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迷宮のようです

1名も無きAAのようです:2014/08/01(金) 22:08:30 ID:HFB/Y94E0
建ったら書いていきます!

2名も無きAAのようです:2014/08/01(金) 22:49:01 ID:FMNrmkqQ0
したらばで立たないわけないだろwwwwwwwwww

3名も無きAAのようです:2014/08/01(金) 22:50:17 ID:HFB/Y94E0

 「聞いたか?」

 無精ひげの男が、卓を挟んで対面する小太りの男にささやくほどの声でそう言った。
 小太りは酒をちびちびとあおりつつも、視線だけで「何が」と返す。

 「ついにあすこにも、調査兵団が送り込まれるってよ」

 少しだけ片目を見開いた小太りは、今しがた空になったグラスを、そこでようやく置いた。


 「・・・ようやくかい、ずいぶんと悠長なこったな」

 「街中は言わずもがな、ガキんちょどもを喜ばすような噂話が絶えねぇからな、あすこは」

 「王様も、目の色が変わったってワケだな?」

 「そりゃあそうだろうよ」

 困ったような表情で、バンダナを巻いた無精ひげは笑い声をかみ殺しながら言う。


 「こないだ5階層から帰ってきたって奴を見たかい」

 「あいにくと」


 そう言った小太りの前に手で模られた大きさは、人間の頭を一回り小さくした程度だった。

 「黄金で出来た杯さ、こーんなでっけぇ奴をな、持って来たんだと」

 「大金持ちじゃねぇか」

 「しかも単独でだぜ?アガリを分け合う必要もねぇ。向こう10年は食うに事欠かねぇだろうよ」

 不精ひげは、卓上を手のひらで軽く叩いてから、足を組みなおした。

4名も無きAAのようです:2014/08/01(金) 23:04:25 ID:CdmRk8Xs0
世界樹かな?

5名も無きAAのようです:2014/08/01(金) 23:46:32 ID:HFB/Y94E0

 「相当アブない話は聞くがよ、ここいらのガキどもの噂も、この分だと夢まぼろしじゃねぇぞ?」

 「いつの間にか、ひょっこり顔を出した・・・謎の迷宮・・・ねえ」

 「お上が動き出したってんなら、今しかねぇよな。奴らが迷宮を荒らし回りゃあ、取り分も減っちまう」

 (お前、行くか?)
 中ほどまで酒が注がれていたグラスを持ち上げた手指の一本を指して、無精ひげは小太りにそう持ちかけた。


 「何人帰って来ないと思ってんだ、命がいくつあっても足りやしねぇ」


 「カネもそうだがな、もしあすこを攻略すりゃあ、一躍時の人になって女も選り取り見取りだぜ?」

 「・・・!」

 話の中で出た迷宮入りには否定的だった小太りの目が一瞬だけ見開かれたのを、無精ひげは見逃さなかった。

 「いい女をはべらしてよ、酒飲みながら楽して暮らせる生活なんて最高だよなぁ・・・どうだい?」

 もう一押し、とばかりに畳み掛けてくる口説き文句に耐えかね、小太りは無言で席を立つと彼に背を向けた。

 「なんだいなんだい。ガキの頃はよく二人で青臭え話してたのによ」

 けったくそ悪そうにそっぽを向いた不精ひげには、小太りの表情が伺い知れない。
 彼は足元の荷物を掴み上げると、それを背に下ろして酒場の出口へと向かった。

 顔を合わせることなく、小太りはすれ違いざまにつぶやく。

 「・・・準備・・・してくる」

 一人酒場に残された無精ひげは、しばしの間、呆けた表情を浮かべていた。
 それからややあって、彼は暇をもてあそぶように、対面の空席に置かれたグラスのふちを指で弾く。

 「そういや面食いだったもんなぁ、昔からよ」

6名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 01:19:51 ID:3IakFrOs0
しえん

7名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 01:51:57 ID:.ANxNJOg0

 ニューソク領、ソサークの街。

 この街は、かつて王同士の争いが巻き起こした戦火の熱風に煽られながらも、まだ息づいていた。
 元々は手を取り合って巨大な連合国を築いたはずの二人の王の戦い。

 そのはじまりから終わりまでを、見届けた街である。


 『平和を、共存を』

 そう掲げていたはずの信念は、人の持つ欲に呑まれ、誓いの言葉とともに捻じ曲げられた。
 のちに【業王】と呼ばれたフレアス・ソクギン率いるイクシスが、ボッツ女王、リップ・マロニーに一方的な攻撃を仕掛けたことが発端だ。

 フレアスは、自国の職人が持つ高い技術力を生かした強力な武器を多く投入し、マロニーを亡き者にしようとした。
 だが、精強無比と謳われるボッツの兵は、おのおのの戦でことごとくイクシス陣営に打ち勝っていく。
 二分されて始まったお互いの領土も、解放戦を重ねるうち、次第に勝敗は市民の目からにも明らかなものとなっていく。

 常に女王自らが最前線に立ち、兵たちの士気を高めることで、精強はさらに精強へと押し上げられた。
 元々は地下に篭り、坑道でハンマーを握っていたものが大半であるイクシスの兵たちは、技術力こそあれど、戦には向かなかった。
 やがてマロニー女王自らが、捕らえられたフレアスを断首することにより、ひとまずこの戦は終わりを告げる。

 しかしフレアス亡き後、その属国に甘んじていたニコ・カステロや、チューバ・フィリエートらが自らも台頭を目論んだ。
 連合としての力を失ったボッツ王国であったが、そうした各所から向けられる戦の刃を、それでも次々と跳ね除けた。

 前線で指揮を執り戦い続けて、敵国の兵を敗走させ続けながら、やがて国家は疲弊していく。
 それは後世、【浄王】と謳われることとなる彼女自身も同じことだった。

 自らの民が死んでいった数を報されることが当たり前となってから、数年が経った頃。

 玉座にある女王が夢に囚われたかのような瞳に見据える先には、沈痛な表情をぶら下げた宰相が立つ以外、なにも無かったという。
 彼女の美貌は見る影もなく貶められ、頬に落とされた影は容赦なく、女王の威光と、明日のわが身を憂う民たちの心をも曇らせた。

 最後に女王が口にした言葉は、給仕の女のすぐそばでのことだ。


 『長きに渡り死と恐怖が覆うこの永遠の戦場にも、千年後には、きっと素敵な、素敵な光がもたらされますよう』

 ある晩、マロニーはクイーンガードの目を盗み、高所にそびえる私室の窓から身投げした。

8名も無きAAのようです:2014/08/02(土) 02:19:45 ID:sjpYltOQ0
しええ

9人妻:2017/04/04(火) 13:03:30 ID:hqi8NjeA0
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