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ダンゲロスSSLove 雑談スレ
14
:
調布 浩一
:2018/12/14(金) 11:42:56
幕間SS 勇者ウィル・キャラダインの失敗
【1/2】
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大の男が、便座の前に跪いて何事かを呟いている。
「シスター。私に懺悔させてください」
ウィル・キャラダインが懺悔室を——少なくとも本人はそう思っている——を見つけたのは、希望崎学園の校舎内であった。
異世界から来たウィルにとって、こちら側の世界は見るもの全てが新しい。さらに言えば文明レベルがまったく違う。そのため、勘違いをしてしまうことがままあるのだった。
今回彼が見つけたのは、男性と女性を模した看板をつけて並んでいるふたつの部屋。扉のないひらけた入り口からは光が漏れている。男女の看板ということは、こちらの世界では懺悔を聞いてくださる方の性別を選べるのだろう。
(神のお言葉が男女で変わるとは思えないが。妻に関する告解ならば、女性に聞いてもらうのが良いか)
ウィルはそう思い、女性の看板がついた方へ入室した。それが大いなる過ちであるとも知らずに……。
「ふむ……清潔だ」
ウィルは感心したように頷く。中に入ればうっすらとピンク色をしたタイルが敷き詰められており、なんらかの香が焚かれているのがわかった。左手には三つの簡素な部屋が並んでいる。この簡素な縦長の直方体を外から覗き見て、ウィルはこの部屋を懺悔室だと判断したのだ。なるほど、異世界の懺悔室は連結しているのかと。
ああ……このとき、彼が男子の方に入っていたならば。奇妙な形の白く艶やかなオブジェがいくつか並んでいるのを見て考えを改めた可能性もあるというのに。
しかし現実として、ウィルは女子の方に入室してしまった。彼は妻を愛するあまり、例えほんの少しでさえ彼女を不安がらせたことを罪と考えていたのだ。そして、神の許しを得なければ顔向けができないと。正常な判断能力を失っていたのかもしれない。
部屋の中でウィルは周囲を見渡す。しかし、これはいったいなんだろう? 彼の横には鏡と謎の金属製品。丸みを帯びた十字形の下には、垂れ下がったように曲がる部品が付いている。まるで魔王軍の動物兵器、ソラトビエレファントの頭部だ。
さらにその下には、壁からせり出す純白の器。見ればうっすらと湿っている。となれば、どこからか水が……?
未知のダンジョンを攻略するのは勇者の必須スキルだ。どこかで決意をし、リスクを負って仕掛けに挑まねばならない。異世界の建物も同じことだ。
(ううむ。触らなければならないのか、このソラトビエレファントを模した頭部に! しかし懺悔室に危険なものなどないはず……まさか邪教の館なのか、ここは?)
おっかなびっくり十字の金属に触れるウィル。確かな手応えを感じてひねると、象の鼻から水が出る。
そう、これはいわゆる蛇口であった。
「おお、水が! なるほど。この鏡と合わせ、顔を清めてから懺悔室に入れば良いのだな!?」
バシャバシャと顔を洗い、布で顔を拭う。さっぱりとした気分のウィルはいよいよ懺悔室に入ろうとしたのだが、ここでも困ったことがあった。
懺悔室が、彼の世界と全然違うのである。
一番手前と真ん中の部屋。半開きの扉を覗けば、中には白い椅子がポツンと置いてあるだけ。脇には筒状になった紙が鈍色の器具に収納されているが、使い道がわからない。
それとも、正面の分厚そうな壁の奥にシスターがいるのだろうか。この先は間取りを考えれば男性懺悔室のはずだが……。
(臆するな勇者ウィル・キャラダイン。無作法でもいい。自らの罪を認め、新たに歩みださねばならぬ!)
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