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ダンゲロスSSエーデルワイス 応援スレ
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山居ジャック 第二話・裏『俺の世界』
:2022/03/13(日) 00:29:27
徐々に疲弊していく餅子の姿を眺めているうちに、万魔のほとんど死んでいた心が戻ってきた。
自然な回復ではない。劇薬があった。“怒り”という劇薬が。
(“世界”が……何だよ。そんなに偉いのかよ! 一人を殺して……餅子も傷つけて……)
万魔は、餅子のスコップが最初に欠いた影の一部に視線を向けていた。
あれから復活する気配が無い。
“影”と言ってもダメージそのものはあるし、欠損も不可逆なようだ。だとしたら、一発逆転の方法は、ある。
見立てが間違っていたら、死ぬけど。
(それが“世界”なら、こっちから願い下げだ! 俺は、“選んだ”よ)
「餅子!」
万魔は銀時計を投げ、ジェスチャーで餅子にやってほしいことを伝える。
餅子はその通りに、銀時計を開いて影に押し当てる。
「ここは……“俺の世界”だ!」
人間相手にはたとえ極悪人にだろうと絶対にできない技だが、意志を持たない影に対してなら躊躇なくやれる。
開いた銀時計の先に転移してきた万魔の肉体が再構築される。その座標にいた影は内側から押し退けられ、弾け飛んだ。
「は、は……やっ…………」
ただしその瞬間、万魔は確かに影に“触った”のだ。
彼女はその場で崩れるように倒れた。
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何日も眠っていたような気がする。
夢を見ない、深い眠りだった。
「大丈夫ですか?」
ぼーっとした頭を起こした万魔は、神職の男性に声を掛けられる。
ここは神社の中だった。たしか境内で戦っていたはずだ。
「そちらのお嬢さんが中まで運んできたのです」
見ると、そちらも疲れて眠った様子の餅子の姿があった。
「ああ、ありがとうございます。すぐに出ていきますんで……」
敷いてもらった布団をそそくさと出ようとする万魔を男性は引き留める。
「いえ、少し気になることがありまして……その銀時計、あなたは、山乃端のお嬢さんでは?」
「……ええ」
本当は違うが、話を合わせておいた方がよさそうだと判断した。
「やはりそうでしたか! 私どもの神社、山乃端神社とは分社の関係にありまして」
“今”の山乃端一人の経歴には“以前”とのズレがある。一番大きいのは年齢だが、それは“魔人にならない”という願いが反映され、魔人になりがちな年齢を回避したものと思われた。
しかしこの“神社の生まれ”というのは理由がよく分かっていない。
ゆえに万魔は、今がそのルーツを調べる機会だと思った。
「何か、資料を見せてもらっても、いいですか?」
万魔が尋ねると、男性は喜んで資料の束を差し出してきた。
それを1枚1枚、めくっていく。古い文字はあまり読めないので図や挿絵が中心になるが。
ふと、手が止まる。
そこには2人の人物が話し合っているような絵が描かれていた。
その片方の人物が纏った奇妙な“面”に見覚えがあった。
「こ、これ!」
「ええ、そちらがかみさまですよ。お顔を描き示すのは畏れ多いので、隠して描いたと言われております」
万魔はいても立ってもいられなかった。
「すみません、やはりすぐに出発しなければいけないようです。ありがとうございました」
資料を丁寧にまとめて男性に返し、すやすや眠る餅子を叩き起こす。
「餅子! “奴”を探すぞ!」
このめぐり合わせにはきっと意味があると信じて。万魔はもう一度立ち上がった。
最終話へ続く
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