したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

ヤンデレの小説を書こう!@避難所 Part07

866 ◆lSx6T.AFVo:2021/06/09(水) 16:39:03 ID:fDGdApDk
 ってなことを考えながら、おにぎりを食べ終えると、
「そういえば、〇〇くん。夏休みの宿題はどの程度まで進んでいますか」
「あのさぁ……食事中に夏休みの宿題の話はマナー違反だって、親に教わらなかった? ったく、これだから育ちの悪いやつは」
「どこの世界の行儀作法ですか。まあ……その様子だと全然進んでいないようですね」
「おいおい、一方的な決めつけはよくないな。クラス委員長たるもの、クラスメイトのことをもっと信用すべきではないかね?」
「信用していますよ。〇〇くんなら絶対に夏休みの宿題に手をつけていないってことを」
「マイナスの方の信頼だったかー」
 あちゃーと額に手をやると、彼は呆れたようにため息をつき、
「〇〇くん。提案なのですが、明日からは夏休みの宿題を持ってきてはどうでしょう」
「夏休みの宿題を? もしかして、夏期講習が終わった後に夏休みの宿題をやらせるような鬼畜の所業を……?」
「できれば、そうしたいところなんですけどね」
 フッと意味深な笑みを浮かべる近藤くん。マジでやりかねないから、変に行間を匂わせるのはやめて欲しい……明日から不登校になっちゃうぞ。
「やるのは放課後ではなく、夏期講習中にですよ。プリントの方も順調に進んでいますし、平行して夏休みの宿題に着手してもいい頃合いだと思いましてね」
「え、夏期講習中に夏休みの宿題をやってもいいの?」
「全く問題ないです。むしろ、夏期講習を夏休みの宿題をやる場として考えている子もいるくらいですよ。ちなみにですが、宿題をやる場合であっても、わからない点があれば挙手して訊いていただいて大丈夫です。おれと先生が教えに行きます」
「でも、二足の草鞋を履いていいのかな。夏期講習用のプリントと夏休みの宿題とじゃ混乱しちまいそうだな。どっちかに集中した方がいい気がするけど……」
「どうして、そこで謎の渋りを見せるのですか。別に、最終的には〇〇くんに任せますが……おれはもう嫌なんですよ。夏休み明けに、担任の先生と醜い攻防を繰り広げる様を見せつけられるのは」
 近藤くんとは、去年も同じクラスだったからな……九月一日が修羅場となるのをご存じらしい。なんなら、今年も夏休み前に名指しで牽制球投げられているからな。「今年こそはマジで頼むぞ」と全然笑っていない瞳で念押しされたっけか……。
 ふーむ。
 でも、これはチャンスではないか。
 どうせ、家でコツコツ夏休みの宿題をやるタイプではないのだ。この夏季講習という場の勢いを借りて、一気に終わらせてしまうのも手ではないか。
 というか、近藤くんの言う通り、これを断る理由が全然なかった。
 何も僕だって、好きで担任の先生とバトルしているわけではないのだ。僕もそろそろ中学生になるわけだし、悪童を卒業するタイミングが来たのかもしれない。
 というわけで、僕は近藤くんの提案を——
「いや、やっぱりやめとくよ」
 ——その直前で、断った。
 僕の回答を受けて、彼は露骨に顔をしかめている。またぞろ、僕が無意味な反抗をしていると思っているのだろう。
「いい加減にしてくださいよ。少なくとも〇〇くんの場合は、夏期講習用のプリントよりも夏休みの宿題の方が、断トツで優先度は高いでしょう」
「近藤くんの言っていることはわかるんだけどさ……ほら、まずは基礎をしっかりさせないと。せっかくプリントが着実に進んでいるんだから、一歩一歩、確実に階段を上がっていく必要があると思う。それにさ、僕がプリントと宿題の両方を同時にやれる器用さを持っていると思うかい?」
 自分の提案が断られて不満に感じるところはあるようだが、僕の言うことにも一理あるとは思ったのか、近藤くんは弁当箱のフタを閉めると、わかりましたと脱力してうなずく。
「〇〇くんが、そこまで言うのなら強制はしませんが……けど、宿題は家でしっかり進めておいてくださいね。アサガオの観察日記は、ちゃんとつけていますか」
「大丈夫。無駄に書かなくて済むように、もう枯らしておいたから」
 説教する気力すら失せてしまったようで、メガネの奥の瞳はひたすら軽蔑の色に染まっている。
 ……明日からの漢塾は大丈夫だよね? 師匠に対する尊敬の念は死滅してないよね? 授業をボイコットしたりしないよね?
 僕はハハハと乾いた笑みで誤魔化しながら、同じく弁当箱のフタを閉めたのだった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板