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( ^ω^)はペルソナ能力を与えられたようです

1 ◆iAiA/QCRIM:2011/10/31(月) 21:25:21 ID:UvGid7pw0
どうしようかなーと考えた結果短いけど投下します

90 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:12:51 ID:Lre2WSNQ0
 
(´・ω・`)「単純に力が暴走しただけなのかも知れないけど……」
 
(´・ω・`)「ツンが切っ掛けになったのは、間違いない気がするんだ」
 
 確証は皆無。
 彼は己の予感だけでそう言っている。
 
('A`)「まぁ……不思議な箱だしな……」
 
 だが、実際にそう言われると、たしかにこの箱ならば或いは、と思わされる。
 
ξ゚⊿゚)ξ「……で……」
 
ミセ*゚−゚)リ「ツンさん?」
 
ξ゚⊿゚)ξ「……まるで……」
 
ξ゚⊿゚)ξ「エクストを倒したいっていう、願いを叶えてくれたみたい……」
 
ミセ*゚−゚)リ「!!」
 
(´・ω・`)(そうか……そういう考え方も……)
 
川 ゚ -゚)「……それが本当だとしたら……」
 
ξ;゚⊿゚)ξ「え、いや、ただそんな気がしただけで……」
 
(´・ω・`)「試してみよう」
 
 直後、視線が一斉にショボンに集う。

91 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:14:50 ID:Lre2WSNQ0
 
(;^ω^)「危なくないかお……?」
 
 驚きと憂慮を含めた顔をするのは、そう言ったブーン以外の者たちも同じだ。
 “見た”だけで心を握られたような感覚を受け、実際に意識を奪われた。
 そんなものに“触れる”というのだから、彼らの表情はもっともだ。
 
 しかし、ただ一人。
 ショボンと同じ無表情の者がいる。
 
ミセ*゚−゚)リ「試してみる価値はあると思います」
 
 ミセリだった。
 
川 ゚ -゚)「……大丈夫なのか?」
 
ミセ*゚−゚)リ「わかりません」
  _
(;゚∀゚)「わかりませんって……」
 
(´・ω・`)「多分大丈夫だよ」
 
(;'A`)「多分って……」
 
ミセ*゚ー゚)リ「ツンさんが大丈夫でしたから」
 
ξ;゚⊿゚)ξ「それはそうですけど……」
 
ミセ*゚ー゚)リ「ただし、試すのは私です」
  _
(;゚∀゚)「ッ!? いやいや、危ないって! 俺がやる!」

92 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:15:56 ID:Lre2WSNQ0
 
ミセ*゚ー゚)リ「それはダメです」
  _
(;゚∀゚)「ミセリさんもダメだって!」
 
ミセ*゚−゚)リ「ジョルジュさん」
 
 笑みを消し、ジョルジュを正面から見据えて、
 
ミセ*゚−゚)リ「もし、万が一またあの闇に取り込まれることがあったら……
      私たちでは助けられません」
 
(´・ω・`)(…………)
  _
(;゚∀゚)「それはミセリさんでも同じ……」
 
ミセ*゚−゚)リ「いえ、私はあの闇から抜け出しましたから、同じことが起きても大丈夫です」
 
 でも、と言い、
 
ミセ*゚−゚)リ「自分の力で抜け出せない方では、ダメです」
 
 彼女の言葉と視線が、ジョルジュの体を射抜いていった。
 彼女らしからぬ台詞に、ジョルジュは何も言えなくなってしまっている。
 
川 ゚ -゚)(ハッキリ言うな……)
 
(´・ω・`)(多分……僕らにも向けて言ってるんだ……)
 
('A`)(俺たちは実力不足、ってことか……)

93 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:21:01 ID:Lre2WSNQ0
 
ミセ*゚−゚)リ「……だから」
 
 次は、笑顔で、
 
ミセ*゚ー゚)リ「皆さん、乗り越えて下さい」
 
 何を、とは言わなかった。
 ミセリは気付いている。
 自分が悪夢を見せられたように、ジョルジュらも同じ悪夢を見たのだと。
 
川 ゚ -゚)(…………)
 
 ミセリは知っている。
 乗り越えた先で得られるものを。
 彼女もモナーの意思を理解し、ブーンらの成長を望んでいるのだ。
 
 そして、彼女は気づいていない。
 モナーの期待は、ミセリ自身にもかかっているということに。
 
 共にブーンらを導く為、ではなく。
 ミセリの“力”にも、モナーは大きな期待を寄せている。
 しかし、彼はその気配を決して掴ませない。
 
 “藤堂美芹”という少女の事を、よく理解しているからだ。
 
 彼女はモナーに絶大な信頼を寄せている。
 もし、美芹の成長を望んでいる事を知られてしまえば、、
 彼女は全身全霊を以てそれに応えようとしてしまう。
 
 それではいけない。伸び代を殺してしまう。
 “才”は誰かの為にではなく、自分の為に使うものだ。
 それが、モナーが美芹に求めているものだった。

94 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:23:59 ID:Lre2WSNQ0
 
 現に、
 
ミセ*゚−゚)リ「……」
 
 彼女は今、布に包まれた黒きトラペゾヘドロンを手に取り、皆の先頭に立っている。
 モナーの思想、ブーンらの道を創るという目的の為に。
 
 期待されている、と認識してしまえば、より率先してこういった行動を取ることになる。
 あくまで推測であるのだが、モナーは確信し、同時に危惧している。
 それが、全てだった。
 
 気丈に振舞ってはいる、が、彼女もまだ少女なのだ。
 乗り越えなくてはいけないものが、美芹にもある。
 
 勿論、彼らも。
 
(´・ω・`)(…………)
  _
( ゚∀゚)(…………)
 
('A`)(…………)
 
川 ゚ -゚)(…………)
 
 闇の中で再現された悪夢が、胸懐に根を張るトラウマを引き出した。
 乗り越えろ、と美芹は言っていたのだが、具体的にどうすることで克服できるのか、
 それが彼らにはわからない。
 
 ここ数日はともかく、今までごく普通に生活を送っていたのだから、
 ある意味、既に乗り越えているのではないのか、という解釈もできる。
 だが、それで良しとするならば、美芹は乗り越えろなどと言わない。

95 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:25:03 ID:Lre2WSNQ0
 
 今は、解らずとも良いのだ。
 いずれその時が、やってくるのだから。
 
 ただ────
 
( ^ω^)「ところで、どうやってそれを使うんだお?」
 
 ────ブーンだけは、あの中で悪夢を見ていない。
 
ミセ*゚−゚)リ「わかりません……。ですが、ツンさんの話を聞いた限りでは……」
 
ミセ*゚ー゚)リ「なんとなく、予想がつきます」
 
ξ;゚⊿゚)ξ「どうするんだろう……?」
 
ミセ*゚ー゚)リ「言ってみれば、“念じる”、でしょうか」
 
 強き願いを込め、箱に呼びかけること。
 噛み砕いて言えば、美芹の一言で納まる。
 
 そして彼女の予想は、的を射ている。
 エクストも、ダイオードも、デレも、同じ手法を用いて箱を使っていた。
 
( ^ω^)「何をお願いするんだお?」
 
ミセ*゚ー゚)リ「そうですね……」
 
ミセ*゚ー゚)リ「“高岡さんの場所まで連れて行け”、というのはどうでしょう?」
  _
( ゚∀゚)「そういえばハインを助けにきてたんだった……」

96 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:26:10 ID:Lre2WSNQ0
 
ミセ;゚−゚)リ「ジョルジュさん……」
  _
(;゚∀゚)「いやほら、色々あったし……」
 
(´・ω・`)「僕もそれでいいと思います」
 
('A`)「もっと大きなことでもいいんじゃないか? VIPを潰せとか……」
 
( ^ω^)「せっかくだし、試してみるのもいいと思うお」
 
(´・ω・`)「いや、それは多分無理だと思う」
 
('A`)「? なんでだ?」
 
 ショボンがドクオを見て、
 
(´・ω・`)「エクストが僕らに……精神攻撃という回りくどいことをしたからさ」
  _
( ゚∀゚)「それが?」
 
(´・ω・`)「僕らを消すつもりなら、それこそ“消せ”とか“殺せ”で済む話でしょ」
 
(´・ω・`)「でもそれをしなかった。他に理由があるかもしれないけど、
      多分、箱でできることに何かしらの制限があるんだと思う」
 
('A`)「なるほど……」
 
(´・ω・`)「だから移動だけなら丁度いいと思う。目的でもあるんだし」
 
(´・ω・`)「それに、箱はVIPが作った物だから。
      自分たちに不都合なことを叶えさせるようにできてない、とも思う」

97 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:28:46 ID:Lre2WSNQ0
 
川 ゚ -゚)「それなら、私たちがハインを助けるのも不都合にならないか?」
 
(´・ω・`)「……どうだろうね」
 
 必ずしもそうではない、とショボンは考えている。
 前回と今回の侵入、防ごうと思えばいくらでもできたはずだ。
 それこそ、入り口のエレベーターを止めるだけで事は済む。
 
(´・ω・`)(敢えて僕らが侵入しやすいようにしてあった。そう思えてならない)
 
川 ゚ -゚)「……?」
 
(´・ω・`)(まるで、僕らを使って何かを試すように……)
 
 試す対象が“箱”なのか、“自分たち”なのか、どちらかはわからないが、
 
(´・ω・`)(僕らだとしたら……ハインさんを救出しても、不都合ということにはならない)
 
 この状況を潜り抜けることができるかどうか、を試しているとしたら。
 可能であれ不可能であれ、VIPにとって計算内と言うことだ。
 
(´・ω・`)「まぁ、試す価値はあるでしょ?」
 
川 ゚ -゚)「……そうだな」
 
ミセ*゚ー゚)リ「では皆さん、私の周りに集まって下さい」
 
 美芹の指示に、ブーンらは素直に応じる。
 彼女に近づく、つまり箱に近づくという行為に、少しの躊躇いを見せつつも、
 美芹を中心にした円陣が、組みあがった。

98 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:29:50 ID:Lre2WSNQ0
 
ミセ*゚ー゚)リ「念の為に、私に触れていて下さい」
 
 言われ、白衣の袖、肩に各々が手を伸ばす。
 彼女の正面に立つ、
  _
(;゚∀゚)(えーと……)
 
 ジョルジュは、なかなか手が伸びない。
 
ミセ*゚−゚)リ「ジョルジュさん?」
  _
(;゚∀゚)「いや、どこに触ろうかなって」
 
川 ゚ -゚)「言い方に問題があると思う」
 
ξ゚⊿゚)ξ「おまわりさんこいつです」
  _
(;゚∀゚)「いやまて、断じて誤解だ」
 
ミセ*゚ー゚)リ(……?)
 
川 ゚ -゚)「ジョルジュ、私と代われ。私がそこに立とう」
  _
(;゚∀゚)「だから! 変な考えはねーって!」
 
ミセ*゚−゚)リ(変な?)
 
ξ゚⊿゚)ξ「すけべ。」
 
ミセ*゚−゚)リ「……あ」
  _
( ゚∀゚)「へっ?」
 
ミセ*///)リ「ぅ……」

99 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:31:32 ID:Lre2WSNQ0
 
 擬音が見えそうな程に分かりやすく、美芹が顔を赤く染めていく。
 それを見てジョルジュは思考停止に陥ったのだが、
 
(´・ω・`)「もうちょっとこう……緊張感をさ……」
 
ミセ;゚−゚)リ(……はっ)
 
 ショボンの声に、美芹が正気に戻った。
 
ミセ*゚−゚)リ「んっ! んっ!」
 
 似合わぬ咳払いをし、
 
ミセ*゚−゚)リ「さぁ、行きましょう。ハインさんを助けないと」
  _
( ゚∀゚)「あっ」
 
 無表情で、ジョルジュの手を掴んだ。
 ジョルジュは固まったままであった。
 
ミセ*゚−゚)リ「皆さん、目を閉じて下さい。箱を見ないように……」
 
 誰もが、箱への興味より恐怖の方が勝っている。
 ショボンも辛うじてだが、そうだ。
 美芹以外の全員が、目を閉じた。
 
ミセ*゚−゚)リ「────いきます」
 
 そして、美芹自身も目を閉じた。
 右手に佇む黒き箱は、もう布に覆われていない。

100 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:33:39 ID:Lre2WSNQ0
 
ミセ* − )リ(私たちを……高岡さんの所へ……!)
 
 強く、強く念じる。
 ハインリッヒの顔を思い浮かべ、この人物の元へ、頼む、と。
 箱に変化は、見られない。
 
ミセ* − )リ(……お願い……!)
 
 更に願いを込め、強固に、心で叫びを上げる。
 
ミセ* − )リ(────……)
 
 そのまま一分が過ぎ、二分が過ぎた。
 瞑想を日常的に行なっている彼女には、苦ではない。
 だが、ペルソナを除き一般人であるブーンらには、とてつもなく長い時間に感じられていた。
 
( -ω-)(まだかお……? やっぱり無理なんじゃ……)
 
(-A-)(……そう都合よくいかないよな)
 
 そうなると生まれるのが雑念だ。
 もとより肯定的であったショボンですら、
 上手くいかないかも知れないという懐疑が心の隅にある。
 
ミセ; − )リ(…………)
 
 美芹には、雑念も疑念もない。
 しかし、何も起こらない。
 
 たっぷりと三分が過ぎた頃。
 
 それが、突然訪れた。

101 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:35:10 ID:Lre2WSNQ0
 
(;^ω^)「なッ!?」
 
(;'A`)「……地震か!?」
 
 大きな縦揺れが、部屋全体を通過していった。
 皆一斉に目を開き、周囲を見渡している。
 
(;´・ω・`)「いや……地震にしては短すぎる……」
 
川;゚ -゚)「瞬間的な……振動? どこかで爆発でも……」
 
(;´・ω・`)「……そうだと思う。ひょっとしたら、モナーさんが何かを……」
 
 ショボンの言葉はあくまで、推測だ。
 だが、
 
ミセ* − )リ「皆さんッ!! 私に捕まって下さいッッ!!」
  _
(;゚∀゚)「ッ!?」
 
 美芹は、確信している。
 今の揺れはモナーに関係しており、しかも、彼が危機に陥っているということを。
  _
(;゚∀゚)「ミセリさん……?」
 
 彼女はジョルジュの手を強く握り締めている。
 ジョルジュの問いかけは、美芹の耳に入ろうとも、意識の中までは到達しなかった。
 
 ──それよりも、そんなことよりも……!
 
 ただ、モナーの元へ。
 今の美芹は、そのためだけに生きているようなものだ。

102 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:37:59 ID:Lre2WSNQ0
 
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
 
 周囲の者たちも、美芹の尋常ならざる様子に何も言えず、白衣を掴む。
 三分間、ハインリッヒの元へと、ひたすら願い続けた。
 されど、成就することは、なかった。
 
 彼らの予想は確かに的を射ている。
 箱に念ずれば、有り得ぬ事象を起こすことができる。
 エクストもそうやって、箱の力を使用していた。
 
 それでは何故、美芹の呼び掛けに応えなかったのであろうか。
 ブーンらの雑念が邪魔をしたから。他に特殊な道具が必要だから。
 そのどれもが、当てはまらない。
 
ミセ; − )リ(モナー様……!)
 
 答えは、単純だ。
 純粋に、思いの強さが足りなかっただけであった。
 
(;´-ω-)(……!)
 
川;- -)(体が……軽く……)
 
 発動しなかった原因を知れば、美芹はハインリッヒに謝罪するだろう。
 だが今、彼女にそんな余裕はなく、今後それを知るすべもない。
 
 例え無意識下であっても、箱を否定していては力は発動し得ないのだ。
 まさに、“信仰”するに等しい、“純粋”さで以て箱に願わなければならない。
 
 美芹が寄せる、モナーへの信頼ならば、

103 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:39:35 ID:Lre2WSNQ0
 
ξ;-⊿-)ξ(この感じ……フィレモンの空間に移動する時と、似てる……)
 
(;-ω-)(まさか……ほんとに……)
 
 
 黒きトラペゾヘドロンを使用するに────
 
 
ミセ*゚−゚)リ(モナー様……今、往きます!!)
 
 
 ────値、する。
 
 
 黒き箱に浮かぶ光沢が、全体を覆うようにして一周、駆けた。
 一同の影が、光の進行方向を完全に無視して、歪に伸びていく。
 やがて、今度は垂直に立ち上がり、ブーンらを囲むように渦を巻いていった。
 
 真横から見れば竜巻、真上から見れば黒い円に見えるだろう。
 それが急速に細くなり、範囲を狭めていく。
 
 そして、竜巻が糸に、円が点になった時。
 
 ブーンらの姿は、消え去っていた。
 残るのは微かに漂う黒の粒子。
 エクストを閉じ込めた闇の球体も、そのままだ。
 
 
 美芹の願いは、叶えられた。

104 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:41:42 ID:Lre2WSNQ0
 

 
 暗転と浮遊感が終わり、地に足が着く感触。
 未だ視界に闇が広がっているのは、眼を閉じているからだ。
 黒き箱での移動が、終わりを告げた。
 
 頭がそう理解した時、一同はようやく目を開ける。
 
 飛び込んだ、景色。
 
<:::゚::::゚>
 
 漆黒の体に四対八翼を加えた、魔王アザゼル。
 相変わらず黒衣に包まれているが、今は真紅の瞳が現れている。
 
(;´・ω・`)「……!?」
 
 だが、アザゼルのことなど、彼らにはどうでもよかった。
 
(;'A`)「あ……」
 
 何故、そこに。
 
川;゚ -゚)「アザピー……先生……?」
 
 
(-@∀@)
 
 
 アサピーがいるのか。

105 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:43:46 ID:Lre2WSNQ0
 
 そして。
 
 
<:::゚::::゚>
 
 
 アザゼルが、赤黒い腕一つで、持ち上げているもの。
 
 
(  ∀ )
 
 
ミセ;゚Д゚)リ「モナー様ッッ!!」
 
 喉を捕まれ、四肢は力なく垂れ下がっている。
 
<:::゚::::゚>「ほう……エクストから逃れたか……」
  _
(#゚∀゚)「てめェッッ! 何してやがる!!」
 
 ジョルジュ、いや、ショボンらもこの悪魔がアザゼルだと気づいていない。
 美芹、ジョルジュはこの状況に激昂しているが、他の者たちは動揺が勝っている。
 何故、モナーが危機に陥っているのに、アサピーは何もしようとしていないのか、と。
 
ミセ# Д )リ「その手を……」
 
 
ミセ#゚Д゚)リ『離せッッッ!!』
 
 
(;^ω^)「ッ!?」

106 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:45:30 ID:Lre2WSNQ0
 
 猛る怒りと共に、美芹のペルソナが発動する。
 
<:::゚::::゚>「ほう……」
 
ξ;゚⊿゚)ξ「ミセリ……さん……!?」
 
 現れたペルソナは、サラスヴァティーではなかった。
 紫の霞がかかり、シルエットも揺らいでいる。
 召喚は実に、不完全だった。
 
ミセ#゚Д゚)リ『ザンダインッッ!!』
 
 厭わず、紡ぐ。
 普段の冷静さなど、どこにも見当たらない。
 
<:::゚::::゚>「……!」
 
 憤怒の衝撃波が、アザゼルに迫る。
 対象に衝撃の塊をぶつけるザン系の中でも、対単体に於いて最強を誇る言霊だ。
 アザゼルはそれを、
 
<:::゚::::゚>
 
 空いている左手で難なく受け止め、握り潰した。
 美芹の一撃は、本来の力よりもやはり、劣っている。
 だが、今の問題はそんなことではなかった。
 
ξ;゚⊿゚)ξ「ミセリさん!!」
 
 ツンだけが、それに気付いている。
 デレの時と、同じだと。

107 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:48:17 ID:Lre2WSNQ0
 
 感情に身を任せたまま、強力なペルソナを発動している。
 その先に待ち受ける、
 
ξ;゚⊿゚)ξ「ミセリさん!! それ以上はだめ!!」
 
ミセ#゚Д゚)リ『ペルソナッッ!!』
 
 ペルソナの、暴走。
 
 止めようとしているのは、ツンだけだ。
 他のものはむしろ、美芹が呼び起こした新しき力に高揚感すら覚えている。
  _
(#゚∀゚)『オルトロスッ!!』
 
 加えて、目に見えるモナーの危機に、便乗者が現れるのも必然であった。
 こうなってはツン一人の声など、美芹には届かない。
 今、彼女を止めることができるとすれば、モナー、ただ一人。
 
ミセ#゚Д゚)リ「……ッ!」
 
 それを、理解しているかのように、
 
<:::゚::::゚>「クハハ……! 我への怒り、なかなか良い物ではある……が」
 
 未だ掴み上げているモナーを、美芹との視線上に運ぶ。
 
<:::゚::::゚>「先の攻撃も、この男で受け止めることは出来たのだぞ?」
 
ミセ;゚−゚)リ「!」
 
<:::゚::::゚>「己の術がこいつに当たらぬとでも思ったか?
     それの不安定さを見れば、間違いなく影響があるだろうな」

108 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:50:03 ID:Lre2WSNQ0
  _
(#゚∀゚)「てめぇ……汚ねぇぞ!!」
 
<:::゚::::゚>「汚い? それをせずにわざわざ我自ら受け止めてやったのだ。
     感謝されるべきだと思うが?」
 
ミセ#゚−゚)リ「その手を……離せ……!」
 
<:::゚::::゚>「クハハ……貴様にとり、この男は余程大切だと見える」
 
 アザゼルの興味は美芹に移りつつある。
 新しい玩具を見つけたかのように、愉悦に瞳を歪ませて。
 
<:::゚::::゚>「……死に損ないでも、返して欲しいのか?」
 
ミセ# − )リ「────!!」
 
 また、感情に火が付く────直前。
 
 
( ´_ゝ`)「あぁ、返してもらおうか」
 
(´<_` )「俺たちもその男に用があるんでな」
 
 
 アサピーの両脇に並び立つ、流石兄弟。
 動かぬ男の喉元に、カストルが槍を、ポリュデウケースが大剣を添えている。
 
<:::゚::::゚>「…………」
 
( ´_ゝ`)「貴様としても、依り代であるこの男が死んだら困るんじゃないか?」
 
(´<_` )「完全な“顕現”ができていないな? まだ必要なんだろう?」

109 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:53:16 ID:Lre2WSNQ0
 
(;^ω^)「ちょ、あんたら先生殺す気かお!?」
 
( ´_ゝ`)「必要ならそうする」
 
(´・ω・`)「それはやめてくれ。というか、何故先生を……」
 
(´<_` )「説明は後だ。さぁ、どうする? 魔王よ」
 
 二人は本気だ。
 所長室を出る前とは、明らかに様子が違う。
 覚悟を決め、ここに立っているということだ。
 
 ブーンらは忘れているが、彼らはプロだ。流石であった。
 
<:::゚::::゚>「我を相手に人質交換の交渉か」
 
( ´_ゝ`)「わかっているなら早くして欲しいものだ」
 
<:::゚::::゚>「……クハハ。辛うじて威勢を搾り出している、という様にも見えるが?」
 
( ´_ゝ`)「そうか。お前の感想はどうでもいい」
 
(´<_` )「その男を返してもらおう」
 
 噛み合わぬ、挑発と要求。
 このまま魔王が言葉を続けても、流石兄弟は無言になるだけだろう。
 それを悟った、わけではないが、
 
<:::゚::::゚>「まぁ良い。我も中々に愉しめた」
 
 子どもが、興味を無くした玩具を投げ捨てるように。
 モナーを美芹に向けて、放り投げた。

110 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:55:11 ID:Lre2WSNQ0
 
(´・ω・`)「モナーさん!」
 
(;^ω^)「おっ」
  _
(;゚∀゚)「うおっっと!」
 
 慌て、三人が美芹の元へ駆け寄り、モナーを受け止める。
 彼の顔を間近で見たことにより、いくらか我を取り戻した美芹が、
 
ミセ;゚−゚)リ『メディラマ!!』
 
 治癒の言霊を、紡ぐ。サラスヴァティーは問題なく現れた。
 モナーの胸部には、大きな火傷が刻まれている。
 彼の意識を飛ばしたものは、この傷を生んだ攻撃が原因だろう。
 
<:::゚::::゚>「さて……」
 
( ´_ゝ`)「……」
 
<:::゚::::゚>「勝負は、貴様たちの勝利だ。我は身を引こう」
 
( ´_ゝ`)(……やけに潔いな……)
 
(´<_` )(そちらの方が好都合、だが……)
 
<:::゚::::゚>「……その前に」
 
 魔王の瞳は、モナーに治癒を施している美芹に向いている。
 正確には、少し違った。
 
<:::゚::::゚>「箱は、返してもらおう」

111 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:56:56 ID:Lre2WSNQ0
 
(´・ω・`)「ッ!」
 
 モナーを見た時、美芹の手から零れ落ちていた箱。
 それが、一瞬でアザゼルの手の中へと移動した。
 同時に、
 
(; ´_ゝ`)「なっ……!?」
 
 アサピーも、アザゼルの脇に立っていた。
 
<:::゚::::゚>「人如きが、我と等価契約を交えられると思うな」
 
(´<_` ;)(……いつでも退避させられたということか……)
 
(; ´_ゝ`)(ならばなぜ、それをしなかった……)
 
 ともあれ、これで事が納まるのなら。
 流石兄弟がそう思った矢先だった。
  _
(#゚∀゚)「おい……」
 
<:::゚::::゚>「……」
  _
(#゚∀゚)「モナーさんにここまでして……帰れると思ってるのかよ」
 
<:::゚::::゚>「それは違うな。我が貴様たちを見逃してやるのだ」
  _
(# ∀ )「……」
 
(; ´_ゝ`)「おい! やめろ小僧!」
 
 若さ故、未熟故、ジョルジュが矛を納めることなど、出来はしない。

112 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:58:36 ID:Lre2WSNQ0
 
从#゚∀从「ジョルジュッッ!!」
 
 叫びと、乾いた音が広間に反響した。
 ジョルジュの頭にのみ、耳鳴りが粘り付いている。
 いつの間にか、ハインリッヒがジョルジュの真正面に立っていた。
 
 そして、第一声と同時に平打ちを見舞ったのだ。
  _
(#゚∀゚)「……ッ! なにしやが……」
 
从#゚∀从「黙ってろボケナス!! モナーの戦いも無駄にする気かよ!?」
  _
(;゚∀゚)「な……どういう」
 
从#゚∀从「どうもこうもねぇ!! ガキはすっこんでろ!!」
  _
(;゚∀゚)「……」
 
 矛は仕舞われぬまま、ハインリッヒに叩き折られた。
 胸をなで下ろしたのは流石兄弟だ。
 
(´・ω・`)(何故……アザピー先生があそこに……)
 
(´・ω・`)(まさか……ペルソナ……!?)
 
ξ;゚⊿゚)ξ(そんな……先生もデレと同じ様に……)
 
 謎を、残して。
 
<:::゚::::゚>「それでいい。いつまでも舞台に縋るのは……滑稽と言えよう」
 
<:::゚::::゚>「期はまた、いずれ訪れる。その時まで、精々足掻いていろ」

113 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 21:59:54 ID:Lre2WSNQ0
 
 虚無を残し、虚無へと消える。
 箱と、アサピーと共に、魔王アザゼルは消え去った。
 
 流石兄弟がショボンらに近づき、モナーの様子を窺いつつ、
 
( ´_ゝ`)「おい、お前ら」
 
(´・ω・`)「はい?」
 
( ´_ゝ`)「どうやってここにきた? エクストはあのままか?」
 
(´・ω・`)「まるで見ていたような言い方ですね」
 
( ´_ゝ`)「見てたさ。監視カメラを使ってな」
 
(´・ω・`)「そうですか。それなら、エクストは見ていた通りあのままです」
 
(´・ω・`)「ここに来たのは……エクストが持っていた、箱の力です」
 
( ´_ゝ`)「箱……?」
 
(´・ω・`)「知らないですか?」
 
( ´_ゝ`)「知らんな」
 
(´・ω・`)「そうですか」
 
从 ゚∀从「……あの黒い箱か」
 
( ´_ゝ`)「知っているのか?」
 
从 ゚∀从「詳しくは……アタシも、エクストが持ってたのを見ただけだ」

114 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:02:05 ID:Lre2WSNQ0
 
(´<_` )「おい、神主は無事か?」
 
ミセ;゚−゚)リ「……傷は完治しました」
 
(´<_` )「そうか。呼吸はあるか?」
 
ミセ;゚−゚)リ「問題なく」
 
(´<_` )「わかった。まずはここから出るぞ」
 
ミセ;゚−゚)リ「あ……」
 
 出る、と言うと、弟者は即座にモナーを背に担ぎ上げた。
 美芹は未だ、普段のように振る舞えないでいる。
 今までに、モナーがこの様な事態に陥ったことがなかったからだ。
 
 どうして良いのか、わからずにいる。
 
从 ゚∀从「ミセリ、大丈夫だ。帰ったらアタシがちゃんと診てやる」
 
ミセ;゚−゚)リ「……はい」
 
 医者は専門じゃねーけどな、とハインリッヒは軽く笑う。
 一歩違えば不安がらせる言葉だったが、彼女の笑みは美芹に幾許かの安堵を与えた。
 唇を噛み、背負われたモナーの背を、じっと見つめていた。
 
( ´_ゝ`)「あれだけの振動と爆発音だ。セキュリティが作動しているかもしれん」
 
(;^ω^)「おっ……」
 
( ´_ゝ`)「急ぐぞ。幸い、ここから出口までは近い」

115 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:05:29 ID:Lre2WSNQ0
 

 
 先頭は兄者、最後尾にジョルジュの並びで、研究所内を駆ける。
 大広間を出て、ここまでは滞り無く進行できていた。
 直に侵入経路に使ったエレベーターが見えてくるだろう。
 
 全速力ではないが、駆けていることに違いはなく、その所為か誰も口を開かない。
 各々が頭の中で、この戦いで起きたことを整理していた。
 謎だらけはあるが、結果的にハインリッヒを救出できたのだから、良しと言えよう。
 
 現時点、では。
 
 間違いなく一同の中で最強である、モナーをここまで追い詰めた敵の出現。
 エクストにも、決して勝てたとは言えない。
 アザゼルが残した言葉通り、再び相まみえる時がやってくる。
 
 この、絶望的なまでの力量差を、如何にして覆すか。
 例え、謎を究明しようとも、今後の戦いを乗り越える力が足りない。
 
(´・ω・`)(……乗り越える……か)
 
('A`)(……もう、忘れてたつもりなんだが……)
  _
( ゚∀゚)(……兄ちゃん……)
 
 彼らは、乗り越えろと言われた。
 
 それでもし、強くなれるというのなら、
 
川 ゚ -゚)(……乗り越えてやろうじゃないか)
 
 やるしかない。それが彼らの望みでもあるのだから。

116 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:09:05 ID:Lre2WSNQ0
 
 漠然とだが、試練の端を掴んだ。
 ショボン、ジョルジュ、ドクオ、クー。
 ただ、どうすれば乗り越えることができるのかは、あまりに不確かだ。
 
 一方。
 
ξ゚⊿゚)ξ(……)
 
 一時の美芹と、アサピーに見た、既視感。
 いや、それは決して既視感などではなく、既視だ。
 
 “既”に、“視”ている。
 外見ではなく、内面的に変わり果てた親友の姿を。
 
 そして、闇の中で見せられた悪夢も、同じ。
 延々とデレに陵辱され続ける悪夢。
 何も出来ずに、ただ、ひたすらに。
 
 ツンはもう、知っている。
 乗り越えるべき試練も、どう乗り越えれば良いかも。
 
 今更彼女は、揺るがない。
 闇を打ち破ったことが、その証明だ。
 
ξ゚⊿゚)ξ(デレは……私が、必ず……!)
 
 彼女もまた、四人に洩れずそう誓う。
 その時こそ、彼らは望んだ力を手にするのだ。

117 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:11:02 ID:Lre2WSNQ0
 
( ´_ゝ`)「着いたぞ」
 
 侵入口に到達するや否や、
 
( ´_ゝ`)「俺が先に行こう。弟者は次だ。あと数人、一緒に来い」
 
 即座に指示を飛ばした。
 先行して様子を見てくるということだ。
  _
( ゚∀゚)「俺が行く」
 
(´・ω・`)「僕もいこう」
 
('A`)「……俺もだ」
 
川 ゚ -゚)「私もだ」
 
( ´_ゝ`)「いいだろう。いつでも戦えるようにしておけ」
 
 望むところだと言わんばかりに四人は頷き、上昇する床に乗る。
 最後に兄者が乗り、機器を操作した。
 
( ´_ゝ`)「弟者、任せたぞ」
 
(´<_` )「了解だ。気を付けろよ」
 
 そして、リフトが上昇していく。
 五名の姿が見えなくなり、底の見えない黒い穴だけになった。
 ややあって、誰かが一つ、息を吐いた。

118 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:15:53 ID:Lre2WSNQ0
 
ミセ;゚−゚)リ「モナー様……」
 
从 ゚∀从「ミセリ、モナーは大丈夫だ。ちゃんと呼吸も整ってる」
 
ミセ;゚−゚)リ「はい……」
 
从 ゚∀从「……帰ったら改めて言うが……すまなかった」
 
 視線はミセリと、ツン、そしてブーンに送られている。
 
ミセ;゚−゚)リ「……?」
 
从 ゚∀从「アタシを助けにきてくれたこと、感謝しているし申し訳なく思う」
 
ξ;゚⊿゚)ξ「そんな……申し訳ないなんて……」
 
从 ゚∀从「いや、充分に予測できた事態だ。勿論、回避する手段もあったはずだ」
 
从 ゚∀从「モナーたちに任せっぱなしで、自分の身も自分で守れないのに……」
 
从 ゚∀从「すまなかった。そして、ありがとう」
 
(;^ω^)「いや、僕らも必死だったし……」
 
ξ;゚⊿゚)ξ「気にしないで下さい……」
 
从 ゚∀从「……ありがとな。そうだ、君らがブーンとツンちゃんか?」
 
( ^ω^)「はいお。ブーンって呼ばれてますお」
 
ξ゚⊿゚)ξ「そうです。高岡さん……でしたよね?」

119 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:18:05 ID:Lre2WSNQ0
 
从 ゚∀从「ああ、そうだ。ジョルジュから二人のことは聞いてる」
 
从 ゚∀从「顔も知らないのに、ありがとう」
 
ξ;゚⊿゚)ξ「いえ、だからそんな……」
 
(´<_` )「感謝は受け取っておけ。それが礼儀ってものだ」
 
ξ;゚⊿゚)ξ「あ……はい」
 
(;^ω^)「お……」
 
 そこで会話は途切れた。
 少しの沈黙の後、弟者が闇を見つめながら、
 
(´<_` )「そうだ、これからのことだが……」
 
从 ゚∀从「あぁ、アタシもそれを考えてた」
 
(´<_` )「もう、あの神社にいるのは危険だろう」
 
(´<_` )「そこでだ。俺たちの隠れ家にこないか?」
 
ξ;゚⊿゚)ξ「え……」
 
(;^ω^)「……」
 
(´<_` )「まぁ、未成年のお前たちは家の都合もあるだろうが……」
 
从 ゚∀从「アタシは問題ねぇ。というか、そっちの方が助かる」

120 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:20:06 ID:Lre2WSNQ0
 
 ハインリッヒに同意を得られることは、弟者の予想済みだ。
 ブーンらが難しいことも、また同じ。
 
(´<_` )「……アンタは……それでも構わないか?」
 
ミセ;゚−゚)リ「……」
 
(´<_` )「そんな状態じゃない、か。まぁ、神主はひとまず連れていくぞ?」
 
ミセ;゚−゚)リ「……」
 
(´<_` )「アンタもこい。一人じゃ不安だろう」
 
从 ゚∀从「ミセリ、一緒に行こう。危険なのはわかるだろ?」
 
ミセ;゚−゚)リ「……はい」
 
 力なく、頷いた。
 
(´<_` )「恐らく、兄者もあいつらに同じことを話していると思う」
 
 上に何もなければな、と足して、言葉を終えた。
 隠れ家に匿うことを、弟者は兄者に話していない。
 だが、兄者も同じことを考えているであろうという推測の元、提案したのだ。
 
 見事に弟者の推測通り、兄者も同じことを考えていた。
 案に乗ったのはジョルジュとドクオの二名だけ。
 ショボンは家族の許可が必要だと言い、クーは妹のことを考え無理だと告げた。
 
 戦いが続こうとも、現実問題としてブーンらは未成年であり、家族がいるのだ。
 即答はできない、という答えに、流石兄弟は何も言わなかった。

121 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:23:42 ID:Lre2WSNQ0
 
 そして。
 
(´<_` )「どうやら、何もなかったようだな」
 
 下降し、定位置で停止したリフトを見て、言った。
 残っていた美芹、モナー以外の面々が顔を見合わせ、一つ頷いた後に、乗り込む。
 ハインリッヒが操作して、リフトは再び上昇し始めた。
 
 移動の間は、誰も口を開かなかった。
 流石兄弟の隠れ家の件で、思考することは増えたが、
 出口に近づくに連れ、疲弊が感じられるようになってきていたからだ。
 
 実際に死闘を演じたブーン、ツンなどは特に顕著だった。
 美芹はというと、じっとモナーを見つめ続けている。
 ペルソナでできることは全て終えた。だからこそ、不安なのだ。
 
 一刻も早く、どこかでモナーを横に寝かせたい。
 彼女が考えていることは、モナーの事ばかりだ。
 モナーの懸念。やはり、的を射ていたということか。
 
 
( ´_ゝ`)「よう。見ての通り、何もなかったぞ」
 
 入り口に着いた弟者らを、兄者が出迎えた。
 ショボンらは離れた場所で何やら会話している。
 ブーンとツンは彼らの元へ、弟者はモナーを背負ったまま、兄者に隠れ家の件を告げた。
 
 モナーが居るため、美芹は必然的に流石兄弟の側に残っている。
 会話も程々に、後で、と兄者が弟者に言うと、倉庫の出口に向かっていった。

122 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:27:32 ID:Lre2WSNQ0
 
( ´_ゝ`)「おい。帰るぞ。色々あるだろうが、まずは────」
 
 離れた場所にいるショボンらに言いながら歩き、扉に差し掛かった時だ。
 
( ´_ゝ`)「……お前ら、油断するな」
  _
( ゚∀゚)「敵か!?」
 
( ´_ゝ`)「そのようだ。しかも、かなりの大所帯のようだ」
 
 兄者が扉の向こうに、気配を感じた。
 不完全燃焼であるジョルジュ、ショボン、ドクオ、クーが、兄者の後方へ駆け寄る。
 いかにも、自分の出番だと言わんばかりだ。
 
(´<_` )「俺はこの通りだ。ブーンと、ツンだったな。頼むぞ」
 
( ^ω^)「わかったお」
 
ξ゚⊿゚)ξ「頑張ります!」
 
(´<_` )「高岡は俺から離れるな」
 
从 ゚∀从「……あぁ、すまねぇ」
 
 一同を一瞥した後、兄者が扉を開ける。
 開ける、などという生易しい行為ではなかった。
 ペルソナで以て、扉を豪快に吹き飛ばしていた。
 
( ´_ゝ`)(ん……?)

123 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:29:14 ID:Lre2WSNQ0
 
 不意打ち。
 待ち受ける敵たちに動揺が走る、と兄者は予測していた。
 しかし、喧騒は起こらないし、気配も動くことがない。
 
( ´_ゝ`)(…………)
 
 夜の下、佇む影たち。
 
( ■-■)
 
('A`)「あいつらは……」
 
( ´_ゝ`)「知ってるのか?」
 
(´・ω・`)「同じ姿をしていた連中と、少し戦いました」
 
( ´_ゝ`)「……人間か?」
 
(´・ω・`)「多分」
 
( ´_ゝ`)「……多分……ね」
 
 兄者が黒ずくめを一瞥する。
 
( ´_ゝ`)(ペルソナの波動は感じないが……)
 
 異様な雰囲気が、ただの人間でないことを知らせている。
 兄者は、ショボンらが動じないという点に、手こずるような相手ではないと判断した。
 だが、その数。
  _
( ゚∀゚)「……何人いるんだ?」
 
(´・ω・`)「ざっと五十人?」

124 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:31:06 ID:Lre2WSNQ0
 
( ´_ゝ`)「面倒だな……車は無事……」
 
 か、と言い終える、直前。
  _
( ゚∀゚)『オルトロス!』
 
 ジョルジュが、ペルソナを発動させる。
 猛る双頭の獣、オルトロスが現れた。
 力漲る牙を覗かせ、右の頭が大きく口を開き、
  _
( ゚∀゚)『ファイアブレス!!』
 
(; ´_ゝ`)「ッ!?」
 
 業火を、吐き出した。
 炎の波は、容赦なく黒ずくめたちを包み込んでいく。
 気でも狂ったか、と兄者がジョルジュに食いついた。
 
(´・ω・`)「心配ないですよ。殺してないです」
 
(; ´_ゝ`)「……どういうことだ?」
 
川 ゚ -゚)「どうやら彼らは、悪魔に憑依されているらしい」
 
川 ゚ -゚)「その悪魔だけを倒してやればいい、ということだ」
 
(; ´_ゝ`)「そ、そうか……」
 
 ──そんな器用な真似、いつの間にできるようになったんだ。
 その言葉は、心に留めておいた。

125 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:33:54 ID:Lre2WSNQ0
 
 躊躇わず攻撃したこともそうだったが、最も驚かされた要因は、オルトロスだ。
 
(; ´_ゝ`)(いつの間にあんな強力なペルソナを……)
 
 兄者が聞いた話によれば、彼らはペルソナ能力に目覚めてまだ数日しか経っていない。
 そのたった数日の間で、少なくともジョルジュが自身に匹敵する程の力を得ている事実。
 
 ショボンらの状況対応力もそうだ。
 とても最近まで普通の高校生だったとは、兄者には到底思うことができなかった。
 
(; ´_ゝ`)「……まぁいい、今のうちだ。急ぐぞ」
 
 ジョルジュが殿を務め、先頭を走る兄者が道を開く。
 オルトロスによって、既に黒ずくめの半数以上が戦闘不能に陥っていた。
 モナーを担ぐ弟者も、常人であるハインリッヒも問題なく車まで辿り着くことができた。
 
 兄者が懸念していた車への妨害は、
 
( ´_ゝ`)「……よし、エンジンはかかる。タイヤも無事だな」
 
 どういうわけか、何もされていなかった。
 モナーの車もそうだ。
 弟者がモナーの車に乗り込み、エンジンをかけていた。
 
从 ゚∀从「ジョルジュ! 乗れ!」
 
 兄者の車に乗り込んでいたハインリッヒが窓から身を乗り出し、叫んだ。
 黒ずくめたちはオルトロスの炎を前に、一歩踏み出すことすらも叶わない。
 頃合いだ、とジョルジュ自身も判断し、車へと駆けた。
 
( ´_ゝ`)「弟者! 例の場所だ!」
 
(´<_` )「了解だ!」

126 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:35:42 ID:Lre2WSNQ0
 
 ジョルジュの乗車を確認すると、兄者が車を発進させる。
 切り返したことを確認すると、弟者も同じ様に車を切り返し、後に続く。
 
从 ゚∀从「例の場所?」
 
( ´_ゝ`)「着けばわかる。隠れ家の前に、調べたいこともあるしな」
 
从 ゚∀从「……ふぅん」
 
( ´_ゝ`)「悪いが、家に送るのはその後だ。すまんな」
 
川 ゚ -゚)「……いや、大丈夫だ」
 
( ´_ゝ`)「弟者は……問題なさそうだな」
 
 バックミラーに、モナーの車、つまり弟者が運転している車が写っている。
 追手は、ないようだ。
 
 
 深き眠りについた街を、二台の車が走りゆく。
 夜は、未だ明けない。
 
 
 長い夜は、もう少しだけ、続くようだった。
 
 
 
                           続く。

127名も無きAAのようです:2011/11/27(日) 22:39:01 ID:ObyV/ZBk0
リアルタイム初遭遇!!乙でした!!
モナー無事…じゃないけど生きてて良かった…
次回も楽しみに待ってます

128 ◆iAiA/QCRIM:2011/11/27(日) 22:40:41 ID:Lre2WSNQ0
22話終わり
次に後日談みたいなのが入って、23話へ
次の投下(後日談)は15日を目標にしてみる

読んでくれた人ありがとう

129名も無きAAのようです:2011/11/27(日) 22:47:20 ID:3RGEjOZs0

やっぱ面白いよこれ

130名も無きAAのようです:2011/11/28(月) 00:56:25 ID:r4yhOJL6O

ショボンたちの過去が気になるぜ

131名も無きAAのようです:2011/11/28(月) 19:09:27 ID:gs7UvKDkO
すっかり忘れてたけどジョルジュかなりのパワーアップしたんだよな

132 ◆iAiA/QCRIM:2011/12/14(水) 23:57:17 ID:PQ1HJ1bY0
書き溜めは10レスを超えてて普通なら15日投下なんだけど、
今回は第何話とかいう区切りじゃなく後日談なので、書き上げてから投下します
レス数も今回の半分くらいなので、多分週末には投下出来るかも

それと、次回はVIPに投下します

133 ◆iAiA/QCRIM:2011/12/19(月) 00:07:05 ID:Vsx3I9Yo0
VIPでやりました
ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1324213691/

134名も無きAAのようです:2011/12/24(土) 21:51:14 ID:lvWN0wVU0
まとめがないなー、読めん

135 ◆iAiA/QCRIM:2011/12/25(日) 17:55:35 ID:hHkF/xrA0
>>134
暫定的に自サイトへUPしました

VIP投下分の23話
http://iaiapersona.web.fc2.com/persona/p23.html

136名も無きAAのようです:2011/12/25(日) 18:01:11 ID:46gVtY8g0


137名も無きAAのようです:2012/03/01(木) 16:08:51 ID:YOaY.2Rk0
続きは?

138名も無きAAのようです:2016/06/07(火) 12:50:09 ID:ZAAy5zRI0
無事打ち切られましたね

139名も無きAAのようです:2017/10/09(月) 01:53:21 ID:64/HVvlMO
舞ってる


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