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('A`)どうやら時は金なりのようです(゚∀゚ )

1名も無きAAのようです:2013/11/01(金) 02:06:20 ID:P1O5gTg20


('A`)「たまに思うんだけど」
  _
( ゚∀゚)「ん?」

('A`)「俺ら高2じゃん」
  _
( ゚∀゚)「うん」

('A`)「えーと、モララーって生徒会長なったじゃん、この前」
  _
( ゚∀゚)「うん」

('A`)「で、今ホッケー部のキャプテンもやってなかったっけ」
  _
( ゚∀゚)「やってるな、うん」

('A`)「で……その、クラスでも割と人気者的なあれじゃん」
  _
( ゚∀゚)「うん。で?」

('A`)「楽しい時間は早く過ぎるって言うじゃん?」
  _
( ゚∀゚)「ん?」

('A`)「いやなんというか……集中してる時というか、充実してると、時間が過ぎるのも早く感じるじゃん」
  _
( ゚∀゚)「まあ……そうだな」

('A`)「ってことは、俺ら今高二じゃん? 俺も、モララーも」
  _
( ゚∀゚)「うん」

76名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:12:29 ID:My4QF3.U0

('A`)「……だから、その時計をぶっ壊すってわけか……」


もし俺が死んでしまったら、その時はHDDを壊せ。壊してくださいお願いします。
そんな話をよく見てきたが、この場合その逆になるのか。
HDDを壊してしまうとその時俺は死んでしまう。時計を壊すと過去が死ぬ。そういう話?

うむ。
つくづく思うが、比喩というのは便利なものだ。

ひとりで頷く俺を見て、時計も軽く頷いた。


( ^ω^)「そのための武器は、ちゃんと君に与えてあるお」

('A`)「武器?」


壊せというからどうするのかとは思っていたが武器と来たか。
しかし武器ね……武器?


(゚A゚)「槍か!」


繋がった。


( ^ω^)「そう、それだお」

(;'A`)「いや、でも俺あれ持ってないんだけど……」

( ^ω^)「……ポケットの中に入ってるんじゃないかお?」


心底どうでもよさそうな顔で時計はさらりと言い放つ。
ガキじゃあるまいしポケットなんて

(゚A゚)「あった」

( ^ω^)「やっぱり」

77名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:13:09 ID:My4QF3.U0
右手をポケットに突っ込むと、出てきましたよ時計の針。
妙な気恥ずかしさを感じて、意味もなく何度も繰り返し頷く。


( *^ω^)「変わってないおねー……昔からそうだったお」


その実態は異界人、時計。が、今の姿は少年。
時計が浮かべるその笑みは、外見の歳と噛み合わない、父親のような笑みだった。


('A`)「でも、これ針……縮んでんだけど……」


俺の手の中にある針は、長短ともにただの針。原寸大の時計の針。
膨れに膨れて槍にまでなったあの時の面影がない。


( ^ω^)「そりゃそうだお、ここ人間の世界だし。それは時計の世界じゃなきゃ使えないお」

('A`)「あ、そうなの……」


ありがちな話だった。


( ^ω^)「さて。時計をぶっ壊せとは言ったけど、そう簡単に行くもんじゃないお」


パンパンと2回手を叩き、時計は話を元に戻した。

78名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:14:25 ID:My4QF3.U0

( ^ω^)「レコード内の時計には自己防衛機能が備わっているお。記録した情報を元に防衛ユニットを生成し、君を排除しようとする」

( ^ω^)「象徴だと言ったおね。"ギルドマスター☆なすび☆"は、君がネトゲにのめり込んだ時間と深く関わっているお」

('A`)「……」

( ^ω^)「その記録を元にして、そいつのハンドルネームからあのナスを生成したんだと思うお」

('A`)「……なるほど……」


それにしたってアレはねーだろと思わないでもなかったが、異世界センスに口出しするのはあまりよろしくもないだろう。
ともかく、俺のやることはわかった。ナスの突進をかいくぐりつつ、時計を壊せばいいわけだ。絵面がすこぶる意味不明。
が、ひとつ気になることが。


('A`)「……体感時間をカットするって言ったよな」

( ^ω^)「うん、そうだお」

('A`)「カットした分の時間は……その、そういう扱いになるんだ?」


一番気になるとこだった。
ビクつきながらの質問だったが、時計はなんでもなさげに返す。

79名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:15:14 ID:My4QF3.U0

( ^ω^)「適宜、記録の埋め合わせをするお。そうだおねー、君からすると……」

( ^ω^)「ネトゲにハマっていたなんて記憶はさらさらない。中学時代は仲間とひたすら部活に打ち込んだ……」

( ^ω^)「みたいな感じになるんじゃないかお? で、周囲の人物、ひいては世界全体の記録も、それに合わせて補正されるお」

('A`)「……」

('A`)「え?」


ちょっと待って、なんか想像と違う。


('A`)「……過去を変えられるわけじゃないのか?」

( ^ω^)「え、変わってるお? なんでこれで変わってないと思うんだお」

('A`)「いやなんというか……俺が過去に戻って、その時間をやり直すとか、そういうことでは……」

( ^ω^)「なんでそういう話になるんだお? 君と周囲の認識は変わるんだから、それで十分じゃないかお」

('A`)「……」

('A`)「……いや、でも……いや……」


なんか釈然としない。
確かに過去は変わるようだが、それは俺に関係のないところで起きるわけで……いや関係あるのか?
引き金引くのは確かに俺だが、それによって変わる過去の、具体的な内容については、俺が関知する余地はない。

80名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:15:57 ID:My4QF3.U0

あれだ、5億年ボタン。
あれも俺の感覚としては押した瞬間に金が出る。記憶が消える都合上、それまで苦しんだ5億年など心のどこにも残らない。
残らないものはないのと同じ、つまりノーリスクで金を得る。

それと似たようなものを感じる。
埋め合わせたに過ぎない過去を、己の正史と認定し。
美しくない過去は消滅。消えた過去はないのと同じ。

どうも気分が悪くなってきた。


('A`)「……これ、強制だったりする?」」


確認してみる。


( ^ω^)「え? いや、別にそんなことは」

('A`)「……そもそも、なんでおまえはこんなことしてるんだよ?」

( ^ω^)「……」

('A`)「えーっと……俺は、迷い込んだだけなんだろ? 時計の世界に……」

( ^ω^)「……そうだお」

('A`)「でも、その……別にいいんじゃないか? こうして帰ってこれたんなら、それで」

( ^ω^)「……」


改めて考えてみると、それでいいんじゃないだろうか。
確かに不思議な体験はしたがこの説明で謎は解けた。
んじゃまあそれでいいんじゃね?

81名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:16:38 ID:My4QF3.U0

('A`)「たしかに、まあ……ネトゲに費やした時間は、無駄だったのかもしんねーけど、俺も別にそこまで気にしてはねーし」

('A`)「全部が全部無駄だったとも、思わねーしな」


さらに言うなれば本音はこうだ。
別にネトゲについての記憶は忘却していたわけじゃない。黒い歴史を思い返して足をバタつかせるノリで、布団の中でたまに思い出す程度の存在感だった。
確かに「あれさえなけりゃなぁ」と思うことは多々あった。というか今でもたまに思うが、そこまで本気で悔やみはしない。
この経験がある以上俺は2度とネトゲにゃハマらない。ギルドメンバーと過ごした時間も悪いものではなかったし、学ぶことも割とあった。


('A`)「だから、無理に過去を変えよーとまでは思わねーんだけど……」

('A`)「おまえは、なんでこんなことするんだ?」


迷惑とまでは言わないが、気になったので聞いてみた。
時計はしばらく俺の目を見て、それから急にそっぽを向き、ボソッと言った。


(^ω^ )「……2年も、3年も……同じ人間ばっかり観測してたら……愛着くらい持つようになるお」


('A`)


時計の世界では、どういうものなのか、知らないが。少なくとも、この人間の世界では。
明らかに言う側と言われる側が逆だった。


( ^ω^)「君が自分の部屋を持ったのは、小学校の5年生からだおね」


時計は俺に向き直ると、なぜだか昔話を始めた。

82名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:17:58 ID:My4QF3.U0

('A`)「……まあ、そうだな。姉ちゃんが進学して、部屋が空いたから……」

( ^ω^)「その部屋で、君が初めて使った時計は僕だったお」

('A`)「そーいや、そうか……えーっと……」

( ^ω^)「元はといえば、僕はリビングに……リビングなんて上品なもんじゃなかったおね。居間に置いてあった時計だお」

('A`)「ああ、そうだっけ。居間には新しいデカイ時計買ったから、それまで使ってたやつをカーチャンがくれたんだったか」

( ^ω^)「お母さんの部屋は居間のすぐ隣にあったおね? 襖を一枚挟んで。増築改築とかしてないかお?」

('A`)「してねーけど」

( ^ω^)「君のお母さんは寝るときいつも、僕のタイマーをセットしてから、部屋に戻っていったんだお」

('A`)「あー……そうだ、目覚ましは布団からじゃ手の届かないとこに置いとけって言われた覚えが……」

( ^ω^)「お母さんはそれを実践してたお」

('A`)「ふーん……」


いやはやなんとも懐かしくなる遠い昔の話です。言われてみればこの時計、割と昔から家にある。
俺たち家族の思い出を、いくつも記録していたようだ。
ようだが。


('A`)「……いや、それで?」


だから何ですか?
としか、思えなかった。

83名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:18:39 ID:My4QF3.U0


( ^ω^)「……それまでの僕は、"鬱田家の時計"だったんだお」

('A`)「……」

( ^ω^)「でもそれからは……」

('A`)「……」


( ^ω^)「……」

⊂( ^ω^)⊃「よっ!」

('A`)「?」


何を言うのかと待っていると、時計は突然両手を広げた。
人間モードを解除して、再び時計の姿に戻る。もう驚かなくなってきた。


〔 ^ω^〕『あんな気持ち悪ィ口調でんなこと言ってられっかよ……とにかく!』



〔 ^ω^〕『それからの俺は――"鬱田ドクオの時計"になったんだ』

('A`)「……」

〔 ^ω^〕『……』

〔 ^ω^〕『……嫌いじゃなかったんだ』

('A`)「え?」


人間モードの時に比べて、時計モードは口が悪い。
それなのに。

84名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:19:21 ID:My4QF3.U0

〔 ^ω^〕『おまえがまだ小学生だった時。俺がまだ"鬱田家の時計"だった時。居間で家族揃ってよォ。仲良く飯食ってる時……』

〔 ^ω^〕『学校で何があったとか、今度誰の家に遊びに行くとか、そーいうことを』

〔 ^ω^〕『幸せそうに……いや、心底幸せな気持ちで、ペラペラしゃべってるおまえを。観測して、記録して……』

〔 ^ω^〕『……それが楽しかったんだよ。そこそこ、だけどな』

('A`)「……」


声色からは、優しさがにじみ出ていた。


〔 ^ω^〕『部屋の時計になってからもそうだなァ。ヒーヒー言いながら宿題こなして、でも終わるとすぐ明日は何して遊ぶかなんて考え始める、単純なヤローで……』

〔 ^ω^〕『友達との仲もいい、幸せなヤローだなって……思ってたんだ』

('A`)「……」


〔 ^ω^〕『今、どうだよ』


〔 ^ω^〕『友達に勧められたっつって始めたネトゲ……どーせすぐに飽きるんだろーと、ポケモンとかその手のゲームと似たようなもんだろーと、思ってたんだけどなァ』

〔 ^ω^〕『最初のうちは、そいつと一緒にプレイするだけだったのによ。学校で、今日はどこで狩りしようぜーとか話す程度で』

〔 ^ω^〕『そいつがログアウトすれば、おまえもすぐにゲームをやめる。その程度だったのに』


〔 ^ω^〕『……その程度だったのになァ』


('A`)「……」


やめろ。

85名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:20:01 ID:My4QF3.U0

〔 ^ω^〕『……ネトゲ、楽しかったか?』

('A`)「……」

〔 ^ω^〕『幸せだったか。充実していたか。感じる時間は、早かったか?』

('A`)「……」

('A`)「……過ぎた後で言われたって……」

('A`)「……後からじゃ、過ぎてみれば早かったなぁとしか、言えねえよ」

〔 ^ω^〕『そうかい』

〔 ^ω^〕『あんだけ好きだったのになぁ。みんなと遊ぶのが』

〔 ^ω^〕『週末はしょっちゅう遊びに行ってたよな。とっかえひっかえ、友達の家に』

〔 ^ω^〕『誘われりゃすぐ乗っかって行ったし、誘われなくても行ってたよ』

〔 ^ω^〕『こいつはこれからもずっと、友達に、仲間に囲まれた、幸せな記録を残すんだろうなと……思ってた』

('A`)「……」

〔 ^ω^〕『……違うだろ』

〔 ^ω^〕『昔からのコミュ障、生来のコミュ障……違うだろ』


やめろ。

86名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:20:50 ID:My4QF3.U0

〔 ^ω^〕『少しずつ、遊びに行くのがめんどくさくなって』

〔 ^ω^〕『その時間をネトゲに回したいと思うようになって』

〔 ^ω^〕『友達と遊ぶより、ネトゲやってたほうが楽しいと思うようになって』

〔 ^ω^〕『遊びに行こうと誘われても、断るようになっちまって』

〔 ^ω^〕『現実とネトゲの優先順位がひっくりかえって』

〔 ^ω^〕『……最後は、誰にも誘われなくなって』

〔 ^ω^〕『中学を卒業するころには、クラスで孤立しちまってた』

〔 ^ω^〕『そして人間世界での俺は、調子が悪くなったから、そのまま押し入れに放り込まれて……おしまいだ」


〔 ^ω^〕『とんだ見立て違いだったよ』


('A`)


〔 ^ω^〕『……俺はよォ、"鬱田ドクオの最初の時計"だからな』

〔 ^ω^〕『今、時計の世界で、"鬱田ドクオの時間の記録"を管理してるのは……俺なんだよ』

('A`)「……」

〔 ^ω^〕『だからその後……今お前が使ってる、そこの時計から送られてくる記録を、俺は見てきたけど』

〔 ^ω^〕『同じ部活の友達は1人いるみてーだけど、クラスでは完全に一人ぼっち。まーた孤立しちまいやがった』

〔 ^ω^〕『ネトゲはもうやってねーのになァ。友達と接する感覚ってのを忘れちまったのか? 根っからのコミュ障になっちまったか?』

87名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:21:33 ID:My4QF3.U0
('A`)「……」

〔 ^ω^〕『……』


〔 ^ω^〕『高校でもこのまま生きていくつもりか』

('A`)「……」

〔 #^ω^〕『 ど う な ん だ っ て 聞 い て ん だ よ ! ! 』

( A )「〜〜〜〜〜〜!!」


小さな時計の体から、大きな怒声が放たれる。
何も言えなかった。


〔 #^ω^〕『……お前がこっちの世界に来た時、俺は……』

〔 #^ω^〕『……』

〔 ^ω^〕『やめだ。12時間だ』

('A`)「……?」


時計は何かを言おうとしたがなぜか無理やり言葉を切った。
いきなり怒声がトーンダウンし、平坦な声で述べたてる。

88名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 10:22:14 ID:My4QF3.U0
〔 ^ω^〕『最初に時計の世界へ入ってから12時間。針が一周するまでの時間、それがタイムリミットだ』

〔 ^ω^〕『お前がこっちの世界に来たのが16時45分、今は20時52分……約7時間は残ってる』

〔 ^ω^〕『やる気がないなら俺はこのまま消えてやる。また押し入れにぶん投げて、忘れろ』

〔 ^ω^〕『だが……』

〔 ^ω^〕『充実した人間に……幸せな人間に! 戻る気があるなら!』

〔 #^ω^〕『堕落していった自分を、今なお落ちぶれつつある自分を! 変える気があるのなら!!』

〔 #^ω^〕『少しでも、後悔しているのなら!!』


〔 ^ω^〕『……早くしろ』

('A`)「……」


俺はどうするべきなのだろうか。
わからないが、とりあえず1回やってみようか、くらいの考えは持つようになっていた。



その3.PC内蔵時計 ここまで

89名も無きAAのようです:2013/11/03(日) 21:04:31 ID:Fj3KRsksO
乙乙
ブーンの設定いいな
次回も楽しみ

90名も無きAAのようです:2013/11/04(月) 13:30:37 ID:YUvqRxkk0
おつ、期待

91名も無きAAのようです:2013/11/16(土) 00:27:10 ID:aNq14qF.0
設定そそられるわ

92名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 20:58:56 ID:vnnFX8z60


その4.今は亡き砂時計−1


〔 ^ω^〕『準備。いいか?』

('A`)「おう……」


やるだけはまあやってみる。
そう言ってみると時計は黙って、俺に準備をしろと言う。準備て。何すりゃいいんだよ。


〔 ^ω^〕『じゃあ、行くぞ』


適当なものをポケットに詰めて、それで準備とやらは終わった。
時計は一度頷くと、立ち上がり軽く指を鳴らした。



窓の外が紫になった。



(;゚A゚)「え!?」


そんなドラえもんみたいな右手でよく指パッチンできたなとか、言いたいことはいくつかあるが。
窓に駆け寄り外を見る。いくつもいくつも時計が浮いてた。

93名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 20:59:56 ID:vnnFX8z60


(;'A`)「急すぎない!?」


『じゃ行くぞ(パチン』でもうこれだ。
キモい紫の空の下、いろんな時計が浮いている。
"時計の世界"の中にある、"ねじれ時計の海"だっけ。またもや俺はそこにいた。


('A`)「っていうか、ここ俺の部屋……」


最初にここへワープした時、俺とジョルジュは理科室にいた。
だが今ここは俺の部屋。場所はどこであれ関係ないのか?


〔 ^ω^〕『別におまえの部屋じゃない。再現しただけだ』

('A`)「再現?」

〔 ^ω^〕『おまえはネトゲにハマってた時間、そのほぼすべてを自分の部屋で過ごしてる』

('A`)「まあ、部屋以外でネトゲなんかやんねーし……」


当時俺はまだ中学生、ネカフェに通う年でもない。


〔 ^ω^〕『過去と現在がごちゃごちゃになってて、"ねじれ時計の海"はいろいろと不安定なんだ』

〔 ^ω^〕『だから、色々といじくることもできる』

('A`)「いじくる?」

94名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:00:50 ID:vnnFX8z60

〔 ^ω^〕『ああ。おまえがネトゲにハマってた時間を観測した時計が、その記録を元に、この空間を再現した』

('A`)「再現……ああ」


言われてやっと気づいたが、よく見りゃ部屋の間取りがおかしい。
ベッドの位置が今と違うし、もう捨てたはずのアナログテレビ、壊れたはずのコタツが置いてる。
そして何より――パソコンが、今使っているやつとは、違う。
親が買ってくれたパソコン、俺が初めて持ったパソコン。中のOSはXP。


〔 ^ω^〕『喜べよ。引きずり出してやったんだ』

('A`)「え?」

〔 ^ω^〕『ぶっ壊しやすいよーに。ネトゲにハマってた時間を観測した時計……』

〔 ^ω^〕『おまえが破壊するべき時計を。レコードの中から、ねじれ時計の海に、引きずり出しておいてやった』

('A`)「……」


時計が何を言っているのか、いまいちピンと来ない。


〔 ^ω^〕『おい、来るぞ』

('A`)「え」


その意味に首をかしげていると、時計がパソコンを指差すもので、俺も慌ててそちらを向く。
パソコンがバチバチと電撃を発していた。


(;'A`)「……」


なにこれ。
記録を元にした再現だと言ったが、こんなスパーク記憶にない。

95名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:01:35 ID:vnnFX8z60

と、思ったら。


(゚A゚)「!?」


ぬっ、と。
帯電しているPCの中から、白い何かが飛び出した。


〔 ^ω^〕『あれだ。おまえが壊すのは』

(;'A`)「いや、あれって……え? なにあれ?」


床に落ちた白いそれ。
最初は手のひらサイズだったそれは、ワカメみたいにムクムク膨れて、やがてその場に直立した。


(;'A`)「……」


モノクロカラーの姿にはよーく見覚えがあった。あったが、俺の知っている君はもう少し小さかった。
サバ読んで175cmの俺より頭一つ低いから、150もないくらい。たぶん。






出てきたのは、ハリボテの砂時計だった。
8に変えてしまった今ではもう見ることなどなくなった。が、XPを使ってた昔は、しょっちゅう見かけていたアレだ。
マウスカーソルの横に付いてくる、時にはカーソル自体がこれに変形する……

『待機中です』の意味を示す、マウスカーソルの砂時計。

96名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:02:44 ID:vnnFX8z60

なんつーか、あれだ。


('A`)「いや、まあ、砂時計だけど……」


これ別に時計じゃないだろ。


〔 ^ω^〕『あー……なんつーかな。シンボル的な意味合いが強い』

('A`)「はぁ……」


時計は微妙な顔で言った。
わかるようなわからないようなだが、とりあえず適当に納得しておく。






('A`)「……」


しかしまあ、なんだろうこの感じ。元が二次元の住人だからか?
目の前に立つ砂時計は、ハリボテどころの話じゃなく、完全にぺらっぺらだった。


('A`)「……壊すの? これ?」


壊すというより破るじゃねーのとか、どうでもいいことを考える。
時計は『そうだ』とだけ言って、両腕を組むと目を閉じた。

97名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:03:32 ID:vnnFX8z60
('A`)「……じゃあ、まあ……」


ポケットから時計の針を取り出す。例の針だ。
どうなるのかと思っていると、何の予兆もなく針は膨らみ、例の槍へとフォルムチェンジ。いきなりすぎて槍落とした。


(;'A`)「とと……まあ、よし!」


落とした槍を拾い上げ、軽く2,3度素振りしてみる。
じゃあ、まあ、はい。やりますか。


('A`)「――さらばだ、俺の過去!」


槍を振り上げ、走り出す。
この勢いのままハリボテ時計に槍の一撃を食らわせようとして――


(゚A゚)「!?」


思わず足が止まった。


突如。
ぺらぺらしていた砂時計が、まるで背筋を伸ばしたかのように、ピンと立った。



△『……』


砂時計はしばらくモゾモゾした後、その場で軽くジャンプした。

98名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:04:16 ID:vnnFX8z60

⊂▽⊃
 △ ニュッ
 ||


直後、時計から手足が飛び出す。
そこからはもうあっという間、あれよあれよと砂時計は――



     ∧_,,
    (#゚;;-゚) 「……」
    /;; ;;っ
   ;; ;; ノ
   (/"



ボロ切れを着た儚げな少女に、トランスフォームしてしまった。


(゚A゚)

(#゚;;-゚)「なに、ブーン」


呆ける俺を一瞥もせず、元砂時計は静かに語る。


(#゚;;-゚)「私、何もしてないよ。なんでこんなところ連れてきたの」

〔 ^ω^〕『わかるだろ、そのくらい。年貢の納め時っつーこった』

(#゚;;-゚)「……」

99名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:05:26 ID:vnnFX8z60

時計同士で会話した後、砂時計は俺に目を向けた。
その目はやたらに冷めている。


(#゚;;-゚)「ひさしぶりだね」

(゚A゚)「あっ、はい」


とっさに返事を返したが、久しぶりと言っていいんだろうか。
気分的には初対面だが、まあPCの砂時計とあれば、一応久しぶりなんだろう。うん。


(#゚;;-゚)「……私のこと、壊しにきたの?」

(;'A`)「えっ?」

(#゚;;-゚)「私は、もう、いらなくなった?」

('A`)「……」

(#゚;;-゚)「私は、無駄だったの?」

(;'A`)「あ……っと、その……」


淡々と喋る砂時計。
見た目は完全にロリっ娘なので、面と向かってそう言われると、精神的に辛いものがある。


(#゚;;-゚)「嫌だよ」

('A`)「はい?」

100名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:06:10 ID:vnnFX8z60


(# ;;- )「そんなの――嫌」


〔 ;^ω^〕『……ッ! おい! 横!』

('A`)「え?」


時計が泡を食って叫んだ。
何のことかと思った瞬間、左で何かの壊れる音が――


(; A )「んがァっ!!」


左を向く暇すらなかった。
轟音と共に突っ込んできた謎の紫の物体に、俺の体は跳ね飛ばされた。


(; A )「げぶェッ!」


部屋の壁にぶち当たる。
しばらく壁に張り付いた後、重力通りに床へと落ちた。べしゃっと。


(;'A`)「んげ、ぐ……」

〔 ^ω^〕『あーあァ。さっさとやっちまわねーから、こうなる』


息が詰まる。車に轢かれた時ってこんな感覚なんだろうか……。
床にへたばる俺の上から、時計のクールな声が振ってくる。

101名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:07:12 ID:vnnFX8z60

〔 ^ω^〕『ほら、来たぞ』


言われてどうにか頭を上げる。
そこに屹立していたのは、やはり――


 <`ーィ
 (  _>ー─ー-、
  )ノ      Ooヽ
   \        |
   //`ーn__,ヘノ'
  〈/  //    ヽ\
    〈/      \>


ナスだった。

向かいの壁に大穴が空いている。ブチ抜いて入ってきたようだ。
ナスはじりじりと歩みを進め、砂時計をかばうように立つ。


(#゚;;-゚)「壊されるなんて、絶対に嫌」

(;'A`)「っく……」


眼も、声も、態度も。すべてが冷ややかだった。
見た目はただのロリなのに、どうにも油断ならない奴だ。


〔 ^ω^〕『まずこいつからどうにかしねーと、どうにもなんねーな』

(; A )「……ッホ! ゲホッ!」


どうでもよさそうに時計が言う。
2,3度咳をし痰を吐き、俺はどうにか立ち上がった。

102名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:07:56 ID:vnnFX8z60

槍を握る手に力がこもる。


〔 ^ω^〕『さて。おまえが無駄にした時間のシンボル――』


ナスが体を低くする。


〔 ^ω^〕『――おまえがぶっ壊せ』


再びナスが突進してきた。


(#'A`)「んぇいッ!!」


左へ跳んでなんとかかわす。
少し態勢が崩れたものの、すぐ前には砂時計がいる。
罪悪感がないわけじゃない。が、手加減してると俺が死ぬ!


(#゚A゚)「ね―――――――――い!!!」


とっさに気合いの雄叫びを発し、槍を構えて数歩踏み込む。
そしてそのままその細い胴を一刀両断しようとして――


〔 ;^ω^〕『おい、後ろ!』

(゚A゚#)「!?」


時計の声に後ろを向く。

ナスが突進してきていた。

103名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:08:40 ID:vnnFX8z60


(# A )「っァぶっ!!」


避けられなかった。
背中にタックルをかまされて、俺の体は床を転がる。
ゴロゴロゴロゴロ転がった後、部屋の壁にぶち当たらない。


(゚A゚)「!!?!?!?!?!!?」


そうだった。壁にはさっきナスが大穴を開けたんだった。


ホールインワン。



(;゚A゚)「えええええええええええええええええええええええ!!!??!?!?」


ナスが空けた壁の穴から、俺は部屋の外へ放り出された。

ちょっと待ってよ部屋の外一面真っ紫なんですけど!?
『記録を元に部屋を再現しただけ』と時計は言った。ということはつまり、部屋の外は特に何もないと?


時計がいくつもふわふわ浮いてる、上も下も紫の空間。
俺はひたすら落ちていた。

104名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:09:23 ID:vnnFX8z60

(゚A゚)「おおおおお――――――――――――――――――!!!!!!!」


下を向いても地面がない!!
この空間に重力はあるのか!?
俺はどこまで落ちるんだ!!??


(゚A゚)「おおおおお―――――――――――おおおお!!!!」

〔 #^ω^〕『んの、馬鹿が!!』

(;'д`)「おぅェっ!? ぃぐっ!!?」


いきなり体が静止して、同時に首が若干締まる。
頭のすぐ後ろで時計の声がした。


〔 ^ω^〕『はじき出されてんじゃねーかよ、っそが……』

(;'A`)「おお……」


首を後ろに回してみると、時計が服の襟元を掴み、ふわふわ空中を飛んでいた。
見た目は小さな目覚ましなのに、よく俺の体重を支えられるものだ。っていうかこいつなんで飛べるの?


〔 ^ω^〕『何考えてるかは大体わかるが、とりあえずひとつだけ言っとくぞ』

〔 ^ω^〕『この空間なら、おまえもちゃんと飛べるからな。変な勘違いしてるから落ちるんだ』

105名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:10:15 ID:vnnFX8z60

('A`)「え? ……マジ?」

〔 ^ω^〕『マジ』


時計がパッと手を離した。


( ゚A゚)「わァ―――――――――――!!!!!」


落ちた。


〔 ^ω^〕『落ちると思うから落ちるんだ、バカ。人間世界と一緒にしてんじゃねーよ』


落ちていく俺に並走しながら、時計が解説してくれる。
んなこと言われたって、落ちないと思えば落ちないとか言われたって――


(゚A゚)「止まった」

〔 ^ω^〕『だろ?』


ピタリと空中で静止することができた。
なんとも不思議な感覚だ。無重力ってこんな感じなんだろうか。宇宙行ったことないからわかんない。
しばらくその場で手足を動かしてみる。おおー……


('A`)「移動どうすんの?」


もがくだけで前に進めなかった。


〔 ^ω^〕『……』


『このバカ救いようがねえな』みたいな目をこちらに向けてくる。なんだその理不尽な目は。

106名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:11:01 ID:vnnFX8z60

〔 ^ω^〕『具体的なイメージを持つんだよ』

('A`)「……」

〔 ^ω^〕『……っハァ』


深々とため息を吐かれた。


〔 ^ω^〕『だから……「1秒後、自分はどこにいるか?」っつーイメージを、きっちり頭の中に持つんだよ』

('A`)「えー……はい」

〔 ^ω^〕『……。おまえ身長いくつだ?』

('A`)「は? いや、えーと、175くらい……」

〔 ^ω^〕『サバ読まずに言うと?』

('A`)「……173」

〔 ^ω^〕『171か。おまえの歩幅をおおよそ70cmとして、1秒で2歩歩くとすれば、1秒後のおまえは140cm前方にいるわけだ』

〔 ^ω^〕『「1秒後、自分は140cm前にいる。」この空間で前に歩いていきたいと思うなら、そういった明確なビジョンを持つ必要がある』

('A`)「……」


身長171cmが当たっているのと、なるべく噛み砕いて伝えようとしてる、ってことはわかる。わかるが。
心遣いは伝わるのだが、正直ピンとこない。

107名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:12:10 ID:vnnFX8z60

〔 ^ω^〕『っと! おい、来たぞ!』

(;'A`)「え!?」


時計が虚空を指差した。
つられて俺もそっちを向くと――


(;'A`)「またナスか!」


さながら天馬、ペガサスのように、ナスが空中を駆けていた。
まっすぐこっちへ向かってくる!


〔 ^ω^〕『避けろ!』

(゚A゚)「え!? おう!」


おう! と言ってはみたものの、の!?
なんだ移動って何なんだ!?

ナスがこっちに迫ってくる!

時計が言うには歩行速度は1秒140cm、じゃあ――


(゚A゚)「左へ秒速140cm――――!」


とりあえず叫んだ。

108名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:12:56 ID:vnnFX8z60


  ヽ(;'A)ノ    「お、おお! おおっ! マジか!」
    ( ) 三
    / ノ  三


マジで動いた。
なんだろうこの新感覚、頭で考えるだけで体が勝手に動いていく! 動くけど!


(;゚A゚)「遅え!!」


文字通り歩くような速さ。
ナスが軌道を微修正しつつこちらへまっすぐ向かって――


(; A )「うげッ!!!」


ナスのタックルが直撃した。
車に轢かれたような衝撃、俺は宙へと跳ね飛ばされて、そして……


(゚A゚)「止まらねえ!!!」


跳ね飛びっぱなしで止まらなかった。


そうだ、なんかの漫画で読んだぞ。
無重力空間で衝撃を受けると、何かにぶつからない限り止まらないって――


(;゚A゚)「おーっ! おーっ!! おおーーーーー!!!!」


ひたすら、ただただ、延々と、後ろのほうへと吹っ飛んでいく。

109名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:14:01 ID:vnnFX8z60


(;゚A゚)「おおおおおおーーーーーーーーーーー!!!!」

〔 #^ω^〕『だからいい加減にしろよてめえ!! おまえここを宇宙かなんかと勘違いしてるだろ!!』


吹っ飛ぶ俺に並走しながら、時計が半ギレ気味に叫んだ。


〔 #^ω^〕『止まらねえと思うから止まらねえんだ! 別に無重力じゃねえんだよ! 頭で考えて動けって言っただろうが!!』

〔 #^ω^〕『後ろへ吹っ飛んだりなんかしない! 1秒後の自分はどこにいるか!? ここでしょ!! この場だよ!! ちゃんと静止するんだよ!! 頭でそう考えりゃいいんだよ!!』


半ギレというかマジギレだった。
熱く叫ぶ時計に気圧され、それで若干冷静になる。


(-A-)(1秒後も俺はこの場所にいる……2秒後もまだこの場所にいる! 3秒後もこの場から動いてはいない! そう、俺は……ここにいる!!)


(゚A゚)「スケェェェェェェェェェェェイス!!!」


頭にはっきりビジョンを持って、それを固めるべく叫ぶ。
そうするとちゃんとその場で止まれた。


(;'A`)「お、おお……ちょっとわかってきた……」

〔 ^ω^〕『……台詞でカッコつけるのは勝手だけどよ……やってることがショボすぎるぞ……』


止まった俺を冷めた目で見て、時計が渋い顔で言う。


('A`)「うるせえ、ほっとけ……」

〔 #^ω^〕『おい、また来たぞ!』

(;'A`)「げっ」


息つく間もなくナスが迫り来る。

110名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:14:54 ID:vnnFX8z60
だが、もう移動のコツは掴んだ!


('A`)「右へ――えっと、1秒10メートルくらい!」


考えるだけでいいのだが、よりはっきりと意識を持つため、あえて声に出し明文化する。
叫んだ直後、俺の体は右へ飛んだ。


 三三三 ヽ(;'A)ノ 「おお! これだ、これだ! これでいい!」
 三三三   ( ) 
 三三三   / ノ 


なかなかのスピードで体が動く。


('A`)「よし、ストップ! ここで止まる!」


ナスの突進を華麗にかわし、俺は一旦停止する。
さて、ここからどうするか。槍を両手でしっかり構え、俺は次の行動に――


〔 ^ω^〕『油断すんなよ、まだ来るぞ!』

(;'A`)「おうっ!?」


ナスはほとんど直角に曲がり、俺を正確に追尾していた。
再びこちらへ突進してくる。


(#'A`)「上! 秒速15m!」


叫んでみると体が浮いた。
猛烈なスピードで上方移動、ナスのはるか上まで飛んだ。

111名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:15:51 ID:vnnFX8z60

(;'A`)「ストップ! おお! おお! すげえ! すげえ! ゴフッ! ゲホッ!」


むせた。
しかしこれはマジですごい。上下の移動も何のその、ドラゴンボールみたいな世界だ。
俺は槍を構え直して、今度は攻撃に移ろうとして――


(;'A`)「ゲホッ! ゲフッ! ゴホ、はー、ひー、ヒュー、ゴホッ! ゼェー!! ヒィー、ふぅー、ヒッ! ハァー、ハッ、ハッ、はー!」


むせまくった。
いやむせるというかなんというか、急に呼吸が苦しくなって、激しく息切れするように……
なんだ、これ?


〔 #^ω^〕『調子に乗るからだ、バカ! ドラゴンボールじゃねえんだぞ』

(; A )「ハァー、ハァー、ハァー!」


時計がパタパタ飛んできて、俺の背中をさすりはじめた。
返事しようにも声が出ない。息を吸うので精いっぱいだ。


〔 ^ω^〕『おまえ100メートル走何秒だ? 18秒か? 20秒か?』

(; A )「じゅ、ハッ、はー、はー……」


15~6秒だと言いたかったが、返事ができる体調じゃない。
時計は乱暴に背をさすりながら話を進める。

112名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:16:40 ID:vnnFX8z60


〔 #^ω^〕『それと同じだよ、この空間で移動するならそれ相応の負荷はかかるんだ! 秒速10メートルってそれ100メートル走10秒じゃねえか、疲れるどころの話じゃねえよ!!』

(;'A`)「じゅっ……」


それならそうと先に言えよ!! と、叫びたかったのだが、未だに声は出なかった。
つまり秒速15メートルは100メートル走7秒切ってるわけで、ウサインボルト以上の無謀を知らぬ間に犯していたようだ。


〔 ^ω^〕『おい、また来たぞ!』

(;'A`)「ひー……!?」


ナスが突っ込んでくるのを見て、時計は素早く飛びのいた。
俺もすぐに逃げようとして、100メートルを15秒だから、秒速……


(; A )「うげェっ!!」


身の丈に合った移動速度を計算し終えるその前に、ナスの突進をモロに食らった。
またもや跳ね飛ばされる俺だが、しかし今度はなんとか止まる。


(; A )「ハァー、ひぃー、ふぅー、はぁー! はっ、はっ、はー!!!」


だがこの息切れはどうにもならん!
ナスはすぐさま態勢を変え、またもや俺のほうに突進――

113名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:17:33 ID:vnnFX8z60

⊂〔 #^ω^〕⊃『あ""ーーーーー!! っとに世話が焼けるなァボケ!』


見かねた時計が割って入って、勢いよく両手を広げる。


          /⌒ヽ
   ⊂二二二( ^ω^)二⊃
        |    /          
         ( ヽノ     【transform!】
         ノ>ノ
     三  レレ


人間モードに変形すると、まっすぐ突っ込んでくるナスを――




                   _ _     .'  , ..
          ∧  _ - ― = ̄  ̄`:, .∴ ' 
         , -'' ̄    __――=', ・,‘ 
        /   -―  ̄ ̄   ̄"'" .   
       /   ノ      
      /  , イ )      
      /   _, \       ( #^ω^)「オラァッ!!」
      |  / \  `、       
      j  /  ヽ  |     
    / ノ   {  |      
   / /     | (_      
  `、_〉      ー‐‐`            



ぶん殴った。


(;゚A゚)「!?」

( ^ω^)「まあ、こんなもんか……だお」


ナスは真後ろへぶっ飛んでいった。

114名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:18:37 ID:vnnFX8z60

ちょっと待ってよおかしいだろ。
真正面から突っ込んでくるものを、真っ正面から殴り返して、なぜ真後ろに飛ぶんだよ!?
こいつ、どんだけ筋肉馬鹿!?


(;'A`)「……すげえ……」


いくらか呼吸が落ち着いてくると、思わず感嘆の声が漏れた。


( #^ω^)「すげえじゃないお、これ君がやるべきことだお!? なんで僕が前に出てるんだお!!」


時計に拾われてキレられた。
とは言われてもだ。こんな意味の分からない世界にいきなり放り込まれたんじゃ、ロクに動けないのも当然だと思う。そこまで責められる道理はないぞ。


( ^ω^)「ったく……とにかくだお。僕がちょっとだけ時間を稼ぐから、その間にそれの使い方を覚えるんだお」

(;'A`)「それ? これか?」


時計が俺を指差した。
というより、俺の持っていた槍を指差した。
これまで移動に精一杯で完全に意識から外れていた。


('A`)「使い方……って、なんか特殊能力みたいなのあんのか?」

( ^ω^)「うん」

(*'A`)「おお!」

115名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:19:21 ID:vnnFX8z60

時計がさらりと頷くもので、がぜんテンションが上がってきた。
デカい時計の針にしか見えない、こんなただのダサい槍にも、特殊能力があるというのだ!
期待に胸を膨らませながら、時計の能力説明を待つ。


( ^ω^)「よし、じゃあそれちゃんと持ってるんだお。いくお?」

(*'A`)「おう!」


  ↑
  |
  ・
  |
  |
  |
  ↓


( ^ω^)「じゃあ……せーの!」


( ^ω^)「3時の方向に敵!」

   .
  .ミ
  ・―→
  |    ガチィン!
  |
  |
  ↓


(;'A`)「おうっ!?」

116名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:20:05 ID:vnnFX8z60

( ^ω^)「9時!」

 
  ←―・..
  ミ|彡    ガチィン!
   |
   |
   ↓


( ^ω^)「12時!」


   ↑
  彡|
  ..・ ガチィン!
   |
   |
   |
   ↓

( ^ω^)「半日経ちました!」


   ↑ ガチィン!
  彡|ミ 
...◎...  
  ミ|彡
   |  グルンッ
   |
   ↓


('A`)「おおー……」

( ^ω^)「とまあ、こんな感じだお」

('A`)「おう。で?」

117名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:21:02 ID:RyYwp.52O
やっぱいいなこの世界観
支援

118名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:21:16 ID:vnnFX8z60

( ^ω^)「ん?」

('A`)「これ結局どういう能力なの?」

( ^ω^)「どういう能力って?」

('A`)「いや、だから……」

( ^ω^)「どうもこうも見ての通りだお。回るんだお、この槍は」


('A`)「……」

( ^ω^)「……」


('A`)「そんだけ?」

( ^ω^)「うん」




(#゚A゚)「どないせーっちゅーねんッ!!!」

( ^ω^)「あ、ドクオ! 来たお!!」

(#゚A゚)「ちくしょ―――がァ!!!」


迫り来るナスを眼前に見て、俺は必死に槍を構えた。
ただ先端が回るだけの槍を。





その4.今は亡き砂時計−1 まだつづく

119名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 21:21:59 ID:vnnFX8z60
AAズレすぎワロッシュwwwwwwwwwwww
次来るときは修正しときます

120名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 22:25:59 ID:CGcvpDcE0


121名も無きAAのようです:2013/11/26(火) 23:32:02 ID:9n3JlDwk0


122名も無きAAのようです:2013/11/27(水) 18:10:16 ID:mdeY68Bs0
wktk

123名も無きAAのようです:2013/11/27(水) 19:49:08 ID:7UG36jdg0
これはいい

124名も無きAAのようです:2013/11/28(木) 08:57:13 ID:/yGkjA/AO

この作品のおかげで祝福祭のスレタイが時計ブーンに見えてきた

125名も無きAAのようです:2013/11/30(土) 07:44:18 ID:fJS/4IFc0
ワロタ


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