0
おつ!
いやー毎回さすがのクオリティ
121
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:08:02 ID:nI5rleiY0
※2〜3日に分けて投下。
122
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:08:45 ID:nI5rleiY0
..
【 しぃサイド: トラック天井部 】
爪;゚〜゚) 「お前、なんで」
震え声に、猫塚しぃは運転席を覗きこんだ。
声の主───誘拐犯は、丸い目でこちらを見上げている。
フロントガラス越しに、さかさまの視線が交差した。
(*゚−゚) 「お願いしますね」
ふたたびよじ登った、トラック運転席(キャブ)・天井部。
車体が上下に揺れ動く。
そのたび、彼女はバランスを崩しそうになる。
人格(チャネル)は交代済み。
今現在、小柄な体躯を支配している主人格───、
しぃには、副人格(つー)ほどの運動能力はない。
トラックは、タムラのハンドル操作によって、どうにか走行状態を保っている。
しぃは潰れたカエルのように、全身で天井にへばりついた。
.
123
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:09:34 ID:nI5rleiY0
.
爪;゚〜゚) 「な、何がだよ、お願いって……」
(゚−゚*) 「ハンドル」
爪;゚〜゚) 「いや、おい」
サイドミラーのパイプにつかまりながら、
しぃはこわごわと、バンパーへ足をおろしてゆく。
反対側の肩から、銀色の直方体がぶらんと下がった。
ごつんと音を立てた後、反動でもう一度、キャブ前部を打つ。
爪l|l゚〜゚) 「何をやろうとしてんだ! なあ!」
タムラが叫んだ。
純粋な疑問ではないだろう。
本当にやるつもりか、というニュアンスが、端々から感じられる。
わかっているなら聞かないで。
唇をぎゅっと結び、しぃはその言葉を、
ためらう気持ちごと喉に押し込んだ。
.
124
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:10:41 ID:nI5rleiY0
.
暴走トラック、キャブフロント。
冷気の鋭さは、タンデムに跨っていた時以上だ。
バンパーに足をかけ、コメツキムシのようにくっついた女子高生は、
その片手に、巨大な物体を抱えていた。
爪l|l゙゚〜゚) 「おいって!」
荷台。
その荷台は荷台にあった荷台だ。
つまり───トラックの荷台に積んであった、運搬用の手押し荷台。
泣いたツインテール少女を乗せて走る、例のアレとは異なる。
車輪が大きく、数も4つではなく2つ。
持ち手部分の根本から、三角形に曲がった金属製のパイプが生えている。
車輪を休めるための足部分だろう。
前後逆のリヤカーと呼ぶべき形状だった。
.
125
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:11:39 ID:nI5rleiY0
.
爪l|l 〜 ) 「無茶だ!」
(-゚* ) 「できます。 ───きっと」
運転席の声が煩わしい。
これ以上の問答は不要だった。
しぃはすでに腹を決めている。
決心がどうとかではなく、ぐずぐずしていると本当に振り落とされる。
しぃはトラックの鼻先に片手を添えた。
そしてもう片方の手から、荷台を降ろし、離し。
て
爪l|l゚〜゚) そ 「うわああああああ!!」
飛び降りた。
荷台ごと。
着地した。
荷台の中心へ。
接地部がアスファルトに弾かれ、荷台は大きく跳ね上がった。
しぃはフロントグリルを掴んで堪える。
それから、全身をつっかえ棒のように伸ばした。
.
126
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:12:43 ID:nI5rleiY0
.
ボロ布を噛まされた車輪が、激しく悲鳴をあげる。
直進するトラック。
その前方、両手でトラックを押し返す、制服の女子学生。
いつ跳ね飛ばされても、轢き潰されてもおかしくない。
人力ブレーキ on 荷台。
(;*>ー゚) 「くぅっ……!」
しぃの矮躯を、体験したことのない負荷が襲う。
肉薄する鉄の圧が、風が、音が。振動が。
巨大な黒い塊となって、全身を包み、数多の牙を突き立てる。
荷台の車軸から火花がほとばしった。
右、そして左。
車輪が次々に弾け飛んだ。
天板が跳ねる。 アスファルトが鳴く。
足場が落ち窪んだことで、しぃはふたたびバランスを失いそうになる。
吹き飛ばされる寸前のところで、どうにか踏みとどまる。
.
127
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:13:47 ID:nI5rleiY0
.
パイプとボードだけになった、元 ・ 荷台。
しぃは必死の形相でそこに立ち、
キャブフロントへ、細い腕を突っ張った。
止める。
ぜったいに、止まる。
止めてみせる。
しぃは叫び続けた。
音の嵐と、全身をシェイクする衝撃の中で。
.
128
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:14:31 ID:nI5rleiY0
.
http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
http://localboon.web.fc2.com/100/top.html
纏
http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html
.
129
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:16:43 ID:nI5rleiY0
.
〜 〜 〜
【 ドクオサイド: 第三倉庫内 】
不思議と札が止まって見える。
目を開けた直後だからだろう。 クロノスタシスってやつか。
ていうか、この位置はアカン。
弧を描いた札は、仮にどのような軌道をたどろうとも、
ただ一点へ収束することがすでにわかっている。
唯一無二のターゲット、兄者は俺のすぐ真後ろにいる。
彼と札を繋ぐ直線。
高さからいって、顔面直撃コース。
ビンゴ。
この札、このまま行けば俺の目玉にぶっ刺さる。
『 ───メぃラコぉ 』
ダメだ、マズ、助け
.
130
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:17:34 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「!」
(;l|l゚A゚) 「 く、 ひっ」
いや。
なにか、おかしい。
『 ───Boy、ずいぶん思い切ったことをしでかしたものだッ 』
顔を覆う腕の隙間から、覗く。
───動かない。
今にも俺の額に突き刺さりそうな三枚の凶器は。
さっき見たときと同じく、依然、宙に静止したままだ。
『 しかぁ───ッし! 』
轟くは、どこかで聞いた、誰かの声。
.
131
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:18:17 ID:nI5rleiY0
.
『 そのエクセレン覚悟ッ、ワタシは確かに見届けたぞッ 』
ああ、これは。
この “ 現象 ” は。
( ゚"_ゞ゚) 「はっ ハッ ハァ──────!」
次の瞬間。
耳障りな高笑いが木霊する。
そして。
ダンボールの影から黒い物体が飛び出した。
あっと思ったときには、黒い長方形が次々に、空中の札を弾き飛ばした。
/ ゚、。 / 「……!」
て
(;゚A゚) そ 「うひっ、こ、れっ!?」
いつもより小さめのPC? タブレット?
黒塗りに妙な文様とクロスをあしらった “ ミニ棺桶 ” は、
くるくる回転しながら、俺の耳元をすり抜けてゆく。
.
132
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:19:14 ID:nI5rleiY0
.
思わず振り向いた。
そこには、自称ダークヒーローの無職男性が、腰に手を当てふんぞり返っていた。
( ゚"_ゞ゚)
【+ と彡 ☆
彼が手をかざすと、棺桶はぴたりのタイミングで眼前に制止する。
まるでブーメランを受け止めるかのごとく、ヤツはそれをキャッチし、
小楯のように構えた。
【+ 】ゞ゚) 「案ずるなかれッ! ダミィだよ!
そちらのエレキネシストくんにビリビリやられちゃぁかなわんからなッ!!」
この口調、“ 棺桶死(シュナイダー) ” とみて間違いない。
PCの心配なんて俺は最初からしてないのだが。
(;'A`) 「う、おおおおおおおッ!!」
俺は鬨の声を上げながら、一直線に───
“ 棺桶死 ” の後ろへ逃げ込んだ。
.
133
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:20:12 ID:nI5rleiY0
.
シフト
/ ゚、。 / 「ふーん。 “ 交代 ” したんだ。
……ま、別にいいケド」
兄者のサイコキネシスは、空間を高速伝播するエネルギーの “ 圧 ”
──要は、なんだかよくわからん波動を飛ばしたり、
発生したエネルギー体を制御する能力だ。
対して棺桶死のサイコキネシスは “ 遠隔操作タイプ ”。
対象物をリモート ・ コントロールする超能力である。
原理はさっぱりわからんが、なるほど、
これだと “ 反射現象(リフレクション) ” は発生しないらしい。
【+ 】ゞ゚) 「チッチッ! すでェにッ!」
続けざまに出現した “ 猪鹿蝶 ” 三枚が、
宙で制止したままであることが、その証拠だ。
【+ 】ゞ゚) 「このワザは! 見切っているのだよッ!」
ミニ棺桶PC(仕様のボード)がふわりと舞い、
浮遊する花札をハエ叩きのようにはたき落としていく。
.
134
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:21:56 ID:nI5rleiY0
.
【+ 】ゞ゚)σ 「ドゥーユーアンダスタン?」
暑苦しい。 口調が。
音もなく放たれた二の矢 ・ 三の矢も、ものともしない。
棺桶シールドを空中で巧みに操って、防ぎ、
じりじり間合いを詰めていく。
【+ 】ゞ゚) 「ハッ ハッ ハァ────!」
/ ゚、。 / 「へぇ。 でもでも」
間もなく射程圏内 ──ヤツの喉元に、手が届く。
そう確信した瞬間、それは起きた。
/ ゚、。 / 「甘い」
棺桶死めがけて飛んでいた花札が、突如、軌道を変え。
不自然に浮き上がると、
さらにその表面から、プロパンバーナーのそれを思わせる、細長い炎が噴き出した。
【+ 】ゞ゚) 「むっ……!」
.
135
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:22:48 ID:nI5rleiY0
.
予測だにしない “ 現象 ” にタイミングを狂わされた棺桶死は、
大仰に横っ飛びし、回避。
/ ゚、。 / 「で、こっちも」
( ゚"_ゞ゚) 「ワッツ!?」
が。
避けた先には、くるくる回転する次のエモノが待ち構えており。
淡い発光。 直後、札から対地放電が起こった。
幾筋もの光の糸が、斜め下方に放出される。
間一髪、棺桶バックラーが電撃を防いだ。
どうやら本当にイミテーション(変な表現だが)らしい。
タブレットPCどころか、そもそも金属製ですらないようだ。
なおもスパークするボードを放り投げ、棺桶死は床を蹴る。
.
136
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:23:47 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「ゴールイン」
───そして。
“ それ ” が放たれる瞬間は。
俺の位置 ・ 角度からだからこそ確認できたのだ。
明後日の方向──両サイドへ向けて投げられた、二枚の札は。
それぞれに跳ね返り、俺の前方へ滑り落ちる。
(;゚A`) 「!」
描かれしは “ 鹿 ” の図柄。
───すなわち “ 磁力操作 ”。
(;'A`) 「───“ マグネティクス ”!
危ない! 右だ!」
俺は力の限り叫んだ。
瞬間的に、起こるであろう “ 現象 ” に思い至ったためだ。
.
137
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:24:32 ID:nI5rleiY0
.
ほどなく、右方のスチールラックが床を滑り出した。
左方で横倒しになっていたもう一つのラックも、ぐらぐら動きはじめる。
棺桶死は誘導されていたのだ。
二つのパレット ・ ラックを結ぶ直線上、その中点へと。
( :::"_ゞ::) 「───SHIT!」
飛び退る。
間一髪避けた彼の真後ろで、けたたましい金属音が弾ける。
二つの収納装置が、熱いハグをかわした。
無理な体勢でジャンプしたため、
棺桶死は受身を取りそこね、グリーンの床へ投げ出される。
/ ゚、。 / 「んー、惜しい」
なおも起き上がれずにいる棺桶死に向かって、
ダイオードはトドメとばかりに札を構え、指を引く。
.
138
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:26:10 ID:nI5rleiY0
.
(;'A`) 「やめろおおおっ! この……っ!」
俺の叫びに反応し、ダイオードはわずかにこちらへ向いた。
棺桶死が戦っている間、俺だってただ手をこまねいていたわけじゃない。
細心の注意を払いつつ、“ それ ” の近くへ移動していたのだ。
飛びついた。
サイコキネシスの直撃によって、ダイオードが床に落とした札の数々。
超能力のパッケージングされた、カード型ウェポンめがけて。
/ ゚、。 / 「!」
(;>A<) 「くらえッ!!」
俺はその一枚を掴み上げると、
手裏剣を飛ばすモーションで、めいっぱい腕を引いた。
.
139
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:27:04 ID:nI5rleiY0
.
(メ;´_ゝ`) 「ばか! やめろっ!」
途端。
( ゛゚A ) (───えっ)
視界が反転した。
世界はコーヒーミルクのように、回り、混ざり。
制止の声が耳に届くと、ようやく、
自分の体が回転しながら宙を舞っていることを知り、
て
(l|l A ) そ 「がッ!?」
右半身への衝撃とともに。
床に打ち付けられた事実と、それがダイオードの所業であることを、理解した。
/ ゚、。 / 「 ──── “ ツイスター ” 。 回転させる能力」
声が出ない。
息が、苦しい。
.
140
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:27:45 ID:nI5rleiY0
.
(メ;´_ゝ`) 「大丈夫か?」
口調からして、兄者に戻ったのだろう。
差し出された肩へ、俺はよろよろと腕を伸ばした。
首へ絡ませると、傷口に触れたのか、兄者は小さく苦痛の声を漏らす。
(;'A`) 「……くそっ。 なん、で」
(メ;´_ゝ`) 「っ痛ぅ……ありゃ不発弾だ。 利用しようなんて思わないほうがいい」
(;'A`) 「あ……」
痛がる兄者から腕を解こうとしたが、抱き起こされるほうが早かった。
ダイオードはすでに俺たちと距離を取っている。
が、追撃はなく、ただ両手で札を弄ぶのみだ。
.
141
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:28:50 ID:nI5rleiY0
.
(メ;´_ゝ`) 「……しないのか。 攻撃」
/ ゚、。 / 「しないんじゃない、できないんだケド。
“ 点火 ” しすぎた。 ちょっち休憩」
(メ ´_ゝ`) 「いーのかよ、そんな弱点っぽいことバラして」
/ ゚、。 / 「んー。 別に。 余裕しゃくしゃくーだから」
(メ;´_ゝ`) 「……あっそ」
兄者のほうにもその隙を突けるほどの体力はなかった。
しばしにらみ合いが続く。
荒い息が、戦況の悪さを物語っていた。
.
142
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:29:33 ID:nI5rleiY0
.
●第三九話 『 信条と、信念と ── VS. タムラ&ダイオード② 』
ふいに訪れた小休止。
痛む体を壁にもたれさせ、俺は悔いる。
(;# A ) (……くそっ)
パイロキネシスが──そしてエレキネシスによる電撃が。
宙に浮いた状態の花札から “ 発動 ” したこと。
これらの “ 現象 ” を目の当たりにしてきたんだ。
少し考えればわかったはず、なのに。
/ ゚、。 / 「発動タイミングはある程度操作できるケド」
一片の可能性に賭けた、俺の目論見は失敗に終わった。
.
143
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:30:47 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「“ 着弾 ” しないと発動できないと思った? ざんねん」
超能力の発動に、“ 札が刺さる ” 過程は必要なかった。
ヤツはいつでも、
札に閉じ込めた超能力のスイッチを入れることができたのだ。
今さらながら、ダイオードの能力は底が深い。
同じ “ 超能力の発動 ” にも、いくつものバリエーションがあることに気づかされる。
札そのものに超能力の効力が現れるタイプ。
着弾した標的物に “ 現象 ” の効果を及ぼすタイプ。
/ ゚、。 / 「どっちにしろ、扱えるのはスズキだけ」
それらを自在に操作できるのだとしたら、
同じコピー能力でも、ドクミの扱うそれとは、利便性に雲泥の差がある。
(メ ´_ゝ`) 「……さっきの不可解な動きも、なんらかの能力か?」
傷だらけの体をもたげ、兄者が聞いた。
.
144
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:32:04 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「ストック少ないからなー。 あんまコレ、使いたくなかったケド」
エレキネシストは遠回しに肯定した。
兄者が聞いているのは、さっき投げられた札の挙動についてだろう。
俺もその点は疑問に感じていた。
これまで投擲される札は、全てが全て直線軌道ではなかったとはいえ、
ある程度物理法則に沿ったものだった。
が、さきほど発動した一枚のパイロキネシスは、実に不可解な挙動を見せた。
光の屈折のように、宙でかくんと折れ曲がったのだ。
まるでインベーダーのような動き。
/ ゚、。 / 「“ シンクロノス ” ── “ 同調させる能力 ”。
パイロキネシスと関連付けたのだ」
マウスを操作するように、空中で手を動かしてみせる。
ダイオードもまた、札をリモート ・ コントロールできたわけか。
札の遠隔操作も、超能力の発動タイミングも思うがまま。
いよいよ手がつけられない。
.
145
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:32:49 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「言っただろ? スズキの信条は、せーせーどーどー」
一瞬何だかよくわからなかったが、
『 能力を明かしても勝てる 』 そう言いたいのだと解釈する。
(メ;´_ゞ`) 「ったく……んじゃ、おれも教えとこっか?」
/ ゚、。 / 「ん?」
(メ ´_ゝ`) 「おれの別人格は……」
/ ゚、。 / 「言わなくていいケド」
サムライは、ヒーローの言葉を一閃した。
/ ゚、。 / 「もう、だいたいわかった」
(メ;´_ゝ`) 「……はあ?」
今までの戦いで、兄者の能力を全て見極めたとでもいうのか。
(;'A`) (マジかよ)
.
146
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:34:51 ID:nI5rleiY0
.
流石オサムというチャネラーに関して、俺の知る情報はごくわずかなものだ。
彼が扱うのは、性質の違う二種類のサイコキネシス。
“ 棺桶死(シュナイダー) ” が、離れた物体に直接働きかけられるのに対し、
“ 兄者 ” を自称する本人格は、波動を飛ばす能力らしい。
空間を高速移動する、ゆらぎの “ 圧 ” 。
透明に近いエネルギー体だが、正確には不可視ではない。
目を凝らせばわかるが、透過した景色に歪みが生じる。
/ ゚、。 / 「悪いケド」
もっとも。
/ ゚、。 / 「あんたののーりょく、射程距離はせいぜい、半径3メートル少々」
(メ ´_ゝ`) 「!」
波動の軌跡を肉眼で捉えるのと、
その動きに反応できるのとでは、別次元の話だが。
.
147
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:36:15 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「スズキはあんたに近づかない」
(メ ´_ゝ`) 「ふーん。 意気地ねぇんだな」
サ イ コ キ ネ シ ス ト フィールド
/ ゚、。 / 「 “ 超念動能力者 ” の射程圏内で戦うほど、
スズキはくるくるぱーじゃないケド」
ヤツはコピー能力者だ。
ある意味超能力のエキスパートとも言える。
にわかに肌が粟立つ。
(メ ´_ゝ`) 「そう邪険にすんなってー。 僕ちゃんお近づきになりたいなー(棒」
/ ゚、。 / 「近づかないケド。 サムライに二言はないケド」
(メ _ゝ ) 「……はっ。 サムライぃ?」
────ニンジャの間違いだろ!
言い捨てて、兄者は地を蹴る。
助走たっぷりの跳躍が、第二ラウンドの開始を告げていた。
.
148
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:38:01 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「リレイト。
──“ リプロデュース ” “ マグネティクス ” 」
ダイオードは札を素早くかざす。
もはや見慣れた感もある、攻撃予備動作。
紫電を合図に、ふたつの飛び道具はさらに強力な超能力兵器と化す。
/ ゚、。 / 「 “ トッピン ” 」
札は飛ばなかった。
代わりに、同心円状の振動波が、ダイオードを中心として放射された。
抗うすべはない。
ジャケットがはためく。 ダンボールが転がる。 倒れた椅子が床を擦り動き出す。
瞬間、衝撃ともいうべき風圧が俺たちを襲った。
両腕で庇をつくり、足を踏ん張って耐える。
が、能力の真価はその後の “ 現象 ” にあった。
<(メ;゚_ゝ゚)> 「うおおおぉぉおぉお!?」
<(l|l゚A゚)> 「ぎゃあぁぁあぁああぁ!?」
.
149
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:38:59 ID:nI5rleiY0
.
反射的に耳を押さえる。
爆音。
他に表現しようのない、強烈な音圧が嵐となって吹き荒れた。
暴力的なディストーションが、空間を暴れまわる。
重厚にして凶悪な、振動の地獄。
荒れ狂い、ぶち当たり、擦り削る。
倉庫全体が、揺れている。
音は段階的に収束した。
両手を離す。 だが、未だ耳鳴りは収まらない。
/ 、 / 「音と磁力の関連付け(リレイト)
──── “ ダイナミック ・ スピーカー ”」
ダイオードもまた、塞いでいた耳から手を離す。
ていうか、本人もダメージを受けてないか。
痺れる身体へ渇を入れるように、兄者は両膝を叩く。
そうして駆け出そうと構えた瞬間。
『 危ない! 右だ! 』
(メ;´_ゝ`) 「!」
.
150
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:39:52 ID:nI5rleiY0
.
声に反応し、兄者は横っ飛びに体をかわす。
響いたのは俺の声だ。
(;'A`) 「……え?」
だが、違う。
(メ; ゚_:::::) 「!!」
俺は、言ってない。
着地と同時、兄者は顔を覆う影に振り向く。
そして立ちすくんだ。
「「 あ 」」
一段背の高いスチールラックが、彼のほうへ大きく傾いていた。
.
151
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 09:42:30 ID:UoKkf34g0
しえん?
152
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:25:34 ID:nI5rleiY0
.
『 ぐああああああ!! 』
て
(;゚A゚) そ 「わああああ! 兄者ッ!?」
ラックが倒れ。
積まれていたダンボールが、兄者めがけて崩落した。
/ ゚、。 / 「リプロデュース。
音を “ 再生 ” するのーりょく」
“ 関連付け ” しない、単品での連続攻撃。
いつの間にか録音した俺の声を、札から 『 再生し 』、
“ 吹き飛ばす能力 ” をぶつけたラックの、倒れる先へ誘導しやがった。
すぐに兄者のもとへ駆け寄る。
段ボールの山に埋もれ、隙間から覗く顔は苦痛にゆがんでいる。
(;'A`) 「大丈夫か!? おいっ」
俺は覆い被さる段ボールを払いのけた。
箱の大きさは均一、しかし重さはさまざまだ。
ときおり関節が悲鳴をあげる。
.
153
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:26:16 ID:nI5rleiY0
.
数個目の箱を投げようとしたところで、俺は気づいた。
すぐ脇の壁際に、しぃちゃんのバッグが落ちている。
そういえば、ここははじめ、簡易テーブルが設置してあった地点だ。
ポセイドンが踏ん反り返っていた場所。
とすると。
( ゚A゚) 「!」
バッグの隣、ひっくり返ったパイプ椅子を蹴飛ばす。
(;'A`) (あった!)
床にプラスチック製のケースが転がっていた。
拾い上げ、勢い任せにふたを外す。
細長いケースの底。 銀色の刃が数本、鋭い光をはなっていた。
ボディチェックの際に、つーの服から転がり落ちたアレだ。
回収後、黒服たちが荷物とともに保管していたのだ。
弾かれるように、兄者のほうへ向き直る。
棺桶死の能力なら、この医療用メスを飛ばして攻撃できる───。
.
154
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:26:57 ID:nI5rleiY0
.
(;゚A`) 「!」
ぱちん。
突如、何かが跳ねるような感覚を、左手に覚えた。
思わず蓋を取り落とす。
同時に、ひらひらと。
(l|l'A`) 「……嘘、だろ」
見覚えのある長方形が、床に舞い落ちた。
“ 鹿 ”─── “ マグネティクス ”。
なぜ、いや、すでに。
蓋の、裏側に、仕込まれていた……!?
続く違和感は、右手側。
掴み上げた箱の中、刃物がぐらぐらと動きはじめており。
『 !! 』
あっと思った瞬間、メスはミサイルのように飛び出してきた。
.
155
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:27:57 ID:nI5rleiY0
.
て
(;>A゚')> そ 「いづっ、あっ……ぐあああぁ!?」
銀の散弾。
さっきとは違う。
止まらない。
とっさに両腕でガードしたものの、
肘の中心に鮮烈な痛みを覚えた。
最初の一箇所を皮切りとして、
腕のあらゆる部位から、シャープな痛みがほとばしる。
半狂乱になりながら、腕のメスを払い落とす。
そして、見た。
メスのハンドル部……一本一本に、細い糸が結びつけてあった。
(l|l;゚'A゚) 「!?」
ぶらり、ぶらり。
一斉に垂れ下がる糸の先。
──その全てに結えられた、月、月、月。
.
156
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:29:12 ID:nI5rleiY0
.
て
l|l (l|l:::A::) l|l そ「があああああああああッ!!!」
/ ゚、。 / 「開けてびっくり、な?」
───エレキネシス。
ショックが体中を駆けた。
視界が白黒に点滅する。
思考が寸断される。
身をバラバラに裂かれるような、激痛。
( A ) 「───あっ。 がっ……」
一瞬だったのか、数秒だったのか。
永劫続くかと思われた電撃から解放され、俺はその場にくずおれる。
かろうじて意識の糸は紡がれている。
だが、力が入らない。
刃物と札の散らばる中、orzの姿勢で震えているのがやっとだ。
.
157
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:30:12 ID:nI5rleiY0
.
頭上で硬質な音が響いた。
残された体力をふりしぼり、頭を上げた。
幾重にもゆがむ世界の中で、どうにか像を結んだのは、人影。
ボロボロの兄者が、俺の前に立っていた。
棺桶ボードを巧みに操り、追撃の札を弾き飛ばしてくれていた。
(メ ´_ゝ`) 「ドクオ! 助けてくれたことにゃ、礼を言うぜ」
(; A ) 「あに……じゃ……」
(メ ´_ゝ`) 「だが、もういい」
兄者は、立ち上がろうとしている俺に、ぴしりと手のひらを向けた。
(メ ´_ゝ`) 「中は……おれ一人で大丈夫だ。
お前は行け! 早く!」
(;'A`) 「うぐ……ぐっ」
かけられた言葉に、しばし頭をひねる。
そして。
──バカな俺にも、ようやく理解できた。
.
158
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:31:02 ID:nI5rleiY0
.
兄者はずっと、俺の身を守りながら戦っていたんだ。
俺たちの行動パターンを把握し、
抜け目なく罠を忍ばせる、多才なコピー能力者。
自称サムライ ・ 鈴木ダイオードの繰り出す、多様な攻撃から。
状況は苛烈を極めている。
それこそ、兄者が額から流れる血を止める余裕すらないほどに。
攻撃手段に乏しい俺の、立ち入る隙などなかった。
これまで狙い撃ちにされなかっただけ幸せだったのだ。
戦力外。
( A ) 「──わかった。 あとは……頼む──」
これ以上俺がここに居ても、足手まといになるだけだ。
悔しさに胸が震えた。
しかし、変えられない現実がそこにあった。
.
159
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:31:53 ID:nI5rleiY0
.
俺は下唇を噛むと、よろよろ立ち上がり、きびすを返す。
(l|l A ) (!……はは。 そうだよな……)
後ろからはチャネラー達の戦い──おそらくは防戦一方だが──の様子が、
音と気配で、依然伝わっていた。
眉根を寄せ、倉庫の入り口から外に出る。
冷たい夜の空気が、潮のにおいを乗せて、傷だらけの体を刺した。
俺の無様をあざ笑っているかのように。
背中を丸め、痛む足を引きずるように進む。
超念動能力者、流石オサム。
あいつの意志は、はっきりと感じ取った。
〜 〜 〜
.
160
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:32:36 ID:nI5rleiY0
.
右手の一振りで、数枚をなぎ払った。
吹き飛ぶ札から超常現象は発現しない。
全て、カス札。
ハズレだ。
心の中で舌打ちする。
あとどれくらい。
どれくらいなんだ。
後方からの気配が消えると、札をばら撒くダイオードの手が止まった。
/ ゚、。 / 「枷は外れた。 これで思い切り戦えるな、サイコキネシスト」
そう告げて。
腰のベルトから、さらに数枚の札を抜き出す目の前の敵に対し、
(メ ´_ゝ`) 「……あいつは、枷なんかじゃない」
流石オサム──兄者は、ぼそりと呟いた。
.
161
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:45:09 ID:nI5rleiY0
.
【 兄者サイド: 第三倉庫内 入り口側パレットラック脇 】
ぬるい液体の伝うまぶたを、無造作に右腕でぬぐった。
袖に赤い染みが広がる。
一張羅が台無しだ。 兄者は敵を睨めつけた。
/ ゚、。 / 「あっそ」
相当量をやっつけたはずだ。
いったいヤツには、あとどれだけのストックがあるというのか。
聞いたところで答えてはもらえないだろう。
なんにせよ、やるべき事は限られている。
ダイオードが攻撃のモーションに入った。
兄者は迎撃の構えをとる。
/ ゚、。 / 「よっと」
涼しげな声とは裏腹に、苛烈だった。
先ほどまでの比ではない。
舞うような動きで、ダイオードは数多の札を繰り出す。
散弾銃さながらに放たれる、茶色い紙片。
.
162
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:45:53 ID:nI5rleiY0
.
(メ ´_ゝ`) 「くっ……」
兄者は棺桶死へ交代(シフト)しようと考えたものの、すぐに思いとどまった。
数が多すぎる。
棺桶死の対物サイコキネシスでは、同時に止められる札は数枚が限界なのだ。
札の連弾は、さながら暴風雨──明らかに、制御限界を超えている。
(メ;´_ゝ`) 「ちィッ!?」
身を低くし、札同士の隙間へ肩から突っ込む。
床についた左腕を軸に、回転し、我武者羅に足を振る。
駄々っ子のような動きだが、
発生する念動エネルギーは、数枚の札の軌道を変化させた。
体勢を戻す際、ダイオードの投擲モーションが目の端に映った。
まだ休ませてくれそうにはない。
両サイドからの札を、一枚は棺桶で処理し、もう片方は上着で払った。
(メ;´_ゝ`) (いつだ、いつ来る……?)
もっとも警戒しなければならないカード。
それが、能力の封じられた札であることは、もはや考えるまでもない。
.
163
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:46:50 ID:nI5rleiY0
.
医療用メスに使われる鋼材は、一般的に磁性体ではない。
だが、メスは飛んだ。
ヤツの操る超能力は、ステンレスを瞬時に磁化させることも可能なのだろう。
常識でははかれない──まさに、超常現象。
能力同士を掛け合わせ、バリエーションは飛躍的に広がる。
(メ ´_ゝ`) (今さっき……)
リ レ イ ト
“ 関連付け ” の声が聞こえたのは、一度。
迫る札のうち、超能力を携えた “ バクダン ” は、多くて二つ。
どのタイミングで、どれが、どんな超能力なのか。
吟味する余裕などない。
兄者にできることは、ひたすらに腕を振るい、飛来する札を退けることだけだ。
(メ;´_ゝ`) 「!!」
そうこうしているうちに、弾き損ねた。
わずかに軌道を逸らしたものの、的をはずすには至らず。
一枚の札が跳ね上がり、ほか二枚が兄者のわき腹を掠める。
ひるんだ兄者の頭上へ、札はふわりと舞い降り。
.
164
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:47:33 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「ほい。 これで終わりっ」
悪いことに。
その一枚こそ、超常現象という名の発火装置を備えた、魔のカードだった。
(メ _ゝ ) 「!!」
兄者を待ちかまえていたかのように。
札は正面で静止し、くるくると回転をはじめる。
発光の瞬間、兄者は考える。
終わりだって? この攻撃で?
言ってくれるじゃないか。
ま、そうかも知れないな。
.
165
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:48:31 ID:nI5rleiY0
.
(メ:::::_ゝ::)
(メ ´_ゝ`) 「───お前がな」
両目を見開いた。
溢れる光のまばゆさなど、意に介すことなく。
白い闇が、周囲の全てを飲み込み。
渇いた音が弾けた。
〜 〜 〜
.
166
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:50:39 ID:dCMBIV4w0
ドクオまじお荷物だったな
167
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 17:46:18 ID:cOEaN73k0
ドクオが去ってから5レスで反撃の一手を繰り出せるレベル
168
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:21:51 ID:nI5rleiY0
.
まほろばの丘に、兄者はたたずんでいた。
輻射熱は確かに身体を包んでいる。
だが不思議と、危機感はない。
穏やかなあたたかみを感じさせる、陽光のごとき光が広がっていた。
ひらり、ひらり。
花びらが舞うように、雅やかに、数多の影が揺れ落ちる。
(メ _ゝ ) 「……」
幻惑的な光景も、やがておぼろに揺らぎ、溶け。
光の霧散とともに、すべては掻き消えた。
あとは元通り、荒れ散らかった倉庫の殺風景な像が結ばれ。
静寂がおとずれる。
『 ぐ…… 』
やがて苦悶が響いた。
.
169
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:23:06 ID:nI5rleiY0
.
散り散りに床へ落ちた札の中に、ただ一枚だけ。
中心部分にいびつな穴の開いたものがあった。
/ ゚、。 / 「……う、くっ」
声の主は、大腿部を押さえてよろめいた。
白い生地に、じわり、濃い赤が滲む。
鈴木ダイオード。
彼の脚をかすめた、念動力の弾丸は。
横倒しの簡易テーブルに炸裂し、天板の中央へ、亀裂を生じさせていた。
(メ ´_ゝ`) 「わお。 当たっちった」
対峙する兄者は、奇妙な体勢でそこにいた。
左腕を前方に伸ばし、指先はVサインを形作っている。
もう片腕は招き猫のように曲げ、手のひらを下向きに、顔の真横へ添えられていた。
彼の左前方、ダンボール箱の端が、僅か燻っている。
” 放電現象 ” の回避。
そして反撃。
倉庫内を包む光の中で──兄者は、それらを同時にやってのけた。
その事実を理解したダイオードは、微かに顔を曇らせる。
.
170
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:24:16 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「……あんた、のーりょくの射程距離は……3メートル半は」
(メ ´_ゝ`) 「限界じゃないぜ? 自制だよ。
勝手に勘違いしたのは、そっちだしー」
/ ゚、。 / 「……!」
たじろぐ敵の10メートルほど先で、
兄者は、にいっと歯を見せて笑った。
左手のVサインを、さらにぐっと突き出す。
ぐにゃり。
二本の指が可動域を越え、有り得ない方向へ変形した。
ダイオードは眉を顰めた。
が、すぐに気づく。
念動力の収斂により、周囲の空間が歪んで見える所為なのだと。
(メ ´_ゝ`) 『 届かないと思った? ざんねん 』
.
171
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:25:16 ID:nI5rleiY0
.
兄者は右手を伸ばした。
緩慢に、一つ一つの動作を見せ付けるように。
左手のVサイン部分を摘むと、腕に沿って、ゆっくり右手を引き絞る。
すると景色が不自然に捩れた。
輪郭がぼやけて判然としないが、目を凝らせば、
念動波の集合体が、細長いゴムのように伸びてゆく様が見て取れる。
/ ゚、。 / 「撃ち抜いたんだな。 ソレで」
(メ ´_ゝ`) 「御名答」
通常の波動攻撃に比べ、初速の向上。
飛距離拡張。
それらに伴う、威力の倍増。
(メ ´_ゝ`) 「 “ スリング ・ ショット ” 」
サイキック ・ エネルギーの凝縮波。
.
172
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:26:18 ID:nI5rleiY0
.
波動を凝縮する分、衝撃面は縮小する。
が、そんなものはデメリットの範疇に入らない。
ドッヂボールをぶつけられることと、ゴム銃で撃たれること。
どちらがより脅威的か、考えるまでもない。
/ ゚、。 / 「──確かに、射程距離を見誤っていたのはスズキのほうだケド」
(メ ´_ゝ`) 「?」
/ ゚、。 / 「つっても、そんなもん大したネタでもないケド。
3メートル半という射程限界を誇示していたのは、
油断を誘う作戦だったんだろ。 ならば」
(メ ´_ゝ`) 「なんだよ」
/ ゚、。 / 「一撃で仕留められなかった、オマエの負けだ」
(メ ´_ゝ`) 「やけに饒舌じゃねーかっ」
周囲の景色を乱反射する波動体は、
すでに不可視とはかけ離れた、禍々しいオーラを放つ球と化していた。
引き絞った右手の指を解放すれば、すぐに推進力を与えられることだろう。
.
173
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:28:23 ID:nI5rleiY0
.
σ゙/ ゚、。 / 「来な、サイコキネシスト」
(メ ´_ゝ`) 「───そうさせてもらうぜっ!」
札の投擲と、念動弾の射出はほぼ同時だった。
両者は吸い込まれるように中央へ飛来する。
貫ける。
兄者が確信した瞬間、札を中心として、赤く平たい衝撃波が展開された。
て
(メ ´_ゝ`) そ 「げっ」
透過性の高い、可視光によるシールド。
つまりそれは、
て
(メ;´_ゝ`) そ 「うお!? ふにゃ、くそッ!」
リ フ レ ク ス
───“ 反射能力 ” 。
ダイオードの導き出した、スリング ・ ショットへの最適解。
飛ばした札は、兄者を狙ったものではなく、念動弾を弾き返すためだった。
.
174
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:30:01 ID:nI5rleiY0
.
(メ ´_ゝ`) 「ずっりぃ! でもさー……」
リフレクション
その意味を即座に理解した兄者は、“ 反射弾 ” を、
(メ#´_ゝ`) 「ワンパなんだよなっ!」
/ ゚、。 / 「!」
難なくかわした。
すぐに体勢を整え、Vサインを作る。
右手を添え、ぎりぎり引き絞るモーションのあと、第二弾が発射された。
〜 〜 〜
.
175
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:42:54 ID:nI5rleiY0
.
【 ダイオードサイド: 第三倉庫奥 ・ 壁側 】
対するダイオードは、札を放てる構えになかった。
辛うじて、手元にて “ リフレクス ” を展開。
だが、そこでの跳弾はまたも兄者に避けられた。
/ ゚、。 / 「くっ、アンタ────」
(メ ´_ゝ`) 「“ 組み合わせる ” 暇なんて、与えねー!」
スムーズに攻撃姿勢へ移り、念動弾を放つ。
反射現象の逆進性と、その軌道の正確性を、相手はすでに理解していた。
ダイオードがこれまで用いてきた “ リフレクス ” は、特殊だ。
攻撃系PSI対策として、ちょっとしたアレンジが施してある。
反射現象(リフレクション)で生まれる跳弾に、入射角と反射角の概念がないのだ。
テレキネシスは、仮にどの角度から衝突しようとも、
そのままの勢いで、真逆の方向へ跳ね戻される。
.
176
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:44:22 ID:nI5rleiY0
.
(メ#´_ゝ`) 「見切ってんだよッ!」
波動は射出位置、つまり発生点目掛けて正確に返ってくる。
軌道は一定、目指す座標は、常にひとつ。
ならば。
“ 反射 ” を察知した瞬間、軽く体を引く。
たったそれだけで、兄者は跳弾を回避することができる。
しかもこれは、 “ 猪鹿蝶 ” のように、周囲を無差別に飛び交う札とは違う。
シールド展開座標は、あくまでダイオードの手元付近。
よしんば札を放ったところで、数メートル前方が関の山。
“ 反射現象 ” を視認したあとで動いても、
兄者はそれを悠々避けることが可能だった。
/ ゚、。 / 「くっ」
“ リフレクス ” による反撃が無駄だと知ると、
ダイオードは回避へと行動をシフトする。
.
177
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:45:47 ID:nI5rleiY0
.
ゴム銃を模した念動弾攻撃は、ダイオードの位置へも届く。
すでに安全圏などない。
それは二人の立場が五分になったことを意味している。
札を飛ばし、飛ばされた札を弾かれ、攻撃を避ける。
壁に沿って移動し、距離を保ちながら札を繰り出す。
(メ;´_ゝ`) 「いってぇ! このっ……!」
兄者はときおり被弾する。
“ 避けきれない ” パターンも生まれつつある。
ダメージは確実に蓄積しているはず。
だが、ダイオードは形勢の悪化をひしひしと感じていた。
/ ゚、。 / (こいつ……!)
それもそのはず。
兄者は超能力の応酬の中、ダイオードとの距離を着実に詰めてきていた。
.
178
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:46:48 ID:nI5rleiY0
.
札の雨に苦悶する。
ときおり炎に体表を焼かれる。
電撃に絶叫する。
なのに──兄者は、斃れない。
札をあらかた弾き飛ばし、
隙を見せれば、容赦なく念動力の弾丸で反撃してくる。
/ ゚、。 / 「ちっ……」
(メ ´_ゝ`) 「捉えたぜ!」
倉庫内は広々としているが、移動可能な空間には限界がある。
積み荷がところどころ崩れた状態ではなおさらのこと。
念動弾を避ける際、箱に足を取られた。
兄者が一気に間合いを詰める。
腕を引いた。 サイコキネシスによる殴打の構えだ。
ダイオードは咄嗟に “ ブローフ ” を展開。
自身を吹き飛ばすことで、無理やり横移動を試みた。
追撃を避けるべく撒いたパイロキネシスは、兄者の肩口に赤い柱を灯した。
(メ;´_ゝ`) 「あっっっちぃぃ! てめっ、こンの……っ!」
.
179
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:48:24 ID:nI5rleiY0
.
兄者はそれを慌てて掻き消している。
思ったとおり、大したダメージも感じさせることなく。
(メ#´_ゝ`) 「鍔迫り合いもできねぇくせに、サムライ名乗ってんじゃねー!」
/ ゚、。 / 「……五月蝿い」
ダイオードの誇りに切り込む一撃だった。
受身の体勢で歯噛みする。 が、態度には出さない。
この程度の挑発には乗れない。
サイコキネシスは、それだけ危険なPSIなのだ。
発生するエネルギーは、不可視の暴力装置といっても過言ではない。
ときに刃物となり、万力となり、凶弾となる。
その上、制御が難しく、暴走しやすいというやっかいな特徴を持つ。
能力が発現した途端、頭蓋の内部を、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられて死んだ者もいる。
念動力の刃で、ミキサーにかけられたかのように。
/ ゚、。 / 「……む」
弾き飛んだパイロキネシスが、天井付近で爆発した。
落下した蛍光灯を、兄者は身を翻してかわす。
.
180
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:49:58 ID:nI5rleiY0
.
ガラスと木屑の降り注ぐ中、ダイオードはサイコキネシストと正面から対峙した。
(メ ´_ゝ`) 「最終ラウンドっつったところか」
/ ゚、。 / 「……」
そうかも知れない。
距離と物量によるアドバンテージを生かし、
じわりじわりとダメージを与えてきたつもりだ。
だが、兄者の耐久性は想定以上だった。
もうすぐ札が尽きる。
先ほどはとうとう接近まで許した。
認めたくないが、形勢は覆ったものと考えていいだろう。
決定打が必要だ。
ここでとどめを刺さねば、ヤツのタフネスに押し切られる。
/ ゚、。 / 「いいだろう」
(メ ´_ゝ`) 「そーこなくちゃな」
紙片を構え、ダイオードは神経を研ぎ澄ます。
.
181
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:51:12 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / (遊びは終わり。 ここで蹴りをつける)
とっておきの必殺技があった。
既に下準備は済ませてある。
エレキネシス、パイロキネシス、ブローフ、シンクロノス。
4種類もの超能力の “ 関連付け(リレイト) ” 。
ブローフ── “ 拡散 ” による威力の減少を、
攻撃系PSIの重ね合わせで補ったそれは、
最悪の範囲攻撃といっていい。
/ 、 / 「いざ、尋常に」
なお、パイロキネシスとエレキネシスは、
“ 同調させる能力(シンクロノス) ” を “ つなぎ ” に使わないと “ 関連付け ” できない。
とはいえ、4枚の札それぞれが、その効力を持つことにはならない。
効果の現れる札は、あくまで1枚に限られる。
だが、その威力は折り紙つきだ。
.
182
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:52:20 ID:nI5rleiY0
.
これでシンクロノスの札はストック切れ。
それ以前に、今のダイオードの体力では、一度放つのが限界の大技だ。
正真正銘の切り札。
(メ ´_ゝ`) 「へへん。 構えだけはいっちょまえだなっ」
加えて、周囲には猪── “ リフレクス ” を撒き散らしている。
先ほどまで使っていたものとは違う。
反射角を広く設定した、“ 乱反射専用 ” 札だ。
/ ゚、。 / 「……」
サイキック ・ ファイナルウェポン。
拡散 ・ 乱反射するエレキネシスによって、庫内は巨大な電撃殺虫機と化す。
同時に炸裂するパイロキネシスの連弾。
辺りは火の海に包まれ、電灯、電子機器の類は全て破壊されるだろう。
サイコキネシスで防げる代物ではない。
バリアでも展開できれば別だろうが、これまでの兄者の戦い方を見る限り、
それは不可能だろうと、ダイオードは確信している。
良くて大火傷。
場合によっては、死。
.
183
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:53:35 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「覚悟はいいか? これで、本当に終わり」
(メ ´_ゝ`) 「そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!」
/ ゚、。 / 「やってみろ」
兄者はぐっと腰を落とし、駆け出した。
(メ#´_ゝ`) 「おおおおおおおおお!」
伸ばされた左手。
V字の指先に生まれた念動弾を番え、ゆっくり右手を引く。
練成された波動がここまでの弾性を持ち、かつ形状を保っているという事実に、
ダイオードは眉を顰める。
サイコキネシス。
やはり、悪魔のPSIだな。
.
184
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 18:54:20 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / (死んでくれるなよ)
ここで遭ったも何かの縁。
超念動能力────レアモノ────、絶対に手に入れてみせる。
(メ#´_ゞ`) 「うおおおおおおおおおおおあああああああ!!」
リ レ イ ト
/ ゚、。 / 「“ 関連付け ” ────【 雨四光 】 」
交差した腕の先。
計四枚の札が怪しく輝くと、蔦のような光の糸で紡がれた。
〜 〜 〜
.
185
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 19:01:58 ID:nI5rleiY0
※今回少し長い。残りは明日投下します。
186
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 19:02:18 ID:3KGbP5j.0
おっうつううう
187
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 19:07:05 ID:/UnYkplo0
おっつんおっつん
188
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 19:09:20 ID:4Q7NJdgo0
乙!
ドクオ消えてすぐ形勢逆転してワロタ
兄者つえーわ
189
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 19:10:52 ID:FHIvLUpo0
乙
激アツだな
190
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 21:10:45 ID:ztrSKY6M0
チャネラーきてたこれで勝つる
191
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 00:06:10 ID:47OggJDU0
乙
明日も期待
192
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 10:48:39 ID:.r1.tOSY0
ドクオさんの挽回チャンスがあると信じてるおつ
193
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 17:53:04 ID:8ijslF5w0
.
【 しぃ ・ クーサイド: 広域農道路上 】
猫塚しぃは、VIP学園に通う2年生だ。
成績は上の中といったところ。
生徒会では会計補佐をつとめている。
色白の肌にショートカット、身長は平均よりだいぶ低い。
華奢で、小柄で、童顔。
容貌は妖精と称される程度に整っており、魅了される者も多い。
あとはまあ、ちょっとだけ人よりよく食べるかも知れない。
それ以外は、いたって普通の高校生だといえる。
.
194
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 17:54:56 ID:8ijslF5w0
.
(l|l*>−<)
そんな彼女は、今夜。
(l|l*>−゚)
爪l|l 〜 )
川 ゚ д゚)
トラックを止めた。
.
195
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 17:56:24 ID:8ijslF5w0
.
(*゚ο゚) ゙ !
川;゚ -゚) 「や……」
爪; 〜 ) 「……やりやがった」
素手で。
彼女の抵抗の軌跡は、
奇妙に長いS字状のブレーキ痕となって、路面に刻まれていた。
.
196
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 17:57:08 ID:EttilP5I0
いつのまにこんなに更新が!!
197
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 17:57:09 ID:8ijslF5w0
.
川;゚ -゚) 「……はぁ」
停止したトラックの後部を数メートル先に見やり、
クーは短いため息をついた。
気を抜くと、その場にぺたりと尻をつきそうになる。
間一髪だった。
暴走するトラック上にしぃの姿を見たとき。
彼女が何をしようとしているのか、クーは瞬時に理解した。
すぐさま路肩の用水路へ飛びつき、
クーは流れる水を掻き飛ばした。
そして、荷台の通過するであろう路面を、薄い水の幕で覆った。
川;゚ -゚) 「……まったく、信じられんことをする」
車輪を無くした台車は、アスファルトへ直に接触する。
が、ボード部の摩擦はハイドロプレーニングにより緩和され。
長い制動距離を経て──トラックは、制止した。
彼女のフォローがなければ、しぃの荷台は地面の摩擦に耐え切れず、
一瞬で宙を舞っていただろう。
トラックは、私が止めた。
.
198
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 17:59:11 ID:8ijslF5w0
.
川;゚ -゚)
クーの頬に冷や汗を伝わせた張本人は、
車の脇にしゃがみ、マグロのしっぽをタイヤ下に押し込んでいる。
……車止め、らしい。
無謀に次ぐ無謀。
虫も殺さない風貌で、よくもまあこんな綱渡りをやってのけるものだ。
クーは呆れ顔で、しぃの小さな背中を見た。
川 ゚ -゚) (────だが)
そういうヤツは嫌いじゃない。
黒髪をかき上げ、斜め後ろに流す。
腰に手をあて、目を細めて、小さくつぶやいた。
超人め。
後でひたいに米って書いてやる。
その直後、トラックのドアが開き。
憔悴しきった表情の男が、よろよろ這い出してきた。
〜 〜 〜
.
199
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:01:27 ID:8ijslF5w0
.
/ ゚、。 / 「!!」
血飛沫が上がった。
威力 ・ スピード ・ 射程距離。
全てが向上した隠し玉、一点集中型サイコキネシス ・ シュート。
被弾。
兄者の必殺技は、無表情なコピー能力者に、苦痛の喘ぎをもたらした。
/ 、 / 「─────な、ぜ、アンタが────」
今までとほぼ同じモーション。
が、念動弾が射出されたのは、肩の横まで引き絞った右手ではなく。
(メ ´_ゝ`) 「へへっ。 かかったな」
軸──パチンコのY字フレームを模した、左手の先からだった。
兄者は指先をふっと吹き、おどけて見せる。
.
200
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:03:04 ID:8ijslF5w0
.
前方へいっぱいに伸ばし、ピースを形作っていた左手。
右手に凝縮した念動弾を飛ばすための台座。
もしくはフロントサイト(照準器)──そう思われていた、二本の指。
その指先が瞬時に閉じ、ピストルと化した。
ダイオードは、マズルを見誤った。
凝縮した波動を飛ばすのに、ゴムの張力は必要なかった。
むろん、兄者が故意にそう思わせていたのだが。
左手の指先に力を集中し、スリング ・ ショット予備動作中に、射出。
これまでより早いタイミングで発射された念動弾は、
札を投げたダイオードが体勢を整える間もなく、その肩へ吸い込まれたのだ。
/ ゚、。l|l/ 「ぐっ、ううっ」
そして。
“ 雨四光 ” とやらは、発動しなかった。
.
201
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:04:24 ID:8ijslF5w0
.
その理由を知るには、前段として、ダイオードの能力の性質を理解する必要がある。
ポーカー勝負の際、ダイオードはいちどロッカーを装着したはずだ。
しかし、花札やちんぽっぽ人形など、おもちゃにコピーされた超能力は消えていなかった。
(ブーンの能力──アポーツにおける “ アクティブ状態 ” は消えてしまったというのに)
つまり、アンチ ・ サイ能力をもってしても、
ヤツのアイテム──コピー済みの能力について、リセットは不可能だと推察される。
……だが。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
/ ゚、。 / 「発動タイミングはある程度操作できるケド」
/ ゚、。 / 「どっちにしろ、扱えるのはスズキだけ」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
札に封印された“ 他人の超能力 ” を “ 起爆 ” させるのは、ダイオード自身のチカラだ。
アイテムのリモート ・ コントロールそのものが、こいつの超能力によるものならば───!!
.
202
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:06:42 ID:8ijslF5w0
.
【 ドクオサイド: 第三倉庫 ・ 外窓付近 】
(#'A`) 「俺が触れている限り、お前はその力を行使できない!」
“ 点火 ” の瞬間は、封じることが可能。
:::/ ゚、。;/::: 「オ、マエ……!!」
俺は窓枠から乗り出した体勢で、
ダイオードの首に巻きつけた腕を、さらにねじり上げた。
.
203
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:08:13 ID:8ijslF5w0
.
(メ ´_ゝ`) 「ドクオ」
:::( 'A`)::: 「あん?」
(メ ´_ゝ`)b 「GJ」
(;'A`) 「……いいから、早くこいつを何とかしてくれっ」
暴れこそしないものの、俺の腕を剥がそうとするダイオードの握力は強まる一方だ。
くそ……やっぱいてえ。 マジいてえ。
ジャケットのおかげで傷は浅かったが、
メスの刺さりまくった袖には点々と血がにじんでいる。
右腕が疼き、熱が強まる。 この姿勢は長く持ちそうにはない。
:::/ ゚、。;/::: 「……逃げたんじゃ……なかった……のか」 ギリギリ
間もなく、床に散った “ 雨四光 ” は全て、
入り口シャッターの外へ弾き飛ばされた。
.
204
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:10:43 ID:8ijslF5w0
.
:::(;'皿`)::: 「ピンと……きた、からなっ」 イテテ
さっきの兄者の言葉を思い返す。
全てはあの一言から始まっていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(メ ´_ゝ`) 「中は……おれ一人で大丈夫だ。
お前は行け! 早く!」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
“ ここは ” ではなく “ 中は ” 。
違和感のある言い回しだ。
倉庫の入り口へ、きびすを返した瞬間、俺は気づいたのだ。
('A`) 「外から回り込め、って事だろうとな」
あの後俺は、足音を殺し、倉庫の外周を移動した。
そして、窓から慎重に中の様子を伺いつつ、機を待った。
.
205
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:12:41 ID:8ijslF5w0
.
サイコキネシス対策として、ダイオードは常に、兄者と一定の距離をとっていた。
必然的に、壁際へ位置取る回数は多くなる。
壁に沿って移動するダイオードを、
兄者はスリング ・ ショットによって、巧みに誘導していた。
入り口シャッター以外に存在する、もう一つの進入口。
棺桶死が登場時に破壊し、枠まで吹っ飛ばしていた、
がらんどうの──この、開いた窓のほうへ。
/ ゚、。;/ 「うぐ……くっ」
というより、最後はダイオード自ら、こちらへ移動している節もあった。
“ 雨四光 ” とやらがどういった能力か知らないが、
こいつの話しぶりからして、相当威力のあるワザだったに違いない。
とすると、こいつは巻き添えを恐れ、脱出を考えていたのかも知れない。
……俺が軒下へ待ち構えているとも知らずに。
罠ってやつは、抜け道に張ることで、最大限の効用を生むもんだ。
.
206
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:16:07 ID:8ijslF5w0
.
(;'A`) 「!」
などと考えているうちに。
ダイオードは肩を震わせながら、右手に摘んだ札の切っ先をこちらに向けた。
俺は驚いて腕を放す。
て
/ 、 / そ 「がっ!?」
だが、ダイオードの身が解放されることはなかった。
俺の腕から逃れたヤツの体は、瞬間的に後方へ吹っ飛び、壁に磔にされたからだ。
苦渋に顔を顰めるダイオード。 とうとうその鉄面皮が剥がれた。
兄者が右手をかざしたまま、一歩ずつ近づいてくる。
両腕を念動力で押さえつけているらしい。
サイキック壁ドンとでもいったらいいのか。
(メ ´,_ゝ`) 「よっ。 捕まえたぜ」
もがくサムライの眼前に立つと、
ぼさぼさ頭のダークヒーローは、にぃっと微笑んでみせた。
.
207
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:17:44 ID:8ijslF5w0
.
/ ゚、。;/ 「くおっ……オマエ、一対一(タイマン)を望んでたんじゃ」
(メ ´_ゝ`) 「卑怯だと思ったかい? 悪いな、期待に副えなくて。
そもそも俺とアンタじゃ “ 正々堂々 ” の解釈が違うみたいだ」
人差し指の銃口を、ダイオードのこめかみに当て。
『 BANG 』 とささやいてみせる。
いちいち面倒くさいヤツだが、今はこのオッサンヒーローこそが頼みの綱だ。
(メ ´_ゝ`) 「俺にとって正々堂々ってのは、弾丸(タマ)の投げ合い、ぶつけ合いじゃねえ。
肉体同士の殴り合い以外にねえんだよ。
アンタがお望みなら、最初から付き合ってやってたぜ」
左手で、ぐっと拳を握って示す。
無駄なアクションのたびに拘束が解かれるのではとヒヤヒヤするが、
伸ばした右手一本で、相手の両肩を押さえつけ続けることが可能らしい。
.
208
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:19:46 ID:8ijslF5w0
.
(メ ´_ゝ`) 「ちなみに、おれがねらーになってからの十数年間──。
喧嘩(ガチンコ)での戦績は、29戦29敗だ」
/ 、 ;/ 「!!」
(メ ´_ゝ`) 「うち姉者5回、母者7回」 ボソ
聞かなかったことにする。
(メ ´_ゞ`) 「そう、おれは────」
『 “ 正々堂々 ” 闘って、勝ったことは一度もない 』
(;'A`)
とびっきり何の自慢にもならない事実を吐いて。
孤高のサイコキネシストは、深く腰を落とした。
.
209
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:20:44 ID:8ijslF5w0
.
(:::::::_ゞ`) 「──はなから、ガチンコで挑んでたら」
/ 、 ;/ 「ぐぅ……っ! 離っ……」
俺は窓枠の特等席から、その様子をしっかり目に焼きつけていた。
/ 、 ;/ 「くああああああああああああああッ!!」
『 いくらでも、勝てただろうにな 』
見えない拳が、サムライヤロウの長身を、打ち上げる瞬間を。
〜 〜 〜
.
210
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:22:19 ID:8ijslF5w0
.
【 タムラサイド: 広域農道 路上 】
爪;゚〜゚)
トラックから降りた鈴木タムラは、きしむ関節をだましだまし歩いた。
めまいがする。
膝を折りそうになりつつ、必死にこらえる。
リ ア ク ト ン
“ 反作用を操る能力 ” を発動した。
トラック前部──キャブ部分にかかる “ 反作用を、増大した ” 。
“ サイアミーズ ” のモンスター ・ パワーだけじゃない。
トラックは、俺が止めた。
爪;゚〜゚) (おめでてえヤツめ!
オレがチカラを使ってなきゃあ、今頃は……!)
(;*゚ο゚) ゙
トラックを襲った小さな怪物を、
タムラは噛み付きそうな表情で睨みつける。
.
211
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:23:23 ID:8ijslF5w0
.
が、以外なことに。
(;*゚ー゚) 「……やりました」
当の怪物は、くしゃっと表情を崩した。
爪 ゚〜゚) 「え」
タムラはぽかんとその様子を眺める。
空気が弛緩した。
(;*^ー^) 「えへへ……」
怪物ははにかみながら、胸の前で控えめなピースサインをつくった。
.
212
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:25:56 ID:8ijslF5w0
.
爪;゚〜゚) 「は、あは、え……?」
なんだこりゃ。
どーいう状況だよ。
意味わかんねェ。
タムラはこの時、いつの間にか自分が頬を緩めていることに気づいた。
朗らかな少女の笑顔に、おずおずと、親指を立てて応える。
(*^ー^)
それを見た怪物は、これまた照れくさそうに、
ちょんちょん、とピースの刃先をあわせる。
爪 ゚〜゚)
.
213
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:26:48 ID:8ijslF5w0
.
『 ぷっ 』
自然に笑い声が漏れた。
タムラの笑いにつられるように、少女も破顔し、肩をすくめる。
(*^ー^) 「えへへへ……ふふっ」
爪*゚〜゚) 「へ……へへっ」
どちらともなく近づき、こつん、と拳を合わせた。
『 あはははははは! 』
誘拐犯と、被害者の妹。
相対する関係の二人は、夜空に笑いあう。
共同作業で、大事故を回避した。
達成感すら覚えている。
タムラは前髪を掻き上げ、ひときわ大きく笑った。
.
214
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:28:05 ID:8ijslF5w0
.
意味わかんねェ。
なーんで絆されてんだ、オレ。
でも、愉快だ。
久しぶりに心から笑った気がする。
(*^ワ^)
不思議だ。
さっきまであんなに恐ろしい相手だったのに。
目の前で、こんな表情されちゃあな。
爪* 〜 )
あーあ、俺の負けだわ。
なーんか、ぜんぶ、どうでもよくなったー。
報酬のことは気がかりだが……もう、これで終わりでもいっか。
タムラはそう考え始めていた。
.
215
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:29:31 ID:8ijslF5w0
.
(*^ー^) 「あはは……さて、それじゃっ」
が。
(#*゚∀゚) 「戦闘かいしだぁぁあぁあぁ!!」
て
爪l|l゚〜 ) そ 「えぇ─────!?」
相手も同じ考えでいてくれるかは、また別の話だ。
〜 〜 〜
.
216
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:30:49 ID:8ijslF5w0
※もうちっとだけ続く。 20時くらいに戻ってきます。
217
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:39:11 ID:P3PHNX9E0
支援
218
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 19:58:26 ID:UAfNONEA0
期待
219
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:13:47 ID:8ijslF5w0
.
【 ドクオサイド: VIP港 倉庫街路上 】
どこか信じがたい光景だった。
ノーヘルでバイクに跨るスーツの男は、
一瞬だけこちらを振り返ると、無言のまま走り去った。
俺たちは肩で息をしつつ、小さくなるヤツの姿を見送る。
(;'A`) -3 「だぁぁああぁもう! 何やってんだよっ!」
(メ;´_ゝ`) 「いやーまさかなー。 まだあんなに動けるたぁなー」
(;'A`) 「この……ポンコツヒーロー……!」
敗走する原付サムライ……鈴木ダイオード。
兄者が能力を解除した途端、それは起こった。
まさに一瞬の出来事だったのだ。
追い詰めたのはこちらだが、
いきなり逃げ出すようなキャラだなんて、思ってもみなかった。
.
220
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:14:33 ID:8ijslF5w0
.
(;'皿`) 「で、どーすんだよこれから!」
(メ ´_ゝ`) 「追う! 当然じゃ!」
(;'A`) 「あ!? ……ああ、ですよねー」
(メ ´,_ゝ`) 「追跡なら任せな!
こーゆーこともあろうかと、
さっきあいつが倒れた時、胸ポケットに小型のGPS発信機入れてやったぜ」
(;'A`) (マジかこのオッサン)
なんと準備のいい。
ピンチ時には美味い豚汁を作ってくれそうだ。
兄者に促されるまま、よろよろ駆け出す。
第三倉庫から少し離れた場所に、一台の車が駐車してあった。
ボロボロの軽。 恐らくは彼のものだろう。
兄者に続き、俺も隣に乗り込む。
勢いに合わせてシートが軋む。
まったくもって、満身創痍の俺たちにぴったりの乗り物だ。
.
221
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:16:24 ID:8ijslF5w0
.
( 'A`) 「んで」
(メ ´_ゝ`) 「んー?」
(;'A`) 「……なんで俺が運転席側なんだ?」
導かれるまま飛び込んだのは、右側。
目の前にはハンドルが、これまたボロいカバーに包まれている。
(メ ´_ゝ`) 「おれがナビゲートしなきゃ始まらんだろーよっ。
できるんだろ? 運転」
('A`)
(メ ´_ゝ`)
('A`) 「まあ……………………
…………………………
……うん………………
……………一応は……」
(メ*´_ゝ`)⊃ 「れっつらごー!」
.
222
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:17:06 ID:8ijslF5w0
.
嬉しそうにそう叫んだあと、兄者は棺桶モバイルを後部座席から取り出し、
くるんと片手に構えた。
こちらはイミテーションではなく本物のほうだろう。
……横から覗きこむと、パネルには確かに、
VIP港を中心とした路線図と、道に沿って動くマーカーが表示されている。
マジか。
マジかよこのオッサン。
なんなんだよ、今日のこの、目まぐるしい出来事の数々は!
(;'A`) (ええいもう、乗りかかった船だ!)
実際は船じゃなく、オンボロの軽だが。
ポセイドンや黒服はとっくの昔に消えていた。
しぃちゃん達は他の誘拐犯を追っている。
しかるに、俺だけ港でのほほんと待っているわけにもいくまい。
あまりに色々なことがありすぎて、頭はすでに、正常な思考を放棄している。
長い夜になりそうだ。
実に三年近く連載しているような印象だ。
エンジンと数回格闘したのち、俺はアクセルを踏み、倉庫街をあとにした。
−−−
.
223
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:18:47 ID:8ijslF5w0
.
(l|l ゚_ゝ゚)
( ゚A゚)
数十分後。
俺たち二人は、ひしゃげたガードレールの横で固まっていた。
(l|l ゚_ゝ゚)
( ゚A゚)
(l|l ゚_ゝ゚)
( ゚A゚)
(l|l ゚_ゝ゚) 「ペーパードライバーなら……先に……言え……」
( ゚A゚)
.
224
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:21:54 ID:8ijslF5w0
.
(l|l _ゝ ) 「……そして、何故、止まらんの……?」
( ゚A゚)
(l|l _ゝ ) 「なんで加速するの……? なんで逆走するの……? バカなの……?」
( ゚A゚)
( ゚A゚) キコエ……ナクテ……
(l|l;゚_ゝ゚) 「何百回止まれって叫んだと思ってんだ!」
( ゚A゚) アセッテ…… ブレーキ ドッチカ ワカラナクナッテ……
.
225
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:24:04 ID:8ijslF5w0
.
ひとしきり叫んだり、暴れたり、頭をかきむしったりしたあと。
兄者はため息をつきながら、右手を俺に差し出した。
(メ;´_ゝ`)つ 「……まあいいや。 ほれ」
( ゚A゚) ……ハイ
(メ;´_ゝ`) 「ひとまず目的地には着いたんだ、ガムでも食って落ち着こうぜ……」
一応弁解しておくが、俺が停車させた路肩のガードレールは元々ひしゃげており、
事故ったわけではない。
まあ……いつそうなってもおかしくなかったというか、
下手な絶叫マシン顔負けの数十分だったけど。
( ゚A゚) ……アリガトウゴザイマス
依然前を向いたまま、やけに薄いガムを受け取る。
開きっぱなしの口に運ぶと、甘酸っぱいいちごフレーバーが広がった。
(*'A`) (あ、おいちー)
いやに口どけのいいガムだ。
舌の上でとろりと柔らかくなったそれを、噛むことなく飲み込んだ。
(メ;´_ゝ`) 「なんじゃこりゃ? ソッコー溶けたぞ。 味もち悪ぅ〜〜」
('∀`) 「……」
('A`) 「ん!?」
.
226
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:25:31 ID:8ijslF5w0
.
(メ ´_ゝ`) 「なんだかんだ言いつつ、もう一枚もらうんですけどね」 パク
('A`)
……そして気づく。
俺はこれを、何度も口にしたことがあるという、その事実に。
('A`;) 「……アンタ、これ、どこから……」
(メ ´_ゝ`) 「ん? ガム? おまえの上着のポケットだけど?」
('A`)
……。
……。
それはガムじゃねええっ。
そう言ったつもりの声は、言葉として成立していなかった。
呂律が回っていないことに気づき、口元を抑える。
��(゚A゚l|l) 「う、ぐっ!?」
次の瞬間。
内側から揺さぶられるような感覚をおぼえ、俺はシートに前かがみになる。
.
227
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:27:51 ID:l.kjh7q.0
久々のドクミか……支援
228
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:28:13 ID:8ijslF5w0
.
ああ、これは。
目の前がスパークし、世界はぐにゃぐにゃと歪んでゆく。
全身を襲う、寒気と、熱と、痛みと、快感と。
体をバラバラにされ、再構築されるような、なんとも言えない感覚に襲われる。
『 う、ぐ、あああっ 』
( メ´_ゝ`)?
『 ああっ、うあ……ああああっ 』
て
( メ ゚_ゝ゚) そ !?
『 やめ……見るなっ、……あああぁぁ! 』
;(;;;゚_ゝ゚);
===
==
=
.
229
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:29:22 ID:8ijslF5w0
.
─── ようやく眩暈が収まったところで。
伸びた髪をかき上げ、僕は兄者に食ってかかった。
从 □ ;リル 「勝手に! 何っ! ……食わせてんだぁっ!」
(メ _ゝ ) 「生命の神秘を見た……」
襟を掴まれ揺さぶられる兄者は、
呆けた表情で僕のほうを見ている。
从 △ ;リル 「……はぁ、はぁ……ああもぅっ」
手を離した。
両腕を交差させ、ふた周りほど小さくなった身体を抱えこむ。
先ほどまでなかった弾力が、窮屈そうに、二の腕を押し返してくる。
背もたれに身を投げ出した。
衣の擦れる不快感に身を捩る。
こんなタイミングで……なんて、聞いてない。
.
230
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:32:24 ID:8ijslF5w0
,_
从゚、゚;リル 「動きにくい身体にしてくれて。 責任とれっ」
(メ ´_ゝ`) 「責任て……まっこと意味がわからないんだが……」
从'、`;リル 「服装とかサイズとか……こう、色々あるんだよ、このカッコは」
(メ ´_ゝ`) 「あ、思い出した」
兄者はぽんと両手を打つ。
(メ ´_ゝ`)つ¬ 「実はだな!
こんな時のためにって、服なら預かってたんだった」
从゚△゚;リル 「はぁ────!?」
なんだそりゃ。
わからん。
本気で意味がわからない。
兄者は、後部座席から一枚の手紙と紙袋を掴み上げた。
首を傾げつつそれを受け取ると、僕は手紙を開いた。
.
231
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:34:50 ID:8ijslF5w0
.
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
( ‘ω‘)
ニーチャンへ
突然アレがソレになっちゃった時のために、服は用意しておきましたお
いざとなったら使ってくださいね ぶーん
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
从'。`;リル 「……マジか。 気が利くっつうかなんというか」
聞けば、僕が気絶していた間(28話)、ブーンが内緒で兄者に預けておいたらしい。
兄者が車で来ることがわかっていたとはいえ、用意周到すぎやしないか。
从'、`;リル 「まーいーや。 じゃあちょっと着替えて……」
ぶつぶつ言いながら紙袋の口を開き、固まった。
从・x ・リル
……服。 確かに入っている。
でも、なぜ。
普段着じゃ、ない。
.
232
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:36:46 ID:8ijslF5w0
.
綺麗に折りたたまれた状態で、紙袋に収められていたもの。
それは、メイド服。
先日までバイトしていた、クーの知り合いの店の……
フレンチ仕様の、例の、あれだ。
(((メ;´_ゝ`) 「どうした? ……げっ、コレ……」
从 皿 ;リル (あのヤロ───────!)
……二度と身に着けることなどないと思っていたのに。
ご丁寧なことに、靴と下着まで入っている。
わざわざタンスから掘り出してくれたのだろうか。
ありがとう弟……後で教育的指導。
同じメイド服でも、ブーンの所持する例のアレじゃないあたりが確信的だ。
あっちのほうが布面積も広いのに。 暖かいのに。
たぶん汚されるのが嫌なんだろう。
.
233
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:38:32 ID:8ijslF5w0
.
从-、-;リル 「……もういい。 着る。 今の服よりは動きやすいだろ……」
(メ ´_ゝ`) 「おう、早くしてくれよな」
从-。-;リル 「はぁ……」 グイ
从゚、゚;リル ハッ
(メ ´_ゝ`) ?
从゚皿゚;リル 「出てけっ!」
兄者を車から押し出し、紙袋に手を突っ込む。
ε-(´く_`; ) 「なんだってんだ一体……」
,_
从゚、゚;リル ガチャッ
(メ;´_ゝ`)彡゙ 「うお!? な、なに!?」
从///リル 「ごめん、ちょっと、その……」
……途中で一度ドアを開け、背中だけ止めてもらった。
〜 〜 〜
.
234
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:39:26 ID:8ijslF5w0
.
【 ドクミサイド: VIP市臨海部 ・ 旧工業地帯 (ソーサク1丁目) 】
背負った星空の清澄さとは対照的に、
目的の廃ビルは、禍々しい佇まいを見せていた。
荒涼とした隣の空き地から見上げる。
奥側には、似たような廃ビル、廃屋が数軒連なっている。
むろん、周囲に人気はまったくない。
四階だろうか。
一箇所だけ明かりのついた窓がある。
ヒーローおやじのぼさぼさ頭越しに、そちらへ目を凝らす。
,_
从゚、゚;リル 「……」
窓付近に人影は見えない。
メイド衣装にジャケットを引っ掛けた姿で、僕は身を震わせた。
この寒い中、なんでこうも場違いな格好してるんだろう。
公開処刑も甚だしい。
.
235
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:40:23 ID:8ijslF5w0
.
(メ ´_ゝ`) 「どうする?」
从゚、゚リル 「何が?」
(メ ´_ゝ`) 「入るのか、入らないのか」
从'。`リル 「あ、ああ……」
GPSの移動反応はこのビルで止まり、その後途絶えていた。
キーホルダーは、ここで発見 ・ 破棄されたと考えていいだろう。
それだけでは、ダイオードがビル内に留まっているかはわからない。
だが、建物の脇で例の原付を発見し、疑念は確信に変わった。
間違いない。
ヤツは今、この中にいる。
クー達からの連絡はない。
正確には着信履歴が残っていたが、何度かけ直しても出なかった。
留守録に場所を吹き込んでおいたものの、連絡があるまで待つべきだろうか。
.
236
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:42:04 ID:8ijslF5w0
※
>>235
訂正
×キーホルダー ○発信機
237
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:42:48 ID:8ijslF5w0
.
从 、 ;リル 「……行こう」
(メ ´_ゝ`) 「だよなっ」
口から出た言葉に、自分で驚いた。
以前であれば、わざわざこんな、危険に飛び込むような決断はしなかったと思う。
無謀は重々承知の上で、湧き上がる好奇心を止められなかった。
ポセイドン一味が、しぃちゃんの両親を手にかけた犯人だとは思えない。
だが、チャネラーや超能力について、僕たち以上の情報を握っていることは間違いない。
だから、ヤツを追う。
しぃちゃん達のためにも、
……いや。
从 、 リル 「……」
僕だってそうだ。
結局のところ、手がかりを求めているのは、誰のためでもない。
少年少女の手助けを──巻き込まれた風を装いながら。
その実、僕は僕自身のために、糸口を欲している。
知りたい。
あのクスリは何なのか。
僕のこの状態は─────僕は、誰なのか。
.
238
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:43:35 ID:8ijslF5w0
.
从'、`;リル 「……オジャマシマス」
(メ;´_ゝ`) 「いーから早く入れよ」
枠だけの入り口ドアを開け、僕たちは中に踏み込んだ。
階段の電灯は点いたが、エレベータは使用できないようだ。
唾を飲み込み、こわごわ階段をのぼっていく。
結局、明かりが生きていたのは二階までで、三階以降は暗闇だった。
兄者にくっついて進む。
从 □ ;リル 「わひっ!?」
(メ;´_ゝ`) 「ちょっ!? ……どんだけポンコツなんだ」
たまに暗がりでコケそうになりつつ。
窓が明るかったからといって、ヤツが四階にいるとは限らない。
踊り場を含め、途中の暗闇に潜んでいる可能性だって充分ある。
旧校舎を探索したときの記憶がよみがえり、足がすくむ。
.
239
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:44:34 ID:8ijslF5w0
.
目的の階層へはすぐに着いた。
廊下は左右に伸びている。
壁際にスイッチを発見したが、電灯の点く気配はない。
携帯のライト機能を頼りに進むほかない。
(メ;´_ゝ`) 「!!」 ガタン>
从゚皿゚l|lリル 「ひょわ!?」
その時、左方向から音が聞こえた。
仰天した兄者が立ちすくみ、僕はその背中にひたいをぶつけた。
从゚□゚';リル 「ちょっと! 脅かすなよっ!」
(メ; ゚_ゝ゚) 「んなこと言っても! おれだって怖いもん!」
从 △ ;リル 「もんとか言うなよオッサン……」
明かりのついていた部屋は、確か右側だ。
どうする。
どちらへ向かう。
.
240
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:46:36 ID:8ijslF5w0
.
あーだこーだ言い合ったのち、兄者先導のもと、左へ進むことにした。
手分けして……とも考えたが、今ここで離れるのは得策ではない。
僕は彼の後ろを、少し距離を空けて着いてゆく。
きょろきょろと、後ろ側を何度も振り返りつつ歩を進める。
いくら音がしようと、明かりのあった部屋は後ろ方向に間違いないのだ。
背後からいきなり襲われてはたまらない。
从 、 ;リル (それにしても)
この建物は何なのだろう。
雑居ビルにしてはいささか大きい。
露出した鉄筋と薄汚れた壁は廃墟としての雰囲気ばっちりだが、
そもそもの用途がわからない。
.
241
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:47:19 ID:8ijslF5w0
.
廊下にはいちおう採光用の窓がある。
ドアの形状はオフィスビルを思わせる。
だが、その並びはアパートのようでもあり、ホテルのようでもある。
(メ;´_ゝ`) 「まだ奥があるのか……」 ボソ
考えている間に、兄者との距離が開いてしまっていた。
兄者は今にも廊下の角を折れようとしている。
半身が暗闇に吸い込まれ、それに合わせて明かりも乏しくなる。
从'。`;リル 「あ、待って……」
その時だった。
.
242
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:48:05 ID:8ijslF5w0
.
/ ゚、。 / カチャッ
从゚、゚リル 「 」
あまりにも、唐突に。
て
从゚□゚|lリル そ 「─────!!」 バタン
横のドアが開いたかと思うと。
(メ ´_ゝ`)彡 「え? ……あれ?」
悲鳴を上げる間もなく、僕はそいつに、部屋へと引きずりこまれたのだった。
(続く)
.
243
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:49:23 ID:8ijslF5w0
.
※ 読んでくれてありがとう。
※ 「引き」が23話と被ってる。 この話はあとで修正するかも。
※ ポセイドン編はあと2話で終わりです。 長かったなぁ。
.
244
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 21:01:48 ID:l.kjh7q.0
乙
245
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 21:10:40 ID:UAfNONEA0
乙
246
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 21:16:46 ID:ZN5GKNgY0
おつんこ
247
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 23:56:25 ID:.r1.tOSY0
おつギコ達の動向が気になるね
248
:
名も無きAAのようです
:2014/10/14(火) 12:58:42 ID:T426ZR4k0
また萌え豚路線なのか…?
249
:
名も無きAAのようです
:2014/10/15(水) 14:10:23 ID:J6z9m/lA0
ドクミ久し振りだな
というか何年ぶりだ
250
:
名も無きAAのようです
:2014/10/18(土) 10:00:15 ID:cLu3SmwI0
クーの『特別製の水』ってまさか、おし…な訳ないか
251
:
名も無きAAのようです
:2015/01/11(日) 11:30:42 ID:fSQ04ccU0
あけおめ
252
:
名も無きAAのようです
:2015/03/27(金) 14:06:26 ID:U5wrDBt.0
勃起age
253
:
名も無きAAのようです
:2015/07/16(木) 18:25:21 ID:hG9himQE0
今度は一年後と予想
254
:
名も無きAAのようです
:2015/09/01(火) 21:27:05 ID:UN0Ntxk20
待ってる
255
:
名も無きAAのようです
:2015/09/14(月) 15:22:57 ID:flo5j5I20
余裕で待ってる
256
:
名も無きAAのようです
:2015/11/19(木) 21:22:33 ID:Cs35qH4U0
来るまで待ってる
257
:
名も無きAAのようです
:2015/11/21(土) 03:57:12 ID:OL53TzCk0
私は、あなたが「もう投稿しません。ここで終わりです」というまで、ずっと、ずうっと待ちます。
たとえそれが何年後だろうとも、何十年後だろうとも。
いつかこのお話の終わりがくるまで、そして終わりがきても私はあなたとこの作品のファンです。
どうぞ、のんびりと自分のペースで筆をお進めください。
……とはいえたまに生存確認なぞをしてくださると、少なくとも私は喜びます。
258
:
名も無きAAのようです
:2016/05/24(火) 02:07:46 ID:5gSg1vYE0
ぶひぃ!
259
:
名も無きAAのようです
:2016/11/20(日) 17:42:01 ID:oCDKsRH20
何をどう彷徨って辿り着いたかは忘れてしまったけど
今更全部読んでとても楽しませて貰いました
続き、お待ちしておりまう
260
:
名も無きAAのようです
:2016/11/20(日) 20:04:48 ID:Zt4HvyGQ0
ぶひひぃ!
261
:
名も無きAAのようです
:2017/02/19(日) 01:50:35 ID:T.94dJvw0
待ってる
262
:
名も無きAAのようです
:2017/02/19(日) 23:27:09 ID:6uUJM94U0
なっつwww
これも逃亡してたもんなー面白いのが続々逃亡で悲しくなるね
263
:
名も無きAAのようです
:2017/08/26(土) 15:51:18 ID:O0h13Jv60
連載開始から読んでたよ
今でも待ってるぞ
264
:
名も無きAAのようです
:2018/09/23(日) 22:43:02 ID:xsK9sR5M0
戻って〜〜
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