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( ・∀・)君と可愛いあのこの内緒話のようです

1名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 19:42:05 ID:Y2RXtETw0
1.便器にかじりついて、ひたすら胃の中身をひっくり返す簡単なお仕事です。

174名も無きAAのようです:2013/12/13(金) 16:57:30 ID:0YVwMWbA0

面白かったよ 続き期待してる

175名も無きAAのようです:2013/12/15(日) 04:34:12 ID:E8UfbXPE0

海外小説の訳文っぽいんだろうか、こういう文章のセンスが欲しい

176名も無きAAのようです:2013/12/15(日) 19:04:55 ID:VcnJrAN.0

登場人物ら出自がこんなに気になる作品を読んだのは初めてだよ
読みやすいし面白くて大好きだ

177名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 14:27:29 ID:lTCXD3GQ0
8.嘘つきは泥棒のはじまり


( ・∀・)「ジョルジュ!」
  _
( ゚∀゚)「おう」


裏から回って店に入る。
煙草を巻いていたジョルジュは待ってたぜ、と手を上げて笑うがたぶん、半分以上は嘘だ。
もっとも、初めは心からの「待ってたぜ」だったのだろうが。

  _
( ゚∀゚)「アじめようか」

( ・∀・)「うん」

178名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 14:31:21 ID:lTCXD3GQ0
紙の端を舐めて仕上げると、雑多なレジスペースから立ち上がり、ジョルジュは僕を先導する。
キィンと響くチューニングされたジッポの開閉音の後、ゆったりと流れてくる紫煙。
この時ばかりは、二度とゴメンだと思った煙草への憧れが燻る。
僕には向いてないからやらないけどな。

僕はここにくると、人間は順応する生き物だということについて考えずにはいられない。
絞られた光のオレンジが照らす薄暗い店内は清潔の二文字からは遠く、
商品の並ぶスペースはそうでもないが、ジョルジュの陣取るカウンターの有様はひどい。

口の開いた瓶や缶が立ち並び、灰を積もらせとうに務めを放棄した灰皿の代わりを果たしている。
瓶の向こう側に透ける、ぐずぐずになった紙と葉が黄ばんだ水の汚らしさを強調。
キャラメルスナイダーズのカスが16粒、埃と髪の毛に混じって天板に落ちていた。
重ねられた雑誌の上の食べかけのピザのサラミで蠅が両手をこすりあわせて止まっている。

その混沌の一角が、甘さの混じった饐えたにおいを微かに発してはフレグランスと煙草のにおいに打ち消されている。
そういうここにいて、僕はあんまり不快でもないから自分でも驚きを隠せない。
僕は最近鈍感になって、ドアノブや、テーブルに触れたカトラリーを使うってことにあんまり抵抗がないんだ。
たぶん、その延長なんだろうけど。驚きは驚きだ。

179名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 14:34:57 ID:lTCXD3GQ0
僕は、少し前からジョルジュという男が営む酒屋で、時々仕事を手伝っている。
お金が必要だったし、ジョージではなくジョルジュと名乗った彼に親しみを感じていたからだ。

お金ってどうやって手に入れたらいい?と聞いた僕に
ジョルジュは自分がID無しだから、僕のような人間を放っておけないと言った。

僕に割り振られた仕事はシンプルだった。分かりやすいっていいよ、最高。
ジョルジュが仕入に使っているバンから段ボールたちを下ろしてきて店まで運ぶ。簡単。
箱を開けて商品をしかるべき場所に並べる。ちょっと手間。瓶、あるいは缶のような繊細なものをいくつも急いで触るのは緊張する。
箱をぺちゃんこにして、ゴミ捨て場までもっていく。楽勝。
店の裏に置いてある、空き瓶のつまったコンテナをバンに積む。あくびが出る。

運ぶ荷物は20もないし、中身だって酒瓶だから対して重くない。その積み下ろしをやると1ドル札を一枚くれる。

まぁ簡単なもので「誰にでもできる、簡単なお仕事です!」ってやつさ。

180名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 14:37:10 ID:lTCXD3GQ0
とは言っても何も問題がないわけじゃない。
最初のころこそジョルジュも満面の笑顔でぼくに1ドルを渡していたが、最近はアレだ、押し付けるように渡してくる。
クーちゃんは僕を、空気の読めない男として扱うけどそれが何を意味してるのかくらいわかる。

その証拠とばかり、手伝い始めこそ「いつでも雇ってやる」と言っていたジョルジュだが
最近では僕の方からその話を持ち出しても、「ばか、お前みたいなヤク中、店におけるかよ」と乗り気でない。
ばかりか、しきりに町から出て行って欲しがっている。

  _
( ゚∀゚)「ここからもっと南か、北……いや南がいいな。そっちに行くのはどうだ?
     田舎で何にもないが、住んでる人間はずっといい。このへんには似たようなのばっかりが住んでる。
     お前には、あんまり向いてるとは思わないな」

181名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 14:43:56 ID:lTCXD3GQ0

まぁジョルジュの立場からすれば嫌だよな、元々はジョルジュがやっていた仕事だ。
あんな簡単な仕事だと、1ドルじゃ割にあわないんだろう。
しかし僕には目的があって急いで15ドルをためなくちゃいけないから、嫌がられていると知りつつ顔をだす。
友達になれたと思っていたから少しさみしいけど、しょうがないことだってある。

  _
( ゚∀゚)「お前な、悪いことは言わねえからさっさと縁を切った方がいいぜ」

( ・∀・)「誰と」
  _
( ゚∀゚)「アニジャだよ。気がかりなのはあのチビの事か?」

( ・∀・)「んー」
  _
( ゚∀゚)「そっか」


ジョルジュの煙草の先端が、一気に灰になる。
ゆっくりと煙を吐き出して、あのこもいい子なのについてないな、と呟いた。
僕は何も言わず、ポケットの中に1ドルをしまい、それから少し咳き込んだ

182名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 14:48:52 ID:lTCXD3GQ0
( ・∀・)「うぃーうぉんごなんてぃるうぃげっさむっ!」


家々が店が飾り立てられ町中がどことなく華やかだ。
僕は楽しくなって歌ってみたが、どうにも節を付けて喋っただけみたいな格好のつかない音になったのと、
前からの通行人が大きく僕を避けてすれ違ったので、続きは舌の上で転がすことにした。
メロディは繰り返しであるように思うから推測できるけど、続きをしらない、あるいは忘れているので延々と
もらうまで帰らない、さあここに!と延々と何かをねだる有様だ。
一体何がそんなに欲しいんだろう?僕は目下の所アップルパイが食べたい。

183名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 15:04:32 ID:lTCXD3GQ0
まだ売れてるなよ、あと少しなんだ。と念じながら目的地であるショーウィンドウにべたっと顔をくっつけて探す。
窓は冷え切っていて、顔からどんどん体温が逃げていく、ついでにガラス越しの店員がこのキチガイが、という目を向けてくるが気にしてはいけない。
目的のために、時に人は非情にならなければいけないのだ。

並べられているアクセサリーの一つ、ピンクのリボンのヘアゴム。
それがまだ一昨日と同じ位置、ぴったりに鎮座していて僕は安心する。
先一昨日は前に見た時より二センチ奥にズレていて、気が気じゃなかった。
そう、クリスマスにあれをクーちゃんにプレゼントするのだ。

彼女の手首には古びたヘアゴムが嵌っているが、彼女はそれが傷むことを恐れて使わないんだ。
髪を括ると映えそうな顔立ちなのに、そんなのもったいないだろ。

横から声、ちょっと満足に水を差された気分になる。


('、`*川「ねぇアンタ、アンタさぁアニジャのとこのだよね」

( ・∀・)「うん、そうだけど……僕たちどこかで会った?」


青っぽいブルネットを伸ばした、おんな。
胸部の布を押し上げる曲線が豊か。
美人ではあるけど、疲れた雰囲気が目じりにある。

いかにも面識のあるふうに話しかけられたが、正しく、知らない人間だった。
ここにきてからは僕の記憶はまっとうに機能しているから、これは間違いのないことだ。

184名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 15:17:26 ID:lTCXD3GQ0
('、`*川「ううん、でもアンタ目立つから。アニジャのとこの、ちみっちゃい子とよくいっしょにいるし」

そういうブロンド、ここじゃめずらしいし。あのこ、ジャンキーとつるみそうな子でもないでしょ?
ちみっちゃいこ、と彼女は掌を自身の膝のあたりまでぐっと下げた。
彼女は僕より、ほんの少し目線がしたにあるだけだから背は高い。
でもクーちゃんはそんなにちっさくはないと思う、たぶん。

( ・∀・)「クーちゃんはそこまで小さくないぜ」

('、`*川「あのこ、クーちゃんって言うんだ」

( ・∀・)「知らなかったの?」

('、`*川「教えてくれないんだもの」

( ・∀・)「ふうん?それよりさ
      クーちゃんに、プレゼントしたいものがあるんだけど
      女の子の欲しがるものって僕にはよくわからなくて
      ちょっと見てくれないかな」

('、`*川「ええっ、アタシだってわかんないわよぅ
     20も離れたら同じおんなでも別の生き物よ」

( ・∀・)「20?」

('、`*川「あ、ヤダ、追及しないで」

( ・∀・)「……若く見えるね」

('、`*川「追及すんなって言ってんだろ」

(;・∀・)「すみません」

185名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 15:39:20 ID:lTCXD3GQ0
('、`*川「ねぇねぇ、アンタはあのこがアニジャの何なのか知ってる?
     正解がわかんないからよけい気になっちゃって
     アタシは、娘じゃないかなってニラんでるんだけど」

(;・∀・)「ええっと」

僕は迷った。
果たして正直に告げてもいいものだろうか?
ペットと聞いて、引かない人間がいるものだろうか?
どうも彼女はアニジャと親しいようであるし、それはいくらなんでも言っちゃだめな事じゃないだろうか?
自問自答、答えは出ない。
彼女のたれ目が好奇心に輝いている。
さて、どう答えたものか……あっ!


(;・∀・)「姉弟、かな?」

('、`*川「ああ!兄妹!
     言われてみれば、話し方とか髪の色とか似てるものねぇ」

(;・∀・)「ね、ねー!」

('、`*川「まぁ、でもあんなのが身内だと、あのこも苦労するわねぇ……」

( ・∀・)「ん?」

('、`*川「ああスッキリした。仕事があるからもう行かなくちゃ。
     アンタも溜まったらおいでなさいね、安くはしないけど
     アニジャのよしみでサービスはしてあげるから」

( ・∀・)「……?悪いけど僕、酒は飲まないから」

('、`*川「ん?…………
     ははは、やだ、純情だぁ!」

186名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 16:13:55 ID:lTCXD3GQ0

――

川;゚ -゚)「もうちょっと、何とかならないのか?」

(;・∀・)「無理!これが精いっぱい!」

川;゚ -゚)「何だか禍々しい……」

( ・∀・)「禍々しいとか言わないで」


キッチンは只今、分娩室に様変わり中。
平らに伸ばしたクッキー・ママに型を押し付けて人型を象る。
焼きあがって冷めたらアイシング。顔やボタンを描けばジンジャークッキーからジンジャーブレッドメンに早変わり、というわけだ。
たっぷりアイシングをしておかないと、ちょっとどうかと思うくらい辛い。
風邪の予防のためだというけど、甘いものは甘いだけでいいのにな、と僕は思う。
そうしておけば、わざわざ後から甘味を足さなくても美味しく食べられるし、禍々しい、などといわれることもなかったんだ。
手元を見る。病院では、わりといた感じだから、大丈夫。大丈夫。
クーちゃんが手掛けたものとは、大分様相が違うが、愛嬌の範囲。
そう、僕が不器用なのではなく、クーちゃんが特別器用なんだ。
特に、ひとつだけ避けられているジンジャーブレッドマンなんか、完璧だ。
その他大勢のクッキーにくらべ形も焼き色もよかったそれはくせ毛とコートを着ていてアイシングが少ない。

187名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 16:15:15 ID:lTCXD3GQ0
( ´_ゝ`)「器用だな上手いもんだ」

そうそう、ちょうどこんな感じのくせ毛とコート。クーちゃんは特徴を捉えるのが上手い。
いつの間に帰って来たんだか、気が付いたらそこにいるからびっくりして、ブレッドマンの目が一個増えた。

川 ゚ -゚)「アニジャ!
     ふふ、私はすごいだろう。
     今日はもう終わりか……?」

( ´_ゝ`)「すごいすごい。
       いいや、これからもう一つある」

川 ゚ -゚)「そうか…………わかった気を付けて。
     これは姉さんから弟へのクリスマスプレゼントだ」

( ´_ゝ`)「ああ、もうそんな時期か
       お返しには苦労するよ姉さん」

クーちゃんが差し出した皿からブレッドマンが取り上げられる。
形のよい丸い頭がばきん、と首から離され、クーちゃんの前歯の間に差し込まれた。

  _, ,_
川 ゚ -゚)「……からい」

( ´_ゝ`)「アイシングを増やすといい」


アニジャはお馴染みの、口と頬の痙攣にしか見えないようなやりかたでおそらく笑うと、
首なしブレッドマンをクーちゃんに返し頭を撫でて、出て行った。
それが昼の話。

188名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 16:24:59 ID:lTCXD3GQ0
夕方、右ポケットの中身のおかげで僕は浮足立っていた。
誰かに取られないか毎日心配してたんだ、これほど嬉しいことはないね。
クーちゃんが気に入ってくれるといいんだけど
お金は少し余分になったから、ジョルジュにも何かプレゼントしてやろうかな。ビールというやつなら買えるだろ、たぶん。
そういう風に僕の体を覆っていた暖かいような楽しい気持ち、というのはエントランスに着くと、ぱちんと弾けた。
変わりに、ぶわっと鳥肌が立つ。血を抜かれすぎたときのように体温が下がる。

日が落ちて、風は鋭く、身を切るような寒さを自覚する。
エントランスのざらざらのコンクリートで出来た階段に足を投げ出して、クーちゃんは座り込んでいた。
上着も着ていないし、ワンピースからはみ出た膝小僧が赤くなっている。


(;・∀・)「クーちゃん!?どうしたの、中に入ろうよ!凍え死ぬよ?!」

川 ゚ -゚)「モララー」

(;・∀・)「ほら!立って!」

川;゚ -゚)「い、いやだ」

(;・∀・)「嫌とかじゃなくて!」

川;゚ -゚)「まだ、だめだ……いまは……」

目線がふらふらと揺れて、声に力がない。
だけどコートの裾を引っ張る力は強いから、荒いやすりをかけたようにざらついた気持ちになってくる。

189名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 16:42:53 ID:lTCXD3GQ0
   _, ,_
( ・∀・)「一体、何が駄目って言うんだ」

質問しておきながら、答えなんて聞かなくてもわかる。
実際の事情なんてものは分からないけど、クーちゃんがこんなに亡羊として寒いところにいる原因くらいならな。

コートから腕を抜いてクーちゃんから逃れるとそのまま部屋へ。
叫ぶように名前を呼ばれたけど、追ってはこない。確定。

ドアを開ける。血なまぐさい。そういう事か。
臭いをたどって、バスルームのドアを開けた。




( ´_ゝ`)「風呂なら後にしてくれ、今忙しい」

べったり濡れた指先が犬を払うように僕を追い立てた。
アルコールと血の臭いが籠っていて、頭が痛くなりそうだった。
僕はここの水回りが好きだったんだよ、いつだって磨き上げられていて清潔だったからな。
白い陶製の洗面ボウルが赤く染まっている。脇に置かれた透明の酒瓶にも、五つの点とそれからのびる筋が同じ色で出来ている。


( ´_ゝ`)「いや、ほんとに出てけよ。おれだって怪我をすると苛立つんだ」

アニジャは少しも感情に波だった様子も見せずにそう言った。
汗の浮いた額と、ぐいぐい煽られる瓶が無ければ、痛みを感じているとすら思えない。

左腕からぷらぷらと糸が伸びている。その先の銀色。僕はそれが何か知っている。
なぜって、ここに来てから僕はそれをずっと見ていたし、記憶は正しく機能しているからさ。
あんなにシンプルなつくりなのに、わずかな違いがある。
それをあのちいさな貝殻の爪は毎回見つけ出すその様子。
これが一番使いやすい、ような気がする。そういって糸を手繰る横顔を僕は覚えている。

190名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 17:03:06 ID:lTCXD3GQ0
( ・∀・)「それは、皮膚を縫うものじゃない」

( ´_ゝ`)「縫う必要があって、出来るなら関係ない」

( #・∀・)「必要なら病院に行けよ」

( ´_ゝ`)「偽装のIDとわけあり丸出しの傷を引っ提げてか?馬鹿じゃねぇの」

( #・∀・)「ばい菌入っておっ死ねクソ野郎!」


メ、ル、ド、いかにも馬鹿っぽい捨て台詞を吐いて、踵を返す。
けっこう真面目に思ったんだけど、あまり真実味がない。
でも本当に、死んだ方がいいんじゃないだろうか?僕は、彼を殺すべきじゃないだろうか?いや、殺さないといけないんじゃないかな?

感謝はしている。実のとこ好意もある。
たぶん、アニジャとだけ関わっていたら僕は彼をここまでは嫌わずにすんだ、あるいはもっと好きだった。
無駄な反芻だった。すでに過ぎ去ったことなのだから。

191名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 17:21:07 ID:lTCXD3GQ0

( ・∀・)「クーちゃん、アイツ大丈夫だよ
       全然死んでない。腕から血が出てるだけさ」

川 ゚ -゚)「そうか」

( ・∀・)「中に入る?どっか遊びにいく?」

川 ゚ -゚)「ん、待ってる」

( ・∀・)「そっか」

返されたコートを羽織る、暖かい。
サイズにゆとりがあるから、ついでにクーちゃんも入れておく。

(;・∀・)「うお!冷た!」

川 ゚ -゚)「私はあったかい」

座った階段はやっぱり冷たく、膝に乗せたクーちゃんも冷え切っていて
僕の体温はがんがん下がるけど、さっきまで胃のあたりが煮え立つほど熱かったから丁度よかったかもしれない。

( ・∀・)「クーちゃん、じっとしててね」

川 ゚ -゚)「うん?」

( ・∀・)「これをこう、こうして……」

( *・∀・)「出来た!」

∫*リ゚ -゚)「え?なんだ?何した?」

( *・∀・)「知りたい?」

∫*リ゚ -゚)「知りたい!」

192名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 17:29:46 ID:lTCXD3GQ0

∫*リ゚ -゚)「これはどうしたんだ?」

( ・∀・)「髪の毛につけたら可愛いと思って買ってきた」

∫*リ゚ -゚)「えー……」

( ・∀・)「な、なんだよ。ほんとにちゃんと買ったんだぞ」

∫*リ゚ -゚)「嘘だよ、ありがとう」

( *・∀・)「いいよ!」

∫*リ゚ -゚)「お前、他の事はぶきっちょなのにな」

( ・∀・)「髪を括る才能があるのかもしれない」


窓ガラスに映して見せるとクーちゃんは気に入ってくれたようで
頭を傾けて、様々な角度で眺めている。
本当は明日の朝に渡したかったんだけど、これだけ喜んでもらえたなら
時間なんて些細なことだと言えるだろう。

193名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 17:37:08 ID:lTCXD3GQ0
――

ひゅおおおんと風が細く唸る。隙間風は感じられないが、窓もドアもがったんごっとん音を立ててうるさい。
上体を起こす、暗闇に目が慣れるまで斜め下を向く。
じわじわと黒色が形を結び、やがてクーちゃんの寝顔になる。頬の丸い輪郭を枕で押しつぶしている。
そっと、ベッドを抜ける。突き刺すような冷気がたちまち足首を舐める。ドアを開ける。
くらやみが詰まった部屋、目を凝らせば、ソファのへりから古いが、良く手入れされているブーツが飛び出している。

体じゃなしに頭でやれば、足音ひとつ、物音ひとつ立てずに歩くことなど、造作もない。
足元の酒瓶を一つ掴む、未開封で液体の重さを感じる。
持ち上げる。瓶というものは握りやすい。
最近は酒屋で幾度となく瓶を掴んだからな、力の入れ方も過不足なくわかるんだ。
それはそうとして、750ミリリットルの液体で満たされた分厚いガラスは充分鈍器になると思わないか?

194名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 17:54:33 ID:lTCXD3GQ0
( ´_ゝ`)「やめてくれ、サラだぞ。
       そうでなくても床に飲ませる酒なんてない」

(;・∀・)「な、な」

( ´_ゝ`)「お前、人殺しに向いてるな。
       いや、でも決断が遅すぎるか。やめとけ、死ぬぞ」

(;・∀・)「じ、自分が死ぬ方だとは思わない?僕より君の方が強いって?」

( ´_ゝ`)「いや、お前の方が強いだろ。でも俺の方が慣れてる」

(;・∀・)「でも、さ、きみ、君も死ぬかもよ」

( ´_ゝ`)「そうだな、それでクーは明日、朝っぱらから男の死体を二つも片付けることになる。ひとりで
       クリスマスプレゼントにしてはデカイんじゃないか?」

( ・∀・)「そういうのって卑怯だ」

( ´_ゝ`)「馬鹿言え、卑怯じゃない人殺しなんて
       清貧な金貸しくらいありえない」

( ・∀・)「貞淑な娼婦みたいに?」

( ´_ゝ`)「それはいる」

( ・∀・)「マジかよ」

( ´_ゝ`)「そんなことはどうでもいいんだ。おれは出来るだけお前を殺したくはないが、
       おとなしく死んでやる気もない、それを置いてさっさと寝ろ」

( ・∀・)「そんだけ?」

( ´_ゝ`)「なにが」

( ・∀・)「僕さ、君を殺そうとしたんだぜ。僕のこと、見逃しちゃっていいの?」

( ´_ゝ`)「人のものを勝手に取り上げるのは泥棒だろ
       お前はクーのだし、おれは人殺ししかやりたくないんだ、面倒だからな。」

195名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 18:10:52 ID:lTCXD3GQ0
――



川*゚ワ゚)o「あっ!モララーくんだぁ!久しぶり!その帽子どうしたの」

( ・∀・)「誰?」





(;・∀・)「ごめんって、怒るなよぉ」
  _, ,_
川*゚з゚)o「べーつーにぃー?アタシ全然怒ってないもーん
      久々に会ったモララーくんがアタシのこと忘れちゃってたくらいじゃ怒ったりしないもーん
      モララーくんがアタシのこと忘れちゃうのなんて初めてでもないしぃ?」

(;・∀・)「怒ってんじゃん……
      違うんだって、忘れてたんじゃなくて髪の毛が違うからびっくりして……」
  _, ,_
川*゚з゚)o「ふぅぅーん」

(;・∀・)「ほら怒ってる!忘れるのだって、わざと忘れてるわけじゃないんだぜ」
  _, ,_
川*゚Д゚)o「怒ってないよーだ」

(;・∀・)「素直に言えばいいだろ!」

川*゚ -゚)o「ほんとに怒ってないもん、しょんぼりして拗ねてるだけだもん」

( ・∀・)「 」

( ・∀・)「ごめん」

川*゚ー゚)o「いいよ」

(;・∀・)「いいんだ」

196名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 18:15:36 ID:lTCXD3GQ0
( ・∀・)「なんで髪の毛変わってるの?」

川*゚ー゚)o「ん?みつあみの練習してるの
     最近ずぅっとしてるから癖がついちゃって」

( ・∀・)「君なら皆より二倍速で編めるね」

川*゚ー゚)o「ん、んんんー!四分の一速かな?新しい方の動かし方まだよくわかんないの
    、元の方の感覚と混ざっちゃうから、やになちゃうなー」

( ・∀・)「新しい?元の?」

川;゚ワ゚)o「腕だよ!腕だよモララーくん!見て!増えてるでしょ!」

(;・∀・)「ほんとだ!」

川;゚ー゚)o「そこは気が付こうよ!」

(;・∀・)「気づいてないわけじゃないよ!
       今日はいつもより可愛いと思ったんだ!」

川*゚ー゚)o「はぁ?」

(;・∀・)「う、嘘じゃないぞ!僕は嘘はつかない!
       君の腕は可愛いよ!だから増えるともっと可愛いんだ」

川*゚ー゚)o「あはっ!モララーくんのドへたくそなサムイ口説きが出た!」

( ・∀・)「ちゃかすなよ、僕は真面目に言ってるんだぜ」

197名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 18:30:00 ID:lTCXD3GQ0
川*゚ー゚)o「えいっ!」

(;・∀・)「あっ」


疑いを晴らそうと躍起になって言葉を考えていたせいで
彼女の腕の、のったりした動きにも反応できなかった。
気が付いたときには既に、四本の腕が引きずりおろすようにして僕の被っていた帽子を頭から払い落とした。


l从・∀・;ノ!リ人「か、かえせよぉ!!!」

川*゚ー゚)o「わっ!モララーくん髪の毛のびたねぇ!」

(;・∀・)「うう、君がとったら帽子を被った意味がなくなるだろ
       僕、今回これをご褒美にしたんだぜ……」

川*゚ー゚)o「なんで?明後日には散髪だよ?」

(;・∀・)「だって、こんな、何かおんなの子みたいだろ……
       坊主の方がマシだ……君には、君にだけは見られたくなかった」

川*゚ー゚)o「見ちゃってごめんね」

( ・∀・)「まったくだよ」


僕は髪が早く伸びる。髪だけじゃなくて爪も早く伸びる。
体温も高い。代謝の問題らしい。あまり関心のないことだ。
でも髪の毛はいけない。僕には妹がいる、いた?どっちでもいいけど
とにかく僕と妹の顔というのは本当にそっくり、瓜二つで。年齢と性別によって違いがあるほかは同じで。
僕が髪を伸ばすと成長した妹のようになるし、妹が髪を切れば小さい僕になるだろう。
今まで、別に気にしたことはなかったのに不思議なものだ。
帽子をもらうために、僕は自分の臓器の色を観察したけれど正直な所
色がどうとか、形がどうとかそんなことより、果たして帽子伸びたは髪の毛をきちんと収めてくれるだろうか?
ということが気がかりでしょうがなかった。
たった今、僕の頑張りは意味のないものになっちゃったけどな!

198名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 18:31:07 ID:xUj8P7CU0
支援

199名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 18:37:32 ID:lTCXD3GQ0

( ・∀・)「君は髪の毛のびないね」

川*゚ー゚)o「やっぱり、左も切っちゃったほうがいいかな?
     えへへ みっともないもんね」

( ・∀・)「なんで?そのままにしとこうよもう伸びないんだろ?
       長いの可愛いよ、バランスは、すごく悪いけど……」

川*゚ー゚)o「アタシね、髪の毛はすごくきれいだったんだよ。
     もう色も抜けちゃったし、信じられないかもしれないけど
     青っぽいブルネットでね、ほんとに、きれいだったの」

( ・∀・)「麦畑を見に行こう。秋がいい。バッタがすごく多いけど……絶対に秋が良い。
       君の、かみのけみたいな色をしてる。夕日にあたるときれいだよ」

川*゚ー゚)o「モララー君の話は唐突だし脈絡がないねぇ
     それに現実的じゃないよ」

( ・∀・)「しっかりと現実だよ。言っただろ物覚えには自信がある。
       それに、元気なゾンビより現実的でないことなんて、そうそうないったあ!禿げたらどうする!!」

200名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 18:55:15 ID:lTCXD3GQ0
( ・∀・)「ねぇ、座ってるの飽きた。僕にもやらせてよ」

川*゚ー゚)o「やだーモララーくん、ぶきっちょだもん」

( ・∀・)「じゃあ次のご褒美にウィッグを頼むよ
       毎日練習する。それで一番に君の髪の毛を結ぶ。約束」

川*゚ー゚)o「あなたはまたご褒美を無駄遣いするんだから……いいよ、約束ね」


川*゚ー゚)o「嘘ついたらサブミッションきーめる!指切った!」

( ・∀・)「ふふ、サブでもメインでもなんでもキメていいよ、僕は嘘つかないから」

川*゚ー゚)o「モララーくんの大口叩き」

( ・∀・)「大口ついでに、念を押すけど本当に麦畑行こうね。バッタ対策に君はピンクのリボンを付けるんだ
       ピンクと緑なら補色でバランスがいいし、君は可愛いからピンクのリボンが似合うと思う」

川*゚ー゚)o「モララーくん、可愛いとピンクとリボンをひとまとめにするなんて発想が貧層だよ」


そうっと囁く声が耳のそばを通り過ぎる。麦穂の間を抜ける風の音だ。
窓から差し込む夕日にあたって、彼女の笑顔はいっそう眩しい。

夕焼けに染まる麦畑を見せたいと思う。
ちょうど今の彼女の髪のような見惚れる美しさを知れば、もう髪を切ろうなんて言いだせないはずだ。
彼女は嘘だと思っているらしいけど、僕は嘘をつかないんだ。



――

201名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 18:56:53 ID:lTCXD3GQ0
今回は終わりメリークリスマス

202名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 19:20:10 ID:dgQEpm7Q0


203名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 19:22:02 ID:fJvJ9Gt.0
おつおつ!

204名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 19:22:11 ID:pckAmeck0

語り口がすごく好み
次も待ってるよ

205名も無きAAのようです:2013/12/25(水) 19:27:24 ID:xUj8P7CU0

良い文章だ

206名も無きAAのようです:2014/02/19(水) 22:45:11 ID:2TTtiAkc0
まだかな

207名も無きAAのようです:2014/02/22(土) 11:50:35 ID:GYaC/V/Y0
まだかなage

208名も無きAAのようです:2014/04/11(金) 23:54:34 ID:s0vLiuTA0
裸が楽になる季節だからまだまだ待てるな

209名も無きAAのようです:2014/06/12(木) 19:53:07 ID:6IRg4xFU0
待ってる

210名も無きAAのようです:2014/06/22(日) 05:55:11 ID:iDHoMjMs0
うおーい

211名も無きAAのようです:2014/08/21(木) 22:04:11 ID:Gmqc7sLw0
今更読んだ、続き来てたのか
イギリスの生活ってなんでこうかっこいいんだろうな、食事とかスラングとか
次も楽しみに待っとくわ

212名も無きAAのようです:2014/12/19(金) 19:48:59 ID:.gZ15YsQ0
待ってる

213名も無きAAのようです:2015/06/25(木) 18:22:23 ID:x2vx14qM0
続き気になる

214名も無きAAのようです:2015/10/12(月) 00:42:57 ID:YZbZpDzE0
まだかな

215名も無きAAのようです:2016/01/02(土) 15:56:36 ID:7HNtDEsI0
まだかなーー

216名も無きAAのようです:2016/06/02(木) 19:12:40 ID:uiQL.qHE0
待ってるからな

217名も無きAAのようです:2016/09/23(金) 16:53:08 ID:DcKbEMNc0
まってる

218名も無きAAのようです:2018/10/18(木) 05:22:24 ID:i6Rd06H20
待ってるよ

219名も無きAAのようです:2019/01/20(日) 01:40:56 ID:iM49s4MI0
まだ待ってるよー

220名も無きAAのようです:2019/01/27(日) 23:49:41 ID:AeTUxCBk0
今年も待つぞ〜〜

221名も無きAAのようです:2019/04/07(日) 21:22:12 ID:8JuXTPRs0
平成終わるけど待つよ

222名も無きAAのようです:2021/04/29(木) 15:11:53 ID:EloHx5ME0
令和でも待つよ

223名も無きAAのようです:2021/06/30(水) 20:43:09 ID:qAnLsSBc0
待ってるからな


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