したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

迷宮のようです

5名も無きAAのようです:2014/08/01(金) 23:46:32 ID:HFB/Y94E0

 「相当アブない話は聞くがよ、ここいらのガキどもの噂も、この分だと夢まぼろしじゃねぇぞ?」

 「いつの間にか、ひょっこり顔を出した・・・謎の迷宮・・・ねえ」

 「お上が動き出したってんなら、今しかねぇよな。奴らが迷宮を荒らし回りゃあ、取り分も減っちまう」

 (お前、行くか?)
 中ほどまで酒が注がれていたグラスを持ち上げた手指の一本を指して、無精ひげは小太りにそう持ちかけた。


 「何人帰って来ないと思ってんだ、命がいくつあっても足りやしねぇ」


 「カネもそうだがな、もしあすこを攻略すりゃあ、一躍時の人になって女も選り取り見取りだぜ?」

 「・・・!」

 話の中で出た迷宮入りには否定的だった小太りの目が一瞬だけ見開かれたのを、無精ひげは見逃さなかった。

 「いい女をはべらしてよ、酒飲みながら楽して暮らせる生活なんて最高だよなぁ・・・どうだい?」

 もう一押し、とばかりに畳み掛けてくる口説き文句に耐えかね、小太りは無言で席を立つと彼に背を向けた。

 「なんだいなんだい。ガキの頃はよく二人で青臭え話してたのによ」

 けったくそ悪そうにそっぽを向いた不精ひげには、小太りの表情が伺い知れない。
 彼は足元の荷物を掴み上げると、それを背に下ろして酒場の出口へと向かった。

 顔を合わせることなく、小太りはすれ違いざまにつぶやく。

 「・・・準備・・・してくる」

 一人酒場に残された無精ひげは、しばしの間、呆けた表情を浮かべていた。
 それからややあって、彼は暇をもてあそぶように、対面の空席に置かれたグラスのふちを指で弾く。

 「そういや面食いだったもんなぁ、昔からよ」


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板