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異伝スレッド

3立憲王政アーカルソン=リペルニア:2016/02/13(土) 22:11:59
立憲王政アーカルソン=リペルニアの中興の祖、アン5世。
そのパトロンである悪魔アンゼロットは、しかしこの日、合同立憲王政の所領ではないとある場所にいた。
「ルーンラントに帰属が戻ってよかったですね」
アンゼロットの従者である(とミリティー本人は認識している)ミリティーは、押し黙るアンゼロットを心配して話しかける。アンゼロットはそれを聞き、ふむ、というように答える。
「そうですね。ブランデーではアーカルソン国籍のパスポートは通用しませんから」
レンスベルク。わずかな期間に三度所属を変えた街。戦乱の中で砲撃と化学兵器とによって荒廃させられた都。
この世界の住民には、ちょうど我々にとってのパッシェンデールのようなものとして記憶されることになるだろう。
〈ザザ…ザザザ……わたくし、アン5世は、諸勢力の均衡ならびに諸国民の権利および正統性の擁護者として、四重帝国が潰えた今、ヤーディシア大陸の情勢について…〉
ちょうど正午。昼のニュース放送が始まる。アンゼロットの懐にあるラジオはアーカルソン=リペルニア女王アン5世の演説を流しはじめた。
演説の内容は今後の大陸の国際秩序に関するもの。フォロノワ帝国が瓦解し、ただ一人戦争に関与せずに平和を保った合同立憲王政は、戦うことなくしてこの大戦の勝者となった。ゆえに、それを語る責務がある。
この後、アン5世が玉座にある数十年の間、合同立憲王政は大洋の支配者、覇権国家として栄華を極め、大陸は彼女の巧妙な勢力均衡政策により仮初めの平和を保つのだ。
しかし彼女が崩御して後、アトリオン側の王国とヤーディシア大陸側の所領は王位継承法の違いによって分裂し、それによって合同立憲王政は大陸を調停する力を失い、そして四重帝国の瓦礫の中から生まれた新しい国々が再び戦乱へと走っていくことになる。
そういったこの後の合同立憲王政、そしてこの世界の運命というものは、アンゼロットにとってはもう知っていることで、この世界の住民にとっては、もちろんまだ分からないことだ。
今は、この世界の住民は、大戦が終わりついに真の平和が訪れたと祝福していることだろう。
それはさておき(この世界の住民にとってはさておかれては困ることだろうが)、レンスベルク近郊の完全なる荒原を二人は歩く。
「マスター、これ、ですかね」
そこにはもとは戦車だったものが転がっている。その中の一つに、アンゼロットとミリティーは注目した。
「ああ、これですね」
「…彼女は、ここで何を思ったでしょうか」
「さて、私には分かりません。もし分かったとしたら、私は彼女にとって必要のない存在だったでしょう」
「…そういう言い回しはマスターらしいですね」
「月光花」
アンゼロットはそのまま古式ゆかしき魔法を発動する。もしそこに第三者がいれば、真昼にも関わらず、一瞬月が輝いたかのような錯覚を受けただろう。その月の輝きは結実して、一輪の花が現れる。
「…紫露草」
「平安あれ。我らに永遠の安息あれ、そして永遠の光あれ」
「「Requiem æternam dona eis, domine, et lux perpetua luceat eis.」」
「…さ、戻りましょうか」
「はい、マスター」
二人が戻る先は、スタックバラの王宮、ではない。
このゲームは終わった。
彼女たちは、またいつものように次の世界へ向かって旅立つのだ。


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