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SSDMSet2幕間スレッド

1 ほまりん :2016/03/19(土) 05:49:17
ダンゲロスSSドリームマッチSet2の幕間SSを投稿するスレッドです。
イラストもこちらに投稿してください。

2 ほまりん :2016/03/28(月) 21:15:34
キャラクター募集期間は終了しましたが、
こちらで「プロローグ」と明記したSSを投稿した場合は
そのキャラクターのプロローグとして扱いますのでよろしくお願いします。

3 五月女 水車 :2016/03/28(月) 23:10:33
目を覚ますと、水車はまず、カーテンを開く。朝の光を体いっぱいに浴びて、伸びをする。
寝るときは下着だけだから、腰まである長い髪がお尻をくすぐる。

「んんーっ!ふぅ。」

私に必要なルーティンワークの1つだ。雨の日や曇りの日は、できなくて少し寂しいけれど。

「胸、また大きくなってる…やっぱり、まだ私でも成長するんだなあ。」

もうとっくに成長は止まったものと思ってたけど、"こっち"は成長しているみたいだ。
とは言っても、そんな大きいわけじゃない。
CかD。でも、これくらいが丁度いい。と思う。多分。

いつもと同じ日。今日もまた、いつものように、私の周りにいる"ニューヨーク・オーシャン"はきらきらと光り、朝の光を喜んでいる。
その様子が眩しくて、私は少し目を細める。最近は、前ほどではなくなったけど。
でも、やっぱり私はこの"オーシャン"が好きなんだと思う。

私はまた、ぼふん、とベッドに座り、目を瞑って"オーシャン"に口付けをする。

今はこれだけで満足できる。
私にはもうこの子より大事なものがあるから。

「おはよう、オーシャン。」

"オーシャン"に微笑みかける。私はべつに、この子のことが嫌いになったわけじゃない。

「おトイレは困るけどね…。」

悩みの種をつぶやいて、私は少し、頬を掻いた。
でも、仕方ないものは仕方ない。"ニューヨーク・オーシャン"を手に入れたとき、そんなリスクすらも愛おしく思ったものだ。
今では、マジックミラーの窓で中が隠された、こんなお家でしか"オーシャン"と遊べない、臆病者になってしまったけど。

「よしっ!」

洗面所で、顔を洗う。前は"オーシャン"に洗ってもらってたけど、さすがに今はそんな子供じみた真似しない。

そして、眠気覚ましに、勢いよく頬を叩く。あとに影響するといけないから、跡がつかない強さで。

「今日も1日、頑張るぞっ!」

そう言うと、水車は、"ニューヨーク・オーシャン"を解除した。

すると、人が変わったかのように、すぅ…と、水車の纏う空気が変わっていく。冷たく、冷たく変わっていく。

これも、ルーティンワークだ。"オーシャン"がいない時、水車は芸能人の顔になる。

今日は特に、笑ってもいられない理由があった。

「さってと……"無色の夢"か。とりあえず、マネージャーに電話しねぇと。」

最新型のスマートフォンを出す。

「俺は....負けるべきなんだろうな。"オーシャン"の為にも。俺自身のためにも。」

相手はいつもワンコールで出る。

「もしもし、戸川っす。えっと、とりあえず今日の予定、オールキャンセルでお願いします。ええ。で、ちょっと特番やって欲しいんすけど。はい。」

洗面台には、まだ"オーシャン"の残滓が残っていた。

4 はかいしん :2016/03/29(火) 21:01:41
余ははかいしん。締め切りを破壊し、プロローグSSを投稿する者である。

はかいしんプロローグSS
『遊園地に行こう!その1』

おひさまがピカピカと光る、とびっきり元気な日曜日。
はかいしんはゆうしゃと待ち合わせるために、最寄りの駅前にきていました。
はかいしんは腕時計をみて、時間を確認します。時刻は9時45分。待ち合わせの15分前です。
待ち合わせの際、はかいしんは何時も15分前には現場に到着するようにしています。
相手がゆうしゃとはいえ、女性を待たせるのははかいしんのポリシーに反するのです。

「うむ、いつも通り。あとはゆうしゃが来るのを待つだけだな。」
はかいしんはそう呟いて、駅の構内をぐるぐる回り始めました。
はかいしんの力は絶大です。一つのところに留まると、それだけで周りの物が破壊されてしまいます。
無駄な殺生を嫌うはかいしんは、歩きまわることで駅の崩壊を防いでいるのでした。

駅を回る最中、はかいしんを見て、様々な人が話しかけてきます。ここははかいしん様の地元、当然その名も知れているというわけです。
真面目なはかいしん様は、その一つ一つに律儀に返事をしながら人々の間を歩いていきます。
「おっ!はかいしんさま!チーッスチーッス!」「おや、はかいしんくん、今日もお出かけかぇ?げんきでいいわねぇ。気をつけてらっしゃいねぇ。」
「あ!はかいしんさま!この前は瓦礫の破壊助かりました!今度また何かお礼させてください!」「バボンバ!バボンベンベン!ブンブー!」
「チーッスチーッス!……じゃない。なんだその態度は。私ははかいしんだぞ。もっと敬え、もっと。」
「ふん。まあな。そちも元気そうで何よりだ。季節の変わり目だからな、体調にはしっかり気を使えよ。」
「別にお前のためにやったわけではない。お前の店で買い物ができないと不便だからやっただけだ。勘違いするなよ定命の者よ。」
「ボンババ?ボッベンボッベン。バボブーバベンバー。」

一通りの人に挨拶をし、はかいしんさまはてくてくと歩き続けます。はかいしん様の表情は複雑でした。
「……破壊の化身であり、いずれ世界を滅ぼすであろうこの私が、この慕われよう……しかも全く畏怖を抱かれていないとは、はぁ……。
何と情けない……!それもこれも全てあのゆうしゃが原因……おのれゆうしゃ……!」
そう、破壊の化身であるはかいしんが町の人々に好かれているのは、ゆうしゃのせいなのです。

今までの勇者は、そのすべてが例外なくはかいしんを殺害しています。平和のための尊い犠牲です。
ですが、ゆうしゃはそれを善しとしませんでした。
「はかいしんが転生するなら、殺すより改心してもらったほうがずっと平和でええやん。」
そう言って彼女は城に引きこもっていたはかいしんをしばきたおし、はかいしんを町の人々と交流させるようになったのでした。
最初の頃は怖がっていた町の人々も、今ではすっかりこんな調子。はかいしんはゆうしゃにしてやられているようで、とても悔しいのでした。
今日のお出かけも、ゆうしゃがはかいしんの城に押しかけてとりつけたものでした。そう、それは一週間前のこと……

◆◆◆

5 はかいしん :2016/03/29(火) 21:03:30

一週間前。富山県と北海道の境目、四方を暗黒領域で囲まれ、入るには門番である溶岩魔神と氷の女王、その奥にいる四天王、更にその四天王を束ねる魔王を倒さねばならないはかいしんの城に、ゆうしゃは訪れていました。
全ての門番をタイムアタックよろしく平均5秒で倒した勇者は、クソデカイ扉を開けて、はかいしんの間に入っていきます。じっとしているだけで近くの物が破壊されるので、はかいしんの間はめちゃくちゃ大きく、殆ど物がありません。
その中央、玉座に座っていたはかいしんは、勇者を認めると、立ち上がってこう言いました。
「……来たか、ゆうしゃよ。だが私はもう二度と外には出んぞ。貴様に誘われてやった草野球は散々だった……。独りでにねじ曲がるバット!当てても破裂して飛んでいかないボール!滑りこんだホームベースは叩き割れ、挙げ句の果てに私のエラーでチームは負けた……!皆私を嫌ったに違いない……もう沢山だ!絶対に街には出んからな!」
「なんや、そんなこと気にしてたん?誰もはかいしんのこと嫌いになったりしてへんて〜!物ぶち壊すのも面白がってたし、エラーで負けるなんてよ〜あることや!むしろ初めてまともに野球できとったの凄い言うてたで?気にしすぎや!元気出しや!」
「ええい黙れ!貴様の言うことなど信用できるか!どうせ私を慰めようと適当なことを言っているに違いない……私は騙されんからな!」

ゆうしゃは悲しむはかいしんを元気づけようと言葉を紡ぎますが、はかいしんはそれに聞く耳を持ちません。
「はぁ〜全く面倒やっちゃな〜。ま、ええわ。今日は草野球の話しに来たんやないからな。ほら、これ何かわかるか?」
そう言って、ゆうしゃはふところから1枚の紙切れを取り出しました。その表面には、「ほにゃらら遊園地ラブラブペア招待券」と印刷されています。
はかいしんが目を細めながら言いました。
「文字は読めるが……見間違えのような気がするな〜……なんかラブラブとか書いてあるように見えるが気のせいかな〜!」
「テレレテッテレー!大正解!これ、商店街の福引でちょうどあたってなあ。今日はこれに二人で行かへんかって誘いに来たんや!な?ええやろええやろ?二人でいこ〜や!」
「よ〜し、行っちゃうか〜!遊園地楽しみ〜!……とでも言うと思ったか!このバカゆうしゃ!」

ウキウキした様子ではなす勇者に、はかいしんは怒った様子で続けます。
「仮にもお前と私はゆうしゃとはかいしん!世界の命運をかけて戦い合う定め……それがラブラブペアだと!?もはやはかいしん概念に対する冒涜だぞ!冒涜!」
「っか〜!定めとか古!そんなん気にしてるの石器時代の人間くらいやで!頭カチコチやな〜。あ、でもはかいしんくんはそれくらいから居るんやっけ?古い考え持っとるのもしゃーないか。」
「転生してからはまだ20年ほどだ!古さは関係ない、貴様が軟弱すぎるのだゆうしゃよ!大体今までの仲良しこよし、友情ごっこをしていたのもおかしな話……。決めたぞ!今日という今日は貴様を打倒し、世界を破壊してくれるわ!」

ブワーッ!はかいしんの声とともに、破壊のエネルギーが空間を走り抜けます。ゆうしゃは腰に下げてあった剣を抜き、それを受け止めました。
この剣こそはゆうしゃのつるぎ。
絶対に壊れないすごい剣であり、ゆうしゃ一家に伝わる遺伝型特殊能力、はかいしんのちからを受け止めることが出来る唯一の力です。
マジで絶対に壊れず、一節によると宇宙の崩壊にも耐えると言われているヤバイ剣なのです。
しかし、それ以外は別。受け止めきれなかったエネルギーによって、服の端々がはかいされ、黒い塵となって宙に舞いました。ゆうしゃは言いました。
「おーおー随分恥ずかしがるなあ。相変わらずかわいいやっちゃで。よーし、相手したる!ただし私が勝ったら遊園地付き合ってもらうで。ええな!」
「望むところだ、今日こそ貴様をはかいしてやる!ハーッ!」

6 はかいしん :2016/03/29(火) 21:03:40

バシュンバシュン。はかいしんの構えた両手から、破壊の力が飛び出していきます。
不可視のその力を、ゆうしゃははかいされる空気の揺らぎによって感知、軌道を見極め、一息で間合いを詰め、剣を振るいます。
「フン、甘いわ!」
ガキーン。はかいしんは手についた鋭利な爪を伸ばし、それを受け止めます。
本当は剣を持つと見栄えがいいのですが、はかいしんは自分の武器も壊してしまうので、それはできません。力には何時も対価が必要なのです。

「フッ!ハ!ヌアーッ!」
両手の爪で剣を捌きつつ、はかいしんはタックルやローキックなどの体術も交えて攻め立てます。
剣で受け止められると不味いですが、一撃でも当たればゆうしゃを破壊することができます。チャレンジャーらしい攻めの姿勢。実に好感が持てますね。
対する勇者は剣撃とフェイントではかいしんの体制をコントロールし、攻撃を掠らせもしません。ついでに一言も喋りません。真剣にやっているのです。鎧袖一触とはこのことですね。

「ふん……チェアァッ!」
状況を変えるため、はかいしんが一際力を込めてゆうしゃに斬りかかります。ゆうしゃがそれを受け止め、一瞬の硬直状態が生まれました。
「フンナーッ!」
それと同時に、はかいしんがぐっと力を込めました。
すると、ゆうしゃの立っていた床が一瞬で破壊され、その下の地面が顕になりました。
高低差により、そこに立っていたゆうしゃの体制が崩れます。はかいしんはそれを見逃さず、剣を弾くと同時にゆうしゃに向かって爪を振るいました。
ゆうしゃ、危うし!かと思われましたが、ゆうしゃは慌てず騒がず、弾かれた勢いを生かして、後ろに吹き飛びながらそれを避けようとしました。
回避しきれず、足が少しばかり破壊され、宙に血の赤と破壊の黒が広がりました。

「今が勝機!ゆうしゃ、今度こそ死……」
「いよいしょー!」
追撃を試みるはかいしんに向かって、ゆうしゃは着地の寸前、ゆうしゃのけんの鞘を投げつけました。
空中にもかかわらず、その鞘はとても正確に、はかいしんの頭に無かって飛んでいきます。
ゆうしゃのけんは絶対に壊れないすごい剣です。その鞘も壊れないので、はかいしんはちからを使わず、爪でそれを弾かなければなりませんでした。

「フン、小賢しいな勇者!……む?」
……そう、弾かなければならないはずでしたが、弾こうとした鞘ははかいしんの目の前で破壊され、黒い塵になり、宙に舞いました。
どうやらゆうしゃは、ゆうしゃのけんを普通の鞘に挿してここまで来たようです。破壊された鞘の残骸で、はかいしんの視界が遮られます。
はかいしんがなるほどなあ、と感心した直後。弾丸くらいの速度で飛んできた本物のゆうしゃのさやが、はかいしんの頭に直撃しました。
灰の向こうから、ゆうしゃのドヤ顔がはかいしんの目に映りました。
さすがのはかいしんも、これにはたまりません。はかいしんは関心した表情のまま後ろに倒れました。
「じゃ、来週の日曜日、ほにゃらら駅前で待ち合わせな。遅刻したら怒るで〜。」
意識を失う前、ゆうしゃのごきげんな声が聞こえてきた気がしました。

◆◆◆

7 はかいしん :2016/03/29(火) 21:04:06

◆◆◆

というような事があり、はかいしんはしぶしぶながらもゆうしゃと遊園地に行くことになったのでした。
「くっ……!忌々しいゆうしゃめ……!今更悔しさがぶり返してきたぞ……!大体遊園地など!はかいしんに全くふさわしくない……。楽しみにしてきたお子様たちが怖がったらどうするつもりだ……!ほんとうに自分勝手な奴だ、ゆうしゃよ……」
呟きながら、はかいしんは腕時計を見ました。既に破壊され、秒針がすっかり止まっていたので、はかいしんは仕方なく広場まで時間を確認しに戻りました。
「む……。何だ、既に集合時間を過ぎているではないか。奴が待ち合わせに遅れるとは、珍しいな。まさかこの前の足の怪我が響いて……?」
心なしかおろおろしながらつぶやくはかいしん。
そんの時、かばんに閉まっていた携帯がピポピポーっとなりました。画面にはまおうの文字が表示されています。はかいしんは通話ボタンを押し、電話に出ました。

「もしもし。余ははかいしんである。どうしたまおうよ。お昼ならいらないといったはずだぞ。」
『もしもしまおうです!お昼の事は覚えてますよ!バカにしないでください!そんなことより大変なのです!お城にゆうしゃとその弟が来ているんですよ!』
「え?なんでゆうしゃがそっちに。集合は駅前って言ってたじゃん。余の聞き間違い?それとも勇者の言い間違い?」
『それがゆうしゃの奴も様子がおかしくて……。なんだかずっと寝てる?みたいな……。弟さんから詳しく聞けばいいんでしょうけど……ごめんなさい!知らない人と話すの怖いです!無理です!早く来てくださいはかいしん様!』
「様子がおかしい?全くしかたのないやつだ……。なるほどちょっと待ってろ。すぐ行くから。話すのが怖いからって殴っちゃダメだぞ。話が聞けなくなるからな。判ったな。」
『はい!できるだけ努力します!なのではやくきてくださいはかい……』

ブツッ。通話が終わる前に、携帯ははかいしんの力に耐え切れず、プシューッと煙を立てて壊れてしまいました。
1万円くらいがパーです。この体質のせいで、はかいしんはスマホをもつこともできません。
はかいしんはこわれた携帯をかばんにしまいながら呟きました。
「全く、ゆうしゃめ。本当にしかたのないやつだ。よりにもよって私とお出かけの日におかしな目に合うとは……。」
はかいしんは携帯の代わりに、かばんの中から大きな冊子を取り出しました。それは、大量に書き込みのされた、ボロボロのほにゃらら遊園地パンフレットでした。
「フン。まあいい。来ようと思えば何時でも来れるのだからな。しかし、ずっと眠っているとは一体……。面倒事にならねばいいが。」

はかいしんはパンフレットを再びしまい、はかいしんの城へ戻ることにしました。
残念、貴方はこれからその面倒事に巻き込まれるのです。具体的に言えば夢の戦いに。
そんなことも知らず、はかいしんはてくてくとはかいしんの城へ戻って行きました。
はかいしんがどうやって夢の戦いに参戦したのか、どうやって無色の夢を見たのか。
語らねばならぬことは山々ありますが、今日はこの辺りで締めとさせていただきましょう。
終わり。

8 女主人 :2016/03/29(火) 22:20:24
薔薇に棘あり――そんな言葉があります。その言葉に似つかわしい、一人の女性のお話です。


***


十五年以上も昔のこと。二人の中年紳士が花に飾られた料理屋で談笑をしていた。
テーブルの横に立つ女店主に向かい、より年配の紳士が言う。

「独り身ですか。勿体無い。私に妻や娘がいなければ立候補したいくらいだ」

眉尻をやや下げて、僅かに首を傾げながら笑って話を聞く女店主の様子に、紳士はフォローを続けた。

「しかし独り身を続けるというのも親孝行かもしれないね。少なくとも父親にとっては」

やや歳若いほうの紳士が、それはどういう意味ですかと疑問を投げた。

「娘が結婚をしないと不安だというなら分かりますが」

老紳士は答える。

「娘の結婚式というのは酷く泣けるんだよ。あれほど哀しい思いをしたことがあったろうか」

老紳士の言葉の熱に惹かれたのか、女店主も身を傾けてその熱弁を見守っている。

「娘が実家から離れて一人暮らしを始めたとか、男を連れ込んで自堕落な学生生活をしていたとか、
 そんな時は哀しいとも思わなかった。けれど結婚だけは違った。
 距離が離れたとか、親より男友達を優先しだしたとか、そんな即物的なものじゃない。
 娘の魂が自分の手元から離れていってしまったんだなという実感が結婚式では襲いかかってきた。
 私は年甲斐もなく泣いてしまったよ。
 ――あの哀しみを親に与えないというのなら、それは立派な親孝行じゃないかってね」

相方の紳士がなるほどと頷く。

「価値観というのは人それぞれですしね」

老紳士は笑いながら、お前も娘の結婚式では絶対泣くぞと釘を刺し、グラスを呷った。

その時、カウンターの奥で電話が鳴った。
にこやかに話を聞いていた女店主は失礼しますと一言断りその場を離れた。

料理上手で気立てよし、しかも美人と三拍子揃っていれば、付き合う相手など星の数と言えよう
この女店主であるが、独り身でいるのには他人に秘する理由があった。

それでは閉店後に、と電話口に向かって告げ受話器を置いた女店主。
その電話の先にあるものこそが、彼女の『秘密』であった。


――――――

9 エルレカーン :2016/03/30(水) 13:44:30
プロローグを元に描き起こしたエルレカーン
tp://0006.x0.to/oo/gif/0330_elrekarn.png

※キャラ把握の一助になればと思い描いたものであり、設定画ではありません。

10 女主人 :2016/03/30(水) 22:24:58
閉店時間はとうに過ぎた夜半。店内の奥まった座席ひとつだけに灯っていた明かりが消えた。
ほどなくして店の入口の扉が開き、一人の影が路上に出た。
軽トラックのエンジン音が湿った深夜の空気を震わせ、見送った女店主は静かに扉を閉めた。

他人の目に触れることのない、窓もない部屋に戻ってきた女店主は長いため息をついた。
部屋の中央には深夜の来客が持ち込んだ、大人がすっぽりと入る大きさの木箱が置かれていた。
荒削りの板切れを張り合わせたその箱の蓋にかけられた女店主の白い手は小刻みに震えていた。

箱の蓋が開けられる。
中を覗き込んだ女店主のその時の表情は、眉ひとつ動かず、唇ひとつ動かず、頬ひとつ動かず、
強張っているとも、弛緩しているともいえない、感情を全て削ぎ落とした能面のようであった。

およそ一分、微動だにせず箱の中身を見据えていた女店主であったが、壁掛け時計の長針がカチリと
時を刻むと、その音に魂を呼び戻されたかのようにビクリと肩を震わせ、みるみると様子が変わった。

赤らんだ頬に短く浅い呼吸を始め、額に珠のような汗を滲ませたかと思うと、突如、身をよじった。
喉の奥からひゅうひゅうと呼気を漏らし、纏っていた洋服が肌に張り付くほどに冷や汗を流しながら、
女店主は部屋の隅に寄せられていたテーブルからハンドタオルを掴むと口元へ押し付けた。

ぎゅっと瞑られた目じりから大粒の涙を幾筋も流れるままに、震え続けること暫し――。

落ち着きを取り戻した女店主は長く息を吐き、立ち上がった。
水差しからコップへ水を注ぎ、ゆっくりと喉の奥へ水分を流し込み、ようやく再び箱へと向き直った。

「みっともない姿を見せちゃってごめんね」

店で客に聞かせるどのような声音よりも優しい口調で女店主は箱の中へ語りかけた。

声色に反し、女店主の様相は酷いものであった。
服は濡れそぼりシワがよって肌が透け、乱れた髪は額や頬に張り付いたままであった。

赤らめた頬は熱を帯び、脱力した口の端はわずかに開き、そこから先程口に含んだ水がつうと垂れた。
汗が浮き絹を思わせる光沢の首筋を辿り、浮き出た鎖骨を迂回し、雫は胸元の陰へと消えていった。
それら全てを気にも留めず、女店主は箱の中へ両手を差し伸べて笑いかけた。

「歓迎するわ。勿論。勿論。今日からずっと一緒ね」

そう言って箱の中へ身を沈めていった。
この箱の中身こそが、彼女の『秘密』であった。


――――――

11 女主人 :2016/04/01(金) 00:28:41
「山崎さん。刑事さんですか」
「すみませんね。お邪魔しちゃって」

その日、女店主の店へ思わぬ客が訪れた。
以後、女店主から安らぎの時間を奪い去る事となる、不吉の鐘を鳴らしたのは二人組の刑事であった。

「ザキさん、顔が怖いんだから店主さん可哀想ですよ」
「お前は鼻の下伸ばしてないで仕事しろ」
「いや、そんな、怒らなくとも。店主さん綺麗なお店ですね」

山崎と名乗る恰幅のよい男は、丸い顔を皺いっぱいの笑顔でくしゃくしゃにしながらも、
細い双眸は女店主を射竦める程の輝きを覗かせていた。
上背は無いが首元まで盛り上がった肩と潰れた耳、節くれだった指は男の戦歴を物語っていた。

それに連れられているのは新米なのか、まだ若い男であった。
店を訪れ、女店主の顔を見るやだらしなく笑い、以降は落ち着かない風で店内を見回していた。
背は高いが、泳ぐ視線や所在無さげに手足をふらふらとさせる様はなんとも頼りない雰囲気だ。

「あの、私、確かにこの人にはよくお世話になっていますが」
「はい。それが、その写真の御仁ね。ちょっとドロンしちゃいまして。行方不明ってヤツです」
「まあ」
「足取りを追ってましたらどうもドロンするちょっと前にこちらへ来てると分かって」

日付や時刻、細かな情報の確認に手帳へ視線を落とし、女店主の顔へと戻し、山崎の口調は軽妙だった。

「ええ、その日は夜にお店に来ていただいて、お夜食をお出しして別れました」
「何か変わった様子はありませんでしたか」
「仕事帰りでだいぶお疲れだったみたいですが、それ以外は、これといって」
「店主さん。その人、そんな時間にお店に上げるなんてもしかして」

話に割って入った若い男の言葉に、山崎は「余計な事は聞くな馬鹿」と拳骨を返し、女店主は苦笑した。

「ガーデニングでお世話になっているんです。ほら、このお店はお花がいっぱいでしょう」
「ははあ。この御仁は造園と生花を扱っているんでしたな。それで親しくされてたと」
「珍しいお花も届けてもらったりして、助かっているんです。その時も生花を車で届けていただいて」
「では、店主さんは特に何も知らないということで」
「はい。お役に立てずすみません」

――話を終え、店を後にした山崎は「で、どうだった」と相棒に向かい顎をしゃくった。

「美人でいいっすねえ。俺も花とか届けたいっすよ」
「真面目にやれ馬鹿」
「ああもう、ザキさん拳骨は勘弁ですよ。はい、店主さんはシロですね。なんも知りません」

二人組の刑事のうち、この一見すると頼りない優男、実のところは魔人能力者であった。
『公務であれば他人の記憶を読める』面倒臭い制約の能力を持つこの男は、山崎の頼れる相棒であった。

彼らが女店主に語った内容は事実のごく僅かな断片であり、彼らが追っていたのは殺人事件であった。
切り落とされた手足だけを残し、行方不明となった被害者の胴体の探索をしているところであった。

「よし。次行くぞ」
「今度はあのお店、仕事抜きで行きたいもんっすねえ」
「見栄張ってどうすんだ安月給。やめとけやめとけ」
「あっ、ザキさん俺の実技の点数知ってるっしょ。そんな事は言いっこ無しっすよ」
「実技が良けりゃなんだってんだ」
「ほら、俺のピストルで彼女のハートを射止めるって」
「馬鹿。上手いこと言おうってんならな、それこそああいうのを高嶺の花って言うんだよ」
「ザキさんそりゃないっすよお」

女店主が本当はその殺人事件に関わる重要な人物であった事実は、
立ち去る刑事達も、この時の女店主自身もまだ知らない話であった。


――――――

12 女主人 :2016/04/03(日) 04:23:01
刑事達が帰ったその日の晩。女店主は日課である花壇への水やりの最中に変化は訪れた。

「ああ」

霧吹きを片手に、女店主は突如として感嘆の声をあげた。
彼女は思いだした。自分が自分の能力により忘れていた、『あの日のお遣い』の内容を。
刑事達の聴取を掻い潜り、秘する事に成功した己の『秘密』を。

「そうだったわ。そうね」

女店主は水やりを終えると調理場に寄り、西瓜と包丁を手に奥の部屋へ向かった。
部屋に置かれた四角い箱の暗幕を退け、ガラス製のショウケースを剥き出しにすると、
ケースに備え付けられた機材を確認し、ケース内の湿度や温度が問題無い事実に息を吐いた。

「寂しかったわ。貴女を忘れている間、すごく寂しく仕事をしてたの。
 早くずっと一緒にいたいけれど、もう少し時間が経つまでは念の為にね」

ケースの中へ語りかけながら、女店主は脇のテーブルで西瓜に包丁を入れた。
サクリと半分、黄色い果肉の種なし西瓜が瑞々しい断面を覗かせる。
転がらないよう、断面の裏側の皮を軽く削いで平らにして、女店主はサクサクと飾り包丁を入れる。

「黄色いお花だと別れ際のプレゼントになっちゃうからお店じゃ出せないけど、
 赤い西瓜は私のお店に置いてないから――さあ! 今日の歓迎の一品は西瓜の薔薇です!」

二つの大輪の薔薇を作った女店主は、その一方をケースへ差し出し、苦笑して話を続ける。

「あの人には悪い事をしたかしら。貴女を送り届けてもらったのに。
 『私が頼んだ』って事、忘れたまま事件に巻き込まれたのかしら。ちょっと可哀想ね。
 貴女を運んだせいで厄介事を背負ってたらと思うと申し訳ないけど。
 でも、そうね。無関係である事を祈りましょう」

返事の無いショウケースへ語り続ける女店主は、最後に西瓜を口にして言った。

「それじゃあ今夜も、貴女と私の夜に――乾杯」

彼女の瞳の先にあったものは、ひとつの花であった。彼女の好きな花であった。
特別に華美でもない、もし路傍に佇んでいたならば十人が前を通り、一人二人がふと振り返る、
ありふれた素朴さの花であった。

ただ、彼女にとってはその花は何よりも愛しいものであった。
一目惚れか、余人には分からない想いがそこにはあった。
彼女は花が好きで、その一心で花を手元に置いた。

だが、そこにひとつだけ問題があった。その花の所持は法律で認められていなかった。
ケシや大麻といった規制のかかる植物と同様、単純所持が違法となる花であった。
それでも欲しいという想いで、仕事で生花を扱う知人に密かに運ばせたのが彼女の『秘密』であった。

「ああ、ああ。美味しいわ。素敵な夜ね。とっても素敵」

やがて女店主は知る。その花を運んだ人物が死んだ事を。
その花を運搬する仮定で、無理を通す為に買った恨みにより殺された事実を。
それを知り、以降十五年以上もの長きに渡り、自分も殺されるのではと恐怖に怯える日々を過ごす未来を。

しかし、その日、その夜、その一時だけは、純粋に愛する花の事だけを考え、彼女は幸せの絶頂であった。
先を考えず、子供染みた衝動でただただ花を愛する事だけを考え続けた一人の女性。
彼女が夢に描く風景は子供の頃から大人になった今でも変わらずただひとつ――お花の天国であった。


***


薔薇に棘あり――そんな言葉もあります。主に使われる意味はふたつあります。
「綺麗な女性も恐ろしい内面を持つ」「欠点の無い人などいない」。
貴方の目に、彼女の『秘密』はどう映ったでしょう。

棘と言われて身構えず、手を伸ばしてみたならば。或いは素敵な花が手に入るかも知れませんよ。

13 宇多津転寝 :2016/04/03(日) 15:53:10
遅れに遅れたプロローグをメールで送ったけどよく考えたらこっちに張れば良かった。くすん。

〜〜〜〜〜〜
「……ふわ、あ」

俺の一日は寝室の掃除から始まる。
目が覚めてから次に寝るまでを一日とするなら、だが。

なにしろ、一度目が覚めると特別な事情がない限りは二日三日は眠くないし眠れない。
それが俺、宇多津転寝の体質である。
横になろうが瞼を閉じようが、だ。しかもその希少な睡眠時間も三時間あるかないか、である。
一応、健康に支障はないようだが……それでも、たまには人並みにぐっすりと眠りたいものだ、とも思う。

それが、叶わぬ夢であっても、だ。

寝室の掃除を終えて、扉を開けて朝メシを喰おうと出たところで――柔らかいモノを踏んだ。

「……げ」

姉貴が、足元で寝ていた。
踏んだのが敷き布団の端だった、と認識した次の瞬間にはもう遅い。

「……Zzzzzz」
「……っ!」

ばさりと翻された羽毛布団が俺の視界を塞ぎ、手足の自由を奪い去る。
そして、羽毛布団もろともにクルリと投げ飛ばされ、壁に激突する。
幸か不幸か、姉貴愛用の羽毛布団が衝撃を吸収するが――それでもダメージは免れない。

「が……いってえ……」

宇多津流夢遊睡拳の技の一つ『叢雲包み』がモロに決まる。
寝込みを襲われた際を想定した『寝ているとき専門の拳法』である。

「……なんで今日に限ってこんなトコで寝てんだよ……もう」

姉貴こと、宇多津泡沫は俺とは真逆の超ロングスリーパーであり――俺よりも強い格闘家である。
その体質上、いつでもどこでも寝ているが……その安眠を妨げるものには、この通り
夢遊睡拳の洗礼が待っている。かくいう俺も、寝ている姉貴に勝てたためしがない。

だがまあ、布団の端で済んだのは幸いだろう。
もし姉貴本体を踏んづけようものなら、その直前に足をヘシ折られていたかもしれないのだから。

巻き付いた羽毛布団を姉貴に被せ直して、俺はそのまま台所へ向かう。
朝飯を作って食べたら、制服に着替えて登校。
いつもの一日が始まる。

14 宇多津転寝 :2016/04/03(日) 15:53:34
〜〜〜〜〜〜

今日も予鈴ギリギリに教室に滑り込むハメになった。

一応弁解させて貰うならば、俺は予鈴の三十分前に着くように家を出ている。
俺に『寝過ごして遅刻』というミスはなにしろ有り得ないのだから。

では、なぜ三十分ものロスが生まれるのか?
理由は簡単、なにかと不良に絡まれるからだ。

俺が格闘家の端くれだということは結構知れ渡っているらしく、
そのせいか入学当初から、その手の血気盛んなセンパイ方だったり
その腰巾着だったり、あるいは新進気鋭の同級生やらが
『アレを倒せば名が上がるぞ』と思い込んで襲いかかりに来るのが日常茶飯事になってしまった。

で、身に降る火の粉を払っているうちに、俺の名がさらに売れてしまったというワケだ。
今日も下駄箱に果たし状が挟まっている……憂鬱極まりない。

だが無視もなかなかできないのが辛いトコロだ。
一度シカトしたら、自宅の道場にまで押しかけてきたバカがいたからだ。

そのバカはどうなったかというと、玄関前で寝ていた姉貴を手込めにしようとして
煎餅布団のようにノされていた。俺とやってりゃ、眠りこけるだけで済んだだろうに。
姉貴の貞操や生命を心配はしてはいないが、しかしこの手のバカは何度やられても懲りない。
どころかやられればやられるほど、報復感情だけを燃やしてくるので手に負えない。
というわけで、俺は家での安寧まで邪魔されないように、なるべく応じているというわけだ。
自分で言うのもなんだが涙ぐましいと思うぜ、本当。

授業中、クラスメイトの何人かが舟を漕ぐのを羨ましいと想いながら、
今日も俺は真面目に授業を受けるのだった。

〜〜〜〜〜〜

15 宇多津転寝 :2016/04/03(日) 15:53:50
放課後の呼び出しを穏健に終えて(拳で相手を眠らせ黙らせることを穏健と呼ぶなら、だが)帰宅。
トイレの前で寝ている姉貴を避けて、自分の部屋へ。
夕飯の時間まで宿題をこなす。
別にこの後もまだまだ起きている時間はタップリあるので、今やらなくてもいいのだが
気分的に夜や夜中に勉強をしたくない、というだけのことだ。

宿題を終え、夕飯を終えたら道場に行って軽く修行して風呂を浴びる。
睡拳をどうやって修行するんだ、と思うかも知れないが……
俺の場合は体質的にも修行のしようがないので、もっぱら他の拳法やら格闘術を独学で学んで
身体強化に努めている。尤も、その破壊力は木人相手くらいにしか発揮できないのだが……

余談だが、俺は飯と風呂の時間は原則ずらしたくないタイプだ。
なにしろ一度起きると数十時間起きっぱなしなので、時間感覚が希薄になりがちなのだ。
だから朝飯や夕飯、特訓に風呂といった家庭内のイベントに関しては時間をきっちり決めて行うことにしている。

もっとも、その後はかなり時間にルーズな過ごし方をする。
自分の部屋に戻ったら、他の面子が寝落ちるまで延々オンラインゲー。でかいドラゴンを皆で狩り倒す。
寝落ち解散の後は、深夜アニメをだらーっと見る。
こんな具合に、夜が明けるまでは自由に、自堕落に過ごす。
そういう意味では、やはり俺も宇多津の血が流れてるんだろうな、と思う。
怠惰の具現である姉貴ほどではないが。

夜が明けたら、また朝飯を作って……の繰り返し。
で、眠くなった日は寝室で寝る。


以上が、俺の“一日”だ。

16 大鋸草菊 :2016/04/04(月) 00:34:11
セルフィの着せ替えで作った大鋸草菊イメージ
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17 織音アイリ :2016/04/04(月) 20:54:24
少女は生まれた時から良い子として育てられ、それを疑問に思った事はなかった。

勉強や運動をして、良い結果を出して褒められた時はとても嬉しかった。

それを物足りないと思った事はただの一度もなかった。

当然、自分はそのまま生きていくものだと思っていた。



10歳のある日、少女ははじめて告白というものをされた。

少女はうろたえ、すぐに返事をすることが出来なかった。

結局その日、その話は有耶無耶になったまま終わった。

数日後、少女は突然やってもいない罪で責められる事となる。

後になってわかったことだが、彼女に告白した少年に恋をしていた少女が根も葉もない噂を流した結果だった。

少女は罪を積極的に否定しなかった。今までそんな経験がなかったからである。

その態度は肯定と見なされ、激しい説教と、初めての体罰を受けた。

彼女にとって、叩かれるということは生まれて初めてに近かった。

きわめて理不尽なその体験に少女は恐怖を感じた。

しかし、それと同時に何か、今まで感じた事のない不思議な感情が芽生えた。

誤解はすぐに解かれ、謝罪されることとなる。

しかし彼女は、自分と変わって叱られ、体罰を受け、涙を流す少女にえも言われぬ感情を覚えていた。

―――今ならわかる。それは、憧れだったのだと。

18 織音アイリ :2016/04/04(月) 20:54:48
その後も彼女は良い成績を出し、良い結果を出し、良い子でありつづけた。

そして11歳のある日、彼女はある儀式の巫女役として選ばれた。

それは、その村に伝わる呪われた杖を鎮めるための役目であった。

その杖は、決して触れてはならぬ、決して祈りを怠ってはならぬ、そう伝えられてきた。

一年に一度の儀式の時にしかそれは外気に触れることすらなく封印されているものであった。

少女はすぐに儀式の内容を覚え、また褒められた。

しかし少女の心の中には、あの時の&ruby(憧れ){感情}が未だに忘れられず、他事で埋められることもなかった。



儀式の日、目の前にその杖を目前に、彼女は祈る。

しかし、彼女の脳裏にある一つの考えが浮かんでしまったのだ。

それは、魔が差したとしか言いようがない、ひとつの、決して考えてはならない考えだった。

―――この杖に触れたら、自分はどれだけ叱られ、叩かれてしまうのだろう―――

19 織音アイリ :2016/04/04(月) 20:55:08
それは、彼女がたった一度だけ犯した&ruby(罪){悪い事}。

ほどなくして、彼女は村を追われることとなる。

だが、彼女に後悔は一切なかった。

何故なら、彼女は自分の望む物が何であるかがわかったのだから。わかってしまったのだから。



そして彼女は旅立つ事となる。その呪われた杖と共に。



―――彼女は本質的には良い子のままであった。

彼女は心優しく、行く先々でも良い子であった。

もう二度と悪い事をする必要はない。

自分の望む物は、全てこの杖が与えてくれるのだから。

20 織音アイリ :2016/04/04(月) 20:59:31
>>17-19
すみません、wikiに乗せる際は17、18の間、18、19の間は三行開けていただけるとありがたいです。

21 :2016/04/04(月) 23:36:49
むかしむかしそのまたむかし、人間が石器を使い始めた頃。

長い長い眠りから覚めた竜を待っていたのは、大量の塩水、つまり海水だった。

寝ている間に起きた地殻変動によって住処が海中に沈んでいたのである。

幸いにも竜は睡眠中ほとんど呼吸をしないため、眠ったまま溺死することは免れた。

こうなってしまったからには、早いうちに新しい寝床を見つけなければいけない。竜は近くの島に移動することに決め、ややぎこちなく泳ぎ始めた。

しかし、ある一点竜は困っていった。

周囲の森林が海底に沈んでしまったために、食料となる生物がまったく見当たらないのだ。

周囲にあるのは少しの海藻とトゲトゲの石(この時の竜はそれがウニという生物だと知らなかった)だけ。このままではおなかが空いたままたくさん泳ぐことになってしまう。

竜は空腹だと機嫌が悪くなる。ひどい時は山をみっつ更地にしてようやく収まったほどだ。

しかし無いものをねだっても出てくるはずもない。

仕方がないので、竜はとりあえず陸地に向かって泳ぎながら獲物を探すことにした。

22 :2016/04/04(月) 23:37:30
**********

竜は海中をすいすいと泳いでいる。

全身をくねらせながら水の中を猛スピードで進んでいく。無駄な動きのない、惚れ惚れするような泳ぎ方だ。体の動かし方を思い出したのかぎこちなかった動きは見る影もない。

そのまま陸地に上陸するかと思われたが、しかし竜は、流れるような体捌きで反転し自分が泳いできた方向を見据えた。

なぜか?......竜のあとを追跡してくる影を察知したのである。

後ろから追って来たのは巨大な猿のような生き物だった。それは後の世で海坊主と呼ばれるモノの先祖にあたる生物、原始人ならぬ原始海坊主である。

原始海坊主の体長はおよそ50メートル(現代海坊主の三倍以上!)あり、さらに現代では退化してなくなってしまった三つの顔と六本の腕を持っているため、その危険度は十倍にも跳ね上がる!
もしもこの恐るべき生物が現代まで生き残っていたら、一年間の海難事故件数は今の300倍にもなっていたことだろう!

竜はこの大きい魚(この時の竜は海の生物はすべて魚だと認識していた)を捕食しようと考えた。先ほどからおなかが減っていたし、なにより大きくて食べがいがありそうだからだ。

原始海坊主は泳ぐスピードを緩めずそのまま竜に体当たりをかますと、右の三本腕を振りかぶり、竜の肩に振り下ろす!原始海坊主パンチだ!その威力は現代海坊主のパンチ10発分以上、一撃で戦艦大和を真っ二つにすることができると予想される!

しかしそれを無抵抗で喰らうほど竜も馬鹿ではない!体を大きくくねらせ回避!そして原始海坊主の左脇に向けて樹齢千年の巨木と見まがうばかりの太い尻尾を叩きつける!

原始海坊主は左の三本腕でガード!腕の骨が粉砕!もはや使い物にならない!しかしこれは幸運だった。水の抵抗がなければ腕ごと胴体をへし折られていただろう!

竜は一撃で息の根を止められなかったことに苛立ち原始海坊主に接近する!しかしこれは下策!空腹からくる苛立ちがために計算力が落ちているのだ!

原始海坊主は接近してきた竜の鼻っ柱に再びパンチを放つ!竜はとっさに避けるが間に合わない!クリーンヒット!竜の鼻から血が流れ出る!

のけぞる竜の胸にさらにパンチ!パンチ!パンチ!呻く竜!

しかし原始海坊主の攻勢はここまでだった。海坊主の動きが鈍る。パンチを放つことに夢中になりすぎて自分の体に巻き付く竜の尻尾に気が付かなかったのだ!長い尻尾により締め付け攻撃!全身の筋肉が断裂し骨が砕けていく!

苦しみ身をよじる原始海坊主!しかしこれで終わらない!奥の手・原始海坊主ビームを目から照射!三つの顔から合計六本のビームが放たれる!しかし竜は体を海坊主の脚方向にずらすことでなんなく回避!海坊主の首は胴体と一体化しているため下をむけないのだ!

原始海坊主はビーム照射によって体力を使い果たし、全身の筋肉から力が抜けていく!それを見た竜は海坊主の首にとどめとばかりに食らいつくと開いた穴に火炎を吐き出した!海坊主のバーベキューだ!

体内から焼かれ断末魔の叫びをあげる原始海坊主!三つの口から悲鳴とともに紅蓮の炎が迸る!血液が沸騰・蒸発し全身の血管が破裂!海坊主はあえなく絶命した!

23 :2016/04/04(月) 23:38:00
**********

竜は獲物の肉をすべてたいらげた。空っぽだったおなかは程よく満ち、全身に力が湧いてくる。先ほどの狩りで負った怪我はすでに完治している。

そうして竜はふたたび陸地にむかって泳ぎ出した。

目指すは心地よい寝床、そして豊富な動植物のある新たな住処だ。

......竜が流した血と食べ残しの原始海坊主の骨が合わさったことによって、現在我々が知る海坊主が生まれるのはまた別のはなしである。

24 のし :2016/04/06(水) 19:58:07
秘密院先輩
tps://twitter.com/noshi_koyomi/status/717667450972602368

25 エルレカーン :2016/04/19(火) 23:02:06
1)ごめんなさい!どうしても期日までに思い浮かばなかったんです!
ということで始めます。これは本戦に至る物語(幕間)――。

『第3試合:ビル建築現場 試合SSその2/Zero 〜海と地の輪舞〜』

春の生暖かい風が吹く。空は曇りで、月明かりは届かない。
夜の闇が灰色の町を覆っていた。

渦巻く暗雲の下、赤い鉄骨の構造体が街灯に照らされ浮かび上がっている。
ありふれた夜の町の光景。
その静寂を切り裂くように、喘ぎ声が木霊した。

「ひゃあぁっ……んっ……か、かってにしないでえぇぇぇ!!」

薄緑色の髪をした少女が、地上10mに位置する鉄骨にしがみついている。
顔は紅潮しており、息は荒い。
そして垂れ下がる髪の毛を巻き付けるようにして、一振りの杖がぶら下がっていた。
茨が巻いた禍々しい棘の杖。

その杖が突然喋り出した。なんとこの杖、お喋り機能付きである。

「クッハッハ!我が茨は鋼よりも硬く絹よりしなやか!八つ裂きになって死ねィ!」

どこから声を発しているのかは分からぬがとにかく杖が喋った。
そして杖から、凶悪な棘を乱杭に生やす……茨が生じた!

「やめてえぇっ!このちからで、ひとをきずつけたくないっ!!」
「我が怨敵、邪悪なる海の神性よ!ここで会ったが40億年目!必ず死なす!」

少女の悲痛な叫びなど聞こえないというふうに杖が咆哮を上げる!
それに応じるかのように、茨が巻きひげをつくりながらどんどん広がっていく!

「わたしっ、こんなのたのんでないぃっ!たのんでないよぉっ!!」

シュルシュル!
茨が鉄骨に絡みながら何かを追うように広がっていく!

「いままでは黙ってお前に従っていたがなァーッ!!アイツを見つけたとなりゃ話が別よぉーッ!!」

シュルシュル!
茨が何かを追うようにどんどん伸びていく!

「こっ……このちからはぁっ……!!ひとのためにっ、つかうってぇぇっ!」
「うるせェァアーーッ!!今はお前が従う番だ!!黙って力を!痛みを!寄越せェッ!!」
「あああぁぁぁっ!!いばりゃぁぁぁぁ!!いばりゃきちゅうぅぅぅぅっ!!」

この少女、織音アイリはマゾだ。心優しきマゾだ。
そして先ほどから何やら喚いている杖は『茨姫の杖(リトル・ブライアローズ)』。
所持者の痛みをその力に変えるこの杖から供給される痛覚に、アイリは快楽を感じている。

特に先程のものは効いたようだ。
アイリはよがり狂い、脊椎反射で鉄骨に腰を振っている。

「ふん。ようやく静かになったなァ。じゃあ行くぜェーーー、エウレカァァァアァ!!」

シュシューッ!
ひときわ太い茨がとぐろを巻いて、跳ね、何かを追いかける!

「紅い茨は槍の如く―――喰らい砕け、ブライアローズ!!」

26 エルレカーン :2016/04/19(火) 23:03:53
バキィーッ!!
締め付けられた鉄骨がブチ折られた!この茨の破壊力は鋼をも砕くというのか!?
こんなものを喰らえば、例え不死身の生命力を持っていたとしても無事ではすむまい!

そして茨の先端が追う数m先に――異形の少女!
肩から下に100本の触手が生えており、それらは海産物――タコとかカニとかクラゲの原型がある!
そんな彼女が悲鳴を上げる!

「リハーサル(※無色の夢)と違ーーーーう!!」

異形の少女は触手を鉄骨に伸ばし、手繰り、立体的に機動する。
その背後からブライアローズが襲いかかる!

100本の内幾つかのイカ触手の先から、タチウオを生やしこれで茨に応戦!
だが無残!
イカタチウオ触手は茨に裂かれ、切り身と化した!

そもそもタチウオは太刀みたいな魚であって泳ぐ太刀では断じて無い!
せいぜい歯が鋭いぐらいである!分かっているのか……分かっているのか、エルレカーン!?

そう、この異形少女の名前はエルレカーン!この戦いに巻き込まれた、哀れな少女だ!
そして彼女の心の中に声が響く!精神の同居人、エウレカだ!

(ほらほらファイトファイトー♪頑張らないと刺し身になっちゃうゾ☆)

「エウレカァァァーーーー!見てないでいつもみたいに手伝いなさいよーーーーッ!!」

(いやー、相性って奴があってぇ。私が出張ってもアイツには勝てな……ああ後ろ後ろ!)

ゆらめく67本目の触手についているタコ眼球が、背後から迫り来る鏖殺茨を捉えた!
100本ほどの茨が渦を巻いて迫り来る!


触手バトルだ!!!!


オーソドックスにダイオウイカの鈎爪付き極悪触手!無残!イカ刺し一丁!
ならばとオニヒトデの毒針付き青黒触手!オニヒトデ無残!環境保護、サンゴを守れ!
電気ビリビリ!シビレエイの発電器官!!あっそれ水中じゃないと効果薄いんで。無残!

ブライアローズが迫ってくる!ヤバイ!

(既存の生物から流用して手抜きしないでホラホラ!独自の発想力!宇宙!マハトマ!)
「やればいいんでしょやればァァーーーーッ!!」

黒い硬質ゴムみたいな蠢く超触手!チェーンソー触手!電撃を纏うポリプ!
宇宙風プロペラカッター!光の流法・輝彩滑刀!超々高圧ウォーターカッター!
これらはやや善戦するも、茨の棘が突き刺さったところから溶け始めた!

「だめじゃない!!なによアレーッ!!インチキだわー!!」
(あちゃーっやっぱコレなんだよなー。専門用語で言う所の神性特攻の棘がなー!)
「に、逃げましょう!逃げるわよ!」
(ちょっとそれはタンマタンマ!!悪手だよエルちゃん!!)

27 エルレカーン :2016/04/19(火) 23:05:25
チョウチンアンコウのランプを生やして逃走を図る!目眩ましだ!
フラッシュバン!閃光が辺りを包む!



徐々に視界が戻る。茨はどうなったのか……。


ダメだ効いてない!まるで意味が無かった!
それどころかさっきの間に、何本かの触手が茨に捕まっている!
それらがそのままエルレカーンを飲み込もうと伸びてきた!

(うわーっ!何やってんですかエルちゃーーーーん!!)
「ああもう!切って切ってぇーーーー!」

カニ触手が茨に捕まった触手をことごとく切り離す!
しかしそれが原因でエルレカーンは体勢を崩し、墜落!鉄骨に激突!気絶!

(うわーっ!シスターにぶち抜かれたときといい相変わらず油断しすぎですぅ、起きてー!!)

茨が彼女を周囲を取り囲み、棘の檻を形作っていく。
もはやここまでか。
このまま肢体をバラバラに引き裂かれ、目覚めぬ永遠の悪夢に囚われてしまうのか。

後悔の念が押し寄せる。
自分が背負った業、因縁、宿命の戦いにエルレカーンを巻き込んでしまった。
こんなことになるなら、外に出なければ良かった……。




エウレカが諦めかけた、その時!




「らめぇ!!らめれしゅぅっ!!」

茨の杖の持ち主、緑髪の少女――織音アイリが叫んだ!

28 エルレカーン :2016/04/19(火) 23:06:53
「こっ、このぉっ………バカ杖……んっ……!!」

アイリが杖を手繰り寄せ、抑えこむ。その華奢な腕に、棘が食い込む。

「あっお前バカやめろ!あとちょっとなのに!いいところなのにィーーーーッ!!」

未練がましい咆哮が響く。アイリは杖を更に強く抱く。棘が食い込む。

「あぅっ…!いばりゃっ!いばりゃささってりゅぅぅぅ!!いたいっ!のがぁっ…ぁ!
 きもちよすぎてぇっ、おかしくなっちゃぅぅぅ!ああああああぁぁぁぁぁぁっ……!!」

「やめろォ!!こ、こんな小娘如きにこの我が!!この我がァーーッ!!」

(何が起こったんです!?)

広がっていた茨が杖のもとへ収縮する。

「いうこときけないっ……子にはぁっ、おしおきぃっ、ですっ!」

アイリは震える手で、杖の先を、自らの秘部へと運んでいく。
棘の杖を、自らの、秘部に。

「わっ……わたしのなかでっ……!大人しくしていてくださいっ……!!」

「うわあああああああーーーーッ!!よせ!やめろ、やめてくれぇぇぇーーーー……」

「えへへっ……じつは前からいっかいやってみたくてぇっ……!
 ゆ、ゆめだから!ゆめだからだいっ、じょうっ……くっ……んっ、はぁ」

これぞマゾヒズムの新境地ローズファック。
アイリの中を、針で刺すよ痛みがのぼっていく。

「あああぁぁぁっ!!いばりゃぁぁっ!!いばりゃはいってくりゅぅぅぅっ!!
 あはっ、あっ、あついっ、おなかのなかぁっ、あついよぉっ……!!」

杖とアイリが一つに交わる。
直結部から朱殷色の光がとめどなく溢れ出し、ビルの建築現場を飲み込んだ。

29 エルレカーン :2016/04/19(火) 23:08:12



 ◯



「あれ、私、どうして――」

エルレカーンが目を覚ます。
周りを囲んでいた茨は消え、薄暗い街灯に照らされる鉄骨だけがあった。

(ど、どうやら助かったみたいですねぇ……?)

狂気を統べる海淵の神エウレカでさえも、動揺を隠し切れない。

「あの子、どうなったかしら……」
(ま、まあ……所詮ただの夢ですし?死んではいないでしょう……多分)

突如、街灯が激しく明滅を始める。
一時の夢の戦いが、終わりを告げようとしていた。

(えー、譲られたとはいえ勝ったには違いありません。どんな夢を願うんで?)
「勿論、この体を治す夢よ。ああ、でも……」

一息置いて。アイリが居た場所を見つめる。

「あの子にもう一度会うってのも――――悪くないわね」


無色の夢を見たときから、あの子とは仲良くなれそうだなって……思ってたから。
ほら、どこか似てるじゃない?あの子と私。

夢でも構わない。一時だけでも、ゆっくりお話したかったわ。
アイリって呼んだり、したかったの……。

(本戦に続く)

30 五月女 水車 :2016/04/20(水) 00:33:49
「オフ会」




「あっ、あの、僕、黄金沢湧水っていいます。」

「お、あなたが!どうも、五月女水車っす!」

「よ、よろしくお願いします。」

「よろしくです!
黄金沢さんも魔人なんですよね?」

「そ、そう。僕の能力は、あの、膀胱ってあるじゃないですか、フヘヘ、ご存じですか?膀胱。尿が溜まる臓器なんです、僕すごい好きなんですよ、膀胱、いやらしい感じと清らかな感じが共にあって、好きなんすよね…。胱って字がいいですよね、光ですよ?神々しさすら感じますよね、それでいて誰もが持つ臓器なのだからすごい。」

「わかる」

「あっ、能力の話でしたね、で、その僕の膀胱に、しこたま溜めるんですね、尿を。」

「ほうほう!!」

「「しこたま」ってやらしくないですか?」

「非常にやらしい!」

「ですよね!僕、綺麗な女の人に耳元で「しこたま」って囁いてもらうのに憧れてるんで…囁いて欲しいっす…。
それはそれとして、溜めた尿を、女の人の膀胱に転送するのが僕の能力っすね。”中出し”と呼ばれるタイプの能力ですね。」

「あー、中出し派なんですか。俺はぶっかけ派なんですよ。俺の能力は、女体化して、尿を操る。それだけですけど、一応尿道を逆流させれば中出しもできます。ただ、パンツあると少し大変なんで、基本はやっぱぶっかけですね。」

「僕、最近流行りの「膀トレ」で膀胱を鍛えてるんで、人より結構大き目の膀胱を持ってるんすよ。」

「うーん…別に否定するわけじゃないですけど、俺苦手なんすよ、膀トレ。だって、量がある程度制限されるからこその尿じゃないですか。」

「でも、だから凄い量溜まって、それが転送されるんで女の人からしてみたら大パニックなんすよ。」

「あー…それは、いいかも。」

「いいですよね!」

「うん、いい!」

「ですよね!」

「うん!!」





※このSSはフィクションです。芸能人がオフ会に参加するの?とか言った君はぶっかけか中出しか選んでね!

31 芳原 梨子 :2016/04/21(木) 19:13:54
「SSDMSet2第一試合ジャングル:another」

 キイイイイイィィィィィンンンンン…………!
 両腕を大きく広げ、列を成して成層圏へと向かい飛び去って行くGFO……ゴリラ型飛行物体の連隊を、五月女水車は見た。

 湿った土と、緑の虫を潰したような葉っぱの臭い。ここはジャングル。熱帯雨林のど真ん中。
 ドリームマッチの世界に茫然と立つのは、稀代のスター、五月女水車だ。
 彼は今、なぜ自分がここにいるのか、よく覚えていない。何やら、頭がぼんやりとする。何もかもが虚ろだ。脳髄の底が渇き、臓腑の奥に熱を感じる。
 ふと地面を見ると、生えている草の一本一本が、黒く見えて来た。黒く、柔らかく、暖かい。これは、ゴリラの体毛だ。水車は今、ゴリラに包まれているのだ。
 顔を上げると、そこはゴリの国。生い茂る木々にはゴリが鬱蒼と茂り、落ちたゴリの実を野生のゴリラがもしゃもしゃと食み、木の洞には気弱なゴリラがもどかしそうに水車を見つめている。水車は、ため息をついた。

「夢だからといって、こんな無茶が許されるというのだろうか」

 水車は、気持ちを落ち着かせるため、木々の洞に隠れたゴリラとかくれんぼを始めた。大丈夫。俺は正常だ。ちゃんと、道行くゴリにスター性を感じる。
 そこでついに、水車は自分がおかしなことを考えていることに気が付いた。
 ここは、ジャングルだ。
『道行くゴリにスター性を感じる』
 道なんて、どこにもないではないか!

 水車は、とっくに対戦相手である芳原梨子の魔人能力、『ゴリのゴリリズム』に当てられていた。
 芳原梨子は、夢の世界に入るとき、コミケ3日目に参加していた来場客約20万人を全てゴリラ化し、夢の戦いに挑んだ。
 『ゴリのゴリリズム』は、感染する。ゴリラからゴリラへ。そのゴリラからまたゴリラへ。
 水車は、夢の戦いが始まった瞬間からゴリラに囲まれていた。その結果、『ゴリリズム』は瞬時に水車の脳髄に叩き込まれ、既にレベル3まで到達していた。
 水車は、聞いている。あの旋律を。
(ゴリリズム♪ ゴリリズム♪ ゴリリズム♪ ゴリリズム♪ ゴリリズム♪)
 ゴリリズムは、ゴリラから水車に感染し、水車からゴリラに感染し、またゴリラから水車に感染していく。
 今水車に見えているのは、ゴリラが見る景色。ゴリラ・パンデミックは止まらない。
 ゴリリズムは、繰りかえす。




 ふんがーどんがーふんがーどんがー。

「アハハハハハー! ゴリラ! ゴリラしかいない! ゴリラサイコー!」

 ゴリラ連隊を引き連れた芳原梨子は、ジャングルをただ楽しそうに行進していた。
 彼女がその豊満な胸を揺らしながら歩き、ゴリラゴリラと叫ぶことで、『ゴリリズム』は拡散していく。
 それは、ジャングルの動物たちに。それは、ジャングルの虫たちに。ジャングルの植物に。微生物に。大気に。
 こうして、ゴリラの円環は無限に広がっていき、いずれこの世の全てはゴリラに満ちる。ゴリリズムは、ゴリループとなる。芳原梨子が、死なない限り。
 当然、現実では世界がゴリラになる前に、芳原梨子が殺されることで、世界はゴリラを免れるだろう。だが、この夢の世界では、芳原梨子を殺せるのは対戦相手以外にいない。
 ゴリループは、止まらない。

32 芳原 梨子 :2016/04/21(木) 19:15:02
「ゴリラ。ゴリラ。ゴリラがゴリラ。ゴリラがゴリラで、ゴリゴリラ」

 戦闘が始まってから、8時間が経過した。水車は、完全にゴリラになっていた。意味の分からないゴリラ語を呟きながら、ほかのゴリラ達と共にゴリの木を植え、ゴリの水を飲み、ゴリの空気を吸い、5リラで買い物をした。
 水車がまだ敗北していないのは、芳原梨子と出会っていないおかげだ。誰だかわからない相手に、降参もくそもない。勝負はまだ始まってすらいないと、夢の戦いは判断しているのだ。
 だが、今の水車は完全なるゴリラであり、芳原梨子の奴隷である。一度出会えば、その瞬間勝敗は決するだろう。ゴリラしかいないこの世界に、芳原梨子が満足した瞬間が、決着の時なのだ。
 ぽつぽつと、空からまばらに小雨が降ってきた。水車は、空を見た。
 空には、巨大なメスゴリラが浮かんでいた。そのゴリラは、恥ずかしそうに頬を染めながら、その股間からぽたぽたと水をたらしていた。
 恵みの雨。それは、ゴリラの尿。
 水車の心を、巨大な衝撃が襲った。心臓が破裂しそうに高鳴り、涙を流しながら、気が付けばなんの意味もなくただ叫んでいた。

「尿だアァーッ!」
 
 何かを思い出しそうだった。野生であるゴリラには決して到達できない、人間を人間たらしめる変態性が、水車の心のドアをガンガンとノックし続ける。
 どうしようもない焦燥。こんなことをしている場合ではない。俺は、ゴリラでいてはいけない。
 水車の体が小さくなる。黒い毛が抜けていく。あの旋律が離れていく。まるでゴリなあの衝動が、消えていく。
 水車が尿を漏らしたその瞬間、水車は、完全な女性の姿に変化した。
『ニューヨーク・オーシャン』発動。水車は、自身の尿をふわふわと浮かべながら、耳を澄ませる。ふんがどんがと、音が聞こえてくる。もう、迷わない。

「私は、ゴリラじゃない」
 
 水車が、決着をつけるため、駆け出した。

「変態だ!」




 芳原梨子が初めに感じたのは、不快感だった。例えるなら、チャーハンのグリーンピース。酢豚のパイナップル。ハンバーグに添えられたニンジンの温野菜。
 大好きなものしかない世界に、異物が混入する。それを、芳原梨子はどうにも許せない性質だった。
 ゴリラの群れをかき分けるように、自分に向かって走ってくる五月女水車という異物を、芳原梨子は許せない。

「やっちゃえ、ゴリラ達ー!」

 芳原梨子が、20万匹のゴリラ全てに轟くかのような雄たけびを上げた。その瞬間、全てのゴリラが一斉に五月女水車に向かって飛びあがってきた。
 水車は、自身の尿をほんの1滴ずつ、ゴリラ達の鼻に向かって飛ばす。それだけで、十分だった。

「ホガアアアアアア!」
「キョホオオオオオオオオオ!」
「意外と悪くない!」
「むしろご褒美!」
「もっとくれ!」
 
 水車の魔人能力『ニューヨーク・オーシャン』は、尿を自由自在に操る。それは、尿を構成する成分すらも。
 尿の持つアンモニアを増幅し、臭気を通常の尿よりはるかに強くした。強い嗅覚を持つゴリラが食らえば、ひとたまりもない(※効果には個人差があります)。
 ゴリラの群れを押し返しながら、芳原梨子に近づく五月女水車。芳原梨子に、戦闘手段はない。ここで、尿を顔射すれば、窒息死させることは容易だ。なにより、かわいい女の子の顔面に尿をぶつけるとか、これ以上ない喜びだ。
 やらない手はない!

「悪いけど、勝たせてもらうよっ!」

 五月女水車が芳原梨子に向かって、今まさに尿を打ち出そうとした時だった。
 芳原梨子は笑った。
 そして、五月女水車は硬直した。
 芳原梨子が、黒色のタイツを脱ぎ、スカートに隠された陰部から、じょぼじょぼと水を垂れ流していたから。
 これは、放尿だ。
 芳原梨子は、放尿をしているのだ。

33 芳原 梨子 :2016/04/21(木) 19:15:27

「五月女水車さん。あなたは、女の子がおしっこをする姿を見るのが、大好きなんだってね」

 くすくすと笑いながら、芳原梨子は尿を出し続ける。五月女水車は、食い入るように見つめるしかない。

「ゴリラのみんなが教えてくれたの。あなたが、積ゴリ乱雲がおしっこをする姿を見て、正気を取り戻したって」

 芳原梨子は、尿をたらしながら、一歩ずつ五月女水車に向かって歩く。それを水車は、へたり込みながら茫然と見続けた。
 水車の鼻の下が伸びる。少しずつ黒色の毛が生えてくる。
 これは仕方ないことなのだ。生まれて初めて、自分好みのかわいい女の子が、自分が最も愛するシチュエーションを提供してくれて、動揺しない男がいるだろうか。
 特に水車にとって、その姿は女神のような神々しさを放っていたに違いない。
 水車は、変態だから。

「こういうのが、好きなんでしょ?」

 水車はがくがくと、首を何度も縦に振る。
 水車は、大好きだ。股間から勢いよく尿が出る姿が。ちょろちょろと勢いが弱まっていく様が。水が滴る太ももが。濡れそぼった靴下が。
 尿が、大好きだ。
 芳原梨子は、ひざまずく水車の目の前に立ち、自身のスカートをたくし上げた。濡れた陰毛と、陰部からぽたぽたと垂れる雫があらわになった。
 芳原梨子は、にこやかに笑った。

「ゴリラになってくれたら、何度でも見せてあげるよっ!」

「ゴリラ、サイコー!」

 体が膨れ上がった。黒い体毛が飛び出た。ゴリラ語が理解できるようになった。
 あの旋律が聞こえた。
 ゴリリズムは、繰り返す。




 ふんがーどんがーふんがーどんがー。
 山々はゴリラ。流れる川はゴリラ。空気中に含まれるゴリラ。というか、空気がゴリラ。
 本来太陽があるべき場所には、ゴリラのにこやかな笑顔が浮かんでいる。
 芳原梨子は、ゴリラとなった世界を、ゴリラを引き連れて、心底楽しそうに行進していた。
 これが夢なのか、現実なのかは、もう誰にもわからない。

34 夢売誘子 :2016/04/24(日) 10:09:48
夢売誘子プロローグ①

 夢売誘子は眠らない。
 眠ることで夢が生じるというのならば、夢売誘子は夢を見ない。
 髑髏(しゃれこうべ)に悪魔が宿る。
 夢売誘子は、アビメルムの見せる悪夢をそう表現した。
 
 その悪夢を幻覚の類とするのなら、あまりにもそれは生々しく、血生臭かった。
 
 アビメルムは、悪夢を喰らう。
 起きている者に、アビメルムの姿は見えず、アビメルムとは、夢売誘子に受胎したことで、この宇宙で観念体となった悪夢そのもの。夢を通してしか知覚できず、夢を見る者が自ら招き入れる。

 アビメルムは喰らった悪夢を現実のものとする。
 それが、どれほど、荒唐無稽であっても、アビメルムは夢を叶える。
 そして、荒唐無稽であればあるほど、叶えられた夢は現実を歪まし、悪夢となって現実を侵食する。
  
 自分がアビメルムに与えてきた悪夢が、堰を切ったかのように溢れだし、現実を歪ませていく、その光景を受け入れるだけの強さは、夢売誘子には残されていなかった。
 夢売誘子は眠れない。それは、アビメルムによって「眠り」を根こそぎ喰われたからに他ならない。
 どこからが現実で、どこからが悪夢だったのか、もはや誰にも判別できない。
 夢売誘子は、寝室に閉じこもり、毛布をかぶって、夜が更けるのを、まるで幼い子どものように、じっと震えて待ち続ける。

 夢を見ることのできない彼女は、無色の夢を見ることができない。
 しかし、アビメルムが喰らった悪夢は、現実を歪ませる。
 その夢は、アビメルムによって叶えられ、既に現実との帳を越えていた。
 眠る自分と、夢の自分、この世界とこことは別の世界、夢を通して�壓がったあらゆる存在・世界は、複雑に入り混じり、一つの世界の中に矛盾を抱え込んだまま叶えられた。
 そして、まるで泡のように、何かのきっかけで弾けて消えそうなその世界は、アビメルムによって少しずつ捨象され、完成された世界へと収束し始めていた。

35 夢売誘子 :2016/04/24(日) 13:29:07
夢売誘子プロローグ②

「夢、売ります」

 夢売誘子は、夢を売る。
 デミウルゴスの泡(あぶく)もしくはソピアの鏡像と呼ばれるものにカテゴライズされるその能力は、夢を「魂が生み出した、肉体という檻に閉じ込められた結果、幻という形でしか認識できない不完全な世界」とし、魂と夢、そして世界は、親と子のような関係でしかなく、その実体は同義であるとする。
 その力について、端的に表現すれば、如意宝珠、豊穣の角でありーーその力の持ち主は、他者の意のままに願い(夢)を叶える道具となる。

 しかし、夢売誘子は、夢を売る。
 叶えるでなく、売るのだ。

 それは、夢売誘子が魔人ではなく、アビメルムの受胎者でしかないことに起因する。
 その力は借り物で、夢売誘子の力ではない。
 アビメルムは、夢(世界)を喰らう。
 アビメルムに喰われた夢(世界)は、悪夢となって現実のものになる。
 人であれ、物であれ、観念であれ、それは物質世界に変換されて実現する。

 しかし、夢売誘子は、その力の意味を何一つ解せず、自身の夢をアビメルムに与え続け、他者にアビメルムを仲介した。
 そこに、悪意はなかったとはいえ。

36 :2016/04/24(日) 21:15:17
『第6試合:遊園地その1・試合後のおまけ』


■▼■▼■▼■▼■


妹とのあれこれを終えた俺・矢塚 一夜とその弟・白夜は、炎天下の中ジェットコースターの順番待ち行列に並んでいた。

俺たちの前には無数のババアと海坊主の群れが行儀よく列を作っているのが見える。だが、肝心のジェットコースターの姿はまったく見えない。遠すぎるのだ。俺たちはかれこれ三週間は並んでいるが、いつまで経っても到着する気配はなかった。

どうやらこれは夢の戦いにおける敗者へのペナルティらしい。白夜に協力していた俺も参加者扱いで引きずり込まれたようだ。本戦の時に入れてくれればもっと活躍できたのになあ……

しかし暑い。むしろ熱い。直射日光とコンクリートの照り返しで二倍熱い。俺の全身から汗が滝のように流れるが、夢の中なので脱水症状で倒れるようなことはない。ひたすらに熱いだけだ。悪夢か。悪夢だった。

列が動く。少しだけ前に進むが、目的地はまだまだ遠い。

俺は横の白夜を見る。我が弟は俺と一緒に三週間立ちっぱなしの並びっぱなしだが、その顔はジェットコースターへの希望に満ち溢れている。そうだよなあ。楽しみだよなあ。ガキのころ遊園地に行ったときは身長制限に引っかかって乗れなかったもんなあ。

そもそも、俺の能力を使えばここから脱出することも可能だろう。だが俺はそうしなかった。今回もいろいろあったが、正直戦いに貢献できていたとは言い難い。むしろ足を引っ張っていたのかもしれない。だから、一緒にペナルティを受けてやるのも当然といえば当然だ。

それに、弟がこんなにも目を輝かせてジェットコースターを心待ちにしているんだ。いまさら乗らずに帰るだなんて、兄貴として恰好がつかないじゃあないか?

列が動く。少しだけ前に進むが、目的地はまだまだ遠い。


■▼■▼■▼■▼■

37 夢売誘子 :2016/04/24(日) 23:17:00
●プロローグ③
 神は最も不遇な者を愛するとは、誰の言葉であっただろうか。
 その言葉は、一見、矛盾するようでありながらも、神の持つ両義性を的確に見抜いていた。
 神に愛された者は、愛された証に、神の徴を刻まれる。

 かつて、デミウルゴスの泡(あぶく)あるいはソピアの鏡像と呼ばれた少女は、生まれながらに脳に異常を抱え、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、時間感覚、その他あらゆる感覚を持たずに生まれ落ちた。
 その少女は、生まれ落ちてから死に至るまでの13年間、世界には天も地もなく、宇宙は無色透明で広大な空間に自我のみが存在しているものと信じていた。
 その少女の名をステラと言う。彼女は偽物の魂を持つ人工生命として創りだされた。

 ヒトは神様を拾ったら、その力を試さずにはいられない。
 全ては、半世紀以上も前に消失した人工衛星の再発見から始まった。
 日本の沖合を漂流していたそれを、最初に発見したのは、日本国籍の小さな漁船であった。
 事件は、何の前触れもなく起こった。当時は、雲ひとつない空であり、どの局でもその週の天気については、晴れもしくは快晴としていた。だからこそ、午後になり、急速に空が鬱りだし、強い風を伴う大雨に変わるとは、誰一人予想していなかった。
 突然の大雨に進路を失ったその漁船は、直ちに救難信号を発し、大波に飲まれぬように、必死に舵を切っていた。
 そんな彼らの目の前に、人工衛星の残物が姿を現した。未解決事件として、世間を騒がせ、最終的には事故として処理されたその事件について、真実を公に語るものは誰もいない。
 謎のみを残したその事件の記憶は風化され、当時を覚えているものも多くない。
 当時、その漁船から無線で連絡を受けた担当者は、その漂流物を発見した時の彼らの様子について、事件当初に語った証言を否定し、今となっては口を噤んでいる。
 だがしかし、一つ確かなのは、当時、その漁船に乗っていた者全員が、太平洋上で忽然と姿を消したという事実だけである。 
 現場の船には、乗組員と何者かが交戦した後が至る所に残っており、事件の異様さを際立たせた。
 彼らが何と出会い、どこへ消えたのか、既に調査は完了していたが、その詳細の一切は公にされていない。
 
 その日、ヒトは神様を拾い損ねたのだ。
 無知なる人類は、何の前触れもなく現れた神様を前に、畏れ慄き、集団で襲いかかった。
 それが事実であり、彼らはその罪を問いた何者かが拉致し、未だにその行方は分からない。
 
 殺してしまった神様を再生するべく、動き出したのが「ステラ計画」であり、それはヒトと神様を掛けあわせることで、天使を創りだす計画だった。

38 夢売誘子 :2016/04/24(日) 23:17:36
●TIPS1「デミウルゴスの泡(あぶく)」
 デミウルゴスの泡とは、ステラと口付けを交わした者の胸部に、沸々と現れる無数の泡のことである。
 肉体という檻に閉じ込められたことで、不安定な形で生み出されることになった、生起と消滅を繰り返す夢の世界を、デミウルゴスの泡は内包している。
 ステラは歌うことで、口付けした者を祝福し、デミウルゴスの泡から、ソピアの鏡像を作り出そうとする。
 デミウルゴスの泡の保有量は、個々人によって異なるが、その一つ一つが、本来ならば、夢という幻覚として消えるか、平行世界となって新たな分岐点となる可能性の源である。

 口付けによってステラと触れた魂は、その魂が備える可能性を、デミウルゴスの泡に内包して体外に放出する。
 口付けをした者は、己から沸き出たデミウルゴスの泡に自身の願いを投影することで、その願いが叶えられるとされる。
 しかし、デミウルゴスの泡によって生み出された世界は、不完全なままであり、何かのきっかけで弾けて消えてしまう。デミウルゴスの泡を、ソピアの鏡像と呼ばれる弾けることのない永遠の虚像に昇華させるには、命さえも投げ打つ覚悟が必要とされる。

39 Set2GK :2016/04/26(火) 05:41:55
>>34
『夢を通して�壓がったあらゆる存在・世界は』
の部分に文字化けがあるようです。
幕間の修正はいつでも受け付けております。

40 茂木 :2016/04/26(火) 17:22:28
創作カレーの秘伝レシピ(みんなも作ってみよう!)
tp://imgur.com/PZbB4mC

41 空木凛(代行:夢売誘子) :2016/04/30(土) 23:02:13
空木凛プロローグSS

第〇章:夢幻の如く

 見渡す限りの紅蓮の火が、ぱちぱちと火の粉をあげていた。
 熱せられた空気が、ごうごうと立ち昇り、どす黒い煙はまるで人魂のように天高く昇っていく。
 ーーああ、またこの夢か。
 大河ドラマで一度は目にするワン・シーン。
《人間五十年――》
 その句を聞けば、嫌でも思い出す。戦国の世の英雄。
 鳴かぬなら殺してしまえホトトギス。
 たとえ、彼の武勇は知らずとも、彼の気性を表したその有名な句ぐらいは、誰もが知っているだろう。
《――化天のうちを比ぶれば――》
 けれど、彼が死に際に、敦盛のその有名な節を詠んだかなどは、私などが知り得るはずもなく、この光景にどこか既視感を覚えるのは、それだけ、このシーンが再現され、人々の記憶に焼き付いている証左でもあるのだろう。
 炎陣の中で舞うその姿は、堂々と雄々しいはずなのに、陽炎のように儚く揺らめく。
 メキメキと梁が音を立てて崩れ落ちていく。迫り来る業火を見上げながら――ノブナガは嗤う。
《人生五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり》
 緋色に塗りつぶされる景色の中で、ノブナガの嗤いだけが、私の脳裏に最後まで焼き付いていた。


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